薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和3年度第4回安全技術調査会議事録

日時

令和3年10月26日(火)15:00~17:00

開催形式

Web会議

出席者

 

出席委員:(10名)五十音順、敬称略



欠席委員:敬称略
 
  • 脇田 隆字



国立感染症研究所:敬称略
 
  • 水上 拓郎
  • 松岡 佐保子



日本赤十字社:敬称略
     
  • 佐竹 正博
  • 後藤 直子
  • 谷重 直子
   


事務局:
 
  • 中谷 祐貴子  (血液対策課長)
  • 菅原 高志     (血液対策課長補佐)
  • 佐野 圭吾     (血液対策課長補佐)
  • 太田 一実   (主査)

 

議題

  1. 1.感染症安全対策体制整備事業について
  2. 2.NAT コントロールサーベイ事業について
  3. 3.日本赤十字社のヘモビジランスについて
  4. 4.HEV NAT スクリーニング導入後の状況について
  5. 5.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 
 
○佐野血液対策課長補佐 それでは、第4回安全技術調査会のWeb会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。本日のWeb会議における委員の出席についてですが、脇田委員より御欠席との御連絡をいただいております。現時点で安全技術調査会委員11名中10名の出席をいただいていることを御報告いたします。
本日は参考人として、国立感染症研究所より、水上拓郎血液・安全性研究部第1室室長、松岡佐保子血液・安全性研究部第2室室長に御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、佐竹正博中央血液研究所所長、後藤直子技術部安全管理課長、谷重直子技術部検査管理課長に御出席いただいております。
続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出していただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞお願い申し上げます。
本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、御自身のお名前と、発言したい旨を御発言いただくようお願いいたします。その後、座長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上で御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますよう、宜しくお願いいたします。
なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は座長からお願いする場合がございます。その場合には、記入されたメッセージに応じて、座長より発言者を御指名いただきます。
また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま説明させていただく場合がございますので、御了承いただければと思います。まもなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。それでは、以降の進行を濵口座長にお願いいたします。
○濵口座長 皆さん、こんにちは。本年は安全技術調査会をかなり頻繁に行っておりますが、毎回、皆様に御参加いただきまして本当にありがとうございます。それでは、ただいま御説明がありましたが、ここまでのところで何か御意見がございましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。
それでは、議事に入ります。議題1「感染症安全対策体制整備事業について」、事務局より御説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。感染症安全対策事業は、新たな病原体が移入した場合などに備えて血液対策課は国立感染症研究所に実施を依頼している事業となっております。令和2年度の実施実績の報告について、水上参考人よりお願いいたします。
○水上参考人 国立感染症研究所の水上です。宜しくお願いいたします。本事業の昨年度の実績を御報告いたします。
まず、資料1「感染症安全対策体制整備事業(令和2年度)実績報告書」です。1.事業の目的ですが、輸血用血液製剤を含む血液製剤は、ヒトの血液を原料とするためウイルス等の病原体混入のリスクが常に存在しております。本邦では、血液製剤の安全性確保のため、血液を介して感染する主要な病原体であるHIV、HCV、HBV、梅毒やパルボウイルスB19等に関しまして、血清学的検査、核酸増幅検査が実施されており、極めて高い安全性が保持されてまいりました。
しかし、グローバル化が進む現在においては、国内ではほとんど発生例のないような感染症、特に海外での新興・再興感染症が国内に輸入され、問題となることがあります。平成26年8月には約70年ぶりのデング熱の国内発生例が確認され、平成27年には南米やアメリカのフロリダ州でジカ熱が大流行し、また同時期にアフリカや南米で黄熱が大流行し、平成23年3月には中国でアジア初の輸入症例として報告されました。このような世界の一部の地域に限局的に発生していた感染症の病原体の日本への移入を想定し、平成25年4月より、新たな病原体が移入した場合に備えて、国立感染症研究所と厚生労働省血液対策課、日本赤十字社とが連携し、「感染症安全対策体制整備事業」が開始されました。
本事業では、国内に侵入して日本の献血血液への混入リスクのある病原体について、血中ウイルス量の低い無症候性感染者が献血する場合等を想定し、高感度の核酸検査法を整備し、将来的な血液の安全性対策に資することを目的としています。現在までに、新規病原体に対する高感度核酸検査法の開発及びモニタリングを実施し、新たな感染症リスクの早期把握と評価を実施しており、特に、デングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの高感度核酸検出法を開発してまいりました。
令和2年度は、2019年度末より発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関し、高感度核酸検査法を開発し、臨床血液検体を用いて高感度核酸検査を実施しました。いさらに、COVID-19核酸検査のための国内参照品を作製し、共同測定を実施した上で、国内参照品を値付けし、試験法の標準化を可能といたしました。
続きまして、2.実施内容です。まず、1)SARS-CoV-2に対する高感度核酸検査法の開発を行いました。2019年度末から中国の武漢で、SARS-CoV-2の大規模なアウトブレイクが発生し、2020年には日本のみならず、他の多くの国々に瞬く間に感染が拡大し世界的なパンデミックとなっております。WHOは2020年1月末には国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言いたしました。SARS-CoV-2は気道から侵入し肺炎を引き起こしますが、一部の患者の血液からも核酸検査によるウイルスRNAが検出されることが報告されております。無症候性感染者も存在することが分かっていますが、血液中にウイルス(RNA)が存在するケースがあるかは不明であったため、無症候性感染者からの献血を想定し、その血液にウイルスが存在するリスクに至急備える必要がありました。開発開始時点での国内のSARS-CoV-2に対する核酸検査は、口腔スワブ等を対象としており、血液検査を用いた検出感度は不明でありました。そこで、献血血液に微量に混入したウイルスを検出可能な高感度核酸検査系を別途開発し準備することとしました。
研究方法と結果です。まず、高感度primerスクリーニングを行い、SARS-CoV-2の約30Kbの核酸配列に対して、Primer設計ソフトで網羅的にForwardおよびReverse primerを299セット設計いたしました。武漢帰国便の陽性者から分離されたLC521975株の培養上清から精製したウイルスRNAを鋳型として、SYBR Green系のRT-qPCRキットにて299セットのRT-qPCRの増幅効率を検討いたしました。RT-qPCRのCt値を基にして評価し、極めて増幅効率の良かった62セットを高感度候補として選出いたしました。
