第15回労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会 議事録

日時

2021年(令和3年)6月8日(火) 15時00分~

場所

厚生労働省 職業安定局第1・2会議室
千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 12階

出席者

 
  • 安藤 至大
  • 大久保 幸夫
  • 鎌田 耕一(座長)
  • 武田洋子
  • 中田 るみ子
  • 山川 隆一

議題

  1. (1)個別の論点等について検討(公開)
  2. (2)その他(公開)

議事

議事内容

○事務局 定刻になりましたので、第15回「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」を開催いたします。皆様、本日は御多忙のところ御出席賜りましてありがとうございます。本日は阿部委員が御欠席です。
 本日は、これまでの研究会で御意見のあった個別の論点について、委員の皆様に御議論を頂きたいと考えております。議事の進め方ですが、事務局より、今回5つのテーマごとに御説明いたしまして、御議論いただくという形で進めたいと考えております。本日は個別論点の議論になっておりますので、議事進行については鎌田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○鎌田座長 それでは、まず、職業情報・募集情報等の共通フォーマットの整備と公共の役割の部分について、御説明をお願いいたします。
○事務局 最初のテーマである「職業情報・募集情報等の共通フォーマットの整備」についてです。「議論の整理」として、ポイントを3点記載しております。「必要とされるスキルやタスク・業務の内容を職業横断的に整備していくことが必要。」「職業情報を一元化するインフラを整備しつつ、雇用仲介サービスを行う者や業界団体、職能団体が実際の募集情報と職業情報を、紐付ける役割を担うべきではないか。」「労働条件に限らず、ミスマッチを防ぐために参考となる情報や、職業選択を助け、職業生活の充実に資するような情報を、企業や雇用仲介サービスを行う者が提供していくべき。」という整理がされております。
 一度お示しさせていただいておりますが、職業情報提供サイト(日本版O-NET)の情報提供ということで、O-NETにおいては、約500職種について、職業解説、資格情報、労働市場情報、スキル、知識等について提供させていただいており、機能としては御覧いただいているキャリア分析機能、人材採用支援機能、人材活用シミュレーション機能、適職探索機能の4つの機能を所持しています。
 O-NETの可能性として、現行、以下のようなスキル、知識等について職種横断的な数値データにより、転職・キャリアアップのための客観的な判断材料を提供するという形のシステムとなっております。スキル39項目、興味6項目、仕事価値観10項目、知識33項目、仕事の性質22項目ということで、それぞれ数値データにより支援を行っている状況です。
 具体的なイメージとして、不動産営業員ということで、こういうものを検索した場合、どういうものが出てくるかというイメージを出しておりまして、御覧いただいているようにタスクですけれども、職業に含まれる細かな仕事ということで、どのようなタスクが何パーセント程度実際必要なのかということ、それから右上ですがスキルとして読解力、文章力等々の能力などがどの程度必要なのかについて、このような形で数値化をしまして、必要となる能力的なもののパーセンテージをお示ししています。
 5ページを御覧ください。第11回の本研究会において、三菱総合研究所様からヒアリングをさせていただいた際に、「日本版O-NET普及を促進する民間情報の活用」ということで御提案いただいた内容を付けさせていただいております。3つポイントがありますが、「O-NETデータを企業等が直接活用する状況は当面期待しにくい」、一方で今後「雇用仲介業者、業界団体、職能団体などがO-NETフレームワークに準拠した職務要件の細分化を行うことで、個社への職業情報のつなぎ込みが可能。」、「職の共通言語が民間情報と接続されることで、結果的に求職者の利便性が高まる」という形で、サジェスチョンを頂いている状況です。
 また、O-NET自体の在り方を検討する場として、日本版O-NET普及・活用の在り方検討会を当省において開催させていただいております。直近3月29日に開催しました際に野村総研様から御提出いただいた資料ですが、今後のO-NETの展開として、社会に出て働くことに不安を感じているような若年層向けに、自分ができる「タクス」をもとにした職業検索ニーズがあることが分かった。「タスク」に係る情報・機能を整備することが有効な対応と考えるということで、下に課題1、2と対応案が書いてありますので御参照ください。
 また、ITや医療・介護など世間の注目度が高い分野や求人が多い分野の職業に紐づくキャリアラダーや将来のすそ野の広がりの事例を、分かりやすくかつ詳しく提示することが入転職やその後のキャリア検討に資するということで、O-NETの可能性について御提言いただいています。
 続きまして、労働条件に限らないミスマッチを防ぐために参考となる情報の提供に関しまして、青少年雇用の促進等に関する法律において青少年雇用情報の提供が規定されております。労働者の募集を行う者は、青少年の募集及び採用の状況、職業能力の開発及び向上並びに職場への定着の促進に関する取組の実施状況その他の青少年の適職の選択に資するものとして厚生労働省令で定める事項を提供するように努めなければならないとされています。また、第2項において、当該学卒見込者自身の求めがあった場合は、青少年雇用情報を提供しなければならないという規定があります。第14条第1項において、求人者は、職業紹介事業者に対し、青少年雇用情報を提供するように努めなければならないとしております。第2項で、職業紹介事業者等については、学卒見込者等求人の申し込みをした求人者は、その紹介事業者の紹介を受け、若しくは受けようとする学校卒業見込者等の求めに応じ、青少年雇用情報を提供しなければならない、と規定されています。
 また、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律については、常用の労働者が300人以上の一般事業主は、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関する次に掲げる情報を定期的に公表しなければならないとしています。その雇用し、又は雇用しようとする女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績、その雇用する労働者の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績ということで、第2項において300人未満の事業主に対しての努力義務という形で規定されています。
 今申し上げた若年法及び女活法に基づき、提供すること、若しくは公開することとされている情報について掲載させていただいておりますので、このような情報が対象になっているということで御参照いただければと思います。
 また、「しょくばらぼ」というサイトがありまして、今申し上げた若年法、女活法、次世代育成支援法などに基づき、企業が公表する情報が分かるシステムがあります。当省としましては、このシステムに基づき、一般の労働者、労働者になろうとする者に対する情報提供等を行っているということです。
 次に「公共の役割について」です。「議論の整理」では、「職業安定機関が労働市場全体の情報を把握した上で、雇用対策を担っていくべき。」「ハローワークは特に就職困難者への対応を充実させ、テーマ別にノウハウを蓄積していく必要がある。」ということです。職業安定機関とハローワークを書き分けておりまして、職業安定機関は、基本的には厚生労働省というイメージを持っていただければと思います。ハローワークでは、働く希望を持つ若者・女性・高齢者・障害者をはじめとする全ての国民の就職実現のための支援、求職者各々の置かれた状況に応じた取組を積極的に実施するということで、高齢者・障害者・生活保護受給者などの就職困難者に対する対応をきめ細かく行っているという状況です。
 次に、職業安定法上、政府の行う業務として、第5条第1号において、労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整を図ること、と規定していまして、第8条に公共職業安定所の業務として、「公共職業安定所は、職業紹介、職業指導、雇用保険その他この法律の目的を達成するための必要な業務を行い、無料で公共に奉仕する機関とする」という定義が置かれています。
 次の労働施策総合推進法については、当研究会でもお示しさせていただいておりますが、労働施策の一般的な原則を定めた法律になっており、第1条で国の行う業務が書かれておりまして、第4条に国の施策が書いてございます。第11条第1項に、厚労大臣は、求人と求職との迅速かつ適正な結合に資するため、労働力の需給の状況、求人及び求職の条件その他必要な雇用に関する情報、「雇用情報」といいますが、を収集し、整理しなければならない、と書いておりまして、第2項において、この雇用情報を、求職者、求人者その他の関係者及び職業紹介機関等、その他の関係機関が、職業の選択、労働者の雇入れ、職業指導、職業紹介、職業訓練その他の措置を行うに際して活用することができるように提供するものとする、と規定されています。前回も御説明しましたが、現在、この雇用情報の提供先に募集情報等提供事業者は入っていないという形になっています。
 公共の役割ということで、求人・求職情報のオンライン提供の御紹介もさせていただいております。現在、当省、ハローワーク、職業紹介機関においては、求人者や求職者の同意を得て、民間職業紹介事業者や地方公共団体等に対し求人・求職者情報を提供させていただいています。また、ハローワークインターネットサービスを通じ、ハローワークの受理した求人のうち求人者の同意がある求人については一般に広く公開しているという状況です。受け付けた全ての求人というわけではありませんが、ハローワークインターネットサービスに掲載することについて同意をした求人については載せているという形です。また、ハローワークの職業紹介のオンライン化というものも進めております。ハローワークインターネットサービス上での取扱い、求人・求職申込みを令和2年1月より開始しております。また、令和2年1月からは、求人者が、ネット上で直接欲しい人材の検索をすることが可能となり、令和4年3月からは求人者がリクエストを送ることも可能となる予定です。最後に、令和3年9月からは、求職者が、ネット上で直接求人に応募することが可能となるシステムの見直しを行う予定です。
 以上で、求人・求職情報のオンライン提供と職業紹介のオンライン化についての説明とさせていただきます。
 
