2021年4月28日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和3年4月28日(水)18:00~

出席者

出席委員(19名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人1名
欠席委員(2名)
行政機関出席者
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  田宮憲一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構執行役員) 他

議事

○医薬品審査管理課長 ただいまから、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日は、お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。この度の医薬品部会についても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議という形にさせていただいております。
 本日のWeb会議における委員の出席状況ですが、飯島委員、代田委員から御欠席、石川委員はWebの接続の関係で、後ほどつながれば参加いただけると承知しております。したがって、本日は現在のところ当部会委員数21名のうち18名の委員が、このWeb会議に御出席いただいているという形ですので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。なお、本日は、審議事項議題1に関して、地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターの名誉総長であります堀正二先生を参考人としてお呼びしております。よろしくお願いいたします。
○堀参考人 よろしくお願いいたします。
○医薬品審査管理課長 部会を開催する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合する旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。また、本日のWeb会議に際しては、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者はマスクを着用したまま説明させていただくという形になりますので、御了承いただければと思います。
 それでは森部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、事務局から審議の進行方法の御説明をお願いいたします。
○事務局 本日は、Webでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、御自身のお名前と、発言したい旨を御発表いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。なお、発言者が多いときには、発言されたい委員がメッセージに御記入いただくことで、部会長より発言者を順に御指名いただきます。適宜、メッセージ機能も御利用ください。
○森部会長 これまでの御説明に、御質問、御意見等はございますか。よろしいでしょうか。それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1-1からNo.8-2までと、製剤写真を用いますので、お手元に御用意いただけますか。このほか、資料No.9として、「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.10として「専門委員リスト」、資料No.11として「競合品目・競合企業リスト」を事前に電子メールにてお送りさせていただいております。なお、システムの動作不良等がございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料No.11の1ページを御覧ください。まず、「ベリキューボ錠」ですが、本品目は、慢性心不全を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 2ページを御覧ください。「アロキシ静注」ですが、本品目は、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページを御覧ください。「エクリズマブ」ですが、本品目はギラン・バレー症候群を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページです。「amifampridine」ですが、本品目はランバート・イートン筋無力症候群による筋力低下の改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 5ページです。「バルドキソロンメチル」ですが、本品目はアルポート症候群における腎機能の改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 6ページは、「エンレスト錠」ですが、本品目は慢性心不全を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御質問、御意見等はございませんか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を得たものといたします。
 それでは、委員からの申し出状況について報告をお願いいたします。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員からの申し出状況については、次のとおりです。議題1「ベリキューボ」:退室委員は佐藤直樹委員、議決に参加しない委員は武田委員です。議題2「アロキシ」:退室委員なし、議決に参加しない委員は田﨑委員です。議題3「エクリズマブ」:退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題4「amifampridine」:退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題5「バルドキソロンメチル」:退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題6「エンレスト」:退室委員なし、議決に参加しない委員として大森委員、佐藤直樹委員、長谷川委員です。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はございますか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものとさせていただきます。
 本日は、審議事項6議題、報告事項2議題となっております。よろしくお願いいたします。それでは、審議事項の議題に移ります。審議事項の議題1については、医薬品ベリキューボに関する議題です。佐藤直樹委員におかれましては、薬事審議会参加規程第5条に基づき、議題1の審議の間、会議から御退室いただき、御待機いただくことになります。佐藤直樹委員は御退室をお願いいたします。
──佐藤(直)委員 退室──
