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第13回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)
日時
令和3年6月2日(水)10:00~12:00
場所
AP虎ノ門 B会議室
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル)
出席者(五十音順)
垣内秀介 東京大学大学院法学政治学研究科教授
鹿野菜穂子 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
神吉知郁子 東京大学大学院法学政治学研究科准教授
小西康之 明治大学法学部教授
中窪裕也 一橋大学大学院法学研究科特任教授
山川隆一 東京大学大学院法学政治学研究科教授
議題
解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理
議事
○山川座長 それでは、おおむね定刻となりましたので、ただいまから第13回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様方、本日も御多忙のところ御参加いただきまして、大変ありがとうございます。
本日の検討会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえまして、Zoomでのオンライン開催となります。委員の皆様方、御了解いただければと思います。
本日は、委員の皆様全員に御出席いただいておりますが、鹿野委員が11時45分頃に退席される予定とのことです。また、吉永労働基準局長は公務のため、御欠席です。
それから、議題に入ります前に、オブザーバー御参加の方でありますけれども、今回は法務省からのオブザーバーとして労働審判法を所管されておられます福田敦参事官にオンラインで御参加いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○福田法務省参事官 よろしくお願いいたします。
○山川座長 それから、本日は、これまでオブザーバー参加していただいております法務省民事局の笹井朋昭参事官につきましては、公務のため御欠席とのことです。
前回の検討会から事務局に異動がございましたので、事務局から説明をお願いします。また、Zoomによるオンライン開催ということで操作方法等についても説明いただきまして、さらに資料の確認もお願いします。
○宮田労働関係法課課長補佐 労働関係法課課長補佐の宮田でございます。よろしくお願いいたします。
本日はZoomによるオンライン会議となっております。座長以外はオンラインでの御参加となっておりますので、簡単に操作方法について御説明させていただきます。
事前にお送りさせていただいております「会議の開催・参加方法について」を御参照ください。現在、画面には、会議室の映像及びオンラインで会議に御参加いただいている委員の皆様が映っているかと思います。まずは、その下のマイクのアイコンがオフ、赤い斜線の入った状態になっているかを御確認ください。本日の検討会の進行中は委員の皆様のマイクをオフの状態とさせていただきます。御発言をされる際には、サービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックして、座長の許可があった後に、マイクをオンにしてから御発言いただきますようお願いいたします。アイコンの赤い斜線がなくなった状態になっていれば、マイクがオンになっております。
また、本日は会議資料を御用意しております。事務局から資料を御説明する際には、画面上に資料を表示いたします。
そして、会議の進行中、通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や音声が聞こえなくなった場合などトラブルがございましたら、お知らせいたしております担当者宛てに電話連絡をいただきますようお願いいたします。
なお、通信遮断等が復旧しない場合でも、座長の御判断により会議を進めさせていただく場合がございますので、あらかじめ御了承くださいますようお願いいたします。
Zoomによるオンライン会議に関する御説明は以上になります。
続きまして、資料の御確認をお願いいたします。ただいま画面共有いたします。
委員の皆様方におかれましては、あらかじめ送付させていただいた資料を御確認いただけますと幸いです。今回御用意した資料は資料1~資料8の8種類となっております。
資料1としまして「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会における主な議論の整理と論点(6月2日版)」。
資料2としまして「労働契約解消金の支払と労働契約の終了について」。
資料3としまして「労働契約解消金の内容・考慮要素等についての整理(6月2日版)」。
資料4としまして「有期労働契約に関する議論の整理(6月2日版)」。
資料5としまして「有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めが無効になる場合の労働者の地位の状況について」。
資料6としまして「労働審判について」の資料でして、1ページ目の題名が「民事訴訟と労働審判の比較」となっているもの。
資料7としまして「労働審判法」。
資料8としまして本検討会開催要綱を配付しております。こちらは、本年4月より2ページ目の参加者名簿の一部に変更がございましたので、今回配付させていただいております。
資料の説明は以上になります。
○山川座長 ありがとうございました。
カメラ撮りの方がおられる場合はここまでとさせていただきます。
それでは、本日の議題に入ります。議題は「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理」となっております。今、御説明、御確認いただきました資料の1~5は前回までの議論を整理した資料です。資料6と7は今回議論します労働審判に関する資料となっております。
本日はまず、労働審判に関する議論をした後、これまでの議論の整理について御意見を伺いたいと思います。そこで、事務局から資料1の論点と資料6、7について御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○宮田労働関係法課課長補佐 それでは、御説明させていただきます。
まず、資料1はこれまで御議論いただいておりました法技術的論点の主な議論を整理したものでございます。内容としましては、前回の検討会においてお配りした資料1に今回の検討会で扱う論点を記載したほか、前回の検討会までの御議論を踏まえ、一部修正を加えております。修正点につきましては、後ほど改めて御説明いたしますので、まずは今回の論点についての説明をさせていただきます。
資料1の1ページ目の「権利行使の方法」の欄に今回の論点を記載しております。論点1として「形成権構成の場合には、労働審判により金銭救済を請求することが可能ということでよいか。また、形成判決構成であっても、労働審判により金銭救済を請求することが可能か」というものを挙げております。また、論点2としまして「どちらの構成であっても、原則3期日で終結するとされている労働審判で円滑に運用できるか」というものを挙げております。
いずれの論点も労働審判において金銭救済制度を実現することは可能かという論点でして、論点1につきましては、主に法的な観点から可能かという点、論点2につきましては、主に事実上・運用上の観点から可能かという点として挙げさせていただいております。論点1につきましては、形成判決構成の特徴から問題点が生じ得るかにつきましても御議論いただければと思っております。
各論点に関する資料として資料6と資料7を御準備させていただきましたので、こちらについての説明をさせていただきます。
まず、資料6は労働審判についておまとめさせていただいたものになっております。
1ページ目は「民事訴訟と労働審判の比較」との題名になっておりまして、民事訴訟と労働審判の一般的な内容を比較するものとなっております。
まず、手続の種類としまして、民事訴訟については、訴訟事件とされていまして公開が原則で終局的には判決がなされます。参考条文として憲法82条の裁判の公開の原則を挙げております。他方、労働審判については、非訟事件(争訟的非訟事件)と称されるとされておりまして、許可により相当と認める者の傍聴は可能であるものの手続は非公開でして、終局的には審判がされます。下に米印で記載しておりますとおり、労働審判で権利関係の判定を行うことについては次のページでまとめておりますので、後ほど御説明いたします。
次に、審理の主体としましては、民事訴訟においては、単独、合議制の別はあるものの裁判官が主体となり、他方、労働審判においては、労働審判官1名、労働審判員2名の合議制から成る労働審判委員会が主体となります。
