2021年2月26日 第52回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会 議事録|厚生労働省

健康局難病対策課移植医療対策推進室

日時

令和3年2月26日 (金) 10:00~12:00

場所

WEB会議にて開催

出席者

委員(五十音順)

議題

  1. 1.臓器移植医療の現状と対策
  2. 2.摘出臓器搬送の外部委託について
  3. 3.移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について
  4. 4.脳死下での臓器提供事例に係る検証会議からの提案について
  5. 5.その他

配布資料

資料1 臓器移植医療の現状と対策
資料2-1 摘出臓器搬送の外部委託について
資料2-2 臓器搬送の外部委託搬送臓器の拡充について
資料3-1 肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について
資料3-2 肝腎同時移植における腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について
資料4 脳死下での臓器提供事例に係る検証会議からの提案書

参考資料1 第49回臓器移植委員会資料 1-4(腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について
参考資料2 肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準に関する学会要望
参考資料3 肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準について-周期加点対象疾患の追加について-
参考資料4 肝腎同時移植における腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準に関する学会要望
参考資料5 肝腎同時移植におけるHCV抗体陽性事例について

議事

議事内容
○磯部委員長 定刻より少し前ですが、御予定の方全員が御参加されて、マイク、スピーカーの確認もさせていただきましたので、始めさせていただきます。委員長を拝命しております磯部と申します。よろしくお願いします。
ただいまから、第52回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございます。本日はハイブリッド会議ですので、事務局のほうからWeb会議に関する説明と、委員の出欠状況の報告及び資料の確認等をお願いいたします。

○事務局 事務局です。皆様には事前に御連絡させていただいておりますが、今般の新型コロナウイルス感染症の発生状況を勘案し、今回はWeb併用のハイブリッド会議にて、臓器移植委員会を行わせていただきます。これよりWeb会議について御説明いたしますが、御不明な点等ございましたら、事前にお伝えしている電話番号におかけいただければ、お電話にて御案内いたしますので、いつでもお問合せください。
では、Web会議の進め方について御説明いたします。画面の下部に4つのマークがあると思いますが、一番左のビデオのマーク、左から2番目のマイクのマークが斜線になっており、ビデオオフ、ミュート状態になっていることを御確認ください。もしなられていない場合にはクリックをし、斜線の状態にしてください。以降、御発言される場合には、ビデオ及びマイクをオンにしていただき、まずお名前をおっしゃった上で御発言をお願いします。また、御発言が終わりましたら、再びビデオオフ、ミュート状態にしていただくようお願いいたします。
続きまして本日より、新たに御参加をいただく委員の先生から一言御挨拶をお願いします。まず、米山順子委員、お願いいたします。

○米山委員 こちらの会議に初めて参加させていただきます。臓器移植ドナー家族の会「くすのきの会」の米山です。2017年に夫がドナーとなり、その後、当事者家族として2020年、ドナー家族の支援を目的として法人を設立しました。会議には慣れておらず、緊張しております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 ありがとうございます。続きまして、外園千恵委員、お願いいたします。

○外園委員 この度、臓器移植委員会に初めて出席させていただきます、京都府立医科大学眼科の外園と申します。私は角膜移植に関わっておりまして、組織移植のほうで組織移植学会のほうにも関与しております。重要な任務を仰せつかったと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 ありがとうございます。また、本日は御欠席ですが、浅井篤委員、途中参加予定の藤野智子委員に新たに委員に着任をしていただいております。
その他の委員の出欠状況ですが、有賀徹委員から欠席との御連絡をいただいております。全20名の委員のうち18名の出席ですので、会議が成立することをお伝えいたします。
また本日、参考人としまして、日本臓器移植ネットワーク、芦刈淳太郎様に御参加いただいております。
ここで移植医療対策推進室長、田中彰子より一言挨拶させていただきます。

○田中室長 皆様おはようございます。昨年8月に井口の後任といたしまして、移植医療対策推進室長に着任をいたしました田中でございます。委員の皆様におかれましては、御多忙の中、本日は会議に御参加をいただきまして誠にありがとうございます。また、日頃から移植医療への御支援、御協力をいただき、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。
本日、議事の中でも触れさせていただきますが、新型コロナウイルス感染症拡大による臓器移植医療への影響は少なくございません。今後も起こり得る新興感染症などに備える観点からも、今回のこの新型コロナウイルス感染症への対応をしっかり、提供施設、あっせん機関、移植施設等がそれぞれ講じていく必要があると考えております。現在も一部地域では、緊急事態宣言が発出されており、まだまだ予断を許さない状況ではありますが、移植医療の現状を御説明させていただき、是非とも今後に向けて先生方から御意見を賜れれば幸いです。本日はこの移植医療の現状に加えて、臓器搬送の外部委託、肝臓移植希望者選択基準の改正、検証会議からの提案について御審議をいただく予定としております。
既に御案内のとおり、新型コロナウイルス感染症の状況を勘案して、Web会議の設定をさせていただきました。委員の皆様には御不便をお掛けすることもあると存じますが、活発な御審議のほどを、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○事務局 続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料1「臓器移植医療の現状と対策」、資料2-1「摘出臓器搬送の外部委託について」、2-2「臓器搬送の外部委託搬送臓器の拡充について」資料3-1「肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について」、3-2「肝腎同時移植における腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について」、資料4「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議からの提案書」、参考資料は1~5となっておりますので、適宜、御活用ください。
これより議事の進行に移らせていただきます。以降の議事進行は磯部委員長にお願いいたします。

○磯部委員長 それでは、ただいまより議事を始めさせていただきます。5点用意がございます。、まず1点目、「臓器移植医療の現状と対策」です。事務局からの御説明をお願いします。

○事務局 資料1について御説明いたします。「臓器移植医療の現状と対策」です。2ページ目を御覧ください。こちらは心停止下、脳死下臓器提供事例の啓示的な事例数を提示させていただいております。赤色が脳死下の臓器提供件数、青色が心停止後の臓器提供件数となっております。令和元年度においては、脳死下臓器提供97例、心停止後28例となっておりましたが、令和2年度におきましては、脳死下臓器提供事例が68例、心停止後臓器提供が9例と、減少を認めております。
3ページ目を御覧ください。こちらは直近3年分の、月ごとの脳死下臓器提供件数を提示させていただいております。赤色が令和2年、オレンジ色が令和元年となっております。緊急事態宣言①と書いてありますように、4月7日から5月25日まで緊急事態宣言が発出されておりましたが、この発出の前より、オレンジ色に比べまして赤色の数値が低下してきており、また緊急事態宣言解除後は、令和2年においては、令和元年同等の提供数となっておりました。しかしながら10月以降より、令和2年におきましては、提供数の低下を認めており、12月においては提供数が0という状況となっております。
4ページ目を御覧ください。「新型コロナウイルス感染症流行下の臓器移植医療における課題」として、アンケート調査からの声を挙げさせていただいております。提供施設側の問題としては、新型コロナウイルス感染症患者受入のために救急の現場での時間的、人的余裕がない。患者家族との面会の機会がなく説明を行うことが難しい。また、家族から申し出ることも困難である。また、臓器提供の際、外部から多くの医療関係者が来院することに不安が大きいということが挙げられています。
また、移植施設側の課題としては、摘出手術のために自施設から提供施設にスタッフを派遣します。そのため、移動による感染の伝播の可能性が考えられております。こちらは非感染地域の施設から感染地域の施設、感染地域の施設から非感染地域の施設への移動が生じます。
このようなお声を頂いておりますが、実際に現場ではどのような状況であるかというものを調査するものとして、厚生労働科学研究特別研究を、3課題立てさせていただき、調査を行っております。1つ目の課題としては、提供施設でどのような状況であるかということの調査、2つ目、3つ目は移植施設の現状を評価しておりますが、1つ目において、脳死下・心停止下の臓器移植の現状、3つ目に関しては生体肝移植、生体腎移植の現状の調査を行っております。こちらは令和3年3月までの研究となっておりますので、5、6月頃に報告書が提出されますので、そちらをもってまた施策に反映していきたいと考えております。
6ページを御覧ください。「令和3年度移植医療対策関係予算(案)の概要」となっております。臓器移植対策の推進として、昨年7.7億円でありましたが、令和3年においては8.3億円で、6,000万円の増と認めております。また、予算において、増額を認められたものとしては、提供施設の体制整備である、院内体制整備支援の充実、臓器提供施設の連携体制の構築、また新たな項目として、ドナー家族支援の強化として予算を頂いております。
7ページ目を御覧ください。参考の中で令和2年度第三次補正予算案が記載されていると思いますが、現在レシピエントの順位を決定するに当たり、移植対象者(レシピエント)検索システムを使用しておりますが、そちらのシステム改修のために1.9億円となっております。また移植医療の研究の推進としては、令和2年同様1.5億円で研究を推進していく予定としております。事務局からは以上です。