○森部会長 御退室を確認できました。それでは、議題1について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1-1及び1-2、医薬品ベリキューボ錠2.5mg、同錠5mg、同錠10mgについて、前回の部会以降の状況を御説明いたします。資料No.1-2を御覧ください。1ページの2ポツに、前回の第一部会で御指摘いただいた内容を記載しております。1点目は、試験16493で主要評価項目について投与群間で統計学的な有意差は示されているとはいえ、試験計画時の症例数設定に用いた群間差より小さい結果であったのだから、本薬が臨床的意義のある有効性を有するといえるのか疑わしいとの御指摘。2点目は、日本人集団における心血管死が本薬群で多かったことの考察に関して、日本人集団において投与群間の患者背景に偶然の偏りがあったことが影響した可能性があるとの考察がどの程度確からしいのか不明との御指摘。3点目は、試験16493の成績に基づき本薬の投与が推奨される患者や状況をより具体的に示した上で、臨床的位置付けや適切な情報提供の仕方を検討すべきとの御指摘でした。
 2ページを御覧ください。まず、1点目の御指摘について説明させていただきます。試験16493は、既承認の慢性心不全治療薬であるサクビトリルバルサルタンナトリウム水和物の海外第III相試験(PARADIGM-HF試験)の成績等を参考に、本薬による相対リスク減少率を20%と仮定して症例数が設定されました。一方で、より医療ニーズの高い集団での有効性を示すという申請者の開発方針に基づき、試験16493の組入れ基準には、サクビトリルバルサルタンのPARADIGM-HF試験では設定されていなかった過去6か月以内に心不全増悪イベントを発現している患者に限定する規定や、近年承認された慢性心不全治療薬の臨床試験よりも高いNT-proBNP値の下限値が設けられ、また、その中でもイベント発現リスクが相対的に低い患者が多く組み入れられないような規定が設定されていました。結果として、本薬のプラセボに対する優越性は検証されたものの、ハザード比は0.9と相対リスク減少率が想定より小さく、この理由は、選択・除外基準に規定された範囲においてイベント発現リスクの高い患者が想定よりも多く組み入れられたためと推定されました。
 試験16493で、イベント発現リスクの高い患者が試験計画時の想定よりも多く組み入れられた理由は明らかにはなりませんでしたが、前回の部会での委員からの御指摘に沿って、この考察の傍証として、サクビトリルバルサルタンのPARADIGM-HF試験における対象患者に、より近いと考えられる患者集団における事後解析の結果を確認いたしました。具体的には、試験16493のベースライン時のNT-proBNP値が高値の集団(第4四分位範囲に該当する集団)を除いた第1から第3四分位範囲に該当する部分集団における事後解析の結果を、3ページの表1の真ん中の行にお示ししております。患者背景として、一番右の行にお示ししているサクビトリルバルサルタンのPARADIGM-HF試験に、より近い患者集団においては、主要評価項目に関するハザード比は0.78という結果であり、試験計画時に参考とした他剤の試験成績に近いものでした。以上のことから、イベント発現リスクの高い患者の組入れ状況が想定した試験成績との乖離をもたらしたとの申請者の考察には、一定の妥当性があるものと考えております。また、申請者は、絶対リスク減少率(ARR)及び治療必要数(NNT)、これは1年間の治療で1件のイベント発現を抑制するために必要な例数の指標ですが、このARR及びNNTからも、結果の臨床的意義を説明しています。
 3ページの表2を御覧ください。一番左の行に本薬の試験16493、真ん中の行にサクビトリルバルサルタンのPARADIGM-HF試験、一番右の行にダパグリフロジンの国際共同第III相試験のARR及びNNTを示しております。本薬の「心血管死又は心不全による入院」の年間発現率のARRは、近年承認された慢性心不全治療薬と比較して大きな違いはなく、試験16493においては心不全増悪の既往を有し、心不全のイベント発現リスクが高い慢性心不全患者を対象としていたことを踏まえると、本薬の投与により心血管死や入院が絶対数として一定数減少することは臨床的意義がある旨を説明しております。
 慢性心不全領域では、世界的にも心血管イベントを指標とした厳格な用量設定試験を実施することの実施可能性はほぼなく、検証試験の対象集団における治験薬の効果の大きさについて事前に確度の高い見積りを行うことが困難な領域です。これまでも試験計画時の想定が全て再現されなかった場合でも、試験結果に基づき臨床的有用性が示されていると判断できれば承認してきたところであり、また、その考え方は、現在の科学水準からも妥当と考えております。有効性が試験計画時の想定より小さかったことについては、試験計画時に申請者が期待していたような、既承認薬の対象患者よりイベント発現リスクの高い患者での本薬の有用性を示唆する結果とはいえないものの、そのことのみをもって慢性心不全治療薬としての本薬の有効性を否定することはできず、適切な標準治療下で、慢性心不全領域で汎用される主要評価項目について、事前に規定された統計解析計画に基づき統計学的に有意な発現抑制効果が認められたことに加え、主要評価項目の構成要素である心血管死、心不全による入院、及び副次評価項目である全死亡のいずれについても本薬群でプラセボ群と比較してイベント発現リスクが低い結果であること等も踏まえ、試験16493で示された本薬の有効性の臨床的意義を検討し、承認が妥当と判断しております。
 続いて、2点目の御指摘について説明いたします。試験16493の日本人集団における投与群間での患者背景(リスク因子)の偏りが生じた原因は特定できませんでしたが、本薬の安全性という観点から改めて説明させていただきます。試験16493の全期間において、心血管死発現例39例(プラセボ群11例、本薬群28例)中、約67%は治験薬投与終了後15日以降に発現しており、治験薬投与との関連は想定しにくいこと、治験薬投与終了後14日以内に発現した心血管死13例(プラセボ群4例、本薬群9例)については、心血管死の発現時期(治験薬投与開始からの期間)に投与群間で偏りは認められず、本薬群の9例については詳細が不明のため「因果関係あり」とされた2例を除き治験薬との因果関係は否定されていること等を審査の過程で確認しております。日本人集団の本薬群における心血管死発現例の概要及び叙述の一例を別添1として添付しておりますので、適宜、御参照ください。
 また、前回の部会でも説明させていただいたとおり、日本人集団における心血管死の内訳として本薬群で原因不明の死亡が多かったことに関して、本薬が一般的に心臓突然死の主要な要因として想定される不整脈を惹起する可能性について検討いたしました。非臨床及び臨床試験成績から本薬の臨床使用時の催不整脈作用は示唆されていないこと、また、基礎治療として用いられた植込み型除細動器(ICD)の有無別の有効性の結果及びβ遮断薬の試験中の使用状況の国内外差等も検討し、β遮断薬の各地域における推奨用量に対する用量分布やICDの植込み率の国内外差が日本人集団において突然死の増加につながっている可能性は低いこと等を確認しております。
