2021年7月19日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第39回) 議事録

日時

令和3年7月19日(月)14:46~16:59

場所

中央労働委員会 労働委員会会館講堂(7階)

出席者

今村主査、大木構成員、関口構成員、土橋構成員、三宅構成員、宮崎構成員、安井構成員

議事

議事内容

○事務局
 ただいまより、「第39回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催いたします。本日の出席状況について報告いたします。本日は、関口構成員、三宅構成員がオンラインでの御参加、志藤構成員、土井構成員が御欠席です。また、先ほど説明しましたとおり、酒井構成員が退席しております。法人の樋口理事長が、オンラインの御出席となっております。
 それでは、本日の議事について説明いたします。今回は、労働政策研究・研修機構について、令和2年度業務実績評価及び中期目標期間見込評価に係る意見聴取を行うこととなっております。前回、事務局から説明したとおり、今回から各評価項目における評定の根拠について、法人から重点的に説明しますので、評価の内容を中心に、皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。議事の流れとしては、年度評価について一通り御意見を頂いた後で、見込評価の御意見をお伺いしますので、見込評価における法人の説明については、年度評価との重複を極力避けていただくよう、お願いいたします。
 3つ目の議題である業務・組織全般の見直しについては、通則法第35条の規定を根拠とし、主務大臣が中期目標終了時までに法人の業務の継続又は組織の存続の必要性、その他業務及び組織全般にわたる検討を行い、その結果に基づいて業務の廃止若しくは移管又は組織の廃止、その他所要の措置を講ずるもので、次期中期目標の内容に反映することを目的として実施するものです。これについても、本WGの御意見を賜りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは今村先生、議事の進行をお願いいたします。

