第16回厚生科学審議会がん登録部会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和3年7月7日(水)13:00~15:00

場所

オンライン開催
 

議題

(1)現行のがん登録推進法における課題抽出と解決に向けた検討【公開】
(2)院内がん登録 全国集計データの活用の検討【公開】
(3)新規申出の全国がん登録情報の提供について【非公開】

議事

 
【公開部分】令和3年7月7日開催の第16回厚生科学審議会がん登録部会
 
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第16回「厚生科学審議会がん登録部会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、御参加いただきましてありがとうございます。本日司会を務めさせていただきます健康局がん・疾病対策課がん対策推進官の岩佐と申します。よろしくお願いいたします。
本日もウェブでの開催とさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
なお、本日の公開部分につきましては、YouTubeにおいて配信をしておりますので、御承知おきください。
委員の出席状況でございますが、本日、小俣委員、家原委員及び荒木委員より御欠席の御連絡を頂戴しております。また、本田委員と友岡委員が途中退席をされると御連絡を頂戴しているところでございます。
本日のがん登録部会の委員定数23名に対しまして、現在出席委員が20名ということでございますので、必要な定足数12名に達していることを御報告申し上げます。
また、新任の構成員につきまして御紹介させていただきます。公益社団法人全日本病院協会副会長の中村康彦委員でございます。
中村委員、一言御挨拶を頂戴できればと思います。よろしくお願いいたします。
○中村委員 全日病から参加させていただいています中村康彦と申します。私は埼玉県の上尾市でがん診療拠点病院をやらせていただいています。今回初めて参加するということで、まだ何も分かりませんけれども、皆様、ぜひよろしくお願いいたします。
以上です。
○がん対策推進官 ありがとうございました。
本日、2名の参考人に御出席をいただいております。
国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センターのセンター長、東尚弘参考人。
それから、公益社団法人日本看護協会常任理事の森内みね子参考人となっております。森内参考人につきましては、団体役員の改選に伴いまして今回手続が間に合わなかったところもございますので、今回は参考人として御参加いただき、次回以降委員として御参加いただくよう考えてございます。
また、オブザーバーとしまして、国立がん登録の窓口組織であります国立がん研究センターがん対策情報センターの皆様の御参加について、事前に委員長より認められておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、以後の進行を辻部会長のほうにお願いいたします。辻部会長、よろしくお願いいたします。
○辻部会長 皆様、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
最初に、事務局から資料の確認をお願いします。
○事務局(渭原) 健康局がん・疾病対策課の渭原です。
それでは、資料を確認させていただきます。事前にメールで送付させていただいておりますが、「第16回厚生科学審議会がん登録部会」の議事次第、そして資料1と資料2。こちらは公開部分になりますが、資料1が東参考人提出資料の「現行のがん登録推進法における課題抽出と解決に向けた検討」。資料2が「院内がん登録 全国集計データの活用の検討」でございます。資料3から資料6に関しては非公開資料となりまして、資料3が「全国がん登録情報の提供に関する申出一覧と申出概要」。資料4-1から4-4までが「申出書類」。申出番号の0001番から0004番。資料5「申出者に対する質問事項と回答書」。資料6「『匿名化』の判断を求められた申出概要と申出理由書」となります。
いま一度お手元の資料を御確認いただき、資料の不足・落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。非公開の資料は画面共有されませんので、御了承いただきますようお願いします。
○辻部会長 それでは、委員の皆様、資料に問題はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、議事に入りたいと思います。議題1「現行のがん登録推進法における課題抽出と解決に向けた検討」に入りたいと思います。
これにつきましては、厚生労働科学研究費補助金によります研究課題「がん登録等の推進に関する法律の改正についての課題に関する研究」という研究班の研究代表者をしておられます東先生から御発表いただきたいと思います。がん登録等の推進に関する法律の課題について、お話を伺いたいと考えておりますので、お話をいただいた後、委員の皆様から御質問、御意見をいただきたいと思います。
それでは、東先生から資料1の御説明をお願いいたします。
○東参考人 国立がん研究センターの東です。
私からは、「現行のがん登録推進法における課題抽出と解決に向けた検討」というところで、研究班の検討を行ってまいりましたので、その報告をさせていただきます。
この検討は、先ほど御案内いただきましたとおり、「がん登録等の推進に関する法律の改正に向けての課題に関する研究」という厚労科研の研究班、その枠組みで行ってまいりました。
研究目的といたしましては、法改正への情報と論点を整理して、具体的な審議に役立てるということを目的としておりまして、実際には関係者から意見聴取をした上で、課題の整理、対応案などの検討を行っている次第です。結果は課題整理報告書としてまとめておりますので、今回はその中の主立った内容について御報告をさせていただきます。
課題整理報告書の概要でありますが、全国がん登録及び院内がん登録について両方をカバーして、8分野に整理しております。これはスライド12枚目以降につけている関係者からの意見募集というものをいたしまして、その結果を参考として検討いたしました。また、課題の整理だけではなくて、各項目について具体的な対応案も研究班で考えて記載しておりますので、併せて御報告いたします。