 また、前回の部会で御指摘のあった心不全死について、本薬群で認められた13例中、因果関係に関する記録を有する12例全例で、治験担当医師により盲検下で治験薬との因果関係は否定され、本薬投与と原疾患の悪化に明らかな関連は示唆されていないものと考えております。なお、前回の部会での委員からの御指摘に沿って、日本人集団における投与群間での患者背景の偏りが、日本人集団の本薬群で心血管死が多く認められたことに影響した可能性があるとの考察に関連して、当該偏りがどの程度起こり得るものであったかについて確認いたしました。具体的には、試験16493の全体集団から日本人集団と同様の症例数の部分集団を無作為に複数回抽出し、日本人集団で認められたリスク因子の投与群間の偏りが認められる確率を算出した結果、日本人集団で偏りが認められた各リスク因子について、10~49%の確率で本薬群に不利な方向の偏りが生じ得ること、試験16493の日本人集団と同様、検討された33のリスク因子のうち10因子以上が本薬群に不利な方向に偏る確率も9%であることが説明され、一定の確率で生じ得る偏りであったものと考えます。試験16493の全体集団及び日本人集団での各投与群における患者背景の分布については、別添2にお示ししておりますので、適宜、御参照ください。
 以上の内容に加え、試験16493の日本人集団では、プラセボ群の全死亡の1年時の累積死亡率(6.9%)が、急性心不全により入院した日本人心不全患者で報告されている一般的な死亡率(14.5~29.3%)よりも低値であったことも考慮すると、少なくとも本薬が日本人において特有に突然死及び心不全死を含む心血管死を増加させる可能性は低いと判断しております。なお、製造販売後調査においては、心血管死を含む心血管イベントの発現状況についても情報収集する予定です。
 最後に、3点目の御指摘について説明いたします。臨床現場で医師が本剤の選択の可否等を判断するに当たり、適切な情報を提供するという観点から、添付文書及び医療従事者向け資材の内容を再検討いたしました。資料No.1-1のCTD1.8添付文書案を御覧ください。4ページ第17項の臨床成績の項において、試験16493の全体集団の成績に加え、日本人集団における成績も記載することといたしました。また、主要複合エンドポイントだけでなく、その構成要素(心血管死、心不全による入院)の発現状況についても記載することとしております。続いて、資料No.1-2の別添3、医療従事者向け資材案を御覧ください。7ページの試験16493の解析計画において、試験計画時の相対リスク減少率の想定が20%であった事実が分かるように記載し、また、9ページでは、NT-proBNP値別の部分集団解析結果を記載することとしております。
 なお、前回部会時に御報告させていただいたとおり、海外では同じ試験成績を根拠に米国では令和3年1月に承認されており、○○○○○○○○○○○○○○○○です。
 以上の機構の判断及び適切な情報提供の内容について、本剤の専門協議に御参加いただいた5名の専門委員にも改めて御確認いただき、同意いただいておりますので申し添えます。
 本試験の全体集団の結果(主要評価項目のハザード比0.9)の臨床的意義、日本人集団における心血管死の発現に関する考察内容、また本剤の臨床的位置付けについて、参考人の堀先生より御専門の立場から御意見を頂ければと存じます。
○堀参考人 堀です。発言してよろしいですか。
○森部会長 どうぞ、お願いいたします。
○堀参考人 時間もないので、簡潔に申し上げたいと思います。まず、よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、お願いいたします。
○堀参考人 まず、全体集団、すなわち試験16493というのは、ビクトリア試験とニックネームが付いておりますが、これがいわゆるサクビトリルバルサルタンのPARADIGM-HF試験を下敷きにしてデザインされたということです。であるのにもかかわらず、ハザード比が0.9でありました。計画では0.8というところに置いていたわけですが、エントリーされた患者さんの背景を見てみますと、重症例が非常に多く入ったということです。一般にNYHA心機能分類の2度を対象にする場合と、3度、4度を対象にする場合、重症の例では一般に心不全薬が効きにくいという傾向があります。PARADIGM-HFでも、実は重症の患者さんは比較的エントリーが少ないのですが、その部分集団(NYHA 3度、4度)では余り有効性が確認されていないのです。
 そうしたバックグラウンドがある心不全の治療で、このビクトリア試験というのは、言わば重症例をたくさん入れてチャレンジをされているということです。これはunmet needsとおっしゃっているのですが。先ほど御説明があったように、第四分位のQ4という重症例を除くと、PARADIGM-HF試験とよく似た患者背景の集団ができます。それで見ると、ハザード比が0.78であったということで、むしろ0.8よりも、より良い成績が示されているので、そうした意味では同じ重症度の患者集団を対象にすれば、本薬も期待どおりの結果が得られているということで、16493試験の全体集団においても、本剤の有効性を示すに値する成績が得られているのではないかと考えております。
 2点目の日本人集団で心血管死が多かったというのは、私も危惧しており、ICDの植込み率が海外と日本とで異なっているのではないかなど、あるいはβブロッカーの投与量が異なるのではないかと、専門協議でも指摘させていただいて、それについても検討いただきました。結果としては、日本人の部分集団は、nの数がどうしても限られておりますので、バイチャンスの可能性があるということは否めないという結論に達したと理解しております。特に、シミュレーションでそうした偏りができる確率を計算していただきますと、10~49%ぐらいの確率で起こるということですので、これも納得のできるデータではないかと思っており、以上の主な2点については、更に検討していただいた結果、本薬を承認しても良い十分なデータを示しているのではないかと考えております。
 もう一点、申し上げますと、本薬は新しい機序の薬剤として提案されております。すなわち、一言で言うと、NO非依存性のグアニルサイクレース(sGC)の活性化薬であって、いわゆる硝酸薬と非常に似ているのですが、硝酸薬はNOドナーですが、本剤はNO非依存性にsGCを活性化してcGMPを増やす薬剤であり、心不全で低下しているcGMPを増やすことによって効果を発揮します。作用機序としては新しい機序ですので、それなりのデータが得られているということで承認して頂ければ、実際の臨床現場に本薬を提供することは、非常に意義のあることだと考えております。私からは以上です。
○森部会長 それでは、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。では宮川委員、御発言ください。
○宮川委員 機構からいろいろなお話を聞いて、堀先生からも追加でいろいろなお話を伺いました。そうした意味では、unmet needsもあることから、NYHAの2度、3度の違いなど、新しい機序であるということが分かりました。ただ、書面でこのような形で数ページにわたって記載されており、企業からの文書の中に、「ベリキューボ錠を御使用いただくに当たって」という記述では、7、8ページの説明で当然の如くという書きぶりなのです。
