令和3年度第2回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和3年10月28日(木) 13:30~15:30

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 12G
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング12階)

議題

  1. (1)有害性評価の判断基準の再確認について
  2. (2)リスク評価対象物質の有害性評価について
  3. (初期リスク評価)
    N,N-ジメチルホルムアミド
    (詳細リスク評価)
    チオ尿素
    テトラメチルチウラムジスルフィド(別名チウラム)
    ピリジン
  4. (3)その他

議事

○福田有害性調査機関査察官 それでは、定刻になりましたので、令和3年度第2回化学物質のリスク評価検討会 (有害性評価小検討会)を開催いたします。
本日は、大変お忙しい中この検討会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
私は、本日、座長の大前先生に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます福田と申します。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
まず本日の出席状況についてですが、本日は高田先生を除く8名の先生方に御出席いただいております。本日は会場での参加とオンライン参加の併用という形で開催させていただいております。6名の先生方にオンラインで参加いただいております。
また、本日の会議の一般の傍聴者につきましては、前回と同様にWebでの参加のみとしておりまして、音声配信のみさせていただいております。
それから、留意事項となりますが、オンライン参加の委員の皆様方におかれましては、周囲の音を拾ってしまうこともありますので、御発言される場合を除きましてマイクをミュートに設定していただきますようよろしくお願いいたします。
それでは、大前先生に以降の議事進行をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
○大前座長 大前です。今日の議事にどうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。
それでは、まず最初に資料の確認をお願いします。
○福田有害性調査機関査察官 本日の会議もペーパーレスということで、会場にお越しの先生方のお席の上にはタブレット端末を配置させていただいております。
資料としましては、資料は1-1~3-2の8種類、また、参考資料としましては参考1~5の7種類を御用意しております。何かございましたら事務局までお知らせいただきたいと思います。
資料の確認は以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
それでは、今日の議事に入りますが、今日は3つ、1つは有害性評価の判断基準の再確認ということ、2つ目はいつもやっております物質の一次評価値、二次評価値を決めるということ、3つ目がその他ということで、最初に有害性評価の判断基準の再確認につきまして、事務局より説明をよろしくお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 資料1-1~1-3につきまして、事務局から御説明いたします。
国のリスク評価につきまして、リスク評価書にはGHS分類に基づいて有害性を表記するというルールがありますが、今まできちんと整理したものがない、この検討会の場で出したものもないということですので、委員の先生方の御判断にもお手数をおかけしていたところです。このため、参考4に「政府向けGHS分類ガイダンス」をつけておりますが、その内容を基に、ヒトに対する発がん性と生殖細胞変異原性の表記方法をこれまでの取扱いに基づいて改めて基準として整理いたしております。
御確認いただいて、何かございましたら御意見等をよろしくお願いします。
○大前座長 ということで、今さらという感じですけれども、様々な判断の方法等々につきまして、資料1-1~1-3で、今までこういう感じでやってきておりますが、それを確認していただきたいということでございます。事前に資料をお配りしていると思いますので、何か先生方から御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。
○江馬委員 内容についてではないのですが、生殖細胞変異原性の表記について、区分1Bのところ、動物で継世代の変異原性陽性結果、それからポツがありますね。このポツは上と「及び」なのか「又は」なのか、よく分からないのです。哺乳類におけるin vivoがあればありとして、そのポツのところの状態があればありにするのか、両方でありとするのか。下のほうに行くともう少しややこしくなるのですが、誘発する可能性ありが、ポツが2つあって、及び・及びでつないでいくのか、又は・又はでつないでいくのか、どちらでしょうか。
○大前座長 私は「又は」と解釈しておりましたけれども、宮川先生、何かございますか。
○宮川委員 これはGHSの原典を見ていただければ分かると思うのですが、「又は」だったと思います。
○大前座長 そうしますと、明示したほうがいいですかね。
○江馬委員 そのほうがよろしいと思います。一般の人も見ると思うので。
○大前座長 ありがとうございます。
そのほかはいかがでしょう。
今の点は、生殖細胞変異原性の表記の根拠のところで「又は」であることをどこかで明示していただくと。
○福田有害性調査機関査察官 そちらにつきましては、ガイダンスのほうも「又は」という形で載っていますので、また私どものほうで整理させていただきたいと思います。
○大前座長 よろしくお願いします。
そのほかに特になければ、今日の本題に入りたいと思いますけれども、よろしいですか。
最初が初期リスク評価で、N,N-ジメチルホルムアミド、その後、続きまして詳細リスク評価で、チオ尿素、チウラム、ピリジンと、この順番でやりたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、まずN,N-ジメチルホルムアミドにつきまして、事務局から御説明をお願いします。
○福田有害性調査機関査察官 それでは、N,N-ジメチルホルムアミドについて、かいつまんで御説明したいと思います。
資料につきましては、資料2-1のN,N-ジメチルホルムアミド、DMFのリスク評価書案の有害性評価部分となります。
N,N-ジメチルホルムアミドにつきましては、2013年度にリスク評価に着手しております。こちらは労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づくがん原性指針の対象物質になっておりまして、有機則の対象物質のうち発がん性のおそれがあるものとしてリスク評価の対象物質に選ばれたものとなっております。
