第13回労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会 議事録

日時

2021年(令和3年)5月25日(火) 16時00分~

場所

厚生労働省 職業安定局第1・2会議室
千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 12階

出席者

  • 阿部 正浩
  • 安藤 至大
  • 大久保 幸夫
  • 鎌田 耕一(座長)
  • 武田洋子
  • 山川 隆一

議題

  1. (1)個別の論点等について検討(公開)
  2. (2)その他(公開)

議事

議事内容

○事務局 「第13回労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」を開催いたします。本日は、御多忙のところ御出席賜りましてありがとうございます。本日は中田委員が御欠席です。
本日は、これまでの研究会で御意見がありました個別の論点について、委員の皆様に御議論いただければと考えております。本日は個別の論点の議論ですので、以降の議事進行は鎌田座長にお願いしたいと思います。
○鎌田座長 それでは、本日の資料について事務局から説明をお願いいたします。
 
○事務局 資料は2種類お配りしておりますが、1つは「議論の整理」で、前回の研究会でも少し御議論いただきましたが、皆様の意見を踏まえ、現段階のものをまとめさせていただきました。本日の進め方は、この「議論の整理」に書いております論点及び基本的な考え方につき議論をいただければと考えております
 まず、先ほど申し上げた、現段階においての議論の整理における基本的考え方をお示ししています。3つありますが、この基本的な考え方を共有し、個別の論点の議論を進めていただければと思います。一番上の〇、「労働市場全体でのマッチング機能を高めていくため、ハローワークや職業紹介事業者に加えて、求人メディアや新たな雇用仲介サービスを含め、労働市場の全体像を把握し、雇用対策を行っていくことが重要」としています。
 これに関して、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部を掲載しております。雇用対策を行う上での基本的な概念、考え方を定めた法律となっております。この法律の第2条に職業紹介機関の定義がありまして、「公共職業安定所、無料の職業紹介事業を行う地方公共団体及び許可を受けて、又は届出をして職業紹介事業を行う者をいう」とあります。有料の職業紹介事業者も含め、「職業紹介機関」として労働施策総合推進法に位置付けられています。
 また、第11条に雇用情報という条文がありまして、ここで厚労大臣が労働力の需給の状況や求人・求職の条件、その他必要な雇用に関する情報を収集し整理するとされております。こうした雇用情報についての提供先が第2項にありまして、職業紹介機関や職業訓練機関が職業選択や労働者の雇入れ、職業指導、職業紹介、その他の措置を行うに際して活用することができるように、雇用情報を厚労大臣が提供することになっています。ここに御議論いただいているいわゆる求人メディア、募集情報等提供事業については規定はされていません。
 続きまして、人材サービスの整理についてです。議論の整理にも記載しておりますが、まずは法的な区分についてです。「プラットフォーム等を用いた新たなサービスについて、サービスの機能や性質に着目して、既存の雇用仲介事業と対比しながら一定の法的整理を行うことが必要。」としております。特に「職業紹介に近いオプションを持つ募集情報等提供の法的位置付け」、「募集情報等提供とプラットフォームの区別」、「職業紹介、募集情報等提供、委託募集についての一定の整理」の3つを論点としております。
 現状では、職業安定法第4条第1項で職業紹介について、第4条第6項で募集情報等提供についての規定がされており、第36条第1項で委託募集について規定されています。また、告示平成11年第141号において、職業紹介事業の許可を必要とする、つまり、職業紹介事業に該当する場合の考え方について書いております。これについては後ほど御説明いたします。
 雇用仲介関係の代表的な最高裁判例を2つ記載しています。1つは東京・エグゼクティブ・サーチ事件というもので、平成6年の判例です。職業安定法による職業紹介の考え方として「職業紹介におけるあっ旋とは、求人者と求職者との間における雇用関係成立のための便宜を図り、その成立を容易にさせる行為一般を指称するものと解すべきであり、右のあっ旋には、求人者と求職者との間に雇用契約を成立させるために、両者を引き合わせるための行為のみならず、求人者に紹介するために求職者を探索し、求人者に就職するよう求職者に勧奨するいわゆるスカウト行為も含まれるものと解するのが相当である」としている判例です。職業紹介は、「雇用関係成立のための便宜を図り、その成立を容易にさせる行為一般を指称する」とありますので、広く解されているという一例です。
 次に、関東求人情報センター事件というもので、昭和57年の判例です。こちらについては、「求職の申込みをした者を事務所備え付けの就職者リストにその氏名、住所、年齢、学歴、希望職種等を記入して登載し、いつでも求人者に紹介することができる態勢を整えたうえ、求人者に対し求職新聞又は購読者リストと題する求職者の名簿を交付して求職者に氏名等を知らせるとともに、求人者の採用面接の段階で必要となる面接案内書及び面接通知書も被告人らにおいて準備するなどの便宜を図り、もつて求人者をして求職者と面接するように仕向けた」という行為が職業安定法第32条第1項のいわゆる職業紹介に該当するとされている一例です。
 続いて、行政による通知でも先ほど申し上げた職業紹介事業に該当するものが、示されております。インターネットによる求人情報、求職者情報提供が、次の1から3番のいずれかに該当する場合には、職業紹介に該当するとなっております。1つ目は「提供される情報の内容又は提供相手について、あらかじめ明示的に設定された客観的な検索条件に基づくことなく情報提供事業者の判断により選別・加工を行うこと」。つまり、求人情報、求職情報を事業者の判断で選別・加工を行ってはいけないということです。2つ目は、「情報提供事業者から求職者に対する求人情報に係る連絡又は求人者に対する求職者情報に係る連絡を行うこと」ということで、この例示として平成12年の通達では、例aを示しており、情報提供事業者が自ら積極的に求職者又は求人者に連絡を行い、雇用関係の成立のための便宜を図るものについては職業紹介に該当するとしています。これをオンライン上で行うとしてもそれは変わらないということです。
 3つ目ですが、「求職者と求人者の間の意思疎通を情報提供事業者のホームページを介して中継する場合に、当該意思疎通のための通信の内容に加工を行うこと」です。例bに詳細があり、「求職者又は求人者が当該ホームページを経由して電子メールを送信することにより、直接オンライン上で応募又は勧誘できる仕組みを設ける場合については、必要なメールアドレスを提供したに過ぎないので、このことによって職業紹介に該当するものではない」としております。
 最後に、「情報提供事業者による宣伝広告の内容、情報提供事業者と求職者又は求人者との間の契約内容等から判断して、情報提供事業者が求職者又は求人者に求人又は求職者をあっせんするものであり、インターネットによる求人情報、求職者情報はその一部として行われているものである場合には、全体として職業紹介に該当する」ものの例としてcがあります。「あなたにふさわしい仕事の面倒を見る、貴社に最適な人材を紹介する等とうたって求職者又は求人者を募り、あっせんしようとする求人又は求職者の事業所名、氏名、電話番号等をインターネットを通じて提供することは、全体として職業紹介に当たる」と整理されております。
