第2回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会(議事録)

日時

令和3年5月31日(月) 10:00~12:00

開催方法

WEB開催

議題

(1)全ゲノム解析等のさらなる推進について
(2)全ゲノム解析等実行計画ロードマップ2021(案)について
(3)その他

第2回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会

2021-5-31 第2回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会
 
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」を開催いたします。
委員、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日、進行を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課がん対策推進官の岩佐と申します。よろしくお願いいたします。
委員会の開催に当たりまして、健康局長の正林より一言御挨拶をさせていただきます。
○健康局長 皆さん、おはようございます。健康局長の正林でございます。一言御挨拶申し上げたいと思います。
まず、本日は、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
前回、第1回の専門委員会のときは、私、国会対応のため参加できませんでした。私はこれまでも全ゲノム解析等の推進に関わってきておりますので、今後も可能な限り出席をさせていただきたいと思っています。
さて、厚生科学審議会の科学技術部会の下に設置された本委員会は、今後の全ゲノム解析などをさらに推進するための司令塔としての役割を期待されています。本委員会では、全ゲノム解析等の成果を患者に還元するという全ゲノム解析等実行計画の目的を改めて明確化し、がんと難病領域について、患者還元体制の構築や事業実施体制などについて議論を行っていただくとともに、全ゲノム解析等実行計画に基づき実施される全ゲノム解析等の実施状況などについて評価・検証を行い、必要な指示をしていただきたいと思っております。
第1回に引き続き、患者、国民、倫理、法律、経済の視点から、また、診療現場や開発研究の現場を含めたがん・難病ゲノム医療の推進に携わる皆様の視点から、我が国のがん・難病ゲノム医療が患者、国民にとってより有益なものとなるよう、議論を深めていただきたいと考えております。
簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。本日は何とぞどうぞよろしくお願いします。
○がん対策推進官 本日の出席状況でございますが、栗原委員より御欠席の御連絡を頂いております。
また、本日は、参考人としまして、厚生労働省データヘルス改革推進本部プロジェクトチーム技術参与の独立行政法人情報処理推進機構 CIO補佐官、葛西重雄参考人、それから、日本製薬工業協会専務理事、森和彦参考人に御参加いただく予定となってございます。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。
資料につきましては、厚生労働省のウェブサイトにも掲載をしてございますが、議事次第、資料1、資料2-1、2-2、資料3及び参考資料の1~4までございますので、御確認いただければと思います。
また、本委員会につきましては、ユーチューブにて配信をしておりますので、御承知おきいただければと思います。
事務局からは以上でございます。
以降の進行につきましては、中釜委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 御指名にあずかりました中釜でございます。
本日は、第2回の「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」となりますが、委員の先生方、御協力をよろしくお願いいたします。
現在、全ゲノム解析に関しては、AMED事業の中で研究班の公募・審査がなされている段階で、まさにこれから国を挙げての全ゲノム解析体制が整い、スタートするというところです。先ほど正林局長から御説明がありましたが、この専門委員会がその司令塔として筋道を示すという意味で、非常に重要な役割になっていると認識しております。
時間の限られた中、内容の濃い議論をしながら、日本の全ゲノム解析がより効率的な方向へ進むように議論に協力いただければと思います。本日はよろしくお願いいたします。
それでは、事務局のほうから資料1の説明をお願いいたします。
○事務局 事務局の健康局がん・疾病対策課の市村と申します。よろしくお願いいたします。
資料1につきましては、20ページ目を御覧ください。
こちらは、前回、天野委員の御指摘により、専門委員会において検討すべき事項について「ELSIに係る事項につき検討」という項目を追加させていただきました。
変更点は以上となります。
○中釜委員長 ありがとうございました。
今の修正点について、特段問題ないと思いますが、何か追加での御質問、御意見はございますでしょうか。
天野委員、お願いいたします。
○天野構成員 ありがとうございます。
今、事務局から御説明いただいたとおり、前回指摘の点について、御修正いただきまして、ありがとうございました。
これは全体の流れかと思いますので、今回の全ゲノムプロジェクトの全体のことに関して、追加で1点質問させていただければと思います。
このプロジェクトと同時に、AMEDのほうでゲノムのデータ共有の推進という形で、いわゆる「CANNDs」というプロジェクトが推進されているかと思うのですが、このAMEDのプロジェクトと本プロジェクトの関係性について、御教授いただければというのが1点。
併せて、今回検討されているプロジェクトのほうで収集された患者さん等のデータというのは、つまり、CANNDsとの関係ではどのように流れていくのかということについて、もし分かれば教えていただければと思います。
以上です。
○中釜委員長 このついて、では、事務局からお願いします。
○がん対策推進官 まさに御指摘いただきましたとおり「CANNDs」というものが同時並行で走っているような状況にございまして、この事業につきましても、特に患者還元を含めて、今、AMEDのほうで研究班が走っているような状況でございます。
それらの事業につきましては、CANNDsにも参画するような形になって進めていくものと考えております。実際にこれらの様々な考え方などについては、一定程度CANNDsのほうとも連携をしながら、歩調を合わせて進めていると考えておりますので、そういった観点では、同じような形でデータ共有、データの利活用が実施されていくものだと考えております。
○中釜委員長 ありがとうございました。
今の説明でよろしいでしょうか。
○天野構成員 つまり、こちらの全ゲノム解析プロジェクトのほうで収集された患者さん等のデータというのは、CANNDsでも共有されていくという理解でよろしいでしょうか。
○がん対策推進官 そのように考えていただいて結構でございます。
○中釜委員長 私のほうから1点確認ですけれども、全ゲノムの場合は、臨床情報に関しては、かなり深度の異なる、あるいは非常に深度の高いものが伴ってくる可能性がある。そういうものに関して、CANNDsとどういうところをシェアするかは、これから詰める必要があると理解しますが、その辺りはどうですか。
○がん対策推進官 まさにCANNDsで収集・共有している情報のレベルと、このプロジェクトの中で収集・共有しているもののレベルというのは、若干差は出てくるのだろうと認識をしております。ですので、それぞれにおいて適切な情報の範囲というものについては、これから調整していきながらということになりますが、基本的な考え方としては、先ほど天野さんに御指摘いただいたような形で、双方で共有ができるようにという形で考えております。
○中釜委員長 ありがとうございました。
天野委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○天野構成員 ありがとうございました。
○中釜委員長 ほかに御意見、御質問はございますか。よろしいでしょうか。
それでは、続きまして、資料2-1及び資料2-2について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 まず、資料2-1を御覧ください。
今回「全ゲノム解析等実行計画ロードマップ2021」概要というものを示させていただきました。こちらは、本文に記載のある項目を上から順にロードマップとして記載しているものとなっております。
大まかに説明させていただきますと、患者還元に必要な事項につきましては、令和3年度より開始いたします。データの利活用に係る事項については、令和4年度中に検討等を行うという方針を考えているところです。
事業実施組織につきましては、検討準備を令和3年度中から始め、令和4年度以降に準備室を設置したいと考えているところです。
また、厚生労働省の検討体制としましては、本専門委員会及び厚生労働科学研究班によって詳細を検討していこうと考えているところです。
以上が資料2-1の説明となります。
資料2-2の説明に移らせていただきたいと思います。
まず、主に修正点について御説明をさせていただきたいと思います。
初めに、5ページ目を御覧ください。
軽微な修正となりますが、難治性のがん「470症例」というところで数字の間違いがありましたので、こちらを修正させていただいております。
「マル1、新規の患者」の4ポツ目の「解析開始時に生存しており、何らかの治療の提供が期待できる状態であること」というところ、前回までは「治療が可能な状態であること」というところを修正させていただいております。
続きまして、飛びまして、8ページ目となります。
8ページ目「4.解析・データセンターの運用について」、解析・データセンターにおける情報管理等に関する留意点につきましては、修正・再構成の上、11ページ目から12ページ目に移動させていただいております。
9ページ目を御覧ください。
「マル2、臨床情報等の活用」につきまして、一つ目のマル「臨床情報データベース」について「臨床情報の取得は、電子カルテからの情報を、再度、転記入力するなどの方法ではなく、電子カルテから直接、APIにて必要なデータを解析・データセンターが取得できるようにする」という修正をさせていただいております。
