第23回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和3年8月3日(火) 13:59~18:22

場所

オンライン開催

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国立研究開発法人国立国際医療研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
    2. (2)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和2年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立国際医療研究センター

資料1-1 令和2事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和2事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和2事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和2事業年度 監査報告書
資料1-5 第2期中長期目標期間 期間実績評価書(案)
資料1-6 第2期中長期目標期間 期間実績評価説明資料

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

資料2-1 令和2事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和2事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和2事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和2事業年度 監査報告書
資料2-5 第2期中長期目標期間 期間実績評価書(案)
資料2-6 第2期中長期目標期間 期間実績評価説明資料

議事

第23回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第23回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議とさせていただいております。委員の皆様には大変お忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。議事進行役を務めさせていただきます研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室の武藤と申します。よろしくお願いいたします。本日は、土岐委員より、17時30分頃に御退席される予定との連絡を頂いております。なお、出席委員に関しましては過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。続いて、本部会の開催に当たり、医政局研究開発振興課長の笠松より御挨拶いたします。
 
○医政局研究開発振興課笠松課長
 厚生労働省の研究会発振興課長の笠松です。本日は大変お忙しい中、この会議に御出席を頂きまして誠にありがとうございます。
 国立高度専門医療研究センター、ナショナルセンターでは、日々それぞれのセンターの使命となっております医療・研究、そして教育・人材育成等に当たっていただいております。また、今、コロナ禍の中でも診療にベストを尽くしていただいているところです。そうした中、日々各ナショナルセンターは尽力をしているところではございますが、やはり国立研究開発法人として、厚生労働大臣が定めた中長期目標に沿って中長期的な計画を立て、そして、それを達成すべく計画的に事業を実施していく。又は、その計画を踏まえて、更に良い研究・医療というものを実践していくことが重要です。
 その意味で、この目標に対してどれぐらい達成ができているのか、あるいは、上回って何かプラスアルファでできているところはどうなのかというところについて、専門家の先生方に御意見を頂き、そして評価をしていくということが極めて重要です。本日の会議では、国立国際医療研究センター及び国立長寿医療研究センターより、様々な実績について御説明を頂きますが、それについて御質問、御意見を頂き、御評価いただければと思うところです。本日も前回同様、非常に長丁場ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 それでは、本日のオンライン会議の進め方について説明いたします。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンを押していただき、部会長による御指名を受けた後に御発言をお願いいたします。その際はマイクのミュートを解除してくださいますようお願いいたします。御発言の際ですが、必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には資料番号と該当ページをお示しいただくようお願いいたします。また、御発言終了後は再度マイクをミュートにしてくださいますようお願いいたします。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して、経過時間等を画面に表示させていただきますので、御承知おきいただけますようお願いいたします。続いて本日の議題を御説明いたします。本日は、国立国際医療研究センター及び国立長寿医療研究センターに関する令和2年度業務実績評価と、中長期目標期間実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れについては、評価項目ごとに年度評価、期間実績評価の順に法人から御説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。なお、期間実績評価については、昨年度に見込評価を実施しているため、見込評価における大臣評価とは異なる自己評価を付けている項目を中心に説明・議論を行っていただく予定です。
 それでは、本日の会議資料の御確認をお願いいたします。委員の皆様におかれましては、お手元に次に申し上げる資料がそろっているか御確認ください。議事次第、資料1-2、資料1-4、資料1-6、資料2-2、資料2-4、資料2-6がお手元に御準備いただけていますでしょうか。その他の資料については、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。評定記入用紙については、様式の電子媒体を送付しておりますので、そちらに御記入いただき、事務局に御提出をお願いいたします。資料の閲覧方法について御不明な点がございましたら、チャット機能で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、何か質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、以降の進行については祖父江部会長よりよろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。皆様、本当にお忙しいところ、先日に続き少し長い時間になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。それでは、今日は、先ほど御案内のように2つのセンターについての評価を行いますが、まず、国立国際医療研究センターの令和2年度業務実績評価、中長期目標期間、昨年度までの6年間の実績評価について、議論をお願いしたいと思います。最初に、理事長先生から一言御挨拶をお願いします。
 
○国立国際医療研究センター國土理事長
 国立国際医療研究センター理事長の國土です。祖父江先生、委員の先生方、本日はお忙しい中、私ども国立国際医療研究センター(NCGM)の業績評価を頂き、ありがとうございます。昨年度を振り返りますと、正に新型コロナウイルス感染症流行の対応に全センターを挙げて取り組んだ1年であったと思います。昨年4月にピークを迎えました感染第1波から第3波、そして年度が変わって現在の最大級の第5波までを経験しておりますが、先月末の時点で通算1,011人、延べ数12,720人の新型コロナウイルス感染症患者の診療に当たってきました。また、レムデシビル、バリシチニブの国際共同試験や回復者血漿療法などの治療法の開発、重症化予測因子の解明、患者レジストリなど、感染症を主任務とするナショナルセンターとして、新型コロナウイルス感染症に関わる全方向の業務と研究・開発に関わってまいりました。その詳細については、「Feel the NCGM」という小冊子、職員の経験の証言をまとめた本を最近作りました。一昨年に刊行したGHMという英文雑誌もありますが、こちらでも2回にわたって特集号で新型コロナを取り上げております。昨年4月には、JH、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部が立ち上がり、私どものセンターの中に事務局が置かれて、後で御報告があると思いますが、植木センター長の下に順調に活動していると思います。
 経営面では、2018年度末に111億円に達した累積欠損金が大きな問題になっておりましたが、一昨年度に独法化後初めて経常収支が3.3億円の黒字となり、昨年度は新型コロナ診療に対する補助金や研究費の大幅増額によって36億円の黒字となり、累積欠損金は72億円まで大きく減らすことができました。第3期中長期目標に向けて、更に収益性の高い病院を目指して経営改革を引き続いて進める所存です。
 本日は、この後、昨年度と第2期中長期目標期間の業務実績について、各担当より詳しく御説明申し上げます。本日はよろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。新型コロナウイルス感染症では、非常に大きな力を発揮していただき、誠にありがとうございました。今日は後でもそのことがいろいろ議論になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。それでは、評価項目の1-1及び1-2、研究・開発の成果の最大化に関する事項ということで、業務実績、同時に中長期6年間の報告も併せて行っていただくことにしたいと存じます。まずは法人から御説明を頂き、質疑応答という流れで進めたいと思いますが、説明時間は20分、質疑応答が18分ということで、かなり限られていますので、何とぞよろしくお願いしたいと思います。それでは、説明をどうぞよろしくお願いします。
 
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 研究所長の満屋でございます。まず、令和2年度実績概要の7ページを御覧ください。指標の達成状況です。令和2年度の感染症その他の疾患の解明と医療推進、それから原著論文数それぞれ達成度は200%、159.6%で、目標は少なくとも量的には達成されていると考えているところです。
 次に、8ページを御覧ください。前年度、4年半、自己評価Sで御評価もSを頂いておりますが、今回もSとしております。評定の根拠は3つあります。まず、新規B型肝炎治療候補薬開発。後で少し詳しく述べますが、薬剤耐性B型ウイルス変異株に対して強力な活性を有する治療候補薬E-CFCPの開発を進め、現在、製薬企業への導出を進めており、耐性感染HBV患者さんの治療に係る研究開発を着実に進展させています。2つ目は、新規エイズ治療候補薬Islatravir、この候補薬は以前はEFdAと呼ばれておりましたが、現在はIslatravirというgeneric nameとなっております。この化合物は米国メルク社に我々が直接導出し、令和2年、NCGMで複数の第3相臨床試験を国際共同試験として開始し、NCGMは日本で最大数の治験症例200例の臨床例を担当するなど、研究開発を着実に進展させております。COVIDへの対応は、後で詳しく述べたいと思います。
 9ページを御覧ください。多剤耐性B型肝炎ウイルスに対する治療候補薬E-CFCPの構造が右上にあります。私どもはフッ素化学を用いました。Fというのはフッ素の元素記号です。E-CFCPとETVを比較したものが中段上で、この実験はヒト肝移植後のキメラマウスで行いました。6週間投与で見ますと、ETVの強度と比べてE-CFCPの強度は100倍から1,000倍ほど強いことがお分かりいただけると思います。このE-CFCPに対して耐性が発現するかどうかについて見ていますのが中段下の図です。耐性発現が見られないばかりかその強度は、ETVと比べて200倍から500倍で、今もまだ実験を続けています。このE-CFCPは、我々NCGMのチーム内でデザイン・合成・同定したもので、特許申請を完了し、PCT、各国移行手続が終了しているところです。
 10ページをご覧ください。Islatravirも同じくフッ素化ヌクレオシドで、左側の上に赤でFと示しているのがフッ素原子です。EFdA(Islatravir)は細胞内で非常によく活性化され、極めて強力な活性を有し、現存する抗ウイルス薬の中で最強と言われており、IslatravirはHIV治療と感染予防でfirst-in-classの抗HIV-1治療薬としてgame-changerあるいはparadigm shiftとなると期待されております。先ほど申し上げたように、令和2年2月から第3相臨床試験が進行し、今年も2件の感染予防のRCTがNCGM内で開始されており、順調に経過しているところです。手のひらにマッチ棒のようなものが見えておりますが、これはIslatravirのインプラントで、一旦包埋すると最低1年間、有効細胞内濃度が維持されます。今年末か来年には米国FDAで認可されるのではないかと期待しているところです。
 11ページはCOVIDへの対応です。私どもと、幾つかの研究者のチームが研究陣容を緊急シフトし、NCGM病院での発熱患者の迅速診断をサポートし、また、NCGMの感染症例からウイルスを分離するなどして抗SARS-CoV-2活性定量系を逸速く確立、回復患者血漿の中和活性を定量し、得られた知見から多施設ランダム化比較試験、これは特に高い中和活性を有する血漿のみを、初期症状の出たばかりの患者さんに投与するというRCTを開始し、本臨床試験は現在も進行中です。この臨床試験は都内6か所の医療センターを加えた多施設ランダム化比較試験です。また私達は同時に、この新型コロナウイルスの非常に重要なタンパク分解酵素である主要プロテアーゼを分子標的とする小分子化合物をおよそ50種類同定しております。いずれもこの多くがNCGMのチーム内でデザイン・合成・同定したもので、比活性が初期のものと比べて50倍から200倍ほど強力で、経口投与が可能と思われる新規化合物の同定に成功しているところです。
 これまでに同定したものの中でもかなり強い抗ウイルス効果を発揮するTKB245は、alpha、beta、deltaなどの変異ウイルスの増殖を強力にブロックします。左上で、赤っぽいものが細胞の骨格、アクチンフィラメントで、感染するとアクチンと細胞が破壊されると同時に、ウイルス抗原が緑色に染まっていますが、左下の旗が付いております所は、この緑色がほとんどないのがお分かりいただけると思います。このようにTKB245などの新規化合物もNCGMのチーム内でデザイン・合成・同定したもので、NCGMが中心となって論文投稿、特許申請を進めています。
 12ページを御覧ください。長くなるので読み上げませんが、特に2020年度の成果は御覧のとおりです。
 もう1つの中長期目標期間業務実績概要の7ページを見てください。左下の図で、新規B型肝炎治療候補薬の進捗状況です。右下にE-CFCPと赤丸で示しております。こうした非常に強い抗ウイルス活性を持った小分子化合物が、例えば最適化の段階でどのようにして上昇して強力な小分子化合物が同定されたかをご覧にいれております。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。続けてお願いします。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 続いて1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について、私、臨床研究センター長の杉浦から発表させていただきます。
 13ページを御覧ください。ここに指標の達成状況等が書いてありますが、ここに書いてある数字は全て100%を越えていますが、令和2年度に目標値を引き上げた上での達成状況となっております。
 14ページを御覧ください。上段にまた別途、指標の達成状況がありますが、こちらはもともとの指標を基に算出した達成状況で、いずれも非常に高い達成状況を示していることが御理解いただけるのではないかと思います。詳しく説明していきます。
 16ページを御覧ください。実用化を目指した研究の[1]COVID-19に対するレムデシビル及びバリシチニブ有効性の検証です。冒頭でも理事長がお話ししたように、私どもはこの1年間、新型コロナ対策に総力を結集して臨んでおり、その1つとして今、申し上げたレムデシビル及びバリシチニブの国内における承認に大きく貢献する治験を行っています。2つの英文誌の表紙を示していますが、この中で当院の大曲が、Compassionate Useのほうではセカンドオーサーとして、レムデシビルが承認されることになった2つ目の論文の中でも共著として名前を載せております。この2つの治験にはNCGMが大きく貢献しております。
 その下に移ります。新型コロナ関係の薬剤開発、新薬以外でrepurposingに関しても多くの実績があり、国際共同試験としては5つ、特定臨床研究施設を2つ、そして今現在も継続しているものが3つあります。この中では残念な結果に終わったのもあり、この右下にあるシクレソニド、これは吸入ステロイドですが、このRCTを私どもで企画立案して実施しましたが、この薬の有効は示されず、その情報をいち早く発信しております。この結果は非常に重要でして、現場の先生方が患者さんに不利益な薬剤を投与しなくて済むために、我々がこういったRCTをやってエビデンスを出してきたということになります。
 17ページですが、私どもは国際的な臨床試験をやっており、[2]では多くの人がやっているものにも入っております。グラフは達成状況になります。右のほうに矢印が伸びておりますが、長いものは達成度が高いということです。多くのものが体外診断薬ではあるのですが、各国の承認に向けて一緒に共同研究をしています。9か国で全部で11の試験を実施しております。
 3番目は新型コロナに関する業績ではないのですが、私どもでは長いこと職域研究、J-ECOHスタディに取り組んでおり、その中で特に糖尿病発症予防システムを開発しております。3年間の糖尿病発症リスクを予測するシステムを作っており、様々な自分自身の情報を投入して、さらに血液検査データがあれば、それも入れることによって、高い精度での予測システムを作っています。予測をすることによって、個々の方の行動変容を求めるというような取組をやっております。ですから、こちらは予防医学の話になりますが、非常に重要な仕事と思っております。
 18ページです。再び新型コロナの話題に戻りますが、私どもでは今年度、令和3年度、国からの依頼を受けて、新興・再興感染症のバイオバンク事業を開始しております。令和2年度は、その準備段階として様々な調査や、下調べのようなことをやってまいりました。4番目はその成果を示していますが、特にほかの先進諸国で、こういったバイオバンク事業がどのようにコロナ対策に活用されてきたかを調査して、それを国に報告書として提出しております。それを基に現在進めておりますバイオバンク事業に取り組んでおります。
 それと、我々は産学連携に関しても非常に力を入れており、多くのことをやっているのですが、その中でも1つの例として挙げているのが、ソフトバンク社と一緒に始めました新型コロナウイルスのPCR検査センターです。令和2年7月に私どもの国府台病院の敷地の中でスタートし、こちらは主に無症候者を対象にした検査になるのですが、現在、1日に2万件を超える処理能力を有しております。6月の時点では全部で100万件を達成し、こちらも順調に進んでおります。これが令和2年の実績です。
 続いて中長期の資料です。12ページを御覧ください。私どもでは、国際感染症フォーラムを開催しております。年に数回やっているのですが、こちらも非常に定着し、多くの企業の方々や外国の研究者の方々が参加しております。参加人数としては延べ1,000人近い方が今までにこのフォーラムに参加をしております。[2]クリニカル・イノベーションネットワーク(CIN)の推進は、新薬開発にお金が掛かり過ぎることを解決しようということで、現在多くの先生方が研究の過程で作られているレジストリデータを活用して、そこからリアルワールドのエビデンスを引いてこようと、そういった取組になっております。こちらについても積極的に取り組んでおります。
 13ページの医工連携は、先ほど申し上げたように、私どもは注力しており、幾つか実際に製品になったものがあります。この写真に撮っているものも、その1つです。最後になりますが、4番目、治験の実績です。これが中長期で特に強調したいことですが、グラフに示しますように、確実に契約数は伸びており、治験は順調に伸びております。私の発表は以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、質疑応答に入ります。時間は18分ですので、それほど時間はありませんが、是非よろしくお願いします。最初に花井委員、お願いします。
 
○花井委員
 3つの抗ウイルス剤についてすごくすばらしいなと思ったのですが、特にキードラッグとしてのNRTIについては、今までバックボーンでしかなかったものが、ここまで強力な抗ウイルス効果というのは、ちょっと目をこする感じなのですけれども、何が特に開発について新しいのかというのを教えていただけたらと思います。それから、COVIDについては低分子であるというのは今は一番望まれているのですけれども、どのくらいで使えるようになるのかという、見通しを教えていただけたらと思います。以上です。
 
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 EFdA、Islatravirは先ほど申し上げましたフッ素化学のたまものでして、フッ素が入りますとその周辺が、ある意味化学的に安定になるということが知られております。私、これは1990年頃からやっているもので、運も良かったのですが、御存じのように長期間作用型というのが非常に重要なトレンドになっておりますので、その視点から新規開発での重要な点でございまして、もう1つが強力な活性と長期投与に耐え得るものをずっと探していたわけでして、その両方に関連するのが化学的に安定した構造とするということになると思います。
 EFdA、Islatravirは実際に1週間ほどは効くだろうと思っていたところが、やはりこれは導出しました米国メルク社のほうでフォーミュレーションをかなり工夫して、それで今、治療については一度内服するだけで1週間はもちます。予防でありますと、1回内服すると1か月もつということで、副作用がほとんどないという特徴が長期にわたる効果を可能にしております。これも目指したわけではないのですけれども、結果的にそのように良いデータが出ました。それで、先ほど申し上げたインプラントでも、マッチ棒よりも小さいのですけれども、一旦それを皮下に包埋することで、1年にわたって蓄積毒性を見ないで抗ウイルス効果が得られるということで、これは非常に運も良かったと思っております。同様に、フッ素原子をB型肝炎ウイルスに対するヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤に配する、そのようなフッ素化学を用いますと、そうして同定したE-CFCPで長期間にわたる非常に強い抗ウイルス効果が得られる。フッ素は化学的に安定であると同時に、ものに対する結合、ちょうどいい所に入ると、フッ素結合、即ちハロゲン結合というという結合様式が発動されて、非常に強く結合することがよく知られております。こうした複数の理由でEFdA、Islatravirの非常に強い抗ウイルス活性と、その他の特徴付けられるような長所が得られたと思っております。B型肝炎でも同じと思います。
 それから、COVIDに対する小分子化合物についても、既に令和3年初頭に報告したものよりも、やはりフッ素化学を導入したところ、数十倍から200倍ほど強い小分子化合物が得られております。このような化合物も経口投与が可能で、1日1回の投与でいけるようなものが今、我々の手中にありますので、これも今から開発を急ぎ進めたいと思っているところです。どうもありがとうございます。
 
○花井委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。中野先生、よろしくお願いいたします。
 
○中野委員
 中野です。新型コロナの流行の中でコロナに対してもすばらしい御研究あるいは診療を継続される中で、このように従来から抗ウイルス薬を含め、研究を継続されていることに敬意を表したいと思います。その中で、私が教えていただきたいことは、頂戴した報告書の中にも、新型コロナウイルスパンデミックに対応するために研究人員を緊急シフトしたこともお書きいただいているのですが、このように従来からの研究を維持しつつ、新しいことも精力的にこれだけこなしておられる。何かこの1年から1年半にわたってどういう工夫をされたのかを是非お教えいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 時間外勤務を含めて対応したということだけに尽きると思います。しかし、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とHBV(B型肝炎ウイルス)については、およそ半分から3分の1ぐらいに時間的な労力を割愛して、COVID対策に、本当によくやった、やってくれたと思うほど皆さん頑張られて、これだけの成果がやっとできたと思っております。しかし、これは我々だけではなくて共同研究者も、これは人類の戦いということで、かなり頑張っていただいたことで成果が上がったという事に尽きると思います。
 
