薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和3年度第3回安全技術調査会議事録

日時

令和3年9月14日(火)10:00~12:00

開催形式

Web会議

出席者

 

出席委員:(10名)五十音順、敬称略



欠席委員:敬称略
 
  • 熊川 みどり



国立感染症研究所:敬称略
 
  • 水上 拓郎



日本赤十字社:敬称略
     
  • 佐竹 正博
  • 後藤 直子
   


事務局:
 
  • 中谷 祐貴子  (血液対策課長)
  • 菅原 高志     (血液対策課長補佐)
  • 佐野 圭吾     (血液対策課長補佐)
  • 太田 一実   (主査)

 

議題

  1. 1.「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の一部改正について
  2. 2.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 
 
○佐野血液対策課長補佐 それでは、定刻には少し早いですが、全ての委員の先生方がおそろいですので、血液事業部会令和3年度第3回安全技術調査会のWeb会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。本日のWeb会議における委員の出席につきましては、熊川委員より御欠席との連絡をいただいております。現時点で安全技術調査会委員11名中10名の出席をいただいていることを御報告いたします。
本日は参考人として、国立感染症研究所血液・安全性研究部第一室、水上拓郎室長に御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、佐竹正博中央血液研究所所長、後藤直子技術部安全管理課長に御出席いただいております。
続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。また、「薬事分科会審議参加規程」に基づいて各委員の利益相反の確認を行いましたところ、岡崎委員、岡田委員から関連企業より一定額の寄附金、契約金などの受取の報告をいただきましたので、御報告させていただきます。以上の委員におかれましては、議題1に関しましては意見を述べていただくことは可能ですが、議決には加わらないこととさせていただきます。他の委員につきましては、対象年度における寄附金・契約金等の受取の実績なし、又は50万円以下の受取であることから、特段の措置はありません。これらの申告についてはホームページで公開させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。
本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、御自身のお名前と、発言したい旨を御発言いただくようお願いいたします。その後、座長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した場合は、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は座長からお願いする場合がございます。その場合には記入されたメッセージに応じて、座長より発言者を御指名いただきます。
また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま説明させていただく場合がございますので、御了承いただければと思います。間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。
それでは、以降の進行を濵口座長にお願いいたします。
○濵口座長 皆さん、おはようございます。今年は安全技術調査会を頻回に開催しておりますが、今日も御参集いただきまして誠にありがとうございます。これまでの御説明に関しまして、何か御質問、御意見がありましたら、まずお聞かせください。何かございますか。
それでは、議事に入ります。議題1、「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の一部改正についてです。事務局より資料の説明をお願いします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局でございます。資料及び参考資料をお手元に御用意ください。資料1に沿って説明させていただきます。平成17年3月、日本赤十字社、医療機関及び血漿分画製剤の製造販売業者等での遡及調査に係る対応を明らかとし、国として遡及調査を、より円滑に実施するために「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」(以下「本ガイドライン」といたします)が作成されました。その後、5回にわたり、一部改正が行われています。
