2021年4月21日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

日時

令和3年4月21日(水)18:00~

出席者

出席委員(21名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理
 
 

行政機関出席者
 

  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  田宮憲一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構執行役員) 他

議事

○事務局 それでは「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」のウェブ会議を開催させていただきます。
 本日、冒頭、医薬品審査管理課長が公務により遅れておりますので、事務局で進行させていただきたいと思います。
 本日は、お忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。
 このたび、医薬品第二部会につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、ウェブでの審議とさせていただきます。
 本日は、現在のところ、当部会委員数21名中、20名の委員に御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。
 薬事分科会規程第11条におきましては「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定しております。
 今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。
 委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 また、本日のウェブ会議に際しまして、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま御説明させていただく場合がございますので、御了承いただければと思います。
 それでは、清田部会長、以後の進行をお願いいたします。
○清田部会長 清田です。皆様、こんばんは。
 それでは、事務局から審議の進行方法の御説明をお願いいたします。
○事務局 本日はウェブでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。
 審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。
 なお、発言者が多いときには、発言されたい委員がメッセージに御記入いただくことで、部会長より発言者を順番に御指名いただけます。
 適宜、メッセージ機能も御利用ください。
○清田部会長 これまでの御説明に御質問、御意見等はございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の審議に入ります。
 まず、事務局から資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての御報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、本日のウェブ会議に係る資料の確認をさせていただきます。
 本日は、あらかじめお送りしておる資料のうち、資料1から資料9と製剤写真を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。
 このほか、資料10として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料11として専門委員リスト、資料12として「競合品目・競合企業リスト」を事前に電子メールにてお送りさせていただいております。
 なお、システムの動作不良などがございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申しつけください。
 続きまして、本日のウェブ会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料12の1ページを御覧ください。
 まず、1ページで、リンヴォック錠でございます。本品目は既存治療で効果不十分な関節症性乾癬を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページを御覧ください。オルミエント錠でございます。本品目はSARS-CoV-2による肺炎を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページを御覧ください。レカルブリオ配合点滴静注用でございます。本品目は各種感染症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページを御覧ください。ヤーボイ点滴静注液でございますが、本品目は切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 以上でございます。
○清田部会長 今の事務局からの御説明に特段の御意見はございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、本ウェブ会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきましては、皆様の御了解をいただいたものといたします。
 それでは、委員からの申出状況についての御報告をお願いいたします。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりでございます。
 議題1、リンヴォック錠。退室委員、なし。議決に参加しない委員、亀田委員、島田委員、中野委員でございます。
 議題2、レカルブリオ配合点滴静注用。退室委員、なし。議決に参加しない委員、亀田委員、川上委員、横幕委員でございます。
 議題3、ヤーボイ点滴静注液。退室委員、山本委員。議決に参加しない委員、亀田委員、南委員でございます。
 議題4、オルミエント錠。退室委員、大曲委員。議決に参加しない委員、亀田委員、南委員でございます。
 薬事分科会審議参加規程第5条におきまして「申請資料作成関与者である委員等は、審議又は議決が行われている間、審議会場から退室する」とされております。ただし、同条のただし書におきまして「当該委員等の発言が特に必要であると分科会等が認めた場合に限り、当該委員等は出席し、意見を述べることができる」となっております。
○清田部会長 ここで今回、議題4の審議に関しましては、SARS-CoV-2による感染症に関する治験の実地経験がある大曲委員の意見を参考にするとよろしいかと思います。当部会として、大曲委員には御出席いただき、御意見を述べていただいてはどうかと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○清田部会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、御了解いただいたものとし、大曲先生には御出席、御意見をいただくことといたします。
 今の事務局からの御説明に特段の御意見等はございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 よろしければ、皆さんに御確認いただいたものといたします。
 本日は審議事項4議題、報告事項4議題、その他事項1議題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移ります。
 議題1について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○説明者 議題1、資料1、リンヴォック錠7.5mgほかの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より説明いたします。審査報告書をお手元に御用意ください。以後の審査報告書のページ数は、審査報告書の下段に37分の幾つで記載している数字を使用いたします。
 本剤の有効成分であるウパダシチニブはヤヌスキナーゼ阻害剤であり「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」に係る効能・効果で承認されております。今般、実施された臨床試験成績等を踏まえ「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」に係る効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、海外では、関節症性乾癬(以下「PsA」と略させていただきます)に係る効能・効果は、欧州では2021年1月に承認され、米国では2021年4月現在、審査中でございます。
 本申請の専門委員として、資料11に記載されております5名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡潔に説明いたします。なお、審査報告書31~32ページの「10.その他」の項に有効性の評価方法の詳細を示しておりますので、適宜、御参照ください。
