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第5回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会(議事録)
1 日時 令和3年4月23日(金)9時59分~11時49分
2 場所 三田共用会議所 第4特別会議室
(東京都港区2-1-8 4階)
3 出席委員
(公益代表委員)
○東京医科大学公衆衛生学分野講師 小田切優子
○筑波大学ビジネスサイエンス系教授 川田琢之
○立教大学経済学部教授 首藤若菜
○東京海洋大学大学院海洋工学系流通情報工学部門教授 寺田一薫
○法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授 藤村博之
○慶應義塾大学大学院法務研究科教授 両角道代
(労働者代表委員)
○日本私鉄労働組合総連合会中央副執行委員長 池之谷潤
○全国交通運輸労働組合総連合軌道・バス部会事務局長 鎌田佳伸
○全国交通運輸労働組合総連合トラック部会事務局長 貫正和
○日本私鉄労働組合総連合会社会保障対策局長 久松勇治
○全国自動車交通労働組合連合会書記長 松永次央
○全日本運輸産業労働組合連合会中央副執行委員長 世永正伸
(使用者代表委員)
○日本通運株式会社執行役員 赤間立也
○東武バスウエスト株式会社取締役社長 金井応季
○京成バス株式会社代表取締役社長 齋藤隆
○西新井相互自動車株式会社代表取締役社長 清水始
○昭栄自動車株式会社代表取締役 武居利春
○公益社団法人全日本トラック協会副会長 馬渡雅敏
4 議題
(1)自動車運転者の労働時間等に係る調査結果のご報告について
(2)改善基準告示の見直しについて
(3)その他
5 議事
○中央労働基準監察監督官 皆様、おはようございます。定刻より少し前ですけれども、皆様お揃いでございますので、ただ今から第5回「自動車運転者労働時間等専門委員会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては御多忙のところ、お集まりいただき誠にありがとうございます。本専門委員会の議事進行について、冒頭の資料説明まで事務局にて進めさせていただきます。私、労働基準局監督課の細貝と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議事運営に当たり、新型コロナウイルス感染症対策として、原則として報道関係者のみの傍聴とさせていただいており、さらに、傍聴席の間隔を広げるなどの措置を講じた上で運営します。会場の皆様におかれましては、備え付けの消毒液の御利用を始め、マスクの着用や咳エチケットに御配慮いただきますようお願い申し上げます。また、換気のために常時扉を開けさせていただきます。あらかじめ御承知おきください。
当専門委員会の委員と本日の出席状況ですが、お手元の委員名簿及び座席表により御紹介に代えさせていただきます。
定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席、又は公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、本日欠席の委員はございませんので、定足数は満たされていることを御報告申し上げます。
次に、使用者代表として新たに就任いただいた委員の方を御紹介いたします。3月31日付けで浜島委員が退任され、日本通運株式会社執行役員の赤間立也委員が就任されました。
○赤間委員 赤間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○中央労働基準監察監督官 また、国土交通省自動車局安全政策課の石田におかれましては、第1回専門委員会より引き続きオブザーバーとして御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
続きまして、お配りした資料の確認をさせていただきます。お手元に資料がございますけれども、次第にありますとおり、資料1が自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)、右上に資料№1とあるものです。資料2が自動車運転者の労働時間等に係る海外調査結果(概要)、資料3が自動車運転者の労働時間等に係る疲労度調査結果(概要)、参考資料1として冊子ですが、自動車運転者の労働時間等に係る実態調査報告書、参考資料2としてA3のものですが、改善基準告示の変遷として、ハイヤー・タクシー、トラック、バスの3業態ごとに、それぞれ1枚の紙でお示ししています。資料は以上です。資料に不足のある場合は事務局までお申し付けください。詳細については、後ほど事務局から改めて説明させていただきます。
次に、傍聴の方へのお願いです。カメラ撮影等はここまでとさせていただきますので御協力をお願いいたします。 それでは、これ以降の進行につきましては、第4回専門委員会に引き続き、藤村委員長にお願いいたします。
○藤村委員長 皆さん、おはようございます。これから議事進行を務めていきたいと思います。お手元の次第にありますように、本日の議題は2つです。議題1が「自動車運転者の労働時間等に係る調査結果の御報告について」です。議題2が「改善基準告示の見直しについて」です。
まず議題1ですが、先日の第4回専門委員会で、実態調査を実施することを当委員会において決定しましたので、まず事務局から実態調査の結果について説明していただきます。また、実態調査と併せまして、厚生労働省において委託事業で「海外調査」と「疲労度調査」を実施しているとのことですので、それぞれ発表者として受託業者から概要を説明してもらい、一旦そこで切りまして、委員の皆様から調査に関する御意見を伺いたいと思います。それが終わりましてから、議題2において、改善基準告示見直しに関する具体的な御意見を委員の皆様からお聞きするという段取りで進めたいと思います。
それでは、議題1の「自動車運転者の労働時間等に係る調査結果の御報告について」ですが、まず事務局より、資料1「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」について御報告をお願いいたします。
○過重労働特別対策室長 過重労働特別対策室の黒部でございます。よろしくお願いいたします。それでは、資料1の実態調査の結果につきまして御説明させていただきます。詳細はお手元の緑の冊子に記載されていますが、ここでは現在の告示の基準、例えば1日の拘束時間の実態とか休息期間の実態など、主要な部分につきまして資料1に基づきまして御説明をさせていただきます。
表紙をおめくりいただき、1ページを御覧ください。令和2年10月の第4回専門委員会で実態調査の実施を御了承いただき、ハイヤー・タクシー、トラック、バス全体で1,293の事業場、9,590名の自動車運転者を対象に実態調査を実施いたしました。回答状況について、各業態それぞれ若干の差はありますけれども、全体としては事業者調査が39.1%の回収、自動車運転者調査が25.8%の回収率です。 2~4ページですが、これは前回の専門委員会で御説明した各業態ごとの実態調査の調査内容ですので、ここでは省略させていただきます。
5ページは先ほど御説明した冊子の目次です。最後は第3章の資料編となっていますが、この資料編の中には実際に使った調査票が入っています。ここから実態調査結果の概要を御説明させていただきます。
6ページですが、告示の各基準の実態につきましては、できるだけ事業者と自動車運転者の結果が比較できるように記載させていただきました。留意点としまして、事業者調査につきましては、実際は2019年の通常期と繁忙期について調査していますが、ここでは特に自動車運転者について最も忙しかった日とか月について聞いていますので、繁忙期ということで、その実態を記載しています。また、ハイヤー・タクシーにつきましては日勤と隔勤がございますけれども、隔勤は拘束時間等の基準が他と大きく違うものですから、ここでは日勤のみ記載しています。また、バスにつきましては、乗合バスの一般と高速及び貸切バスの3種類を調査していますが、ここではその全体の合計値を記載していることに御留意いただきたいと思います。
まず、6ページの1日の拘束時間の実態についてです。現在の告示の基準は、いずれの業種も原則13時間、最大16時間となっていますが、事業者調査では繁忙期において13時間以下の割合は、いずれの業態とも6割を超えており、特にハイヤー・タクシーはその割合が高い結果になっています。逆に16時間超の割合は、どこの業態も1割に満たない結果になっています。一方、自動車運転者調査につきましては、各業態で差がありますが、最も忙しかった1日の拘束時間について13時間以下の割合は、ハイヤー・タクシーの57.7%からバスの18.6%まで差が出るという結果になっています。
7ページを御覧ください。1日の拘束時間について適切と思う時間を尋ねた結果です。事業者調査についてハイヤー・タクシーの結果がありませんが、表の左上のnの値は回答数ですけれども、これが10を切っていましたので、ここでは省略させていただきます。御承知おきいただきたいと思います。事業者調査のトラックとバスについては、13時間超が適切という割合が78.9%、60%と高く、トラックについては16時間超が適切というのもかなり多く見られる状況です。一方で、自動車運転者調査では、13時間以下が適切と思うというのが全業態で6割を超えており、特にハイヤー・タクシー、バスについては、かなりの割合を占めている状況になっています。