○中野委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。コメント、質問や何でもいいと思いますが、ありませんか。土岐先生、お願いいたします。
 
○土岐部会長代理
 非常にたくさんの臨床研究を行われておりまして、令和2年度も623件ということなのですが、このうち研究代表がNCGMであるものがどれぐらいなのかということと、その臨床研究をサポートする体制について、目標件数を令和2年度に上げられているのですが、何か体制に変化があったのか、教えていただけますか。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 それでは、杉浦が回答させていただきます。申し訳ございませんが、最初の質問に関しては、調べておりませんので正確には分かりませんが、400前後と思います。
 2つ目の御質問に関しては、やはりリソースの集中ということで、とにかく新型コロナを中心に進め、外部委託も含めてリソースを十分量投入するのが一番重要と思っています。やはり人材を確保しないと研究、臨床研究は進められないという、特に特定臨床研究や、医師主導治験に関しては、本当に人がいないと進められない現実がありますので、そういうところに人を投入して配分してまいりました。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。では、深見先生、お願いいたします。
 
○深見委員
 まず、治験の件数が非常に年々増えてきていて、昨年度も非常に増えているのですが、これは年々増えている経過の中で昨年も増えたという理解なのか、それとも、COVID-19がありましたので、それに伴う臨床治験が増えたことによって増加になったのかという点はどのように理解したらよろしいのでしょうか。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 令和2年以前より治験件数を増やしていこうということで努力をしております。昨年の1年間に関しては、間違いなく新型コロナ関連の治験の比率が上がっております。新型コロナによる新規治験の契約数は増えているのは間違いございません。
 
○深見委員
 分かりました。もう1つは、国際医療センターだけに関係しているわけではないのですけれども、本当に皆さんの努力によっていろいろなCOVIDの対応をしていただいて、PCRもたくさんやっていただいているのですが、日本のコロナ対策として、やはりPCRが海外と比べても少ないと私自身は感じているのですが、そこに対してどのようなことをやっていったらいいのか、その辺りのお考えが何かあるのでしたら教えていただきたいのですが。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 杉浦から回答させていただきます。感染症というものは早期診断、早期治療が鉄則かと思っております。そういう意味ではPCR、抗原検査のどちらにせよ、しっかり診断するということは非常に重要だと考えます。先ほど満屋所長から新薬開発のお話がありましたけれども、これは恐らく感染初期に使うのがいいだろうということを考えますと、治療薬をタイムリーに且つ有効に使うためには早期診断が重要になってきます。従って私自身はPCR検査、これが特にストレスなくできるような環境が重要だと思っています。
 一方で、市中の人を対象に検査をしても、日本の罹患率を考えると余り感染予防策としては有効ではないと個人的には思っております。例えば先ほどお話しした産学連携で企業と一緒に実施しているPCR検査は、ある事業所というか、1つの集団を塊としてPCR検査を実施しているのです。これにより安全な職場を作り出す、クラスター予防のために使っているということで、キャパシティーが限られている現状では、このような使い方が良いと個人的には思っております。以上です。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。
 
○深見委員
 はい。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。それでは続いて、前村先生、お願いいたします。
 
○前村委員
 長崎大の前村です。コロナ禍で大変な中で次々に新しい薬を同定されていることに敬意を表したいと思います。特にCOVID-19に関しては、今、世界中で新しい治療薬が出てくるのを待望している状態だと思いますが、この有望な低分子化合物ができて、通常の治験でやっていきますと、ある程度の時間が掛かってしまうと思いますが、早く実用化するために治験の工夫をして、早く承認されるようなことは考えられていますか。
 
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 満屋がお答えします。今、私共が開発を進めております化合物の中で最も強力なものがTKB250という化合物で、これは例えばファイザーが今、第1相の経口投与臨床試験を進めておりますPF-332という化合物の100倍ほど強力で、同じく経口投与が可能なのですが、量的には、多くてもまだ数人分しか作れないのです。これを工業的に作るためには、つまり、10gあるいは1kgを作るためには、やはりメーカーの力を借りるほかはないと、今のところは思っております。今はまだ研究室内で作っておりますから、1回のバッチが3~4mgしか作れないのです。工程は7~10工程と比較的単純なのですが、これも1g作るとなると、今、小さな研究室で1年かかりますので、注文生産をやっていただける会社への相談を先週から始めて、比較的大量に作ることとしておりますが、まだGLP、GMPレベルでの合成は先になりますので、やはり開発のパートナーを見付けることが非常に重要な段階に差し掛かってきていると認識しております。それについて、少なくとも500mgとか1gぐらいであれば、AMEDからもサポートしていただけるという御提案を頂いているところです。しかし、そうしますと、やはりどのようにしても1年は必要で、先ほど申し上げましたファイザーの第1相試験がやっと行われましたのも、やはり1年ぐらいかかっています。ですから、大きな薬品会社と連携しても1年でフェーズ1に到達すれば超高速と言われるほどですから、恐らくその後も超高速で臨床試験が進みましても、認可されるということになりますのは更に2年ほどと思っているところです。
 
○前村委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。私から1つお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。18ページの[4]で、新型コロナウイルス感染症の臨床情報とかゲノム情報などのデータバンクと言いますか、これは国際的な連携というところで、少し強調して書いていただいていると思いますが、国内のオールジャパンとまでは言いませんけれども、いろいろな所からの情報、臨床情報もあるでしょうし、バイオバンク的な生体試料もあるでしょうし、ゲノムのデータもあると思いますが、そういうものの統合というか、インテグレーションは何か組織的にやっておられるでしょうかという質問なのですが、いかがでしょうか。教えていただけたらと思います。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 その点ですが、正に今、それを取り組んでいるところです。令和3年初頭から取り組んでおりますけれども、患者さんの情報、その中ではゲノム解析、全例を考えております。ウイルスに関しても解析して、それを全て1つのバンク、データベースとしての統合を目指しています。さらに、そこには各種サンプル、臨床検体が一緒に収集・集約されることになっております。私どもNCGMと国立感染症研究所、東京大学医化学研究所、東北大学の東北バイオバンク、その4者が中心となり、目指すはオールジャパンの体制です。今回のような緊急時には速やかに臨床情報が集約されて、研究者の先生方がストレスなく研究のためにサンプル、情報を使えるようなシステム構築に取り組んでおります。以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。これは特にウイルスそのものの情報などは感染研も結構やっておられるのではないかと思うのですが、感染研との連携ということも、今、少し触れられたのですけれども、進めておられるというように理解してよろしいでしょうか。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 そのとおりです。感染研はコアメンバーであり、一緒にやっているような形になっております。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。是非とも今後の非常に大きな研究データバンクになると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。では、土岐先生、よろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長代理
 ちょっと細かいことですが、項目1、2について、令和2年度はSで、6年間通じてはAということになっていますけれども、非常にすばらしい結果を残しておられると思いますが、そこの違いは何か意味があるのでしょうか。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 杉浦から回答します。Sは令和2年度、単年度の評価かと思いますけれども、これに関しては、先ほど冒頭にも言いましたように、達成度が過去5年間と比べても高く、多くのことが達成できたのではないかと自己評価をSとしました。
 
○土岐部会長代理
 6年間を平均してという意味でAなのかもしれませんけれども、令和2年度は大変センターを挙げて頑張られたので、点を上げてもいいのかなと思ったので。
 
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 ありがとうございます。是非、よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。それでは、よろしいですか。もう少しだけ時間がありますが、よろしいでしょうか。それでは、また後で全体の総合討論をする場面がありますので、そこであればと思います。
 次は、評価項目1-2のうちに入るかもしれませんが、医療研究連携推進本部、JHと言っているものです。これについて議論したいと思います。まず、法人から御説明いただけますか。
 
○国立国際医療研究センター國土理事長
 当初、5分ということだったのですけれども、少し内容があるものですから、10分でお願いしたいと思います。
 
○祖父江部会長
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 それでは、国立高度専門医療研究センター医療連携推進本部のJapan Health Research Promotion BureauのJHの活動概要について御報告申し上げます。19ページを御覧ください。JHの組織ですが、6NCの内部組織でして、職員はいずれも6NCの職員で、クロスアポイントメントで26名が併任として従事しております。3.の少し小さい図で恐縮ですけれども、JHの内部の組織としては、データ基盤課、共同研究課、知財・法務課、広報課、人材育成課の5つの課があります。各々のレベルで6NCのカウンターパートとも密接に連携を取りながら事業を進めているところであり、冒頭、國土理事長からも御説明がありましたように、本部はNCGM内に置かれておりますところから、この場をお借りして、進捗を御説明させていただきます。
 そのミッションですけれども、NCが世界最高水準の研究開発・医療を目指して新たなイノベーションを創出するために、6NCの資源・情報を集約し、それぞれの専門性をいかしつつ、有機的・機能的連携を行うことにより、我が国全体の臨床研究能力の向上に資することを目的とする。2番目として、社会ニーズと疾患構造の変化に対応しつつ、6NCの基礎・臨床・社会学トップランナー間での有機的な連携を強化することにより、革新的な予防・診断・治療及び共生に関する医療技術の開発・実装を促進する。これにより、健康寿命の延伸を図り、人々があらゆるライフステージにおいて幸福で活躍できる社会の実現に貢献するというミッションの下に事業を進めております。
 実際の事業の進め方ですが、3.にありますように、JHは6NCの内部組織ですので、理事長連絡会議の下でJHの事業計画を策定しておりますので、その範囲内で私、JH本部長に一定の権限が委ねられており、実際に昨年度の実績については、4.にあるような事業を推進しているところです。[1]新たなニーズに対応した研究開発機能を支援・強化です。例えば新たな国内の企業、シスメックス社ですが、COVID-19の抗体検査のキットの開発を支援し、実際にそれを既存のロシュやアボットの抗体と一緒に用いて、そこにありますように、NCCで行われました、がん患者さんの場合にはCOVID-19の抗体価が化学療法を行っている場合に低く出ているということを既に論文として発表しておりますし、6NC職員の間での抗体価に関する疫学調査も開始して、それを支援しているところです。
 さらに、JHが支援し、6NCを高速インターネットで連携して、クラウド型のグループウエアを利用した更なる臨床研究の推進に資しているところです。また、6NC間の電子カルテのデータを集約して、その解析によって様々な臨床研究を発展させていこうということで、まずパイロット的には、COVID-19によって他の疾患がどのような診療実態に影響を受けたのかということについて、既にデータが集積している4NC間で解析を始めるところです。NCによっては生物統計家やリサーチアドミニストレテーションの人材が不足しているので、その人材育成や人材の共有化について支援をしております。また、6NCでは、様々に教育コンテンツが各NCではそろっているわけですが、それを共通化して配信するようなシステムを整えたところです。
 6NC連携で効果的な研究開発が期待される領域の取組を支援・強化については、これはJHが発足する前から6NC間でフォローしていたコホートの研究結果ですが、1.にあるような疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言を行っており、次ページにありますようなプレスリリースも行って、社会実装に貢献しています。
 また、令和2年度、昨年度には8課題の新たな研究の支援を開始し、令和元年度にJHの発足前からスタートしている6課題と合わせ、外部評価員あるいは共同研究家の会員を中心としてその進捗管理をして、研究の成果の最大化を図っているところです。これらの研究あるいはNC内で行われております臨床研究あるいは医師主導治験のやり方の共通化、あるいは知財・法務に関わる知識の共有化を図るために、知財・法務課では相談窓口を整備して研究の支援を行っているところです。これらの実績については、JHのWebページから立ち上がっておりますので、是非、先生方にも、一度御覧いただければと考えております。私からの報告は以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。手際よくまとめていただきましたので、割と短い時間で済みましたけれども、以上で発表はよろしいですか。それでは、質疑応答に移ります。時間がかなり限られておりますが、これは非常に重要なテーマですので、是非、活発な議論を頂けると有り難いと思いますが、いかがでしょうか。前村先生、お願いいたします。
 
○前村委員
 JHが立ち上がって、6NCに対していろいろなインフラの整備やサポートがなされているということはよく分かりました。まだ昨年に立ち上がったばかりなので、成果という点では難しいのかもしれないのですが、JHができたからこそ6NCが共同で行うことができて、これから出てきそうな成果というのは何か具体例としてありますか。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 少し述べましたけれども、6NCの職員については、健康診断などを利用して、抗体価のフォローを行っております。現時点では、どのような事業従事者が陽性になる可能性があるのかについては、非常に抗体陽性率は低いながらも昨年と今年を比べますと少し上がっている、ただしCOVID-19の診療に関わった人の抗体陽性率が必ずしも高いわけではないというデータも出ておりまして、既に論文化も6報、研究班ではパブリッシュをされております。また、先ほどJHが支援した抗体キットを用いた成果については、NCCからも論文が出ています。ほかにも令和元年度から既にスタートしているものについては、成果が出つつあると認識しております。
 
○前村委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 いかがでしょうか。土岐先生、よろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長代理
 大変すばらしい試みだと思いますが、6NCの間であれば共通化できるもの、先ほど知財管理のことを少し言われたのですけれども、ほかにも、例えばパッと思い付くのは、利益相反の管理とか、研究倫理とか、その辺りを6NC間で共通のものにしていく、そのようなことは今後、考えておられるのでしょうか。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 大変重要な御指摘かと思います。実際、知財・法務課を中心として、各NCで若干、内部の規則は違うのですけれども、共通化できる部分については共通化するということ。今年度、既に政府から求められておりますデータポリシーに関しては、JHが作成して、6NC間で共通化を図って、ほかの施設にも提供しました。大変好評を受けているところです。それから、倫理講習などについても一元化できるだろうということで、また動物実験の講習などについても一元化をして、Web配信をするという仕組みを作っているところです。
 
○土岐部会長代理
 分かりました。大変すばらしいと思います。
 
○祖父江部会長
 次は、藤川先生、最初にお願いいたします。
 
○藤川委員
 藤川です。今、JHのホームページを見ていたのですけれども、広報の担当の方を置くということになっているのですが、お知らせで出ているのが9件しかなくというのか何というのか、ちょっと分からないのですが、しかも、そのうち2つは発足、もう1つはホームページ開設なので、実質、中身は7つということかと思います。コロナという大きな問題もありましたので、なかなか進展は難しいのかもしれませんが、JHの存在というのを、国民に対してはどのようにアピールをしていくのか、6NCを裏で支えるような縁の下の力持ち的なものとして、表には出ていかないのか、それとも、むしろ、そこが6NCを結局束ねていくというような、どういう持っていき方をするのかというところがちょっとよく分からないと思いました。
 また、JH事業計画を立てられ、数値目標なども掲げられているということですが、その事業計画が、ホームページを見たところ、見当たらなかったので、そういうことも御検討されて、やはり広報はとても大事なことだと思いますので、御検討いただければと思いました。以上です。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 すみません、先生が御覧になっているページが正しいのかどうか分かりませんけれども、事業計画も載せておりますし、お知らせの所にたくさん載っているかと思います。
 
○藤川委員
 そうですか。失礼いたしました。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 もちろんJHの存在は、世の中にはもっとどんどん伝えていきたいと思っています。今のところは、月間6,000ビューぐらいなのですが、更に認知度を上げるために、各NCがやっておられるSNSの中で、JHについても広報をしていただくようにお願いしているところです。
 
○藤川委員
 事業計画は推進本部のホームページを見たのですけれども、どこに入っているのですか。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 活動方針・組織という所に入っております。
 
○藤川委員
 分かりました。後でまた拝見します。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。中野先生、よろしくお願いいたします。
 
○中野委員
 中野です。プレゼンテーションで言及されました抗体価研究のことでお教えください。シスメックス社の抗体、アボットやロシュに負けないようにという言い方は変ですが、日本発のすばらしい御研究、私もホームページを拝見させていただいて、いいなと思っていたのですけれども、今、NCでやっている抗体価の研究というのは、日本から発信したシスメックスの抗体価キットの評価という意味なのか、あるいは単純に疫学研究という形で、別に国内、海外は関係なしで進行しておられるのか、その辺をもう少し、興味があるので教えていただければと思います。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 基本的には3社のキットを使っております。それを比較することにどの程度意味があるのかどうかは、データが集約されてから初めて言えることだと思いますけれども、NCの御事情によっては、1つか2つという所もありますが、できる限り少なくともNCGMをはじめとして、多くの所では3社のキットを使って抗体価を測定しております。特に国内のものをフューチャーするというわけではないのですけれども、トータルで何万例かが前向きにフォローアップされることになりますので、各キットの正確性ですとか意味付けに関しても、一定程度の評価ができるのではないかと期待しているところです。
 
○中野委員
 ありがとうございます。並行して、例えば中和抗体も同一検体で測ったりとか、そういうバリデーションか何かされておられるのでしょうか。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 これは一部のNCで別研究としてやっておりますが、全部はできておりません。
 
○中野委員
 かしこまりました。ありがとうございます。
 
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 満屋ですが、我々も国内のワクチン2回接種終了後の225人のメディカルスタッフにお願いして血清を頂いて、IgG抗体量つまり結合抗体量と、中和活性を有する抗体量、即ち中和抗体価との関連について調べましたが、結合抗体量が多くても、その半数程の人々で中和抗体価は低いというデータを得ておりまして、そのようなデータをまとめた論文を投稿したところです。
 
○中野委員
 どうもありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 少し時間が超過しておりますが、最後、1つだけお聞きできたらと思います。私から、よろしくお願いいたします。確かこれは長い間の議論が、NCの在り方委員会の中で議論されてきまして、その中に、本日お話いただいたミッションも、もちろん含まれていたと思いますが、6ナショナルセンターの、いわゆるバイオリソースとか、いろいろな情報ですが、臨床情報からゲノム情報とか、いろいろな研究ベースのバイオ的なリソースを共同的に管理・統合するというような話があったように思います。その辺については、まだこれは始まったばかりだということで、これからだと思いますが、どのように今後お考えになっているのかをお聞かせ願えるといいかなと思います。
 
○国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部植木本部長
 6NCではバイオバンク、NCBNがありまして、そこの臨床情報を、先ほど申し上げましたような電子カルテの情報と結び付けるということを、まだ始めたばかりですけれども是非、実現させたいと思っております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。是非、よろしくお願いしたいと思います。時間が少し過ぎておりますので、まだまだ議論があると思いますが、先へ少し急ぎたいと思います。
 続いて、医療の提供等その他の業務の質の向上に関する事項で、評価項目1-3~1-7について議論したいと思います。まずは法人から御説明をお願いします。
 
