第29回労働政策審議会人材開発分科会 議事録

人材開発総務担当参事官室

日時

令和3年10月20日(水)10:00~12:00

場所

WEB会議

議題

  1. (1) 令和4年度予算概算要求の概要について
  2. (2) 今後の人材開発政策について(「リカレントガイドライン(仮称)」の策定等)

     

議事

議事内容

○武石会長  おはようございます。それでは定刻となりましたので、ただいまから第29回労働政策審議会人材開発分科会を開催いたします。本分科会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、労働政策審議会運営規程第3条第1項に基づき、オンライン会議の開催といたします。
 本日の出欠状況ですが、公益代表の玄田委員、堀委員、使用者代表の増田委員が御欠席です。なお、増田委員の代理として、日本・東京商工会議所産業政策第二部担当部長の杉崎様が出席されております。よろしくお願いいたします。
 議事に先立ち、配布しております委員名簿のとおり、本開催より労働者代表委員として、岡野委員、篠原委員、冨髙委員が新たに就任されましたので、それぞれ御挨拶をお願いいたします。それでは、岡野委員、お願いいたします。
○岡野委員  今回より委員に拝任いただきました自動車総連の岡野と申します。本件に関しては余り詳しくありませんが、皆様とともに意見交換することで、いい議論を進めさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○武石会長  よろしくお願いいたします。次に、篠原委員お願いいたします。
○篠原委員  おはようございます。基幹労連の篠原です。これから皆様と一緒にいい議論ができればいいかなと思っておりますので、精一杯やらせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。以上です。
○武石会長  どうぞよろしくお願いいたします。それでは、冨髙委員お願いいたします。
○冨髙委員  おはようございます。連合の冨髙です。前任の仁平同様、どうぞよろしくお願いいたします。
○武石会長  よろしくお願いいたします。それから、事務局についても異動がありましたので、紹介させていただきます。岡崎大臣官房審議官、黒澤人材開発総務担当参事官、宇野人材開発政策担当参事官、川口海外人材育成担当参事官、以上です。
 それでは、議事に入ります。議題1、令和4年度予算概算要求の概要についてです。内容について、人材開発総務担当参事官より資料の御説明をお願いいたします。
○黒澤参事官  総務担当参事官の黒澤と申します。改めまして、どうぞよろしくお願いいたします。私からは、資料1を用いて、私ども人材開発統括官部門における、令和4年度の概算要求の概要について御説明申し上げます。まず、資料1の1ページを御覧ください。令和4年度概算要求総括表というものがあります。私ども人材開発統括官部門の来年度、令和4年度の概算要求額については、この表の中央の列の一番下にあるように1,811億円ほどとなっていて、今年度、令和3年度の予算額からは251億円ほどの減額となっています。減額の要因としては、表の少し上の部分にある労働保険特別会計の雇用勘定について、雇用保険二事業の財政が雇用調整助成金の特例措置等によって、現在大変厳しい状況にあります。そういった状況を踏まえ、それぞれの事業の執行状況等を踏まえながら概算要求額を削減しているといったところです。
 一方で、ポストコロナに向けた新規学卒者支援や、デジタル分野における人材育成の強化に関する予算、あるいは外国人技能実習生に対する相談支援体制の強化に関する予算、こういったものを重点化しながら必要な予算を要求しています。
 以下、資料の2ページ以降を用いて、概算要求の概要について御説明申し上げます。資料の2ページを御覧ください。第1、ポストコロナに向けた再就職・人材育成の支援です。まず1、求職者支援制度による再就職支援として、やむを得ず離職された非正規雇用労働者の方々等の再就職を促進するため、求職者支援訓練について、引き続き来年度も推進していくこととしています。
 2、新規学卒者等(専門学校生等)への就職支援として、新卒応援ハローワーク等に就職支援ナビゲーターを新たに配置して、特に新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けている分野、例えば観光分野など、そういった分野に就職されようとしていた専門学校生の方々、あるいは未就職卒業者の方々等を中心として就職支援を強化していきたいと考えています。
 3、デジタル分野等の新たなスキルの習得に向けた職業訓練の強化です。IT分野の訓練コースの設定を促進するために、IT分野の資格取得を目指す訓練コースについて、訓練実施機関に対する訓練委託費等の上乗せを行うこととしています。また、中小企業におけるDX人材育成を推進するということから、全国の生産性向上人材育成支援センターにおいて、新たにDX人材育成推進員を配置することとしています。
 4、雇用と福祉の連携による離職者への介護・障害福祉分野への就職支援として、職業訓練に職場見学や職場体験を組み込む場合に、訓練委託費の上乗せを行うこととしています。
 5、ジョブ・カードの活用等を通じたキャリアコンサルティングの普及促進として、キャリア形成サポートセンターを通じて、労働者の方々に対するオンラインや土日夜間を含めたキャリアコンサルティングの機会の提供、あるいは、企業の皆様に向けて、企業内で定期的にキャリアコンサルティングを行うセルフ・キャリアドックの導入支援を強化していくこととしています。また、ジョブ・カードについては、引き続きデジタル化に取り組ん でいき、マイナポータルとの連携を図っていくこととしています。
 続いて、資料の3ページを御覧ください。第2、多様な人材の活躍促進です。まず1、就職氷河期世代の活躍支援です。政府においては、令和2年度から就職氷河期世代支援プログラムに基づき、3年間集中的に取り組むこととされています。(1)の地域若者サポートステーションにおける支援、(2)の資格取得の支援、(3)の都道府県プラットフォームを活用した支援について、引き続き取り組んでいくこととしています。
 2、精神障害者等の多様な障害特性に対応した就労支援の推進です。障害者職業能力開発校における職業訓練のほか、一般の職業能力開発校においても精神障害者の方々等の受入体制を整備していくこととしています。
 最後3、外国人技能実習生に対する相談・支援体制の強化です。制度の適正な運用を図るため、外国人技能実習機構において監理団体や実習実施者に対する実地検査等を引き続き行うほか、技能実習生からの相談に的確に対応するための体制を拡充していくこととしています。以上が資料1、来年度の人材開発統括官部門における概算要求の概要です。説明を終わります。
○武石会長  それでは、ただいまの御説明に対する御質問、御意見がございましたら、Zoom機能のリアクションから「手を挙げる」マークを押していただいて、指名された方はマイクをオンにして御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。では、松浦委員、お願いいたします。
○松浦委員  2点、要望を申し上げます。雇用調整助成金などの支出の増加により、雇用保険財政が大変ひっ迫しているという中で、今回の人材開発施策に関わる概算要求にも影響が出ていることは承知しております。しかし、コロナの影響で今後、雇用情勢の見通しが立たない状況の中で、若者や求職者など支援を必要とされている方々への就労支援、あるいはスキルアップにつながるような職業訓練は、これこそこれから大事なものであおりますので、是非この施策が後退することがないようにお願いします。
 2点目は、就職氷河期世代への支援、3か年の支援プログラムが最終年度になります。今回の概算要求における関連予算では、引きこもり対策に重点的に措置されているとお聞きしています。例えば、地域若者サポートステーションによる就労支援、あるいは、資格取得に向けた支援も重要だと思いますので、是非、目標達成に向けて課題を精査していただきながら、就職氷河期世代の当事者の希望に寄り添った支援を展開していただきますようお願い申し上げます。以上です。
○武石会長  ありがとうございます。手が挙がっている方がいらっしゃるので、まとめて御意見、御質問を聞いて、事務局から答えていただくということにしたいと思います。では、宮田委員、お願いいたします。
○宮田委員  ANAホールディングスの宮田です。御丁寧な説明、ありがとうございます。ポイントを2つ、先ほども御意見がありましたとおり、雇調金の財源の関係で執行状況を見ながら削減ということではありますが、やはりポストコロナの一番大切なタイミングのところということですので、御報告いただいたとおり、きちんとしたポイントとなるところに対応されるということを引き続き見ていきたいと思っています。ただ、その中で今回、御説明いただいたとおり、ポストコロナの状況を見た上でのポイントを置いた対応がされているのではないかなと思っています。1つは、コロナの影響で社会情勢が変わる中で、業界を含めた人の動きというのは大きく変わってきていると思っています。
 その中で、例えばデジタル人材のところは、どの会社も今かなり人材確保に困っている所があって、そういう所にきちんと対応することで新しい分野を産んでいくということと、デジタルに関しては知識とか技能だけではなくて、多分いろいろなものをつないでいったりとか、全体を見通してコントロールしていくというような、専門知識だけではない多くの能力が必要とされると思っております。そのためにDX人材、真の人材育成のために様々な対応が今後必要になってくるのかと思っています。
