第1回多様化する労働契約のルールに関する検討会(議事録)

日時

令和3年3月24日(水)10:00~12:00

場所

労働委員会会館612会議室(6階)
(東京都港区芝公園1-5-32)

出席者(五十音順)

(あん)(どう)(むね)(とも) 日本大学経済学部教授

(えび)(すの)(すみ)() 立正大学経済学部教授

(くわ)(むら)()()() 東北大学大学院法学研究科准教授

(さか)(づめ)(ひろ)() 法政大学キャリアデザイン学部教授

(たけ)(うち)(おく)()寿(ひさし) 早稲田大学法学学術院教授

(やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

(1) 無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルール等に関する現状等について
(2) その他

議事


○竹中補佐 定刻となりましたので、ただいまより、第1回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 私は労働基準局労働関係法課の竹中と申します。本検討会の進行について、座長が選出されるまでの間、議事進行を務めさせていただきます。
 まず、本検討会の開催に当たり、本来であれば、委員の皆様を参集しました労働基準局長の吉永から冒頭の御挨拶を申し上げるところでありますけれども、急遽国会対応が発生いたしましたため、吉永に代わりまして大臣官房審議官の小林から御挨拶させていただきたいと思います。
○小林審議官 皆さんおはようございます。審議官の小林でございます。
 委員の皆様方におかれましては、本当に大変お忙しい中、本日御参集いただきましてありがとうございます。
 この検討会でございますけれども、課題は大きく2点ございます。
 1点目は、労働契約法の改正によりまして、平成25年4月から施行されました無期転換ルールについて、施行後8年を経過した場合の見直し検討規定、これがございましたのでこの見直し検討規定に基づきまして施行の状況も踏まえた検討を行うものでございます。これが1点目でございます。
 また、2点目でございますけれども、働き方の多様化の中で、勤務地や職務などが限定されたいわゆる多様な正社員、この多様な正社員につきましては、無期転換ルールによって無期雇用となった社員の受け皿の一つとしても期待されるということでございますので、このいわゆる多様な正社員について、規制改革実施計画に基づきまして雇用ルールの明確化について検討を行う。このようにされているところでございます。
 課題はこの2点ということでございまして、これらの課題につきまして、この検討会で専門的な検討を行っていただいて、その結果を踏まえまして、労政審において多面的な議論を行う必要があると考えております。委員の皆様方におかれましても、大変お忙しい中でございますけれども、ぜひ活発に御議論をいただきますように、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○竹中補佐 続きまして、御出席いただいております委員の皆様を御紹介いたします。
 日本大学経済学部教授の安藤至大様。
 立正大学経済学部教授の戎野淑子様。
 東北大学大学院法学研究科准教授の桑村裕美子様、本日はオンライン参加いただいております。
 法政大学キャリアデザイン学部教授の坂爪洋美様。
 早稲田大学法学学術院教授の竹内(奥野)寿様。
 東京大学大学院法学政治学研究科教授の山川隆一様。
 なお、慶應義塾大学大学院法務研究科教授の両角道代様におかれましては、本日御欠席となっております。
 以上7名でございます。
 続きまして、事務局を御紹介いたします。
 まず、先ほど御挨拶させていただいた大臣官房審議官の小林。
 労働関係法課長の田村です。
 どうぞよろしくお願いします。
 続きまして、本検討会の開催要項について御説明いたします。
 タブレットを御覧いただいている委員の皆様におかれましては、タブレットの中の01の資料1、開催要項を御覧ください。こちらですが、まず1の「趣旨・目的」にありますように、また先ほど審議官のほうからもお話しさせていただきましたが、まず労働契約法の一部を改正する法律附則第3項において、同法施行後8年を経過した場合、つまり令和3年4月において、改正労働契約法第18条の規定に基づく無期転換ルールについて「その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの」とされているところです。
 また、勤務地限定正社員や職務限定正社員などの多様な正社員は無期転換ルールによって無期雇用となった社員の重要な受け皿の一つとして期待されており、規制改革実施計画において、令和2年度中に多様な正社員の雇用ルールの明確化について検討を開始することとされているところです。
 このため、無期転換ルールの見直しと多様な正社員の雇用ルールの明確化などについて検討を行うことを目的として「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を開催させていただきました。
 2の「検討事項」でありますが、無期転換ルールの見直しと多様な正社員の雇用ルールの明確化などについて御検討いただきたいということでございます。
 3の「運営」につきましては、記載のとおりでございます。
 以上でございます。
 まず初めに、本検討会の座長についてお諮りいたします。ただいま説明いたしました開催要項「3.運営」の(4)におきまして、本検討会の座長は参集者の互選により選出し、座長代理は座長が指名するとしておりまして、これに従いまして座長の選出を行いたいと思います。座長の選出につきましては、事前に事務局のほうから各委員に御相談させていただきまして、山川委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○竹中補佐 ありがとうございます。御賛同いただきましたので、山川委員に座長をお願い申し上げます。これ以降の進行は山川座長にお願いいたします。
 まず、御挨拶をいただければと存じますので、よろしくお願いします。
○山川座長 山川でございます。座ったままで失礼します。
