第24回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和3年8月6(金) 13:59~17:50

場所

オンライン開催

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国立研究開発法人国立循環器病研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間実績評価について
    2. (2)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間実績評価について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立循環器病研究センター
資料1-1 令和2事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和2事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和2事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和2事業年度 監査報告書
資料1-5 第2期中長期目標期間 期間実績評価書(案)
資料1-6 第2期中長期目標期間 期間実績評価説明資料
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
資料2-1 令和2事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和2事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和2事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和2事業年度 監査報告書
資料2-5 第2期中長期目標期間 期間実績評価書(案)
資料2-6 第2期中長期目標期間 期間実績評価説明資料

議事

第24回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 お時間は少々早いですが、差し支えなければ始めさせていただきたいと思います。
 ただいまより「第24回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議とさせていただいております。
 委員の皆様には、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。議事進行役を務めさせていただきます研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室の武藤と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は藤川委員より御欠席の連絡、それから中野委員より16時45分ごろに御退席される予定との連絡をいただいております。なお、出席委員に関しましては過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
 続きまして、本部会の開催に当たり、医政局研究開発振興課長の笠松より御挨拶申し上げます。
 
○医政局研究開発振興課笠松課長
 研究開発振興課長の笠松でございます。委員の皆様には、大変長時間にわたる御審議をこれまで2回にわたってしていただいております。ありがとうございます。本日も長丁場になりますが、よろしくお願いをいたします。
 研究、医療、教育、人材育成など鋭意計画的に実施に取り組んでいるところでございますが、こういった場で定期的に目標を精査し、先生方に御議論いただくことによって、法人の成果が、より一層前向きに加速するということを念じておるところでございます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 それでは、本日のオンライン会議の進め方について御説明いたします。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による御指名を受けた後に御発言をお願いいたします。その際、マイクのミュートを解除してくださいますようお願いいたします。
 御発言の際、必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には資料番号と該当ページをお示しいただきますようお願いいたします。また、御発言終了後は、再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して、経過時間等を画面に表示させていただきますので御承知おきいただければと思います。
 続きまして、本日の議事を御説明いたします。本日は国立循環器病研究センター及び国立精神・神経医療研究センターに関する令和2年度業務実績評価、中長期目標期間実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに「年度評価」「期間実績評価」の順に法人から御説明していただいた後、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと存じます。
なお、期間実績評価につきましては、昨年度に見込評価を実施しているため、見込評価における大臣評価とは異なる自己評価を付けている項目を中心に説明・議論を行っていただく予定でおります。
 それでは、本日の会議資料の御確認をお願いいたします。委員の皆様におかれましては、お手元の資料を確認していただければと思います。議事次第、資料1-2、1-4、1-6、2-2、2-4、2-6がお手元にございますでしょうか。御確認をお願いいたします。その他の資料につきましては、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。
 評定記入用紙につきましては、様式の電子媒体を送付しておりますので、そちらに御記入いただき事務局に御提出をお願いいたします。資料の閲覧方法について御不明な点がございましたら、チャット機能で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、何か御質問等ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、以降の進行につきまして祖父江部会長にお願いしたいと存じます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。それでは、ただいまから評価部会を開始したいと思います。本日は本当に暑い中といいますか、大変お忙しいところ、あるいはコロナで大変なところお集まりいただきましてありがとうございます。
 まず、国立研究開発法人国立循環器病研究センターの令和2年度の業務実績評価と中長期目標期間の実績評価について御議論いただきたいと思います。会議に先立ち、法人の理事長先生から御挨拶をいただければと思います。準備はよろしいでしょうか、よろしければスタートしていただけるとありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター大津理事長
 理事長の大津でございます。本日は当センターの業績を評価していただく機会を設けていただきまして、厚く御礼申し上げます。私は、本年4月に理事長に就任いたしました。この数箇月、病院長、研究所長、医長、部長、看護師長、技師長等150名以上と面談し、現状を捉えることに努めてまいりました。私の使命は、研究面、医療面でこれまでの優れたところは更に伸ばしつつ、改革すべきことは大胆に改革することだと心得ております。そして、名実ともに世界最高レベルの研究医療機関としたいと思っております。先生方におかれましては、御指導賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 それでは、私のほうから特に3点、昨年度の業績について述べさせていただきたいと思います。第一点目は世界最小・最軽量・長期耐久型ポータブルECMOの開発でございます。当センターでは長年、人工心臓の開発に取り組んでまいりました。最近開発した非接触回転型遠心ポンプと抗血栓性、長期耐久性に優れた人工肺を組み合わせたECMOは、国難とも言えるコロナの重症患者に使用され、患者さんの命を救いました。従来のECMOは6時間しか持たなかったのですが、我々のECMOは14日間以上使用でき、治療成績の向上と医療従事者の負担の軽減が図られています。現在、多施設で臨床試験中でございます。
 さらに、この技術を発展的に応用したポータブルECMOについて現在、多施設医師主導治験が進行中でございます。更に今回、医療現場で不足しているN95マスクについて、我々のオープンイノベーションセンターに入居する事業分野の異なる3社との共同研究の形で、社会ニーズに応えるべく医療用高性能マスクの開発に成功いたしました。1年という短期間で既に発売を開始しております。
 2点目は当センター研究者の研究成果が一流誌に掲載されたことです。具体的には成熟心筋細胞が自己再生する上で大切な新規分子を同定し『Science』に掲載されました。また、肺動脈性肺高血圧症の重症化機構を解明し『PNAS』に掲載いたしました。
 3点目は外部資金の大幅な増加であります。昨年度、JSTのプロジェクトである「共創の場形成支援プログラム」として当センターを中心とした提案が採択されました。これは難治性心疾患・がん・認知症・ウイルス感染症の克服を目指すバイオコミュニティの形成をするものでございます。これはまた、将来の日本を担う人材を育成することも目指しております。10年間で総額31億以上の大型プロジェクトでございます。また、昨年度、AMED等から公的な研究費は一昨年に比して70%、企業等の共同研究費は一昨年に比して30%増加いたしました。これは研究者のより積極的な姿勢とそれをサポートするシステムの充実のお陰だと思っております。また、これらは財政にも深く関与しております。
 以上、昨年度の実績について簡単に御紹介させていただきました。今日は御評価・御指導のほどよろしくお願い申し上げます。
 
○祖父江部会長
 どうも大変ありがとうございました。大津先生から今、3つの点について非常に大きなプログレスがあったということと、新しく理事長になられてからの抱負・決意というようなことをおっしゃっていただきまして、非常にインプレッシブな御挨拶をいただいたと思います。
 それでは、議事に入っていきたいと思います。まず、最初は「研究開発の成果の最大化に関する事項」ということでございます。評価項目の番号から言いますと1-1及び1-2に関わる業務実績及び自己評価について議論したいと思います。時間は説明が20分、質疑応答は18分ということで、かなり限られておりますので、ポイントを絞って御説明いただけるとありがたいと思います。それでは御説明のほう、スタートしていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 国立循環器病研究センター研究所長の望月と申します。よろしくお願いいたします。評価項目1-1、「戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」について御説明いたします。今年度の自己評価をSとさせていただきました。
 3ページを御覧いただけますでしょうか、上段に掲げてございます中長期目標の内容ですが、[1]から[4]まで当該領域の医療機器・医薬品の開発、並びに新規治療法の研究開発、それから革新的な治療法の研究開発、共同研究、多施設とのネットワーク化ということを目指しております。
下段に示しますように指標の達成状況を定量指数で申しますと、上段に示す医療推進に関わる中長期計画中に12件以上、単年度では2件以上、今年度は3件でしたので達成度150%。また英語論文数に関しては、当該年度250件以上に対して434件でございますので、達成度174%。いずれも150%を達成しましたので、自己評価はSとさせていただきました。
 その要因分析ですが、先ほど大津理事長からも申し上げましたように、コロナに対するECMOの治療、それから最新の基礎研究を報告させていただいたということで、英語論文数に併せて、当該研究が120%以上ということでSとしたのが根拠になっております。
 5ページで、我々の研究成果を説明させていただきたいと思います。皆様御存じのように、ECMOを小型化することだけでなく、先ほど理事長が御説明した抗血栓性、長期耐久性ということが本ECMOの特徴でございます。左下段を見ていただきますと、御覧のように手のひらに乗る自立型のポンプを作ることができました。また、下段中ほどに書いてありますBIOCUBE、これは膜型人工肺なのですが、この2つを組み合わせることによって、キャリーバッグと同じぐらいの大きさでECMOを組み立てることができました。これを医師主導型の治験で現在も進行中でございます。
 一方、これが医師主導治験で進みましたけれども、治験中にCOVID19がパンデミックとなり、何とかして患者さんを救いたいということで、それぞれのパーツを分解するということで新たなECMOシステム、これは特定臨床研究で実施するために医師主導治験として使っている左側のものを使えなかったので、あえて分解して使ったものが右の臨床研究になります。これは下に掲げていますように10の施設、関東・関西含めて、重症感染症搬入で困っている所で非常に貢献したというように考えております。
 6ページに進んでいただきたいと思います。左側に書いてあるのが、細胞治療を有さない、ただ転写因子を心臓内に発現させるだけで、心臓の増殖、心筋細胞の増殖を起こすことができるKrueppel-like factor1、Klf1という転写因子を同定することができました。左側の黒の写真に書いてありますように、このKlf1を強制発現することによって、数倍以上の心臓の細胞数の増加を得ることができました。これは現在、ゼブラフィッシュで見つかったことですけれども、哺乳類の動物でも同じことができないかということを共同研究に発展させていっております。
 また、6ページ右に書いてございますのは肺動脈性肺高血圧症、大体日本には3,500人ぐらいの患者さんがいらっしゃるのですが、若い女性で発症し治療抵抗性の患者さんもいらっしゃいます。その中で、芳香族炭化水素受容体、上段に書いてありますがAHRがこの病態に関係していることを見出すことができました。下段に示しますように、ラットの肺高血圧のモデルでは、AHRの遺伝子破壊をしておくと肺高血圧が起きないことが分かりました。つまり、このAHRという芳香族炭化水素受容体が肺高血圧発症に重要であるということを報告することができました。
実際、このAHRというのは皆様御存じのように、ダイオキシン等をリガンドとします。これが病態の発生に関与するということが言われていますので、それを現在、更に治療法の開発に進めていきたいと考えております。
 7ページをお開きください。左が先ほどのBIOFLOATというものなのですが、実際にはECMOとして使われているというよりも、体外式の人工心臓としての認定を受けることができました。今まで体外式の人工心臓は海外のものだけだったのですが、国産初として臨床使用が可能になったという、唯一の国産の人工心臓ポンプとして利用できるということが画期的ということで報告させていただきます。また、下段に示します細かいパーツなのですが、これは植込み型の小児用人工心臓を、更に人工臓器部で自作しているものです。真ん中に試作機と書いてありますが、その右側に立っているのが1円玉でございますので、1円玉2個分の大きさで、赤ちゃん、小さい子供の心臓の役割を果たしてくれる。さらに、電池をどうしていくかということまで考えて、外からの充電ができるようなことまで現在考えております。
 また、7ページ右側を御覧いただくと、私どもECMOの治療を行う中で、どのようにしていったら離脱できるか、どういう治療効果をもたらすことがECMOからの離脱に関わることができるかということを臨床的に調べました。その結果として、肺動脈圧、右側の図に書いてあります15という数字、それからLVETcという駆出時間を見ることによって、これが改善するとECMOからの離脱が容易になることを、この臨床研究でも見つけることができました。
 8ページにまとめてございますが、以上の3点を上中下段に書いてございます。これまで私ども、中長期計画の中で、平成27年度から令和2年度まで地道な努力を積み重ねることによって、昨年度、成果とすることができたことを本日御報告させていただきます。以上となります。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 続きまして、オープンイノベーションセンター長の宮本から報告いたします。資料1-2の9ページを御覧ください。「実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備」についてです。自己評価はSです。中長期目標の内容としては、産学官等との連携強化、臨床研究の基盤整備、循環器疾患情報の収集・登録体制の構築を挙げております。指標の達成状況ですが、令和2年度は、一番上のファーストインヒューマン試験実施件数以外は、全て200%以上の達成率です。ファーストインヒューマン試験については、年に0.33件以上、6年間で2件以上とされておりますが、先ほどのECMOを含めたファーストインヒューマン試験を令和元年度に2件実施しており、令和2年度は0ですが、年限の中では目標を達成しております。
 そして、今回Sとさせていただいた評定の根拠としては、10ページにある世界モデルとなる産学官との連携強化、そして、新型コロナウイルス感染拡大等に伴う実用化を目指した研究開発の強化、世界連携を目指した研究基盤の整備です。この内容については、詳細はそれぞれの所で御説明をいたします。
 まず、11ページを御覧ください。産学官との連携強化についての実績です。先ほど話があったように、令和2年度に「共創の場形成支援プログラム」の採択を頂きました。これは、10年間で総額約31億円以上のプロジェクトです。国循が中核となって、様々なイノベーションが創出される産学共創システムを作っていくということで、難治性心血管疾患・難治性がん・認知証・新興再興ウイルス感染症など、我が国を襲う様々な困難を克服する社会を作っていくための人材育成等研究基盤整備ということです。
 右にあるように、異分野連携ということで、医療関係にとどまらず、様々な領域の企業、機関との包括的な連携協定を結んでおります。中には金融機関や商工会議所など、様々な分野が含まれております。それらの機関とのネットワークを活用しまして、昨年の12月から「イノベーションカフェ」を開催しております。これは、毎月定期開催をして、様々な研究成果をお互いに紹介しあって、イノベーションを起こすというものです。既に21社以上の企業から発表いただいて、延べ700人を超える方が参加されております。11ページの右下にあるように、令和2年度は5億円を超える共同研究費を達成しております。いわゆるAMED等の競争的資金ではなくて、共同研究費として5.5億円を達成しております。
 12ページを御覧ください。世界連携を目指した研究基盤の成果を示しています。脳梗塞の患者の約2割は、睡眠中に発症して、発症時刻が明確でないということがあります。現在、脳梗塞の非常に有効な治療として血栓溶解療法というものがございますが、これは発症後4.5時間以内しか治療できないということがあります。発症後4.5時間以上経った場合は出血を引き起こす可能性があるということですが、発症時間が不明な場合でもMRIの画像を利用して、4.5時間以内であるということを推測して効果を見るという試験を行いました。その成果を欧州やオーストラリアとの共同研究を含めて、成果をまとめて発表して、発症時間が分からない場合でも、医療機関でMRIを撮ることによって適応の範囲を広げることができるということを示しました。
 また、右に示すように、心房細動を合併している脳梗塞の患者は、脳梗塞全体の約2割あります。これらの患者において抗凝固薬を使って治療する必要がありますが、余り早く使うと脳出血を引き起こす懸念があります。これに対して我が国、そして世界規模のレジストリ研究でエビデンスを作りまして、軽症であれば早期から開始してもよいということを示すことができました。これらは、いずれも既に学会のガイドラインに推奨として掲載される予定になっております。
 13ページを御覧ください。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う実用化を目指した研究開発の例を示しております。先ほど御説明があったような医療用高機能マスクの開発を、オープンイノベーションセンターに入居している企業との連携を含めて、短期間に達成し、今年の6月に販売開始に至るまで進めることができました。右のほうですが、これは国立循環器病研究センターが進めている減塩のプロジェクトの「かるしお」というものについて、コロナ禍の中でいかに進めるかということで、1つは、海外に向けてオンラインで調理実演をして、ロシアの病院にテスト導入することができました。これは、ロシアの病院の患者にも非常に好評であったということでした。また、国循で提供する心疾患妊産婦、これは入院されてすぐに退院できない方が多いのですが、そういった方々にお祝い膳というものを用意しております。これを1食2g未満という形で用意して届けるということを、年間を通して行うことができました。そして、「かるしお」を広げるということについて、モニターの募集を、右下にあるように3回行いましたが、最終的に4,000名を超えるモニター参加があり、ツイッターやインスタグラムで、それぞれの方が「かるしお」を広げるということで、社会に減塩の取組を広げていただくことができました。
 14ページを御覧ください。これはオープンイノベーションセンターにあるバイオバンクを活用した研究例です。もともと、もやもや病の感受性遺伝子として同定されたRNF213という遺伝子多型がございますが、これが脳梗塞とも関連があること、それが脳梗塞だけではなくて心筋梗塞や肺高血圧、本態性高血圧とも関係があるということを同定することができました。これは、現在iPS細胞を用いた表現型の解析にまで進めております。さらに、脳出血と関連する要因として、虫歯菌の中にcnm陽性の悪玉の虫歯菌があると血管障害が起こったときに、そこから微小出血を起こすことを明らかにすることができました。これは現在、東南アジア、インドネシア、アフリカのケニアなどとの国際共同研究を進めており、世界神経学連合による研究費の支援も含めて現在進められているところです。
 15ページを御覧ください。これは創薬オミックス解析センターの成果を示したものです。QT延長症候群は、致死性不整脈を来す遺伝性不整脈ということで知られているものですが、その原因遺伝子が同定されても、臨床症状が様々であるということがこれまで知られていました。また、原因遺伝子が同定されない症例も多くあることが知られていました。そこで、今回は4つのコモンバリアント、これは非常に頻度の高い遺伝子多型というものですが、そういったものがQT延長症候群と関連をしていること、そして、QT時間と関連する68個のコモンバリアントから計算される遺伝的リスク値というものが、QT延長症候群の発症リスクに関連しているということを報告することができました。また、ブルガダ症候群について、これは、「ぽっくり病」ということで非常にアジアに多い病気ということで、その原因の1つとして、ブルガダ症候群が考えられておりますが、この原因遺伝子として知られているSCN5A変異の中で、機能的な変化があるものについては、その発生率が高いことを同定することができました。これは55個の変異についてスクリーニングを行ったもので、こういったスクリーニングを行うシステムを構築したということもございます。
 資料1-6を御覧ください。「中長期目標期間の評価」です。14ページを御覧ください。今回、期間実績として、昨年度、見込評価でAということでした。本日御説明させていただいたように、世界モデルとなる共創システムのプロジェクトを開始したこと、そして、連携協定を進めて、共同研究費も含めて非常に大きな成果が上げられたのではないかと考えられること、新型コロナウイルスに関連する社会に提供する開発ができたことなどを含め、自己評価でSに上げさせていただいております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。見込評価と期間実績評価の相違点についてもお触れいただきましたので、御説明いただいた内容について、御意見、御質問等がございましたら、「手を挙げる」を押していただいて御発言いただけたらと思います。いかがでしょうか。
 私から口火を切らせていただきます。最初におっしゃった高性能新規ECMOシステムの開発というのは、これは前から少しずつお話を頂いておりますが、非常にすばらしいと思っております。これは、まだ医師主導治験ということで進行中だというお話を頂きました。今後の予定はどのようなものかということと、もう1つ、5ページでお話いただきましたが、10施設でFeasibility Studyをやっていただいたという話ですので、その結果はどのような評価であるか。左側の進行中の医師主導治験のものとはちょっと違うようですが、その辺の状況を教えていただけたらと思います。いかがでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 まず、1点目なのですが、医師主導治験のほうは、あと数例で終わります。現在、これを実施しているのが大阪大学と国立循環器病センター、関西医大なのですが、当初始まったときはCOVIDがパンデミックになっておりませんでしたので、全てECMOの適応患者に使っていました。その分はあと数例で終わります。
 2つ目の右側の特定臨床研究のほうですが、数字は数日前のECMOの日本全国の離脱症例、492人中、離脱できない人もいたのですが、私どものECMOを使うと95%ぐらいの患者が離脱できたということなので、ECMOの改善率という意味で比較すると、従来のECMOよりも相当よくて、70%に対しても95%ぐらいということで、いいと考えております。
 