ここからがそれぞれの分野についての課題と対応案ということになります。まず、「全国がん登録の届出項目/ルール」についてということです。現状の課題でありますが、全国がん登録では、全ての病院に届出義務があるということから、同一の患者についての複数の届出というものが必然的に生じます。その照合・集約作業を行っておりますが、それを現在は氏名、住所、生年月日など、そういった情報で行っておりまして、相当な労力と時間を要するということになっております。
一方で、全国がん登録の項目は現在26項目ということで、少々限られておりますので、疾病の実態把握はある程度できますけれども、治療などへの展開を考える上では不十分といった問題も指摘されております。
そこで提案でありますが、最初の照合・集約ということにつきましては、効率化のために一意性のある番号を利用する、もしくはその他の付加情報を活用して効率化していく、そういう届出項目の見直しなどが重要ではないかと思っております。
また、有用性の観点ということに関しましても、項目の拡充ということも検討が必要でしょうし、また、ほかの情報との可能な連携方法を検討して、それを確立するといったことが改善につながるのではないかと考えます。
次に、届出手順/登録精度ということについてです。現状の課題としては、今、全国の病院に届出義務があるということで、正確な罹患数を把握するということは想定されておりますが、ただ、逆に届出漏れがあったとしても、それを把握する機会は死亡情報しかないというのが現状となっております。レセプトないしはほかのデータを活用するという仕組みは現在ありませんので、このように届出漏れがあった場合には、その方が亡くなるまでは分からないという問題があります。そのために、精度の検証であるとかその向上といった対策には限界があると言わざるを得ないのが現状です。
また、ちょっと違う話ですけれども、全国がん登録と院内がん登録は、現在データの収集が別ということになっております。そのため、年に一度ということではあるのですが、院内がん登録に出していただいている病院というのは、全国がん登録にもまた出さなければいけないということで、作業が重複しているという問題もあります。
ということで、提案になりますが、最初の点につきましては、法的根拠を整備して、市町村等の保有するほかのデータなどについても収集や参照可能な体制を整備して、総合的なデータインフラとして整備をしていくというのが必要ではないかと考えます。
全国がん登録と院内がん登録の違いに関しましても、一括届出をする仕組みが必須ではないかと考える次第です。
次に、データに関連してということになりますが、少し個別のことになりますけれども、現在名寄せ・照合を行う際に、氏名などが一致しているのに住所が異なるということで、この2つもしくは3人の方々が同一かどうかということを確認するために、住所異動確認調査を行っています。ここでは住民票の写しを都道府県から市町村に提出を求めて、その異動を追跡して確認をするという仕組みを取っておりますけれども、都道府県のがん登録の担当というものが、実際には県立病院や大学などの外部に委託されているということがあります。そうすると、市町村のほうでは、請求が来た元が都道府県でないものですから、公用請求には当たらないという判断をされてしまったり、あと、この請求は本当に大丈夫かという疑義照会が多く発生する。そういう円滑な協力がなかなか得られないという問題があります。これは実は国立がん研究センターでも同様でありまして、独立行政法人ということで、国の機関そのものでないことから、国立がん研究センターからの依頼というのは、市町村で公用請求ではないという整理をされてしまうというのが通常です。
そこで、研究班で考えた提案ではありますが、このがん登録のための住民票の写しの請求ということに関しては、何らかの形で公用業務として取り扱えるような体制を整備することが必要ではないかと思っております。そのうちの一つとしては、住民基本台帳法上でそのようなことが可能になるように明確に位置づけるというのが対策として重要ではないかと思う次第です。
次に、データの利活用についての課題ということです。これは様々な点があるわけですが、まず利用範囲であるとか利用者の範囲が明確ではなくて、ちょっと曖昧であるという問題もありますし、また、匿名化データがほかのデータと連結できない。個票データは国外に持ち出しができない。申出から審査、情報提供までの時間や労力が非常に多くかかる。こういった問題が指摘されております。
対策といたしましては、ほかの法律やルールなどとの整合性を図る必要がありますが、情報の利活用に関する規定をより整理して、他のデータベースとの連携や活用可能な仕組みを検討したり、また、審議におきましても、全ての利用において審議が必要ということではなくて、定型的な報告書の作成など、審議を経ずに提供できる業務などを規定する。もしくは簡易審査など、そういった方策も規定するといったことで、申出から承認までの時間短縮ができるのではないかと考えます。
次に、院内がん登録でありますが、院内がん登録は法律上、第44条で専門施設、地域のがん医療での中心的な施設の努力義務という形で規定されておりますが、その法的な利用範囲というものが少々不明確であるという問題があります。そのために、法律の施行後に全国集計データということで、全国の分を集めたものが活用できないということが起きております。
さらに、予後調査においても、法律が施行された後の院内がん登録については、全国がん登録から生存確認情報が提供されるということは規定されておりますが、5年生存率、10年生存率の統計を出すための現状といたしましては、施行前の患者さんの追跡が必要になります。そのような場合は、現状としては自主的に市町村に住民票照会などを行っておりますけれども、そちらのほうへ協力いただけるかどうかということについては、市町村でばらつきがあるというのが現状です。
ですので、対策としては、最初の点については利活用体制の整備を進めるということしかないと思います。これは私の次の報告で整理をさせていただいておりますが、そちらのほうを進めるのが良いと思います。
2番目の点については、何らかの位置づけ、予後追跡の位置づけを明確化して、市町村の協力が得られやすいような方策を考えるということが必要であると思います。
次に、がん登録推進法20条の問題であります。この20条というのは、病院から届出をしたがんに関して、届出をした患者さんに関する生存確認情報ですが、それを都道府県のほうに請求をされた場合、都道府県知事は、その生存確認情報を提供しなければならないという規定でありますが、しかし、現実には提供された情報を診療録もしくはほかのデータベースに転記してはいけないということになっておりますので、情報の管理が非常に限定されるということであるとか、共同研究への活用が不可能になってしまうという問題が指摘されております。