 今回の検討は、いずれもテーマが多角的な検討を必要とするものと思われますけれども、この検討会には非常に多数の分野から非常に優れた先生方に御参加をいただきました。大変心強く思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、開催要項3の(4)に基づきまして、この検討会の座長代理を指名させていただきたいと思います。座長代理につきましては、本日は御欠席ですけれども、両角委員にお願いしたいと思います。事前に両角委員には御承諾をいただいております。よろしくお願いいたします。
 それから、カメラ撮りはもうお済みでよろしいですね、ここまでとさせていただきます。
 それでは、議事に入ります前に、この検討会の開催に当たりまして、会議の公開等について、事務局から説明をお願いいたします。
○竹中補佐 そうしましたら、資料2を御覧いただきたいと思います。
 こちらは「検討会の公開の取扱いについて(案)」ということでして、一番下に※がついているかと思いますが、この厚生労働省が定める「審議会等会合の公開に関する指針」における審議会等会合の公開に関する考え方に準拠して公開していきたいというものでございます。
 上のほうに行きますが、検討会は原則公開とするということで、この記載の①~④に該当する場合であって、座長が非公開が妥当であると判断した場合には非公開とするというものでございます。
 以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして御質問・御意見はございますでしょうか。オンライン参加の桑村委員はもし何かございましたら、手を挙げるなり適宜な方法でこの後もお知らせいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、異議ございませんので、会議の公開につきましては、ただいまの説明のように取り扱いたいと思います。
 それでは、本日の議題に入っていきます。まず、無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルール等に関する現状等につきまして、事務局で資料を用意しておりますので、これらの説明をお願いいたします。
○竹中補佐 そうしましたら、タブレットでいきますと03の資料3~5というところから御説明したいと思います。
 まず、資料3でございます。「無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルール等に関する閣議決定等」ということでありまして、この検討会が立ち上がるきっかけとなったようなものでございます。
 まず、無期転換ルール関連ということで、1つ目につきましては要綱でも御紹介した無期転換ルールの見直し検討規定でございます。
 2つ目ですが、無期転換ルールの創設につながった建議でございまして、下線部を御覧いただきますと、その利用可能期間、つまり5年です。満了前の雇止めが懸念された議論の過程を踏まえ、見直し検討規定が置かれるということでございます。ちなみにこの建議の全文につきましては、参考資料1でつけておりますので、必要に応じて後ほど御参照いただければと思います。
 3つ目でありますが、働き方改革推進法の附帯決議ということでございまして、こちらについては主に無期転換しますと、同一労働同一賃金の対象外になるなどの国会審議があったところでございます。そういった関連もあってこの附帯決議ですが、無期転換権を行使した労働者について必要な検討を加えることとされています。
 続いて4つ目、規制改革実施計画でございます。こちらは無期転換ルールの周知に関するものでありまして、下線部でありますが、有期契約が更新されて5年を超える労働者を雇用する企業から当該労働者に通知する方策を含め検討ということで記載がございます。
 次のページを御覧いただきたいと思います。こちらは「多様な正社員の雇用ルール関連」ということでして、2つありますけれども、規制改革実施計画と骨太の方針のそれぞれで雇用ルールの明確化の検討とされています。
 規制改革のほうの下線部ですが「勤務地限定正社員」「職務限定正社員」などを導入する企業に対し、勤務地などの労働条件について労働契約の締結時や変更の際に、個々の労働者と事業者との間で書面による確認が確実に行われるように、以下のような方策について検討ということで、下に四角が3つありますが、労働条件の明示事項、就業規則の記載内容、労働契約の内容の確認という3つの方策が示されているところであります。
 続きまして、次の資料4を御覧いただきたいと思います。こちらは「無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルールに関するこれまでの提言等」ということで、先ほど御覧いただいた資料3の閣議決定などに関連するものも含めて記載しています。
 1の「無期転換ルール関連」の(1)でありますが、先ほど規制改革実施計画の中に無期転換ルールの周知の関連がありましたが、その関係でその答申がございましたので御紹介するものです。この中で無期転換ルールに関して、周知が必ずしも十分ではないということがあるのと、あとは制度を認知して、正社員化を希望しながらも転勤や残業を強制されるような無限定な働き方を憂慮するあまり、その活用が進んでいないとの指摘があるところです。
 次の(2)につきましては、無期転換ルールの創設につながった有期労働契約研究会の報告書の抜粋であります。こちらは説明は割愛させていただきますが、参考資料2で全文をつけていますので適宜御参照いただければと思います。
 続きまして、資料4の3ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは「多様な正社員の雇用ルール関連」ということでして、まず(1)ですが、規制改革実施計画の中で雇用ルールの明確化とあったわけですが、その関連で規制改革の答申がございます。その中で3行目ぐらいから、勤務地限定などを含む多様な働き方のニーズが高まる中で、個々の労働者と使用者の間の文書による労働条件の確認と合意というのが、予見可能性の高い納得ある働き方を担保して、労使間の個別紛争の未然防止の観点からも欠かせないとされているところです。
 この答申に関連しまして(2)でありますが、規制改革推進会議のほうで意見というものを出しておりまして、その中で具体的な提案がなされているところです。この意見については参考資料6のほうで全文をつけておりますので、必要に応じて後ほど参照いただければと思います。
