2021年5月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和3年5月26日(水)17:00~

出席者

出席委員(18名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
欠席委員(3名)
行政機関出席者
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 ただいまから、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日はお忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 本日のWeb会議における委員の出席状況です。飯島委員、合田委員、代田委員から、御欠席の連絡を頂いております。そのほか、本日は石川委員、大森委員、長谷川委員におかれましては、追って御参加いただけると思っております。したがいまして、現在、当部会委員数21名のうち、15名の委員がこのWeb会議に御出席をいただいておりますので、定足数に達していることを御報告いたします。
 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。また、本日のWeb会議に際しては、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者はマスクを着用したまま説明させていただくという形になりますので、御了承いただければと思います。
 それでは森部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 事務局から、審議の進行方法の御説明をお願いいたします。
○事務局 本日は、Webでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、御自身のお名前と、発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。なお、発言者が多いときには、発言されたい委員がメッセージに御記入いただくことで、部会長より発言者を順に御指名いただきます。適宜、メッセージ機能も御利用ください。
○森部会長 これまでの御説明に、御質問、御意見等はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストの報告を行ってください。
○事務局 本日のWeb会議に係る資料の確認をいたします。本日、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1-1~資料No.14-2と製剤写真を用いますので、お手元に御用意ください。この他、資料No.15として、「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.16として、「専門委員リスト」、資料No.17として、「競合品目・競合企業リスト」を事前に電子メールにてお送りさせていただいております。なお、システムの動作不良などがございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続きまして、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、御報告いたします。資料No.17の1ページを御覧ください。「エブリスディドライシロップ60mg」ですが、本品目は「脊髄性筋萎縮症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページを御覧ください。「ウパシタ静注透析用25μgシリンジ他6規格」です。本品目は、「血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページを御覧ください。「レベスティブ皮下注用3.8mg」です。本品目は、「短腸症候群」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 4ページを御覧ください。「ツイミーグ錠500mg」です。本品目は「2型糖尿病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページを御覧ください。「ギブラーリ皮下注189mg」です。本品目は「急性肝性ポルフィリン症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページを御覧ください。「アジョビ皮下注225mgシリンジ」です。本品目は「片頭痛発作の発症抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページを御覧ください。「アイモビーグ皮下注70mgペン」です。本品目は「片頭痛発作の発症抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 8ページを御覧ください。「ラツーダ錠20mg他3規格」です。本品目は「統合失調症、双極性障害におけるうつ症状の改善」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 9ページを御覧ください。「TransCon PTH」です。本品目は「副甲状腺機能低下症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はございますか。よろしいでしょうか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を得たものといたします。
 それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員からの申出状況については、次のとおりです。議題1「エブリスディ」:退室委員はなし、議決に参加しない委員は大森委員、佐藤直樹委員、長谷川委員です。議題2「ウパシタ」:退室委員はなし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員です。議題3「レベスティブ」:退室委員はなし、議決に参加しない委員は大森委員、川上委員、武田委員、宮川委員です。議題4「ツイミーグ」:退室委員はなし、議決に参加しない委員は大森委員、佐藤直樹委員です。議題5「ギブラーリ」:退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題6「アジョビ」:退室委員は佐藤直樹委員、議決に参加しない委員は大森委員です。議題7、8「アイモビーグ」:退室委員は佐藤直樹委員、議決に参加しない委員は大森委員、川上委員です。議題9「ラツーダ」:退室委員は佐藤直樹委員、議決に参加しない委員は大森委員です。議題10「TranceCon PTH」:退室委員はなし、議決に参加しない委員は川上委員です。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はございますか。よろしければ、皆様の御確認を頂いたものといたします。
 本日は審議事項10議題、報告議題3議題、その他の事項は1議題となっております。それでは、審議事項の議題に移ります。議題1について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品エブリスディドライシロップ60mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.1の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全90ページの通し番号で4ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。
 脊髄性筋萎縮症(以下、「SMA」と略す)は、Survival motor neuron(以下、「SMN」と略す)タンパクをコードする遺伝子の一つであるSMN1遺伝子の両アレル性の機能喪失変異により、SMNタンパクの欠乏が生じる結果、体幹、四肢の骨格筋及び呼吸筋における萎縮並びに高度な脱力を引き起こす常染色体劣性遺伝疾患です。SMAは指定難病とされており、平成30年度の特定医療費受給者証所持者数は858人とされています。SMAの病型は、発症年齢及び発達中に達成した最も高度な運動マイルストーンにより、主に出生後に発症するI型~IV型に大別されます。I型は6か月齢までに発症し、支えなしに座ることができず、人工呼吸器での管理を行わなければ、ほとんどの場合に2歳までに死亡するとされております。II型は6か月齢以降、18か月齢以前に発症し、立位が可能な場合もありますが、自立歩行はできないとされております。III型は18か月齢以降に発症し、自立歩行を達成しますが、時間とともに運動機能が低下し、歩行能力を喪失することがあるとされております。IV型は、典型的には35歳を超えて発症し、症状はIII型と類似するとされております。
 SMAに対する治療選択肢として、本邦ではヌシネルセンナトリウム、再生医療等製品であるオナセムノゲンアベパルボベクなどが承認されております。ヌシネルセンナトリウムは髄腔内に投与する必要があり侵襲性が高く、重度の側弯や関節拘縮を合併する場合は物理的に投与が困難な場合があり、また、オナセムノゲンアベパルボベクの投与は、2歳未満かつ抗アデノ随伴ウイルス9型抗体の陰性患者に限定されております。そのため、より負担の少ない、かつ幅広い患者に使用できる治療選択肢に対する高い医療ニーズが存在します。
 本剤の有効成分であるリスジプラムは、経口投与可能な低分子化合物であり、ヒトでSMNタンパクをコードするもう一つの遺伝子であるSMN2のmRNA前駆体に作用することで、スプライシングを調節し、機能性SMNタンパクを増加させることで、SMAに対して効果を示すことが期待されております。今般、国際共同第II/III相試験の成績などに基づき、有効性及び安全性が確認されたとし、製造販売承認申請が行われました。
 海外での状況について、2021年4月15日時点で、本剤はSMAに関する効能・効果で米国、欧州、カナダを含む40か国で承認されております。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。本申請の専門委員として、資料No.16に記載されている10名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
 有効性について、まず、II型及びIII型SMA患者を対象とした試験成績を御説明いたします。審査報告書の通し番号で54ページの表42を御覧ください。国際共同第II/III相試験の検証パートにおいて、プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験が実施されました。運動機能の評価尺度であるMFM32が用いられ、主要評価項目とされた「投与12か月後におけるMFM32合計スコアのベースラインからの変化量」について、全体集団において、本剤群でプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善が認められました。一方、日本人集団においては、全体集団の結果との一貫性は確認できませんでした。
 主要評価項目であるMFM32合計スコアにおいて、全体集団と日本人集団で結果の一貫性が確認されなかったことから、審査報告書の通し番号で55ページの表43にお示ししたとおり、主要評価項目のMFM32に加えて、SMA患者における上肢の運動能力を評価するために開発された評価尺度であり、本試験における重要な副次評価項目とされた「投与12か月後におけるRULM合計スコアのベースラインからの変化量」も含めて、個別症例ごとに結果を確認いたしました。その結果、一貫性が確認されなかった要因として、日本人集団では群間の年齢分布に偏りが認められたことが考えられました。具体的には、SMA患者においては思春期に関節拘縮、側弯症の悪化などにより運動機能の急速な低下を示すことがあると報告されており、日本人集団では思春期に該当する被験者が本剤群にのみ登録されていたことが結果に影響した可能性が考えられました。これらの想定される要因に加え、SMAは民族差が想定されにくい疾患であること、副次評価項目であるRULMや薬力学的指標である血中SMNタンパクの増加では国内外の一貫性が確認されていることなどを含めて総合的に解釈すれば、全体集団の結果を用いて日本人患者の有効性及び安全性を評価することについて、大きな問題はないと判断いたしました。