さらに、生体認証であるとか二重扉など、ほかの条文に基づく顕名の提供と同様の管理が必要といった疑義が生じておりまして、こちらはそういうことはないのですけれども、通常の病院ではそのような設備がないということで、適用も受けられないということが言われてきました。ですので、我々研究班の懸念といたしましては、これら管理については、法律の、通常の30条から34条の規定というのがありますが、それを20条提供の情報については別途規定するということが適切ではないかと考えております。
また、死亡情報については管理規定を別にするという形を取って、ある一定の柔軟な扱いを可能にするというのも必要だと思いますし、それに対応してマニュアルの改訂が必要かと思う次第です。
安全管理措置ということについては続きがありまして、それが厳しいということで、利用が困難だという指摘も寄せられています。
さらに、昨今のコロナ禍において、研究者がリモートで仕事をする、研究をするということが行われますが、その場合にリモートでこの情報を扱っていいのかということについての規定がないために、どうすればよいのかが分からないという問題も生じました。
対策としては、匿名化の強度や提供データの安全性について検討した上で、リスクに合わせて安全管理の在り方を考えるということが必要だと思いますし、オンサイト解析やリモートアクセスといったことについても整備が必要と思います。
今後の検討についてということでありますけれども、様々な課題を挙げさせていただきましたが、現行法下での課題ということについては、特に具体的な規定が明確にないという事項については、運用上の課題が生じやすいということが経験された次第です。そのため、今年度の研究班での検討につきましては、抽出された課題について、可能な限り想定を尽くして、法改正による対応を検討するということをやっていきたいと思っております。
私の報告は以上になりまして、スライドの以下の資料は意見募集等の詳細になっておりますので、適宜御参照いただければと思います。
以上です。
○辻部会長 東先生、どうもありがとうございました。
ただいま御説明いただきました内容につきまして、委員の皆様から御質問、御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。天野委員、どうぞ。
○天野委員 ありがとうございます。
先生、御説明いただきましてありがとうございます。私から3点ございますが、申し上げる前に、改めてがん登録法の立法趣旨というものを私から申し述べるというか、確認できればと思うのですけれども、もともとがん登録法は、国会の超党派議連で検討いただいて立法された法律だと理解していて、最初の頃はなかなか議論が低調で進まなかったという部分があったのですが、あるとき小児がん患者会の方々が議連を招いていただいて、議連のほうで、自分たちの経験した苦しみとかしんどいことが、これから続く小児がんの患者さんたちがもう経験しないようにしてほしいと。そのために自分たちのデータを活用していただけるのであれば、ぜひこの法案を成立させてほしいというお願いがあって、それで成立したという経緯があるのです。
なので、今回改正ということを視野に御検討いただいていると思うのですが、趣旨としては、データの利活用をしっかり進めていただいて患者さんに還元していただくということを趣旨に、こういった今回の論点もそれぞれ検討いただければと願っております。
その上で、私から3点意見を申し上げたいのですが、まず1点目は、今、東先生の御説明の中であったいわゆる20条問題の部分です。この部分があるために十分利活用が進まないということがあって、関係者の方からもその指摘は複数伺っているところですが、ただ、がん登録にあまり関心のない方からすると、いまいち何が問題なのか分からないということをおっしゃる方もいらっしゃるので、改めて東先生からこの部分についてもう少し詳しく御説明いただければというのが1点目です。
2点目は全国がん登録についてです。5年前にこの部会でも検討が始まった際、私も患者の立場から利活用が進むように、もしくは患者さんががん登録データを用いて何らかの意思決定に資するような公開であるとか、項目を検討してほしいということを申し上げたのですが、その際にいただいた御指摘としては、まず全国がん登録自体が今、非常に大規模な、世界でも類を見ないようなデータベースの構築ですし、それを円滑に進めることがまず第一に優先とされるので、そういった検討は今後に任せてほしいという御意見をいただいたと理解しております。
今回東先生から御説明いただいた資料の中では、患者の視点から、場合によってはがん取組に関わっている医療者以外の医療者の方々、例えばかん治療を実際にされている先生方からの御指摘、御意見というのは十分に記載がなかったように思うのですが、その部分について実際にどういった御意見があったのかということが、もしあれば教えていただければというのが2点目です。
3点目が院内がん登録についてです。院内がん登録の法定な位置づけが不明確というお話がありましたが、この部分も、例えば全国がん登録でそういったデータを知ることはできないのかという意見が出ると、必ず院内がん登録でより詳細に把握しているのだから、そちらのほうで対応してほしいということを言われている現状があるのですが、院内がん登録も同様の理由で項目等について十分に議論が進んでこなかったという面があるかと思います。
以上、全国がん登録、院内がん登録についてですが、法施行後、円滑に進めるということを前提に今まで進んできたと思いますし、今もまだ様々な問題があるかと思いますが、今回改正するに至っては、患者還元という視点から様々な項目の見直し、場合によっては法律の改正というものが必要かと思いますが、その部分について、もし東先生にお考えがあれば教えていただければというのが私からの意見です。
以上です。ありがとうございました。
○辻部会長 東先生、手短にお答えをお願いできますか。
