第32回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和3年3月17日(水)17時~19時

場所

オンライン

議題

  1. (1)座長の選任について
  2. (2)乳がん検診について
  3. (3)子宮頸がん検診について
  4. (4)その他

議事

議事内容
2021-3-17 第32回がん検診のあり方に関する検討会

○事務局 それでは、定刻を若干超えましたので、ただいまより第32回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の岩佐と申します。よろしくお願いいたします。
それでは初めに、厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長の古元より御挨拶を申し上げます。
○がん・疾病対策課長 皆様、厚生労働省健康局がん・疾病対策課長の古元と申します。第32回がん検診のあり方に関する検討会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
構成員の皆様におかれましては、日ごろより厚生労働行政に御指導いただき、厚く御礼を申し上げます。また、このたびの委員改選に当たりまして、委員就任をお引き受けくださり、ありがとうございます。
これまで国としては、がん対策推進基本計画に基づき科学的根拠に基づいたがん検診をより多くの国民の方に提供すべく取り組んでまいりました。そうした中、最近では新型コロナウイルス感染症の流行により、がん検診受診者数の減少などが社会的にも大きな課題となっております。
また、超音波検査による乳がん検診やヒトパピローマウイルス検査による子宮頸がんの検診など、新たな技術を公的な検診に位置づけるか否かの科学的な検討が求められており、仮にこうした新たな技術を導入する場合、いかに速やかに、かつ円滑に導入することができるか、そうした課題に直面しているわけでございます。
本日お集まりいただきました皆様におかれましては、がん検診のさらなる推進に向け、皆様の活発な御議論をいただきますようお願い申し上げまして、御挨拶とさせていただきます。
本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○事務局 ありがとうございます。
構成員の皆様方につきましては、画像の表示をオンにしていただければと思います。また、御発言の際には挙手をいただければ、こちらから指定させていただきますので、その際には、お名前を最初に名乗っていただいた上で御発言いただければと思います。
引き続き、座長が選任されるまでの間、進行を務めさせていただきます。
それでは、構成員の皆様方を御紹介させていただきます。恐縮でございますが、お名前を呼ばれた際、一言1分程度で御挨拶をお願いできればと思います。
国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究部部長、井上真奈美構成員です。
○井上構成員 国立がん研究センターの井上真奈美と申します。よろしくお願いいたします。
○事務局 続きまして、国立大学法人東北大学大学院医学系研究科客員教授、国立大学法人東北大学名誉教授、大内憲明構成員です。
○大内構成員 東北大学の大内です。よろしくお願いいたします。
○事務局 続きまして、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科教授、祖父江友孝構成員です。
○祖父江構成員 大阪大学の祖父江です。よろしくお願いします。
○事務局 次に、大阪市健康局健康推進部健康づくり課課長、田中明子構成員です。
○田中構成員 大阪市健康局の田中と申します。今回初めて参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 東京大学医学部附属病院放射線科准教授、がん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長、中川恵一構成員です。
○中川構成員 中川でございます。今回は主に厚労省の委託事業であります、がん対策推進企業アクションのアドバイザリーボード議長という立場で参加したいと思います。よろしくお願いいたします。
○事務局 健康保険組合連合会参与、中野恵構成員です。
○中野構成員 中野です。前任の棟重に引き続きまして出席することになりました。よろしくお願い申し上げます。
○事務局 国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部部長、中山富雄構成員です。
○中山構成員 国立がん研究センターの中山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 公益社団法人日本医師会常任理事、羽鳥裕構成員です。
○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。がん対策も行っています。よろしくお願いします。
○事務局 国立保健医療科学院保健医療経済評価研究センターセンター長、福田敬構成員です。
○福田構成員 国立保険医療科学院の福田でございます。医療経済を専門にしております。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 公益財団法人福井県健康管理協会副理事長、松田一夫構成員です。
○松田構成員 福井県健康管理協会の松田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 NPO法人がんフォーラム山梨理事長、若尾直子構成員です。
○若尾構成員 若尾直子です。よろしくお願いいたします。私は、乳がんと白血病さい帯血移植のサバイバーで、NPO法人がんフォーラム山梨というがん啓発の活動をしています。よろしくお願いいたします。
○事務局 本日は、御紹介させていただきました11名の構成員全員の方に御出席をいただいております。
また、本日参考人といたしまして、恩寵財団福井県済生会病院副院長、笠原善郎参考人、慶應義塾大学医学部産婦人科教授、青木大輔参考人、国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部室長、高橋宏和参考人に御出席いただいております。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載しておりますが、議事次第、資料1-1、資料2-1~2-3、資料3-1、3-2、資料4-1、4-2、及び参考資料1~6とございます。不備等がございましたら、事務局までお申し出ください。
それでは、議題1「座長の選任」に移りたいと思います。資料1を御覧いただければと思います。がん検診のあり方に関する検討会の開催要綱になってございますが、「3.その他」の(2)におきまして「本検討会には、構成員の互選により座長をおき、検討会を統括する」とされております。本規定に基づきまして、構成員の互選により座長を選任いただきたいと思いますが、どなたか御推薦ございますか。
○中山構成員 中山ですが、よろしいでしょうか。これまでがん検診のあり方検討会は長く議論されておりますが、ずっと関わってこられました大内構成員に引き続いて座長をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○事務局 ただいま大内構成員の御推薦がございましたが、そのほかにいかがでしょうか。
それでは、大内構成員に本検討会の座長をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
大内座長より、改めて一言御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○大内座長 改めまして大内でございます。
本検討会は平成24年から始まっておりまして32回目になります。昨年3月に、がん検診のあり方に関する検討会における議論の中間整理をさせていただきましたが、その後1年間、新型コロナウイルス感染症拡大もあり中断しておりました。令和2年度として1回の開催となりますが、今までの経緯も含めまして議論を深めていきたいと思います。構成員の皆様におかれましては、活発な御討論をお願いしたいと思います。
以上です。
○事務局 ありがとうございます。
それでは、以降の進行は大内座長にお願いしたいと思います。
○大内座長 それでは、議題2に移ります。「乳がん検診について」でございます。
まずは、事務局から資料2-1について説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、資料2-1について説明をさせていただきます。
1ページでございますが、今回出させていただいた件としましては、乳がんの集団検診、マンモグラフィを実施する際に、医師や歯科医師の立ち会いを求めずに実施することが可能な形にできるかどうかの検討をいただきたいという点でございます。
これまでの経緯でございますが、平成26年6月に診療放射線技師法が改正されまして、このときの改正内容につきましては、胸部エックス線検査の実施の際には、医師、歯科医師の立ち会いを必須としないという取扱いにしているところです。これを受けまして、がん検診の指針においても、医師や歯科医師の立ち会いを不要とする取扱いにしたところでございますが、当時は乳がんについては視診・触診が必須になっていたことから、これらに併せた改正等は特段しておりません。ただ、平成28年に乳がんにおける視診・触診については、指針でも推奨しないという形に変更してございます。
その後、令和2年の地方分権改革に関する提案募集の中で、乳がんの集団検診、マンモグラフィの実施においても、医師の立ち会いを必須としないような取扱いにできないかということで意見がございました。それらを受けまして、第77回社会保障審議会医療部会で検討が進められまして、対応方針として、乳がんの集団検診の際にも医師の立ち会いがなく診療放射線技師が実施できる。その際には、安全性の確保等のために一定の要件を設けるという前提ではございますが、そういった方向性が示され、それらについておおむね了承をいただいたところでございます。こういった方向で診療放射線技師法の関連法令の改正がされた場合に、今回、指針自体に対しての修正を併せて実施する必要性が生じている状況でございます。
