第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会(第4回)議事録

日時

令和3年7月2日(金)15時00分~

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 14階 ホール14A
(東京都千代田区内幸町1ー3-1)

出席者(五十音順)

構成員
  • 荒井 史男
  • 一ノ瀬 正樹 《web出席》
  • 岩崎 俊樹  《web出席》
  • 鎌田 七男 《web出席》
  • 木戸 季市 《web出席》
  • 小池 信之 《web出席》
  • ◎佐々木 康人
  • 柴田 義貞 《web出席》
  • 永山 雄二 《web出席》
  • 増田 善信
  • 山澤 弘実 《web出席》
  • ◎は座長
  • 荒井構成員の「荒」の草冠は、正しくは間が空いている四画草冠
参考人
  • 河野 一二(広島市原爆被害対策部部長) 《web出席》
  • 二井 秀樹(広島県健康福祉局被爆者支援課課長) 《web出席》
  • 五十嵐 康人(京都大学複合原子力研究所教授) 《web出席》
  • 高宮 幸一(京都大学複合原子力研究所准教授) 《web出席》
  • 長谷川 友祥(株式会社ニチマイ) 《web出席》
  • 會澤 美智恵(国立広島原爆死没者追悼平和祈念館) 《web出席》

議題

  1. (1)前回の指摘事項について
  2. (2)検証の進捗状況及びこれまでの議論の経過について
  3. (3)その他

議事

議事内容

○山本室長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第4回「第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会」を開催いたします。
 構成員及び参考人の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
 本日の出欠について御案内いたします。一ノ瀬構成員、岩崎構成員、鎌田構成員、木戸構成員、小池構成員、柴田構成員、永山構成員、山澤構成員はオンライン参加となっております。
 また、議事の1つ目、議事(1)に関する参考人としまして、広島県健康福祉局被爆者支援課の二井秀樹課長、広島市健康福祉局原爆被害対策部の河野一二部長、それから議事(2)に関する参考人としまして、祈念館における体験記調査の担当者として国立広島原爆死没者追悼平和祈念館主事の會澤美智恵様、原爆投下時の気象状況等に関する文献等調査の受託者である株式会社ニチマイの長谷川友祥様、気象シミュレーション及び土壌調査ワーキンググループとして京都大学複合原子力研究所の五十嵐康人先生及び同研究所の高宮幸一先生にオンラインにて御参加いただいております。
 なお、誠に恐縮ですが、健康局長は別の公務の都合により欠席とさせていただいております。健康局長の代理としまして、大臣官房審議官の宮崎が出席しておりますので御了承ください。
 本日の傍聴ですが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、マスコミの方のみの傍聴とし、会議の模様をYouTubeによるライブ配信にて公開しておりますので御承知おきください。
 ここで、YouTube配信に関する注意事項を御連絡いたします。この動画、映像と音声になりますが、これは本検討会の公式記録ではございません。公式記録である議事録は、厚生労働省ホームページ内に会議終了後に追って掲載いたします。
 また、配信している画面、あるいは内容につきましては、この後、会場におられるマスコミの方々の冒頭のカメラ撮り終了時までは使用することが可能です。
 それから、オンラインで参加の先生方に何点かお願いさせていただきます。ビデオカメラはオンにしてください。マイクはミュートにしていただき、御発言のときのみマイクをオンにしてください。御発言時には、名前をおっしゃった上で御発言をお願いいたします。御発言が終わりましたら、マイクをミュートにしてください。
 以上、よろしくお願いいたします。
 冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでといたします。カメラの方は、御退室をお願いいたします。

                                                               (カメラ退室)


○山本室長 それでは、以降の進行は佐々木座長にお願いいたします。
○佐々木座長 佐々木です。皆様、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 早速でありますけれども、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
○山本室長 それでは、資料の御確認をお願いいたします。
 座席表、議事次第、資料は1から7まで、枝番を含めまして12あります。それから、第3回までの検討会の資料は、別途1冊のファイルにまとめて御用意しております。
 資料の不足などございましたら、議事の途中でも結構ですので事務局までお声がけください。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。本日は非常に内容が多くございますし、特に議事2におきましてはこれまでの3回の検討会での議論及び現在の検証状況をまとめた資料が出されており、これについての議論の時間もしっかりと確保したいと考えておりますので、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。
 議事(1)は「前回の指摘事項について」であります。まず、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○南川課長補佐 それでは、事務局から資料1-1を御説明させていただきます。
 資料1-1をおめくりください。前回、事務局の説明不足も含めてちょっと混乱をさせてしまった部分もありますが、この資料1-1の上半分につきましては、前回出した資料と基本的には同じものでございます。この上半分の表のまとめ方ですが、実は今回この表は第2回に鎌田構成員が御提出いただいた資料について、そのときの議論の中で柴田構成員から手帳の有無等についての御指摘等がありまして、その質問に基づいて手帳の有無等を含めて整理したものがこの上半分でございます。
 それにつきまして、第3回の際に鎌田構成員のほうからもともと出したときの趣旨が違うということを御指摘いただきまして、その後、鎌田構成員が御指摘いただいた形の分類に分けたものが下半分となります。
 前回、頂いた御指摘については以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 鎌田構成員、よろしいでしょうか。前回の御指摘の訂正をしたのですが。
○鎌田構成員 鎌田です。上の部分が下の部分に変わるということですね。そう理解してよろしいですか。これを並列にして出すということではないですよね。それを確認したいのですが。
○佐々木座長 事務局、お願いします。
○南川課長補佐 これは、並列のつもりでございます。
 というのは、上の部分は柴田構成員の御質問、指摘に基づいて分類したものでございまして、下の部分は鎌田構成員の指摘に基づいて分類したものですので、両方とも構成員の指摘に基づいて分類したものを2つ載せさせていただいているものでございます。
○佐々木座長 よろしいでしょうか。
○鎌田構成員 了解しました。
○佐々木座長 柴田構成員もよろしいでしょうか。
○柴田構成員 分かりました。
○佐々木座長 それでは、この資料についてはこれで終わらせていただきます。
 次に資料1-2、1-3として、鎌田構成員、増田構成員から資料提出をいただいております。これについて、まず事務局から御説明いただきますか。
○南川課長補佐 構成員の方から御発言いただいた後、必要に応じて事務局から御発言させていただきます。
○佐々木座長 分かりました。
 それでは、資料1-2について、鎌田構成員から御発言いただけますでしょうか。
○鎌田構成員 鎌田です。
 第1ページは先ほどお話があったことですので、第1ページはスキップします。
 第2ページを開けてください。これも、第2回の検討会のときに佐々木座長さんのほうから“泥雨”というのはどんなものかというような質問がありまして、そのときに「木灰を溶かしたような雨という意味の、かなりどろどろしたぐらいの濃度の濃ゆいものを泥雨と表現しているようであります」と返答いたしました。今回は、それの科学的所見について付言したいと思います。
 泥雨というのは、当時、複数の地点で確認されております。科学的調査は、その中で宇田雨域の一番南側に位置する高須地区で行われております。
 宇田論文の108ページには、「黒き泥分多きため粘り気あり」「雹の如き大粒の雨、身体には痛いほど粗い粒の雨」というような形容詞のついた説明がありますし、また、その内容については「筆者の次男が山奥の学童疎開から帰って来て、雨に打たれた雨戸のそばに寝ていたが脱毛し始め急ぎ片づけた」「この雨戸に付着した泥分を採取し、理化学研究所佐々木・宮崎氏に調べてもらったところ、爆発2カ月経過しても、爆心地の数倍のすこぶる強大な放射能であった」という返事があったそうです。
 また、宇田氏はこのように述べています。「己斐高須方面の人は爆発後約3か月にわたって下痢をするものがすこぶる多数に上がった。水道破壊のため井戸水、地下水を飲用したことが関与するものと推察される」と述べております。
 次のスライドですが、この泥雨に関しての内容が実際に見つかりまして、八島という方が泥雨のついた壁を原爆資料館に寄贈されました。それで、宇田さんのお宅と八島さんのお宅とは非常に近い。同じ高須で近いところなので、宇田さんの表現はこれに似たような、この壁を見ても分かりますように粘着があるような格好で、さらさらっと流れた格好にはなっていないようなものです。
 次のページをお願いします。これに関して、85年、昭和60年に理学部のほうで下の赤いマークがあります「黒い雨」の壁面というのを全部そろえてセシウム137を調べたわけです。そうすると、「黒い雨」の壁面は4.85、10の8乗ベクレル/キロスクエアになっておりまして、爆心地付近のものはここに書いていますようにそれの37分の1であったというふうに記載されております。これは理科研のサンプルがありますけれども、その10サンプルの平均値、広島市内の平均値を取っても32分の1ということで、結局何が言いたいかというと「黒い雨」の壁面は爆心地付近土壌サンプルと比べて37倍高い放射能強度を示したということであります。宇田宅は八島宅の近所であり、宇田論文の脚注を科学的に裏づけるものであると考えます。
 これは高須ですけれども、「黒い雨」の中心部に当たる前原というところがあるのですが、その部分の放射能強度も分かっておりまして、ここでは示しておりませんが、約2.5倍高須地区よりも高いということで、結局「黒い雨」の中心部は爆心地付近よりも100倍高いということが言えると思います。
 それで、もう一つお示ししたいのは、この壁面の放射能強度がどれぐらいのものかということで図を示しますが、これは御存じのようにチェルノブイリの図と、それから福島のものを示しておりますが、ランキングからいきますと下から2番目の放射能強度に当たるという値になっているということであります。これはチェルノブイリ、それから福島の部分も含めておりますが、いずれにしてもかなりの強度であったということが分かると思います。