また、経気道ばく露によるリスクが低いことは見込まれるものの、ACGIHでskinで、日本産業衛生学会で「皮」の勧告がありますので、経皮吸収が勧告されている物質として、経皮吸収の懸念がある化学物質のリスク評価の対象にもなっております。このため、参考5の「経皮吸収に関する評価方法について (暫定)」というのをつけさせていただいておりますが、それを踏まえて今回のリスク評価書案の有害性評価部分も御審議いただきたいと思います。
なお、ばく露作業報告につきましては、2014年度に355の事業場から報告を受けております。
それでは、リスク評価書案、有害性評価部分の内容をかいつまんで御説明したいと思います。
まず1の物理化学的性質でございます。
(1)の化学物質の基本情報は御覧のとおりとなっております。先ほど申し上げましたとおり、労働安全衛生法施行令別表第9の「名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物」、労働安全衛生法施行令別表第6の2の有機溶剤、また、がん原性指針の対象物質に該当しております。
次に参りまして、(2)の物理化学的性状でございます。外観につきましては、特徴的な臭気のある無色、黄色の液体ということでございます。沸点につきましては153℃。蒸気圧につきましては25℃で0.49 kPa。また、オクタノール/水分配係数につきましては-0.87という数値が出ているといった状況になっております。
次に参りまして、(3)の物理的化学的危険性でございます。こちらにつきましては以上のとおりですが、火災危険性としましては、引火性ありとなっております。爆発危険性としましては、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。化学的危険性としましては、加熱すると分解し窒素酸化物などの有害なフュームを生じるなどとなっております。
次に参りまして、(4)の製造・輸入量、用途等でございます。製造・輸入量としましては、経済産業省のデータによりますと、2019年度 (令和元年度)で3万4,336 t未満となっております。また、化学工業日報社の2021年版の『17221の化学商品』によりますと、推定3万8,000 tとなっております。用途としましては、先ほどの化工日で以上のとおりになっております。また、製造業者につきましても、辻本化学工業となっております。
次に、2の有害性評価の結果に進みたいと思います。
まず(1)の発がん性でございます。
発がん性につきましては、ヒトに対しておそらく発がん性があるとさせていただいております。根拠としましては、ヒトでの精巣がんの発生を示唆する報告があるほか、実験動物を用いた吸入ばく露による発がん性試験におきまして肝細胞腺腫、肝細胞がん及び肝芽腫の増加などが見られたため、ヒトでの限定的な証拠と実験動物での発がん性の十分な証拠があるものとして、ヒトに対しておそらく発がん性があると評価させていただいております。
65行目からの各評価区分ですが、IARCと産衛学会では2A、ACGIHではA3、DFG MAKでは4、その他は情報なしと評価されているという状況になっております。
73行目からの発がん性の閾値の有無ですが、遺伝毒性は判断できないということになっておりますので、こちらも判断できないとしております。
76行目からのLOAELになりますが、雌雄の実験動物に対する全身吸入ばく露試験で雄の200 ppmばく露群と400 ppmばく露群で肝芽腫の発生率の増加が認められたなどとしまして、200 ppmをLOAELとしております。
このLOAELから不確実係数を1,000としてNOAELに変換しまして、0.15 ppmという評価レベルが得られております。
また、定量的な発がん性のリスク評価に関しましては、ユニットリスクに関する情報はなしとなっております。
次に参りまして、(2)の発がん性以外の有害性でございます。
急性毒性について、致死性は御覧のとおりとなります。
113行目からの健康影響ですが、動物実験で過剰な毛づくろい、嗜眠、被毛粗剛、頭部脱毛が見られたほか、死亡動物では肝臓の脱色、胸腺の出血、膵臓と胃粘膜の点状出血などが見られたなどとされております。
次に参りまして、皮膚刺激性/腐食性のところになりますが、ヒトで皮膚の炎症や充血、紅斑性発疹の報告があるほか、動物実験でも皮膚刺激性や軽度の紅斑が見られたということで、ありとしております。
次に参りまして、眼に対する重篤な損傷性/刺激性も、ヒトでの症例の報告があるほか、動物実験でも軽度の結膜充血と重篤な傷害、軽度の表面歪みや下層の血管新生を伴った中等度の角膜傷害が見られたということで、ありとしております。
次に参りまして、皮膚感作性につきましては、なしとしております。
また、呼吸器感作性につきましては、報告なしとしております。
次に参りまして、169行目の反復投与毒性でございます。
LOAELとしましては22 mg/m3という数値が得られております。こちらにつきましては、DMFに曝露したヒトでの疫学調査の結果、ばく露群では頭痛、消化不良、非特異的な心臓窮迫及び肝機能障害を示唆する消化器障害の訴えが頻繁に見られ、流涙、咳及び喉の渇きを含む呼吸器の刺激症状の増加やγ-GTPレベルの有意な増加が見られるなどしたため、そういう症状が見られた方々の平均ばく露濃度に相当する22 mg/m3をLOAELとしております。
その下、183行目からですが、このLOAELから不確実係数を10としてNOAELに変換しまして、0.73 ppmという評価レベルが得られております。
なお、その下に参考として動物実験の結果も示しております。
次に参りまして、222行目の生殖毒性でございますが、ありとしております。
NOAELとしましては150 ppmという数値が得られております。こちらはウサギに0、50、150、450 ppmのDMFを吸入ばく露させた試験の結果となりますが、450 ppmで母動物の体重増加の抑制が認められたほか、胎児に体重減少や奇形、変異の増加が認められております。そうした結果からNOAELを150 ppmとしております。
237行目からですが、このNOAELから不確実係数を10としてLOAELに変換して、11.25 ppmという評価レベルが得られております。
なお、参考としてヒトでの精子の運動性の有意な減少などの報告も示しております。
次に参りまして、245行目の遺伝毒性で、ヒトでの症例報告がありますが、最終的には遺伝毒性の有無を判断するための十分な情報がないということで、判断できないとさせていただいております。
260行目の生殖細胞変異原性ですが、ヒトで抹消リンパ球の姉妹染色分体交換の発生率のわずかではあるが有意な上昇、DMFとアクリルニトリルのばく露で染色体異常の発生率の増加などが報告されているほか、in vitroとin vivoの試験結果の一部に陽性の報告があるということで、誘発する可能性があると判断させていただいております。
