2021年4月19日 第168回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和3年4月19日(月) 10:00~12:00

場所

厚生労働省省議室 中央合同庁舎5号館9階(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

公益代表委員
 荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、平野委員、藤村委員、水島委員
労働者代表委員
 川野委員、北野委員、櫻田委員、津村委員、仁平委員、八野委員、森口委員、世永委員
使用者代表委員
 池田委員、早乙女委員、佐久間委員、佐々委員、佐藤委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
事務局
 吉永労働基準局長、小林審議官(労働条件政策、賃金担当)、石垣総務課長、黒澤労働条件政策課長、尾田監督課長、田村労働関係法課長、大塚賃金課長
オブザーバー
 石村金融庁総合政策局リスク分析総括課長、曲淵金融庁総合政策局フィンテック監理官、守屋金融庁企画市場局総務課決済・金融サービス仲介法制室長

議題

  1. (1)資金移動業者の口座への賃金支払について
  2. (2)フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインの策定について(報告事項)

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第168回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の労働条件分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員として公益代表の両角道代委員、藤村委員は後ほど参加と伺っております。
最初に、事務局から定足数の報告と、本日の議事運営について説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
本日の定足数について御報告いたします。
労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
また、本日も感染防止の観点から、会場の皆様におかれましては、会場備付けの消毒液の御利用やマスクの御着用に御配慮いただきますようお願い申し上げます。
以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題は、(1)「資金移動業者の口座への賃金支払について」です。
初めに、労働政策審議会運営規程第4条に、分科会長が必要と認めるときは、委員でない者の説明又は意見を聴くことができるという規程がございます。前回の分科会での委員からの要請を踏まえまして、本分科会における議論の内容が金融庁の所管する事項に関係することから、金融庁総合政策局リスク分析総括課の石村課長、金融庁総合政策局の曲淵フィンテック監理官、金融庁企画市場局総務課決済・金融サービス仲介法制室の守屋室長に、本日、オブザーバーとして御出席いただいております。
それでは、本議題につきまして事務局より説明をお願いいたします。
○賃金課長 賃金課長の大塚でございます。
私のほうからは、資料No.1「資金移動業者の口座への賃金支払について 課題の整理③」ということで御準備いたしましたので、御説明申し上げます。
ページをおめくりいただきまして、2ページ目から8ページ目までは、前回までの各委員から寄せられた御質問、御意見等を事項ごとに並べたものでございますので、必要に応じて御参照いただければと思います。赤字で記した部分が、前回、3月16日の意見等の分でございます。
続きまして、ページ9をお開きいただければと存じます。こちらは、前回の委員からの御意見を踏まえまして、厚生労働省として議論の素材とするために、資金移動業者の口座へ賃金支払を行う場合の制度設計案の骨子をお示しするものでございます。このページに骨子を記載いたしまして、次の10ページ目以降に、各事項ごとの論点となり得るものを、これまでの議論に基づき整理させていただいております。
では、まず9ページから御説明申し上げます。この制度設計案の骨子は、3つの柱からなっておりまして、1つ目が、使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について新たな方法によることができるものとするというものでございます。
※印の1つ目に書いてございますように、銀行口座への振込とか、一定の要件を満たす証券総合口座への払込みにつきましては、現行でも通貨払いの原則の例外として認められておりますけれども、仮にこの制度が成立した場合におきましても、引き続き利用は可能というものでございます。
※印の2つ目でございますが、資金移動業者の口座への賃金支払について、使用者が労働者に強制しないことが前提と考えております。
次に、柱の2つ目でございます。従来から御説明しておりましたように、資金決済法に基づく80の資金移動業者全てに、この賃金支払の業務を認めるということではなく、一定の要件による絞り込みが必要と考えてございまして、この(2)は、その絞り込むための5つの要件案を示しているものでございます。これらの要件を全て満たした資金移動業者については、厚生労働大臣が大臣告示で指定するということを想定しております。
要件の1つ目でございますけれども、こちらは、資金移動業者が破綻した場合に、その保証がきちんとなされるかどうかの要件でございます。
2つ目は、例えばアカウントの乗っ取りなど、不正利用が行われた場合に、利用者たる労働者の損失が補償されることを示したものでございます。
3つ目は、いわゆる換金性の要件でございます。
4つ目は、前回議論になりましたけれども、賃金の支払に関する業務の実施状況などにつきまして、厚生労働大臣に適時報告できる体制を有することでございます。
要件の5つ目は、これら①から④のほか、賃金の支払に関する業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有することという要件でございます。
(3)は、手続を示したものでございます。
2つありまして、1つが、厚生労働大臣の指定を受けようとする資金移動業者は、さきに述べました(2)の①から⑤の要件を全て満たしていることを示す申請書を厚生労働大臣宛てに提出していただきます。それで審査した上で適合しているということであれば、個社指定をするという流れになります。
2つ目でございますけれども、指定の際に(2)の①から⑤の要件を満たしていれば、それでその後もオーケーということではなく、この要件は充足し続けていただく必要がございます。仮に(2)の①から⑤の要件を満たさなくなった場合には、指定を取り消すことができるという立てつけはどうかと考えております。
続きまして、10ページをお開きください。10ページ以降は、先ほど申し上げましたように、各事項ごとに、これまでの議論から論点となり得るものを掲げさせていただいております。
1つ目が、労働者の同意についてでございます。
ア、イ、ウとありますけれども、まずアでございますが、これまで何度もここで議論になりましたように、資金移動業者と銀行とは、本質的に業態等も異なるものですし、また、規制の内容や破綻した場合の保証のスキーム等々、多岐にわたり異なる点がございまして、それらをきちんと理解していただいた上で同意していただくということが重要であります。その旨の記載をさせていただいております。事業場内でのルールを設定する際には、銀行口座等への賃金支払と同様に労使協定を締結するという取扱いでよいかということも、併せてアに記載させていただいております。
次に、イですけれども、こちらは、本人同意の際の確認事項について記したものでございます。基本は、①から③に書いてあるような事項、すなわち、希望する賃金の範囲及び金額。そして、資金移動業者名、アカウントID。そして、振込開始時期、これらが基本であると考えております。
ただ、これまでにも御説明させていただきましたように、資金移動業者の賃金支払に関しては、銀行口座振込とは異なる点がございます。それらを線引きのところで書かせていただいておりますけれども、その固有の事項として、例えば破綻時の保証の受取方法もございますし、また振込エラー対策の観点から必要な労働者のほかの情報ということもございますでしょうし、受入れ上限を超え得る場合の代替口座情報等も、労基法24条を一般の使用者が履行するという観点では必要になってくるものと考えられますので、これらも併せて記載させていただいております。
続きまして、ウでございますけれども、使用者が選択する賃金支払手段に関しまして、これまで御説明申し上げておりましたように、現行の銀行口座等に関しましては、労働者の便宜に配慮して1行、1社に限定せずということを通達で示しているところでございます。資金移動業者の口座への賃金支払につきまして、労働者の自由意思に基づく同意となることを担保するためには、資金移動業者の口座以外の賃金支払手段も選択肢とする取扱いとすべきかということを、ここでは掲げさせていただいております。
続きまして、11ページをお開きください。11ページからは、柱立ての2つ目といたしまして、具体の指定の要件に係る論点を掲げさせていただいておりますが、まず、総論部分といたしまして、一番最初のエでございます。改正資金決済法に基づきまして、5月1日から、現行の類型に加えまして、高額類型と少額類型の3類型となります。
これまでも御説明しましたとおり、高額類型というのは、100万円を超える出金・送金が可能というスキームでございますけれども、あらかじめ利用者が、いつ、誰に、幾ら送金するのかという指図を行っていないと、そもそも入金できないという仕組みであると承知しております。仮に指図を行っていない場合には入金できないわけでございますので、使用者側がそこの口座に入金しようとしても受け取ってもらえない。その場合は、労基法24条との問題が生じ得るものでございますので、この扱いをどうするかというのが1つの論点ではないかと考えてございます。
同様に、少額類型につきましても、5万円を超える分については入金できないという設定がございますので、これについても、併せてどのようにすべきか検討すべきと考えております。
次に、指定の要件の①でございまして、破綻時の資金保全の部分でございます。これに関しましては、これまでも図で示させていただいたところでございますけれども、民間による資金保全の契約を結んでいただくことを提案申し上げてございます。その場合に、ここのオに書いてございますように、十分な額が早期に労働者に支払われることが必要ではないかと考えられまして、「その際」に書かせていただきましたように、十分な額というのはどのようにするのか、あるいは早期にというのは、どのぐらいの期間にするのかということを御議論いただければと考えてございます。
次に、その下の要件の②、不正利用があった場合の補償の要件に関してでございますが、カに書いてございますように、インターネットバンキングにおきましては、全銀協ガイドラインがございます。そこで利用者が無過失の場合には全額補償で、過失があった場合には個別対応ということが記載されてございます。
一方で、資金移動業者に関しましては、前回、3月16日までは、これは個社対応、全てそれぞれの会社の約款等に基づくものなのだという御説明を申し上げておりましたけれども、その後、4月2日になりまして、資金決済業協会のほうで業界のガイドラインを取りまとめたと承知しております。そういった民間における自主的な取扱いも踏まえまして、労働者が無過失の場合は全額を補償することとしてはどうか。あるいは、労働者に過失がある場合の補償の在り方について、どう考えるかということを論点として記載させていただいております。
続きまして、12ページをお開きください。12ページの要件の③、換金性の部分についてでございますけれども、キ、ク、ケと3点掲げさせていただいております。
まず、キですが、現行の銀行口座への賃金支払に関しましては、所定の賃金支払日の午前10時までに労働者が出金できるような状態にしておくこと、これを通達に記載しているところでございます。資金移動業者の場合にも、所定の賃金支払日に換金(出金)できることが必要ではないかということを、まず掲げさせていただいております。
