第12回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和3年3月1日(月) 14:00~16:00

場所

労働委員会会館7階講堂
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. (1)職場における化学物質等の管理のあり方について
  2. (2)その他

議事

○課長補佐 本日は大変お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、第12回「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を開催いたします。
本日は、三柴委員、中澤委員が御欠席となっております。それから毎回のことでございますが、感染予防ということでマスクの着用を傍聴の方も含めて、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、議事進行を城内座長に、よろしくお願いいたします。
○城内座長 はい、承知いたしました。まず、事務局から資料の確認と本日の議事の進め方について説明をお願いいたします。
○課長補佐 お手元のタブレットに、配布資料として、資料1~3、それから参考資料をお配りしております。本日の議題は3つ設定させていただいております。前回取りまとめていただいた「中間とりまとめ」を踏まえ、その中で更に、もう少し具体的な議論が必要だと思われることについて御議論いただきたいというのが、1つ目の議事でございます。それが資料1の関係です。それから、前回御議論いただきましたものを踏まえて、更に検討を進めたいということで、「化学物質管理を担う専門家について」を2つ目の議題として、資料2を準備しております。
それから、もともとこの検討会で議論をするというテーマにしておりましたけれども、まだ議論できていないテーマの「化学物質による遅発性疾病の把握について」というテーマについて、資料3を御用意しておりますので、本日御議論いただければと思います。
議論の参考として、取りまとめていただいた中間とりまとめを、参考資料として付けております。御確認をよろしくお願いします。
○城内座長 それでは、議事にしたがって進めたいと思います。1番目、中間とりまとめの具体的進め方について、資料の説明をお願いいたします。
○課長補佐 資料1を御覧ください。資料1の表紙に、御議論をお願いしたいテーマとして5つほど挙げております。ラベル表示・SDS交付の義務拡大の進め方、自律的な管理実施状況のモニタリング、SDSの記載内容の見直し、中小企業に対する支援措置、それから将来的な規制のあり方です。まず、1つ目の義務拡大の進め方については、1ページ目を御覧いただければと思います。中間とりまとめの所にございますけれども、国によりGHS分類を行ったものについては、全ての物質をラベル表示・SDS交付の義務対象とすることにしており、この義務対象の拡大の進め方について、もう少し具体的に御議論いただきたいということです。基本方針、こちらは2月15日に開催しました本検討会の下に設けておりますワーキンググループでも御議論いただいた内容と同一の内容ですけれども、基本方針として、今現在、モデルラベル・モデルSDSを作成している3,018物質になりますが、今現在、正確に言うと674物質になっていますけれども、既に義務対象となっている674物質を除いたもののうち環境有害性の情報しかない物質を除いた上で、残りの物質の義務化を進めていくことを想定しております。具体的には、2021年度から対応を始めるということです。下の想定スケジュールの所にありますけれども、毎年700物質程度の義務化をしていくということです。ただ、義務化をして、すぐに施行ということではなくて、準備期間を想定し、施行までの経過措置として2、3年程度おいてはどうかという案にしております。
2ページに、拡大の具体的スケジュールを載せています。まず1年目となる2021年度、来年度については、発がん性、生殖細胞変異原性、生殖毒性、急性毒性のカテゴリーで区分1相当の高い有害性を有する物質700物質を対象にする。2年目となる2022年度には、それ以外の区分1相当の物質、それから区分2相当の物質を対象にする。3年目に残りの物質を対象とするという進め方をしていってはどうかということです。既にGHS分類が終わっている物質はこういう進め方をしつつ、同時に、新たに危険有害性が判明した物質は順次、GHS分類を進めていくことにしておりますので、新たにGHS分類を国が行った物質については、2024年度以降に義務化の対象としていくことを想定しております。それを少し図で示したものが3ページになっております。
3ページの上の欄がGHS分類の進め方で、下の欄が義務対象とするものの進め方になっております。初めの3年間は、このタブレットで見ていただいている方には黄色く表示されていますけれども、700物質ずつ3年間、既にGHS分類が終わっているものを対象にしていきます。その間も、新たな国によるGHS分類が行われていくわけですので、その3年間分の新たなGHS分類についての義務化は、2024年の4年目にまとめてやってしまおうというイメージです。2024年以降の新たなGHS分類の物質はその翌年度に、それぞれ義務化の対象にしていくという進め方でどうかと考えております。
4ページ目が2つ目の論点になります。「中間とりまとめ」で、自律的な管理についてのモニタリングをどうするかということです。論点の1つとしては、まとめていただいたリスクアセスメントなどの自律的な管理の実施状況の記録の保存期間をどうするかということについて考え方を整理いただければということです。事務局からの案として、下の論点の所にお示しております。
労働安全衛生法関係の書類の保存期間がおおむね3年間となっていることも踏まえ、こちらも3年間の保存としてはどうかということです。括弧書きの「ただし」の所ですが、リスクアセスメントの実施結果は、自律的管理を行う上では非常に重要な情報となると思いますので、リスクアセスメントを次にやり直すまでの間は、前のリスクアセスメントの結果を残しておくということで整理をしたらどうかというのが1つ目です。
2つ目は、後ほど御議論いただきます専門家の議論とも関わってくるのですけれども、中間とりまとめの中でまとめていただいている「化学物質の取扱いの規模が一定以上」の企業については、定期的に専門家による自律的な管理の実施状況について確認・指導を受けるということでまとめていただいております。これについて、そもそも専門家はどういう観点で確認指導をするべきなのか。それから、具体的に一定規模以上というのをどういう基準で考えていけばよいのか。また、定期的な確認をどれぐらいの頻度で考えていけばよいのか。これは先ほどの記録の保存期間とも絡んで議論となると思います。それから、一言で専門家といってもどういった方による確認が必要なのか、これも後ほど議論に出てくるかと思いますけれども、業種とか業態によっても違うのか、規模によっても違うのか、そうしたことも含めて整理が必要かと考えております。
次に、5ページが3つ目の論点になります。SDSの交付を行う場合の記載内容について、「中間とりまとめ」の中には、記載されている事項が古いままの情報伝達がされないようにということで、定期的に危険性・有害性に関する情報を更新して確認することとし、更新した場合は再交付ということにしておりますが、論点として、この頻度はどのぐらいの頻度でやるべきなのか、また更新した場合の再交付はいつまでにやる必要があるのかといったことについて、もう少し具体的に整理をしていただければということです。
それから、(その他)の論点として2つほど挙げております。今回はラベルSDSの交付の対象物質が3,000まで増えることになります。今現在の労働安全衛生法のSDSの記載のルールにおいては、裾切値以上含まれる全ての物質について、その成分情報、これは含有率も含めて全部書くことになっています。対象物質が増えていった場合に、その記載内容が非常に増えていくのではないかといった論点。そもそも、このSDSの伝達の意味は、危険性・有害性の伝達をすることが主な目的ですので、非常に詳細な成分情報までSDSに書かせる意義はどういうことなのかということです。どこまでSDSに書かせるべき情報なのかということを改めて、もう一度御議論いただいて、きちんと整理をしていただくことが必要なのではないかということです。必要な情報を端的に伝えていくことが重要だと思いますので、その点でもう一度整理をお願いできないかというのが、(その他)の論点の1つ目です。
また、今回、推奨用途などを追加して記載することにしていますが、特に最終製品のSDSには、余り化学物質に詳しくない方も含めて、最終製品をそのまま使う方を想定して「貯蔵又は取扱上の注意」を書くことになっています。この中でも特に、どういった保護具を、その物質を使用するときに選択するべきなのかということについて、現状では「適切な保護具を使うこと」としか書いていません。あまり専門知識のない方にとっては、どういうものを使えばいいのか分からないという声も一部にございますので、このSDSに具体的な情報をどこまで書くべきなのかについても御議論をお願いできればということが、(その他)の2つ目です。
6ページが論点の4つ目です。これは主に中小企業支援をどうしていくかという課題ですが、中間とりまとめにまとめていただいています。特に管理が困難と思われるような物質等については、中小企業向けに国のほうでガイドラインを作っていってはどうかということをまとめていただいております。一口にガイドラインと言っても、今後どういうものが必要になっていくのかについて御議論いただけないかということです。論点の2つ目として、例えば具体的なガイドラインなり、マニュアルという言い方になるかもしれませんけれども、こうしたものが定められた場合に、それに準じてガイドラインどおりにやっている場合について、改めてリスクアセスメントを行うことを求めるのか、それともガイドラインに沿ってやっていることをもって、リスクアセスメントはやったという取扱いができるのか等、これは特に最終製品のユーザーを想定しての議論になりますけれども、どこまでの対策を中小企業なり、若しくは化学物質に詳しい方がいないような業種も含めて求めていくのかについて、もう一度整理が必要なのではないかということで論点に入れております。論点の3番、4番は、中間とりまとめの2つ目にも関係するのですが、中小企業向けの化学物質管理支援システムやポータルサイトについては、どういう機能を持たせるべきなのか、必要があるのかという点について、いろいろな御意見を頂ければと考えております。