 もう一点は、コロナの影響の中で新たな人材分野などが出てくる中では、そういう意味では5番にあるようなキャリアコンサルティング機能というのを就労者側にも最新状況をインプットする、また企業と結んでいくということで様々な施策と、正にコロナによって変わってきた環境をいかに周知して、うまく人の流れを作っていくかというところがこの組合せですごく大切になるかなと思っております。私からは以上です。
○武石会長  ありがとうございました。では、海老原委員、お願いいたします。
○海老原委員  おはようございます。予算全体を見ると非常にバランスが良くて、IT化とリモート対応と外国人と非常に頑張って新しいことをやられているので私は評価しているのですが、偉そうですみません。ただ、やはり一番嘆かわしいのは就職氷河期世代です。全体予算のうちの2割がこの小さな年代に特化されて入っているということになるのですか、この1、2のを合わせた400億円の中に。これはちょっと納得がどうしてもいかないのです。就職氷河期世代の話だと玄田さんが一番詳しいと思うのですが、もともと玄田さんとオオタさんの論文に書いてあったのは、日本の場合だと就職の年によって差が余りにも付いてしまうと。海外だと5年ぐらいで解消されるものが日本だと10~15年掛かると。つまり、30代中盤まで差が出てしまうという話が出ているのです。そのとおりで、だから、彼らが言っているのは30代中盤には就職氷河期というものは全く関係なくなるというのが、マクロ的観点からの提言だったわけなのです。
 実際に見てもらうと、2018年の時点で40代前半、いわゆるロスジェネ世代の非正規というのは210万人いるのです。でも、210万人のうち男性は31万人で女性は179万人、これは年代の問題ではなくて、ジェンダーの問題のほうが圧倒的に大きいということが分かっているのです。さらに、179万人の女性のうちの140万人が主婦です。つまり、これは性別役割分担のほうが圧倒的に大きくて、31万人が男性という問題に関しては、他の年代と全く差が付いていません。むしろ、その前の世代が40代だったときのほうが非正規の数は多いです。ということで、就職氷河期という問題は、余りこのデータ的には出ていないのです。ここが2018年で、つまり、起点になる3か年の初めの年でデータをちゃんと調べれば、こういうような全く問題がないという状態だったのにもかかわらず、3か年お金を使っていると。これが1つ目の話です。
 2つ目は、私はこの商売をやっている関係でジョブカフェやサポステに呼ばれて、総会に呼ばれて話すことが多くて、そこで現場の人たちと話をすごくするのです。私は2016年に島根にサポステで呼ばれて2017年が岡山で、18、19が和歌山で20年が山梨で、今年は滋賀と今月は岩手に行ってきますが、そこで言われる現場の話を聞いておいてほしいのです。特に、これは厚労省に関してかなりフラストレーションがたまっています。なぜたまっているかというと、言葉は悪いのですが“出がらし”だと。本当に頑張りに頑張って、つまり、就職できる人はみんな就職していると。ほかの世代にももっとお金を使いたいし、ほかの世代にももっとサポートを広げたいのに、就職氷河期という名前が付いていることで随分勘違いしてしまうことが出ると。無駄なこともかなりやっている、だから、就職氷河期世代向けのセミナーとかいうのとか、本当だったらほかにお金を使うべきなのにここに使っていると。
 さらに、今どうしているかというと、アベノミクスの頃、かなり景気がいい頃に正社員に随分なっていったと。その状況は後でデータで示しますが、なっていった結果どうなったか、今なれていない人はどうなっているかというと、障害者手帳を取ってもらって社会不適合の方を精神障害者枠として採用する、こういうことまでやっている状況なのです。本当にほかの世代にもっと回したほうがいい金がここにすごい使われていると。実際に就業構造基本調査の2017年版で見ていますが、相当古いもので見ていますけれども、大卒後に何年掛かって正社員になったか、大卒者だけです。大卒者だけで、大卒後1~3年掛かってなった人、2000年卒の人で4万3,000人もいます。3~5年卒の人が1万3,000人おります。5~10年卒が1万6,000人、10年以上たってからなった人が1万1,800人もいます。
 こういう状況で、就職氷河期世代というのは全然就職できなかったわけではなくて、連綿と2017年までの間で8万4,700人も正社員になっているというのです。にもかかわらず、ここにいまだに100億円近い金が使われているということが納得いかないです。3か年だから今年やるのはしようがないですが、どの世代にも就職困難者というのはいるのですよ。どの世代にもいるのだから、就職氷河期ではなくてどの世代向けのもっと広いものに使ってほしいです。でなければ、先ほど話があったとおり、予算が減っているからほかができないというところに対してちゃんと回すべきだと思っています。これは私の意見です。何かいろいろ私に対して言うことがあったら、それに対して反論させてもらいます。これは質問ではなくて、意見として言っています。よろしいですか。私はこれだけです。
○武石会長  よろしいでしょうか。ありがとうございました。では、杉崎様お願いいたします。
○杉崎部長(増田委員代理)  ありがとうございます。商工会議所でございます。予算概算要求のデジタル分野等の新たなスキル習得に向けた職業訓練の強化についてです。中小企業においては生産性の向上が喫緊の課題である一方で、このデジタル化を促進するための人材やそのためのノウハウが、中小企業では非常に不足しているのが実態です。そうした中で、この概算要求の中で、全国の生産性向上人材育成支援センターにDX人材育成推進員を配置して、中小企業におけるDX人材の育成を図る旨が記載されておりますが、こうした取組には大いに期待をしております。是非とも、関係団体と連携して幅広く周知をしていただきまして、利用を促進していただければと思います。
 また、JEEDがやっております生産性向上訓練についても非常に利用が進んでおり、評判がいいと伺っております。受講者数、受講事業所数ともに計画を上回るような実績を上げていらっしゃると聞いております。中小企業にとって生産性向上は喫緊の課題でありますので、是非、中小企業の生産性向上支援策については、十分な予算を確保していただきたいと思います。
 また、外国人技能実習生に対する相談支援体制の強化についても、非常に重要な取組であるかと思います。機構において、是非、的確に対応していただきたいと考えます。以上です。
○武石会長  ありがとうございます。では、早川委員、お願いいたします。
○早川委員  御指名ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私のほうからは3つお伺いしたいのですが、まず1点は、外国人技能実習生に対する支援としての予算投下、これはとても大切なことと考えます。今般、コロナ禍の影響を受けて、本人都合離職も含めて、多くの離職者を出す経験をしました。その中で、外国人技能実習機構等によるサポート体制の拡充が大変必要になっています。外国人技能実習機構には、大変な中だとは思いますが、そういった離職者の再マッチングをより効果的にできるような職業紹介事業者の許可の取得、そして、厚生労働省との連携の中でデータをうまくいかしていく方策を、この予算の中から検討していただければと思っています。今般、こういったコロナ禍の中の技能実習生の離職者に対し、出入国在留管理庁では職種を変えて、農業などの人手不足分野たる特定技能分野に移し変えるという方策を取っていますが、緊急で仕方がない、緊急な対応が必要だという点は十分に認めますが、一方で、技能実習制度の本旨からすると、技能実習の継続という方策も十分に措置する必要があり、そうした中では、外国人技能実習機構、そして厚生労働省が職業訓練機関の活用も検討するなど、こういった経済状況あるいはコロナ感染症の状況で離職せざるを得ない技能実習生を、どうにか減らして安定した制度の運用に努めていただければと思っています。
 2点目は、ジョブ・カードについてです。ジョブ・カードについては、活用が進むことが大切と考えます。一方で、スマートフォンのアプリが新規の利用を止めていたりしておりまして、ジョブ・カードの普及に際して、そのツールがなかなか安定して提供されないことには、このジョブ・カードの普及に多少影響があるかと思いますので、しっかりしたツール、インターネット、スマートフォンアプリ、紙ベースのもの、そういったツールの安定供給をお願いいたします。
 それから3点目は、福祉と雇用の連携は大変重要なことだと思います。私は地方に在住しているので、社会福祉協議会の方ともたまたま接点があったりするのですが、コロナ禍の中で社会福祉協議会の緊急小口貸付など行われておりますが、生活困窮者への対応として福祉と雇用の連携、今回の概算要求での人材開発の部分での予算投下について、社会福祉協議会との連携の下で成功させていただければと思っています。よろしくお願いします。
○武石会長  ありがとうございます。すみません。御意見等がたくさんあるのですが、平田委員が、手を挙げていらっしゃいますので、平田委員までのところで、事務局から御回答いただきたいと思います。平田委員、お願いいたします。
○平田委員  御説明ありがとうございます。手短に2つ申し上げます。雇用保険財政のひっ迫を受けて、必要性が高まっているデジタル等の分野の職業訓練に重点化を図っていると理解しております。今後も企業や働き手のニーズをくみ取りながら、限られた財源を効率的に活用していくべきだと思っておりますので、そういった対応をお願いしたいと思っております。
 2つ目は、単純な質問です。資料1の1ページの総括表の所で、一般会計と労働保険特別会計と分けて御説明がありました。雇用勘定が非常に厳しいということですが、この一般会計の部分が主にどういった分野にどれぐらい投入されているかというのを、ざっくりで構いませんので教えていただければと思います。以上です。