8ページを御覧ください。休息期間の実態と適切と思う休息期間を尋ねたもので、これは自動車運転者の方のみにお尋ねしている質問です。現在の告示の基準は、いずれも基準は継続8時間以上となっています。左下のグラフは休息期間の実態ですが、最も忙しい日において8時間以上休息期間を取っているというものは、いずれの業態とも7割を超えています。そのうち、ハイヤー・タクシーとトラックは10時間以上取っているというものが多く、バスは8時間から9時間未満のレンジが一番多くなっている状況です。右のグラフは適切と思う休息期間ですが、いずれの業態とも8時間以上と答えた方が6割以上であり、特に10時間以上が適切と思う方がかなりの割合を占めています。中でもバスは83%と突出している状況です。
9ページを御覧ください。現在の告示では労使協定を締結した場合の1ヶ月の最大拘束時間は、ハイヤー・タクシーで最大322時間、トラックで320時間、バスで4週平均1週71.5時間となっています。左下の事業者調査では、これを超えた割合はほとんどありません。ハイヤー・タクシーでは0%、トラックが5.2%、バスが2.8%という状況になっています。また、原則の拘束時間は、ハイヤー・タクシーが299時間、トラックが293時間、バスは4週平均で1週当たり65時間、それ以下である割合はいずれも8割を超えている結果となっています。
なお、表の中に275時間未満という濃い青色の帯の部分があります。これまでも議論の中で出てきたことですが、御承知のとおり令和6年4月から自動車運転者については、年間960時間という時間外労働の上限規制が適用されることになっています。休日労働を考慮しないとすれば計算上、年間3,300時間となるわけであり、それをハイヤー・タクシー、トラックについては単純に12か月で割って1か月275時間、バスについては52週で割りまして約63時間という数字を作り、その実態を確認したものです。その結果はいずれも5割を超えているという結果になっています。一方、右下の自動車運転者調査でも275時間未満と回答した者は、事業者調査よりも少ないですが、おおむね5割前後となっている状況です。
10ページを御覧ください。適切と思う1ヶ月の拘束時間です。事業者が適切と思う1ヶ月における拘束時間について、原則は、ハイヤー・タクシーが299時間、トラックが293時間、バスが1週65時間ですが、この限度を超えていた割合は全業態で7割を超えています。トラックでは78.9%、バスでは87.5%となっています。事業者が適切と思う1か月における拘束時間について、275時間未満の割合は、トラックが5.3%、バスが12.5%となっています。一方、自動車運転者のほうですが、自動車運転者が適切と思う1ヶ月における拘束時間について、限度時間を超えていた割合は、ハイヤー・タクシーでは12.8%、トラックでは39.0%、バスでは8.7%、ちょっとトラックが多くなっています。一方、275時間未満と答えた方の割合は、ハイヤー・タクシーでは50.0%、トラックでは33.6%、バスでは多くて85.9%となっています。
11ページです。1年の拘束時間の実態についてお尋ねしました。これは先ほど申し上げた年間の3,300時間という数字の実態がどうなっているかということですが、1年の拘束時間が3,300時間未満という割合は、全業態で7割を超えており、ハイヤー・タクシーが86.5%、トラックが70.7%、バスが85.0%ということです。今の拘束時間の限度時間を超えていたという割合は、全業態で大体1割未満という状況になっています。
12ページです。連続運転時間の実態ですが、これはトラックとバスのみになっています。まず事業者調査ですが、連続運転時間が4時間以下という割合はトラック、バスともに9割を超えている状況です。一方、4時間超という割合は、全業態で1割未満ということで、トラックがやや多い状況になっています。また、自動車運転者調査によりますと、最も忙しかった日における連続運転時間が4時間以下の割合は、全業態でトラックが64.4%、バスが76.8%ということでバスのほうが大きい。また、連続運転時間が4時間超という割合は、全業態で3割未満であり、トラックが25.1%、バスが13.4%という状況になっています。
最後に、13ページです。適切と思う連続運転時間についてです。事業者が適切と思う連続運転時間について、4時間以下の割合は、トラックが7.9%、バスが20.9%ということ。一方、4時間よりも長くていいというのは、トラックがかなり多くて86.8%、バスでは79.2%という状況です。一方、自動車運転者のほうでは、4時間以下の割合がトラックで30.7%、バスで92%でした。また、4時間超の割合は、トラックでは65.6%、バスでは8.0%ということで、トラックとバスで大きく違う結果になっています。私からは以上です。
○藤村委員長 ありがとうございました。それでは、続きまして受託業者より、資料2「自動車運転者の労働時間等に係る海外調査結果(概要)」について、説明をお願いいたします。トーマツの平岡さん、お願いいたします。
○有限責任監査法人トーマツ トーマツの平岡と申します。よろしくお願いいたします。トーマツより海外調査結果の概要を御報告させていただきます。2ページ目、調査概要を御覧ください。本調査の目的は、改善基準告示見直しの議論における参考とするため、諸外国のILO条約及びILO勧告の例外規定の運用状況又は関連する法令制度を調査し、報告書を作成するものです。御存じの方も多いかもしれませんが、ILOとは労働問題に取り組む国際労働機関のことで、ILO条約153号において、道路輸送における労働時間等を定めたものがございます。当該条約及び勧告の例外規定の内容については調査対象(選定理由)の1行目にも記載がございますけれども、(a)事故、故障、予見されない遅延、運行の乱れ又は交通断の場合、(b)不可抗力の場合、(c)公益事業の業務の運営を確保するために緊急かつ例外的に必要な場合、これらの場合に例外的に運転時間の延長等を可能とする旨の規定がなされています。また、調査対象につきましては記載のとおり、アメリカ、イギリス、スイス、フィンランド、オランダの5か国です。選定の理由としましては、ILOの批准国としてスイスを選定し、その他の国につきましては関連する国内規定の開示が比較的進んでおり、我が国と同様に暴風雨、大雪、津波、火山噴火などによる例外的な状況が発生し得る国を選定しております。
調査方法につきましては、文献調査と、ヒアリング調査を行いました。ヒアリング調査につきましては、対象の5か国における規制を所管する機関、使用者側の団体、労働組合、及び国際的な規則を所管する組織としてEU及びILOにヒアリングを依頼しました。実際にヒアリングを実施できた先については、右下の表の記載のとおりになります。
3ページ目、調査結果を御覧ください。3ページ目は、(1)ハイヤー・タクシーにおける各国の法規制の概要を一覧にしたものです。例外規定ではなく原則的な規定になっています。一番左にある項目は日本の改善基準告示をベースとしたものです。補足事項として、1点目はアメリカについてですけれども、ヒアリング結果によりますと、国としての規則というのはなく各地域や州で規則が定められている場合があるということでした。また、2点目として、ILO条約を批准しているスイスですが、1週間当たりの運転時間や連続運転時間について、ILO条約よりも緩やかな規定となっています。これは、ILO条約が各国の状況に合わせて弾力的な規定を設けることを許容していること、若しくはタクシーによる運送については条約の規定の全部又は一部の適用から除外できると定められているためです。3点目は、EUに関してですけれども、自動車運転者に関する主な規則としては、別途、EU規則が定められています。当該規則については、主にトラック、バスを対象とするもので、ハイヤー・タクシーは適用除外で対象外となっています。そのため、ハイヤー・タクシーにおいてはEU規則を補完する位置付けである「EU指令」が主に適用される規制となっています。
4ページ目を御覧ください。4ページ目は、先ほどと同様の形式で、(2)トラックに関する各国の法規制の概要を一覧にしたものです。トラックについて、アメリカではHOSという規則が適用され、ヨーロッパ諸国ではEU規則に準じた規則が適用されています。基本的には記載のとおりですけれども、アメリカについては1日の中で運転可能な時間の枠というものが設けられていること、あとは連続運転時間が8時間と、他国と比較して非常に長いということが特徴的な点として挙げられるかと存じます。
5ページ目を御覧ください。5ページ目は、先ほどと同様の形式で、(3)バスに関する各国の法規制の概要を一覧にしたものです。EU規則はトラックとバスで相違はありませんので、諸外国の規定でトラックと相違があるのはアメリカの規定になります。各項目の内容については記載のとおりですので、詳細な御説明は割愛させていただきます。
6ページ目を御覧ください。6ページ目は、ILO条約及び勧告の制定の経緯を記載したものです。制定の背景としましては、2)に記載のとおり、第二次世界大戦後に急速に道路輸送が発展する一方で、道路輸送に関わる自動車運転者の劣悪な労働環境が問題視されており、1978年、1979年にILOにて議論が行われています。議論の結果、運転時間、休息期間などを定めるILO条約及び勧告が採択されるという形になりました。また、3)の3点目に記載がありますとおり、ILO条約は加盟国が批准できる国際条約ですけれども、ILO勧告については拘束力のないガイドラインとして機能しています。この条約と勧告という規制の形式について、国際労働会議の中で使用者側は条約という形ではなく、各国の状況に適応するのに十分な柔軟性を持つ勧告の採択を提唱していました。一方、労働者側については、自動車運転者の安全と健康に関する特に重要な規定を含む条約と、あとは道路輸送の全ての労働者の社会的保護を補完する勧告、この2つの採択を望み、最終的には条約と勧告が採択された形になっています。
