2021年11月8日 第4回厚生労働省統計改革検討会 議事録

日時

令和3年11月8日(月)14時00分~16時00分

場所

AP東京丸の内 3F会議室(E+F+Gルーム)

出席者

<構成員(五十音順、敬称略)>

 

<オブザーバー(敬称略)>

議題

(1)厚生労働省統計改革ビジョン2019の進捗状況等について
(2)その他

議事

 

○古舘参事官
 それでは定刻になりましたので、ただいまから第4回厚生労働省統計改革委員会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。本日は、神林委員、吉川委員から御欠席の連絡をいただいております。また、中室委員はオンラインでの出席という予定ですが、現時点ではまだオンラインでつながっておりません。最初に、開催にあたりまして、坂口厚生労働審議官から御挨拶を申し上げます。よろしくお願いします。


○坂口厚生労働審議官
 9月に厚生労働審議官になりました坂口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。委員の皆様には御多忙のところ本検討会に御参集いただきましてありがとうございます。厚生労働省では統計の不適切な取扱いというものを反省して、委員の皆様から頂戴した提言を踏まえまして、一昨年の8月に統計改革ビジョンをとりまとめ、10月には統計改革のスケジュールを示す工程表を策定させていただきました。これらのビジョン、あるいは工程表に基づきまして「ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施」、「情報システムの適正化」、「ガバナンスの強化などのための組織改革・研修の拡充」、「データの利活用・一元的な保存の推進」、「EBPMの実践を通じた統計の利活用の促進」といった取組を進めているところです。この取組の状況につきましては、本検討会においても御報告させていただいて、逐次、皆様方の御意見を賜りながら、進めていきたいと考えております。

ただ、御承知のとおり、現在の工程表は令和3年度末までとなっております。取組は、まだ道半ばですので、令和4年度からは、これまでの取組を実際の統計業務に反映して根付かせることが必要ですし、いろいろな業務の中で気付いた点についてはガイドライン等に反映していくという取組も必要になってまいります。こういうことから、令和4年度以降の工程表を作成して、引き続きこの検討会で御意見を賜りながら統計改革をしっかり進めてまいりたいと思っております。

本日の検討会では、今年度の統計改革の取組状況などについて御説明させていただきますので、奇譚のない御意見を賜りますようにお願いいたしまして、私からの冒頭の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


○古舘参事官
 続きまして事務局に異動がございましたので、紹介をさせていただきます。まず、政策立案総括審議官に9月から田中が着任いたしておりますが、本日は急な用務のために欠席させていただいております。続きまして、大臣官房参事官情報化担当の山内です。それから審査解析室長の渡邉です。それから申し遅れましたが、私は企画調整担当の参事官の古舘でございます。よろしくお願いいたします。それでは、冒頭のカメラ撮影はここまでとさせていただきます。

続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。また、ただいま、中室先生が御参加されました。


○中室委員
 遅くなりまして申し訳ございません。どうぞよろしくお願いいたします。


○古舘参事官
 どうぞよろしくお願いいたします。お手元の資料の確認をさせていただきます。議事次第が1枚あり、資料1から4までがあります。続いて、参考資料1と参考資料2があります。御確認をいただきまして、もし不足がある場合には事務局に申し付けていただければと存じます。

それでは、以降の進行につきましては小峰座長にお願いいたします。


○小峰座長
 皆さん、こんにちは。それでは本日の議題に入りたいと思います。まず議題1として、厚生労働省統計改革ビジョンの進捗状況等について事務局から御説明をお願いいたします。


○戸田企画官
 それでは、厚生労働省統計改革ビジョンの進捗状況等について、資料1から資料3に沿って御説明いたします。まず資料1を御覧ください。資料1はビジョン連絡会議の開催実績を示したものです。統計改革は、先ほど厚生労働審議官が申し上げましたように、5つの柱に基づき、それぞれについてグループを編成し、各グループ長が責任をもって進捗を管理しております。ビジョン連絡会議では、各グループ長が政策統括官、政策立案総括審議官に定期的に進捗状況の報告を行い、必要な指示を受けるとともに、各グループ間で連携し、統計改革を進める目的で開催しております。開催の頻度としては、ほぼ1か月に1回のペースとし、オンラインを活用して開催しております。

それでは次に資料2に沿って各グループ長より進捗状況を御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。


○奥垣室長
 厚生労働省統計企画調整室の奥垣です。本日はよろしくお願いいたします。それでは資料2、厚生労働省統計改革ビジョン2019工程表の進捗状況についてご説明いたします。目次を御覧ください。私からは、進捗状況のうち最初の「ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施」から「組織改革・研修の拡充等」に関しまして順次、御説明させていただきます。

まず、ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施に関して御説明いたします。なお、進捗状況の報告に入る前に前回の検討会から期間が経過しているために、おさらいの意味も含め、ガイドラインの目的・位置付け等に関して改めて最初に御説明いたします。5ページを御覧ください。

本日お集まりいただいた委員の方々に統計改革ビジョン2019に関する提言を取りまとめていただくきっかけとなりました、毎月勤労統計調査の事案におきましては、課内のみの判断で調査方法の変更を実施、システム改修の際の仕様を口頭ベースで伝達、あるいは幹部職員の公的統計に関する無関心等の指摘を受けたところです。そのため再発防止の一つとしまして、「総務省が作成・提供する標準的な業務マニュアルを踏まえ、統計の企画から公表・データ保管まで一連のプロセスを可視化した標準的な業務マニュアルを作成し、そのルールに基づいた業務遂行を実践する」との御提言をいただいたところです。ビジョンの提言に記載されている「統計の企画から公表・データ保管までの一連のプロセスを可視化した標準的な業務マニュアル」に相当するのが、5ページの真ん中の「個別マニュアル」と書いていますが、それが該当いたします。

個別マニュアルは、統計各課室が作成するもので、具体的にはガバナンスの強化を目的とし、統計業務の開始に先立ち、スケジュールや業務実施体制あるいは成果物等を定めた統計実施計画書と一連の業務プロセスを可視化した業務マニュアルの2種類から構成しております。