続きまして、高感度probeスクリーニングを行いました。選出したprimerセットのPCR増幅領域にTaqMan МGB probeを設計し、24セットのprimer-probeについてTaqMan RT-PCRキットにて、ウイルスRNAを鋳型にして増幅効率を評価いたしました。その結果、11セットについては極めて増幅効率が良く、これらのprimer-probeセットをSARS-CoV-2高感度核酸検査法の候補といたしました。それは図1にまとめております。11セットのうち、NCBI登録株約4,000株に対して相同性を評価し、登録株と100%一致する率が99%以上のprimer-probeを、変異によるミスマッチの生じにくい高感度primer-probeとして最終的に3セットを選出いたしました。これらの3セットに関し、RT-qPCRにおける増幅効率を確認した結果、Table.1に示すとおり、それぞれ100コピー/wellで、37.8、36.7、35.7サイクルでした。
続きまして、2)臨床血液検体を用いた高感度核酸検査体制の構築と実施についてです。COVID-19の治療法開発のため、国立国際医療研究センター(NCGM)が中心となり、日本赤十字社、国立感染症研究所が協力する形で、COVID-19回復者血漿療法の臨床研究がスタートしました。また、同様に慶應義塾大学においても同様のプロジェクトがスタートしました。その中で国立感染症研究所では、本事業において NCGMの回復者血漿の適合者のスクリーニング及び血漿採取時のSARS-CoV-2に対する安全性確認のため、採血した血漿に対して、高感度SARS-CoV-2核酸検査を実施いたしました。
研究方法および結果です。開始した当時は、WHOの国際標準品が存在しなかったため、暫定的にSARS-CoV-2が100コピー/mLで血液に混入した場合においても、確実に検出できるような核酸検出の感度を目指しました。そこで、SARS-CoV-2に対する核酸検査法のCDC_N2及びNIID_N2法を用いて、合成RNAを使った検出感度を暫定的に評価したところ、約30コピー/reactionであったことから、100コピー/mLのウイルス液から30コピー以上のウイルスRNAをPCR1well中に持ち込める方法でセットアップすることといたしました。そこで、RNA抽出効率を仮に100%とした場合に条件を計算したところ、全自動核酸抽出機の2mLの抽出プロトコルで核酸を抽出し、90μLで核酸を溶出、qPCRに抽出液を25μL添加(60μLの反応系)したとき、100コピー/mLのウイルス液から55コピーのウイルスRNAをPCR1well中に持ち込める計算となることから、この条件で検査を実施しました。
続いて、回復者血漿のSARS-CoV-2に対する安全性確認のための核酸検査です。先程設定した核酸抽出・検出条件下で、2020年9月末までにCDC_N2及び感染研のNIID_N2法において、NCGMの回復者血漿のスクリーニング検体の約210件、採取した回復者血漿69件について、全55回のSARS-CoV-2の核酸検査を行いました。その結果、全ての検体から、SARS-CoV-2のRNAは検出されませんでした。以上が高感度核酸検査系の開発の結果となります。
続きまして、3)COVID-19核酸検査のための国内参照品の作製と値付けです。SARS-CoV-2に関しては、抽出効率を反映させた生ウイルス由来の核酸検査用標準品が日本にはなく、一般に国際標準品も現在のところ入手が困難であることから、核酸検査用に使用できる国内参照品候補品2種類を10施設で測定し、値付けを実施しました。また国際標準品の入手が可能であった日本赤十字社と国立感染症研究所の2施設のデータを元に、国内参照品に対して国際単位「IU/mL」の表示値を付与しました。
研究方法および結果です。血液用及び一般用として「NIID_001/2020、NIID_002/2020」の参照品候補品として、武漢由来のSARS-CoV-2であるJPN/ty/wk-521株を60℃で60分の加熱により不活化し、感染性がないことを確認した上で、それぞれ血漿ベースマトリックス、ユニバーサルバッファーで希釈したものを1,000本ずつ作製しました。臨床検査薬協会の協力を得まして、臨床検査薬会社を含む10施設で値付けを実施しました。定性法ではエンドポイント法で力価を算出し、定量法では各参加施設の定量PCRの定量値を用いて算出し、双方の値を考慮して算出した値を値付け値としました。相対評価での力価算出の際は、平行線定量法により算出しました。一般用を国内参照品とし、その力価を6.92log10Units/mL(7.08log10IU/mL)、また国内参照品に対する相対力価として血液用(NIID_001/2020)の力価を6.73log10Units/mL(6.88log10IU/mL)といたしました。
続きまして、4)海外における血液安全に関する情報の収集および交換です。WHOの血液安全に関するカンファレンスに定期的に参加するとともに、各国の血液事業に携わるネットワーク会議(Blood Regulators Network)に加盟し活動することにより、感染症リスクの早期察知および評価に基づく安全対策の検討を行いました。また、国立感染症研究所の病原体関連部署と連携し、情報の収集や交換を行いました。
3.考察と課題です。まず、1)SARS-CoV-2に対する高感度核酸検査法の開発ですが、SARS-CoV-2はRNAウイルスの特徴として、当初より変異が多く導入されることが明らかであったため、変異対策として複数の高感度primer-probeをmultiplex化して、多くの変異株を包括的に検出できる核酸検出系が望まれていると考えています。こちらに関しては、令和3年度内に継続開発するとなっています。
次に、2)臨床血液検体を用いた高感度核酸検査体制の構築と実施についてです。回復者血漿を用いた治療法の開発は慶應義塾大学においても開始されており、NCGMと同じ方法を用いて検査協力を開始しています。現在までにスクリーニング検体20件、及び採取したCP2件に関して、全6回のSARS-CoV-2の核酸スクリーニング検査を実施しており、全てが陰性となっています。
続きまして、3)COVID-19核酸検査のための国内参照品の作製と値付けです。国内参照品NIID_002と血液用NIID_001は依頼があれば国立感染症研究所から交付可能であり、本参照品の整備により、国内で実施される新型コロナウイルスの核酸検査において、感度評価、試験法キャリブレーション、試験法ハーモナイゼーション等に使用できると考えられ、また国際単位であるIU/mL表示された力価が与えられたことにより、世界各国の核酸検査とも評価・比較が可能となると考えられます。
最後に、4)新型コロナウイルス感染症対策としてです。御存じのとおり、2019年末より、新たなリスクとして新型コロナウイルス感染症が報告され、重症化する患者におけるウイルスRNA血症(RNAemia)が報告された他、血液のドナーからも確率は低いが、新型コロナウイルスRNAが検出されたという報告もありました。その後の他施設での献血センターにおける大規模調査が実施され、RNAemiaの頻度は極めて少ないことも明らかになりつつあります。その一方で、ワクチンエスケープを含めた様々な変異株が出現しており、引き続き、病原性の変化による血中移行の可能性も含めて注視が必要であると考えられます。また変異株の流行により、現状の検査系では感度の低下等も懸念され得るので、WHOが定める「懸念される変異株(Variants of Concern)」や「注目すべき変異株(Variants of Interest」などについては、高感度multiplex PCR検出法の開発とともに、参照品として準備しておくことが重要であると考えられます。
最後に、4.結論になります。本事業では、血液を介して感染し得る病原体に関する情報を継続して収集し、日本におけるリスクのある病原体については高感度核酸検査法を開発して小規模モニタリングを継続しており、我が国への感染症リスクの早期察知およびアウトブレイクに備えた体制整備に貢献しております。