7ページ目を御覧ください。7ページ目はILO条約及び勧告における例外規定です。ILO条約は、貨物又は乗客の路面による国内運送又は国際運送に従事する自動車運転者を適用対象とする一方で、ILO勧告についてはILO条約を補足し、運転者に加え、助手、添乗者、その他同等の業務に従事する人々を対象としています。なお、それぞれの条文を下に記載していますが、例外規定で示されている例示(a)~(c)に記載しているものについては、条約、勧告のいずれも同じものになっています。
8ページ目を御覧ください。8ページ目はアメリカ国内規則による例外規定です。アメリカはHOSという規則が適用されますが、その適用対象は箇条書きで記載のとおりです。10,001ポンドというのは約4.5tですが、それ以上の重量の車両及び9名以上乗りのバスなどが適用対象となります。それ以外の車両については各地域、州で規制がある場合があるということです。また、具体的な例外規定としては、大きく1)と2)があります。1)は事前に予見できなかった悪条件下での例外規定ということで、適用例としては下線の部分の積雪、みぞれ、凍結、霧その他の悪天候と異常な道路状況又は混雑状況が挙げられています。それぞれ図表に記載の時間の延長が可能となります。延長に当たっては事前の申請等は必要なく、適宜、ドライバーが理由を記録し、監督機関からの指摘があった場合に記録を提供するという形になっています。2)の緊急宣言につきましては、自然災害等の発生により、人命または公共の福祉が直ちに脅かされる場合に、権限を有する機関、または責任者が宣言を発出するものです。直近では当該規定に基づき、新型コロナウイルス感染症に関連した適用事例があると、ヒアリングで伺っています。
9ページ目を御覧ください。9ページ目はEU規則による例外規定について記載しています。EU規則は、3.5t超の貨物自動車及び9人乗り以上のバスが適用対象となりますが、それ以外の例外規定については各国の国内規則で定められています。EU規則における例外規定は大きく3つあります。1)は、特定の緊急時または救助活動への即時の対応に深く従事する場合であり、例えばイギリスにおいては大雪による道路封鎖で家庭燃料を運ぶために適用された事例があるとのことです。また2)は、悪天候、交通事故、機械的な故障、フェリーサービスの中断、人や動物の生命や健康に危険を及ぼす事象等が発生した場合に、人、車両、または積荷の安全を確保するために必要な範囲で緩和が認められるものです。ただし、緩和で運転可能となる上限は表に記載のとおりであり、アメリカと同様に、最大で2時間となっています。
10ページ目を御覧ください。3)として欧州委員会からの通知というものがあります。アメリカの緊急宣言に近しい内容となっています。
11ページ目を御覧ください。11ページ目は、イギリスの例外規則となっています。EU規則の適用対象外となる3.5t以下の貨物自動車運転者、8人乗り以下の公共バス運転者が適用対象となっています。これらの車両の運転者は合理的に予見できなかった状況から生じるやむを得ない規則違反であることを証明できる場合、緊急事態または救助活動の場合は規則からの逸脱が許容されています。
12ページ目を御覧ください。12ページ目はスイスの国内規則による例外規定です。スイスではEU規則を採択しているものの、1)国内輸送についてはARV1という国内法が適用されています。ARV1では、EU規則と同様、緊急時に救助活動に用いる車両に関する適用除外とか、緊急時の規則からの逸脱の規定があります。また、スイス国内規則においては連邦の権限で、個々の規定からの緩和を許可することができる旨が規定されています。また、2)については、EU規則の適用除外となる車両を対象としたARV2という国内規則の例外規定です。ARV1と異なり、規制の適用除外の車両に関する規定はありませんが、それ以外はARV1と同様の取扱いがなされています。
13ページ目を御覧ください。13ページ目はフィンランドの国内規則による例外規定です。フィンランドの国内規則はEU規則対象外の車両が適用対象となります。事前に予測不可能な事象によって、通常の業務の中断又は生命、健康、財物又は環境が脅かされる深刻な恐れが生じた場合に、通常の労働時間に加えて労働を行うことができるという規定になっています。
14ページ目を御覧ください。14ページ目はオランダの国内規則による例外規定です。オランダの国内規則はEU規則対象外の車両が適用対象となりますが、EU規則第3条で定められる「緊急時または救助活動に使用される車両」に該当する場合は、オランダ国内規則も適用除外となります。また、タクシーについては、災害または危機が生じた際や、突然の不測の事態に関する例外規定があります。駆け足での御説明となりましたが、御報告は以上になります。
○藤村委員長 平岡さん、どうもありがとうございました。続きまして、資料3の自動車運転者の労働時間等に係る疲労度調査結果概要について、受託業者の日立物流の秋山さんより説明をお願いしたいと思います。
○(株)日立物流 ただ今より「自動車運転者の疲労度の医学的な調査に関する事業」についてご報告いたします。日立物流の秋山でございます。専門用語も多く、理解の難しい部分もあるかと思いますが、可能な限り平易な表現・説明をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本調査事業の背景と目的については記載のとおりでございますが、自動車運転者の長時間労働による過労死防止の観点から、労働政策審議会労働条件分科会、自動車運転者労働時間等専門委員会のもと、改善基準告知の見直しが検討されておりまして、専門委員会において、自動車運転者の多様な勤務実態や業務特性を踏まえた基準を定めるために、様々な業態の自動車運転者の疲労度を医学的に調査し、拘束時間の変化による疲労の蓄積状況等の調査を行う為、本調査事業を実施いたしました。
被験者及び測定期間については記載のとおりでございますが、トラック、タクシー、バスの各業態から2事業所ずつ、合計6事業所、24名の自動車運転者を対象に実施いたしました。また、各業態の中でも運行方法によって拘束時間や運転実態も異なりますので、内訳としまして、トラックで言いますと、事業所を出発した後、毎日ほぼ同じ納品先へ配達し、当日中に事業所へ戻るルート配送、事業所を出発し2泊3日や3泊4日といった宿泊を伴う運行を行った後に事業所へ戻る長距離トラックで、今回の調査では九州から関西方面や東京へ運転し事業所戻るといった1運行で2,000km超となるような事業所を対象としております。また、順序入れ替わりますが、バスでは乗合バスと貸切バス、タクシーは2事業所とも不定期勤務となっておりますが、これは当初日勤、隔勤の事業所を対象としておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言発令に伴い、不定期勤務となったものです。
続きまして、測定項目でございます。業務前後では自律神経を測定し客観疲労度の他に、タブレットを用いたアンケート、問診による主観疲労度(元気度)を測定いたしました。また、運行中は心拍センサーを用いて運行前後と同様に客観疲労度を測定いたしました。なお、業務中だけでなく、終業、帰宅後、就寝時にも常時腕時計型活動量計を装着いただき、生活リズムや睡眠データを測定いたしました。
続きまして、留意事項(本調査の限界)でございます。本調査では被験者が男性のみであったこと、業態間に年齢の偏りがあったこと、また被験者数も各業態から数名ずつなど多くなく、必ずしも業態全体を調査出来ているとは言えず、限定的な調査であると考えております。また本調査の計測期間がCOVID19による緊急事態宣言下にあり、被験者の勤務状況が平常時とは乖離があること等となっております。
1ページめくっていただきまして、各業態の被験者の拘束時間、連続運転時間、休息時間、睡眠時間は御覧のとおりとなっております。拘束時間については、現在の改善基準告示での1日当たりの上限である16時間の所にラインを引いていますが、長距離トラックにおいて拘束時間16時間を超える事例が多く見られています。また、連続運転時間については、長距離トラック、タクシーにおいては4時間を超える事例も認められましたが、バス、ルート配送トラックにおいては2時間を超える事例はほぼ見られませんでした。
続きまして、統計解析手法についてでございます。被験者間の測定指標の大きさの違いを考慮する為の分析方法を採用しまして、業務前後・運行中の疲労度及び連続運転中の疲労度経時変化を統計解析いたしました。また、自律神経系の反応(応答性)をグルーピングし各グループごとに拘束・休息・連続運転時間と疲労度の関係を評価いたしました。
グルーピングにつきまして、補足説明いたします。業務前後のTP偏差値の変化をそのままプロットいたしますと中央の全データと示されたグラフにございます様に、傾向を掴むことが難しくなってしまいますので、まずは、業務後にTP偏差値が減少するグループと業務前後であまり変化しないグループと業務後にTP偏差値が増大するグループに分類した上で、それぞれのグループに対し拘束時間などを変数とし、元気度、LF/HFといった指標に対しどの様な傾向が見られるかを統計解析いたしました。統計的に有意であると認められたものをまとめたものが最下段の表となっております。