 有効性につきまして、従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬等で効果不十分な生物製剤未治療のPsA患者を対象とした国際共同第III相試験であるM15-572試験の成績より説明いたします。
 審査報告書10ページ、表7を御覧ください。本試験の主要評価項目である「投与12週後のACR20達成率」について、表7の左から2列目、3列目に示しておりますとおり、プラセボに対する本剤15mg群及び本剤30mg群の優越性が検証されております。日本人部分集団の成績は同ページ、表8のとおりであり、検討例数は限られておりますが、全体集団とおおむね同様の傾向が認められております。
 次に、審査報告書13ページ、表11を御覧ください。こちらは生物製剤で効果不十分なPsA患者を対象とした国際共同第III相試験であるM15-554試験の成績であり、左から2列目、3列目に示しますとおり、主要評価項目である「投与12週後のACR20達成率」について、プラセボに対する本剤15mg群及び30mg群の優越性が検証されております。日本人部分集団の成績は同ページ、表12のとおりであり、全体集団と同様の傾向が認められております。
 以上より、機構は本剤のPsAに対する有効性は示されていると判断いたしました。
 安全性につきましては、審査報告書25ページ、表22にPsA患者を対象とした臨床試験における本剤の安全性の概要を、既承認効能・効果である関節リウマチ患者における安全性の概要とともに示しております。本剤15mg群と本剤30mg群のいずれの用量においても忍容性は許容可能と考えられますが、一部の事象においては15mg群と比較し30mg群でリスクが高い傾向が認められております。また、合併症等の患者背景が異なるため比較には限界がございますが、既承認の関節リウマチ患者における安全性プロファイルと比較して、PsA患者での安全性プロファイルについて、特段の新たな懸念は示されていないことから、関節リウマチに対して実施されている内容と同様の安全対策により、PsAについても管理可能と判断しております。
 用法・用量につきまして、これまでに説明いたしました内容に加えまして、審査報告書19ページの表17及び20ページの表18に示しますように、有効性の各種評価指標において、投与56週後における効果の大きさに本剤15mg群と本剤30mg群で明らかな差は認められず、本剤30mgで得られるさらなるベネフィットは限られていると考えられること等から、申請者は、PsAにおける本剤の用量は15mgが適切であると判断しております。当該判断は、機構も理解でき、本剤のPsAに対する用法・用量を申請のとおり「通常、成人にはウパダシチニブとして15mgの1日1回経口投与する」と設定することで差し支えないと判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能及び新用量医薬品としての申請であるものの、既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上であることから、再審査期間は残余期間(令和10年1月22日まで)と設定することが適切と判断いたしました。
 薬事分科会では報告を予定しております。
 以上、よろしく御審議のほど、お願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございました。
 委員の先生方から御質問等がございましたら、お願いいたします。いかがでしょう。
 どうぞ。
○渡辺委員 渡辺です。
 表7と表8、37分の10ページですが、または37分の13ページの表11と表12に関しての御説明のところで、全体集団と日本人の部分集団との傾向は大体同じだ、みたいなことをおっしゃいましたけれども、この表8、表12において、日本人の症例数とかが極めて少ないわけですね。これでそんなこじつけみたいな、日本人でも当てはまるということを言わなければいけないのか。それとも、この全体のデータがよろしいということなので、特に人種差というものが、エスニックディファレンスというものがあるわけではないという前提でこれを日本人にそのまま適用するのかという、どちらかにしないととても滑稽な話に聞こえるのですが、いかがでしょうか。
○清田部会長 機構からお答えください。
○説明者 先生、御指摘ありがとうございます。
 私どもといたしましては、国際共同試験での開発となりますので、まずは全体集団で有効性が検証されていることが前提だと思っております。その上で、日本人集団でも全体集団で得られた成績と大きな傾向の違いがないかということを確認いたしました。したがいまして、先生からの御指摘の点に対しましては、本剤の有効性の判断は、まずは全体集団で有効性が検証されているということを基本として考えてございます。
 以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございます。
○渡辺委員 ただ、しばしば聞くフレーズとして、日本人でのデータが少ない。例えばCOVID-19のワクチンに関してもそういうフレーズが繰り返し言われましたけれども、では、このわずかな日本人症例が入っているということでこの全体集団の結果を日本人に外挿していいのかということなのですが、その点は何かこじつけのような気がするのですが、いかがでしょうか。統計学的にちゃんとそういうことが、表7と表8のことでコメントをいただいてきましたけれども、そういうことが言えるのでしょうか。
○清田部会長 部会長の清田です。
 渡辺先生のおっしゃるところはごもっともなのです。随分前から私もこの部会の委員をやっておりまして、そのときに、必ず日本人ではどうなのだというデータをくっつけないと議論が進まない時期がございまして、それをまず引きずっているというふうにお考えいただいて、そこのところはちょっと御理解いただきたいなと思っています。
○渡辺委員 ですから、それは僕も昔から臨床試験に参加したときにしており、そういうフレーズも。
○清田部会長 ちょっと声が途絶えました。
○渡辺委員 やっていらっしゃるわけですね。その事前相談のときに日本人集団を何%ぐらい入れることが望ましいとか入れなければいけないとかということについての助言はされたのでしょうか。
○清田部会長 機構からお答えください。
○説明者 御指摘ありがとうございます。
 事前に臨床試験計画に関して相談をいただいた際には、日本人での結果の一貫性、全体集団との結果の一貫性が得られる確率が、検証的試験の場合は80%程度となるような日本人の症例数を組み入れてくださいと助言させていただいているところでございます。今回につきましても、生物製剤で治療効果不十分な患者を対象としたM15-554試験につきましては、一貫性が得られる確率が80%程度になるようには日本人患者さんが組み入れられております。
○清田部会長 いかがでしょう。
○渡辺委員 ですから、逆に言えば、今まで抗がん剤を中心としてですが、欧米でのデータと日本人でのデータというか、反応性、効果とか副作用について、そんな大きく変わるものではないので、あまり日本人がどうのこうのというエスニックディファレンスについて、これはグローバルに承認されたらば日本人だろうが関係ないのだったら承認するというスタンスでいいのではないでしょうか。それが一つのドラッグラグの原因になっているようにも思います。
 僕は最近の情勢をちょっと確認していないのですが、例えば台湾とか韓国などはFDAが承認したらそのまま横滑りで承認するというスタンスを取っているように記憶しているのですが、この点についてはあえてお答えいただかなくてもいいのですが、基本的な方針としてもう少し考え直していただいた方がいいのではないかと思います。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 どうぞ。
○島田委員 島田です。
 渡辺先生の御意見は本当にごもっともだと思います。この関節症性乾癬というものは、私は皮膚科なので、乾癬というものはまあまあ数はあると思うので、これは国際共同治験をやったときに、もうちょっと数を入れられたと思うのですけれども、これがあまりできなかったのは非常に残念な気がしてなりませんが、もうちょっと御指導いただければ皮膚科学会全体で、あるいは日本には日本乾癬学会という、この病気に特化した学会もあるので、そこでうまくやっていただければもうちょっと、この日本の症例が組み込まれたのではないかとも思うのですよ。確かに、この表8では8例しかやっていなかった。おっしゃるとおり、余りにも日本人症例の数がみすぼらしいので、そのような形でもうちょっとうまく国際治験が進むようにしていただければいいかなとは思います。
 ただ、この薬はJAKキナーゼですので、JAK kinase inhibitorなので、幾つか薬もありますし、それの類似薬ということで、リウマチの方もお使いのようですから、これは安全性とかは多分、本当は多分ではいけないのですが、かなり担保されている薬ですし、これは私は今回は承認していいのではないかなとは思います。