 以上です。
○佐々木座長 御説明ありがとうございました。
 ただいまの鎌田構成員の御説明に関して、何か御発言がありますでしょうか。
 特にないようでありますので、それでは次に資料1-3、増田構成員から御発言をいただけますでしょうか。
○増田構成員 増田でございます。非常に長い意見を出したのですけれども、その理由というのは、今回の質問は検討会の基本問題に関することを述べたいと思ったので大変長くなりました。事務局のほうでは3分以内にやれということですけれども、幾ら何でも3分ではできませんから、できるだけ早くやるようにいたしますので、少し時間をいただきたいと思います。
 さて、1ページ目に私は第3回の会議が終わった後に、もう一度その資料を精査いたしました。そうしたら、ここでは資料4-1というふうに書いてありますが、実は資料7にABCCから出されたものの中に大変重要な内容が含まれておりました。
 というのは、例えば2.5マイル以内のところでは細かく測定をしてほしいとか、あるいは呉まで測定をしてほしいというような内容が書かれております。従って、そこで測定した結果は、この会の資料として非常に重要ではないかと思います。しかし、そこには資料が出ていませんから、ぜひABCCに資料を出すように要請をしていただきたいと思います。
 それでは、時間がありませんので3ページに飛んでいただきます。前回の資料3-1ですが、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館所蔵の被爆体験記録をまとめていただいた大変貴重な資料でございますが、その資料がいわゆる大瀧雨域だけに限定されてプロットされています。この会は何も大瀧雨域にこだわらないで、少なくとも全ての放射能の影響がありそうな地域を選ぶ、すなわち、調べるというところに大きな目的があったと思います。そう考えると、なぜ大瀧雨域だけに限定されているかということについて事務局のほうにお伺いしたいと思います。
 その問題については、既に第3回のときにも、体験記は5,880もあるのに実際に使われているのは千幾つだったという点で質問をしております。そして、今回の資料にもその続き、第2弾が出されておりますが、同じ形でまとめられておりますので、これはぜひ地点ごとに分布図を作っていただきたいというふうにお願いいたします。
 次は、この会の主要な目的というのは、雨だけではなくて歯茎からの血だとか、ちりがどこまで降ったか、あるいは11種の原爆症を選んで、どこで発生しているかを検索していただきたい。せっかく電子化したわけですから、その中からそういうものの分布図を作っていくことが非常に重要ではないかと思います。
 6ページの図2というのは、私がまとめましたいわゆる増田雨域でございまして、これは大瀧雨域よりもずっと広い範囲に、少なくとも私が調べた範囲内では広がっています。したがって、少なくとも広島県の中全体をお調べになっていただくようなやり方を取っていただけないか。ぜひもっと広範囲なところを、しかも雨だけではなくてチリであるとか、あるいは歯茎から血が出たとか、下痢だとか、そういうものも含めて、電子化された資料を使って分布図を作っていただきたいと考えております。
 次は、9ページです。(3)-4の最後で、このアンケートに広島県と市が、実は私はこれもそのときに要請いたしたのですが、今まで使っていた資料だけではなくて、公式に広島県や市がおやりになったアンケートの結果も今回まとめて、放射性の物質があったとか、あるいは病気があったとか、そういう地域を調べるというふうにしていただきたい。
 そのことと関連して、この前の第3回のときにもお話をしたのですが、昭和48年の11月に広島県と市がおやりになったアンケート結果が、実は昭和51年の宇田雨域に拡大するときの重要な資料になったアンケートでございまして、1万7000筆の回答があるということは分かっています。それが使われたということは事実なのですが、その現物をぜひこの中で使わせていただくようにしていただきたい。お願いいたします。それについては、後で広島県と広島市から御回答がありますが、アンケートがなくなるなどということがあってはならないと思いますので、ぜひ捜索をお願いしたいと訴えております。
 それから、10ページのキノコ雲のでき方という問題が実は大変シミュレーションの場合も重要であると思いますので、いわゆるキノコ雲と積乱雲からの雨が2種類あったのですが、なぜそういう現象が起こるかという点を気象学的な立場から詳しくお話ししておいたほうがいいのではないかと思って、(2)でキノコ雲の形成過程ということを述べてあります。
 そこでは、時間がありませんから簡単に触れますが、一般の人はキノコ雲だけが上昇していくように考えていらっしゃるのですが、気象学的に言うと、空気が上昇した後は真空になるわけにはいきませんから、必ず周りから空気が集まってきて上昇し、それでキノコ雲の柄を作るのです。しかも、それは上昇気流があるところだけでしか雲はできないんです。下降気流のところは雲がないんですから、そういう点では約20キロ先まで行って下降気流になって、そこから雲が切れる。だからこそ、キノコ雲が半径約20キロになっているのです。
 しかも、その柄の部分はいつまでもずっと地面付近の放射性物質を集めて上昇しますから、いつまでたってもそこが放射性物質のオリジンになるんです。それを吉川さんたちは、ある時だけそこに放射性物質があるとしているという点で非常に問題があったと思っておりますが、そういう点で柄の部分というのはずっと放射性物質が上昇してキノコ雲の中を通って外へ出ていく空気の流れになっているんだということをきちんと理解していただきたいと思います。
 しかも、火災が起こった場合も、まず近くから大きい火災が起こりますから、その火災によってできた、すすを含んだ空気も、元のキノコ雲の柄の中を通って上昇するんです。それで、各地に火災が広がって、各地で大きな火災が起こって、初めて弾幕のように「黒い雨」の壁ができるんです。そういう点をきちんと理解していただかないと、「黒い雨」というのがなぜこんなに広いところへ、あるいは遠いところへ広がったかということが分かりませんので、ひとつぜひご理解をお願いいたします。そのことが、実はかなり長く書いてございます。
 次ですが、シミュレーションの問題についてはいろいろ御意見がございますし、前回の会議でも山澤構成員と岩崎構成員からも同様な危惧が出されております。そういう点では、初期値をどう求めるかというのが基本だという点を強調させていただきたいと思います。
 最後は13ページですけれども、シミュレーションなどといういわゆるコンピューターを使う場合というのは科学者の倫理性が問われるということを強調させていただきたいと思います。
 それは、14ページの丸山・吉川論文です。広島県と市が主催なさった黒い雨検討会の報告書の中にある図は記者会見等には出されておりませんが、それをオリジナルのデータにまで遡って調べますと、全く同じ初期値であり、また境界条件が同じであるのに、こういうふうに2種類の図が出てくるなどということは本来は考えられません。そういう点で、なぜこういうことが起こったのかという点は本当はおやりになった方にお聞きになる必要があると思いますが、そのうちの吉川論文のほうが宇田大雨域とよく合っているということで恐らくお決めになったのではないかと思います。そういう点で、科学者の倫理性というのがこういうシミュレーションの場合には重要だという点を強調させていただきます。
 非常に言いにくいことを言いましたけれども、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいまの増田構成員からの御説明は大変広い話題に触れていただいたわけですが、関連して御意見があれば御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
 それでは、先に前回、増田構成員からお尋ねがあった、先ほど増田構成員の御説明の中にも出てまいりましたけれども、過去に広島県及び広島市で行ったアンケート調査の保存状況に関して、県と市より説明をしていただきたいと思います。
 まず、最初に広島市からお願いできますでしょうか。
○河野参考人 広島市原爆被害対策部の河野と申します。よろしくお願いいたします。
 増田構成員から御要望いただいたことを受けまして、本日はその確認結果について説明をさせていただきます。
 1973年、昭和48年でございます。このアンケート調査でございますけれども、昭和48年11月から翌年の1月にかけて実施したものでございまして、「黒い雨」降雨地域の対象とした区域のうち、当時の広島地域の地区については広島市が、広島市を除く広島県域の地区については広島県が、それぞれ調査を実施しております。当時、県、市、合わせて約1万7000人から回答がございました。
 この調査の区域を地図に示したものが、こちらでございます。少し見えにくいのですけれども、黄色で囲った区域が広島市の調査区域でございます。それから、オレンジ色で囲った区域が広島県の調査区域となります。また、青、緑の点線で示しているのがいわゆる宇田雨域になりますが、内側の青線が昭和51年第一種健康診断特例区域として指定された大雨地域となります。御覧のとおり、宇田大雨地域の外も含めて幅広く調査を実施しているところでございます。
 こちらは、広島市が実施したアンケート調査の調査票の様式でございます。被爆当時の住所、世帯構成や被爆直後の健康状況などを尋ねる様式となっておりますが、そのうち問4の「原爆が落ちた8月6日当日の雨の状況について」の項目において、降雨状況についての回答を求めております。
 具体的にいいますと、まず雨が降ったかどうか。「1.降った」「2.降らなかった」「3.覚えてない」、この中から回答していただき、「1.降った」を選択した方についてはその雨は何時頃に降り、それはパラパラ降ったのか、ザーザー降ったのか、それとも土砂降りだったのか。また、黒い雨だったのか、普通の雨だったのかを併せて回答していただく様式となっております。
 このアンケート調査における広島市分の回答者数は約1万500人でございますが、この調査は世帯ごとに1枚の調査票になっておりますので、調査票自体は約3,000枚でございます。この調査票の原本につきまして、広島市調査分については現在も広島市において保管をしております。
 次に、当時の文書の中から御覧のような調査結果の集計表も確認をしております。先ほどの雨の状況の問いについての広島県分の集計結果と併せて取りまとめております。
 以上、本市ではただいま説明をさせていただいたとおり、昭和48年に実施したアンケート調査の調査票原本を保管しております。必要があれば、検討会にこれらの資料を提供させていただくことは可能でございます。
 説明は、以上でございます。
○佐々木座長 河野参考人、ありがとうございました。
 続きまして、広島県からの御説明を二井参考人からお願いいたします。
○二井参考人 広島県被爆者支援課長の二井でございます。よろしくお願いいたします。
 ただいま広島市さんから御説明されました昭和48年、1973年に広島市さん、それから広島県が実施いたしましたアンケート調査のうち、広島市以外の町村に係る調査票につきまして探索いたしました結果を御報告させていただきます。
