令和3年度第1回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和3年9月30日(木) 13:30~15:30

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 12G
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング12階)

議題

  1. (1)職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書について
  2. (2)リスク評価対象物質の有害性評価について
    (初期リスク評価)
    ジエチルケトン
    (詳細リスク評価)
    タリウム及びその水溶性化合物
    ピリジン
  3. (3)その他

議事

○福田有害性調査機関査察官 それでは、定刻になりましたので、一部まだ入っておられない先生もおられますが、会議を始めさせていただきたいと思います。
本日は大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
私は、本日、座長に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます、有害性調査機関査察官の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
まず本日の委員の出席状況についてですが、本日は高田委員が所用で20~30分ほど遅れるとお聞きしております。また、西川先生はまだ入られておりませんが、もう間もなく入りますということで、一応本日は全員参加ということで予定しております。
なお、新型コロナウイルス感染症対策のため、本日は会場参加とオンライン参加の併用という形で開催させていただいております。オンラインで8名の先生方が参加ということで予定しております。
また、本日の会議の一般の傍聴者につきましては、先ほども御案内のとおり、新型コロナウイルス感染症に鑑みまして、Google Meetでの参加で音声配信のみとさせていただいております。
オンライン参加の委員の先生方におかれましては、周囲の音を拾ってしまうということもありますので、もういろいろ学会等でも慣れられているとは思いますが、御発言される場合を除きましてマイクをオフに設定していただきますようよろしくお願いいたします。
それでは、最初に、令和3年度第1回有害性評価小検討会の開催に当たりまして、化学物質対策課長の木口から一言御挨拶申し上げます。
よろしくお願いいたします。
○木口化学物質対策課長 化学物質対策課長の木口でございます。
先生方には日頃より労働安全衛生行政の推進に御支援を頂きまして、大変ありがとうございます。
年度が変わりましてリスク評価を担当する化学物質評価室のメンバーの交代がございました。前年度に引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
今年なのですけれども、リスク評価に係る検討会のスタートが例年より遅くなっております。昨年10月の小検討会でも御説明いたしましたが、厚生労働省において今後の化学物質等の管理のあり方を検討するに際して、国によるリスク評価のあり方も含めて検討を行っておりまして、今年の7月19日に報告書を公表いたしました。
大きな流れとしては、職場における化学物質管理に関して、特化則、有機則などで個別具体的な措置を規定する方法から、化学物質の危険性・有害性情報の確実な伝達とその情報に基づくリスクアセスメントを踏まえた措置を実施する自律管理への転換が提言されまして、特化則への規制対象物質の追加を今後は行わないということが提言されております。
また、化学物質のリスク評価に関しましては、化学物質管理を担当する関係省庁との連携をとりながら今後のあり方を検討していくという方向性が示されております。
現在、この報告書における提言内容を踏まえた制度見直しの作業に着手しておりますけれども、新たな仕組みにおけるリスク評価のあり方に関しましても先生方には引き続き御助言いただきたいと思っております。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 ありがとうございます。
続きまして、本年度事務局側に異動がございましたので、御紹介いたします。
8月1日付けで化学物質評価室長に佐藤が着任しまして、7月20日付けで室長補佐に吉見が着任しておりますので、2名からそれぞれ一言御挨拶申し上げます。
よろしくお願いします。
○佐藤化学物質評価室長 ただいま御紹介いただきました佐藤と申します。8月1日付で赴任してまいりまして、はや2か月たちました。画面での御挨拶となり恐縮ですが、前任の内田同様、どうぞよろしくお願いいたします。
○吉見化学物質評価室長補佐 ただいま御紹介いただきました化学物質評価室長補佐の吉見と申します。よろしくお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 ありがとうございました。
また、改めまして、私は6月1日付で有害性調査機関査察官を拝命いたしまして、リスク評価を担当させていただくことになりました福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、今年度も大前先生に座長をお願いすることにいたしまして、大前座長に以降の議事進行をお願いしたいと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
○大前座長 大前でございます。どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。
それでは、議事次第に従いまして、まず1「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書について」の御説明をよろしくお願いいたします。
○佐藤化学物質評価室長 私、佐藤から御説明いたします。
資料の共有をお願いしたいのですが、資料1になります。報告書本体は参考資料2にありますけれども、それは文章だけですので、今回は資料1のパワーポイント版で御説明したいと思います。
それでは、まず5ページ目をお願いいたします。
5ページは現在の化学物質規制の仕組みを簡単に紹介した図になります。
左下に三角形がございまして、上のほうから厳しい規制がかかっております。
一番上が8物質で、製造・使用等ができないというものです。
その下に赤い点線で枠囲いされていますけれども、ここにつきましては、特定化学物質など、あと有機溶媒など、それぞれ特別な規則がありますので、それに基づいて個別具体的なばく露を下げる措置を行ってくださいという義務がかかっている物質が123物質ございます。
その下、123の隣に674物質とあるのですけれども、許容濃度もしくはばく露限界値といった目安の数字が決まっている危険・有害な物質というものがございます。併せて、674物質につきましては、商品・製品に必ずラベルをしてください、あとは安全性のデータ、危険性・有害性をまとめた情報、SDSと言っているのですけれども、それを必ず添えて情報を伝達してくださいという義務がかかっております。
リスク評価を先生方にお願いしているのですけれども、左側のほうに上向きに矢印があります。ここのラベル表示とSDSの交付の義務がかかっているものにつきまして、例えば発がん性などが確認された物質につきまして個別具体的に詳細なリスク評価を行いまして、必要があれば上の赤い枠で囲っている厳しい措置のほうに移っていく。そういったことを一つ一つの物質について行っております。
ところが、三角形の左側に「労働災害の8割はここで発生!」と書いてありまして、あまり厳しくない規制がかかっているところで労働災害が起こっているというデータがございます。我々行政の任務といたしましては化学物質が原因の労働災害をとにかく減らすということが最大の命題ですので、この部分を何とかしたいということで検討会を行ってきたという経緯がございます。
1ページ目に戻ってください。
1ページ目は「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」ということで、2番の参集者のところにございますように、「本検討会」と技術的な検討を行っている「リスク評価ワーキンググループ」で、本日座長を務められております大前先生もメンバーですけれども、これまで2年間にわたり議論を行いまして、報告書を7月にまとめたということになっております。
次の2ページ目を御覧ください。