また、統計各課室が個別マニュアルを作成するための、いわゆる手引きといたしまして統計標準ガイドラインを令和2年度に作成したところです。

4ページにお戻りください。進捗状況について御説明いたします。今年度の上半期の取組ですが、最初に統計実施計画書の活用を行っております。毎年度、6月から7月に厚生労働省におきましては、翌年度の統計に関する予算を確認しており、新規統計や前年度よりも大幅に予算の増額を行っている統計を対象として妥当性を検証する観点からヒアリングを行っています。今回のヒアリング対象の8統計については、統計実施計画書の提出を求めて業務実施体制やスケジュール等が適切に確保されているのかという内容の確認を行うとともに、実際に統計実施計画書を作成した統計各課室に対してもアンケート調査を行ったところです。

次に、2点目、PDCAによる点検・評価の実施です。PDCAサイクルによる統計調査の改善は政府全体における取組であり、令和26月に閣議決定により改定された「公的統計の整備に関する基本的な計画」におきましても、「品質保証の取組の前提をなす、調査計画のガバナンスを確立することが急務であり、各府省は、統計調査の実施後において、調査計画の履行状況等の観点から事後検証を行い、次回以降の調査計画等の見直しに反映するPDCAサイクルの仕組みを整備する」とされております。本件は、厚生労働省におきましても、令和2年度から実施しており、今年度も6統計を対象とし、PDCAサイクルに基づく点検・評価を実施しております。

続きまして、今年度下半期の取組です。まず、統計作成プロセス診断、いわゆる第三者監査の試行です。プロセス診断につきましてもPDCAサイクルと同様に、政府全体の取組ですので、先ほど申しました「公的統計の整備に関する基本的な計画」におきましては、「統計委員会が取りまとめる要求事項及び方針に基づき、総務省から派遣される統計監理官等が行う取組」とされております。具体的に第三者監査では、統計各課室が用いているマニュアルや成果物等も対象に監査を行うこととなっております。今年度、試行され、厚生労働省においても第三者監査を受ける予定です。なお、PDCAサイクルと第三者監査は今後連携する予定と聞いております。

次に、4点目、ガイドラインの見直しです。先ほど説明した内容を踏まえ、特に第三者監査に関しましては、現在の統計標準ガイドラインにほとんど触れておらず、また第三者監査で求められる統計委員会が取りまとめる要求事項や方針と、統計標準ガイドラインとの間に齟齬が生じた場合、統計標準ガイドラインに基づいて作成した業務マニュアルに修正が発生する等の手間が統計各課室に発生するため、今年度の第三者監査等を踏まえ、まずは統計標準ガイドラインの見直しを実施し、その後、政府全体の統計改革の動きと一体となりまして統計標準ガイドラインに基づく業務を本格化するとともに、統計標準ガイドラインをホームページで公開する予定です。

続きまして、情報システムの適正化に関し、進捗状況を御説明いたします。7ページを御覧ください。工程表において見直しの対象となっていますが、工程表上、「システム共通」と記載している統計処理システムと毎月勤労統計システムの2種類があります。なお、これらのシステムは個別に運用されているわけではございません。7ページの脚注の※1に記載していますが、厚生労働省政策統括官が実施する統計の審査や集計を行う統計処理システムがあり、その統計処理システムのサブシステムとして毎月勤労統計システムが存在いたします。統計処理システムの中に、毎月勤労統計システムが内在しているとお考えいただければと思います。

次に、進捗状況ですが、ビジョンの提言におきまして、「毎月勤労統計の事案では、開発などに対応できる者が限られ、また、業務仕様を明記した資料が不十分であるなど、システムが「ブラックボックス化」」との指摘を受けております。統計処理システムの改修に先行し、今年度、COBOL言語で開発した集計プログラムはC言語に変換作業を行っております。予定では、令和41月分の調査から従来のCOBOL言語による集計システムのほか、新たに開発いたしましたC言語による集計プログラムを併用して検証を行い、その後、C言語のみによる集計システムの本格的運用を行う予定です。

一方、統計処理システムに関しましては、昨年度、次期システムのあり方の検討を行い、今年度は次期統計処理システムで想定している環境の候補の1つでもあるLinuxOSとするクラウド環境において、現行の統計処理システムの各種プログラムを移行して、動作環境や計算結果の検証を実施しているところです。来年度は、昨年度行われました調査研究、今年度のPoCを踏まえて次期統計処理システムの要件定義を行い、令和5年度から開発し、令和6年度、具体的には令和71月から次期統計処理システムの運用を開始いたします。なお、毎月勤労統計システムも、このタイミングで現行統計処理システムから次期統計処理システムに移管する予定です。

次に、組織改革・研修の拡充に関し、進捗状況を御説明いたします。10ページを御覧ください。今年度上半期の取組ですが、令和3年度から令和7年度までを対象とした「統計の人材育成基本方針」を策定いたしました。毎年度、この人材育成方針に基づいた具体的な統計研修方針を作成することが求められており、令和3年の統計研修方針を作成いたしました。当該統計研修方針に基づき、スキルレベル別研修のうち初級者向け研修、中級者向け研修の実施、統計処理システムの操作に関するプログラム研修、統計データアナリスト研修及びアナリスト補研修を実施いたしました。統計データアナリストや統計データアナリスト補として認定されるためには、専用の研修を受講する必要があります。今年度は、アナリストに関しては4人、アナリスト補に関しては6人がそれぞれ受講しております。なお、一部の者は重複し、両方を受講しているところです。

今年度の下半期の取組ですが、統計研修方針に基づく省内研修の実施を上半期から継続して実施するとともに、統計職員単位で研修履歴、統計に関する資格の取得状況、あるいは統計に関する業務履歴を取りまとめた統計人材プロファイルを作って更新を行います。併せて、令和4年度統計の研修方針の作成を予定しております。私からの説明は以上です。