○祖父江部会長
 その離脱できるというところは、何か今までのものとどういう点が違って、そのような効果が得られたと考えたらよろしいのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 先ほど理事長から申し上げましたように、抗血栓性と長期耐久性というところが非常にポイントで、多分、従来のものだと6時間が限度ということがあったのが、14日間の連続使用ができて、よい場合には30日間利用したという症例もあったということです。あと、抗血栓性に関しても、ヘパリンを使用しなくても十分に使えるということなので、多臓器疾患への移行がなかったということも大きな要因だと考えております。
 
○祖父江部会長
 これは非常に画期的だと思いますので、できれば、是非コロナの患者に使えるように、一刻も早くしていただけると有り難いと思っております。是非よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 ほかに御質問等はございませんでしょうか。大西先生からお願いいたします。
 
○大西委員
 今も話があったECMOのシステムですが、この医師主導治験と多施設共同Feasibility Studyは、患者の数としては、どのぐらいの数なのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 前者が15例で、後者は20例強ということです。実質的には、ほかのECMOの数よりは1/20ぐらいなのですが、定量的指標としては、そのように説明させていただきました。
 
○大西委員
 実用化が大変待たれますね。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 先ほど説明しましたように、もともと左側のコンパクトなものでやるべきだったのですが、こちらが先行して、医師主導治験で始まっていましたので、それを特定臨床研究にすることができませんでしたので、実際には左側のタイプで今後どんどん進んでいくようになると考えております。
 
○大西委員
 もう一点ですが、このシステムを使うと、人的な負荷というのは膨らむのでしょうか、それとも少なくて済むのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 御指摘は重要な点で、これを使いますと、本当に人的負担が軽減されます。回路の取替えもないですし、それに関わる看護師、医療技師の手間もほとんど省けるので、習熟していただけると、人手、経済的にも非常によくなると考えています。
 
○大西委員
 この実用化というのは、いつになりますか。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 特定臨床研究がOKということになって、医師主導治験の成績がよいということで、これ以上はやる必要はないという判断を受けていると聞いておりますので、このまま判断がよければ、実用化に進んでいけると思います。
 
○大西委員
 PMDAの承認が取れるということですね。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 はい。
 
○祖父江部会長
 次は、花井先生からお願いします。
 
○花井委員
 いわゆる健都に移って、国循型のオープンイノベーションシステムというのは大きく進捗したように見受けられるのですが、具体的には産学連携が苦手だというのが日本のこれまでの状況で、循環器病センターとしては、場所も含めて、今までの課題のどういうものをクリアできたのか、若しくは日本の中においての、ある程度のボトルネックをどのように解消していくかというところについて、国循としての御意見があったら教えていただきたいと思います。場所の利というのは大きなものかどうか、教えていただけますか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 オープンイノベーションセンターの宮本がお答えします。場所というものも重要だと思いますが、今回は、新たに新センターとしてこちらに移ってきたということで、オープンイノベーションをするための場所を含んだ形で、国循を建設することができたということがあります。つまり、オープンイノベーションラボを含めて、あるいはサイエンスカフェというイノベーションを起こすための集まれる場所、そういったものも含めて、それを最初から念頭に置いて設計して、移ることができたということがございます。
 そして、それを最大限に活用することが求められておりますが、現在はコロナ禍がありますので、先ほど言いましたように、オンラインという形での活動になっておりますが、そういった活動も含めて、今後進めていくことができるだろうと思います。
組織としては、オープンイノベーションラボに入られた企業の研究者にも、国循の研究者と同じように研究できるような環境を作ることを念頭に進めております。つまり、オープンイノベーションラボ研究員という身分を作りまして、そういった形で研究ができるようにしております。つまり、垣根をできるだけ作らないようにして、目的は同じであるということで、それぞれの立場は違いますが、目的は同じという形で進められるような土壌を作っていくことが大事だろうと考えています。
 
○花井委員
 湘南地区にも民間の大規模なものがありますし、日本の連携の苦手さはどうやって解消するのかというのが、日頃の疑問と課題だと思いましたので、ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 次に、前村先生からお願いいたします。
 
○前村委員
 資料1-2の7ページの補助人工心臓システムについてお伺いします。これは体外式の補助人工心臓ですね。植込み型も開発されていたと思いますが、補助人工心臓の分野では、できれば国内産のもののシェアを上げていただきたいと思うのですが、残念ながら海外のものが、特に植込み型に関しては海外のものが主流になっている状況です。国循が開発されているものが海外の補助人工心臓に比較して、優越性はどういうところにあるかというのを教えていただければと思います。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 先生が御指摘のところは本当に重要なポイントで、現在使われている体外式の人工心臓は、ほとんど海外でも一社独占状態が続いております。私どもは、そこの移植にいくまでのブリッジとしての体外式の人工心臓というところで進めていきたいというストラテジーを立てております。
それと、先生が御懸念されているように、植込み型になると、バッテリーというのが鍵となると思うので、上段に掲げているような体外式を、更に体内式に持っていくときのバッテリーの研究を推進することで、小児も含めて、何とか植込み型に移行できるようにしていきたい。
 この両者の利点としては、血栓性がいいということと、拍動流ではないので流量としても非常に取れるということが特徴となっています。最大9リッターまでいけるということまで出ていますので、今までの人工心臓とは大きく異なるということで、日常生活にも対応できるような流量が得られることを目標にしていきたいと考えております。
 
○前村委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 次に、中野先生からお願いいたします。
 
○中野委員
 毎年素晴らしい御研究の成果をありがとうございます。資料1-2の15ページですが、致死性不整脈についてお尋ねいたします。QT延長症候群とブルガダ症候群、ともに2020年に『Circulation』に掲載され、また『European Heart Journal』にもin pressということで、論文成果も上がっていて、すばらしいと思います。
 教えていただきたいのは、今回御報告された成果というのは、既に何か不幸なイベント、例えば大きな不整脈が起こった方を解析してなのか、それに加えて、今後の研究の方向性として、例えばそういったことが起こる予防に、致死性の不整脈の方の御家族を調べるとか、検診で見付かってきた方を調べるとか、その辺りのことをお教えいただければと思うのですが、いかがでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 宮本でございます。15ページの左にある図を御覧ください。これを見ますと、LQTSの変異がある方とない方で、コモンバリアントの関与の違いというものが示されております。実は、変異がない方、つまり従来の変異が認められない方のほうが、このコモンバリアントで予測できるということになっております。そして、このコモンバリアントというのは、一般集団の中で数パーセントから数十パーセント存在するバリアントです。つまり、こういったものを一般の検診でするのかどうかというのはありますが、一般の方に対してスクリーニングを行うことにより、リスクを見極めるということは可能になっているのではないかと考えております。
 
○中野委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ほかにはいかがでしょうか。土岐先生からお願いします。
 
○土岐部会長代理
 オープンイノベーションラボがどれぐらいの顕著な成果を上げたかが必要になってくるのですが、1つ、今回マスクの話をしていただいたのですが、ほかにも幾つか有力なプロジェクトがあるように、ここに3件あるのですが、よろしければ御紹介していただけるでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 現在、オープンイノベーションラボに入居されている企業、学術機関は19機関ございます。それぞれ、様々な取組をされております。
 例えば、生命保険会社は予防であるとか、社会的に循環器対策にどういった取組ができるかというような、いわゆる社会実装の研究もしていただいております。ですから、基礎研究だけではないということがあります。
 その中には、1つは例えば1週間つけられるホルター心電図の非常に簡易なものを開発しまして、それで心房細動を含めた不整脈を容易にスクリーニングできるようなものを開発しました。これは既に市場に出ていまして、一般の診療所などでも活用できるようにシステムを構築して進めているところです。そのように様々なものがございます。
 中には、人工知能を用いた画像の検索等も、現在進められているところです。
 
○土岐部会長代理
 大学の共同研究講座よりも更に効率がよさそうな感じがしておりまして、大変すばらしいシステムだと思います。是非よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 私もこれは前から非常に、国循が、移転に伴ってこういうものを作り上げたことは、今後のナショナルセンターの1つの方向性を示しているのではないかと思っておりまして、特に、今回この「共創の場形成支援プログラム」を獲得されたということと、産業界あるいは商工会議所、銀行とも連携をして、地域あるいは日本全体かもしれませんが、大きな枠組みでやり出そうということは、非常にインプレッシブな感じを受けました。是非、これは大きく成長させていただけると有り難いと思います。皆さんのロールモデル、非常に大きなモデルになると思います。
 まだ、これは成果を生むというところまではいっていないと思いますが、非常にユニークなのは、銀行、生保、商工会議所等の人たちにも入っていただいて、一緒にやるというスタイルを取られたというのは、ユニークだと思います。まだ成果は出ていないかもしれませんが、いかがでしょうか。何か得るものがあったとか、こういう点が非常によかったということがあれば御紹介いただけますか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 大変励みになるお言葉を頂きまして、ありがとうございます。銀行、あるいは商工会議所というものは、それぞれのネットワークをお持ちです。銀行も様々なベンチャー企業等との関連もある、あるいは商工会議所も様々な企業が参加されているということがございまして、そういった所から情報を頂くことができる、あるいはイノベーションカフェを含めて、そういった情報交換ができるということで、毎回イノベーションカフェを開くときに、幾つかのプロジェクトが立ち上がるということになっています。もちろん、それが全て完成するかどうかは分からないのですが、そういった試みが常に起こっているということは、非常に大きなことではないかなと思っています。
 
○祖父江部会長
 そうすると、企業の共同的な研究が進むときには、かなり早い時期から商工会議所、銀行などの方々も入られるというわけではないのでしょうけれども、何か関係されながら動いていくというスタイルになりますか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 もちろん、それはマストではございません。必要があればということになるだろうと思います。ただ、銀行あるいは商工会議所のネットワークで、新たな共同研究者の発掘につながるということがあります。
 
○祖父江部会長
 是非これは発展されるといいと思っていますので、よろしくお願いいたします。ほかにはいかがでしょうか。非常にたくさんの御発表をされておられますが、ほかにはございませんでしょうか。
 私からもう一点です。14ページに、RNF213pの変異を日本人の約300万人が保有するということで、アテローム型の脳梗塞のかなりの部分をこれで説明できるのではないかという話を頂きました。このアテローム型の脳梗塞というのは、日本にかなり多いのでしょうか。その辺は、基本的な情報で、これは細かいことですが重要なポイントだと思いました。お教えいただけると有り難いなと思いました。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 御指摘のように、従来、日本では脳卒中ということでは、高血圧による脳梗塞あるいは脳出血というものが非常に多いということがありました。幸い、血圧の予防と管理が進んで、この部分は減ってきておりますが、今後、このアテローム血栓性の脳梗塞というものが、代わって重要な要素を占めるようになってきているということは言えると思います。
 
○祖父江部会長
 そうすると、欧米と比べてどうかというデータは、まだ、臨床レベルあるいは疫学レベルでは、はっきりしたものはこれからだということになりますか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 そうです。特に欧米と比べて多い、あるいは少ないということはないのではないかと思います。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。分かりました。根岸先生、よろしくお願いいたします。
 
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。ECMOとか人工心臓をはじめ、革新的な研究開発に取り組んでこられたこと、それから、先ほど来から出ている異分野との連携を推進していらっしゃるということで、大変すばらしい取組を発表いただきまして、ありがとうございます。
 13ページの「かるしお」のことを教えていただきたいのですが、これは1つの予防活動として、随分時間をかけてたくさんの認定商品ができ、あるいは予防のためのレシピ本でしょうか、私も拝見していますが、そういったものを作られて、恐らく一定の効果が出ているだろうと思われます。実際に企業における産業保健活動の中でも、例えば保健指導とか、健康教育で活用させていただいているところです。それで、実際に、まだまだ日本人の食塩の摂取量が高いと思っておりますが、このかるしおプロジェクトに取り組まれてきて、それなりの商品が開発されて、発売もされている。このプロジェクトの効果をどのように評価されるのかを、まず1つ伺いたいと思います。
 それと、今後の展開として、このかるしおプロジェクトを更にどう推進していくのか、何か計画がありましたら教えてください。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 評価については、1つは「かるしお」あるいは減塩ということの認知度の調査を行っております。まだ、一般に常識となるほどのレベルまではいかないこと、それから、全国的な規模として広がるというところには足りないということがあります。今後はそういったところに、いわゆるS-1グランプリという全国規模での「かるしお」のメニューのコンテストをやっておりますが、そういったものや、マスコミを含めて広げていきたいと思っております。
 あと、定量的なものですが、「かるしお」については、かるしお商品でどれぐらい減塩できているかについてのデータを、最初に認定をするときに把握しております。そして、「かるしお」はライセンスの制度を取っていますので、どのぐらい商品が実際に消費されたのかというデータもございます。そういったところから、全国で「かるしお」によってどのぐらい減塩ができるかということの定量化を進めようとしております。
 