○鎌田座長 それでは、今御説明があったことについての質問、御意見がありましたら、どうぞお願いしたいと思います。
○大久保委員 まず、募集情報に関する所なのですが、今回、青少年雇用促進法とか女性活躍推進法で、募集情報に関して新しい項目の開示を促していくことについての御紹介がありました。募集情報について様々な関心事項の開示を進めていくというのは、ミスマッチを解消する上では大変重要なことだと思っております。全ての求人に関して同じように一律に開示させるということは、なかなか困難なのですが、ただ、明らかに開示を進めた求人のほうが、応募者が集まりやすくなるというのは、はっきりとした傾向として出ておりますので、法律を通じて適切に開示を推進していくということは、大変意味のあることかなと思っております。募集情報等提供事業を行っている求人サイトなどでも、インデックスを改定することによって検索ができるように進めていくという対策を常に取り続けていますので、そこは官民が連携してできるところかなと思います。
 特に現在の状況で、求職者が望んでいるのは、テレワークができるかどうかという情報で、検索で常にトップにきます。求職者のニーズに応えて全国求人情報協会の加盟会社の多くは、それが検索できるような構造を作って求職者のニーズに応えるような動きをしていると思います。それから、今後の問題でいくと、例えば選択型の週休3日制のようなものに対応して、働き方が選択できるような会社とか、そういったものもニーズが出てくるのだろうなと考えております。
 もう1つ公共の役割のところでいくと、以前のこの研究会でも申し上げましたが、就職困難者に対しての部分は民間の中でなかなか先導してやるというのは難しいところもあって、公共の役割としてリーダーシップを発揮したいところだと思います。特に、発達障害とか高齢者などに関しては非常に人口も多く、求職者の中でも苦しんでいる人が多いテーマですので、むしろ官の側でリーダーシップを取ってもらって、民間も関わりながら一緒にマッチングの進め方、促進の方法について研究をしたり、実践に取り組んでいくというようなことができるといいのかなと思っています。
 
○中田委員 資料の3ページと4ページにある職業情報が整備されると、求職者の方々も分かりやすいだろうと思いますが、ちょっと表現が古いと感じます。例えば対人の交渉がどの程度できるかとか、異文化とのコミュニケーションであれば、外国語で話すだけではなくて、外国語で仕事ができるかとか、交渉レベルまでできるのかといったこと、又は新規事業の開発ができるとか、非常に挑戦が多い仕事なのか日々のルーティーンワークなのか、などもう少し表現の仕方が工夫されると双方が使いやすいと思います。
 これらはいわゆるジョブカードとはどのような関係なのでしょうか。企業としては、入社後の育成にも使え、個人の方たちもこのスキルを身に付ければここに行けるというような形で活用していけると有効なのではないかと思っています。
 
○事務局 御質問について可能な範囲でお答えさせていただきます。ジョブカードとO-NETの情報というのが直接結び付いているということは、現時点ではありませんが、O-NETの情報というものを逆にジョブカードでうまく利用できないかという取組は、現在、検討を行っております。
 将来的な展望としては、うまくジョブカードとかO-NETの情報というのを紐づけていければいいなと思っているのですが、実際、今、中田委員から御指摘があったように、必要な情報がどういうものか、項目が古くなっているのではないか等、そういう御指摘もありまして、課題として検討させていただいているという状況です。
○中田委員 ありがとうございました。
 
○山川委員 先ほど大久保委員もおっしゃっておられた情報の公表ないし公開は、私も非常に重要なことだと思っています。労働市場の機能の質を高めるという側面があると思います。求人企業側としては、言わばPRをして情報を提供して、有能な人材を集めます。それで企業間の労働市場における競争が促進されるということがありますし、求職者側からは職業選択の幅が広まるということがあります。また、国の政策という見地からしても、先ほどのテレワークのお話もそうですが、そのような人事施策をとっていることを公表することによって、そのような企業に人が集まりやすくなるという政策の促進効果もあると思われます。そういう意味で、私も先ほど「しょくばらぼ」をネットで調べてみましたら、個々の企業名を入れれば情報が出てきて、そこには自由記述とかPRもあって、非常に面白いことが書いてありました。企業としてこういう特色がPRできて、これをもう少し、例えば業界団体など、いろいろな所を通じて、人に知られるような形、あるいは求職者の目に触れやすいような形にしていってはどうかと思います。
 これと関連して、公共の役割の所で、ハローワークの役割は今後とも重要だと思います。実は、職業安定局の別の所で外国人の雇用の検討の研究会をしており、そこでもハローワークの役割がかなり焦点になりました。そこで出てきたのは連携です。例えば地域のNPO、自治体との連携とか、留学生等のことも考えると学校との連携、職業紹介事業者との連携、それ以外に教育機関などいろいろな所とハローワークが連携するに当たってのコーディネーター的な役割は、正に職業安定機関が果たし得るのではないかと思っております。
 コーディネート先としては、最後のほうに出てきますが、業界団体の役割というのも出てくるのではないかと思います。特に個別企業では、例えば法改正の情報が欲しいとか、人材の育成をしてほしいとか、コンプライアンスの実現の際にどのような点に留意したらいいのかとか、いろいろな点で支援が欲しいであろうと思います。特に、創業間もない企業、あるいは新規参入の企業にとっては、いろいろなところでノウハウとか情報が欲しいということがありますので、ハローワークないし国、業界団体とかいろいろなところで協力して、トータル的に言えば労働市場の質を向上させるということが望まれるのではないかと思っております。
 
