2021年7月7日 令和3年第3回目安に関する小委員会 議事録

日時

令和3年7月7日(水)13:00~16:20

場所

九段第3合同庁舎 1-1会議室(11階)

出席者

公益代表委員
 藤村委員長、鹿住委員、小西委員、中窪委員
労働者代表委員
 伊藤委員、小原委員、冨田委員、永井委員
使用者代表委員
 大下委員、佐久間委員、高原委員、新田委員
事務局
 吉永労働基準局長、大塚賃金課長、小城主任中央賃金指導官、
 尾崎賃金課長補佐、長山賃金課長補佐

議題

令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について

議事

 (第1回全体会議)
 
○藤村委員長
 ただ今から第3回目安に関する小委員会を開催いたします。本日は、鹿住委員、永井委員が遅れていらっしゃる予定です。まず、お手元の資料について、事務局から御説明をお願いします。
 
○吉永労働基準局長
 労働基準局長の吉永でございます。賃金改定状況調査結果の訂正についてのご報告に先立ち、事務局を代表してお詫び申し上げます。
 具体的にはこの後に担当課長及び担当課長補佐から説明させますが、この中央最低賃金審議会の審議に当たって重要な資料である「賃金改定状況調査」につき誤りが生じたことは誠に遺憾であり、公労使の各委員の皆様など関係各位に対し、心よりお詫び申し上げます。
 誠に申し訳ございませんでした。
 
(事務局一同、起立して礼)
 
○大塚賃金課長
 賃金改定状況調査結果の修正につきまして、私の方からまず、概況をご説明させていただきます。資料をお手元にお配りしております。先の7月1日の第2回の目安小委につきまして、資料No.1として、令和3年の賃金改定状況調査結果につきまして、ご報告したところでございますが、その後、集計誤りを確認しまして、その結果、この資料に書いてありますような、訂正せざるを得ない状況であることが判明いたしました。この元々の原因ですが、一昨年度まではサービス業が3つまとめて、サンプルとして母集団の労働者数に紐付けされておりましたが、これが昨年度、3つのサービス業に分かれました。その際に、サンプルと母集団労働者数との紐付けがうまくいかなくなってしまっていたのですが、昨年の段階ではそれに気づかず、資料をお出ししていたということを確認いたしました。
 そして、先日の目安小委の後にそういった状況について確認いたしまして、改めて正しい母集団数に復元して集計したところ、こちらの記の1に記載しているような訂正をすることとなりました。
 まず、今年の賃金改定状況調査につきましては、前回0.3%とご報告していたところですが、これが0.4%に訂正されます。
 そして今年と昨年の両方にいえる傾向ですけれども、A・Bランクにつきましては上方訂正、C・Dランクにつきましては下方訂正ということになります。
 これの元々生じてしまった原因といたしましては、今年は、昨年度の母集団への復元が正しいことを前提として作業を行ってしまい、昨年度の母集団への復元作業が正しいものであったかどうかまでの確認が至っておりませんでした。
 このため、この資料の次のページの3にございますように、今までも2人以上で、異なる集計プログラムを使って確認・検証はしていたものの、結局、その上流の作業工程であります、母集団労働者数の設定まで遡っての作業はしておりませんでしたので、今後につきましては、2人以上で異なる集計プログラムで検証するということは同様ですが、上流工程である母集団労働者数の設定等も含めて、確認し、今後このような誤りが生じないように徹底してまいりたいというように考えております。
 前回はこの数字を基に、労使の皆様方からご意見を賜ったところでありますけれども、その前提となった資料に、このような不手際が生じたことを担当課長として、誠に申し訳なく思っております。誠に申し訳ございませんでした。
 若干、技術的な内容について、長山の方から補足させます。
 