ページをめくっていただきまして、本ページは統計解析ではなく、調査期間中において、業態毎に特徴的であった、ある1運行についての事例解析の御説明となります。上段が長距離トラックでございまして、拘束時間は約35時間ですが休息時間が無く、途中途中で休憩・仮眠を取り、睡眠時間が合計3.3時間しかなった例です。最初59であった元気度(主観疲労度)が2日目途中で13と下がり、運行後も10となっております様に、1日目の運行・休憩取得後に主観・客観ともに疲労度が回復せず、著しい疲労を抱えたまま乗務していたものと思われる事例です。中段がタクシーの事例でございます。拘束時間は11.4時間ですが、その内3.5時間ほどの連続運転があり、その間にTP偏差値が約30減少、LF/HFについては0.67から2.25へと増加しており、客観疲労度が著しく増大している事例となります。下段が乗合バスの事例でございます。拘束時間は14.3時間ですが、途中途中に休憩がありその中で仮眠を取った事例となります。仮眠を挟む休憩前後でLF/HFが5.15から2.39、4.77から3.55というように疲労度が緩和されている事例となります。
ページをめくっていただきまして、結果と考察でございます。冒頭の留意事項でも触れました様に、今回の調査は新型コロナ感染拡大の影響もあり、分析するにあたり十分な調査対象を収集することが困難な状況ではございましたが、限られた事例の中で得られた有意な調査結果は以下記載のとおりでございます。
1点目に「拘束時間による疲労」に関しまして、「業務前後の疲労度分析」の結果、主観的な疲労度は拘束時間が長くなるにつれ増大した一方で、客観的な疲労度については拘束時間との有意な関連が認められませんでした。また、「業務開始後と業務終了前の運行中の疲労度を分析」した結果、業務中にLF/HFが高くなる急性疲労様の反応を示した場合において、拘束時間の増大に従って疲労度が有意に増大する事が認められました。
2点目に「休息の効果」に関しまして、業務前後、あるいは業務終了から次の業務開始の運行中の疲労度を比較しましたが、今回の調査ではコロナ禍で勤務形態のばらつきが大きかったこともあり、業務と業務の間の休息時間と疲労度との間に明確な関係性は確認できませんでした。
3点目に「連続運転時間と疲労の関係」に関しまして、連続運転中の疲労度経時変化を分析した結果、全体の67%において連続運転時間の増大に伴う疲労の様相が有意に認められました。内訳としまして、右の円グラフに示されています様に、約37%に自律神経活動の増大を伴う急性様の疲労が見られ、約30%に自律神経活動が低下する蓄積様の疲労が見られました。一方、連続運転時間が長くなるほど自律神経機能が改善される群(6.7%)も存在しており、一様に疲労と言っても、コンディションや業務環境などによって現れる反応は一律ではないことが示唆されました。その他につきましては、2ページの上段で説明した内容と重複しますので割愛させていただきます。
次ページ以降、別紙としまして補足説明資料となっておりますので、こちらにつきましても説明は割愛させていただきます。
「自動車運転者の疲労度の医学的な調査に関する事業」に関する報告は以上となります。ありがとうございました。
○藤村委員長 秋山さん、どうもありがとうございました。今、3つの資料を御説明いただきました。ここで少し時間を取り、この3つの調査結果についての意見とか質問をお受けしたいのですが、時間の制約がありますので、現時点で質問をしたいと思っていらっしゃる方は、ちょっと手をお挙げいただけますでしょうか。
○久松委員 意見も含めてでもいいですか。
○藤村委員長 意見も含めてです。お2人、3人ですかね。では、久松委員からお願いします。
○久松委員 久松です。どうぞよろしくお願いいたします。実態調査結果について、感想ということにもなるかもしれませんが、ハイヤー・タクシーの場合、事業者と自動車運転者の回答の内容に乖離が大きかったと思いました。その理由として、私が思ったことの1つは、自動車運転者の回答では、本来は労働時間・拘束時間に入るはずである洗車時間、納金時間、点呼時間などを労働時間としてカウントしていないという実態があったということと、もう1つは、改善基準告示の認知が非常に低いという点があったこと、これらによって、自動車運転者と事業者の回答の実態に大きな乖離がありました。その点を踏まえて、この実態調査を見なければならないという感想を持ちました。以上です。
○藤村委員長 ありがとうございます。では寺田先生ですか、手を挙げていただいていますね、どうぞ。
○寺田委員 それほど大きな話ではないのですけれども、資料2の海外調査です。例外規定についての調査はこれでいいかと思うのですが、本則というか例外ではないところについては、例えば自動車運転者以外の運転者とか、車掌さんとかの規制で、夜間を1時間短縮する規制などの法体系などが反映されていないような感じもしました。
EUの加盟国の中も、基本的にはEUルールと同じか規制を強めるかいずれかで、逆というのは余りないと思うのです。その点で確か2012年に、厚生労働省内で日通総研の委託で大きな調査をされているかと思います。恐らく現状はそれほど大きく変わっていないと思いますので、その辺りも反映して、精緻な情報にしていただければいいと思います。申しあげた2点のため、本則については規制が緩いほうにバイアスがかかった資料となっているおそれがあるのかなと思いました。以上です。
○藤村委員長 平岡さん、その点について、何かございますか。
○有限責任監査法人トーマツ 御指摘いただきまして、ありがとうございます。御指摘のとおり、今回に関しては、自動車運転者に関する例外規定というところに着目して、それをメインで調査してまいりましたので、それ以外の補足的な作業をされる方とか、そういった方に対する規定については、まだ十分に反映しきれていない部分があるかと思いますので、今一度、調査をできればと思います。以上になります。
○藤村委員長 ありがとうございます。では小田切先生、どうぞ。
○小田切委員 2点あります。今のEUの調査のことについて、EUの指令が決まってきた背景のようなもの、この数値の背景のようなものまで分かっているようであれば教えていただきたいというのが、私の疑問点の1点です。
それから資料3の疲労度調査ですが、これについては私も企画のときに少しお話を伺いましたけれども、測定期間が資料を見ると1月18日から3月12日ということで、新型コロナウイルスの経過を考えますと、この間に恐らく全員の方がこの53日間装着するということは、大分無理があったであろうということもあり、本来であれば数か月のスパンで疲労が蓄積していくというような事例を追いかけられると、より的確に疲労の状況が観察できたのではないかと思います。
確かに、一週間で疲労が蓄積することもありますが、過労死防止の観点を考えれば、やはり3か月とか6か月とか、そういった事例の深掘りがしっかりできて、そこから何か問題になるようなことが洗い出せれば一番良いと思います。それについて、この調査の限界点を認識した上で、意見として述べさせていただきたいと思いました。
○藤村委員長 ありがとうございます。では平岡さん、EUの時間が決まった背景を、もしお分かりであればお願いします。
〇有限責任監査法人トーマツ EU規則のほうでよろしかったでしょうか。EU規則の時間の背景については、確認が取れておりませんので、EUのほうに追加的にヒアリングをかけていければと思います。以上です。
○藤村委員長 ありがとうございます。秋山さん、今の小田切先生の発言についてはいかがでしょうか。
○(株)日立物流 コメントありがとうございます。実際に今回のところで言いますと、調査対象の御家族の方が医療従事者ということで、全く勤務をされないような方もいらっしゃいましたので、このような実態となっています。今後については、私のほうからは御回答が難しいので、すみませんがよろしくお願いします。
○藤村委員長 では黒部さん、どうぞ。
○過重労働特別対策室長 ただ今の小田切先生の御意見を含め、事務局のほうで、改めて速やかな調査の実施を検討していきたいと考えています。以上です。
○藤村委員長 分かりました。あと3分ぐらいありますので、もし追加で。どうぞ、馬渡委員。
○馬渡委員 全般に渡ることは後ほど述べさせていただきたいのですけれども、この資料の中で、今お話があった諸外国のILO条約運用状況に関する調査概要で、例外規定が結構いろいろあるなと感じました。これまでも全体的な総労働時間とか、いろいろな面において、ILOに準拠してちゃんと守ってくださいと言われていたので、ここに書いてあることが、このまま第153条というものであるとするのならば、国内の状況によってそれぞれに決めている部分があるのかと。
我が国においても、どういう事象を捉えるかというのは、ここで決めるのか全体で決めていただくのかは別にして、事故とか故障は明らかに分かっていることでしょうけれども、予見されない遅延というのが、誰にとって予見されないかというと、多分、労働者にとって予見されないという意味なのだろうと思いました。ですから、労働者にとって予見されない遅延というのは、いろいろな方々から、あっちに行け、こっちに行けと言われて予見されないのだろうと。 運行の乱れも似たようなことかと。交通渋滞等もあると思うのですけれども。交通の断というのは、事故等があって、大雪が降ったとか、そういうことなのだろうと。
(B)に、「不可抗力の場合」と書いてありますので、不可抗力が事業者にとってではなく、運転者にとって不可抗力だと解釈をするのであれば、これは例外の規定で、こういう場合は例外にすると、皆で決めれば、取りあえず毎回起こるような事象でなければ、ある程度あらかじめ決めておくことができるのかなと。
要は、例外にしてどのようにするかですね。ほかの所では2時間ぐらいアローワンスを取りましょうという意味合いもあるかと思いますが、この不可抗力の場合は、こういうふうにカウントしましょうというのを決めれば済むのかと。