 続きまして、参考として、雇用仲介等に係る現行のルールについて整理をさせていただきました。職業紹介、募集情報等提供、労働者募集、求人者という形で整理しており、御覧いただいているとおりの状況になっています。例えば、職業安定機関と職業紹介事業者等の協力の努力義務などにつきましても、職業紹介事業者等の「等」には、地方公共団体、労働者供給事業者が入りますが、募集情報等提供事業者は入っていないという形になっています。また、求職者等の個人情報の取扱いの義務、秘密を守る義務についても、御覧のとおりの状況になっており、募集情報等提供事業者には当該規定は適用されていません。また、労働条件明示の義務については、職業紹介、労働者募集を行う者、求人者に適用されており、募集情報等提供事業者については、募集内容の的確な表示の努力義務が適用されております。
 人材サービスの類型についてというものを再度お配りしております。職業紹介は、求職及び求人の申込みを受け、雇用関係の成立をあっせんするということで、職業安定法に基づく許可が必要となっているものです。委託募集は、いわゆる人の募集を行う企業等が、自分の雇用している方以外を労働者の募集に従事させる場合については、募集主の側で有料で委託する場合は、職業安定法に基づく許可が必要となっているものです。募集受託者は求職者に対して被用者となることの、つまり自分の社員となることの勧誘を行うこととなります。
 求人メディアについて、いわゆる募集情報等提供事業がほぼ該当すると考えられますが、求人企業の依頼を受け、求人情報の作成や掲載を行うものです。求職者は自ら求人情報を検索し応募するということと、求職者の情報やサイト内での行動を基に、検索結果の並び替えやリコメンドを行う場合などのサービスも存在しております。
 続きまして人材データベースです。求職者や潜在求職者の情報を求人企業や職業紹介事業者に対して提供するというものです。求人企業や職業紹介事業者が求職者情報を検索し、スカウトを送付するものや、求職者が自ら情報を登録するだけでなくて、候補者の情報をクローリング・収集するサービスも存在しています。
 人材データベースについては、例えば求職者の情報を求人者に提供する場合は、基本的に募集情報等提供事業に該当すると考えられますが、求職者の情報を職業紹介事業者などに提供している場合については、基本的には現行の定義では募集情報等提供事業者に該当しないのではないかと考えられます。
 続きましてアグリゲーターについて、求人企業や職業紹介事業者、求人メディアが求人情報を登録するものと、インターネット上に公開されている求人情報をアグリゲーターがクローリングして収集するものとがあります。つまり、登録をしたメディアや求人企業からの情報以外も、インターネット上で基本的にオープンになっている情報を集めてくるクローリングをした上で、一覧に供するというサービスです。求職者が自ら求人情報を検索し応募する場合と、求職者の情報やサイト内の行動を基に、検索結果の並び替えなどを行う場合も存在いたします。求人企業が求人情報の掲載を依頼し、それに基づき、いわゆる求職者、職を得ようとする方に提供する場合については、基本的に募集情報等提供事業者に該当いたします。それ以外の場合について、例えばインターネット上で集めてくる場合については、誰かからの「依頼」、つまり求人企業又は求職者になろうとする者からの「依頼」はございませんので、基本的に募集情報等提供事業者に該当しないのではないかと考えられます。
 次に、SNSについてです。求職者、求人企業、職業紹介事業者を含め、不特定多数の利用者が自らの情報を開示するプラットフォームです。利用者同士がSNSに登録して、その中でやり取りをするということです。求人情報として投稿することを目的とした機能を有するサービスも存在し、利用者の登録情報や閲覧履歴を基に表示される情報も変化するものもあります。こちらについても、求人者若しくは求職者からの「依頼」がありませんので、基本的に現行法上は募集情報等提供事業者に該当しないのではないかと考えられます。
 続いて、スポットマッチングについてです。求人企業が短時間の求人情報を登録する一方で、求職者もあらかじめ自らの情報を登録する。選考過程がほとんどなく、求職者の応募によりアプリ等のサービスなりマッチングが成立します。サービス内に蓄積された求人者・求職者の評価情報も提供され、給与の立替払いが付加されているサービスも存在します。こちらについては、基本的には職業紹介となるのではないかと考えておりますが、募集情報等提供事業に該当するような場合もあるであろうと考えております。
 最後に、クラウドソーシングです。こちらについては業務委託契約を締結する発注者と受注者のプラットフォームということで、発注するのが業務、タスクというもので、発注者と、自分がスキル情報を登録する受注者が、互いに検索するというものです。サービス内で蓄積された受注者・発注者評価などの情報も提供されるということです。こちらについては、基本的な考え方としまして、いわゆる請負的なものを仲介しており、求人者、求職者の仲介を対象とする職業安定法の範疇には基本的には入ってこないものと考えています。
 次に2つ目の論点として、新しいサービスの把握等についてです。議論の整理において、「これまで人材サービスを提供していなかった事業者が参入し、比較的参入が容易な領域となっている。」「労働市場において雇用仲介サービスを行う者が守るべきルールを明確にすべき。」「多種多様なサービスが展開されている中で、一定の基準を満たす事業者を認定し、求職者と求人者の双方に対して利用を促すべき。」「新しいサービスを展開している事業者を把握できていないことは問題であり、イノベーションを疎外しない形での把握の仕組みの導入を検討するべき。」ということが示されております。
 現行の制度について、職業紹介事業、募集情報等提供事業、委託募集、労働者派遣事業の参入、事業把握、責任者については御覧のとおりの状況になつております。職業紹介や労働者派遣においては、職業紹介責任者や派遣元、派遣先責任者を置くのが義務になっており、法制的にはこの方々がいわゆる苦情の処理を行う形になっております。募集情報等提供事業には責任者の規定はありません。
最後ですが、何度か各委員から御発言がございました、いわゆる認定制度、より良い事業を行っている者を認定していく制度にどのようなものがあるかを紹介しております。職業紹介優良事業者認定制度として、現在許可制になっております有料職業紹介事業者につきまして、法令以上の一定の基準を設け認定を行っていく委託事業を行っております。
 また、医療・介護・保育分野適合紹介事業者宣言として昨年から行っているものですが、医療・介護・保育分野の有料職業紹介を行っている事業者から、職業安定法や職業安定法に基づく指針をしっかり守りますということを宣言いただき、認定ではありませんが、手挙げ方式で厚生労働省においてホームページ等で公表するというものです。現在、367社が登録しています。何度か研究会でもお話がありましたが、求人情報提供ガイドライン適合メディア宣言ということで、厚労省が全国求人情報協会に委託している求人情報提供の適正化推進事業において平成29年に構築されたガイドラインに基づき業務運営を行ったことを、社会に対し意思表明するということで宣言していただく制度です。62社、128メディアが現在宣言を行っているということです。最後に派遣の関係ですが、優良派遣事業者認定制度というものがあり、派遣の許可を持っている事業者向けのものです。こちらも法令遵守や派遣社員のキャリア形成などのいわゆる法令以上の一定の基準を設け、それを満たした事業者を優良派遣事業者として認定する委託事業です。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは、ただいまの説明に対し、委員の皆様から御質問、御意見を頂きたいと思います。まず、基本的な考え方についてです。これまでのところ、私の認識としては特段異論はなかったように思いますが、この考え方に基づいて個別の議論をしていくことでよろしいでしょうか。もちろん、後で基本的な考え方に触れていただくのは全く問題ありません。
それでは、御意見ないようですので、人材サービスの整理のうち、法的区分の部分について御意見を頂きたいと思います。
 
