第110回労働政策審議会障害者雇用分科会(議事録)

日時

令和3年10月12日(火)14:00~16:00

場所

オンラインによる開催(厚生労働省職業安定局第1・2会議室)

議事

○山川分科会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第110回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しいところ御参集いただきまして、大変ありがとうございます。初めに、委員の改選がありまして、障害者雇用分科会の委員に新たに就任された皆様を御紹介いたします。労働者側代表委員につきまして、本年10月12日付けで岡本賢治委員が退任されましたことに伴いまして、近畿日本ツーリスト労働組合中央本部中央執行委員長の亀田隆仁委員に、新たに御就任いただいております。一言、御挨拶をお願いいたします。
○亀田委員 はじめまして。ただいま御紹介にあずかりました、近畿日本ツーリスト労働組合で委員長をやっております亀田と申します。この度、岡本さんに代わり、私が就任させていただくことになりました。どうぞ今後ともお願いいたします。
○山川分科会長 よろしくお願いいたします。また、森口勲委員が退任されたことに伴いまして、同じく10月12日付けで、全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長の東矢孝朗委員に、新たに御就任いただいております。一言、御挨拶をお願いいたします。
○東矢委員 皆さん、こんにちは。今、御紹介いただきました自動車総連で副事務局長を務めております東矢と申します。森口の後任になりますので、これからどうぞよろしくお願いいたします。
○山川分科会長 よろしくお願いいたします。本日は、影山委員、中川委員、仁平委員、小西委員が御欠席と伺っております。仁平委員の代理といたしまして、本年10月6日付けで日本労働組合総連合会総合政策推進局長に就任されました冨高裕子様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○冨高委員 よろしくお願いします。
○山川分科会長 また、事務局であります職業安定局の幹部の異動がありましたので御報告いたします。奈尾高齢・障害者雇用開発審議官、中村雇用開発企画課長が、それぞれ就任されております。
本日の分科会もZoomによるオンラインでの開催となります。開催に当たりまして、事務局から説明があります。お願いします。
○中村障害者雇用対策課係長 障害者雇用対策課係長の中村でございます。本日もZoomを使ったオンライン会議となっております。開催に当たりまして、簡単ではありますが、オンラインについて操作方法のポイントを御説明いたします。本日、分科会の進行中は皆様のマイクをオフとさせていただきます。御発言をされる際には、サービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックし、分科会長の許可があった後にマイクをオンにして、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。
会議進行中、トラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただきますようお願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合には一時休憩とさせていただくこともございますので、御容赦いただきますようお願いいたします。オンライン会議に係る説明については以上です。事務局からの説明は以上でございます。
○山川分科会長 それでは議事に入ります。取材の方がありましたら、カメラの頭撮りはここまでとなっておりますので、よろしくお願いいたします。
本日の議題は、(1)が関係団体からのヒアリング、(2)がその他となっております。本日は議題(1)との関係で、社会・援護局、障害保健福祉部障害福祉課の津曲課長に御出席いただいております。公務の都合で、途中で御退席予定と伺っております。
それでは、議題(1)につきまして、まず、事務局から本日の進め方について説明をお願いします。
○中村障害者雇用対策課係長 障害者雇用対策課係長の中村でございます。それでは、本日の関係団体ヒアリングにつきまして御説明させていただきます。当分科会では、本年1月から、参考資料2の今後の検討に向けた論点整理に基づいて、委員の皆様に御議論いただいたところです。この論点整理に関連して、関係団体の皆様にもヒアリングを行い、幅広く御意見を頂戴したいと思っております。
本日は、5つの団体にヒアリングをさせていただきます。各団体の具体的なお名前につきましては、議事次第を御覧ください。ヒアリングの時間が限られていることもあり、関係団体の皆様方には、関心の高い論点に絞って意見を述べていただいて構わない旨をお伝えしております。委員の皆様におかれましては、あらかじめ御了承いただければと思います。また、ヒアリングは、各団体、質疑応答を含めて約20分間を予定しております。冒頭の10分間で団体の皆様から御説明いただき、その後の10分間で委員の皆様方から御質問、御意見を頂くという形で進めてまいります。大変恐縮ではございますが、発表いただく団体の皆様におかれては、分科会の運営上、発表時間の10分間を守っていただければ幸いでございます。事務局からの説明は以上です。
○山川分科会長 御協力をどうぞよろしくお願いいたします。では、ヒアリングを開始します。まず、株式会社研進の皆様、よろしくお願いいたします。
○株式会社研進 株式会社研進の出縄貴史と申します。今日はこのような会議に参加させていただきまして、大変光栄に思っております。よろしくお願いいたします。今日は、研進から随行参加者ということで、スドウマコトも同席させていただいております。それでは、お時間も限られておりますので、私どもからは「在宅就業障害者支援制度」の見直しにつきまして、問題点並びに提言をさせていただければと思っております。
私どもは、神奈川県の平塚にあります社会福祉法人進和学園という、主に知的障害がある方の就労支援施設の営業窓口会社でございます。1974年、今から47年前ですが、私の父がホンダに勤めていたという御縁で、うちの父の弟の出縄明が進和学園を創設したわけですが、もともと児童施設からスタートいたしましたけれども、障害のある方々の働く場ということで、47年前に本田宗一郎様の御尽力で、ホンダさんの自動車部品をはじめとする、そういう部品の組立てを行うことができるようになりました。以来、本田技研様の「研」と進和学園の「進」の両者を合わせまして、「研進」という窓口会社を設立いたしました。
長年、ホンダさんからずっと御発注を頂いているわけですけれども、社会的にそれを評価する仕組み、制度は残念ながらなかったのです。それが、今から15年前に在宅就業障害者支援制度が障害者雇用促進法の中にでき、障害者雇用納付金制度を活用いたしまして、企業が自宅若しくは福祉施設で働く障害のある方々に仕事を発注した場合に特例調整金、特例報奨金という助成金を支給していただけるようになったということで、私ども、これに飛び付きまして、神奈川県で第1号の在宅就業支援団体に登録されました。今日、随行参加しておりますスドウが、その専任管理者を務めております。
私どもの強みとしては、いわゆる福祉的就労の現場を始終見ておりまして、今日も私とスドウともに、会議室は別にしているのですけれども、同じ平塚の進和学園の福祉工場のしんわルネッサンスという所から参加させていただいております。日頃の活動を通じまして、福祉的就労が抱える問題点、今後どうしたらいいかといったような改善は、機会があるごとに、いろいろなセミナーですとか、機関誌とか、あるいは一昨年に拙著としまして、「よくわかる在宅就業障害者支援制度の活用と事例~『みなし雇用』のすすめ」という本を日本法令様から出版させていただいておりました。
この制度を活用いたしまして、ホンダさん、あるいは平塚の地元のスーパーのしまむらストアーさん、あるいはホンダロジスティクスさん、神奈川県公園協会さん等に、この制度を活用し、調整金等が支給されております。また、神奈川県は私どもの事例を参考としまして、足柄緑の会さんがGSユアサさんですとか、すずらんの会さんが3Mジャパンさんとか、そういう名の通った企業様からの発注を受けて、この制度を活用しているということがございます。そういう意味で、大変ささやかではありますけれども、この制度を活用した部分につきましては、私どもにそれなりの経験と実績があるのではないかということで、今回、参加させていただいている次第でございます。
お手元の資料1-1、厚労省さんのほうで掲示していただいておりますが、そこにA4の3枚で本日の要点を書かせていただきました。いろいろなことを申し上げたいのですけれども、時間の関係がありますので、先般、拙い著書の中でも書かせていただいた中から、要点を絞り出しております。順番に提言を申し上げたいと思います。
