2021年7月16日 第61回中央最低賃金審議会 議事録

日時

令和3年7月16日(金)10:00~10:37

場所

厚生労働省省議室(9階)

出席者

公益代表委員
 藤村会長、鹿住委員、権丈委員、小西委員、中窪委員
労働者代表委員
 伊藤委員、古賀委員、小原委員、冨田委員、永井委員、平野委員
使用者代表委員
 大下委員、佐久間委員、志賀委員、新田委員、堀内委員
事務局
 土屋厚生労働審議官、吉永労働基準局長、小林大臣官房審議官、大塚賃金課長、
 小城主任中央賃金指導官、長山賃金課長補佐、尾崎賃金課長補佐

議題

(1)中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について
(2)令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)

議事

○藤村会長
 皆さんおはようございます。ただいまから「第61回中央最低賃金審議会」を開催いたします。本日は高原委員、松浦委員が御欠席です。また、中窪委員、権丈委員がオンラインによる参加となっております。本日の議題は、中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告と、令和3年度地域別最低賃金額改定の目安についてです。本年度の地域別最低賃金額改定の目安については、目安に関する小委員会において、真摯な御審議を重ねていただき、本日の第5回小委員会において、報告が取りまとめられましたので、委員長の私から報告したいと思います。本年度の目安審議については、去る6月22日のこの本審において諮問が行われるとともに、目安に関する小委員会に付託をされました。その後、小委員会においては6月22日、7月1日、7月7日、7月13日、7月14日までの5回にわたって会議を開催し、委員の皆様には誠に熱心な御議論を頂きました。小委員会報告を取りまとめるべく、公益と労使各側の個別の打合せを数回にわたり開催し、御議論を頂きましたが、労使の意見の一致ということができませんでした。また、公益委員の見解を小委員会報告として、地方最低賃金審議会に示すように、本審議会に報告することについても、残念ながら全会一致とはなりませんでしたが、小委員会として決定し、お手元のとおり報告をまとめた次第です。では、小委員会報告を事務局に朗読していただきます。
 
