第22回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和3年7月29日(木) 9:05~13:08

場所

オンライン開催

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)部会長の選出及び部会長代理の指名
    2. (2)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間実績評価について
    3. (3)国立研究開発法人国立がん研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間実績評価について
    4. (4)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立成育医療研究センター

資料1-1 令和2事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和2事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和2事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和2事業年度 監査報告書
資料1-5 第2期中長期目標期間 期間実績評価書(案)
資料1-6 第2期中長期目標期間 期間実績評価説明資料

国立研究開発法人国立がん研究センター

資料2-1 令和2事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和2事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和2事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和2事業年度 監査報告書
資料2-5 第2期中長期目標期間 期間実績評価書(案)
資料2-6 第2期中長期目標期間 期間実績評価説明資料

議事

第22回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 定刻を少々過ぎてしまいました。失礼しました。ただいまより「第22回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催します。新型コロナウイルス感染症対策の観点からオンライン会議とさせていただいております。委員の皆様には大変お忙しい中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。部会長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきます研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室の武藤と申します。よろしくお願いします。
 本日は、深見委員及び藤川委員より、御欠席との連絡を頂いております。また、花井委員より、10時から12時の間、御退席される予定との連絡を頂いております。なお、出席委員に関しましては過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告します。
 また、前回まで本部会の委員を務めていただいた福井委員及び斎藤委員が御退任されたことの御報告と併せまして、新しく本部会の委員に御就任いただいた方を紹介します。50音順に紹介させていただきます。土岐祐一郎委員です。
 
○土岐部会長代理
 皆様、よろしくお願いします。私は現在、癌治療学会の理事長をしております。よろしくお願いします。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 続いて、根岸茂登美委員です。
 
○根岸委員
 おはようございます。藤沢タクシーの根岸と申します。初めて参加させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 ありがとうございました。なお、研究開発振興課長の笠松は本日、事情により欠席となります。続いて、本部会の開催に当たり、国立高度専門医療研究センター支援室長の髙野より御挨拶します。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室髙野室長
 NC支援室の髙野と申します。よろしくお願いします。委員の先生方におかれましては、朝の早い中、大変お忙しい中をお時間を頂きまして、ありがとうございます。
 国立高度専門医療研究センターについては、先般御議論いただきました第3期中長期目標が本年度より開始されたところであり、昨年度に第2期中長期目標が終了したところです。そのため、本部会におきまして、令和2年度の業務実績評価に加え、平成27年度から令和2年度までの6年間に当たります第2期中長期目標期間の業務実績評価について、御意見を聴取するものです。
 本日は、国立成育医療研究センター及び国立がん研究センターにおける業務実績評価について、委員の皆様の御専門の立場から御意見や御助言を頂けますようお願い申し上げます。
 簡単ではございますが、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 それでは、本日のオンライン会議の進め方について御説明します。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようにお願いします。御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いします。その際は、マイクのミュートを解除していただくようお願いします。御発言の際ですが、必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には、資料番号と該当ページをお示しいただくようお願いします。また、御発言終了後は再度マイクをミュートにしていただくようお願いします。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して、経過時間等を画面に表示させていただきますので、御承知おきいただけますようお願いします。
 続いて、本日の議事を御説明します。本日は、部会長の選出及び部会長代理の指名を行った後、国立成育医療研究センター及び国立がん研究センターに関する令和2年度業務実績評価と、中長期目標期間実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れについては、評価項目ごとに年度評価、期間実績評価の順に法人から説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと思います。なお、期間実績評価については、昨年度に見込評価を実施しているため、見込評価における大臣評価とは異なる自己評価を付けている項目を中心に説明・議論を行っていただく予定です。
 それでは、本日の会議資料の御確認をお願いします。委員の皆様におかれましては、お手元に今から申し上げる資料があるか御確認ください。議事次第、資料1-2、資料1-4、資料1-6、資料2-2、資料2-4、資料2-6、お手元に御準備いただいておりますでしょうか。その他の資料については、事前にお知らせしましたURLより閲覧していただくようお願いします。
 評定記入用紙については、様式の電子媒体を送付しておりますので、そちらに御記入いただき、事務局に御提出をお願いします。資料の閲覧方法について御不明な点がございましたら、チャット機能で事務局までお申し付けください。
 以降は議事に入る予定ですが、議事に入る前に評価に当たっての留意事項について、調査分析・評価担当参事官の生田より御説明をさせていただきます。参考資料3をお手元に御用意ください。
 
○政策統括官政策立案・評価担当参事官室生田参事官
 参考資料3です。私は、政策立案・評価担当参事官室の生田でございます。よろしくお願いします。今回、独法評価に関して少し見直しを行っておりますので、その点について御説明をさせていただきます。まず1ページ目ですが、これは現行のやり方についてです。これは中期目標管理型という、研究開発法人に直接これが当てはまるということではないのですが、考え方については共通している部分がありますので、これで説明をさせていただきます。
 ポイントは真ん中の所で、B評価が標準であるということです。定量的な指標があるものについては、100%以上120%未満というものがBに該当します。120%以上がAで、これに加えて更に質的に顕著な成果があった場合にSとなりますので、Sというのはそうなかなか簡単に取れる評価ではないということです。また、Bについては所期の目標を達成している状態であり、先ほど申し上げましたように100%でもBになりますので、逆に言うと、Bだから法人がちゃんとやっていないということにはならないということになります。こういった点を改めて念頭に置いて、御議論いただければと思います。
 2ページ目です。今回の見直しの内容ですけれども、私は昨年の夏に今のポストに着任をしまして、ワンサイクル評価をやったのですが、そういう中で改善したほうがよいかなという点も出てきました。今、御説明したBが標準というところも踏まえながら、より適正な評価を行うため、厚労省はきちんとした評価をやっていますねと受け取られるように今回、見直しを行っているということです。
1つ目は目標設定の場面で、これは厚労省の中の問題でもありますけれども、現在は目標を作るときに評価部局、この評価部局というのは我々の部局のことでして、法人所管部局のことではなくて評価の取りまとめを行っている我々政策統括官という部署になりますが、この我々が目標策定時に関与する仕組みになっていないということがあり、結果として目標は研修回数や雑誌の発行回数など、単に実施すると終わりという目標、あるいは連続して150%とか200%など、非常に高い達成率になっているもの、こういうものが見受けられるということがございます。したがいまして、法人所管部局だけで目標を決めるのではなくて、政策統括官という我々の部署もちゃんとチェックをするという仕組みにします。また、目標設定に関して共通のルールを作ることにしました。
 もう1つは評価の場面です。我々のほうでもこういった会議、有識者会議というものを運営しているのですが、有識者の方々に御議論いただくという場を設けても、資料や説明が法人の業務内容中心になってしまうことも多くあるということで、なぜそういう評価になるのかという議論になかなかならないということがございます。したがって、資料については評価のポイントが分かるような様式に改め、会議では評価の妥当性について重点的に御議論いただきたいと考えております。今回、見直し後の様式に沿いまして評価の要約の資料を作成いただいておりますので、これに基づきまして御議論をお願いしたいと思います。
 3ページ目です。目標策定のルールについてです。ただ、研究開発法人の場合には、なお書きにありますけれども、総務省の指針において研究開発成果の最大化、これが重要なのだということで、定量的な水準・観点について考慮しつつも客観性を追求し過ぎないように留意をするといった趣旨のことが書かれておりますので、その点を改めて明記しております。その上で、定量的指標については、1つの目標に対して3~5個程度を目安に設定する。それから、定量的指標については、事業の実施頻度、単に雑誌を何回発行するとか研修会を何回開催する等ではなくて、例えば研修対象者数や満足度、これがすごく良い目標だということではないのですが、より成果に関連する内容について目標にする。定量的指標が平均してずっと120%以上の達成度になっている場合には目標の見直しを検討しましょうということ。それから、重要度高を付すことができますが、これは全体の半数以下にしましょう。こういったことを定めております。
 次のページです。これが新しい様式になりまして、目標の内容、指標の達成状況について、見てすぐ分かるようにきちんと書いていただく。また、下に要因分析という欄がございまして指標の達成率が120%以上、あるいは80%未満の場合には何がその要因なのかということについても書いていただくということです。
 続いて次のページ、評定の根拠ということで、どうしてそういう評定にするのかということについてしっかりと書いていただいて、会議の中でこういった所を中心に御議論いただければと思います。説明は以上です。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局からの説明は以上ですが、何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。初めに、本部会の部会長の選出及び部会長代理の指名を行います。参考資料2、厚生労働省国立研究開発法人審議会令の2ページを御覧ください。第5条第3項において「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員のうちから、当該部会に属する委員が選挙する」と規定されております。なお、選挙の方法については、委員の互選となっておりますので、皆様から御推薦いただければと思います。いかがでしょうか。大西先生、お願いします。
 
○大西委員
 大西です。よろしいでしょうか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 どうぞ。
 
○大西委員
 これまでの御経験を踏まえまして、前期に引き続き、祖父江委員を部会長に推薦したいと思います。よろしくどうぞ。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 ただいま大西委員から祖父江委員を御推薦いただきましたが、委員の皆様、いかがでしょうか。御異議がないようですので、祖父江委員に本部会の部会長をお願いしたいと思います。それでは、以降の進行については祖父江部会長にお願いします。
 
○祖父江部会長
 どうも皆さん、ありがとうございます。大西先生から御指名として皆様の御承認を頂いたということで、祖父江ですが、引き続きこの評価部会の部会長という大役を仰せつかりましたので、全力を尽くしてやりたいと思います。部会長ということで、議事を進行させていただくことになりますが、是非皆様の御協力を頂き、円滑に進めたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いします。
 それでは、議事を始めますが、もう1つ決めておかないといけないことがございまして、それは、参考資料2に書いてございますが、部会長にもし何か事故等があるときは、当該部会に属する委員のうちから、部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代行するという定めがございます。これは部会長代理ということですが、この代理の先生を、今度新しく入っていただきました土岐委員にお願いしたいと存じますが、いかがでございましょうか。これは、部会長代理は部会長の指名ということですので、御承認というプロセスはございませんが、是非御了解いただけたらと思いますので、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。それでは、土岐先生、よろしくお願いします。
 