2ページでございますが、今回、事務局側から検討の方向性としてお示しさせていただく提案でございますが、指針を見直しまして、医師の立ち会いなしの乳がん検診を可能とするよう、肺がん検診と同様に見直すことも必要ではないかという提案になっております。
乳がん検診におきまして問診は必須としておりますが、その中では、現在の症状を含めた精密検査の必要性の判断に資する情報であったり、エックス線の安全性確保のための情報であったりの収集が必要なわけではありますが、こういったものについても医師以外の医療従事者による質問によって、一定程度代替することが可能ではないかと考えております。
3ページでございます。具体的な指針の見直しの方向性についての提案でございますが、指針について以下の見直しを行ってはどうかと考えております。1番目としましては、事前に質問をするための基本的な質問項目を明確化するということ。2番目に、医師の立ち会いなしに実施する場合に、責任医師を明示した計画書の作成・提出を求めるということ。3つ目に、医師の立ち会いなしに実施する場合の緊急時等における連絡体制の整備や、撮影時や緊急時に使用するマニュアルの整備、また教育や研修の実施を確保すること。4つ目としまして、読影の結果を総合的に判断して、その結果を速やかに通知することなどを指針の中に入れ込んではどうかと考えております。
4ページには、参考までにこれまでの乳がん検診の歩みを入れさせていただいておりますが、事務局からの提案としては以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○大内座長 ありがとうございました。ただいま乳がん検診に係るがん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針の見直しについての案が示されました。皆様、御記憶かと思いますが、平成27年9月の本検討会の中間報告書において、乳がん検診についてはマンモグラフィによることを原則とすると改められました。
一方で、令和2年の地方分権改革に関する提案募集に対する地方からの提案がございまして、先日の第77回社会保障審議会医療部会においての対応方針案が示されております。それにのっとった形で、今、事務局からの提案がございました。御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
笠原参考人。
○笠原参考人 福井県で乳がんを担当しております笠原と申します。
特に地方の現状で言いますと、マンモグラフィ検診バスに同乗するドクターがいないということがかなり受診率向上に対する足かせの原因にもなっていますので、この件はぜひ進めていただければ地方の現状としては非常にありがたいと思います。
以上です。
○大内座長 ほかにございますか。
若尾構成員。
○若尾構成員 私は、受ける立場としましては、放射線技師さんだけで大丈夫だと思うのです。基準を変えるときに明確化すべき文章として今の状況では足りないのかなと思っています。何が足りないのかと申しますと撮影の方向性です。1方向なのか、2方向なのかということも含めて明記していただきたいです。受ける立場であれば放射線技師さんが写してくれるわけですから、そこに医師がいなくてもそれほど問題はないと思います。しかし、市町村、基礎自治体などによっては1方向だけだったり、2方向だけだったりということがありますので、ここで指針を変えるのであれば、その点も併せて審議していただくとうれしいなと思います。
以上です。
○大内座長 御指摘ありがとうございます。ただいま若尾構成員からいただいたマンモグラフィの撮影方向に関しましては、2004年だったと思いますが、40歳代に導入拡大されたときに、49歳以下については2方向に、50歳代については1方向ということで、その文言が今日の参考資料2、がん検診の指針の12ページにあるかと思います。5の(1)の〇2乳房エックス線検査にアとイとウがございまして、イに2方向ということが明記されております。ただ、若尾構成員が御指摘のとおり、自治体によってはこれが守られていないこともあるかと思います。したがって、一応指針には書かれているのですが、いかがでしょうか。
○若尾構成員 参考資料の中に明記してあったとしても、実際に受ける人間はこの指針を見ていません。ですので、各基礎自治体がほかの自治体とのバランスを考えたり、できる方向だけを明記したり、あるいは書かなかったりするということがよくあります。なので、ここで議論をして放射線技師がしてもいいということを明記するのであれば、1方向か2方向か、その対象年齢のことも表の中にしっかりと書き込んでいただけると、受けるほうとしてはありがたいです。
○大内座長 ただいまの御意見ごもっともと思いますので、そのような方針にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ほかに御意見ありますか。では、事務局案に沿った形で、見直しを図ることについては皆様の御了解を得られたことにさせていただきます。
では、次の議題に移らせていただきます。乳がん検診に関する研究について、資料2-2は私から報告いたします。資料2-3は笠原参考人から報告をお願いいたします。
では、資料2-2ですが、私からは「超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(J-START)」、現在AMED研究として行われております現状報告を行いたいと思います。
がん検診指針の一部改正が大きく過去3回行われました。2000年に当時の老健第65号の中に、問診・視触診に加えて、マンモグラフィによる検診を原則とする(50歳以上)。2004年に、これが40歳以上に拡大されております。2016年に、胃がん・乳がん検診の指針に関する改正の中で、乳がん検診についてはマンモグラフィによる検診を原則とする。視触診単独については推奨しないことになっております。
このときに検討会における中間報告書で提言が出ております。検診方法としては、マンモグラフィによる検診を原則とする。視触診については推奨しない。仮に視触診を実施する場合はマンモグラフィと併用することとする。
第3点が大事なのですが、超音波検査については、特に高濃度乳腺の者に対してマンモグラフィと併用した場合、マンモグラフィ単独検査に比べて感度及びがん発見率が優れているという研究成果が得られており、対策型検診として導入される可能性がある。しかしながら、死亡率検証効果や検診の実施体制、特異度が低下するといった不利益を最小化するための対策等について、引き続き検証していく必要があるとされています。
これはJ-START研究のプライマリーエンドポイントから導かれた結果ですが、まだ結論は出ておりません。といいますのは、本検討会は科学的根拠をベースにしておりまして、死亡率減少効果を基本にしております。それから、中間報告でも指摘されていますように、実施体制、不利益の最小化などについて今、検討中です。がん検診の指針への反映には引き続き検証が必要ということになっております。
平成29年6月5日の第22回検討会でも、高濃度乳房について議論されました。本日この後、笠原参考人から最新の状況をいただきますが、そのときに高濃度乳房への対応の案として、赤枠で囲みましたように「高濃度乳房に対しても高い感度で実施できる検査方法について検討してはどうか(その一つとして、乳房超音波検査併用検診の感度等について検証する)」と記載されました。
J-STARTの概略を申しますと、研究は平成18年度から始まっております。これは戦略的アウトカム研究班としてスタートしておりまして、いわゆるがん戦略研究ですが、現時点ではAMED研究に移行しております。
目的は、研究背景にありますように、マンモグラフィの弱点を補うという意味で、特に高濃度乳房、40歳代をターゲットにして超音波検査の有効性について検証していくということです。
2つテーマがございまして、1つは、超音波検査による乳がん検診の標準化と普及です。それから、ランダム化比較試験(RCT)による有効性の検証。このRCTは40歳代女性、結果的には両群で7万6,196名のエントリーがございました。無作為化割付を行って、超音波を加える群とマンモグラフィ単独群で、プライマリーエンドポイントとしては感度・特異度・がん発見率について公表しております。
7ページはそのデータですが、7万6,000余りの中で解析できたのが7万3,000人以上ということで、世界でも有数の大規模比較試験になっております。
8ページが、プライマリーエンドポイントであります感度・特異度・がん発見率で、超音波を加えることによってがん発見率が1.5倍になっていることと、中間期がんがコントロール群に比べて半分になったことから、感度が予想の87%を超えて91%まで上がっています。
一方で要精検率、これはマンモグラフィ所見と超音波所見とを独立判定するという科学的な根拠を求めて行った理由によって、要精検率が上がっています。その結果として特異度が87.7%ということで、これが不利益につながるわけです。最近この判定を現場では、マンモグラフィとエコーとを同時に総合判定する方向で特異度を上げていく取組で動いております。
超音波検査を加えることによって何が変わったかということなのですが、マンモグラフィ陽性でエコー陰性というのが、多くは非浸潤がん(DCIS)で発見されていることが分かります。一方で、マンモグラフィネガティブで、エコーポジティブなケースというのはステージI、早期の浸潤がんがエコーで効率的に検出されていることが分かります。
それから、大変重要なことですが、触診(CBE=clinical breast examination)が両群に用いられていましたので、触診単独で見つかった人数も出しているのですが、Control armのマンモグラフィ単独群で視触診で発見された方が8名おりました。エコー併用群、介入群ではゼロであったことから、エコーを加えることによって触診を省けるであろうことを提言させていただいています。
10ページは、約2万例のマンモグラム画像を再読影してみた結果です。高濃度乳房と非高濃度乳房とで、マンモグラフィの感度及びエコーの感度、マンモグラフィ+エコーの感度を比較してみたところ、結論的には高濃度であっても非高濃度であってもマンモグラフィの感度はあまり変わりません。エコー単独であっても決して十分な値になりません。しかしながら、マンモグラフィとエコーを加えることによって93%という感度まで跳ね上がっております。これは高濃度であっても非高濃度であっても同じデータになっております。このことから40歳代においては、マンモグラフィに超音波検査を加えることが妥当ではないかというデータが得られております。
