2021年7月19日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第38回) 議事録

日時

令和3年7月19日(月)13:00~14:25

場所

中央労働委員会 労働委員会会館講堂(7階)

出席者

今村主査、大木構成員、酒井構成員、関口構成員、土井構成員、土橋構成員、三宅構成員、宮崎構成員、安井構成員

議事

議事内容

○事務局
 定刻になりましたので、ただいまから、「第38回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催します。事務局の政策立案・評価担当参事官室長補佐の戸高です。よろしくお願いいたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。まず新任の構成員を紹介いたします。4月1日付けで玉川大学の大木先生に御就任いただきました。よろしくお願いいたします。

○大木構成員
 大木です。よろしくお願いします。

○事務局
 続きまして、日本総合研究所の安井先生です。

○安井構成員
 安井です。よろしくお願いいたします。

○事務局
 続きまして、東京大学の土橋先生です。

○土橋構成員
 土橋です。よろしくお願いいたします。

○事務局
 次に、本日の出席状況について御報告いたします。本日は、酒井構成員、関口構成員、土井構成員、三宅構成員がオンラインでの御参加、志藤構成員が御欠席となっております。続いて参事官の生田より御挨拶申し上げます。

○政策立案・評価担当参事官室参事官
 政策立案・評価担当参事官室の参事官をやっております生田です。本日は、お暑い中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

○事務局
 続きまして、本日の議事について説明いたします。本日の資料に関しては、お手元のタブレットに収納してありますので、そちらを御覧ください。本日は議題として、厚生労働省における独立行政法人評価の見直しについて、及び勤労者退職金共済機構の令和2年度業務実績評価に係る意見聴取を行うこととなっています。この後の進行は、当WGの主査である今村先生にお願いしたいと思います。それでは、今村先生、お願いいたします。

○今村主査
 皆さん、私はこのWGの主査を務めさせていただきます今村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、議事に入りたいと思います。厚生労働省における独立行政法人評価の見直しについて、事務局から御説明をお願いいたします。

○政策立案・評価担当参事官室参事官
 それでは、資料1に基づきまして説明をさせていただきます。まず1ページ目ですが、これは現在の評価のやり方でございまして、確認というところですが、ポイントは真ん中の所、あくまでも標準はBであるということでして、定量的な指標があるものについては、100%以上120%未満がBに該当いたします。120%以上がA、それから、これに加えて更に質的に顕著な成果があった場合がSとなりますので、Sというのはそんなに簡単に取れるものではない。また、Bについては、これは初期の目標を達成している状態。つまり、100%を達成しているとBになります。逆にいうと、Bだからといって別に法人がちゃんとやっていないというわけではございませんので、改めてこの点も念頭に置いて評価のほうをお願いしたいと思います。
 2ページ目ですが、今回の見直しの関係ですが、私も昨年夏に着任をいたしまして、1サイクル、評価をやってきましたが、その中で改善したほうがいいのではないかというところも出てきましたので、今、御説明したようにBが標準であるというところも踏まえながら、より適正な評価を行うために、言い方を変えますと、外から見ても厚労省はきちんと評価をやっていると受け取られるように今回、見直しを行っております。
 1つは目標策定についてですが、こちらは厚労省のどちらかというと中の話になりますが、現在は目標を作るときに評価部局、これは法人の所管部局ではなくて、我々政策統括官という評価の取りまとめをやっておる部署になりますが、この評価部局が関与する仕組みになっていないということがありまして、結果として研修回数ですとか雑誌の発行回数といった、単に実施するとそれで終わりという目標ですとか、あるいは連続して150%とか200%とか、非常に高い達成率になっているものがありまして、法人所管部局だけで目標を決めるのではなくて、我々もきちんとチェックをする仕組みにするということです。また、目標設定に関する共通のルールを作ることにいたしました。
 2つ目ですが、評価の場面ですが、せっかく有識者会議などを開催いたしましても、資料や説明が法人の業務内容中心となってしまうことも多いと。なぜその評価になるのかという議論になかなか至らないということもありました。したがいまして、資料については評価のポイントが分かるような様式に改めまして、会議では評価の妥当性について重点的に御議論いただきたいと考えております。今回は見直し後の様式に沿って評価の要約の資料を作成いただいております。これに基づきまして議論をお願いしたいと思います。
 3ページ目です。先ほど触れました目標策定についての共通のルールですが、1つ目、定量的指標については1つの目標について3~5個程度を目安に設定。2つ目として、定量的指標については、事業の実施頻度ではなくて研修対象者数ですとか満足度。これがものすごく良い目標だというわけではないのですが、まだこちらのほうが良いということで、より成果に関連するような目標にするということ。3点目として、平均してずっと120%以上の達成度になっている場合については、目標の見直しを検討するということ。それから、重要度高というものを付すことができますが、これは全体の半数以下にすると定めております。
 4ページ目です。新しい様式ですが、目標の内容、指標の達成状況について、見てすぐ分かるようにきちんと書いていただくと。「要因分析」と下のほうにありますが、達成率が120%以上あるいは80%未満という場合には、何がその要因として考えられるのか書いていただくということになります。
 続いて次のページで、評定の根拠について、どうしてその評価なのかというところをしっかり書いてもらって、会議の中ではこの辺りを中心に御議論いただければと思います。
 飛びまして7ページ目で、こちらのほうはちょっと今回試みにやってみようということですが、評価の適正化を図ることはもちろん重要なのですが、評価のための評価になるのはどうなのかということがありまして、法人により頑張ってもらえるような評価をすることが大事だということがありまして、評定そのものには必ずしも直結しないが、こういうところは頑張ったと評価できる取組というようなこと、今後の法人運営の参考になるような、法人のやる気やインセンティブを与えるような前向きなコメントがあった場合に、それについて正式な評価と合わせて、そこはちゃんと伝え、こういう形にまとめてみてはどうかということで、最後、主査にも確認いただいた上で法人に渡すということで考えております。説明は以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。ただいまの資料1、厚生労働省における独立行政法人の評価の見直しについて参事官より説明いただきましたが、これについて御質問がありましたら、皆さんどうぞ御自由にお願いいたします。オンラインの先生もどうぞよろしくお願いいたします。大変きめ細かくより適正な評価ができるようにということなのですが、特にプラスアルファのコメントについてはどうやって拾っていただけるのかというのがちょっと気になるところです。その辺、議事進行で促してよろしいのでしょうか。

○政策立案・評価担当参事官室参事官
 こちらのほうで最後、議事録を整理するわけですが、その中で今、御説明したような趣旨の法人の運営に参考になるような事項についてまとめ、今村先生に御確認いただいた上で、法人の評価と合わせてこういう形にまとめる。これも今回初めての試みなので、どんな感じなのかは我々もやってみないと分からないところがありますが、そういう形でまとめてやってみたいと思います。