 治験のことに関しては渡辺先生のおっしゃるとおりで、日本人をもっと入れるようにするということで、では、この薬をどうするのかといったときに、少ないからやはりやめるというよりは、関節症性乾癬は非常に治療も難しい病気でありまして、幾つかのバイオロジクスは確かに効くことは効くけれども、物すごい勢いで効くわけでもなく、このJAK kinase inhibitorの幾つかはかなり期待されているのですよ。その中の一つで出てきていて、効果は非常によろしいようですので、副作用のリミテッドというか、それほど大きなものはなさそうですので、15mgにすると特にそうですね。そういうことで、私はこれは承認していいのではないかと思います。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
○宮川委員 宮川ですけれども、よろしいでしょうか。
○清田部会長 どうぞ。
○宮川委員 今の渡辺先生のお話はごもっともで、私も質問しようと思っていたことと同様で、そのとおりだろうと私も思っております。
 細かい話で申し訳ないのですけれども、表22、37分の25です。実臨床での使用方法として、プラセボで副作用が173例も認められています。これは前薬をずっと継続使用していた被験者だと推察するのですが、副作用として分類するのは分かりにくいのではないのかなと思います。この173例でこういうものをどのように評価していくのか明らかにし、副作用として記載されていることをどのように考えればいいのか教えていただければと思うのですが、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 機構からお答えください。
○説明者 お答えいたします。
 御指摘いただきました副作用に当たるかどうかの判断につきましては、治験の担当の医師により判断されております。本試験につきましては、併用薬等もございますので、それらによる副作用が混ざっている可能性は否定できないと考えております。
○宮川委員 では、これは推測で、よく分からないということで了解してよろしいですね。
 不明であれば不明で記載されても結構なのですが、真意が読み取れなかったので、教えていただければと思って発言いたしました。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
○説明者 一点訂正させていただきます。併用薬も使用されているのでと申し上げましたが、正確には治験薬との因果関係が否定できないという形で報告されているものが集計されている形になります。
○宮川委員 了解しました。
○清田部会長 よろしいでしょうか。
 それでは、そろそろ議決に入りたいと思います。
 亀田委員、島田委員、中野委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 議題1につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○清田部会長 ありがとうございます。それでは、御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、続きまして、議題2に移ります。
 議題2につきまして、機構から御説明をお願いいたします。
○説明者 議題2、資料2、医薬品レカルブリオ配合点滴静注用の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。タブレットの資料2のフォルダを開き、★マークのついている「審査報告書」のファイルをお開きください。
 レカルブリオ配合点滴静注用(以下、本剤と申します)は、カルバペネム系抗菌薬であるイミペネム水和物とイミペネムの代謝不活性化を抑制するシラスタチンナトリウムの配合剤である既承認のチエナム点滴静注用に、β-ラクタマーゼ阻害薬である新規有効成分のレレバクタム水和物を配合した注射剤で、カルバペネム耐性グラム陰性菌による感染症に対する治療薬として開発されました。本剤は、2020年12月時点で欧米を含む30以上の国または地域で承認されています。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。
 本申請の専門委員として、資料11に記載の8名の委員を指名しました。
 審査の概要について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
 有効性について、通し番号67ページの冒頭を御覧ください。
 イミペネム耐性菌による感染症患者を対象とした国際共同第III相試験である013試験において、主要評価項目であるmMITT集団における総合効果の有効率は、本剤群で71.4%、対照群のイミペネム/シラスタチン及びコリスチン併用群で70.0%であり、両群で大きな差異は認められませんでした。
 少し下の段落「機構は」から始まる文章を御覧ください。
 カルバペネム耐性グラム陰性菌による感染症患者は非常に限られている上、散発的に発生するため、仮説検定における検出力を確保した臨床試験を実施することは困難であり、本試験の有効性評価を推定値の結果に基づき行ったことはやむを得ないと考えます。結果として、本剤群において、カルバペネム耐性菌等による重症感染症患者に対して国内外で使用されているイミペネム/シラスタチン及びコリスチン併用投与群と大きく異ならない有効性の結果が得られたことを踏まえ、本剤のカルバペネム耐性グラム陰性菌による感染症に対する有効性は期待できると判断しました。
 次に、安全性について、通し番号73ページの表70を御覧ください。
 第II相試験及び第III相試験における安全性の概要をお示ししております。各臨床試験における有害事象の発現状況を中心に確認した結果、本剤と既承認のイミペネム/シラスタチンで異なる安全性プロファイルは認められていないことから、既承認のイミペネム/シラスタチンと同様の安全対策を行うことが適切と考えました。
 以上の審査を踏まえ、機構は、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。
 本品目は希少疾病用医薬品に指定されていることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断いたしました。
 なお、薬事分科会では報告を予定しております。
 以上、御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○清田部会長 ありがとうございました。
 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見を承りたいと思います。いかがでしょう。
○登美委員 よろしいでしょうか。
○清田部会長 どうぞ。
○登美委員 2点あるのです。
 一つは添付文書に関係するところなのですけれども、相互作用の併用禁忌のところで、バルプロ酸との併用禁忌ということになって、これはそれでいいのですが、機序が不明となっていたのですけれども、ずっと前から機序は大分不明だったのですが、ここ10年ぐらいでグルクロン酸抱合の脱抱合のところが関係しているということはかなり分かってきた段階で、何かそろそろアップデートしてもいいのかなと思ったりもしたのですけれども、その辺に議論はなかったのかというのが一つ目。
 二つ目は、クレアチニンクリアランスに基づく投与量設計、腎機能に応じた投与設計というものが提案されているわけですが、最近はeGFRを使うようなやり方も増えてきていると思うのですけれども、そっちの方に移行するのかなとは思っていたのですが、やはりこれは今回の場合、クレアチニンクリアランスを使ったというのはチエナムに合わせたのかなとも思ったりもしたので、その辺について、何でそういうふうになったのかということをちょっと質問させてください。
○清田部会長 機構からお答えください。
○説明者 御質問ありがとうございます。
 まず、1点目の相互作用ですけれども、バルプロ酸ナトリウムにつきまして、申請企業から新たな機序の説明資料が提出されていないこともございまして、今回、特にアップデートすることにはならなかったのですが、新しい情報が得られた場合には引き続き添付文書を最新の情報にアップデートするよう、申請者には伝えたいと思います。
○登美委員 お願いします。
○説明者 それから、2点目のクレアチニンクリアランスかeGFRかという点ですけれども、こちらについても、今回、もともとの経緯は分からないところではあるのですが、本剤の用法・用量の設定の最初のところからクレアチニンクリアランスを用いて検討がされているということがございまして、最終的に添付文書にもそちらで設定するという形の記載になっているところが事実関係でございます。
○登美委員 機構としてどっちがいいとか、そういうことを何か言う、その辺は相談に乗って、eGFRの方にするとか、そういうところのお考えは特にないというところですね。
○説明者 機構として、どちらが良い悪いというのはなかなか難しいのですけれども、企業からeGFRでという相談があれば、対応したいと考えています。
○登美委員 ありがとうございます。
○清田部会長 ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。
 濱先生、どうぞ。
○濱委員 濱です。
 添付文書のところで質問させてもらいたいのですが、製剤名と用法の記載についてです。本剤は合剤ですので、製剤名として、剤形の後に規格が入っていないのは何となく分かるのですが、用法の記載を見ますと、通常、1回1.25gという記載になっています。この1バイアルは何gであるのかが明記されていないので、ちょっと分かりにくいかなと感じています。
