技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会(第10回)議事録

政策統括官付政策統括室

日時

令和3年5月11日(火)10:00~12:00

場所

厚生労働省省議室(9階)

出席者

委員(五十音順)
事務局

議題

  1. (1)とりまとめに向けた議論
  2. (2)その他

議事

議事内容

○守島座長 皆さん方、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」の第10回を開催いたしたいと思います。
 本日はオンラインでの開催となっております。皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、カメラの頭撮りはこのぐらいとさせていただきまして、本日は所用により森戸委員が御欠席でございます。
 議事に入ります前に、オンラインでの開催に当たって、事務局より説明をお願いいたします。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 本日も皆様にオンラインで出席いただいておりますので、留意事項を御説明いたします。
 まず、検討会中は原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしてください。委員の皆様は、御発言の際は参加者パネルの御自身のお名前の横にあります挙手ボタンを押して、座長から指名があるまでお待ちください。座長から指名後、マイクのミュートを解除して御発言ください。発言終了後は、マイクをミュートに戻し、再度挙手ボタンを押して挙手の状態を解除してください。
 通信の状態などにより、音声での御発言が難しい場合には、チャットで御発言内容をお送りください。
 また、検討会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしております電話番号まで御連絡ください。
 なお、通信遮断などが生じた場合には、検討会を一時中断とさせていただく場合がございますので、御承知おきください。
 以上でございます。
○守島座長 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、本日の進め方について御説明をさしあげます。最初に、事務局から報告書案(たたき台)について御説明をいただきます。その後、報告書案(たたき台)について質疑応答と自由討議を行います。
 それでは、資料1の報告書案(たたき台)について、事務局から御説明をお願いいたします。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 事務局から資料1、報告書案(たたき台)について御説明いたします。資料1を御覧ください。
 この資料1、報告書(たたき台)になりますけれども、こちらはこれからの取りまとめに向けた議論に資するように、事務局におきまして座長と相談して、これまでの検討会におけるヒアリングや議論の内容について整理したものでございます。今回以降の委員の皆様の御議論をさらに反映しまして、次回以降、報告書案を作成してまいりますので、活発な御議論のほどよろしくお願いいたします。
 まず、目次を御覧ください。前回の検討会の最後に報告書骨子案として説明いたしました資料と、実際にこのたたき台をつくる過程におきまして構成を変更した点が大きく3点ございます。その点から御説明いたします。
 1点目は、骨子案では冒頭の1の(1)としまして、新技術の導入・活用に関する労使コミュニケーションの必要性をまず記載する内容としておりましたが、そうした場合、最初に結論が出てくる流れとなりまして、まとめの部分と重複しますので、冒頭には記載しないで、最後の5.の(1)にありますが、新技術導入に当たっての労使コミュニケーションの重要性についてということで後ろのほうに記載してございます。
 2点目は、企業ヒアリングの事例の内容につきまして報告書本文に盛り込むことにしておりましたけれども、こちらは分量が多くて報告書の論旨、流れが分かりにくくなることから、報告書本文にはポイントのみを記載いたしまして、企業ごとの事例の詳細については別添の事例集として作成することとしております。
 3点目は、前々回の第8回の検討会を中心に議論になった点ですけれども、SNSやグループウェア等のデジタルツールによる社会や社内のコミュニケーション自体の変化が労使コミュニケーションに影響を及ぼしているというところ、これが議論になりましたが、これについて、例えば5.の(3)などのセクションを追加して記載してございます。
 以上の3点などについて、骨子案とは構成を変更しておりますので御承知おきいただければと思います。
 続いて、1ページを御覧ください。中身の説明でございます。まず「はじめに」のところは今のところ記載しておりませんで、報告書の内容を踏まえて今後記載する部分になります。
 次に「1.検討の前提」としまして、まず、本検討会の主題、テーマについてまとめております。基本部会の報告書を踏まえて議論を行ってきたというところ。また、検討に当たっては、インターネットやデジタル技術により日常のコミュニケーション自体が変化し、労使コミュニケーションにも影響しているというところ。さらには、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機にDXが加速していく可能性についても検討の前提として議論がありまして、その上で検討を重ねてまいりました。
 その上で、(1)では検討対象とした新技術について、1つ目の○ではAI等といった生産性向上につながるデジタル技術の実装が及ぼす影響を一義的な検討対象としたこと。2つ目の○では、新技術によるコミュニケーション自体の変質の観点から、ICTツールの普及・定着がもたらす影響についても検討の射程に入れたということです。
 次に2ページ、(2)になりますが、こちらでは検討対象としました労使コミュニケーションの枠組み・方法といたしまして、記載の1専ら課題解決を目的とする組織や会議での労使の交渉や協議を一義的な検討対象といたしまして、2に掲げておりますそれら以外の意見交換等についても、円滑な新技術導入に資するものについて検討対象に含めたとしております。こちらは第4回の検討会の資料から作成した部分でございます。それから、4行目の「その際」というところに書いてございますが、こうした労使コミュニケーションが労使の課題解決に向けた双方向の協議なのか、一方向の情報伝達なのかという違いに留意して検討したということも書いてございます。また、いずれの枠組みでもオンライン会議や社内SNSなど、デジタル技術を活用した取組にも注目したとしてございます。
 次に、2.になります。こちらは各種調査から見える労使コミュニケーションの状況についてまとめております。(1)では、厚生労働省の「労使コミュニケーション調査」から分かることとしまして、労使関係の認識は良好・安定的と捉える傾向が強まってきたが、労使の関心事項が変わってきたという内容。
 3ページに参りまして、(2)としてありますが、JILPTが実施しました新技術導入に関する労使コミュニケーションの調査、ここから分かることを書いてございます。新技術を導入した企業の半数では労使で協議をしていた、それ以外では経営判断であること等を理由に協議をしていなかったというところ。それから、協議した企業の9割では効果があった、しかしながら、生産性向上の成果の把握や可視化の検証、こうしたところは企業の過半数がしていなかったという内容。それから、組織の根幹に関わる事項については見直しにつながっていないということが分かりました。さらには、専門的組織の編成が重要であるという可能性の示唆といったところも指摘があったかと思います。
 4ページに参りますが、3.のところです。こちらではヒアリングを行いました労使コミュニケーションに積極的な企業の事例から見える課題についてまとめております。ヒアリングの概況については別途事例集として作成中ですけれども、これを参考として企業の実態に応じた取組が期待されるとしてございます。
 続いて、3.の(1)としまして、積極的な事例での労使での協議内容やテーマ、労使コミュニケーションの中身についてまとめております。まず1つ目の○では、導入する目的、必要性、目指す姿について労使で認識を共有し、意見集約や協議を重ね、導入後のフォローによって円滑かつ効果的な導入・運用を図っている事例。その際、導入の目的はその成果による働き方改革や負担軽減であって、人員削減ではないということを労使で共有している事例があったというところ。2つ目の○は、生産性向上の成果を労働者に分配する視点を共有しているというところ。3つ目の○では、新技術導入に伴う業務の変更に伴いまして、研修や人材育成、職種転換に伴う人事評価、こういったところの制度の改定をしていた企業もあったということでございます。
 (2)では、先ほどの内容に対して、今度は労使コミュニケーションの枠組みについて書いてございます。1つ目の○では、労働組合のある企業では労働者から本音の意見を集約して、企業のみでは気がつけない課題を把握するなど不可欠な経営資源であると認識して、コミュニケーションを評価している事例。2つ目の○では、組合がない企業も含めまして労働者からの意見や提案を集約する仕組みづくり、言いやすい雰囲気づくりなどの工夫、これについて具体的な例を挙げて書いてございます。
 (3)では、ICTツールを活用した自由な情報発信、情報共有、意見交換の場を設定する事例というところ、そのメリット、デメリットについて触れてございます。
 (4)としましては、労使コミュニケーションの主体の広がりとして、パート従業員等の非正規雇用労働者とのコミュニケーション機会を積極的に設けている事例について触れております。
 4.に参ります。ここでは今までの2と3で見てまいりました労使コミュニケーションの変化の背景について、近年の雇用・労働を取り巻く環境の変化を振り返りつつ見てございます。
 (1)は、経済・企業経営や労働環境の変化についてまとめた部分でございます。90年代以降の経済停滞、雇用情勢の悪化から、不本意非正規雇用労働者の増加、また、人事管理の見直しの中で、業績・成果主義型の賃金制度に見直す動きが見られたといったところ。それから、経済のサービス化、産業構造の変化、仕事、雇用形態の多様化、労働者の職業意識や価値観の多様化、また、労働組合の組織率の低下についても触れております。
 こうしたことを背景とした労使関係、労使コミュニケーションの変化について、(2)でまとめております。アとしまして、1つ目の○では、日常の労使コミュニケーションにおいて個別の労使コミュニケーションの役割や領域が広がり、労使関係が個別化してきたのではないかといったところ。2つ目の○では、その背景として、企業の人事評価制度の見直しや労働者のニーズの多様化があるのではないかといったところについて触れております。3つ目の○では、企業側もICTツールの活用により労働者に直接コンタクトを取れるようになってきたといったところ。4つ目の○では、こうした状況への危惧もあり、集団的な労使コミュニケーションの再構築や既存の労使コミュニケーションを補完する多様なコミュニケーションについての検討が必要といった点について触れてございます。