○安藤委員 O-NETのページを見てみますと、今年2月にリニューアルオープンされたとなっています。開設から1年ぐらいでリニューアルオープンされて、非常に見やすく触りやすい、アクセスしやすい形式になっているかと思います。
 これを実際に、適当にいろいろなキーワードを入れて、例えば自分の強みか何かを入れると、どのような仕事が出てくるのか。情報工学研究者、裁判官、高分子化学技術者、資材コーディネーター、デジタルビジネスイノベーター、コンサルタントと、このような形でいろいろな仕事を見ることができます。
 多くの仕事をバラエティ豊かに載せているというのは、これから仕事を探したいと思っている中学校、高校の子供たちからすると、とても勉強になると思いますが、実際に、今私は45歳ですけれども、45歳の人間が今やっていた仕事を失いそうだという場合、では次の仕事を探そうというときに、このサイトで検索して次の仕事にたどり着くのかと考えると、なかなかこのサイトの使い道というのは難しいのかなという気もしています。
 資料にあるように、キャリアラダーを示すと、今やっている仕事から何を加えたら更に上に行けるかというようなことが分かるという点では有益かもしれません。しかし、例えば、今やっている仕事と傾向が似ていて別の仕事、今の仕事が技術進歩などで失われようとしているときに、別のどの仕事に行けば、必要とされるスキルにあまり差がなく移行できるのかとか、何かそういう実際に仕事を探している人の目から見たときに、より使い勝手が良くなるためにはどうすればいいのかというようなことの検討が必要かなと思います。
 例えば、ここで数字上、求められるスキルが似ていたとしても、実際にAという仕事からBという仕事に移りにくいケースもあれば、移りやすいケースもあると思うのです。その数字がどのぐらい使えるのかということで、まずはこのサイトの出来としては、かなりきれいなものが出来上がっているわけで、これをどう使えるかという観点からどんどん検証、改善していくフェーズなのかなと感じております。こういうものをせっかく作ったのだから使いなさいと一般に対して要求するというよりは、改善の提案などがあったらこちらへどうぞといった形で、このサイトをより良いものにしていくため意見募集の仕組みをサイトの中に埋め込んでいくとよいのかなと思います。
 次に、公共の役割ということで、就職困難者の支援という話はとても大事だと思っています。以前からハローワークと民間の職業紹介などのすみ分けのような話に対してクリーム・スキミング論のようなものがあって、良いとこどりを民間事業者がするのはけしからんみたいな議論があったわけですが、最近はどちらかというと、民間にできることは民間にやってもらって、公にしかできないことをしっかりやるというような雰囲気になっているのかなと見ていたのですけれども、この方向でいくのであれば、そのときにハローワークでの転職が向かない人というのが多分いると思うのです。どういう人がハローワークに行くべきであって、どういう人は、まず他のほうがいいというような情報提供があればよろしいのかなと思いました。
 ハローワークについては、検索すると山のように、ハローワークに行くのが怖い、嫌な思い出がたくさんある、強引な職業相談員の人にどうのこうのとか、正社員を探しに行ったのに、非正規しかあなたには向いていないと言われたとか、雰囲気が暗いとか、いろいろなことが好き放題書かれているわけです。この辺り、一般の利用者からのリアクションを受けながら、もちろん公の、かつ困っている人に対するサービスですので、民間のサービスのように快適にとはならないのかもしれませんが、どういう形で改善していくことで利用者が納得して使っていく、余り頑張って宣伝しなくてもこちらにどんどん人が来るというような状況になるのかということが、今後の課題かなと思ってお話を聞いています。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。
 まず、1番目の「職業情報・募集情報等の共通フォーマットの整備について」ですが、これはもう皆さんに御指摘いただいているように、いわゆる労働条件以外のこういう職場情報を広く提示するということは非常に大切なことだなと思います。
 募集情報を広く職場情報を含めて提供するということについて、私も本当に賛成です。ただ、ちょっとこれは確認ということにもなるかもしれませんが、現在、若者雇用促進法などに、青少年雇用情報の提供ということで職場情報、雇用情報についての提供ということが努力義務になっているのですけれども、それというのは、いわゆる新卒者を対象にしているわけですよね。まずは、求人者に対してこのような雇用情報の提供を求めるということが努力義務になっているわけですが、これは、今皆さんに御指摘いただいたことを踏まえて、私も雇用情報の提供ということは大切だなと思うのですけれども、その前に、新卒学生以外の方に、一般的に求人者はこういったような情報を提供する、あるいは、そういったことに協力するということを今後考えてほしいと思います。
 義務付けるかどうかという法的な位置付けについては、今後の検討課題だと思うのですが、新卒だけにとどまらず、広く一般にこういったような雇用情報の提供に協力をお願いする、求人者等にお願いするということが大切かなと思っています。
 それから、第2に若者雇用促進法では、雇用仲介事業、ハローワークも含めてですが、特に職業紹介事業者を対象に、求職者がこういう雇用情報を出してほしいと希望した場合には、ハローワークや職業紹介事業者がこの提供を求人者に求めるように努めなければいけないと、こういうようなことにもなっていると思うのです。こういったことも雇用仲介事業の役割として考えていかなければいけない。職業紹介の場合には分かりやすいのですが、募集情報提供事業者の場合には、特定の求職者との関連ということがない場合もありますので、そうした場合にはこういう直接のつながりはないのかもしれませんが、一方で、リコメンドという形でダイレクトなつながりがあって、こういった情報が欲しいというような求めもあるかもしれません。そういった場合には、やはり募集情報提供事業であってもそういったことの協力ということを考えていただきたいと思っております。
 第2点は、提供すべき雇用情報というのはどういったものが大切なのかということです。これは大きく、例えば離職率のような情報と、職業能力開発、キャリア形成に関わる情報と、職場定着に関わる情報ということで、幾つか青少年雇用情報にはリストがあるのですが、これは今後、協力をお願いする求人者、あるいは雇用仲介事業に、こういう情報の提供、収集に協力していただくということであれば、少し精査をしたほうがいいのではないかと思うのです。個人的には、最も優先すべきは、やはり何といっても研修やキャリア形成におけるいろいろな支援、例えばキャリアコンサルティングとか、そういったことが特に大切なのかなとも思いますし、また、そのヒアリングの中では、離職情報というものもありました。離職情報というのは、またちょっと性格が違うものであると思っておりますので、こういったこともどのように位置付けるのかというのが1つの検討課題かなと思っております。
 それから、公共の役割ですが、これも皆さんとほぼ同じ意見です。ハローワークのこれからの役割をどう考えるのか、これは随分長い間議論されてきました。いわゆる民間事業との間での競争的関係なのか、あるいは補完的関係なのかと様々な議論がされてきたわけですが、今までの経緯の中で皆さんの御意見もあるし、私もそうかなと思っているのですけれども、やはり一定のすみ分けというか、ハローワーク固有の役割として、まず様々な形で就職に困難を抱えている方たちの支援ということが、非常に重要な役割としてあるのだということは言えるのではないかなと思います。
 ただ、そうした場合に、就職困難者への就職支援ということでマッチングを考えた場合に、労働市場全体の情報を把握しながらハローワークも対応していくという必要がやはり出てくるのではないかと思っております。なので、一方でハローワークは、労働市場全体を見据えた情報の把握ということが今後の雇用政策を進めていく場合でも大きな役割として出てくるので、この2点がハローワークの役割ということで確認していく必要があるのではないかなと思います。
 さらに、「就職困難者への対応を充実させ」ということの中身なのですが、正に様々な機関との連携ということが大切になってくるだろうと思っております。高齢者・障害者・生活困窮者、例えば生活困窮者の支援事業というのは、独自の様々な支援を行っているわけですが、こういった中で就職に関わること、生活困窮者の自立支援事業の中の1つのゴールとして就職ということもあるかと思います。そういったことを考える場合に、現在でも連携は行われているのですが、きめ細かくそれぞれの機関の特性を考慮しながらハローワークがリーダーシップを取って、最も求職者にとって有意義なルール、あるいは仕組みを作っていくということが大切ではないかと思っております。実際、それぞれの立場が違いますから、その中でこの問題をどのように解決したらいいのかということが、様々に若干違いがありますので、ここではハローワークがそういった各種機関の連携、あるいは自治体との連携を進める中で、是非ともリーダーシップを取って、それぞれの立場を踏まえながら最終的にはこういう就職困難者の方たちの満足が得られるような、そういうプロセスを作っていくようにしていただければと思います。私の意見はそういうことです。
 武田委員、どうぞお願いいたします。
 
