第8回多様化する労働契約のルールに関する検討会(議事録)

日時

令和3年10月12日(火)10:00~12:00

場所

厚生労働省労働基準局第1会議室 中央合同庁舎第5号館16階
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者(五十音順)

  • (あん)(どう)(むね)(とも) 日本大学経済学部教授
  • (えび)(すの)(すみ)() 立正大学経済学部教授
  • (くわ)(むら)()()() 東北大学大学院法学研究科教授
  • (さか)(づめ)(ひろ)() 法政大学キャリアデザイン学部教授
  • (たけ)(うち)(おく)()寿(ひさし) 早稲田大学法学学術院教授
  • (やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

無期転換ルールに関する論点について

議事

議事内容

 
○山川座長 皆様、おはようございます。
 定刻となりましたので、ただいまから第8回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方、本日も、御多忙のところ、御参加いただきまして、大変ありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症の感染状況も変化しつつありますけれども、本日はZoomによるオンラインでの
開催とさせていただきます。委員の皆様方、こちらの音声、画像は届いておりますでしょうか。
 ありがとうございます。
 本日は、両角委員が御欠席です。
 議題に入ります前に、事務局からオンライン操作方法の説明と資料の確認をお願いいたします。
○田村労働関係法課長 事務局より、操作方法の説明と資料の確認をいたします。
 御発言の際には、Zoomの手を挙げる機能を使用して発言の意思をお伝えいただき、座長の指名がございましたら御発言をお願いいたします。御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようよろしくお願いいたします。不安定な通信状態が続く場合には、座長の御判断により、会議を進めさせていただく場合がございますので、御了承をお願いいたします。
 続きまして、資料の御確認をお願いいたします。
 本日の配付資料は、資料1と参考資料1~3です。説明時に画面に投影いたしますので、そちらを御参照ください。資料1「無期転換ルールに関する論点について」が今回の資料でございます。参考資料1と2は前回の資料に前回の議論の内容を追加したものになっております。参考資料3につきましては、委員の皆様方には事前に御説明しておりますけれども、第5回検討会で提出した資料1の実態調査結果につきまして、一部修正を行っております。具体的には、28ページと35~37ページの60歳以上の嘱託を除いたデータの集計方法に誤りがございました。事務局の不手際がございまして、大変申し訳ございません。
 今後の検討に当たりましては、訂正後の資料を御参照いただきますようお願いいたします。本日の資料につきまして不備などがございましたら、事務局までお申しつけください。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、カメラ撮りがありましたらここまでとさせていただきます。
 本日の議題に入ります。資料1を御覧ください。事務局から、資料1「無期転換ルールに関する論点について」につきまして、説明をお願いします。
○田村労働関係法課長 それでは、資料1につきまして御説明いたします。
 資料1につきましては、これまでの無期転換ルールに関する論点全般について整理したものでございます。
 論点一覧につきましては、これまでお示ししてきた論点ですので、割愛いたします。
 論点の総論の部分でございます。総論の論点に関しまして、これまでの検討会の御議論を踏まえた考え方を整理しております。以下、各論につきましても、同様の整理となっております。まず、無期転換ルールの活用状況について、無期転換申込権が生じた者のうち、無期転換を申し込んだ者は約3割、無期転換ルールにより無期転換した労働者は118万人と推計されております。一方、無期転換権が生じたものの申し込まなかった者のうち、ほとんどが有期労働契約のまま継続して雇用されています。3点目で、無期転換の希望の有無を見ますと、希望する者が2割弱、希望しない者が2割強、分からないとする者が5割強と多くなっています。4点目で、無期転換ルールに関して何らか知っている企業が約8割、一方、有期契約労働者のうち約4割が制度を知らないという状況です。5点目で、無期転換ルールの導入後、比較的人手不足感が強い雇用環境であったため、現状に不満はなく、労働者の無期転換希望が大きくなかったとも考えられますけれども、今後は雇用環境が厳しくなる可能性もある中で、この制度を活用する希望や期待が高まる可能性があるのではないかという御指摘がございました。
 続きまして、有期契約労働者の雇用への影響について以下のような御意見がありました。1点目で、無期転換を希望する理由は、雇用不安がなくなるから、長期的なキャリア形成の見通しや将来的な生活設計が立てやすくなるからが多くなっておりまして、長期雇用を希望する労働者にとって、無期転換ルール導入の目的である雇用の安定に一定の効果が見られると言えるのではないか。一方、希望しない理由として、高齢だから、定年後の再雇用だから、現状に不満がないからが多くなっており、必ずしも全ての有期契約労働者が無期転換を希望しているわけではないのではないか。また、転換とともに処遇の改善を期待する者がいる一方、負担の増加を求めない者もいると言えるのではないか。その下ですけれども、そもそも制度を知らない労働者が約4割、希望するか分からない労働者が5割いることにも留意が必要ではないかという御意見がございました。
 それから、企業の雇用管理への影響について、以下のような御意見がありました。1点目で、無期転換申込権が生じた労働者がいる事業所のうち実際に権利を行使した労働者がいるのは4割弱であり、労働者の権利行使の有無は事業所によって偏っている可能性があるのではないか。また、企業規模によっても異なるのではないか。2点目で、法定の無期転換ルールのほかに、企業独自の制度による無期契約への転換も見られることから、こうした独自の制度による転換状況と併せて見ていく必要があるのではないか。3点目で、企業独自の無期転換制度で転換した人は比較的若年層に多いが、無期転換ルールにより、企業独自の無期転換制度では対象にならなかった年齢層が無期転換していると言えるのではないか。最後に、企業の対応として、5年を超える有期契約労働者から申込みがなされた段階で無期契約に切り替えるとする企業が4割超、適性や能力を見ながら言わば前倒しで無期契約にしている企業が2割超、雇入れ段階から無期契約にする企業が約1割見られる一方で、通算5年を超えないように運用している企業も1割弱見られ、無期転換を避ける行動をする企業も一定見られるのではないかといった意見がございました。
 無期転換ルール見直しに向けた御意見として、以下のような御意見がございました。無期転換ルールを根幹から見直さなければならないような大きな問題が生じている状況ではなく、制度の本来の目的や機能である有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図ることがより適切に実現されるためにどのような対応が必要かを考えていくべきではないか。次に、無期転換を行使していない労働者の割合も多いけれども、そもそも無期転換ルールを知らない労働者も多いことから、労働者が制度を理解した上で希望者が権利行使できるような方向で見直していくべきではないか。3点目として、無期転換者を正社員として登用する企業がある一方、有期労働契約時と労働条件を変えずに雇用する企業も実態として多い。また、企業独自の制度を含め無期転換制度を活用していく企業がある一方で、そもそも勤続年数等の上限を設ける企業も見られる。こういった状況の中で、個々の企業の実情に応じた有期労働契約と無期転換の在り方について、労使双方が適切な判断ができるようにすることも考えられるのではないかといった御意見がございました。総論につきましては、各論の議論を行った後、再度御意見をいただくことにしておりましたので、今回、さらに御意見をいただければと思います。
 これ以降の参考資料については、これまでお示しした資料ですので、割愛させていただきます。
 16ページからの各論の部分について御説明いたします。まず、各論の1点目、無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保についてです。こちらの論点に関しましては、現状ですけれども、無期転換ルールに関して何らか知っている企業が約8割、ただし、企業規模が小さくなるほど知らない企業の割合が増加している。無期転換ルールに関して何らか知っている労働者は5割強にとどまるが、知っている内容がある労働者の情報入手ルートは勤務先が5割超と最も多い。また、自らの権利が発生しているかどうか分からない労働者も多く見られる。無期転換できる機会もしくは転換後の労働条件について就業規則に規定している企業は6割超いる一方、3割はいずれも規定していない。また、通算期間を満たした労働者に対し、無期転換できる機会の案内をしている企業は5割で、4割は案内していないという現状です。
論点の制度の効果的な周知に関して、無期転換ルールについて労使双方に対する認知度向上のため、制度のさらなる効果的な周知が必要ではないか。その際、労働者に対して、無期転換権とはどのような権利か周知していくとともに、使用者に対して、無期転換をどのように活用することが考えられるか、周知していくべきではないかといった御意見をいただいていたところです。
 次に、論点の使用者からの通知に関する部分です。まず、無期転換ルールについて、申込権発生の有無や転換後の労働条件などを知らず、権利の行使に至らない労働者が見られる中で、個々の労働者に通知・周知する方策を検討するべきではないか。この使用者から通知をすることに関して、まず、労働者については、使用者を通じて無期転換に関する情報を入手する割合が高いこと、使用者から説明を受けていない労働者に比べて説明を受けている労働者のほうが無期転換をするかどうか決める、判断することができていること、各社ごとに無期転換後の労働条件が異なっていること、無期転換後の労働条件が不明確であることで無期転換権の行使を抑制している面があると考えられること、ルールの制度や各社の運用方法について労使間での理解の相違を解消していくことが紛争の未然防止につながると考えられることから、使用者を通じた通知が行使するかどうか判断する上で有効なのではないか。続いて、事業所に無期転換者が在籍している場合には、労基法89条により就業規則に無期転換後に適用される労働条件の規定をする必要があることも周知するべきではないか。その下で、無期転換後の労働条件が分からなければ、労働者は転換するかどうか決めることができず、権利の行使をためらうと考えられることから、使用者から労働者への通知の際には、無期転換後の労働条件も知らせるべきではないか。その際、通知等の時点で無期転換者がいない事業所であれば、無期転換後の労働条件を定めていない場合が考えられるため、留意が必要ではないか。最後に、求職者が求人企業の無期転換ルールの取扱いや実績について知った上で応募できることは有益であるため、企業が自社の無期転換ルールの取扱いや実績について公表等を行うことを促すことも考えられるのではないかといった御意見をいただいたところです。
