第328回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 議事録

日時

2021年(令和3年)10月19日(火) 16時00分~

場所

オンライン会議会場
東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
省議室(9階)

出席者

(公益代表委員)
  • 小野 晶子
  • 原 昌登
  • 松浦 民恵
  • 山川 隆一(部会長)
(労働者代表委員)
  • 相羽 迅人
  • 永井 幸子
  • 奈良 統一
(使用者代表委員)
  • 佐久間 一浩
  • 佐藤 英毅
  • 田尻 久美子
  • 平田 充

議題

  1. (1)雇用仲介事業の在り方について(公開)

議事

議事内容
 
○山川部会長 それでは、ただいまから第328回労働力需給制度部会を開催いたします。本日は、労働者代表の仁平委員が所用により御欠席とのことでして、代理で日本労働組合総連合会総合政策推進局長の冨髙裕子様にお越しいただいております。本部会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、オンライン会議として開催いたします。本日は、「雇用仲介事業の在り方について」を御議論いただきます。
では早速、議事に入りますので、カメラの頭撮りの方がおられましたら、ここまでとさせていただきます。それでは、事務局から説明をお願いします。

○高橋補佐 需給調整事業課の高橋です。資料について御説明差し上げます。本日は、事務局から今後の議論の論点についての案をお示しいたしまして、それに対する御意見、コメント、あるいは論点の過不足についての御意見を頂戴したいと思っております。
資料の1ページ目です。論点の案について4点お示ししております。1点目、多種多様な雇用仲介事業が展開されている中で、新たな形態も含めた雇用仲介事業者について労働市場において需給調整機能の一翼を担うものとして位置付け、官民の連携を進めていくことについてどう考えるか。2点目、特に募集情報等提供事業者の位置付けと役割についてどう考えるか。3点目、優良な雇用仲介事業の認定についてどう考えるか。4点目、求職者の安心を確保し、自らが理解・納得して雇用仲介事業者を利用できる環境を整備していくに当たって、募集情報の的確性や個人情報の取扱い、苦情への対応等についてどう考えるか。
2ページ以降は参考資料になります。2ページ目は近年、多様化していく雇用仲介事業者のサービスについて、イメージとしてお示ししたものです。
3~9ページは、多様化する様々なサービスの類型を御説明するものでして、3ページ目は、現行の職業安定法にあります職業紹介についてお示しをしたものです。
4ページ目を御覧ください。こちらも、現行の職業安定法上の委託募集についてお示しをしたものです。
5ページ目は、求人メディアについてお示しをしたものです。求人メディアは、求人企業からの求人掲載の依頼を受け、それを掲載し、求職者はそれを検索、閲覧し、応募をするというサービス形態です。基本的には、現行の職業安定法の募集情報等提供に該当するものだと考えております。
6ページ目を御覧ください。いわゆる人材データベースについてお示ししたものです。人材データベースは求職者の情報を登録いたしまして、それを求人企業に対して提供するというようなサービス形態です。基本的には、現行の職業安定法の募集情報等提供に該当するものだと考えておりますが、6ページの下の図の求職者と人材データベースの間にクローリングという矢印があります。ネット上で公開されている情報を集めてくることを一般的にクローリングと呼んでおりまして、このクローリング機能を活用し、求職者情報を集めてくるといった人材データベースもあります。そういった場合には、職業安定法上の募集情報等提供の定義の1つである求職者の依頼というものがありませんので、そうした場合には募集情報等提供に該当しないサービスも存在はすると考えております。
7ページ目です。いわゆるアグリゲーターと呼ばれるものについてお示ししたものです。こちらは、求人メディアや求人企業において公開されている求人情報を集めてきて掲載をするというサービス形態だと理解しております。それによりまして、求職者側はこの求人メディアの枠を超えて、アグリゲーターが提供する情報を見れば様々な募集情報を閲覧できるという意味で重宝されているメディアの1つだと理解しております。こちらも、図の中にクローリングという矢印がありますとおり、中にはクローリング機能を活用して求人情報を提供するものもありまして、現行の募集情報等提供に該当するサービスもあれば、求職者の依頼がないために現行の募集情報等提供には該当しないサービスもあると考えております。
