2021年5月28日 第11回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」 議事録

日時

令和3年5月28日(金) 17:00~19:00

場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
磯博康、小山勉、杉薫、髙田礼子、高橋正也、
嵩さやか、豊田一則、西村重敬、野出孝一、水島郁子

厚生労働省:事務局
小林高明、西村斗利、児屋野文男、中山始、本間健司 他

議題

  1. (1)脳・心臓疾患の労災認定の基準について
  2. (2)その他

議事

議事録


○本間職業病認定対策室長補佐 定刻となりましたので、第11回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、検討会に御出席いただき、ありがとうございます。今回は小山委員、髙田委員、高橋委員、嵩委員、豊田委員、野出委員、水島委員の7名がオンラインでの参加となっています。
検討会に先立ち、傍聴されている皆様にお願いがございます。携帯電話などは必ず電源を切るかマナーモードにしてください。そのほか、別途配布している留意事項をよくお読みの上、検討会開催中は、これらの事項をお守りいただいて傍聴されるようお願い申し上げます。また、傍聴されている方にも会議室に入室する前にマスクの着用をお願いしておりますので、御協力をお願い申し上げます。万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退出をお願いすることがございますので、あらかじめ御了承ください。
傍聴されている方へ、写真撮影はここまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。
次に、本日の資料の御確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1「第11回における論点」、資料2「論点に関する医学的知見」、資料3「第10回検討会の議論の概要」、過労死弁護団全国連絡会議から提出のあった緊急意見書を参考資料として添付しております。本検討会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料等の確認をお願いいたします。
それでは、磯座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。
○磯座長 資料1の論点に沿って検討を進めたいと思います。本日の検討会では、はじめに前回の第10回に引き続いて、「長時間の過重業務における労働時間の評価等」について、医学的な知見を踏まえて検討を行います。次に、「業務の過重性の評価」についての検討を行い、最後に「リスクファクター」、すなわち脳・心臓疾患の危険因子の検討を行うこととします。はじめに、論点1の「長期間の過重業務における労働時間の評価等」について、事務局から説明をお願いします。
○西川中央職業病認定調査官 本日の検討会では、磯先生から御説明がありましたとおり、第10回の検討会に引き続き「長期間の過重業務における労働時間の評価」、それから、これまで御議論いただいた事項の整理となる労働時間以外の負荷要因に関する「業務の過重性の評価」、そして、また新たな医学的な整理となりますが、「脳・心臓疾患の危険因子」の3点を論点として予定しているところです。論点ごとに事務局から御説明しまして、先生方に御議論いただきたいと考えております。本日の資料1、資料2、資料3、参考資料がありますが、資料1、資料2、参考資料については、論点1の中で御説明いたします。資料3は第10回検討会の議論の概要ですが、こちらの説明は割愛させていただきます。
論点1です。この論点は前回、第10回の御議論の続きということになります。資料1の1ページ目に論点をまとめていまして、2ページ目に具体的な論点をお示ししているところです。また、資料2が、これに関する医学的知見で、全体としてはそれ以外のものも含めておりますが、資料2の医学的知見についても後ほど御説明させていただきまして、さらに参考資料ですが、過労死弁護団全国連絡会議からいただいた意見書も、御意見の主要部分は労働時間の評価に関するものとなっているところです。また、医学的知見の関係では、前回の検討会以後の動きとして、先週5月17日にWHO・ILOの発表などもございましたので、これも併せて御説明いたします。
2ページ目を御覧ください。こちらには4つの論点をお示ししております。論点のAは、医学的知見等の状況について別添1のとおり整理できるかという形になっています。この論点については、主として事実関係の整理に関するもので、評価の前段階のものということになります。この別添1は3ページ目から9ページ目となりますが、その内容を御説明いたします。
3ページ目を御覧ください。こちらについては、労働時間の評価に関する現行認定基準の内容を示しております。何度も御説明させていただいておりますが、四角囲みの中が現行の認定基準で、月45時間以下の時間外労働では業務と発症との関連性は弱いということ、45時間を超えると徐々に関連性が強まるということ、そして、1か月100時間、2か月から6か月の平均で月80時間を超える時間外労働があるような水準では、業務と発症との関連性が強いという現行認定基準の内容をまとめたものです。こちらは13年の検討会において行った、「医学的知見を踏まえ、長時間労働のために、1日4時間~6時間の睡眠を確保できない状態が継続するという状態が、疲労の蓄積をもたらし、業務と発症との関連性が強い」といった整理から導かれるものです。御留意いただきたい点としては、時間外労働月100時間、80時間といった、いわゆる過労死ラインに至らない状態について、リスクがないとか、リスクが低いとか評価しているものではなく、月45時間を超えると、徐々に発症との関連性が強まっていく、リスクが上がっていくと評価しているということです。
4ページ目を御覧ください。こちら以降は、今回の検討会で検討いただいた新しい知見の状況を整理したものです。まず、1つ目の○ですが、4ページからは睡眠時間と脳・心臓疾患の発症等との関係に関する疫学調査の状況を取りまとめたものです。先ほど現行基準の説明で触れましたとおり、労働時間が長くなると、その裏返しとして睡眠時間が短くなるという関係があることから、13年の検討会においても、そして今回においても、睡眠時間と発症との関係に関する知見を検討しているところです。
第3回の検討会において、横表の形で多数の医学的知見を御紹介させていただきました。また、検索漏れ等の御指摘も頂きまして、その後の検討会でも追加して知見を紹介してきたところでございます。そういったものを全部取りまとめて、改めてまとめたものが65ページからの資料2となりますが、睡眠時間と脳・心臓疾患の発症や死亡に関する知見は、重複もありますが脳に関して21文献、心臓に関して55文献ということで、かなりの数があるという状況です。
そういった状況を踏まえて4ページ目では、2行目のところで「疫学調査が多数あり」という整理をしております。そして、2段落目がそういった疫学調査全体のまとめとなりますが、多くの文献で6時間未満の睡眠と脳・心の発症等との有意な関係がみられており、一方で、有意な関係を認めなかった文献、5時間未満の睡眠と有意な関係を認めた文献というものもあるという状況です。
そして、全体として見ると、1日の睡眠時間が7時間ないし7から8時間の群を対照群、基準としまして、それよりも睡眠が短い群も長い群も、脳・心臓疾患のリスクが高くなる傾向があると整理しております。このうち労働時間との関係があるのは、睡眠が取れない、短い睡眠の方ですが、こちらについて、一般に信頼度が高いと言われているシステマティックレビューによるメタアナリシスの文献は、資料2のうち6文献ございましたので、それについて4ページ目の中程から、「ここで」というところから、6文献を御紹介しているところです。こういった整理について、よいかどうかについても御意見を頂ければと思います。
続きましては5ページ目の下の方からです。労働時間それ自体に関する疫学調査の整理です。こちらは、基本的に前回第10回の資料2で整理したものです。修正点が2か所あります。1か所目は7ページです。図1と図2の下に注を入れまして、図に書いてある数字は累積値だということを追加させていただきました。もう一箇所は8ページの下の方です。黄色マーカーを付けております。ここは第10回の資料において、事務局が論文から転記するときに数字の誤りがあったところですので、お詫びして訂正させていただきます。
この関係で、冒頭に少し触れさせていただいたWHOとILOの発表内容についても御説明させていただきます。この8ページの一番下の2段落目の「Liらは」というところ、「Descathaらは」というところです。この2020年の2つの文献を御紹介しております。
ここで、資料2の79ページを御覧ください。下から2段目の11番に、第10回の追加ということで、先ほど申し上げたDescatha2020の文献を掲載しております。これは第10回の資料3にも掲載していたものです。その下の12番に参考として、一番右を見ていただくと「2021」と入れておりますが、2021年の新しい文献であるPegaの論文を掲載しております。これが先週5月17日にWHO・ILOが共同で発表した論文で、報道を御覧になった方もいらっしゃるかもしれません。報道では、WHO・ILOが長時間労働、ここでは長時間労働は週55時間以上の労働と定義されておりますが、そういった長時間労働によって脳卒中のリスクが35%、心疾患のリスクが17%上昇すると発表したという内容になっていたかと思います。
ですが、この表に記載しているとおり、2021年の新しい論文の内容は、リスク比を新たに調査、分析したものではなくて、世界全体の長時間労働者の数や長時間労働による脳卒中や心疾患による死亡者の数などを推計したものという内容です。この推計の根拠、推定値として、2020年のDescatha、Liの論文にある相対リスクの値、1.35や1.17を用いているというものですので、リスク比の話としては、前回から御検討いただいている、1つ上の2020年の文献の内容そのものということになりまして、新しい知見ではないということになります。疫学調査とは違うということで、この表においても参考という形で記載しておりますが、社会的には注目度が高いところですので、御紹介させていただきました。この79ページは、脳血管疾患に関する知見の表となっておりますが、83ページの心疾患に関する表にも、参考27として同じようにこの文献を紹介しているところです。