○渡邉室長
 続きまして、資料214ページから、データ利活用・一元的な保存の推進につきまして説明いたします。15ページをお開きください。最初に、2021年度上期の取組状況等です。最初に調査票情報の利用状況です。本年730日に統計法第55条に基づく施行状況が総務省より公表されております。こちらによりますと、厚生労働省の調査票情報の提供実績は、令和2年度において公的機関等あてが948件、前年度が824件でした。その他は114件で、前年度は53件でしたので、それぞれ前年度より大きく増加しております。それから令和2年度におきまして、申請1件当たりの平均審査日数は59日で、前年度の99日から大幅に短縮し、改善しております。令和元年度においては、統計法改正に伴って様式の変更があり、審査負担が増加したということで平均審査日数も増加しておりますが、令和2年度においては様式についての変更はありませんが、作業を効率的に進めるよう職員が努力したこともあり、短縮できたものと考えております。なお、これらの過去3年間の推移については、16ページのグラフにあるとおりです。

次に15ページにお戻りください。利活用促進策についてです。「調査票情報の提供に関するよくある質問」(FAQ)を新規作成し、本年の810日に公開しております。これまでに受けた質問をカテゴリー別に整理して28の質問・回答を作成の上、厚生労働省のホームページに掲載しております。こちらにつきましても、17ページ以降に参考としてその一部を掲載しております。次にオンサイト施設です。これは統計センターと提携する大学あるいは行政機関等が情報セキュリティーを確保した施設を設置し、当該施設内におきまして調査票情報を利用できるようにするといった施設です。ここで提供している厚生労働省所管の統計は、人口動態統計など現在は7統計となっております。引き続き、年次の追加なども含めて5統計の統計センターへの登録ないし登録準備を進めているところです。次は賃金構造基本統計調査の匿名データの作成です。こちらは平成30年の「公的統計の整備に関する基本的な計画」において検討が求められ、昨年度より総務省統計研究研修所のワーキンググループにおきまして検討を進めてきたものですが、本年8月末に報告がまとまり、921日開催の匿名データ有識者会議、こちらも統計研究研修所に設置された会議体ですが、こちらにおいて作成方針が了承されております。

続きまして、2021年度下期の取組方針です。まずデータの利活用ですが、可能なものから利活用促進策を実施することとしております。具体的には、審査に係る負荷の軽減策として審査様式や受付の改善を検討し、またオンサイト施設へのデータ登録を進めていきたいと考えております。賃金構造基本統計調査の匿名データの作成につきましては、作成方針について統計委員会への諮問を予定しております。併せて作成費用に係る令和4年度予算の概算要求を実施しているところです。それから職業訓練や雇用保険の行政記録情報等を用いた公共職業訓練の効果分析においてEBPMの推進に係る若手・中堅プロジェクトチームが、行政記録情報の利活用やEBPM推進の観点で協力することとしております。

次に一元的な保存の推進です。毎月勤労統計調査において、都道府県が実施する地方調査の調査票情報については現在、保存期間を3年間とし、都道府県が保存することとされています。調査票情報等の長期保存を可能とするため、当省において調査票情報を収録した磁気媒体を一元的・永年的に保存できるよう、調査規則の改正を進めているところです。私からは以上です。


○飯島推進官
 続きまして、EBPMの実践を通じた統計の利活用の促進について御説明いたします。資料20ページを御覧ください。EBPMにつきましては、大きく分けましてEBPMの実践関係と、省内若手・中堅プロジェクトチーム関係の2点があります。また、このEBPMの実践関係は、資料にありますとおり3点に分かれております。順に御説明いたします。(1)2021年度上期の取組内容を御覧ください。まず1点目は、EBPMの対象施策の拡大です。当省では、昨年度から予算プロセスとEBPMの一体的な取組を実施しており、本年度は令和4年度予算要求事業のうち、1億円以上の新規事業、全てのモデル事業及び大幅見直し事業に加え、部局単位でこれらに該当する事業が1つもない場合には、最も要求額が大きい事業を原則対象として、全ての部局においてロジックモデルを作成し、概算要求に係る会計課説明において活用しております。また、この中からロジックモデルの精度・向上を図るため、重点フォローアップ事業を選定しております。(2)2021年度下期の取組方針を御覧ください。この重点フォローアップ事業の中から、有識者検証会の意見等を踏まえ、1から3事業を効果検証対象事業として選定する予定にしております。また、平成30年度から実施してきたEBPMの実践対象事業の中から、1から2事業を選定し、実際の統計等データを用いて効果検証を今年度の下期に行っていきたいと考えております。

ただいまの説明につきまして、若干補足をいたします。22ページを御覧ください。こちらの資料は、令和3年度以降の予算プロセスにおけるEBPMの取組サイクルの全体像です。本年度は、6月に各部局からロジックモデルを提出していただき、事務局で点検し、ブラッシュアップした後、各部局において会計課説明で活用し、9月以降は財務省説明でも活用しております。また、本年度はこれら事業の中から重点フォローアップ事業の選定も既に終えているところです。この重点フォローアップ事業につきましては、令和41月に公表を予定しております。また、今後選定される効果検証対象事業につきましては、リサーチデザインを設計した上で事業を実施し、事業実施後の令和5年度に効果検証を行うとともに、行政事業レビューと連携した取組を行う予定としております。

次に、23ページを御覧ください。2点目は、有識者によるEBPMの実施状況の検証です。今年度のEBPMの実践状況等を検証するため、昨年度に続き、有識者検証会を設置し、本年9月に第1回会合を開催しております。検証事項につきましては、各部局から提出されたロジックモデルの点検・助言・効果検証方法等の精度向上に係る検証や、次年度のEBPMの実践に向けて、例えば、実践対象事業のスクリーニング基準の妥当性などの検証を行っております。こちらは東京大学の田中隆一教授を座長とし、ほか3名の構成員の方に御参加いただいております。年度内に、あと2回開催し、審議結果を取りまとめる予定となっております。

