第109回労働政策審議会障害者雇用分科会(議事録)

日時

令和3年9月3日(金)10:00~12:00

場所

オンラインによる開催(厚生労働省職業安定局第1・2会議室)

議事

○山川分科会長 ただいまから、第109回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しいところ御参集いただきまして、大変ありがとうございます。本日の分科会もZoomによるオンラインでの開催となりますので、開催に当たりまして、改めて事務局から説明がございます。
○小林障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課課長補佐の小林でございます。本日もZoomを使ったオンライン会議です。開催に当たり、簡単ではありますが、操作方法のポイントを御説明いたします。本日、分科会の進行中は皆様のマイクをオフといたしますが、御発言をされる際には、サービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックし、分科会長の許可があった後にマイクをオンにして、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。Zoomのバージョンによっては、「手を挙げる」ボタンの配置箇所が変わっております。事前にお送りしたマニュアルを御参照ください。
会議進行中、トラブルがございましたら事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただきますようお願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合には一時休憩とさせていただくこともございますので御容赦くださいますようお願いいたします。
また、前回の障害者雇用分科会の際に、本分科会の議論については障害者部会の委員の皆様にも情報共有しながら進めていただけないかという御意見を頂いたところです。御意見も踏まえまして、今回の分科会の開催の御案内については、障害者部会の委員の皆様にも連絡をさせていただいております。事務局からの説明は以上です。
○山川分科会長 本日は岡本委員が御欠席と伺っております。また、仁平委員におかれましては、所用のため途中からの御参加と伺っております。
では、議事に入ります。頭撮りはここまでとなっておりますので、カメラ取材の方がおられましたら、御退室をお願いいたします。
本日の議題は(1)関係団体からのヒアリング、(2)省令案要綱についての諮問、(3)2020年度の年度目標に係る評価及び2021年度の年度目標の設定について、(4)その他となっております。本日は議題(1)の関係で、社会・援護局障害保健福祉部の方に御出席いただくこととしております。では、議題(1)について、事務局から進め方についての説明をお願いします。
○小林障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課長補佐の小林です。本日の関係団体ヒアリングについて、御説明いたします。当分科会では、本年1月から、参考資料2にある、今後の検討に向けた論点整理について、委員の皆様に議論いただいてきたところです。この論点整理に関連して、関係団体の皆様にヒアリングを行いまして、幅広く御意見を頂戴したいと考えております。本日は3団体にヒアリングをさせていただきます。各団体のお名前については、議事次第を御覧ください。ヒアリングの時間が限られていることもございまして、関係団体の皆様方には、関心の高い論点に絞って意見を述べていただいて構わない旨をお伝えしております。委員の皆様におかれましては、あらかじめ御承知おきいただければ幸いです。ヒアリングは各団体、質疑応答を含めて約20分を予定しております。冒頭の10分間で団体から御説明いただきまして、その後の10分間に委員の皆様から御意見、御質問いただくという形で進めていきます。事務局からの説明は以上です。
○山川分科会長 それでは、ヒアリングを開始します。はじめに、一般財団法人全日本ろうあ連盟の皆様、お願いいたします。
○一般財団法人全日本ろうあ連盟 おはようございます。私どもは、一般財団法人全日本ろうあ連盟から参りました。福祉労働委員会の副委員長を務めております。有山と申します。よろしくお願いいたします。隣にいるのは、労働関係の専門委員を務めております岩山です。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、お招きいただきまして、誠にありがとうございます。論点については、岩山のほうから詳しく説明を申し上げます。
○一般財団法人全日本ろうあ連盟 就労上の支援政策というところに絞っての御意見を述べさせていただきます。我が国の障害者雇用政策に関しては、目覚ましい発展を遂げていると感じております。ただ、残念なことは、その中で、きこえない者に対する就労支援政策については非常に遅れているというのが現状です。最近では、知的障害、精神障害に対する政策は目覚ましい発展を遂げておりますが、きこえない者に対するという絞った政策に関しては、大変遅れている印象がございます。その中でも、特に2点、大きな課題として申し上げたいと思います。まず1点は、就労上の各種支援サービスに関するアクセスの保障についてです。2点目は、就労の質的向上について、キャリアアップ支援についての政策です。この2点の課題について、絞って意見を述べさせていただきます。
1点目です。就労上の各種施策サービスへのアクセスの保障についてです。この中で3つに分けて述べます。まず、就労支援施策のコミュニケーション上の障壁が、大きくアクセスに制約があり、こちらを解消していただきたいです。ハローワークをはじめ、障害者就業・生活支援センターというような、様々な就労支援の施設が建てられておりますが、これらに手話ができるスタッフが常駐していない、また、障害者の職業上の特性に関する理解が十分なスタッフがいないのです。そうしますと、きこえない者が就労支援を受けたいと思っても、十分な支援が受けられないという現状がございます。
例えばハローワークについては、手話相談員という形で設けられているのですが、日数、時間ともに不足しております。1か月で7時間程度しか手話協力日は取っていただけないような実情です。こちらは拡充が必要だと考えております。また、障害者就業・生活支援センターのスタッフについても、手話を習得したスタッフを配置していただけるような施策を急ぎ設けていただきたいと感じております。
2点目です。手話のできるジョブコーチの養成という課題です。ジョブコーチは、職場に定着できるようにという支援者ですが、これも手話ができるジョブコーチが大変少ないという現状がございます。きこえない者としては、ジョブコーチを呼びたいと考えても、まず本人との話が通じないわけですから、ちゃんとした職場定着への支援も十分に受けられない現状です。多くのきこえない者が、職場定着が不安定な状況になっているという実情を鑑みますと、こちらの制度は改善していただいて、ジョブコーチ養成の中で、しっかりと手話ができるような体制を整える、そして、聴覚障害者が持つ特性を十分に理解するという知識を養うこと、この2点がクリアできるようなカリキュラムを整えていただいて、ジョブコーチの養成に力を更に入れていただきたいと思っております。
3点目です。大阪府では独自の制度として、「聴覚障がい者等ワークライフ支援事業」を展開しております。この事業は、きこえない者が働く前、働いた後、長期にわたって継続的な支援を展開するという事業になっております。この制度があるお陰で、重複して障害を持つ方たちも含めて、安定的な職場定着を目指すことができているという事例が上がっている、大変いい制度です。効果的な部分も見込まれるということですので、全国的にきこえない者に対する制度が遅れている中で、このようなしっかりとした支援を作ることが、今のところは漏れておりますので、大阪府の取組を切っ掛けにして、こういった就労支援制度を全国的に拡充していただきたいと思います。
大きな柱の2本目です。就労の質的向上としてのキャリアアップ支援です。現在、障害者の雇用を増やすという目的が国としてはありますが、その後、職場で質の向上が図れるような支援対策が十分に取られなければなりません。きこえない者の場合、キャリアアップについてはコミュニケーションの壁等、いろいろ乗り越えていかなければなりません。適切な環境がなければ、質的向上、キャリアアップ、昇進になかなか恵まれないことになり、仕事の幅も広がりません。ですから、コミュニケーション支援というのは必須なわけで、現状、コミュニケーション支援をするための唯一の制度としてあるのが、高齢・障害・求職者雇用支援機構による障害者介助等助成金の制度の中の、「手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金」です。こちらは唯一の制度ではあるものの、これが効果的に利用されていないという企業の実情がございます。
課題として4つあります。こちらが改善ポイントですが、まず1点目が、1回当たりの助成額の上限があるということです。こちらについては撤廃、上限緩和をしなければなりません。手話通訳の実際の自治体の単価というのは、もっと高いわけです。こういった助成金の上限があると使いにくいということです。2点目が、年間の助成額の上限も更に設けられております。こちらについても、必要な機会はたくさんあるはずですので、この上限に縛られてスキルアップができないということがないように、この上限を引き上げる、若しくは撤廃ということで、見直していただきたいと思います。3点目は、利用可能期間というのがありまして、なぜか初回利用後10年間と決められております。きこえない者は10年間でやめるのかというと、そのようなことはございません。この先もその会社に勤めていくという目標がございます。そういった意味では、この「10年」も撤廃すべきだと考えます。4点目は、申請手続についても、企業に関して問い合わせたところ、「大変面倒だ」という意見を聞いております。ここも合理化や簡素化が必要だと感じております。
それから、職場で手話通訳が必要だと障害者本人が感じても、それを活用できる制度はございません。先ほどの助成金は、あくまでも企業の意思ですので、企業が申請して初めて使える制度しかないような、不便な実情があります。雇用された聴覚障害者が、自ら必要なときに、この制度等を利用することができるような、雇用者側だけではなくて、雇用された者が使えるようにしていただきたいと思います。