8ページ目を御覧ください。SNSを活用した雇用仲介事業についてお示しをしたものです。SNSは、求職者や求人企業が自らの経歴や情報を公開して、意思疎通ができるプラットホームとなっております。中には、求人情報を投稿する機能を備えるなど、求人、求職に特化したSNSも存在しており、そういった場合には現行の募集情報等提供に該当するサービスもあると考えております。
9ページです。いわゆるスポットマッチングというサービスについてお示ししたものです。これは、求人企業がコンビニの店員さんであったり飲食のホールのお仕事、こういった短時間や単発の求人を掲載して、求職者がそれに対して閲覧、応募をするものだというように理解しております。基本的には、募集に対して応募があれば、そのまま雇用の契約が成立するサービスになっているというように理解しておりまして、基本的には現行の職業紹介に該当するものが多いと考えております。
10ページを御覧ください。10~14ページまでは、職業紹介と募集情報提供の関係についての参考資料です。10ページが、様々な雇用仲介事業者の把握に関する現行の仕組みについてお示ししたものです。一番左の職業紹介事業につきましては、基本的には許可制であるとともに、年1回事業報告を義務付けております。一方で、右側の募集情報等提供事業は、事前の手続や事業報告、こういったものが現行では課せられていないということになっております。
11ページを御覧ください。上段が、現行の職業安定法における職業紹介と募集情報等提供の定義を改めてお示しをしたものです。下段は、職業安定法に基づく指針の中で職業紹介と募集情報等提供の区分の考え方についてお示ししたものです。
12ページを御覧ください。局長通達におきまして、インターネットを活用した場合の職業紹介と募集情報等提供の区分の考え方についてお示ししたものです。一番上を御覧いただきますと、2つ目のパラグラフですが、「これらを全てオンライン上で行うとしても」「職業紹介に該当するか否かの判断に影響を与えるものではない」というようにお示しをしております。
13ページを御覧ください。職業紹介に関連する過去の判例をお示ししたものです。上段の東京・エグゼクティブ・サーチ事件におきましては、「職業紹介におけるあっ旋とは、求人者と求職者との間における雇用関係成立のための便宜を図り、その成立を容易にさせる行為一般を指称するものと解すべき」というようにされております。これらの2つの判決は、それぞれ平成6年、昭和57年という時代の判決です。現在においては、インターネットの普及という点において、取り巻く環境が変わっているという点は考慮すべき要素の1つだというように考えております。
14ページを御覧ください。こちらは前回の部会においても御紹介をしたアンケート調査の結果です。募集情報等提供事業者等に対して、求人情報の提供に付随してどのようなサービスを行っていますかと、求職者情報の提供に付随してどのようなサービスを行っていますかというようにお尋ねしたものです。いずれもリコメンドが上位に挙がっています。
15ページを御覧ください。こちらは論点の3つ目に関連して、現行の優良事業者の認定制度について御紹介をするものです。一番上の職業紹介優良事業者認定制度というのは、その名のとおり、優良事業者の認定を行う委託事業です。2、3段目につきましては、事業者自らが法令やガイドラインの遵守を宣言していただく仕組みというようになっております。
16ページを御覧ください。今、御紹介いたしました優良事業者の認定制度等についての認知度をアンケート調査したものです。左側が優良事業者認定制度等で、右側が厚労省が開設しております人材サービス総合サイト、これらについての認知度をお尋ねしたものですが、いずれも知らなかったというものが多数というようになっております。
17ページ以降は、論点の4つ目に関連した参考資料でして、17ページは現行の職業安定法における労働条件明示に関する条文をお示ししたものです。第5条の3の第1項におきましては、「求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」というように定められております。
18ページを御覧ください。上段は先ほどの労働条件明示に関連しまして、省令で定められた具体的に明示すべき事項をお示ししたものです。下段は指針において示された内容ですが、「原則として、求職者等と最初に接触する時点までに従事すべき業務の内容等を明示」するというようにされております。したがいまして、募集情報を提供する段階におきましては、これらの事項の明示は必ずしも求められていないことになっております。