 次に、全体集団において、認められたプラセボ群と本剤群の群間差は1.55点であり、試験計画時に想定していた群間差である3点よりも小さい結果であった点について、審査報告書の通し番号で79ページの「1.1.1 II型及びIII型SMA患者について」の項を御覧ください。事前の想定値の設定に当たっては、検証パート計画時に利用できる情報が極めて限られていたため、多くの仮定が必要であり、新たな運動機能を獲得する又は幾つかの運動機能の改善を意味する群間差として仮定した3点が設定されました。事前の想定値と実際の群間差に差が認められた理由として、本剤の効果は低年齢ほど大きく、最も効果が大きかった6歳未満の集団における群間差は事前の想定値を上回っていましたが、6歳以上の集団においては想定値を下回っていたことが原因である可能性が考えられました。しかしながら、6歳以上の集団において、MFM32合計スコアのベースラインからの変化量が0点以上であった、つまり運動機能が少なくとも維持されていた被験者の割合は、プラセボ群と比較して本剤群で高く、本剤投与により運動機能が維持される傾向が認められました。運動機能が経時的に低下するII型及びIII型SMA患者では、運動機能の維持も臨床的意義があるとされており、特に病態が進行していると考えられる年齢が高い患者では、日常生活への更なる制限を避ける観点から運動機能の維持は重要と考えられることも踏まえると、年齢の高い集団においても本剤による運動機能の維持が認められたことには臨床的意義があると考えられました。また、副次評価項目とされたRULMについて、最も年齢の高い18~25歳の集団でも一定の有効性が認められていることなども踏まえると、今回得られた試験成績には、臨床的意義があると判断しました。
 以上については、専門協議においても支持されたことから、II型及びIII型SMA患者において、本剤の有効性は示されており、日本人患者においても期待できると判断いたしました。
 次に、I型SMA患者を対象とした試験成績を御説明いたします。審査報告書の通し番号で57ページの1ポツ目を御覧ください。I型SMA患者は極めて重篤な疾患であり、患者数も限られていることを踏まえ、国際共同第II/III相試験の検証パートにおいては、利用可能な自然歴研究の文献報告のうち、ベースライン特性を考慮し、登録が予想される患者集団に近い患者集団の自然歴研究を考慮して、有効判定の閾値が事前に設定され、非盲検単群試験として実施されました。結果については、審査報告書の通し番号の61ページの表46を御覧ください。全体集団について、主要評価項目とされた、「投与12か月後における支えなしで5秒間坐位を保持できる被験者の割合」の90%信頼区間の下限は17.8%であり、事前に設定した有効判定の閾値である5%を上回りました。また、長期人工呼吸管理を受けずに生存していた被験者の割合等の主な副次評価項目についても、事前に設定した有効判定の閾値を上回りました。日本人について、目標症例数を満たすよう方策が最大限なされた上で、最終的に組み入れられた被験者は1例にとどまりました。当該日本人被験者における結果について、審査報告書の通し番号の57ページの4ポツ目を御覧ください。主要評価項目である5秒間の坐位保持は達成できなかったものの、その他の運動マイルストーンは改善が認められており、運動機能の推移は自然歴と異なる傾向が認められたこと、薬力学的指標である血中SMNタンパク濃度の増加が認められていることを踏まえると、日本人被験者においても本剤の有効性は示唆されていると判断しました。
 以上の検討を踏まえ、I型SMA患者において本剤の有効性は示されており、日本人患者においても期待できると判断いたしました。
 続いて、安全性について説明いたします。審査報告書の通し番号の64ページから始まる「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。今般提出された臨床試験において認められた重篤な有害事象の多くは原疾患であるSMAに関連するものであり、今般提出された臨床試験成績における本剤投与時の安全性を踏まえると、本剤の安全性上のリスクは許容可能であると判断いたしました。
 最後に、効能・効果について説明いたします。審査報告書の通し番号の81ページから始まる「1.3 臨床的位置付け及び効能・効果について」の項を御覧ください。本剤の臨床試験において、有効性及び安全性が確認されたI型、II型及びIII型SMAを効能・効果に含めることに、大きな問題はないと考えました。また、IV型のSMA患者については、臨床試験における投与経験がないものの、IV型のSMA患者を対象とした臨床試験の実施が困難であること、IV型SMA患者でも進行性に筋力が低下するおそれがあること、本剤の作用機序を踏まえると他の病型と同様に有効性が期待できると考えること、SMN2遺伝子のコピー数が4以上の患者において、4未満の集団と比較して有効性及び安全性に大きな差異は認められていないこと、IV型SMA患者に対する治療選択肢は限られていることなどを考慮すると、本剤の効能・効果にIV型のSMAを含めることは許容可能と判断しました。なお、IV型SMA患者については、製造販売後調査において、再審査期間中に本剤が投与されたIV型SMA患者の全症例の安全性及び有効性に関する情報が収集される予定になっております。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会にて御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は毒薬に該当し、製剤は劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。
 説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 委員の先生方から御質問等がございましたらお願いします。
○堀委員 家庭でこのように経口投与ができる薬ができたことは、本当に保護者にとっては喜ばしいことだと思います。
 それで、I型、重症型について1点お尋ねいたします。I型は、生まれてから生後6か月までに発症するものと伺っておりますが、発症すると、食べ物や飲み物を飲み込む力、嚥下機能が落ちてくると聞いております。特に、6か月までの赤ちゃんにこのドライシロップを服用することにおいて、スムーズに保護者は飲ませることができるのでしょうか。心配でしたので御質問させていただきました。お願いいたします。
○森部会長 機構から回答してください。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答いたします。今、堀先生から御指摘があったように、I型の患者さんについては、嚥下機能が低下している患者さんも一部で認められることがございまして、経口投与が可能であれば経口投与していただくことになると思うのですが、嚥下機能が落ちているような患者さんについては、鼻からチューブを入れて、その中に流し込むような形で本剤を投与することが考えられると思います。
○堀委員 これは私の意見なのですが、今回の薬ができたことは保護者にとって、特に幼い患者を持つ保護者にとっては、非常に有り難いことだと思います。と言うのは、今までは治療の場合、どうしても病院に行って注射を打つことが必要ということだったのですが、今回、自宅で薬が飲めるということは、通院による時間の拘束、後は治療費の面からも、非常に負担が軽くなることだと思っております。
 ですから、よけいに保護者に対しての資材、今おっしゃったように鼻から投与することや、そうした細やかな注意すべきことも、本当に小さい赤ちゃんに投与するというのは母親、保護者にとっては非常にびくびくしてしまうようなことなので、是非主治医からの細やかな説明、また、この薬をお作りになる資材に関しましても、詳細に作っていただけたら有り難いと思います。
 もう1点あります。今回、新生児に行われるスクリーニングの検査に関しては、まだSMAが含まれておりません。できましたら、早急にスクリーニングに入れていただいて、早期発見ができることを切に願っております。私からは以上です。
○森部会長 続きまして、赤羽委員から御質問を承ります。
○赤羽委員 審査報告書の通し番号の11ページ~12ページに掛けて、副次的なSMN2以外のスプライシング修飾作用に関して、細胞の増殖であったり、アポトーシスに関連した遺伝子のスプライシングにも影響があるかもしれなくて、それは細胞増殖が盛んな組織で影響があるかもしれないということが述べられていますが、これは申請書の中ではかなり慎重に検討されていたようでした。一方、添付文書の中でも副作用の中で、粘膜であったり、消化管など、皮膚の副作用が11.2項の所に示されています。これは、この副次的なスプライシングの修飾による影響と関係がある可能性はあるのでしょうか。
○森部会長 機構から御回答をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 赤羽先生から御指摘いただいたように、本薬のin vitroの試験の中で、本薬のターゲットとする遺伝子以外の遺伝子産物に対しても本薬は作用する可能性があり、細胞増殖が激しいような器官、組織への影響については、動物を用いた試験の中でも認められております。
 臨床試験の中でも、特に皮膚への影響については、本剤による某かの影響が出ているという傾向は認められておりますので、添付文書に記載している事象である、特に口腔内潰瘍形成、皮膚の症状については、本剤によるオフターゲットの作用が関係している可能性があるとは考えていますが、現時点で、それに起因して生じたとまでは必ずしも断定できないというように考えています。
 また、消化器の症状として、下痢を添付文書に記載しておりますが、本剤による明確な影響が余り示唆はされておりませんでしたので、こちらについても、オフターゲット作用によって生じたかどうかについては、何とも言えないというのが正直なところです。
○赤羽委員 これからまた引き続き、そこは症例を集めていくということで御検討いただければと思います。ありがとうございました。
○森部会長 国際的に使用されている薬剤ですので、広範に世界から情報を集めるということで、今後とも安全対策を図っていきたいと思います。そのほかに御質問はいかがでしょうか。
○宮川委員 審査報告書の通し番号ページ55/90の表43について、側弯の度数が40度超と記載されていますが、コメントの中に2例は80度以上と書いてあるのですが、そのほかの状況はどのようになっていて、有効性の有無についても検討したのか教えてください。すべて「超」で書いているので、実際の数字というのは分からないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 今回の臨床試験の中で、情報収集されていたものは、側弯症のカテゴリー分類だけであり、つまり、側弯症がない、側弯が0~10度、10~40度、40度超への該当性のみしか収集されておりません。
 ただし、一部、日本人症例で、非常にベースラインからの悪化が認められた症例については、事後的に側弯症の程度の情報が収集されており、具体的な側弯の程度が分かっているという状況です。
○宮川委員 もう一つよろしいでしょうか。投与の期間というのは、この疾病の特性から言うと、一生というように考えてよろしいのでしょうか。例えば途中で継続の判断をする、どのようなメルクマールを用いるとか、そうしたものは設定されているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 基本的には、この薬剤は根治させるような薬剤ではございませんので、投与を始めたら生涯投与される場合もあると想定しております。ただ、例えば人工呼吸が既に導入されたような患者については、臨床試験では検討されていないということもありましたので、添付文書の5.3項で注意喚起させていただいており、定期的に有効性を評価して、投与継続の可否を御判断いただくことになると考えております。
○宮川委員 ありがとうございました。