 類似薬の、例えばチエナムであれば、イミペネムの量で0.5gという記載があるわけですので、本剤も用法に1.25gと記載するのであれば、合剤であっても「点滴静注用」の後に「1.25g」と書くべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○清田部会長 機構から、いかがでしょう。
○説明者 機構です。御質問、ありがとうございます。
 販売名に規格が入っていない点につきましては、医薬品の名前を決めるルールが決まっておりまして、配合剤の場合はこのような記載になるというふうになっています。
 1バイアルにどのくらい入っているか分からないという御指摘につきましては、添付文書の「3.組成・性状」のところを御覧いただければ1バイアル中にどのくらい各成分が入っているかというのは分かるようにはなっているのですけれども、いかがでしょうか。
○濱委員 チエナムにはチエナム点滴静注用0.5gという規格が、合剤ですが、入っています。規格が入っていないと、処方するときにレカルブリオ配合点滴静注用1.25gと処方をしたときに、それが何バイアルであるのかということに対して過誤を起こす可能性があると思いますので、1バイアルが処方量に対してどのくらいの量になるのかということをやはり明記すべきだろうと思っています。いかがでしょうか。
○清田部会長 機構の方、いかがですか。聞こえていますか。
○説明者 ありがとうございます。
 チエナムにつきましては、名称にも配合という名前がついておらず、規格が0.5gというものが書いてあるのが名前をつけるときのルールでそのようになっているところが本剤配合点滴静注用との違いとは考えています。
 御指摘の、バイアル自体には1.25gという記載がされますので、そちらで1バイアルでどのくらいの量と対応するのかというのが判別は可能かと思うのですけれども、販売名につきましてはルールが決まってしまっているので、規格を今回つけるのは難しいのではないかなと思うのです。
○濱委員 そのルールは何となく分かるのですが、先ほど言いましたように、実際に処方するときに、添付文書は手元にないことが多く、レカルブリオ1バイアルというオーダーではなく、1.25gとオーダーをしたときに間違えないことが一番重要かなと思います。
 すみません。本剤のバイアルのラベルを確認していないのですが、1.25gがかなり大きく書かれるのであれば分かるかなと思います。
 以上です。
○清田部会長 機構、いかがでしょうか。
○説明者 機構です。ありがとうございます。御指摘の点は理解いたしました。
 誤解がないように何か医療現場に適切に伝わるような方策が取れないかというのを申請者とも相談したいと思います。
○濱委員 よろしくお願いいたします。
○清田部会長 石井先生、いかがでしょう。
○石井委員 ありがとうございます。
 名称について、INNのルールがあるのでという御説明をいただいたのですけれども、INNは一般名のみで、販売名は日本で決められるのではないかと思いますので、医療上の問題がないように御検討いただくのがよろしいかと思います。よろしくお願いいたします。
○説明者 機構です。
 販売名につきましては、日本独自で医薬品の販売名のつけ方のルールが決まってございまして、そちらに配合の場合は規格を書かないルールになっているところでございます。
○清田部会長 よろしいでしょうか。
○石井委員 はい。分かりました。
○清田部会長 ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 私から意見するのもあれなのですけれども、適応菌種・菌株といいましょうか、全てのカルバペネマーゼを阻害するわけではないということですから、カルバペネム耐性菌に全てが効くわけではないということはちょっと誤解しやすいので、そこはメーカーの方から使い方を気をつけてアナウンスしていただくようにしてもらうようにしないといけないなと思っています。
 例えば緑膿菌などはメタロβ-ラクタマーゼ。これはちょっと効きづらいです。それから、日本のカルバペネマーゼはIMP-1、IMP-6というところが多いのですが、これにも効きづらそうなのです。ただし、欧米で困ってしまっているKPCであるとかはなかなかいい効果があるのです。ですから、これから欧米の耐性菌が入ってきた場合、この薬は非常に有用だということです。そこをメーカーの方にミスリードしないようにお願いしておきたいと思っています。
 それでは、議決に入りたいと思います。
 亀田委員、川上委員、横幕委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○清田部会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題3に移ります。
 山本昇委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題3の審議の間、会議から御退室して御待機いただきたいと思います。山本委員は御退室をお願いいたします。
○山本委員 了解しました。退室します。
―― 山本委員退室 ――
○清田部会長 議題3は、報告事項議題2と関連する内容ですので、これらについて併せて、機構から概要を説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○説明者 審議事項議題3及び報告事項議題2について、機構より説明させていただきます。
 まず、審議事項議題3、資料3、医薬品ヤーボイ点滴静注液50mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、説明いたします。以後の審査報告書のページ数は、各ページの37分の幾つで記載している数字を使用いたします。
 本剤の有効成分であるイピリムマブ(遺伝子組換え)は、ヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)と、抗原提示細胞に発現しているCD80及びCD86分子との結合を阻害するモノクローナル抗体であり、がん抗原特異的なT細胞の活性化等を増強し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。
 現在、本剤は、悪性黒色腫、腎細胞癌、高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸・直腸癌及び非小細胞肺癌に係る効能・効果で承認されております。
 今般、本剤は「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」を効能・効果として承認申請されました。
 なお、本剤は、令和2年8月の当部会における審議を経て、希少疾病用医薬品に指定されております。
 令和3年1月時点において、本剤は、悪性胸膜中皮腫に係る効能・効果で2か国で承認されています。
 本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料11にございますとおり4名の委員です。
 以下、臨床試験成績を中心に、審査の概要を説明いたします。
 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国際共同第III相試験である743試験が提出されました。
 有効性については、審査報告書9ページの表3及び10ページの図1を御覧ください。化学療法歴のない切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫患者を対象とした743試験において、主要評価項目とされた全生存期間について、白金製剤とペメトレキセドナトリウム水和物の併用投与群に対する、本剤とニボルマブ(遺伝子組換え)との併用投与群の優越性が示されました。
 以上より、化学療法歴のない切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫患者に対する本剤とニボルマブ(遺伝子組換え)との併用投与の有効性は示されたと判断しました。
 安全性については、審査報告書12ページ下部の「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。本剤とニボルマブ(遺伝子組換え)との併用投与時において特に注意すべき有害事象は既承認の効能・効果と同様であり、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師による観察や管理等の適切な対応により、忍容可能と判断いたしました。
 ただし、日本人における検討症例は限られており、製造販売後には使用成績調査の実施が必要であると判断しております。
 以上のような審査の結果、機構は「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。
 本剤は、悪性胸膜中皮腫に係る効能・効果で希少疾病用医薬品に指定されていることから、今回追加する効能・効果等に対して再審査期間は10年とすることが適当であると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。
 なお、報告事項の議題2、資料番号5、オプジーボ点滴静注20mg、ほか3規格については、小野薬品工業株式会社から、本剤との併用で使用される薬剤として、化学療法歴のない切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に関する効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、当該品目についても承認して差し支えないと判断しております。