恐縮ですが、20ページにお戻りください。3点目は、EBPMよろず相談窓口の対応状況です。当省ではEBPMの実践対象事業に限らず、省内全ての施策のEBPMを支援することを目的として令和元年7月からEBPMよろず相談窓口を設置しております。今年度の上期は、ロジックモデルの作成方法や、事業の効果検証手法の相談など、79件の相談を受け付けており、民間事業者の専門的知見も活用しながら相談に対応しております。

続きまして、2つ目は、省内若手・中堅プロジェクトチーム関係です。こちらは24ページに資料を用意しておりますので、そちらを御覧ください。当省では、EBPMの実践を通じた統計の利活用を推進し、省内職員が統計データに係る分析手法を習得できるようにするため、令和元年12月に省内有志によるEBPMの推進に係る若手・中堅プロジェクトチームを設置しております。令和2年度は、3つのサブチームを設けて分析を進めてきましたが、そのうち障害者雇用につきまして、本年5月に分析レポートを取りまとめて厚生労働省ホームページで公表するとともに、週刊社会保障の6月号に掲載し、更に内閣官房行革事務局のメルマガにも7月に配信していただいたところです。令和3年度においても新たな分析テーマを設定し、本年5月から活動を開始しており、分析結果の出たものから年度内に公表していきたいと考えております。また、本チーム活動の一環として、昨年度から労働政策研究・研修機構と連携し、EBPMセミナーを開催しております。本年度は85日に健康と労働政策をテーマとして開催したところです。

資料25ページを御覧ください。先ほど御説明しました若手・中堅プロジェクトチームによる障害者雇用の分析レポートの概要です。本分析レポートでは、企業における障害者の実雇用率について、平成304月の法定雇用率の引き上げにより障害者を追加的に雇用する義務が生じた企業と追加雇用義務が生じていない企業との間で差の差による分析、障害者雇用納付金制度の対象となる労働者100人超の企業と100人以下の企業との間で回帰不連続デザインによる分析を行っております。詳細は、厚生労働省ホームページにレポートの本文を掲載しておりますので、後ほど御確認いただければと思います。私からの説明は以上です。


○戸田企画官
 それでは最後に、資料3に沿って令和4年度の統計改革関係の予算概算要求、組織定員要求、そして新型コロナウイルスを踏まえた統計調査の対応について御説明いたします。資料3の表面を御覧ください。こちらは、「令和4年度予算概算要求の概要 統計改革の推進」というタイトルです。統計改革の推進として、昨年度比3.6億円増の6.8億円の予算案を要求しております。主な増額要因としては、統計業務の改善を目的としたシステムに係る費用を要求しております。システムについては、先ほどの情報システムの適正化の項目において御説明した次期厚生労働省統計処理システムの更改に係る調達支援等の費用と、令和3年度にCOBOL言語からC言語に移行した毎月勤労統計調査の全国集計プログラムについて、令和4年度以降において職員が適切に管理していくための運用支援業務に係る費用等を要求しております。なお、システムに係る費用に関しては今年9月に設置されたデジタル庁が一括して予算要求することになっており、それらの費用には「デジタル庁計上経費」と記載しております。またガイドラインが整備された後において、それぞれの統計調査における業務マニュアルの整備や、PDCAサイクルによる自己検証を効率かつ効果的に進めるために支援業務に必要な費用を要求しております。更には、統計に関する認識、リテラシーの向上として研修内容の拡充等に要する経費と、EBPMの検討事業に係る費用を要求しております。

それでは、裏面の2ページ目を御覧ください。上段は、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた統計関係の取組に係る要求内容をまとめております。昨年度も要求しているものについては説明を省略し、今年度に新規に要求するものを御説明いたします。主に2つあり、オンライン回答状況把握支援等業務と、一番下の介護サービス施設・事業所調査におけるプログラム等の開発があります。

まず、オンライン回答状況把握支援等業務について御説明いたします。国民生活基礎調査と毎月勤労統計調査では、調査票の回収を調査員経由とオンライン経由の2通りとしております。この場合、保健所などの経由機関において、調査対象世帯及び事業者からのオンライン回答状況の確認や調査員へオンライン回答状況を伝える業務などが発生することになっております。そのため、経由機関の負担軽減を実現するため、オンライン回答状況をクラウド環境で確認できるようにするための費用を要求しております。

次に、介護サービス施設・事業所調査についてです。統計調査と関連法令に基づく届出情報が重複するという意見を受け、「規制改革実施計画」において、法令に基づく届出情報を基に介護サービス施設・事業所調査の調査自体や、調査項目の統廃合を進めるべく検討しております。そのため、届出情報のデータを利活用する仕組みを構築するべく、プログラム等の開発費用を要求しております。このページの下段にあります統計改革関係の組織・定員要求につきましては、デジタル技術等を活用した統計の作成や、統計作成プロセスの見直しの観点で要求しております。厚生労働省統計改革ビジョンの進捗状況等については、以上でございます。


○小峰座長
 御説明ありがとうございました。それでは、これまでの厚生労働省からの説明について、委員の皆様から御意見、御質問等があればお願いしたいと思います。美添先生、どうぞ。


○美添委員
 詳細な説明を頂きまして、どうもありがとうございました。本当はもっと分厚い資料がありそうな内容の御報告でしたが、手際良く、ポイントはしっかり押さえられているように感じました。今年度までの計画ということで、実際に進捗状況を伺う限り、順調に計画に沿って取組は進められていると思うのですが、細かいことよりも、私が一番心配なのは、職員の量と質の確保ということです。そもそもの問題、不適切な事例とおっしゃいましたが、あの事例は、後で調べてみると、厚生労働省の内部で不適切だと思っていた方と、そうではないという自信を持っていた方の両方がいるのです。自信を持っていた方というのは統計委員会との手続の関係ではこれでいいのだとお考えだったようなのです。ただし、統計委員会もそうですけれども、私たち統計学会でもいろいろと情報をいただいて検討した結果、統計法の精神に関して適切な理解ではなかったと考えました。