3点目です。こちらの労働政策審議会について御意見申し上げます。委員の中にきこえない者を加えていただきたいという希望です。今時点で、視覚障害、肢体不自由の方々がいらっしゃるのは存じておりますが、きこえない委員がおりません。きこえない者の課題というのは特殊性がありますので、そういったことを理解できる委員の選出をお願いしたいと思います。社会保障審議会障害者部会にはきこえない委員が選出されておりますので、同様に参画させていただきたいと考えます。以上です。ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございました。ただいまの御発表について、委員の皆様から御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
○影山委員 プレゼンありがとうございました。横浜市大の影山でございます。2点お伺いしたいことがあります。ときどき耳にするのですが、自律性の高い職場、若しくはそういう中で従業者の競争関係が強いような職場では、きこえない方は情報が入ってこなくて取り残されてしまう、非常に働きにくいということをお聞きすることがあります。例えば民間の研究機関などでお話を聞くことがあります。つまり、職場ですとか、職務内容による働きにくさの差はあるのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
もう1点は、テレワークで障害者がお仕事をしている会社があるのですが、チャット機能などをうまく使ってコミュニケーションを図っている会社があります。つまり、ICT活用による支援はあり得るかということをお尋ねしたいと思います。以上の2点でございます。
○山川分科会長 いかがでしょうか。
○一般財団法人全日本ろうあ連盟 岩山です。御質問ありがとうございます。大変貴重な御質問だと感じております。まず1点目ですが、職場によって働きにくさがあるか、差異があるかどうかという御質問ですが、それはございます。例えば事務系の仕事、又はコンピュータ関係の仕事といった業種の場合は、ICT活用、今あるようなパソコン技術等を使いやすい、導入しやすいという部分がございます。手話通訳、パソコンを使った要約筆記の文字による情報保障を受けやすいという環境が最初からありますが、一方で、例えば現場業務、工場、物流機関、輸送などに携わっている場合には、体を使って現場のスタッフとして動くことが多いのですが、そうしますとデスクワークをするわけではなくて、いろいろな所に立ち回るわけです。そのようになってしまうと、先ほど申し上げたような情報保障、手話通訳等のサポートは全く受けられない状況で仕事を進めなければいけないという状況もございます。
また、一般的なコミュニケーションについても、外部の方との接触が多いような場面が多くなると、その中で差が出て、やはりコミュニケーションの差が大きく出てしまって、配置が難しいという差異が会社によっては出てきてしまうことがあります。ですから、個々の職場に応じて、働きやすさや働きにくさといったことは必ず生じていると感じております。
こうしたギャップを解消する意味でも、合理的配慮を各企業できちんと整え、効果的な環境を整える必要があるかと思います。会社の多くは、働きにくさを解消するために、きこえない者に対する支援をしたいと考えている所は多いと思うのですが、壁があるのはお金の問題です。金銭的な問題が課題として大きいために、合理的配慮をしようと思っても難しいという回答をする企業が多くあります。こういった企業主に対して、合理的配慮を提供するに当たっての経済的な負担を軽くする制度を早急に設ける必要があると感じております。
それから、2点目のテレワークに関する御質問です。パソコンを使ってのチャット機能が、確かにやりとりとしてできるような職場もございます。一方で、企業によってはチャットではなくて、あくまでも音声によるやり取りを求めたいという企業も未だにあります。そういった意味では、企業ときこえない者とのコミュニケーション方法についての捉え方も、企業によって様々だということが言えます。ICTの活用によって文字が出るというところがあったとしても、必ずしも、それが確実に使われるということは少ない状況がございます。チャットとなると時間もかかりますし、音声でスムーズに進めなければならないという考え方を持つ企業の意図も恐らくあると思います。音声が中心で企業の仕事が進むという現状はあると思いますので、よりスムーズにコミュニケーションが取れるような体制、環境整備を個人と話し合いながら構築していく必要があると思いますので、企業でも環境が整えられるような具対策、整える支援が必要かと思います。先ほど発表で申し上げましたが、経済的支援についても是非ともやっていただかないと、なかなか解消されないかと思われます。
○山川分科会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。では次に倉知委員、お願いします。
○倉知委員 九州産業大学の倉知です。御意見ありがとうございました。私は、聴覚障害のある方の働く上での問題というのはすごく大きいと思っていて、特に就職した後の職場適応に非常に困難を抱えていると感じています。今、障害者雇用はいかに就職者を増やすかという量のほうに目がいっているのですが、職業生活の質を考えると、聴覚障害の方というのは、本当に大きな課題をたくさん持っているなと感じています。
そこで質問なのですが、私は問題は2つあると思っていて、1つは、コミュニケーションの支援の問題です。もう1つは、聴覚障害のある方がきこえない生活を送ることによって、情報を獲得できないことから、いわゆる聴者文化の社会性を獲得することが困難だったり、人との関わりの方法が非常に困難であったりということを感じるのです。そこはコミュニケーション支援だけではとても解決できないと思っていて、障害特性に応じた支援ができる人をどう増やすか、専門職をどう増やすかというところに問題があると思っています。それとコミュニケーション支援もできる人を増やすことを一緒に考えると困難があるので、コミュニケーションはうまく取れない、手話などはできないけれども、障害特性のことはよく分かっていて支援できるという人を増やすというように、2つに分けて考えていく必要があるのではないかと思っています。
もう1つ聞きたいのは、最近、大学に進学するきこえない学生は非常に多いのです。ろう学校からも大学に入る学生が多くなってきて、つまり、日本語をかなり獲得している方が多いのかなと。それとともに、いわゆる情報を獲得するという、社会に適応していくというところに課題を持っている方が減っているような感じがするのですが、実際はどうなのかを教えていただければと思います。
○山川分科会長 いかがでしょうか。
○一般財団法人全日本ろうあ連盟 御質問ありがとうございます。1つ目の御質問ですが、支援者のほうが障害特性をしっかりと理解する、そういう人たちをまず養成する、そして、コミュニケーション支援と分けながらやったほうがいいのではないかという御意見だと受け止めました。そういった御意見はごもっともだと感じております。
そういった意味では、例えば職場で実際に支援を行う人たち、ジョブコーチが関わることになると思います。このジョブコーチですが、最低でも、きこえない者の特性の理解は必須です。これが最低条件になるのかなと感じます。
一方で、コミュニケーションの支援については、確かにジョブコーチが様々な障害の支援をする中で、きこえない者に対するコミュニケーションもしっかりとスキルを身に付けるのだというのは現実的に難しいというのは、事実としてあると思います。ですから、ジョブコーチというしっかりと聴覚障害のことを十分に理解した専門職が、手話通訳、要約筆記を活用し企業に同行するという形も、大変好ましい形かと思います。
実際、ジョブコーチ支援の中で、ジョブコーチが手話通訳を依頼する場合は、ジョブコーチのほうで手話通訳費用を負担するという経済的な負担を抱えながら同行させなければならないという現状があるのです。そうしますと躊躇するわけです。ジョブコーチをするのだけれども、それに対して手話通訳を自費で払わなければなりません。これに対する支援策というのも、新たに考えなければならない課題だと思います。
2点目の御質問ですが、先ほどのお話のように、最近では、大学に入学する学生が大変増えております。これは大変好ましい発展を遂げている状況で、昔と比べて、日本語力というところでは向上は見られるとは思いますし、かなり身に付けている学生が多いと認識しておりますが、きこえない者の社会生活の中で日本語能力だけでは難しい側面がございます。日本語能力が高くても、それだけでは周りとのコミュニケーションはうまくいかないと思います。それが必ずしも原点になるわけではないと思いますので、日本語能力が高いということも大事なのですが、社会に出た後に、職場の中で、又は様々な労働場面、生活場面の中で、自分の意思をスムーズに伝える、そして相手の話も分かるという関係を構築するといったことができるようになっていかなければいけません。幅広い社会スキルの養成も考えていかなければならない課題だと思います。
○一般財団法人全日本ろうあ連盟 有山です。補足いたします。先ほどの御意見で、コミュニケーション支援の部分ですが、最近、企業の中で事例としてあるのが、支援者だけではなくて、会社の中で、きこえない者のために手話通訳者を雇うという企業がぼちぼち増えてきている状況は喜ばしいこととしてございます。それが、ずっと企業の中で支援としてかかわるというようになれば、大変いい事例なのかなと思います。こういったことも支援策の1つに考えていただきたいと思います。
2点目の質問ですが、ろう学生についてです。環境を整えるということが大事なのです。きこえない世界の中でろう学校で生活していた彼らが一般の大学に行く、社会に出るときに、まず孤立という問題が出てきてしまいます。周りの環境がしっかりと整えられていれば、そういった孤立も避けられます。こういった環境を改善するということです。それが合理的配慮という取組なのかなと感じておりますので、補足いたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。では、長谷川委員、お願いします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川と申します。お話ありがとうございました。1点、質問させていただきます。勉強不足の質問で申し訳ないのですが、助成金の利用期限が利用開始から10年間ということに対して、問題を指摘いただいたかと思います。10年と区切っている理由の1つが、恐らく、その10年の間で同僚とか職場の皆さんも手話等を学ぶなりして、職場で対応していってくださいというようなことも趣旨の1つかと思うのです。