 続いて、下の(3)でありますが、こちらは厚労省のほうで行いました「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会の報告書でございます。これにつきまして、今回の論点の関連部分を抜粋しているところでありますが、こちらも全文は参考資料3のほうでおつけしております。説明は割愛させていただきます。
 続いて5ページ目でありますけれども、ここから下は多様な正社員に限らず、労働者一般に対する労働条件明示などに関する過去の報告書でございます。
 (4)は労働契約法の創設につながった研究会の報告書の抜粋であります。
 続いて、6ページ目でございますが(5)とございまして、こちらについては平成10年の労働基準法改正において労働条件明示等の改正があったわけですが、その改正につながった平成5年の労働基準法研究会の報告でございます。説明は割愛させていただきます。
 次に、資料5のほうを御覧いただきたいと思います。こちらについては、無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルールなどに関して、労働契約法のほぼ全文と、あとは労働基準法の有期契約関係ですとか労働条件明示、就業規則関係を載せているほか、その下位法令や施行通達を載せているものでございます。説明は割愛させていただきます。
 続いて、資料6のほうを御覧いただきたいと思います。タブレットでいきますと、04の資料6というところを御覧いただきたいと思います。こちらの資料6につきましては「無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルールなどに関する現状」ということで、主にデータ関係でございます。
 2ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは目次の最後におつけしている四角囲みのところでありますが、無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルールなどについては、直近の状況を別途調査しておりまして、その調査の結果につきましては、今後、本検討会の資料として提出させていただきたいと思っております。今回、この第1回では、この現状に関して、基本的にはこれまでに行われた調査の範囲内で御紹介させていただきたいと思います。
 では、この資料の4ページ目を御覧いただきたいと思います。まず「雇用を取り巻く環境」に関してでありますが、こちらは上の四角囲みでもございますように、足下の雇用情勢につきましては、有効求人倍率ですとか失業率など、新型コロナの雇用に与える影響というのは、より一層注意する必要があるという状況でございます。
 続いて、5ページ目でございます。他方、中長期的に見ていきますと、人口が減少する中において、その推計におきましては、2020年以降減少していく見込みということで、人手不足の傾向が継続していくだろうということです。こうした状況を踏まえますと、労働市場への幅広い人材の参加促進というのが重要との指摘もあるところでございます。
 続いて、6ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは就業者数の推移ということで、こちらのオレンジのところですが、雇用者の中でも非正規の職員の方が4割近くを占めているという状況でございます。
 続いて、7ページ目以降は「有期契約労働者に関する現状」でございます。
 8ページ目を御覧ください。こちらは役員を除く雇用者における、その正規・非正規の各区分と有期契約労働者の関係でございます。
 続いて、9ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは雇用者に占める有期契約労働者の割合ということでして、2020年では25.4%という状況でございます。
 続いて、10ページ目を御覧ください。こちらは契約期間別の有期契約労働者の割合でして、一番右のほうで赤い吹き出しをつけていますが、1年以下というのが合計で53.3%ということでございます。ちなみに一番上のほうに灰色のところがありますが、こちらは契約期間が分からないという割合で17.5%でございます。
 続いて、11ページ目でございますが、勤続年数別の有期契約労働者の割合でございます。一番右上のところでありますが、5年以上というのが45.7%ということであります。ただ、この勤続年数につきましては、賃金構造基本統計調査を基にしているのですけれども、その中で定年後の再雇用の場合については、それ以前の勤続年数を通算しているという点を御留意いただければと思います。この点については後ほど資料にも追記しまして、ホームページにはアップし直したいと思っています。
 続きまして、12ページ目でありますが、産業別の有期契約労働者・無期契約労働者割合でありまして、一番上が全産業で25.5%とあります。産業別では教育、学習支援業、あとはサービス業といったところで35%以上を占めているというのが見てとれます。
 続いて、13ページ目です。有期契約労働者の方の、まず上のほうが年齢階級別・性別のデータであります。男性が2020年で593万人に対して、女性は836万人程度ということがあるのと、あと、男性で言いますと、55歳以上というところが52%程度を占めているということでして、女性のほうの55歳以上の割合よりは多い状況であります。ちなみにこの男性のところで見ますと、2018年のデータも合わせてつけさせていただきましたが、2018年の55歳以上の割合と比べて、少し55歳以上の割合が増えているというところであります。続いて、下の世帯の状況別ということでして、男性は世帯主が55.5%を占めているのに対して、女性は世帯主の配偶者56.6%ということでございます。
 続いて、14ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは有期の方を雇用している理由ということでありまして、一番上、一番多いのは「定年退職者の再雇用のため」ということでございます。ちなみにこの検討会の関連でいきますと、上から6つ目のところで「正社員として採用できるか、能力や適性を見極めるため」というのもございます。