 御覧いただいております本日、本県が提出しております資料でございますけれども、当時の佐伯郡湯来町役場、現在の広島市になっておりますが、そこが作成をされました昭和48年10月、「広島原子爆弾に伴う黒い雨降雨地区調査」という表題で括弧書き、朱書きをされていますが、(湯来町保管)とされた表紙の湯来町の住民124人分のアンケート調査の個票の写しがつづられたものを発見いたしました。
 この表紙の後ろに124人分の個票の写しがついているわけでありますけれども、本日の資料としては割愛をさせていただきます。
 これ以外の町村分のアンケートの本体、個票につきましても書庫や県立文書館等を含め、手を尽くして探索いたしましたが、残念ながら発見することはできませんでした。
 また、この表紙には(湯来町保管)と書かれていることから、各町村で個票が保管されている可能性もあると考えまして、当時、本県がアンケート調査を依頼したとされる旧町村の合併後の自治体に個票は残っていないか問合せをいたしましたが、いずれも見当たらないとのことでありました。
 なお、この湯来町の124人分という数字は、先ほど広島市さんが説明された資料の最後のページにございました調査結果集計表に記載されている湯来町の回答数、先ほどの資料では砂谷村391、水内村288、合計で679となりますが、これとは大きな違いがございます。このため、この調査票の写しが昭和48年に本県と広島市が実施した調査の湯来町分、または湯来町分の一部であるという確証を得ることもできなかったところでございます。
 いずれにいたしましても、本県が発見できたアンケートの本体はこの旧湯来町分の124人分の個票の写し以外にはないというのが実情でございます。
 広島県からの御説明は、以上でございます。
○佐々木座長 二井参考人、ありがとうございました。
 ただいまの2つの資料及び御説明も含めまして、増田構成員から御提出の資料1-3全体について議論を進めたいと思います。関連して御発言があればお願いいたします。
 増田委員、お願いします。
○増田構成員 それでは、まず広島市のほうにお尋ねいたします。昭和48年アンケート調査のいわゆる調査様式ですね。調査票の様式が載っております。さっきお話しがありました統計した結果がその次のページに入っていますが、個票と言われる個人別の資料、元の資料は一体存在するのでしょうか。
 この問題の一番大事な点は、いわゆる雨の地域を限定し、できるだけ正確に再現しようということならば、それぞれの個票の雨の結果というものが非常に重要です。そういう点で、先ほどは湯来町の124票と言われましたが、実は私が使ったのは123人です。それはどうもその当時の黒い雨の会の会長さんをしておられた花本兵三さんが自分で調べられたものではないかと考えております。
 したがって、そのほかに正式ないわゆる広島市と県がやったアンケート結果というのがどこかにあるはずだと思うので、まず1つ質問をいたしますが、先ほども言いました個票があるのか。統計票はあるのですが、個票があるのかどうかをお聞きしたいということです。
 同じく、広島県の課長さんには大変お世話になりましたが、やはりここでも124人の個票があると先ほどおっしゃいましたが、それは現物で提出していただけるのでしょうか。
 以上、2つの点について質問をさせていただきました。よろしくお願いします。
○佐々木座長 河野参考人と二井参考人から御発言いただけますでしょうか。お願いいたします。
○河野参考人 広島市でございます。お答えをいたします。
 昭和48年に実施をいたしましたアンケートにつきましてでございますけれども、先ほども説明をさせていただきました広島地域分は約1万500人分でございます。これは、当時、調査票は世帯ごとに調査をしております。それで、この個票については約3,000枚あろうかと思います。これは現在も広島市で保管をしておりまして、当時の原本を保管しております。
 以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 二井参考人からは御発言ありますか。
○二井参考人 広島県の二井でございます。
 先ほど御説明をさせていただきました124名の旧湯来町分の個票でございますが、これは個票の写しでございます。こちらは、見る限りはお一人ずつの記載になっておりますので、124人分ということにはなろうかと思います。
 御提出できるかどうかということでございますけれども、個人名等も書いてありますので、それをそのままお渡しできるのかどうかも含めて、またお答えを改めてさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいまの増田構成員から御提出の資料1-3に関連しましては、後ほどまた議論する機会があろうかと思いますので、先に進めさせていただきたいと思います。
 議事(2)は「検証の進捗状況及びこれまでの議論の経過について」であります。この議題では、資料2から7まで提出されておりますけれども、資料2と7は内容が重複しますので、最後にまとめて事務局から説明していただき総合討論することとしまして、初めに個別の検証課題について説明をしていただこうと思います。
 まず資料3「国立広島原爆死没者追悼平和祈念館での調査状況について」、事務局からお願いをいたします。
○南川課長補佐 それでは、事務局のほうから御説明させていただきます。資料3-1を御確認ください。
 祈念館における体験記調査については昨年度もやらせていただいていましたが、今年度も前回の増田構成員の御指摘を踏まえて、さらに拡大した調査という形でやらせていただいています。
 「調査対象」につきましては前回と同じですが、1ページ目のマル1からマル4の体験記になります。具体的な内容であったり、数については2ページ目にございますので、適宜作成年度も含めて御参照いただければと思います。
 これにつきまして、前回御提出した資料の中では左の赤い部分ですけれども、被爆地が広島市であるものの中で、登場地というのが前回のときには拡大要望地域という形の調査対象地域が絞られているということに対して増田構成員からも御指摘いただきましたので、今回の追加の調査におきましては、拡大要望地域の外側の体験記についても改めて3,346件、祈念館の職員の皆様に御協力をいただき作成させていただきました。ですから、前回の約5,800件から、さらに追加で3,346件を今回調査したというふうに御理解いただければと思っております。
 3ページ目を御確認ください。実際の体験記でございますので、それについて書かれているもので雨というものが書かれているものの中で、さらにその調査対象地域のところの部分について一定程度フィルターをかけた上で、今回対象地域という前回調査したところから追加で拡大要望地域の外も含めた対象地域について見つかった29件についてまた改めてプロットさせていただいております。
 具体的には4ページ目は広島県全体ということですが、これに加えて陸続きの隣接県、鳥取県、島根県、岡山県、山口県についても今回の体験記調査の中では調査をさせていただいているところでございます。
 続きまして、5ページ目を御確認ください。この図について赤くなっている部分については、前回の段階で体験記の中に雨が含まれているものという形、登場地は雨が含まれているものという形でプロットさせていただきましたが、さらにその外側の部分についても青くプロットされているところがございます。ここにつきましては、それぞれ今回の拡大調査において分かったものという形で御理解いただければと思っております。
 6ページ目も、以上です。
 事務局からの説明は、以上となります。よろしくお願いします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいまの資料3についての御説明に関して、御意見、御質問があれば御発言をお願いいたします。
○鎌田構成員 広島の鎌田ですが、よろしいでしょうか。
○佐々木座長 鎌田構成員、お願いいたします。
○鎌田構成員 この資料の3ページに「抽出された体験記の状況について」の記載がありますが、これは雨という言葉を選んで抽出されたものだというふうに理解してよろしいのでしょうか。それで、私がお尋ねしたいのは、雨以外のものについても同じような調査をすべきではないかと増田構成員から質問が出ていると思うので、その辺でこれが雨だけだというのであればほかのことについても御発言いただきたいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 これは、事務局から。
○南川課長補佐 事務局ですが、そもそも体験記というのはそれぞれの方が当時の状況についてナラティブに記載されているものでございますので、その中から祈念館の職員の皆様に雨という情報を抽出していただいたものでございます。
 以上です。
○佐々木座長 鎌田構成員、何か御発言ありますか。
○鎌田構成員 今の回答では、雨以外のものについて調査するのか、しないのか、明確な回答でなかったように思うので、再度その件についてはっきりとお答えいただければありがたいと思います。
○佐々木座長 いかがでしょうか。
 會澤参考人、どうぞ御発言ください。
○會澤参考人 追悼平和祈念館の會澤でございます。
 この調査については2年度も同じなのですが、本文がテキスト化されているものについては雨というキーワードで抜き出しているのですが、テキスト化されていない体験記というものがありまして、それについては8月6日にその地域の記述があるものということで抜き出しをしております。
 今、画面共有されているものの左側の赤い部分ですね。登場地と私どもは言っているのですけれども、体験記に出てくる地域ですね。それについて、今回の拡大要望地域の外側の地域について、8月6日の記述があったものを全て抽出して職員が読み込みをしております。
 その中で抽出したものは雨について、要するに被爆後の降雨であるかどうかということと、それからいわゆるフォールアウトですね。ちりとか、紙くずとか、紙片とか、そういったものについても一応抜き出しをしております。
 そういう対象となったものが書かれている体験記ということで、先ほどの5ページのような形になっております。基本的には29件と大変少ないのですが、被爆後の降雨についての記述があったもの、あとは雨以外の飛散物についての記述があったものについて抜き出した結果が29件だったということです。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 鎌田構成員、何か追加の御発言はありますか。
○鎌田構成員 鎌田ですが、ちょっと理解できにくいのですが、雨以外を抽出したら29件だったと3ページには書かれていますが、そのすぐ下に「雨の強弱」という言葉がありますけれども、これはどう理解したらいいのでしょうか。雨以外のものを抽出しておりながら、内容的には「雨の強弱」というのは私には理解できないのですが。
○佐々木座長 これは、會澤参考人から御発言いただけますか。
○會澤参考人 先ほどの3ページを画面共有していただけますか。
 抽出された体験記、3,346件のうち、職員が読み込んだ結果として被爆後の降雨というものが143件です。それで、そのうち今回の調査対象地域であるかどうか、拡大要望地域の外側ですね。そうでなかったものが89件で、あとは地域について特定できていないものが25件で、残った29件が被爆後の降雨と判断できるもので、それについて雨の強弱ということで、強いが7件、弱いが4件、強弱の記述なしが18件となっております。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。
○鎌田構成員 ということは、これは雨以外のものについては抽出していないというふうに理解してよろしいのでしょうか。