対象としましては、民事訴訟では、民事訴訟全般が対象となるのに対し、労働審判では個別労働関係民事紛争が対象となります。
迅速な手続等に関する定めとしましては、民事訴訟については裁判所及び当事者は、適正かつ迅速な審理の実現のため、訴訟手続の計画的な進行を図らなければならないとされておりまして、参考としましては、裁判の迅速化に関する法律は、第一審の訴訟手続につき、2年以内のできるだけ短い期間内に終局させるとの目標を定めているところです。他方、労働審判については、特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日において、審理を終結しなければならないとされております。
取下げにつきましては、民事訴訟では、判決確定までは可能だが、一定の時期以降は相手方の同意を要するとされており、他方で労働審判では、審判の確定または異議申立てによる訴え提起の擬制まで、相手方の同意を要せず、いつでも可能となっております。
判決・審判の内容としましては、民事訴訟では、裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができないとされているのに対し、労働審判においては、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び手続の経過を踏まえて、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払いや物の引渡し等を命じ、その他紛争解決のために相当と認める事項を定めることができるとされています。
判決・審判の効力としましては、民事訴訟においては、既判力、形成力、執行力が認められるとされております。労働審判の効力につきましては、裁判上の和解と同一の効力を有するとされておりまして、その効力といたしましては、既判力、形成力、執行力が考えられるところですが、既判力を有するか否かには争いがあるところです。
最後に、異議等が出された場合の効果についてですが、民事訴訟では、上訴されても当然には失効せず、事件は上訴審へ移行するのに対し、労働審判は異議申立により失効し、事件は通常訴訟に移行することになります。
1ページ目の御説明は以上になります。
2ページ目は「労働審判で権利関係の判定を行うことについて」と題しておりまして、この部分は主に論点1に関する資料としてまとめております。上の部分と下の部分に分かれておりまして、上の部分は書籍からの抜粋部分でして、権利関係を確定する作用そのものであれば、公開の法廷における訴訟手続によるのが原則であろうが(最高裁大法廷決定昭和40年6月30日)、労働審判のことですが、審判は、異議を申し立てれば失効するものであり、それ自体により権利義務関係を終局的に確定するものではないので、その中で権利関係について一定の判定を行うことは差し支えないとの記載部分を載せております。
下の部分では、先ほど出ました最高裁決定の要約でして、「性質上純然たる訴訟事件につき当事者の意思いかんに拘らず、終局的に事実を確定し、当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定するような裁判は、公開の法廷における対審及び判決によるべき」とされております。
3ページ以下は主に論点2に関する資料としてまとめております。
3ページ目は「労働審判における審理のイメージ」と題しておりまして、労働審判の審理を簡単にまとめたものとなっております。上のほうから見ていきますと、申立てがなされた後、審理がなされますところ、原則3回以内の期日で争点及び証拠の整理、事実の調査・証拠調べ(当事者・参考人からの聴取)、調停協議が行われ、調停が成立すれば左下の矢印のように調停が成立し、審判が行われる場合は真ん中下の矢印のように審判がなされます。審判がなされた後、異議申立てがなされなければその審判は確定いたしますが、異議申立てがなされますと、右下のほうにあります訴え提起の擬制がなされ、民事訴訟手続に移行いたします。また、右側の矢印のように、労働審判をせずに労働審判事件が終了する場合もございまして、これについては、労働審判法24条1項に規定がございます。
ここで資料7の御説明をさせていただきます。資料7は労働審判法の条文を載せたものになっております。
この6ページ目の中ほどに先ほど述べた24条1項の条文がありまして、読み上げますと「労働審判委員会は、事案の性質に照らし、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させることができる」と定められております。
資料6の3ページ目に戻らせていただきます。右側の下に延びる矢印のとおり、労働審判をせずに労働審判事件が終了する場合も、訴え提起の擬制がなされ、民事訴訟手続に移行することになります。
4ページ以下は、最高裁判所事務総局行政局から御提供いただいた労働審判に関する統計データをまとめたものになっております。
4ページ目は、地方裁判所における平成17年から令和2年までの労働関係民事通常訴訟事件と労働審判事件の新受件数のグラフになっております。これを見ますと、ここ10年ほどは両者の件数がおおむね1対1程度の割合で推移しているかと思います。
5ページ目には表1と表2を載せております。表1は地方裁判所を対象とした平成28年から令和2年までの労働審判事件の事件類型別の新受件数に関する表でして、例えば、「①地位確認」の欄を見ますと、1,500件~1,800件前後で推移しておりまして、全体の新受件数が左側に記載されておりますが、それと比べてかなりの割合を占める件数で地位確認の件数が推移しているかと思います。
下の表2は、地方裁判所を対象とした平成28年から令和2年までの労働審判事件の終局事由別の既済件数に関する表となっておりまして、例えば、真ん中辺りの「調停成立」の欄を見ますと、68%~72%前後で推移しているかと思います。
6ページは表3~表5を載せております。表3は地方裁判所を対象とした平成28年から令和2年までの労働審判事件の審理期間等に関する表になっておりまして、例えば、一番右側の「平均審理期間」を見ますと、2.6月~3.6月の範囲で推移しているかと思います。
左下の表4は地方裁判所を対象とした平成28年から令和2年までの労働審判事件の審理期日実施回数に関する表になっておりまして、例えば、一番右側の「4回以上」の欄を見ますと、1.2%~1.6%の割合で推移しているかと思います。
右下の表5につきましては、地方裁判所を対象とした令和2年の労働審判事件の弁護士代理人の選任状況に関する表となっております。
長らくお時間をいただきましたが、資料1の論点と資料6及び資料7についての御説明は以上となります。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、論点についての議論に入っていきたいと思います。御発言がございましたら、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、指名後に御発言をいただきますようお願いいたします。何かございますでしょうか。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 垣内でございます。どうもありがとうございます。
資料1の論点1に関してなのですけれども、以前からこの検討会でも議論がされてきた論点かと思いますけれども、まず、前段の形成権構成の場合についてどうかということにつきましては、形成権ということであれば、原則としてはどこでも形成権の意思表示があればその効果が発生するということで、その形成権の行使ができる場面を政策的に裁判上に限るということはあり得るかもしれませんけれども、その際にそこに労働審判を含めるということ自体は特段問題はないだろうと思います。ですから、あとは論点2のほうでそうした機能、労働審判を担わせることが適切かどうかというまた別の政策的判断によって決まるということになるのかなと理解しております。
難しいのは、形成判決構成を取った場合にどう考えるべきかということであります。その関係で、そもそも労働審判の性格が裁判的な側面と調停的・調整的な側面との両面を持っている。厳密な意味でこれが裁判なのかということも、主体が労働審判委員会であるということになりますと若干特異ですので、明らかでないところがありますけれども、一面では非訟事件の審判あるいは裁判というように捉えることができるとともに、他面では、例えば、民事調停法17条の決定のような調停過程でなされる決定で異議がなければ、調停成立と似たような効果が生じる。そういう意味では、合意の延長線上に位置づけられる仕組みという性格も持っているということで、その辺りが理論的にどう考えるのかという前提問題があるということかと思います。