令和2年度は、新型コロナウイルスの高感度核酸検査法を開発し、臨床血液検体を用いて高感度核酸検査を実施し、結果を病院等へ提供しました。また、COVID-19核酸検査のために国内参照品を作製し、共同測定を実施した上で、国内参照品を値付けしたので、今後、核酸検査に関しては標準化が可能となり、信頼性が向上しました。今後も血液を介して感染する新たな病原体等について常に注視・情報収集し、血液の安全性確保のために適宜対応していくことが必要であると考えます。
最後に、5.令和3年度の実施予定内容です。まず、高感度の核酸検査系の開発になりますが、1.SARS-CoV-2の変異対策として、高感度multiplex RT-PCR法の構築、2.血液関連ウイルス、類似コロナウイルスを用いた高感度multiplex RT-PCR法の検証、3.高感度multiplex RT-PCR法による臨床血液検体を用いた核酸検査を実施する予定となっております。また、参照品に関しては、4.SARS-CoV-2変異対策としての変異株の参照品の作製と値付けを引き続き行う予定です。また、5.海外における血液安全に関する情報の収集および交換も引き続き行う予定となっております。説明は以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、御意見や御質問がございましたらお願いいたします。
○内田委員 内田ですけれども、よろしいでしょうか。御発表、どうもありがとうございます。衛研の方でも、COVID-19診断用PCR検査薬の一斉試験等を行ったこともありますので、大変興味深く伺わせていただきました。3点ほど質問させていただきたいのですけれども、1点目は、高感度核酸検査法の開発で、primerセットのスクリーニングで用いたPCR primerの配列について、論文等で公開される予定がありますでしょうか。衛研ではPCR primerの最適化に関する研究も行っておりまして、非常に有用なデータだと思いますので、公開していただけると有り難いです。
2点目は、開発された高感度primer-probeセット、S2-A,B,Cというものですけれども、既存のCDC、NIIDのprimerと感度比較をされたようなデータはお持ちでしょうか。3点目は国内の参照品も血液用と一般用という形で2種類作製されておりますけれども、血液と口腔スワブ等でPCR反応に夾雑物が与える影響に、どのくらい差があるのか、データをお持ちでしたら教えていただければと思います。質問は以上です。宜しくお願いします。
○濵口座長 ありがとうございます。水上先生の方から回答をお願いします。
○水上参考人 御質問ありがとうございます。まずPCRのprimer-probe等についての情報開示及び論文等ですけれども、こちらは担当した研究者が今後、パブリケーションも含めて、部内も含めて検討させていただきたいと思います。恐らく情報については共有できるかと思いますので、必要に応じて濵口部長の方を通して、こちらの課から情報共有することも可能となっております。
それから、primer-probeセットのCDC法との比較等になりますが、こちらに関しては現状、少し行っておりまして、手元にデータはないのですけれども、令和3年度中で実施している形になっているかと思います。こちらに関しましても今後、また御報告できるかと思います。
3点目の血液のベースマトリックスと実際の参照品の違いになりますけれども、現状、今回の値付けのところでは大きな差は認められなかったということになります。一部、血液をサンプルとした場合、血漿をバックに希釈したものになりますと、機器等で動かないものが一部あったりなどということはありました。ですから、今回も値付けのところは、もともとの参照品の方に基づいて、相対的に血液の方は値付けしたという経緯がありますので、使う参照品の希釈液によって若干影響があるというのは分かりつつあります。こちらに関しましても、今後、報告等を含めて検討していきたいと思いますので、情報共有できればと思います。
○濵口座長 ありがとうございます。内田先生、よろしいでしょうか。
○内田委員 はい、どうもありがとうございました。
○濵口座長 宜しくお願いします。
○内田委員 また、情報共有を宜しくお願いいたします。
○濵口座長 はい、了解しました。他にいかがでしょうか。
○大隈委員 すみません、関西医大の大隈ですけれども。2つ質問があるのですけれども。核酸検査系の開発においてですが、最終的に3つのprimer-probeセットが選定されておりますけれども、これは一応、表1にはデータとしてはsingle-plexのデータしかないのですが、これは実際に使用する際は、singleで使われるのか、multiplexで3セット一緒に使われるのか、どちらでしょうかということが1点です。あと、国内参照品の値付けについてですけれども、一応、単位が「Units/mL」と国際単位の「IU/mL」と両方ありますけれども、これは今後、測定された際に、単位としては2つ両方を併記されるのか、あるいは既にIU/mLという国際単位が値付けされているので、そちらだけでも十分という気もするのですけれども、今後どのように単位付けされていくのか、教えていただけないでしょうか。以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。水上先生、よろしいですか。
○水上参考人 御質問ありがとうございます。報告書にありますとおり、まず現状としては、single-plexの方で感度を確認したという形になっております。先程お話したとおり、今後の変異株等のことを考えますと、当然、multiplexでやることで一部のミューテーション等が入っても、感度がある程度維持できるという可能性が非常に高いので、現状としては、今年度はmultiplexのものをsingle-plexと比較して、最終的に multiplexでもっていけるような系というのを現状開発しているということになります。それで、最終的にはmultiplexでやることで、こういった変異株も含めて対応できるのではないかと考えております。
また値付けのところですけれども、確かに今回、日本赤十字社と感染研の方で、この標準品がありましたので、こちらの方で値付けさせていただいたので基本的にはこちらの値を使っていただくことは可能かと思いますが、本来であれば、もう少し多施設で検討するということが必要だったのかもしれないなと少し考えておりまして、引き続き、基本的には両方併記させていただいて、参考までに、この国際単位の方も値付けさせていただいたという形になっております。ただ、信頼性としては特に問題はございませんので、国際単位の値を使っていただいても特に問題はないかと考えております。
○大隈委員 分かりました。ありがとうございました。では、今日のデータとしてはmultiplexのデータはなくて、single-plexのデータだけで、いずれは、そういった方向で結果が出てくるということでよろしいですか。
○水上参考人 はい、そういう形になるかと思います。
○大隈委員 分かりました。ありがとうございました。
○濵口座長 私の方から、少し補足させてください。値付けの作業なのですけれども、作業としては、参加していただいたところには「Units/mL」で、共同測定を行ったところです。最終的に、WHOから国際標準品を入手できたところで、後付けで感染研と日赤の方で測定をして、「IU/mL」という単位で最終的に値付けをしました。これについては参加した施設からも了承を得ておりますので、今後は「IU/mL」で出していくという方向で今、考えているところです。
○大隈委員 分かりました。ありがとうございます。
○濵口座長 宜しくお願いします。他はいかがでしょうか。よろしいですか。それでは水上先生、ありがとうございました。
次に、議題2「NATコントロールサーベイ事業」について、事務局より御説明をお願いします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局でございます。NATコントロールサーベイ事業は、NATの精度管理の実情を把握するため血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業となっております。令和2年度の実績の報告について、松岡参考人よりお願いいたします。