○森部会長 そのほかに御質問はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入ります。なお、大森委員、佐藤直樹委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。それでは、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題2に移ります。機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題2、資料No.2-1及び2-2、医薬品ウパシタ静注透析用25μgシリンジ他6品目の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)は、慢性腎臓病の進行に伴うリンの排泄低下及びビタミンD活性化障害に伴う血中カルシウム濃度低下により副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌が引き起こされることで生じます。SHPT患者におけるPTHの過剰分泌は、骨吸収を亢進させることで骨痛や骨折を生じ、骨から血中へのCaやPの放出を過剰亢進させることで、心血管等の石灰化を引き起こし、生命予後にも影響を及ぼします。
 本薬は、PTH分泌や副甲状腺細胞増殖等を制御するカルシウム感知受容体作動薬であり、SHPTに対する効果が期待され、開発に至りました。
 今般、申請者は国内臨床試験を実施し、本薬の有効性及び安全性が確認できたとして、医薬品製造販売承認申請を行いました。2021年2月現在、本薬が承認されている国又は地域はございません。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.16に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
 有効性に関しては、審査報告書の青字の通し番号27ページ、表25を御覧ください。維持血液透析下のSHPT患者を対象とした国内第III相比較試験において、主要評価項目である「22~24週後の平均血清iPTH濃度の目標達成割合」について、本薬群のプラセボ群に対する優越性が検証されたことから、本薬の有効性が示されました。
 安全性について、審査報告書の通し番号36ページ、表35を御覧ください。国内第III相比較試験において、本薬群はプラセボ群と比較して、補正カルシウム減少以外の有害事象の発現状況に臨床上大きな違いは認められなかったことを確認しました。また、審査報告書の通し番号37~39ページを御覧ください。低Ca血症関連事象について検討した結果、本薬投与により低Ca血症及びQT延長関連事象が発現する可能性がありますが、第III相比較試験及び長期投与試験で認められた事象の重症度はいずれも軽度であったことから、現時点では類薬と同様に本薬の添付文書で低Ca血症及びQT延長について注意喚起することで臨床上大きな問題となる可能性は低いと考えました。
 以上、機構での審査の結果、血液透析下のSHPTに対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
 本薬は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は、いずれも劇薬に該当すると判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しております。
 機構からの説明は以上になります。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。いかがでしょうか。よろしければ議決に進んでよろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただきます。なお、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、議題3に移ります。議題3について、機構から概要説明をお願いしたいと思います。御準備をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題3、資料No.3、医薬品レベスティブ皮下注用3.8mgの製造販売承認の可否等について機構より御説明いたします。短腸症候群は、小腸の外科的切除又は先天性欠損に起因し、小腸からの栄養吸収低下により栄養欠乏状態に至るため、多くの場合、水分及び栄養補給のために継続的な経静脈サポートを必要とします。経静脈サポートは、患者に必要な栄養及び水分を補給することはできるものの、カテーテル関連感染症などの合併症を発症することや、患者及び介護者の負担が大きく、日常生活に著しい影響を及ぼすことが問題となっています。
 本薬は、テデュグルチド(遺伝子組換え)を有効成分とする天然型ヒトGLP‐2の遺伝子組換えアナログの注射剤です。海外では、本薬は短腸症候群に対して2012年8月に欧州、同年12月に米国で承認されて以降、2021年3月現在、海外40か国以上で承認されています。本邦では、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議における議論を経て、2014年に厚生労働省から開発要請がなされ開発に至りました。
 なお、本薬は、短腸症候群を予定される効能・効果とする希少疾病用医薬品としての指定について本部会で御審議いただき、2014年11月20日付けで希少疾病用医薬品に指定されています。本品目の専門協議では、資料No.16に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
 有効性について、審査報告書の青字で表記しております通し番号の59ページの表73を御覧ください。成人短腸症候群患者を対象とした海外第III相試験(CL0600‐020試験)において、主要評価項目である「Week20及びWeek24の両時点における週間経静脈サポート量がベースラインから20%以上減少した被験者の割合」について、本薬群のプラセボ群に対する統計学的有意差が示されました。また、国内第III相試験(SHP633‐306試験)の症例数は極めて限られていることから、結果の解釈には限界があるものの、海外第III相試験と比較して異なる傾向は認められませんでした。
 続いて、審査報告書、通し番号62ページの表77及び表78を御覧ください。1歳以上の短腸症候群患者を対象とした国内第III相試験(SHP633‐302試験)及び海外第III相試験(TED‐C14‐006試験)において、本薬を1日1回24週間皮下投与したときの「経静脈サポート量及びベースラインからの変化率の推移」は、いずれの試験においても本薬投与により経静脈サポート量が減少し、海外第III相試験では、標準治療群と比較して本薬群で経静脈サポート量のベースラインからの変化率が大きいことが示されました。また、1歳未満の小児短腸症候群患者について、国内第III相試験(SHP633‐302試験)の2例では、本薬を1日1回、24週間皮下投与により経静脈サポート量が減少したことなどを確認しました。以上より、短腸症候群患者に対する本薬の有効性は示されたと考えました。
 安全性について、審査報告書通し番号65ページの表81を御覧ください。成人短腸症候群患者を対象とした海外第III相試験(CL0600‐020試験及びCL0600‐004試験の併合)において、副作用、重篤な有害事象、重篤な副作用の発現割合及び投与中止に至った有害事象の発現割合は、プラセボ群と比較して本薬群で高い傾向が認められました。また、本薬群で頻度の高い有害事象は、腹痛、悪心、腹部膨満、消化管ストーマ合併症などであり、これらの事象は副作用としても比較的多く認められました。日本人症例数が極めて限られていることに留意する必要はあるものの、国内第III相試験における有害事象等の概要は、海外第III相試験における本薬群と比較して臨床上問題となる傾向は認められませんでした。
 ただし、国内第III相試験で1名の死亡例が確認されておりますので、御説明します。審査報告書通し番号36~37ページを御覧ください。こちらの試験は、本薬が投与された11名中3例で、本薬の血漿中濃度が一度も検出されず投与過誤が推測されたことから、参考資料とした試験です。死亡した1例の経過については、審査報告書通し番号37ページの表36の下の文章に記載しております。当該症例は、本薬の血漿中濃度が検出されなかった症例です。治験薬投与後に、肝機能検査値の悪化により急性肝機能障害が疑われ、治験薬の投与が中止されました。治験薬投与中止以降も全身状態の悪化が認められ、最終的に腎不全により死亡しました。治験担当医師は、肝不全による二次性肝腎症候群によって、糖尿病性腎症による腎不全が促進されたことが原因とし、治験担当医師により副作用と判断しています。治験依頼者は、被験者が進行性肝疾患及び胆汁うっ滞の既往を合併しており、臨床的肝代償不全のリスクが非常に高かったため、因果関係はないと判断しております。なお、添付文書の注意喚起につきましては、国内外の臨床試験成績を踏まえて設定しており、肝機能検査については、「8.3 重要な基本的注意」の項において、胆道疾患関連の中で定期的に肝機能検査を行うよう記載しております。
 また、審査報告書通し番号67~76ページを御覧ください。本薬の作用機序、非臨床試験及び臨床試験成績から特に注意すべき有害事象を中心に検討を行いました。各検討の結果、添付文書の禁忌、重要な基本的注意の項などで注意喚起を予定しております。なお、国内での治験症例数が極めて限られていることから、製造販売後、全症例を対象に使用成績調査を実施し、本薬投与時の安全性情報などを収集する必要があると考えました。
 以上の審査の結果、短腸症候群に対する本薬の有効性は示され、期待できるベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。
 本申請は希少疾病用医薬品に指定されていることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しております。
 なお、審査報告書に誤記載がありましたので、医薬品審査管理課より別途追加送付いただいた修正表のとおり訂正させていただきます。本修正につきまして、審査への影響がないことは確認しています。以上です。御審議をどうぞよろしくお願いします。
○森部会長 委員の先生方から、御質問等ございましたらお願いします。赤羽先生、どうぞ御質問をお願いします。
○赤羽委員 審査報告書の69ページにあります前臨床試験、動物の試験で消化器系の悪性腫瘍の発現リスクが懸念されたということで、比較的細かく記載がされていますが、例えばクローン病の患者さんですと、免疫を抑制するような免疫修飾薬で治療を受けられている方がいらっしゃるかと思うのですが、一つの懸念事項として悪性新生物とか悪性腫瘍というのがあるかと思います。そういった薬剤で治療を受けている方で、特に消化器系の悪性腫瘍の発現のリスクが上がるかどうかについて、既に欧米ではもう承認されてから時間がたっていますが、そういったことに関して何か報告などございますか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。機構からお答えさせていただきます。先生に御指摘いただきましたように、クローン病を含めて、この投与対象となる疾患において免疫を抑えるような薬の併用は一定の割合で予想されると考えられます。そのことに関しては、御指摘いただいたように注意が必要だろうと考えています。本剤は、既に欧米では8年余の使用実績がありますが、免疫不全の、あるいは免疫抑制剤を用いている患者さんで特別に腫瘍原性が高まっている、あるいはがんの合併が増えているようなデータはありません。以上です。
○赤羽委員 また市販後調査もされるということですので、データが蓄積されることを期待しております。ありがとうございました。
○森部会長 続いて、岡委員から御質問を承ります。お願いします。
○岡委員 この基になっているGLP‐2については、基礎研究からは、食欲の抑制や血圧を下げる作用などが報告されていると思うのですが、臨床試験ではそうした症状は現れなかったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。御指摘の点は、薬理学的には考えられる作用となりますが、臨床的に課題となるような、血圧の問題であるとか食欲の問題というのは現時点では特別には報告されていません。なお、食欲に関して申し上げれば、作用として、消化管の、簡単に言えば面積といいますか吸収面積が増えますので、食事の量自体が増えたという被験者はおられます。以上です。
