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2021年7月14日 令和3年第5回目安に関する小委員会 議事録
日時
令和3年7月14日(水)10:06~14:46
場所
三田共用会議所第四特別会議室(4階)
出席者
- 公益代表委員
- 藤村委員長、鹿住委員、小西委員、中窪委員
- 労働者代表委員
- 伊藤委員、小原委員、冨田委員、永井委員
- 使用者代表委員
- 大下委員、佐久間委員、新田委員
- 事務局
- 土屋厚生労働審議官、吉永労働基準局長、小林大臣官房審議官、大塚賃金課長、
小城主任中央賃金指導官、尾崎賃金課長補佐、長山賃金課長補佐
議題
令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について
議事
(第1回全体会議)
○藤村委員長
ただ今から第5回目安に関する小委員会を開催いたします。本日は、高原委員がご欠席の予定です。
前回の小委員会においては、目安を取りまとめるべく鋭意調整を進めましたが、労使の見解に隔たりが大きく、今回に持ち越したところです。本日も引き続き、とりまとめに向けてしっかりと議論を重ねていければと思いますので、よろしくお願いいたします。
労使双方から、これまでの主張に追加等があればお願いいたします。
(発言なし)
○藤村委員長
労使のご主張には特段の変更はないようですので、全体会議で開きを詰めるのは難しいと思います。 個別に御意見を伺いながら、開きを詰めていきたいと思いますが、よろしいですか。
(異議無し)
○藤村委員長
それでは、控え室にてお待ちください。
(第2回全体会議)
◯藤村委員長
ただ今から、第2回目の全体会議を開催致します。
お手元に公益委員見解を配布しておりますので、事務局から読み上げてもらいます。よろしくお願いします。
◯小城主任中央賃金指導官
朗読致します。令和3年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。令和3年7月14日。1令和3年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和3年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。Aランク、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、28円。Bランク、茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島、28円。Cランク、北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡、28円。Dランク、青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄、28円。
2(1)、目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「経済財政運営と改革の基本方針2021」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」に配意した調査審議が求められたことについて特段の配慮をした上で、総合的な審議を行ってきた。今年度の公益委員見解を取りまとめるに当たっては、①賃金改定状況調査結果第4表や春季賃上げ妥結状況等における賃金上昇率は、昨年より上げ幅は縮小しているが、引き続きプラスの水準を示していること、また、昨年度は、最低賃金の引上げ額の目安を示せず、最低賃金の引上げ率は0.1%となったこと、②消費者物価指数は、横ばい圏内で推移しており、名目GDPは、令和2年には落ち込んだものの、足下では一時期より回復していること、加えて、新型コロナウイルス感染症の感染状況については予断を許さないものの、今年度はワクチン接種が開始されるなど、少なくとも昨年度とは審議の前提となる状況が異なっていること、③法人企業統計における企業利益は、足下では、産業全体では回復が見られること、また、一部産業では引き続きマイナスとなっているものの、政府として、「感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組」む方針であること、④雇用情勢は、令和2年には悪化したものの、足下では横ばい圏内で推移しており、有効求人倍率は1倍を超え、失業率も3%以下で推移していること、⑤政府としては、最低賃金について、より早期に全国加重平均1,000円を目指すこととされているところ、①から④までの状況を総合的に勘案すれば、平成28年度から令和元年度までの最低賃金を3.0~3.1%引き上げてきた時期と比べて、今年度の状況は大きく異なるとは言えず、最低賃金をその時期と同程度引き上げた場合にマクロで見た際の雇用情勢に大きな影響を与えるとまでは言えないと考えられること、⑥地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があること、また、賃金改定状況調査結果第4表のうちAランクとCランクが最も高い賃金上昇率であった一方、雇用情勢については昨年においてAランクを中心に悪化したこと等を総合的に勘案する必要があること、⑦最低賃金を含めた賃金の引上げにより、可処分所得の継続的な拡大と将来の安心の確保を図り、さらに消費の拡大につなげるという経済の好循環を実現させることや非正規雇用労働者の処遇改善が社会的に求められていることを特に重視する必要があること等を総合的に勘案し、検討を行ったところである。目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、地域の経済・雇用の実態を見極めつつ、目安を十分に参酌することを強く期待する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