○小城主任中央賃金指導官
 朗読いたします。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和3年7月14日。
1はじめに。令和3年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2労働者側見解。労働者側委員は、現在も新型コロナウイルス感染症による影響は予断を許さない状況であるが、コロナ禍から1年余が経過した今、先行きを見通す環境は確実に変化していることから、今年度は、ワクチン接種や世界・日本経済の回復など昨年度とは明らかに異なる環境変化を見極めた上で議論を尽くす必要があるとの認識を示した。その上で、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならず、最低賃金の確実な引上げにつながる有額の目安を示すことで、セーフティネットとしての機能を果たし、最低賃金法第1条にある「国民経済の健全な発展に寄与する」という目的を達成するべきであると主張した。
さらに、日本の最低賃金は国際的に見ても低位であり、諸外国ではコロナ禍でも最低賃金の引上げを行っている中、グローバルスタンダードを見据え、ナショナルミニマムにふさわしい水準に引き上げるべきであると主張した。また、エッセンシャルワーカーの中には処遇が高くない労働者も少なくなく、コロナ禍で懸命に働き続けている労働者の努力に報いるためにも、最低賃金の引上げを行うべきであるとともに、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスクや手指消毒液などの恒常的な支出増が、最低賃金近傍で働く者の家計に大きな影響を与えていることも考慮すべきであると主張した。加えて、1年余のコロナ禍により労働者の生活困窮度は深刻さを増し、緊急小口資金等による貸付はリーマンショックの50倍となっており、労働者は賃金を得て返済するしか術はないと主張した。さらに、中小企業が賃上げしやすい環境整備に向けては、最低賃金引上げの各種支援策の拡充と各省庁が連携した周知や、中小企業が生み出した付加価値を確実に価格に転嫁できる環境整備が重要であり、政府も政策対応をはかっていることを踏まえて審議すべきと主張した。以上を踏まえれば、「誰もが時給1,000円」を実現するため、今年度は「800円未達の地域をなくすこと」「トップランナーであるAランクは1,000円に到達すること」の両方を達成する目安を示すべきであると主張した。併せて、最低賃金の地域間格差は隣県や大都市圏への労働力流出の一因ともなっており、昨年度の地方審議の結果を見ても各地方は懸命に地域間格差の縮小の努力をしていることから、今年度は地域間の「額差」の縮小につながる目安を示すべきであると主張した。労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 3、使用者側見解。使用者側委員は、最初の緊急事態宣言から1年3ヶ月経過し、足下では新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の兆候が見られ、第5波の到来が懸念されているうえ、休業要請等により経済活動が抑制された状況では、業況の回復はほど遠く、中小企業への貸付残高も上がっており、事業を立て直す上でも大きな負担となっていると指摘した。さらに、中小企業は、価格転嫁が困難であり、労働分配率も高いが、コロナ禍では、従前にもまして、賃金支払能力が乏しい状況にあるとの認識を示した。また、最低賃金は、各種データによる明確な根拠をもとに、納得感のある水準とすべきであり、賃金水準の引上げなど、法が定める目的以外に用いるべきではないと主張した。さらに、今年度は、コロナ禍における中小企業、とりわけ厳しい状況にある業種の中小企業の窮状を考慮すると、3要素のうち通常の事業の賃金支払能力を最も重視して審議を進めるべきであり、企業の業況が二極化している状況を踏まえ、平均賃金や平均的な状況のみに着目するのではなく、とりわけコロナ禍の影響が深刻な宿泊・飲食、交通・運輸などの業種における経営状況や賃金支払余力に焦点を当てるべきであると述べた。経済界が事業の存続と雇用の維持に最大限努めた結果、雇用情勢が悪化する状況には至っていないが、雇用への影響がデータに表れてからでは手遅れであり、最低賃金の引上げが雇用調整の契機となることは避けるべきであることや、最低賃金の引上げによって、企業の人件費を増やした結果、倒産、廃業や雇用調整を招く懸念があり、そのトリガーを引くことになることは避けなければならないと主張した。コロナ禍でも、賃金引上げが可能な企業は賃上げに前向きに取り組み、消費の拡大につなげ、地域経済の活性化をはかることが望ましいが、現状では、 飲食業や宿泊業のみならず、これらと取引のある関連産業も厳しい状況にある。最低賃金の引上げは、危機的な経営状況の経営者にとって、雇用を維持したいという切実な想いを切り捨てるものにほかならないとの認識を示した。以上を踏まえると、今は、「事業の存続」と「雇用の維持」を最優先すべきであり、今年度は、最低賃金を引き上げず、「現行水準を維持」すべきであると主張した。使用者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 4意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
 5公益委員としては、今年度の目安審議については、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、「経済財政運営と改革の基本方針2021」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。
目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。なお、使用者側委員は、下記1の公益委員見解を地方最低賃金審議会に示すように総会に報告することは適当でないとの意見を表明した。また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し強く要望する。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金について、特例的な要件緩和・拡充を早急に行うことを政府に対し強く要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 記。1令和3年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和3年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。Aランク、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、28円。Bランク、茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島、28円。Cランク、北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡、28円。Dランク、青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄、28円。
 2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「経済財政運営と改革の基本方針2021」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」に配意した調査審議が求められたことについて特段の配慮をした上で、総合的な審議を行ってきた。今年度の公益委員見解を取りまとめるに当たっては、①賃金改定状況調査結果第4表や春季賃上げ妥結状況等における賃金上昇率は、昨年より上げ幅は縮小しているが、引き続きプラスの水準を示していること、また、昨年度は、最低賃金の引上げ額の目安を示せず、最低賃金の引上げ率は0.1%となったこと、②消費者物価指数は、横ばい圏内で推移しており、名目GDPは、令和2年には落ち込んだものの、足下では一時期より回復していること、加えて、新型コロナウイルス感染症の感染状況については予断を許さないものの、今年度はワクチン接種が開始されるなど、少なくとも昨年度とは審議の前提となる状況が異なっていること、③法人企業統計における企業利益は、足下では、産業全体では回復が見られること、また、一部産業では引き続きマイナスとなっているものの、政府として、「感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組」む方針であること、④ 雇用情勢は、令和2年には悪化したものの、足下では横ばい圏内で推移しており、有効求人倍率は1倍を超え、失業率も3%以下で推移していること、⑤政府としては、最低賃金について、より早期に全国加重平均1,000円を目指すこととされているところ、①から④までの状況を総合的に勘案すれば、平成28年度から令和元年度までの最低賃金を3.0~3.1%引き上げてきた時期と比べて、今年度の状況は大きく異なるとは言えず、最低賃金をその時期と同程度引き上げた場合にマクロで見た際の雇用情勢に大きな影響を与えるとまでは言えないと考えられること、⑥地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があること、また、賃金改定状況調査結果第4表のうちAランクとCランクが最も高い賃金上昇率であった一方、雇用情勢については昨年においてAランクを中心に悪化したこと等を総合的に勘案する必要があること、⑦最低賃金を含めた賃金の引上げにより、可処分所得の継続的な拡大と将来の安心の確保を図り、さらに消費の拡大につなげるという経済の好循環を実現させることや非正規雇用労働者の処遇改善が社会的に求められていることを特に重視する必要があること等を総合的に勘案し、検討を行ったところである。目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、地域の経済・雇用の実態を見極めつつ、目安を十分に参酌することを強く期待する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
 (2)生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項及び平成29年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
 (3)最低賃金引上げの影響については、平成29年全員協議会報告の3(2)及び4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。
 