○岡委員 ありがとうございました。
○森部会長 そのほか、特に御質問事項はありませんでしょうか。先ほど報告いただいた、1名お亡くなりになった方のデータで、血液中の本薬剤の血中濃度は確認されたのですか、されなかったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。当該症例は、本薬の血漿中濃度は検出されなかった被験者です。
○森部会長 血中薬剤濃度が確認がされなかった被験者ですか。分かりました。では、不適切投与プロセスがあったことが確認されているのですね。分かりました。そのほか先生方、御質問はよろしかったでしょうか。それでは、議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。なお、大森委員、川上委員、武田委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題4に移ります。では、議題4について、機構からの概要説明の御準備をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題4、資料No.4の医薬品ツイミーグ錠500mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明申し上げます。本剤は、イメグリミン塩酸塩を有効成分とする2型糖尿病の治療薬です。本剤はインスリン分泌臓器である膵臓、及びインスリン標的組織である肝臓、筋肉等でミトコンドリア機能を改善することにより、インスリン分泌促進作用及びインスリン抵抗性改善作用を示すことで、血糖降下作用を示すと考えられています。なお、本剤はビグアナイド系薬剤であるメトホルミン塩酸塩と構造の一部が共通しており、インスリン抵抗性改善作用の一部の機序も共通すると考えられています。
 海外においては、2021年3月までに、いずれの国又は地域においても承認されていません。本品目の専門協議では、資料No.16に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 それでは、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず、有効性について、審査報告書の42ページの表34を御覧ください。食事・運動療法又は食事・運動療法に加えて経口血糖降下薬単剤による治療で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者を対象に、本剤単独療法におけるプラセボ対照比較試験が実施されました。その結果、ベースラインから投与24週時までのHbA1c変化量について、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示されました。続いて、審査報告書の44ページの表37を御覧ください。先ほどの試験と同様の患者を対象に、各経口血糖降下薬及びGLP-1受容体作動薬との併用療法における非盲検非対照試験が実施されました。その結果、ビグアナイド系薬剤併用群を含め、いずれの併用療法群においてもHbA1cの低下が認められました。また、審査報告書の48ページの表39を御覧ください。インスリン療法又はインスリン療法と経口血糖降下薬単剤による治療で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者を対象とし、インスリン製剤との併用療法におけるプラセボ対照比較試験が実施されました。その結果、ベースラインから投与16週時までのHbA1c変化量について、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示されました。
 続いて、安全性について、審査報告書の55ページの表49~51を御覧ください。本剤単独療法、経口血糖降下薬等との併用療法、インスリン製剤との併用療法における臨床試験での有害事象の発現状況を示しています。その結果、単独療法においては、臨床推奨用量である本剤1,000mg群での有害事象の発現状況はプラセボ群と大きな違いは認められませんでした。また、各併用療法においても、低血糖及び消化器症状を除き、併用療法群間で有害事象の発現状況に大きな違いは認められませんでした。
 低血糖については、審査報告書の56ページの表53、及び57ページの表54と55を御覧ください。本剤単独療法、経口血糖降下薬等との併用療法、インスリン製剤との併用療法における低血糖の発現状況を示しています。その結果、本剤単独療法においては用量依存的に低血糖の発現割合が高くなる傾向が認められておらず、プラセボ群と比較しても本剤群の発現割合が大きく上昇する傾向は認められていません。併用療法においては、SU、グリニド及びインスリン製剤との併用時に低血糖の発現割合が高い傾向が認められています。実施した臨床試験においては重度の低血糖は認められていないことから、本剤の低血糖のリスクは許容可能と判断しましたが、添付文書においては、特にインスリン、SU及びグリニド併用時の低血糖に関する適切な注意喚起を行った上で、製造販売後においても引き続き情報収集をする予定です。また、消化器症状については、審査報告書の59ページの表57と58、60ページの表59を御覧ください。それぞれ本剤単独療法、経口血糖降下薬等との併用療法、インスリン製剤との併用療法における消化器症状の発現状況を示しています。単独療法においては、用量依存的な消化器症状の発現が認められております。また、併用療法においては、ビグアナイド系薬剤併用群において他の併用療法と比較して発現割合が高い傾向が認められ、特に投与開始初期に高い傾向が認められました。各臨床試験で認められた消化器症状の大部分は軽度であることを考慮すると、本剤投与時の消化器症状の発現リスクは許容できるものと判断しましたが、添付文書においては、臨床試験でのこれらの事象の発現状況の情報提供をするとともに、ビグアナイド系薬剤との併用については特に投与開始時に消化器症状の発現に注意する旨を注意喚起することが適切と判断しました。
 続いて、審査報告書の61ページの「7.R.2.3 乳酸アシドーシスに関連する有害事象」の項を御覧ください。ビグアナイド系薬剤については乳酸アシドーシスがリスクとして知られていますが、本剤とビグアナイド系薬剤では構造及び作用機序の一部が共通することから、当該リスクについて検討しました。実施した臨床試験においては、乳酸アシドーシスの発現は認められておらず、関連する事象や血中乳酸値の顕著な上昇を認めた症例が少なかったことから、臨床試験においては本剤の乳酸アシドーシスのリスクを明確に示す結果は認められていないものと判断いたしました。また、非臨床試験の結果、メトホルミン投与時には血中乳酸濃度の上昇が認められたものの、本剤投与時には当該事象は認められなかったこと等、メトホルミンと本剤で乳酸アシドーシスに対するリスクが異なる可能性も考えられます。しかしながら、一般的に乳酸アシドーシスの発現頻度は低く、実施された臨床試験の規模からは乳酸アシドーシスのリスクを評価することには限界があること、また、実施された臨床試験では、腎機能障害、肝機能障害、心機能低下を合併した被験者等、乳酸アシドーシスのリスクが高いと考えられる集団が除外されていることには留意する必要があり、製造販売後においても本剤の乳酸アシドーシスに関するリスクについて引き続き情報収集をする予定です。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問等をお願いいたします。いかがでしょうか。佐藤直樹委員から御発言がございますので、よろしくお願いいたします。
○佐藤(直)委員 御説明ありがとうございます。今、乳酸アシドーシスの御説明があったと思います。メトホルミンを含むビグアナイド系で、造影剤を使うときに、中止すると思いますけれども、この薬剤に関しての造影剤の情報があるかどうか、実際に使えるようになったときに、その対処は必要がないかどうかを御教示ください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。本剤を用いた臨床試験で造影剤を使用した際の情報は得られていません。本剤と造影剤の併用に関する注意喚起について、メトホルミンに関しては、乳酸アシドーシスのリスクが考慮され、腎障害のリスクを有するヨード系の造影剤などを使用する際には、メトホルミンの使用を一時中断することが注意喚起されています。
 本剤に関しては、非臨床試験、臨床試験の結果を考慮すると、本剤とメトホルミンでの乳酸アシドーシスに対するリスクは異なる可能性があり、現時点では、乳酸アシドーシスを本剤投与によるリスクと判断ができるだけの明確な根拠が得られていないと判断しております。したがって、添付文書においては、ヨード系造影剤についてメトホルミンと同様の注意喚起は予定しておりません。
○佐藤(直)委員 市販後調査で、その辺りの情報も是非取っていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 現在の添付文書の案では、例えば、造影剤を使った後に腎機能が一過性に低下して、eGFRが45を下回った方の場合には休薬をするということはよいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおりです。本剤については、eGFRが45未満の患者については投与を推奨しておりませんので、ヨード系造影剤などによって腎機能が一過性に落ちてしまった患者については、本剤の投与を中止していただくことが適当と考えております。
○森部会長 では、いわゆる急性腎障害(AKI)のときにも同様の対応をするということですね。理解いたしました。続いて、堀委員から御質問を頂きます。よろしくお願いいたします。
○堀委員 私からは、製剤の性状についてお尋ねいたします。添付文書の1ページを御覧ください。3.2の製剤の性状を拝見すると、1粒がかなり大きく感じます。これを1回で2錠飲むということなのですが、飲みにくさなどはどのようにお考えでしょうか。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。本剤については、1剤中に500mgの有効成分が含まれているため、製剤が大きくなっていると考えています。製剤の大きさについては、メトホルミンの500mg錠についてもほぼ同様の大きさであり、医療現場でも許容され得ると考えています。
○堀委員 これはフィルムコーティングされているということなのですが、今、自宅などでも簡単に粉砕する機械をネットで購入できますが、粉砕して飲むことは可能なのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本剤については用量調節は予定しておりませんので、粉砕等についてはなされないと考えています。
○堀委員 分かりました。私たち一般市民は薬を粉砕することによって起こるいろいろな副作用など、そうしたことをやってはいけないという認識が薄いので、そこに関して、粉砕は駄目ということを、是非、分かるように書いていただけたら有り難いと思います。また、口に入れたときの溶解性はどのような感じでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本剤がフィルムコートされている理由は○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○。錠剤の場合、粉砕せずに飲んでいただくことが大前提であるため、そのまま服用していただくようにお願いしたいと思っております。
○堀委員 では、是非、そこの部分に関しても患者にはきちんと伝えていただけるような資材、又は先生からの御注意をいただければと思っております。後、溶けやすさはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 イメグリミン自体は水に溶けやすいものです。添加剤の量より原薬のイメグリミンの量が多いので、水に溶けにくいということはないかと思いますが、基本的には、錠剤で飲んでいただくということが大前提です。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。錠剤が大きいとすぐに砕いて飲んでしまいがちになってしまいますので、是非、今後も薬の大きさに関しては留意していただけたらと思います。以上です。
