2021年4月20日 第10回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」 議事録

日時

令和3年4月20日(火) 17:00~19:00

場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省専用第21会議室(17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
磯博康、小山勉、杉薫、髙田礼子、高橋正也、
嵩さやか、豊田一則、西村重敬、野出孝一

厚生労働省:事務局
小林高明、西村斗利、児屋野文男、中山始、本間健司 他

議題

  1. (1)脳・心臓疾患の労災認定の基準について
  2. (2)その他

議事

議事録


○本間職業病認定対策室長補佐 それでは、ただいまから第10回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中会議に御出席いただき、誠にありがとうございます。今回は、水島委員が御欠席で、小山委員、杉委員、髙田委員、高橋委員、嵩委員、豊田委員、野出委員の7名の方がオンラインでの参加となります。
初めに、事務局に人事異動がございましたので御紹介いたします。職業病認定対策室長の児屋野でございます。
○児屋野職業病対策認定室長 児屋野です。よろしくお願いいたします。
○本間職業病認定対策室長補佐 そして、私は職業病認定対策室室長補佐の本間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。なお、補償課長の西村は所用により遅れておりますが、用務終了次第参加となりますので、あらかじめ御了承ください。
検討会に先立ち、傍聴されている皆様にお願いがございます。携帯電話などは、必ず電源を切るかマナーモードにしてください。そのほか、別途配布しております留意事項をよくお読みの上、検討会開催中は、これらの事項をお守りいただいて傍聴されるようお願い申し上げます。また、傍聴されている方にも、会議室に入室する前にマスクの着用をお願いしておりますので、御協力をお願い申し上げます。万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退室をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。写真撮影等はここまでとさせていただきます。これ以降の写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。
次に、本日の資料の御確認をお願いいたします。資料1「第10回における論点」、資料2「労働時間と脳・心臓疾患の発症等に関する主要な疫学調査の状況」、資料3「論点に関する医学的知見」、資料4「第9回検討会の議論の概要」でございます。本検討会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の御確認をお願いいたします。
それでは、磯座長、以後の議事の進行をよろしくお願いいたします。
○磯座長 では、資料1の論点に沿って検討を進めたいと思います。今回は、前回の第9回に引き続いて、長期間の過重業務における労働時間の評価等について、医学的知見を踏まえた検討を行います。次に、労働時間以外の負荷要因のうち、勤務時間の不規則性について検討を行い、最後に対象疾病及び疾患別の概要の検討を行うことといたします。
初めに、論点1の長期間の過重業務における労働時間の評価等について、事務局から説明をお願いします。
○西川中央職業病認定調査官 本日の検討会では、先ほど磯座長からも御説明がありましたように、長期間の過重業務における労働時間の評価、それから労働時間以外の負荷要因のうち勤務時間の不規則性、この2つが第9回検討会から引き続きということになります。そして、これまで御議論いただいた事項の整理となる対象疾病と疾患別概要、この3点を論点として予定しております。論点ごとに、事務局から区切って御説明させていただきまして、先生方に御議論いただきたいと考えております。
なお、本日の資料のうち、資料1から資料3については論点の説明の中で御説明いたします。資料4は第9回検討会の概要です。内容の御紹介は割愛しますが、適宜御参照いただければと存じます。
それでは、論点1、長期間の過重業務における労働時間の評価等についてです。資料1の1ページ目に、いつものように論点をまとめております。次の2ページ以降、具体的な論点という形になっております。2ページと3ページに論点1の具体的な論点、4ページ目は論点Bの総合評価のイメージ事例をお示ししております。また、資料2と資料3については、論点1に関する医学的知見となっております。資料1については第9回のものとほとんど変わっておりませんので、繰り返しになる部分もありますが、要点だけ御説明させていただきます。
資料1の2ページ目を御覧ください。論点Aですが、現行認定基準における労働時間の評価についてどのように考えるかというものです。現行認定基準では、労働時間を疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と整理をした上で、①と②の所ですが、発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるという評価ができること。そして、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できるということとしております。
これについては、平成13年の検討会の報告で、脳・心臓疾患の発症あるいは死亡と睡眠時間に関する疫学調査を見た上で、長時間労働に着目した場合、1日4時間から6時間程度の睡眠が確保できない状態が継続していたかどうかという視点で検討しまして、1日6時間程度の睡眠が確保できない状態というのが月80時間を超える時間外労働がある状態でして、1日5時間程度の睡眠が確保できない状態というのが、月におおむね100時間を超える時間外労働がある状態ということで、先ほどの①②の基準を導いています。
今回の検討のために収集した医学的知見でも、第3回以降にいろいろと見ていただきましたが、多くの文献で、睡眠と脳・心臓疾患の発症又は死亡との関係については、6時間未満あるいは6時間以下の睡眠時間と脳・心臓疾患の発症又は死亡との間に有意な関係があるという知見が得られているところです。
また、2ページ目の右側を御覧ください。こちらも第3回の資料の再掲となりますが、社会的な統計の結果としても、最新の平成28年社会生活基本調査の結果において、食事等の時間、すなわち生活していくために必要不可欠な食事や身の回りの用事、通勤といった時間については5.3時間ということで、平成13年の報告書で整理したものと同程度ということになっております。この調査結果からは、現時点においても、1日6時間程度の睡眠が確保できない状態というのは、おおむね月80時間を超える時間外労働がある状態ということになります。
一方で、労働時間そのものと脳・心臓疾患の発症又は死亡との関係について、秋に新しい疫学調査の結果が出てきておりまして、第9回の検討会において、座長の磯先生からもいろいろと御説明、御指摘を頂いたところです。磯先生の御指摘も含めまして、近年の労働時間と脳・心臓疾患の発症又は死亡に関する主要な疫学調査の状況について、資料2にまとめさせていただきました。資料2については、少し時間を取って御説明させていただきます。
資料2を御覧ください。通しページでは61ページからです。なお、資料3については別途御説明はいたしませんが、資料2の文献をこれまでの検討会に提出してきたものと同様に表の形にまとめたものとなっております。資料3においては、新しく提出する文献や過去の検討会資料から、表の中身を一部修正したものは色付きのセルで表示しております。後ほど、適宜御確認いただければと思っております。
資料2に沿って御説明いたします。まず、第1段落の最後の部分で8つの文献を御紹介しております。このうち3つ目のHannerzら(2018)というのは、脳と心臓で2つの文献がありまして、ここに掲げたものが合計で8つということになります。また、Hayashiら(2019)というものがございますが、こちらは、第5回以降、国立がん研究センターの日本のコホートとして御紹介した文献となります。第9回に磯先生から御紹介があった文献は、最初のO'ReillyからHayashiまでの文献ということになりますが、更に2文献を追加して、資料2では御紹介しております。
ここに2つ書いているLiらとDescathaらの2020年の文献ですが、ILOとWHOが仕事に関連する疾病の負荷を共同で推定するというシリーズにおける文献でして、先日、事務局にも全国労働安全衛生センター連絡会議さんから取り上げてほしいという旨の御要望を頂いたところです。事務局としても内容を確認しまして、内容はこれから御説明いたしますが、第9回に磯先生から御紹介のあった文献を合わせてメタアナリシスを行うというもので、ある程度規模の大きな主要なものとして、これらも追加して御紹介するところです。
具体的なそれぞれの疫学調査の御紹介は、61ページの2段落目からということになります。O'Reillyの文献です。こちらは北アイルランドの労働者41万人ということで、非常に大規模なコホートで、8.7年間追跡したというコホートになっております。全体の分析では、どの労働時間も総死亡リスクとの有意な関連はなかったということですが、職業階層別の分析をしたところ、単純労働職の男性で週55時間以上の労働をしている方において、総死亡あるいは全心血管疾患(虚血性心疾患と脳血管疾患を合わせたもの)について、あるいは虚血性心疾患、脳血管疾患のそれぞれについて、死亡リスクが有意に高かったという結果になっております。