2ページ目の右上の表ですけれども、労働災害を原因別にまとめたデータでございます。左から2つ目の列に件数があるのですけれども、18.5%はかなり厳しい規制がかかっている特別規則対象物質が原因ということで、8割を超えるものはそれ以外の厳しくない規制がかかっている物質が原因となっております。
それはなぜかといいますと、左側の(1)の2つ目の白丸ですけれども、厳しい規制がかかっている物質につきましてはどうしても使うことをやめて、危険性・有害性を十分に確認・評価せずに規制対象外の物質を使ってしまうのが原因ではないかと推測されております。
一番下の(4)ですけれども、諸外国において化学物質はどのように管理されているかということで、1行目にございますように、欧州と米国におきましては、国際的な化学物質の分類と表示のルールがありまして、略してGHSというのですが、その分類で危険性・有害性がある全ての物質がラベル表示もしくはSDS交付の義務対象ということで、日本とはかなり違った管理がなされているということがございます。
めくっていただきまして、4ページ目を御覧ください。
化学物質の規制の体系を大きく見直そうということで、ここに文章でいろいろまとめて書いてございます。
先ほど課長の木口の挨拶の中にありましたように、個別具体的な規制から、危険性・有害性が確認された全ての物質に対して国が定める管理基準の達成を求め、その達成のためには手段は指定しない。具体的な措置はこうですよと国のほうで指定せずに、事業所の方に情報に基づいてリスクアセスメントを実施していただきまして、それに基づいてばく露を下げるような措置を決めていただく。そういった方法に転換いたします。
下の赤い枠で囲っている部分ですけれども、最初の黒四角のところで、国のほうでGHSに基づいて分類している物質が既に3,000ぐらいあります。そういったものに対しまして、危険性・有害性の情報の伝達が大事ですので、ラベル表示・SDSの交付を義務付けいたします。事業者の方にはリスクアセスメントを実施していただいて、その下のほうにマル1~マル4があるのですけれども、この優先順位に基づいてばく露濃度を下げる措置を決めていただくということを行っていただきたい。そういった内容になっております。
一番下のところで、特化則、有機則で規制されている、厳しく管理されている物質が今123あるのですけれども、5年後をめどに、自律的な管理に移行できる環境を整えた上でという条件付きで、個別具体的な規制は廃止することも想定しています。
資料の6ページ目を御覧ください。今言ったことを図で示したものになります。
真ん中のちょっと上のほうに「有害性に関する情報量」というのがあります。情報量が多いと、その化学物質の特徴とか使い方、どんなばく露濃度なのかというのが当然詳しく分かりますので、いろいろなことをできるということになります。
その下に約2,900物質とあるのですけれども、国のほうでGHS分類を行って有害性・危険性があると分かっている物質が約2,900あるということです。分類に基づいてモデルとなるようなラベル表示・SDSをつくって、国のほうで公表しております。厚生労働省のホームページに掲載されております。
国のほうでこういったものを用意しておりますので、それに基づいて下の橙色の部分を事業者の方に行っていただく必要があるということです。繰り返しになりますけれども、製品・商品を譲渡する場合には、ラベル・SDSを必ずつけて危険性と有害性の情報を伝達していただくということが重要になります。繰り返しになりますけれども、その情報に基づいて事業者自らリスクアセスメントを実施していただくということになります。一番下のところに長い長方形があるのですけれども、皮膚への刺激性・腐食性・皮膚吸収による健康影響のおそれがないことが明らかな物質以外のものにつきましては、保護眼鏡、保護手袋といったものを必ず使用してくださいという義務がかかることになります。
右側に数万物質とあるのですけれども、これはまだ国のほうでGHS分類しておりませんので、危険性・有害性の情報としてどういったものがあるのか、中身がどういったものなのかというのが分からない物質です。これにつきましては、国のほうで毎年50~100ぐらいの物質について分類して、真ん中のほうに移していきます。分類が済んだものはモデルラベル・SDSを公表いたしまして、事業者の方がリスクアセスメントがしやすい環境を整えていくことになります。
次の7ページ目を御覧ください。
7ページ目の真ん中ですけれども、「GHS分類の分類済み危険有害物の管理」というところを御覧ください。まず、義務を課すに当たっては法律が根拠になりますので、左側にありますように安衛法の規制対象に追加という作業が必要になります。これで法的な根拠ができまして、義務化されるということになります。先ほど国のほうで2,900の化学物質を分類済みと御説明いたしましたが、その中には、環境有害性のみ、あとは既に表示とSDSの交付が義務化されているものがありますので、それを引きまして、残った物質が約1,800あります。これを今年1年間でまとめてということはなかなか大変ですので、令和3年、今年から3年間かけて順次追加していきます。今その作業中です。令和6年度以降は、逆に新しく分類していくことになる化学物質を表示とSDS交付の義務対象として順次追加していくことになります。
その下に「ばく露濃度基準の設定」とあります。国が定める管理基準の話ですけれども、これまでにリスク評価が済んだ化学物質が約150物質あります。そういったものを対象にばく露濃度基準というものを定めていきたいという方向性が打ち出されております。
次の8ページ目を御覧ください。
これは、事業所でリスクアセスメントが実施されているかどうかを労使双方からモニタリングする仕組みをつくっていきましょうという説明になります。
左側に薄く橙色で囲っている部分がありまして、リスクアセスメントの手法及び実施結果というところになるのですが、リスクアセスメントが実際に行われているか、それに基づいて労働者へのばく露濃度が低減されているかといったことを記録として残して、それを労使双方によってモニタリングする仕組みをつくるということになります。
左下のほうにあるのですけれども、労働災害が発生した場合、監督署が指示した場合は外部の専門家の方の御助言を頂いて指導結果を監督署に報告する、こういった枠組みも設けられております。
9ページ目を御覧ください。各事業所で自律的な化学物質管理をしていくための仕組みを示した図になります。
左側にあるのですけれども、「化学物質管理者」、この方は何をするかというと、リスクアセスメントを行って、それを実施していく、ばく露濃度を下げていく、そういった本当の責任者になります。必ずこの方を決めて事業所に置いてくださいといったことが義務付けられる予定になっております。化学物質管理者の方にラベル・SDSの情報に基づいてリスクアセスメントを実施していただきまして、ばく露濃度を下げる措置を決めていただくということになります。
ばく露濃度を下げる手段として保護具を使いましょうとその事業所で決めた場合は、「保護具着用管理責任者」というのを必ず決めて置いてくださいということになります。この方が保護具の選択、使い方といったことの責任者となります。
国のほうで外部の業界団体、関係機関と協力してこういった人材を育てていくことも考えております。
次の10ページ目をお願いいたします。
これがSDSに書かなければいけない内容の説明になります。
SDSが危険性・有害性の大事な情報を書いてあるものになるのですけれども、大きい字、あと赤字で書いてある部分が今回追加もしくは見直しをしようというところになります。
まず一番上の「名称」はそのまま書いていただく。
次の「成分及びその含有量」ですけれども、今は10%刻みで成分を書いていただいているのですけれども、これを今度は重量%の記載で書いていただく。ただし、営業上の秘密に該当するときはその旨を記載の上で省略できるというような内容になっております。
次の「物理的及び化学的性質」はそのまま書いていただく。
次に「人体に及ぼす作用」ですけれども、5年以内ごとに情報がどんどん更新される場合がありますので、その状況を確認してくださいと。新しい有害性とかが出てくる場合があるからです。
次の「貯蔵又は取扱い上の注意」ですけれども、この項目に保護具の種類を義務化ということが盛り込まれております。
その次の「推奨用途と使用上の制限」、これが全く新しく追加になる部分ですけれども、商品や製品の化学物質を譲渡または提供する時点で想定しているものを記載してくださいということになります。
あとの小さい黒字の部分は、今までどおり、引き続き書いていただく内容になります。
SDSの交付方法ですけれども、現在は紙とかフロッピー、ファックスですけれども、今度は、相手に事前の了承を得なくても、例えば製品に2次元バーコードをつけてそこからSDSが入手できる、もしくは会社のホームページでSDSを閲覧できるように記載していただくといった方法もいいのではないかという内容になっております。