 この(2)の論点に関しまして、今回追加で御議論いただきたい点を挙げております。これまでもいろいろと御意見をいただいていたところですけれども、改めて整理いただきたいということで挙げております。無期転換申込機会の通知の方法等について、労働者が無期転換を申し込むかどうか決定する上で有効か、紛争の未然防止に資するか、使用者の負担が過大でないか、既存のスキームを活用できるか等の観点から、どのような方策、通知時期、内容が考えられるかということで、前回までの検討会で指摘があった方策として、個別通知の義務化、労働者の意向確認の義務化、無期転換実績の公表の義務化ないし努力義務化といった方策がございました。それから、通知の時期について、3つのタイミングの御指摘がありました。19ページの図で御覧いただければと思いますけれども、この図は1年契約の場合の例ですが、まず、①は雇入れ後、無期転換権が初めて発生するより前のタイミング、②で無期転換権が初めて発生する契約更新のタイミング、1年契約更新の場合ですと、4回更新されて、次に更新すると5年を超えるというタイミング、③で、無期転換権が発生する契約更新ごとのタイミングのいずれが適当かといった御指摘がありました。通知内容の例として、転換申込みができる期間、申込みの方法、転換後の労働条件、通知方法の例として、書面、ファクシミリ、電子メール等、面談といった方法が考えられるかどうか。この辺りについてさらに御意見をいただければと思っております。
 20ページには、参考としてお付けしておりますけれども、労働条件がまだ具体的に決まっていない場合の示し方の例として内定の際の労働条件明示の方法について、御参考でお付けしております。
 次の論点に移ります。28ページ目から、無期転換前の雇止め等に関する論点でございます。こちらにつきましても、論点についてのこれまでの御意見をまとめております。まず、現状として、無期転換申込権が生じた労働者がいる企業の状況を見ると、無期転換権が生じた労働者のうち、無期転換権を行使しなかった労働者の多くは継続して雇用されており、自己都合により退職した労働者を除けば、雇止めや解雇が行われた労働者の割合はわずかと考えられる。無期転換ルール導入前の状況と比べると、有期契約労働者の勤続年数の上限を設定している企業の割合はやや増加しているものの、15%未満にとどまっている。ただし、本検討会でも行いました労働組合からのヒアリングや労働局への相談などで、無期転換ルールに関連した雇止めや無期転換を回避する事例が見られるほか、無期転換回避等のための雇止めの裁判例も見られるところです。また、無期転換を躊躇してしまうような労働条件の不利益な変更等が行われた事例も見られたところです。
 この論点に関して、無期転換前の雇止めその他の無期転換回避策に対して、無期転換ルールの趣旨、雇止め法理や裁判例等に照らし、問題があるケースについて考え方を整理して周知していくべきではないか。2点目で、裁判例について、紛争の未然防止に資するよう、無期転換ポータルサイトに掲載するなどして周知していくべきではないか。3点目で、更新上限について労使双方が納得の上で合意することを促す等、紛争の未然防止や解決促進に向けた方策を検討していくべきではないかといった御意見がございました。続いて、無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いに関して、解雇、雇止め、労働条件の引下げ、嫌がらせ等がありますけれども、どういう状況でどのような問題が生じているか、特に労働条件の変更の場合に何が不利益取扱いに該当するかの整理が重要ではないか。無期転換権行使の実効性確保の観点から、不利益取扱いの禁止について検討することが考えられるが、別段の定めにより労働条件を不利益に変更することもあり得るため、労働条件を不利益に変更することが全て不利益取扱い禁止に抵触するわけではないことに留意すべきではないかといった御意見がございました。
 この論点に関しまして、本日追加で御議論いただきたい点として、以下のとおり、示しております。まず、論点ア・イ関連として、a.無期転換前に雇止めや無期転換回避が行われる具体例ごとの考え方を次のページ以降で整理しておりますので、そこを御確認いただきたい。無期転換前の雇止めや無期転換回避をめぐる紛争の未然防止や解決促進のためにどのような方策が考えられるか。特に更新上限に関する紛争の防止について、労使双方が納得の上で合意することを促すためにどのような方策が考えられるか。論点ウ関連として、b.無期転換に関する不利益取扱いについても、後ほど御説明しますけれども、今回整理しているので、御確認いただきたい。このように整理できる場合、無期転換権行使を抑制する不利益取扱いを抑止する観点から、どのような方策が考えられるか。この不利益取扱いについては、前回もいろいろと御議論いただいたところですけれども、前回、立法で禁止規定を置くと仮定した場合について、御意見、御指摘をいただいております。効果として指摘があった事項として、無期転換を希望する労働者の無期転換権行使の実効性確保や権利行使の妨害抑止につながると考えられること。一方、懸念点または留意点として指摘があった事項として、「別段の定め」により無期転換後に労働条件を不利益に変更すること自体は禁止されておらず、どういう事例が申し込んだこと等を「理由として」に当てはまるのか、何が「不利益な取扱い」になるのか、法解釈が難しい問題になることといった御指摘がございました。
 31ページは、この追加論点のa.の関係として今回追加している資料でございます。これまでも無期転換前の雇止めが行われるケース等の具体例を1~10で整理しておりましたけれども、これらに関して、雇止め法理に照らして、合理的期待や、雇止めの合理性・相当性について、それぞれの観点から整理をしたものでございます。多くはこれまでも通達やQ&Aで示してきているものですけれども、改めて整理したところです。①で無期転換申込権が発生する直前に合理的な理由のない雇止めをするケースについては、契約更新について合理的な期待が生じている状況で使用者が他に合理的な理由がなく、無期転換申込権の発生を回避することを目的として雇止めを行った場合、当該雇止めは、客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断され得るとしております。②で、無期転換申込権発生前に新たに更新上限を設定して当該条項を理由に雇止めをするようなケース、③も、無期転換申込権発生前に新たに更新上限を設定した上で、一定の場合に無期雇用をする制度を設けているものの、不合理な要件や厳しい試験等を課し、不合格により雇止めをするようなケースについては、次のように整理しております。契約更新について合理的な期待が生じている状況で、使用者が一方的に更新上限を設定しても合理的期待が失われることにはならず、当該上限のみを理由に雇止めが行われていても、合理性、相当性が認められないと判断され得る。この合理的期待に関して、使用者が新たに設定した上限のある雇用契約に労働者が合意したことをもって直ちに合理的期待を放棄したと認められるものではなく、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足る合理的な理由が客観的に存在しない場合には、更新に対する合理的期待が消滅したとは認められないと判断され得る。この場合、雇止めの合理性、相当性が関わってくることになります。また、契約更新について合理的な期待が生じている状況で就業規則の変更より更新上限を設定した場合にも、労働条件の不利益変更として労契法9条、10条により判断されることを整理しております。
 次のページの④~⑧、その次のページの⑨につきましては、これまでの通知やQ&Aで示しておりました考え方を改めて掲載しておりますので、説明は省略させていただきます。最後の⓾の部分ですけれども、当初の契約締結時から更新上限を設定して無期転換申込権発生前に雇止めをするようなケースについても、一部Q&Aで示してはいたところですけれども、改めて考え方として記載しております。当初の契約締結時から更新年限や更新回数の上限を設けることが直ちに違法となるものではない、使用者と労働者の間で真意の合意がなされた場合には労働契約として成立することになります。ただし、雇用継続を期待させるような使用者側の言動があったなど、雇用継続への期待が生じている場合には、当該雇止めは客観的合理性、社会的相当性により判断されることになるとしております。
 更新上限等に関連し、参考資料としてお付けしておりますものがモデル条件通知書等でございます。労働基準法に基づく労働条件明示の中で、施行規則で雇入れ時に明示すべき事項として、労働契約の期間に関する事項、期間の定めのある労働契約の更新する場合の基準に関する事項がございます。こういったことから、モデル条件通知書の中でも、契約の更新の有無や契約の更新の判断基準について記載する形になっているところです。就業規則についても、必要的記載事項ではありませんけれども、更新の基準等を記載しているようなモデルの就業規則をつくっております。今は更新の上限がある場合に、その旨を明示するような形にはなっていないという現状でございます。
 雇止めの論点に関連して、データの説明は割愛します。
 39ページは、追加論点のb.の関係の資料としておつけしております。前回、不利益変更や不利益取扱いについて、本人のこれまでの働き方との比較か他の労働者との比較なのかといった御指摘もございましたので、関係を図にしたものでございます。不利益変更に関して、まず、労働契約法に基づく別段の定めによる無期転換後の労働条件の変更、先ほどから議題にしております無期転換申込みを行ったことを理由とする解雇や無期転換後の配転や賃下げ等の不利益取扱いについては、本人の有期労働契約時と無期転換後の待遇の相違が不利益に当たるかどうか、あるいは、不利益であっても合理的な変更かどうかといったところが論点になっているところでございます。それに対しまして、後ろのほうの労働条件に関わる論点の部分なのでグレーにしておりますけれども、こちらの下のほうの記載につきましては、他の労働者との比較で不利益ないし不合理があるかといった論点になっているところです。ここでは、上のところの不利益取扱いないし別段の定めによる労働条件の変更について御議論いただきたいと思っております。これに関連して、申込みを行ったことを理由とする不利益取扱いとしてどういうものがあるのかと前回御指摘を受けましたので、労働局への相談事例を基に実際にどういうケースがあり得るかということをお示ししたものが次のページの資料でございます。
 具体的な相談事例として、まず、幾つか御紹介しますと、①として、無期転換申込書を提出したが、検討すると言われたまま、従前と同じ次の1年間の有期契約の契約書にサインするように迫られており、無期転換申込みを受理してもらえない。法的には無期契約が成立しておりますけれども、実態としてそのように扱われていないという状況です。②で、契約期間満了での雇止めの連絡を受けたが、通算契約期間が5年超であったため無期転換申込みを行ったところ、再度雇止めの連絡を受け、その後会社と交渉して無期転換可能との連絡を受けたが、同時に遠隔地へ配転を指示されたというケース。⑤ですと、無期転換を申し込んだ後、従前の契約より不利益な労働条件の契約書の署名を求められたようなケース。⑥も、無期転換を申し込んだところ、契約満了30日以内であることから受理を拒否され、次の契約期間中に再度申し込んだところ、再び拒否された。法違反の可能性を指摘すると、労働条件の不利益変更を言われたといった事例が見られるところです。これは無期転換を申し込んだ後に有期労働契約の間にこういったことを言われたというケースですけれども、⑧の青枠のほうは無期転換後の不利益な変更ということで、無期転換後に無期転換者用の就業規則が策定されたが、給与体系の変更、賞与の廃止等の不利益な変更となっていたという事例が相談事例として挙げられたところです。