さはさりながら、仮に裁判的なものであると考えましたときに、非訟事件における裁判で形成の訴えにおける認容判決と同様の効果を生じさせるという例がほかにあるだろうかという観点から見ますと、一つには離婚に関しては離婚の訴え自体は形成訴訟ですけれども、調停離婚とか審判離婚ということが一応あり得る。労働審判の場合には、審判離婚の場合と非常によく似た形になるのではないかと思われます。審判があって異議がなければそれで確定し、裁判上の和解と同一ということは確定判決と同一の効力が生じる。その確定判決と同一の効力の中に、審判離婚であれば離婚という効果がそこで直ちに生じるということだと思いますので、それと似たような仕組みが考えられるのかもしれません。
ただ、離婚の場合には、別途、協議離婚の制度があるということで、当事者の離婚意思に加えて離婚の届出がされるということで、基本的には当事者が自らの意思で離婚することができる。形成の訴えで離婚の効果を生じさせるというのは、様々ある離婚の効果が発生するルートの一つにすぎないというところがあり、そうした協議離婚の制度の存在が審判離婚のような制度の正当性を基礎づけているという見方ができるところだろうと思います。
そうした観点から見ますと、形成判決構成を取った場合に、解消金という請求権は形成判決の効果として初めて発生するという構成になるわけですけれども、それと同じようなことが当事者の合意をベースにしてできるのかどうか、協議離婚と同じようなものを想定できるのかということが問題になる感じがいたしまして、その観点から、実は労働審判で金銭救済を請求することが可能かという論点の意味がよく分からなくなってくる感じもいたします。
と申しますのは、結局解消金の制度の内容というのは、使用者が労働者に対して一定の金銭を支払う。この金銭が支払われたときに労働契約の終了という効果が生じるという条件つきの法律関係を成立させるというところにこの解消金の仕組みの本質的な特徴があるのだろうと思われるわけですが、そのこと自体は、当事者間で幾ら幾ら支払われたらその時点で労使契約は終了しますという合意をすれば有効にできるということなのかということで、それが仮にできるとしますと、もともと労働審判で今回のような制度を仮に導入しなくても、労働審判の内容としましては、個別労働関係民事紛争を解決するために相当と認める事項を定めることができるとされてきたわけですので、合意でできることを審判で行って異議がなければそれで効力が生じるということもあり得たのかなという感じもしないでもありません。
いずれにしましても、合意で仮にできるようなことなのだとすると、それを労働審判でもできるようにし、労働審判には最終的には確定判決と同一の効力が生じるということになるわけですから、それはそれで構わないという見方もあり得るのかなという感じもいたします。
ただ、形成判決で金銭請求権とその支払いによって労働関係が終了するという法律関係が発生するという、全く新しい制度ということで、協議離婚の例は出しましたけれども、過去に全く同じような例があるということではないことからしますと、その辺りが法制的にきちんと認められるものになるのかということについては、いろいろ議論の余地があるところなのかなという感じがしております。
ということで、労働審判の性格あるいは解消金という制度の性格等々とも関係して、形成判決構成を取った場合についてどうなるかについては、まだ少し流動的と申しますか、できるとかできないとか決め打ちが難しいところがあるのかなという印象を持っているところです。
差し当たり以上です。
○山川座長 手続法の観点から詳細な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。
ほかに何かございますでしょうか。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 ありがとうございます。
垣内委員のお話はたいへん参考になりました。もともとは通常の裁判以外にも労働審判で可能にすることを想定しながら議論してきたと思うのですけれども、当初は形成権構成で考えていたところに、途中から形成判決という構成もあり得るのではないかということで2つ並べるようになったものですから、そうすると、改めて考えてみると、形成判決のときに、なるほどこういう問題があるのだなというのを改めて認識できた気がします。
それと、離婚の場合と同じような部分もあるし違うような部分もあるというご指摘も非常に参考になったのですが、垣内委員がおっしゃったように、当事者間で解消金を払うことを条件に、本来無効な解雇だったのだけれども労働契約をそこで解消するということは、当事者間の合意ではあり得ると思うのです。そういう意味では協議離婚にもちょっと似ている部分がある。
その場合に一番大きいのは、解消金の額について当事者間でまとまらないときに、審判を通じて妥当な金額が出されるという点で、そこに意義があると思います。ですから、制度としてそういう仕組みをつくることが前提ですけれども、当事者間でまとまらない場合に、労働審判によってこういう金額を払うことを条件に契約の解消という効果を生じさせる。そういう制度というのは、私はあり得るのではないかとお聞きしていて思いました。
あとは、第2の論点になりますけれども、それが実際上可能かどうかというのがもう一つ別にあると思いますが、理論的には今、お聞きしていて頭が整理され、形成判決でも行けるのではないかと思ったということであります。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかにどなたかございますか。よろしいでしょうか。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 先ほど申し忘れたのですけれども、そうこう考えてまいりますと、仮に形成判決構成を取った場合に、労働審判の問題もありますけれども、他方、当該訴訟の中で訴訟上の和解によって解消金の支払いのようなことに合意することの可否も密接に関連する問題になってくるのかなと。労働審判の調整的な側面を重視しつつ、そこでは解消金について定めることができるのであるということで、この場合には、いわば当事者の消極的な同意というものでそれが続けられるという説明なのだとしますと、裁判上で和解するということであれば、そこでも同じように裁判所も関与として確定判決と同一の効力が発生するし、当事者の合意もあるということで、認めるという方向もあり得るような感じもいたしまして、どこで線を引くのかについても併せて検討していく必要があるのかなという感じを持っています。
先ほどの発言の補足とさせていただきます。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございました。
ほかにどなたか何かございますか。
事務局から補足があります。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田でございます。
先ほど御指摘いただきました点につきまして、補足となりますが、資料1につきましては、これまでの論点に関する議論を簡単にまとめているものになっておりまして、1ページ目の下のほうにあります「債権発生の時点等」という欄の右側が形成判決構成の欄になっておりますが、そこのところが先ほどお話が出た部分も関係するかと思いますので、改めて御紹介をさせていただきます。
上から読み上げますが、形成判決構成ですが、「判決又は審判確定により労働契約解消金債権が発生するため、それ以前に使用者が労働契約解消金として金銭を支払っても、労働契約は終了しない」に矢印としまして、「判決又は審判確定日に支払日が到来し、それ以降使用者が労働契約解消金を支払えば、労働契約は終了する」。次の矢印ですが、「判決又は審判確定前に『解消金』名目での訴訟内外での和解等は不可(ただし、その場合でも現行と同様の解決金としての和解は可能)」という整理を現時点ではしておりますので、補足ということで御説明させていただきました。
以上になります。
○山川座長 ありがとうございます。
ちょうど私もその点を言及しようかと思っていたところです。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 度々すみません。
この資料の整理がされているのはそのとおりでありまして、問題はその解消金名目での和解が何を意味しているのかということかと思います。