○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
センター病院長の杉山が説明いたします。評価項目1-3、20ページです。自己評価Sといたしました。21ページの指標の達成状況の確認をお願いします。4つの指標がありますが、1つを除いては達成しております。達成できなかったのは、セカンドオピニオンです。昨年度は、やはりコロナ禍ということもあり、対面のセカンドオピニオンができなかったことが影響しております。これに対しては、Webを利用したオンラインのセカンドオピニオンを行う体制をしっかり整えておりますので、今年度は大丈夫だと思っております。
 22ページをお願いします。まずは新興・再興感染症に対する対応で、これはCOVID-19に対する対応ですが、特定感染症病棟や集中治療室での集中治療機能を利用して、重症のCOVID-19感染症に積極的に取り組みました。それから、先ほど杉浦からお話がありましたように、COVID-19のレジストリであるCOVIREGIを立ち上げ、治療薬であるレムデシビルについて米国NIHの国際共同研究を4つ行いました。その結果、レムデシビルとバリシチニブが本邦でのCOVID-19の治療薬として承認されました。
 臨床面では、新宿区医師会及び区内の大学病院を含む基幹病院と協同し、NCGMの敷地内にPCR検査スポットを設営し、増大する患者の検査需要に応えるとともに、病病連携・病診連携に努めました。ここでは、最終的に約6,000名のPCR検査を約3か月間で行いました。左下に示したのが、かまぼこ状のテントを用いて設営したPCR検査スポットです。この仕組みは現在も継続しており、新宿区保健所内に設置されたPCR検査センターには、区内の大学病院、基幹病院から人員を派遣して、バックアップしております。
 センター病院では、COVID-19の疑い・確定例に対して病院を挙げて全面的な対応を行いました。右下の図は6月23日時点での数値ですので、現在よりも若干人数は少ないですが、延べ890名の患者を診ております。それから、外国人感染症患者の診療に関しては、国際診療部と連携して、主にCOVID-19に対する外国語での診療サポートを協力して行いました。我々の所は、多くの外国人患者も引き受けております。
 23ページは、エイズです。ACCは、国内最多のHIV/エイズ患者の診療実績を有しており、通院患者のウイルス量200コピー以下への抑制率は、ほぼ毎年、UNAIDS目標の90%を超えており、令和2年度で94.9%です。また、平成29年に開設したSexual Health外来(SHC)の定期受診者も順調に増加しており、令和2年度末で1,500人を超えております。それから、HIV感染予防についても臨床研究を行っており、暴露前予防(PrEP)研究においてPrEPの有効性を証明しました。右の上の図を御覧ください。PrEPありでは感染が完全に予防されており、カプランマイヤー曲線によるPrEPの感染予防効果は、赤がPrEPありですけれども、明らかに高い効果を示しています。
 次に、DCCでは日本における梅毒の標準治療と高用量でのAMPC治療を比べるRTCで高用量のほうが有効性が高いことを証明いたしました。また、尿道外淋病に対するセフォトリアキソン単剤とアジスロマイシン併用療法の有効性比較試験でも、単剤療法で十分であることを報告しました。
 血友病のHIV感染者の包括外来受診も、ほぼ毎年90%を超えており、令和2年度は92.7%の血友病HIV感染者が包括外来を利用いたしました。最近行ったものは冠動脈スクリーニング研究で、実に12.3%の方に治療を要する冠動脈狭窄を認めました。この結果は予想外の高頻度であり、その後、原因探索のための研究に発展いたしております。また、他施設での冠動脈スクリーニングの実施を提言しております。
 ACC外来では、HIV陽性の患者コホートが間もなく5,000人に達します。令和2年度ではISLによる国際臨床治験を3つ実施中であり、更にHIV/HBV、B型肝炎共感染者に対する国際臨床治験を実施しております。1回の注射で治療ができる半減期延長型の新薬による国際治療臨床治験などにも参加しており、現在7つの国際臨床治験を実施中です。
 24ページです。もう1つの柱は救急医療です。センター病院の救急搬送応需件数は、コロナ禍にもかかわらず、発熱や呼吸器疾患の救急外来を積極的に受け入れたため、例年とほぼ同様の年間1万件以上を維持し、応需率も都の平均が68.4%に落ち込んでいる中で、87.5%と高い水準を保っております。特に左の下に示す三次救急の搬送件数については、去年の12月から今年の1月に掛けて第3波になったときに、都内の多くの三次救命センターが受入れを控えるような傾向にありましたが、我々が積極的に受け入れたため、三次の応需率が非常に高くなっております。国府台については青柳が説明します。
 
○国立国際医療研究センター青柳国府台病院長
 国府台病院の説明をいたします病院長の青柳です。どうぞよろしくお願いします。21ページを御覧ください。表の上段、国府台地区における精神科救急入院病棟等の重症身体合併症率は、中長期目標期間では7%以上と目標値を立てたところ、6か年連続で達成しております。令和2年度、3年度は目標値を16%以上としましたが、実績として17.9%という結果になりました。ちなみに、この重症身体合併症というのは、精神科で入院が必要な患者の中で、がん、あるいは肺炎、薬物中毒、骨折等の単独でも入院が必要になるような身体疾患のことを指しております。
 25ページを御覧ください。[4]摂食障害診療への取組です。私ども国府台病院では摂食障害治療支援センターを併設しており、積極的に摂食障害診療に取り組んでまいりました。右の表にありますように、摂食障害の入院患者数は全国で1位の実績を、ここしばらくずっと維持しております。また、患者数だけではなくて、重症患者も積極的に受け入れるよう取り組んでおります。国府台病院からの報告は以上です。
 
○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 同じ25ページで、[3]1型糖尿病への先進的対応です。センター病院では、平成27年から先進1型糖尿病外来を開始しており、持続血糖測定器搭載型インスリンポンプを導入しております。もう1つの柱である膵島移植プロジェクトですが、臓器提供者の膵臓から膵島を単離し、患者の肝臓内に点滴で細胞を移植する臨床試験を実施しています。これまで1例で施行しましたが、その他に10例が登録され、膵島移植を待っている状態です。この待機患者数も日本で最大です。膵島移植を行った1例は外来で経過を見ており、完全なインスリン離脱は難しいものの、患者にとっての血糖管理の負担が大きく減った状態を継続しております。以上です。
 
○国立国際医療研究センター明石運営企画部長
 続いて、1-4から国際医療協力局の明石が説明いたします。26ページを御覧ください。1-4、人材育成に関する事項です。指標の達成状況ですが、各種研修会を30回以上予定し、75回、250%実施しており、自己評価はAとしました。28ページをお願いします。リーダー人材の育成です。[1]国際協力人材育成については、例年どおりの若手医師向け研修や国際保健協力への従事希望者向けの集中講座、基礎講座をコロナの影響下で、オンラインでの研修として行いました。その中でも、年9回開催される基礎講座は、例年280名程度を研修のところ、令和2年度は在外日本人も含めて514名参加と増加しました。[2]国際機関等への日本人就職を促進するグローバルヘルス人材戦略センターでは、国際機関への就職希望者のための講演会や個別指導等を実施し、令和2年度にはWHO等で合計5名が常勤採用、若しくは昇進しました。
 29ページをお願いします。モデル研修についてです。[3]国際的な感染症分野等の人材育成では、DCCでの輸入感染症講習会など6つの研修会を実施し、6,000人強の参加が得られました。また、AMR臨床リファレンスセンターによるAMR対策臨床セミナー、同公衆衛生セミナーの実施。思春期精神保健対策医療従事者専門研修の実施、エイズ、肝炎、糖尿病診療の高度化・均てん化のための研修実施、更に医療通訳の養成も行いました。
 1-5、医療政策の推進等に関する事項について説明いたします。30ページの指標ですが、ホームページのアクセス数などでそれらが増加したほか、政策提言や均てん化、重大な危害に関する事項として、特筆すべきコロナ対応もあり、自己評価は今年もSとしています。
 32ページをお願いします。国等への政策提言です。[1]新型コロナに関しては、国の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議、東京都新型コロナウイルス感染症対策審議会のメンバーとして、国や自治体の対策について専門的な立場から助言を行いました。また、保健分野のODAあり方を考える特別委員会の委員として、政府グローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会に提言を提出しました。また、在日外国人の新型コロナ拡大予防と保健医療アクセス改善のため、多言語陽性者フローチャート作成、内閣官房新型コロナ対策外国人支援チームに提言を行いました。その他、厚生労働省や外務省からの要請で、世界保健総会やWHO西太平洋地域事務所WPROのUHCの各種会議、グローバルファンドの理事会などに出席し、世界戦略や地域行動計画の立案に貢献しました。
 33ページは、国際的な委員会の委員に就任した職員が増え、例えば新型コロナの独立したコロナワクチンの分配検証グループIAVGの世界10名中1名にも選ばれています。グローバル政策研究センターiGHPでは、グローバルヘルス外交ワークショップを開催し、厚生労働省や外務省などの若手人材の育成を行ったほか、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)との共同研究では、健康管理アプリの開発のためのチャットボット機能開発、タイ保健省とは生活習慣病等の共同研究を行いました。
 34ページをお願いします。医療の均てん化並びに情報の収集及び発信について、[2]NCGMが創刊した国際英文ジャーナル「Global Health & Medicine」誌は、令和2年4月号として新型コロナ特集号を発刊するなど内容を充実させ、12月にはPubMedに掲載される雑誌となりました。臨床研究センターは、オンラインでのコンサルタントサービスやNCGM国際感染症フォーラムを開催しました。WPRO主催の新型コロナ対策に関するWHO協力センター(WCC)の経験共有とネットワーキングを図る会合は、域内10か国250名以上が参加しました。國土理事長が国内のWCCの代表として発表を行いました。ほか、子宮頸がん排除世界戦略開始記念イベント開催への協力、国連UHC会合決議案や「世界の看護」を全訳公開し、NGO・公的機関等のアライアンスである「みんなのSDGs」の事務局として、SDGsと新型コロナをテーマに4回シリーズでセミナーを開催しました。
 35ページをお願いします。海外拠点については、ベトナム拠点を使った薬剤耐性の共同研究や、カンボジア拠点を使ったメコン流域の子どもの慢性低栄養などの研究を行いました。[4]センター病院では1年を通じ、新型コロナ疑い患者を含め、多くの診療をしていますが、ホームページに新型コロナの実際の診療に役立っているリソースの公開、新型コロナに関する外国語での診療サポート、更には長崎のクルーズの船コスタ・アトランティカ号への医療支援等を行いました。
 1-6、医療政策の推進等に関する事項(国際協力)です。36ページをお願いします。国際協力は、コロナ禍で専門家派遣や研修生の受入れが難しかったところですが、オンラインの講習を多用し、これまで以上の成果を上げることができました。また、このような中において一時的に帰国を余儀なくされた時期もありましたが、専門家を派遣し続け、状況が厳しい中、例年以上の支援を行うことができたと判断し、自己評価をSとしています。
 38ページをお願いします。グローバル健康医療戦略2020の国際協力では、令和2年度にNCGMグローバル健康・医療戦略2020を策定し、過去にはビル・ゲイツ氏やヒラリー・クリントン氏も受賞したWHOアラブ首長国連邦保健基金賞の賞金を原資として、NCGM内の国際展開を推進すべく賞を創設しました。[1]日本人専門家の海外派遣です。右下の地図にあるように、厳しい状況下でも長期専門家については可能な限り派遣を継続するとともに、オンラインを活用した協力に切り替え、オンラインでの派遣相当数は延べ439人と、過去6年間で最高となりました。
 39ページをお願いします。外国人研修生の受入れは、日本での研修が中止になったため、オンライン研修を強化し、JICA研修や厚生労働省の医療技術等国際展開推進事業による研修参加者は、顕著に増加しました。また、オンラインのメリットをいかし、研修生の大幅増加のみならず、コロナなど最新の内容の研修を増加させたり、来日しづらい当該国の地方の研修参加者も増加しました。
 40ページです。[2]大学や企業などの応募する医療技術等国際展開推進事業では、オンライン研修登録参加者が増加した上、更にこれまでのカテゴリーにはなかったオブザーバーという参加者も増加し、遠隔研修参加者が1万5,000人以上になっています。厚生労働省のWHO事前認証及び推奨の取得並びに途上国向けWHO推奨機器要覧掲載推進事業の一環として、WHOと協力して国際医療展開セミナーをオンラインで開催し、これには下段のグラフのように製品開発、製造企業が数多く参加し、WHOの認証取得に役立てました。
 41ページです。[3]公衆衛生上の重大な危機への対応では、新型コロナに対する日本国内の対応にも従事しました。1つは、東京都や検疫所が3つのホテルに作った軽症者宿泊療養施設の開設及び運営支援です。これらの経験から作ったマニュアルやフォーム、手順書などをホームページに公開し、医師会でも取り上げられています。また、岡山県でのコロナ対策にも従事し、この結果、岡山県の事例が厚生労働省のグッドプラクティスに取り上げられるとともに、岡山大学SDGs賞を受賞しました。国際的には、例えばフィリピンについてはWHO西太平洋事務所WPROに派遣している職員が地域の新型コロナ対応に従事し、写真左下のように、フィリピン保健省副大臣と記者会見などを行ったほか、WHOの世界規模感染症に対する警戒と対応ネットワークGOARNの枠組みで、短期派遣した職員はフィリピン保健省への支援を行ったほか、このとき作った各種研修教材はWHOの他国でも使われました。さらに、直接ブルネイ、ラオス、ミャンマー、ベトナムなどへの支援も行いました。
 42ページです。国際協力、アジア・アフリカ・中東で培った感染症対策の専門性の国内還元については、新型コロナウイルス感染症の水際対策に関する研究として、ダイヤモンド・プリンセス号における感染動態につき研究、あるいは検疫における唾液抗原検査の有用性を定量的に評価し、厚生労働省感染症部会に導入を提言。また、全入国者の感染状況を調べ、新しい検疫データベースを構築しました。そのほか、新型コロナウイルス感染症の国際協力に関する研究、東京オリンピック・パラリンピック2020対策の研究、子宮頸がん対策の多国間比較研究、多剤耐性菌対策の系統的レビュー、アジアの高齢化と保健医療サービスの研究などを実施しました。
 
○国立国際医療研究センター井上国立看護大学校長
 続いて、1-7、医療政策の推進等に関する事項(看護に関する教育及び研究)について、資料43ページから国立看護大学校長の井上智子が説明いたします。国立看護大学校は清瀬市にあり、学部は1学年100名、大学院に相当する研究課程部は前期課程、後期課程合わせて39名の定員を持ち、本年開学20周年を迎えることができました。43ページの中長期目標の[1]にありますように、本学の使命としては、教育の充実と学部生のNCへの就職率を90%以上にすること。以下2~5番にあるような目標を掲げて事業を行っております。指標の達成状況については、44ページの数値を御覧ください。真ん中辺りに令和2年度の数値がありますが、90%以上の卒業生の達成目標は、昨年度は残念ながら87.5%で、達成度は97.2%でした。個別状況で説明いたします。コロナ禍において公開講座や現任者を対象とする研修会は全て中止をし、ただし、その次の時代に向けての新たな様式としてのWeb教育の在り方等の構築の時間に充てました。そのことに関しては注1、注2に書いております。公開講座やオープンキャンパスなどはネットで行い、相談にも乗れるようなシステムを構築いたしました。
 45ページは本学の3つの評定の根拠ですが、46ページから1つずつ説明いたします。[1]学部、研究課程部ともにNCへの就職志願者を継続的に担保する。その右側の図を御覧ください。緑の折線グラフは本邦の看護大学数です。2015年に241校だったのが、わずか5年で272校と30校ほど増えています。本学が開学したときは110校程度で、それが約3倍に増えておりますが、赤の棒グラフが本学への進学者数です。開学以来、5倍ないし6倍ぐらいを維持しておりました。2019年度は文科省の提言に先駆けて英語の外部試験を導入したために、一時的に志願者数が減りましたが、コロナ禍の昨年度は回復して5倍を維持しております。
 2番目の国際交流研究、国際看護学習です。本学では国際看護研究、国際教育などを標榜しておりますが、コロナ禍においてベトナム・ハノイ大学に行っておりました国際看護実習が中止となりまして、それに代わるものとしてのWeb、あるいは国内の大学などに広げております。また、国際交流研究も変更しましてインドネシアで行い、200名以上の参加を得て、この後提携を結びたいという10以上の施設からの申入れがありました。
 47ページを御覧ください。コロナ渦ということで、学びを止めないということ。特に看護教育では実習や演習、病院で行う実習ができなくなりました。それを在宅でのWebでどのようにしたらいいのか知恵を絞り、いろいろなことをやりました。また、アルバイトもできない、いろいろな方との交流もできない学生に対する様々な支援として、フードドライブであったり、メンタルヘルスの相談などの制度を導入し、今のところCOVID-19による学生の休学・退学は1人も出ておりません。このように、昨年の経験を踏まえ、感染拡大の中でも実習を含む必要な学修や諸活動を充実させるよう実施しております。私からは以上です。
 
○祖父江部会長
 これで1-7までの御説明が終わったと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。広汎なお話を要領よく短い時間でまとめていただいたと思います。委員の皆様方、御質問あるいはコメント等をお願いできたらと思いますが、いかがでしょうか。まず、大西先生からお願いします。
 
○大西委員
 ありがとうございました。政策に対するいろいろな御意見を出されていると思うのですけれども、COVID-19に関して今までいろいろな批判があったと思います。現場から御覧になって、それに対してこういう提案があるのだということがありましたら、教えていただけますでしょうか。例えば、ワクチンの遅れとか、治療薬の開発も取り組んでおられますけれども、国産のものが行き届かなかったことについて批判のようなこともあるのですけれども、そういうことについて、こういうことがあれば進んだのではないかというお話があれば承りたいです。
 
○国立国際医療研究センター國土理事長
 理事長の國土です。ちょっと難しい御質問でうまく答えられないのですが、ワクチンについては国産ワクチン開発の遅れが言われておりますけれども、私どもも早い時期から国内メーカー幾つかと連絡を取り合いながら、臨床試験が始まればすぐ一緒に協力できるような体制で、実は待機しているところです。
 もう1つはインターナショナルトライアル部の活動で、アジア主要国と国際共同治験のための連携を取り始めています。特にタイ、フィリピン、マレーシアなどですけれども、体制の構築ができておりますので、今、検査機器などで始めてはおりますが、シーズがあれば、ワクチンもできればいいと思っております。そういう準備だけは、まず体制を整えましたので、シーズ開発を待っているところです。お答えになりましたでしょうか。
 
○大西委員
 今、感染が拡大しておりますけれども、これに対して何か御意見があれば、我々が注意すべきことがあれば頂けますでしょうか。
 
○国立国際医療研究センター國土理事長
 つい最近、私どものセンターで感染経路不明患者20数名からの聞き取りデータを公表しました。NHKのニュースにもなりましたが、その中で多くはやはり会食時の感染、それからマスクを外している時間が長いなど、感染予防法についてかなり誤解があるということが分かりましたので、国民の皆さんへの注意喚起とか行動変容のお願いをしているところです。今日、実はプレスリリースにもなっていると思います。
そういう事実もはっきり分かりましたので、日本は非常にロックダウンに比べて緩い制度になっていますが、その中で、国民の行動変容をお願いしたい。そういう情報を出したいと思っています。
 
○大西委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは根岸先生、よろしくお願いいたします。
 
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。まず、御発表の中で看護に関することが、1-5と1-7であったかと思います。同じ看護職として本当に多くの方々がCOVID-19の対応に当たってくださったことについて、まずは感謝とエールを送りたいと思います。34ページの御発表に、「世界の看護」を全訳されて公開したとありましたけれども、2020年は国際看護師・助産師年で、フロレンス・ナイチンゲール生誕200年ですが、この「世界の看護」を私も一通り拝読いたしました。本当にグローバルな視点で看護あるいは看護師とはということを、ここから学ぶことができるかと思います。これから看護職を目指す人、あるいは既に看護職に就いている方、大勢の方に読んでほしいなと思っております。是非この「世界の看護」というのをもっともっと多くの方に活用していただきたい、拡大してほしいと思うのですが、そこのところは何かお考えがあれば教えてください。まずは、1-5からお願いいたします。
 
○国立国際医療研究センター明石運営企画部長
 御質問ありがとうございます。国際医療協力局の明石です。国際看護については、こちらがやはり世界のトレンドというか、それを日本国内でも是非押し進めたいということで日本語に翻訳、これは確かWHOの神戸センターと協力していたと思いましたが、これについては公開するだけではなくて、今後何かのいろいろな機会に、逆に看護協会様などの専門機関でも是非活用いただければと思っております。
 
○根岸委員
 是非よろしくお願いいたします。それからもう1つあるのですが、よろしいですか。
 
○祖父江部会長
 はい、どうぞ。
 
○根岸委員
 1-7について、看護大学校の御発表で、資料の1-6の32ページに詳しく書かれているかと思いますが、高い倍率あるいはNCへの就職率を維持されているということで、非常に素晴らしいと思っております。多分、COVID-19で大学校では学部の臨地実習がやりづらかったのではないかと思われます。そこのところで、例えば講義ですとオンラインを中心にということが考えられますが、実習がしづらい、あるいは、もしかしたら全くできないというような状況もあり、恐らくその中で、何か代替手段を考えながら教育に当たっておられたと思います。実際に学生たちが卒業して、今回の国試の結果がどうだったのか。それから、現場へ送り出すときの臨床との連携、いつものカリキュラム上の実習が順調にできなかった学生が現場に出るときに、現場と大学校との連携、そういった辺りでいろいろな工夫をされたかと思います。是非その辺りを教えてください。
 