次に、クですが、前回、使用者側委員のほうから御意見があったことも踏まえまして、換金の単位につきましては1円単位とし、資金移動業者の口座への資金移動が1円単位でできることが必要ではないかということを掲げさせていただいております。
また、ケも同様に、前回の使用者側委員からの御指摘も踏まえまして、少なくとも毎月1回は手数料を負担することなく、受け取りができることとしてはどうかということを掲げさせていただいております。
次に、要件の④、適時報告要件についてでございます。コ、サと、2つ掲げさせていただいております。
まず、コの部分ですけれども、この適時報告要件そのものを要件化することによりまして、資金移動業者が賃金の支払に関する各種の要件にきちんと適合しているのかどうか。それを指定の後も確認できるようにすることが必要かと考えられますので、これを要件化することをまず考えてございます。労基則に設けられる指定要件として位置づけた以上、これに基づいて厚生労働大臣は指定資金移動業者に対しまして、適時の報告をさせることができるという流れになろうかと存じます。
また、サの部分でございますが、資金保全の要件では、こちらといたしましては、民間保全のスキームということを念頭に置いております。そうなりますと、資金移動業者のほかに、保証会社なり保険会社というのも登場人物として現れることになります。資金保全の要件、具体的には契約の内容や、その履行が可能かどうかといった状況なども適時に確認することが必要となってくることが想定されますので、これらの保証会社や保険会社等についても、必要に応じて状況を報告させることが必要ではないかと考えております。
そのやり方といたしましては、ここに書いてございますように、資金移動業者が大臣指定を受ける際の申請を出していただく際に、あらかじめ契約の相手方であります保証会社や保険会社などから受け取った、適時に厚生労働大臣に報告するという旨の同意書を併せて添付していただきまして、その同意書に基づいて適時の報告を求めるというスキームにしてはどうかという御提案でございます。
次に、13ページをお開きください。13ページは、指定要件の5番目でございまして、技術的能力や社会的信用に係るものでございます。具体的には、シの1から4に掲げさせていただいたような事項に関しまして、これらを技術的能力とか社会的信用を有することとして位置づけて確認してはどうかと考えてございます。
スにも関わることですけれども、例えばシの1から3に関わる技術的能力に関する事項とか、4の社会的信用に関する事項につきましては、1階部分であります資金決済法を所管する金融庁のほうで、どのような監督、モニタリングあるいは状況把握をされているのかということと緊密に連携を取りながら確認していく必要があると考えてございますので、その旨をスに記載させていただいたところでございます。
次に、14ページをお開きください。14ページは、柱立ての3つ目の手続に関する事項でございます。このうちの後段の部分、指定取消しに関する記載をセに論点として掲げさせていただいております。さきに申し上げましたように、(2)の①から⑤の要件は、指定の際の確認事項であるほかに、指定された後もその要件を充足し続けていただくことが、労働者保護の観点からも必要と考えてございます。この要件の充足性が怪しくなったときには、要件の④にあります適時報告に基づきまして状況を確認し、要件が充足されるのかどうかをきちんと確認していくということが、まず前提となります。
仮に、少し怪しいところが出てきた場合に、その報告を受けた内容に基づきまして、金融庁とも連携しながら改善を求めて、それで是正されれば、引き続き、賃金支払業務を資金移動業者に担っていただくことが可能という立てつけにしてはどうかということを考えております。その趣旨といたしましては、セに書かせていただきましたように、要件を充足しなかったからといって、指定を直ちに取り消されたりすると、賃金支払に関して労使にとっても非常に大きな影響をもたらすことが考えられますので、そのような立てつけにしてはどうかと御提案申し上げるものでございます。
それで是正されればいいのですけれども、是正されない場合には、指定要件を満たさなくなることが想定されます。その場合には、行政手続法に基づく聴聞等の手続を経て指定の取消しということに進んでいくわけでございますけれども、今、申し上げたようなことなどにつきましては、これが不利益処分に該当する以上、あらかじめ明示しておくことが必要と考えておりますので、それをここに記載させていただいたものでございます。
以上が骨子に係る御説明でございました。
次に、15ページをお開きください。15ページは、1月の御指摘を踏まえて、前回御用意いたしました米国におけるペイロールカードの概要につきまして、情報として、今回の議論に関わる事項が少し足りないのではないかという御指摘があったことを踏まえ、右側の規制内容に関しまして、私どもが把握できた限りにおいて、若干追記したものでございます。具体的には、15ページの右側、規制の部分の真ん中、(※)以下について追加記載させていただきました。
まず、※の部分でございますけれども、米国消費者金融保護局の、ちょっと古いのですが、2014年調査によりますと、ペイロールカードのうち、預金保険や信用組合保険といった保険がないものも、実態としては12%あるということでございます。
続きまして、その下でございますけれども、レギュレーションEという規則がございまして、これによりますと、金融機関等は、ペイロールカードに限らず、プリペイドカードの紛失・盗難等による不正な送金につきまして、利用者に損失費用の一部を払い戻すこととなっているようでございます。
さらに、その下でございますけれども、アメリカペイロール協会の情報によりますと、連邦法・州法で、労働者に対しまして、給料日に賃金が支払われて、その日に労働者が引き出せるようにする必要があるとされておりまして、ほとんどの州では、賃金支払期間に少なくとも1回は手数料無料で引き出しができなければならないとされているようでございます。
本体資料については、以上でございまして、その次の16ページ以降の参考資料につきましては、これまでの議論を踏まえまして、2つに分けております。1つが、16ページから27ページまででございますけれども、資金移動業に関する1階部分の規制を、これまでの資料を並び替えて、こちらに掲げさせていただいております。
さらに、28ページ以降は、この資金決済法などの1階部分以外の資料、例えば成長戦略とか労基法24条ですとか、こういったその他の既存の参考資料を掲げさせていただいております。
私のほうからの説明は、以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局の説明につきまして御質問、御意見があればお願いいたします。なお、ウェブ参加の委員の皆様におかれましては、御発言の希望がある場合は、チャット機能を利用して「発言希望」と入力してください。「手を挙げる」機能は、使わないようにお願いいたします。
それでは、御発言希望の方、どうぞお願いします。
仁平委員。
○仁平委員 ありがとうございます。
本題に入る前に、まずお尋ねがございます。4月5日、「規制改革会議投資等ワーキング・グループ」で、厚労省より、今後の対応について、1つは、労働条件分科会で具体的な制度案を示すことで議論を加速させる。もう一つは、2021年度、できる限り早期の制度化を目指すという御発言がございました。資金移動業者の口座の問題については、省令改正が必要で、労政審において労使の議論と合意が必要な事項であり、厚労省が労働側の意見を聞かずに勝手に進めることはできない事項であると認識していますが、投資等ワーキング・グループにおける厚労省の発言について御説明をお願いしたいと思います。
加えて、1月の審議会においても、結論ありきで進めるべきではないと発言しておりますが、今後の分科会の運営に当たり、どのような方針で厚労省として臨むのか、これは小林審議官からぜひ御説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 それでは、事務局よりお願いいたします。
○審議官 審議官の小林でございます。仁平委員からの御質問にお答え申し上げます。
御指摘のとおり、4月5日に行われました「規制改革会議投資等ワーキング・グループ」において、厚生労働省として2点の対応方針をお示しいたしました。
1点目は、前回の労働条件分科会において、公益委員より、議論を深める観点から、制度化した場合を想定して、より具体的な制度設計案を提示してほしいという御意見が示されたことを踏まえまして、具体的な制度案を示すことで議論を加速という表現で対応方針を述べたものでございます。
2点目でございますけれども、昨年7月17日の閣議決定、これは成長戦略フォローアップでございますけれども、これの中で、令和2年度、できるだけ早期の制度化を図るとされておりました。既に令和2年度が終了しておりますことから、2021年度、できる限り早期に制度化を目指すという対応方針を述べたところでございます。
これらの対応方針を踏まえまして、本日、資金移動業者の口座へ賃金支払を行う場合の制度設計案(骨子)ということで、資料No.1の9ページなどをお示ししているところでございますけれども、これはあくまでも議論の素材でございます。引き続き、各委員の皆様から制度設計に係る御意見などを頂戴して、丁寧な審議会運営を行ってまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 いかがでしょうか。仁平委員。
○仁平委員 ありがとうございます。ぜひ、この労政審労働条件分科会は、丁寧に運営をお願いしたいと思います。
ありがとうございます。
○荒木分科会長 オンラインから聞き取りづらいという御指摘をいただいております。発言される方は、なるべくマイクに口を近づけて発言をお願いしたいと存じます。
ほかに発言、いかがでしょうか。
森口委員。
○森口委員 ありがとうございます。労働側の森口でございます。
私からは、不正引き出しの補償について、金融庁に質問したいと思います。
不正引き出しについては、資料の11ページのカの部分に、インターネットバンキングにおける不正引き出しの補償の取扱いを踏まえと記載がございます。ネットバンクにおける補償は、全銀協申合せにおいて、過失及び重大な過失については、個別補償となっております。全銀協は、補償の割合などを定期的に公表されておりますが、実際にはどのような取扱いがなされているのか、金融庁として把握されているのでしょうか。11ページの文言を見ますと、補償はネットバンクと同様の取扱いを考えているようにも受け取れますが、そもそもネットバンクの補償が、利用者保護の観点から十分なのかについても検討する必要があるのではないでしょうか。
また、日本資金決済業協会においては、資金移動サービスの不正利用防止に関するガイドラインを策定されたとのことですが、資料の27ページを見ますと、「補償要件」以下は個社によると記載されています。これでは、ガイドラインが作成されたとしても、特に今までと変化がないのではないでしょうか。問題は、不正引き出しのときにどの程度の補償が受けられるのかという点であり、補償の内容や水準が明らかにならなければ、利用者からすると予見可能性に乏しく、労働側として利用者保護に欠けると言わざるを得ないと考えております。
以上となります。
○荒木分科会長 それでは、金融庁へのお尋ねでしたので、金融庁よりよろしくお願いいたします。
○金融庁総合政策局フィンテック監理官 金融庁の曲淵と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、1点目、インターネットバンキングの補償の件でございます。金融庁では、各銀行に対しまして、インターネットバンキングにおける不正取引が発生した場合には、当局まで報告するよう求めているところでございまして、補償状況につきましても確認を行っているところでございます。
それから、インターネットバンキングによる不正取引につきましては、預貯金者保護法制定時の附帯決議におきまして、政府及び業界において、預貯金者保護法の趣旨を踏まえた対応が求められていたところでございます。こうした決議を受けまして、全国銀行協会におきまして、預金者の保護の観点から十分な検討を行った結果、会員銀行が遵守すべき自主ルールといたしまして、「預金等の不正な払戻しへの対応について」という申合せを策定したものと承知してございます。金融庁といたしましては、各銀行のインターネットバンキングにおいて不正取引が発生した場合には、この申合せに基づきまして、適切に補償等の顧客対応が行われているものと承知しているところでございます。