まず、「在宅就業障害者支援制度」という制度の名称ですが、これは冒頭に「在宅」という文言が付いておりますが、もともとは身体障害の方が御自宅で、通勤等ができなくて、パソコン等を使ってお仕事をするといったことに仕事を発注する企業さんに、仕事を出す奨励ということでスタートしました。その後、福祉施設等で働く皆さんも、知的障害あるいは精神障害等のハンディがあって一般就労ができない、そういう方々が福祉施設でもって仕事を受注するといったところにも適用ができるようになったわけです。しかし、私どもが申し上げた先ほどのホンダさんの事例ですとかスーパーさんでも、施設外就労等々、むしろ自宅とは真逆の、外へ行って、あるいは福祉施設の中で対応しておりまして、この制度とのアンマッチということが非常に気になっているところです。時々、私どもの所にもお電話がありまして、「研進さんでは自宅でホンダさんの部品の仕事ができるのでしょうか」というような問合せも頂きます。その度に御説明を申し上げるのですが、大変申し訳ない思いをしている次第です。
名前をどのようにして変えていったらいいかというのは難しいところではありますが、例えばということで、障害者就労促進発注制度であるとか、障害者優先発注奨励制度とか、いろいろ実態に合うような名称に変えていただいたほうがよろしいかと思います。これが第1点です。
第2点は、特例調整金・特例報奨金の増額ということです。現行の特例調整金は、障害者御自身に支払った年間支払工賃35万円について2万1,000円、これが特例調整金です。2万1,000円を35万円で割りますと、ちょうど6%です。一方、特例報奨金は、これは規模の小さい所ですが、35万円につき1万7,000円、これは4.9%にしかすぎません。また、100人を超える企業さんの場合、法定雇用率を満たさない場合に課徴される納付金は月額5万円、年間60万円、いわゆるペナルティーですけれども、これは年間60万円との相殺が認められております。その60万円の年間の納付金との対比でも、特例調整金・特例報奨金は低すぎて、企業さんにとってのインセンティブとしては不十分と考えております。
例えば、ここにH社と書いてありますが、これは先ほど申し上げたとおり本田技研さんでございます。ホンダさんからは、説明のときに社名を出して構わないということを御了解いただいております。2019年度の特例調整金、ホンダさんに支払われた調整金はかなり少なくなってしまったのですが、昔は400、500万円ありました。それが今は、仕事量が減って237万3,000円、これが昨年2020年度にホンダさんが受け取った金額です。これを、本来、障害者雇用を満たさない場合の納付金である1年間60万円で換算しますと、3.96人分にしかならないわけです。相殺する場合に3.96人分だけホンダさんは相殺する。そこは、ある種、みなし雇用効果が享受できるのですけれども、いかにも少ないと思います。
同社からの発注で、実際にB型の方が131人働いておりまして、その方々に支払われた実際の支払工賃は3,956万円です。これを、例えば最低賃金(時給1,000円)で換算しますと、年収200万円にもならないのです、本来フルタイムで働いても。例えば200万円で割っても、19.8人になりますし、これに法定福利費等を入れて年収300万円とみなして、それで割り返しても、13.2人の雇用に該当するわけです。その貢献の大きさに比べまして、いかにも少なすぎるということです。ここは、現行水準の3~5倍引き上げないとバランスがとれないということです。それから、A型は今は対象になっていないのですが、ここも下記4.で対象にするように提言したいと考えております。
第3点は、業務契約の形態を拡大するということです。現在、発注企業と在宅就業支援団体との間で締結する、いわゆる業務契約と呼ばれておりますが、これは委託契約、我々の立場からすると請負契約に限られております。例えば福祉施設で作っている自主製品、パンとかいろいろな物を作っていますけれども、それを例えばホンダさんに買っていただいても対象にはなりません。この制度が発足直後は、実はホンダさんにクリスマス会に大量のお菓子を買っていただいて、それを基礎数値に入れて発注証明書を出しまして、当初は認められました。しかし、その後、それは対象にならないという指導がなされまして、現在は売買契約は対象にならないという位置付けになっております。官公需の優先発注を定める障害者優先調達推進法と同様に、そのような制限を設けずに、それを官公需に対する民需版と位置付けて、広く認めていただければと思います。
第4点は、A型の発注への対応です。今、申し上げたとおり、A型の場合は、雇用主であるいわゆる福祉施設、うちで言うと進和学園に支払われているわけですが、私どものホンダさんの事業は、ホンダさんのお仕事があって雇用が創出されているわけですので、私どもが報奨金・調整金を頂いても雇用の創出にはつながりません。ここは、ホンダさんに享受をしていただいて、仕事をどんどん発注していただいたほうがメリットがあります。そうは言いながら、私どもも頑張って「湘南とまと工房」とかという農産品加工ですとか、「いのちの森づくり」とかで雇用も生み出しておりますので、そういった部分は胸を張って報奨金・調整金を頂ければいいと思います。財源も限られておりますので、発注企業とA型事業者の合意を前提に、限られた財源をシェアできるという仕組みにしていったらいいと思います。いわゆる分配ですね、岸田内閣が今おっしゃっていますけれども、助成金を有効に分配するということがよろしいかと思います。
第5点は、在宅就業支援団体の事務ロード軽減の支援策です。今、在宅就業支援団体は、発注証明書等の作成が大変なのですけれども、経済的な支援というのは全くないのです。ここは、「福祉」と「労働」の連携ということがいろいろ言われているわけですが、例えば福祉制度上の自立支援給付費といったものを支援団体に支給していただければ、相当のインセンティブが喚起されるのではないかと考えられます。
最後、この制度の普及・活性化の決め手は、「みなし雇用制度」の導入です。今も申し上げましたとおり、法定雇用率を満たさない場合、納付金と特例調整金の相殺が一部認められておりますけれども、これをもっと積極的に認めていく。申請用紙は直接雇用と発注ベースが、今、同一書式で併記されておりますので、先ほど申し上げましたとおり、例えば最低賃金の年収でもって支払った工賃を除すれば、いわゆる雇用にどれだけ貢献しているかというのは分かるわけですので、そういったものを発注企業さんに還元する。これが「みなし雇用」です。そうは言いながら、直接雇用もしっかりやっていかなければいけませんので、ここは慶應の中島先生などもおっしゃっていますが、ある程度の、例えば2.3%までは直接雇用を義務付け、それを超える部分については、「発注」ベースを見て決める二段階方式が合理的であろうと考えております。
いずれにしましても、この制度は、労働政策でありながら福祉的就労に焦点を当てた画期的な制度です。「良質な仕事」を企業さんから福祉施設にもたらす、そして、多様な就労の場をもたらす、福祉的就労全体を底上げすることにより、いわゆる「福祉から雇用へ」という直接雇用にもつながる、そういう仕組みを何とかうまくできればと考えている次第でございます。以上です。ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございました。ただいまの御発表につきまして、委員の皆様から御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。倉知委員、どうぞ。
○倉知委員 倉知です。ありがとうございました。1点お聞きしたいことがありまして、特例調整金の増額の件ですが、2ページ目の所で特例調整金を3~5倍引き上げないとバランスがとれないということがあったと思いますが、このバランスというのはどのバランスになるのでしょうか。教えていただきたいと思います。
○山川分科会長 よろしくお願いします。
○株式会社研進 ここで言うバランスですが、企業さんが障害者の法定雇用率を守らなければいけないわけですが、それを守れなかった場合に、1人当たり月間5万円、年間60万円の納付金を納めなければならないのです。その場合に、特例調整金がもし出ていれば、納付金が減額されるわけです、相殺されるわけです。ですから、今でもその部分において間接的なみなし雇用効果というのは認められているので、これは画期的なことなのですが、1人当たり年間60万円、それに対しまして、例えばホンダさんが、先ほど申し上げましたように、B型で131名、それも、進和学園のみならず、小田原支援センター、フレッシュベルカンパニーの3施設の所に仲介していますし、それとは別に、A型の方にも対象にならないのに2,180万円も払っている。要するに納付金とのバランスが余りにもアンバランスなので、特例調整金をもらおうと思っている企業さんは発注するというインセンティブは、今、ほとんど働いていないと思います。納付金を払ってしまったほうがいいやと、そうなってしまうでしょうからね。ということでございます。
○倉知委員 ありがとうございます。となると、余り引き上げてしまうと、ほぼみなし雇用に近い仕組みになっていくという、そちらを望んでいらっしゃるということでしょうか。
○株式会社研進 みなし雇用というと、皆さんちょっと構えられると思うのですけれども、私どもは、やはり一定のところまでは企業さんに直接雇用で頑張っていただきたいと思います。ただ、そこの層の方は、最低賃金に見合う生産性をお持ちの方だと思うのですよね。残念ながら、この後、全Aネットさんとか、いろいろ各関係団体の方がいらっしゃいますけれども、いわゆる福祉的就労と呼ばれている所のA型、B型の方々は、やはり障害が重い方が多いですので、一定の福祉サービスを得ながら雇用に向けて頑張っている方です。
