2021年12月15日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会議事録

日時

令和3年12月15日(水)10:00~12:00

場所

オンライン会議
事務局設置場所:AP虎ノ門 3階 会議室J

出席者

委員
佐藤部会長、笹本委員、杉本委員、瀧本委員、頭金委員、戸塚委員、中島委員、二村委員、松藤委員、三浦委員、渡辺委員
事務局
近澤課長、田中室長、福澤専門官、冨士原主査、重田技官
参考人
国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部 小川部長

議題

  1. (1)審議事項
    • 炭酸水素カリウムの新規指定の可否等について
  2. (2)報告事項

議事録

  

○事務局 それでは、少し時間が早いですけれども、委員の皆様におそろいいただきましたので、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会を開催させていただきます。本日は、御多忙のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。まず初めに、今回、本部会をオンラインで実施させていただきますので、オンライン会議で御注意をいただきたい点について、あらかじめ確認いたします。1つ目として、御発言時以外は基本的にマイクをミュートにしていただきますように、お願いいたします。発言時以外にマイクがオンとなっている場合には、事務局でミュートにさせていただく場合がございますので、御了承ください。また、御発言がある場合には、まず挙手機能やコメント機能を用いて意思表示をお願いいたします。意思表示いただきましたら、部会長又は事務局が指名しますので、その後に御発言をお願いいたします。御発言の際には、最初にお名前をおっしゃっていただきますようにお願いいたします。また、部会長から委員の皆様に、審議事項について認めることでよいかなど確認することがございますが、その際、チャット機能での意思表示をした後に御発言をお願いいたします。了承いただける場合には、チャット機能で「異議なし」等を入力いただきますようにお願いいたします。注意事項は以上となります。
 本部会の傍聴については、報道関係者のみ事務局設置場所にて可としております。このような事情に鑑みまして、審議結果を広く速やかにお知らせするという目的で、審議の結果概要について、議事概要という形でこの部会の終了後に速やかに厚生労働省のホームページに公開をすることとしたいと考えております。議事概要の内容に関しては、速やかに公開をするという観点から、部会長に御一任いただくということで御了承いただければと考えております。なお、いつもの議事録は、後日改めて公開をする予定としています。
 続きまして、1月25日に開催されました薬事・食品衛生審議会総会の場において、審議会委員の改選がありましたことを御報告します。その後開催されました食品衛生分科会において、委員の互選により佐藤部会長に引き続き添加物部会の部会長をお願いすることとなりました。佐藤部会長におかれましては、本部会の運営について引き続きよろしくお願い申し上げます。また、今回の改選により新たに3人の先生方に部会委員として加わっていただいております。新たに御就任いただきました3名の先生を私から御紹介をさせていただきますので、順番に一言御挨拶いただければと思います。名古屋市立大学薬学部教授の頭金正博委員です。先生、お願いいたします。
○頭金委員 名古屋市立大学の頭金と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 よろしくお願いいたします。続きまして、日本大学生物資源科学部教授の松藤寛委員です。
○松藤委員 日本大学生物資源科学部食品生命学科教授の松藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 よろしくお願いいたします。国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部第三室長の渡辺麻衣子委員です。
○渡辺委員 国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部の渡辺と申します。微生物学を専門としております。よろしくお願いします。
○事務局 ありがとうございました。本日の委員の皆様の出席状況を報告します。本日は、桒形委員、原委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、中島委員は遅れて御出席されるとの連絡を頂いております。現時点で、添加物部会委員13名中10名の委員の皆様に御出席いただいておりますので、本日の部会が成立をしますことを御報告申し上げます。
 議題に入る前に、昨年11月に事務局に異動がございました。中山に代わりまして、食品基準審査課長に近澤が着任しました。近澤より一言御挨拶をさせていただきます。
○近澤課長 食品基準審査課長になりました近澤と申します。よろしくお願いいたします。食品に帰ってきたのは30年ぶりぐらいで、昔、食品保健課という所があったのですが、そこにおりまして、そこで規格基準係長をやっておりました。ということで、すごく食品には愛情がありますので、皆さん、先生方には非常に御苦労を掛けているということを、よく分かっているつもりでおります。これからも御苦労をお掛けいたします。申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
○事務局 それでは、資料等の確認をいたします。あらかじめ議事次第、委員名簿、資料1-1から1-3、資料2、資料3-1から3-4、資料4及び参考資料1をお送りしています。それでは、議事の進行を佐藤部会長にお願いします。よろしくお願いいたします。
○佐藤部会長 佐藤です。皆様、よろしいでしょうか。それでは、事務局から本日の部会の審議品目に関する利益相反の確認結果について報告をお願いいたします。
○事務局 本日の部会においては、利益相反の確認対象はございません。
○佐藤部会長 よろしいでしょうか。それでは審議に入ります。議題1「炭酸水素カリウムの新規指定の可否等」に関して審議を行います。まずは事務局から、炭酸水素カリウムの添加物としての概要の説明をお願いいたします。
○事務局 よろしくお願いいたします。それでは、事務局より炭酸水素カリウムについての説明に入ります。その前に、参考資料1を用いまして、本日審議予定の添加物の導入的な説明をさせていただきます。本日の審議対象添加物は、ワインの製造に用いるもので、この資料ではワインの製造工程と、添加物を使用する工程について示しています。後ほど使用基準に係る御説明の中で、ぶどう酒又はぶどう酒の製造に用いるぶどう果汁に使えるとしておりますが、こちらの図に示している工程部分の○3、ぶどう酒の製造に用いるぶどう果汁から、ろ過前の状態までの間に使用できるものであるということになります。また、図の下のほうに表がありますが、これまで添加物部会で御審議いただいた添加物と、本日御審議いただく炭酸水素カリウムの名称と用途をまとめたものです。今回の炭酸水素カリウムは除酸剤でして、令和2年8月の部会で御審議いただいていたL-酒石酸カリウムや炭酸カルシウム等も同様に除酸剤ですので、これらと同様のタイミングで使用するというような説明の図になっております。