続きまして、11ページ目となります。先ほど留意点を移動させたところとなっております。
「(3)解析・データセンターにおける情報管理等に関する留意点」は「マル1、解析・データセンターにおける情報管理に関する留意点」と、12ページ目「マル2、解析・データセンターにおけるシステム開発や環境構築に関する留意点」について、大幅に追記・修正をさせていただいております。
続きまして、13ページ目となります。
「5.データ利活用の方策」につきまして、前回の議論を踏まえ、下線部のような修正を行わせていただいております。
「6.検体の保管、利活用」につきまして、第1回目では「保管、管理ルール」が上に来ておりましたが、今後、原則「集中管理システム」を目指していくというところで、順番を入れ替えさせていただいております。また「保管、管理ルール」につきましても、下線部のような修正をさせていただいております。
続きまして、14ページ目となります。
「7.倫理的・法的・社会的課題(Ethical、Legal and Social Issues、ELSI)について」、前回、御指摘のありました事項につきまして、追記をさせていただいております。
続きまして、15ページ目「8.事業実施組織」についてです。こちらは読ませていただきます。
Genomics Englandは、英国保健省が大部分を出資する会社組織の形態をとり、強力なガバナンス、経営の透明性、説明責任等を実現し、また広くアカデミアや産業界から参画を募ることで最新の知見に基づいた柔軟な運営判断を可能としている。
我が国においても、事業実施組織は強固なガバナンスと透明性、説明責任を有する自律性の高い組織にするとともに、事業実施組織は、公的な存在として、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部が主体的に関与しながらも、広くアカデミアや産業界から参画を募り、幅広い人材からなるボードメンバーが最新の知見に基づく柔軟な運営判断を行えるようにする必要がある。
そのため、実施組織の前身となる事業実施準備室を国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部に設置し、厚生労働省と当該準備室において、専門委員会における検討に基づき、患者還元、ゲノム解析、臨床情報等、データ共有、人材育成、データ利活用、検体の保存・利活用、ELSI等の調整を行う。また、厚生労働省と当該準備室は、実施組織の創設に向け、以下について具体的な検討を行う。
と修正をさせていただいております。そして、マル4からマル6につきまして、検討事項を追加させていただいております。
以上が前回の第1回からの修正点となります。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、まず、資料2-2で前回から修正があった点につきまして、順に御意見、御質問を受けたいと思います。
まず、5ページですが、この2か所、難治がんの470症例と、治療の提供が期待できる状態にあるという記載について、何か御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
この点は適切に修正できているかと思います。
続きまして、少し飛びまして、8ページのほうについては、解析・データセンターのところで、11、12ページに移動ということですね。
9ページのところですが、臨床情報データベースに関する修正記載ですが、この点について、御意見はいかがでしょうか。
中村委員、お願いいたします。
○中村構成員 このとおりにすると、結局、APIができてデータが移せるようにならないと、臨床情報は移せないわけですよね。そうすると、臨床情報を実際に集められるのはかなりずれ込むと思うのですが、私はそのほうが効率的でいいとは思いますけれども、そういう理解でよろしいのでしょうか。
○中釜委員長 この点について、御意見はございますか。前回の議論の中では、APIを活用した方向性で進むということで、そこを前提とした方向で進むという理解であったかと思うのですが、よろしいですか。何か事務局からございますか。
○事務局 事務局です。
原則としましては、電子カルテから直接APIで必要なデータを解析データセンターが取得できるような構想で進めていきたいと考えております。できるだけ早く臨床情報が収集できるようにはしたいと思っていますが、この方針は守っていきたいと考えております。
○中釜委員長 森委員、お願いいたします。
○森正樹構成員 実際にこれに参画できる施設の中で、APIから直接取得できるという施設がどれぐらいあるかというのは分かるのですか。もし今からかなり構築しないといけないというのであれば、中村先生がおっしゃるように、あまりにスタートが遅れ過ぎるとかなり問題だと思いますので、もしそういう施設が多くて、先に進めることのできる施設があるというのであれば、もちろんそのほうがいいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○中釜委員長 この点について、事務局、御意見はございますか。
○事務局 今まさにAMEDの研究班を公募している最中でして、その点に関しましては、公募で研究班が確定した後に、まずは一部の医療機関とデータ解析班でこのシステムをパイロット的に始めていき、それを順次拡大していくような形が望ましいと考えています。
○中釜委員長 委員長から少し追加で発言すると、疾患によって集める臨床情報の深度が少し異なってきます。特にがんの場合は、製薬企業等の企業が民間の利活用できるデータを構築する必要があります。それに必要な情報は、特にがんの場合は非常に膨大になってくる可能性がある。APIを使ってそれを完全に自動で取り込めるところまではまだ十分に来ていないと理解するので、もちろん方向性としてはこの方向で行くとしても、実際、このために事業の開始が大幅に遅れるということは避けなければなりませんので、中村委員の御指摘のところを考慮して、方向性を共有するという理解でよろしいでしょうか。この点について、何か追加で御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
これは大きな方向性をこの中で目指すということで、その方向性を示すものと具体的なプロセスについては、今、事務局から説明がありましたパイロットスタディー等を介して、実際に実効性のあるものを作り上げていくというような記載かなと思うので、それが分かるような記載にしていただければと思います。
では、事務局、お願いします。
○がん対策推進官 ありがとうございます。
まさにそのような観点で言いますと、中村先生の御懸念のように、これを記載しているがゆえにスタートが遅れる形にならないように、なおかつ、ただ、基本的な方向性としてこのように進んでいくのだということがもう少し明確に分かるような形で、その書きぶりについては、若干修正を加えさせていただければと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御意見はございますでしょうか。
中村委員、お願いします。
○中村構成員 私は、臨床情報を集めるのが少々遅れるのは致し方がないと思うのですが、方向性として持続的なスパンで見ると、この方向性はいいと思います。しかし、APIというのは恐らく病院ごとに少しずつ違ってくると思いますので、プロジェクトがスタートした時点では、そういう時間的なものも要素に入れて、この部分をできるだけ円滑にしてほしいという意味で申し上げたので、決してこの方向性がおかしいという意味ではありませんので、誤解のないように。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、続きまして、11ページから12ページの「(3)解析・データセンターにおける情報管理等に関する留意点」に移ります。
この点の修正案について、何か御意見はございますでしょうか。よろしいですか。この中には、前回、葛西参考人から御意見いただきましたところを考慮いたしまして、大きな視点から、こういうところに配慮しながら進めるべきだという大きな理念が書き込まれていると理解いたしますが、よろしいでしょうか。
中村委員。
○中村構成員 中村です。私ばかり質問して申し訳ありません。
要するに、これはトレーサビリティーまでしっかりしておいて、ブロックチェーンのような形で、誰かが何か操作をすれば完全に分かるというデータセンターをイメージしておられると思うのですけれども、葛西さん、それでよろしいでしょうか。
○中釜委員長 葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 そのとおりです。ログを取るというのはちょっと専門的なのですけれども、基本的にシステムのログを取るというと、ログにもまさに粒度がいろいろありまして、誰がどのデータをどのようにさわって、何を解析したかまで全部確認できる。
あと、もう一点気になっているのが、今まさに政府系では話題になっていますが、あるプロジェクトサイトが海外から標的型攻撃を受けて、そして、公安の情報だとか、国交省のメールアドレスが漏れたりしていますが、思った以上にクラウドがインターネットの世界に近いので、恐らくゲノムというものが扱われているのはここのネットワークでということが、いわゆる悪意のある国であったり、悪意のある方から見られてしまうと、即座に標的型攻撃を受けるのは間違いないので、そういったものも同時に防御する。いわゆる内部での不正アクセスと外部からの不正アクセスともに、徹底的に防御しましょうということが書かれています。
ただ、一方、多分、特定の企業の製品だけでそれを賄うということは難しいので、その点も書いていまして、最適なものをきちんと選びなさいと。特定のベンダーさんが、自分が使いやすいからこれでやりますみたいなものはやめてくださいということ、複数案から検討してくださいということを書いております。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
中村委員、よろしいでしょうか。
○中村構成員 結構です。
○中釜委員長 ほかに御意見はございますでしょうか。ありがとうございました。
それでは、続きまして、13ページ「5.データ利活用の方策」に関する修正点について、何か御意見はございますか。
この点について、実は本日御欠席の栗原委員からコメントを頂いておりましたので、最初に、その全文を紹介させていただきます。
では、事務局、お願いいたします。
