2021年2月25日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和3年2月25日(木)17:00~

出席者

出席委員(21名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 
行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  中井清人(医薬安全対策課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  山田雅信(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日もお忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。この度の医薬品部会についても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 本日の出欠状況ですが、大谷先生、大森先生、代田先生の3名が遅れて御参加と承知しております。現在のところ、当部会委員数21名のうち18名の委員にこの部会に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告をさせていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出していただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 また、本日のWeb会議に際しましても、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてはマスクを着用したまま説明させていただきますので、御了承いただければと思います。
 それでは、森部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、事務局から審議の進行方法の御説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。それでは、本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に発言者の御指名をさせていただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言をお願いいたします。なお、発言者が多いときには、発言されたい委員が、メッセージ欄に御記入いただくことで、部会長より発言者を順番に御指名させていただきますので、適宜、メッセージ欄の御利用をお願いいたします。
○森部会長 これまでの御説明に御質問、御意見等はございますか。それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から、資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストの報告をお願いします。
○事務局 事務局でございます。それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~No.15と製剤写真を用いますので、お手元に御用意をお願いいたします。そのほか、資料No.16といたしまして「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.17として「専門委員リスト」、資料No.18として「競合品目・競合企業リスト」を、また当日配布資料として、「ベリキューボ錠審査報告書修正表」をメールにてお送りさせていただいております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料No.18を御覧ください。
 1ページですが、「イスツリサ錠1mg他1規格」です。本品目は、クッシング症候群を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 2ページ、「イズカーゴ点滴静注用10mg」です。本品目は、ムコ多糖症II型を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の2品目を競合品目として選定しております。
 3ページ、「オスタバロ皮下注カートリッジ3mg」です。本品目は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 4ページ、「リオナ錠250mg」です。本品目は、鉄欠乏性貧血を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 5ページ、「レコベル皮下注12μgペン他2規格」です。本品目は、生殖補助医療における調節卵巣刺激を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 7ページ、「ベリキューボ錠2.5mg他2規格」です。本品目は、慢性心不全を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目なしとさせていただいております。
 8ページ、「ヴォリブリス錠2.5mg」です。本品目は、肺動脈性肺高血圧症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 9ページ、「ロナセン錠2mg他3規格」です。本品目は、統合失調症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に記載のこちらの3品目を競合品目として選定しております。
 10ページ、「ユプリズナ点滴静注100mg」です。本品目は、視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 11ページ、「ケシンプタ皮下注20mgペン」です。本品目は、再発寛解型多発性硬化症患者及び疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症患者における再発予防及び身体的障害の進行抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 12ページ、「インスリン アスパルトBS注ソロスター NR「サノフィ」他2規格」です。本品目は、インスリン療法が適応となる糖尿病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見はございませんでしょうか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を得たものといたします。それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 事務局です。薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員からの申出状況については、次のとおりでございます。
 議題1、「イスツリサ」については、退室委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃいません。
 議題2、「オスタバロ」については、退室委員はいらっしゃいませんが、議決に参加しない委員として川上委員、代田委員、武田委員です。
 議題3、「「イズカーゴ」については、退室委員なし、議決に参加しない委員として長谷川委員です。
 議題4、「リオナ」については、退室委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃいません。
 議題5、「レコベル」についても、退室委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃいません。
 議題6、「ベリキューボ」については、退室委員として佐藤直樹委員、議決に参加しない委員として代田委員、武田委員です。
 議題7、「ヴォリブリス」については、退室委員なし、議決に参加しない委員として大森委員、川上委員、武田委員です。
 議題8、「ロナセン」については、退室委員として佐藤直樹委員、議決に参加しない委員として大森委員、代田委員です。
 議題9、「ユプリズナ」については、退室委員なし、議決に参加しない委員として武田委員、長谷川委員です。
 議題10、「ケシンプタ」については、退室委員なし、議決に参加しない委員として大森委員、佐藤直樹委員、長谷川委員です。
 議題11、「インスリン アスパルトBS」については、退室委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃいません。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はございませんでしょうか。よろしいですか。
○佐藤(直)委員 佐藤ですが、よろしいですか。
○森部会長 どうぞお願いします。
○佐藤(直)委員 議題10に私の名前はありましたか。
○事務局 議決に参加しないとして、佐藤直樹先生のお名前を読み上げさせていただいております。
○佐藤(直)委員 そうですか。これは何でしたか。事前に議題6と議題8しか聞いていなかったのですが。
○事務局 退室されるのは議題6と議題8になりますが、議決のときに議決に参加できないという取扱いになっております。
○佐藤(直)委員 これはどこが関係しているのでしたか。あ、分かりました。確認してみます。ありがとうございます。
○森部会長 そのほかよろしいですか。では、本日は、審議事項11議題、報告事項3議題、その他の事項は1議題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移ります。議題1について、機構から内容を説明してください。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題1、資料No.1、医薬品イスツリサ錠1mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 本剤は、オシロドロスタットリン酸塩を有効成分とする副腎皮質ホルモン合成阻害剤です。クッシング症候群は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)による刺激又は副腎皮質の機能亢進により副腎皮質からコルチゾールが過剰分泌されることにより、慢性的に高コルチゾール血症を呈する症候群です。本剤は、コルチゾール生合成の最終段階を触媒する11β-水酸化酵素を阻害し、副腎でのコルチゾール生合成を抑制することで、高コルチゾール血症を是正することが期待されます。
 本剤は、欧州でクッシング症候群に対して2020年1月に承認され、米国ではクッシング病に対して2020年3月に承認されています。本品目の専門協議では、資料No.17に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書43ページの表41を御覧ください。クッシング病患者を対象に国際共同第III相試験が実施され、主要評価項目とされたランダム化治療中止期終了時である投与34週時の完全奏功率について、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示されました。また、投与24週時の完全奏功率の95%信頼区間の下限値は、事前に規定した閾値(30%)を超えていました。次に、審査報告書51ページの表52を御覧ください。クッシング病を除くクッシング症候群患者を対象とした国内第II相試験が実施され、先ほど述べた国際共同第III相試験と同様に、全ての被験者で本剤投与により、平均尿中遊離コルチゾール等の低下が認められました。以上の結果等を踏まえると、クッシング症候群に対して、本剤の有効性が示されていると判断しました。
 安全性については、審査報告書55ページの表56を御覧ください。ここでは、患者を対象に実施された各臨床試験における有害事象の発現状況を示しております。本剤の安全性について、実施された各臨床試験における発現状況を中心に確認した結果、認められた主な事象は、本剤の作用機序及び原疾患に起因する事象であり、クッシング病患者とそれ以外のクッシング症候群の患者で、本剤の安全性プロファイルに大きな違いは認められませんでした。低コルチゾール血症に関連する事象や副腎ホルモン前躯体の蓄積に関連する事象等の個別の事象について検討した結果から、本剤はクッシング症候群の治療に対して、十分な知識と経験を持つ医師により使用され、適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本疾患における薬物治療の位置付けも踏まえ、「クッシング症候群(外科的処置で効果が不十分又は施行が困難な場合)」を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 本剤は新有効成分含有医薬品であるため、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がありましたら、お願いいたします。
〇佐藤(直)委員 佐藤ですが、一つよろしいでしょうか。
○森部会長 はい、どうぞ。
○佐藤(直)委員 不整脈に関しての質問です。QT延長の報告と低カリウムの報告もあり、QT延長と低カリウムが合わさると、かなり不整脈が出る可能性が高いと思うのですが、それに関するデータがあるかないかと、実際にQT延長を来した患者さんのカリウムやマグネシウムのデータ等があれば、教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。低カリウム血症を来した患者さんについては、添付文書の重要な基本的注意の8.4にも記載しておりますとおり、事前にカリウムの補充等をしていただいて、きちんと正常に戻ったところで投与していただくことになると考えています。臨床試験では、除外基準が設定されていたものの、低カリウム血症を来してしまった患者さんが数例入っており、その患者さんにおいて、ほかの患者さんと比べて重篤な有害事象等の問題となる事象は認められていませんでした。投与前に電解質異常を是正をしていただくことが大切と考えております。
○佐藤(直)委員 そうすると、QT延長を来しても、電解質異常が出るケースは除かれて使用するという理解でよろしいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。適切に治療を、電解質を補正いただいた上で、投与していただくと考えております。
○佐藤(直)委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 宮川先生、御質問でしょうか。どうぞ。
○宮川委員 クッシング症候群は、高血圧も含めて、いろいろな病気が原因になって、多彩な症状を示してくるわけですが、治験において、この参加者の併用薬との兼ね合いはどうだったのかをお尋ねします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。併用薬というのは、例えば高血圧を合併している患者さんで、高血圧の治療薬は臨床試験でどうなっていたのかなど、そういった辺りでしょうか。
○宮川委員 いろいろな薬が使われているはずなので、それによって、どのような影響があったのかどうかを知りたかったのです。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。臨床試験では除外基準が設定されているので、ある程度は状態が安定している患者さんを組み入れられてはいるのですが、例えば高血圧を合併している患者さんは組み入れられておりまして、高血圧に対する治療薬を継続しながら本剤の臨床試験を実施しているという状況です。
○宮川委員 分かりました。併用薬よる違いはなかったと了解してよろしいですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。併用薬に関して、現時点で何か注意喚起が必要な状況ではないと考えていますが、製造販売後の調査でも、引き続き併用薬と安全性の関係について検討させていただく予定です。
○宮川委員 是非お願いします。それから、効能・効果で、クッシング症候群であって、クッシング病ではない、対象ではないと了解していいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。クッシング症候群という効能・効果にしておりまして、その中にクッシング病も含まれるとの理解です。
○宮川委員 中に包括されるということでよろしいのですね。では、米国の場合、クッシング病という形で、クッシング症候群ではないと記載されています。米国との差異は、臨床試験の中でも、どのような検討がされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 米国の申請パッケージには、クッシング病を対象とした臨床試験のみで申請されておりますので、効能・効果はクッシング病となっております。
○宮川委員 はい。ありがとうございました。
○森部会長 そのほか、先生方から御質問はございますか。よろしいですか。先ほどのQT延長についても、心電図の検査が事前に必要で、かつ、投与開始後1週間後にも添付文書上明示されていますので、この運用でよろしかったでしょうか。特にこの点で御発言はございますか。
○医薬品医療機器総合機構 機構としては、その理解でおります。
○森部会長 海外の添付文書でも同様の記載がありますし、本邦でもそれと同様な形の対応でよろしいかと思います。
 それでは、先生方の御質問がなければ、議決に入ってよろしいでしょうか。では、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はありませんでしたので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題2に移ります。議題2について、資料の概要の説明を機構からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題2、資料No.2、医薬品オスタバロ皮下注カートリッジ3mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 本剤は、ヒト副甲状腺ホルモン関連ペプチドのアミノ酸配列の一部を改変したアバロパラチド酢酸塩を有効成分とする骨粗鬆症治療薬です。本剤は、既存の骨粗鬆症治療薬として承認されている副甲状腺ホルモン(以下、PTHという)製剤と同様に、間歇的に投与することで、骨芽細胞の増殖や分化促進による骨形成促進作用が破骨前駆細胞から破骨細胞への分化の促進による骨吸収促進作用に対して優位となり、骨量及び骨密度の増加を示すと考えられています。
 海外においては、米国において2017年に承認されていますが、欧州では2018年に非承認勧告が出され、現時点では承認されていません。本品目の専門協議では、資料No.17に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 それでは、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。まず、有効性について、審査報告書の43ページの表35を御覧ください。骨折の危険性の高い日本人骨粗鬆症患者を対象とし、プラセボ対照比較試験が実施されました。その結果、ベースラインから投与78週までの腰椎骨密度変化率について、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示されました。続いて、審査報告書の46ページの表38を御覧ください。骨折の危険性の高い外国人閉経後骨粗鬆症患者を対象としたプラセボ及び実薬対照比較試験が実施されました。その結果、主要評価項目であるベースラインから投与18か月までの新規椎体骨折発生率について、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示されました。また参照群として設定された既存のPTH製剤であるテリパラチド群での新規椎体骨折発生率は0.84%、本剤群では0.58%でした。