最後の7ページは、少し将来的な課題にもなりますが、今回、中間とりまとめにおいても規制のやり方を大きく変えるということで、これまでは国がリスク評価をして特化則などに追加するというやり方で、今後は基本的に自律的な管理を中心にしていく。国は、ばく露限界値などを決めていくけれども、具体的な対策の措置の内容は、法令では決めていかないという規制に移行しようとしているわけです。こうなってきますと、当面は特化則や有機溶剤中毒予防規則等は維持するということにしていますけれども、今後その2つの規制が並立する形がしばらく続くことになると思います。将来的に、この2つの並立する規制をずっと続けるわけにもいかないと思いますので、将来どういう方向にもっていくべきなのかについて、今の時点で全て決めるということではございませんけれども、将来の青写真について整理をしておく必要があるかなということで、こちらも論点に入れさせていただいております。私からの説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
○城内座長 ありがとうございました。中間とりまとめについては委員の皆様方に御協力いただき、2月1日の安全衛生分科会にも報告いたしました。幾つか具体的な論点について詰める必要があるということで、今、御説明を頂きましたが、論点が5つ挙げられておりますので、順に議論をお願いしたいと思います。まず最初に、資料1-1の3ページ、「ラベル表示・SDS交付の義務拡大の進め方」について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
○永松委員 日化協の永松です。これについては、私どもの会員の皆様から多くの意見が寄せられております。基本的に義務を拡大していく上で、事業者がスムーズにと言いますか、円滑に進めていく取組にしていただきたいのです。具体的な意見は幾つかあります。例えば、移行期間をどういうように考えるかとか、先ほどの御説明にもありましたけれども、このような計画でやっていく上で事業者にとってSDSの更新時期、その事業者が作っている製品に関わるSDSの見直しに3年間かかるとしますと、毎年更新しなければならないことになりかねないわけです。例えばAという物質、Bという物質、Cという物質を使っていて、それらが1年ごとに見直されると、AとBとC全てを使っていれば全部やり直さなくてはいけないということもあります。そこら辺を、より具体的に、どういうように進めていただけるかということを是非検討していただきたいという意見です。
もう1つは、SDSについては2022年5月に改正JISを適用するということで、今も進められていて、その準備をやっている所もあるのです。そこも踏まえた上でやっていただかないと、やるべきことではあるけれども、事業者の負担が大きくなりすぎる場合があります。この点も踏まえた上で考えていただきたいという要望が出ております。是非、これも具体的にいろいろと御検討いただければと思います。私からは以上です。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。今、3番目のSDSの記載内容の見直しにも少し触れられましたけれども、それも含めた上で結構なので、御意見があればお願いいたします。
よろしいでしょうか。では、私のほうから補足させていただきます。SDSの記載内容の見直しと交付の義務拡大の件についてですが、JISでは、危険有害性に関する新たな情報が入った場合には更新することが望ましいというような書き方です。しかし、GHSのほうでは、3年、5年ごとぐらいで改定することを行政が決めてもいいという書き方になっています。私も、3年というのは短いのではないかという気がするのです。例えば5年にして、なおかつ事業者のほうに危険有害性に関する新しい情報が入ったら、その時点で更新するというのが現実的ではないかと思っていますので、参考にしていただければと思います。
それから、JISの改定版が2022年というお話がありました。実は今、日本のJISはGHSの6版が基準になっています。ところが、既に世界的には7版で走っています。そうすると、日本と世界の差がちょっと出始めることもあるので、私としては、今度出る9版に合わせて、日本のJISを改定したほうがいいのではないかと個人的には思っています。ただ、JISの改定は、日化協さんの事務局と経産省の動きが絡みますので、ここで決めるわけにはいかないのですが、その辺も見ながら検討していく必要があるのではないかと思っています。
そのほかにありませんか。では、ラベル表示・SDS交付の義務拡大の進め方のタイムテーブルが出ていますけれども、基本的には、この進め方でよろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、次の議題にいきたいと思います。「自律的な管理の実施状況のモニタリングについて」ということで、資料1の4ページにあります。これについて御意見はいかがでしょうか。漆原委員、お願いします。
○漆原委員 まず、4ページです。ここで保存期間が3年間と提起されております。今後検討されておりますが、「遅発性疾患」の確認への影響を考えれば、発がん性が疑われている物質を含めて、一律に3年はいかがなものでしょうか。自律的な管理になるとしても、物質ごとの危険有害性は異なるので、全てが一律3年で本当にいいのか疑問です。あと、混合物の扱いについては、企業秘密等もあって、なかなか情報を出せないということも当然あろうかと思います。しかし、含まれる物質が何パーセントという細やかな数値までは求めるつもりはありませんが、どういう物質が配合されており、それぞれの物質の有害性や、どういう保護具を使用し、どの程度対策をすればいいかという情報は、混合物であっても必要であると思っております。その次の論点に移ってもよろしいですか。
○城内座長 はい。
○漆原委員 7ページの「将来的な規制のあり方(特化則等の位置づけ)について」です。ここでは今後、特化則などの規制を今後をどうするかということですが、当面は維持するべきであろうと思います。とはいえ、自律管理というものが、どの程度の期間を経れば広く中小あるいは零細企業においても、うまく浸透し、機能していくのかというのは、現段階ではわかりません。そこで、広く浸透した状況が確認できるまでは少なくとも現状を維持することが大切です。そのためには、特に中小零細企業においても自律管理が浸透するインセンティブが必要ですし、しかるべき経過措置が必要になるのではないかと思います。
仮に将来的に自律管理に統合する際の課題として、情報の保存・管理があります。今は健康管理手帳などにより情報を長期間、労働者も把握できるシステムがあるわけですが、当然そういったシステムの構築や維持が必要でしょう。また、特化則だと、情報の保存期間は結果的に長くなるので、自律管理になったことよりそれが短縮してしまうような形の齟齬がないようにすることが必要ではないかと思っています。以上です。
○城内座長 そのほかにいかがでしょうか。宮腰委員、どうぞ。
○宮腰委員 宮腰です。今後自律的管理において、記録を取ったり等、いろいろ実施していく上では、当然、事業所内の安全衛生管理が重要になると思っています。その中において、モニタリングの結果についても、事業所で働く方たちに対してきちんと情報を共有する必要があると考えております。その仕組みをしっかりやっていくためには企業規模に関係なく、特に労働者数50人未満の所などは安全衛生委員会そのものも、なかなか開催していないという状況にありますので、そういった所に対して支援制度をしっかりと設けていただきたいと思っております。
もう1点は、これから外部に、例えばインダストリアル・ハイジニスト等の専門家に、指導を受けるという形になったとすると、費用がどれだけ発生するか。いずれにしても、特に中小の所に費用負担が重ならないように、何か支援制度を設けていただきたいということをお願いしたいと思います。以上です。
○城内座長 名古屋委員、どうぞ。
○名古屋委員 2番目の化学物質の取扱いの規模が一定以上の企業とか、定期的とはという中で、取扱いの規模が一定以上について、具体的に何を基準とするかに関しては、化学物質のリスク評価企画検討会でリスク評価対象物質の選定の際によくあるのですが、やはり化学物質の取扱い量が多いほど、そこで働く作業者がばく露する可能性があるということで、選定対象の参考にしています。今、リスク評価対象物質は年間500kg以上の製造・取扱いがある事業場ということになっていますけれども、それはちょっと取扱い量が多くて選ばれる事業場の数が少ないので100kgとか。それが妥当なのか、あるいは50kgでいいのかどうかは分かりませんが、年間100kgぐらいにして選ばれる事業場を広げたほうがいいのではないかと思います。
もう1つは、定期的ということになると、作業環境測定も、健康診断も6か月に1回ですので、6ヶ月に1回を定期的としたほうが慣れているのでいいのではないかという気がします。
それから、これは後から出てくると思うのですが、外部人材を入れたほうがいいかということです。これは常時ということではないけれども、指摘することに対しては、外部人材のほうが、事業主にはプレッシャーになると思うので、やはり何か外部人材を入れるような要件にしたほうがいいのではないかと思っています。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。永松委員、お願いします。