62ページ、Kivimäkiらの2015年の文献です。Kivimäkiらは、先ほどのO'Reillyの研究を含め、冠動脈性心疾患に関する22件の研究及び脳血管疾患に関する14件の研究を合わせてメタアナリシスを行ったということです。こちらは発症の相対リスクを検討したということで、週の労働時間が35時間から40時間の群を対照群として、これを週の労働時間が55時間以上の群と比較したということです。その結果、心疾患の相対リスクが1.13、脳血管疾患の相対リスクが1.33ということで、これらの発症リスクが有意に高かったという結果になっております。ただし、ここで分析対象とした研究のうち、心臓の17研究、脳の13研究は、労働時間に関する研究としては公開されていないものを、Kivimäkiらが各研究者にデータ提供を依頼して分析を行ったというものです。また、この論文の付録において、このKivimäkiらが、今回収集の対象とした研究の質についても自ら評価をしていますが、先ほどの非公開の研究のうち、心臓に関する7研究、脳に関する6研究については、その研究の質は高くないという記述がある点にも留意が必要かと思います。
続いて、63ページのHannerzらの研究です。今度は新しい別のコホートということで、デンマークの労働者14万5,861人を平均7.7年間追跡したコホート研究となっております。まず心臓の方ですが、週の労働時間が32時間から40時間を対照群として比較したところ、週48時間を超えて労働する群について、虚血性心疾患の発症リスクに有意な差はなかったという結果になっています。ただし、この中でも低い社会経済的地位の層に限ると、発症リスクは有意に高かったという結果になっております。そのほかの層においては、他の社会経済的地位であるとか、男女別であるとか、そういったいずれの層でも有意な関係はなかったという結果です。
次に「さらに」からの段落は、同じような分析の脳血管疾患についての研究でして、週55時間を超えて労働する群について分析されておりますが、脳血管疾患の発症リスクに有意な差はなかったということです。相対リスクは0.89で、95%信頼区間が1をまたぐという結果になっております。
その次に、Virtanenらが、先ほどの2015年のKivimäkiと2018年のHannerzの両方の研究を合わせてメタアナリシスを行ったというもので、発症の相対リスクを週の労働時間が35時間から45時間と55時間以上の群で比較したものです。その結果、55時間以上の群では、心臓も脳もそれぞれ発症リスクが有意に高かったという結果になっております。
次のHayashiらは日本の別のコホートになりまして、国立がん研究センターで行われた日本で唯一の大きなコホートになります。40歳から59歳の男性約1万5,000人について20年間追跡したものとなっております。こちらの結果ですが、1日11時間以上の群で、急性心筋硬塞の発症リスクは有意に高かった一方で、脳卒中の関係性は有意な差はなかったということです。そして、これらを合わせた全心血管疾患においても、発症リスクに有意な差はなかったという内容となっております。
Liらの2020年の報告では、Kivimäkiら、Hannerzら、Hayashiらの研究を全部合わせてメタアナリシスを行ったというものになっております。このLiらの方は、虚血性心疾患の相対リスクを分析したもので、結果としては55時間以上の群で、虚血性心疾患の発症と死亡について、それぞれリスクが有意に高かったという形でまとめています。
64ページのDescathaらは、KivimäkiらやHayashiらの研究などを合わせてメタアナリシスを行ったもので、こちらは脳血管疾患のメタアナリシスになります。こちらは、55時間以上の群で脳血管疾患の発症リスクが有意に高かったという一方で、死亡リスクには有意な差がなかったという結果になっております。ただ、発症リスクの分析の対象となったものの中で、ボリュームがあるFadelらの研究については、週55時間以上という分析がされているものではなくて、1日10時間以上の労働を年50日以上しているかがイエスであれば長時間労働であるということで、少し指標が違う点に留意が必要ではないかというような疫学調査の内容となっております。
労働時間と脳・心臓疾患の発症あるいは死亡に関する知見について、第9回のときには、発症と死亡でも、特に発病の捉え方という点で質が違うところもあるのではないかという御指摘もあったところですが、いずれにしても、医学的知見の状況については、このような状況となっております。このような医学的知見や支給決定事例あるいは裁判例等も踏まえて、労働時間だけで業務と発症との関連性が強いかどうかを判断する水準についてのAの論点、あるいはそれに至らない場合に関するBの論点について、御議論を頂きたいと思っております。
続きまして、Bの論点について御説明いたします。資料1の3ページ目を御覧ください。労働時間だけで業務と発症との関連性が強いとする水準に至らない場合でも、労働時間の状況と労働時間以外の負荷要因の状況を総合的に考慮して、適切に判断していく必要があるということについて、当然のことではありますが、改めて示しておくことが必要ではないか。また、その際、どのような場合に関連性が強いと判断できるのかについて、なるべく具体化することはできないか。例えば、時間数とそれ以外の負荷要因の組合せで、こういう場合は強いということが示せるのかどうか。示せないとしても、考え方を示すことができないか。そういった考え方を示すに当たって、疫学調査の結果についても考慮することが必要ではないか。このような論点で、たたき台を示させていただいております。
こちらのたたき台は、具体的な支給決定事例を踏まえて御議論いただいた際に、特に労働時間以外の負荷要因については、労働時間と組み合わせたとしても、なかなか数字として定量的にこれならいいというようなことを示すことは難しいのではないか。むしろ、定性的な考え方を示すことがよいのではないかという御指摘を踏まえた形のたたき台とさせていただいております。
ただ、たたき台だけでは少し分かりにくいというところもあろうかと思いますので、4ページにイメージとしての事例を示しております。事例1は、時間外労働が月71時間で、深夜勤務、不規則な勤務があり、そして拘束時間が長かったという事例です。事例2は、時間外労働が月64時間で、出張の多い業務であったという事例です。第9回のときにも御説明いたしましたが、この事例自体はイメージとして事務局で作ったものですが、事例の中で評価している数字の状況、負荷の状況については、実際の認定事例と同じものでございます。
このように、労働時間だけでは認定に至らない、他の負荷要因を考慮して認定した事案については、1か月当たりの時間外労働は月65時間から70時間以上のものが多く、その上で拘束時間などの一定の時間以外の負荷要因を考慮して認定している状況にあるということを、個別の事例を見て検討していただいたときも、また第9回についても御説明させていただいたところです。
また、この労働時間に関して、先ほど御説明した医学的知見では、週55時間以上の労働時間あるいは1日11時間を超える労働時間と心筋梗塞の発症などの間に有意な関係が認められたものがあったということも御紹介したところです。これらの疫学調査の数字、週55時間や1日11時間といった数字は、1か月に換算すると月65時間の時間外労働の水準となります。
これまで御意見いただいた労働時間だけで評価するということではなく、総合評価であることが十分に理解されるようにすべきではないかといった御指摘を踏まえつつ、総合評価であることを前提に、数字は示さないまでも、御説明した医学的知見や支給決定事例等を踏まえて運用していくことが考えられるのではないか、そういった点も含めて御議論いただければと思います。長くなりましたが、論点1についての御説明は以上です。御議論、よろしくお願いいたします。
○磯座長 詳細な説明をありがとうございました。資料の2ページの1の「長時間の過重業務における労働時間の評価等」の中のAの「現行認定基準における以下の労働時間の評価について、どのように考えるか」について、委員の先生方から御意見等がありましたらお願いします。特にございませんか。これまで議論した内容に沿って、Aの方は大きな方針については変わりはないと思いますが、先生方にはもう一回確認していただきたいと思います。西村先生、よろしいですか。
○西村委員 最近の知見は、週55時間が基準として使われていて、1日にすると、週5日働いていると11時間で1日3時間の残業です。先ほど、おおむね平均的に月65時間に相当するということでしたが、65時間でよろしいのでしょうか。平均的にやることの意味と、週ごと、月ごとに計算するというのは実は意味合いが違うとも考えられます。、
○西川中央職業病認定調査官 ありがとうございます。事務局としての整理を御説明させていただきますと、今の認定基準といいますか、平成13年の検討会報告書においては、先ほどの睡眠時間と労働時間の関係を数字で表すに当たって、1か月の勤務日数を21.7日として計算されています。これを踏襲いたしますと、先ほどの月というのが65時間、月を20日と見ればぴったり60時間になるのですが、21.7日で計算しますと65時間という水準になるということで、65時間という御説明をさせていただきました。
○西村委員 磯先生に伺いたいのですが、ヨーロッパの論文は、55時間を基準にして、3あるいは4分割しての解析方法がとられていますが、月で見るよりも週で見るのでは情報の質が違うとか、何か医学的な理由もあるのでしょうか。
○磯座長 私の理解では、週の方が分かりやすいという理由だと思います。ヨーロッパの労働基準ですが、多くは週ので基準を出していますので、どちらかというのは国によって違うのではないかと思います。ほかに御意見はございますか。
○豊田委員 文言の修正などはございませんが、資料2を見ていて面白いなと思うことがたくさんありましたので、磯先生にコメントを頂ければと思いました。
62ページのKivimäkiという方が作られている2つの図、虚血性心疾患と脳卒中に分けたものがございましたよね。これは不完全なものもあるというお話でしたが、気持ち悪いぐらいにそれぞれの個別研究の結果がほぼ近いというか、心疾患に関しても脳疾患に関しても、どちらも有意に長時間労働が効いているとはいえ、心疾患に関しては、ほとんどレラティブリスクが1.1から1.2の辺りにかなり集中していて、逆に脳疾患は1.3から1.4の辺りにレラティブリスクが集中していて、気持ち悪いぐらい個別研究の結果が近似していて、これを見ると、脳のほうが長時間労働によるマイナスのインパクトが大きいという印象を受けたのです。
一方で、日本のHayashiの研究は、これとは逆に心疾患のほうが長時間労働による障害の出るインパクトが強いという結果が出ているのですが、単純にこの2つの図というのは、こんなに個別研究の結果が近似するものなのでしょうか。