 御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございます。
 それでは、委員の皆様からの御質問、御意見を頂戴したいと思います。
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○宮川委員 宮川ですけれども、よろしいでしょうか。
○清田部会長 どうぞ。
○宮川委員 今、機構からもお話があったように、37分の12、10ページのところですけれども、有効性が非常に分かりにくいと考えます。日本人における検討症例は限られておりそういう意味では、非常に難しい判断だろうと思います。承認後、臨床の場でしっかり検証してもらうように関連学会にお願いするなど何らかの手を打っておいた方が良いと考えます。1ポツ、2ポツも書いてあるとおりなのですけれども、その辺のところはどうなのでしょうか。御意見をいただければ幸いかなと思います。
○清田部会長 機構からお答えください。
○説明者 御意見、ありがとうございます。
 試験結果の解釈につきましては、先生からコメントいただいているとおり、審査報告書12ページの1ポツ目、2ポツ目のところが機構の評価内容になりまして、ここを繰り返し申し上げるだけになってしまうのですが、基本的には全体集団の結果に重きを置いて評価を行っているところでございます。日本人集団の結果に関しましては明確に異なる傾向は認められていないというところで、全体集団での結果に重きを置いて日本人集団でも有効性は期待できるだろうと判断させていただいております。
 以上になります。
○清田部会長 宮川先生、よろしいですね。
○宮川委員 重要な薬です。非常に苦しい解釈だなということはよく分かりますので、今後しっかりとフォローしていくことが重要なのだろうなと思いますので、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。
○島田委員 島田ですけれども、よろしいでしょうか。
○清田部会長 どうぞ。
○島田委員 先ほどの資料1のお話とちょっと似ていると思うのですよ。結局、日本でこの悪性の中皮腫は物すごく少ないから、これは仕方ないと思うのですよ。国際治験ではきっちりとした差が37分の10の表11で出ているので、これはこれで、私の先ほどの意見と同じで、こういうものも認めざるを得ないと思うのですけれども、確かにこのNIVO/IPIの副作用のところを見てもらうと、物すごい勢いで出ているのをお気づきになると思うのですよ。例えば37分の14の表6とか、すごい勢いで副作用が出る治療です。
 私たちはメラノーマでこのニボルマブだけでやっていたらそれほどでもないのですが、NIVO/IPIになると途端にこのイピリムマブというものは相当、自己免疫を起こす薬ですので、こういうようになるのは分かるのですけれども、ただ、やはりベネフィットが上回るというように判断するしかないと思うのですが、先ほど宮川先生がおっしゃったように、この症例を蓄積するしかないと思うのですけれども、承認していいというふうに私は考えます。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入らせていただきます。
 亀田委員、南委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○清田部会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 また、報告事項議題2につきましても御確認いただいたものといたします。
 ロビーで待機されている山本委員をお呼びください。
―― 山本委員入室 ――
○清田部会長 山本委員がお戻りになりました。
 事務局から引き続き御説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項議題2に関連して、オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg、同点滴静注240mg及び同点滴静注120mgにつきまして、その他事項として最適使用推進ガイドラインを作成しておりますので、御説明させていただきます。資料8-1を御覧ください。
 主な変更点につきましては網かけをしております。
 下のページ番号で2ページの枠内を御覧ください。先ほど御説明したとおり、イピリムマブ(遺伝子組換え)との併用に関する内容を追加しております。
 5ページ以降に今回審査された主な臨床試験の結果を記載しております。有効性については先ほど御説明した内容でございます。
 安全性については7ページ以降に記載しておりますが、今回審査された臨床試験において新たに懸念される事象は認められておりません。
 13ページを御覧ください。「有効性に関する事項」について、化学療法未治療の患者に対する本剤とイピリムマブ(遺伝子組換え)の併用投与に関する内容の追加等を行っております。
 14ページ以降の投与に際して留意すべき事項についてはマル4に今回審査された臨床試験を追加したのみで、そのほかに変更はございません。
 説明は以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございます。
委員の先生方から御質問等がございましたら、承りたいと思います。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg、同点滴静注240mg及び同点滴静注120mgの最適使用推進ガイドラインにつきまして御確認いただいたものといたします。
 続きまして、議題4に移りたいと思います。
 議題4につきまして、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○説明者 議題4、資料9、オルミエント錠2mg及び同錠4mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。審査報告書をお手元に御用意ください。以降の審査報告書のページ数は、各ページの下段に41分のXで記載しております数字を使用いたします。
 本剤の有効成分であるバリシチニブはヤヌスキナーゼ阻害剤であり、関節リウマチ及びアトピー性皮膚炎に係る効能・効果で承認されております。今般、実施された臨床試験成績等を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症に関する効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 本申請の専門委員として、資料11に記載されております6名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡潔に御説明いたします。
本申請では評価資料として、SARS-CoV-2による肺炎患者を対象にレムデシビル併用下で実施された国際共同第III相試験であるACTT-2試験が提出されております。
 審査報告書12ページをお開きください。ACTT-2試験では、表4に示しましたNIAID-OSにおいてスコア4~7の患者が対象とされました。
 有効性について、表5及び図1を御覧ください。ACTT-2試験では、NIAID-OSが1~3になった場合に回復と判断することとされ、主要評価項目とされた無作為化後28日時点での回復までの期間についてプラセボ群に対する本剤群の優越性が検証されました。また、審査報告書17ページ、表10及び図2を御覧ください。主要評価項目の結果に加えて全死亡率及び無作為化後14日時点での臨床状態の評価においてもプラセボ群と比較して本剤群で有効な傾向が認められており、本剤のSARS-CoV-2による肺炎患者に対する有効性は示されたと判断いたしました。
 NIAID-OS別の有効性について、審査報告書18~19ページ、表11及び図3~5に示しましたNIAID-OS4の患者集団では主要評価項目及び副次評価項目のいずれにおいてもプラセボ群と比較して本剤群で有効な傾向は認められておらず、申請者は当該患者集団に対する本剤の投与は推奨されない旨を説明しております。部分集団解析の結果であり、評価には限界がありますが、NIAID-OS4の患者集団に対する本剤の有効性が期待できるとは判断し難く、当該患者集団への本剤の投与は推奨されないとする申請者の判断について、機構は理解可能と考えております。
 安全性につきまして、ACTT-2試験において認められた有害事象を審査報告書の13ページ、表6、安全性の概要を審査報告書21ページ、表12に示しております。ACTT-2試験では主にGrade3以上の事象が収集されており、重症度の低い事象の評価には限界があることに留意する必要がありますが、得られた臨床試験成績から新たに注意を要する事象は認められておらず、SARS-CoV-2による肺炎患者においても、既承認の効能・効果の審査時に本剤の使用に当たって注意を要すると判断された事象の発現に注意が必要と判断いたしました。なお、本剤の静脈血栓症発現リスク及びSARS-CoV-2による感染症自体の静脈血栓症発現リスクを踏まえ、SARS-CoV-2による肺炎患者に本剤を投与する場合には、静脈血栓症に対する予防について添付文書において注意喚起する予定としております。