○永松委員 まず、自律的な管理の実施状況を記録しておくということで、中間とりまとめで出されたのは、具体的には情報伝達と、リスクアセスメントの実施義務と、ばく露濃度に関わるものと、保護具に関わるものの4点かと思うのです。これについて化学物質を取扱う多くの事業者は業種も違いますので、何らかのガイドラインと言いますか、こういうもので残すというものがあったほうがいいのではないかと思っております。
それから、専門家による実施状況の妥当性というところです。2つ目のところでも議論になるかとは思いますけれども、取扱っている化学物質の量とか種類とか、特に化学産業の皆さんであれば中間原料としての取扱いは多いのですが、その他の所では、いわゆる業務用の最終製品ということも大変多いと思います。ですから業種によってどのような方が必要かということを考えた上で、取り組むことが合理的ではないかと思います。そういう意味では、最後にある社外人材であるということを要件にする必要はないと思っております。一方、社内に適当な人材がおらず社外人材が必要な業態・業種については、活用するということが重要ではないかと思っております。私のほうからは以上です。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。高橋委員、お願いします。
○高橋委員 最後の専門家を社外人材にするかどうかというところです。この後の議論でもう少し深掘りされると思うのですが、私のこれまでの認識では、それぞれの専門家の役割が多少オーバーラップしていると思っています。ハイジニストにしても、コンサルにしても、社内の衛生管理者にしても、誰がどのような役割をするかという部分がオーバーラップしているところがあるので、誰かがやるであろうという余地を残しておくのではなくて、誰がやるかを、ある程度定義付けした上で、人材を選ぶべきだと思います。
それから、新たにこういった自律的な管理に移行するというのは、これまでに起こっている災害を今後はなくしていく、減らしていくということですので、自律的な管理を企業に責任を持ってやっていただくということであれば、自浄作用が働くようにしていただかないと、逆にそれが甘い管理になってしまっては駄目だと思います。そういった意味でいきますと、ある程度外部の方を入れた体制を築くのがいいのではないかと思います。
○城内座長 そのほかにありませんか。一定規模、一定期間ということでのお話ですね。明石委員、お願いします。
○明石委員 まず、最初の記録の問題です。記録を取ることは必要だと思うのですが、記録主義にならないように御注意をしていただきたいと。記録だけを残しておけばいいという話で、記録だけが残って積み重なっていくのではなくて、やはりちゃんとした自律的な管理が行われることが大事だと思うので、できるだけそちらに重きを置いていただきたいと思います。
それから専門家の話ですけれども、産業医でも専属と嘱託があるように、内にいたり外にいたり、いろいろな方がいます。それをうまく活用することが大事ではないかと思います。いきなり社外人材といっても、そんなにたくさんいらっしゃらないような気がするので、そこはよくよく考えていけばいいような気がします。以上です。
○城内座長 そのほかにいかがでしょうか。名古屋委員、お願いします。
○名古屋委員 6ページの標準的な管理方法等をガイドラインにまとめるというのは、基本的なところはいいと思うのですけれども、そのほかに業種ごと、作業ごとの策定は、やはり必要ではないかと思うのです。例えば作業主任者の例、リフラクトリーセラミックファイバーが特化物になった時もそうだったし、溶接ヒュームが特化物になった時もそうだったのですけれども、必ず特化則の作業主任者の資格を取らなくてはいけないわけです。しかし特化則の作業主任者の講習会を受けても溶接の話は出てこないし、リフラクトリーセラミックファイバーについても同様で、講義の内容が分からないよということで、結果的には役に立たなかったという話をよく聞くのです。ですから、ある意味で基本的な管理方法等をまとめたガイドラインはあってもいいけれども、業種が明らかに違う所は業種ごとに作ってあげないと役に立たないのではないかと思うので、やはり業種ごと、作業ごとに作ってあげたほうがいいのではないかと思います。
○城内座長 今、話題が広がっていますので、どこからでもいいので御意見をお願いいたします。永松委員、お願いします。
○永松委員 5ページの3つ目の混合物のSDSについても、組まれる成分が持っている危険・有害性を配慮した上での危険有害性の結果なので、それ以上のことを求めても、ある意味、目的と合致しないという点があります。また、事業者にとっては営業上の情報も重要なものがあると思いますので、混合物のSDSを作っている場合には、そこは必要ではないのではないかと思っております。
4番目の最終製品のSDSが情報伝達される業種や職場は、大変広いイメージがあります。私どもの会員を含めて、推奨用途というのは当然あるわけです。ただ、その推奨用途で使用している業種や職場でどういう取扱いをするか、いわゆるばく露対策をどうしているかというのは、そこの用途は推奨であっても、作業の方法などは様々なわけです。したがって、これを提供されている事業者に具体的に適正な保護具を示すというのは大変難しいところがあります。逆に言いますと、提供者が想定していない取扱いをしている方に対しては、逆に間違った情報を出してしまう可能性もありますから、4番目は具体的に、どこまでならいいかという議論はあってもいいと思いますけれども、やはり取扱い方法やばく露対策は様々である点を踏まえた上での議論をしていく必要があるのではないかと思っております。
○城内座長 そのほかにいかがでしょうか。高橋委員、お願いいたします。
○高橋委員 今の5ページの4番目についてです。先ほど事務局からも御説明があったとおり、現場で、どのような保護具を使ったらいいかという専門的な知識のない所がそれなりにあるというお話でしたので、やはりこれは安全側に立って、ある程度の情報を流してあげないと駄目ではないかと思います。保護眼鏡が必要です、手袋が必要ですというだけでは、これまで以上の安全対策は引き出せないので、やはりそういった情報は出していただきたい。ただ、最終製品の使い方によってばく露対策は違うという御意見もありましたので、その辺も踏まえた上で、最低限ここまでは必要だというような情報の出し方でもいいので、何らかの情報が必要ではないかと思います。
○城内座長 永松委員に質問したいのです。ヨーロッパだと、ある程度メーカーがリスクアセスをしなさいというようになっていますけれども、例えば日系の企業でヨーロッパに行っている事業者は、どういう対応をしていらっしゃるのでしょうか。
○永松委員 すみません。私は具体的に存じあげないので、お答えできないのです。
○城内座長 何かヒントになるようなことがあるのではないかと思うのです。というのは、私はGHSを長いことやってきて、この頃やっと事業者側というか、製造メーカーがある程度、末端のリスクアセスも考えないといけないのではないかという欧州の考え方が、少し分かったような気がします。同じ物質で別の形態のものを作って事故が起きるということが、実際に日本でありました。物質名だけを見て政府が作ったモデルSDSを見ても、そのハザードが分からないのです。結局、作った側がどういう粒子で作ったのかといった情報がないと、多分そのハザードが分かりにくいところがあるのではないかという気がしています。そういうものを欧州ではどういうようにして情報伝達しているかということが分かれば、日本でも制度を作るときに役に立つのではないかという気がしたのでお伺いしました。今はお答えがないかもしれませんので、もし情報があったら教えていただければいいかなと思います。
○永松委員 ハザードという意味では、SDSがハザードの情報源ということで、それをベースにやっていきましょうということです。冒頭にも申し上げましたけれども、最終製品というものが、どういう形態をしているのかによって、ハザードの考え方も違ってくると思うのです。私どもも会員の皆さんの御意見を聞きながら、有用な情報はここで共有させていただこうと思います。
○城内座長 あと、先ほど永松委員からも、あと事務局からも発言があったと思うのですが、成分をどれくらい詳しく記載するかというのは、実はGHSを導入したときに結構誤解されていました。危険有害なものについてはSDSに書きましょうとか、ラベルに書きましょうというのは大原則ですが、SDSを作るときに、成分名を全部書きなさいというような話になってきたのです。先ほどおっしゃったように、そこは行政としても今後、情報発信をきちんとする必要があるのではないかと思っています。そうすると、先ほどの御懸念の、全部書かなければならないかもしれない、それは企業秘密が外に出るかもしれないというところが、ある程度ぼやけるというか、少し負荷が掛からないのではないかという気がします。その辺はもう一度、情報発信として、行政からもしっかり発信したほうがいいのではないかと思っております。よろしくお願いいたします。そのほかに何か御意見はありますか。大前委員、お願いします。
○大前委員 5ページのSDSの更新の頻度の件です。先ほど3年、5年というお話がありましたけれども、有害性の観点からいくと、発がん性なり生殖細胞の変異原性なりに非常に強い影響が新たに分かった場合は、3年、5年ではとても遅いと思うのです。影響の種類によって3年、5年でいいものもあるでしょうし、直ちに変えなくてはいけないものもあると思います。
○城内座長 漆原委員、お願いします。
○漆原委員 3.混合物のSDSについてです。意図的に混合させたものではなく、非意図的に生成されてしまう不純物についても、ここの混合物というカテゴリーの中という考え方でいいかどうかを確認したいのです。
○城内座長 GHS上は、それも含まれて有害物ですけれども、法律的には分かりませんので、事務局からお願いします。
○課長補佐 すみません。そこは整理をさせていただきたいと思います。
○城内座長 そのほかにありますか。永松委員、お願いいたします。