○今村主査
 このWGの主査を務めさせていただく今村です。どうぞよろしくお願いいたします。ただいまの事務局の御説明ですが、先ほどの勤退機構に加えて、見込評価あるいは業務・組織全般の見直しといった言葉が出ておりますが、御質問がありましたらお願いいたします。よろしいですか。それでは、労働政策研究・研修機構の令和2年度業務実績評価について、御議論いただきたいと思います。初めに、法人の業務概要と自己評価について、「評価の要約」の記載内容を中心に、手短に御説明をお願いいたします。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 総務部長の中井と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。私からは、法人の業務概要及び重点化対象項目を中心に業務実績及び自己評価について御説明させていただきます。
 資料ですが、お手元のタブレットの「評価の要約」を御覧ください。それと、補足資料を中心に説明いたしますので、よろしくお願いいたします。まず、法人の業務概要ですが、2ページに当機構についての資料があります。上段の法人の概要ですが、目的は、内外の労働に関する事情及び労働政策について、総合的な調査研究等を行うこと、それとともに、その成果を活用した労働行政担当職員等に対する研修を実施すること、この2つの目的を柱として事業を実施しているところです。設立年次は平成15年10月で、当時の特殊法人である日本労働研究機構と厚生労働省の施設等機関であった労働研修所を統合し発足しております。所在地は、法人本部及び労働政策研究所が練馬区の上石神井、労働大学校が埼玉県朝霞市にございます。理事長は、平成30年4月より樋口美雄慶應義塾大学名誉教授に就任いただきまして、理事長を含め5人の役員で構成しております。常勤職員数は昨年度末時点で99名、予算額は昨年度ベースで約29億円となっております。上段右側は組織図です。上石神井の本部に労働政策研究所と法人本部があって、労働大学校が朝霞にあり、理事長以下、役員の下に構成しています。
 下段に移っていただきまして、法人の業務の概要です。先ほど目的を申し上げた並びで整理しております。労働政策の総合的な調査研究では、時宜に応じた政策課題に基づき労働政策を支援するための研究を実施すること、さらに体系的・継続的な基礎研究を実施すること等を通じて、政策の企画立案及び推進をサポートしております。労働行政職員研修については、具体的にはハローワーク、労働基準監督署、また労働局の各ポジションの職員を対象に、階層ごとに一般研修、専門研修、管理監督者研修を実施しているところです。後でも御説明いたしますが、昨年度は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、宿泊を伴う集合研修は全て中止されたことから、90コースの研修コースを52に集約したところですが、厚労省の判断で中止若しくは資料送付とされた24コースを除く28コースで研修を実施し、2,965人が受講しました。こちらの資料については以上です。
 引き続き、当機構の事業活動の概要について、令和2年度の事業をベースに説明いたします。当機構については、基本的な方針として表題の下にも書いているとおり、事業全体を有機的に連携して実施することで有意なデータ、エビデンス、分析結果を的確、迅速に提供する。そういう中で、令和2年度は新型コロナの影響が非常に大きかったわけですが、その関連の調査研究、情報収集を開始し、結果を速やかに公表、情報発信を行うとともに、各事業の実施に当たっては、オンラインの活用等により、着実に実施しました。
 それぞれ評価項目になっている事業の柱を真ん中に塊として書いておりますが、労働政策研究、情報収集・整理、労働行政職員研修といったものを有機的に連携して実施するとともに、研究成果等を普及する。また、そこからもフィードバックをして、それぞれの事業に反映させる取組を継続して行っております。
 そういった中で、特に赤字の所を御覧になっていただければと思いますが、まず左上のほうからです。労働政策研究の実施に当たっては、新型コロナの関係で、昨年の3月、コロナが始まって早期の頃ですが、組織横断的なプロジェクトチーム、コロナPTを緊急的に立ち上げてパネル調査等を実施しています。このコロナPTには外部の研究者にも多く参画いただいて、パネル調査に基づくデータの2次分析を行って、各種の研究成果を執筆、報告していただいております。こういった成果については、情報発信としてホームページに特設サイトを立ち上げて、研究成果・結果を迅速に公表したり、メルマガでも情報発信しております。コロナ関係については左下に出ていますが、統計情報も含め内外の情報収集を行い、その成果についていろいろな形で発信しており、英語に訳して海外向けにも情報提供を行っています。また、国内外のネットワークにより、オンラインを活用してセミナーを行ったり、ヒアリングを行っております。オンラインについては、コロナによるいろいろな行動制約が掛かる中で、各種事業に新たに活用して、その事業を維持するとともに、新たな付加価値を付けております。その1つとして、労働政策フォーラムの開催がございます。これまで大きな会場を使ってフォーラムをやっていたわけですが、それが厳しくなる中で、オンラインを有効活用して集客を増加させるとともに、各種の効果を上げております。
 研修については、宿泊を伴う集合研修が全て中止となった中で苦慮したわけですが、コースを集約するとともに、オンラインによる代替開催を行うことによって、可能な限り研修を維持する努力をしました。それとともに、研究と研修の連携事業として、イブニングセッションという形で、研修参加者に対して、研究員が研究成果をプレゼンして、それに基づいて研修生とディスカッションするという事業を行っておりますが、それもできなくなった中において、代替措置として、研究成果に基づく教材を作成して、研修生に配布するといった取組もいたしました。このような事業を令和2年度はさせていただきました。以上が、事業活動も含めた法人の概要についての御説明です。
 引き続きまして、令和2年度の自己評価です。これは、各評価項目の評定の根拠を中心に説明させていただきます。資料については、「評価の要約」を御覧いただいておりますが、資料を替えていただきまして、資料1「評価項目一覧」を御覧ください。当機構については、国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項、業務運営の効率化、財務内容の改善という事項が立てられております。特に最初の、提供するサービスその他の業務の質ということで言えば、労働政策研究の実施、内外の労働事情・労働政策に関する情報の収集・整理、労働政策研究等の成果の普及及び政策への提言、労働関係事務担当職員等に対する研修という項目で、評価項目を設定しております。
 そういった中で、一番上の第3.1にある労働政策研究の実施について、重要度、難易度という所にマルが付いております。重点化項目にもマルが付いております。当機構のリソースについて、正に、こちらの項目に注力するということで取り組んできた経緯がございます。重点化理由の所に出ておりますが、厚生労働省の労働政策の企画立案及び推進に貢献することができる質の高い研究を実施すること、また、中長期的な課題を含め、労働政策の動向を適切に把握し対応するとともに、現時点では想定していない様々な政策課題が生じた際にも適切に対応できるよう、労働政策の基礎となる研究を体系的、継続的に実施することは、本機構の業務として重要である。このようなことで、正にここの「現時点では想定しない様々な政策課題」というのが、今回の新型コロナの問題に該当するのではないかと考え、取り組んできたところです。また、中期目標においては、本項目について重要度、難易度をそれぞれ設定していますので、目標達成の上でも重要な項目であるということで、重点化項目とさせていただいております。この項目についての昨年度の自己評価はSとしているとともに、それ以下の自己評価はB、総合評定はBとさせていただいております。
 その内容について資料2-1-2、補足資料を御覧ください。3ページに、評価シート1-1、自己評価はSと整理しております。これに関する指標が①から⑤で、順に簡単に説明いたします。①のリサーチ・アドバイザー部会等の外部評価における研究成果の評価について、重要度高、難易度高という設定をしておりまして、外部の有識者から我々の研究成果を評価いただくという取組を行っております。その対象となる研究成果について、令和2年度は2.33で、達成度は116.6%となっております。これは実績報告の資料にも詳細に書いておりますが、令和2年度においては、研究成果については6本評価いただいて、そのうちS評価が2本、A評価が4本という結果で、それを数値化して加重平均すると116.5%になっております。②は、厚生労働省から政策貢献が期待できると評価を受けた研究サブテーマということで、100%という評価を頂いて、達成度は125%となっています。③として、労働政策の企画立案及び実施等へ活用した研究成果ということで95.5%、達成度は112.4%になっております。④は、有識者アンケートによる労働政策研究の成果についてで、2.43ということで達成度は121.5%です。⑤の労働政策担当者向け勉強会等への厚生労働省等の政策関係者の参加者数(実績)は295人、目標に対する達成度は131.1%となっておりまして、全ての項目について、数値目標は達成したという形になっております。
 これについて補足させていただきます。評価シートの1-1を御覧ください。事業の概要で、新型コロナに取り組んだと申し上げましたが、我々の中期計画の中でプロジェクト研究ということで、8本の研究の柱で取り組んでいるわけです。コロナに関しては、そのうちのⅠの雇用システムに関する研究の中にサブテーマとして盛り込む形を取って、研究を進めてきました。また、厚生労働省からの要請に基づいて課題研究と緊急調査を実施したと整理しておりますが、昨年度において具体例を掲載しています。特に新型コロナの関係について、多くの調査研究の要請を頂いて、例としてひとり親の影響に関する調査を記載していますが、この調査研究を行うことで、国会におけるひとり親世帯の臨時特別給付金に係る検討資料として活用されるという貢献もさせていただきました。
 コロナPTについては、5ページの「新型コロナ調査・分析PTの取組」を御覧ください。冒頭にコロナPTを設置して取り組んだという話をいたしましたが、具体的な取組として、真ん中にいろいろと書いております。コロナPTでは、理事長をトップとして、ほぼ毎週、頻繁に開催して、その中で部門を超えた協働ということで、機構全体の部門からPTに参加して、情報交換、意見交換、今後のコロナの取組に対する方針決定といったことを進めてきました。具体的に取り組んだ内容については、諸外国の対策についても情報収集するとか、リーマンショック時との比較を行うとか、厳しい環境の中でオンラインを活用するといったことにも取り組んで、検討をしてきたと。その成果の1つとして、その下に「各種調査の実施」と出ていますが、個人、企業に対するパネル調査、同じ調査客体を継続的に追いかけることを柱として取り組んできました。併せて関連の調査、これは厚生労働省から委託を頂いたということも含めてです。あるいはNHKとの共同調査もやらせていただきました。個人パネル調査は、もともと連合総研との共同研究でスタートしたということで、そういった取組を行って、調査研究を迅速に取りまとめて公表、情報発信をしてきました。
 ページをめくっていただきまして、次の「調査・分析結果の情報発信・成果の普及」です。具体的には、その成果について、東京労働大学特別講座として開講したり、取りまとめたハンドブック、それについては海外の情報、テレワークといったことも取りまとめています。また、成果についてはフォーラムの形で開催したり、年度をまたいでいますが、6月のオンライン開催は、内閣府の男女共同参画局と連携してフォーラムを開いたものです。また、いろいろな媒体を使って情報発信しました。そういった成果に基づいて、国会審議、政府の審議会・検討会、与野党問わず政党等への報告、成果提供をしました。白書等でも成果を引用いただいております。そういう活用をしていただいたということです。
 次ページは、労働政策研究の実施の続きです。もう1つの取組として、厚生労働省との連携の中で、若手・中堅プロジェクトチームとの連携事業ということで、EBPMセミナーを昨年度から立ち上げ、政府が取り組むEBPMを我々の知見、あるいはこれまでの成果を活用して勉強していただくという支援を行っております。また、コロナの関係のテーマが多くなっていますが、いろいろと制約がある中での国際間のネットワークを維持、学術的な貢献も含めて取り組んできました。右側は先ほど申し上げたとおり、6本の成果について評価を頂きました。それから、労使との対話、また、外部あるいは審議会への参画等も、制約がある中でも積極的に取り組んできました。
 資料2-1-1の「評価の要約」を御覧ください。5ページに「要因分析」と「評定の根拠・理由」という所がありますので、ここについて簡単に御説明いたします。要因分析というのは、達成度が120%を超えた指標についての要因ということです。①については、令和元年度に120%を達成しているので入っていますが、②④⑤は令和2年度の結果です。各々について、我々の努力により、厚生労働省から実際に政策貢献が期待できるといった評価を頂きました。あとは、有識者アンケートによる評価も、高い評価を頂きました。また、⑤の勉強会への参加者数も、厳しい状況の中でも維持したというのは、EBPMセミナーを新たに始めたことによっての参加増もありますが、いずれについても、コロナで厳しい中、逆にコロナ関係の調査研究を精力的に進めて、時宜に合った研究成果を出したということが、こういった評価につながったと考えております。
 評定の根拠・理由の特に真ん中の所で、コロナの関係で機構を挙げて取り組んだということについて、パネル調査の迅速な実施や内外の研究者、研究機関との連携については、JILPTが長年にわたって構築した研究蓄積、人的資源、ネットワークの活用によるものであると書いておりますが、これまで取り組んだ延長が、今回のコロナに対して成果を上げることができた大きな要因ではないかと考えています。その下の「労働政策動向の適切な把握」も同じですが、コロナに対して政策需要が非常に大きい中において、厚生労働省の方々との情報交換、意見交換を行いながら、我々の研究成果を、「大臣、官房長官へのレク資料提供」とありますが、そのようなことも含めて、高いレベルで政策立案に大きく貢献したことを書いております。
 こういったことで全体を総括しますと、令和2年度、新型コロナウイルス感染症が当機構の事業運営にも甚大な影響を及ぼしたわけですが、そうした中でも、既定の調査研究について、工夫をしてほぼ計画どおりに実施したことに加えて、新たに発生した新型コロナに係る研究活動に組織を挙げて対応し、正直申し上げて大変だったのですが、迅速かつ質、量とも充実した研究成果を発信し、政策面をはじめ社会に多大な貢献ができたと考えております。これはJILPTのこれまでの労働政策に関する研究資源、ノウハウの蓄積があったからこそ、新型コロナという非常に厳しい状況に対して、迅速、機動的に対応し、能力を発揮できたものと考えているところです。以上のことから、重点化項目である労働政策研究の実施に関しては、自己評価をSとしているところです。
 それ以降の評価項目については、全て自己評価をBとしておりまして、詳細な説明は省略しますが、若干説明事項がありますので、簡単に御説明いたします。
 8ページの「労働政策研究等の成果及び政策提言の普及」ですが、この中で、労働政策フォーラムの参加者への有意義度評価の達成度が120%となった要因分析について記載しています。これも法人の努力結果で、年6回開催するとともに、有意義度の評価の一定基準を満たすということですが、先ほど申し上げたとおり、コロナ禍で大きな会場で行うことが非常に厳しい中で、オンラインを使って開催し、そこにも記載されているとおり、例えば開催方法については2部構成にして、1部の研究報告、事例報告は、事前に一定期間オンデマンドで配信して、2部のパネル討論をライブ配信するといった形式を採用しました。これは地方からでも視聴でき、1部については繰り返し見られて内部の理解が深まるといったことが非常に高い評価につながって、有意義度の向上にもつながったと考えております。
 9ページの「労働関係事務担当職員等に対する研修」の要因分析があります。これは、集合研修ができなくなったことにより、もともと設定されていた指標が作れなくなったという制約があったわけです。それに対応するために、代替指標ということで、研修の評価については、もともと一定期間後の評価だったのですが、それが昨年前半は中止になってできなくなり、研修直後の評価ということに、代替指標として切り替えて提示しております。もう1つ、イブニングセッションの開催についても30回以上開催し、それに基づく研修教材の開発・改善するのですが、それもできなかったので、研修生向けの教材を新たに作成して、それを勉強した研修生から評価いただいて、それぞれ有意義度は93.9%、95%という代替指標を得て、提示させていただいているところです。
 10ページの「業務運営の効率化に関する事項」のうち、一者応札件数の実績についてです。これについては、もともと件数を、第3期の中期計画期間に実績平均4.2件を下回るという目標だったわけですが、平成30年度と令和元年度で9件ということで大幅に増えた結果、既にそこで目標が達成できなくなってしまったという状況がございます。あらゆる手段を尽くして改善に取り組み、令和2年度は2件まで減らしたのですが、先ほど申し上げた事情によって、計画期間全体では厳しい状況になっています。以上が補足説明でした。私からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。

○今村主査
 ありがとうございます。それでは、実績評価について御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。ただいま説明がなかった事項についてでも結構です。オンラインで御参加の構成員も適宜御発言をお願いいたします。それではどうぞ。