 続いて、15ページを御覧いただきたいと思います。こちら有期の方が現在の働き方を選択した理由ということで、一番多いのが、その労働条件などが希望に合致したからということであります。ちなみに上から3つ目のところで「正社員や無期雇用としての働き口が見つからなかったから」というのが16.7%でございます。
 続いて、16ページ目であります。個人の方に今後の働き方の希望を有期の方に対して聞いているものであります。このオレンジのところが正社員で働きたいという方でありまして、若いほどその割合が高いというのが見てとれるところです。
 続いて、17ページ目でありますが、正社員としての働き方の限定を選べるとしたら、どのような限定を希望するかということで、労働時間、勤務地、仕事の限定というのが3割超を占めているところであります。
 続いて、18ページ目を御覧ください。こちらが個人の方に対して現在の勤務先や仕事に対する満足度や不満の理由を聞いているものですが、この左側の黒い枠の部分が不満のところで、合計が15.4%ということでありまして、その理由については右のほうです。一番多いのは、労働条件関連のところが上から3つぐらい並んでいるところですが、上から7つ目、少し見づらくて恐縮ですが「いつ解雇・雇止めされるかわからない」というのがあるほか、その2つ下ですけれども「正社員や無期雇用になれない」というものや、例えば下から6つ目のところの「契約の更新回数や勤続年数に上限がある」というのが並んでいるところであります。
 続いて、次のページからは「無期転換ルール等に関する現状」ということでありまして、20ページ目を御覧いただきたいと思います。まず、こちらが労働契約法の概要ということでありまして、上の四角囲みでもございますが、労働契約に関する基本的な民事ルールを定めているものでございます。このうち、右のほうで有期労働契約の継続・終了というくくりがありまして、この中の赤枠の部分が無期転換ルールということでございます。
 次のページを御覧いただきたいと思いますが、次は「無期転換ルールの概要」ということでありまして、中ほどの図を見ていただきたいと思いますが、ここの例では平成25年4月に開始しまして、契約期間が1年の場合ということであります。1年ずつ更新しまして30年の4月に更新しましたら、その後の1年間の中で無期転換の申し込みをしますと、31年4月から無期転換するということであります。下のほうの青字の部分を御覧いただきたいと思いますが、無期労働契約の労働条件については、別段の定めがない限りは、直前の有期労働契約と同一となるということで、別段の定めをすることによって、変更が可能であるということでございます。
 続いて、22ページ目を御覧いただきたいと思いますが、次は「雇止め法理」の概要でございます。こちらは過去の最高裁判例によって確立された雇止めについての判例上のルールを労働契約法の19条に条文化されたものということでございます。一番下のほうの矢印の先ですが、無期転換申込権発生前の雇止めについても「雇止め法理」に照らして、司法で有効性が判断されるものでございます。
 続いて、23ページ目でございますが、ここからはデータ関係ということでございます。今日御紹介する実態調査については、主に2つということですが、どちらもJILPTのデータでございます。表のところですが、①は調査時点としては2016年10月でありまして、企業に対する調査であります。右側の②でありますが、2018年の11月時点でありまして、企業と、その企業で働く有期契約労働者などに対して聞いているものであります。なお、この2つの調査について、その概要は参考資料の4と5でつけておりますので、後ほど必要に応じて参照いただければと思います。
 続いて、24ページ目でありますが、企業の対応の状況ということで、無期転換できる機会の整備状況でございます。ここで上の※でも記載させていただいているのですけれども、ここでの無期転換といいますのは、法定の18条の無期転換に限らず、各社独自の無期転換についても含んでいるということで、御承知おきいただければと思います。
 この左側のグラフがフルタイムに関してですが、まず通算契約期間のみを要件とする無期転換の機会があるというのが43.8%ということでして、あとは黒枠の中ですけれども、通算契約期間という機会だけではなくて、ほかの内容でも無期転換できるですとか、通算契約期間のみを要件とするものではないけれども、ほかの内容で無期転換できるという企業もございます。ほかの内容というのはどういったものかというのが、その下のほうの表でありまして、その他の要件ということでありますが、例えば真ん中くらいです。一定以上の人事評価などを要件としているところがございます。
 続いて、25ページ目でありますが、無期転換できる機会を設けている理由を企業に対して聞いたものです。一番多いのがコンプライアンスということですが、2つ目のところに「優秀な人材が入れば、確保したいから」ということがございます。
 続いて、26ページ目を御覧ください。こちらは無期転換ルールの認知度に関してでございます。左側が企業の認知度ということで、無期転換に関して、その内容について知っていることがあるかということで、これは全有効回答企業の中では63.8%ということであります。右側が労働者の認知度ということでありまして、内容について知っていることがあるというのが35.5%ということでございます。なお、下のほうで情報入手ルートを記載していますが、一番多い情報入手ルートとしては、勤務先というのが挙げられているところです。
 続いて、このデータに関連しまして27ページ目を御覧ください。こちらが企業とそこで働く労働者の無期転換ルールの認知度の関係ということでございます。一番上が、企業のほうが無期転換ルールについて具体的に知っている場合で、そこで働いている有期契約労働者の場合は、無期転換ルールについて具体的に知っているというのが41.1%であるのに対して、一番下ですけれども、無期転換ルールについて何も知らないという企業で働いている有期契約労働者の場合は、無期転換ルールを知っているというのが3%ということでございます。