○根岸委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 次に、庄子委員からお願いします。
 
○庄子委員
 14ページにある虫歯との関係の所で、虫歯による脳出血機序を解明されたということです。そこで、今後、我が国の歯科衛生医療の普及を促していくとありまして、実際には歯科業界との連携が必要になってくると思うのですが、具体的に動かれていることがあれば、教えてください。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 現在、これは、どういった方法で除菌をすることが一番効率的かということについての検討を開始しております。成果が出てきますと、そういったことに基づいて歯科との連携が進められるのではないかと考えております。
 
○庄子委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 それでは、どうもありがとうございました。次へ移らせていただきます。次は、「医療の提供等、その他業務の質の向上に関する事項」ということです。評価項目は1-3から1-5ということです。先ほどの流れと同じように、法人から御説明を頂きまして、その後に質疑応答をしたいと思います。時間は20分、質疑18分ということですので、よろしくお願いします。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 それでは、1-3から始めたいと思います。病院長の飯原と申します。どうぞ、よろしくお願いします。1-3は「医療の提供に関する事項」で、自己評価はSとさせていただきました。資料19ページを御覧ください。令和2年度の業務実績評価資料です。中長期目標の内容は[1]から[4]まで、チーム医療の推進、高度・専門的な医療の提供、新たな診療体制モデルの構築・提供、そして循環器終末期医療モデルの確立でございます。
 指標の達成状況は、表の中で上の2つを見ていただきますと、先進医療を含むという所で、心房細動アブレーションで令和2年度は達成度は210%です。補助人工心臓装着患者外来管理患者数も年60件という目標でしたが、これは達成度が198%でした。その表の下の部分、手術件数から始まる4つを見ていただきますと、この研究開発成果の最大化、業務運営の部分なのですが、このコロナ禍の中でも手術件数は、令和2年度は7,628件、109%でした。平均在院日数は12.8日、入院実患者数は1万2,434人ということで、ともに100%を超えているというところです。
 20ページを御覧ください。要因の分析があります。心房細動アブレーションは外来患者も非常に増えており、心房細動の外来を増設、アブレーションに運用できるカテーテル室を増加させるなど、ひと月ごとに病院運営会議等で診療実績を各診療科の部長とともに共有し、外来、あるいはカテーテル室の運用等を年に一度、また病院、病床の診療科別の定床数も変更するなど、柔軟に病院運営をしております。補助人工心臓の装着に関しても、コロナ禍でも重症心不全の患者の受入れは減っておりません。植込み型のVADを装着する、在宅VADを増加させるとか、いろいろな工夫をして指標も向上しているところです。
 20ページ下の評定の根拠の部分です。この世界最高水準の高度専門的な医療提供の推進に関しては、世界最先端のハイブリッド手術室を4室、この新病院に移ってから装備しており、脳血管・心臓病の複合治療、ロボット手術が本格化しております。心筋症や肺高血圧症等の国内の最大センターですし、人工心臓の治療等の治療件数、成績ともに世界最高水準の医療提供をしているということです。心臓移植の成績については、後に詳しく御説明させていただきます。チーム医療の推進の強化についても、脳と心臓の連携ですね。これは国循の特徴ですが、ブレインハートチーム診療の強化、多職種からなる充実した緩和ケアチームによる体系的なアドバンス・ケア・プランニングの実践など、全国に先駆けて、その業績を発信したところです。
 最後に、我が国の医療の質の向上への取組です。センターが主導で行っている脳卒中や循環器病データベースを活用した臨床指標について、全国の参加施設に対して遵守率やベンチマークを公表するということで、国全体の医療の質の向上に取り組んでいるところです。最後に、循環器病対策基本法の登録事業に関するお話もさせていただこうと思います。
 21ページ以降、その詳細を個別に御説明させていただきます。21ページの左側、国内最大の肺高血圧センターにおける世界最高水準の肺動脈バルーン形成術治療です。左下の肺高血圧症治療患者数、その右側のグラフはBPAレジストリの登録患者症例数とも国内で最大です。このBPAレジストリは安全性、有効性のエビデンスを世界に向けて発信するということです。人工心臓治療は、右側に書いており、人工心臓の手術は日本の25%、5年生存率は75%で日本一です。心臓ロボット手術の実績に関しても、下に記載しているところです。
 22ページは、世界最先端のハイブリッド手術室の内容です。あらゆる脳血管・心臓病の複合治療を行える「万能」の手術室です。世界的に見ても、循環器病に特化して4室を使用しているのは当センターのみで、診断から治療、あるいは大規模な手術、直達術、脳外科の手術までワンストップでシームレスに対応が可能です。この22ページの左下の実施件数を見ていただいても、各診療科別に令和元年度より全て実施件数は伸びておりますが、令和2年度は4室で1,183件ということで、令和元年度の812件より大幅に増加しているというところです。
 右側は、そのハイブリッド手術室によって可能になった幾つかの治療法を示しております。弁膜症に対する経カテーテル治療です。使用法2として、これは脳血管の困難な動脈に対する次世代のハイブリッド治療。3番目として、くも膜下出血治療のパラダイムシフトということで、一番下の囲みに書いてあるとおり、この利点としては1つの部屋で診断、手術、カテーテル治療、そしてその両方、併用治療、その治療の効果の判定まで1回でできるということで、低侵襲で安全な治療が可能になっているということです。
 23ページは心臓移植です。1999年から20年間の治療の成績、変遷をまとめて、115例の成人の心臓移植の患者に対して、どのような変遷があるかということを報告しております。23ページの右上の囲みの所がその結果です。10年生存率が96.4%、20年生存率は76.7%ということで、心移植後の生存率、左側の図1にありますが、国循の成績は国際的なレジストリと比べてはるかに勝っているということで、その1つの要素として、この搬送時間と予後の差は左側右上の図2にありますし、この免疫抑制剤エベロリムスの導入による腎機能障害の改善、冠動脈病変の進行の回避、これらの研究成果を『Circulation Journal』に掲載しました。この研究論文は、日循の編集委員会においてawardを頂いたということです。
 24ページは、ブレインハートチームの診療、緩和ケアです。脳と心臓の連携の強みを発揮しているものです。長期間の遠隔モニタリング、不整脈のモニタリングで、在宅とかかりつけ医との連携を推進しているということで、死亡率改善、入院回数の減少、早期発見、早期治療介入というのは国策としても非常に重要になってくるところを、実際に近隣の連携医と実践しているということです。終末期医療は、患者家族の意思の尊重、支援に一定以上の質を担保するということで、研究費を頂き展開しているというところで、国内の循環器の緩和医療の均てん化に寄与しているものです。リハに関しても、脳の患者ですね。急性期の軽症脳梗塞の44%に潜在的なリハの適応があるということで、これから超高齢社会の中で脳と心臓の両者を持つ患者さんが激増すると予測されておりますので、脳・心リハを複合して実施することの重要性を発信していこうというところです。
 25ページは、センターが主導で行っている脳卒中・循環器病データベースを活用した医療の質の評価等への貢献です。脳卒中は左に書いてあるJ-ASPECT Study、その中でも医療の質を測定するClose The Gap-Strokeという、DPCに付加情報を組み合わせるプログラムを開発し、これを実施しているところです。右側は、循環器のJROAD-DPCの業績です。これは2020年で16編の学術論文を発表しているということです。この両者は、今後登録事業の促進において「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」の中心になる事業です。
 26ページは、新しいイメージングバイオマーカーです。超迅速PETで自動化された循環代謝量検査システムの実用化です。もやもや病や動静脈奇形の周術期の一過性障害の診断や全身多臓器の機能評価などで威力を発揮するということで、アミロイドPETによる高齢者心不全の病態解明と心脳連関の探究です。アルツハイマー型の認知症と心不全の患者さんの一部で脳組織へのアミロイド蛋白の蓄積という同様の病態が関与している可能性を示唆したものです。
 続いて27ページ、1-4にまいります。人材育成に関する事項です。中長期目標の内容は、リーダーとして活躍できる人材育成、モデル的研修・講習の実施、並びに最先端の医療技術の研修です。
 評定の根拠として28ページの下を見ていただきますと、新型コロナウイルス感染症拡大の中で、先ほどから話題になっているECMOシステムの臨床使用のため、国内の代表的な10施設に対して操作・手技説明及びトレーニングを実施したということと、3Dプリンタ技術を応用した超軟質心臓レプリカを開発し、若手外科医の教育や医療の均てん化への寄与を図っているところです。また、後に述べる文部科学省の事業として、女性や若手研究者の研究環境の改善に向けたプログラムで、最も高いS評価を獲得しております。連携大学院の制度などを使い、学位取得のための教育などを行っているということです。最後に、リーダーとして活躍できる人材育成の推進では、NC初の特定行為研修修了者を育成しているということで、人材育成に関することは29ページ以降です。
 29ページは、新型コロナウイルス肺炎に対するECMOシステム教育活動です。右がダイバーシティ研究環境の向上ということで、これは唯一のS評価というところです。特定行為研修は今、国策としても、働き方改革やワークシェアリングのところで非常に重要な方向性ですが、2020年4月にナショナルセンター初の特定行為研修修了者6名が誕生したということで、2021年度は5名が修了して、合計11名ということです。実践件数は年々増加というところで、受講生による研修評価も非常に高いというところです。
 31ページは、アミロイドーシスの病理診断のことと、右側は先ほど申しました心臓レプリカを開発して、特に小児や非常に複雑な心臓手術の場合にこれを使うことにより、教育的な価値を生み出そうという試みです。
 1-5は、自己評価Sにしておりますが、中長期目標の内容は、政策提言に関する事項と医療の均てん化情報の収集・発信と国際貢献です。
 33ページ、評定の根拠ですが、循環器病対策基本法を踏まえた診療情報の収集・活用体制は、センターが有識者からなる検討会を立ち上げ、具体的な提言を取りまとめ、厚労省に提出いたしました。今後、これが具体化していくと考えております。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、どのような循環器疾患の影響を受けているかということに関しても公表・提言を行っております。世界最大規模の情報の収集・発信は先ほどお話したDPC情報を用いたJROAD、J-ASPECTと脳卒中データバンク、国循が主導して行っている3つの大きなデータベースの事業です。
 最後の国際貢献は、COVID-19感染下の循環器診療に関する国際共同提言、突然死・突然の心停止等の国際的な調査と解明などを行っているというところです。その具体的なところは、34ページ以降に載せております。この循環器病対策基本法に関しては検討会を立ち上げ、右にある幾つかの○で書いてある、登録の方法、患者の同意書の問題や医療機関の説明文書の整備及び同意取得など、個人情報の取扱い、対象疾患や項目の定義の検討など、いろいろな問題点を、有識者を交えて、現在のところ、これを取りまとめて登録事業の準備を進めているところです。
 35ページは、ウィズコロナ時代の循環器病診療の新スタイル、脳卒中データバンクの登録について述べているところです。中長期目標期間の評価に関して、私たちは、1-3、1-4に関しては見込評価のとおりAで出しておりますが、1-5に関しては、この中長期の資料、青の表紙の「第2期中長期目標期間実績評価説明資料」の39ページを見ていただければと思います。評価項目1-5、「医療政策の推進等に関する事項」の目標と実績の比較の所を見ていただければと思います。評価は、特筆すべき成果があり、所期の目標を上回る成果を上げているということと、具体的には、特に黒字で書いてある循環器病対策基本法ができたということで、国循に重要な役割が期待できるとされていることに対するいろいろな取組、先ほど話したような私たちの取組です。研究成果などに基づき、我が国独自のガイドライン作成を指揮、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ、これでS評価を得たということです。
 具体的なことに関しては、右下の囲みの中に書いてあるところです。定量的な指標を踏まえて、1-5に関しては当初の見込みのAからSに引き上げたということで、特に顕著な成果を上げたということでSと評価させていただきました。以上でございます。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 非常に広範な内容を短時間でまとめていただき、どうもありがとうございました。時間が限られておりますけれども、評価委員の先生方から御意見、御質問等はありますか。「手挙げボタン」を押していただくと分かりやすいと思いますが。まず土岐先生、よろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長代理
 令和2年度の診療実績のことで、指標の中でやはり稼働率等はコロナの影響で下がらざるを得なかったとは思うのです。これをどう考えるかというか、コロナで減っているのをベースに考えるべきかどうか私自身悩んではいるのです。質問は、循環器の救急の件数、いわゆる脳卒中や心臓などは、日本全体で、よく減っている減っていると言われますけれども、どの程度減っていたのかと。それに対して、循環器病センターではどのぐらいの診療実績があるのか、循環器の救急疾患について教えていただけますか。非常に具体的な質問で申し訳ないのですけれども。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 日本全体のデータは、これから出てくるところだと思います。JROADも出てくるでしょうし、J-ASPECTも今から集計だと思いますが、もう少し時間が掛かると思います。国循に関しては、例えば急性心筋梗塞に関しては、昨年はむしろ増加しているということです。ただ、これは単施設の問題で、先生も御存じのとおり、コロナの状況によって周りのICUやCCUの活動がかなり制限されて、国循の単施設だけの成績で、診療件数で言うのは、なかなか難しいと思います。
 心臓に関しては脳卒中とはちょっと違うと思うのですが、共通とかですと少し患者さんの早期受診の抑制が起こったり、救急受診が少し減ったりということで、より重症化したというような報告もありますので、これが日本全体の傾向なのかどうかというのは、もうしばらくデータが蓄積されるのを待つほうがいいのかなと考えています。
 
○土岐部会長代理
 分かりました。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 それから、脳神経外科の全国のデータベースの委員長もしているのですが、脳神経外科は、例えばくも膜下出血といったことに関しては、死亡率や重症度には特に変化はありません。これも、その後の第3波、第4波の影響はどうなるかというのはこれからのことですけれども、現在言えるのはそういうところかなと思っております。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。いわゆる循環器の救急疾患というのが、特に大阪では普通の病院が診療できなくなった状況があったと思います。その中で、循環器病センターが通常よりも多いぐらいの症例をこなしておられたのは大変心強く、非常に頑張っておられると感じました。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 1つ追加なのですけれども、大動脈解離が非常に増えて、それが恐らくは心筋梗塞以上に大動脈のセンターも、医療体制の中で、循環器学会や心臓外科の学会の中でも議論されているとは思うのです。より重症の疾患が、ICUがコロナのために閉鎖されたことによって、より広域の搬送が行われているということがあったと思います。これは、昨年から今年に至るまで一定した傾向だと考えております。以上です。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 前村先生、よろしくお願いします。
 
○前村委員
 前村です。がん対策基本法ができて、悉皆性の高い登録ができたように、循環器病の登録事業も、悉皆性の高いものができるのが期待されているわけで、国循で昨年度モデル事業をして、それを提言されたわけです。今後、日本全体で循環器病の登録をしていく上で、どのような課題があるかということを提言されましたか。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 これは非常に大きな問題で、これから有識者の皆さんと意見交換しながら進めていかないといけないと思っております。がんから非常に遅れて、これからスタートするわけで、がんとも違う診療体制の中で、最初の検討会の前の段階でも非常に多くの期待、厚生労働省、あるいは患者さんからの多くの要望が寄せられており、救急の現場での活用や顕名での登録で公衆衛生上利用したい、あるいは学会からは研究にも利用したいという様々な要望が寄せられております。それをどのようにうまく融合していくかがこれからの課題だと思っております。
 一番多く要望が寄せられているのは、登録の負担軽減で、循環器や脳卒中という非常に忙しい臨床現場の中で、臨床現場に負担を掛けない形でより悉皆性の高い登録の方法、様々なやり方があると思うのですが、それをどのような形で組み合わせていくか。それによって、登録の項目の数や粒度など様々なことが影響を受けると思うので、そのようなことを考えていかないといけないと思っております。顕名で集めるということで、循環器の疾患で例えば心不全にしてもそうですし、脳卒中に関しても再発や重症化を繰り返していくということで、最後は先ほどお話したような認知症や心不全などの一連の流れの中で悪化していくということで、それを将来的に縦断的に可視化していくということが登録事業の長期的な展望に立つと非常に大事なことだと思うので、それをどのように構築していくかということです。
 登録事業の両輪の関係にあるのは医療体制の構築ですので、医療の均てん化にも役立てるような形で登録をうまく活用していくと。やはり、早く皆さんに登録の価値、意義を広く認めていただけるように進めることが大切かと、循環器病研究センターとして考えているところです。
 