19ページを御覧ください。こちらは、現行の職業安定法の募集内容の的確表示に関する条文をお示ししたものです。第42条第1項ですが、「募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければならない」というように定められております。そして、第2項におきましては、「募集情報等提供事業を行う者は」とありまして、最後のほうに「当該依頼をした者に対し、必要な協力を行うよう努めなければならない」と定められております。したがいまして、募集情報等提供事業者につきましては、求職者に対して行う表示に関する特段の規制は今のところないということになっております。
20ページは、求人企業や職業紹介事業者に対して、求人情報としてどのような情報を求職者に提供しているかというのをお尋ねしたものです。先ほど18ページにおいてお示ししました労働条件の明示事項と対応させてお尋ねをしておりますが、おおむね求人情報の段階でこれらの情報については提供がされている状況だというように考えております。
21ページを御覧ください。労働条件の明示の方法について、求人企業と職業紹介事業者に対してお尋ねしたものです。書面での提示が多数になっておりますが、メールやアプリといったものを併用している場合も存在しているという状況が見てとれます。
22ページを御覧ください。人材サービスを利用した際のトラブルについて、求職者の方に対してお尋ねしたものです。一番上が、求人企業の募集条件と実際の就業条件が違ったということで、これが多数となっています。また、下のほうを見ていただきますと、人材サービスの提供をする募集情報が最新の情報ではなかった、応募したら既に求人が終了していた、こういったものも多数となっております。募集情報の内容、あるいは募集の情報の時点の問題、こういった問題が存在しているのではないかと考えております。
23ページを御覧ください。職業安定法におけます個人情報保護の関係の条文をお示ししたものです。これらの規定は、一般法であります個人情報保護法の規定の上に、更に求人者などに遵守を求めるものだと考えております。例えば第5条の4第1項では、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集、保管、使用しなければならない」とされております。個人情報保護法におきましては、目的はできる限り特定し、その範囲内で使用することが求められております。したがいまして、この職業安定法第5条の4にあります「業務の目的の範囲内で」という記載は、個人情報保護法の更に上乗せで求めているものだというように考えております。
24ページを御覧ください。先ほどの条文に加えまして、指針でお示ししている内容も含めて、個人情報の保護に関する事項について整理をした資料です。
25ページを御覧ください。左側が職業紹介事業者と募集情報等提供事業者などに対しまして、個人情報の利用に関して、本人同意をどのように取っているかということについてお尋ねしたものです。濃い青い線が職業紹介事業者の数値、薄い水色が募集情報等提供事業者等の数値でして、両者とも一番上の「利用規約に記載をし、サービス利用をもって同意としている」が一定数存在しています。一方で、「利用規約に記載し、チェックボックスなどで同意を得ている」は薄い水色のほうの募集情報等提供等に多く見られる傾向です。その下の「利用規約に記載し、本人の署名や捺印をもって同意を得ている」は濃い青の職業紹介事業者のほうに多く見られるというようになっております。
右側は求職者の方に調査したものでして、人材サービスを利用した際の個人情報の取扱いについてお尋ねしたものです。一番上の「個人情報の取扱いについて十分理解して同意した」が29%、これが多数というようになっておりますが、一方で、下から2番目、「個人情報の取扱いについて同意を求められた記憶がない」というのも同じぐらいの割合を占めている状況です。
26ページを御覧ください。左側は、苦情の受付をどのように行っているかというのを職業紹介事業者等にお尋ねをしたものです。苦情があった場合には、求職者や求人企業に事実関係を確認している、あるいは電話、メールで受付をするなど、何らかの対応を行っている事業者というのが多数というようになっております。右側は、求職者の方に人材サービスを利用した際のトラブルへの対応についてお尋ねしたものです。一番下の「対応せず、そのままにした」というのが多数となっている状況です。駆け足ではありましたが、資料の説明としては以上でございます。