○今村主査
 ありがとうございます。冒頭のBが原則であるということについては、当WGはかなり定着をしておりまして、これはこれまでどおりということでよろしいかと思います。それにプラスして法人に頑張っていただくために是非、構成員の皆様、積極的に御意見いただければと思います。何かほかに御質問はございませんでしょうか。では、次に行ってよろしいでしょうか。評価の見直しについて、もし御不明な点がありましたら、次の議題等の中でも適宜思い付いたら御質問いただければと思います。それでは早速、本日の議題、勤労者退職金共済機構の令和2年度業務実績評価について御議論いただきたいと思います。まず初めに法人から、法人の業務概要及び自己評価について御説明いただきます。この2つの説明が終わってから質疑応答というような流れで進めていきたいと思います。それでは法人から、法人の業務概要及び自己評価について説明をお願いいたします。

○勤労者退職金共済機構総務部長
 それでは、勤労者退職金共済機構の業務概要と自己評価について御説明申し上げます。資料は3-1です。表紙の次に、我が機構の概要の資料が出てきます。私どもの機構の設立目的は、中小企業退職金共済法の規定による中小企業退職金共済制度の運営と、勤労者の計画的な財産形成の促進の業務を行うことです。役職員数は役員が6名、職員が256名という規模の法人です。業務の概要としては、先ほど申し上げた中小企業退職金共済制度の運営と、勤労者財産形成持家融資制度の運営をやっております。中小企業退職金共済制度の中には、2つのジャンルがあります。一般の中小企業退職金共済制度と、もう1つは特定の業種で期間雇用をされる従業員について、期間雇用をされる方が業界で働くと、辞めたときに退職金を支給するという制度です。こちらのほうは現在、建設業、清酒製造業、林業の3つの業種において運営されております。
 次のページを御覧ください。これが我々の自己評価の項目の一覧です。私どもは今回、一番上の一般の中小企業退職金共済事業については、自己評価をA評価とさせていただいております。その他の事項については、全てB評価とさせていただいているところです。
 次のスライドを御覧ください。まず最初に、一般の中小企業退職金共済事業についてです。今回、自己評価をAとしております。中期目標の内容としては、大きな柱で言うと、資産の運用、確実な退職金の支給に向けた取組、加入促進対策の効果的な実施、サービスの向上という4本の柱です。この4本の柱については、大きな柱立てというところでは、この後で説明する建退共、清退共、林退共はいずれも同じ柱立てになっています。
 次のスライドです。これが指標の達成状況です。(1)の資産の運用については、指標としては委託運用部分について、各資産のベンチマーク収益率を確保するということで、4つの資産がありますが、いずれもプラスマイナス0のところを確保する、それ以上のところを確保するというのが目標です。令和2年度について、4つの資産はいずれもベンチマークを上回ったということです。資産の運用については、後ほどまた少し説明させていただきます。
 (2)が確実な退職金の支給に向けた取組です。こちらは退職金の未請求の方の数と、未請求の退職金の金額の割合を減らそうということです。令和2年度の実績値は、いずれも未達成ということで、達成度としては人数ベースでは76.0%、額のベースでは87.0%ということになります。これについては要因も含めて、また後ほど説明をさせていただきます。
 次が、加入促進対策の効果的な実施です。加入の数については、111%の数字を確保できました。その下に個別事業主に対する勧奨の数字があります。これは加入促進の1つのツールとして、普及推進員の方が個別の事業主に勧奨するという活動をやっております。これは月平均15件という指標ですが、実績としては14.1件ということで、94.0%となっております。ただ、訪問が少ないというのは、コロナの感染状況の厳しい折に、私どものほうであえて訪問を控えたということです。その代わりに電話とか文書とか、ほかの手段による勧奨の部分を含めると平均で月16.0件なので、その数字で見ると100%を超えています。
 また、ここには書いておりませんが、加入促進ということでは、通常の年は事業主向けの集団説明会といったことをやっております。昨年度はコロナの影響で、人を集めての説明会が非常にやりにくい状況になったということで、ウェブを使った説明会を初めて試しにやってみました。最初はコロナ対応の緊急避難的な位置付けで始めたわけですが、やってみると結構事業主さんにも好評なので、今後のサービスの向上という意味では、恒常的な取組としてやっていけるのではないかと思っております。そういう取組も含めて加入の数ということでは、111%確保できているということです。
 次のスライドを御覧ください。サービスの向上についてです。様々な指標があって、いずれも100%確保できているところですが、去年の議論との関係で、1件補足的な説明をする必要があります。それは上から3つ目の、ホームページのアクセス件数の目標についてです。件数を2種類書いております。昨年度の議論の中で、このスライドの一番下を見ていただきますと、ホームページアクセス件数の中に情報セキュリティの通信監視サービスが、どうやら大量にアクセスしてきていることが、去年の段階でも分かっていたわけです。しかし、去年はその内訳としてどれぐらいかというのをお示しできなかったので、一部の事業で達成率が2,000%を超える状況になっており、指標としての適切性の議論にまでなってしまったことがあります。
 それを受けて、さすがに中期目標において指標として掲げられている以上、私どもとしても、ちゃんと適切に評価していただけるような数値をお示ししなければいけないということで、今年は何とか通信監視サービスの分を我々のほうで特定して、その数値を除いたものを併せて提供させていただいているということです。そういう意味では、達成率についても、そのサービス分を除いた数字で評価していただくことが適当ではないかと思っております。ですから、中退共で言うと131.8%と104.4%という2つの数字が出ておりますが、104.4%で評価していただくのが適切だろうと思っています。
 それから、資産の運用についてはここ数年、すごく大きな取組をずっとやってきた、ある意味成果が出た年が令和2年度だったと思っております。その取組の話を7、8ページで少しさせていただいております。一番分かりやすいのが、8ページに図表3というのがあります。ここに「資産運用委員会の開催状況」というデータがあります。資産運用委員会というのは外部有識者から成る委員会で、その委員会の助言を受けながら、資産運用の質の向上のための取組を、ここのところずっとやってきたということです。どういうことをどういう年にやったかというのが、この資料で大体一目で分かるようになっています。