○永松委員 これは参考情報です。非意図的混合物として想定されるものの1つに、産業廃棄物みたいなものがあろうかと思います。これについては今、環境省のほうで情報伝達の改善が進められております。当然、廃棄物を出す人が廃棄物においても混合物としてのSDSを出せれば、それがベストなのでしょうけれども、なかなかそうはいかないという点もあります。また、廃棄物の種類は大変多いので、現在の環境省のお考えは、成分に関わるSDSを出しましょうということになっております。
○城内座長 そのほかにありませんか。大前委員、お願いします。
○大前委員 7ページの特化則の位置付けのお話で、これから先、特化則をどうするかということですけれども、将来的には特化則がなくなって、あるいは有機則等もなくなって、自律管理になるのが理想だとは思うのです。そのときには、特別則に入っていない物質で、ばく露限界値のあるタイプのものは自律管理がしっかりできているという評価にならないと、やはり特化則等々は抜けられないと思うのです。ですから将来、何年掛かるか分かりませんけれども、例えば10年後ぐらいに、もう一度自律管理の状況を評価して、もう特化則という規則を外してもいいよねということになれば、外していくのが理想だと思います。
○城内座長 そこについては、事務局から何か御意見はありますか
○課長補佐 おっしゃるように、自律管理という新しい仕組みがうまく回るかどうかというのは、ここに書いてあるように特化則をどうするかということを考える上で、前提条件になっていくと思います。具体的にどういう評価の仕組みにするかというのは、また御議論のあるところだと思いますけれども、そこは事務局としてもそういう考え方として受け止めたいと思います。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。
○大前委員 日本の場合は、どうしても事業規模で達成できるかどうかという問題がありますので、やはり中企業、小企業、零細企業の話と、大企業の話は別だと思うのです。だから全部同時に外すということではなくて、ひょっとしたら企業ごとに、できている所から外すという柔軟性があってもいいのではないかと思います。
○城内座長 永松委員、お願いします。
○永松委員 6ページの標準的な管理方法をどうするかということについてです。例えば、厚労省の職場のあんぜんサイトを見ますと、リスクアセスメントの進め方が非常に丁寧に書かれていますので、きっとあれをきちんとやっていただければ標準的な管理は必ずできているはずだと思います。私は、全てを網羅することはできませんが、やはり業種ごととか作業ごとにリスクアセスメントの進め方を策定することが、特に中小の企業にとっては有用ではないかと思います。特に、化学物質そのもののハザードを認識していても、作業方法や取扱方法におけるばく露のリスクがあってハザードが出現して、直接受けると言いますか、ばく露されることになります。そこをきちんと捉えていかないと、なかなかリスクアセスメントの実効性も上がらないと思いますので、私はこのように思います。
○城内座長 そのほかは、いかがですか。4ページの「化学物質の取扱いの規模が一定以上の企業は」の「一定」というのが、企業規模を分けるときには1,000人で分けるとか、300人で分けるとか、安衛法上は50人の所でいろいろ決まりが分かれています。事務局としては、この「一定以上」の「一定」に、ある数字がイメージされているのか、今後の議論次第なのかというところではいかがでしょうか。
○課長補佐 ここは具体的な数字のイメージ以前に、そもそも基準としてどういうものを使うかと。今、従業員規模ということをおっしゃったと思うのですけれども、我々がイメージしていたのは従業員の数と言うよりは、むしろ扱う化学物質の量をイメージしておりました。ただ、具体的にどれだけかというのは、今申し上げられるような段階ではないと思っております。
○城内座長 分かりました。永松委員、どうぞ。
○永松委員 その点においては、例えば量と種類、数と言いますか、その両方を考えていただいたほうがいいと思うのです。単品あるいは1つか2つしか使っていなくても、大量に扱っている方たちもおられると思いますし、その両方を踏まえて検討いただければ有り難いと思います。
○城内座長 前回の議論で、正確に使用量を把握するのはとてもできないだろうという結論だったと思うのです。例えば、それは申告制にするということも考えられるということでしょうか。
○課長補佐 ここは誤解のないように申し上げておいたほうがいいかと思います。これはあくまでも自律管理なので、取扱量を行政に報告していただくということを考えているわけではなくて、自分の企業の中で使っている化学物質の量を踏まえて、自らやっていただくということです。記録を残していただくので、きちんとされているかどうか、場合によっては行政側がその記録を見ることで確認するということをイメージしておりました。
○城内座長 分かりました。ありがとうございます。それでは、第1番目の「中間とりまとめに基づく具体的な進め方」についての議論は、ここまでにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、続いて議事の2つ目、「化学物質管理を担う専門家について」を議論したいと思います。資料の説明をお願いいたします。
○課長補佐 資料2を御覧いただければと思います。資料2の1ページは、前回お示しした資料を一応、もう一度載せているものですので説明は省かせていただきます。2ページを御覧ください。前回の御議論で出された主な意見ということでまとめさせていただいておりますが、ここにあるように、前回、例えば新たな専門家といっても、今いる専門家とのすみ分けとか関係性はどうするのかといったこととか、あとは業種とか規模によっても求められる専門家は違うのではないか、階層的にもう少し整理したほうがいいのではないかといった御意見が多く寄せられたということですので、改めて3ページ以降に、今後どのように議論していくかということを整理させていただいております。
まず、3ページは、この議論の土台となる考え方の整理ですが、これまでの規制は特別則を中心にやってきたということで、法令の中に具体的に何をするべきかということを基本的には全て書いてあるということでしたので、法令どおりやっているかどうかということが大事であったということです。そういうことですので、今配置されている衛生管理者とか、作業主任者、作業環境測定士等もそうだと思いますが、法令どおりの措置をきちんとやるということ、それから、法令に基づいてきちんと測定することが大事であるということになります。
真ん中の所ですが、今後、自律的な管理ということになっていくと、法令に何をすべきかというソリューションが書いてあるわけではありませんので、ラベルとかSDSによって伝わってくる有害性、危険性の情報等を拠り所にして、自らの事業所でやっている作業におけるばく露防止なり労働災害防止をどうやっていくかということを自ら判断する、そして実行することが求められていくということです。ただ、今も御議論にあったように、求められる判断のレベルというのは、業種とか業態によって大分違うのではないかということだと思いますので、業種とか業態に合わせてどういう人材が必要なのかということの整理をしていってはどうかというのが3ページです。
4ページは、具体的に細かく分けていくと幾らでも分けられるのですが、議論がしやすいように大雑把に3つのカテゴリーに分けて議論したらどうかということです。1つは原材料・中間物を製造しているメーカーです。2つ目は、先ほど最終製品といってもいろいろイメージがあるのではないかという御意見を永松委員から頂いておりますが、最終製品のメーカーということで、ここで言う最終製品のイメージとしては、追加で加工等を行わず、そのまま使用することが想定される製品としております。これもいろいろあるかと思いますが、そういう整理にしております。それから、3つ目のグループとして、最終製品をそのまま使うユーザーのグループということで分けられるのではないかと。
1つ目の原材料等のメーカーについては、扱う原材料は多種多様であるという特徴があり、こういったメーカーであれば一定の知識・経験を有する方というのがある程度既に配置されているのではないかという特徴、それから、情報伝達の最初の起点となるという特徴があるかと思いますので、こういった特徴に応じたいろいろなリスクアセスメントとか、ラベル・SDSの作成等が求められていくグループではないかということです。
2つ目の最終製品のメーカーということですが、ここは比較の問題です。原材料のメーカーよりは扱う化学物質の種類等は限定的なのではないか、知識・経験を有する人材というのは、いる場合もいない場合もあるのではないかといったこと、それから、重要な点としては、最終製品のユーザーに伝える情報をここが発出するということだと思いますので、先ほどの議論にもちょっとありましたが、具体的な保護具等を含めて、化学物質の知識がない人でも理解できるような情報伝達の仕方というのが重要になってくるのではないかということです。
3つ目は最終製品のユーザーということで、ここは基本的には取り扱う化学物質の種類等は限定的だと思われますし、知識のある方というのはほとんどいないというのが前提になるのではないかということですので、伝達される情報に基づいて、リスクアセスメント等自分の作業にどう適用させていくかということが求められる役割としては重要になってくるのではないかということです。
5ページですが、こういった点を踏まえて、それぞれどういうレベルの人材が必要とされるかということをすごく単純化して整理させていただいております。原材料等のメーカーなどについては、最も専門性の高い人材が求められていくのではないかということです。後ほどの論点にも出てきますが、例えばインダストリアル・ハイジニスト等の高い専門性を有する人材をどう育てていくかということにもつながってくるのかなと考えております。真ん中のグループは、そこまで高い専門性は要らないかもしれないけれども、一定の知見はやはり必要なのではないかということ、一番下のグループは、専門性というよりは、現場に即して必要な措置を選択できるような人材ということで育てていく必要があるのではないかという整理をさせていただいております。先ほど議論にあったように、大きい企業であれば自社内でこういった人材の確保ができるかもしれませんし、小さい企業であれば国などによる公的な支援が必要になるのではないかということで、一応イメージとして書かせていただいております。