J-STARTの追跡デザインです。現在令和2年度が終わろうとしておりますが、現在フォローアップ中で受診者7万6,000人おりますので、これを今、研究費の観点から4分割して、4年に一回のタームでフォローを続けているところです。
2007年から行っていまして、2016年にはプライマリーエンドポイントの解析結果を「ランセット」に発表しております。現在、セカンダリーエンドポイントの解析を行っているところです。
昨年発出された中間整理の中に、乳がん検診についてどのように書いてあるかについて一応まとめておきます。
がん検診の種類・検査方法について(乳がん)においては、指針に定められていない検査方法として挙げられています。グレードIです。Insufficient enough efficiencyですが、この中に超音波検査・マンモグラフィ併用法が明記されております。
死亡率減少が明らかにされていない検査方法について、例えばAMEDにおいてJ-START等によって科学的根拠を明らかにしていくための研究が行われている。このような科学的根拠の集積が引き続き重要であることが指摘されています。
これもかなり議論されたのですが、新たな検査項目の指針への導入を検討するに当たっての基本的な考え方ということで、令和元年に集中的に議論されました。その結果が書いてあります。
死亡率減少効果を最大のポイントにしつつも、その1点のみでは導入に至るまでに時間がかかり過ぎるということが外部からも指摘されております。具体的には、平成31年3月に出されました今後のがん研究のあり方に関する有識者会議の中で、死亡率減少が主要評価項目として検証されてきているが、その検証には長い期間を要するために、死亡率減少効果の代替となる適正な指標について検討すべきであると提言されております。
J-STARTは当初の研究計画書の中に、代替指標、サロゲートマーカーを載せています。プライマリーエンドポイントが感度・特異度、がん発見率・早期がん比率でして、セカンダリーエンドポイントの累積進行がん罹患率の比較が今検討されているところです。
セカンダリーエンドポイントについての現況です。データは今集積中ですが、統計解析委員会の指摘等によってシミュレーションしますと、両群間で有意差を検定するためには、今、全乳がん1,381例登録されていますが、うち進行乳がんは358例です。実際に統計解析に必要な進行乳がん罹患数は両群で383というデータが出ていまして、そこまで25例不足している状況にあります。
介入群、非介入群ともに均等に割り当てられていまして、病期分類で見るとII以上の進行がんが26.3%ほどになっています。18ページ下のグラフが年次推移と累積数ですけれども、最近の4年間が少ないのは、追跡調査を4分割にしていることもあります。それから、令和2年度は新型コロナの影響があって追跡が不十分であることがあります。しかしながら、さらにあと2年ほど費やせれば進行乳がんの目標症例数383に到達するものと考えています。その時点でキーオープンとなって両群間の比較検証が可能になります。
以上が、私からの報告になります。
では、続きまして、笠原参考人から御説明を願います。高濃度乳房に関する論点ですね。「乳がん検診の適切な情報提供に関する研究」ということで、笠原参考人にプレゼンしていただいた後に、この2議題については併せて討論したいと思います。
では、笠原先生、よろしくお願いします。
○笠原参考人 笠原と申します。よろしくお願いします。
乳がん検診の適切な情報提供に関する研究、笠原班では、乳房の構成の通知に関する国内外での実態調査や乳房構成の判定基準の検討、また、乳房構成の超音波検査の有用性の検討などを実施しており、第29回のがん検診のあり方に関する検討会で高濃度乳房について、以下QA集と略しますが、それを周知した後の市町村の乳房構成に関する情報提供の変化についてと、検討2として、福井市で試行した乳房構成の通知に伴うアンケート調査の分析、課題を報告いたしました。
今回は、検討2を福井市から福井県レベルに拡大して実施した結果。
○大内座長 笠原先生、申し訳ございません。局長がおみえになったので一旦止めていただいて、健康局長の御挨拶をいただいた後に改めてスタートしますので、お願いします。
○健康局長 健康局長の正林でございます。中断してしまってすみません。また、遅参しましてすみません。
かつて平成26年頃だったと思いますけれども、がん対策健康増進課長をしていましたので、このがん検診のあり方検討会はかつても自分が課長として運営していましたし、また、先生方もなじみのある先生方だと思っています。
当時一番ホットなイシューが、胃がんの検診の見直しだったと思います。透視だけではなくて内視鏡を導入する、しないというもので、結論が出てからも導入するに向けて大分難渋した記憶がありますが、いずれにしても、このがん検診のあり方検討会は非常に重要な意味を持つ検討会だと思っています。昨今、がん検診の内容の見直し、あるいは新しい検診項目を追加するときも、今の国民の関心はいかに科学的な根拠があるかという部分です。新しいものを導入すれば当然それに必要な税金を使うことになりますので、それに相当するきちんとしたエビデンスがあるのかどうかというのがいつも問われます。そういう意味でも、先生方にしっかり議論していただいて、科学的根拠に基づいた検診のあり方を追求していただけたらと思っています。
大内先生、本当に御無沙汰しておりますが、引き続きよろしくお願いします。
私の挨拶とさせていただきます。どうも失礼します。
○大内座長 国会審議中わざわざおいでいただき、ありがとうございました。正林局長は、がん・疾病対策課の課長としてこの検討会を仕切られていました。特に胃がん検診、乳がん検診の見直しのときにはその責任者であったわけですが、その背景でまた皆さんと議論させていただければと思います。ありがとうございました。
では、笠原先生すみません、再開してください。お願いいたします。
○笠原参考人 再開したいと思います。今回は、乳房構成の通知に関して、福井市から福井県レベルに拡大して実施しましたので、その経過について御報告するとともに、偽陰性例の受診後対策の一つとしてのブレスト・アウェアネスについてお話しさせていただきたいと思います。
第29回の検討会では、福井市における試行結果で、乳房構成の通知を希望されたのは81%であったこと、また、通知を受けた後の不安に関しては、極めて高濃度で67%、不均一高濃度で49%の人が不安に感じており、一方、乳腺散在では15%、脂肪性乳房では22%と不安に感じる人は少ないという結果を報告させていただきました。
1年目の結果のまとめを示します。乳房の構成の通知は希望されない方もいるので、事前の意思確認などの配慮が必要なこと。個別の説明、質問窓口の設定、QA集の配布など、通知後の対応までを含めた情報提供体制が重要であること。極めて高濃度、不均一高濃度とされた人が不安に感じ、一方、乳腺散在、脂肪性とされた人が安心を感じる傾向にあるとまとめさせていただきました。
乳房構成の通知の試行は、2年度目は福井県レベル、12市町、受診者数8,311名について行いました。3年目の今年度は現在進行中ですが、配布するQA集は非常にかさばりますので、A4三つ折り簡易版に変更して行っております。従来のセルフチェック・自己触診の記載をブレスト・アウェアネスの記載、説明に変更いたしました。
2年目の結果です。20市町中試行に参加していただけた12市町で行った8,311名中7,219名、86.9%の方が乳房構成の通知を希望しておられました。
対象者の年代別乳房構成は、不均一高濃度と極めて高濃度、いわゆるこの2つを高濃度乳房と言っていますけれども、これは40歳代66.6%、50歳代41.6%、60歳代27.5%、70歳代20.1%、80歳代14.1%と若年で高率でありました。
年代別の通知希望者ですけれども、40歳代95.1%、50歳代93.1%、60歳代87.4%、70歳代80.1%、80歳代67.5%と、40歳、50歳代で非常に高率という結果でございました。
受診者からの問い合わせに関しては、電話相談窓口へが5件、精密検診機関への相談が5件、計10件の問い合わせがありましたが、3件は書類上の乳房濃度に関係しない事務的質問で、7件が高濃度乳房、乳房構成に関する質問でした。高濃度乳房とは何かが1件、高濃度乳房であったときのその後の対応についてが5件、高濃度乳房でのがんの発見率についてが1件ということで、これらはいずれもQA集のQ1、Q4、Q6に基づいて説明することで対応可能でした。
3年目の研究は現在継続中ですが、QA集はA4版で17ページと内容・量が多いことや、全通知希望者への配布のコスト、また読みやすさなども勘案し、A4の三つ折りパンフレットを作成して使用しています。内容は、1年目のアンケートで閲覧数の多かったQA項目、つまり乳房構成の説明について、判定や変化について、乳房濃度が高い場合の対処法について、この3項目に加えブレスト・アウェアネスに関して記載いたしました。
三つ折りパンフレットの裏面になります。電話での問い合わせ先を明示するとともに、QRコードを添付しております。これをスマートフォンなどで読み込むことによりQA集が閲覧参照可能な仕組みを盛り込んでおります。今回の経験を元に、このパンフレットはさらに改善していきたいと考えております。
以上のことから、乳房構成を通知する際の留意事項をまとめてみました。1、乳房構成の通知を希望するかの意思確認を行う。この際、個別の対面による説明と同意取得が望ましいと考えております。2、高濃度乳房か否かではなく、乳房構成の四区分で通知を行うこと。3、通知後の受診者に対する指導はQA集に基づいた内容で実施すること。4、通知後の情報提供体制を整備すること。電話の相談窓口の設置や今回用いたようなITも活用すべきと考えています。
乳房構成に関する情報提供のあり方としては、あくまで乳房構成と病変の隠れやすさは、高濃度、非高濃度で線引きされるものではなく、連続的なもので乳房の濃度が高い、いわゆる白っぽいほうが病変が隠れやすい。つまり、偽陰性が多いという理解が大切と考えます。高濃度乳房という語句を取り上げ二分して語ることではなく、マンモグラフィに映らない乳がんがあり、白っぽいほど隠れやすくなること。すなわちこれは偽陰性問題としての理解を深める必要があると考えます。