○山川委員 先ほど御紹介いただいたように、最高裁判例は非常に広く職業紹介の定義を明らかにしており、恐らくは、募集情報等提供につき、もし規定が現在なかったとしたら、この職業紹介の定義にすら該当してしまうおそれがない訳ではないと思います。申込みという要件はありますが、「雇用関係の成立を容易にさせる行為一般を指称する」ということで非常に広く、もし募集情報等提供の規定がなければ職業紹介に該当するおそれすらなしとしないのではないかと思います。しかし、現行法に規定がある以上、募集情報提供に該当するのであれば、反対解釈としてこれは職業紹介には該当しないという整理になると思います。
ということからすると、この法的な位置付けを整理することは、職業紹介に当たらないことを明確化する意味もあるのではないかと思います。法的整理の必要にはいろいろな意味があるのですが、いわば予見可能性を高める、あるいは現在の状況の下で職業紹介に該当しないというような外縁を明確にするという意味もあるのではないかと思った次第です。
 
○大久保委員 私も十分に考え方が整理できているわけではありませんが、改めて、この法的な区分を考えたときに、最高裁判例が2つ紹介されておりますが、これは2つともかなり古い判例です。実際に書いてあるこの2つの内容を見ると、これは確かに職業紹介だと思う内容です。一方で今出ている新形態のサービスというのとはずいぶん内容が違うのではないかと思います。
 オンラインのサービスが出てきた最初は、1990年代の終わりぐらいからで、新卒の求人サイトから先に出てくるわけです。当初の求人サイトと呼ばれているものは紙でやっている求人情報誌がインターネット化したものだったのです。ですから、文書募集の性格を継承しているもので、その中でテクノロジーやAIなど進化してくるに従い、求職者に対してより便利に活用してもらうための幾つかの機能が追加されて発展してきたものです。
 ただし、職業紹介をオンラインでやる形に近い発想を目指しているものもあるので、実際には新形態といってもいろいろな形のものがあり、職業紹介に極めて近いものもあるわけです。
 それでも多くのものは、職業紹介ではない形の募集情報等提供事業として、作ってきたサービスだと思います。区別する基準が書かれておりますが、事業運営をしている側からすると、ここにおける選別・加工する解釈が、次々に新しいテクノロジーが出てくる中で、結構、迷うということだと思います。
 これが職業紹介に当たるのか、当たらないのか、より予見可能性が高いほうが望ましいと思うのですが、結構、微妙なものが新しいテクノロジーの中にもあり、場合によってはその判断が人によって違うものも出てくるので、分かりにくくなっていると思います。
 やはり、もう一段階明確に職業紹介とそうでないものの区分が分かりやすくなるようにルールを整備する必要があるのではないかと思います。特に、リコメンドの問題は、分かりにくさが多くあるような感じがしており、その分かりにくさが、場合によっては求職者が必要とされているサービスについても、グレーゾーンに入りかねないのでやめておこう、ということにもなっています。
 本来、何を規制すべきかを原点から考えるのであれば、当然ながら求職者の保護が一番大事な問題ですので、その観点に照らし合わせてより規制するべきであり、職業紹介とそうでないものとの間の線引きをどのような形でするのかを改めて考える必要があると思っております。
 私が思うには、求人情報を提供することと求職者の情報を求人者に提供することは、同じものとして見るのではなく、求職者の個人情報等を求人者に提供するときこそ、保護する必要があるのではないかと思っております。求職者の情報を1つ決めて提供するとなれば、それはやはり職業紹介の意味合いが強いのだろうと思います。そうでないテクノロジーによって提供されている求人情報については、募集情報等提供事業であると整理するのも1つの考え方ではないかと思っております。これについては、いずれにしても明らかにし、予見可能性を高める必要があると考えているところです。
 