○磯座長 これは表だけでは分かりにくいですが、これは累積のオッズ比なのです。、新しい研究結果を累積していって、これまでのアップデートした形でのオッズ比ですので、更に加わっていったときにどうなるかということになりますので、どうしても一致することになります。
○豊田委員 なるほど、よく分かりました。ありがとうございます。
○磯座長 日本がなぜ心筋梗塞が11時間以上の労働時間でリスクが1.6倍高くなって、一方で、脳卒中は逆に0.8倍ということで、リスクは低い傾向が出ているということについては、62ページの右側にある図では、脳卒中は1.3倍でリスクが高いと出ているのですが、日本の場合は逆にリスクは低めに出ています。この研究では、ほとんどアメリカ若しくはヨーロッパのデータなので、脳卒中のリスクファクターの分布の違いとか、いわゆる粥状硬化による脳卒中が比較的多くて、日本の場合は細動脈による脳卒中が多いといった病型の違いも、反映しているのかもしれません。
○豊田委員 分かりました。ありがとうございます。
○磯座長 ほかにございませんか。医学的な見地で、野出先生からコメント等はございませんか。
○野出委員 特に大きなところはございませんが、先ほど日本で心筋梗塞のオッズ比が高いということは、恐らくスパズム(攣縮)の関与が日本人のMI(心筋梗塞)は多いので、睡眠時間の低下によるスパズムが心筋梗塞に寄与したということで、そういうところも関与しているのかなと考えながら聞いておりました。特にほかはコメントはございません。
○磯座長 ありがとうございます。杉先生、何かコメントはございますか。
○杉委員 今の御説明のとおりで、これが時間によってというのは面白いなとは思いましたが、西村先生がおっしゃったように、65時間としたほうがいいのか60時間のほうがいいのかという点があると思うのですが、この辺は厚労省のほうで教えていただければと思います。やはり、脳疾患と心臓疾患は少し違うというところは興味深い感じがいたしました。
○磯座長 ほかにコメントはございませんでしょうか。小山先生はいかがでしょうか。
 
○小山委員 特にありませんが、やはり心疾患と脳疾患とはちょっと作業機序が違うのでしょうかね。よく分からないのですが、労災に関わる場合に動脈硬化のせいの、逆に言い換えれば、血管障害のほうが日本の場合は少ないのかもしれないです。そういう印象なのですが。
○磯座長 ありがとうございます。日本の脳卒中の場合は、ヨーロッパに比べて粥状動脈硬化の関与が少ないということ、ストレスの関与が少ない可能性はありますが、日本のデータが少なく、大規模コホートでは、先ほどのHayashiの論文が唯一なので、ヨーロッパのこれまでのメタアナリシスとはすぐには比較できない可能性があります。そういったところも踏まえて議論していく必要があるかと思います。ほかの先生方で、何かコメント等はありますか。高橋先生、何かありますか。
○高橋委員 この2ページのAに関しては、特に追加意見はないのでよろしいかと思います。
○磯座長 髙田先生、いかがですか。
○髙田委員 私も、Aについては特に追加のコメントはありません。また、疫学研究については、磯先生がおっしゃっていることがそうなのだろうと思っております。ありがとうございます。
○磯座長 先ほどの1か月というのは、基本的にこのAの基準が1か月辺り又は発症前の2か月ないし6か月といったように、やはり1か月で括りながら基準を設定しているので、先ほど事務局から説明がありましたように、週単位ではなくて、1か月で21.7日という形での時間の設定というのは、統一されたものと思います。ただ、それをどこかに付記する所はありますか。1か月を21.7日として計算しているというのは。
○西川中央職業病認定調査官 平成13年の報告書にはそういった記述があります。年52週ということで、年52週に週5日出勤すると、平均して月21.7という形になるということで、そういったような数字が出てきているかと思います。最終的に、ここの考え方をどう整理して、どのような形にまとめていくかということについては、引き続き御検討いただければ、事務局でも整理をさせていただき、また次回以降御議論いただければと思っております。
○磯座長 はい。西村先生、どうぞ。
○西村委員 考え方の方向性なのですけれども、勤務時間の数字と、以前からの間接的に睡眠時間等から推測していた数字があるわけです。医学的にいうと直接得られた生データから判断をすることが望ましいのであって、今回は直接データを取り入れる方向を指向していることを明記するのか、あるいは従来からの睡眠時間からの研究データの蓄積も続いていることも重視しつつ、新しい治験見解も加えた検討であるとするのか、分かるようにすることは重要と思います。
○磯座長 そこは事務局で整理していただいて、例えばメディアの方や一般の方が聞いたときに、この時間数に関してすんなりと理解できるような解説というか、考え方をどこかに注釈しておいたほうがいいのではないかと。その辺りは、事務局でもう一回整理してもらえませんか。よろしいでしょうか。それ以外に、Aについてはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは次に進みます。資料3ページのBで、今ディスカッションいただいた現行認定基準における労働時間の評価に加えて、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮して、業務と発症との関連性が強いと判断できる場合について、医学的知見及び労災の支給決定事例などを踏まえて、総合的な評価に当たっての考えを明確化することができないか、ということについて検討を行いたいと思います。これについては、事務局から説明があったとおり、労働時間だけで評価するのではなくて、総合的な評価であることを前提に、労働時間と発症との関連について、これまでの知見や支給決定事例などを踏まえつつ、業務と発症との関連性が強いと評価できる場合があり、適切に評価を行う必要があることを示してはどうかという問題意識からのものです。これについて、御意見等があればよろしくお願いします。
○高橋委員 高橋です。このBの書き方は妥当ではないかと考えます。前回あるいは今回も最新の知見を整備したわけですが、45から80までの間の時間の長時間となる目安を明らかな数字として出すほどには、証拠が十分かといえば、やはり十分ではないと見受けます。最近の1つか2つ、あるいは数えるぐらいの知見で有意なものがあったり、有意ではないものがあったり、それからメタアナリシスにしても、例えばサンプルサイズが15万とか20万という大きいものに、もしかしたら引っ張られている可能性もなきにしもあらずなのですが。発がん物質の国際分類と同様に考えると、やはりいろいろな知見に依拠するのは当然なのですが、現時点ではこのBの書き方で、決して単月100あるいは平均で80以外は認めないという見解では全くないですし、仮にそれよりも低くても短くても、時間以外の要因もよく考慮するということで、実態によく即しているのかなと考えます。
○磯座長 ありがとうございます。ほかに御意見等はありますか。今、高橋委員がおっしゃったように、労働時間と拘束時間は単純には示されないという、他のいろいろな要因が重なって発症が起こるということで、一律に労働時間で決められるわけでは必ずしもなく、中間的なところは総合的に判断しなければいけないといった記載となっていますが、これについて、嵩先生、法律の立場からいかがでしょうか。
○嵩委員 嵩です。今までの基準でも、当然総合的に評価するという考え方はあったのだと思いますけれども、このように確認的に明示していただくと、より判断しやすいと思います。他方で、これに近い時間外労働というものを、例えば具体的に65とか60と示すということは難しいように思いますので、私はこの書き方でいいのではないかと思いました。
○磯座長 ありがとうございます。ほかに先生方や委員の方から、何か御質問やコメントはありませんか。西村先生、これについてはどうですか。
○西村委員 西村です。医学研究というのは、陽性の所見が出ないと論文化できないので、カットオフの値を探索しながら、陽性の結果を出してしまうものです。、実際は、ある基準を満たす満たさないの2分割ではありませんので、それぞれ個別の事案について審査の機会は制限せずに、多くの要因も含めかつ医学的経験則も加味して、総合的に判断することが原則です。○磯座長 ほかに御意見等はありませんか。ありがとうございます。論点1のA、Bについては、これまでの最新の医学的知見や労働認定事例を踏まえて、これまで検討してきて、様々な御意見を頂きました。中でも、労働時間とそれ以外の要因というのは、個別の事例もありますので、更に慎重な検討が必要と考えております。そのため、事務局では次回までに、ここまでの各委員の発言や検討内容について、もう一度整理をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは次に進みます。論点2の労働時間以外の負荷要因のうち、勤務時間の不規則性について検討します。資料は5ページになります。事務局から資料の説明をお願いします。
○西川中央職業病認定調査官 論点1についての御議論ありがとうございました。論点2については、労働時間以外の負荷要因、その中でも勤務時間の不規則性、その中でも不規則な勤務の関係、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務に関して御説明いたします。資料1の5ページ目を御覧ください。論点をAとBに分けております。前回も御議論いただきまして、やはりまずは項目名が、前回の項目名では不規則な勤務とだけ書いてあり、検討の視点の中に交替制勤務や深夜勤務の話も出てくるという状況になっていましたが、そこが少し分かりにくいというか、論理的でないというか、そういった問題があるのではないかという御指摘であったかと思います。事務局でも再度整理をさせていただき、項目名のほうには「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」と並列にした形でたたき台をお示ししています。