偽陰性例は、がん検診では避け得ないものでゼロにはできません。マンモグラフィで検出できない乳がんがあることや、次回検診との間に症状が明らかになる場合があることを理解してもらうとともに、乳房構成が高濃度になる、いわゆる白っぽい乳房ほど病変が隠れやすいという偽陰性問題として検診関係者はしっかり情報提供し、受診者や医療関係者も理解することが重要です。
結果的に生じる偽陰性例の対策の一つとして、2年に一度定期的に検診を受診することに加えて、ブレスト・アウェアネスの啓発を推進することを提唱させていただきたいと思います。
ブレスト・アウェアネスは乳房を意識する生活習慣であり、1990年代の初めに英国で普及いたしました。この乳房を意識する生活習慣の具体的な項目は、1、自分の乳房の状態を知る。このための行動としては、見たり、触ったり、感じたりすることが挙げられます。2、乳房の変化に気をつける。特に注意すべき症状として、しこり、皮膚の黒み、血性の乳頭分泌などが挙げられます。3、変化に気づいたらすぐに医師に相談する。4、40歳になったら継続して2年に1回乳がん検診を受ける。この4つがポイントとして挙げられます。
従来は自己触診の言葉が使われており、自己触診とブレスト・アウェアネスとの明確な定義や違いというのは、これまではっきり示されていませんが、当研究班で論議し、考え方を整理してみました。
まず、自己触診という言葉を用いず、今回ブレスト・アウェアネスを提案する背景として重要なことは、従来の自己触診には検診としての死亡率減少効果の科学的根拠がないこと、米国予防医学専門委員会(U.S.Preventive Service Task Force)も自己触診を推奨Dとして否定していることがあります。
まず、それぞれの位置づけとして、自己触診は、異常を見つける、しこりを探す、診察する・診断するといった検診行為として位置づけられるのに対し、ブレスト・アウェアネスは乳房のふだんの状態を知る、変化に気をつける、見る・触る・感じる、月経周期に伴う変化を知るといった生活習慣としての考え方が基本にあります。
学習の視点から見てみますと、自己触診は乳房の触り方など手技の習得が必要になりますが、一方、アウェアネスは生涯にわたる乳房の健康教育の一環としての知識の習得という観点から啓発が行われます。
自己触診は、煩雑・習得が難しく、正確性・継続性・実効性に疑問があると考えられますが、ブレスト・アウェアネスは日常生活の中で取り組め、ヘルスリテラシーの向上が期待されます。
科学的根拠が否定されている自己触診の文言はなるべく用いず、今後はブレスト・アウェアネスを提案することが望ましい方向性と考えます。
16ページは、3年目の乳房構成の通知に使用したパンフレット、これはまだまだ未完成ですが、参考までに掲示します。今年度の研究結果や議論を参考に、さらに改善していくつもりです。
まとめです。乳房構成に関する情報提供は、現在市町村の判断に任されていますが、乳房構成を通知するのであれば、その際に留意すべき事項をまとめました。高濃度乳房に関する課題の本質は偽陰性問題であり、検診関係者・受診者・医療者はその理解を深める必要があります。ブレスト・アウェアネス「乳房を意識する生活習慣」に注目し、その啓発に努めることが偽陰性例の検診受診後の対策として重要であると考えます。
以上でございます。
○大内座長 では、ただいま資料2-2と2-3について説明がございました。構成員の皆様から御意見・御提言ございましたら。
祖父江構成員。
○祖父江構成員 今、笠原先生から御発表になった高濃度乳房に関して、高濃度であればあるほど偽陰性が多いと、感度が低いということですよね。そのことと、大内先生が発表になったJ-STARTでの結果と、資料2-2の10ページですが、感度が低いというのは実はマンモグラフィに関して感度が低いのであって、超音波を加えた場合の感度はそれほど変わらないというのが大内先生の御発表だったと思います。すなわち、超音波が高濃度乳房に関しては感度が比較的よいということで、そのような結果になっているという理解でよろしいですか。Sensitivityのところを見ていただくと、スタディー群の真ん中3列の一番下で93%、93%と、高濃度であれ、Scattered and fattyであれ93%となっていますけれども、マンモグラフィに限ると55%と70%で、やはり高濃度のほうが低いんですよね。超音波のほうで見ると、逆に高濃度のほうが66%と感度が高いと。これが補完的に作用していて、全体としては93%、93%で変わらないという理解でよろしいですよね。
○大内座長 そのとおりです。
○祖父江構成員 確認でした。以上です。
○大内座長 この表は大変重要でして、今投稿中なのですが、笠原参考人から乳腺散在から高濃度に至るグラデーションのような図がありましたけれども、結局デンシティーであっても偽陰性は起こるんですね。濃淡の差ということなのですが、J-STARTのデータから見ると高濃度として判定されたものと非高濃度でそんなに差はないのですよというのが、この研究でも分かってきたわけです。ですので、笠原班も最近は、高濃度乳房というのはマンモグラフィにおける偽陰性という言葉で説明されていますよね。その点確認ですが、笠原先生いかがですか。
○笠原参考人 先ほど大内先生の出された重要な結果は、高濃度、非高濃度で2つに分けるという意味はあまりないと。どちらにおいても超音波を加えるとSensitivityにおいて十分な上昇が見られるということです。
それから、高濃度乳房という言葉で2つに区切るという科学的根拠はなく、先ほどのグラデーションの図が一番理解として正しいと考えます。もし今後いろいろな追加検査という処置を考える場合に、高濃度・非高濃度の2つに分けるという考え方ではなく検討を進めていくべきだと考えております。
○大内座長 ありがとうございました。笠原参考人の資料の12ページの「乳房構成に関する情報伝達のイメージ」がそこに当てはまりますので、今日皆様に共有していただきたいのはこの点かと思います。
ほかに御意見ございますか。松田構成員。
○松田構成員 福井県健康管理協会の松田です。
笠原参考人にお伺いしたいと思います。高濃度乳房か否か、あるいは4つの区分にかかわらず、偽陰性がどの区分にもある。そのために重要なことはブレスト・アウェアネスだというお話だったかと思います。高濃度であろうとなかろうとブレスト・アウェアネスを勧める。そうすると、今の4つの区分あるいは高濃度か否かをお伝えする意味がどこにあるのかなと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○笠原参考人 こういう情報を個人として認識した上で、その人の今後の乳房健康生活に役立てるということは意識として大切だと思います。乳房濃度が高い方はブレスト・アウェアネスの意識が高くなるでしょうし、そういうことは十分個人の健康教育としての意味が私はあると考えます。
○松田構成員 4つの区分のうち極めて高濃度の方については、とりわけブレわけブレスト・アウェアネスをやっていただきたいという伝え方をすると、そうではない人たちはあまり関心を持たないことにもなってしまうかと思います。そうすると、繰り返しになりますが、4つの区分をお伝えするのがいかがなものかと私は思ってしまうのですが、先生、その点いかがですか。
○笠原参考人 対策型検診ですので情報を伝えるのであれば、しっかりとした情報が伝わり、その方の役に立つような使われ方をしなければりません。その点に関しては、私は決して伝え放しにしないようにと言っているのです。伝えた後、その受診者の役に立つような行動がとれるところまで、情報提供体制を整備しながら伝えていく必要があるということを研究班では考えております。アウェアネスの説明に関しても、任意型乳がん検診の場で行っている私の経験ですけれども、受診者の反応としましては、あなたの乳房はやや白いので、こういうことに気をつけてやっていきましょうねという話をいたしますと、受診者の方は素直に納得していただける手応えは得ております。これはあくまで私個人の経験です。
○松田構成員 分かりました、ありがとうございます。
○大内座長 中山構成員。
○中山構成員 大内座長に2つ質問させていただきたいのですけれども、1つは、特異度を上げるための努力をしているというお話でしたが、そこを詳しくお願いしたいとのと、進行がん罹患率というお話が出ているのですが、ステージII以上ということなんですね。韓国で甲状腺の超音波検診がはやったときに罹患率が15倍と大幅に増加して、過剰診断のいい例だと言われたのですが、このとき見つかったものは7割方くらいがリンパ節転移があるものだったというレポートが出ているということなので、過剰診断というのは転移をしないがんという定義ではどうやらなさそうで、年齢などによってはリンパ節転移を起こしても過剰診断になり得るという例だと思うのですが、乳がんはその辺の解釈がよくまだ分かっていないのですけれども、その辺についてのコメントがございましたらお願いしたいと思います。
○大内座長 2番目からいきましょうか。進行乳がんを比較する基本的な考え方は、子宮頸がんや大腸がんと同じストラテジーで考えておりました。乳がんには甲状腺がんとはかなり違った特徴といいますか、乳がんのナチュラルヒストリー(自然史)はある程度分かっていますので、進行度分類で生存率が大幅に変わってくることは科学的にも、あるいは国がんのデータなどでも見てとれるわけです。したがって、進行がん罹患率について比較することを研究デザインの中で最初につくっております。第2点はそれでよろしいですか。
第1点は、もう一回確認したいのですが。
○中山構成員 第1点は、超音波だと特異度がどうしても下がってしまいますので、それを上げるための工夫をしているということを御発表されたかと思いますが、具体的にどういうことをなさっているのか。
○大内座長 具体的には、日本乳がん検診学会の委員会を立ち上げまして、そこに超音波検査を導入する場合の精度管理、それから読影の仕方、判定の仕方ということで、J-STARTはいわゆるRCTでマンモグラフィと超音波の両方を科学的にしっかり見極めるために独立判定していたわけですが、その結果として要精検率が上がっています。現場では乳がん検診において、マンモグラフィと超音波は同時判定あるいは総合判定が行われているのが実態でして、それを5年ほど前から学会を中心として取り組んでおります。総合判定マニュアルもつくりました。ガイドラインもつくっております。それによって今まで超音波併用検診の要精検率10%程度あったのが、今は5%を切っています。低いところだと3%から2%まで落ちています。そういった取組を学会の特定委員会として行っております。それでよろしいでしょうか。