○藤村会長
 ありがとうございました。小委員会報告についての御意見は後ほどお伺いをすることといたしまして、ただいまの小委員会報告に基づいて、本審議会の答申を作ることといたします。それでは、答申案を事務局から配布をして読み上げていただきたいと思います。
 
 (答申案配布)
 
○小城主任中央賃金指導官
 朗読します。(案)令和3年7月16日。厚生労働大臣田村憲久殿。中央最低賃金審議会会長藤村博之。
令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)令和3年6月22日に諮問のあった令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
 記。1令和3年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
 2地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
 3地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
 4中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し強く要望する。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金について、特例的な要件緩和・拡充を早急に行うことを政府に対し強く要望する。
 5行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。以下、別紙については省略します。
 
○藤村会長
 ありがとうございます。では、小委員会報告及び答申案についての御意見がございますでしょうか。大下委員、どうぞ。
 
○大下委員
 発言をお許しいただき、ありがとうございます。今、御説明いただきました、公益委員の見解を含む小委員会報告の内容をこれから地方最低賃金審議会に示すことにつきまして、大変残念ですが、使用者側委員の一人として反対の意を表明せざるを得ないと考えております。採決をこの場でお願いをしたいと思っております。
 公労使三者で議論を尽くし、大変難しい中、取りまとめを頂いた内容であって、異を唱えることは大変心苦しいと思っておりますが、最終的な金額はもとより、あるいはそれ以上に、コロナ禍という非常時において最低賃金そのものが果たす役割をどう考えるか。また、今回、明記を頂きました政府方針への配意ということについてどのように考えるべきか、こうした最低賃金制度や審議の在り方そのものに関わる点で、我々が主張してきた考えとは大きく相違する内容となっております。
 懸念されていた新型コロナウイルス感染症拡大第5波の到来によって、今もなお、緊急事態宣言下にある東京や沖縄、あるいは蔓延防止等重点措置の下にある千葉、埼玉、神奈川、大阪をはじめとして、苦境を強いられている全国の飲食・宿泊をはじめとする中小事業者のことを思えば、到底受け入れることはできないと考えております。また、今後の我が国における最低賃金制度の在り方、あるいはその審議の在り方を考えていく上でも、今般、採決による決定を行うことは大変大きな意味を持つものと考えております。小委員会に続いてのお願いで大変恐縮ではございますが、御検討のほど、よろしくお願い申し上げます。私からは以上です。
 
○藤村会長
 佐久間委員、どうぞ。
 
○佐久間委員
 ありがとうございます。私も、7月14日の最低賃金の目安に関する小委員会第5回でも申し上げましたが、ここに改めまして、私どもの意見を申し上げたいと思います。
 私ども、全国中小企業団体中央会は、47の都道府県中央会とその会員である中小企業組合、約2万3,600団体及び組合の組合員企業約230万社を組織する団体です。組合員である中小企業の中には、コロナ禍の感染拡大の影響を受けながらも、「従業員の雇用を守り」、「懸命に経営を維持しようとしている」中小企業者が多数存在しています。その中小企業経営者の気持ちを考えると、今回の目安額は切実な経営者の思いを切り捨てるものにほかならないと考えています。
 私どもの組織だけではなく、経団連、そして日本商工会議所の使用者側は、一貫して明確な根拠に基づいた納得感のある目安を提示するよう主張してまいりました。しかしながら、平成28年から令和元年度には、必ずしも根拠が明確ではない中で大幅な引上げが行われ、今回はそれにも増して、中小企業の賃金引上げ実態を無視した大幅な引上げ額が示されたことに、正直申し上げて、全く納得はしておりません。
 新規感染者が現在も増加し、雇用調整助成金等の特例措置が延長されるなど、経営環境と経営実態が未だ通常時に戻っているわけではなく、また、今年度の賃金改定状況調査 第4表の数字も昨年より低い中で、政府の意向だとしても、過去最高のアップ額とするのは中小企業者に説明できるものではありません。
したがって、今回の公益委員そして小委員会報告案の提案には「反対」であります。
 これだけの増額がなされるということは、影響率もこれまでになく高まり、最低賃金引上げの直接的な影響を受ける企業が増加の一途をたどることになると思います。そういう状況下において、今回の大幅な引上げが雇用の減少、倒産・廃業の増加など、地域の中小企業経営や地域経済に与える影響を大いに懸念しております。
 今回、公益委員の見解そして小委員会報告、その中に「感染症の影響を受け厳しい業況の企業に配慮しつつ、生産性向上に取り込む中小企業の支援強化に一層取り込んでいく方針である」と文面が入っております。仮に、支援策を講ずるならば、引上げ幅に見合った現金を全中小企業者に給付するような内容でなければ、現在、苦境にある業界や地方の中小企業は雇用を維持できないと考えます。
 労働者の皆様には、経営者と労働者一体となり、このコロナ禍の厳しい状況において企業の事業運営をし、また、企業を育てていただいていることに深く感謝いたしたいと考えております。また、労働側の委員の皆様にはいつも真摯な審議を行っていただいておりますことを改めて感謝を申し上げたいと思います。
なお現在、本審議会の開催により、一時、開催を中断しております全員協議会が、これから再開されることになると存じます。ランク制だけの問題ではなく、最低賃金引上げ要請とその影響、目安審議の在り方など、目安に関する小委員会全体についても疑義があり、検討を重ねていくことが必要だと思います。以上です。
 