○武石会長  ありがとうございます。いろんな御意見を頂きまして、基本的には今回の予算には賛成ということですが、予算が限られている中で重要なところにメリハリを付けるということを基本にしつつ、個別にはいろんな御注文があったかと思います。では、事務局からまとめてお願いしてよろしいでしょうか。
○黒澤参事官  事務局です。大変貴重な御指摘を頂きましてありがとうございました。なるべく端的にお話にお答えしたいと思います。まず、松浦委員、宮田委員、平田委員から、財政が厳しい中においても必要な取組をという御指摘を頂戴いたしました。正に御指摘を頂きましたように、まずこの目先のコロナの中での就職・再就職支援というもの、あるいはキャリアアップもありますが、このコロナの後を見据えての人材育成の取組もまた重要になってまいります。大変貴重な財源を預かっている側としましては、その政策効果もよく考えながら、効果的な施策の展開に今後とも努めてまいりたいと考えております。
 続きまして、松浦委員、海老原委員から、就職氷河期世代の支援に関して御指摘がありました。来年度が3年目の最後になりますが、引き続き取り組んでいくこととしています。一方で、海老原委員から、全体の2割の予算という御指摘もありました。大変恐縮ですが、資料がやや分かりにくかったかもしれません。1ページの総括表にありますように、私どもの人材開発総括官部門全体で1,800億円ほど要求をしております。2、3ページ目は、その1,800億円のうちの、ごく一部のものを取り出して御紹介させていただいておりますので、人材開発に関する予算のうちの2割を就職氷河期が占めてしまっているというものではないという点だけは、1点御報告させていただきます。
○海老原委員  いや、裁量的経費に関しては2割ではないですか。
○黒澤参事官  そういった御指摘はあろうかと思います。一方で、就職氷河期世代というと、ある一定の年代が想定され得ますが、海老原委員から御指摘のありましたジェンダーの問題、あるいは非正規の問題、あるいは男女共同参画の問題もあろうかと思います。当然ながら、厚生労働行政、特に労働行政においては、そういった男女共同参画の観点、あるいは非正規の観点などでも、人材開発部門以外の部局でも取組をしているところです。したがいまして、本日御紹介させていただきましたものは、1つ、この就職氷河期世代という切り口からこういった対策で取り組んでいると。ただ、大変重要な御指摘を海老原委員から頂きましたのは、やはり現場の声なども踏まえまして、本当に対策を必要とされている方に、必要な対策がきちんと届いているのかと。こういったことはやはり漫然とやるのではなく、きちんとチェックをしながら取り組んでいくべきだと思いますし、そういった御指摘かと思いますので、本日の御指摘もまたいかしながら、役に立つ事業展開に努めてまいりたいと思っております。大変貴重な御指摘を頂きましてありがとうございました。
 それから、宮田委員からキャリアコンサルティングのお話がございまして、早川委員からはジョブ・カードの御指摘もございました。やはり、この様々なツール、あるいは働いている方、働こうとする方御本人に対する支援ということで、それぞれ強化を図ってきているところです。早川委員から御指摘がありましたように、利用しやすいようなツールをきちんと開発し、安定的に供給していく点も取り組んでまいりたいと考えております。
 それから杉崎様と早川委員からは、外国人技能実習制度に関して御指摘がありました。後ほど、担当の参事官からも御説明申し上げますが、こういった仕組みが、特にこのコロナといった状況の中においても、きちんと有効に機能していくように、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
 続きまして、早川委員からは、雇用と福祉の連携に関しての御指摘もございました。私どもは福祉部門、あるいは社協の皆様とも連携をして取り組んでいくというのが特色ですので、引き続き、そういった方々との連携の下に取り組んでまいりたいと考えております。
 最後、平田委員から一般会計に関しての御質問がございました。幾つか例を挙げますと、例えば、新規学卒者の方に対しての就職支援ナビゲーターといった方々にかかるお金ですとか、あるいは、外国人技能実習機構に対する交付金の中にも、一部、一般会計で措置をしている部分もあります。あるいはサポステの関係においても一般会計が使われている、あるいはその他一般論としまして、一般会計は事務費的なものに充てられますので、そういったものに充てているというところです。したがいまして、金額としては全体の中に占める割合としては少なくなっているということです。
 続きまして、時間を頂いて恐縮ですが、外国人技能実習の関係について担当の参事官から御説明を申し上げます。
○川口参事官  海外人材育成担当参事官の川口と申します。よろしくお願いします。早川委員から、技能実習生がこのコロナ下において、やむを得ず実習が継続できなくなって、大量の離職が生じているということへの支援、特に技能実習が継続できるような支援をとの御指摘があったと思います。とりわけその中で、外国人技能実習機構においても、職業紹介をしっかりやることについても検討していただきたいとの御指摘だったと思います。委員の御案内のとおり、現状この外国人技能実習生が技能実習の継続が困難になった場合の支援としましては、実習実施者すなわち受入企業と、そしてとりわけ監理団体、この監理団体においてしっかり転職支援をしていただくことになっております。それはかなりやっていただいているところではありますが、その上で、外国人技能実習機構においても、マッチングがうまくいくように実習先変更支援サイトというものを設けて、その運用をしています。正直、確かにこのコロナ下において、残念ながら実習の継続は困難になるという事例が多くなっていて、その中で相談も非常に多くなっています。今回の予算なり体制の拡充というものは、まず、その相談にしっかり対応していこうというところで要求させていただいています。更に踏み込んで、まずはその監理団体でしっかり転籍支援をするというところを超えて、機構でも職業紹介をできたらよいのではないかという御指摘。これについては、法律上、例えば監理団体と同じように職業紹介の許可を取ったものとみなすような設計にするのか、個別に職業紹介の許可を取るなどいろいろなやり方が考えられますが、率直に言って、機構の体制の問題も考えなければいけないし、そういった中でどういう形でやるのが技能実習の継続支援につながるのかを、全体のバランスを考えながら、引き続きいろいろと検討させていただきたいと考えております。以上です。
○武石会長  ありがとうございました。いろいろな御意見、御質問に対して、事務局から御回答を頂きました。追加で、あるいは御自身の御意見、質問に対して不十分なことがあればお願いしたいと思います。海老原委員、どうぞ。
○海老原委員  先ほどの説明は、非常に私は分かりやくて、納得ができたのですが、1点だけ付け加えさせていただければ、私は、就職氷河期世代ではなくて、どの世代にも就職困難者はいるということはよく分かっているのです。ですから、これは全世代に開かれたもので、就職困難者向けの施策とか就職困難者向けの予算という形に、是非、来年からは名前を変えてほしいと、今年はもう3年目だからしょうがないと思うのですが、来年からは、是非、名前を変えていただきたいというのが私の希望です。よろしいでしょうか。
○黒澤参事官  総務担当参事官です。海老原先生、ありがとうございました。やはり、いろいろと3年目ということもありまして、今後どうするかは政府全体の中で議論もあろうかと思いますので、本日の先生の御指摘も踏まえまして、いろいろと工夫を考えてまいりたいと思っております。今後とも、御指導をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○海老原委員  はい、どうもご丁寧にありがとうございます。
○武石会長  ありがとうございます。ほかに御質問、御意見はございますか、よろしいでしょうか。活発な御意見をありがとうございました。特に追加でないようであれば、この案件は、これまでとさせていただきます。
次に議題2、今後の人材開発政策リカレントガイドラインの策定等です。これについて、人材開発政策担当参事官付政策企画室長より資料の説明をお願いいたします。
○黒田室長  政策企画室長の黒田でございます。本日は、よろしくお願いいたします。私からは議題2、今後の人材開発政策についてリカレントガイドライン(仮称)の策定等の説明をさせていただきます。資料は2-1から資料3までを用いて御説明いたします。まず、お手元の資料2-1を御覧ください。既に令和3年7月28日の第27回人材開発分科会におきまして御説明申し上げた所と重複いたしますけれども、令和3年6月18日に閣議決定されました「規制改革実施計画」におきまして、下線を引いておりますけれども、働き手・企業が取り組む事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した「リカレントガイドライン」の策定が求められているところです。この資料には書いてありませんけれども、これを年度末までにということが書かれておりまして、文末にありますとおり、「労使からの意見を反映させながら検討を開始」とありますので、事務局としましては、本分科会で御議論いただいた上で、年度末を目途にガイドライン策定を進めてまいりたいと考えております。また後ほど、改めて御説明を申し上げますけれども、同日の令和3年6月18日にいわゆる骨太方針、「経済財政運営と改革の基本方針2021」も閣議決定されておりまして、その中でも、非正規雇用労働者などへのデジタル分野等の新たなスキルの習得に向けた職業訓練の強化ですとか、キャリアコンサルティング支援の強化などが指摘されて、求められているところです。