○土岐部会長代理
 はい、祖父江先生の代理ということで、何かあったときには、よろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 よろしくお願いします。それでは、今日は2つの医療研究センターの評価をするということで、しかも、内容は2つやらなければいけないですね。令和2年度の業務実績評価と、ちょうど第2期が終わりましたので、第2期全体の評価と。先ほど御説明がございましたが、自己評価と厚労大臣評価、見込評価と言うのですか、これが乖離があるものについて、どうして乖離があったかを議論していただくという流れになっておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、第1番目は、国立成育医療研究センターの評価ということで進めたいと思いますが、準備できておりますか。そろっておられますね。分かりました。では、まず、理事長先生から御挨拶をお願いできますか。よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 おはようございます。成育医療研究センターの理事長の五十嵐と申します。本日は、国立成育医療研究センターの令和2年度と第2中長期目標期間の業務の評価部会に御参加いただき、心より感謝申し上げます。
 私どものセンターは、受精・妊娠から胎児期、新生児期、乳児期、学童期、思春期、次世代を育む若年成人期に至る過程で生じる疾患に関する医療と研究を推進することを目指しております。この目的を果たすためには、アドボカシーの理念をベースに活動をしております。妊娠・出産に関わる女性や、急性疾患あるいは難病などの慢性疾患の子どもと御家族が、安心して優れた医療、看護、患者支援を行うことを第一に心掛けております。特に大学病院やほかの小児病院ではできない高度先進医療、特に生体肝移植、難治性がんへの骨髄移植、遺伝子治療、ES細胞を用いた再生医療などの高度先進医療の分野に力を入れて、研究所と十分に協力をしまして、優れた成果を上げてまいりました。今後は、遺伝子治療の分野にも力を入れる所存です。
 さて、人の健康とは、身体的、心理的、社会的、バイオサイコソーシャルに良い状態、ウェルビーイングであることと、WHOが1988年に定義しました。昨年9月に、ミラノにありますユニセフ・イノチェンティ・リサーチセンターが、ユニセフイノチェンティレポート16で、我が国の子どもの身体的健康度は、OECD38か国中第1位という評価を受けましたけれども、心理的健康度については、38か国中の37位という極めて悪い評価を受けております。ここに我が国の子どもの健康の実態が明らかにされているのではないかと思います。思春期の子どもの自殺が我が国では多い等が、こういう低い評価につながっているのではないかと推測しております。子どもと家族の心理・社会性を評価し、支援・対応するシステムを作ることにも当センターは努力をしております。
 さらに、3年前になりますが、成育基本法が成立しました。この理念を実行することが、当センターの重要な使命と考えております。昨年から現在に至るまで、新型コロナウイルス感染症の流行の影響を当センターも大きく受けております。子どもと妊婦の新型コロナウイルス感染症患者も多数入院をしております。また、今年の初夏からは、RSウイルス感染症の大流行がございまして、現在この2つの大きな感染症に対して、センターが一丸となって対応しているところです。本評価部会の委員の皆様からは、本日は忌憚のない御意見を頂き、今後のセンターの運営に役立たせていただきたいと存じます。本日はどうぞよろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に包括的に分かりやすく御説明いただき、本当にありがとうございます。それでは、順次評価を御説明いただき、議論を進めたいと思います。最初は、研究開発の成果の最大化に関する事項ということで、評価項目1-1及び1-2に係る業務実績及び自己評価について議論したいと思います。時間は説明20分、質疑18分となっておりますので、あまり時間がございませんので、大変申し訳ないのですが、簡潔におまとめいただけると有り難いと存じます。これは法人から説明していただき、その後にちょっと補足がありますが、まずは、法人から御説明いただいてということでよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 承りました。それでは、評価項目1-1、国立成育医療研究センターの戦略かつ重点的な研究・開発の促進、ページ番号ですと5ページを御覧ください。自己評価はSとなります。Ⅱは、指標の達成状況です。医療に大きく貢献する研究成果は5件、原著論文発表数は435本でした。
6ページになりますが、こちらがその大きく貢献する成果3つを説明する項目を列挙しております。上から順にスライドで説明をさせていただきます。
 7ページを御覧ください。左の上に大きくタイトルが書いてあります。[1]医師主導による治験を行っております。先天性尿素サイクル異常症に対して、HAES移植治療の医師主導治験を行っております。その隣、オレンジ色の枠ですが、ヒトES細胞由来の肝細胞を使ったヒトへの移植を行ったところです。この移植は世界で初めてのことであり、肝臓の再生医療製品の開発につなげてまいりたいと考えております。患者さんは、体内の窒素から生じるアンモニアが肝臓で代謝できない方で、高アンモニア血症による死亡、重度の脳障害のリスクが生じます。この患者さんに対してアンモニア代謝能を有する細胞を投与し、その後、2020年度、中央のオレンジ色の箇所ですが、3例の移植が完了しています。こちらは後に、病院から丁寧に御説明をさせていただきます。これらの成果、製造に関しても、国内外で大きく報道され、特に海外での報道が見受けられたところです。
 次に、性分化疾患の新規発症原因と病態を解明し、診断法と治療法を開発しました。中央の2020年度の赤字の箇所を御覧ください。上から、性分化疾患を招くMAP3K1スプライス異常及びSMCHD1機能喪失バリアントを同定し、国際誌に発表しました。また、女児胎児の外性器男性化に関与する新たなヒト男性ホルモンを見出しました。さらに、女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)に対するドラッグリポジショニングによる新規治療法を開発しました。これらの成果に基づき、臨床遺伝子診断の社会実装化、新規治療法の提唱、国際共同研究の推進に進んでいきたいと考えております。
 3つ目ですが、左側の上のタイトルの箇所を御覧ください。「子どもの健康と環境に関する全国調査」、私どもはエコチル調査と呼んでおります。2020年度の中央の赤字の箇所を御覧ください。全国約10万人規模の初めての全国レベルでの調査です。その結果、乳幼児期のアレルギー症状・疾患の実態が明らかとなりました。1歳児即時型食物アレルギーは7.6%、鶏卵アレルギーは5.3%、牛乳アレルギーは2.1%、小麦アレルギーは0.5%でした。現在増加している消化管アレルギーは1.4%で、原因食物は鶏卵が最も多くありました。その次の黒字のポツですが、妊娠中の母親のうつ状態と血中鉛濃度の関連について発表したところです。最後の箇所ですが、妊婦の血中コントロールについて、妊婦の5%は一般的に推奨される目標7.0%よりも高いHbA1cレベルを有していることを明らかにしました。
 次に、中長期計画、資料1-6に移ります。資料1-6の5ページとなります。自己評価はSとなります。Ⅱは、目標と実績との比較ということで、医療に貢献する研究成果、原著論文発表数は、非常に順調ないしは極めて良い数字を出しております。3つの成果について御報告します。
 1つ目が、先ほど少し御紹介したヒトES細胞由来の肝細胞についてです。こちらは、一番左の2015年度から研究はスタートしております。ES細胞を用いた再生医療の研究開発を実施していたところで、特に研究所での再生医療等製品における品質管理と有効性・安全性の製品規格に関する課題について、当局と薬事戦略相談を活用し、治験開発を実施しました。こちらは、最終的には病院における治験につながり、3例を終了し、それらの有効性・安全性に確認が進んでいるというように御理解いただければと思います。これらの成果は、ちょうど中央の下、右側にあります国の政策にも貢献しており、厚生労働省が発出するガイダンスに、私どものデータがこの基盤データとして利用されているところです。ヒトES細胞の肝細胞のみならず、緑色の所で、「注目」と書いてある所ですが、ヒトES細胞を用いた再生医療のイノベーション創出につながるもので、こちらは肝細胞のみならず小腸細胞を作ったということです。こちらに関しましては、再生医療等製品のみならず、創薬・安全性試験にも利用することができ、産業界にこの3年間利用してきていただいているところです。これらの成果は、著名な国際誌並びにNHKニュース、朝日新聞一面でも大きく報道され、注目を浴びてきたところです。
 7ページ[2]を御覧ください。乳幼児期までのアレルギー疾患発症予防研究です。左側の中央の上の青色で囲んだ箇所を御覧ください。離乳早期鶏卵摂取により、鶏卵アレルギーの発症が8倍近く減少することをランダム化比較試験で実証しました。この成果は、Lancet誌に掲載され、朝日新聞、読売新聞共に一面、NHKニュース等で配信され、注目を集めました。次に、右上の赤色で囲んだ箇所です。乳児アトピー性皮膚炎で早期積極的皮膚治療介入により、食物アレルギーの発症が予防できることを明らかにしました。また、中央下、緑色の線で囲まれた箇所です。乳児期湿疹、食物アレルギー、気管支ぜん息、花粉症といったものはIgE抗体が関与します。妊娠中のマウスにIgEに対する抗体を投与することで、マウスの仔のIgE抗体の生産が長期間抑制されることを明らかにし、アレルギー疾患における著名な雑誌に紹介され、朝日新聞一面で報道されたところです。
 8ページを御覧ください。希少・未診断疾患イニシアチブにおいて、原因不明な563症例の疾患が判明しました。診断のつかない難病に対する研究プロジェクト、小児希少・未診断疾患イニシアチブ(IRUD-P)の中心的施設として研究を実施し、5,229検体(1,482家系)を解析し、38%で診断に到達し、新規原因遺伝子の変異も発見しました。これらは2018年度の神経難病におけるJIP3、2019年度の成長障害におけるMAP3K7新規バリアント、2020年の神経難病におけるPRR12遺伝子の発見につながり、これらの成果を活かして、今後、全ゲノム解析、新技術による更なる診断困難、新規疾患原因遺伝子の探索、病態解明に推進してまいりたいと考えております。1-1の説明は以上となります。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 続いて、評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について、臨床研究センターから御報告させていただきます。資料はお戻りいただき、令和2事業年度実績評価書の10ページを御覧ください。まず、自己評価はSとさせていただいております。指標の達成状況です。おおむね150%以上の達成状況となっています。First in Human、先進医療及び医師主導治験については目標が数年間で数件という形ですので、単年度では目標に達しておりませんが、中長期目標期間では十分目標を達成したと考えております。
 続いて、12ページを御覧ください。評定の根拠です。令和2年度については、薬事承認が取得できた医師主導治験が2件ありましたので、その2件及び小児医療情報収集システムについて御説明をさせていただきます。
それでは、13ページを御覧ください。医師主導治験により、ムコ多糖症Ⅱ型の中枢神経症状に対する新規治療法の開発です。御存じのように、ムコ多糖症Ⅱ型はライソゾーム酵素であるイデュルスルファーゼの先天的欠損に起因する遺伝病であり、国内患者約120名の希少疾病です。全体の70%を占める重症例では、精神運動発達遅滞などの中枢神経症状を呈すると言われています。これまで動脈内投与の酵素製剤はありましたが、血液脳関門を超えて脳内に達することができず、進行を抑制できない状況でした。そこで、当センターでは、新たに頭部に植込み型のリザーバを装着し、脳室内に直接投与する新たな治療法を開発しました。令和元年度末に承認申請を行い、令和2年度末に薬事承認を得ております。全体で6症例を実施し、成育医療センター及び大阪市立大学で医師主導治験を実施したものです。
 続いて、14ページを御覧ください。医師主導治験による低亜鉛血症に対する小児用製剤の開発です。低亜鉛血症の効能効果で承認されておりますノベルジン錠は錠剤であるために、小児患者では服用が困難、あるいは小児の投与量は年齢と体重に考慮して決定することとなっておりますので、体重に応じてきめ細かい投与量の調整のために、小児用剤形であります顆粒剤が必要と判断しました。当センターの小児用製剤ラボを活用し、GMP下で治験薬を製造し、製薬企業が医師主導治験のための製剤を開発したものです。製造から治験まで一貫して当センターで実施した初の医薬品となります。なお、この医薬品については、有償でのデータ導出によるマイルストーンという形で対価を得ることもできております。全体で12症例であり、血清中の亜鉛濃度で評価をしていくというものです。
 続いて、15ページを御覧ください。小児医療情報収集システムによるリアルワールドデータの収集・利活用基盤整備です。平成27年度から実施しております小児と薬情報収集ネットワーク整備事業で整備した小児医療情報収集システムを稼働し、小児医療施設が11施設、小児クリニックが33施設からなる患者データの送受信を行っております。令和2年度時点で、電子カルテデータが約64万案件分、問診データの7.6万人分のデータを蓄積しているところです。
 副作用情報、使用実態調査に活用することで、現在、添付文書中の「小児への投与経験がない」などの記載に対して、その見直しなどに利用しております。PMDAでもMID-NETによって多少は小児のデータが入ってきておりますが、決定的な欠陥としてはクリニックのデータがない、あるいは日数単位での追跡が困難であるという点があります。本データベースでは、クリニックが33施設入っておりますし、生後1か月以内でも、日の範囲で追跡が可能となっております。現在、情報については成育ホームページで解析情報を公開・提供しているところです。
 続いて、第2期中長期目標期間中の御説明をさせていただきます。資料9ページになります。自己評価はSとさせていただいております。目標と実績との比較ですが、以下に示しましたように、初期の目標を量的あるいは質的に上回っていると考えております。それでは、以下、期中に開発から承認申請まで当センターで一貫して実施しました医師主導治験2件と、以前より活発に活動しております小児治験ネットワークについて御説明をさせていただきます。
 11ページを御覧ください。偶然にも、令和2年度に承認を得た品目と重なってしまいましたので、同様のものを御説明しますが、ムコ多糖症Ⅱ型の治療については先ほど御説明したとおりです。2015年度に医師主導治験のプロトコールを作成し、全体の開発計画について、成育センターで一丸となり支援を行いました。その後も調整、事務局作業、データマネジメント作業、モニタリングあるいは解析計画書の作成などに従事し、2020年の申請、そして2021年の承認となりました。
 続いて、12ページです。医師主導治験による低亜鉛血症に対する小児用製剤の開発です。こちらも、先ほど概要は御説明しました。本件は、小児用顆粒剤の開発ですので、錠剤の承認を取得している企業と、剤形の検討段階から共同で開発を進めてまいりました。加えて、医師主導治験の研究費の取得のための検討、開発の全体計画のライン引き、治験実施のための支援を行っております。2016年度からは治験調整事務局、データマネジメント、モニタリング、解析計画書の作成の支援を行い、2020年の申請、2021年度の承認となっております。先ほども申し上げましたように、こちらはそれぞれのマイルストーンという形で対価を得る形になっており、承認申請時、そして承認取得時、その後は売上げに応じたマージンを頂くという形にしております。
 続いて、13ページです。小児治験ネットワークの活用と拡大について御説明します。小児領域での治験などの推進を行うために、小児医療施設だけではなく、大学病院、NHOなどと連携し、ネットワークを作成し設置しました。加盟施設の推移は、2011年度の設立当時から現在まで、およそ2倍の設置数となっております。治験の効率化を目指して、当初から治験手続の統一化、もちろん小児ですので説明文書のほかに添付文書も統一して作っております。そのほかICT化、最も大きなものが中央治験審査委員会の設置を行っているところです。これらにより、早期開発について企業の支援を行っています。真ん中ほどのグラフですが、小児治験ネットワークを介した治験数は徐々に増えており、令和2年度現在で37の継続実施、10件の新規実施という形です。右に移っていただき、進捗状況です。ネットワークを介した97課題のうち、承認取得が19件の2割、開発中止が4件と非常に少なくなっております。これらの作業のほかに、臨床研究コーディネーターを中心とした人材育成についても実施しており、毎年多くの参加者を得て研修会を開催しているところです。説明は以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、事務局から、医療研究連携推進本部(JH)の説明が引き続きございますか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局です。若干、補足させていただきます。資料の最後の部分、14ページに、6NC横断的研究推進組織の説明がありますが、これは、令和2年度に立ち上げられた医療研究連携推進本部のことです。通称JHと呼んでおります。JHについては、6NC共通の実績となっており、資料の内容や説明が統一的なものとなっているため、JHの本部長が所属しております国立国際医療研究センターに関する審議の中で、次回、8月3日に実施したいと思います。そのため、本日の両センターのこの部分の御意見については、次回のJHに関する審議を踏まえて実施していただくようお願い申し上げます。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、御意見を頂けますか。今の御説明に対して、御質問、あるいはコメントを頂けますでしょうか。中野委員、よろしくお願いします。
 
○中野委員
 川崎医大の中野です。分かりやすい御説明をありがとうございました。まず、2点お伺いします。資料1-2、令和2年度に関してです。女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)、6ページのⅢの真ん中のカラムに、ドラッグリポジショニングによる新規治療法の開発、それによって性分化疾患の発症機序と病態の解明、すばらしいことだと思います。ここにお書きいただいていますように、患者さんの予後改善に是非、つなげていただきたいと思います。医療費削減ということも記載してあり、この観点もとても大切なことであると思いますので、この疾患において、また他の疾患においても、どのような形で医療費削減に貢献できるのかということを、もう少し教えていただきたいというのが1点目です。
 もう1つは、同じく資料1-2の9ページにありますエコチル調査で、小児で特に増加傾向であるアレルギー、即時型食物アレルギーのことに関して、全国数値をしっかりとお示しいただいたこと、これも大変すばらしいと思います。成育医療研究センター様に、私たち地域の小児科医として非常に期待しているのは、希少疾患と併せてコモンディジーズに関しても指導的立場で是非、お願いしたいと思っているのです。なかなか希少疾患、まれな疾患、難しい疾患と、こういった一般的な疾患との研究のバランスはすごく難しいと思うのですが、その辺りをどう工夫されておられるかも御教示いただければと思います。以上、2点です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。それでは、よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 一つ一つお答えします。まず、性分化に関する御質問ありがとうございます。女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)に対するドラッグリポジショニングによる新規治療法を具体的に行いました深見副所長より説明します。
 
○国立成育医療研究センター深見研究副所長
 担当の深見です。これについて御説明します。女性化乳房症は男の子で胸が大きくなってしまう難病ですが、これまでは外科的治療しかありませんでした。アナストロゾールは今、乳がんで使われている一般的な薬ですが、それを使うことによって、医療コストの面でも改善が認められ、御本人に対する効果も非常に良いというデータが出ております。また、もう1つ女性化乳房症の問題として、背の伸びが早期に止まってしまうので、最終身長が非常に低くなるという問題があったのです。それはもちろん手術では改善できなかったのですが、アナストロゾールを使うことによって正常な身長が得られたということで、患者さんとご家族が喜んでいらっしゃいます。この成果はドイツのグループと共同研究で現在、データをまとめているところです。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。ほかの質問に対してはよろしいですか。引き続き。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 2つ目の質問のお答えをします。乳幼児のアレルギー症状の調査は10万人規模です。どのようにバランスを取っているか、実際の現場との関係について調査を行った経緯に当たり、実際に行っているのは、研究所と病院の両方に所属しております大矢センター長並びに野村室長がこれらのアレルギーの担当です。また、このエコチル調査に関しては、センター全体で行っています。病院と研究所が一体となって行っている事業でして、実際はエコチル以外にも、3つのコホート調査が成育の中で走っており、それらをうまく連携させながらやっているところです。ですので、現場の課題、すなわち主要アウトカムと、例えばその原因との関連について、何を調べるかといったところから、実際に大矢並びに野村は病院での診療を行っておりますので、何を主要アウトカムとするかということ、また、その原因が何かというところのセットをしっかりして、成果から診断・治療、予防法へ改善し、最終的には政策決定に応用していきたいと考えております。以上です。
 
○中野委員
 ありがとうございます。2点ともよく理解できました。冒頭で五十嵐理事長がおっしゃられたように、今年、RSウイルスが小児では非常に流行していて、成育医療センターは高次医療研究センターでいらっしゃるわけなのですが、やはりコモンディジーズでも私たちは本当に頼りにしておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、前村委員がお手を挙げておられますので、どうぞよろしくお願いします。
 
○前村委員
 長崎大学の前村です。資料1-2の7ページについてお伺いします。ES細胞由来の肝細胞、治験にまで至ったというのは非常にすばらしいと思います。今後の見込みについてお伺いします。これは、新生児にES細胞由来の肝細胞を注入したのだと思います。自己細胞を残した状態でES細胞を注入しているのだと思いますが、1回注入するとその後、ES細胞が増殖していって、ずっと生涯残っていって、更にもう注入する必要がなくなるかということと、自己細胞と注入したES細胞の比率は将来的にどうなるのかということ。それがうまくいったとすると、ほかの肝疾患にも応用できると思いますが、先天性の肝疾患に対する応用の見込みはいかがでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 本当に本質的な御質問をありがとうございます。まず、体内動態並びにどのような経過を取るかについて御説明します。投与しますのは、新生児期、すなわち生後すぐから1か月以内に投与を行います。その後、こちらはエンドポイントの1つが、肝移植にまで到達するかといったことがエンドポイントとなります。ですので、肝移植を行いますので、投与した細胞、肝臓は切除されて、その肝臓において生存率を検討することができます。投与時には、2×10の8乗細胞を投与しており、実際、2例目に関しては結果が出てきております。それに関しては、残存率が23%です。一方、肝臓は循環器等やほかの細胞と違い、投与後、増殖する特性を有しております。ですので、今、前村先生が御指摘になりましたように、今後は、肝不全のような肝臓の機能が完全にペースが生じるようなものに関しては、投与した細胞が増殖することを想定しています。目標としては、肝移植なしに進むことが最大のゴールです。これは、まず1回目としては、肝移植まで問題なく行われて、肝移植が行えるかどうか。またそのときに、神経障害が生じないかどうかといったことをエンドポイントとしております。
 一方、動物実験においては、肝細胞を投与しますと、マウスの肝臓を全て移植したヒトの肝臓に90%、もう100%近く置換することが可能です。ですので、将来的には、この治療が、ここにも書きましたが、肝不全とほかの疾患等にも利用できる可能性があるのではないかと期待しているところです。お答えは以上となります。ありがとうございます。
 
○前村委員
 ありがとうございます。非常に期待できる治療だと思います。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。
 そのほか、お手を挙げておられる先生はいらっしゃいますか。土岐先生、よろしくお願いします。
 
○土岐部会長代理
 私は外科医ですので、肝移植に興味があったのです。現時点では、これはブリッジングということなのですが、先ほどの話の続きになるのですが、ブリッジングの肝移植をするまでに、実際、この3例の方は何か月ぐらいこれで頑張ることができたのかというのと、今後の症例数、年間どれぐらい対象になる方がいらっしゃるのか教えていただけますか。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 ありがとうございます。まず、肝移植に達するまでというのは、十分な体の大きさが大事と伺っております。これは、病院の外科の先生方から伺った、私自身は外科ではありませんのでお答えができるかどうか分かりませんが、想定しているのは、6kgの体重になった時点での肝移植となります。では何か月かと言いますと、3か月から6か月の間で肝移植を行うことになります。ですので、その時期にならないまでのBridge to Transplantationという、今、土岐先生がおっしゃったとおりとなります。エンドポイントはもうBridge to Transplantationとなるわけです。もう1点の御質問が。
 
○土岐部会長代理
 症例数はどのぐらいの見込みなのか。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 症例数は、まず、尿素サイクル異常症の患者さんは、私どもは別の小児慢性特性疾患というレジストリを行っており、そちらでは年間100人程度とされております。一方、今回の医師主導治験は新生児期発症型ですので、年間10人いかないと思います。10名位と御理解いただければと思います。現在、治験の目標症例数は5例でして、3例まで終了したところと、今回の病院の医師主導治験の責任医師から伺っているところです。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。大変期待できる治療と思いますので、是非、発展させていただきたいと思います。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、ほかにはいかがでしょうか。お手を挙げておられる先生はちょっと今は見えないので、私から1つお聞きできたらと思いますので、よろしくお願いします。先ほど、15ページの[3]の所で御説明いただいた、リアルワールドデータの収集・利活用の基盤整備という所が非常にすばらしいと思いました。これは特に、先ほどちょっとお触れになりましたが、クリニックまで入れてやられているということで、しかも、クラウドなどもシステム化されて、非常にシステミックにおやりになっているということで、すばらしいなと思いました。これはちょっと将来のことになるのかもしれませんが、これは非常にいいシステムで、これを発展していただければと思うのですが、施設数から言うと11施設、33施設ということで、日本全体のカバリングという点から言うと、例えばがんセンターが全国的な拠点病院を作って全国の状況を把握しているというのに比べると、目的は少し違うかもしれないのですが、将来的にはこれをどう広げて、前回もお聞きしたのですが、今、成育の関連の対策基本法ですか、そういうものもできたところですので、それとの関係などもひょっとすると将来的には出てくるのかなという気はしているのですが、将来、これをどう展開されていこうとされておられるのかを教えていただけると有り難いなと思いますが、いかがでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 御質問ありがとうございます。我々としても、施設数については、今後、増やしていきたいという思いは重々ございます。ただし、なにぶん予算が必要でして、医療機関ですと、1施設当たりおよそ700万円、それから、クリニックですと、1施設当たり100万円ぐらいの接続費用等が掛かってきます。
 
○祖父江部会長
 なるほど。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 これがクリアできれば全国に増やしていきたいと思っておりますし、現在、我々のほうで事務局をやっているJACHRIという小児総合医療施設協議会がありますが、そちらのほうは、現在、都道府県を含めて大体37施設あります。最低でも、病院としてはそれくらいは増やしていきたいと考えております。クリニックとしては、33施設は日本全国満遍なく散らばっておりますので、大体のところは取れるかと思うのですが、やはり西日本、あるいは北陸地方、こういう所の手薄さが目立っていると感じておりますので、そちらのほうも少しずつ進めていきたいと考えております。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ちょっと追加で1点です。一番最初に理事長先生からも、心理的評価ですか、それが非常に低い評価だったというお話がありました。例えば、発達障害や自閉症など、そういう、何と言いますか、精神・心理的障害の患者さんの調査、全国的な把握というのも非常に重要になってくると思うのですが、その辺は、今のリアルワールド型のデータの中に入っているのでしょうか、どうでしょうかということを、ちょっと教えていただけると有り難いと思います。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 今回の医療情報については、病名、処方名、検体検査の3つでして、残念ながら、発達障害に関する詳しい情報は入手できておりません。
 