○磯部委員長 ありがとうございます。コロナの状況で大変厳しい、どの医療もそうだと思いますが、非常に厳しい状況であるということで、残念な状況だと思います。それぞれ現場でお困りのことは多いかと思いますが、今の御説明に対しまして、御意見、御質問がございましたら、どうぞ御発言をお願いいたします。

○横田委員 先ほどのグラフの説明の中で、脳死下よりは心停止後の腎提供が昨年はかなり減っているように見えているのですが、そこの原因というのは何か事務局のほうでは把握しているのでしょうか。

○磯部委員長 事務局、お願いします。

○田中室長 御質問ありがとうございます。直接的に明確にこれが原因であるということが同定されているわけではないのですが、やはり救急医療における現場の負担が非常に大きくなっている中で、特に、医療現場の負担が大きい心停止後の臓器提供が、大きく減っているのではないかというように推察をしております。先ほどお話もさせていただきましたが、そこの部分をもう少し掘り下げた調査を、今、特別研究で行っておりまして、より詳細な結果を皆様にお知らせできるのではないかと思っております。

○磯部委員長 ありがとうございました。

○小野委員 今、横田先生の御質問されたことは、非常に大事なことで、脳死の臓器提供が3分の2で、心停止が3分の1になっている。これは、率から言うとかなり低いですね。心停止下の臓器提供を推進しようという方向で動いている最中でこういう状況になっておりまして、多分、一番大きい理由はPCRが必要だということだと思います。
つまりPCR、脳死下の場合には2回の脳死判定、大人で6時間、子供で24時間空いておりますので、第1回目の脳死判定前ぐらいにPCRをやれば、通常の場合、結果が第2回の脳死判定、つまり提供の決定の段階で陰性が確認できるわけですが、心停止下の場合には、少なくともそのいわゆる現場で心停止をしている方に対してPCRをやると、少なくとも数時間後でないと提供ができないという問題があります。
院内心停止の場合は、必ずしもそうではありませんけれども、ということなので恐らくほとんどがこれ院内心停止の症例で、院外心停止の症例はPCRが陰性が提供の条件ということに事実上なっておりますので、したがって難しいということになるというように私は考えています。

○磯部委員長 ほかにいかがでしょうか。

○小笠原委員 この5ページ目の厚生労働科研の1番目なのですが、要するに提供側の学会、日本救急医学会とか日本脳死医学会とは一緒にやっていない研究ですよね。少なくとも私はこの研究がされていることは今日初めて聞いたのですが、ここにその流行下での臓器提供施設の現状調査は、5累計の病院に出したと思うのです。これは一体どういう施設にされているのかなと思いながら、私も黙って聞いていたのですが、こういうのってその学会の協力にしたほうが、ものはうまくいくと思います。
私は脳外科学会の臓器移植委員長もやっていますので、そこに来ていないということは、これは少なくとも学会としてやっているものではないということになると、調査する施設はどうやって決めたのか、不思議に思っていたのですが、ここで文句を言うつもりはありませんが、そういうことですよねということを確認したかっただけの話です。学会と一緒にやっているわけではないという理解ですよね。

○磯部委員長 事務局よろしいですか。

○事務局 事務局からお答えさせていただきます。こちらの研究課題につきましては、日本救急医学会の御協力の下に進めさせていただいております。代表研究者の小野先生におきましても、救急医学会の御推薦と伺っております。

○小笠原委員 分かりました。

○横田委員 横田ですが、追加で発言します。日本救急医学会の理事会では、この研究に関しては理事会の議題となり、承知しております。以上です。

○磯部委員長 ほかにいかがでしょうか。

○外園委員 私はアイバンクに関わっておりますが、やはりドナーが減っておりますので、こういう調査にアイバンクのほうでも協力させていただければと思いましたので追加でコメントさせていただきます。

○磯部委員長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、現状を承ったということで、対策も含め了解されたということで、先に進めさせていただきたいと思います。
続きまして、議事の(2)「摘出臓器搬送の外部委託について」始めさせていただきます。事務局から御説明をお願いします。

○事務局 資料2-1について御説明します。「これまでの経緯」ですが、2018年3月の腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正にて、臓器提供者が20歳未満の場合、20歳未満の移植希望者が優先されることとなり、搬送範囲が同一都道府県、地域ブロック内から全国へと拡大することとなりました。これに関し、日本臨床腎移植学会より、負担軽減のための腎臓搬送体制の再構築を望む要望書が提出され、日本臓器移植ネットワークにより準備が進められました。これを受け、2019年6月21日に開催された第50回の臓器移植委員会におきまして、腎臓搬送の外部委託が承認されました。また、同会議におきまして、他臓器への展開については、今後、委員会で議論を行うこととされておりました。
「腎臓搬送の実績と他臓器展開への問題点と対応」については、後ほど日本臓器移植ネットワークより御説明いただきます。今回の検討事項として、摘出臓器搬送の外部委託について対象臓器を、腎臓以外の臓器にどのように展開するか、について御議論いただければと思います。事務局からは以上です。