(2)生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項及び平成29年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
(3)最低賃金引上げの影響については、平成29年全員協議会報告の3(2)及び4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。以上です。
◯藤村委員長
ありがとうございました。ただ今読みあげていただきました公益委員見解について、何か意見ございますでしょうか。大下委員どうぞ。
○大下委員
まずは公益委員見解をお示しいただき、ありがとうございます。コロナ禍の大変難しい状況の中で、労使の現状に対する認識あるいはこうした非常時における最低賃金制度の果たすべき役割など、根本的な考え方の部分で大きく意見が隔たる中で、公益委員として双方の意見にしっかりと耳を傾けていただき、熟考の上、示していただいた内容であると重く受け止めたいと思います。また、今回お示しいただいた内容では、経済、雇用の実態に加えまして、もう一つの要素である、政府方針への配意というところについても、これまでよりも、より明確に公益委員としての考え方を示していただいているかと思います。もちろん、その内容に使用者側委員として、少なからず異論はございますが、これまでよりも公益委員としてのお考えが、より理解出来る内容になっていると思っております。まずは、とりまとめについて、重ねて感謝申し上げたいと思います。
しかしながら、我々、使用者側の考えとは、内容に大きな乖離があり、真摯に受け止めたいとは思いつつも、これでよしというかたちで受け入れることはできるものではありません。
この内容を本審、さらにはその先の地方での審議の参考として示すことについては反対の意見を表明せざるを得ないと考えております。もちろん、本来、目安の審議においては、三者で真摯に議論を尽くして、何らかの形で一定の合意を目指すべきものであると考えておりますが、先ほど申し上げたとおり、労使双方の相違点は、最低賃金の在り方にも関わる内容にも及んでいるかと思います。残念ながら、現状としては、合意に至ることは難しいと思っております。
ついては、お示しいただいたこの公益委員の見解を、小委員会報告として本審、さらにはその先の地審に示すことについて、目安小委員会での採決をお願いしたいと思います。よろしくご検討の程、お願い致します。
あわせて、佐久間委員からも発言をお願いさせていただきたいと思います。
◯藤村委員長
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員
ありがとうございます。私ども全国中央会は、47の都道府県中央会、そしてその会員である中小企業組合が約2万3,600団体及びその組合員企業約230万社を組織する団体です。組合員である中小企業の中には、コロナ禍の感染拡大の影響を受けながらも、「従業員の雇用を守り」、「懸命に経営を維持」しようとする中小企業経営者が、多数、存在しております。その中小企業経営者の気持ちを考えると、今回の目安額は、切実な中小企業経営者の想いを切り捨てるものにほかなりません。
私どもの組織だけでなく、経団連、日本商工会議所の使用者側は、一貫して、明確な根拠に基づく納得感のある目安を提示していただくよう主張してまいりました。しかしながら、平成28年から令和元年には、必ずしも根拠が明確でないまま、大幅な引上げが行われ、今回はそれにも増して、中小企業の賃金引上げ実態を無視した大幅な引上げ額が示されたことに、正直申し上げて、全く納得はしておりません。
新規感染者が現在も増加し、雇用調整助成金等の特例措置が延長されるなど、経営環境と経営実態が未だ通常時に戻っているわけではなく、また、今年度の賃金改定状況調査 第4表の数値も昨年よりも低い中で、政府の意向だとしても、過去最高のアップ額とするのは、中小企業者に説明できるものではありません。
したがって、今回の公益委員、政府側の提案には反対であります。
これだけの増額がなされるということは、影響率もこれまでになく高まり、最低賃金引上げの直接的な影響を受ける企業が増加の一途をたどることになると思います。そういう状況下において、今回の大幅な引上げが、雇用の減少、倒産・廃業の増加など、地域の中小企業の経営や地域経済に与える影響を大いに懸念しております。
今回、「感染症の影響を受け、厳しい業況の企業に配慮しつつ、生産性向上に取り組む中小企業の支援強化に一層取り組んでいく方針」との文面が入っておりますが、仮に支援策を講じていただけるのであれば、引き上げ幅に見合った現金を全中小企業に給付するような内容でなければ、現在苦境にある業界や地方の企業は雇用を維持できないと考えております。
労働者の皆様に対しましては、経営者と労働者と一体となって、このコロナ禍の厳しい状況において、企業の事業運営、そして一緒に企業を支えていただいていることに対しましては、感謝を申し上げたいと思っております。また、労働側委員の皆様に対しましても、いつも、今回の審議も、真摯な審議を行っていただいており、深く感謝申し上げているところではございます。
なお、現在、本審議会の開催により、一時中断しております、全員協議会がこれから再開されることになると存じます。ランク制だけではなく、最低賃金引き上げ要請とその影響、目安に関する小委員会全体の審議の在り方についても疑義があり、検討を重ねていくことが必要であると思います。以上でございます。
○藤村委員長
今、複数の方から、公益委員見解を小委員会報告の一部として中央最低賃金審議会に示すことについて反対という意見が寄せられました。
そこで反対という方に挙手をお願いしたいと思います。
(反対委員の挙手)
○藤村委員長
大下委員と佐久間委員が反対ということで表明をされました。
ただ、反対が少数でありましたために、この公益委員見解を小委員会の報告として、中央最低賃金審議会に示したいと思います。
○新田委員
委員長、少しよろしいでしょうか。
○藤村委員長
新田委員、どうぞ。
○新田委員