 ※4には、実際に計画では0.8であるにもかかわらず、結果として0.9であったと当然のように数字としては書いてあります。その理由などは何も書かずに、当然のものとして認められたというような書きぶりであるというのは、使用する患者にとっても、真に期待している患者にとっても失礼です。また、それを選択する医師にとっても十分な情報提供である、丁寧な情報提供であるとは言い難いと思うので、御質問させていただいたわけです。
 別に私は、機構の御説明に異論を唱えるわけではありません。そうした意味では、日本人集団という中で十分ではなかったということもよく分かります。実際にそのようにしなければ差も出なかったということもあります。そうした形で不利な方向に陥る確率があったということもよく分かるのです。ただ、それが「御使用いただくに当たって」という所に文章として反映しなければなりません。
 以前にも、ソリリスの時の非常に大きな問題があったことは承知しております。市販後の監視指導とか、麻薬対策課とか、医薬安全対策課が指導して修正に当たったという苦い思い出があるのです。ですから、そうしたことがないようにするためには、しっかりとした歯止めが必要だということは、是非認識していただきたいと。
 堀先生の言うように、これが大変貴重な薬であるということは、もう重々分かっております。困窮している患者がいることも重々分かっております。ですから現場の臨床医としても、使いたいのは当然だろうと思うので、是非とも適切な資材にしていただくということが重要だろうと思うのです。8ページの表現に関しては、変に意欲的になられている販売の製薬会社には、釘をさしておくことが非常に重要だろうと考えております。以上です。
○森部会長 御意見、どうもありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御回答させていただきます。宮川先生、貴重な御意見を頂きましてありがとうございます。御指摘の内容を踏まえて、今、御提示させていただいている医療従事者向け資材の中に、想定を達成できなかった旨の事実が明確に分かるような記載を入れるよう申請者に依頼し、御指摘に沿った対応をさせていただきたいと存じます。
○宮川委員 ありがとうございます。是非、企業側にお願いしていただければ有り難いと思います。基本的なところは守っていかなければいけないということで、今後は機構には非常に頑張っていただいて。大変感謝しております。そうした意味では、想定した基準をクリアできなかった原因を探るために行われた今回の部分集団における事後解析というのは、これからも事前に助言していく機構として、今後の治験計画立案において、是非とも御参考にしていただければと思います。以上です。
○森部会長 それでは、堀参考人から追加の御意見を頂いております。どうぞお願いします。
○堀参考人 宮川先生、ありがとうございます。私もおっしゃることは非常によく分かりますし、大賛成です。ただ心不全の治療というのは、実はまだ心不全の本体がよく分かっていないという現実があります。それに対して計画どおりのハザード比が得られなかったことをもって許可すべきでないというのは、私は反対なのです。私は、育薬という、実際に有効であるということが統計学上強く示唆されたものについては、現実のリアルワールド、すなわち、第IV相で、どういう使い方をすればいいのか、どういう患者背景の心不全に使うといいのかというのは、まだ明らかになっていないのです。これを明らかにするのは、リアルワールドの臨床医の責務であると私は思っております。そうしたことができるチャンスを与えてほしいというのが、私が切に希望することです。新しい薬剤は使ってみて新しいtherapeutic window が開けるときがありますので、そうしたことを第IV相と言いますか、実際の現場で探し出していってほしいというのが私の希望です。私は平生から、そのように考えておりますので、一言コメントさせていただきました。
○宮川委員 私は、堀先生のような立派な先生にそう言っていただけて、ありがとうございます。私は、学問を否定しているのではないのです。私もずっと学問をやっておりましたので、その中で必要なことは重要な育薬だと思っています。臨床医は当たり前ですけれども、現場では適正に育薬していかなければいけないのですが、得てして製薬会社が、その育薬を邪魔するということを、今まで散々味わってきました。是非、そのような形で、臨床現場でうまく活用できるように、「使っていただくに当たって」という所には、ものごとを正直に書いて、そこから始まるというところが重要かと思います。心不全においては非常に治療が困窮しているところですので、是非、お救いしなければいけない患者さんがいるわけなので、是非、そのような取組をしていただければと思う次第です。ありがとうございました。
○堀参考人 御指摘、ありがとうございました。私もそうしたことに大賛成です。
○森部会長 続いて柴田委員より御質問があります。お願いします。
○柴田委員 柴田です。まず、私の立場を先にお伝えしておきます。本剤の臨床試験結果がプラセボとの比較において、新しい薬の有効性を示し得ていることは認められると思いますし、承認されることに異存はありません。どちらかと言いますと、承認されることに賛成です。また、新規の作用機序の医薬品が新たに選択肢として増えることの重要性も十分理解できます。これが前提です。
 一方で、先ほど宮川先生から御指摘いただいたことを統計家の立場から表現し直すだけにとどまるかもしれませんが、本剤については新規作用機序によって生じる臨床的なメリットは、あくまでも現時点では、臨床試験結果からは示されていないということを改めて指摘しておきたいと思います。今回の試験結果が全てのサブグループで均質な効果が得られていたのであればまだしも、今回のハイリスクの集団を除くと予想どおりの結果が得られたということは、言い換えると、ハイリスクの集団では効果が非常に小さかったということです。資料1-2の2ページの2ポツ目に、企業側の今回の試験計画の想定が書いてあります。より医療ニーズの高い集団での有効性を示すという申請者の方針は、それがハイリスクの方をたくさん入れるということにつながっているわけですが、そのコンセプトがデータからは示し得なかったのです。
 繰り返しになりますけれども、試験計画時に期待されていた結果が得られていないということは、本剤の新規作用機序によって生み出されるメリットのエビデンスが十分でないということで、それについては今後の研究なり、臨床現場で、です。 先ほど育薬というお話を堀先生から御指摘いただきましたが、正に私もそれが重要だと考えており、そこで明らかになってくる段階のものである結果だと思います。そこを明らかにしておかないと、宮川先生からも御指摘があったように、新規作用機序ということだけでハイリスクの方に漫然と使われてしまうような状況には、現状ではないのです。
 ただし、薬としては効果が証明されているので、臨床現場に出して今後は臨床の先生方の研究や、場合によっては企業が追加で新たな研究をされるということもあるかもしれませんが、今後のデータが積み重なっていくことによって、より良い使い方が見いだされるような段階にあるという状況だということは、改めて指摘しておきたいと思います。逆に表現を変えますと、新規作用機序であるということが一人歩きをして、臨床的なデータの裏付けがないままに、企業がそれをアピールされることが決してないような形で、世に出ることを期待しております。以上です。