資料1の9ページを御覧ください。別添1の最後のところになります。こちらは医学的知見というよりは、社会的な統計ということになります。労働者の1日の生活時間と睡眠時間、労働時間との関係についてです。先ほど、労働時間が長くなると睡眠時間が短くなるという関係についてお話しましたが、その関係性の整理です。こちらも既に第3回の検討会で御紹介したところですが、平成28年の社会生活基本調査の結果によると、労働者の1日の生活時間は9ページの下の図3のように整理されるということになります。食事、身の回りの用事、通勤等の生活に必要な時間というのは、平成13年検討会報告のときの整理と同じ、1日5.3時間であったということをお示ししております。これは5年に1回の調査ですので、この平成28年のものが最新の知見ということになりまして、これを基に考えますと、現時点においても、1日6時間程度の睡眠が確保できない状態というのは、月80時間を超える時間外労働が想定される。5時間程度の睡眠が確保できない状態は、月100時間を超える時間外労働が想定される。そういった状況になるかと思います。以上が別添1の、これまでに御紹介した現時点の知見の整理ということになります。こういった整理でよろしいでしょうかということが論点のAです。
続いて、2ページの論点のBからDについてです。論点のBについては、労働時間が脳・心臓疾患の発症等に影響を及ぼす理由について、どのように整理するかということです。平成13年の検討会では、このように①②③④と整理しておりますが、こういったものでよいのか、あるいは修正すべき点があるのかということです。
平成13年報告書の整理ですが、いずれも長時間労働のためにということなのですが、①は長時間労働のために、睡眠時間が不足するということで、それが疲労の蓄積になるということです。②は、長時間労働のために睡眠以外の休憩や休息、余暇といったものが制限される、つまり十分にリラックスした時間が取れないということです。③と④は、労働時間自体に着目したものですが、③については、長く働けば当然疲れるということで、長時間労働それ自体が直接的なストレスとなるということです。④は、労働の中にはいろいろな負荷要因がある、労働時間が長くなれば、そのような負荷要因にさらされる時間、ばく露時間が多くなるということを記載しております。括弧の中は、(物理・化学的有害因子を含む)と書いておりますが、例えば物理的な有害因子としては、暑い中で働く、寒い中で働くというようなものがあろうかと思います。こういったもののほかにも、例えば厳しいノルマに追われてずっと働くとか、出張が多い、ハラスメントのある環境といった様々な負荷に、1日8時間労働であれば8時間ばく露するだけですが、仮に1日11時間労働になれば、プラス3時間、1.5倍近くばく露することになるといった、この4点に分けて整理しております。
労災保険としては、当然業務の負荷、プライベートの領域ではなく仕事の領域に着目して評価を行うものですが、そういった中にあっても、そういった労働時間が長いということの裏返しとしての睡眠、休暇の不足という状況が①と②、③と④は仕事それ自体の状況ということで整理していることになります。こういった①~④の整理について、どのように考えるかということです。仮に①~④の整理が大体よいということであったとしても、こういった現行の表現でいいのかどうかということについても御検討いただければと思います。さらに13年報告書では、この整理に続く箇所で、「疲労の蓄積をもたらす要因として睡眠不足が深く関わっていると考えられる」ということで、特に睡眠不足を重視する整理となっておりますが、これらの各要因の関係、どれが重要なのか、あるいは全部重要なのか、そういったことについても御議論いただければと思っております。
この論点Bの理由の整理が、論点Cと論点Dの労働時間の評価にも深く関わってくると思いますので、B、C、Dは一体として御議論いただければと思っております。論点Cは前回の論点Aと同じものです。先ほどの別添1でも御説明しました現行認定基準の労働時間の評価、特に、労働時間の長さそれだけで業務と発症との関連性が強いとする、いわゆる「過労死ライン」の水準についてどのように考えるかというものです。また、論点のDについては、前回の論点のBと同じものです。労働時間だけで業務と発症との関連性が強いとする水準に至らない場合について、どのように整理するか。そのような場合には、労働時間の状況と労働時間以外の負荷要因の状況を総合的に考慮し、適切に判断をしていく必要があるということについて、当然のことではありますが、改めて示しておくことが必要ではないかといったような論点です。
なお、論点Cの冒頭に括弧書きで「業務において」という記載を今回補っておりますが、先ほども申し上げましたように、労災保険はあくまで業務、仕事に着目して、以前嵩先生から検討会の中でも御発言がございましたが、「業務に内在する危険」が現実化したのかどうかを判断するということになります。その意味で、睡眠などプライベートの領域を直ちに評価するということではないのですが、労働時間が長いことの帰結として睡眠時間が短くなる、そういった睡眠時間の短さが生理的に人体に影響を与えるということであれば、そういった点までを含めて、広く「労働時間」という考え方の中で評価するということになります。論点Cや論点Dにおける「労働時間」というのは、そのような意味での労働時間ということで御理解いただければと思います。
これらの検討に際しましては、第10回、そして今回もお示しした労働時間と脳・心臓疾患、そして睡眠時間と脳・心臓疾患の関係に関する医学的知見を考慮する必要があるのではないかということ、また、そういった知見について、互いに矛盾するものではなくて、睡眠時間を裏返しの労働時間に換算した場合には重なり合う部分があると考えておりますが、そういった点も含めて御議論を頂ければと考えております。
論点1の最後に、参考資料について御説明させていただきます。資料の115ページ、参考資料を御覧ください。こちらは5月13日付けで過労死弁護団全国連絡会議から頂いた、第8回検討会以降の議論に関する緊急意見書となります。御意見の主要部分は116ページからです。第3のところです。「発症との関連が強い時間外労働時間数の改定の必要性について」というところです。117ページまで進んでいただきまして、上の方の2の(2)ですが、睡眠時間からの労働時間の逆算による考え方を、この意見書では「間接的アプローチ」、労働時間そのものと発症との関係に関する医学的知見を用いた考え方を「直接アプローチ」と整理されておりまして、直接的アプローチに関する医学的知見が多数明らかになっているというのが、少し下の3の(2)のところに記載されていまして、これを基に結論としては、119ページの6ですが、現行認定基準の100時間、80時間を65時間に引き下げて、月65時間の時間外労働があれば、この労働時間の長さのみで業務上と認定するよう、認定基準を変更すべきであるといった要望になっております。また、この意見書は13日付けですので、先ほど御紹介した17日のWHO・ILOの発表に関する言及は、この中にはございませんが、その後、19日には弁護団が記者会見を開かれまして、WHO・ILOの発表も踏まえ、この意見書のとおりに認定基準を引き下げるべきであるといった発言をされているところです。この点も踏まえて御議論いただきたく存じます。
長くなりましたが、論点1の御説明は以上です。御議論のほど、よろしくお願いいたします。
○磯座長 それでは、資料1、2ページの1番目の「長期間の過重業務における労働時間の評価等」について検討していきます。初めにAの医学的知見等(疫学調査や社会生活基本調査等)の状況について、別添1のとおり整理ができるか、ということが事務局からありましたので、それについて検討します。別添1は、3ページの「労働時間に関する医学的知見等(これまでの整理)」においてです。これについて何か御意見等がありましたら、御発言のほどよろしくお願いします。
別添1については今、事務局から説明がありましたように、これまでの議論を、更に最近のメタ解析についてもまとめて述べたものです。メタ解析については累積のリスク比であることの注釈を入れましたし、少し数字の修正等もありました。そして、睡眠時間と労働時間の確認も、これは先ほど説明がありましたように、論点Cにも関わってきます。この辺りについての別添1の内容を再確認したいのですが、何か御意見等はありますか。
特に御意見等はありませんか。ありがとうございます。特に御意見がないということで、別添1の形で整理をしていきたいと思います。
資料の2ページに戻ります。B、C、Dについてです。Cについては先ほどのAと関連しますが、全体的に議論していきたいと思います。Bについては労働時間、恒常的な長時間労働が脳・心臓疾患に影響を及ぼす理由について、平成13年検討会報告書と同様に医学的整理が可能であるかということです。Cについては、現行の基準における労働時間の評価についてどのように考えるか。Dは、B、Cの現行の医学的知見と認定基準の整理、評価を踏まえて、これに加えて総合的な評価に当たっての考えを明確化できないかという提案になっています。そして、先ほど事務局からWHO・ILOからの長時間労働による脳・心疾患の影響に関する報告もなされたということで、団体からの意見書も提出されているところですが、これらの点も含めて御意見等があればお願いします。
それでは、まずBを御覧ください。Bについては、理由として①~④として整理がありますが、この表現について何か修正、御意見等はありますか。
○高橋委員 高橋です。Bの4つの視点というのは、基本的には支持できるものかと考えます。細かい文言、特に③の「長時間に及ぶ労働では、疲労し低下した心理・生理機能を鼓舞して」というのを、もう少し整理した方がいいかなというのはありますが、この4つの点は理解できます。特に①と②が、いわば仕事時間以外、オフのことになります。③と④がオンに関わることと大別できます。オフの中でも一番長い行動としての睡眠が量的、質的に足りないと当然疲労の回復が損なわれ、蓄積は生じるでしょう。また、オフの中でも睡眠以外の余暇、休息は非常に重要で、私たちの体が仕事から離れたからすぐ眠れるかというとそうではなくて、やはりオンとオフは徐々に切り替わっていく時間が必要です。自分の趣味や御家族と楽しい時間を過ごしてリラックスするということが、良い睡眠を取る、いわば助走になりますので、②の時間帯を確保するということはすごく重要なことになります。
③④は先ほどのとおりオンに関する問題ですが、③については物理的に働く時間が長くなると身体機能に影響が出てくるというのは予想がつきます。私どもの過労死等センターで12時間に及ぶ模擬的な長時間労働の実験をを行ったところ、労働時間の延長に伴って血圧の上昇等循環器負担は増加することが分かりました。ですので、やはり労働の長さに関することは基本的に重要だということはあります。一方、④は、いわば労働時間という枠の中身というか、いろいろな物理・化学的なばく露、それから場合によっては人間工学的な物理因子が、労働時間が長くなるに連れて大きくなると、結果的に過重な負荷になって、その後睡眠や休息を十分取っても回復し切れないと。そういうことを1か月、半年と続けていくことで悪影響を起こしていくというように、なぜ長時間労働が脳・心に関わるかを説明する潜在的なメカニズムとしては理解できます。以上です。
○磯座長 ありがとうございました。今のコメントの中で「鼓舞して」というのは、③「疲労し低下した心理・生理機能を鼓舞して職務上求められる一定のパフォーマンスを維持する必要性が生じ」の「鼓舞して」を、少し別の言い方にした方がいいという御意見と伺ったのですが、何かいい表現はありますか。