○前村委員
 ありがとうございます。是非、課題を克服して推進していただきたいと思います。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。深見先生、よろしくお願いします。
 
○深見委員
 深見です。25ページのビッグデータ、リアルワールドデータについてお伺いしたいのですが。脳卒中のQIを測定する革新的なプログラムやリアルワールドデータの集積ということが書かれていますけれども、これはどの程度普及、活用したかという点でお尋ねします。例えば、他のナショナルセンターにどのように使われて、何か使った実績というような、他の機関との活用があったかどうかをお伺いしたいのが1点です。
 2点目が、26ページのイメージングの所ですけれども、前にも伺ったような気がするのですけれども、アミロイドβがアルツハイマーのマーカーとして、脳ではもちろんよく使われるマーカーなのですけれども、心臓でのアミロイドβを測ることの実際の意義が本当に正しいのか。アルツハイマーと心筋疾患との関係性というものは、どの程度きちんと相関が取れそうなのかどうかという点もお伺いしたいと思います。以上です。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 まずビッグデータの件ですが、これはJ-ASPECTとJROADが各々学会との共同研究事業ということでやっているのです。J-ASPECTに関しては、診療実態調査を最初にやっていて、それは脳卒中学会の年次調査に反映されているということです。このClose The Gap-Strokeというのは、革新的なプログラムと書いてありますけれども、なかなか医療の質を測るというのはDPCを使うことだけでは難しくて、登録はできるだけ負担軽減というか、医師の手を介さないのが一番いいと思うのですけれども、脳卒中や心臓病の救急医療の中では時間の要素とかタイムメトリックというものがないとなかなか難しくて、どうしても追加情報が必要になってくるということで、集めたDPCのデータなどはしっかり使うということで、それをプリセットして負担の軽減を図るのが1つの方向性です。
 これで、一応集めたデータの解析の結果は、各参加施設にそのままお返しして、これはJROADもそうだと思うのですが、ベンチマークとして使っているところです。ですから、自分の日本国内での立ち位置が客観的に見られて、自発的な改善を促そうというのが主な狙いです。
アミロイドβに関しては、これは26ページの下に書いてあるとおりで、病態概念確立のために、まだ時間が掛かりますので、2年以内に目標症例数に到達するというようなことが書いてありますので、心脳連関に関しては、これから超高齢社会の中でこういう病態がリンクしていると非常に興味深いというか、今後の予防策の確立に貢献できる可能性はあるのですが、成果が出るにはまだ時間が掛かるということです。以上です。
 
○深見委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。今のアミロイドβは私も非常に興味を持って聞かせていただきました。このようないろいろな変性疾患で溜まってくるαシヌクレインとかアミロイドβというのは、今までは脳だけかと思われていたのが、全身にいろいろあるのだということがだんだん分かってきております。これは、是非心臓と脳にどういう相関があって、どういう意味があるのかということを、答えを出していただけると有り難いなと思っております。よろしくお願いいたします。深見先生、今の質問で、終わりでよろしいですか。
 
○深見委員
 はい、結構です。
 
○祖父江部会長
 次は、大西先生よろしくお願いします。
 
○大西委員
 昨年の発表のときに、心不全の患者さんが増えているというお話があったような気がするのです。JROADデータの中では、やはり継続的に増えているのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 心不全については、JROADの中で循環器学会の認定施設、それから教育施設から情報を集めております。そこで心不全とされている患者さんということで、かなり確度が高い心不全の数だと思うのですけれども、これはやはり年々増えている状況にあります。その傾向は余り変わっていないと思います。
 
○大西委員
 そうですか。そうすると、医療費の負担が増えてきますよね。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 そのとおりだろうと思います。ですから、心不全を今後どのように医療として見ていくかということで、医療体制も含めて循環器病対策基本法も成立したということもあり、関係する所と協力しながら、循環器病研究センターがそこに貢献をしながら、医療体制の構築をしていかなければいけないと考えております。
 
○大西委員
 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 次は根岸先生、よろしくお願いします。
 
○根岸委員
 根岸です。評価項目1-4の人材育成についてお尋ねします。30ページですが、看護師の特定行為研修について、先ほど発表がありましたけれども数がだんだん増えてきている、恐らく今後もそのニーズは高まるだろうと予測いたします。その一方で、この制度への認知度というのは、まだ高くはないと思われるのですが、特定研修を終えられたナースが活動をし始めて、もともと医師がしていた診療の部分であったり治療の部分であったり、それをナースが代わって行う行為に対する医師の抵抗、あるいは実際にそれを受ける患者さんたちの理解度という面での課題などが、もしあれば教えてください。よろしくお願いします。
 
○国立循環器病研究センター空山看護部長
 看護部長の空山です。特定行為研修修了者の医師の反応ですが、年に1回実践報告会を開催しており、その際に集中系のドクターがかなり報告会に参加をしていただいております。その中では、看護師の判断というものが、やはり患者の全身観察から始まって、非常に判断力が高いという評価を頂きました。今回6月に実施したのですけれども、その際には24時間365日、特定行為の研修修了者が集中治療室にいるように是非していただきたいという強い要望をお受けいたしました。これは2年掛けてですので、特定行為研修の修了者自身の実践力や判断力も、日々集中治療医との協働によって高められてきている成果もお認めいただいたのかなと思っております。
 特定行為の認知度に関しても、集中治療室のほうもかなり高まってはきておりますので、その期待に応えるべく修了者を今後も引き続き増やしていきたいと考えております。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。そうすると、今のところ活動の場としては、集中治療室に限定されるということでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター空山看護部長
 そうですね、集中治療室と心臓血管外科の病棟に1名配置しており、外科の術後のケアの特定行為を実践しているところです。
 
○根岸委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 土岐委員、お願いします。
 
○土岐部会長代理
 私も特定行為の所です。阪大は1年遅れで、今年の4月から院内の卒業生が3名出たのですけれども、まだ試用期間です。グラフの「相談」というのが気になったので、どういう運用をしておられて、「相談」というのは何を、どういう状況なのかを教えていただけますか。
 
○国立循環器病研究センター空山看護部長
 この相談というのは、集中治療室等で実際に勤務しております看護師から患者のアセスメントをした際に、これをどのように判断していいだろうかとか、医師に報告すべきかどうかというところのコンサルテーションを請け負っているところです。実際に特定行為研修修了者が一緒に診断をして、医師に報告をするほうがより精度が高いという評価も、医師からは頂いております。
 
○土岐部会長代理
 「相談」というのは、特定行為を研修した看護師さんが自分で患者さんを診て、医師に相談したという件数でしょうか。
 
○国立循環器病研究センター空山看護部長
 一般の特定行為研修修了者でない看護師から、特定行為の研修修了者に相談があった件数です。
 
○土岐部会長代理
 それもモニタリングされているのですね。
 
○国立循環器病研究センター空山看護部長
 はい。
 
○土岐部会長代理
 分かりました。参考になりました。もう一点よろしいでしょうか。
 
○祖父江部会長
 ちょっと短めにお願いします。
 
○土岐部会長代理
 阪大もダイバーシティの研究者が困っているのですけれども、実際に増えたという実績はよく分かるのですけれども、具体的に言って、これは基本どおり子育て支援とかを淡々とするのが一番なのでしょうか。何か特効薬みたいな方法があれば教えていただきたいと思います。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 なかなか特効薬というのも難しいと思うのですけれども、これは国循としても女性研究者の研究力向上ということで、留学のための補助をしたり、女性研究者の新規採用等、いろいろな取組をしているところです。女性研究者の公的な資金の新規採択額も増えたりということで、この辺りは客観的には指標が総合的に評価されたのではないかと考えるところです。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。ちょっと遅れているのですが、1点だけクイックに申し上げます。循環器病対策基本法が制定されて、先ほども議論がありましたけれども、これに対応する形のどういうミッションを構築していくのかということが、恐らく次の6年間の非常に大きなミッションになるのではないかと感じております。がんセンターなどは非常によく分かる形で、毎年全国の状況を発表いただいておりますので、先ほども心不全や認知症の話がありましたけれども、是非よろしくお願いします。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 ありがとうございます。循環器病の対策に関するセンターも立ち上がることも決まり、国がんに追いつけ追い越せではないですけれども、早く日本全国の指標の公表に向けて全力で取り組みたいと思います。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。それでは、次の項目に移ります。次は2-1から4-1です。業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項です。説明8分、質疑6分ということで、法人から御説明をお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 企画戦略局長の稻川と申します。それでは私のほうから令和2年度の自己評価を中心に2-1から4-1まで順次御説明をいたします。まず、資料1-2の36ページになります。評価項目2-1ですけれども、「業務運営の効率化に関する事項」はB評価ということにしております。指標の達成状況は経常収支率が99.1%と目標の100%には達しておりませんが、手術などはあったのですけれども、全体として見ますと、やはり新型コロナウイルス感染症の拡大により、医業収益が想定したほどでもなかったという影響が大きかったのかなと考えております。なお当センターは令和元年度に建て替えを行いました結果、それ以前と比較して減価償却費が大幅に増えておりますけれども、そのような中で経常収支率をこの水準まで持ってこられたということについては、収益増に向けた取組等が功を奏したというふうにも考えております。
 後発医薬品の使用率については、達成度が129.3%と目標を大幅に上回っております。一般管理費の削減率も達成度が96.9%となっておりますけれども、移転・建て替え経費の影響が解消された結果、令和元年度のときよりは大幅に改善しております。また移転に伴って、施設の規模が大きくなりました中でのこの数字ということですので、全体としてはB評価ということにさせていただいております。
 次の37、38ページが具体的な財務状況です。38ページになりますけれども、医業収支、右側のほうですけれども、13.76億円の赤字でしたが、医業外のほうで後ほど御説明いたします外部資金の獲得の大幅増により黒字を確保し、法人全体の経常収支の赤字は3.31億円と抑えることができました。
 なお37ページの右側にキャッシュ・フロー計算書というのがありますけれども、今期の資金増加額とローマ数字のⅣの所ですけれども、一応19.35億円ということでキャッシュのほうも増加しております。これについては左側の真ん中のほうに建て替えに伴い発生した財政融資資金からの借入金残高というのが445億円ということですけれども、この返済が令和5年度から本格化いたしますので、その返済を滞りなく行えるよう財務体質の基盤強化に取り組んでいるところです。
 続いて39ページです。人事交流についてはAMEDからリサーチ・アドミニストレーターを受け入れて、後ほど御説明いたします公的資金の確保増につなげております。また、先ほど健都の話もありましたけれども、地元の吹田市からも職員を受け入れて、健都における連携強化のために、積極的に御活躍をいただいているということです。
 次に評価項目3-1、40ページになりますけれども、「財務内容の改善に関する事項」についてもB評価ということにしております。まず自己収入の増加についてですが、41ページを御覧いただければと思います。令和2年度においては新たな取組を行うことにより、自己収入が大幅に増加しております。まず1番目のAMEDの委託費、あるいは厚生労働省・文部科学省の科研費ですけれども、27.5億円を受け入れました。これは下にありますように、令和元年度の16.33億円に比べて、68.4%の大幅増です。
 これについては先ほど人事交流の所で御説明しました、リサーチ・アドミニストレーターや大学でのURAの経験を有する理事長特任補佐が中心になりまして、研究支援体制を強化するなどのマネジメントの改善を行いました。また、研究者のほうもそれを受けて積極的に手を挙げてくれた結果、このような実績につながったと思っています。
 その下のライセンス収入です。これも7,800万円ということで、令和元年度より20.6%増加しています。これについてもここにありますように、令和2年度新たに元製薬企業のアライアンス部門マネージャー及びURA経験のある専門人材を産学連携本部内に配置した結果、企業との調整・契約交渉力が強化されて、当センターの知的財産のマネタイズ化が図られた成果によるものと考えていますし、先ほど話にありました「かるしお」のライセンス収入なども入っています。金額的にも上位の大学と肩を並べる規模まで実績が上がっているという状況です。
 それから右側に移って、共同研究費の獲得についても5.54億円ということで、令和元年度と比較して40.3%の増加になりました。これも先ほど御説明した、産学連携フォームのスタッフが中心になって、企業と研究者との橋渡しを行って、大型の研究を新規に複数件契約できたことによるものです。
 このようなことで、気持ち的にはA評価でもいいかなと思ったのですけれども、定量的な指標もないということでしたので、一応B評価としております。
 最後に42ページになりますけれども、「その他業務運営に関する事項」については、B評価にしています。具体的な取組は43ページをご覧ください。まず、法令遵守と内部統制の適切な構築ということです。令和2年8月、それから令和3年1月に、過去に当センター研究所に在籍した研究者の研究不正事案を公表しました。それを受けてここに書いてある再発防止策を講じて、令和2年度中に概ね対応を完了しました。今後再発防止策を確実に実施するとともに、新たな取組も着手、実施していきたいと思っていて、このような事案が発生しないように取り組んでいきたいと思っています。
 次に、平成30年度に発生した倫理指針不適合事案を受けた各種の再発防止策についても、取組を風化させることなく着実に実施してきております。それから右側に移って、研究体制について、後ほど監事からもお話があるかもしれませんけれども、監事が病院、研究所及びオープンイノベーションセンターの研究者を対象にアンケートを実施して、その結果に基づき提言を頂きました。この提言の内容を踏まえ、よりよい研究活動を行う取組を開始しています。
 また、昨年度は新たな取組として、[4]ですけれども、診療、研究等の実施に関連する各種法規制遵守のための体制整備という取組をスタートしています。各種法令を遵守するというのは、ある意味当然と言えば当然なのですけれども、ただ、これらのここに書いてあるような法規制については、種類も非常に多いですし、内容も複雑です。それから頻繁に改正がなされるということですので、こちらに悪意がなくても知らぬ間に法律違反をしているということもあり得ると思っています。
 そのため現場まかせにするのではなく、組織としてしっかり体制を組んで取り組むことで、確実に法規制を遵守することを担保することとしました。具体的にはこの(1)から(5)までに記載のとおりですけれども、プロジェクトチームを立ち上げて、こういう分野に精通した外部の先生を「規制管理アドバイザー」として委嘱して、サポートいただきながらプロジェクトを進めていて、着実に成果が上がっていると思っています。
 なお44ページの右側に、新型コロナウイルス感染症の取組の状況ということで資料を用意していますけれども、我々も最大で中等症軽症病床7床、それから重症病床4床の運用を行いました。先ほど病院長からもお話がありましたけれども、この間大阪のほかの基幹的な医療機関がコロナの患者の対応に尽力したことにより、当センターに重症の循環器疾患の患者が集中し、現場が非常に厳しい状況に置かれたのですけれども、病院長をはじめスタッフの頑張りによって何とか対応することができました。
 以上のことから、全体としてみればB評価を頂ける取組が十分できたと思っています。簡単ではございますが説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常にまとめてお話いただいたと思います。それでは挙手をお願いします。前村先生。
 
○前村委員
 前村です。ありがとうございます。2024年からの働き方改革に向けて、全国の病院で対応を今しているところだと思います。循環器、脳卒中医というのは非常に多忙で、我々の所でも非常に頭を痛めているところではあります。先ほどタスクシフトのお話はされたのですけれども、国立循環器病研究センターでも、働き方改革への対応の状況と、どれぐらい達成できているかというのを教えていただければと思います。
 
○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 私どもはこういう病院ですので、大変対応には苦慮といいますか、しっかりやっていかなければいけないと思っていて、つい最近、専門家の方に来ていただいて講演会を行っています。それからそれを受けて、近々副院長をヘッドとするプロジェクトチームを立ち上げて、2024年に向けてしっかり対応していきたいと思っています。
 幸い私どもの病院はスタッフがおりますので、皆様が思っておられるほど過剰な状況になっているということではないのですけれども、ただ、実際の労働の状況なども、もう少し見える化をしてはっきりさせた上で取り組んでいきたいと思っていますし、その中で先ほどのタスクシフトとか、そういうことについても取組を進めていきたいと思っています。以上です。
 