後は、公益目的とか災害時の緊急自動車は当然の話なので、当然の話以外は、ある程度の解釈をきちんと決めてやれば、ILOからは、こういうふうな例外規定を自分たちで決められると言われているからと、解釈できるのかなと思って、ちょっとほっとしています。そういう感想です。
○藤村委員長 分かりました。感想を頂きまして、ありがとうございます。本来は、もう少し議論をしていくといいと思うのですが、今日は議題2で、労使双方から具体的な数字を出していただきたいと思っています。そちらの議論に移りたいと思います。
事務局、あるいは受託業者の方から、実態調査のみならず、海外調査や疲労度調査についての報告がありました。これらを踏まえて、令和4年12月の改正に向け、改善基準告示の見直しに関する御意見を、各代表から改めてお伺いしたいと思います。
それでは、ハイヤー・タクシー分野、トラック分野、バス分野の順に、各代表の皆様から5分以内でお願いしたいと思います。まずは、ハイヤー・タクシーについて、労働者代表からお願いいたします。
○久松委員 久松です。どうぞよろしくお願いいたします。これから具体的な議論に入っていくということですが、少なくとも私たちハイヤー・タクシーだけではなく、自動車運転の産業全てが、なかなか労働市場では選んでいただけない産業ではないかと思います。また、3年定着率も非常に低いということです。そこにはやはり長時間労働というのが大きなネックになっているということを考えれば、今回は960時間の時間外労働の上限規制が入るという前提の改善告示の見直しですから、やはりしっかりとした明確な労働時間の短縮をしていかなければいけないということが前提であるかと思っています。
私たち労働側としては、年間の最大拘束時間は3,300時間以下である必要があると考えております。また、労働時間等設定改善法の勤務間インターバルの制度が将来義務化されていくことを見据えて、働き方改革推進支援助成金が9時間以上11時間と、11時間以上で設定されています。助成金は11時間が満額であるということを考えても、休息期間について日勤勤務は11時間必要であると考えています。1日の拘束時間については、そこから逆算してということになるのではないかと考えているところです。
タクシーにおいて隔勤勤務というものは、また別に改善基準の設定があります。現状は20時間で休息期間が定められておりますが、少なくともここは24時間が必要なのだろうと考えています。そこを逆算して2暦日の拘束時間や、1か月の拘束時間を考えていく必要があると考えているところです。
また、タクシーの特例の1つとして、車庫待ちの場合は、拘束時間などにおいて緩和されていますが、車庫待ちの定義というのが、営業所においてお客さんを待つ状況と、駅待ちとなっています。この駅待ちの部分が非常に曖昧なので、ここをしっかり明確にしておく必要があるのではないでしょうか。その上で、特例の時間数を決めていく必要があるのではないかと思っています。
もう1つは賃金の関係ですが、長時間労働やスピード違反、交通事故を誘発する危険性が高いということで、タクシーの場合は累進歩合が禁止されております。現状、今は年次有給休暇の5日間の取得義務化があるのですが、累進歩合制度や、これに類似する賃金制度において、年休取得の抑制がされているということがありますので、長時間労働の是正を鑑みれば、累進歩合の厳格化も必要であると考えています。
それから休日労働については、今は2週に1回ということになっていますが、これは現行を据え置くべきだと考えています。タクシーについては以上です。
○藤村委員長 ありがとうございました。では、使用者側からお願いします。
○武居委員 ハイヤー・タクシーの労務委員長を仰せつかっている武居です。よろしくお願いいたします。時間外労働時間の特例として、バス、タクシー、トラック等で960時間をいただきました。これは私ども3団体がヒアリングを受けて、実態を国交大臣にお話して特例を頂いたものです。それと同時に、改善基準の見直しということになるわけです。やはり私どもは、最低限960時間の残業を拘束時間に反映したいというのが本音のところです。
今、現行は299時間と322時間の日勤があるわけですが、現状では全国の乗務員が大変不足しており、認可台数に対して多分、1.4ぐらいしか乗務員はいないだろうと思います。東京でも2を切り始めました。そうなると今後、全国において労働者不足が喫緊の問題となり、これから労務倒産が続出するだろうと想像されます。その中でやはり当面、会社側は乗務体制を日勤という方向に移行していく可能性があり、都心部や流しを中心にした地域でも向かっていくだろうと予想されます。
全国でも経営者側から心配されているのが、実は日勤の最大拘束時間です。私どもは、299時間、今「13時間拘束」と言われている日勤を最大限利用させていただくと23乗務できます。23乗務で1時間の休息を取りますと、事業内労働も入れて1日4時間残業ということになります。つまり23乗務が4だと92時間です。そうすると当然のことながら、960時間はクリアできないという話になるわけです。当然、このアンケート結果を私もきちんと読ませていただきました。その中で、私どもは事業者側として最大限経営を維持しながら運転手にも、ある程度の収入を確保させる。皆さんは「長時間労働は是正しなさい」と言うのですが、例えば今の13時間が10時間になって同じ賃金が受け取れるかといったら、とんでもない話です。今でさえ労働者が不足している中で3割を超えるような減収になった場合に、我々の産業は多分、もう維持できません。現実的に会社側は、もうほとんど廃業という実態に陥ります。最大限利用という意味において、私どもも全国の経営者側の意見をまとめさせていただいて、今申し上げたとおり、1か月最大限やれば基本的に13時間拘束で23乗務、92時間の残業ができるわけですが、そういうことになると当然、これはもう違反になるのです。私どもが最大限留保できる数字として、拘束時間12時間となりますと、1日の残業時間が3時間で24乗務として、月間の残業時間が72時間です。これならば十分960時間をクリアできるだろうと思っています。つまり当面、算定上は最大拘束時間を288時間と考えている次第です。
同時に、タクシーの場合に累進歩合は駄目ですけれども積算歩合は認められています。私は全国を回って各地域において、累進から積算に切り替えてほしいという話をしています。それと同時に、今回の働きやすい職場環境良好度認証制度の中では、累進歩合の廃止を2年以内にやろうということで申請し、マークを頂きました。約600以上のタクシー業界が今後、一つのマークの認証を受けて働くわけです。
そういった中で、タクシーとして今一番問題なのが、曜日や月によって生産性がかなり違うということです。これはコロナがない場合ですけれども、1月とか2月とか、年に3回から4回ぐらいは忙しい月があるのです。例えばボーナス月の7月や12月、3月、4月のように歓送迎会が多い時期というのは、タクシーにとって一番忙しい時期です。それを鑑みて、計算方式として288時間の上限72時間×12か月という場合、やはり曜日や月によって需給の格差が非常に出てくるものですから、288時間の4か月管理をやらせていただけないかと考えています。つまり4か月の合計1,152時間としていただきたい。上限的に月によっては288時間を少し緩和していただいて、月によってはもっと少なくして、少なくとも4か月で1,152時間とすると、平均で時間外労働が72時間になるだろうという形で、我々事業者側としては今考えています。それが1点です。
もう1つは、隔日勤務というのが都市部を中心にあるわけです。これについても曜日によってかなり売上げが変わってきます。基本的に隔日勤務は262時間ですから、残業的には全然問題なくクリアしていることですから、これは現状維持をお願いしたい。それと、曜日に関係なく2暦日の拘束時間は21時間ということになっているのですが、ここをやはり労使協定によって月に4回なら4回、1時間延長できるという形を取らせていただいて262時間を確保する。つまり、土曜日や日曜日の夜はそんなにお客さんがいらっしゃいませんから、21時間も必要ないね、18時間で帰ろうねという形で調整をして、月の262時間を確保させていただく、若しくは年6回の270時間を確保させていただくというように、現状としては考えているわけです。以上です。
○藤村委員長 では、トラックについて、労働者代表からお願いします。
○世永委員 世永です。数字ということなので、労働側としては拘束時間については、年間3,300時間と思っているということは、この間何回も申し上げてきたとおりです。そもそも振り返りになりますけれども、実は2015年の5月に、中小企業における6時間超の割増賃金率の猶予措置の廃止があり、そこからスタートになったのだろうと思っています。それを受けて、トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会が発足したということです。
解散等によって廃案になりましたけれども、その後も労働側としては、首相官邸で開催された働き方改革実現会議の中で、連合の神津会長より自動車運転の業務、特定の業種や職種を今回の上限規制の枠組みから置き去りにしては駄目だということを強く申し上げていただきました。しかしながら、その後の労基法の改正の中では、休日労働を含まない960時間になったということです。ただ、皆さんも御存じのとおり、国会における審議の中では、この960時間の時間外を行った場合の拘束時間等々についてのやり取りをして、当時の加藤大臣より、やはり拘束時間ベースで考えて3,300時間というのも、1つの数字としてあるという御回答を頂いて、それに沿った付帯決議を付けていただいていると思っております。