○祖父江部会長
 今後、やられる予定は何かございますか。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 まず、薬に紐付けた調査になりますので。
 
○祖父江部会長
 なるほど。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 薬がなかなかないということがありますので、また別の事業、あるいは研究での展開になると考えております。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。期待しております。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 よろしいですか、部会長、申し訳ございません。
 
○祖父江部会長
 どうぞ。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 申し訳ございません。ASD、アスペルガースペクトラムディジーズシンドロームや自閉症に関しては、病院が担当しており、研究所とともに、実際に今はAI、人工知能を使い診断に向かって行っております。
 
○祖父江部会長
 なるほど。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 その診断は、幾つかの目の動き、プログラムの開発、実際に外来の動きをビデオで撮り、それをAIで診断するという、診断の部分でやっていることが1点あります。それから同時に、ASDの患者様の遺伝的な要因を持っている方もいらっしゃいますので、そういった方々から、iPSを作ってバイオマーカーを検討しているところです。いずれも、AMED又は内閣府の御支援を頂いて動かしているところです。そういった意味で診断、またバイオマーカーといったところで、今現在、成育としてかなりの患者さんがいらっしゃいますので、こういった観点で進めているところです。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。診断とかバイオマーカーが出てくると、こういう全国的な調査にも乗ってくるのではないかという感じがします。そのほかいかがでしょうか。もう一人ぐらい御質問できるかと思いますが、よろしいですか。土岐先生、どうぞ。
 
○土岐部会長代理
 それでは、すみません、1つ治験のことをお伺いしたかったのです。すばらしい治験のネットワークがあって、すばらしいと思うのですが、これは、地域性の問題をカバーされているのかどうか。資料1-6の13ページになりますが、50以上の施設を同時に治験の施設とするということで、非常に治験が迅速に進むのだろうと想像されますが、都市部だけに固まっていないか、地域性も考慮されているかどうか、その辺りをお伺いできたらと思いました。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 ありがとうございます。55施設は日本全国に散らばっておりますので、最近でも、まだ増加している状況です。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。そろそろ、事務のほうはよろしいですか。まだ時間はあるのですか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 一応、ここまででお願いできればと思います。
 
○祖父江部会長
 そうですか、分かりました。そうしたら、一応、質疑は以上で、後でまた、もし御質問があれば出していただけたらと思います。
 それでは次に、医療の提供とその他業務の質の向上に関する事項ということで、評価項目の1-3から1-5について議論したいと思います。まず法人から御説明を頂き、その後、質疑応答を行いたいと思います。これも今と同じ、説明20分、質疑応答18分ということですので、よろしくお願いします。それでは、スタートしていただけますでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 では、病院長の賀藤から御説明します。資料1-2、令和2事業年度実績評価説明資料の17ページの1-3、医療の提供に関する事項においては、自己評価Sを付けさせていただきました。指標の達成状況は表で記載しているとおりです。今回、19ページの評定の根拠に書いてある3項目を主に御説明します。20ページに記載してあります、ヒトES細胞由来の肝細胞のヒトへの移植については、もう大分御質問も頂き、大体御説明する内容も終わったような状況ですが、尿素サイクル異常症に対するブリッジングセラピー、肝移植へのブリッジングセラピーとして、生後1か月以内の新生児で、高アンモニア血症を来した先天性代謝異常症の子ども3例に対して、ヒトES細胞由来の肝細胞移植を行いました。
 門脈から注入するわけですが、注入後、速やかにアンモニアが低下して、先ほど研究所長から御説明がありましたように、大体6kg前後ぐらいで肝移植ができます。2人が脳死移植、1人が生体肝移植を行っていますが、全員成功し、その後、元気に過ごしております。今まで新生児期に高アンモニア血症を来してしまう重症なタイプにおいては、なかなかこのような治療ができず、また、治ったとしても後遺症を残したり、いろいろなことがあったのですが、このような方法で後遺症なく成長していくことが得られました。このことは、20ページに書いてありますように、2020年の重大ニュースや、いろいろなマスコミで取り上げていただきましたし、アメリカの科学雑誌でもES細胞に関する成果の1つとして世界的に評価されております。
 次は21ページです。昨年度から遺伝子治療に力を入れており、昨年の10月、日本で初めて血友病Bの方に遺伝子治療を行いました。この方は現在、大変順調で、血友病の場合は定期的に凝固因子を入れなくてはいけませんが、今はそのようなことをすることなく生活をしています。大変順調な経過をたどっております。今後は血友病Aに向かっていきたいと思います。
 次に、別のタイプの遺伝子治療ですが、御存じのように、骨髄移植後でも再発してしまった重症なタイプの白血病等に対するCAR-T療法、商品名はキムリアですが、それを小児医療施設として認定されており、昨年は6件行うことができました。これは後で説明しますが、なぜ6件だったかというのはコロナの影響です。大体、認定されている所は成人の重症なコロナでICUが閉められ、小児がCAR-TでICUに入ることができなかったことも1つの要因です。タイムリーにCAR-TをやりたいのですがICUが空いていないということで、遠くのほうからも紹介されて来ました。それで6件とも順調に特に問題なく、みんな元気に戻っているということです。この6件のCAR-Tのケースに関して、今のところは大変順調にCAR-Tを行っております。
 次は22ページです。どうしても昨年度は、新型コロナウイルス感染症に引きずり回されたのが病院の実態です。そのような中で何ができるのかを考えた上で、成育病院としては全国からセカンドオピニオンを求める方がいらっしゃっていますが、このような緊急事態宣言等のことがあり、なかなか来られる状況ではなかったものですから、このセカンドオピニオンに対する対応ということで、オンラインでのセカンドオピニオンを始めました。これを始めた時期としては、日本でもトップの方だと思います。どのぐらいの要望があるかと思いましたが、ここに書きましたように、年間のトータルのセカンドオピニオン件数の約4分の1ぐらいがオンラインということになります。国内のどこからオンラインで依頼されたかがここに書いてあります。結構、九州など遠くからオンラインでのセカンドオピニオンを希望される方もいました。
 これは日本だけではなく、世界の各国にいて日本に帰って来られない、日本の会社で海外に居住されている御家族に対してもこれができることをホームページで流したところ、まだ少ないですが、スイスやボリビアから2件ほど、これは日本の御家族から依頼されて、それでオンラインを行うことにしております。今後は、せっかくこのようなシステムを立ち上げましたので、わざわざ移動することなく日本国内又は世界の日本の方々に、今度は乳児の発達の困りごとなど、そのような相談にも乗っていけるように発展させていきたいと思っております。
 23ページです。これは新型コロナウイルス感染症ということで、御存じのように、昨年度の新型コロナウイルスのパンデミックで、ほとんど成人ばかりが注目されておりました。子どもは軽症ですが、最初に起こったことは、皆様は今でも記憶に新しいと思いますが、学校の一斉休校が突然言い渡されました。これは子どもにとっては大変大きなショックで、子どもにとってはロックダウンと同じようなことが突然起こったわけですが、それ以降、私どものこころの診療部を中心に「何か子どもが変だ」という主訴が多くなり、それで、何かをしなくてはいけないということで、こころの診療部を中心に、どのように心に接していっていただきたいかをホームページで細かく提示させていただいたところ、様々な所から利用したいと、たくさんの連絡がありました。年間のページビュー数で約44万人の方がホームページを見られております。テレワークが主体となったこともあり、テレワークということはお父さんが家にいます。お父さんが家にいることで何か悪いことが起こったわけではありませんが、それでも、いろいろなストレス、虐待と思われるようなことも起こったり、子どもがうつになったり、そのような様々なことが起こってきたので、子どもの心へのケアということで、子どもの感染症に関することよりも、社会の様々な危機的状況が起こったことによる子どものストレスの対応に対して一生懸命やってきました。
 次は24ページで、1-4の人材育成に関する事項です。そこは自己評価Aとしています。
 25ページは、リーダーとして活躍できる人材です。毎年大体1人位を大学の教授に輩出しておりますが、昨年度は東大の小児科教授に加藤先生が就任されました。あと、主に小児科学会、学術集会の一般演題の口演推移、ポスター発表年次推移のグラフを書かせていただきました。これは、成育が発表する数としては、施設の中では一番多い数を学術集会で発表しました。左側のグラフですと、小児科専攻医は、専攻医は論文を書かなくてもいいのですが、年間としては1人1本は必ず出すということで、大体、27本から30本ぐらいの論文を出します。その半分ぐらいは英文で出しております。
 次は26ページで、1-5の医療政策の推進等に関する事項です。これは自己評価Aとさせていただいております。
 次は27ページで、1-5は妊娠と薬情報センターから出た本当に良い結果ですが、今までドンペリドンというポピュラーな制吐剤が、妊娠初期に妊婦さんが悪阻で吐いて、妊娠しているのを知らずにドンペリドンを飲んでしまい、これが禁忌だったことが分かり、それで中絶していることが結構あったと聞いております。ということで、ドンペリドンは本当に妊娠によくないのかということを科学的に評価し、妊娠している人が飲んでも大丈夫だということを証明したことにより、これを妊娠の禁忌の解除につなげていきたいと思います。逆に言うと、本当に妊婦さんにとっては大変良いニュースだと思います。
 次に、28ページのコロナについてです。何回も申し上げますが、昨年度、当院は本当にコロナに引きずり回された病院です。ただ、小児は軽症か無症状です。ですので、病棟をどうしようかと考えましたが、発熱性疾患はたくさん入院してきますので、コロナとの鑑別をどうしてもしなければいけないということで、1つの病棟をコロナ専用病棟にしようということで、コロナ専用病棟を1つ作りました。それでNICU、小児ICUで1人ずつ受けることにしました。そこに書いた数字は平時に比べたら本当に入院数は少ないのですが、都からの要請に関しては全例受けた数字になります。ただ、今は第5波が来ております。去年とは関係ありませんが、それと匹敵するような急激な入院患者数になっており、少し危機感を感じております。
 一方で、成育医療センター病院の一番の役割は、コロナの患者さんは大変軽症で、逆に成育でフォローしている患者さんのほうがよほど重症です。ですので、何とか成育の医療というものを制限しない、通常どおりやりたいということに徹して、それで救急も通常どおり、診療も通常どおりということで、最初は一時的に診療を制限しましたが、その後は一切制限することなく頑張ってきました。
 とにかく厳しかったのは昨年の年末です。完全に周りの病院がクラスターを起こし、当院への救急がほぼ全面ストップすることもだんだん増えてきて、最後は、東京は人口数百万人ですが、大体、東京の半分ぐらいを、その中で成育1か所だけが救急を受けられる所になってしまい、3次救命救急も成育1か所でやるという状況に追い込まれ、大変危機的な状況となった記憶があります。
 実際に、静岡県、群馬県、千葉県からほとんど意識のない患者さんが、その県で診ることができないということで夜中に救急搬送され、コロナにかかっていない子どもたちの最後の受入れ先として頑張ってまいりました。これは大変、我々としても誇るべきだと思っております。そのほか、細かく研究したところ、うつ病が多い、コロナの患者さんはぜん息が少なかった、受診控えが起こったことも研究の成果としております。
 もう1つは、子どもがコロナでどのような影響を受けたかをホームページでアンケート調査を行い、その結果を出しました。やはり子どもは精神的なストレス、心の異常というものが、このコロナによって大きくなったということをきちんとデータで示し、このことは、いろいろなマスコミで取り上げられました。あと、欧米でもいろいろと評価されていることは大きなものだったと考えます。
 次に、第2期中長期に移ります。1-3の医療の提供は自己評価Sを付けております。17ページを御覧ください。まずは胎児治療を日本に定着させたということです。胎児鏡下レーザー手術、胎児胸水に対する胸腔シャント術、無心体双胎のラジオ波凝固術、胎児輸血、それぞれ書かれている年に保険収載まで持っていき、その技術を各病院で、これに興味のある施設にはきちんと技術提供して、少しずつ均てん化されております。
 18ページは、私どもの病院の特徴である臓器移植です。現在、私どもは肝臓・小腸・腎臓・心臓の臓器移植が可能な病院となっております。特に生体肝移植・肝臓移植に関して、小児生体肝移植に関しては世界で1番、最近は腎臓移植も小児移植に関しては日本で1番です。小児の小腸移植に関しても昨年2例行い、これも最初に行った病院です。心臓はドナーがコロナの影響でありませんので、まだやっておりませんが、臓器移植に関しても、ここにあるように世界でも指折りの病院にまでなってきておりますし、移植といえば成育というところまでになってきました。また、肝臓移植に関しては世界の、特に東南アジアに技術の移転ということも考えており、特にインドネシアでは自立した生体肝移植ができるまで一緒にやっていくことができました。
 19ページは小児がんです。これは厚生労働省の御援助もあり、小児がんセンターを作ることができました。ここに掲げたグラフのように、小児がんの延べ患者数は、今までの一番多い人数になり、現在も毎日50~60人の患者さんが入院しております。小児造血細胞移植は2018年には日本でも1番になり、また、小児がんの新規の診断というのも日本で一番多くなりました。今後は、長期フォローアップをしていきながら、患者さんが大人になっていった場合にどうするかも含めて、日本の小児がんの医療の指導的役割を果たしていきたいと思っております。
 20ページの1-4の人材育成に関する事項ですが、これは自己評価Aです。
 21ページで、先ほど言いましたが、大学への転出に関しては、大体1年に1人ぐらいが教授になり、転出しているということ。ここに書いた論文数、小児科学会の一般演題口演数は同じですので、今回はこれを割愛します。
 22ページの1-5、医療政策の推進等に関する事項です。これは自己評価Aです。
 23ページに書きましたが、やはり一番大きいのは「もみじの家」です。これは医療型短期滞在施設ですが、これは民間の御寄付により設立されました。医療的ケア児、いわゆる家庭で人工呼吸器の治療を続けるなど、家庭で医療を続けなければいけないお子さんが実際にいます。そのお子さんを持った家族がどのぐらい大変な状況になっているのだろうということが、5、6年前までは余り日本社会では気付かれてきませんでした。どのようにしたら医療的ケア児とその御家族をサポートできるか、それを一番具現化できたものが、この医療型短期滞在施設「もみじの家」です。これによって、どのようなことをやっていくのがいいのか、そのようなことも含めて社会に提示できたことが一番大きく、それによって社会も動いて、何とか医療的ケア児のサポートというシステムが少しずつ整ってきたのではないかと思います。
 24ページは外傷です。子どものけがというものに関して、日本は世界でも一番注目されておりません。ただ、それは大きな問題であって、消費者庁の御協力の下、子どもの事故についての情報をまとめて報告する制度があります。子どもの事故情報というのは、全て1件1件ずつ親の同意書を取らなくてはいけないので、なかなか病院としては大変なことになります。成育では、事故の情報は大変重要だと考えています。消費者庁に全国から届けられている6年間における事故の情報提供数2万件のうち1000件位を成育が占めます。このことを評価していただき、内閣総理大臣より表彰していただきました。
 25ページは、小児慢性特定疾病情報センターと、先ほど申しました妊娠と薬情報センターということで、特に妊娠と薬情報センターは、妊娠に関する薬に対して疑問があったら相談できる所がなかったのですが、それをやっと、全国47都道府県に作ることが完了しました。今後は妊娠において、先ほど出したドンペリドンなど、妊娠中に飲んでは駄目だと言われているものもたくさんあるのですが、それが本当かどうかをきちんと情報を科学的に分析しながら、妊婦さんへの適切な情報提供を行ってまいりたいと思います。
 26ページは、内閣府の事業で参加させていただいたAIホスピタル事業です。これに参画することで、いろいろなAIに関して研究することができました。企業とのコラボですが、カルテの音声自動入力システム、秘密分散・秘密計算技術は企業とのコラボレーションなのであれですが、特に引き金として一番大きかったのは、AIの診断補助の1つができたということ。1つは、難病と希少疾患の診断支援システムでAIを使ったものが、ほぼ出来上がりました。もう1つはアスペルガーです。自閉症系統の発達障害の方の早期診断をAIを使って行うことが可能になりました。これは逆にいうと、3歳でも、ほぼ全国で誰でも診断することができるようになりました。これは早期診断の均てん化に大変大きな貢献をしたのではないかと思っております。開業の先生でもできるようなシステム、また、乳児健診でも保健所で診断できる、AIの活用ができるシステムが、あと数年後には提供できるのではないかというところまで漕ぎ着けました。あとは、ロボットを使ったりとありますが、一番大きな貢献は、今、申し上げたものではないかと思っております。以上です。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、評価委員の先生方から御質問等、先ほどと同じように手挙げ方式でお願いできたらと思いますが、どなたか手を挙げていただけますか。根岸先生、よろしくお願いします。
 