○藤村会長
 はい、分かりました。そのほか、ございますでしょうか。採決というのは馴染まない方法だと思っております。ただ、そういうお求めがありました以上、会長としてはその意向を確認するという必要があると思います。そこで、先ほど読み上げていただきました公益委員見解及び小委員会報告、それを地方最低賃金審議会に示すこと等を内容とする本答申案について、反対の委員、挙手をお願いいたします。
 
 (反対委員の挙手)
 
○藤村会長
 はい、ありがとうございます。公益委員見解及び小委員会報告を地方最低賃金審議会に示すことに反対された委員は、大下委員、佐久間委員、志賀委員、堀内委員であったと思います。反対は少数ということですので、本答申案を本審議会の答申とするということでよろしいでしょうか。新田委員、どうぞ。
 
○新田委員
 発言を許していただいてありがとうございます。私は、この中央最低賃金審議会に関わるようになって、担当者時代を含めると、実にもう20年ほどになる状況です。そうした観点で、若干、申し上げておきたいと思います。先ほども御紹介のありましたとおり、この目安審議というのは長年にわたって労働者側と我々使用者側、その見解が大きく隔たる中で、仲裁役であります公益委員の先生方から公益委員見解が示され、その内容については労使双方とも不満の意を表明しつつも、それを地方最低賃金審議会に示すことについてはやむなしという、ぎりぎりの線を落としどころとして、それを長年の慣習としてやって参りました。これは正に我々の先人たちの知恵でありまして、こうしたことは長年この最低賃金審議会に携わってきた身としては、やはり大事にしたいと思っております。
 従いまして、本年度におきましても、やはり労使双方がやむなしという段階に至るまできちんと審議を尽くすべきと考えておりまして、そういった観点で、先ほどの採決において意向を表明しなかったということを御説明しておきたいと思います。
 加えまして、今年の秋から目安の在り方全員協議会が再開されると思います。そこにおきましては、様々、ランク制の問題もありますけれども、最低賃金制度の在り方全般についても、皆様方と真摯に意見交換しながら、どういった形がよろしいのかということについても検討していきたいということを申し添えておきたいと思います。私からは以上です。
 
○藤村会長
 はい、分かりました。ありがとうございます。労働側から、何かございますでしょうか。どうぞ、冨田委員。
 
○冨田委員
 私ども労働側は、中央最低賃金審議会の根幹は公労使の三者構成原則にあると認識しており、今後もその枠組みを大切にしていきたいと考えております。それにもかかわらず、目安小委員会に引き続き、本審においても採決を求められた委員の態度は、長時間にわたり議論を尽くしてきた経過と三者構成の場の重みを踏まえると、誠に遺憾であると言わざるを得ません。なお、事務局にお願いがございます。一昨日、土屋厚生労働審議官から、公労使の意見を聞いた上で今年度の審議を総括するとの御発言がございました。三者構成の枠組みを維持していくためにも、全員協議会再開の前に総括する場を求めておきたいと思いますので、御検討のほど、よろしくお願いいたします。
 