次に参りまして、神経毒性です。神経毒性は報告なしとしております。
次に参りまして、(3)の許容濃度でございます。
ACGIHはTLV-TWAを 5 ppm (15 mg/m3)という数値を出しております。また、産衛学会では10 ppmとなっております。そのほか、DFG MAKで5 ppm、NIOSHやOSHAでTWAが10 ppm、UK WELでlong-term exposure limitで5 ppm、short-term exposure limitで250 ppmというような数値が出ております。OARSでは設定なしといった状況になっております。
さらに、経皮吸収の勧告になりますが、ACGIHで液体及び蒸気は皮膚から大量に吸収されるといった情報もありまして、そういったものを根拠にskin、産衛学会で経皮的にも吸収されることが動物実験によって認められているなどの情報を基に「皮」となっているほか、DFG MAKではH、NIOSHやOSHAでskin、UK WELでSKとなっております。
以上から、(4)の評価値でございます。
まず一次評価値につきましては、発がん性の閾値の有無が判断できないということにされておりますので、試験で得られた無毒性量に不確実性係数を考慮して求めた評価レベルが一次評価値となります。その結果につきましては、発がん性の閾値の有無のところを御参照いただきたいと思いますが、一次評価値は0.15 ppmとしております。
また、二次評価値につきましては、ACGIHが提言しているばく露限界値のTLV-TWAの5 ppmを採用しております。
最後に、補足となりますが、このN,N-ジメチルホルムアミドにつきましては、参考5の「経皮吸収に関する評価方法について」を踏まえますと、本来は詳細リスク評価の段階で経皮吸収に関するばく露実態調査の尿等の検査結果を反映するということになっておりまして、今回は初めて、本当に初期リスクの評価の段階ですけれども、昨年度の実態調査で尿等の検査結果が出ていますので、初期リスク評価の段階で反映することを予定しております。
説明は以上になります。
○大前座長 ありがとうございました。
一次評価値、二次評価値に関してはあまり議論はないと思うのですが、恐らく議論になるのは生殖細胞変異原性のところだと思います。そのほかにもあるかもしれませんけれども。変異原性が判断できない、そして生殖細胞変異原性を誘発する可能性があるというところで、今までは余りこういう乖離はなかったということがございます。
それからもう一つ、420行目ですが、ドイツのMAKの中では「DMFには遺伝毒性や生殖細胞変異原性がないことが示されている」という表現になっているのです。だからMAKの判断とも若干乖離があるということがございますので、皆様方の御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
具体的には、39ページ、40ページ、参考資料のほうですが、そちらを見ていただくと変異原性の一覧表が載っております。In vivoのところを見ますと、幾つか実験されておりますけれども、コメットアッセイが1つ陽性、小核試験が1つ陽性、優性致死は両方とも陰性というような状況になっております。
それから、ヒトのデータは、1215行目のところで、生殖細胞変異原性につきましては、合成皮革製造工場で働く女性のSCEの発生率がわずかではあるけれども有意、それから染色体異常の発生率が対照者と比べて増加した。ヒトのデータはこのようなデータがある。
というような状況ですが、今我々の原案で出しておりますこれでよろしゅうございますか。遺伝毒性は判断できない、それから生殖細胞変異原性は誘発する可能性がある。
○西川委員 いいと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
それでは、この点は変更なしということで、そのほかの点でいかがでしょうか。
○西川委員 1つ、皮膚感作性のところで。
○大前座長 皮膚感作性は165行目ですね。
○西川委員 そうですね。単に「なし」と書いてあるのですが、実はこれはモルモットのマキシマイゼーション法で陰性になっていることが根拠になっていると思いますので、やはりそれを書いたほうがよいかなと思いました。
○大前座長 ありがとうございます。
では、ラットのマキシマイゼーション法のことをその下に書くようにと。166行目ですか。
○西川委員 モルモットですね。
○大前座長 失礼しました。モルモット。
○福田有害性調査機関査察官 そちらにつきましては、なしとする根拠を付け加えたいと思います。
○大前座長 お願いします。
そのほかはいかがでしょう。
特になければ、一次評価値、二次評価値は先ほどの数字でよろしゅうございますか。
では、若干の修正はお願いしておりますけれども、一次評価値、二次評価値は原案どおりということでよろしくお願いします。
それでは、2番目の物質、チオ尿素につきまして、よろしくお願いします。
○佐藤化学物質評価室長 それでは、チオ尿素について御説明いたします。
まず、この物質につきましては、2014年にリスク評価の対象として選ばれています。理由といたしましては、化審法のスクリーニング評価で発がん性クラスが2と分類されていたからです。2015年度からリスク評価を始めまして、2020年3月に初期リスク評価書を公表しております。そのときにばく露作業報告の中で二次評価値を超えているところが2か所ありましたので、詳細リスクに移るべきという判断がされております。それで今回詳細リスク評価書の原案を取りまとめております。
資料の6ページ目の174行目を御覧ください。許容濃度のところです。いずれのところも設定なしとなっておりまして、初期リスク評価書の議論のときに二次評価値をどうしようかということを議論しております。そこでページを戻っていただきまして、5ページ目の110行目の反復投与毒性、ヒトの疫学調査になりますけれども、ここで得られたLOAELの0.6 mg/m3を二次評価値にしてはいかがかということで結論が出ております。そういった議論の過程がある物質になっております。
今回、初期リスク評価書の判断を大きく変えるような新しい有害性の情報はございませんでした。
若干データの更新等がございましたので、概要を御説明いたします。
1ページ目を御覧ください。10行目にありますように、労働安全衛生法に基づきまして、表示とSDSの交付の義務が課せられている物質になります。
11行目、物理化学的性状になりますけれども、外観は白色の結晶または粉末ということです。沸点、蒸気圧はデータなし、蒸気密度はデータなし、融点は182℃、引火点はデータなし、発火点はデータなしというものです。
物理的化学的危険性ですが、可燃性、火災時に刺激性もしくは有毒なフュームやガスを放出する。爆発危険性ですが、アクロレインという化学物質と接触すると火災及び爆発の危険性がある物質です。化学的危険性ですが、加熱すると分解し、有毒な窒素酸化物及びイオウ酸化物のフュームを生じる。アクロレイン、強酸、強酸化剤と激しく反応するという特徴がございます。