 例えば、平成28年度の中退共の基本ポートフォリオの見直しは、ゼロベースの見直しをやったわけです。また、平成29年度の中退共のマネジャー・ストラクチャーの見直し、要するに委託運用をしている機関の見直しについても、ゼロベースでの見直しを行いました。中身のゼロベースと併せて説明責任という意味では、その結果等についてホームページ上に公表していったという取組も併せて行いました。そのほかにスチュワードシップ・コードの関係の取組とか、合同運用についても平成27年度に中退共と林退共が資産の合同運用を始めたわけですが、令和元年度からは清退共の合同運用の参加が決まり、令和2年度の議論の中では、今度は建退共の合同運用の参加の検討もなされています。
 それから、令和2年度は資産運用におけるガバナンスの議論もやってきました。これだけのことをやっていくためには、やはり人的資源の導入は不可欠です。私どものほうでも厳しい人員状況の中で、資産運用の専門職を増員し、これに対応したということです。また、資産運用委員会という外部有識者との議論を重ねたり、中退共の基本ポートフォリオの見直しに代表される大きなプロジェクトをやっていくことによって、内部に知見・経験が集積していくことで、人材養成ができるという面もありました。そういうように内部で知見・経験が集積されたことが、建退共の基本ポートフォリオの見直し、あるいは後ほど出てくる林退共の累積欠損の解消計画の策定にもいきてきたということで、良い循環が始まっているのかなと思っているところです。
 それから、様々な取組の中で目標に掲げられている、委託運用部分の超過収益率にダイレクトに影響してくる取組です。これはマネジャー・ストラクチャーの見直しですが、これについてもう少し話をさせていただきます。図表2を御覧ください。指標の収益率は委託運用部分の収益率なので、私どもとしては委託した運用機関の活動によって結果が左右されます。そういうことで、私どもとしては何をやらなければいけないかというと、ちゃんと実績を上げられる運用機関をしっかり選ぶことで、ほとんど勝負が決まるという話になってくるわけです。
 図表2は私どもでやったマネジャー・ストラクチャーの見直し、運用委託機関の見直しです。この経過を見ていただきますと、107社147ファンドが応募してきて、それを書類選考で50社56ファンドに絞り、この50社56ファンドを延べ100時間掛けてヒアリングをやって、30社30ファンドまで絞るということをやったわけです。その後、運用スタイルの分散によるリスクの分散を私どものほうで考え、最終的に採用するファンドを23に決めたという資料がこれです。
 もう一回、応募のファンド数のところに戻っていただきますと、147の横に括弧をして、赤い文字で16と書いております。この16というのは、マネジャー・ストラクチャーの見直しを行う前、私どもから実際に資産運用を委託されていたファンドが16応募してきたことを示しているわけです。一番右を見ていただきますと、既に我々の委託を受けて資産運用をやっていた16機関は、最終的に16のうち半分の8しか生き残れなかったわけです。これはすごく厳しい選考をやったということを表す数字ということになるわけです。
 そういうマネジャー・ストラクチャーの見直しというのは、すごく手間が掛かります。4つの手段がありますから1年ではやり切れないということで、もう一回図表3を見ていただきますと、平成29年度に初めてマネジャー・ストラクチャーの見直しが出てきますが、平成30年度、令和元年度と同じ文字が出てきます。これは平成29年度に検討を始めて、平成30年度と令和元年度の2年を掛けて、4つの資産についてそれぞれ選考作業を行ったということです。それぞれの選考の結果を受けて、委託された機関がそろって運用を始めることができたのは令和2年度ですから、その結果については今、初めてお示しできるものです。
 そういう意味では、ものすごく継続的・戦略的に取組を進めていかなくてはいけませんが、やはり成果が出るタイミングとのタイムラグというのは、どうしても出てくるわけです。今回は令和2年度に初めて実績として出てきたということで、ある意味、意図を持ってやった取組の結果が意図どおりに実現できて、かつ、4つともにベンチマークを上回ったという結果になっているというところから、私どもとしては今回、この部分を自己評価としてA評価とさせていただきました。
 7ページを見ていただきますと、最後の黒ポツにありますように、例えば私どもは外国債券について、運用機関に対してガイドラインを示して、これに基づいて運用してくださいと言っているわけですが、かなり保守的な格付の制限を行っているわけです。収益率だけで見れば、信用リスクがある程度高い、信用格付けがBBB格の国のほうが率は儲かるのですけれども、私どもの退職金の原資という資金の性格がありますので、そこは保守的な運用をやってきているということです。より安全のほうに寄った形で運用をしながら、超過収益率の土俵で勝負をしなければいけないという、かなり難しいところをやってきています。
 最後に、7ページの右上の過去5年間の実績を御覧いただければと思います。平成28年度から令和元年度まで、4つそろって超過収益率を出せた年がなかなかない。特に先ほど申し上げた外国債券などは、4年のうち3年はベンチマークを下回っているという状況です。そういう状況の中で今回、マネジャー・ストラクチャーの抜本的な見直しをやった結果、それらの運用機関の取組の実績が、令和2年度にこのような形で4つともプラスになりました。改めて申し上げますが、その点について私どもとしては自己評価をA評価とさせていただいているということです。
 それからもう一点、9ページを御覧いただければと思います。先ほどの確実な退職金の支給の取組の中で、達成率が低かった部分があります。左上の図表を見ていただきますと、これは私どもが退職金の支給をしない方々に、なぜ請求しないのかを聞いたアンケートの結果です。これは支給の額によって、明らかな傾向の違いが出ております。10万円以下の比較的低額の方については手続が面倒だったり、手続が分かりにくかったりというところが、合わせて半分ぐらいなります。
 一方で10万円を超えるところですが、中退共については企業間の通算の制度というのがありまして、その企業を辞めた後にまた中退共の加入企業に就職した場合は、通算できるという制度です。通算したほうがもらえる総額という意味では有利になるということがあって、それを選ぼうという方々が、10万円を超える部分では3分の2ぐらいになります。特に企業間の通算制度については、使いやすくするための法改正が平成28年度に行われております。それまでは、通算するためには、1つ目の企業を辞めて2年以内に通算の手続を取らなければいけなかったわけですが、それが3年以内に緩和されて、企業間の通算制度をより使いやすくしたという制度改正が行われました。