次に11ページ目を御覧ください。
11ページ目は場所が変わりまして、左側にラベル表示されたきちんとした製品があるのですけれども、それをとある事業所が購入して小分けした場合も有害性・危険性の情報が途絶えないように表示してくださいという内容になります。こういったことで重要な情報が途切れないようにすることがやはり重要だということになります。
その下ですけれども、化学物質を作っている工場・プラントで設備そのものを修理したり清掃する場合には、外部の方、第三者の方にその作業を委託する場合があります。その作業を請けた方は当然その化学物質の情報は分からないので、そういった方たちについても情報が分かるように、文書交付を義務とする対象設備を拡大するということも報告書の中に盛り込まれております。
12ページ目を御覧ください。
また話が変わりまして、健康診断の話になります。
今、特化則などに基づきまして労働者の方に健康診断が義務付けされているのですけれども、大体6か月以内に1回となっております。これにつきましては、特定の条件が必要なのですけれども、そういったものを満たした場合は1年以内に1回に緩和できるようにしようという内容になっております。
次に13ページ目をお願いいたします。
13ページは、特化則などに基づいて作業環境を測定するということが義務付けされているのですけれども、その測定結果に基づいて管理区分が1~3まで決まっています。第3管理区分になってしまったところは早急に対策を打ってくださいというような事業所になるのですけれども、当然行政側といたしましては、第3管理区分のままではなくて第1管理区分、第2管理区分にどんどん事業場を改善していただきたいということがございます。ところが第3管理区分のまま継続してしまっているところにつきましては、橙色のところのマル1ですけれども、改善の可否について外部専門家の意見を必ず聞いてくださいという義務付けを予定しております。外部専門家の方に評価をしていただきまして、改善措置がうまく作れればいいのですけれども、作られない場合、改善が困難といった場合、下向きに太い矢印があるのですけれども、マル4に行きまして、直ちに講ずべき措置というのを必ずとっていただくということになります。そういった場合には、マル5にありますように労基署へ届出という内容になります。厳しい措置になるのですけれども、こういったことに対応していただいて、第3管理区分のところは第1もしくは第2管理区分に移っていただくということを目的としております。
最後になりますが、14ページ目を御覧ください。
左側に四角が2つありまして、これはそれぞれ労働者の方を表しているのですけれども、同種のがんを発症してしまったという方を赤く色付けしています。こういった事業所では、産業医の方もしくは外部機関の医師の判断で、複数の労働者が同種のがんに罹患した、これは重要だということで、これを都道府県の労働局に報告していただく。こういった枠組みを設けてはどうかということになっております。発がん性に関しましては、発症するまでに時間が相当かかることと、原因物質を特定するのにも時間がかかりますので、こういった仕組みを設けると、労働局が報告を受けてすぐ同じ化学物質を取り扱うほかの事業所でも調査をすることができます。こういったことで発がん性物質を取り扱う事業所について将来のリスクを下げることが可能となります。
最後になりますけれども、下のほうで、発がん性物質に関しまして、長期にわたって保存すべきデータがあります。健康診断の結果なんかがそうなのですけれども、労働者の方が転職したり会社自体が倒産するとデータが離散してしまいます。そうならないように、第三者機関、公的な機関でそういったデータをまとめて保存します。保存したものはビッグデータになりますので、それを分析して予防対策に活用できないか。こういう枠組みも作ってくださいといった内容になっております。
簡単ですけれども、私からの報告書の説明は以上とさせていただきます。
○大前座長 ありがとうございました。
委員の先生方、今のあり方検討会の報告書の御説明あるいは中身に関しまして何か質問はございますか。今の概要と報告書そのものがホームページに載っておりますので、もし詳しく御覧になりたい方はそちらを見ていただくと分かると思いますけれども。
○西川委員 最後のがんに関連する情報の保存ですけれども、場合によっては30年あるいはもっとかかる場合もあるので、30年と区切らずに永久保存のような形ではまずいのでしょうか。
○木口化学物質対策課長 この仕組みにつきましては、仕組みについて検討するということで、今後の課題として挙げられておりますので、現在法令で保存は30年となっておりますけれども、どのような取扱いにするかも含めて今後の課題として検討していきたいと思っております。
○大前座長 西川先生、よろしいですか。
○西川委員 はい。ありがとうございます。
○大前座長 そのほかはいかがでしょう。
○津田委員 今のお話を聞いていて、きちんとやっているということはよく分かるのですけれども、実際には吸入ばく露で、それを管理するための、毒性が分かっているとかそういうデータは、例えばGHS分類に基づいて有害性の分類をしている物質の数はどのぐらいあるのかということは把握しておられるのでしょうか。
○大前座長 今おっしゃったのは、数がどれぐらいあるかという御質問でよろしいですか。
○津田委員 そうです。
○吉見化学物質評価室長補佐 国のほうでGHSに基づいて有害性の分類をしている物質自体は先ほど申し上げたように3,000ぐらいあるのですけれども、中には個々の分類について情報が少なくて分類できないといったものもたくさんございまして、実際にどれぐらいの物質について情報が分かっているかというのは、今この場では数字を持ち合わせてございません。
○大前座長 今、先生はIARCなんかが出している数のことを想定して御質問されたということですか。
○津田委員 それに限らず、急性毒性も含めて。私的な話になりますけれども、今、吸入急性毒性の代替評価法のことで厚労科研費を頂いてその方法論についての研究をしているのですけれども、日本では吸入毒性が急性あるいは慢性毒性を含めて実施できるのはバイオアッセイさんだけですね。世界的に見ても全部で5施設ぐらいしかない。そうすると1年間にやれる数は極めて限られておりまして、ここで指定されている化合物については実際にハザードが起こってから指定されるというようなケースが多いのではないかと思うのですけれども、そういう点についてどのように考えておられるかをお聞きしたいと思います。
○大前座長 何かございますか。
でも、基本的にハザードが起きてから規制というのは化学物質ではどうしようもないところがあります。構造活性相関等々で推測はできるのかもしれないですけれども、なかなか当たらないですよね。
津田先生、何かいい方法はありませんか。
○津田委員 少なくともLC50のデータは短いから入れられるのではないかと思って調べてみたのですけれども、企業が出している安全データシートを見てもそうたくさんはないという感じがあって、実際の管理は、確かに法的にはきちんと整っているけれども、果たしてこの物質にどういうハザードがあるかということについては意外とデータが少ないのではないかという気がしております。私の個人的見解です。
○木口化学物質対策課長 スライドの7ページ目で、国が新たにGHS分類をやる話が右上に出ているのですけれども、今後有害性の情報を集めるに際して、事業者さんがお持ちの情報なども何とか活用できるような仕組みも含めて考えていきたいと思っております。数がかなり多いので網羅的にやっていくというのも厳しいかなと思うのですけれども、いろいろな手段をもって現在ある情報も集めながらハザードを整理していきたいと思っております。
○大前座長 ありがとうございました。
そのほかの委員の方々、何かございますか。
○清水委員 今回のこの結果に関しまして、法律改正なのか、政省令改正なのか、どういうレベルでいつ頃から実施されるのか、お分かりでしたら教えていただきたいのですが。
○大前座長 見通しはどうかという御質問ですが、いかがですか。
○吉見化学物質評価室長補佐 制度改正については、今厚労省内部で法律になるのか政省令になるのか内容を検討しておりますので、整理できましたら安全衛生分科会で御審議いただいて制度改正をしていくという形になります。少なくともこの報告書の中で令和3年度から改正を検討していくような内容もございますので、今年度中に何らかの改正の内容について分科会にお諮りしていくという形で考えております。
○大前座長 清水先生、よろしゅうございますか。
○清水委員 はい。ありがとうございます。
○大前座長 そのほかはいかがでしょうか。