Bの検討の視点です。この趣旨において、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務に関する検討の視点については、これまでも、この中で何を評価するのかということで、夜に働くということ、あるいは勤務時間がずれていく、変更が度々あるということについて、人間の体の生体リズムと勤務時間に基づく生活リズムがずれてしまい、これが疲労の蓄積に影響を及ぼすということで、そこが負荷になるということではないかという先生方からの御指摘も踏まえ、次のようにしてはどうかということで、項目名は「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」と3つ並べました。前回はなお書きで、検討の視点の後ろでこういったものを評価しますと書いていたものを、定義のように、ここでいう不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務というのは、ここに書いてあるものを指します。この中には、イレギュラーな、予定された始業終業時刻が変更される、正に不規則なものもそうですし、予定された始業終業時刻が日や週によって定期的にというものも含めて変わってくる、異なってくるという、規則的な日勤、夜勤の交替なども含めた交替制勤務や、こういった予定された始業又は終業時刻が相当程度深夜時間帯に及ぶことによって、そのために夜間に十分な睡眠を取ることが困難な深夜勤務といったものを、ここでは評価するということを書かせていただくということです。その上で検討の視点ですが、これについては基本的に前と同じなのですけれども、嵩先生からも御質問がありまして、深夜時間帯に眠れないということについては、これはもともと予定されていたものの変更とは関係なく、そもそも夜間に十分な睡眠が取れないということについて、評価の対象としていくということをはっきりさせるというような趣旨で少し修文をさせていただいております。こういった項目名と検討の視点について、先生方の御意見を頂きたいと思っております。簡単ではありますが、論点2の説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○磯座長 ただいま説明がありましたとおり、まず資料の5ページのAについて、労働時間以外の負荷要因のうち不規則な勤務については、前回の会議で事務局にて再度項目名を整理することとなりました。これについて事務局から、「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」としてはどうかという提案です。また、資料5ページのBとして、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務に関する検討の視点として、現在の用語の定義付けと具体的にどのような働き方がこれに該当し、どのような視点で評価すべきかについての説明がありました。
このAとBについて御意見等があれば御発言をお願いします。いかがでしょうか。前回、この3つの定義について様々な議論が出たのですが、最終的にはこうやって3つを並列することで、事務局からの解決案として出ております。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。髙田先生、よろしいでしょうか。
○髙田委員 髙田です。分かりやすくなったと思います。
○磯座長 ありがとうございます。嵩先生、法律の面からいかがですか。
○嵩委員 前回はいろいろ御意見をさせていただきましたけれども、今回、結果的には非常にすっきりと分かりやすくなったと思います。3つの共通項としては、生体リズムと生活リズムがずれるという共通項があるのですけれども、評価する視点はそれぞれ違ったりするような気がするので、3つ並列に書いてそれぞれ評価していて、違うことも表現されて分かりやすくなっているのではないかと思います。私はこれで結構かと思います。以上です。
○磯座長 高橋先生、いかがでしょうか。
○高橋委員 ここは、いわゆる夜勤、交替勤務という、いわば不規則というかレギュラーではない部分の働き方と、夜勤、交替ではなく普通の日勤なのだけれども勤務時刻がバラバラという2つを、どううまく座らせるかというのが前回からの課題だったのですが、他の委員の先生方もおっしゃるように、非常にすっきりとまとまったのではないかと思っています。
○磯座長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
少し先生方と議論が必要だと思うのが、Bの2段落目の下から4行目、「夜間に十分な睡眠が取れない程度」とあるのですが、これは例えば深夜勤務をずっとやっている人は、昼間に十分な睡眠が取れればそれでいいのではないかという意見もあるのですが、これはどうでしょうか。夜間とこだわる必要があるのかどうかという点です。
○高橋委員 高橋です。基本的には、私たちの体は夜にしっかり睡眠を取るようになっていて、昼間にそこそこ取れたとしても疲労回復効果は全然違いますので、やはり夜に十分なというのは健康確保上重要な視点かと思っています。
○磯座長 そこは、もちろんサーカディアンリズムの関係や日照の関係から、私もそうだと思うのですが、ただ、この場合、例えば本当に固定した深夜勤務の人が、夜に十分睡眠が取れる状況を設定できるのかということとなり、これであれば、もう固定した深夜勤務は行ってはいけないということとならないか。
○高橋委員 交替勤務の世界では、できるならば固定夜勤、常夜勤とも言いますが、できるだけ避けたほうがいいというのが共通した見解です。
○磯座長 なるほど。
○高橋委員 ただ、どうしても工場によっては、例えば1週間夜勤、次の週が日勤というようなシフトもありますし、あるいは警備の人とか、ほとんど夜に働かないといけない人たちもいますので、パーセンテージはそんなに高くはないのですが、そういう人たちの健康管理をどうしていくかというのは難しい問題かと思っています。
○磯座長 となると、固定夜勤というのはできるだけ避けるようにというリコメンデーションだと思うのですが。
○高橋委員 国際的なコンセンサスとしては、そうなっています。
○磯座長 なるほど。そうなると、固定勤務の人は夜間に十分に睡眠が取れない程度が高いと判断するということで、よろしいですね。
○高橋委員 下線の前の「深夜時間帯の勤務の頻度など」という形で、いわば深夜、夜勤の回数が増えれば増えるほど、夜に物理的に睡眠が取れなくなってしまうので、これが過重性との関わりでどのぐらい見ていくのかというのは、もしかしたら個別のケースで判断していかざるを得ない部分もあるかと思います。
○磯座長 これは文言の中で、「深夜時間帯の勤務の頻度など夜間に」と、ひとつながりなわけですね。
○高橋委員 そうですね。ですから、「など」の前の、もしかしたら「交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度」、この辺りも関わっているかもしれないですね。
○磯座長 そこが全部関わってくると、少し違和感が出てくるので。
○高橋委員 なるほど。
○磯座長 深夜時間帯の勤務の頻度が非常に多くて、夜間に十分睡眠が取れない程度に影響があるという意味合いであれば、もう少し理解が進みやすいのですけれども、要するに夜間の深夜帯の勤務の頻度と、夜間の十分な睡眠が取れない程度というのは、これは独立した事象である
○高橋委員 例えば、月当たりでも週当たりでも、夜勤の回数が増えれば増えるほど、夜間に睡眠は事実上取れないので、「夜間に十分な睡眠がとれない」ことになってしまうとはいえるかと思います。
○磯座長 すみません、こだわるようですが、「など」という言葉が、その接続が曖昧なような気がするのですけれども。
○高橋委員 そうですね。この辺りの係り方が。
○磯座長 文言ですけれども、夜間、深夜帯の勤務の頻度が高くなると、十分に睡眠が取れない程度が高くなるのですが、「など」として「頻度」と「取れない程度」というのが同一になっている、形容詞の様に表現されると少し違和感があるので、事務局で文言を整理してもらえませんか。
○西川中央職業病認定調査官 承知いたしました。これは事務局のたたき台としては、ひとつながりというつもりでしたけれども、そこが分かりにくいということかと思いますので。
○磯座長 「など」の辺りのつながりの所の文言を、もう一度検討してもらえませんか。
○西川中央職業病認定調査官 少し見直させていただきます。
○磯座長 少し修文をしていただければと思います。ほかにありませんか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、論点2については、御意見を踏まえた上で、今の修文についても事務局で検討をお願いしたいと思います。
次に進みます。論点3、対象疾病及び疾患別概要について検討いたします。資料6ページになります。事務局から説明をお願いいたします。
○西川職認官 事務局から御説明させていただきます。論点2についての御議論ありがとうございました。
論点3、最後となりますが、対象疾病と疾患別の概要について御説明をさせていただきます。この論点については、資料1の1ページ目で論点3という形でお示しをしていまして、これまでの議論を別添のとおり整理することについて、どのように考えるかといった論点として、6ページ目から別添の1と別添の2というものをお示しをしているところです。
まず、資料1の6ページ目です。別添の1を御覧いただきたいと思います。6ページ目から10ページ目の別添1は、対象疾病の考え方について、これまでの御議論の整理をさせていただいたものです。対象疾病については、これまで主として第6回と第8回において御検討いただいたものということになります。別添1は、項目を4つに分けています。順に御説明をさせていただきます。
まず、1つ目ですが、現行認定基準の対象疾病ということで、現行認定基準の対象疾病を示した上で、次の段落で現行認定基準における不整脈による突然死等の取扱いと、次の段落で、平成7年の認定基準にある労働者が先天性心疾患等を有する場合の取扱いについて示しているところです。その上で、7ページの3行目からの段落ですが、この検討会においても、平成7年の認定基準の先天性心疾患等を有する場合の取扱い、「この本検討会においても」の次の所からですが、先天性心疾患等を有する場合について、当該先天性心疾患等が自然経過により重篤な状態に至った場合については業務と発症との関連を認めることはできない、労災として認定することはできないけれども、その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合であって、業務による明らかな過重負荷によって、自然経過を超えて著しく重篤な状態に至ったというふうに認められる場合には、業務と発症との関連を認めることが妥当と、こういった形で第6回、第8回で整理をしていただきまして、こういった取りまとめをしているところです。