 事務局としましては、本分科会におきまして、先ほど申し上げたリカレントガイドラインを含めまして、これらの指摘に対する対応の方向性につきまして、年末までに一定の考え方を整理していただきまして、年明け以降の議論につなげていただきたいと考えております。
続きまして、資料2-2を御覧ください。ちょっと分厚めの資料のほうですが、当分科会では、令和3年3月3日の第26回人材開発分科会で、第11次職業能力開発基本計画をおまとめいただきました。この4月から施行されておりまして、今後5年間、この基本計画に基づきまして、私ども人材開発統括官部門の施策を推進してまいりますけれども、1ページ目を御覧いただきますと、この計画開始後の最近の状況の変化ということで資料を御用意しております。1ページ目にあるとおり、大きく3つ挙げさせていただいておりまして、1つ目が急速なデジタル化の進展、2つ目が長引く新型コロナウイルス感染症の影響、3つ目が先ほど少し申し上げましたけれども、リカレント教育やリスキリングなど「学び直し」の重要性の高まりということで、この3つを挙げております。
 まず1つ目、急速なデジタル化の進展につきましては、コロナ禍によりデジタル化が急速に進み、その影響の範囲が広いということが言えます。また、デジタル人材が不足しています。そうした中で、デジタル人材の育成など、成長分野への労働移動支援が重要になってくるという状況です。2つ目の新型コロナの影響ですが、非正規雇用労働者の方々、その中でもとりわけ、女性への影響が大きく出ている状況だと考えております。最後のリカレント教育、リスキリングなどの「学び直し」の重要性の高まりにつきましては、急速かつ広範な社会変化に対応していくためには、企業による人材開発の推進と同時に、労働者の主体的かつ継続的な学びが重要になるということです。
 2ページ目に別紙をお付けしておりまして、今年度の骨太方針2021の抜粋ですが、この骨太方針におきましても、幾つか下線を引かせていただいております。ざっくり申し上げますと、リカレント教育等の人的投資支援の強力な推進ですとか、新型コロナでより厳しい影響を受けた非正規雇用労働者の方々への、デジタル分野等の新たなスキルの習得に向けた職業訓練の強化等を通じた自立支援が求められていたり、一番下のほうですが、40歳を目途に行うキャリアの棚卸し、資格取得やキャリアコンサルティングの支援の強化などが盛り込まれ、これが求められているという状況です。
 3ページ目以降は関連資料をお付けしておりまして、4ページ目は、先般申し上げた第11次の職業能力開発基本計画の概要です。5ページ目からですが、デジタル化の関係の資料をお付けしております。5ページ目は総務省情報通信白書からですが、コロナ禍でデジタル活用が急激に拡大しているということを示す資料です。
 6ページ目、令和3年の労働経済白書から引用したものですけれども、新型コロナウイルス感染症流行前後、第1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月を境にテレワークの実施割合が急激な伸びで、その後ちょっと落ち着いていますけれども、それでも流行前に比べ、かなり高い状況になっているということです。
 7ページ目、企業のデジタルトランスフォーメーションの現状についての整理です。左側が大企業、右側は中小企業ですが、大企業と中小企業では取組の差がありまして、中小企業においては青い所ですが、「DXを聞いたことはあるが、内容はよく知らない」ですとか、「DXを聞いたことがない」が半数を占めておりまして、なかなかDXが浸透していない現状というのが見受けられる状況です。
 8ページ目、総務省の情報通信白書から引用させていただきました。我が国のデジタルトランスフォーメーションの現状と課題ということで、右上のグラフの主要国のICT人材の比較を見ると、日本はまだまだユーザー企業側のICT人材がいないのだなということですとか、右下ですけれども、日本企業における課題ということの一番大きなものに人材不足が挙げられていることが分かります。
 人材不足について、9~12ページ目に資料を準備しておりまして、まず9ページ目です。経済産業省が公表しているIT人材需要の試算結果を御用意しました。2030年には、低位推計でも約16万人、中位推計であれば約45万人、高位推計では約79万人のIT人材が不足するという試算が出されております。
 10ページ目、企業におけるIT人材の過不足感を示したものです。「一部で不足」というところまで加えると、8割強の企業が不足感を感じているという状況です。
 11ページ目、ものづくり企業における話ですけれども、デジタル人材の確保をどうやっているかということで、デジタル人材について、中途採用よりも自社の社員の研修によって確保するということ、デジタル技術を活用している企業は、そのように自社の人材をしっかり育成していることが表れたデータです。
 12ページ目、中小企業のIT人材の確保における課題を聞いたものです。57.1%が「IT人材を採用・育成する体制が整っていない」と回答していると、ここに大きな課題があるということです。
 続きまして、同じく中小企業の課題ということで、これも中小企業白書からですが、デジタル化に向けた課題について書かれたものです。一番割合が高いのが一番左の「アナログな文化・価値観が定着している」ということと、もう1つ注目したいのが、赤で囲んだ左から3つ目の所ですが、「組織のITリテラシーが不足している」といった課題を挙げた企業が多くなっているという状況です。
 14ページ目、ものづくり白書から取ってきたものですが、ものづくり企業に限定するものですけれども、デジタル技術を活用することで労働生産性が向上しているということが言えるという資料です。
 15ページ目以降、15~19ページ目は、新型コロナウイルス感染症の雇用情勢への影響を示した資料をお付けしています。特に16ページ目は、休業者の数を見たときに、第1回目の緊急事態宣言のあった2020年4月、ここで休業者が一気に増えた。特に、宿泊業・飲食サービス業とか、卸売業、小売業、こういった所で休業者が大きく増えた状況だったということであります。
 17ページ目では、2019年と2020年を比べて、産業別・就業形態別の雇用者数を見たものですが、多くの業種で非正規雇用労働者の雇用者数がマイナスになったということ、特に宿泊業・飲食サービス業などで影響が大きかったことを示しています。
 18ページ目、女性の非正規雇用労働者への影響が大きくなっています。オレンジの下に伸びている所がそうですが、2020年3月以降に大きく下にマイナスになっているということで、女性の非正規雇用労働者に大きな影響があったことを示すデータです。
 19ページ目、これはコロナの影響を受けた業種を、雇調金と緊急雇用安定助成金の支給決定額から見てみようという資料ですけれども、1位が「飲食店」、2位が「宿泊業」、3位が「道路旅客運送業」ということです。
 20ページ目からは人材開発の現状です。20、21ページ目は、教育訓練の費用の推移です。特に21ページ目が直近のことを示したデータで、民間の調査から取りました。企業が支払う従業員1人あたりの教育研修費用として、このグラフは下が古くて、上が新しいのですけれども、2019年と一番上の2020年を比べていただくと、これがコロナ禍の影響で、2019年と比べて大きく減少ということが分かりますし、右側の円グラフは、コロナで教育研修影響を受けたかということで、ほとんどの企業がコロナで教育訓練や研修などができなかったということだと思いますけれども、影響を受けたのだという回答になっています。
 22ページ目、キャリアコンサルティングの実施状況です。右から2つ目の棒グラフは、制度導入している企業のうち、キャリアコンサルタントを活用している事業者は1割前後ということですが、一番右の専門家に相談した人たちの満足度というのは、やはり高くなっているということで、キャリコンの有用性はあるのだろうということです。
 23ページ目、学びへの取組の効果についてまとめた民間調査です。これは2つの指標、会社や上司の指示と、労働者が自ら進んで学んだということと、その2つの良さがありますけれども、その両方の要素がそろった場合が、左から「学び行動の効果があった」など、いろいろ項目がありますけれども、どの項目もその2つがそろった場合が、最も高い効果や成果が上がっていたということを示した資料です。つまり、労使で一緒の方向を向いて、一緒に連携していくことが大事だということを表している資料としてお出ししました。
 24ページ目、ものづくり企業において実施している人材育成、能力開発の取組について調べたものです。青の棒グラフがデジタル技術を活用する企業、赤の棒グラフが活用していない企業です。その差が大きい所に赤枠を付けておりますけれども、それを上から申しますと、「作業標準書や作業手順書の活用」、「身につけるべき知識や技能を示す」、「OFF-JTを実施している」、「会社の理念や創業者の考え方を理解させる」、「自己啓発活動を支援している」。これらの特にデジタル技術を活用するような企業がしっかり取り組んでいるのは、労働者の主体的な学びを後押しする取組なのだろうということでお出しした資料です。労働者の主体的な学びを企業がしっかり後押ししているような企業は、変化に対応してデジタル技術をしっかり導入していっているということが言えるのではないかということです。
 続いて、資料3も併せて御説明させていただきたいと思います。事務局において検討の視点例をまとめてみたものでございます。まず1つ目ですが、急速かつ広範な社会変化に直面する中で、人材開発を効果的に進めるためにはということで①~③です。①求められる人材要件やスキルの明確化・共有。②としては、①を踏まえた形の効果的な教育訓練プログラムの開発・提供。③労働者が目標を持ち、効果的な学びを進めるための伴走支援。こういったプロセスが重要になるのではないかというものです。