 炭酸水素カリウムの説明に移ります。資料1のシリーズが炭酸水素カリウムの指定に関する審議資料でして、1-1が諮問書、1-2が今回のメインになる部会報告書、1-3が食品安全委員会の食品健康影響評価書です。資料1-1の諮問にあるとおり、本品は新規指定ですので、新規の指定の可否についての諮問がありまして、それから成分規格と使用基準を定めることを提案しておりますので、それらの設定についても諮問しております。
 説明は資料1-2を用いて行います。本部会で御審議いただき了承いただいた場合には、本品目は食品衛生分科会で諮ることになっておりますので、分科会に対する部会の報告書(案)というような形でまとめております。
 そのうちまず、1.から5.の添加物としての有効性までについて御説明いたします。1.からです。品目名、炭酸水素カリウムで、2.のとおりの構造になっております。カリウムイオンと炭酸水素イオンに分かれて働くものです。用途としては製造用剤でして、除酸剤としてワインに使用されます。
 4.で概要と外国での使用状況について説明しております。概要としては、炭酸水素カリウムは、ぶどう酒中で炭酸水素イオンとカリウムイオンとに解離し、炭酸水素イオンはアルカリ性ですので、ぶどう酒の酸を中和し、二酸化炭素となり、大部分が揮散されるとされております。また、カリウムイオンは、ぶどう酒中の酒石酸と反応し、酒石酸水素カリウムとなり沈降するとされております。この沈降した酒石酸水素カリウムは滓下げ、ろ過等によって除かれます。これによって過剰な酒石酸を含むぶどう酒から酒石酸を除く効果があるとされております。
 諸外国での使用状況ですが、まずEUにおいてはワインへの加工助剤としての使用のほか、粉ミルクや栄養補助食品への使用が認められております。これはカリウムの栄養補給として使われているということです。ワインへの使用の上限量は定められていません。米国においては、一般に安全と認められる物質、GRASとされておりまして、ワインを含む広範な食品への使用が認められております。ワインとぶどう果汁の除酸に用いる場合に、除酸後の酸度が5 g/L未満に減少してはならないとされております。オーストラリアにおいては、加工助剤としてワインへの使用が認められております。
 5.で添加物としての有効性を記載しております。まず概要ですが、ぶどう酒中の過剰な酸は、強い酸味によって香味のバランスを崩します。また、ぶどう酒中の過剰な酒石酸は、酒石を形成することによって、ぶどう酒の品質を著しく低下させます。そのため、酒石酸をはじめとする酸がぶどう酒中に過剰に存在する場合は、酸度の調整や酒石酸の除去が必要になる場合があります。炭酸水素カリウムは、炭酸水素イオンによってぶどう酒中の酸を中和し、また、カリウムイオンがぶどう酒中の酒石酸水素イオンと反応し、難溶性の酒石酸水素カリウムとして沈殿するため、これを除去することによって酒石酸を除くことができるとされております。
 具体的には下の反応の所のとおりで、酒石酸は2つカルボキシル基がありますが、このうちの片方がカリウムイオンに置き替わることによって、難溶性の炭酸水素カリウムになります。そして、これを滓引き等によって除去すると、もともと酒石酸は2つカルボキシル基がありますので、この反応によって、炭酸水素カリウム1つによって酸性プロトンを2つ取り除くことができるというものになっております。
 次に、溶液中での酒石酸の存在状態に関して説明しています。酒石酸は溶液中に存在するとき、3つの異なる形、酒石酸、酒石酸水素イオン、酒石酸イオンの状態で平衡状態にあることが知られています。酒石酸の状態から1つずつプロトンが取れていった状態ですが、具体的には図1のようになっております。この3つの間の平衡状態がありまして、それぞれpHの値によって存在比が変化している様子がこの図で分かると思います。ぶどう酒のpHは3.0から4.0の間であり、この間ですと真ん中のHT-が酒石酸水素イオンですが、これの濃度が一番高くなっており、特にpH3.7で最大になっているとされております。そのため、pH3.7のぶどう酒に使用するのが最も効率が良いということになっておりますが、一方で、もう片方の炭酸水素イオンのほうが弱アルカリ性になりますので、加えていくと、少しずつpHが上がっていくというところがあります。
 具体的には表1に示しております。左の列に炭酸水素カリウム添加量がありますが、1 g/L上がっていくごとにpHが少しずつ上がっていき、滴定酸度が少しずつ下がっていくことがわかります。炭酸水素カリウム1 g/Lの添加によって、滴定酸度が平均1.1 g/Lずつ下がるくらいの動きになっております。後ほど使用基準で上限量について触れておりますが、滴定酸度、pHなどの関係上、この表に記載されている程度の量の使用がされるものと想定されております。
 次に、炭酸水素カリウムの特徴について説明しております。まず1点目として、ぶどう酒成分に与える影響が小さい除酸剤であるという点が挙げられております。表2に炭酸水素カリウムを処理したぶどう酒と、処理しなかったぶどう酒の中の酸の濃度の比較を示しておりますが、酒石酸に御注目いただきますと、無処理の場合は4.08 g/Lとなっているところ、処理した場合には1.95 g/Lまで下がっています。一方でリンゴ酸、乳酸、クエン酸等のほかの酸に関しては、大きく変動していません。酒石酸以外の酸への影響が小さいことによって、炭酸水素カリウムによる除酸には、ほかの除酸方法と併用できるという特徴があります。よく使用される除酸方法としては、微生物を用いる方法、マロラクティック発酵というものがあります。これは乳酸菌を用いて、2価の酸であるリンゴ酸を1価の酸である乳酸に変換し、酸味を和らげるというものであり、ぶどう酒の製造においては頻繁に行われるということです。このマロラクティック発酵に関わるのがリンゴ酸と乳酸で、炭酸水素カリウムの場合には酒石酸であり、対象の酸が異なるということで、これら2つを組み合わせて、酒質の設計をしていくことができるというものになっております。
 2つ目の特徴として、既に指定されているほかの添加物と比較して有用性が高い点を説明します。ワインの除酸剤として使用できる指定添加物としては、炭酸カリウムと炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどが存在します。まず炭酸カリウムと比較しますと、酸度の細かな調整ができるという点があります。炭酸水素カリウムは1価の塩基であるのに対して、比較対象の炭酸カリウムは2価ですので、これに比べるとアルカリ性が弱く、酸度の細かな調整が可能です。ぶどう酒の一般的なpHが3.0~4.0の範囲と、比較的狭いことを考えますと、この範囲の中で調整するにはアルカリ性が弱いもののほうが利便性が高いということです。なお、pHが高過ぎますと、微生物汚染のリスク等が高まりますので、ぶどう酒の品質に悪影響を及ぼすとされております。