○森部会長 堀委員、どうもありがとうございました。メトホルミンの500mg錠は、割線が入っている製剤だと思います。ですが、今回の薬剤は、ハーフドーズで飲むということが前提になっていないので割線が入っていません。これまでも、ハーフドーズにはしないけれども、剤形のデザインとして真ん中にややくぼみがあるものを見たことがあります。大きい錠剤を飲んで違和感を感じたり、少し飲みにくいという患者のニーズもありますので、今後、この点は何らかの対応を御検討いただければと思います。現場からの声として上げさせていただきました。どうもありがとうございました。
 機構の方、もう1点、私から質問してもよろしいでしょうか。メトホルミンではビタミンB12吸収障害が知られているのですが、本製剤ではその可能性は指摘されているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問の点に関しては、現状はデータが得られていません。
○森部会長 ビタミンB12吸収障害は、日本よりも海外で多く発生しています。恐らく、日本人で検討してもデータが得られるか分かりませんが、今後、市販後の課題としては、臨床研究も含めて検討すべき事項かと思っております。どうもありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。頂いた点については、申請者にもお伝えして、製造販売後に検討できるような体制とさせていただきたいと思います。
○森部会長 宮川委員から御質問がございます。
○宮川委員 先ほど、佐藤直樹委員が御質問なされた乳酸アシドーシスの件です。何となく釈然としないところが残るのは、臨床試験では乳酸アシドーシスの発現を認めていないけれども、本剤とビグアナイド系薬剤は作用機序が一部共通している可能性があると書いてあるので、やはり、どこかで注意喚起をしっかりしていかないと問題が起こるのではないかと懸念します。これは市販後の所でしっかりとした調査をするなど、何かしらの注意喚起をしてほしいと思った次第です。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただいた点については添付文書において情報提供を予定しています。
○宮川委員 添付文書にも書いてありますでしょうか。「臨床使用に基づく情報」という所にも書いてありますが、ここにその作用機序の一部が共通している可能性があると書いておきながら、全くそうした問題がないような言い方になってしまうのはいかがなものかと思った次第なので、その辺りを教えていただければ幸いです。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。乳酸アシドーシスの機序に関して、もう少し詳細に御説明いたします。メトホルミンに関しては、ミトコンドリアでの電子伝達系のComplexIを阻害し、それによって細胞の嫌気呼吸が促されて乳酸が蓄積してしまうということが機序として一般的に考えられています。
 本剤のin vitroでの検討の結果、ComplexIの阻害も認められているのですが、それに加えて電子伝達系のComplexIIIの機能を回復するという結果も得られており、メトホルミンとは機序上の違いがあると考えられます。本剤のin vivoでの乳酸に対する検討において、ラットを用いた検討ではメトホルミン投与により血中の乳酸濃度の増加が認められますが、本剤の投与では血中乳酸濃度に対しては影響を及ぼさないというような結果が得られています。
 また、順番が前後しますが、乳酸アシドーシスに関しては嫌気呼吸が促されることによって生じると考えられますが、in vitroの検討ではメトホルミンを添加すると細胞の酸素消費量が減少しますが、本剤の添加では細胞の酸素消費量には影響を及ぼさないという結果が得られています。したがって、以上の非臨床の結果を考慮すると、本剤とメトホルミンで乳酸アシドーシスに関するリスクが異なる可能性はあると考えています。
 臨床試験では、乳酸アシドーシスのリスクを検討するには規模が限られているのですが、血中の乳酸値の上昇も認められていないことを考えると、今の時点で乳酸アシドーシスを本剤投与によるリスクと判断するだけの根拠は得られていないと考えています。したがって、基本的には添付文書には本剤そのもののリスクを記載することになりますので、本剤の添付文書においては乳酸アシドーシスに関するリスクは「その他の注意」の項においてメトホルミンのリスクとして記載することが適切ではないかと考えているところです。
○宮川委員 分かりました。先ほど佐藤直樹委員がおっしゃったように、そこに造影剤がプラスして少し入ってくると機序はいろいろ変わってくる可能性があるかと思いますが、その辺りに関してはどうなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。メトホルミン投与中の患者で造影剤を使用された場合に、メトホルミンの投与を一時中断する理由は、造影剤によって急性腎障害が生じて、その結果、メトホルミンに関しては腎排泄型ですので、メトホルミンの血中濃度が上昇することを考慮して、投与を一時中断するようにという注意喚起がなされています。したがって、造影剤に関しては、血中濃度が問題になるということで、造影剤を投与することで直接的に乳酸アシドーシスのリスクに関する機序が変わるということではないと考えています。
○宮川委員 了解しました。
○森部会長 重要なリスク評価に関する所について、乳酸アシドーシスに関して少し補足していただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘の点について確認させていただきます。審査報告書の81ページでしょうか。
○森部会長 審査報告書の81ページです。医薬品リスク管理計画を立てていただいていますが、案としてこれを御紹介してください。
○医薬品医療機器総合機構 説明させていただきます。本剤の安全性検討事項としては、機序から想定される低血糖、それから臨床試験で認められている消化器症状について「重要な特定されたリスク」とすることが適切と考えています。
 重要な潜在的リスクとしては、機序の一部がメトホルミンと共通することから、乳酸アシドーシスを挙げることが適当と判断しています。重要な不足情報に関しては、本剤は腎排泄型の薬剤となりますので腎機能障害患者への安全性、それから糖尿病薬一般のリスクとして心血管系リスクを挙げています。
 これらに対するリスク管理計画については、特定使用成績調査として低血糖、消化器症状、乳酸アシドーシスについて情報収集するとともに、今回、腎機能障害患者を対象とした製造販売後臨床試験を実施する予定ですので、その試験の中では、血中乳酸値についても評価することで、これらのリスクについて情報収集することを検討しております。
○森部会長 実臨床では、糖尿病の患者が下痢を起こしたり、感染症になったり、お酒を飲みすぎたときに、乳酸アシドーシスの誘因になりやすいので、本剤についても、そうした様々な日常的な生活の中でのリスクについても、この「重要な潜在的リスク」という中で評価していただければと思っています。どうもありがとうございました。そのほかに御質問はございますか。
 それでは、議決に進みます。なお、大森委員、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。それでは、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会へ報告といたします。
 続いて、議題5に移ります。では、議題5について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料No.5、医薬品ギブラーリ皮下注189mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。本剤の適応対象である急性肝性ポルフィリン症は欠損酵素が異なる4病型が知られていますが、いずれの病型も肝臓等でポルフィリン前駆体であるアミノレブリン酸(以下、「ALA」と略す)及びポルフォビリノーゲン(以下、「PBG」と略す)が蓄積することにより神経系とその他の様々な臓器が損傷し、急性の内臓神経発作及び慢性の障害が生じます。また、重篤な内臓神経発作は永続的な障害をもたらすとともに、生命を脅かす可能性があるとされています。本邦における急性肝性ポルフィリン症の患者数は、1920~2010年の間に約350症例、2006~2010年の間に新規に診断されたポルフィリン症患者は14例と報告されています。
 本剤は、5’-アミノレブリン酸合成酵素1を標的とする低分子干渉リボ核酸(以下、「siRNA」と略します)を有効成分とする注射剤です。肝細胞内でsiRNAにより、5’-アミノレブリン酸合成酵素1遺伝子のmRNAの分解が誘導され、肝臓で5’-アミノレブリン酸合成酵素1が減少することで、ALA及びPBGが減少することが期待されます。
 現在、本邦においてポルフィリン症発作の発現を抑制する既承認の薬剤はなく、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。本剤は、2019年11月に米国、2020年3月に欧州で承認され、2021年3月現在、五つの国又は地域で承認されています。本品目の専門協議では、資料No.16に示す先生方を専門委員として指名させていただいています。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます
 有効性については、審査報告書通し番号40ページの表38を御覧ください。急性肝性ポルフィリン症患者を対象に国際共同第III相試験が実施され、主要評価項目とされた二重盲検期における急性間欠性ポルフィリン症(以下、「AIP」と略します)患者集団での年換算複合発作回数について、本剤群はプラセボ群と比較して有意に低値を示しました。また、主な副次評価項目について、審査報告書41ページの表39及び40を御覧ください。全集団においても、AIP患者集団と同様に、本剤投与により複合発作回数の減少、尿中ALA値及びPBG値の低下傾向等が認められ、その効果は継続投与期においても維持されていることを確認しました。以上の結果等を踏まえ、急性肝性ポルフィリン症患者に対して本剤の有効性が示されていると判断しました。
 安全性については、審査報告書47ページの表46を御覧ください。ここでは国際共同第III相試験における有害事象の発現状況を示しています。本剤の安全性について、実施された各臨床試験における発現状況等を中心に確認し、過敏症、肝機能障害、腎機能障害等の個別の事象について検討した結果から、これらの事象に対する適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 なお、日本人における投与経験が極めて限られていることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しています。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がありましたら、お願いいたします。これまでなかなか予防が困難でした急性発作の予防につながる成果というように感じましたが、御質問はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは議決に進んでよろしいでしょうか。では、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題6に移らせていただきます。議題6については、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反に関するお申し出に基づきまして、議題6~議題9までの審議の間、会議から御退出をいただきまして御待機いただくことになっています。佐藤直樹委員におかれましては、御退出をお願いいたします。
──佐藤(直)委員退室──