○阿部委員 私は、一定の法的整理を行うことは必要だろうと思います。いろいろな理由はあるかとは思いますが、新しいサービスが出てきて、職業安定法にある意味規制のない中で事業者がいろいろなことをやっているというのが事実だろうと思います。我々が目指す方向性の1つとして、労働市場が効率的に機能することを考えていかなければいけないことだと思います。
 我々研究者であれば、一度は見たことがあると思うのですが、国立研究開発法人科学技術振興機構、いわゆるJSTが、JREC-INというポータルサービスを行っております。
 JREC-IN Portalの利用規約をみると、第4条の2に、このJREC-IN Portalは職業安定法に定める職業紹介を行うものではなく、機構は登録ユーザーその他の者に対し、個別に求人のあっせん又は登録求人機関との雇用契約の締結等の仲介を行うものでないとあるわけです。
 第15条に自己責任原則及び免責と書いてあるのですが、ここが私が非常に注目したいところです。登録ユーザーは自らの責任と判断でJREC-IN Portalのサービス及びJREC-IN Portalで提供される情報を利用するものとすると書いてあり、全て求人者と求職者にお任せしますと書いてあります。その2で、機構は、JREC-IN Portalで提供する情報の真実性・正確性・適切性・有用性・合法性・安全性・最新性・掲載期限その他一切の事項について何ら保証しないと書いてあります。
 つまり、こうした情報を、そのポータルサービスとして提供していることが労働市場に混乱をもたらす、研究者の労働市場に、もしかしたらそういった混乱をもたらす可能性はあるのではないかと思います。多分、大丈夫なのだろうとは思いますが、ただ、このように書かれてしまうと、むしろ労働市場を効率よく動かしていくためには、こうした情報の真実性・正確性・適切性・有用性・合法性・安全性・最新性あるいは掲載期限、そういったものに一定の責任は望むものではないかと思います。
 これは1つの例ですが、こうした新しいサービスにはこういった問題があるかもしれない。それらに一定程度指針を与えるために法的に整理するなど、そういった考え方はあるのではないかと思っています。いずれにしても私の観点は、労働市場の効率性を追求していくために、どのような役割をそれぞれのプレイヤーに担ってもらうか、それを整理する上で法的な整理はあっても良いのではないかと考えているところです。
 
○安藤委員 では、私からも簡単に一言申し上げたいと思います。資料の6ページに平成12年局長通達という形で情報提供と職業紹介の区分に関する基準を設けているわけですが、これを現時点でもう一度振り返ったときに、どのようなロジックに基づいているのか。今、文言として出ているこの基準の背後に、どのような理屈があってやっているのかを整理する必要があると考えております。
 そもそも、求人情報を提供する、求職者情報を提供すること自体が労使双方にとって望ましいマッチングを実現することに役に立っているのであれば、それを妨げる必要はないわけです。例えば、ここに掲げられている中で私が気になったものとしては、Ⅲの2における求人情報に係る連絡又は求職者情報に係る連絡を行うことで、果たして、これが職業紹介に当たるのか。自分でどこかと話をしたいときに、その仲介をするのは、あくまで意思決定は当事者が行い、連絡の部分についてコストを下げることだけをやっているのであれば、ここにはあまり問題はないのではないかという気はしています。
 これに対して、労使双方にとって望ましいマッチングを実現するという観点から、どこまでが理想的なものとして考えるのかは非常に難しいと思っております。例えば、お金を払った使用者とお金を払っていない使用者がいたときに、お金を払った使用者側、求人企業に有利なマッチングを実現することで、労働者にとっては本当はより良いマッチングがあるのに別のマッチングを成立させてしまうことになったとすると、望ましくないとも考えられます。しかし、情報提供が何もなければマッチングが一切成立しなかったと思い、次善の組合せだったとしても無いよりはましなどと考えたときに、どのような要素、例えば、労働者の個人情報が不適切に使用されるのは望ましくないことは分かりますが、それ以外に、どのようなところを規制するのかが理屈として私は完全に腑に落ちていないところがあるのです。新しいサービスが出てきたときに、今ある通達に当てはめてどう解釈されるのかより、もう少し分かりやすくどの理屈に当てはまるからこれはどう解釈されるのか、これが分かれば予見可能性がより高まるのかと思っており、その辺りがより明確化されるとよろしいのではないかと考えております。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。では、私の意見も申し上げたいと思います。
まず、職業紹介と募集情報等提供事業との関係で申しますと、冒頭に山川委員がおっしゃったように、古い判例で、今とビジネスモデルというかサービスモデルが違ってはいるのですが、最高裁が職業紹介についてはかなり広めの定義をしていると、私も同様の感想を持っております。
しかし、古いがゆえに、現在の新しいサービス形態にマッチするかどうかということは、もちろん議論になるわけですが、法律家として現にある定義があれば、それに当てはめて考えるというスタンスで考えれば、山川委員がおっしゃった法的整理という点で、もし外縁というものが曖昧あるいは広すぎるために混乱を招くということであれば、やはりこの場で整理をしていく必要があるのではないかと思います。
 また一方で阿部委員がおっしゃったように、労働市場の効率性、労働市場のルールといったものをしっかりと踏まえて、広く普及、ルールを共有化する点からも、やはり整理が必要ではないかと思います。1つ例を挙げておられましたが、やはり、その辺のところは共通認識を持っていくことが必要だと思っておりますので、法的整理の意義はあるのではないかと思っております。
 そこで具体的に、例えば、職業紹介と募集情報等提供事業との区分でいうとなかなか難しいことはありますが、大久保委員がおっしゃったことを私は非常になるほどと思って聞いていました。インターネットを通じた募集情報提供と職業紹介の区分で幾つかの基準を立てており、この基準の意味を考えていかなければいけない。安藤委員もおっしゃっていたように、その背景にある理論を考えておかないと、新たなサービスが出たときの対応が難しいのではないかというのは、正にそのとおりだと思っております。
 取り分け、大久保委員から御指摘のあったリコメンドをどう取り扱うかというのは、結構、難しい問題です。情報の選別・加工と連絡をそのまま文字通り読むと、リコメンドは入る可能性も出てくるし、入らないなら入らないという見方もできるかもしれませんが、非常にグレーだという感じはしております。その上で、求人・求職等のルールを一緒に取り扱う必要はないのではないかという御提案がありました。つまり、求職者情報の提供に関してはやや厳格なルールで、求人情報についてある程度は選別・加工などについては緩やかに捉えていき、よりマッチングに資するような仕組みに整理したらどうかというのは1つのアイディアだと私は思って聞いておりました。今のまとめを含めて、この議論で全てをまとめるつもりは全くないのですが、何か御意見があればお願いしたいと思います。
 