例えば福祉施設が立ち上げたA型事業所というのは、かなりの割合で最低賃金の減額特例も適用しております。そういう方々を全て、福祉から雇用へということで、法定雇用率ありきで引っ張るということは、これまでも雇用のミスマッチというのは大変問題になっておりますけれども、福祉と雇用との差がどんどん開きますし、決して障害者御本人はもちろんですが、企業さんにとっても競争が激化する中でよろしくない。そこは、多様な就労の場をつくるということで、福祉的就労の中間的な所、授産施設で工賃が1万5,000円とかと言われていますけれども、それを2、3万円と上げていく、そういった所にみなし雇用という考え方を一部取り入れていくということで、二段階形式ですね。今、2.3%まで上がってきましたから、そこまでは例えば直接雇用を頑張ってくださいと。
例えば本田技研さんで言うと、ちょうど2.3%ぐらいなのです。そうすると、これから更に上がっていったときに、それを直接雇用で引っ張って、それで皆さんがハッピーになればいいのですけれども、私どもの経験では、かなり多くの方がドロップアウトしてきます。せっかく就職したのに私どもの福祉工場に戻って来る方がかなりいらっしゃいますので、そういうことを考えますと、やはりみなし雇用ということで、全体の底上げを図るということが大事だと思っております。
○倉知委員 ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見等はありますでしょうか。よろしいですか。それでは、株式会社研進の皆様、時間の限られている中、貴重な御意見を大変ありがとうございました。
続きまして、特定非営利活動法人全国就業支援ネットワークの皆様、お願いいたします。
○特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク 全国就業支援ネットワークの酒井と申します。今、事務局もおります。どうぞよろしくお願いします。
私どもの団体は、全国の会員事業所270か所で構成されている団体でありまして、NPO法人です。会員の3分の2は障害者就業・生活支援センター、いわゆる「なかぽつセンター」で、全国に配置されているなかぽつセンターの半数以上が加盟をしています。あとは、障害者職業能力開発施設が12か所と就労移行支援事業所が約50か所、A型やB型等で構成されているというような、主に一般就労を支える、支援する活動をしている団体です。
本日は、このような貴重な機会を賜りましてありがとうございます。事前に資料を提出しておりますけれども、10分という限られた時間でこの資料の内容全部をお話することは多分できませんので、幾つかの項目に絞ってお話をさせていただきたいと思っております。
まず1点目、1つ目の○なのですが、雇用率の引上げです。ここ数年、17年連続で雇用者数も拡大ということで、雇用の受け皿が雇用率の引上げによって拡大をしたことで、これまで就労を諦めていた障害のある人たちがチャレンジできる環境が整ってきたということは、とても評価できます。一方で、障害者雇用の理念とか哲学が忘れ去られてしまっていて、雇用すること自体が目的となっている傾向が多々見られるというか、強くなってきていることを、現在、非常に懸念をしております。やはり労働力として当てにされ、周りから必要とされる労働環境をどのように作っていくかという視点を忘れずに障害者雇用に取り組む体制作りというのは求められて、そういう意味では雇用率の人数も大事なのですが、人数だけでなく雇用の質とか中味を強化する段階にきていると考えています。
ただ単に雇えばいいということではなくて、雇用の中身を評価して、社員の能力が引き出されているかどうかとか、一人一人大切にするということが企業の成長につながるという風土を醸成していくような評価項目があればと思っております。そういう意味では、もにす認定で一定の評価指標が示された意味は大きいと思っていますので、雇用状況報告書において、もにす認定と同等とは申しませんけれども、質に関するチェック項目を加えることを是非検討していただきたいと思います。
ちなみに、大阪府では15年前、2006年度にハートフル企業顕彰制度という府独自の取組をスタートしております。それは、正しく雇用の中身を重視して雇用の中身を見る、そして、いい取組をほかの企業に知ってもらうということだけではなくて、企業だけでなく府民に広く知ってもらって、府民がそういういい取組をしている企業を何らかの形で応援しよう、例えば購買活動も1つの形かもしれませんし、そういういい取組をみんなで応援しようという趣旨でスタートしました。そういう風土を地域の中でつくっていくということがすごく大事だと考えていますので、行政の数字の報告だけではなくて、大企業、中小企業を問わずにいい取組を知ってもらって、地域の人たちを巻き込んでそういう土壌をつくっていく、そういう仕掛けや仕組みがあればいいと思っております。
それに関連して、提出資料2ページ目の上から4つ目の○に、もにす認定について記載をしています。この認定制度は、先ほど申しましたように、いい制度だととても評価をしております。ただ、継続して地道に取り組んで、地域の中にどのように浸透させていくかということが大事だと思っていまして、制度の効果が限定的にならないような運用をお願いしたいと思っております。
例えば選定に当たっては、先ほどの雇用と福祉の連携強化の検討会においては、なかぽつセンターのハブ型機能が提示をされましたけれども、なかぽつが地域の中の企業の実情をよく把握して、認定に相応しい事業所を推薦して、1年ぐらいその企業と一緒に伴走して一緒に、地道に地域の中にいい取組を落とし込む、そういう活動をできるような仕組みを是非地域の中で、全国の地域の中で作っていただきたいなと思います。
あと、資料には記載していませんが、もにす認定は中小企業が対象ですけれども、大企業においても同等の項目が必要です。例えば健康経営優良法人の認定基準に、法定雇用率を満たしているかどうかという項目を加えたりとか、健康経営優良法人は経産省だと思うのですが、厚生労働省以外のいろいろな省庁と連携しながら、全体で障害者雇用ということを考える仕組みを是非お願いしたいと思います。
思っていたより時間が過ぎるのが早いですね。あと、お伝えしたいこととして一番最後の所、公務部門における障害者雇用の促進ということです。私どもの団体では、「国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナー」というものを受託をして開催しており、これは国の機関の職員だけが対象なのですが、全国の地方公共団体や自治体から「こういう研修をやってもらえないか」という問合せが実はすごく多いです。ですから、ニーズは相当あるものと思われます。これについては、本来は、総務省が都道府県とか自治体向けの研修をまず行って、あとは都道府県がそれを各自治体で展開していくべきところなのだと思うのですけれども、実際、職業生活相談員の研修は訪問員向けはされていますけれども、それ以外は、なかなか実態としてはないのではないかと思われます。
現実にはハローワークの個別支援だけではなかなか本格的な取組にはつながっていっていないのが現状ですので、地方公共団体で言えば、例えば埼玉県庁とか大阪府庁、東京都の教育庁などの事例は、集中配置型で効果的な支援体制を作っていますので、そういう体制の在り方を考えてもらう研修を開催できるように、厚生労働省から総務省へ働き掛けをお願いしたいと思っております。
まだ、時間、大丈夫でしょうか。
○小野寺障害者雇用対策課長 大丈夫です。
○特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク ありがとうございます。では、続きまして飛ばした所に行きます。すみません、1枚目に戻っていただいて、上から3つ目の○の精神障害者に関する雇用率のカウントです。今、時限で、令和5年まで短時間の雇用率のカウント、1カウントがされていますけれども、これについては精神障害の人の就労機会の拡大と初期定着においては有効であるということで、企業のほうからもいろいろな御意見を聞いているところです。コロナで雇用状況がどのようになるか引き続き不透明な部分もありますので、是非、令和5年度以降も継続すべきであると考えるとともに、手帳を取得後の3年間、この3年間満了後に雇止めに直結しないよう、ここがすごく大事だと思いますので、そこに記載していますように、特例措置満了後の実態の把握をするような調査を是非お願いしたいと思います。特例が終わった後に、その方の状況によると思うのですが、長時間にステップアップしていくことが望ましいですが、短時間のままといったときに、ではということでそこで雇止めになるような事態が起こっていないかどうか、是非調査をお願いしたいと思っております。
ほかにも幾つかお伝えしたいところはありますが、以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。それでは、委員の皆様から御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。下屋敷委員、どうぞ。
○下屋敷委員 今のお話の中の公務部門の話ですけれども、私の県では、精神障害者の方が職員の障害者選考の対象になってきているのです、去年辺りから。是非、これは必要ではないのかなと思いました。私も前、岩手県庁に勤めていまして、身体障害者の方のバリアフリー研修、これは当然やるわけですが、今、精神の方が多い段階では、やはり就労というのは都で、是非、地方公務員部門でも必要になってくるのではないかと思いました。
あと、先ほどの手帳取得後の短時間勤務の話ですが、その後の実態動向という調査は是非必要ではないのかなと思って聞いたところでございます。以上です。