○松岡参考人 宜しくお願いいたします。資料2を御覧ください。NATコントロールサーベイ事業2020年度の実績報告をいたします。まず1.事業の目的です。最近のNAT技術の進歩は目覚しく、我が国においても2013年、2014年に血漿分画製剤の原料プールと輸血用血液のNATスクリーニングの試験法がそれぞれ新しいマルチプレックス法に更新されました。それを踏まえて、2014年の薬食血発0730第1号により、「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン(以下、NATガイドライン)」の改正が行われ、薬食血発0730第2号により輸血用血液スクリーニングへの個別NAT導入に伴うNATに必要とされる検出限界値の改正が行われました。以降、2016年度に新しいマルチプレックス法を用いたHBV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的としてWHO HBVジェノタイプ国際参照パネルを用いた第8回NATコントロールサーベイ、2017年、2018年度にHIV-1 NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、WHO HIV-1サブタイプ国際参照パネルを用いた第9回NATコントロールサーベイ、2019年度にHCV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、このWHOは誤記なので消してください。HCVサブタイプ国内参照パネルを用いた第10回NATコントロールサーベイを実施いたしました。
HIV-1はサブタイプ間の組換え体が存在し、ある地域における流行に重要な役割を果たしている組換型流行株[circulating recombinant forms(CRFs)]が複数報告されています。2020年度はWHO HIV-1 CRF国際参照パネルを用いてHIV-1の新しいマルチプレックス法におけるHIV-1 NATの検出感度と特異性の実情把握を目的とした第11回NATコントロールサーベイを、輸血用血液のNATスクリーニング試験及びHIV-1識別試験並びに血漿分画製剤の原料血漿プールのNAT試験を対象として実施いたしました。
2番、実施内容です。1)参加施設ですが、輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設と国内外の血漿分画製剤製造所のNAT実施施設5施設の計13施設で、試薬メーカー1施設、研究施設1施設がオブザーバーとして参加いたしました。
次に、2)パネルの調整です。原料としてWHO HIV-1 CRF国際参照パネル(NIBSC code:13/214)を用いて評価用のパネルを作製いたしました。陰性血漿検体並びに陽性検体の希釈には国内献血由来の陰性血漿を用いました。原料血漿プールのHIV-1 NATに必要とされる検出限界値の3倍濃度にあたる300IU/mLに検体を希釈調整いたしました。計11検体をブラインド化したパネルを参加施設へ送付いたしました。
次に、3)測定ですが、(1)輸血用血液製剤のNAT施設と研究施設はProcleix UltrioPlex EABD Assay(グリフォス株式会社)を用いて測定いたしました。この試験法は個別検体のスクリーニング試験(HBV、HCV、HIV-1/2を識別せず検出し、同時にHEVを単独で検出する)とHBV、HCV、HIV-1/2を識別するための識別試験とからなっています。参加施設はスクリーニング試験とHIV-1/2 2識別試験の両方の試験法を用いて検体No.01~11について日を変えて2回測定いたしました。ただし、No.01、No.03、No.10の検体は原料に用いたパネル検体の力価が低かったため、2回分の検体が準備できなかったので、1回のみの測定といたしました。
次に、(2)血漿分画製剤の原料血漿プールNAT施設と試薬メーカーは、コバスTaqScreen МPXv2.0(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用いて測定いたしました。この試験法はHBV、HIV-1/2の3ウイルスを検出すると同時に種類を同定いたします。参加施設は検体No.01~11について日を変えて2回測定しました。No.01、No.03、No.10の検体は1回のみの測定としました。
4)結果ですが、(1)輸血用血液製剤のNATについては、日本赤十字社ブロック血液センター全8施設において改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、スクリーニング試験法とHIV-1/2識別試験法の両方において、HIV-1に関する精度管理が適切に実施されておりました。全施設において、WHO HIV-1 CRF国際参照パネルを構成する10種類のSubtype/CRF検体を全て検出できることを確認いたしました。陰性対照は全て陰性と判定されました。
(2)血漿分画製剤の原料血漿プールNATですが、血漿分画製剤の原料血漿プールNAT実施施設全5施設において改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、HIV-1に関する精度管理が適切に実施されておりました。全施設において、WHO HIV-1 CRF国際参照パネルを構成する10種類のSubtype/CRF検体を全て検出できることを確認いたしました。陰性対照は全て陰性と判定されました。
(3)研究施設および試薬メーカーにおけるNATについては、参加施設において実施されているNAT試験が同様に10種類のSubtype/CRF検体を全て検出できることを確認し、陰性対照は全て陰性と判定されました。
次に、3.考察について述べさせていただきます。2020年度に実施したWHO HIV-1 CRF国際参照パネルを用いた第11回NATコントロールサーベイにて、輸血用血液のNATスクリーニング試験とHIV-1/2識別試験並びに血漿分画製剤の原料血漿プールのNAT試験において、10種類の異なるSubtype/CRFのHIV-1陽性検体を問題なく検出できることを確認できました。陰性対照は全て陰性と判定されました。HIV-1のCRFsにつきましては次々と発見されており、今回検査したSubtype/CRFはその一部にすぎませんが、第9回のNATコントロールサーベイにおいて10種類のWHO HIV-1サブタイプ国際参照パネル検体を問題なく検出したことと合わせ、試験対象実施施設全13施設において、様々なHIV-1Subtype/CRFを問題なく検出できることが確認できました。今後も、HIV-1のSubtype/CRFの流行や世界分布に留意して検体を準備し、HIV-1 NATのコントロールサーベイを実施していきたいと思います。
最後に、4.2021年度の実施計画についてです。輸血用血液のNATスクリーニング試験法が2020年8月よりHEVの検出を加えたマルチプレックス法に更新されました。そこで2021年度は、輸血用血液のNAT実施施設を対象に、新しい試験法におけるHBV、HCV、HIV-1、HEVの4ウイルスNATの検出感度と特異性の実情把握を目的とした第12回NATコントロールサーベイの実施を計画しております。HBV、HCV、HIV-1については、輸血用血液のNATで必要とされる検出限界値と、その3倍濃度の2種の検体を作製予定です。HEV-NATについては、輸血用血液のNATで必要とされる検出限界値はまだ設定されておりませんが、Paul Ehrlich Instituteの推奨するHEV-NATの最低感度は2000IU/mLですが、日本赤十字社の導入した検査システムの95%分析感度は3.6IU/mLときわめて低いことを鑑み、HBV、HCVと同様のレベルの100IU/mlとその3倍濃度の2種の検体を作製してサーベイを実施したいと考えております。
続きまして、資料2に付けている表についても簡単に説明させてください。表1は、参加施設の一覧表になります。表2は、今回サーベイに用いましたHIV-1 CRFパネルの内容になります。表3は、日赤の検査結果を示しております。表4は、血漿分画製剤会社の検査結果になります。表5は、今年度実施したいと考えている4ウイルスNATパネルの構成(案)を示しております。4ウイルスにつきまして2種の検体濃度の検体を用意して、陰性血漿と加えて9種類の資料を準備してパネルを作製し、実施施設に配布し、測定を依頼しようと考えております。以上になります。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは引き続き、このNATコントロールサーベイ事業を続けていただきたいと考えております。宜しくお願いします。