○前村委員
 はい、ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。先ほど中野先生が手を挙げておられたように思ったのですが、よろしいでしょうか。
 
○中野委員
 先ほどは挙げていないのですが、1つ質問させていただきます。4-1に関して、コンプライアンス遵守に関してちょっとお教えください。元室長の方の公表事案というので、2件のことを御説明いただきましたけれども、本件が、国立循環器病研究センターに出張の先生がいらしたときに、どういう経緯だったかを私は十分に把握できていないのかもしれないのですが、もうちょっと教えていただけるとありがたいです。
 
○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 この先生自体は、もともとうちに流動研究員というか非常勤の研究員で入った方で、そこで研究を続けていたのですが、いわゆる心臓のホルモンの関係のものが、循環器だけでなくむしろがんの転移抑制に効くのではないかということがあり、そういう観点から研究を進めていたのですが、その過程で論文のデータの改ざんとかねつ造ということが分かりました。もともと平成29年の暮れに告発があって、その告発の対象が非常に多かったりしたもので、まずその分について調査をしていたのですが、その結果をまず令和2年8月に公表して、その後ある意味私どもの判断として、やはりほかの論文も全部チェックすべきではないかということで調査した結果を今年の1月に公表したということで、両方に論文の不正があったということで、大変申し訳ない事案だったと思っています。
 それを受けてここにあるような形の取組、この中には先ほど御説明しました倫理指針不適合事案を受けた取組の内容も含まれていますけれども、再発防止策を講じまして、しっかり対応していますし、あと今年の3月からになりますけれども、外部の有識者の先生にも入っていただき、うちの再発防止の取組が適切かどうかの検証も一応行っています。この7月に検証の報告書をまとめていただいた経緯があります。それを受けまして、また新たな取組が必要な所についてはやっていきたいということです。そういうような経緯で発生した事案ということです。
 
○中野委員
 ありがとうございます。ということは、論文もやはり国立循環器病研究センター所属の名前で出された論文に関して、研究不正が一部あったということは事実ということですか。
 
○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 はい、論文もうちの所属の論文、先生が今おっしゃったとおりです。
 
○中野委員
 ありがとうございました。
 
○土岐部会長代理
 すみません、大阪大学も関係していますので、本件に関して、大阪大学の病院長としてご説明します。この研究者は、国立循環器病研究センターだけでなく、もともとは大阪大学の教室の者ですので、大阪大学所属のときに行った研究にも不正があったので、この場を借りて循環器病センターに御迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。それでは大西先生、お手を挙げておられますので、どうぞ。
 
○大西委員
 大西でございます。コロナの患者さんも受け入れられたということですので、補助金があったのではないかと思うのですけれども、補助金を含めてもぎりぎり収支率が100%にならなかったということでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 補助金は確かに受けておりますけれども、いわゆる空床部分に対する補助というものは、余り令和元年度にはなかったものですから、令和2年度に入りましてかなりうちも、大阪は、4、5月は大変だったものですから、ベッドを一部閉めてやったりしましたので、令和2年度は多少そういうことで医療外のほうで入ってくると思いますけれども、令和元年度はそれほど補助金という形では頂けなかったものですから、こういう数字になったということです。
 
○大西委員
 なるほど、それから新棟ができたことに伴い、減価償却費が増えたという話がありましたけれども、どのぐらいの金額になったのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 資料で言いますと、37ページを見ていただきますと、左側の損益計算書の中に業務費用の所に設備関係費というので66億円費用が上がっています。この中の大部分が減価償却費なのですけれども、これが平成30年度、2年前におきましては22~23億円の数字だったので、大体それと比較しますと45億円ぐらい減価償却が増えているという状況です。
 
○大西委員
 45億円ですね。それから、もう1点伺ってよろしいですか。
 
○祖父江部会長
 ちょっと短めにお願いできますでしょうか。
 
○大西委員
 令和5年から財政投融資の資金の返済が始まるとおっしゃいましたけれども、そうなりますとどれぐらいの費用が掛かるのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 令和5年度は確か15、16億円でしたけれども、令和6年度から数年間は21、22億円ぐらい毎年返さなければいけないということですので、もうひと頑張りしないといけないということで、病院のほうでは患者さんを確保するために目標を作ってやっていますし、先ほど申しました研究の外部資金の獲得なども、これまで以上に取り組んでいかなければいけないと思っています。以上です。
 
○大西委員
 期待しています。よろしくどうぞお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 よろしいですか、どうもありがとうございました。ちょっと時間が遅れていますので、この後に全体の振り返り質疑というのがあるのですが、ちょっとその時間をオーバーしておりますので、もし何か特別にということであれば、御発言いただけたらと思いますが、いかがでしょうか、よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。それでは一応御発表、それから質疑応答はここまでとしたいと思います。よろしくお願いします。
 最後に法人の理事長先生と、監事からのヒアリング、御発表をお願いしたいと思います。まず監事より監査報告について御説明いただけるでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター片山監事
 監事の片山です。よろしくお願いします。監査結果については、資料1-4の監査報告書のとおりです。これに関して、私のほうから特に2点申し上げたいと思います。
 1つは法令遵守と内部統制システムの構築に関することです。先ほど来話に出ていましたが、当センターは過去に研究不正事案を生じさせていたことを昨年公表しています。これを機に、監事のほうでも研究体制ということに大変気を使いまして、基本的に全研究者を対象にして、ヒアリングに代わる詳細な自由記載で答えていただく形のアンケートを実施しました。対象者全員から回答を受領しています。
 回答では皆さん非常に高い倫理観と研究に対する熱意、あるいは理想というものをたくさん書かれていて、更に循環器病の予防と制圧という、センターのミッション達成に向けて、もっともっと活性化を図りたいという研究者自らの思いから、たくさんの改善提案も出されてきました。
 監事のほうはこれらを盛り込んだ監事提言というものを作成して、執行部にお渡しするとともに、研究者の皆さん自身に整理したものをお返ししました。それに基づいて、既に様々な取組が研究者の皆さんの間で自主的に開始されていることを御報告したいと思います。
 次に業務運営に関してです。移転に伴って経営の上では大変厳しい状況になることを、幹部全員が数字の上で理解をしており、常に経営目標を共有すべきであるという考え方で取り組んできました。経営目標となる数字を共有したことに伴って、このコロナ禍の厳しい情勢の中でも、病院では各診療科において、地域との連携や患者さんのニーズに応じた診療体制の工夫がなされるなど、ここでもセンターのミッション体制に向けた、非常に前向きな取組がこれも自主的に続けられていると認識しています。そうした成果が経営の安定に、厳しい中でもつながってきていると監事として認識しています。
 課題を分かりやすく見える化して全員で共有すること、全員で業務の改善と効率化、適正化に取り組む。そしてセンター全体の力を最大化していこうという意識が、今役職員の中で確実に浸透してきていると感じているところです。以上です、ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。大変重要な意識改革につながるようなインターベンションをしていただいたのではないかという感じがしておりますが、よろしいでしょうか。
 それでは今日の議論、今後の展望等も踏まえていただいて、最後に理事長先生から御挨拶、締めの言葉を頂けたらと思います。よろしくお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター大津理事長
 本日はどうも長時間にわたり、我々の業績を評価、あるいは御指導していただきありがとうございました。御存じのように、循環器疾患、つまり心臓病、脳卒中は日本の死因第2位、高齢者に対してはがんよりも多く1位、それから介護が必要とされる原因の20%は循環器疾患であり、その解決は国に大きく求められているものであります。そのために基本法ができたわけですけれども、その克服には登録事業あるいは医療体制の充実、それから人材育成、研究が必要ですが、それを体現するということも我々の任務です。我々は、今日発表しましたように、その1つ1つの項目を地道に行使して、それを社会に還元するために、病院、研究所、それからオープンイノベーションセンターが一体となって、循環器病克服のために努力していきたいと思います。
 先生方から今日頂いた御指導を基に更に改革していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうも本当にありがとうございました。将来に向けた展望を交えて御挨拶いただいたと思います。また報告書を作って先生方のお手元にも行くことになると思いますので、今後とも是非よろしくお願いしたいと思います。今日は長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。改めて感謝申し上げます。ここで10分間の休憩を取りたいと思います。開始が、事務局どうですか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 16時10分から再開させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 16時10分から再開するということで、またよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 
          (国立研究開発法人国立循環器病研究センター退室)
                -休憩-
          (国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター入室)
 
○祖父江部会長
 後半をスタートしたいと思います。長丁場で申し訳ありませんが、最後の1つですのでよろしくお願いします。
 それでは、国立精神・神経医療研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間の実績評価について御議論をお願いしたいと思います。お集まりですか。どうも今日は大変暑い中、あるいはコロナ禍の中、皆様御出席いただきましてありがとうございます。会に入る前に、まず法人の理事長先生から御挨拶を頂けたらと思いますが、いかがでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 本日は当センターの業務実績評価のために、貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございます。私はこの4月より理事長を拝命しています中込と申します。
 それでは早速ですが、私からセンターの概要について御説明申し上げてよろしいでしょうか。
 
○祖父江部会長
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 そうしましたら画面を共有させていただきます。本日は、こちらの「令和2年度業務実績評価説明資料」を中心に、必要に応じて「第2期中長期目標期間」に関する資料を使って御説明したいと思います。当センターは、病院2つと研究所、そしてその間をつなぐ4センターからなっています。また11の専門疾病センターで先端的な研究、診療を展開しています。さらに当センターは、昭和15年に設立された傷痍軍人武蔵療養所に端を発し、昭和61年に神経センターと精神衛生研究所を統合して、今の原形が生まれています。最大の特徴は、基礎から臨床までシームレスなフローを可能とする研究体制です。その成果が第2期中長期資料の9ページにありますこの2つの新規治療薬です。
 病院ですが、精神、神経、筋疾患、発達障害を対象とする高度専門医療機関ですが、現在はこの身体疾患を合併した患者さんへの対応を強化するために、総合診療部門の充実を図っています。
令和2年度は、コロナ禍の影響を受けてかなり稼働率が低迷しました。一方、都内の精神科病院でクラスター感染が相次ぎ、当院では昨年の6月よりコロナに感染した精神疾患患者の受入れを開始し、これまでに100名を超える患者を受け入れてきました。現在、コロナ専用病棟を12床運用していますが、呼吸器専門医が全くいない中、チーム医療でこの難局に当たっているところです。
 そのような中ですが、昨年度も当センターのミッションである神経系難病領域の開発研究拠点の形成、特に臨床研究の基盤となる患者レジストリ、あるいは臨床研究ネットワークを充実させてきました。これは全国の研究機関の下支えとなる事業と考えていまして、正にナショナルセンターの使命だと考えています。私どもの自己評価としては、こちらの7ページに示させていただいています。よろしくお願い申し上げます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、今、全体の概要を御説明いただきましたので、早速、議論に入りたいと思います。最初は研究開発の成果の最大化に関する事項、評価項目で申し上げますと1-1及び1-2に関わる業務実績と自己評価について議論したいと思います。
 まず、法人から御説明いただきまして、その後、質疑応答という流れにさせていただきますが、説明は20分、質疑は18分ということですので、ポイントを絞って御説明いただければ有り難いと存じます。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 それでは研究開発に関してNCNP神経研究所の岩坪から御説明をさせていただきます。研究に関しては、今、提示しています令和2年度の業務実績評価資料、こちらに沿って御説明をすることにさせていただきます。まず7ページを御覧ください。「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」の自己評価については、Sとしています。この自己評価の理由ですが、こちらにあります難易度「高」の理由にも示したとおり、当センターが、例えば多発性硬化症などの免疫性神経疾患、あるいは筋ジストロフィーなどの難治性神経筋疾患等々の症例集積に基づいて、世界レベルの研究を進めまして、病態メカニズムに基づく画期的な治療薬の開発を達成し、患者様のもとに届けているということを挙げさせていただきたく思います。
 令和2年度ですが、9ページ以降でこの後御説明しますように、さらに医療推進に大きく貢献する画期的な研究成果を上げていることなどが、自己評価を高く設定させていただいた理由です。また、全体的な研究の発展を反映しまして、7ページ下段に示しますとおり、論文の発表数も平成26年度に比して20%以上増加し、原著論文の発表数も令和元年度に比しても16%増加しています。8ページに示すように、論文発表は極めて高い研究実績を表現しております。
 9ページから、令和2年度に形になりました顕著な研究の実例を3件、御説明させていただきます。最初は、神経難病の先端医療に貢献する進歩として、多発性硬化症の診断並びに個別化医療のためのバイオマーカー開発が達成されたことが挙げられます。多発性硬化症、MSと略されますが、自己免疫性の神経難病として頻度も高く極めて重要な疾患です。この中でも幾つかの病型がありますが、二次進行型という難治性の病型に関して、本年度神経研究所の山村グループで2つ大きな発見を成し遂げたことです。
 まず、この1)に示すように、多発性硬化症の進行・増悪に関する腸内細菌叢の変化を解明し、診断・治療の手掛かりを提示しました。今回の新たな発見は、この二次進行型病型で、糞便中の酸化ストレスの増大によって、DNA修復障害が大きな因子になっていることを示したことにあります。また、2)に示すように二次進行型の診療・診断に有用なバイオマーカーとして、Eomesという因子が陽性になっているヘルパーT細胞を発見しました。これらの成果は、山村グループより令和2年単年度の間に米国科学アカデミー紀要PNASに2編の原著論文として発表が達成されています。
 10ページ上段にありますように、山村らは多発性硬化症の発症と腸内細菌叢異常の関連について10年近く前から研究を始め、まず動物実験の結果から予測をして、中段の3)にあるように、患者試料で再発寛解型というもう1種類のメジャーな病型の多発性硬化症で、炎症を抑える制御性のT細胞を誘導、あるいは脳や脊髄における髄鞘物質の再生を促したりする働きのある酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸が腸内細菌によって産生される能力が低下していることを見出しています。これが病態悪化に関わる可能性をまず示したわけです。そこで予後不良な二次進行型MSが課題として残ったわけですが、これらの患者様で糞便中の酸化ストレスの亢進を見出したわけです。これは腸内細菌のDNAの損傷を示唆するもので、腸管に由来する神経の慢性炎症病態の増悪の原因になることが示唆される結果でした。
 そして、2つ目の発見のEomes陽性Tリンパ球について、下段にその研究史を示しています。この二次進行型MSの動物モデルの開発から患者サンプル、そして今回は剖検に至った方の脳病巣でもこのEomes陽性T細胞の集績があったことを示しています。このように全てのモダリティで変化を検討できたことに端を発した発見です。このように臨床例から剖検例までを多数蓄積しているNCNPにおいて、初めて可能な基礎臨床連携によって達成された結果であると申し上げたく思います。
 次に11ページを御覧ください。今回、顕著な成果を上げた第2の例です。こちらは老化によって衰えた神経回路の修復力を回復させる分子をスクリーニングした結果、APJという分子、右図にあるとおりアペリンという活性因子の受容体を同定しました。本研究を達成した村松里衣子部長は、神経研究所で最年少かつ女性の部長として活躍している研究者ですが、今回は神経回路の機能維持に重要な神経線維を包む被覆の髄鞘に着目して、これを作るオリゴデンドロサイトというグリア細胞の維持並びにオリゴデンドロサイトの老化による活性低下障害の修復力向上にこのアペリン受容体、APJという分子が働くことを発見しました。この成果を発表した論文は『Nature Aging』の第1巻を飾りまして、それ以来、APJが新規の神経疾患治療薬開発の標的として非常に注目を浴びるようになっています。
 12ページにありますように、村松は数年前に大阪大学から赴任したのですが、大阪大学在職中から脳神経回路の修復を促進する因子のスクリーニングと解析を集中的に進めてきました。今回、NCNP着任後に本格的にこの神経線維の修復分子の探索を開始して、特にAPJノックアウトマウス等の動物資源を縦横に活用できる環境の下で、今回、神経線維髄鞘修復分子の探索から、APJという受容体を世界に先駆けて発見したものです。
 13ページを御覧ください。精神疾患の病態解明についても、ヒト脳画像研究を通じて大きな進捗がありました。精神保健研究所の橋本亮太部長らは、磁気共鳴画像法、MRIによる脳の構造・機能画像研究を、全国30を超える多施設による大規模共同研究によって進めてきました。その結果として、今回、統合失調症と双極性障害という2大主要精神疾患に共通する大脳の白質、これは神経線維の部分ですが、こちらの微小構造の変化を発見し、『Molecular Psychiatry』誌に発表しました。
 14ページです。こちらの成果も、平成26年に発足した世界最大規模と言っていい精神医学の臨床連携研究体制である認知ゲノムの共同研究機構、略称COCOROにより、画像などのいわゆる中間表現型とゲノムを中心に精神疾患の病態解明を目指してきました。こういったトランスレーショナルな研究において、当NCNPが全国の中心的な役割を果たして、病態に基づく精神疾患の治療の指針と研究開発に資する成果を上げたものと認識しています。
 15ページからです。項目1-2、「実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備」について、御説明申し上げます。こちらも令和2年度の自己評価をSとしています。こちらは見込評価Aとの相違がありますが、16ページにその根拠となる事象を示しています。具体的にはFirst in human試験、医師主導治験、また先進医療などを、この期間継続中に実施し、目標の250%を上回る件数が達成されたこと、また診療ガイドラインの採用も目標の425%と非常に上回ったことがあげられます。さらに加えまして、第2期の中長期目標期間において、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する核酸医薬ビルトラルセン、あるいは多発性硬化症の新規治療薬OCHの治験、また先進医療Bとして実施していました治療抵抗性のうつ病患者さんを対象とした反復経頭蓋磁気刺激装置による治療法が平成29年に薬事承認に至ったなどの臨床実用的な成果が大きかったことなどを根拠としています。
 17ページです。こちらにはその結果としての治験や臨床試験の実施状況の拡大について記しています。令和2年度ですが、コロナ禍の中にあったにもかかわらず企業治験、医師主導治験、臨床研究の総数は御覧のとおり増大しています。国際共同治験の数も、過去最大数に達しています。また右の表にありますように、当NCNPでは難治性の精神・神経疾患、代表的なもの、ほぼ全ての疾患を網羅する治験を実施しているということも特筆されることかと存じます。
 18ページにバイオバンク、ブレインバンク事業についてまとめています。18ページに項目を書いて、19ページにはこの内容を図示していますので御参照ください。まず1番のバイオバンクについてです。当センターのバイオバンクのうち、まず伝統のある筋肉については、今までのサンプル総数は2万1,000を超えて、世界最大級を誇ります。本邦の筋疾患診断の80%以上を担うようになっています。このリソース研究から得られた成果は、神経疾患概念の確立や治療薬開発の基盤となり、また最近では、一部はiPS細胞としての保存も行っています。
第2の脳脊髄液サンプルです。神経疾患では採取されることが伝統的に多かったのですが、NCNPでは精神疾患でも積極的に集積を進めています。今までの集積総数5,800、うち精神疾患と健常な方のサンプルのみでも1,368人に達していまして、また、神経疾患で多数集積されているサンプルはパーキンソン病、認知症、精神疾患、うつ病の研究開発などにも活用されています。
 NCNPで非常に特徴のある最近のサンプルとして、難治性の小児てんかんの手術脳組織があります。こちらは年間30以上、累計でも278例が集積されています。神経研究所でも病院と合同で先端的な研究に活用され、本年度のAMEDの脳プロの研究の課題としても採択いただくことができました。そして、ブレインバンクですが、こちらも日本ブレインバンクの中核として貢献をしています。生前同意の総数が351名に達しています。
 次の2.の所に利活用の実績を示しています。これらリソースは、延べ163件の外部への提供実績があります。この数も毎年20%程度ずつ増加しています。特に企業に対しても37件、海外に対しても5件と広く貴重なサンプルのシェアリングを行い、世界における責任を果たしていると申せます。こういったことが徐々に拡大している背景には、この3.に示していますナショナルセンター・バイオバンクの連携、そしてCINの基盤が非常に後押しとなっているところです。
 20ページを御覧ください。こちらにCIN、クリニカル・イノベーション・ネットワークの取組についてまとめています。御承知のとおり、CINは6つのナショナルセンターが中心となって、各分野の患者登録、すなわちレジストリの構築を基盤に臨床研究、あるいは治療薬開発に資する医療研究開発の環境整備を図るための体制作りの活動です。この中のコア事業では、構築の推進、それから横断的な課題の解決をNCNPの武田元研究所長らによる武田班等により、事業化に貢献してきました。これと同時に製薬企業等とのワーキンググループを形成し、研究開発のための情報提供体制も整備しています。そして、我がNCNPでは筋疾患レジストリであるRemudyをはじめとして、精神疾患、運動失調、プリオン、あるいはアルツハイマー病等の認知症早期を対象としたオンラインレジストリのIROOP、またAMED革新脳プロジェクトに関わりますが、パーキンソン病早期を解析するParkinson Progression Marker Initiative Japan、PPMI-Jなどの幅広いレジストリを構築して、企業を含む研究展開によって治療法の開発に貢献しているところです。
 21ページが最後になりますが、こちらに人事交流の実績について示しています。当NCNPの研究者は非常に多くの機関と広い人事交流、また機関に対する人材輩出を行っています。特に大学の教員、あるいはPMDA、AMED等の公的機関の専門職としても人材を輩出しています。特筆すべきこととして、非常に幅広い学術機関との連携を進めていることがあり、令和2年度には大学に対して4名の教員を輩出、また大学院生、学生も非常に多数を多くの機関から受け入れています。外国人研究者も、常時の受入れ数が20名を超えていまして、国際的な人材育成にも貢献しているところです。
 以上、研究開発に関して御報告を申し上げました。よろしく御審査のほどお願い申し上げます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に細かくお話いただいたと思いますが、いかがでしょうか。早速、御意見、御質問等がありましたら御発言いただけたらと思いますが、よろしくお願いします。では、花井先生、最初にお願いします。
 