○藤村会長
 ありがとうございます。ただいま、委員の皆様から採決となったことについて、あるいはこの中央最低賃金審議会の公労使という三者構成でこれまで議論をしてきて、双方、不満を持ちながらも、ぎりぎりのところで合意をしてやってきたと。その枠組みは非常に大事であり、維持していくべきものであると、こういう御意見がございました。会長としても、今回、このような議事進行になったことについては非常に残念でなりません。私も15年ぐらい関わってきているのですが、こういうことは初めてでして、確かに、この中央最低賃金審議会の歴史をひもとくと、採決になったことは一度あったようです。しかし、そういうのは余り良くないというのが、そのときの採決をした後の労使双方、公益も含めた考え方だったと思います。私としては、引き続き、公労使の三者構成で真摯に議論を行うという本審議会の枠組みを大事にしつつ、来年度以降の審議では、今年度の審議をしっかり総括し、公労使の委員の皆様の御意見も拝聴して円滑な運営に最大限取り組んでまいりたいと思います。先ほど、冨田委員からのお求めがありましたように、今年の審議についての総括というのは、私としても必要だと思っておりますので、事務局と相談をして、その機会を設けたいと思います。
 いろいろ御意見はございますが、本審議会としては、いずれにしても反対少数ということで、公益委員見解及び小委員会報告を地方最低賃金審議会に示したいと思います。よろしいですね。はい、ありがとうございます。どうぞ、冨田委員。
 
○冨田委員
 藤村会長、どうもありがとうございました。今、公益委員見解及び小委員会報告を地方最低賃金審議会に示していくという御発言がありましたけれども、示すに当たって、事務局へのお願いを一点、申し上げさせていただきたいと思います。本格的に始まる地方審議が少数の反対意見に左右されることのないように、この小委員会報告は、本審において了解されたものであること、並びに公益委員見解において28円ランク同額が示された経過やその意味合いについて、都道府県労働局にしっかりと伝達いただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。以上です。
 
○藤村会長
 そのほか、御意見がないようでしたら、先ほどお示しをした案のとおり、答申をまとめたいと思いますがよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、先ほどのとおり答申を取りまとめたいと思います。それでは、答申を土屋厚生労働審議官にお渡しをしたいと思います。答申を用意してください。
 
○尾崎賃金課長補佐
 答申手交の準備ができるまで、少々お待ちいただければと思います。ただいまの時間から、報道関係者の皆様につきましては撮影の順備をしていただいて構いません。
 
○藤村会長
 それでは、土屋厚生労働審議官にお渡しをいたします。
 
○土屋厚生労働審議官
 頂戴いたしました。答申ありがとうございました。
 
○尾崎賃金課長補佐
 それでは、撮影はここまでにしていただければと思います。
 
○藤村会長
 それでは、ここで一言、土屋厚生労働審議官より御挨拶をお願いいたします。
 
○土屋厚生労働審議官
 厚生労働審議官の土屋でございます。一言、御挨拶を申し上げます。本年度の目安につきまして、ただいま、答申を取りまとめていただき誠にありがとうございました。本年度の調査審議におきましては、経済財政運営と改革の基本方針2021及び成長戦略フォローアップに配意をしつつ、各種指標を総合的に勘案して、真摯な御議論を尽くしていただいたと承知をしております。中央最低賃金審議会の運営に当たりましては、事務局として最大限の努力を尽くしてまいりましたが、残念ながら、目安小委員会とこの本審議会におきまして、採決という例年にない議事進行となり、至らない点が多々あったものと考えております。私どもとしては、公労使三者構成で真摯に御議論いただくということが労働行政の推進に当たっての基本だと考えております。この審議会においても、そうした公労使三者構成の枠組みの下で、三者がそれぞれの立場や考え方の違いはあっても、真摯に向き合い、議論を積み重ねて結論を出してきた歴史と実績がございます。私どもは、こうした枠組みや観点をこれからも大切にしつつ、来年度以降の審議に向けて、先ほど御意見として会長からもお話がございましたように、まずは今年度の審議をしっかりと総括をし、公労使の委員の皆様の御意見を拝聴して、円滑な運営に最大限、取り組んでまいりたいと考えております。
 また、本日頂きました答申を速やかに都道府県労働局に伝達をいたしまして、それぞれの地方最低賃金審議会において、地域別最低賃金額の改定審議が円滑に進められるようにしてまいりたいと考えております。皆様方の御尽力に、改めて心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
 
○藤村会長
 はい、どうもありがとうございました。委員の皆様から、ほかに何かございますでしょうか。ないようですので、それでは、これを持ちまして、第61回中央最低賃金審議会を終了いたします。どうも、お疲れさまでございました。