 これに伴い、右上の図表5の一番下の企業間の通算申請の件数を見ていただきますと、平成27年の2,512件から今はどんどん増えてきて、令和元年度には4,000件となっています。通算制度を使いたいから、今は退職金の請求をしないという選択については、これはもう労働者個人の選択の問題なので、それ以上に私どもとして何かアクションを起こす必要がある部分ではないと考えております。ですから、その要素については恐らく目標設定の時点で、何か調整が要るのだろうと思っております。ただ、今、正に通算制度の利用者が拡大傾向にあって、数字がまだ固まっていない状況にありますので、これについては次期中期目標、中期計画策定段階でしっかり議論ができるように、私どもとしてはデータの収集・分析を行っていきたいと考えています。また、金額が少ない方々については、手続の負担の軽減や我々の制度の知名度をしっかり向上させて、詐欺だと思われないようにするという取組をやる余地はありますから、そういう未請求率低減に向けた取組は、しっかりと続けていきたいと考えているところです。
 そこで、最終的な結論として評定の根拠が6ページにあります。今回、資産の運用について、私どもとしては単体でA評価をするというぐらいのレベルであったと思っております。しっかり加入件数は確保しておりますし、加入促進対策のほうはしっかりと件数を確保しておりますし、確実な退職金の支給に向けた取組については、目標は確かに達成できていない数字にはなっておりますが、先ほど申し上げた通算制度の影響があるという状況なので、それらを総合的に勘案すると、中退共については自己評価としてはA評価とさせていただいています。
 続いて建退共です。10ページを御覧ください。建退共についても、4つの柱で目標を立てています。次に11ページを御覧ください。資産の運用については、これも委託運用部分は複合のベンチマーク収益率ということで、4つそれぞれではなくて全体です。これも超過収益率はプラスになっています。その下に特別給付経理というのがあります。私どもの制度は中小企業が対象ですが、付帯事業として大手企業向けの事業もやれることになっておりますので、その部分についてです。こちらも超過収益率はプラスとなっております。(2)の確実な退職金の支給に向けた取組と、(3)の加入促進対策の効果的な実施、(4)のサービスの向上のいずれも100%の確保をしているので、これらについて勘案すると、建退共ではB評価を自己評価とさせていただいています。
 この評価の項目の中には入ってないので、建退共の関係でもう一言言っておきます。以前から検討を進めてきた電子申請については、いよいよ昨年度の10月からトライアルで試行し、今年の3月、ついに本格実施ということで当初の予定どおり、しっかりと事が進められておりますので御報告申し上げます。
 次に清退共です。15ページを御覧ください。目標の立て方は基本的に同じですが、清退共については資産の運用が、昨年ここでお話をした段階では、まだ単独で運用しておりましたが、令和2年度については、既に合同運用になっております。したがって、16ページの指標の達成状況を御覧いただきますと、資産の運用は中退共と同じ数字が並んでおり、これは合同運用になっているということです。確実な退職金の支給に向けた取組も実施できています。(3)の加入促進対策の効果的な実施については、達成率が54.2%ということで低い状況です。これは後ほどまた説明させていただきます。(4)のサービスの向上については、いずれも100%を達成しています。特に通信監視サービスの影響で、ホームページのアクセス数が昨年は2,000%を超えるといった状況ですが、その影響を除いたら、今年は243.1%です。
 加入目標の達成率が低かったので、その下の要因分析の所で分析をさせていただいております。まず、清酒製造業というのは免許事業者ですから、免許がないとできないので、ある意味、どこにどういう事業者がいるかというのは全部把握できています。逆に言うと、それ以外に何か加入のフロンティアが広がっている分野ではないわけです。ですから、いかに免許事業者をしっかり加入させるかというのが大事になってきます。
 2つの数字が出ておりますが、2行目にある今未加入の事業所は119です。3行目にある既に加入している事業所は、休造を除いて1,831となっております。つまり、9割をはるかに超える割合の事業所が、既に加入しているという状況です。これは任意加入を前提とする制度としては、既に破格の加入率という状況になっているわけです。ここから更に加入者を伸ばそうとすると、新規に入ってくる人に確実に入ってもらうことと、未加入の全ての事業所にまた働き掛けることと、新しく期間雇用者を雇ったときに、今既に加入している事業所に確実に手続をしてもらうことが必要です。令和2年は新規がいなかったのでやれなかったのですが、その他の取組については一通り全てやってきました。
 にもかかわらず令和2年度というのは、お酒を造っている業種にとっては極めて厳しい状況だったわけです。それは何かと言うと、コロナの影響で最も大きな影響を受けた業種の1つが飲食店で、更にお酒を提供する飲食店でした。お酒の消費が減りますから、当然ながら製造も減っていくということで、前の年度との比較で言うと、1割ぐらい製造量が減っています。
 現在では既にワクチンの高齢者への接種が本格化し、ある程度の出口が見えてきたような状況ですけれども、昨年度は足元の製造量が減っているのに加え、今よりも更に出口が見えない、不透明感の高い状況でした。足元で生産量が減少していて先行きの不透明感が高い状況では、新しく人を雇うという選択が、業者としてもなかなかできない状況だったろうと思っております。そういう意味で、16ページからの指標の中で、その項目を除けば、おおむね100%は達成しておりますので、加入促進の部分については、コロナの影響を受けた厳しい状況が清酒製造業を取り巻く状況としてあったことを踏まえ、全体の評価としてはBで自己評価をさせていただいております。
 それから、21ページの林退共については資産の運用に加え、累積欠損の解消計画が目標の中に入っています。22ページの指標の達成状況を見ていただきますと、林退共も資産運用については中退共と合同運用なので、同じ数字が入っています。累積欠損の解消計画については、ちゃんと策定しました。確実な退職金の支給に向けた取組やサービスの向上については、いずれも100%を超えておりますが、加入促進対策の効果的な実施については、達成率が81.3%となっております。
 それについては25ページを御覧ください。加入促進対策について、林業にはなかなか厳しい状況があるというのがこのデータです。これは森林組合の雇用労働者のデータです。もちろん林業全体を表してはいないのですが、森林組合の雇用労働者のデータということで、一定の傾向がこれから分かると思います。これには2つのことが言えると思っています。林業の従事者数自身がずっと減少傾向にあるということと、その中でも特に、ここで言う日数の短い方、我々の対象となる期間雇用の方が大幅に減少してきているという傾向があります。
 そういう傾向がある中で、26ページにありますように、幾つか新規の加入促進の取組をやったわけですが、状況がなかなか厳しいということで、達成率は81.3%となっております。それ以外のところは目標を達成しておりますが、加入促進対策についても林業というのは厳しい事情があるということで、全体の評価としてはB評価とさせていただいています。私からは以上です。