○東参考人 3点。20条問題ということについては、20条というのは生存確認情報ということで、主に生死情報、もしくは死亡、死因といった情報が届出をもともとした病院に返るということですが、そちらの返った情報をどう使ってよいかということについては、普通に提供された全く関係のない研究者であるとか利用者に提供されたのと同じ制限がかかるということになっておりますので、そこは区別がついていないから同じということになってしまっているのですが、そうすると、目的外に使ってはいけない、ほかの人に提供してはいけないということになってしまっていて、せっかく病院には予後情報が返ってきているのに、それを例えば診療目的でないから診療に使ってはいけない、カルテに転記してはいけない、多施設共同研究で、ほかの病院と一緒にこの情報を使ってはいけないと、禁止ばかりがかかってしまうというのが現状です。ここはかなり問題だと言われていますし、私も個人的にはそこは問題だと思っています。
次に、これまでの意見というふうに、使っている意見といいますか、全国がん登録、院内がん登録、法律に関する意見があったのかということについては、スライドの12枚目以降に全部ではないですけれどもまとめてありますので、そちらのほうを御覧いただければと思います。
3つ目に関してですが、法の趣旨を考えて患者さんに還元するという視点から今後の体制をというのは、おっしゃるとおりだと思いますので、その方向を整備するようにしていきたいと思います。院内がん登録でできることは院内がん登録でやりますし、全国がん登録にしかできないことは全国がん登録でやると。そこは両方とも使えるような形で発展していければと思っております。
答えになっていますでしょうか。
○天野委員 はい。ありがとうございます。私たち患者の意見もそうですし、がん臨床に関わっている臨床家の方々の意見もぜひ聞いて研究班のほうで意見を挙げていただきたいと願っております。
ありがとうございました。
○辻部会長 天野委員、どうもありがとうございました。
ほかの先生方。まず、大木先生、それから羽鳥先生、中西先生の順番でお願いします。
○大木委員 埼玉県立大学の大木です。
東先生、ありがとうございました。私たち日本がん登録協議会からもいろいろな課題を述べさせていただいて、それについてはおおむね含まれていると感じております。また、各所から意見を吸い上げていただいた内容も資料の中に記載されていて、検討いただくということが確認されたと感じております。ほかの意見やコメントも非常に参考になっていて、よかったと思っています。
ただ、それを踏まえた上で幾つか追加と補足をさせていただければと思っています。まず、1点目です。18条と19条というのが、がん検診の精度管理にがん登録が使えるということですけれども、市町村と県の間で、後ろにある46条、利用との兼ね合いから進まないという意見が挙がっております。せっかくできた法律で、がん対策、しかもがん検診の、どれぐらいきちっと当たっているかという感度や特異度などもこのことによって把握できるような精度ですので、活用が進むような方向を課題として挙げさせていただきたいと思っています。
2つ目が、データをつくっていて効率的にやるというのは私も大賛成ですけれども、どうしても人がきちっと管理して大事にしていかないと、そのデータというのは簡単に力を失ってしまうものですので、効率よくするのと同時に、そういった人材をきちんと育てていただき、それが対策を行う行政の人や研究者との橋渡しになって、さらなるデータの活用に生きるような方向も入れていただきたいと願っています。
3点目は追加ですが、申請などは幾つか上がってきた中で、定型的なものとか毎年やるようなものはある程度簡素化して、変わったところをきちんと効率よく力を入れて検討できたりする仕組みがあってもいいかなという課題もいただいております。
安全管理については日々進歩しておりまして、技術的な安全管理が非常に上昇したのを下げるという意味ではなくて、それと物理的な安全対策とのバランスやオンサイト解析なども含めて日々更新していかれることを願っています。
雑駁ですが、御意見として挙げさせていただきます。以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、羽鳥先生、お願いします。
○羽鳥委員 ありがとうございます。日本医師会の羽鳥です。
僕もこの登録事業については、例えば循環器病対策基本法、難病・小児慢性疾患の登録のところ、最近で言うと次世代医療基盤法での登録、この辺のところに関わって見ているのですけれども、がん登録は最も進んでいると思っています。その代わり縛りもなかなかきついので、その辺が現場の先生は非常に苦労しているのだろうなと思います。
幾つか東先生から御指摘されている悉皆性のことで言えば、マイナンバーをもう少しきちんと活用することによってデータの二重登録あるいは漏れなどを探すこともできるでしょうし、それから院内がん登録と国のがん登録は、データベースは1つにして、少なくとも現場の先生に二重登録をさせていると思わせるようなやり方は、やり方としては非常にまずいのではないかと思いますので、その辺は何か工夫して二重で登録する必要がないようにしてあげなければ、かわいそうではないかなと思います。
がん登録は、悉皆性がある。努力義務ではなくて義務。ほかの循環器対策とか難病などはいわゆる努力義務ということで、法的な縛りも違いますので、まずここは見本をしっかり見せて、最先端を走っていってほしいなと思います。
以上です。ありがとうございました。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、中西先生、その後、松本委員、黒田先生ということでお願いします。
○中西委員 北九州市立病院機構の中西です。
冒頭に天野委員からもお話がありましたように、この法のもともとの精神というのは、がん登録を通じて医療あるいは医学の発展に資すること、それから患者の意思決定等に資することが基本的なことだと思っています。一方で、極めて大規模な機微情報を集めるということで、当初から個人情報が漏えいすることについてかなり突っ込んだ対策が取られてきたと思っています。
ここまでの間に何が起こったかというと、率直に申し上げまして、確かに業務が進んでいますけれども、利活用がどうしても不十分ではないか。その大きな問題は、個人情報を漏えいしないためにつくられた様々な縛りが若干オーバーではなかったのではないかという気がしています。そろそろ私たちは次のステップとして利活用に向けて進むべきではないかと思っています。
そういう意味で、今日御発表いただきました全国がん登録と院内がん登録の完全共通化とか、あるいは診療録への転記を認めること、国際共同研究へのデータの提供、こういったものをぜひとも実現化するべきではないかと思っております。