 安全性について、審査報告書55ページの表47と審査報告書56ページの表48を御覧ください。それぞれ国内及び海外臨床試験における有害事象の発現状況を示しています。本剤の臨床試験で認められた主な有害事象は、既存のPTH製剤で認められている事象である、動悸、起立性低血圧、悪心、高カルシウム血症等であり、重篤な有害事象及び投与中止に至った有害事象の発現割合は、プラセボ群又はテリパラチド群と比較して大きな差は認められていません。
 続いて、審査報告書58ページ、7.R.2.1の心血管系事象の項を御覧ください。既存のPTH製剤については、心臓での陽性変時及び変力作用並びに末梢血管拡張作用を有することから、国内外の臨床試験における心血管系関連の有害事象について検討しました。その結果、プラセボ群及びテリパラチド群と比較して本剤群で発現割合が高い傾向が認められ、その差の主たる原因となった事象は動悸関連の事象でした。動悸関連の事象の発現割合は、審査報告書60ページ、7.R.2.1.1の動悸の項にお示ししたとおり、国内併合解析ではプラセボ群3.2%、本剤群で7.3%、海外併合解析ではプラセボ群で2.7%、本剤群で8.6%、テリパラチド群で3.8%でした。
 また、起立性低血圧についても、本剤群でプラセボ群及びテリパラチド群に比較して発現割合が高い傾向が認められています。動悸及び起立性低血圧について、重篤な事象の発現割合はプラセボ群及びテリパラチド群と本剤群で同程度であること、及び本剤群でプラセボ群又はテリパラチド群に比較して心血管系事象関連の重篤な有害事象が多く発現する傾向も認められなかったことを踏まえると、現時点で本剤投与時の心血管系への影響については許容可能と判断しましたが、起立性低血圧及び動悸に関しては、添付文書等を用いて注意喚起していく予定です。また、製造販売後データベース調査を実施し、本剤投与時の重大な心血管事象の発現状況について、類薬と比較して引き続き検討する予定です。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 本剤は、新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。
○堀委員 すみません、堀ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 はい。堀先生、お願いします。
○堀委員 ありがとうございます。私からは、自己注射の際の注射の部位について質問させていただきます。この薬は1日1回の皮下注射ということで、投与期間が18か月とかなり長くなっております。1か月を30日と考えて、30×18とすると、自己注射の場合、単純に言って540回自分の腹部に注射をするということで、添付文書の14.1.2では注射部位を投与ごとに変えると書いてありますが、一般の人間が注射部位を540回変えるというのは、最初の使用の際にかなり迷うところかと思います。取扱説明書にはどのように書いてあるのか、具体的に教えていただけたら幸いです。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答させていただきます。本剤の注射部位としては腹部のみですが、全て異なる箇所に注射するというわけではなく、例えば複数の箇所に交互に投与するなど、偏った注射がなされないようにというような使われ方をすれば、投与は可能と考えております。同様の使われ方をしている製剤はほかにもありますので、実臨床では大きな問題は生じないものと考えています。
○堀委員 分かりました。そうしますと、もちろん主治医からの指示もあるかと思うのですが、私ども一般の人間が使う取扱説明書はあるのでしょうか。患者向けの資材というものはあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤は自己注射となりますので、患者向けの資材を作成する予定です。
○堀委員 分かりました。その際に、ほかの薬剤でも同様な使われ方をしている資材はあると思うのですが、初めての患者さんに関しても分かりやすいような取扱説明書、資材を作っていただけたら有り難いと思いました。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。本件に関しましては、申請者とも調整して資材提供をさせていただきたいと思います。
○堀委員 私からは以上です。ありがとうございます。
○森部会長 宮川委員から御質問を頂いております。よろしくお願いします。
○宮川委員 宮川です。お聞きしたいのは、切替えのことなのですが、本剤は既承認薬、類似薬ですが、それを切り替えるケースでは、これは想定されていないといいますか、期間の上限は検討されていないというような記載があります。どちらにしても、投与期間というものは24か月と規定されているということで、切替えの条件をきちんと書いていないといけないのかと思うのですが、合算の投与期間をどのように設定しているのかをお聞きしたいと思いました。
○森部会長 いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤とテリパラチド製剤はともに非臨床試験で認められた骨肉腫の発生リスクの懸念から、臨床試験での投与期間が、用法・用量における投与期間の上限として設定されています。テリパラチド製剤から本剤に切り替えた際のデータはありませんので、基本的な考え方としては、テリパラチド製剤で治療がされた患者さんに対して、本剤の投与を推奨するだけのデータはないと考えています。
 本剤の添付文書での注意喚起については既存のテリパラチド製剤の添付文書を参考に検討しています。具体的な内容としては、添付文書の用法・用量の7.3項の記載となります。まず、テリパラチド製剤からの切替え時の安全性が確立していないとの記載で、切替え時の投与を推奨していないということを表しています。その上で、切り替えた時の投与期間の上限については検討されていないということを注意喚起する予定です。
 また、添付文書の15項のその他の注意を御覧ください。本剤とテリパラチド製剤ともにがん原性での骨肉腫というような懸念があるということ、臨床成績を踏まえて投与期間の上限が設定されているということを注意喚起する予定です。本剤については、添付文書及び情報提供の資材を用いて、これらの注意喚起を実施する予定です。
○宮川委員 検討されていないということであれば、そうした表現でこれで済むのかと思ったのです。原則そうであれば、24か月を超えないようにするなど、そのような表現があってしかるべきだと思うのです。これでは、どこまでもいっていいのかということになってしまうのですが、その辺の表現の仕方はどうなのでしょうか。合算の場合の上限は、しっかりとシングルだってあるわけですから、合算であっても、これはテリパラチド若しくはテリパラチドの類似薬という形で書いてあるわけですから、ほとんど同等という形です。それから、臨床試験の報告書を読んでも、実際には有効域などそうしたものはほとんど変わりません。類似薬ですから、ほとんど同じような形になると考えます。そうすると上限というのをしっかりと規定して、フォローするのが本当ではなかろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。本剤の投与期間の上限は18か月ですが、テリパラチド製剤との合算での投与期間の上限を18若しくは24か月までと記載すると、それまでの投与であれば安全性上の問題はないと受け取られる可能性もあると考えています。切り替えた際のデータはないため、投与期間の上限について具体的な数字を提示することは難しいと考えています。
○宮川委員 分かるのですが、そうであれば24を超えて、24+18でもいいのですかということになるわけでしょうか。それを完全に許しているということになるのですが、それはいかがなのでしょうか。前薬が18か月使われて、本薬が24か月使われるという形になるということを許してよいという形で、42か月でもよいということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 回答させていただきます。ここで我々として伝えたかったことは、テリパラチドから本剤に切り替えた臨床試験は実施していないため、データがない以上は切り替えの推奨できないということであり、それを注意喚起の前半に記載していることをまずはお伝えさせていただきたいと思います。
 後半は、テリパラチド製剤の添付文書も参考にしながら記載の整理をしてみたところではあるのですが、この記載があることで、投与期間の上限が、切り替えたときに一体どの程度になるのか、あるいはそもそも切り替えを許容しているのか許容していないのかが、誤解を生む記載になっていたかと思いますので、この記載については整備又は削除等の対応を検討させていただきたいと思います。
○宮川委員 是非ともそれをお願いします。つまり、有効性の記載と、それから投与期間の話と、混然と一体になっているようなところがあります。誤解のないように書き分けていただけると有り難いかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 承知しました。投与期間の上限の具体的な記載については、この剤については単独で18か月まで投与した際のデータしか得られておらず、テリパラチド製剤からの切替え自体は推奨できないと考えているため期間の上限の数値まで記載することは難しいかもしれませんが、御指摘を踏まえて注意喚起の記載の修正を検討したいと思います。
○宮川委員 よろしくお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 はい、承知しました。ありがとうございます。
○宮川委員 それからもう一つ、高齢者の投与状況を確認したいのです。これは高齢者にとっても非常に重要な薬であるというように思うのですが、実際には70、80代になっても、同様な臨床的な改善が見られたのか、どのような年齢まで有効として考えるのかということは必要かと思うので、是非ともそこを教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤は、対象疾患が高齢の方となりますので、臨床試験でも多くの高齢の患者さんが組み入れられています。症例数で申し上げますと、国内試験では、本剤投与例200例弱ののうち、25例が75歳以上で、124例が65歳~75歳、44例が65歳未満でした。海外試験では、本剤投与例918例中、75歳以上が159例、65歳以上75歳未満が567例となっていますので、大半は高齢の患者さんになっています。そういった中で臨床試験の結果は示されていますので、高齢の患者さんでも有効性は認められたものと考えています。
○宮川委員 年齢が入っているのならいいのですが、年齢層別に何かしら問題点というのはあったのかどうか、少しお聞きしたいと思います。高齢者でも比較的年齢層が若い者と、後期高齢者あるいは超高齢者のような年齢層別のような形はあったのかどうか、少しお聞きしたかったものですから。
○医薬品医療機器総合機構 御説明させていただきます。審査報告書の72、73ページを御確認いただけますでしょうか。こちらに、高齢者での安全性の方の結果については記載しておりまして、75歳以上となってきますと、なかなか例数も少ないということもあって解釈が難しいところもあるのですが、何か高齢者で特に気になるといった事象が顕著に出ているというような状況ではなかったということは、データをもって確認しております。
○宮川委員 安全性のことしか記載がなくて、効果の記述が書いていなかったので、お聞きしたということです。有害事象などは分かったのですが、効果がどうなったのかというのは、これは人それぞれなので問題ないと思うのですが、一応お聞きしたということです。ありがとうございました。
○森部会長 宮川委員、どうもありがとうございました。テリパラチドとの使用の合算に関する添付文書の記載整備、それから、もともと転倒しやすい高齢の方に起立性低血圧が起こりやすいお薬を使うということで、この辺りの資材を含めた十分な注意喚起という点は特にお願したいと思います。松野委員から御質問お願いいたします。
○松野委員 日本歯科大学の松野です。質問が1点あります。我々の領域で非常に関心が高いのが顎骨の壊死なのですが、これはBP製剤や抗RANKL抗体で見られるような顎骨壊死というのは発現しないという、テリパラチドでも見られないようなのですが、この薬剤でもそういった事象というのは確認されていないという理解でよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。御指摘のとおり、本剤は既存のPTH製剤とほぼ同様の薬理作用を有しておりますので、顎骨壊死のリスクは低いだろうというように考えています。
○松野委員 ありがとうございました。
○森部会長 今の機構の御回答によりますと、特に患者さんの歯科治療に対する注意喚起は必要ないという判断でよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御理解のとおりです。顎骨壊死の注意喚起は、骨吸収抑制薬で注意喚起がされていますが、本剤は骨形成促進薬ですので、既存のPTH製剤と同様に、注意喚起は不要と考えております。
○森部会長 分かりました。それから先ほど冒頭、堀先生から御質問がありましたが、注射部位につきまして、私はインスリンでも多々経験がありますが、患者さんはつい同じ所に打ってしまう、手の届く所に習慣的に打ってしまいやすいので、是非、資材等で注射部位のローテーション等も御指導いただけたらと思っております。
 そのほか先生方、御質問いかがでしょうか。では、委員の先生方から御質問いただきました点につきまして、今つまびらかにしていただくように回答いただきましたので、その点の修正をもって、本案件につきましては議決に入ってよろしいでしょうか。なお、川上委員、代田委員、武田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決の参加を御遠慮いただくことになっております。
 それでは、本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ございませんので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題3に移ります。では、議題3につきまして、機構から概要の御説明をお願いたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題3、資料No.3、医薬品イズカーゴ点滴静注用10mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 本剤は、遺伝子組換えヒトイズロン酸-2-スルファターゼとヒト化抗ヒトトランスフェリン受容体抗体との遺伝子組換え融合タンパク質であるパビナフスプアルファ(遺伝子組換え)を有効成分とする、ムコ多糖症II型に対する静脈内投与製剤です。ムコ多糖症II型はムコ多糖の一種であるグルコサミノグリカン(以下、GAGという)の代謝経路を担うリソソーム酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼの遺伝的欠損又は活性低下に起因し、GAGであるヘパラン硫酸(以下、HSという)などが細胞内に蓄積することで、精神運動発達の遅滞、神経退行症状等の中枢神経症状及び心不全、閉塞性呼吸障害、関節可動域の制限、肝脾腫等の全身症状が発現します。
 現在、本邦においては、ムコ多糖症II型に対する治療薬として、静脈内投与による酵素補充療法に用いられるイデュルスルファーゼ製剤が使用されていますが、静脈内投与ではイデュルスルファーゼは血液脳関門を通過せず、中枢神経症状に対する有効性は期待できません。また、中枢神経症状に対する有効性を期待する製剤として、脳室内投与用のイデュルスルファーゼベータ製剤が承認されていますが、当該製剤では全身症状に対する有効性は期待できません。本剤は、静脈内投与することで末梢組織とともに中枢神経系に移行することも可能とした製剤であり、本剤のヒト化抗ヒトトランスフェリン受容抗体部分が、血液脳関門を構成する脳毛細血管内皮細胞の細胞膜に存在するヒトトランスフェリン受容体に結合することで、脳毛細血管内皮細胞を通過し、脳実質側の神経細胞に運搬されると考えられています。
 海外においては、ブラジルにおいて2020年12月に本剤の承認申請が行われており、2020年12月現在、本剤はいずれの国・地域においても承認されていません。本邦におけるムコ多糖症II型の患者数については、2016年に実施された全国疫学調査において168例と報告されており、本薬は希少疾病用医薬品に指定されています。また、本品目は先駆け審査指定制度の対象品目に指定されています。本品目の専門協議では、資料No.17に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書31ページの表23を御覧ください。ムコ多糖症II型患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。主要評価項目については、HSを含めたGAGの蓄積がムコ多糖症II型患者の中枢神経症状の主たる原因であるとする報告が複数あること等を踏まえ、脳脊髄液(以下、CSFという)中のHS濃度とされました。その結果、ベースライン時に比較して、投与52週時にCSF中のHS濃度の減少が認められています。続いて、審査報告書38ページの図2を御覧ください。本試験では、新版K式発達検査により発達年齢が評価されました。左の図が一般に中枢神経症状を呈しないとされる軽症型の被験者で、右の図が中枢神経症状を呈するとされる重症型の被験者での発達年齢の推移を示していますが、本剤を52週間投与した結果として、中枢神経症状に関する明確な結果は得られませんでした。しかしながら、発達に対する評価の影響には、より長期にわたる検討が必要と考えられること等を踏まえ、現時点で得られている本試験のCSF中のHS濃度の減少等の結果から、中枢神経障害を有するムコ多糖症II型患者に対する本剤投与時の一定の有効性は期待できると解釈して差し支えないと判断しました。
 続いて、全身症状に対する有効性について、審査報告書32ページの表25を御覧ください。血清中HS濃度や肝臓、脾臓容積について、既存の静脈内投与による酵素補充療法であるイデュルスルファーゼによる治療歴のある患者では維持傾向、治療歴のない患者では改善傾向が示されました。
 安全性について、審査報告書33ページの表26を御覧ください。本試験で認められた有害事象の発現状況を確認する限り、臨床試験において認められた有害事象は、主にムコ多糖症II型患者の疾患に起因する事象又は既存の酵素製剤投与中に見られる事象と考えられることから、許容可能と判断しました。
 なお、本剤を投与した経験は極めて限られ、特に臨床試験での中枢神経症状に対する評価には限界があったことから、製造販売後臨床試験及び製造販売後調査を全投与症例を対象に実施し、安全性及び有効性に関するデータを早期に収集することに加え、特に有効性に関する発達評価のデータ等を中心に、実施した製造販売後臨床試験、使用成績調査等の解析結果を定期的に提出すること、及び本剤の有効性等に関する追加的に実施された評価に基づき本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨を承認条件として付すことが適当と判断しております。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は、希少疾病用医薬品であることから再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問をお受けします。宮川委員から御質問のようです。どうぞお願いします。