○高橋委員 当時、どのような背景で、この「低下した心理・生理機能を鼓舞して」と書かれたかはちょっと分からないのですけれども、これもある意味推定されているようなものなので、もう少しシンプルに書いてもいいのではないかと思います。
○磯座長 これはどういう背景から、このような表現になったのでしょうか。
○高橋委員 一言で言えば、労働時間が長くなるに連れてという意味ですよね。
○磯座長 そうですね。私のイメージですと、鞭打ってとか、無理矢理何とか引き上げてというイメージなのです。鼓舞というのは、何となくまだまだ余力があって応援して引き上げるという感じがするのですが、その辺りの文言ですね。
○高橋委員 言わんとしていることは、例えば8時間で終わるところを12時間、15時間働かなくてはいけないとなると、当然身体の機能を過剰に使ってという意味で、意味しているところは分かるのですけれども、もう少しシンプルに言えないかなと思っています。
○磯座長 ほかの先生方から、文言について何か御意見はありませんか。いかがでしょうか。
○西村委員 西村です。③のところはすごく重要な点なのですが、別の側面も言いたいのですが。磯先生がおっしゃいましたが、鞭打って、それに大量なストレスを受けたために、食事が不規則になる、食べる物、食事内容も変わる、過度に飲酒をすることから、それらを介して動脈硬化のリスクファクターに悪影響を与えることも起こりうるとの記載も必要です。労働時間以外に、医学的には、血圧が高いとか体重が減らないということも出てきます。自己管理が、悪い方にいってしまうような、負荷にもなることがあり得ると思います。
○磯座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。鞭打ってというのは仮の表現として、一定のパフォーマンスを維持する必要性から直接的なストレス負荷要因となり、さらに間接的なリスク因子への影響が加わるという意味でしょうか。
○西村委員 そういう考え方もあるのではないかと。個々の事案で議論になる場合があるのですが、労働の負荷によって、生活のコントロールをできなくしてしまうようなこともあります。その辺りも配慮して評価する考え方もあった方が良いと思います。
○高橋委員 高橋です。今の御意見は非常に重要で、特に②はオフにおける睡眠以外の余暇の時間面だけにフォーカスしているのですが、今の御意見のように、例えば長時間労働が続くと飲酒が増えるとか運動が少なくなるとか、いわゆる行動面が変わるという部分は、確かにメカニズムの1つとしてはあるので、うまく盛り込めたらいいかなとは思います。
○磯座長 それでは、流れとしては、「疲労し低下した心理・生理機能を」、鞭打ったような表現をして、それでも一定のパフォーマンスを維持する必要性が生じ、そのために直接的なストレス要因や生活習慣の変容につながるといった文言を、修文してみてください。ありがとうございました。ほかには何か御意見等はありますか。野出先生、どうぞ。
○野出委員 先ほどの「心理・生理機能を鼓舞して」という表現なのですけれども、少し意味が違うかもしれませんが、「心理・生理機能を刺激して」という、「刺激」という言葉も近いのかなと思いましたので。
○磯座長 ありがとうございます。「刺激して」ですね。低下したものを無理矢理刺激してという感じですね。その辺りも参考にしてください。ほかに御意見等はありますか。
○高橋委員 高橋です。少し追加なのですが、大きく分けてオフの2つとオンの2つなのですけれども、これは実際にはそれぞれがばらばらに影響しているというよりは、それぞれが相互に影響し合いながら脳・心につながっているというのが実情かと思われます。その意味で、総合的な影響があるのだというニュアンスを出せたら望ましいかと思います。
というのは、睡眠だけに注意を払えばよいのか、あるいは労働時間だけ注目すればいいのかということではないと思うのです。例えば、勤務間インターバルというものがあります。事業場側が11、12時間のインターバルを確保したけれども、その中で労働者側が夜中の2時、3時までゲームをやっていて、きちんと休まなかったのでは全く意味がなくなります。ですので、少なくともこの4つのコンポーネントは相互に関わりながら影響があるというニュアンスを少し出せたらいいかなと思いました。
○磯座長 ありがとうございます。それについては、Dのところに「労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮して」という文言が入っています。ただ、先生がおっしゃるようにBのことが抜けているので、事務局で、上記のCにBの要素も加えた方がいいのか、BとCを加えてDと考えた方がいいのか検討してください。そうすると、BとCを加えてDでは総合的に労働時間と労働時間以外の負荷要因を考えるということで、今の高橋先生がおっしゃったことが一応まとめられるような気がするのですが、いかがでしょうか。高橋先生、いかがですか。
○高橋委員 結構です。
○磯座長 ありがとうございます。ほかに御意見等はありますか。Dについても、よろしいですか。今はBについて、少し修文が必要であるとの御意見を頂きましたが、事務局でもう一度確認していただくことになりました。それを受けてCについては前回のAと同じでしたので、ほぼ先生方の合意を得ていると思いますが、今申し上げたDについて上記のBとCを加えて総合的に考えるということについては、特に御意見等はありませんか。よろしいでしょうか。団体からの意見書については先ほど事務局から説明があり、高橋先生からもお話がありましたが、これは非常に重要な点です。過重の長時間労働を考えるという軸は変わっておりませんが、それに影響する他の生活の時間帯をしっかり見ていく必要があるということの説明がありました。
そして、生活の時間帯は睡眠と余暇であることと、特にこれまでの疫学調査から、睡眠時間と循環器疾患との関連のエビデンスが非常に多いということもありますので、このような整理になったかと思っております。これについて、全体的にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、BとDの一部についての修文をお願いします。その他について特に御意見はよろしいでしょうか。
ありがとうございます。論点1の「長時間の過重業務における労働時間の評価等」については、最新の医学的知見や労災認定事例を踏まえて、様々な先生方に御意見を頂きながら検討してきました。長期間の過重業務の検討において、労働時間の評価については最も重要なポイントの1つでありますが、ここではそれ以外の生活、睡眠時間、余暇時間のことも総合的に考えて、先生方の御意見が出そろってきたと考えます。事務局では次回までに、この点についてまとめ、整理をお願いします。
それでは次に進みます。論点2の「業務の過重性の評価」について検討します。資料は10ページになります。事務局から資料の説明をお願いします。
○西川中央職業病認定調査官 論点1についての御議論、どうもありがとうございました。それでは、論点2の「業務の過重性の評価」です。労働時間の部分は先ほど御議論いただいたところで、また次回改めて整理させていただきます。論点2は労働時間の部分を除いた整理ということになりますが、これについて御説明させていただきます。
こちらの論点については1ページ目、論点2ということで、「これまでの議論を踏まえ、別添2のとおり整理することについて、どのように考えるか」という記載をしております。
別添2として10ページからお示ししておりますが、別添2は大きく3つに分けております。2-1、2-2、2-3とありますが、2-1は総論的な部分ということになります。過重負荷の考え方であるとか、過重負荷の評価の基準となる労働者の関係、そして業務の過重性の評価期間、この3つを2-1に記載しております。2-2は、異常な出来事と短期間の過重業務の評価についてです。そして、2-3が、長期間の過重業務の評価についてです。大量の資料となっておりますけれども、基本的にはこれまでの御議論で論点とさせていただき、その上で御了承を頂いたものをまとめた形になっております。ただ、文章として全体を整理するに当たり、幾つかの箇所は御議論の内容や、あるいは平成13年報告書の内容などを踏まえて補足、追記したところもありますので、その部分を中心に御説明したいと思います。
それでは、10ページを御覧ください。別添2-1、総論部分です。(1)過重負荷の考え方をまとめております。こちらについては第2回、全般的な認定基準の検証に入り初めての検討会で御議論いただいたものですけれども、大筋としては現行認定基準の考え方、13年検討会報告書の考え方について、大きな御異論はなかったものと考えておりますので、そのように取りまとめております。冒頭に、13年検討会の整理について、現時点の医学的知見に照らしても妥当と判断するとまとめておりますが、こういった形で良いかどうかということを確認いただきたいと思います。
その内容として、次の段落からですけれども、脳・心臓疾患は、加齢や日常生活のいろいろな要因などにより、徐々に血管病変等が進行、増悪するという自然経過によって発症するものであって、労働者に限らず発症するものとしています。必ずしも労災になるというものではないというところです。
「しかしながら」で次の段落ですが、そういったものではあるのだけれども、そこに業務による過重な負荷が加わり、自然経過を超えて著しく増悪、発症することがある。その場合には労災として認めるということになります。ここでいう「過重負荷」というのは、発症に近接した時期の急性の負荷、それから長期間にわたる疲労の蓄積と整理される。こういった過重負荷については客観的、総合的に判断することになると。なお、時間外労働もなく、業務内容としても通常のものと言えるような、いわゆる「日常業務」に従事する上で受ける負荷については、家庭生活にも負荷がありますし、学生さんの生活にも負荷があります。それらと同様に、一般に日常生活などにおける通常の負荷の範囲内と考えられる、すなわち、自然経過の範囲内と考えられるということです。
そして、業務による過重負荷の発症のパターンについては、10ページの下のところから11ページにかけて記載し、11ページの図1のように整理されるというふうにまとめております。この図はア、イ、ウと点線の上に3つの実線が書いてありますけれども、点線のところが自然経過で、一番上、発症に至るというところですが、この実線は「業務による負荷」ということです。業務による負荷が加わることによって、アについては長期間にわたる疲労の蓄積です。イやウは急性の負荷ですけれども、アがあるところにイが乗ってくるというパターンもありますし、アがないところにウが、急性の負荷が起きるということもあります。そういった形で発症していくと。こういった場合には、これらのものは労災として取り扱うという図になっております。
なお、①②③の1つ上のところですが、こういった疲労の蓄積は解消することがあります。疲労の蓄積の解消や適切な治療によって、血管病変等が改善するという報告もあることに留意する必要があるという整理になっております。