○事務局 それでは、本日、栗原委員より、委員会へのコメントということで文章を頂いておりますので、全文を代読させていただきます。
本日は出席できませんので、事前にお聞きした議題内容に基づき、ロードマップ案に対しコメントいたします。当日の議論を踏まえたものではありませんので、参考として述べさせていただきます。
1.アカデミアや産業界においてデータの利活用が進み、創薬や診断技術等の研究開発の成果が患者に還元されることは大変重要と考えます。そのため、産業界のデータ利活用が推進されるという視点でロードマップを見ました。
2.P12「解析・データセンターにおけるシステム開発や環境構築に関する留意点」の最後の段落に「ユースケースについて利用者からのヒアリングを十分行うなどし、利便性にも十分配慮した設計を行う」旨が記載されたことを評価します。今後のプロセスに入れていただきたいと思います。
3.P13「5.データ利活用の方策」について、特に産業フォーラムの在り方について、前回の委員会での議論を踏まえて意見を求められましたので、コメントし、今回の案に反映していただきました。コメントの背景及び今後の検討論点について補足いたします。
いずれのフォーラムもアカデミアや産業界が参画するものであり、データを利用するための入り口的な機能を果たすと考えます。参画するとしたのは、各フォーラムの主催者、設置者については、フォーラムの役割に照らし、誰が行うのが望ましいかは検討事項と考えます。
前回議論のありました出資については、データ利用をする参画企業がどのような形で研究開発を進めるかは企業の決定事項であり、形態も様々だと思います。実施組織や産業フォーラムは、各企業の利用に加え、企業間連携や産学連携等の支援でも貢献することを期待します。
ロードマップでの記述の仕方は分かりませんが、参画企業のデータ利活用の際の対価や成果物の権利帰属の在り方は重要な検討事項だと思います。事業実施組織の在り方や、産業界の利活用が進む、進まないに関係しますし、他国との競争力に影響します。英国の例のように、企業はデータ利用料を支払い、知財は当該企業に帰属するというのが自然だと思われますが、それらについては、今後、議論すべき事項だと思います。
以上。
○中釜委員長 ありがとうございました。
では、ただいまの栗原委員からのコメントも踏まえて、この13ページ、5.の修正案について、御意見、御質問はございますでしょうか。
上野委員、お願いいたします。
○上野構成員 今の栗原委員のコメントの中にも言及されていたのですけれども、データ利活用の5.のところで、アカデミアフォーラム、産業フォーラムということで、組織というか、登場人物を書いていただいているのですが、先ほどのコメントにもありましたように、利用料の設定をどうしていくのかとか、データを活用して得られた知財をどうしていくのか。
場合によってはアカデミアと産業と別立ての設計にしたほうがいいのかも分かりませんが、詳細は追ってTBDということにしても、非常に大事な検討ポイントだと思いますので、ロードマップの中で、今後の検討ポイントとしてこういったことを検討していくということを示しておいたほうがいいのではと思っております。
○中釜委員長 ありがとうございました。
この御指摘について、事務局、よろしいでしょうか。
○事務局 御指摘ありがとうございます。
知財に関しましては、ELSIに係る事項の中で、特に厚生労働科学研究班のELSIワーキングというところで議論を深めてまいりたいと考えております。
○中釜委員長 今のお答えでよろしいでしょうか。
○上野構成員 それはロードマップの中に、そういった形で検討していくということが組み込まれるという理解でよろしいのでしょうか。
○中釜委員長 今の上野委員からの御指摘は、13ページの産業フォーラムの中に、あるいはその前段のところに、今の御指摘の点をより明確に記載してはどうかということだと理解しますが、そういう御指摘ですか。
○上野構成員 そうですね。データ利活用のピクチャーの中の一つでもあると思うので、産業フォーラムのところだけにぶら下げるべきことでもないと思うので、どちらかというと、その前だか後ろだか、独立の項目ですかね。
ELSIで検討されるというのであれば、それはELSIのほうで検討していくという形でもいいのですが、いずれにせよ、利活用の方策の中の一つの検討項目として、利用料であったり、IPであったりを検討していくということが入っていたほうが分かりやすいのではないかなと私個人としては思います。
○中釜委員長 事務局、よろしいでしょうか。
○がん対策推進官 ありがとうございます。
今、申し上げたのは14ページのところになるのかなと思うのですが、確かにデータの利活用に関する説明等については書いてあるのですが、利活用に関するルールみたいなものというのは記載がないところでございますので、恐らくこちらは14ページになるかと思いますが、どちらかに少し追記をさせていただくようにしたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
森委員、お願いします。
○森正樹構成員 質問というか、あれなのですが、私としては、アカデミアはお金のことが出てくると、なかなか経験が乏しいものですから、教えていただきたいのですけれども、例えば、利活用に関する対価とか、知財の所属とかいうのは、先行するGenomics Englandとかではかなり明確にされているのでしょうか。もちろんされていると思いますけれども、そういうものも少し参考にデータとして出していただけると、大変ありがたいと思います。
もう一つは、この産業界というのは、結局、国としては、全世界の産業界を対象にしているのか、日本の産業界を対象にしているのかというのが分からないものですから、教えていただければと思います。
○中釜委員長 今の森委員からの御指摘について、最初にお願いいたします。
○事務局 御指摘ありがとうございます。
まず、1つ、産業フォーラムにつきまして、日本国内だけなのかどうかというところなのですが、特にこれは国内に限るようなことは想定しておりません。Genomics Englandでも全世界に開かれていると思いますので、日本の企業も参加していると思いますので、産業フォーラムに関しましては、Genomics Englandと同様に、全世界に開かれるべきものと考えております。
また、Genomics Englandがどのような知財のやり方をしているかということに関しましても、また改めて共有させていただければと思います。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
少し戻りますが、先ほどの上野委員からの御指摘に関しては、先ほど事務局から説明がありましたが、14ページのところで、利活用に関するルールについて、少し詳細に記載するということで対応したいと思いますが、上野委員、それでよろしいでしょうか。
○上野構成員 はい。承知しました。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。
葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 私はNDBとか、NDBはレセプトなのですが、そういったナショナルデータベースのことについても助言をしているのですが、その中でも話題になるのですが、データを提供するときに、匿名加工であったり、仮名化加工、個人情報保護をするために、どこまで秘匿してデータを提供すればいいかというのは、実はアルゴリズムがありまして、至って数学的なものなのですが、産業フォーラムであったり、アカデミアフォーラムであったり、恐らく後からできるELSIの倫理指針に従うとは思うのですが、誰かがどの組織で匿名加工がちゃんと行われているかとか、あと、フォーラムに参加されたデータを利用される方で、当然、悪意のあるようなデータ利用の仕方をしてはいけないので、もしシステム上、そういう悪意のあるような不正があるような振る舞いが発見された場合には、どの形でそれを停止するのか。
実際にその方は悪意があったわけではないのですが、NDBも、ルールどおりの利用をしていないということで、厚生労働省で一部利用を停止させていただいた案件があったはずなのです。
それと同様で、このデータに関して、実際にどこかの組織で管理をし、至って数学的なアルゴリズムを経て、ちゃんと匿名加工されているのかという審査をしなければいけないはずで、そういったデータ利用のガバナンスと、逆にユースケースのほうは、当然、私はそうしたほうがいいということで書いているのですが、ユースケースをよく理解していただいて、できるだけ使いやすくするということが大事だと思うので、そのガバナンスの部分がちゃんと書かれていないと、恐らく倫理指針などの解釈によって、どのようにデータ提供をしていればよしとするのかが分からなくなるのではないかなと思っていまして、データ利用のガバナンスについて、体制、ルールをもう少し細かくつけ加えたほうがいいのではないかなというのが意見です。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、事務局からコメント、意見はいかがですか。
○がん対策推進官 御指摘ありがとうございます。
恐らくそこの辺りのデータ利用のガバナンスのルールなどについて、これから検討していかないといけないのかなと思っております。今回、こちらはロードマップという形ですので、この委員会の中で、さらに、データ利用のガバナンス等についても検討していくような形にさせていただいてと考えてございます。その辺り、しっかりと追記をさせていただくようにいたします。
○中釜委員長 ありがとうございます。
そのような対応でよろしいでしょうか。ありがとうございました。
ほかに御質問はございますか。
○森参考人 製薬協の森でございます。
この産業フォーラムの部分につきましては、前回の会議のときに、業界からの出資というところに、中山前会長が違和感ということを発言しましたものですから、修正いただいて、今、このような形になっているという点について、まず、御礼申し上げます。
このような形ですっきりとした記載にしていただいているということと、その趣旨は、産業界の利活用が、いろいろなデータがあり得るという前提に基づいて、フレキシビリティーのある形を許容できるような記述にしていただいたということだと理解しております。したがって、このような形で書いていただいたことにお礼を申し上げたいというコメントでございます。
それから、12ページのユースケースについて、利用者からヒアリングを十分にということは、これは産業界に対してもヒアリングをしていただくということとして、具体的なケースについて、相談に乗っていただくとありがたいと思っておりますことをコメントさせていただきます。