そういったときに、それは確かにそういう趣旨かもしれないけれども、現実として、職場で挨拶や普段の会話はできたとしても、仕事の細かい指示とか、そういうことまで同僚が手話で伝えるということは、現実的に非常に難しく、10年経過後も専門的な手話通訳者を必要とするのかどうか、その辺りを教えていただけますか。
○一般財団法人全日本ろうあ連盟 岩山です。御質問ありがとうございます。この10年の捉え方は、おっしゃるとおりの政策的な意図があるのだろうと感じておりますが、10年を過ぎて、その職場の中で積極的な支援、対応、働き方ができるのかというところだと思います。おっしゃるように、日常的な会話程度のもので恐らく10年というのは過ぎてしまうのかなと感じています。細かな仕事の指示ということだけではなくて、職場というのは会議もございますし、ミーティング等で情報のやり取りが常にございます。これをどう解消するかという問題なのです。
ですから、内容的な部分でも、高度なものにどんどんなっていくわけなのです。それを手話を学んだことがない社員が日常的な手話の程度で支援できるかというと、これは難しい話です。その場でしっかりとした情報を本人に伝えるためには、また逆に、きこえない者が周りに対して自分の意見を言うことができるためには、しっかりとした専門的な訓練を受けた情報保障者が必要だという考え方なのです。
10年という部分ですが、それぐらいになると当然きこえない者も職場の中で経験を積んできていますから、肩書も上がってくることもあります。係長、課長と昇進する者も出るでしょう。そういった中で、管理職としての会議参加ということも課題になってくると思います。ですから、肩書を上げて重要な会議に参画していくといった機会を増やしていただいたとしても、そこに手話通訳がない、要約筆記がないとなれば大変残念なことですから、この10年というのは、できれば撤廃してほしいという意図で御意見を出させていただきました。
○山川分科会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。ほかに追加の御質問があるかもしれませんが、時間の関係で、もしございましたら事務局にお伝えいただきまして、後ほど事務局からお伺いした上で、回答を皆様に共有するということにさせていただければと思います。
それでは、全日本ろうあ連盟の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。
○一般財団法人全日本ろうあ連盟 こちらこそ、このような場を頂きまして、ありがとうございました。
○山川分科会長 続いて、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会の皆様、お願いいたします。
○一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 日本難病・疾病団体協議会、JPAの副代表理事を務めております山崎洋一と申します。重症筋無力症の患者で、現在は治療は受けておりません。今日はヒアリングにお招きいただきまして、ありがとうございます。今日お話したいのは、私たちJPAが長年要望しています法定雇用率の参入に難病患者も対象にしていただきたいということに関して、この1点についてお話させていただきます。
まず、私たちが考えている法定雇用率をどうしても対象としていただくことが必要だということの現状から見ていきます。先進国の中では、日本は残念ながら障害者雇用の水準が余り高くないと言われております。その中で、身障手帳を持っていない難病患者の雇用は更にかなり低いといった現状があります。難病の患者が就職を希望してハローワークに行きますと、専門支援窓口に案内されます。そこで、まず手帳を持っているかどうかを確認されますが、手帳を持っている難病の患者は非常に少ないのです。厚労省の調査では手帳を所持しているのは56%ということですが、私たちJPAに加盟している患者会がアンケート調査をした中では、例えば全国筋無力症友の会の調査では、3割に満たないという数字が出ており、他の疾病団体、患者会も56%より高い所持率の団体というのはないのです。まずこの点を私たちJPAからは指摘させていただきたいと思います。
そのように、手帳を持っていない難病の患者が就労を希望しても就職できないという現状は、雇用主側にとって、法定雇用率に反映しない障害者を雇用する意味合いが乏しいということが一番に挙げられるかと思います。それから、仮に運よく就職をしても、法定雇用率に守られていないということがありますので、体調を崩したりしたときに一番最初に肩たたきにあったりして辞めざるを得ないという現状があると。あるいは、正社員からパートにさせられるといった現状もあります。
私は地元の労働局の職業安定部職業対策課に勤務したことがあり、そこで障害者雇用の担当をやっておりました。そのときに感じたことは、難病の患者を雇用する雇用主に対しての助成金、難治性疾患患者雇用開発助成金や特定求職者雇用開発助成金ですが、これに申請する雇用主が極めて少ないという現状があり、難病患者の就労促進には結びついていないということです。これは中小企業ですと、短時間労働以外の場合は2年間で120万円という多額の助成金が交付されるにもかかわらず、非常に申請件数が少ない現状については、やはり難病への無理解と法定雇用率に反映しないということが影響しているのだと思います。それと、難病という言葉を聞いた場合、暗い、治りにくい、あるいは治療を受けながら働くことは無理、といった難病に対しての先入観が固定化している方が多いと思うのです。今まで労働局の仕事を通じて雇用主の話を聞いたときに、そういうことがありました。
しかし、難病の患者でも治療を続けながら働ける方がたくさんいます。例えば、安倍前首相は皆さん御存じのように難病の1つである潰瘍性大腸炎の患者ですが、医学の進歩によって治療法が進んできたことによって、薬を服用することで症状を大分抑えられるようになり、日常の勤務については支障なくこなせる患者が増えてきております。そういった中にあって、やはり難病に対しての企業側の意識というか、固定観念を少しずつ変えていかなければならない。ただ、その切っ掛けとなるのが、やはり法定雇用率の対象にしていただくということになると思うのです。法定雇用率の対象になることが、企業の側が重い腰を上げる一番大きな切っ掛けになるのです。それで雇用主は病気への理解を進めていただくことになるわけですが、それについての必要な配慮については私たち当事者団体、あるいは厚労省、関係機関の団体と話を進めながら具体化していき、例えば必要な労働時間の配慮といったことを進めていく。そういったことで、受け入れる環境づくりを進めていただくことが必要かと思います。
これについては設備投資を企業の側が行う必要はほとんどないと思うのです。これは人的なところでのいろいろな研修や情報の提供といったところで、難病に関しての理解を進めていって、例えばテレワークが得意な難病の患者もたくさんいますし、テレワークでなくても実際出社して仕事をこなせる、疲れやすいとか症状が出た場合に病院に行かなければならない場合は配慮を頂いた上で仕事を続けていくといった、治療と仕事の両立支援が必要になると思います。治療が終わってからの就労支援ではなくて、難病の患者は極めて長い治療期間、あるいは一生その病気を背負っていくことになる患者が多くおりますので、治療が終わってからの就労支援では意味がないわけです。ですから、治療をしていくことについての企業側の理解、配慮ということで、必要な労働力を企業の側も確保していただくということが、法定雇用率参入に難病の患者を対象にしていただくことで進むことになると思います。
難病の患者は、制度の谷間にあって、手帳を持っていないということでいろいろな不利益がありますけれども、就労に関しては、働きたい能力を持っている難病患者がかなりたくさんいるのに、それが実現していない、なかなか進まない、これに風穴を開けるのが法定雇用率の参入だと。そういった制度ができることによって、雇用の枠が広がる共生社会という形に進んでいくことになると思っております。
国が指定した指定難病は、今、333疾患あります。私たちは手帳を持っていなくても、特定医療費受給者証というものが交付されて、それを所持していれば、それを提示してその方を雇用した場合は法定雇用率にカウントしていただける形になることを希望しております。その場合、現在は週20時間以上30時間未満の場合は0.5人とカウントしておりますが、難病の患者の場合は、治療の関係あるいは症状の関係で、もう少し労働時間が少なければ十分に働ける方もたくさんおりますので、週10時間以上20時間未満の労働者についても、私たちの希望としては4分の1でカウントしていただけきたい。ただ、それが厳しいのであれば、現在10時間以上20時間未満は特定給付金の支給の対象になっていますが、そういったことでの特例措置を継続していっていただく中で、難病の患者も雇用率への参入を実現していただいて、短時間労働についても配慮をいただきたい、制度の中に組み入れていただきたいと考えております。
以上、申し上げてまいりましたが、難病の患者を法定雇用率算入の対象にしていただき、雇用主がこの疾病であれば、このぐらいの症状であれば、自分たちの会社のこういったポジションは採用できるという形で患者の就労が進むことを切望しております。私たちのほうで今お話したいことは、以上です。ちょっと時間が早いですか。
○山川分科会長 時間的には、十分お話いただいております。ありがとうございました。それでは、委員の皆様から御質問、御意見がありましたらお願いいたします。影山委員どうぞ。
○影山委員 横浜市大の影山です。お話ありがとうございました。1点、御意見をお伺いしたい点があります。難病の方に手帳を、法定雇用率に参入をというお話との関わり合いで、障害者雇用の状況を見ておりますと、多様性がある場合、つまり人によって状況が違う、日によって体調が変わってくるというような多様性が高い場合には、雇用しにくいという声を聞く場合があります。他方で、医療機関と連携して、内臓疾患のある方を雇用されている企業があるのですが、疾患がある方も非常に働きやすい、安心であるというようなことを言っておられます。これとの関係で、医療機関との連携、つまり法定雇用率に入れる場合に、同時に企業を支援するような制度として、もう少し具体的に言うと人事担当者が病気に関する情報を得たほうがいいですよというようなことも文書に書かれていたように思うのです。そうであるとすると、医療機関と連携して雇用を進めていくということも、付随して必要になってくるような気がいたします。それについてはどのように思われるかということと、良い事例があったらお教えいただきたいと思います。以上です。