○松岡参考人 宜しくお願いします。
○濵口座長 次に、議題3「日本赤十字社のヘモビジランスについて」に移ります。日本赤十字社より資料の御説明をお願いします。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 資料3を用いて日赤で行っているヘモビジランスについて、2020年の結果を中心に御説明いたします。2枚目を御覧ください。本日は、まず輸血感染症について、ウイルス感染症と細菌感染症に分けて御説明し、続いて輸血副作用について御説明いたします。
3枚目を御覧ください。輸血後に感染が疑われ、医療機関から御報告いただいた症例数の推移を病原体別にお示ししました。個別の導入後の年間報告受理件数は100件以下が続いており、2020年は過去最少の63件でした。
4枚目を御覧ください。2020年の病原体別解析結果をお示しします。報告受理数は、HBVが13件、HCVが9件、細菌感染疑いが25件、CMV疑いが3件、HEV疑いが11件、Parvo B19が1件、HTLV-1が1件の合計63件で、輸血による感染と特定されたのは、HBVが2件、細菌感染が2件、HEVが6例で合計10例でした。
それでは、ウイルス感染症について御説明いたします。6枚目のスライドを御覧ください。輸血による感染が特定された症例について、原因血液の採血年と安全対策の導入状況とともにお示ししました。HCV、HIVについては、プールNATの時代でも発生数はかなり低く抑えられていましたが、HBVは年に10件ほどの発生がありました。2014年に個別NATを導入して以降は、遡及調査により、受血者の感染が判明した個別NAT陰性の血液によるHBV感染例が年に1例ほどの割合で発生しています。
7枚目を御覧ください。感染数の多いHBVの原因献血者について、検査システムごとの感染状況をお示ししています。一番左の20プールNATの時代には、HBC抗体が陽性である感染既往者の献血者が、半分以上の感染源となっていましたが、真ん中のHBc抗体の判定基準を厳格化した後は、感染既往の血液のものによるものがなくなり、一番右に示したとおり個別NATを導入後は、個別NATを陰性の血液による感染事例が残ることになりました。
8枚目を御覧ください。遡及調査には、遡及調査ガイドラインにもありますように、大きく分けて、医療機関発と供血者発の2種類があります。医療機関発の場合、輸血後の患者に陽性が認められた場合は日赤に報告があります。輸血した血液は、過去の献血も含めて個別NATは陰性ですが、この被疑薬とされた血液が個別NATのウインドウ・ピリオドに採血されたものかどうかが分かりません。したがって、ウインドウ・ピリオドを超えた時期の次回献血又は事後検査の結果により、当該血液がNATウインドウ・ピリオドのものではないことを確認しています。供血者発の遡及調査の場合は、複数回献血者の陽転情報を基に調査を行います。個別NATのウインドウ・ピリオドを基に定めた遡及調査期間内の献血血液について献血者の感染状況を調査しています。
遡及調査により判明したNAT陰性の血液によるHBVの感染事例を御紹介いたします。9枚目を御覧ください。献血者のHBV-NATのみの陽転が認められ、その献血の14日前の献血血液が遡及調査対象となりました。医療機関に情報提供したところ、この血液(血小板製剤)の受血者の方は、30代の男性で急性骨髄性白血病の患者さんでした。血小板を輸血し、48日後にHBV-DNA及びHBs抗原が陽性となっていました。献血者及び受血者の血液から検出されたHBVの塩基配列に相同性が認められ、輸血による感染と考えられました。GenotypeはA2でした。なお、14日前のこの献血血液からは血小板製剤がもう1本製造されていましたが、こちらの血小板の受血者の方に感染は認められませんでした。
10枚目を御覧ください。こちらも献血者のHBV-NATのみ陽転が認められ、14日前のマルチプレックス(МPX)のスクリーニングNAT陽性、同定NAT陰性を挟んで、29日前の献血血液が遡及調査対象となりました。医療機関に情報提供したところ、受血者は70代の女性で急性骨髄性白血病の患者で、この血小板製剤を輸血後、フォローをしていましたが、266日後に肝炎を発症し、HBV-DNA及びHBs抗原が陽性となっていました。遡って調査したところ、輸血161日後に、HBV-DNAが陽性になっていることが分かりました。献血者及び受血者の血液から検出されたHBVの塩基配列に相同性が認められ、輸血による感染と考えられました。こちらもGenotypeはA2でした。こちらの症例でも、陽転の29日前の献血血液から血小板製剤がもう1本製造されていましたが、受血者に感染は認められておりません。
次は、輸血によるHEVの感染例です。11枚目を御覧ください。2020年8月5日採血分からHEV-NATを開始しましたが、その後の遡及調査分を含め、昨年は6例の輸血による感染の特定例があり、輸血後HEV感染症の累計は45例となりました。
12枚目を御覧ください。2020年のHEV感染の症例の内訳は、医療機関からの感染報告が3例、遡及調査から判明したものが3例で、原因血液については、赤血球、洗浄赤血球、血小板、FFPと多岐にわたり、Genotypeはいずれも3でした。HEV感染症の転帰は、幸いにも全て軽快又は回復となっておりました。輸血用血液のウイルス量は、医療機関発も遡及調査も大きく違いはありませんが、定量限界以下のウイルス濃度の血小板製剤による感染事例もありました。
13枚目を御覧ください。こちらは医療機関報告により判明した感染事例ですが、HEV陽性血液の輸血から肝炎を発症してウイルスマーカーが陽転するまで6か月以上掛かった事例を御紹介いたします。2019年5月末から12月にかけて約40本の輸血を行い、HEV陽性の洗浄赤血球製剤を12月に輸血されております。11月から化学療法と、その後は免疫抑制剤の投与を行っていました。翌年6月に肝炎を発症し、7月にはHEV関連マーカーが陽性となり、輸血による感染であることが分かりました。その後、11月にセロコンバージョンを認めております。
14枚目を御覧ください。令和2年(2020年)8月5日採血分からHEV-NATのスクリーニングを導入したことに伴い実施した遡及調査についてお示ししました。HEVの遡及調査期間が6か月のため、遡及調査対象は6か月後の2021年2月3日採血分までとしました。この期間のスクリーニング数は、256万2,309件、HEV-NAT陽性が1,412件あり、全国平均の陽性率は0.055%でした。6か月以内に献血履歴のあった献血者が756人で、遡及調査対象の献血が2,163件ありました。保管検体を用いてHEV-NATを実施したところ14本が陽性となりました。内訳は、陽転献血の前回献血が12本、前々回が2本でした。これらのNAT陽性血液から製造された製剤が20本あり、そのうち赤血球1本と血小板5本が医療機関に供給され、輸血に使用されていました。受血者の調査の結果、血小板製剤5本のうち輸血前後で陰性が2例、輸血前後で抗体陽性が1例あり、輸血後に一度HEV-NATが陽性となりましたが、その後は陰性であり肝機能も正常であった事例が1例ありました。輸血後はHEV-NATが陰性で、原疾患で死亡されたのが1例となっていました。また、赤血球の受血者の方は原疾患で死亡され、調査ができませんでした。
以上のことから、明らかにE型肝炎を発症したという事例はありませんでした。なお、FFPと原料血漿は全て供給停止又は送付停止とできました。15枚目のスライドに、「ウイルス感染症のまとめ」をお示ししました。本日は、読み上げは割愛させていただきます。
次に、輸血による細菌感染症についてです。17枚目を御覧ください。初流血除去や、保存前白血球除去の安全対策を2007年に導入後、血小板製剤による感染は、合計21例となりました。原因となった細菌の内訳は、右に示したとおり、レンサ球菌、ブドウ球菌、大腸菌が主で、その他にセラチアやクレブシエラ等を含みます。患者の原疾患は、白血病等、血液疾患、リンパ腫が多く見られました。