○武田委員 1点目は、職業情報の整備についてです。人材のマッチングを高めるためには、先ほどから議論がありますとおり、雇用情報を広く公開いただく方向で、規制という縛りではなく、より幅広い情報を公開いただくという方向性について賛成です。
 ただ、加えてその情報がより共通言語化されて公開されないと、同じ言葉を使っても異なる意味で使われたり、あるいは違った要件で語られたりすると、情報が公表されたとしてもマッチングの効率化につながるかどうかについて懸念が残ります。情報を公開するとともに、それを共通言語化し広く普及させる整備が必要と思います。
 また、安藤委員がおっしゃられたように、O-NETの使い勝手を上げることも併せて重要と考えます。この両者を実現するためには、職務要件に関しもう少し現実的・具体的な項目に落とし込まれる必要があると考えます。また、利便性という観点では、民間情報と接続される形で利便性を高める方向性を目指されることが望ましいと考えます。もちろん、インフラを整えさえすれば直ちにマッチングが進むわけではないとは思いますが、以前にこの場で申し上げたとおり、3つの環境の変化、企業の雇用制度の変化、技術の変化、環境変化のスピードの加速が顕在化しております。政府としても人材マッチングを高めるために、職の共通言語化、より活用されるためのO-NETの使い勝手向上に向けた整備を進めるのに良いタイミングだと思いますので、雇用仲介業者、業界団体の皆様に御協力いただき、今回を契機に1歩でも2歩でも前に進めていただければ有り難く思います。
 2点目、今後の公共の役割については、座長の御意見に賛成です。公共の役割が非常に大切だと考えており、民間とハローワークは、担っている役割がそれぞれにあると思います。一方で、労働市場や転職市場が二分化することは望ましくなく、ハローワークが全体の労働市場の情報を捉えておく必要もあると思います。オンライン化の取組も進んでいることが分かりましたし、ハローワーク自体も民間との連携が進んでいることは望ましいですが、先ほどの職の共通言語化、O-NETのより利便性を高める方向での改定等と相まって、最終的に相互の連携が進み、それがひいては求職者にとっての利便性の向上や、労働市場全体のマッチングの効率性の向上に資することが望ましいのではないかと考えます。
 
○山川委員 情報の公開の所で、社会的に情報を公表することを要請している法律として、もう1つ労働施策総合推進法が、大企業に限ってですが、中途採用比率を一般的に公表するように義務付けています。それで、もし義務付け的な方向を取るとしたら、座長のおっしゃるように項目等は結構慎重な検討が必要になるかと思います。例えば、勤続年数というものが企業によってはそれほど意味を持たないものがあって、研究機関などで考えますと、勤続年数については、若手研究者の養成とか、あるいは優秀な研究者を招聘するとかということをしておりますと勤続年数が下がってくるので、その辺りは個々の業種とか業態に応じて考える必要があるかと思います。
 もう一点、公共の役割について、今の話とも関係するのですが、労働施策総合推進法第11条第2項に、厚生労働大臣は、雇用情報を提供するということが書いてあります。先ほど事務局から御説明いただいたような求人情報のオンライン提供等がされているのですけれども、募集情報等提供事業が第11条第2項には直接入っていません。その他関係機関になるかもしれませんが、以前お話が出てきたように、ハローワークでの有効期限切れの情報が載っていたりとかというような苦情が確か例として挙げられていたかと思いますので、この辺りでも連携を強化するというのはあるのではないかと思います。お聞きしたいのは第11条等において、募集情報等提供事業がどういう位置付けになっているのかということを、ちょっとお教えいただきたいと思います。
 
○事務局 現段階としてお答えできる範囲としては、労働施策総合推進法上、募集情報等提供事業者という名前を明示的に使った条文はありません。その中で、雇用情報の第11条第2項において、今、山川委員からも御指摘がありましたが、その他の関係機関というものに入るかどうかという解釈論はありますが、私どもの通達等において、その他関係機関に募集情報等提供事業が該当するという形の解釈を示したことはないという状況ですので、私どもとしては、現段階の労働施策総合推進法においては、募集情報等提供事業者を明確に認識した上で対応を行っているものではないと考えております。
○山川委員 ありがとうございました。第11条第2項に関しては、国が雇用情報を提供するということですので、募集情報等提供事業にとっても有益なことがあろうかと思っております。
 