○一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 ありがとうございます。先ほどの私の話の中で、医療機関との連携ということに1点も触れられておりませんでした。しかしJPAの中では、そのことについて当然話はありまして、医療機関との連携なしにはこの就労は進められないと。ただ、どこの段階でどういった連携をしていけるのか、いかなければならないのかということの具体的なところまでは、まだ詰めてない状況で、今の影山先生の御指摘はとても大事なことであると思います。
例えば、企業の側がハローワークから病気の説明を受けると。今現在はハローワークの職員もいろいろな研修を重ねており、難病についての知識が豊富になってきております。ただ、企業がハローワークのスタッフから病気のことを聞くよりも、やはり医療機関から病気の情報やサポートを受けて、この疾病のこの患者にはこういった労働条件が必要ですと、あるいは働いてから改善すべきことがあるとすれば、どういった内容かということについては医療機関が一番よく内容を把握できていると思いますし、指摘できると。そして、説明を受けた企業の側も医療機関からの説明が一番説得力がありますし、参考になる内容を聞くことができますので、結果的には難病患者の就労支援を進めることになると思います。
○一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 随行しておりますJPAの辻󠄀と申します。求職に当たっては、やはり医療機関との連携は大事なのですけれども、各求職先に医療機関が説明するわけにもいかないので、そういう意味では相談支援センターあるいは難病就職サポーターでの知識が必要になってくるのかなと思っております。
就労継続に当たっては、企業内においては産業医の問題があるかと思います。産業医の方がそれぞれの難病に関して理解があるのかというと、ほとんどの産業医の方は難病についての理解は残念ながらありません。言い方が悪くて申し訳ないのですが、現状では産業医あるいは産業看護師の方が力になっていらっしゃる例が少ないというのが現実かと思います。ただ、がんとの両立の話が大分進んでおりますので、そのような両立支援のところで難病も何か光が当たる道はあるのではないかとは思っておりますが、残念ながら就労継続において、産業医あるいは医療関係者が、企業内等でトラブルが起きたときに、先ほども言いましたように退職あるいはパート化の流れを止めるところまでは力は至っていないと考えております。以上です。
○山川分科会長 よろしいでしょうか。それでは倉知委員お願いします。
○倉知委員 九州産業大学の倉知です。非常に分かりやすい説明をありがとうございました。身体障害には入らない、難病固有の障害とは何だろうかと、そこはすごく大事なところだと思います。それが明確になることによって、何を配慮し何を支援するかというのが出てくると思うのです。その意味で、今お話された疲労の問題と痛みの問題と、体調の波の変化の問題、この3つは大事なキーワードではないかと思います。そこを、どう評価をして、評価スケールを作って、そこで対象となった人を内部障害に加えていくという流れが、私は一番自然かなと思っているのです。
もう一方で、先ほどの話の中で難病患者は全て受給者証で障害者と認めたほうがいいのではないかという話もありましたが、これはどうかなと思っています。そうなってしまうと、病者を全て対象にすることになってしまって、疲労、痛み、体調の変化とはずれてしまうのではないかという気がします。その2つが、何か矛盾した報告だなと感じています。その辺りは、どう整理されるのかをお聞きしたいと思います。
○一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 1つは、医療費助成の認定基準については、重症度分類の基準というものが疾病ごとに定められております。非常にたくさんの300以上の疾患がありますので、それぞれの特性が全く違うと。例えば、痺れやすいといった感覚障害の場合でも、それが今後進行するのか遺伝性なのか、中年発症なのか、子供のときから発症するのかという具合に、背景が違うわけです。
疲れやすいというものは非常に測りにくい指標ではあるのですが、重症度分類の基準で実際には医療費助成は決まるのですけれども、医療費助成は生活の困難度を医学的に判断するというような規定があります。では、生活の困難度、特に就労の困難度や働きにくさを医学的に判断するというのは、先ほど申し上げたように背景が全く違うと考えておりますので、非常に難しいのではないかと。そういう意味では、果たして医療費受給者証によるものが正解なのかというのは、少し疑問が残るところです。
実際に、疲れやすさや痺れや痛みが医学的には測れないということで、医療費受給者証がもらえない、もちろん身体障害者手帳ももらえないという方が軽症者にはたくさんいるわけです。その方の医療データも当然、治療研究に貢献できるように登録制度はあるのですが、なかなかそういう方に就労支援の手が伸びていないというのが現実です。ただ、行政としては、どこかで線を引かなければいけないというのがあると思いますので、その部分での論議の中で受給者証とか重症と軽症の違いなどの議論が上がってこざるを得ないのかなとは思っています。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。竹下委員、お願いします。
○竹下委員 日視連の竹下です。簡単に、意見と質問をさせていただきます。結論から申しまして、難病指定患者については、法定雇用率の対象の問題なのか障害者手帳の考え方の問題なのかということに疑問を持っています。すなわち、難病患者の方とは私も若干お付き合いがありますけれども、手帳を持たない方の比率が5割であるか7割であるかは別として、手帳の対象となっているけれども手帳を持たない人が多いのか、それとも障害者手帳、特に身体障害者の対象にならないから持たないのかというところが、私は非常に関心をもっております。
就労の場面で問われているのは、手帳の有る無しではなくて、本来は障害者雇用促進法の第36条の2と3、すなわち差別の禁止と合理的配慮の問題だろうと思っているわけです。この部分については、難病患者であろうが障害者手帳を持つ方であろうが、そこは無関係に差別の禁止と合理的配慮の規定が働くのだろうと思っておりますので、難病団体の方々はその点をどう捉えておられるのかをお聞きしたいと思います。
具体例で申しますと、例えば視覚障害者で申しますと、0.5以下の方は就労の場面でハンディがあると言われているわけです。典型的には運転免許を見たら分かるわけです。そのことは高橋政代先生がいつも強調しておられるわけです。ところが、手帳の対象となっているのは0.3以下なのです。そうすると、視覚障害があっても手帳を持たない方が現に存在するわけです。そういう方については、雇用率の問題ではなく、合理的配慮のところでの対応をすべきではないかと私は思っています。その点、難病団体はどう考えているかについて、御意見があれば教えていただきたいと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 辻󠄀からお答えいたします。1つは、身体障害、知的、精神とは全く別の異なるカテゴリーと考えております。難病患者は身体障害の基準に合わないので身体障害者手帳が取りにくい、というものではないと考えております。視力の場合は、確かに身体障害手帳のほうに基準がありますので、それとの比較ができるわけですけれども、難病患者が抱える問題については身体障害者の部位別の基準とは全く別の次元にある部分もありますので、基本的には精神、知的、身体とは別のカテゴリーと考えております。
その上で、もちろん難病患者の合理的配慮、それから難病手帳になるのかという辺りは議論があるかと思いますが、そういう意味で身体障害者手帳の中に入れてくれという要望をしているものではありません。竹下さん、もう1点はどういう点ですか。
○竹下委員 分科会長、よろしいですか。
○山川分科会長 どうぞ。
○竹下委員 障害の程度との関係では、少なくとも対象の難病患者が全部法定雇用率に入ることには単純にはならないと、枠組みとしてはなるのではないでしょうかということです。
○一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 実は法定雇用率の最大の問題は、どちらかというと就労を継続する場合においては、職場の理解やその人の実績である程度加味する部分があると思うのですが、新しく就労する、あるいは首を切られて再就職をしなければいけないときに、病気を隠さざるを得ない。要するに、病気を持ったまま一般枠で勝負せざるを得ないときに、病気を隠すのか隠さないのか、病気を隠さない場合は、自分の欠点をさらけ出して健常な人と勝負せざるを得ないというのが現状かと思っています。
そのときに障害になってくるのが、実は通院であったり、3週間に一遍点滴を受けなければいけない、あるいは非常に疲れやすくて残業ができないというような多様な障壁があることを伝えながら、一般枠の中で勝負しなければいけないというところは、非常につらいものがあります。
ちょっと答えになっているか分からないのですけれども、合理的配慮うんぬんだけで解決できる問題では到底ないと考えておりますし、合理的配慮が難病に対して何ができるのかというところのニーズについても、非常に捉えられていないのではないかと。もちろん患者側が声を挙げられていないというところもありますが、社会的に、声が押しとどめられてしまっていると、言っても仕方ないという現状があるのかと思っております。少し答えになっているかどうか分からないのですが、そのような感じを受けております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。時間の関係もありまして、同様に追加の御質問がありましたら、事務局にお寄せいただければと思います。それでは、日本難病・疾病団体協議会の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。
○山川分科会長 続きまして、一般社団法人日本発達障害ネットワークの皆様からお願いします。