○今村主査
 それでは、ただいまの法人の業務概要及び評価の要約について御質問、御意見等ございましたら、どうぞ御自由にお願いいたします。法人から説明がなかった事項についても、資料等提出されておりますので、それについてでも結構です。

○宮崎構成員
 御説明ありがとうございました。何点か確認ですが、今の御説明で出た資料3-1の5ページに記載がございますが、中退共の未請求者比率を下げる取組の中で、企業間を転職された際に通算希望者がいて、そういった方がだんだん増えてきて、未請求者が増えているというお話があったかと思います。確かに今後、未請求者の定義そのものの見直しも必要なのかなと思っているところなのですが、現状の評価の枠組みの中では、退職して、その後次の企業に行って、中退共の退職金を通算して支給を受けたいという方が定義上、未請求者になってしまうのかというところに違和感があったのです。改めて確認なのですが、現状の評価の枠組みでは、未請求者というのはどういう定義になっているかを教えていただけますでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 中退共を担当しております西川です。私から御説明をさせていただきます。未請求者については、退職をされて、請求権がある方で、3年間たっても請求をしてこない方となっております。実際、おっしゃるとおり、移行通算を考えていらっしゃる方というのは、究極的には請求をしていただけるとは思うのですけれども、ただ、本当に移行通算、要するに中退共に加盟している先に再就職できるかどうかというのは分からないということから考えますと、そういった方々も未請求者の中に入れざるを得ないところがあります。そういった方の人数というのは、ある程度期間がたてば一定のレベルに収斂していくのだろうとは思っているのですが、移行通算を適用し得る期間が2年から3年に延びたということで、その制度を活用する方が今増えつつある状況ですと。拡充された制度の浸透段階にあるということで、その影響を受ける部分が不安定になっているということかと思っております。究極的には、私どもが減らさなくてはいけないと思っているのは、まず1つは、そもそも請求権があることを認識していらっしゃらない方々、それから請求権を認識しているのだけれども手続きが面倒等の理由で請求してこない方々です。そういった方々を何とか減らすようにしたいと思っているところです。

○宮崎構成員
 御説明ありがとうございました。内容は理解いたしましたが、今後、次の評価の際に、通算希望というか、新しい企業に承継されて、引き続き掛け金を計算されるという方がいたら、それは未請求者ではなくて、承継して通算しているという本人の意向があれば、そういったものをこの定義から考慮いただけるような評価になっていくとよろしいかと思います。
 あと2点ほどあります。1点は、合同運用されて効果があったということですが、参考までに、運用規模を大きくされると委託先を選ぶコストとか、委託運用のコストも減って、また運用資産の規模も大きくなりますから、やはり収益性も追求しやすくなるかと思うのですが、その委託運用コストというのは多少下がったのかお聞きしたいと思います。
 最後もう一点は、建退共の電子申請利用が開始されたということですが、こちらは新規の証紙貼付分からだけ電子申請が可能なのか。あるいは、既存の分の証紙、紙に関しても何か手続すれば、完全に過去の分も電子申請が可能なのかという、この点をお教えいただければと思います。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 まずは合同運用の手数料の件ですが、はい、おっしゃるとおりです。委託手数料の場合は金額に応じて委託手数料の率が変わりますので、例えば林退共ですと運用資産の金額は150億円しかありませんが、中退共の場合ですと総資産が5兆円で、運用委託部分だけでも2兆円となり、そのうちの1兆円がアクティブな運用となっています。委託金額の水準が2桁違いますので、かなりの程度の手数料削減になったと考えております。

○勤労者退職金共済機構理事長代理
 建退共担当理事長代理の稗田と申します。よろしくお願い申し上げます。まず退職金というか、掛け金の充当です。お預かりした資金、証紙の場合は手帳にペタっと証紙を貼るわけですけれども、電子申請の場合には、あらかじめお金をお預かりした上で、事業主からの請求に基づいて、この人に何日分付けるというのを付けていきます。それで、基本的には元請、下請がある場合もありますが、働いてから下請間の手続をやっても大体2か月ぐらいで掛け金を充当していただいたり、あるいは手帳に貼付していただいたり、そういうことが終わりますので、過去の部分というのはほとんどないと御理解いただければと存じます。ただし、もし貼り忘れというようなものがあるとすれば、それは電子申請でも可能というような対応となっております。以上です。

○宮崎構成員
 ありがとうございます。合同運用、やはり委託運用コストの面でもメリットがあるということですので、是非今後も検討いただければと思います。あと、建退共の証紙の貼付、基本的には新規の分で、過去の分も新しく納付する、納付漏れの分に関してはできるというお話でしたけれども、費用対効果はあろうかと思いますが、せっかく大掛かりなシステムを入れていらっしゃいますので、是非過去の分も登録とか、切換えとか、より一元的に管理するほうがコストが下がるという面があるかもしれませんので、そういった観点も御検討いただければと思います。以上です。

○勤労者退職金共済機構理事長
 理事長の水野です。合同運用について御質問いただいたので、もう一点、理事長から付言させていただきます。当然、委託手数料はものすごく安くなりますが、最大のメリットは、中退共以外は規模が小さいので、投資信託みたいな感じなのです。つまり4つの資産、内株、外株、内債、外債をまとめたものを幾つかの所で買っている。ところが、中退共の場合は国内の株はここ、海外の株はここ、国内の債券はここ、海外の債券はここ、それぞれ強い所に任せている。したがいまして、外株とか外債については当然ブラックロックとかゴールドマンサックスが強いわけですけれども、国内の債券とか国内の株はまだまだ日本が優位な所もある。それぞれの強い所に任せ、かつ、スチュワードシップで、理事長が後で御説明しますが、そこのトップと年に一遍差しで勝負しますから、それは全然プレッシャーが違うと、こういうことであります。

○今村主査
 はい、よろしいでしょうか。いかがでしょう。1つだけA評価が出ているということも御意見いただければ、よろしくお願いします。

○安井構成員
 安井です。御説明いただきまして、ありがとうございました。マネジャー・ストラクチャーの見直しですとか、ガバナンスの体制、情報セキュリティの強化など精力的に改革を進めていらっしゃっているので、委託者の安心感につながっているのではないかなと思っております。
 2点御質問があります。1つは評価ですけれども、先ほど来御説明を聞いておりますと、例えば清退共で加入者数が目標を未達成であったのはコロナのせいであると、不可抗力であったという御説明がございました。他方、今回、A評価の資産運用について、超過収益率がプラスになっていたと。ここは、恐らくそのマネジャー・ストラクチャーの見直しなど着実な改革が進んだ結果、プラスになったということでA評価だと思うのですけれども、これは本当に不可抗力ではなくて、ちゃんとそういった改革の結果プラスの収益率になったと考えてよろしいのでしょうか。つまり、今年度だけではなくて、来年度もちゃんと超過収益率が達成できるのか教えていただければと思います。これが1点目です。評定の根拠を厳しくということなので、聞いてみたところであります。
 2点目は、ホームページのアクセス件数ということに皆様着目されていらっしゃいます。根本的にはウェブサイトの利便性を上げていくということが目的だと思うのですけれども、この事業主の方々が御機構のホームページにアクセスして、どのような情報を入手されようとしているのか。そういった分析はされていますでしょうか。その2点、お伺いできればと思っております。