○中山構成員 よく分かりました。ありがとうございました。
○大内座長 ほかに御意見ありますか。井上構成員。
○井上構成員 大内先生か中山先生への質問かもしれませんけれども、J-STARTの研究というのは大規模でエビデンスレベルとしては非常に信頼度の高い研究かと思うのですけれども、今日のお話で、乳がん検診で超音波を併用することがいいということを近い将来提唱できる時代になるのかもしれないと今考えています。その場合にJ-STARTという研究でもし結果が出て、それが科学的エビデンスとして報告された場合に、即適用となるのか、それともまだまださらにエビデンスが必要になるのかという点について確認をさせていただきたいと思います。
もう一つは、この研究は今、大内先生に大変面白い結果をお示しいただきましたが、そうすると笠原先生の今開発しているものに関しては、ある意味超音波が導入されるまでの非常に短い期間の暫定的なものと考えていいのでしょうか。要するに、導入されてしまえば偽陰性も少なくなると考えますと、結局導入されるまでの話なのかなという気もしてしまうのですが、その辺についてお考えをお聞かせいただければと思います。
○大内座長 極めて重要な御指摘です。死亡率減少効果のデータが出たとしても、単一研究だとかなり弱いです。今までマンモグラフィ検診が対策型検診として入ってきたのは、複数のRCT等の研究結果があってのことです。世界的に見て超音波を使ったRCTは今、発出されているのはJ-STARTオンリーです。しかしながら、台湾や中国のスタディーもあるのですが、それはまだ論文化されていないのも事実です。これは皆様方に判断していただきたいことではあるのですが、死亡率減少効果が出ない段階でどの時点でこれを議論すべきか。それから、仮に進行がん罹患率で結果が出たとしても、先ほどの笠原参考人のデータにも重なるのですが、J-STARTはあくまでも40歳代のデータなんです。50歳代以上は入っていないんです。ただし、50歳代以上で高濃度の方に対しては適用が可能かもしれません。ですから、かなり限定的な導入あるいは試験的に対策型に入るのではないかと私は考えています。丁寧にデータを見ながらどのように使っていけるかを皆さんと議論していきたと思っておりますが、それでよろしいでしょうか。
中川構成員どうぞ。
○中川構成員 先ほどの笠原参考人のブレスト・アウェアネスの向上は極めて重要だと思っておりまして、がん検診そのものを支えるところがアウェアネスだとかねてから思っています。もちろん、乳がん検診における乳房構成との兼ね合いもあるのですが、それ以上に非常に重要な点で、ヘルスリテラシーにもお触れいただきましたが、ある研究によると国際的なヘルスリテラシーの尺度評価上、日本は15か国で最下位だったと思いますけれども、その一方で、中学校・高校の指導要領の中にがん教育が明記されて、来月から中学校では全面展開という形になります。ぜひ、アウェアネスの問題をがん検診と両輪として今後広めていっていただければと思います。
以上です。
○大内座長 笠原参考人、今の御質問含めて時間の関係上、簡単にお願いいたします。
○笠原参考人 中川先生に私の言いたいことを全て言っていただきまして、ありがとうございます。アウェアネスは、偽陰性対策だけではなくて、生涯にわたる健康教育という意味で非常に重要だと考えています。今、小中学校からがん教育も始まっています、そういうことも含めて今後、ブレストだけではなくてキャンサー・アウェアネスという意味で、どんどん取り組まなければならない課題だと考えております。
以上です。
○大内座長 時間が押しておりまして、大変申し訳ないのですが、次の議題に移らせていただきます。
議題3「子宮頸がん検診について」に移ります。資料3-1及び3-2について中山構成員及び青木参考人より報告をお願いいたします。
まずは、中山構成員、お願いいたします。
○中山構成員 よろしくお願いいたします。資料3-1の共有をお願いいたします。
子宮頸がん検診について議論されるのは、このあり方検討会だと10年ぐらい前のようでございますので、簡単な総論からもう一度おさらいさせていただきます。
子宮頸がんの自然歴というのは、HPVウイルスの慢性感染が発がんの原因で、その後前がん病変、浸潤がんへ移行するというのが非常にはっきり分かっているものでありまして、前がん病変を発見して治療介入すると、浸潤がんは減少するだろうということが古くから知られているということです。前がん病変であっても自然消退・停止という頻度がかなり高いという特徴がありまして、CIN1は9割方治ってしまうものでございますから、前がん病変から発がん、浸潤がんに至るまで長期間の経過観察が必要な場合があるということでございます。
細胞診や組織診という言葉がこれから後も出てきますので、少し簡単にお示ししておきます。
細胞診で異常なしというのはNILMというものでございまして、それ以外、ASC-USやASC-H、LSILというものが要精検という形になります。
一方、精密検査として組織診をいたしますと、前がん病変扱いになるのがCINと呼ばれるものでして、このグレードが1~3という形になって、CIN3というのがかつての上皮内がんを含むものでございます。SCCやAdenocarcinomaというのが浸潤がんという形になりますが、CIN1~CIN3までの間に関しては移行して進んでいくものに関しては10%程度であろうと。CIN2からCIN3になってからでもまた自然に元に戻っていくものがあったり、30~40%ぐらいはCIN2の形で止まってしまったりというようなことが知られています。
3ページはSchiffmanという人の総説で、非常に有名な自然歴を表す論文ですけれども、HPVを感染しますと大体12か月ぐらいでほとんど消失し、2年という期間を普通使いますけれども、それで9割以上の方が自然に消滅するということですが、そのあたりからCIN3という病変が出てまいります。CIN3からすぐに浸潤がんに至るのかというと、そういうことはありませんで、実際30年間ぐらい追跡して半分くらいが浸潤がんに移行するけれども、CIN3に一旦なってからも消失するものや、あるいはそのままずっと継続するものが5割方あることが知られています。
細胞診とHPV検査の概念図ですが、これまでの細胞診は、もちろん浸潤がんや前がん病変のCIN2とかCIN3も見つけることができますが、細胞の形態変化が出ているというのはASC-USと呼ばれるところ以上、細胞の変化を見ているわけでございますが、HPV検査というのは細胞の変化に至る手前から見つけてくるものでございますので、かなり引っかけてくる人数というのは大きくなります。したがいまして、これを全て長期間にわたって適切に管理していくと、細胞診よりも感度は高くなることが考えられますけれども、治療が必要なのは今はCIN3あるいは浸潤がんということになってきますが、こういう形になってくると検出力の差という意味では小さくなってくるところがあります。
これまではがん検診のエンドポイント、評価というのは、死亡率減少効果がほとんどのがんで用いられてきまして、細胞診でもほとんど死亡率減少効果が評価されてきたのですが、先進国におきましては子宮頸がんの死亡率がかなり減ってきたところもありまして、死亡率減少効果を評価するというのはなかなか現実的ではないという形になっております。それで、ヨーロッパではEUガイドラインをつくりまして、2010年にアウトカムを設定しておりまして、浸潤がんの罹患減少までを絶対指標という形にして、それ以外については代替指標としては一応検討するけれども、基本は絶対指標を評価しましょうという形に取り決めがなされておりますので、こういう取り決めに沿って海外でRCTなどが進行されてきたという経緯がございます。
6ページは、先進国で行われた6つのHPV検査を用いた有効性評価したランダム化比較試験のサマリーでございます。これまで6つ行われているのですが、追跡期間も非常に短い3年ぐらいのものもありますし、11年ぐらい追跡した研究もございます。HPVと細胞診を比較したものもあれば、細胞診とHPVと併用したものと細胞診断を比較したものもありますし、対象者の年齢も20代を含んだものもありますし、30代だけを検討したものもありますし、検診間隔も2年間隔でやったものから5年間隔でやったものなどいろいろなものがあって、プロトコルとしてはかなりばらばらなところがございます。
あまり詳しいことは時間がないので割愛いたしますが、浸潤がん罹患率減少効果、利益と呼ばれるものをまとめた一覧表が7ページに示すもので、全ての研究で18万人年対19万人年で、細胞診は浸潤がんが94例で、HPVが69例ということで、相対リスクとしては0.69、HPVで検診を行ったほうが31%ぐらい浸潤がんを減らす可能性があるけれども、95%信用区間を一応含んでいるので強い証拠とは言えない、弱い証拠であるというものでございます。
絶対イベント数というのは引き算という形にしているのですが、細胞診の場合だと10万人年、つまり10万人を1年間追跡あるいは1万人を10年間追跡という形で考えると、細胞診は11.2人ということですけれども、HPV検診の場合は3.5人減少するという平均値では示せるけれども、場合によってはHPV検診を選択すると0.9人増加する可能性もありますよという研究結果になっています。
細胞診とHPV併用法、HPV単独法に関しては、一応相対リスク、ハザード比という形では併用法のほうが高いという形になっておりますが、HPV単独法は研究の数自体が2研究しかないという問題もございます。
不利益として今回は偽陽性数にかなり着目したところでございまして、8ページの右端が細胞診の単独法で、感度、特異度、偽陽性数という形でお示ししていますが、細胞診単独だとこの場合はCIN2以上の病変という形になります。CIN2自体は治療の対象ではまだないのですけれども、それも含めて見ると感度は63.5で、特異度は94.7%です。
HC2・細胞診併用法というのは細胞診とHPV検査の併用法で、これでやると感度は98.5と上がるのですけれども、特異度が84.4と下がってしまいます。