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いします。初めて参加させていただきましたけれども、先ほどから大変先進的な研究あるいは医療の取組を伺い、本当にこの大変な時期、特にこの1年間、コロナの影響が様々あった中で、次世代の育成に寄与するすばらしい御研究だと思いました。まずは感謝申し上げます。それで、今、御発表がございました資料1-2の28ページに、コロナ禍における小児・周産期医療への貢献というのが出てきます。その前にも子どものストレスへの対応について様々な取組をされたということですけれども、このページに書いてある面会時間の制限、これは恐らく医療の現場ではコロナが発生した後、ずっと面会時間の制限というのが起きていると思います。特にこの中で、日本初のテレプレゼンスシステムを応用したオンライン面会を手掛けたという所ですが、実際にこのシステムというのはどういう内容なのか。恐らく家族、両親との面会制限というのは子どもたち、あるいは妊産婦にとって大きな影響があると推測しますけれども、それをカバーする方法として、このシステムによってどんなふうに整備されたのか。そして、実際にこのシステムを運用したことによってどんな効果が出てきたのか。その2点をお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 ありがとうございます。これは企業名がなく、申し訳ございませんが、ソニーが作った「窓」というシステムです。これは大きなモニターが1つありまして、それを外来などの別の部屋に置き、家族がその部屋に入ります。患者さんの病室には同じものがあり、それを映し出す機械もそこにあります。何が一番のメリットで違うかと言うと、等身大で映るということです。等身大に映って、かつ、あたかも立体的に映る。5Kだったと思いますので、ボールを投げるとボールをキャッチしたくなるような画像が入ります。ですから、会話ができて等身大で姿が見えて、すごく立体的に見えるというシステムです。一番良かったのは、あたかも家族写真のようなものも撮れます。妊婦さんも、申し訳ないですが御主人は出産のときしか来られない。それ以外の面会は禁止になっていますので。退院して赤ちゃんと一緒に写真が撮れる。そういうことができるようなことにもなっていて、これは今までにないものだろうと思いますし、大変好評を頂いております。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。それでは、次に前村先生、よろしくお願いします。
 
○前村委員
 前村です。資料1-6の25ページについてお伺いしたいと思います。この妊娠と薬情報センターは臨床の現場で非常に役立っています。私は循環器がバックグラウンドですけれども、実際の臨床をやっていてどうしても使わなければいけない薬だけど、添付文書に禁忌と書かれていて困ることがちょくちょくあります。ドンペリドンの例をお示しになりましたが、お伺いしたいのは、この妊娠と薬情報センターで出た中で禁忌とするまでではないということであれば、添付文書の改訂について積極的に何か働き掛けは行われているのでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 そういうものに関して、特にドンペリドンもそうでしたが、これはPMDAと一緒に活動していまして、PMDAと交渉しながら添付文書を改訂することも含め、今、活動しています。
 
○前村委員
 されているのですね、ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 よろしいですか。ありがとうございます。そのほかございますか。土岐先生、どうぞ。
 
○土岐部会長代理
 私も先ほどと同じコロナの所で資料1-2の28ページですが、小児の救急を維持するというのは非常に重要な業務であって、恐らく普段よりも負荷が掛かっていると思います。実際、件数が増えたというのは分かりますが、診療体制を変更させたかということ。例えば人員や看護師をどの程度多く救命部門に配置するかなど、そういうフレキシビリティが大事になってきますから、どのように小児救急医療を維持するために院内の診療体制を変えたかを教えていただけるでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 これが不思議なことに、最初、小児の救急受診の患者さんは半分になりました。救急の応需率は99%です。ですから、断ることはないのです。救急車の台数も例年の半分です。子どもは外に出なくなり、けがをすることもなくなり、コロナ以外の感染症も激減して、ほぼ皆無になりました。ということで、最初は感染症をきっかけにして何かの病気になることが多かったのですが、それもなくなったのだろうと思います。ですから、最初に起こったことが救急患者数の激減でしたので、スタッフの数に関しては逆に余裕ができたということ。ところが、周りの大学病院や大きな病院では、いわゆる発熱の外来で小児の発熱は受けませんという形にどんどんなってきた影響で少し増えてきましたから、スタッフの数をそこに集中させることはしなくても受け入れることができたということです。
 
○土岐部会長代理
 よく分かりました。ただ、広域から受けるというのは非常に重要なことだと思いますので、その部分はしっかりやっていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。中野先生、よろしくお願いします。
 
○中野委員
 中野です。前村先生からの御質問とも共通するのですが、今回、お示しいただいたドンペリドンですね、ドンペリドンのことも本当にすばらしい発信だと思いますが、結構、私たちが日常で使っている身近な薬剤でも、妊婦さんに安全に投与できるかどうか明示されていないものが多く、成育医療研究センター様は日頃からホームページを常に更新していろいろな発信をしていただいていると思いますので、各地域の医師、コメディカルはすごく参考になっていると思います。引き続き発信をお願いできれば、とても有り難く思います。
 1つ、確認事項で教えていただきたいのですが、資料1-2の17ページになります。今回の項目1-3に関係したところでは17ページですが、項目1-2でもあったのですが、例えば小児がん診療新規治療レジメンや出生前遺伝学的検査は、3年間の中長期目標を立てていて、これは達成できているわけです。各年度で6つに分けた所にもパーセンテージの数値が入っていて、出生前遺伝学的検査は非常に良好な達成率なので各年度もよろしいのですが、レジメンのほうは中長期としては達成していますけれども、各年度で数値を出してしまうと、この総和が恐らく200%だと思うのです。ここは決して達成していないわけでなく、200%の内訳が書いてあるという理解でよろしいでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 大丈夫だと思います。
 
○中野委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。よろしいですか。私、祖父江ですが、1つだけ教えていただけたらと思います。第2期の全体のバージョンの評価項目1-3ですが、後遺症なき児の生存を目指すということで、そういうタイトルは上に書いていましたけれども、1-3で4つの胎児治療法という所です。次の臓器移植では長期のフォローアップと言いますか、こういうインターベンションが長期にわたって小児の成育、それからだんだん成人になっていくわけですが、そういうものにどういう影響を及ぼして、良い効果をもたらしたか。前も同じような趣旨でお聞きしたことがあると思いますが、その辺のフォローアップ体制というか、長期フォローというのが結構重要かと思います。その辺はどういうような形で、小児期を超えてしまった場合にどうされるのか。将来の問題かもしれませんが、ちょっと教えていただけると有り難いなと思いました。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 それは多分、ここに記載された胎児治療や、あとは移植もあると思いますが、まず胎児治療に関して説明させていただくと、胎児治療だけ適応があるのでということで私どもに紹介されてきて、それでもって胎児治療を行って、安定したらば紹介元の産科にまた戻すということをやっています。ただ、その後、胎児治療を行った患者さんがどういう経過で、赤ちゃんがどうだったかという情報は全部頂いています。そういうことで特に大きな問題はなく、順調に育っているということを確認してこういう形になったということで、これは御紹介元と連携してもらう。あと、学会と連携しながら、胎児治療学会というのもございますので、その学会と連携してやっています。
 
○祖父江部会長
 なるほど。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 移植に関しては、申し訳ないですが、紹介でも遠くからでも定期的に来ていただいて、毎月でなくても、遠い方は年に3回などという形で来ていただくことで全例フォローしています。
 
○祖父江部会長
そうですか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 今回も、20歳過ぎでも来ていただく形になっていますが、確かに今後、30歳、40歳を過ぎたらどうしていくかということは内科系の成人の診療科と相談しながら、体制を作らなければいけないと思っています。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。是非、その辺、よろしくお願いします。先ほどの自閉症の発達障害などでも長期フォローが非常に重要になってくると思いますので、是非、よろしくお願いします。ほかにはよろしいですか。ディスカッションの時間が短くなっていますが、もしなければ次に移りたいと存じます。次は2-1から4-1になります。業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項、2-1から4-1ということで、これは説明8分、質疑6分と短い時間で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 よろしくお願いします。企画戦略局長です。資料1-2の29ページを御覧ください。中長期の指標については29ページの下にありますとおり、紹介率、看護師離職率の減少、経常収支率等々がございまして、いずれも一部達成していないところがありますが、おおむね目標を達成しているところです。
 30ページですが、達成していない中に看護師離職率(目標値13%)に対して、様々な教育担当者による定期的なヒアリングや復職支援を行いましたが、離職率は高止まりしたということで、目標には達していません。ただ、一般管理費については15%以上の削減とありますが、経費の縮減等見直しを行った結果、目標を達成しています。後発医薬品についても、目標の数値については達成しています。
 31ページを御覧ください。業務運営の効率化の中で医薬品、医療材料等の経費削減に努力し、特に[3]棚卸資産(診療材料)の在庫縮減については大きく在庫を縮減しています。[2]働き方改革ですが、令和2年度としては[1]にありますけれども、PICU、NICUといった重症者を受け入れるフロアにおいて、医師事務作業補助者に加えて事務補助員2名を配置しました。これにより業務を特化することによって、業務軽減につながっています。[2]の薬剤師の全病棟配置については令和元年度に達成していますけれども、これによって医師等の負担軽減、薬剤師の持参薬確認による医療安全の向上に寄与しています。
 この2-1について、中長期の資料1-6では27ページ以降になります。先ほど申し上げたとおり、定量的な指標については、おおむね目標を達成しているところです。次の29ページを御覧いただきますと、ほぼ先ほどと同じ内容になっていますが、特に[2]働き方改革の[3]、右のグラフになりますけれども、医師事務作業補助者配置については、平成27年度から鋭意増加し、25名まで増やしました。この結果、令和2年4月から医師事務作業補助体制加算の算定が開始されたところです。
 次に、評価項目3-1ですが、資料1-2にお戻りいただいて32ページ以降になります。中長期の目標については投資の計画的な実施、あるいは運営費交付金以外の外部資金の積極的な導入、競争的資金等の獲得に努めるとなっています。
 33ページを御覧ください。[1]ですが、病院の建物については、竣工してから既に20年たっています。そういったことから大規模建物整備計画が了承されて策定し、その実施段階の準備を行っているところです。また、[2]は外部医療機関からの検体検査受託の推進ということで衛生検査所を登録し、令和2年度は外部医療機関との受託契約の締結を行い、実際に受託をしております。
 資料1-6の中長期の方ですが、評価項目3-1で31ページを御覧ください。[1]で、平成27年度については大幅な赤字になったのですが、その後、経営改善を図って28年度は11億、その後も黒字決算を続けて5期連続の黒字決算を達成しています。また、令和2年度についてはコロナの感染で収支悪化の要因があり、先ほどありましたとおり患者数の減等がありましたが、コロナの補助金等の獲得の努力も含め、令和2年度についても経常収支については黒字になっています。また、31ページの[3]ですが、競争的資金等の外部資金獲得ということで、AMED、厚労科研、文科研など獲得に努めています。
 資料1-2に戻って、4-1、その他の事項になります。自己評価はAとさせていただいています。中長期の指標の達成状況については内部監査、人事交流の人数等について、全て大幅に上回った達成となっています。
 次の35ページを御覧ください。昨年の見込みではBとなっていましたが、それをA評価にしています。Aとした根拠について35ページの下にありますが、先ほど説明していますように「新型コロナウイルス子どものストレスについて」は、センターのホームページで、コロナ禍におけるストレス対処法等、健康・安全につながる情報を提供し、非常に多くの方々に御覧いただき、特に自治体・教育機関は、このホームページに掲載したリーフレットを活用していて、心理教育等に大きく貢献したところです。また、これも先ほど話がありましたが、コロナ×こどもアンケートを行い、この結果に基づく相談窓口等も公開していて、コロナ禍での問題の早期発見や、予防・対策に大きく貢献しています。そのほか日本小児科学会の指針等に引用される等しています。
 最後になりますが、資料1-6、33ページを御覧いただくと、その他の中で、職場のハラスメント対策といったものにも、アンケート調査、ポスターの掲示、患者・家族からの暴力等についてはポスターの作成、院内に警察OBを雇用するなどして対応しています。また、広報については令和元年度、広報企画室を新たに設置し、民間からの人材も活用して、分かりやすい表現でホームページを作る。あるいは発信量についても非常に多く行い、寄付金についても大きな獲得を得たところです。説明については以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、皆様から御質問、コメント等を頂けたらと思いますが、お手を挙げていただけますか。特にございませんか。土岐先生、よろしくお願いします。
 
○土岐部会長代理
 コロナ禍での経営のこと、特に小児・周産期領域は非常に懸念されています。補助金を入れて黒字というのは分かりますけれども、通常の診療の収益としましてはどれぐらい減少したのか。その辺りの情報も提供したほうがいいのではないでしょうか。先ほどの収益の所です。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 病院長から答えさせていただきます。大体、例年ですと医業収入が200億円ですが、医業収支率が大体104%ということで、黒字幅としては4億円か5億円と、6億円前後の医業収支の黒字には持っていっていました。ところが、昨年度は逆に医業収支としては約6億円の赤字です。ですから、例年と比べると11億円ぐらいの減少ということになるかと思います。
 
○土岐部会長代理
 分かりました。適正な医療を受けておられない方がたくさんいらっしゃると思うのですが、そういうものに対する広報活動、私はがんの領域ですが、がんも減っていて、患者さんにとって将来、非常な不利益になって返ってきますので、そういう適正な医療を受けるようにという啓発活動みたいなものは行っておられるでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 これは、小児がん、白血病の方や固形腫瘍の方のステージがどうかということを一度調べたことがありますが、子どもでは全く影響がございませんでした。ですから、紹介患者数も減っていませんで、逆に増えているような形になっています。ただ、移植患者さんについては論文にもしたのですが、重症化してから紹介されて来る方が多かったということで、移植の適応の患者さんが影響を受けたかということは考えています。
 
○土岐部会長代理
 がんなので、進行がんは全く減らないので、減っているのは早期検診レベルのものですから、是非、小児がんでも小児の移植でも早く対応できるように、引き続き広報活動をよろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。ほかにはございますか。庄子先生、よろしくお願いします。
 
○庄子委員
 日経BPの庄子です。資料1-2の31ページにある働き方改革の所で1点、質問です。[1]で医師事務作業補助者に加えて事務補助員2名を配置ということで、聞き漏らしたのかもしれませんが、この事務補助員というのは具体的にどういうことをされる方々なのか、その業務を教えてください。あと、働き方改革は今回の1-2にも、それから中長期のほうでも載っていますが、実際にその効果というか労働時間がどうなったのか、職員の方の満足度など、その辺りの評価はされているのでしょうか。それを教えていただければと思います。
 
○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 医師事務作業補助員は医療文書の下書きやクリニカルデータベースの登録など、そういう直接医師の業務を代替する業務を行っています。それ以外に、電話の取次ぎ等を含めた事務については、事務補助員の方が実施することによって、医師事務作業補助者がより医師の医療の補助に特化できる業務に貢献したことになります。
 
○祖父江部会長
 よろしいですか。
 
○庄子委員
 実際に働き方改革を行って、この[1][2][3]を行っての実際の効果というか、労働時間がどうなったとか職員の満足度など、そちらの調査はされているのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター金森総務部長
 総務部長です。実際の労働時間がどうなったかということですけれども、昨年、コロナの関係で患者数が一昨年と状況が違いましたので、一概に労働時間が増えた、減ったということはなかなか難しいです。実際に減ってはいますけれども、それがこの働き方改革の影響なのか、コロナで患者数が減った影響なのか難しい部分がございます。以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。働き方改革は今、大学でも大変なことになってきていますので、今、庄子委員がおっしゃったように、引き続き御報告いただけると有り難いと思います。中野委員、よろしくお願いします。
 
○中野委員
 中野です。4-1の業務運営に関して質問させていただきます。働くスタッフを守るという観点から、コンプライアンス体制の強化やハラスメントの防止はとても大事なことだと思います。それに加えて実施しておられる、ポスターを掲示して、患者さんや家族からの迷惑行為への毅然とした対応も非常に大事なことだと思います。教えていただきたいのは、こういった患者さんや家族の方からの迷惑行為が起こりやすい時間帯や背景、あるいはスタッフの研修医であるとか、こういった活動をされて気付かれたことがあったら教えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 これも病院長から答えさせていただきます。今までも迷惑行為を受けることは大分ありました。一番多かったのはナースに対してです。今まではナースが師長に相談して何とか内輪でという対応をしてきたのですが、それでは対応しきれないほど精神的に落ち込むし、本当に迷惑行為を受けることが多くなってきた。あとは研修医です。主治医には余り言わないのです。研修医に言ってくるので、研修医も大分受けています。全体として一番多いのは夜の時間帯です。ほかに1対1になる時間帯も言ってくるのです。第三者がいる時は絶対言わないのです。ですから、夜の時間帯が多いことになります。ICUが一番多いとか、日中はどうしても1対1になる時間帯に多かったということがあるので、防止というのはなかなかできないものですから、とにかく相談できる場所が病院にあるので、その親への対応はあなたたちだけでしなくてもいいから、病院として全体でやっていきましょうと、そういう風にやっていくことが大事だと思います。本当に警察OBの方も入れざるを得ない状況になったものですから、そういう方にも働いてもらっています。大事なのは、あなただけに任せない、全部これは病院として対応しましょうということでやっていったら、現場の先生方、ナースの方々は少し落ち着いたということはございました。特に決まった時間はなかったですが、1対1のときに大分迷惑行為を受けていることがあります。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。時間ですが、根岸先生、何かございますか。手短にお願いできれば有り難いです。
 
○根岸委員
 よろしくお願いします。根岸です。資料1-2の30ページです。看護師の離職率について、離職率が高止まりということで、先ほども質問が出ていましたけれども、働き方改革が推進される中で、看護師の離職を何とか減らすために、どんな職場環境の改善をされたのか教えてください。
 
○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 ありがとうございます。30ページにも書いてありますけれども、御説明しますと、定期的なヒアリング、先ほどの病院長の話ではないですが、組織として、職場全体として支援をしていくという観点が重要だと思いますので、そういう体制について、引き続き看護部を中心に体制を組んでいます。なお、高止まりと書いてありますが、実は東京都について、ほかの病院の調査などを見ますと、離職率は15%ぐらいとお聞きしていますので、平均的なのですが、引き続きよく分析して対応していきたいと。1年以内に離職する方は当院は少ないと承知していて、もともと2、3年ということで来ている方もおられるでしょうけれども、何年かたって辞める方が多いと承知していますので、そういった現状に対して引き続き対応しています。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 病院長からコメントを1つだけ加えさせていただきます。原因は2つあります。1つは、余りにも忙しすぎるということです。私どもの病院の一般病床は小児入院医療管理料1を届出していますので7対1の看護体制なのですが、これでやっていけるほどではありません。ほとんど、ほかの病院で言えばHCUと言われる所の重症度と同じ患者さんがいます。それを7対1でやれと言われても無理なところなのですが、7対1以上の看護師が入っていると経営にもすごい影響が出ますし、数百人規模の看護師を増やさなければやっていけないので、経営上は無理です。ところが、重症度が高まっていて本当に忙しい。夜中でも走り回るほどの忙しさがなかなか改善できていない。あとは、地方からいらっしゃる看護師がたくさんいるのですが、成育で3年か4年やると「そろそろ帰って来てね」と言う親がだんだん多くなってきます。成育で3年、4年やって地元に目を向けると、「成育で3年、4年やったのだったら、うちに来ないか」と小児病院からは引っ張りだこです。ですから、気軽に就職先が見つかって親元に帰るということがあったり、いろいろなファクターがあって、なかなかこの改善は難しいかと思います。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ちょっと時間が超過しましたが、次は全体を振り返っての総合討論を5分だけ時間を作ってあります。それも入れて何か全体的にございますか。今の働き方改革あるいはコロナの問題、それから過重労働が一部の業種に押し寄せているというのは、今、いろいろな組織で正に問題になっているところですので、議論しだすと本当に切りがないかと思いますが、いかがでしょうか。Zoomでやると少しタイムラグがあって打々発止という感じにならないですが、全体を通じて何か総合的に御質問、コメント等がございましたら、是非、よろしくお願いしたいと思います。前村先生、よろしくお願いします。
 