18行目、製造・輸入量、用途などですけれども、ここはデータを更新しておりまして、製造・輸入量は約7,000 tとなっております。用途は、様々な医薬品の原料、そのほかチオグリコール酸アンモン、写真薬、金属防錆剤、ゴム薬品、農薬といったものの原料として使われております。製造業者は、25行目にございますように堺化学工業、日本化学工業といったところで、三井化学ファインが販売しております。
3ページ目を御覧ください。ここは初期リスク評価のところと結論は変わっていないのですが、根拠の知見を詳しく記載しております。
ここの根拠になっている試験なのですけれども、ヒトにおける発がん性の報告はありません。動物試験が2つ引用されているのですけれども、群内の数が少ない、また、2つ目の試験については化学物質をどのぐらい摂取したか絶対量が不明ということで、初期リスク評価書では根拠として掲載していなかったのですけれども、詳しく試験を書くべきだということで、ここの「ヒトに対する発がん性が疑われる」というところにまとめております。
各評価区分ですけれども、43行目以降に書いてございます。IARCではグループ3、ACGIHは情報なし、日本産業衛生学会では2B。括弧の中で1995と書いてありますけれども、これは提案年の1995年です。設定年は2015年になります。ここは後ほど修正いたします。DFGでは3B、EUでは2と区分されております。
50行目、閾値ですけれども、ありと判断しております。根拠といたしましては、遺伝毒性の判断を根拠としております。
参考ですけれども、LOAELといたしまして5 mg/kgという値が得られております。
説明が遅くなったのですけれども、初期リスク評価のときには濃度のppmという値での評価値も並列で書いてあったのですけれども、詳細リスクの原案では全てmg/kgという単位で統一した絶対量を記載しております。
65行目です。リスクレベルの算出ですけれども、ユニットリスクに関する情報はありませんでした。
68行目、発がん性以外の有害性です。
急性毒性につきまして、ラット、マウス、ウサギ、ここはデータの更新がございません。85行目、健康影響ですけれども、動物試験においては致死用量での死亡は肺水腫が原因であり、生存動物には胸水が見られた、中毒性のチオ尿素はラットで高血糖、糖尿、多尿及び肝グリコーゲン値の低下を引き起こすといった所見が見られております。このページにつきましても初期リスク評価書からデータの更新はありませんでした。
91行目、皮膚刺激性/腐食性はありです。根拠といたしまして、ウサギの試験結果をそこに書いてございます。
95行目、眼に対する重篤な損傷性/刺激性、これも根拠として3行ほど書いてございますけれども、ウサギに対する影響が見られておりますので、ありとまとめております。
101行目、皮膚感作性、これもありとまとめております。ヒトに対するバッチテストといったものから影響があるとまとめております。
108行目、呼吸器感作性ですが、調査した範囲で報告はありませんでした。
110行目、反復投与毒性、これはヒトの疫学調査で、これが二次評価値の根拠になっている試験になります。ロシアにおけるチオ尿素生産工場での疫学データになります。122行目にありますように、評価レベルは0.06 mg/m3という値が得られております。125行目に動物試験結果から得られたNOAELを記載しております。NOAELは12.5 mg/kg体重/日という値が得られております。これにつきまして計算をいたしまして、139行目にありますように、評価レベルは10.5 mg/m3となっております。
142行目、生殖毒性ですけれども、判断できないとまとめております。
159行目、遺伝毒性につきましてもなしとまとめております。
今までの説明のところですけれども、初期リスク評価書と判断は変わっておりません。
168行目、生殖細胞変異原性も判断できないと変わっておりません。169行目以降に根拠として試験を追記しております。初期リスク評価書ではこの部分は書いてございませんでした。
174行目、許容濃度等ですけれども、最初に御説明いたしましたようにどこの評価機関でも設定がないということで、二次評価値になるのですけれども、ヒトの疫学のデータから求められた0.06 mg/m3を二次評価値としてまとめております。
一次評価についてですけれども、動物試験から導き出された無毒性量NOAELが二次評価値の1/10以上であるため、設定はされておりません。そういった物質になります。
198行目以下のところに初期リスク評価書に書いてあるばく露実態の評価をそのまま掲載しておりますけれども、この部分は、今後ばく露実態調査の結果が得られましたら更新いたしまして、ばく露評価小検討会で検討していただく予定となっております。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
許容濃度等がない物質に関しましては、今まで得られた情報の中から計算して、その数字を二次評価値にするというのは今までやってきたルールになっております。
先生方、御意見あるいは御質問はいかがでしょうか。
○吉成委員 1点教えていただきたいのですが、103行目の皮膚感作性のところの文章で、「チオ尿素の化合物」という表現があるのですが、これはチオ尿素そのものではないということですか。それともチオ尿素そのものということですか。少し曖昧な表現かと思ったのですが、いかがでしょうか。
○大前座長 そうですね。随分曖昧ですね。これは気がつかなかったですが。
○吉成委員 後ろのほうも全部「チオ尿素の化合物」となっていましたが、後ろのほうからは判断できなかったので、御確認いただいたほうがよろしいかなと。全く反応性が違う化合物ですと意味がないことになってしまいますので。
○佐藤化学物質評価室長 元が環境省の有害性評価シート2004年ですので、そちらを確認いたします。
○吉成委員 お願いいたします。
○大前座長 多分ここが回答ではないかと思うのですが、540行目に「チオ尿素やチオ尿素の化合物によるアレルギー性接触皮膚炎の症例が多く報告されており」と書いてあり、540行目はチオ尿素の化合物ということですから、両方あるのだろうと思います。確かに表現は曖昧ですので、「チオ尿素」と書かれていいのではないかと思いますけれども、先生、ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょう。
○津田委員 チオ尿素のところを見ますと、ほかの発がん性の疑われたものでジエチルチオウレアとかナフチルチオウレアとか、そういう化合物がありますので、やはりはっきりしておいたほうがいいと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
では、「チオ尿素」という単独で。