また、その次の「なお」のところですが、この著しく重篤な状態に至った場合というものがどういうものであるかということについても、これについては対象疾病を発症した場合というように整理をしています。これらについて、これまでの整理に基づくものというように取りまとめていますが、御意見を頂ければと存じます。
次の項目の2、対象疾病に追加する疾病のところです。まず、第6回、第8回の御議論を踏まえて、(1)で重篤な心不全について、不整脈による心不全とするかといったような御議論がありましたが、限定しない重篤な心不全を対象疾病に追加するというような方向での整理を書かせていただいています。不整脈による心不全については、第6回、第8回でも御説明しましたとおり、今は心停止に含めて取り扱うということにしていますが、この取扱いは適切ではないのではないかという御指摘を頂いています。また、不整脈によらず、心筋症や弁膜症を基礎疾患として発症するような心不全であっても、先ほど1の項目で整理したとおり、そういった基礎疾患の病態が安定しているというようなときに、業務による明らかな過重負荷があって、自然経過を超えて重篤な心不全に至った場合には、業務と発症との関連を認めるという形になってくるのではないかということで、これは現行の整理からも、運用上はそういった形になるというようなものではありますが、心停止で読み込むというのは少し無理があるという御指摘も踏まえて、対象疾病として位置付ける整理をしているところです。
それから、第8回での御議論を踏まえて、この心不全というものが非常に幅が広いということで、自然経過によってなるものではなく、業務による明らかな過重負荷によって自然経過を超えて著しく増悪したと判断できる必要があるということから、入院による治療を必要とする急性心不全を念頭に、対象疾病の範囲を重篤な心不全という形で限定するという整理としています。
また、(2)ですが、ほかに対象疾病として追加、削除するものはないのではないかということ、下肢動脈急性閉塞等、各種の動脈の閉塞等の動脈硬化性の疾患について、発症数が少なく原因も様々であるので対象疾病として追加はしないのだけれども、この脳・心増疾患の認定基準の考え方に基づいて業務起因性の判断ができる場合もあるということで、こういった請求に対しては個別に検討して、業務が発症の相対的に有力な原因と判断できる場合には、その他条項が今の労災制度にはありますので、その他業務に起因することの明らかな疾病として取り扱うといったことを(2)のほうで整理しています。
9ページ、3番目は対象疾病の表現の適正化です。解離性大動脈瘤と書かれてますが、第8回の御議論を踏まえて大動脈解離に改めるというような整理をしています。これはICD-10に沿ったものとして、次の10ページの表においては、対象疾病とICD-10との関係を示しています。さらに、この10ページの表の下のなお書きですが、現行の認定基準でICD-10で脳内出血としている疾患については「脳内出血(脳出血)」という形で併記をしています。平成13年当時、我が国において一般的に脳出血と表現されているということで、こういった併記を行うという形で整理をしていまして、これについて現在においても同様であると考えてよいかということについても、同様であると考えてよければ同じような整理をしたいと考えていますが、この点についても、御確認、御意見いただければと存じます。
項目の4番目です。肺塞栓症等ということで、ここの「等」は深部静脈血栓症を想定していますが、この取扱いについてです。こちらについては、動脈硬化等を基礎とする対象疾病とは機序が異なり、脳・心臓疾患の認定基準の対象疾病とすることは適切でないというような御意見で整理されたかと思います。ただ、労災にならないということではなく、座った状態などによって発症するということですので、業務によるそうした座った状態などが血栓形成の有力な原因といえるような場合には、脳・心臓疾患の分類ではなく、つまり、いわゆる過労死の分類ではなく、「その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病」という、別表1の2第3号5という別のカテゴリーがありますが、こちらとして引き続き労災認定を行う整理についてまとめているところです。これはいずれも、これまでの御議論を整理したものという趣旨でまとめのたたき台を作っていますが、改めて御確認、御意見を頂ければと存じます。
次に、12ページ以降も御説明させていただきます。12ページから別添2でして、疾患別の概要になっています。こちらはこれまでの検討会で御議論いただいたものではありませんが、脳血管疾患、虚血性心疾患等のそれぞれについて、現在の医学的知見に基づき概略を取りまとめておきたいということで、整理をさせていただくものです。平成13年の報告書においては21ページから85ページに相当する箇所になりまして、この検討会で取りまとめていただきました整理は、労災行政に協力していただいている医師の方にも読んでいただくことにはなりますが、医師でない職員、弁護士の方、裁判官の方、場合によっては事業主の方や被災者の方など、医師ではない方が読むものとなります。そういった方々にも分かるようにという前提で、こういう書き方がいい、ここの表現はおかしいとか、ここは医師ならこういう前提が分かるが、ここはちょっと足りないといった様々な御指摘を頂ければというふうに存じます。
構成としては、脳・心臓のそれぞれにおいて、最初に解剖と生理、それから疾患全体の概要、さらに各個別の疾患の概要という形で記載をしています。脳は脳、心臓は心臓でまとめるということで、平成13年の報告書のまとめ方とは少し順序を変えております。
その内容ですが、概略を御説明させていただきます。12ページ、脳血管疾患についてということで、(1)が脳の解剖と生理となっています。ここは平成13年の報告書とほとんど同じ内容をたたき台とさせていただいていますが、今の先生方の目で見ていただいて、古い点などいろいろあろうかと思います。図のほうも含めて、ここは古いからこうしたほうがいいなどということを御指摘いただければと思います。この解剖と生理がずっと続きまして、27ページまで進んでいただければと思います。
27ページ、(2)です。こちらは脳血管疾患の概要ということで、ここから先については、先生方から御紹介いただいたテキストや学会のガイドラインといったものから、事務局でたたき台を作成させていただいたものです。こちらについても不十分な点がいろいろあろうかと思いますので、是非様々な御指摘を頂きたいと思っています。まず、(2)の脳血管疾患の概要の所では、脳血管疾患とはということで対象疾病の3つ、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、これについては脳卒中と総称されているということ、このほか高血圧性脳症というものを対象疾病としているということなどを記載した上で、リスクファクターについても簡単にまとめています。平成13年の報告書においては、リスクファクターについては、この疾患別概要の所にも書いてありますし、別の章でもリスクファクターの独立した章も設けてまとめています。こういったところの関係性についても、追って整理をさせていただきたいと思いますが、ここでは簡略にリスクファクターについて書いています。
さらに治療について、脳血管疾患については各疾病共通の部分が多いとも思われますので、各疾患の所にも治療について少し書いていますが、ここの項目にも記載をしています。そして、エは疫学についてです。
29ページの(3)の所からです。各疾患別の概要という形になっています。各疾患別のものについては、アが概要、イが成因、ウが自然経過、治療、予後ということで、この3つに分けて簡略に記載をしています。この29ページの脳出血の次に、30ページの(4)がくも膜下出血、そして31ページの(5)が脳梗塞となっています。脳梗塞の所ですが、平成13年の報告書では血栓性、塞栓性といいますか、出血性、非出血性というような分け方をしていましたが、第2回の検討会においても豊田先生から、これは古い整理ではないかというような御指摘も頂きまして、最近の成書の分類なども踏まえまして、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞、その他の脳梗塞という形で分類をしています。
33ページ、高血圧性脳症です。こちらも疾病の概要を簡単にまとめていますが、平成13年のときから血圧管理が普及した現在、希な疾患となっているというような記載があります。こういった認識も含めて、現在維持していいかどうかということも含めて、御確認、御意見いただけれは有り難いというふうに思っています。
34ページからは虚血性心疾患等です。こちらも同じ作りになっていまして、(1)は解剖と生理です。心臓の解剖と生理について、基本的には平成13年報告書と同じような形になっていますが、心臓について縷々書いた上で、39ページからのカのその他で、心電図や心エコー図、X線、次のページで血圧、脈拍、こういったことについても解剖と生理の所でまとめをしています。この辺りも、今の目で見ていかがかというということで、修正すべき事項をいろいろ御指摘いただきたいと思っています。
40ページの(2)から虚血性心疾患等の概要ということで、ここからは脳と同じように学会のガイドラインなどを拝見して、事務局としてのたたき台として記載させていただいたものです。アで虚血性心疾患とはということをまとめています。主要な原因は動脈硬化という整理をしています。冠動脈疾患や急性冠症候群といったものとの用語の整理についても、現場の職員が分かるように解説をしています。
次のイですが、動脈硬化ということで、脳・心臓疾患の認定基準は業務による過重負荷によって、こういった動脈硬化等の血管病変などが自然経過を超えて著しく増悪して、例えば心筋梗塞や脳・心臓疾患を発症したというような基本的な考え方に基づいていまして、この動脈硬化について非常に重要な要素として、平成13年の報告書においても節を設けて説明をしております。こういった今の成書などから動脈硬化についての解説を書かせていただいていますが、そういった内容についても御検討いただければと思います。