○前村委員
 前村です。冒頭に説明があったかと思いますけれども、成育基本法ができて、そのことによって変わったこと、あるいはこれから変えようとしていることは何かございますか。
 
○祖父江部会長
 よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 理事長からお話させていただきます。成育基本法が3年前にできまして、2年前から施行になりました。そして、今年の2月に成育基本法の基本方針案ができました。今後、3年以内に各地域での医療状況を調査し、評価して公表することになりました。基本方針の中には私どもがやらなければいけない具体的なことが書かれています。基本方針を実施するための改善策をいろいろな所に訴えていきたいと考えています。特に先ほどお話しましたように、バイオロジカルな対応で我が国の小児医療は世界でも一番良いと言われているわけですが、心理的なことや社会性を評価するための体制が不十分です。例えば学校健診で子どもたちの心理状況や御家族の環境を評価することは、できません。こうした課題に対して、学校健診の内容を改めることで対応するのか、それとも米国のように個別健診を行うのか、検討すべきと考えます。米国では子どもの個別健診に対して、社会保険が1回当たり150ドルの健診料を医療者側に支払っています。3歳から21歳になるまで年に1回、個別健診を受けないと学校に行けないという状況にもなっています。米国の仕組みを考慮しつつ、子どもの健診について変える方向に努力したいと考えているところです。成育基本法では、社会科学の研究を推進することも記載されています。私どもは社会科学の研究部門が2部門ございますが、これを充実し小児・周産期医療のシンクタンクとする努力をしたいとも考えているところです。以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。今、理事長先生がおっしゃったように、基本法が制定されて3年になるわけで、がんでもそうでしたし循環器でもそうですが、法律化すると社会全体を含めてナショナルセンターの在り方が大きく変わるということが起こりますので、是非、そういう方向を積極的、先進的に進めていただけるといいなと思っています。どうぞよろしくお願いします。それでは最後にと言いますか、時間が超過して申し訳ございませんが、法人の理事長先生と監事の先生からヒアリングとなっています。御説明を2分、そして質疑応答があればということですが、まず監事の先生からよろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター西田監事
 監事の西田です。私から報告させていただきます。令和2年度について監事監査の結果は、お手元の資料1-4に記載のとおりです。センターは適切に運営されており、財務諸表等については適切な開示が行われているものと認めています。令和2年度は新型コロナウイルス感染症への対応の年となりましたが、そのような状況下においても理事長のリーダーシップの下、事務部門も含めて全ての役職員の相当の努力によって、今まで御報告させていただきましたとおりの研究開発の推進及び医療提供等において、しっかりと成果を上げているものと評価しています。また、新型コロナウイルス感染症への対応については患者の受入れ、また大学病院等との連携、オンライン診療を行っていますが、子どものストレスに関する情報発信、また、5回にわたるコロナ×こどもアンケートによって、子どもの心理・社会的対応を見える化するといったことで、センター全体で広範囲でタイムリーな対応が行えているものとして評価しているところです。
 財務面については、令和2年度はコロナウイルスの影響で良い面、悪い面がありますので良否の判断は難しいですが、それでも中長期の期間で31億円の総利益を計上していますので、総じて有効的かつ効率的に運営がなされているという認識をしていますが、一方で、黒字幅は縮小傾向となっておりますので、子どもを取り巻く環境及び小児医療を取り巻く環境が大きく変化している中で、研究開発及び医療の提供というミッションを適切に果たしていくために、引き続き財務的にどのように手当していくのかというところについては、注視していかないといけないと考えております。以上となります。お時間を頂き、ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。短い時間でおまとめいただいたと思います。それでは、最後になりますが、理事長先生から今後の方針なども含めながら、一言、御挨拶をお願いできると有り難いと思います。よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 ありがとうございます。先ほど少しお話させていただきましたけれども、コロナの影響で、これからの小児医療あるいは周産期医療にも大きな影響が出るのではないかと思っています。今後、スマホなどICTを利用した診療方式を積極的に取り入れるとともに、AIホスピタル事業で培った様々な研究成果を利用し、ITを使って子どもや御家族に優しい、かつ信頼の高い医療を提供したいと考えているところです。それから、女性の出産に関しても更に支援が必要で、プレコンセプションケアや産後ケアを充実すること。それから、先ほど私が少し申し上げましたけれども、バイオサイコソーシャルの3つの点から子どもたちを守る体制を作りたいと考えています。そして、研究については再生、遺伝子治療を更に推進するということと、社会科学研究を推進して子どものシンクタンクを是非、作りたいと考えているところです。以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。将来に向けた非常に積極的なお話を頂いたと感じました。ありがとうございます。何か御発言があればですが、よろしいでしょうか。もしなければ、以上で、国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間実績評価についての審議を終了したいと思います。長時間にわたり活発な御議論を頂き誠にありがとうございました。感謝申し上げます。それでは、ここで10分ほど休憩を取りたいと思います。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局です。失礼します。休憩時間を短くしまして5分ほどとさせていただき、差し支えなければ11時25分から、がんセンターの審議をさせていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
○祖父江部会長
 申し訳ございませんが、5分にさせていただきます。よろしくお願いします。
 
         (国立研究開発法人国立成育医療研究センター退室)
                    -休憩-
          (国立研究開発法人国立がん研究センター入室)
 
○祖父江部会長
 そろそろ定刻です。それでは、事務局、始めてよろしいですか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 よろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 ただいまから、国立研究開発法人国立がん研究センターの令和2年度の業務実績評価及び中長期目標期間の実績評価を始めます。まず、理事長先生から、最初の御挨拶をしていただけると有り難く存じます。よろしくお願いします。
 
○国立がん研究センター中釜理事長
 理事長の中釜です。本日はよろしくお願いします。まず、私から簡単に御挨拶させていただきます。令和2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けての対応で、特に中央病院においては診療面での実質的な影響がありました。その中で、築地・柏の両キャンパスにおいては、職員の努力でその影響を最小限に食い止めることができていると考えています。最終的には、今年度も医業収支及び経常収支をプラスに保つことができています。
 このような社会的な環境、背景の中でも高度かつ最適な医療を提供すると同時に、がん医療の均てん化に関する事業へも、引き続き積極的に取り組んできたところです。同時に、新しい医療技術開発や全ゲノム医療への対応を含む医療データ基盤の構築や、人材育成のための体制構築とその充実にも取り組んできました。さらに、国際化への取組、これは開発研究を更に加速するためにはどうしても必要なところであり、そういう意味から、グローバルヘルスへの貢献にも取り組んできたところです。本日は各部門から、令和2年度の成果を中心に第2期中長期計画の実績について報告させていただきます。よろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。それでは、最初のセッションは、研究開発の成果の最大化に関する事項の評価項目1-1及び1-2に係る業務実績及び自己評価について議論したいと存じます。まず、法人から御説明いただき、その後、質疑応答という流れで進めます。時間は、説明が20分で質疑応答が18分です。時間が限られておりますので、何とぞよろしくお願いします。それでは、スタートしてください。
 
○国立がん研究センター間野理事
 おはようございます。研究開発に関する事項について、間野から御説明申し上げます。時間の関係で、限られた事項の説明に絞ることになることをお許しください。それでは、資料2-2に従って説明を申し上げます。
 4ページを御覧ください。評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進です。ここでは自己評価をSとさせていただきました。以降、具体的な課題について御紹介を申し上げます。
 6ページを御覧ください。左側のがんの本態解明に関する研究です。[1]大規模の横断的がんゲノム解析による新規発がん機構の解明です。アミノ酸置換等により、がん化能を獲得してがん遺伝子になるものは数多く発見されてきました。ところが、今回、6万例以上のがんゲノムデータをスーパーコンピュータを用いて統合的に解析すると、意外にもがん遺伝子の中で複数の、2個以上の変異が同時に起きていることが、ある程度の頻度で存在することが明らかになりました。それらの複合変異の組合せによって、がん化能が増強したり、あるいは、薬剤の感受性が変わることが明らかになりました。
 下にグラフがありますが、青で複合変異の頻度を表しています。例えば、一番左のPIK3CAという遺伝子や7番目のEGFRの遺伝子は、がんにおける変異頻度のうち約1割が複合変異となっていて、薬の感受性等に影響を与えていることが明らかになりました。ですから、これらの遺伝子に関して適切ながんゲノム医療を行うためには、ホットスポットの解析だけではなく、遺伝子全体を解析することが必要になると結論付けられます。このデータは、科学誌の『Nature』に掲載されました。
 7ページの右を御覧ください。[4]遺伝性乳がん・卵巣がんのリスクとなるBRCA2遺伝子バリアントの新規機能解析法を開発です。BRCA1、BRCA2遺伝子等は、親から異常遺伝子を受け継ぐと、子どもの乳がんや卵巣がんの発症リスクが10倍以上に増加します。しかし、例えば、1つのアミノ酸置換を見付けたときに、それが病的な原因変異なのか、それとも、単に正常な多型の1つなのかということは判断に苦慮することが多いのが現状です。
 こういう臨床的意義が分からない変異のことをVariant of Unknown Significance(VUS)と言います。世界的なデータベースのClinVarなどを見ると、BRCA1やBRCA2のVUSはいまだに1,000~2,000種類ぐらい存在していて、臨床の現場では判断に苦慮しています。私たちは、これらの数百~1,000ものVUSを一度に機能解析する新しいテクノロジーを開発しました。それを用いて、日本人の乳がん・卵巣がんに関係するBRCA2のVUSを186種類一度に解析したものが下の図です。
 解析結果で、病的な原因バリアントであるということが分かったものはy軸の下のほうに位置していて、良性のバリアントは上のほうに位置する形でグラフ上でお示ししております。右に国際がん研究機関(IARC)の分類が書いてありますが、青は良性のバリアント、黄はVUS、赤は病的なバリアントです。
 例えば、グラフの右下を見ると、色が青や黄であるにもかかわらず下のほうに位置していて、病的なバリアントだということが明らかになったものが結構あります。IARCの分類と我々の分類で違いが出たものについては、旧来のBRCAの機能アッセイ法で一つ一つ確認しており、我々のデータが正しいことが検証されました。こういうデータが大規模に世界に公開されることは、がんのゲノム医療の普及にとって極めて重要だと考えております。このデータは、『Nature Communications』に掲載されました。
 8ページを御覧ください。右側の[6]母親の子宮頸がんが子どもに移行する現象を発見。当センターの小児科に、多発性の肺がんを発症した乳児の患者さんがいらっしゃいました。その肺がんのゲノム解析をしたところ、肺がんの遺伝的なバックグラウンド、遺伝子多型が赤ちゃんの末梢血とは一致せず、お母さんの末梢血と完全に一致することが分かりました。
 当センターでは、臨床の場で疑問になるような症例、あるいは、医学上すごく重要な症例については、研究所がすぐに連携して最新のゲノム解析をするようなプロジェクト「すぐやる課プロジェクト」というのが始まっています。この症例も、すぐやる課プロジェクトで解析しました。赤ちゃんを分娩する際に羊膜が破れますが、そのとき赤ちゃんは一過性に羊水を吸います。実は母親の子宮頸がんが羊水の中に播種されていて、それを吸い込んだ赤ちゃんの肺に多発性肺がんが発症したことが分かりました。患者さんは男の子でしたからY染色体があるはずですが、その腫瘍のゲノムにはY染色体がありませんでしたので、女性のがん細胞であることが分かりました。
 以上のように、母親の子宮頸がんや体がんが子どもに飲み込まれて、あるいは、移ってがんが発症するということを、今回、世界で初めて明らかにしたわけです。しかも、その赤ちゃんはオプジーボ、免疫チェックポイント阻害薬で完全寛解しましたので、臨床的にゲノム解析をする意義が明らかになりました。この結果は、『The New England Journal of Medicine』に掲載されました。
 10ページを御覧ください。右側の[2]免疫チェックポイント阻害薬による治療効果を高精度に予測するバイオマーカーを開発。御存じのように、現在、オプジーボ等の免疫チェックポイント阻害薬はがんの医療で広く使われておりますが、その臨床的な有用性を高精度に予測するバイオマーカーは存在しません。そこで、当センターでは、腫瘍のゲノムだけではなく、そこに浸潤している免疫担当細胞の詳細なプロファイリングを併せて行うことで、新しいバイオマーカーの同定を試みました。その結果は真ん中の図です。少し専門的ですが、x軸の「腫瘍周囲の浸潤CD8キラーT細胞中のPD-1の陽性率」を分子として、y軸の「腫瘍浸潤制御性T細胞(Treg細胞)中のPD-1陽性割合」を分母とするような数値が、最もよく患者さんの反応性を予測することを明らかにしました。この結果は新しい患者コホートで検証しただけではなく、現在、それを診断する機器を診断機器メーカーと既に開発済みであり、さらに、その診断機器を用いた臨床試験が前向きで始まっています。こうして、我々の研究成果を直接的に臨床の場へ還元しております。この成果は、『Nature Immunology』に掲載されました。
 11ページです。右側の患者に優しい新規医療技術開発に関する研究の[1]リキッドバイオプシーによるゲノム解析の有用性の証明です。当センターの東病院を中心に大規模な臨床試験ネットワークを組んでおりますが、これまでのゲノム医療は、主に腫瘍の病理組織を使ったゲノム解析、ターゲットがん遺伝子パネル検査が用いられていました。しかし、最近では末梢血を用いて、末梢血中の腫瘍由来のDNA、あるいは、末梢血中の循環腫瘍細胞を解析するリキッドバイオプシーというテクノロジーが急速に進歩しています。
 そこで、当センターの東病院を中心として、リキッドバイオプシーが臨床試験のエントリーにどれくらい臨床的有用性があるかということを検証したデータがこれです。例えば、真ん中の左の図にあるように、旧来のパネル検査であるGI-SCREENと、リキッドバイオプシーによるGOZILAを比較しました。旧来のパネル検査の場合には、検体を出してから結果が出るまでに1か月以上掛かっておりますが、GOZILAの場合には僅か11日で臨床の場に結果が戻されています。しかも、左下にあるように、その結果、治験にエントリーした患者の数が2倍以上に増えていますので、少なくとも臨床試験においては、リキッドバイオプシーは患者さんのエントリーのテクノロジーとしては優れているということが証明されました。この結果は、『Nature Medicine』に報告しました。
 12ページを御覧ください。[5]新たな標準治療を創るための研究です。患者.市民参画(Patient and Public Involvement(PPI))は、当センターでは様々なプロジェクトにおいて積極的に導入してまいりました。今回、J-SUPPORTという支持療法や緩和療法の新しい科学的エビデンスを作るためのプログラムにおいて、PPIを積極的に活用して、患者の皆様と一緒に事業を最初から、プロジェクトの立案、計画の立案、結果の審査、成果を普及するところまで、様々な面でPPIの方に参加していただき大規模にプロジェクトが進んでいます。こういうことはJ-SUPPORTだけではなく、これからますます、がんセンターのプロジェクトに応用していきたいと考えています。
 13、14ページは、主なテーマに関して経年の進捗状況を表しています。13ページの上は、世界規模の国際ネットワークによる各種がんのゲノム解読です。27、28年度は、肝臓がんの全ゲノム解析を報告しました。令和元年度は、国際がんゲノムコンソーシアムに参加し、大規模な全ゲノム解析を報告しました。令和2年度は、先ほど御説明したように、がん種の横断的なスーパーコンピュータによる解析結果を報告しました。下は、遺伝子パネル検査の開発とゲノム医療の実装です。14ページの上は、がんのアキレス腱となる標的を研究において発見して新たな治療法につなげるテーマです。その下は、先ほど少しお話しましたが、リキッドバイオプシーによる低侵襲診断法の開発です。
 15ページを御覧ください。発表論文の数から、当センターの実績を可視化したものです。左側は、臨床医学分野における発表論文数を年次ごとに表したグラフです。この中で、当センターは赤ですが、2018年から急速に数が伸びており、2020年は1.5倍以上に伸びています。日本で考えると、一番上の黄緑の東大、黒の阪大、オレンジの京大、茶の慶応に次いで第5位の発表論文数になっています。しかも、その中で、高被引用論文数、他の論文から引用された回数が多い、つまり、医学的に重要と思われる高被引用論文数(Highly Cited Paper)の数で言うと、2018年から日本で1位の高被引用論文数を誇っています。この面からも、研究は順調に推進しているのではないかと考えました。
 16ページを御覧ください。評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備です。この面においても、自己評価をSとさせていただきました。
 18ページを御覧ください。日本は2019年から保険診療下でがんゲノム医療を大規模にスタートしており、当センターが全体をサポートする仕組みを作っております。左側にあるように、[1]がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の体制整備です。日本でがんゲノム遺伝子パネル検査を受けた患者のゲノム情報と臨床情報を集約するデータセンターとして、C-CATが作られました。C-CATでは、一人一人の患者に対して、その人に適合する保険収載薬、あるいは、マッチした最新の臨床試験の情報をまとめたものをC-CAT調査結果として各病院にお返ししています。その数は、そこのグラフでは令和2年12月で1万1,558例と書いてありますが、最新のデータでは、今年の6月末で1万8,000例を超える症例が集まっており、その1万8,000例に最適化されたC-CAT調査結果をお送りして、日本のゲノム医療を支えております。
 また、こうして集まったデータを利活用しようということで、右側にあるように、様々な利活用システムを作っております。利活用していいかどうかというのはインフォームドコンセントの中で尋ねており、その問いに対して、利活用してよいという同意率は99.7%ですから、C-CATで集まったデータのほぼ全ては実際に利活用できるようになっています。
 右側の「診療検索ポータル」は、実際のゲノム医療を行っている病院のデータが見られるポータルサイトです。これは令和2年度9月からスタートしております。さらに、真ん中にある「利活用検索ポータル」は、一般のアカデミア、世界中の製薬会社や企業に利活用してもらうためのポータルサイトを今年度中にスタートさせるべく、現在、急ピッチで準備を進めております。将来は、右下にあるように、シーケンスの元データを直接利活用できる利活用クラウドシステムを作りたいと考えております。
 19ページを御覧ください。右側の[3]産官学の連携・ネットワークの構築です。[1]SCRUM-Japan/Asiaでのリキッドバイオプシーによる世界最大規模の新薬開発の推進です。当センターの東病院が中心となり、産学連携のゲノムスクリーニングプラットフォーム(SCRUM-Japan)というオールジャパンのプラットフォームを大規模に行い、新薬開発を進めてまいりました。これまでに9剤11適応で既に薬事承認を取得済みです。
さらに、2017年からはそこにリキッドバイオプシーを大規模に取り入れて、そのデータを患者のエントリーに使う形で行っております。左下にあるように、肺がんの患者さんがいらしたら、リキッドバイオプシーをやって、見付かった遺伝子変異に応じてそれぞれの臨床試験に割り振る仕組みであったり、右側にあるように、固形腫瘍の患者さんに対してリキッドバイオプシーを行い、それぞれの遺伝子変異に応じた臨床試験に入るという、大規模な臨床試験のネットワークを現在も精力的に進めております。
 21ページを御覧ください。[4]国際連携・国際貢献です。当センターでは、理事長主導の下、アジアの臨床試験の開発ネットワークを推進することを精力的に行っております。例えば、右側にあるように、ATLAS Projectが、AMEDからの予算を得てスタートしたところです。タイ、マレーシア、ベトナム等の成長著しいASEAN諸国で臨床試験を大規模に、日本主導でネットワークを作っていく。さらに、それらの国に日本主導でゲノム医療を根付かせていくという非常に大規模なプロジェクトです。5年後や10年後の日本を考えた場合に、日本にとって極めて重要なプロジェクトになると、我々は考えています。
 22ページを御覧ください。先ほどのATLAS Projectだけではなく、左にあるように、先ほどのSCRUM-JapanをLC-SCRUM-Asiaとして更に拡大して、中国、台湾、韓国等、アジアの医療先進国と一緒に大規模な臨床試験ネットワークを構築しているところです。
また、右側の[3]国際機関プロジェクトへの参画と協力です。もちろん、アジアだけではなく世界の主要な所とも国際協力を結んでおります。例えば、国際協定については、21機関と20の協力覚書をしており、それから、国際がん研究機関(IARC)の科学評議会の副議長として、当センターの井上が選出されました。世界のがん研究、がん医療のガバナンスにNCCが入ることにより、日本がガバナンスに直接コミットしていくという意味でも重要なことだと考えています。以上が、評価項目1-1と1-2の成果です。NCCのJHに関しては、別の所で御説明があると思いますので割愛させていただきます。以上です。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 非常に精力的に説明をしていただき、ありがとうございました。いかがでしょうか。今の御説明に対して、コメントや御質問等をお願いします。お手を挙げていただけると有り難く存じます。ないようでしたら、私から始めさせていただきます。最初の頃に、非常に画期的ですばらしい成果をまとめてたくさんお話いただきました。その中で、少し細かい問題になるかもしれませんが、VUSの発がんに対する機能解析と言うのでしょうか。これは非常にいろいろな領域で応用できるコンセプトかと思ってお聞きしました。右側に機能をいろいろ書いていらっしゃいますが、例えば、発がんに直接関わるもの、それから、発がんした後の経過、進展、転移など、フェノタイプを類例とするモディファイアー的なバリアントと言うのでしょうか。ディープフェノタイプバリアントと言うのでしょうか。その辺りについて、分かっていることはあるでしょうか。
 