 続いて、28ページ目でありますが、こちらは企業のほうで無期転換できる機会を例えば就業規則で規定しているだとか、もしくは無期転換できる機会の内容を説明している、もしくはその要件を満たした方に案内しているというものの割合ですが、およそ5割から6割ぐらいが対応しているところであります。
 続いて、これに関連しまして29ページ目でありますが、無期転換申込権の状態に関する認識でありまして、個人のほうに聞いています。企業のほうで無期転換できる機会について就業規則で規定しているだとか、個別に案内しているだとか、そういった場合における個人の方の申込権の認識で、分からないという回答が低くなっているというのが見てとれます。ちなみにこの図の中で、一番上の緑色の吹き出しのところを御覧いただきたいと思いますけれども、別の見方で見ますと、無期転換申込権が発生したと回答した有期契約労働者を分母としますと、「既に申し込んだ」という割合が17.3%ということでございます。
 続いて、30ページ目を御覧いただきたいと思います。企業のほうで無期転換ルールにどう対応しているかというものでありますが、まず円グラフの青い部分、フルタイムのほうで見ますと、下のほうの四角囲みでありますが、何らかの形で無期契約に切り替えるというのが62.9%であるということです。これに対して赤色の部分ですけれども、通算5年を超えないように運用しているというのが8.5%ということであります。
 これに関連しまして、31ページ目でありますが、通算5年を超えないように運用している理由ということで、一番多いのが「従来からそうした契約管理を行ってきたから」ということですが、ほかに雇用調整余地を残しておきたいからというものが28%であるほか、5つ目のところで「無期転換後の処遇を決定するのが困難だから」という理由もございます。
 続いて、32ページ目を御覧ください。これに関連しまして、通算5年を超えないように運用していく方法を聞いたところ、一番多いのが、更新回数上限や通算勤続年数等で制限しているということでございます。
 続いて、33ページ目を御覧ください。次がクーリングの実施状況ということでありまして、クーリングを行っているというのが6.2%ということでございます。ちなみに右下のほうでクーリング後の再雇用とありますけれども、これを約束しているというのが14.5%ということでございます。
 続いて、34ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらが契約更新上限の設定状況でございまして、フルタイムのほうで申し上げますと、回数ですとか通算の勤続年数の上限を設けている企業等というのが一番上に太字でありますが11.9%、その中でも通算の勤続年数で上限を設けている企業等ということで限ると6.9%であります。この年数で上限を区切っているというところの年数の内訳でありますけれども、円グラフの下にありますが、5年以内というのが97.1%を占めているということであります。
 続いて、35ページ目を御覧ください。こちらが無期転換ルールの施行から2018年3月末までということで、有期契約労働者について何らかの形で無期転換できる機会を設けている企業等について、無期転換した人がいたかどうかということで聞いたところ26.8%で無期転換者がいたということでして、その無期転換後の形態が右側でございますが、まず正社員になったということで、それがフルタイムですと27.2%、パートタイムですと1.6%であります。
 その下に限定正社員とありますけれども、この調査の中での定義は右下のほうでございますが、何らかの限定がある正社員ということで、働き方が変化して賃金等が改善しているようなケースですが、フルタイムですと8.1%、パートタイムですと0.3%であります。
 その下、無期転換社員Aといいますのが、これは働き方も労働条件も変化しないという方でして、フルタイムですと47.7%、パートタイムですと95.6%ということです。
 ちなみにその下の無期転換社員Bというのが、働き方について負荷が増えている一方で、労働条件は変化していないというような方です。これも一定いらっしゃるということであります。
 続いて、36ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは「採用されてから無期転換されるまでの期間の見通し」であります。ここでの無期転換というのは各社独自のものも含んでいるわけですが、フルタイムのほうで御覧いただきますと、もちろん法定のものもありますので、5年超6年以内というところが多いのに加えまして、1年以内というところも一定のボリュームがあるということでございます。
 続いて、37ページ目を御覧いただきたいと思いますが、こちらは個人のほうに対して、無期転換ルールに基づいて無期転換するという希望を聞いているものでありまして「希望する」というのが26.6%ということで、その希望する理由が右側にありますが、一番多いのは「雇用不安が無くなるから」ということであります。それに対して赤色の「希望しない」というところでありますが、33.1%ということで、希望しない理由は右側のほうですが、定年後の再雇用者だからというのが一番多いところと、あとは一番下のほうでも負荷が高まりそうだからというところもございます。
 続いて、38ページ目を御覧ください。こちらは「無期転換ルールの有効性に対する見解」というのを個人のほうに聞いていまして。何らか有効であるとされている方が4割弱いらっしゃるのに対して、有効ではないと考えていらっしゃる方が13.5%いらっしゃるということで、有効ではないと思う理由が右側でありますが、上のほうから、正社員になれるわけではないからですとか、あとは雇止めが増えるおそれがある、会社側に希望を言い出しにくい、更新等の上限設定などの抜け道があるなどなどがございます。
 続きまして、39ページ目を御覧いただきたいと思います。「無期転換後の心境の変化」というのを個人に聞きまして、一番上のところですが、雇用不安が減って定着を考えるようになったというのが5割超いらっしゃるところであります。
 続いて、40ページ目でありますが、企業のほうに対して「無期転換ルールに対応する上での課題」というのを聞きますと、一番上でありますが、有期の方、あとは無期転換後の方、正社員の方の間のバランスとか納得感というのが26.3%とございます。