○山川分科会長 御意見ということで伺いました。ありがとうございます。酒井さん、何かありますか、どうぞ。
○特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク 今の公務部門で1つ付け加えさせていただくとしたら、今は公務部門において障害者雇用担当者の方が受講されていますけれども、かねてより要望として挙げていますのは、全ての省庁において職員が入省時に、ともに働く仲間として障害のある人を受け入れて、障害特性であったりとか一緒に働くことの意味について考える研修をやっていただきたいということ、これをお願いします。これは国だけではなくて地方公共団体にも言えることだと思うのですが、最初に学んでおくことによって、後で担当になったから学ぶということよりも、入口の部分での研修というのはずっと意義があると思っております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに何か御質問、御意見等はありますでしょうか。長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。質問させていただきます。
御説明、ありがとうございました。最初のところで、法定雇用率が引き上がるにつれて、そもそもの理念が忘れ去られていってしまっているというような御指摘があったのですが、具体的にどういったこと、どういった企業の対応が理念を忘れているような対応だというように感じていらっしゃるのか、それを聞きたいのが1つです。
それに関連して、もにす認定制度の項目などを参考にして、今後、雇用の質の管理もしていく必要があるのではないかという御指摘、御提案だったのですが、もにす認定制度のあの項目を全ての企業に対してやっていくというのは非常に難しいというように思っています。そういった中で、せめてこの項目だけはチェックしたほうがいいというようなことがあれば御指摘いただければいいかなと思います。それが最初の質問とも関わってくるのかなとも思っています。よろしくお願いします。
○特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク ありがとうございます。2ページ目の上から3つ目の○を飛ばしたのですが、いわゆる「雇用ビジネス」が横行する現状はいかがなものかということを書かせていただいています。やはり、これに対して、国として最低限の雇用環境というのは、ある一定のラインは示す必要があると思っています。最近、本当に雇用ビジネスは大阪でもすごく事業所が増えていて、以前は雇用ビジネスと言えば農業でしたが、今は事務も含めて30幾つそういう企業があります。その中で、普通だと雇用する企業があって、本人がきちっと面接とか、それなりのプロセスを経て雇用に至るということですが、どこの企業に雇用されるかも分からない、しかも雇用契約も一切結ばない、結んでいないまま、体験実習という名のもとに、いきなり労働の現場に入ってずっと労働している。それは実習という名目ですけれども。実習という名目でして、では、その人が何のために働くのか、自分が働くことによって、自分は社会経済のどこにポジション、位置しているのかということも分からない。私たちも、ふだん、そこまで深く考えて毎日毎日、日々の仕事をしているわけではないかもしれませんけれども、雇用のスタート時点で、自分がどこの企業に雇用されるかも分からない、これを認めていいのかどうか。
日々、いろいろな事例を見聞きするにつけ、やはりその人が社会の一員となってほかの人ともつながりながら自分が社会において役割を果たすという、最終的には障害者雇用を通じて、ほかの社員の働く環境も良くなるのだというようなことが確認できるような何か指標が必要ではないかと思っています。
もにす認定はとても項目が多いので、このままこれを評価項目にするということではなくて、先ほど申し上げた大阪のハートフル企業顕彰制度も、多分その半分ぐらいのボリュームの評価項目だと思います。大事なのは、濃淡があるというよりは、どこか1つでもそれに該当する企業は、そこからスタートして一緒にもっと良い取組をしていきましょうというように作っていく。最初からパーフェクトを目指すというよりは、階段を一段一段上るような、何かそういう取組を地域でじっくりやっていく。だから、これは時間が掛かることでもあるのかなというイメージでは考えていますが、何かそういうことができないかなと思っています。
漠然とした答えで申し訳ありません。答えになっていないかもしれませんが以上です。
○長谷川委員 ありがとうございます。私も雇用ビジネスは非常に大きな問題だと思っていますので、検討しなければならない項目だと思います。ただ、形式を整えればそれでよいとなってしまわないような対応が必要かなとも思っています。御説明、どうもありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。倉知委員、どうぞ。
○倉知委員 九州産業大学の倉知です。ありがとうございました。先ほど説明がなくて資料の中にあったことで、聞きたかったことがあります。対象障害者の範囲についてという所で、若年認知症の方についてコメントがあって、診断が確定した時点では対応が手遅れになってしまうという、この辺りのことを教えていただきたいと思います。
○特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク ありがとうございます。若年性認知症については、少しずついろいろな就労支援の取組や研究も進められていることと思いますが、なかぽつセンターには実は若年性認知症の相談はほとんどないのです。それは、やはり病気の診断が確定した時点ではかなり進んでいて、働いていた人も離職せざるを得ない状況になってしまっていて、離職してしまっていて、そこから、また一から就労に向かうというようになかなか向かわないということがあります。なので、もっと前段で、診断が確定していなくても働いている方が若年性認知症になったときに、もう少し雇用環境を整えられるような何か取組が、そこの時点でなかぽつに相談があればいいのですが、なかなか現実はなかぽつに相談が来ていないので、各センターで多分1、2件ぐらいしか相談に応じていないというような状況があるので、もう少し早くつながるような仕組みが何かあればいいかなという意味合いで書いています。それが具体的にどういう仕組みかというところまでは、すみません、まだ検討できていません。
○倉知委員 分かりました。要するに、診断が付いていない段階で障害者の範囲にどうやって認定するのかというのは難しくて、ちょっとイメージが湧かなかったものですから。なかなか難しそうですね。ありがとうございました。
○山川分科会長 ほかに委員の皆様から何かありますか。では、事務局から少し補足があります。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺でございます。本件ではなく、先ほど、酒井委員からの雇用ビジネスに関するご指摘がございましたので、事務局として状況についての補足説明をしたいと思います。
大阪の事例についての御報告がありました。私どもとしても、全国にこういった形で障害者に対しての様々なサービスが展開されていることについては認識しております。ともすると、法令違反を疑われるような内容等もある場合に、それを放置していいのかという問題もありますので、全国の労働局に対しまして、まずはこういったビジネスを管内で把握した場合には、できる限り実態把握に行くよう指示を出したところでございます。
その上で、法令上の問題があれば、労働局内の需給調整事業部とも調整しながら、しっかりと指導をして適切に運用していただくような形を取っていかなければいけないと思っております。法令上の問題がない場合に、どこまでどういった形で行政として御助言していけるのかというところについては、法の趣旨について御理解等をまず仰ぎながら、障害者の活躍の場になっていけるような形でのサービスの展開に対していろいろな御助言をしていきたいと思っているところでございます。
先ほどのような、雇用契約を締結せずに労働という形を取っているといったような実態がもし仮にあるとすれば、それはまず地元の労働局のほうにしっかりと情報提供をしていただきまして、適切な対応を取りたいと思っていますので、よろしくお願い申し上げます。以上でございます。
○山川分科会長 ほかに御質問、御意見等は何かございますか。それでは、全国就業支援ネットワーク様、酒井様、大変ありがとうございました。
○特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク ありがとうございました。
○山川分科会長 続きまして、全国社会就労センター協議会の皆様、お願いいたします。
○全国社会就労センター協議会 本日はありがとうございます。全国社会就労センター協議会、通称セルプ協といいますが、副会長をしております叶と申します。セルプ協は1977年、44年前に結成されて、障害のある人の働く・くらすの充実に向けて取り組んでいる組織です。