○土橋構成員
 土橋です。最初の所、S評価になっていて、数字的な評価だけ見ると、令和元年がAであれば令和2年もAかなという気がするのですが、そこでSにした辺りは、やはりコロナへの対応というのが大きかったという理解でよろしいでしょうか。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 おっしゃるとおりです。そこは定量的、定性的という両方で総合的に評価させていただいている部分があって、繰り返しになって恐縮ですが、コロナなかりせばというところが、コロナがあったときに、その他の事業をどうするのかということについては、計画どおり行うと。現実には、例えば情報収集のための出張ができなかったりとか、インタビュー調査なども現地に足を運べないので大々的にオンラインでやるという制約はあったわけです。もともと実施することになっていた事業は、そのままほぼ実施したということに加えて、新型コロナという非常に大きな社会的な問題、これが雇用・就業に与える影響が甚大であったことから、そこに注力して取り組むということを通常業務に加えて、テーマはプロジェクト研究に盛り込んだと申し上げましたけれども、それが丸々新たな業務としてオンされたという形の中で取り組んで、先ほど申し上げたとおり、スピードも含めて質、量ともに成果を出して貢献できたという、そこを重視させていただいたということです。

○土橋構成員
 多分、かなり追加的なことを迅速に調査を行って、政策立案にまで貢献できたというところなのですが、ちょっと内容的に研究成果としてどのようなものがあったかというのをある程度伺わないと、S評価にしていますので、ちょっとその辺をもし可能であればお聞かせいただきたいと思います。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 それでは、資料で申し上げますと補足資料で、ちょっと繰り返しになって恐縮ですが、5ページあるいは6ページを併せて御覧になっていただければと思います。今回の事業の核についてですが、個人、企業に対するパネル調査というものを実施したと申し上げました。これで同じ個人、企業を動学的に追いかけて調査をすることによって、コロナの影響というのが時系列でどう変わっていったのかが把握できるという状況があったわけです。コロナというのは、当初、緊急事態宣言で日本の経済の活動、社会活動を人為的に抑制しなければいけないという状況があり、最初は全ての分野に多大な影響があったという中で、コロナの性格ということですが、どうしても対人接触を伴う分野に大きな影響を及ぼしたということ、また、そういった分野で働く方々というのが女性の非正規が多かったとか、あるいは、そういった方々が非常に所得水準が低かったとか、そういった成果というのをこの間いろいろ公表させていただきました。
 その公表結果、先ほども若干申し上げましたけれども、大臣にも説明させていただきましたが、成果をいろいろな分野で活用していただきました。そういった取組があった中で、例えばNHKさんとの共同研究というお話もしましたが、NHKさんから声が掛かって、引き続き一緒に調査をしたいということで、その調査結果も公表しました。そういった内容も含めて、今度は内閣府の研究会にも活用していただいたとか、いろいろな所で波及、ひとり親家庭の支給の話もしましたが、そういう形になって結実したと考えています。
 その成果については、資料の6ページでハンドブック等の刊行ということで、昨年の成果をまとめたハンドブック「新型コロナウイルス感染拡大の雇用・就業への影響2020」というのがあります。これは非売品なのですが、ホームページで全文ダウンロードできるとともに、欲しいと言われる方には配布しております。ページが多ければいいという話ではないのですが、500ページ近くになる成果物で、それぞれの所で多方面に活用されているということです。あるいは、その下に書いてありますが、「データブック国際労働比較特別エディション」というのは、コロナの影響を受けた諸外国の状況をデータによって比較できるというもので整理しているものです。この間、それぞれ雇用情勢がどう動いたかとか、それ以外の労働関係の分野がどういう動きを示したか、政策的にどのような動きがあったか、そういったことが分かるものになっています。
 また、今回のコロナ禍で非常に注目されたテレワークについても、我々が持っている知見というものを使いながら順次、研究成果を情報発信したのですが、それを取りまとめたものをブックレットとして、これは販売していますけれども、そういったものも成果物として公表して、各方面で使っていただいています。成果についての活用は、繰り返しになりますが、代表的なことについてそのページにも掲載しておりますけれども、いろいろな形で政策面をはじめとして役立てていただいているのではないかなと考えております。

○労働政策研究・研修機構研究所長
 1点付け加えさせていただきたいと思います。具体的な例を挙げますと、例えばテレワークです。昨年コロナになってから、企業やシンクタンクやいろいろな所がそれぞれに調査結果を発表しておりますが、継続的に毎月のペースでテレワークがどのような状況になっているかというのを、しかも対象が同じ人たちという形で、この1年半ほどの動きをずっとフォローして、使えるようなデータとしてお示しできているのは、多分我々の調査ではないかなと思います。あるいは、諸外国の情報なども、新聞ではいろいろな形が報道されておりますが、それぞれの国でどのようなテレワークの状況になっているかということを総合的に取りまとめた形で示しているのも、多分我々がまとめたものが一番使いやすいのではないかなと。情報自体としてはいろいろな形で出ておりますが、時間的にも空間的にも非常にまとまった形で、言わば政策を考える上で使いやすい形になっているという意味では、我々のやってきた調査研究というものは、やはり一日の長があるのかなと思っているところです。これはテレワークの例ですが、ほかのものについても、やはり同じようなところがあると思っております。

○土橋構成員
 ありがとうございました。このページにあるように、今御説明があったように、しっかりとした調査を迅速に行って、ここにあるような労働政策上の課題を抽出して、実際にそれを労働政策にもフィードバックしたということですね。分かりました。ありがとうございます。

○今村主査
 ありがとうございます。三宅構成員から発言の御希望が出ていますが、ちょっとこれに関連してですけれども、念のために確認したいと思います。今、使えるという割と淡白な言葉でおっしゃいましたが、エビデンスベースドポリシーデザインというか、ポリシーのためのエビデンスをしっかりと信頼できるものを継続したと。それが機構の持っておられる過去からの蓄積の上に、コロナの令和2年に花開くといいますか、積極的に前向きに展開されたということでよろしいですか。特にその例がパネル調査の実施という理解でよろしいですか。Sの根拠ですが。

○労働政策研究・研修機構研究所長
 こういったきちんとまとまった形で情報を発信できているのは、やはり我々JILPTなのではないかなとは思っているところです。

○今村主査
 ありがとうございます。それでは、三宅構成員から発言の御希望が出ております。事務局、つないでいただければと思います。

○三宅構成員
 よろしいでしょうか。三宅です。私から3つほど、2つは質問、1つはコメントになります。まず1つ目は、先ほどの土橋委員と同様なものなのですが、今回のコロナ関連の調査分析というのは非常に意味のあるもので、非常に貢献されたということはよく理解いたしました。誠に頭が下がる思いです。一方、1つ目の質問としては、これだけ大きないろいろな作業に組織全体として取り組んだときに、その反面、予定していてできなかったことはないのかなという質問だったのですが、先ほどの御質問と御回答で大体理解いたしました。補足があればそれについて御回答いただければと思います。それが1つ目です。
 2つ目は、やはり同じようなものなのですが、これはお願いというかコメントです。先ほど御回答にありましたように、こういった調査というのは各業界で膨大に行われていると思います。それらは自主的な取組としてされていると思うのですが、それらの各業界団体とか産業界との比較とか、あるいは議論というのはどのようにされたのかということ、そこは大体理解いたしましたけれども、是非これについても、例えば体力のある業界や業種というのもあるし、そうでない所もあります。しかも、コロナの問題というのはまだまだ継続中ですので、例えば労働環境とか経済への影響というのは今後も続いてくる話だと思いますし、時間遅れで数年後に当然出てくるようなこともあると思いますので、是非、引き続きこういった調査をお願いしたいというのがお願い事項です。
 最後、質問というか、これは以前のこういった会議でも伺ったことの繰り返しになってしまうのですが、幾つか出ていた数値目標に対して、目標をクリアしたのでAとかSという話になるのですけれども、例えば参加者数やウェブの閲覧数というのは、あくまでもアウトプットな話であって、こういった件数はもともと設定した目標の達成のためのあくまで手段であると思うのです。結局その結果として、どのような新しい学術的な知見が得られたかとか、あるいは社会に影響を与えたかとか、社会変革を導いたかというような、アウトプットではなくてアウトカムとしての評価というのをどのようにお考えかなというのを伺いたいということです。以上です。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 3つ御質問、コメントいただいたということで、既に先ほどの回答でお聞きになりたかったことを少しお答えさせていただいていた部分があったかと思います。1つ目として、取り組めなかったことはなかったのかというのは、先ほど申し上げたとおり移動制約によって、例えば当初、研究に伴う海外出張を想定していたのができなくなったとか、そういうところはありましたが、そういった制約の中でも代替的な手段、場合によっては文献調査に頼らざるを得なかったというようなところもありますけれども、そういったことを行うことによって、当初実施するはずだった調査研究事業を丸々やらなかったことはなかったということです。その分、コロナがプラスアルファで覆いかぶさってきたので、組織としては相当無理をして頑張ってきたということがありますけれども、やるべきことはやった上でコロナに全力で対応したと考えているところです。
 2つ目としては、いろいろなコロナ関係の調査研究というのは、こういう事態でしたので、とにかく今、調査研究が必要だということで、いろいろな所で取り組まれたと承知しております。そういった中においても、我々はこれまで労働政策研究を各方面でやってきた中で、そういった取組の中で起きたコロナという事案を、これまでの研究の知見をいかして更に研究を深めるという視点を持ちながら取り組んできたということと、ちょっと言葉は悪いですが、研究の流行りすたりというようなことではなくて、そういった状況が社会にどのような影響を与えるかというのは、しっかりと実態把握をしながら研究を進めていくということを、今後もやっていきたいということで、今の状況を踏まえたときに、やはり今の取組を継続的にこれからも行っていこうと考えているところです。
 もう1つ、単に参加者とかあるいは閲覧とか、そういうことではないということでしたが、今回の目標設定の数字の中でも、特にホームページの閲覧なども大幅に増加している状況はあるのですけれども、あくまでも参考指標という扱いにさせていただいています。それから、可能な限りそれぞれの事業について評価を伴う、アウトプットではなくてアウトカムということですが、そういった指標にするべくこれまでも取り組んでまいりましたし、今後についても、今おっしゃったような視点は非常に重要です。これから第5期中期目標に向けてまたいろいろ整理していく必要がありますけれども、おっしゃったような視点は常に持ちながら、目標設定を考えていきたいと思っております。