ないようでしたら、今日の議題の2つ目、いつもやっているメインの議題ですけれども、こちらに移りたいと思います。「リスク評価対象物質の有害性評価について」ということで、今日は、ジエチルケトン、タリウム、ピリジンの3物質に関しまして、最終的な結論としては第1、第2管理区分の濃度の評価値をどうするかということを決めていきたいと思います。
それでは、最初にジエチルケトンにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 それでは、ジエチルケトンについて福田から御説明いたします。
まず資料は、資料2-1のジエチルケトンの「リスク評価書(案)(有害性評価書部分)」となっております。
こちらにつきましては2015年度(平成27年度)からリスク評価に着手しているものになっております。GHS分類における標的臓器・全身毒性(中枢神経系単回ばく露)が区分1となっておりますので、それを理由としてリスク評価の対象物質に選ばれたものとなっております。
なお、ばく露作業報告につきましては、対象期間が2014年(平成26年)の1月~12月となっておりまして、報告時期が平成27年の1月~3月となっておりまして、当時の報告数としては9件の報告が上がってきているという状況となっております。
それでは、リスク評価書(案)の内容をかいつまんで御説明いたします。
まず1の物理化学的性質でございます。
(1)の化学物質の基本情報は御覧のとおりでございまして、労働安全衛生法施行令別表第9の「名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物」に該当するものとなっております。
次に参りまして、(2)の物理的化学的性状でございます。外観につきましては特徴的な臭気のある無色の液体ということでございます。沸点につきましては102℃となっております。蒸気圧につきましては20℃で2.0 kPa未満ということでございます。また、オクタノール/水分配係数につきましては0.99という数値が出ているといった状況となっております。
次に参りまして、(3)の物理的化学的危険性でございます。火災危険性としましては、引火性が高いとなっております。爆発危険性としましては、蒸気・空気の混合気体は爆発性であるとなっております。物理的危険性におきましては、蒸気は空気より重いとなっております。化学的危険性におきましては、酸化剤と激しく反応し、火災や爆発の危険性をもたらすとなっております。
続きまして、製造・輸入量になります。製造・輸入量としましては、経済産業省のデータによりますと、2019年度(平成元年度)で1,000 t未満となっております。用途としましては、医薬原料や有機合成原料となっております。製造業者の情報はないということになっております。
次に2の有害性評価の結果に移ります。
まず(1)の発がん性でございますが、発がん性につきましては報告なしとしております。
次に参りまして、(2)の発がん性以外の有害性でございます。
急性毒性につきまして、致死性については御覧のとおりとなっております。52行目、健康影響につきましては、マウスの経口投与試験で麻酔作用と運動失調が、ラットへの経口投与試験で麻酔作用が見られております。
次に参りまして、62行目、皮膚腐食性/刺激性ですが、こちらについてはありとしております。
次に参りまして、66行目、眼に対する重篤な損傷性/刺激性につきましては、同じくありとしております。
次に参りまして、74行目の皮膚感作性とその次の76行目の呼吸器感作性につきましては、報告なしとしております。
次に参りまして、78行目の反復投与毒性でございます。LOAELとしまして1,860 mg/kg体重/日という数値が得られております。こちらにつきましては、雌のラットに2.4%のジエチルケトン水溶液を120日間飲水投与した試験となっておりますが、飲水量の減少や体重増加の抑制、腎臓の重量の増加というものが見られたため、この水溶液の濃度に相当する1,860 mg/kg体重/日をLOAELとしております。
93行目になりますが、このLOAELから不確実係数を利用してNOAELに変換いたしまして、43.7 ppmという評価レベルが得られております。
次に参りまして、99行目、生殖毒性でございますが、報告なしとなっております。
次に参りまして、101行目、遺伝毒性でございますが、酵母での報告はあるが判断に十分な情報はなかったということで、判断できないとしております。
104行目の生殖細胞変異原性につきましては、情報がないとしております。
続きまして、106行目の神経毒性といたしましては、マウスへの経口投与試験で麻酔作用と運動失調、ラットへの経口投与試験で麻酔作用が見られたということで、ありとしております。
次に参りまして、(3)の許容濃度に参りたいと思います。
ACGIHにおきましては、TLV-TWAで200 ppm、STELで300 ppmという数値を出しております。また、日本産衛学会におきましては設定なしとなっております。そのほか、NIOSHで200 ppm、UK WELで8時間TWAが200 ppm、STELが250 ppmというような数値が出ております。DFG MAK、OSHA PEL、OARS WEELで設定なしとなっております。
以上から、(4)の評価値でございますが、まず二次評価値につきましては、リスク評価の手法などに基づきまして、ACGIHが提言しているばく露限界値、TLV-TWAの200 ppmを採用しております。
戻りまして、一次評価です。一次評価につきましては、毒性試験のデータを基に算定した無毒性量LOAELが二次評価値の1/10以上となる場合には設定しないとされております。先ほど御覧いただいた反復投与毒性の評価値、96行目のところで156.2 mg/m3という数値が出ておりますが、それを持ってきますと二次評価値の1/10である70.5 mg/m3を超えておりますので、一次評価値は設定しないとしております。
以上となります。
○大前座長 ありがとうございました。
発がんあるいは生殖毒性の両方がないという物質で、ACGIHの数字を二次評価値として持ってくるという提案ですが、いかがでしょうか。
○西川委員 106行目の神経毒性のところに「あり」という評価がしてあるのですが、内容を見ますと、ラット、マウスともに致死量の3,000 mg/kgに相当する極めて高い用量で見られた運動失調とか麻酔作用というのが所見であって、これが本当に神経毒性なのか、あるいは、死亡するわけですから、それに伴う変化なのか、なかなか判断が難しいと思うので、これは単に「あり」ではなくて、「判断できない」とか、少し緩やかな評価にすべきではないかと思いました。
○大前座長 ありがとうございました。
本当に瀕死状態のやつの評価をどうするかというのはいつも問題になっておりまして、先生がおっしゃったように、この濃度だと本当に瀕死状態だと思うので、それをとるかとらないかというのは時々議論にはなっております。
いかがしましょうか。ある意味、これだけの濃度だともう書かないという判断もあり得ると思うのですが、
○西川委員 さらに言うと、ちょうど下に出ている112行目からの文章ですけれども、1,860 mg/kg、約2,000 mg/kgを投与しても神経毒性はないのです。だから、この物質固有の作用として、神経毒性は仮にあったとしてもあまり強いものではないと思います。
○大前座長 そんな感じですね。
どうしましょう。神経毒性はないと書いてしまいますか。それもちょっとという気がしているのですけれども。
これは麻酔作用がなかったんでしたっけ。53行目あたりで麻酔作用と書いてありますが、これも濃度が随分高いですよね。
○西川委員 これは死ぬ用量なのです。だから、それで麻酔作用があるかどうかというのは本当は判断できないと思うのです。
○大前座長 ヒトのデータは麻酔ではなくて呼吸器の刺激の閾値の話ですから、これはまた別ですものね。
先ほども申しましたように、瀕死の状態の評価をどうするかというのはいつも問題になって、とらなかったりとったりみたいなことをこの前の原案を出す委員会ではやっているのですけれども、今回は一応ありというスタイルで書いています。
どうしましょうか。神経毒性は「判断できない」ぐらいにしておいて、根拠は全部消してしまいますか。そのほうが妥当ですか、先生方。
○宮川委員 「判断できない」が妥当だと思います。確かに麻酔作用が見られたのは瀕死の状態かもしれませんが、その状態で、これは呼吸器で死んだのか、あるいは麻酔作用で死んだのか、その辺は分からないわけです。だから、「なし」というよりは「判断できない」というのが妥当ではないかと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
ほかの先生方は「判断できない」でよろしいですか。