6ページ以降は、それぞれのグループについてもう少し具体的に論点として書かせていただいております。まず6ページが原材料等のメーカーということで、1つ目のポツは今御説明させていただいたように、様々なラベル・SDSを作成するための知識とか、自社内のリスクアセスメントの実施とか、ここに書いてあるような様々な専門的な知識が必要となっていくのではないかということです。こうした人材を確保・育成するためにどういうことをしていく必要があるかということで、例えば、今いる専門人材で対応が可能なのかどうか、若しくは今、国でクリエイト・シンプル等のリスクアセスメント支援ソフトを開発しておりますが、それで対応できるものとできないものというのは、どういうものがあるのか。それから、先ほどお話したように、国際的な専門資格であるインダストリアル・ハイジニストについて、何か活用の余地があるのかどうか、こういったことについて論点になるのではないかということです。
それから、7ページが最終製品のメーカーということです。こちらは先ほど申し上げたように、エンドユーザーにどう分かりやすく情報を伝えるかということが1つ特徴としては重要になるのかなということです。そのほかにも、自社内のリスクアセスメントとか、そういったことについての専門性というのが求められるのだろうということで、論点については先ほどのものとある程度共通しますが、今の人材で対応可能なのかどうか。対応可能でないのであれば、どういったものが対応困難なのかとか、こういったことについて整理していってはどうかということです。
8ページの最終製品のユーザーというのは、基本的に専門家がいないことが前提に立つことになると思いますので、伝達されるラベル・SDSの情報をきちんと理解できて、何をすべきかを選択できるような、そういった人材や体制が必要となっていくのではないかということです。先ほど、ガイドラインの議論もありましたが、例えば業種ごと、作業ごとに最終製品のガイドラインを仮に作った場合、そのガイドラインどおりにやることがリスクアセスメントをやったことになると考えていいかどうかといったことも含めて、現場の実態に即して何をやっていただければ労働災害の防止につながるかということの整理をしていければなと考えております。
9ページは参考です。次の10、11ページを御覧いただくと、今回、日本化学工業協会様、化成品工業協会様に御協力いただき、簡単なアンケートを取らせていただきました。アンケートは、幾つかの項目について御質問させていただいたのですが、今回、専門家の検討に関係しそうな項目について、ちょっとこれは単純に集計した結果ですけれども、参考に取りまとめさせていただきました。10ページにあるように、1つ目は、化学物質管理体制でどういう課題を多く抱えているかということ、11ページには、今現在、化学物質管理の人材をどのように確保しているのか、今後どういった人材の育成が必要になってくるのかといったことについて、アンケートを取らせていただいて単純に集計した結果です。今回、御協力いただいた皆様は、先ほど申し上げた3つのカテゴリーでいうと、恐らく原材料のメーカーですので一番上のグループに属する方々というふうに捉えていただければと思います。また、同じアンケートを他のグループで取った場合は、また別の結果がおそらく出てくるのかなということも踏まえて御覧いただければと思います。
最後、12ページは先ほどの議論の続きですが、一定規模以上の企業についても定期的に専門家の確認・指導を受けるということについて、同じような論点になりますけれども、今回のどういった専門家を必要とするかという観点からも整理が必要かなと思っており、確認対象とする企業において、どういう作業が行われているのかとか、どれだけの種類、どれだけの量の化学物質が扱われているかによっても、専門家に求められる要件は変わってくるのではないかということも含めて、今回、専門家の議論と併せての整理をお願いできればなと考えております。
また、これは中小企業支援という観点ですが、先ほどから御意見が出ているように、中小企業に対して支援を行う専門家には、どういう役割を担わせるべきかということについても少し御議論いただければなと考えております。私からの説明は以上です。
○城内座長 前回の議論も踏まえて、改めて論点を整理していただきました。専門家を3つのグループに分けて、かなり分かりやすくなったと思いますが、これに関して御意見をよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。漆原委員、お願いいたします。
○漆原委員 意見としては3ページに対してになるのかもしれません。まず、「どういった人材が必要か」ということ以前に、そもそも自律管理を実施するかしないかにかかわりなく、そこで働いている管理者も労働者も、一定程度の化学物質の管理や有害性などに関する研修を受けるなどの人材育成も必要で、さらに経験を積んでいくことが重要です。そのうえで、そうした現場の体制にプラスして専門家が必要というような考え方になろうかと思うのです。
その上で、ここにあるように、確かに衛生管理者とか作業主任者というのは、適切に措置がなされているかの確認をするという役割ですが、とはいえ、既に化学物質を扱う現場で役割を担っており、一定程度の基礎ができている者もいると思われます。そういう人材にさらに活躍していただくために、更なる研修を用意することも重要ではないかと思います。新たに新しい資格を作ってそこに統合するよりも、既存の資格や資格所持者を活用していくほうが有効ではないかと思っております。
知識やスキルのブラッシュアップは、当然、定期的に行っていくということになろうかと思います。ただ、最終製品のユーザーのところについては、仮にその現場で何らかの資格を持つ者がいないとすれば、可能な範囲で既存の資格などの取得を促進するインセンティブを用意することも必要なのかなと思っています。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。
○漆原委員 あと、今回の議論とは直接関係ないですが、自律管理を運用するに当たって、必要となる専門家として産業医があると思います。自律的な管理にあたり産業医にも当然、新たな研修が必要ですし、産業看護職は化学物質の研修もゼロではなかったと思うのですけれども、追加的な研修等も必要なのではないかと思っております。作業環境測定の結果や、ばく露の状況と健康診断の関係も、それぞれの数字をリンクさせて判断できるような、そういった人材も必要なのではないかと思っているところです。それがハイジニストなのかどうかと言われるとなかなか難しいと思います。また、産業医が選任されていない50人未満の所をどうするかという議論も必要ですが、労働衛生機関も含めて、健診結果をそのような研修等を受けた医師・産業医の目で見ることも、外部人材としては必要なのではないかと思っております。以上です。
○城内座長 そのほか、ございますか。名古屋委員、どうぞ。
○名古屋委員 専門家の資格というところの中で、化学物質に関して言うと、衛生工学衛生管理者とか衛生管理者よりも、作業主任者のほうが適当だと私は思っているのです。衛生工学衛生管理者も衛生管理者も確かに事業場全体を見なくてはいけないから、衛生工学衛生管理者等の資格が作られたときには騒音から始まって暑熱、作業環境管理、作業管理など工場全範囲を管理するに必要ないろいろなことを知る必要があるから、それに必要な講義内容になっている。作られた当時から時代は変わってきているけれども毅然として、今でも同じ内容のことが必要で、且つ新しいことを加えながら実施しているから、化学物質管理をテキストには追加しても、限られた時間なので講義する時間も極端に少ないため、現在検討しているような化学物質に関する内容はほとんど扱っていないと思います。
だったら作業に従事する作業者が取得する作業主任者のほうが、はるかにそれに特化した内容を教えてもらっているから、作業主任者をうまく使っていくことであっても良いのかなと、ただ、対応可能かというと、会社のどの位置にいるかによっても違うので何とも言えませんが、本当に知っているのは作業主任者のほうが知っていて、その人たちがほかの化学の知識の講義を受けたときに、自分でやっているから聞いていても分かるのだけれども、他の資格を持っている人で通常は事務所で業務を行っているのに、必要に迫られてそうした講義を聴きに行っても、普段なじみがなく身に付いていないから、ただ聞いているだけの話なのであまり役に立たないことがあるのではないかと私は思うのです。やはり現場で扱っていて問題点を知っているから、聞いて覚えてくるのではないかなと。だから、作業主任者をもっとうまく使ったほうがいいのかなと思っているということです。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。大前委員、お願いいたします。
○大前委員 この専門家というのは、あくまでも自律管理をやるための専門家という意味だと思うのです。自律管理をやってそれなりのアセスメントをして、これからどうすればということを最終的に決めるのは社長でしょうけれども、提案するのは専門家ということになると思うのです。そうすると、当然、根拠がないと提案できないわけですから、結構しっかりした根拠を出せるようなタイプの専門家になろうかと思います。それを今の作業主任者や測定士、あるいは第一種の衛生管理者をやはり教育して使うというのが、取りあえずは時間的な問題も含めて、まず最初かなと。それプラス、将来的にはもう少し専門性の高いハイジニスト等というように順番にやっていかないと、最初からハイジニストを目指してしまうと10年後、15年後にならないと、自律菅理できないとか、うまくいかないということになってしまうと思うので、まずは衛生管理者等と。