○労働政策研究・研修機構研究所長
 最後の件ですが、こういうところで出せる数字というのは、正に手段的なところしかありません。世の中に対してどのようなインパクトを与えたかということをダイレクトに示すような指標というのは、なかなか取りにくいのです。間接的な話になるのですが、例えば先月、もう今年になりますけれども、先ほど申し上げたように男女共同参加局と一緒にコロナ禍における女性の問題についてのフォーラムをいたしました。これの参加者が、もちろんオンラインですので日本全国から参加いただいたのですが、今までの労働政策フォーラムとかなり様相が異なり、今まで来られなかったような方々、女性とか貧困といったことに関心のある多くの方々に御参加いただいています。そういう意味ではインパクトがあったのではないかなと。そのインパクトがどれぐらいあるのかというのを指し示すことはなかなか難しいのですが、そういった形で我々の仕事が世の中に一定のインパクトを与えていることになるのかなと思っております。
 それから、1つ目について言いますと、例えば出張できなくなった、海外には本当に行けない、国内もなかなか出張に行けないのですけれども、その分、オンラインでヒアリングを多くの研究員が行うようになっております。ある意味、コロナ禍を契機として今までやらなかったような調査研究の手法をそれぞれに拡大してきているというところもあります。
 また、2番目の問題についても、コロナの問題は今も正に真っ最中で、その中で走りながらいろいろやっているわけです。当然のことながら、リーマンもそうですし東日本大震災もそうなのですが、一定ある時期が過ぎたところで、一体これは日本の労働社会にどのようなインパクトを与えたのかということを振り返るような研究も当然必要になってくると思います。そういった意味では、この課題は非常に重要なものだと思っているところです。

○今村主査
 ありがとうございました。

○三宅構成員
 先ほどの御回答の中で、コロナ以外のところは少しというか、大分無理をされたという御発言があったと思うのですが、その分、一方では代替手段としてウェブ会議等で情報収集あるいはコンタクトができたという良い面も出てきたということで、ますますこれからの活動に期待するところです。そうすると、少し意地悪な質問になってしまうかもしれないのですが、無理をするということは労働環境の悪化を招いているということになるので、正に働き方改革を少し厚生労働省というか法人も、機構も考えなければいけないのかなということを思いつつ、一方で今年度とか来年度については、出張のための経費は大分削減できるというようなニュアンスで考えてよろしいのですか。つまり、ウェブでの会議システム等が非常に有効に活用できるということは、その分出張とか、あるいは会議での直接会って議論する機会が減らせる。ゼロにはならないと思うのですが、そういう理解でよろしいですか。そうすると、予算ももう一回組み直しというようなことも少し考えなければいけないのかなと思った次第ですが、支障のない範囲で結構ですので、お考えがあれば聞かせてください。以上です。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 最初に、今回のような突発的な調査研究の課題が発生した時点では、それに取り組まなければいけないという中において、ちょっと厳しい局面があったのは事実ですが、そういったことに対応できるということを常に念頭に置きながら、今後、計画的に事業を実施する中において、新たに発生したことも含めてマネジメントしていくということだと思います。おっしゃるとおり、我々も労働分野の独法ですから、職員の働き方改革というのは常に念頭において取り組んでいく必要があるわけですので、そういった視点を持ちながら持続可能的に調査研究をはじめとした事業をやっていきたいと思います。
 それから、出張に関しては、今回いろいろな方面でオンラインを経験して、オンラインのメリット、デメリットをいずれも感じているところです。オンラインが普及したからといって、対面によって得られる情報とか関係性とか、そういったものに勝るものはない部分もある一方で、全て対面でやればいいかどうかということについては、効率性という観点から考えられる部分があると思います。予算について我々自身が継続的な効率化を求められている法人でもありますので、そういった中での今おっしゃるような対面とオンラインのベストミックス、予算の効率的な執行という観点は、御指摘のとおり考えていく必要があろうと思っています。ちょっと数字は申し上げられませんが、そういった視点を持って取り組んでいきたいと思います。以上です。

○今村主査
 三宅委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○三宅構成員
 分かりました。ますますの御活躍、御発展を期待しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○今村主査
 それでは、引き続き御質問をどうぞ、お願いいたします。

○安井構成員
 安井です。御説明いただきまして、どうもありがとうございました。ただいまちょっと話題になったところと関連するのですが、労働政策研究の実施で自己評価Sの背景に関して確認が1点と質問が2点ございます。3ページ目の令和2年度の指標は、令和元年度とそれほど変わっていませんので、これ以外の先ほどおっしゃったコロナ関係のパネル調査の寄与が大きいのでSにされたという理解でよろしいでしょうかというのが1点目です。
 2点目が、全体の評価をSとした背景には、かなり追加的に労働投入するなど、相当無理してやったということなので、もうSにしないと、職員の方もここまでやったのにということで納得しないという面もあるのかなと勝手に推察するわけなのですが、民間企業では、こういうときには予算や人員も限られていますから、優先順位を変えて対応します。この点、JILPTでは何かを削って、このコロナに注力する、それによって従業員の負担の急激な拡大、増加を抑制するということはできなかったのか、何かそこに問題はなかったのかお伺いしたい。それが2点目です。
 3点目は、先ほどテレワークについて定点観測されていて、かなり信頼性の高い指標が公表できているということでした。私もテレワーク等に関して、関心を持っていて、新聞等に関してはウォッチしていたわけですが、日本生産性本部やパーソル総合研究所などがテレワークの結果を公表しているのは存じ上げていたものの、JILPTのテレワークのデータについては恥ずかしながら存じ上げませんでした。所長がおっしゃったように、定点観測又は統計の取り方の面で優れているということであれば、他の機関よりもこの点が優れているということを主張し、それからマスコミ等にアピールしていただけると新聞等にも載って、私もそういったJILPTのデータを使おうと思えたと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 ありがとうございます。最初のSにした理由ですが、定量的な指標についてはお示ししたとおりで、そこに現れないプラスアルファの部分というのが、先ほど申し上げような、いろいろな形で研究成果を取りまとめて公表して、それが政策決定をはじめとしていろいろな形で貢献できた、そういうことで考えています。頑張ったからということもあるのですが、それが実際として、我々は努力というよりも、成果ですから、その成果を上げることができたということが、この指標だけでは現れない部分を先ほどから御説明させていただいています。そういうことも含めて、あるいはこういった指標の中でも、それぞれの評価の中には正にコロナの問題が今、社会的に非常に重要ですので、そういったアウトプットも込みで評価いただいている部分もあるかもしれません。それは指標のどこの部分かというのは切り出せないのですが、そういうことだというように我々としては整理をしているところです。
 それから、先ほどの優先順位についてですが、我々としては中期的に取り組むべき内容というのは、計画で定めて目標数字も作る中において、それをしっかりやっていくということはある意味お約束をして事業を行っているという関係上、それを安易に放棄するというのは、重要だから取り組むわけで、そこがなかなか小回りがきかない部分かもしれません。ただ、無理をしたという言葉は使いたくないのですが、頑張って既存のやるべきこともやりながら、何とかコロナにも対応できたという状況だったと思います。それがいよいよどうするのかと考えたときというよりは、我々、リソース目一杯頑張って、既存の事業もできるという状況だったということです。今後、似たような状況があったときどうするのかをもしかしたら考えないといけないかもしれませんが、今回はそういうことで対応できたと考えているということです。
 それから、テレワークの成果などについても、我々としては定点観測とパネル調査もそうですが、継続的に動学的に動きを見ることができるデータで、そういったものについては政府、行政でも対応されているという部分はあります。そういう意味では、質も担保できていると思っています。また、実際問題として、そういった情報を発信することで、アウトプットではありますが、我々のホームページのウェブの閲覧数が今回大幅に増加しているということで言えば、社会全体としてはそういったものについて見ていただいているのではないか、そういった機会が増えているのではないかとは思っています。ただ今回、安井構成員が御存じなかったということについては、若干反省というか、アウトリーチ的な情報発信がちょっと弱いところがあり、そういった部分について、研究者の方々にもむしろ見てほしいということで、内容を見ていただければ質という面でも多分御理解いただけるのではないかと思いますが、課題として考えていく必要があるかなと感じた次第です。