○鎌田座長 では、次の「求職者等の特徴・保護について」、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 「求職者等の特徴・保護について」御説明します。「議論の整理」では、「求職者等は人材サービスの仕組みや実態をよく分からずに利用しており、求職者等に対して人材サービスや労働市場等について有用な情報の公開等を進めるべき。」「求職者の中には、リコメンドを待って、声をかけられたら行くというような受け身の方もいることを意識し、雇用仲介サービスがより良い求人情報やマッチングシステムを提供しているのか考えるべき。」「AIやマッチングアルゴリズムによるアンコンシャスバイアスの再生産や、ブラックボックス化の回避のため業界共通の見識が必要。」と記載しています。
 イメージとして、ある意味、求職者に対してどのような情報が来るかということですが、職業紹介事業者からは紹介の情報、求人メディアや、ここでは雇用仲介サービスが書いてありますが、新形態のサービスなどについてはリコメンドなどが来ると考えております。また、求人企業側からは、スカウト情報や直接のアクセスがあるということで、求職者のほうに様々な情報が入ってくる形に今なっております。
 右のほうは、全国求人情報協会から御提出いただいた資料の抜粋です。いわゆる求人メディア・サービスに付随する機能として、やはり、求人案件のリコメンドや、業界・分野特集などの案内メールなどについての機能を有しているサービスが多くなっている状況です。
 また、第1回目の当研究会でお示しさせていただいた資料ですが、ハローワーク、民間職業紹介事業者、求人メディアでは、取り扱う求人の年収帯や職種が異なるということです。ハローワークの求人のうち、パート新規求人が約40%を占めるのに対して、求人メディアの求人のうち、約73%がアルバイトパート求人ということで、契約形態にも違いが見られる。いわゆる得意分野がそれぞれ存在するということを書かせていただいます。
 ユーザー企業からのヒアリングの概要で、ここからはAIの活用など新しい技術サービスをどういう形で考えていくかということですが、「AIやIT技術の活用については、採用活動の工数を削減するために活用している。」「履歴書や応募書類のスクリーニングにAIを導入している。」「スクリーニングにAIを利用する際にも、次の過程に進むか否かをAIのみでは決定しないようにしている。」などのお話があって、皆様、様々ご苦労されながら、またいろいろとお考えいただきながらAI等の技術を使っているというお話がありました。
 参考として、前回個人情報保護法の関係で、欧州の状況を有識者の方から御説明いただきましたが、欧州委員会の新AI規制案として、現段階の案で出ているものをお示しさせていただいております。これは2021年4月に発表されているものです。AIが持つリスクにより4種類に分類を行いまして、態様を変えて規制する案ということになっております。採用過程での履歴書選別など、雇用や従業員のマネジメントに用いるAIは、「ハイリスク」ということで分類されております。この「ハイリスク」に分類されたらどうなるのかということですが、「ハイリスク」のAIについては、第三者機関による事前審査を経て、EUのデータベースに登録し、その上で各企業は必要基準を満たしている宣言書にサインし、「CEマーク」というものを取得して、市場での使用が認められるというシステムになっております。
 ハイリスクAIに対する義務としては、右下に書いてあるように、十分なリスク評価とリスク軽減を行うこと。システムに読み込ませるデータの高品質化により、リスクと差別的な結果を最小化にするなど、このような形の義務をかけるということが、現段階ではあくまでも案ですので、こういう形で欧州委員会から示されていることを御紹介したいと思います。
 また、以前の研究会でリクルートワークス研究所様から御提出された資料から抜粋しております。テクノロジーによるバイアスの排除ということで、選考者のアンコンシャスバイアスの排除、人が介さないアセスメント評価・タグ化・マッチングなど、AI等を活用した様々な支援サービスが開発されている、ということです。テクノロジーによるバイアスの排除ということで、様々な支援サービスが展開されている状況であることも改めて御紹介させていただきたいと思います。本議題についての事務局からの説明は以上です。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。このテーマについて、御質問、御意見があれば自由に御発言いただきたいと思います。
○大久保委員 求職者の特徴の所で、ここにもリコメンドの話が出てきましたので補足的なデータを御紹介します。求人サイトには、応募のボタンが付いております。自分が応募したい会社が見つかった場合、そこの機能を使って直接求人企業に自分の履歴書的なデータをお送りして応募するという方法を取ります。その応募というアクションを取った人がどういう形で募集情報を見つけたのかということを分析したデータを確認してみました。そうしますと、応募に至る流れというのは、おおむね3つあります。1つは、利用者がサイトの検索機能を使って、自分で条件を入れていって、そこから導き出した求人に応募する。これが1つ目のパターンです。2つ目は、この求人サイトを通じて求人企業から当社に応募しませんかというメールが届いて、それに反応する形で応募するというのが2つ目です。3つ目が、雇用仲介の事業者である求人サイト側からリコメンド情報が送られてきて、これに反応する形で応募するというものです。
 応募行動を取った人のうち、リコメンド情報を元にした人は、全体の3分の2を占めるようです。つまり、自分で検索して見つけて応募行動まで行く人は全体では割と少なく、なかなか大量の情報の中から自分に合った情報を見つけ出すのは難しくて、求人サイト側から出てくるリコメンド情報などを頼りにしながら、最終的には見つけていく人がかなり多いということのようです。
 そのリコメンド情報というのはどういうものか、サイトが何をもとにリコメンド情報を送るかと言いますと、当然御本人が登録したプロフィール、そういう条件にマッチするものを送る場合、その人が検索した行動履歴から、それに該当しそうなものを送る場合、同じ求人をみている方が大体どういうものに興味を持って見ているのかという傾向から類推して、こういうものにも興味ありませんかということで送る場合の大体3つぐらいのパターンがあるようです。情報を送る提供の道筋は、メールで送る方法もありますしマイページみたいな所に表記する方法もあります。あるいは同じメールですが、メルマガみたいなものに記載して送るという方法があるようです。
 求職者の人たちに、自分に合った会社を見つけて応募行動が取れるようにするための機能として、リコメンドというのは大変重要な役割を果たしていると思うのです。リコメンドというのは、何回も繰り返しいろいろな種類のものが送られていくものなので、多くの求人情報が載っていることもありますし、少ない数のものが送られるときもあります。こういうことが何度か繰り返されて、その中で自分に合ったものを見つけて応募するということになっております。以前の議論にもありましたが、どのくらいの量の求人情報なのかという点で、そこに線を引く意味はあまりないのではないかと思うのです。
 一度にたくさん送ると、今度は逆にまた分からなくなってしまうので、もう少し絞り込んで送ってほしいというのが常に求職者からの要望としては出ているということです。こういうものが工夫されることによって、実際にはミスマッチを防いだり、転職希望者にきちんと最終的に転職先が見つけられるように促していく精度を上げていくということに民間の事業者は取り組んでいるということで、情報提供としてお話をさせていただきます。
 