ウについては、リスクファクターを簡単に説明をしたものです。それから、エの発症の引き金因子については、平成13年の整理を踏襲しているものですが、こちらも現時点でもこの認識でよいかということを御検討いただければと思います。オは疫学ですが、2012年のガイドラインから引いてきているので、より新しい知見がありましたら、是非御教示いただければ有り難いというふうに思っています。
42ページ、下のほうの(3)から疾患別の概要でございます。こちらも脳血管疾患と同じように、それぞれ概要、成因、自然経過・治療・予後というように分けて簡略に記載をしています。
42ページは心筋梗塞、45ページから狭心症、47ページから心停止という形で書いてあります。図も平成13年の図を使っているので、やはり古いというような御指摘もあるかもしれませんので、その点も御意見があれば是非お願いしたいと思っています。
心停止については、少し細かに説明をさせていただきたいと思います。47ページです。心臓性突然死について記載するという形で記載していますが、その中で心電図記録中の突然死の解析においては、7、8割に頻拍性の不整脈、2割弱に徐脈性の不整脈が生じているといったような知見もありまして、そういった不整脈に関連するものであること、そして不整脈を生じさせて心停止の原因となる各種の基礎心疾患について述べているという形になっています。このまとめ方自体は、平成13年の整理を踏襲していますが、そういった形でたたき台とさせていただいております。
49ページの下のほうですが、こういった不整脈を生じさせて心停止の原因となる基礎心疾患は、その次から書かせていただいてるように様々なものがあり、この基礎疾患それ自体は業務と関連がないものが多々ありまして、そうすると、その基礎疾患そのものやその自然経過による悪化、心停止については、業務と発症との関連を認めることができないということになってきますが、これまで対象疾病の項で検討していただいたとおり、こういったものが安定していて直ちに重篤な状態に至るのではないというときに、業務による明らかな過重負荷によって心停止に至ったというような場合には、業務と発症との関連を認めることが妥当というような、これまでの整理から導かれる関係性についても記載をしているところです。
その上で、ここでいう各種の基礎心疾患について、(ア)急性冠症候群、(イ)心筋疾患、この心筋疾患は肥大型心筋症、拡張型心筋症、そしてその他の心筋疾患ということで書かせていただいていまして、それから(ウ)原発性不整脈、(エ)その他ということで記載しています。こちらですが、不整脈に関しては原発性不整脈という言い方がいいのかどうかということについて、それから、aのブルガタ症候群、bのQT延長症候群、cのWPW症候群というような形で、それと並べましてdの所で徐脈性不整脈を書かせていただいているのですが、これは平成13年の構成と同じように書いていまして、徐脈性不整脈については第8回の検討会で杉先生から業務に関連することはほとんどないのではないかという御指摘もあったかと思います。また、この徐脈性不整脈の所で記載している房室ブロック、洞不全症候群というのは基礎的な病態というより、それ自体が危険な不整脈の症状、心室頻拍や心室細動と並ぶものとも考えられるものですので、この辺りをどのように整理するのがよいのかということについても御意見を頂きたいと思っています。
54ページ、(6)心不全です。ここは、対象疾病の所で追加をしてはどうかということから、新たに記載が必要となる部分ということになります。これまでの検討会の御議論でもありましたように、心不全というのは病名というよりは状態名でして、その程度、重篤度は様々であり、原因疾患も様々であるということです。さらに、予防が重要、そのための早期介入が重要ということで、心不全ガイドラインに基づく心不全ステージを使っての議論がなされることも多いところですが、その分類ではステージのAとBというのは、心不全症候のない状態、発症していない段階ということとなっていまして、心不全の発症というのはステージC以降ということになろうかと思いますが、そういったことについても誤解のないようにという趣旨で記載をしているところです。
心不全の成因についてですが、こちらについては様々あるというようなことを書かせていただいた上で、自然経過の所ですが、多くの場合は慢性で進行性のもの、大多数は急性心不全として発症する、そして、この重篤な心不全として想定される急性心不全を中心に、自然経過、治療、予後について記載をしています。疾患が進行性であるということで、自然経過による急性心不全の発症であるのか、業務による過重負荷によって起こった自然経過を超えて著しく増悪したための急性心不全の発症であるのかということが、労災認定上は重要になってこようかなというふうに思っています。そういった判断に資するような基礎的な医学的な知見、特に自然経過や成因、増悪因子などについて、こういった概要の整理に御助言を頂きたいというふうに思っています。
最後、57ページです。すみません、見出しが解離性大動脈瘤のままになっていますが、こちらは大動脈解離の誤りです。概要において、大動脈解離の概要と、瘤形成を認めた場合の解離性大動脈瘤について記載をしています。成因について、できれば大動脈瘤全般ではなく大動脈解離についての記載を行いたいところですが、こういったことについても御助言を頂ければというふうに思っています。御説明は以上です。
対象疾病の各項目と疾患別概要の脳、心臓それぞれについて御議論いただきたいというふうに考えていますが、特に疾患別の概要については内容が非常に多くなりますので、本日の検討会のお時間では不足することもあろうかと存じます。検討会終了後も含め、各先生方に御検討いただきまして、後日事務局に御指摘を頂くことも含めまして御検討いただけましたら有り難いと考えています。それでは、御議論のほどよろしくお願いいたします。
○磯座長 それでは、資料の6ページから始めたいと思います。現行の認定基準の対象疾病について検討いたします。最初の段落で先天性心疾患等を有する場合の考え方が整理されています。これは第6回、第8回での議論に基づくものですが、御意見があればよろしくお願いします。6ページから7ページの最初の所ですが、この点についてはいかがでしょうか。先天性心疾患に関する取扱いです。
○豊田委員 豊田ですが、よろしいですか。
○磯座長 はい、どうぞ。
○豊田委員 ちょっと分からなかったのは、先天性心疾患等で括弧して高血圧性心疾患、心筋症、心筋炎という、およそ先天性ではない全く別の疾患が並んでいますが、この意味が単純によく分かりませんでした。
○磯座長 事務局、その辺りはどうですか。
○西川中央職業病認定調査官 これは以前からこう書いていたということではありますが、先天性心疾患のほか、「等」として既往症であるところの高血圧性心疾患であったり、心筋症であったり、心筋炎であったりを含むということなのですが、確かに御指摘のとおり、表現として適当でないということであれば、表現を修正することも含めて検討させていただきたいと思います。
○豊田委員 多分、これは労災とは直接関係ない心筋症や心筋炎を持っている方が、その後、慢性的にそれが経過してなどという話なのですね。
○西川中央職業病認定調査官 趣旨としては、そういったことです。
○豊田委員 ですから、先天性心疾患と心筋症や心筋炎など全部イコールというか、同列に並んでいる疾患という意味でいいですか。そうだったら、わざわざ括弧しなくて「先天性心疾患、心筋症、心筋炎等を有する場合については」でいいように思いました。心筋症や心筋炎が労災とは関係ない病気であるというのはよく分かるのですが、高血圧性心疾患というのは、労働と関係なく高血圧を持っているといえば別のものかもしれませんが、労働のストレスで血圧の管理が悪くなることなどを考えれば、この高血圧性心疾患自体が労災かもしれないなと私は思って読んでいました。ちょっとその辺りの切り分けが難しいように思いました。
○西川中央職業病認定調査官 ありがとうございます。また整理をさせていただきたいと思います。
○磯座長 そうですね、確かに高血圧性心疾患の取扱いの所は「先天性心疾患、心筋症、心筋炎等を有する」として、高血圧性心疾患をどう扱うか、別立てで扱うか、それともここから消すか、これについてはいかがでしょうか。杉先生、どうぞ。
○杉委員 ここに先天性心疾患が昔から入っていたということなのですが、心筋症、心筋炎も含めて、今回心不全という項目を入れていただきましたので、これは器質的な心疾患がある場合というふうに理解したらいいのではないかというふうに解釈しました。そして、器質的心疾患を持っている人が過重労働によって、心機能が悪化してくることがあれば心不全という所に入るので、対象疾患としてはこれを入れてそういうふうに解釈するのだろうと思っていました。これはいかがでしょうか。
○磯座長 先生、そうしますと、ここをどういうふうに表現したらよろしいですか。
○杉委員 これは、先天性心疾患だけではなくて、器質的心疾患ということでいかがでしょうか。
○磯座長 先天性心疾患というのを頭出しするのではなくて、消して、器質的心疾患ということ。
○杉委員 そして、高血圧性心疾患もほかの先生の御意見を伺いたいのですが、高血圧が続くことでかなり心不全も来します。ですから、これは高血圧による心筋の変化が来ているのだろうということで、大体高血圧性心疾患という表現をします。ですから、これも器質的な心疾患の1つで、今、臨床的にはそう扱っていると思いますが、いかがでしょうか。
○磯座長 そうしましたら、器質的心疾患という言葉を一番頭出しにするという。
○杉委員 私はそれがいいと思います。でも、ほかの先生の御意見はどうでしょうか。
○磯座長 分かりました。ほかの先生から御意見等はありますか。
○野出委員 野出です。杉先生のおっしゃるとおりだと思いました。器質的心疾患として、その後に括弧書き。それから、弁膜症が入っていないので、Structural Diseaseということで弁膜症、心筋症、心筋炎、高血圧性心疾患、それが先天性心疾患ということで、もともと構造的な異常があるという意味で、その疾患をここに入れたらいかがかなと思いました。以上です。
○磯座長 ありがとうございます。そうなりますと、「器質的心疾患(先天性心疾患、弁膜症、高血圧性心疾患、心筋症、心筋炎等)」という形でしょうか。順番はいかがでしょうか。
○野出委員 それでよろしいかと思います。
○磯座長 ほかの先生はよろしいでしょうか。