本日はまず、私のほうからは、障害者雇用に対するセルプ協の基本的な姿勢について話したいと思います。セルプ協では、障害のある方を特定の働く場に固定することがないように、一般就労が可能な障害者には“一般就労に向けた支援”、一般就労が困難な障害者には就労継続支援A型事業などの“福祉的就労における働く支援”を提供することを基本としています。A型事業に関しては、“福祉”と“雇用”が融合した、それぞれの利点を兼ね備えた事業で、当然、そこで働く障害者は、労働基準局長通知でも明記されているとおり、労働基準法第9条の正に「労働者」だと思います。このようにA型事業があることで、重度の障害のある人が労働者として雇用されて、働いて、自立できているという点において、A型事業は非常に貴重な役割を担っていると思っています。
この後、具体的な意見については、制度・政策・予算対策委員会の桑原委員長から述べさせていただきます。
○全国社会就労センター協議会 今、紹介のありました桑原です。2番の論点に対する意見から御説明をさせていただきます。
1.雇用率制度の在り方についてです。意見の趣旨としては、現行の雇用率制度を見直して、「新たな障害者就労支援策」(仮称)の創設を検討していただきたい。この「新たな障害者就労支援策」については、企業が、就労継続支援事業所や、いつも忘れ去られるのですが生保・社会事業授産施設、ここでもかなり障害者の方を受け入れていますが、そういった所への発注を行ったことを前提として、以下のパターンを想定しています。これについては、実雇用率が法定雇用率を下回った場合を想定しています。
まず、パターンまるいち発注額に応じて、納付金を減額する制度、パターンまるに実雇用率への特例的な算定を可能とする、今までも結構出てきましたが、よくやられている「みなし雇用」を可能とするということです。このどちらかを何とか仕組み化していただけないかなというのが要望になります。なお、「新たな障害者就労支援策」の創設にあたっては、法定雇用率を引き上げるとともに、パターンまるいち、まるにについて上限を定めていただきたい。併せて、法定雇用率を超過した企業(「新たな障害者就労支援策」の対象企業を含む)へのインセンティブとなる仕組みをお願いしたい。このインセンティブになる仕組みについては、今日、一番最初の発表にもありました、在宅就業障害者支援制度のより活用しやすい仕組み、調整金・報奨金を減額しないような部分を想定しています。
次のページ、雇用率制度における就労継続支援A型事業所の利用者の評価についてです。「法定雇用率の算定式」や「調整金・報奨金・納付金」の対象から、A型の利用者(雇用)を除外することには、セルプ協としては反対です。A型利用者については、労働基準局長通知(平成19年5月17日付け)において、「労働基準法第9条の『労働者』」と明記されています。障害者雇用促進法では障害者である労働者について規定されており、「法定雇用率の算定式」や「調整金・報奨金・納付金」の対象からA型利用者を除外することは、労働基準局長通知の内容と矛盾すると考えます。また、「法定雇用率の算定式」からA型利用者を除外した場合、働きたいと考えている障害者全体の実態がつかめなくなる懸念があります。
次は、対象障害者の範囲についてです。障害者手帳の有無によらず、“働きづらさを抱える方”が一般企業等への就職で不利にならない仕組みの検討が必要です。現行の雇用率制度は、障害者手帳を有する方のみが対象になっています。そういったことから、手帳を持たない“働きづらさを抱える方”の一般企業等への就職に対して、非常にマイナスの面が出ています。実雇用率に算定できるような仕組みの検討が必要と考えています。この“働きづらさを抱える方”というのは、下の※にあるように、精神通院医療を受けている方や難病の方、こういった人たちを想定しています。現状、就労移行やA型・B型を利用されている方の中にも、かなり手帳を持たない“働きづらさを抱える方”がいらっしゃいます。
次は、中高年齢層等、長期継続雇用の評価についてです。加齢や状態変化などの影響で働き方を見直す必要がある場合、企業などの都合で安易に福祉的就労(A型、B型)への移行が行われないように、計画相談支援事業所などの関係機関と連携する仕組みづくりが必要です。これは計画相談支援事業所となっていますが、A型、B型というのは福祉サービスの利用になりますので、入口できちんとしたアセスメントが必要ではないかということで、計画相談をしている事業所にこだわっているわけではないですが、きちんとした第三者の目での評価が必要ではないかということです。
意見出しの視点としては、今年の4月に高年齢者雇用安定法が改定されて、70歳までの就業機会の確保が努力義務とされました。これを踏まえると、一義的な雇用責任は企業側にあるため、企業側の都合による福祉的就労への安易な移行が行われないことが重要だと思います。
最後に、2.納付金制度の在り方についてです。大企業及びA型に対する障害者雇用調整金の在り方です。障害福祉サービス等の報酬(自立支援給付費)はサービス利用に対する対価で、障害者雇用調整金は雇用維持にかかる支給のため、両者は区別されていると考えます。一方で、障害者雇用調整金・報奨金が障害者を雇用する企業の経済的負担を公平に負担するという観点に立ち、調整金に限度額を設定するということは、セルプ協としても理解できます。平成29年3月30日付けの通知で、A型利用者の賃金支払いは、原則、生産活動収支で完結することと明記されています。この通知を踏まえると、自立支援給付費は、障害のある方がA型の利用をしたことに対する対価と考えます。一方で、雇用調整金は、障害者を雇用することで追加的に発生する特別経費を補填することを目的に支給されているため、サービス利用の対価である自立支援給付費とは目的が異なると整理ができると考えています。セルプ協の意見については以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。では、委員の皆様方からの御質問、御意見はございますでしょうか。はい、竹下委員。
○竹下委員 ありがとうございます。日視連の竹下です。2点ほどお聞きしたいと思います。まず1点目ですが、現在の障害者総合支援法におけるA型事業所、B型もそうですが、取り分けA型事業所について見れば、その要件としては一般就労が困難な人、これがA型事業所の対象になっていると理解しています。この要件を外すことについて、どうお考えかということをお聞きしたいのが1点目です。
2点目はその全く逆になるのかもしれませんが、今の報告にも若干絡むと思うのですが、A型事業所で働いている障害者について、労働者性を肯定するとすれば、労働基準法の適用ということが、A型事業所に本当にそれを全て適用しても、それは今のA型事業所の実態から見て妥当性はあるのだろうかということを私は疑問に思っているのですが、この点について御意見があれば教えていただきたいと思います。以上です。
○山川分科会長 いかがでしょうか。
○全国社会就労センター協議会 すみません、1つ目がちょっと分かりづらかったのですが。
○竹下委員 もう一度、申し上げます。私は今、手元に文章を持ちませんが、A型事業所の対象となっている障害者の要件としては一般就労が困難な人、これが対象となっていると理解しているのですが、その要件をなくすことについてどうお考えでしょうかという質問です。
○全国社会就労センター協議会 なくすという提案を、うちのほうでしていましたでしょうか。
○竹下委員 なくすことについて、就労センターではどう考えているかということをお聞きしたいのです。
○全国社会就労センター協議会 この一覧に出ているものではなくてということですね。
○山川分科会長 そういうことでよろしいでしょうか。
○竹下委員 はい、それで結構です。
○全国社会就労センター協議会 そこについては、協議会の中では具体的な議論はできていないので、何とも私もお答えしづらいところなのですが。
○竹下委員 結構です。ありがとうございます。では、2点目はどうでしょうか。
○全国社会就労センター協議会 副会長、どうでしょう。
○全国社会就労センター協議会 基本、A型にしてもB型にしても、一般就労を望む人はもちろん一般就労を目指していっていただいたらいいのですが、どうしても一般就労ができない人たちが働く場としてA型あるいはB型があると思うので、その要件が外れてしまったら、どうなってしまうのでしょうか。一般就労が困難な人たちがA型とかB型を利用されることが基本だと思っているのですが、いかがでしょうか。
○竹下委員 分科会長、発言してもよろしいでしょうか。
○山川分科会長 どうぞ、お願いします。
○竹下委員 と申しますのは、今、雇用と福祉の連携という議論の中で、一般就労をしている人がA型でしばらく働く、また、A型で働いている人たちが一般就労で働くという、その行き来といいますか、そういうものを可能にするという議論がされていることから、今後、体系上はどうあるべきかということについて、私自身もまだ迷っていることがあるので、就労センターでは、その点はどう議論があるのかと思ってお聞きしました。まだ議論がなされてないということであれば、これ以上は結構でございます。
○全国社会就労センター協議会 ただ、現状のA型の中に、一般就労が可能な方がたくさんいるのではないかという御指摘があった部分については、入口の問題で、きちんとアセスメントができていれば、そういった方々がA型にいるはずはないという前提でできると思いますので、雇用と福祉の連携の所でもありましたけれども、入口のアセスメントをきちんとすべきではないかというのは議論しているところです。