先ほど申しましたのは、ごく一般的に、一定の金銭を支払って支払ったときに労働契約が終了するという内容の法律関係を当事者間の合意でつくり出すということは、特段、強行法規等に違反するものではないとすれば可能ではないかということだったわけですけれども、恐らく解消金名目とされることが持つ他の効果と申しますか、例えば、労働契約の終了というのが合意による終了ということで、他の関連する労働法上の様々な法律関係に影響を与えていくということなのか、それとも、解消金支払い事由による労働契約終了ということで、私は労働法そのものは専門ではありませんのであれなのですけれども、労働契約の終了事由によって取扱いが変わってくるような法律関係が種々あるといたしますと、その関係でこれが解消金の支払いによる終了なのか、そうでないのかということが問題となってくる。
あるいは、解消金の支払いというものの税法上の取扱いとか、様々な法領域で解消金の授受とそれに伴う効果をどういう性質のものとして扱うかという論点がいろいろなところで発生するときに、当事者間の合意でつくった場合と判決等でそれが命じられている場合とで区別されることになるのかというのが、それぞれの法領域の問題として生じてくることが一方であるのかなと思われますので、その辺りの効果との関係でもこの問題を考える必要があることがこの資料で示されているということかなと理解しております。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかに御意見等ございますか。
中窪委員、お願いします。
○中窪委員 私も先ほど申しましたのは、厳密に解消金か解決金なのかはあまり区別せずに、少なくとも紛争が起きているときに、労働契約の解約という効果をもたらすことの合意は妨げられないという意味で離婚することとパラレルなのかなと思ったわけでありまして、その中でこういう金銭解決の仕組みを正式の裁判あるいは労働審判に限定するというのはまた別途あり得る話なので、そこは区別したほうがいいと思います。先ほどの補足として。
○山川座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。
先ほど、事務局と垣内委員からもお話のありました資料1ページ目の右下の部分でありますけれども、和解においてのお話で、ただし、その場合でも現行と同様に解決金としての和解は可能ということで、労働審判においても調停では同じことになるかと思います。また、審判としても契約を終了させて金銭の解決を命じるという審判も可能であるという見解が多数ですので、あまり実益がないのかなという感じもしております。
恐らく解決金名目での金銭支払いを定めることによって、労働法上はどういう差が生じるのかは今は考えつかないところでありまして、税金上の問題はあるかもしれませんが、実際上、裁判上の和解でも金銭の名目を例えば賃金というよりは、解決金ということで名称をつけることが比較的多いのではないかという感じがしております。その意味でも、それほど実益のない話かなと私としては考えております。その意味では、いろいろな考えがあり得ますけれども、私としては審判による対応も可能ではないかという感じがしております。
論点2で円滑な運用についてというほうが実際上重要になる可能性がありますので、論点2も含めて御質問、御意見等をいただければと思います。
小西委員、どうぞ。
○小西委員 小西です。
論点1か論点2か、どちらにもあまり関係がないことなのかもしれないのですけれども、今回、労働審判を御担当なさっている法務省の方がいらっしゃるので、少しお伺いしたいことがあって、御質問させていただければと思っております。
今回の金銭解決の話ではないのですけれども、労働基準法の114条に付加金の請求というものが定められていて、裁判所は労働者の請求があった場合に支払いを命じることができるということが書かれているのですけれども、こういう仕組みが労働審判の中でどう位置づけられているのかというところを少しお聞かせいただければと思います。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
労基法114条の付加金は、裁判所が命じることによって初めて支払い義務が発生するという構成になっておりますけれども、今の御質問に関しまして、福田参事官から何かございますでしょうか。
○福田法務省参事官 法務省の福田でございます。御質問ありがとうございます。
労働審判法上は、付加金について何らかの特別な規定を設けているわけではございませんので、そこは労働審判委員会の中で付加金もまとめて支払わせるべきだということになれば、その旨の審判を出すことができる余地はあると思われます。
私は、裁判所から出向している身分なので、裁判官のときに実際に労働審判を20~30件ほど担当した経験がございますが、その経験から申し上げますと、労働審判手続の中で付加金を含めて審判で出すということは、実務上はあまり行われていないものと承知しております。もちろん、申立書の中では労働者の側から訴訟になった場合と同様に付加金の請求があることはあるのですけれども、これまでの私の経験では、今、申し上げたように労働審判の中で付加金の支払を命ずるということはあまりしておりませんでした。
ただ、解雇無効の心証が強い場面、労働審判委員会がそのような心証を持った場合で、訴訟に移行したら付加金の支払が命ぜられる可能性があるとの心証を得た場合には、訴訟に行った場合はそのような可能性があるということをある程度示唆した上で、調停での解決金の額に多少上乗せをするということは実務上あり得るかなと思っております。
差し当たり以上でございます。
○小西委員 ありがとうございます。
そうしますと、労働基準法114条の裁判所は支払いを命じることができるというところの裁判所というのは、裁判に限らず審判も含めている、実際にそういうケースは少ないのかもしれませんけれども、そういう前提で実務上はそういうことがないという理解でよろしいのでしょうか。
○福田法務省参事官 そこは解釈が分かれ得るかと思います。労働審判委員会は「裁判所」に当たらないという解釈をして、労働審判委員会ではそのような審判を出しませんと明言している裁判官もいますし、そこは明確にせず、今、申し上げた調停のところである程度考慮して事件を処理するという形の運用もあるやに聞いておりますので、そこは両論あり得るだろうと認識しております。
○小西委員 どうもありがとうございます。
差し当たり以上です。どうもありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございました。
福田参事官、せっかくの機会ですので、これまでの議論も含めて何かコメント等ありましたらいかがでしょうか。
○福田法務省参事官 ありがとうございます。
手続法的な観点からの整理は先ほど垣内委員がおっしゃったとおりで、私のほうで何ら付け加えることはございませんが、多少実務を経験したことのある者の立場から申し上げますと、やはり労働者側が基本的に労働審判を申し立てることがほとんどですので、それを前提としたときに、労働者側は解雇が無効であるという心証を労働審判委員会が持っているにもかかわらず解雇を受け入れるということであれば、それ相応の解決金なりなんなりというものを払ってもらわないと納得しないということになります。ですので、その名目が何かということよりも金額が幾らかというところに非常に関心が高いものと思われます。
今の実務は、解雇が無効となった場合の裁判例や実務のいろいろな積み重ねを基に、この程度の金額が相当ではないかということで運用がされています。今回、この解消金制度ができることによって、算定基準や、考慮要素というものがある程度明確になって、そこが客観視されることになるのだとすれば、より算定しやすくなって、納得のしやすい金額で労働者側が合意するということはあり得るのかもしれません。
しかしながら、労働者側がそれでもやはり納得ができないというときに、幾らか金銭の支払を条件にということではあっても、客観的に見れば解雇の事由がないにもかかわらず解雇を認めるという形をとるのであれば、それは労働審判という枠の中でやるのが適切なのかどうかというのは、実務の経験をしたことがある人間からすると若干悩ましいところがあります。そこは厳格な手続にのっとった形でしっかりと手続保障をした上で裁判所が判断するべき範疇の話ではないかという考え方も成り立つだろうと思います。
他方で、労働審判というものは、異議を出せばすぐに訴訟に移行するという性質のものですので、そうであれば、特段、労働者側の手続保障にもとるところはないのだという考え方も成り立つと思いますので、そこは両論あるのかなと私としては考えているところです。全くの私見になりますけれども、コメントできることとしては以上になります。
○山川座長 労働審判実務の御経験も踏まえまして、大変有益な御意見をありがとうございます。
ほかに運用に係る論点も含めまして、何かございますでしょうか。
中窪委員、お願いします。
○中窪委員 せっかくですから、さらに教えていただきたいのですけれども、今、実際上は3回以内と言いながら1回や2回で片付いているものがかなり多いと思うのですが、これは審判で解消金も算定するというときに、その分、3回では無理だという感じになるのか、それともそこは十分に吸収する余裕があるのか、その辺りはいかがでしょうか。