○労働政策研究・研修機構研究所長
 1点付け加えます。ただいま、安井構成員から御指摘いただいた点は、実はある意味、我々独立行政法人としての弱いところなのかなと。良いことをきちっとやって、ホームページにきちんと載せているので、心ある人は見ていただけるのではないかと思っているのですが、なかなか外に対する宣伝、広報と言いますか、きちっとやっているつもりではいるのですが、やはり弱い面があったのかなということは、かなり痛切に反省したところです。やはり、中身の良いものと我々が思っているだけでは駄目で、それをきちんと世の中の多くの方々に見ていただくということが必要だということを、改めてただいま痛感しましたので、今後の我々の業務運営を是非、そういう視点を踏まえてやらせていただければと思った次第です。ありがとうございました。

○安井構成員
 どうもありがとうございます。パネル調査についても、迅速に立ち上げられたほか、その結果が政策担当者に直に伝わったことから、政策担当者も自信を持って政策をスピーディーに実行できたという点で、非常に有意義なものだと私は思っています。
 パネル調査は政策にいかされて有意義なアウトカムになったと思いますが、他方でパネル調査の個票データに関しては、対外公表されているのでしょうか。もしされていないのであれば、迅速に企業パネルも個人パネルについても公表されれば、例えば民間のいろいろな業種のセクターの人たちが分析することができます。パネルデータですから活用するのが難しい面はあるかもしれませんが、公表されていれば、コロナ禍で企業が有効活用できたという面もあったのかもしれないなと思った次第です。この点に関して、関係者だけに利用を制限するのではなく、パネル調査の個票を迅速に公表してはいかがでしょうか。

○今村主査
 この件ですが、今、樋口理事長のお顔がちょうど画面上に出てきてますので、むしろ理事長から直接説明いただいたほうがいいのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。

○労働政策研究・研修機構理事長
 樋口です。今日はちょっと体調が悪くて、状況が状況ですので皆様にうつしてはと、ワクチンは2回打っていますので、そういうことはないと思いますが、失礼しました。
 今のパネル調査の話ですが、パネル調査については二次分析という形で20何人のアカデミックの先生方にお集まりいただいて、それぞれ分析していただいて、そしてそれを書籍という形で10月、11月に、それと並行して皆様に情報公開ということですが、JILPTにおいては今までもデータアーカイブを行っていますので、そのデータアーカイブを使って公表していくということですが、まずその先生方に御利用いただいて、研究成果を取りまとめた上で、公表していくというような段取りを踏みたいと考えています。さらに、先ほど御質問がありました……テレワーク。

○今村主査
 すみません、ちょっと声が途切れています。もう一回お願いします。

○労働政策研究・研修機構理事長
 フリーランスの人たちについても、テレワークについて調査しています。これは東京大学の玄田先生がもうすぐ発表すると思いますが、そのフリーランスの中でもこういうテレワークを行っているフリーランスについては、仕事を継続している。離職に比べて、非常に安定性を確保する上でも重要であるというような分析結果も出ています。
 さらに、今まで……、企業においてあるいは個人において、その後も継続しているのですが、同じ個人でありながら、実はそれを途中でやめている人たちが、かなり多いというような、その出入りについて、ほかの調査とは違った特徴を示すことができた……得るというようなことについては、私ども反省していますが……、生産性本部……というようなことで協働してきたところです。

○今村主査
 ちょっと聞き取りにくいところがありましたが、いずれにしても研究成果を年末までに報告して、その後にオープンにするという趣旨ですね。

○労働政策研究・研修機構理事長
 すみません。……。

○今村主査
 それでお答えいただいていると思います。それに期待するということで、まずは第1段階の分析、公表をお待ちしたいということでよろしいでしょうか。

○安井構成員
 1点だけ、これは要望と言うか意見なのですが、雇用保険料を財源にJILPTは運営されているので、このパネル調査についても、みんなのお金でやっているところがあります。そうしますと、すばらしい研究者の方々が先行的に個票データを用いて研究されて成果につなげられるということなのでしょうが、国民のお金でパネル調査をやったのであれば、すぐに民間企業や個人などが現状把握のために使えるという環境が整備されてもよいのではないかとは個人的には思います。以上です。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 ありがとうございます。1点だけ、今の関係でよろしいでしょうか。先ほど樋口理事長の御発言の中にも言及があったのですが、今の話に関連して資料2-1-2の補足資料を開いていただいて、その資料の9ページです。9ページの右の真ん中からちょっと下の所に、データアーカイブの充実・活用実績とあります。これが先ほどから安井構成員がおっしゃっている関係だと思います。我々がこれまで行ってきたアンケート調査などについては、ここに公共財としてと書いてありますが、一定期間を経過した後、一定期間を経過というのは実際に調査を実施した研究員などが二次分析をまずは自ら行うという期間が一定期間必要だと、そういうことを前提にしてやっているのですが、それを経過した後、申請すればどなたでも使えるという形で、アーカイブ事業として公表しています。これまでの実績は、JILPTのホームページから見ていただくことができるのですが、このコロナの関係の調査についても、それが早いほうがいいという御指摘だと思いますが、アーカイブデータとして公表させていただく予定で考えています。

○安井構成員
 JILPTのアーカイブの取組については存じ上げていました。私がちょっとこだわってしまったのは、一定期間というところです。民間企業・個人にも、コロナの感染状況が企業や個人に与える影響が日々刻々と変わっていく中で、迅速にそれを把握したいというニーズがあったと思います。それはもちろん公表された集計データや分析結果を見れば一定程度状況が把握できるということなのでしょうが、他方で生のデータがあって、職種別や規模別などクロスで見ることなどによって、例えば飲食業者であれば、自分の業界で今どのような状況なのかということを把握できたのではないかなと思った次第です。つまり、こういった臨時調査については、個票を公表したら個人が特定されてしまうなど、そういう問題があるのであれば話は別ですが、個人が特定されないような加工等をされているデータであれば、迅速に公表して広く国民が使えるようにしてもよかったのかなと思います。以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。できるだけその一定期間を短くしていただきたいという安井構成員からの希望です。
 今、関口構成員から質問をされたいということですが、今の件に関してちょっとだけコメントを申し上げますと、先ほどから出ているようにアウトカムの届き方が少し分かりにくい、アウトリーチがJILPTは苦手であるなど、いろいろお話が出ていますが、私が若干考えていただきたいのは、JILPT全体でのCIO、要するにコンピュータやICT関連のウェブやネットワークなど、そういうものを総合的にデザインして外に届くような、例えばひとり親の問題についても、これは厚生労働省内部の問題であると同時に、その政策を受け止める御本人たちの問題でもありますが、SNSのこの時代にもう少し柔軟に、あるいは将来的にはAIを使って効率的にするなど、いろいろな発想があります。DXの中でどのように機構として、研究のセンターとして対応していくかということは、ちゃんと考えておいても不足はないというか、ちょっと遅いぐらいかもしれませんが、そういう人材も中で育てられて、お考えになったら、この問題も総合的に解決できるのではないかというのが、私から若干余計なお世話のコメントです。よろしくお願いします。それでは、関口構成員、よろしくお願いいたします。

○関口構成員
 関口です。今、いろいろ御意見が出た部分に関係するのですが、アウトリーチ、情報発信というところで、ホームページだけではなく、今、今村先生もおっしゃられたように、SNSをもう少し有効活用したほうがいいのではないかということで、質問ではなくコメントということで少しだけお話をさせていただければと思います。
 中小企業基盤整備機構さんでは、YouTubeを活用して15分ぐらいのものを単発でぼんぼん上げています。JILPTさんは中小機構さんとはやはり取り扱っているテーマが違いますので、テーマ設定というのは非常に難しいとは思うのですが、研究者や労働関係者以外の方に情報発信をするというところでは、15分の短いもので一般の国民の方に広く知っていただくために、そういったものを活用することも手ではないのかなと、今回の話を聞いていて思いました。法的根拠や法的解釈のところで非常に難しいとは思いますが、例えば法律が変わったところにこのような考え方だということを、非常にかみ砕いた形でお話するなど、それから先ほどデータアーカイブのお話もありましたが、そこのトピックスの部分だけをお知らせするなど、そういったやり方もできるのではないかなと考えています。トレンドの部分とオーソドックスな部分、ここも合わせて発信していただくことで、そこを入口にして労働政策フォーラムやイブニングセッションの、先ほどお話の中で異なる層が昨年度は受けられたということですが、その間口を広げるというところで、YouTubeの活用も考えてもいいのではないかと思いました。YouTubeにこだわる必要はないのですが、そういったところで短いもの、起承転結がはっきりしたということではなくて、入口の部分でもっと詳しく知りたい場合はここにというような引っ張り方も、考え方としてはあるのではないかと思います。昨年から今年にかけて、オンラインで様々な取組をされているその御努力を今後につなげていくというところで、そんなことも考えていただいてもいいと思います。
 そういったところで、予算というところでは、一大学教員としては昨年オンラインの講座組立てが大変だったということです。放送大学やオンラインをメインにしている大学の教員とは、やはり設備やサポート体制が違ったということを非常に身にしみて感じています。今後、そのほうにシフトするのであれば、予算措置はそちらも少し拡充してもいいのではないかと、先ほどのお話を聞いていて感じました。雑駁ですが、コメントさせていただきました。以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。もし、よろしければご発言を。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 ありがとうございます。我々自身もオンラインを今回、いろいろな事業で活用することによって、もともとそういう基盤がなかったので、導入に当たっては、それこそ労働大学校の授業などもはじめとして非常に苦労しながら取り組んできたわけですが、いろいろ経験できたこともありますので、今後の事業運営にはいかしたいと思います。
 課題であります我々の広報宣伝力についても、当然、今後ICT技術を活用してという話もあります。アウトリーチという課題もあります。なかなか我々自身のリソースをどこに配分するかという問題はあるのですが、今日いただいた御指摘を参考にさせていただければと考えています。