労働側としては、この産業に若い人が来ないといけないと思っております。働き過ぎによる過労死等の防止と、労働時間が短縮されても賃金が減らないという、この2つの取組が必要だろうと思っています。そういったことを考えながら、実は2018年12月の事業法改正には、組合としてもベクトルを合わせてきたということです。細かい中身については、今回の調査結果の1番、2番で出ていますが、海外における例外規定も含めて、30日以降に考え方を出していきたいと思っています。今の段階では、総拘束時間が3,300時間ということについては申し上げさせていただきます。以上です。
○藤村委員長 では、トラック使用者側からお願いします。
○馬渡委員 馬渡のほうで答えさせていただきます。今、労働者側のほうからもお話があったように、我々は今年の3月から9月までで、2回目の調査のお願いをするということになっておりますので、この時間でこういうようにしようという細かい話は、まだ固まっておりません。ただ、毎回申し上げておりますけれども、960時間という規制が法的に決まったということは、やはり我々経営者も重く受けとめなければいけないだろうと。というのは、世永さんも言われたように、そもそも働く人が入ってこないのでは、我々の業界も成り立たないということもあります。あとは、どうやってそういうことをきちんと守らせるか、守っていこうと思えるような制度にしていくかが大事だと思っています。
先ほど例外規定の話も申し上げましたけれども、拘束時間が延びたり、1日の実働時間が延びたりというのは、今は規定があるのですが、実際は我々経営者が命令をして、こういうようにルートを走って、アローワンスも見て、これぐらいで終わるだろうというように想定しても、やはり予見されないことが本当に種々雑多にあります。その中には当然、道路環境によって規定される部分もあるのですが、どちらかと言うと、やはり出先とか、積込み時に荷主さんによって予見できなかったことを命じられるということもあります。
我々の仕事というのは、結局はきちんと着荷主さんにお荷物をお届けすることです。今はコロナで、手書きのサインをなくそうとしていただけるのは、我々も非常にうれしいのですけれども、結局は荷台に乗っている荷物を下ろして完了というのがはっきりしているものですから、荷主さんから「待て」とか、「これの一部ここに置いて、残りは向こうに置いてくれ」とか、今は予約システム等を入れてくれている所もあるのですが、予約をして一部を下ろして、「また一番後ろから並んで」ということもまだまだ多々あります。
そういった運転手の責に寄らない部分や、経営者が予見できない部分を社会も含めてどう捉えていただくかによって、この960時間が守られるのではないかと思っております。罰則を伴うことなので、軽々に今の段階で「3,300時間でいいですよ」と言うことはできないのではないかと思っておりますが、例外規定の取り方とか、いろいろな細かい部分で疲労度等の調査もありますので、議論を闘わせながら、まずは労働者の皆さんが健康で仕事ができるようにしてあげたいと、経営者は当然考えておりますので、不可抗力みたいなことはなるべくなくすような話を、この際に社会も含めて御認識をいただいた上で、我々経営者の責務は守る、でも不可抗力の部分は労働組合の皆さんとも御一緒に、社会的にきちんと皆さんに守っていただくということができれば、960時間というのは何とかできていくのではないかと思っております。
繰り返しになりますけれども、今のところ我々のほうでいろいろな事業者に聞いた限りでは、御意見が種々雑多あります。というのは、荷主さんの荷種によっても全然違いますし、長距離をやっている所と近距離をやっている所でも違います。それから、都市間でも渋滞が多い所やルート配送されているような場合でも違いますので、もし場合場合で、こういうようにしようと細かく決められるのなら、長距離ルートの場合はこういうようにしましょうということを議論できればと思っておりますので、これも30日以降の協議の中で話していきたいと思っているところです。以上です。
○藤村委員長 では、バスの労働者代表から御意見をお願いいたします。
○池之谷委員 私鉄総連の池之谷です。バスの関係ですが、そもそもこの実態調査を取り組むに当たって、一抹の不安がありました。というのは、一昨年のデータを用いるということで、本来の実態が現れるかどうかといったところに少し不安があったわけですが、結果として「自動車運転者調査」、また「事業者調査」を見ても、長時間労働や長時間拘束の実態が浮き彫りになっているのだろうと思います。それを含めて、労働者が強い疲労感を感じているという実態も明らかになっていると思っています。
今回の改善基準告示の見直しというのは、そもそも働き方改革関連法又は付帯決議に基づいて、長時間労働の是正というのが大前提で、その目的達成のために労使の中でしっかり議論をしていく必要があると思います。実態調査結果にあるように、労働者が強く求めている休息期間の延長、拘束時間の短縮、分割特例の廃止等々の実施は必要であろうと考えています。具体的に、休息期間については連合が提唱している11時間、拘束時間については3,300時間以下と考えております。
分割特例の関係では、今回の調査結果の6ページの「1日の拘束時間の実態について」ということで、「事業者調査」の中では13時間以下というのが67.1%です。それに対して「自動車運転者調査」の中では、13時間以下が18.6%ということで、これだけ乖離しているのです。これは分割特例の中で、事業者側が分割をして、中抜きの拘束時間を含んでいるとか含んでいないということによって、解釈の違いがここに大きく現れているのだろうと思っています。
机上の計算では、拘束時間から抜くことによって13時間以下というのが守られているのかもしれないのですが、実際に働く側としては、拘束時間から抜いたとしても会社にいるわけですから、実質的な長時間拘束になっている。それが18.6%という数字に現れているのだろうと思っています。分割特例の運用にばらつきがあり、労働者の感覚として、長時間拘束だというように感じているのであれば、分割特例の廃止、若しくはきちんとした定義に基づいて設定すべきだと考えています。
また、連続運転時間の関係ですが、改善基準告示では4時間となっています。ただ、バスの交替運転者の配置基準では、2時間という通達が出ているのです。この2時間というのは、元々関越自動車道の大きな事故があって、それを踏まえて4時間という長時間運転がいいのかどうかといったところで、交替運転者の基準として2時間というように定められているのです。それとの整合性が余りにもなさ過ぎる。この連続運転2時間というのは労働者側というよりは、事業者側がお客さんを安全に運ぶためにということで、事業者側が主張してくるのではないかと思っていますが、やはり今の4時間は短縮すべきだと思っています。
時間外の規制が960時間ということになっていきますが、そもそも一般則の時間から見て、大きく駆け離れている時間だというように考えています。960時間をここで論ずるつもりはありませんが、960時間は月80時間の過労死認定ラインだろうと思いますので、きちんと改善基準告示の議論の中でやっていく必要があると思っています。労働時間が短くなれば、確かに賃金は下がるのかもしれません。しかし、労働者がきちんと健康で、その職場で働き続けられる環境を整備していくことが必要なのだろうと思っています。バス、ハイヤー・タクシー、トラックを含めて、いろいろな作業や働き方があると考えていますから、その辺は作業部会の中でも改めてしっかり議論をしていきたいと思っています。以上です。
○藤村委員長 では、バスの使用者代表からお願いいたします。
○齋藤委員 日本バス協会労務委員長の齋藤です。具体的な数字というのは、本日は持ち合わせていません。したがって、部会の中でお話をさせていただこうと思っています。先ほど来、3,300時間の話が結構出ております。これは960時間を踏まえて3,300時間ということのようですけれども、960時間には休日労働が入っていなかったり、やはり繁忙期の特例なども必要ではないかという感じを持っております。本日の調査を踏まえて、現時点での私どもの考え方についてはペーパーを読ませていただいて今後につなげていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
初めに、昨年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、人々の移動が大幅に制限された結果、バス業界は極めて厳しい経営状況に置かれており、事業存亡の危機であります。このような厳しい状況下で改善基準告示の見直しが行われることを、まず御理解いただきたいと思います。
さて、現在の改善基準告示は、1日の拘束時間が15時間を超えるのは週2回が限度です。1週間の拘束時間、運転時間、休息期間など、遵守しなければならない項目が多く、例えば1日の拘束時間が15時間を超えるのは週2回が限度との基準を管理する際には、翌日の出勤時間が前日の出勤時間よりも早い場合、前日の拘束時間に加算しなければならないなど、複雑で分かりづらい基準となっております。対応する運行管理者にとっては大きな負担となっており、運転者にとってももっと分かりやすく、その上で運転者の過労が減り、事業の継続にも考慮した実効性のある改善が望まれます。