○森部会長 それでは、確認できましたので、議題6について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品アジョビ皮下注225mgシリンジについて、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。紙資料は、資料No.6の審査報告書を御覧ください。タブレットで御覧になる場合は、資料No.6のフォルダを開き、★の付いている調査報告書ファイルをお開きください。審査報告書の一番下、全84ページの通し番号で5ページ、「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。
 本剤は、フレマネズマブ(遺伝子組換え)を有効成分とし、片頭痛発作時に三叉神経節ニューロン及び硬膜を含む三叉神経の末梢で高度に発現する神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(以下、「CGRP」と略す)に特異的に結合してその生理活生を阻害することにより、片頭痛発作の発症を抑制する抗体製剤です。今般、国際共同試験成績等を基に製造販売承認申請されました。なお、本剤は、2021年2月現在、欧米を含む40以上の国又は地域で承認されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明します。審査報告書の通し番号39ページ、表38を御覧ください。慢性片頭痛患者を対象とし、本剤の用法・用量が2種類設定された国際共同第III相試験が実施されました。本剤225mgQ4W群では、初回のみ本剤675mgが投与され、以降、4週間に1回、225mgが投与され、本剤675mgQ12W群では、本剤675mgが12週間に1回投与されました。主要評価項目は二重盲検投与期12週における4週間当たりの中等度以上の頭痛日数のベースラインからの変化量とされ、いずれの本剤群でもプラセボ群と比較して中等度以上の頭痛日数の有意な減少が認められました。また、審査報告書の通し番号40ページ、表40に示しますように、主要評価項目について全体集団と日本人集団で一貫した結果が示されました。
 次に、審査報告書の通し番号42ページ、表42に示しますように、反復性片頭痛患者を対象とし、本剤の用法・用量が2種類設定された国際共同第III相試験が実施されました。本剤225mgQ4W群では、本剤225mgが4週間に1回投与され、本剤675mgQ12W群では、本剤675mgが12週間に1回投与されました。主要評価項目は二重盲検投与期12週における4週間当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化量とされ、いずれの本剤群でもプラセボ群と比較して片頭痛日数の有意な減少が認められました。審査報告書の通し番号43ページ、表44に示しますように、主要評価項目について、全体集団と日本人集団で一貫した結果が示されました。
 また、これらの国際共同第III相試験と同様の試験デザインで、日韓共同第II/III相試験2試験が実施され、いずれの試験でも、主要評価項目について、国際共同第III相試験と同様の結果が示されました。
 これら主要評価項目の結果に加え、審査報告書の通し番号77ページの1.2項に示しますように、複数の副次評価項目において、本剤の投与により患者の生活の質が改善することが示唆されたことも考慮し、本剤の効果には臨床的意義があると判断し、この判断について専門協議においても妥当との御意見を頂きました。
 続いて、安全性について御説明します。ページが前後しますが、審査報告書の通し番号59ページから記載している「7.R.4 安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験での有害事象の発現状況及び本剤の海外製造販売後に得られた安全性情報より、本剤の臨床使用における有用性を損なうほどの問題点は認められていないと判断しました。なお、重篤な過敏症や注射部位関連の有害事象については、添付文書に加え、医療従事者向け資材及び患者向け資材を用いて情報提供を行うことで、対応可能と判断しました。また、本剤は片頭痛の予防療法に用いる抗CGRP抗体の製剤であり、臨床的位置付けは既存の抗CGRP抗体と同様と判断できるため、投与対象に関する規定等も既存の抗CGRP抗体と同様とすることが適切と判断しました。
 なお、次の議題7で説明しますアイモビーグでは、重要な潜在的リスクとされた高血圧について、本剤では臨床試験で認められた高血圧に関連する重篤な事象は、いずれも治験薬との因果関係が否定されていることや、海外の製造販売後に報告された重篤な高血圧の蓄積件数、因果関係の判定結果等を踏まえまして、現時点では注噫喚起不要と判断しました。
 次に、本剤の用法・用量について、審査報告書の通し番号71ページから記載している「7.R.6 用法・用量について」の項を御覧ください。慢性片頭痛患者のCGRP濃度は反復性片頭痛患者よりも高いとの報告を踏まえ、12週間の投与期間内に定常状態に近い血漿中濃度が得られるよう、慢性片頭痛患者を対象とした臨床試験では、本剤225mgを4週間に1回投与する群の初回用量は、loading doseとして675mgとされましたが、その後、臨床試験成績並びにPPK解析及びER解析によるloading doseありなしでの検討に基づき、欧米を含む海外では、反復性片頭痛及び慢性片頭痛を問わず、片頭痛に対する用法・用量として「225mgを4週間に1回投与」及び「675mgを12週間に1回投与」が承認されました。日本人の慢性片頭痛患者についても、海外と同様に225mgから投与開始しても675mgから開始した場合と同様の有効性が期待できることが示唆されたことなどから、反復性片頭痛及び慢性片頭痛のいずれにおいても、「225mgを4週間に1回投与」及び「675mgを12週間に1回投与」の二つの用法・用量を設定することが妥当と判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
 御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。委員の先生方から、御質問等がありましたらお願いいたします。
○大森委員 大森です。質問してもよろしいでしょうか。
○森部会長 はい、お願いいたします。
○大森委員 確か2か月ぐらい前、1か月前でしたか、イーライリリーの類似の薬品が承認されたかと思います。エムガルティという薬です。その際に、投与する側の条件について議論があって、後での連絡で非常に厳密に、頭痛学会と神経学会でしたでしょうか、そこの専門医に限るだったか、少し記憶があやふやなのですが、かなり限定した対応の連絡だったと思います。私は精神科医であるため、精神科医仲間でも使えないのかと、そのとき思ったのですが、今回の薬に関してはそういった厳しい限定は付けないということでよろしいのでしょうか。
○森部会長 この後の議題ですが、「最適使用推進ガイドライン」の御紹介をさせていただくことになっています。その中に使用者の資質に関する規定等がありますので、後ほど御確認いただきまして、また御意見いただいてよろしいでしょうか。
○大森委員 はい、分かりました。失礼しました。
○森部会長 そのほかの先生方から御質問はよろしいでしょうか。それでは議決に移らせていただいてよろしいでしょうか。なお、大森委員におかれましては、利益相反に関するお申し出に基づきまして、議決への御参加を御遠慮いただくことをお願いいたします。それでは、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、事務局から、引き続き御説明をお願いいたします。
○事務局 御指摘いただきました「最適使用推進ガイドライン」について、本品目について作成していますので、その他事項として御説明させていただきます。資料No.14-1を御覧ください。
○事務局 それでは事務局より、アジョビの最適使用推進ガイドラインについて御説明します。平成29年9月に発出しました通知「最適使用推進ガイドラインの取扱いについて」に基づきまして、新規作用機序など、革新性が高く、有効性や安全性のプロファイルが既存の医薬品と大きく異なる医薬品については、当該医薬品を真に必要とする患者や使用する医療機関の要件を示し、最適な使用を進めていくための最適使用推進ガイドラインを個別医薬品ごとに承認に合わせて作成することとしています。
 当該通知に準じまして、今回は、先ほど御審議いただきましたアジョビの最適使用推進ガイドラインの案を作成しましたので御説明します。
資料No.14-1の1ページの目次を御覧ください。全体の構成は、既に発出されております他剤の最適使用推進ガイドラインと同様の構成としており、先般御審議いただきましたエムガルティと基本的には同様の記載にしています。
 2ページの「1.はじめに」について、今回の対象効能・効果は片頭痛発作の発症抑制であるため、日本神経学会、日本頭痛学会、日本内科学会、日本脳神経外科学会及び日本脳神経血管内治療学会から御推薦いただいた専門家からの御意見を踏まえまして、本ガイドラインの作成を行っています。
 続きまして、本剤の特徴及び作用機序を、3ページからは本剤の臨床成績の概要を記載しております。内容は先ほどの機構からの説明と重複しますので割愛させていただきます。
 続きまして、16ページに、本剤を適切に使用していただくために必要な施設の要件を記載しています。本剤の投与が適切な片頭痛とそれ以外の頭痛疾患を鑑別するという観点から、医師要件として2年の初期研修+5年以上の臨床経験を求めることとともに、投与継続の是非についての判断を適切に行うことができること、頭痛の診療に関連する学会として、日本神経学会、日本頭痛学会、日本内科学会の総合内科専門医、又は日本脳神経外科学会の専門医の認定を有していることを要件として定めています。また、MRI等による鑑別が必要と判断した場合に連携が取れる体制が整っていることも合わせて求めています。さらに、重篤な副作用が発現した際に、適切に対応するという観点から、マル2及びマル3の要件も定めています。
 続きまして、17ページに「投与対象となる患者」について記載をしています。患者選択の要件については、国際頭痛分類に従い鑑別がなされていること、投与開始前3か月以上において1か月当たり平均4日以上の片頭痛があること、非薬物療法も含めた急性期治療を実施した上でなお日常生活に支障を来していること、既承認の発症抑制薬のいずれかにおいて使用・継続できないことが確認されていること、これら全てが満たされていることを求めています。
 また、その下に本剤の投与の継続の取扱いについて記載しています。月に1回の投与については投与開始後3か月、3か月に1回投与する場合は投与開始後3か月又は6か月を目安に有益性の評価を行い、症状の改善が認められない場合には中止を考慮することとしています。
 最後の18ページに、投与に際して留意すべき事項として、添付文書の禁忌、重要な基本的注意などに記載された主な注意事項について、入念的に本ガイドラインにおいても記載を行っています。また、マル6に投与間隔を変更する際の注意点として、変更後の初回投与は、変更前の次回投与日に行う旨記載しています。
 本ガイドラインは、本日いただいた御意見も踏まえつつ引き続き検討を行い、中医協にもお諮りした上で、本剤の薬価収載日に通知として発出する予定としております。
 以上、簡単ですが、本剤のガイドラインの現在の案について御説明しました。御意見、御質問等がありましたらよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。
○宮川委員 では私からよろしいでしょうか。
○森部会長 宮川委員からお願いいたします。
○宮川委員 先ほど大森委員からもお話がありましたように、最適使用ガイドラインがこうやって出ているわけですが、そうするとエムガルティから始まりまして、今回この薬と、その後の薬という形になりますと、片頭痛薬の使い分けなど、どのようにしていくのかお教えください。確かにこの薬は実際少し長く期間を空けてもよいというような形がありますが、それ以外はほとんど同じであります。そうなると、最適使用ガイドラインはできているわけですが、その実際的な臨床上の使い分けをどのように今後進めていくのかということについては、機構もどのようにお考えになるかということで、その辺のところをお聞かせ願えればと思います。