参考資料1を御覧ください。本年6月の第1回運営委員会において、B型肝炎ウイルス、(以下「HBV」といたします)に対して本ガイドラインで定めている遡及調査期間を超えて、それ以前に採血された献血血液由来の輸血用血液製剤からHBV感染が成立した事例が報告されました。運営委員会では、引き続き本調査会で本ガイドラインの見直しの必要性を議論する必要があるとされました。
以上を踏まえ、本年7月の第2回安全技術調査会において、当該感染事例等について精査し、様々な観点で検討が行われました。その結果、本ガイドラインは、感染事例の防止、受血者感染の早期発見、早期治療への誘導及び遡及調査に係る評価・分析を通じて、検査法の改良等、血液製剤の安全性向上に資するべきものであることを考えれば、遡及調査の手順や検体の保存について示すだけでなく、血液製剤に感染のリスクがあると考えられた場合における製剤の供給停止又は回収等の措置等も示す必要があるとされました。
当該安全技術調査会の後、8月11日、8月23日、9月8日と本ガイドラインの改正等について、厚生労働科学研究班の浜口班で議論が行われました。浜口班における議論の内容につきましては、資料1の1ページの後段から3ページの前段にかけて記載しておりますので、そちらを御覧ください。
まずはマル1HBV感染を防止する上での基本的な考え方となります。まず1ポツ目、当該事例における献血者については、HBV感染既往歴があり、その経過の中でNAT陽性となった事例なのか、急性感染期が非常に長い事例なのかの判別は現在の情報からは困難であることから、NAT陰性血からの感染については、ウインドウ期の考え方に基づいて対応すれば十分であるという今までの考え方では不十分である可能性があるという意見が出ております。
2ポツ目、血清学的には、HBc抗体陰性、HBs抗体陽性のHBV感染既往者が存在することは確実であり、ワクチン接種歴に留意すれば、HBs抗体検査をスクリーニング検査として既往者の判定に活用することは可能ではないかという御意見が出ております。
3ポツ目、遡及調査の対象期間としてはウインドウ期を参考に設定するとしても、回収等の安全対策について考える場合には、遡及調査と同じである必要はなく、既製剤の供給停止及び回収と遡及調査については別の考え方に基づいてガイドラインに規定すべきであるという意見が出ております。
次に、マル2の遡及調査期間についてです。まずは1ポツ目、参考資料2の2ページの中段、及び参考資料7の2枚目のスライドを御覧ください。現在の遡及調査期間は、Steven H. Kleinmanらから報告されたHBs抗原検査のウインドウ期である36日を保守的に2倍にしたものであります。しかし、参考資料10及び参考資料8の8枚目のスライドを御覧ください。欧米諸国において主流で、近年、本邦でも問題となってきているGenotype AというタイプのHBVについては、よりウインドウ期が長いとする報告もあることから、Genotype Aのウインドウ期を参考に、より長い遡及調査期間である94日を設定することも検討すべきであるという意見が出されました。
しかしながら、2ポツ目ですが、マル1の1ポツ目と同じ内容にはなるのですが、明確にどれだけの遡及調査期間を設ければ、NAT陰性の血液製剤からのHBV感染を完全に防ぐのに十分であるか結論づけることは、現段階では困難であるとの意見も出されております。
次にマル3、製剤の出荷停止及び回収についてです。NAT陽性となった場合は、製剤の安全性という観点からは、輸血用血液製剤について遡及調査期間にかかわらず出荷停止又は回収を行うべきであり、この対応については、HBVだけではなく、C型肝炎ウイルス(HCV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIⅤ)についても同様に考えるべきであるとの意見が出されました。
最後にマル4、医療機関から感染事例が報告された場合の対応についてです。参考資料9-4から6枚目のスライドを御覧ください。現行の本ガイドラインでは、医療機関から感染事例が報告された場合、投与された血液製剤の献血者において、当該血液製剤等が採血された時点以外で個別NAT陽性となっている場合には、遡及調査の対応を行うこととなっております。しかしながら、NAT陰性の場合についても感染が起こり得ることを踏まえ、少なくとも医療機関から報告された感染の原因となった可能性のある輸血用血液製剤を採取した献血者から採血された他の血液製剤を投与された患者に対して、情報提供を行うべきではないかという意見が出されましたが、全ての患者について、当該内容の対応を行う必要性はないと考えられるとの意見が出されました。