以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、続きまして「6.検体の保管、利活用」に関する修正箇所ですが、これについて何か御意見はございますでしょうか。
水澤委員、お願いします。
○水澤構成員 ありがとうございます。
前回の御議論に従って「集中管理システム」のほうが上に来たということで、よかったと思うのですが、2番目の「保管、管理ルール」の1行目なのですけれども、後ろのほうに、ただし、医療機関の求めに応じてほかでも保管を行えるという記載になっているのですが、恐らく医療機関だけではなくて、その上に書いてある一括管理するような仕組みのほうからの要請もあるかと思うので、「等」と入れていただければ、ほかの機関も可能になると思いましたが、いかがでしょうか。
○中釜委員長 今の御指摘に関していかがでしょうか。
○事務局 水澤先生、ありがとうございます。御指摘のようなことも想定され得ると理解いたしましたので、「等」は追記させていただきたいと思います。ほかの先生方、よろしいでしょうか。
○中釜委員長 今の御指摘と修正案について、よろしいでしょうか。
特に御意見はございませんので、そのような形にさせていただきたいと思います。
○水澤構成員 ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。
続きまして、14ページの「7.倫理的・法的・社会的課題(Ethical、Legal and Social Issues、ELSI)について」に関する修正箇所・追記についてですが、この部分について、御意見、御質問はございますでしょうか。
天野委員、お願いします。
○天野構成員 ありがとうございます。
前回の神里委員並びに私からの指摘を反映していただきまして、ありがとうございます。その上で、この箇所について、追加の指摘をさせていただきたいと思います。
前文というか、最初のところで「全ゲノム解析等の結果を患者に還元するにあたっては、ELSIへの適切な対応が求められる」と一文で簡単に書いていただいているのですが、そもそも論というか、この文章だけだと、基本的な方針が分かりづらいという部分があるかと思いますので、例えば、前提の条件として、国内では前例のない規模で患者さんに協力していただいて全ゲノム解析を実施することから、データベースを構築して、今後の研究開発や患者さんの診療に役立てるという性格上、ELSIへの適切な対応並びにその体制が求められるといった指摘というか、そういった文章を一文追記していただけないかというのが1点目です。
2点目ですが、その後の個別項目も、前回の指摘を経て大分修正していただいてよくなっているのですけれども、現状、まだ現場の負担軽減であるとか、ICTの利活用という部分にかなり偏っていて、患者さんや参加される方々への視点というものが若干不足しておりますので、例えば、参加に当たっては丁寧な説明、情報提供を行い、参加者の意思を尊重した上で、十分な理解に基づく同意を得ることが必要であるために、その際に参加者の理解促進のためにICTを活用するであるとか、あとは、なぜ法整備が必要なのかという部分についても、その前提条件として、例えば、プライバシーの保護であるとか、情報セキュリティーの方針を明確化し、その実施に必要な体制を確保するとともに法整備ということがあっていいのかなと思いました。
以上は指摘でございます。
あと、修正ではないのですが、3点目で追加でコメントをさせてください。
今回、全体的にELSIであるとか、特に法整備の部分に関しては、引き続き検討するという記載をしていただいているのですが、それはもちろん引き続き検討していただきたいということはありますが、法整備に関しては、かねてから申し上げているとおり、本事業を含めて、ゲノム医療、ゲノム研究を実施するに当たって不可欠なものですので、引き続き検討するにしても、できるだけ早期にこういったものの実現に向けて御尽力いただきたいということを改めて強調しておきたいと思います。
以前に健康局長からも、仮に法案成立となった場合には非常に難しい作業になるというコメントを頂いておりますが、超党派議連でも既に何年にもわたって議論いただいているところですし、いつまでも放置するわけにはいかないので、いずれは必要だということを改めてここで強調しておきたいと思います。
私からは以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘をありがとうございました。
最初の2つの追加での修正点について、事務局、何かありますか。
○事務局 ありがとうございます。
追加の修文案につきましては、ほかの委員の先生方、特に御意見はありますでしょうか。なければ、修正案について、天野委員とまた細かいところを詰めさせていただいて、修正をさせていただきたいと思います。
○中釜委員長 森委員、お願いします。
○森幸子構成員 森です。ありがとうございます。
今の天野委員の意見に賛成です。ELSIの適切な対応について追記いただいたことは、非常にありがたいと思います。私たちも、がんや難病の現状をしっかりと踏まえていただきまして、これらの法整備というものは、適切で、非常に厳しくしっかりしたものにしていただきたいです。
全ゲノム解析でより医療が患者に届くことを期待していますけれども、当事者は同時に様々なことが分かることで、さらに不安や悩みを抱えるということになる複雑な気持ちというものも併せ持っています。それはがんや難病に対する現実があまりにも厳しいからです。
ある患者会での発言を一つ紹介させてください。
病気になった人が悪いという自己責任論のような思考が社会では多く見られます。患者や家族は遺伝病の家系に生まれた悲哀を叫び、生んだ親の責任だと胸ぐらをつかんですごむ子供、申し訳なかったように目を伏せる親を見てきた私たちは、身の置きどころがない気持ちになります。このようなことを言われています。
全ゲノム解析等の結果を患者に還元する体制の構築、この目的は、相談体制の構築も併せまして、病気を知ったことで起こる悲劇を生まないように、このような現実をぜひすくえるものにしていただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ただいまの森委員及び天野委員の御指摘は、全ゲノム解析等実行計画のロードマップが誰に向けたメッセージかということで、参加いただく方々の視点を十分に考慮した記載ぶり、その方々にメッセージが伝わるような記載ぶりを考慮すべきだという御指摘だと理解しましたので、その点については、事務局のほうで文章の工夫をお願いしたいと思います。重要な御指摘をありがとうございました。
ほかに御意見はございますか。
では、先に神里委員、それから松原委員、お願いします。
○神里構成員 今回の会議の冒頭で健康局長からもありましたように、今回、これは国を挙げて全ゲノム解析を推進していく。そういう事業をやるのだということなわけです。
多くの国民の協力を得て推進していきますので、患者さん、市民に向けて情報を開示するというか、説明をしていくということが、社会にこの事業を定着させるためにも大変重要なことだと思います。
ですので、やはり本格的な解析に入る前に、今、我々はどういうことをやろうとしているのかという国の方針を分かりやすく説明するという機会を、いろいろな形のアプローチで国民に向けてメッセージを出していただけないか。そのための計画というのもこのロードマップの中に入れ込んでいただければと思っております。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。重要な御指摘だと思いますので、事務局、よろしくお願いいたします。
続きまして、松原委員、お願いいたします。
○松原構成員 お願いします。
14ページのELSIに関わる事項の3ポツ目に「患者への説明に当たっては」云々と書いてあって「同意を求める」と書いてあります。
2番目の文章に「積極的にICTやAIなども活用した遺伝カウンセリングなどを併用する」と書かれているので、これ自体は大変いいと私は思いますけれども、ただ、この書きぶりによると、説明、同意というものが遺伝カウンセリングと同じようなものであると誤解されるおそれもあると思うのです。ですから、遺伝カウンセリングについては、3ポツ目に含めるのではなくて、4ポツ目ということで独立した形で書いていただくようにお願いしたいと思います。
それから、もう一点ございます。「ICTやAIなども活用した」という文言を加えていただいたのは大変すばらしいことだと思うのですけれども、具体的にどういうことなのかということがいまいちよく理解されない可能性もありますので、もう少し具体的なことを書き込んだほうがいいと思います。
例えば、ICTについては、現在、様々な医療機関で、コロナ禍で遠隔診療での遺伝カウンセリングが随分やられておりますので、「遠隔診療」というようなキーワードをここに書いておくこと。
それから、AIにつきましては、AIによる遺伝カウンセリングというのは、ロボットがやるようなことをイメージされることもあるのですけれども、実はそういうものではないと私は思っております。
例えば、ICTを使った遺伝カウンセリングでは、患者さんの顔が映るときに、その顔の画像から心拍数も計測することができるのです。ですから、遺伝カウンセリングの途中で御本人の心拍数、あるいは視線の動き、まばたきの回数、そういったものを分析することによって、患者さんの不安、あるいは理解度を推し量るという非常に科学的な遺伝カウンセリングが今いろいろ考えられていると思いますので、そういった文言をもう少し具体的に書いていただくと、これを実行に移すときに役立つのではないかと思います。
以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。非常に重要な御指摘2点かと思いました。いずれも重要ですが、AIの記載は確かに誤解を招く可能性があるので、実際に具体的にどういうことを意味しているのかということが分かるような記載が適切という御指摘ですが、事務局、いかがでしょうか。
○事務局 御指摘ありがとうございます。
こちらの記載につきましては、できるだけ幅広にいろいろなICT、AI技術を用いることを想定しており、特定のものをあえて記載していなかったのですけれども、例えばというような形で具体的に記載したほうがいいということであれば、その方向で修正していきたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