もう一つ、27ページの日本資金決済業協会のガイドラインの件でございます。御指摘のとおり、今般、資金移動業者の自主規制団体である日本資金決済業協会が、4月2日に「資金移動サービスの不正利用防止に関するガイドライン」を作成いたしました。このガイドラインにおきまして、被害者に過失等がない場合には、補償金額の補償を行うことが明確化されまして、また、各事業者も、このガイドラインに沿った補償方針を策定することとなったことが、今までとの大きな変化ではないかと認識しているところでございます。
また、このガイドラインにおきましては、被害者に過失がある場合等、個別対応に係る補償方針につきましても、「自らが提供する資金移動サービスの内容に応じて、適切な補償方針を策定することが重要であり、消費者契約法その他の法令の趣旨に照らし、利用者や被害者の保護に欠けるような補償方針は許容されるものではない点に留意が必要」とされているところでございます。金融庁といたしましても、資金移動業者に対しまして、不正利用が発生した場合には、対応状況等につきまして報告を求めることとしており、補償状況につきましても、資金決済業協会が策定したガイドラインを踏まえて、適切な対応がなされているかどうか、モニタリングしてまいりたいと考えているところでございます。
○荒木分科会長 大塚課長、補足的にお願いします。
○賃金課長 若干補足させていただきます。
今、金融庁のほうから、いわゆる1階部分に関する御説明がございました。実際に個社対応とガイドラインとの相違が出てくる場合の御懸念が、森口委員のほうから出されたものと認識しております。今の業界ガイドラインを前提としつつ、さらに踏み込んで2階部分をどうするのかというのは、別途の議論としてあり得るところだと考えております。例えば、日本資金決済業協会のガイドラインなどにありますように、過失があった場合に、きちんと顧客側のニーズに沿った対応をということでございますけれども、資金移動業者の約款を見ますと、会社によっては、過失があった場合は、一律に補償対象外としているようなところもあると承知しております。
例えば、過失があった場合に一律に補償外とするのは認められないといったことを2階部分で規定するということも、これは議論としてはあり得るところだと思っておりまして、そういった部分を含めて、現状を踏まえつつ、2階建て部分をどうするかの議論をしていただければ幸いに存じます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
○森口委員 ありがとうございました。
○荒木分科会長 それでは、オンラインのほうから希望が出ております。
まず、櫻田委員、御発言をお願いいたします。
○櫻田委員 ありがとうございます。櫻田でございます。
私からは、資料の9ページ、10ページにある労働者の同意について、厚労省に質問させていただきたいと思います。
資料の10ページですが、労働者の同意に関して、滞留規制、破綻時の保証方法以下、理解の上で同意できるようにすることが必要であると記載されています。同意については、破綻等リスクのある資金移動業に関しては、より重要な課題だと考えております。
この点につきまして、資料9ページの(1)の※印のところに、使用者が労働者に強制しないことが前提との記載がありますが、真の同意を担保するためには、資金移動業に関するリスクも含めた正確な理解と、労働者の自由な判断が必要だと考えます。使用者に強制されないということはもとより、選ばざるを得ないという状態にさせられるということも非常に問題であると思っています。自由な判断が阻害された状態で同意した場合、監督・指導いただくことができるのか、どのように真の同意の実効性を担保するのかということについて、まずお伺いしたいと思います。
もう一点、労働者が外国人だった場合についても、滞留規制以下、事業者による保全スキームの違いや、預金とは違うということ等も含めて、外国人も理解の上で同意できるようにするということでよろしいのかという点についても、併せてお伺いさせていただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 事務局より、お願いします。
○賃金課長 ただいまの櫻田委員の御指摘、2点あったかと存じます。
まず、1点目についてですけれども、強制はもちろんのこと、同意せざるを得ないような状況に追い込まれて同意する。あるいは、資金移動業と銀行との違いがよく分からない状態のまま同意するということは、これは望ましくないと考えてございます。このため、まず、厚生労働省といたしましては、この制度が仮にできた暁には、そもそも資金移動業と銀行というのは、業態も、またそこで取り扱うお金の性質も、各種の規制も、あるいは破綻した場合のスキームも、もろもろ違うのだということを丁寧に周知していかなければならないと考えておりまして、それもきちんと情報開示した上で、使用者の方々にはそれらを活用していただきつつ、強制にわたるようなことがないような形で行っていただくよう、周知の在り方というものを並行して検討していきたいと考えてございます。
監督・指導できるかどうかというのは、これはルールの中にどのような規定ぶりをするかにも関わるので、今の段階でなかなか一概には言いがたいものがありますけれども、少なくとも望ましくない形で行われることが横行しないように、その対応策についても、今後きちんと考えていきたいと考えてございます。
次に、外国人の場合でございますが、外国人の場合も、資金移動業と銀行との違いなどについて、正確に御理解いただくことが重要と考えておりまして、その点は櫻田委員の御指摘のとおりかと考えております。私どもの別の業務であります最低賃金の関係につきましては、実は、日本語のほか、13か国語での案内を用意して、最低賃金制度に係る各種の周知を行っているところでございまして、そのやり方、ノウハウというのは、こちらのほうにも応用できるのではないかと考えてございます。制度が仮に成立した暁には、外国人の方々に対する多言語での周知というものも検討していきたいと、そのように考えてございます。
以上です。
○荒木分科会長 櫻田委員、よろしいでしょうか。
○櫻田委員 ありがとうございます。
○荒木分科会長 続いて、佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤委員 ありがとうございます。佐藤でございます。
私のほうからは、指定要件の5点目でしょうか、①から④のほかにということで、13ページに具体的に要件の解説があろうかと思うのですけれども、このことについて事務局にお伺いしたいと思います。⑤として、賃金の支払に関する業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有するということですけれども、これについて、スを拝見しますと、シに示されている4点について金融庁とも連携して、厚生労働省において総合的に判断していくといった仕組みが御提案されているかと思うのです。
非常に重要なことがシに挙げられている4点と思うのですが、この3つ目に、「個人情報について、厳格な取扱を行っていること」が挙げられておりますけれども、個人情報の保護に関しては、個人情報保護委員会の関与も不可欠と考えておりまして、この個人情報保護委員会の所掌であったり、法令に基づく監督権限との関係性を、まずどうお考えになっているかをお聞きしたいのと、個人情報保護委員会では、先月末ですか、同委員会が事業者への立入検査などを実施したとの報道もありますけれども、個人情報保護委員会との連携といったことも、今回の制度においては想定されておるのか、その2点について、お伺いさせていただければと思います。
以上です。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 お答え申し上げます。
まず、個人情報保護法に関しましては、金融関係につきましては、独自の金融分野におけるガイドラインを策定するなど、金融庁としても一定の関与をされていると承知しております。他方で、今回、ある会社における個人情報関係が問題になった際には、個人情報保護委員会が独自に動かれたという点もございますので、私どもといたしましては、金融庁とは個人情報保護関係の履行状況につきまして連携させていただくとともに、個人情報保護委員会についても必要な連携があるのかどうか、これは継続して検討していきたいと考えてございます。
以上です。
○荒木分科会長 佐藤委員、よろしいでしょうか。
○佐藤委員 ありがとうございます。
○荒木分科会長 続いて、川野委員、お願いいたします。
○川野委員 ありがとうございます。
私からは、滞留規制について金融庁へ御質問させていただきたいと思います。資金決済法の改正によって、第2類型となる現行類型については、100万円を超える金額について滞留規制がかかることになります。しかし、送金に関係する資金であれば、100万円を超える資金の滞留も許されるということになっています。送金に関係する資金か否かをどのように判断されるのでしょうか。また、金融庁として、一つ一つの口座の滞留状況を確認するわけではないと思いますが、滞留しているか否かの監督・指導における判断はどのように行うのでしょうか。
また、改正資金決済法は5月1日に施行されますが、資金移動業者において、どのような体制を構築して滞留を制限していくのかについては、施行後、速やかに情報提供いただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 それでは、金融庁へのお尋ねですが、お願いできますでしょうか。
○金融庁総合政策局フィンテック監理官 金融庁の曲淵でございます。お答え申し上げます。
金融庁では、利用者1人当たりの受入金額が1件当たりの送金上限額を超えている場合、資金移動業者に対しまして、利用者資金が為替取引に関するものであるかを資金移動業者で確認を行い、仮に為替取引に用いられる蓋然性が低いと判断される場合、利用者に払出しを要請しまして、利用者がこれに応じない場合、払出しを行うといった措置を講ずることが求められているところでございます。なお、資金移動業者が利用者資金と為替取引との関連性を判断するに当たりましては、利用者ごとに受入金額、受入期間、送金実績、利用目的を総合考慮することを求めているところでございます。
また、金融庁は、資金移動業者において、具体的な確認方法、判断基準、対応方法につきまして規定した社内規則等を定め、役職員が社内規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、社内研修等によりまして周知徹底を図ることを求めているところでございます。金融庁といたしましては、こうした第2類型における滞留規制に係る体制整備の状況を確認いたしまして、また必要に応じまして、利用者資金の滞留状況も確認することで、実効性が確保されているかどうか、しっかりモニタリングを行ってまいりたいと思っております。
それから、2点目、法施行後の資金移動業者の態勢整備の件でございます。資金移動業者における滞留規制に係る態勢整備状況につきましては、どのような形で情報提供できるか、検討してまいりたいと考えているところでございます。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 川野委員、よろしいでしょうか。
○川野委員 ありがとうございます。
○荒木分科会長 それでは、以下、佐々委員、鳥澤委員、その後、八野委員にお願いしたいと思います。
佐々委員、発言をお願いします。
○佐々委員 ありがとうございます。
私から3点、申し上げます。
1つ目は、システムに関してですけれども、現在、給与計算システムというものがありまして、そこの中で全銀協の統一フォーマットで振込データを作成するという実務をやっています。これが、現在想定されているスキームを前提に考えますと、どうも資金移動業者ごとに仕様が異なりそうですので、それぞれの仕組みを構築していく必要が出るのかなと想像しています。なので、ここをできればフォーマットを統一するような形をお願いしたいと考えています。
続いて、2点目ですけれども、振込依頼に関しての実務ですけれども、弊社では、振込依頼というのは毎月、約16万件、実施しております。その手続を各銀行とそれぞれやっているわけではなくて、3つの元請銀行にお願いしております。ですので、一つ一つの資金移動業者と手続を進めますと非常に煩雑でございますので、できればこちらも移動業者を取りまとめる元請の資金移動業者というものができないかということを検討いただけないかと思います。