○花井委員
 レジストリやバイオバンク、着実にこの期間中に進捗して、提供数もどんどん上がっているということで、大変素晴らしい活動をされていると思うのですが、一方で、単年度を見ますと、治験数は、治験は受けているというところはあるのですが、臨床研究に対して、医師主導治験1件ということなのですが、この1件の医師主導治験はどのような治験を行ったのでしょうか。令和2年度の医師主導治験です。新規が1件ありますが、令和2年度の実用化に向けた臨床研究、ここ1件かと思って。まずは、臨床研究の中でも、もしかしたらもう少し内容が分かれば、代表的なものがあれば教えていただきたいと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 恐れ入ります。これは神経筋疾患に関するものかと思いますが、今少し内容について確認をいたします。申し訳ありません。
 
○祖父江部会長
 では、また後でお触れいただくということで、花井先生、何かほかにはよろしいでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 申し訳ありません。正確を期したほうがいいと思いますので、お時間を頂戴できれば。
 
○花井委員
 分かりました。
 
○祖父江部会長
 花井先生、何かほかにはよろしいでしょうか。
 
○花井委員
 大丈夫です。単年度の成果と期間中の成果と分けて評価しなくてはいけないので、一応、令和2年度の実績を確認したかったという趣旨です。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 申し訳ございませんでした。確認でき次第御報告いたします。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。よろしくお願いします。ほかにはありませんか。では、私から1つだけ。前期の比較のところで少しお触れになりましたが、令和2年の中には余り深くは触れてなかったのですが、例のビルトラルセンの初期の重要な所は精神・神経センターが開発されたと思うのですが、令和2年3月に一応治療薬として認められましたよね。その後どうかを、横道の話になるかもしれませんが、非常によく順調に利用されているのかどうか。ポストマーケティングスタディの中で、何か分かってきたことがあるのかどうかを教えていただけると有り難いのですが。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 祖父江先生が御指摘のとおりで、昨年の春に日本新薬から上市が達成されたわけです。その後も順調に薬の販売量が増えており、患者数は、正確な投与数は申し上げられないのですが、例えばNCNPに対して発明者に対する特許収入等の報告がされていますが、この数は順調に増えてきています。市販後の全例調査の検討を課せられており、有効性についての取りまとめの結果はまだないわけですが、逆に安全性等での懸念事項は一切指摘されていないところです。
 関連いたしまして、First in human治験は、2、3年前から継続しているわけですが、ジストロフィンの治療薬ビルトラルセンがエクソン53スキップ療法に相当しますが、次に頻度の高いエクソン44に対するスキップ療法のNS089という薬剤についても治験を進めており、これがまた数年後には実用化が達成されるのではないかと予想しているところです。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。順調に進んでいるということかと思います。それでは、中野先生、よろしくお願いします。
 
○中野委員
 実は私も祖父江部会長と同じで、ビルトラルセンについて質問したかったのです。私は小児科医です。この薬剤が2015年に先駆け審査指定制度対象になって、去年の春に承認ですから。お伺いしたかったのは、5か年、ほぼそこと合致しているので、当初の想定どおりに進んだのかどうかということ。それと、祖父江部会長が御質問された、その後の臨床での使われ方、それも開発の時点で想定されたものであったのかどうか。一部、質問がかぶってしまって申し訳ないのですが、それを少しお教えいただければと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 過去5年間の進捗は、研究者から聞いておりますところでは比較的順調に進んだということでした。ただ、最後、上市をして企業側に受け渡すところ、こちらはスピードを考えなければならないということで、センターとしてこういう条件をとれればという希望を少し譲ったようなことがあったというようなことも聞いておりますが、それだけに早く患者様のもとに届けることができたということかと思います。今申しましたRemudyを用いて製造販売後の調査等を進めているところですので、また、取りまとめた結果が出てまいりましたら、この席でも御報告したいと考えております。
 エクソン44スキップ薬については、祖父江先生へのお答えで申し述べたところで、FIH試験が今始まって、進んでいるところです。
 
○中野委員
 どうもありがとうございます。新しい治療薬は、患者さんにとってもとても期待の持てるものだと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ほかにはありますか。先ほどの花井先生の質問に対するお答えは、まだ少し時間が掛かりそうですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 申し訳ございません、今、手元では出ないようですので、場合によりましては、もう少し後で。確かめたいと思います。恐れ入ります。
 