 2点目として、酒石発生の防止の効果が炭酸水素ナトリウムや炭酸カルシウムに比べてあるということです。酒石酸水素カリウムは難溶性のものになりますので、これを形成すると沈殿が生じるわけですが、酒石酸水素ナトリウムに関しましては、溶解度が高いため、酒石として除くことができません。また、炭酸カルシウムについてですが、酒石の1つである酒石酸カルシウムとなって沈殿させる効果を有しているものの、結晶の形成に時間を要しますので、瓶詰め後の酒石発生の懸念が高まるとされております。以上が有効性に関する説明でした。
 ここから⑵の食品中での安定性と⑶の食品中の栄養成分に及ぼす影響です。まず、食品中での安定性として、炭酸水素カリウムは、ぶどう酒中で炭酸水素イオンとカリウムイオンに完全に解離し、そのうち炭酸水素イオンに関しては水素イオンと反応して炭酸となり、ぶどう酒中のpHだと二酸化炭素になる比率が高いですので、これが過剰になりますと空気中に放出されるとされております。一方でカリウムイオンに関しては、先ほどからの説明のとおり、酒石酸水素イオンと反応して難溶性の酒石となり、ろ過等によって除かれます。
 食品中の栄養成分に及ぼす影響ですが、まず、カリウムによって酒石酸イオンを減少させますが、先ほどの説明のとおり、それ以外の有機酸に対する影響はほとんどないと考えられます。また、解離したカリウムイオンの大部分が酒石酸イオンとともに沈殿・除去されますし、炭酸水素イオンは二酸化炭素や水になりますので、食品中の栄養成分に及ぼす影響はほとんどないと考えられます。有効性に関する説明はここまでです。
○佐藤部会長 ここまでで委員の先生方から御質問等ございますか。よろしいでしょうか。それでは、続いて炭酸水素カリウムの食品安全委員会における評価結果について、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 食品安全委員会における評価結果ですが、資料としては1-3に評価結果の通知本体が載っております。こちらに詳しくありますが、これを簡単にまとめたものとして報告書では6.に記載しております。
 今年の3月30日付けで食品安全委員会に対して諮問をしており、10月5日付けで通知を返していただいております。健康影響評価としては、炭酸水素カリウムが添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと評価結果を頂いております。その概要としては以下のとおりです。
 まず、安全性に係る知見の概要として、炭酸水素カリウムに係る知見は限定的であるということで、炭酸水素カリウムと同様に胃内で二酸化炭素とカリウムイオンを生じると考えられる炭酸カリウムに係る知見と併せて安全性について検討をされております。
 炭酸水素カリウムの体内動態としては、まず胃内で直ちに解離して炭酸水素イオン又は炭酸イオン及びカリウムイオンを生成すると考えられました。炭酸水素イオンと炭酸イオンについては、胃内で二酸化炭素になり胃壁細胞に吸収され、水と反応して炭酸水素イオンを生成し血中に取り込まれ、余剰は腎臓から排泄されると考えられました。カリウムイオンについては、ヒトの血中、尿中、細胞中及び細胞外液中において広く分布する物質の1つであり、経口投与されたカリウムイオンの消化管における吸収は比較的高いが、腎臓の排泄機構によって排泄され、その恒常性が維持されていると考えられました。
 炭酸水素カリウムは、容易に食品内又は消化管内で分解して、食品常在成分と同一の物質になることなどの要件に当てはまることから、添加物に関する指針における「食品常在成分であること又は食品内若しくは消化管内で分解して食品常在成分となることが科学的に明らかな場合」に該当すると判断されました。これに該当した場合には、指針に基づき、毒性評価については試験の一部を省略できるとされており、今回の場合は提出された毒性に係る知見のうち、遺伝毒性並びに4週間及び13週間の反復投与毒性に係る試験成績を用いて評価を行うことで、毒性情報は十分得られると判断されております。
 このうちの遺伝毒性に関しては、認められないと判断されました。
 4週間及び13週間の反復経口投与試験に関しましては、ラットにおいて行われておりまして、酸塩基や電解質のバランスの異常を引き起こすような高用量で実施されている試験における所見はあるものの、添加物として適切に使用される限り、ヒトにおける毒性は示さないとされております。そして、炭酸水素カリウムに関するヒトにおける知見としては、その有用性を検討した試験結果でありまして、NOAELを設定可能な試験成績はないものの、2つの研究において、200 mg/kg体重/日で毒性影響は認められないとされております。
 次に、一日摂取量の推計についてです。山梨県のワイン製造マニュアルによりますと、除酸が過剰になると酒質が損なわれるため、ぶどう酒の除酸の最大量は酒石酸として3.5 g/Lとされております。また、炭酸水素カリウム1 g/Lを添加したときには、先ほど表1で説明しましたが、滴定酸度が1.1 g/L程度下がるということから、逆算して3.5 g/Lを1.1で割り、炭酸水素カリウムの最大添加量は3.18 g/Lとされております。そして、これら全てを加えて、全てがぶどう酒に残存すると仮定して計算した場合、ぶどう酒の一日摂取量を46.5 mL/人/日として計算しますと、炭酸水素カリウムの最大摂取量は148 mg/人/日と推定されております。ただ、先ほど申しましたとおり、炭酸水素イオンもカリウムもそれぞれ最終的にある程度除かれることを考慮しますと、実際に摂取される量としては、これよりも少ないとされております。
 ⑶でまとめられておりまして、食品健康影響評価としては、炭酸水素カリウムについては添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと考えられ、ADIを特定する必要はないと判断されております。食品安全委員会の健康影響評価に関しては以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。食品安全委員会における安全性に係る評価の概要について、委員よりコメントをお願いしたいと思います。まず、体内動態について、頭金委員、いかがでしょうか。
○頭金委員 体内動態について簡単に説明いたします。食品常在成分であるか又は食品内若しくは消化管内で分解して食品常在成分になる剤については、平成8年厚生省ガイドラインに該当する条件が記載されています。この剤についてはこの条件に該当することは明らかです。食品常在成分になることが明らかな場合、毒性試験について、げっ歯類の28日間反復投与毒性試験及び変異原性試験を実施することが望ましいとなっております。また、炭酸水素カルシウムについては、炭酸水素イオンとカリウムイオンに生成するということになります。カリウムイオンと炭酸水素イオンについて、それから炭酸カリウムについてのデータを集めるということになっております。簡単ですが以上になります。
○佐藤部会長 ありがとうございます。続いて遺伝毒性について、戸塚委員、いかがでしょうか。
○戸塚委員 すみません、食品安全委員会の評価書を用いて少し説明したほうがよろしいのでしょうか。
○佐藤部会長 はい、よろしくお願いします。