でも、先ほど言いましたように、あくまでも法的根拠がないものに対しての提案をしなくてはいけない専門家ですから、これは相当きつい話になります。だから、そこのところも考えて、教育のプログラムとか、そこら辺をやらなくてはいけないのではないかと思います。
○城内座長 そのほか、ございますか。永松委員、お願いいたします。
○永松委員 ここで今、分類していただきました最終製品のメーカーやユーザーについては、先生方もおっしゃられたように、まずは専門家の方がやっていくのがいいのかなと思っております。私どもの会社のアンケートにもありますし、ここにも記載されているのですが、規模がある程度となりますと、インダストリアル・ハイジニストはおりませんけれども、その方たちが持っている多くの要件を、社内のそれぞれの人材で組織的に対応しているという状況だと思うのです。ただ、分け方にもよりますが、例えば経産省の分類によれば3,000社ぐらい化学産業と言われる方たちがおられます。そうすると、今回の議論の中で、どこの皆さんをターゲットにするかという議論をしていかないと、ちょっと大きくなりすぎるというか、実効性に時間も掛かるし、難しいのかなと思うのです。そういう意味では、先ほどありましたような作業主任者というのを軸にしていくのが、規模とか業態によらず、まずは横断的に考えられるのではないかなというふうには思います。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。では、私からちょっとお聞きしたいというか、意見を言います。私の考え方は、先ほど漆原委員がおっしゃったように、底辺から始めるというか、そういうのに近いのですが、作業主任者を決めなければいけないとは思っていないけれども、化学品を使っている所も結構あるのではないかと思っています。特に、私の話は小規模事業所に当てはめるべきではないかと思っているのです。ある通達の中に、化学物質管理者とかというのが確かありますよね。それは、制度としてはあるけれども、多分動いていないと思うのです。既存の資格制度をもっと増やすというのは、私もあまり賛成ではないので、その通達の中にある化学物質管理者をもっと教育してというか、グレードアップして、何とか制度の中に入れられないかなと思っています。
というのは、化学品を扱う業態は本当にいろいろあって、一般化できないもののほうが多いと思っています。例えば、建設で使うペイントでもそうですし、剥離剤もそうですが、現場によって全然使い方が違います。けれども、そこで働いている人は何をやっているか知っているはずなので、例えば、そこの人を会社から派遣してもらって、国がちゃんと教育をして戻ってもらって、ハザードを知るとか、次は何をしなければいけないかとか、法律的にどういうものが引っ掛かっているのかということをまず知ってもらって、それでその次のリスクアセスメントについては、彼らではなくて外部に頼むとか、何かそういうワンクッションがあって先に進めるのでなければ、小規模事業場対策はなかなか難しいのではないかと思っています。なので、できれば今ある制度をもっとうまく使う、もちろん作業主任者がいる所はそれでいいかもしれないのですが、それが賄えていない所がいっぱいあるのではないかなと思っていますので、少しその辺りも検討していただければいいかなと思っています。
そのほか、いかがでしょうか。大前委員、お願いいたします。
○大前委員 作業主任者というのは、特別則に関わっているだけですよね。今話している自律管理というのは特別則の外の話ですから、そこには作業主任者もいないわけですよね。だから、今の特別則の中の作業主任者を使うにしても、やはりしっかり教育をし直さないといけないと思います。先ほど名古屋先生がおっしゃいましたが、特化則の作業主任者の講義ってすごいですものね。あれでは何も解らない。
○城内座長 そのほか、ございますか。
○名古屋委員 ただ、最終製品のユーザーの所というのは、結局、作業主任者は廃棄もやっていますし、現場でいろいろ自分でも取り扱っているので、最終製品のメーカーの所ではなくて、やはりその下の最終製品のユーザーの所は意外と作業主任者が活躍できるのかなと思っている部分があります。原材料等のメーカー等の所は多分、資格を持った担当者がいますので、それなりに講義を受ければ専門性の高い人材は増えてくるのですが、現場に即して必要な措置を選択できる人材をどこに当てはめるかといったら、最終製品のユーザーの所では、作業主任者が合っているかなという感想です。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。永松委員、お願いいたします。
○永松委員 8ページの4つ目の○の所なのですが、「最終製品の使用の場面ごとにリスクアセスメントを行うことに代えて、最終製品を用いる作業が定型化できるのであれば」とあります。定型化された作業しか行えないのであれば、当然それがマニュアルということで残っていればよろしいかと思うのですけれども、ちょっとここの意図が少し分かりにくかったのですが。
○城内座長 事務局からお願いいたします。
○課長補佐 永松委員がおっしゃるように、全てにガイドラインとかマニュアルがあるわけではないので、そういうものがある場合に、という前提に立った議論です。
○城内座長 そのほか、ございますか。高橋委員、どうぞ。
○高橋委員 今のマニュアルとか、ガイドラインの話なのですけれども、それができていればリスクアセスメントができているというふうに判断していいかどうかということですが、そこで規定されていることができる職場というのは逆に限定されるのではないかなという気がします。それ以外の所のほうが圧倒的に多いと思うので、そこで判断するというのはちょっと違うのではないかなと感じました。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。何をやればリスクアセスメントを実行したことにするかということについては、私も高橋委員のような感覚があって、マニュアル化はやっても切りがないというか、多分マニュアル化し切れないだろうと思うのです。そうすると、多分これで職場では事故は起きないはずだと思ったら、すごくラフですが、それはそれでもいいのではないかと。ただし、何かが起きたときは罰があるというような話しかないのではないかなと感じています。
つまり、自主管理というのは、自分たちが決めて、こうやればいいはずで事故はないはずだと思えるかどうかだと思うのです。実はGHSの分類もそうなのです。自分たちがデータを集めて、これでハザードは網羅してというか集めて、それで分類して、これでいいでしょうというのが実は最初なのです。それを国で決めるか決めないかということは、また別のフェーズとしてあって、GHSというのはもともとそうで、リスクアセスメントはGHSではないですけれども、考え方としてはそれでいいのではないかなと思っていますが、それだと行政としては不安があるのかなという気もいたします。永松委員、お願いいたします。
○永松委員 私の経験上、当然マニュアルを作る場合にはリスクアセスメントをして、定型化されてしまっているので、そこからずれた作業方法では当然リスクが発生するわけです。そのために、マニュアルがあっても作業の前にはツール・ボックス・ミーティングなどによる注意喚起をやっている会社も多いと思うのです。今回の場合も先ほど申し上げたように、ある程度定型化できるのであれば定型化されて、それを守るということが安全上、一番大事だと思うのです。当然ずれることもあるからこそ、その前にKYミーティングとかツール・ボックス・ミーティングをやるというのが職場での安全確保のためには重要ではないかなと思います。
○課長補佐 ここの論点を挙げた趣旨をもう少し補足させていただきます。マニュアルとかガイドラインと書いたので、ミスリードだったのかもしれないのですが、厳密にリスクアセスメントというと、例えば実測法とかマトリックス法とか、すごく厳密にやらなければいけないと捉えている方が非常に多いです。実際、行政がそう言っているからなのですが。
仮に今回、例えば3,000物質が対象になると、多分ほとんどの所でリスクアセスメントをやらなければいけなくなると思うのです。全ての業種が全ての現場でリスクアセスメントができるのかという声もいろいろな所から頂いていて、確かに厳密なリスクアセスメントを全てに求めるとなると、できない、やらなくなるというほうに向くのは、それはそれでよろしくない方向だと思うので、実際、現場でできるやり方で、それが法令上きちんと自律管理をしているというように解釈できる範囲をどうやって決めていけるかということは、やはり整理しておいたほうがいいのではないかというのが趣旨でした。
○城内座長 これに御意見はございますか。先ほど発言させていただいたことの延長線上でいくと、それを記録しておけばいいということでもあるわけですね。こうやりましたということですね。いかがでしょうか。
○永松委員 厚労省さんが出されているリスクアセスメントの方法にも、最初にハザードを比較するとなっていますので、少なくともそこはやっていただかないといけないとは思うのです。これまでとハザードに違いがなければ、それから先に進む必要もないとは思います。
○城内座長 漆原委員、お願いいたします。
○漆原委員 書き方がかなり省略してあるので、いろいろな誤解あるいは解釈に違いが出ると思われます。私が受けたイメージは、物質ごとのガイドラインには、換気はどの程度までせよとか、保護具はどうせよとかというようなところまで記載されていて、このガイドラインを守れば、リスクアセスメントを実施しなくても、結果として必要なばく露対策につながり、労災の発生を防ぐことができるというものです。最終製品を扱う現場においては、それでも大丈夫なのかなという理解をしていたのです。仮に、想定外の使用方法も当然あるでしょうし、何らかの試作品的なものを使うなどの場面があった場合、どうするのかということも起こり得るので、全てがそれで順応できるとは限りません。ガイドラインの記載にない事態への対応策というのが必要になるかなと思いました。以上です。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、次の議題に移りたいと思います。3つ目の議題ですが、「化学物質による遅発性疾病の把握について」の議論をしたいと思います。資料の説明をお願いいたします。