○會澤参考人 追悼平和祈念館の會澤です。
 ここに書かれているものについては、雨のものです。雨についての結果が書いてありますが、飛散物についても調べてはおります。 
○佐々木座長 事務局にお願いしますが、次回に雨以外のものを出していただくことは可能ですか。
○南川課長補佐 そうですね。先ほどの増田構成員の御指摘も含めて、どのような形で調査をするか、最後の資料7のときにも改めて全ての構成員の方に御確認させていただきたいと思っていますので、そこでの議論も含めて事務局としては対応させていただきたいと思います。
○佐々木座長 では、雨以外の調査についてはまた改めて資料を出していただくことにいたします。
 関連して、増田構成員。
○増田構成員 大変精密な調査をなさっていただいて感謝していますが、先ほども何回も繰り返しましたが、まず少なくとも地域を限定するということはやめていただけないか。それは、先ほども言いましたように、この検討会は今度の黒い雨の影響があったか、なかったかというような点を問題にして、それがあった部分をできれば拡大していこうということになっているのではないか。最初の要綱の中にもそういう趣旨のことが書かれておりましたが、そういう点で言えば、限定したところだけでやるというのは、そもそも要綱にも外れているのではないかと私は思います。
 ですから、できれば限定しないで雨、あるいは先ほど鎌田先生からもお話がありましたような雨以外のものもできれば抽出していただきたいと思います。
 その場合に、まとめ方でございますが、出された資料の最後の3-2がおまとめになるときの原票になると思いますが、まず雨が降った時刻の分類というのが、「午前」「午後」「夜」「不明」というふうになっています。
 しかし、宇田先生がおやりになったのは、まず雨がいつ降ったか、そして何時間降ったかによって、例えば30分以内の場合は小雨、30分から1時間の間は中雨、そして1時間以上は大雨というふうに分類をなさって、あの図をお作りになっているわけです。それを再現していくことが非常に重要になっているのですから、できればここは時間にしていただいて、雨が降った時刻がその下には書いてあるのですが、長さのことが書いていないのです。そういう点では強い、弱い、あるいは強弱の記録なしというのが宇田先生の大雨、小雨になるのかもしれませんが、できるだけ正確に大雨にするか、小雨にするかという点をしっかりとデータの上でお分けになられたほうがいいのではないかと思います。そういう点で、このまとめの表はぜひお変えになっていただきたい。
 私ごとで大変失礼ですけれども、この検討会の2回目に私が実際に60名の方の中から約20名の方の雨であるとか、あるいは歯茎からの出血だとか、そういうものを含めて検索した結果を参考資料として提出してありますから、できればそれを参考にする、あるいは御相談していただいて、できるだけ正確な、しかも今の段階でできる最大のことをやっていくことが非常に大事ではないかと思いますので、その点はひとつ御協力いただきたいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいまの点も、今後の進め方のところでまた触れていただきたいと思います。會澤参考人、ありがとうございました。
 では、続きまして米国の公文書館等における文献等調査について、長谷川参考人から御報告をお願いいたします。
○長谷川参考人 ニチマイの長谷川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 現状、アメリカのほうではいまだ米国国立公文書館をはじめ、新型コロナウイルスの影響によって施設の再開には至っておりませんので、今年度もオンラインを中心としたインターネットで公開されているサイトを調査しますということで調査を進めるような形になります。
 それで、米国国立公文書館の現状ということで資料を御案内させていただいておりますが、今、一部限定した関係者に向けて段階的に再開をして全部の正常な開館を目指すという段階に入っています。こちらに関しましては、「NARA Phased Reopening Plan」ということで、アメリカの公文書館のほうではインターネットで公開されている。こちらのプランニングに基づいて、段階的に再開を行っていく。
 ただし、現時点で本格的な施設の再開時期というのは未定になっておりまして、つまりは現地に出向いて調査をするというのはまだいつからできますという状況ではございません。
 あとは、ちょっと懸念されるのが、施設が再開されたとしても、新型コロナウイルス感染症対策のために今までより資料の請求から資料を受け取る時間が非常にかかりそうだということが予想されまして、今までのように資料の調査、収集が行われるかどうかというのはまだ不透明な状況という形になります。
 同じくトルーマン大統領図書館の現状につきましても、全てのサービスについて正式な施設の再開には至っておらず、正式な施設の再開には館内で限定的な公開を行ってから再開に向けた検討を行うというような状況になっているようでございます。
 現状、米国の状況はそんな感じでございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいまの御説明について、御質問等ございましたら御発言をお願いいたします。前回からあまり進捗はないということと、いつ実際に調査ができるかということも今のところ予測ができないということのようであります。よろしいでしょうか。
○長谷川参考人 今年度につきましては、もうオンラインを使って、「令和3年度調査について」ということで書いてございますが、現地で資料に直接当たることは今年度難しそうですけれども、インターネットを利用した調査というのは今、鋭意進めているところでございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 増田構成員、何かございますか。
○増田構成員 たびたび私が発言して申し訳ないのですが、質問します。2枚目の資料で原子爆弾投下時の気象状況等に関する文献等調査というお仕事かと思うのですが、気象状況というのは一体何を指しておられるのでしょうか。
 というのは、雨の降り方というか、雨の結果などが主体になる調査なのか、あるいは数値シミュレーションの初期のデータに関することを調査しようとなさるのか分かりません。ということは、一般的にこの前も報告がございましたけれども、原爆あるいは雨だけでやると、結局ほとんど何も引っかかってこないという結果が報告されています。ある特定のテーマに限定してやらないと調査にはならないのではないかと思うのですが、いかがお考えでしょうか。
○佐々木座長 長谷川参考人、御発言いただけますか。
○長谷川参考人 こちらの調査に関しましては、御相談いただいた当初から、なかなかアメリカ軍が、その当時は収集ではないですね。記録している情報というのは、戦時中でございますのでアメリカ軍が攻撃したものに関するもの、要はいかにダメージを与えたかという記録が多うございます。我々の今までの知見によって、そういうものは持っています。
 それで、今回のような原爆投下に付随する情報というのがあるかないかはちょっと分かりませんという状況でスタートしているのがそもそもです。ですから、この「気象状況等」というのは、そもそも気象状況に関する情報があるか、ないか分からない状況で、前回の検討会でもお話ししましたけれども、まずは手探りで当たっていくしかない状況です。キーワードを基にどんどんひも解いていって、出てきたものから、例えばそこの爆撃機の機長の手帳からそういう気象に関する何かコメントが出ているのではないかとか、そういったものを当たるような状況でございますので、今、構成員からいただいた「雨」というもので引っかかることはほとんどないと思います。
 それに付随する記録、バトルレコードというものがあるのですけれども、飛行機がどういうふうにして戻ってきましたという記録が取ってありますので、そのときに何かのコメントのところで、こういう状況で雨が降っていたとか、そういったものが出るのではないかというようなものが主眼になってくるかと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。
○増田構成員 どうも納得できないというか、先ほどABCCの結果が大変重要なことを含んでいる。しかし、内容的にはまだまだ不十分だというお話をいたしました。だから、ABCCのようなところを特に検索をして、いわゆる黒い雨、あるいは下痢、あるいは原爆症などというものとどう関係があるかというような点をお調べにならないと、ただ一般的な気象ということだけでやれば、この前もお話がありましたが、B29の途中の風の方向などが手に入ったというお話でした。しかし、あんなものが初期値にはなり得ないわけですから、もっとポイントを絞ってお調べいただきたいというふうに私はお願いいたします。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。これも、今後の進め方の中で御検討いただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。ほかに御発言がないようですので、次に気象及び土壌調査について、五十嵐参考人から御報告をいただきたいと思います。お願いいたします。
○五十嵐参考人 京都大学複合原子力科学研究所の五十嵐でございます。よろしくお願いします。
 これはタイトルですので、次をお願いいたします。
 今年度の計画概要をざっと御紹介いたします。我々のほうでは1番目、2番目を主として、気象モデルの構築と、それからその計算結果をどのように検証していくかということで共同調査を行いまして、これが原爆由来物質であると目星がついたものについて分離測定をしていき、最終的にはマップを描いていこうという計画になっております。次をお願いします。
 こちらは、実施の事業者を示してございます。今年度は広島大学の原医研ですね。こちらも含めまして臨んでいこうということで、過去収集されました試料もできる限りアーカイブをして、それを測っていこうということであります。次をお願いします。
 爆発の再現計算、気象計算の戦略をここで記載してございます。こちらは、爆発雲の形成・発達と衝撃塵というところで、爆発を再現計算によりまして作りまして、それを気象モデルへ渡していこうという取組の戦略です。
 気象モデルにつきましてはいろいろ御議論があるのですが、ERA-20Cというもの、あるいはNOAA-CIRES20Cというデータセットは1945年の8月の気象もカバーしているということなので、それを取り込みまして、よりスケールの小さな格子を作っていき、これは10キロ、2.5キロと書いてありますが、今年度はこのレベルで進めていこうということです。
 それから、気象モデルのパラメーターの感度実験等を行いまして、さらには諸過程を気象モデルへ取り込んでいって計算しようというような取組の戦略であります。次をお願いします。
 これは何度もお示ししていますが、ERA-20Cで全球の気象データのセットということになっておりまして、これが細かい格子のモデルの境界条件ということになります。次をお願いします。
 これは気象庁のホームページから取らせていただいたものですけれども、天気予報に使われている非静力学モデルと呼ばれるもので、局地モデル、メソモデルとございますが、今はメソモデルというものが気象の現場で使われているということでありますけれども、そういったモデル、さらに精細なモデルを構築しなければいけないという具合に考えております。次をお願いします。