○戸塚委員 はい。そうしましたら、この評価書の15ページだったと思うのですけれども、こちらに遺伝毒性に関して記載がございまして、炭酸水素カリウムと、次のページに炭酸カリウムに関する知見が出ております。いずれも全てin vitroの試験になっており、限定的なのですけれども、中身を見てみますと、全て基本的なAmes試験等でも一般的な菌株を使って試験されており、全て陰性という結果になっておりますので、これをもって炭酸水素カリウムの遺伝毒性に関しては問題ないというふうに判断しております。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。遺伝毒性以外、発がん性、毒性、in vivo試験の部分については、本日御欠席の桒形委員からコメントを頂いております。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 読み上げます。資料1-3の15ページから毒性の項目ですので、こちらから、まず16ページに反復投与毒性試験の記載があります。ラット4週間及び13週間の反復混餌投与試験の毒性所見が17ページに表6としてまとめられております。4週間投与試験では、毒性所見は認められておりませんでした。13週間の投与試験では、副腎の球状帯肥大や腎臓のoncocytic tubule、表6の注釈に記載がありますように、加齢性病変である慢性進行性腎症に伴う形態変化で、尿細管の一部の上皮細胞が巨大化した形態を示している状態ですが、これが観察されております。しかし、腎臓の所見は自然発生で観察される加齢性病変であり、投与期間が30か月と長くなっても増悪していないことが長期投与試験結果、18ページからの参考資料の項目に記載された毒性試験の情報から明らかになっておりますので、毒性学的意義は低いと考えられます。
 また、副腎球状帯肥大は、血中カリウム値の上昇傾向により、カリウム排泄作用のあるアルドステロンの分泌が刺激されたことによると考えられます。この副腎の所見は、ラットにアルカリ性の食餌を摂取させた場合の周知の毒性影響であり、ヒトへの外挿性はない変化と考えられます。また、これらの所見が見られた群は4%の投与群ですが、この用量は、酸塩基や電解質のバランスの異常を引き起こすような高用量のものです。先に少し言及しましたが、参考資料として18ページからラットを用いた長期毒性試験の記載もあります。腎臓、膀胱に所見が見られていますが、これらの所見も、ラットに高濃度のアルカリ性の食餌を長期間摂取させた場合の一般的な知見であり、ヒトへの外挿性はない所見と考えられております。
 まとめますと、19ページに(3)毒性のまとめと記されております。観察された所見は、酸塩基や電解質のバランスの異常を引き起こすような高用量で実施されている試験で認められた所見であって、炭酸水素カリウムの添加物としての使用条件においては、ヒトで毒性を示さないと考えられます。
 19ページから、3.ヒトにおける知見の記載があります。炭酸カリウムを摂取したヒトの知見報告はありませんでした。炭酸水素カリウムに関するヒトの知見は、骨形成の促進や尿路結石の改善、高血圧の予防などの有用性を検証した試験が多い中で、2つの介入研究の結果から、炭酸水素カリウム200 mg/kg体重/日を4~18日間摂取しても毒性影響はないと考えられます。桒形委員からのコメントは以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ここまでで、委員の先生方から、食品健康影響評価における評価結果について、御質問等ございますでしょうか。特によろしいでしょうか。
 では、続いて、炭酸水素カリウムの使用基準案と成分規格案などについて、事務局から説明をお願いします。
○事務局 まず、7.で、本品目は新規の指定ですので、食品安全委員会における食品健康影響評価を踏まえ、食品衛生法第12条の規定に基づく添加物として指定することは差し支えないと記載しております。
 それから、8.の規格基準の設定についてですが、今回、使用基準と成分規格の案を示しておりますので、それについて記載しております。まず、使用基準についてです。諸外国での使用状況、添加物としての有効性、食品安全委員会の食品健康影響評価結果、摂取量の推計等を踏まえて、下の8ページの頭に記載しておりますとおりの使用基準を設定することを提案しております。なお、先ほど少し話しましたが、使用量の上限を規定していません。これについては、ぶどう酒において過剰な除酸は酒質を損なうとされているため、使用される量は自ずと制限されると考えられることから、規定する必要はないと考えております。使用基準案ですが、炭酸水素カリウムは、ぶどう酒の製造に用いるぶどう果汁及びぶどう酒以外の食品に使用してはならない。ぶどう酒とぶどう酒に用いるぶどう果汁のみに使えるというものにしております。
 成分規格は、10ページの別紙1に記載しております。主に、EU、JECFA、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)の規格を参考にして作成されております。本品目の名称は、炭酸水素カリウムでして、含量、性状は記載のとおりです。確認試験として、カリウム塩と炭酸水素塩の反応を呈することを定めています。純度試験としては、溶状において、ほとんど澄明とし、水に溶けやすいことから、1.0 gが水10mLに溶解するとしています。また、純度試験においては、鉛とヒ素について規定しております。乾燥減量と定量法については記載のとおりです。成分規格の詳細な設定根拠は、別紙2からの3ページに記載し、別紙3の14ページ以降にEU等の規格と比較できる表を記載しております。指定、成分規格等に関しては以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。使用基準案及び成分規格案等について、委員の先生方からコメントがあればお願いしたいと思います。まず、成分規格について、杉本委員、いかがでしょうか。
○杉本委員 杉本です。事務局から説明がありましたように、炭酸水素カリウムについてですが、この物質はほぼ純物質です。規格に関しては、EU、OIV、JECFAなど国際的な規格、公定書の中の類似品目を参考に設定されております。また、名称についても、一般的な名称が付けられていまして、国際的に流通するにしても齟齬がないように設定されていると思います。試験も国際的な整合性が取れた方法が設定されていると思いますので、特別に何か成分規格に問題があるとは思っておりません。以上になります。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、炭酸水素カリウムの使用基準案及び成分規格案について、委員の先生方から御質問等ございますでしょうか。では、戸塚先生。
○戸塚委員 ちょっと内容とは関係なかったのですが、8ページにお戻りいただいてもよろしいですか。ここの「ぶどう果汁及び」、すみません、私の勘違いでした。大変失礼しました。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ほかにどなたかございますでしょうか。よろしいでしょうか。特に御意見はないということで、それでは、全体を通して、炭酸水素カリウムの新規指定等の可否について、御意見等をお願いします。杉本委員、どうぞ。
○杉本委員 杉本です。大したことではないので申し訳ないのですが、資料1-2の3ページの1行目の「イオン」の後ろの「T-」の「2-」を上付きに修正をお願いします。
○事務局 失礼しました。修正いたします。