○大久保委員 座長に整理していただいたことに異論はありません。ちょっと追加的なお話を少し加えたいと思います。
 私は、日本の求職者はかなり受け身だということも申し上げましたけれども、そういう中でより望ましいマッチングを推進していく上で、リコメンドは大変有益だと思っております。それがAI等が進化したことによって、求職者がサイト上で探索した履歴とか、閲覧している傾向等から、こういうものに興味があるのではないですかとリコメンドをするということがあるのですが、そこに対して、こちらは良い、こちらは悪いというような規制を加えることができるのか、私としてはあまり合理的ではないような気がします。つまり、本来の何を守るための規制かということが若干分かりにくくなっているのではないかと思っておりまして、求職者の個人情報の保護が、守るべき重要なテーマであるとするならば、求職者情報を求人者に提供することにおいてはよりナーバスであっていいし、それこそ職業紹介の一定の許可制の免許を持った上でやるべきところがそこにはあると考えても合理的なのかなと思いましたので、リコメンドについてはその辺りの議論まで少し踏み込んで考えたほうがいいのかなと思ったのが、私の意見です。
 
○山川委員 リコメンド機能の取扱い等は、先ほどの区分基準をより明確化するという方向が良いのではないかと思います。恐らく最高裁判例と違う要素が入ってきたのは、ネット上では見る人が検索をできるということではないかと思います。客観的に明確な基準をあらかじめ設定している場合を除くというのは、多分それは事業者が独自にしていることではなくて、検索している本人の行為と評価してよいというようなことかなと推測をしているところです。その辺りを見直すというか、より明確化するということは、あり得るのかなと思います。
 もう1つ、求人情報と求職者情報の区別もあり得ることかと思います。法律の世界では、要件を考えるときには、どのような効果を与えるのがふさわしいかという効果から逆に要件を考えるという方法があります。求職者情報は個人情報やプライバシーの問題から考えていく、求人情報は労働条件の明示などの規制がありますので、そちらの効果ないし規制を掛けるのが妥当だということから要件を考えていくなど、効果から要件を考えるとしたらどうなるかというシミュレーションをやってみるのも1つかなと思います。
 あと1点は、先ほど座長がおっしゃった新形態サービスというか、現行の募集情報等提供以外については、先ほど事務局からSNSのお話もありましたが、現在の募集情報等提供ですと、情報提供自体をするのが事業者だという立て付けになっていますので、本人が情報提供をするのはこれに該当しないというようなことから来ているのかなとも思います。あくまでSNSは、本人が情報を提供して、それを載せる場が事業者によって提供されるという、その辺りの区別も、またはっきりしないところがあるかもしれませんけれども、こちらは募集情報提供の定義で提供行為を規制しているということと、それから相手方も、例えば労働者となろうとする者というように対象も限定されているという要件の立て付けが、現在のSNSにはなかなか妥当しないということの影響・結果かと思っております。これも、また検討に値するのかもしれませんけれども、職業紹介と募集情報提供の区分とはやや次元の違う話が含まれているということかもしれません。
 
○鎌田座長 ありがとうございました。新形態サービスのことについて山川委員から発言があったのですけれども、この点についても皆さんに御意見を頂ければ有り難いと思います。
○大久保委員 求職者の皆さんからのヒアリングの回にもありましたけれども、転職を考える皆さんは、転職をするときにハローワーク、求人サイト、新形態サービス、SNSのようなものを使い分けています。日本ではまだSNSを求人・求職に使う比率は、他の国と比べた場合に低いのですけれども、既にSNSがトップシェアになっている国も結構あるのです。入職経路の1つとして成り立ってきているということだろうと、私は思っています。
 そうすると、雇用仲介サービスとしてきちんと把握するとか、最低限のベースとして、個人情報の保護とか求人情報の的確性について守るということは、発想として自然に出てくることなのかなと思うわけです。ですので、新形態サービスと言われているものについても一定程度は幅広く、この雇用仲介サービスの概念の中に含めて捉えるべきだと私は思います。
 ただ、新形態サービスと呼ばれている事業側が、職業紹介と言われることについてはもちろん、募集情報等提供事業と言われることについても抵抗感を持っているのは、現在の事業形態に合った規制になっていないからだと思うのです。過剰なものを求められるので、それでは事業を進化させる上で差し障りがあると思っているから、否定的な考え方を持っているのだと思うのです。逆に、最低限の情報について把握したり、本当に絶対的な大事なことを守ってもらうという観点から、募集情報等提供事業の今の定義に修正を加えて、新形態サービスについても一定程度の把握ができるようにしていくというのは、1つの考え方なのではないかなと私は思っています。
 ただ、そのときにあまり変なところに線引きをするのはよくないなと思っています。例えば、既に募集情報等提供事業は国際的なサービスですから、海外から日本に提供しているサービスもたくさんありますし、日本に進出してきている新形態サービスもあります。伝統的な国内の企業体だけがそういうルールの中に入っていて、そうでないものはルール外で、一般の人から見ると同じように活動しているという状態は、私はあまり望ましくないと思っているので、規制・ルールのオペレーションの問題も含めて、しっかり検討する必要があるのではないかと思っています。
 