 続いて、41ページ目を御覧いただきたいと思いますが、こちらはデータの基が変わりまして、厚生労働省の令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況というものを基にしていますが、これは※でもありますけれども、無期転換ルール関連に限らず雇止め全般ということでありますして、そういったものの相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数でございます。無期転換ルールの施行が平成25年4月だったわけですが、その5年目に当たる平成29年度の実績の中に、無期転換関係というものも入っているだろうということであります。
 続いて、42ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらのページから数枚にかけてあるのが、過去の裁判例ですとか労働局への相談事例などを基に作成しました無期転換前に雇止めが行われるケースなどの具体例ということでございます。この※でもありますけれども、個別の雇止めですとか、就業規則の変更などが認められるか否かというのは最終的には司法判断になるということであります。
 ①のところから順次行きますと、無期転換申込権が発生する直前に合理的な理由もなく雇止められるケース。
 ②でありますが、申込権の発生前に新たに一方的に不更新条項を設定するようなケース。
 続いて、43ページ目でありますけれども、③5年の更新上限を設けた上で不合理な要件ですとか、厳しい試験などを課すようなケース。
 ④でありますが、再雇用を約束した上で雇止めをしてクーリング期間経過後に再雇用するケース。
 44ページ目でありますが、⑤申込権が生じる前に派遣だとか請負を偽装するようなケース。
 ⑥無期転換後の労働条件について、例えば従前、有期のときよりも大幅に低下させるようなことなどをして、無期転換の申し込みを抑制するようなケース。
 ⑦無期転換の申し込みを拒否するようなケース。
 続いて、45ページ目でありますけれども、⑧無期転換申込権の事前放棄を強要するようなケース。
 ⑨でありますが、細切れの定年を設定するようなケース。下のほうの表でもありますが、例えば無期転換の申し込みをした年齢が65歳とかであれば、定年の年齢が68歳になるだとか、そういったケースであります。
 続いて、46ページ目でございますが、⑩当初の契約締結時から更新上限を設定するようなケースでございます。
 ここまでが通常の無期転換ルール関連であります。
 次に、47ページ目を御覧いただきたいと思いますが、ここから2ページにわたって無期転換ルールの特例に当たります専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法ということでございます。有期特措法などということがございますが、この主な内容としましては、この四角囲みの1の「特例の対象者」のところを御覧いただきますと、Ⅰのところは高度専門的知識などを有する有期の方、Ⅱとして定年後に有期規約で継続雇用される高齢者の方々ということで対象者となっておりまして、そういった方々に2のほうにありますけれども、適切な雇用管理を実施していて、労働局のほうに認定申請を行って認定されれば、下のほうの図の、ここでは定年後のケースでありますけれども、5年を超えたとしても無期転換申込権は発生しないというものであります。
 続いて、48ページ目を御覧いただきたいと思いますが、今見ていただいた有期特措法の認定件数などでありまして、一番右の赤い部分でありますけれども、これは累計の数字ということでありますが、令和元年度で約6万6000件ということでございます。
 続いて、49ページ目でありますが、こちらは無期転換ルールの周知啓発等についてまとめたものでございます。説明は割愛させていただきます。
 次のページからは「多様な正社員の雇用ルール等に関する現状」でございます。
 51ページ目を御覧いただきたいと思いますが、こちらは「多様な正社員の活用状況」ということでして、多様な正社員区分がある企業は、全ての企業の中では28.6%ということであるのに対して、1,000人以上の企業であれば、それが65.5%ということでございます。続いて、その下の限定内容のところで見ますと、職種だとか職務、職域というところが比較的限定内容としては多いところであります。
 続いて、52ページ目を御覧いただきたいと思いますが、こちらは多様な正社員区分がある企業における多様な正社員の人数割合ということでありまして、50.4%が1割未満ということでございます。
 続いて、53ページ目でありますが「多様な正社員を導入する理由」ということで、一番多いのは労働力の確保に対する危機感が高まっているからということでありまして、上から4つ目の辺り、非正社員からの転換を促すという理由も見てとれます。
 続いて、54ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは多様な正社員について、申請する上での課題だとか、導入が難しい理由でございますが、青い棒グラフについては導入する意向がない企業ということで見ますと、一番多いのは一番上の労務管理が煩雑になるということでありまして、2つ目に多いのが区分間のバランスの取り方が難しいということでございます。
 続いて、55ページ目を御覧いただきたいと思いますが「正社員と多様な正社員の間の移行制度の有無」ということで、黒い枠の中でありますけれども、その制度、または慣行があるというのが大体4割弱あるわけですが、このうち右側のグラフでありますけれども、相互に移行可能であるというのが75.2%ということでございます。
 続いて、56ページ目を御覧いただきたいと思いますが、事業所が閉鎖したなど、そういうものに直面した場合に、多様な正社員についてどう対応する方針かということで見てみますと、無限定正社員と全く同じ雇用維持努力を行うというのが49.2%ということでございます。
 続いて、57ページ目を御覧いただきたいと思いますが、こちらが多様な正社員に関するこれまでの検討の経緯でございます。一番下のほうでありますが、規制改革ですとか骨太の方針というのは先ほど見ていただいたものの抜粋であります。こういったものを受けまして、その右側のところですけれども、多様化する労働契約のルールに関する検討会、この検討会がございます。この検討会の前に、少し上のところでありますけれども、多様な正社員の普及拡大のための有識者懇談会というものがございました。