以上の浜口班における議論を踏まえ、本ガイドラインの改正の方針については、以下のようにしてはどうかと御提案させていただきます。参考資料12、13をお手元に御用意ください。参考資料13は、ガイドラインの新旧対照表となっておりますので、そちらを中心に御覧いただければと思います。
まず1つ目は、今回の改正においては、個別NAT陽性となった場合、当該献血者由来の製剤について供給停止及び回収することを本ガイドラインに明記する。2つ目は、Genotype Aのウインドウ期に合わせて遡及調査期間を94日間に変更する。なお、今回のようなHBV持続感染症例を想定した遡及調査期間を規定することは現段階では困難であることから、当該期間については引き続き検討する。3つ目ですが、HBs抗体検査は、HBVの既感染を判断する上で有用な検査であると考えられるものの、ワクチン接種者との鑑別をする必要があることから、その基準や運用方法については引き続き検討する。最後に4つ目は、医療機関から感染事例が報告されたものの、投与された血液製剤の献血者におけるNAT検査が全て陰性であった場合、当該献血者由来の他の製剤の投与を受けた受血者への情報提供については、対象となる受血者の範囲について、引き続き検討する。
事務局としては、以上になります。御審議のほど、宜しくお願い申し上げます。
○濵口座長 それでは、まず、研究班の方から、ただいまの御説明について補足等ありましたら、水上参考人からお願いしたいと思います。
○水上参考人 国立感染症研究所の水上と申します。宜しくお願いいたします。3回にわたって実施されました浜口班の議論につきましては、先程佐野先生にまとめていただいた内容で、基本的には相違はございません。まとめていただいたとおり、今回の改正において、個別NAT陽性となった場合は、当該献血者由来の製剤については、供給停止及び回収するということが妥当だということで合意がなされました。
また、先程ウインドウピリオドについても御説明があったとおり、Genotype Aのウインドウ期に合わせまして遡及調査期間を94日に変更するということで、こちらは参考資料7のスライド8枚目に、日赤のデータで、改正後としては3.4日の倍加時間を参考に94日という形できちんと変更していくことで妥当ではないかと。ただ、先程お話があったとおり、遡及調査期間については引き続き検討していくということが議論されました。
また、HBs抗体の検査につきましては、参考資料4のスライド21ですが、当該献血者の原料血液検査履歴及び研究的調査結果で、HBs抗体が陽性になっている所が数ポイントあるということで、やはりこれを少し加味できないかということが研究班の中でも議論されました。同じようにワクチン接種者との鑑別というのが必要になってくるということから、こちらについても引き続き検討することになりました。
最後に、医療機関からの感染事例の報告に関しましても、やはり投与された血液製剤の献血者におけるNAT検査が全て陰性であった場合、やはり受血者への情報提供というのは必要ではないかという意見がありました。ただ、その範囲等についても、今後、引き続き検討するということで、班会議の方ではまとまりました。以上となります。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、次に日本赤十字社の方から御意見等がありましたらお願いいたします。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 日本赤十字社の佐竹と申します。ただいま、お二人の先生から説明がありましたとおりのことで、まとめについては全く我々としても同意できるところであります。特にそれ以上のコメントはございません。
○濵口座長 ありがとうございます。本日は、資料がかなりたくさんありますので、これから議論する際に、どこのスライドの何枚目という形で議論をしていただければと思います。それでは、ただいまの御説明、御意見等に関しまして、次は委員の先生方から御意見を賜りたいと思います。お名前を言っていただいて、私から指名いたしますので、宜しくお願いいたします。いかがでしょうか。
本日、提示しているガイドラインは、まだいくつか検討すべき内容というのが、十分に時間が取れなかった面もありまして、継続していくつかの可能性についてさらに検討していくというところです。そういう意味では、現段階での最終案ではあるのですが、まだ検討の余地は残しているという状況だということを踏まえた上で御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。朝比奈先生、もし、追加で御発言が何かありましたらお願いいたします。