○江馬委員 「判断できない」でいいと思うのですが、投与量が非常に大きいところで麻酔作用がみられています。麻酔作用というのは神経毒性にとらないのですか。
○大前座長 今までとっています。
○江馬委員 麻酔作用による運動失調だと思うのですが、麻酔作用が神経毒性ならば、神経毒性ありということになると思います。
○大前座長 どうでしょう。ほかの先生方。
○西川委員 ですから、先ほど申し上げましたように、これが本当に麻酔作用かどうかは判断できないのです。もう死にかけている動物の所見ですから。
○江馬委員 分かりました。
○大前座長 では、江馬先生が分かりましたとおっしゃいましたので、これは「判断できない」ということで、神経毒性に関する記述、107行目から123行目までは削除するということでよろしいですか。
○津田委員 麻酔作用がどうなのかという記載が必要なのですけれども、わざわざ麻酔作用と書いてあるのは、やはり麻酔されたという状況で、瀕死で横たわっているとかそういう状態ではないと思うのです。だから、非常に高用量でそういうことがあったというのは消す必要はないと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
瀕死の状態であっても、麻酔作用が起きていれば、神経毒性は「あり」とすべきだと。「判断できない」ではなくて。いずれにしても情報が少な過ぎるというのが一番大きな問題なのですけれども。
○西川委員 「判断できない」として、根拠は残してもいいと思います。これは事実ですから。ただ、本当に麻酔作用かどうかというのは、おそらく確かめたわけではないので。
○大前座長 ちょっと気になるのは、ACGIHの131行目、200 ppmに決めた根拠の中に「麻酔作用を最小限にするため」という文章があるのです。だから、ACGIHは麻酔作用があると判断しているようなのです。ACGIHの原文を見ていないので、どういうあれなのかまでは分からないのですけれども、どうしましょう。ACGIHがこういう判断をしたということは、やはり麻酔作用があるという可能性も大きいと思うのですが。
○津田委員 そういう記載もあるし、非常に高い用量なので、麻酔作用があったと書いても、用量設定とかそういうことにはほとんど関係ないので、一応そういう観察があるということは無視できないと思います。
○大前座長 分かりました。
そうしましたら、ACGIHはこういう書き方をしていて麻酔作用があることを認めているということなので、一応麻酔作用ありということで、記述はこのままでよろしいですか。
西川先生、よろしいですか。
○西川委員 結論として神経毒性「あり」とするのですね。
○大前座長 はい。ACGIHが根拠として書いているというのがやはり。
○西川委員 多分、ACGIHが根拠としているのも我々が見ている試験結果と同じものを見て評価しているだけだと思うのですけれども、それを尊重するのであれば、それはそれで結構です。あまり大きな問題ではないと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
では、今の文章のまま、「あり」という形で行くということ、それから二次評価値は先ほどのACGIHの200 ppmを採用するということで結論としたいと思いますが、先生方、よろしいですか。
○西川委員 それで結構です。
あと、146行目にLOAELの日本語として「最小副作用用量」とあるのですが、これはあまり使わないと思うのです。
○大前座長 そうですね。「最小毒性量」と言いますよね。
○西川委員 「最小毒性量」と言いますので、これに特に意味がなければそちらに直したほうがいいと思いました。
○大前座長 そうですね。これは「最小毒性量」に修正してください。おっしゃるとおりだと思います。ひょっとしたらほかのところにもあるかもしれないので、同じように修正してください。
ありがとうございました。
○吉成委員 2点ほどよろしいですか。
1点は、127行目と141行目に「200 ppm」と書かれている後の「mg/m3」の数字が異なるのは、原典がそのような数字を書いているから転記しているだけということですか。「705」と「716」となっているのですが。
○大前座長 これは確認していませんが、多分そういうことだと思います。20℃で計算するか、25℃で計算するかみたいなことでここの数字は違ってくるので、そういう意味合いだと思います。
○吉成委員 分かりました。
あと一個、すごいマイナーですけれども、39行目の吸入毒性のところの「LCLo」、ローなので「Lo」だと思うのですけれども、「0」の下付きにも見えなくはない。
○大前座長 「LCLo」のところですね。
○吉成委員 はい。確認だけお願いいたします。
○大前座長 では、これは確認をお願いします。
ありがとうございます。
○江馬委員 2ページにLD50値が複数表記されているのですが、これは複数の報告があったということですよね。
○大前座長 はい、そうです。
○江馬委員 信頼性の高い報告があればそれだけでいいように思うのです。この複数出ているというのがぱっと見たときによく分からなかったのですが、信頼性の高い報告を探すのは難しいのですか。
○大前座長 それは原典に行けば探せると思うのですが、もう一つの問題は、出てきている報告の実験に使った濃度によって、これは多分計算値で出していると思うので、信頼性が同じでも数字が違ってくるということは時々あるのです。数字を見るとそんなに大きな差はない数字なので、私はいいかなと思っているのですが。
○江馬委員 分かりました。
○大前座長 よろしくお願いします。
そのほかはよろしいですか。
では、タリウムをよろしくお願いします。
○佐藤化学物質評価室長 では、2番目の物質、タリウム及びその水溶性化合物のリスク評価書の案になります。
本文を御説明したいと思います。
タリウムなのですけれども、2011年度(平成23年度)からリスク評価を始めておりまして、初期リスクは一度2014年度にまとめまして、報告されております。
こちらは、GHS分類で生殖毒性が区分1A、標的臓器・全身毒性(神経系単回ばく露)、標的臓器・全身毒性(神経系反復ばく露)が区分1となっていることからリスク評価の対象物質に選ばれております。
ばく露作業報告につきましては、2010年が対象期間で、翌年2011年に報告が上がってきております。当時の報告書といたしましては、事業所が2件となっております。
今回は、一旦初期リスク評価書としてまとめたものですけれども、新しい情報を加えてこれをアップデートしております。
まず資料を御覧ください。
1行目から物理化学的性質となります。
3行目の名称のところですけれども、「タリウム及びその水溶性化合物(不溶性も含む)」となっておりまして、矛盾するような内容になっているのですけれども、原案をつくる際に、以前のリスク評価書では水溶性の物質5物質だけが記載されておりましたのを、有害性の情報があるものは全て、不溶性もまとめてリスク評価書の原案をつくろうということで、9物質足しまして、全部で14物質、12行目以降の表にございますようにまとめております。そのために名称が矛盾するような形になっておりますけれども、厚生労働省といたしましてはこのリスク評価書の10行目あたりに注をつけたいと思っておりまして、非水溶性化合物についても有害性情報があるものについては評価対象に加えたという旨の注意書きを設けたいと思っております。表記の仕方につきましても先生方から御意見を賜りたいと思っております。
初期のリスク評価書、2014年に公表されたときにはタリウム、硝酸タリウム(Ⅰ)、硫酸タリウム、炭酸タリウム、酢酸タリウムの5物質だけでした。今回はそれに9物質足されております。
この物質につきましては、8行目にございますように、別表9の「名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物」となっております。
表が長いのですけれども、飛ばしまして、17行目以降を御覧ください。物理的化学的危険性のところです。
タリウム以外の化合物は、火災危険性、爆発危険性、物理的危険性、化学的危険性につきましてはほとんど情報がございません。情報なしという状態になっております。タリウムだけ情報がございまして、それを記載してあります。
64行目、生産・輸入量/使用量/用途です。タリウムを含めて14物質なのですけれども、生産量、輸入量につきましては情報なしとなっております。用途につきましては、それぞれの化合物で用途の情報が伴うものを記載してございます。
152行目をお願いいたします。有害性評価の結果です。詳細につきましては別添1、別添2に書いてございます。その概要をまとめたものになります。
(1)発がん性です。情報はなしということです。