今の説明でよろしいでしょうか。
中村委員、お願いいたします。
○中村構成員 AIに関しては、どんどん新しいものが生まれてきているので、あまり詳細に書いても、そこに縛られてしまうので、松原先生がおっしゃっていることはよく分かりますが、恐らくAIを使って説明の代用はできると思うのですけれども、最終的にカウンセリングというのは人と人との問題で、そこはちょっと区別しておいたほうがいいのではないか。あまりAIを細かく規定すると、その規定の範囲に縛られるので、AIというより人工知能という柔らかい感じのほうがいいと思いますし、あまり狭義に定義しないほうがいいと思います。
それから、もう一点、ここでゲノム医療に関するリテラシーというのが何ポツ目かに出てきますが、先ほど森さんがおっしゃったように、ゲノム医療の前に正しい遺伝学を知るというのが非常に大事で、私は従来から、いろいろな病気を含めて、多様性を知ってお互いを理解し、尊重し合うということが大事だと言ってきましたけれども、特にこの全ゲノムに関しては、難病も入っていますので、単にゲノム医療ではなくて、もう少し社会に対して多様性の理解を深めるようなリテラシーというのをどこかに入れていただくのがいいのではないかと思います。
それから、これは松原先生に対する質問なのですけれども、オンラインでやる場合、個人認証というのはどうされるのですか。私も東大の医科研にいるときに遺伝カウンセリングの責任者のようなものをしていましたけれども、誰かを偽って相談しに来るようなケースもあったので、オンラインの場合の個人認証というのはどういう方法でされているのか。これはこことは別かもしれないですが、教えていただければ。
○中釜委員長 まず、最初の複数の御指摘に関しては、事務局のほうで、より遺伝学の理解を深めるような、あるいは多様性の理解を深めるようなリテラシーという記載ぶりということでお願いしたいと思いますが、まず、最初の点に関して、事務局、御意見はございますか。
○事務局 ゲノム医療のみならず、ゲノム社会に対するリテラシーというような記載を検討していきたいと思います。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○中村構成員 中村です。
後で事務局と相談させていただいて、今、森さんから御指摘いただいたことは非常に大切だと思いますので、そこは何らかの形で追加していただければと思います。
以上です。
○中釜委員長 それから、最初のAIのほうですが、松原委員の御指摘は、ロボットがAIを使ってカウンセリングをするイメージとして誤って伝わらないようにということで、AIを使ったAI支援とするなど、そういう記載の方がいいのかなと思いましたが、その辺の表現の工夫については、中村委員と事務局で御相談いただければと思います。よろしいでしょうか。
最後の点で、実際に個人認証をどうするかということに関して、松原委員、何かコメントはございますか。
○松原構成員 中村先生、大変重要な御指摘をありがとうございます。
初診の方が受診された場合は、これはもう遠隔医療遺伝カウンセリングで本人を認識するすべはないと思います。ただ、今回のプロジェクトの中では、難病あるいはがんの患者さんが対象でございますので、その方がどこかの医療機関に最初のワンタッチをされていると思うのです。そのときに患者さんと接触された主治医の先生が同時に遺伝カウンセリングに入っていただいて、御本人であることをきちんと確認するというプロセスは不可欠だと思います。
中村先生がおっしゃるように、なりすましで一見さんが来たりすると、これはもう全く話になりませんので、今回のプロジェクトに関しては、最初にかかった医療機関の主治医の先生、実際に患者さんを御覧になった先生が、第三者としてそこのカウンセリングで少なくとも最初に御本人の認証をするというプロセスが必要かと思います。
それでよろしいでしょうか。
○中村構成員 はい。ありがとうございました。
○中釜委員長 ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、続きまして、15ページの「8.事業実施組織」についての修正ですが、この点について、何か御意見はございますでしょうか。
○中村構成員 中村ですが、1つ確認させてください。
この文章には5行目か6行目に「事業実施組織は、公的な存在として」と書いてありますけれども、この事業実施組織は永遠に公的な機関として運営されていくと、今の厚労省はそういう理解だという形で理解してよろしいでしょうか。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘、事務局、お願いいたします。
○がん対策推進官 御意見ありがとうございます。
この辺りは非常に難しいポイントであるとは思っておりますが、やはりこういった個人のゲノム情報を集約して取り扱うという観点からは、何らかの公的な性質というのが必要なのではないかと思っているところでございます。ただ、この点につきましても、また様々な御意見があるかと思いますので、それらも含めて、頂ければと思ってございます。
○中釜委員長 今の説明でよろしいでしょうか。
○中村構成員 これは基本方針を決める会議ですよね。ここで公的な存在として云々かんぬんとあると、これは公的な機関として税金を使って永遠に運営されるという形になってしまいますが、遺伝子解析をしている海外のいろいろな機関を見ても、必ずしも公的ではないわけですけれども、日本だけ公的なものしかこういうことをやってはいけないという、逆に縛りのような感じがしますが、いかがでしょうか。
○中釜委員長 事務局、いかがでしょうか。
○がん対策推進官 公的なところしかやってはいけないとするわけではないと思っておりますが、今回、特に国のプロジェクトとして進めるという中においては、公的な組織になるのではないかと思っているところです。
逆に、中村先生としては、完全な民間のもののほうがより適切だとお考えという御理解でしょうか。
○中村構成員 私の理解は、研究でやっていると特定の医療機関に限られてくると思うのです。ゲノム医療をもっと広く行き渡るようにしようと思えば、どこかの時点で日本のがん患者さん、難病患者さんがいつどこにいても解析を受けられるという環境が整ったほうがいいと思うのですが、一部は公的な税金で遺伝子解析を賄ってもらえるけれども、この枠に入らない人は、こういうサービスというか、自分のことを知りたいと思っても知ることができない環境にある。
そうすると、こういう書き方をしてしまうと、これは公的なものとして運用されて、民間企業では今でもDTCのような検査をやっているところがありますが、そことは全く関係なく、公的な機関で、年間何万人かだけに限ってこういうゲノム解析を提供していくということになりますけれども、それはそれで、これは研究事業で、実際、社会への還元を目指した事業ではないということになってしまいますが、違うのでしょうか。
○中釜委員長 今の中村委員の御指摘を少し整理すると、データ構築・管理に関する責任の所在をどうするかという問題と、その利活用の推進に当たって、どのような仕組みを作るか。この2つに分けて考えるのもあるのかなとお聞きしておりましたが、その点を含めていかがでしょうか。
○がん対策推進官 そうですね。この全ゲノム解析というものが、今後、さらにどう進展していくのかというのは一つあるのかなと思っているのですが、例えば、これが通常の医療の中に具体的に実装されていくということも含めて考えていくとなると、その機関に対する一定の公的性というのが求められてくる可能性もあるかなとは思ってございます。
いずれにしても、患者さんに還元をしていくという、さらに、特定の人だけではなく、より幅広く実装していくという観点では、そこはむしろ公的な性質のほうが強くなるのではないかと思っているところなのですが、必ずしも民間でのサービス自体を否定して、それらはやってはいけないとするものではないというのが、一応、私たちが考えているところではございますが、これの記載という部分とか、整合性が課題になるということでしょうか。
○中村構成員 中村ですけれども、恐らくがんと難病とは置かれた状況が少し違うと思うのです。がんの場合には、恐らくこれからいろいろな治療法が出てきて、ゲノム解析するということ自体が患者さんのベネフィットにつながってくると思います。
日本で100万人以上ががんと診断されている状況で、1万人、2万人単位を研究組織としてずっとやっていくというのは、やはり国民全体に対する健康維持というか、最適な治療法を提供するという観点で、がんの場合には、今のこの事業組織自体、すごく限定的な患者さんにしかベネフィットがないと思います。そこを考えれば、がんの場合には、もっと多くの方に遺伝子診断、遺伝子解析を受けていただくということが将来像としてあっていいと私は思います。
もう一つ大事なのは、そのような場合でも、臨床情報をいかに集めてきて、できるだけ多くの方々の情報を基に、より最適化された治療法を提供していくのかということは、当然、国として考えるべきことだと思いますので、そこは難病の方々とは性質が異なるので、一括して議論するのは難しいところはあると思いますけれども、がんに関しては、これからゲノム解析というのが主になって、いろいろな治療法が提供されていくと思いますので、そこはもう少し考えていただければと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
○厚生労働省厚生科学課 厚生労働省厚生科学課でございます。事務局の補足として申し上げます。
公的な存在としてという部分でございますけれども、中村先生がおっしゃるとおり、全ゲノム解析とそれに伴う医療について、できるだけ多くの患者さんがその恩恵に浴するべきであるというのは、我々も同じ思いでございます。
公的と書かせていただきましたのは、まずは、これについて、政府として、厚生労働省としてちゃんと責任を持つという思いが1つ。それから、安定して運営できるというメリットが1つ。それから、データベースといったときに、細かなデータベースが乱立するのではなくて、1つのデータベースで大きく検索ができるようにしたほうがいいというスケールメリットを生かせるという点が1つございます。
公的と書かせていただいたときに、公的なものによるメリットと、先生がおっしゃるような外部資金によるメリット、それらをハイブリッドして、できるだけ患者さんの利益が最大化できるようにしていきたいと考えてございます。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の説明でよろしいでしょうか。