○西川委員 この物質はIARCでグループ3になっていますので、結局発がん性物質には該当しないということになるのですが、ここで踏み込んで、「ヒトに対する発がん性が疑われる」ということになっています。幾つかの動物の試験で腫瘍の発生が見られたということですが、IARCはそれらの試験はいずれも条件的に適切なものではないという判断の基にグループ3にしているわけです。だから、そのあたりは議論しないといけないと思いますし、もう一つは、「発がん性が疑われる」という区分はGHSにはないと思うのです。「可能性がある」と置き換えればいいかもしれませんが。そのあたりの御議論を頂ければと思います。
○大前座長 津田先生、いかがですか。
○津田委員 それでもいいのですけれども、IARC等ではっきりしない理由は、チオウレアというのはペルオキシダーゼ阻害作用が非常に強くて、そうすると甲状腺ホルモンの合成が阻害されて、そのためにTSHがたくさん出て甲状腺腫瘍が出るという機序があります。それはアミノトリアゾール等であるので、チオウレア自体に抗甲状腺作用があることは分かっていますので、そういうことも踏まえてIARCもはっきり言えていないのではないかと思っています。
○大前座長 ありがとうございました。
チオ尿素は確かに昔甲状腺の薬か何かで使われていたのですよね。
○津田委員 抗ベルオキシダーゼ作用によって甲状腺ホルモンが減少し、反応的にTSH値の上昇することによって甲状腺腫瘍が発生することが疑われています。
○大前座長 それから、西川先生の後半のほうの表現ですけれども、一応GHS分類では区分2は「ヒトに対する発がん性が疑われる」という表現になっていると思うのですが。
○西川委員 おそらく「可能性がある」というような表現になっていると思うのですが、この際GHSに合わせる形にしたほうがよいのかなと思ってコメントしました。
○宮川委員 GHSの表現は「suspected」という言葉が使われていて、日本語版では「疑われる」と訳されていたと思います。JISになっているところです。
1点、IARCとGHSが違うのは、IARCの2A相当になるのがGHSの1Bで、IARCの2BがGHSの区分2ということになりまして、IARCはヒトの情報をかなり重視しますけれども、GHSは区分1Bにするときには主として動物データというようなことが言われているというところは違いがあります。でも、今回は区分2相当なので総合的な判断になるのかなという気がいたします。
○大前座長 ありがとうございました。
そのほか、今の点について御意見いかがでしょう。
○西川委員 関連したコメントになりますけれども、遺伝毒性なしという判断で、これは以前から変わっていないのですが、試験のデータを見ると、それなりに幾つかの試験で陽性の結果が出ているのです。これを見てなしと言っていいのかというのはやはり気になりますので、議論していただければと思います。
○大前座長 これは御意見いかがでしょう。
21ページ、22ページに遺伝毒性の結果の表が載っておりますけれども、酵母関係だと「+」が多い、それ以外はあまりはっきりした「+」はないというような情報になります。
清水先生、いかがでしょうか。
○清水委員 今ちょっと見ておりまして、たしかこの作成委員会のときに、Amesはほとんど「-」で、染色体異常試験もなかったのですね。それから小核は出たり出なかったり、その他でもあまりはっきりしていないということで、評価としてはなしと判断したと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
西川先生の御意見としては、「判断できない」ぐらいのほうがいいのではないかという御意見ですか。
○西川委員 そう思ったのですけれども、エキスパートの判断でなしということですので、異議ありません。
○大前座長 ありがとうございます。
そのほかはいかがでしょうか。
特になければ、一次評価値、二次評価値は先ほどの原案どおりということでよろしゅうございますか。―ありがとうございました。
それでは、次の物質、チウラムですね。説明をよろしくお願いします。
○佐藤化学物質評価室長 では、続きましてチウラムのリスク評価書の原案の説明をいたします。
この物質につきましては、GHS分類で生殖毒性が区分1となっている化学物質だったために、2014年にリスク評価の対象として選ばれています。2020年3月に初期リスク評価書として公表されています。このチウラムにつきましても先ほどいのチオ尿素と同様で、二次評価値を超えているばく露の報告がありましたので、詳細リスクに移るべきだという判断がされております。
本名は「テトラメチルチウラムジスルフィド」と長いのですけれども、別名の「チウラム」のほうがよく知られておりますので、評価書の表紙に別名の「チウラム」も記載しております。また、評価書本体でも化学物質の名前として「チウラム」、「チラム」と記載しております。
この評価書の原案なのですけれども、別添1、別添2の有害性総合評価表、有害性評価書は、原案をつくる際にいろいろ頂きました意見、議論の過程で修正すべきところがまだ修正されていない箇所がございます。ただし、本文は頂きました意見をかなり反映しておりますので、本文のほうを御説明したいと思います。別添のほうは会議終了後に追って修正いたします。
まず物理化学的性質ですけれども、この物質につきましても、14行目にございますように、ラベルとSDSの交付の義務対象物質となっております。また、強い変異原性が認められた化学物質といたしまして官報の告示に載っております。
18行目、物理化学的性状です。外観は無色の結晶。沸点は129℃。蒸気圧は「ほとんどない」となっておりますが、初期リスク評価書では「無視できる」となっておりまして、議論の過程で「ほとんどない」と修正しております。
20行目、物理的化学的危険性ですけれども、火災危険性は、可燃性です。有機溶剤を含む液体製剤は引火性のことがある、火災時に刺激性もしくは有毒なフュームやガスを放出する性質があります。爆発危険性ですが、空気中で粒子が細かく拡散して爆発性の混合物を生じる。物理的危険性ですが、粉末や顆粒状で空気と混合すると粉塵爆発の可能性がある物質ということになります。化学的危険性ですが、燃焼すると分解し、イオウ酸化物、硫化炭素などの有害なフュームを生じます。
28行目、ここはデータを更新しておりまして、製造・輸入量は762 tとなっております。初期リスク評価書では1,000 tでしたので、減っている傾向があります。用途のところですけれども、ここは初期リスク評価書と比較してかなり詳しく書いております。チウラム系加硫促進剤の代表で天然ゴム、ジエン系合成ゴムといったものの材料として使われているということがあります。以下、かなり詳しく書いてありますけれども、ここでの説明は省かせていただきます。製造業者は、41行目にありますように、チウラムはヌーリオン・ジャパン、大内新興化学工業、三新化学工業といったところが製造業者でして、輸入品の場合はランクセスという業者が輸入をしております。
44行目、有害性評価の結果になります。
