令和3年4月8日 第2回 障害児の新たな移行調整の枠組みに向けた実務者会議(議事要旨)

日時

令和3年4月8日(木)
16:30~18:30

場所

オンライン会議(厚生労働省 部長室横会議室)

出席者

構成員
代理出席

議題

  1. (1)「障害児入所施設移行状況に関する調査票」の結果(速報)について
  2. (2)「障害児入所施設の18歳以上(いわゆる過齢児を含む)の移行についての論点整理(案)」について
  • 議事の概要
    1. (1)議題(1)について、資料1の「障害児入所施設移行状況に関する調査票」の結果(速報)を事務局より説明した。
    2. (2)議題(2)について、資料3の構成員(北海道)提出資料を中野構成員から、資料4の構成員(日本知的障害者福祉協会)資料を北川構成員から、資料2の障害児の新たな移行調整の枠組みの構築に向けた論点(案)を事務局から説明した。その後、「都道府県等での新たな移行調整の枠組み」「移行に関する受入先確保・施設整備のあり方」について意見交換を行った。
  • 構成員からの発言の概要
    都道府県等での新たな移行調整の枠組みについて
(1)移行調整の責任主体
  • 入所から退所まで、本人や家族を含めたリービングケアが重要。まずは都道府県・児童相談所が責任を持ち、市町村と連携する形が必要。
  • 地域に移行することを前提とするべき。どうしても移行が難しいケースを全国で調整しなければならない場合があることは理解するが、移行さえできればよいということに繋がりかねない。全国の空いている施設を探すための機能では本末転倒。
  • 要保護児童対策地域協議会と自立支援協議会が連携する仕組みを考える場合に、障害児入所施設に入所する児童のうち、要保護児童対策地域協議会の支援対象にならない児童もいるのではないか。
  • 障害福祉計画・障害児福祉計画に明確に記載することで、市町村は過齢児が地元に戻ってくることを前提に、整備計画を作ることができるのではないか。単に連携の仕組みを作るだけではなく、行政計画に落とし込むことが必要ではないか。
  • 18歳を超えると援護の実施機関が市町村に移るため、過齢児の移行について、都道府県が実施主体となるのは難しいのではないか。市町村が担う場合でも、児童相談所や都道府県が障害児入所施設への入所を決定しているので、市町村に情報提供をしっかりすることが必要。
  • 障害のある方の権利が守られているかを考える必要がある。行政がゆずりあうのではなく、責任を持って障害のある方の大人になる時の権利を守ることが必要。
  • 児童相談所は入所を決定するが、児童虐待の対応に追われていて障害児に関する対応力が非常に弱くなっている。成人施設等への移行を児童相談所が窓口になって調整していくのは難しい。
  • 援護の実施主体を決めること自体が非常に難しい事例が毎年ある。どこが責任を持って調整するのかルールをしっかり決めるべき。
  • 責任の主体は基本的には市町村にすべき。強度行動障害や医療的ケアなど調整に困難を要する場合は、都道府県単位で検討する場を持つようにすることが考えられる。その後の生活を支援していく市町村が調整の責任を担うべき。市町村や相談支援事業所がその地域の情報を把握している。
  • 障害のある子どもとその家族の地域での支援体制整備と結びついていないと、退所後の体制整備は不完全なものになる。地域の体制整備の要となる基幹相談支援が主体となるべき。

(2)関係者の役割分担・連携のあり方、移行調整の枠組みのイメージ
  • 一定の年齢に達した時に家族も含めて移行について状況を共有することは重要。高校生からでは遅く、中学3年生くらいから、ケース会議などで議論を始めることが必要。
  • 保護者と早めに移行について話をすることは、移行を意識することとなり、子どもの将来を考えるうえで重要。
  • 保護者も今まで通っていた学校を18歳になる間際で転校させたくないため、移行のチャンスを逃してしまう場合がある。
  • 最低でも高校入学時から、児童の状態像の把握、予想される地域生活、入所先の把握と実習の実施が必須と考える。実習時の措置停止や送迎に課題があるように思われる。
  • 障害児入所施設に入所している方は4割近い人が社会的養護が必要。養育が困難ということが背景の人はかなりいる。保護者や支援している施設も含めて、早くから連携した会議の開催が必要。成人サービスの給付決定のための認定調査を早めに行うことで、成人への移行がよりしやすくなると考える。
 