 これは不確実性の評価で、どのように進めるか、非常に難しい問題ですけれども、一番左にあるのが手書きの地上気圧の配置図になります。ERA-20Cのは真ん中にありますが、このような形で表されております。それで、比較を通してモデル自身の不確実性というのも評価したいと考えておりますので、似た気圧配置の日、あるいは温度分布の日のデータを使って計算をするということも考えておりますし、地上天気図だけではなくて高層の天気図、降水分布等の比較というものも1945年の8月当時のものと比較をできる範囲でしていきたいという具合に思っております。次をお願いします。
 これは実際の降水に関わる既存の情報でありまして、私が改めて御紹介するまでもないと思いますが、一番左が増田先生の雨域でありまして、真ん中が大瀧先生が構成された宇田雨域と大瀧雨域というものになります。時間変化も表されているということであります。こういったものがどれほど再現できるかということに挑戦しようということであります。次をお願いします。
 これは、爆発モデルについての説明になります。爆発モデルで再現しようと思っているのは、爆発で生じた微粒子の分布、それから温度、圧力、そちらのパラメーターを気象モデルに最終的に引き渡したいと考えているわけですが、どのような形で引き渡せるかというのはトライ・アンド・エラーをしていかないといけないということになります。次をお願いします。
 また、火球については既存の情報がある程度あります。これらは測られたものではないのですが、推定された中心の温度ということで、当然12分で12キロに原爆雲は到達しているというお話なので、そこではサチュレーションしていると思いますが、このような温度変化をしたのではないかという推定がなされております。先ほどの爆発モデルというものを検証していくという意味では、こういったデータと照らし合わせながら不確実性を減らしていきたいと思っております。次をお願いします。
 こちらは、爆発に使おうと考えているモデルでありまして、これは爆轟現象といって水素が燃えている、着火していくという状況の再現のモデルですが、かなり高時間分解能で、かつ高速の流体の再現ができているということになります。こういったものを利用していくということになります。次をお願いします。
 火災煙につきましては、WRFというのは気象モデルなのですが、ここに付随する様々なアプリケーションがありまして、その中に森林火災の再現のモデルがあります。こういったものを流用するということを現状では想定しております。次をお願いします。
 マップでありますけれども、目標となるのは福島の土壌調査のこういったマッピングになります。
 ただ、どこまで広範囲にカバーできるかというのは現状なかなか難しい部分もありますが、可能な範囲で努めていきたいと思います。次をお願いします。
 対象となるものは過去の情報ですけれども、例として長崎の西山地区で炭素、すすがセシウム、アメリシウム等の組成物質とともに、濃度のピークとして堆積物に検出されているということもあります。こういった保存されている条件を探して見つけていこうということになります。
 それ自体、かなり難しい仕事でありますけれども、次のページにお示ししているのはスクレーパープレートと呼ばれる道具を使った手法でありまして、表土層を薄く削りながら、その中に含まれる放射性物質を検出していくといった手法であります。天然核種の鉛が上から降ってくるわけですが、そういったものはだんだん地面の深い方向に向かって濃度減少するのですが、セシウムはきちんとした濃度ピークを持っておりまして、1963年頃にピークがあった大気圏内核実験由来のセシウムでありますけれども、こうした形で保存されている。こういうものが広島、長崎であれば、セシウムがどこかに、より小さなピークであるかと思われますが、残っていないかということがあります。そういう地層ですね。そこの層を抽出しまして核爆発起源物質の検出をしていこうということです。次をお願いします。
 従来の手法では放射性物質、放射能だけを検出するという手法だったのですが、我々は例えば炭素やすすを検出する。次をお願いします。
 または、溶融したものと推定される微粒子というものが広島の海岸に検出されております。こういったものの正体をきっちり解明しまして、これを原爆由来の物質ではないかという具合に考えて、陸上でも検出していきたいと考えています。
 それで、まずは広島の海岸線において本当にこういうものがあるかということですけれども、それを調べたところ、間違いなくあるということが分かってまいりました。次をお願いします。
 こちらは下側がそうですが、広島の海岸線で採りました砂の中からかなり容易に球状のガラス粒子から見つかっております。次をお願いします。
 これは、シリカのガラス粒子と酸化鉄の粒子です。由来は本当に何であるかというのはなかなか推定が難しい部分があるのですが、現在の物質分析の最先端技術を使って由来を明確にさせ、これを陸上域においてもしっかり追いかけていきたい。すなわち、これが爆弾の由来のものであれば、どこの領域にそれが沈着したかというのが割に容易に判別がつくだろうという具合に推定しております。特に、酸化鉄の粒子が顕著に検出されるということが分かっておりますので、これを追いかけていきたいと考えております。次をお願いします。
 また、過去に採取されました昭和40年代の調査、さらに古い時代の調査というものが行われた、そういったものが長崎大学、広島大学に保管はされております。ただ、整理がされておりません。
 また、どの地域、どの地点で採取されたサンプルなのか、現状残っているサンプルとの照合ができておりませんので、そういったものを進めつつデータベースを構築しまして、データと試料をやり取りしていって、このメッシュを作った地図を埋めていきたいと考えております。
 以上、雑駁なお話でしたけれども、今年度の戦略ということをお話しいたしました。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいまの御説明に関して、御質問や御意見がありましたら御発言をお願いいたします。
○岩崎構成員 岩崎でございますが、よろしいですか。
○佐々木座長 どうぞ、岩崎構成員お願いします。
○岩崎構成員 五十嵐さん、御計画について御説明ありがとうございました。私から、質問とコメントを言わせていただきます。
 この課題は、非常に不確実な初期条件、境界条件の下で数値シミュレーションをやるということですので、数値モデルを使っても、やれることとやれないことがあると思います。そういうことを考慮した上で、数値モデル、数値シミュレーションの最終的な目標をどの辺りに置いているのかということについてお考えをお聞きしたいと思います。
 先に私の意見を言っておきますが、非常に難しいことなので、はっきり言って、結局求めるような精度で雨域を特定することはできないというのは一つの答えだと私は思っております。無理やり答えを出すということは非常に危険ですし、増田構成員が倫理という言葉を使いましたが、もちろんやれることとやれないことを考えて、その上でどの辺りを目標に置いているのかということをお聞きしたいと思います。
 それから、もう一つはスケジュールの問題で、結局この裁判では被爆者を救済するということを考えると無限に時間が与えられたものではないと思います。できるだけ迅速に、なおかつ科学的に妥当な答えを出すということは、与えられた時間で答えが出せないということもまた一つの答えではないかと考えております。よろしくお願いいたします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 五十嵐参考人から御発言をいただいて、そのスケジュール感については事務局から後で追加していただけますか。
 まず、五十嵐参考人からお願いします。
○五十嵐参考人 岩崎先生、コメントどうもありがとうございます。
 おっしゃるとおりでありまして、私も何でもできるという具合には全く思っていなくて、できる範囲でどこまでいけるかということにチャレンジするといった目標ではないかと思っております。
 それで、一定の雨域の評価は全くできないということではなくて、できるけれども、不確実性が非常に大きい結果になるのではないか。それで、その不確実性の範囲をできれば評価というか、お示ししたい。プラマイ100%なのか、あるいはプラマイ1000%なのか。1000%という言い方が適切かどうかは分かりませんけれども、そういった評価ができるかどうかというところだと思います。
 また、物質輸送モデルの専門家の協力というものが必須でありまして、厚労省さんもそうですが、我々も鋭意努力している状況です。まだ御報告できないのですけれども、そういった協力があればスケジュールも短くなり、あるいは不確実性評価についてもこの程度までというのはもう少し明確に言えるかと思うのですが、申し訳ございません。何度もお話ししているのですけれども、私自身が気象モデル構築を専門とする研究者でないということがございますので、ここの問題ですね。しかし、放射能と気象モデルの両方をある程度の知識を持っている者として私は研究を進めさせていただいているという状況ですので、その中で気象の専門家の先生方に絶対ここまでできるというようなことは、とても口が裂けても言えないということでございます。そこは御理解をお願いいたします。努力はいたしております。
○佐々木座長 どうぞ、岩崎構成員。
○岩崎構成員 ポジティブに捉えると、過去の現象に関して、爆発して火災が起こって、なおかつ黒い雨が降ってという非常に複雑な現象に関して、一つのシナリオを計算機の中で作り出すということは、それ自身は非常に興味深く、また意義のあることだと思うのです。ただ、問題として雨域の問題にどこまで踏み込めるのかということに関しては非常に慎重に判断していただきたいと思います。
 以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 関連して御発言ございますでしょうか。
 それでは、事務局からどうぞ。
○南川課長補佐 先ほど座長のほうから触れられましたので、先ほど五十嵐参考人からもありましたとおり、これをしっかりやっていくには、もしくは不確実性はどこまでかも含めて迅速にやるためには、五十嵐参考人だけではなくて事務局も含めてしっかりと協力しながらやっていきたいと思っております。
 それで、今回の検証については、可能な限り検証課題の中で細分化した上で、並行して迅速に検証を進めていくということが今回の検証の進め方でございますので、もちろん気象シミュレーションだけではなく土壌調査及びこの後御説明する健康影響に関する調査も含めて、併せて我々としては可能な限り迅速に検証を進めていきたいと思っております。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 関連して、この話題についての御発言はありますでしょうか。
 山澤構成員、お願いします。
○山澤構成員 ありがとうございます。気象シミュレーションにつきましては、私は岩崎先生と同じ考え方を持っております。初回からそのように申し上げてきたところです。それについては、あえてここでは追加はいたしません。
 それで、後半部分の資料の分析のほうについてちょっと質問させていただいてよろしいでしょうか。
○佐々木座長 お願いします。
○山澤構成員 かなり100点以上で試料採取を行って、できれば分布図みたいなものを得たいのだという構想なのですけれども、これもかなり難しそうだし、かなり手間もかかりそうだという感じがしておりまして、その部分についての成算と言ったらいいんですか、見込みと言ったらいいんですか。その辺りはどのようにお考えでしょうか。