なお、第2回の検討会においては、この「疲労の蓄積」という用語についても幾つか御意見があったところです。この「疲労の蓄積」という用語は、こういった業務による様々な精神的負荷、身体的負荷が蓄積して積み上がっていくことを示すものとして、13年の検討会で、この言葉でそれを示そうということで選択したものです。必ずしも日常会話で言う「疲れた」という感じ、疲労感といったものと一致する日本語ということではなく、それよりも幅広いものを含んでいるところです。13年報告書と、それに基づく現行認定基準の「疲労の蓄積」という表現については、各種の行政の周知資料でも用いておりますし、裁判例などにおいても妥当なものとして受け入れられて使用されているという状況にあると考えておりますので、事務局としては、できれば維持をしたいと考えているところです。こういった基本的な考え方につきまして、御検討のほどお願いしたいと存じます。
続いて(2)のところ、11ページの下半分ですが、こちらは過重負荷の評価の基準となる労働者です。冒頭に、「引き続き、本人ではなく、同種労働者にとって、特に過重な業務であるかを判断の基準とすることが妥当」とまとめております。第6回の検討会で御議論いただいたところになります。その上で、こういった同種労働者については、「基礎疾患を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる者」を含む概念であるということで、こちらについても第6回の検討会で御了解いただいたものと考えているところです。
その次の12ページの冒頭から、その理由について整理しておりますけれども、この12ページの第1段落から第3段落まで、第6回検討会での御発言や13年報告書の整理を基に、改めてまとめているものです。この部分は、第6回検討会の論点の記載よりも少し追記している形になっておりますので、ここについて御確認をお願いできればと思っております。
書いてある内容としては、御発言がございましたけれども、労災保険制度とは業務に内在する危険が現実化したものであるかどうかを判断するものなので、本人ではなく同種の労働者を抽象的に想定して客観的に判断するという枠組みが不可欠であると。基礎疾患を有している方も多数働いていらっしゃるので、そのような方の保護に欠けてはいけないということもあります。一方で、僅かな負荷でも発症する方が、たまたま仕事中に発症したということであったとしても、これは自然経過によるものと評価せざるを得ないということ、このような整理は13年検討会の報告書にもまとめてあるところですし、本検討会において基礎疾患を有する方の取扱い、基礎疾患を有する方の病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合であって、そういった方が業務による明らかな過重負荷によって自然経過を超えて著しく重篤な状態に至ったと認められる場合には、業務と発症との関連を認めることが妥当と判断したこととの関係においても、そういった整理が適当であるという理由付けを示しているところです。
そして、「また」の段落ですが、同種労働者の定義について、基礎疾患の状況などの健康状態についても、ここで対象とするといったようなことについては、第6回で御議論いただいた内容ですし、以上のような考察からの段落においては、こちらは論点で、文字で示したところですけれども、括弧の内容です。「業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な精神的、身体的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること」が必要だとか、同種労働者の定義はこうすることが妥当だと判断するというような整理、こちらは第6回の論点のとおりとなっております。
13ページの(3)ですが、評価期間についてです。こちらは第8回の論点で御承認いただいたとおりですけれども、一般的に、過重負荷と発症との関連を時間的に見た場合、発症に近いほど関連が強いということ。負荷と発症との関係は、先ほど(1)で御説明した図1のとおりで、急性の負荷と疲労の蓄積、これが両方影響するものです。疫学調査を検討会にもお示ししましたし、このまとめ、別添にも表1、表2というものを14ページから示しておりますが、こういった疫学調査からしても、急性の負荷を評価する異常な出来事については発症直前から前日までの間、短期間の過重負荷については発症前おおむね1週間、これを評価期間とすることが引き続き妥当と考えられること。
一方で、その次、長期間の過重業務、15ページのイです。こちらも2段落目、「以上のような」というところですけれども、原則として発症前1~6か月の就労状況を調査すれば、発症と関連する疲労の蓄積が判断され得るとした13年検討会の整理は妥当であり、これを変更するに足りる十分な根拠は現時点ではないといったような御議論を頂いていたかと思います。なので、ここにそのような形で示しております。
その次、なお書きのところですけれども、発症に近い時期の負荷が小さく、発症から離れた時期の負荷が大きい場合についても、全体を総合的に評価するということ。併せて、発症前おおむね6か月より前の業務については、疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価するに当たり付加的要因として考慮するという、これは現行でもそういった取扱いになっているわけですが、これを引き続き維持することが妥当であるということ。
さらに最後のところですが、長期間の過重業務の判断に当たり、先ほどの図1で見たとおり、疲労の蓄積の線の上に更に急性の負荷が加わるというイのパターン、②のパターンというのもあるということから、発症に近接した時期に一定の負荷要因が認められるという場合には、それらの近接した時期の負荷要因についても十分に検討する必要がある、すなわち長期間の過重業務の判断に当たって、短期間の過重業務についても総合的に評価すべき事案があるということについて、認定基準上明らかにすることが妥当であるという整理をしております。
以上が別添2-1です。1、2、3をまとめて特に1の部分が、これまでの論点を文章にまとめるに当たって御議論いただく必要があろうかと思っておりますので、特に(1)を中心に御議論いただければと思っております。
続いて、資料の19ページからです。別添2-2です。こちらは異常な出来事と短期間の過重業務の評価についてです。これは非公開であった第7回、そして公開の第8回と御議論いただき、第8回の論点で御承認いただいたとおりです。
まず、異常な出来事ですけれども、「すなわち」のところ、3段落目ですが、「当該出来事によって急激な血圧変動や血管収縮等を引き起こすことが医学的にみて妥当と認められる出来事」だということ、これを認定基準上明らかにすることが妥当であると。その上で、具体的には①②③と書いており、①②は現行認定基準から修正が入っておりますけれども、こういった形で整理することが妥当であると御議論でまとめていただいたもので整理しているところです。
また、検討の視点等についても、(2)にあるとおり、「その際」のところですけれども、検討の視点としてはこういったことを示すことが妥当である。さらに業務と発症との関連性が強いと評価できる場合の例示としては、こういったことを示すことが妥当であるということで、それぞれの括弧の中は、第8回の論点のときに御議論いただき、御承認いただいた内容を示しているところです。
次に、2番の短期間の過重業務の評価ということです。(1)ですが、短期間の過重業務についても急性の負荷によって発症するという整理です。その中で、負荷要因ですけれども、(2)のアの労働時間については、21ページになりますが、「その際、検討の視点としては」ということで、これも括弧の中のとおりで示すことが妥当であるということ。さらに業務と発症との関連性が強いと評価できる場合の例示として、こういったことを示すことが妥当であると。こういったそれぞれの括弧の中も第8回の論点で御承認いただいた内容を貼り付けているところです。
2-2の最後、イのところ、労働時間以外の負荷要因です。労働時間以外の負荷要因及びその検討の視点については、現行認定基準と同じく、原則として長期間の過重業務におけるものと同じように考えることが妥当であると。ただし、作業環境については短期の方で重視して、長期の方では付加的に考慮することが妥当であるということを書いております。こちら、別添2-2は、御説明したとおり、既に御承認いただいた内容そのものと考えておりますが、念のため御確認をお願いしたいという次第です。
最後、22ページからの別添2-3です。長期間の過重業務についてです。こちらは別添2の中でも長くなっておりますけれども、特に冒頭の(1)の長期間にわたる疲労の蓄積の考え方と、それから、前回第10回検討会の宿題事項、「不規則な勤務、交替制勤務、深夜勤務」、この検討の視点について御検討いただきたいと思っております。
まず、(1)の疲労の蓄積の考え方です。先ほど別添2-1の冒頭も全体の過重負荷の考え方を整理していたところですが、こちらは長期間にわたる疲労の蓄積の考え方について整理したものです。13年報告書の内容を少し圧縮して記載しているところですが、どのような業務であれ、仕事をすれば生体機能には多様なストレス反応が引き起こされるという整理です。長時間労働が長期間にわたって続くなどといったストレスがずっと続くことになると、ストレス反応も持続するし、更に過大なものとなり、遂には回復し難いものとなると。そのような状態を「疲労の蓄積」というと整理をし、この疲労の蓄積によって、血管病変等が自然経過を超えて著しく増悪することがあるという整理をしているものです。
このストレス反応については、次の23ページにNIOSH、アメリカの国立労働安全衛生研究所が示した職業性ストレスモデルを引いているところです。13年の報告書は、このモデルを先生方に一部改変いただいて、13年の認定基準に即したような形で記載していたところですが、ここでは、原著の直訳の形で図1は載せております。
黒い矢印の先、acute reactionsが原文ですけれども、急性反応とあるところがストレス反応ということで、抑うつなどの心理的な反応、疲労感や血圧上昇などを含む身体的愁訴といった生理的反応。先ほど高橋先生から「行動が変わる」というようなお話がありましたけれども、事故や病気による休業など、あるいは運動をしなくなるといったことも含まれるかと思いますが、行動的な反応といったものをいうとされているところです。
この整理については13年報告書の趣旨に沿って記載したものですが、これまでの検討会では十分議論いただいてないところでもあるので、御確認、御議論いただければと思っております。
その次の(2)は、こういった疲労の蓄積を評価するための個々の負荷要因についての記載です。労働時間のところは先ほど論点1で御検討いただいたところで、この別添2-3では【P】保留という形にしております。先ほど御議論いただいたものを後ほど整理していくことになろうかと思います。
以降の各負荷要因については、これまでの検討会、直近では第9回、一部は第10回で御議論いただき御承認いただいたものを記載していることになります。それぞれの負荷要因について、基本的にはそれぞれの医学的知見の状況を記載し、それを踏まえて検討の視点としてはこういったことを示すことが妥当という形で、大体同じような書きぶりで整理しているところです。