ご発言の途中で大変申し訳ございません。私の方からも若干、発言をさせていただければと思います。ここにおられる皆様ご承知のとおり、そもそも目安審議というのは、労働者側、使用者側の見解が大きく隔たる中で、公益委員の見解が示され、それを本審である総会に報告し、地方の最低賃金審議会に提示をしてきました。内容については労使双方、不満の意を表明するものの、労使双方が公益委員見解を地方に示すことはやむなしとしてきたことが、長年の慣習であり、それは我々の先人達の智恵ということで、私は、非常に大事にしていきたいと思っております。したがいまして、今年度の目安審議においても、こういった段階にいたるまで、審議を尽くすべきではないかという考えに基づいて、今の採決において、意向を表明しなかったことを、この場で申し上げておきたいと思います。私からは以上でございます。
○藤村委員長
新田委員の発言にありますように、この目安小委員会は、労使それぞれに意見の隔たりがありながら、最終的には、まぁこれでいいかというように、とりまとめてまいりました。
ただ、今年度については、使用者側委員お2人の方が反対ということを表明されました。誠に残念ではありますけれども、この目安小委委員会における結論が出ない限り本審の方にはいけないものですから、今日は反対意見が少数であったということを持ちまして、この公益委員会の見解を小委員会の報告として、中央最低賃金審議会に示したいと思います。冨田委員、どうぞ。
○冨田委員
申し訳ありません。お話遮って大変恐縮ですが、労働側委員からも、今ほどお二方の使用者側委員から反対との発言があったことにつきまして、申し上げさせていただきたいと思います。
今回の審議におきましても長時間にわたり様々な論点に関して公労使で議論を尽くしてきた経過、また、三者構成原則の重要性を踏まえれば、先ほどのご発言は、労働側として大変遺憾であると申し上げざると得ません。なお、労使の意見の隔たりが大変大きい中、難しい取りまとめにご尽力いただいた公益委員の先生方に対しましては、深く感謝を申し上げたいと思います。以上です。
◯藤村委員長
冨田委員から、採決となったことについて、遺憾の意の表明がございました。私も、この小委員会の委員長、審議会の会長という立場で、この間、目安を取りまとめるべく、努力をしてきたところではございますが、今回このような議事進行となったことについて、公労使の三者構成枠組みという観点から大変残念なことになったと思います。ただ、私としては、引き続き、公労使三者構成で真摯に議論を行うという本審議会の枠組みを大切にしつつ、来年度以降の審議では、本年度の審議をしっかりと総括をし、公労使の皆様のご意見を拝聴して、円滑な運営に最大限取り組んでまいりたいと考えております。どうぞ皆様の引き続きのご協力をよろしくお願いしたいと思います。
それでは目安に関する小委員会報告を取りまとめたいと思いますので、配布をお願い致します。では事務局から朗読をお願い致します。
○小城主任中央賃金指導官
朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和3年7月14日。
1はじめに。令和3年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
2労働者側見解。労働者側委員は、現在も新型コロナウイルス感染症による影響は予断を許さない状況であるが、コロナ禍から1年余が経過した今、先行きを見通す環境は確実に変化していることから、今年度は、ワクチン接種や世界・日本経済の回復など昨年度とは明らかに異なる環境変化を見極めた上で議論を尽くす必要があるとの認識を示した。その上で、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならず、最低賃金の確実な引上げにつながる有額の目安を示すことで、セーフティネットとしての機能を果たし、最低賃金法第1条にある「国民経済の健全な発展に寄与する」という目的を達成するべきであると主張した。さらに、日本の最低賃金は国際的に見ても低位であり、諸外国ではコロナ禍でも最低賃金の引上げを行っている中、グローバルスタンダードを見据え、ナショナルミニマムにふさわしい水準に引き上げるべきであると主張した。また、エッセンシャルワーカーの中には処遇が高くない労働者も少なくなく、コロナ禍で懸命に働き続けている労働者の努力に報いるためにも、最低賃金の引上げを行うべきであるとともに、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスクや手指消毒液などの恒常的な支出増が、最低賃金近傍で働く者の家計に大きな影響を与えていることも考慮すべきであると主張した。加えて、1年余のコロナ禍により労働者の生活困窮度は深刻さを増し、緊急小口資金等による貸付はリーマンショックの50倍となっており、労働者は賃金を得て返済するしか術はないと主張した。さらに、中小企業が賃上げしやすい環境整備に向けては、最低賃金引上げの各種支援策の拡充と各省庁が連携した周知や、中小企業が生み出した付加価値を確実に価格に転嫁できる環境整備が重要であり、政府も政策対応をはかっていることを踏まえて審議すべきと主張した。以上を踏まえれば、「誰もが時給1,000円」を実現するため、今年度は「800円未達の地域をなくすこと」「トップランナーであるAランクは1,000円に到達すること」の両方を達成する目安を示すべきであると主張した。併せて、最低賃金の地域間格差は隣県や大都市圏への労働力流出の一因ともなっており、昨年度の地方審議の結果を見ても各地方は懸命に地域間格差の縮小の努力をしていることから、今年度は地域間の「額差」の縮小につながる目安を示すべきであると主張した。労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