○宮川委員 静注で血液脳関門を通過するということで期待できるということなのですが、審査報告書の24/54の6.8.1の所に書いてあるのですが、検出するということが難しいというように考えてよろしいでしょうか。脳脊髄液の中に検出されたのが42例中の3例で、検出された濃度が低量下限以下で、下限付近であったという解釈で、その検出が難しいとありました。そうすると、血液脳関門を通過することがこの薬の有利なところであるということなのですが、既承認薬のイデュルスルファーゼは通過しないのだけれども、ある程度効いているというところの差というのは、どう考えたらいいのかということでお聞きしました。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。御指摘のとおり、本剤がCSFで検出された症例は少なかったですが、本剤がCSFに移行する機序としましては、血液脳関門を通過した後、脳細胞を介してCSFに流出することになると考えられます。したがって、CSF中で本薬の検出が困難であったのではないかというように考えています。また、既存のイデュルスルファーゼとの差異につきましては、審査報告書の37ページの表31を御覧ください。
○宮川委員 はい。
○医薬品医療機器総合機構 今回、臨床試験は101試験及び301試験の2試験が実施されており、これらの両試験に参加した患者でのCSF中のHS濃度の推移を示しています。101試験と301試験の間は、およそ1年程度空いています。HS濃度の推移に着目して御覧いただければと思うのですが、101試験でのベースライン時は5,000程度から投与4週で3,500程度に減少し、その後、1年程度経過すると、5,700程度にまた増加しています。301試験として本剤投与すると再度2,200程度まで減少しています。したがって、既存の製剤での治療では、CSF中のHS濃度の増加が認められていますので、実施した臨床試験で認められたCSF中のHS濃度の低下は本剤によるものだとに考えています。
○宮川委員 分かりました。そこのところがアドバンテージであるというように考えていけばよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。御指摘のとおりです。
○宮川委員 それから以前審議しました、脳室内の注射液であるヒュンタラーゼとの関連で、専門家の先生に是非お聞きしたかったのは、本剤の投与がヒュンタラーゼの脳室内注射液に優先される形なのかどうなのかです。どちらをファーストチョイスとしていくのかどうかということです。つまり、CSFの中に入っていけるという利点があるので、脳脊髄関門を通っていけるということであるならば、これがファーストチョイスで、それで十分効かなければヒュンタラーゼのようなものを使うのかどうか、そのような順番などというのはあるのかどうかをお聞きしたかったのですが、いかがでしょうか。
○森部会長 宮川委員、今の御発言は委員の先生方への御質問でよろしいですか。
○宮川委員 はい。
○森部会長 では、どなたか御回答いただくのは可能でしょうか。神経薬理若しくは薬理学の御専門の先生、どなたか御指名してよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 もしよろしければ、機構より。
○森部会長 はい、お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは御説明させていただきます。本剤とヒュンタラーゼの基質の分解作用に関しては、得られている臨床試験の成績等からすると、恐らく大きな差はないのであろうと考えています。そういった観点からすると、どちらの製剤が優先されるということはないと考えています。一方で、投与経路による差異はあり、本剤は静脈内投与、ヒュンタラーゼは脳室内である程度侵襲性が高い投与方法であり、投与経路の違いが各製剤を選択するときの判断基準の一つになるかと思います。
 また、本剤は新たな機序、つまりトランスフェリン受容体を介して中枢神経系への移行という機序を有しているのに対して、ヒュンタラーゼについては既存のエラプレースと同じ酵素部分を使った製剤になりますので、そういった既存の製剤での実績、経験も重視されてヒュンタラーゼを選ぶ先生もいるかもしれないと、考えています。
○宮川委員 はい、ありがとうございます。引き続き機構の方にお聞きしたいのですが、少しグラフの読み方が分からなかったのです。38/54の図2の左の方なのですが、暦年齢の月の216の所の線が縦になっているのでしょうか、三つのつなぐ線をどう読んだらいいのか。普通は斜めになったりということがあるのですが、これは一直線になっているように見えるのですが、どう読み取ればいいのかお聞きしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 はい。機構よりお答え申し上げます。実際の推移としましては、一度上昇した後に若干下降しています。今回提示した図では発達年齢を示していますが、発達に関しては発達指数という実際年齢で発達年齢を割った指標も重要視されます。発達指数を評価する場合、発達年齢はある程度の年齢に達すると一定になると考えられますが、一方で実年齢については増えていくことになりますので、単純に実際の年齢で除するといった計算をすると右肩下がりになってしまいます。そうしたことを避けるために、一定年齢以上では、実年齢についてはある一定の値を使うというような補正がなされていますので、こちらの図では一直線として表示されています。
○宮川委員 勉強になりました。ありがとうございます。
○森部会長 そのほかの委員の先生から御質問ございますか。それでは、議決に入ってよろしいでしょうか。なお、長谷川委員におかれましては利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただいております。
 それでは、本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ございませんようですので、審認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題4に移ります。議題4につきまして、機構の方から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題4、資料No.4、医薬品リオナ錠250mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 鉄欠乏性貧血に対する治療は、原因疾患の治療及び鉄の補充が基本とされています。鉄の補充の第一選択は経口鉄剤であり、多量の出血で鉄の損失が多く経口鉄剤では不足する場合や、副作用により経口鉄剤が服用できない場合に、静注鉄剤が選択されます。本剤は3価鉄であるクエン酸第二鉄水和物を有効成分とする経口鉄剤であり、鉄還元酵素である十二指腸シトクロムbによって2価鉄イオンに還元されて吸収されます。本邦では、本剤は、2014年1月に慢性腎臓病患者における高リン血症の改善の効能・効果で承認されています。
 今般、申請者は、鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内臨床試験を実施し、本剤の有効性及び安全性が確認できたとして、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、本剤は、2020年10月現在、成人の保存期慢性腎臓病患者における鉄欠乏性貧血の治療に対して米国で承認されています。
 以下、本剤の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書、青字で表記されております通し番号10ページの表8を御覧ください。鉄欠乏性貧血患者を対象に、本剤の貧血改善効果を検討した国内第III相試験(GBB4-1試験)において、主要評価項目である「Week7におけるベースラインからのHb値の変化量」は、本剤500mg/日群及び本剤1,000mg/日群のいずれにおいても、クエン酸第一鉄Na群に対する非劣性が検証されました。
 また、審査報告書、通し番号の12ページの表12を御覧ください。鉄欠乏性貧血患者を対象に、本剤の鉄補充効果を検討した国内第III相試験(GBB4-2試験)において、主要評価項目である「各測定時点における血清フェリチン値及びベースラインからの変化量」は、本剤500mg/日群及び本剤1,000mg/日群のいずれにおいても、投与開始後に血清フェリチン値の上昇が認められました。以上より、鉄欠乏性貧血に対する本剤の有効性は示されたと判断しました。
 続きまして、安全性について御説明いたします。審査報告書、通し番号10ページの表9及び11ページの表10を御覧ください。国内第III相試験(GBB4-1試験)における7週までの有害事象及び副作用の発現状況について示しております。これらの結果から、本剤500mg/日群及び本剤1,000mg/日群のいずれにおいても、クエン酸第一鉄Na群と比較して有害事象等の発現割合が高い傾向は認められず、本剤各群で認められた事象は、いずれも軽度又は中等度であることを確認しました。
 国内第III相試験2試験の本剤各群で認められた主な有害事象は、悪心及び下痢を中心とした胃腸障害関連の事象でしたが、いずれも軽度又は中等度であり、投与中止等の処置を行うことで回復をしたことを確認しました。そのほか、本剤の投与期間の長期化に伴い有害事象が増加する傾向は認められなかったこと、本剤投与後に臨床的に問題となるような血清リン値の低下は認められなかったことなどを確認しました。以上より、鉄欠乏性貧血に対する本剤の安全性は許容可能と考えました。
 以上の審査の結果、鉄欠乏性貧血に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は新効能・新用量医薬品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は4年間と設定することが適切と判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等ございましたら、お願いします。
○佐藤(直)委員 佐藤です。一つよろしいですか。
○森部会長 はい。どうぞ、お願いします。
○佐藤(直)委員 この薬剤は、もともと高リン血症の改善薬で、リンの吸収を抑制する機序からすると、リンの低下を来し、特に長期間では、その可能性が高いのではないかと思われますが、その懸念はないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 大変申し訳ないのですが、途中聞こえなかったので、もう一度御質問いただいてもよろしいでしょうか。
○佐藤(直)委員 具体的にリンの低下といいますか、問題になるようなことはないというお話でしたけれども、実際にどの程度下がるのか、吸収を抑制するので当然下がると思うのですが、その辺での懸念する要素はないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。審査報告書の通し番号の18ページを御覧ください。7.R.2.4項で血中リンへの影響について、今回の臨床試験成績を基に検討した内容を記載しております。国内第III相試験2試験において、血中リン減少が1例認められましたが、いずれも軽度であったことを確認しました。また、次のページの表20、Week24までリンの推移において、本剤投与開始後にリンが低下する傾向は認められなかったということを確認しました。以上より、鉄欠乏性貧血患者においてリン低下の懸念はないことから注意喚起は不要と考えております。
○森部会長 はい。今の御説明についていかがでしょうか。佐藤委員、よろしいでしょうか。
○佐藤(直)委員 はい、分かりました。
○堀委員 すみません。堀ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 堀委員、御質問どうぞ。
○堀委員 はい、ありがとうございます。今回、この薬は鉄欠乏性貧血という適応追加が行われたことによって、多分患者さんは女性が多いと思いますので、産婦人科で扱われることが非常に多くなると思います。それで、添付文書での飲み方に関しまして拝見しますと、慢性腎臓病患者における飲み方と、鉄欠乏性貧血における飲み方では、1日の回数などが異なると思います。ですから産婦人科等の患者が鉄欠乏性貧血として飲まれる場合には患者向けの資材というものが必要かと思います。もしかなり服用の仕方を間違えてしまうと大変なことになるかと思いますので、その点はどのような配慮がなされているか、教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。機構よりお答えいたします。今回の対象となる鉄欠乏性貧血では、妊婦の患者や、婦人科疾患を有する患者も想定されるため、まずは市販直後調査において、安全性については重点的に確認していく予定でございます。服用方法につきましては、添付文書上での注意喚起に基づいて、臨床現場で先生方にきちんと情報提供していただくことになると考えております。先生方から患者さんに、用法・用量について注意喚起いただけるように、申請者から医療現場に周知徹底する予定です。
○堀委員 お願いいたします。この添付文書では、二つの飲み方が6の所で書かれていると思うのですけれども、一般の市民、患者はこの添付文書の見方というのもなかなか難しいかと思います。ですので、産科鉄欠乏性貧血の方にはこういう飲み方をするんだよという説明が書かれた分かりやすい資材を作っていただきたいと思いました。ありがとうございます。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 そのほかの御質問はいかがでしょうか。
○平石委員 平石ですが。
○森部会長 はい、どうぞ。
○平石委員 本薬の用法・用量に関してですが、メーカーからの申請時の用法・用量は3ページ真ん中ほどにございますように、1日の用量は1,000mg/日であったようですが、審査を経てその用量が、1ページにございますように、500mgを1日1回ということで、500mgの用量に修正されたという理解でよろしいですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりでございます。
○平石委員 それは副作用など、あるいは鉄の貯蔵の状態をかんがみて、500mgで十分だろうということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。審査報告書の通し番号20ページ、7.R.5の項を御覧ください。今回実施しました国内第III相試験において、500mg/日群と1,000mg/日群で同程度の鉄欠乏性貧血患者に対する有効性が示されたということを踏まえ、500mg/日群で管理可能な患者も一定数存在すると考えております。その上で、症状等により、1,000mg/日が必要な患者も存在することが考えられるため、臨床現場の先生方の御判断で、鉄欠乏性貧血患者さんの状態を踏まえて、1,000mg/日を投与できるようにしました。
○平石委員 はい、理解しました。ありがとうございます。
○森部会長 専門協議では、より少量の250mgの使用も可能になるように、適宜増減の判断ということが追加になっておりますので、この対応でもよろしかったでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。御理解のとおりでございます。
○森部会長 そのほか委員の先生方、御質問いかがでしょうか。それでは、議決に入ってよろしいでしょうか。
 では、本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題5に移らせていただきます。準備が整いましたら、機構の方から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。それでは、議題5、資料No.5、レコベル皮下注につきまして御説明いたします。紙資料は資料No.5の審査報告書です。電子ファイルでは資料No.5のフォルダーを開き、星印の付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 審査報告書の通し番号5ページ、1 起原又は発見の経緯及び外国における使用状況の項を御覧ください。本剤は、遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモンであるホリトロピン デルタ(遺伝子組換え)を有効成分とする皮下注用製剤であり、2016年に欧州で、申請効能・効果である生殖補助医療(以下、ARTという)における調節卵巣刺激(以下、COSという)の効能・効果で承認されて以降、60以上の国又は地域で承認されております。本邦では、他の遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン製剤(以下、r-hFSH製剤という)が、既にARTにおけるCOSに使用されていますが、COSに対する卵巣反応は患者ごとに異なることから、現状、患者背景を考慮して、開始用量をはじめとして用量を調節して投与されております。本剤は、卵巣反応の予測因子として血清抗ミュラー管ホルモン値(以下、AMH値という)を用い、また本薬の曝露量に影響を及ぼす体重も指標として用量を決定することで、COSの期間を通じて同一の用量を投与する製剤として、申請者であるフェリング・ファーマ株式会社により開発され、今般、国内臨床試験成績等に基づき、医薬品製造販売承認申請がなされました。本剤の審査に関し、専門委員として、資料No.17に記載されております委員を指名いたしました。
 本剤の概略につきまして、臨床試験成績を中心に御説明をいたします。まず、有効性について御説明いたします。審査報告書の通し番号27ページ、7.3.1 国内第III相試験の項を御覧ください。体外受精又は卵細胞質内精子注入を受ける日本人女性を対象とした評価者盲検並行群間比較試験が実施されました。
 主要評価項目である採卵数の結果は、審査報告書の通し番号28ページの表29のとおり、対照薬とされたフォリトロピンベータ(遺伝子組換え)(以下、r-hFSHβという)に対する本薬の非劣性が示されました。国内第III相試験における採卵数は、r-hFSHβ群と比較して、本薬群で低い傾向が認められましたが、審査報告書の通し番号32ページの表33、34に示しましたとおり、血清AMH値別の採卵数及び妊娠率に基づく検討及び採卵数が卵巣過剰刺激症候群(以下、OHSSという)の発現にも関連することを考慮した本薬の用量設定に関する申請者の説明から、臨床的に意義のある本薬の有効性を示しているものと判断いたしました。
 なお現在、本邦ではr-hFSHβは承認整理されておりますが、本邦の成書等の記載から、r-hFSHβと、本邦で現在ARTにおけるCOSの承認を有するr-hFSH製剤であるホリトロピン アルファ(遺伝子組換え)は、同じ位置付けで標準的に使用されていたと判断できることも踏まえると、機構は国内第III相試験の成績から、本薬が本邦での現在の標準治療薬に劣らない有効性を有することが説明できると判断しており、日本人女性に対し本薬をARTにおけるCOSに用いた際の有効性は示されたと判断いたしました。
 安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号33ページ、7.R.2.1 OHSSについての項を御覧ください。本剤の特徴的な副作用であるOHSSについて、本薬群でのOHSSの発現割合及びOHSSに対する予防的介入の実施割合は、国内第III相試験及び海外第III相試験のいずれにおいても対照薬群を上回らず、本邦の医療現場において実施されているOHSSの発現及び重症化を回避するための方策と同様の方策を講ずることで、本邦において本剤をARTにおけるCOSに用いた際のOHSSは、重大な問題とならない程度に管理可能と判断いたしました。