○朝比奈委員 医科歯科大学の朝比奈でございます。私も今回の件に関しては、浜口班の議論に参加させていただいたので、基本的には今回御提示された改定の案というのは妥当かと思っております。私が浜口班で申し上げたことは、HBV感染の急性感染とオカルトHBVというのを完全に区別することが難しいということで、そうなると、今までウインドウ期間というのを設けて遡及の考えをしていたのですけれども、それ自体が難しいのではないかということです。基本的な考えとして、感染様式を区別すること自体が非常に難しい問題であるということと、それから、仮に急性感染であるとした場合のウインドウピリオドも、in vitroの倍加時間ということで規定はされているのですけれども、実際の診療においては、それ以上のウインドウピリオドを呈するような症例もあるのではないかということで、ウインドウピリオドの設定というのも非常に難しい問題ではないかということです。
それから、今回の事案ですが、HBs抗体の陽性というのを遡って見てみると、先程御指摘があったように、陽性になる時期というのが散発的に認められているということから、本事例がオカルトのHBVであったとすると、HBs抗体を見ることによって、その可能性が判断できたのではないかということを御指摘させていただきました。ただ、HBs抗体を用いて、それを今の献血者において判定するということは、ワクチン接種者の問題であるとか、あるいは輸血製剤、あるいは急性肝炎後6か月を経ていれば献血が可能であるというような現行の方針との整合性、あるいは血液製剤から作られる抗体製剤等の今後の供給に関して非常に影響を与えるものですので、ここは広い、深い議論が必要だろうということで、ただいまも御提示がありましたように、いくつかの点については今後も検討する必要性はあるとは思います。しかし、現状、まずは輸血製剤の安全性を確保するという意味で、早急な今回の改定案というのは妥当かと私自身は考えております。以上でございます。
○濵口座長 詳しく御説明いただきまして、ありがとうございます。他はいかがでしょうか。それでは、私から御指名させていただきます。長村先生、何か御意見がありましたらお願いいたします。
○長村委員 長村です。前回欠席になっておりまして失礼いたしました。一連のエピソードを鑑みて、やはりこれは、かなり重要なことかなと思いました。もう1つは、前回も議論になったと厚労省から説明を受けたのですが、やはり180日間FFPを置いておくというところがちょっと気になるところでありまして、今回の遡及ガイドラインとは別件ですが、引き続いて日赤の方で考えていただきたいと思います。
あと、HBc抗体ですが、ワクチンと区別するには、HBc抗体の陽性で、現在は、確かLоwタイターはOKということだと認識しています。
○濵口座長 長村先生、HBs抗体ですか。
○長村委員 HBc抗体。
○濵口座長 HBc抗体。
○長村委員 はい、HBcも、もう少し重要視しても良いのかなと。つまり、既感染という意味で重要視しても良いのかなと思います。臨床的にはHBc抗体が陽性であれば、この人はHBVを持っている可能性が高いというように考えて対応しています。それがLоwタイターであろうがHighタイターであろうが、もちろんHighタイターであれば、かなりHBs抗原が陽性の確率は高いと思いますけれども、その辺りを今後どう考えるのかなというように思いました。
ウインドウピリオドに関して、この改定の提案自体に関しては、特にこれまで、かなり議論されてこられたと思いますし、説明を聞きまして、特に異論はございません。
○濵口座長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。では、佐竹先生。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 日赤の佐竹です。長村先生、御意見ありがとうございます。今回の一連の浜口班、それから安全技術調査会での議論のところでは、ただいま御指摘がありましたコア抗体であるHBc抗体についてほとんど触れていないのですけれども、それは大前提として、HBc抗体が陽性の場合には、それは全て既往感染というようにした上での、上乗せでのHBc抗体での話です。これまでのコア抗体については、ただいまありましたHighタイター、Lоwタイターという考えは全て終わっておりますので、コア抗体はインターナショナルな1.0という非常に低い所から全て陽性としています。そちらの方のコア抗体の考慮というものは、基本的に2012年から採用しておりますので、そのところについては問題ないかと考えております。
○濵口座長 ありがとうございます。長村先生よろしいですか、それで。