(2)発がん性以外の有害性です。急性毒性につきましてはタリウム以外の化合物につきましても情報がありましたので、記載してございます。経口毒性、経皮毒性をラットについて記載しております。マウスについては経口毒性、ウサギについては経口毒性を書いてございます。ヒトについても情報がありましたので、189行目に書いてございます。191行目から健康影響ですけれども、最初に動物におきましては、急性毒性の症状は嘔吐、下痢といったものが見られたということです。ヒトにおきましても、急性毒性の症状なのですけれども、腹痛、吐き気、嘔吐、頭痛、脱力感といったものが見られております。
201行目、皮膚腐食性/刺激性です。これにつきましては、ヒトと犬についてデータがありましたので、刺激性ありとしております。
208行目です。眼に対する重篤な損傷性/刺激性です。これにつきましてはヒトについてデータがありましたので、ありと書いてございます。
211行目の皮膚感作性、続いての呼吸器感作性は報告がありませんので、なしとしております。
215行目、反復投与毒性です。NOAELにつきましては0.04 mg Tl/体重/日となっております。根拠は、下にありますように、SDラットの雌雄に硫酸タリウムを90日間経口投与した実験で、雌の0.25 mg/kg体重群で毛嚢の萎縮と脱毛を認めたということで、これが根拠になっております。不確実係数は、種差の10を用いまして、225行目にある計算式に当てはめますと、評価レベルが0.024 mg Tl/m3となります。
227行目、生殖毒性ですけれども、これについてはありとしております。LOAELは0.7 mg Tl/kg/日となっております。根拠の試験データですが、雄のラットに10 ppmのタリウム飲料水を60日間経口投与した結果となっております。この実験に基づきまして、不確実係数は、種差の10とLOAELからNOAELへの変換の10を用いて計算式に当てはめますと、評価レベルが0.042 mg TI/m3となります。
243行目、遺伝毒性ですけれども、ありとまとめております。これにつきましては、本文の255行目、いろいろな試験結果があるのですけれども、「タリウム及びその水溶性化合物は、in vitroの試験系で陰性と陽性の両方の結果を示し、一貫性がみられないが、ヒトにおいて染色体異常の誘発がみられていることから、遺伝毒性はありと判断する」ということで、遺伝毒性ありとまとめております。
259行目、生殖細胞変異原性ですけれども、これについては誘発する可能性があるとまとめています。根拠の試験なのですけれども、260行以降にございますように、261行の後半なのですけれども、「細胞腫は不明であるがHPRT試験は陽性であった」、これを根拠に誘発する可能性があると判断しております。
267行目、神経毒性、これはありとしております。根拠は、ヒトの症例報告があり、またラットについてもありましたので、神経毒性はありとまとめております。
275行目、許容濃度です。ACGIHではTLV-TWAは0.02 mg/m3です。これは吸引性粒子のタリウムとしての数字になります。また、経皮吸収に注意ということで、skinということも書いてございます。290行目、日本産業衛生学会では設定されておりません。DFG MAKでも設定はなし。その次ではTWAが0.1 mg/m3でskinということになっております。続きまして、OSHA PELでもTWAは同じ数字の0.1 mg/m3でskinです。UK WELでは0.1 mg/m3(タリウムとして)でskinです。次のところでは設定されておりません。
評価値のところで、まず一次評価値ですけれども、動物試験から導き出された無毒性量―こちらは日本語がきちんと書かれておりまして、先ほどのジエチルケトンでは間違っておりました。大変申し訳ございませんでした。無毒性量から不確実係数を考慮して算定した評価レベルが二次評価の1/10になるため、一次評価値はなしとしております。
二次評価値は、先ほど御説明したように、ACGIHで決めております0.02 mg/m3(吸引性粒子タリウムとして)という数字を記載してございます。
314行以降はばく露実態評価でして、今回は新しいデータがありませんので、追加されておりません。こちらは別の検討会での議論を踏まえて修正する予定となっております。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
当初はメタルのタリウムと水溶性のタリウムということでしたけれども、不溶性も付け加えて、この全体について評価してあるということになります。二次評価値はACGIHの数字0.02 mg/m3、一次評価値は反復毒性が1/10に満たないので、なし、提案せずというような結論でございますけれども、先生方、いかがでしょうか。
○西川委員 227行目の生殖毒性のところで、生殖毒性ありはいいのですが、この根拠となっているのはラットの精巣毒性があるということを示すものであって、実際の生殖毒性というのは、778行目あたりですか、実際に妊娠したラットに投与していろいろな変化が来たというデータに変えるか、あるいは追加したほうがよいのかなと思いました。これは江馬先生の御意見を聞きたいと思います。
○大前座長 今の後半のは何行目とおっしゃいましたか。
○西川委員 777行目、後の詳細な試験データが出ているものです。
江馬先生、いかがでしょうか。
○江馬委員 精巣毒性があれば、実際の生殖に関わる指標が変化しなくても生殖毒性ありとすると思いますので、私はこれでいいのではないかと思います。
○大前座長 精巣毒性の数字が一番小さいからここに根拠として持ってきているということにはなろうかと思いますが。
○西川委員 ですが、これはあくまでも精巣に変化があったということであって、生殖毒性を調べた試験はほかにもあるのです。それで陽性の結果が出ていることから言えば、そちらを併記するか、むしろそちらに入れ替えたほうがよいのかなと思いました。これだけでは生殖毒性ではなくて精巣毒性ありとしか言えないと思うのです。
○大前座長 これは、この委員会で「生殖毒性」という言葉をどのように使っているかという問題だと思うのですけれども、この委員会では精巣の毒性も、もちろん発生の毒性も、それから生まれた後の毒性も全部含めて「生殖毒性」という言葉を使うということになっているのです。今、西川先生がおっしゃったのは、発生毒性のところで、そちらが生殖毒性の中ではメインだろうと考えられておっしゃっていると思いますので。
○西川委員 そうです。仮に精巣毒性があったとしても、生殖毒性に影響がない場合もあるのです。そういうことを考えると、精巣毒性だけを記載するのはやはりまずいのではないかと思いましたけれども。
○大前座長 そうしますと、西川先生の御意見は、これはこれでいいけれども、これにプラスして発生のところにおける毒性の一番低い濃度も参考といいますか追記したらどうかという御意見ですね。
○西川委員 そのとおりです。
○大前座長 どうでしょう、江馬先生。
○江馬委員 併記するのはいいと思います。精巣毒性も生殖毒性と捉えますので、先ほど大前先生がおっしゃられたように、これが一番低い値が出ている報告であるということでここに載っているということだと思います。
○大前座長 そうしましたら、これは精巣毒性で、それ以降の発生毒性のところのデータ、当然低い濃度がメインになると思いますけれども、それもこの後に、この場合は「(参考)」と括弧して入れるということになると思いますけれども、それを追記するということでよろしいですか。
○西川委員 結構です。
○大前座長 ありがとうございます。
この生殖毒性以外のところで、そのほかの先生方、あるいはお二人の先生方、御意見いかがでしょうか。
特にないようでしたら、今のところの追記を加えて、二次評価値がACGIHの値0.02 mg/m3、一次評価値はなしということでよろしゅうございますか。―ありがとうございます。
そうしましたら、今日の3番目、最後の物質ですが、ピリジンにつきまして説明をよろしくお願いします。
○佐藤化学物質評価室長 それでは、資料2-3をお願いいたします。3つ目の物質はピリジンになります。
これも本文のみの御説明とさせていただきます。
ピリジンにつきましては、2014年度からリスク評価を始めまして、2017年度に初期リスク評価書を一度公表しております。こちらの物質につきましては、GHS分類におきまして標的臓器・全身毒性(神経系単回ばく露)、標的臓器・全身毒性(神経系反復ばく露)が区分1となっていることからリスク評価の対象物質に選ばれたものとなっています。
ばく露作業報告につきましては、2012年に対象期間として、翌年度の2013年に報告が上がってきております。当時は85件の事業所から報告が上がってきております。