 この懇談会の詳細については次の58ページ目でございます。この懇談会の概要ですとか報告書のポイントをまとめているものでございます。
 次の59ページ目でありますけれども、この懇談会の報告などを踏まえた対応を並べているものであります。この中の2つ目のところで雇用管理上の留意事項の周知ということでありますが、その中の主な留意事項等の内容というものの1つ目のところです。この規制改革実施計画の中でも検討すべきとされている労働者に対する限定内容の明示などについても留意事項としてまとめた上で通達を発出していたりだとか、パンフレット、モデル就業規則などによって、周知をしてきているところであります。
 続いて、60ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは雇用ルールの明確化に関しまして、現行制度の概要であります。まず、就業規則のことをまとめたものが60ページ目であります。
 続いて、61ページ目のほうで労働条件の明示を入れてございます。上のほうの四角囲みの中の1つ目の○でありますが、労働基準法では、労働契約の締結に際して労働条件について明示をしなければならないとされているところです。この労働基準法の15条に関して、下の表でありますけれども、今回の閣議決定事項に関連しますと、明示事項の中で③とありまして、就業の場所ですとか、従事すべき業務に関する事項というのがあります。これの現行の取扱いというのが※2のところで、右のほうの点線囲みでありますけれども、解釈例規(通達)において、雇い入れ直後の就業の場所ですとか従事すべき業務を明示すれば足りるとしているところであります。
 続いて、62ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは「多様な社員」の規定例ということで、就業規則でどういう規定する例があるかというのを並べたものであります。
 続いて、63ページ目を御覧いただきますと、こちらは多様な正社員、限定正社員の労働条件通知書の例ということでございます。
 続いて、64ページ目を御覧いただきますと、この多様な正社員の限定性に関してどういう状況であるかということで、下のほうの全体計のところで御覧いただきますと、青い部分ですが、これは就業規則でも限定性を規定していて、かつ書面による本人明示も行っているというのが36.2%であります。薄いオレンジの部分でありますけれども、就業規則でも規定しておらず、書面による本人明示も行っていないというのが29.3%でございます。
 続いて、65ページ目を御覧いただきますと、この多様な正社員制度の普及促進に関する取組を書いてございます。
 その関連もありまして、66ページ目でありますが、キャリアアップ助成金についてもつけさせていただいたところであります。
 資料6は以上でございます。
 続いて資料7を御覧いただきたいのですが、タブレットでいきますと、05番の資料を御覧いただきたいと思います。こちらは関係する主な裁判例ということで、主には各論点を議論する際に使用するものかとは思いますが、どういったものを並べているかということだけ御紹介しますと、無期転換ルールに関しましては、まだ施行して間もないということでもありまして、判決が確定したものについて、ここで上げさせていただいているものであります。続いて、下のほうの多様な正社員の関係でありますが、代表的な裁判例ですとか、あとはできるだけ新しいものということで、かつ何らかの論点を含んでいるようなもの、あとは職務だとか勤務地、勤務時間など、各限定に関するようなものを並べているものであります。
 資料7としては以上でありまして、私からの説明は、一旦ここまでとさせていただきたいと思います。
○山川座長 ありがとうございました。
 政策提言、法制度、それから、各種制度運用状況、政策的な取組等、詳細な御説明をいただきました。これらにつきまして御質問・御意見がありましたら、お願いいたします。この検討会での論点につきましては、資料10で改めて説明いただく予定ですけれども、この段階で、例えばこういう具体的な論点があるのではないかという資料10に関わるようなことでも御発言いただいて差し支えないと思います。どうぞ御自由に御発言をいただきたいと思います。何かございますでしょうか。
 桑村委員、よろしくお願いします。
○桑村委員 桑村でございます。本日はそちらに伺うことができず申し訳ございません。
 私は資料6の35ページについて少しお伺いしたいと思います。こちらでは無期転換した後の労働者の労働条件について現状がどうなっているのかというデータを示していただきましたが、私の関心があるのが無期転換後の労働者についての就業規則の適用関係です。契約社員と正社員で就業規則が分かれていることも多いと思いますが、無期転換した労働者について、企業がどのように就業規則を適用しているのでしょうか。正社員就業規則は、無期契約労働者についての規定だということで、従来の正社員の就業規則を適用しているのか、あるいは無期転換後の労働者について特別な就業規則を作成しているのか。さらにそういうものは一切なくて、就業規則がない状態で個別の契約で労働条件を定めているという関係になるのか。そのあたりのデータは現状ではないという理解でよろしいですか。
○竹中補佐 御質問ありがとうございます。
 現状、御指摘のようなデータについてはないかと思います。ちなみに今御指摘いただいたことに関連しまして、無期転換に関するQ&Aというものを厚労省のホームページで載せているわけですけれども、その中で言いますと、特に別段の定めをするような場合については、適用する就業規則にその旨を規定する必要があると記載をしているところであります。まず、これからヒアリングなどを行っていく中で、そういったところについても聞いていくことができればと考えているところであります。
○山川座長 桑村委員、いかがでしょうか。
○桑村委員 無期転換しない理由として、労働条件が不明確であるとか、抽象的に負担が増えるのではないかという考えを持っている労働者がいると思いますので、就業規則を作成しているのかどうかについて、企業の対応として現状が分かるデータがあれば、よりよいかなと考えたところです。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点は多分、労働条件の設定の点と周知の点、双方に関わる重要な点だと思いますのでヒアリング、あるいはその他の方法で現状等が分かるように、何らかの対応をしていただければと思います。