 また、そのほか、国内外の臨床試験で発現が認められた有害事象については、既承認のr-hFSH製剤と比較して、臨床的に大きな問題が生じる可能性は低いと判断いたしました。なお、申請者は、本剤を自己注射が可能な製剤として医療現場に提供する方針を示しており、機構は、本剤を用いて自己注射が実施された国内第III相試験において、注射手技に関連する有害事象は報告されていないこと等を踏まえると、自己注射の手順を含む本剤の取扱いについて、患者に対して適切な情報提供と指導が提供されるのであれば、本剤を自己注射が可能な製剤として本邦の医療現場に提供することは可能と判断いたしました。
 続きまして、審査報告書の通し番号40ページ、7.R.5 用法・用量についての項を御覧ください。機構は、国内第III相試験における有効性及び安全性を踏まえると、本剤の用法・用量を、国内第III相試験と同一の、血清AMH値及び体重に基づき設定した用量をCOSの期間を通じて固定用量で投与する用法・用量とすることは、妥当と判断いたしました。
 以上の審査の結果、本剤を生殖補助医療における調節卵巣刺激の効能・効果で承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤の再審査期間は8年、また、本剤は生物由来製品に該当し、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。
○堀委員 堀です。よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○堀委員 ありがとうございます。今回の不妊治療の薬ですが、用量は体重に応じてというように、体重に基づいて用量が設定されていると伺っております。最近では、40歳以上の方でも不妊治療を行う方が非常に多くなってきましたが、その場合、年齢との関連というのは何かしらデータはあるのでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。御質問ありがとうございます。御質問いただきました年齢につきまして、今回の製剤の用量設定をする中で影響を及ぼす可能性のある因子について検討がなされ、その中で、因子として年齢の影響は大きくないことから、本剤の用量設定は、年齢での調整は行わないという設定がなされました。以上でございます。
○堀委員 ありがとうございます。そういたしましたら、例えば年齢によって効能が変わる、効果が変わることはないということですね。
○医薬品医療機器総合機構 治療対象となる患者に、今回の用法・用量に従った投与量が投与された場合に、年齢によって採卵数が異なることはないと考えております。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。安心する患者さんも非常に多いと思います。
 後、もう1点お願いいたします。今回、今年の1月から、政府が不妊治療の助成制度を拡大し、大変喜んでいる御夫妻は多いと思います。その場合に、変更後は1子につき6回までの助成回数が認可されましたので、例えばこのお薬で、1回目駄目、2回目駄目という形で、6回までこのお薬を使って継続的に不妊治療をすることというのは可能なのでしょうか。
○審査管理課長 審査課でございます。機構で分からなければ、こちらで。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。御質問ありがとうございました。本剤について、治療回数に関する投与制限は特段設けてはおりませんが、本剤を用いたARTにおけるCOSで採卵ができたものの妊娠に至らなかった場合の次の治療として、本剤を用いたCOSが選択されるのかというのは、医療現場で判断されるものと考えております。以上でございます。
○堀委員 ありがとうございます。それでは、制限はないということで、あくまでも女性の体と主治医、かかりつけ医との相談の上、何回かというようなことは、その都度決めていくということでよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。そのように理解しております。
○堀委員 分かりました。どうもありがとうございました。自己注射ができるということは、働く女性にとってみると、通院をせずに不妊治療ができるということで、非常に有り難いと思っております。私からは以上です。
○森部会長 では、宮川委員、どうぞご発言ください。
○宮川委員 これは月経周期に合わせて投与するものですけれども、卵胞成熟の誘起を行う基準に達したかどうか、何日目辺りで確認するのが妥当なのかどうかお聞きしたいと思います。これは新薬ですから14日処方の制限を保険で外すことをできるだけ避けたいと思います。できれば14日以内に受診して、卵胞の成熟度を確認してから、医師が投与継続を判断するかどうか判断すべきなのでしょうか。そのような処方制限もあるかと思うのですが、どういう兼ね合いで考えていらっしゃるのかどうかをお聞きしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御回答申し上げます。本剤を用いたCOSを行っていただく場合、本剤処方後に14日間全くモニタリングをしないということではございませんで、3日ごと、又はもう少し頻繁に超音波検査を実施して、卵胞の発育状況を確認しながら使うことが想定されます。臨床試験では、刺激1及び6日目、その後は1日おきに超音波検査が実施され、本剤を用いたCOSの期間の平均は9日間でした。これを踏まえると、本剤によるCOS開始後は、何回か検査をしていただきつつ、卵胞が十分に発育されたと判断された時点で、本剤の投与が終了され、排卵されるというような治療の流れになると認識しております。以上でございます。
○宮川委員 では、その治療の流れというのは、例えば添付文書等に用法・用量といいますか、それに関する事項として、きちっと記載されるということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。御指摘ありがとうございます。今お話をさせていただいた採卵までのモニタリングに関しては、添付文書の7.2項に記載させていただいております。頻度に関しては診療ガイドライン等でも示されてございますし、生殖補助医療を御専門にされている先生方にとっては一般的な頻度かと思っております。以上でございます。
○宮川委員 分かりました。それから、審査報告書の33/50の中程の下の所です。「重要な情報であることから、医療現場に情報提供することが適切であると判断する」と書いてあるのですが、それはガイドラインで入るのかもしれませんが、具体的にどのように対応されるのか、そうした予定があるのかということです。それは「医療現場に情報提供することが適切であると判断する」という部分、これは添付文書には記載しなくていいのかどうかお教えください。排卵数が少ない傾向が見られたことなど、それから本剤の選択に当たっては、卵巣の刺激から生殖補助医療におけるそのような条件というものを何らかの形で、専門の方の書き込みがどうなるかと思ったのでお聞きいたしました。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より回答させていただきます。御質問いただきました採卵数の情報提供につきましては、医療従事者向けの資材を作成いたしますので、そちらでの情報提供をいたします。採卵数に関する情報につきましては、他剤との使い分けの観点から、本剤がどういった採卵数に関するプロファイルを有するものかは重要なものと考えますので、現場の先生方に提供することが重要と判断いたしました。以上です。
○宮川委員 ありがとうございました。では、ゴナールエフなどと同じような形で、しっかりと指導されるということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのように考えております。
○宮川委員 ありがとうございます。
○森部会長 そのほか、先生方から御質問ございますか。よろしいようでしたら、議決に移らせていただきます。
 では、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、先に議題7に移らせていただきます。議題7の資料の御準備ができましたら、機構から概要説明がございます。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料No.7、医薬品ヴォリブリス錠2.5mgにつきまして、機構より説明させていただきます。紙資料は資料No.7の審査報告書を御覧ください。タブレットで御覧になる場合は、資料No.7のフォルダーを開き、星印の付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全40ページの通し番号で5ページの第1項、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、エンドセリン受容体拮抗薬であるアンブリセンタンを有効成分とする肺動脈性肺高血圧症(以下、PAHという)の治療薬であり、成人のPAH治療薬として、海外では2007年以降、本邦でも2010年に承認されています。また、本剤はPAHの適応症について希少疾病用医薬品に指定されています。
 今般、国内外の臨床試験成績を基に、PAHの効能・効果に、8歳以上の小児での用法・用量を設定する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。2020年7月現在、本剤の小児のPAHに対する用法・用量が承認されている国又は地域はございませんが、本邦での申請に先立って、欧州でも8歳以上の小児のPAHに係る承認申請がなされております。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号14ページを御覧ください。8歳以上18歳未満のPAH患者41例を対象とした国際共同の非盲検非対照試験が実施され、審査報告書の通し番号14ページの表10に示しますように、体重区分ごとに規定された用量が投与されました。このときの有効性について、審査報告書の通し番号14ページの表11に示しました。投与24週時の6分間歩行距離のベースラインからの変化量に改善傾向が認められ、この結果は、成人のPAH患者を対象とした本剤の臨床試験成績と類似していました。
 また、審査報告書の通し番号15ページ、表13に示しますように、6分間歩行距離について、日本人集団でも全体集団と同様の改善傾向が示されました。少数例での検討であったため、審査報告書の通し番号23ページの表17に示しますように、日本人の個々の症例の肺血行動態パラメータの変化も評価したところ、本剤の有効性を支持する結果でした。
 一方で、小児を対象とした試験では、本剤の明確な増量効果は確認できませんでしたが、当該試験は用量間の位置関係が十分に評価可能な試験としては計画されていなかったことに加え、成人では日本人PAH患者における本剤の増量効果が認められており、成人と小児でPAHの組織病理及び動態生理や治療実態に差異はないと考えられること、今回設定した小児の用法・用量で投与することで、成人と同程度の曝露量が得られることなどを考慮すると、8歳以上の小児のPAH患者においても、本剤の有効性が、増量効果を含めて期待できると判断いたしました。
 続いて、安全性について説明いたします。審査報告書の通し番号25ページ、表18に示しますように、小児のPAH患者で多く見られた事象は、いずれも成人で同様に報告されており、本剤に特徴的な有害事象である肝障害、体液貯留、貧血等の発現状況について、成人と小児の間に違いは認められませんでした。本邦の製剤販売後調査等で報告された本剤の小児への使用例における有害事象も精査し、成人と小児のPAH患者で本剤の安全性プロファイルに大きな違いは見られていないことから、現時点では、小児においても成人と同様の注意喚起をすることで、適切な臨床使用が可能であると判断しております。したがって、製剤販売後の対応としては、通常の安全性監視活動を実施し、得られた情報に基づいて製造販売後調査等の必要性を検討することが妥当と判断しました。
 なお、審査報告書の通し番号31ページ、「7.R.7 8歳未満の患者と小児への投与に適した製剤の開発」の項に示しますように、8歳未満のPAH患者を対象とした臨床試験及び小児への投与に適した製剤の開発については、現在、申請者が検討しているところです。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に該当しますが、既に成人のPAHに対して2010年7月に承認されており、国内において約10年の使用経験を有することから、再審査期間は6年1日と設定することが適切と判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、御質問等ございましたらお願いします。特段の御質問ございませんでしょうか。
 それでは、議決に移ってよろしいでしょうか。なお、大森委員、川上委員、武田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。それでは、本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題6に移ります。準備ができましたら、議題6の説明をさせていただきますが、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議題6と8の審議の間、会議から一旦御退室いただきまして、御待機いただきます。佐藤直樹委員におかれましては、御退室をお願いいたします。
○佐藤(直)委員 了解しました。
──佐藤(直)委員退室──
○森部会長 よろしいでしょうか。では、議題6につきまして、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品ベリキューボ錠2.5mg、同錠5mg、同錠10mgについて、機構より説明いたします。紙資料は資料No.6の審査報告書をお開きください。電子ファイルは、資料No.6のフォルダーを開き、星印が付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全97ページの通し番号で4ページです。1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるベルイシグアトを有効成分とする薬剤であり、血管拡張作用等を介して心負荷を軽減することにより、慢性心不全の病態を改善すると考えられます。
 今般、国際共同第III相試験の成績等に基づき、製造販売承認申請が行われました。なお、海外での状況について、審査報告書(1)の作成時点から更新がありました。2021年2月時点で、本剤は、米国で慢性心不全に関する効能・効果で承認され、○○○○○○○○○となっております。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の54ページの表47を御覧ください。国際共同第III相試験として、心不全の標準治療を受けている左室駆出率の低下した慢性心不全患者を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。本薬の用法・用量は、2.5mgを1日1回から投与開始し、2週間間隔で1回投与量を5mg及び10mgに段階的に増量することとされました。主要評価項目は「心血管死又は心不全による入院の初回発現までの期間」とされ、複合イベントの発現抑制効果について、プラセボに対する本薬の優越性が検証されましたが、主要評価項目である複合イベントのプラセボ群に対する本薬群のハザード比は0.90であり、計画時点で想定していたハザード比の点推定値の0.8より大きい結果でした。
 この結果の評価については、審査報告書の59ページの7.R.2.1、有効性の評価結果についてを御覧ください。計画時点の想定と結果に差が認められたことについて、本試験は、医療ニーズが特に高いと申請者が考えた心不全の増悪イベントの発現リスクの高い慢性心不全患者を対象としており、また、結果として、組入れ基準を満たす患者の中でも、特にイベント発現割合が高いと考えられる患者集団が想定よりも多く組み入れられたことが影響している可能性があると、申請者は考察しております。機構としても、組み入れられた患者の影響等から、イベント発現リスクの高い集団で有効性の大きさが比較的小さかったことが影響した可能性があると考えました。
 その上で、過去の心不全増悪イベント発現からの期間が比較的短く、イベント発現リスクが特に高いと考えられる患者集団においても、主要評価項目のハザード比が1を下回ったこと、全体集団において臨床的に重要な心血管死及び全死亡のいずれについても、本薬群でプラセボ群より発現が少ない傾向が示されたこと等から、本試験では、本薬により臨床的意義のある有効性が示されているものと判断いたしました。日本人集団においても、審査報告書54ページの表47に示したとおり、複合イベントについて全体集団と一貫した成績が認められました。
 一方で、心血管死の発現が、プラセボ群と比較して本薬群で多かったことについて、日本人集団では、複合イベントの各構成要素の発現状況の一貫性を十分に検討可能な例数ではないことも考慮して検討しました。審査報告書の62ページの中段以降で議論しているとおり、申請者の心不全の予後に関わるリスク因子の投与群間での偏りが影響した可能性があるとの考察について、組み入れられた患者の背景を確認し、一定の妥当性があるものと考えました。
 また、審査報告書64ページの表54に示したとおり、日本人集団における心血管死の内訳において、本薬群で原因不明の死亡が多く認められたことから、本薬や本邦の医療実態が影響して突然死を増加させる可能性がないか、専門委員の意見も踏まえて検討しました。審査報告書83ページの中段以降を御覧ください。本薬が、一般的に心臓突然死の主要な要因として想定される不整脈を惹起する可能性について、非臨床及び臨床試験成績から本薬の臨床使用時の催不整脈作用は示唆されていないこと、心血管死発現症例の症例経過の詳細を踏まえると、本薬と突然死との関連性は示唆されていないことを確認いたしました。
 また、基礎治療として用いられた植込み型除細動器(ICD)やβ遮断薬が、突然死に関連する不整脈の発現に影響した可能性があることから、ICDの有無別の有効性の結果とβ遮断薬の試験中の使用状況の国内外差等も検討いたしました。その結果、β遮断薬については、各地域における推奨用量に対する用量分布に国内外で差は認められず、ICDについては、日本人集団でICDの植込み率が全体集団より低かったものの、そのことが突然死の増加につながっている可能性は低いこと等を確認し、本薬が日本人患者において特有に突然死を増加させる可能性は低いと判断いたしました。以上の検討を踏まえ、総合的に、日本人慢性心不全患者においても本薬の有効性は期待できると判断し、当該判断は専門委員に支持されました。
 続いて、安全性について説明いたします。審査報告書の69ページから記載している7.R.3、安全性についての項を御覧ください。国際共同第III相試験における有害事象の発現状況より、本薬の臨床使用における有用性を損なうほどの懸念は認められていないと判断いたしました。作用機序から想定される低血圧に関する有害事象については、添付文書での注意喚起に加え、医療従事者向け資材及び患者向け資材を用いて注意喚起を行うことで対応可能と判断いたしました。
 なお、効能・効果については、昨年10月の当部会で報告させていただいた方針に基づき、効能・効果は慢性心不全とした上で、効能・効果に関連する注意において、臨床試験成績に基づき現時点で投与が推奨される対象は、左室駆出率が低下した慢性心不全である旨を注意喚起することとしております。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は劇薬に該当し、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 なお、平石委員より、事前に御質問を頂いておりますので御紹介いたします。「審査報告書の83~84ページにかけて、本薬の安全性に関し、試験16493の日本人集団において、本薬群で心血管死の発現割合が、プラセボ群と比較して高かった結果が認められています。うち、治験薬との関連性が否定できない治験薬投与終了後14日以内に発現した心血管死13例、プラセボ群4例、本薬群9例があり、これらの症例が検討され、治験担当医師により本薬群における心血管死と本薬との関連性はないと判断されたとあります。本薬の効能・効果が、慢性心不全の標準的な治療を受けている重篤な患者に対するものであることから、心血管イベントとの関連性の評価は特に慎重である必要があり、専門委員会でも十分検討され、安全性については問題ないと判断されたと承知しています。しかし、本薬と心血管イベントとの関連の重要性にかんがみ、本部会において関連性について改めて御質問させていただきます」とのことでございます。