○全国社会就労センター協議会 2つ目の質問で、A型に労働基準法を適用することについてということですが、基本的には、A型の雇用によらない人以外は、A型は雇用ですから労働基準法は適用となっていると思います。ただ、B型に関しては雇用でありませんから、労働法の適用になっていないということがありまして、そこら辺がいろんな論点にはなっています。B型のほうに労基を適用して、最賃が求められたりすると、ハードルが上がっていけば、そこで働き場を失ってしまうという人たちが出てくるということもあり得ますので、やはり働くことを希望する人たちが働き続けるということは、セルプ協としてはとても大事に思っているところです。2点目のお答えになったか分かりませんが。
○竹下委員 ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかに委員の皆様から御質問、御意見等がありますか。倉知委員、どうぞ。
○倉知委員 九州産業大学の倉知です。報告、ありがとうございました。1点、教えていただきたいことがありまして、頂いた資料の2枚目の、「法定雇用率の算定式」からA型利用者(雇用)を除外した場合、働きたいと考えている障害者全体の実態がつかめなくなる懸念、これを教えていただきたいのですが。
○山川分科会長 いかがでしょうか。
○全国社会就労センター協議会 これは計算式のところに絡むのかなと思っています。雇用率の計算のときの分子から外れると、全体像が見えなくなるのではないかというところからきています。
○倉知委員 どうして働きたいと考えている障害者全体の実態がつかめなくなるのか、どうしてそうなるのだろうなと思っているのですけれども。
○全国社会就労センター協議会 ちょっとこれは文章の表現が分かりにくいかもしれませんが、雇用率の計算式からこの人たちが抜けると、全体像が見えなくなるのではないかという意味です。
○倉知委員 逆に働いている人の全体像が見えなくなっていると、私は理解しているのですが。
○全国社会就労センター協議会 そうも取れますね。
○倉知委員 ですから、今のままだと見えないので、外したほうがよく見えるのではないかという感じはしているのですが。そうでないとしたら、どういう主張なのか、ちょっとお聞きしたいのです。
○全国社会就労センター協議会 倉知先生、ありがとうございます。基本的な我々の位置付けとして、福祉工場の流れからいって、A型の人たちは雇用、労働者と我々は位置付けているのです。だから、もし法定雇用率にA型の人たちが入らないとなると、雇用している実態が分からなくなっていくのではないかというのが1つあるのかと思います。ただ、今も法定雇用率の判定式にA型も全部ごっちゃになっているので、今、言われたように、そこら辺がよく分からないというのも一方ではあるのかと思いますが、完全に外してしまったら、そこら辺がおかしくなってしまうのかなと、我々の、労働者としての位置付けにおける考え方だと理解しています。
○倉知委員 私は、一般企業で働く人たちの数が見えなくなってるなというように思っているので。
○全国社会就労センター協議会 そうですね。
○倉知委員 そういう意味なのです。
○全国社会就労センター協議会 はい、それはよく分かります。
○倉知委員 それ以外の他意は特にないのですけども。
○全国社会就労センター協議会 はい。そこがちょっと分かりにくくなっていますよね、A型でどの働いている人は法定雇用率の何%になるのか。法定雇用率からA型の人たちを外したときに、何%になるのかとか、この辺もきっちりと数字としては必要なのかという気はします。ありがとうございます。
○倉知委員 ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見等はございますか。ありませんでしたら、それでは、全国社会就労センター協議会の皆様、大変ありがとうございました。
○全国社会就労センター協議会 ありがとうございました。
○山川分科会長 では、続きまして、全国就労移行支援事業所連絡協議会の皆様、お願いいたします。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会 全国就労移行支援事業所連絡協議会の酒井でございます。日頃からお世話になっております。今後の障害者雇用施策の見直しに向けた議論の場で、このような場にお呼びいただきまして、ありがとうございます。資料に沿って順に説明させていただきます。
1点目が、障害者雇用の理念についてです。具体的には、先ほどからも話題に上がっていましたが、障害者雇用の代行サービスに係る課題です。私は就労支援に携わって20数年たちますが、この間、障害者雇用、就労支援は大きく前進してきたと思います。その成り果てに、このような代行サービスが横行するというか、こういうことに手を出す企業が増え始めているということを非常に残念に感じているところです。中には、企業の経済活動からほど遠い業務での雇用になっているケースも散見されます。本来の障害者雇用の姿、これまで社会が求めていた障害者雇用の姿とは、少し違うのではないかと思うのです。
まずは、このような手法に企業が手を出さないように、啓発を強化していくことが大切なのではないかと思います。そのために、例えば障害者雇用促進法の基本的理念のところとか、あるいは第5条の事業主の責務のところで、能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与え、適正な雇用管理を行う、それはどのようなものなのか、この障害者雇用について、どのような社会を目指しているのかを、もう少し条文等で具体化させることができないのかというように考えています。その中で、障害者雇用の本質は、このような数合わせの雇用ではないのだという発信を強化していくことが、まずは必要ではないかと考えております。
2点目が、多様な働き方や中小企業への対応についてということです。週20時間未満の短時間労働者の雇用率へのカウントについて、是非議論を深めていただければと思います。ここに記載している中小企業での障害者雇用促進という観点と、もう1つは、雇用と福祉の検討会で挙がっている、雇用中の福祉サービスの並行利用について、障害者部会でも議論をしているところですが、多様なニーズに対応するためにも、週20時間未満の労働に対する雇用率のカウント方法を見直すことで、短時間労働者の雇用の受入れの動機になったり、あるいは企業にとって、より効果的な雇用率達成に向けた運用が図られるのではないかと考えますので、是非検討をお願いしたいと思います。
それから、納付金について、従業員規模が100人を超える企業まで引下げを行った結果、一定の促進効果は表れてきているのではないかと考えています。今後は、さらに100人未満の規模について、どのように考えるか、規模の小さな企業への支援の強化策と併せて、対象範囲の引下げを検討する価値はあるのではないかと考えています。
3点目が、就労継続支援のA型についてです。A型ついては、様々な角度から様々な意見が出されていることは承知しています。福祉サービスの報酬を賃金に当てて運営が成り立っているという、いわゆる経営改善計画の必要がある事業所がいまだ多数存在している現状については、このままでいいはずはないと、私も同じ問題意識を持っている立場です。複数年そのような状態が続いている事業所には、撤退していただくことも含めて、大胆な改革が必要だとも思っています。他方で、この度の報酬改定では、サービスの質に焦点を当てたスコア方式化での形に改められております。これが機能すれば、改善の方向に働くのではないかと期待しているところです。これは質に関してというところです。そういう中で、利用者の多くはハローワークより職業紹介を受けて働いていること、また、多くが雇用保険や労災保険にも加入して、労働者であるということを踏まえて考えれば、十分な労働者性を有していると考えられるため、引き続き雇用率の算定における分子への計上を継続すべきだと考えます。
一方で、制度創設時には、専ら社会福祉事業を運営する事業体がA型を運営するということが想定されていたわけですが、事業体が多様化される中で、グループのグループ適用やグループ算定の制度におけるA型利用者の雇用のカウントの取扱いについて、問題視する声があると聞いています。まずは、グループ適用と算定の在り方について、雇用施策のほうで再整理や見直しをするタイミングにきているのかもしれないと思い、ここに記載しております。
続いて、除外率制度の縮小廃止についてです。前回の法改正のタイミングでも、これは研究会でのヒアリングで強く要望していることです。決まっていることをなぜ実行できないのか、私には理解できないのですが、10年以上そのままにしているわけです。廃止にするとなれば当該企業も大変ですから、来年から毎年10%引き下げて3、4年で廃止するとか、スケジュールを示してもらって、その上で、例えばもう少し緩やかに廃止していくとか、そのように是非議論を前に進めていただきたいと思います。
5点目は、ジョブコーチと人材確保について記載しています。その中でも、人材確保や育成については、検討会でも整理をされてきましたが、そろそろ就労支援について、何かしらの資格化を検討するタイミングにもきているのではないかと思います。少し時間の掛かることだと思いますけれども、資格化に向けて、こちらも議論を前に進めていただきたいと思います。是非、国家資格化、公的資格化について、検討いただきたいと考えています。
最後に、雇用と福祉の連携強化の中で就労アセスメントの強化が打ち出され、障害者部会でも議論が進められているところです。今回は福祉サービスの入口の部分での導入が主な目的とされていますが、対象者はハローワークの門もたたくわけでして、それらの方々に適切なアセスメントが実施されたり、そのアセスメントを活用して雇用につなげていく、そういう連携が進むよう、促進法の中でも、アセスメントについて何かしらの明示を頂ければ有り難いと考えているところです。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。続きまして、委員の皆様から御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。倉知委員、どうぞ。