移行に関する受入先確保・施設整備のあり方について
  • 児童養護施設に入所する障害児の状況、障害児入所施設の養護性の高い児童の状況を踏まえ、児童養護施設と障害児入所施設を統合してはどうか。
  • 体験利用を積み重ねていくことで本人が移行できることが確認されている。一回措置と契約を切らないと使えず、受け入れ側に負担をかけることになるので改善が必要と考える。
  • 障害児入所施設からの移行先として、日中支援型のグループホームを自法人で整備しようとする場合には、施設整備の国庫補助について優先採択の対象とすることの検討が必要ではないか。
  • 障害児入所施設にソーシャルワーカーを配置した時の加算が創設されたが、本質的には行政の責任で進めるべきこと。地域移行の相談が今の仕組みでは使えないので、運用の改善を行うべき。
  • 保護者による養育に課題があり、要保護児童対策地域協議会が関与しているような方が移行する際に、成年後見人をつけて契約しようとする方法が、市町村には重い負担になる。例えば、措置入所をしている児童には、実務的にやむを得ない措置とすることを推奨するという運用も必要ではないか。
  • 障害児の短期入所は、単独型短期入所も考えられるので、例えば放課後等デイサービスの運営基準を変えて、単独型短期入所の併設を義務づけ、障害児の緊急時の受入先を地域の中で増やしていくような政策誘導も必要ではないか。
  • 都道府県や市町村が主体となって行っていくことである程度は移行が進むと思われる。一方、困難ケースについて対応するため、既存の障害者支援施設に空きができた場合に、その定員を都道府県として、買い上げるという方法も考えられる。一旦過齢児を解消するための緊急措置となるのではないか。
  • 施設整備については、過齢児を受け入れるグループホームを優先採択する方向が良いと考える。
  • 医療的ケアや行動障害の方をグループホームで受け入れることとして、グループホームでの受け入れが難しい行動障害の方については、重度障害者等包括支援を使って一人暮らしを応援する方法がある。
  • 受け入れが難しい方をどう受け入れるかは、受け手側のマンパワーの問題があるのではないか。移行する際に障害児入所施設と受け手側の相談支援事業所を活用し、上手くバトンタッチができるようにしていくと良い。
  • マンパワーのことを考えると、グループホームについては個人単位利用の居宅介護について経過措置をなくして、そこを基盤として地域の総合力で支えることとしてはどうか。その際には、本人がどこで暮らしたいかは、ずっと見て支援してきた障害児入所施設の方が意思決定支援を行い、地域の中にバトンタッチができると良い。
  • 里帰り的に障害児入所施設にショートステイができると良い。
  • 強度行動障害で重度障害者等包括支援を利用している方について、地域の総合力で支えて、その方が生き生き暮らせる場を居所だけでなく、日中の活動も含めて考えて行く必要がある。
  • 18歳に向けて成人サービス等を体験する仕組みは大切。強度行動障害の方の空床利用は現実的には難しいかもしれないが、考えておいてもよいのではないか。
  • 成人サービス等の体験については、場所の問題だけではなく、支援の引き継ぎが難しい。地域移行支援では、そこのコーディネートはするが受け手の支援は見ることができない。例えば、障害児入所施設の職員と一緒に体験をできるような仕組みがあると、職員と泊まることで本人も安心し、支援について受け手側に留意点を伝えられるのではないか。
  • 現時点で、沢山の人が移行できていない現状があり、現実的に障害者支援施設も必要なのではないか。その場合でも、移行先・受け入れ先がない方が入所する場合や、入所先が個室でグループホームのようにユニットになっている場合など、豊かな暮らしの保障ができるような障害者支援施設であることが必要。
  • 障害児入所施設から障害者支援施設に転換する際に児童の数が少数の場合、地域小規模施設だけでなく、グループホームができればよいのではないか。手厚い支援が必要な児童なので、基準で運営ができるような新たな仕組みは必要ではないか。地域に施設が無くなった所、子どもが少なくなった所にも良いのではないか。
  • 里親が障害児を育てている家庭は多い。
  • 障害児入所施設が少なくなってくることが、どれくらい影響するかわからないが、前年度コロナの影響もあり、在宅の障害児のショートステイ先がなかった。
  • 障害者支援施設で、高齢者を中心とした入所が続いていて、若い人が入所する場所ではなくなってきている。18歳、20歳で障害児入所施設を出て、移行先と考えることができるか疑問。グループホームを選択先とするべき。既存の障害者支援施設を本格的に見直す必要があるのではないか。
  • グループホームや入所施設の整備の際には、強度行動障害のある方の受け入れ割合等を明記することなどの工夫が必要ではないか。
  • 施設整備だけでは課題解決にはならないため、市町村における強度行動障害の方への支援に関する人材育成のためのチームなど、ソフトの体制整備もセットで行われるべき。
  • 障害児入所施設を障害者支援施設に転換をすると、ショートステイの利用先が少なくなり、レスパイトの役割が果たせず、入所を余儀なくされる方も増えてしまうことも考えられる。

その他
  • 調整が難しい人は県立施設を中心とした移行調整に取り組んで来た。どんなに障害が重い人でも意思決定支援が大切で、本人の意思をとらえて考えていく必要がある。
  • 入り口では児童相談所が措置と契約で施設を選ぶが、出口は本人の意向を尊重しながら進めて行かなければならない。
  • 障害児入所施設への里帰りとして、移行した先輩の方が戻って来ると、入所している児童には今後どのような生活をするか、一つのイメージを持てることにつながる。児童自身にとって意思決定の支援の強力なツールになると考える。