○一般社団法人日本発達障害ネットワーク 一般社団法人日本発達障害ネットワークの副理事長の大塚と申します。本日は労働政策審議会で発言する機会を頂きありがとうございます。感謝いたします。また、特に障害者施策の推進ということで、日頃より様々な形で御尽力いただきましてありがとうございます。
発達障害者ネットワークとしては、現在の雇用施策のポイントは2つあります。コロナ禍において、あるいはポストコロナかもしれませんが、障害のある方が雇用の面で不利益を被らないように安心して雇用が継続できるということも含めて課題があると思っておりますので、そこに取り組むことが1つです。
もう1つは、障害者権利条約の批准と発効、そして障害者雇用促進法、あるいは障害者差別解消法も改正されました。そういう中において、雇用における障害者差別の撤廃、そして合理的配慮の提供、この2つをきちんと今後行っていくと。コロナ禍における対策、権利条約でいう差別の撤廃、合理的配慮、この2つが私は要素だと思っております。個々の課題については幾つかポイントでお話したいと思います。
まず、「働く」ということ、働き方改革ということもありますが、様々な形で多様性のある働き方が求められていると考えております。特に労働時間、働く場所、副業、いろいろな形があると思います。例えば、労働時間においては20時間未満の障害者の雇用に対する支援をどのように行っているか。法定雇用率には入っていないということですが、発達障害の方の場合に、ストレスへの対応や、次の20時間以上の労働への移行ということも含めて、20時間未満の方たちについても法定雇用率の対策等を考えていただきたいと思います。何時間からということはもちろんありますし、雇用における自立を考えたときに様々な課題があると思っています。多様性の中においては労働時間についても、今の現行を変更していくことも1つの考え方かもしれません。提案いたします。
先ほども出ましたが、手帳制度のことですが、発達障害の方たちには発達障害者支援手帳などはありません。現行においては知的障害が伴っている場合は療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を取得するということになっております。今の私たちの団体の議論としても、例えば知的障害がある方はもちろん療育手帳でいいのですが、やはり高機能については現行の療育手帳などは無理があると。そうしますと、精神障害者保健福祉手帳というものを利用して雇用に結び付けるのが合理的であると考えております。もちろん様々な課題はありますが、団体としても精神障害者(発達障害者を含む)という基本法にもありますので、精神障害者保健福祉手帳の取得ということも含めて、積極的に取り組んでいきたいと思っております。今までの統計などにおいても、精神障害者、その中の発達障害の方については何人就労したかという内数であるか、外数であるかという課題も出てきます。そういうことについても皆様の御意見を伺いながら、どんな形できちんと発達障害の方の就労が確保されるかということに取り組んでいきたいと思っております。ただ、団体としては、発達障害の方が発達障害という障害を受容しながら法定雇用率の中に、あるいは手帳を取得ということも含めて、受容という問題は非常に大きな課題ですので、これについては団体としても積極的に取り組んでいきたいと思います。
発達障害の方の雇用のプロセスにおいて、その特性に応じて幾つかの観点からお話したいと思います。1つは、ジョブマッチングという本人と仕事との適合が非常に大きな形だと思います。様々な形で専門的な観点からアセスメントなどについても積極的に行っていただいて感謝しております。そういうツールを使いながら、あるいはバージョンアップしながら適切なジョブマッチングができるということをお願いしたいです。
もう1つは、合理的配慮の観点から言いますと、もちろんジョブコーチやコーディネーター等の発達障害者個人の特性と職場での合理的配慮に取り組む際の専門性を高めていただきたいと思います。こういう発達障害の特性を理解した方を職場に置いていただきたいと常に考えております。それによって発達障害の理解の促進ができ、企業の人事担当者についても発達障害の方の積極的な雇用に取り組んでいただきたいと思います。
やはり、職場定着は大きな課題です。他の障害に比べても発達障害の方については、職場定着に関しては離職率が高いものとなっております。特にコミュニケーションや対人関係などに課題がある方については、もちろん定着の有効な方法等、理解する人員の配置も含めてですが、この定着に取り組んでいきたいと思っております。その観点から言いますと、支援者の専門性、福祉あるいは雇用施策の様々な機関、職場においてもコミュニケーション、対人関係に困難を抱えていることによって、同僚、上司から誤解されることがよく見られますが、発達障害の方の就労及び職場定着を図るためには、当事者と企業との橋渡しとなる就労支援者の役割が非常に大きなものと考えておりますので、そのような配慮ができる専門性のある職員とか関係者を育てていきたいと考えております。人材の養成のことです。
雇用施策については、福祉との連携を一つお願いしたいと思います。障害者の雇用に際しては、当事者の就業能力や就労準備性と業務の作業特徴とのマッチングが重要であると先ほど申しました。継続的なアセスメントやモニタリングが必要不可欠です。そのためには発達障害者支援センターとの連携あるいは障害者職業センターとの連携、福祉の観点からも就労移行支援事業、あるいは職場定着事業が始まりましたので、特に福祉と雇用との連携が重要だと思っております。
もう1つは教育との連携があるかもしれません。発達障害の方の場合については、小中高あるいは大学、大学院ということも含めて、雇用と教育との連携によって働く能力のある発達障害の方が働けるようになるということ、その力がそがれないように様々な形で支援していく。そのためには教育から雇用という連続性、あるいは継続性が非常に重要になってくると思いますので、そのような教育現場との連携ができる体制作りも確保していただきたいと思っております。
最後に、合理的配慮というのはずっと申してきましたが、障害者差別解消法の改正が行われましたが、これによって合理的配慮の義務付けは、今までは国や自治体だけでしたが、今後は民間事業者にも努力義務が課せられるということになりました。今回の改正において、今後は義務として配慮提供が求められることになります。この障害者差別解消法の改正を契機として、障害者雇用促進法においては既に義務化ということになっておりますが、改めてもう一度、合理的配慮についての一層の促進を求めて取り組みをお願いしたいと思います。
雇用施策の質の向上も課題かと思っております。発達障害者支援法ができて、発達障害の方について雇用の分野において様々な取組が進んできたことは非常に感謝しております。そういう中において、若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム、あるいは発達障害者雇用トータルサポーター、発達障害者に対する体系的支援プログラムができて、発達障害の方の雇用に取り組んでいるということは非常に有効なものとなってくると思います。
ただ、そのような事業あるいはプログラムが、どのような効果、有効性を持って体系付けられているかということは疑問になる場合もあります。今後、このようなプログラムの改善、一層の推進のために、是非、プログラムの評価を通して発達障害の方の雇用を進めていきたいと思っております。
最後は、やはりコロナ禍においてなかなか厳しい雇用状況になっているという話はよく聞きます。発達障害の方が雇用止めなどにならないような施策、本人が安心して働ける環境を作っていきたいと思いますので、是非、皆さんと一緒にやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。それでは委員の皆様から御質問、御意見等あればお願いします。よろしいですか。委員の皆様から、もしこの後御質問等がありましたら、事務局にお寄せいただければ、お伝えいただいて、御回答等共有させていただきます。日本発達障害ネットワークの皆様、貴重な御意見を大変ありがとうございました。
○一般社団法人日本発達障害ネットワーク どうもありがとうございました。
○山川分科会長 以上で本日のヒアリングは終了となります。改めて、本日御発表いただいた関係団体の皆様方には御協力に感謝申し上げます。
それでは議題2に入ります。事務局から説明をお願いします。
○小野寺障害者雇用対策課長 事務局、障害者雇用対策課長の小野寺です。議題2の、職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について御説明します。資料2、省令案要綱を付けておりますので御覧ください。
まず、背景について御説明します。行政機関等に対する各手続について、デジタル・ガバメント実行計画が令和2年末に取りまとめられておりまして、登記事項を確認するような場合において、行政機関間の情報連携システムの活用によりまして、国民の皆様の各手続の負担を軽減することが取りまとめられております。この手続については、デジタル手続法に基づき、基本的に、情報連携等によって添付省略が可能となる書類というのは、個別法令において提出を求めている添付書類に限られております。私どもの障害者雇用促進法上で納付金助成金等の規定がありますが、具体的な添付書類については、要領等で定めているものもあります。今回、登記事項証明書の添付を省略するに当たりましては、取り扱いとしての変更ではありませんが、要領に定めている助成金の支給の申請に必要な書類として、登記事項証明書を改めて障害者雇用促進法の省令に明確化し、規定をし直すということです。本件については、公布の日から施行とさせていただければと思います。御説明は以上です。よろしくお願いします。
○山川分科会長 この件については、8月26日付けで、厚生労働大臣から労働政策審議会に対して、資料2にあるように、「職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」についての諮問が出されております。当分科会としてこの点について議論を行い、結果を労政審に報告したいと考えております。要するに、手続の簡素化のための取り扱いの明確化ということになります。それでは質疑応答に移ります。御質問、御意見がありましたら「手を挙げる」ボタンをクリックして、お名前をおっしゃってください。御質問、御意見等はございますか。よろしいですか。
特になければ、当分科会として厚生労働省案を妥当と認めるということで、分科会長から労政審の会長に報告をしたいと思います。この方向で御意見はありますか。よろしいですか。