○佐々木座長 五十嵐参考人、御発言いただけますでしょうか。
○五十嵐参考人 1つ注目しておりますのは、やはり酸化鉄状の粒子というものですけれども、これはもっと細かいものもあるのかもしれないのですが、ある程度の大きさを持ったものについては、ふるい等の簡単な物理的なプロセスで分離が可能かもしれない。形状を追いかけて、今は光学顕微鏡での形状同定というのは進んでおりますので、そういう中で割にたやすく測定できる可能性があります。鉄ですので、しかも磁気を帯びてというか、磁気で収集できるということもある程度わかってきましたので、そうであれば、より簡便に分離ができる可能性があります。
 ただ、まだできるとはなかなか断言できなくて、もがいている最中でありますけれども、そういった方向で、いわゆる爆弾から由来したものであると同定できればその分布図が描けそうだという、いわゆるセシウムとか、その一部等で測るよりはよさそうな気が私はしております。そうでなければ、もう一度ウラン等の放射性核種の調査に戻らないといけなくて、それは非常に化学処理も必要ですので、もっと大部隊を動員しないといけないということになります。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 まだ御意見があろうかと思うのですが、時間が押してきておりまして、大変申し訳ないのですが、先に進ませていただきます。
 次に、疾患罹患状況等に関する調査等について、事務局から御説明をお願いします。
○南川課長補佐 では、手短に事務局のほうから御説明させていただきます。
 資料6を御確認ください。これにつきましては「疾患罹患状況等に関する調査等について」の「1.目的」の「(2)健康影響が生じているか確認する課題」の部分に関して、現在新たな調査、「オ.健康相談事業受診者の疾患罹患状況の統計解析、アンケート調査」ということを実施することに加えて、その一番下の「なお」のところですね。健康影響ワーキングを複数の医師・専門家で開催するというようなことを目的として、我々が公募をしている内容について今回御提示させていただくものでございます。これについては、喫緊に受託者を決定して進めてまいりたいと厚生労働省としては思っています。
 「業務内容」につきましては2にありますが、原爆に伴う健康影響に関する調査研究について「被爆地域」「第一種健康診断特例区域」「黒い雨相談支援事業の対象地域」の3地域を念頭に、同事業の受診者を対象とした調査及びがん登録の話はかなりこの検討会で出ておりましたので、活用するための疫学調査を行うというような形にさせていただいているところでございます。
 事務局からの説明は、以上になります。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 資料6に関連して、ただいまの御説明に御質問や御意見がありましたらお願いいたします。
 これは、これまでに鎌田構成員から出ておりました疫学調査の問題とか、そういうものを勘案しているということでよろしいでしょうか。
○南川課長補佐 はい。そこも含めて、最後にまた改めて資料7のところで今後の方向性について御相談させていただければと思っております。
○佐々木座長 よろしいでしょうか。
 それでは、次へ進みたいと思います。本検討会については、本日までに3回の議論を重ねたところであります。これまで様々な御意見を構成員からいただいておりますところ、本日は事務局においてそれらを「第一種健康診断特例区域等の検証に関するこれまでの議論の経過及び今後の方向性について(案)」という資料にまとめていただいておりますので、事務局から御説明をお願いいたします。
○南川課長補佐 それでは、資料7について事務局から御説明させていただきます。
 これまで3回にわたって様々な御議論をいただきましたので、それについて我々が御意見を受けた上でしっかりと検証課題、検証を進めていくという趣旨からまとめさせていただきました。
 1の「検討にあたっての背景・目的」でございますが、改めまして1つ目のマルについて、昭和32年の原爆医療法、そして昭和43年の原爆特別措置法、その後、平成6年に援護法が統合されたということ、そして被爆者が受けた放射能による健康被害というほかの戦争と異なる「特殊の被害」であることに鑑み、様々な援護施策が講じられていることを1つ目に書かせていただいています。
 2つ目のマルにつきましてですが、本検討会の検証事項である第一種健康診断特例区域については援護法の中で定められているものであり、この区域にある方については被爆者と同様に健康診断を受けることができ、その結果、健康管理手当の対象となる障害に該当した場合については被爆者健康手帳が交付されて、医療等の給付や諸手当の支給などの援護がなされると書かせていただいております。
 そして、この区域については、当時の降雨状況やその後、同区域に居住された方々の健康状態を踏まえて昭和49年に設定されて、昭和51年に追加指定が行われておりますが、その後は様々な調査が行われておりますが、区域拡大は行われていないということを事実関係として記載させていただいています。
 そして、本検討会はこれまで様々な調査で蓄積されてきたデータの最大限の活用とともに、最新の科学技術を用いて新たな調査を追加的に行うことにより、可能な限りの検証を新たに行った上で、第一種特例区域の在り方等についての意見を集約することを目的とするという形で、第1回を中心に御説明させていただいたことについて記載させていただいております。
 続きまして、2つ目の「検討会におけるこれまでのご意見」です。これまで様々な御意見を各構成員からいただいておりますものを、基本的には各構成員の御意見について2、3行にまとめた形にさせていただいております。テーマごとに分けさせていただいています。
 まず「検証にあたっての考え方について」なのですが、1つは基本懇、もしくは科学的検証というか、考え方について、特に第2回を中心に活発な御意見をいただいております。
 1つ目は、長年尊重されている基本懇の考え方を議論の前提として受け止め、科学的知見をベースに区域設定を検証すべきではないか。その上で、日進月歩に進む科学技術を踏まえ、新たな知見をできる限り取り入れていくことは必要であるという御意見であったり、被爆者の立場からすれば、基本懇の考え方にあるような科学的な根拠・合理性ではなく、原爆投下時の科学的検証・知見の不十分性を認めた上で、合理性が否定されない限りは被害の事実に照らして努めることを基本的な考え方とすべきという御意見。
 それから、データによる科学的な根拠を踏まえた合理性が必要であって、それがなければほかの戦災者との不均衡が問題になるという御意見であったり、放射能の起因性について科学的根拠ではなく健康影響が出ているという結果をもって判断してもいいのではないかという御意見であったり、基本懇の考え方は現在でも納得できるものであり、国民的合意を得るための重要な担保として、やはり科学的・合理的根拠が必要ではないかというような御意見をいただいていたと思います。
 続きまして、2ページ目を御確認ください。「検証の進め方について」、御意見をいただいた部分について御紹介いたします。
 まず、新たな調査を行うにしても、これまで行われた調査をできる限り網羅的に探索・整理した上で、専⾨家らが客観的に解釈した上で報告してほしいというような御意見であったり、問題は雨の色ではなくて、雨の中に健康影響を及ぼす放射能があったかどうかが重要であり、その点を意識して調査・取りまとめをお願いしたいという御意見をいただいていたと思います。
 続きまして、個別の調査、特に「気象シミュレーション・土壌調査について」は本日も御意見がありましたが、1回から3回目も75年前の気象観測データが乏しい上、さらに爆発であったりとか物質拡散なども含めて検証する必要があるため、最新の科学技術を用いても相当な困難を伴う。ですから、結果の提供にはやはり不確実性も含めた検証が必要という御意見をいただいたり、原爆はいわゆる黒い雨だけでなく、泥雨であったり、ちりであったりにも放射性降下物が含まれている。その発生源も、キノコ雲本体だけではなくて火災積乱雲などによる2種類がある。これらを考慮した上でデータやモデルの精度、初期値という言い方をされていましたけれども、モデルの精度が高いことがシミュレーションには要るのではないかというような御意見をいただいています。
 3つ目ですが、気象シミュレーションを使ったとしても、どの程度再現できるかは非常に難しく、挑戦的な検証になる。このため、⼟壌調査と併せて評価すべきというような御意見をいただいていたり、相当な困難を伴うシミュレーションなため、一定期間を区切って実現性の評価をした上で議論を行う必要があるというような御意見をいただいていると事務局としては認識しております。
 続きまして、「健康影響調査について」ですが、疫学調査を行うに当たって科学的知見を得るためには、交絡要因等の影響を除外できるように研究計画をしっかり企画・立案した上で実践すべきではないかという御意見であったりとか、がん登録でも院内がん登録のほうが郵便番号まで特定できるため、なかなか生活習慣の影響なども含めて解析するのは難しいけれども、作業のしやすさも含め積極的に活用すべきではないかという御意見であったり、がんの原因は無数にあるため、生活習慣とか喫煙というほうの寄与度が高い中で、地域のがんの罹患状況だけで当該地区の放射線の影響を説明するのは論理的に難しいのではないかという話であって、全国との比較は少なくとも必要ではないかという御意見をいただいたりしました。
 あとは、放射線が例えば食物の中に入ってきた場合の内部被曝についても放射線医学の科学的知見も踏まえて検討すべきではないかというような御意見をいただいていたと思っております。
 これらの御意見について、こういうような御意見があったということをしっかりこの検討会の中でもう一度改めて確認させていただければと思っております。
 続きまして、3ページにいっていただきますと、現在の検証課題の進捗状況と、先ほど御紹介しました御意見を踏まえた今後の方向性についての御確認をさせていただければと思っております。
 1つは、今回の検証課題である「(1)原爆由来の放射性物質を確認する課題」という部分になります。
 1つは「気象シミュレーション・土壌調査」という形でして、(気象シミュレーション)については現在の状況としましても、広島市が設けているHiSoFで収集されたデータや研究成果も含めて、当時の気象場の再現であったり、火球の発生・膨張過程の挙動等の爆発モデルのシミュレーション、大規模な火災が気象に与える影響も含めた拡散状況に関する情報収集・整理を行った上で、いろいろな必要条件も整理した上でモデル計算による再現レシピを作成したというのが現状と認識しております。
 (⼟壌調査)につきましては、広島市、長崎市において数地点、試料採取適地選定を行った上で、実際に表⼟試料を採取して放射能の測定・分析を行うとともに、微粒⼦がどんな成分なのかということの分析も行っているというような認識でございます。
 この結果、土壌調査については何度かこの検討会でも御発言がありましたけれども、原爆由来の降下物の総合的な分布調査ができるのではないかというような形で現状と理解しております。