○磯部委員長 引き続きまして、今、御紹介がありました日本臓器移植ネットワークの芦刈参考人から御説明をお願いします。

○臓器移植ネットワーク(芦刈)よろしくお願いします。日本臓器移植ネットワーク医療情報部の芦刈と申します。資料の次のページをお願いします。「背景」として、先ほど御報告がありましたように、2019年6月に、こちらの臓器移植委員会において腎臓の外部委託について協議をいただき、承認を得たところです。私どもの中で外部の有識者による移植施設委員会及びその諮問機関である腎移植部会において議論し、このように臓器搬送に関する企業への業務委託を検討してまいりました。ほかの臓器への拡充については、その時点では今後の議論としていたところです。
一方で、先ほどありましたように、2020年になりまして、新型コロナウイルス感染症の拡大の中で、日本移植学会と関連の学会において、臓器摘出に関する互助制度を活用した臓器摘出の件数が増加しております。この互助制度について具体的に申し上げますと、ドナーが発生した地域の地元の移植施設が臓器を摘出し、それを移植をする施設まで出品するという形での、お互いに協力し合うという体制が構築されてきたという経緯があります。そうしますと、その間の臓器の搬送をどのように対応するのかということが課題として発生するという状況になっています。
次のスライドです。搬送企業による腎臓搬送の実績です。2019年6月にお認めいただいた後に、搬送する企業とマニュアルの整備、また複数回に及ぶ搬送のシミュレーション。実際にコーディネーターが搬送する際に、この企業の方が同行したということで複数回実施をしております。2020年1月より実際の搬送を開始しております。これまでに4例の実搬送がありました。例えば、近畿地方から東邦大学、東京のほうまで搬送したということで、比較的広域に搬送したという事例があります。いずれの事例も搬送に関して問題なく、確実に安全に実施されました。この4例以外に、問合せや調整を行った事例もあります。2020年の新型コロナウイルス感染症拡大化の中での互助制度が活用されている状況の中で、ほかの臓器、特に腹部臓器に関して拡大していく必要があるという状況になってまいりました。具体的に申し上げますと、肝臓、膵臓、小腸の臓器ということになります。
次のスライドをお願いします。そこで私どものほうで、どのような課題があるのかということを企業とともに洗い出しを行っております。腎臓の搬送に比べて、肝臓やほかの腹部臓器は空路での搬送、定期便で飛行機での搬送が増えるところがありますので、まず、そのような状況の中でどのように安全性を確保するかということに関して協議を重ねてまいりました。チェックインや、例えばクーラーボックスに入った臓器を保安検査場に通さないといけないという、通常の搭乗とは異なる手続が必要になりますので、その点について協議をしております。また、保安検査場は通常X線装置で手荷物を通しますが、現在、臓器に関してもX線装置を通しているのですが、例えばそこでボックスの開封を求められたときの対応が必要になってきます。
また、搬送する臓器が肝臓等になりますと大型になるということで、重量や用量に適した搬送用のボックスの調達、またそういった搬送中の落下のリスク、やはり重量が増えますので、それに耐え得るボックスを整備したということがあります。
次のスライドをお願いします。そのような中で協議をして、運用上強化した対策として、まずマニュアルを策定していたのですが、これをほかの腹部臓器に適応するようなマニュアルに改正をしました。腎臓は1名の搬送員によって搬送することが可能ですが、肝臓になりますと、2名での搬送ということになりますので、そういった体制の確保。また、搬送ボックスの開封の問題がありますので、セキュリティタイという形で、一度封緘しますと開けられないものを使うことにしております。
定期的なシミュレーションを引き続き実施しております。また、緊急時でのJOTとの連絡体制に関して再確認、徹底をしている状況です。また、企業との定期的な搬送事例の検証の実施を継続している状況の中で、このような対策を強化してまいりました。内容としては以上です。
先ほどありましたように、腎臓以外の腹部臓器に関して、企業による臓器の搬送、外部委託を拡充して良いかどうかということについて御協議いただければと思います。よろしくお願いします。

○磯部委員長 今、腎臓で行われている実状と、それをほかの腹部臓器に拡大していくという御提案だと思います。臓器搬送に関わる負担が軽減できる一方、臓器の管理、安全性についての検証をなされてきたということです。私から1点伺います。保安検査について幾つか問題点を挙げられていましたが、具体的にはこの方法でクリアできるということですか。

○事務局 具体的にその方法でクリアできるということを確認しております。

○磯部委員長 開けさせられるとか、そういうこともクリアできるし、大きさの点もクリアできると。

○事務局 大きさの点もクリアできます。あと開封の依頼があったときは開封せざるを得ないのですが、そのときの開封の状況等を確認するということで、十分にそこは対応できます。

○磯部委員長 ただいまの御提案に関して、御意見や御質問を頂けますか。

○上本委員 滋賀医科大学の上本です。肝臓に関して、既に互助制度に近いものをやっておりまして、肝臓の場合、大体4人のドナーの方が手術に必要ですが、人員が派遣できない場合には現地近くの施設から応援を頼んでやっているということがあります。
また、中堅若手の外科医に関しては、大動物を使ったドナーの方の手術のシミュレーションも定期的に行っておりまして、お互いの協力関係性もだいぶできておりますので、このような環境の中で搬送をしていただくということは非常に助かる環境ではないかと考えております。以上です。

○磯部委員長 ほかにいかがですか。

○湯沢委員 私は水戸医療センターの湯沢と申します。実は4月2日にあった症例について、直接関わったので、実際どうだったのか報告させていただいてよろしいですか。

○磯部委員長 どうぞ。

○湯沢委員 4月2日の症例については、移植医の立場で言いますと、遠隔地で摘出されて搬送されることについては2つ危惧される点があります。1つは、摘出に直接関わらないことになりますので、全く知らない先生が摘出された脾臓器を本当に安心して使えるのかという問題が1つあります。
もう一つは、今、問題になっているように、搬送はしっかりされてくるのか心配されるところです。実際、私が経験した症例ですが、情報公開されているものでは6歳未満の提供者ということになるのですが、実は非常にもっと小さい方だったのです。移植を受けた人が20歳未満ということになっていますが、それは20歳に極めて近い方、大人に近い方だったのです。そうしますと、非常に小さいお子様の腎臓を大きな成人に近い人に移植するとなると、1つの腎臓では十分働きませんので、2つの腎臓を1人の方に植えるという移植手術が必要になります。そうしますと、非常に小さいお子様から2つの腎臓を1つのまとまりとして体内から摘出するというのは非常に難しい手術になります。
これを遠く離れた先生に任せられるかということになるわけですが、実は提供された病院の先生は移植医でもあるのですが、私は24年前にアメリカのヒューストンで移植をしていたのですが、そのときヒューストンで一緒に働いていた先生だったのです。それが分かって直接電話連絡をして、先生、これこれこういうことで、2腎まとめて移植したいので、そういうつもりで摘出してくださいということをお願いしたところ、快く引き受けてくれたと。ですから、しっかり最初の摘出手術は任せられるかということについては、全く問題なくクリアできました。
それと搬送については、西日本の病院を出る時点で、臓器移植ネットワークから連絡がありまして、何時にどの電車で行って、私の病院に一番近い水戸駅に何時に着くというスケジュールが報告されております。そのとおりに搬送されて、水戸駅から私の病院まではタクシーで来たわけですが、その予想もついてお待ちしていたところ、しっかり届けられました。当院で受け取ったのはレシピエント移植コーディネーターですが、搬送というのは宅配便のように届けられるのかと言いますと実は全然違って、スーツを着た方がしっかり搬送していただけたということで、非常にレシピエントコーディネーターも驚いていたというのが本当のところで、安心して、これだったら搬送されてきたのだなという印象を持ったということです。もちろん移植された腎臓は非常によく働いて、すぐ移植された患者さんも退院することができたということを報告させていただきます。以上です。

○磯部委員長 芦刈参考人、単に搬送だけではなくて、臓器摘出のところもレシピエント側の手術に携わる方の要望に応えなければいけないということだと思いますが、その辺りはどういうディスカッションなり、対策を取られているのですか。

○臓器移植ネットワーク 臓器摘出については、主に移植学会等の学会を中心に体制を組んでいただいております。地元で摘出することに関して可能かどうか間に入って調整することは行いますが、具体的には直接移植病院と摘出病院でお話いただいて、技術的なところは確認していただいています。あくまでもそこの間を仲介するという形は取らせていただいております。

○磯部委員長 ドナー側とレシピエント側の病院同士の医療者が、直接にコンタクトを取って相談できるという体制だということですね。

○臓器移植ネットワーク はい、そうです。

○磯部委員長 分かりました。ほかに御意見はありますか。

○渡辺委員 日本医師会の渡辺です。2点教えてください。この搬送企業というのは、どなたがどういう基準でお願いするのか。お願いする企業が複数あって選択されているのかというのが1点です。
2点目は、今までは陸路だと思いますが、空路の話が出ていたと思いますが、空路のほうが陸路よりも確実性に乏しい。時間的なこともありますし、気象条件とかもあると思いますが、その辺りのリスクに対しての対応は、空路の場合、どのようにお考えになっておられるのか、2点教えてください。

○臓器移植ネットワーク 御質問ありがとうございます。まず1点目は、企業としてはセルートという会社になります。この企業は前回でも申し上げましたが、バイオ関連や医療の搬送に非常に力を注いでいる企業になります。これまでほかの分野でも十分に実績があるということで、この企業の選定を行っております。複数社あるのかということに関しては、今現状では1社という形になります。もちろん、ほかの社が入ることは把除するものではありませんが、実績、安全性というところは十分に担保できることが条件になります。
2点目については、実際、空路は不確実性があるということは御指摘のとおりです。日頃から私ども、例えば天候や何らかの理由により欠航や遅延の可能性を考えて搬送の経路を立てております。
その中で、例えば条件付き飛行であるとか、そういった状況になる可能性がある場合はバックアップの体制を取ったり、例えば新幹線で代替できないかということを検討したりしております。ですので、企業に委託する部分は実搬送の部分だけで、調整の部分については引き続き私どものほうで対応しております。以上です。