 御指摘の点については、機構の専門協議における専門委員からの御意見も踏まえ、機構としても慎重に評価をいたしました。試験16493の心血管死発現例の個別症例における症例経過の詳細については、機構内の臨床担当でも確認をしており、治験薬との因果関係判断についても特に疑義のある状況とは考えておりません。また、これらの症例のうち、突然死及び原因不明の死亡に分類された死亡例について、専門委員から御指摘のあった不整脈の発現を示唆する所見が認められていないことも確認しております。
 そのほか、日本人集団でICDの植込み率が低いことや、β遮断薬の用量分布の国内外差が影響した可能性についても検討し、これらの国内外差が影響した可能性も低いと判断し、安全性の観点から、少なくとも日本人で本薬投与により突然死を増加させる可能性は低いとの機構の判断については、専門委員の先生方からも御了解を頂いている状況です。以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 平石委員、今の機構の回答についていかがでしょうか。
○平石委員 ありがとうございます。審査報告書を改めて読ませていただくと、84ページの1行目からあるように、不整脈をもたらすリスクについては安全性の薬理試験においても確認されているということで、基礎的にも臨床的にも本薬の安全性については担保されているのかと判断いたしました。どうもありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 委員の先生方から、そのほかに何か御質問はいかがでしょうか。
○合田委員 合田です。
○森部会長 よろしくお願いいたします。
○合田委員 非常にマイナーのことで申し訳ないのですが、最初のページに書かれている英名の物質名の後にスペースが必要なのですが、これは入っていません。資料の1.9の所のJANの所には明らかに入っています。多分、訂正されたほうがいいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。御指摘ありがとうございます。適切に修正させていただきます。
○合田委員 はい。
○森部会長 代田委員、お願いいたします。
○代田委員 中でも議論されておりますが、試験19334のエントリークライテリアは、6か月以内に心不全、あるいは静注の利尿薬の経験があるという、比較的限られた集団のように思うのですが、これを慢性心不全の全体に一般化することの是非については、もう少し御説明いただきたいということと、もう一点は、サクビトリルバルサルタンやSGLT2阻害薬といった、この試験以降に認可された薬が今後広く普及してくるわけですが、そうした場合のこの薬の位置付けはどのようになっていくかということについて、御意見を頂きたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答いたします。まず、1点目の御質問についてです。恐らく、試験16493のことを示していらっしゃるのかと理解いたしましたが、今回、臨床試験で組み入れられなかった、恐らく状態の安定した患者への一般化可能性の御質問と理解いたしました。審査報告書の通し番号60ページの表50を御覧ください。こちらに、組入れ前の心不全の増悪イベントの発現時期等による部分集団解析の結果をお示ししております。検討された範囲ですが、心不全による入院から割り付けまでの期間が比較的長い方の集団においても、有効性が減弱する傾向等は認められておりませんので、より安定した、つまり心不全の増悪イベントから6か月以上経過した患者においても、本薬の有効性は期待でき、投与も可能であると考えております。
 もう一点補足いたします。今回、臨床試験に組み入れられたのは左室駆出率が45%以下の患者集団でして、この臨床試験で対象とされた集団への投与が推奨されると考えておりますので、添付文書の効能・効果に関連する注意におきまして、左室駆出率の低下した患者に投与する、また、臨床試験における対象患者の背景を踏まえて投与患者を選択する旨を注意喚起させていただいております。
○代田委員 ありがとうございます。もう一点、恐らくこのお薬の位置付けは今後いろいろな臨床の中で明らかになってくるのでしょうが、専門家の御意見の中では、こういうお薬はこういう病態により効きやすいなど、あるいは今までの臨床試験の中でそうしたことが示唆されるデータはないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。今回、選択基準としてイベント発現リスクの高い所を対象にして検討を行ったところではありますが、一方で想定よりもリスクが特に高い患者が多く組み入れられたことが、有効性の結果に影響したということも示唆されておりまして、本剤が特にイベント発現リスクの高い患者に対して推奨される、つまり他剤と差別化したような対象に推奨されるということは考えておりません。御指摘いただいたように、近接した時期に開発された薬剤との位置関係については、直接比較しておりませんので、明確な評価は難しいと考えておりますが、得られた臨床試験成績を踏まえて、臨床現場で選択していただくような形になるものと想定しております。
○代田委員 ありがとうございました。
○森部会長 続いて、宮川委員からお願いいたします。
○宮川委員 機構から詳しく御説明していただきまして、ありがとうございます。実際に、試験15371、試験19334、試験16493などいろいろな試験があるのですが、統計学的に全てで有意な差が認められなかったという機構からの御説明があったわけです。専門委員から非常にシビアな状況での症例があるとの説明で理解しております。アンメットメディカルニーズに応えるべく、データとしては非常にぎりぎりの薬であることは間違いないのだろうと思います。
 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○もあるわけです。本当に標準治療の上乗せ効果として、そこまで期待できるものなのかどうかというのは、真摯に考えなければなりません。薬があれば患者を救えるというのでもないわけです。本当に有効な薬であるかということの見極めが重要だろうと思います。藁にもすがりたい思いでということも非常に分かるのですが、そこで注意喚起が重要と考えます。状況として、どのような患者さんに対して使っていけばいいのか、標準治療に加えて本剤を使用する臨床的意義は何なのかということをしっかり考えていくべきだろうと思うのです。
 私も今まで薬事承認に携わってきたのですが、そうした意味では、統計学的に有意な差が認められないとしても、専門委員からも、どうしても必要な薬剤であるとのお話を伺っても、果たして、そうしたことだけで問題を容認してもと非常に疑問に思います。その辺りのところは、見解というわけではないのですが、どのように捉えたらいいのかということをみんなでしっかり考えていかなければいけないのかと思っています。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。1点修正させていただきます。今回、主要な臨床試験成績として説明しました試験16493においては、統計学的なイベント抑制効果は検証できているということでございます。有効性の大きさが、当初の想定よりも小さかったということについては、御指摘いただいたように、専門協議での専門委員の先生方の意見聴取も含めて慎重に検討させていただいたところです。今後も含めての御示唆を頂いたと理解いたしました。ありがとうございます。
○宮川委員 先ほど機構の方が、有意な差が認められていなかったもののハザード比とおっしゃいました。実際に想定されていた0.8を達成していないのでしょうか。達成していないものについては、達成していないのだという評価は非常に重要なことだろうと思います。そこのところは本当にすごく重要なことだと思うのです。誰でも患者さんを救いたいのです。私も心不全の方のシビアな状態をたくさん知っておりますし、ニーズもよく分かります。ほかにもいろいろな薬がある中でどうしても使わざるを得ない薬なのかという位置付けはよく分かりますので、しっかりと注意喚起なり、添付文書などで文言として反映されれば一番いいのかと思った次第です。ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 理解いたしました。ありがとうございます。
○森部会長 委員の先生方から、そのほかに何かございますか。
○柴田委員 柴田ですが、発言してもよろしいでしょうか。
○森部会長 お願いいたします。
○柴田委員 今、御指摘のあった件について追加で質問させていただきます。試験16493の群間のハザード比を0.8と設定された経緯について、何を根拠に0.8と設定されたのか教えていただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。今回、相対リスク減少率を20%と見込んだ点については、エンレストのパラダイム試験等を参考に、十分に臨床的意義のある差として設定されたものと理解しております。
○柴田委員 ありがとうございます。そうしたことであるならば、やはり宮川委員から御指摘があったように、これは統計学的に有意な差が付いているのでプラセボではないことは示されているけれども、思ったほど効かない薬であったということは、事実として明確にしなければいけないのではないかと思います。
 そうした薬であって、もともと対象集団は重篤な患者であるとはいえ、その中で特に重症な患者に効くということであればまだしも、逆に、重症の患者では群間差が薄まるような傾向があるということになると、どのような対象の方に使えばよいのかという、具体的なアンメットメディカルニーズがどこにあるのかということは説明がしにくくなってしまうと思います。そうしたものであるということを明らかにした上で世に出さないと、誤解が生じるのではないかと思う次第です。その点について、機構の方はどのような対応を取られるお考えなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘の点は非常に重要と考えております。現時点で機構としてできる対応としては、添付文書の臨床成績の項を御参照いただいた上で投与対象を選択していただく旨を注意喚起することと考えております。先ほども少し御説明いたしましたが、他剤との位置付けに関しては、直接の比較を行っていない以上、どういう場合にどういう薬剤を選択するかということについても、現時点で何かを推奨するということは困難な状況なのかと思っております。
 今後、臨床現場に出ていった後には、現場の先生方にもいろいろ御検討いただき、使用実態等も踏まえて、例えば学会等に御協力いただきまして、ガイドライン等に反映されていくということが想定されるのかと考えております。
○柴田委員 ありがとうございます。
○森部会長 委員の先生方から、そのほかに何かございますか。宮川委員、お願いいたします。
○宮川委員 何度もすみません。今、柴田委員がおっしゃったことはすごく大事なことです。私たちは審議をするわけですから、何が何でも通すということではないのだろうと思うのです。専門の人間として、あくまでも御注意申し上げるところはしていかなければいけないのだろうと考えます。データがそろっていないといいますか、ぎりぎりで拾い上げることが本当のことなのか、それともそうではないのかということは、やはり薬事に関わる人間としては非常に重いのだろうと思います。
 そうしたところを考えると、もう少し慎重であるべきなのかと思っています。いいものはいいとして取り上げていけばいいし、十分な効果が見られないものであれば、何かを追加して物事を考えていけるような余地があるのかどうかということを、真摯に書き込んだり取り組んだりすることが重要なのかと思います。この辺りについては、何らかの配慮が必要なのかと、漠然とした言い方で申し訳ないのですが、後は部会長にお任せいたしますけれども、そうした意味で疑念があるとあえて申し上げます。単に審議をして通過させていいのかどうか、少し注意喚起したいと思います。以上です。
○森部会長 赤羽委員からお願いいたします。
○赤羽委員 議論を長引かせてしまい、すみません。今、先生方から御指摘のあったことをまた重ねてお尋ねして申し訳ないのですが、62ページの表54の心血管死の内訳の日本人集団を見ると、心不全が比較的多いという、例数が非常に少ないのでプラセボ群を少し上回る数字が出ているということが気になります。
 お尋ねしたいのは、重症の方に対する本薬の治療効果が比較的弱いために、重症化した方がそのまま心不全でお亡くなりになったということなのか、何かほかにもう少し心不全を、あるポピュレーションではかえって悪化させてしまうことがあるのかについて、何かしら分析をしていらっしゃるかどうかをお尋ねしたく思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。最初の説明の中で少し触れさせていただいた点ではございますが、審査報告書の通し番号で62ページの一番下のマル1投与群間における患者背景の偏りの影響という所から考察しております。日本人集団においては、欧州のガイドライン等で心不全の予後に関わるリスク因子として挙げられている項目の投与群間での偏りを確認しておりまして、日本人集団では、若干、本薬群に不利なリスク因子の偏りが認められました。
 部分集団での解析になりますので、結果の解釈に限界がございますし、全体集団と比較して症例数が少ないということで、全体よりも投与群間での偏りが生じやすいのですが、その偏りが影響した可能性があると考えております。つまり、ご指摘の結果は原疾患の悪化の表れと理解しております。
○赤羽委員 ありがとうございます。これまで先生方から散々御指摘のあったところだと思うのですが、有効性に関しても安全性に関しても、サンプリングの偏りというファクターで、結論について少しそうした説明をしなくてはいけないというのは、データがまだまだ十分ではないのではないかという印象を持っています。そうした意味では、今回お示しいただいたデータでは、リスクとベネフィットのバランスが余り十分に取られていないのではないかと思いますので、ほかの先生方からも御指摘がありましたとおり、実際の治療にどのように使うのかということについて、もっともっと厳しい引き続いての検討が必要ではないかと思いました。
○森部会長 赤羽委員から大変貴重な御意見を頂きました。今まで多くの先生方が、本薬剤に関する有効性について、国際共同治験で本来達成されるべきハザード比の0.8という数値が未達であるということ。ただし、統計的有意差はあるという機構の見解を確認しています。また、代田委員の御発言のように、どういう症例に、よりベネフィットがあるのかという、ベネフィットの層別化に対する解析も不十分であるということ。また、決して少なくない日本人が300人含まれているという国際共同治験の中で、日本人の参加者の中で心血管死の症例が本薬群の方で多いこと。そして、その心血管死の内訳を見ても、心不全死の方がプラセボに比べて多いという厳然たる事実があり、それが、日本人集団でこの治験に組み入れられた集団の偏りによって説明されるという機構の見解でありますが、偏りは認められるけれども、それが薬剤によっての有害性を否定するものではないという可能性も大変懸念しております。
 したがって、現時点では今、私どもが頂いている医療的な情報では、本薬の日本人におけるリスク並びにベネフィットを十分に評価することが難しいという、そういった先生方の御意見と受け止めましたが、いかがでしょうか。
○宮川委員 森部会長、取りまとめていただきまして本当にありがとうございます。私の言葉が足りないばかりに、いろいろ御迷惑をお掛けしていると思いますが、私も原則的にこれはもう少し議論したいと思っていて、それから専門家の方にもう少し深く御議論していただければよいのではないかと思います。先ほど赤羽委員からもありましたように、そうした配慮がすごく必要ではなかろうかと思います。以上です。ありがとうございました。
○森部会長 少々お時間を頂きまして、厚労省の方と相談させていただきます。どのような対応が可能なのでしょうか。
〇事務局 継続です。議決に入って。
○森部会長 議決に入ってですか。
〇事務局 そうですね。議決に入りますと言って、今回は承認とはせずに再審議とさせていただくという。
○森部会長 分かりました。それを、先生方の御了解を頂くかどうかということですね。
〇事務局 そうです。
○森部会長 今、厚労省の方に確認させていただきました。対応としては、審議の継続という議決が可能だということです。まず、そのように提案させていただいた上で、議決に入ります。
 本議題については、継続の審議が適切という御判断でよろしいでしょうか。
○宮川委員 賛成します。
○医薬品医療機器総合機構 機構ですが、少し確認をしてもよろしいでしょうか。継続の審議となる場合に、最終的にクリアしなければいけない課題を確認させていただきたいのです。今回の試験対象集団では、全般的な投与が認められるほどの有効性は示されていないということが審議の結論となると、仮に部分集団解析をして、より有効性が期待できそうな集団を見い出したとしても、恐らくそこについては部分集団解析結果となるので、結局はその患者を対象とした検証試験を、日本人で数千例規模で集積し検証しなければならないという結論になる可能性があります。
 今までの心不全領域の実施可能性等から、そうした検討を日本単独で行うのはかなり困難ではないかという懸念があります。具体的な対応策として、どういうことをクリアすれば承認可能とご判断いただけるかというところについて、もう少し明確にしていただけないでしょうか。
○森部会長 それでは、この点について委員の先生方の御意見を少し伺ってもよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 よろしくお願いいたします。
○森部会長 御発言いただける方がいらっしゃいましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
○宮川委員 宮川ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いいたします。
○宮川委員 今の機構の言い方は分かるのですが、承認するということを前提としてそうしたことをしなければいけないのかということが問題だと思います。これは、承認といいますか、そうしたものの問題点を明らかにするということであるため、現時点でのデータでは十分な差を認めていくことができないということが、一つの結論であってもよろしいのではないかと思います。機構は何をすればいいのかということは、私たちが言うことではないのかもしれません。この事実を見てどうなのかということを私たちが評価するというのが、この部会に求められていることだろうと思うのです。それを真摯に判断することが重要ではないかと理解してきたのですが、いかがでしょうか。
 では、機構に対して質問しますが、これを認めさせるためにはどのようなことを考えればいいのかということを、委員にお聞きになるということでしょうか。
○森部会長 宮川委員、ここで1回、部会長でお預かりしてもよろしいでしょうか。すみません。審議の流れを確認させていただきます。委員の先生方からは十分御意見を頂き、リスク、ベネフィットに関する情報が不足しているという御指摘も多々頂きました。私の方から、今回は継続審議にさせていただくということを議決の段階で提案させていただいたところ、機構から追加の御発言を頂きました。今、機構から頂いた御意見をよく論点整理して機構にお伝えさせていただいた上で、また、この後に専門の先生方の御意見も重々お伺いした上で、機構にどのようにデータをまとめていただくかということについて、こちらから提案させていただくということでよろしいでしょうか。その上で、継続審議で進めてよろしいでしょうか。手順上はこれでよろしいのでしょうか。