まず発がん性ですけれども、ヒトに対する発がん性は判断できないとまとめております。ここは初期リスク評価書と判断は変わっておりません。根拠ですけれども、ヒトにおいて報告がない、また動物実験ではラット、マウス及びイヌを用いた長期の経口投与試験でチウラム投与による腫瘍発生率の上昇は認められなかったということです。そこで、発がん性を、IARCはグループ3、ACGIHはA4に分類しております。
52行目以降は各評価区分です。
58行目ですが、閾値はなしと判断しております。遺伝毒性の判断を根拠としております。
発がんの定量的リスク評価ですけれども、ユニットリスクに関する情報はなしでした。
63行目以降は発がん性以外の有害性です。
急性毒性、ラット、マウス、ウサギにつきましてはデータの更新はありませんでした。76行目以降、健康影響ですけれども、ラット、マウスといった動物に対して影響が見られております。
81行目、皮膚刺激性/腐食性ですが、ヒト、ウサギに対して影響がありましたので、ありとまとめております。
88行目、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、ありとまとめております。根拠ですが、ヒトとウサギに対して影響が認められたという報告がありました。
94行目、皮膚感作性、これもありとまとめております。根拠ですけれども、様々なタイプの作業現場において影響があったと根拠が示されております。
100行目、呼吸器感作性ですが、判断できないとまとめております。104行目にございますように、影響があったのですけれども、それがチウラムばく露によるかは明らかではない、また動物実験の報告はないということでした。
ここまでの判断ですけれども、初期リスク評価書と変わってはございません。
続きまして、106行目、反復投与毒性ですけれども、イヌに対して経口投与を104週間行った長期試験で、125行目にありますように、NOAELは0.4 mg/kg/日と判断しております。
これをもちまして、129行目にありますように、評価レベルは0.24 mg/m3 (0.02 ppm)という濃度を記しております。
132行目、この部分は生殖毒性なのですが、初期リスク評価書と判断が変わっております。初期リスク評価書では判断できないとされておりましたが、今回の原案ではありに変更しております。
134行目の根拠のところにSDラットの試験データがあるのですけれども、初期リスク評価ではここが参考扱いで、146行目にある<参考>で人間に対する疫学調査の結果を用いて判断できないとしていたのですが、根拠と参考のデータを入れ替えて、生殖毒性がありと判断しております。
132行目に戻っていただきまして、ラットに対する動物試験の結果からNOAELは2.3 mg/kg体重/日と得られまして、評価レベルですが、143行目にありますように、1.38 mg/m3 (0.14 ppm)という値が得られております。
155行目です。遺伝毒性につきましてはありと、ここも初期リスク評価と判断は変えておりません。168行目にありますように、厚生労働省では強い変異原性が認められた化学物質として指定しております。ACGIHでも様々な実験系で遺伝毒性が示されたと判断しております。
173行目、生殖細胞変異原性はありと判断しております。174行目以降に根拠の試験データが書いてございます。初期リスク評価書ではこの根拠の部分が書いてございませんでしたが、今回は本文に追記しております。
188行目、神経毒性ですが、これはありと判断しております。根拠になる試験データが190行目以降にございまして、動物試験のデータがございます。ここで得られたNOAELは雄と雌で違うのですけれども、雌のほうが低かったので、それを用いまして、202行目にございますように、評価レベル1.71 mg/m3 (0.17 ppm)を得ております。
204行目、許容濃度等です。
205行目のところにACGIHのTLV-TWAが書いてございますが、0.05 mg/m3 (0.005 ppm)インハラブル (吸引性)画分及び蒸気という値が得られております。初期リスク評価書ではここの表記が若干違っておりまして、「0.005 ppm」の後に「可及入画分 (※インハラブル粒子)および蒸気」となっておりましたが、今回原案をつくる際に議論がございまして、「インハラブル (吸引性)画分および蒸気」と対象物質の表記が変わっております。226行目、日本産業衛生学会ですが、許容濃度を0.1 mg/m3と定めております。2008年提案で、変わっておりません。241行目、DFG MAKの値ですが、1 mg/m3という値になっております。行が飛んで、283行目と284行目にNIOSHとOSHAの値がありまして、それぞれ5 mg/m3という値が得られております。
292行目、二次評価値ですけれども、ACGIHのTLV-TWAの0.05 mg/m3を二次評価値として設定しております。ここの判断は初期リスク評価書と変わっておりません。
一次評価値ですが、動物試験から導き出された無毒性量NOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルが二次評価値の1/10以上であるため、一次評価値はなしとなっております。
299行目以降のばく露実態評価は初期リスク評価書の表記をそのままにしてありまして、新しいばく露作業報告が上がってきまして、それをばく露評価小検討会で議論いただいた後に修正をと考えております。
説明は以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
最初に御説明がありましたように、評価書の本文は最新版なっておりますけれども、別添1の評価表と別添2の有害性評価書は古い版が出ているので、本文と下のほうが少しずれているということで、この部分の修正は後ほどしていただくということになろうかと思います。これは事務局にお任せしてよろしいですか。
○福田有害性調査機関査察官 事務局で責任を持って修正いたします。
○大前座長 そういうことですので、よろしくお願いいたします。
委員の先生方から御意見はいかがでしょうか。
大前からなのですが、別添の古い版としても多分これは同じだと思うので、43ページの変異原性の表の一番下から2つ目、ショウジョウバエの伴性劣性致死遺伝のことは「+」と書いてあるのですが、マウスの優性致死試験のことが本文に書いていないので、これは加えていただきたいと思います。ちなみに、本文ではどこからかといいますと、173行目の「生殖細胞変異原性:あり」のところをずっと読んでいくと、劣性致死のやつは182行目に書いてあるのですが、優性致死のことが書いてないので。どこかに書いてありましたか。
○江馬委員 174~176行目あたりです。
○大前座長 ありますか。失礼しました。申し訳ありません。
そのほかに委員の先生方、御意見あるいは御質問はいかがでしょうか。