○渡辺委員 ありがとうございました。

○磯部委員長 ほかにはいかがですか。その会社は24時間、365日、対応可能ということですね。

○臓器移植ネットワーク そうですね。原則的に対応可能ですが、やはり、現状の中で臓器搬送に関して経験があり、またそのトレーニングを私どもと一緒に受けている方は人数が限られておりますので、まず、可能な方という狭い範囲で、現状は運用しております。条件によって、その方が対応できないという状況がありますので、100%というわけにはいかないというのが現状です。私ども、コーディネーターも搬送を実際にしていますので、そのコーディネーターが搬送する、あるいは搬送企業にお願いをするという中で使い分けをしている状況です。

○磯部委員長 分かりました。ほかによろしいですか。

○猪股委員 熊本の猪股です。2点あるのですが、1つは、先ほど御質問があったことに関係しますが、肝臓移植については、摘出、移植……がかなり全国展開されて均てん化がされつつあるとは思って、それで互助制度をいかしてやっていると思うのですが、恐らく、湯沢先生がおっしゃったように、パーソナルで提供病院と移植病院の間の話し合いがあって、それからこの制度を利用するかどうかということが決まってくると思うのです。どういうタイミングでこれを使おうと思ったときに、どれぐらいの迅速性で対応ができるのかという御質問が1つです。
もう一つは、肝臓の場合、非常に摘出の道具立てが大変で、それを持って行くのにたくさん人が要るという状況がありましたが、腎臓の場合は、基本的には提供病院で機器等は提供して使っていただいてということになるのですか。その2点を教えていただければと思います。

○臓器移植ネットワーク まず1点目について、実際に移植施設が決定した段階で、その摘出が地元で可能かどうかというところの調整をまず御要望に応じて行っていくことになります。まず、摘出チームと移植施設が別であるという状況の中で、搬送に関しては、その段階で可能かどうか調整をしていきます。通常の脳死下臓器提供のタイムフレームの中での調整になりますので、そこは十分に対応できると考えております。
2点目については、私どもということではないのですが、私どものほうでお答えしてよろしいですか。今、先生がおっしゃったところについては、地元の中での対応というところですか。もう一度、すみません。

○猪股委員 肝臓ですと非常に大きなトランクを3つぐらい持って行くわけですが、今まで実際されてきたのは腎臓だと思うのですが、その機器の提供というのはスムーズに現場でできるのかどうかです。移植病院から何も持って行かないことになるわけですが、それで可能なのかどうか。仮に肝臓にそれを広げるとなると、それがどこまで可能かということです。これは見通しになるかもしれません、その辺はいかがですか。

○臓器移植ネットワーク 提供施設から借用いただける場合もありますが、どちらかと言いますと、実際にその摘出対応するチームとの間の調整になるかと思います。その移植施設と摘出を対応していただく施設の間で調整をしていただいて、機材等を含めて協力いただけるかどうかというところになります。やはり提供施設から機材を出すということになりますと、通常の提供施設での手術の予定等への影響もありますし、どういった機材があるか十分に相互確認できないところもありますので、これまで提供施設のほうから借用した事例はありますが、提供施設がイコール移植施設であるという状況の中での借用になっております。

○猪股委員 分かりました。それは業者の方が道具を運ぶということもあり得るわけですね。そういうことですね。

○湯沢委員 水戸医療センターの湯沢です。今、臓器の摘出についてですが、先ほど厚労省から説明があったスライドの5枚目、私もこれに関わっておりますが、特別研究の2番目、新型コロナウイルス感染症流行時に移植実施施設における脳死下の調査研究の研究内容の所に、臓器摘出手術機器利用者臓器システムの確立のためのシミュレーションというのがありまして、今、スライドが出た2番目です。搬送システムについて、今、研究班として検討させていただいております。
まず、機器については、機器を限定して準備して、そこに届けていただくということを考えております。従来では、腎臓、肝臓、膵臓というように、臓器ごとに摘出機材を全部持ち込んでいたのですが、基本的に肝臓摘出の機器があれば、膵臓、腎臓は間違いなく使えるのです。ですから、共通化しようという試みもあります。それがこの互助制度の大きなところで、実際に今研究として動いていますので、間違いなく実現するものと思います。
先ほど上本先生からもお話がありましたように、現地の人に任せられるかということ、互助制度が本当に浸透するかどうかということですが、どうしても摘出は摘出だけ、移植は移植だけということになりますと、どうしても移植施設側から摘出をお願いしにくいところがあります。そのために移植学会では、その互助制度の実例をホームページで公開させていただいているのです。それは、今日現在で21例がここ1年間では報告されております。これを実例にお願いすることを少しでも敷居を低くして、互助制度を活用していただけるようにさせていただいているのが日本移植学会の取組ですし、この班研究、特研でもやっているところで報告させていただきます。以上です。

○猪股委員 ありがとうございました。

○小野委員 東大の小野です。私は心臓移植を進めている者です。腹部臓器が先行的に様々な具体的な事例をお作りいただいて、それを参考にして心臓ないし肺の臓器摘出に関しても何らかの形で互助制度のシステムに乗ることが可能かどうか少しずつ検討を始める段階にあります。その中で、まずは実際に可能かどうかということを腹部の臓器、特に腎臓を中心に事例を蓄積して、それが肝臓ないし膵臓などに拡大していくのが我々にとってはものすごく有り難いと思っております。
その中で1つ、今後、もっと詰めていかなければいけない問題として、これは厚労省の方々にも御理解いただきたいのですが、臓器摘出の管理料というのがあります。この臓器摘出の管理料を移植の病院のチームが現地に赴いて摘出して持ち帰る場合には、つまり臓器の摘出の施設が全てそれを所掌することになりますが、互助制度で役割を分担した場合にどのように管理料を分割するのかというのは、実はルールがありません。これは提供病院、あるいはお手伝いいただいた摘出のチーム、さらには移植をする側の施設の中で、ある意味では紳士協定的にこのぐらいで分割しましょうかという形で、事務レベルないしは移植に携わる医師のレベルでの口約束みたいな形で実は進んでいる実状があります。
なかなかこれを一律に定式化するのは簡単ではないと思いますが、今後これを普及させるためには保険医療上においても何らかの一定のルールがないとトラブルのもとにきっとなるだろうと今から考えております。今後これをいろいろな意味で働き方改革という観点で、移植料というのは最もハードで、働き方改革に逆行する分野ということは既に認識されておりますので、それを解消する意味でも、少し下世話な話になりますが、ここも何らかの形でシステム化していただければと思っております。以上です。

○磯部委員長 これまでの御経験で、腎臓の場合はどうされていたのですか。

○臓器移植ネットワーク(芦刈) 今、小野先生から非常に大事な点を御指摘いただいたと思います。実際に腎臓においては、摘出を行った施設に臓器摘出の部分の費用配分のお支払いをしているという状況です。例えば、混成チームである場合は、機材の金額は決まっているのですが、機材の分として幾ら、あと人数が混成である場合はその人数の頭割りでの配分という形で費用配分をしております。その仕組みを使って今後拡大していく状況の中では、その形での合意を作っていけると考えております。

○磯部委員長 事務局はその辺りはそういう方針でよろしいのですか。

○田中室長 基本的には診療報酬で担保されている部分は、既に医療を提供した所にお金が入る仕組みになっておりまして、その後の費用などについては民民の契約ということで、先生がおっしゃったように、病院間の中で紳士協定的にというか、ある程度のルールを持って費用を決めているのが現状です。これをこの施設に幾ら渡せ、この施設に幾ら渡せというのを診療報酬等の中で決めることは非常に難しい。ですから、あくまで大枠は保険の中で見ますとお示しした上で、きちんと皆様の御理解がいただけるような配分の割合などを決めていくと、それをしっかり周知していくということで対応させていただきたいと思います。