○労働政策研究・研修機構理事(内田)
 先ほど関口構成員がおっしゃった件で、具体的に考えていることが1つあります。実は、6月に、内閣府の男女共同参画局とコロナが女性の生活と仕事に与えた影響ということで、現状と今後の支援の在り方などをNPOを含めて事例報告を頂く、そういうフォーラムをやったところ、やはり関口先生がおっしゃったとおりのことを、理事長から先日指示がありました。今まで労働関係の労使を中心に情報発信をしているところですが、そういう方々だけではない参加者と、もう1つはアウトリーチをしていくべき対象向けではないかということで、YouTubeでその労働政策フォーラムの内容をとにかくホームページにまずアップしろという指示がきています。そういうこともありますので、少しずつではありますが、具体的にやっていきたいと思います。どうもありがとうございます。

○今村主査
 よろしいですか、ありがとうございます。先ほども前の独法で申し上げたCIOの人材というのは、非常に不足していまして、奪い合いになっていますので、仮にレンタルするとしてもできるだけ早めに御検討いただければと思います。
 時間も大分予定を超過しています。このままでいけば大体、お約束した時間に終われそうな感じで進んではいるのですが、もし何かどうしても1つとあれば、お受けします。いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、これで令和2年度業務実績評価については終わりたいと思います。続いて、本日のもう1つの議題である中期目標見込評価について御議論いただきたいと思います。基本的には年度評価とかなりオーバーラップしていますが、年度評価と異なる部分のみ、評価の要約の記載内容を中心に簡潔に御説明をお願いしたいと思います。それではお願いいたします。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 それでは引き続き、1-1を説明させていただきます。お手元のタブレット、資料3-1-1を開いてください。今村先生がおっしゃったとおり、基本的には同じ構成であります。4ページの評価項目1-1です。中期計画期間の評価については、令和元年度まで3年連続でA評価を頂いたということ、それから、我々の令和2年度の自己評価はSで提示をさせていただいたというのは、先ほど申し上げたとおりです。そういった4年間の実績を踏まえ、資料1でも表が出ておりますが、見込評価としては自己評価Aということで整理をさせていただいています。令和2年度の実績は、それまでの実績に加え、指標の達成状況ということで整理をさせていただいています。そして、5ページで、実績についても基本的に、どうしても足元を重点的に書くような内容にはなっており、整理としては同じ整理をさせていただいておりますが、そういう中で若干異なるという意味では、期間平均あるいはトータルの実績が記載としては異なっています。
 1点、ちょっと訂正があって申し訳ないのですが、定性的指標の右側の実績を書いている部分で、下から2番目のポツの第4期平均英文情報ホームページビュー数が前期比約1.3倍の172とあるのですが、「万」が抜けておりまして、172万件です。大変申し訳ございません。第3期の135万件と比較して1.3倍になったという記載に修正します。
 そういったことであるとか、その下の要因分析でいろいろ書いていますが、これも4期全体の記述をしています。以下同様になっております。それ以外は全てB評価ということで、令和2年もそうですし、それを踏まえた見込評価でもB評価ですので、詳細は割愛させていただきます。簡単ですが説明は以上です。よろしくお願いいたします。

○今村主査
 ありがとうございました。中期の全体に関する最終的な評価の見込みということです。それでは、この見込評価について御意見、御質問がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。先ほど言い残したことも含めて、どうぞ御自由に御意見をお願いいたします。全体としては、評価のA、B、Cの一覧表のようなものはどこかにありましたか。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 その意味ではまた、資料の1に戻っていただければと思います。全体の評価が出ておりますが、今回の見込評価、総合評定でも、一番下に記載していますが、B評価ということで考えているところです。

○今村主査
 ありがとうございました。B評価というのは達成目標を十分達成しているという意味での前向きな評価です。どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

○土橋構成員
 この中で有意義度というのが時々出てくるのですが、どういう定義というか、どうやって決めているのでしょうか。

○労働政策研究・研修機構研究所長
 基本的にはアンケートです。例えば、有識者であれば有識者の方々にアンケート、フォーラムであればフォーラムを御覧いただいた方々へのアンケートで、有意義度がどうかというのを集計してこの数字にしているということです。

○労働政策研究・研修機構総務部長
 具体的には、見込評価の補足資料を御覧ください。例えば3ページで、これは労働政策研究の実施ですが、指標の達成状況の④に有識者を対象としたアンケート調査を実施と書いてあって、2.0以上の評価を得るというときに、選択肢として大変有意義3点、有意義2点、あまり有意義でない1点、有意義ではない0点というのを、それぞれアンケートとして記載いただいて、それを集計して平均化している、有意義度については、そういう作り方をしています。

○土橋構成員
 ありがとうございます。今の資料で14ページの令和2年度の研修生の研修直後の評価というのがあって、こちらはパーセントになっていますが、これはまた違う計算なのでしょうか。

○労働政策研究・研修機構大学校長
 研修についての有意義度は、同じように大変有意義であるか、あるいは普通に有意義であるかといったアンケートに答えさせて、大変有意義といったものと有意義だったといったものを足し合わせた数字が、全体の中で何%というのを取って、95とか90と出しているものです。

○今村主査
 ちなみに、有義意度計算するときの分母は大体どのぐらいですか、母数といいましょうか。

○労働政策研究・研修機構大学校長
 研修についての場合ですと、研修の規模にもよりますが、多いものは500ぐらいになります。

○今村主査
 そうすると、3点、2点で分かれて93.3%までいくと、大変有意義というのは相当多いということですね。

○労働政策研究・研修機構大学校長
 我々としては、満足してはいけないのですけども、そこそこ頑張ってるなと思います。

○今村主査
 分かりました。ありがとうございます。御質問いかがでしょうか。これは見込評価ですので、これからまた修正とかもあり得るかと思います。とりあえず見込みということで決着をしております。それで、先ほどの資料の1番ですね。では、最終的には見込評価で、先ほどから議論しておりますが、3-1の労働政策研究の実施についてはA評価、全体では総合評定Bということで、令和2年度については正にコロナのど真ん中の年でありました。そこに対して資源をうまく活用しながら努力されたという評価は皆さんしておられるようですが、普及の仕方その他についてはいろいろ積極的な御意見があったと解釈したいと思います。そのほかいかがでしょうか。改善すべき点がいっぱいあるという、非常に前向きですが、厳しい御意見がいっぱいあったと思います。よろしいでしょうか。特になければ、この見込評価まで終了しまして、次の議事に移りたいと思います。それでは、最後になりますが、法人の監事及び理事長から、年度中期目標期間における目標の達成状況を踏まえ、今後の法人の業務運営等についてコメントを頂ければと存じます。最初に法人の監事から、続いて法人の理事長よりお願いいたします。

○労働政策研究・研修機構監事
 監事の東ヶ崎です。当機構の令和2事業年度に係る監査報告は、お手元の資料2-4のとおりですが、6月22日付けで理事長宛てに報告いたしました。当機構の監査結果を御報告いたします。資料の135ページ目です。監査報告Ⅰに記載のとおり、監査計画に基づき業務監査にあっては、役職員からその職務の執行状況について聴取するとともに、全ての理事長決裁書類の内容確認を行ったほか、経営会議等重要な会議への出席などを通じて当機構の意思決定過程や業務活動状況を監査いたしました。さらに、会計監査に対しては当機構の契約した監査法人の監査結果を聴取し、会計に関する帳簿及び各種証票書類を閲覧、点検、資産の実地監査を行うとともに、会計責任者から聴取を行いました。
 その結果ですが、次の136ページの監査報告Ⅱに記載のとおり、法人の業務は法令等に従い適正に実施され、また、中期計画の着実な達成に向け効果的かつ効率的に実施されているものと認めます。また、内部統制に関すること、役員の不正行為、法令違反、財務諸表等の内容、事業報告書の内容につきましても、詳細は割愛いたしますが、いずれも適正に行われており、指摘すべき事項及び特段の意見はございません。監査は私と非常勤の小林監事の2名で実施しておりますが、両監事間での意見の相違はございません。
 監査の報告は以上ですが、今後の効果的かつ効率的な業務運営の遂行に当たり、日常及び監査期間中に気付いた点を少し述べておきます。新型コロナウイルス感染症による社会への影響が出始めようとした一昨年末以降、かかる感染症が経済、雇用・就業にもたらした種々の社会変貌を組織横断的に研究プロジェクトとして立ち上げ、情報収集・分析及び評価を行い、調査研究結果として取りまとめた成果は、政府をはじめとする多分野で活用されました。このことは機構職員の精力的な活動、理事長をリーダーとした機構幹部の指導の結実と評価されるところと思われます。
 翻って、かかる感染症への対応等が世間の様々な事業分野で従前の業務のやり方の改革を促していることは周知のところであります。当機構の業務遂行においても、こうした改革として在宅勤務、リモートワークあるいはオンライン会議、研修等々、様々な取り組み方が採用されました。こうした事業運営は常態化していくことと推察されます。第4期中期計画を全うさせることに加え、是非、第5期中期目標の設定においてビジョンを描き、業務改革にチャレンジして臨んでいただくことをお願いいたします。以上で監事からの報告を終わります。