その中で1つだけ質問させていただきたいのですけれども、現在26の項目があるということで、この項目では十分に活用するための情報が不足しているという話だったと思いますが、具体的にはどういうことが不足、あるいはどういったことを追加することによってより全国がん登録の活用化が見込めるのか。現時点でそれについて想定するものがあったら教えていただきたいと思います。
以上です。
○辻部会長 東先生、いかがでしょうか。
○東参考人 ありがとうございます。
貴重な御指摘だと思います。項目の追加に関しましては、いろんなところがいろんなことをおっしゃるというのが現状であります。院内がん登録と全国がん登録の項目の違いという中で一番大きいのは、UICCのステージ分類が院内がん登録にはあるけれども、全国がん登録にはないというところがあります。これは悉皆性を持ってそれを集めるのは無理だろうというところから来たのですが、ここは院内がん登録と全国がん登録が連携することによって、一部ではあって、全部の症例にはならないかもしれませんが、今は連携もしていませんので、そちらのほうを解決すれば、少なくともステージが一定程度はつくというのがあると思います。
これ以上のことについては、がんのそれぞれのもの、例えば乳がんですとレセプターの情報であるとか、肺がんですと遺伝子変異の情報というものが恐らく必要になってくるのだろうと思いますけれども、これをがん登録で集めるのかということについては恐らく検討が必要で、全員について集めるのではなくて、ほかのデータ、学会のデータ等と連携して、そことうまい連携の下でいろんな解析をするというのが、もしかしたら現実的なのではないかなと思っております。
まだまだたくさんあると思うのですけれども、例としてはそんな感じです。
○中西委員 ありがとうございます。
今、御指摘のTNM分類につきましては、現在肺がん以外はほとんどが国内分類とUICCの分類は違っていまして、院内がん登録に非常に苦労しています。これは何が問題かというと、結局、日本のデータが世界に反映されていないだけの話で、もし院内がん登録の分がすぱっとそちらに行けば、それについては、恐らく日本のTNM分類と世界のTNM分類が一緒になって、業務の煩雑さのみならず、世界的な視点でがんについてステージを見て、そして適切な治療、予後についてできると思いますし、ぜひそこは進めばいいと思います。
以上です。ありがとうございます。
○辻部会長 松本委員、どうぞ。
○松本委員 ありがとうございます。松本でございます。
これまでの委員がおっしゃったとおりで、利活用ということは本当に重要だと思っております。今、中西先生が御質問くださったことを私もお尋ねをしようと思っておりました。スライド4枚目のところの、今の限られた項目では問題があるということについて、東先生から御解説いただきましてありがとうございました。
重ねてお尋ねいたしますが、「治療への展開に不十分」と先生がこのスライドの中で書いていらっしゃいます。これについてはどのようなことが不十分なのか。すみません。今、頭を抱えられてしまいましたけれども、今後どうすれば、どういうことが期待できるのかということを患者の視点からお尋ねしたいと思います。可能な範囲でお教えください。
○東参考人 ありがとうございます。貴重な御指摘です。
「治療への展開」というのは、少し曖昧な表現で恐縮でありますが、例えばこの治療法と治療法を比べようといったときに、治療法という項目は、今のところは外科治療があるのかないのか、内視鏡があるのかないのか、そういった有無しかないわけです。これは区別をつけようと思うと、当然手術もごまんと術式があるわけですし、薬に至ってはそれぞれ違うし、どんどん変わっていくということもあります。こういった情報があれば、今度は予後と結びつけることでいろんな評価もできますし、調整因子としての併存症であるとかADL、全身状態みたいなものがあれば、そちらのほうを調整することもできるということになります。
そういったものが今のところはないので、どうしてもその治療を評価するということはできづらいということがあります。ただ、先ほどと同じような詳細情報の話になるのですけれども、この情報をがん登録で全て集めるのかということについては、すでに整備されているほかのデータベースがありますので、そちらのほうと連携しつつ、それぞれの解析課題に対応して必要なデータを連携して使っていくということが必要なのではないかと思います。
○松本委員 ありがとうございました。
以上です。
○辻部会長 では、時間が大分迫ってきていますので、黒田委員と坂元委員のお二人でここは打ち切りたいと思いますので、まず黒田委員、どうぞ。
○黒田委員 ありがとうございます。京都大学の黒田です。
臨床現場でサポートしている立場で、医療情報を専門としている者として2点意見を申し上げます。1つ目は20条問題ですけれども、死亡情報についてはかなり重たい問題だと思っていまして、臨床現場で死亡であるという情報が都道府県、地域から返ってきた後、これをカルテに記載することができないということは、そのデータを死亡であると分かっていながらカルテに書けないので、カルテの上では130歳、140歳、生きていらっしゃる形になります。
ちゃんと死亡されたかどうかを確認しようと思いますと、それを御本人に別途改めて聞く以外の方法論が許されないということになってしまうわけです。亡くなられているところの御家族にお聞きするというのは、それだけで十分重たい作業ですので、診療現場の現実を考えると、診療記録に対して返却された死亡情報を記載することを可能にするというのは、絶対の必要性があることだと思っていますので、ぜひ法の改正の中で御検討いただきたいと思います。これが1点目です。
2点目につきましては、データの利活用について制限を負うのではないかというお話ですけれども、私自身もこの法律も含めて日本の医療情報の取扱いについては、個人情報の取扱いがあまりにも厳密であろうと。その厳密さの中に、技術論に偏って厳密さを求めるがために、できることができなくなってしまっているという現実がかなり強いという印象を持っています。例えばヨーロッパを見ますと、国が持っているレセプトのデータベースに該当するようなものはクラウドで共有されていて、クラウドのアクセス権を渡して、その上で研究者に使わせるのが普通です。
この3月に厚生労働省から出ていますNDBのほうの利用に関しまして、医療・介護データの解析基盤の開発ということが報告されていて、その上でも解析結果がクラウドの上でつくりますということを明言されています。