○磯部委員長 数が増えてきますと、紳士協定というわけにはなかなかいかなくなって、トラブルも起きてくる可能性もありますので、今後はルールを整備していただくという方向でいけるということだと思います。よろしくお願いします。

○木幡委員 フジテレビの木幡です。臓器搬送の外部委託については、当然のことながら、扱うのはドナーの方の尊い意思に基づく提供臓器ですので、そこをしっかりと認識された上で安全かつ確実に搬送するというのが大前提だと思っております。
1点、今まで出てこなかった視点で申し上げますと、空路で搬送する場合、陸路に比べて、保安検査など、よりいろいろな人の目に触れるというか、その臓器を運んでいるということが多くの人が知るところになると思うのです。そうなりますと、やはりクーラーボックスに対する一般の方の感じ方というのは、やはり見慣れていないですし、驚いたりとか、こうやって運んでいるんだということを知った時、そのことをSNSで投稿したりとかしないよう、空路での搬送に関しては検査業務に関わる人たちに対する情報管理を徹底したほうがいいと思っております。
そこでネガティブな情報などが出てしまいますと、移植のイメージが悪くなってしまったり、ドナーの特定につながったりすることもゼロではないので、情報管理を徹底していただけたらと思います。

○磯部委員長 少し音が途切れ途切れになっていますが、大体分かったと思いますが、芦刈参考人、何かコメントはありますか。

○臓器移植ネットワーク(芦刈) 非常に重要な点を御指摘いただいたかと思います。こちらの企業、実際に搬送する方の人数は限定をしております。搬送する人数に対しては、私どもがドナーに関する思いや、そういったことをきちんとお伝えした上で搬送する。コーディネーターと同じように、先ほど湯沢先生からもありましたが、きちんとスーツを着てネクタイを締めて搬送するという形を取るように指示をしております。
クーラーボックスについても、一般の方に不快な思いや、これは何だろうというような思いがないように、そのクーラーボックス自体を選定をして、この企業に私どもが購入したものを預けているという状況になります。ですから、一般の方が見られて、違和感がないようにというところは配慮しております。クーラーボックスそのものも、これは通常の摘出の先生方が搬送するときも同じですが、座席を確保して、座席の上にクーラーボックスを乗せるということで、航空会社との間で合意をして搬送しておりますので、安全性には十分に配慮して行っております。ありがとうございます。

○磯部委員長 大分長くなりましたので、集約していきたいのですが、何かこれといった御異議と言いますか、御意見はありますか。大変貴重な御意見を伺えたと思います。摘出施設と移植施設のコミュニケーション、機材、診療報酬の按分、そういったことが今後の課題として残ってくるのだと思います。最後に御指摘があった情報管理と一般の方に対する配慮、そういったことも今後、より御配慮いただけるのだと思います。大体そういうことで、特に御異議はないように思いますので、摘出臓器の搬送の外部委託については、対象臓器を腎臓から他の腹部3臓器に拡充するということをお認めいただくということでよろしいですか。
(了承)

○磯部委員長 ありがとうございます。この件については承認ということで進めさせていただきます。引き続きまして、3つ目の議題、レシピエント選択基準の改正についてです。まず、肝臓移植希望者の選択基準の改正について、事務局から御説明をお願いします。○事務局 資料3-1について説明いたします。これまでの経緯です。肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準において、臓器のあっせんの優先順位は、ABO式血液型、医学的緊急性等により決定することとされております。このうち、医学的緊急性については、StatusⅡについてはMELDスコアの高い順に優先順位が決定されることとされております。
MELDスコアは、腎臓の値のクレアチニン値、肝臓の値のビリルビン値、また肝機能を表すPTINRの検査値から算出されるスコアとなっておりまして、高くなると重症というものとなります。ただし、肝臓移植の待機登録を行う患者のうち、その重症度が検査値から算出されるMELDスコアに反映されにくい疾患を有する患者については、待機登録時にMELD換算値が付与されるとともに、登録後の周期加点を行うこととされております。そのような疾患につきましては、対象疾患としてリスト化されているものです。
これに関し、令和元年12月、日本移植学会から肝臓移植希望者、レシピエント選択基準におけるMELDスコア換算値付与及び周期加点の対象となる疾患の追加の検討に関する要望がありました。
これを受けまして、令和2年11月18日に開催された肝臓移植の基準等に関する作業班にて、肝臓移植希望者、レシピエント選択基準におけるMELDスコア換算値付与及び周期加点の対象となる疾患に、肝肺症候群、門脈肺高血圧、腸管不全関連肝障害、脳死肝移植適応評価委員会で承認された疾患を追加することについて、また、追加することが適当と考えられる場合の加点の方法について、検討されております。
作業班の資料を説明させていただきます。参考資料3を御覧ください。5ページ目を御覧ください。「肝肺症候群」についてです。本邦や他国での報告、また海外、米国や欧州での現在の状況を踏まえまして、オレンジ色の所を議論いただきました。肝肺症候群の定義としては、「シャント率が20%以上、又はPaO2が70mmHg未満」と定義し、この中で、シャント率が30%以上、又はPaO2が60mmHg未満を重症とし、それ以外を軽症とするという定義に基づきまして、軽症については、登録時MELDスコア16点相当とし、登録後6か月ごとに2点の加算とします。重症につきましては、登録時16点、登録後は3か月ごとに2点の加算にします。このように加算の傾斜を付けさせていただいております。また、軽症から重症に移行した場合については、それまでのMELDスコアは継続し、加点を3か月ごとに2点とするとして、加点の加速を傾斜させていただいております。
6ページ目を御覧ください。「門脈肺高血圧」についてです。こちらも他国の報告、海外での状況を踏まえまして、オレンジ色の基準について議論いただいております。門脈肺高血圧症を合併する場合については、治療前に肺動脈血圧35mmHgより高い、又はPVRが400より高く、治療によりmPAPが35mmHg以下又はPVRが400以下になる場合については、周期加点による登録を可能とします。この際、登録時のMELDスコアは16点相当とし、登録後は3か月ごとに右心カテーテル検査を行い、mPAPが35mmHg以下に維持されていることを確認して、2点の加算とするとしております。しかしながら、小児例など右心カテーテルの実施が困難である場合においては、測定精度が保たれる場合は心エコー検査による測定を代用とすることが可能であると追記させていただいております。
7ページ目を御覧ください。「腸管不全関連肝障害」についてです。こちらも今までの疾患同様、オレンジ色の部分を入れております。小腸移植適応委員会において、肝・小腸同時移植の適応と判断された場合、実際には総ビリルビン値6以上となりますが、CHILDスコアが10点未満でも登録可能とし、登録時16点、登録後は6か月ごとに2点の加算とさせていただいております。
8ページ目のスライドを御覧ください。「その他の疾患の取扱い」という所です。こちらが先ほどの資料3-1における脳死肝移植適応評価委員会で承認された疾患に当たります。現在の適応基準の中では、適切な登録病名がない場合や登録病名に悩む場合においては、各移植施設から肝臓学会の中に設置されている脳死肝移植適応評価委員会に評価を依頼し、その評価で登録の可否を決定します。登録が認められますと、現在MELDスコア、客観的な数値での登録となっております。
しかしながら、そのような現在の対象疾患リストに載っていないものであったりする中で、MELDスコアによる重症度評価を行えない疾患が存在する(可能性がある)ことから、「脳死肝移植適応評価委員会で適応ありと評価された疾患」を周期加点の対象にしてはどうかという要望がございました。作業班の検討においては、そのような疾患に関しては登録時16点、登録後は6か月ごとに2点の加算とするというようにされております。
また、参考に下の表を提示しておりますが、その他の疾患として、現在までに登録された疾患と登録理由を記載しております。この中で肝肺症候群、門脈肺高血圧症については、本日御承認いただきますと、リストに載ることになりますので、それ以外の疾患が対象となってくる可能性がございます。事務局からは以上です。