今回、厚生労働省で実施していただいた実態調査により、一部の事業者では現在の基準を守り切れておらず、また自動車運転者に対する調査では、「守られていない」と回答した率が、事業者調査と比較して高いという実態が明らかになりました。改善基準告示を遵守することが難しい理由は、実態調査の結果から、公共交通機関としての運行を確保する必要があること、道路渋滞、複雑な基準であり運行管理の実態に合っていないことを挙げる声が多く、運転者の健康管理に配慮しながら、実態に即した告示に見直していくことが必要と考えております。
次に、バスの総拘束時間は4週単位で管理しておりますが、法定帳簿である賃金台帳の管理は1か月単位となっております。そこでタクシーやトラックと同様に、月単位での管理もできることとし、従来の4週単位で適切に管理を行っている事業者もいることから、選択制とするなど、各社が実態に合った形で事業の運営ができるよう要望いたします。また、総拘束時間の見直しについては運転者の過労防止、安全運行の観点から議論が必要なことは理解しております。その際、労使協定を結ぶことで可能となる拘束時間の延長については、2024年から適用される年間の時間外労働上限960時間に休日労働時間が含まれていないことから、今後も拘束時間の延長特例が必要と考えます。
なお、延長特例の上限に「貸切バスを運行する営業所において、運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び高速バス運転者」とありますが、高速バスを運転する営業所についても繁忙期があるため、「貸切バス又は高速バスを運行する営業所において、運転の業務に従事する者」という文言に変更をお願いしたいと思います。
次に休息期間です。現在の期間基準においても、平均11時間以上の休息期間が確保されております。休息期間の延長は、比例して拘束時間、労働時間の減少につながり、例えば始発や終発時刻の見直し、混雑する朝ラッシュ時を含めたダイヤの減便など、お客様へのサービス低下は避けられず、影響が極めて大きいことから、作業部会で、より深く議論していただきたいと考えております。
次に運転時間についてです。2024年4月1日以降、改善基準告示による運転時間管理とは別に、労働基準法による時間外労働の上限規制に基づいた労働時間の管理を行うことになります。自動車運転者の労働時間の大部分が運転時間であることから、運転時間に関する基準を見直し、労働時間の管理をもって運転時間の管理に代えることを要望します。
続いて、連続運転時間については現行どおりでお願いしたいと思います。ただし、駅前ロータリーでの待機中や、貸切バスの路上待機中などに、周辺交通の円滑化のために数メートル車両を移動させる場合があります。現在はこれで10分以上の連続した休憩とみなされず、連続運転違反とされる例があります。日本の道路事情の実態を考えますと、駐車スペースも限られているため、待機中のやむを得ない移動については、改善基準上の連続運転から外していただくことを要望します。
次に、分割休息の特例についてです。テーマパークや野外音楽イベントへの輸送、最近では2019年に開催されたラグビーワールドカップ輸送など、早朝と夕方にお客様の送り迎えをし、日中は現地で4時間以上の休息を取るような輸送形態では必要な制度と考えております。また、一般乗合バスにおいても運転者の突発的な休みに対し、運行確保のために他の運転者に休日出勤や勤務変更を依頼する際、やむを得ず8時間の休息期間を確保できない場合において利用していることから、現行どおり残していただくことを強く要望したいと思います。私からは以上ですけれども、副委員長の金井さんからも述べさせていただきたいと思います。
○金井委員 日本バス協会労務副委員長の金井です。引き続き使用者側から、あと何点かを要望させていただきたいと思います。バスの特徴の1つに、定時定路線での運行が挙げられます。一般路線バス及び貸切バスにおいても、お客様にあらかじめ時刻を提示して運行しているため、季節や曜日、時間帯による一定の道路渋滞をあらかじめ運行計画に盛り込んでおります。また、道路渋滞が発生している場合でも、停留所を通過することは認められていないため、渋滞区間を迂回して運行することができません。そのため、一定の渋滞を見込んだ運行計画を超える道路渋滞や、今後ますます多発化するおそれのある自然災害によるやむを得ない運行の乱れ、あるいは公共交通確保のために行う列車代行輸送などについては、事業者の努力で遵守が難しい不可抗力な事象とみなして、改善基準告示違反にならないように、一時的な例外措置として、通達などで取扱いを明示していただくことを強く要望させていただきたいと思います。
また、貸切バスについては旅行代理店などのエージェントにも、改善基準告示遵守に向けた協力を求め、運転者の過労防止に繋がるよう、関係各所及び日本バス協会と連携して取り組んでいただくことを要望させていただきます。
最後に、改善基準告示の適用に関する要望です。現在、改善基準告示の対象はバス、タクシー、トラックに限定されております。今後、運転業務を有償で提供する新たなビジネスに対しても、運転者という面を鑑みて、過労防止に向けた取組が実施され、公平で健全な競争が行われるように、環境整備をお願いしたいと思っております。
以上、現時点での要望について申し上げましたけれども、今後の議論において発生する課題については、作業部会で継続して、しっかり議論させていただきたいと思っております。以上で、使用者側の発言を終了させていただきます。
○藤村委員長 どうもありがとうございました。それぞれの労働者代表、使用者代表から御意見を伺ったところです。馬渡さんがそろそろ退室と伺っていますが、何か最後に言っておきたいことはありますか。
○馬渡委員 今、バスのほうでおっしゃいましたが、我々のトラックのほうもUber的なものですとか、例えばアマゾンさんたちがやられているように、軽車両の一人事業主とみなして適用を除外しようという動きがますます強くなっているものですから、では、その人たちは改善基準告示は関係なしで、やりっ放しでいいのかという話はきちんとしていただきたいと、我々も思っています。
我々は「白トラ」と呼んでいるのですが、白と言えなくても、軽車両は黒になるのですが、黒の軽車両でも運転される方は同じですから、健康に過ごせるような労働環境を整えていこうというのは一緒だと思いますし、我々も経営条件が著しく変わってくるということになると影響がすごく大きいものですから、今、ITとかDXを使って、アルバイトも1時間単位で集められるという時代ですので、Uberも含めて個々の人たちをアルバイトとして半日なり1日ごとに集めようというのは、前から考えると考えられないほど容易にできると。その人たちが労働者とは言えないという概念だけで同じことをされるというのは、やはり社会的にも不合理があるのかなと感じております。我々は白いトラックから緑のナンバーのトラックに、「自営転換」と呼んでいますが、自営転換を改めてやっていただくようなことも必要なのかなと思います。
労働時間の問題だけではなくて、いろいろな問題が関わっていますので、調査結果のクロス集計等も踏まえながら、作業部会でもきちんとその辺もお話させていただくと、今年の調査も、より良く、クロス集計の結果によって、ここをきちんと見ようというようなことを事業者もできるかなと思いますので、その辺も併せてお願いしたいと思っております。以上でございます。
○藤村委員長 そういう、いわゆる個人自営業主という形で荷物を運んでいらっしゃる方々については、労働者性を問うということは別の所でも議論されていまして、そういったところとの関連も出てくるように思います。今、お話を伺っていまして、特に論点となる事項が3点あるかなと思います。
まず、休息期間をどのように決めるか、2つ目が連続運転時間、3つ目が年間の拘束時間です。この3つについて、労使の意見が大分隔たっているように見えます。先ほど、既に具体的に時間の数字も出していただいてはいますが、改めて、この3つの点について、補足的に述べたいということがあれば、お伺いしたいと思います。
○松永委員 私からは休息時間についてお話させていただきます。今、トラックの事業者側からもありましたが、自由な働き方というものが日本社会に増えてきているという中で、私たちの業界にもいろいろな風が吹いてきているというのは感じます。
そういった意味で、最初に配っていただいたA3版のものにもあるのですが、昭和54年のときから休息時間は8時間のままで、何十年、この議論を続けなくてはいけないのか。
そういった中で、タクシーのことを申し上げると平均年齢が60歳という業界です。ちょうど20年前が約50歳です。ですから、20年間で0.5歳ずつ、10歳も年を取ってしまった業界で、バス、タクシー、トラックの中では断トツの平均年齢です。その中で残念ながら、この業界は長時間労働を踏まえながら、若い方たちが集まってこない、また、給料が低い、3モードの中では年収が低い中で、大変厳しい業界です。人が入ってこないという中で、この5、6年、東京で大卒の運転手が増えてきたという、全国の47都道府県とは別の例として、大都会での例はあります。しかし、全国的には年齢層がどんどん上がってきて、県によっては平均年齢が67歳という所も出てきました。
そういった意味で、この長時間労働を是正するためにも、先ほど事業者側からありましたが、時間を短くすれば稼げなくなるのだということの中で、もう一つヒントとして、累進歩合は駄目なのだ、しかし積算歩合ということで、何とか形を変えたいという事業者からの提案もありました。基本給というものをしっかりと作る業界にならなくてはいけないということにおいては、もっと人が集まる業界にするためには、休息時間をしっかり作って、家庭というものと向き合える環境の業界にしなくてはいけないということが、私は一番必要だと思っております。