(異議無し)
○山川分科会長 それでは、報告文案の表示をお願いします。
(報告文案を表示)
○山川分科会長 下のほうに書いてあるように、妥当と認めるという報告文案になります。これで労政審の会長に報告するということで御異議はありませんか。ありがとうございます。
(異議無し)
○山川分科会長 御異議はありませんでしたので、このように報告をさせていただきます。労政審会長宛ての報告の後、会長から厚生労働大臣に答申するという運びになっております。
特段、ほかになければ、議題3について、事務局から説明をお願いします。
○小野寺障害者雇用対策課長 事務局、障害者雇用対策課長の小野寺です。議題3については、2020年度の年度目標に係る評価、2021年度の年度目標の数値の確定をさせていただきます。資料3-1を御覧ください。2020年度の実績の評価です。当分科会にお諮りしている目標については、3つの大きな柱立てがあります。就職件数、雇用率関係、精神障害者雇用トータルサポーターの支援実績、この3つの柱に基づいて各指標を設けております。
1点目、就職件数については、前年度以上にするということをこれまで目標としておりまして、2020年度の目標は10万3,163件でした。これに対して、2020年度の実績は8万9,840件ということで目標を下回る結果となりました。本件については、前回、ハローワークの職業紹介状況等について御報告した際にも御説明しておりますが、こうした結果になった要因は、主に新型コロナウイルス感染症の影響が大きくあったということ、その影響下で、障害者が比較的応募しやすい求人数が減少したということです。一方で、求職活動の低迷から求職者数が減少したということも御報告しております。さらに現場での運用の状況から見えてきていることとして、大規模な面接会や職場実習が延期、中止となったということが挙げられております。
これに基づいて、今後の目標達成に向けて、引き続き、ハローワークにおきまして、関係機関等と連携して、「障害者向けチーム支援」などもやっていきたいと思っております。併せて、その時期に各労働局から業務のヒアリングを行っております。コロナ禍におきましても効果を上げている局もありますので、そういった効果的な取組を広く共有して、支援力の底上げを図っていきたいと考えております。また、特にこれまで十分に支援が行き届いていなかった、就労支援機関とのつながりのない求職者についても、障害者向けチーム支援を通じてさらにきめ細かい支援を強化していきたいと考えております。
2点目は障害者雇用率関係です。目標としては2点設定しております。1点目が、障害者の雇用率達成企業割合です。この達成企業割合については、2020年度目標は46.7%以上ということで取り組んできました。併せて、障害者雇用ゼロ企業のうち、1年後の状況を見て、新たに障害者を雇用した企業の割合15.6%以上を目標として取り組んできました。これらについては、今年の2021年6月1日の状況をもって評価をしますので、ただいま集計中ということです。
次のページで、3つ目の柱の精神障害者雇用トータルサポーター支援実績については、2つの目標を設定しております。1つ目が、精神障害者雇用トータルサポーターの相談支援を終了した者のうち、就職に向けた次の段階へ移行した者の割合です。精神障害者雇用トータルサポーターについては、PSWや臨床心理士など有資格者を主に配置しておりまして、6か月間を集中期間として支援をしております。この6か月間の支援終了後も引き続き支援は行われるわけですが、本件事業の評価については、6か月の支援終了までの間の状況において評価をしております。次の段階へ移行したというのは、具体的な求人に応募するとか、職業訓練に移るとか、あるいは実際に就職をしたということと捉えております。2020年度の目標は70.9%以上で、実績が74.8%でしたので目標を達成しております。
2つ目の目標は、次の段階へ移った方の中で、実際に就職を実現した者の割合です。2020年度目標は84.3%以上でしたが、実績は80.9%で目標を下回ったという結果です。この要因については、先ほど1点目で御説明した就職全体の状況に準じているのですが、特に精神障害者の方たちについては、新型コロナウイルス感染症による社会の変化に様々な御不安を感じて、求職活動の継続的な実施が難しい方が多かったということを現場の声として把握しております。
また、精神障害の方の場合は、例えば労働時間や様々な配慮をした上で一般求人にチャレンジできる方も多々いらっしゃるので、個別求人開拓を事業所訪問によって積極的に取り組んでまいりましたが、これが十分にできなかったことも要因の一つです。併せて、企業実習先の確保が困難であり、実際に企業の中に身を置いてトライする機会が減ってしまったので、就職に直結する支援が十分に行えなかったために、こういった結果になったのではないかと分析しております。
こういった状況を踏まえて、今後は、個別求人開拓については事業所訪問がかなわない中ではあるものの、電話等を活用して引き続き積極的に行って、職場実習の受入れ先については、都道府県や地域の支援機関は独自の情報などを持っていますので、こういった所とも連携しながら、労働局、ハローワークにおいて実習先の確保に引き続き努めていきたいと思っております。
一方で、実習先確保が十分に行えない場合については、労働局、ハローワーク、それぞれにおきまして、模擬的なものになってしまいますが、様々な就職準備プログラム等を取り入れて、引き続き支援を強化していきたいと思っております。以上が実績の評価です。
続きまして、資料3-3に基づいて、2021年度の目標値の確定をさせていただきたいと思います。1点目の目標の障害者の就職件数については、これまでどおり前年度以上を目標とさせていただきたいと思います。リーマンショック以降、10数年にわたりまして右肩上がりの数字を出してきておりました。今回、前年度を下回るような実績になっておりますが、先ほど申し上げたように新型コロナウイルス感染症の影響を多大に受けたためこういった結果になっており、今年度中盤までの状況を見ても、コロナウイルスの影響を完全に払拭できていない中で、最低限、前年度以上には実績を上げていくという目標です。併せて、前年度以上の実績でいいということではなく、現場には引き続きそれ以上の成果を出すようにということで指導していきたいと思っております。
次に、障害者雇用率関係です。障害者雇用率達成企業割合については、これまでも10年間の雇用率達成割合の伸びを平均して、直近の実績にそれを加えて目標として設定しております。今回は2020年6月1日の雇用率達成企業割合が48.6%であり、これに対して、まず、制度等の見直しが行われた年度を除いて、遡って10年の平均伸び率1.47%を加え、さらに法定雇用率が2.3%に引き上げられた影響を加味するために、前回の引き上げの際の影響から推計した2.7%をマイナスして47.4%以上ということで目標値とさせていただきたいと思います。
それから、障害者雇用ゼロ企業のうち、新たに障害者を雇用した企業の割合です。この目標については2021年度に初めて設定しております。それに対しての実績、評価は調査中ということで、同じ考え方に立って3か年平均ということで15.2%以上と設定しております。
3点目の、精神障害者雇用トータルサポーター支援実績については、次の段階へ移行した者の割合については、これまでと同様に3か年度平均を取って72.8%以上とさせていただきたいと思います。
最後に、次の段階へ移行した者のうち、就職した者の割合については、これまでは3か年平均で設定してきておりますが、これについては2020年度の年度目標84.3%以上を下回る実績になっておりまして、2020年度の実績を踏まえることなく、2020年度達成できなかった84.3%以上について、再度チャレンジしていきたいと考えております。実績の評価と目標値の設定については以上です。よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思います。御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。内田委員、どうぞ。
○内田委員 労働側の内田です。御説明ありがとうございました。私からは1点意見を述べさせていただきます。資料3-3の、障害者雇用分科会における2021年度目標の障害者雇用ゼロ企業の目標について、2021年度は15.2%以上と設定をされていますが、設定の考え方としては2017年から19年の過去3か年の平均を基に算定されたものと理解しています。
今回、感染症対策を受けて障害者を雇用できなくなった企業も、また障害者雇用ゼロ企業に戻ってしまう場合もあり、時期によって目標達成が難しいことは承知しています。しかし、障害者雇用ゼロ企業を可能な限り低減させることを目指しているとすれば、前年度に比較して目標値が下がることは、社会にネガティブなイメージを発信することにつながるのではないかと危惧しています。仮に過去3年間の平均値が、今回のように前年度よりも低くなる場合においても、最低でも前年度を踏襲すべきではないかと考えます。
また、雇用情勢や法定雇用率の引上げの影響を鑑みつつ、ゼロ企業をなくす目標に向けて、一定程度高い目標を維持して、ゼロ企業の多い中小企業への雇用助成金の周知や、支援人材のサポート、また、「もにす認定制度」における好事例の展開y、ノウハウの提供などの支援策も講じながら、障害者雇用促進の取組を着実に進めていただくことをお願いしたいと思います。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。御意見ということですが、事務局からは何かありますか。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。前年度に比して目標値が下がることについて、社会に対してネガティブな発信になるのではないかという御指摘だったかと思います。この目標値の設定については、先ほど申し上げたように2020年から始まっていまして、その上で実績評価がなされないままに2021年度の目標を設定させていただくということで、この数値の設定自体の適切性についてもまだ事務局としても十分に検証し切れてないというところは、御理解を頂きたいと思っています。