 2つ目の視点ですが、社会変化が激しく不確実性が高まる時代にあっては、企業による人材開発の推進と同時に、労働者の主体的な学びも重要となるが、そのためには、労使をはじめとした関係者間の連携が重要ではないかというものです。
 3つ目、労使をはじめ、国などの関係者間の役割を考える上で、企業内と労働市場全体を分けて整理していくことが考えられるのではないかというものでありまして、その上で(1)~(3)に掲げる視点を例として挙げさせていただきます。(1)企業内における人材開発の場面において、上記1の①~③に対応して、どのような取組が必要と考えられるか。関係者の役割について、どのように考えるか。(2)、外部労働市場の観点ですが、労働市場全体における人材開発の場面、例えば公的職業訓練等の場面ですが、それらにおいて、上記1の①~③に対応して、どのような取組が必要と考えられるか。関係者の役割についてどのように考えるかというものです。最後に(3)としまして、1の③の伴走支援の関係で、企業内と労働市場全体のそれぞれにおいて、キャリアコンサルティングにどのような役割が期待されているかというものです。そして、3の(1)が、冒頭に申し上げたリカレントガイドラインに関係してくるものだと考えております。
 事務局としましては、こうした検討の視点例を踏まえつつ御議論いただきまして、年内に分科会としての一定の考え方をおまとめいただきまして、それを踏まえて、年度内を目途にガイドライン策定などにつなげていただければと考えております。資料4は参考ですので、説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○武石会長  御説明ありがとうございました。今年度から第11次職業能力開発基本計画が始まっているわけなのですが、非常に大きな変化がここ1、2年で起こったということで、それを踏まえて、社会変化に対応した人材開発施策の在り方ということを年内に検討していく中に、リカレントガイドラインも重要なテーマとして含まれるということでの全体の整理だと思います。年内に集中的な議論になるわけですが、今日が1回目ですので、フリートークのような形になろうかと思います。それでは、ただいまの御説明に対して、御質問、御意見等があったらZoom機能のリアクションから「手を挙げる」マークを押していただいて、指名された方はマイクをオンにして御発言をお願いしたいと思います。多分、たくさん御意見が出てくると思うので、3人の委員の方ぐらいずつまとめて御意見を頂戴して、そこで事務局にという形で進めたいと思います。では、海老原委員、お願いします。
○海老原委員  私はお聞きしたいのですが、このような形で社会人壮年者のキャリアコンサルティングがうまくいっている世界中の国というのはどこかあるのか、まず聞きたいですね。もともと私、このGCDFをリクルートで資格化したときに、そのすぐそばにいて見ていましたけれども、そのときの話だと、これは向こうのハローワークの職員用に作った仕組みだったと思うのですよ。ハローワークの職員は向こうだと、労働市場のことはよく知っていますけれども、ほとんど人の話は全く聞かない、人の話は全く聞かないので、ロジャースの理論(受容と共感)をベースに、いわゆる聞く側の理論というもので、聞く側の仕組みというのを作ろうというので、それがGCDFの基になっていると。そうしてアメリカの職安の職員に広まっただけの話だったと思うのです。欧米では、このようなものがうまくいっているのかどうかが、まず聞きたいです。私は、キャリアカウンセラーの団体はすごくよく知っていますけれども、まともにリアルなキャリアのことを知っている人がほとんどいないのですよね。働いたこともない人もすごく多いのです。あとは大学職員をやっていた人や、若しくは定年退職して初めてキャリアカウンセラーになった人が多いのですけれども、本当にこのような人たちに、このようにお金を使って大丈夫なのかというのが私の不安点です。よろしいでしょうか。
○武石会長  ありがとうございます。
○海老原委員  1個目の話、欧米でどこがうまくいっているのかだけは聞きたいです、本当に。
○武石会長  後ほど事務局が分かっている範囲でお答えいただきたいと思います。では、滝澤委員、お願いいたします。
○滝澤委員  中小企業団体中央会の滝澤でございます。御説明ありがとうございました。これから年度末に向けてリカレントガイドラインの検討に入っていくということで、その方向性について、一言申し述べさせていただきます。御説明の中で、デジタル人材の育成に向けた裾野拡大のためのガイドラインの策定というように理解しておりますが、資料3の1の①で、求められる人材要件やスキルの明確化という御指摘がありましたけれども、デジタル人材を含めて人材開発につきましては、各企業や業界によって多種多様な要件やスキルがあるかと思います。特にデジタル人材については、デジタル技術の導入前、あるいはその導入後によって、求められる要件やスキルは変わってきますし、また、業界によってもそれらは異なってくると思います。是非、一括りでこの要件やスキルを考えるのではなく、各業界や企業の状況を踏まえて、多角的な検討が必要かと考えております。以上、意見です。
○武石会長  ありがとうございます。橋本委員のところで一旦切って、事務局にお願いしたいと思います。では、橋本委員、お願いいたします。
○橋本委員  学習院大学の橋本です。質問は2件ありまして、資料2-2の別紙、「経済財政運営と改革の基本方針2021」の意味を教えていただければと思って御質問させていただきます。
 今回のリカレントガイドラインと直接関係はないかもしれないのですが、5の(3)の若者の活躍という所で、「若者のキャリア形成を支えるため、ジョブ型雇用の推進などにより」と書いてあるのですが、ここがちょっとよく分からなくて、一般にジョブ型雇用というと、欧米型で空きが出たときだけ採用するという採用の仕組みになっているかと思います。ジョブというのがしっかり決まっていて、空きが出たときだけ採用して、そのジョブは、はっきりどういう職務か決まっているので、職務経験のない若者には不利だと言われていると思います。ですので、若者のキャリア形成を支えるためというのとちょっとつながらないような気がして、どういう意味がここで込められているのかというのを御質問できればと思いました。
 次の(5)のリカレント教育の所ですが、先ほどの海老原委員の御質問と問題意識が共通するかもしれませんが、「40歳を目途に行うキャリアの棚卸し」という、「キャリアの棚卸し」という言葉は、ここで初めて出たのではなくて、この分科会でも何か聞いたことがあるので、そのときに問題視すべきだったかもしれないのですが、これからリカレントガイドラインを作っていくなら、ちゃんと意味を明確にして、委員間の共通理解を得た上で議論する必要があるのではないかと思いました。なぜ40歳なのかとか、キャリアの棚卸しの意味は私が理解しているところでは、これまでに自分がどういう仕事をしてきたのか、そして、これから働き続けるにあたって、どういう課題があるのかということを自分なりに自覚して、これからも頑張ろうという機会を設けるということかなとは思っているのですけれども、ここでキャリアコンサルタントが出てくることで、それがどう役に立つのかということが、やはりまだピンときていません。22ページの資料で専門家への相談経験がある人は、職業生活全般において、満足感が高いというデータをお示しくださいましたが、いつ、どういうタイミングで、何を相談したのかということを、できれば詳しく知りたいと思っています。
 自分の個人的な経験で、40歳頃は私は大分前に過ぎてしまいましたが、非常に忙しくて日々の仕事をこなすので精一杯だったわけです。とても今まで自分は何をして、これから何をしようとか、そのようなキャリアについて考える暇はなかったですし、ここで「キャリアの棚卸し」というのは、リカレントガイドラインを作る上での重要な概念かなと思うので、明らかにする必要があるのではないかという問題意識を述べさせていただければと思いました。私からは以上です。ありがとうございました。
○武石会長  ありがとうございます。もしかすると今のお話は、皆さんの御意見もお聞きしたほうがいいのかもしれないのですけれども、まずは事務局でお答えいただけるところをお願いしたいと思います。
○宇野参事官  人材開発政策担当参事官の宇野と申します。いろいろ御意見を頂きまして、ありがとうございます。海老原委員と橋本委員の後段のキャリアコンサルティングの方は、担当のほうの國分室長から、後ほど御説明させていただきます。滝澤委員の御意見は承りました。リカレントガイドライン自体をデジタル人材に限らず、もう少し人材育成のスキーム自体を含めて、それ自体をまとめていきたいと思っておりますけれども、それを念頭に置きまして、1つの一番分かりやすい最近の変化の例として、資料としてはデジタル人材を挙げさせていただいたというところです。
 橋本委員の前段の骨太方針のところですが、ここは「ジョブ型雇用の推進など」とありますので、多様な働き方の1つの例示として、ジョブ型雇用ということをここには書かせていただいたと理解しております。若者のキャリア形成を支えるためというのは、「多様な働き方の実現を図るとともに」ということで、後ろの訓練やリカレント教育、様々な対策とセットで進めていきたいと思っておりますので、骨太方針としてはそのような読み方ではないかということで理解しております。キャリア関係については、担当室長から説明させていただきます。
○國分室長  キャリア形成支援室の國分と申します。よろしくお願いいたします。まず海老原委員から御質問がありました欧米でのキャリアコンサルタントに関してです。海老原委員が御指摘のように、アメリカではハローワークに相当するワンストップセンターでGCDFという資格があって、これをそのワンストップセンターのスタッフとして支援に当たるというところでGCDFという資格。それ以外に州立やアメリカ全体でカウンセラーという制度がありまして、それは主に保険サービスのような形で大学院で一定の勉強をして、そのカウンセラー資格を取るというような仕組み。