○山川座長 福田参事官、貴重な機会ですので、いろいろとコメントをお願いして恐縮ですが、どうぞよろしくお願いします。
○福田法務省参事官 今日の会議に出席させていただく前提として、最高裁の感触も聞いてみたのですが、解消金の算定というものがどういう算定基準、算定方法で行われるのかが肝になると裁判所は考えているようでして、私自身もそれはそうだろうと思います。
今回の資料でも考慮要素等を挙げていただいているのですけれども、これらは評価的な要素が多分に含まれているものなので、評価根拠事実とか評価障害事実が非常に多岐にわたって出てくると、これを整理するのはなかなか大変だろうと思います。
結局のところ、解雇当時の給与の額ですとか、どれぐらいの勤続年数だったのかとか、その後、当該解雇された方がどういう立場にいらっしゃるのかということを考えるのは、現行の解雇無効の慰謝料の算定基準や考慮要素とそれほど違いはないのかなという気もしなくはないというところもありますので、この辺りがどう整理されるのかというところに係ってくるのかなと思っております。
もう一つ、申し上げることができるとすれば、私の少ない実務経験ではありますが、特殊な雇用条件がついている事案で、残業代について複雑な計算が要求されるような局面では、3回で労働審判を成立させるのは難しいのですけれども、単純な解雇無効の事案であれば、よほど復職したいという意思が強い方でない限り、雇用契約を解消した上で幾らかもらって紛争を解決しようというお考えがあれば、3回で労働審判を成立させる、ないしは調停を成立させるということは、実務上は結構多く行われております。
ですので、私の経験では、なかなか難しいのは今、申し上げた残業代の複雑な計算ですとかどうしても復職したいという意思が強い労働者の方の場合は、なかなか3回で終わらず、その後訴訟に移行するというケースが多いという印象を持っております。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
中窪委員、よろしいでしょうか。
○中窪委員 分かりました。ありがとうございました。
○山川座長 ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
恐らく皆様の感覚で共通していると思われますのは、今労働審判手続の充実した運用がなされていると思いますので、3回以内の期日で審議を行って、かつ柔軟な判断を行うという運用には、仮にこのような制度を導入しても悪い影響が生じないようにするという点ではなかろうかと思っております。その辺りは、特に申立てをする場合の手続の選択にも運用面は関わってくることがあろうかと思いますので、そちらへの配慮、つまり労働審判手続を申し立てるのか、通常訴訟手続によるのかというのは申立人側の選択になりますので、そちらをどう考えるか、あるいは考えてもらうのかという点とも関わってくるのかなという感じがしております。
ほかはいかがでしょうか。
それでは、この点もさらに追加でお話がありましたらいただきたいと思いますけれども、これまでの議論の整理に移りたいと思います。事務局から資料1~5についての御説明をお願いいたします。
○宮田労働関係法課課長補佐 事務局の宮田でございます。御説明させていただきます。
まず資料1でございますが、資料1は先ほど述べましたとおり、これまで御議論いただいておりました法技術的論点の主な議論を整理したものでございまして、内容としましては、前回の検討会においてお配りした資料1に今回の検討会で扱う論点を記載したほか、前回の検討会までの御議論を踏まえ、一部修正を加えております。主な修正点については、分かりやすいように赤色にしております。この点を中心に御説明させていただきます。
まず、2ページ目の下のほうの「権利の消滅要件等」の欄を御覧ください。この点につきましては、前回の検討会で御議論いただきましたので、それを反映する形とさせていただいております。左側の形成権構成の欄から見ていきますと、「形成権の性質上、金銭救済請求権の権利行使後は具体的な労働契約解消金債権が発生しており、その後の事情により同債権は消滅しないのが原則」と整理されております。
これと異なる考え方としまして、1つ目の矢印の部分になりますが、「労働契約を終了させるという性質を有する特殊な金銭債権であり、権利行使後に別事由(死亡、使用者による二次的解雇等)により労働契約が終了した場合には消滅するとすることが考えられる」と整理しております。
また、この点の例外といたしまして、2つ目の矢印ですが「辞職については、労働者の意思で契約を終了させる場合として、労働者の選択により金銭の支払を受けて労働契約を終了させる本制度による労働契約の終了と同視することが法的に可能であると考えられることから、政策的見地から、辞職は例外として、債権が消滅しないと規定することは可能」と整理しております。
その下の米印では、前回の検討会で御意見をいただきました定年についての記載になっておりまして、「定年について、高齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づく継続雇用制度に照らし、労働者の地位が定年後も継続する蓋然性等が高い場合には、他の消滅事由と異なる取扱いも考え得る」と記載させていただきました。ここの記載ぶりにつきましては、これまでの御意見を十分に反映しているかなどといった観点から御意見をいただけますと幸いです。
引き続きまして、右側の形成判決構成の欄を見ていきますと、2ページ目の右下の欄でございます。「形成訴訟の基準時(口頭弁論終結時)までの間に、別の事由(死亡、使用者による二次的解雇等)によって労働契約が終了した場合には、労働契約解消金の支払を認める判決をし得ないのが原則」と整理されております。この例外としまして、矢印の部分で記載しております辞職に関する部分と、3ページ目に行きまして、上の米印で記載しております定年に関する部分につきましては、先ほど左側の形成権構成についての説明と同様になっております。
右側の下の米印としまして、「なお」の部分ですが、「なお、以上と異なり、過去に無効な解雇があったことが形成原因であるとして、形成訴訟の基準時までの間に別の事由によって労働契約が終了しても、労働契約解消金の支払を認める判決をし得るとすることも可能」と記載しております。この部分につきましては、前回の検討会で、左側の形成権構成で、原則として上のほうで整理されている、一度発生した労働契約解消金はその後の事情により消滅しないとする考え方につき、改めて御意見が出されましたことを受けまして、右側の形成判決構成におけるそれと同様の考え方として成り立ち得るものとして記載している文になっております。この記載部分につきましても、これまでの御意見を十分に反映しているかなどといった観点から御意見をいただけますと幸いです。
続きまして、3ページ目の「2.労働契約解消金の性質等」に移りたいのですが、その前に資料3を御覧いただければと思います。
資料3は、前回の検討会の資料3とほぼ同内容ですので説明は省略させていただきますが、労働契約解消金の内容・考慮要素等についてのこれまでの御議論を整理したものとなっております。
それでは、資料1の3ページにお戻りいただければと思います。
3ページ目の「2.労働契約解消金の性質等」の部分につき、追記した赤字の部分が4ページ目にかけてございます。これにつきましては、先ほどの資料3の内容を資料1のこの部分に入れ込んだものになっております。そのため、これまでの資料の内容に実質的に加わった部分はございませんので、説明につきましては省略させていただきます。
資料2は、労働契約解消金の支払いと労働契約の終了についてまとめた資料になっております。前回の検討会の資料2と同内容になっておりますので、これにつきましても説明は省略させていただきます。
資料4は、形成権構成を例に取りまして、有期労働契約に関する議論を整理した資料になっております。こちらにつきましては、前回の検討会の資料4から、これまでの御議論を踏まえ一部修正を加えております。主な修正点につきましては、分かりやすいように赤色にしております。この点を中心に御説明させていただきます。
まず、前回の検討会において有期労働契約の契約期間中の解雇についても、本制度の対象とすることが考えられる旨の御意見をいただきましたので、真ん中の縦軸として「有期労働契約の契約期間中の解雇の場合」を追加しておりまして、上のほうの欄の「権利(形成権)の行使要件」の欄に要件として①~③を記載しております。
①として有期労働契約の労働者であること、②として使用者による契約期間中の解雇の意思表示がされたこと、③として②の解雇がやむを得ない事由がある場合であると認められないこと(無効であること)と記載しております。