 7ページに行きまして、イでございますが、主体の広がりとしまして、非正規雇用労働者、非組合員の管理職の問題について、さらにはフリーランスについても触れてございます。
 ウでは、労使の関心事項の変化について、企業と大多数の労働者が一致して企業の長期的な発展を目指すことが、かつてより難しくなってきたということ。このため、例えば長期的な人材育成に懸念があるという点について記載しております。
 次のエでは、SNS、ソーシャルメディアによる影響力について、労使関係、労使コミュニケーションにも影響が及んでいるということ、いわゆる「炎上」という事案が企業のリスクとなっていることなどについて触れてございます。また、SNSの普及によりまして、個人が触れる情報量が増加して、労働環境に関する考え方も企業と労働者の間で乖離が生じ、ディスコミュニケーションが生じやすくなっているということについても触れてございます。
 最後、8ページの下のほう、5.では課題と方向性についてまとめております。(1)では、まず新技術活用に際して労使コミュニケーションが行われない場合には、現場の実態に合わず、それにより労働者の納得感も得られないことで生産性向上が達成できない結果となるということ。また、今日のDXは労働者の働き方そのものの変化を必要とするということから、労使コミュニケーションの重要性が増しているということを明記しております。次がそれに向けて何が求められるかというところで、3つ目の○にありますが、DXによる変化に乗り遅れる労働者を生じさせることがないよう進めるためには、労働者がスキルアップ、スキル転換に前向きに取り組めるようにすることが重要である。4つ目の○、そのためには、新技術活用の目的について認識を共有し、また、成果の適切な分配についても認識を共有することが重要である。その上で、キャリア形成に向けて企業が求めるスキルや人材、必要な研修について認識を共有して、企業がキャリア支援や人材育成に取り組むことが重要であるというところ。こうしたテーマについて、新技術の導入の影響や実態を把握しつつ、労使の認識や価値観をすり合わせ解決策を見いだしていく、こうした労使コミュニケーションが不可欠であるとしております。
 続いて、5.の(2)では、こうした内容の労使コミュニケーションについてどのように進めていくか、促進していくかについてまとめております。
 アでは、個別の企業での取組としまして、まず経営者や労働者、労働組合が労使コミュニケーションの有用性について認識を共有することで取組を進めるべきとしております。2つ目の○の「特に」というところですが、伝統的な労使コミュニケーションの外側にいた非正規雇用労働者や管理職、また、職業意識が変わってきました若年層などにも目配りした労使コミュニケーションの在り方の模索が求められていること。それから、具体的な例として、全労働者を集めることが難しい場合には代表者を集めて意見収集することや個別の意見を聞く場を設けるなどの取組を組み合わせて、きめ細やかに対応する必要があるということ。3つ目の○では、多様な労働者のニーズを酌みながら労使コミュニケーションを活性化させるためには、労働組合に役割が期待されるとともに、組合がない企業でも労働者の意見を集約する仕組みづくりや雰囲気づくり等の工夫を通じて意見を吸い上げる環境を構築することが求められるとしております。次の○では、具体的に有効と考えられる労使コミュニケーションの工夫について挙げております。新技術活用に関する専門の組織の設置、グループウェア等を活用した社内のコミュニケーションの活性化、労働組合がない企業でも経営者層と労働者とで新技術導入に関して協議する継続的な枠組みを設け、話し合って施策に反映させる、こういったことを挙げております。
 次に、イとしまして、個別の企業の労使を超える課題について述べております。1つ目の○では、企業の中には、経営者の関心が低く、労使コミュニケーションが低調な企業の存在が考えられる、そうした企業の労働者への支援の検討の必要性が高まるということ。2つ目の○では、産業構造の変化やそれに伴う雇用の在り方については、個別の企業の枠を超えた問題であるので、地域レベルの政労使の対話の中で検討することも重要であること。3つ目の○では、技術革新の進展が社会全体に影響を与えることから、個別の労使を超えた業種・産業レベル、地域レベル、全国レベル、こうした労使コミュニケーションの取組が求められると書いております。
 最後の5.の(3)のところでは、デジタル技術によりコミュニケーションが変化する中での労使コミュニケーションとしまして、まず企業が労使コミュニケーションに取り組む際には、ソーシャルメディアの普及等、時代の変化に応じて労働環境に関する考え方が変化しており、労使で認識の違いが生まれやすいことを念頭に置いて、そのギャップを埋める姿勢が求められるということ。また、労働者の不満が社内で解消できず、SNS上に訴えることで企業が損害を受けている事例があるということ。こうした事態を招かないために社内の労使コミュニケーションを実効性のあるものにしておく必要があるというところ。業務に関連する内容を公表した際の影響について、企業と労働者が認識を共有していくことも有用であると書いてございます。
 最後の「おわりに」のところは、報告書案の内容を踏まえた内容ということになります。
 説明は以上でございます。
○守島座長 ありがとうございました。
 それでは、質疑応答と自由討議に入りたいと思います。ただいまの御説明に関しまして、御質問、御意見のある方は挙手をお願いしたいと思います。
 大竹委員、お願いいたします。
○大竹委員 ありがとうございます。
 この検討会が始まったときは、AI技術進展で労使コミュニケーションをどうするかというのが確かに重要な課題だったと思います。しかし、検討会の途中で新型コロナという大きなショックがあり、AI技術の導入が大きく変わったことがうまく反映されていません。たしかに、1ページ目の「検討の前提」の最初のところで、新型コロナでさらに加速していく可能性があると触れてはあるのですけれども、実態はもっと深刻になっていると思うのです。もうテレワークを導入するにもそういう技術が導入できていないから進まない、ということが問題になっています。あるいは、テレワークを導入したときに、新しい技術を使ったコミュニケーションが必要になってきて、その導入も進んできている。そのような実態、現実の進行があまりにも急速で、そこについていっていない感じがすごくします。確かに研究会の途中でそれが起こってしまったので、今さらどうしようもないのではないか、というところは難しいのですけれども、この「はじめに」の最初の部分だけではなくて、もう少しそういう変化の重要性というものと、それに対応しなければどうしようもないという危機感を入れることはできないのかなという感想を持ちました。
 以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
 続いて、後藤委員、お願いします。
○後藤委員 ありがとうございます。
 まずは取りまとめをいただいて、ありがとうございました。大竹先生の御指摘にもありましたように、このまとめの前提につきまして、この間、何度かお話はさせていただいたのですが、この報告書の対象となるものが、いわゆる従来型の企業の労使関係をどうするかということへ非常に特化していて、コロナ禍で世の中が大きく変わり、ウーバーイーツ、アマゾンなど、新しい形で人を使い仕事をしている企業における労使コミュニケーションをどうするのかということはすっぽりと抜けてしまっています。若干フリーランスに関する記述はあるのですが、その分野における労使コミュニケーションの在り方について、別のところできちんと考えているのであればここでは一旦それは置いておいて、報告書のフォーカスするところとしては従来型の企業ということで議論していけばいいのかどうか、確認したいのですが、その点について教えていただけますか。
○守島座長 ありがとうございます。
 では、お答えいただけますでしょうか。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 御質問ありがとうございます。
 後藤委員のお尋ねの従来型の企業中心といったところで、ウーバーイーツでしたり、アマゾンでしたり、新しい働き方をしている方々についてということを御指摘いただきました。それについて、これまでの議論でもフリーランスというところでの御発言がありましたので、そういう方たちには中でも触れるようにしております。その中でも実際フリーランスなり請負の形であったとしても労働者性があって、その労働者として労使コミュニケーションに取り組むべき人たちについては取り込んでいくということ、この中では労働関係法令が適用されるというところで書いてございますけれども、我々としてはそういったところで書いたつもりではございます。そこのところをさらに肉づけが必要ということでございましたら、そういった点についてまた御指摘いただければ増やしていくこともできるかと思います。
 一方で、労働者性がない部分についてというところで言うと、若干この労使コミュニケーションというところから外れてまいりますので、そういったところは書き方をどうするかまた御相談していくということかと思います。
 以上でございます。
○後藤委員 ありがとうございました。
 そうだとすると、まとめの2ページにある対象とする労使コミュニケーションの枠組み・方法が、例えば1で言うところの専ら課題解決を目的とする組織や会議での労使の交渉、あるいはそれ以外の労使の意見交換、意見収集、情報収集というように、ある程度形として限定されているのですけれども、フリーランスの中で労働者性が認められる人たちについては、実際にそうした労使コミュニケーションの枠組みがそもそもあるのかが見えていないので、本当に労働者性の有無に関する記載だけである程度この報告書としてケアしていると考えて良いのか、御認識をお聞かせいただきたいのです。
○村山政策立案総括審議官 ありがとうございます。
 先ほど高松調査官からお答えしましたように、後藤委員の御指摘に関しましては、労使コミュニケーションの主体の広がりというで、7ページのところで、仕事の非集団化・個別化の促進、あるいはクラウドソーシングやシェアリングビジネス等における新しい働き方の拡大の中で、そうした働き方の方々に対して考慮することも重要であるという御指摘があったと、議論の積み重ねを踏まえた一定の整理はしているところです。