 それからイギリスのほうでは、コネクションズ、日本のサポートステーションのモデルになった取組ですが、そちらにおいて若い方を対象にキャリアガイダンスを行うというものでパーソナルアドバイザーという資格や、あるいは学校の中でキャリアガイダンスを行うキャリアアドバイザーというような仕組みがありました。
 そういったものを日本の中でも、キャリアコンサルタントとして活用できる部分を、欧米のところから取ってきている。それから日本での特徴というものが、企業の中でキャリアに関する相談をしていくというところが、今の日本のキャリアコンサルタントの特徴になっているのかなと思っています。
 これは橋本委員からの御質問にも絡んでくるところかと思いますが、キャリアの棚卸しということで、JILPTの調査自体は既にこういう項目になっているので、細かいどういった取組が行われてきたのかというところはお答えできない部分がありますが、我々が今キャリア形成サポートセンターという取組を通じまして、キャリアコンサルティングあるいはセルフ・キャリアドックという企業に働きかけをして、企業の中で企業研修と個別の面談を組み合わせて行うという取組をしています。そういった利用者の方々の声を聞きますと、やはり普段余り自分自身のキャリアについて考えることがなかったが、漠然と感じていることを第三者に話すことで自分の考え方が整理された、経営者側にとっても人材育成や組織面で取り組む課題が見えてきたというような実際の生の声なども頂いています。こういったことで、労働者の方個人に働きかける。そして、企業や組織にも働きかける工夫、その仲立ちとしてキャリアコンサルタントが役に立つというような形で、このリカレント、学び直しにも一定の役割を果たしていくことができればと考えて、施策を進めているということです。お答えになっているかどうか分かりませんが、私として今お答えさせていただくのは以上になります。よろしくお願いいたします。
○武石会長  ありがとうございました。橋本委員、それから海老原委員、今の点に関してよろしいでしょうか。
○海老原委員  サポステでは既にそういう仕組みがありますし、大学のカウンセラーもGCDFを取っている人、CDAを取っている人は多いです。職安でも、ハローワークでも取っている人は多いので、欧米のやっていることは今はもうキャッチアップしているのではないですか。企業の中に入れて、企業の中でキャリアカウンセラーがうまくいっている事例というのは、どこにもないのではないかということが私の質問なのですが。そこにたくさんのお金を掛けることが、少し無謀であり、そういうお話を聞くと例えばリクルートなどが色めき立ってしまうわけです。予算が付きそうだと。私もかつてリクルートにいた人間ですが、そういうことにはどうしても納得いかないです。
○武石会長  事務局から、いかがでしょうか。
○國分室長  そこは欧米の例を参考にしつつも、日本の中で労働者の方が働きやすい、それから自分のこれまでの働いてきたことを踏まえて、今後変化の大きい社会において、どうやって自分の働き方を考えていくかというところを考える上で、キャリアコンサルタントの活躍の意義があると。ここは欧米というよりは日本独自の視点になるのかもしれませんが、そういった環境が変わる中にあって、労働者の方が働きやすい環境を作っていくということでキャリアコンサルティングの普及に努めていくという考え方です。
○海老原委員  かしこまりました。チャレンジするのは私は好きなので、欧米にならわず新たな方法を、というのは良いと思います。1点だけ言いたいのは、やはり雇用環境で一番今問題になっている、厚労省にまずキャリアカウンセラーを入れて頑張ってほしくて、いい例を作ってほしいと思いました。以上です。
○國分室長  ありがとうございます。ハローワークなどでも職員が、キャリアコンサルタントの資格を取って専門性を高めていくということでやっています。貴重な御意見です。我々としても引き続き取り組んでいきたいと思います。ありがとうございます。
○武石会長  重要な点をありがとうございます。引き続き、ほかの労使の方からも御意見を頂戴したいテーマではないかなと思いました。
では、今4人の方の手が挙がっているので、すみません、杉崎様、宮田委員、冨髙委員、渡邉委員まで御意見、御質問を頂きたいと思います。杉崎様お願いいたします。
○杉崎部長(増田委員代理)  ありがとうございます。まず資料2-2の人材開発分野をめぐる状況の変化ということで、3点が示されていますが、ここに先ほども話題に出ました財源の枯渇ということをしっかりと位置付ける必要があるのではないかと思います。第11次計画開始後の変化ということは、ここ半年ぐらいの状況変化を列記しているわけですから、この財源の枯渇ということは明確に位置付ける必要があるのではないかと思います。
 加えまして資料3の検討の視点についてですが、大きく3点が示されています。深刻な人手不足の中で、人材は中小企業にとって最も重要な経営資源であります。中小企業では、自社の人材の成長が会社全体の成長に直結いたしますので、今回掲示された視点についてはいずれも重要であると認識しています。
 1点目についてですが、特に①と②については求められる人材要件やスキルの明確化・共有ということは重要だと思いますが、具体的に中小企業ではデジタル人材やIT人材が不足しているという一方で、教育訓練費には限りがあるという実態もありますので、在職者訓練をはじめとした公共職業訓練において、デジタル関連のプログラムを拡充していくといった視点が大事なのではないかと思います。
 加えまして専門実践教育訓練給付において、第四次産業革命スキル修得講座に係る対象講座数が今非常に少ないのが現状ですので、これを増やしていくことも大事なのではないかと思います。
③についてですが、キャリアコンサルティングの促進に加えまして、ハローワークにおける就職までを見据えた出口一体型の支援というものも進めていく必要があるのではないかと思います。
 次に2の労使をはじめとした関係者間の連携についてですが、これは労使がしっかりと連携をして、教育訓練給付制度の更なる周知を図ることで活用を促進していくといった視点や、各企業における教育訓練を後押ししていく政策を強化するということが重要だと思います。
 次に3についてですが、(2)については中央、地方の訓練協議会での議論を通じまして、産業界のニーズを公共職業訓練の内容にしっかりと反映していくという視点が大事なのではないかと思います。そのためには、企業に対して求める人材要件やスキルを調査したり、またヒアリングするといった取組が求められると思います。加えまして求人情報を扱ういろいろな民間企業もありますが、こういった会社に労働市場の今の実態や状況をヒアリングをしてみるということも有効なのではないかと思います。
 最後に(3)キャリアコンサルティングに期待される役割ですが、DXやITをはじめとした産業界のニーズを踏まえたコンサルティングや女性のキャリア形成のコンサルティング、これらに加えまして今後は改正高年齢者雇用安定法の施行も踏まえまして、シニア層に対するキャリアコンサルティングの重要性が高まっていくのではないかと考えています。以上です。
○武石会長  ありがとうございました。宮田委員、お願いいたします。
○宮田委員  ANAの宮田です。詳細な御説明ありがとうございます。今回が最初の議論ということで、少し感想めいたことになってしまうかもしれないのですが、正にこの検討の視点のところで、コロナの影響を含めて働き方や人の就労に対する意識も大きく変わってきていると思っています。そういう意味では、どうしても私どもはまだ終身雇用的なイメージを持った人材開発という観点がありますが、やはりこれは大きく変わってくると思っています。そういう意味で強く思うのは、会社と政府だけではなく、やはり一人一人が年代にかかわらず自分のキャリアをどうしていくかという視点を、その一人一人が持つ、ここが一番最初のスタートではないかと思っています。まず本人が、先ほど棚卸しの話もあったのですが、私もばたばたする中でそのような仕事の棚卸しをしないできていますが、本来であればそれぞれの年代において常にキャリアを考えるという姿勢を持つということが、まず一番大切なのではないかなと思っています。
 もう1つ、私もCDAの資格を取らせていただいて社内で対応していたのですが、そういう意味では今、社内で働いている人が仕事を継続するというような観点での相談などということでは機能してきたと思っていますが、ただ先ほど申し上げたように、働き方や就労の意識が変わっていて、人が動くことなども前提にしたときには、今までの社内にあるキャリアコンサルティング的な機能と、また別にキャリアを動いていくことを含めたコンサルティングは少し違ってくるかと思っていますので、正に就労、働き方、仕事に対する意識の変化に合わせた対応ということが必要になってくるのではないかなと思っています。すみません、感想ですが以上です。
○武石会長  ありがとうございます。それでは冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員  ありがとうございます。資料3について数点、意見を述べたいと思います。まず、労働者の主体的な学びももちろん重要ですが、やはりリカレント教育を含めた教育訓練など人材育成については基本的に企業の責任において実施されることが重要であるります。今後、リカレント教育を普及、促進するためには、そうした観点から労働者の教育や訓練の機会を保障するための環境整備の重要性といった視点を、このガイドラインの中に盛り込んで策定する必要があるのではないかと考えます。