○山川部会長 ただいまの説明に対する御質問、御意見等がございましたら、ZOOMの「手を挙げる」機能を使うか、画面上に映るように挙手をお願いいたします。冨髙様、どうぞ。

○冨髙様(仁平委員代理) 代理ではございますが、御発言の機会を頂きましてありがとうございます。今、御説明いただきました今後の議論の論点について、4点ほど意見を述べさせていただきます。
1点目は論点1に関わることです。現在、多くの労働者がインターネット上の雇用仲介事業を通じて就職、転職をしていますが、内容的には玉石混淆の情報がインターネット上に掲載されている状況だと思います。そうした点を踏まえれば、労働者が雇用仲介事業を安心して利用できることが重要ですので、業態を問わず提供されている情報の質を担保することが、まず重要だと考えております。したがって、今般の論点となる新たな形態も含め、雇用仲介事業者は需給制度機能の一翼を担うものとして、一定の責任を負うべきだと考えておりますし、官民連携の上、労働市場における健全な需給調整機能の発揮につながるように取り組んでいくべきだとに考えているところです。
次に、特に募集情報等提供事業者についてです。これは先ほど御説明いただいたように、職業安定法の第4条第6項で定義されていますが、募集情報等提供に類似した事業を行っているにもかかわらず、この定義に該当しないような雇用仲介サービスも出てきていると認識しています。平成6年の最高裁判決にある「職業紹介におけるあっ旋とは、求人者と求職者の間における雇用関係成立のための便宜を図り、その成立を容易にさせる行為一般を指称するものと解すべき」という指摘を踏まえれば、募集情報等提供事業者に対して現在は指針による指導、助言にとどまっているわけですが、ほかの雇用仲介事業と同程度の法規制が必要ではないかと考えています。
続いて、論点4の、募集情報の的確性の確保についてです。職業紹介事業においては労働条件の明示が求められている一方で、募集受託者を含む労働者の募集を行う者については、的確な表示の努力義務が課されているのみであり、募集情報等提供事業者については的確な表示の協力にとどまっています。22ページの求職者調査では、「募集条件と実際の就業条件が違った」という回答の割合が多いことを踏まえれば、労働条件を明示する時点の在り方や、協力要請で十分なのか、的確な表示で足りるのかといった点を含めて、規制を強化する方向で検討するべきではないかと考えています。
最後に苦情処理についてです。最終ページで御紹介いただいたように、事業者では何らかの対応をしているとのことですが、求職者のほうを見てみますと、3割超の方たちは、困り事があっても「対応せず、そのままにした」という回答が多くなっています。こうしたことを踏まえますと、労働者派遣等において苦情処理窓口の設置、対応方法の明確化などが定められておりますので、同様のルールを定めるといったことも検討すべきではないかと考えているところです。以上です。

○山川部会長 資料1の1ページ目の1番目、2番目、4番目の論点についての御意見を伺ったところです。では、永井委員、お願いします。

○永井委員 私からは、論点2の「特に、募集情報等提供事業者の位置付けと役割についてどう考えるか」のAIによるリコメンド選別・加工について、2点ほど申し述べます。
まず、雇用仲介事業者によっては、求職者の属性や希望などを入力するとAIが自動的にお勧めの求人情報を提示してくれるというリコメンド機能を有する所もあると認識しております。御提示いただいた資料の11ページ目に、下の告示のイにおいて、「提供される求職者に関する情報若しくは求人に関する情報の内容又は提供相手について、あらかじめ明示的に設定された客観的な情報に基づくことなく当該者の判断により選別又は加工を行うこと」ということが、職業紹介事業者の許可が必要な行為として挙げられておりますが、AIによるリコメンド機能が「客観的に」なものに該当するかどうかについて、検討が必要なのではないかと考えております。
2つ目です。AIは、アンコンシャスバイアスを防止する観点から有用だと認識する一方で、AIに学習させるのは人間であり、その際に偏った情報が用いられれば差別を助長しかねないと考えております。以前、この部会で報告がありましたが、労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会の議論の中でも、AIのレベルも様々で、次々と登場していろいろ使われているといったことが委員より指摘されていたと思います。本日の資料の14ページでも、多くの事業者がリコメンド機能サービスを用いているということですので、このリコメンドをどう考えるかについても検討が必要であると考えております。

○山川部会長 1ページの2番目の論点で、特にAIを利用したリコメンド機能についての御意見を伺いました。続きまして、平田委員、お願いします。

○平田委員 全般的に論点について3点申し上げたいと思います。
まず1つ目です。御存じのとおり、人口が減少していく中、労働生産性の向上が必要であり、成長分野への労働移動ということも重要になってくるということから、官民が連携して、労働市場全体のマッチング機能の強化を図ることは不可欠だと考えています。
次に2つ目です。マッチング機能の強化という観点からは、近年活用が進んでいるインターネット等により募集情報等を提供している事業者の更なる発展を期待したいと考えております。
最後に、3点目です。多種多様なサービスが乱立している状況にあると理解しております。求人者や求職者が安心してサービスを利用できる環境整備が不可欠なのではないかと考えております。事業者、求職者、求人者等の意見を十分に踏まえて、検討していくことが必要なのではないかと思っております。