○国立国際医療研究センター井上国立看護大学校長
 御質問ありがとうございます。本当に昨年は苦労いたしまして、何よりも大学構内に立ち入ってはいけないという第1次のときですね。実習室の器具も使えない。それが使えれば、病院が作った実習を代替することができたのですが、それができない状況での演習と実習を行わせるために大変苦労いたしました。文部科学省、厚生労働省からは、教育の質を担保し、大学側が単位認定をきちんとするようにということでした。非常に教員にその質の保証ということが委ねられておりました故にかなり苦労しましたが、本学は6NC8病院との連携があるという強みをいかすことができました。例えば、病棟には上がれなくても、病院の控室に、各病院にいる臨床教員が下りてきてケースカンファレンスをする。あるいは、その臨床教員が病棟の中を動画撮影、患者様を入れずに動画撮影をして、それを配信してくれるというような、通常の臨地実習では考えられないようなこともできたというのは強みだと思います。もともと6NC8病院は臨地実習を入れており、それは良かったと思います。
 また昨日も、6NC8病院の看護部長との会議が定期的に行われていまして、当然この春の卒業生については様子を見ていくこと、教育と現場が連携してどのような支援ができるかお互いに情報交換し合うというようなことを申し合せました。まだ就業して4か月余り、一番疲れがたまってくる頃かもしれませんが、先輩の方、卒業生をWebですが呼び戻すようなことも考えております。そういう方法で現状を把握して、教育や実習に反映させてもらいたいと思っております。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。是非、教育大学校の特色をいかした教育の充実をこれからも目指してほしいと思います。博士号の取得者第1号が輩出されたということで、本当に素晴らしいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
 
○国立国際医療研究センター井上国立看護大学校長
 博士号は5名、あとに続いておりまして、国家試験の合格率は、残念ながら1人落ちました。以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、まず中野先生、お願いします。
 
○中野委員
 中野です。国際協力のパートのところでお尋ねさせてください。そちらの施設はもうずっと長年にわたって研修員の受入れとか、2国間のいろいろな協力事業、更には今日も触れていただいた国連機関へ、本当に指導的立場の日本からの人材の派遣とか、海外拠点の成熟、素晴らしい成果を上げられておられると思います。COVID-19がそこに与えた影響は多大だと推察いたします。ここから今までのいろいろなタイプの海外とのやり取りの事業、これはやはり是非継続していただきたいと思うのですが、どのような形で方向性を考えておられるか、ここは結構いいふうに行けるけどこちらのほうはちょっと難しいとか、そういったことがあれば御意見、コメントいただければ有難いなと思うのですが、いかがでしょうか。
 
○国立国際医療研究センター明石運営企画部長
 明石からお答えさせていただきます。御質問ありがとうございます。おっしゃるとおり、コロナの影響が多大です。先ほど発表内でも述べましたが、こちらも最初はどう取り組むかなという形で、とにかく遠隔の研修システムを早急に組み立て、そのことと相俟って、今度は研修教材内容を充実させて、モジュール化というか幾つもの単位で作り上げたり。それから、想像以上に参加者が増えた。逆に遠隔なので参加しやすくなり、今まで日本人の研修で在外の日本人が参加することはなかったわけです。あるいは、相手国の地方にいらっしゃる方が参加する機会が増えました。通常は声を掛けても、そもそもどういう団体がやっている研修なのかみたいな、そういう受止めが多いと思うのです。普段は当該国に専門家を送って、そこから更に地方に伸びるという形なので、ある程度NCGMも信頼度、これまでの協力が認められて参加するという方が増えて、遠隔の参加者が増えました。一方、やはり日本に来て、現場を見てもらってというところが本来的にあったほうが、いわゆる概念的な話よりは実際に日本に来て、例えば時間どおり電車が動くとか会議が始まるとか、そういう何か基本的なことを肌身として感じる機会がちょっと減ったような気がして、そこのところはちょっと残念だと思いますので、これから多分ハイブリットの形が増えてくるのではないかと思います。以上です。
 
○中野委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、先ほど土岐先生、手をお挙げになっておられたと思いましたが、よろしいですか。
 
○土岐部会長代理
 人材育成か政策の重大な危機か、若しくは看護のところかもしれないのですが、やはりコロナを診れる人材育成が大事だと思うのです。それをオンラインで、e-learning的なものもいいのですが、やはり実際現場を見てもらう。研修をしていただくとか、実際出向いて行って教えるとか、そこが重要になってくると思うのですが、どのようなことを具体的にされたのか。クルーズ船とかあったのですが、システマティックにされた事例があれば教えていただけますか。
 
○国立国際医療研究センター明石運営企画部長
 人材育成については、先ほど国際についてはちょっとお話させていただきましたが、例えば日本における軽症者の宿泊療養施設も、実際にはこれまで感染症に携わっていなかった方とか、あるいは要するに医療従事者ではない人たちがある程度患者さんに対応しなければいけないようなこともどんどん起こってくる中で、そういう方たち向けの研修ですね。例えば宿泊療養施設を作る場合に、先ほどお話しましたが、フォームとか、あるいはテキストというか、マニュアルとか、そういうのをある程度パッケージ化して、それを公開することによっていろいろな所で利用していただくみたいな、そういうパッケージ化もございます。あとは研修、コロナについての、例えば病院の先生方に実際に病院でやってらっしゃるような、病院で学んだことというか身につけた内容を、研修としてパッケージ化して、それを海外の方たちに御覧いただくとか。御覧いただくだけではなくて、実際につないでリアルタイムで研修もやっていました。
 
○国立国際医療研究センター國土理事長
 あとは、私どもの診療方針についてはホームページで早い時期から公開したり、最近は「新型コロナウィルス感染症対応マニュアル」という本も出しました。また最近では企業に協賛いただいたウェビナーを開催し、4,000人でしたか、ものすごい数の方に、患者の呼吸器管理の方法について視聴いただきました。このように情報発信しております。
 
○土岐部会長代理
 ありがとうございました。大阪で第4波の経験から言いますと、これまで重症コロナを診たことなかった病院が重症コロナを診るという事態が、何十もの病院が一遍にそういう状況になりますと、それは医師、特に看護師で診たことがないという人が多くて、そこが問題になりました。個人的には、私もこうなるのが分かっていれば、少しでも多くの看護師さんに、例えば阪大に来ていただいて、ちょっとでも重症コロナの対応を経験していただけたら、もっとうまく対応できたのではないかと反省しておりますので、是非そういう試みをしていただけたらと思います。よろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは深見先生、よろしくお願いいたします。
 
○深見委員
 重要なCOVID-19に関して対応が非常に行われてきましたので、質問がここに集中しているのですが、非常にマイナーな点で申し訳ないと思いますが、子宮頸がんについての対応についてお尋ねさせていただきます。1-5、37ページの国内発信、それから1-6の45ページの多国間の比較研究で2つ、ほんの1行ですけれども、子宮頸がんについての記載がございます。日本の子宮頸がんというのは、ワクチンの遅れ等から将来的な子宮頸がんの発症がすごく懸念されているわけですけれども、国際医療センターさんはこの問題についてどういう立ち位置にしていくのか。ほかのいろいろなことをやってらっしゃるので、そんなに大きな比重を占めているとは思わないし、これに対してそんなに比重を割くべきだとも思わないのですけれども、どのぐらいの立ち位置を今後考えているのか。何か、この会議とか、統計的な疫学調査に参加することを重点とするとか、どのぐらいの比重というか、重みというのでしょうか、考えていらっしゃるのか。お伺いしたいと思います。
 
○国立国際医療研究センター明石運営企画部長
 国際医療協力局の明石から。国際協力が中心なのですが、実は私の所ではWHOのNCD、ノンコミュニカブルディジーズの部署に職員を送りまして、そこで特に子宮頸がんについて取り上げられたというか、それを担当したというのと、もう1つは、カンボジアで子宮頸がんを何とか減らしましょうということで、日本の産婦人科学会とカンボジアの産婦人科学会が協力して、カンボジアで子宮頸がんのプロモーションをやっています。それで、その経験もいきて、WHOの本部で子宮頸がんの部署に貢献するという形で、その職員は日本に戻って来たのですが、その後もAPWという短期専門家みたいな形で、WHOの子宮頸がん事業に対して積極的に取り組んでおります。というのが国際協力の御報告です。
 
○深見委員
 余り発信を聞いたことないような気がするのですが、すみません。
 
○国立国際医療研究センター針田企画戦略局長
 国際医療協力局の針田ですが、実際はWHOにも人を送っていますので、中からWHOに対し発信するということもなかなかないと。ただ、もう国際機関とがっぷり四つで今、仕事をさせていただいておりますので、内部で積極的にもう何人も人を出しておりますので、発言していると思っております。
 
○深見委員
 ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。そろそろ時間です。今いろいろな質問がたくさん出ましたが、メインはやはりコロナ関係ではなかったかと思います。本当に素晴らしい活躍をされたと拝見いたしました。やはり国際医療研究センターの感染症というのは非常に大きな柱になっております。もちろん国の感染症対策専門委員会とか、東京都の新型コロナウイルス感染対策審議会のメンバーとして非常に大きな発言をされていると思いますが、先ほど来議論がございますように、できればエビデンスベースドの形で非常に強いメッセージを発信していただけるといいかなと、実はちょっと私は個人的にも思っています。今後もこういう感染症で何が起こってくるか分からないわけですが、そのとき、やはり国際医療研究センターの感染症を扱う臨床的な日本の要の組織・拠点として、その辺は今はいろいろな考え方があるのでしょうけれど、何かその辺はどう考えられておりますでしょうか。非常に重要な拠点として重い発言ができる場をお持ちではないかなと思っているのですが、いかがでしょうか。
 
○国立国際医療研究センター國土理事長
 ありがとうございます。理事長の國土ですが、まず広報については非常に重要だと考えておりまして、ここ1,2年で広報部門をかなり強化いたしました。マスコミへの発信については余り先走ったものではなく、エビデンスに基づいた、しっかりした広報が必要だと考えています。計画的に今までメディアセミナーという形で、もう6、7回、2か月に1回ぐらいのペースで行っております。
 それから、今後についてというのはかなり大きな質問ですけれども、先ほど来話がありますように、一番大きいものは、恐らくリバインド(REBIND)という事業です。これまではCovid-19患者さんの情報をレジストリー(COVIREGI)の形で、もう4万人以上の患者さんのデータを集めております。そして、それにREBINDでは患者のサンプル、それからウイルスのサンプルを収集します。もちろん感染研との共同事業ですけれども、そこにかなり予算も付けていただきましたので、オールジャパンの体制でやりたいと考えています。これは我々が研究をすべてやるのではなく、ナショセンとしての研究の基盤を作り維持することが目的です。我々だけではなくて、日本中の研究者がアイディアを出して使っていただく。そういう基盤を作りたいと思っております。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に良い議論ができているのではないかという感じはいたしますが、時間が来ましたので、また後で、もし必要があれば御質問があるかと思いますので、先へ進みたいと思います。それでは、次は業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項で、評価項目で言いますと、2-1~4-1について、議論したいと思います。これも時間がちょっと短めで、全体14分、説明8分、質疑6分ですので、効率良くやっていきたいと思います。まずは、御説明お願いいたします。
 
○国立国際医療研究センター山田統括事務部長
 それでは、統括事務部長の山田から御説明させていただきます。まず48ページの2-1、業務運営の効率化に関する事項です。今中長期期間中の目標を3点掲げておりますが、特に[2]の効率化による収支改善を柱として、この6年間取り組んでまいりました。その中でも、特に経常収支率を100%以上となるよう経営改善に取り組んでいるところです。その中で定量的目標の経常収支率100%以上については、令和2年度は収支相償を上回る107.5%を達成したところです。ちなみにもう1つ掲げております後発医薬品の数量シェアも、目標70%以上に対してセンター病院では90.6%、国府台病院は94.6%と大きく上回りました。繰り返しになりますが経常収支については、冒頭、國土理事長からも申し上げましたとおり、令和元年度に続いて2年連続で100%を超えて黒字化しております。その大きな要因については52ページにまとめておりますので御覧ください。
 まず、上段の効率化による収支改善の項目ですが、センター病院は、これまで説明したとおり新型コロナの影響を相当受けまして、初期の初期、武漢の帰国者対応から始まり、この第5波まで積極的に患者さんの受入れをしてまいりました。そういったこともあり、厚労省あるいは東京都から、多くの補助金等を手当していただきました。この補助金が経常収支を大きく引き上げた要因です。これについては、センター病院は新型コロナ医療の最前線として、手術や外来等、診療を制限してまでも多くの患者さんを受け入れ、多くの命を救ったということで、そうした対応への支援と受け止めております。そのほか今申し上げましたように、手術件数については、センター病院は一般診療を制限した結果、6,543件から5,097件、約1,500件減少しております。国府台病院については、新型コロナの影響を受けましたが、ほぼ同じ手術件数を維持できた状況です。そのほか診療点数の増加を非常に念頭に置き、患者数が減る一方で高難度手術等を積極的に実施したこと、また新型コロナ患者を多く受け入れていたことにより、新型コロナ入院患者は御存じのとおり診療報酬上の加点を頂いておりますので、その結果診療単価が増加し、結果的に今回、36億円の経常収支の黒字化が図られたところです。国府台病院においては、整形外科あるいは脳外科等の体制強化により、手術件数は減らさずに済みましたので、医業収支、経常収支共に黒字化となりました。こういった要因もあり、経常収支については大きく改善されたところです。
 そのほか、もう1つの目標の電子化の推進ということがあります。コロナ禍の影響を受けたことに伴い、センターが昨年度取り組んだ例として、病床においては、今までは無線WiFiの接続がなかったのですが、WiFiを接続できるようにして患者サービスを向上させたこと、あるいはWeb会議を推進したこと、あるいはどこの病院もそうかと思いますが、面会の制限もありましたので、オンラインでの面会といったものを推進したこと等により、電子化も推進しております。これらを踏まえ、令和2年度については大きく経常収支を改善いたしましたので、これまでB評価を頂いておりましたが、A評価の自己評定としております。
 続いて3-1、財務内容の改善に関する事項です。この項目については2項目列挙しております。まず、1つ目の自己収入の増加は、競争的資金等、外部資金の積極的な導入。2つ目は資産及び負債の管理です。昨年度の診療収入については新型コロナウイルス感染症の影響を受け、54ページの表にありますが、患者数は大きく減少しております。例えば、センター病院の1日平均入院患者数は39人の減、国府台病院も10人の減、外来もそれぞれ大きく減少し、更には先ほど申し上げましたとおり手術件数も大幅に減少したところで、その結果、合わせて約18.2億円減少しました。一方で、自治体等から補助金、それに加えAMED等からの研究費獲得、それから受託研究、治験依頼による外部資金等の大幅な増加がありました。これで、診療収入の減を補っている状況です。
 もう一度52ページを御覧ください。中ほどに表を示しております。競争的資金、受託研究、治験の表で、縦軸の単位が違いますが、一番左の競争的資金に注目してください。2019年度は26億だったのに対して昨年度は70億と非常に大きく増加しています。そのほか受託研究、あるいは先ほど御質問がありました治験についても、新型コロナの影響がありましたが、大きく上回っております。
 一方でもう1つの目標であります繰越欠損金ですが、これも冒頭で理事長が申し上げましたとおり、昨年は100億まで上がりましたが、今回は36億の黒字化により約72億円となりました。ただし、今期の目標については53億から3.5%減少する。本来であれば51億円にしなくてはならないので、こういったこともありますので資金としては増えましたが、繰越欠損金は目標達成できませんでしたので、自己評定はBとしております。
 最後になります。4-1、その他業務運営に関する事項です。この事項は特に2点あります。エイズ裁判の和解に基づく対応について、大きな目標の柱としております。令和2年度の達成状況については、医療のほうで杉山院長から説明がありました包括的なケアをする包括外来の使用状況について、目標は80%以上でしたが、92.7%と大きく上回っております。またC型肝炎治癒後の肝がんスクリーニングについて、同意を得られた69名の方に実施した結果、2名の方に早期の肝がんを発見し、早期手術で切除することができたという幸いなこととなっております。また個別救済医療については、当センターのエイズ治療研究開発センターいわゆるACCの関与が必要な患者をリストアップして、地元医療機関と連携を図っております。ただし一昨年の長崎大学での肝移植、あるいは群馬大学で実施された重粒子線治療対象患者さんはいらっしゃいませんでした。そのほか薬害患者さんに関する治療法の評価会議をはばたき福祉事業団と合同で年2回実施しております。エイズ裁判の和解に基づく対応についても、しっかりと実施したところです。
 また、資料には記載しておりませんが、昨年御質問がありました、医師へのタスクシフトに関しましては、これも例年と同様に医師の軽減を図るための看護師、あるいは臨床検査技師による採血の実施、薬剤師による患者への処方説明、それから医師事務補助職員の増員により対応しました。さらに、看護師が新型コロナ入院患者への対応で非常に不足し、これをどうするかということで検討を行い、やむなく一部病棟の休棟を行ったり、あるいは看護師業務に専念していただくために、例えば検査やリハビリの患者さんを送り出す送迎については、それぞれリハビリのスタッフあるいは検査のスタッフにやっていただく、持参薬チェックを薬剤師に完全シフトして、看護師には本来の看護業務に専念していただくということにして、平時から緊急時に対して迅速な対応を行い勤務環境の改善を図ったところです。これら結果を踏まえ、自己評定はBとさせていただきました。駆け足となりましたが以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。今2-1から4-1まで御説明いただきましたが、何か御質問等はありますか。藤川委員、よろしくお願いします。
 
○藤川委員
 2点あるのですが、1点はまず収支の件です。何度も御説明いただいているように、当然今回は補助金を獲得ということが非常に大きいと思います。当然、頑張っていただいたことによる成果と言えるとは思うのですが、公的病院は今回どこの病院も同じように非常に今までにない黒字を計上されている所が多いのかなと思うのですが、これがもしなかったらどうなのかということをどこの病院も恐らく考えていらっしゃって、あと1年後、2年後には普通の状態になってしまうので、そうなったときにも収支が黒字化できるような方策を、今だからやることをやっておかなければいけないのかなと思うので、その辺りをどのようにお考えなのかということをお聞きしたいのが1点です。
 2点目ですが、最初のところでコロナに人を随分割かれてしまったので、研究はかなり人をシフトしてしまって長時間労働によって成果が得られたというようなことを伺ったのですが、それはある意味皆さんモチベーションを高く持たれて、こういうときだから頑張ろうということだったのかもしれませんが、それに対する報いというか、そういうようなことはどのようにされたのか教えていただけますか。以上です。
 
○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 センター病院長の杉山がお答えします。おっしゃるとおりで、この1年間で体質改善を図らなければいけないと思っております。ですので、以前から提案がありました、例えばSCUの増床を図る、あるいは高機能病床を作る、高機能な手術室を作るというのが懸案事項でありましたので、それを推進します。あと、やはり全般的に人員の見直しを少しずつ始めております。不採算な所は人員を少し減らして、必要な所に手当するようなシフトを始めております。この1年が勝負だと思っておりますので、入院の単価を上げることを第1目標に邁進しているところです。
 
○国立国際医療研究センター山田統括事務部長
 2点目の職員への報いですが、先ほど申し上げましたとおり、経常収支の大幅な改善が図られましたので、全職員、非常勤職員も含めて、特別ボーナスというか、一時金を皆さんに給付しております。10万円を越えるような大きな額を職員の皆さんに給付していますし、また新型コロナに対応している職員に関しては、コロナ手当というものを新設し、1日3,000円ないし5,000円を給付するなど、お金の面ではそのように対応しております。
 