 同時に、この検討会の議論の進め方としましては、委員の皆様方の御意見も踏まえながら、様々な現場の実態について労使双方の多くの方々からのヒアリングも積み重ねてまいりました。ここの部分についてさらに深掘りをするときに、一定のスケジュール感でまとめていく中でどこまで追加でヒアリングなどができるかという点も現実問題としてあるのだろうと思います。一方で、後藤委員から御指摘いただいた働く現場の中で様々に起こっていることについては、それぞれ委員の皆様方も大変御知見の深い方々でいらっしゃいますので、例えば具体的にこういうことが生じているといった話を出していただいて、後の議論の中でそこを深めていったことについて、先ほどおっしゃった2ページ目や7ページ目の記述の深め方に資する具体的な御知見や事例の紹介などもいただけると、ありがたいと思います。まずは今までの議論については7ページ目で一旦整理はさせていただいたということが、先ほど御説明した趣旨でございます。
○後藤委員 分かりました。ありがとうございます。
○守島座長 ありがとうございました。
 続いて、根橋委員、お願いいたします。
○根橋委員 ありがとうございます。根橋でございます。
 まずは、取りまとめをいただきまして、ありがとうございました。先程、労使コミュニケーションの必要性については、文章の流れをよくするため、最後のほうで記載しているという御説明もいただきました。今後、1ページの「はじめに」の部分を書き込まれるとのことですが、この報告書を効果的なものとするためには、新技術等が進展する中、また、大きな環境の変化の中における今日的な課題を捉えて、読み手や情報の受け取り手による具体的な取組、施策を促す内容とすることが必要であろうと考えております。
 そうした中で、新技術の効果的な活用に向けて、この報告書の求める労使コミュニケーションとは何かという点については、冒頭の「はじめに」の部分でしっかりと提示をいただいた上で、その背景、具体的な内容、課題を本文で整理する構成とすべきではないでしょうか。具体的にはこの「はじめに」の部分で、コロナ禍、新技術等の進展、そして働き方の多様化など、企業で働く者を取り巻く状況が急速に変化している中で、包括的な労使コミュニケーションによって労使双方に資する形で課題解決をすること、企業と労働者の双方に利益をもたらす取組がますます重要となること、また、労使コミュニケーションは、労働者の様々な意見をまとめた上で労使が対等な形で双方向のコミュニケーションを図って認識をすり合わせしていくプロセスであるという点を、趣旨として記載を盛り込んでいくことが必要であると考えております。
 次に、1ページの1.の「検討の前提」の部分でございます。基本部会の報告書で提示された課題認識に加えて、検討に当たり各委員から出された意見や、議論を踏まえた内容がこの部分で記載されております。ここで触れられているコミュニケーション自体の変化とコロナ禍の影響以外にも、主な議論の視点として挙げられた事項があったのではないかと思います。特に労使コミュニケーションの社会的な意味、また公益性、地域社会にもたらす影響とともに、先ほどもありました雇用によらない者に対するコミュニケーションの在り方といった視点は複数の委員から意見が出されております。後段の4、5につながる内容でもあるという視点でこの項に記載をいただいたらどうかと考えております。
 最後に、2ページの1.(2)検討対象とした労使コミュニケーションの枠組み・方法の部分でございます。ヒアリング等を通じて労使コミュニケーションの在り方について検討を重ねるに当たっては、労働者の本音を聞き出しているかですとか、緊密または忌憚なき意見交換を行っているのかどうか、また、現場の真の情報にどうアクセスをできるのかといったコミュニケーションの質の部分やその質を高める点についても留意をしながら検討を積み重ねてきたと考えております。つきましては、コミュニケーションの双方向性は記載をいただいておりますが、そういった質の部分や質を高める視点も検討に際して留意した点として記載をいただいたらどうかと考えております。
 以上、大きく3点、よろしくお願いします。
○守島座長 ありがとうございました。
 続きまして、仁平委員、お願いいたします。
○仁平委員 どうもありがとうございます。連合の仁平です。
 今回の報告書は、労使関係について詳しくない方も含めて広く読んでいただき、労使コミュニケーションの重要性について理解していただくことも一つ大事な視点だと思っております。そうした視点から見ますと、御提示いただいている案の8ページから10ページにかけて、(1)で技術革新が進展する中で労使コミュニケーションが重要なのだということを述べ、(2)でそのために労使の取組を如何に大きく促進していくのかを示す組立てになっていますが、ここでは新技術等の円滑な導入に向けた協議の方法と内容について、具体的に何をすればいいのかよく分からないという読み手の方もいることを念頭に置いて、もう少し具体例を挙げて記載したほうがよいのではないかと思っております。
 具体的に申し上げると、例えば検討会でご紹介頂いた事例の中には、新技術等を現場に導入するときには労使で確認をして、そのために必要な新たに求められる人材の育成と環境の整備をしていくこと、そして、生産性の向上に伴う成果の配分や新技術等への対応が難しい労働者への対応などについて、きちんと話し合っていくこと、また、雇用あるいは労働条件に影響を与える懸念事項についても労使でコミュニケーションを図っていくことが必要だとする事例もあったかと思うのです。そういったものについてポイントを絞って本文に記載することもぜひ検討していただきたいと思います。
 また、経営側のみならず労働組合側も、会社や産業別の組合組織などと、新技術等の進展による環境変化や取りうる対応に関して情報収集や情報交換などを積極的に実施していくことが必要である旨も記載したらどうかと思っております。
 もう一点、これは先ほど後藤委員からもございましたが、労使コミュニケーションの主体の拡がりについて、私からも意見を申し上げます。クラウドワーカーなど従来の雇用関係によらない者の保護については、親委員会である基本部会で課題とされていたと認識しております。コロナ禍においてフリーランスで働く者への注目度も高まってきており、この報告書の記載ぶりをどうするかも一つ大事なポイントだと思っております。御存じのとおり、3月にはフリーランスに関するガイドラインが政府から発表されており、その内容を踏まえ、実態として労働者性のある者については労働関係法令が適用されることを労使で周知徹底していくことは重要であり、7ページになお書きで触れていただいておりますが、付け足しではなくて、ここはより積極的に書いていくべきではないかと思っております。加えまして、技術革新が進む中で働き方も変化していますので、それに対応して従来の労働者概念の見直しも検討すべきという意見があったことについてもぜひ記載していただきたいと思います。
 また、7ページ、イの3つ目の○の書きぶりにつきまして、そうした働き方の者の位置づけについて考慮することも重要だと記載されていますが、この表現ぶりだと何が言いたいのか不明瞭でよく分かりません。例えば、いかに集団的労使コミュニケーションの定義を広げていくのか検討していくことが必要などといったより明確な書きぶりにしたほうがよいのではないかと思います。更に、実際に検討を進めるに当たっては、社会対話や諸条件を交渉する相手が誰なのか、環境整備の部分で何が必要なのかなど、従来以上に多様なステークホルダーが参画して検討しなくてはいけない課題であると考えております。5.(2)のイについては、個別の労使関係を超えた課題という記載もされておりますので、ここでも今後の政策的な検討につなげていくべき課題として触れていただいたらと思います。
 以上でございます。
○守島座長 ありがとうございました。
 続きまして、井上委員、お願いいたします。
○井上委員 ありがとうございます。日本商工会議所の井上です。
 厚生労働省におかれましては、報告書のたたき台の策定に当たりまして、多岐にわたる調査及びヒアリングを通じて情報収集いただきまして、改めましてお礼を申し上げたいと思います。
 報告書案につきまして、各委員の皆様、御意見がございましたので、重ならない項目について一言申し上げたいと思います。
 今まで重ねてきました各企業とのヒアリングの中で、AIなどのデジタル技術を活用して、労使との円滑なコミュニケーションを図られている事例が多くありました。その内容につきましてもたたき台に盛り込んでいただいておりますが、一方で、デジタルでは対応できない場面や社員にとって大切な局面では対面でのコミュニケーションをされているなど、技術と対面のめり張りをつけてより効果的に技術を活用した労使コミュニケーションを図られているケースも多々ありましたので、対面と技術の効果的な使い分けといった内容も今までの企業の事例を踏まえながらたたき台に記載いただけないか、検討をお願いしたいと思います。
 以上になります。
○守島座長 ありがとうございました。
 続いて、戎野委員、お願いいたします。
○戎野委員 御報告書、ありがとうございました。私からは2点です。1点目は、デジタル化が進む中での自営業の話もこれまでのヒアリングの中であったと思います。いわゆる大企業やそれなりに雇用環境等が整っている企業はこの技術革新にどんどんついていきながら発展していくけれども、同じ業界を支えている小さな企業や自営業のほうはどんどん置いていかれていて、このままだと産業が成り立たないかもしれないというお話もあったかと思うのです。そこにおいて労使の役割というのは、他の企業のことだからとか自営業のことだからと決して他人事ではなくて、産業自体をどう支えていくかというところにも言及できたらいいのではないかと思いました。そこには産別の労働組合の役割もあるでしょうし、また、地方自治体としての取組の中で労使が様々な形で参画していくということもあるでしょう。このようなことによって、その産業の課題を乗り越えていくことが必要ではないかと思います。
 2点目は、今の御意見とも重なるのですけれども、対面といわゆる様々な新たな技術によるコミュニケーションとは、それぞれ長所、欠点があるということがヒアリングの中でも明らかになったかと思います。両方の組合せをうまくしないといけないですし、SNSなどの怖さについても話がありましたが、短所に対する取り扱いも注意が必要でした。つまり、新技術だけに偏るとコミュニケーションが不十分になるということもありますし、また、一方でコロナ禍において特に進行したこの技術革新についていかなければいけない面もあるわけです。それぞれのコミュニケーションの特徴を踏まえた上での十分な注意と、組み合わせることの重要性についてもどこかに入れていただけたらと思いました。
 以上2点です。ありがとうございました。
○守島座長 ありがとうございました。
 続いて、冨山委員、お願いいたします。
○冨山委員 どうもありがとうございます。