○倉知委員 倉知です。A型のところで聞きたいことがあります。雇用率算定における分子の計上を継続すべきだということと、一方で、A型利用者の取扱い、グループ算定とか、一般企業や特例子会社での雇用が安易にA型での置き換わらないようにというところが、矛盾しているような気がしまして、そこは矛盾していないのかどうかを教えていただきたいと思っています。
なぜかと言うと、もし分子に計上してしまうと、A型にそのまま固定化されること、企業への移行を固定化してしまうのではないかということが気になったのですが、その辺りについての御意見をお聞かせいただけますか。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会 A型にですか。
○倉知委員 はい。A型にずっとそのまま固定されてしまうのではないか、企業就労に移行がなくなってしまうのではないかという心配があって、その辺、酒井さんの御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会 確かに、私も説明していて、矛盾に思われるかなとは思っていました。まず主張したかったことは、労働者性を有しているということなので、労働者として認める限りは、この計算式には算定されるべきだということ、これが1つです。
もう1つは、これは私たちの問題意識というよりは、比較的大きな企業が特例子会社を運営するようになって、これは理念と一緒ですが、数合わせではないですが、障害者雇用率を達成するためにA型を運営しているというようなこともあって、それが問題だということも聞きましたので、それだったら、そこはグループ適用の範囲で整理をしてみてはどうかということ、これが2点目です。
それから、A型に滞留してしまう問題は確かにそうだと思います。そこについては、ほかの部分で促進策というか、インセンティブを付けていければと思いますし、今回の福祉サービスの並行利用ということで、今までためらいのあったA型で働いていた利用者も、福祉サービスを受けながら企業のほうにもいけるという、そういう段階を踏めることは1つの促進策としてあり得るのではないかと考えています。
○倉知委員 ありがとうございました。
○山川分科会長 ほかに御質問、御意見等はございますか。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会 もう1つだけ発言させてもらってもよろしいでしょうか。
○山川分科会長 どうぞ。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会 除外率制度のところの発言なのですが、趣旨はお伝えしたとおりなのですが、除外率制度が今後廃止されたら、どのぐらいの雇用を生み出すのかについて、事務局から提示いただいた上で、そういう議論が進んでいけばいいと考えていますので、併せて発言させていただきました。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺でございます。今後、当分科会でも除外率制度についても論点の1つに位置付けておりますので、当然しっかりと検討していくことになります。その際に、今、酒井さんから御提案のあったようなデータについても、できる限りそろえまして、議論を深めてまいりたいと思っております。ありがとうございました。
○山川分科会長 よろしくお願いします。ほかには何かございますか。特段ございませんでしたら、全国就労移行支援事業所連絡協議会の酒井様、大変ありがとうございました。
続きまして、NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会の皆様、お願いいたします。
○NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会 皆さん、こんにちは。就労継続支援A型事業所全国協議会、略称を全Aネットといいますが、理事長の久保寺と言います。今日は副理事長の加藤が随行していますので、よろしくお願いいたします。資料に沿って御説明いたします。
多くの仲間から、A型事業所を閉めてB型にしようという誘惑に負けそうになるとよく言われます。そのようなとき、労働者として働いてもらえるよう、継続して良きA型を目指そうと励ますのですが、時々思い出すのは、全Aネットが協力し、2019年3月に報告書を出しました、A型事業所の利用者本人へヒアリング調査したものです。もちろん成果と課題があるわけですが、課題の克服を含めて、A型事業所のあるべき姿と理解しています。今日は時間もありませんので、後で読んでいただければなと思います。特に成果については、健康上の理由などで、一般企業では就労が困難な多くの精神障害者などに、雇用契約の下で、過度の負担のかからない労働条件を提供して、やりがいのある仕事を提供しているということです。課題については、全Aネットとして改善の努力をしていきたいと思っています。1ページの一番下ですが、A型の最大の成果は、障害特性上、短時間や週当たりの日数が少なくても、就労という形で精神障害者が社会に参加できたことと考えています。
2ページを御覧ください。今回の検討会でのA型の在り方の課題についてです。1つ目は、生産活動の収支を黒字にすることを求めることと、一般就労を促進させることを求めるということは矛盾していないか。一般就労の成果を上げている事業所には、収支の制限を緩やかにしてもいいのではないかと思います。スコア方式に変わったわけですが、経営改善計画の提出義務はまだ継続されています。
2つ目は、一人一人の障害者の就労支援は適切なアセスメント・モニタリングに基づいて、第三者機関が絡んで支援内容が決まり、それに基づいてサービス事業者が決まるという制度が、まず必要ではないかということです。
3つ目は、前身である福祉工場制度を引き継いだA型事業制度は、制度ができた時点と比較し、一般就労への移行が進んできたことを考えれば、福祉事業であるA型事業の利用者は、配慮された環境で、より重度の障害者、又は本人の希望のケースに限定されるべきだと考えております。A型利用の障害者の許容されるケースとして、まるいちまるにまるさんを挙げました。
本題に入りますが、雇用率制度の在り方についてです。現在の制度では、A型事業所の多くは小規模事業所であるため、直接、雇用率にはそれほど関係はしません。しかし、大規模な社会福祉法人やグループ適用をされている企業は、雇用率に換算されないとA型事業を運営している理由がなくなる可能性が高いと思われます。一方、A型事業の場合、福祉財源である給付費が支給されています。したがって、労働政策上の事業所のメリットは一定程度の制限があっても仕方がないと考えています。しかし、その場合でも、利用者の労働者としての権利は保障されるべきであると思います。
納付金制度の在り方についてです。障害者雇用調整金は、現在、A型事業に適用されています。調整金・報奨金については、雇用維持のためであり、福祉財源である給付費が支給されていることと切り離して考えるべきだとの考えもあります。比較的大規模な事業所では、設備投資などの貴重な財源としている事業所も多くあります。雇用率と同様に、調整金がなくなると、運営のメリットがなくなり、事業を転換される所も出てくるかもしれません。したがって、もしA型を調整金の対象から外すならば、あるいは一定の制限をされるということがあるならば、代わりに後で示す「民間企業からの発注促進策」などの支援策を強く要望いたします。また、少なくとも報奨金に関しては、受給している事業所は小規模事業所が多く、貴重な運営費になっていることを考えると、継続すべきと考えています。
最後に、民間企業からの発注促進策についての提案です。1つ目、障害者優先調達法は国等の福祉事業所への発注促進策であり、民間企業からの福祉事業所への発注促進策はありません。民間企業からの発注という意味では、現在、在宅就業支援制度のみがあるだけです。優先調達法の中に、民間企業からの発注促進策についても位置付けていただきたいと思います。
2つ目、「障害者みなし雇用研究会」報告書を令和2年3月に公表いたしました。名称を「障害者就労促進発注制度」とし、障害者の多様な働き方を目指すために、民間企業から福祉事業所への発注枠について、雇用率には換算しないが納付金制度の中での計算に含めるというものです。
3つ目、今回、全Aネットとして、上記「障害者みなし雇用研究会」報告書の一部を修正し、新しい提案といたしました。その理由ですが、今回の検討会では、障害者の一般就労への促進が強調されています。一般就労への促進をするためにも、受け入れる企業側にも環境づくりが必要と考えました。その内容ですが、雇用率適用企業の範囲であるけれども、納付金適用企業の範囲でない43.5人~100人未満の企業に、納付金の適用をすべきと考えます。これについては、中小企業の負担を減らすために、まずは43.5人~100人未満の企業に限定し、発注枠、みなし雇用を一定程度認めるということです。各企業には期限付きとし、直接雇用と期間付きの間接雇用(みなし雇用)をバランスよく実施すべきと考えます。補足になりますが、また、必要以上に企業に直接雇用のみを求めることは、雇用率ビジネスの横行を許してしまうだけであり、障害者雇用促進法の趣旨が形骸化してしまうだけと考えます。