続いて、3点目ですけれども、送信データの取消しと訂正という実務についてです。今、振込エラーに関しては御配慮いただいていると思いますけれども、実務上、送信データの訂正とか取消しという実務もございます。元請銀行を窓口にして、振込日の前日まで、振込額の訂正とか取消しといった処理が今、できるようになっていますので、そういった点についても御留意いただければと思います。具体的に申し上げますと、債権差押えの通知といったものが届いたときには、直ちに給与の振込を止めなければいけないので、そういったところも、資金移動業者になっても資金データ取消しという実務ができるようにしていただければと思います。
以上です。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 佐々委員、御指摘ありがとうございました。
今の佐々委員の御指摘3点は、いずれも現行の銀行口座振込が行われる際の全銀システムに乗った形での各種の御懸念、御意見なのかなと受け止めております。資金移動業者に関しまして、全銀システムに乗ってくるというお話につきましては、私ども、所管ではございませんけれども、報道などでは2022年度中にというお話も伺っているところではあります。
ただ、現状では、資金移動業者は全銀システムには乗っていないということが、今は前提になっているのかなと思いまして、仮にそのコードなど、今の全銀システムに乗る形で資金移動業者にも同様のものをということになりますと、全銀システムに資金移動業者が加わることが前提となってくるお話なのかなと思いながら、今、各種の御指摘を伺っていたところでございます。一般の企業様にとってみたら、全銀システムと異なるシステムで、選択肢として、こちらの資金移動業者の口座への支払を認めるのは、実務上、問題・課題があるという御認識なのだろうなと考えております。
他方で、全銀システムに資金移動業者がまだ乗っていない状況におきましては、それに代わるシステムというものも念頭に、こちらの制度設計を考えていかなければならない。それも一方で思うところであります。
例えば、前回までの資料でもお示ししましたように、各労働者に対する給与振込に関するデータをCSVファイルに出して、それを資金移動業者の側に渡して処理してもらう方式ですとか、あるいは、資金移動業者側が用意するシステムにおきまして、そこに入力する形ですとか、あるいは企業様の各種データと、この資金移動業者のシステムとをつなぐAPI連携をするとか、いろいろな選択肢というのも、現状の全銀システムに資金移動業者が乗っていない段階においては、検討し得るものではないかとも考えてございます。そういったものが使い勝手も含めて選択肢となり得るのかどうかということなのかなと考えております。
いずれにしましても、全銀システムに乗る前、あるいは乗った後において、企業の人事労務実務の観点からは、手間が少なく済む、あるいは3点目におっしゃったような、データの取消しや訂正も迅速・正確に済むといった仕組みを構築することは大事なことだなと思っておりますので、引き続き、その企業の人事労務の実務も佐々様などにお教えを請うて、勉強しながら引き続き検討していきたいと思っております。
御指摘ありがとうございます。
○荒木分科会長 佐々委員、よろしいでしょうか。
○佐々委員 ありがとうございます。
○荒木分科会長 続いて、鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
今回、制度設計案について明示いただき、ありがとうございます。これによってデータイメージが分かりやすくなったのと、課題・論点が明確にされたと思います。その上で、この制度設計案について意見を申し上げます。
13ページに記載されている資金移動業者の指定要件について、賃金の振込エラーへの対策がございます。この要件につきましては、以前から申し上げているとおり、使用者としては、受入上限額、また金額の通知がない場合など、資金移動業者側の問題や利用者側の条件設定の問題によって賃金を振り込めない場合に、使用者側が責任を負わないということを明確にしていただきたいということと、そういうことが起きないように、回避先の口座をあらかじめ指定しておくという措置を行うということが、制度化に当たっての大前提だと思っております。
また、同様に、資金振込エラーに対しては、恐らく対象となる資金移動業者に対して、賃金を支払う使用者側、また賃金を受け取る労働者側、双方から問合せや相談というものが多数起こるものと思っております。それに対して的確に個別に対応できる体制というものが求められると思いますので、指定要件の中にその対応ができるということを検討していただきたいと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○賃金課長 鳥澤委員、御指摘ありがとうございました。
まず、1点目の振込エラーの対策に関してでございますけれども、前提といたしまして、鳥澤委員おっしゃるように、入金できない状態になってしまうと、それは、一般の使用者にとってみれば、労基法24条の履行確保の観点で問題が生じ得るものと認識しております。それがこういうシステム上のエラーで生じることは、できる限り防がなければいけないと考えてございます。
そういう意味で、私どもといたしましては、例えば労働者の同意時に確認した労働者の情報からアカウントを特定するといったような、そのアカウントが存在するのかどうかの実在性確認をきちんと行うことを、まず求めたいと考えておりますし、また、給与振込の期日前にリアルタイムで振込データを確認し、誤りがあった場合には、それを使用者側にフィードバックするなどの振込時確認といった観点も大事なのかなと思っております。
それに加えて、受入上限を超えるようなおそれが生じる場合には、あらかじめ労働者の本人同意時に設定しておいた、別の代替口座に支払うといったことも考えられるかと思いますので、振込エラーが起きたときに使用者側に労基法24条の責任が生じないようにするための代替策等につきまして、引き続き検討していきたいと思いますので、実務上の観点からの御意見も併せてお伺いできれば幸いに存じます。
また、鳥澤委員がおっしゃいました2点目の、資金移動業者側に多数の問合せが生じた場合への対応につきましても、これも具体的な省令の要件というよりは、解釈上の要件になるかと思いますけれども、ここに加えるかどうかにつきましては、皆様方の御意見も聞きながら検討していきたいと考えております。きちんと賃金支払業務を実施させるという観点からは、重要な御指摘なのではないかと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 鳥澤委員、よろしいでしょうか。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
○荒木分科会長 続いて、八野委員、その後に早乙女委員にお願いしたいと思います。
八野委員、お願いします。
○八野委員 ありがとうございます。
金融庁と厚生労働省、両方に対する質問ということになるのかもしれませんが、個人情報保護について質問します。資料の25ページに銀行と資金移動業者の個人情報に関する比較表があります。これを見ますと、個人情報保護については、銀行と資金移動業者で内容は変わらないという資料が示されていると思いますが、もともと資金移動業者と銀行ではビジネスモデルも違いますし、それぞれが把握する個人に関する情報の内容・量も異なるため、規制の在り方も異なるべきなのではないかと思っています。
銀行は、そもそも専業義務があり、情報取得の範囲も限られる上、金融サービスの仲介においても情報共有の規制がかかっていると認識しています。一方、資金移動業者においては、専業義務はなく、他業との兼業が可能でありますから、他業を含めたグループ内等において、賃金の入りから出までの非常に詳細な個人情報が共有されることになるのではないかと想定されますし、そういう懸念がございます。
銀行においては、賃金等の収入に関わる情報や、ローンを組んでいれば、個人の信用情報を有していると思いますが、だからこそ、銀行に関しては守秘義務が課せられていると認識しています。一方、資金移動業者に賃金振込が認められることになると、収入情報、または勤務先の情報だけでなく、それを使うことによって、どこで暮らし、いつ、どこで何を購入したかなどの詳細な個人に関する情報が蓄積されていくことが予測されます。その点を踏まえれば、銀行と同じ個人情報の保護の程度では十分ではないと考えます。
銀行では、金融サービス仲介についても、監督指針において、「預金等の媒介業務で得た顧客情報が、顧客の同意なく兼業業務に流用されることのないよう」という記載があります。一方で、ある資金移動業者の個人情報に係るデータの利用目的を見ると、広告や宣伝、マーケティングのために、「広告主となる第三者のサービスに関する広告、宣伝」や、「第三者の商品サービスに関するマーケティングのため」に個人情報を利用することが明記されています。決済利用で得られた情報が、当該の資金移動業者だけでなく、第三者を含めて広く共有されることについては、たとえ少額であったとしても問題だと思いますし、賃金が振り込まれることになると、先ほど述べたような個人に関する詳細な情報が決済業者に集まることになると考えます。
13ページの資金移動業者の指定要件のシの3ポツに、個人情報については、厳格な取扱いを行っていることと記載されていますけれども、この個人情報ということについては、別に項目を立てて、きちんと対応を図ることが非常に重要であると考えますが、考えを聞かせていただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 今、八野委員がおっしゃった最後の部分の個人情報を別立てとするべきではないかといった部分に関連して、私のほうからまずお答え申し上げますと、個人情報保護の法律やガイドラインに基づく履行確保の状況、これは先ほどの議論でも出ましたけれども、個人情報保護委員会や、金融業界を所管する金融庁さんのほうで適正にやっておられるものと考えております。
それを前提に、情報をやり取りしながらですけれども、個人情報の保護に関する別立ての要件にするかどうかについては、それはいわゆる1階部分の規制に加えて、何か別の規制を用意するかどうかにも関わってくることなのかなと考えておりますので、2階立て部分で個人情報保護に関して何を求めていくのか、その辺との兼ね合いなのかなと考えているところでございます。今後、労使の皆様方の具体的な御議論をお願いしたいと考えております。
○荒木分科会長 金融庁からお願いします。
○金融庁総合政策局フィンテック監理官 金融庁でございます。
資金移動業者には、個人情報保護法によりまして、他の事業者と同様に個人情報の適切な取扱いが求められていることはもとより、資金決済法において、銀行と同様でございますけれども、個人情報の安全管理措置を講ずることも求められているところでございます。
そして、個人情報の取扱いにつきましては、個人情報保護法ですとか、金融分野におけるガイドラインにおいても、個人情報の利用目的をしっかり特定することですとか、個人情報の提供に際して本人の同意を取るといったこと、あるいは利用目的外の利用をしないといったことが求められているところでございまして、他の業態と同様、個人情報に配慮した取扱いになっているものと認識しているところでございます。
○荒木分科会長 八野委員、どうぞ。
○八野委員 どうもありがとうございました。
ただ、今までは資金移動業者の口座に賃金が直接支払われことはなかったわけですが、賃金がデジタル口座に払われるということになりますと、賃金の振込から、購入履歴といった、様々な情報がビジネスに使われるということになるのではないでしょうか。
そういう意味で見ると、賃金がデジタル口座に払われるということになれば、個人情報をいかに守るかということは、今までとは異なり、非常に重要な部分になってくると思いますので、個人情報保護について2階建ての部分になるのか、1階建ての部分になるのか分かりませんが、そこにきちんと明記していく必要があるという意味で発言させていただきました。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、早乙女委員、その後、北野委員とお願いしたいと思います。