○国立がん研究センター間野理事
 今回はBRCA2と遺伝子に関して解析しましたので、基本的には、VUSはBRCA2の本来の機能をどれぐらい損なうかという指標で評価しています。BRCA1も同じだと思いますが、先ほど申し上げたように、比較的若年で、若年と言っても30、40代で乳がんや卵巣がんになりますので、発がんそのものの機構、ゲノムの不安定さを誘導する機構としての働きになると思います。
 ただし、先生がおっしゃるように、例えば、EGFRのVUSを調べると、今度はがん遺伝子のVUSの機能解析はできるわけです。それによると、例えば、がん化能に直接関係するVUSもありますし、それから、分化能に関係しているVUSも出てきます。遺伝子によって得られるVUSの機能は様々になるというのは、先生が御指摘のとおりです。以上です。
 
○祖父江部会長
ありがとうございました。土岐先生、よろしくお願いします。
 
○土岐部会長代理
 間野先生、ありがとうございます。ただただ感服するばかりです。1点申し上げます。しばしば質問を受けると思いますが、ゲノム医療は最終的にはホールゲノムまでいくのですが、これを患者さんの予後向上に役立てるために、今、どこが一番ブレークスルーと言うか、制度上の問題などもあるかもしれませんけれども、先生なり、がんセンターのお考えをお聞かせ願えないでしょうか。
 
○国立がん研究センター間野理事
 ありがとうございます。大変重要な問題で、先生が御指摘のように、こういうゲノム医療を日本全体で行っても、実際に臨床試験で薬にたどり着ける割合はせいぜい10%前後なのです。でも、実は日本だけではなく、アメリカなど諸外国のゲノム医療の論文を見ても大体同じくらいの治験のエントリーレートです。
 そうすると、一番ボトルネックになっているのは、体制というよりは、むしろ、がん研究が足りない。つまり、実際に患者さんに有効に使える薬の数に限りがあるというのが、実は一番ボトルネックなのではないかと思います。パネル検査は、今ある臨床試験や保険薬を効率よく患者さんに届けるには最適なのですが、その薬がないがんが圧倒的に多いわけです。ですので、がんの全ゲノム解析や様々なアプローチによって治せる薬を増やすことに注力することは、日本だけではなく世界においても重要なテーマになるのだろうと考えます。以上です。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。研究の発展が大変重要ということで、基礎研究の発展を期待しております。もう1点よろしいでしょうか。
 
○祖父江部会長
 どうぞ。
 
○土岐部会長代理
 12ページのPatient and Public Involvementです。患者さんにもある程度の知識を持ってもらわないと、臨床試験に参画することはなかなか難しいと思います。がんセンターでは、患者さんへの教育という言い方がいいかどうかは分からないのですが、レベルアップしてもらうためにどのような努力をされているのでしょうか。
 
○国立がん研究センター間野理事
 これは私だけではなく、ほかの方からも回答させていただいたほうがいいかと思うのですが、先生がおっしゃるとおりで、例えば、患者会にも参画していただき、その患者さんが発言することに対してノーと言えるような関係性を築くことはすごく大事だと思います。それは、私はがんセンターに来て4年ぐらいになりますが、患者会の中でも、例えば、全国の患者の団体連合会が出来て患者会も変わろうとしています。先ほどおっしゃいましたが、あちら側でも教育や学習という活動をされていますし、こちら側でも、SCRUMの中でも患者会の参画はあると思いますし、一緒に入っていただいて、医者が感じている問題点を様々な形で共有しているというのが現状です。私だけではなく、ほかの方もお答えになったほうがいいと思います。
 
○国立がん研究センター島田中央病院長
 中央病院の島田です。土岐先生、ありがとうございます。患者さんの参画に関しては、医療の提供の項目にもあるのですが、市民講座やいろいろな講演をするということを中心にやっております。特にJ-SUPPORTでは、このスライドに出てくるものなのですが、患者さん側に座長をやっていただくという参加の仕方をしていただき、共に議論していくという格好になっておりますので、より議論の中心に入っていただくような格好になることを目指しております。ただ、これは広まるようで難しいところもあり、地道な努力を続けていくことが一番大事なことなのかと考えております。ありがとうございます。
 
○土岐部会長代理
 今後も、この点について御指導をよろしくお願いします。ありがとうございました。
 
○国立がん研究センター大津東病院長
 東病院ではSCRUM-Japanの中でPPIの委員会を組織して、セミナー等での公開講座的なものもやっています。今は基本的にICFです。ゲノム関係に関しても、医師主導治験等の説明同意文書に関しても、PPIの方にもそこに一緒に参加していただきチェックしてもらっています。
 
○土岐部会長代理
 実際の説明。そうですか。
 
○国立がん研究センター大津東病院長
 はい、やっていただいています。それから、もう1つは、今、SCRUM-Japanで国際がんゲノムコンソーシアムのICGC-ARGOにメンバーで入っています。ICGCの委員会のPPIのメンバーに日本の方を何人かノミネートしていて、国際的なPPIとELSIのワーキンググループです。倫理面など、全ゲノムになってきますので、そこの患者会の方や専門家の方をメンバーに組み入れる話を進めていて、日本がグローバルにリードできるような形に進めているという状況です。
 
○土岐部会長代理
 大津先生、どうもありがとうございます。また御指導をよろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 それでは、前村先生、よろしくお願いします。
 
○前村委員
 間野先生、どうもありがとうございました。次々にトップジャーナルに発表されていて、感服するばかりです。リキッドバイオプシーについてお伺いします。昨年のこの会では、miRNAをターゲットにしたリキッドバイオプシーのお話をされていたかと思います。今日はDNAの変異のお話をされましたが、今後の方向性として、リキッドバイオプシーのターゲットになるものとして、DNAの変異なのかmiRNAなのか、最近はロングノンコーディングも言われていると思いますけれども、どれが実用化に近いとお考えでしょうか。
 
○国立がん研究センター間野理事
 ありがとうございます。実用化という意味では、実際にcirculating tumor DNAが診断薬として広く使われていますし、日本でも保険収載はまだですが薬事承認は下りていますので、間もなく循環DNAを用いたリキッドバイオプシーが、がんの実臨床で使われる時代になると思います。
ただし、将来的にctDNAがリキッドバイオプシーのゴールデンスタンダードになるかというのは、まだ正解は誰も分かっていないのではないかと思っています。例えば、ctDNAだと融合遺伝子が取りにくいという弱点がありますし、循環腫瘍細胞を解析するというアプローチもまだ残っていますし、先ほどのmiRNAを使った解析法は、現在、前向きの臨床試験が走っているところです。将来的にゴールデンスタンダードになるか、リキッドバイオプシーがどういう形に落ち着くかということは、現在、世界が模索しているところではないかというのが正直なところです。以上です。
 
○前村委員
 どうもありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 では、中野先生、引き続きお願いします。
 
○中野委員
 川崎医大の小児科の中野です。すばらしい御発表をありがとうございます。私は小児科医なのですが、『New England Journal』の、母親の子宮頸がんが子どもに肺がんとして移行したという御報告はすごいお気付きだと、発表されたときも大変興味を持っていました。また、それに対して医師主導治験でニボルマブで効果があったということで、私はがんは全く専門ではないのですが、この御経験を何かほかにいかすことを計画されておられるのでしょうか。
 
○国立がん研究センター間野理事
 この症例は、1人の方のお話をしましたが、当センターの周りの病院にいろいろ調べてもらったところ、同じような症例がもう1例見付かっているのです。ですので、こういう症例はまれですが、全くないわけではなく、世界中に結構あるのだと思います。本来は免疫に拒絶されますから、がん細胞はほかの人に移るはずがないのです。でも、赤ちゃんの体は免疫系が2歳になるぐらいまでは不十分であることと、半分は母親由来ですから、半分は免疫が同じだという2つが合わさり、他人(母)のがん細胞なのに子どもの体内で生存してがんになったという結果だと思うのです。だからこそ、免疫拒絶になりやすいので、免疫チェックポイント阻害薬が有効だったということは予想されると思います。もう少し症例を増やしていき、常にコンスタントな結果が出るようであれば、それを実臨床へ持っていく活動を行いたいと思います。また、ゲノム解析をしたから分かったので、ゲノム医療の有効性を示すものではないかと考えています。以上です。
 
○中野委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ほかに何かございますか。手を挙げるボタンを押していただけると有り難く存じます。では、もう1つお聞きします。リキッドバイオプシーの今後の展開には非常に期待が持てて、がんの早期の発見につながると思います。前から先生もおっしゃっていますし、理事長先生もおっしゃっていたかと思うのですが、今後、予防を考えた場合に、リキッドバイオプシーは、どこかにがんがあるという状態を見ているようにも取れるのです。私は神経なので、いわゆる未病状態と言うのでしょうか。どうやったらがんが出てくるのを防げるかという、今はどちらかというと疫学的なデータの範囲だと思うのですが、先生、その辺りの方向性はゲノムからはやれそうでしょうか。
 
○国立がん研究センター間野理事
 実は一見正常な体内で体細胞変異が起きている細胞を見付けるのは、今のがんのゲノム解析で最もホットな領域です。4年ぐらい前に、末梢血中に白血病に関わるがん遺伝子が陽性となった細胞がある程度の頻度で存在するクローン性造血という現象があることが分かってきました。これは高齢になればなるほどクローン性造血が増えていき、クローン性造血がある人は白血病の発症リスクが10倍ぐらい上がるのです。
 不思議なことに、そういう人は心筋梗塞のリスクも上がるのです。ですので、我々の体の中に起きた体細胞変異を持つクローンたちがどのような病気に関わるかということはものすごく大事で、しかも、ホットな研究領域です。これから行われようとしているがんの全ゲノムプロジェクトでも、そういうふうなアプローチが必要だと考えます。
 血液だけではなく我々の皮膚、例えば、先生がおっしゃるように神経細胞など、もしかしたら神経細胞はエピジェネティックな異常のほうが多いのかもしれませんが、後天的な変異が我々の体の中に確率論的に一定の数で出てくるので、それがどういう病気にどれぐらいリンクするのかということは、これから10年間で最も知見が増える領域ではないかと考えています。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。そろそろ時間で、これは5分ぐらい遅れておりますので、お一人方ぐらいは御発言いただいても良いかと思います。よろしいでしょうか。また後で、まとめて議論する時間が少しあるかと思います。それでは、先へ進みます。どうもありがとうございました。
 それでは、1-3から1-5です。医療の提供等その他業務の質の向上に関する事項です。これは、説明が20分、質疑が18分でお願いしたく存じます。まず、法人から御説明をよろしくお願いします。
 
○国立がん研究センター島田中央病院長
 まず医療の提供に関する事項から、東病院の大津と中央病院の島田から御報告させていただきます。どうぞよろしくお願いします。26ページを見てください。まず安心・安全な医療の提供です。本年度はCOVIDの感染が、がんセンターと言えども避け切れない影響を受けております。特に特定機能病院の責務として、やはりコロナ患者さんの受入れを行政からの要請もあり、1病棟をコロナ病床として診療してきました。それに関してはPCR検査の内製化を行い、発熱外来を設置し、疑い症例に関しては2,000件以上のPCR検査をしました。
 また、術前患者さんに関しても、がん患者さんなので、全ての症例に関してPCR検査を施行しております。現時点においては、病床に入院された患者さんは400名を超えております。その中でほとんどの患者さんが保健所から依頼された一般の患者さんですが、一部は院内で発生したがん患者さんのPCR陽性患者さんもここで収容して診ております。また、このような患者さんのデータを使い、NCGMと共同させていただき、抗体検査法の臨床性能の評価等も行って、研究的な実績も出しているところです。
 次は[1]の先進医療・治験に関することです。COVIDの影響にもかかわらず、本年度は非常に多くの治験・臨床研究を行いました。本邦では1位、アジアでは2番目の実績だと考えております。実際に企業治験は800を超え、医師主導治験が109、First in Humanは99件です。また、国際共同治験も数多くやっております。この中で例を挙げますと、先進医療に関しては右の下のほうです。今までは固形がんに関する、要するに標準治療後のプロファイルの検査でしたが、今は初回治療時に包括的なゲノムプロファイル検査が有効であるかということを、先進医療Bで行っています。現時点では100例近い症例が登録されているところです。また、重要な点は患者申出療養というのがあり、遺伝子パネル検査における遺伝子プロファイリングに関する複数の分子標的剤の臨床試験を開始しています。当初、これは200件近い症例を登録しており、順調に進行しているところです。
 27ページは、医療機器の開発です。内視鏡のAI診断支援システムの開発により、昨年11月に医療機器承認を取得しました。これは前がん病変の大腸病変をAIに診断させることによって、教育的な見地と見落としがないように行うことに非常に重要な研究と考えており、医療機器として承認されたわけです。こういうアプリケーション、医療機器のプログラムというのも、開発の中に入ってきているというのが如実に分かる研究です。
 右側を見ていただきますと、これは新たな標準治療の開発ということになります。今まで切除不能な大腸がんというのは、特に狭窄あるいは出血を予防的に回避するために手術を行っていたわけですけれども、症状のないステージⅣの切除不能の患者さんは、抗がん剤治療を先行したほうがいいのではないかということを証明したことになります。ですから不要な手術をしなくてもよいということで、切除不能の無症状の大腸がん患者さんの新しい標準治療は、抗がん剤をファーストに選ぶということが、臨床研究として証明されました。2021年2月号のJCOにパブリケーションされております。
 次が28ページです。当院では東病院、中央病院も含めて、低侵襲治療の開発や提供に力を入れてきました。特に継時的にCOVIDの影響で件数は少なくなっておりますけれども、多くの低侵襲治療を開発しています。特にIVRという放射線誘導下の治療が行われているのですが、これに内視鏡的な技術も一緒にコンビネーションすることによって、総合的なIVRセンターと言いますか、内視鏡治療と放射線治療を開発しています。それが右側に書かれている、みらいプロジェクトというプロジェクトの中で、低侵襲医療機器の開発あるいは推進を、センターとして全体的に取り組んでいきます。この医療機器の開発あるいは高精度の放射線治療を、どういうように知的財産として保持していくのか、医療機器として認められていくのかということを、包括的に支援しながら進めていくようなプロジェクトを立てております。29ページは、東病院の大津先生から御説明していただきます。
 