個々の負荷要因ごとの詳細な説明については割愛させていただきたいと思っておりますが、大きなイが勤務時間の不規則性の関係で、その細目として(ア)拘束時間の長い勤務、(イ)休日のない連続勤務、(ウ)勤務間インターバルが短い勤務という形で示しており、中を見ていただくと、定義的なものが頭に来ていますが、それぞれの負荷要因については、こういった医学的知見の状況にあって、これらの状況を踏まえて、その検討の視点としては、これとこれを示すことが妥当であるといったような書きぶりになっております。
そして26ページを御覧ください。(エ)が不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務です。この検討の視点について、26ページの下、黄色マーカーを付しているところがありますが、こちらが前回第10回検討会の宿題事項となっておりますので、御検討いただきたいと思います。黄色部分は、前回の資料では「深夜時間帯の勤務の頻度など夜間に十分な睡眠が取れない程度」としておりましたが、「など」という表現では前半と後半の関係がはっきり分からないという御指摘を踏まえ、整理したものです。夜間に十分な睡眠が取れるかどうかという観点から、勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度を評価するという趣旨で、括弧書きで、括弧の外と中は同じことを指しているという趣旨で記載しているところです。
先に進み、27ページの大きなウについては、事業場外における移動を伴う業務の負荷に関してです。こちらは細目で出張の多い業務と、その他事業場外における移動を伴う業務に分けているところです。また、時差に関する評価も、作業環境から移して、この項目に記載しているところです。
29ページです。大きなエ、心理的負荷を伴う業務です。心理的負荷を伴う業務としては表5と表6を示しておりますが、こういった表に沿って、業務の心理的負荷を評価していくという方針で御承認いただいているかと存じます。
32ページのオ、身体的負荷を伴う業務です。これを新たに負荷要因として評価することであるとか、第9回で承認いただいた検討の視点について示しているところです。
「なお」ということで、32ページの一番下のところですが、活動強度、作業強度の表を33ページの頭に引用しております。検討会の中の御議論でもありましたけれども、この作業強度の表はMETsの表ということになりますが、何METsあれば発症との関係性が強いのかといったような基準を設けることは難しいということで、「様々な負荷の重なり合い」というような表現が検討会の御発言でありましたけれども、業務の全体を総合的に評価することとなる旨も付記しているところです。
最後、33ページ、カの作業環境です。先ほど短期間の過重業務のところでも記載しましたけれども、作業環境については短期の方で重視して、長期の方では付加的に検討するということ。それから、温度環境について、検討会での御議論を踏まえ、寒冷と高温を並列して同じように記載すること。騒音については現行の検討の視点を修正する根拠は特段ないという整理になったこと。こういったことについて記載しております。御議論、御発言を踏まえて記載しておりますが、「エビデンス」といった表現について、より具体的な記載ができるかどうか等、また、先生方とも御相談してまいりたいと考えております。
こういった各負荷要因に関する医学的知見については、資料2の方でも、基本的には第3回の検討会でお示ししたものですけれども、追加で検索漏れがあった部分も全体の表の中に整理し直したり、あるいは騒音の関係についてはWHO・ILOの共同推計のシリーズで知見が1つあったので、それも併せて1件、105ページに追加で御紹介しております。知見の状況は特段変わるものではありませんので、逐一の御説明は省略いたします。
論点2の説明は以上となります。それぞれ2-1、2-2、2-3に分けて御議論いただければと考えております。よろしくお願いいたします。
○磯座長 それでは、別添2-1から2-3まで説明がありました。まず、2-1のが10ページになりますので、そこから先生方の御意見を頂きたいと思います。重要な点としては、先ほどの11ページにある発症に至るまでの概念図ですね。これについては前回と同様な形で今まで様々な活用がされているので、先生方にこれでよろしいかということの御確認です。いかがでしょうか。西村先生。
○西村委員 ここにあります図1というのはすごく重要な図で、パッと見て分かる面もあるのですが、私が以前から誤解を招くのではないかと思っている点は、縦の軸というのは血管病変等の進行状態ですね。そこに疲労の蓄積という全然違うものが矢印で入ってきますので、これは疲労の蓄積によるとか何か別なものでどう影響しているという表示にした方が、誤解を招かない。
もう1つ、ア、イ、ウと整理されていますが、時間経過というのが後の説明で13ページぐらいに出てきて、そこの説明とこの絵を一緒に見ると何かよく分からないことになるのではないかという心配がございます。例えばこれ全体の軸というのは、アのところは6か月ぐらいですから、横軸は書かないとしても1年とか6か月であり、10年とか20年のものではないということですが、それが分かりにくい。アというのが、今、想定している長時間のものだとして、イというのは1週間かなと思ったら、1週間ぐらいのものではなくて割と急にイベントに達していますし、ウというのが前日の1日かなと思ったら、イよりもウの傾斜の方がなだらかです。一般的にはイと、直線に上がるよりもきついぐらいの角度があった方が、直前の異常な負荷でイベントが起きたということが分かると思います。1週間というのは、では、その間に入るかという考え方もあるのですが、そうではなくて、いろいろなことが悪くなった後の1週間後に引き金因子が加わって発症することもあるとの記載がありますから、そうであればイもありということで、ここの文章との整合性がわかりにくい概念図であり、本文を読んでいるうちに混乱してしまうのではないかと思います。
○磯座長 非常に重要な指摘をありがとうございます。確かに疲労の蓄積と書くと縦軸が疲労の蓄積というふうに見えるので、蓄積によるとか、そういった文言を考えていただければと思います。また、今、西村先生が御指摘になったように、11ページの上のア、イ、ウですね。①②③についてはもう少し時間の範囲というのを明確化してください。それを事務局の方で次回までに検討してください。ありがとうございます。それでは次のページ、特に12ページについては、先ほどお話があったように同僚という文言を削除して、基礎疾患を持っている方を基準にするという説明がありました。これについては、これまでの検討会で議論になって合意を得たものを、それぞれ文章で組み立てたということになりますけれども、何か御意見等はございますか。12ページから13ページです。
1つ、私の方で、もう一度読み返してちょっと気になったのは、12ページから13ページのところで、12ページの一番終わり、「必要であり」として文章を止めないで、次のページで「同種労働者とは」として同種労働者の定義をもう1回書いてありますが、実を言うとその前のパラグラフで、同種労働者についてはこう考えるのが適切であるということと、年齢と同様に対象とすることとなると、12ページの下から2番目のパラグラフで定義を一部説明しているところがあります。ここでしっかりと定義を説明すれば、最後の「以上のような考察から」というところは、一番下を「必要である」として止めれば話がすっきりするのではないかと思います。ちょっと重複感がありますのでもう一度確認してください。ほかに、この12ページについていかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは13ページ以降、評価ですけれども、これについてもこれまでの議論をまとめたものです。その中で15ページの2段落目について、発症前1~6か月で就労状況を調査することで疲労の蓄積を判断するという、検討会のこれまでの整理は妥当であるということです。それを更に変更するには十分な根拠は現時点ではないという文言で、これについてもこれまでの会議で合意されたものです。さらに次のパラグラフで、6か月より前の業務については付加的な要因としてしっかりと考慮することも書いてありますが、さらに15ページから16ページにかけて、短期間のものがあったらそれも総合的に評価すべきことを考えるということで、これまでの議論をまとめてあります。これについてはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。高橋先生、どうぞ。
○高橋委員 すみません、この長期の評価期間に関して、正にここに書いてあるとおりだと思います。この辺はむしろ磯先生にお伺いしたいのですが、疫学調査はベースラインから5年から10年ぐらいで、アウトカムが出るか出ないかという評価ですね。一方で、認定基準というのは発症前の6か月までとなっています。これまで見てきたように、たくさんの疫学の知見で月当たり60時間とか70時間というのが、その後、5年、10年後にこういう疾病の発症と関わると。一方、今は単月100若しくは2~6を平均して80というのが1つの目安になっていますが、そうなると、疫学から出された時間外の数字というのを、現行認定基準のモデルにすぐには当てはめられないと理解してもよろしいのでしょうか。
○磯座長 それは前の検討会でも議論になったかと思いますが、ほとんどの疫学調査、特に観察による疫学調査は、ある時点での労働時間を聞いて、その後、5年、10年、長いもので20年ぐらいの間で起こる循環器疾患の発症確率を見ていますので、例えば最初に労働時間を評価して、次の5年、10年ぐらいでもう一度評価するというのはJPHCの研究で行っていますが、6か月毎とか1か月毎で労働時間を繰り返し評価し、その後の循環器疾患の発症、死亡を評価したという研究は皆無です。この点はこれまでの疫学調査の限界だと思います。ですから、基本的には、ある一時点での労働時間でその後の長期間の発症確率を見て、労働時間の区分別でどのぐらい発症が上がるか、若しくは下がるかを見ているのが現状の疫学調査になります。
例えば、先ほどの話のWHO・ILOの評価、研究も基本的に現在、週55時間以上の労働の方が世界中でどのぐらいいるかという調査をして、さらに特に男性で、かつ開発途上国ですね、特に中進国の男性で長時間労働が増えているというレポートを出して、これまで我々がレビューで検討している疫学研究で、脳卒中、心筋梗塞が10数パーセントから数十パーセント程度高くなることを当てはめて、どの程度世界的に長時間労働による過剰死亡が起こるかを推定したデータです。詳細な内容については判定が難しいという点はこの原著論文にも記述されています。原著論文のディスカッションに、この研究の限界が詳しく書いてあります。1つは横断研究のデータが多いということ。相対リスクは一部のコホート研究より出していますが、それほど高くない。これはこれまでの研究と同様です。
そして、55時間以上でリスクが上がるということについて、一部の研究グループは、55時間以上で循環器病のリスクは高くなることは中等度の確からしさとしています。しかし、別のグループの中では、それはまだそこまで言えない、疑わしいとして、意見が分かれているということが、論文の中で記載されています。