○今村主査
 ありがとうございました。それでは、理事長よりお願いいたします。

○労働政策研究・研修機構理事長
 理事長の樋口です。本日は構成員の皆様におかれまして、本日の業務実績評価を通じ、多くの貴重な御意見を頂きました。是非、参考にさせていただきたいと考えるとともに感謝申し上げたいと思っております。
 ただいま、東ヶ崎監事からも御指摘がございましたように、JILPTにおきましても新型コロナウイルスという世界規模の脅威に対し、令和2年3月の早い段階におきましてプロジェクトを立ち上げ、組織全体でスピード感を持って調査研究、そして情報収集・分析を行い、その成果の情報発信に取り組んでまいったところです。特に非常事態が宣言されました昨年の4月からは、先ほどからも議論にありますように、同一の個人や企業に対し繰り返し調査を行う連続パネル調査方式を採用し、雇用者やフリーランスをはじめとする就業者個々人の仕事や生活、失業や休業、そして給与、労働時間に及ぼしている影響、さらには企業の業績や事業運営、雇用調整や雇用システム、テレワークといった就業環境のコロナ禍における変化等を明らかにしてまいりました。また、影響が長期化するに伴い、人々の行動あるいは心理にも大きな変化が生じてきております。これらの課題はコロナ後を睨んだ解決策を見出していく必要があると考えております。また、今般のコロナウイルスの事態は研究対象の提供にとどまらず、調査方法や労働大学校の研修など、機構全体の事業にも大きな影響を及ぼすこととなりました。セミナー、国際会議、そして労働大学校での研修等で対面からオンラインへの切替えを行うなど、状況に応じて柔軟に対応してまいりました。
 本日、皆様からいただきました御意見を個々の研究調査、研修の改善に反映させるとともに、次期中期計画におきましても、国民のウェルビーイングを高める労働市場構築のためのエビデンスを提供できるよう、各事業に取り組んでまいりたいと思っております。そしてまた、最近、特に注目されています働く者の意識あるいはリスクに対する考え方、こういったものに対して新たにほかの研究分野、特に自然科学で取り入れられていますK6であるとか、あるいは、今申し上げましたウェルビーイング、そういったものをGDPの影響とともに研究してまいりたいと考えております。皆様におかれましても、今後も御指導、御鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いしたいと思っております。本日は誠にありがとうございました。

○今村主査
 理事長、ありがとうございました。それでは、ただいまの監事、理事長からの御発言内容について、御意見、御質問等がございましたらよろしくお願いします。今度は音声が非常にクリアになりましたので、しっかりお答えいただけると思います。いかがでしょうか。先ほど来、出ている大きな問題ですけれども、データの公共性とか研究の公共性ということが予算のところから言われています。公共とは何かと言ったときに、日本人は公共って御上というふうに考えますけれども、基本的にはパブリックでみんなが共有するものだというのが、どうやらグローバルスタンダードの考えのようであります。そういう意味で私事で恐縮ですが、今、私が研究しているのは創造的公共空間ということで、もっと積極的にみんながコミットできるような、そういう公共空間とは何だろうというのを調べていますけれども、そのためにもJILPTの持っていらっしゃるリソース、今、理事長が御方針を表明されたように、是非、それがもっともっと世の中に広く浸透するように、これだけのものを持っている組織がもっともっと広く浸透するような、そういう方向性を大いに期待しています。限られた資源、予算の中で大変だとよく言われることと思いますが、今申し上げました公共空間のイノベーションに、是非、貢献していただければと思います。監事、理事長、御発言をどうもありがとうございました。何かほかにあればお伺いいたします。
 それでは、まだもう1つ残っております。オンラインの構成員の方々、何か接続不良ということは特にないですね。分かりました。それでは、次は業務及び組織の全般にわたる検討の結果並びに講ずる措置の内容についてです。労働政策研究・研修機構の業務組織全般の見直しについて、次期中期目標、中期計画について関わってくるわけですが、初めに見直し内容について、それから法人所管課からポイントを絞って簡潔に御説明いただきまして、その後に質疑応答という流れで進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○政策統括官付政策統括室参事官
 厚生労働省政策統括室参事官の松本です。座長から御指示のあった件について御説明申し上げます。資料4を御覧ください。検討の結果並びに講ずる措置の内容(案)です。5年前のこの措置の内容から改めている点を中心に絞って御説明申し上げます。環境についてのコメントは別として、2ページ目に2とあります。これまで労務管理、労働関係について調査分析をしてこられたわけですけれども、技術の進展や産業構造の変化などに伴って、社会保障制度、公的サービス、雇用制度も変容していくということですので、考慮すべき領域が広がっていることから、関連する他の研究機関との共同研究、研究交流の促進、他分野の専門家等との協力・連携といった取組を進めていただければというのが1点目です。それから、本日議論になっていますけれども、新型コロナウイルス感染症の研究など、突発的な課題にも対応できるような体制の整備を行っていただきたいという点が改めた点です。
 資料の3ページです。Ⅱの1ですが、海外の調査・情報収集について、国際化の進展等によって共通した課題に直面する国も多くなっていることから、国際比較が可能なデータを中心に調査・情報収集を実施していただければと存じます。同様の内容が同じページの下半分のⅢです。課題の共通化ということもありますが、しかし、各国の経済社会の状況や労働環境等によって異なってくる面もありますので、諸事情を踏まえて理解する必要があることから、JILPTさんにおかれましては、各国の研究者、研究機関と一層の交流・研究を図り、諸課題への対応についての知見の共有、研究調査の向上を図っていただきたいという点です。
 次の4ページ、Ⅳの1の最後の2行です。調査研究成果、情報の発信方法を再検討し、インターネットの更なる活用などにより、成果物を効果的に普及できるような取組を進めていただきたい。同じページ、Ⅴの1の最後の2行ですが、次期中期計画期間においては、非対面の研修と集合研修の双方のメリットを最大限活用した研修方式により実施する。こういう点で御検討いただきたい。所管部局から以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。参事官にもお伺いしたいのですが、これ、独法評価の問題点と対応で冒頭にお話されたように、目標の策定時に評価部局が関与する仕組みになっているということです。これについて御議論に参加していただけるという言い方は変ですが、もし何か新しい試みがあればお願いしたい。なければ全然構いません。お気になさらないで。それから、これは目標設定ですから、独法自身からも何か御希望、御意見があってもいいのではないかと思いますが、そういう割とフランクな感じで皆さんの御意見を頂戴できればと思います。これは次期中期目標の期間に関わる重要なことですので、御自由に御発言いただければと思います。もし来年度から何か方針が違うんだよという御発言があれば、この機会にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。無茶ぶりですみません。どう変わったのかなと私も逆に知りたくて。

○政策立案・評価担当参事官室参事官
 どちらかというと、今後の目標設定のところでは、次の計画に向けてより具体的なところをやるのですけれども、この時点で、この場で議論に参加して何かということまでは想定していません。大きく何か方向性に問題があるということはないと考えています。

○今村主査
 どうも御協力ありがとうございます。御自由に、いかがでしょうか。

○宮崎構成員
 この資料を拝見して個人的に思うところですが、世の中の流れの変化を踏まえていろいろな共同研究とか領域を広げていくのは大変良いことだと思います。その中で個人的に感じることは、国際的な競争というのが年々厳しくなってきていて、今、環境の取組であったり脱炭素化であったり、いろいろなものに関して、より主体的に政府、国が関与した中で民間の経済を進めていくという考え方も結構出ています。そうした働き方の中で思うのは、民間の人材と官の人材の交流というのが、制度上の課題もあって我が国ではあまり普及していないのではないかと思っているところがあります。具体的に言うと、任期付任用と言って、1回退職しないと役所に人材を派遣できないとか、いろいろな仕組みの課題がどうもあるように思っています。こういったことも諸外国との比較のテーマの中に入れていただいて、単純に民間だけで努力するということでなく、国家と一体となって官民の交流も促進する中で、どうやって我が国として成長発展していくか。人材の流動化とか交流の促進というテーマなど、次の計画期間においてはそういった視点で新しい政策提言とか、実際、いろいろな人材の交流が促進できるような提言を研究いただければと思います。以上です。

○今村主査
 適宜、関連して御発言があれば御自由にお願いします。特にないですか。どうぞ。

○土橋構成員
 土橋ですが、2ページ目の2の所に「突発的な課題に対応できるよう」とあって、これは難しいというか何を期待されるのかなというところです。体制等の整備なので、そういう人材をすぐ追加できるようにするのか。あるいは課題を集約するようなことを柔軟にできるようにするのか。それとも、その時点で直接問題になっていない課題も研究ですから、いろいろやっておいて、そういうところからパッと出せるようにするのか。どういった辺りを求められているのかが分からないと、何をやっていいのか分からないのかなとちょっと感じました。以上です。