○課長補佐 資料3を御覧ください。今回は、このテーマについて初めての議論になりますので、少し基本的なところから、まずはフリーディスカッションのような形になってしまうかと思いますけれども、議論をお願いできればと思っております。1ページ目は、今の化学物質による労働災害を把握する仕組みについて簡単に紹介しております。基本的には、労働者死傷病報告ということで、行政としては把握しております。この労働者死傷病報告として把握できるのは、負傷や窒息又は急性中毒などによって発生していることが直ちに判断できるものということになっております。例えば、がんなどの遅発性の疾病については、この労働者死傷病報告では把握が困難ということです。別途、労災認定という仕組みで申請をしていただいたものについて、業務との関連性を調査して関連性があると認められれば、認定されるということを通じて、がんなどの遅発性疾病の把握は別途にされているということです。
ただ、下の「参考」に書かせていただきましたように、2012年に発生した胆管がんや、2015年の膀胱がん、その後のポリマーによる肺疾患の集団発生事案などについては、いずれも労災申請を端緒に把握したものもあれば、事業所の方からの相談に基づいて行政で把握したというものもあり、いずれも自発的な事業者側からの、若しくは労働者の方からの情報提供を元に把握したという状況になっております。
2ページ目です。こういった現状にありますので、今の課題としては、がんが集団発生している事案であるとか、規制されていない物質で疾病が発生しているというような情報は、いずれも事業者などからの自発的な相談などで把握をするというのが現状ですので、行政が体系的に把握できないというのが、課題として1つあります。それから、仮に何らかの端緒である事案を把握したとしても、その時点で、業務との関連性が明確になっていない場合は、労働災害としての調査もなかなか難しいということです。例えば、この事案が発生していない事業所も含めて、例えばその物質を使っている事業所でどういった疾病が発生しているかといったようなことを調べる仕組みも、実は今はなかなかなくて、こういった予防的な対応が難しい状況になっています。
3点目です。日本の労災認定のデータを見ていくと、「職業がん」として認定されているものは、ほとんどが石綿による中皮腫及び肺がんで、それ以外の化学物質によるがんとして認定されているのは、20人程度となっております。下の表の諸外国の所に記載をしておりますけれども、海外の統計データなどを見ていると、例えばEU域内の職業がんの数が出ておりますけれども、例えば罹患数は年間12万人で、そのうち亡くなっている方が8万人であるとか、イギリスなどでは、年間1.8万人で、亡くなっている方が9,000人というように、日本とはオーダーが大分違うデータが出ております。日本は20人程度しか職業がんが発生していないのかというと、多くを把握できていない可能性もあるということです。課題としては、把握が、なかなか現実を反映できていないのではないかということです。4つ目の課題としては、遅発性ですので退職後に発症する場合も多いかと思いますけれども、退職後に発生した場合は業務との関連というところになかなか思いが至らず、実態の把握につながらないという課題もあるのではないかということです。
3ページ目に、論点として入れております。そもそも遅発性疾病の把握を行うことの意義というのは何なのかということの整理として、急性中毒などと違って、ばく露してから疾病が発生するまで、かなりのタイムラグがあるということですので、なるべく早めに遅発性疾病を起こすような危険性を把握できれば、アラートを出して将来的な疾病の発生を防げるのではないかということです。それから、今申し上げたように、なるべく実態に近いデータを把握するというのは、何にどのぐらい力を入れて対策を取っていかなければいけないかということを検討する上での基本データになりますので、そういう意味でも、なるべく実態を踏まえたデータを取っていくことが大事なのではないか、それから過去に起こったようながんの集団発生事案などについての予防にもつながるのではないかということです。論点としては、非常にざっくりとした形で挙げさせていただいておりますけれども、こういった遅発性の疾病について把握する場合に、どういう情報が必要なのかということです。実際に把握するとなった場合には、個人情報保護などの問題も含めて、どういう課題や問題点があるのか。それから、実際に把握するための手立てとしてどういった方法が考えられるのかといったようなことを、第1回目の論点として挙げさせていただきました。よろしくお願いします。
○城内座長 ありがとうございました。この議題3は、行政から、このように変えていきたいということですが、初めてのことだと私は思っていて、とてもエポックメイキングなことではないかと思っております。皆さんから活発な御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。
○漆原委員 労働者にとっては、職業生活で扱った化学物質の情報について、遅発性疾患を考えれば、長期間保存することが重要です。特に作業従事歴や、ばく露歴については、勤務先が変わったとしても継続して把握することが必要な情報であって、そうした情報を保存する場所の問題は別にして、長期間保存していくことが必要です。もう1点は、3ページにも出ておりますけれども、同種物質を扱う場合、それは同じような障害が将来的に起こりうる可能性があるので、そうした同種物質の危険性をどうやって見つけて、どうやって証明するかが重要です。例えば、QSARなどを活用してスクリーニングをした上で、然るべき検討の場で、議論したうえで、必要であればアラートを出すというようなシステムがあるということが重要なのかなとは思っています。
ただ、遅発性疾患との因果関係をどのように明らかにするかについては、単に研究機関だけでは難しい面もあるかと思います。研究者の皆さんの努力に加え、海外の知見も適切に収集し、それをどこかの場で検討していくことは、引き続き必要になりますし、経口・経皮ごとにできるだけ多くの物質についての情報を収集・記録して、それを統計的に検討していくことが今後は必要になると思いますので、そういった場の設定も含めて検討すべきではないかと思っています。
○城内座長 そのほかに、いかがでしょうか。
○高橋委員 まずは、把握という意味とは違うかもしれないですけれども、暫定ばく露限界値については示さない方向になっているという認識でよろしいですか。
○課長補佐 前回のワーキングでは、示すのは難しいのではないかという論点を提示して議論いただいているという状態です。
○高橋委員 特に、この遅発性疾病についてもそうだと思うのですけれども、暫定ばく露限界値を示さないことによって、その物質は安全だという誤解を生まないために、ある程度、何らかのサインを出していくべきではないかと思います。そういったことをすることによっても病気を予防できるのではないかと思います。
それから、遅発性疾病をどうやって把握するかですけれども、情報がなければ、把握することも予測することも推測することもできないと思いますので、データをどうやって集めていくかということではないかと思います。例えば、電離性放射線については30年間保管するということになっていたと思うのですが、データを蓄積していかないと、傾向も分からないと思います。更に今後、この分野でAIがどれぐらい活用できるか分かりませんが、それだけの情報が集まってくればビックデータという形になって徐々に予測することもできてくるのではないかと思います。まずは、データを集めるということをどのように行っていくか。当然、健康に関する情報は個人情報ですので、その取扱いについては十分注意する必要があると思いますが、ただ、何にしても、そのような情報がなければ今後の遅発性疾病の予測にも使えないと思いますので、それをどうするかを考えなければいけないのではないか思います。
○城内座長 そのほかは、いかがでしょうか。大前委員、お願いします。
○大前委員 既に特化則に入っていて発がんの可能性が大きいという物質がほとんどだと思いますけれども、そういう物質ですら、ばく露の把握、あるいは退職後まで通じるところがきちんとできるようなシステムには、まだなっていないのです。ここから始めないと、どうしょうもなくて、自律的な管理物質などは更にもっと先の話で、これはもう法的な根拠がなくて、ばく露のデータを取るとか、作業あるいは健康の影響の結果を取るというのはできないわけです。まずは、特化則になっている物質に関して始めると。一応、最近起きたジクロロプロパン等の場合は保存期間が30年となりましたけれども、その他の物質も全部そういう形でやっていただきたいです。
もう1つは、日本の場合は退職者の会というのがあるのですけれども、全然それが機能していないのです。私も2つか3つぐらいの退職者の会にアプローチしたことがあるのですけれども、何もやってくれないです。要するに、彼らは老後の心配をするのですけれども、老後の健康の心配をあまりしない。特に、職業とリンクしてあまり考えないのです。というのは、日本の場合は30年、40年の間その企業で働いてきたというのがあるので、ある意味、退職した方は恩があるという感覚もあるのです。ですから、私の会社を悪く言いたくないみたいなところもあって、なかなか機能しないので、退職した後でも客観的なデータが取れるようなシステムを是非、まずは特化則対象物質からやっていただきたいです。それが最初で、それがうまくいったら、いよいよ自律管理物質のほうにいくというパターンだと思うのです。
○城内座長 そのほかにありますか。
○宮腰委員 私も、以前の自分の会社にいたときに、石綿に関連するOBの方たちを探すのに苦労した覚えがあります。やはり、どこにどれだけの人たちが携わっていたかが、なかなか見えなかったのが実態としてはありました。そういう実例を考えると、先ほど言われたように、どういう物質、製品を扱っていたかを、統一的なフォーマットをある程度作って、それに合わせてチェックをして、きちんとそれが経歴として残っていくというシステムを作っていただければ、今後いろいろと把握することができるのかなと考えます。