○中村構成員 中村です。
これは今後の検討課題として、実地医療に提供していく場合に、ずっと税金を投下し続けるのかどうかということ。
もう一つは、できるだけたくさんの方の臨床情報とゲノム情報を集めるほうが、はるかに多様な患者さんのニーズに合った治療法の提供につながると思いますので、そこは当面何年間と。出口を考えてどういう組織を作っていくのかということは、特にがんに関しては、社会のニーズという観点を考えつつ、どこかで難病とがんが離れていくかもしれませんけれども、やはり社会のニーズ、それから、最適化されたがんの治療法によって医療費も削減されると思いますし、社会的な将来の課題を考える上で非常に重要だと思いますので、そこは考えていただきたい。
難病の場合には、それぞれの疾患数も少ないですし、診断も難しいですので、それを公的なサービスとして提供し続けていくというのはあるべき姿だと思いますので、そこをどこかで線を引いて、この委員会かどこかは分かりませんけれども、議論していただければと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
私から2点質問なのですが、先ほどの厚労省の説明の中で、安定的な運営のための公的な位置づけだという御説明だったのですけれども、ここへの民間の協力もあり得ると理解してよろしいのですか。
○厚生労働省厚生科学課 おっしゃるとおりでございます。必ずしもビジネスとしてペイしないものでも政策上必要なものはございますので、そういったときに安定して対応できるようにという意味で、公的な部分のメリットというのがあるのかなと思っております。それは難病のお話でもそういったところがあると思っております。
○中釜委員長 それから、2点目の中村委員の御指摘のがんと難病で少し方向性が異なってくるかもしれませんがということで、がんに関しては、幅広い利活用を目指した展開を目指すときに、先ほど議論のあったゲノム医療に対する利用者・参加者を保護する意味からも、社会的なリテラシーの向上というものを同時に進めていく必要があるのかなと思います。そういうものの社会的な情勢、理念の醸成?と併せて、今後、どのような形態の在り方を議論されていくのかという御指摘かと思いましたが、中村委員、その点についてはいかがでしょうか。
○中村構成員 中釜先生がおっしゃったとおりだと思います。いろいろなリテラシーがあると思うのですけれども、その意味で、その際には、研究者とか医師だけではなくて、もう少し患者さんや一般の方も含めた広い議論が必要になってくると思いますし、それはもう不可欠な課題だと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
そういう点では、先ほども御指摘のありましたロードマップの記述ぶりに関して、参加者という目線を少し加味したような記載が可能であれば、このことによって、国民を挙げて日本全体として取り組んでいくというイメージが伝わるのかなと思いますので、その辺も御考慮いただければと思います。
水澤委員、お願いいたします。
○水澤構成員 中村先生、どうもありがとうございました。難病のほうの状況でコメントだけ補足をしたいと思うのですが、難病の患者さんは、先生がおっしゃったように、非常にまれな疾患がたくさんありますので、一疾患、一疾患でいいますと患者さんの数は少ないのですけれども、指定難病だけでも、全部を合わせますと100万人ぐらいの方は現状でもおられるという数字が出ています。
それから、我々は、未診断疾患プロジェクトで、いろいろな手を尽くしても診断がつかないという方の全ゲノム解析とか、全エクソーム解析等をやって診断をつけておりますけれども、大部分は既知の疾患です。毎回毎回、全く新しい疾患、全く新しい遺伝子が分かるわけではなくて、それはごく一部でありまして、大部分は既知の疾患なわけです。
そういうものにつきましては、社会実装という言葉をよく使いますけれども、保険診療に下ろしていって、患者さんにすぐに役立つような形にしていく方向が今出ていまして、基本的にはがんと同じような仕組みや構造があるのではないかなと私は理解しております。
ですから、先生の御指摘は非常に重要だと理解しておりまして、私としては、公的な存在というのは、公的な性格を持って、フレキシブルに民間の企業等も参加するような組織という理解でおりました。
コメントさせていただきました。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の中村委員、水澤委員の御指摘は非常に重要なポイントですので、その辺りが分かるような形の書きぶりを工夫いただければと思います。
ほかに。
中村委員、お願いいたします。
○中村構成員 水澤先生のおっしゃっているとおりだと思いまして、私も松原先生の前任者として人類遺伝学会の理事長を務めておりましたので、がんだけではなくて、難病に関しても十分に理解しているつもりですし、やはり公的な支援というのは、ある面においては絶対的に必要だと思いますので、そこは十分に理解した上で、本当に民間が参画してくれて、それがスムーズに動いていけばいいと思いますけれども、そうでなくても、やはりある部分は公的な支援が必要だと思いますので、そこは十分に配慮しながらも、病気によっては、もう少し考え方が違ってもいいのではないかということで、今、お話を差し上げたところです。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
この点については、前回第1回の専門委員会の中で、製薬協の中山参考人から、こういうデータベースの構築に関しては、公的な整備?というお話もあったかと思うのですけれども、本日、森参考人に御出席いただいていますが、この点について何か追加での御発言はございますでしょうか。
○森参考人 ありがとうございます。
ちょうど15ページの最後の「マル6、官民協働による事業実施や公費外からの資金調達等」という、これは具体的な検討をこれからするのですということでお書きいただいているところだと思うのですが、この部分の記述と、先ほど来、中村先生がおっしゃっておられる公的な存在としての事業実施組織の在り方と、どういう関係になっているのかというところがよく整理される必要があるのではないかと思っております。
その点で、ゲノムの情報、診療情報、こうした非常にプライバシーそのものの情報を扱うという事業実施組織ですので、公的な存在としてスタートするということがぜひとも必要であり、その性質はやはりずっと保たれるものであってほしいと、産業界としてはそのように考えているということは変わりません。
ただ、産業界が協働して、この組織が本当に実りある形で活躍できるようにするという事業のやり方は、当然、検討対象だと認識しております。
ただ、マル6の協働の事業実施のやり方という話と公費外からの資金調達というのが並べてつなげて書かれているので、この資金調達ということの意味合いは、どんな内容を想定してお書きになっているのかということをお聞きしなければと先ほど考えていたところだったのであります。
恐らく公的な存在ということが基本であれば、やはりメインは公費なのだろうということなのですが、それ以外の部分というのはどういうものを考えているのかということについては、当然、公的な存在としての実施組織の在り方と深く関わってくる話であると思いますので、その辺りをどのように検討する内容としてお考えになっているのかというのが、今の時点ではそんなに明確にというのは難しいと思うのですけれども、例えば、こんなものをと考えていることがございましたら、理解の助けということでお聞きしたいなと考えているところでございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
今の森参考人の御意見は、恐らく8.に書いてある事業実施形態が含む公的な側面と事業実施体制の在り方、さらには資金調達の面、この3つの大きな論点を少し明示しながら、この辺の事業実施組織を具体的にどのように安定的な体制として作り上げていくのか。そういうところを整理して、御意見を頂いたと認識いたしました。
今の説明は、議論いただいた御意見をかなり包括したようなおまとめかと思いますが、何か追加での御発言はよろしいでしょうか。
葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 1点だけ、簡単なことではあるのですが、当然、データは公的なものであるべきでしょうし、それは特定の組織でなければ使えないなんていうのはあり得ないと思うのですが、私はどうしてもシステム開発であったり、業務を執行するほうに近い立場ですので、実は国立高度専門医療研究センターは独法なので、中央省庁よりは軽いとは思うのですが、とはいえ、独法のルールがありまして、その独法のルールに縛られる面があるので、何をやるのでも、民間よりもどうしてもアジリティーではないと思います。
そのときに、民間収入がある部分と公的資金がある部分が会計的に混ざりますので、少なくともここのプリンシパルに1個書かなければいけないのが、柔軟なということばかりが書かれていて、俊敏さ、素早い判断みたいなことが書かれていないのです。
これは非常に重要で、執行管理者の人はルールをすごく守ろうとして、我々がシステム開発を高度化したりとか、新しい業務を取り入れたいと思っても、どうしても1年サイクルだったり、2年サイクルだったり、下手をしたら4年サイクルという全く患者のためにならないような執行になってしまう可能性があります。
そこをできるだけ回避しておかなければいけないので、私の提案としては、15ページ目は「幅広い人材からなるボードメンバーが最新の知見に基づく柔軟かつ素早い運営判断と執行を行えるようにする必要がある」と書かないと、単純に柔軟なだけですと、独法ルールを守ろうとする方は素早い判断とかはあまり気にしませんので、全然、患者さんのところに届かなくなるのではないかなということを気にします。
以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘をありがとうございました。この点についても、事務局、御配慮いただければと思います。
ほかに御意見、御指摘はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、最後に、資料2-1、2-2、全体を通しての御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。
森委員、お願いいたします。