3使用者側見解。使用者側委員は、最初の緊急事態宣言から1年3ヶ月経過し、足下では新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の兆候が見られ、第5波の到来が懸念されているうえ、休業要請等により経済活動が抑制された状況では、業況の回復はほど遠く、中小企業への貸付残高も上がっており、事業を立て直す上でも大きな負担となっていると指摘した。さらに、中小企業は、価格転嫁が困難であり、労働分配率も高いが、コロナ禍では、従前にもまして、賃金支払能力が乏しい状況にあるとの認識を示した。また、最低賃金は、各種データによる明確な根拠をもとに、納得感のある水準とすべきであり、賃金水準の引上げなど、法が定める目的以外に用いるべきではないと主張した。さらに、今年度は、コロナ禍における中小企業、とりわけ厳しい状況にある業種の中小企業の窮状を考慮すると、3要素のうち通常の事業の賃金支払能力を最も重視して審議を進めるべきであり、企業の業況が二極化している状況を踏まえ、平均賃金や平均的な状況のみに着目するのではなく、とりわけコロナ禍の影響が深刻な宿泊・飲食、交通・運輸などの業種における経営状況や賃金支払余力に焦点を当てるべきであると述べた。経済界が事業の存続と雇用の維持に最大限努めた結果、雇用情勢が悪化する状況には至っていないが、雇用への影響がデータに表れてからでは手遅れであり、最低賃金の引上げが雇用調整の契機となることは避けるべきであることや、最低賃金の引上げによって、企業の人件費を増やした結果、倒産、廃業や雇用調整を招く懸念があり、そのトリガーを引くことになることは避けなければならないと主張した。コロナ禍でも、賃金引上げが可能な企業は賃上げに前向きに取り組み、消費の拡大につなげ、地域経済の活性化をはかることが望ましいが、現状では、 飲食業や宿泊業のみならず、これらと取引のある関連産業も厳しい状況にある。最低賃金の引上げは、危機的な経営状況の経営者にとって、雇用を維持したいという切実な想いを切り捨てるものにほかならないとの認識を示した。以上を踏まえると、今は、「事業の存続」と「雇用の維持」を最優先すべきであり、今年度は、最低賃金を引き上げず、「現行水準を維持」すべきであると主張した。使用者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
4意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
5公益委員としては、今年度の目安審議については、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、「経済財政運営と改革の基本方針2021」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。なお、使用者側委員は、下記1の公益委員見解を地方最低賃金審議会に示すように総会に報告することは適当でないとの意見を表明した。また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し強く要望する。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金について、特例的な要件緩和・拡充を早急に行うことを政府に対し強く要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。以下省略致します。
◯藤村委員長
どうもありがとうございました。ただ今読み上げていただきました内容を小委員会報告として、取りまとめようと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
◯藤村委員長
それではこの内容でいきたいと思います。
では、ここで今日の会議には土屋厚生労働審議官がご出席いただいております。一言、ここでご挨拶をお願い致します。
◯土屋厚生労働審議官
厚生労働審議官の土屋でございます。一言ご挨拶申し上げます。
まず、公労使の委員の皆さま方には、今年度の「目安に関する小委員会」におきまして、昨日、本日と長時間にわたるご審議をいただいた事を含め、5回にわたり、精力的にご議論いただきました。そして、小委員会報告を先ほど決定をしていただいたことにつきまして、事務局を代表して、心より感謝を申し上げます。
小委員会の運営に当たりましては、事務局として、最大限の努力を尽くしてまいった所存でございますが、例年にない議事進行となった場面もございまして、至らない点が多々あったものと考えております。私どもと致しましても、先ほど会長からも話がございましたとおり、引き続き、「公労使三者構成で真摯にご議論をいただく」というこの審議会の枠組を大事にしながら、来年度以降の審議におきまして、今年度の審議をまずしっかりと総括をし、公労使の委員の皆さま方のご意見も十分に拝聴させていただき、円滑な運営に最大限取り組んでまいりたいというように考えております。
皆様方の御尽力に心より感謝申し上げます。本当に長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。
◯藤村委員長
どうもありがとうございました。事務局から、次回の審議会の日程の連絡をお願いします。
◯長山賃金課長補佐
次回の中央最低賃金審議会は7月16日(金)10時から、厚生労働省9階省議室で行います。
◯藤村委員長
ありがとうございます。それでは、本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。また、小委員会報告は、中央最低賃金審議会の前ですが、審議会で了承を得るという手続を前提に、マスコミに公表したいと思いますが、皆様よろしいでしょうか。
(異議無し)
◯藤村委員長
どうもありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。他に何かございますでしょうか。大下委員、どうぞ。
◯大下委員
先ほど厚生労働審議官のお話にもありましたが、今回非常に難しい審議であったかと思います。まずは重ねて、お取りまとめていただいた藤村委員長はじめ、公益委員の皆様に御礼を申し上げたいと思います。