その点について、厚生労働省は今回の3年までの計画で統計委員会が指摘した以上の姿勢でお考えになっているので、安心しているのですが、本当の心配は、不適切な事例のときに何が起こったかというと、統計職員の数を減らしてきて、しかも経験のある方がお辞めになったとき、後任の方は短期間で経験の蓄積が十分できないままに次の担当の方に代わっている。こういうことを言うと失礼ですが、大変優秀な方がいるのはよく分かっています。そういう方がいたからこそ、システムを維持できてきたのだと思うのですが、人が減ってきて仕事がむしろ増加している中で、細かい点検までできなかった。私は、これが一番の問題だったと思うのです。

それに対しては、量の確保は難しいとしても質の確保はなさっている、ここは非常に高く評価したいのですが、例えば資料2の途中にありましたように、スキル別の統計データアナリストの育成とか、アナリスト補がおられる点は期待したいところです。けれども外から見ていてやや不安なのは、こういうポストに就かれる方、統計データアナリストとかアナリスト補とかになる方が、どのぐらい、プライドというか、世の中の役に立っているという意識を持てるような仕組みになっているのだろうか。この肩書は、海外でいえば大変重要な肩書だと思うのですが、まだ日本の中では余り評価が上がっていないような気が、ほかの役職を見ていて微妙にします。

そういう中で、データアナリスト研修を4名が受講、アナリスト補研修を6名が受講と。忙しいと思うのですが、このぐらいの数でいいのかなと。私が期待していたのは、もう一桁上なのですが、さすがに日常業務があると難しいのでしょうね、というのが正直な感想です。統計委員会で各府省における人材の状況を調べたときに、厚生労働省からも御報告いただいていますが、記憶で言いますけれども、あのときに総務省統計局は、例えば統計検定で専門統計調査士以上の資格を持っている人が30人近くいたのです。財務省で3名、多分、厚生労働省は1人もいらっしゃらなかった。これは自覚の問題というよりは、ふだん仕事をしている優秀な人はそういう試験を受ける必要はないと思ったのでしょうけれども、時間もなかったのでしょう。

考えてみると、その辺の知識を持っている方であれば、専門の先生方とも交流があるはずなので、そういう方たちの意見も日常的に取り入れていくことができたのではないか、そうすれば、不適切な事例としてマスコミで過大に取り上げられたようなことは、基本的には防げたのではないかという気がしています。ということで、活動は進められていると思いながら、令和4年度以降の計画を立てるときに、人材の育成は充実するべきだろうと考えています。ほかにも言いたいことはあるのですが、取りあえず人材の件だけで、この辺にしておきます。よろしくお願いいたします。


○奥垣室長
 美添先生、ありがとうございました。私から、先生からの御意見に対して、現状について御説明させていただきたいと思います。まず統計検定ですが、人材育成に関して、今年度統計の人材育成基本方針を策定した、という話をさせていただきました。その基本方針の中においては、まだまだアナリスト等の具体的な業務はちょっと分からないところはあるので、今後そういう統計検定保有者やアナリストに関しては、統計データアナリスト等の状況を踏まえつつ、職員のキャリアパスをきちんと作成して、誇りを持って仕事をしていただけるような環境づくりというのを記載しています。そのため、今後、基本方針に基づいてやらせていただく予定です。

また、アナリストやアナリスト補の人数が少ないのではないかという御指摘ですが、確かに、なかなか少ない点はありますけれども、今の目標でいくと、厚生労働省の政策統括官という組織があって、ここは我々が所属している統計に関する組織ですが、アナリストやアナリスト補になるためには、統計の実務経験がアナリスト補では5年、アナリストは10年という形で長い期間になっております。そのため、統計担当室ごとに、アナリストは1名、統計調査ごとにアナリスト補を1名ほど、令和7年度までに育成して、令和8年度からそれに基づいて業務をする予定としています。また、政策部局はなかなか難しいので、政策統括官でプールして、ある程度支援ということを考えているところです。御提案ありがとうございました。参考にさせていただきます。


○小峰座長
 よろしいでしょうか。ほかはいかがですか。梶木委員、どうぞ。


○梶木委員
 梶木です。大丈夫ですか。


○小峰座長
 はい、どうぞ。


○梶木委員
 資料215ページです。審査の期間が99日から59日になったということで、担当の職員の方々が随分頑張って期間短縮に努められたということは、評価すべきことだろうと思いました。一つ思うのは、提供実績から見ると、大半が公的機関や研究者だったりということなのです。一方、かなり細かいデータを出していただいている個々の事業主や企業の業務情報をある程度守ってあげなければいけない場面が出てくると。そうすると、例えば特定の企業名のマスキングをするとか、そういった作業がどうしても必要になってくるのだろうと思うのです。

もし、そういう企業名の特定が難しいようなマスキングが一律にできれば、言ってみれば公的機関や研究者にしても、即、そのまま出して何の問題があるのだろうかという感じがしています。せっかく貴重な資料を作成して、大勢の方の協力をいただいているわけなので、特に今の個々の企業情報の部分を除いては、秘匿すべきものがあまりないような気がするのです。そうすると、審査の在り方をもう少し簡略化することによって、職員の方々の負担も減るだろうし、皆さんの仕事の結果、大勢の方に有効に使っていただくということもできるのかなと思っております。いろいろ難しい問題があるのだろうと思いますが、引き続き今の方向で期間短縮を図っていただけたらと思っております。以上です。


○渡邉室長
 御指摘ありがとうございます。調査票情報の提供については、統計法で定められたものがあり、提供の相手先などについても定められておりますので、基本的にはそれに従ってやっていくことになります。その際には、利用者が最低限度必要なものを提供するという形で、調査票の提供については一定の制限が掛かってくることになるかと思います。調査票情報の提供については、磁気媒体での提供だけではなく、オンサイト施設での提供や匿名データ、あるいはそれ以外も含め、データ提供の在り方については総務省でも検討されていると理解しておりますので、そうした形に従って進めていきたいと考えております。以上です。