○長村委員 今、HBc抗体が陽性だと、もう全部を落としているという意味でよろしかったですか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 はい、そういうことです。昔はHBc抗体が少し高めのものは許していたのですけれども、今は、もう完全に低い所、インターナショナルの1.0の所から全て不合格にしておりますので、そういう意味では、コア抗体については、余り心配される必要はないかと思います。
○長村委員 Lоwタイターであっても陽性の場合に、非常にLоwタイターであればOKなのですよね、今は。違いますか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 いえ、Lоwタイターの場合も、とにかくコア抗体が陽性であれば全て不適格にしております。
○長村委員 全て落としている。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 はい。
○長村委員 分かりました。ありがとうございます。
○濵口座長 ありがとうございました。追加で。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 ただ例外的に、HBs抗体が200以上のときには感染性がないものとして、その場合には入れておりますけれども、今まで感染事例を起こしていたものはコア抗体が低くて、しかも、コア抗体が陽性であるのに、HBs抗体が低い場合はOKとしていた場合があったのですが、今は全部、不合格にしているということです。
○濵口座長 ありがとうございました。他はいかがでしょうか。委員の先生方から。
○荒戸委員 荒戸ですけれども、私も今回、御提示いただいた今回の改正案については、特に異論はございません。1点、教えていただきたいのでが、今ほども議論になっていたウインドウ期のお話ですが、参考資料7の10ページに、輸血感染が判明するまで6か月かかる例があるという記載があるのですが、これは、今回のGenotype Aとの関連があるのか。また、こういう事例が実際にどの程度あるのかということを教えていただければと思います。
○濵口座長 日本赤十字社から、このスライドについての説明をお願いします。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 日赤の佐竹です。個別NATが入ってからのHBVの輸血感染例というのは、これまでで全部で5例あります。そのうちの4例は、ウインドウピリオドは全て、これまで設定していた中に含まれていたものですが、最後の5例目は、これが今回の例でありますが、これがウインドウピリオドのさらに前からウイルスがあったという例でございます。それが、実際に輸血されてから検査で見付かるまで4.9か月で、大体5か月というところです。今回の180日に少し近いところにはなりますけれども、この例があったからということもありますが、それと、もう1つ、論文の中のチンパンジーの実験ですが、倍加時間が3.4日ということでは、94日以上のウインドウ期ということになりますので、その辺のものを全て考慮して、遡及調査としては94日にしますが、安全性ということだと180日ということで、実質の安全性は取れるというように考えております。
○濵口座長 荒戸先生、よろしいですか。あとは頻度の話は、5例ということでよかったですか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 頻度は2014年からは国内で5例です。
○濵口座長 荒戸先生、いかがですか。よろしいでしょうか。
○荒戸委員 背景がよく分かりました。ありがとうございました。
○濵口座長 ありがとうございます。他はいかがでしょうか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。佐竹先生に確認したいのですが、その5例は、実際にNATをすり抜けた場合で、確かGenotype Aが多かったのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 1つはC2ですが、あとの4つはA2です。
○岡田委員 確か、これは論文か何かにあって、ありますよね、既に。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 はい、論文になっています。
○岡田委員 ですね、やはりGenotype Aが、こういう今までの遡及、つまりウインドウ期とか、あとは発症するまでの期間が長いというのが特徴だと思いますので、その辺のことを考慮して決めないと、漏れが出て感染が起こってしまうのではないかと思います。以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。