○国立がん研究センター大津東病院長
 光免疫療法の医師主導治験で、これはアメリカのNCIで勤務している日本人の小林先生が開発された治療法です。抗体に光感受性物質を付加して近赤外線を当てることで、その部位が確実に壊死に陥って、特に免疫原性の壊死を起こすということで、非常に効果が高く、日本では我々が開発して、もう既に薬事承認を得ました。現在、頭頸部がんで薬事承認を得ていますけれども、食道がんと胃がんで医師主導治験中です。
 
○国立がん研究センター島田中央病院長
 では、29ページの3番の[1]希少がんの研究開発・ゲノム医療を推進するということで、従来からMASTER KEYプロジェクトというのを行っています。これは現時点ではレジストリ研究ですが、幾つかの施設、北海道大学、東北、京大、九大の先生方と協力して、バスケット型デザインと呼ばれる新しい手法の臨床試験、バイオマーカーを有している患者集団に関して、薬剤を用いて治験を行っております。13社の製薬企業の方に参加していただいて、申請に向けて14の治験が行われています。本年度はMASTER KEY Asiaとして、ASEANにおいてもこのようなことをやる基盤事業を進めております。現時点までに固形がん1,613例、血液がん168例という順調な登録を行っているところです。
 次に30ページです。従来、希少がんに対するがんセンターの使命は、非常に重要なものと考えております。希少がん中央機関として希少がんの診療ワーキンググループ、病理診断、患者支援という3つのプロジェクトチームを立ち上げ、中央機関としての使命を果たしています。従来から希少がんホットラインというものを設置し、患者さんからの希少がんに対する相談を全国から受けており、正しい治療へ導く努力をしてきたところです。今後は数ではなくて質、どのような有効な治療法に導いていったかということを解析していくことを計画しています。[4]の小児がんの医師主導治験、国内の小児がんに対する薬剤開発も数はまだ少ないのですけれども、遺伝子パネル検査を用いて、本年度から4例の解析に基づく医師主導治験等を開始しています。
 30ページの右側に、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供とあります。従来、TQMというものが広く行われてきていますが、これを実践的に効果的にやることは、各病院でも非常に苦労されているかと思います。当院でも患者さんの診療の質を上げるため、あるいは職員の満足度を上げるために、TQMセンターを作る準備を昨年からしており、本年度から開始しているところです。やはり医療の質を改善するということは非常に重要な視点で、それも医師ばかりではなく、多職種でやっていくということが非常に重要な問題だと考えております。
 
○国立がん研究センター大津東病院長
 下段のほうです。我々は、山形県鶴岡市立荘内病院と包括的医療連携をしています。これは慶應の先端研が鶴岡市にあり、以前から共同研究をやっていたことが縁で市立病院と包括的連携を結び、同院でがん相談外来、オンラインでの診療開始に向けて、こちらから鶴岡の電子カルテが見られるような形を構築中です。次のページにいきます。オンラインの相談というのは、もう既に始めています。遠隔診療に向けて、全体の診療形態が変わると思いますので、オンライン化を様々な所で進めています。それから、我々の施設では来年にオープンしますが、敷地内に宿泊施設、ホテルができます。その中にこういった遠隔医療に関する様々なセンサーや解析機器を組み入れ、遠方からの方が宿泊して通院治療を行う、あるいは手術を行ってから術後の間、ホテルで宿泊するといった形での新しい診療形態を今、スタートしたところです。
 
○国立がん研究センター島田中央病院長
 オンライン診療に関しては、中央病院からも少し追加させていただきます。特に中央病院の患者さんのうち、2割程度は遠隔から診療される方が多くなりました。このCOVIDの状況でオンラインセカンドオピニオンというのは、非常に重要な位置を占めるものと考えております。その質を上げるために、患者さんと画像を見ながら相談できる、あるいは紹介医も一緒に参加して、オンライン上で相談できるようなシステムを考えており、今後、これから更に発展していきたいと考えております。
 次に、アピアランスのガイドラインを作成しましたので、御報告させていただきます。アピアランス支援センターというのが、患者サポートセンターの中に設置されております。患者さんの重要なサポートの1つと考えており、これを研究所に発展していきたいということでガイドラインを作っています。31ページの最後に、地域に開かれた病院を目指してとあります。先ほど土岐先生から御指摘いただいたように、様々なプログラムあるいはイベントを開催し、患者さんと病気の理解、あるいは患者会との共有に努めております。特に患者サポートセンターを中心にして、患者さんを十分サポートしてがん診療をやっていくということは、がん専門病院の重要な役割と考えております。これに関しても、JCOGに関しても、臨床試験においても、患者さんの参画を求めることが広く言われていますので、これを現実的に実行しているところです。医療提供の項目に関しては、これで終了させていただきます。
 
○国立がん研究センター神ノ田人材育成事務局長
 続いて1-4の人材育成に関する事項について、人材育成管理事務局の神ノ田から御報告差し上げます。資料32ページを御覧ください。過去3年間はB評価となっておりますが、令和2年度においては、自己評価をAとさせていただいております。人材育成に関しては、これまでもがんセンターとしてしっかり取り組んできたところですが、この評価シートにおいては、十分なアピールができてこなかったという反省があります。中ほどに評価指標を載せております。指標としては1つ設定しており、指導者的立場にある医療従事者への研修プログラム提供ということで、7種類以上を目標にしております。ただ、これは人材育成の全体の中では、ごく一部の取組だということを御理解いただければと思います。
 過去の実績を見ますと10種類弱で推移してきており、この数字だけを見ますと、取組が進んでいないように受け止められてしまうところがあるかと思いますが、実際にはスクラップアンドビルドを重ねてきております。令和2年度においては2種類のプログラムを廃止し、新たに3種類のプログラムを立ち上げております。具体的には下の囲みで記載しているとおり、[1]の緩和ケアチームフォローアップ研修、[2]のがん化学療法薬剤師研修等、3種類のプログラムを立ち上げているところです。
 33ページを御覧ください。今御説明した評価指標以外にも、多様な人材育成の取組を実施しておりますので、主なものを御紹介します。下の所に実績として、何点か数字を挙げております。[1]の修練医・レジデントの育成として、令和2年度は145名のレジデント等の育成をしております。対前年と比べますと、13名増となっております。[2]の連携大学院数についても20施設で、プラス3となっておりますし、大学院に在籍する職員数も90名で、プラス13人となっております。がんセンターにおいては、レジデント等に対して臨床だけではなく、研究についても指導を実施しております。その成果としての学位の取得についても、積極的に支援をしています。[3]のeラーニングサイトの実績ですが、ICRwebという臨床研究に関するeラーニングサイトを運用しております。その実績は、こちらに記載しているとおりです。新規協力者数は2万人を超えておりますし、修了書の発行も1万8,000、配信講義数も270ということで、前年度と比べても1割ぐらいは実績が上がっています。これはがんに限らず、全国の臨床研究に関わる専門家の育成に大きく貢献していることを示しています。
 34ページを御覧ください。具体的な取組について、重複を避けて御説明させていただきます。まず左側、キャリアラダーの作成・公表についてです。がんセンターとして、初めて人材育成キャリアラダーを作成しました。下のほうにキャリアラダーの例として、中央病院の医師部門のものを御用意しております。卒後年数に応じた到達目標を定め、しっかりとステップアップをさせるような仕組みを導入しております。これと同様のものを21作成し、いろいろな職種に応じてこのようなキャリアラダーを設けて、しっかりと計画的に人材育成をしているということです。
 右側が、フィジシャン・サイエンティスト養成プログラムについてです。これはトランスレーショナルリサーチ、又はリバーストランスレーショナルリサーチを担う研究志向を持った臨床医を養成することを目的に、このプログラムを令和元年度から立ち上げております。令和2年度においては初めて2名がプログラムを修了し、新たに5名を採用しました。連携大学院については、先ほど御説明したとおりです。
 35ページを御覧ください。専門職種の育成の推進ということで、医学物理士レジレントコースを、令和2年度から開始しております。こちらは1、2、3と書いてあるとおり、将来、指導的立場で活躍できる医学物理士の育成に努めているところです。全国的に見ても医学物理士は不足している中で、しっかりと指導的な立場で活躍できる方を育成していこうということで立ち上げたものです。下に写真がありますが、リニアック、陽子線、MRIdian、BNCTといった多様な放射線治療機器があります。また、豊富な治療実績もありますので、こういった恵まれた環境の中で、専門性の高い医学物理士の育成に努めているところです。
 35ページの右側が専門研修の関係です。全国のがん医療水準の向上を目指して、33種類の専門研修を実施し、6,000名を超える医療従事者が受講しております。ここに合わせて、冒頭に御説明した指導者養成研修も行っているということです。地域緩和ケア連携調整員についても、38地域、136名が令和2年度に受講されております。最後のICRwebについては、先ほど御説明したとおりで繰り返しになりますけれども、全国の臨床研究の底上げに多大なる貢献をしております。担当としては、S評価をしてもいいぐらいの成果ではないかと自負しています。
 期間実績については資料2-6の3ページです。人材育成については、Bとなっております。過去にB評価が多かったので、見込評価はBとなっておりますけれども、ここでは自己評価としてAとさせていただいております。その理由としては、十分にアピールできてこなかったというところもあります。我々としては人材育成にしっかりと取り組み、成果も上がってきていると考えておりますので、是非、この点も踏まえて御評価を頂ければと思っております。以上です。
 
○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 続いて1-5、医療政策の推進等に関する事項について、がん対策情報センターの若尾から御説明させていただきます。もう時間が過ぎていますので、本当にかいつまんで御紹介します。自己評価はAとさせていただいております。37ページを御覧ください。こちらでは国への政策提言として2点挙げております。国のがん対策推進協議会、あるいはがんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議等に、スタッフが参加しております。それから、全国がんセンター協議会との連携となりますが、外来化学療法加算1の評価の見直しなどを厚労省に提言しております。医療の均てん化では、やはりコロナ禍でオンラインを中心とした活動となりました。ただし、コロナ禍で特に参加者等が増えたということと、PDCAを回すために非常に重要と思われるピアレビューについても、オンラインで実施したという実績になっております。
 それから38ページの左側で、3つの調査を行っています。患者体験調査は平成27年に続いて2回目です。小児の患者体験調査は初めてです。さらに、人生の最終段階の療養生活の状況を調査するという形で、前回、遺族調査を初めて行っております。これらの3つの調査については、国のがん対策推進協議会に報告して、がん対策推進基本計画の評価、又はアウトカムとして評価に使っていただいております。
 39ページは、がん情報サービスについてです。がん情報サービスの提供では、全体として60種類の情報を更新しました。その結果、年間で5,300万PVを得ています。最後に[6]の患者・市民パネル(PPI)です。このがん情報サービスを作るためには、患者・市民パネルという形で、100名の患者さんに御協力いただいています。こちらは平成20年度から活動しており、累計で568名の方に御協力いただいております。やはりオンラインで検討会を開き、その結果は[6]の末尾にありますように、拠点病院の連絡協議会等で患者さんにお伝えするということで、フィードバックさせていただいております。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ちょっと時間が過ぎておりますが、いかがでしょうか。今、御説明いただきました点について、御質問等頂きたいと思います。土岐先生、よろしくお願いします。
 
○土岐部会長代理
 評価が分かれているところを重点的に聞くようにということでしたので、フィジシャン・サイエンティスト養成プログラムですけれども、こちらのほうは昨年度2名で、次は5名ということなのですが、ページで言うと34ページです。これは、将来へ向けてビジョンのようなものは、この方々はどのようにされるのか、そこはデザインできているのでしょうか。
 
○国立がん研究センター神ノ田人材育成事務局長
 採用に当たっては、是非がんセンターの中で活躍していただきたいというような有望な方を選考しております。研究実績も、論文等の実績についてもしっかりと評価した上で、研究的な活動もできるような優秀な臨床医を採用して育成に取り組んでおり、令和2年度に修了した2名についても、がんセンターにおいて実際にトランスレーショナルリサーチにしっかりと従事して取り組んでいただいているところです。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。それでは、前村先生、よろしくお願いします。
 
○前村委員
 資料2-2の33ページの人材育成についてお伺いします。専門医機構の制度が変わって、内科専門医や外科専門医など、なかなかナショナルセンターを回るのが難しくなってきていると思います。がんセンターの場合は、どのようになっているかというのをお聞きしたいのですけれども、一階建て部分の専門医を取った二階建て部分を対象として、その後の専門的な人材育成をしているのか、何らかの手で研修医を終わって、一階建て部分の専門医プログラムとしてすぐにがんセンターに行くという道もあるのでしょうか。
 
○国立がん研究センター大津東病院長
 東病院の大津です。若干、中央との違いもあるかもしれませんが、東のほうは基本的に一段階目を取った方がほとんどです。外科の専門医あるいは内科の専門医を取って、その上の消化器の外科や呼吸器外科、内科だと腫瘍内科あるいは内視鏡科、そういった二階の部分を教育して専門医を取得させるというのがほとんどであります。
 
○前村委員
 では、もともとそういう制度だったので、余り影響はないということですね。
 
○国立がん研究センター大津東病院長
 現時点ではそれほどないのかとは思います。
 
○前村委員
 分かりました。ナショナルセンターによっては非常に影響を受けている所があると聞くものですから。ありがとうございます。
 
○土岐部会長代理
 もう1点よろしいですか。人材のところばかり聞きますが、評価が違っていたので。ICRwebですが、S評価を気持ち的には出したいということでしたけれども、数としては120%増というわけではないのですが、それでもやはり非常に高い自己評価というのは何か理由があるのでしょうか。
 
○国立がん研究センター神ノ田人材育成事務局長
 正にがんセンターが全国の臨床研究を支えている、それぐらいの役割を担っているという意味で申し上げました。類似のe-learningのプログラムというのはなく、がんセンターが臨床研究の人材育成の中心になっているということです。また、数的にも、しっかりと2万とかということで、毎年新規登録がありますし、修了書も1万8,000ということで発行しております。これは年々増えておりますので、そういった形で全国の臨床研究を支えるその人材育成の成果としては、S評価はおおげさではないのではないかと考えて申し上げました。
 
○土岐部会長代理
 すみません、厳しいことをお伺いしまして、どうもありがとうございます。
 
○国立がん研究センター島田中央病院長
 中央病院の島田ですけれども、追加してもよろしいでしょうか。実は私みたいな外科医がこれを見ると、すごく参考になって、臨床研究をやるときの知識が非常に広くなるということと、昨年度からATLAS Projectというので、ASEANに私たちが臨床研究・治験を推進していく事業を始めたのですけれども、ICRwebを全部英語化して、海外の方もこれを見て勉強できるような、CRCの話だとか、そういうことにも含めているので、手前味噌ですが、是非、Sの御配慮をお願いできればと思います。
 
○土岐部会長代理
 納得しました。どうもありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。宣伝いただき、どうもありがとうございます。そのほかはいかがでしょうか。
 それでは、祖父江からですけれども、1-5で医療の均てん化と言いますか、がんセンターでいろいろ開発されたシステムを地域へ均てん化して、フィードバックしていくという作業が非常に重要かなと思います。その1つの中核になるのは、そこに今、出ていますが、がん診療連携拠点病院への支援の強化というのが、もう既に幾つかやられているのですけれども、ここのチャンネルは非常に重要ではないかなと、私個人的には思うのですが、どうなのですか。均てん化の方向をどう考えるかということ。もう1つは、例えば若い人、先ほど来出ているように、がんセンターに呼んで、そこでトレーニングして帰っていただくというやり方がもう1つあるのですが、どういうチャンネルを現時点では重要と考えておられて、将来的にはどういうチャンネルを更に考えておられるかどうかということをお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
 
○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 御質問ありがとうございます。若尾からお答えさせていただきます。御指摘のとおり、拠点病院のネットワークをいかすことが均てん化を進めるキーと考えております。ただ、全体で拠点病院は447、現在では451あり、こちらに対して全てがんセンターからアプローチするというのは難しい中、都道府県を取りまとめる都道府県拠点病院が51施設あります。我々としましては51とネットワークを作っており、その51の中で機関の相談支援、情報提供をどうするか、がん登録をどうするか、あるいは緩和医療をどうするかということを、部会を通して情報共有、更に推進をしているところです。拠点病院に対してアプローチして、更に都道府県が、都道府県内の拠点病院に対して研修会を開くときに、そこに対する支援も行っているところです。
 さらに、研修会等は、先ほども専門医機構のお話がありましたけれども、各学会等で職種ごとの研修会はやっていただいているのですが、そこでどうしても抜けるのがチーム医療の研修会で、今はチーム医療の研修を中心に都道府県の指導者を育成するということで、都道府県拠点の医療チームを集めて行っているところです。それも1周しましたら、全国全て網羅したら、その研修会はずっと続けるということではなくて、各都道府県の取組をそれぞれ情報共有する場を作っていって、それをまた県内においても均てん化をするような場を作っていくような形に変えていきたいと考えているところです。以上です。
 