○城内座長 そのほかは、いかがでしょうか。
○大前委員 もう1つは予測の観点なのです。先ほど、QSARという言葉が出ましたけれども、予測し得るがんというのはあるのです。一番端的なのは肺がんなどで、線維化が起これば肺がんになる可能性は非常に高いということです。今は、IARCのグループ1とか2Aになっていない物質でも、例えば独自に検査等で線維化が起きるかどうかを予めやっていれば、この物質はリスクが高いというような対応ができると思うのです。
それから、オルトトルイジンもベンジジンもMOCAもそうですが、芳香族アミン系は共通して可能性があるので、特別則に入っていなくてもリスクが高い。この辺りは予測可能なので、そのような予測可能性がある物質に関しては、自律管理物質の中でも少し別に考えて管理していく、あるいは記録を残していくことを考えていってもいいのではないかと思います。
○城内座長 ほかにいかがでしょうか。
○永松委員 具体的なことは、知見もないのでコメントできないのですが、やはり人数があまりにも違いますよね。1,000人程度の所と、イギリスですと1万8,000人ということで、この違いは何なのかというところを踏まえていかないと、より実効的な検討にも進みにくいのかなと。今、先生方からありましたように、今できることもあろうかと思いますけれども、そういうことを感じています。
話が横にずれてしまうかもしれませんが、アメリカでは健康保険の制度がなくて、私の経験では事業所の従業員の方が腰が痛くなったり、けがをしたりすると、会社で何かあったということを言われる場合もあると聞いています。良い悪いと言っているのではなくて、国によって状況が異なると想定されますのでこの数字が各国でどのような基準で見ているのかということを検討していただければ有り難いと思います。
○城内座長 そのほかにありますか。
○大前委員 これは国の文化の問題なのでしょうけれども、日本ですと、先ほど言いましたような終身雇用みたいな形で、一旦入社したら何十年と働くことを前提として環境管理等をやると。ところが、日本企業があちらこちらの国に出ていって話を聞きますと、非常に人の回転が早いのです。人の回転が早いということは、多少ばく露がたくさんあっても構わないという感覚がどうもあるみたいで、環境管理よりも人をやめさせるほうが先だという実態もあるようなので、その辺りも日本のがんが少なくなっている要因の1つだとは思います。
もう1つは、先ほど言ったように追跡ができないので報告がないというか、もともと数が少なめに出ているということもあろうかと思います。
○城内座長 そのほかにありますか。私は、やはり働いている人に、発がん性があるものを扱っているかどうかを知らせるのが一番先だと思っています。日本では多分、特化物を扱っているときは事業者も労働者も、ある程度は知ることができると思うのですが、そうではない、法令から外れた発がん物質を扱っているときは、何も知らせる術が今まではなかったわけです。少なくとも、GHSができた時点では、それは伝える方法は確立したわけです。まずは、それを徹底して伝えることが必要ではないかと思っています。
というのは、ここにある尿路系の腫瘍が発生したというのは、何人か発生するまでは分かっていないですよね。しかし、自分が発がん物質を扱っていて具合が悪くなったら、多分それは可能性として考えるはずなので、病院に行って、私はこういう仕事をしていると言ったときに、まずドクターが、可能性があるかもしれないと思って調べれば、1人で済むかもしれないのに、そうではなくてずるずると何人も出てくるというのは、それは日本に今言ったようなシステムができていないからではないかと思っています。ですので、知らせるということが予防であり、大事なのです。それから発見するのも、もう少し早くなるのではないかという期待があるので、まずはそこを徹底して、発がん物質を扱っている場合には発がん物質を扱っているのだということを知らせることが大事だろうと思っています。
余計な話ですけれども、私が1985年に労働衛生の分野に入って、第57条のラベルのシステムを知ったときに、よく読んだら発がん物質を扱っていても、発がん物質を扱っているということを労働者に伝えるシステムにはなっていないということに気づいて、当時の私の上司に「そうなっていないのですよね」と言ったら、「そうだ」と言うのです。「何でそうなっていないのですか」と言ったら、「そんなこと言ったら誰も働かなくなるじゃないか」と言われました。でも、そうだったのです、1980年代ですから。それは、世界的にもそうだったかもしれないのですけれども、今はもう時代が違うので、システムがあるのだから是非とも伝えてほしいというのが、第一です。特化則ではないけれども、特化則と同じような扱いというか、知らせることをまず第一にしてくださいということをしていかないといけないと思っています。
それから、諸外国でこんなに数が違うというのは、いろいろな委員の方からも意見がありましたが、欧州などの発がん因子を全部見ると、日本とは全然幅が違いますよね。例えば、シフトワークも入っていますし、受動喫煙も入っているという、そういうものが全部入っている中での数値なので、多分そういうものも含まれているのではないかという予想はします。それにしても、日本の職業性疾病は4日以上ということもあるのですけれども、少ないのではないかというのは数十年来、言われていることなので、きちんとチェックする必要があろうと思っています。あと、皆様から御意見はありますか。
○永松委員 余談になるかもしれませんが、今の先生のお話を聞いて、例えば健康診断や人間ドックに入ったときに、がんの所に、親兄弟のことが書いてある場合もあるのですけれども、自分が取り扱った物質について、例えば何もコメントするような項目はないのです。そういうところから広げていくのも、一つの手かなと思いましたので。余計なコメントをいたしました。
○城内座長 そのほかにありませんか。高橋委員、どうぞ。
○高橋委員 今のことに関連してなのですが、発がん性が分かっている物質については、やはり知らせることは大事だと思います。例えば、胆管がんのように、後から発がん性があると分かったときには、遡ってそれを確認できるようにしておかないと駄目じゃないかと思うのです。そういった意味では、先ほどの暫定ばく露限界値の話もそうなのですけれども、やはり過去にどういったものを扱ったかが分かるシステムというものを作り上げておかないと、何が原因かというところまで、なかなかたどり着けないのではないかと思います。
○城内座長 そのほかの御意見はいかがでしょうか。早期発見ということでは、いかがですかね。大前先生、何か御意見はございますか。早期発見というか、出るのはしょうがないかもしれないけれど、それを、できるだけ少ない人数で抑えるみたいな。
○大前委員 職業がんとしては、発生率が低いのですよね。しかも、それぞれその物質で、ばく露している人の単位が小さい。各会社で、せいぜい10人とか20人しかいないのですよね。そこで一人ぐらい肺がんが出ても、誰も何とも思わないのですよね。これが特殊ながんだったら話は別なのですけれども、一般的ながんの場合は何とも思わない。2人出て、少しおかしいなと思う。そういうことを産業医の講習会で私はいつも言っています。1人はもう仕方がないけれども、同じ会社の同じ職場で、同じ物質を扱っていて、2人出たら、職業性のがんを疑ってくれという話をしております。それは産業医の講習会の話ですけれども、それだけじゃなくて、やはり各会社でも、同じような病気が2例起きたら、まず絶対に職業性を考えろというように。敷衍していただくと有り難いですよね。
○城内座長 それは言い過ぎかもしれませんけども、もっといたかもしれないっていうところにもつながりますか。
○大前委員 はい。
○城内座長 2人よりも、もっといたかもしれないというところにつながるということで。
○大前委員 当然、そうです。だって、今2人だったら、前にはもっといた可能性があるのですよね。だから、2人だったから気が付いて、でも前はどうだったかという、そういう後ろ向きにデータを引っ張っていくという、そういうスタイルになりますけれどね。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかに御意見はございませんでしょうか。事務局からはよろしいですか。
○課長補佐 今日は、事務局からお示しした論点も非常に雑駁であったので議論しにくかったかと思うのですが、事務局として、海外のやり方についてもできるだけ情報を集めたいと思っていますので、また次回以降、さらに御議論いただければと思います。
○城内座長 ありがとうございました。それでは、議題3の議論はここまでにしたいと思います。頂いた意見を事務局のほうで整理していただき、次回の議論につなげていただければと思います。本日の議論は、これで終了したいと思います。何か言い忘れたこと等はございませんでしょうか。
ありがとうございます。それでは、事務局から連絡がありましたら、お願いいたします。
○課長補佐 今日は、活発な御議論をありがとうございました。専門家のところの議論も含めて、もう少し事務局のほうで整理をして、また次回以降、御議論いただければと思います。
それから一点、御報告ですが、前回、検討状況をお示しした特殊健診の頻度をどうするかという論点については、正に衛生課の検討会で、かなり活発に御議論いただいている状況ですので、本日は中途半端な状況で御議論いただくのもどうかということで、議題から外させていただきました。また、次回で検討状況を御報告し、さらに検討を進めていただければというように考えております。次回は、年度明けになりますけれども、4月27日の14時から予定しております。また改めて、正式に御連絡させていただきたいと思います。
○城内座長 以上で、第12回「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を閉会いたします。どうもありがとうございました。