左端のHC2と書いてあるものがHPV検査単独法に当たるのですが、これだと感度は88.6ですが、特異度は90.2という形になります。
偽陽性数が一番下のカラムに書いてありますが、細胞診に比べてHPVの単独法は10万人検診を受けて4,400人増える程度であるが、細胞診とHPVを併用すると感度は上がるけれども偽陽性の数が10万人当たり1万人以上増えてしまいますよという結果でございます。
9ページは、利益と不利益を対比したものでございますが、HPV検査を用いるとこれまでの細胞診よりもさらに浸潤がんの罹患を10万人当たりで1.6~4.8減少させる可能性があるということでございます。
一方、不利益としては併用法の場合はCIN2+に進展しないような偽陽性を10万人当たり1万人細胞診よりも増加させてしまうということです。この方々は、いつ発がんしていくのかというのが分からないわけですし、胃の慢性ピロリ菌感染症とは異なって治療法がないので、正直いってずっと長い年数経過観察が必要ということになります。
胃や大腸の場合は、検診で精密検査という形になっても精密検査を受ければ、場合によっては内視鏡を受けている間に異常がないということを言われて、当日に安心できることになりますけれども、残念ながらHPV検査を用いた子宮頸がん検診の場合は、精密検査を受けたとしても、その時点でもう発がんする見込みはないということは誰にも言えないので、可能な限りずっと長期的に通院を続けてくださいという話になるので、偽陽性がHPV検診の不利益の中心になるのではないかと想定されるわけです。
ガイドラインのまとめという形で3枚ほど供覧させていただきますが、細胞診検査に関しては今回、評価は年齢と検診間隔だけをやったわけですけれども、基本的には対策型検診/任意型検診とも実施を勧めますが、検診対象は20~69歳で、検診間隔は2年が望ましいとしています。
前のガイドラインにも書いておりましたが、自己採取細胞診が行われていたのですけれども、これは認めないという形で明記しています。
HPV検査単独法については、推奨グレードは細胞診と同じと扱わせていただきました。ただ、実施を勧めるものの後で青木参考人からお話が出ますが、統一された検診結果ごとのアルゴリズムが全然ないわけですので、これをつくらないと進めないところがございます。
検診対象は20代で感染される方が非常にたくさんいるし、それはほとんど一過性ということもありますので、30~60歳で検診間隔は5年が望ましいとしております。
細胞診とHPV検査併用法は、国内で自主的におやりになっているところがかなりたくさん自治体でもあるのですけれども、これに関しては不利益としての偽陽性が一番増加するということでございまして、推奨グレードはCという形にいたしました。この不利益を解決する方法があるのかですけれども、何がしかの方法、例えば、HPVのサブタイプを決めてトリアージして、この群だと精密検査は必要ではないとか、フォローアップは必要ではないという判定ができるような手法が確立する、あるいは対象年齢や検診間隔を遵守している方、アルゴリズムに精通した婦人科医を確保するという条件を設けて、それが全て達成されるのであれば実施は可能であると書きましたが、なかなかそれは難しい状態だろうと思います。
私の発表は以上でございます。
○大内座長 それでは、引き続きまして、資料3-2「子宮頸がんにおけるHPV検査について」と題しまして、慶應義塾大学の青木参考人からお願いいたします。
○青木参考人 今の中山構成員の御発表を受けて、アルゴリズムについて主に検討をさせていただいたということでございます。
簡単に実務としての検診を説明させていただきます。子宮頸部の細胞を機器でとりまして、細胞診検体を作成し、異常細胞があれば要精検とするというのが基本です。
コルポスコープを使いまして異常所見があればバイオプシーをとり、その部分の病理学的な確定診断を行うということで、CIN1、CIN2、CIN3、浸潤がんといった診断がつくというのが大前提ということです。確認だけさせていただきました。
今、中山構成員から御説明があったとおり、細胞診の単独法、HPV単独、併用法等々の内容については3ページに記載されたとおりですが、HPV検査陽性者の大半は、その時点では病変は有さず、その後ごく一部が数年後に有病者となり得るため、これらのリスク保持者の長期間の追跡管理が検診の効果に大きく影響するというのは、今プレゼンテーションのあったとおりでございます。したがって、HPV検査を用いた検診は、実現可能性のあるアルゴリズムの構築と検診の精度管理を含めて、適切な検診の運用ができる場合にのみ実施すべきであるということが述べられたということです。
このHPV検査を用いた子宮頸がん検診の運用上の課題としては、アルゴリズムが複雑になる、精検受診率がどうなるか、増加する要精検例への対応、リスク保持者、すなわちHPVだけが陽性の者の追跡管理方法などが挙げられるというのが大きな問題点の枠組みだと理解しています。
おおよそ運用上の長所と短所をまとめてみましたが、細胞診は今行われていますのでインフラがそのまま利用できるというのが長所だと思いますが、特異度が高いけれども感度がやや低いといった問題。細胞診単独法では、現行2年の検診間隔ということでございますが、HPV検査単独あるいはHPV検査の併用法では延長が可能だということで、検診間隔が5年になる、これは大きなメリットと言えるのではないかと思います。その代わりといっては何ですが、要精検者が多い、偽陽性者が多いというのは、今お話にあったとおりですし、併用だとそれが最も多くなるというのが問題点となると思います。
本日は、2点につきまして御説明させていただきます。まず、アルゴリズムの調査と精度管理体制についてお話を進めます。それから、最後のほうでアルゴリズムの検討を行ったことから判明しました課題と、新たながん検診を導入するとしたらどんな準備が必要か、そのプロセスについてということで御説明をさせていただきます。
まず、アルゴリズムといってもたくさんございまして、それを先ほどの中山構成員から発表されたガイドラインの中で採用されたRCTを用いられたアルゴリズム、それから、国のプログラムとして導入されている検診のアルゴリズム、上記以外、我が国の場合ということで、調査対象を選択しまして調査を開始したということです。
8ページの表にそれぞれを記載させていただきました。一番上はRCTですので、細胞診単独に対してHPV検査を含むものということで、1つのRCTで2つのアルゴリズムが動いているということですので、同じ国の名前が書いてあります。国のプログラムとして導入されているのは、オランダとオーストラリアを見てみました。
基本的には細胞診による子宮頸がん検診、従来行われていたものと、HPV検査をする子宮頸がん検診と比較するという形でRCTが行われていまして、その詳細については先ほど中山構成員から示されたとおりです。この中のアルゴリズムを検討したということでございます。
10ページは、オランダの研究で示されたアルゴリズムです。コントロールのグループと介入のグループ、HPVを使った併用検診です。大変複雑で、にわかに説明するのは難しい、そして皆さんの理解も進まないことがございましたので、これを整理することを試みました。
アルゴリズムの記載の仕方の統一を試みました。よく考えてみますと、ベースラインの検診を行い、要精検になったら何をするのか。それ以外になったらどうするのか。通常は検診に戻るわけですが、場合によってはこの時期に何らかの検査を行う、先ほども追跡とありましたが、そういった検査を行うことになります。
そして、ここでアルゴリズムを見るときに、必ず最終的なコルポ・組織診に行く経路、そして最終的には次の検診に戻る、これは検診が閉じていると研究班では称させていただきましたが、こういった形のアルゴリズムを重視したということになります。
FOCAL研究、これはカナダの研究で、細胞診はコントロール群です。細胞診単独で行ったものは、NILM陰性とASC-USという軽度異常と、それ以上の異常です。それ以上の異常はコルポ・組織診が行われ、軽度の異常についてはその後直ちにHPV検査を行い、HPVがプラスであればコルポ・組織診、マイナスであれば12か月後の細胞診という形になっています。そして次回の検診に回るということですので、このように閉じた形になっているのを重視しているということです。
さらに、要精検者と精密検査の定義づけをさせていただきました。
要精検者というのは、ベースラインの検診で陽性とされたもの全て、スクリーンポジティブになります。精密検査を、要精検者が確定した病理診断を得るためのコルポ・生検、または次の検診となるまでに受診して行われる全ての検査と定義づけました。
そして、精密検査を3つに分類してございます。1つは、コルポ・生検、これを確定精検と呼ばせていただきます。もう一つは、トリアージ精検です。これはベースラインの検診判定直後に疾患リスクの選別を目的で実施する確定精検以外の検査と位置づけます。もう一つは、追跡精検と呼ばせていただきますが、ベースラインの検診判定後、確定精検をやらずに実施する確定精検、トリアージ精検以外の検査と定義づけをしました。
実際にはどうなるかといいますと、細胞診単独の場合ですが、ASC-USというのは直ちにHPV検査でトリアージが行われる場合が多いので、これをトリアージ精検と呼びます。そして、LSIL以上であればコルポ・組織診ですので、これを確定精検と呼びます。ASC-USというリスクがちょっと高いものについては12か月後の細胞診となりますので、これを追跡精検と呼ぶことにします。青二重線枠の中全てを精密検査と呼ぶことにしました。
右はHPV単独の場合ですが、HPV(-)とHPV(+)の2つに分かれますが、HPV(+)は大変数が多いので、コルポ・組織診に行くためのトリアージ精検が行われます、これをトリアージ精検。細胞診が異常なければフォローアップするという形になりますので、これを追跡精検と呼ぶわけです。必要があれば確定精検、そうでなければ次の検診に回るという形です。すなわち、いろいろなアルゴリズムをトリアージ精検、確定精検、追跡精検という形で分類することを試みたわけです。
13ページはオランダの場合です。細胞診単独、介入群は併用検診が使われていましたので、併用検診の場合の要精検は5項目になります。それぞれが点線の追跡精検、確定精検という形で位置づけることができます。