○国立がん研究センター中釜理事長
 中釜から少し追加させていただきます。今の祖父江先生の御指摘は非常に重要だと思っていまして、がん診療連携拠点病院400数十を中心としたがん診療のネットワークは非常に重要だと思いますし、がん医療の均てん化の重要なエンジンになっていると思います。一方で、例えば希少がんや難治がん、あるいは高度のがんゲノム医療に関しては集約化を介した医療技術の均てんという2つ目の方向性があるかと思っています。
 後者に関しては、やはりデータ基盤を充実させ、先ほども紹介がありましたけれども、ゲノムデータベースや人材育成のプラットフォームといったものを介して全国から研修に来ていただき、その方々に全国各地に戻っていただくという医療均てん化の方向性です。この2つをバランス良く、例えば小児がん中央機関としての役割などに関しては国立成育医療研究センターとも連携をし、希少がんに関しては、希少がんの幾つかの連携病院と協力しながら、集約化を介した医療技術の均てん化というように、この2つの方向で見据えていきたいと考えています。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。これもいろいろ進化させていただけると有り難いなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。ほかには何かございますか。根岸先生、よろしくお願いします。
 
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いします。大変戦略的な研究あるいは医療についての御発表をありがとうございました。一層がん治療に希望が持てるという思いでおります。
 企業の立場から、今、多くの事業所では両立支援ということが非常に重要なテーマになっています。特にその中でも、がんの治療と仕事の両立をどのように企業が支えていくかということに非常に関心を持っているところなのですが、企業に対するがん研究センターの先駆的な働き掛けや御支援に期待しているところです。それで、もし両立支援について現在の取組があれば教えていただきたい。それと、今後の両立支援の推進に向けてお考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
 
○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 それでは、若尾からお話させていただきます。資料2-6の35ページをお開きください。これは平成30年度の活動ですが、企業の人事課の方あるいは患者さん、あるいは労務の方等と連携し、「がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック」というのを作らせていただいております。これはどうしてかといいますと、患者さん個々にアプローチするのではなくて、やはり会社側に、患者さんに対する接し方あるいは対応の仕方を学んでいただくことが必要だと思いまして、企業に対するアプローチとして、大企業と中小企業ではリソースが違いますので、大企業編と中小企業編という形で2種類作り、これを配布するとともに、スライドの左側に出ていますけれども、がん情報サービスのホームページから公開して、多くの方に活用していただいています。各都道府県などでも、やはり両立支援のセミナーなどが開かれておりますけれども、セミナーなどでも御紹介し、これを活用していただいております。
 今後の活動としては、これを始めたとき、あるいは、がんセンターから、がんとともに働くというような情報提供をしていた頃は、なかなか両立支援あるいはがん患者さんの就労ということが世間的に取り上げられることはなかったのですが、今、働き方改革なども広がり、様々なリソースが増えてきていると考えております。ですので、私どもが先進的に取り組んでいたのですが、ここは非常に充実してまいりましたので、今、私どもが積極的にこの情報を作って発信していくというよりは、様々ながんの対応において働けるということを、医療の臨床の場で患者さんが辞めないでいいということをしっかりと伝えられるような、そちらのほうにシフトしているというような状況だと考えています。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。企業の規模によっても大分差があるのが現実ですので、また中小企業の両立支援についても、引き続き御支援をよろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ほかにはいかがですか。よろしいでしょうか。そろそろ時間が迫ってきておりますが、何か御発言はよろしいですか。それでは、ありがとうございました。また後で、時間がなくなるかもしれませんが、全体を見渡す時間をつくりたいと思いますので、よろしくお願いします。
 次へ移らせていただきます。2-1から4-1の業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項です。これは全体で14分の時間となっており、説明は8分、質疑応答を6分ということで、ちょっと短い時間ですが、よろしくお願いします。まず、法人から御説明をお願いします。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 それでは、2-1の業務運営の効率化に関する事項に関する説明をさせていただきます。企画経営部長の中山と申します。よろしくお願いします。
 2-1、業務運営の効率化に関する事項ですが、40ページを御覧いただきますと、指標の達成状況は、経常収支率について、目標は100%を超えること。一般管理費に関しては15%以上を削減ということですが、令和2年度については、中期経常収支率は101.9%で目標は達成し、一般管理費についても15.3%で、目標を達成したという状況です。事務職員のスタッフデベロップメント研修の開催数についても同様です。今回、自己評価としては、Aとさせていただいています。これまでBという評価でしたが、Aという評価をさせていただいています。その評定の根拠として御説明をさせていただきます。
 42ページを御覧ください。左下にありますように、経常収支率の改善と安定化という項目です。先ほど申し上げましたように、令和2年度についてはコロナ禍で非常に厳しい状況があったという中でも、経常収支率は101.9%とできたということ。そして、中長期計画期間中について、6年連続で黒字を達成したことについて評価いただきたいということで、まず、1つ挙げさせていただきたいと思います。これを達成するためには、医業収益の増加に努めるとともに、財務ガバナンスの強化といった点で、様々な投資に関しては部門ごとの責任を明確にさせて、執行管理をしっかり行う。投資委員会というような場を設け、そこでその投資の必要性などについて厳しく判断をするということを行った結果として、こういった結果が出てきているものと考えております。
 さらに、業務の効率化といった視点で、令和2年度に大きく前進したという点が、42ページの右の下、電子化の推進といった所の記載にありますとおり、電子申請決裁システムというものを令和2年度中に導入することにしました。これは令和3年度に共通基盤システムというものを公開する予定だったのですが、電子申請決裁システムについては、前倒しして実施したということであります。右下に棒グラフがあるとおり、1月から導入し、372件から888件など、徐々に増加しています。年間にこういった処理をしなければいけないものが8,000件ありますけれども、これを全て電子化処理することによって業務の効率化、コスト削減といったことに大きく資することができますので、こういった点で評価を、自己評価Aということで我々としては挙げさせていただいております。
 次に、43ページに移りまして、財務内容の改善に関する事項です。これについても、これまでの5年間はBという評価だったところ、自己評価としてはAとさせていただいております。その評定の根拠を御説明させていただきますが、次の44ページを御覧ください。44ページの左上、自己収入の増加に関する事項とあります。その中の外部資金の獲得といった点で、令和2年度については158.9億円で、前年度比117.5%増という形になりました。令和元年度は、黄色の部分の共同研究費について大型研究費の減ということで一時下がりましたが、ここの部分も盛り返すとともに、全体としても過去最大、全体として合わせますと158.9億円で、過去最大という実績を上げたということを、1つ挙げさせていただきたいと思います。
 さらに、その下にあります寄付金の拡大に向けた取組ということで、これもこの6年間の推移が見て取れるかと思います。過去最大で1,000件を超え、折れ線グラフの所ですが、1,137件という実績を上げ、かつ、寄付金として約3億円ということで、これも過去最大という形になっております。広告などを行い、寄付者層の拡大に努めたという結果などが寄与していることかと思いますけれども、こうした実績を上げたということを挙げさせていただきたいと思います。
 右上のほうにいきますけれども、知財収支の状況ということで、これについても令和2年度は1億円を超える収入で、これまでに比べますと非常に増大したという結果が得られたと。1億円を超える収入、過去最高額が得られたということであります。
 あと、1つあるのは、収入が多くても特許支出の部分が多いと、結果としては残らないということになってしまうのですが、ここについては非常に費用の支出を抑えるという形での特許収入を得るという戦略が成功し、高い利益率を上げているというところが特徴ではないかと考えております。こういった点を合わせ、自己評価としては、Aとさせていただいております。
 最後に、その他業務運営に関する重要事項ですが、これについては従来どおりのBという評価にさせていただいております。この内容については、46ページを御覧ください。1つ挙げさせていただきますが、積極的な広報ということで、広報を積極的に実施しているという点が挙げられるのかと思います。実績としては、取材対応数で292件、月当たり24件、プレスリリースにしては52本、メディア掲載数にしても1,127件で、非常に多くの広報を実施しているということが挙げられると思います。さらに、FacebookやYouTubeなどを通しての情報発信方法の工夫も行っているということが挙げられるのかと思っています。
 評定を上げさせていただいた点については、6年間のところでの説明もということでしたが、先ほど触れた点と重複しますので、説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。見込評価の結果と、この期間全体の今回の自己評価が少し割れている点についても、一応、触れていただいて御説明いただいたということです。いかがでしょうか。それでは、御質問をよろしくお願いします。大西先生、よろしくお願いします。
 
○大西委員
 収支は非常に良かったというお話だったのですけれども、今回は補助金というのは頂いたのでしょうか。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 はい、頂いております。
 
○大西委員
 どのぐらいの金額でしょうか。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 補助金については、11億円です。
 
○大西委員
 それがなくてもプラスであったということですか。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 補助金を除いたときの経常収支率を計算しておりますけれども、100.7%ということで、100%は超えているという状況になっています。
 
○大西委員
 なるほど。さすがです。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常にすばらしい結果ではないかなと思いました。ほかにはよろしいですか。前村先生、よろしくお願いします。
 
○前村委員
 44ページですが、外部資金の獲得が順調に伸びていて、非常にいいかと思います。お伺いしたいのは、共同研究費は2018年度までは順調に伸びていて、2019年度が少なくなって、また今回、挽回したということになるのですけれども、これはどういう要因が考えられるのでしょうか。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 令和元年度については、共同研究費の中の大型研究費について、ちょっと減ってしまったことが要因だと思いますが、令和2年度に関しては、そこが回復できてきているという状況が反映されているということかと思います。
 
○前村委員
 割と少ない数の大型研究費が取れたか取れないかの違いということでよろしいでしょうか。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 そういうところが反映されているのではないかと考えています。
 
○前村委員
 ありがとうございます。
 
○国立がん研究センター間野理事
 間野から少し補足させていただきますが、企業との大型研究費、共同研究費がたまたまこの年度に終了したものが2つほどあり、それで一挙に減ったのですけれども、また次の年には、新たな共同研究の大型が幾つかスタートして、また元に戻っているというような状況です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。私から1つお伺いします。先ほど42ページの2-1の所で投資委員会、中身がどこに書いてあるのか分かりませんけれども、説明の中で投資委員会というようにおっしゃったような気がしたのですが、もし、そういう形のようなものがあるとすると、内容やその規模など、どういうものを議論されて、これは非常に大事だと思いますけれども、どこか投資するという、そういうのをディシジョンするというのは、最終的には理事長先生ではないかと思いますが、それはどういう組織立てになっているのかをお答えいただけるといいなと。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 42ページの左上、財務ガバナンスの強化の6行目の辺りに、投資委員会という言葉が出てくるのですけれども、基本的には1,000万円以上の医療機器などの投資や人員の増に関しての案件は、がんセンター全体の中でも実際にその計画を出して、それの増をしたことによって収益がどれだけ上がるのかといったこととともに、費用が掛かるわけですから、それを上回る収益があるのかどうか。仮に収益が上回らないとしても、そのセンター全体としての必要性に基づいて、それを導入する必要があるのか。そういったことを理事長以下、部長などの委員が、いろいろ審議した上で決定するという仕組みを設けているということです。
 
○祖父江部会長
 そうですか。そうすると、これは主に、ここに書いてあるのは医療関係が多いのですか。
 
○国立がん研究センター中山企画経営部長
 基本的には病院関係が多いということになります。
 
○祖父江部会長
 なるほど。分かりました。ありがとうございました。よろしいでしょうか、ほかには。ちょっと時間が押してきておりますが、もしあれば御質問いただけたらと思います。よろしいですか。全体としては、先ほどの棒グラフで出ていた企業の外部資金、黄色で共同研究という形で出ていますが、これはやはりがんセンターは、ほかの所と比べても非常に飛び抜けていまして、すばらしいというように思います。内容などを詳しく教えていただけると有り難いなと思ったのですが、時間がありませんので、また情報としてお教えいただけるといいかなと思っております。どうもありがとうございました。
 それでは、この項目はこれで終わりにしたいと思いますが、先ほどと同じように、全体を通じて何かコメントや御質問等がありましたら御発言いただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
 ないようでしたら、私からですけれども、いつでしたか、先期の、第2期の中間ぐらいだったかと思いますが、いろいろな世界のベンチマークですが、例えばダナファーバーや、世界的なスローンケタリングなど、世界的ながんの拠点が幾つかあって、それと比べるとまだ足りないところは幾つかありますというお話を聞かせていただいたことがあったと思います。今日の発表などを伺うと、相当いいところへ行っているのではないかという気がするのですが、その辺の世界的ベンチマークとの比較という観点ではいかがでしょうか。もし、何か教えていただけることがあれば御発言いただけると有り難いのですが。
 
○国立がん研究センター中釜理事長
 中釜から少し説明させていただきます。ベンチマークに関して十分に私自身がフォローできているわけではないのですが、例えば昨年の『Newsweek』の「World’s Best Specialized Hospitals 2021」の腫瘍学部門において、Newsweekなりの様々な査定・評価の結果、世界のがんセンター、がん研究所あるいは大学病院と比較したところでは16位に選出されています。その背景として、今日お話にあったSCRUM-JAPAN等でいろいろなデータ基盤、データレジストリを作ることによって開発研究を効率的に進めており、その中でも既に非常に効率よく創薬あるいはその診断薬の承認にもっていけるという点で米国のNCIと比較しても非常に優れた成果を上げています。
 加えて今、保険で行っているがんゲノム医療にしても、このデータ基盤を構築していって、それを利活用できるような仕組みを作っていくことが重要と考えています。これは恐らく今後、更に展開をして、製薬企業やアカデミアがこのデータ基盤を使い、更には全ゲノム解析へ移行して、そういうデータをきちんと作り込むことによって、日本全体の開発力を強化する、そういうところを今後見える形で評価指標として打ち出していくというところも広報活動が必要かなと思います。まだまだ足らないところはあると認識しながらも、毎年方向性としては良い方向に進んでいるかなと、理事長としては理解しています。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。非常に良い方向に、良い線に行っているという印象を持ちました。それでは、最後のセッションですが、理事長先生と監事の先生からヒアリングというか、御発表を伺いたいと思います。これは、まず監事の先生からでして、今年の監査報告として御説明いただけたらと思います。よろしくお願いします。
 
○国立がん研究センター小野監事
 監事の小野と申します。よろしくお願いします。令和2年度の監事監査に関しましては、今、画面に提示されておりますように、監査報告書という形で提出しておりますが、特段の指摘事項はございませんでした。少し付言しますと、独立行政法人については、総務省が法人のミッションを明確にした目標と計画を示すようにという要請をしております。がんセンターの大きなミッションは、がん研究、医療、先端的な研究開発、国内基盤の構築、国際競争を勝ち抜く、こういったところにミッションがあるというように思っております。そういった観点からも、がんセンターの御努力と成果について、監事としても高く評価をしているところです。お時間を頂き、ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。順調に推移しているという御報告だったと思います。よろしいでしょうか。それでは、最後に理事長先生から、今日のお話も踏まえて、あるいは今後の方向性も踏まえながら御挨拶いただけたらと思います。
 
○国立がん研究センター中釜理事長
 理事長の中釜です。本日は本当に長い時間、令和2年度を中心とした成果についてお聞きいただき、ありがとうございました。
 私から最後に、今後、国立がん研究センターが日本のがん医療の目指す方向性として、個々人の治療における最適化、そのための新しい医療技術の開発とその提供は非常に大きなミッションだと考えています。一方で、今回の新型コロナウイルス感染症を含めて、今後、医療の提供体制に関しては、大きな変革を求められているタイミングかと思います。個別化され、患者さんの層別化に基づく最適な医療提供のためにも、医療データ基盤をきちんと構築をし、それを利活用できるシステムと、その作られた基盤を使って人材を育成するようなプラットフォームの構築は、当センターのみならず日本全体におけるがん医療の充実、展開、発展に非常に重要だと認識しており、当センターもその方向で貢献したいと考えています。更には、国内だけではなく、国際的な協力・連携をし、特にアジア地域のゲノムの共有性あるいは民族的な共通性を踏まえた疾患の特性などを踏まえた開発研究において、日本だけではなくグローバルな意味で医療展開できるような仕組みを構築していくことが極めて重要かと思います。そのためには共同研究等で資金獲得を行い、しっかりとした財政基盤を作りながら開発研究を進めていくことが必要になります。本日はお話できませんでしたが、今後はベンチャーの育成プログラムや様々な外的な資金を使いながら開発研究を更に加速していくためにも、当センターと日本中、あるいはアジア地域の専門機関と連携を取りながら進めていくことが必要かと思います。
 最後に一言、これは祖父江先生も御指摘になりましたけれども、治療だけではなく、いわゆるがんになる前の方のがん予防をどのように展開していくかということが、やはり予防から医療、治療、更には、がんとの共生というシームレスながん患者の支援というものを、国立がん研究センターとしてどのような形で展開し、提供できるかは今後の大きなテーマだと思います。そこにがんの全ゲノムからの情報、バイオマーカーの情報を踏まえた適切な予防と早期の診断・治療というものが実現できればと、今後の方向性として考えているところです。私からは以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。大変すばらしい御挨拶を賜ったと思います。今、先生御自身でもおっしゃいましたけれども、これはがんセンターにとどまらず、日本の医学全体のことを包括するような方向が、かなり含まれているという感じがしました。今日は本当に長時間にわたり御説明、御回答いただき、ありがとうございました。改めて御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。では、これで、取りあえず質疑応答、御発表は終わりにしますが、最後、事務局から御案内はありますか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局です。今後の流れについて御連絡します。本日御議論いただきました令和2年度の評価、それから中長期の評価については、今後、本部会における御意見、それから法人の監事、理事長のコメントを踏まえまして厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について、法人に通知するとともに公表します。委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお送りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、次回8月3日の審議分と合わせて、8月10日までに事務局宛てにメールで御送付いただきますようお願いします。なお、決定した内容については、後日、委員の皆様にお送りしたいと思います。
 次回の日程ですが、8月3日(火)14時から、国立国際医療研究センター、国立長寿医療研究センターの評価に関する審議を予定しております。事務局からは以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。いろいろな事務情報を頂き、それに対応していきたいと思っております。それでは、これで本日の予定は全て終了したいと思います。本当に長い時間、活発な御議論を賜り、ありがとうございました。では、次回は8月3日、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。これで失礼します。