それを考えるならば、このがん登録のデータについても、国がある程度、もしくは国がんさんがマネージされるのかも分かりませんが、国なり国がんさんがマネージされるクラウドの上でちゃんと扱われるようにするべきであって、それをもし法が阻んでいるのであれば、法やガイドラインを全て修正するべきであろうと考えます。
もう一つ、先ほど東先生がおっしゃっているとおり、データの連結をすることをしないと、データの価値はどんどん下がりますので、先ほどおっしゃっていたどんな治療がされたか。極端なことを言うと、NDB表を引っかけると、Kコードを見れば、どの手術なのか分かるわけです。そういうものとちゃんとつなぎ合わせるということも含めて、法律上不可能だというふうに私はこれまで委員として説明を受けてきましたので、連結を認めるような法律を変えるということをやっていくことがこの委員会としては必要なのではないかと考えます。
以上、2点御意見として申し上げます。
○辻部会長 ありがとうございました。
では、坂元委員、どうぞ。
○坂元委員 先ほど市町村が国がんからの調査依頼に応じないところがあるということで、住民基本台帳法の改正という意見が出たのですが、これは公共的なものであれば閲覧とか、公布に関してはちょっと厳しいのですけれども、可能であると。恐らくこれは法律改正に至らなくても、例えば厚生労働省のほうから市町村に通知で、この取扱いについてはお願いしますという文書があれば、恐らく市町村は開示してくれると思うのです。そういう文書を用意して、請求するたびにその文書をつければ、それでも拒否する市町村はないと思いますので、法律改正というのはかなり大変なので、その程度で行けるのではないかと思っております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
今日は1回目ということで、様々な御意見を委員の先生方からいただくということが目的ですので、特にまとめませんけれども、今日は私の不手際もありまして時間不足で、まだ多くの委員の方々が御意見、御質問を出されたいと思うのですが、それにつきましては、終了後、メールその他で事務局のほうにぜひ御意見、御質問をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
では、続きまして、同じく東先生から資料2の御説明をお願いしたいと思います。先生、恐らく委員の皆様はほとんど事前に目を通していらっしゃると思いますので、若干時間の関係もありますので、ポイントを絞って短めに御説明をお願いします。
○東参考人 承知いたしました。それでは、ちょっと早口になりますけれども、「院内がん登録の全国集計データの活用法の検討」ということで、御報告をさせていただきたいと思います。スライドは11枚あります。
これは「院内がん登録とは」というところで、定義を示したものになります。全国がん登録との対比でありまして、院内がん登録は一定程度の専門施設で行い、さらに少し詳細な情報を集めるといったことが役割となっております。
院内がん登録の利用に関してですが、古くから院内がん登録というのは、がん診療連携拠点病院の指定要件に基づいて行われてきたというところがあります。ですので、法施行の2016年よりも前、2015年省令以前というところも全国集計データ等を活用するという体制はありました。そのときには何をしていたのかと申しますと、全国集計データの利用規約というものをつくりまして、これは病院の合意の下に集める。さらに、個別の解析案件ができたときに、研究であれば研究倫理審査委員会の審査をしていただくということですし、さらにはデータ利用審査委員会というものをつくって審査をして、提供・活用するということを行ってきたわけです。
ただ、法が施行された後ということになりますと、この指定要件はそのままなのですが、法的な位置づけがあるということで、では、法律上でどこまで規定ができるかといいますと、実際には「院内がん登録の実施に係る指針」、厚生労働大臣の指針によって規定されるということになっております。そうしますと、この全国データはどうするのかということになりますが、そこの規定がないために要検討だということになり、検討中は停止をするということになってしまったというのが現状です。
ただ、法の理念ということから考えますと、精神的に働くべきということが定められているわけです。法の1条、3条というところで目的、基本理念としていますけれども、こちらのほうは、院内がん登録についても調査研究等を推進するということが書かれています。
さらに、指針においても、冒頭部分ではありますが、調査研究を推進して、がん対策を充実させるということも書かれています。ただ、具体的にどう使うということについては、そのスライド下半分に書いてあるような、国立がん研究センターが院内がん情報を全国規模で収集し、当該情報を基にしたがん統計等の算出を行うとしか書かれていないというのが現状です。なので、書かれていない部分をどうするのかというのが問題となってしまっていて、現在まで検討がかかっているというところです。利用ができないわけではないのですけれども、それをどういうふうにしたらいいのかということを検討し始めると時間がかかって止まる、それが現実です。
ですので、今、その検討の結論を出したいというところで動いているわけですが、原則としては2つの分類を考えています。1つは、もう既に院内がん登録の実施に係る指針に記載された利用ということです。これは現在も実施しております。加えて、がん登録推進法の目的及び理念に沿った、プラス個人情報保護法と整合した形での利用または提供ということを考えています。
そういった分類の中で1つ考えたのが、分類として定型業務と定形外業務に分けてはどうかと。定型業務というのは、明白に院内がん登録の目的に該当している、例えば指針に書かれていること。具体的には厚生労働省の委託事業であるとか補助事業、他省庁からの事業、もしくは都道府県での活用、こういったものは定型業務でいいのではないか。定型業務以外のものについては利用申請をしていただいて審査をする。そういったことで整理がつくのではないかと思っています。
定型業務以外の利用についても3種類ほど考えておりまして、施設同定の利用、個票利用、集計利用という形です。このうちの施設同定ということについては、少し院内がん登録独特のものかもしれませんけれども、例えば詳細な臨床研究をしたい、詳細なデータを集めて臨床研究をしたいとか、もしくは治験を行いたいといった場合に、特定のがんの種類を診療している施設というのを、過去の実績ではありますが、院内がん登録から同定をして、その病院に対して協力依頼をお送りする。そういったことを考えるということをしています。これは2015年以前の利用規約にも書かれている同定、利用法であります。