○佐野血液対策課長補佐 事務局ですけれども、1点御質問よろしいでしょうか。4例については、基本的に72日、今までのウインドウピリオドの期間内であったと把握しているのですが、何か今の議論は、ウインドウピリオドの外みたいな感じになってしまっていたのですけれども、そういうことですよね。72日で対応できていたということですね。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 今までの4例は全て72日で対応できています。今回、初めてそうではないものが出てきたということです。これまでで初めてのことです。
○濵口座長 岡田先生、よろしいですか、御説明は。脇田先生、どうぞ。
○脇田委員 脇田です。私も今日の御提案は妥当だと思いますけれども、質問が2点あって、今、5例のすり抜けのうち4例はGenotype Aということですね。私が知っているデータは少し古いと思いますが、急性肝炎のGenotypeは、慢性肝炎はまだ少ないのだけれども、急性肝炎はGenotype Aが半分ぐらいあるというような、あとはGenotype Cだったかなというように記憶していて、今の急性肝炎のGenotypeというのはA型が増えているのか、それとも、やはりA型というのは増加速度が遅いですよね。ですので、すり抜けになりやすいということで、5分の4がGenotype Aになっているのか、それとも、疫学的に急性肝炎もGenotype Aが非常に増えてきているのかというところを教えていただきたいということが1つ目です。
2つ目は、今回の改定によって、コストがどの程度というか、なかなか難しいかもしれませんけれども、どの程度の負荷、負担になるのかということを、日赤の方にお尋ねしたい。その2点をお願いします。
○濵口座長 ありがとうございます。それでは、佐竹先生。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 佐竹です。最初の御質問について我々が知っているところでお答えしたいと思います。御存じのように、一般の市中病院での現在の急性肝炎のGenotypeというのは、60、70%ぐらいがGenotype Aとなっております。特に都会の方では、それが圧倒的に多いということです。
献血者の中で、NAT単独陽性、すなわち献血者の中で現在、オンゴーイングで起きている感染は、どのGenotypeが多いかというと、これは非常に不思議なことに、Genotype Aがそれほど多くないのです。現在、大体20%(発言者注;会議後の調べで、正確には10%以下でした。委員の先生方に情報を回覧しました。)ぐらいになっていて、それが10、15年前と余り変わらないのです。病院で見ている臨床例というものは、どんどんGenotype Aが多くなっているのですが、献血者の中だと、それが20%台でずっときているということです。ところが、こうやって輸血によって感染が起きた例を見ますと、やはりGenotype Aが多いということで、その辺の値の違いというのは我々も非常に興味を持って、どうしてこのようになるのかと考えております。一つ、よく言われるのは、やはりGenotype Aは、検査で捕まるまでの低濃度で増えている時間が非常に長いので、その分、周囲に感染させるピリオドも長いということが、Genotype Aが実際よりも多く急性肝炎の症例に見付かるのではないかという、そのような考えがあるかと思います。それが現在の疫学的な状況でございます。
コストについては、我々はコストというよりは、どちらかというと我々の仕事量、遡及しなければならない臨床例とか、あるいは臨床からの疑い例が1つ出ますと、それに関して、遡及に関しての色々な手続きの事務的な仕事が圧倒的に増えるという、そちらの方の負荷ですね。コストというよりは、そちらの方の負荷ですので、臨床例で、1例の疑い例が入りますと、我々としては、ガイドラインにも記載がありますように、直ちにというように記載されていますので、例えば、特に血液疾患の患者の場合に、何月何日から何月何日までの間に輸血された血液が疑われるということになりますと、それが100本ということもあるにはありますが、通常は20、30本、あとは60本などということなので、それらの血液のドナーが全て疑われることになります。それらについて、全て対応しなければならないという、そういった仕事量が非常に増えるということです。以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。脇田先生、よろしいでしょうか。