今回、この物質ピリジンにつきましては、先ほどのタリウム及びその水溶性化合物と同じように、一旦初期リスク評価書としてまとめているのですけれども、新しい情報、有害性の部分を加えてアップデートしております。
資料2-3の1行目、物理化学的性質を御覧ください。
基本情報を書いてございまして、この物質につきましても、10行目にございますように別表9の対象物質でありまして、「名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物」となっております。
続きまして、(2)の物理化学的性状です。外観は特徴的な臭気のある無色の液体です。沸点は115℃、蒸気圧は20℃で2.0 kPaです。オクタノール/水分配係数は0.65です。
物理的化学的危険性ですけれども、火災危険性は、引火性が高い、火災時に刺激性もしくは有毒なフュームやガスを放出するということです。爆発危険性は、蒸気/空気の混合気体は爆発性であるという特徴です。物理的危険性といたしましては、蒸気は空気より重く、地面に沿って移動し、遠距離発火の可能性があるとなっております。化学的危険性ですが、燃焼すると分解する、有毒な窒素酸化物及びシアン化水素のフュームを生じるということです。
製造・輸入量、用途等ですけれども、経産省のデータによりますと、輸入量は3,000以上4,000 t未満です。そのうち輸出が1,661 t、輸入は69 tです。輸出入ともピリジン及びその塩となっております。用途ですけれども、医薬品、無水金属塩の溶剤及び反応媒介剤、医薬品原料といったものに用いられております。製造業者は、30行のところに書いてある事業者名となっております。
33行目ですけれども、有害性評価の結果になります。詳しい情報につきましては別添1と別添2に書いてございます。そこから概要を取りまとめた本文となっております。
まず(1)発がん性です。ヒトに対しておそらく発がん性があるとまとめております。根拠ですけれども、ヒトでの発がん性の証拠は不十分ですが、GLPに準拠した飲水実験におきまして、B6C3F1マウス雌雄での肝細胞腺腫、肝細胞がん、肝芽腫といったものが見られた、F344/Nラット雄では尿細管腺腫あるいは尿細管腺腫と尿細管がんの併発といったものが見られたということです。そういったことから実験動物での発がん性は十分な証拠があるとして、ヒトに対しておそらく発がん性があると評価されております。49行以下、ほかの機関でどういった評価区分になっているかということですけれども、IARCと産衛学会―すみません、産衛学会と略語になっておりまして、これは正式名称に直します。そちらの2つでは2Bです。ACGIHではA3、DFG MAKでは3Bと評価されている状況です。そういったことから、ヒトに対しておそらく発がん性があると記載しております。
58行目、閾値の有無ですけれども、ありということです。根拠は遺伝毒性がないということで、閾値はあり、そういった発がん性があるとまとめております。
62行目以降に試験データが書いてございまして、それに基づきましてLOAELを参考で書いてあります。63行目以降に数字がいろいろ出てきているのですけれども、雌のマウスで250 ppmに相当するところでLOAELをとっています。投与量に換算して15 mg/kg体重/日というものですけれども、これがLOAELの根拠となっております。文章のほうでいきますと、66行から67行のところで「雌雄の250 ppm以上で肝細胞がん」が見られたということです。これが根拠になっております。
73行目以降のところですけれども、労働補正と不確実係数をとりまして、不確実係数はLOAELからNOAELの変換と種差とがんの重大性の3つをとりまして、1,000をとっております。計算式に当てはめて計算すると、評価レベルが0.13 mg/m3となります。濃度では0.04 ppmとなります。
79行目、リスクレベルの算出ですけれども、ユニットリスクに関する情報はなしとなっております。
83行目以降、発がん性以外の有害性です。
まず急性毒性ですが、ラットとマウスとウサギとヒトについてのデータを記載してございます。
99行目以降、健康への影響となります。ヒトにつきまして症例も幾つか報告されております。
111行目、皮膚刺激性/腐食性ですけれども、ウサギの所見が見られておりますので、ありとしております。
115行目、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですけれども、ウサギについての所見が見られておりますので、ありとしております。
皮膚感作性は判断できない。
呼吸器感作性は情報なしとまとめております。
123行目、反復投与毒性です。LOAELは6 ppmとしております。根拠ですけれども、これはヒトのデータですが、ピリジンの蒸気濃度が6~12 ppm、括弧の中は投与量に換算してございますが、そういった化学工場の7人の労働者での所見からLOAELを6 ppmとしております。所見といたしましては頭痛、一過性のめまい、神経過敏、不眠といったものが見られております。このLOAELを用いまして、不確実係数10を使いまして計算式に当てはめますと、評価レベルが0.6 ppm、投与量に換算すると1.94 mg/m3となります。
134行目、生殖毒性です。判断できないとしております。ヒトでの生殖毒性の報告がなく、また実験動物への経口投与により精子運動能の軽微な低下、雌の性周期のわずかな延長が認められていますが、発生毒性に関する情報が乏しくて生殖毒性影響と判断できないということで、判断できないとまとめております。
139行目、遺伝毒性です。In vitro試験でほとんどの試験結果が陰性であったこと、in vivo試験でいずれの試験結果も陰性であったことから、遺伝毒性はなしとしております。
149行目、生殖細胞変異原性です。情報がないとまとめております。
152行目、神経毒性です。こちらは根拠で154行目以降にありまして、先ほどと同じデータですが、LOAELが6 ppmと書いてございます。
158行目、(3)の許容濃度等です。
ACGIHではTLV-TWAを1 ppm、投与量では3.1 mg/m3と決めてあります。根拠のところにはいろいろ書いてあるのですけれども、161行目の後段にありますように動物データに基づいて出しております。ラットの短期間吸入ばく露試験で試験の最低濃度の5 ppmで嗅上皮の障害が見られた。長期間の吸入ばく露試験は利用できないが、ラット及びマウスでの反復経口投与の影響が検討された。NOELは8未満から50 mg/kgの範囲ということでした。すなわち、2年間の飲水投与試験の最も低いNOELは、F344ラットで7 mg/kg、Wistarラットで8 mg/kg以下、マウスで15 mg/kg以下ということでした。F344ラットの7 mg/kg/日の経口用量は、人間に換算すると、167行目にありますけれども、仕事中の70kgの男性が10 m3の空気を呼吸するとして、49 mg/m3、濃度では15 ppmの呼吸用量に相当するということでした。こういったことから、169行目にありますように、5 ppmでラットの鼻の組織の病変が生じたデータと突き合わせますと、TWAとして1 ppmを守ればピリジンによる障害を最小化することができるということで、1 ppmという数字を決めております。180行目、日本産業衛生学会では設定されていません。DFG MAKでも設定されておりません。NIOSHではTWAが5 ppm、その次のOSHA PELではTWAが5 ppmということでした。イギリスでは長期のばく露では5 ppm、短期のばく露では10 ppmと決めてあります。
評価値ですけれども、一次評価値は0.04 ppmと決めて、ここに記載してあります。根拠は閾値がある発がん性ということです。
196行目ですけれども、二次評価はACGIHが勧告している1 ppmと書いてございます。
203行目以降はばく露実態評価ですけれども、今回は新しいデータがなかったので、前のとおりとしております。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
ピリジンですが、臭いを嗅いだ人はいかに気持ち悪い臭いかというのは実感していると思いますけれども、いかがでしょうか。一次評価値が閾値のある発がんから計算した0.04 ppm、二次評価値がACGIHの1 ppmということでございますが。