○磯部委員長 肝臓移植のレシピエント選択基準について、MELDスコアになじまない疾患があるということで、登録後の周期加点をするということについて、改正をするという御提案です。議論は全般に関することに加えて、それぞれの疾患が4つあります。まず全体についてコメントはありますでしょうか。よろしいでしょうか。
そうしましたら個別にまいりまして、まず、肝肺症候群につきまして、御意見を頂けますでしょうか。肝肺症候群については、事務局の御提案のとおりに基準を改正するということで、コメントはございますか。1については反対はないということで、進めてよろしいでしょうか。
(異議なし)

○磯部委員長 次に、門脈肺高血圧症はいかがでしょうか。こちらも事務局の御提案で進める方向で御意見が集約できるかと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)

○磯部委員長 腸管不全関連肝障害について、コメントはございますか。これも事務局の提案どおりに進めてよろしいでしょうか。
(異議なし)

○磯部委員長 次に、4番目は疾患名ではございませんが、脳死肝移植適応評価委員会で承認された疾患ということで御説明がございましたが、これについての御意見はございますか。

○賀藤委員 今読ませていただくと、この脳死肝移植適応委員会で認められればいいということなのですが、もう少しどういう基準でこれを認めていくのかというのがはっきりしないと、ある委員会で認められればいいのだということになってしまいそうなところがあるのですが、これについて、何か事務局で把握しているようなことはございますでしょうか。

○事務局 こちらに関しましては、そもそも現在登録できない病名、登録病名に悩む場合、各移植施設から、この委員会に評価を依頼しているところとなっておりまして、ただ、その中でも、この疾患はMELDスコアでは評価できないのではないか、そのような疾患があるのではないかということから、今回のような提案となっているものと考えております。具体的にどのような疾患かというのは、リストの中に記載しているものが現在までに登録されたものとなっておりますが、果たしてそのような。
○賀藤委員 私は肝臓の専門ではないのですが、何を基準にして選ぶと言うか、どういうところを客観的な数字として捉えて、何を基準にしてこの病気だったらいいということを、なかなか私は理解できていないのですが、お教えいただければと思います。何かアバウトのような感じがしていて、申し訳ないです。

○磯部委員長 おっしゃる意味はよく分かります。事務局、いかがですか。

○事務局 先生が御指摘の点に関しては、資料3-1に記載させていただいているとおり、日本肝臓学会、日本移植学会、日本肝移植学会の代表者からなる合同委員会となっておりまして、そのような症例の提示に対しまして、代表された委員の皆様に御評議いただくものと考えております。

○賀藤委員 それだとブラックボックスになってしまいますよね。

○田中室長 具体的にこういうルールでこの疾患については検討するという案を、事務局にはお示しいただいていない状況です。作業班でもそういったもののお示しを頂いておりませんので、申し訳ございませんが、我々として先生から御指摘いただいた、いわゆる客観的な基準というものは、現在の時点では示されていないということです。それに対して、もしかしたらあるのではないかという病気に対して、最低限の適応基準を設けたいという御意向のみを、私どもとしては伺っておりますので、その点、今はお答えすることが困難と。

○賀藤委員 でも、何か客観的な数字が必要かと思うのですが。

○田中室長 御指摘はごもっともだと思います。

○磯部委員長 論点は御理解いただけたかと思うのですが、ほかの委員の方はいかがでしょうか。

○猪股委員 委員の先生方の御発言の趣旨はすごくよく分かるのですが、実は私も委員の1人なのですが、これまで、特にMELD制になってから、それぞれの施設が判断して登録をします。しかし、これまでのルールに該当しない疾患というものが出てきていて、その中の代表的なものが、今日病名として挙げられた肝肺症候群や肺高血圧症ということになっています。
それも今までルールがなかったのですが、基本的には肝臓移植以外では救命ができない、予後も限られるということが、肝移植適応、すなわち登録基準の大前提になっていますが、それで全肝移植適応疾患を全部挙げて、ルールを決めて提示することはなかなか難しいです。
先ほどから出ている適応評価委員会というのは、3つの学会からそれぞれ選ばれた委員が10名以上入って、それぞれ意見を出しあって、集約して結果を出すということになっていて、その結果が、先ほど表に出てきたものになります。
今日、お認めいただいた3つの疾患以外に、まだ非常にファジーなところが残るのですが、そこを完全にルール化して固めてしまうと、なかなか患者あるいは移植施設から出てくる要望を完全にすくい上げて移植の対象としてあげることができなくなるというのが、移植をする立場としての考え方で、今議論いただいている、脳死肝移植適応評価委員会で承認された疾患という範疇が今日の会議の俎上に残ったと、委員の1人として理解しております。歯切れが悪いことで申し訳ないのですが、それが実情であるということは御理解いただければなと思っています。

○磯部委員長 御趣旨はよく分かりました。ほかに御意見はございますか。

○賀藤委員 先生のおっしゃることはよく理解できると思います。ただ、そうしますと、どういう議論があって、どういう根拠があったので肝移植が適当と認められたということの、それ自体がどのように、今は適応基準がほかの3つまではできているのですが、このファジーで当てはまらない病気が確かにあって、それで移植をしたほうがいいというのは確かにあると思うのですが、どういう過程で、どういう基準で、どういうもので決まったのだということを、どのように担保というか、世間にどうやって承知していただくかという過程が大事だと思っているのですが、いかがでしょうか。

○猪股委員 適応かどうかを申請してきている施設には、委員全員の意見を集約した形で、委員長がまとめてお返ししています。そこには、当然、場合によっては却下、適応しないということもあるのですが、それなりの理由を記載してお返ししています。ただ、それが全部公表されているわけではありませんので、そこをもし公表するほうがいいということになれば、それはそれでまた適応評価委員会なり、各学会なりで考えないといけないことになるかもしれません。
ただ、それぞれの基準を出せということになると、基準が出せるのであれば、今日決められたようなほかの疾患と同様に、ある種、非常に決めやすくなる。それができない疾患の範疇を残していただきたいということです。

○賀藤委員 私が危惧しているのは、今、3)の腸管不全関連肝障害までは基準があって、その他の疾患として「脳死肝移植適応委員会という所が承認した疾患」とあるのですが、それはそれなのですが、例えば今日開催されている臓器移植委員会の中では、この1)から3)までの基準はみんな共有していますが、この脳死肝臓移植適応評価委員会で認められた疾患というのは、どのような過程で、どうだったのかというのが、例えばこの臓器移植委員会では、どのように把握できるのか、どのように評価して、どのように「そうだったのだね」というように、臓器移植委員会としてどのように把握するのかなと思ったのですが、そこら辺は事務局はどのようにお考えなのでしょうか。

○田中室長 今までの議論にあるとおりでして、この適応の疾患を決めるに当たっては、予後、海外の状況などをそれぞれの疾患について精査をし、学会からの要望を頂き、作業班で議論し、こちらの委員会で了承を頂くというプロセスを踏んでまいりました。
今、委員会のほうでは、それでは間に合わないと言うか、それで測れない病気があるということではあるのですが、事務局としては透明な議論が行われることというのは、この臓器移植においては非常に重要だと思っておりまして、学会で、グレーでこういう評価ができないものを、グレーなのになぜ出すのかというところには答えていかないといけないだろうと思っています。
なので、今回、この委員会の開催が非常に時間が掛かるので、学会としては早くやってくれというような御要望なのだとすれば、学会からの要望に対して、私どもとしては速やかに作業班や当委員会を開催することで、学会の要望に応えていきたいと考えております。
一方で、この学会からの御要望が、現時点で我々が担保している透明性と同等の透明性が担保できているとは、事務局としては判断をしていないところです。
なので、学会として、私どもが速やかに対応するということで御理解をいただけるのであれば、そこは今までの議論と同様、一つ一つの疾患について議論するということにさせていただければと考えています。