14ページは、カナダのFOCAL研究。HPV単独を細胞診単独と比較したものですが、これも同様で、直ちにHPV検査を行う、直ちに細胞診を行うところのトリアージ精検が加わります。そして、確定精検があり、追跡精検があるという形になるわけです。
日本はどうかといいますと、日本の中の一部で行われているものについては、まず細胞診で要精検、ASC-USは直ちにHPV検査が行われ、トリアージ精検が行われる場合もあり、そのまま追跡精検に移行する場合もあり、確定精検に移行する場合もあるという形が許容されています。ASC-USより上位の細胞診異常であれば、そのまま確定精検に行くという形が採用されていると思います。
ここでオーストラリアの例を挙げます。これは国のプログラムとして導入されたものですが、従来の細胞診だけのもの、HPVだけのものとありますが、HPVもリスクによって2つに分けています。要精検が2つに分かれます。そのまま確定精検に行くものもありますが、あまりリスクの高くないHPVが陽性の場合には、直ちに細胞診でトリアージが行われ、もちろん要精検のコルポ・組織診に行く場合もありますが、それ以外は追跡精検が行われるという形で、既に国のプログラムとして導入されているという経緯です。
日本産婦人科医会でリコメンデーションという形で出ているものについては、極めて曖昧な部分のアルゴリズムは途中で止まってしまっている問題がありまして、この先何をしていいのか分からないという形になっていますので、混乱を招く原因の一つにもならざるを得ないかなという気がしています。
アルゴリズムの検討については、今申し上げた4つのカテゴリーを検討させていただきまして、基本的なパターン分類を試みています。
まず、細胞診単独のアルゴリズムは3つのパターンに分類することができました。すぐ追跡精検と確定精検を入れるものということで、いろいろな国、評価研究では19ページに書いてあるとおりですし、国のプログラムとしてはニュージーランドがこちらを採用しているということでした。
3つ目のパターンは、細胞診のパターンも異常なしと異常ありの2つに分けて、それぞれ確定精検、追跡精検を位置づけるということで、日本の一部、スタディーとしてはカナダ、米国のいろいろな学会のガイドラインに掲載されています。
同じようにHPV検査単独法のアルゴリズムは3つのパターンに分けることができます。要精検が2つ、要精検が3つに分けられるパターンで、これも21ページに示した各国が採用しているということです。
併用検診については、要精検のパターンが非常に増えるのが特徴です。有効性評価研究では、イギリスやオランダでこういったものが用いられていましたが、実際の国のプログラムとして用いている国は今のところはないと思います。学会や団体のガイドライン等には既に載せている米国のものなどがあるということです。
やはり大事なのは、それぞれのカテゴリーにどの程度の人が流れるかといったところを見てみました。24ページに、それぞれのRCTの研究を表にしてあります。細胞診単独と併用、単独と併用、単独、HPVだけのRCTです。
スクリーンポジティブの割合は、当然併用すると上がっていきます。HPV単独でも上がります。そのスクリーンポジティブのカテゴリーも、片や2つ程度でありますが、こちらは非常に増えてくるということです。
確定精検、追跡精検等々に行く割合を示してありますが、いずれにしましても、これらのスタディーは確定精検あるいは追跡精検等々に行くものが、ほぼほぼ100%ちょっと欠ける程度まできちんと追跡が行われ出てきたのが、先ほどの中山先生のプレゼンテーションのあった結果となります。したがって、追跡精検等が非常に落ちてしまいますと、それなりの効果が生まれてこない可能性があります。
これをグラフにしてみますと25ページからのようになりまして、ブルーは細胞診単独、オレンジが併用の場合です。確定精検に行く割合ですが、確定精検の割合は両者でそれほど変わるものではありません。細胞診単独とHPV単独で比較しても、確定精検に行く割合はそれほど大きなものではありません。
しかし、追跡精検に行く人の割合は、細胞診単独に比べていずれのスタディーでも、日本の場合でも、HPV単独と比較しても増えるというのが特徴だと考えられます。
アルゴリズムの検討結果のまとめですが、いずれにしてもトリアージ精検、確定精検、追跡精検による整理を試みて、アルゴリズムの理解を促進したいということでございます。
以上、まとめてみるとパターン分けをすることが可能でした。
有効性評価に用いられた研究あるいは国のプログラムで用いられたアルゴリズムでは、参加者の転帰が確定精検または次回検診のいずれかになっていることが留意点だと思います。
それから、HPV検査を判定に導入した検診では、細胞診単独に比較して特に6か月から12か月後の追跡精検の対象者が増加することが分かりました。
続いて、データの収集と精度管理体制についてです。
研究班では、がん検診の精度管理に基づきまして、チェックリストと健康増進事業報告を作成してまいりました。これを新たなアルゴリズムの中でどうなるかも検討しています。
アルゴリズムを検討するときにこういった精度管理指標が併せてついてこないと、本当に精度管理を伴った運営ができるかが分からないので、それを試みたということです。ここでは時間の関係でこのあたりはスキップさせていただきますが、資料を後で御覧になっていただきたいと思います。
簡単に言いますと、要トリアージ精検の項目が健康増進事業報告では増え、その内容がどうだったかをきちんと把握しなければいけないということになります。
併用検診でもそうです。要精検の中で、それが要確定精検なのか要追跡精検なのかに分けて報告をしていただく必要があるということになります。
さらに深く追跡することはほぼできないと考えられますので、アウトカムについては従来と同じものを使うという作戦を立ててみました。
同じようにチェックリストも今までのものを変えて考えてみますと、34ページに赤で書いた部分が加わるということでございまして、項目数が非常に増えることが分かりました。
35ページも同様です。後で見ていただければと思います。
これをまとめてみますと、健康増進事業報告の報告様式に基づいた作成が可能であったということですが、トリアージ精検、追跡精検、確定精検の組み合わせが発生し、全てを1つの報告様式にまとめるのは非常に困難であることが分かりました。したがって、最終判定のみをきちんと統一した書式として記入する様式としています。いずれしましても、経時的な検診結果、精検結果を把握することが大事ということになります。
チェックリストも項目が増えることが分かったということでございます。
最後に、こういったアルゴリズムを導入するにはどうしたらいいのかということを述べてみたいと思います。
アルゴリズムの検討から判明した課題ですが、どういった基準でとなりますとHPV検査の種類、利益・不利益のバランス、経済評価あるいは精度管理、マネジメントが可能であるか、しやすいアルゴリズムであるのか等ということになります。
アルゴリズムの選択とともに決定しておくことといいますと、これはガイドラインで決めていただきました対象年齢や検診間隔、HPV検査キットはどうするのか、要精検となった者に対して保険診療のカバーする範囲あるいは検診事業のカバーする範囲の線引きを決めなければいけないということと、チェックリストあるいは報告様式も確立しなければいけません。それから、最近言われていますパーソナルヘルスレコードとひもづけることもいいアイデアかもしれません。
それから、誰に説明と理解が必要かということになりますと、もちろん受診者です。国民、実施主体の自治体、検診実施機関、医療者、各種機関等々、これを考えていただければよく分かることだと思います。
どのように実施するのかとなりますと、このあり方検討会での審議、指針への記載ということになるのだと思いますが、今までの経緯から実施の決定から開始まで時間がかかることが想定されます。準備に時間がかかるということですので、タイムラインをどうするかといったことが一番大きな課題かと感じています。
これらを経験して新たにHPV検査を国のプログラムに導入した国がございますが、それがオーストラリアです。
オーストラリアの例を見てみますと、2011年に検討が始まり、実際に導入したのが2017年です。その間に40ページに示したようないろいろな決定段階があり、導入段階に至るということで、最初の段階で検討項目を決定し、公表しています。
その公表の項目は41ページに示したとおりで、このようなことが議論されたということが既に報告されています。
実際には非常に細かいところまで検討されていまして、実に132のスクリーニングアルゴリズムを検討している。この中から一番国に合ったものを選んできたということだと思います。
この検討項目を決定して公表して、計画に沿って進め、導入段階に至っては、プロジェクトを5項目ほど決めて、国民に提供する医療サービスの改訂を行い、疾病登録システムの改訂、あるいは検診に従事する各種プレーヤーの仕事配置転換、精度管理のやり方、情報発信、医療従事者あるいは検診対象者に対して正確な情報を伝えるといったプロジェクトが同時に動いて導入に至っているということでした。
まとめてみますと、アルゴリズムの検討ではパターン化をする、3つの精密検査、トリアージ精検、確定精検、追跡精検を骨組みに組み立てられているということでした。
HPV検査を検診の判定に導入することを念頭に置きまして、健康増進事業報告の報告様式、チェックリストなどの作成が必要だということと、HPV陽性者に対する長期にわたる追跡精検の把握が大事だということだと思います。
この検査を導入するとすれば、オーストラリアでは5年以上の時間と労力をかけて検討を行っていますので、そのマイルストーン、プランをしっかりと立てることが大事かなということでまとめさせていただきます。
以上です。ありがとうございました。
○大内座長 ただいま子宮頸がんにつきまして、お二人から資料に基づいて説明がございました。残り時間が10分を切ってまいりましたので、質疑については限定させていただきます。
本件について、実は本検討会の第2回、平成24年9月3日に同じような議題をされています。国立がん研究センターからは濱島先生が提言されていて、同じく青木先生からこの前段の話が出ました。今回その経過が報告されたことになります。
では、日本医師会の羽鳥構成員、お願いします。