18枚目を御覧ください。2020年の2症例をお示ししました。いずれも4日目の血小板製剤によるもので、1例はE.faecium(Enterococcus faecium)、もう1例はE.cоli(大腸菌)の事例でした。フェシウム(faecium)の例は開始4時間20分後、大腸菌の例は開始15分後に、細菌感染症の症状を認め、血液培養が陽性となり、日赤に報告をいただいております。いずれも患者から検出された菌と血小板製剤のバッグ残渣から検出した菌の種類は一致し、パルスフィールドゲル電気泳動にて差異は認められず、輸血による感染と特定されました。
19枚目に細菌感染症についてまとめました。これらの事例に鑑み、日本赤十字社では、血小板製剤の細菌スクリーニング導入に向けて準備を進めております。血小板製剤は、採血供給後、なるべく早く使用することが重要だということについては、引き続き医療機関にもお願いを続けてまいります。
ここからは、輸血による副作用について、まずは非溶血性副作用から御紹介いたします。21枚目を御覧ください。輸血による副作用や感染症が認められ、日赤に報告いただいた事例は、2020年は副作用が約2,570症例で、感染症が63症例でした。
22枚目を御覧ください。非溶血性副作用の内訳は、軽微なアレルギーと重症アレルギーで、全体の3分の2を占め、発熱、TRALIやTACOを含む呼吸困難、血圧低下と続いておりました。PMDAの報告対象となる重篤症例と非重篤症例に分けますと、右上に示したとおり、全体の4分の1が重篤例で、その内訳は、下に示したとおり、アナフィラキシー等の重症アレルギーやTRALIやTACOといった呼吸困難がメインであり、残りの4分の3は軽微なアレルギーや発熱などの副作用となっておりました。
23枚目を御覧ください。副作用の原因製剤は、血小板と赤血球が30~40%と多く、次がFFPとなっていました。下の棒グラフにお示ししますとおり、血漿の多い製剤であるFFPとPCについては、アレルギーが80%であり、赤血球はアレルギーの他にも発熱と呼吸困難の割合が高いという結果になっています。
24枚目を御覧ください。重篤な呼吸器の副作用であるTRALIとTACOの評価結果をお示ししました。非溶血性副作用2,532件のうち5.8%に当たる147件が評価対象となりました。TRALIが疑われ、TRALIの評価を行った症例134例のうちTRALIと評価されたものが5例と、possible TRALI(p-TRALI)が3例で評価件数の6%を占めることになりました。TRALIではないと判断された症例のうち81例は心原性肺水腫と考えられ、TACOが疑われると報告された13例とともにTACOの評価を行ったところ、TACOが35例、その他のボリュームオーバーロードが59件となっておりました。
25枚目を御覧ください。2005年以降のTRALIとTACOの評価状況のグラフとなっています。ここ10年は、TACOと心原性肺水腫等のボリュームオーバーロードの事例がとても目立つようになってきました。2020年はTRALI評価でアナフィラキシー等の「その他」と評価された事例が多く、また、TACOと評価された症例が例年より少し少ない傾向にありました。
26枚目を御覧ください。2020年までに評価したTRALI症例383件の患者内訳をお示ししました。男性がやや多く、また原因となった製剤は赤血球が最も多いのですが、血小板やFFPもかなりの割合で認められました。
27枚目を御覧ください。こちらは2020年までに評価したTACOの症例の患者内訳と原因製剤です。患者内訳は、こちらは女性の方が多く、原因製剤としては赤血球が最も多く認められ、TRALIと違う傾向が認められております。
28枚目を御覧ください。TRALI症例のうち製剤から抗白血球抗体が検出された152件についてまとめました。原因製剤は赤血球が一番多く、FFP、血小板と続いております。右上に示した抗白血球抗体陽性の献血者の男女年代別割合の棒グラフからは、30代以降の女性がほとんど多くなっており、妊娠、出産による抗白血球抗体の産生の影響と考えられました。下に示した献血者全体の割合と比べますと、30代以降の女性の影響が大きいという特徴がよく分かると思います。一方、男性献血者の方も3分の1弱は認められます。しかしながら、抗体を産生するようになった理由については不明となっております。
29枚目を御覧ください。TRALIとTACOの評価基準については、昨年の本報告において、2021年から新しい国際分類及び評価基準を参考に基準を変更する予定であることをお話しましたが、本年4月より、右の緑の枠に示した新しい基準によってTRALIとTACOを一度に評価する方法に変更しております。基準としては、急激に発症し、低酸素血症を示し、胸部画像上で両側肺野の浸潤影を認めたもののうち、左房圧上昇の有無、輸血開始から発症までの時間、もともとのALIのリスク、輸血前12時間以内の呼吸状態等を指標にして、マトリクスにより分類する方法を取っております。
30枚目に評価マトリクスの表をお示ししました。該当する指標に○を付け、例えばTRALI Type1であれば、急激な発症、低酸素血症、両側の浸潤影があり、左房圧上昇がなく、輸血開始6時間以内に発症し、ALI、ARDSのリスクファクターがなく、輸血前の呼吸状態が安定している状況に当てはまるものになります。実際には、このマトリクスと胸部画像、症例の経過から総合的に判断することとしております。来年度は、この新評価基準による評価分類をお示しできるかと思います。
最後に、溶血性副作用のまとめです。32枚目を御覧ください。即時型と遅発型を合わせて39例の報告があり、主に重篤例の患者血液の不規則抗体等の検査を行ったところ、11例で表に示した抗体が検出されました。溶血を疑う症状があっても、抗体が検出されなかった事例については、日赤では調査しておりませんので不明となります。私からは以上です。
○濵口座長 はい、ありがとうございました。ただいまの御説明に関して、御意見や御質問がありましたらお願いいたします。
○岡崎委員 岡崎ですが、よろしいですか。
○濵口座長 はい、岡崎先生、お願いいたします。
○岡崎委員 ここ1、2年くらい、海外渡航はやはり制限されていると思いますが、その中で例えばスクリーニングNATにおける全体のリスクということの評価において、HIVやHBVのNATスクリーニングにおける頻度というのは、どのように推移しているのかということに少し興味があるので教えていただければなと思いますが、いかがでしょうか。以上です。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 はい、御質問ありがとうございます。もちろん海外渡航の減少というのはありますが、陽性率については特に大きく変化したということはないと思います。
また、HIVについては少し状況が違いますので、一概にコロナの影響だけで検査陽性率が変わるということはないかと存じます。
○岡崎委員 はい、ありがとうございます。
○濵口座長 他にいかがでしょうか。
○長村委員 東大医科研の長村です。
○濵口座長 長村先生、お願いいたします。
○長村委員 1点だけ、14ページの製剤はHEV-NAT導入後の遡及調査の所ですが、製剤は20本で、そのFFPの1本と原料血漿の13本は、供給停止又は提供しなかったということでしたので、これは一応、表の所に一筆書くか、何か補足があった方が良いかなと思いました。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 はい、ありがとうございました。
○濵口座長 そうしていただきます。他にいかがでしょうか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。よろしいでしょうか。
○濵口座長 岡田先生、先にお願いいたします。
○岡田委員 血液製剤で、2例の細菌感染が起こっていますが、この供血者に何か特記すべきことはありましたか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 ありがとうございます。供血者の方も調査はしていますが、献血したときの体調不良もなく、その後も特に何もないということを聞いています。
○岡田委員 あと、医療機関ではスワーリング検査などは、一応確認されているのでしょうか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 はい、供給前に日赤でも見て供給していますし、輸血前にも当然確認して、実施されていると思います。特に滴下不良なども何もなかったと聞いています。