 次の41ページですけれども、前回も議論になりました申込みをしたこと等を理由とする不利益取扱いと無期転換の労働条件の別段の定めの関係について少し整理したものです。行為の類型ごとに考えられるケースと現行法における対応を整理しております。左側が無期転換以前に不利益取扱いが行われたケース、右側が不利益取扱いが無期転換後に行われたケースとして記載しております。類型で、申込み等を行ったことを理由とする解雇、雇止め、ハラスメント、嫌がらせ、人事考課等の事実行為、配転、降格、労働条件引下げといった事例として整理しております。それぞれ現行法においても一定の対応が考えられる内容について記載しております。この労働条件の引下げに関しまして、下のところで、労働条件の引下げがまさに今働いている有期労働契約期間中に行われるケースと、無期転換のタイミングで無期転換後の労働条件を引き下げるケースとあり得ますけれども、無期転換後のタイミングで無期転換申込みをしたことを理由に、個別合意によって労働条件を引き下げる、あるいは、就業規則の新設・変更によって引き下げるようなケースについて、無期転換後の労働条件の「別段の定め」による不利益変更と重なり得るようなケースがあるのではないかということでこのように整理しております。この不利益取扱いに関して、何らかの対応をしていくことが考えられるかどうかということを、今回、御議論いただければと思っております。
 続きまして、通算契約期間及びクーリング期間に関してです。44ページになります。こちらについても、これまでの御議論をまとめておりますけれども、現状につきまして、通算契約期間について、ヒアリングでは、雇用の安定の観点から短くすべきという意見もあれば、短縮は雇用の柔軟性や雇用意欲の低下につながるおそれがあり、現行を維持すべきとの意見もあったところです。クーリング期間について、ヒアリングでは悪用されている実態があり廃止すべきという意見もあれば、クーリングの仕組みがなくなると同じ企業に再度勤務したい労働者にとってエントリーの機会がなくなる等の影響があるとの意見もあったところです。論点に対する意見としては、通算契約期間とクーリング期間ともに、1つ目の○は重複しておりますけれども、制度が始まってまだそれほど長くないこと、特に変えるべき事情がないと考えられることから、制度の安定性も勘案すれば、通算契約期間、また、クーリング期間について、現時点で制度枠組みを見直す必要が生じているとは言えないのではないか。ただし、クーリング期間に関して、契約更新上限を設けた上で、形式的にクーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用することを約束して雇止めするなどは、法の趣旨に照らして望ましいものとは言えないことについて、さらなる周知を行うべきではないか。これについては、先ほどの無期転換回避策としての整理でも記載しているところですけれども、これについて周知を行っていくべきではないかといった御意見があったところです。
 続きまして、無期転換後の労働条件に対する論点もございます。48ページになります。まず、現状として、無期転換ルールによる無期転換後は、有期労働契約のとき、職務タイプはいろいろありますけれども、職務タイプ別に見ると一定の違いがあるものの、全体としては1割程度が正社員になっている。一方、大多数が業務量も労働条件も有期のときから変化がない状況。フルタイムの無期転換社員の約3割は「別段の定め」が活用されているのに対し、パートタイムの無期転換社員については「別段の定め」が活用されているのは1割弱となっている。「別段の定め」により改善される処遇がある企業の割合が5割弱であるのに対し、不利になる処遇がある企業の割合も5%程度見られるところです。無期転換者のうち3割が現在の働き方に満足していないと回答していますけれども、その理由として賃金水準の低さやステップアップが見込めないこと等が挙げられています。無期転換ルールに対応する企業側の課題としては、有期労働契約と無期転換後、正社員の間の仕事や働き方、賃金・労働条件とのバランスと納得感の醸成が多く挙げられているところです。
 論点に関して、無期転換後の労働条件の「別段の定め」についての御意見はいろいろとこれまでいただいたところです。まず、就業規則で「別段の定め」をするのであれば、基本的には労働契約法7条、10条の問題になると考えられるけれども、無期転換後の労働条件をめぐる裁判では、判断枠組みが労働契約の締結時に適用される7条であっても、従前から有期労働契約が存続していたことなどを踏まえて、合理性の有無についてある程度踏み込んだ判断がなされる場合があること。また、合理性という一般条項の適用に当たっては、労契法3条2項の均衡の理念も考慮され得ることに留意が必要ではないか。個別契約で「別段の定め」をする場合について、無期転換申込みの際に提示された労働条件に労働者が合意しなければ、「別段の定め」は成立せず、有期労働契約の際の労働条件で無期契約が成立することとなること、労働条件変更についての個別合意は労働者の自由な意思に基づき行われる必要があること、これらを労使双方に対して周知すべきではないか。提示された条件が労働者の意向と合わない場合、労働者はどう調整するかイメージができない場合が多いと考えられるため、労働者に必要な知識等を示していくべきではないか。施行通達の記載についての御指摘ですけれども、今申し上げたような7条、10条の合理性の問題、個別契約の場合の合意の問題について、原則を明確化した上で、その枠内で労働条件の変更が可能であることが明確になるよう、施行通達の記載を修正することを検討するべきではないかと。その際、いわゆる有期プレミアムがあった上で「別段の定め」により労働条件の変更がなされる場合もあり得ることに留意しつつ、いずれにしても労基法7条や10条の合理性や個別の合意が必要であることをメッセージとして出していくことが考えられるのではないか。4点目として、「別段の定め」により、転換後の社員区分を正社員とするとか、あるいは、職務の内容等、負担の増加に伴い相応に待遇を向上させることは、一般的には問題とならないと考えられる。ただし、多くの有期契約労働者が負担増をためらって無期転換申込みをしないことも想定されるため、無期転換後の区分として多様な正社員等の多様な選択肢を設けることも考えられるというメッセージを出すことが考えられるのではないか。一方、労働者に対しても、無期転換によって必ずしも正社員の労働条件が適用されるわけではないことも改めてメッセージとして出す必要があるのではないか。
 無期転換後の労働条件の見直しについて、無期転換後に本人の希望も踏まえ業務の内容や責任の程度等が変更される場合には、それに見合った処遇の見直しが行われるために労使の話合いが重要ではないか。その際、労使で情報の非対称性や交渉力の差があることも踏まえて、労働者の納得や適切な労使自治につながるように促すことが考えられるのではないか。
無期転換労働者と他の無期契約労働者との待遇の均衡について、パートタイムの無期転換労働者はパート・有期法の適用がある一方で、フルタイムの無期転換労働者には同法の適用がない中、こうした他の無期契約労働者との待遇の均衡に関して、労使自治に委ねるという考え方もあるほか、労働契約法3条2項等も踏まえて均衡を考慮するよう促すことが考えられるのではないか。処遇格差に不満がある労働者の中には、説明が不十分であるために理解の相違があることも考えられ、使用者からの説明を求める者も一定は存在していることから、無期転換後の労働条件を定めるに当たって考慮した事項の説明を促すことも考えられるのではないか。この点に関して追加で御議論いただきたい点は、無期転換労働者の待遇について、就業の実態に応じた均衡を考慮しつつ、労使間で納得感が醸成されるよう、どのような取組を促していくことが考えられるかという点について御議論いただければと思います。
 51ページについては、先ほど前のほうでも御覧いただいたのですけれども、ここでは、下のところですけれども、有期労働契約者と無期契約労働者との待遇差に関して、パート・有期法の8条や9条で、待遇について、通常の労働者の待遇との間において不合理な相違の禁止や差別的取扱いの禁止といった規定があるところです。無期転換労働者について、特にフルタイムの労働者は直接はパート・有期法の対象にならないところでありますけれども、無期転換労働者と他の無期契約労働者との待遇差についてどう考えるか。上のところで、業務内容の変更等に伴う労働条件の変更は、無期転換時に変更することもありますし、転換後に変更することに伴って処遇が変わっていく、あるいは、限定正社員や正社員に転換していくことも含めて、この辺りをどう考えるかということでお示ししているところです。この辺りについて、本日は御意見をいただければと思います。
 続きまして、次の(6)の論点に移ります。68ページになります。有期雇用特別措置法の活用状況についてです。現状につきまして、第1種高度専門知識のほうの認定は1件、第2種定年後継続雇用の特例の認定は約7万件、有期特措法については、内容まで知っている者は2割以下であり、特に第2種については対象企業が特例を活用していない理由として特例の存在を知らなかったからが多く挙げられている。ヒアリングにおいては、廃止すべきとの意見もある一方で、有効に活用されている例や利用を狭める方向での改正は行うべきではないという意見もあったところです。また、制度の普及・周知に関する措置が必要との意見があったところです。論点の考え方として、1点目で、有期特措法がなければ、企業がプロジェクトの進捗状況等に応じて必要な高度専門職を雇用しにくくなるほか、65歳を超える高齢者の継続雇用に慎重になると想定されるため、有期特措法があることで雇用が進んでいると言えるのではないか。特に高齢者雇用は過渡期にあるため、第2種の意義は大きくなっていると言えるのではないか。他方、活用状況は十分とは言いがたく、特例の存在を知らないという課題はあるため、制度を周知して活用を促すべきではないかといった意見がございました。
 最後、72ページで、(7)その他の部分です。その他では、無期転換に係る人事制度等に関する有期雇用労働者及び無期転換者の意見の反映について御意見をいただきました。まず、1点目、労基法90条において、使用者が就業規則の作成等について意見聴取をしなければならないのは、事業場の労働者の過半数代表であり、仮に無期転換者の就業規則を作成するとしても、関係する無期転換者・有期契約労働者の意見を聞けるとは限らないため、労使間でのコミュニケーションを促す方策を検討すべきではないか。その際、意見を聞く対象者について検討が必要ではないか。2点目として、労使コミュニケーションだけでなく多様な雇用形態の労働者間のコミュニケーションも重要。労働組合が労働者間の利害調整を行うこともあるが、無期転換者について、組合への加入資格のある者が半数程度、加入希望も「分からない」が6割弱の中で、雇用形態間の待遇の納得感が得られるように、いかに声を吸い上げるかが必要ではないか。3点目で、有期契約時には更新の際に交渉なり発言するような機会がありますけれども、正社員であれば人事評価のような機会がある一方で、無期転換者にはそうした機会がない可能性があるので、無期転換者について職場でどのようにマネジメントをすればいいか、どのように生かすかについて、好事例とともに示していくべきではないか。4点目として、一つの企業内に様々な労働者が存在する中で、無期転換に係る制度等について個々の対象となる労働者の意見を吸い上げるとともに、労働者全体の意見を調整することも必要であり、従業員代表制を含め、多様な労働者全体の意見を反映した労使交渉促進を図る方策も中長期的な課題ではないかといった御意見があったところです。
 以上、論点全体を通じてこれまでの議論を整理したところです。今回は、この中で特に追加で御議論いただきたい点について御議論いただければと思っております。
 説明は以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、議論に入っていきたいと思います。前回までの2回で無期転換ルールに関して一通り御議論いただきましたが、本日は追加で議論いただきたい点を整理していただきましたので、その点を中心に御議論いただければと思います。その他各論点について、また、総論についても、その後、御議論をいただければと思います。