○安藤委員 求職者等の保護のところで、AIの規制などとありますが、こういう話もこれからどういう方向に進んでいくのか、かなり懸念を持っております。例えば、事業者がサービスとしてAIのソフトを提供するというものについては規制というものが馴染むのかもしれません。例えば、EUの案をみると、ハイリスクに分類されて、そういう場合は第三者機関による事前審査を経て、EUのデータベースに登録される、宣言書にサインして市場での使用が認められるとなっています。これはあくまで市場で使う場合です。
 一方で、例えば、個別の企業が自前でデータベースを作って、そこから共通の要素を抜き出して、応募者の履歴書と当てはめて評価するみたいなことをどうやって防止するのか。私の手元に学部生でも頑張れば読めるぐらいの学部上級、大学院初級ぐらいの教科書があるのですが、これを使うだけで、無料のソフトと組み合わせれば自然言語処理ができて、何かの文章と何かの文章が似通っている度合いみたいなことが判定できてしまうのです。
 企業がこのような新しいテクノロジーを使うことを実効性を持ってコントロールするのはなかなか難しい時代になっています。また、質が高いものを使ってくれるのでしたらまだしも、自前で、あり合わせのソフトなどをうまく組み合わせた場合には、もしかしたら質が低いかもしれないという観点で、実効性を持って社会に適用していくためにどのように考えればいいかというのが今後の課題かなと思って、お話を聞いておりました。
 
○山川委員 今、安藤委員の御指摘になった点で、特にAIやIT技術の活用に関することですが、ここで欧州委員会の案が出ていますが、雇用仲介ビジネスに限った話ではどうもなさそうで、雇用や従業員のマネジメントに用いるAIは、「ハイリスク」に分類ということで、企業経営、人事管理一般の話として出てきているような感じがします。
 そうしますと、この問題は雇用仲介事業だけの話ではなくなってくるかと思います。出発点の所で、仲介だけではなくて、いろいろな形でアウトソーシングという事業形態が出てきているということでしたが、言わば、それの裏返し的に、仲介の側面だけでなくて、いろいろな所で使われる可能性が出てきているということで、ここについてはEUの動向等も見ながら、意識しておくことは必要かと思いますが、直接何か、今、仲介ビジネスについてどうこうというレベルには、まだ正直言って達していないのかなという感じがします。
 
○武田委員 今、山川委員がおっしゃられたとおり、雇用仲介だけの議論ではないと思いますので、本研究会で何か結論を出すという話ではないと思います。今後の参考のために教えていただければと思いますが、日本では、総合イノベーション戦略推進会議で、数年前に人間中心のAI社会原則が決定、発表されております。基本理念として、人間の尊厳が尊重される社会、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会、持続性のある社会が打ち出されております。雇用とはいずれも関係致しますが、特に人間の尊厳であるとか、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できるとか、その辺りと絡んでくると思います。
 政府のこれまでの検討の中で、雇用関係でのAIに関する基本原則、プリンシプル的なものは議論されたり、検討されたりしたことは、過去にございますでしょうか。
○事務局 雇用というものに限った形でAIの活用に関する何らかの原則、プリンシプルが示されたことがあるかについては、確認させていただきたいと思います。
○武田委員 承知いたしました。世界での動きを踏まえた上で、日本の状況を知ることが大切と考えました。
 
○鎌田座長 では次は、人材サービスの役割と業界団体の役割について事務局より一緒に説明をお願いします。
○事務局 人材サービスの役割と業界団体の役割に係る資料について、説明いたします。
 「議論の整理」では、人材サービスの役割として5つ記載しております。「企業向けサービスである一方で、今後少子高齢化が進む労働市場にあっては、求職者に寄り添う形での事業運営を強く意識すべきであり、インセンティブ付け等によって市場全体としてもそのような事業運営を促進するべき。」「IT化等により情報の非対称性が軽減される中で、最後に人が決断を後押しする、キャリアの相談をするといった役割は重要。」「雇用仲介サービスが提供する情報の質は、事業者やサービス形態によらず情報を取り扱う者の質に依存し、影響を受けている。人材サービスに従事する人材の質の確保、職業・雇用に対する理解が重要。」「事業を行う者として、カスタマー等からの苦情処理を確実に行うことは当然であり、特に求職者が相談しやすいような体制を整えるとともに、サービスの内容に説明を尽くすべき。」「苦情処理の状況について市場全体で情報を公開することで、人材サービスの競争力を保ちながら適正化を図るべき。」。
 求職者からのヒアリングにおいては、「マンツーマンサポートの話やハローワークなどでサポート体制の担当者などもいて助かった。」「民間の場合、どの事業者を選ぶかというよりは、事業者の中で質が高い方にたまたま担当してもらえれば、質の高いサービスを受けられるという状況である。」というお話がありました。
 続いて、担当者の質ということで資料を用意いたしました。許可制の下に置いている職業紹介事業においては、職業紹介事業者に職業紹介責任者の選任が義務付けられています。法の趣旨、職業紹介責任者の職務、必要な事務手続等について講習を実施し、職業紹介事業者における事業運営の適正化に資することを目的としております。こちらが責任者講習です。許可更新に当たっても、過去5年以内に職業紹介責任者が講習を受ける必要があるという形で対応しているところです。下のほうに講義課目などがあり、こちらを実施しています。
 職業安定法における規定は、第32条の14において、職業紹介事業者は、職業紹介に関し次に掲げる事項を統括管理させ、及び従業者に対する職業紹介の適正な遂行に必要な教育を行わせるため、厚生労働省令で定めるところにより職業紹介責任者を選任しなければならない。責務として、苦情の処理、個人情報の管理等が掲げられています。
 それから、全国求人情報協会様に御提出いただいた資料を再度付けております。全国求人情報協会様の中でアンケートを取っていただいた結果、苦情処理については受付窓口をウェブサイトや求人情報紙に掲載している、専用メールアドレスで受け付けている、適宜電話により各担当者が個別に対応している、という回答が多くなっております。何らかの形で苦情・相談体制の処理が行われているということでした。
 続いて業界団体の役割です。「議論の整理」では4点ありました。「新しく人材サービスに参入した事業者は、自らを人材サービス事業者と認識しておらず、既存の業界団体に吸収することは難しいのではないか。」「業界団体に入っていない新しいサービスが多く、業界団体による実態把握や適正化は難しい状況にせよ、雇用仲介サービスにおける理念や課題の共有を行っていくべき。」「業界団体の加入企業がより高いサービス水準を作り、事業者全体の質の向上の推進を図るべき。」「業界団体としても、事業者に対する苦情に、中立的に対処していくべき。」という4点です。
 労働者派遣法には事業主団体等の責務という条文があり、第47条の11に「派遣元事業主を直接又は間接の構成員とする団体は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護が図られるよう、構成員に対し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならない。」、第2項として、「国は、事業主団対に対し、必要な助言及び協力を行うように努めるものとする。」という形で事業主団体の責務を定めている例があります。また、こちらも全国求人情報協会様からの提出資料ですが、同協会が団体の加入条件として、求人広告倫理綱領や求人広告掲載基準などを設け、こちらを加入の条件としている状況です。
 また何度か本研究会で話が出てきておりますが、「求人情報提供ガイドライン適合メディア宣言」ということで、求人情報提供の適正化推進事業で、厚労省から委託事業として行っていただいております。平成29年に構築された「求人情報提供ガイドライン」について、そのガイドラインに沿った業務運営を行うことを社会に対し意思表明し、適正化の取組を進めていく制度で、現在62社127メディアがこちらの宣言を行っているということです。
 「求人情報提供ガイドライン」にどのような内容が入っているかですが、例えば掲載を差し控えるべき事項や、求人情報の掲載前後に確認する事項として、新規に掲載の申し込みがあった求人企業・事業主については、訪問その他確実な方法により、調査を行うものとする、表現に留意すべき事項、掲載明示項目と掲載明示に努める項目などがかなり細かめに掲載されております。こちらを守るということを意思表明していただいた企業、求人メディアのみ、この宣言が可能になっている状況です。事務局からの説明は以上です。
○鎌田座長 それでは、説明についての御質問、御意見がありましたらお願いします。
 