なお、右側の有期労働契約の雇止めの場合の行使要件④も赤色になっております。こちらにつきましては、より正確と思われる記載に修正いたしているところでございます。④として使用者が契約更新を拒絶したことと記載させていただいております。
1ページ目の下のほうの「権利の消滅要件等」の欄につきましては、左側の無期労働契約と右側の有期労働契約のいずれにつきましても、冒頭のところで「形成権の性質上、金銭救済請求権の権利行使後は具体的な解消金債権が発生しており、その後の事情により同債権は消滅しないのが原則」という形成権構成の原則としてこれまで整理されている考えを追記いたしております。
右側の有期労働契約の欄を見ていただきますと、1つ目の矢印として先ほどの原則とは違う考え方として、前回までの御議論を踏まえて「労働契約を終了させるという性質を有する特殊な金銭債権であり、権利行使後に別事由(死亡、使用者による二次的解雇、期間満了等)により労働契約が終了した場合には消滅するとすることが考えられる」と整理いたしております。
また、この点の例外として2つ目の矢印になりますが、「辞職や労働者が更新の申込みをせずに期間満了を迎えた場合については、労働者の意思で契約を終了させる場合として、労働者の選択により金銭の支払を受けて労働契約を終了させる本制度による労働契約の終了と同視することが法的に可能であると考えられることから、政策的見地から、辞職等は例外として、債権が消滅しないと規定することは可能」と整理しております。
今読み上げたところのうち、赤字になっている1ページ目の「労働者が更新の申込みをせずに期間満了を迎えた場合」という部分は分かりにくくて恐縮ではございますが、この部分につきましては、仮に労働者が更新の申込みをした場合には、それを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合を前提としているものとなっております。
このような場合を辞職と同様に考えてよいかにつきましては、前回の検討会において論点となっていたところですが、否定的な御意見がございませんでしたので、ひとまずこのような整理とさせていただいておりますが、この点につきましても御意見をいただけますと幸いです。
2ページ目の「2.労働契約解消金の性質等」の部分の修正点につきましては、基本的には資料1と同様に資料3の内容を入れ込んだものになっておりますので、全体的な説明は省略させていただきます。
個別に御説明いたしたい部分としましては、2ページ目の一番下の「考慮要素」の欄のうち、右側の有期労働契約の欄にあります一番下の行ですが、①として、現在の地位の価値に関連する要素につきまして、3ページ目の右側の上から2つ目のポツとして、「地位継続の可能性を反映した要素として、解雇の場合には『残りの契約期間』『更新が期待される程度』」と記載しておりまして、この点は前回の検討会で無期労働契約とは違う考慮要素として考え得る旨の御意見をいただきましたので、このようにまとめさせていただいております。
最後に資料5に移りまして、資料5は有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めが無効になる場合の労働者の地位の状況についてまとめた資料になっておりまして、前回の検討会の資料5の一部とほぼ同内容ですので、これにつきましても説明は省略させていただきます。
資料1~資料5につきまして、御説明は以上となります。
○山川座長 ありがとうございました。
前回、様々な御意見をいただきましたので、これまでの資料に赤字で修正を加えていただいております。それでは、ただいまの御説明に関しまして、何か御質問、御意見等ございますでしょうか。
神吉委員、お願いします。
○神吉委員 ありがとうございます。
資料1の2ページ目で確認したいことがあります。権利の消滅要件について、基本的には労働契約上の地位がなくなっている場合は消滅するけれども、辞職を別扱いすることについて確認をさせてください。
まず、権利行使後の別事由として二次的解雇があったときを考えます。第一解雇があって、その解雇に関して有効無効の争いないし解消金の請求をした後に、第二解雇が有効になされると、既に第一解雇について有効無効であるとか解消金に関しては考慮できなくなるということだと思います。労働者が争うとすれば、第二解雇が本当に有効なのかどうか、それで解消金が取れるかという問題の検討に入っていくので、第一解雇についてはもう争えないことになると思うのですけれども、使用者が第一解雇は争いがあって合理的な理由はなかったかもしれないとか、手続的な瑕疵があるかもしれないと考えて第二解雇の予告をした後に、予告期間中に労働者側から辞職をした場合は、第二解雇は効力を発生していなくて、労働者側からの辞職になると思います。そうすると、第一解雇についての争いは引き続きできる、債権としては消滅しないので争えるということでいいでしょうか。
使用者としては、少なくとも第二解雇は有効だということを主張したいと思うのですけれども、第二解雇は効力が発生していないので、争いとしてはやはり第一解雇の有効無効ないし解消金の額を争うしかない。第二解雇の予告をしたという事情は特に考慮されなくなるという理解でよろしいでしょうか。
○山川座長 ありがとうございます。
御質問を含んでいましたが、事務局から何かありますか。第二解雇がなされて、予告期間中に辞職した場合の取扱いということでしょうか。
○宮田労働関係法課課長補佐 今の御指摘いただきました辞職の場合につきましては、事務局の理解としましては、予告にかかわらず辞職された場合と基本的には同様に考えるという整理をさせていただいておりました。
その前提といたしまして、一次的な解雇がありまして、それが無効だということで契約解消金を請求し、その後、二次的解雇があった場合、その二次的解雇も無効だとなったときに、対象とする解消金債権が一次的解雇を原因として発生しているものなのか、二次的解雇が原因として発生しているものなのかということにつきましては、私のほうでは厳密に整理ができていないところでございますので、御知見等をいただけたら幸いでございます。
○山川座長 ありがとうございます。
神吉委員、何かございますか。
○神吉委員 ありがとうございます。
最後の部分は、第一解雇も無効・第二解雇も無効だった場合にどうするかという別問題を付け加えてくださったということですか。
○山川座長 そのようなことでよろしいですか。
○神吉委員 ありがとうございます。
○山川座長 聞かれたのは二次解雇が有効な場合でしょうか。
○神吉委員 質問の時念頭においていたのは、第二解雇が有効になりそうな場合でした。効力が発生していないので解雇ではないことにならざるをえないと思うのですけれども、そうすると労働者としては、辞職をしたほうがいい、しないといけないという状況になるのかなという気はしました。
○山川座長 ありがとうございます。
恐らく政策的見地からどうするかという前提に立ってのお話ですので、おっしゃったように二次解雇が有効であっても、その効力が発生する前に辞職してしまえば、政策的見地からということを貫いたとしたら、一次解雇によって発生した形成権が生きているので、それも補償の内容をどうするかという問題はありますけれども、権利自体は消滅しないということになりそうで、それがよいかどうかというお話かもしれないですね。
○神吉委員 そうですね。そういう問題が起き得るかと考えましたので、辞職と権利消滅要件の組み方の問題かもしれません。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかに何かございますか。
今の点は政策的判断ということで、転職の妨げにならないようにという御議論があってのお話かと思います。そういう政策的見地からの選択もあり得るという形で記載していただいております。その前に書いてあることとの関係では、労働契約を終了させるという性質を有する特殊な金銭債権であるということをどの程度考慮するかということにも関わってくるのかなという感じがしております。形成権一般のお話と、契約の終了ということに結びつけられている金銭債権であることとをどの程度重視するかによって、政策的な判断も異なってくるのかなという感じがいたしております。また、辞職というものをどう考えるかにも関わりがあるのかもしれません。
まだ私も考えはまとまっていないのですけれども、労働者が単に辞職した場合と紛争解決の手段として契約の終了を選択した場合の違いをどう考えるかが、ある意味でこの制度を創設する場合のクリティカルなところではないかと思います。紛争状態の継続した契約を終了させるということと、単なる自由意思によって辞職することの違いをどう考えるかについてのいわば政策的判断の問題なのかなと感じがしております。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 どうもありがとうございます。