○江馬委員 別添のほうなのですけれども、37ページの730行目に「Mishra et al.1993」とあります。この試験はMishraの試験ではなくて、Mishraの試験はその上の試験なのです。これだけPubMedで論文が取れたので見たのですが、これが30、60、90日に剖検しているので、上の実験だと思います。Mishraの1993は180日とか360日まで試験を行っていないです。
○大前座長 そうすると、本来は726行目のところでMAKの前にMishraの文献を書かなければいけない。
○江馬委員 と思います。
○大前座長 ありがとうございます。
そのほかはいかがでしょうか。
特にないようでしたら、先ほどの別添1と別添2は本文に合わせて修正していただくということで、評価値に関しては原案どおりということでよろしゅうございますか。―ありがとうございました。
それでは、今日の最後の物質ですね。ピリジンについてお願いします。
○福田有害性調査機関査察官 それでは、4物質目のピリジンになります。
ピリジンにつきましては前回の第1回目でも御審議いただいたものとなっております。資料につきましては資料3-1と3-2となります。
ピリジンのヒトに対する発がん性の表記につきましては、初期リスクでの表記と詳細リスクでの表記を比べますと、具体的にはなっているのですが、実際には新たな試験結果ではないように見受けられます。そういったこともあって、今回の表記の部分については初期リスクと詳細リスクの表記の仕方が異なっているという状況になっております。先ほどヒトに対する発がん性の表記の仕方ということを1番目の議題のところで御審議いただきましたが、それに基づきまして、改めてピリジンのヒトに対する発がん性の評価の表記の仕方、表記の内容について御審議をお願いしたいと思っております。
また、今回、1回目での御指摘などを踏まえまして、資料は見え消しでお送りさせていただいておりますが、修正した部分がございます。その点の御意見も含めて御審議いただければと存じております。
なお、発がん性の表記につきまして、事務局としましては、最新の2019年のIARCの発がん性の分類はグループ2Bとなっておりまして、「政府向けGHS分類ガイダンス」などを踏まえますと、先ほどの表記の一番後ろのほうの対比表を参考に持ってきますと、GHS分類では区分2相当ですので、元のヒトに対する発がん性が疑われる化学物質に戻したほうがよいのではないかと考えております。
以上でございます。御審議をよろしくお願いします。
○大前座長 ありがとうございました。
発がんに関する表記をどうするかということで、西川先生からコメントを頂いているので、西川先生、よろしいですか。
○西川委員 問題になった発がん性は35行目からでしょうか、これが変更した文章ですけれども、幾つか気になったことがあって、事務局には既にお伝えしたのですが、まず第1点は、ここで「腎尿細管腺腫」、「腎尿細管癌」という記載があるのですが、これは訂正する前は「腎細胞腺腫」、「腎細胞癌」となっていて、言葉としては同じ意味なのですが、ヒトでは「尿細管腺腫」とか「尿細管癌」という用語を使わないので、同じ意味であれば元のままで、つまり「腎細胞腺腫」、「腎細胞癌」のほうがヒトのリスク評価をする上では適切かなと思いました。
それから、「腎尿細管癌」を消して「腎尿細管腫瘍」となっているのですが、これはIARCの記載、あるいはNTPのもともとの報告書を見ても腺腫とがんの合計の発生頻度を見ているわけですから、これも元に戻したほうがよいかなと思いました。
さらに、「F344/Nラット雌での単核細胞白血病、Wistarラット雄での精巣細胞腺腫の発生率が有意に増加した」とあるのですが、これらは発生頻度が増加したわけではなくて、傾向検定のみでの有意な変化なのです。したがって、これら2つの腫瘍を追記するのであればできるだけ正確な記載をしたほうがいいと思いますし、傾向検定だけであればわざわざ追記する必要もないのかなと思いました。
最後に、「Wistarラット雄での精巣細胞腺腫」と書いてあるのですが、これは間違いで、「精巣間細胞腺腫」あるいは「間細胞腫」とすべきところですので、これを記載するのであれば正確な記載に改めていただきたいというのが私のコメントです。
○大前座長 ありがとうございました。正確に書きましょうという御意見ですね。
そうすると、基本的には前の文章のほうがいいということですね。
○西川委員 基本的にそうですけれども、さらに踏み込めば、傾向のみの有意の増加である単核細胞白血病などをあえて書く必要はないのかなと思っています。
○大前座長 ありがとうございます。
そのほか、このがんの根拠あるいは表記に関していかがでしょうか。
○宮川委員 専門の先生の御意見を伺いたいのですけれども、ここに書かれているものを見て、IARCは一応動物実験では十分な証拠があると判断されているということだと思うのですけれども、それはそれでよろしいのでしょうか。そのあたり、動物で十分であるとGHS分類だと1Bでもいいのかなと。そうすると「おそらく発がん性がある」という表記になると思うのですが、ここに書かれた動物実験のデータがよくよく考えれば十分とは言えないような場合には一段落とした「疑われる」程度になるのかなという気がしたので、御専門の先生の意見を伺いたいと思います。
○西川委員 IARCは、ラット及びマウスで明らかな腫瘍の発生増加があるので、動物のデータは十分であると判断しています。ただし、ヒトのデータが不十分なのでグループ分類は2Bになっていると思います。結論としては、「おそらく発がん性がある」というのは妥当かなと思っています。
○大前座長 ありがとうございます。
そうすると、表現としては「おそらく発がん性がある」でいいという御意見ですね。
○西川委員 はい。
○大前座長 ありがとうございます。
○津田委員 日本語のほうですけれども、「おそらく」というのはかなり強い意味だと思うのです。IARCで2Bは、GHSでは2、産衛では第2群B、ACGIHではA3です。そうすると、その上の1B、IARCでいうと2Aは日本語ではどのように表現するのでしょうか。「おそらく」というのはかなり可能性が高いという日本語だと思うのですけれども、その上というと言葉が見つかりません。
○宮川委員 ここは最終的な表記はGHSに準拠した表記をするということで、「おそらく発がん性がある」というのは、GHSのJISでこのとおり訳されているのはGHSの区分1Bということになります。動物実験で十分な証拠があれば、IARCと違いまして、疫学のデータがなくても1Bにできるということで、その動物実験で十分というのをとると、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」というGHSの1Bの区分相当の表現になるということだと思います。
○津田委員 そうしますと、頂いた資料の1-2にこれを比べた発がん性分類の表記というのがありますが、そこで横に並べてみると今の御説明は合わない気がするのですけれども。