○祖父江部会長
 分かりました。ほかにはいかがでしょうか。非常にたくさんの成果をお話いただいたと思いますが、1つよろしいでしょうか、少し時間が過ぎておりますが。先ほどの脳の修復力を回復させるメカニズムで、これがどうもオリゴデンドロサイトの分化力の維持に関わるアペリンだというお話があったのですが、そうすると、髄鞘の機能といいますか、髄鞘が非常に重要な役目を果たしていると考えてよろしいのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 おっしゃるとおりです。アペリン受容体というのは、いわゆるオーファンGタンパク質結合型レセプターという、いろいろな薬のターゲットとして出てきている分子の1つのようです。アペリンというのは、例えばサルコペニアとか、老化に伴う神経以外の組織の障害に関係すると今まで言われてきたのですが、今回、神経線維に着目して、特に老化に伴う髄鞘障害でターゲットにできる対象だということがはっきり見えてきたということでした。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ほかはよろしいですか。時間ですので、また、もしあれば、最後のところで立ち戻って御質問ということでもよいかと思いますので、取りあえずこのセッションは、ここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 次は、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」ということで、評価項目で申しますと、1-3から1-5について議論したいと思います。先ほどと同じように20分の説明を頂いて、その後18分の質疑応答という流れでやりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 それでは、評価項目1-3、「医療の提供に関する事項」から御説明申し上げます。私は、この4月から病院長を拝命しております阿部と申します。専門は神経内科です。医療の提供に関する事項については、自己評価Aでお願いしたいと思います。重要度「高」です。当センターは、我が国における精神・神経疾患に対する中核的な医療機関としまして、先進医療を含む高度かつ専門的な医療の提供をやらなくてはいけないというミッションがあるわけです。中でも先進医療制度を活用した反復経頭蓋磁気刺激装置(TMS)などを用いた治療については、中長期目標期間中に数十人以上実施して薬事承認を目指してまいります。そのような中で、患者さんの視点に立った良質かつ安心な医療の提供を進めてまいります。
 24ページを御覧ください。指標の達成状況です。これは全職員を対象とした医療安全、感染対策のための研修会などですが、この表に出ておりますように、達成度200%のものが数多くあります。
 25ページを御覧ください。良質な医療ということでは、左上にあるニューロモデュレーション療法を非常に熱心に行っております。Aとして、電気けいれん療法。これは、難治性のてんかん等について電気けいれんを行っております。左下のBは、反復経頭蓋磁気刺激のrTMSですが、磁気を脳の表面から非侵襲的にあて様々な治療を行う。うつ病とか双極性、躁うつ病などにも使っているということです。右下のC.深部脳刺激(DBS)、あるいは定位的凝固術、迷走神経刺激ということで、これは脳神経外科を中心に多数の症例を行ってまいりました。
 26ページを御覧ください。これは高度で専門的ではあるのですが、私どものセンターは、国内の他の医療機関では対応困難な様々な希少疾患に対しても、高度かつ専門的な医療を提供しなければいけないというミッションがあるわけでして、右側の表に、その具体例を書き込んでおります。様々な神経難病、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性ニューロパチー、Duchenne型筋ジストロフィーをはじめとした、その下にある筋ジスの多くです。これは国内での当病院のシェアが5、6、10、15%ぐらいまで占めておりますので、国内の他の施設ではなかなか難しい疾患を、当センターでは一手に引き受けてやっているという実態がここに出ているかと思います。
 27ページを御覧ください。これは国内で未診断、診断がまだつかない、診断が非常に難しい病気を登録して、新しい遺伝子の同定、あるいは新規疾患の概念を確立するという目的のために、そこに未診断疾患イニシアチブ(IRUD)と書いてありますが、これも国内の、右にあるような14地域37病院の中でも当施設が中心的にこれを進めてまいりました。これはIRUD体制の中心を私どものセンター病院が担い、診断連携・解析、あるいはデータのシェア・リポジトリ・中央倫理審査体制を確立して、研究を中心的に進めてまいりました。
 28ページを御覧ください。下の真ん中に、ブルーでIRUDが書いてあります。左側にアメリカのものがオレンジ色で書いてありますが、それと比較しても、当センターが中心になっている国内のネットワークが、申込数も米国の倍ぐらいになっております。単純に比較は難しい点もありますが、短期間に米国の約5分の1の経費で大きな成果を上げているということができるのではないかと思っております。
 29ページを御覧ください。これは「高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供」です。当センターはてんかん診療に非常に力を入れております。ここの図にあるように、てんかん疫学に始まって、基礎研究、それを臨床のほうにトランスレートするという形で、当センターは研究所が2つ、病院が1つで構成されておりますが、それをうまく連携して、総合的にてんかんの研究と診療を行っているということです。
 ここには書いてありませんが、先ほども少し出ましたように、昨年度は新型コロナの患者さんを受け入れて、つい先月120例近くになりました。当院のコロナ病棟は、一般のコロナを受け付けている病院では入院させてもらえない、精神疾患を抱えたコロナの患者、あるいは認知症を抱えて、なかなか治療が難しい患者さんを引き受けており、これも今、第5波の中で12床確保していますが、最近また、ほぼ満床になっているところです。次をお願いします。
 30ページに、先ほどのてんかん診療の実績を年度ごとに書いてありますが、少しずつ増えてきており、2020年はコロナで少し減りましたが、2019年にてんかん新患数は1,100例余り、てんかんの新入院数も1,200例余りと、前年の50%増しぐらいの感じで増えております。
31ページを御覧ください。ここに、当センターが日本でも中心となって進めているCBT、認知行動療法と言われていますが、人間の精神の中で不安、抑うつ系、そういう疾患に対して高い治療効果の認められている認知行動療法(CBT)の研修、研究、臨床、国内連携という形の四本柱で進めており、日本で唯一の国立のCBT研究機関ということで、中心的にこれも進めております。
 右のほうに具体的な成果を少し載せておりますが、例えば、認知行動療法(CBT)によって様々な抗不安薬の減量が可能になっている。下のほうに、疾患ごとの改善度として、うつ病、不安障害、強迫性障害、発達障害について、赤く出ておりますが、著明改善の効果が認められているということです。
 32ページ、最後ですが、医療安全管理体制の充実と、左の真ん中辺りに訪問看護件数、これも過去15年ぐらいにわたり継続的に伸びており、その右側の退院支援の実施件数も継続して伸びているところです。前半の私からの御説明は以上です。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 引き続きまして、精神保健研究所の金より人材育成に関する御報告をいたします。この領域では自己評価Aをお願いしたいと考えています。資料33ページを御覧ください。中長期目標につきましては、リーダーとして活躍できる人材の育成。生物統計家の育成のための講座を毎年5回開催する。そして、精神・神経疾患等に関する臨床研究のリーダーを育成する研修を行う。[2]として、モデル的研修・講習を実施して研究成果を広く世の中に均てん化することが挙げられています。
 指標として、生物統計学の講座については年間5回という数値目標が掲げられていますけれども、令和2年度は8回、160%の達成状況となっています。これは中長期の全期間を通じて高い達成状況を維持しています。その背景としましては、将来、生物統計学を志す若手の人々を積極的に受講させる方針が取られていることが挙げられます。
 34ページに進みたいと思います。生物統計学講座は、今、申し上げたとおりです。臨床研究研修のリーダー育成については、下半分に書いている様々な研修を開催しています。入門、Meet The Expert、実践講座ワークショップ等々多彩な研修を開催しています。特に令和2年度はコロナの影響がありましたけれども、Web研修を積極的に開催し、前年度までと同じ程度の回数を維持しています。
 モデル的研修・講習につきましては、35ページを御覧ください。この表のうち、上の2つは、今、申し上げたリーダー育成、生物統計学の講座ですけれども、3つ目以降はそれ以外の様々な研修を御紹介しています。研究支援、精神保健、技術の均てん化、治療に関してこれだけの研修を行っています。ただし、中止、延期という文字が目につくかと思います。これはコロナの影響ですけれども、ただ単にコロナがあるから仕方がないと考えていたわけではございません。
 36ページを御覧ください。これは精神保健に関する技術研修課程の内訳を左上に示しています。確かに中止というのも多いですが、年度の後半からはWebを取り入れて積極的に受講者を増やす努力をしてまいりました。左下のPTSD対策専門研修は厚労からの委託で行っていますが、これはそもそも年度の後半になってから開講したということもあり、最初からWebでやることを決めていました。そして、前年度の400人の受講者に対して今年度は何と1,226人の受講者を獲得しています。また、受講者からも、Webのお陰で参加できたという声が多数寄せられています。右上の認知行動療法研修においても、昨年度の559人に対して今年度は652人と、これも遠隔を用いて健闘したと思います。市民公開講座の一番上にNCNPブレインバンク市民公開講座とありますが、何と760回、これはYouTubeを使って自由に市民に見ていただくという方法を取っています。このようにコロナの中、様々に不利な状況がありましたけれども、何とか克服するための努力を通じて、総体としては昨年よりも多くの方に受講していただいております。
 37ページで次の項目、「医療政策の推進等に関する事項」について御報告いたします。この項目も自己評価Aをお願いしたいと考えています。目標としましては、国への政策提言を行う。医療の均てん化、情報収集及び情報発信を行う。公衆衛生上の重大な危害に対応する。この3つが挙げられています。中でも最も重要なものが政策提言です。これは提言を幾つ行うという定量指標はありませんけれども、令和2年度の実績を見ますと3回提言を行っていて、中長期の全期間を通じてほぼコンスタントにこのような提言が行われています。
 38ページは、政策提言以外に、医療の均てん化、情報収集及び情報発信に関する事項を紹介しています。IRUD、ゲノムは既に御紹介がありましたけれども、摂食障害全国基幹センター、依存症治療全国拠点機関、指定入院機関のネットワークシステム等、多彩なネットワークを構築しています。また、公衆衛生上の重大な危害への対応はスライドに同じことが2回書かれていて大変失礼しました。令和2年度は、日本だけでなくアジアでの災害対応に寄与することを目標にして、WHOのプログラムをe-Learningとし、タイ、インドネシア等の政府、医療機関と連携して普及に努めています。これはAMEDの研究費を用いて行っています。
 39ページを御覧ください。国への政策提言の具体的な中身になります。1つは、クロザピンという統合失調症に大変効果のある薬がありますけれども、重大な副作用がありますので、頻回に検査を行わなければいけないことから普及に支障が生じていました。これをエビデンスに基づいて検査間隔を延長できないか。4週間に1回にできないかという提言を学会と協力して行い、令和3年6月3日に厚生労働省でそれが認められたという実績を上げています。また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムと自治体の精神保健に関しては、研究班の成果を踏まえて、この新しい地域システムが普及するように各部署の地元のセンター等の役割に関する提言を行いました。また、自治体の精神保健に関しては、精神保健福祉法というのが精神医療では大変重要であり、それによって統合失調症の方たちの入院とか地域生活が促進されていますけれども、この法の改正に向けた自治体の課題について調査を行い、提言を行っています。
 40ページで、個別の研究課題で代表的なものを2つ御紹介します。1つは薬物依存関係です。最近、特に大きな関心を集めている薬物依存、乱用について、一次予防として実態調査を定期的に繰り返して経年的な変化を見ています。また、右上の基礎研究ですが、ある物質が危険ドラッグあるいは麻薬指定に値するかどうか、当研究センターにおける動物実験を通じて認定を行い、これを厚労省に答申しています。令和2年度は7種類が麻薬指定されました。単一の研究機関でこれほど多くの薬物の指定に関わっているのは当センターのみです。
 左下に二次予防、三次予防とありますが、薬物依存患者は、ともすると刑罰の対象として捉えられがちです。それは重要なことですけれども、その刑の執行中から治療を導入して順調な社会復帰を促進するための取組を行っています。また、右下は臨床として認知行動療法の集団療法によって薬物依存を治療するプログラムを開発し、全国に普及しています。実態調査、基礎研究、法制度、臨床研究、全ての領域において薬物依存を克服するための取組をしています。
 41ページは地域精神医療です。これは、地域包括ケアシステムというものが認知症等の社会復帰、地域ケアのために作られていますけれども、途中から精神障害も含まれるようになりました。したがって精神障害にも対応したと言っています。これを効率的なものにするためにマネジメントシステムを開発していますけれども、2行目にありますブローカリング・タイプというのは、例えばビュッフェスタイルに似ておりまして、いろいろなサービスの所に本人が移動して行ってサービスを受けるタイプですが、統合失調症の方は対人関係が非常に難しいので、自分でいろいろなサービスを渡り歩く方式はあまり効果を上げません。これに対してインテンシブ・ケースマネジメント(ICM)というのは、担当者と一緒に様々なサービスにつながるというもので、こちらの方が優れていることが国際的にも指摘されておりまして、当研究所でもこれに取り組んでいます。
 左側に、インテンシブ・ケースマネジメント(ICM)を必要とする人の特徴を解析しました。左側を見ていただくと分かりますように、保健所や警察の関与、過去の入院、家族への暴力、こういうものを示している方に取り分け有効性が認められています。こういう方を対象にして、左下のようにこのプログラムの試行前後の入院回数を見ますと、明らかに入院が減っています。支援内容として、右にあるとおり様々なサービスに取り組んでいますけれども、中でも人々との連携を深めるような支援が有効であることが分かりました。これに基づいて右下、研究成果が中医協資料に採用され、令和2年度診療報酬改定において、「精神科退院時共同指導料」「療養生活環境整備指導加算」が新設されるに至りました。
 もう1つコロナ関係ですが、東京都内における精神科専門病院等での統合失調症と基礎疾患を抱え、一般病院では対応困難な新型コロナウイルス感染症に罹患した方を、厚生労働省や東京都からの強い要請を受け入院を認めています。令和2年6月8日から7月26日まで、それから令和3年2月9日からはコロナ専門病棟を1つ、まるまる作り、コロナ専門病床として運用しています。その結果、令和2年6月10日から令和3年3月31日までの間に75名の精神・神経疾患を持つコロナ感染患者を受け入れ、65名が退院しています。うち統合失調症32名、認知症24名、その他となっています。当センターのような高度な精神・神経疾患の専門治療機関において、初めてこのような精神・神経疾患を持ったコロナ感染者の治療が可能になったと考えています。以上です。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。非常に広範な内容を要領よくまとめていただいたと思いますが、いかがでしょうか。御質問あるいはコメントはございますか。「手挙げ」のボタンを押していただいて。前村先生、よろしくお願いします。
 
○前村委員
 前村ですが、ありがとうございました。24ページについてお伺いしたいのですが、指標の達成状況の所です。ほとんどの指標が達成されていると思いますが、教えていただきたいのは、専門領域の診断・治療に関する手術件数が65%となっています。これは単年度の目標に比べて令和2年度は下回っていたということでしょうか。もし下回っていたとしたら、これはコロナの影響でしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 そういうことです。当院は脳外科とか日本全国から患者さんが来るのですが、コロナで非常事態宣言が出ますと自分の県を跨いで移動ができなくなりましたので、全国から来ていた方がどうしても来られなくなったという事情が、ここに数字として出ているわけです。
 
○前村委員
 分かりました。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。何かございますでしょうか。庄子先生、よろしくお願いします。
 
○庄子委員
 庄子です。2つ質問があって、まず40ページの薬物依存の所ですが、右のほうに全国精神科病院への普及ということで、またその下に全国精神保健福祉センターへの普及ということですが、これは具体的にどういうことをされたのかというのが1点です。あと、最後にお話されていたコロナ患者の受入れで、コロナ専門病床を作ってうんぬんという話があったと思います。全国の精神科病院は今回のコロナ患者の対応に苦慮されていたと思いますが、ほかの病院への指導というか、そういうことはされたのかというのを教えていただければと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 ありがとうございます。薬物依存に関しては集団認知行動療法、スマープ(SMARPP)という略称になっていますけれども、この研修会を積極的に開催しまして、この研修会に参加した人がこの治療を行うと保険点数を取ることができる仕組みになっています。この研修を受けた人々が実際にこの薬物依存の方の治療をする。そういうことができる施設の数が今はどんどん広がってきていて、それには民間病院もあれば公の精神保健福祉センターもあり、この数が増えてきたという状況です。
 コロナに関してどれくらいの指導をしているかという御質問ですが、むしろほかの精神科病院で診ることができなくなった患者さんを、うちが受け入れているということが主なミッションであり、中には精神科病院においてクラスターが発生したという事案もありましたので、そういう方たちを受け入れているということが主なミッションと考えています。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。順番に、深見先生よろしくお願いいたします。
 
○深見委員
 35ページ、36ページの研修状況ですが、ほかのナショナルセンターですと研修回数はコロナで逆に非常に増えたという所が多いですけれども、これを見ると中止、延期ということで少ないのではないかという印象を持ちます。これは実際の実習というのか、対面でやらなくてはいけないものが多かったという理解なのですか。それとも何かコロナ関連でほかに人員が割けなかったとか、そういう原因によるものなのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 ありがとうございます。1つには、当センターに全国から人を集めることがどうなのかという議論が最初にございまして、密にしてはいけない。密にしないまでも、移動の途中で感染リスクを上げてはいけないのではないかという議論が1つありました。
 
○深見委員
 それは、対面でやらなければいけないものだったということですね。対面というのか、実際にやらなければいけない研修が多かった。Web研修では代行できなかったという理解でよろしいですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 当初はコロナがいつまで続くか分かりませんでしたので、取りあえず中止にしても、年度内にはまたできるのではないかという見通しもありました。私どもとしては延期というぐらいのつもりでいたのですが、結果的に開催できなかったというものもあります。しかし、できる限りWebでまた開催するような方向に持っていって埋めるように努力いたしました。35ページの真ん中を見ていただくと、光トポグラフィーとか腰椎穿刺は実習をしなければいけませんので、Webではすることができない研修です。包括的暴力防止プログラムもスキルトレーニングが伴います。それから、先ほど申し上げた薬物依存の集団精神療法もスキルトレーニングがどうしても必要なので、あれだけはコロナの中でも面接を伴う研修会を、人数を制限して開催しました。そうでないと保険点数が取れないという制約がありました。一部にはそういうものもあります。
 
○深見委員
 分かりました。ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、引き続き花井先生、よろしくお願いします。
 
○花井委員
 ありがとうございます。医療の均てん化の話ですが、先ほど医療の提供の所でいわゆるCBTによる抗不安薬の減量というのが取り上げられており、多くの場合、うつの患者さんというのはクリニックで診ていることが多く、そこにおけるこういう薬の減薬というのは常に課題ですけれども、そういうクリニックも含めた均てん化ということについては何か取組をされているのか。されていないとすれば課題は何なのかということを教えていただけますでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 抗不安薬の乱用は私どもも非常に憂慮していまして、CBTによってそれを減らすという取組をしていますけれども、クリニックの先生方を問わず手挙げで申し込んで来られる研修がほとんどですので、中を見ますと大きな病院の先生もいればクリニックの先生もいるということです。もちろん、研修の開始に当たっては日本精神神経科診療所協会等に情報提供していますけれども、クリニックだけに特化したプログラム研修をしているかと言われますと、それはまだそこまでではないというのが現状です。
 
○花井委員
 クリニックでは医療の提供も限られているので、診療報酬でも評価されないとなると、研修を受けて、これだったらいいと思っても、なかなか人手というところで難しいということはあるのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 私どもがお会いするのは非常に熱心なクリニックの先生が、当然、研修に来られますので、今、委員がおっしゃるような先生方も残念ながらおられるとしたら、そういう先生方の実態をちゃんと聞き取って、それに適した対策を今後は取ってまいりたいと考えています。
 
○花井委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。それでは、次に土岐先生、よろしくお願いします。
 
○土岐部会長代理
 直接、NCNPが関与しているのかどうか分からないですが、コロナで自殺が増えるとか心を病む人が増えているとか、そういう問題が国全体であると思いますけれども、そういうものに対する提言とか活動というのはされていないのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 先生、御指摘の点は大変重要なことで、コロナは第5波で、かなり急性期の患者がこれまでもいっぱい発生してきたわけですが、むしろそれを乗り越えた後のアフターコロナが今は精神的に非常に問題になってきています。それに対して、当センターとしては正面から対応しなければいけないだろうということで、今年6月からコロナ後遺症専門外来を立ち上げ、かなり患者さんが来ています。先生がおっしゃったような、うつとか手足のしびれとかもあります。それから、呼吸器の問題があり疲れやすいとか、すぐ呼吸が苦しくなる。そういう様々な症状がありますので、総合内科と精神科の連携の中で正に今、それに対応しているところです。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。是非、ホームページ等でも出していただきますと非常に助かりますので、よろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 ホームページには掲載しています。また、インスタグラムにも情報を出しています。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 もう1点、精神保健研究所のほうでは、コロナに負けない心のケアというWebサイトを作っていて、今、Googleで検索するとかなり上のほうに出てきます。その中の不安対応とか子供対応等々、かなり見られています。さらにこれを拡充したいと思っています。
 
○土岐部会長代理
 非常に重要なことなので、是非、強調していただけたらと思います。ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。ほかにはございませんか。私、祖父江ですが、1つ教えていただけたらと思います。31ページで認知行動療法の話をしていただきました。これは非常にたくさんの疾患について、毎回、ここで発表されますので、いろいろな側面からお聞きしているのですが、それと同時に、後ろのほうの研修の実施状況で非常にたくさんの方が受講されているということがあって、認知行動療法というのはなかなか難しいと思います。
 2つ質問があって、1つは何か定番というわけではないですが、プロシージャというか、それぞれについてテキスト的なものが作られて、全国的に均てん化に役立っているような形になっているのかどうか。もう1つは、認知行動療法というのは652人と非常にたくさんの人が来ていますが、帰って独立してやれるようなレベルまでいくのですか。その辺、均てん化との関連で教えていただけると有り難いと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 ありがとうございます。当NCNPで行われているCBTは全て治療効果、エビデンスを検証しながら行っていますので、治療の手順、プロトコールというものは確定しています。それに沿って研修、臨床も行っているという状況です。
 