○山川部会長 全般的な御意見を頂いたところです。相羽委員、お願いいたします。

○相羽委員 私からは、論点3の優良な雇用仲介業者の認定について御検討いただきたい点を申し上げます。今の発言とも被る部分がありますが、御容赦いただきたいと思います。
優良事業者を認定する仕組みそのものについては、事業の健全な発展を促す観点から有効なスキームと考えております。その一方で、信頼できる事業者、サービスへのニーズは高いですが、既存の認定制度については、認知度が非常に低いという実態が出ております。周知方法の改善はもとよりそもそも認定制度や宣言自体の見直しが必要ではないか、実効的な方法についても検討すべきではないかということを提起させていただきたいと思います。

○山川部会長 3番目の論点について、周知のみならず、制度自体への踏み込んだ検討もすべきではないかといった御意見であったと思います。佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員 私の所も、いわゆるインターネットを利用した人材サービスは活用させてもらっているのですが、今後こういう分野は、先ほどAIというお話もありましたが、イノベーションが更に進んでいってほしいと思います。そうすると、既存のそういうサービスを提供している会社、それぞれ独自の強みを磨いていくことが考えられますし、新しい技術が導入されるということで、新規参入などもあるかもしれません。そういうことによって、求人者、求職者どちらにもニーズに合う人とか仕事を、より精度高く、スピード感を持って結び付けられるようなサービスということに進化していくということは、誰にとってもいいことだろうと思いますので、そういうことを促進するような方向感があるといいかなと思うところが1点です。
一方で、過去3年間の利用において問題や困りごとがある人というのも、とても多いという印象はあります。なので、この部分については、是非解決する案を検討して、導入したほうがいいかなと思います。そこに、先ほどの論点にもありましたが、優良な事業者の認定が高い効果を見込めるということがあるのであれば、そこは検討を進めることは大切かなと思います。以上の2点です。

○山川部会長 イノベーションの促進を図りつつ、問題点の改善を図るというような御意見と伺いました。では、佐久間委員、お願いします。

○佐久間委員 私も先生方と同じように、これからのビジネスにおいて、AI、インターネットを使ったサービスというのはどんどんいろいろな形態が出てくるだろうと言われまして、産業の芽というか、新しい機能的なものは潰してはいけないと思います。
ただ、いろいろな事業者の許可とか実態把握というのは、ここまでくると必要なのだろうと考えます。こういう事業者の方々、仲介ビジネスを行っている相手方というのは、求人者であり求職者であるという、ここには事業者のほうも密接に絡んでくるわけですので、安心して信頼して依頼ができるという事業者を把握するということは必要なのではないかと思います。その捉え方についても、民間が行うというよりは、国なり地方でもいいのですが、責任ある機関にちゃんとつかんでいただきたいと思います。
今、実際に職業紹介ビジネスを事業で行っている所と、こういう許可などを取らない所も多数あると思うので、今取っていらっしゃる方、これは許可を取っているわけですが、これがほかの事業者は登録だけでいいのか、併用になっている普通の紙媒体とか、そういものからネットを使われている場合というのは許可でいいのか、登録でいいのか、認可とか、そういうランク付けというか、そういうことをこれから検討していかなければいけないのだろうなと思います。これが1つ目です。
2つ目については、ハローワークにはない使い勝手のよさというのが、募集情報等提供事業者は有しているわけです。先ほど資料1でも職業紹介事業者、そして委託募集の関係は従来型と言ってもいいのかもしれませんが、求人メディアなり人材ベース型については、求人側から見る、求職側から見るという、その捉え方によって、どういう形態になっているのかということがなかなか分かりにくい、また複合化しているところもあると思いますので、そういうものの実態がどういう分類になるのか、又は併用しているのか、そこはつかんでいただきたいと思っております。
3番目の優良事業者の認定ですが、ホームページを拝見すると委託という形になっています。もちろん委託ですから、厚生労働省がやらなければいけないところを募集をされて、委託先にお願いしているわけですが、厚生労働省ももう少し認定事業者の周知というか、先ほど佐藤委員もおっしゃっていましたが、全体を見直していくとか、今は職種ごとに分かれてしまっているところがありますので、ある程度一本化する必要も出てくるのかなと考えています。
最後の点について、苦情処理の対応というのは、求職者、求人者問わず必要だと思います。単一のものというよりは、例えば電話とメールとか、両方ともできるような機能を持ったりというような利便性を図っていただきたいと考えています。