また、我々のみならず、労働者側委員の方々にとっても難しい、悩ましい審議であったかと思います。そうした中でこうして取りまとめという形に至ったわけでありますが、改めて使用者側委員として、先生方をはじめ、また事務方の皆様はじめ、ここにご参集の皆様の取りまとめに対して、御礼申し上げるとともにお疲れ様でしたということを一言申し上げさせていただきたいと思います。ありがとうございました。お疲れ様でした。
◯藤村委員長
どうもありがとうございました。それでは、以上を持ちまして、この小委員会は終了といたしたいと思います。長時間の御審議、大変お疲れ様でした。ありがとうございました。
○藤村委員長
ただ今から第5回目安に関する小委員会を開催いたします。本日は、高原委員がご欠席の予定です。
前回の小委員会においては、目安を取りまとめるべく鋭意調整を進めましたが、労使の見解に隔たりが大きく、今回に持ち越したところです。本日も引き続き、とりまとめに向けてしっかりと議論を重ねていければと思いますので、よろしくお願いいたします。
労使双方から、これまでの主張に追加等があればお願いいたします。
(発言なし)
○藤村委員長
労使のご主張には特段の変更はないようですので、全体会議で開きを詰めるのは難しいと思います。 個別に御意見を伺いながら、開きを詰めていきたいと思いますが、よろしいですか。
(異議無し)
○藤村委員長
それでは、控え室にてお待ちください。
(第2回全体会議)
◯藤村委員長
ただ今から、第2回目の全体会議を開催致します。
お手元に公益委員見解を配布しておりますので、事務局から読み上げてもらいます。よろしくお願いします。
◯小城主任中央賃金指導官
朗読致します。令和3年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。令和3年7月14日。1令和3年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和3年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。Aランク、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、28円。Bランク、茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島、28円。Cランク、北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡、28円。Dランク、青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄、28円。
2(1)、目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「経済財政運営と改革の基本方針2021」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」に配意した調査審議が求められたことについて特段の配慮をした上で、総合的な審議を行ってきた。今年度の公益委員見解を取りまとめるに当たっては、①賃金改定状況調査結果第4表や春季賃上げ妥結状況等における賃金上昇率は、昨年より上げ幅は縮小しているが、引き続きプラスの水準を示していること、また、昨年度は、最低賃金の引上げ額の目安を示せず、最低賃金の引上げ率は0.1%となったこと、②消費者物価指数は、横ばい圏内で推移しており、名目GDPは、令和2年には落ち込んだものの、足下では一時期より回復していること、加えて、新型コロナウイルス感染症の感染状況については予断を許さないものの、今年度はワクチン接種が開始されるなど、少なくとも昨年度とは審議の前提となる状況が異なっていること、③法人企業統計における企業利益は、足下では、産業全体では回復が見られること、また、一部産業では引き続きマイナスとなっているものの、政府として、「感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組」む方針であること、④雇用情勢は、令和2年には悪化したものの、足下では横ばい圏内で推移しており、有効求人倍率は1倍を超え、失業率も3%以下で推移していること、⑤政府としては、最低賃金について、より早期に全国加重平均1,000円を目指すこととされているところ、①から④までの状況を総合的に勘案すれば、平成28年度から令和元年度までの最低賃金を3.0~3.1%引き上げてきた時期と比べて、今年度の状況は大きく異なるとは言えず、最低賃金をその時期と同程度引き上げた場合にマクロで見た際の雇用情勢に大きな影響を与えるとまでは言えないと考えられること、⑥地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があること、また、賃金改定状況調査結果第4表のうちAランクとCランクが最も高い賃金上昇率であった一方、雇用情勢については昨年においてAランクを中心に悪化したこと等を総合的に勘案する必要があること、⑦最低賃金を含めた賃金の引上げにより、可処分所得の継続的な拡大と将来の安心の確保を図り、さらに消費の拡大につなげるという経済の好循環を実現させることや非正規雇用労働者の処遇改善が社会的に求められていることを特に重視する必要があること等を総合的に勘案し、検討を行ったところである。目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、地域の経済・雇用の実態を見極めつつ、目安を十分に参酌することを強く期待する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
(2)生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項及び平成29年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
(3)最低賃金引上げの影響については、平成29年全員協議会報告の3(2)及び4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。以上です。
◯藤村委員長