また、社会経済的な階層で、長時間労働による循環器疾患のリスクの大きさは違うのではないかというデータもあります。確かに中進国では少し大きいのではないかというデータもありますが、それについてもデータ量が少なくて断定的なことは言えないとの記載があります。そういった様々な限界について、総合的に判断するのが重要かと思います。
ほかに御意見等はございますか。よろしいですか。それでは、別添2-1についてはおおむね先生方の同意が得られたものとして、次のページに進みます。
次は別添2-2についてです。これについても、これまでの整理ということで、先生方の議論をまとめたものと、先ほど事務局から説明がありました異常な出来事については、相当議論しまして、実際の状況の例示も19ページで示しています。20ページでは様々な異常な出来事について、業務との関連等が強いと評価できることを踏まえて総合的に判断することも妥当であると書いてあります。21ページについても同様にこれまでの議論をまとめてありますが、ここら辺について何か御意見等はございますか。よろしいでしょうか。特に御意見等はございませんか。ありがとうございます。
それでは、別添2-3に移ります。これは長期間の過重業務の評価ということで、疲労蓄積の考え方について22ページにまとめています。これについても、これまでの議論を文章にまとめたものです。23ページの労働時間については事務局から、最終的に合意ができた文言を後で書き込むということの説明がありました。24ページから25ページについても、主にこれまでのまとめとなります。先ほど課題として挙げられた26ページの黄色のところですが、この文言の修正が事務局から提示されました。一番下のところです。「勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度(勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度)」としていますが、これについていかがでしょうか。
○高橋委員 高橋です。
○磯座長 どうぞ。
○高橋委員 ここは夜勤交代勤務、長年あってもなかなか答えは出せないところなのですが、最近のガイドラインでは深夜勤3回連続は避けた方がいいという見解が出されています。
○磯座長 先生、その場合、何か文言の修正がありますか。
○高橋委員 その前のばらつきの程度とか、ほかのところも定量的なものはないので、ここをもう少し定性的にどう書き換えるかですが、そうですね、事務局でどこまで整理を付けたいかというのもあるかと思います。何かありますか。
○西川中央職業病認定調査官 今、先生が御指摘の御趣旨は、例えば3回連続というようなお話を頂いたので、この括弧の中に勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度・連続性とか、今、確かにここは「等」がないので、文字をそのまま読めば、これとこれだけを評価するということにはなります。最後に「業務内容及びその変化の程度等」と、全部ひっくるめた「等」というのはありますので全く見れないわけではないのですが、この御議論の段階で、この勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度について考える観点として、時間帯とか回数、頻度のほかに、そういったものも検討の視点として大事だということであれば、明示的に入れておいた方がいいのかなと思います。
○高橋委員 それまで連続の回数というのも、ひとつの見方にはなるかと思いますね。
○磯座長 例えば、ここに深夜時間帯の勤務の頻度と連続の程度とか。
○高橋委員 連続回数という形ですかね。
○磯座長 連続回数、日数ですか。
○高橋委員 夜勤交代ですと、日数と言うと日をまたいだりして勘定しにくいので、回数で示すことが多いです。
○磯座長 連続回数等と入れておきますか。
○高橋委員 はい。
○磯座長 では、ここの最後の勤務の頻度の後に、「と連続回数等」でどうですか。文言の整理をお願いします。ほかにありますでしょうか。どうぞ。
○西村委員 西村です。23ページのNIOSH職業性ストレスモデル、これ置き換わると書いてあります。あのモデル、私は勉強不足で古いものしか知らないのですが、いろいろな負荷要因と緩和要因のバランスを取るということが強調してあります。前提として、ストレスがあったら余暇等の緩和要因を増してバランスを取るということが分かる表にしてほしいと思います。なぜかと言いますと、最初、論点1のときのBの労働時間うんぬんのところで、②というのは生活時間の中での休憩・休息や余暇の時間がどうのと書いてありますから、余暇で精神的なストレスに対してバランスを取るということは重要と判断しています。この大きな表には確か、多様な因子がみんな書いてある表でした。ですから、バランスを取る形でのそういう余暇、自由な時間というものが入っているモデル、もともとそうだったと思うので、その表があることは重要かなと思います。高橋先生、御存じですか。
○高橋委員 実際、このNIOSHのモデルだけでなく、ばく露があって、いろいろな調整因子があって、何らかの急性のレスポンスがあって疾病につながる。大体、大枠はこんな感じなのですが、モデルになると全部一定方向と言いますか、流れが左から右へとなっているわけです。おそらく先生がおっしゃるように急性反応が出て、ちゃんと休んだり労働時間を調整すれば、そこでストップするわけですから、そういう事実はある。逆に急性反応が出て非常に頭が働かないとか鬱っぽくなってしまって、結局、これがまた仕事のストレッサーを増強するみたいな右から左へ戻る流れも必ずあるはずなのです。それは非常に複雑なのですが、そういう単純に時間経過でいかないというニュアンスは確かに入れた方がいいですね。
○西村委員 ただ、前回のときの表はそのバランスが分かりにくい表だったのです。バランスを取ることが大事だということを言うために、改変した表になってたのではなかったでしょうか。
○高橋委員 それが正に蓄積を防ぐ重要な対処になりますし。
○西村委員 Bの②のところの論点ですね、先生がおっしゃっていた。
○磯座長 前の図は、どんな感じですか。
○西川中央職業病認定調査官 前回の図は、先生方に御説明のときに申し上げましたが、一部改変をしていただいたということですね。今、ここに貼り付けてあるのは原著そのものの直訳です。今、先生がおっしゃっているのは緩衝要因に関する部分になろうかなと思いますけれども、原著の緩衝要因はこれしか書いていないところです。上司、同僚、家族からの社会的支援ということしか書いていない。前回の13年の先生方に改変していただいたこの表につきましては、専門検討会報告書の90ページになりますが、緩衝要因、緩和要因のところに社会的支持、支援のほかにストレス対処法という記載があります。その部分がまずはそこに当たるのかなということです。さらに、ストレス反応から疾病に真っすぐ行く矢印のほかに、そこにも個人要因の関与というものを書いていて、不摂生であるとか自主健康努力不足であるとか受療不良というようなことが書いてございます。逆に言えば、そういったものがなければ疾病まで行き着かずに済むかもしれない、そういうニュアンスもあるような図になっています。
○磯座長 どうでしょうか。要は今回の22ページは、ストレス反応ということを説明するためのモデルを、ただ単に直訳したものだと。前回は、これを踏まえて更に我々の考え方が分かるように書いたということですね、どちらがいいですかね。この場合、前の改変をあえてこちらにしたのは、そうですね、緩衝要因のところに確かにストレス対処法とか、ここで高橋先生がおっしゃった余暇とか睡眠も入っていないですね。十分な睡眠とか入って、更に個人要因としては飲酒、喫煙、こういった先ほど西村先生がおっしゃった論点の中で、どうしても飲酒とか喫煙、ストレス反応、長時間労働によって行動が変わるということが書いてあるので。
原著モデルでは薬物使用と書いてありますが、そこにいろいろな生活習慣の急性反応がありそうですね。ただ、疾病に至るまでには個人的な生活習慣の乱れがあり、疲労の蓄積を経て最終的に疾病につながる。そういう意味で、前の方がいいような気がします。
○高橋委員 高橋です。このNIOSHの図、これはほとんどオリジナルを和訳したようなものですけれども、だからこれを今回の検討会とか、あるいは基準を包括するものとするためには、もっともっといろいろな要因を付け加えて、この検討会なりのモデルを構築する必要があるかなと思います。そうなると、かなり時間と労力がかかるので、どうするかというところです。磯先生がおっしゃるようにそういう努力をするか、あるいはなくすかでしょうか。
○磯座長 今回の議論の中で重要な因子を、前の改変したモデルに加えるだけでもできるような気がします。
○髙田委員 すみません、髙田です。
○磯座長 どうぞ。
○髙田委員 私もこの図をこのまま載せるというのは反対で、うつ病といった精神疾患のときにこれを使うのは構わないと思いますが、今回、脳・心臓疾患ということで血管病変のことを扱うので、13年の報告書のモデルに今回の議論のものを、もし足せるのであれば足した改変モデルの方がよろしいかと思います。
○磯座長 ほかに、いかがでしょうか。今の御意見で進めてよろしいですか。今回、議論になったキーワード、基本的な概念をはめ込むような形で、西村先生、お願いできますか。
○西村委員 私は荷が重い。高橋先生お願いできますか。
○磯座長 高橋先生、この前の図に今回、重要な論点になったキーワードをはめ込んでいただけますか。
○高橋委員 はい、分かりました。
○磯座長 それでは高橋先生に伺いながら事務局の方で修正してください。ほかにありませんか。よろしいでしょうか。27ページ以降の出張の多い業務とか移動を伴う業務については、これまで相当議論してその合意された文言をまとめてあります。次の29ページの心理的な負荷を伴う業務についても表を入れてまとめてあります。32ページ、身体的負荷を伴う業務の最後の3行については、個別に質的、量的に評価する基準を設けるのは難しいので、総合的に評価するという形にしています。そして33ページ、34ページに続きますが、作業環境、温度環境、騒音についての記載をしています。いかがでしょうか。これについて特に御意見等はございますか。よろしいですか。特にここでのポイントとしては、「勤務時間の不規則性」の「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」の検討の視点を整理しているのですが、26ページにもう1回お戻りください。今回、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務について、これまでの議論についての文言が書いてあります。先ほど黄色の部分については高橋先生から御指摘があって、連続回数を付け加えることとなりました。その他についていかがでしょうか。よろしいでしょうか。
労働時間の評価をはじめとする業務の過重性の評価は、脳・心臓疾患という、様々な素因を背景として自然経過によって発症し得る疾病について、業務との関係性を評価する上で極めて重要な視点であり、検討を重ねてきたところですが、ここまでに御意見等も出そろったと思いますので、そろそろ取りまとめの時期となってきたと考えます。事務局においては、今回論点になったところや修正点についても、次回までに検討して整理するようにお願いします。