 まず、無期転換を希望する労働者の転換申込み機会の確保について、追加論点としては、資料1の18ページに記載されていますので、この点について御意見がありましたらお願いいたします。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 御説明をいろいろとありがとうございました。
 この18ページの追加論点に関して、意見を申し上げたいと思います。第6回検討会で指摘があった方策例に関して申しますと、最も理想的には3つとも賛成と申し上げたいのですけれども、3番目に関しては、労働者の判断もあって無期転換をしていない事例も考えられるのではないかとい思います。そうすると、無期転換がなされたという結果の実績だけを公表させることが適切なのか等の疑問もあり得て、実施にはなお課題があろうかと思います。
 2つ目の意向確認を義務化することに関しては、ある時点で意向を確認したとして、それ以降の時点だけれども、なお無期転換申込権が行使できるという期間があるわけですけれども、そういう期間に、さきに意向確認をしたときと異なる考え方をしめす、それによって労使間で紛争につながり得るということも考えると、私としては、それは基本的には望ましいのではないかと考えているところもあるのですけれども、課題もあるのではないかと思います。この点、1点、事務局に質問させていただければと思うのですけれども、この意向確認の義務化の議論、アイデアを検討会で出していった中では、今般改正された育児介護休業法ではこうした意向確認が義務化されているということが参照されて、私もそれを念頭に置いて意見を申し上げてきたと認識しているところですけれども、同時に、今申し上げたような意向確認とその後ということについて同法の下での義務化に関しても同様の問題が生じ得なくもないとも考えられるわけですけれども、その点について、それでもなお意向確認を義務化したということに関して、事務局で、育児介護休業法の下での事情とここで議論している状況の違い等、何か把握されている事柄があれば教えていただきたいと思います。教えていただきたいということを踏まえた上で、さらに私の考えをあらかじめ申し上げておきますと、そういうふうな問題状況について、育児介護休業法の場合とこちらの場合とで違いがあって、こちらについては意向確認をある時点でしてしまうということが、むしろ紛争をその後に生じせしめてしまいかねないということであれば、私がこの意向確認の義務化の方向を基本的に志向しているのは、申込権の行使が可能ですよということをきちんと労働者に伝えて、そして、権利行使が妨げられる雰囲気を醸成されないようにすることをかなり念頭に置いているところがあるのですけれども、何らかの形でそういうメッセージを出すことを期待しつつ、義務化が先ほど申し上げたような問題があって技術的に難しいということであれば、そういうメッセージを出した上で、結論的には、基本的に個別通知の義務化にとどまることになる可能性があるのではないかと思います。
 ほかに申し上げる点はございますけれども、今の点に関して、一旦切って、質問について御教示いただければと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 事務局、いかがでしょうか。
 竹中課長補佐、お願いします。
○竹中課長補佐 御質問ありがとうございました。
今ほど御指摘いただいた点は、育休法に関しましては、我々の理解としましては、意向確認をされた段階で、意向を示せば、その時点で育休の申出を行うことが基本的には可能なのだろうとは思っております。他方で、無期転換に関して育休法と少し違う事情がある点について御説明いたしますと、例えば、無期転換権が初めて発生する契約更新の直前のタイミングで無期転換について使用者から無期転換について説明を受けることを想定したとして、併せて、その場で意向確認をすることも想定したとすると、労働者がその意向を示したとしても、労契法18条の要件を満たした申込みではないことが想定されるのではないかと考えられます。その後、無期転換権の発生以降に、労働者から正式な申込み手続がなされないということがあれば、後々トラブルにつながる可能性もあるのではないかとは思っております。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 竹内委員、今の点で何かございますか。
○竹内委員 今の点に関しましては、そういうふうな事情等が違うかどうかということを踏まえて、意向確認の義務化ができるかについて検討していただければと思います。それで技術的にできるということであれば、意向確認もあっていいのではないかと思いますけれども、そこが難しいということであれば、申込権を行使することを妨げないような、妨げる雰囲気を醸成しないような形は何らかの形でメッセージとして出しつつ、通知の義務化にとどめることになろうかと思います。今、この18ページの方策例に関して申し上げさせていただきましたけれども、通知時期のこと等についても意見がありますけれども、それは続けて申し上げてもよろしいでしょうか。
○山川座長 お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 ※の2つ目にあります通知時期の例についても、非常に理想的にと申しますか、権利が発生した場合の実効性を一番高めるという意味では1の方策が一番望ましいのではないかと考えられるわけですけれども、権利が発生する前の時点でもありますし、これについては、これまでの検討会でも申し上げてきたかと思いますけれども、5年を超えて雇用を継続する、少し言葉を変えて言いますと、5年を超えて契約が更新されることについての合理的な期待を与える、それを使用者に強いてしまうという側面もあろうかと思います。もちろん技術的には、ここで求められている通知は19条2号に言うところの合理的な期待とは関係がないと整理することも技術的には全くなくはないのかもしれませんけれども、事実上はなかなか難しい課題があると思います。
 また、1番目の場合は、いつの時点から通知すべきか。例えば、権利が発生すると考えられる1年前からかと考えるとすると、何で2年前では駄目なのかという形で、1に関しては理想的だなと思う側面はもちろんあるのですけれども、技術的に難しい課題があるのではないかと現時点では考えるに至っています。他方で、無期転換権は5年を超えて有期契約が更新されるたびに改めて発生するものでありますので、最初の権利発生時点以降は、最初と異なって、無期転換申込権の行使は別に促さなくてよいという理由はないと考えられますので、そういう意味では、2のアイデアの初めて無期転換権が発生するタイミングだけではなくて、無期転換権が発生するたびに通知を義務づけるという、結論としては3の考え方に私としては賛成いたします。
 18ページの中で挙げられていないことではないかと思ったのですけれども、ちょっと気になったので申し上げさせていただきますと、通知を義務づけるとして、どの法律に入れるかというのも一応課題になるのではないかと思いました。労契法18条の無期転換ルールに関する義務づけであるからには、体系的には労働契約法の18条に義務づけの規定を入れることが整合的ではないかと、基本的にはそういうふうに私としては考えます。ただ、労契法の場合ですと、行政による指導等の根拠規定があるわけでもないですし、また、転換後の労働条件についても併せて示さないと無期転換権を行使するかどうかということについてなかなか判断がつきかねること等を踏まえて、この検討会では、無期転換後に見込まれる労働条件についても示すという方向性で議論がされてきていると思いますけれども、その関係でいうと、労働条件明示に係る労基法の諸規定とも整合性があり得ると考えることができます。こういう方法が技術的にあり得ることかどうかはやや自信がないのですけれども、労契法上は、通知義務については、労基法の定めるところによるとした上で、それで具体的な義務内容については労基法で定めるということも、やり方としてはあり得るのではないかと思いました。
 18ページに関しては、以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、ほかにどなたかおられますか。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 18ページの論点につきまして、今竹内先生がおっしゃったことに賛成ですが、若干、私自身の着眼点といいますか、補足をさせていただきます。
まず、方策例について、私も、企業からの個別通知の義務化が現時点では良い方策だと思います。
 2つ目の労働者の意向確認の義務化をやるとすると、権利の行使可能期間の終了直前に、まだ無期転換の意思表示をしていない労働者に対して意向を確認することが考えられますが、それをどのタイミングでするのか、明確に定めるのが難しいと思います。基本的に労働者の権利は労働者自身が行使していくものであることを前提に、まずは権利行使可能な状態にあることをきちんと知らせる意味で、最初の個別通知の義務化がよいのではないかと考えております。
 2番目の通知時期の例につきましては、以前問題提起したことがありますが、条文の構造上、5年超となる契約の更新ごとに権利が発生することになっておりますし、実務上、この点が労働者にしっかり周知されていない、理解されていないがために、以降、権利を行使しない人もいると想定されますので、そのような誤解を防ぐため、通知のタイミングとしては契約更新ごとと考えております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 安藤委員。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
 まず、17ページの「労働者については」というところで、使用者を通じて無期転換に関する情報を入手する割合が高いことに着目して、個別通知が効果的だという話につながっているのかなと思うのですが、これに加えて、使用者を通じてだけでなく、何か直接的に行政からといいますか、一般的な情報提供を行うことを通じて、積極的ではない使用者の下にいてもその知識が得られるようにということが必要かと思っております。
 18ページ目に進みまして、個別通知の義務化については、先生方の御意見に私も異論はございません。個別通知については、やってしかるべきだろうと思います。意向確認といったものが何を指しているのかということが多義的であって、最初にこの資料を読んだ段階では少し戸惑いました。新規採用時、そもそも最初に雇われるときに、あなたは無期転換ルールがあったら希望しますかという形で採用時に聞くこともあり得ますし、定期的に聞くことだってあるかもしれない。また、先ほど桑村先生からあったように、権利行使可能期間が終わるタイミングで、どうしますか、権利行使期間が終わりますよということを伝えるなど、いろいろなものがある中で、具体的にどういうものを想定しているのかということがもう少し明確になればよろしいかと思いました。
実績の情報提供については否定的な意見が竹内先生からありましたが、これは努力義務として入れてみるのは効果があるのではないかと思っています。例えば、具体例として過去に出したような、学生のアルバイトのように、そこの職場で無期転換することなどは最初から考えていない、大学の卒業後にはほかの会社で正社員として働くつもりだという人も分母に入れてしまうと、実績として低い数値が出てしまうということを懸念する声もあるかもしれません。しかし、希望しなかった人がどのくらいいるのかとか、学生がどのくらいいたのかという情報も含めるなど、どういう形で伝えるのが効果的なのかということも検討が進むのではないかと思っています。これを義務化するというのは乱暴だと思いますが、努力義務としてやれるところには頑張ってやっていただきたいと考えます。特に最近は人手不足を問題としている事業者の方が多くいらっしゃいます。そこで、賃金を上げるとか、労働条件を上げるだけでなく、雇用の安定を図ることでも労働者に対していろいろなメッセージを伝えることにもつながります。そういう観点から、これは検討してもよろしいかと思っています。