○磯部委員長 難しい議論です。外園委員、お願いします。

○外園委員 肝臓の専門家でない者が見て、クリアに分かるということは必要ではないかと思います。今の非常に切迫したことは私も理解できるのですが、まず、脳死肝移植適応評価委員会というものがどういうものであるかということが、今の御説明で分かりました。
あと、ここに羅列している病態が、イメージは分かるのですが、カテゴライズして第三者に分かるようにしていただくことで、皆さん納得いくのではないかと。その他の原因による肝不全と、その他の肝異常による二次障害というように分かれるかなと、肝臓でない医師として思いましたが、それが妥当かどうかは別としまして、カテゴライズしていただいて、この評価委員会以外の者が納得のいく状況に、クリアにしていただければいいのではないかと思いました。

○磯部委員長 ほかはいかがでしょうか。
ファジーな部分を残さざるを得ないという作業班からの御意見でありますが、ファジーな部分は透明性の観点から、移植医療の健全な国民に対する説明責任ということで果たせないのではないかという御意見ということだと思います。事務局からは、個別の疾患について申請があれば、速やかにそれなりの検討をしていきたいという御説明があったと思います。いかがでしょうか。
議論としては、作業班からの御提案に対して、必ずしも合意が得られていないという状況ではないかと理解しますが、そういう理解でよろしければ、4)の条件については、今後具体的に検討すべき疾患が出てきたときに、同様に、かつ速やかに学会から御要望を頂いて、作業班で速やかに検討していただいて、当委員会で速やかに検討するということで、一旦保留のような形になるかと思いますが、そういう形で猪股委員、いかがでしょうか。

○猪股委員 今現在も、こういう対象になる登録申請が多いわけではないのですが、登録が出てくると全国の委員にメールで送られて、数日以内に結果を出して、移植を希望される施設に報告するという過程を取っています。
ですから、もし今のような御判断になれば、そういうものが出てきたときには、即この委員会を招集していただいて、そこにデータを出して検討するというような仕組作りをしておかないと、かなりそれぞれの患者、特に切迫しているような状況では難しいことになってくると思いますが、そこはいかがでしょうか。

○磯部委員長 事務局から御意見はございますか。

○田中室長 この周期加点自体は、御提案いただいているのは最初は16点で、その後は6か月ごとに2点の加算と。イメージとしては、6か月の2点の加算までにきちんと結論が出て加算ができるようになれば、基本的にはよいのだと思っておりますし、我々としては、もちろんその期間を超えるつもりもないですし、しっかりと速やかに対応したいと。今、コロナの影響もあって、このようなWebでの会議であるとか、Webでの審議などもできるようにはなっていると思いますので、作業班でしっかりとエビデンスを確認していただくことは必要になりますので、1週間でということはお約束はできませんが、適切な期間のうちに、対応させていただく体制は取ってまいります。

○猪股委員 MELD16で登録するところまでは、もしそれが妥当だと委員会で判断したら、それはそれでお許いただけると。加点うんぬんに関しては、その間に考えるという仕組みを考えているということでしょうか。

○田中室長 MELD16も含めて議論かなと思っているのですが、そもそも、この脳死肝移植評価委員会が認めれば、MELDスコアでの登録は可能というように8ページには書いてあるのですが、そこはお間違えはないのでしょうか。

○猪股委員 それは私も理解しておりますが。

○田中室長 MELDスコアでは登録していただくことが可能で、そこに周期加点を追加するかどうかの議論を速やかにしてほしいと認識をしているのですが。

○猪股委員 そういうことですか。脳死肝移植適応評価委員会では、今までは登録をするかしないかも評価しているわけですが、それでは、もしそこで登録をしてもいいということになれば、16で登録はしてもいいという判断ですね。

○田中室長 16点かどうかというのは、少なくとも本日の資料にある、いわゆる換算のMELDスコアで登録していただくことは、今は認められているという認識で、それが16点かどうかというのは実際に計算していただかないといけないと思うのですが、その上で、その病気を周期加点の対象となるのかどうかを速やかに検討するということでは間に合わないということでしょうか。

○猪股委員 登録ができるのなら、それは第1段階としてそれでいいと思うのです。ただ、MELD換算がいつも16点になる患者ではない人を考えるわけですので、それを登録するためには、Childの10点相当の16点で登録するということになるので、そこまで認められれば、その後、加点をどういう周期でするかしないかということは、十分に時間を掛けて検討する余地はあると思います。

○田中室長 その「16点として認める」というのは、今回の議題に出ているという認識はないのですが、基本、MELDスコアで通常どおり計算をしていただいた、それが10点だろうが12点だろうが、まずはそれで登録をしていただく。登録だけです。その上で、速やかに我々のほうで頂いた疾患について検討し、その疾患が対象になれば、その方はスコアは16点相当として、そこから加算していくという認識ですが、要は最初に16点で登録しておかないといけない理由というのが、我々のほうでよく分からないのですが、少なくとも、そこの速やかな検討というのは、短い期間で御対応させていただくことはお約束するということでは不十分という理解でしょうか。

○猪股委員 委員会を代表して言っているようなことになって申し訳ないのですが、総意がそうかどうか分かりませんけれども。16点というのは、これまでのChildの10点、いわゆる脳死登録に適応があった場合にChildの10点が最低限の条件だったのです。それがMELDになって16点ということが、逆にMELD16点に達しない状況であれば、MELDスコア上は登録ができないというように今まで判断されてきていたので、それで登録イコール16点ということになっていたと、みんなそういう理解だったと思うのです。
だから、MELDが10点だということで登録するというのであれば、それはそれでもいいのですが、これは細かい議論になるので、もしかしたらこの場で議論するのは妥当ではないのかもしれません。

○磯部委員長 意見が相半ばするところと、前提が事務局と猪股委員のおっしゃることと、一致していないように思いますので、一旦ここは保留とさせていただいて、4番の疾患については、より議論を事務局と詰めていただいて、再度という形で進めてはいかがでしょうか。かつ、登録後速やかに個別の疾患について検討するということについては、事務局は、そういう形で進めていくということですので、猪股委員、4番についての議論は保留という形で、事務局と作業班でもう一遍詰めていただくという形で、この場は終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。

○猪股委員 はい。私は作業班の立場ではなくて、脳死肝移植適応評価委員会の立場でお話をしています。

○磯部委員長 了解しました。けれども、基本的には作業班と事務局でもう一遍詰めていただくという形にさせていただきたいと思います。

○猪股委員 分かりました。

○賀藤委員 よろしいでしょうか。

○磯部委員長 はい。

○賀藤委員 多分、思いは同じだと思いますので、今、猪股先生がおっしゃっていることは私も理解できると思いますので、一番重要なことは、いかに透明性を担保して適応の疾患を広げていくということは、思いは同じだと思いますので、そこのためにはもう少しお時間を頂いたほうが私もいいと思います。