○佐藤部会長 三浦委員、お願いします。
○三浦委員 基本的にはいいと思うのですが、ちょっと確認です。非常に有用性の高い物質として報告されているかと思うのですが、これはもう既に、これまでも使われていたけれども、今回は新規に指定するという理解でよろしいのでしょうか。
○佐藤部会長 事務局からお願いします。
○事務局 海外においては、諸外国での使用状況に示しているとおり、ワインを製造する所においてはよく使われているものであると認識しております。日本においては指定されておりませんので、今の時点ではまだ使用できないものとなっております。
○三浦委員 使用は制限されていたのですね、国内については。
○事務局 そのとおりです。今回の要請により指定を受けますと、使用基準に従って、ぶどう酒等に対して使用できるようになります。
○三浦委員 ありがとうございました。
○佐藤部会長 ほかの先生方、よろしいでしょうか。それでは、一通り御審議をいただいたようですので、炭酸水素カリウムの新規指定等の可否については認めるということでよろしいでしょうか。御意見がある場合は、御発言をお願いします。御了承いただける場合は、コメント欄に「異議なし」などの入力をお願いします。それでは、皆様、御異論なしということで了承いただきましたので、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。事務局からそのほか何かございますでしょうか。
○事務局 本件は添加物の新規指定ですので、分科会では審議事項とされております。細かい文言の変更等の軽微な修正が必要となった場合については、修正内容を部会長に御確認いただいた上で手続を進めることとしてよろしいでしょうか。
○佐藤部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見のある場合は挙手でお知らせください。では、特にないということで、よろしいですね。それでは、幾つか御指摘等ございました。これについて、事務局で再度整備するということで、炭酸水素カリウムの新規指定の可否等については認めるということでよろしいでしょうか。御意見がある場合には御発言をお願いします。それでは、今後のスケジュールについてはどうなりますでしょうか。
○事務局 今回の審議結果について、食品衛生分科会での審議のほか、所定の事務手続を開始したいと考えております。
○佐藤部会長 よろしくお願いします。続いて、報告事項の「令和2年度マーケットバスケット方式による保存料及び着色料の摂取量調査の結果について」に関して、事務局より説明をお願いします。
○事務局 それでは、御説明いたします。資料2を御準備ください。本マーケットバスケット調査は、毎年調査対象となる添加物を変えて実施しているものです。まず、調査の目的から御説明いたします。これまで、マーケットバスケット方式により、添加物の一日摂取量調査を実施し、指定添加物を中心に、我が国における食品添加物の摂取実態を明らかにする取組を行っております。令和2年度については、20歳以上の喫食量に基づき、表1にございます保存料と着色料の一日摂取量調査を行っております。
 方法について御説明いたします。調査に参加した国立医薬品食品衛生研究所及び地方衛生研究所の5機関(札幌、仙台、香川、長崎、沖縄)において、加工食品を購入し、購入した加工食品を1~7群の食品群に分け、それぞれの群ごとに混合した試料を調製いたします。その6機関に東京、千葉、広島を加えた9機関で表1の調査対象添加物の含有量を測定し、各加工食品群の20歳以上の人の喫食量を乗じたものを添加物の一日摂取量として算出するものです。こちらについて、購入した食品を混合したサンプルから一日摂取量を算出しておりますので、得られた一日摂取量は、混合群推定一日摂取量と呼んでおります。また、今御説明いたしました混合群の調査とは別に、購入した食品のうち、調査対象添加物の添加物表示がある食品については、別途表示のある食品ごとにサンプルを調製して分析を行い、表示された食品に基づく一日摂取量を別途算出し、混合群との比較を行っております。こちらは表示のあるものについて算出しておりますので、得られた一日摂取量は、表示群推定一日摂取量と呼んでおります。
 2ページ目以降を御覧ください。続いて、結果及び考察について御説明いたします。結果については、表の見方から御説明いたします。それぞれ、一番左が調査対象の添加物となっており、左から1群の調味嗜好飲料から7群の果実類、野菜類、海草類が並んでおり、一番右に総摂取量の値が出ております。また、各項目については、表2の右上のように、(混合群推定一日摂取量)/(表示群推定一日摂取量)というように示しており、安息香酸で言いますと、1の調味嗜好飲料にある0.695という値が混合群の値、0.560という値が表示群の値になります。
 表3についても見方を御説明させていただきます。表3については、表2で算出した推定一日摂取量と、JECFAと食品衛生委員会でそれぞれ設定されているADI、その右にADIから算出した一人当たりの一日摂取許容量、一番右に推定一日摂取量と一人当たりの一日摂取許容量から算出した対ADI比を示しております。表の見方は以上になりますので、結果について御説明いたします。
 表2より混合群推定一日摂取量の値については、保存料のソルビン酸で最も多く、4.312 mg/人/日であり、着色料については、食用黄色4号が最も多く、0.036 mg/人/日という値でした。また、このような結果から、表示群推定一日摂取量と混合群推定一日摂取量の比較を行った結果、こちらにある安息香酸とプロピオン酸については、表示群より混合群のほうが高い値を示しました。これは、天然由来の食品成分として、食品に含まれているものが値として分析されたものと考えられます。また、亜硫酸塩類、カンタキサンチン、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色2号及びビキシンについては、表示群のみ値が得られております。これらについては、亜硫酸塩は分解しやすいこと、カンタキサンチン、食用赤色3号、黄色5号、青色2号及びビキシンについては、混合群のサンプルを調製する際に、試料が希釈されたため定量下限未満になり、分析ができなかったことが考えられました。その他の添加物については、混合群と表示群の推定一日摂取量はおおむね一致しており、概ね表示どおりに食品添加物が使用されていることが考えられました。
 続いて、表3の結果を御説明いたします。表3により、対ADI比については、保存料では亜硫酸塩が最も高く0.57%、次いで安息香酸の0.45%でした。着色料では最も高いもので、カンタキサンチンの0.03%、次いで食用赤色4号の0.02%でした。これらの結果について、ADIが設定されている保存料及び着色料の推定一日摂取量から得た対ADI比については、いずれもADIを大きく下回っていることが分かりました。
 続いて、試料の添加物含有量に年齢層別喫食量を乗じて算出した年齢層別の推定一日摂取量を表4に示しております。また、表4で算出した推定一日摂取量から、更に値を出した年齢別の対ADI比を表5に示しております。表4と表5の結果は、あくまで20歳以上の人の食事量を基に調製したサンプルの結果から算出している値であるため、参考データではございますが、どの年齢層においてADIを大きく下回っていることが分かり、これらの添加物については、安全上特段の問題はないと考えられております。資料2についての説明は以上になります。