○今村主査
 いかがでしょうか。

○政策統括官付政策統括室参事官
 所管部局の立場からのお答えとして申し上げれば、今般の新型コロナウイルス感染症につきましては、まずは速やかにプロジェクトを立ち上げて定点観測し、同じパネルを対象とした継続的な調査をされたことが大変な資産で、我々としても政策を変更又は追加するに当たって大変参考になったところです。一言で言えば、次の突発事態が同じようなものである保障はないので、具体的にこんなことをやってくれということまでは明示できないにせよ、無理に重ねた上でも今般、このような御対応を頂けたということであります。今の時点の評価としてです。独法としては、運営費交付金を基に中期期間において目標設定された中で、国とは半ば独立して理事長をはじめとした役員又は職員の皆様の取組によって、ある程度計画の範囲内ではありますけれども、いろいろ柔軟な対応も頂けるような制度化がされているわけで、それを事後に有識者の皆様に御評価いただいて次期に活かすという立て付けになっているわけです。ですから予算と言っても、国からは「これについて使え」といった交付の仕方はしない。それぞれの御判断で人員や予算の配分、また手法についてはもちろんのこと、創意工夫なりそれまでの継続的な資産を活かしていただく。そういった対応ができる組織としてJILPTを運営いただいているわけです。
 元に戻って、できるだけ委員の御質問にお答えするようにすれば、体制の中には人員も予算も、また業務の言わば優先順位、手法の工夫、それらを全て含めて体制等と表現しているつもりですけれども、可能な範囲で許された柔軟性の範囲内でそういった工夫をしていただければという意味で書いたつもりですが、ここは明確でないという御指摘は受け止めまして、我々としても考えたいと思います。

○今村主査
 ありがとうございます。いかがでしょうか。

○労働政策研究・研修機構研究所副所長
 先ほど松本参事官から御指摘がありましたように、グローバル化の進展によって各国が直面する課題の共通化が進んでおります。私は海外の担当ですけれども、国際セミナーとか国際会議、我々が主催するそういった会議を通じて諸外国の取組についても、いろいろな政策上でどういった工夫をしているか。あるいは政策上でどういった課題があるかという情報を取るとともに、政策対応についても議論する場を持っています。今、委員から御指摘がありましたように、昨年度は正に突発的なことが起きたわけで、このコロナにどういうふうに諸外国が取り組んでいるか。これは日々、報道ベースでは表層的なことがたくさん出てきますけれども、恐らく政策的にどの国も非常に突発的に起こった事態に対して悩みながら、昨年度はやってきたということがあるかと思います。
 我々は先ほど申し上げましたように、平時、持っていた枠組みを使いまして、例えば日韓ワークショップという枠組みがあったのですが、これはむしろ韓国のほうから日本の政策対応について知りたいというアプローチがございまして、昨年の秋口にワークショップを行い、お互いの政策対応、直面している困難な課題について議論したところです。日中韓という枠組みにおいてもコロナに対する取組ということで、そういった議論を行っています。また、今年度の終わりには国際比較セミナー、これはヨーロッパを含めた議論の枠組みですけれども、ここでも諸外国の取組について議論したいと考えています。ということで、先ほど松本参事官から御指摘があったように、各国で共通化する課題に平時から取り組むとともに、こういった突発的な非常に重要な課題が起きたときには、迅速にネットワークをいかして今後も取り組んでいきたいと考えています。以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。何かありますか。いかがでしょうか。

○安井構成員
 安井です。先ほど来、アウトプットだけでなくアウトカムをどうやって実現していくかというお話があったかと思います。私、ちょっとずれていたら恐縮ですけれども、こういった今後の取組の中に、日本版O-NETへの支援というものを掲げてみてはいかがかなと思っています。なぜかと申しますと、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に少しずつ転換していく中で職業別の情報、つまり、タスク、賃金水準、求められるスキルなどの情報が求職者及び事業主にとって重要になってきています。現在の日本版O-NETが去年3月に出ましたけれども、米国のO-NETオンラインと比べて情報や機能が大きく見劣りしています。企業関係者等に聞きますと、ジョブ型にしていくんだけれども、ジョブ・ディスクリプションをどうやって作ったらいいか分からないという意見があって、その点、例えば米国版O-NETだと必要なタスクを入れると、自動でジョブ・ディスクリプションを作ってくれる仕組みがあります。これは、JILPTさんのような専門性の高い機関が大分サポートしないと、厚生労働省としてもなかなか促進していくことが難しいプロジェクトなのかなと思って外から眺めているわけですが、こういった職業情報の見える化をより高度化して、皆が雇用が変わっていく中でジョブ型に対応できるようにしていく仕組み、公共財を作っていくのが1つ大事かなと思っているところです。以上です。

○労働政策研究・研修機構研究所長
 安井構成員が支援と言われましたが、実は日本版O-NET、もちろん厚生労働省が運営主体ではありますが中身を我々が作っています。載っている様々なデータは我々が調査研究して載せているものです。正直言って、確かに現時点ではまだアメリカのO-NETに比べると貧弱です。まだそういう状況ですが、これは引き続き、よりアメリカのO-NETに匹敵するようなレベルに達するように、今も担当の部門の研究員が毎日研究していて、これは随時データを追加をして充実させていっています。これからもっと充実したものになるように頑張っていきたいと思っています。

○安井構成員
 是非、よろしくお願いいたします。

○今村主査
 ありがとうございます。非常に具体的かつ貴重な議論だったと思います。こういうふうにして目標を文章にしたとき、どこまで明確に書けるかに限界があることはよく分かっていますが、最後に1つだけ気になるのは、今のO-NETのこともそうですけれども、予算は自由に使っていただけると松本参事官はおっしゃっていましたが、限られたJILPTの予算と人員の中で、それをどういうふうに振り分けるか。例えば先ほどありましたようにアウトプットからアウトカムへとか、アウトリーチをもっと充実するにはとか、SNSの時代に対応したとか、でも人材もお金もかかる話で簡単にいかないと思いますが、そういうことは枠の中でやってくれという状況で考えざるを得ないのか。あるいは、もうちょっとネゴシエーションが可能なのか。私は踏み込んで聞いてしまうかもしれませんが、政策的には予算的に限られたものの中で頑張っていただくことになるのか。立ち入った質問ですけれども、どこまでここの有識者会議で出た希望に対して、JILPTが応えることが許されるというか可能なのか。ちょっとだけでも柔軟度というか、そういうことを教えていただければと思います。

○政策統括官付政策統括室参事官
 座長の今のコメントに対して、ストレートにお答えするのがなかなか困難なのは御賢察のとおりです。法人の設立なり運営の目的の観点から、具体的にはできるだけ縛らずに、けれども好きに何でもやっていいという訳ではないという意味において、中期目標・中期計画、また年度目標・年度計画を設定していくということです。所管部局としては、また個別の役所からすると、こういったことをやってほしいと細々と書き込みたくなる誘惑はもちろんあるわけですが、果たしてそれがいいのかというところのバランスはあるわけで、そういう意味で独法として、独立して御判断、運営いただけるというところの匙加減は必要であろうと思います。予算に関しては、言わば別の所で決まる話ですので、中期目標・中期計画、また年度目標・年度計画プラス運営費交付金の範囲内、その中でできる限りの裁量と工夫でもって運営していただくということであろうかと存じます。

○今村主査
 ありがとうございます。最初の1ページの冒頭に随分長いこと、第4次産業革命、ロボット開発などと書いてあります。こういうことにこれから対応しなければいけないということで、そういうことをちょっと質問した次第です。ありがとうございました。いかがでしょうか。オンラインの方、いかがでしょうか。特にないですか。あれば声を出していただければと思います。よろしいですか。それでは、以上で労働政策研究・研修機構の業務・組織全般の見直しについての議論を終了いたします。法人所管課におかれましては、構成員の皆様から本日いただきました御意見等を踏まえ、見直し内容の修正等について御検討いただき、内容の最終的な確定をよろしくお願いいたします。以上で、本日の議事を終了いたします。最後に、事務局からよろしくお願いいたします。

○事務局
 事務局です。今後の流れについて御連絡いたします。本日、御議論いただきました労働政策研究・研修機構の令和2年度業務実績評価並びに中期目標期間見込評価につきましては、この後、本WGにおける御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表いたします。
 また、業務・組織全般の見直し内容につきましても同様に、本WGにおける御意見等を踏まえ、厚生労働大臣が決定し、独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表いたします。
 決定したそれぞれの内容につきましては、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。なお、中期目標期間見込評価及び業務・組織全般の見直し内容につきましては、独立行政法人評価制度委員会へ通知後、同委員会において点検が行われ、その点検結果に基づき出される意見を踏まえ、厚生労働省において次期中期目標案を作成することとなります。そして、その次期中期目標案については来年1月以降、独立行政法人評価制度委員会の審議に付されることが予定されているため、次期中期目標案等につきましても、来年1月頃に本WGでの意見聴取を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 なお、評価に関しては勤労者退職金共済機構の際にも説明しましたが、法人へのインセンティブとして試行的に、評定には影響しないものの、法人の今後の運営の参考となる御指摘について取りまとめたいと思います。事務局からは以上です。

○今村主査
 どうもありがとうございました。それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。外も大分涼しくはなってきたかと思いますが、長いこと皆様、お疲れさまでした。どうもありがとうございました。
 
(了)