○ 長山補佐
 それでは少し、補足させていただきます。まず、訂正内容についての詳細でございますけれども、別紙1をご覧いただければと思います。訂正が発生いたしますのは、令和3年調査及び令和2年調査につきまして、第4表①、第4表②及び付表の一部について、訂正が生じるということでございます。別紙1の1ページ目は令和3年調査の訂正後の第4表①でございます。色づけされているところが訂正のあるところでございます。訂正があるのは、産業計の部分及び一部の産業のランク計の部分が修正されるものでございます。この資料については、令和3年の第4表①の訂正後、その後ろに訂正前、第4表②の訂正後、第4表②の訂正前、付表の訂正後・訂正前という順でございます。その後に、令和2年調査の第4表①の訂正後、第4表①訂正前、第4表②の訂正前、第4表②の訂正後、さらに付票の訂正後、訂正前という資料になってございます。
 誤りが生じた原因については、先ほど課長がご説明したとおりでございますけれども、別紙2のとおりです。先ほど申し上げましたとおり、令和元年の方をご覧いただきますと、E、I、M、Pとその他のサービス業の5つ産業で、左側の青がサンプル労働者数で、右側のオレンジが母集団労働者数でございますけれども、A、B、C、Dがランクを表しておりまして、製造業Aのサンプル労働者数は製造業Aの母集団労働者数に復元しておりまて、これを5つの産業ごとでやっていたというものであります。
 これが令和2年調査については、その他のサービス業のL、N、Rを別々に集計することになりまして、右側の令和2年という方をご覧いただきますと、サンプル労働者につきましては、E~Rまで産業の記号のアルファベット順に配置したものでありますが、これに対して母集団労働者数については、その他のサービス業が元々、一番後ろにあったものでありますから、L、N、Rをまとめて後ろにくっつけて配置してしまいまして、これの順番が同じだと思ってプログラム改修したところ、誤りが生じたということでございます。資料の説明は以上でございます。
 なお、本日の配布資料の他に、各種団体からの要望を回覧させて頂きますので、後ほどご参照いただければと思います。
 
○藤村委員長
 ありがとうございました。それでは、今、事務局からご説明いただきました内容について、何かご質問等がありましたら、お願いします。大下委員、どうぞ。
 
○大下委員
 ご説明ありがとうございました。最初の会議それから2回目の会議含めて、大変膨大な資料を提出いただいていることに、まず感謝申し上げたいと思います。その中で、第4表は、先般使用者側見解で申しあげたとおり、一番議論のベースとなる数字なので、資料の精査・作成、大変ご苦労かと思いますけれども、くれぐれもこうしたことのないように、再発防止には取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
○藤村委員長
 冨田委員、どうぞ。
 
○冨田委員
 ご説明いただきありがとうございました。
 例年、賃金改定状況調査については、短期間の中で集中的に作業をされていると承知をしておりますので、そのことについて、まずは感謝申し上げたいと思います。一方で、賃金改定状況調査は、2年前に集計不備が見つかって、調査方法を含め、昨年見直ししたばかりであったと思います。その見直しをした集計にミスがあったことに加えて、本年の数値誤りは審議中に発見できましたが、昨年は誤った数値の資料が審議に提出されたことについては、労側として誠に遺憾であり、少なからず、審議に影響を与える事態となったことを、事務方には重く受け止めていただきたいと存じます。中賃の議論の信頼性の観点からも、その基礎となる資料や調査結果の数値の正確性を期していただきますとともに、二度と繰り返すことのないように再発防止に努めていただくことを強く要望させていただきたいと思います。
 併せてこちらの資料は、昨年の集計においてもミスがあったということで、昨年の中賃の目安審議のみならず、地方の審議にも少なからず影響があると思いますので、そこについてのご判断もございましたら、お示しいただけると大変有り難いと思います。
 
○藤村委員長
 冨田さんの今のご発言につきまして、私の認識について申し上げたいと思います。
 最低賃金額引上げの目安額、あるいは実際に引上げしている額については、第4表はもちろん参考にするのですが、特定の指標によって何か自動的に決定されるというようなものではないということで、これまでも議論してまいりました。賃金改定状況調査や春闘、賃上げ結果のほか、名目GDPとか消費者物価指数、有効求人倍率などの様々なデータ、またそのほかのデータを踏まえて検討をしてきたわけですね。いわゆる総合的に勘案して、公労使からなる審議会で審議をし、決定をしてきています。
 ですから、色々なデータを見ながら、審議会で審議を決定していったものでありますから、確かにデータが間違っていたことは問題ですが、それによって議論が大幅に歪められたとかそういうことは起こっていないというように思います。それが私の見解でございます。
 それから、私からも事務局に対して一言申し上げたいと思います。
 お忙しい中、賃金改定状況調査をやり、短い時間で結果を出さなければならない状況はよくわかるのですが、特にこの第4表は、目安を定めるに当たり、非常に重要な資料と位置づけられております。また、前回の目安小委員会においても、この資料を前提とした主張がなされたところです。
 人間がやることですから、ミスが起こること仕方がない面はございますが、とりわけ大事な調査結果ですので、先ほど再発防止策について、お示しいただきましたが、それに基づいて着実な実施を行っていただきますようにお願いします。
 配付資料に関しては以上でよろしいでしょうか。どうぞ、冨田さん。
 