非常に難しい問題を御指摘いただいた感じがしているのですけれども、先ほども御説明がありましたように、辞職は例外であるということを貫いて単純にそれを適用すると、二次的解雇は結果的には有効であると評価すべき解雇であるような場合であっても解消金の支払い請求権は存続することになるということで、しかし、恐らくそれは不当なのではないかという問題意識が背景にあるということではないかと思います。
確かにそういう側面もあるという感じもいたしまして、それでは、その場合について何らか対応するとすればどういう対応が考えられるのかを考えるといたしますと、辞職してそれで労働契約は有効に終了しているということではあるのだけれども、それによって解消金が消滅するのかしないのかということは、辞職後に効力を生ずべきであった二次的解雇が有効であったのかどうかに係ることになるということで、解消金請求権が消滅するかどうかというのを実際には効力が生ずることがなかった二次的解雇の有効性を改めて判断して、それが無効であれば解消金請求権はもちろん認められるし、有効であった場合には認められないのだという規律にすることが対応としては考えられるということなのだろうと思います。そうしたときに、その規律がどの程度政策的に望ましい規律なのかということが問題になるのかなと思われます。
一方では、辞職で労働契約自体は終了していて、あとは解消金の問題だけが残っているということであれば、そこで二次的解雇の有効性まで併せて裁判所等で審議しなければいけないということになるのは、かえって双方にとって負担も重いのではないかということも考えますと、それは捨象して辞職の場合は例外ということで一貫させるという方向になるかもしれません。
しかし、二次的解雇の有効性が全体の妥当な解決という点では重要ではないかと考えるのであれば、そこをなおきちんと審議した上で判断すべき問題であるということになるのかなという感じもいたしますが、辞職のほうは認めるという政策的な判断というのが、新しいスタートを切ること、背中を押すということで促すということだとしますと、その経緯に二次的解雇があって、本当はそちらで解雇されてしまったのではないかというところが疑わしい面があるにしても、辞職でほかのところに移っていくということで、労働関係自体の存続についてはもうそれで解決されて、あとは金銭の金額評価という問題に帰着すると割り切るという政策判断も一応あり得る判断ではあるのかなという感じもいたします。どちらがいいかというのは難しい問題だと思いますけれども、差し当たりの感想を申し上げます。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
神吉委員、よろしいですか。何かございますか。
○神吉委員 今、整理してくださったとおりかと思います。辞職を債権の消滅か継続という場面で場合分けするのもかなりややこしい話になると思いますので、消滅しないものとして扱うのだったら、それはそれとして、解消金の算定でどうにかするというのが実際には取りやすい方法だと思っております。
ただ、そういう観点で現在の要素を見たときに、それにフィットするものがないように思いました。つまり、二次的解雇という紛争が生じてからの出来事を反映させるような要素が今のところは挙がっていない。概念的に考えると、もしかすると①の現在の地位の価値、地位継続の可能性や補償を得る必要性に関連していくのかもしれませんが、そこは割と客観的な要素だけが乗っていて、紛争周りの状況は③「紛争に寄与した」という点で関連する要素に入りそうなところなのですが、これは従来はどちらかというと過去の事情を想定してきましたので、そういう権利発生後の事情を反映するような入れ物がこの要素の中にあってもいいのかなという印象を持ったところです。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかに何かございましたらよろしくお願いします。
鹿野委員、お願いします。
○鹿野委員 今の点に関しては特段私から付け加えることはないのですが、解消金を判断する基準時ないし考慮要素についてです。解消金の中心的な部分が契約終了後の将来得べかりし賃金等の財産的価値についての金銭的補償とすると、無効な解雇がなされて訴訟その他の手続が始まって、訴訟であれば口頭弁論終結ということがあるのでしょうけれども、そのときに先ほど神吉委員が出してくださった例で、二次的な解雇が効力を生じたわけではないけれども、解雇事由が発生していたということですよね。そうすると、その場合に、そういうことがなかった通常の事態と比較すると、将来得べかりし利益は恐らく民事的な損害賠償的な発想で行くと変わるような気がします。それを解消金というところに考慮するのかどうかということなのかなと考えておりました。
それと、先ほどの辞職を政策的に例外扱いするのかというところとの兼ね合いをどういうふうに調整するのかという問題なのかもしれません。
もう一点質問をさせていただきたいのですが、資料1の3ページの左上のところに今回米印がつけられています。定年後の話なのですが、定年について高齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づく継続雇用制度に照らしてということで、要するに、定年年齢というのは定められているけれども、定年前の無効な解雇がもしなかったとすると、定年後の継続雇用についてかなりの期待可能性があったという場合を問題としていらっしゃるのだろうと思います。
この場合、もしバックペイとしてはあくまでも定年年齢までということになるとすると、定年後の継続雇用の期待可能性があって、得べかりし利益的なものが考えられたはずなのに、それが失われるということになりまずいのではないか、その点を考慮すべきではないかというお考えだと理解してよろしいですか。ここの趣旨について確認をさせていただきたいと思います。特にバックペイとの関係についても御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○山川座長 ありがとうございます。
多分この赤字部分は前回の私の発言を踏まえてつくっていただいたのかと思いますが、事務局から何かありますか。
○宮田労働関係法課課長補佐 事務局の宮田でございます。
この記載の整理の趣旨といたしましては、先ほどの御指摘に絡めて御説明いたしますと、解消金は将来得べかりし利益も考慮するとされているところ、将来得べかりしということにつきましては、解消金の支払いにより労働契約が終了するという立てつけになっておりますので、その解消金の支払いにより労働契約が解消した以降、本当なら解消せずにいたとしたときの得べかりし利益を考えていると理解しております。
そうしますと、先ほど御指摘のあったバックペイとの関係についてなのですけれども、基本的には、例えば、地位確認とバックペイの請求と解消金が併合提起されていたと仮定しますと、地位確認が仮にされて、それが継続雇用の地位を前提として地位確認がされたということになりますと、併合提起されているバックペイにつきましては、地位確認されるところまでの継続雇用後のものも一部含まれることになり得るのかなと考えております。
お答えになっているか不安ではございますが、以上になります。
○山川座長 鹿野委員、いかがでしょうか。
○鹿野委員 ありがとうございます。
そうしますと、定年後に継続雇用の期待可能性があるという場合においては、その分についてもバックペイの支払いを請求することができる。もちろん、前提として無効な解雇があったということがありますが、その場合にバックペイは請求できる。そうすると、定年年齢に達した後、その期待可能であった期間の途中で解消金の制度が効力を生じて、労働契約がその解消金請求権の行使の効果としてその支払いにより終了するということもある。つまり、金額は多少違ってくるかもしれませんが、解消金請求権は残るという御趣旨なのですね。
○宮田労働関係法課課長補佐 今おっしゃった趣旨を前提に記載させていただいています。
○鹿野委員 ありがとうございます。すっきりしました。
○山川座長 ありがとうございました。
私のほうでも前回の発言を座長としてではなく補足しますと、恐らくさっき鹿野委員の言われた判断の基準時の点とも関わってくるかと思いますけれども、これは事案によって異なるのですが、定年によって労働契約が終了したとしても、再雇用についての合理的期待のある場合をどう考えるかという問題でありまして、形成判決構成の場合はいろいろな考え方があり得るのですけれども、もし口頭弁論終結時における形成原因を考えるとすると、新たなというべきかどうか分かりませんが、定年後の再雇用について地位確認が可能になる。つまり、再雇用という労働契約が新たに成立することが形成原因の一つを構成するようになるということになるかと思います。