 19ページ目の話として、この通知時期なのですが、マル2のタイミングが具体的にどういうものなのか、少し検討が必要かと思いました。契約更新のタイミングは、例えば、実際にある日突然会社側から、あなたは更新しますか、更新しませんか、今、答えてくださいと言われて判断できるかといったら、検討する時間が必要なのではないか。メリット・デメリットなどを検討するとなると、このマル1の後半の辺り、つまり、マル2の少し前のタイミングで情報が行かないと判断が難しいのではないか。マル2の1回目には判断できず、その次に行ってしまい、実質的にマル3のタイミングになってしまうのではないかとか、申込みが1年契約だったら1年間ということがあるのかもしれませんが、どういう形で見せていくのかということが気になったポイントです。
 私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 坂爪委員、お願いします。
○坂爪委員 ありがとうございます。
 18ページ目の論点でいきますと、個別通知の義務化には、ほかの先生方と同様、賛成です。その上で、無期転換申込権が自分にあるかどうかが分かることが非常に大事な情報であると同時に、自分が無期転換権を使うかどうかのジャッジメントをするために必要な情報が提供できることも併せて重要だと考えます。その意味で、実績の情報が対象者に伝わることは意味があると思います。例えば、過去3年間で、この会社では無期転換をしたい人がいるかとか、無期転換をした後の人たちは、どういう仕事内容を担っているのか、例えば、有期のときと同じ仕事内容をしているかといった情報が伝わることは非常に有益だと思います。
 ただ、この資料で想定されている公表はおそらく外部に対しての公表だと思いますが、外部に対して公表するとなると企業にとって負荷が高い部分もあるのではないかと思います。その意味で、外部への公表というよりは、対象となる有期雇用者に対して実績といった情報を伝えること、それは企業にとってそれほど負荷が高いとは思えませんので、個別通知のときに併せてそのような情報が提供できるとよいのではないかと考えました。
 取りあえず、以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかはございませんでしょうか。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 ありがとうございます。
 18ページの個別通知の義務化は、私もほかの委員と同じに賛成です。労働者は企業からの情報入手が非常に多かったわけです。しかし、結果としてこういう制度を知らない人が4割ということで、企業からの情報入手が一層望まれるところであります。また、企業は労働者からの申込みをされたら切り替えるというところが4割で多いですので、結局、企業からの情報が不十分で、労働者が手を挙げなければ、企業側は切り替えないということが生じます。この連鎖は何とかしなければという意味からも、やはりこの個別通知義務は重要だろうと思います。その後、今、議論がありましたけれども、意向確認は私もまだ明確なイメージがつかめないのですけれども、できればあったほうが良いと思います。一方的に企業が通知しました、あとは自由に申し込んでくださいというやり方もありだとは思いますけれども、その後にある労働条件がどうなっているのかとか、周りの人はどうしているのかとか、そういった情報も欲しいと思います。最初の通知のときに、そういったことまで丁寧に通知があればいいのですけれども、なかなか一般的にはそこまでいかないこともあるのではないか。そのため、双方向のコミュニケーション、労使の何らかのコミュニケーションがあれば良いと思います。意向確認がフォーマルな形でも、あるいは、インフォーマルでも、そこには何らかのコミュニケーションがあったらいいと、私はこの意向確認について期待しているところであります。
 通知方法の例として、下に面談がありますので、通知方法の仕方によっても、この意向確認の部分を少しカバーできる面もあるのかなと思っています。なので、手法との関連もあるのですけれども、私の気持ちとしては、個別通知はもちろん、なるべくなら意向確認も双方向のコミュニケーションとして成立する方法はないかと思っている次第です。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 一わたり御意見をいただきました。基本的には、転換申込機会を確保するような方策を取ることについて、特に個別通知の義務化に関しては、皆様、おおむね御意見が一致したかと思います。その他については、いろいろな御意見がありまして、例えば、無期転換後の労働条件の通知との関連とか、あるいは、これをもし導入した場合の方法とも関連すると思いますので、また今後議論ができるのかなと思います。
 問題意識として皆さんで共通しているのは、資料1の25ページにありますように、無期転換を選択する方も選択しない方もおられるのですけれども、知らないという場合には非常に「分からない」という回答が高くなる。これが恐らく皆様の御意見の基礎にあるのではないか。無期転換するかどうかを選択するスキームだとしても、そもそも知らないと選択も困難だということがベースにあるのではないかと感じたところです。
 それから、先ほど事務局にもお答えいただきましたけれども、意向確認については、育児介護休業法のスキームとの違いは意識する必要があるかもしれません。育児介護休業法ですと、本人または配偶者が妊娠・出産したことを申し出たときに意向確認を行うというスキームになっていまして、一定の時期、状況、本人の申出を前提にした意向確認というスキームになっています。参考資料の42ページだと思いますけれども、そのような施策を取ることになった背景は、育児休業の促進、特に男性の育児休業の促進という背景があっての規定、定め方、スキームになっているのかなと思いました。私から追加的なコメントになってしまいましたけれども、すみません。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 ありがとうございます。
 重ねての話になってしまうかもしれないのですけれども、戎野委員、ほかの委員からも御意見があったかと思いますけれども、意向確認に関しては、今、座長から御指摘いただいたような、法技術的あるいは育児介護休業法との背景事情の違い等もあって、立法としてこの形を取ることが難しい側面は確かにあろうかと思うのですけれども、単にあなたに権利がありますよということだけではなくて、権利行使ができますよ、少なくとも権利行使を妨げるような雰囲気は醸成させないという形で、そういうある程度の後押しができないかということで、意向確認のアイデアが議論されてきたのではないかと理解しております。そういう意味では、意向確認の義務化は立法技術的に難しいとしても、例えば、行政等がメッセージを出す中では、権利行使ができるということを積極的に伝えるということを出していただければと思うのが1点であります。
 個別通知に関して、いつから通知するかということに関して、安藤委員を含め、幾つか御意見があったかと思いますけれども、18条による権利が発生するのは、通算契約期間が5年を超えたときであると理解ができます。5年を超えることが確実になるといえるのがいつかというと、通算5年を超える有期の労働契約が締結、あるいは、言葉を変えると更新が決まったという段階であります。5年を超える契約の始期が到達する前でも、契約は言わば新卒の内定のような形で契約の始期よりも前に契約が成立することは当然あり得るわけですけれども、そういう契約更新手続きが終わって、5年を超える有期労働契約が成立した段階で、それは現実的には5年を超える実際の日よりも少し前であることが、例えば、2週間とか、1か月前とか、考え得るわけですけれども、そういう時期に通知をする法設計とすることは考えられるのではないかと思いました。これは参考というか、追加の意見です。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 今の点は、より詰めるべきところになろうかと思います。前者の点も戎野委員がおっしゃったように、労働条件の通知をするとか、方法として面談とか、そちらの観点と関係しますし、また、労働行政としての取組ないし啓発はもちろん可能ではないかと思います。
 ほかはよろしいでしょうか。
 次に、無期転換前の雇止めに関して、資料の30ページになりますけれども、無期転換前の雇止めの具体例ごとの考え方の整理、追加論点のa.になります。無期転換前の雇止めに具体例ごとの考え方の整理、無期転換前の雇止め等の未然防止や紛争の解決の促進、更新上限等に関する紛争の防止といった追加論点のa.について御議論いただければと思います。いかがでしょうか。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 これについては、ごく簡単に、この追加論点のa.に関しては、31ページから33ページで裁判例等あるいは行政のこれまでの考え方が整理されておりますけれども、これまで申し上げてきたとおり、一定程度、裁判例等によって現行の裁判例においても対応がなされていると考えられますので、このような整理されたものをメッセージとして打ち出すということでよいのではないかと考えます。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 a.更新に関する紛争の防止についてどのような方策が考えられるのかというところで、新たに何ができるのかと考えた場合には、契約が更新されていくときに、途中で更新上限を導入する場合については、労働者からの求めがあった場合に、その理由を説明する義務を入れることが考えられると思います。ただ、更新時に、労働者が説明を求めて同意した場合であっても、契約更新のタイミングでそのような上限が導入されると、それに応じなければ今回の契約も更新してもらえないかもしれないという圧力が働きます。ですから、仮に労働者からの求めに応じて更新上限を入れる理由について説明する義務を課すとしても、その説明を受けて同意したというだけでは、更新の期待が消滅することにはならず、契約更新のタイミングでそのようなやり取りがなされた場合には、合意せざるを得ない状況に追いやられることを踏まえた、合意の慎重な認定が必要であることは周知の点で強調しておく必要があると思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 ありがとうございます。
 この更新上限のところですけれども、通常更新されるものであるという思いがある場合、あるいは、本来はそうではなくてもそのような期待を持つような環境にいる場合もあるでしょう。また、理解が間違っていることもあるかもしれません。いずれの場合においても、両者が思っていたことと実態がずれたときには、当然そこに齟齬が生じて、労使のいろいろなトラブルの原因になると思います。したがって、上限がある場合には、その理由を明確に示すことが労使にとって重要ではないかと思いますので、ここのところは明らかにするべきだと思います。
 また、労使の力関係がありますので、企業側にそこのところの何らかの配慮といいますか、意識を持っていただかないといけないというのも一方でありまして、合理的な理由を明示する明示の仕方、内容、どのタイミングかというのは、しっかりと検討する余地があるかと思いますけれども、これを明示することに関しては、不可欠なのではないかと思っております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 34ページにモデル労働条件通知書の記載がございますが、ここに、先ほど御説明いただいたとおり、更新の有無に関していろいろ記載することになっていますが、更新限度についての記載がないというお話について、私はここについて明示する必要があると思っています。もちろん考え方としては、更新の限度がありますということについて書けるようになると、更新上限を設定する方向に誘導してしまうという懸念を持つ考え方もあり得るとは思いますが、全体のバランスとして、メリットのほうが大きいか、それともデメリットが大きいかと考えた場合に、労働者側が、この職場は上限があるんだと、最初にこの条件通知書を見た段階で把握できるようになることのメリットのほうが大きいのではないかと考えています。