 また、リカレント教育の議論に当たっては、企業の人材育成、それから労働者の学び直しに関するニーズを踏まえたものである必要があると考えます。例えば、デジタル分野やグリーン分野などについても、今後の産業の変化を想定しつつ、長期的、安定的な雇用につながるプログラムをそろえていくことが重要です。また、政府全体でリカレント教育を推進していくのであれば、2の所に労使をはじめとした関係者間の連携とありますが、他省庁との連携というところも非常に重要になってくると思います。財源に関しても、厚労省の雇用保険財源だけでなく、他省庁の財源も積極的に活用することも必要ではないかと考えます。また、他省庁との連携では、例えば、文科省などの意見も聞きつつ学校の段階から働くことの意識の啓発であったり、大学における職業訓練の実施などが、その後の教育訓練の実効性を高めることにもつながってくると思いますので、そういった視点も重要だと考えます。
 またリカレント教育に対する関係者が、それぞれに持つイメージなども擦り合わせた上で議論していくことが必要と考えています。
次に3の(2)の労働市場全体における人材開発についてです。労働市場全体を対象とした人材開発施策を広く議論するに当たっては、雇用保険を財源とした施策の原則を維持することが重要だと考えます。また雇用の安定や生産性、賃金の上昇につながる訓練であるということも視点としても必要です。いずれにしても、先ほどのリカレント教育にも言えることではありますが、やみくもに雇用の流動化を進めることありきの議論にならないことが必要ではないかと考えます。
 キャリアコンサルティングについては、この役割の議論をするに当たって、そもそもキャリアコンサルティングが企業内や労働市場全体の中で、現状どのような効果や役割を果たしてきたのか、客観的な評価、総括をした上で議論する必要があるのではないかと考えています。その上で労働者の働きがいや処遇改善につながる助言ができるような、例えば産業や特性を踏まえたキャリアコンサルティングを、どう育成していくかという検討も必要だと考えます。また、キャリアコンサルティングだけではなく、相談機能を強化したハローワークを、労働者のキャリア形成やスキルアップの相談窓口として活用するといった視点も重要です。長くなりましたが以上です。
○武石会長  ありがとうございます。渡邉委員、お願いいたします。
○渡邉委員  渡邉です。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。私も資料の3について、幾つか感想を述べさせていただきます。まず期間が2か月間しかないということで、非常にタイトだなということはまずもって大変だなと思っていますので、事務局の方には頑張っていただかなくてはいけないなと思いますが、資料2-2の13ページで、全産業では「アナログな文化・価値観が定着している」が最も高くて、なかなかデジタル化が進まないというようなことが書かれていますが、このリカレントにしろリスキリングにしろ、私の考えだとやはり企業内人材育成というと企業内でそもそも仕事はDXによって、仕事自体もシフトしていくわけです。ですから、企業内でのリスキリングというのは非常に重要になってくる。この点は、ここで視点として強めていただいてもいいのではないかと思っています。そのときに企業内で、リスキリングしていく上においても、また外部の人を受け入れる。特にテック人材などを受け入れると、私どものようなアナログな会社だと、文化が合わないのです。それによって、残念ながら離職してしまうということで非常に離職率が高い。ですから、まず受け入れる体制をどう取っていくのかということは、非常に重要な視点ではないかと、そうすることによって初めて学び直しとして、リカレントで出入りする、外に出ていってまた戻ってくるなど、こういったことが構築されると思いますので、その風土という部分は非常に重要ではないかと思いますので、その辺の視点も入れていただければなと思います。
 2-2の資料の中で、教育訓練費の推移が出ていました。20ページです。21ページに特にこのコロナ禍で厳しいと、確かに2つコロナ禍で厳しい理由はあると思います。まず1つは、社内教育というものが割と集合研修でやられていたということで、ケーススタディなどをやるにしても、やはりまとまってやったほうがいい。ですからちょっと見送ろうかということもあったと思います。一方で、やはり業績が厳しい。業績が厳しいとどこを削るのかというと教育費になる。短期的には影響が出ませんから。私どもはグループ会社を多く持っていますが、グループ会社の教育費用は昨年と本年、要は19年度ですが、コロナ前とコロナ後で比べているのですが、やはりコロナ前と比べると業績がコロナによって厳しくなったところの会社の教育費が大きく削減されています。これは実態として出ていますので、この辺の教育原資をどのように各企業が確保するのか、この辺の視点を踏まえていかないとなかなか人材育成はできないのかなと。
 それともう1点、やりたいのですが担い手がいない。正に今日のパソナさんのニュースです。あれは企業の痛いところを突いているなと思いました。やはりIT人材を育てたいのですが、その担い手がいない。やり方が分からないというところに対して、非常にタイムリーに出ていますので、やはりああいった専門のスキルをどういかしていくかということも、考えていかなくてはいけないところだろうなと思っています。
 最後に、皆さんで議論になっていますキャリアコンサルティング、1の③の労働者が目標を持ち効果的な学びを進めるための伴走支援。伴走支援という言葉がいいのかどうなのかというのは私はちょっと疑問です。ここはやはり一番求めるものは、ずっと言われています自立型人材になってくるのだと、ですから私はジョブ・カードは非常にいいなと思っているのですが、自分のスキルがどういうスキルなのかということを明確化する。このことによって、自立型人材になって、自立型の学びというものがそこに出てくるのかなと思っていますので、そういった視点で御議論いただくことも必要かなと思いますので、よろしくお願いいたします。
○武石会長  ありがとうございます。御意見が多いと思いますので、すみません、渡邉委員までと申し上げたのですが、早川委員も挙手されていますので、早川委員まで御意見をお願いしたいと思います。
○早川委員  御指名ありがとうございます。私からは先ほど橋本委員からも懸念が示されましたジョブ型雇用の言葉の使い方、これについては再考する必要があるのかなと思います。このジョブ型雇用とメンバーシップ雇用の言葉を広めた濱口桂一郎さんも、日本において大いに誤解されて普及しているという本も出されていますので、このジョブ型雇用が独り歩きして不安定雇用に陥ることのない施策にしていただきたいと思います。リカレントガイドライン自体は、不安定雇用にしないための将来の働き方を目指していくものを示すものだと思いますので、リカレントガイドラインでのジョブ型雇用の言葉の使い方については、再考してはどうかと思います。恐らくこの提案でジョブ型雇用という言葉を使った理由は、労働者であってもキャリア形成の軸を自らの中に持つことの大切さ、例えばプロティアンキャリアという言葉を最近よく聞きますが、不透明の時代のなかでギリシャのプロテウスのごとく変幻自在に職業人生を選びとっていく生き方、ひょっとしたら求められるものはそれに近いのかなと思いました。ジョブ型雇用の間違った捉え方の中で、政策によって不安定雇用に導くことのないようにしていただきたい。日本社会の特性からみると、才能は組織の中で活かされることが多く、安定雇用の中でこそ生産性が上がるというところもありますので、そういった日本の職業能力開発にあるべき姿を、せっかくですから一旦考えさせていただければと思います。
 そして、その中でデジタル技術、デジタルトランスフォーメーション、DXということが意識されて、それに対応できる人材が様々な産業に必要で各企業において求められていることはある程度納得していますが、人材開発というのは、もし示す方向が間違っていれば、ハーメルンの笛吹き男の物語ではありませんが、みんな同じ方向に進むことによってぜい弱性も生じますので、人材開発の多様性は維持する必要があろうと思います。もちろんデジタル技術を否定するわけではありません。しかし、デジタル技術はそれが先端技術であればあるほど、技術革新によっていきなり不要になってしまう恐れもあります。軸となる基礎がしっかりある教育をし、多少うわべが変わっても、対応していける人材の育成が大切です。、確かに年度内に方針を決めるのは難しいかもしれませんが、非常に大切なガイドラインだと思いますので、人材開発の多様性をいかしつつ決めていくことが必要かと思われます。
 なお、若干、心配になったのが、先ほど議論しました概算要求の中でこのガイドラインがいかされる部分はどこなのかということが見えません。せっかくこれを作るのですから新年度にいかされるように、予算措置だとどの部分に位置付けられるのか、よろしければ教えてください。ありがとうございました。
○武石会長  ありがとうございます。では平田委員にはお待ちいただいていいですか。たくさん御意見が出ていますので、今後の議論のところでの貴重な御意見ということで、事務局からわざわざ御説明いただく必要がない部分もあると思いますが、事務局から可能な範囲で御意見に対するリプライをお願いいたします。
○宇野参事官  人材開発政策担当参事官の宇野です。杉崎様、宮田委員、冨髙委員、渡邉委員、早川委員、貴重な御意見ありがとうございました。今、分科会長からお話があったように御意見については、今日はフリートーキングの時間なので、御意見を踏まえまして次回につなげたいと思いますが、特にキャリアコンサルティングについては、今日様々な御意見が出ましたので、次回、キャリアコンサルティングについての現状やその辺の有用性については、また資料をお出しして、御議論の材料とさせていただきたいと思います。