○西川委員 123行目の反復投与毒性のところで、これはヒトのデータを使ってLOAELが6 ppmということになっているのですが、動物の試験を見ますと、一番分かりやすいのは別添1の有害性総合評価表の項目の中のエ「反復投与毒性」のところですが、参考データが2つあって、いずれもラットのデータなのですが、特に2つ目の試験はヒトのデータよりも低い値になっています。これは確認なのですけれども、ヒトのデータをより重視するという観点からこのような評価をしたのでしょうか。ちなみに、その参考の2つ目のラットの試験はACGIHでも言及されている試験でありますので、そのあたりを確認させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○大前座長 ヒトのデータ優先というのが原則になっております。それからLOAELが6 ppm。6~12 ppmですから、通常は平均値をとるのですけれども、今回の場合は平均値の記載がないので低いほうの数字をとったということになります。
それから、先生がおっしゃったように、2つ目の参考ですと評価レベルが0.03 ppmで、ヒトのデータですと0.6 ppmですから、一桁ぐらい違うのですけれども、基本的にはヒトを使うということで、参考という形で無視していないよという意思表示を示してあるというのが今やっている現状です。
○西川委員 分かりました。ありがとうございました。
○津田委員 発がん性に関してですけれども、前回はたしか2018年に評価されていると思うのです。そのときはIARCは2Bであって、そのままとれば発がんの可能性があるということになります。もちろん動物ではsufficient evidenceであったわけですが、2Aにならなかった理由は、ヒトに外挿できる根拠が薄いということで2Bになって、「可能性がある」、「発がん性が疑われる」になったと思うのです。今回それが1つアップして、「おそらく発がん性がある」、2Aと同じ表現になったのですけれども、それは、これに足してヒトに外挿できる根拠がどこでどのように出たのか、この中に見つからないのですけれども、いかがでしょうか。
○大前座長 ルールブック上2A、2Bに相当する表現はどうでしたっけ。「可能性がある」が上で、「おそらく」が下になってございます。IARCの2Aに相当する表現は、GHSでは「ヒトに対しておそらく発がん性がある」ということなので、津田先生がおっしゃったように2Bよりも1ランク上げたスタイルの表現になっております。
○宮川委員 ここの丸のついているところの表現はGHSの表現を原則として作った表現なので、GHSの1B相当。1B相当というのはIARCで言うと2Aに該当すると通常は考えられているわけです。ただ、GHSの分類では1Bの判定は主として動物実験のデータによるという記載がGHSの文書にありますので、動物のデータがヒトにきちんと外挿できるかどうかを検討することは重要なのですが、ここでの判断では、多分、動物でもって十分ということであればGHSの1B相当ということで、「おそらく発がん性がある」という文言にすることになったのだと思います。
○大前座長 GHSの1Bの判断の中身ですけれども、これは動物実験で十分な証拠がある場合、それからヒトでも動物試験でも証拠が限定的である場合を1Bにするという形になっていて、今回の場合は動物実験で十分な証拠があるということなのでおそらくGHSの表現になっているのではないかと思います。
○津田委員 そうしますと、手元にある資料で言いますと、2018年1月のリスク評価検討委員会では「可能性がある」で報告されていますけれども、それ以上のデータがあったと考えてよろしいでしょうか。
○大前座長 GHSの表現の仕方ですと、おそらくIARCの2B相当は「人に対する発がん性が疑われる」という表現になっているのですが、前回は「可能性がある」という表現になっていましたか。すみません、前回の資料が手元にないので何とも言えないのですが、基本的にはGHSの表現をずっとしていると思うのです。「可能性がある」というのはIARCの表現なので。
○津田委員 アップグレードする何かがあったということですね。
○大前座長 ピリジンに関しては今回の見直しで何か新しい情報はありましたっけ。―新しい情報はないということです。だから、前回と中身はほとんど変わっていないはずだということなのですけれども。
○津田委員 前回のを見ますと、IARCが2B、ACGIHがA3、産衛学会が情報なし、DFG MAKが3B、EU CLPが情報なし、NTPが情報なし、そういうデータに基づき「可能性がある」だったのですけれども、それよりも今回は表現を変える理由があったと考えてよろしいでしょうか。
○大前座長 前回と今回と、ACGIH等々の評価は変わっていないですよね。A3とか。前回から新しい情報は出ていないというので今回評価書をリバイスしましたので、前回は「可能性がある」と書いてあるとしたら、前回はなぜGHSに基づいた表現にしなかったのか。
○津田委員 「可能性が疑われる」と書いてあります。
○宮川委員 1点は、同じようなデータを使ったとしても、IARCとかほかの機関の最終的な分類を主に見た場合とそこに書いてある動物実験のデータを見た場合でもしかすると判断が違った可能性があるのではないかと今思ったところです。
それから、この丸のところの記載は、同じようなルールでやっていたと思うのですけれども、時々単純ミスでもって記載がずれるようなこともかつてはあったような気がいたします。その辺、資料がないので分かりませんけれども、一応今思ったコメントでございます。
○大前座長 津田先生、今ちらとおっしゃったのは、前回は「ヒトに対する発がん性が疑われる」と書いてあるとおっしゃいましたか。
○津田委員 そう書いてあります。
○大前座長 そうしましたらやはりGHSの表現をしているのですね。それはGHSの2になりますけれども。そうしますと、今回はGHSの表現で「人に対しておそらく発がん性がある」、前回は「発がん性が疑われる」ということで、その間に追加の情報があったかなかったかということですが、これは今は何とも判断できないところです。
○津田委員 この辺をはっきりされたほうがいいのではないかと思った次第です。
○大前座長 そうしましたら、もし情報が追加されていれば、今回の表現は「おそらく発がん性がある」でいいのでしょうが、情報が追加されていなければ、前回と同じように「発がん性が疑われる」という表現にしたほうがいいのではないかということですね。
○津田委員 そうです。特に新しいデータが入っていなければ、基本的な論理の一貫性の問題でそのほうがいいのではないかと思った次第です。
○大前座長 ありがとうございます。
そうしましたら、ここに関しましては新しい情報があるかどうかを再チェックしてみますか。その結果によって、このままでいくか、あるいは前回と同じような表現にするかということを決める、そういうことで、津田先生、よろしいですか。
○津田委員 はい。いいと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
何かございますか。
○佐藤化学物質評価室長 おそらく新しいデータが出てきたということではないと思いますので、そこは確認いたします。
○大前座長 では、今の点はもう一度確認しまして、特に新しいデータがなければ前回と同じ表現に戻すといいますか、変えるといいますか、そういう形になろうかと思います。
そのほかにピリジンでいかがでしょう。
一次評価値、二次評価値に関しましては特に御意見はございませんか。ACGIHの1 ppmを二次評価値、動物発がんのほうから持ってきた数字を一次評価値の0.04 ppmとするということでよろしゅうございますか。―ありがとうございました。
そうしましたら、先ほどの発がんの表現に関しましては確認して最終的に決めるということでよろしくお願いいたします。
今日予定されている議事は以上ですが、「その他」ということで、何かございますでしょうか。
○福田有害性調査機関査察官 検討をお願いしたい案件につきましては以上となっております。
本日頂いた御意見を踏まえて修正したものにつきましては後日改めて皆様に送付させていただきますので、御確認をお願いしたいと思います。
なお、御承知だとは思いますが、有害性評価小検討会で了解いただいたリスク評価書などの案につきましては、今後ばく露実態調査などの結果を改めて追加するなり、詳細リスクという形で追記するなりしまして、ばく露評価小検討会で評価を受けた後にリスク判定の項目を追記するなどした上でリスク評価検討会に諮り、できる限り今年度中にリスク評価書として確定していくという方向で進める予定で考えております。
また、次回の日程でございますけれども、もう御案内が行っていると思いますが、10月28日、木曜日、13時半~15時半で予定しておりますので、また10月28日にはよろしくお願いしたいと思います。
以上となります。
○大前座長 そのほかに委員の先生方から何かございますか。
特にございませんようでしたら本日の検討会を終了したいと思いますが、よろしゅうございますか。事務局ももうよろしいですね。―ありがとうございました。
それでは、本日の有害性評価小検討会を終了いたします。どうもありがとうございました。