○事務局 はい。
○森部会長 機構からは御異論ございませんか。よろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。申し訳ありません。少し確認させていただきたいのですが、森部会長がおっしゃったことは、厚労省側で今後やることを、そのようなデータが必要なのではないかというお話いただくということだったのでしょうか。
○森部会長 今まで委員の先生方から多々御指摘や御意見がございまして、機構もその内容を御確認されていらっしゃると思いますので、今後リスクとベネフィットの項目を更に充実したものにしていただき、また、添付文書も含めて、どのような情報をディスクローズしていくかということについても、より一層添付文書の内容の充実も含めて御検討いただきたいと、そうしたことだと思います。
 その上で、本薬剤が上市されて患者に使える段階になったときに、臨床の先生方が十分な情報の下に、この薬剤を使うか使わないかが判断できるかが、我々にとっては一番の懸案事項で、それに対する情報が不足しているので、その点についてもう一度情報提供をしていただきたいというお願いでございます。
○医薬品医療機器総合機構 森部会長、どうもありがとうございました。機構側も、本日頂いた御意見を真摯に検討させていただき、どういうことができるかを考えていきたいと思います。ただ、臨床試験は、恐らく今後実施できるような規模の試験ではないので、今ある試験成績から何を言えるかということにはなるかと思います。それによって、日本人のどのような患者さんがメリットを得られるかということについて、もう少し明らかにするということだと理解いたしましたので、検討させていただきます。ありがとうございました。
○森部会長 私から一つお願いしたいことは、日本人の症例を登録する際に、背景因子の偏りが大きかった点がなぜ起こったのかは是非教えてください。これは、何かしら組み入れる上で、そうしたバイアスが起こり得る中で起こったのか、それとも不可避なことだったのかという、そうした辺りのことも、追加の情報を頂く際に是非お願いしたいと思っております。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。その辺りの状況も、機構の方で再度確認させていただきます。
○森部会長 国際試験で日本人を含んで施行されておりますが、全体としての統計的な方向性と日本人での部分的なデータが、同じトレンドを向いていることは大変重要ですので、今回の臨床試験で、日本人の集団において心血管死が多いという点は、こちらとしても大変懸念しております。今後、それに関する十分な議論をさせていただくということで御理解いただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘の点は理解いたしました。ありがとうございます。
○合田委員 合田ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いいたします。
○合田委員 森部会長が言われた、この事象について添付文書にどのように書くのかということも議論になっているのではないかと思います。機構は、そこの情報提供の仕方についても検討される必要があるのではないかと私は理解いたしましたが、それでよろしいでしょうか。
○森部会長 具体的なポイントをどうもありがとうございました。現在、添付文書に記載されている国際共同治験の成績には、日本人の数は載っていますが、具体的なデータは載っていませんし、心血管死に関する内訳のディスクローズもありません。これについては、添付文書に記載すべきか、インタビューフォームに記載すべきかなども含めて、十分な意見交換が必要だと考えております。御指摘どうもありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 ただ今、御提案いただいたような添付文書の臨床成績の項、あるいは、そのほかの情報提供資材等において、日本人集団における成績をどのように情報提供するかという点と、今、得られている試験の中で、対象患者の選択に関してどのような情報提供ができるかというところは、機構としても検討し得る論点と考えております。
○森部会長 どうもありがとうございました。それでは、議題6の議論はこれで終了させていただきます。続いて、議題8に移ります。準備ができましたら、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題8、資料No.8、医薬品ロナセン錠2mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 資料No.8の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全40ページの通し番号で4ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、非定型抗精神病薬であるブロナンセリンを有効成分とする経口剤であり、本邦においては2008年1月に、統合失調症の効能・効果で承認されております。また、同一の有効成分を含有するテープ剤が、2019年6月に統合失調症の効能・効果で承認されております。今般、小児の統合失調症に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。本剤は、2020年11月現在、韓国及び中国において統合失調症の効能・効果で承認されておりますが、いずれにおいても小児に対する用法・用量は承認されておりません。本申請の専門委員として、資料No.17に記載されている4名の委員を指名しております。
 臨床試験成績を中心に、審査の内容を説明させていただきます。まず、有効性について、審査報告書の通し番号8ページの表6を御覧ください。12歳以上18歳以下の小児統合失調症患者を対象とした国内第III相試験は、プラセボ、本剤8mg/日及び本剤16mg/日の3群を設定した無作為化二重盲検並行群間比較試験として実施されました。主要評価項目であるFASにおける治験薬投与6週時のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量について、本剤16mg/日群ではプラセボ群と比較して、統計学的な有意差が認められました。
 一方、本剤8mg/日群では、治験計画時に想定していたエフェクトサイズが得られず、プラセボ群との間に統計学的な有意差は認められませんでした。この点については、審査報告書の通し番号10ページ、7.R.1.2、本剤8mg/日の有効性についての項を御覧ください。審査報告書の通し番号11ページの表8のとおり、初発年齢が13歳未満の集団では、本剤8mg/日群とプラセボ群との群間差が小さい傾向にあり、一般に初発年齢が13歳未満の患者は難治性の傾向があるため、本剤8mg/日の有効性に影響した可能性が考えられました。
 その上で、審査報告書の通し番号12ページの表9~11のとおり、副次評価項目であるPANSSレスポンダーの割合及びCGI-I改善率では、プラセボ群と比較して本剤8mg/日群で割合が高く、改善傾向が認められ、また、長期投与試験における最頻投与量は本剤4~8mg/日が最も多く、多くの被験者は本剤4~8mg/日で効果を維持することが可能でした。以上の検討を踏まえ、小児統合失調症患者に対する本剤8mg/日の有効性に特段の問題はないと判断しました。
 次に、安全性について、審査報告書の通し番号16ページの表15を御覧ください。小児統合失調症患者を対象とした第III相試験及び長期投与試験と、成人の統合失調症患者を対象とした臨床試験における有害事象の発現状況の比較等を踏まえると、小児と成人における本剤の安全性プロファイルに明らかな差異は認められておらず、成人と同様の注意喚起の下で適正に使用されることを前提とすれば、小児統合失調症患者に対する本剤の安全性は許容可能と考えております。
 最後に用法・用量について、審査報告書の通し番号38ページの1.4、用法・用量についての項を御覧ください。開始用量及び漸増方法について、小児統合失調症患者を対象とした臨床試験では、被験者の安全性を考慮して、成人の維持用量下限の半量である本剤4mg/日を1日2回から投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて増量することとされ、漸増期間に特徴的な安全性の懸念は認められませんでした。次に、維持用量について、第III相試験及び長期投与試験の成績から、本剤8mg/日及び本剤16mg/日の有効性及び安全性に特段の問題はないと考えております。以上より、本剤の開始用量を4mg/日とし、維持用量を8~16mg/日とすることに問題はなく、増量する場合には1週間以上の間隔をあけて行うことを、添付文書の用法及び用量に関連する注意において注意喚起することが適切と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新用量医薬品としての申請であることから、再審査期間は4年間と設定することが適当と判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がありましたらお願いします。堀委員、どうぞ。
○堀委員 私からは、小児統合失調症患者の長期投与についてお尋ねいたします。添付文書の17.1.4を御覧ください。ここで国内の長期投与試験が行われて、その副作用発現率が65.1%と、私にしてはかなり高く感じられました。これを見ますと、小児が長期に投与する場合に関しては、今は52週後までのということで、大体1年少しですが、副作用発現率が高く出ているというように私には感じるのです。長期投与に関しては、いつまでというようなリミットはあるのでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。機構より回答いたします。小児の統合失調症の治療においては、成人と同様に、薬物療法と心理社会的療法を組み合わせて治療が進められることになります。本邦においては、いまのところ小児に対して承認されている医薬品がありませんので、確立されている治療法はありませんが、小児においても比較的早期の段階からの薬剤による介入が重要とされております。その後、病態がコントロールされるまでは、薬剤による治療を続けていくということになりますので、期間について特に制限はありません。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。ただ、この副作用発現率の65.1%というのが、私、患者といいますか一般市民の立場からだと、少し高いなと思うのです。これは問題がないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答いたします。審査報告書の通し番号9ページ、下から3段落目の有害事象の記載を御覧ください。長期投与試験においては90.6%の患者に有害事象が認められておりますが、そのうち重篤な有害事象は15例、うち本剤との因果関係が否定できなかった事象は統合失調症の事象が発現した1例のみであり、長期投与試験において認められた有害事象の多くは、軽度から中等度の事象となります。
○堀委員 分かりました。この患者の対象年齢が12歳からということで、いつも申し上げているように、12歳というと小学校6年生、中学校1年生で、自分自身の副作用を明確に伝えるのがなかなか難しいかと思いました。それで家族、親が確認すべきことは多々あるかと思い、そこが心配でしたので、もしこれを投与する場合には、副作用に関してもう少し詳しく御家族に伝えていただけると有り難いです。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。本剤については、既に患者向医薬品ガイドが作成されており、本剤投与に伴う有害事象について、患者に向けて情報提供をする体制が整っております。小児に対しても、引き続き同じような対応を取っていただくようにしたいと思います。
○堀委員 ありがとうございます。私からの意見は以上です。
○森部会長 森です。今のことですけれども、資材については、小児の方が使う際に、御両親が参考にする資材もお作りいただけるということでよろしいでしょうか。
○堀委員 はい、そうです。
○森部会長 機構さん、それでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 作成されているのは、患者向けのガイドとなります。
○森部会長 今お願いしたいのは、小児が使う場合に御両親向けの資材を別途作っていただけないかということです。そうしたことを御検討いただくことは可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。ただいま作成されている患者向医薬品ガイドにおいては、小児の患者だけではなく、その保護者も含めて、同じガイドにて情報提供をすることは可能と考えております。
○森部会長 汎用性があるという理解でよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 堀委員、それでよろしいですか。それとも、やはり御両親向けの資材があったほうが、なおよろしいでしょうか。
○堀委員 現物の資材は私も見ておりませんので、今ここでは何とも発言できないのですけれども、特に12歳、13歳の方でも分かりやすい、そして御家族の方が見ても投与の仕方や副作用の判断が分かりやすい資材を作っていただきたいと願っております。私からは以上です。ありがとうございます。
○森部会長 続いて、大森委員から御質問をお願いします。
○大森委員 自分の質問の前に、今の堀委員の御心配について、精神科医の立場で少し御説明します。例えば、資料の通し番号16ページの副作用を見ますと、8週間の試験でプラセボでも68%の有害事象が出るのです。ですから、長期試験でいろいろな訴えが出てくるけれども、全てが本当に薬のためというわけではないし、軽いものも多く含まれていると思います。90%にシリアスな副作用が出ているわけではないということで、少し御安心していただいてもいいのではないかと思っています。何だか事務局の代わりのようなお答えをしました。
 私の質問ですが、添付文書を見ますと、今度は小児と成人というように分かれたわけですが、小児の定義が全くないのです。対象となった試験を考えると、18歳までを小児とみなしているということになるのかもしれませんけれども、一般の小児というイメージは、普通は18歳まで及んでいないのではないかと思うのです。添付文書など、そういった厚労省関係の用語の使い方として、「小児」というのはどこをカバーするかということは、何かしらルールがあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より回答いたします。添付文書においては、記載上「小児」と書いた場合には、おおよそ15歳未満を指すことになります。ただし、品目ごとに状況が異なりまして、実際には臨床試験に組み入れられた小児患者の年齢層や、成人の臨床試験で対象とされた患者の年齢などを踏まえて、個々の品目ごとに適切な年齢層に対して使用いただいているものと考えております。
○大森委員 そうすると、この文書を読んだ人は通常15歳までというように解釈するけれども、それでいいのでしょうか。これは、小児と成人で使い方が異なるようになってくるので、そこは場合によっては問題になる可能性があると思うのです。
○医薬品医療機器総合機構 本剤の成人の臨床試験においては、15歳以上を対象にして実施されておりましたので、15歳以上に関しては成人の用法・用量で使用することは可能かと思います。
○大森委員 成人の試験は15歳以上で行ったのですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○大森委員 そうすると、今回の試験の年齢が12~18歳というのは、妙な設定だったということになるのではないでしょうか。小児の適応という意味では、本来は15歳までで行ったほうが適切だったような気がいたします。
○森部会長 御回答はいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床試験の対象患者として15~18歳が重複しているところではあり、臨床における成人の年齢層の認識が18歳以上か15歳以上かという観点で、幅があるかと思いますが、今回は小児として12~18歳と少し幅広に臨床試験が実施されたものと理解しております。
○大森委員 すると、この添付文書を守って医師や薬剤師がこの薬を処方するとなると、小児と成人の間は、15~18歳のどこに置くのかというようなことは。
○医薬品医療機器総合機構 患者の状態等に応じて、本剤の用法・用量をお決めいただくことになるとは思いますが、15歳以上の患者については、成人の用法・用量に準じて投与していただくことも差し支えないと考えております。
○大森委員 そのように読めるのではないかと疑問に思ってしまうのです。そうすると、念のためにですが、先ほど年齢が低いと少用量の効果が出てなかったということがありましたので、15歳以下だけのサブ解析の結果というのはあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査の過程においては、15歳で区分したときの有効性の結果なども確認させていただいておりますけれども、今回、審査報告書で13歳というのが、ちょうど臨床試験に組み入れられた患者の初発の年齢の中央値が13歳ということで、そちらの結果に基づいて13歳以下の部分集団解析を提示させていただいたところです。
○大森委員 臨床側としては、小児できちんと試験をやっていただいて、有効性と安全性を証明していただいたのは有り難いことで、歓迎なのですけれども、何か非常に曖昧で、対象を12~18歳で取っておいて、実際に使ってもらうのは12~15歳というと、試験と実際のずれがあるので、そこは気になってしまいます。
○大谷委員 慶應の大谷です。大森先生の御意見に大賛成です。
○森部会長 大谷先生、更に御意見はございますか。どうぞ。
○大谷委員 大森先生の御意見に大賛成でして、医療現場では、添付文書の記載事項で小児とは15歳未満とするということが明確に示されていて、医療現場はそれで動いていますので、18歳以下の人でやった試験の結果を基に15歳のことが決められていると、多分医療者は思わないと思いますから、この辺りは何らかの形で情報を整理して、きちんと添付文書を提供されたほうがよろしいのではないかと思います。大森先生の御意見に大賛成でございます。
○森部会長 堀委員、どうぞ。
○堀委員 患者向けの資材に関してもなのですが、添付文書の6の用法及び用量の所には、「通常成人には」と「通常小児には」という、この二つの文言しかありません。私ども子供を育てる親にしてみますと、大森委員や大谷委員がおっしゃったように「小児」と言いますと、15歳になるまでと理解します。そうすると、私たち一般市民は成人は18歳と理解しておりますので、15歳、16歳、17歳に関してはどうしたらいいのかという疑問が出てくるのではないかと思います。これをその都度、薬局ないしかかりつけのお医者さんに相談するべきことなのかどうかも躊躇してしまうのが本音です。ですから私どもが自分たちで薬を管理するのであるならば、やはり一般の人間が分かりやすいように書いていただかないと非常に困るということを、私から意見を述べさせていただきます。以上です。
○事務局 先生方ありがとうございます。今の御意見を総合しますと、こちらとしては添付文書や情報提供資材について、それらがしっかり分かるように追記させていただくものというように理解したのですが、そのような対応でよろしかったでしょうか。
○大森委員 具体的な対応が見えないのですけれども、分かるような形になればいいなとは思うのです。