まず、早乙女委員、発言ください。
○早乙女委員 ありがとうございます。使用者側委員の早乙女です。
私からは、2点御質問させていただきます。
まず、1点目でございますが、資料11ページ(エ)に記載の資金決済法改正後の類型範囲に関しまして、資料22ページに、以前より分科会でお示しいただいております改正資金決済法の概要が記載されております。今回新設される高額類型では、利用者資金の滞留について、「送金額/送金日/送金先が明確な場合のみ資金を受け入れ、ただちに送金」と記載がございます。一般的な会社員が賃金振込口座として活用することを想定した場合に、こうした情報が振込時点で明確になっているとすると、例えば定額の公共料金の支払ぐらいではないかと思います。
また、その場合においても、100万円を超える送金となることは考えにくいのではないかと思いますが、高額類型の資金移動業者を活用するケースとはどのようなものなのか、お伺いできればと思います。
続いて、2点目でございますが、こちらも資料11ページ(オ)に記載の資金保全に関しまして、資料35ページに、以前よりお示しいただいております、資金移動業者が破綻した場合の資金保全のスキームの例がございます。こちらには、「資金移動業者が破綻した場合に、資金移動業者の口座のある賃金について、①十分な額が、②早期に、労働者に支払われる仕組み」と記載がございますが、労働者が保有する資金移動業者のアカウント残高には、使用者から支払われる賃金だけではなく、第三者や、本人が送金・入金したものなども含まれるのではないかと思います。
そういったことを想定いたしますと、ここでお示しいただいているスキームを実現するためには、賃金だけが振り込まれる専用アカウントを準備する必要があるのではないかとも思います。普段利用している資金移動業者のアカウントについて、賃金だけを別建てで管理することが可能なのか、資金移動業者の対応について、お分かりになるようでしたら教えていただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 今、早乙女委員から御指摘いただきました2点について、お答え申し上げます。
まず、1点目の、高額類型で具体的にどういうケースが想定されるかということでございますが、こちらは5月1日から施行されるものでありますため、私どものほうから確定的なことを申し上げることはできません。ただ、今後の議論との兼ね合いで申し上げますと、確かにおっしゃるとおり、一般の日本の会社員の方々の利用を考えますに、例えば毎月100万円を超えるような送金をするというのは、かなり限定的なケースなのかなと考えております。そもそも100万円を超えるような賃金をもらっていらっしゃる方が、しかもその全額を送金などに使うというような、かなり限られたケースなのかなと考えられます。
他方で、この賃金の範囲をどうするかの議論との兼ね合いで申し上げますれば、例えば退職金や賞与もこの対象から外さないのだということになれば、毎月ではないにしても、100万円を超えるような送金というものを、ニーズと言っていいのかどうか分かりませんけれども、そういうことを考えられる方ももしかしたらいるかもしれません。なので、私どもとしては、金融庁さんのほうからも情報をいただきながら、5月1日以降に高額類型の使用状況などについても必要な情報をいただいた上で、今後、高額類型をそもそもこの仕組みの対象に入れるのかどうかについて、労使の皆様方の御意見も承りながら検討していきたいと考えております。
2点目の給与専用アカウントを設けるかどうかについてですけれども、まず、これまで資金移動業者の動向を把握している限りにおいては、給与の専用アカウントをつくる意向を持っている業者というのは、限定的であるように承知しております。これは、技術的にそれができるのかどうかといった問題もあろうかと思います。
ただ、他方で、資金保全の要件についてですけれども、給与専用アカウントみたいなものを持っているような事業者について言えば、まさにそこの部分について保全すれば済むということなのかもしれませんが、仮に御自身で入金される分ですとか、他者から送られてくるといった、いわばごちゃ混ぜのアカウントの場合に、これをどの範囲、資金保全の対象とすべきなのかというのは、これは皆様方でも御議論いただければと思っているところでございますけれども、私どもとしては、そういうごちゃ混ぜのアカウントの場合には、基本は全額なのだろうと考えてございます。
以上です。
○荒木分科会長 早乙女委員、よろしいでしょうか。
○早乙女委員 ありがとうございました。
○荒木分科会長 続いて、北野委員、お願いいたします。
○北野委員 ありがとうございます。
資金保全に関して、金融庁と厚労省に質問がございます。資料の35ページに保証機関を中心とした資金保全スキームの図が例として挙げられていますけれども、保証機関に対する監督官庁はないと理解しております。現行においても、保証機関を利用した貸付け等は行われていますが、保証機関の内実について、金融庁としては承知していないという理解でよいでしょうか。
また、金融庁でも監督していない保証機関について、厚労省として、単に保証契約が整っているか否かの形式のみを見て判断するということでいいのでしょうか。このスキームの図で言えば、まさに保証機関がスキームの中心となっているわけですが、この中心となる機関について、厚労省は形式的にしか判断せず、金融庁は監督・指導しないということで、本当にいいのか疑問があります。
それから、資料9ページに、厚労大臣が指定する要件として、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に補償する仕組みを有しているということが挙げられていますが、仕組みの有無は厚労省が見るとしても、その実効性が伴わなければ意味がないと認識しております。資料12ページに、保証会社等への適時の報告に関する同意書の取得を行うとありますが、書類上の形式的な確認をするだけで実効性が本当に担保できると考えているのか、厚労省の御認識を伺いたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、まず金融庁からお願いいたします。
○金融庁総合政策局フィンテック監理官 金融庁でございます。
保証機関の実情についてというお話でございました。民間の保証会社におけます保証業務自体は金融庁の所管ではございませんので、その実態についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
なお、保証会社が貸金業者等、金融庁の所管業者である場合もございますが、その場合も所管業務の範囲内でモニタリングを実施しているという状況でございます。
また、御指摘のとおり、金融庁の監督下にあります金融機関におきましては、保証会社を活用して業務を行っているところもございます。そういった場合に、必要に応じて金融機関を通じて保証会社の実態を把握するということもあるわけでございますけれども、通常、保証会社の実態を把握しているわけではございません。
以上でございます。
○荒木分科会長 事務局から、引き続きお願いします。
○賃金課長 この指定要件の①を充足しているかどうかについてですけれども、保証会社にしても、あるいはほかのスキームもあり得ると考えておりますけれども、いずれにしましても、まず、契約内容はしっかりチェックさせていただく。これは、単に文面がそろっていればいいのではなくて、その実効性がきちんと伴うものなのかどうかも、法律の専門家の知識なども必要に応じて活用しながら確認していきたいと考えておりまして、文言上そろっていれば、それで①の要件はオーケーにするといった運用には、決してなってはならないと考えておりますので、引き続き、その履行の方法につきましては確認していきたいと考えております。
○荒木分科会長 北野委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○北野委員 ありがとうございます。
○荒木分科会長 ほかに御発言の御希望ございますでしょうか。
仁平委員、お願いします。
○仁平委員 ありがとうございます。
ほかの法律との関連についての質問でございます。2020年4月より改正民事執行法が施行されておりまして、強制執行における執行率を高めるために、第三者からの情報取得制度が新設されたと伺っております。例えば養育費の支払が滞っている場合など、預貯金債権は情報取得の対象になりますが、資金移動業の場合、預貯金債権ではなく為替債権ということなので、対象外になるのではないかと思うのですが、給与の振込先が異なることで、こうした差が生じることはいかがなものかと思っております。
また、賃金が資金移動業者の口座に振り込まれることにより、為替債権という取扱いになることによって生ずる問題が、ほかにももしかするとあるかもしれません。その他の問題も含めて検討しておくべき課題があるのか、ぜひ精査していただきたいと思っておりますので、これは金融庁が答えられるのであれば金融庁、難しければ厚労省にお願いしたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○賃金課長 今、仁平委員が御指摘いただいた事項は、制度を具体的に検討するに当たりまして重要な御示唆なのかなと考えております。と言いますのも、私ども、一般的に制度改正する際には、その制度改正の内容がほかの制度にはねるかどうかというものを、所管する官庁に情報提供しつつ、併せて検討を促すということを行っておりますので、本件につきましても、もうちょっと制度の内容が具体的になった暁には、民事執行法を所管する法務省のほうに情報提供して検討を促していきたいと考えております。
今、御指摘のありました改正民事執行法の第207条についてでございますけれども、こちらは金融機関から給与の支払をする者の名称ですとか、住所等の預貯金債権に関する情報を取得することができることとされているところでございまして、仁平委員御指摘のとおり、これは預貯金債権ですので、資金移動業者の為替債権については、基本的に入ってこないだろう。あと、207条に金融機関として具体的な定めがされているのですけれども、これも銀行や証券会社等のことでありまして、そもそも資金移動業者はここには入っていないのではないかと、条文を見る限りでは、そのように見受けられるところでございます。
この民事執行法207条の対象に資金移動業者を含めるか否かというのは、これはまさに民事執行法を所管する法務省の政策判断事項ということでございますので、資金移動業者の口座への賃金支払の制度化がもう少し具体的に進んだ段階で、法務省の担当部局のほうには必要な情報提供を行っていきたいと思いますし、ほかにも、例えば預貯金債権を前提としたような制度を持っているところがあるのかどうか、その辺も確認した上で対応していきたいと考えております。
御指摘ありがとうございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
山内委員が発言御希望ということで、失礼いたしました。山内委員、お願いいたします。
○山内委員 詳細な御説明ありがとうございました。
私からは、先ほど冒頭、労側の委員様から御質問があった指定要件の②の回答部分のカについてでございます。
2点ございまして、1点目は、労側の委員様と意見としてはほぼ同じなのですが、まず、労働者側に過失がある場合について、損失全額を補償することについて、前回の分科会でも使用者側の委員から、インターネットバンキングの補償根拠である全銀協の申合せと同じ補償をすることを要件化することを求めておりましたので、事務局側の御提案内容については、異論はございません。
ただ、労働者に過失がある場合の補償の在り方について、現状では個社によって対応が異なると想定されるために、指定要件として考慮するのであれば、事業者間での差異ができるだけ生じないようにしていただければと思います。これについては、先ほど冒頭、金融庁及び厚労省側から回答いただきましたので、同じような意見ということでお含みおきいただければと思います。
もう一点でございます。この文面の中には、労働者側の過失・無過失に関して付言されておりますが、資金移動業者側の過失・無過失に伴ってのトラブルが生じた場合、この補償内容について、利用する労働者側にしっかりと伝えることも重要かと考えております。これは当然、加入する労働者側、そして資金移動業者の間の契約によるものと理解しておりますが、このような初めてのケースということもございますし、トラブルも幾つか想定されることから考えると、補償内容は個社の契約ごとに異なる内容であるとしても、資金支払先として労働者の同意を得る際、使用者が本人に当該規約の内容に関して周知することを、何かしらのルールとして設けてはいかがかなと感じております。