そういった意味で、休息時間をしっかりと取ることによって、しっかりと自分の、労使間も含めて、事業者とともに会社を良くしたいという気持ちになれる環境づくりとして、私は休息時間をしっかりと作ることが第一だと思っております。
これは今回の働き方改革、長時間労働是正の肝だと思っております。そういった意味では、この休息時間についてしっかりと議論をして、3モード一体で、何とか休息時間を8時間から、私たち労働側は11時間と申し上げておりますが、そういった議論をしっかりとさせていただきながら、インターバル(休息時間)を作らせていただきたいというのが、切なるお願いであります。私からは以上です。
○藤村委員長 そのほか、御意見はございますでしょうか。
○貫委員 交通労連の貫でございます。先ほど、使用者側からもいろいろ言われておりましたが、私自身も、トラックにおける日勤勤務、ルート配送や近距離の輸送と長距離運行の中においても、連続運転の課題とか休息期間、これは課題が違うのではないかと感じている部分があります。ある意味、2つの基準的なものを分けて作れるのであれば、そのようなことも、働き方としてはあってもいいのではないかなと感じる部分がございます。
あと、少し違うのかもしれないのですが、拘束時間の中に休憩という概念がないところが私は気になっている部分です。今の改善基準告示、労基法上では6時間以上働けば45分の休憩を与えなさいとなっておりますが、改善基準の中においては、やり方によっては10分の休憩だけで8時間の運転ができてしまうというような現状もありますので、その辺をどのように止めていく必要があるのかなということも、課題としてはあるのかなと感じているところです。以上でございます。
○藤村委員長 ほかにございますでしょうか。
○武居委員 休息期間について、実態調査では8時間未満がほとんどなかったという結果が出ています。とりあえず、8時間以上となっていますが、都心部の場合は、流し中心の所は10時間以上の休息は取っていると思います。そういう実態があるのですが、なぜ私どもが休息期間にこだわるかと言うと、先ほどから労働組合側は、逆算方式で24時間からどんどん引いていくものですから、拘束時間は当然減ってきます。そうすると、そこから逆算されますと論議ができなくなってしまうということです。我々はいろいろな形態があるわけです。特に、累進歩合等の問題はあるのですが、トラックとバスと違って、私どもは歩合給なのです。ある意味では、基本給イコール最低賃金というような発想が、全国的に実態的にはそういうことになっています。
つまり、基本給はあると言いながらも、ある程度の売上げにいかなければ、基本給に達しなければ最賃を払うというような発想に、タクシー会社というのはほとんどなっているわけです。売上げゼロならば、今までは最賃すら払わない会社では、給料も2万円とか3万円しか払わないという事業者があって、社会問題になっているということもあるのです。
ですから、休息期間から全部逆算されてしまいますと、今言った最大拘束の部分も含め、1日の拘束時間も非常に厳しくなります。経営者側からすると、ちょっと待ってよ、現状維持にしてよという意見のほうが増えてくるという実態があるのです。
だから、どうしても8時間という休息時間が9時間とか11時間となると、1日は24時間しかないわけでありまして、日勤の1日の拘束時間は現在原則13時間、最大16時間です。もし休息期間を11時間にされたら、最大限でも13時間しかできない。拘束時間からみると、10時間拘束では1時間休憩を取って、労働時間が9時間と言ったら、都心部でどんなに頑張って、若い人を入れろと言ったって、給料は最低賃金の20万円ぐらいで、どうやって若い産業に人が入ってくるのだという実態があるものですから、新卒をやるというのは、ある程度、半年の給料の保障をして新卒を入れているのです。つまり、生産性がまだ確保できないだろうから、給料を半年間は確保してあげましょうと。それで、生産性を上げるような努力をしましょうという形で集めていますので、やはり若い人たちも30万円以上の給料については、相当意識した中で、今の新規参入というのが入ってきているのです、都心部の場合ですけれど。
特に新卒は、東京では今年は大卒を500人雇用しているわけです、ある程度の企業は。ですから、そういう実態の中で、休息期間が長ければ長いほど1日の拘束時間は短くなります。先ほど久松さんも松永さんも逆算方式でいきますので、当然それに沿って短くしましょうということになってしまうと、なかなかOKですという話にはならないと考えています。
つまり、画一的に休息期間を11時間とか10時間とされてしまいますと、それ以下を、画一的に一切認められないという発想だと、歩合給でやっているタクシー業界にとっては難しいです。日によっては、8時間の現状でいいよ、日によっては10時間取ってねというのだったら、まだ我々のほうは譲歩できるというところになってくるのかなと感じています。以上です。
○藤村委員長 このように意見が出てくるといいですね。そのほかにございますでしょうか。
○世永委員 先ほど1点申し上げ忘れたのですが、改善基準告示の立て付けは変えないということで、時間外労働960時間に休日労働は別立てに法律上はなっていますが、告示では総拘束時間の中ということについては、労側としては統一認識を取っていますので、よろしくお願いいたします。
○藤村委員長 分かりました。そのほかにございますか。
○赤間委員 拘束時間の関係については馬渡委員がお話しになったので、それで大体。この場で数字を言うという話ではないのですが、恐らく休日労働時間をどう捉えるかというところが、最後のポイントになるのかなと感じております。
もう一つ、先ほど話も出ましたが、長距離運行と、都市部の1日の日勤の運行については、明らかに業態が違います。実際の運行計画自体も、連続運転時間と休憩時間を組み合わせていくということになりますから、実質の1日の労働が8時間、拘束時間9時間では測れないという可能性が出てきます。ですので、そこは仕組みを変えたほうがいいというのは同感であります。
あと、連続運転時間ですが、今は4時間となっています。車両の性能も上がっているということと、今はデジタコというのを入れていますので、1分でも超えてしまうと4時間オーバーと。それはそうなのでしょうが、実態の運行計画としては合わない部分も出てきますので、そこは見直しをしていただいたほうがいいかなと感じています。以上でございます。
○藤村委員長 そのほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
この改善告示の見直しに関する具体的な議論を進めていく上で、今後、業態別の作業部会というものを設置して、引き続き実施するということにしたいと思います。では、事務局から作業部会の設置案等がありましたら、配布をお願いいたします。
(作業部会設置案配布)
○藤村委員長 ただ今「自動車運転者の労働時間等に係る作業部会の設置について」という一枚紙が配られたと思います。これについて、事務局より御説明をお願いいたします。
○過重労働対策室長 ただいまの御議論の中でも少しありましたとおり、各業態で事情等が違いますので、各業態ごとに集まって、細かく深い議論をすることが必要だと感じております。このため、専門委員会運営規程第9条に基づいて、専門委員会の下に、新たに公労使の三者で構成される自動車運転者労働時間等作業部会を設置して検討を行うこととしたいということでございます。 2の検討事項としては、改善基準告示の見直しに関する事項、その他、自動車運転者の健康確保であるとか、過労死防止や労働時間の短縮等について必要な事項ということです。
3の組織です。(1)作業部会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は、専門委員会委員長が指名するということになっております。(2)作業部会に属する委員のうち、公益を代表するもの、労働者を代表するもの及び使用者を代表するものは、各同数とするとなっております。
4の運営については、作業部会において別途定めるものとします。昨年度の1月から3月まで行った検討会をイメージしていただければよろしいのかなと思います。それから、その作業部会の部会長は、1回目の部会で決めるということにしたいと考えております。以上です。
○藤村委員長 ただいま御説明がありましたように、専門委員会運営規程第9条に基づいて、新たに公労使の三者で構成される自動車運転者労働時間等作業部会というものを、業態ごとに設置して検討を行うことにしたいということです。これについて、この場で御承認を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
(異議なし)
○藤村委員長 では今後、具体的な時間等については作業部会の中で御議論いただきたいと思います。
構成メンバーについては、令和元年度の実態調査検討会に入っていただく方々で構成していきたいと思います。
以上が、本日話し合うべき事項ですが、皆様から何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、本日の会議はここまでとしたいと思います。最後に、次回の日程等について、事務局からの説明をお願いいたします。
○中央労働基準監察監督官 次回の業態別作業部会等の日程につきましては、日時、場所について調整の上、追って御連絡させていただきます。議事録につきましても、後日御確認いただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○藤村委員長 それでは、これをもちまして、第5回自動車運転者労働時間等専門委員会を終了いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。