こういったことを考えながら検討しておりますけれども、検討の方向性としましては、大原則として全国がん登録の提供手続に準ずる方式がいいのではないかと思っております。ただ、それだけではなくて、提供体制のあるべき姿を追求して、これまで感じられてきた問題、課題といったものは、この機会で院内がん登録については解決をしていくというのが必要なのかもしれないと思っております。
残されている要検討事項という形では、これも一定の検討はしておりますけれども、2点ありまして、1つは個人情報保護法との関係、もう一つはデータの活用に関する整理というところで分類をしました。
1つ目の個人情報保護法に関しましては、まずは目的外利用の禁止であるとか、提供の禁止ということを言っておりまして、そちらのほうとの整合性をどうするかというふうに検討いたしましたが、院内がん登録の研究利用であるとか、がん対策の利用といったことについては、本来の目的に合致している。目的外にはならないのではないかと考えます。さらには、個人情報保護法上では学術研究目的における例外が認められておりますので、いずれにせよ学術研究利用であるとか、こういった本来目的というのは使えるのではないかと整理をいたしました。
次に、匿名化情報に関してということですが、個人情報であると考えるといろんな縛りがあるわけですが、個人情報保護法上では匿名加工情報となりますと、またそれは別の扱いが可能になるということがあります。院内がん登録の提供におきましても、匿名加工レベルを確保して活用を推進するというのは有効なのではないかと考えております。
具体的には次のスライドに出していますが、例えば治療日、具体的な日付というデータは出さないようにして、大抵の研究、大抵の解析では日付が必要というよりは、いつからいつまでの期間が必要ということになりますので、そういったものは全て診断日を起算として、何日後かというのを再計算して期間として提供する。そうすると、現実とのつながりがなくなりますので匿名化が進む。そういうことも考えております。
施設名については、原則的には提供しないと。個票データということですけれども、提供しないということで秘匿性を確保できると思いますし、テキスト情報を削除するとか、地理情報は都道府県までの提供という形で確保してはどうかと思います。
最後に、データ活用に関する整理というのがあるわけですが、非定型利用においてのデータ利用審査の方法ということであるとか、データ利用者をきちんと類型して指定する。あとは、全国がん登録でもやっておりますが、公表確認をするとか、そういった体制を整備して、さらに複雑なデータの加工、集計等については、事務手数料などの整備をして、きちんと体制が回るということも確保したいと思っております。
かなり駆け足でしましたけれども、院内がん登録の全国データの利活用というところについて、そのような方向で検討しているという御報告です。
御清聴ありがとうございます。
○辻部会長 東先生、どうもありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、委員の皆様から御質問、御意見をいただきたいと思います。祖父江先生、お願いします。
○祖父江委員 説明ありがとうございました。
全国がん登録のほうについては、法律に基づく国の事業として明確に規定されていますけれども、院内がん登録というのは、確かにがん登録法の中に記載はありますが、誰が実施主体なのか、国の事業なのか、そうでないのか、そこの位置づけはどうなっているのですか。東先生に聞くのか、厚労省に確認するのか、どちらでもいいですけれども。
○東参考人 私が一言で言うと、一応国の事業であることは間違いないと考えております。実施主体というのは、院内がん登録の実施に係る指針においては、個々の主体が個々の役割を持ってやると。例えば標準登録様式を決めるのは、国立がん研究センターの役割だとなっていますし、各病院がその実務者を配置するというのは、各病院の役割という形かと思います。
○祖父江委員 もうちょっと区別したいのですけれども、個々の院内がん登録ということと、院内がん登録の全国集計ということがごっちゃになっていると思うのですが、区別して、全国集計のほうはどこの事業なのでしょうか。
○東参考人 院内がん登録制度の主体というのは国だと思っております。法律に基づいて指針を定めて、そのとおりやっていくと。事業主体はそこですが、国立がん研究センターがその一翼を担ってやっていくというのが指針に書かれていますので、それはがんセンターの役割ということで考えています。
○祖父江委員 ただ、がん登録法のほうには全国集計のことは一言も書かれていないと思うのです。
○東参考人 先ほどのスライドの5枚目の部分では、全国規模で収集するというのはがんセンターの役割で、当該情報を基にしたがん統計の算出を行うというのもがんセンターの役割ということになっています。
○祖父江委員 これも指針ですね。
○東参考人 はい。
○祖父江委員 がん登録推進法のほうには。
○辻部会長 すみません。この点に関して整理した上で、次回整理したものをお出しいただけますか。ほかの先生方の御意見もいただきたいと思いますので。よろしいでしょうか。
では、ほかの先生方、どなたか。大木先生、どうぞ。
○大木委員 埼玉県立大学の大木です。
院内がん登録の全体のことは私もまだ明確に理解していないのですけれども、幾つか気づいた点について御意見をさせていただきます。まず、院内がん登録自体は全部出してしまって、個人情報を持たないで、昔で言う連結可能匿名化という形で出すと思うのですが、それで出した先が、どちらかといえば院内とか診療情報なので、施設名がなくて、部位や組織テキスト情報もなくて、地理情報は都道府県までというと、かなり限定されたものになるのかなと思っていて、きれいにきちんとルールをするのは簡単なのですけれども、もう少し研究や知りたいことを明らかにするためのものを考慮いただいてもいいかなと考えております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ほかの委員の方から御質問、御意見ありますか。黒田先生、どうぞ。
○黒田委員 黒田です。