○大前座長 先ほどの西川先生のお話ですと、2Bだけれども動物に関しては十分な証拠があるとIARCは言っているということですので、そういうパターンだとGHSは1Bに区分するということなので、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」という表現になると解釈したのですが。
○津田委員 そうすると、2Aと2Bは一緒ということになりますか。
○宮川委員 IARCの2AとGHSの1Bが基本的には対応すると言われています。
○津田委員 そうすると2Aはどうなるのですか。いただいた資料によるとIARCの2はAでもBでも1Bに相当して、「おそらく」という日本語になるという意味でしょうか。
○宮川委員 いや、2Aが1Bに、2BがGHSの区分2になるというのが基本的な対応ですけれども、GHSの1Bの判断では、動物実験だけの場合にどうするかというところでIARCあるいは産業衛生学会と違うところが出てくるということだと思うのです。
○津田委員 まだよく分からないのですけれども、日本語にしたらどうなるのですか。
○宮川委員 日本語では、1Bになったときには「おそらく発がん性がある」と表記するというのは、GHS及びそれが日本語になったJISの規則でそのとおりに書いてあるので、それを使うということになります。
○津田委員 そういうことですと、確認ですが要するに2はAでもBでも一緒ということですね。GHSにすれば。
○宮川委員 すみません、2というのは。
○津田委員 2A、2B。
○宮川委員 いや、2Aの場合は基本的にはGHSの1B、それからIARCの2BはGHSの区分2ということになるのですけれども、ずれが生じるのは、動物実験だけ十分な場合にGHSでは比較的1Bと判断しやすいところがあるというのはIARCの2Aとずれてくると思います。
○津田委員 2Bというのは、IARCの提案分類でいうと、動物実験においてsufficient evidence。ですから、動物実験で十分な証拠があるけれどもヒトに外挿するだけのヒトのデータあるいはAにするだけの証拠がない場合に2Bとなります、そうすると、2BがGHSの1Bに相当するというのは私は理解できないのですが。
○宮川委員 GHSの1Bは、主として動物実験の証拠によって判断するというのがもともとの規定で、したがって、動物実験でsufficientの場合、IARCでは2Bにしかならないかもしれませんけれども、GHSでは1Bにすることができるので、そこで食い違うことがあるということです。
○津田委員 先ほど申しましたが、IARCの2Aと2Bとは区別しないということですね。
○宮川委員 データによって同じ1Bになってくる可能性があるということになります。なので、先ほど私が質問しましたのは、これで動物実験は十分と考えられるかというところが非常に重要になるのかなということで質問させていただきました。
○津田委員 その点は安全を考えて問題ないと思うのですけれども、それで日本語で「おそらく」となると、事実上動物実験だけのデータでsufficientと言っているのはGHSの1Bにするということがあって「おそらく」となっているということですね。
○宮川委員 そういうことだと思います。
○大前座長 若干IARCとGHSで2Bのレベルといいますか、それで扱いが違うということのようですね。
○津田委員 この表を見ると、2のところが2Bで、1Bが2Aと書いてあります。
○大前座長 先生がおっしゃっているのは右下の表ですね。
○津田委員 はい。
○大前座長 区分2が2Bという表が右下にありますけれども、これに合わないと。
○宮川委員 先ほど言いましたように、動物実験でsufficientという十分なデータがあった場合の扱いは多少違ってくるのですけれども、大きく見ると、ほかの機関で分類しているものを参考に、GHSを考えるときにはこのような対応があるのではないかということで、政府の分類ガイダンスなどにはこれを参考にということで、この表が載っているということだと思います。
ついでに申し上げますと、一番重要なのは、動物実験できれいにデータが出たけれども人間では全然データがないようなものについても、安全を考えて、情報を伝達するためには1Bにできるというところが非常に重要な点かなと私は思っています。以前、日本バイオアッセイセンターで1,2-ジクロロプロパンの発がん性試験をして、きれいにデータが出ていたと思うのですけれども、そういうものの場合には、その段階で1B相当ということで、「おそらく発がん性がある」という言い方ができるとすると、人での事故が起きる前に重要な情報の提供ができたようなこともあったかと思うのです。
○大前座長 ありがとうございました。
今までの意見を総合しますと、発がん性の表現に関しましては、GHS相当で「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と。根拠のところは、今回のではなくて以前のやつにしたほうがベターだろうと。そのような結論でよろしいですか。単核白血病とか、そこら辺は書く必要はないだろうという西川先生の御意見も含めて前のやつに戻すということでよろしいですか。
○西川委員 それでいいですし、F344/Nラット雌に見られた単核細胞白血病についても、これは傾向だけで有意なので、これも本来削除してよろしいかなと思いました。これを加えるとしたら先ほどの精巣間細胞腺腫も加えないといけなくなりますので、そのあたりは御判断いただければと思います。
○大前座長 そうすると、前の文章の「雌での単核球性白血病の発生率が有意に増加したことから」、ここのところは外してしまうということですね。
では、そのような修文をしていただいて、それで結論にするということにいたしたいと思います。
ピリジンに関しましては発がんのことだけが前回から残っていたことで、そのほかについては前回で議論が終わっておりますので、これで終了したいと思います。
そうしますと、今日の議事で物質の評価が終わりましたので、最後の「その他」ですが、これは事務局から何かございますか。
○福田有害性調査機関査察官 検討をお願いしたい案件につきましては以上となります。
本日頂いた御意見を踏まえましてということと、チウラムのところを修正したものを改めて送付させていただきますので、その際は御確認をお願いしたいと思います。
また、次回についてですが、期間的に厳しいのかもしれないと思いつつも、期間的に可能であれば発がん性評価ワーキンググループでの発がん性試験の評価結果の報告などができたらと考えています。その点ができるかどうかも含めて検討の上、別途調整の連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上となります。
○大前座長 ありがとうございました。
先生方から今日の議題以外のところで何か御意見はございますでしょうか。
特になければ、今日のリスク評価検討会 (有害性評価小検討会)を終了にしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
では、どうもありがとうございました。お疲れさまでした。