あと、修正提案を机上資料としてお示ししていますので、後で御覧いただければと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。委員の皆様から、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。竹下委員、どうぞ。
○竹下委員 日視連の竹下です。補足していただければと思うのですが、一番最後に、企業に障害者の直接雇用を広げていくというか、それを強調することが、障害者雇用促進法の形骸化になりかねないという懸念をおっしゃったわけですが、その点は、どういう中身から懸念をおっしゃっているのか、もう少し内容を敷衍していただければというのが1点です。
もう一点は、先ほどのお話を聞いていて、私自身も迷いながらの質問なのですが、A型事業所に雇用納付金制度に基づく調整金等の適用ということが、それ自身は見方によっては福祉と雇用の連携とも言えるし、逆に、就労継続A型事業所がもともとは障害者の雇用を前提としているという、事業所から見れば自己矛盾とも言えると思うのです。この点の調和の仕方について、どのようにしていくと妥当なA型の事業所になるとお考えなのかについて、その点のお考えを聞かせていただきたいと思っています。以上です。
○NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会 1つ目ですが、障害者雇用促進法の形骸化というのは、雇用率ビジネスの横行ということであって、みなし雇用に関して、直接雇用と間接雇用をバランスよく実施するという説明をしました。ですので、形骸化については、雇用率ビジネスの横行ということについてであって、私の説明が悪かったのかもしれませんが、そういう意味です。
2つ目、A型の納付金の調整金の扱いです。これはA型の在り方に関わってくるのですが、A型は一般就労が難しい方々の利用する場所だと思います。ただ、この一般就労がなかなか難しいという中身が問題だと思っていて、例えば職業能力はあるのだけれども、なかなか環境に適合できないで一般就労が難しいような人、あるいはドロップアウトしてしまった人等が、A型を利用するという意味であって、したがって、労働基準法の適用労働者としての位置付けは、A型にもあって然るべきだと思います。それを踏まえると、調整金に関しては当然あって然るべきだと思うのですが、ただ、一般雇用の場から見ると、税金が投与されている所の利用者でもあるA型利用者は、福祉サービスの利用者でもあるわけです。だから、なかなか難しい問題なのですが、そこら辺はやはり割り引いて考えるべきだと私は思っています。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。大谷委員、お願いします。
○大谷委員 2点ほどお伺いします。ちょっと的がずれたらごめんなさい。1点目はA型の関係で、全AネットはA型の団体ですが、企業の方とかいろいろな所でA型が新しく出来ていますが、そういう方たちは、この団体のことは御存じでしょうか。どの程度の認知度があるのかということです。
もう一点は、一般就労への移行率の問題をお聞きしたいのですが、A型から一般就労への移行ということで、各市町村で計画を立てるときに、1年間に何件という計画を立てるのですが、ほぼゼロに等しい地域もかなりありますし、逆に一般就労からA型に戻ってきたとか、そういう雰囲気のところで、どのようなお考えをお持ちなのかをお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
○NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会 1つ目ですが、これはA型が出来たときに遡るのですが、専ら福祉事業を行っている団体ということで、営利企業が参入してきたときに、企業の定款に「福祉事業も」という明記がしてあればよかろうというようなことで、厚労省が認めたという経緯があります。
一般企業がA型をどれだけ認知しているかというところは、中身はともかく、A型があるということの認知度はかなりあるのではないかと思っています。特に、雇用率に関して苦労している事業所にとってみると、特例子会社やA型について、私どもの団体に相談に来られたことが幾つかあります。それは、特例をやったほうがいいのか、A型をやったほうがいいのかというような相談です。だから、認知度としてはかなりあるのではないかと思います。
2つ目ですが、一般就労への移行率についてですが、厚労省のデータで見ますと、B型と移行支援の中間ぐらい、少し下がるかもしれませんが、そのぐらいにA型はあるのです。A型の中でもいろいろなタイプのA型があります。移行支援事業所以上に一般就労に努力しているA型も幾つもあります。したがって、一緒くたにはできないのですが、全体としては厚労省がデータを出していますので、分かるのではないかと思います。
○大谷委員 ありがとうございました。
○山川分科会長 ほかに御質問、御意見等はございますか。倉知委員、どうぞ。
○倉知委員 倉知です。分かりやすい報告をありがとうございました。1点、私も今も悩んでいるところなのですが、雇用率制度の在り方のところです。大規模社会福祉法人やグループ特例を適用されている企業が雇用率に換算されないと、A型事業を運営している理由がなくなる可能性が高いとおっしゃっていて、だから算定すべきだという御意見なのかなと思ったのですが、雇用率代行サービスがいろいろ批判されてくると、企業が今度はA型事業所の運営に切り替えていくのではないかという危惧を持っています。そうなると、全Aネットが今考えているようなものと、どんどん変質していってしまうのかなと。どこかで歯止めを掛けておかないとまずいかなという考えがあるのです。その辺りについて、久保寺さんはどうお考えですか。
○NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会 私個人として答えるということにしてください。一番最初にグループ適用等が認められていたときに、本当にこれでいいのかということは思いました。特例子会社でそのままやっていただいたほうがいいのではないかと思いました。
ただ、一方で、このA型がスタートした時点に戻ると、A型がなかなか増えなかったということがありました。それは、真面目に考えれば本当に難しい事業なのです、大変な制度で、苦労します、それを分かっているから、なかなか皆さんは参入しなかったのです。その後、一部の悪しき事業所が参入できてしまいました。しかし縷々厚労省が対策を取られました。そういう経過を皆さん御存じだから分かると思うのですが、良きA型事業所を1つでも増やしていきたいと我々は思っていますが、かなりハードルも高いし、逆に、真剣にA型をやろうという人たちが二の足を踏んでしまうのではないかというところもあります。
もう1つ、原点に戻ると、福祉的就労から一般就労できる機会が増えたからいいのではないかという見解もあります。でも、一般就労が本当に難しい人もいるのです。そういう人たちに労働者として働いてもらうという制度でもあるので、今の7万人というスケールがいいかどうかは別として、A型事業所というのは存続させるべきだし、ここに労働と福祉の一体的な展開という文脈で考えていただきたいと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかにございますか。ございませんようでしたら、NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会の皆様、大変ありがとうございました。
それでは、事務局から1点補足がございます。
○津曲障害保健福祉部障害福祉課長 障害福祉課長の津曲でございます。先ほど大谷委員から、一般就労への移行に関して、就労系障害福祉サービスからの割合はどのようになっているかに関してデータがあるのではないかという御示唆を頂きましたので、御紹介いたします。
令和元年の数字となりますが、就労移行支援に関しては54.7%、就労継続支援A型に関しては25.1%、就労継続支援B型に関しては13.2%です。これはサービス利用終了者に占める一般就労への移行者割合の数字です。以上です。
○山川分科会長 それでは、本日のヒアリングはこれで終了いたします。本日、御発表いただいた関係団体の皆様には、貴重な御意見を頂きまして、また種々御協力いただきまして、感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
それでは、議題(2)に入ります。事務局からお願いします。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺でございます。本日、その他としての議題は特にございません。
○山川分科会長 それでは、特にないということでしたら、本日の議論はこれで終了となります。次回の日程等について、事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。
○中村障害者雇用対策課係長 障害者雇用対策課係長の中村でございます。次回の日程については、11月上旬の開催を予定しております。詳細は追って事務局より御連絡いたします。以上です。
○山川分科会長 それでは、本日は皆様お忙しい中、大変ありがとうございました。終了いたします。