○山川部会長 論点全般にわたっての御意見を頂きましたが、特に募集情報等提供事業者等についての把握の必要性等について、踏み込んだ御意見を頂いたかと思っております。では、田尻委員、お願いします。

○田尻委員 何点か意見を申し上げます。まず、論点の1点目に挙げられている多様な雇用仲介業者との官民連携についてですが、人材不足は中小企業の重要課題であることから、是非積極的に官民連携を進めていただきたいと思います。政府として、需給調整機能の安全性や信頼性を確保する意味で、コンプライアンスや個人情報保護などの必要な対策を講じるべきだと思いますが、一方で過度な規制や義務、制限を課すような対策は避けていただきたいと思います。
2点目の論点についてです。募集情報等提供事業者の位置付けと役割の考え方についても、同様に、適切な求人情報は積極的に発信されるべきであることから、過度な制約は避けていただければと考えます。業界団体や企業の支援機関など、求人情報の発信を主たる業務ではなく、副次的なサービスとして行っている組織も多くあると思いますので、事業者の把握に取り組んでいただくに当たっては、何を目的に、どこまでの情報を取り扱っている事業者の把握をするのかということを整理することが必要ではないかと考えています。
最後に、優良事業者認定制度についてです。こちらはまだ認知率が低いということもありますので、制度の拡大や周知の強化に取り組んでいただけたらと思っております。仲介事業者にとって、厚生労働省から認定を受けているということは信頼の確保に大きく役立つと思います。ホームページのリニューアルであったり、ハローワークでの広報活動の強化など、事業者や求職者に対する認定制度の周知に、より一層取り組んでいただきたいと思います。また、そういった認定の取得につながるようなインセンティブについても、何か御検討いただければ好ましいかなと思います。

○山川部会長 政府の役割への期待とともに、過度な制約を避けること、把握をする場合に、その対象をどう考えていくのかといったような点の御指摘を頂きました。優良企業の認定のインセンティブの検討の必要性についても御指摘を頂きました。では、奈良委員、どうぞ。

○奈良委員 私からも制度全般についての意見を申し述べたいと思います。募集情報等提供事業者なのですが、ここが一定、指針等で指導ができるとは言っても、実際はなかなか行政の側で事業の実態を把握することは難しいと、今回、全体の3割程度しか事業状況の把握が可能な所はなかったという調査も示されています。しかも、ここが昨今のITの進化で、多くの求職者がこういった業者を利用しているわけですから、安心して利用できるということ、情報の的確性の担保は緊急の課題だと思っています。
それで、求職者のアンケートでも、「実際に行ってみたら話が違っていた」という方が3割、4割います。肝心の給料とか働く場所、あるいは業務の内容ですら違っていたという回答も出ていますから、ここはどういう形でか、この的確性を担保させる必要があると思います。雇用の仲介にとどまらず、今は雇用によらない働き方というのでしょうか、フリーランスのマッチングも非常に増えていまして、私ども建設業の中でも請負のマッチングがあります。ひどいサイトになると、紹介するだけで、あとはそれぞれの自己責任で契約を取り交わしてくださいというような所もあるわけで、なかなか怖くて利用ができないという現状も実際としてはあるのです。こういったもの、取り分け雇用仲介についてはきちんと実態をつかんでいく、そのための一定の法規制が求められているのではないかと思います。
それと同時に、求職者側というのは非常に立場が弱いです。サイトに示された情報が、雇用契約なのか請負なのか、そこについても探す側からするとよく分からないままで応募している状況もあります。しかも、個人情報の取扱いについても、同意しなければ利用できない仕組みになっているわけですから、圧倒的に立場が弱いわけです。この求職者の権利、人権や個人情報を守るための何らかの仕組みが求められると思っています。

○山川部会長 募集情報等提供事業の把握の必要性、的確性の担保、それからフリーランスあるいは個人情報の問題についても御提起いただいたところです。では、小野委員、お願いします。