○佐藤部会長 ただいまの報告について、御意見、御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
○中島委員 比較的ADI比としての数字等は少ないので問題はないと思うのですが、亜硫酸塩は割と2%とかあって、これはワインに使われているものですか。
○佐藤部会長 はい、そうですね。
○中島委員 やはりそうですか。ワインには伝統的にこれを入れないと、乳酸菌が入るので、この程度の濃度はどうしても必要とされておりまして、それでもADIと比べてこのくらいの数字だと分かって私も安心しました。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。中島委員、今御発言いただきましたように、会議に入られまして、ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかにございますでしょうか。
 それでは、続いて2つ目の報告事項、「既存添加物の安全性の見直しについて」に関して、事務局より御説明をお願いします。本報告事項については、参考人として、国立医薬品食品衛生研究所の小川先生に御出席いただいております。小川先生、一言御挨拶いただけますでしょうか。
○小川参考人 国立医薬品食品衛生研究所病理部の小川です。食品添加物安全性評価検討会の委員をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 資料3-1、資料3-2、資料3-3、資料3-4を御用意ください。まず、資料3-1ですが、既存添加物に関して、背景から簡単に説明いたします。平成7年時点までは、天然の添加物に関しては指定等を要しないものとされていたところ、平成7年の食品衛生法改正において、その時点で使用されていた天然添加物は既存添加物名簿に収載し、それに限って、指定等を受けなくても使用できるものとなっております。ただ、それに伴い安全性の確認をしていくこととされまして、その確認の報告というのが、今回の報告です。
 これらの既存添加物について、平成8年度の厚生科学研究報告書、既存天然添加物の安全性評価に関する調査研究において、国際的な評価結果や欧米での許認可状況、安全性試験成績結果等から、既存添加物の基本的な安全性について検討しており、それによって、幾つかの分類に分けられております。それが資料3-3で示している図です。平成7年当時は489品目あったものを、安全性の確認をどのぐらい急ぐべきかというような観点から4つの分類にしております。まず、国際的な評価がなされていて基本的な安全性が確認されているものが159品目、その時点で入手した試験成績の評価により安全性の検討を早急に行う必要はないとされたものが41品目とされました。今回の対象になるのが下から2番目ですが、まず、一番下の、安全性の確認を迅速かつ効率的に行うことが求められるものが、平成8年以降迅速に評価を最優先でやってきたというものでした。139品目のうち79品目については、流通していない等の理由によって消除され、残りの60品目のうちの57品目が評価済み、未評価の3品目については、今後どのように評価するのかということを踏まえて、部会で報告を上げさせていただくことになると考えております。
 一番下の最優先のものが大体終わってきましたので、現在は、「基原、製法、本質からみて、現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないもの」という括りのものについての評価を主に進めているところです。43品目については、既に消除されておりまして、残っている107品目のうち、未評価のものが69品目ございます。このうち13品目の報告が今回上げられてきています。
 資料3-1の1段落目の後半では、この辺りのことを説明しておりました。国立医薬品食品衛生研究所の中に食品添加物安全性評価検討会といった検討会を作っておりまして、今般、○2の分類の107品目について、そこの所属の方々を中心にして検討が進められているのですが、調査研究によって情報が得られた13品目について、その結果の報告を頂きましたので、本部会で報告いたします。
 評価結果の概要です。報告書においては、評価した既存添加物の13品目について、それぞれの品目において得られた反復投与毒性試験、変異原性試験、その他の毒性試験の情報、並びに海外における評価を参考に個別に評価を実施し、いずれの既存添加物においても、食品添加物としての使用に関しては、安全性に懸念がないと評価されております。評価の結果は資料3-2に添付している、国立医薬品食品衛生研究所から提出されている調査研究報告書です。この中に各品目についての検討状況について記載いただいております。
 資料3-1の2ページを御覧ください。検討品目の一覧です。右の欄に、平成29年度中の製造・輸入数量の調査研究結果を載せております。これは佐藤先生部会長が研究代表者を担当されているもので、食品添加物の安全性確保に資する研究という研究の中で調査されたものです。
 今回の報告を受けて、この後、二村委員から御説明いただくことになると思いますが、この部会までの間に指摘いただいたこと等もありまして、3.の今後の取扱いとしては、今回報告された13品目のうち、単糖・アミノ酸複合物を除く12品目については、引き続き規格設定等を通じ、安全性の確保に努めることとします。それから、単糖・アミノ酸複合物については、類似物質も含めて毒性試験結果を示す資料が得られなかったため、不純物を想定して最大量を見積もりまして、製造・輸入数量を踏まえて評価されております。報告によると、現状の使用では安全性上の懸念がないとされておりますが、本品そのものによる毒性は明らかではないことから、引き続き安全性に係る情報の収集等に努め、必要に応じて評価の見直しを検討するという形にしております。これに関して、この後、二村委員からの御意見も踏まえて、御意見等を頂ければと思います。
○佐藤部会長 では、二村委員から御意見を頂いているところですので、御発言をよろしくお願いいたします。
○二村委員 事前に意見を文書で提出させていただきましたので、こちらも御覧いただければと思います。
 まず、既存添加物の安全性評価について継続して取り組んでいただいている点には、非常に感謝をしております。現段階において、安全性の検討を早急に行う必要はないと判断された品目についても、改めて安全性評価を進めていくということは、食品添加物の安全性の向上の観点からも重要であると考えています。
 その上で、今回評価いただいているものの中で、全般的に安全と判断した根拠について、もう少し丁寧に説明する必要があるのではないかという意見を述べさせていただいております。特に、報告書は公開されるものですので、もう少し丁寧に記載いただく必要があるのではないかと思っています。遺伝毒性試験と反復投与毒性試験のデータがそろっていない場合の根拠については、特に客観的に、ほかの添加物と並びで見たときに、なぜこれが問題がないとされるのかについては、丁寧な記述が必要だと思います。