○岡田委員 分かりました。
○濵口座長 他にいかがでしょうか。
○岡崎委員 岡崎ですが、もう1点よろしいでしょうか。
○濵口座長 はい、どうぞ。
○岡崎委員 TRALIの原因製剤で、400ccのFFPの男性由来製品の優先製造のようなことを、2011年ぐらいから導入なさっていると思いますが、このデータを見ると2004年から2020年を全部まとめて書いてあるので、2011年のFFPの男性の血液製剤から作るようにした後と前と分けて示していただいた方が、その効果というものが、より分かるのではないかと思いましたが、その点はいかがでしょうか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 次回からは、そのような表示の仕方も検討したいと思います。ただ、数としては2011年ぐらいから、男性由来の血漿を重点的に製造する、特に400ml採血のものについては、それを開始しています。2012年からは、全体的にTRALIの症例というものは、非常に減ってきているということはこちらでも分かるかと思いますが、特にFFPの影響についてお示しできるような表示の仕方を検討したいと思います。ありがとうございます。
○岡崎委員 ありがとうございます。
○濵口座長 他にいかがでしょうか。岡田先生、どうぞ。
○岡田委員 E型肝炎で、症例3例、発症まで非常に時間を要した症例なのですが、この発症した2020年7月のときのRNAの量は、どれくらいだったか分かりますか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 患者さんのRNAの量についてですか。
○岡田委員 そうです。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 今、データが手元にありませんので、測っているかどうか確認しないと分かりません。
○岡田委員 分かりました。というのは、増えるのが遅い、要するにE型肝炎が増えるのが遅いために発症が遅れたのか、それとも普通に増えて生体の反応が弱かったために、免疫抑制剤の作用が消えてきて、それで肝炎になったと考えると、どちらかなと思って、ちょっと質問した次第です。
もう1つ良いでしょうか。
○濵口座長 お願いいたします。
○岡田委員 この症例6ですが、この方はウイルスの量がNDというのは、これは定量限界以下ということでしょうか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 はい、そのようになります。NAT自体は陽性になるのですが、ウイルス量の定量では数字として出せないというところかと思います。
○岡田委員 分かりました。どうもありがとうございました。
○濵口座長 すみません。私から、この症例6に関連して。これまで実際に、E型肝炎が輸血によって感染するというときの、最低限の混入ウイルス量を1つの指標にして、そしてウイルス低減化のお話をしてきたかなと思います。その当時からすると、もう数年経っているのですが、日本赤十字社でデータを集めてくる中で、最低ウイルス量が実はもっと低いところでも感染し得るというような、そういう情報をお持ちだったら教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 日赤の佐竹です。これについては、先程のNATサーベイの所でも話がありました。PEIのスタンダードでもって、最初サーベイをやろうとしましたが、余りにもその値が高いので、もっと低い値でやろうという話になったということですが、全くそのとおりで、実はドイツが、その当時知られていた最低感染濃度から計算した最少感染ウイルス量を基にして出したものです。ところがその後、主に日本ですが、それよりももっと低い移入HEV量のものがどんどん出まして、一番新しい例はペーパーで出ていますが、大体300コピーぐらいで感染した例もあります。恐らく世界で最少の例だと思います。
300コピーぐらいのものを、もしそれをPCで、それが輸血されたとする場合に一番濃度が低くなりますので、PCで輸血されるとなると1.5コピーや2コピー未満の濃度で感染したことになります。これは、恐らく世界のどのスクリーニングでもディテクトできないことになりますので、本当にHBVと同じような感染性そのものは極めて高いということになりますので、さすがにPaul-Ehrlichも最近ペーパーを出しまして、今までの、よしとする濃度は余りにも高かったということをきちんと認めて、そういう表現をしております。ですので、濃度は今のところは、それほど低い、今度、日赤で入れましたNATも3.6や4コピー/wellと、ちょっと感度が良すぎるかなと思っていたのですが、それ以下のものでも感染している例があります。ただ、だからといって、それをもっと高感度にしなくてはいけないかということは、また話は別かなという感じがします。技術的には、これ以上感度を高くすることになりますと、非特異も反比例してどんどん増えてきますので、その辺のバランスが重要ですし、現在のところはそのような極めて低い濃度で感染した例は、非常に特別な例ではないかなと考えています。
○濵口座長 ありがとうございます。多分、情報を集めて、場合によっては今後のウイルス低減化のための1つの指標というものを、もう一度確認する必要があるかなと思いました。また、そこに結び付けていきたいと思います。他にいかがでしょうか。
○熊川委員 福岡大学病院の熊川ですが、1点、お願いします。
○濵口座長 熊川先生、宜しくお願いいたします。
○熊川委員 26枚目のスライドです。もう一度TRALIに戻ります。この原因製剤で、赤血球が一番多いということで、複合は別にありますので、赤血球単独で発生したと考えられるということですね。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 はい、そのようになります。
○熊川委員 というのは、赤血球製剤の中の血漿混入量は、大体1割程度と聞き及んでいますので、少ない血漿に含まれている抗白血球抗体が原因で、TRALI発生数が一定数を超えるという認識でよろしいでしょうか。以上が質問です。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 ありがとうございます。赤血球での事例が多いというのは、必ずしも白血球抗体がなくても、症状からTRALIが疑われるものということでTRALIと判断されるものもあるので、多いことは多いのですが。抗白血球抗体が出たもの、検出されたものの中では、やはり赤血球が多くて、クロスマッチでも陽性となるものもいくつか出てきています。この赤血球製剤に含まれる血漿中の抗体との反応だけでは本当に起きているかどうか分かりませんが、この結果からすると、その赤血球製剤中の血漿が反応して、その後でTRALIを引き起こしたということは、否定はできないものと考えています。
○熊川委員 はい、ありがとうございました。
○濵口座長 はい、ありがとうございます。他はいかがですか。
○岡田委員 濵口先生、もう1つ、良いでしょうか。
○濵口座長 はい、どうぞ。
○岡田委員 また、E型肝炎なのですが、Eが検出された製剤が20本と記載されていますが、そのうち原料血漿が13本ということで、原料血漿の割合が異常に多いのですが、これは何らかの理由があるのでしょうか。それとも、たまたま多かったということなのでしょうか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 はい、ありがとうございます。これは遡及調査ですので、比較的頻回に献血してくださる方が多く調査対象になるということがあります。そうなりますと、血小板製剤や血漿献血の方は2週間に1回、毎月などに来ていただけますので、結果として血小板採血でも原料血漿を取れますし、原料血漿の採血もありますし、全血採血から原料血漿を作ることもありますので、そういうことが総合して、原料血漿の本数が増えたものと考えています。
○岡田委員 分かりました。どうもありがとうございました。
○濵口座長 はい、ありがとうございました。
○朝比奈委員 東京医科歯科大学の朝比奈ですが。
○濵口座長 宜しくお願いします。