 この報告書、AIや新しい技術が入っていく中で、ある種、改善・改良的にどんなことをコミュニケーション的に気をつけたらいいかという点に関してはよく書かれていると思います。その点に関しては特に私から付け加えることはないのですけれども、冒頭の大竹先生の話とも関わるのですが、この間、コロナが起きて、私は時代のシーソーは倒れたと思っていて、起きていることの変化の度合いがもう違うのです。改善・改良で済む話ではなくなる勢いで、だから、DXやAIを改善・改良的な技術として捉えるのか、それとも産業構造や社会構造、社会あるいは労使関係を含めて全てのものを根本的に成り立たせているものを根こそぎ変えるようなムーブメントが始まってしまったと僕は思っていて、もともとそれは底流としてあったのだけれども、さっきも言ったようにギグワーカーとか、やむなくギグワーカーになっている人もいるかもしれないけれども、今はむしろ自発的に選択としてギグワーカーになっているのです。
 もう一つ、ひょっとしたらあまり皆さんはドラマを見ない人たちかもしれませんけれども、今はやりのドラマを見てください。今はやりのドラマで、「半沢直樹」や「沈まぬ太陽」みたいな時代劇はともかくとして、現代劇のドラマに典型的労働者性のある人は出てこないのです。ヒットしているドラマには100%出てこないです。なぜ出てこないかというと、典型的労働者性のある人たちはドラマを見ている層からすると自分たちにとって全く実感のない人たちなのです。要は、世の中のちょっと引いてメタで見たときの平均的な姿というのは、既にここで今改良・改善的にいろいろなことをやったからといってそこで包摂されるかというと、恐らくほとんど包摂されないのです。そうすると、その外側にいる人のほうがいつの間にか、今たまたまそういう立場にいたとしても、マインドセットで言ってしまうと、変な話、ここで一生懸命書いていることに関して、残念ながら自分事と思わない人が今の20代、30代は8割、9割だと思います。だって、あの人たちにとったら、自分がその中に一生包摂されて生きていきたいと思っていないから。
 その現実を踏まえたときに、もしこのレポートか未来志向で、あるいは今やっているこの作業を未来志向で本当に役立つものにしていこうと思うのであれば、レポートの最後のほうに個社を超えたという話が出てきますね。だから、実は個社を超える、産業単位を超える、そういう流動性なり新陳代謝を不可避的に受け入れざるを得ないし、恐らくこの10年間から20年間で今存在しているジョブは1000万、2000万単位でなくなると思います。でも、同時に新しいジョブが1000万、2000万単位で生まれるのです。ということは、全勤労者のうちの3割から4割の人は違う仕事を10年後、20年後にやっているし、それはかなりの確率で別の会社でやっているはずなのです。あるいは、かなりの確率で別の産業でやっているはずなのです。そうすると、このコミュニケーションの議論もダイナミズムを前提としたコミュニケーションの議論をしないと、世の中の大宗の人にとってこれは響かないです。
 だから、途中でこういうことが起きてしまったのでついていけていないのはしようがない、そこは全然責めません。僕も自分の責任でもあるから。そこはしようがないとして、ある種の未来への問題提起として、産業や企業を超えたダイナミズムあるいは伝統的な労働者性を超えた社会の変化や流動化が今後起きるわけで、その中でどのようにある意味で弱い立場である働き手の人たちをどう包摂していく、どうそういう人たちを包摂するコミュニケーションの在り方を日本の中に創造していくか。そういったことをやっていくべきだという問題提起は私はやるべきで、くどいようですけれども、改善・改良的なアプローチで何とかなる問題と、イノベーションが起きてしまうと改善・改良は通用しないのです。こうなると、もう一回アーキテクチャーを根本からリデザインしないと対応できない問題がすごく大きくなるので、このレポートの意味は僕は否定しません。だから、一方で今の労使関係で包摂される人はたくさんいるので、その人たちをすくうという意味ではこのレポートの価値はなくならないと思うのだけれども、でも、その外側の人がこの後急速に増えて、あるいは増えていかざるを得ない、今後10年、20年、ポストコロナの時代を想定したときにそこに我々が問題意識を持っているという投げかけをやったほうがいいのではないかというところで、結構長くなってしまいましたけれども、最後のところにそういう問題提起を入れてもらえると未来に光があるような気がしました。
 以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
 続きまして、鬼丸委員、お願いいたします。
○鬼丸委員 原案をお示しいただきまして、ありがとうございました。いろいろと勉強させていただきました。
 ほかの先生方も御指摘なさっていることと重複する部分が多くございますが、この報告書原案を拝読したときに、例えば労働側として、これは組合員という範疇で狭義で考えるのか、それとも非組合員も含めてさらに大きな枠組みで考えるのかというところがまず一つあろうかと思います。一方、使用者としても個別の企業の枠組みで考えるのか、あるいは業界、さらに言うといわゆる一国の働き方という観点から考えるのか。先ほどの労働というところで申し上げますと、雇用類似の働き方について、いろいろな先生も御指摘なさっていますが、そういったところも含めながら今回の議論を進めていくのかということを考えながら拝読しました。
 さらに、それぞれについて集団的労使関係の枠組みでどのように捉えていくのか、進めていくのかということと、個別的な労使関係の枠組みの中でどのようにこれらの新しい取組について進めていくのかを考えたときに、この報告書はそういったものが少し混在しているように思われました。この集団的な労使関係で、例えば個別企業の中では何ができるのか、産業別労働組合ですとか、ナショナルセンターという枠組みで何を出すべきなのかということにもなろうかと思います。一方、使用者側から見れば個別の企業という枠組みの中、あるいは企業グループの枠組み、さらに言うと業界の枠組みの中でどうしていくのか、それぞれ幾つかのフェーズがあるのではないかと考えました。そのようなところについて、今回拝読しながら、そこをもう少しうまく交通整理ができると、それぞれの場面でどのようなことに取り組んでいくべきかということが読んだ方にクリアに伝わるのではないかと感じました。
 具体的に申し上げますと、雇用類似の働き方というところは、従来の組合員という枠組みでなかなか捉えることも難しゅうございますし、ほかの先生方からも御指摘がありましたとおり、労働者性という枠組みですとか、新しい枠組みで捉えていくことが必要な側面もあろうかと思いましたので、そういったことも含めまして、もう少し交通整理できる余地もあるのではないかと思いました。
 以上でございます。
○守島座長 ありがとうございます。
 続きまして、佐久間委員、お願いいたします。
○佐久間委員 ありがとうございます。佐久間でございます。よろしくお願いします。
 報告書の最後の5.で書かれています「今後の課題や方向性」のところですけれども、前回、労働政策審議会労働政策基本部会が、令和元年6月にとりまとめた「働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために」の報告書も1本あって、そこに、労使コミュニケーションということがふれられています。その後、開催された今回の検討会のテーマについて、最後にまとめていく内容をお示しいただいたのがこの報告書の原案になるわけですけれども、どこまで深掘りしていくかということも、ある程度は検討する必要があると思うのですが、事例を拝聴させていただく中で、幾つかのパターン化というか、例示ができると思います。もうちょっと踏み込んだ具体策として、組織体とか、組織体制の在り方、チーム制を採用したり、特にプロジェクトチームを編成したりですね。もう少し具体化したものを最後には明記していただくのが良いのではないかと考えます。
 そのほかに、私からは細かいところを申し上げたいと思うのですけれども、例えば「はじめに」の(1)のところで、4行目あたりに「こうした新技術を職場に実装する際、新技術の活用に伴い」とか、言葉が重なっているような気がするので、後段の「新技術の活用に伴い」は要らないのではないか、また、その下の行では、社内のグループウェア、社内SNS、社内コミュニケーション、そして労使コミュニケーションとあって、あえて「社内」ということを強調しているのでしょうけれども、くどいのではないかと思います。まとめていただいたほうが良いのではないかと思います。
 細かいご指摘ですみません。2ページ目では、調査結果からの回答した割合が出ているのですけれども、どのぐらいが増加傾向にあるとか、そういう表記がされているのですが、調査回答の実数値やパーセンテージは、例えば何割とか大まかな数値ではなく、明確に各項目に入れていただいたほうがイメージとして湧きやすいかと思います。
 4ページ目の3.の新技術の活用に関する労使コミュニケーションのところで、1つ目の○の4行目「その際、新技術が活用されることによる職場や労使間のコミュニケーション」、前段では「労使間」というのを「労使コミュニケーション」と銘打っていますので、ここだけ「労使間」の「間」という字が入っています。「間」という意味合いがあるのかもしれませんけれども、違和感があります。
 その下の○のところで「ヒアリングの概況は、別添の事例集のとおりであり、事例集で紹介する」、この辺もくどいのではないかと思いますので、「事例集」という単語は一回出てくれば意が通じるのではないかと思います。
 4ページの中段の4つ目の○のところで、成果を労働者に分配するという視点を労使コミュニケーションを通じて共有する事例もあったということで、後ろにも「分配」という言葉が出てくるのですが、「生産性を分配」ということなのですけれども、この分配というのは各種の意味合いが含まれていると思うのですが、これは賃金として分配するのかとか、利益を分配するのか、その辺はあえて出さないということもあるかもしれませんけれども、具体的に分配の考え方を記載していただいた方が私ども実務者にとっては分かりやすいと思っています。
 長くなってすみません。5ページの2行目ですね。労使コミュニケーションが「不可欠な経営資源であると認識し」とあります。労使コミュニケーションは経営資源として見ていくものかどうか、この辺は学識の先生方に経営資源として含めても構わない表現かお聴きしたいところです。経営資源であれば、一般的には、「人、モノ、金、情報」といったもので、それにプラスして、「労使コミュニケーション」も入れたほうがいいのかということを教えていただければと思います。
 最後ですけれども、6ページ目で(1)近年の経済・企業経営や労働環境の変化があって、中段に「あわせて、経済のサービス化」、その「また」のところでも「経済のサービス化」と繰り返しあえて使っているのですけれども、この辺もくどいなと。同じ単語が同じようなセンテンスや段落の中に出てきているというのが幾つか見受けられるものですから、その辺をもう一度整理していただければ読みやすくなるかと考えております。
長くなりましてすみません。以上でございます。
○守島座長 ありがとうございました。
 続きまして、池田委員、お願いいたします。
○池田委員 報告書の原案の作成と御報告をありがとうございました。