○大久保委員 業界団体の役割ですけれども、今回議論のメインテーマになっております募集情報等提供事業において、取り分け業界団体の役割は重要だと私は考えております。特に全国求人情報協会ができたときから、もともと募集情報等提供事業というのは、職業安定法上の規制の対象となっている事業ではなかったこともあるので、自主的に掲載基準や守るべき倫理綱領といったものを作って、主要なプレーヤーが集まって業界団体を作ってきたということですので、法令に規定されていること以上に先んじて雇用仲介の課題に取り組んで、より高いガイドラインというか、より高い基準で会員を集めているということをやってきたのだと思います。
 その結果として、その条件を全部クリアできなくて、会員にはなかなかなれないという会社もあるのですけれども、実際には会員企業だけではなくて、新規に参入してくる人材サービス事業者が、この業界団体に加盟している企業群のやっている事業をある意味お手本にしながら事業の組み立てをしてきたりとか、あるいはその事業者にヒアリングに行って、情報収集をした上で事業の仕組みを作ったりというような形での影響があります。
 また、実際には新しい事業者、今回新形態と言われているような所の中に、業界団体に加盟している企業の出身者がやっている割合が結構多いということもあります。このように、業界団体が法令に少し上乗せしたところで理想的な姿を追い掛けていく形の組み合わせでやっていくというのが大変有効な方法なのかなと思います。ここにも求人メディア宣言がありますけれども、これは法令よりもかなり上乗せしたところでガイドラインが作られていて、それが理想形として示されて、これに適合しているメディア宣言をしている所については、ハローワーク等を通じて安心して活用できるメディアであるということで紹介をするというような連携は、更に進めていく必要があるのかなと思います。
 いずれにしても、法令だけで全部を、細かいところまで作り込んでしまうと、かえってそれを的確に守ろうとしている所に関しては、自由度が失われてしまって、更に先を行くという形の動機付けができなくなってしまったり、単純に求職者の利益というよりはコスト要因になってしまったりするところもあるので、うまく両方で割り振りをしながら理想的な雇用仲介事業の姿を作っていくことが重要なのかなと思っております。
 
○安藤委員 私からは2点コメントがあります。20ページの所で、最初に、求職者に寄り添う形での事業運営を強く意識すべきであるという点について、私のコメントも反映していただいたのか、インセンティブ付け等によってそういう形に向けていくという話があります。これについて、制度設計を考える上で善意に頼るというのはとても危険だという話を、授業で学部生向けにしています。パン屋さんは、早朝3時とか4時から準備を始めている。これは、おいしいパンを食べてほしいからという善意に溢れてやっているのかといったら、そういう人もいるでしょうけれども、朝7時台からお店を開けてパンを提供することで、しっかり利益につながるから、朝早くから準備しているのだというように、金銭的なメリットに応じて行動している人もいて、それが結果として消費者の利益になっているわけです。こういう観点から、求職者に寄り添う形での事業運営を強く意識すべきというよりは、消費者に寄り添うことが事業者によって自発的に選択されるようなルールや制度になっていることが求められると思っています。
 その後にもあるとおり、IT化によって情報の非対称性が軽減される方向になっています。そうなると、情報面で有利だからという点で専門家のアドバイス、相談を受けるという点から、これまでいろいろな要素が組み合わさっていた仲介事業の人材サービスの役割が幾つかの要因に分解されて、その中で更に重要性が増すものと重要性が軽くなるものがあると認識しています。
 選択肢が多すぎると適切に選べないというような行動経済学の研究結果などもありますし、情報の非対称性が軽減される、又は労働者、企業が自分で選べるようになる、選択肢を自分で目の前に準備できるということが必ずしも幸せなこととは限らないとも思います。多すぎて選べないということもあり得るなどということも認識した上で、円滑な取引が実現する、適材適所が実現するための議論ということで、今回の話はとても重要だと思っております。
 その上で、もう一点だけコメントいたします。職業紹介事業者の責任者講習などの仕組みについても、職業紹介をするためには担当者、責任者を置いて定期的に研修を受けないといけない仕組みになっていますが、こういうものも時代の変化に合わせて適切に見直されていくのかというのが私の関心事です。恐らくこの講習を受けている人は、これは義務だからやっているという人がかなり多いと推察しています。これが本当に役に立つものであったとすると、例えばこの講習が有料で、かつ義務でなかったとしても、当事者が自分で学びに来るはずです。現在の研修がそのようなものなのか、それとも当事者は希望しないけれども、是非これは受けてもらう必要があるものなのかが気になります。
 最近、新型コロナの問題も含めて、オンラインで自宅又は職場からこういう研修を受けられるような形になってきました。そうなると、行き帰りの交通のコストなども掛からないですみますし、また、より多くの人がこういう研修を受けることが容易になるとも考えています。リアルで講師が説明して、ここにある理解度確認試験を紙で実施するというものではなく、まずはビデオで受講してオンライン上で回答するというものであったとすると、運営のコストも相当下がるでしょう。これまで受講者、責任者が職場に帰ってから、周りの人みんなに今回勉強した内容をきちんと伝えているのかという点にも不確かなものがありますので、こういう適切な情報提供、特に法律又は様々な要求水準の変化等について、どうやれば人材サービスの皆さんたちに適切に新しい情報に触れてもらえるのかということについても、今後更に見直しが必要かと思っています。以上です。
 