○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 労働関係についてですが、やはり金銭面だけではありませんので、働いている方がちゃんと報われているのか、そういう意味では特定の職種に過重な負担が生じないように、タスクシフトを積極的に進めております。それからメンタルにも非常に気を付けており、産業医を含めてメンタルのチェックをかなり入念に行っております。こうした対応もあって、今の所、離職というのは、それほどないのが現状です。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。ちょっと時間が遅れ気味になっておりますが、何かここで更に御発言はありますか。よろしいですか。どうもありがとうございました。それでは、全体を通じて前に議論した問題点や、前に議論があった点も含めてですが、何か更に御質問したい方がありましたら手を挙げていただきたいと思います。全体を通じての議論ということで、少しだけ時間を作ってありますので、もしあれば手を挙げていただければと思いますが。よろしいですか。ちょっと時間が超過しておりますので、もしなければこれで議論の時間を終わりにしますが、よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。それでは、全体の振り返り議論も含めて、これで終了したいと思います。
 それでは最後に、理事長先生と監事の方から少し御発表いただけたらと思っております。まずは、監事の先生から監査報告を頂けたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
○国立国際医療研究センター石井監事
 監事の石井です。令和2年度の監査の結果です。監査結果に関しては、財務諸表等という資料の30ページに添付しております。監査報告は6月9日に理事長に直接提出し、同じものは厚生労働省に提出しているところです。監査報告の内容ですが、報告内容・監査の結果については、監査報告記載のとおりで、昨年と同様に特に重要な指摘事項はございません。我が国の感染症対応の大変な状況下にもかかわらず、監事監査を円滑に行うことができました。また、先ほど来御指摘があるように、100億円を越えていた繰越欠損金は、72億まで縮小され大変大きく改善されたと認識しております。先ほどの御質問の中で、職員の方たちに対しての措置がありましたが、国の予算で医療従事者には慰労金も別途出ておりますから、私ども監事としましては、職員の方たちに対しては、しっかりとした対応がなされたという認識をしております。
 それから、もう一点。当センターは大変評価をしていただきましたので、例年とは異なる形で年間数億円、独法会計基準の関係でまだ集計されておりませんが、外部から、個人・法人からの非常に多額な寄付も行われており、国立国際医療研究センターがしっかりとした形で評価をされたのだと、こんなふうにも理解しています。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に分かりやすくお話いただいたと思います。それでは、最後に法人の理事長より、今日のお話を踏まえて、あるいは今後の展開も踏まえて、お言葉を頂けたらと思います。では理事長先生、よろしくお願いいたします。
 
○国立国際医療研究センター國土理事長
 國土です。本日は、長時間にわたりまして、御評価と貴重な御意見を頂きましてありがとうございました。新型コロナ対応に明け暮れた1年ではありましたが、今年度から第3期に入るわけですが、累積欠損金は減ったと言っても72億ありますので、それを地道にお返しなければいけないというのが、まず1点です。それから、新型コロナについても、満屋先生のグループが新薬、有望なものを創り出そうとしておりますので、そういう研究開発に更に力を入れて、コロナの終息に臨みたいと、できるだけ尽力したいと思っております。
 職員については、先ほどもありましたように、コロナ禍において非常に全員の士気が高く、これは本当に私自身も感動したのですが、感染症に立ち向かう病院であるということを職員全体が平時から心構えを持っていたということが今回よく分かりました。このように目の前の有事に対して全力で頑張っているところです。今後について見通すのはなかなか難しいのですが、経営についてはコロナ後に向けて今、杉山院長、青柳院長が体制を作っているところです。今年度は補助金がありますので恐らく赤字にはならないだろうと予想しております。来年度からはこれが多分なくなりますので、そこでどういうふうに経営を持ち直しながら研究開発を取り組めるかが、我々が考えなければいけない一番大きな問題であると思っております。
 それから、もう1つ重要な課題は臨床研究です。NCGM臨床研究センターは研究費もかなりコロナ関係で頂き体制を充実させてきました。臨床研究中核病院にまだ我々はなっていませんが、できれば感染症の領域で取りたいと思っています。そのために今、その体制作り、実績作りに努力をしているところです。今後ともよろしくお願いいたします。本日は、どうもありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。本当に今、理事長先生のおまとめいただいたとおりだという印象を私も持っております。新型コロナ感染を通して、この国際医療研究センターの感染症の拠点としての重要性が、ますます見えてきたのではないかと感じて、これを見事にやっていただいたと感じております。ただ、今後同じような、あるいは違うものがまた起こってくる可能性もございますので、それに対応して是非、今後の計画を更に進めていただけるといいなと思っております。今日は本当にありがとうございました。これで終わりたいと思います。それでは、これで一旦終わります。事務局、休憩は5分ですか。10分ですか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 10分ほど休憩を取り、35分から再開させていただければと思います。
 
○祖父江部会長
 分かりました。ちょっと長丁場でしたので、10分頂けると有り難いなと思います。10分の休憩を取りますので、よろしくお願いいたします。
 
           (国立研究開発法人国立国際医療研究センター退室)
                      -休憩-
            (国立研究開発法人国立長寿医療研究センター入室)
 
○祖父江部会長
 35分からとなっておりましたので始めたいと思います。皆様おそろいかと思います。本日は、大変お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。これから国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和2年度の業務実績評価と中長期目標期間の実績評価について議論を進めたいと思います。先立ちまして、理事長先生から一言御挨拶を賜れたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 皆さんこんにちは。国立長寿医療研究センター理事長の荒井です。今回は、令和2年度及び第2期中長期計画期間における業務実績について説明をさせていただきたいと思います。画面を御覧ください。お手元の資料4ページになります。当センターは心と身体の自立を促進し、健康長寿医療構築に貢献するということで、研究開発を行っております。そのために、2大目標であります認知症研究、老化研究に関して、臨床・基礎だけではなく、疫学、ゲノム、工学といった研究が加わって学際的に研究開発を行うという、世界的に見ても非常にユニークな研究機関であると自負しております。
 次のスライドをお願いします。その高齢者の自立阻害の2大要因である認知症、フレイルといった病態に対してアプローチするために、研究所及び病院をこのようにセンター内センター化し、課題達成の最大化を施行した組織としております。昨年度は、ほかのNCと同様に新型コロナウイルス感染症による影響をかなり受けており、診療に関しても研究に関しても、通常の状態に比べますと、診療に関しては約4億減となっており、今年以降また頑張っていきたいと思います。診療による影響が大きかったということで、ほかのNCに比べて赤字が大きいのではないかと思われるかもしれませんけれども、当センターは国・自治体からの補助金は全く頂けていないのですが、昨年来、外来におけるPCR検査の整備を研究所と病院で連携して行っておりますし、高齢者のフレイル予防という観点から、様々なコンテンツを制作し、発表し、論文化をしております。そうした形で高齢者のフレイルといった問題が、このステイホームあるいは自粛によってもたらされているということを非常に強く懸念をしており、その対策を発信している状況であります。
 これから病院・研究所から発表させていただきますけれども、コロナの影響を受けましたが、臨床研究については最大限の感染対策を行い、大規模臨床研究もほぼ予定通りに進めることができ、コホート研究に関しても十分な感染体制を取りながら進めているということで、研究を止めることなく、診療においては感染対策に十分に配慮しながらこの1年間をやってきました。この第2期中長期においては、運営費交付金が減少する中、外部研究費を3倍にしておりますので、そうした努力も十分に御配慮いただければと考えております。以上で私からの挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に分かりやすくおまとめいただいたと思います。それでは評価項目の1-1及び1-2になりますが、研究開発の成果の最大化に関する事項という点について、業務実績及び自己評価について議論していきたいと思います。まず、法人から御説明いただいて、その後、質疑応答の流れにしたいと思います。よろしくお願いします。説明が20分、質疑が18分ということで、時間がかなり限られておりますので、ポイントを絞っての御説明、よろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 研究所の新飯田です。続いて、研究事業の実績について私から説明させていただきます。お手元の説明資料の6ページを御覧ください。評価項目1、重点的な研究・開発の推進は自己評価をSといたしました。9ページを御覧ください。認知症の血液バイオマーカー開発と、患者層別化マーカー開発です。(1)は、認知症及び認知症リスク者を、複数の血液マーカーで層別化するものです。ページの左側にスクリーニングの流れを示しました。まず、被験者の血中アミロイドベータ(略して「Aβ」)を検出するマーカーで、陰性/陽性の2群に分けた後、図に示しましたように、血中のTauやαSNC、神経変性を反映するNFLなどを組み合わせて検査し、アルツハイマー病やレビー小体型認知症、血管性認知症などの病型判定を行います。昨年度は最初のAβ検査を加速しました。(2)は、(1)の姉妹プロジェクトですが、前述のスクリーニング法を利用して、超早期アルツハイマー病コホートを構築するというものです。ページ右側に示しましたように、アルツハイマー病は発症の20年も前から脳内にAβ沈着が生じます。先制医療や予防法の開発研究においては、近年このような集団の観察研究は極めて重要であると考えられるようになりました。
 そこで、既存の住民コホートの参加者から、図中に格子状で示した領域ですが、この時期に該当する超早期段階にある対象者を抽出して、観察研究を始めました。昨年度は5,300人のコホート参加者の準備調査を終え、700人以上の血中Aβ測定を実施しました。
 10ページを御覧ください。ビッグデータ解析による日本人アルツハイマー病発症関連因子の同定と発症予測モデル構築の実績です。(1)アルツハイマー病の発症関連因子の探索です。アルツハイマー病と認知機能正常者600人以上の血液トランスクリプトームデータのin silico解析を行った結果、好中球数と認知機能に相関性が示唆されました。実際の患者、認知機能正常者3,000人の血液検査データで検証解析を実施、ページ左のグラフに示しましたように、両者間に有意な相関が確認されました。日常診療のデータから、疾患の徴候を検出するなど、ビッグデータ解析の有用性が示されました。同じデータセットの分子ネットワーク解析を行い、遺伝子発現変化の中心遺伝子を探索した結果、EEF2とRPL7という2つの遺伝子が同定されました。EEF2はTauリン酸化や海馬歯状回の神経細胞形成に関与することが報告されており、病態解明や新たな創薬標的分子になると考えられます。
 (2)認知症発症予測アルゴリズムの開発成果です。軽度認知障害、いわゆるMCIの段階からいつ認知症になるかを予測するものです。予測にはゲノム情報と血中microRNAデータという2つのビッグデータを活用しました。右のグラフを御覧ください。赤は認知症のリスク遺伝子を持つ高リスク群です。4年9か月ほどでほとんどの人が認知症に移行しています。一方、青のリスクの低い群では、同じ期間経過しても、半数以上はMCIに踏みとどまっています。この予測アルゴリズムは、患者マネジメントに活用できると考えております。
 次に、microRNAの標的遺伝子のネットワーク解析から、資料に記載の4つの遺伝子が疾患関連遺伝子としてヒットしました。脳の検査はできませんので、末梢血で4遺伝子の発現を調べた結果、PTENとSHC1は認知機能低下と相関が示されました。SHC1はPTENの直接の基質になっていますので、両者は一体と考えられます。PTENは異常神経細胞で増加することが知られており、それが認知症の進行に関連するという既報もあります。この解析はそれを支持する結果となりました。
 11ページを御覧ください。老化細胞を標的とした肺疾患の治療法開発の成果です。(1)肺気腫を主要病態とする慢性閉塞性肺疾患、COPDの治療法開発に資する成果です。COPDは高齢になるほど罹患率は高まり、症状も悪化します。左側の絵を御覧ください。当センターの先行研究は、加齢で増加する肺の老化細胞が、肺気腫病態を増悪化することを報告しております。今回は肺気腫モデル動物を用い、老化細胞の除去に加え、肺幹細胞移植を行うことで、肺機能の再生が可能であることを見出しました。組織写真を御参照ください。この成果は、肺気腫の治療法開発につながる成果と期待しております。
 (2)老化細胞を選択的に除去する、いわゆるセノリティック薬の基礎研究成果です。ページ右の絵図を御覧ください。老化細胞があると周辺の正常細胞にも悪影響が生じ、臓器機能の低下などが引き起こされます。老化した細胞のみを選択的に除去することで、機能が保たれると考えられます。昨年度は東京大学との共同研究で、既存の抗がん剤グルタミナーゼ阻害剤が新たなセノリティック薬となることを見出しました。その効果は肺機能回復以外にも、動脈硬化モデル、肥満モデルでも確認されたところです。この一連の成果は「Science」誌に発表されております。
 (3)は前述の研究から派生したものですが、転移性肺がんモデルの研究から、肺の老化細胞が分泌するSAF-1という液性因子が、がん細胞の肺転移を誘導していることを明らかにしました。ヒトにおいてもSAF-1濃度と肺がん進行度は、強い相関を示すことが分かり、がん転移抑制の標的になる可能性が示唆されたところです。
 12ページを御覧ください。認知症や介護の予防法開発の取組です。(1)は認知症を含む老年症候群の発症因子の調査コホートです。昨年度は新たに知多市民約4,000人の調査を実施しました。保有する高齢者コホートデータベースの登録数は3万4,000人を超え、国内最大規模となりました。
 (2)は高齢者の運転寿命を延ばす教育プログラムの実装を目指した取組です。大府市や近隣の自動車学校と協力して、事故リスクの有無をスクリーニングするプログラムを開発し、加えてそのリスク改善を実車により行う教育システムを開発いたしました。その効果検証を行った結果、高齢でも実車トレーニングを積むことで、事故リスクを減らせることが実証されました。この取組は海外でも注目され、米国のニュースサイトなどで紹介されました。大府市はこの成果を市の事業として採択し、今年度より社会実装されました。全国に広まるきっかけとなりそうです。
 (3)はコロナ禍対応の介護予防アプリの開発です。御承知のように、国は介護予防事業を「通いの場」で実践することとしておりましたが、今回のコロナ禍で全国約11万か所ある「通いの場」は活動を自粛しております。そこで当センター研究所は、この状況に対応したスマートフォン用の介護予防ツールを開発いたしました。このアプリは高齢者が自身の身体活動、知的活動及び食行動等の改善履歴を蓄積して、健康維持に取り組む自己管理型のプログラムです。蓄積されたデータは自治体でも2次利用できるように現在、システムを改善しています。いずれも当センター独自の、しかも大規模に実践する取組で、我が国の健康長寿政策に寄与するものと考えております。
 続いて、評価項目1-2に移ります。令和2年度の説明資料の13ページを御覧ください。実用化研究と基盤整備については、自己評価をSとさせていただきました。1ページ飛んで15ページを御覧ください。研究基盤の質というのは、それを利用する研究そのものの質に直結いたします。御覧のページはゲノム医療推進基盤整備のバイオバンク事業の実績です。NCGGバイオバンクは、認知症例の血清・血漿を中心に収集を進めております。昨年度の病院受診者からの登録数は約1,500人。また、コホート研究に参加している住民ボランティアの登録は3,600人ありました。合計2万8,000人を超えるバイオバンクとなっております。病院からの登録の内訳は左の表に示したとおりです。認知症例だけでなく、高齢者に多い骨・関節疾患の症例も1,300例ほど登録・保存されております。バイオバンク試料には、詳細な臨床情報が付随されており、製薬企業を含め、利用者も年々増加しています。右の(2)に示しましたように、昨年度は延べ40件、1万2,000バイアル以上が研究者に分譲されております。バイオバンク試料は全て標準化された手順で収集・保管されていますが、その収集管理を見える化するために、ISOのバイオバンク国際標準規格を取得する準備に着手いたしました。
 16ページを御覧ください。ゲノム医療推進基盤のもう1つの軸は、メディカルゲノムセンター事業です。メディカルゲノムセンターでは、バイオバンク検体からゲノム情報を取得し、認知症情報とひも付けて、ゲノム医療に資する研究情報資源基盤とすることです。(2)を御覧ください。令和2年度は、2,400例以上の全ゲノム解析を行いました。ジェノタイピングでは共同研究先の試料を含め、1万3,000例以上を解析しました。個々の遺伝子から検出される変異情報は、AMEDが管理する公共データベース、MGeNDにも登録して共有化しております。詳細な臨床情報が付随する数千、数万規模の日本人認知症ゲノム情報資源は、世界で唯一当センターが保有しております。認知症ゲノム研究の90%が白人データを基に実施されていますが、この集団は世界人口の10%です。今は多人種の認知症ゲノム研究の重要性が認識され、昨年度末に国際100万人コホートコンソーシアム、IHCCに参加する機会を頂き、現在も共同研究を進めております。(1)に戻ります。昨年度はゲノム情報とmicroRNA発現情報を組み合わせたeQTLデータベースのプロトタイプを完成させました。今年度に入り、このデータベースのバージョン1をリリースすることができました。microRNAのeQTL公開データベースは世界初となります。
 17ページを御覧ください。認知症血液バイオマーカー研究から生じた実用化実績です。評価項目1-1で紹介した成果に基づいた血中Aβ検出専用の分析装置が昨年12月、薬機承認を取得しました。製品は「アミロイドMS CL」と命名され、本年6月、共同研究先の島津製作所から発売されたところです。研究成果の第1報から6年、大規模検証の成果を「Nature」に発表してから2年というスピードでの実用化です。一方、脳内β蓄積の有無はデリケートな情報であるため、当検査法の普及に当たり、倫理的にも科学的にも妥当な方法で実施できるよう「適正使用指針」を作成いたしました。さらに、このシステムの保険収載に向けて取り組んでいます。本システムの薬機承認範囲は、血中のAβレベルを測定するものとされております。そこで、この承認範囲を認知症の補助診断ツールに拡大することとともに、保険収載を目指しております。PMDA指導の下、それに必要なエビデンスを取得するための前向研究に取り組んだところです。
 18ページを御覧ください。高齢者及び介護者の支援ロボットの開発、検証基盤の成果です。(1)は介護ロボット導入が介護者の負担軽減、員数削減に有効であることを介護動線分析から客観的に証明したものです。この動線解析システムは、自動車組立工場等で利用されているものですが、介護現場においても有用性が示され、そのデータは即時に介護現場に反映できることを併せて実証しました。(2)は介護者の身体負担を評価する筋電システム開発です。装着型の支援ロボットによる負担軽減評価は、装着者の腰方形筋の活動電位をモニターすることで可能になることを明らかにしました。これまで介護者の訴える腰痛部位は、脊柱起立筋や臀筋と考えられてきましたが、実際には、腰の深層にある腰方形筋に負荷が掛かって生じることを世界で初めて証明した成果です。(3)はトイレ移動にも使える自立歩行支援器の完成です。ピクトグラムを御覧ください。高齢者が歩行補助器を使ってトイレに移動し、戻ってこられるように工夫した製品です。来年4月に発売予定で、自宅や介護施設への導入が期待されております。最後の(4)は厚労省の介護ロボットの開発・実証・普及プラットフォーム構築事業に当センターも貢献していることを紹介したものになります。令和2年度の事業実績は以上となります。
 続いて、第2期中長期の説明資料に移ります。資料6ページを御覧ください。担当領域の重点的研究については、自己評価をSといたしました。資料の7、8、9ページは昨年の見込評価で説明した内容から変更はございませんので省略させていただきます。
 10ページを御覧ください。老化細胞を標的とした呼吸器疾患の治療モデルの確立に関する研究です。当該研究は第2期中長期のスタート直後から取り組んでおります。最初期には生体内の老化細胞を可視化する方法を確立し、加齢マウスの肺から老化細胞を除去することで呼吸機能が回復することを確認しました。この成果から、肺気腫の改善に効果が見込めると考え、肺気腫モデルマウスを樹立し、老化細胞除去を実施。しかしながら改善が軽微だったことから、肺幹細胞移植を同時併用し、今回の肺気腫治療モデルの樹立につながっております。臨床応用にもつながる成果と考えております。
 資料11ページを御覧ください。評価項目1-2、実用化研究と基盤整備の構築です。自己評価をSとしました。12ページを御覧ください。老年病に焦点を当てたバイオバンクは国内唯一、世界でも希と認識しております。中長期目標期間を通じて、コンスタントにバイオバンク登録があり、昨年9月には開設から10年目の目標と設定していました1万人登録を8年半で達成した点を強調したいと思います。住民コホート参加者の登録を含めますと、3万人弱のバイオバンクとなりました。試料情報の分譲は順調で、利用者による論文創出も累計118件となりました。バンク登録者の試料はゲノム情報基盤構築に供されます。昨年度末までに3,000人以上のゲノム情報が蓄積されました。一方、ジェノタイピングデータは、センター登録分だけで2万3,000人以上を保有しており、質・量とも世界に通用する認知症ゲノム情報基盤となりました。既に海外のゲノム情報との統合解析が実施されるまでになり、複数の新規アルツハイマー病感受性遺伝子同定に寄与しております。ページ下の写真に示しますように、データを格納する大型サーバを設置。さらに、ゲノム情報の高速処理が可能なハイパフォーマンスコンピュータ、HPCを独自に組み立てました。認知症に限定すれば、アジア最大規模のゲノム情報基盤を構築しております。
 13ページを御覧ください。長寿医療支援ロボットの開発と基盤整備については、見込評価で説明した内容と大きく変わりませんが、右下の図に示しました、介護による負荷は腰方形筋に掛かっていることを見出した点、トイレの行き帰りが可能な歩行支援器が製品化された点を強調したいと思います。
 14ページを御覧ください。認知症の血液バイオマーカー開発は、先ほどの見込評価で説明したとおりです。先ほど説明しましたように、血中Aβ測定装置が薬機承認を得て製品化されたことを強調したいと思います。
 最後の15ページは、昨年の見込評価で説明した内容から変更はございませんので省略させいただきます。以上で、研究実績についての説明を終わります。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ちょっと時間が超過しておりますが、いかがでしょうか。今の御説明に対して、御質問、あるいはコメント等ございましたら、お手を挙げて御発言いただけるといいと思いますが、いかがでしょうか。大西先生、お手を挙げておられます。よろしくお願いします。
 