 私からは労働法の専門家として1点だけコメントをさせていただきたいと思うのですが、何かというと、この報告書で伝統的な企業別組合が労使コミュニケーションにおいて果たしている役割にもう少し言及してもいいのではないかという印象を抱いたという点です。
 なぜかというと、日本には、今のところ、常設型の労働者代表組織が存在しないという中で、日本の企業別組合が果たしてきた労働者代表としての役割が、こういった労使コミュニケーションの場面では特によく表れているのではないかとヒアリングなどから感じられたところです。ただ、これは労働組合の本来の役割というか、そういうものとはまた異質な役割になります。本来、労働組合というのは使用者の対抗勢力として、労使で交渉して有利な条件を勝ち取っていくというのが本来の労働組合の姿なわけですけれども、それに対してコミュニケーションを取るパートナーとして関わるという場面になりますので、伝統的な労働組合の役割みたいなものとはまた違う役割を果たしていることになりますが、しかし、日本では、現状、労働組合以外にそういった役割を果たせる存在がおりません。そこで、その制度がないところの穴を伝統的な企業別組合が埋めてきてくれたというところは無視し得ないのではないかという印象を受けましたので、そういったところにもう少し言及があってもいいのではないか、という印象を受けました。
 具体的にはこの4.の労使関係を取り巻く環境の変化という辺りに、労働者が個別化したり、多様化したりして、コミュニケーションの在り方が変化しているというほうに随分注目した形で言及されているわけなのですが、その変化以前に伝統的な企業別労働組合がコミュニケーションに果たしてきた役割、それが今も企業別組合のあるところではコミュニケーションのパートナーとして企業別組合を非常に重宝しているということがヒアリングでも分かりましたので、そういうところにももう少し言及があるといいのではないか、という印象を抱きました。
 以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
 これで手を挙げていらっしゃる方は1ラウンドが済んだのですけれども、2回目でも構いませんので、時間はまだありますので、御意見等がございましたらぜひお伺いしたいと思います。
 冨山委員、お願いいたします。
○冨山委員 私はあまり厚労省のこういう委員会に関わったことがないので、ある種の地合いというか、あるいは神津さんとか組合の上のほうの人とは割と僕は付き合いはあるのですが、だけれども、空気感を知りたいのですが、私が申し上げたような話で、例えば今は組合の組織率はどんどん下がっていますね。全然上がる気配がありませんと。今、先生方が言われた従来型のいろいろな仕組みの重要性は、私もいろいろな仕事をしてきたし、なぜ連合を親しいかというと、まさにそういう仕組みを利用して企業の再生をやってきたから詳しいのですけれども、だけれども、その一方で、今、再生案件などをやっていてもちゃんとした組合が成り立っているところなんて大企業だけですね。8割、9割、組合など存在しないのです。
 だから、ここで議論している話で、雇用で言ってしまうと圧倒的にそっちで働いている人が多くて、そうすると、組織率が上がらないのはちゃんと理由があって、社会構造がとにかく不可逆的にどんどん変化していて、間違いなく今回のコロナで猛烈に加速するのです。かつ産業構造も崩れていくので、ですから、産別という単位も最近もどうか、経済界でも何とか工業会とかはミーンズナッシングですね。議論することはないのです。電機工業会といってもパナソニックとソニーでやっていることは全然違うし、日立と全然やっていることは違うので、ソニーなどはある意味では任天堂と同じことをやっているわけですね。あるいはネットフリックスと同じことをやっているわけです。ですから、そういう時代になったときに、どんどん外側が大きくなっていく。それを新しいことだからいいやと済ますのか、ここは本当に真剣勝負でそういった問題を包摂していかないと、すごくむなしい議論、努力をすることになってしまうような気がして、私は本当にこの領域では門外漢なので、その辺の空気感は役所の側の感覚で言うとどうなのですか。その空気感を教えてほしいのです。空気が読めないタイプなのでその辺を教えてほしいのです。
○村山政策立案総括審議官 貴重なお投げかけをいただき、ありがとうございます。
 冨山委員御指摘の点については、先ほども御指摘のありました報告書の6ページに書いておりますように、この議論の中でも労使関係を取り巻く環境変化の(1)といたしまして、経済のサービス化の進展などに伴う産業構造の変化、あるいは典型的でない働き方の方々の増加などで労働組合の組織率が趨勢的に低下を続けていると。このような問題についてどう考えなくてはいけないかについて議論してきました。そこは一つ、これまでの議論、ヒアリングを通じても変化の状況を押さえてきております。
 その上で、労働政策全般として、非正規の働き方が増えていることや、従来型の集団的な労使関係の下に置かれない方がとても多くなっていることも意識しながら、では、そこをどのようにカバーするか、やや講学的な言い方をすれば、労使の力の不均衡な在り方が個々の方々の働き方、生活に影響が及ばないようにしていくためにどのようにカバーしていくのかということに取り組んでおります。この点、ある意味、お立場によってはびほう策ととらえられるのかもしれませんが、厚労省としたらセーフティーネットをどのように時代の変化に応じて再構築していくかという議論・取組を行ってきている経緯がある。
 その上で、理念型として昔から積み重ねてきている枠組は重んじているのかという点については、先ほどの池田委員の御意見にあったとおり、労使関係の中で培われてきたものをどうやっていい形で活かしていくのかという視点、また組織率が低下する中にあっても、働く方の声を代表する方、そして企業の人事労務をつかさどる方の声を代表する方々の御意見は踏まえながら議論していかないと、実際に現場で通用する政策の立案なり形成は難しいのではないかという視点、そういった視点でやってきているということであります。
 したがって、やや矛盾して聞こえるかもしれませんが、伝統的なものがかなり変質してきている、あるいはベクトルで言えば昔ながらのものは縮小してきている面はあるけれども、一方では全体の現場で働いている人、また、それらの方々を育てて活用して経済を回している方々、それらの声を踏まえてしっかり政策立案をしていかなくてはいけない。そこのところは踏まえてやってきているつもりであるということは申し上げておきたいと思います。
 その上で、コロナ禍の下で従来とは違うねという部分が、雇用によらない働き方の方の話であれ、あるいはまたテレワークのような新技術を生かしたコミュニケーションであれ、そういったものが急速に広がってくる中でどのように対応していかなくてはいけないのか。ここは非常に大事だ、あるいは大きな転換点にあるという認識は持っているつもりでございますので、引き続き御指導いただければと思います。
 一応、役所として公式的な回答を申し上げました。
○冨山委員 正しい官僚的答えを求めているわけではなくて、私が問うているのは、くどいようですが、我々も5,000人の組合員を雇用している立場なので、従来の伝統的な仕組みが持っている意味合いは誰よりも分かっているし、こっちは現実の経営者で再生をやっている人間なので、そういったものが使えるときにはむしろ大いに利用していかなければいけないし、当然バス会社みたいなところはまさに働き手が価値を生んでいるので、そういう人たちを大事にすることは当たり前なのです。今、人手不足なので、むしろ従前以上にリテンションのほうが課題になってしまっているのです。ですから、働き手の思いや安全性ということに本当に真剣に思いを致さないと駄目で、その部分は従来の延長線上でいいというのは分かります。だから、そこは全く否定しません。
 だけれども、問題は、イノベーションが起きている時代は、シュンペーターの有名な言葉であるのですけれども、馬車を幾らつないでも電車にならないのです。汽車にならない。馬車を幾らつないでも車にならないのです。要は、馬車の領域の延長線上でやっていける領域、それは我々がやっているバス会社もそうです。それでいいのです。だけれども、問題は、馬車を幾らつないでも汽車にならない、鉄道にならない領域がどんどん大きくなっていく中で、だから、アーキテクチャーのレイヤーの問題で、もう一つ上のレイヤーの問題が起きてしまっているわけです。ということは、今のお話の中で言ってしまうと、私はあえて提案しますけれども、従来の延長線上で対処していける問題と、ゼロベースで過去のことは一旦忘れて何もない状態で、何もない白地で理想の仕組みをつくったらどうでしょうという領域と、この際、これは分けたほうがいいと思うのです。分けた上で再統合するという思考プロセスを踏まないと、これはどちらかというと日本の会社が失敗してきた典型的パターンなのです。日本の電機メーカーがやられてきたパターンというのは、みんな一生懸命何とか馬車を汽車にしようとしてきたのです。なのだけれども、幾らつないでも汽車にならなくて、GAFAにやられてきてしまったという歴史がある。
 これは製品市場の話ですけれども、労働市場でも同じことが起きてしまう気がしていて、今回のレポートに反映しろということではないのですが、今後の物の考え方というのか、こういう労働政策を21世紀、令和のモードで考えるときに、従来の仕組みを改良・改善してよりよいものにしていくこと、これはすごく大事です。これは私も実際にやっているから全く否定しません。だから、非常にいいレポートになっていると思っているのですけれども、その一方で、全くイノベーションによって生まれる産業、従来の全く延長線ではない産業がどんどん大きくなっていってしまうので、そこをどうするかゼロベースで考えるような仕組みを今後つくられたらいかがかという提案です。ありがとうございました。
○守島座長 ありがとうございました。
 ほかの方、今の点について何かございますでしょうか。大丈夫ですかね。
 そうしたら、ほかの点でも構わないですけれども、何かございましたらお願いします。
○冨山委員 ちなみに大竹先生、どうですか。
○大竹委員 私も冒頭に発言したことと関わるのですけれども、世の中が大きく変わってきているのに非常に小さな改善を続けていく、という状況設定が正しいのか、ということを感じます。最初に申し上げたとおり、AIが来たからどうしようというので対応していく姿がこの検討会が始まったときの前提でした。しかし、新型コロナをきっかけとして、もう完全にその流れで動いているという状況で労使関係を考えていくというのは、随分違う感じがするのです。AIが今までなかったところに来てどう対応するかというところについては今回の報告書は非常によく書けていると思うのですけれども、もっと急激に進んで全く違う働き方がどんどん始まっているときにどう構築すべきかということは別の問題で、今後大事だということをもうちょっと強く書いておかないと、冨山さんがおっしゃった印象を多くの人が持つのではないかと私も思います。