○羽鳥構成員 中山先生のスライドで、13ページ「子宮頸がん推奨グレード-3」ということで、細胞診とHPVの検査を併用すると推奨グレードがCに下がってしまうということは、要するに不利益が多いと認識しました。それはそれでいいと思うのですけれども、青木先生の説明で、諸外国でも大変苦労してHPV検査と細胞診の検査が導入されているわけですが、これは早く決めていかないとまずいのではないか。特に日本の場合はHPVワクチンを打っていないということですから、諸外国に比べて圧倒的に子宮頸がんの割合が増えてくるわけですよね。早く明確な道筋を示してあげないと、がん検診のあり方として非常にまずいのではないかと思いますが、それについてはいかがでしょうか。
○大内座長 オーストラリアの事例がございますが、青木先生にお伺いしたいのは、オーストラリアは6年、7年かかっていますけれども、日本はどの時点にあるのですか。2011年から検討されていて、オーストラリアで2017年に導入されていますが、今はオーストラリアの中で言えばちょうど真ん中ぐらいですか。
○青木参考人 まだそこまでも行っていないかもしれません。アルゴリズムをどういったものにするのかの統一見解を得るという段階だと私は思っています。特に、HPVの検診の一番いいところは5年空けられるというところだと私は考えています。そのことのコンセンサスをきちんと得ないと、なかなかその先に進まず、検診間隔が短いまま進みますと不利益が大きくなってしまうという問題点を抱えている段階だと理解しています。
○大内座長 では、アルゴリズムの確定に至る課題を整理していただいて、次の機会にお願いいたします。
時間が押していまして、課題がまだ残っておりますので、大変申し訳ないのですが、どうしても御質問のある方は挙手を願います。
では、若尾構成員。
○若尾構成員 検診を受ける側として、いろいろ長く研究されていて、エビデンスに基づいた検診の過程を組み立ててくださっていることは非常にありがたく思います。でも、受ける側としては、少しでも早く受診間隔を安全に長くしていただきたいんです。女性にとってみたら、2年おきに子宮頸がんの検診を受けることは非常に大変ですので受診率は伸びないと思います。それから、子宮頸がん検診の最終アウトカムが死亡率だけで見ていることも、女性としてはそれだけではないと申し上げたいです。
ですので、今言っている細胞診のこと、HPV検査のこと、それらの結果をずっと待っていることについては非常に歯がゆい思いをします。そのあたりについては、どこかでモデルケース的な自治体に動いてもらう、もしくは動いているところがあれば、それを進めていくというような経過は今のところは見られていないのでしょうか。
○青木参考人 私からよろしいですか。今、私が関与しているものとして2つの臨床研究が動いています。今、最終年度に入っていますので、その結果を見て解析に1年ほどかかると思いますが、そこで運用状況も含めて御報告できると思いますので、それが大いに参考になると期待しています。よろしいでしょうか。
○若尾構成員 では、近いうちにということですね。
○青木参考人 そうですね、あと1~2年。
○若尾構成員 分かりました。
○大内座長 では、この議題については継続とさせていただきます。
「その他」の事項に移ります。資料4-1「新型コロナウイルス感染症下におけるがん検診受診状況の変化について」、高橋参考人提出資料でお願いいたします。
○高橋参考人 国立がん研究センターの高橋と申します。私からは新型コロナウイルス感染症下におけるがん検診受診状況の変化について報告いたします。
我が国におけるがん検診の受診状況の把握法は、地域保健・健康増進事業報告及び国民生活基礎調査の2つの方法があります。いずれの調査においても、報告は調査の翌年度となるために月別の集計ができないことから、今回のような数か月単位の端的な変化を検討する際は不向きとなります。
本検討では、がん検診受診に関する悉皆性の高いデータを報告することを目的としており、厚生労働科学研究である「がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究」班により、全国労働衛生団体連合会、日本対がん協会、聖隷福祉事業団における2019年及び2020年の月別がん検診受診者数を取りまとめました。これらの機関のデータは、集計対象や検診方法が統一されていないことから単純な比較をすることはできませんが、おおよそ一定の傾向が見られたために御紹介いたします。
まず初めに、日本総合検診医学会及び全国労働衛生団体連合会に加入する180機関からの特定健診の受診者数に関する回答です。健診の受診者数は全年齢・男女計であり、事業者健診、特定健診、人間ドック健診、学校健診、その他の健診の合計となります。また、令和2年7月末時点でのデータですので、令和2年8月、9月は予約数より算定しています。
これを見ますと、第1回の緊急事態宣言が出されました2020年4月、5月では、前年同月比でおよそ2割程度まで健診受診者数は減少しましたが、その後は前年並みに回復しています。
続きまして4ページは、日本対がん協会29支部からのがん検診受診者数に関する回答です。がん検診の受診者数は、5がんにおける自治体で実施している集団で行うがん検診の男女計となります。年齢は胃、大腸、肺、乳がんの40歳以上、また子宮頸がんは20歳以上となり、令和2年9月時点でのデータとなります。
これを見ますと、2020年4月、5月では、前年同月比でおよそ2割程度まで。また、6月、7月は半数程度までがん検診受診者数が減少していますが、その後は回復傾向にあります。
5ページは、聖隷福祉事業団関連機関からのがん検診の受診者数に関する回答です。がん検診受診者数は、5がんにおける住民検診と職域検診の合計であり、胃、大腸、肺、乳がんは40歳以上、子宮頸がんは20歳以上となります。また、令和3年2月時点でのデータとなります。
これを見ますと、2020年4月、5月は、前年同月比でおよそ半数程度までがん検診の受診者数は減少しておりますが、その後は前年並みに回復しております。
これらのことから、がん検診の受診状況につきましては、現時点での考察といたしましては、2020年4月、5月のがん検診及び特定健診の受診者数は、前年同月と比べて大幅に減少していました。一方、6月以降は、前年同月とおおよそ同程度に回復しているという状況にございます。
また、御協力いただいた機関は、いずれもがん検診や特定健診を全国レベルで提供しており、悉皆性の高いデータではありますが、年度における変化など今後検討する必要があること、また、独立性の高いデータ収集システムの構築が求められることから、受診者を把握するための体制について検討する必要があるなどが考えられます。
発表は以上となります。御静聴ありがとうございました。
○大内座長 ただいま、がん検診の研究評価班の班長である高橋参考人から、コロナ下におけるがん検診の受診状況の変化について説明いただきました。
これは今、動いておりまして10月以降も見ているのですが、1月、2月と見てもかなり回復傾向にあると思います。ただ詳しいデータについてはもう少し待って、さらに解析をお願いしたいと思います。さらには、精検受診率の低下も指摘されているところですが、そのデータも収集していただきたいと思います。
では、次の議事に入ります。資料4-2について事務局から説明願います。
○事務局 事務局から簡単に、マイナポータルでのがん検診結果の閲覧についてということで説明させていただきます。
1ページにつきましては、データーヘルスの集中改革プランということで、別の検討会である健康・医療・介護情報利活用検討会で議論されているものでございますが、その中のACTION3において、いわゆるパーソナルヘルスレコード、自身の保健医療情報をPCやスマートフォンなどで閲覧できる仕組みの構築ということで進めているところです。
2ページです。現状としましては、検診情報にワンストップでアクセスして閲覧・活用することがなかなか難しい状況にあるところを、本人の同意の下、マイナポータル等を通じて自身の情報をPCやスマホ等で閲覧・活用できる仕組みを構築していこうという流れになっているところです。
3ページに工程をこのようにつくって進めさせていただいておりますが、さらに4ページに赤枠で強調しておりますところをがん検診ということで進めておりまして、2022年度の早い段階でサービスを提供開始できるような形で、現在システム改修などを含めて準備を進めていく予定にしているところでございますので、現状の御報告ということでさせていただいております。
簡単ではございますが、以上でございます。
○大内座長 ただいま、がん検診結果のマイナポータルでの閲覧等について説明がございました。
お一方だけ、御質問があれば承ります。松田構成員。
○松田構成員 今回のご報告の趣旨と異なるので大変恐縮なのですが、日本のがん検診は将来的には組織型検診に向かわないといけないと思います。このマイナポータルあるいはパーソナルヘルスレコードを活用すれば、将来的には未受診者を把握して受診率を高め、受診勧奨するという方向に向かうことができるのかどうか、お答えいただけますでしょうか。
○事務局 我々も、システム自体をどこまで十分に把握できているかという点はあるのですが、基本的にパーソナルヘルスレコードでは、本人がデータを閲覧するシステムと認識でおりますので、今、御指摘いただいた問題の解決にはすぐにはつながらないのではないかとは思っております。
○松田構成員 ぜひ、今後、ご検討をよろしくお願いしたいと思います。
○大内座長 検討させていただきます。ありがとうございました。
時間が超過しておりまして、消化不良の感は否めないのですが、定刻を過ぎておりますので、これにて議論は終了とさせていただきます。ありがとうございました。
それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○事務局 今回、御意見を十分に賜れなかったところもあるかと思います。もし、追加での意見等がございましたら、事務局までメールなどでお寄せいただけましたら対応させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
また、次回の検討会の詳細につきましては、調整の上御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
本日は長い間ありがとうございました。本日の検討会は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3825)