○杉委員 杉です。私もよろしいかと思います。
○磯座長 よろしいでしょうか。小山先生、よろしいでしょうか。
○小山委員 特に問題ありません。
○磯座長 西村先生、いかがでしょうか。
○西村委員 ここの記載は平成7年からあって、前回もこれを踏襲していて、意味合いとしては、先ほどの器質的心疾患が該当するのだと思います。器質的心疾患といった際に、循環器医はおおまかに分かるのですが、先ほど事務局から説明があったように、具体的な名前があったほうが分かり易い。逆に、ここに名前がなかったら労災申請できないとの取り方をされる危険もありますので、頻度の高い疾患は具体名を書いておく方がよいとの考え方もあります。その辺は磯先生にお決めいただければと思います。
○磯座長 器質的心疾患として、括弧開きで頻度の高い病気を並列して、括弧の最後に等を入れて括弧閉じすればいいのではないかと思います。そういう形でよろしいですか。
○西村委員 賛成です。そのときに、先ほどの高血圧性心疾患は。
○磯座長 入ります。
○西村委員 はい。
〇磯座長 では、そのような形にさせていただきます。ありがとうございます。ここの7ページまでの文言について、ほかに何か御意見等はありますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。そうしましたら、事務局の提案としては、これ自体は労災にはならないけれども自然経過を超えて著しく重篤な状態に陥った場合には対象となる、関連を認めるということについてはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、次に移りたいと思います。7ページの2の対象疾病に追加する疾病について御意見等があればよろしくお願いします。重篤な心不全の所です。7ページ、8ページ、9ページまでです。
○豊田委員 豊田ですが、よろしいでしょうか。
○磯座長 豊田先生、どうぞ。
○豊田委員 8ページの(2)のその他の疾病の中で、具体的に過去に対象になった個別事例が4つ羅列されていますよね。これは、過去に実際にあった事例だから細かく書いているのはよく分かるのですが、さすがにこの左(左下肢動脈急性閉塞の「左」)とか右(右網膜中心動脈閉塞症の「右」)とかというのはあまり意味がなくて、外していいのではないかと思ったのですけれども、いかがでしょうか。
○磯座長 いかがでしょうか。事務局、どうぞ。
○西川中央職業病認定調査官 御指摘のとおり、左とか右とかに意味がなければ、そのとおりにさせていただきます。
○磯座長 では、ここは削るということでよろしいでしょうか。
○豊田委員 そうですね。
○磯座長 ありがとうございます。
○豊田委員 事務局の方に言っておきますが、上腸間膜の「上」は外さないでください。
○西川中央職業病認定調査官 はい。
○磯座長 そうですね、そのようにしたいと思います。御指摘ありがとうございます。8ページの所でほかにありませんか。どうぞ。
○西村委員 西村です。「重篤な心不全」での、この「重篤」の定義は、前回も入院を要するというようなことで議論したと思うのですが、重篤な心不全というのは、入院したときに一見すごく血行動態が崩れていて重篤に見える場合と、治療した後、医学的な予後を推定すると重篤であるとの場合もあります。例えば、発症から半年ぐらいの末期まで進行した急速進行型の拡張型心筋症の病型です。「重篤な」というと、全体の病像、疾患も全部含めた上での重篤という判定になる場合もあるのではないでしょうか。心不全という病気は入院例は数多繰り返す経過をとる場合も多い。○磯座長 大事な点だと思います。この文言の中でどのように記載したらよろしいでしょうか。要するに、入院に至るだけではちょっと弱いということでしょうか。
○西村委員 はい。私が関連した事案の中で、2例記憶に残っているものがあります。1つは、先ほども弁膜症という話が野出先生から出ましたが、僧帽弁腱策断裂による逆流性弁膜症による急性心不全の方で、手術が必要となり重篤の判断になった例がありました。もう1つは、先ほど述べたのですが、若年者の拡張型心筋症で、心筋炎との鑑別は難しいのですが、比較的急に発症して治療を受けたけれども悪化し、人工心臓を植え込み心臓移植待機になった方です。こういう方は短期に進行し全体を含めて重症だと判断できます。一方で、心不全の中でも徐々に進行してきてうっ血が生じ、下肢むくみや息切れを認め、心不全の診断基準を満たしますが、入院し利尿剤と安静で短期間で回復・退院できて社会復帰もできるような例もあります。、基礎疾患によって臨床の表現型が非常に多彩なので、入院のときの基準と、それから基礎心疾患や予後等から全体像を見たときの重篤の目安があったほうが、判断しやすいのではないかなと思います。
○磯座長 そうであれば、例えば8ページの所に「入院による治療を必要とし、かつ、予後の不良な」とか、そういう急性心不全の形容詞のところで少し文言を付け加えるということでしょうか。
○西村委員 そうですね。それも1つだし、病態の全体像がそこで予後を見たときに悪いというようなことが分かった入院だったとか、幾つかの観点からの指標があったほうが公平性において混乱を来さないのではないかと思うのですが。
○磯座長 そうですね。先生の御意見は、そのときにすぐ入院が必要でも、割と利尿剤とかでよくなっているケースとよくならないケースとがあるので、その差別化をしなければいけないと、そういう意味でしょうか。そこは非常に重要な点ですが、ほかにいかがですか。杉先生、どうぞ。
○杉委員 よろしいでしょうか。今の西村先生のお話はよく分かるのですが、この後のことで関係するのは、過重労働によって心不全になったかどうかということが重要なのだろうと思うのです。そうしますと、先ほどの心機能が悪くなって胸水もたまって、浮腫も出てきてうっ血性の心不全になる、だけれども、過重労働をなくして安静にして、利尿剤を中心として強心剤をやるとよくなると。また、そういう状態に戻るということが多分、心不全の特徴なのだと思うのです。それで、退院できて社会に復帰することが可能であると。その際に、今回入院したのは過重労働でなったということがあれば、これは労災の心不全で認定していいと思うのです。左室の駆出率が10%とか、そういう方が通常の労働ができるかというと、やはり難しい可能性があります。通常の器質的な心疾患があった上で、過重労働があって、いろいろな重い物を持ったとか、そういうことも含めて心不全になるということが、私どもの判断の基準の1つとなるのだと思います。
ですから、最初にお話のあった入院を要するというのは、客観的かどうかは分かりません。主観的かもしれないのです。ちょっとした苦しいことで入院するということがありますが、それは個々の例で判断して、いずれにしろ入院するような心不全というのは、前回の話で非常に納得できるなと思っておりました。過重労働の有無で判断すれば、そういうことになるのではないかと思いますが。
○磯座長 ありがとうございます。ほかに御意見はいかがでしょうか。基本的に今の杉先生のお話は、8ページの上から6行目の所に、「業務による明らかな過重負荷によって基礎疾患がその自然経過を超えて著しく増悪したものと判断できる必要があることから、入院による治療を必要とする」と、そういった定義が入っているので、先生がおっしゃったことはそこに含まれていると思います。ですから、そのときの労働の過重負荷が本当に重篤なものであったかどうかというのは、次の文言ですが、「対象疾病として追加するに当たってはその範囲を「重篤な心不全」と限定することが妥当である」と書いてありますが、その中には、もしかしたらそこまで重篤ではないものも含まれる可能性はあるということなのでしょうか。
確かに先生のおっしゃるように、そこら辺のぎりぎりのところで何か労働負荷があって、それが自然経過を超えて悪くなったのか。あるいは、ぎりぎりのところで労働負荷がかからなくても悪くなったのか、その見極めをどのようにしていくかというのは、やはり個別の評価というようになりますか。
○杉委員 杉ですが、よろしいでしょうか。
○磯座長 はい。
○杉委員 先生のおっしゃるとおりで、個別の評価がやはり重要だと思います。ですが、一元的にこういうものだから心不全として扱うというのはなかなか難しいので、1つの指標は、入院を要する心不全というのと業務との関係を評価することが必要なのかなと思いました。
○磯座長 西村先生、どうぞ。
○西村委員 私も負荷度の評価が重要であるとの意見に賛成ですが、多要因が発症に関連する心不全では、判断が難しくなります。判断の機会を狭くするのではなく、心不全のステージCの最初の方の時期に比べて、ステージが進行してDの手前の時期では軽度の負荷で心不全を発症し、違う病態ですから、その都度、負荷のかかり方、程度の評価が求められます。その辺も含めてどの範囲までを自然歴とするのかの診断が難しい場合もあるのですが、総合的に医学的な診断をしないといけないと理解しています。
○磯座長 では、どこかの記述の中に少しそういったニュアンスを加えるとして、先生、ここの記述はこのままでよろしいですか。
○西村委員 はい。
○磯座長 ありがとうございました。7ページ、8ページについてはよろしいでしょうか。それでは、7ページについても、大体先生方から御意見が出たと思うのですが、特に追加の御意見等はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それから、たこつぼ心筋症のこともありましたね。9ページのたこつぼ心筋症については、前回、前々回も議論がありましたが、ここに書いてあるようにケース数が少ないということで、個別の判断をしていくというのが妥当であろうということです。これについてもよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、9ページの3番、対象疾病のうちの標記の適正化を図る疾病等というサブタイトルの所です。これについて御意見等はございますか。これについては、前回までにいろいろ議論をして、大動脈解離ということでほぼ御意見が統一されたかと思いますので、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
そして、脳内出血は、引き続き脳出血としても称することができる。要するに、併記するという形でよろしいでしょうか。特に問題はないですか。豊田先生、どうですか。脳出血と一般に言われていますよね。