 その一つが、新型コロナで全く変わってしまった風景があるのに、そこが今後進んでいくのではないかというだけでは弱いですし、そういう働き方をしている人たちがどんどん増えているわけです。私の意見は、この報告書そのものを今から書き換えるという話ではありません。その危機感を最後のところか最初のところ、両方のところにうまく盛り込んでいくことが必要だと思います。
 以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
 ほかの方、どなたかございませんでしょうか。
 今の点についてもう少し掘り下げたいと思いますので、特に労側、使側で何か御発言をされたい方がございましたら、ぜひお願いいたします。
 特に労働組合の側から出てこられている後藤委員であるとか仁平委員、その辺はいかがでしょうか。
 どうぞ。
○後藤委員 後藤です。
 今の冨山先生や大竹先生の議論についてということですか。
○守島座長 そうですね。御自分の御意見があればぜひお伺いしたいのです。
○後藤委員 お二人の先生からいただいた御発言は労働組合の現役の役員としてもそのとおりだと思っております。さはさりながら、目の前のコロナ禍への対応を1年間続けてきて、現役の労働組合の役員であってもほとんどテレワークで仕事ができている環境の中で、会社側はどうなのかというと、当初は割と先進的にリードしていく姿勢が見受けられたものの、結構ゆり戻しがあり、従来型の働き方を美徳とするような表現が内外に多く見受けられるのです。そうなったときに、先ほど冨山先生から御指摘があった、がらりと世の中が変わったことに対して、逆に経営側の人たちはどういう感覚で向き合っていこうとしているのか、若干懐疑的と言いますか、不信感ではないのですが、見えない部分があります。ただ、冨山先生などは、これまでとは全く違う考え方が必要だという御意見だったので、経営側全体がそうなればいいのではないかという気もするのですが、その辺はいろいろな方々とお付き合いをされている中でどのように感じられているのか、逆にお聞かせいただけるとありがたいです。
○冨山委員 ストレートに申し上げると、正直、世代間の問題はあって、要はアナログネーティブかデジタルネーティブかみたいなところがあるのです。経営者は悪く言えば恐らく昭和に大半の人生を送った典型的な日本のサラリーマンのなれの果てですね。この人たちはアナログネーティブで生きてきた人たちで、アナログに人間関係をつくって、アナログにコミュニケーションをして、アナログに人をマネジメントするというのがネーティブなのです。ということは、彼らにとってこういうリモートを含めたサイバー空間を介在してマネジメントするというのはすごくストレスフルです。右利きの人が無理やり左利きで御飯を食べろみたいなストレスがあって、組合の人は基本的にどちらかというと特に大企業になると若いですね。若い人たちで、組合員になっている人たちは今中心はナナロク世代から下でしょう。だから、比較的デジタルネーティブのほうによっていくので、若い人たちのほうがこの状況に関してストレスが少ないのです。そうすると、当然経営の側からすれば自分たちがすごく苦手なことをやっている状況なので、このフラストレーションから解放されたいと思うと、人間はやっぱり酒を飲んで顔を合わせて腹を割って話さないと分からないよなというあの昭和ののりになってしまうわけで、だから、これは物すごく基本的な部分の底流的な問題として、そういったものが僕はあるような気がします。
 だから、ここはもともと左利きか右利きかみたいなところにかなり近い部分のストレスなので、なかなかこれはクリアできないのですが、ただ、現実に起きている問題というのは、これは大竹さんが言われたように、このコロナ禍で、今この瞬間もそうなのですけれども、私たちが今いろいろな仕事をする、人と関わる、物を買う、サービスを享受する中で、サイバー空間で暮らしている時間が激増しているのです。ビジネスとしてもサイバー空間でお客さんをつかんでサイバー空間で物を売る、サービスを提供するという部分のほうが、同じ人間なのだけれども、一人の人間がサイバー空間の時間とリアル空間の時間との両方で我々は生きていますから、例えばSNSをやっている瞬間はみんなサイバー空間に住んでいるわけですね。人間関係もそこで出来上がっているわけで、その比率はどんどんサイバー空間が広がっていく流れが、大竹さんが言われたように明らかに勢いがついてしまって、私はこれは戻らないと思います。
 もちろん10・0にはなりません。人間というのは本質的にアナログなので、必ずそれは何らかのバランスを取ってみんな生きていくことになるのですが、ただ、ビジネス的に言ってしまうとサイバー空間はめちゃめちゃ効率がよくて、めちゃめちゃ便利なので、そっちによっていくはずなのです。そうなったときに、経営者としてはサイバー空間の世界観や手触り感で当然ビジネスもやっていかなければいけないし、人間関係も構築していかなければいけないし、コミュニケーションも取っていかなければいけないという問題があって、乱暴な意見なのだけれども、ある意味、世代交代を加速させないとこの問題は解決しないと思っていて、ですから、経団連の副会長クラスが50代になってしまわないと僕は駄目かなと思っています。
○後藤委員 ありがとうございました。
 御年配の方に関するお話をいただきましたが、実は20代の方々もデジタルネーティブであるはずなのにリアルなコミュニケーションを強く求める声が多く、20代の人たちと50~60代の人たちにサンドイッチされているような状況が生じているということもあり、そうした意味では組合として悩ましい状態にあります。
○冨山委員 20代が求めているリアルコミュニケーションと60代のおじさんたちとは中身が違っています。
○後藤委員 違うとは思います。
○冨山委員 20代は恐らく彼らはネットワーク社会に生きているので、横なのです。横のコミュニケーションがもっと欲しいはずです。おじさんたちは縦のコミュニケーションをリアルでやりたいのです。だから、そういう意味でいってしまうと、今、気の毒なのは、若者たちがお酒を飲みに行ったり、騒いだり、それができないことはすごくつらいはずで、会社に行っても、それこそ昔はたばこ部屋だったり、あるいは昼飯を食べながらああでもないこうでもないと上司の悪口を言う。これは実は労使関係的に言うとすごく大事なのです。そういう機会を奪われてしまっていることはすごく気の毒だし、特に新卒の社員などはほとんどリアルな人間関係をつくらないでバーチャルだけで人間関係をつくらないといけない。これはすごくストレスで、そういう気の毒さは僕は全く同感します。うちの会社でも起きていることです。
 だから、くどいようですけれども、これはどちらかという10・0にはならないので、そういった意味で、ただ、伝統的な縦社会のサラリーマン型の終身・年功のがちがちの縦というモデルは今後崩壊していきますから、その中でこういうDX時代のコミュニケーションをどうつくっていくか。組合は本来横型ではないですか。本来、縦ではないではないですか。だから、僕はそこは組合の活躍をもっとしてほしいと思っているし、本当は企業という単位を超えてさっき申し上げたような従来の仕組みの中に入っていないような立場で働いている人たちを包摂するようなモデルが組合から出てきたらすばらしいなと思っているのです。期待しています。サイバーモデルの新しいユニオンの在り方をつくってもらえたら。後藤さん、頑張ってください。
○後藤委員 仁平さんから御発言いただいたほうがいいかもしれません。ありがとうございます。
○守島座長 ありがとうございます。
 仁平委員、いかがですか。
○仁平委員 組合の在り方もこのコロナ禍で様々に問われており、今後それはそれで取り組んでいきたいと思っております。この検討会に話を戻しますと、自身の職場を見てみても、どうやってZoomを使うかすら分からずにいた1年前の状況から急速に変化してきており、そういった変化についていける人といけない人がいて、労働組合としてはついていけない人をどうやってしっかりとフォローできるか、という点にも焦点を当てなければいけないと考えています。こうした点については、いわゆる正社員を中心とした労働組合が集団的労使関係の中でフォローしていくのが従来取られてきたやり方なのだと思います。しかし、それもこの10年、20年で変化してきていまして、パートの方や派遣の方、契約の方まで組合員の対象を広げ、組合がカバーする範囲も広げるなど、集団的労使関係を広げていく努力を、大変ゆっくりしたスピードかもしれませんが、行っていることは御理解いただきたいというのが一つです。
 ただ、それでカバーできているのは雇用者全体の2割を切っており、そうした中集団的労使関係で守るということの次に、法律で規制するということが我々のやり方になるのですが、フリーランスへの対応などは労働法のエリアではないという話も出てきているものですから、こういった課題について、厚労省ができる範囲で議論をすると言われてしまうと、それ以上広がっていかないわけなのです。こうした課題についてどう考えるかについては、今回の報告書の中でも議論すべき論点なのではないかと思っております。
 以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
○冨山委員 厚労省の方に伺いたいのは、あるいは法律家の方でもいいのですけれども、労働法はある意味で広義の競争法というのか、優越的地位の濫用みたいな話で言うと公正競争法とかぶりますね。そうすると、今のお話で言うと、労働法の枠を超えてしまうと、今の法体系で言うと誰が面倒を見ることになるのですか。どこの省のどの法律なのでしょうか。
○村山政策立案総括審議官 また補足があったら法学者の先生からと思いますけれども、基本的にそこから外れた領域に関しては、例えば独占禁止法とか、さらに力の非対称ということに注目して規模などを考えると下請代金の適正化法とか、そういった公正取引委員会なり、経産省、中企庁といったところの領域がベースで、あとは各業法の中で例えば建設業であれば建設業法とか、そういう話になると思います。
○冨山委員 これは全てのところで起きていると思うのですけれども、労働法はまず主体を定義して、ある種、主体型の法体系なのですね。主体を定義した上で、だから、労働者性が問題になるのですけれども、結局世の中がすごく流動化してダイナミックに変貌するときは、主体の定義がまさにここで議論されているように危うくなってきて、どちらかというとこれは金融でも同じことが起きていて、銀行法は今結構ピンチなのです。銀行法の外側で死ぬほどいっぱい決済が行われてしまっていて、銀行の外側で死ぬほど預金が起きてしまっているので、だから、皆さんのポイントはあれは預金なので、銀行の外側で猛烈な量の決済と猛烈な量の預金が発生している中で銀行という主体の意味がなくなってきている。こういうアクティブな議論が大好きなのでどんどん盛り上げてしまうのですけれども、まさに労働法の外内という問題提起があったので、だから、ひょっとするとそこの枠を取っ払ってさっき申し上げた外側の議論はやっていかないと、ずっと外側が放置されてしまうのかなと思ってしまったりしたものですから、こういうときは今の政府の仕組みだと誰が拾うのですか。