○中田委員 人材サービスの方たちで良心的な方たちは、マッチングが終わって終わりではなく、その後もずっと仲介をした人たちの様子を見ていて、本当にその人たちが定着しているのかどうか、その人たちにとっていい仲介だったのかというところを検証していただいているように思います。どれだけ定着しているかということで企業とのマッチング、相性を見ていて、次のものに生かされているのではないでしょうか。万一紹介した人たちがうまくいっていないのであれば、また次の紹介につなげようというところもあると思います。そういったノウハウがAIにも使われていって、AIでマッチングしていた人たちが実際にどうだったかというフォローアップを掛けることによって精度が上がっていくことにつながっていくと思います。
 業界団体の方たちにお話をお伺いして、非常にしっかりしたことをやっておられると感じました。先ほどもお話がありましたが、そういった業界団体に参画できる、加入できるということがステータスになって、優良な業界団体のサービスがどんどん大きくなっていくという形で、好循環が回っていくといいと考えます。
 
○山川委員 今までの委員の皆さんとかなり共通しているのですけれども、人材サービスの役割と業界団体の役割は、かなり関連している部分があると思います。個々の企業の利害を超えた、言わば業界全体の質を向上させるという役割と、もう1つは、多分国の職業安定機関との連携の窓口のような役割もあるのではないかと思います。そうした観点からすると、人材の開発、あるいはスキルの向上で責任者講習の話等も出ましたけれども、この点を強制するのか否かは多分職業紹介事業で許可制との関連があるので、その辺りも考える必要はあるのではないかという感じがいたしますが、少なくとも推進することは、業界団体の果たす役割として考えれば重要かなとも思います。
 その他に、先走って雇用情報の所等で申し上げてしまいましたけれども、いろいろな行政情報や法令が出たときに周知をしたりコンプライアンスの促進に協力することは業界団体の役割として重要と思います。あとは、先ほど武田委員もおっしゃった日本版O-NET、共通フォーマットを作る、改善する、ないし促進していくというようなときにも、業界団体は個々の企業の利害を超えた役割を果たし得るのではないかと思います。労働者派遣法にも例があるということですので、そういう役割を国として推進していく、支援していくということもあり得るのではないかと思います。
○鎌田座長 ありがとうございます。安藤先生の御意見に対して、事務局から補足をお願いします。
 
○事務局 職業紹介責任者講習ですが、本年度からオンラインによる講習を既に行える形になっております。紹介責任者講習をやっている団体や機関において、オンラインでやること自体は問題がないと考えております。オンラインでやる部分もあればリアルでやる部分もあるという形で、現在対応を行っているところです。その結果がどうなっているかは、今年度から始めたばかりですのでまだ出ておりませんが、そういう取組を行っているということで紹介させていただきます。
○安藤委員 オンラインで実施すると言ったときに、例えば実際にカメラの向こうに人間がいて解説するようなスタイルもあれば、オンラインのビデオ動画を見てオンラインの試験を受ける、人が反対側にいないようなものもあり得ると思います。どういう形でやるのがより伝わるのか。人がきちんと説明しているほうが伝わる場合もあるでしょうし、そのほうが、適宜質疑応答などができるというメリットもあります。1回ビデオや教材のシステムを作ってしまえばそれを何人でも受けられるという意味では、オンデマンド型にするということにもメリットがあると思いますので、今後はより実効性を持つ形を更に検討していくとよろしいかと考えております。
○鎌田座長 ありがとうございます。では、私からも一言申し上げます。サービスの向上ということを考えた場合に、何よりも大切だなと思うのは、苦情を受け付け、その苦情に適切に対処し、そしてそれを業界、あるいは全体で共有化するということではないかと思っております。その苦情も、求職者から来る苦情もあるでしょうし、求人者から来る苦情も当然考えられるわけです。そういったものに、この人材サービス事業を営む人たちが、それなりのコストも掛けながら対処していくということが、このサービス向上にとって非常に重要なことではないかと思っております。
 既に先ほど来、全国求人情報協会という業界団体の取組の御紹介がある中で、全国求人情報協会様の加盟企業では実際にやっていることでもあります、職業紹介事業者については責任者がやるということがはっきりしているのですが、募集情報等提供事業に関しては今言いましたように、業界として取り組んでいるということで、こういったことを更に進めていただきたいと思っております。
 さらに、業界に加入していないサービス事業者の方たちもたくさんおられるかと思います。そういう方たちの苦情の受付ということになると、やはり業界団体、あるいは行政機関といった所にも寄せられるのかと思います。そうしたことも、先ほど言いましたように受付をし、それについて何らかの形で関与し、それを共有化する仕組みを是非個々のサービス事業者、それから業界全体として考えていただきたいと思うのです。そうすれば、この事業やこういう業界の信頼性も高まっていくのではないかと思っております。
 ほかにありますか。特に御意見がないようですが、かなり時間も経っておりますので、本日はこの辺りで議論を終了いたします。
 本日も活発な御議論を頂きありがとうございます。職場情報・募集情報のフォーマット化については、労働条件以外の雇用情報、周辺情報についても求職者に伝えていくことが重要であるということが、皆さんの御意見にあったかと思います。さらに、日本版O-NETを活用する、あるいはそれを使いやすくしていくことも含めて、共通言語化するということについても、一層の努力が必要だということが言われたのではないかと思っております。
 公共の役割については、これも皆さん大体同じようなお考えかと思いますが、ハローワークの役割として就職困難者への対応をしっかりと押さえておく必要があるだろうと。ただ、それだけではなくて、労働市場全体についての情報の把握も大切だろうという御意見だったと思います。
 それから求職者保護の面では、特にAIなどに関する様々な議論があったと思います。この点については、なお諸外国の動向を踏まえながら、さらに、雇用仲介事業だけにとどまらず、様々な観点を踏まえて検討を進めていく、考えていく必要があるのではないかと感じました。最後に、人材サービスの向上に関しては、業界全体の質の向上を図り、その中で人材サービスに従事する人材の育成などの面でも果たす役割が大切ではないかと思います。
 今回まで個別論点について御議論いただいた内容は、事務局において整理をお願いいたします。今後の研究会の持ち方については私に一任いただき、改めて事務局を通じて委員の皆様にお知らせいたします。こういった進め方でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○事務局 次回以降の日程については、決まり次第、各委員に御案内申し上げます。よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○鎌田座長 本日は御議論ありがとうございました。これにて終了いたします。