○祖父江部会長
 なるほど。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 それから、残念ながら研修会に出ただけではなかなか一人前になりませんので、継続研修と言いますか、実際に患者さんを受け持って、スーパーバイズと呼びますけれども、本当にきめ細やかな指導をマン・ツー・マンで、時には集団で受けるということも行われています。この部分は厚労省の事業として外付けで行われていますので、ここには書いていませんけれども、そこの2つが組み合わさって臨床家が育成されているという状況です。
 
○祖父江部会長
 なるほど。そうしますと何度も通うというか、あるいは、しばらく滞在しながらこれを勉強しておられる方も結構おられることになりますか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 そういう方もおられますが、スーパーバイズは、今、Webで行うことが多く、それで広がっています。
 
○祖父江部会長
 なるほど。ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。何か御質問あるいはコメントはございますか。よろしいですか。もう1つだけお聞きしたいのですが、精神・神経センターとして、IRUDのことをかなり前から全国の中心的な仕事としてやられていますけれども、ゲノムで半分ぐらいでしたか、毎回、円グラフのような格好で、これがきちっと分かったものと、まだ未確定というのが書かれていたと思います。今回、それがよく分からなかったのですが、どうなのですか。全ゲノムシーケンス、あるいは構造遺伝子変異まで取り込んでいくという話を前にお聞きしましたが、その辺の率がだんだん上がってきている確信率というのか、そういうようなことがございますか。経過を教えていただけると有り難いなと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 すみません。私、昨年までのデータをよく知らないものですから、ここにも今回はデータが出ていませんけれども、一応、42疾患で新しい遺伝子を同定して疾患概念を確立したということと、新しい治療薬の開発につながりました。発見も8件あったということで、コンスタントにこの事業を進めていますので、昨年からも確実に、コロナ禍ではありますけれども、遺伝子はDNAを送っていただければできますので、当センターの中で進めています。
 
○祖父江部会長
 順調に伸びているということで症例診断実績としてはあるのですが、分からない部分がこれだけあるのだということを毎回おっしゃっていたので、それがどうなったかお聞きしたかったのですが、分かりました。
 
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 この図の左上の所に、家系数、解析済み、診断数のそれぞれの棒グラフが出ていますので、この10年間、順調に伸びていると御判断いただいて差し支えないものと思います。
 
○祖父江部会長
 分かりました。例数としては非常に伸びてきているという感じがしていますので、引き続き伸ばしていただいたらいいかなと思っています。ありがとうございます。ほかには何かございますか。よろしいですか。それでは、ちょうど時間ですので先に進みたいと存じます。次は、評価項目で言いますと2-1から4-1についてです。内容は、2-1「業務運営の効率化に関する事項」、3-1「財務内容の改善に関する事項」、4-1「その他業務運営に関する事項」ということです。先ほどと同じように、まずは法人のほうから御説明いただいて質疑応答をさせていただきますが、非常に短い時間で説明は8分となっていますので、よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 それでは、「業務運営の効率化に関する事項」について、令和2年度の実績評価説明資料を用いて御説明いたします。42ページを御覧ください。2-1については自己評価Bとしております。中段のⅡの指標の達成状況に基づいて説明いたします。まず指標の1番で給与体系です。令和2年度は3行目に書いていますように、人事院勧告、あるいは経営への影響、職員のモチベーションを考慮して、賞与の引き下げ、ないし維持等の実施をしております。役職手当が支給されている職員については人事院勧告に準じた引き下げをしており、その他の職員については据え置いた4.25か月分としております。次に[2]の公共調達です。これについては目標の期間中において、医薬品等について他のNCや国立病院機構との共同調達を実施してまいりました。
 次の43ページ、[3]の後発医薬品ですが、令和2年度は92.4%になり、目標の65%以上を確保しております。[4]の一般管理費ですが、令和2年度については38%の減ということで、目標を達成しております。次の[5]の医業未収金ですが、アに書いてありますように、高額療養費受領委任払制度の活用等により回収を図るといったことを行っており、未収金の回収に努めております。それから[6]損益計算書です。こちらの経常収支ですが、本部会における御指摘を踏まえ、平成28年度に各種ワーキンググループを設置し、経営改善に努めてまいりました。その結果、平成27年度から28年度間にかけて、収支が大きく改善しました。平成29年度は病棟の改築をしたために一旦下がりましたが、病棟が出来ました平成30年度については経常収支が100.6%で、令和元年度は100%、令和2年度は100.5%となり、黒字化に転じております。
 次の44ページを御覧ください。経営改善等への取り組みになります。令和2年度では、コロナ禍により対前年度比で1日平均入院患者数は、49.7人の減、1日平均外来患者数は、24人の減でした。入院診療収益では、小児神経科が、外来診療収益では、脳神経内科が対前年度比で増となりました。このような結果、医業収支については0.8億円のマイナスとなっております。前年度は3.8億円のプラスでしたので、その差4.6億円が対前年度比4.6億円のマイナスとなります。
 45ページをお開きください。次に経常収支です。令和元年度が経常収支600万円、令和2年度が1億600万円です。経常収支に影響した主なものは、プラスになったものだけ申し上げますと、東京都からのコロナ補助金が3.6億円、消費税について約2億円が還付されております。これは実験動物研究棟の老朽配管の改修工事について、消費税の課税売上げから控除される支払い金額が増加したもの等です。このコロナの関連の補助金等と消費税の還付の2つを合わせると、対前年度5.6億円のプラスとなります。先ほど申し上げた医業収支、対前年マイナス4.6億円と合わせますと、およそ1億円のプラスとなります。そのほか給与費、材料費等については多少プラスマイナスも入り繰りがありますけれども、全体として見ますと45ページの右側の表に記載したように、1億600万円のプラスになります。
 それから、コロナ対策が左に書いてあります。こちらは東京都からの要請によりコロナ患者を延べ1090名受け入れております。この表の左側は、空床を確保したことによる影響額です。空床を確保したための補助金が約2億円。通常どおり稼働した場合差額が約1億円となります。右側は、コロナ患者を受け入れによる影響額です。こちらは約6,100万円ということで、空床の確保、それから患者の受入れ、両方合わせると、大体コロナによる影響として、当センターでは1億6,000万円影響額があったと考えてございます。
 次に46ページを御覧ください。財務内容の改善に関する事項になります。自己評価Bとしております。こちらは競争的資金の獲得です。右下に書いてありますように、コロナ禍がある中で、今年度も36億円の研究費、外部資金を獲得することができました。それから左に繰越欠損金が書いてございます。令和2年度は24億4,400万円で、達成度は81.7%になります。今後も引き続き改善に努めてまいりたいと考えています。
47ページをお開きください。その他業務運営に関する事項になります。これは自己評価Bです。まず、[2]のセンターの維持、向上等について、記載のとおり適切に行っております。それから[3]の人事の最適化については独立行政法人、PMDA、AMED等と人事交流を実施しております。
次の48ページをお開きください。こちらは働き方改革の対応についてです。令和2年度は、「チーム医療の促進」、「勤務時間の変更等で超過勤務の縮減」、「IT化の推進による業務の軽減」等を行っております。
 49ページ、最後のページをお開きください。こちらはNDBデータの活用についての記載になります。昨年度、NDBデータの活用について不正があったことから、今年度、全ての研究者に対して教育の受講の義務化、それから、NDBデータの適切な運用として、利用申請時、公表確認時、公表時に、それぞれ担当の部局長に報告すること。共同研究やその他公共調達をするときの委員会で、各委員が、このような不正がないかを意識して見ることを心掛けております。以上です。よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に詳しく、特にコロナ補助金の額なども提示していただきながら御説明いただいたと思います。御質問等、ございますでしょうか。大西委員ですね。大西先生、よろしくお願いします。
 
○大西委員
 ありがとうございました。大西でございます。AMEDとかPMDAとの人事交流のお話がございましたけれども、どういった部門にどういった専門家を出されているのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 はい。PMDAにつきましては、医師やその他の研究者の方などに行っていただきまして、特に審査に関することをやっていただいております。それからAMEDにつきましては、やはり同じく研究者の方に行っていただきまして、研究に関する仕事、アドバイス等を行っていただいております。
 
○大西委員
 そうすると、当該機関に関わる業務にあたっていただいているということですね。
 
○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 はい。関連業務にあたっていただいていると考えております。
 
○大西委員
 ありがとうございます。御苦労様です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。ほかにございませんでしょうか。よろしいでしょうか。土岐先生、よろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長代理
 ちょっと研究不正のところが評価が一致していない項目だと思いましたので、この詳細が分からないのですけど、これは、この部長が企業にそのNDBデータのほうを流用というか、横流ししていたと。どういうあれなのでしょうか。もう少し教えていただけるでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 はい。この当該部長が製薬企業との間に受託・共同協約を締結しまして。それ自体はNCNPの中の審査委員会を通っていたのですが、前提として厚生労働省の許可を得てやっているんだという彼の発言が、根拠がなかったということが後で分かりました。もう1つは、NDBデータの使用申請するときに、どういう人間が閲覧するのか書く欄に、製薬企業の名前が書いてなかった。この場合は、研究成果を外部に公知した後でないと、製薬企業の方に見せてはいけないことになっているのですが、そのタイミングがずれていて、製薬企業の方との連名の論文を出すタイミングが公知の時期とずれていたということで、その公知手続にも違反していたと、この2点がございます。
 
○土岐部会長代理
 これは知らなかったということだけなのですか。故意ではなくて、たまたまそれを知らなかったという、そういう事例で、故意の場合は難しいかも分からないですけど、知らなかっただけであれば、システムがちゃんとしていれば防げたという、そういうことなのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 はい。第1点の厚労の意向というのは、それがあった・なかったということは余り本質ではないと思うのですけれども、第2点のデータ使用に関しましてはガイドラインがありまして、私もこの問題が発覚しましてから当該部長と一緒にこのガイドラインを全部読み直したのですが、確かに彼は誤解をしていた部分はあったと思います。ただ、誤解をしている曖昧な部分を自分に都合よく解釈していたというのは否めないのですけれども。今回、その所属長、場長の許可を得て研究を進める、データを管理する、発表するというところで、複数の目でその手続をきちんと見ていこうと。そういう体制にしたというところでございます。
 
○土岐部会長代理
 はい、了解しました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。ほかには、特にございませんでしょうか。そろそろ時間になってまいりましたが、全体を振り返って質疑するという時間が少し設けてあるのですが、ほとんどなくなりかけておるのですが。先ほど、最初のところで質問がありましたね。あれはいかがでしょうか。何かございますか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 恐れ入ります。今トランスレーション・メディカルセンターにも問い合わせて確認中でございまして、後日はっきり御報告したいと思います。
 
○祖父江部会長
 そうですか。では後日、はい。どうもありがとうございます。では後日、よろしくお願いいたします。何かございますか、全体を振り返って。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、これで全体の質疑、ヒアリング応答は終わりにしたいと思います。
 最後に、法人の理事長先生と監事からの御報告というのをお願いしたいと存じます。まず、法人の監事から、監査報告について御報告をお願いできますでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター菱山監事
 はい。私、7月1日に拝命いたしました監事の菱山と申します。御覧いただいております令和2事業年度の監査報告書に記載がございますとおり、前任の監事の方が全て実施すべき監査を行うことができました。その結果、令和2事業年度の業務そのほかは、適正・妥当なものとお認めになられたということです。もう1人の露木監事とともに、前任の監事の方から十分な引き継ぎを受けまして、問題意識も共有させていただきましたので、今年度、引き続きしっかり監査をしてまいりたいと思っております。まだ1か月しかたっていないのですが、コロナの影響で、センターの皆様とコミュニケーションが、まだ十分取れていないなと思っておりますが、引き続き、焦らずできることをやっていきたいと思っております。以上となります。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。何か御質問等はよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 それでは最後になりますが、理事長先生のほうからもう一度、今日の議論を踏まえてと申しますか、今後の展望、あるいは今後の方向性なども含めながら御挨拶、締めの言葉を頂けたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 はい。皆様、本日は長時間にわたりまして、私どものセンターにつきまして御助言いただき誠にありがとうございます。改めて感じましたことは、当センターの基本であります、基礎から臨床までシームレスなフローを実現化していくと。このことによってビルトラルセン、OCHに次ぐ新たな治療薬の開発に取り組んでまいりたいと強く思っております。その一方で、NCNP、ナショナルセンターとしてのミッションとして、やはり多くの研究機関の下支えとなるというところがございます。そういった意味で、基盤部分であります患者さんのレジストリであるとか、あるいは臨床研究ネットワーク、ここもしっかり機能させて、ほかの医療機関との多施設共同研究を活性化してまいりたい、それを支えていきたいと思っております。
 その一方で、この令和2年度というのはコロナ禍という、我々も経験のない状況の中でかなり苦しみました。かなり苦しみましたが、その中で私どもの病院、あるいはセンターの弱点、強みも見えてきたと思います。私ども高度専門医療機関としてかなり専門化した医療を展開してまいりましたが、皆様御存じのように、現代はこういった疾患が単一で生じるわけではなく、様々な疾患を合併した患者が多くいるということは、薄々もちろん感じていたわけですが、今回の感染症で本当にそれを強く感じ、私どもが診るべき患者さんをなるべく広く、いろいろな病気にかかっても診られるような、そういう意味での総合診療部門の強化ということは非常に重要だということを強く感じました。
 それから御指摘がありました、例えばCBTとか、あるいは感染症が流行っている中で受診を控える患者さんに、どう我々はアプローチするかということに関しましても、今はWeb等で情報発信をするとともに、オンラインで相談できるシステム、あるいはCBTに関してもチャットボットでアクセスできるようなシステム、そういったものの開発は進んでいます。そういったところでもNCNPは大いに力を発揮していきたいと考えているところでございます。
 改めまして、本日は本当にありがとうございました。いろいろ宿題がございますので、後日また報告させていただきたいと思います。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。最後におまとめいただきまして、ありがとうございます。コロナで、強みというか、今までの問題点が浮き彫りになったというお話をいただきまして、これは全国津々浦々どこもそういう感じを持っているところでございますが、それを更に発展、克服していただいて、いい方向を目指していただけると有り難いなと思っておりますので、どうも本当に長時間、ありがとうございました。これで全体を終わりたいと存じます。どうもありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 それでは、事務局のほうから何か連絡事項はございますでしょうか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 はい、事務局でございます。今後の流れについての御連絡ですが、まず、今日宿題になった点についてはセンターからデータ、資料を頂きまして、また委員の先生方と共有したいと思っております。それから、本日御議論いただきました実績評価につきましては、今後本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメントを踏まえまして、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに、公表いたします。
 委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、8月13日金曜日までに事務局宛てメールで御送付いただきますようお願いいたします。決定しました内容につきましては、後日委員の皆様にお送りいたします。
事務局からは以上となりますが、延べ3回にわたって御審議いただきました評価部会、本日閉会にあたりまして、研究開発振興課長の笠松より御挨拶申し上げます。
 
○医政局研究開発振興課笠松課長
 笠松でございます。先生方、本日は大変長時間にわたり御審議をいただきまして、ありがとうございました。また、今日のような長丁場の御審議を3回にもわたりしていただいた部会長の祖父江先生はじめ、委員の皆様方には改めて御礼申し上げる次第でございます。本日も含めた各回で御指摘いただいた内容、課題意識につきましては、また今後いただきました評価、そういったものにつきまして法人と認識を共有しますとともに、厚生労働大臣の評価を検討させていただきたいと思っております。
 また、本日の後も8月13日までに御評価をお願いしているところでございますが、それも含めまして、国立高度医療研究センターの更なる事業の充実発展に向けまして、今後とも御指導御鞭撻いただきますようお願いを申し上げまして、御礼ともども私の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。本当に4時間以上にわたる会議を3回やりまして、皆さん、本当にお疲れのところ、まだ宿題が残っておりますので、よろしくお願いいたします。長時間ありがとうございました。非常に勉強させていただきながらやれたという感想を、私自身は持っております。本当にどうもありがとうございました。これで本部会の評価を終わりにしたいと存じます。皆さん、どうもありがとうございました。これで失礼いたします。