○朝比奈委員 ちょっと確認なのですが、14枚目のスライドの遡及調査6例で、輸血後のE型肝炎の発症例はなかったということですが、このチェックの3番目の症例というのは、感染は成立したということでよろしいのでしょうか。その後、この受血者の方のHEV抗体のセロコンバージョンなど、そういったものは分かっているのでしょうか。以上です。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 セロコンバージョンを起こしたかどうかは、今、手元にないのですが、言葉の使い方としては、感染は起こしましたが感染症という臨床的な状況には至らなかったと、そういうことではないかなと考えています。
○朝比奈委員 はい、承知しました。
○濵口座長 ありがとうございます。他にいかがですか。よろしいですか。ありがとうございました。
それでは、日本赤十字社においては引き続き、血液安全監視の一環として情報収集をお願いしたいと思います。
次に議題の4「HEV NATスクリーニング導入後の状況について」に移りたいと思います。引き続き、説明をお願いいたします。
○日本赤十字社技術部谷重検査管理課長 日本赤十字社の谷重と申します。宜しくお願いします。日本赤十字社におけるHEV NATスクリーニング導入後の状況について御説明させていただきます。資料4を御覧ください。日本赤十字社では、輸血用血液製剤のHEV安全対策として、HBV、HCV、HIVに加えHEVも同時に検出する試薬を用いたHEV NATの全数スクリーニングを令和2年8月5日採血分から導入しました。本日は、導入から約1年が経過したことから、その導入後の状況について報告します。
現在、使用している4価NAT試薬は、発光スペクトルの違いにより、一度の検査でHBV・HCV・HIVに加えHEVを同時に検出し、HEVは単独で判定することができる試薬です。またHEVの分析感度は、こちらに示しています北海道地区で試行的に実施していたHEV NAT試薬と同等となっています。
導入後の状況についてです。令和2年8月5日から令和3年8月4日までの1年間において、献血者507万5,100人の献血があり、そのうちHEV NAT陽性となったのは2,804人でした。この陽性数及び陽性率を年代別・性別で示したものが図2と図3になります。HEV NAT陽性者の年齢中央値は45歳で、20~40歳代の陽性率が高値でした。また性別は男性に多く、76.7%を占めています。HEV NAT陽性率は男性が0.06%、女性が0.043%でした。
HEV NAT陽性率をブロック血液センターごとにお示したものが図4になります。全国の陽性率は、0.055%でした。陽性率には地域差が見られ、陽性率の一番高い関東甲信越と一番低い九州では3.6倍の差が見られました。
次にHEV NATの濃度分布についてお示しします。令和2年8月5日から令和3年3月31日までの約8か月の陽性検体1,882本について、HEV NATの定量を実施しました。およそ半数の46.9%が低濃度のため定量ができませんでした。最大値は、6.26Log IU/mLであり、6.0Log IU/mL以上のHEV Genotypeは、3a、3b、4aとなっていました。
次に、HEV Genotypeについてです。令和2年8月5日から令和3年3月31日までの陽性検体771例について、遺伝子型の解析を行ったところ、Genotype3が760例、Genotype4が11例でした。なお、Genotype4の11例は8例が北海道、2例が東京と静岡、1例が青森で検出されています。
最後にHEVの遡及調査についてです。HEV NATスクリーニング開始後、遡及調査期間である6か月にわたり、HEV NAT陽転に係る遡及調査を実施しました。HEV NAT陽転前、6か月に献血歴があった献血者が756人、遡及調査対象の献血件数は2,163件で、保管検体を用いて実施したHEV NATが陽性となったものは14件でした。これは14件の献血から、赤血球製剤1本、血小板製剤5本、新鮮凍結血漿1本、原料血漿13本が製造され、赤血球製剤と血小板製剤の受血者6名について調査を実施したところ、1名が輸血後にHEV NAT陽性となりましたが、いずれもE型肝炎の発症は認められませんでした。新鮮凍結血漿は、貯留保管中だったため供給停止としました。なお、医療機関発の遡及調査件数は、HEV NAT導入後、減少傾向にあり、HEV NAT導入後の血液により感染が特定した事例はありません。以上で説明を終わります。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に関して、御意見、御質問をお願いいたします。よろしいでしょうか。先程E型肝炎について、いくつか御質問があったかと思いますが、そこで大体お聞きになりたい点は聞かれたということでよろしいですか。
○長村委員 東大医科研の長村です。先程と一緒で原料血漿の行方が記載されていないので、提供されなかったという旨の一筆を追加で、先程と一緒です。宜しくお願いします。
○日本赤十字社技術部谷重検査管理課長 ありがとうございます。修正しておきます。
○濵口座長 他にいかがですか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。よろしいでしょうか。
○濵口座長 はい、どうぞ。
○岡田委員 E型肝炎のGenotypeで、北海道以外からもGenotype4が検出されているのですが、この供血者というのは北海道で感染した疑いがあるのか、もう土着というか、本州にも数は少ないが存在しているのか、どちらの解釈がよろしいのでしょうか。
○日本赤十字社技術部谷重検査管理課長 御質問ありがとうございます。今回お示ししています陽性株の地域というのは、あくまで献血していただいた方のセンターの所在地ということになります。ですので、この方たちの感染経路等も不明ということになりますので、例数も少ないことから、これだけではその判断が付かないかと考えています。
○岡田委員 分かりました。どうもありがとうございました。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの4型について、もし今回の情報以外のところで、日本赤十字社でこういう情報があるということがあれば、教えていただきたいのですが、全国で北海道以外の所で、非常に限局的に4型があるのではなかろうかと思われるようなところがあると思いますが。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 単に狭義のところだけなのかもしれませんが、4dという株が見付かっていますが、これは事前に質問をいただいて、質問にはお答えしているのですが、これが青森で見付かっているわけですが、4dというのは、日本では琉球イノシシに多数見付かっています。ですので、青森の方が、どうやって琉球イノシシと接触があったのか、非常に分からない。そういうことがHEVに対しては結構ありますので、なかなか先程もありましたように、ある程度の数が集まらないと変なことになってしまいます。ただ、Genotype4というものが北海道以外にもあちこちで見えていることは確かです。これまでの調査でも4というものは、九州でもちゃんとありますし、近畿地方のある県でも結構多数が見付かっています。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。他にはよろしいでしょうか。特にないようでしたら、引き続き、E型肝炎に関する安全対策を実施していただきますようお願いいたします。
最後に、議題の5「その他」で、事務局から何かありますか。
○佐野血液対策課長補佐 特にありません。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、本日の議題は以上です。何か御意見等、委員の先生方からありますか。よろしいですか。
それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。
○佐野血液対策課長補佐 濵口座長、ありがとうございました。本日の議題の報告の際に、一部資料に修正がある旨の説明があった資料については、ホームページに掲載する資料について御発言のとおりに修正させていただければと思います。宜しくお願いいたします。
次回の安全技術調査会の日程は、別途、御連絡を差し上げます。これにて「血液事業部会令和3年度第4回安全技術調査会」を終了します。ありがとうございました。
 
(了)