まず、このゼロ企業については、前年の6月1日時点でゼロ企業であった企業が、1年間の行政指導を通じて改めて障害者の雇い入れをし、ゼロ企業から脱却していくことが、一番、行政指導の効果として理想的かと思っていますが、それ以外にも、例えば、従業員が増えたことによって、障害者雇用について全く認識を持っていなかった企業がゼロ企業として新たに出現することもあれば、他県に出ていくことによって、あるいは倒産などによって事業が廃止されてゼロ企業でなくなる企業もありますし、雇っていた障害者自体が離職をされて、再度雇い入れができないままでゼロ企業として残っていらっしゃるという企業もあり、そのゼロ企業の背景としての要因が、個々非常に様々な状況を呈しています。
もちろんゼロ企業をなくしていくという方向で、行政としては運用していくことになるわけですが、今申し上げたような様々な状況を本省や全国でつぶさに把握することは困難ですので、今回のような形でこの目標を示すことによって、現場である労働局、ハローワークが管内の個々のゼロ企業の状況について詳細に把握をした上で、どういったアプローチでこのゼロをなくす行政運営をしていったらいいのか、指導していったらいいのかというところを、しっかりと認識して、戦略的に取り組んでいく1つの指標になるのではないかと考えています。
いずれにしても、御指摘のあったような、中小企業に対する様々な支援や、もにす認定制度の促進、もにす認定制度における好事例の展開ということも合わせて行い、雇用指導と助言支援をしっかりと丁寧にやっていくという行政運営の強化ということを通じまして、一旦、目標値ということは御理解をいただければと思っています。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。確か竹下委員が内田委員に続いて手を挙げられていた記憶がありますが、いかがでしょうか。
○竹下委員 日視連の竹下ですが、よろしいでしょうか。まず1点目は質問なのですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、就職者数が下がったことはやむを得ないと思っています。ただ、だからと言ってそれで仕方ないで終わるのでは、ちょっと問題だと思っています。統計上は19年度が、10万人台の実績があったものが、20年度は8万人台まで下がっているのは非常に大きな減少だと思うのです。たまたま見ていた新聞で厚生労働省が発表した8月31日の統計で、労働移動の数字を見ていますと、離職者が727万人で、新規就職入職者が710万人ということになっているようです。そうすると、その移動だけを見ていると減少は僅か17万人にとどまっているわけです。そうすると障害者の場合に、就職者が1万数千人、実績が減っていることからすれば、では離職者はどうだったのか、そこも合わせて出さないと、障害者の雇用実態としては見えてこないのではないかと思うので、その点もし分かれば教えていただきたい。これが質問の1点目です。
2点目は、目標の設定の仕方ですが、確かにコロナの影響で下がっていることは事実だと思いますし、2021年度についても、現実には新型コロナウイルスの感染拡大が終わっていないわけですから、影響があるのだろうと思うので、この2020年度を上回るという設定でやむを得ないと思いますが、その先が問題だと思います。すなわちコロナが収束した以降に、例えば2022年度の設定というときに、低いほうに合わせた設定になるというのは、私は問題だろうと思うのです。その点で、これは質問というか要望になるかと思いますが、今年度の2021年度の目標設定はやむを得ないけれども、2022年度は単に前年度の実績に従うということは、そのまま持ち越すべきではないということだけ意見として申し上げておきたいと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。御質問、御意見がありました。御質問の点は、事務局から何かありますか。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。全国的に、離職の状況がどうなっているかということについては、大変恐縮ですが、網羅的に把握しておりません。解雇者についての状況は、前回の公表資料の際にも御説明した解雇届の割合ということで、一定お示ししたかと思います。これについては、やはり前年に比べると増えているという状況であって、その後、一体その求職者がどういった行動をしているかということについては、現時点においてはつぶさに把握できておりません。この辺りは、全数把握というのは非常に困難かと思いますが、ハローワークシステムの中で若干把握できる要素があるのかどうか、少し検討させていただきたいと思います。
もう1つ、御意見として承りました2022年度の目標について、前年度以上という同じ考え方に立っていいのかということについての御指摘がありました。これはまた改めて2022年度の目標設定の際にも是非御議論させていただきたいと思っていますが、2021年度についても、まだコロナの影響が残っている中での実績ということになりますので、そこに上乗せしていくということについて、2021年度後半の状況もしっかりと見た上で、また議論をさせていただきたいと思います。以上です。
○山川分科会長 それでは続きまして、後は順不同でお願いします。小原委員、お願いいたします。
○小原委員 大阪大学の小原です。私からは目標の評価についての所で、目標値の達成ができなかった、あるいは数字が思ったより高くなかった、多くならなかったということなのですが、コロナの状況があって、企業側の採用の話が出てきて、うまくマッチングできなかった、紹介をしたり受けることができなかったというマッチングの話でした。最後のほうに書かれていた、求職側が求職活動を続けられなかったというのは、また全然違う側面で、つまり、求人側の理由ではなく、マッチングの効率性の話でもなく、求職側がちょっと状況が分からなくなってもうやめてしまおうかなというような状況が、例えば障害を持っていない人よりもそれが高いという、私が実態をよく知らないようなことがあるのだとすると、途中で分母から彼らが落ちていってしまう問題があります。途中でそのようにやめてしまった人は、失業者では何でもなく、非労働力になってしまうような人の問題として大きな問題として残り続けます。資料の3-1の最後のほうに書かれていた、就職に向けたモチベーションが下がって求職活動をやめてしまうことの問題というのは、多分最初の部分も関わっていて、その実態の把握が必要なことと、この問題はマッチングをよくするとか、企業側に雇用を促進させるやり方とは違う方法で支援しないと増えない、よくならない。それが何か最初にも書かれていてもよかったかなと思いました。以上です。意見だけです。
○山川分科会長 ありがとうございます。事務局から何かありますか。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。御指摘ありがとうございました。1点だけ確認です。先ほど御説明申し上げた、例えば途中でハローワークに来なくなってしまったり、求職活動から一旦離脱するような形になりましても、障害者の場合には求職の取扱い上はずっと有効ということで続くものです。ただ、一旦求職活動から少しお休みをしたいという明示的な意思表示があった場合には、障害者については職員側のほうで保留中というような形での取扱いをしています。6か月に1回ほど、こういった現況の把握に努めるようにしています。そのため、その時点で求職活動が少し停滞してしまっていて、来所がなされていい場合や、本人から少し求職活動を抑えたいというお申出があった場合、あるいは病気の悪化というようなことで保留中という処置をした場合であっても、やはり引き続き定期的にハローワークへの来所や、相談への誘導ををすることで、求職活動自体を継続できるよう、現場としても努力はしているところです。ちょっと状況の共有だけさせていただきます。以上です。
○小原委員 ちょっと言い方が悪かったと思います。数字から漏れ落ちているという問題を指摘したかったのではなくて、例えば、求職者が次の段階に移行したとして、これは後半のトータルサポーター支援実績のほうでいうと、次のステップまでは求職活動が維持されていたことになります。けれど、その後途中でやめてしまって就職ができなかった、つまり、活動自体をやめてしまったことで就職しなかったのであれば、就職できなかったことの原因が違ってしまいます。
どんなに企業に支援をしても、或いはどんなに仕事を紹介したって、途中で抜け落ちてしまったら、支援にならないです。何かそういう求職側の要因があるかもしれない。求職者が次のステップに行って、その後、次のステップからも時間が就職するまでは多分経っているわけで、その期間中に抜け落ちてしまうというような人たちがどれぐらいいるのか。この数字からはそれが分からないです。この値だと、次のステップに行った人が初期時点の分母になっていて、そこから何%就職したかになってしまっているから。
このようなケースの把握としては、前半のそれこそヒアリングで、そういう人たちがいろいろなタイプ別に、どれぐらいあるのかということを調べておいたらよかったかもしれないのです。このようなケースが深刻で、いま見ようとしている就職サポートとは違って存在しているのだとすると、途中でやめる人の支援も真剣に考えていかないといけないのかなと思います。これらのケースは前半の所は数字で出ていませんので、おっしゃる説明はよく分かるのですが、実際には就職件数というところに出てこない、就職をやめてしまったということが原因で少なくなっているところのサポートが必要ならばすべきだと思います。なので、何か原因の把握というか実態把握、今日は最後の日本発達障害ネットワークの方からもありましたが、実態把握と検証がとても大事です。理由の解明という意味です。働こうとする意欲が、求職活動を途中でやめることが原因で起こっているのだとすると、違う政策が必要になるということを強調しました。数字の信ぴょう性について何か言っているわけではありません。目標値も私はこれが考えられるものかなと思っています。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。よろしいですか。恐らく、これまでは就職後の定着ということに焦点が当たってきたような気がしますが、先ほどのヒアリング来のお話を聞いていますと、個人的な感想ですが、求職活動の定着というか持続性、その辺りも支援との関係でデータの把握から始めていく、そういう必要もあるのかなと感じた次第です。ありがとうございました。では、仁平委員、お願いいたします。