○森部会長 先生、ありがとうございます。
○宮川委員 機構でも、どなたからでもコメントでも何でもいいので、一応。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えします。本剤を含むCGRPに関連した薬剤については、海外で開発が先行していまして、御指摘いただいたような内容についても海外は学会がガイドラインを更新する形で、情報を提供しています。日本においても頭痛学会が頭痛に関する診療ガイドラインを出していますので、学会のそのような動きに合わせて、これから蓄積される情報に基づいて、幾つかの剤の使い分けというものの情報が提供されていくものと期待しています。コメントは以上です。
○宮川委員 どうもありがとうございました。
○事務局 念のため、審査管理課ですが、若干補足になりますが、現時点で、今、機構から説明があったように、次に審議いただく剤も含めて、この3剤を直接比較した結果があるわけではないという現状ですので、それぞれの臨床成績を添付文書なりで確認いただいて、臨床現場の先生方に使い分けていただくということになろうかと思います。そうした意味で、エムガルティとアジョビ、作用機序としては一緒のものになりますが、作用機序が一緒であるからといって、片方が駄目だった場合に、もう片方も駄目なのかということすら現状分からないという状態ですので、最適使用推進ガイドライン上は、それら3剤のうち、例えば一つ使ったら他は駄目ですよというような記載は現状はしていないということだけ、補足をさせていただきます。
○宮川委員 どうもありがとうございました。これは別の部会でも、また審議がいろいろあるでしょうけれど、薬価の問題など、あるいはさまざまな薬剤が乱立してしまう可能性があるので、注視していかなければいけない部分があるのかと思いました。以上です。
○森部会長 ありがとうございます。慢性片頭痛の方の日常生活に差し障る影響は多大なものがありますので、この薬剤を必要としている、適した患者さんに、適切にお届けするという観点の議論も必要で、ガイドラインはもちろん安全にお届けするということを意図に作られていますが、多くの先生方が片頭痛の方を診療されているという現状をかんがみますと、今後、適切にその内容が定期的にリバイスされて、多くの患者様にお届けしやすくするような工夫も必要かと考えています。
 大森先生、御発言いかがでしょうか。
○大森委員 どうもありがとうございます。どういう経緯でこの4学会に絞られたのか、少し分からないのですが、精神科の医師も、全員とは言わないまでも、頭痛の診療にかなり携わっているので、将来、機会が少し広がるとうれしいなというふうに考えています。
○森部会長 御発言、どうもありがとうございました。そのほか、先生方から御質問、御意見はございますか。それでは、本議題については御確認いただいたものとさせていただきます。
 続きまして、議題7及び議題8に移らせていただきます。まず議題7について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料No.7、医薬品アイモビーグ皮下注70mgペンについて、機構より説明いたします。審査報告書の一番下、全68ページの通し番号で5ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤は、エレヌマブ(遺伝子組換え)を有効成分とし、片頭痛発作時に増加する神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の受容体に結合してCGRPの生理活性を阻害することにより、片頭痛発作の発症を抑制する抗体製剤になります。今般、国内臨床試験成績を基に製造販売承認申請されました。なお、本剤は、2021年2月現在、欧米を含む67の国又は地域で承認されています。本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
 審査報告書の通し番号30ページ、表23を御覧ください。反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者を対象とした国内第III相試験が実施され、本剤群では本剤70mgが4週間に1回投与されました。主要評価項目は投与4、5及び6か月目における月間片頭痛日数のベースラインからの変化量とされ、本薬群はプラセボ群と比較して月間片頭痛日数の有意な減少が認められました。
 また、審査報告書通し番号27ページの表20、及び30ページの表24に示すように、反復性片頭痛患者を対象とした国内第II相試験の結果、並びに反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者を対象とした国内第III相試験の部分集団解析の結果より、反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者のいずれにおいてもプラセボ群と比較して本剤群で月間片頭痛日数の減少傾向は認められていることから、これらいずれの患者においても本剤の有効性は期待できると判断しました。これらの主要評価項目の結果に加え、審査報告書の通し番号60ページの1.2項の「有効性について」に示しますように、生活の質(QOL)の評価も含むその他の評価項目についても国内第II相試験及び国内第III相試験において、プラセボと比較して本剤で良好な結果が得られたことも考慮し、本剤の効果には臨床的意義があると判断し、専門協議においても妥当との御意見を頂きました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号40ページから記載しております「7.R.4 安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験での有害事象の発現状況及び本剤の製造販売後に得られた安全性情報より、本剤の臨床使用における有用性を損なうほどの問題点は認められていないと判断いたしました。なお、重篤な過敏症、注射部位関連の有害事象、及び重篤な便秘については、添付文書に加え、医療従事者向け資材及び患者向け資材を用いて情報提供を行うことで、対応可能と判断いたしました。また、本剤は片頭痛発作の発症抑制を目的に用いる抗CGRP受容体抗体であり、臨床的位置付けは既承認の抗CGRP抗体と同様と判断できるため、投与対象に関する規定も、既存の抗CGRP抗体と同様とすることが適切と判断いたしました。
 なお、議題8の「アイモビーグ皮下注70mgペンの再審査期間延長の可否について」に関連しまして、小児開発について御説明いたします。審査報告書の通し番号63ページの「1.7 小児開発について」の項を御覧ください。申請者は、12歳以上の小児及び6歳以上12歳未満の小児の片頭痛患者を対象とした開発を行っており、現在、これらの患者を対象とした臨床試験が実施されています。機構も本薬の小児適応に関する開発の必要性はあり、小児における片頭痛の好発時期等を踏まえると、申請者の提案する12歳以上の小児及び6歳以上12歳未満の小児の片頭痛患者を対象とした臨床試験を実施する申請者の開発計画は妥当であると判断いたしました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 続いて、議題8につきまして、事務局から説明をお願いします。
○事務局 最後、機構の方にも触れていただきましたが、再審査期間の延長について御説明したいと思います。資料8を御覧ください。アイモビーグの再審査期間延長に関しまして、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条の4第3項において、「厚生労働大臣は、新医薬品の再審査を適正に行うため特に必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、再審査期間をその製造販売承認があった日から10年を超えない範囲内において延長することができる」旨の規定があります。この規定に基づき、小児の用量設定等のための臨床試験を計画する場合で、必要があると認められる場合には、個別に部会に諮った上で、再審査期間を延長しております。今般、申請者から再審査期間を今回御審議いただいた8年に2年追加し、10年間とする要望が提出されております。
 小児におきまして既存の片頭痛の治療薬の有効性・安全性は明確には確立しておらず、適切なエビデンスを創出する開発が望まれております。現時点で小児に対する用法・用量は設定されておらず、小児片頭痛発作の発症抑制に対する本剤の有効性、安全性等を検討する臨床試験の治験計画届が提出されていることから、再審査期間を10年間に延長することは適切と判断しております。以上です。
○森部会長 御説明ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。
○堀委員 堀ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、お願いします。
○堀委員 この使い方についてお尋ねいたします。添付文書の1ページの8.5の所を御覧ください。これはペンタイプであるため、自己投与ができるというふうに書いてありました。そこで、「自己投与の適用については、その妥当性を慎重に検討し」と書いてありますが、この妥当性というものに関して、具体的にどのようにお考えでしょうか。教えてください。
○森部会長 では、機構からお願いしていいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えさせていただきます。こちらの注意の趣旨といたしましては、患者の方が自身で確実に液漏れ等なく注射できるか、自己で注射している場合に不具合等が生じたとき、それに適切に対応できるか、また医師等に必要な報告等を行えるか。こういったものを、ここに書かれているような事前の教育訓練等によって確認して、自己注射の可否を御判断いただきたいという趣旨でございます。
○堀委員 ありがとうございました。そのようなチェックリストというのはないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。現在、患者様向け資材の作成もRMPにおいて検討しておりまして、その中では、自己注射の方法等について図解等も付けて分かりやすく解説する予定でございます。具体的に何か自己注射を可能と判断するチェックリストをというところまでは、現時点では作成しておりませんが、そちらの作成も含めて、今後、検討させていただきたいと思います。
○堀委員 ありがとうございます。特にこの片頭痛の発作の患者の場合、初めてこのペンタイプで注射をする方だと思うのですね。そうなったときに、やはり自己注射に関して慣れていない方がたくさんいらっしゃると思いますので、特に同じ部位に注射をしてはいけない、反復投与がいけないなど、やはりいろいろと規定がございますので、是非、資材は詳しく分かりやすく書いていただきたいと思います。特に1回目の医師からの、相談のときに、いろいろとこと細かく確認していただけるような判断でお願いしたいと思います。ありがとうございました。私からは以上です。
○森部会長 ありがとうございました。では、宮川委員からです。お願いします。
○宮川委員 今、堀委員がおっしゃったように、すごく大事なことで、自己注射の開始時に当たっては、医師が目の前で、若しくは医師が一緒にやる、若しくは医師の監督下の中で始まるというところから始まります。最適使用推進ガイドラインというものがあるのは、しっかりとした見識を持った医師が必ず初期のところは実際に一緒にその医行為を行うということになります。その医師に対しても、より患者さんに分かりやすく指導できるような何かしらを作るということは確かに必要だろうと思いますので、堀委員の御助言、ありがとうございました。
○森部会長 どうもありがとうございました。最近では様々な映像資材、動画などの資材が作成されている薬剤も多いので、今回の薬につきましても是非検討をお願いしたいと思います。また、今回のアイモビーグの注射デバイスは、外国のものと共通でしょうか。既に海外で使用歴のあるものでございますか。機構の方、いかがでしょうか。
○事務局 機構の方、分かりますか。