それでは、次に進みたいと思います。資料35ページの論点3「脳・心臓疾患の危険因子(リスクファクター)」についてです。事務局から資料の説明をお願いします。
○西川中央職業病認定調査官 論点2についての御議論ありがとうございました。最後になりますけれども、論点3、脳・心臓疾患の危険因子について御説明をさせていいただきます。資料1の1ページ目ですけれども、論点3として業務の過重性に限らない脳・心臓疾患の危険因子について、別添3のとおり整理できるかという論点を記載させていただいています。
この論点については、これまでの検討会で御議論いただいたものではありませんけれども、脳血管疾患、虚血性心疾患等のそれぞれの危険因子について、現在の医学的知見に基づいて概略を取りまとめておきたいということで、整理をさせていただくものです。13年の報告書においては112~127ページに相当する箇所になります。
なお、13年の報告書では「リスクファクター」と表現をしていて、前回第10回検討会の疾患別概要の事務局のたたき台でも「リスクファクター」という表現をしていましたけれども、検討会後に先生から「危険因子」の方が適切ではないかという御指摘を頂き、参照したガイドラインなどにおいても危険因子との表現で統一されていたところですので、「危険因子」という形で整理をしたいと思っております。
35ページ、別添3を御覧ください。脳血管疾患の危険因子です。48ページからは虚血性心疾患等の危険因子になっています。事務局で幾つか文献を確認したところでは、35ページの脚注のところに、脳卒中治療ガイドラインと動脈硬化性疾患予防ガイドラインというものを2つ記載していますけれども、これらのガイドラインにおいて危険因子の関係が詳しく、かつまとめて示されているということで、基本的にはこの2文献から引用して記載をしています。一方で、事務局の目で見ての引用となりますので、この箇所の引用は適切でないとか、別の記載が良いとか、医学的に様々な御指摘があろうかと思いますので、御検討のほど是非よろしくお願いしたいと思います。
なお、今回の資料では脚注として参考文献を記載していますが、非常にボリュームが大きくなってしまいましたので、体裁については追って調整をしたいと考えています。
脳と心臓それぞれについて、内容の概略を簡単に御説明したいと思います。35ページの冒頭1の(1)です。脳血管疾患に関してです。この(1)の概要については13年の報告書とほぼ同様のまとめという形で記載しています。この内容でよいかどうか、御検討をいただきたいと思います。
(2)が各論ということで、これは13年の報告書と同様、是正不可能な危険因子と、是正可能な危険因子に区分をして記載をしています。この是正不可能な危険因子については、(ア)年齢、(イ)性、(ウ)家族歴、この3つを整理しています。どちらかというと心臓に合わせた形で整理をしていて、脳血管疾患の方の家族歴については、ガイドラインにおいては言及がなかったのですが、事務局の方で文献を見つくろい記載をしています。また、他の文献についても御紹介いただければ記載していきたいと考えていまして、先生とも御相談して記載できればと考えています。
イの是正可能な危険因子についてですけれども、(ア)から(サ)まで11の因子を整理しています。(ア)高血圧、(イ)糖尿病、さらに進んで38ページ(ウ)脂質異常症、そして(エ)不整脈(心房細動)ですけれども、(オ)喫煙、(カ)飲酒、(キ)炎症マーカー、(ク)高尿酸血症、(ケ)ですけれども、睡眠時無呼吸症候群の患者さんという趣旨ですが、睡眠時無呼吸症候群、(コ)メタボリックシンドローム、(サ)慢性腎臓病です。最後の3つは脳卒中のガイドラインにおいて、ハイリスク群ということで示されているものとなります。並列に記載する形で良いかどうかということも含めて御意見をいただければ有り難いと思います。
また引用元におきましては、脳梗塞という記載と、虚血性脳卒中という記載が混在していますけれども、混在しているということは一応書き分けてある。恐らく元の疫学調査がそういう形になっているからということであろうかと思いますけれども、そのまま混在する形で記載していますが、そういったものの是非などについても御指摘があれば頂きたいと思っています。
48ページからは心臓の方についてとなります。虚血性心疾患等の危険因子ですが、申し訳ありません、2の大きな見出しから「等」が脱字となっています。冒頭(1)の概要ですが、こちらも13年の報告書とほぼ同様のまとめとしていますけれども、内容について御指摘があれば頂きたいと思います。
(2)です。同じく各論という形で、こちらも是正不可能なものと是正可能なものに区分して記載をしています。なお、心臓の方は、いずれの記載も動脈硬化性疾患予防ガイドラインから引用したものとなります。アの是正不可能な危険因子については、脳血管疾患と同じく(ア)年齢、(イ)性、(ウ)家族歴の3つを整理しています。虚血性心疾患、引用元では冠動脈疾患という記載になっていますが、こちらについてはガイドラインに家族歴に関する言及があります。
イの方の是正可能な危険因子については、(コ)まで10の因子を整理しています。(ア)高血圧、(イ)糖尿病、(ウ)脂質異常症、(エ)喫煙、(オ)炎症マーカー、(カ)高尿酸血症、(キ)睡眠時無呼吸症候群、(ク)メタボリックシンドローム、(ケ)慢性腎臓病、(コ)冠動脈疾患の既往という形で整理しています。脳血管疾患と比較して不整脈と飲酒がなく、冠動脈疾患の既往が追加という形になっています。
なお、労災行政においては、虚血性心疾患という表現をしていますけれども、引用元では基本的に冠動脈疾患というような記載になっています。引用元でも人口動態統計を用いている「性」の因子のところですけれども、ここは虚血性心疾患となっていて、これは人口動態統計が虚血性心疾患となっているからと理解をしていて、やはり書き分けられているということで、そのまま混在する形で記載していますが、その是非についても御指摘があればお願いをしたいと思います。
予防対策ということで言えば、是正可能なものだけ書いておけばいいのではないかということもありますけれども、労災認定に当たっては、目の前に発症された方がいるとき、それは業務によるものなのかそうでないのかを考えていく場合、是正不可能な危険因子についても検討の対象になるということで、是正不可能な危険因子についても13年の報告書でも整理をしていますし、今回も整理をしたいと考えていますので、御検討をいただければ有り難いと思います。
御説明は以上です。御議論いただいた上で、時間が不足する部分があるかと思いますので、検討会終了後も含め、先生方に御検討いただき、後日、事務局に御指摘を頂ければ有り難いと考えています。御議論のほど、よろしくお願いいたします。
○磯座長 はい、それではまず、脳卒中について、豊田先生から何かコメント等ありますか。
○豊田委員 いや、すごく詳しく書かれていて、いいと思うのですが、私はこういう文献の書き方というのは見慣れていなかったのですけれども、まずガイドラインから引用したということでガイドラインを書いて、更にそのガイドラインの出典になっている、要するの孫引きした原著を詳しく書いて、文献のための脚注がかなりのボリュームですけれども、こういう書き方をするものなのですか。せめて孫引きした原著は、もう題名は外すとか、もうちょっとボリュームを減らしてもいいように思ったのですけれども。こういうふうにした方がいいのでしょうか。
○磯座長 どうですか、これはガイドラインから孫引きしているわけですね。
○西川中央職業病認定調査官 先生御指摘のとおり孫引きになっていて、そのまま貼り付けた方が、あまり改変しない方がいいのかなということで貼り付けしているところですが、逆に、豊田先生がおっしゃるように、著者と年だけにするとか、ちょっと体裁についても考えていきたいと思っていますので、御指摘として承りたいと思います。
○磯座長 もう1つ、脳梗塞と虚血性脳卒中という2つが混在して、それぞれの文献でそれぞれ違った言葉を使っているのですが、これはこれでよろしいですか。
○豊田委員 なるほど、脳梗塞でまとめてしまっていいのではないでしょうか。虚血性脳卒中という言葉がどこに出てくるか、具体的なところを見つけられない。でも、言葉は脳梗塞で統一したらいかがでしょうか。
○磯座長 どの辺りですか。後で確認してください。
○西川中央職業病認定調査官 例えば39ページを御覧ください。これは脂質異常症の項ですが、39ページ第1段落は「低HDL-コレステロール血症が脳卒中及び脳梗塞の独立した危険因子であることが報告された」と。次の「その後」の段落では、前半は「脳梗塞の発症が25%増加することがうんぬん」と。後半、「韓国から発表された観察研究によれば、虚血性脳卒中のデータを解析したところ、虚血性脳卒中の危険度は高まる」といったような。その次の「一方で」の段落も、「虚血性脳卒中の」というような。これは虚血性脳卒中と出血性脳卒中が並んでいるので、その関係かもしれませんけれども、そういった表現になっています。
○豊田委員 虚血性脳卒中は大体脳梗塞とイコールです。
○磯座長 文献を見る限り、多分脳梗塞にしても間違いはないと思います。脳梗塞に統一でよろしいと思いますので。
○西川中央職業病認定調査官 ありがとうございます。それではそのようにしたいと思います。
○磯座長 ほかに、よろしいですか。引用の仕方とか、また事務局で工夫してもらいます。
○髙田委員 すみません、髙田ですけれども1つ教えてください。是正可能な危険因子の並び順は何かルールがあるのでしょうか。もしないようでしたら、喫煙、飲酒が疾患の間に入っているのはすごく違和感があるので、もう少し並べ替えしていただいた方が見やすいのかと思ったので発言しました。
○磯座長 どのように並べたらよいでしょうか。バイオマーカーや生体の指標の後に習慣を置いておく。
○髙田委員 どちらかにまとめられた方が、後に高尿酸血症があったりとかしますので。
○磯座長 そうですね。
○髙田委員 間に喫煙、飲酒、炎症マーカーがあって、その後にまた高尿酸血症とかになっていますので。
○磯座長 なるほど。
○豊田委員 これは多分、脳卒中ガイドライン2019の並び順をそのまま書かれているのですね。
○西川中央職業病認定調査官 そのとおりです。高尿酸血症の方は動脈硬化のガイドラインから引いてきたがゆえに、そういったようなことになっています。並び順にも御指摘があれば、そのように並べ替えたいと思います。
○髙田委員 脳卒中ガイドラインだと、喫煙、飲酒が最後の方になっているということなのですね。ただ、ほかから引いてきたものを前の方に入れた方がいいということでよろしいのでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 脳卒中ガイドラインの並びは、1高血圧、2糖尿病、3脂質異常症、4心房細動、5喫煙、6飲酒、7炎症マーカーです。こういった危険因子と区別してハイリスク群の管理という章がありまして、睡眠時無呼吸症候群、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病というふうに並んでいるという状況です。