○森部会長 大谷委員、御発言してください。
○大谷委員 今、チャットの方に定義をお送りしましたが、厚労省の方できちんと出されている、添付文書に書いたときの年齢の定義というのがあるわけですから、少なくともこれと齟齬(そご)がないようにやっていただきたいと思います。16歳、17歳の人を小児として扱われると非常に混乱すると思います。15歳未満と厚労省の方から明確に出されている定義と、絶対に齟齬(そご)がないような書類の作り込みをしていただければ、それでよろしいかと思います。
○森部会長 堀委員、どうぞ。
○堀委員 2人の先生方がおっしゃったように、ここの「通常成人には」や「小児には」という形ではなく、もし可能であるならば年齢を書いていただけると、非常に分かりやすいのではないかと思いました。以上です。
○森部会長 機構の方、どうぞ。
○医薬品医療機器総合機構 我々としましては、既承認の成人の用法・用量は「通常、成人には」とされており、その「成人」は、添付文書の記載要領を踏まえておおよそ15歳以上という認識で考えておりました。その上で、今回、小児の用法・用量が追加されましたが、「通常、小児には」という所も、添付文書の記載要領に従って15歳未満というような認識で考えております。したがって、通常と同様の考え方になりますので、例えば用法・用量の中で、あえて年齢を書く必要まではないのではないかと考えております。
 一方で、臨床試験で対象とされた年齢層と異なるのではないかというところは御指摘のとおりですが、この疾患領域ですと小児の患者数はかなり限られていることもあり、臨床試験は12歳以上18歳以下という区分で実施されたところです。その臨床試験の中で、15歳で区切った際の有効性や安全性について、年齢による特段の差異は認められませんでしたので、12~15歳までの患者において、本剤の有効性・安全性は確認されているというように考えております。
○大森委員 15歳以下で確認されているというところが、資料からはよく分からなかったのです。そこはもう一回説明していただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。15歳で区切った場合の成績については、資材等で情報提供ができるように対応させていただきたいと思います。
○大谷委員 大谷です。今のお話ですけれども、サブ解析をしない限りは、結局は小児、15歳未満の部分の有効性・安全性を担保するのに、18歳未満までの年齢全体を使って承認するという形になってしまわないのでしょうか。そこは大丈夫なのでしょうか。後、小児ということですけれども、例えば添付文書の体内動態などの16.1.4の小児というのは、これは小児ではなくて18歳未満の被験者ではないでしょうか。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 成人と小児については、さきほど大谷委員から御指摘いただいたとおり、添付文書における年齢の区分は厚労省の方から指針が出されておりますが、臨床試験の実施に当たっては、実施可能性等も考慮して、18歳以上で成人の臨床試験を実施する場合や、18歳未満で小児の臨床試験を実施する場合もあると思っております。
○事務局 御指摘いただいている議論を整理しますと、そもそも18歳までを対象にした試験を使って、今回、小児の適応を認めていいのかという今しがたの大谷委員の御意見と、それはそれで、機構からもあったように、15歳未満でも同様の傾向が見られているので、そこの部分は紛らわしいから添付文書なり資材なりをきちんと整備をしたほうがいいのではないかという二つの論点があるというように、事務局の方では理解をしています。
 仮に、前者の方が問題であれば、そもそも承認できるのかという話になると思います。後者の話であれば、そこの部分は申請者と相談をして適切な形に直すということで、承認自体は可として進めさせていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○大谷委員 大谷です。前者の方については、これが絶対に駄目だと言っているわけではなくて、その点も含めて、結局は使う方がそうした情報にきちんとアクセスできることが大事ではないかと思います。結果的に承認しないという話ではなくて、こういう形で承認されたということと、それがきちんと添付文書の方で、例えば18歳未満なのにまとめて「小児」と書かれてしまうと、これは15歳未満の結果なのだと思ってしまいがちであるため、その辺りを整備していただきたいと思います。これは個人的な意見です。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。大森委員もよろしいでしょうか。
○大森委員 それで結構ですが、数が足りないから結果は出ないかもしれませんけれども、やはり15歳以下でどうだったというのは調べておく必要があると思うのです。そこはお願いしたいと思います。
○森部会長 大変貴重な御意見をどうもありがとうございました。赤羽先生、どうぞ。
○赤羽委員 資料の提示の仕方についてお願いがあります。小児に対する有効性・安全性をこの場所で議論しなくてはいけないので、15歳未満のサブ解析の結果などを、やはり私たちに見える形でデータとして御提示いただきたいと思います。そこの議論ができていないまま、決して承認していけないというわけではないのですけれども、大谷先生や大森先生が御懸念されていることは、私もそういうように思っております。以上です。
○事務局 機構から、後ほど委員の先生方と個別に、ご説明はきちんとさせていただくということで。
○森部会長 機構の方から15歳未満の実際の解析のデータについて、詳細を大森先生と大谷先生と赤羽先生に御提示させていただくということで、御確認の上で進めていくということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ただいま御指摘いただいた点を踏まえて、必要な情報については適切に情報提供をさせていただき、添付文書においても15歳未満、15歳以上の情報について、きちんと盛り込めるように対応させていただきます。
○森部会長 合田委員、どうぞ御発言してください。
○合田委員 今の添付文書のことがどうだったのかと思っただけですから、今の機構のお答えで結構です。
○森部会長 分かりました。議論をどうもありがとうございました。柴田委員、どうぞお願いします。
○柴田委員 柴田です。コメント一つと質問一つがあります。もう既に今までの議論の中でもありましたが、小児の用法・用量を定めるに当たって、18歳までの治験が行われたこと自体を否定するつもりは全くありませんが、今回の添付文書の記載情報を示す根拠としては、やはり15歳以下のサブグループの解析というのは必須であって、その必須な情報が審査報告書に載っていないというのは、機構の御判断が著しくおかしいと思います。これは、今までの先生方の御発言に対してデータの示し方がおかしいというのは、本件に限らず、いろいろなところで臨床の先生方からもコメントが出ていたことだと思います。そこは、機構の方もきちんと考え直していただきたいと思います。薬事に関して素人の方が審査をしたものではなくて、小児とは何かという定義を知っている皆さんが審査をして、15歳以下のデータをきちんと明示的に出していないというのは、何かしらおかしいと思いました。以上がコメントです。
 それから、審査報告書の通しの11/40の表8について質問させてください。表8の初発年齢13歳未満の8mg群の数字を見ますと、ベースラインでのスコアの平均が80.4から68.3に変化していて、それをMMRMに基づく解析で変化量を計算すると、-10.7になります。これは実際に、80.4と68.3というような単純な集計から見たものよりも、変化量が小さくなっていると思います。
 何が起こっているかというのは、実際の個別の患者のデータを見ないと分かりませんが、一つのスペキュレーションとしては、途中で欠測になった患者さんが、悪くなっている方が欠測となっているために、見た目の平均値ではそこそこ落ちているけれども途中でデータが得られなくなった患者さんが結構悪くなっていたために、治療が継続できないとか、そうしたことによって統計学的に調整した変化量が、見た目の変化量と結構変わっているという結果が出ているのではないかと推察します。
 そうした検討に基づいて、機構の方に御質問します。この8mgを使っていいかどうかという議論をするに当たって、治験の中で状態の悪い患者さん、薬が効きにくい患者さんが入っていたから有意差が出なかったという議論を熱心にされていますが、実際に8mgでなかなか効いていなかった18歳未満の方に、きちんと適切なタイミングで16mgまで増量していくということを行えば、適切に治療に導入できるということで、それを担保するほうが重要ではないかと思います。実際に、臨床現場にそうした患者さんがいるからです。そういうように考えると、逆に言うと、今のお話や今のデータから、8mgから16mgにきちんと増量するタイミングを逸してしまうと、効果不十分で途中で治療を中止してしまうということが起こるのではないかという懸念があります。であるため、もしそうしたところを詰めておられるのであれば、実際にどういう方が途中で脱落していたのかを教えていただきたいのです。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。まず、御指摘いただいた報告書の記載方法については、今後留意したいと思います。
 御質問いただいた点について、第III相試験は固定用量で行われましたので、効果不十分等で中止した被験者が認められました。その上で、審査報告書の33ページの上から4ポツ目、D4907002試験において効果不十分で増量し、増量後に改善が認められた患者の割合を、表29に示しております。御指摘いただいたとおり、効果不十分の患者については適切なタイミングで増量を御検討いただくことで、本剤の治療効果を期待することが可能なのではないかと思っております。
○森部会長 柴田委員、そのような回答でよろしいでしょうか。
○柴田委員 はい、ありがとうございました。
○森部会長 柴田先生、コメントと御質問をどうもありがとうございました。この後、議決に移ってよろしいでしょうか。なお、大森委員、代田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただいております。
 それでは、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がありませんでしたので、承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。ロビーで待機されている佐藤直樹委員をお呼びください。佐藤委員、どうぞお戻りください。
──佐藤(直)委員入室──
○森部会長 では、引き続き議題9に移ります。機構から、議題9についての概要説明がありますので、お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題9、資料No.9、医薬品ユプリズナ点滴静注100mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 資料No.9の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全59ページの通し番号で5ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。視神経脊髄炎スペクトラム障害(以下、NMOSDという)は、重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする中枢神経系の自己免疫性炎症性脱髄疾患です。本剤の有効成分であるイネビリズマブ(遺伝子組換え)は、CD19に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、本剤はCD19陽性B細胞数を減少させ、抗アクアポリン4抗体(以下、抗AQP4抗体という)等の自己抗体の産生を低下させることで、NMOSDに対する治療効果を示すことが期待されております。
 今般、NMOSDに対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。海外ではNMOSDに係る効能に関して、米国では2020年6月に承認され、○○では現在審査中です。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。本申請の専門委員として、資料No.17に記載されている11名の委員を指名しております。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。まず、有効性について、審査報告書の通し番号31ページの表29を御覧ください。NMOSD患者を対象とした国際共同第II/III相試験において、主要評価項目である二重盲検期間におけるNMOSD発作までの期間について、プラセボ群に対する本剤群のハザード比を算出した結果、抗AQP4抗体陽性ITT集団では0.227、ITT集団では0.272であり、本剤の有効性が示されました。
 抗AQP4抗体陰性集団について、審査報告書の通し番号35ページの表32を御覧ください。抗AQP4抗体陰性集団の被験者は少数であり、抗AQP4抗体陰性集団の本剤群ではNMOSD発作が認められたものの、プラセボ群ではNMOSD発作が認められていないこと等から、抗AQP4抗体陰性の患者に対する本剤の有効性を評価することは困難であり、抗AQP4抗体陰性の患者に対する本剤の有効性は明確になっていないと考えました。
 次に、審査報告書の通し番号53ページの1.1、有効性及び効能・効果についてを御覧ください。抗AQP4抗体陰性の患者に対する本剤の有効性は明確になっていないこと、抗AQP4抗体陰性のNMOSDの病態は、抗AQP4抗体陽性のNMOSDの病態とは異なることから、本剤の投与対象は抗AQP4抗体陽性の患者とすることが適切であると判断し、添付文書の効能・効果に関連する注意の項に、本剤は抗AQP4抗体陽性の患者に投与することを注意喚起する必要があると判断いたしました。
 最後に、安全性について、審査報告書の通し番号38ページの7.R.2、安全性についての項を御覧ください。今般、提出された臨床試験成績、本剤の作用機序等に基づき、個別の事象について検討した結果、本剤投与に当たっては、特に注入に伴う反応、感染症、白血球減少・好中球減少・リンパ球減少、免疫グロブリン濃度の低下、進行性多巣性白質脳症、B型肝炎ウイルスの再活性化について注意する必要があるものの、適切な注意喚起の下であれば管理可能であり、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年間、生物由来製品に該当し、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。委員の先生方から、御質問等がありましたらお願いいたします。
○石川委員 説明ありがとうございました。有効性を判断された35ページの表32の所の統計学的な解析について確認したいのですが、これは対照のプラセボ群と本剤群とでは、患者さん、対象の数が全然違っていて、投与群は細かく分けられていますけれども、実際、最終的には有効性を全部ひっくるめて解析されています。こういう方法は、少し違和感を感じるのですが、統計の先生など、あるいはこの辺りについてどのように議論されていたか、具体的にはいろいろな量で分けて解析されていたので、その細かい統計解析結果もお示しするべきではないかと思って質問させていただきました。まず、1点目の質問は以上です。
○森部会長 機構から、今の御回答をお待ちしております。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。御質問いただきましたのは、審査報告書の通し番号35ページの表32において、抗AQP4抗体陽性と陰性に分けて解析しているところについて、解析理由も含めて確認したいという御意図と認識しましたが、その理解で合っていますでしょうか。
○石川委員 すみません、少し説明が不足していました。抗アクアポリン4抗体陽性の例だけにおいてのことですけれども、プラセボ群が52例で、本剤群が161例という、3倍も違っているわけです。161例の内訳が示されていて、分けて、量も変えて投与されていて、実際は161例が、もっとサブクラシファイされているわけですけれども、最終的な統計結果は、表32には全部ひっくるめて出ているという、そうした解析方法に関して、分けているのであれば、分けたごとの解析が必要ではないかという質問でした。
○森部会長 石川先生、これ、割付けは1対3の割付けではないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。ただ今、部会長より御指摘いただきましたとおり、今回の臨床試験におきましては、審査報告書の通し番号30ページの下部の注釈19にもありますとおり、プラセボ群と本剤群での割付けが1対3の比で割り付けられることとなっており、その割付け比を踏まえた結果となっております。
○石川委員 例えば23/59ページを見ますと、実際には本剤群というのは量が大分ふってあります。これに対応するのかと思ったのですけれども、量がふってあって、いろいろな量が異なるのを全部ひっくるめてプラセボと比較という、そうしたやり方をなさっていらっしゃるように理解したのですが。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただいてもよろしいでしょうか。ただ今、先生からお示しいただきました審査報告書23ページの表20の本剤群ですが、これは第I相試験の結果を記載しているものでして、有効性・安全性を評価する試験とは別の試験になります。先ほど審査報告書35ページの表32でお示しした試験は、23ページの表の試験とは別の試験の結果であり、本剤群は、300mgの1用量のみになります。説明は以上になりますが、いかがでしょうか。
○石川委員 分かりました。では、反復投与などの結果は御説明はなさってらっしゃらなかったのですけれども、先ほど口頭では。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書23ページの表20の結果は、第I相試験として実施された試験でして、主な検討目的は、安全性や薬物動態の評価になっております。本日は、有効性及び安全性の評価をした試験を中心に、説明させていただきました。
○石川委員 分かりました。では、1対3というものの問題に戻りますけれども、それのそうした方法は、特別問題ないのですね。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。第II/III相試験に関して、1対3で割り付けたことについては、特に問題ないものと考えております。
○石川委員 はい、承知しました。もう一つ質問させていただきますけれども、抗アクアポリン4抗体陰性のものに対して有効性が確認できなかったというのは、お立場といいますか、理解は、よくこちらも理解できましたが、添付文書では、少しそこが不明確で、よく見るとその下の方に「情報は不十分だった」と書いていらっしゃるのですけれども、添付文書をもう少し明確に、例えば適応の所に「抗アクアポリン4抗体陽性のNMOSD」というようにお書きしたほうがいいのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えします。御質問いただいた点について、添付文書を御覧いただければと思います。添付文書の1ページの5.2の項において、効能又は効果に関連する注意として、「抗アクアポリン4抗体陰性の患者において有効性を示すデータは限られている」の後に、「本剤は、抗アクアポリン4抗体陽性の患者に投与すること」を明記させていただいております。効能又は効果だけでなく、効能又は効果に関連する注意の項も含めて投与対象が判断されることになると考えておりますため、こちらの注意喚起で問題ないと考えております。説明は以上になります。