 また、申請時には、成人と小児におけるSARS-CoV-2による感染症の病態に関する知見や他疾患の小児患者を対象とした臨床試験成績を踏まえ、本申請に先立って許可が下りた米国EUAの内容に合わせて小児に対する用法・用量が設定されておりました。しかしながら、現時点において、小児のSARS-CoV-2による感染症患者を対象とした臨床試験成績は得られていないこと等から本申請において小児に対する本剤の臨床的有用性を判断すること及び小児の用法・用量を設定することは困難であり、計画中の小児のSARS-CoV-2による感染症患者を対象とした臨床試験の成績等を踏まえて判断することが適当と考えております。
 以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能医薬品としての申請であるものの、既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上であることから、本申請に係る効能・効果の再審査期間は、既に付与されている再審査期間の期限である令和7年7月2日までとすることが適切と判断しております。
 薬事分科会には報告を予定しております。
 よろしく御審議のほど、お願いいたします。
○清田部会長 ありがとうございます。
 それでは、皆様の御質問を受ける前に、大曲先生から本議題についてのコメント等の御発言をお願いしたいと思います。
○大曲委員 国立国際医療研究センターの大曲です。本日はよろしくお願いいたします。
 私、この治験に関わっておりますので、主に現場の医療者として使う側としての意見を申し述べたいと思います。治験そのものへのコメントは差し控えたいと思います。
 新型コロナウイルス感染症の治療は、主にウイルスを抑えることと、あと、ウイルスの増殖に伴う過剰な免疫応答を抑える。これによって患者さんを治癒することが主な治療の方針になっていきます。その中でも、主に致命率を下げる可能性があるのは、抗ウイルス薬自体ではなかなかそれは期待できないのが現状の認識でありまして、やはり免疫抑制薬をいかに使うのかということが患者さんの予後改善、端的には致命率の低下等に大きく関係していると考えられています。そういう意味では、今までのところでは海外の治験といいますか、大規模のRCTですけれども、それでデキサメタゾンで致命率が下がるということが示されているのが唯一の知見であります。
 ただ、デキサメタゾンが出てきたことは我々、現場の臨床医あるいは患者さんからすればいいニュースではあるわけですが、実は新型コロナの患者さんは、特に重症化する方は耐糖能異常があったりですとかもともと体が大きい方が多かったりして、そういう方々にデキサメタゾンを使うとやはり血糖のコントロールが難しいといった問題もありますし、なかなか使いにくい面も正直ございます。また、本当にデキサメタゾンの効果が最上なのか、致命率の低下の効果は最上なのかと言うと、そこはまだ分からないところですので、治療自体がなかなか未確立という中では、やはりいいオプションがまだ探索されるべきだと思っています。
 そういう意味では、このバリシチニブに関しては、今回、結果が示されていますけれども、デキサメタゾンと並んで、いわゆる免疫を抑える方の治療ということで我々としては期待をしたいと思っています。
 ただ、今回の唯一、今回の書類を見て、OS4のところは外してありました。OS4は酸素の要らない肺炎の患者さんと私は認識しておりますが、確かにここにまで使うのは、オルミエント自体の、バリシチニブ自体が持っている潜在的な、様々な有害事象、血栓ですとか、あるいは免疫抑制ですとか、もろもろありますけれども、その辺を考えると、やはり酸素需要のない方に対して使うのは我々、現場の人間としても非常に怖いところがあります。避けたいところがありますので、このグループの方々を適用から外して提示がしてあることに関しては、現場としては非常に納得できるものだと思っております。
 そういうことで、現場の印象としては以上でございます。ありがとうございます。
○清田部会長 ありがとうございました。
 それでは、委員の先生方から御質問、御意見がございましたら、承りたいと思います。いかがでしょう。
○島田委員 島田ですけれども、よろしいでしょうか。
○清田部会長 どうぞ。
○島田委員 今の大曲先生のお話、非常によく理解いたしました。確かに抗ウイルス薬がいまだ出ていないというか、レムデシビルのみで、ほかの薬は全部、かなり討ち死に傾向にあるということで、こうなると、やはり免疫抑制剤というか、免疫を抑制する薬であるデキサメタゾンがあって、あと、やはりもうちょっと欲しいところでアクテムラという話もあるのですけれども、まだ出てきていないので、このバリシチニブなどというものはJAKキナーゼの阻害剤ということで、1番目に出てきたものと似たような薬なわけですね。既にアトピー性皮膚炎など、我々の皮膚科がアトピー性皮膚炎などにも取っている薬ですので、これは比較的安全という薬です。こういうものが出てきて、これと抗ウイルス薬を併用することによって、この昨今の感染症はある程度抑えることができるのは非常に喜ばしいことではないかと思いますので、こういうものは本当にぜひ残していただきたいのです。
 大曲先生がせっかく出てこられたので、これは実際にお使いになってはいないですか。幾つかの病院では適応外使用みたいな形で、これは既に、要するに諸外国では使われていて、いいということで使われていることを実際、耳にするのですが、先生御自身でもし御経験があったら、ちょっとお話を聞きたいのですけれども、いかがでしょうか。
○大曲委員 実臨床では、実は私たちはまだ使っていないのです。
 いろいろな問題があります。一つは、デキサメタゾンが早く標準薬になったところが非常に影響していると思っています。やはりデキサメタゾンは臨床医からすると使いたいのです。そこをバリシチニブに置き換えてやるのは現状、こうした今まさに審査が行われているわけですが、それが行われる以前の状況では日本の少なくとも現場の人間からすると、なかなか勇気が要るといいますか、そういうところがあったのではないかと思いますので、現実には使われていない。
 あと、考え方としては、これはかなり飛躍した話になりますが、デキサメタゾンだけで十分なのか。場合によっては、例えばトシリズマブでいきますと、英国のトライアルの結果を見ますと、どうもトシリズマブとデキサメタゾンと併用した群の方がよく見えるので、むしろそれを使うのは現場ではよく見かけることなのですけれども、ただ、バリシチニブに関しては、ステロイドと併用した場合にどうかということに関しては、なかなか現場の人間が納得できるようなデータが出ていないところもありましたので、併用もしないということになりますので、今のところはまだ私自身は使っていないですし、日本でもそうそう使われてはいないのではないかと思っています。
○島田委員 実は私、使っているような話を聞いたので、結構、やはり免疫を抑えることが主眼になると、トシリズマブ併用が良くて、これが駄目という理由づけは私はちょっと納得できないのですけれども、免疫抑制ということであれば、このJAKキナーゼというものはかなり広範なサイトカインの、要はシグナルを抑えるので、コロナなどというものは非常にいいと思うのですが、トシリズマブがIL-6のみなので、むしろ特化した薬ですね。だから、それよりもむしろこっちの方が本当は、要はサイトカインストームでやられるということになると、IL-6だけ抑えるよりは、こういうふうに広範に、要するにサイトカインシグナルを抑えた方がいいかもしれません。
 理論的なので、これは実際に試していないからそんなことは言えないのではないかということは言えるとは思いますけれども、この薬などというものはかなりいいのではないか。ステロイドと併用するのもいいのではないかと私は思いますが、これもやはり臨床試験で確かめないといけないと思いますけれども、ただ、これは承認させないと何もできないので、ぜひこれは承認してほしいというところなので、その辺、大曲先生と全く私は同意いたします。
 ありがとうございました。
○清田部会長 ありがとうございます。
 ほかの先生から御質問、御意見はございますでしょうか。
○大隈委員 大隈からよろしいでしょうか。
○清田部会長 どうぞ。
○大隈委員 本剤の承認については特に異論はないのですけれども、ちょっと確認ですが、これはレムデシビルとの併用において使うということかと思いますけれども、今後、併用ではなくて単独で使用することも見据えているということかと思うのですが、そこの確認。
 あと、副作用としてVTEが出現するということですけれども、何かしら、この理由とか発現機序とか、そういうものがもし分かっていれば、ちょっと教えていただけないでしょうか。
○清田部会長 機構からお答えください。
○説明者 御質問いただき、ありがとうございます。
 まず、1点目の今後、単独投与ができるようになるかというところでございますけれども、ACTT-2試験とは別に企業主導で標準治療に本剤を上乗せする治験を実施中でございます。その結果についてプレスが企業からも出されているところではありますが、結果の精査を行い企業がレムデシビルとの併用に限定せずに使用することを考えた場合には、レムデシビルとの併用のみに限定されない形に変更される可能性も残っているのではないかと思います。ただ、現時点においては、ACTT-2試験に基づいた結果で推奨できる使い方というところで、機構としてはレムデシビル併用ということになると考えております。
 このような御説明でよろしいでしょうか。