○磯部委員長 そこは事務局も含めて思いは同じだと思いますが、ファジーな部分を残したくないという御意見も至極真っ当だと思いますので、一旦ここで議論を止めさせていただきたいと思います。
まとめとしては、1番、2番、3番の疾患については、基準の改正をお認めするとして、4番については一旦保留にするという形で議論をまとめたいと思います。御了解をお願いいたします。
(異議なし)
○磯部委員長 ありがとうございました。
続きまして、「肝腎同時移植における腎臓移植希望者の選択基準の改正について」です。事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 資料3-2について御説明いたします。これまでの経緯です。腎臓移植希望者、レシピエント選択基準における前提条件には、C型肝炎ウイルス、HCV抗体陽性の臓器提供者から提供された腎臓は、HCV抗体陽性の移植希望者のみを対象とすることとされております。一方、肝臓移植希望者選択基準におきましては、臓器提供者のHCV抗体の有無は問われておりません。そのため、肝腎同時移植希望者がHCV抗体陰性であり、臓器提供者がHCV抗体陽性の場合、肝臓はあっせんできるのですが、腎臓のあっせんを行うことができないという乖離した状態が起こり得ます。
これに関しまして、令和2年7月、日本移植学会から、肝腎同時移植の際のHCV抗体陽性臓器提供者からHCV抗体陰性臓器移植希望者への場合の腎臓のあっせんについて、腎臓移植希望者選択基準の変更に関する要望がございました。これを受けまして、令和2年11月11日に開催された肝臓移植の基準等に関する作業班、腎臓移植の基準等に関する作業班にて、肝腎同時移植においてHCV抗体陽性臓器提供者からHCV抗体陰性臓器移植希望者への場合に腎臓のあっせんを行うことが適当かについて検討されております。その際の資料は参考資料5になります。
参考資料5を御覧ください。6ページ目を御覧ください。「肝腎同時移植の成績¬-肝胆同時移植との予後比較-」を提示しております。こちらは「UNOS database」と言いまして、アメリカのデータベースの解析になります。1ポツにおいて、肝腎同時移植登録症例の1994年~2011年、肝腎同時を希望されていて実際に同時移植を受けた3,127名と、何らかの理由で肝単独となった422例の術後の成績を比較しております。5年生存率で20%程度の開きが出ており、肝腎同時移植が良好な成績となっております。また、肝単独移植の方も24%の方が、肝移植後に腎移植を実施されたという報告となっております。2ポツ目は、肝腎同時移植症例とCKD(慢性腎障害)を有する肝単独症例の比較の2009年から2015年の症例です。肝腎同時であった2,856例と、肝単独の751例を比較しますと、1年生存率について、同時移植のほうが成績が良好であるということであり、同時移植の適応となるものに関しては同時移植の成績が良好であるという報告となっております。
次のページを御覧ください。「HCV抗体陽性ドナー症例の予後」ということです。こちらは、肝腎同時移植を行った19症例を対象としておりまして、HCV-NATというのは、拡散検査陽性のものであり、ウイルス血症のものと御理解いただければと思います。HCV-NAT陽性ドナー13例からの移植においては、13例全例にC型肝炎の感染を認めましたが、経口内服薬での治療を処方したところ、12例でSVRを達成しております。HCV-NAT陰性ドナー6例からの移植においては、術後、C型肝炎の感染は認めておりません。
また、腎単独移植症例17例においても、HCV-NAT陽性ドナー13例からの移植において、13例でC型肝炎感染を認め、経口内服薬治療を施行したところ、7例でSVRを達成しており、2例は治療終了の時点、2例は治療中であり、SVRの評価が行えていない状況となっております。先ほどと同様に、HCV-NAT陰性ドナー4例からの移植では、術後のC型肝炎の感染の症例は認めておりませんでした。
次のスライドを御覧ください。こちらはHCV-NAT陽性ドナーからHCV抗体陰性レシピエントへの77例の固形臓器移植後の経過をお示ししております。腎臓64例、肝臓6例、心臓7例をお示ししております。下の数字は移植からの月数を表示しております。濃いオレンジ色のバーが治療前の期間、黄色いバーが経口内服薬治療期間中となっており、緑色のバーがSVRを達成しているとなっております。このように、術後にC型肝炎の発症を認めたものに関して経口内服薬治療を行うことで良好な成績が得られており、現在治療の途中経過ですが、術後の経口内服薬治療により、50例がSVRを達成しており、SVRは達成しておりませんが検出感度以下であるものが10例という状況となっております。
このような議論から、合同作業班においては、肝腎同時移植においてHCV抗体陽性臓器提供者からHCV抗体陰性臓器移植希望者の場合に、腎臓のあっせんを行うことが了承されております。事務局からは以上です。

○磯部委員長 御説明があったとおりですが、HCV陽性のドナーから陰性のレシピエントに腎臓をあっせんすることが妥当かどうかということで、データを示して御説明いただきました。肝炎の治療が飛躍的に進歩したということが、この背景にあるとは思いますが、御意見はございますでしょうか。御意見、御懸念、コメントがございましたらと思いますが、よろしいでしょうか。
御発言がございませんので、お認めいただけたと判断したいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)

○磯部委員長 それでは、肝腎同時移植におけるレシピエント選択基準の改正を認めるということで進めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
次は最後の議題、「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議からの提案書」が出ておりまして、これについての議事を進めます。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 資料4について御説明いたします。こちらは「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」から、当臓器移植委員会に対しての「提案書」となっております。この検証会議においては、現在まで、脳死下臓器提供事例全例の検証を行ってきております。
その背景として、脳死下臓器提供事例の第1例目から第4例目までの脳死下臓器提供事例に関して、公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会、現臓器移植委員会の前身の委員会ですが、こちらの委員会で4例の検証作業を行い、「臓器移植法に基づく脳死下臓器提供事例に係る検証に関する最終報告書」として取りまとめられております。その報告書において、「少なくとも臓器移植が一般の医療として国民の間に定着するまでの間、第三者の立場による検証が行われるべき」であるとされたことを受けまして、「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」を開催することとし、現在までに至っております。
現在までに400例を超える脳死下臓器提供事例の全事例の検証を行ってきており、また、臓器移植法施行から約20年、臓器移植法改正から約10年が経過しており、脳死下臓器提供件数も経時的に増加していることからも、臓器移植医療は一般の医療として国民に定着してきているものと考えます。
こうした状況やこれまで102例の脳死下での臓器提供事例のまとめ、150例の脳死下での臓器提供事例の検証のまとめ、200例の脳死下での臓器提供事例の検証のまとめを公表してきたことを踏まえ、今般検症事例数が500例に到達した時点で、500例の脳死下での臓器提供事例の検証のまとめを取りまとめるとともに、検証会議におきまして、今後の検証会議の在り方について提言をまとめることを提案させてください。このような提案書となっております。事務局からは以上です。

○磯部委員長 御趣旨は十分に理解していただけたかと思います。20数年の法の下での脳死下臓器移植の過程で、検証委員会の御苦労というのは関係者一堂感謝しているところですし、適正にこういうことが長年にわたって行われてきたことは、本当に有り難いことだと思っています。これによって臓器移植が発展し、定着してきたといった背景があるのだと思います。それを踏まえて、検証委員会から、現在は440例の検証を終えており、500例まで待って、検証のまとめをして、今後の検証会議の在り方について提言したいという御提案を頂いております。御意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
これは具体的には書いておりませんが、この検証会議を発展的に解消するのかなというニュアンスが感じられますが、そういう形で理解してよろしいのでしょうか。

○田中室長 500例の中で、検証した事例にどのような問題があったのかということを見た上でとは思いますが、もともとの国民の間に定着するまでの間ということが十分に議論されてきたのではないかということが、検証会議から頂いている御意見ですので、委員長がおっしゃったとおり、解消するというのはどの程度に解消になるかは今後しっかりと見極める必要があると思いますが、全例での検証会議での検証を見直すということだと承知しております。

○磯部委員長 この御提案について特別御異議がございませんでしたら、この御提案を進めていただくということで、この会議としてお認めするという形で進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)

○磯部委員長 それでは、提案のとおり検証会議において進めていただくということでまとめさせていただきます。ありがとうございました。
用意した議題は以上で、その他として用意しているものはございません。先生方から何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、マイクを事務局にお戻しします。どうぞよろしくお願いします。

○事務局 本日は御議論いただきまして、ありがとうございました。「肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について」における脳死肝移植適応評価委員会で承認された疾患につきましては、肝臓作業班と協議を続けてまいりたいと思います。事務局においては本日頂いた御意見を踏まえ、引き続き臓器移植に係る環境の整備について取り組んでまいります。本日御議論いただきました内容については、後日議事録を公開させていただきます。また、次回以降の開催については、改めて事務局より御連絡させていただきます。事務局からは以上です。

○磯部委員長 それでは、本日の委員会は終了いたします。御協力ありがとうございます。

照会先

健康局難病対策課移植医療対策推進室

代表:03(5253)1111
内線:2365