 「今後の方向性」につきましては、様々これについても御意見をいただいていますので、この議論を踏まえた上で昨年度作ったレシピに基づいて、実際に試験的な気象シミュレーションを実施した上で、もちろんそこには不確実性であったり、新たに必要なデータであったり、知見などがあるでしょうから、そこを精査しながら最終的な放射性降下物分布の推定シミュレーションにつなげていきたいと考えております。
 ⼟壌調査につきましては、新規採取地点を大幅に増やしつつ、先ほど御説明いただきましたが、これまでに集められた試料の解析・アーカイブ化も進めた上で、実際の分離同定方法の改善を図りながら調査を進めていきたい。
 その上で、イ、ウというこれから御説明する結果も含めて、気象・⼟壌ワーキングのほうでしっかりとそれぞれの調査結果について科学的検証をした上で検討会に改めて報告する方向にしたいと考えております。
 続きまして、イですけれども、今の文献調査についてもいろいろな御意見をいただいております。
 「現在の検証状況」としましては、先ほど御説明したとおり、今のところ公文書館だったり、トルーマン大統領図書館についてインターネットを利用した上で資料検索をして、文献の候補となるリストを作っている状況と考えております。
 「今後の方向性」につきましては、原爆投下時の文献がある可能性のあるほかの図書館についても候補を作るということと、4ページ目を御確認いただければと思いますが、開き次第、直ちに現地調査を実施し、実際の文献を入手した上で翻訳を行う。
 それで、ここについては先ほどABCCの文献も必要ではないかという増田構成員の御意見もいただきましたので、文献を集めていくことについてはニチマイさんにお願いするかどうかは別として、そういうものも集めていくのは大事なことかと思っております。
 その上で、文献の入手・翻訳をもってこの調査そのものは終了とした上で、得られた文献について気象・⼟壌ワーキングにおいて科学的な検証に活用するという方向に進めていきたいと思っております。
 そして、「祈念館における体験記調査等」につきましては、現在の状況としましては15万件の体験記及び証言ビデオの中で、被爆地域以外の広島県及び陸続きの4県を対象にして、9,226件の被爆体験記について内容を確認した。
 それで、この体験記の中の登場地点ですね。降雨地点が特定される体験記について、地図上にプロットして資料としてまとめたというのが今日現在の段階でございます。
 「今後の方向性」について、先ほどいろいろな御議論がありましたので、また改めてここでも御議論いただければと思いますが、今回、本調査は一回終了とした上で、先ほどのアの結果と併せて気象・土壌ワーキングの中で科学的検証に活用するという方向で進めたいと思っています。これについても、雨以外の飛散物を入れるべきではないかという御意見等をもう既にいただいたと思いますが、そこも含めて御議論いただければと思っています。
 続きまして、「(2)健康影響が生じているか確認する課題」となっております。
 エの部分ですが、これまで「広島赤十字・原爆病院におけるカルテ調査」をさせていただきました。広島赤十字・原爆病院にある外来受診カルテ、約5万4000症例のうち、現在の電⼦カルテのIDを所有する約9,000例について、現在生存されている約500例について、雨に曝露した記載がある入市被爆者と、それ以外の入市被爆者との間で、被爆直後の症状や40年以降の疾病状況を解析、比較をしたという形なのですけれども、この調査では違いについては報告されなかった。同病院は被爆者手帳所持者に限られることについても留意が必要ですが、現時点では違いは報告されていないという状況です。
 この調査については、調査そのものは一旦終了とした上で、これからやる新しい調査と併せて健康影響ワーキングの中で科学的検証を進めるという形にしたいと思っております。
 オの「相談支援事業受診者の疾患罹患状況等の調査」についてですが、「現在の状況」としましては先ほど御説明したとおり、調査の実施主体の公募を行っているところでございます。
 「今後の方向性」につきましては、広島県・市の協力を得つつ、実現可能な調査方法を検討した上で、倫理の話が出てきましたが、倫理審査委員会等の必要な手続がございますので、そこを踏まえた上でちゃんと調査を新たに実施すると考えております。
 また、ワーキングにつきましても放射線医学、統計だけではなく、がん登録の話がかなり今回出ていますので、がん登録の専⾨家などから成る者を速やかに構築した上で、これまで様々な検討会の御意見を踏まえた形で調査を行っていきたいと考えております。
 それは、エの結果がさらにどういう活用ができるかも含めて、健康影響ワーキングの中で検討した上で検討会に報告するという形で事務局としては進めたいと考えております。
 御説明については、以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 時間が短くて非常にスピーディーな御説明だったのですが、今回、本検討会のこれまでの取組を「検討にあたっての背景・目的」「検討課題におけるこれまでのご意見」「検証課題の進捗状況と今後の方向性について」という3つのパーツに分けて整理をしていただきました。
 そこで、これからあと20分弱しか時間がないのでありますけれども、議論については1の「検討にあたっての背景・目的」、2の「検討課題におけるこれまでのご意見」についてまず御意見を伺いまして、3の「検証課題の進捗状況と今後の方向性について」はそれを分けて別に議論したいと思っております。
 まず、1及び2の項目について、基本的には事実関係になると思いますが、検証課題に関するこれまで出された御意見が適切にまとめられているかなどの観点から、各構成員の御意見をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。御発言をお願いします。
 どうぞ、一ノ瀬構成員お願いします。
○一ノ瀬構成員 今の佐々木先生の議論の振りにぴったり即している質問というか、コメントになるかどうか分からないのですけれども、今日の鎌田先生の発表の中でちょっと素朴に思ったことがあるので、せっかくの機会ですので発言を1つだけさせていただきたいと思います。
○佐々木座長 どうぞお願いします。
○一ノ瀬構成員 鎌田先生の泥の雨に関してなのですけれども、それを飲んだ方々でずっと長期に下痢をしたという御報告がありましたが、その下痢というのは先ほどの事務局からのまとめの中にあった交絡要因ではありませんが、放射性物質を含んだ水を飲んだから下痢をしたというふうに理解されているのか。それとも、それ以外の不衛生な状態での水を飲んだから下痢をしたという可能性もあるかなというふうに私は素朴に思ったのですけれども、下痢をしたという報告がどんな受け取られ方をされているのか、ちょっと確認したいと思いました。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 鎌田構成員、御発言をいただけますでしょうか。
○鎌田構成員 下痢という症状は、降雨線量を受けたときに大体1週間から2週間くらいに出てくる。これは外部線量ですけれども、それはありますが、それ以外に長期にわたって放射性物質を含んだものを食べた。例えば、食べるものがなかったわけですから、川魚を月に3、4回食べるとか、お米の中にも入っていたわけですね。今でさえ我々は福島で経験したように食べなかったわけですけれども、当時としては無知であるがゆえにいろんなものを口の中に入れた。ただ飲み物だけではなく、雨水とか、そういうものだけではなくていろんな形で摂っていたということは想像に難くないと思います。それが宇田論文の中には、少なからずの人について長期間、下痢症状があったと記載されておりますので、そこのところは私はかなり内部から放射能を受けて胃腸のほうは弱っていたのではないかと考えております。
 だから、全員についてというのは統計的にはないわけですけれども、そういう口から入れたということは想像に難くないということだけは申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 一ノ瀬構成員、よろしいでしょうか。
○一ノ瀬構成員 多分そういうものがおのずと自然な見方として出てくるかと思うのですが、先ほど事務局のまとめの中に交絡要因というものがありましたので、衛生状況とか、そういうことも関わるのかなとちょっと素朴に思ったので、その点、確認させていただきました。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言をお願いいたします。
 小池構成員、お願いします。
○小池構成員 ありがとうございます。
 先ほどスケジュール感に関する話が少しありましたけれども、確認させていただきたいのは、今の資料7の1ページ目の1番に4つマルがありますが、最後のマルで「本検討会は」で、最後の行で「在り方等について意見を集約することを目的とする」というふうにありますけれども、意見の集約をこの検討会でするに当たって、どういう材料がそろえば意見の集約ができるのかというところはあまり今まで議論をしたこともないですし、明確になっていないと思っています。
 最終的にこの検討会のゴールがどこにあるかというところに関連すると思うのですけれども、今日のお話を聞いていると、この後で議論される3番に書いてある各論のこれからの方針の中でも、やはり時間のかかるものとか、難しいものとか、そういったものがあると思うのですが、そういったものを全部そろえて、できる、できないという判断をした上でないと、この検討会の結論というのは出ないものなのかというところを指摘しておきたい。私たち広島市としては前々から厚生労働省さんにお願いしているとおり、できるだけ早く、この検討会にかかわらず、黒い雨の降雨地域の拡大をお願いしたいということを申しておるのですけれども、その中で拡大をするという判断をするのに必要最低限の材料がそろっていれば拡大はできるのではないかというふうにこの検討会の議論でも思っていて、時間のかかるもの、あるいは難しそうなものは、言葉は悪いですけれども、切り捨てるというか、最終的には途中までしかできていない状態であっても、これとこれの材料があるのでこれをもって科学的知見としてこの検討会の結論として黒い雨降雨地域を拡大すべきであるという判断もできるのではないかと思っています。
 ですので、そういう判断をどこかですべきなのではないかと思っておりますので、そういう問題提起を一つはしておきたいと思います。
 それともう一つは、先ほどスケジュールの話がありましたけれども、最終的にこれをいつまでやるのか。目標値でもいいですけれども、この検討会をいつまでやるのかというところはある程度皆さんのコンセンサスを得ておいたほうが今後の議論にも役に立つと思いますので、その辺は事務局としてどう考えているかもお聞かせいただければと思っております。
 とにかく途中でお話がありましたけれども、やはり黒い雨体験者の方々は結論を待っております。しかも、再来週には第二審の判決も出るところですので、できるだけ早く結論は出していきたいと思っております。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 これは、事務局から御発言いただけますか。
○南川課長補佐 ありがとうございます。
 御指摘のように、迅速に検証していくことそのものは我々としても極めて重要だと思っております。それで、今回の進め方について、2ページでこれまでいただいた御意見に記載させていただきますとおり、新たな調査が行われるにしても、これまで行われた様々な調査や研究結果をできるだけ網羅的に探索・整理した上で、しっかり専門家が客観的に解釈した上で報告してほしいというような御意見もいただいていますので、まずこういうものがある一方で、気象シミュレーションの文脈で御発言があったものなのですけれども、相当な困難を伴うシミュレーションのため、一定の期間を区切って、実現性を評価した上で議論を行う必要があるというような御意見も片方でいただいているところでございます。