○小峰座長
 ちょっと補足ですが、審査というのは、何に一番時間が掛かるのですか。相手が私的利害のためではなくて公共目的のためという使用目的なのか、相手がそういうことをする能力が本当にあるかどうかを審査するのか、その辺はどこが一番審査の対象になるのでしょうか。


○渡邉室長
 まずは、提供する相手先や目的が公共性を持っているかというのを最初に審査し、その上で申請していただく。その際に、提供するデータは、個別に、必要な最低限度ということになってきますので、必要なものだけを残しマスキングした上で提供する。どうしても個別のオーダーに従った提供ということになりますので、そこで時間が掛かると思っております。


○小峰座長
 ありがとうございました。


○美添委員
 梶木先生の指摘はもっともで、15ページの真ん中辺りに書いてある匿名データの作成について総務省の有識者会議で了承、とあります。私は、この会議の委員ですが、実はガイドラインを作ったときにも関わっていて、この20年ほど、匿名データの提供を促進してきた立場です。私の先輩にあたる一橋大学の松田芳郎先生の積極的な働きかけによって、匿名データを提供できるように統計法を改正したときから関わってきましたので、梶木先生のおっしゃるような問題意識は昔から共有しているつもりです。審査は、今、御説明があったように本当に大変なのです。いろいろな方からデータの要求があって、公開されているデータで分析できることもよくあるのです。研究者は、自分の分析に必要なデータは広めに求めます。一部の分析は公開されているデータでできるでしょうという府省の対応もあるのですが、私はそういうことを言ってはいけないという立場で、データを提供できるものは、してくださいと言っています。

ただし、そうすると各府省の負担が大変増えるのです。最近、新しい統計法の下で公表データの利用申請が増えています。これは止めてはいけないと思います。負担軽減のアイディアは、有識者会議で10年以上前から出しているのですが、秘匿は掛けなければいけないのです。先ほど梶木先生がおっしゃった企業データは出したら駄目なのです。大企業であれば、従業者や資本金から、経済学者はどの企業かが分かります。中小企業、零細な企業なら出せますが、そういう統計は数に限りがあり情報も詳細ではないから研究者はあまり喜びません。大部分は世帯または個人のデータです。

厚生労働省の統計の秘匿方法については、私も審査に関わりました。統計委員会の中の評価分科会もありますし、総務省の匿名データ部会で個別に審査していますが、審査の度に大変な手間を掛けます。たとえば、子供が11人いる世帯はまずい、では8人まではいいのかなど。本当に珍しい世帯だったら公開は危険だとか、そういう判断基準は学会でも持っているのです。理論的な秘匿の開示に関する研究は日本でも進めています。日本もかなり先進的に、国際的な水準で高い水準の研究をしているのです。実は、海外で公開しているデータというのは、強い秘匿がかかってるのです。

私の親しいカナダとかアメリカの友人に聞いても、具体的な秘匿の手順は教えてくれません。その代わりにデータを分析すれば、満足できる正確な結果は出るといいます。その方法はこの場では言えませんが、それを日本でやりたい。そういう秘匿措置を施したデータベースを各府省で持っていれば、研究目的で申請があれば黙って出せばいいのです。そこから切り取ってそのデータベースを使って、個別のデータを出せばいい。

企業データの公開は難しいのですが、世帯や個人の秘密は守れると言い切れるぐらいの方法があるのです。日本でもそういう方向に進めたいと、そのように願っておりますので、各府省の負担を減らして研究者にとっても利益になるような取組ですので、政府全体としての匿名データの作成方法を早く進めていただきたいという梶木先生のような発言を続けていただければと思います。


○小峰座長
 ありがとうございました。川口先生、どうぞ。


○川口委員
 ありがとうございます。このEBPMを進めていらっしゃるということで、資料2の最後のページに載っているような良い例というのも出てきていて、すばらしいと思います。内部で進められているものがある一方で、原課のほうから直接、外部に依頼があって、そういうのを進めるということも行われているわけです。実際に私も一部、そういう活動に参加しているのですが、恐らくその場合のデータの申請が、例えば外部のシンクタンクに1回出して、データを申請するとなると、厚生労働省からの委託研究なんだけれども事業者は外部ということで、審査に時間が掛かる傾向はあるように思います。明らかに目的は、国の政策形成に資するということで公益のためにやっているということですけれども、やっている主体が民間企業であるケースだと、どうしても第332項のほうの扱いとなっているのかなと思います。その実感からしますと、やっぱり審査に時間が掛かると。

今、美添先生からお話がありました世帯と事業所の統計の話ですが、どうしてもそういう研究をやろうとするときに事業所系のデータを利用しなければいけない。資料2の一番最後のものも、おそらく事業所系のデータからやられているということだと思います。そうすると、この企業がどういう企業か分からなくするという、秘匿を掛けるというのは技術的に極めて難しいというのは、美添先生の御指摘のとおりだと思います。

2つのレベルがあると私は理解していて、技術的に秘匿するものと、もう1つは、ルール違反を犯して利用した者に対して罰則を科すという形で、法的に対応する方法というのもかなり真剣に考えていく必要があるのかなと思っています。

どこで時間が掛かるのかという小峰先生の御質問ですが、私の理解している範囲でお答えすると、必要最低限のデータを出しますという、美添先生が関わられたガイドラインとは別のガイドラインだと思いますけれども、統計法331項、2項に基づいて、データを外に出すというところのガイドラインにおいて、やはり必要最小限のデータを出すとなっています。そうすると何が起こるかというと、どの質問項目を使いますかというのを一つ一つ説明するのです。このデータは必要ですかという質問が返ってくるので、こういう分析をするから必要なんですとお返しするわけです。11回のレスポンスはすごく早いのですが、五月雨式に質問がやってきて、質問に答えるとそれが更なる質問を誘発してというプロセスをやっていると、実感としてはかなり時間が掛かるなという形になっています。それは、おそらく厚生労働省だけで何とかなる問題ではなく、総務省の所管の部分でガイドラインをどういうふうに考えていただくのかということです。