 また、成分規格が定められていない添加物の安全性の判断については、原則的には成分規格を定めていただいて、その規格に適合するものの安全性評価を行うべきではないかと思いますので、その点についても、御検討いただければと思っています。
 それから、この中で、特に単糖・アミノ酸複合物については、単糖とアミノ酸の反応生成物で毒性が知られている物質がアクリルアミド以外にもあると言われています。原則的には、遺伝毒性発がん物質は食品添加物としては使用が認められないということとの並びで考えますと、もう少し安全性の精査をする必要があるのではないかという意見を提出させていただいております。
 資料の最後に、今回の13品目について、こういう評価であったと読み取ったものを付けておりますが、この表との関係で、それぞれの品目について追加の情報の記載なり、御検討を頂ければと思っております。私からは以上になります。
○佐藤部会長 それでは、事務局からお願いいたします。
○事務局 資料の4.の単糖・アミノ酸複合物についてからですが、先ほどの資料3-1で触れているとおり、単糖・アミノ酸複合物については御意見を頂いている状況でもありますので、ここについての検討、必要に応じて評価の見直しをしていただくということで、検討会で検討していただきたいと考えております。
 なお、アクリルアミドに限って言いますと、現在把握している単糖・アミノ酸複合物を扱っている事業者においては、少なくともアクリルアミドの原因となるアスパラギンを用いての製造はしていないということでしたので、把握している範囲では特に問題があるというわけではないのですが、当然、規格によって縛っているわけでもないということですので、現状で把握している範囲ではというものです。
 それから、3.の毒性情報の収集方法についてで記載していただいているデキストランとフィチンに関して、追加の情報を頂いております。これについては、検討会にこういった情報も頂きましたので、これを踏まえて、もう一度考えていただけないか依頼しようと考えております。
 それから、2番目の成分規格が定められていない既存添加物の安全性の判断についてですが、御指摘のとおり、規格を定めてから評価を行うほうが適切であることは確かなのですが、平成7年の法改正時の附帯決議において、既存添加物に関しては安全性の見直しを速やかに行うこととされていたことも踏まえて、優先度を高く設定して実施してきているものですので、将来的に規格ができたときに、それとの差異が生じて、評価できていないという部分が出てくることもあるかもしれませんが、その際にはその差異を埋めることを検討することも視野に入れて、まずはできる範囲で安全性の評価を迅速に進めていくことが必要なことだと認識しております。
 それから、1.の安全性の判断の根拠に関して頂いておりますが、これについては、最後に二村委員にまとめていただいたデータの比較表を参照しながら、1品目ずつ簡単に見ていければと思います。
 まず、遺伝毒性試験と反復投与試験に関して、データのそろっているものは、従来の判断の通りに安全性を判断できるものと考えております。それから、海外における評価があるものに関しても、そちらで評価されていることを担保に、安全性の評価を終えているというところがあります。以上を踏まえて見ていきますと、アラビノガラクタンは試験がそろっていて、アラビノースは、反復投与毒性試験に関しては以前に資料をお送りした後に反復投与毒性試験の結果のデータが得られていたものでして、これもマルになったというもので、問題ないと判断しております。キシロースはデータがあり、ゲンチアナに関してはFEMA GRASに加えて、こちらも報告書を少し修正しているのですが、アメリカで指定があるということと、酵素処理ヘスペリジンはデータがあり、レシチンもそうです。骨炭に関しては、反復投与毒性試験のデータが得られていません。単糖・アミノ酸複合物に関しては、どちらも得られていない状況で、デキストランに関しては反復投与毒性試験がない状態で、パーライトは遺伝毒性試験がないですが、GRAS物質とされています。フィチンは反復投与毒性試験のデータが得られていません。ラムザンガムはデータがあり、ラムノースに関しては反復投与毒性試験のデータがないという状況です。
 従来の、海外のデータがあるか又は遺伝毒性試験や反復投与毒性試験のデータが得られているかということによる判断の枠の外に出ているものというのが、この表の中では、骨炭、単糖・アミノ酸複合物、デキストラン、フィチン、ラムノースということになります。
 このうちの単糖・アミノ酸複合物に関しては、最初に説明したとおり、もう一度検討するということと、デキストランとフィチンに関しては、もう一度検討会で、頂いたデータを基に考察していただくということにしております。
 残るは骨炭とラムノースなのですが、骨炭に関しては、基原、製法の所を御覧いただければ分かるとおり、牛骨を高温で炭にしたもので、牛骨としては出汁を取ったりと食経験がある程度あり、そういったものを炭にしたものということですので、それを踏まえて、特に問題はないと判断したということかと思うのですが、それを報告書に記載すべきという御意見なのだと捉えております。
 それから、ラムノースに関しても、単糖ですので、ほかにも単糖として指定を受けているものがあるだとか、ミカン等から得られたものから、加水分解で得られたものということで、その程度のものなので、安全性に問題はないのではないかという議論だったと思われるところですが、委員からの御指摘を踏まえて、骨炭とかラムノースに関しての判断の根拠についても、報告書に改めて記載して、この部会で報告させていただくという形で進めさせていただくのがいいのではないかと考えております。事務局からは以上です。
○佐藤部会長 小川先生から、何か追加はございますでしょうか。
○小川参考人 一部、我々のほうで十分に見られていなかった点を御指摘いただきまして、ありがとうございました。特に、デキストランについては、御指摘のように、EUで評価もされていることもありますので、そちらも踏まえて、評価書の記載も修正させていただきたいと思います。幾つか足りない部分については、もう一度確認した上で、安全性に懸念のないような形で提示できるように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○佐藤部会長 それでは、御質問等がありましたら、挙手でお知らせいただけますでしょうか。よろしいでしょうか。
 続いて3つ目の報告事項、「食品添加物二酸化チタンの対応について」に関して、事務局よりお願いいたします。
○事務局 資料4で説明をさせていただきます。食品添加物二酸化チタンの対応について、状況を報告させていただきます。本年5月6日に、欧州食品安全機関(EFSA)から、食品添加物二酸化チタンについては、遺伝毒性の懸念を排除できないとして、もはや安全であるとみなすことはできないとの結論が公表されました。
 この結論を受け、欧州委員会において、本年10月8日に使用禁止が承認をされております。今後、欧州においては、年末までに欧州理事会又は欧州議会で反対意見が採択されない限り、2022年初頭から6か月間の段階的廃止期間を経て全面的に禁止する方針を示しています。
 一方で我が国においては、二酸化チタンが昭和58年に指定添加物として認められております。白色の着色料という用途で、菓子類等に広く使用されています。