○小野委員 2番目と3番目の件に関しての意見です。まず、募集情報等提供事業者については、先ほど来、皆様からもお話がありますが、基本的にはインターネットを使った事業について考えていかなければならないのだろうなと思っております。というのは、これまでこの募集情報等提供事業者は、紙であったり情報誌という形で一方的に情報を発信するというような形態だったものが、個人の情報をインターネット上で得て、それを基にリコメンドを出すという、かなり能動的な形に変わってきていると思っています。ですので、その辺の職業紹介の事業との狭間が曖昧になってきているのではないかというようなところから、こちらについては、特にインターネットでIT上のリコメンドを介するような事業については、何らかの枠を掛けるというか、そのようなことが質を担保するためにも必要ではないかと思っております。
それに付随するのですが、優良な雇用仲介事業の認定について、今ある職業紹介事業の優良認定が思うように進んでいないということもありますし、ここの部分をいい方向に変えていかなければいけないということがありますが、募集情報等提供事業者の属性、前回の調査の中でも職業紹介の許可を受けている所が74%と出ております。今回の調査は、少しサンプルが少ないので、本当に74%なのかというのはもう一度検討が必要なところではありますが、そのように、いわゆる大多数が職業紹介の許可をもって募集情報等事業を行っているのであれば、同時にそちらにも優良の認定の枠を掛けるというような、少し包括的なやり方で認定の方法を考えていくのも1つかなと思って、今回の話を聞いておりました。

○山川部会長 2番目の募集情報等提供事業者に関しては、リコメンド機能、クローリング機能といった、インターネットを活用した仕組みについての検討の必要性を強調された御意見と受け止めております。あと、優良事業者の認定の仕組みの再検討という御意見も頂きました。では、原委員、どうぞ。

○原委員 大きく3つ申し上げます。論点の1つ目についてですが、官民の連携、いわば総論ですが、これはもちろん重要であると思います。民間が多様なサービスを工夫できるようにしながらも、基本的なルールとして何が必要かということを皆で議論していくことが重要だと感じております。
2点目は、論点の2つ目の募集情報等提供事業者についてです。先ほどから皆さん御意見をおっしゃっていまして、私も申し上げたいと思うのですが、現在、この募集情報等提供事業者について、特に問題がとても多いというわけではないかもしれません。他方で、何かあっても、行政指導などの行政によるコントロールの対象外という事業者が増えていくのは問題だと思いますので、最低限のルール作りは必要だと思います。ただ、現在、募集情報等提供事業者については許可制、届出制ではないので、行政としても実態を把握し切れていないという面があります。だからといって、すぐに届出制などを導入するというのは影響が大きいため、募集情報等提供事業者に関しては、段階的に考えていくことが重要ではないかと考えます。
例えば、何かあったときに、最低限行政から連絡ができる、連絡が取れるということは必要だと思うのです。そこで、現行の募集情報等提供事業者に当てはまるかどうかは問わず、例えばWebサイトなどを使って連絡先を必ず開示するといったことは、まず先行してルール化しておくということ、同時に中期的、長期的な視点で、募集情報等提供事業者の現在の定義の見直しや、届出制、許可制といった議論の余地はあると思います。こういった検討を行っていくということです。例えば指導ができる仕組みを作るとか、そういったことを考えていく。まず、すぐに手を付ける問題と、中期的、長期的な課題を意識して、募集情報等提供事業者については考えていくことが必要だと考えます。
3点目は、論点の4つ目の所です。今後のルールと関係します。募集情報の的確性とか苦情への対応ももちろん重要ですが、これらは求職者である会社側に様々な問題があるといったことも要因にあると思うのです。ですから、まず雇用仲介事業との関係では、個人情報を重視して考えていくのがいいのではないかと考えます。個人情報が漏れれば、大きく問題になりますので、個人情報について、まず焦点を当ててルールを考えていくということが望ましいのではないかと考えます。

○山川部会長 事業者の把握について、段階的なという観点から具体的な御提案も頂きました。あと、個人情報を取り扱うかどうかという観点を重視すべきではないかという御意見も、4番目の論点等に関して頂いたところです。それでは、松浦委員、お願いします。