○武田委員 先ほどからの議論とも関係致しますが、新しいサービスの把握等と書かれている現行制度の表が1つポイントと考えております。現在は、募集情報等提供事業は全部バー表記になっておりますが、新しいサービスが既に多数起きており、イノベーションを阻害しないという観点で考えますと、事業把握をどのようにしていくかが重要なのではないかと考えます。
 今後も更にデジタル技術が進み、この体系的な整理にも入っていないサービス、新しいサービスが生まれてくる可能性もあります。サービス次第では、行政として対処すべきことが生じる可能性もあります。そうした点を考えると、労働市場におけるこうした仲介サービスの在り方の全体像を把握しておくことは、とても大切だと思います。
 また、こうした把握によって、一番重要なことは、大久保委員もおっしゃったように、求職者の権利を守る、特に個人情報などの扱いを適切に行うことを促進する観点だと思います。これは以前も申し上げた件ですけれども、認定制度などをうまく活用できれば、新しいイノベーションを阻害しないという観点と、同時に求人者の様々な権利を守ることが担保され、かつ行政としても事業把握がより進むのではないかと考えます。
 ただ、こうした認定制度というのは言うは易しですが、ではその基準をどう考えていくのか、どう設定していくのかという点は、もう一段の議論が必要になると考えます。以上です。
 
○鎌田座長 新形態サービスについての御意見を頂いている中でなるほどと思ったのは、1つは大久保委員からの、新形態サービスについても一定の雇用仲介という枠の中で考える必要もあるのではないかというものです。ただし、それは現在ある事業規制、あるいはその効果というものの、言ってみれば重さといったことを見据えながら議論をすべきではないかというようなお話があったと思います。山川委員からは、この新形態サービスの特殊性というか独自性というか、本人の自主性といったことについても御指摘を頂いたと思っております。また、武田委員からは、事業規制の在り方については認定制度をもう少し活用するような方向で考えてみたらどうかということと、求職者の保護をベースに考えていくべきということでした。
 新形態サービスという場合に、例えばクローリング等いろいろな類型を御説明いただいたのですが、仮に現在の募集情報等提供事業というものに当てはまるか当てはまらないかという法律論で議論しますと、恐らく依頼があって提供するということがネックになってきて、これを出してくださいと依頼があれば、それは募集情報等提供事業に入るのだけれども、いわば申込み行為がない場合には入らないというような認識で法適用を考えているということであれば、それは実態としては新形態サービスの、あるいは個々の具体的なサービス事業者の在り方によって、当てはまる当てはまらないというのがでてくるのだと思うのです。
 プラットフォームなどで求人・求職情報として出ているときに、求職者は依頼があって出ているのか、依頼がなくて出ているのかということはよく分からない。だけど、求職者の目線から言えば、先ほど阿部委員がおっしゃったように、正確性とか的確性、コンプライアンスは守ってくださいという視点だと思うのです。つまり、依頼があるからしっかりしてほしいとか、依頼がないからそれはちゃんとしなくてよいという話ではないと思うのです。個人情報も依頼があれば守るけれども、依頼がなければそれは法適用の埒外だということではないと思うのです。そうすると、求職者にとってその情報がどう的確で、あるいは個人情報が守られるかということを担保していくことが1つ論点なのかなと思っております。

○阿部委員 私からは2点あります。1点目は、先ほどの武田委員の発言で、新しいサービスの把握の所に関連してなのですけれども、私のこれまでの経験で言うと、募集情報等提供事業者を把握しようとして何回かトライしてきましたけれども、やはり完全に把握はできませんでした。それは、法律の裏付けもないということもあるのかもしれませんが、推測でしか現状、国内で募集情報をやっている事業者が何社あるかというのは、実は把握できていません。
 先ほどの各業界で自主的な取組を促すということも、それはそれで非常に大事なことだと思うのですが、実際に事業者を把握しようとしたときに、それだけで大丈夫なのかというのは、少し検討する余地はあるのかなとは思います。
 もう1点はリコメンドに関連してなのですけれども、これは法律の先生方にお聞きしたいところではあるのですが、リコメンドというのが、労働者の職業選択の自由を狭めるのか狭めないのかという議論について、どう整理されるのだろうかということです。確かにリコメンドでもいろいろなタイプがあると思うので、全てが駄目だとは思えないのです。例えば、私はこういう職業を望んでいて登録しておくと。新しい求人情報が来たから、それをリコメンド機能でやってくるという場合には、あまり選別されていない情報で新規の情報が出てくるだろうと思います。そこである程度選別が行われた場合には、自分で選別していないで誰かが、第三者が、あるいは機械が、最近ですと機械学習とかもありますので、そうした機械が選別をしてしまった場合に、どこまで職業選択の自由が担保されたと考えていいのか、先生方にお聞きしたいと思っています。
 
○鎌田座長 法律家という要望だったので、私の考えをちょっと申し上げたいと思います。職業選択の自由というのは、リコメンドとの関係でいうと、直接は関係はないかなと思うのです。それはどういうことかというと、職業選択の自由とよく言われるのは、この仕事を辞めたら違約金を払ってもらいますよという、何か一定の外的な強制というか、仕事を辞めること、あるいは仕事に就くことに強制的な仕組みが付いているというような場合は職業選択の自由に反するのかもしれないのですが、リコメンドは、どうですかと勧めるということなのだと思うのです。
 そうすると、それは自由に選択できて、嫌だと言えるわけです。であれば、職業選択の自由という意味では抵触しないだろうと。ただし、リコメンドする側の仲介事業が、あなたの要望にはこれがぴったりですよということで、ピンポイントで押してくるということがありますよね。そうすると、情報提供と言いながらも職業紹介に限りなく近づいていくというのはあると思うのです、雇用契約の成立について容易にするというよりは、かなり積極的に介入している。情報提供の域を超えてくるというような場合をどう考えておくのかは整理がいるかなと思います。
 
○山川委員 職業選択の自由という点は、鎌田座長と同意見です。特に選択を強制されたということがなければ、判断はできるわけですので、リコメンドされたからといって職業選択の自由を害したとまでは言えないと思います。あとは、あるとすれば、虚偽の情報に基づいて、あるいは本人の希望と別の理由でリコメンドされたときには、本人の選択を介したとはいえ、その選択をした本人はこんなはずじゃなかったと期待を害された、あるいは信頼を害されたというと思う可能性はあるかもしれませんので、情報が明確でかつ適切であるということが、ある種要請されるかと思います。
 