いずれも、これを新たに導入する際に従業員がトラブルに巻き込まれないということを想定しての意見ということでございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、事務局からお願いします。
○賃金課長 山内委員、御指摘ありがとうございました。
山内委員がおっしゃった前段につきましては、先ほども申し上げたとおりでございまして、個社ごとに対応が異なってしまうということも、現状においてはあるのかもしれませんけれども、2階部分のルールとして、その現状は現状で見つつも、その解釈・運用として、どのようなことを事業者側に求めていくのかというのは、別途議論できることかと思っておりますので、引き続き労使の皆様方の御意見を承れればと思っております。
それにも関連するのかもしれませんが、資金移動業者側で無過失だった場合の取扱いが特に問題になるかと思っておりますけれども、各個社の約款などを見るに、例えば想定されるケースとしては、利用者たる労働者本人の過失・無過失ではなくて、同居している家族が御本人のIDやパスワードを使って引き落としてしまったようなケース。これは、もしかすると資金移動業者側にとっては知り得ないような状態で、しかし、使われてしまった。しかし、使ったのは労働者ではないといったケースも中にはあるかもしれません。
こういった家族が使ってしまったケースについて、補償の対象とするかどうかというのは、これは各資金移動業者の約款を見ますと、対象外として明記しているところもあれば、余りはっきり書いていないところもあったりします。
いずれにしましても、労働者の過失・無過失や、その補償の対象の範囲、除外の範囲などにつきまして、一定の線引きを労基則に基づく解釈の中で示していくことも、これは2階部分として考え得ることだと思いますので、皆様方の御意見をいただければと思っております。
また、山内委員のほうから御指摘いただきました、使用者が実際に本人同意を取り付ける際に、今ありましたような不正利用等の場合の補償に関する契約内容を労働者の方にきちんと理解していただき、そのために使用者側からもその旨の周知をきちんとしていただいた上で、同意を取り付けていただく。これは、非常に大事な観点でありますし、できればそうしたことはやっていただきたいと考えられますので、こうした本人同意を取り付ける際に、何を使用者側として労働者の方々に伝えなければいけないのか、周知しなければいけないのかということも、今後の議論において労使の皆様方からも御意見いただきたいと思っております。
ありがとうございます。
○荒木分科会長 山内委員、よろしいでしょうか。
○山内委員 ありがとうございました。
○荒木分科会長 それでは、公益の黒田委員から発言希望が出ております。お願いいたします。
○黒田委員 ありがとうございます。
本日、音声が大変聞き取りづらい状況でして、もし重複しているようなことを申し上げるようでしたらお許しください。今日、金融庁の皆様がせっかくいらしてくださっているので、1点質問です。現在、この分科会では、1階部分を所与とした上で、2階部分について詳しく議論するという立てつけで話をしているわけですけれども、その前提条件として、1階部分の岩盤がしっかりしているということが一番重要になってくると理解しております。
そこで、門外漢からの質問で恐縮ですが、検査体制について質問させていただければと思います。主要銀行とそれ以外の銀行では、検査の頻度や深度が違うという理解をしていますけれども、それらに比較した場合、現在、80の資金移動業者に対しての検査の頻度や深度は、どのぐらい違うのか、同程度なのかということをぜひ教えていただきたいと思います。銀行業と違って、資金移動業は登録という形で認められるということであれば、これからも増えていく可能性が考えられるわけですけれども、そうした中で検査の頻度や深度はどういったものを想定されているのか、その辺りをぜひ聞かせていただければと思います。
たしか2年ほど前に集中検査に入ったという報道があったと思うのですけれども、一度入ったら、その後は当分ないのかといったことも教えていただければありがたいです。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 それでは、金融庁よりお願いいたします。
○金融庁総合政策局フィンテック監理官 金融庁でございます。
検査の頻度でございますけれども、まず事実関係を申し上げますと、資金移動業者に対しましては、2017年度3先、2018年度8先、2019年度はコロナ対応もございまして、3先ということでございます。銀行と比較してどうかというところはありますけれども、我々として申し上げられるのは、リスクに応じて検査の対応先を選定いたしまして、財務局と金融庁で連携して、必要な先に検査を行っていくということでございます。
今後も資金移動業者は増加してくるということはあると思いますけれども、様々な面を見まして、通常のモニタリングからリスクをしっかり検証いたしまして、その結果、必要な業者については、優先順位を上げまして入検していくということだと思います。
○荒木分科会長 黒田委員、いかがでしょうか。
○黒田委員 すみません、今回も途切れ途切れで、具体的な数字を冒頭におっしゃっていたと思うのですけれども、ちょっと聞き取りづらくて理解できなかったので、議事録でまた拝見させていただきたいと思います。
お答えいただきまして、ありがとうございました。
○荒木分科会長 通信状況がよろしくなくて、申し訳ございません。
ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
まず初めに、金融庁におかれましては、国会会期中、本分科会に御出席いただきまして、ありがとうございました。
これまでの質疑応答をお伺いする中で、例えば不正引出しに関しましては、1階部分の資金移動業者に対する必要な規制と適時のモニタリングというものが、ある程度されている印象を受けましたが、先ほど山内委員からもありましたように、なお2階部分で追加の要件を検討する必要があると、改めて感じたところでございます。その上で、私からは2点、2階の大臣指定要件についてのコメントをさしあげたいと思います。
1点目は、資料12ページ下段のコとサで記載されております、厚生労働大臣への適時の報告についてでございます。この要件自体は大変重要なもので、実効性を担保することが必要だと思っているところでございます。その上で、ここに資金移動業者や保証会社・保険会社が厚生労働大臣へ報告できる体制の必要性を書いてありまして、実際にそうした報告をすることが生じた場合、報告内容を広く国民、とりわけ各社の労使が適時に把握できることが重要ではないかと考えております。そのため、この報告内容については、早期に厚生労働省のウェブサイト等で公表することを何かしらルール化していただきたいと思います。
2点目は、資料10ページの労働者の同意についてでございます。資金移動業者の口座への賃金振込を行うに当たり、賃金の全額を振り込もうという方は少ないのではないかと思います。以前にも申し上げましたように、金融庁の調査によれば、資金移動業者のアカウントにおける残高の94.6%が5万円未満という結果ですので、賃金の一部を振り込む形での利用が主流になる可能性が高いと思っております。そのことを踏まえますと、10ページのイの①の金額を最初に労働者が同意するという部分について、一度設定した振込額を後に変更するニーズというものも生じるのではないかと思っております。
その際、振込額の変更が硬直的でありますと、労働者の利便性に欠けるという面がある一方、余りにも変更頻度が高くなりますと、今度は使用者側にとって大きな負担となりかねないと思っております。そこで、労使で話し合い、振込額の変更頻度に一定のルールを設けることが必要ではないかと私自身は思っているところでございますけれども、この点に関して厚生労働省の見解をお伺いできればと思っております。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 それでは、事務局からお願いします。
○賃金課長 今、鈴木委員から2点の御指摘をいただいたと承知しております。
まず、1点目の報告を受けた内容に関する情報開示の関係で申し上げます。先ほど来、申し上げておりますように、労働者の自由意思に基づく同意を担保することが極めて大事なことであろうかと思っております。そのためには、先ほど来、資金移動業者と銀行との違い等々を含めてでありますけれども、適切な情報開示を、国としても、あるいは個々の使用者としても行うことが大事なのではないのかなと考えております。
この④の要件に基づいて報告いただくような内容というのは、どちらかというと要件充足性に関わる非常に微妙な情報と考えておりますけれども、それらについて、委員御指摘のように、厚生労働省ウェブサイトなどで開示することにつきましては、資金移動業者側から同意を得るなどの必要な諸手続を踏んだ上でということが前提になろうかと思いますけれども、そういう手続を踏んだ上で適切に対応していくことが必要と考えられますので、具体的な開示内容や方法などにつきましては、皆様方の御意見も承りながら検討していきたいと考えてございます。
それと、鈴木委員御指摘の2点目の振込額を変える際の頻度等についてでございますけれども、鈴木委員のお話をお伺いしていて、想定されるケースとしては、例えば毎月、数万円、資金移動業者の口座のほうに振り込んでいただくようにお願いしていたのだけれども、実際には送金とか決済とかに余り使わなくて、どんどんたまっていってしまう。それで事後的に額を修正したいといったケースが生じてくることもあるのかなと思いながら、お話を伺っておりました。
まず、現行の銀行口座振込につきましては、そうした振込額の変更頻度などにつきまして、法令上の定めはないものと承知しております。それを念頭に置きつつ、資金移動業者の口座への賃金支払について、その賃金の範囲とか金額、あるいは変更の度合いなどについては、基本的には、労使協定を制度の前提とした場合には、労使で話し合った上で、労使協定において事業場内のルールとしてお決めいただくべき事項なのかなと考えております。
ただ、この分科会の議論におきまして、制度の前提として、その事業場内でのルール設定などについて労使協定で決めるということが固まったというわけではございませんので、その前提として、労使協定にするかどうかということも含めて、皆様方の御意見を頂戴できればと考えております。
御指摘ありがとうございました。
○荒木分科会長 鈴木委員、よろしいでしょうか。
○鈴木委員 ありがとうございました。
○荒木分科会長 大分時間が押しておりますが、佐久間委員、簡単にお願いします。
○佐久間委員 申し訳ございません。佐久間でございます。
先ほど大塚課長様のほうから、事業者を通じて労働者のほうに詳細に説明していただきたいというお話がございました。これはもっともなことだと思うのですけれども、今回の案件、ただ単に「資金移動業者の口座に振り込めるようになったよ」というものではなく、事業主にとっても、例えば保全はどうするのかとか、いろいろな仕組み自体の問題があります。ですから、単にパンフレットをつくって、例えば私ども事業者団体を通じて、各事業者、そして労働者のほうに見られるようにしておくという程度だと、この問題というのは、疑問点が出ると、なかなか使用者の知識だけで仕組み等を簡易に説明することができない、問題だと思うのですね。
そのためには、ここは従来から周知に使用されるパンフレット的なものは、もちろん必要でしょうけれども、各労働局様、そして銀行、資金移動業者など関連のところからも、労使で一緒に説明を聞けるような場というのも、ぜひ設けていただきたいと考えております。これから、どういうふうに実施するか、最終的なパターンなどが明示されることになると思うのですけれども、「周知」という話はちょっと早いのかもしれませんけれども、ぜひご留意をいただければと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 佐久間委員、御指摘ありがとうございます。