○松浦委員 提示頂いた論点に関して、私も幾つか意見を申し上げます。まず、募集情報等提供事業者の適正化については、先方に行ってみると求人情報と違ったとか、求人されているはずなのに既に終わっていたといったことにならないよう、募集情報の質を上げていくことが最終的な目的なのだと思います。
そのための手段としては、事業者の把握や管理、適正化に向けたインセンティブなど、いろいろあると思うのですが、事業者の把握や管理は相当負荷を伴うこと、把握や管理を強化することによる新しい事業創造への弊害も懸念される中で、最低限必要な把握や管理、中長期的に進める把握や管理を峻別し、段階を踏んで検討していくという原委員の御意見に、私も賛同いたします。
手段のもう1つとして挙げさせて頂いた適正化に向けたインセンティブについては、既存のインセンティブが十分に効いていない点が問題だと思います。特に優良事業者認定制度の認知度が低いという問題については、重要な論点の1つになろうかと思います。また、啓発の仕方だけではなくて制度にまで踏み込んでというような御発言もありましたが、制度に踏み込む上で、評価項目の重点を適正化にシフトさせることも、1つ可能性としてあるのではないかと思いました。
もう1つ補足させていただくと、募集情報を適正化する上で、事業者単位での規制を検討するのか、募集情報単位での規制を検討するのかについても、議論の余地があるように思います。つまり、募集情報には、請負や位置付けがあいまいなものも含め、多様な情報が含まれている中で、これらを一括りにして同じ温度感で規制を考える必要があるのかという問題意識です。雇用を伴っている募集情報を取り出して規制を考えるのか、あるいは、個人情報を伴う募集情報に対する規制を考えるのか。要は事業者単位というよりも、募集情報単位で規制を検討するというアプローチもあるのかもしれないという意見です。

○山川部会長 募集情報等提供事業の適正化という観点から、把握の仕方についての御意見、インセンティブの仕組みについての御意見、もう1つは、情報の内容に着目した検討の必要性ということで、これは2番目の論点と4番目の論点が若干リンクしているかもしれないという感じがいたしまして、例えば個人情報という観点に着目して、2番目の論点を考えていくというようなことも含まれているのかなとお伺いしたところです。
御希望の方から、一通り御意見を頂きまして、事務局で提示いただいた4つの論点、これらそれぞれについて、これから検討が必要であるということについては、おおむね御異論がなかったようにお伺いします。その中で、更に具体的詰めるべき点、あるいは相互の論点の関係性等について、種々御意見を頂いたところです。これまで出された御意見を踏まえて、更に何か追加的な御発言はございますでしょうか。小野委員、お願いします。

○小野委員 第1回目の議論のときに、一言申し上げたと思うのですが、これは使う側の労働者の教育というか、意識の向上が重要になってくると思うのです。これだけインターネット上に情報が溢れている時代ですので、ここをうまく泳いでいけるような知識、ノウハウを得てもらいたいと思っています。特に、若年の人たちにとっては死活問題になりますので、できれば高校であったり、大学であったりという所で、就職活動の前にでも、こういうようなマークが付いている、ネット上で検索をするのだったらこのようにやりなさいとか、やったほうがいいよというような指導が非常に重要になってくると思いますので、その辺を何とか労働者に対してアプローチするような事業も、1つあっていいのかなと思っております。

○山川部会長 言わば労働市場リテラシーのようなことを、教育的にも推進していくという御意見と伺いました。一方で、どのような事業をやっているかということを見やすいようにするという点と、恐らくリンクしているお話なのかなとお伺いしたところです。ほかに何か追加的に御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
先ほど申しましたように、事務局から提示のあった論点について取り上げるということについては御異論はなかったように思います。また、特に総論的な1番目の論点の重要性についても、ほぼ御意見は共通していたところが多かったのではないかと思っております。すなわち、新しいものも含めた仲介ビジネスの社会における重要性、あるいは労働市場における重要性ということの認識で、その上で、これを更に適正化していく、他方で発展も促進していくというような観点が、それぞれの委員の皆様方の御意見から伺えたように思います。
ほかに特段にございませんでしたら、本日の議論は、ここまでとさせていただきたいと思います。それでは、事務局から次回の部会の日程等を含めて、連絡事項はございますでしょうか。

○笠松補佐 ありがとうございました。次回の部会の日程については、追って事務局から御連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

○山川部会長 ありがとうございます。それでは、以上で第328回労働力需給制度部会を終了いたします。本日は活発な御意見を大変ありがとうございました。皆様、お疲れさまでした。終了いたします。