 戎野先生からもあった、上限を設けた場合に理由を明記するということも併せてできればベストだと思いますが、少なくともこの会社がどういう会社なのか、どういう意向を持っている会社なのか理解した上でその会社に就職することができたほうが、結果、労働者側のためになるのではないかと感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 何度も恐縮です。
 ちょっと細かいところで、もしかしたら念頭に置かれている点と違うかもしれませんけれども、今の安藤委員の御意見に関して、初めに雇うときに上限がありますと通知されることについては、それはなくもないかなと一方で考えられるわけですけれども、もし誤解しなければということなのですけれども、もし労働条件の通知を、労働契約が成立するにあたり法的に通知することが義務づけられる労働条件を通知するものだと考えると、理論的には、更新時についても新しい契約が締結され成立しますので、同じように労働条件を通知し、その際に、この通知書のようなものを利用するということが考えられるわけでして、そうすると、最初に雇用された後のある時点の更新のときに、更新はないみたいな形でいきなりこういう通知で入ってくる可能性があって、その場合だと途中から更新条項を入れるような問題と似たような状況になってきて、そうすると、そこは裁判例でも整理されていますけれども、容易にそういうふうに不更新条項で更新に対する期待とかがなくなってよいのかという議論がありますので、初めに雇うときと更新時という状況が違う中でどういうふうに取り扱ったらいいのかということも併せて考慮して、安藤先生がおっしゃったような意見を検討していくべきではないかと思いましたので、補足的に申し上げます。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 今の竹内委員からあったコメント、ありがとうございます。そのことを前提としますと、この労働条件通知書は2つのパターンがもしかしたらあるのかもしれないと思いました。まず、既存の契約については、その欄がないものを用います。またルールが施行された日から後の新規契約については欄があるという形で使い分けが必要なのかなと感じました。一度その欄が入った通知書に切り替わった後では、更新時もそれを使い続けることが可能なのかなと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
 今竹内委員からお話のあった点、契約が締結されて更新されてからの更新条項の追加については、ひょっとしたら記憶違いかもしれませんが、合理的期待が生じてからそのような条項を入れたりすると、状況としてはかなり違ってくるのかなということはあったかと思います。今映っている資料の一番下にあるマル3がそのような状況であったかと思いますが、そういう点はまた別途考慮する事項になると思います。
 また、例えば、恣意的に上限を運用して、ある人については適用しないでということをしていたりすると、通達では別の表現ですけれども、合理的期待は必ずしも消えないということはよく議論されていることかと思います。それらの点はありますけれども、基本的には、上限条項の意味の問題がありまして、最高裁判例がありましたけれども、上限条項による契約の終了と雇止めは基本的には同じ、つまり、期間満了によって労働契約が終了するということで、上限条項による終了は特別の雇止めとは別の法律的な性格を持つものではないというものが最高裁判例の立場であったかと思います。そういうこともありますので、雇止めと同じ性格を持つものだという整理も構成的には不可能ではないのではないかと、御意見を聞いていて思ったところであります。
 今回、割と私のコメントも出てきてしまっておりますけれども、よろしいでしょうか。
 a.については、いろいろありがとうございました。
 それでは、30ページの追加論点b.不利益取扱いについて、御意見、御議論をお願いいたします。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 ありがとうございます。
 この不利益取扱いの論点に関して、申し上げます。まずは、事務局で問題と考えられる場合についてかなり分かりやすい形で整理していただきまして、ありがとうございました。この41ページの表を拝見すると、全般的には裁判所に行けばという、そこに現実的なハードルはあるのかもしれませんけれども、裁判所に行けば、解雇等の法律行為であれば、不利益取扱いと認定されれば無効になる、あるいは、事実行為であれば損害賠償を認めるなどの何らかの救済は現行法の諸規定の下でもあり得るのではないかと思います。その意味では、既存の解雇権濫用の禁止等の規定の下で、あるいは、公序を通じた規制にとどめるということもなくはないかなと一方では思いました。
 ただ、無期転換申込権を行使したことを理由に不利益な取扱いを行うということに関しては、救済だけではなくて、あらかじめ抑止をするという観点が非常に重要なのではないかと考えられます。そういうふうな不利益取扱いは許されないのだというメッセージを出すことの観点から言うと、法律上、独自の明文の規定として、無期転換権申込みを行ったこと等を理由に不利益取扱いをすることは許されないという規定を設けることが考えられてよいのではないかと、そういうふうな抑止のメッセージを出す観点から、独自の条文化を、私としては、この時点では支持したいと考えております。
 仮に独自の明文の規定として条文化することはしないとしても、無期転換権の申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いは許されないのだと、この41ページにあるような整理された考え方を出し、現行法の下でも規制をされているのだという形のものを周知徹底して、いずれにしても、抑止のメッセージをきちんと出していくということが必要だと考えております。
 ちなみに、独自の条文化をする場合でも、あるいは、既存の条文や公序法理を用いて処理する場合でも、基本的には同じ問題、状況になるのかもしれませんけれども、特に41ページの下のほうで青い囲みで示してあるところに関し、別段の定めをすることそのものは、18条の構造上、無期転換ルールの構造上、否定されていないわけです。そうすると、例えば、労働条件が無期転換後に変わること等については、それがそもそも不利益取扱いに当たるかどうか、あるいは、理由としてということに当たるのかどうかということが問題になってくると思うのですけれども、それはその独自に条文化する場合であれ、一般法理ないしは公序法理ないしは既存の規定による場合であっても、基本的には変わらないと考えられますので、そこはそういうふうな禁止を実施していく中で、別途解釈論的に解決されて、例えば、裁判例等の積み重ねを踏まえて、どういうふうな場合が不利益取扱いに当たる、あるいは、申込権行使等を理由としてなされた不利益取扱いたる労働条件変更に当たるかどうかということを見ざるを得ない。そこは立法化の場合であれ既存の規定の下での処理であれ、判断の積み重ねを待つほかないのではないかということも併せて思いました。
 いずれにせよ、抑止のメッセージの観点から、独自の条文化が検討されてよいのではないかということを申し上げさせていただきました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 安藤委員、お願いします。
○安藤委員 ここについては、不利益な取扱いというものが不合理なものか、それとも、一定の何らかの理由があるのかというところで扱いが難しいなと感じながらお話を聞いていました。例えば、労働者側がそれは不利益変更だと捉える条件であっても、その会社の無期雇用の労働者または正社員が受け入れているものについては、不合理とは言えないような形の不利益取扱いもあるのではないか。例えば、40ページのマル2、遠隔地への転勤が具体例として挙げられていましたが、配置転換がその会社の無期雇用労働者が転勤を受け入れているとすると、合理性があり得る。遠隔地への転勤が嫌がらせのような行為であったとすると問題になるのかもしれませんが、その会社では一般的なのかによって捉え方が変わるのではないか。無期転換の申込みを理由としてというのも、理由となるわけですね。その会社の無期雇用労働者と同じ扱いになるということで、この辺りは必要な考え方の整理として、そもそも不利益な取扱いだけと簡潔にまとめてよいのかと。その中に不合理なものとそうでないものを書き分ける必要があるようにも感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 坂爪委員、どうぞ。
○坂爪委員 ありがとうございます。
 基本的には、無期転換する際に生じる不利益に焦点が集まっているかと思いますが、先ほどの41ページのところにも書いていただいたとおり、無期転換後にも不利益取扱いが生じうる可能性があり、そのことが埋もれるのではないかと考えています。そういう意味では、例えば、企業の業績の状況等によって何らかの雇用の条件をひき下げることがありますが、そのときに無期転換者だけが非常に他の雇用区分と比べて大幅に下がるといったことがないように、無期転換時だけではなくて無期転換後も視野にいれるべきだということを企業側に伝えるということが必要かと思います。
 今、安藤委員からの不利益ということについて、情報の欠如がもたらしている部分もあるのではないかということを鑑みますと、労働者側が自分が勤務する企業での無期転換者の活用実態を知ることは非常に意味があると思います。先ほどの個別通知のところともつながるのですが、折を見て、その会社が無期転換者をどのように活用しているかということを労働者側に伝えることが大事だと、今、議論を聞いていて改めて感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 不利益取扱い禁止規定を置いた場合の解釈問題ですが、まず、別段の定めとの関係については、個別合意の場合には真意の合意に基づくものであること、就業規則による場合には労契法7条または10条の合理性が必要であること、これらの労働条件設定あるいは変更法理の要件をクリアするものについては、不利益取扱い禁止の対象から除外されるというのが、不利益取扱い禁止規定を設けた場合の条文構造から当然に導かれることだと思います。
 難しいのは、例えば、就業規則で一方的に不利益変更する場合に、必要性が低いとか、労働者の不利益が大きいという理由で合理性を欠くと判断された場合、労働条件の変更としては拘束力がないので、労働者の差額賃金請求が可能ですが、この合理性を満たさない場合に、より低い賃金を支払われているということが、無期転換の申込みを理由とする不利益取扱いに当たるのかです。この点については解釈上の疑義が生じると思います。
 その一方で、嫌がらせ等の不利益な取扱いについては、権利濫用法理や不法行為、公序良俗の枠組みで、違法無効となることが判例上確立されておりますので、不利益取扱いが許されないというメッセージ効果を重視することに意味があるのであれば、法律の中に必ずしも書く必要はなくて、法律とは別の、より下位の規範、あるいは、労働行政やホームページ等での周知の際に明確にそのようなことを書けば、私自身は足りるのではないかと考えております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 この点は、いろいろな御意見をいただいたところであります。禁止規定を置くと仮定した場合という書き方になっていて、禁止規定ということに限るかということは出てくるのかなと思います。禁止規定でない場合に、法律上の規定あるいはそれ以外の行政上の対応か、行政上の対応によってもまたいろいろありますが、そうしたメッセージを出すことについてはそれほど異論がなかったのかなと思います。例えば、裁判で一般条項の形で適用される場合に、裁判所にも考慮してもらえるような形のメッセージの出し方はあるのかなという感じはしております。