 今般、国立医薬品食品衛生研究所などに所属される安全性生物試験研究の専門家の皆様に、EFSAの評価を受け、我々から二酸化チタンの安全性について御意見を求めております。そうしたところ、EFSAが評価をしたデータセットから、遺伝毒性の懸念が排除できないと結論することは困難であり、ナノサイズの二酸化チタンを考慮して安全性を評価するには、更なるデータ収集と検討が必要との御意見でした。
 現在、国立医薬品食品衛生研究所において、ナノサイズの二酸化チタンについて、ラットを用いた90日間の反復経口投与試験を実施しています。それに先立ち、同じく衛研で実施をされました28日間の毒性試験においては、毒性学的に意義のある所見は認められておりません。90日間の反復投与試験においては、28日間試験の結果を基に条件設定をされていて、今年度中に必要な解析等を進める予定です。この試験結果が得られた際には、その結果を含め、再度、先ほどの安全性生物試験研究の専門家に御意見を求める予定としております。報告は以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ただいまの御報告について、御質問、御意見等はありますか。二村先生、よろしくお願いします。
○二村委員 御説明ありがとうございます。欧州で禁止になることは、今のところ余り報道等はされていないのですが、消費者にとっては不安になる情報だと考えています。今の御報告の中で、欧州では「遺伝毒性の懸念を排除できない」という少し分かりにくい言い回しで理由を述べられています。それに対して日本国内では、専門家の結論として、そのように結論することは困難という御意見だったということです。この意見の違いについて、もう少し詳しく御説明を頂ければと思っています。
 もう1つ、毒性試験等を実施されているという御説明ですので、今後、欧州の評価や対応の妥当性が判断できるように是非、検討を進めていただきたいと思いますし、欧州あるいはそれ以外の諸外国や国際機関の動向についても、情報収集して、必要に応じて情報提供をしていただければと思っています。以上、2点です。
○佐藤部会長 ありがとうございました。これについて、事務局からありますか。
○事務局 事務局です。御指摘ありがとうございます。まだ先ほどの専門家のグループで報告にまとめられたものではないのですが、これまで具体的に頂いたコメントを御紹介させていただきます。主に遺伝毒性に関するEFSAの評価と、それに対する御意見というところを紹介させていただきます。
 まず、in vitroの遺伝子突然変異試験がEFSAの評価書の中に書かれているのですが、その報告書の中で複数の試験が書かれていると。その複数の試験の間でも、結果が相反しているものがあるということで、結論付けは困難であるとコメントを頂いております。in vitroの染色体異常誘発性に関する試験結果についても陰性結果が多いものの判断し難いというコメントを頂いております。
 また、遺伝毒性の判定においては、通常はin vivo試験の結果を最も重視するが、EFSAの報告のうち、in vivoの試験の中で最も重視されるin vivo突然変異試験においては、多くの場合、陰性になっていると。6つの試験のうち5つが陰性という報告になっています。一方で、そのほかのin vivoの陽性の結果に関しては、信頼性が高くなく、標準的でない試験法で実施されているものが含まれていて、EFSAがこれらを根拠として遺伝毒性の懸念を払拭できないとしていることには大きな違和感があるということ。EFSAの報告で言及されている試験においては、被験物質が粒子径等などに関して一定ではなく、評価や解釈が困難であるといったコメントを頂いております。
 これはEFSAの報告を御覧いただいて、一旦のコメントを頂いたものですので、また先ほど御報告しましたように、90日間の試験結果が出てから再度御意見を頂いて、見解をまとめていただく予定です。
 海外での動向も収集するようにという御指摘に関して、そこにも注意を払って進めてまいります。今の時点で、JECFAでもこの品目に関して再評価を進めることになっていることを承知しておりますので、その点報告をさせていただきます。まだJECFAでどのようなスケジュールにするか、どのようなデータを各国から求めるかといった点を整理している段階ですが、引き続き情報収集を進めてまいります。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございました。ほかの先生方、何か御質問等がありましたら、挙手でお知らせください。戸塚先生、お願いします。
○戸塚委員 1つ、もし情報をお持ちでしたら教えていただきたいのですが、EFSAで評価に用いているin vivo試験の投与経路は全て経口ですか。
○事務局 膨大なので一通り確認をさせていただくのは、この時間では困難であるのですが。
○戸塚委員 我々の経験からもあるのですが、ナノサイズのマテリアルを気管内に投与すると陽性と出る場合がありますので、それは物質自体のということよりかは、生体の異物反応みたいなもので出ているという解釈でおりますので、そういったものがもし混ざっているようであれば、日本側の専門家の先生たちがお考えのことがサポートできるかと思いました。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ほかに。小川先生、何かコメント、御発言はありますか。
○小川参考人 先ほどの戸塚先生の御指摘はこちらでももう少し検討します。EFSAのほうなので、基本的には経口投与試験からの判断とは思うのですが、日本からのデータのin vivo変異原性は陰性としていたものに対して、マイナーな試験の陽性データを重視しているところに違和感があるというのが、委員会の見解ではありました。
 この問題は、二酸化チタンそのものの評価ということとナノマテリアルの評価ということの2つが一緒になってしまっている部分がありますので、現在、実際に日本で使われているものがどれぐらいのサイズのものであるか、我々の試験でもナノサイズのもので問題があるかどうかを検討した上で、結果を適切に発表していくことにしたいと考えております。
 現在のところは、90日試験も投与が終了し、少なくとも強い毒性を示唆する所見はないと考えております。遺伝毒性に関連するようなパラメーターも何とか見られないか検討していますので、どうぞよろしくお願いします。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ほかの先生はよろしいでしょうか。よろしいということで、本日の審議、報告は以上ですが、部会委員の皆様から、そのほか何か御発言はありますか。ありましたら挙手でお願いします。よろしいでしょうか。では、本日の審議は、御発言が特にないということなので、次回の予定について、事務局より御説明をお願いします。
○事務局 次回の添加物部会については、日程調整をさせていただいて、場所や議題に関して改めて御案内をさせていただきたいと思います。
○佐藤部会長 それでは、本日の添加物部会はこれで終了します。長時間にわたり、皆様、どうもありがとうございました。

照会先

 

厚生労働省 医薬・生活衛生局 食品基準審査課
03-5253-1111(内線4274)