これは、政府全体のEBPMの取組みたいなものが進んで、一部を外部に出して分析をするという話になってくると、かなり深刻な問題になるのではないかなと思っています。厚生労働省としても総務省に働きかけていただけるような機会があれば、そのようなことをしていただけると有り難いなと思います。ありがとうございます。


○美添委員
 川口先生でもそういう経験をされているのですね。国立大学の先生に対しては基準は緩いのです。私が私立大学の助教授のときは、目的外利用の申請すらできませんでした。統計法の改革に取り組んでいる頃に、科研費を取っていたら公益性の証明になるという基準を作っていただいてようやく使えるようになりました。審査は、実は省によって違うのです。川口先生は、経済産業省のデータを分析していますね。省内で統計を改善するための取組と整理すると、総務省は介入しないのです。これは旧統計法でも、今でも30何条だったか、各省の判断でできるのです。経済産業省は内部の研究会を使って、そこに先生方を入れて統計を改善してきたのです。あそこはすごい組織でした。


○川口委員
 なるほど。


○美添委員
 厚労省がやる気になれば、同じことができるのです。総務省の政策統括官(統計制度担当)は関与する必要がない。厚生労働省が管轄する統計の改善のためにこのデータを使うことさえ整理して、関わる研究者たちにはきちんと秘匿の義務を課す。

先ほど川口先生がおっしゃった罰則規定ですが、日本の統計法にもあって懲役2年以下でしたね。ところが、アメリカは5年なのです。日本でも厳しくしたいと提案したのですが、各省が同意してくれなくて、罰則規定は日本ではあまり使いたくない。伝家の宝刀だから使いたくないと言っているうちに本当に錆び付くと思います。

さっきの話に戻しますけれども、審査に細かい時間を掛けすぎだというのは、私も全く同意見です。厚生労働省が御自分の統計を改善するための研究会を作っているのだったら、今、私が申し上げたような方法を使えば、審査の手間をかけずに使えるはずです。問題はそれ以外の研究者の方たちが申請した場合で、これはガイドラインに従っていただくしかないし、公開されているデータでできるのに、なぜ追加のデータが必要なのか不思議な申請はたくさんあります。

心配しているのは、漏えいなのです。御存じかどうか知りませんけれども、今から30年以上前に有名な研究者が某役所で個票の分析をして、それを無断で拡散してしまって以来、各省が統計データを大学の教員に貸さなくなった。これから統計法の改正まで20数年間掛かったのです。そういう不幸な歴史は繰り返したくない。そのためには、さっき言ったような秘匿措置をかけたデータベースをしっかり作成して、そんなことが起きないようにするほうが先だと思います。私は、未だに匿名データ作成部会にいますので、そちらのほうで少し検討させてください。そこは是非プレッシャーをください。利用者からのプレッシャーがないと、匿名部会も事務局の皆さんが本当に忙しくてなかなか仕事が進まないのです。この部会では、個別のデータに関して、例えば賃金構造基本統計調査もそうですが、審査をするのです。ここまでなら公開してもいいという匿名データを作るために1年も掛かるようではなかなか進まないのです。そこで、さっき細かい手法は申し上げられませんと言った匿名化の手法を使って何とかしたい。実は、来年度の研究課題に入れてもらいました。御期待いただけるのは再来年度以降だと思いますが、そんな状況です。


○小峰座長
 ありがとうございました。厚労省から何かありますか。


○渡邉室長
 二次利用申請の処理に関して、我々としても負担があるということは事実ですので、非公式な場などで総務省の方とそういった話をすることはございます。一方、総務省においては、先ほども申したとおりオンサイト施設であるとか、あるいは先ほどからお話に上がっている匿名データを含めたデータ提供のあり方について、海外の事例なども含め広く検討されているものと理解しています。先ほどの、項目を指定しない形でのデータ提供であれば、今現在の枠組みとしては、オンサイト施設で可能なのではないかと思います。以上です。


○小峰座長
 ありがとうございました。オンライン参加の中室先生、何かございますか。


○中室委員
 座長、発言の機会を与えていただいてありがとうございます。本日の報告の資料を見せていただいて、私は率直に非常によかったと思います。感銘を受けました。こういった統計不正という非常に難しい問題が起きて、そのことに目を背けずに、これだけ長期の間にわたって、きちんと、そのことについて誠実に対応してきてくださったということは本日の報告書からも明らかなことだと思いますので、まずはその点を率直に感謝申し上げたいと思いますし、評価をしたいと思っています。

特に内容面で言えば、EBPMのところが極めて充実してきていることについて、とてもうれしく思っています。美添先生のおっしゃるとおり、人材育成というのは大変時間が掛かることでもありますし、そこが課題として残っているというのは御指摘のとおりかと思いますけれども、方向としては非常に良い方向に進んでいるという印象を持ちました。こうした動きはドライビングフォースが強い間だけモメンタムがあるということではなく、今後も長く続いていくために、こうしたEBPMに関わる人たちに対して、よい意味でのインセンティブがあることが非常に重要なのかなと思いますので、特に若手の人たちを中心にEBPMを積極的に押し進める人たちについて、例えば昇進だったり研修だったり様々な面でインセンティブが付くようにしていただければ、より長期的に継続していくことができるのではないかと思いました。私からは以上です。


○小峰座長
 中室先生、ありがとうございました。ほかに委員の方から何か御発言はありますでしょうか。ないようでしたら、次に資料4の令和4年度以降の工程表の作成について、事務局から御説明をお願いします。


○戸田企画官
 それでは、資料4の令和4年度以降の工程表の作成について御報告いたします。資料4を御覧ください。現在の工程表は参考資料2にお付けしていますとおり、おおむね令和3年度までの計画でございます。ただ、統計処理システムの更改、統計業務マニュアルの作成やPDCAサイクルの推進、また、先ほどの統計データアナリスト、アナリスト補の育成等の取組が引き続き必要であると考えていまして、統計改革がまだ道半ばであると認識しています。そのため、令和4年度以降についても工程表を作成し、統計改革を進めていく必要があると考えています。