○大西委員
 どうもありがとうございました。バイオメディカルセンターの機能の話なのですが、これはホールゲノムなのでしょうか。それともパネルで集めておられるのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 ホールゲノムが3,000人、全ゲノムジェノタイピングが2万3,000人です。
 
○大西委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 いいですか。大西先生。
 
○大西委員
 はい。
 
○祖父江部会長
 それでは、前村先生、お願いいたします。
 
○前村委員
 どうもありがとうございました。大変膨大なバイオバンクを樹立されていることに感心いたしました。6ナショナルセンターをまとめるJHのほうで、バイオバンクを連携していくという方向性が示されているのではないかと思うのですが、長寿医療研究センターのバイオバンクを6NCで今後連携していくというような動きがあるのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 これは発足当時から6NCが連携してNCBNというバイオバンクネットワークを形成しております。
 
○前村委員
 やっているのですか。
 
○国立長寿医療研究センター
 はい。そこでいろいろ決まりごとを作っているわけですが、大概の規則等は長寿医療研究センターバイオバンクの主導で作られたものがありまして、牽引役も務めています。
 
○前村委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ほかにはございますか。もしなければ私のほうから1つ、2つ、ちょっとお尋ねします。9ページで御説明していただいた高齢者の認知症リスクを有する、あるいはAβの蓄積のある例の層別化のシステムをお話いただいたのですが、モレキュラー的に層別化していくというのは、今の流れに合致した非常に良い層別化のシステムを進められていると思いますが、同時に臨床的な多様性といいますか、進行がかなり、その辺はどのぐらい差があるのかよく分かりませんが、こういう神経変性疾患というのは、臨床的な多様性が非常に大きく出るということがほかのいろいろな疾患では知られているのですが、その辺の兼ね合いというのは何かやっておられますでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 大変難しい御指摘と思います。一人一人の検査を進めていく上で、専門医の先生方に協力していただいており、一つ一つの症例についての情報を共有しております。それに応じてケースケースで多様性を認識していくというような方法を取って進めております。また、資料にも書いておりますが、スタンダードオブトゥルース(SOT)として、PET情報を合わせて取っておりますので、それを軸にして検査を進めているというような方法を取っております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。深見先生、お手を挙げておられます。よろしくお願いします。
 
○深見委員
 今の1-1の10ページで、幾つか分からなかったので教えてください。まず、アミロイドβの所と、好中球の割合増加、ハブ遺伝子ということで、3つ成果を挙げていらっしゃるのですが、どれがリンクしてアルツハイマー発症モデルとつながっているのかというのが、ちょっと分からないのですね。このアルツハイマー、AD発症予測モデルの構築というのは何を基にしているのか、そこのところの御説明をお願いします。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 まず好中球のデータに関し、ハブ遺伝子同定をする前にビッグデータ解析をしています。これは血中mRNAでやっています。トランスクリプトームデータです。そこで発現差を比較して、有意差があるものからどういった遺伝子群に違いがあるかを拾っていきます。そうすると800種類ぐらいの遺伝子に差が生じていて、それを解析していきますと、好中球が産生する遺伝子が何か関係がありそうだと。こういう擬似的なセルソーティングができるソフトがございます。それを拾ってきて、実際の患者さんの検査データでやったら、好中球数と認知機能のスコアがリンクしていたというのが、最初のビッグデータ解析の紹介です。
 ハブ遺伝子のほうは、血中mRNAの発現変化が、どういった遺伝子が動いて差が出てくるのかというものを解析したのがネットワーク解析です。スライドの中で大きい白い丸があると思うのですが、これが大きければ大きいほど影響力が強いというものです。これはコンピュータでやります。コンピュータがどういう計算をしているかというのは、実はブラックボックスで我々にも分かりません。いろいろな論文情報を集めてコンピュータが勝手にやるわけですが、そこの中から、このEEF2とRPL7の2つが出てきたというのがこのデータです。こちらは発症に関わる遺伝子として知られています。2番のほうは、MCIから更に病態が加速するときに動く遺伝子を捉えたのが、ここにあります4つの遺伝子です。見ている時期に大きな違いがあると思います。
 
○深見委員
 ハブ遺伝子はランダムに出てきて、ネットワーク解析から出てきたものですけれども、これまでにアルツハイマーとは全くリンクが分かっていなかった遺伝子ですか。アミロイドβの何か代謝とか、そういうものに関係しているというわけではない。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 そこが非常に面白いところで、アルツハイマー病は多因子疾患ですので、今まで分かっていない遺伝子が最近たくさん分かってきています。それからもう1つ大きな点は、先ほど別の所で紹介しましたが、白人の情報が大半で、日本人の情報、東アジア人の情報はほとんどないのです。恐らく人種差も関わってくるだろうと考えております。大きな違いというのは、集団の違いから出てきたことと、そもそもアルツハイマー病自体が非常に多くの因子の影響で発症するということがありますので、みる角度によって、こうした新しいものが出てくるというのがあります。ただ、断片的には今紹介した遺伝子のように、単発の論文などでちょこちょこ報告が出ています。ですから、こういったものが実は重要な遺伝子だろうということが、後から解析で分かるということはよくあります。恐らくそういった中で拾われてきたものだろうと思います。かなりのビッグデータで解析したデータですから、今まで見えていなかったものが見えた仮説駆動型の研究から出てくる限られた結果とは違って、データ駆動型の研究にシフトしている時代ですので、今後はこういったビッグデータを活用した研究が進んでいくのだろうと期待しています。
 
○祖父江部会長
 また後で追加があれば戻りますので、ありがとうございました。ほかにはございませんか。今の所はもう1回質問されるかもしれませんが、追加で1つだけ質問させていただくと、いわゆるGWASなんかをベースにするポリジェニックリスクファクターみたいな、このゲノムでも最初からリスクが決まっている現象と、RNAseqとか、発現状態がどんどん経時的に変わっていくものから見えてくるものと2つあると思うのですが、この場合、私も理解しにくかったのですが、例えばGWASとは言わないが、シーケンスをやってみえると思いますので、そういうもともと決まった遺伝子のバックグラウンドがこういう変化をもたらしているのか、あるいは血中の何か時々刻々と変化する発現状態みたいなものを見ていくとこういう差が見えてくるのか、その辺はどうなんでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 まず1つ目の(1)のほうは、mRNAの発現解析に基づいたものです。つまり、ゲノムではなくて遺伝子の発現のほうですね。それから、2番のほうは、もともと持っているゲノムの情報プラスmicroRNAの発現情報で、両方セットしています。
 
○祖父江部会長
 それを組み合わせて見ると、こういう差が見えてきたということですね。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 はい、そうです。相当新しい取組だと思います。
 
○祖父江部会長
 例えば、揺らぎみたいなものが病前に出てくるというようなことがよく言われているのは、発現の幅が非常に広くなるということですね。ただこれが、非常に重要な要素としては、バックグラウンドのジェネティックバリエーションによって、この揺らぎの大きさが変わったりとか、ある人は出るけど、ある人は出ないというような。だから、非常に決まったジェネティックの変化と、ここではmiRNAを取っておられますが、そういう動くものとの相関で予測していくというのは、非常に今後の重要な方向だと思っておりまして、正にそれだということで今御説明いただきましたので、是非更に進めていただけると有り難いなと思っているところです。どうもありがとうございます。そのほか何かございますか。深見先生、よかったですかね。ちょっと分からないですかね。後でまた。
 
○深見委員
 分かったような分かっていないような、ちょっと細かいところは理解できていないのですが、でも、概略は分かりました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。何かほかに御質問ありますか。根岸先生、お願いします。
 
○根岸委員
 よろしくお願いいたします。資料の12ページです。実生活の中での研究というのが非常に進んできておりまして、大変参考になりました。運転寿命の延伸に関する研究・開発という項目があります。健康寿命の延伸を目指す中で、この運転寿命を延ばすということが大切な目標の1つになってくるのかなと考えているところです。自動車教習所での実車トレーニングというのをされていますけれども、ここでの高齢ドライバーというのは何歳以上を対象にしたのかということと、運転評価に影響を与えるリスク因子というのはどういうものが考えられるのか。そのトレーニングによって運転技術を向上させることができる因子には、どういうものが考えられるのか、もしお分かりになる部分がありましたら教えてください。よろしくお願いします。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 この運転寿命延伸に関する研究は65歳以上の高齢者が対象となっており、その中でいろいろなリスク評価を行っています。実車をしている最中、いろいろなモニターがありまして、モニターで反応時間などを調べることになっていますし、車から離れた形で、体のフレイルな状態、サルコペニア、そういった状態も評価することができるようになっています。詳細なデータは御回答できないのですけれども、高齢者の認知機能だけではなくて、身体機能の面におけるリスクも明らかになっています。それに対して、実車訓練をすることによって、実際に技能が改善するということも明らかにしていまして、現在、アウトカム、要するに事故という形のアウトカムを減らすことができるかというRCTを行っております。恐らく来年以降には、教習所における実車訓練が、有意に事故を減らすことができて運転寿命の延伸につながるという結果を出すことができるのではないかと考えています。残念ながら、この実車訓練は効果があると我々は思っているのですが、これを社会実装に持っていくのはかなり大変というのが現在の課題で、教習所でトレーニングを受ければ運転寿命が延伸するというのは分かっているのですが、インセンティブが働かないという問題がありまして、そこは今後の課題であると思っていますので、しっかりとエビデンスを出して、警察庁や国土交通省などの行政に訴え掛けることを計画しています。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。今後の研究結果に期待したいと思います。ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。土岐先生、お願いします。
 
○土岐部会長代理
 15ページのバイオバンク事業のことをお伺いします。がんも専門なのでサンプリングをよくするのですが、臨床情報がなければ有用なサンプルにならないのですけれども、これを見ますと累計試料は4万7,000ということなのですが、臨床情報はどのように収集して、どなたが管理していらっしゃるのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 もちろんバイオバンクのスタート時点から、臨床情報が全て付随しているというのは、このナショナルセンターバイオバンクネットワークの売りです。それぞれのセンターで同じようなことをやっておりますが、電子カルテからデータを抽出する専門の担当医を配置しております。バイオバンクの中にも電子カルテ端末が置かれており、そこから抽出する作業を行っています。また、画像は画像で独自にデータベースがあるのですが、それを更に統合する試みもしています。第2期中長期の資料のバイオバンクの所には写真があったと思いますが、専用のデータセンターを作りました。ここに臨床情報を含む、つまり電子カルテをミラー化したものを入れるような仕組みを今構築中です。ですから一大データセンターがこの中に作られるという構想で進めております。
 