○森正樹構成員 13ページ目の「6.検体の保管、利活用」というところで、ちょっと細かい話で恐縮なのですけれども、この検体というのは、何か定義というか、要するに、がんでいえば腫瘍と血液ということなのか、その辺はどこかに書かれているのでしょうか。
○中釜委員長 この点について、事務局、お答えできますか。
○事務局 原則としましては、がんでは腫瘍部の新鮮凍結検体と正常組織としての末梢血を想定しており、恐らく難病では末梢血と一部組織も含まれると理解しております。特に明確に規定をしているわけではありませんが、検体の保管・管理ルールの詳細については、今後、患者還元のワーキングにおいてフィックスしていくことになると思いますが、これまでの関連会議において、検体の取得・採取方法等については、ある程度議論はされてきていたところです。
○中釜委員長 森委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○森正樹構成員 結局、そうしたら、今回は全ゲノム解析ということが主眼なので、新鮮凍結標本と血液ということでしょうが、将来的には、例えば、唾液とか尿というのも重要なサンプルになってくると思うのですけれども、その辺は別というか、このデータを基にさらに別に考えていくという理解でよろしいですか。
○中釜委員長 この点について、事務局、お願いいたします。
○がん対策推進官 参考資料3に「『全ゲノム解析等実行計画』の推進に向けての検討」という2月に決定した資料がございます。その中の7ページのところに「(3)検体の処理・収集・保管等のワークフローの確立について」という記載をしてございます。
そこの中の対応方針(案)のところにですけれども、検体の処理に係る標準作業手順書(SOP)の骨子を検討しということがございます。用いる検体の取扱いについては、基本的には全ゲノム解析実行計画の中でSOPを定めて対応していくことになろうかと思います。
先ほど森委員からは唾液とか尿ということを言っていただいたのですが、一応、今回の検体に関して言いますと、全ゲノム解析をするための検体ということになっているので、それらについては、必ずしも対象になってこないのではないかと思っておりますけれども、患者さんの関連する検体というところでは、研究などでは重要なポイントになるのだろうと思っています。
恐らくこれらの情報については、各個人の患者さんに戻った際に、併せて使えるようなものとしてどう整備していくのかというのが議論の一つなのかなと思っております。
以上です。
○森正樹構成員 ありがとうございます。
例えば、膵臓がんとかは、とにかく早く診断して治療すれば、予後が悪くても、0期、1期の膵がんであれば何とか治療可能ということで、治療成績も5年生存率が75%ぐらいあるということなのですけれども、ただ、それを腫瘍サンプルとして採るのは基本的には不可能に近いのです。
だけれども、全ゲノムの中で、そういう早期診断をするという目的は非常に重要ですので、物すごく早い時期の極めて小さいがんをどうやって解析するかというときに、代替として、例えば、血液、それから、ほかのサンプルというのも重要かなと思ったので、お聞きした次第ですけれども、当初の目的は、とにかく全ゲノムを調べて公衆に還元していくということであれば、現実的にはそれでいいのではないかと思います。
それから、もう一つ、先ほどのもので、一応、検体の運送とか運搬ということもきちんと考えられているわけですね。そういう理解でよろしいですか。
○中釜委員長 この点について、事務局、お答えできますか。
○事務局 こちらもSOPの中にしっかりと必要な基準等を書き込むということを考えております。
○森正樹構成員 ありがとうございます。
○中釜委員長 今、森委員から御指摘の点については、恐らく現行での全ゲノム解析に資する検体としては、手術検体等が適切だと思うのですけれども、今後、感度等が向上することによって、いわゆるリキッドの応用であるとか、検体の定義が広がっていくのかなと思います。
そういう中で、実行計画の進捗状況に応じて、関連した委員会の中で専門的な部分を議論し、それを専門委員会に上げてくる仕組みができていると理解します。個別の問題に関しては、今後さらに順次議論しながら、この専門委員会の中でその妥当性を検証し、検討していくという流れになるかなと理解しますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
○森正樹構成員 ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかに全体を通しての御意見、御質問はございますか。
では、森幸子委員、お願いいたします。
○森幸子構成員 ありがとうございます。
全体を通しまして、患者・家族のケアの在り方ですとか、相談体制の構築というところについては、いろいろな部分が挙がっていますけれども、これらはどこかに入るのでしょうか。
先ほど遺伝カウンセラーのお話などもありましたけれども、患者・家族が現実を受け止めて積極的な治療に向かうためには、とても重要なものだと思います。質の高い人材の育成を行えるようにしていただきたいですし、10ページには人材育成のことがありますが、大幅な増員ですとか、質の高い人材育成を行えるように、がんや難病というのは、特に遺伝性疾患などは、診断や治療も非常に大きな課題ですけれども、相談しにくいということとか、社会的な理解が得にくいことが問題で、説明やカウンセリングを受ける患者の安心感ですとか、遺伝カウンセラーの専門職としての認知度を上げていただくためには、遺伝カウンセラー自体がやはり国家資格となっていただきたいという思いがあります。
そして、遺伝カウンセラーの立ち位置をもっときちんとしたものにして、偏見や差別で患者・家族が孤立してしまわないように、自暴自棄ですとか、自殺などをすることがないような確かなケアが絶対に必要です。患者・家族にずっと寄り添えるような相談体制の構築というものもぜひ考えていただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、事務局から何か御回答できますか。
○事務局 重要な御指摘をありがとうございます。今後、そういった視点も大切と思いますので、引き続き検討してまいりたいと思います。
○中釜委員長 先ほど議論にありましたゲノム医療全体の社会的なリテラシー、そういうものをいかに向上していくか。そこともこの人材育成は関わってくるのかなと思いますので、その辺りがうまく読み込めるような書きぶりをお願いできればと思います。御指摘ありがとうございました。
ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、取りあえず資料2については、以上とさせていただきます。
続きまして、事務局より資料3の説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。資料3について説明をさせていただきたいと思います。
今回「解析・データセンター構築の詳細要件(案)」としまして、こちらの資料3を作成させていただきました。
こちらは、今回「1.情報管理」「(1)ガイドライン等の適応に関する留意事項」「(2)情報へのアクセス監視に関する遵守事項」、そして「2.システム構築」「(1)クラウド基盤利用に関する遵守事項」「(2)コンテナ技術の利用に関する遵守事項」「(3)外部サービスの利用に関する遵守事項」「(4)解析環境等の利用に関する遵守事項」「(5)システム監視やセキュリティ対策に関する遵守事項」、そして「3.構築事業の管理に関する留意事項」、最後に「4.共通事項」となっておりますが、解析・データセンター構築のためのかなり細かい詳細要件となっており、今回、引き続き検討をさせていただきたいと思いますので、幅広く皆さんから御意見を頂ければと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、資料3はかなり細かい記載、専門性の高い部分の記述もありますが、現時点において何か御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいですか。
今、事務局から説明がありましたが、資料3につきましては、今後、事業実施組織が構築されるまでに、これも非常に重要な論点だと思います。
先ほど葛西参与のほうから御指摘があったように、データ構築をする際、あるいは利活用をする際のルールは、非常に高いセキュリティー、あるいは同時に利活用を促進するような、さらには利用のログをきちんと把握できるような仕組みが必要だということであります。
この辺りはかなり専門性の高い部分もあるということと、今後、どのように全体的にセキュアの高い環境を作っていくかというところは、まずコンセプト・理念として大くくりが把握できるような記述ぶりとし、さらに詳細については、より細かく具体的な記載をするステップ、さらには、これを実際に実施する際の参画団体について、どのようなルールを作って、仕様書レベルまで書き込んでいくか。幾つかの段階・レベルがあるかと認識しますが、この点について、葛西参与のほうから何か追加で御発言はございますか。
○葛西参考人 まず、ここに書かれているのは、当然、かなり厳重にセキュリティーを守ることが前提になっています。ただ「案」とつけていることと、これは私の案をかなり流用いただいてありがたいのですが、やはりAPIの件もそうなのですが、当然、がんの種類だったり、解析するものであったり、難病であったり、それぞれ臨床データを使うものも、APIを作るのも非常に段階的ですし、セキュリティーに関しても、お金があって、一遍に全部どかっと。お金があったとしても、構築作業者の人数も少ないですので、突然ここまでの要件が完成するとは思えないのです。
問題は、この詳細要件はあるべき姿で、とはいえ、これを10年後にやるとか、20年後に実現するでは意味がないと思いますので、どのぐらいのまさにシステム構築のロードマップとして遵守していこうとするのか。
特に一番怖いのは、今、オリンピックが開催されていきますから、インターネットの世界ではかなり外部から攻撃しやすい国になるのです。取りあえず一旦攻撃しますというようなところがあるので、その時期に、ある意味、ゲノムという非常に機密性かつ個別性、個人が特定されやすい情報を扱うわけですので、素早くどの順番にリスク等を判断しながら、実際の調達要件とかシステム構築要件に入れていくかというのは、また準備室のほうで検討されればいいと思っていますので、一応、ここではあるべき要件を全部述べておいたほうがいいかなと。