令和4年度以降の次期工程表につきましては、統計処理システムの更改や統計データアナリスト、アナリスト補の育成等が一通り実施される令和8年度末までの期間として作成したいと考えています。これまでの検討会の御意見等を踏まえ、今後、事務局において次期工程表の案を作成し、次回の検討会に提示する予定です。

また、資料4には記載していませんが、本検討会につきましては令和4年度以降も続けていきたいと考えていますけれども、取り組んでいる事項が長期的なものになっていることから開催頻度を変更させていただきたいと考えています。現在は、年2回開催させていただいていますが、年1回の開催とさせていただければと存じます。資料4の説明は以上です。


○小峰座長
 ありがとうございました。ただいまの点について何か皆さんからございますか。川口先生。


○川口委員
 次期の計画を練られているということで質問ですが、今回の資料2の一番最後でもそうですし、行政記録情報を使った統計分析というものが非常に重要性を増していると理解しています。実際に厚生労働省でも職業訓練の評価のプロジェクトに取り組まれていて、恐らく成果が年度内に出てくるのだろうと認識しているところです。先般、財務省の国税と税関のデータを、共同研究の利用枠組みの中で研究者に使わせるという取組が始まったところですが、厚生労働省も雇用保険のデータあるいは年金のデータなど、統計を利用すると多くのことが分かりそうな業務情報を持っておられて、それを学術利用の枠組みの中に載せる。あるいはEBPMを推進するための枠組みの中に載せるようなことも、次の計画の中に盛り込んでいただけると有り難いと思っています。

もちろん、行政記録情報の活用ということで、内部での活用を進めていただくのは結構なことだと思いますし、是非進めていただきたいのですが、それと同時に、外部の研究者や研究機関が使えるような体制というものを、次の計画では時間を掛けて考えていただければ有り難いなと思っています。今の時点で共有するのは難しいのかもしれないですが、差し支えのない範囲で何か考えていらっしゃることがあれば教えていただければ有り難いと思います。


○戸田企画官
 御意見、ありがとうございました。おっしゃるとおり行政記録情報の活用というところは、特にEBPMを推進していく上では重要であると認識しています。ただ、こちらについては、行政記録情報と言っても各部局がいろいろな情報を持っているのと、それぞれの情報を収集するに当たっての根拠となる法令や、技術的にも、特にシステムを改修しないとデータを抽出できないとか、いわゆる統計のスクリーニングが必要なものがたくさんあるといった状況など、様々に状況が異なっていると考えていますので、引き続き、特に厚生労働省に関しては、ナショナルデータベースのように医療のレセプトデータ等については一定の整理をさせていただいて外部の研究者の方にも利用していただいているところですので、そうした取組ができるところから進めていくというところはあるのかなと考えています。ただ、現状のところ、その整理が付く付かないというところは各部局で状況が異なっていますし、ここでは統計部門としてどういう役割を果たすかというところは、また別の観点で議論があるかと思いますので、そこについても内々には検討してまいりたいと思っています。


○美添委員
 御苦労はよく分かります。先ほど川口先生のおっしゃった国税庁の話は、私が統計委員会の評価分科会でお願いしたことが発端なのです。統計を改善できる貴重なデータを使わないのはもったいないと言ったら、信じられないことに国税庁で検討の機会を作って1年半ぐらい非公開の勉強会をやりました。あの人たちは優秀ですね。普段はデータ分析はしないと言いながら、あっという間に分析できるようになって、すばらしい結果が出るのです。これからは若手を入れた研究会をやって欲しいということで、データ公開に踏み切ったのです。今までの議事録は非公開となっていますが、これから先の議事録は公開でやってくれます。税務データの利用については実現まで30年かかりました。貿易統計のほうも20年ぐらいかかっていましたが、やはり同じ財務省なので急に前向きになっています。

ですから、できれば川口先生が厚生労働省に入ってお手伝いしていただいて、すばらしい分析ができるということを省内で共有してくれないと困るのです。今、黙ってやれと言うと、多分、戸田さんの負担が増えるばかりで、それは説得力がないですよね。やってみなければ分からないことを、他の仕事が忙しい方にお願いするのは難しいので、少なくとも結果が出そうな研究者を何人か御存じでしょうから、そういう方と研究会のチームを作って、厚生労働省の手を煩わせなくても、それなりの分析ができて、良い結果を示していただけると、結局、これは国のためなんだと私は思うのです。良いデータがあって、その分析が政策の企画・立案や評価に利用できると思うのです。そのためのデータベースをしっかり持っているのが役所ですから、その公開に向けて努力するというのは当然の方向だと思います。その辺は統計改革推進会議でも目標に書いてありますので、各省でも行政資料の利活用をもう少し、これこそ川口先生がおっしゃったのに便乗しますけれども、令和4年以降の取組の中の目玉商品の1つにしていただければいいかなと思います。


○小峰座長
 ありがとうございました。ほかには何かありますでしょうか。ないようでしたら、予定していました議事は全てこれで終了いたしました。全体を通して何か御意見等があればどうぞ。ないようでしたら、さっき中室先生からおっしゃっていただいたように、最初、懇談会でかなり広範な改革のビジョンの案をまとめていただき、ほぼそれを、まるまる公式の改革ビジョンにしていただいて、これまで着実に進めていただいてきたと思いますので、これからも是非、こういったペースで計画どおり更に進めていただければと思います。最後に事務局から連絡事項等があればお願いします。


○古舘参事官
 事務局です。委員の皆様、本日、お忙しい中、御出席をいただきまして、また大変重要な御指摘を皆様からいただきました。本当にありがとうございます。次回の日程につきましては、昨年と同様に3月頃に開催させていただければと考えています。改めて日程調整等の連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。


○小峰座長
 ありがとうございました。それでは、本日はこれをもちまして第4回厚生労働省統計改革検討会を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

 

 (了)

照会先

政策統括官付参事官付統計・情報総務室 坂部

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