○鎌田座長 職業紹介との関係、つまり介入すればするほど職業紹介に近づくというイメージ、特定性や個別性という話はいかがですか。
○山川委員 そういうことはあり得るかとは思いますが。発想として、やはり実質的に、それはあっせんに近いかどうかということは、判断の観点としては十分あり得るかなと思いました。
 
○阿部委員 私も両委員の御説明、よく理解できました。最後の鎌田先生がおっしゃった職業選択に近づくかどうかというのも、1社なら駄目だけれども10社だったらどうなのか、2社ならどうなのかというのは、どのように考えればいいのかは御説明を聞いていて、私も感じたところです。ですので、リコメンドという一言で区切っていいのかどうかは、少し考えたほうがいいのではないかとは思います。以上です。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。新しいサービスの把握の議論にも入っていますので、こちらも併せて御意見を頂ければと思います。
○安藤委員 過去のこの会議でお話したこととも重複するかもしれませんが、幾つか意見を述べておきたいと思います。まず労働者保護が大事だ、その中でも個人情報はとても重要だとはいえ、労働者保護の観点から、個人情報保護法にどのぐらい上乗せする必要があるのかというのは、この会議に参加していて常に考えさせられているポイントです。
 これまでもWebサービスなどもあって、一定のリスクがあっても新規サービスを使う人もいますし、我々研究者というのは、自分の学歴から、どこの学校を出て、いつ学位を取って、どんな論文を書いてと、様々な個人情報に当たりかねないものをたくさんオープンにしています。それをやっているからこそ、一本釣りの声が掛かるみたいなこともあるわけです。あなたはこの仕事に向いているのではないかと言って、異動のチャンスが向こうからやってくるみたいなこともあるわけです。これはコンピューターのエンジニアの方などでも同じようなことがあって、GitHubと言うのでしょうか、自分の書いたプログラムを載せておいたり、あとはプログラムのコンテストみたいなもので高い点数を取るとお声が掛かるというのがあるわけです。個人情報保護も含めての話なのですが、規制を厳格にすると、分かりやすいかわいそうな人は出ません。個人情報が流出したとかで損失があるという人が現れにくくなったけれども、もしかしたら成立したかもしれないマッチングが成立しないというような、見えにくいかわいそうな人が出てくるのではないかというトレードオフを、十分に考えておく必要はあると思っています。
 このことをしっかり理解した上で、しかしここは譲れない線だというところで規制のラインを引くということをやらないと、規制に関する納得感に影響があるのではないかと思うのです。古いビジネスモデルを守るためになどと規制を掛けていると誤解されてしまうと、ビジネスの邪魔をしていると思われてしまうので、やはり明確な理由、ロジックがあって一定の基準の下でルールが分かりやすく明示されているといいと思います。
 先ほどあった話ですが、新形態の人たちについても把握したいということは当然あるわけです。例えば、実は募集情報等提供事業者に該当する人であっても、新形態の方の中では、そもそも自分が当てはまると思っていなければ申し出てくれないわけで、そこがいかに分かりやすく、こういうことをやるとこういう業法に従わないといけないとか、こういう情報提供義務があるということが、うまく伝わるといいなと思っています。
 もう1点は、リコメンドという話で、何のために、誰の利益のためにリコメンドしているのかというのが、恐らくいろいろなビジネスがあるのではないかと思っています。例えば、行動経済学の研究でも有名ですが、人間は選択肢が20何個あると結局選べません。しかし、その中から選択肢を6つに絞ってやると、実際に購入してくれる人が増えるみたいな、多すぎると選べないみたいな議論まであるわけです。求職者が自分の転職先をWebで探していっても、データが多すぎてよく分からないと、また明日見ようと先送りしてしまうのです。これが、まずある程度確率が高いものに母集団を絞ってもらうだけで選びやすくなる。もしかしたらそれは自分で全部見た場合にはもっといい会社があったのかもしれないけれども、それでは選べなかったのだったら、母集団を絞ってもらったことによって選べたというだけでも、かなりの価値があることかもしれないと思っています。
 また、数を絞ってくれるだけではなくて、マッチング確率が高いものを紹介してもらえるのか、これでしたら求職者にとってメリットがあるわけです。これに対して、求人企業側がお金を払ったという場合の情報が上位にくるというような場合には、そのリコメンドというのは求職者のためになっているのかというと、少しグレーになってくるわけです。数が絞られて選びやすくなっているというメリットはありつつも、求職者からはもしかしたら第2候補、第3候補に当たるようなものしか見えていなくて、もっといいものが見えていないという損失が起こり得るのではないかということで、この辺りはリコメンドといってもいろいろな構造、サービスの中身があって、どちらを向いてどんなことをやっているのかということまできちんと分けて考えないといけないのかなと、お話を聞いて感じました。
 そもそも検索ができるようになったことがとても重要な変化だという御指摘を聞いて、おっしゃるとおりだなと思ったのです。このとき、どちら側が情報を提示して、どちら側が検索する側なのかといったら、これまでの基本的なロジックは、自分の条件を細かく言語化して、条件を明示するのが難しい側が検索をするというのが一般的だったわけです。例えば、不動産を探す場合も、個人個人が自分の好みを明示するのはなかなか難しい。しかし、不動産の、駅から何分で築何年で、何平米で家賃は、という条件が出ていれば選びやすいわけです。ですので、客観的なデータを出しやすい側がテーブルに家を並べて、それを家を探す人が検索するというようなことをやっていたわけです。
 では、仕事探しについてはどうかというと、紙ベースでやっていたような時代は、基本的にはやはり企業側の情報がリストアップされて、それのどれに応募するのかみたいな話をしたわけです。しかし、最近の検索が容易になったことや、マッチングのデータからAIがリコメンドできてしまうというような話になると、今度は逆に労働者側、求職者側の希望であったり属性というものをデータベースにして求人企業側が探すということも可能になったりなどということで、この辺りのメカニズムが変わってきたという技術進歩のことも踏まえて、果たしてそこをどこまで抑制していくのかということを考えて議論をする必要があるなと思っています。
 