一方で、私自身も足りていないことがたくさんあると思いますので、それはさらに追加していただければいいと思っております。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
今の葛西参考人の発言を含めて、資料3についての御質問はございますでしょうか。
宮野委員、お願いいたします。
○宮野構成員 多分、皆さんから見ると、葛西参与が非常に細かく書いていると見ておられるのではないかと思いますけれども、ここの部分は、例えば、大企業においては、たったこれだけしか書かないのかという印象を恐らく持たれるのだと思うのです。そういう意味では、これから1年、2年のうちにまた劇的な技術の変化が起こってくるかと思いますので、そこの部分に柔軟に対応していくということが極めて重要だと思います。
今、ページ数が結構あって、皆さん、ほかの項目に比べるとたくさん書いておられるようにお感じなのではないかと思いますが、いわゆる一般の大企業のデータ管理・利活用といったところの観点からは、まだこれしか書いていないのかという印象を恐らく持つのではないかと思います。
それと、一例ですが、暗号化については、2025年に暗号化の標準が変わっていく段階に入っていくと思いますので、資料3は量が多いですけれども、ある意味で、今ここで書いてあることをずっと遵守すればいいという認識ではないのだということを明確に追記しておいていただけると、ダイナミックに変わっていけるのではないかと思います。
皆さんも御存じのように、10年前のセキュリティーと今のセキュリティーは全く違うわけです。それと、実現するかどうか、私はあまり認識していませんが、量子コンピューターが出てくると、暗号は破られるということになってくると思います。ですから、そういう時代に対応した格好のものにしていくということが一番肝要なことだと思っています。
これは私の前職のヒトゲノム解析センターのスーパーコンピューター「SHIROKANE」での経験ですが、1日にすさまじい数のアタックがあります。それを前提に運用していっているので、何とか持ちこたえているわけですけれども、そこの部分に一瞬でも、一瞬というか、1日でも心の緩みがあると、必ず攻撃によって破られていくということを前提に運用していかないといけないと考えております。
それと、攻撃によって破られても大丈夫なデータとそうでないデータをきちんと区別しておいて、単に破られたから全部駄目なのだというメッセージが国民に伝わらないようにぜひしておいていただきたいと思っております。
ヒトゲノム解析センターも、私が運用の担当をする前ですが、実際にルートといいますか、一番てっぺんのパスワードですけれども、これは言っていいのかどうか分かりませんが、数十文字のパスワードで、これは私が知っているものではなくて、知っている人は非常に限定的なものですけれども、それでも1か月間にわたる攻撃によって破られたことがあります。
ただ、そのとき、幸いなことに、使っていたアクセス可能だったデータというのは、ほぼ全てがパブリックなデータであったり、ゲノムの時期的に非常に部分的なものであったために、直接的な被害はなかったと認識しているところです。
ぜひここの部分は、一般企業といいますか、企業ではなくても、ブロードインスティテュートですとか、サンガーインスティテュートですとか、メイヨークリニックですとか、いろいろなところが既に運用しているところですので、そういったところのものを積極的に活用しながらやっていただきたいと思います。
それと、もう一つ、クラウドに対して非常に不信感を持っておられる方が多いのではないかと思うのですけれども、昔と今は随分と違います。クラウドほど安全にデータが保護されているところというのはないと。
これは私の非常に個人的な感想ですが、ヒトゲノム解析センターにデータを置くよりも、特定の企業の名前を挙げるのは不適切かと思いますけれども、クラウドを提供することを会社のサービスとしてやっているところは、それが破られるということは、会社の存続に大きな影響を与えるものですので、非常に強くセキュアに、かつ、利便性を高くやっているところです。ですから、単純にクラウドは駄目だよという方針で持っていっていただきたくないなというのが私の思っているところです。
もう3年か4年ぐらい前になりますが、インハウスのクラウドを構築する。外部にクラウドを構築する。少なくとも米国ではそういう運用の仕方を医療の中でやっていますので、これはちょっと変な言い方になりますけれども、日本が江戸幕府的なデータの運用にならないようにぜひしていただきたい。利活用が国民・患者さんへの還元になるのだということを積極的にメッセージとして出していただけたらと私は思っています。
中村祐輔先生がおられますけれども、実際、AIホスピタルで、基盤研のほうでコロナの情報を提供するということで、レベル1、2、3とデータの種類を分けて、そして、クラウド利用をしていくということで、システムがオープンになりました。これが一つの突破口になっているのだと思うのですが、クラウド利用についての古い考え方に固執せずに、前に進んでいっていただけたらと私は個人的に思っております。
葛西参与も御意見があるのではないかと思いますが、もし頂けましたら幸いです。
長くなりました。失礼しました。
○中釜委員長 では、葛西参与、お願いできますか。
○葛西参考人 宮野先生、ありがとうございます。全く同じ意見で、私としては、実はこれでもかなり少なく書いたつもりでございまして、一般の解析データセンターの仕様、詳細要件を書こうとすると、段ボール箱8個ぐらいになるようなものを書くのですが、最低限のものがこのぐらいだということは申し伝えておきたいと思います。
それから、クラウドに関してもそうなのですが、今、クラウドもブラックボックスではなくて、政府が使う場合は、当然、ホワイトボックスでなければいけないので、ISMAPと言われる監査法人が第三者的にクラウドの中がどうなっているかも監査して、公表している制度がありますので、そういったものを活用すればいいかなというのが1つです。
私、1点、書き忘れているというか、意見を言い忘れているのですが、中村先生からも頂いていた秘密分散処理です。データを管理する際に秘密分散処理をして、管理したほうがいいというのを書き忘れているというか、意見を言い忘れていまして、それを入れたほうがいいかなというのがあります。
宮野先生がおっしゃられた2025年というのは、今、まさにネットワークセキュリティーから認証、個人を特定するほうのセキュリティーに意識が変わってきています。ネットワークセキュリティーはすごく負担が大きいので、ゼロトラストという、どちらかというと、アプリケーションとか認証のところを強固にして、電子証明書を運用することによって、ネットワーク側がある程度攻撃に遭っていても、情報が流出しないというゼロトラストセキュリティーの概念にだんだん移行してきています。
当然ですけれども、準備室内でやっている間に、多分、この詳細要件は変わっていくと思います。1点だけ絶対に変わらないのは、クラウドを使うこと、これはもう絶対に変わらないと思います。今さらにして、場合によっては、使われない方が、クラウドは何か怖いとか、ブラックボックスだからおかしいと言われる方がいるのは幾ら何でもナンセンスだと思いますので、例えば、クラウドとスパコンとか、解析の粒度、もしくはデプスによって、もっと高度な解析をされるのであれば、クラウドをベースにしながら、スパコンも連携して利用するような感じになるのではないかなということを、一応、その辺りは書いてありますが、申しつけておきたいと思います。
以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。葛西参考人、宮野委員、重要な御指摘をありがとうございます。
今後、資料3の取扱いをどのように位置づけるか。データ解析、データ収集、あるいは保存・管理、利活用をする際に、今、御指摘のシステムの構築は非常に重要な視点かと思います。
一方で、冒頭に葛西参考人がおっしゃったように、社会全体としての情報管理、システムの在り方をどのように考えていくのか。そういう大きな視点からの情報管理に関する考え方、理念を提示し、さらに、実際にどのようにそれを踏まえた構造体を作っていくのか、管理するのか、運用するのか。さらには、より細かなSOPを規定するのか。両委員及び参考人の御指摘のように、幾つかレベルがあろうかなと思います。きっちりとより詳細な部分を書き込んだものを最終的には作り上げる必要があると理解しました。
同時に、この全ゲノム解析事業そのものだけではなくて、国民全体、社会全体として情報管理の在り方をどのように進めていくべきかという御指摘だと理解しましたので、その辺りが、いろいろなレベルの方々に理解できるような文章体の構造、そういう形に作っていければなと事務局に期待しますので、よろしくお願いいたします。
ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、今日の議論の全体を通した協議に入りたいと思いますが、全体を通して御質問、御意見があれば、お願いしたいと思います。
まず、本日の委員会では、取りあえずロードマップをある程度確定する方向に向けて御議論いただいたと理解しますが、言い残していること等がございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、本日も各委員の方々からはいろいろな御指摘を頂いたと理解しますので、それについては、事務局のほうで修文等を進めていただきたいと思います。
全体を通して重要な御指摘が幾つかあったと思うのですが、大きな方向性としては御異論はなかったと理解しますので、本専門委員会の委員長といたしまして、取りまとめの案については、また各委員にお目通しいただき、その上で進めていきたいと思います。その方向でよろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、事務局、お願いいたします。
○がん対策推進官 それでは、以上をもちまして、本会議を終了させていただきたいと思います。
また追加の意見等がございましたら、適宜、事務局のほうまで御連絡を頂ければと思います。
また、先ほど中釜委員長からございましたとおり、修正した意見につきましても、改めて確認をさせていただきたいと思います。その上で、科学技術部会への報告に進んでいきたいと考えてございます。
本日は、委員の皆様方、長時間にわたり大変ありがとうございました。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 

配布資料

議事