○勤労者退職金共済機構理事長
 理事長の水野です。資産運用について申し上げます。先ほど部長が非常に分かりやすい御説明をしたのですけれども、私がちょっと気になっていたのは、ここでA評価をしているのは、4資産全てがベンチマークを上回ったからだけではないのです。むしろ基本ポートフォリオの改定、マネジャー・ストラクチャーの改定、全てゼロからやったという定性面ですね。その結果として、令和2年度は全ての項目でベンチマークを上回った。ただし、資産運用をやっていらっしゃる方は当然お分かりだと思いますけれども、全ての項目でベンチマークを上回るというのは相当な、実力だけではなくて、多少運もあるのですね。当然のことながら、先ほど御説明いたしましたけれども、クレジットリスクは取りません。つまり、BBBをやれば利回りは高くなるのは分かっております。ただ、先ほど御説明があったと思いますけれども、100時間かけて理事長が面談したのは、この人たちには申し訳ないけれども、クレジットリスクは任せられないなという判断なのです。したがって、来年度もこのとおり行くかどうかは分かりません。ただし、今までのようにやや原因が分からない状況にはならない。ここはこういうことでこうなったということは、明確に分かるというふうに思います。以上です。

○勤労者退職金共済機構理事(大地)
 ホームページの方は、大地から説明をさせていただきます。中退共と特退共がございますが、まとめてお答えいたしますと、まずホームページについてどのような属性の方に御覧いただいているかという分析、及びホームページの中のどういう情報にアクセスしていただいたかという情報は、大変申し訳ないことに分析できておりません。ただし、昨年度の月ごとのアクセスの状況を分析しましたところ、中退共と特退共のいずれにおいても4、5月のアクセス件数の増加が非常に大きくなっておりました。一番コロナ禍が世の中において大きな不安を与えた時期であったと思っております。事業主か個人かよく分からないところですが、例えば個人の方でいらっしゃいましたら、将来に不安を持った方が、自分がもし仕事がなくなった場合にどれくらい退職金が出るかと試算するページがそれぞれございますので、利用した方はいらっしゃったのではないかと推測しております。あるいは、事業主の方が、もう事業が立ち行かない場合にどれくらい退職金が払われるかということも考えて利用されるなど、もしかしたら皆様の不安に少しはお応えできたのかもしれないと考えておるところです。現時点では、どういった方がどこを御覧いただいているか分析できていないということは申し訳なく思いますが、昨年度の大きな動きとしてはそのようなところがございました。以上です。

○安井構成員
 ありがとうございました。では、その資産運用のことに関しましては、こういったマネジャー・ストラクチャーの見直しの定性的な部分が今回ちゃんと遂行されたからA評価となったという部分が大きいと理解したいと思います。

○勤労者退職金共済機構理事長
 ありがとうございました。それだけではなくて、定性的な部分もです。部分が、ではなく、部分もあって、両方でA評価ということです。

○安井構成員
 分かりました。

○勤労者退職金共済機構理事長
 よろしくお願いします。細かいことですが、申し訳ございません。

○安井構成員
 それから、ホームページの件なのですけれども、民間企業では、ホームページのアクセスというのは属性ですとか、どういった情報を入手しているのかというのを緻密に分析しています。そこら辺をやはり把握していかないと、このホームページのアクセス数というだけではなくて、その裏にある根本的な利便性の向上につながらないと思いますので、そこをもし今後注力していただけたら、有り難いと思っております。以上になります。

○勤労者退職金共済機構理事長
 全くおっしゃるとおりです。私もずっとそういう問題意識を持っておりまして、きっと明日から大地理事が考えてくれると思っております。ありがとうございます。

○今村主査
 よろしいですか。今のウェブの解析については、もともとこの目標設定がアクセス回数ということで設定していて、それ以上については、現状では要求していないということなのですが、安井構成員のおっしゃるとおりで、ウェブ解析士というような資格もありますし、民間企業ではウェブサイトの中での訪問者の行動をしっかり解析しておりますので、機構さんは非常に情報システムにも優秀な人材をそろえておられると思います。是非、御検討をお願いしたいと思います。オンラインの構成員の方々、いかがでしょうか。
 発表を待っている間に、今の運用実績に関してですが、これは確かに運、不運というところがあって、かつて株式市場が非常に好調で、数値上S以上の成績を修めたときがありますが、しかしこれは一時的なものだからということで、認めていただかなかったことがあります。逆に、非常に市場が悪くて、Cだろうというときも、これは一時の不安定な要素であってということで、そのときはBにしたことがある。それは、若干少し幅を狭めてやっているというのが過去の例であります。プラス今回は、おっしゃるとおり、勤退機構は運用の目利きの人材に非常に力を入れて努力しておられる。その成果が、ここにきて結び付いたのではないかという印象を受けているところです。

○土橋構成員
 土橋ですが、簡単な質問です。加入促進対策で、新規加入者の人数の目標設定をなさっておりますが、結構その前の年よりかなり多く設定したりとか、あるいは清酒製造ではかなり飽和状態にあるようなのですが、その辺を加味して、どうやってこの数字を決めているかというのを、先ほど話があったのかもしれませんが、御説明をお願いいたします。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 それでは、経理ごとに若干その推計方法が異なりますので、経理ごとに御説明をさせていただきたいと思います。私の担当する中退共ですけれども、こちらは過去の実績等から、新規加入者と追加加入者に分けて、過去のトレンド要因、労働需給要因、制度要因を説明変数として回帰分析し、そういった中で加入者数を推計しています。
 この中期計画について申し上げますと、中退共については毎年少しずつ目標人数が下がっております。なぜかというと、中期計画を立てた頃は労働市場のひと需給のタイトさがピークのような状態になっておりましたので、恐らくオリンピックが終わる頃にはピークアウトするであろうということで、その要因をスムージングアウトするような格好で少しずつ目標値を下げていっております。コロナ禍を予測していたわけではないのですけれども、景気のスローダウンに合わせて、目標が下がっておりますので、この10%以上の目標達成率になっている部分はあるかと思っております。

○勤労者退職金共済機構理事長
 時間がないので、理事長からまとめて御説明いたします。基本的には過去トレンドです。ですが、中退共の場合は、過去5年前は適年からの振り替わりが大きく入っておりました。もう1つは、当然ですけれども、景気が良いときは増える。そこの2つを重回帰分析して、その特殊要因を除いた目標になっております。さらに、中小企業の経営者の70歳問題等がありますから、中小企業はどんどん減っていくだろうということもあって、ここはなかなか目標には織り込めませんでしたけれども、その数字は見ております。なぜかというと、数字が独り歩きすると、私は民間から来ましたけれども、ここの職員は皆真面目ですから、本当にこうやろうとするのです。それは有り難いことなのですけれども、変な格好にならないように、どこかの保険会社さんでありましたけれども、そういうようなことにならないように、数字の妥当性については、中退共はチェックしています。
 建退共については稗田さんの担当なのですが、基本的にはやはり公共事業です。公共事業の1つの条件というか、建退共に入っていると入りやすいような格好になっていますので、公共事業の伸びがどうなのかというのは見ています。
 清酒についていえば飽和状態なのですけれども、ほとんど過去トレンドをどこまで落としてもらえるかということで、この議論はそろそろ次の中期計画やるときに、もう一回ゼロベースから、私は厚生労働省さんとお話をしたいと思っています。
 最後に、先ほどから出ていますが、KPIは、この数字が行ったらどうなるのというのはないのですよね。例えば中退共は今、シェアが大体10%少しぐらいなのです。これを20%まで持っていくのか、あるいはこの程度なのかというところの見極めが大事でありまして、かなり小さな所、サービスなどが入っておりますので、その辺をよく見極めてやらないと、絵に描いた餅になってしまうかということで、次の中期計画については更に一歩進めて、この計画の妥当性について厚生労働省さんとよく議論したいと思っております。以上です。