○山川委員 把握をするということを法的に考える場合には、何らかの届出の義務を課するというようなことが考えられるわけですけれども、その場合にも、義務を掛ける以上は対象を特定するための要件は考えなければいけないので、その辺りをどうするかという問題は出てこようかと思います。
 要件の掛け方としては法律の立て付けだと2つ考えられまして、1つは事業の内容、どういう事業活動をやっているかという点から、例えば、紹介や情報提供という点から考えるアプローチがあります。もう1つは、何を最終的に規制の対象とするかなのですけれども、例えば、個人情報の保護という点に焦点を当てれば、情報の性格や内容という点から把握をしていくという、例えば、求人・求職情報といったようなことで網を掛けていくという2つがあり得るかと思います。
 ただ、後者のほう、情報の内容と性格から把握を考えていくという場合には、今、安藤委員がおっしゃったように個人情報保護法があって、個人情報取扱事業者という形で網を掛けていってということについては、個人情報保護法では一般的な届出規制は多分ないのではないかと思います。そちらも、個人情報の取扱いとは何かや、あるいは求人・求職情報といった場合に、その定義をどうするかなどといった問題がなくはないのかなと思います。
 定義の問題については、完璧を期すのは難しいのではなかろうかと思います。全部把握するといっても、把握する対象が何かというのは、完璧にはどのみち分からないと思ったほうがいいのではないかと思うのです。あとは、規制の強さとの関係で、強い規制だとすると逆に把握に漏れがあっても大変ですし、不公平だということはありますけれども、規制の内容が把握にとどまるという形であれば、ややフレキシブルな形もあり得る。すなわち、完全な把握というのは、もう実際には難しいと思ったほうがいいのかなという感じもしております。
○鎌田座長 ありがとうございます。今、山川先生、2種類と言われましたが、1つは事業内容にポイントを当てる、もう1つは、情報の取扱いというところに、情報にポイントを当てて、いわゆる把握の対象としていくかという、そういう御趣旨ですか。
○山川委員 はい。
○鎌田座長 その場合、事業内容と言った場合には、今現在既に定義されているものが、例えば募集情報提供や職業紹介などがありますけれども、新しいサービスについても、やはり情報提供をどのように管理するかなど、そのような感じなのですか。
○山川委員 まだどういう形にするかまでは考えてはないのですけれども、個人情報保護法では、個人情報取扱事業者ということで、紹介や情報提供のようには行為の定義をあまりきっちりとは置いてなかったように思います。それでいいのかという問題もあろうかと思います。そこで、情報の内容のほうで絞っていくというのは1つあるとは思いますが、そちらも、どう特定するのかというのは、いずれにしても難しい面はあるとは思います。
○鎌田座長 情報の取扱いという形態といいますか、サービスの在り方だけですと、ものすごく対象が広がりますよね。
○山川委員 ですので、それでいいのかという問題は出てくるかと思います。思い付きなのですが、求人・求職情報と、あるいはその提供の相手方を定義するというやり方はありうるかと思います。確かに鎌田座長のおっしゃるように、「取扱い」だけの定義だと非常に広いかなという感じはしていて、届出だけでも相当大変になるなという感じはしますので、考えるべきことは、沢山ありますね。
○鎌田座長 雇用仲介という枠の中で考えれば、労働力の需給調整という大枠はたぶん入ってきて、情報が何でも対象というわけにはならないのだろうなとは思います。
 
○大久保委員 個人情報の問題は、個人情報保護法の規定、ルールをしっかりと適用して、それを尊重しているということに加えて、職業安定法にも書き込まれているとおり、能力や適性に基づいて選考を行うということになっているので、それ以外の情報を収集することは、選考において差別につながっていくリスク、危険がありますので、それをしないということをしっかり守ってもらうということが大事なのだと思います。
 ですから、そこに関しては、ルールやガイドラインをしっかりと作って運用してもらえばいいということだと思います。一方で、情報の的確性、最新性あるいはもし情報に問題があったときに苦情処理の窓口が対応するということに関しては、情報が網羅的に把握されていたほうがいいということもあります。今、新形態サービスも含めて、実際には求職者に提供するサービスの内容が多様化していて、細分化されていますので、その内容を把握するということのほうがテーマとしては大きいのかなと思います。
 先ほども山川先生が言われたことですが、明確に定義できないということになったときに、正直者が損をするみたいな形になりかねない。これはぜひとも避けたいと思います。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。ほかにございませんか。
 これを今日の議論も含めて、どのように具体的に深掘りしていくかというのは、これから更に考えていかなければいけないと思います。今回の議論や今までのヒアリングなどを通じて、事業の多くが現行の職業安定法の対象となっていないということが、明らかになったと思います。また、募集情報等提供事業と職業紹介の違いということについても、法的な整理が必要であるという議論がありました。
いずれにせよ、今後こういった雇用仲介あるいはそれに類するサービスを行う者については、法的な地位を明確にする必要があるということで、ある程度の同意が得られたのではないかと思っております。また、新しいビジネスを含め、人材サービスを把握するに当たっては、いろいろな観点からの御意見がありました。細かな議論は別として、やはり、把握をするという目的をどう捉えるのかということも含めて考えていく必要があるだろうと。そして、いわば、その把握した後、どういったことを考えていくのか、どういった対処をしていくのか、そういったことを総合的に考えていくという必要があるのではないかと思っております。
 ただ、新しいサービスについても一定程度、労働市場の中で活躍、活動している限りは、把握をしていくということは1つの方向性として、皆さん、おっしゃっておられたのではないかというように思っております。あと、事業の規制といいますか、事業の在り方については、優良企業などの認定制度ということを、非常に力を入れて考えていく、それもしっかりと考えていく必要があるというようなことが、御意見としてあったのではないかと思っております。
 論点は多岐にわたっておりましたので、もしかしたら私のほうで十分理解していないこともあったかもしれませんが、もし御意見があれば、事務局に、こういった意見ということでお寄せいただければ有り難いと思います。次回も議論の整理として示された事項について、個別の論点ごとに議論を進めたいと思っております。それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
○事務局 本日は、ありがとうございました。次回の日程につきましては、決まり次第、委員各位に御案内申し上げたいと思います。事務局からは以上です。
〇鎌田座長 それでは、本日はお忙しいところご出席いただき、ありがとうございました。