○土岐部会長代理
 分かりました。非常に多様な疾患があるので、多分、がんよりも更に難しいだろうなと思って、膨大なデータになると思いますので、大変だと思いますが、よろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 はい。ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。1つだけ、ちょっとクイックな、質問ではなくコメントかもしれませんが、先ほどJHという横糸的な組織が去年から動いているというお話がありまして、その1つが今のバイオバンクを横糸的にも統括していくという話でしたが、最近それぞれの疾患に共通的な分子メカニズムが、例えばがんと神経変性というのは非常に似た動きがあって、これをやはり将来的には非常に見ていかないといけないという流れが少しずつ出てきておりますので、是非それは連携を取りながら、インテグレートしたバンクにしていただけるといいなと思います。コメントでした。
 時間が押しております。どうもありがとうございました。良い議論ができたと思います。それでは、次にまいります。次は、医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項、評価項目1-3から1-5について議論したいと思います。先ほどと同じように法人から御説明いただけますか。よろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 それでは、評価項目1-3から1-4までを病院長の鷲見から説明いたします。最初に評価項目1-3、医療の提供に関する事項の説明をいたします。令和2年度業務実績概要説明資料の21ページを御覧ください。自己評価Aといたしました。評定の根拠はお示しした3つのポイントです。この3点を中心に5つの領域に関して説明いたします。資料の22ページを御覧ください。最初はもの忘れセンターの活動です。初診は988名で、令和元年度1,054名に比べて若干減少しましたが、大きな減少は見られませんでした。
 一方、再診は6,048名から5,363名と1割程度減少しました。昨年度紹介いたしました脳活リハと呼んでいる脳-身体賦活リハビリテーション、これは認知症の人へのリハビリテーション療法ですが、当センターの認知リハビリテーションプログラムは幾つかの特徴があり、図に示すような一人一人に合わせた多彩な処方を用いて、認知機能の直接的な改善等や本人に関する過剰な努力を強要するのではなく、残っている機能の向上を目指すのが特徴です。
 令和2年度はコロナ禍にあったにもかかわらず、前年度と同等の2,863名が参加して診療実績を維持しており、ニーズの高さが窺えます。実際に、脳活リハの満足度は大変高く、全プログラムにおいて満足度は10点満点中7.5点以上でした。また、非介入との比較では、介入1年目においてADLが有意に維持されております。2021年5月には、この包括プログラムを厚労科研の成果としてマニュアルにまとめました。家族教室を中心とした本人・家族の支援、地域からの相談業務も順調に継続できています。認知症の御本人の思いを家族とともに傾聴する「Petit茶論(プチ・サロン)」と命名した茶話会を開催しており、結果について既にデータは集積し、まとめているところです。
 地域連携では、若年性認知症の支援が前年度と比べ倍増しています。また、もの忘れセンター10年の活動を認知症診療ハンドブックとして発刊いたしました。資料23ページの図の左側を御覧ください。(1)の認知症患者登録システムであるオレンジレジストリの発展的開示をさせ、より軽度認知症障害に特化したレジストリを継続して構築中です。ここから得られた成果として、MCIの全体で1,738例を登録し、当センターは大きく貢献しました。MCIレジストリで得られた情報を閲覧できるカタログを作成しました。このカタログを使用することで、登録者の基本情報、病名、認知機能を検索でき、認知症リスクを層別化することが可能となっております。
 このレジストリに関連して、治験の紹介や高血圧・糖尿病・心房細動、あるいは先ほどのバイオマーカー研究、あるいはレビー小体型認知症に関する研究、難聴や顔認識に関する研究、あるいは東北メディカル・メガバンクとの連携研究に利活用されています。また、本レジストリから、この後紹介するJ-MINT研究のような大規模臨床試験に対象者を紹介し、コホート間の連携も行っています。1年後の疾患変化を調査したところ、認知症へのコンバート率は21.1%、リバート率は1.3%でした。概ね期待したMCIコホートは構築されたと思っております。
 (2)認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較試験、J-MINT研究が、昨年12月、531例を登録して登録完了いたしました。これは2012年からフィンランドで始まったFINGERS研究とリンクした研究ですが、FINGERSを超えてランダム化介入研究であること、それから認知症のバイオマーカー研究も組み合わさる点が大きな特徴です。また、研究対象の中に民間企業が多数参画している点も特徴です。
 (3)10年間の認知症診療で蓄積された臨床情報、脳画像、ゲノム、血液バイオマーカー、ケア情報を含むデータベースの整備を開始いたしました。認知症のリスク、予防、早期診断、治療、ケア、長期予後を解析できるデータベースの作成を依頼し、整理後は公開を予定しております。また、血液バイオマーカー開発研究と連携しています。
 次に、ロコモフレイルセンターの活動について報告いたします。令和2年度資料の24ページを御覧ください。2本目の柱であるロコモフレイルセンターでは、世界初のロコモフレイルに対する包括的診療を行い、令和2年度は134名、累計788名の患者さんに達しました。継続して経過観察できている患者さんは370名です。平成31年度から開始した栄養指導による介入や運動指導による介入が本格化し、栄養指導は81名、運動指導は91名に実施されました。この外来カルテを基に(2)に示すようなレジストリを構築し、サルコペニア、フレイルに関する臨床試験を開始しています。
 続いて、資料の25ページを御覧ください。民間企業やアカデミアとの共同研究も進んでおり、サルコペニアの評価資料としての画像診断に関する共同研究が始まっています。また、全国1,740の自治体に対して、介護予防・通いの場に関する調査を実施し、介護予防・通いの場の実態把握を行いました。ここにお示しした介護予防ガイド実践・エビデンス編を作成し、当センターホームページに掲載するとともに、全国の自治体へ郵送いたしました。是非、御利用いただければと思います。
 令和2年度資料の26ページを御覧ください。3番目、医療の提供に関する事項では、4点を示します。1つ目は、退院後の自宅療養、退院時から切れ間なく、かつ円滑に安心できるよう支援するトランジショナルケアチームの活動です。様々な栄養支援、排泄支援、多様な薬物投与技術、実際の自宅環境での家族への指導など、医療が高度化したことにより、このような需要は大変高まっています。令和2年度はコロナ禍ではありましたが、113名に対して374回のアウトリーチを行っており、令和元年度と比べても遜色ない結果でした。
 2つ目はエンドオブライフケアチームの活動です。令和2年度の新規依頼件数は116件であり、うち非がん患者の依頼件数は62件、非がん疾患の比率は53.4%でした。緩和医療学会の調査によると、同規模の病床数の病院における非がん比率は5.3%ですので、当センターの目標とする非がん疾患に対して群を抜いて高い活動となっていることが分かっていただけるかと思います。
 3つ目は、非がんのエンドオブライフケアのガイドライン作成です。系統的レビューを行い、非がん疾患のエンドオブライフケアに関するガイドラインを作成しました。現在、公開に向け、Mindsガイドラインライブラリーへの掲載を申請中です。エビデンスに基づいた非がん疾患のエンドオブライフケアの標準化が期待できると思います。
 4つ目は、アドバンスケアプランニングファシリテーターの養成です。これは人材育成とも関連しますが、研修に関してはCOVID-19感染症の影響が大きく、アドバンスケアプランニングのリーダーやファシリテーター養成のための研修会においては集合型研修を諦めて、新たにオンライン研修プログラムを開発し、愛知県下2か所の研修拠点で医師、看護師を含む多職種で計50名に対しての研修を行いました。研修における意思決定支援技術は共有意思決定(SDM)の評価スケールを用い、意思決定支援技術に不足している内容の抽出を行いました。この評価スケール(日本版SDM-Q-Doc)の信頼性・妥当性評価を当センターで行い、これを論文化しております。
 令和2年度資料の27ページを御覧ください。リハビリテーションニーズの多様化に対するための組織基盤作成です。主として高齢者リハビリテーションに関するものです。昨年度先行版を紹介した「在宅活動ガイドHEPOP2020」が完成し、日本語版、英語版の作成と公表を行いました。外出自粛が唱えられる中、生活が不活発になり、心身機能が低下する高齢者が増えることが懸念されるとともに、リハビリテーションをはじめとする医療サービスの提供も以前のようには行いにくくなっております。
 このような状況下においても、できるだけ健康な生活が送れるような在宅活動ガイドを発刊いたしました。また、テレワークで不活発な生活を余儀なくされている若い方でも、どこでも簡単に体を動かす機会を作っていただくことを目的に、健康増進のためのテレワーク体操、「どこでもHEPOP」を作成しています。
 2つ目はADL評価ツールNPASの開発です。ADL評価の医療と介護現場では、シームレス化に向けて、専門性があり、かつ客観的な、医療・介護の専門職以外でも簡便に使えて高い信頼性を持っている指標が欲しいということで、この日常生活活動指標NCGG Practical ADL Scale、略してNPASを完成させました。
 3つ目は、早期リハビリテーションの充実及び医療安全の推進です。高齢者にとってリハビリテーションは機能回復だけではなく、機能維持のためにも非常に重要ですが、発症早期より開始するリハビリテーションは有効性が高いことが分かっており、この早期のリハビリテーションをいかに充実させるかということで、令和2年度においては、初期、早期のリハ開始実績が過去最大となりました。また、転倒事故が多いのは、どうしても朝と夕方になるので、この時間帯に療法士を厚く配置して早出・遅出勤務を充実させ、実際にこの事例発生件数を減少させています。
 令和2年度資料の28ページを御覧ください。高齢者における感覚器障害は日常生活への影響、認知機能への影響等、非常に重要であるにもかかわらず、年齢の影響として軽視される傾向にあります。当センターでは先進医療と高齢者の感覚器障害をスクリーニングして早期に見出す挑戦を行ってきました。先進医療としては水疱性角膜症に対する培養角膜内皮細胞注入療法や難治性角結膜上皮症に対する培養口腔粘膜上皮移植を行い、難治性角結膜上皮症に対する移植に関しては、医師主導臨床治験と観察研究による臨床データを既にPMDAに提出し、承認申請を行っているところです。
 図に示すような5つの感覚、触覚は併合覚のことがあるのですが、これは問診簡易検査でスクリーニングし、感覚器リハビリテーション、フレイル予防への評価・介入、サルコペニア予防、認知症治療への介入につなげていこうとするものです。したがって、病院内のもの忘れセンターやロコモフレイルセンターと強く連携して、この活動を行っております。研究成果はまだこれからですが、今はもうデータの蓄積が始まっています。
 続いて、評価項目1-4の人材育成に関する事項です。令和2年度資料の31ページを御覧ください。人材育成に関する事項に関しては、ここはやはりCOVID-19感染症の影響が非常に強く出ました。多くの集合研修は、繰り返し発令される緊急事態宣言で開催中止を余儀なくされました。認知症施策推進に向けた各種研修、専門医等の育成の中でもサポート医研修は、昨年度後半、老健事業の追加支援を受けて、グループワークも含め、全てWebで行うシステムを構築することができました。人数はどうしても限られますが、1月から3月の間に集中的に実施することにより、サポート医を養成することができました。
 認知症初期集中支援チーム員研修は、サポート医研修と違って非常に多職種で、しかも、受講生のネット環境が様々であること、人数もサポート医研修よりもはるかに多いことから、感染管理を徹底させ参加人数を3分の1程度に絞り、グループワークを行いながら工夫して、辛うじてリアルタイムで実施することができました。幸い、感染は全く起こりませんでした。本年度は座学をeラーニングで行えるようにして準備を進めています。
 続いて、令和2年度資料の32ページを御覧ください。今、紹介した2つの研修以外にも高齢者医療・在宅医療総合看護研修、レジデント及び専門修練医の育成、老年医学サマーセミナーの開催、連携大学における研究者の育成、当センターの開発した認知症予防プログラム「コグニサイズ」の指導者・実践者養成研修、それから在宅医療に関する研修を引き続き行ってまいりました。
 それでは、この6年間の総括である第2期中長期目標期間業務実績概要説明資料の18ページを御覧ください。もの忘れセンターでは3点を強調したいと思います。1番は世界の最先端をいく画像、血液バイオマーカーの認知症診断システムを構築できたこと。2番目は軽度認知障害の人たちを中心とした登録システムを設立できたこと。これによって、新しい治療薬の受け皿が確立し、リクルートシステムができました。3番目は、これまでエビデンスの乏しかった非薬物療法に関する介入試験を開始したことで、次の中長期計画の前半にもその成果が出ることが期待できます。
 19ページを御覧ください。ロコモフレイルセンターのこの6年間をまとめました。先ほどのもの忘れセンターと同様に、フレイル・サルコペニアの画像診断を中心とした、より客観的な指標の確立を目指し達成してきています。フレイルのレジストリを構築しつつあること、そして、改善のための介入研究を開始したことがポイントです。更に今年度後半から医師主導型臨床治験も開始されることになっており、次の6年間でその成果が期待できます。この研究を見ても、ナショナルセンターの特徴である病院と研究所が併設されている特性をいかして、ここに示すような基礎研究と一体となった研究、企業との共同研究を進めている点も強調しておきたいと思います。
 実績説明資料の20ページを御覧ください。感覚器診療の構築です。先ほど説明したように、2つの精神的なところとスクリーニングなところで進めてきています。これは第2期中長期計画の後半から開始しているものですから、本格的な成果はこれからだと思いますが、高齢者の感覚器障害対策は今後も非常に重要な課題だと考えております。
 実績説明資料の21ページを御覧ください。リハビリテーションの充実に向けた様々な取組と診療実績です。いずれの指標も右肩上がりになっていることがお分かりいただけるかと思います。高齢者にとって社会生活継続のための維持リハビリの重要性は、ますます高くなるものと思っております。今から20年前は、そもそも認知症の人はリハビリの適用にならないと言われていたのですが、それが現在では、最初に紹介したように、個別リハビリの対象となってきています。フレイルの問題も絡めて、健康時からの維持リハビリテーションがますます求められるようになってきていると思います。
 実績説明資料の22ページを御覧ください。地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実に関してのこの6年間、特に力を入れてきたのは、先ほど紹介したトランジショナルケアチームの活動とアドバンスケアプランニングファシリテーターの養成です。これらの活動がこの6年間で広がっていることを示しています。病院から自宅への生活を円滑に進めるトラジショナルケアチーム、これは在宅医療との関係が深いことは言うまでもありません。また、これまでがんの患者さんにおいて語られることが多かったエンドオブライフを非がんの患者さんで検討することは、当センターの重要な役割と認識しております。
 実績説明資料の23ページを御覧ください。人材育成に関する資料です。認知症サポート医養成研修と認知症初期集中支援チーム員研修を示しています。これらは昨年度には当初目標養成者数に達していますが、昨年度、実はこの会でも御指摘を受けたのですが、数が達成されたのは分かったと、では、一体どのようなことができるようになったかを説明してほしいという御質問を頂きました。サポート医、初期集中支援チーム員とも新オレンジプラン、認知症大綱で非常に重要な役割を与えられています。サポート医に関しては、専門医の育成にはどうしても時間がかかります。その中で地域の認知症の相談窓口として、初期集中支援チーム員としての役割が目立つようになってきました。最近では、病院の中での認知症対応多職種チームの中心となる医師としての活動が目立ち、受講生も増加しております。認知症初期集中支援チームに関しては、このチーム名から、どうしても早期の認知症を見付けるチームという誤解を招きやすいのですが、もちろん、そのような目的もあるのですが、認知症ケアパスの中でも、認知症を疑われてもなかなか医療につながらない人たちに、こちらから出向くチームという点が非常に重要な点だと思います。
 このコロナ禍において、昨年度の調査では、例えば、地域包括のチームでは62%が、医療機関チームでは79%のチームが何らかの影響を受けたと回答しているのですが、その中でも集合会議を早い時期からWeb会議に切り替えて対応したり、訪問回数や訪問人数を減らし、でも回数を何とか保ちながら訪問することを続けながら、かなりのチームに対応を続けていただきました。このような状況下ですので、高齢者や認知症の人たちは外出抑制、あるいは、その結果として起こる心理的・身体的な不活発が非常に大きな課題です。このような状況であるからこそ、こちらから訪問する認知症初期集中支援チームの役割は大きいと考えております。これらの研修は、日本ではもちろん、世界でも類を見ない研修であると自負しております。最近、海外からも、これらの研修をより各国の実情に合わせたものとして利用したいという要望が届いております。研修に対しては、単年だけでなく6年間の経過も考えて自己評価をAとさせていただきました。以上です。どうもありがとうございました。
 
○国立長寿医療研究センター松原企画戦略局長
 続いて、1-5、医療政策の推進等に関する事項について、企画戦略局から御説明いたします。まず、令和2年度業務実績についてです。恐れ入りますが、令和2年度資料を御参照ください。自己評価ですが、33ページのとおりAとしております。
 次のページです。まず、診療ガイドラインとして、34ページの(1)のとおり3月にフレイル高齢者・認知機能低下高齢者の下部尿路機能障害に対する診療ガイドラインを作成しました。実地医家・看護師や介護職等にとっても有用性が高いものです。
また、医学、医療及び社会全般の在り方に関する提言として、(2)のとおり、昨年9月に日本学術会議において、「活力ある超高齢社会の構築に向けて」が出されましたが、理事長がこの取りまとめに当たったところです。
 さらに、新型コロナウイルス感染症に関する取組として(3)のとおり、同年8月に日本老年医学会から「新型コロナウイルス感染症流行期において高齢者が最善の医療等を受けるための提言」が行われましたが、これについても理事長等が取りまとめに当たっているところです。
新型コロナウイルス感染症については、理事長が議長、当センターが事務局を務めております(4)の認知症医療介護推進会議や、当センター等が本年2月に開催した認知症医療介護推進フォーラムにおいても取り上げられ、同フォーラムについては1,200名を超える視聴の申込みがあったところです。
 次のページです。同じく2月には、35ページ(5)のとおり、認知症に関する臨床研究のネットワークであるWorld-Wide FINGERSネットワークと連携してJ-MINT研究等を取り上げ、新型コロナウイルス感染症の流行時における臨床研究の課題等を整理しております。
同様な国際的な取組としては、(6)のとおり、昨年5月、理事長が参画しているアジアサルコペニアワーキンググループにおいて、各国の状況を踏まえた提言を行っております。
このほか、新型コロナウイルス感染症については(7)のとおり「健康長寿教室テキスト第2版」等を通じた情報提供を行っているところです。
 地方公共団体に対しては(8)のとおり、例えば、認知症についてリーフレットの作成、研修実施等に対する支援などを行うとともに、認知症ケアパス作成等に関する手引や予防に関する取組事例集作成などを行っているところです。
以上の実績も加わっていますので、第2期中長期目標期間における自己評価についても、同期間の実績資料の23ページのとおりAとしているところです。以上です。
 
○祖父江部会長
 短い時間で非常に急いで発表していただいたという感じになってしまいましたが、いかがですか。要領よくまとめていただいたと思いますが、何か御質問等ありますか。お手を挙げていただけるといいのですが、花井委員、お願いいたします。
 
○花井委員
 コロナ禍においても、お年寄りはリハビリテーションには来られているというところで、コロナで運動不足になって、どんどんフレイルなどが悪化するのを防ごうと一生懸命やられているなと思って感心しました。中長期の評価で地域包括ケアシステムに対応した医療モデルを2-6のスライドの22枚目で示されています。これは恐らく、地域包括ケアシステムと言い出してから、2016年頃からですかね、かれこれ5年ぐらい経って、病診連携や病院にもアウトリーチする、診療報酬など整備されているのですが、私どももいろいろな地域で長期療養の、いわゆる病診連携あるいは訪看、あるいはケアマネ等々と連携していますと、やはり地域とその地元の中心となる開業医の先生のレベルによってすごくばらつきがあり、確かに大府市においてうまくいっていることが、果たして全国にどう均てん化できるかというのは、多分、5年前にも申し上げていたかと思います。5年経って、地域格差や病診連携や包括ケアシステムというのは、着実にうまくいきつつあるのか、まだまだ課題が多いのか、その辺の評価というのはいかがなものでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 おっしゃるとおりで、それは本当に両方あると思います。いろいろな意味で長年いろいろな調査を行ってきており、例えば、ケアパスでどのぐらいで実施されて、どのようなケアパスが作られているか評価を定期的に行ってきているのですが、そのようなことを見てると、非常に良い試みをしている都市が増えてきているなという実感はあります。ただ、おっしゃるとおり、それが本当に全国でできているかというと、そうではないので、これもやはり継続して努力していくしかないと思っています。
 
○花井委員
 素晴らしい所が増えましたよね。ここはすごく素晴らしいというのは、5年間で増えた感じはしますが、均てん化となると、まだまだな感じを受けたので質問しました。これはデータとしては取っていないのですか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 はい、取っています。もちろん、全部ではありませんが、パートでは分かれてしまいますけどね。ケアパスを作っているとか、初期集中支援チームの活動はどうだという、どうしても分断した形になって統合されていない感じはあるのですが。
 
○花井委員
 厚労省が、これは包括支援でやったほうがいいんだ、病院から追い出したほうが医療費が安いんだみたいな、そのような思惑もあり、割と雑なことをやっているので、むしろそのようなデータを出していただいて、その地域包括ケアシステムという、きれいな言葉の5年後の実態、そして、これから10年後どうなるのかというところを、ナショセンでリアルなエビデンスで示していただけると、いろいろ国も反省するところ、若しくは、もっとやることができるかなと思いました。ありがとうございます。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。前村委員、よろしくお願いいたします。
 
○前村委員
 今の花井委員との御質問とも関連するのですが、トラジショナルケアは重要な取組だと思いますが、高齢者だといろいろな疾患を合併していることが多いと思います。その場合に、例えば、心不全など結構多いと思いますが、心不全合併患者の場合に、スタッフを教育していって心不全も一緒に診られるような方向性でいくのか、心不全などが合併する場合に関しては、また別のチームに任せてという方向を考えているのか、いかがでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 いいえ、これはできるだけ1つのチームで行う方向です。高齢者で専門医導入をやり始めてしまうと切りがなく、複数の疾病を持っておられますので、これはできるだけワンチームでそれに対応できることがポイントだと思います。
 
○前村委員
 そうすると、スタッフの教育、人材育成をしながらワンチームで診ていく、素晴らしいと思います。ありがとうございます。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 まず、基本的にはワンチームだと思いますが、やはり心臓の場合、デバイスなど、その扱いに特別なテクニックやスキルが必要な方のケアもありますので、そこはやはり専門の看護師の育成も大事だと思っております。心不全認定看護師であったり、あるいは病院とのスタッフとの連携であったり、そういった方も必要だと思いますが、基本的には病院長が今、申し上げたとおり進めてまいりたいと思っております。
 
○前村委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 それでは、藤川委員、よろしくお願いいたします。
 
○藤川委員
 冒頭のところで、コロナによって引きこもってしまう高齢者のフレイル等に対する対策に力を入れたとおっしゃっていたので、ここまで通して聞いての感想というか質問ですが、その中で、そこに重点を置いて論文なども一生懸命書いてきましたということだったのですが、非公表の資料の中に、長寿医療センターの発表論文数や英文論文の論文数を拝見すると、減少しているように見えます。厚労省だけでなく、国交省などの研発法人においても、コロナによって、ある意味、落ち着いて研究ができたなどとおっしゃる所があり、論文も増えましたという所が割と多いのですが、減ってしまったのはどういうことなのか教えていただけますか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 基礎研究については落ち着いてという面もあったかと思いますが、我々センターの売りはコホート研究、臨床研究であり、コホート研究に関しては、我々がやりたいと言っても自治体のほうで待ったがかかる場合があります。どうしても調査研究というのは、恐らく、ほとんどの大学が持っておられるコホートで中止あるいは中断を余儀無くされたかと思います。その間、データを分析して論文を書けばいいのではないかという御意見もあるかと思いますが、やはりデータ収集がうまくいかないことが、我々の1つの大きな強みである疫学研究におけるアウトプットを減らしたということになったかと思います。
 臨床研究も正に同じで、病院での臨床研究、先ほどJ-MINTという研究を紹介しましたが、これは非常に希なケースだと思っています。これは集合型の介入研究ですので、どうしても患者さんに来ていただいて、検査をして集団で介入をするということで、ほとんどの医療機関でこういった形の臨床研究をストップしているかと思っています。こういった研究を何とか予定どおり患者さんのリクルートを終了し、介入も緊急事態宣言でWebなどを使いながら何とか継続している状況で、かなりこの新型コロナウイルス感染症による影響とともに、緊急事態宣言による影響は、この臨床あるいは疫学研究にとって大きかったということで、学会発表もかなり減っておりますし、そういった意味で今年は少しダウンしたかもしれませんが、来年度以降は、地道にこういった研究を続けておりますので、必ず数は増えると思いますし、先ほどお話した院内、センター内のデータ整備をかなり充実していますので、データベースからの研究成果がこれからものすごく増えると考えております。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。ほかにはありませんか。大西委員、よろしくお願いします。
 
○大西委員
 大西です。ロコモフレイルセンターのレジストリについてお伺いしたいのですが、このレジストリは外来患者さんを登録患者にしているという設定ですよね。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 はい、外来患者さんです。
 
○大西委員
 そうしますと、770名と書いてありましたが、規模としては余り大きくならないということですか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 そうですね。おっしゃるとおり、規模としてはそんなに大きくならないと思います。外来の患者さんですので。
 
○大西委員
 ですよね。それで十分なレジストリの研究ができますか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 そうですね。もちろん、今後はほかのセンターと連携していくことを考えていかなければいけないと思っています。例えば、東京の健康長寿や、ほかとも連携して数を増やしていくことが必要かと思います。単施設だけではなかなかレジストリ研究は難しいところもありますので、それは今後の課題として必要かと思います。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 補足させていただきます。レジストリに関しては、今、病院長が申し上げましたように、東京都の健康長寿にも同じ規模のレジストリがあり、長寿医療の研発費を使い、多施設のレジストリ研究を行っております。10施設、8大学と一緒にデータがかなり集まっており、今のトータル数は記憶しておりませんが、3,000ぐらいのデータになっておりますので、今後、そのデータを整備していきたいと思っております。このフレイル、ロコモに関して、もの忘れセンターのように年間1,000という数を達成できていませんが、非常に幸運なことに、昨年4月から後期高齢者の健診が始まりました。この後期高齢者の健診は、いわゆるフレイル健診と言われており、フレイルの早期発見、すなわちプレフレイルから発見をして、問題があった場合に長寿センターに紹介していただく仕組みを地元の開業医の先生方と構築しており、このコロナで開業医や医師会との連携がなかなか図れなかったのですが、ようやく先月、医師会との会合ができましたので、これから大府市だけではなく、ほかの市町の医師会とも連携してフレイル健診から患者さんを増やしていこうと考えております。
 
○大西委員
 そうですね、それは良い取組だと思います。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 それでは、根岸委員、よろしくお願いいたします。
 