○大隈委員 分かりました。
 もう一点の方をお願いします。
○説明者 2点目のVTEでございますけれども、もともと関節リウマチの審査においてVTEというものが本剤のリスクとして上がってきたところではございますが、その作用機序については明らかにはなっていません。
 今回、関節リウマチの試験よりもSARS-CoV-2による肺炎患者の試験では、VTEの発現割合が高かったのですが、それがもともとの疾患自体によるものなのか、本剤がさらに上乗せしているかというところは明らかではないと思っておりますが、少なくとも試験の結果から、プラセボ群と比較して、本剤群で少し高い傾向が認められているということで、注意が必要と考えております。
○清田部会長 よろしいでしょうか。
○大隈委員 承知しました。
 この副作用については、発現するとやはり投与された方にはかなり影響があるかなと思うので、この点についてはちょっと注意喚起していただければと思います。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
 それでは、松下先生、先に御質問いただけますか。
○松下委員 松下です。
 ステロイドとの併用の件ですが、これを見ると、ステロイドの併用は肺炎の治療を目的としなければ可能となっているのですけれども、発熱の抑制とか、そういった目的で使用することはオーケーであって、量も限定的と考えていいのでしょうか。
○説明者 機構でございます。御質問いただき、ありがとうございます。
 審査報告書を御覧いただいての御質問だと思っておりますけれども、この審査報告書ではACTT-2試験での設定を記載しております。ACTT-2試験では、御質問いただきましたとおり、喘息とかほかの疾患に対する使用というところは認められていたのですが、SARS-CoV-2による肺炎自体の治療を目的とした使い方は認められていなかった状況でございます。
○松下委員 とはいっても、実際にはなかなか区別することは難しいような気もするのです。
○説明者 SARS-CoV-2による感染症に対する使用が禁止されていたというのがこの試験の設定になっております。
○松下委員 そうなると、併用したことによる有効性あるいは有害事象に関する影響に関しては、この試験では分からないということになっているのですけれども、現在、KHAA試験が実施中なので、その結果が確定するとそれが分かるようなことも書いてあるのですが、現状は機構としては併用を禁止しないスタンスであるということですか。
○説明者 御指摘いただき、ありがとうございます。
 機構といたしましては、少なくともACTT-2試験に基づいてステロイドとの併用により、更なる本剤の上乗せした効果があるとか、併用したときに安全性上の重大な懸念が生じるという判断をしているわけではありません。
 KHAA試験に関する記載をしましたのは、KHAA試験はステロイドの併用が認められている試験、標準治療としてステロイドを投与できる試験でございますので、そこで併用した場合と併用しなかった場合と、個別の詳細な内容を見ていくと、もしかしたらステロイド併用時の有効性、安全性について、さらなる情報が得られるのではないかというところで記載しております。
○松下委員 大体分かりました。
○清田部会長 ありがとうございます。
 それでは、亀田先生、お手を挙げておられましたので、亀田先生、先にどうぞ。
○亀田委員 ありがとうございます。
 今の併用の件は非常に大事であって、今回、添付文書を拝見しますと、関節リウマチなどで重篤な感染症が駄目とか、いろいろな生物学的製剤との併用が駄目とか、いろいろ書いてあったのですけれども、そういったことが少し取り外されているのは非常に大事なことなのです。例えば重篤な肺炎として皮膚筋炎という病気の極めて重篤な間質性肺炎というものがあって、これはステロイドを使って免疫抑制薬を最初から2剤併用して、それでも亡くなってしまう。そういった状況のときにトファチニブというJAK阻害薬を使って、良かったという成績が日本から出ていて、中国の方で『New England Journal of Medicine』に同様の結果だったというものが出ています。そういったことを考えますと、これをきっかけにして様々な併用が認められることは今後の様々な肺の炎症に対して致命的なものを救うことにつながる可能性がございます。
 また、そういったことを考えますと、ステロイドを投与している患者さんにこのバリシチニブを使うときにステロイドをオフにするなどというのはむしろ危ないことであって、それがリバウンドを起こす可能性もある。JAKに関連しない病態が悪くなったりとか、用量も制限されていますから、JAKもステロイドとバリシチニブの併用でようやく抑えられている患者さんもいます。そういったことを考えると、変な制限をもたらしてしまうことは患者さんに不幸な転帰を与えますので、ぜひそこは主治医の判断で柔軟にできるようにしている、この添付文書どおりで良いと思います。
 ありがとうございました。
○清田部会長 ありがとうございます。
 それでは、島田先生、また御意見があるようで。
○島田委員 すみません。よろしいですか。
○清田部会長 どうぞ。
○島田委員 レムデシビルとその併用のことがちょっと問題になったのですけれども、要はこれは肺炎なのですよ。それでウイルス性の肺炎で、普通、我々みたいなオールドタイプの医師からすると、肺炎にステロイドを使っていいのか。ウイルス性肺炎ですが、感染症にステロイドというものは大体禁忌だったのです。これはそれを乗り越えて、要はこのデキサメタゾンが効くというのは非常に驚いたのですよ。本当かなと、今でも自分がこの病気になったときにステロイドを使うのはちょっと引くようなぐらいのやり方ですね。
 だけれども、これは実際、本当に効くのだからしようがないわけで、これは大曲先生も十分御経験なさっているわけですが、だから、免疫抑制剤が効くということは、つまり、このSARS-CoV-2の病態に、最初はウイルス性の病態があるのですけれども、その後、自己免疫みたいな、かなり免疫がやられて、活躍し過ぎてサイトカインストームになりつつ、要するに亡くなっていく。そういう経過を取るので、先ほど亀田先生がおっしゃったように、これは免疫抑制薬をマルチに重ねていくのが一つの治療法になるのです。だから、そこのところがあるので、ウイルス性の疾患にステロイドを使うことに対する矛盾ということはそこで、この病気で恐らくこういうことが行われたのは初めてか、私もそんなに知識があるわけではないのであれですが、私としては非常に驚きの治療なわけでして、では、そんなにいっぱい重ねると危ないのではないのか、免疫抑制薬をこんなに重ねていいのかという先生もやはりおられると思うのですよ。
 だけれども、これは実臨床では良さそうというところなので、さっき亀田先生がおっしゃったように、この後半のところは本当に、皮膚筋炎もそうですが、これも自己免疫系のこの疾患を抑えるかのごとく治療していくのがいいのではないかと思いますけれども、そこにこういう治療薬が本当に出て、レムデシビルは弱いですね。だから、これよりももっといいものが、国立国際医療研究センターの満屋先生などはSARS-CoV-2のプロテアーゼインヒビターなどを開発されていて、こういうものが出てくるとさらにいいのではないかなとは思うのですが、それを待つしかないかなと思っております。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
 宮川先生、御質問があるようです。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。
 今のステロイドのことは亀田先生と同じようなお話をしようと思っていたところで、亀田先生に先に御指摘いただき納得いたしました。
 審査報告書には記載がないのですが、『New England Journal』の論文を読むと、実際にはECMOの使用に至った人数が抑制されたり、重症化に対して防ぐことが患者予後にとっても重要であると記載されています。この重症の病床を担う医療従事者の負担が軽減されるということで、この論文の内容が審査報告書にも反映されても良いのではと思っていたので、記載についてお願いできればということです。
 それから、ハザード比のことですが、論文で見ると、Rate ratio for recoveryと書いてあります。回復率の比で見ているわけですが、そういうことが情報提供のところにあると非常に分かりやすく、納得しやすいような表現になるのではないかと感じます。回復率の比という表現は、いかがでしょうか。
 実際に報告書の時点との状況で比べて、変異株のことも含めて小児のことも随分変わっている現状です。実際にこの論文の中では小児のことも少し良いことも書いてあるので、小児への適応拡大の今後の臨床試験がどうなっているのかということを、これは付け足しで申し訳ないのですが、そこだけ教えていただければと思い質問させていただきました。
○清田部会長 機構からお答えいただけますでしょうか。
○説明者 申し訳ありません。最後の、小児のお話をされていたと思うのですけれども、その点をもう一度御説明いただいてもよろしいでしょうか。
○宮川委員 まずは先に回復率の比とか、そのような表現を盛り込んでいただけるかどうか。それから、ECMOの使用に至った人数が抑制されたり、重症化を防ぐということが論文に書いてあるので、それを反映できるのかどうかということをまず機構の方にお聞きしたいと思います。