制度ができた後の話なのかもしれませんけれども、御指摘のとおり、周知に当たっては、単に文字で示すパンフレットだけだと趣旨も伝わりにくいですし、それだけでは十分な周知が図られるとも思いません。ですので、御指摘いただいたような説明会や、あるいは今はネットでいろいろな情報を見る御時世でございますので、例えば動画で分かりやすく解説したようなものをつくるとか、周知に当たっては様々な工夫をしていかなければならないのだろうなと考えております。いずれにしても、皆様方の御意見を承りながら、制度設計あるいは周知の取組について、その具体的な内容を検討していきたいと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 資金移動業者の口座への賃金支払について議論を重ねてまいりました。今日伺ったところでも、労使間の意見の隔たり、あるいは各委員の間での理解の相違というものが依然として残っていると考えます。そこで、今後も引き続き、この問題については審議を続けてまいりたいと思いますけれども、労使間の意見の隔たり、あるいは委員間の理解の相違をどう解消していくか、事務局でも今後の進め方について、さらに検討するようにお願いしたいと思います。
本日は、オブザーバーとして金融庁の方々に御参加いただきました。御協力に感謝申し上げます。金融庁の皆様には、ここで退席いただいて結構です。
(金融庁退席)
○荒木分科会長 それでは、本日はもう一件議題がございます。(2)「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインの策定について」です。
それでは、事務局より説明をお願いします。
○監督課長 監督課の尾田です。御説明いたします。
恐縮ですが、まず、参考資料1を御覧いただければと思います。昨年7月に閣議決定された成長戦略実行計画で「フリーランスの環境整備」という項目が盛り込まれております。今後、フリーランスの方々に活躍していただくための環境整備という観点で、政府として一体的に保護ルールの整備を行うといったことが記載されております。その一環といたしまして、関係省庁で今回のフリーランスのガイドラインを策定したという経緯でございます。
恐縮ですが、資料2-2を御覧いただければと思います。1枚紙のガイドラインの概要でございます。
冒頭でございますが、趣旨ということで、事業者とフリーランスとの取引について、独禁法、下請法、労働関係法令の適用関係を明らかにし、これらの法令に基づく問題行為を明確化するために、実効性があり、一覧性のあるガイドラインを、内閣官房、公取、中企庁、厚労省連名で策定し云々という趣旨を述べております。
そして、第1で、このガイドラインにおけるフリーランスの定義といたしまして、実店舗がなく、雇い人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者と定義しております。
次の第2では、関係法令の適用関係を示しております。
そして、第3で、ここでは独禁法、下請法の関係で問題となり得る場面を具体的に例示した上で、それぞれの場合にどのような問題が生じ、どういう法律が適用になるかということを具体的に示しております。
次に、第4では、仲介事業者、プラットフォーマーに関しまして、独禁法上、優越的地位の濫用となり得る事例もあり得るということが、ここで紹介されているところでございます。
そして、第5で、労働関係法令が適用される場合について、具体的にお示ししている。
こういう全体構成になっております。
続きまして、恐縮ですが、資料2-1の本文を御説明させていただきます。
まず、2ページ目を御覧いただければと思います。基本的考え方の2でございますけれども、関係法令の適用関係を示しております。そこの第2段落の一番最後の文章、下から4行目でございますが、「この場合において」、これは要するに労働関係法令がフリーランスに適用される場合でございますが、この場合においては、独禁法や下請法上問題となり得る事業者の行為が、労働関係法令で禁止又は義務とされ、あるいは適法なものとして認められている行為類型に該当する場合には、労働関係法令が適用され、独禁法や下請法上問題としないと規定されております。
これは、すなわちフリーランスに関しましては、独禁法、下請法が適用され、その上で労働者性が認められれば、労働関係法令が適用されるという関係にはなりますが、労働関係法令が適用されるということになりましたら、独禁法や下請法は、この場合はそれを問題としないということを、このフリーランスガイドラインではうたっているということでございます。
続きまして、17ページ以降が労働関係法令の記載になります。第5、「雇用」に該当する場合の判断基準。
まず、1のところでは、契約の形式・名称に関わらず、フリーランスであっても、働き方の実態に基づきまして、労働者に該当するか否かが判断されること。そして、労働基準法上の労働者、労働組合法上の労働者、それぞれ該当しますとどのようなルールが適用になるか。そして、労働組合法における労働者の範囲が、労働基準法上の労働者の範囲よりも広い。こういったことについて、まず、冒頭述べております。
次の2、3が労働基準法上の労働者に関する記載でございまして、18ページに、枠囲みでございますが、労働基準法上の労働者の判断基準の大枠を示しております。労働基準法上の労働者につきましては、使用従属性が認められるかどうかということで判断することになっておりまして、主要な判断要素は、①指揮監督下の労働であるかどうか。②報酬の労務対償性があるかどうか、の2つでございます。そして、①の指揮監督下の労働であるかどうかに関しましては、諾否の自由の有無、指揮監督の有無、拘束性の有無、代替性の有無といったことを総合的に評価することになっております。
また、(2)でございますが、事業者性の有無、専属性の程度といったものにつきましても、労働者性の判断を補強する要素になり得る。これが全体像でございます。
そして、図2では、こういった全体の流れについて、チャート図でお示ししたものでございます。
19ページ以降は、今、申し上げました判断基準につきまして、簡潔に分かりやすい説明と、具体的な例示を示したものでございます。
23ページでは、労働者性について争われた最高裁判例を2つ載せております。1が運送業の持込運転者、2がひとり親方の大工について、いずれも労働者性が否定された判決ではございますが、労働者性の基準に沿った形での判断ということで、具体的にこの2例を例示させていただいているところでございます。
続きまして、25ページ以下が労働組合法における「労働者性」の判断要素を示しております。
枠囲みのほうで基本的な枠組みを示しておりますが、まず、基本的な判断要素としては3つございまして、事業組織への組入れ、契約内容の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性の3つでございます。
そして、補充的な判断要素といたしまして、業務の依頼に応ずべき関係、広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束の2つがございます。
最後に、労働者性を打ち消す消極的判断要素として、顕著な事業者性というものを示しております。
この関係をお示ししたのが、下の図でございます。
そして、このそれぞれの要素について、26ページ以下で詳細かつ簡潔、分かりやすい御説明と具体的な事情をお示ししているということでございます。
そして、30ページでございますが、こちらも同じく最高裁判例を2つおつけしております。合唱団員の事例と、機材の修理・補修の受託者。こちらは、いずれも労働者性が肯定された事例でございますが、先ほどお示しした判断要素に沿った形でお示ししているものでございます。
以上がガイドラインの概略でございます。
そして、資料2-3でございますが、こちらも関係省庁で、このガイドラインを分かりやすく周知するためのパンフレットをお作りしております。13ページ以下が労働者性に関する部分でございますが、ガイドラインより、さらに分かりやすく、一般の方でも理解していただけるような形でお示しした内容となっております。
そして、最後の17ページに問合せ先ということで、各制度について関係省庁の所管先。そして、フリーランス・トラブル110番という総合窓口の御紹介をしております。このフリーランス・トラブル110番につきましては、参考資料2に本日、リーフレットをおつけしております。こちらは厚生労働省の委託事業でございまして、内閣官房、公取、中企庁と連携して設置した総合的な相談窓口でございます。フリーランスの方と発注事業者との間のトラブルにつきまして、弁護士に無料で相談できるということでございます。まずは、メールまたは電話で相談を受け付けまして、必要に応じて対面またはウェブでの相談、和解あっせん手続、あるいは関係機関への御案内といったことをワンストップで行っているものでございます。
以上、厚生労働省といたしましては、関係省庁とともに、このフリーランスガイドラインの周知を図るとともに、フリーランス・トラブル110番、あるいは労働局、労働基準監督署におきまして御相談を受けた場合には、関係機関の紹介も含めて的確に対応してまいりたいと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局の説明につきまして御質問、御意見があればお願いいたします。
世永委員、どうぞ。
○世永委員 ありがとうございます。
資料2-1のフリーランスガイドライン23ページに労働者性が否定された事例として、配送業者の事例が挙げられていますが、判決が出されたときと現在では、社会的な状況も変化しています。特に、近年増加しているネット販売の配送業務については、貨物軽自動車で業務委託を行う自営業者が増えており、それに比例して労働組合への相談も増えています。
相談の内容としては、社会保険制度の適用になるのかどうかということ。荷物量が増加しても報酬が変わらないこと。長時間労働になっても、発注者の指示を拒否することができないこと。さらには、自分の車の休車時において、発注者から代替車両の費用の負担を求められることなど、このように多くの相談が寄せられているということからすれば、労働者なのか否かが非常にグレーのケースもあれば、優越的地位の濫用規制に抵触するような事案もあるということです。実際、厚労省の委託事業で行われているフリーランス110番においても、配送業者からの相談が多く寄せられていると聞いています。同様の事案は、この配送業以外の業態でも発生しているのだろうと考えています。
そのようなことを踏まえれば、ガイドラインを見て、自分は労働者ではないと安易に判断されることがないよう、労働者性の判断についてはあくまで総合的な判断であり、また、個別の事例によって変わり得るものであることについて周知するとともに、疑わしい場合は積極的に相談を利用できるように相談についての周知も徹底していただきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
時間がちょっと押しておりますので、発言を全部伺ってから事務局からお願いしましょうか。
では、佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 すみません、佐久間でございます。
このフリーランスのガイドラインでございますけれども、定義自体は私のイメージするものと大体、合っていると思っています。特に、当初は内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の定義自体が結構ばらばらだったのが統一されたということで、評価できると思っています。当初、私どもが求めていたのは、マニュアル又はガイドライン、そしてトラブル防止のための弁護士のフリーランス110番。これは、裁判までは行きませんけれども、何回か回数もある程度まで弁護士の方に相談できるということで、非常に利用しやすくなったのではないかなと思いまして、この紛争解決窓口ができたのもすごく評価できるところだと思います。
このガイドラインについては、今回も労働条件分科会の扱いは、報告事項となっております。当分科会では、副業・兼業のガイドラインについては、労働者性、賃金の問題とかがあるということで議論してきたわけですけれども、今回のフリーランスガイドラインについても、労働条件分科会には、報告というのではなく、できたら審議のテーマとして諮っていただきたい案件であると考えます。