○今村主査
 よろしいですか。いかがでしょうか。1つだけ、報告にないことで、時間も限られていますので、簡単にコメントだけさせていただければと思います。36ページで、先ほど来、ウェブサイトの訪問者数とか、電子システム関係の発言もございますが、今後のDXについてどういう体制を整えておられるかということで、この機構の特徴はやはり目利きの人材の育成かと思います。この業務の電子化に関する取組の2つ目のマル・で、トップコンサルタントチームと実務担当部署が延べ200回、数百時間のミーティングにより要件定義を実施とか、こういったエキスパートのノウハウを内部の人材に取り込んで、そして目利きの人材を育てていくという仕組み。これは先ほどの資金運用についてもそうですが、こういうコンピューターシステムについても同じようにやっておられるということで今後大いに期待できるわけです。こういった人材育成は、現状でどういう見通しでこれからも進めていかれるのかということなど、大変関心があるところです。これはあくまで意見ですが、もし何か現状について、特に強調したいことがあればおっしゃっていただければと思うのです。いかがでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 ありがとうございます。正にこの中退共システムの再構築においては、現場がとにかく当事者意識を持ってもらわないと成り立たないので、理事長の号令以下、役職員総出で事に当たっております。この200回、数百時間という打合せ回数と時間は、大体週2回程度、1回当たり2、3時間のミーティングに現場の人間が参加しています。従来はどうしてもシステム関係というとシステム管理部任せと、自分たちのことではないという感じが強かったのですけれども、現場の人間もシステムは自分たちのものであると、将来的な自分たちの仕事に関わってくることだということを認識し、システムの世界では非常に基本的な機能要件、非機能要件やPOCなど、そういう専門用語もようやく理解し始めたところかと思っております。今後、この開発計画が進むにつれて、今度は成果物のプログラム等のチェック等もやらなければならなくなりますが、ここも現場がどうしてもやらなくてはいけません。その事前準備としてもこの要件定義は良かったかと思っております。さらに、やはりトップコンサルタントというと、スケジュール管理ですとか、ガバナンス的な知見・経験も非常に豊富な方が多いので、そういった面からの教育的な効果、これは職員だけではなくて、私ども役員にとっても非常に学ぶところが多かったと思っているところです。

○今村主査
 はい、ありがとうございました。最近各紙、日経新聞などもDX人材の日本企業における不足と、盛んに言っております。どうぞよろしく御努力をお願いしたいと思います。もう1つか、幾つか可能と思いますが、いかがでしょうか。オンラインの構成員の方、いかがですか。会場にいらっしゃる先生。特にないようでしたら、ここで一旦、質疑を打ち切りたいと思います。
 続いて、法人の監事及び理事長から、年度中期目標期間における目標の達成状況等を踏まえまして、今後の法人の業務運営等について、コメントいただければと存じます。最初に法人の監事から、続いて法人の理事長より、お願いいたします。

○勤労者退職金共済機構監事(鈴木)
 監事の鈴木です。隣におります塩田監事と共に監査業務を行っております。当機構の令和2事業年度の監事監査の結果については、お手元資料の3-4、監査報告に記載のとおりです。法人の業務は法令等に従い適正に行われており、指摘すべき重大な事項は認められませんでした。
 中期目標及び年度計画について若干意見を述べさせていただければと存じます。機構本部からの説明にもあったとおり、新型コロナウイルス感染拡大による影響の中、理事長のリーダーシップの下、各事業部それぞれ求められる役割を適切に果たし、しっかりと成果に結び付けていると評価しております。コロナ禍という制約もあり、環境は厳しい状況ですが、引き続き法令を遵守し、効率的・効果的な業務運営に努めていただきたいと思います。私からは以上です。