○堀参考人 大賛成です。私もその意見に全く異論はありません。しかし、使えるようなチャンスをつくっておいていただかないと、育薬ができないということを私は申し上げたかったのです。おっしゃるとおり、どういうtherapeutic windowがあるかというのは明確になっておりません。ですから、これはエントリーの患者背景が間違っていたというより、もっと適切なものがあったのかもしれません。やはり、これからの臨床で、それを見いだしていくというのが私たちの仕事ではないかと思っております。ありがとうございます。
○森部会長 そのほかに委員の先生方から御質問はございますか。特段の御質問、御意見はありませんか。一つ、先生方にお伺いしたい点があります。よろしいでしょうか。本薬の販売後の医薬品リスク管理計画、つまり先ほど堀参考人から御発言のあった、いわゆる第IV相のデータをどのように確認していくかということにつながっていくリスク管理計画、審査報告書だと通し番号の90、91ページですが、その表70を御覧いただきたいと思います。「医薬品リスク管理計画案における安全性検討事項及び有効性に関する検討事項」という点が列記されています。この内容は現在、我々が得ている臨床試験の成績から十分網羅されていると考えてよろしいでしょうか。特段の御意見はありませんか。
 堀参考人に一つ御質問をさせていただきます。心血管死での日本人のデータがバイチャンスで増加されているということは、専門委員の先生方もバイチャンスであるという合意が出たということでしょうか。
○堀参考人 私が答えるのがどうかは分かりませんけれども、シミュレーション結果も示されており、ある一定の確率でこういう隔たりが起こることは示されております。ですから同じ試験を10回やれば、もう少し真実の姿に近づくのでしょうけれども、そもそも日本人の部分集団というのは、全体を語るには少な過ぎるわけです。これを認めないということになると、全ての臨床試験が日本人には適応しにくいということになってしまうので、機構としては、これをどの範囲まで許容するかという議論になろうと思います。それから、サイエンティフィックに議論をし出すと非常に難しいので、日本人の部分集団は主として安全性にウエイトを置いて検討することになっていると、私は理解しております。その限界は、もう重々感じております。
○森部会長 心不全の臨床度を評価するNYHA分類の2度と3度には、主に日本人も組み入れられておりますけれども、NYHAの2に相当する症例においては、心血管死のハザードが2.94という数値を示しております。この状況をかんがみて、実際に先生方が本薬を患者に御使用になるときに、「日本人ではどういった成績が今まで分かっていますか」という御質問があった場合、どのように御説明なさると想定されるのでしょうか。
○堀参考人 これも私が答えるのでしょうか。
○森部会長 いや、もし専門協議の際に先生方でそういった議論が出ておられましたら、御教示いただけないでしょうか。
○堀参考人 私も全てを覚えているわけではないので、その議論がどれだけ出たかどうか、機構の方から何かコメントを頂けますか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答させていただきます。堀先生、ご丁寧な補足をありがとうございました。今回の日本人集団の部分集団解析の結果については、専門協議においてはハザードレシオが2を上回ったという点も含めて、この結果自体はきちんと医療現場に情報提供をすべきという、各委員からの御指摘もいただいております。また当部会での御指摘も踏まえ、添付文書や情報提供資材等に情報提供いたします。ただ、その上で特に専門協議において、ご指摘の結果をもってNYHAの2度から3度の患者を含めて、日本人で特に投与を避けるべき集団といえるか、あるいは近年承認されたほかの治療薬を優先すべきかといった議論までは出なかったと認識しております。
○森部会長 今の議論を踏まえて、先ほど御提案させていただいた表70の医薬品リスク管理計画の重要な特定されたリスクについては、今は低血圧という1項目になっておりますが、重要な不足情報について、現時点では心血管死に関する情報は既に十分収集されており、この問題を特定に挙げる必要はないという先生方の御意見は、何かございますか。
○宮川委員 宮川です。そうした意味では審議会長のおっしゃったように、適切な文言は入れるべきだろうと思います。堀先生がおっしゃったように育薬であるならば、しっかりとした情報がなければ今後のリスク管理という形にはならないので、是非このようなことを含めた書き込みが今後必要でしょう。そうでなければ、誤った、あるいは間違って意欲的に使うことによって、もし患者さんにほかの治療法の選択肢があるのに、そうしたものを選ばないで、治療に突き進んでしまうということもあろうかと思います。
 先ほど柴田先生に、冷静にいろいろと話をしていただきました。やはり私たちは科学者であるべきですし、それをもって、この審議委員会に臨んでいるというサイエンティフィックな考え方でやらなければいけないのです。私も臨床医ですから、感情的にそうした方をお救いしたいということはよく分かるのです。しかし、それは別な話で、この薬がどうあるべきか、どのような位置付けであるべきかということを真剣に審議会で話しているわけです。しっかりとした書き込みがなければいけないだろうと、私は思います。以上です。
○森部会長 宮川委員、御意見をどうもありがとうございました。この点について、そのほかに委員から御意見はございますか。特定使用成績調査を施行するということが規定されておりますけれども、特定使用成績調査の場合、基本的に評価基準は、この薬剤を使ったシングルアーム評価ということになります。本薬剤が日本人のどういった方に真に有効であり、かつ、どういった方が最も恩恵を受け、どういった方がリスクベネフィットのバランスが余り良くないかといった、いわゆる第IV相、リアルワールドでの情報を科学的な方法で収集していく方法として、シングルアームの特定使用成績調査という手法が適正かどうか、御意見を伺ってよろしいでしょうか。どなたか御発言いただいてもよろしいでしょうか。市販後の使用成績調査の手法には、使用成績比較調査という手法があり、本薬を使用した患者と本薬を使用していない患者の両方のデータを収集し、特定の課題点についても収集していくという方法が認められています。本薬の市販後の調査方法としては、どの手法が適正であるか、もし御意見を頂ければ。いかがでしょうか。
○柴田委員 柴田です。先ほどのハザード比が2を超えている部分集団があるということも踏まえますと、一定の比較対照を取った上での調査は求められてもいいのではないかと私個人は思います。少なくとも審査報告書で見る限り、先ほど森先生が御指摘された部分については、単なる偶然だと結論付けるのが少し厳しい認識で、データを取る必要があると思っています。また、それが重要なイベントであるということをかんがみると、対照との比較ができる形のデータ収集というのは、既存の制度の中でできますし、そうしたものが制度上も提示されているので、検討されてもいいのではないかと個人的には思います。