○冨田委員
 ありがとうございました。会長のご判断を大変重く受け止めたいと思います。
 事務方にお願いですが、先ほど申し上げましたとおり、賃金改定状況調査表を用いた審議というのは、中賃だけでなく地方審議においても大変重要な参考資料の一つとされております。今日のこの場での議論の内容を、私どもは地方審議会の労側委員に共有いたしますけれども、地方審議会としてのご判断もあろうかと思いますので、地方審議会の関係者全体がしっかりとその内容を周知できるように労働局を通じて周知徹底をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 
○大塚賃金課長
 承知しました。労働局に対する周知を行いたいと思います。
 
○藤村委員長
 この配付資料については以上でよろしいでしょうか。

(異議なし)
 
○藤村委員長
 ありがとうございます。では前回、労使双方から今年の目安審議に対しての基本的な考え方を表明いただきました。それを確認して、次に進みたいと思います。
 まず、労働者側委員からは、次のような主張がなされました。現在もコロナ禍は予断を許さない状況であるが、コロナ禍がはじまって1年余が経過した今、先行きを見通す環境は確実に変化している。今年度は、ワクチン接種や世界・国内経済の回復など昨年度とは明らかに異なる環境変化をしっかり見極めた上で議論を尽くす必要がある。2点目。最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならない。最低賃金の確実な引上げにつながる有額の目安を示すことで、セーフティネットとしての機能を果たし、最低賃金法第1条の「国民経済の健全な発展に寄与する」という目的を達成すべき。日本の最低賃金は国際的に見ても低位。諸外国ではコロナ禍でも最低賃金の引上げを行った。グローバルスタンダードを見据え、ナショナルミニマムにふさわしい水準に引上げるべき。3点目。1年余のコロナ禍により労働者の生活困窮度は深刻さを増している。緊急小口資金等による貸付はリーマンショックの50倍となっているが、労働者は賃金を得て返済するしか術はない。4点目。エッセンシャルワーカーの中には処遇が高くない労働者も少なくない。コロナ禍で懸命に働き続けている労働者の努力に報いるためにも、最低賃金の引上げを行うべき。5点目。感染症対策として、マスクや手指消毒液などは、家計の恒常的な支出となっている。これらの恒常的な支出増が、最低賃金近傍で働く者の家計に大きな影響を与えていることも考慮すべき。6点目。中小企業が賃上げしやすい環境整備は極めて重要。最低賃金引上げの各種支援策の拡充と各省庁が連携した周知を進めるべき。また、中小企業が生み出した付加価値を確実に価格に転嫁できる環境整備も重要であり、政府も政策対応をはかっている。今年度の目安は、これら政策展開を踏まえて審議すべき。7点目。以上を踏まえると、具体的方向感としては、「誰でも時給1,000円」を実現するため、今年度は「800円以下の地域をなくすこと」「トップランナーであるAランクは1,000円に到達すること」の両方を達成する目安を示すべき。8点目。現在の地域別最低賃金の最高額と最低額の221円の差が、地域の経済情勢等に見合った差であるのか、課題意識を持ちたい。地域間格差は隣県や大都市圏への労働力流出の一因ともなっている。昨年度の地方審議の結果を見ても各地方は懸命に地域間格差の縮小の努力をしており、今年度は地域間格差の縮小につながる目安を示すべき。以上の点が主張されました。
 次に使用者側委員の主張です。最初の緊急事態宣言から1年3ヶ月経過し、足下では感染再拡大の兆候が見られ、第5波の到来が懸念されている。休業要請等により経済活動が抑制された状況では、業況の回復はほど遠い。中小企業への貸付残高も上がっており、事業を立て直す上でも大きな負担となっている。中小企業は、価格転嫁が困難であり、労働分配率も高いが、コロナ禍では、従前にもまして、賃金支払能力が乏しい状況にある。2点目。最低賃金は、各種データによる明確な根拠をもとに、納得感のある水準とすべきであり、賃金水準の引上げなど、法が定める目的以外に用いるべきではない。3点目。今年度は、コロナ禍における中小企業、とりわけ厳しい状況にある業種の中小企業の窮状を考慮すると、3要素のうち通常の事業の賃金支払能力を最も重視して審議を進めるべき。4点目。コロナ禍で企業の業況が二極化している状況を踏まえ、平均賃金や平均的な状況のみに着目するのではなく、とりわけコロナ禍の影響が深刻な宿泊・飲食、交通・運輸などの業種における経営状況や賃金支払余力に焦点を当てるべき。5点目。政府からの数次の要請もあり、経済界が事業の継続と雇用の維持に最大限努めた結果、雇用情勢が悪化する状況には至っていないが、雇用への影響はデータに表れてからでは手遅れである。最低賃金の引上げが雇用調整の契機となることは避けるべき。6点目。現状では、コロナの収束はまだまだ見通せない状況にあり、各企業の業況は二極化している。最低賃金の引上げによって、企業の人件費を増やした結果、倒産、廃業や雇用調整を招く懸念があり、そのトリガーを引くことになることは避けなければならない。7点目。コロナ禍でも、賃金引上げが可能な企業は賃上げに前向きに取り組み、消費の拡大につなげ、地域経済の活性化をはかることが望ましいが、現状では、飲食業や宿泊業のみならず、これらと取引のある関連産業も厳しい状況にある。最低賃金の引上げは、危機的な経営状況の経営者にとって、雇用を維持したいという切実な想いを切り捨てるものにほかならない。8点目。以上を踏まえると、今は、「事業の存続」と「雇用の維持」を最優先すべきであり、今年度は、最低賃金を引上げず、「現行水準を維持」すべきである。
 以上、労働者側、使用者側それぞれの前回の主張をまとめました。補足、あるいは追加の意見があれば承りたいと思います。冨田委員、どうぞ。
 