 その上で、3のところでも御議論いただきたいと思っていますが、それぞれの調査、これまでやってきた5つの調査について、この調査については一旦終了した上でワーキングの中でやっていいのではないかとか、そういうような御提案もさせていただいておりますので、そこも含めてこの検討会での御意見を踏まえながら、なるべく迅速に検証を進めていきたいと考えております。
○佐々木座長 どうぞ御発言ください、木戸構成員。
○木戸構成員 私は1つお願いがあるんですけれども、この検討会が設けられた理由といいますか、やはり裁判、黒い雨訴訟にきちんと応える。それが与えられた課題ではないかと思っているんです。
 今日、増田先生が御意見を出されておりますけれども、資料1-3の4ページ目を開けていただくと、「4 「黒い雨」の調査対象区域」云々と書かれていますけれども、「そもそもこの「検討会」が設置されるに至った発端は、昨年7月29日の広島地方裁判所の判決です。」と出ております。それで、84名の原告全員に被爆者手帳を交付せよという広島地裁判決だった。それで、国はこれを不服として広島県・市に「被ばく地域の拡大を視野に入れて検討するから」ということで、ですからこの検討会というのは原告が求めている、それにどう応えるということであり、または報道機関を厚労省は、援護区域拡大を求める地元の意向を受け黒い雨の降雨域や人体への影響を再検証する有識者検討会を設置したんだという具合に報道しているわけです。
 そういう意味で、私はこの検討会というのはこういった報道機関、これは別の言い方をすると、国民がこの検討会に期待している中身なんだ。それに対してきちんと応える責任というものがこの検討会にあると思うわけです。その責任を、私たちは果たさなければならない。そのためには、やはり原爆症訴訟の経過といいますか、何が問題になっているのかということを共通に認識する必要があるのではないか。
 付け加えれば、私は裁判所と行政が乖離するといいますか、裁判所の判断と行政の施策といいますか、それが違うということはあってはならないのではないかと思っているわけです。
 なぜならば、両方とも現在の法律に基づいて判決を下すのであり、現在の法律に基づいて施策を行政は行うのだ。そういうことであれば、一致するというのが本来の姿ではないかと思いますので、そういうことも含めてこの検討会で黒い雨訴訟の経過といいますか、そういったことについて議論する機会というものをぜひつくっていただきたいとお願いいたします。
 以上です。
○佐々木座長 ただいまの木戸構成員の御意見に関して、今、法律論のお話も出てまいりましたので、荒井構成員から御発言をお願いします。
○荒井構成員 今、木戸構成員の御意見を伺ったことに関連して発言させていただきたいと思います。
 この検討会が設置されて現在検討が進められていますが、なぜそういう経過をたどっているのかということについては、今、木戸構成員が発言されたことが幾らか当たるところがあるのかもしれません。私はそういう考え方ではございませんけれども、しかし、裁判対応のためにこの検討会が設置されているという理解は、はっきり申し上げて私はむしろ反対でございます。
 当然、この結果が裁判に影響する点も将来的には出てくる可能性はあろうかと思いますが、そもそもから言えば、裁判というのは構造的には求めるほうとそうではないという意見の立場との相克といいますか、争いですね。それで、広島の今回きっかけになったと言われている裁判そのものも、いわば裁判制度からいうと第一審の判決、判断にすぎないと言うと語弊があるかもしれませんが、一審の判決であることは間違いがないところです。控訴審でどうなるか、あるいは最高裁でどうなるかという今後の段階がありましょうから、そういう意味では確定した判決ではないわけですね。
 しかし、一方では裁判にどう対応するかというよりも、私の理解からすれば、被爆者行政として黒い雨問題を裁判の場でずっと争っていくというのはできるだけ避けるべきではないだろうか。何らかのもう少し何十年も積み重ねてきた経過の中で、科学的な知見も進歩なり、新たな知見が発見された部分もありましょうから、そういうことを集大成して改めて現時点で黒い雨問題についてどういう考え方を取って被爆者行政に生かしていくべきかということで設置されているものだろうと思います。
 ですから、裁判に間に合わせるとか何とかという考え方はむしろ離れて、やはり科学的、客観的な立場から黒い雨問題について今の知見、衆知を集めて集大成をしてもう少し安定感のある考え方を構築すべきではないだろうかということで私たちは集まって知恵を絞りつつある段階だろうと思いますので、そこが裁判対応のためにやっているということになると、今後のためにもいろいろな意味で誤解を招くことになりかねないと思いますので、むしろその点は私は要注意で臨みたいと思います。
 とりあえず、以上です。
○佐々木座長 ありがとうございます。難しい話題になってきているのですが、木戸構成員どうぞ。
○木戸構成員 一言だけ、私は裁判対応などと言ってはおりませんので誤解のないように、黒い雨による被害がどういうものかということにきちんと応えなければいけないんだ。それは国民がそれを求めているんですよということで、裁判対応というのは荒井先生が誤解されていると思います。私は、裁判対応しなさいとは一言も言っておりません。裁判対応ではありません。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 今、ちょうど終わりの時間になってしまいまして、一番大事なところへまだ入れないでいるのですが、どうぞ大事な問題ですから増田構成員、簡潔に御発言をお願いします。
○増田構成員 そもそもこの会議が作られたのは、昨年の7月29日の判決の後に安倍首相が、控訴はするが、こういう検討をするからということを言われたのは事実です。しかし、荒井先生がおっしゃるように、この会は裁判のためのものではありませんし、私もそのつもりでここへ参加しております。
 それで、実は今の資料7がある意味では中間まとめのような形を取っておられるように思いますから、その点ではまだ私は意見があるということを発言させていただきたいのです。
 と申しますのは、この中でも例えば本当は後のほうになるところですが、もう既にそれは終わったというふうなことも書いてありますが、実際は全く終わっていないものがありますから、今の時点で中間まとめという形で出されるということが果たしていいのかどうか、今日は時間がないですから、もう一回次回のときにまとめのところの資料7については十分意見を戦わせる必要があるんじゃないか。そうしないと、次に進めないと思います。これはあくまでもそういう意味では中間まとめのところだろうと思いますので、そこはみんなが一致して、もちろん全部が一致するわけではないと思いますが、ある程度意見の共有をして次に進まないと本当の解決に進まないと思いますので、もう少し時間をいただきたい。
 特にこれは昨夜までに私たちのところに入った資料でございまして、十分な検討ができないままに参加をしています。そういう意味では、もう一度この問題を議論させていただきたいということをお願いしたいと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、ほかの構成員の方からこの資料7の扱いについて少し簡潔な御意見を伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。御発言される方、ありますでしょうか。特にないようであれば、事務局、今、増田構成員の言われたように十分な議論の時間を持てなかったのでありますが、今後の進め方としてどういたしましょうか。
 1つは、先ほど申し上げましたように、1と2については事実関係だと思いますので、そこについてもいろいろ御意見があるかどうか。それから、3は今後の進め方ですので、いろいろな御意見を伺わなければいけないと思いますが、どういたしましょうか。
 どうぞ、荒井構成員。
○荒井構成員 実は、この資料7というのは今、座長が御指摘のとおり、初めの部分は1と2でしょうか。比較的客観的な経過を取りまとめてくださってあるということで間違いないと思うのですけれども、これはこれまでの検討会、あるいは勉強会の経過も踏まえてまとめてくださっているかなり大事ないわばステップだろうと思うんです。
 それにしては、実は私自身も読み方としては十分読めていない自覚がございます。加えて、このウェブ会議というのはやはり対面で顔を合わせてお互いの議論を交わすというのとはちょっと雰囲気、状況が違うんですね。なかなかコロナの感染状況との関係で、現実に実際に集まって会議が持てるかどうかという見通しは今の段階では何とも申せませんけれども、もう少し議論の機会をいただきたい。少なくともこの次の検討会の頭のところでは、この資料7を中心に意見交換ができるような設営をお考えくださればありがたいと思います。よろしくお願いします。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 既に予定の時間を過ぎておりまして大変申し訳なく思いますけれども、特に今後の方向性も含めて十分時間を取らない中でも多くの御意見をいただいております。この資料7については様々な御意見があると思いますので、本資料を本委員会の意見の整理とするに当たってはもっと議論が必要であるという構成員の御意見が続いておりますし、私もそう思いますので、事務局においては各構成員からいただいた御意見、本日いただいた御意見も整理をして、必要ならば資料7を作成し直していただいて、その上でこれまで検討してきたことと、それから目的も含めて、これまでの検討の結果と、それから今後どういうふうに進めるのか、どういうふうにやっていくのかということをもう一度整理をしていただいた上で検討会で十分な議論をしたいと思いますが、事務局いかがでしょうか。
 それでは、そういう方向で、今日は最後に十分時間を取っていないのですけれども、多くの貴重な御意見をいただきましたので、その御意見を踏まえた上でこの資料7をもう一度事務局のほうで作成をし直していただき、できれば早めに構成員の方に配付していただいた上で議論の場を持ちたいと思いますが、事務局で対応していただけますでしょうか。
○山本室長 構成員の皆様、貴重な御意見ありがとうございました。
 資料7につきましては、1と2、それから3につきましても今日の御議論で御意見をいただいておりますので、こういったところを踏まえまして修正しまして議論させていただければと思っております。日程につきましては、また改めて御連絡させていただきたいと思います。
 続きまして、事務連絡でございます。
○佐々木座長 お願いします。
○山本室長 参考資料のファイルは再利用したいと思っておりますので、本日いらっしゃっている方は机上に置いたままにしていただくようにお願いいたします。
 次回の日程は、別途事務局より御連絡をさせていただくようにいたします。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。時間がちょっと過ぎてしまいまして申し訳ありませんでした。
 構成員の方々、特にオンラインの方々、御退室をお願いいたします。ありがとうございました。