形成権構成の場合は、恐らく先ほどのお話のように、当初の解雇の時点で形成権としては一旦発生していることになると思いますが、それが定年によって従前の契約が終了することによって一旦消滅するかもしれないけれども、新たに再雇用がなされ得るであろう、地位確認がなされ得るであろうとされる場合には、使用者側が争っている限りは再雇用契約について新たな形成権の発生を考えるということで、判断の基準時をどう考えるかによって異なってくる可能性があるように思われます。
ただ、この点は最高裁判例があって、合理的期待があって再雇用契約の内容が特定されているような場合には地位確認を認め得るということですけれども、それも事案によりますので、ここは最終的にどうなるかは解釈問題で、制度をつくるとしても条文に書くような問題ではないのではないかと思っております。
いずれにしても、判断の基準時はこの検討会ではこれまで明確には検討してきていないようですけれども、地位確認訴訟の場合は、明らかに口頭弁論終結時の労働契約の存否を考えるのですが、形成権構成だとすると、形成権が発生しているかどうかは、例えば当初の解雇の時点で考えて、形成判決の場合は、両方あり得るのですけれども、一般的な考え方は例えば形成原因の有無は口頭弁論終結時で考えることが、必然的にはないのですが、多いのかなと思います。そのように、形成権構成によると、地位確認の訴えの場合とやや基準時がずれてくる。結果に影響するかどうかはまた別の問題ですけれども、そんな感じがしたところです。これは有期契約の雇止めの場合でも同じように問題になるかと思います。
個人としてのコメントを言ってしまいましたけれども、ほかに御質問、御意見等ありましたらどうぞよろしくお願いします。
中窪委員、お願いします。
○中窪委員 だんだん複雑になって頭もついていかないのですけれども、辞職について、そもそもなぜこういう形で辞職を例外にすることになったのかというと、例えば、こういう形で解消金を求めて争っているときに、どこかで別の良い勤め先があったときに、ここで辞めたらもらえなくなってしまうので無理にしがみついていようとかいうのを促進するのはよくないだろうという判断があったと思うのです。
その関係で、二次的解雇があった場合はどうするかとなると、そもそもの例外を認めた狙いと、その状況における利害関係をいろいろと調整していかないといけないので、このような表で議論するには難しい段階に来ているのかなと思いました。もう少し文章で説明して、そもそもこういう趣旨であるが、こういうときにはこういう考慮が必要になるという、もう少し細かい分析をする段階に来ているのかなという印象を持ちました。
定年後についても同じでありまして、本来こういう構成であればこうなるのだけれども、定年については、さっき山川座長がおっしゃいましたように、その後の再雇用そのものが、地位確認が認められるほどの特定性があるのか、ないのかということによって違いますし、その辺りになると、いろいろと説明しないと大変だなと思ったのが一つです。
それから、別のことになりますが、資料4の1ページ目で、言葉だけのことですけれども、下から3行目に付け加えられました、「辞職や」の後に「労働者が更新の申込みをせずに期間満了を迎えた場合」とあるのが気になりました。これはやや不正確でありまして、右の上のほうに①~⑤まであるうちの③に当たりますけれども、契約期間中または期間満了後遅滞ない更新の申込みの意思表示ということで、満了した後に申込みをすることも遅滞なければ認められているので、ちょっとどうかなと思ったところです。
また、条文でこういう形で申込みと書かれましたので、それに沿ってこういう書き方になっておりますけれども、もともと19条は判例法理を条文化したもので、申込みといっても厳密なものではありません。雇止めをされたこと、あるいは雇止めをするぞと言われたことに対して抗議したとか、そういうことで十分というのが判例で、多分そう解釈されているはずなので、その辺りは言葉遣いとして若干の注意が必要かなと思いました。
もう一つ、そこの項目で「権利の消滅要件等」と見出しが書いてありまして、これは資料1でもそういう言葉になっていると思いますけれども、どういう要件がそろえば消滅するということでもないと思いますので、「消滅要件」というのは「権利の消滅等」くらいでいいのではないかと思いましたので、補足させていただきます。
○山川座長 ありがとうございます。
申込みの点は確かにおっしゃるとおりだと思いますので、表記を再検討していただければと思います。恐らく権利の消滅要件も、先ほどのように再雇用の場合はどうなるかという辺りも含むとなると、要件に限らないお話もあるかと思いますので、御異論がなければこれも要件を取ってしまっていいのではないかと私も思います。ありがとうございました。
今回、赤字で有期契約の期間途中の解雇等についても書かれております。この辺りは要件事実的に考えるといろいろな議論が出てきて、例えば請求原因の段階で有期であることを労働者側は主張・立証する必要はないはずなのですけれども、その辺りは実体法的な観点ということで記載されている。むしろ、通常の解雇訴訟とか雇止め訴訟の主張・立証責任自体に影響を与えることがないということが重要なのかなと。実体法上、別個、例えば権利の発生要件とか形成原因について独自の主張・立証事項が加わってくるということは、特に補償金の内容等についてはあり得るかと思いますけれども、解雇無効とか雇止めの違法ということについては、実体法上、特段の変更はないということでよろしいのかなと、先ほどの中窪委員のコメントを聞いて思ったところです。
ほかに何かございますでしょうか。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 先ほど神吉委員の問題提起に対して事務局のほうからさらに付け加えられた問題に関して、つまり二次的解雇もまた無効であるという場合の取扱いに関してなのですけれども、複数の解雇の意思表示がされていて、いずれもそれが無効であるという場合に、例えば形成権構成でいきますと、そのままでは全ての無効な解雇について形成権が発生するということになりそうで、相互間の調整をする必要がある感じがいたします。
仮に形成権そのものが発生するとして、形成権行使をすると一つ金銭救済請求権が発生するとしたときに、ほかの形成権も行使できることになるのかどうかの辺りも整理する必要があるのかなと、先ほどの御発言を伺って感じました。
十分に検討はできていないのですけれども、どうも2つとか3つとか解消金請求権が発生するというのは、制度の解消金を受け取って労働契約を終了するということからすると、労働契約自体が一つですので、幾つも解消金請求権があって、それを全部受け取るという話になるのかというと、それは少し趣旨にそぐわないような感じが現時点ではしております。
そう考えますと、複数の無効な解雇があっても1回しか請求ができないことになりそうなのですけれども、その1個が最初の無効な解雇なのか、最後の無効な解雇なのか、労働者が選ぶのかといった辺りについて、なお考える必要があるのかなという感じがいたしました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
有益な御指摘ありがとうございました。確かに形成権構成だと、これまでは無効な解雇によって形成権が発生すると考えてきたかと思いますけれども、その辺りをどう考えるかという問題につながってくるのかなと思います。ありがとうございます。
ほかに何かございましたらよろしくお願いします。全体にわたってで結構でありますけれども、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
もう時間もそれほどありませんので、それでは、これまでいただいた御意見等を踏まえまして、事務局で次回までにまた資料の修正等をお願いいたします。特段、御意見等がございませんでしたら、少し早いですけれども、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
本日は、福田参事官にも御出席、御発言をいただきまして、大変ありがとうございました。
次回の日程等について事務局からお願いします。
○宮田労働関係法課課長補佐 次回の日程につきましては、現在調整中でございます。確定次第、開催場所と併せて御連絡いたします。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、これで第13回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を終了いたします。
皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。
照会先
労働基準局労働関係法課
(代表電話) 03(5253)1111 (内線5370)
(直通電話) 03(3502)6734