ありがとうございました。ただ今読みあげていただきました公益委員見解について、何か意見ございますでしょうか。大下委員どうぞ。
○大下委員
まずは公益委員見解をお示しいただき、ありがとうございます。コロナ禍の大変難しい状況の中で、労使の現状に対する認識あるいはこうした非常時における最低賃金制度の果たすべき役割など、根本的な考え方の部分で大きく意見が隔たる中で、公益委員として双方の意見にしっかりと耳を傾けていただき、熟考の上、示していただいた内容であると重く受け止めたいと思います。また、今回お示しいただいた内容では、経済、雇用の実態に加えまして、もう一つの要素である、政府方針への配意というところについても、これまでよりも、より明確に公益委員としての考え方を示していただいているかと思います。もちろん、その内容に使用者側委員として、少なからず異論はございますが、これまでよりも公益委員としてのお考えが、より理解出来る内容になっていると思っております。まずは、とりまとめについて、重ねて感謝申し上げたいと思います。
しかしながら、我々、使用者側の考えとは、内容に大きな乖離があり、真摯に受け止めたいとは思いつつも、これでよしというかたちで受け入れることはできるものではありません。
この内容を本審、さらにはその先の地方での審議の参考として示すことについては反対の意見を表明せざるを得ないと考えております。もちろん、本来、目安の審議においては、三者で真摯に議論を尽くして、何らかの形で一定の合意を目指すべきものであると考えておりますが、先ほど申し上げたとおり、労使双方の相違点は、最低賃金の在り方にも関わる内容にも及んでいるかと思います。残念ながら、現状としては、合意に至ることは難しいと思っております。
ついては、お示しいただいたこの公益委員の見解を、小委員会報告として本審、さらにはその先の地審に示すことについて、目安小委員会での採決をお願いしたいと思います。よろしくご検討の程、お願い致します。
あわせて、佐久間委員からも発言をお願いさせていただきたいと思います。
◯藤村委員長
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員
ありがとうございます。私ども全国中央会は、47の都道府県中央会、そしてその会員である中小企業組合が約2万3,600団体及びその組合員企業約230万社を組織する団体です。組合員である中小企業の中には、コロナ禍の感染拡大の影響を受けながらも、「従業員の雇用を守り」、「懸命に経営を維持」しようとする中小企業経営者が、多数、存在しております。その中小企業経営者の気持ちを考えると、今回の目安額は、切実な中小企業経営者の想いを切り捨てるものにほかなりません。
私どもの組織だけでなく、経団連、日本商工会議所の使用者側は、一貫して、明確な根拠に基づく納得感のある目安を提示していただくよう主張してまいりました。しかしながら、平成28年から令和元年には、必ずしも根拠が明確でないまま、大幅な引上げが行われ、今回はそれにも増して、中小企業の賃金引上げ実態を無視した大幅な引上げ額が示されたことに、正直申し上げて、全く納得はしておりません。
新規感染者が現在も増加し、雇用調整助成金等の特例措置が延長されるなど、経営環境と経営実態が未だ通常時に戻っているわけではなく、また、今年度の賃金改定状況調査 第4表の数値も昨年よりも低い中で、政府の意向だとしても、過去最高のアップ額とするのは、中小企業者に説明できるものではありません。
したがって、今回の公益委員、政府側の提案には反対であります。
これだけの増額がなされるということは、影響率もこれまでになく高まり、最低賃金引上げの直接的な影響を受ける企業が増加の一途をたどることになると思います。そういう状況下において、今回の大幅な引上げが、雇用の減少、倒産・廃業の増加など、地域の中小企業の経営や地域経済に与える影響を大いに懸念しております。
今回、「感染症の影響を受け、厳しい業況の企業に配慮しつつ、生産性向上に取り組む中小企業の支援強化に一層取り組んでいく方針」との文面が入っておりますが、仮に支援策を講じていただけるのであれば、引き上げ幅に見合った現金を全中小企業に給付するような内容でなければ、現在苦境にある業界や地方の企業は雇用を維持できないと考えております。
労働者の皆様に対しましては、経営者と労働者と一体となって、このコロナ禍の厳しい状況において、企業の事業運営、そして一緒に企業を支えていただいていることに対しましては、感謝を申し上げたいと思っております。また、労働側委員の皆様に対しましても、いつも、今回の審議も、真摯な審議を行っていただいており、深く感謝申し上げているところではございます。
なお、現在、本審議会の開催により、一時中断しております、全員協議会がこれから再開されることになると存じます。ランク制だけではなく、最低賃金引き上げ要請とその影響、目安に関する小委員会全体の審議の在り方についても疑義があり、検討を重ねていくことが必要であると思います。以上でございます。
○藤村委員長
今、複数の方から、公益委員見解を小委員会報告の一部として中央最低賃金審議会に示すことについて反対という意見が寄せられました。
そこで反対という方に挙手をお願いしたいと思います。
(反対委員の挙手)
○藤村委員長
大下委員と佐久間委員が反対ということで表明をされました。
ただ、反対が少数でありましたために、この公益委員見解を小委員会の報告として、中央最低賃金審議会に示したいと思います。
○新田委員
委員長、少しよろしいでしょうか。
○藤村委員長
新田委員、どうぞ。
○新田委員
ご発言の途中で大変申し訳ございません。私の方からも若干、発言をさせていただければと思います。ここにおられる皆様ご承知のとおり、そもそも目安審議というのは、労働者側、使用者側の見解が大きく隔たる中で、公益委員の見解が示され、それを本審である総会に報告し、地方の最低賃金審議会に提示をしてきました。内容については労使双方、不満の意を表明するものの、労使双方が公益委員見解を地方に示すことはやむなしとしてきたことが、長年の慣習であり、それは我々の先人達の智恵ということで、私は、非常に大事にしていきたいと思っております。したがいまして、今年度の目安審議においても、こういった段階にいたるまで、審議を尽くすべきではないかという考えに基づいて、今の採決において、意向を表明しなかったことを、この場で申し上げておきたいと思います。私からは以上でございます。