○説明者 承知いたしました。
 申請資料のCTD2.5でございますけれども、その中に主要な統計解析計画書に基づく解析結果と、申請者が別途解析した統計解析計画書の補遺に基づく解析結果が記載されており、この統計解析計画書の補遺に基づく解析結果として人工呼吸に至った患者に関する検討結果が記載されております。今回、ACTT-2試験のもともとの解析計画である主要な統計解析計画書の解析結果に基づいて審査をしておりますので、人工呼吸に至った患者に関する解析結果等につきましては審査報告書に記載しておりませんが、CTD2.5につきましては公表されますので、こちらで確認いただけるのではないかと考えております。
○宮川委員 ありがとうございます。
 小児のことについては、今後の臨床試験に期待したいのですけれども、そういう方向性が機構の方として把握していらっしゃるのかどうか、厚労省として把握されているのかどうか。それから、大曲先生などがそういう計画があるのかどうか、蛇足ですが聞きたかったということです。
○清田部会長 では、亀田先生、また御意見があるようです。どうぞ。
○亀田委員 すみません。簡単に追加なのですけれども、例えばデキサメタゾンはもともと重症感染症に対して化学療法と併用する条件で適応を有しております。また、ニューモシスチス肺炎の場合にはST合剤とステロイドを併用するのが我々の領域では一般的であります。そういったことで、今回、こういった感染症に対して抗ウイルス薬とステロイド、あるいはバリシチニブというJAK阻害薬を併用することは、我々にとっては非常に理解しやすいことであると考えております。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
○中野委員 中野ですけれども、いいでしょうか。
○清田部会長 どうぞ。
○中野委員 小児科医なので、一言発言させていただきます。
 宮川先生に御指摘いただきました小児の薬としてもぜひというのは非常に小児科医としては本当にありがたいお言葉で、私もそのように考えております。薬剤でもワクチンでもとにかく使えるものの選択肢としては欲しいと思うのです。
 ただ、その一方で、大曲先生がおっしゃられた、成人ではデキサメタゾンが使えない方が糖尿病その他でいらっしゃるということであったと思いますが、小児では幸いにステロイドが使いにくい方は非常に少ないと思うのです。
 もう一点は、私も今、小児科医として、もし小児の重症例が来たら、使える薬はレムデシビルとデキサメタゾンしかないなと思っているのですが、実際、それらの薬が必要な子供たちは決して多くはないので、国内で治験を組むとなるとそれはそれで非常に大変なお話だと思いますので、逆に他の疾患での安全性とか、そういったデータを集積していただいて、使える薬が増えることはもちろんウェルカムでございますので、そのような観点から御検討いただければうれしく思います。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
 それでは、そろそろ議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 大曲先生におかれましては、退室委員として議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
―― 大曲委員退室 ――
○清田部会長 また、亀田委員、南委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○清田部会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、報告事項に移ります。
 報告事項議題1・3・4につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
 大曲先生がお戻りになりましたら始めさせていただきます。
―― 大曲委員入室 ――
○清田部会長 それでは、報告事項議題1・3・4につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 まず、報告事項議題1から御説明させていただきます。資料4を御覧ください。議題1、医薬品ニンラーロカプセルの製造販売承認事項一部変更承認について御報告いたします。
 本剤は、イキサゾミブクエン酸エステルを有効成分とする抗悪性腫瘍剤でありまして、現在は多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法を効能・効果として承認されております。
 今般、武田薬品工業から、自家造血幹細胞移植の適応とならず、かつ初回治療により奏効が認められた初発の多発性骨髄腫患者を対象とした試験成績を基に、多発性骨髄腫における維持療法に係る効能・効果を変更する一部変更承認の申請がなされました。
 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断いたしました。
 続いて、議題3について御説明いたします。医療用医薬品の承認条件についてです。資料6を御覧ください。
 まず、2ページを御覧ください。
 今回は、ドルテグラビルナトリウム/リルピビリン塩酸塩を有効成分とする医薬品ジャルカ配合錠の承認条件に係る御報告となります。本剤は平成30年11月にHIV-1感染症の効能・効果が承認され、その際、下線のとおり承認条件が付されております。
 今回、ヴィーブヘルスケア株式会社から臨床薬理試験の成績が提出され、機構において評価されましたので、御報告いたします。
 続いて、3ページを御覧ください。
 臨床薬理試験といたしまして、日本人健康成人を対象に、薬物動態及び安全性を検討することを目的とした非盲検非対照試験が実施されました。表1を御覧ください。
 本試験で得られましたPKパラメーターと、本剤の承認申請時に提出された海外試験の結果から得られた外国人のPKパラメーターは表に示すとおりでございまして、本試験と海外試験の結果について、臨床的に意義のある民族差は認められませんでした。
 安全性については、4ページに記載しておりますとおり、現時点で追加の対応が必要となる問題は生じていないことを確認いたしました。
 以上、機構における評価の結果、承認条件は対応されたものと判断しております。
 続きまして、議題4について御説明いたします。医療用医薬品の再審査結果についてです。資料7-1から資料7-5までを御覧ください。
 資料7-1は、経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチンを有効成分とするロタリックス内用液です。
 資料7-2は、レトロゾールを有効成分とするフェマーラ錠2.5mgです。
 資料7-3は、標準化スギ花粉エキス原液を有効成分とするシダトレンスギ花粉舌下液でございます。
 資料7-4は、リツキシマブを有効成分とするリツキサン点滴静注でございます。
 資料7-5は、フルダラビンリン酸エステルを有効成分とするフルダラ錠でございます。
 これらの品目につきまして、製造販売後の特定使用成績調査及び製造販売後臨床試験等の結果に基づきまして再審査申請が行われました。審査の結果、薬機法第14条第2項第3号に掲げる承認拒否事由のいずれにも該当しないことを確認し、カテゴリー1と判定したものでございます。
 報告事項については以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございました。
 委員の先生方から御質問、御意見はございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、報告事項の議題1・3・4につきましては御確認いただいたものといたします。
 続きまして、その他事項に移ります。
 その他事項につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 その他といたしまして「最適使用推進ガイドラインの対象となる医薬品の選定(キイトルーダ)」について御説明いたします。資料8-2を御覧ください。
 品目はキイトルーダ点滴静注100mgでございます。今般、MSD株式会社より乳がんに関する効能・効果の追加に関する一部変更承認申請がなされました。
 当該品目につきまして、最適使用推進ガイドライン作成対象の医薬品として選定いたしました。今後、関係学会等にガイドライン(案)の検討依頼を行いまして、対象医薬品の承認について審議等を行う部会において、改めてガイドライン(案)を御説明することとなります。
 以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございました。
 委員の先生方から御質問等がございましたら、承りたいと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、その他事項議題1につきましては御確認いただけたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か御報告はありますでしょうか。
○事務局 次回の部会は5月28日水曜日午後2時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。
 ありがとうございました。失礼いたします。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)