ちょっと気になったことがあって、先ほどの祖父江先生の御質問と絡むのですが、院内がん登録の全国集計で国がんが集められた情報を匿名化して出すという議論になったときに、そもそもそのデータを集めることというのは、病院からデータを送るときに何に基づいて出しているかがよく分かっていないので、そうすると、それに基づいて集めたデータを匿名化する権利をがんセンターが持ち得るのかという法律上の整理が少し気になるので、そこは確認していただいたほうがいいかなという気がいたしました。
もう一つは、診療情報の第三者提供になりますので、診療情報の第三者提供は、要配慮個人情報の第三者提供ですから、そうすると、まずがんセンターに出す時点で何がしかの同意が必要な世界で、法の定めがない限り同意なく第三者提供をできないのです。それで提供したものについてさらに匿名加工するとなると、匿名加工情報は確かに要配慮個人情報のくびきにかかわらず、個人情報保護法上出せるのですけれども、もともとは第三者提供がNGですよと言っているところを割と抜け穴的に使ってしまっているような空気があるので、国の事業であると明確になればなるほど、逆にそこの抜け穴的なところを使ってデータを出しますと、ちょっと引っかかる気がするなと思っているので、相当法的整理をきちんとされたほうがいいのではないかなという気がいたしました。
もちろん、利用目的についてはそういう目的があるので、できるようにするほうがいいのだろうと思うのですが、法的に穴が空いているのであれば、そこをきちんと埋めてやられることをしていただきたいなというところかと思っています。あくまでも意見です。
○辻部会長 ありがとうございます。
これにつきましては、国立がんセンターと厚労省事務局との間で協議していただいた上で、次回の部会で見解を出していただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。議題2に限らず、先ほどの議題でも言いたかったけれども時間がなかったという方がいらっしゃれば、御追加、お一人、お二人は可能です。どうぞ。
○がん対策推進官 厚生労働省でございます。
先ほど来院内がん登録の全国集計のデータということでいただいておりまして、辻部会長からも御指示いただきましたけれども、1点は、法律上明確な位置づけがないということが課題だという御意見だと認識をしております。その上で、現状どのような根拠に基づいて集計されているのか、それらをどう活用できるのか。また、法的な手当てが必要なのであれば、どのようなものが必要なのか。その辺りを少し整理して、次回またお示しさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○辻部会長 どうぞよろしくお願いします。
委員の先生方からほかに御質問、御意見はございますか。亀井先生、どうぞ。
○亀井委員 先ほど大木委員が言われたとおりなのですが、先ほど秘匿化の加工の方法につきまして、後々こういった情報がなければ利活用できなかったということがないような形でそこの辺りを検討していただければと思っております。同様な意見でございますけれども、一言だけ申し上げさせていただきます。
○辻部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたかいらっしゃいますか。東先生、どうぞ。
○東参考人 今の議論というのは、まさに明確なものがないと全て止まるということの典型だと思います。院内がん登録、2016年からずっとやっているのに、それが全然使えないというのが現状になっていますので、今後の法改正についてはそういうことがないようにやっていきたいと思う次第です。がん登録法と個人情報保護法との関連ということについては、特別法と一般法の関係だと大まかには理解しておりますけれども、その整理がどうなのかと。実際には特別法としてのがん登録推進法は、同意なく情報を集めるということについては、院内がん登録も全国がん登録も併せて局長通知で規定されてはいるのですが、では、その使い方はどうなのかということについては、今まで整理できずに来てしまったというところがありますので、早急に進めるべきです。これ以上止めるのは限界だと思っていますので、私たちも考えていきたいと思いますし、先生方からも御意見をぜひいただきたいと思っております。よろしくお願いします。
○辻部会長 黒田先生、手が挙がっていますので、お願いします。
○黒田委員 今の厚生労働省の方からの御意見でちょっと気になったので一言だけお願いをしたいと思って口を開きました。法律上可能かどうかという議論をされていたのですが、法律上可能かどうかだけで法をつくる、つくらないというのをやると、今、東先生が言われたように、ルールがないから、やっていいかどうか明確でないのでやらないというアクションが働きますし、特に個人情報に関わるところについては、個人情報保護が比較的プロテクティブな法律になっている中で、匿名加工だけがプロテクティブでない、急にそこだけドアが開いているつくりになっているので、それを積極的に使うことについては、逆にそれは物すごく悪意があると社会から判断される可能性が強いと理解しています。
国際的に見たときに、データの活用で国に悪意があると思われた国は、いろんな形でオプトアウトの率が上がるということを体験しています。オーストラリアも10%以上がシステムからオプトアウトしていますし、イギリスで目の前でオプトアウトのための手続の時間が短いから延ばせということが実際にNHSの中で今、発生しているわけです。
それを考えるならば、ちゃんと手続を踏んで、きちんと法の上でできるからではなくて、ちゃんとつくるというスタンスで物事を構えていただきたいなということをぜひお願いしたいと思います。意見です。
○辻部会長 ありがとうございました。
議題1、議題2に共通することでありますけれども、今日は1回目ということで、様々な御意見をいただきましたので、今日先生方からいただいた御議論を基にこれから一つ一つ整理をして、今後検討していく予定でございますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。
では、3つ目の議題といたしまして、「全国がん登録情報の提供に関する申出」に入りたいと思います。これより非公開となりますので、マスコミの方、傍聴の方は御退室ください。YouTubeの放送も中止してください。
事務局、よろしいでしょうか。YouTube、退室できたでしょうか。
○がん対策推進官 今、確認しておりますので、少々お待ちください。
○辻部会長 お願いします。
(傍聴者退室、YouTube中止)
 
 
 

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