○藤村委員長
新田委員の発言にありますように、この目安小委員会は、労使それぞれに意見の隔たりがありながら、最終的には、まぁこれでいいかというように、とりまとめてまいりました。
ただ、今年度については、使用者側委員お2人の方が反対ということを表明されました。誠に残念ではありますけれども、この目安小委委員会における結論が出ない限り本審の方にはいけないものですから、今日は反対意見が少数であったということを持ちまして、この公益委員会の見解を小委員会の報告として、中央最低賃金審議会に示したいと思います。冨田委員、どうぞ。
○冨田委員
申し訳ありません。お話遮って大変恐縮ですが、労働側委員からも、今ほどお二方の使用者側委員から反対との発言があったことにつきまして、申し上げさせていただきたいと思います。
今回の審議におきましても長時間にわたり様々な論点に関して公労使で議論を尽くしてきた経過、また、三者構成原則の重要性を踏まえれば、先ほどのご発言は、労働側として大変遺憾であると申し上げざると得ません。なお、労使の意見の隔たりが大変大きい中、難しい取りまとめにご尽力いただいた公益委員の先生方に対しましては、深く感謝を申し上げたいと思います。以上です。
◯藤村委員長
冨田委員から、採決となったことについて、遺憾の意の表明がございました。私も、この小委員会の委員長、審議会の会長という立場で、この間、目安を取りまとめるべく、努力をしてきたところではございますが、今回このような議事進行となったことについて、公労使の三者構成枠組みという観点から大変残念なことになったと思います。ただ、私としては、引き続き、公労使三者構成で真摯に議論を行うという本審議会の枠組みを大切にしつつ、来年度以降の審議では、本年度の審議をしっかりと総括をし、公労使の皆様のご意見を拝聴して、円滑な運営に最大限取り組んでまいりたいと考えております。どうぞ皆様の引き続きのご協力をよろしくお願いしたいと思います。
それでは目安に関する小委員会報告を取りまとめたいと思いますので、配布をお願い致します。では事務局から朗読をお願い致します。
○小城主任中央賃金指導官
朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和3年7月14日。
1はじめに。令和3年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
2労働者側見解。労働者側委員は、現在も新型コロナウイルス感染症による影響は予断を許さない状況であるが、コロナ禍から1年余が経過した今、先行きを見通す環境は確実に変化していることから、今年度は、ワクチン接種や世界・日本経済の回復など昨年度とは明らかに異なる環境変化を見極めた上で議論を尽くす必要があるとの認識を示した。その上で、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならず、最低賃金の確実な引上げにつながる有額の目安を示すことで、セーフティネットとしての機能を果たし、最低賃金法第1条にある「国民経済の健全な発展に寄与する」という目的を達成するべきであると主張した。さらに、日本の最低賃金は国際的に見ても低位であり、諸外国ではコロナ禍でも最低賃金の引上げを行っている中、グローバルスタンダードを見据え、ナショナルミニマムにふさわしい水準に引き上げるべきであると主張した。また、エッセンシャルワーカーの中には処遇が高くない労働者も少なくなく、コロナ禍で懸命に働き続けている労働者の努力に報いるためにも、最低賃金の引上げを行うべきであるとともに、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスクや手指消毒液などの恒常的な支出増が、最低賃金近傍で働く者の家計に大きな影響を与えていることも考慮すべきであると主張した。加えて、1年余のコロナ禍により労働者の生活困窮度は深刻さを増し、緊急小口資金等による貸付はリーマンショックの50倍となっており、労働者は賃金を得て返済するしか術はないと主張した。さらに、中小企業が賃上げしやすい環境整備に向けては、最低賃金引上げの各種支援策の拡充と各省庁が連携した周知や、中小企業が生み出した付加価値を確実に価格に転嫁できる環境整備が重要であり、政府も政策対応をはかっていることを踏まえて審議すべきと主張した。以上を踏まえれば、「誰もが時給1,000円」を実現するため、今年度は「800円未達の地域をなくすこと」「トップランナーであるAランクは1,000円に到達すること」の両方を達成する目安を示すべきであると主張した。併せて、最低賃金の地域間格差は隣県や大都市圏への労働力流出の一因ともなっており、昨年度の地方審議の結果を見ても各地方は懸命に地域間格差の縮小の努力をしていることから、今年度は地域間の「額差」の縮小につながる目安を示すべきであると主張した。労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