それから、この雇用類似の関係で、今、論点整理に関する検討会が厚労省内でも進められていると思うのですけれども、フリーランスガイドラインをこの時期にとりまとめたのは、政府から要請があってということでしょうか。このガイドラインは、フリーランスということで作成されていますけれども、雇用類似は家内労働や自営業者、フリーランスを含め、もっと広い概念が有ると考えています。雇用類似に適用される概念を、これからどういうふうに扱っていくのか。また、このフリーランスという概念で全て雇用類似、使用者側というか、事業者の立場として、全部表したものなのか、その辺の見解をお伺いしたいなと思います。
あと、1点、この報告書の中では、労働組合を組織する場合、対象者の範囲は労働基準法に定める労働者とは異なり、もう少し広いと思います。労働組合と別に、事業者としてみれば、事業者が集まった団体として、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合に団体協約という制度もあるので、これもぜひ明記していただきたかったという思いがあります。
以上でございます。
厚労省さんのほうには、雇用類似の範疇に、このフリーランスガイドライン、そして労働者とすれば副業・兼業のガイドライン、そして家内労働は家内労働として捉えるということで、これで全て雇用類似という概念は終わったのかどうか、それをお伺いしたいと思っています。
以上でございます。
○荒木分科会長 引き続いて、川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
2点述べたいのですが、1点は時間との関係で、できるだけ簡潔にコメント的な意見ということで、ガイドライン全体に関わることです。このガイドラインは、フリーランスを定義した上で、特に優越的地位の濫用を中心とした独占禁止法と関連する下請法、それから労働法の適用についての基本的な考え方を、両者の関係を含めてまとめられたものと認識しておりますが、主題は、恐らくタイトルにもある、フリーランスとして安心して働ける環境の整備ということにあると思います。
そのような課題に対応していく上では、例えば1つだけ例を挙げると、民法の契約に関するルールの中で問題が解決されるような場面等もあると思いますし、ここに挙がっている法律の中身についても、さらに深めるべき点等もあろうかと思います。そのような検討は、引き続き進められることが必要なのだろうと思いますし、そのような検討が進んでいくことを望みたいというのが1つ目です。
その上で、2つ目としては、労働法に関わる問題の中で、この分科会で審議している領域に近いところで1点、確認しておきたいところがあるのですが、資料2-1の17ページから18ページ辺りの部分についてです。
17ページの下のほうから、労働基準法9条の、労働者について、18ページの真ん中の四角囲み部分も含めて、「指揮監督下の労働」であるかどうかと、報酬が労務の対償としての性質を持つかどうかという2つを主要な判断基準の要素として挙げるという考え方が示されています。これは労働基準法9条の使用者から賃金を支払われるという条文の構造から考えても、最も一般的な労働法における考え方ではないかと思いますし、私自身もそのように考えることが適当であろうと考えているところです。
確認したい点は、18ページの下のほうの図2のところの記述が、それとやや違うようにも読めるという点です。右側の青い四角の2つ目のところで、その左下の「指揮監督下の労働」であるかということと、それから2つ目の主要な要素と思われる報酬の労務対償性が認められるかということが、補強要素という形で挙がっています。先ほどの一般的な理解によれば、この2つは並列的な要素と捉えるのが一般的な理解だし、本文ではそのように書かれているように思われ、本文の記載が図の中に完全に反映され切っていないのかなと若干思われましたので、この点がどのようにまとめられているのかという点について伺いたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 続いて、オンライン参加の池田委員、お願いします。
○池田委員 どうもありがとうございます。
フリーランスに関する実態調査によりますと、発注の時点で報酬や業務の内容などが明示されなかったとか、報酬の支払が遅れた、期日に支払われなかったといった発注者とのトラブルや、業務委託にもかかわらず、業務の内容や遂行方法について具体的な指示を出されたり、受けているというような声が少なくございません。
今回、関係行政機関が連名で本ガイドラインを作成し、独禁法、下請法、労働関係法令等の適用関係とともに、各法令に基づく問題行為が明確化されました。とりわけガイドラインにおいて、請負契約や準委任契約として仕事をしていても、発注者の指揮監督の下で働いているなど、労働者と変わらない実態があれば、それは労働関係法令が適用されるという考え方とか、そのケースが紹介されたこと、この意味は大きいと思っております。実態調査に現れた各種のトラブルを防止するため、ガイドラインを最大限活用することが重要だと思いますし、またワンストップ窓口であるフリーランス・トラブル110番と併せ、事業者と働き手の双方に周知徹底する必要があると考えております。
労働政策研究・研修機構は、労働基準監督業務を通じて得られた事案の内容を分析して、労働者性の判断状況を広く公表しています。こうした調査を今後も継続するとともに、広く関係者に周知徹底していくことが重要と思います。
以上、意見でございます。よろしくお願いします。
○荒木分科会長 時間を超過して恐縮です。最後に、津村委員、お願いいたします。
○津村委員 時間が超過している中、申し訳ございません。私からは、ガイドラインに対する受け止めと意見を申し上げたいと思います。
3月にフリーランスのガイドラインを発出された際には、連合としても談話を発出しておりますが、特に労働者性の判断に関して、先ほど御説明いただきました18ページにあるとおり、35年以上前の労働基準法研究会報告に基づいた基準と、現在の多様な働き方や就業形態が増えている現状との齟齬が生じているのではないかと考えております。
そうした多様な働き方、社会の変化を踏まえて、早急に労働者性の判断基準については見直すべきだということを労働側として繰り返し申し上げてきましたが、このコロナ禍におけるフリーランスのセーフティーネットの脆弱性の問題を見ましても、喫緊の課題だと認識しています。
内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が連携し、ガイドラインを策定したということに対しては評価したいと思いますが、35年以上前の古い判断基準を省庁横断的に固定してしまうことに対しては懸念を持っております。繰り返しになりますが、新しい働き方が法の隙間に落ちてしまい、救済されないということがあってはならないと思っております。
一方、委託事業としてフリーランス110番を始められたということですが、IT化の進展により、現在は場所を問わずに働ける事例が非常に増えております。地方においても、東京の会社と契約して働いているフリーランスの方もたくさんいるのではないかと考えております。この委託事業は、第二東京弁護士会において実施されているということですが、地方におきましても、電話やメールのみならず、対面を希望される場合には、同様の相談が受けられるよう、相談体制の整備にぜひ努めていただきたいと思います。
また、多くの省庁が関係することにより、結果として相談者がたらい回しになるようなことがないよう、必要な相談にすぐにたどり着けるように省庁間で緊密に連携を図っていただきたいということを意見として申し上げておきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、事務局より、意見にわたる点もございますので、必要な部分について御答弁をお願いします。
○監督課長 御意見ありがとうございました。
まず、世永委員からございました、時代が変わって、トラックの運転手についてもいろいろな事例があり、また相談もたくさんいただいているということについては、御指摘のとおり、これはあくまでも個別事例でございまして、その当時の文脈の中での判断ということもあろうかと思います。そういった中で、今回のガイドラインでも総合判断ということで判断基準をお示ししております。こういった基準を総合的に見ながら、状況に応じて判断していくという枠組みでございますので、その実態に合った判断が今後とも現場でなされるよう、私どもとしてもしっかり周知・注視してまいりたいと思っております。
また、佐久間委員から、できればこのガイドラインを分科会に諮ってもらいたかったというお叱りをいただきました。この点については、受け止めさせていただきたいと思います。
また、今後の雇用類似の働き方に関する検討でございますけれども、まずは、当面、このガイドラインの周知・運用状況について、しっかり見させていただいた上で、引き続き、関係省庁と連携して、こうした課題に取り組んでいきたいと思っております。今回のフリーランスのガイドラインでは、あくまでも先ほど申しました定義の中でのフリーランスに関して、現状を記述したというものでございますので、雇用類似あるいは個人委託事業者、そういったもの等の総体を今回、全てフリーランスで捉えたということではございませんので、そこのどの範囲をどうしていくかということも含めて、今後も引き続き課題と認識しております。
また、川田委員ご指摘の民法の観点につきましては、今後の課題として受け止めさせていただきたいと思います。
また、2点目、御指摘いただきました資料2-1の図のところでございます。この点につきましては、私どもも当然ながら労働基準法第9条で、賃金が支払われる者ということが2大要件の1つとなっているということはしっかりと認識した上で、この17ページ以降の記載をさせていただいたところでございます。
このフローチャートにつきましては、フリーランスということで、賃金の支払が所与の前提ということで、その上で60年報告の各要素の関係性を簡潔に整理したというものでございますが、17ページ以降の具体的な記載とやや合っていないのではないか、不十分ではないかという御指摘については、御指摘のとおりかと思いますので、今後、この利用に当たっては注意して使っていきたいと思っておりますし、また、今後改定に当たりましては、この図の見直しも含めて考えてまいりたいと思っております。
続きまして、池田委員からは、御評価をいただきまして、ありがとうございます。私ども、このガイドラインをしっかり活用を進めるとともに、相談対応も、関係省庁と連携して対応してまいりたいと思っておりますので、経済団体・労働団体の皆様にも、周知に御協力いただければと思っております。
また、津村委員からは、古い研究会報告をベースにしているのはどうかという御指摘ございました。今回のガイドライン策定に当たりましては、フリーランスに適用になっている法令、現状の問題に対処する枠組みについて、一覧性のあるものをつくるということで作成させていただきました。独禁法、下請法も含めて、現状の法令を前提とした記載とするという方針で対処いたしましたので、労働者性についても既存の枠組みをそのまま、ただし、分かりやすくお示しするという対処方針で行ってまいりました。今後の課題については、先ほど申し上げましたとおり、フリーランスガイドラインを周知・運用する中で、引き続き関係省庁と連携して対処していきたいと思っております。
また、地方での窓口という点につきましては、御承知のとおり、このトラブル110番、ウェブ相談も受け付けておりますので、まずはそれで対処していきたいと思っておりますが、御指摘としては受け止めさせていただきたいと思います。関係省庁と連携して、しっかり対応してまいりたいと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
司会の不手際で時間を超過しまして、申し訳ございません。
予定された議題は以上ということになりますので、本日はここまでとさせていただきます。
最後に、次回の日程等について事務局よりお願いします。
○労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程、場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、これをもちまして、第168回労働条件分科会は終了といたします。
本日は、通信状況がよろしくなく、大変御迷惑をおかけしましたが、御参加いただき、御礼申し上げます。
以上といたします。