○森部会長 お写真を拝見しているのですけれども、この点いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 海外で使われているデバイスと同じかどうかについては、まだ確認が取れておりませんので、確認後、改めて御報告させていただきます。
○森部会長 分かりました。お願いします。それでは、柴田委員から御発言がございます。お願いします。
○柴田委員 本質的な話ではないのですが、記載整備、少し記載が必要だと思うので。添付文書の3ページの図2についてなのですが、縦棒が95%信頼区間だということが書いてないので、それは追記していただいたほうがいいのではないかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおり信頼区間ですので、添付文書を修正させていただく方向で検討させていただきます。
○森部会長 どうもありがとうございました。御指摘ありがとうございます。そのほか先生方から御質問等はございますか。それでは議決に入らせていただきます。なお、大森委員、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、この議題7につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、議題8につきまして、再審査期間の延長を可としてよろしいでしょうか。御異議ございませんようですので、延長を可とし、薬事分科会に御報告させていただきます。
 では、事務局から引き続き説明をお願いいたします。
○事務局 本議題に関連しましても、最適使用推進ガイドラインを作成しておりますので、御説明いたします。資料No.14-2を御覧ください。
○事務局 それでは事務局より、アイモビーグの最適使用推進ガイドラインについて御説明いたします。アジョビと同様、先ほど御審議いただきましたアイモビーグの最適使用推進ガイドラインの案を作成いたしましたので、御説明いたします。
 資料No.14-2の1ページの目次を御覧ください。全体の構成は既に発出されております他剤の最適使用推進ガイドラインと同様の構成としております。2ページの「1.はじめに」について、今回の対象となる効能・効果は、片頭痛発作の発症抑制であり、アジョビと同様、日本神経学会、日本頭痛学会、日本内科学会、日本脳神経外科学会及び日本脳神経血管内治療学会から御推薦をいただいた専門家からの御意見を踏まえ、本ガイドラインの作成を行っております。
 続いて、本剤の特徴及び作用機序を、3ページからは本剤の臨床試験成績の概要を記載しております。内容は先ほどの機構からの説明と重複いたしますので割愛させていただきます。
 続いて12ページに、本剤を適切に使用していただくために必要な施設の要件を記載しており、アジョビと同じ内容となっております。
 続いて13ページに、投与対象となる患者について記載しておりまして、こちらもアジョビと同じ内容となっております。また、その下に、本剤の投与継続の取扱いについて記載しております。アイモビーグは、月に1回の投与のみであるため、投与開始後3か月を目安に治療上の有益性の評価を行い、症状の改善が認められない場合には中止を考慮することとしております。
 最後の14ページに、投与に際して留意すべき事項としまして、添付文書の禁忌、重要な基本的注意などに記載された主な注意事項につきまして、入念的に本ガイドラインにおいても記載を行っております。本ガイドラインは、本日頂いた御意見も踏まえつつ、引き続き検討を行い、中医協にもお諮りした上で、本剤の薬価収載日に通知として発出する予定としております。以上、簡単でございますが、本剤のガイドライン案について御説明いたしました。御意見、御質問等がございましたら、よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。特段ございませんでしょうか。それでは本議題につきましては御確認いただいたものとさせていただきます。
○医薬品医療機器総合機構 すみません。
○森部会長 どうぞ。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど森部会長より御質問いただいたデバイスですが、確認いたしまして、海外の添付文書に記載されているデバイスと、今回の申請資料に記載されているデバイスの名称が同じでしたので、恐らく海外で使われているものと同じものを使うこととなるかと思います。
○森部会長 迅速な御確認、どうもありがとうございました。では、続いて議題9につきまして、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題9、再審査期間延長の可否について御説明いたします。資料9を御覧ください。ラツーダ錠ですが、本品目につきましても、議題8と同様に、再審査期間を初回承認より2年延長し、10年間とする要望が提出されております。小児の統合失調症につきましては、国内で承認を取得している薬剤はなく、治療のほとんどが成人患者でのエビデンスに基づいており、適切なエビデンスを創出する開発が望まれております。
 現時点で小児に対する用法・用量は設定されておらず、小児の統合失調症に対する本剤の有効性・安全性等を検討する臨床試験の治験計画届が提出されていることから、再審査期間を10年間に延長することは適切と判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、議決に進ませていただきます。なお、大森委員におかれましては利益相反に関するお申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただいております。
 本議題につきまして、再審査期間の延長を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようでございますので、延長を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、ロビーに待機されていらっしゃる佐藤直樹委員をお呼びいただきたいと思います。お戻り次第、議題10に移らせていただきます。
──佐藤(直)委員入室──
○森部会長 それでは、議題10につきまして、事務局から概要説明を開始させていただきます。
○事務局 議題10、資料No.10、TransCon PTHを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料No.10の中の「2 事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書1ページ中段を御覧ください。申請者は「Ascendis Pharma Bone Diseases A/S」、予定される効能・効果は、「副甲状腺機能低下症」です。
 まず、1ページの対象者数について御説明いたします。副甲状腺機能低下症は指定難病であり、本邦における副甲状腺機能低下症の患者数は32,625人と推定されております。以上より、対象者数は5万人未満という基準を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性について御説明いたします。副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモン、以下PTHと略させていただきますが、PTHの欠乏により、慢性の低カルシウム血症等が生じるとともに、排泄されたカルシウムを再吸収できないために高カルシウム尿症等が生じる疾患です。現在、本邦では、活性型ビタミンD製剤及び経口カルシウム製剤による治療が行われていますが、比較的軽度の患者さんが対象とされております。より重度のPTH欠乏患者に対する治療は依然として困難な状況であり、本邦において、副甲状腺機能低下症の病因に基づいたPTH補充療法が望まれております。本剤はPTHの徐放性プロドラッグであり、1日1回の皮下注射でPTHの生理的濃度が維持できるよう設計されており、本剤により、副甲状腺機能低下症に対するPTH補充療法が可能となることから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性について御説明いたします。副甲状腺機能低下症患者を対象とした本剤の海外第II相試験において、複合主要評価項目を達成した被験者の割合が、プラセボ群と比較して本剤群で高かったこと等が示され、現在、本剤の海外第III相試験が実施中です。本邦でも臨床試験が開始予定とされております。以上より、本剤の開発の可能性が高いと考えております。
 したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたら、お願いいたします。特によろしいでしょうか。それでは議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。それでは、本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議ございませんようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では続いて、報告事項に移ります。報告事項の議題1、2、3につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局から、まず報告事項議題1について御説明いたします。報告事項議題1については、資料No.11を御覧ください。医薬品ゼオマインです。本剤は、A型ボツリヌス菌により産生されるA型ボツリヌス毒素からボツリヌス菌由来の複合タンパク質を取り除いたものを有効成分とする注射剤です。現在、「上肢痙縮」に係る効能・効果で承認されております。今般、国内臨床試験成績を基に、帝人ファーマ株式会社より、「下肢痙縮」に係る効能・効果、用法・用量を追加する一部変更申請が行われました。機構による審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断されたものです。
 続いて、報告事項議題2です。資料No.12を御覧ください。セルセプトです。本剤は、ミコフェノール酸モフェチルを有効成分とする免疫抑制剤ですが、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」におきまして、本剤の「造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制」に関する公知申請の該当性報告書が取りまとめられており、これは今年の1月27日に開催された本部会において事前評価を行っていただいたものです。今般、中外製薬株式会社及びマイラン製薬株式会社から、本剤に係る一部変更申請がなされたものです。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断されたものです。
 続いて報告事項議題3で、資料No.13-1~13-6までです。医薬品の再審査結果についてです。資料No.13-1はルセンティスについて、資料No.13-2は献血ベニロン、資料No.13-3はルネスタ、資料No.13-4はリスパダール、資料No.13-5はアドシルカ、資料No.13-6はザクラスに関する再審査結果についてです。いずれの品目につきましても、機構における審査の結果、効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要がないカテゴリー1と判断されたものです。報告事項は以上でございます。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、報告事項議題1、2、3につきましては御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上となります。事務局から何か御報告はございますか。
○事務局 次回の部会は、7月28日(水)午後5時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 本日はお時間を超過して大変申し訳ございません。心よりおわび申し上げます。大変活発な議論、どうもありがとうございました。本日はこれで終了させていただきます。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)