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。今の御発表の中で27ページにありますNPASについてお尋ねします。この大変なコロナ禍の中で、リハビリテーションに関する実績をかなり上げておられてすばらしいと思いました。このNPASについてなのですけれども、ポイントの所に「簡便かつ詳細に」という言葉が書かれていますが、簡便でありながら詳細と、ちょっとイメージしづらいのですけれども、具体的にこのNPASというのはどういったツールなのか特徴を教えていただければと思います。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 私から回答させていただきます。もともとこのADLの評価に関しては地域で使われるバーセルインデックスというのもあります。これは非常に簡単で、ある程度誰でも評価ができて、100点満点で評価ができるというツールですけれども、なかなか介入による変化、介入による効果が見えにくいという欠点があります。
 一方、病院、回復期の病棟などではFIMというのが使われていて、このFIMでADLを評価するということは一般的に行われていますけれども、これは専門職しかできないという欠点があって、このFIMのデータをそのまま、その患者さんが在宅に入ったときに全くいかすことができないということで、このADLの評価に関しては、地域いわゆる在宅での評価と、病院での評価にかなりのギャップがあるという問題があります。そのギャップを埋めるためにこのNPASを作ったということなのですけれども、実際には個々のいろいろな動作ができるできないで評価していきますので、FIMのように専門職でなくて、例えば介護をする方でもできるという特徴を持っています。
 しかもNPASを作って今、アプリにしていますので、御家族で患者さんのADLをiPadあるいはスマホを使って入力ができます。それで点数化をすることができて、そのデータを見て我々がFIMだったらこのくらい、そしてバーセルだったらこのぐらいと、一応相関が出ていますので、そういった形でNPASを真ん中に置いて、それを多くの方に使っていただいて、実際の専門的な評価については専門的な療法士あるいは医師が評価を行って、介入のポイントを決めるとなっています。
 実際には細かい手足の動作が入っているのですけれども、問題のある動作の難易度というのが分かっています。その難易度を明らかにすることによって、例えばAという動作ができない場合、それ以降の動作をするためにどのようなリハビリテーションをするのがいいのかということを、これから作るということで、ほとんど出来上がっているのですけれども、例えばものを食べるのにうまくいかないといったときに、どこに問題があるか。例えば筋力が弱いから筋力のトレーニングをするのかどうか。そういったトレーニングにもつなげるということで、在宅で御家族が評価をできて、次のステップは何かと。それを全部自宅で完結して、自宅で介護者の方が評価をしていく。そのデータを医療の側が受け取って、治療効果が上がっているか、次のステップは何かということを、家族に指導できる。そういうシステムを今、考えています。
 
○根岸委員 
 ありがとうございます。そうすると、評価をするのは家族ということになるのですか。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 
 基本的に誰でもできます。もちろん医療専門職もできますし、家族もできる。そういうことでFIMの問題である医療専門職しかできないという問題点をクリアしています。
 
○根岸委員
 項目はベーシックに限らず、もう少し手段的なADL、アドバンスドADLに踏み込んでいるのですか。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 基本的にはADLになります。手段的ADLは脳梗塞の方を主に念頭に置いていますので、そういった疾患ベースで基本的なADL障害がある場合を想定しているとお考えいただければと思います。手段的ADLはまた別の手段が必要ではないかと思っています。
 
○根岸委員
 分かりました、ありがとうございます。完成を楽しみにしています。よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 もうちょっとだけ時間があるようですので、私から1つだけちょっとお伺いしたいのですが、先ほど来、高齢者のリハビリテーションの話が幾つか出ておりますが、私も高齢者のリハビリというのは今後ますます重要度を増してくるのではないかと思います。病院長先生がおっしゃったように、昔はちょっとあきらめていたようなところがあって、余りきちんとやっていなかったのではないかと思いますが、逆に先ほど来話が出ているように、心不全はあるは、肺気腫はあるは、フレイルはあるは、認知症はあるはというような、幾つかの病気が内臓疾患も含めて重なっていますね。そういう場合に、どういうメニューでどういう形でやると、どれぐらいのアウトカムが見込めるのかというようなデータが、実は非常に重要ではないかと感じています。
 これはなかなか言うは易く、心不全だけしかない人にリハビリするのと全然違う患者のメニュー、考え方が必要かもしれないのですが、これをむしろ長寿研で開発していただけると有り難いと思っています。これは津々浦々で困っているところではないかと思っています。これは質問のようで質問ではないのですが。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 今のお答えをしたいと思います。実は先ほど御紹介したHEPOPというのは、一般的なフレイルの方を対象に作ったもので、御自分とか御家族が評価をして、適切なメニューを自宅でできるということです。今、社会実装の研究を行っているので、ちょっとアウトカムが出ていない、結果は出ていないのですけれども。同時に今おっしゃったような脳卒中があったり、心不全があったり糖尿病があったり、そういった疾患ベースのものも作っていて、それは本にしています。これから出版予定で今作っていますので、そういったものを多くの方に使っていただけるようにしたいと思っています。同時に、そういった資材を現場で使っていただいて、ちゃんと実証していくということを計画していますので、この第3期の中ではそういったこともできると考えています。
 
○祖父江部会長
 是非進めていただけるといいと思いますし、やっぱりアウトカムがどうなのかというところも、もしできればインプットしていただけると有り難いと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長 
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 それでは時間が少し超過しましたので、この部分はこれぐらいにして、次の業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項ということで、2-1から4-1について議論したいと思います。これも時間が非常に短いので、手際よくやっていただけるといいと思いますが、説明8分、質疑6分です。法人からよろしくお願いします。
 
○国立長寿医療研究センター松原企画戦略局長
 企画戦略局から御説明します。まず令和2年度業務実績についてです。まず、評価項目2-1、業務運営の効率化に関する事項についてです。自己評価は令和2年度実績資料36ページのとおりBとしています。Ⅱの経常収支率は約98.8%で、目標値の100%とはならなかったものの、令和元年度より改善しています。後発医薬品のシェアについては約80%で、達成度は約133%です。一般管理費については約21.5%で、達成度は約143%です。
 次のスライドです。具体的には37ページ(1)のとおり、リハビリテーションの充実等による医業収益の確保、競争的研究費の獲得等による研究収益の確保、水道光熱費の削減等による費用の適正化に取り組んでいるところです。
電子化については(2)[1]及び[2]のとおり、引き続き職員による自己点検を実施するとともに、資産管理システムを活用し、不正接続対策を強化しました。また、[3]のとおり情報系基幹ネットワークの更新を行い、インターネット接続について商用プロバイダから学術情報ネットワークに切替えを行っています。さらに[4]のとおり、電子メールをグループウエアに移行を行い、セキュリティ及び利便性の確保に努めています。加えて[5]のとおり、標的型電子メールに関する訓練を実施して、電子メールに関する安全性の意識向上に努めています。
 次のスライドです。収支について補足しますと、38ページのとおりになります。
医業収支については約4,500万円のマイナスになっていますけれども、先ほど理事長から発言があったとおり、新型コロナウイルス感染症による患者数の大幅な減少が影響したもので、患者当たりの単価は増加しています。なお当センターにおいては、地域の医療機関間における機能分担もあり、先ほど理事長から申し上げましたとおり、新型コロナウイルス感染症に関する大規模な公的支援を受けていないことについても、御留意いただければと思います。
 医業外収支については、約2億3,600万円とマイナスではありますけれども、令和元年度と比較して、大幅に改善しています。
総収支差についても約2億8,100万円とマイナスではありますが、令和元年度と比較して改善しています。
 次のスライドです。評価項目3-1、財務内容の改善に関する事項についてです。自己評価は39ページのとおりBとしています。Ⅲの外部資金についてですが、AMED等の受託研究に関するものを始めとして、約31億3,600万円に上り、前年度から約48%増加しています。寄付金についても約115%と大幅に増加しています。自己収入についてですけれども、診療情報管理士を増員するなどして、診療報酬に関する各種の基準の取得に努めているところです。
 次のスライドです。外部資金について補足すると、40ページの図のとおり、令和2年度は平成27年度の3倍を超える額になっています。
 次のページです。最後に評価項目4-1、その他業務運営に関する重要事項についてです。自己評価は41ページのとおりBとしています。Ⅲの内部統制についてですが、内部監査を9回、監事監査を9回、会計監査人監査20回実施するなどしています。調達行為については、引き続き物品管理の業務を委託業者と協力するなどの取組を行っています。人事交流については引き続きAMED等を始めとした交流を行っています。
 次のスライドです。続いて第2期中長期目標期間の業務実績についてです。
次をお願いします。評価項目2-1、業務運営の効率化に関する事項についてです。自己評価は28ページのとおりBとしています。
次のスライドをお願いします。
29ページ(1)のとおり、経常収支率についてはわずかに目標に届かなかったものの、収益については患者当たりの診療点数が増加しているとともに、費用について保守料、電気料、診療材料等の削減を行ったところであり、後発医薬品の数量シェア及び一般管理費についても目標を上回っています。
 電子化については(2)のとおり、情報系基幹システムの更新を安価に行うとともに、資産管理システムの導入、不正接続対策、情報系基幹ネットワークの更新、電子メール及びグループウエアの移行、標的型メール訓練の実施等を行ったところです。
 損益について補足しますと、30ページのとおりとなります。経常収支差のマイナスについては、令和元年度までは増加していましたけれども、先ほど申し上げたとおり令和2年度では減少しています。また、令和2年度においては、先ほど申し上げたとおり、新型コロナウイルス感染症の影響により患者が減少し、診療収益が減少していますけれども、今後ワクチンの接種の進捗等を踏まえ、住民や他の医療機関に対する呼び掛けを強化するなどして、診療収益の改善に努めていきたいと思っています。
 次のスライドをお願いします。次に評価項目3-1、財務内容の改善に関する事項についてです。自己評価はそこにあるとおりBとしています。Ⅱ(1)のとおり、平成27年度と比較して、令和2年度の受託研究は約295%、外部資金全体は約203%増加しています。また寄付金についても、(2)のとおり令和2年度は平成27年度と比較して約270%増加しています。
 次のスライドをお願いします。次に評価項目4-1、その他業務運営に関する重要事項についてです。自己評価は32ページのとおりBとしています。Ⅱ[1]内部統制については先ほど申し上げたとおりです。[2]の施設、設備及び人事の最適化についてですが、まず新棟の建設が順調に進んでいて、令和3年度中に竣工する予定です。人事交流については先ほど申し上げたとおりです。そのほか専門的人材の育成を図るため、大学院との連携を図るとともに、職員の働きやすい職場環境の整備としてハラスメント防止等に関する規程の整備、ストレスチェックの実施、育児・介護休業の充実等に努めているところです。
 資料については以上のとおりですが、全体として申し上げますと、収支から見ると十分でないところもありますけれども、後発品の数量シェア、あるいは一般管理費については目標を大幅に上回っています。外部研究資金や寄付金についても、期間当初よりも大幅に増加しています。今後ともこれらの取組に加えて、病院における患者数や患者当たりの診療単価を増加させるなどの取組を更に進めていくつもりですけれども、御高承のとおり、患者数については新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けるものです。診療単価についても、当センターは主として加齢に伴う疾患を対象としているところで、高額あるいは頻回な検査、投薬、処置等が必要でなかったり、あるいは適当でなかったりする場合もありますので、その点も御承知おきいただいた上で御評価いただきたいと考えています。センターからは以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは今の御発表に対して、質疑をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。藤川先生、よろしくお願いします。
 
○藤川委員
 令和2年度資料の38ページに運営状況、前年度との比較というのを作っていただいていて、これは医業収支と医業外収支に分けているのですけれども、分けないで財務諸表を去年と比べたときに、経費が結構増えているなと思ったのです。25億ぐらいから31億に増えていて、38ページに経費の増と出てくるのは2,800万しか増えていないので、そうすると医業外収支の経費が増えているということですか。医業外収支の中で委託費等の経費と書いてありますけれども、これが5億増えていますが、研究のための委託費というのは委託費の中に入っているので、経費とは違いますよね。これは何が増えたのでしょうか。
 もう1つ、臨時損失で訴訟損失引当金繰入額が割とそこそこの金額になっているのですが、これは医療訴訟か何かですか。以上2点お願いします。
 
○国立長寿医療研究センター松原企画戦略局長
 1点目ですけれども、委託の関係は研究の委託に関するもので、全体として研究費自体が増えていますので、当然その執行に伴う委託も増えているということです。それから2番目の訴訟の関係ですが、これは医事ではありませんで、契約関係の見解の相違に基づいて今、訴訟を行っているところで、それのために念のため計上しているものです。以上です。
 
○藤川委員
 でも、念のためと言っても、引当金を計上するということはそれなりに発生の可能性が高いということだと思うのですけれども。すみません、経費に戻りますが、38ページに書いている委託費等の経費というのは、委託費自体は委託費勘定で処理しているけれども、それ以外のものも研究の獲得の増加によって増えているという意味で、経費が増えているという理解でよろしいでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター松原企画戦略局長
 はい、さようです。
 
○藤川委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 そのほかいかがでしょうか。ちょっといいですか、私から。外部資金獲得が結構好調ですが、コロナにかかわらずと言ったらいいのか、主にはこれは中身を見ますと、AMED研究費がかなり中心的な位置を占めている感じがするのですが、コロナの時期にそういうことは余り好調ではなかったのかもしれませんが、企業との連携研究といいますか、前から何回かお聞きしているのですが、今回どれぐらいに納まっているのでしょうか。共同研究と書いてあるのが、ひょっとするとそういう企業研究あるいは一番下の受託事業などが、企業との連携研究ではないかと思ったのですが、その辺をちょっと御説明いただけますか。
 
○国立長寿医療研究センター松原企画戦略局長
 企業の研究は共同研究の中に含まれていて、こちらは39ページにありますように、9億9,000万円余りでやはり前年度と比較しますと5%程度減少しています。御指摘のような事情があったのかもしれません。以上です。
 
○祖父江部会長
 だけど、そんなに落ちてはないですね、前年度と比較して。いかがでしょうか、ほかにはよろしいでしょうか。
 
○藤川委員
 よろしいですか、藤川です。すみません、先ほどの契約の話というのは、今、ホームページで見たのですけれども、中部電力のトーエネックという話かと思うのですが、工事完成前に一部を解除と書いてあるのですが、これは内部統制とか、そういう面では問題はなかったのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター松原企画戦略局長
 それについては確かに内部統制上問題がないわけではなかったと思っています。そのようなことも踏まえ、今現在、全ての契約については、役員も含めて幹部が全て把握するということで、かなり詳細なことについても情報を共有するという形を取っているところです。
 
○祖父江部会長
 いかがでしょうか、よろしいでしょうか。もしよろしければ、やはりちょっと時間を過ぎていますので、この項目についてはそろそろクローズにしたいと思いますが、よろしいですか。どうもありがとうございました。これでこの項目は終わりにしたいと思います。
 それで、時間が押していますが、全体を通じて何か御質問、今まで質問ができなかったことがあれば、出していただきたいのですが。大西先生、手が挙がっていますね、よろしくお願いします。
 
○大西委員
 冒頭、外来の患者さんが4割減っているという話がありましたけれども、98%の収支を達成されたというのは、大変な御尽力があったのだと思いますが、その背景として書かれていたのが診療報酬の点数が上がったということがありました。それは相当上がったということなのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 そうですね、大体点数でいいますと、4,700、4,800点だったのが5,000点を超えるようになったというレベルです。
 
○大西委員
 なるほど。入院の患者さんは相変わらずだったのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見病院長
 そうですね、入院は大体1割減。先生、外来は4割減ではなくて2割減です。
 
○大西委員
 2割減ですか、失礼しました。
 
○祖父江部会長
 よろしいでしょうか、どうもありがとうございます。もし何か全体を通じてお聞きになりたいことがあればと思いますが、もしなければそろそろ全体を終了したいと思います。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは質疑はこれで終了したいと思います。最後に法人の理事長先生と監事の先生からお言葉を頂きたいと思います。まず最初に監事の先生から監査報告をお願いできたらと思いますが、よろしいでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター二村監事
 監事の二村です。よろしくお願いします。監事の意見として監査報告がお手元にあるかと思います。令和2事業年度の業務・事業報告書、財務諸表及び決算報告書について監査を実施しました。結果を簡単に御説明します。
 今年度業務は法令等に従い適正に実施されていまして、内部統制システムに関しても法人の長の職務の執行について、指摘すべき重大な事項は認められませんでした。役員の職務の執行に関しても、不正行為・法令等に違反する重大な事実はありませんでした。財務諸表等に係る監査人、あずさ監査法人の監査報告及び結果は相当であると認めるということです。
 先ほど藤川先生から内部統制について御質問がありましたが、この点について、ちょうど3年ほど前の私たち監事の監査報告書において、この2番の所でそのことを指摘した監事報告書を提出しています。その後に関しては内部統制は順調に守られてやられていると思っています。
 4番の財務諸表に関して、先ほどからの新型コロナウイルスの影響を受けて、患者さんが大幅に減少し、当期純損失が計上されておりますが、高齢者に対する研究開発に加えて、法人としてどのようにこの損失を解消していくのかが求められており、理事長はじめ医業収益の改善をどう図るかが重要だと認識されており、理事会や運営会議において常に検討されていることを私たちは確認していますので、今後も見守っていきたいと思っています。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか、今のような御報告ですが。それでは、最後に理事長から、今日のディスカッションも踏まえながら、あるいは今後の展望などもちょっと触れていただけると有り難いのですが、最後に締めの御言葉を頂けたらと思います。よろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター理事長
 ありがとうございました。今日は長時間にわたり御審議いただき、ありがとうございました。まず、昨年来続いています新型コロナウイルス感染症により、スタッフ全員が精神的にも身体的にも疲労している中で、しかも運営費交付金がなかなか増えないといった状況で、今日発表したように様々な成果を上げていることを非常に誇らしいと思っておりますし、なかなか補助金を頂けない状況があったのですけれども、赤字が最小限にとどまったという状況であることは、私としても誇りに思っているところです。
 来年には、新棟が完成しますので、更に地域の方々と共に認知症、フレイル予防に関し、全国あるいは世界に発信できる研究成果を上げていきたいと思っておりますので、引き続き御指導いただきたいと思います。今後の展望という観点については、今は研究ベースで行っていますけれども、オンラインによる診療については、やはり高齢者のオンライン診療は非常に重要なツールだと思っています。現在ほとんどの患者さんがマスクをして来られますので、口の表情がなかなか外来で読み取れないという状況もありますし、特に認知機能が低下している高齢者においては、表情が十分に分からないというのは我々にとって非常に不安になります。その不安を取っていただく1つの方法として、オンラインの診療があると考えていますので、先ほどのチーム医療というものも組み合わせた形での研究を行うことによって、診療報酬にいかにつなげていくかということを、是非とも検討していきたいと思っております。
 もう1つは、外来機能をどこかに設けるということも、この中長期で何とか実現したいと思っています。そういったことを行いながら研究開発を進めるということで、第3期中期計画においては必ず黒字化を目指したいと考えていますので、引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。以上で終わります。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。正に今まとめていだたいたことが全てだと思いますが、今後のポストコロナに向けての非常に力強いお言葉を頂いたのではないかと思いますし、令和2年度と中長期の表紙がいずれも新棟になっていますので、来年の新棟竣工に伴って更に方向が見えてくるのではないかと期待しているところです。今日は本当に長時間にわたり、ありがとうございました。これで全てのディスカッションを終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 どうもありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 事務連絡が最後にありますか。事務局、いかがでしょうか。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局です。今後の流れについて御連絡いたします。前回審議と同様になりますけれども、本日御議論いただきました実績評価については、今後本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメントを踏まえ、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに、公表いたします。委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、前回7月29日の審議分と合わせて8月10日までに事務局宛てメールでお送りいただければと思います。決定した内容については、後日、委員の皆様にお送りいたします。
 次回の審議は、8月6日金曜日14時から、国立循環器病研究センターと、精神・神経医療研究センターの評価に関する審議を予定していますので、よろしくお願いします。事務局からは以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。長時間にわたって本当にありがとうございました。感謝申し上げます。それでは、本日は以上で終了とさせていただきます。また次回がございますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
 
○笠松課長
どうもありがとうございました。