○仁平委員 連合の仁平です。ありがとうございます。昨年度の評価と目標設定について、一言意見を申し上げたいと思っています。1つ目の目標設定について、御説明にあったとおり、障害者の就職件数、前年度の実績を基に目標設定がされていますが、コロナ禍での雇用情勢の影響を踏まえると、就職件数のみでは、今の実態を目標として反映していくのは分かりにくいのではないかと思います。例えば、仕事を希望する障害者の方が、コロナの影響で前年より減っているということであれば、就職件数にも当然ながら影響しますし、その目標の就職件数が下がっているとしても、就職を希望する方はしっかりとハローワークで就職に結び付けているということが分かれば分かりやすいのではないかと思います。参考資料には、就職率が示されていますが、その参考資料を見ずに目標設定の数値しか見ない場合もありますので、例えば、その目標の欄に就職率も記載していただくことで、目標件数の増減が示す意味合いも伝わると思いますので、意見として申し上げます。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。よろしいですか。では新田委員、どうぞ。
○新田委員 経団連の新田です。私からは全体的な印象とお願いを申し上げたいと思います。2020年度の目標について、コロナ禍による制約や影響によって一部未達の目標があったことは、やむを得ないと考えております。目標未達の理由として障害者の求職活動が低迷していたことや、職場実習、事業所訪問が十分に実施できなかったことなどが挙げられており、そうした事情については理解いたします。ただ、先ほど竹下委員からもご指摘があったとおり、こうした問題は今年度も生じる可能性が高く、コロナ禍であるからといって、今後の目標や取組みを緩めるということはあってはならないと考えます。
今後も障害者の求職活動と企業の採用活動の促進を図っていく必要があり、厚生労働省におかれましては、資料3-2で本年度の目標達成に向けた今後の方針で示されているとおり、ウィズコロナに対応した支援策をしっかりと検討し、実行して、今後の目標達成に努めていただきたいというのがお願いです。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは、清田委員、お願いいたします。
○清田委員 ありがとうございます。日本商工会議所の清田です。皆様の御発言と重複するところがありますが、意見を申し上げさせていただきます。2020年度の目標評価については、コロナ禍により、通常行われている面接会や職場実習の開催がかなわなかったこと、それに加えて企業の求人数が減少など、求職者の求職活動の継続が困難な状況もあったことも踏まえますと、目標が未達になってしまったものはやむを得ないと考えています。
また2021年度の目標についても、現在、こうしたコロナの影響が継続していることを鑑みますと、本年度の実績や3年間の平均に基づいて示されている資料3-3の案にやむをえないものとして同意いたします。ただし、長期化するコロナ禍において、支援事業の中止や縮小といった対応ではなく、オンラインの活用などの感染防止を図りながら効果的な支援を実施していくなど、常時、改善・工夫に取り組むことが重要であると思っています。
加えまして、本年3月から法定雇用率が引き上げられていることも考えますと、中小企業の障害者雇用にとってハローワークは非常に身近な支援機関であることから、ハローワークに対する期待はより一層高まっていることを御理解いただければと思います。したがいまして、2021年度の目標案は最低限達成するべき目標と捉えて、支援事業の改善・工夫とともに、ハローワークの機能強化も合わせて行い、より高い実績に向けて取り組んでいただきたいと思います。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかに御意見ございますか。大谷委員、どうぞ。
○大谷委員 お世話になります。育成会の大谷です。よろしくお願いします。1点、数値の問題が現状で状況に応じてと思いますが、この中で一番気になるのは離職率で、5年以内の離職率は40%など、かなり多く挙がってきているのですが、特に精神、知的な場合、そうした場合にそこにまた新しい方が入るということで、結果的に何回離職したかと言えば3回、4回離職したなど、そういう方が多く含まれてくるということ。そして最終的にどこに向かうかというと、その次に来るのが生活保護のほうに行ってしまうなど、そういう問題がかなりこれには含まれてくるのではないかなという気がします。ですので、数値目標というのはものすごく大事なものなのですが、数値ばかりに捕らわれていると、そういうものを見落としがちになるということもあります。離職ということもやはり考えていくことが必要ではないかなと思いますので、内容的にはちょっと違うかも分かりませんが意見としてお話をさせていただきました。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。よろしいですか。ほかにありますか。御意見を伺っていまして、基本的には今回の評価、目標設定はやむを得ないという御意見が多かったかと思います。ただ、最終的にはいろいろな御意見を頂きましたので、頂きました御意見を踏まえて、私と事務局とで相談して、取りまとめさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
これも個人的な感想ですが、目標の評価について、その数値的な面のほかに質的な対応の充実ということも委員の皆様方がかなりおっしゃられていましたので、質を充実させるということは、今回のような状況においてもというか、だからこそ一層図っていただきたいと思います。また、数値の示し方ということも検討に値する事項かと思っています。来年、このコロナの状況がどうなるかということは、まだ予断を許さないのですが、来年度の議論がまた改めて重要になってくるのかなという感じがしています。それでは、先ほどのようにまとめさせていただきたいと思います。
では、議題4について事務局からお願いいたします。
○小野寺障害者雇用対策課長 事務局、障害者雇用対策課長の小野寺です。「その他」として、2点共有させていただければと思います。参考資料4を御覧ください。1点目ですが、昨年来、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会において、様々御議論いただいたところです。その成果をより一層実現に向けて積み重ねていきたいと考えており、特に第2ワーキングにおいて、専門人材の育成・確保について御議論いただいた中で、雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修を創設するという方向性が示されています。これを踏まえ、本件について具体化に向けた検討を進めるために、参考資料4にお示ししています作業部会を設置させていただきたいと考えています。同検討会の駒村座長とも御相談申し上げていまして、主要な検討事項、あるいは参集者についてはお示しているとおりです。また、この検討結果については、同検討会本体でも御議論いただきまして、最後に取りまとまりましたあかつきには、障害者雇用分科会にも御報告させていただきたいと思います。これが1点目です。
それから2点目は、参考資料5でお示しています。全国のハローワークで使っているハローワークシステムと、それから国民の皆様にハローワークの情報等が開かれているハローワークインターネットサービス、これの機能強化を従前からしてまいりました。御参考までに資料7として、平成31年の3月27日に労働政策審議会職業安定分科会で御報告した中身が載っています。若干、機能のリリースの時期に変更がありますが、内容としてはお示ししているような内容で、ハローワークに来所、それから窓口対面相談支援ということを原則としていたものを、国民の皆様の利便性の向上のため、インターネットサービス上に様々な機能を追加、創設しています。
求人者側へのサービスについては、昨年既にリリースしていますが、求職者の皆様に対しても、インターネット上で求職者マイページを開設して、求職登録を完了し、自主的にハローワークインターネットサービス上で検索をした求人に応募をするというような機能の追加を9月21日に予定しております。併せて、職員と個別に相談を重ねてきた求職者に対しては、ご自宅にいながら、電話やオンライン相談をした上で、オンライン上で職業紹介をするというような運用も、限定的になりますが開始されます。以上のようなサービスについて、障害者についても同様にお使いいただくということになります。
ただ、障害者の場合には特に助成金の御活用や、手帳による障害者であることの確認などがありますので、引き続き個別相談などもきめ細かに対応しながら、一方で最終的な紹介に際して利便性向上のためにオンライン紹介の機能も、適宜、合わせて活用していきたいと考えているところです。以上、2点です。
○山川分科会長 ありがとうございました。2点報告がありましたが、御質問、御意見等はありませんか。よろしいですか。特に前者のほうは、先ほどのヒアリングでも支援スキルの重要性ということが何回か強調されていましたので、期待していきたいと思います。ほかにはよろしいでしょうか。
すみません、1点だけ、先ほど議題の3の所で、私から言い忘れたというか確認し忘れたことがあります。資料3-1の裏にありますが、精神障害者雇用トータルサポーター支援実績に関する分析の2番目の○の所で、「事業所訪問など事業所への働きが十分にできなかったこと」とありますが、これは課長の口頭の説明では趣旨が明らかでしたが、働きかけが十分にできなかったということで、事前の私の確認のときにちょっと見落としていました。これは「働きかけ」と訂正させていただきたいと思います。趣旨は先ほどお話がありましたとおりです。すみません。
それでは、ほかに何か特段ありますでしょうか。では、ないようでしたら、本日の議論は終了となりますので、分科会は終了とさせていただきたいと思います。事務局から連絡事項は何かありますか。
○小林障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課課長補佐の小林です。次回の日程については、10月中旬の開催を予定しています。詳細は追って事務局から御連絡をさせていただきます。また、社会保障審議会障害者部会において、障害者の就労支援について今後も議論する予定と聞いております。審議の様子はオンラインで御覧いただけるということですので、具体的な日程や傍聴の方法については、追って事務局より御連絡をさせていただきます。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。それではこれで終了します。大変有益な御議論ありがとうございました。