○脇田委員 ありがとうございました。よく整理できました。多分、急性肝炎では、Genotype Aが多いということを反映しているのかなとは思いました。コストの方は仕事量が増えると。だから、それをどこまでリスクを落とすために許容できるのかということも、きちんと議論していく必要があるなと思いました。ありがとうございます。
○濵口座長 重要な御指摘をありがとうございます。このコストについても、次の改定に関して、やはり改善、改良に向けてどのようにやっていけるのかを検討させていただきたいと思います。他はいかがでしょうか。
○大隈委員 よろしいでしょうか。
○濵口座長 大隈先生、どうぞ。
○大隈委員 関西医大の大隈です。今回の改正に向けて方針が示されましたけれども、その中でHBs抗体検査については、有用な検査であると私も思っています。ワクチン接種者との鑑別をすることが必要であると書かれておりますけれども、現在、実際の献血の問診では、ワクチン接種歴を確認されていると思います。それによって、ワクチン接種をされた方とされてない方は、ある程度区別できるかと思います。これで、鑑別が十分なのか、あるいは他にそういったこと以外に、ワクチン接種をしたかどうかという鑑別のために何か必要なことが、もう少しあるのかどうかをお聞きしたいと思います。
○濵口座長 ありがとうございます。日本赤十字社からコメントを頂けませんか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 浜口班の中でも、そのことについて何度か御質問いただいているのですが、実際には問診での回答をもとに、不適格かどうかを判断することは非常に難しいし、非常に不正確になるかと思います。下手をしますと、相当なドナーのロスにつながる可能性がありますので、これは非常に慎重にしなければならないと思っています。実際に、自分がワクチンを打ったか打たなかったか、他のワクチンと混同して覚えていないか。その辺は、ドナーの方に今はインフルエンザや他のワクチンのことを聞いているのですが、やはり現場を見ると、それを確実に答えられる人は、そんなに多くはいないです。ですので、その問診をベースに、これがどちらかと判断することは非常に慎重にしなければならないと、我々は考えております。ドナーのロスが一番大きな問題かと思います。
それから、その他に何か、これを鑑別する方法がないかということですが、ワクチンを打ったということが、はっきり分かる経過のドナーももちろんいますけれども、残念ながら、その他の何らかのマーカーで、これを見ることのできる手立てはちょっとないのではないかと考えております。以上です。
○濵口座長 大隈先生、よろしいですか。
○大隈委員 分かりました。やはり問診だけでは、その鑑別が難しいということがよく分かりました。今後は、問診に加えて何かしら、ここの鑑別が可能になるような何かしらの項目が見つかれば、それを活用してHBs抗体検査を導入するかどうかを、是非検討していただければと思います。以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。引き続きHBs抗体についての有用性について議論していきたいと考えております。ありがとうございました。他はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。御意見が他にないようですので、今回の御見解を踏まえて、事務局においては、通知の発出等の御対応をお願いしたいと思います。宜しくお願いします。
では最後に、議題の2「その他」ですが、事務局から何かありますでしょうか。
○佐野血液対策課長補佐 特にございません。
○濵口座長 ありがとうございました。本日の議題は以上となります。他に何か委員の先生方から御意見等がございましたらお願いします。
○天野委員 東京医大の天野ですけれども。
○濵口座長 どうぞ。
○天野委員 今回のマーカーの話の中に、HBcrAgという話が全然出てこなかったかなと思っているのですけれども、HBs抗体が陽性になっていて、HBV-DNAが、いわゆるPCRが陰性になっていても、HBcrAgが陽性になっている人というのはキャリアであると考えられると思うのですが、その辺りのマーカーを、どこかに何かに追加するという話などは何か出たことはあるのでしょうか。
○濵口座長 現状、日赤においては、これはどういう扱いになっていますか。すいません、天野先生、もう1回、先生がおっしゃっていたのを教えてください。
○天野委員 HBcrAgという検査ですけれども、HBが肝臓の中に入っていて、肝臓の細胞の中に存在して残っていますよという活動性的なものを血漿中で表わすマーカーになっていると思うのです。なので、HBV-DNAがPCRで陰性でも、HBcrAgが陽性になっていればキャリアであるという状態になると思うのですが。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 関連抗原ですね。これについては、日赤ではまだ検討したことはございません。それと、従来のコア抗体とS抗体、その辺の関連については、これから内部の研究テーマとして考えていきたいと思います。