○森部会長 その方法が可能でしたら、先ほど堀参考人から御提案いただいた実臨床での、より詳細な情報を収集していくという趣旨に適うものではないかと考えております。柴田委員、もしこれを御助言いただければ、どの対象を用いて、どの評価項目を調査していくのか、具体的に御提案若しくは今後御提案していただくことは可能でしょうか。
○柴田委員 今、具体的なデザインまでは申し上げられないのですが、例えばいろいろなサブグループなどを見ますと、日本人の集団でも統計学的に有意差がつきそうなぐらい、ハザード比が悪い集団もあるということは、言い換えると、少数例でもある程度の差が出る可能性はあるので、希少疾病ではありませんので、通常の調査を組めば、それなりの精度のアウトカムを得られるのではないかと思います。個別の、どの項目についてというのは、今は特定し得ないのですが、デザインとしてそのような枠組みで調査をするということにしておけば、日本人集団でのリスクが高い懸念に対して、それを払拭するデータがある程度たまるのではないかと思います。
 また、がんの領域などでは製造販売承認を取得した後に、臨床的有用性を証明するためにランダム化比較試験を求めるなどという、かなり厳しい要求が付けられていたことも過去にはあります。今、森先生からお話があったように、ランダム化試験ではなく、対照を持ってきて調査をするということは、フィジビリティーの観点でもある程度はできるので、それはやっていただいたほうがいいのではないかと思います。直接の回答ができずに申し訳ございません。
○森部会長 柴田委員、御発言をありがとうございました。宮川委員、御発言ですか。
○宮川委員 柴田委員から非常に適切な御指摘を頂きました。しかし、議論をずっと行っていると時間がなくなってしまうので、次回にどういう方法があるのかということをしっかりと提示した上で、継続審議という形にならざるを得ないのではないかと思います。それは部会長のお考えだろうと思いますので、方向性はお願いしたいと思います。以上です。
○森部会長 お待ちください。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。御指摘、ありがとうございます。心不全領域においては、比較対照を設定した調査の実績がありませんので、どういった調査が可能かというところは検討させていただきたいと思いますが、やはりおっしゃったように、集団をある程度特定することでイベントの一定数の発現が見込まれるという御指摘を踏まえて、その上で、何と比べるかというところが、今回はかなりキーポイントになると思いますから、その点を含めてどういった調査が可能かということも検討させていただいた上で、何らかの比較可能な形で、調査を実施することを検討させていただきたいと考えております。
○堀参考人 堀です。一言だけよろしいですか。
〇森部会長 堀先生、どうぞ。
〇堀参考人 実は、私も市販後調査でコントロール群を置くという経験はありません。うまくいけば、そうしたデザインの方が、より真実に近いものが得られますので、私は賛成なのですが、検討していただくということでいかがでしょうか。私にはそうしたことを言う立場でもないのですけれども、どういうデザインのものにするかということは、次回に検討された上で御提示いただくということで、前向きに検討されたほうがいいのではないかと個人的には思います。
○森部会長 堀参考人、大変貴重な御意見をありがとうございます。少々お待ちください。
○医薬品審査管理課長 審査課の吉田です。一つの御提案ですけれども、本日御議論いただいた中で、市販後において何らかの比較ができるようなデザインでの調査を、これから申請者との間で、機構との間で検討していただきます。それを先生方に御確認していただくということを前提に、それを条件として今回の審議会としては御了解いただくという形で、この会の結論とさせていただくということでいかがでしょうか。もし、それで御了解いただけないのであれば、また次の会に御確認いただく。例えば、そのようなやり方もあるのではないかと思います。いかがでしょうか。今後の見込みだと思うのですが、改めてこういった形で、全体で御議論いただくような形でないと御了解いただけないのであれば、また改めての会となりますが、各先生方に資料をお送りし、それで御確認いただくということで御了解いただける見込みがあるのであれば、方向性としてご了解いただけるのであれば、そういったやり方もあるのではないかと思います。
○森部会長 条件付き承認という運用規程は多分ないはずなので、ここで合田部会長代理の御意見を少し伺ってもよろしいでしょうか。今回の取扱いについて、もし御意見がありましたら、いかがでしょうか。
○合田部会長代理 部会長代理の合田です。今の審査管理課長の意見で、私はよろしいと思います。やはり患者に、ある一定のスピードで医薬品を届けるというのも大事だと思います。そうした意味で言うと条件付きと言うのですか、こういう形で、このタイミングで承認することで、私はよろしいのではないかと思います。座長がどのようなお考えなのかということもお聞きしたいです。以上です。
○森部会長 御意見をどうもありがとうございました。委員の先生方から、この審議の進め方について、特に御意見がなければ、この後、本薬剤に関する議決に移ってもよろしいでしょうか。特に御意見はありませんか。
○宮川委員 宮川です。合田先生の御意見に賛成なので、部会長に差配していただければよろしいのではないかと思っております。よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。先生方には十分な議論の時間を頂きましたので、この後、議決に移らせていただきます。使用調査に関する改善点については宿題事項として、その内容の確認を頂くことを前提として、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。 
○合田部会長代理 それで結構だと思います。
○森部会長 それでは、先生方から御意見を頂いて承認を可とさせていただきます。薬事分科会の報告は、確認事項の確認を待って、報告とさせていただきます。堀参考人におかれましては、長時間の審議で多々御発言いただき、大変ありがとうございました。心より御礼申し上げます。では、どうぞ御退出ください。
──堀参考人 退出──
○森部会長 それでは、議題2に進みます。議題2について、機構から概要説明があります。先ほど御退室いただいた先生は、もう議決をされていますので、そのまま進めさせていただきます。
 では、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題2の資料2、医薬品アロキシ静注0.75mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 本薬は、セロトニン受容体拮抗薬であり、本邦では成人に対し、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」の効能・効果で承認されています。今般、18歳以下の悪性腫瘍患者を対象とした国内臨床試験により、本薬の有効性及び安全性が確認され、用法・用量を変更する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 なお、海外において本薬は、2020年7月現在、成人に対しては80以上、小児に対しては50以上の国又は地域で承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料10に示す専門委員を指名しています。以下、本薬の有効性・安全性について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。