○冨田委員
 ありがとうございます。お示しいただいた労働側の基本的な考え方の3点目になりますが、前回の目安小委員会では、全体会議ではなく第1回目の公労会議の場で、公益の先生から、追加意見を表明する場を頂戴した際に発言した内容ですので、改めて本日この場で補足的に申し上げさせていただきます。
 発言した内容は、コロナ禍で苦しい状況に置かれている、労働者の実態について補足をさせていただいたということです。エビデンスという意味でいきますと、生活困窮者生活支援として実施されており、最大200万円まで無利子で貸し付ける制度である「緊急小口資金貸付制度」、これは現在コロナ禍により返済期間が猶予されていますが、その貸付額は累計で1兆円を超えており、これはリーマンショックの約50倍となっています。あわせて、これは給付金ではなく貸付であり、労働者が働いて返済しなければならないことを考えると、労働者が払える原資は賃金しかありませんので、最低賃金をしっかり引き上げて返済可能な賃金を保障していくことが必要だということを追加で申し上げさせていただきましたので、この場での労側基本的考え方として、補足させていただきます。ありがとうございます。
 
○藤村委員長
 使用者側からは何かございますか。よろしいでしょうか。
 ではこの後は、公労・公使で個別に主張を伺いながら、開きを詰めていきたいと思います。今日は、公使会議から始めたいと思いますので、労働者側委員の皆様はいったん控室でお待ちいただきたいと思います。
 
(第2回全体会議)
 
○藤村委員長
 ただ今から、第2回目の全体会議を開催致します。
 本日は本年度の目安の取りまとめに向けて、個別に意見を伺いながら、鋭意調整を進めさせていただきました。
 しかしながら、現時点では依然として双方の主張の隔たりが大きいことから、本日の取りまとめは断念し、次回に持ち越すことにしたいと思います。よろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
○藤村委員長
  それでは、次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いします。
 
○尾崎賃金課長補佐
 事務局でございます。次回の第4回目安に関する小委員会は、7月13日(火)14時から中野サンプラザ14階クレセントルームで開催いたします。
 
○藤村委員長
 それでは、本日の小委員会はこれをもって終了といたします。お疲れ様でした。