○石川委員 ありがとうございました。そうすると、認識の違いなのですけれども、4番の効能又は効果の所に書いたほうがいいかと思ったのです。ですけれども、確かに下にここに書いてあるのでは、私は十分ではないかと思ったのですが、5の方に書いてあればいいと、どうもそういうお立場なのですね。それなら了解しました。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 どうもありがとうございました。機構の方に一つお願いがあります。私ども、審査のときに第III相試験を大変重視していますので、例えば割付けが、特別な割付けが行われている場合には、その状況プラス背景も教えていただければ大変助かりますので、よろしくお願いします。聞こえていますでしょうか。それでは、柴田先生から御質問です、どうぞ。
○柴田委員 審査報告書通しの34/59、中間解析の結果で止めたことに関する議論について質問させてください。ここで、タイプIエラーがきちんとコントロールされているか否かという議論はされているのですが、もう一つ、恐らく機構の方も議論されているとは思いますが、ハザード比の推定値が過大評価されるという方向にバイアスが入るということが普段起こります。それを判断するために必要な情報として、もともとこの試験の主たる解析のタイミングで想定していたイベント数と、この中間解析で止めると判断したときのイベント数の比がどの程度なのか、予定されていたイベント数に対して何割ぐらいのイベントが観察されたところで止めたのかという情報が重要になるのですが、この試験はもともと何イベントが観察されることを想定してデザインされた試験なのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。審査報告書の通し番号30ページを御確認いただければと思います。下部の注釈18において、この試験の試験計画時には、必要イベント数は67件とされておりました。
○柴田委員 ありがとうございます。すみません、ここを見落としておりました。ということであれば、比較的0.227というハザード比は非常にインパクトのある数字ですが、ある程度のイベント数が観察されたところで止まっているということですので、今回の結論に対して大きな異議はございません。ありがとうございました。
○森部会長 ほかの先生方からの御意見はございますか。それでは、議決に移ってよろしいでしょうか。なお、武田委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。
 それでは、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。では、御異議ありませんでしたので、承認を可とし、薬事分科会の方に報告させていただきます。
 続いて、議題10に移ります。機構から概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題10、資料No.10、医薬品ケシンプタ皮下注20mgペンの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 資料No.10の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、通し番号62ページの3ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。多発性硬化症(以下、MSという)は、脳・視神経・脊髄等の中枢神経系に時間的・空間的に病変が多発することで、歩行障害、嚥下・構音障害、視覚障害等の多岐にわたる神経症状を呈する自己免疫性炎症性脱髄疾患です。MSは、臨床経過に基づき、再発と寛解を繰り返す再発寛解型(以下、RRMSという)、RRMSとして経過した後に再発の有無にかかわらず身体的障害が徐々に進行する二次性進行型(以下、SPMSという)、発症時から再発を伴わずに身体障害が進行する一次性進行型(以下、PPMSという)の3病型に分類されます。また、RRMSと再発が認められる段階にある疾患活動性を有するSPMSをまとめて再発性のMS(以下、RMSという)と称することもあります。
 本剤の有効成分であるオファツムマブ(遺伝子組換え)は、CD20に対するモノクローナル抗体であり、本邦では既に、CD20陽性の慢性リンパ性白血病に対して点滴静注製剤が承認されています。本剤は皮下注射製剤であり、MSに対してはCD20陽性の自己反応性B細胞を減少させることで効果を示すということが期待されております。
 今般、国内外の臨床試験成績に基づき、有効性及び安全性が確認されたとして製造販売承認申請が行われました。海外では、2021年1月時点で、米国、カナダなどで承認され、欧州においては審査中となっております。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。本申請の専門委員として、資料No.17に記載されている6名の委員を指名しております。
 審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。まず、有効性について、審査報告書の通し番号23ページの表23を御覧ください。臨床的な再発との相関性が報告されているMRI画像所見を指標に、RMS患者を対象とした国際共同第II相試験が実施され、主要評価項目とされた「投与24週後までのMRIスキャン当たりのGd造影T1病変数」において、本剤群ではプラセボ群と比較して、統計学的に有意な抑制効果が認められました。
 続いて、年間再発率について、審査報告書の通し番号24ページの表24及び26ページの表26を御覧ください。海外第III相試験において、RMS患者を対象として、海外では標準的治療薬とされているTeriflunomide(表中ではTERと略す)を対照に、同一デザインで二つの試験が実施され、主要評価項目である年間再発率について、本剤群ではTeriflunomide群と比較して、統計学的に有意な抑制効果が認められました。
 続いて、審査報告書の通し番号33ページの表34及び表35を御覧ください。先に御説明した二つの海外第III相試験の結果を併合解析して、事前に規定されていたMSの身体的障害の進行抑制効果が検討された結果、3か月持続する障害増悪が認められる期間、6か月持続する障害増悪が認められる期間のいずれの評価項目においても、本剤群ではTeriflunomide群と比較して、統計学的に有意な抑制効果が認められました。以上の結果から、本剤のRMSに対する再発予防効果及び身体的障害の進行抑制効果は示されていると判断しました。
 次に、効能・効果について、審査報告書の通し番号56ページの1.1、有効性及び効能・効果についての項を御覧ください。国際共同第II相試験及び海外第III相試験の結果から、本剤の再発予防効果及び身体的障害の進行抑制効果は示されていることから、効能・効果に再発予防及び身体的障害の進行抑制を明記することに問題はないと考えました。また、国際共同第II相試験及び海外第III相試験ではRMS患者を対象とされたことなどから、RRMS及び疾患活動性を有するSPMSを含むRMSを本剤の投与対象とすることに問題はないと考えました。しかしながら、効能・効果の表記について、国内MS診療ガイドライン、国内診断基準、国際疾病分類第11版などでは、RMSの定義が記載されていないことから、専門協議での意見を踏まえ、RRMS及び疾患活動性を有するSPMSを効能・効果とすることが適切であると判断しました。
 以上を踏まえまして、本剤の効能・効果としては、審査報告書の通し番号57ページの中段にあります「効能・効果」に記載している効能・効果とすることが適切と判断しました。
 最後に、安全性について、審査報告書の通し番号36ページの7.R.3、安全性についての項を御覧ください。今般、提出された臨床試験成績、本剤の作用機序などに基づき、個別の事象について検討した結果、本剤投与に当たっては、特に注射に伴う全身反応、感染症、白血球数減少、免疫グロブリン濃度の低下、進行性多巣性白質脳症、B型肝炎ウイルスの再活性化について注意する必要があるものの、適切な注意喚起の下であれば管理可能であり、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であるため、再審査期間は10年、生物由来製品に該当し、製剤は劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。
 なお、部会長の森先生より、海外第III相試験におけるデータベースのアクセス権の不適切な管理に関する再発防止策と同様の事案の有無について、事前に御質問を頂いておりましたので、この場をお借りしまして回答させていただきます。
 審査報告書の通し番号29ページの7.R.1.3、海外第III相試験におけるデータベースのアクセス権の不適切な管理の影響についての項を御覧ください。本項の記載について、少し補足しながら説明させていただきます。今回の海外第III相試験では、約2,900名の評価者が参加しており、このうち不適切なアクセス権が付与されたのは45名で、このうち実際にデータの入力や変更を行っていたのは6名という状況でした。なお、この6名によるデータの入力や変更内容については、機構が実施している適合性調査においても確認しております。不適切なアクセス権が付与された45名により評価された全例を除いた感度解析を確認した結果、審査報告書にも記載したとおり、評価を行う上で大きな影響はなかったということを確認しております。
 次に、再発防止策について説明させていただきます。再発防止策として、ユーザーアクセス権の付与及び管理のための新しいSOPを発行し、第三者によるユーザーアクセス権の定期的なレビューについて規定する、また臨床試験の品質リスク管理活動を文書化、追跡、報告するシステムを導入し、この中で臨床試験におけるデータベース間のアクセス権のクロスチェックの方法及び頻度などについても検討するということなどが説明されております。
 最後に、同様の事案の有無についてですが、昨年御審議いただきました多発性硬化症治療薬であるシポニモドフマル酸の臨床試験でも認められておりまして、シポニモドと本剤の事案を受け、厚生労働省宛てに顛末書が提出されております。なお、シポニモドの事案が明らかになった時点で、既に本剤の海外第III相試験は、開始から一定期間経過していた段階でした。本剤の治験においても、先ほど御紹介した事案が確認された段階で、各データベースのアクセス権については適切に再設定されております。現在は、シポニモドと本剤で生じた事案を踏まえ、先ほど御説明した再発防止策が講じられているという状況です。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。承認の際に大変重要である臨床試験が適正に行われることが前提になりますので、今回の顛末書のことも含めまして、是非再発防止に努力していただきたいと思っております。いかがでしょうか。御質問はありませんでしょうか。
○宮川委員 宮川です。質問ではなく、機構の方々も御苦労されたことと思います。それから今、森部会長がおっしゃったことは非常に重要なことで、これを見ると、どの会社かということがよく分かるので、このようなことがこれから一切ないようなことを望むわけです。審議に対しては公平にいつも見ていかなければいけないということで、これは機構の方の御苦労を察しますけれども、これからもこういうようなことに対しては、厳しくしっかり見ていくことが必要だろうと思います。以上です。ありがとうございました。
○森部会長 宮川委員、どうも御発言ありがとうございました。ほかの先生方から御意見がありませんでしたら、議決に入らせていただきます。なお、大森委員、佐藤直樹委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただいております。
 それでは、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がありませんので、承認を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題11に移ります。今から準備に入っていただきます。先生方、長時間になっておりますので、是非脚のマッサージなどもしていただいて、DVTの防止を図っていただけたらと思います。水分もどうぞお取りください。
○医薬品医療機器総合機構 審議事項の議題11と、報告事項の議題1について御説明いたします。資料はタブレットの資料No.11とNo.12になります。
 まず、審議事項の議題11、医薬品インスリン アスパルトBS注ソロスターNR「サノフィ」、同注カート NR「サノフィ」及び同注100単位/mL NR「サノフィ」の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について御説明いたします。資料No.11、No.12の別紙(3)毒薬・劇薬等の指定審査資料のまとめを適宜御覧ください。
 本剤は、超速効型のヒトインスリンアナログ製剤であるノボラピッドを先行バイオ医薬品とするバイオ後続品として、サノフィ株式会社により製造販売承認申請がなされました。本剤は、大腸菌を用いて製造され、原料等に生物由来成分は使用されていないことから、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当と考えております。また、先行バイオ医薬品のノボラピッドは、原体及び製剤ともに劇薬に指定されていることから、ノボラピッドと同等・同質である本剤についても、原体及び製剤ともに劇薬とすることが適当と考えております。
 審議事項の議題11、本剤の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について、御審議のほどよろしくお願いいたします。
 また、同一品目に係る報告事項の議題1についても、併せて御説明いたします。機構における審査の結果、本剤とノボラピッドの同等性・同質性が確認されたことから、本剤をノボラピッドのバイオ後続品として承認して差し支えないと判断いたしました。以上となります。よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。確認事項ですが、医薬品名に「NR」と記号が入っていますと、これはノボラピッドの同等品で、フィアスプとは同等ではないという意味のための識字になっているということでした。付帯情報としてお伝えしております。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりでございます。
○森部会長 特に御質問はよろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。本議題について劇薬に指定し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも指定しないことを可としてよろしいでしょうか。御異議がありませんでしたので、劇薬に指定し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも指定しないことを可とし、薬事分科会に報告させていただきます。また、報告事項議題1についても、御確認いただいたものといたします。
 続いて、報告事項に移ります。それでは、報告事項の議題2、議題3について、事務局から御説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。報告議題2と報告議題3をまとめて御説明させていただきます。まず、報告議題2についてですが、医薬品コレクチム軟膏0.25%の製造販売承認について並びにコレクチム軟膏0.5%の製造販売承認事項一部変更承認についてです。
 本剤は、デルゴシチニブを有効成分とする軟膏剤でして、アトピー性皮膚炎に係る効能・効果で承認がされているところです。今般、小児のアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内臨床試験が実施されまして、日本たばこ産業株式会社より、新用量・剤形追加に係る0.25%製剤の製造販売承認申請及び新用量に係る0.5%製剤の製造販売承認事項一部変更承認申請がなされております。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。
 続いて、議題3、医療用医薬品の再審査結果についてです。資料No.14-1~資料No.14-3です。まず、資料No.14-1ですが、有効成分名が「ガバペンチンエナカビル」、販売名が「レグナイト錠300mg」、資料No.14-2が、有効成分名が「デノスマブ(遺伝子組換え)」、販売名が「プラリア皮下注60mgシリンジ」、資料No.14-3が、有効成分名が「ホスアプレピタントメグルミン」、販売名が「プロイメンド点滴静注用150mg」です。
 これらの品目については、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査及び製造販売後臨床試験に基づいて再審査申請が行われまして、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要がない「カテゴリー1」と判定させていただいております。事務局からは以上でございます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がありましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、報告事項議題2及び3については、御確認いただいたものとします。
 続いて、その他の事項に移ります。その他の事項について事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。その他の議題1、最適使用推進ガイドラインの対象となる医薬品の選定を行いましたので、説明をさせていただきます。資料No.15の2ページを御覧いただければと思います。
 平成29年9月15日付けの最適使用推進ガイドラインの取扱いに関する通知におきまして、最適使用推進ガイドラインの対象医薬品や作成の手続等をお示ししておりますが、1の対象医薬品の選定の考え方に記載されているような最適使用推進ガイドラインの作成対象となる医薬品を選定した場合には、2に記載のとおり、直近の薬事・食品衛生審議会の担当部会に報告することとしております。
 今回の品目ですが、1ページ、バイオジェン・ジャパン株式会社よりアデュヘルム点滴静注170mg、同点滴静注300mg、一般名アデュカヌマブ(遺伝子組換え)について、記載のとおり、軽度認知障害及び軽度認知症の病期にあるアルツハイマー病の病勢進行による臨床状態悪化の抑制に対する効能・効果に関して承認申請がなされたことから、当該医薬品を最適使用推進ガイドラインの作成対象の医薬品として選定いたしました。今後、関係学会等に御協力いただきつつガイドライン案の検討を進め、本剤の承認について、部会で御審議いただく際に、改めてガイドライン案を御確認いただく予定としております。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がありましたら、お願いいたします。それでは、その他の事項についても御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はございますか。
○事務局 事務局でございます。長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。次回の部会ですが、4月28日(水)午後6時から開催させていただく予定です。また、状況に応じまして、部会の開催方法について御連絡させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日は大変長時間にわたり、本当にどうもありがとうございました。これで終了させていただきます。失礼いたします。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)