○豊田委員 脳出血か脳内出血かは、どちらも十分によく使われていると思います。神経学の「神経学用語集(日本神経学会 作成)」というのがあって、これを見ると、どちらもちゃんと正式な用語として載っておりました。結局、英語のcerebral hemorrhageを訳せば脳出血、intracerebral hemorrhageを訳せば脳内出血で、英語でもどちらも同じように使われていますから、両方併記が一番いいと思います。
○磯座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。
10ページに移ります。4番の肺塞栓症等についてですが、これについて御意見等はございますか。事務局からの肺塞栓は動脈硬化でない、静脈の問題であるということはこれまで議論されたことだと思いますが、その他身体に過度の負荷のかかる作業態様の業務に起因するということで、飛行機でずっと座っていたりとか、そういう労働でどうしてもずっと座っている状況に強制的になった場合ということになりますので、こういった整理でよろしいでしょうか。杉先生、どうぞ。
○杉委員 この文言でよろしいかと思います。それで、さらに11ページの2行目からの「その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病として」ですが、この疾患は循環器の先生に扱ってもらいたいとい事例がありました。対象疾病に入っていないことから、いろいろ難しいところはあるかもしれませんが、11ページの2行目から3行目をこの中に明記していただいて、事例によっては循環器科で判断できるのだと。つまり、過重負荷ではないのですが、先ほど先生のおっしゃられたような、同じ姿勢を保つような強制的なそういう労働があった場合には、これは業務上のものとして判断できる場合があるのではないかと思うのですけれども、そうしたことを最後の11ページの2行目、3行目の所をどこかに書いておいていただけると、対象疾患ではないというのはあるのですが、何かそういう記載があると良いのではないでしょうか。
○磯座長 先生のコメントは、どこに明記したほうがいいという意味でしょうか。
○杉委員 これは、対象疾病とここの表1に書いてあるのですけれども、今回は心不全も入るのだろうと思って非常によかったなとは思うのですが。
○磯座長 この対象疾病の所ですね。
○杉委員 欄外でもいいのですが。
○磯座長 表1の所にという意味でしょうか。
○杉委員 表1でもいいのです。でも、表1はまだICD-10の分類だから、今後なのですが、これが別に入るというわけではないのでしょうか。今までは心不全という言葉が全くなかったので、どこか労災認定にこれが入ってくれるといいなとは思っているのですが、その折に肺血栓塞栓症も欄外でもいいからどこかに書いておいていただけると、対象疾患ではないけれども、過重労働の判断というか、業務上の判断には使えるのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○磯座長 動脈硬化を基盤とする対象疾病とは異なるが加えるということでしょうか。
○杉委員 そうですよね。
○磯座長 事務局としては、これは労災の対象となると表1に書いてもいいのかどうかということだけ確認したいのですが。
○西川中央職業病認定調査官 表1は、今、杉先生がおっしゃっていたように、ICD-10の分類を示しているものでして、最終的には6ページの対象疾病のリストを認定基準としては作ることになってきます。その認定基準に入れるかどうかという話なのですが、ここで今、御議論いただいている認定基準というのは、労働基準法施行規則別表1の2の第8号の疾病の認定基準でして、いわゆる過労死と言われているものですが、業務の過重負荷によって疲労の蓄積等が生じて、血管病変が進展してこれが発症するという機序のものに係る認定基準を検討していただいております。この肺塞栓症については、広い意味で労災の対象にはもちろんなるのですが、先ほどの別表1の2の第8号ではなく、第3号の5、第3号というのは作業態様、仕事のやり方でして、振動業務とか腰を曲げて行う作業とか、そういったいろいろな作業のやり方に起因して起こる疾病ということで、その中には、確かに循環器の疾患もあり得ます。正に肺塞栓症はそうであるということで、循環器の先生に判断いただくものであるということを明らかにすることはできるかもしれませんが、対象疾病のリストの中に入れるということは、これまでの御議論からすると難しいかと思っています。
○磯座長 分かりました。現行の対象疾病がこうだという説明ですね。分かります。
○西川中央職業病認定調査官 改訂に当たっても難しいということです。
○杉委員 杉ですが、よろしいでしょうか。
○磯座長 どうぞ。
○杉委員 今の説明のとおりでよく理解できるのですが、やはりこれは対象疾病ではないのです。対象疾病ではないのですが、扱う人間たちが、野出先生もそうでしょうけれども、循環器の人間がこれを扱う、ほかの整形の先生ではないのですよね。形が一定だったからというわけではないので。ですから、これは脳・心部会のいろいろな業務に関することのそういうものがあれば、脳・心部会は必ずしも動脈だけではなくて、循環器も扱っているものですから、どこかの欄というか端っこに、欄外に入ることは可能でしょうか。
○磯座長 事務局、いかがでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 それについては、部会の運用とかこの認定基準に限らず、労災の業務上外の専門医の先生への御相談のやり方等についての処理要領というか、何らかの形で各労働局にも分かるようにお示しさせていただく形で対応させていただきたいと思いますが、先生、それでよろしいでしょうか。
○杉委員 分かりました。明確に分かるようにしていただけると助かります。
○磯座長 ここではなくて、手引書のような形で明記するということですね。分かりました。よろしくお願いいたします。
それでは、次は12ページです。12ページからは、脳と心疾患の疾患別概要ということで、先ほど事務局から説明がありましたように、平成13年ですから、もう20年前の報告書で作られたものを基礎としております。12ページからは脳血管疾患、資料の36ページからは虚血性疾患で多くの文量にあります。全体として何か、特に先ほど事務局から提案がありました脳について、何かコメント等はございますか。
事務局では最近のガイドライン等を参照して、記述を加えていってもらっているのですが、いかんせん20年前の資料ですので、基本的な解剖の所は大きな変更はないと思いますが、幾つかの図については、かなり新しくしたほうがいいと思います。そういう意味で、まず脳について豊田先生から何か御意見等はございますか。
○豊田委員 。内容を必ずもう一度全部読んで対応するようにいたします。私の本とかもたくさん引用していただいて、ありがとうございました。1つですが、脳卒中ガイドライン2019年版を引用してくださっているのですが、6月まで待つと2021年版が出ます。内容はほぼ知っていますので、今でも書き直せるのですが、6月に出る2021年版参照という形にしても無理はないですか。それとも、6月よりも前にこれは世に出るのでしょうか。
○磯座長 いかがでしょうか。
○児屋野室長 事務局です。ガイドラインの最新版の2021年版が出ると。ただ、公式的に通達あるいはまとめていただくのに、既に出ていて認知されているものということがやはり好ましいかなとは思います。
○豊田委員 分かりました。では、2019年版はそのままにして、内容を見るようにいたします。
○磯座長 ありがとうございます。先生、図もいいものがあったら差し替えてください。よろしくお願いいたします。
○豊田委員 分かりました。ありがとうございました。
○磯座長 ありがとうございました。それでは、ほかの先生方で、脳の所で何かコメント等はございますか。よろしいでしょうか。
それでは、心臓について野出先生、何かコメント等はございますか。
○野出委員 拝見させていただきましたが、特に問題となるような文言とかはなかったような気がいたします。1つ、原発性不整脈という言葉だけ気になったぐらいで、後は文章、図も問題なかったかと思います。以上です。
○磯座長 それでは先生、原発性不整脈については、コメントを事務局のほうに頂けますか。
○野出委員 杉先生からも御意見を頂きたいと思います。
○磯座長 ありがとうございます。あと、49ページのような図があります。49ページに心停止の成因とありますが、最近の知見を入れてこの図をリバイズする必要はありますか。また、後で検討していただければと思いますが。
○野出委員 検討させていただきます。
○磯座長 ありがとうございます。それと、先ほど事務局からありましたように、心不全や徐脈性不整脈についてもよろしくお願いいたします。
○野出委員 はい。
○磯座長 ありがとうございます。先生方、非常にたくさんの御意見をありがとうございました。論点3についてはそれぞれの先生方からの御意見を頂いて、事務局で整理をお願いいたします。論点3については検討を終わりとしたいと思います。
これで本日の議事は以上となります。最後に何か御意見や御質問等はありますか。ちょうど時間となりましたが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、これまでの先生方の御意見について内容を整理しながら、過重性の評価については非常に重要なことですので、引き続き慎重に議論していきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。では、事務局においては、次回以降に資料の準備をお願いいたします。
それでは、本日の検討会はこれで終了といたします。次回の日程等、事務局から何かありますか。
○本間職業病認定対策室長補佐 長時間の御議論、大変ありがとうございました。次回以降は、ただいま座長から御発言のありましたとおり、これまでの医学的事項、業務による過重性の評価等を含め、これまでの議論を整理しつつ御議論いただく予定としております。次回の検討会の日時、開催場所については、後日改めて御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日は、大変お忙しい中御議論いただきまして、ありがとうございました。以上で検討会を終了とさせていただきます。
○磯座長 ありがとうございました。