 1点、早川委員からこのガイドラインが概算要求の中のどこにいかされているのかというお話がありました。まず我々としては、ガイドライン自体を今年度中を目途に作っていくということで、その出来上がりを踏まえまして既存の経費の中で周知等を行ってきたいと思いますが、まずはその中身、今日もたくさんいろいろな御意見を頂きまして、これは正直に言ってかなり難しい作業ですので、短い期間で難しい作業を詰めていきますので、その上でまた皆様の御意見を踏まえながら、これをどのように活用していくかということはまた進めていきたいと思います。すみません、雑ぱくな説明ですが、以上です。
○武石会長  ありがとうございます。キャリアコンサルティング関連で、いろいろな御意見がありましたのでよろしくお願いいたします。またリカレントガイドラインなどで、そもそもリカレントとは何かということで「棚卸し」の定義へのご意見もありましたが、その辺りは一旦事務局から提示していただいて、委員の皆様から御意見を頂くのがよいと思いますので、それも併せてお願いしたいと思います。
○宇野参事官 承りました。リカレントガイドラインは仮称ですが、いわゆる一体何をこのガイドラインが狙っているのかというところは、もう一度整理させていただきたいと思います。
○武石会長  よろしくお願いいたします。では、お待たせしました平田委員、お願いいたします。
○平田委員  ありがとうございます。質問と意見を一つずつ申しあげます。今日は議論のキックオフということで今後の議論にいかしていただければと思います。
 まず資料3の検討の視点の所ですが、1の所で人材要件やスキルの明確化・共有とあります。これは質問ですが、求められる人材要件やスキルの明確化・共有について国としてどういう取組を行っているのか、可能な範囲でコメントいただければと思います。
 次に意見です。まず1の所で伴走支援型という言葉が出ています。先ほどの意見とも重なりますが、今後のことを考えると、まずは自立的かつ主体的なキャリア形成に向けて、働き手の意識改革が求められるのではないかと思っています。その上で、そういった働き手を企業や政府がどのように支援していくのかということを考えることが基本なのではないかと思っています。
 それから2の所で関係者間の連携について言及がありますが、連携するのは労使だけでよいかという素朴な疑問があります。職業能力開発促進法には事業主や国、都道府県の責務が規定されていますので、そことの関係も考えていかなくてはならないのかなと思っています。
 さらに3の所ですが、企業内と労働市場全体を分けて整理していくということは、そのとおりだと思っています。労働市場には企業内と企業外があると思いますが、密接不可分だと思っていますので、そういったことに留意して、関係者をリストアップしていくことが重要なのではないかと思います。
 最後にキャリアコンサルティングについて、いろいろ御指摘がありますが、若干、唐突に出てくるような印象もあります。既に御意見がありましたがこれまで果たしてきた役割をまとめて、その上で、今後どのような役割がキャリアコンサルティングに求められているのかということを整理していくことが大事なのではないかなと思っています。以上です。
○武石会長  ありがとうございます。質問があったのですが、杉崎様が挙手されていますので、お願いいたします。
○杉崎部長(増田委員代理)  手短に1点だけ、リカレントガイドラインは年度内に策定をするということで、その必要性自体は何ら否定するものでもありませんし、策定に向けた作業も重要だと思いますが、一方でちょっと漠然とした感があります。そもそもこのガイドラインは、リカレント教育を推し進めるために策定するのだと思いますが、この策定の目的や策定されたあかつきに企業の現場でどのようにこのガイドラインがいかされるのかなどを、是非、明確にしていただきたいと思います。具体性がある内容にしていただくことで、企業の現場における教育訓練や労働者の皆様の主体的な学びの促進に役に立つ内容のガイドラインにしていただきたいと思います。以上です。
○武石会長 ありがとうございます。それでは、平田委員から御質問、今の杉崎様も半分御質問だったかと思いますので、事務局からお願いいたします。
○宇野参事官  ありがとうございます。まず平田委員の御指摘のこの人材要件のスキルの明確化について、どのような取組をしてきたかというところですが、これは日本の場合、どちらかと言えばメンバーシップ型のような形の中で、人材に求められる要件はどんなものがあるのかというところについては、職業能力評価基準のようなものや技能検定のような形で技能として求められるものというような取組をやってきました。我々としましては、そういったものも重要と思っていますが、まずは実際の人材育成や教育訓練などを考えた場合に、特に産業界ないし企業のニーズがどのようなものかということを、明確にするという意味で①は書かせていただきました。
 これは冨髙委員からもお話がありましたし、平田委員からもお話もありましたので、1点説明させていただきます。関係省庁との連携については、我々はこれが非常に重要な視点だと思っています。そういう意味では、関係者間の中には当然、国の中には厚生労働省だけではなく、例えば文部科学省や経済産業省、ほかの業所管省庁、そういったものとの連携や支援なども含まれております。
 杉崎様の御指摘にも関係するかもしれませんが、我々として求められているリカレントガイドラインの宿題は、規制改革実施計画には働き手・企業が取り組む事項と、人材開発施策に係る諸制度を体系的に示したものと書かれています。ですから働き手や企業がどのようなリカレント教育という観点から、リスキリングという観点からどのように取り組んでいくのか、またその人材開発施策に関する諸制度、私どもとしては単に人材開発統括官部門の施策だけではなく、文部科学省や経済産業省などの施策も取り込んでいきながら、正に先ほどお話がありましたが、これを見た方が使い勝手がいいものにしていきたいということは思っています。いずれにしても、次回のところでもう少しそこは明確化できるように、我々としても工夫、準備、努力はしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。以上です。
○武石会長  ありがとうございます。ほかに御質問、御意見等はありませんか。ほかにいかがでしょうか。大丈夫ですか。
すみません、私が余り意見を言うべきではないのですが、私からも一言だけこれについて言わせていただいてもよろしいでしょうか。先ほどデジタル技術の中身やそのステージの多様性というを話がありました。もう1つ多様性を考えなくてはいけないこととして、今日は自律という言葉がたくさん出てきているのですが、多分自律のレベル感というものもです。自律できる人とやはり支援してあげなくてはいけない人などがいて、ここの多様性にも配慮する必要があるのではないかと思っています。
 資料3が皆さんからいろいろな御意見があった点です。「スキルの明確化」という言葉があるのですが、スキルを明確化して、そこに導いていかなくてはいけない人もいますが、企業としてこのDXの中でどんなスキルが必要かも分からないという部分もあると思います。企業が明確化できないところに関して、それぞれの従業員が自由に外に出ていって、いろいろな知見を深めていくという人材も一方で必要になってくると思います。要は人材の自律度の多様性、スキル要件が明確化できる人と、むしろ明確化しないほうがいい人というケースがあり、そこの多様性にも目配りする必要があるのではないかなということを感じた次第です。意見を申し上げさせていただきました。
 ほかに御意見はいかがでしょうか。大丈夫ですか。また次回以降、議論を深めていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。特にないようであれば、これまでの議論を踏まえて事務局から何かあればお願いいたします。
○宇野参事官  事務局です。本日は本当にありがとうございました。本日、いただいた御意見を踏まえた関係資料は、次回の分科会で御用意しようと思っていますが、特に我々としてはこれから3点の資料を次回に御提出したいと思っています。1点目は、今回、企業現場でどのような人材開発が行われているかという御意見もありましたので、人材開発等に積極的な企業からのヒアリング結果を事務局で行いまして、それをまとめた資料を提示したいと思っています。
 2点目として、労働市場という部分において訓練ニーズに対応した職業訓練が必要だという御意見がありました。その中で今日お話がありましたが、訓練ニーズに対応するための訓練を検討する場として、中央の訓練協議会、地方の訓練協議会があります。これの今の現状と課題をまとめた資料も次回にお出ししたいと思っています。
 最後に、先ほど私が申し上げたことと繰り返しになりますが、キャリアコンサルティング、キャリアコンサルタント、これの現状と課題をまとめた資料、これも次回、御用意させていただきたいと思います。
 さらに今日の御意見を踏まえまして、必要な資料も用意しまして、次回更に議論を深めていただきたいと考えていますので、引き続きどうかよろしくお願い申し上げます。事務局からは以上です。      
○武石会長  ありがとうございます。ただいまの参事官の発言について、御質問、御意見はありませんか。よろしいですか。多分、併せてリカレントとは何か、そのガイドラインの目的といった辺りについても御説明いただけるものと思っています。よろしくお願いいたします。
○宇野参事官 はい、御用意させていただきます。
○武石会長  ありがとうございます。それでは議題は以上となります。全体を通して、委員の皆様から何かありますか。特にないようであれば、本日の議論は以上とさせていただきます。次回の開催日程については、決まり次第、事務局から御連絡をさせていただきます。それでは、以上をもちまして第29回労働政策審議会人材開発分科会を終了します。皆様、お疲れさまでした。御協力ありがとうございました。