 例えば、禁止規定を置いても、行政指導を労働契約法に置く限りはできないという構造になっていますので、どちらかというと、メッセージあるいは一般条項への影響という点が実質的には重要になるのかなという感じが私個人としてはしているところであります。
 またコメントをしてしまいましたが、何かほかにございますでしょうか。
 続きまして、50ページの追加で議論いただきたいという論点でありますが、無期転換後の労働条件に関わる問題につきまして、御意見等がありましたら、よろしくお願いします。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 この点について、申し上げます。現行の考慮に関していいますと、1つの考え方としては、パートタイム・有期雇用労働法の8条と同様の規定を考えることも一方ではあり得るのかもしれないと思います。ただ、無期契約で働いている労働者のうち、無期転換者のみがそういう規制の対象となってくるのはなぜかという立法上解決しなければならない難しい課題はいろいろあると思います。そういう意味では、そういうふうな規定を同じように置くことが、適切かに関しては議論の余地は多分にあろうかと思います。
 ちなみに、無期転換者に限って言えば、パートタイム・有期雇用労働法8条を、個別の事案ごとに類推適用するという余地はなくはないのかなとは思います。労契法上は、一般的な訓示規定と通常理解されているところですけれども、その労契法3条の2項は均衡を考慮した労働契約の締結や変更をうたっておりますし、また、労契法の4条1項は、使用者が労働条件内容等について、労働者の理解を深めるようにしましょうと、これも訓示的な規定だと思いますけれども、しているわけです。そういうふうな意味では、これは一般的に、労働者、使用者の労働契約上の関係であれば全て妥当してくることになりますので、労契法3条2項を踏まえ、均衡を、一般的に無期転換者を含めて考慮するということと、労働条件等について、例えば、無期転換者ともともと無期の人、典型的にはいわゆる正社員なのでしょうけれども、そういう人たちについての差異があるならば、労契法4条1項を踏まえて、それについて、違っている、違う労働条件であるということについて、理解を深めるように、例えば、きちんと説明をするということが求められる。そのようなことをメッセージないしは周知徹底をするということが考えられると思います。
 そのような意味では、パートタイム・有期雇用労働法8条のような条文化は、独自の何か条文を設けることは難しいかもしれませんけれども、設けないとして、しかし、労契法3条2項や4条1項を踏まえた均衡の一般的な考慮あるいは説明をするといったことをメッセージとして打ち出していくという方策があり得るのではないかと考えます。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 ありがとうございます。
 今、周知方法として、具体的にお伺いして、それ自体はそのとおりだなと思います。私からも、改めて労使間で納得感を醸成できるよう、ここのところをいかに形成していくかといったときに、無期転換というものに対しての知識が、多くの労働者があまり持っていないということを前提に考えていくことは重要だと思います。いわゆる労働条件がどうなっているのかということのイメージがつかない。そこで理解を進めていってもらうといったときに、51ページのところの図がありますけれども、ほかの有期契約の人、ほかの無期転換、正社員をはじめ、限定正社員とは何が限定なのかとか、いろいろとあると思いますが、こういったものとの相違点を明らかにして、企業によっても無期転換の在り方は決して一様でないと思いますので、同じ企業の中での他の働き方の人の相違をどこかの段階できちんと明示して、労働者が知ることが求められてくるのではないか。これが最終的に労使間での納得感というときに必要な要件になってくるのではないかと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 安藤委員、お願いします。
○安藤委員 ありがとうございます。
 50ページの追加で議論いただきたい点のところに、労使間で納得感が醸成されるとありますが、これ自体も大事なことですし、また、労働者間での納得もとても大事かと思って、この資料を拝見しています。その観点から、今回の話ではないのかもしれませんが、49ページの最後のところでメッセージを出すということが2つ挙げられています。このうち無期転換後の区分として多様な正社員等の多様な選択肢を設けることも考えられるというのは企業に向けてのメッセージかと思います。また労働者に対しては、無期転換によって必ずしも正社員と同等になるとは限らないよというメッセージだけが書いてありますが、反対に、無期転換に伴って責任が重くなる可能性がありますよという形で、もう一方の労働者側が期待しているただ無期みたいなものが必ずしもあるとは限らないよということについても言及してもいいのではないかと思いました。ここは対称的にしたほうがきれいかなということからの意見です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかに何かどなたかございますか。よろしいでしょうか。
 非常に有益な御意見をいただきました。これまで議論した点、次に議論する点はかなり密接に相互に関連しているように思いまして、実態的な労働条件の規律の問題と無期転換後の労働条件の開示ないし説明の問題と納得性という観点からの労使コミュニケーションの問題の3つが関連しているので、それぞれのところでの対応も考えられるのではないか、あるいは、それぞれの組合せをどう考えるかという問題を含んでいるのではないかと考えた次第であります。
 追加的なコメント等はよろしいでしょうか。
 坂爪委員、お願いします。
○坂爪委員 ありがとうございます。恐らく無期雇用者のマネジメントのあり方自体を企業がしっかり考えているかというとまだまだ課題があって、取りあえず無期転換が始まったので無期転換をしましたというのが実情という企業も少なからずあると思います。その意味では、もちろん何が均衡に欠けるのかということもそうなのですが、この無期雇用として出てきた人をどう活用すべきなのか、していけるのかといったことを企業側が知る機会があることが非常に重要だと思います。均衡が必要だということを知らしめるのと併せて、新しく出てきたこの雇用区分を、いわゆる正社員とリンクさせて活用するのか、そうではなくて、無期雇用として既存の雇用区分とは異なる活用していくのか、そのために何が必要なのかといったことを考える情報を提供する、そういう仕組みをつくっていくということがこの問題を考えるときに併せて大事なのではないかと考えました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 先ほどの労働者間の納得性という点にも関わる問題点の御指摘であったかと思います。(7)にも関連しますが、企業の中でのキャリアコースや人事制度全体の設計に関わる問題でもあるという御指摘であったかと思います。
 ほかはよろしいでしょうか。よろしければ、追加論点ということではないのですけれども、ほかの点、通算契約期間、クーリング期間、有期特措法の活用状況、労使コミュニケーションを含めた(7)その他で、総論につきましても、御意見がありましたらお願いいたします。
 事務局からちょっと補足があります。
○田村労働関係法課長 (7)その他の部分で、先ほどの説明の補足です。75ページを御覧いただければと思います。前回の御議論の中で、パート・有期法の7条、就業規則等を作成するときに、短時間労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聞くように努めるという部分について、運用の現状について桑村委員から御質問いただいたところです。担当部署にも確認いたしましたけれども、具体的にどういう人に意見を聞いている場合が多いかどうかといったところについては把握していないところではありますけれども、施行通達の中では、ここの部分について、具体的に過半数を代表すると認められる者は、事業所の短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、短時間労働者の過半数で組織される労働組合がない場合には短時間労働者の過半数に該当する者が考えられること。選出の方法として、管理・監督の地位にある者ではないとか、挙手等の方法により選出された者であって使用者の意向に基づき選出された者ではないことといったことが定められているところです。
 参考に、御紹介させていただきました。
○山川座長 ありがとうございました。
 前回御指摘があって、ちょっと積み残していたところでした。先ほど竹内委員からお手が挙がったように記憶していますが、よろしいですか。
○竹内委員 ありがとうございます。
 本日の検討会の中で、特に坂爪委員並びに安藤委員や戎野委員からも御意見があったところで、ほぼ繰り返しになってしまうのではないかという懸念もありますけれども、申し上げさせていただきます。
 ここまでの議論で、労契法18条に基づく無期転換制度が、いわゆる一方でただ無期と呼ばれる、法はデフォルトではそういうものを念頭に置いていると思われますけれども、期間の定めだけが有期から無期になる、ほかは変わらないということが一方であるわけですけれども、他方で、別段の定めをして労働条件を変える、その中で、例えば、いわゆる正社員のような形で、あるいはそれに近づける形で、責任も重くするという形で位置づけを変えるということもあり得るわけであります。ここまでの検討会の中で示された資料等によると、企業が独自に、18条とは別に転換制度を設けている場合は、どちらかというと、より正社員に近いような転換をしていくような例が多かったのではないかと思います。また、年齢層的にも若い人が多いとか、幾つか特徴があったかと思います。
 そういうものと対比して、実態としては、そういう独自の制度である意味正社員に近いような形で転換しなかったような人たちが、18条で無期転換している側面がある程度見受けられる、どちらかというと、ただ無期の方向が18条としては利用されているところがあるという傾向が調査で示されていたのではないかとは思います。
 ただ、一般的にはそういうふうに申し上げても、やはり正社員化のようなものを念頭に置いてその企業としては18条の制度を利用することもあり得ると思いますし、また、法のデフォルトの理解から言うと、必ずしも正確とは言えない側面があるかもしれませんけれども、労働者としては、18条は正社員化できるような制度ではないかと思うような場合もあったりするわけです。他方で、今の責任の重さとかはそのままでいいので、取りあえずといいますか、無期化することによって雇用の安定が図られるようになってほしいと考える、これは法が本来想定している場合ではないかと思いますけれども、そう考える場合もあるわけです。