○天野委員 宜しくお願いします。失礼します。
○濵口座長 朝比奈先生、今の件につきまして、全体の流れの中で、先生はどのようにお考えでしょうか。
○朝比奈委員 ありがとうございます。朝比奈でございます。確かに、天野先生がおっしゃるように、コア関連抗原が陽性というだけで判断できる症例というのは、恐らくあるかと思います。例えば、HBVのキャリアの方で、S抗原がセロコンバージョンしてS抗体になって、当然HBV-DNAも陰性になるのですけれども、コア関連抗原だけ陽性であり続ける患者さんというのはいらっしゃるのですね。その患者さんをS抗原がセロコンバージョンした時点の1局面で見てみると、コア関連抗原で、この方はキャリアだったということが判別できる症例が確かにあります。コア関連抗原というのは、オカルトHBVの本体と言いますか、本質に近い所にある肝臓の中のcccDNAを反映しているマーカーだとも言われていますので、こういったことも今後、OBIを見つける検査として研究を重ねていく必要はあると思います。ただ、現在のコア関連抗原は、感度が十分でないような感触も、私は診療上で感じております。恐らく将来感度は上がるというような話も聞いておりますので、そういった点も踏まえて今後活用していくということは非常に良いと思います。外国では、このような検査は診療上も余り使われておりません。これは日本で開発された抗原検査ですので、我が国でデータを集積して、こういったものを献血事業に組み入れていくことは非常に有意義だなと思っております。以上でございます。
○濵口座長 コメントをありがとうございました。いかがでしょうか。日本赤十字社で、将来的な見解として、こういったことも検討していくということはあり得ますか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 ありがとうございます。それは非常に大事な点ですので、十分に。やはり感度が問題になってくるかと思いますので、その感度を見ながら、これまでの少し足りないところを補完できるものかどうか、そこのところを見ていきたいと思っております。
○濵口座長 この議論は非常に重要かなと思うのですけれども、天野先生、今回はこういったところでよろしいでしょうか。引き続き、ガイドラインの改定に関しましても、この件については議論を続けていきたいと思います。
○天野委員 ありがとうございます。それで大丈夫だと思います。今後、検討していただけると良いかなと思っております。あと、今回のガイドライン改正の方針に関しては、特にこれと言ってコメントはございません。大丈夫です。ありがとうございます。
○濵口座長 ありがとうございます。長村先生、どうぞ。
○長村委員 長村です。ガイドラインの内容的には特に異議はないのですが、参考資料12の3ページ目で、書き方だけの問題ですが、有効期限の期間内にある当該輸血用血液製剤については出庫を停止し、医療機関で未使用の製剤があれば回収するということが、全個別項目に書いてあります。「スクリーニングNAT陽転時、または血清学検査陽転時には」というように、全体の所に書かれても良いのかなと思いました。以上です。書き方の問題です。
○濵口座長 御意見、ありがとうございます。そこは事務局で少し考えてもらいますが、余り変わらないようでしたら今回はこれでいきたいと思います。
○長村委員 はい。
○濵口座長 他はいかがでしょうか。ないようでしたら、事務局に議事進行を戻したいと思います。
○佐野血液対策課長補佐 すみません。事務局でございます。申し訳ございませんが、ガイドラインの改正の所で、今回の改正に伴って、少し記載整備というか、状況が変わりましたので、HBV、HBcとか、HIV以外の所でも1点ちょっと記載整備というか、状況が変わったことを反映させた所がございます。新旧対応表の3~4ページの「HEVへの対応」の所ですが、以前のガイドラインには、北海道に限定して研究して試験的な取組みとして全例NATを実施しているということが記載されてはいるのですけれども、こちらは昨年8月から既に全国的にもスクリーニング検査としてHEVのNATを導入しておりますので、その形に記載を整理させていただいております。すみません、こちらのアナウンスが漏れておりました。濵口座長、ありがとうございました。
次回の安全技術調査会の日程は、別途に御連絡させていただきます。これにて「血液事業部会令和3年度第3回安全技術調査会」を終了いたします。ありがとうございました。
 
(了)