○村山政策立案総括審議官 政府としても大変悩ましいところで、先ほど仁平委員からフリーランスのガイドラインを政府で策定したことについて御発言がありました。こうしたものは取引関係法制だけやっている役所だけは作成できず、労働関係法制を専ら見ている役所でも作成できないので、あのガイドラインで言えば内閣官房の調整の下で有識者の方々に集まっていただいた検討会の成果などを踏まえながら策定してきたという経緯にはなっております。いずれにしても変化の時代だというのはおっしゃるとおりだと思います。
○冨山委員 それは労働という枠を広く捉えたときに、厚労省で拾っていってしまうことは難しいのですか。国家行政組織法的に言ってしまうと、公取と領空侵犯になってしまうのですか。
○村山政策立案総括審議官 法律の体系の話をしますと、労働法は基本的に民法の特別法で、さきほど冨山委員から整理していただいたように契約関係の主体があって、労使の力が不均衡だからそれをどう補完するのかというところからのアプローチなのです。それと専ら取引の法との間で交錯する分野についてどのように考えていくのか、世界的にもまさに今日ずっと御議論のあるようなお話の中でみんな頭を悩ませているところだと思います。これからしっかり考えていかなければいけない問題ではないかと我々としても考えています。
○伊原政策統括官(総合政策担当) 冨山先生が非常に興味深い御提起をされたのでお話しさせていただきますと、労働者性の問題で労働法制として考えるかというだけの問題ではなくて、日本の場合は、例えば社会保障の領域でも厚生年金や健康保険は職域とそれ以外ではっきり分かれていまして、職域の場合は年金も医療も企業が半分お金を出す仕組みになっています。自分の従業員に対しては会社が生活というか、その部分を面倒を見る仕組みがあるので、賃金や労働時間だけではなくて、会社と従業員という関係がその他のところまでずっと引っ張られています。
 そういった意味で、さっき出ているような雇用関係のあるなしとその外の場合の断絶が物すごく大きいので、この整理をしようと思うのであれば、どこの役所がやるかというよりも、まずこういう社会実態が起きてきたときに、そこで働いている人の生活をどう守るのが合理的なのか、そのときに事業主というのはどこまで責任があるのか。雇用した人には責任があるけれども、雇用していない人でも自分が密接に取引している人にもある程度その人の年金や医療まで責任を負うべきなのかどうかとかというところまで議論しないと、なかなか連続しているものですので、そういう意味でいうと今はまだ政府内も、社会全体がこうしたことについてどう受け止めていいかが整理されていない状況だと思います。
○冨山委員 最近、まさに私も実は本質的に同じような問題意識を持っていて、言うなれば、日本の社会の自助・共助・公助は、かなりの部分は個社法人共助なのです。これは労使関係を含めて、法人という枠組みの中でいろいろな人の生活や人生というものを支えていきましょう、助け合っていきましょうという仕組みになっている。問題は、個社法人共助型でやっていったときに、それがうまく機能する産業や企業もあるけれども、これだけダイナミックになって破壊的イノベーションが起きてしまうとそれではもたなくなる法人が出てくるわけで、そうすると、結局法人共助では包摂されない人たちをどうするかという問題がずっとくすぶっているところに今回コロナが起きて、厚労省も頑張って雇調金などをどんどんやってくれて、我々も実は使っているのですけれども、ただ、問題は、どうしてもそれですくいやすいのは結局正社員なのです。正社員はすくい取りやすいのだけれども、結局フリーランスの人はすくい取れなくて、結果的に御案内のように、そういう人ももらえる制度を厚労省は用意してくれていますけれども、そもそもみんなそういう感覚を持っていないものだから、かつそういった方々が絶望して、今、たしか女性の比較的若年層の自殺率は上がっているのですね。
 だから、そういうものに包摂されない人がかなりたくさんいるという問題が、今回ある意味でこれもコロナが顕在化させた気がしていて、そうすると、くどいようですけれども、全てこれは社会全体の仕組みとして過度に個社法人共助に依存しているという日本の社会、ある種の人間を守っていくセーフティーネットの仕組みの全体の再設計というのは御指摘のように問われているような気がしているので、そういった議論を政府のどこかで真剣にやってもらえるとうれしいなと一国民として思う次第です。
○守島座長 ありがとうございます。
 佐藤委員、何か今の一連の議論、ほかのことでも構わないですけれども、ございますでしょうか。
○佐藤委員 民間企業の人事の立場として、本当に冨山先生その他皆さんのおっしゃったことが今切実な問題で、この1年で大きく変わりましたけれども、会社と組合の関係というのか、組合の役割というのか、大きく見直さないといけないところに来ております。いろいろなコミュニケーションも組合が従業員代表みたいな形で正しく伝えてもらえるところもあれば、これだけ個人個人とかいろいろな多様性がどんどん大きくなってきて、コロナがそこを加速化させているところもあるのですけれども、そうなってくると、一つの考え方、一つの意見でカバーすることはできず、もっとタイムリーに、もっとそれこそICT、IoTを使いながらブロードに、経営陣も人事側も会社のほうから直接に個人個人にアプローチすることがすごく多くなっています。そんな背景で、本当に組合と会社の関係、役割の大きな見直しの転換に来ているというのはすごく感じています。
 以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
 ほかにどなたかございますでしょうか。よろしいですかね。
 どうなのですか。いわゆる労使コミュニケーションという枠組みで言うと、別に極端に言えば労働法であるとか、労働組合であるとか、そういうものがどうなっているかということとは別枠で考えることもできるのだと思うのです。確かに企業内組合が今まで非常に盛んで、その中で労使コミュニケーションが取られてきたという伝統はあるし、そこの部分は池田委員のおっしゃるようにもうちょっと書き込むことは必要だと思うのですけれども、労働法は私は後追いだと思うのです。労働運動があって、労働者が雇用されているという状態のほうが先にあって、それに対していろいろなことが、労働運動であるとか、昔で言えば非合法な労働組合が生まれてきて、その中で労使コミュニケーションはできてきた。そういう歴史だと思うのです。
 ですから、新しい時代になっていくことは確かにそのとおりなのだけれども、そのときに労働組合の役割がなくなるわけではないし、労使コミュニケーションの役割がなくなるわけではないし、どのようにそこを結節していくのか。冨山委員やほかの方がおっしゃっているような問題は確かにあり得ると思いますので、今回皆さん方からいろいろな形でSNSであるとか新しいコミュニケーションの在り方みたいなものもいろいろ聞かれてきたところはあると思いますので、そういう部分を逆に、今は昔の労使関係の中に取り込んだ形で書かれていますけれども、少しそこの部分をそこから引っ張り出して新しい形の労使コミュニケーション、労働者を守っていく、もしくは経営者のイントラストを守っていく。そういう立場から書き直すは言い過ぎかもしれませんけれども、少しトーンを変えるということは、私は今の皆さん方の議論を伺っていると必要なのではないかと思いました。
 冨山委員がおっしゃるようなレイヤーの違いというところまで、完全にインダストリアルレボリューションの新しい形というところまで言及するのはこの報告書の中では不可能だと思うので、政府の役割みたいなことも当然書けないのですけれども、でも、労使コミュニケーション、労働者、経営者のある意味ではコミュニケーションの維持というか、そういう観点から書かれた内容を再整理することはある程度可能なのかと私は皆さん方の意見を伺っていて思いました。
○冨山委員 私もこうしろああしろということではなくて、今後の課題という形で提起されればそれで十分だと思います。くどいようですけれども、この報告書はその枠の中ではよく書かれていると思っているので、その先に大きな課題があるということだけある種未来に向けて問題提起されているほうが、読み手からするとインクルーシブなレポートに見えると思うのです。そういう感じがするので、そういう位置づけで最後のところで一言言ってもらえれば十分だと思います。
○守島座長 大竹委員、何かございますでしょうか。
○大竹委員 私も賛成です。ヒアリングを聞いていても、日本型企業かどうかなどはあまり関係なく新しいコミュニケーション手段を取り入れていらっしゃる会社がたくさんあったと思うのです。私自身もテレワークを導入した企業がどんなタイプか、あるいはどんな従業員がテレワークに従事しているのかという研究をしたのですけれども、日本型経営かどうかはあまり関係がないです。経営者がどういう考えを持っているかとか、管理職がどういうスタイルかということが圧倒的で、それは確かに冨山さんがおっしゃったとおりなのです。
 私は従業員側から調査したのですけれども、まだ発表されていませんが、最近、企業のレベルで調査した神林さんの研究があるのですけれども、そこでも全く同じ結果で、日本型雇用かどうかということとテレワークのようにITを導入するかどうかはほとんど関係がないという結果なのですね。ですから、こういう新しいコミュニケーション手段を使っていくことはもう少しどんなタイプでも必要で、それに取り組んでいかないと、そこまで来ているのだという感覚を取り入れていただきたい。それは座長がおっしゃったとおりの形で十分だと思うのですけれども、ぜひそういう方向にしていただければと思います。
○守島座長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか追加のコメント等はございますでしょうか。
 事務局からは大丈夫ですか。
 ほかに何か今の点でなくても構わないのですけれども、ございますでしょうか。
 後藤委員、手を挙げていらっしゃいますね。
○後藤委員 今後の労働組合の立ち位置といいますか、コミュニケーションが個別化していっているということについては、間違っていたら指摘していただきたいのですが、ある意味、会社側がデジタルツールを手に入れたことで、様々なコミュニケーションが簡単に取りやすくなってしまう環境が訪れたことが一番大きいのではないかと思っております。そうなってくると、働いている人たちの声を聞く、あるいは自分たちの考え方を働いている人たちに伝える上での手法として、どれが一番効率的なのかということも一つ大きなポイントなのではないかと思っています。