○今村主査
 では、続きまして理事長、よろしくお願いいたします。

○勤労者退職金共済機構理事長
 理事長の水野です。私からまず、事業報告書で公表しております理事長の経営理念について御説明させていただきます。私の経営理念としては4本の柱を建てております。1本目が、現業における正確かつ迅速な事務処理。これが、この機構の岩盤です。2本目が、安全かつ効率的な資産運用。この数年でものすごく変わってきているところであります。3本目が、機微かつ大量の個人情報を保全するにふさわしい情報セキュリティ体制の構築、そして4本目が、高い職業倫理の徹底であります。この経営理念に基づき、持続可能な組織として制度の安定的な運営を図っていくことが機構の使命だと考えております。
 私は、平成27年10月1日、着任しました。約6年前ですけれども、それ以来、理事長方針として、理事会などで折に触れて役職員に言ってきたことが2つあります。1つは、自浄作用のある持続可能な組織を目指すということです。こういう組織は、変えるべきことは変え、変えてはいけないことは変えない組織であると思っております。
 この方針に、令和元年度からは、機構の役職員は高い職業倫理が求められているということを加えています。先ほど御説明した経営理念の4本目の柱であります。職業倫理というと、最近は不正をしないとか癒着をしない、接待を受けないというイメージでとらえられがちでありますけれども、機構は行政の一端を担っている独立行政法人という側面と、公共的な使命を帯びている金融機関という2つの側面を持っておりますので、世間で求められているものよりは一段上を行く高潔さや仕事に対する責任感が求められているというのが私の理解であります。
 これは、内部統制上の統制環境に当たります。例えば、前例墨守や問題先送りは、金融業務の中でも最先端の業務を行う独立行政法人である当機構にとって高い職業倫理を果たしているとは言えません。変えるべきことを変えるという、当たり前のことができないでいる一因でもあると思っております。変えるべきものを変えるためには、施策を策定し、経営資源を投入し、担い手の養成メカニズムを構成し、組織対応することが必須でありますが、厳しい予算の枠がはめられている中では、資源再配分と人材教育による労働生産性の向上が必要になりますので、職員の理解と協力が要諦であります。
 その決意をお示ししたのが、平成29年7月のこの有識者会議で御説明させていただいた、平成28年度に行った第3期中期計画のローリング、すなわち新規施策の実施であります。第3期中期計画途上でありながら新規施策を実施して、機構経営の軌道修正を行ったのは、2つの大きな環境変化があったからであります。1つはガバナンス強化を狙った法改正であり、平成27年4月の改正独法通則法の施行とその一環である中退法改正に伴う資産運用委員会の設置、これは平成27年10月、この2つです。これは経営理念の2本目の柱になります。
 もう1つは当時、日本年金機構からの個人情報大量漏洩問題をはじめとする情報セキュリティ問題の深刻化であり、これは経営理念の3本目の柱になります。いずれも、直ちに手を付けないと機構にとって命取りになる、変えるべきことでしたが、その変える真の狙いは、実は理事長としては以下の2点にありました。
 1点目は、本邦公的機関では6番目の資産規模、6兆円を有する機関投資家にふさわしいガバナンス体制の構築です。すなわち、内外の資産運用会社から一目置かれるガバナンス体制を構築することにより、内外の資産運用会社のトップとの建設的な対話を行い、本邦資本市場の健全な発展を促し、以て退職金並びに年金などを通して勤労者の資産形成をするということであります。今年度で4回目になります。我が国を代表するような生保・信託・証券のトップの経営者と私、理事長との真剣勝負ですから、理事長としても経営に関し啓発を受けることも多々あります。
 2点目は、情報セキュリティ環境の劇的な改善を図り、システムの2つの大プロジェクトに備えることであります。すなわち、中退共については62年前の制度発足以来、初めての業務経営システムの本格的な改定プロジェクトであり、建退共については制度の発足以来行ってきた証紙制度の電子化です。今村先生もそのときからのお付き合いですけれども、当時の有識者の皆さんとの議論が今も私のモチベーションの源泉になっております。本当にありがとうございました。こときの議論は今でも覚えています。であれば今日は、その施策がこの5年間でどのような成果を生んだのかについて、機構の経営という切り口を交えて御報告をさせていただいた次第であります。
 先ほど部長から説明がありましたが、中退共の資産運用の5年に及ぶ一連の改革で培った知見が、林退共では平成17年度に作成した累損解消計画を見直した上で、本格的なファクトファインディングに基づく新しい累損解消計画の策定につながりました。建退共では、平成15年10月以来の本格的な基本ポートフォリオの改定につながりました。
 システムについて言えば、中退共システム改定作業の中で、システム管理部と現業部が一体となって、トップコンサルタントと濃密かつ頻度の高い議論を重ねることにより、システム部門の知見が飛躍的に増強されたことにとどまらず、役職員のITリテラシーも向上し、将来のデジタル化の担い手確保に道を付けることができました。
 さらに、資産運用、システムといった最先端の分野での一流コンサルタントの日々の共同作業を通して、仕事に対する責任感、本質に迫る姿勢、クライアント・ファーストに徹した対応が機構の職員に自然な形で伝播し、それが働き方改革の原動力になってまいりました。
 このローリングプランは御説明したときにも言われましたけれども、トップダウンで策定いたしました。トップダウンで策定しましたが、この5年間の実行は、先ほどから出ていますけれども、加入促進の成果で被共済者数が増加し、それに伴って事務量が増加する中で、経営理念の1本目の柱である正確かつ迅速な事務処理という、変えてはいけないことを貫徹しながら、資源再配分を理解してくれた職員が歯を食い縛って、力を合わせて実行してくれたものであります。
 前例墨守とは無縁の、ゼロベースから議論から作り上げたため、事業本部に資産運用、情報セキュリティの横軸を通すこともできました。これは平成10年4月の合併以来の懸案でもありました。厚生労働省をはじめ、それぞれの事業本部の上にいらっしゃる省庁の御理解と御支援があったればこそだと思っております。これについては大変感謝しております。
 ただ、これは実は私にとっては単なるステップであり、理事長の到達目標は、先ほどから申し上げております、自浄作用のある持続可能な組織の構築であります。機構が公的機関として求められている使命だと理解しております。
 着任以来、独立行政法人の立法精神にのっとり、独立の気力をもって国民の生活の安定と社会及び経済の健全な発展に役立つことを目指して機構を経営してまいりましたけれども、独立行政法人と雖も、組織的には主務官庁がある以上、自浄の本質を深く追求した場合、厚生労働省と機構とが一体となって取り組まなければ成し得ないことであると考えております。2年を切った残りの任期は、自浄作用のある組織文化、すなわち問題が起こる前に変えるべきことを自ら変える組織文化を構築して、この機構を持続可能な組織として次の理事長へバトンタッチするのが私の使命であると考えております。この組織文化は、高い職業倫理にも通じるものであると考えております。厚生労働省さんも、自分のこととして考えてくれるか否かにもかかっていると思っています。
 この到達目標、アスピレーションを中期計画期間中にクリアして、次期中期計画では一歩進めて存在意義、パーパスを掲げたいと思っておりますので何卒よろしくお願いいたします。私からは以上です。

○今村主査
 どうもありがとうございました。構成員の皆さんもお気付きだと思いますが、理事長の強力なトップダウンでここまで改革を進めてこられたことを評価したいと思います。我々、イノベーションの理論で言うと、イノベーションのクラスターと言って、どんどんそういうつながりが広がっていってガバナンス、パフォーマンスの改革へつながっていければと思っています。
 ただいまの監事、理事長の御発言について御発言等がありましたら是非お願いいたします。オンラインの構成員の方々、いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。それでは、一応、念のためにオンラインの接続で不良があったかもしれないという可能性があります。一応、事務局に確認をしたいと思います。何かオンラインの構成員から報告が届いていますでしょうか。

○事務局
 現在のところ、メールでの御意見は頂いておりませんので報告いたします。

○今村主査
 どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の議事を終了させていただきたいと思います。最後に事務局からお願いいたします。

○事務局
 今後の流れについて御連絡します。本日、御議論いただいた勤労者退職金共済機構の令和2年度業務実績評価については、この後、本WGにおける御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表いたします。決定したそれぞれの内容については、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。
 なお、冒頭説明した法人へのインセンティブとして、今年度は試行的に、本日の会議においての構成員の皆様の御発言の中で、評定には影響しないものの、法人の今後の運営の参考となる御指摘について取りまとめ、主査の御確認を頂いた上で所管課及び法人に提示したいと思います。
 また、この後、労働政策研究・研修機構の有識者会議が開催されますが、酒井構成員におかれましては、同機構が発行している「日本労働研究雑誌」の編集委員に就いている関係から、次の有識者会議には参加せず、本会議が終わりましたら退席されます。また、土井構成員も所用により御欠席と伺っておりますので、この会議をもって御退席されます。酒井先生、土井先生、ありがとうございました。事務局からは以上です。

○今村主査
 それでは、勤労者退職金共済機構に係る意見聴取は、これで終了します。これから20分休憩とし、14時50分から、労働政策研究・研修機構に係る意見聴取を開催します。どうもありがとうございました。
 
(了)