3使用者側見解。使用者側委員は、最初の緊急事態宣言から1年3ヶ月経過し、足下では新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の兆候が見られ、第5波の到来が懸念されているうえ、休業要請等により経済活動が抑制された状況では、業況の回復はほど遠く、中小企業への貸付残高も上がっており、事業を立て直す上でも大きな負担となっていると指摘した。さらに、中小企業は、価格転嫁が困難であり、労働分配率も高いが、コロナ禍では、従前にもまして、賃金支払能力が乏しい状況にあるとの認識を示した。また、最低賃金は、各種データによる明確な根拠をもとに、納得感のある水準とすべきであり、賃金水準の引上げなど、法が定める目的以外に用いるべきではないと主張した。さらに、今年度は、コロナ禍における中小企業、とりわけ厳しい状況にある業種の中小企業の窮状を考慮すると、3要素のうち通常の事業の賃金支払能力を最も重視して審議を進めるべきであり、企業の業況が二極化している状況を踏まえ、平均賃金や平均的な状況のみに着目するのではなく、とりわけコロナ禍の影響が深刻な宿泊・飲食、交通・運輸などの業種における経営状況や賃金支払余力に焦点を当てるべきであると述べた。経済界が事業の存続と雇用の維持に最大限努めた結果、雇用情勢が悪化する状況には至っていないが、雇用への影響がデータに表れてからでは手遅れであり、最低賃金の引上げが雇用調整の契機となることは避けるべきであることや、最低賃金の引上げによって、企業の人件費を増やした結果、倒産、廃業や雇用調整を招く懸念があり、そのトリガーを引くことになることは避けなければならないと主張した。コロナ禍でも、賃金引上げが可能な企業は賃上げに前向きに取り組み、消費の拡大につなげ、地域経済の活性化をはかることが望ましいが、現状では、 飲食業や宿泊業のみならず、これらと取引のある関連産業も厳しい状況にある。最低賃金の引上げは、危機的な経営状況の経営者にとって、雇用を維持したいという切実な想いを切り捨てるものにほかならないとの認識を示した。以上を踏まえると、今は、「事業の存続」と「雇用の維持」を最優先すべきであり、今年度は、最低賃金を引き上げず、「現行水準を維持」すべきであると主張した。使用者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
4意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
5公益委員としては、今年度の目安審議については、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、「経済財政運営と改革の基本方針2021」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。なお、使用者側委員は、下記1の公益委員見解を地方最低賃金審議会に示すように総会に報告することは適当でないとの意見を表明した。また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し強く要望する。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金について、特例的な要件緩和・拡充を早急に行うことを政府に対し強く要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。以下省略致します。
◯藤村委員長
どうもありがとうございました。ただ今読み上げていただきました内容を小委員会報告として、取りまとめようと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
◯藤村委員長
それではこの内容でいきたいと思います。
では、ここで今日の会議には土屋厚生労働審議官がご出席いただいております。一言、ここでご挨拶をお願い致します。
◯土屋厚生労働審議官
厚生労働審議官の土屋でございます。一言ご挨拶申し上げます。
まず、公労使の委員の皆さま方には、今年度の「目安に関する小委員会」におきまして、昨日、本日と長時間にわたるご審議をいただいた事を含め、5回にわたり、精力的にご議論いただきました。そして、小委員会報告を先ほど決定をしていただいたことにつきまして、事務局を代表して、心より感謝を申し上げます。
小委員会の運営に当たりましては、事務局として、最大限の努力を尽くしてまいった所存でございますが、例年にない議事進行となった場面もございまして、至らない点が多々あったものと考えております。私どもと致しましても、先ほど会長からも話がございましたとおり、引き続き、「公労使三者構成で真摯にご議論をいただく」というこの審議会の枠組を大事にしながら、来年度以降の審議におきまして、今年度の審議をまずしっかりと総括をし、公労使の委員の皆さま方のご意見も十分に拝聴させていただき、円滑な運営に最大限取り組んでまいりたいというように考えております。
皆様方の御尽力に心より感謝申し上げます。本当に長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。
◯藤村委員長
どうもありがとうございました。事務局から、次回の審議会の日程の連絡をお願いします。
◯長山賃金課長補佐
次回の中央最低賃金審議会は7月16日(金)10時から、厚生労働省9階省議室で行います。
◯藤村委員長
ありがとうございます。それでは、本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。また、小委員会報告は、中央最低賃金審議会の前ですが、審議会で了承を得るという手続を前提に、マスコミに公表したいと思いますが、皆様よろしいでしょうか。
(異議無し)
◯藤村委員長
どうもありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。他に何かございますでしょうか。大下委員、どうぞ。
◯大下委員
先ほど厚生労働審議官のお話にもありましたが、今回非常に難しい審議であったかと思います。まずは重ねて、お取りまとめていただいた藤村委員長はじめ、公益委員の皆様に御礼を申し上げたいと思います。
また、我々のみならず、労働者側委員の方々にとっても難しい、悩ましい審議であったかと思います。そうした中でこうして取りまとめという形に至ったわけでありますが、改めて使用者側委員として、先生方をはじめ、また事務方の皆様はじめ、ここにご参集の皆様の取りまとめに対して、御礼申し上げるとともにお疲れ様でしたということを一言申し上げさせていただきたいと思います。ありがとうございました。お疲れ様でした。
◯藤村委員長
どうもありがとうございました。それでは、以上を持ちまして、この小委員会は終了といたしたいと思います。長時間の御審議、大変お疲れ様でした。ありがとうございました。