 この点について、個別のコミュニケーションが急速に発展していったときに、これは従来型の会社なのか今後の会社なのかは分かりませんが、簡単にコミュニケーションが取れるからといって果たして全てに対応できていくのか、という課題も出てくるのではないかと思っております。そうなってくると、その中間に立つ人たちもまた求められてくることは間違いないかと思っています。そうした意味では、労働組合が全くなくなっていくということではなくて、労働組合がコミュニケーションの効率化の中でどういった役割を果たしていくのかという観点が必要なのだろうと思います。報告書の中に集団的労使コミュニケーションがだんだん希薄化していき、もうあまり必要ないのではないかといったトーンの書き方があるのですが、逆にいろいろな意見が集まりやすくなってしまっているからこそ、その間に入っていく役割はずっと続いていくのだろうと思っていますし、そのようにしていかなければいけないのだろうとも思っています。次のステージを考えていったときにも、労働組合の役割はきちんとあるということは触れておいていただきたいと思います。
○守島座長 ありがとうございます。
 労働組合の役割は私もなくならないと思うのです。ただ、その形というか、運動の在り方は多分これからどんどん変わっていくだろうと。SNSみたいな話がありましたけれども、SNSみたいなものを経営者が使っている状況の中で労働者の代表として何をやっていかないといけないのかということは、後藤委員がおっしゃったように考えていかないといけない課題だと思うので、そういう点は触れていったほうがいいのかなと私は思います。
 ほかにどなたかございますか。
○冨山委員 今のは重要な問題点なので逆に後藤さんに伺ってみたいのですけれども、ネットワーク型のコミュニケーションは、n対nが個別にコミュニケーションできるわけですね。これはある意味では使用者の側もいろいろなマネジャーがいろいろな形でコミュニケーションするし、働き手もいろいろな人がいろいろな形でいろいろな人とコミュニケーションをするのだと思うのです。それはあるときはメールであったり、あるときは何らかのSNSであったりだと思うのです。そのときに、実際の現場のいろいろな労使関係の形成過程で、一方でn掛けるnでずっとコミュニケーションをして、コミュニケーションはできるのだけれども、それだけだと意思統合はできないではないですか。みんなが勝手にn・nでやっているので、何らかの意思決定、典型的には賃金交渉などもそうなのだけれども、ある種、統合的・集団的意思決定をしなければいけないときのやっていく役割と、今、例えば民主主義全体で起きているのだけれども、n対nで勝手にやれてしまう部分は結構トレードオフになっている部分は、実は難しくなっているのですね。例えば民主的政治過程で意思統合するのはかえってね。今、その辺は現場の感覚としてどんな風景なのですか。
○後藤委員 おっしゃるとおり個々の横・横や横・縦のコミュニケーションで解決できる問題を解決していくことは可能だと思うのです。ただ、一つの組織の中で働いている場合には、例えば労働条件や賃金などを個別で全て決めていくことは会社のマネジメントとしてなかなか難しいという状況がまだ残っていて、最大公約数をどこするかということはやらざるを得ないとなると、そのときに、私は労働組合がある会社しか知らないので、結果的には労働組合が入って、個々の職場ごとに意見を形成していき、最終的には労使で決めるということになるかと思います。当然その中には不満を持つ人もいるのですが、最終的には決まったことだから従うというところにはなっているのかと思います。
 逆にそういった機能がない場合どのように意思決定をしているのかは、この間、いろいろな事例の御説明がありましたが、最終的には経営側の意思として決定していることのほうが多く、あまりそこに労使での合意形成は見られなかったというのが、この間の検討会での印象です。
○冨山委員 難しいところですね。
○守島座長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。今の点でも構いません。
○冨山委員 ある意味で、会社はもともと契約の束を大数的に処理するリーガルフィクションではないですか。例えば労働者と全員個別に契約するのは大変なので、あるいは取引先と個別に契約するのは大変だから会社という法人という単位で制度的に解決するわけですね。この辺は大竹さんの専門領域かもしれないですが、経済的に言ってしまうと、そこにある種の経済的効率性というものを生み出す仕組みですね。でも、結局個別化が進んでしまうと、実は会社という一法人で一制度でやることの意味合いとのある種のトレードオフが起きるというか、あるいはもっと言ってしまうと、ネットワーク型の会社になればなるほど株式会社法人でやっている意味が結構乏しいケースも今後増えてくるかなとも思ってしまっていて、なかなか今の後藤さんのお話は結構深い問題をはらんでいる気がしたもので突っ込んだのです。
○後藤委員 そういった意味では、例えば、KDDIはジョブ型の人事制度といったものを入れていっているのですが、これが更に進んでいくと、先ほどの経済的効率性よりも、個々の従業員というかプレーヤーと会社との個別契約が当然増えていくのが何となく筋のように見えるのですが、そうなっていったときに、労働界としては、企業別労働組合という枠組みではなく、諸外国と同様に産別型や職種別というか、トレードユニオン化していく可能性もあるのではないかと個人的に思ってはいるのです。そうすると、ヨーロッパなどの様に一つの会社の中に複数のトレードユニオンが入り込んでいくことにも当然なっていきますし、そのときの労使コミュニケーションをどのようにしていくのかということは、悩ましいかと思います。
○守島座長 今の点について、ほかの労働組合の方々はいかがでしょう。
 根橋委員、どうぞ。
○根橋委員 地方の立場で議論を聞かせていただきました。取り巻く環境については、先ほどお話のあったように非常に大きな変化で、これまでとは全く異質なものであるとは思っています。ただ、地域で経営者の皆さん、また労働組合の皆さんとお話をしていると、どちらかというと変化に受け身で、まだ例外的なものとして捉えていて、主体的に能動的に変えようという姿になかなか追いついていない実態もあります。以前から継続的に求められていたことではあるのですが、どうAIなどの新技術等を入れたらいいのか、このコロナ禍の状況になって右往左往している姿も見受けられています。
 私は中小企業の出身なのですが、新技術等を導入するときに、ベンダーに丸投げをして結果的にそれがうまくいかずに失敗してきたという積み重ねが以前からあったと思っています。そうした意味でいくと、今の時代であっても、新しい技術を現場でどう活用するか、現場の視点をどう大事にするのかという観点から双方向の意見交換をして、如何にその現場ならではの技術にしていくのかが、地方、中小でも求められるところだと思っております。更に、この検討会でも報告させていただいたように、社会的な課題という観点からすると、地域の労使が新技術の進展に係る課題をどう社会的に解決していくのかということや、多様な働き手が出てくる中でそれを地域全体としてどう解決していくのかという視点も非常に重要であると思っていますし、そういった仕掛けも県、また経営者協会等々とも連携をしながら様々つくり出しております。なによりもその根幹は、現場の生の声をどう生かすのかが全ての起点になると考えております。
 以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
 ほかに、今の点でもほかの点でも構わないです。
○冨山委員 今の根橋さんのことで、地方でバス会社をやっている当事者なので、あるいは地方の空港などもやっているので、おっしゃっていることはすごく実感として分かります。
 もう一つ、今までは結構ベンダー丸投げで、悪く言えばベンダーにだまされて高い金を使わされて役に立たないという事例も私もいっぱい見てきているのです。だから、今後の光があるとすれば、うちのバス会社で使っているようなITなどもそうなのですけれども、ここに来てITのいろいろなサービスが劇的に安くなってきていて、クラウドになっているからなのですけれども、要するに、オンプレで一々ベンダーに頼まなくても使えるようになってきているということと、そういったものが地方の会社でもすごくUXがよくなってすごく使いやすくなってきているので、現場起点でいろいろな働きかけをしていけばかなりいろいろなテクノロジーが使いやすく、このZoomもそうですけれども、そういう時代に変わってきている。ちょうどいい意味で地方企業にとっては潮目が来ている気がしていて、そういうことを導入することで現場の生産性、まさに労働生産性が高くなる余地はすごく地方はあると思っておりますものですから、今おっしゃったこともぜひ現場起点で圧力をかけてもらったらいいのかなと。経営者側でこういうことを言うのは変なのですけれども、きっと地方はすごく人手不足にポストコロナでまた戻りますね。すごく人手不足に戻ってしまうと思うので、そのときに現場からすると、まさに人手不足をカバーしようと思ったらそういったテクノロジーを使って生産性を上げていかないと人手も足りないし、賃金も上がっていかないと思うので、個人的にぜひ働きかけを期待しております。
○根橋委員 ありがとうございます。
 いいチャンスと捉えていきたいと思います。ありがとうございました。
○守島座長 ありがとうございました。
 ほかにどなたかございますか。
 労働組合は確かに今は企業別組合という色合いが物すごく強いし、その上の産別であるとか連合まで頂点になっていますけれども、社会運動と捉えると、地域とのつながりであるとか、働いているその企業に雇用されている以外の人たちとのつながりというところも、労働組合を社会運動として見た場合にはある程度私は関心を持って見ていく必要があると思うのです。ですから、先ほどトレードユニオンという話がありましたけれども、そういう形で変わっていくのも一つだろうし、もう一つは一種のコミュニティームーブメントというか、地域的な広がりを持った一つのNPOという言い方がいいかどうか分かりませんけれども、そのような組織として成長していく、変わっていくこともあると思います。そういう場面で労使コミュニケーションも一つの重要な、そうなると働いている人だけではないですけれども、入ってくるのかなと私は聞いていて思いました。
 すみません。私が勝手にしゃべっていますけれども、ほかの方、どなたかございますか。よろしいですかね。
 それでは、そろそろ時間も終わりに近づいてまいりましたので、ほかに御意見等がなければこれで今回の議論は終了させていただきたいと思います。非常に活発な御議論をありがとうございました。
 事務局におきましては、御意見を踏まえて、次回に向けて報告書案を作成していただきたいと思います。
 最後に、事務局から次回日程について御連絡をお願いいたします。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 次回の検討会は、6月8日火曜日10時から12時の開催を予定しております。詳細については追って事務局から御連絡いたします。
○守島座長 それでは、本日はこの辺りで終了させていただきたいと思います。
 皆さん方、お忙しい中をお集まりいただいて、どうもありがとうございました。