 有効性について、審査報告書の通し番号6ページの表6を御覧ください。生後28日以上18歳以下の悪性腫瘍患者を対象とした第III相試験は、実施可能性を考慮して非盲検非対照試験として実施されました。高度又は中等度催吐性抗悪性腫瘍剤投与前に本薬を投与し、主要評価項目である1コースにおける全期間の嘔吐完全抑制率は58.6%であり、95%信頼区間の下限が事前に規定した閾値である30%を上回りました。以上より、18歳以下の患者における本薬の有効性は期待できると判断しました。
 安全性については、審査報告書の通し番号8~12ページに記載しています。本薬は、小児のがん化学療法の知識・経験を有する医師の管理下で抗悪性腫瘍剤と併用して使用されることを踏まえると、小児においても成人と同様の注意喚起を行うことで本薬の安全性は許容可能と判断しました。以上の審査の結果、18歳以下の抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、機構は、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
 本申請は、新用量医薬品としての申請であることから、本申請に係る用法・用量の再審査期間は4年と設定することが適切と判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。
 なお、CTD1.10に誤記がありましたので、部会前に委員の先生方にお送りしたファイルは修正しております。説明は以上です。御審議のほどをよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。
○堀委員 すみません。委員の掘ですが、よろしいでしょうか。用法及び用量について確認をさせてください。一般の患者は、医学用語の専門用語である投与量というものと用量というものの違いがはっきりしないので、ここで少し明確にさせていただきたく質問をさせていただきました。
 今回、18歳以下の患者には、通常は本薬を、1kg当たり20μgを1回静注又は点滴静注することとし、投与量の上限は1.5mgとするというように書いてあります。これは、この投与量の上限は1.5mgということの解釈ですが、これは単回の投与量の合計の、要するに、投与量が1.5mg、つまり、18歳以下の場合だと1.5mgが上限ということで理解してよろしいでしょうか。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御回答いたします。御理解のとおりです。
○堀委員 ありがとうございます。そういたしましたら、例えば、例として、幼児で10kgの子の場合、10×20μgのグラム数を単回投与して、その上限が1.5mgまでは投与ができるというように理解してよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。体重に応じて投与をしますので、10kgの患者さんであれば、20μg×10となります。体重の重い場合、例えば、体重100kgの場合ですと、計算すると2mgになりますが、そのような場合でも1.5mgが投与量の上限となります。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。すみません。投与量と用量ということを、明確にしたく質問をさせていただきました。私からは以上です。ありがとうございます。
○森部会長 堀委員、どうもありがとうございました。そのほか御質問はございますか、いかがでしょうか。
 それでは、本議題について議決に入ってよろしいでしょうか。なお、田﨑委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただいておりますのでよろしくお願いいたします。
 それでは、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
〇森部会長 ありがとうございました。特に御異議がありませんでしたので、したがって承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて議題3に移ります。エクリズマブに関する議題3について、事務局から概要を説明してください。お願いいたします。
○事務局 議題3について御説明します。資料No.3を開いてください。2番目の「事前評価報告書」のファイルを出して、報告書を御覧ください。申請者は、アレクシオンファーマ合同会社、予定される効能・効果は、「ギラン・バレー症候群」になります。医薬品エクリズマブの希少疾病用医薬品の指定について御審議いただきたく思います。
 対象患者数については、本邦におけるGBSの患者数は10万人当たり1.15人と推定されていることから、5万人以下という基準を満たしているものと考えております。
 医療上の必要性について御説明いたします。ギラン・バレー症候群は、四肢筋力の低下と急性の運動麻痺を特徴とする自己免疫性の末梢神経疾患です。典型的には、上気道感染や消化器感染等の先行感染後、手足のしびれ感又は脱力が発生し、日を追うごとに重症化するといわれております。本邦において、ギラン・バレー症候群に対する効能・効果で承認されている薬剤として、ステロイドと人免疫グロブリン製剤がありますが、有効性・安全性の観点から課題があるとされており、医療上の必要性は高いと考えております。
 開発の可能性については、これまでに実施された国内医師主導第II相試験において、本剤のギラン・バレー症候群に対する有効性が示唆されており、現在、第III相試験を実施中ですので、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか、どなたか御発言されますか。
 それでは、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
○森部会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて議題4に移ります。議題4について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 議題4、資料No.4を御覧ください。amifampridineを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明いたします。また、2の「事前評価報告書」のファイルを開いてください。報告書の1ページですが、申請者は、Catalyst Pharmaceuticals,Inc.、予定効能・効果は「ランバート・イートン筋無力症候群(以下「LEMS」と省略) 」です。
 対象患者数については、2017年の推定患者数が348人で、5万人以下という基準を満たしているものと考えております。