 そういう意味では、総論の中で、8ページのところで、無期転換ルールで見直しに向けた考え方で、これはこれまでの意見が出ているものだと思いますけれども、3つ目の○のところで、これこれの中で個々の企業の実績に応じた有期労働契約と無期転換の在り方について、労使双方が適切な判断ができるようにすることも考えられるのではないかということが現時点では書かれている訳ですけれども、よりもう少し具体的に、18条の無期転換制度の使い方は、こういうものだと、私としては、デフォルトとしては、ただ無期になるだけということだと思いますけれども、責任を重くするような場合とか、正社員化の利用の仕方もあり得ると。そういうふうな幾つかのバリエーションがあって、それはもちろん企業ごとに使い方は異なるものがあって、かつ、それがそれぞれの企業でどういうふうに使われているかということについて、労使が最も理想的には、無期転換の対象とはならないようなもともと無期の人とかの労働者も含めて、情報が共有される。それは無期転換権を行使するような段階で、個々の労働者がちゃんと情報を持っていることも重要ですし、もともとこの会社ではこういうふうに活用しているのだということが労使全体を通じて共有されていることも重要ですし、そういうふうな労使全体で共有されているということは、例えば、安藤先生がおっしゃったような、無期労働者については、うちではこういうふうな労働条件でやっているのですよという、不利益取扱いに係る議論の中でも納得感の醸成につながることもあろうかと思います。
 そういう意味では、どのようにそれぞれの企業で18条の無期転換の制度が活用されているのか、それについて労使間全体で情報共有をすることが必要であるということを、総論部分でも、この3つ目の○をさらに敷衍する形で書き込む、そして、そのような形でメッセージを検討会として出していくということが重要と考えます。
 ですので、坂爪委員等がおっしゃったようなことに関して、この総論部分でもぜひ書き込むことが望ましいのではないかと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 既にまとめの発言をしていただいたような感じがいたしているところでありますけれども、ほかに御意見はございますでしょうか。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 「その他の論点」に行ってよろしいでしょうか。
 72ページで、前回、パート・有期法の運用状況についてお聞きしまして、本日御回答いただきました。調べてくださり、ありがとうございます。この運用状況を聞きましたのは、まだ無期転換者が一人もいない事業場で初めて無期転換者の人事制度等について定める場合は、既に有期契約労働者の過半数を代表する者について、意見の反映方法でよい例があればそれを活用できるのではないかと考えたものでした。ただ、情報はあまりないということで、努力義務規定なので、全く意見を聴いていない事業場も多いのではないかと推測します。ただ、無期転換者の人事制度等について定める場合、当事者である対象労働者、つまり、無期転換者及び有期契約労働者の意見を聞いて、できる限りそれを反映することが望ましいと思いますので、今後は、代表者を選出の上、その代表者が様々な意見を集約して、使用者にしっかり伝えるという仕組みが重要であることを改めて指摘したいと思います。
 この意見聴取の方法としては、使用者が直接労働者に聴くことはあり得るかと思いますが、労働者が使用者に対して本当の意見を言えるのかというと、そうではないと思いますので、やはり意見聴取、意見の反映の方法としては、代表者が間に入って自由な意見交換の場をつくって、その代表者が使用者に伝えるということが重要であると考えます。
 無期転換に係る人事制度をつくる場合、就業規則でやる場合には労契法7条または10条の合理性が必要です。この合理性の判断において、現在の労基法90条の過半数代表による意見聴取を行っているかどうかは、労契法10条の中の判断要素にはなりますが、7条では考慮されないと考えるのが一般的です。ただ、無期転換者の労働条件設定の場面では、7条の枠組みにおいても、ある程度踏み込んだ合理性の判断がなされることが、これまでの資料でも確認されています。そのため、7条の枠組みでも、対象労働者の意見をどれだけ聴いたかが合理性の判断に影響を与えると考えられ、事業所に対してその点を周知することで、対象労働者の意見を酌み取ることを促進できるのではないかと思います。
 また、意見をただ伝えるだけではなく、多様な意見を集約した上で調整するという視点、それは対象労働者の集団の中だけではなく、全労働者との関係でも必要であることが前回指摘されました。それについての仕組みが存在しないということは、ここだけではなく、現在の労働法制における重大な欠陥であるということは、私自身も共通して持っている問題意識ですので、将来的に従業員代表制が必要であるというメッセージを出す必要があるという前回の指摘に賛成いたします。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 2つ、1つは中長期的な課題も含めて御指摘いただいたと思います。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 これで一わたり無期転換ルール関係については御意見をいただいたということになります。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 最後の7のところです。前回も意見が出ましたけれども、労使の納得感、労使の情報共有は、労はいろいろなタイプがいるので、労働者間の互いの情報をそれぞれ持っていないと納得できないということがあると思います。雇用形態を取ってみても、その雇用形態間の待遇の調整であったり、雇用形態間の利害の調整であったりが必要ですし、また、雇用形態を超えての大きな声として一つの労働者の声としてまとめ上げていくこと、そういったことも本来は必要です。そこには労働組合の役割が当然あると思います。もちろんそういうことをやっているところもあるのですけれども、御存じのとおり、組織率は低く、中にはこれまでの調査でもありましたけれども、労働組合に入るつもりはないとか、よく分からないという回答も多く、無期転換もよく分からないけれども、労働組合についてもよく分かっていないという労働者の状況がありました。こういった問題を解決していくときに、労働組合が一つの役割を担うべきであり、また、企業もそれを十分に活用していく。そして、従業員代表制も重要な位置づけとなっている。労使コミュニケーション、労使の納得感、労働者間の納得感を進めて行くにあたっては、労働組合や従業員代表制などを十分に活用していくことも、重要ではないかと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかはよろしいでしょうか。
 おおむね時間になりつつありますけれども、私としては、先ほど竹内委員の言われたコメントに基本的に同感です。全体のスキーム設計に当たっての視点をまとめていただいたものと思っております。2012年の労働契約法改正のときに、旧労契法20条については、有期契約の状態での待遇の改善を、18条については、無期転換ということによる雇用の安定ということを考えたといいますか、意図していたと思いますし、もともとパート・有期法には正社員転換を措置するという規定があって、これはキャリアアップのための制度である。無期転換も別段の定めを許容した段階で、いわゆるただ無期以外のキャリアアップ的な色彩も可能であるというスキームにしたものだと理解しております。つまり、非正規といいますか、非典型のままでの待遇改善と雇用安定とキャリアアップと、いろいろなルートがこの問題についてはあり得て、それは恐らく企業全体の中、の既に御意見もありましたし、私も申しましたけれども、キャリアコースとか、人事制度の設計をどうするかという観点から、言わば戦略的に全従業員を含めて考えるような問題ではないかと御議論を伺っていて感じたところであります。
 そうしますと、関係者、パート・有期法には既に就業規則に関して意見を聞く、過半数代表者と認められる者からの意見を聞くというスキームがありますし、また、中長期的には従業員代表制度の問題がありますけれども、労使コミュニケーションの中で、個々の企業の非正規の方々についてどういう人事制度をつくっていくかというのを設計していく議論を促進する。そこまでいくと、法律でどうということではないかもしれませんけれども、そういうことを積極的に開示していくと、人が集まる企業にもなる。要するに、従業員をきちんと処遇している、あるいは、発展してもらえるという労働市場に対するメッセージにも、各企業について人が集まるようなことをメッセージとして出し得る。そういう議論を促進していただければと思った次第です。
 すみません。演説のようになってしまいまして、いろいろな御発言に触発された次第です。
 何か御意見が、あと数分ありますけれども、ございますでしょうか。
 安藤委員、お願いします。
○安藤委員 ありがとうございます。
 この無期転換のルールは、ただ無期が基本というのはおっしゃるとおりだと思っています。それを踏まえて、無期転換を望まず、更新に上限を課している企業も一定割合が存在しているということがデータでも示されていたわけです。そして更新に上限が設定されるのであったら理由が必要だろうというのは、一般の人が感じることかなと思っているのですが、どういうことが理由で無期転換を会社側が望まないのかということについての整理は、今後、有益かと思っています。例えば、我々大学で働いている人間からすると、任期つきの助教や研究員のようなポジションを無期転換するというのは考えにくいのではないか。大学で無期転換前に雇い止めをするのは、あくまでも若いうちに集中して研究する期間が必要だという一定の合理性があると思って、大学の世界では通用している仕組みがあったりするわけですが、ほかにどういうものが社会的に受入れ可能なのかということについて、理解が深まるとよろしいかなと思っています。
 もう一点、今回の議論の全体を通じて、無期転換権の発生の5年、クーリング期間の6か月、また、有期特措法関係については大きく変えるというものではなく、明確化しよう、使いやすくしよう、情報提供をきちんとしようという方針で議論をしているわけですが、これからまた一定年数後に、5年後か8年後か分かりませんが、見直すとしたらどんな点に注意が必要なのかという視点、これからこの仕組みがまた動いていく中で、どういう点に注目していかないといけないのかということを考えておくことが有益かと思いました。
 10ページ目の飛ばされたスライドではありますが、大事なのは無期転換した人数や割合だけではなくて、例えば、更新上限がどうだったのかとか、それが無期転換ルールとの前後でどう変わったのか、無期転換を希望する、安定した仕事を希望する人がその安定した仕事に就くことができたのか、または、先ほど座長からもあった有期雇用の活用、会社などのキャリアがどう変わったのか、こういうことについて見ていく視点が今後は重要なのかなと思って、今回、ルールを大きくは触らないということについて、だからといって現状のままでいいというわけではないという理解が必要かと感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今回の調査ではまだ状況がよく分からない点もあったのですが、今後に向けてテイクノートをするような姿勢はやはり必要かと思っております。
 ほかはよろしいでしょうか。
 それでは、おおむね時間になりましたので、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。有益な御議論を大変ありがとうございました。
 それでは、次回の日程につきまして、事務局からお願いいたします。
○田村労働関係法課長 本日も、ありがとうございました。
 次回の日程につきましては、現在調整中ですので、確定次第、開催場所と併せて御連絡させていただきます。
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、これで第8回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を終了いたします。お忙しい中、お集まりいただき、御議論いただきまして、大変ありがとうございました。
 

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