○髙田委員 意味が違うのですね。
○西川中央職業病認定調査官 すみません、事務局の理解が十分ではなくて申し訳ないのですが。
○磯座長 基本的に脳卒中ガイドラインの並びでいいのではないですか。これは脳卒中ガイドラインの並びと違いますか。
○豊田委員 ガイドライン2019と同じ並びで、ただ、先ほどもおっしゃったように、高尿酸血症だけが、脳卒中ガイドラインにないものを動脈硬化ガイドラインから持ってきて途中にはめ込んでいる状況でしょうね。必ずしもガイドラインの順番に準拠しなくてもいいと思いますし、7月に発刊予定のガイドライン2021はまた並びが少し変わりますので。
○磯座長 そうですか。
○豊田委員 ガイドラインの順番にかかわらずに、この検討会でいいと思う順番に変えてもいいと思います。
○磯座長 先生、2021年を丸写にはできないのですが、順番を教えてもらえると。
○豊田委員 2021の順番ですか。2021は(1)高血圧、(2)糖尿病、(3)脂質異常、(4)飲酒・喫煙というのが繰り上がっているのかな。(5)が心疾患といって、不整脈だけではなくて心疾患一般になっていて、(6)が肥満・メタボリック症候群など、(7)が慢性腎臓病、(8)が血液バイオマーカー。ここまでです。
○磯座長 折衷案として、その並びに近いものを並べ替えておくということか、ガイドラインのままに並べるかということですが、基本的にこのガイドラインを引用しているので、そのままにしましょうか。それで高尿酸血症を最後に、メタボリックシンドロームの後に付けておくということも1つの手だと思うのです。
○西川中央職業病認定調査官 分かりました、その方向で再調整したいと思います。
○磯座長 悩ましい問題ですけれども、一応ガイドラインに沿うということでよろしいでしょうか。
○豊田委員 細かいことですが、危険因子で統一したとおっしゃったのですけれども、47ページの最後の言葉だけリスク因子になっているのです。
○磯座長 47ページ、リスク因子。
○豊田委員 47ページの最後の行です。
○磯座長 本当ですね、ありがとうございます。ここを直してください。
○西川中央職業病認定調査官 承知いたしました。
○磯座長 48ページの虚血性心疾患に関して、野出先生、何か御意見等ありますか。
○野出委員 拝見しましたが、かなり細かく書いておられるのですけれども、内容的には特に問題はないと思います。1点だけ、高尿酸血症のところで、多分、動脈硬化学会のガイドラインですので、2010年のガイドラインを引用されているのですが、2019年から新しい改訂版が出ています。多分、内容的には同じなので、10年前のガイドラインですので、できれば2019年の高尿酸血症のガイドラインということで、文献だけ変えられれば内容的には変わっていませんので、そこだけ変更していただいたらよろしいのではないかと思います。
○磯座長 2019年の高尿酸血症のところですね。
○野出委員 はい。
○磯座長 そこを入れ替えてください。
○西川中央職業病認定調査官 ありがとうございます。
○磯座長 ありがとうございました。それでは、ほかに御意見等はございますでしょうか。
○高橋委員 時間がなくて申し訳ないのですけれども、11ページの上から3行目のところに、なお書きがありますね。「なお、疲労の蓄積や解消や適切な治療によって、血管病変等が改善する」と。
○磯座長 3行目ですか。
○高橋委員 3行目から4行目ですね。この意図するところがちょっと見えなかったのですけれども。こういう場合には臨床的にも含めた方がいいということでしょうか。
○磯座長 読み返すとこれはいらないような気がしますが、いりますか。
○西川中央職業病認定調査官 これは13年の検討会報告書にもある記載ですけれども、その趣旨としては、先ほどのストレス反応の話だけではないのですけれども、結局どこかでリラックス、睡眠の確保、そういった十分な休養が取られると、例えば長時間労働が一定期間続いたとしても、その後それがない状態になるというような場合に、回復するという報告があるということを記載することによって、10年も20年も、ただただ積もり積もっていくのかというと、そういうわけではないとする報告があるという趣旨での記載となっています。
○磯座長 それを入れるとすると、図1に、例えばアのところで少し上がっていますよね。疲労の蓄積によって上がってくるけれども、途中でまた下がっていって、エとして自然経過に近づくというのを入れないと。
○高橋委員 そうですね。
○磯座長 アは悪くなる、イは更に悪くなる、エもぐっと急性期に悪くなる。けれども、アで悪くなるのだけれども、途中でブレーキがかかって自然経過に近づいていくという線を入れないとこの説明ができにくくなるのは。
○高橋委員 更にこれは報告があることにというか、知見とか論文から引いてとなると、治療による改善というのは、研究はあるでしょうけれども、疲労蓄積の解消でもって血管病変が良くなったというのは非常に少ないのではないかと思います。どう扱うのかなと思っていました。
○磯座長 むしろ図1を説明する上で、ここは特に必要ないのではないかと思います。
○高橋委員 もしかするとアイウエではないですけれども、きちんと健康な生活、あるいはまっとうな労働をすれば、自然経過がぐっと上がっていくのが、少し下がってくるみたいな、新たに線を入れるというのも1つの手ですね。
○磯座長 どうしましょうか。
○高橋委員 次回の検討でもよいかと思います。
○西川中央職業病認定調査官 確かに先生御指摘のとおり、図1と直接的な関係はないのですね。むしろ先ほど西村先生から御指摘のあった、基本的には、回復というのは、要は長期のスパンの話ですので、どちらかといえば急性の負荷にはあまり関係がなくて、疲労の蓄積の方に関係があって、このNIOSHの直訳モデルにはそういう要素はないのですけれども、緩衝要因、先ほど先生から、途中でリラックスする、十分な休憩を取る、そういったことがあればというニュアンスも分かるようなモデルにという御指摘もありました。むしろ前からは削ってこちらに書くというのが、もしかするといいのかもしれないと、今伺って思いました。
○高橋委員 この役割をもう少し、どう位置づけるかというのをもう一回整理した方がいいかもしれませんね。
○磯座長 先ほどの西村先生の時間的な関係を整理するとともに、「なお」の文章を①②③の後に付加的に書いておいた方が、途中でア、イ、ウの説明の前に来ると非常に違和感があるので、最後の方に、悪くなる状態もあるけれども、それをある程度抑制する要因もあるということで、この「なお」の1文章を、今でいう①~③の後、最後の方に持ってきた方が分かりやすいと思います。
○西川中央職業病認定調査官 分かりました、ありがとうございます。
○磯座長 よろしいでしょうか、ほかに何かございませんか。どうぞ、杉先生。
○杉委員 すみません、これは意見を言うだけで。豊田先生に怒られるかもしれないけれども、ガイドラインを遵守しているというか引用したので、先ほどの脳卒中のところの心房細動という不整脈なのですけれども、心筋梗塞後に心機能が悪くなった人で心室に血栓ができる。それが脳梗塞を起こすことがある。それからもともと言われているのは、最近少ないですけれども、僧帽弁狭窄症は洞調律でも脳梗塞を起こすことがある。ですから抗凝固薬が必要であるというのが昔からの概念です。
そうすると、心房細動、不整脈だけということより、今、豊田先生がおっしゃった心疾患とかそういうものが本当はいいだろうと思うのですが、ただ、まだ使っていないことです。思い返しますと、私が読んだとき、心筋梗塞後の左室の悪い人のはいいのかなと思って、そのままにしたのですけれども、ガイドラインを使うのであれば、触れていないのであれば今回はこれでいくということで。意見だけです。
○磯座長 確か、新しいガイドラインはまだ出ないのですね。
○豊田委員 2021年版は7月中旬に出る予定です。
○磯座長 ぎりぎりで無理でしょうか。
そのガイドラインではなくても、知見が、そういった形の文献があれば、なお書きで付加的に入れるということもできます。
○豊田委員 ガイドラインはまだ発刊はされていないですけれども、ほぼこれで間違いない決定稿を私が持っていますから、ガイドラインで引用された論文を載せることは可能なのですけれども。
○磯座長 そうですね、それを検討してください。
○豊田委員 ですから、最初に私が質問したように、何かまずガイドラインの何ページというのを書いて、それから孫引きするような形で書いていくのだったら、2019年版しか引用できないけれども、いきなり孫の論文を直接引用していいのなら、幾つか論文をバージョンアップして内容を変えることはできます。ただ、今回用意された内容も、しっかりしていて、そのままでもいいと思っています。
○磯座長 では、この点については、ガイドラインではなくて、新しいガイドラインに引用されている重要な論文を、独立して引用して加えるということは事務局で可能ですよね。
○西川中央職業病認定調査官 もちろん可能ですので、是非御教示いただきたいと思います。
○磯座長 では、それで対応したいと思います。
○西村委員 20年前に比べると、日本のいろいろなコホートでの研究成果が集積されてきて、それらは地域あるいは職域の疫学研究です。また、ガイドラインがそれぞれの学会で作成され、学会も1つの学会ではなくて複数の学会からの共同作業によるガイドラインが作成されていますので、この部分を事務局に、コンパクトにまとめていただいて、前回はいろいろな海外のデータばかりの引用だったのに比べて、充実した内容と思っています。
○磯座長 ありがとうございます。ほかにございませんか。小山先生、全体を通じて何か御意見、コメント等ございますか。
○小山委員 特に大丈夫です。
○磯座長 ありがとうございます。水島先生、何かございますか。
○水島委員 特にありません、ありがとうございます。
○磯座長 ありがとうございます。それでは記載内容について様々な御意見を頂いたので、事務局のほうで追加等お願いします。先生方、いろいろな御意見をありがとうございました。それでは本日の議題はこれで終了とします。最後に御質問等、特にございませんか。
それでは、次回は事務局に専門検討会の報告書の形でこれまでの検討結果を整理していただいて、それを検討していくこととしたいと思いますが、先生方いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは資料の準備を、次回に向けて事務局のほうでよろしくお願いします。本日の検討会はこれで終了いたします。次回の日程等を含めて、事務局から何かありますか。
○本間職業病認定対策室長補佐 長時間の御議論、誠にありがとうございました。次回は、ただいま座長から御発言のありましたとおり、これまで検討いただいてきた労働時間の評価、業務による過重性の評価などを含め、報告書案の形で資料を御用意させていただき、御議論をいただく予定としたいと考えます。次回の検討会の日時、開催場所については、後日改めて御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。本日はお忙しいところ、大変ありがとうございました。
○磯座長 ありがとうございました、以上です。