 医療上の必要性については、LEMSは近位筋の筋力低下、易疲労性及び自律神経機能障害を特徴とする自己免疫性の疾患です。現在、LEMSに対する効能・効果で承認されている薬剤はなく、海外で対症療法が行われておりますが、有効性・安全性の観点から課題があり、医療上の必要性は高いと考えております。
 開発の可能性については、これまでに実施された海外第III相試験において、本剤の有効性及び安全性が確認されており、本邦においては、国内第III相試験の実施が予定されております。また、医療上の安全性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、医療上の必要性が高いと判断されているものですので、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほどをよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問はございますか、特にありませんか。どうもありがとうございました。
 それでは、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
〇森部会長 ありがとうございました。御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて議題5に移ります。議題5について、事務局から概要を説明してください。お願いいたします。
○事務局 資料No.5の同じく2の事前評価報告書を開いてください。バルドキソロンメチルを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、御説明いたします。報告書1ページを御覧ください。申請者は、協和キリン株式会社、予定される効能・効果は「アルポート症候群における腎機能の改善」です。
 対象患者数についてですが、本邦におけるアルポート症候群の患者数が約1,200例と推定されており、5万人以下という基準を満たしていると考えております。
 医療上の必要性についてです。アルポート症候群の患者は、徐々に腎機能が低下し、最終的に末期腎不全に至ることが多いとされており、本邦においては、この疾患に関連する効能・効果を有する医薬品は存在していないことから、医療上の必要性は高いと考えております。
 また、開発の可能性については、国際共同第II/第III相試験において有効性・安全性が確認されていることと、それに基づいて本剤の承認申請が予定されておりますので、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほどをよろしくお願いいたします。
○森部会長 先生方から御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 では、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
〇森部会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告をさせていただきます。
 続いて議題6に移ります。議題6について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 議題6、資料No.6を御覧ください。医薬品「エンレスト錠」に関する再審査期間延長の可否についてです。薬機法第14条4第3項において、新医薬品の再審査を適正に行うため特に必要がある場合は、再審査期間を10年を超えない範囲内において延長することができるという規定があります。この規定に基づいて今般、申請者から小児の用量設定に関する臨床試験を計画するということで、再審査期間を2年間延長し、令和12年6月28日までの10年間とする要望が提出されております。
 現時点では、小児に対する用法・用量は設定されておらず、小児心不全に対する本剤の有効性、安全性等を検討する臨床試験の治験計画届が提出されていることから、再審査期間を10年間に延長することは適切と判断しております。御審議のほどをよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。特にないようでしたら議決に入らせていただきます。なお、大森委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申し出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。
 では、本議題について、再審査期間の延長を可としてよろしいでしょうか。
〇森部会長 はい、特に御異議がないようですので、再審査期間の延長を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、報告事項に移ります。それでは、報告事項の議題1、2について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項の議題1、アデムパス錠の承認条件について御説明いたします。資料No.7を開いてください。
 今回は、「リオシグアト」を有効成分とする医薬品「アデムパス錠」の承認条件に係る御報告となります。資料の2/9の中ほどに下線が引いておりますが、承認の際には、この承認条件が付されております。
 今回、企業から特定使用成績調査に関する全症例を対象とした使用成績調査に関する中間成績等の成績が提出されております。予定症例数は420例、観察期間を投与開始日から1年間として実施されており、令和元年の9月19日までに調査票が回収された症例の情報を基に調査結果がまとめられております。機構においては、本調査によって収集された有効性、安全性に関する情報を確認した結果、現時点で更なる製造販売後調査等の実施が必要とされております。以上を踏まえ、承認条件は満たされたものと判断しております。以上です。
○森部会長 ありがとうございます。
○事務局 続いて、報告事項2について、資料No.8-1、8-2を御覧ください。資料8-1は、バノロセトロン塩酸塩を有効成分とするアロキシ静注です。資料8-2は、ミラベグロンを有効成分とするベタニスです。本剤、これらの再審査結果について、機構によって審査が行われ、承認拒否事由のいずれにも該当せず、効能・効果、用法・用量との承認事項について変更の必要はないと判断されたものです。御説明は以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。ないようでしたら、報告事項、議題1、2については、御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か御報告はございますか。
○事務局 次回の部会は、5月26日(水)午後5時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 本日は、休前日の中、大変、長時間の委員会になりまして、司会の不手際等をおわび申し上げます。また、貴重な御意見を多々頂きまして、心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 それでは、本日の第一部会は、これで終了させていただきます。これで失礼します。どうぞ御退出ください。ありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)