 ほかは何かございますでしょうか。
 では、竹内委員、どうぞ。
○竹内(奥野)委員 私からは、資料6で御説明いただいたデータに関して、確認という形かと思いますけれども、質問させていただければと思いまして、できれば3つ聞ければと思っております。
 1つ目は、データないし説明の仕方の確認ですけれども、資料6の29ページのところで、無期転換申込権の状態にかかる認識のデータの御紹介をいただいたところでございます。
緑の枠の話で、n=無期転換申込権が発生した有期労働契約者とすると、既に申し込んだ人は17.3%であると、実際に権利を行使した人についての状況についての御説明があったと思います。その前提としての質問ですけれども、灰色の「分からない」の44.1%の中には無期転換申込権が発生しているけれども、本人が認識していないという状況が当然入っているかなと思います。そうすると、緑で囲っているような形で説明をするのは、やや誤解を招きかねない。要するにほかにも無期転換権があるのだけれども、分からないから多分行使していないという可能性もあって、そういう意味でこの数字の出し方はこれでいいのかなということを確認させていただければというのが1点でございます。
 まとめて質問したほうがいいですか。
○山川座長 お願いします。
○竹内(奥野)委員 その次の質問は、これは同じく資料の33ページ等に主として関連するもので、クーリングを行っている中で、再雇用を約束しているというのが、そのほかに比べれば数字は少ないわけですけれどもありまして、そういうことに関する紛争事例も、そのしばらく後で御紹介いただいたわけです。約束しているとかというのは調査の時期も関係しているかもしれませんけれども、実際に、上限のあとクーリング期間をおいて雇ったという現実例がどれぐらいあるかとか、そのようなことに関して、もしデータなり、知見があれば教えていただければというのが2点目でございます。
 3点目は、いわゆる多様な正社員のほうに飛びます。資料で申しますと64ページ目の御説明いただいた内容に関しての質問なのですけれども、このn=就業規則で規定していない企業で、就業規則で規定していないとか、本人明示も含めて両方とも行っていないということなのですけれども、このデータの理解の仕方に関して質問があります。これは多様な正社員区分がある、要するにそういう制度がある企業を念頭に置いた調査かと思いますけれども、この、就業規則で規定していない、特に就業規則で規定していないし本人明示もしてない事例というのは、単純に聞くと労働条件明示の違反の問題が生じているとも思うのですけれども、これはそもそも現実にはそういう人たちがいないから対応していないという可能性が含まれているのかどうか、そこがもし分かれば教えていただければと思います。
 ちなみに最後の質問をしたところについては、先ほど桑村委員が無期転換後の労働条件に関して御関心があるというお話でしたけれども、今の私の最後の質問も、これは要するに、そのような人たちがいないから労働条件に関していろいろ定めるとか、整備するということをしていなくて、そうすると、翻って労働者から転換後に見たらどうなるのか分からないという不安が出てくると考えられ、無期転換の話であれ、この多様な正社員の話であれ、移ったらどうなるかということについて不明瞭であるということは意向を躊躇させかねないという点で、多分、労使双方にとっての課題の一つではないかなと思います。
 以上です。
○山川座長 それでは、事務局からお願いします。
○竹中補佐 御質問ありがとうございます。
 29ページ目の件でまず御質問をいただきまして、御指摘はまさにおっしゃるとおりでございます。こういった灰色のところの中で、まさに申込権がもしかしたら発生している方も含んでいるということでもありますので、そういったところも留意すべきということで、その点を先ほど御案内すべきだったところ、大変申し訳ございません。
 2点目の33ページ目の件でございますけれども、実際にクーリング後の再雇用を約束した実績があったかどうかというデータの関係があるかという点では、今思いつくものはございませんが、またありましたら御案内したいと思います。
 3点目の64ページ目のところでございますが、条件明示などの関係で、言わば就業規則でも規定していないと、本人明示も行っていないということで、まず本人明示の関係で申し上げますと、資料の中では61ページ目を少し御参照いただければと思いますが、1番上の四角囲みの中でも労働契約の締結のタイミングであると、先ほど御案内した点線囲みの※2のところでありますが、雇い入れ直後の場所ですとか、業務を明示すれば足りるとされていますので、言わば当面のものを示せばいいということが今のルールでございます。限定性という意味では、それは将来にわたる明示ということになろうかと思いますので、そうしますと、限定性のあることを本人に明示を行っていない、書面で示していないということをもって何か違反であるということは、現行の取扱いとしてはないかと思います。これで回答になっておりますでしょうか。
○山川座長 よろしいですか。
 それでは、戎野委員お願いします。
○戎野委員 御説明いただきましてありがとうございます。
 55、56ページのところの多様な正社員に関する現状なのですけれども、今後、検討を進めていく上で、現状をしっかり把握していくことは大事だと思っています。その中で、制度があるということと、制度が活用されている、運用されているということは、必ずしも一致しているばかりではないと思いまして、移行制度が実際にどの程度運用されているのかという実態が分かれば教えていただきたい。
 また、56ページについても、多様な正社員について正社員と全く同じ雇用維持努力を行うという考えがおよそ半数という結果ですが、実際にそうだったのか、実現できているのかということです。ここでは分からないかもしれませんけれども、何かそのような実態について、制度運用の状況が分かれば教えていただきたいと思います。
○竹中補佐 御質問ありがとうございます。
 2点ございましたが、今御質問いただいた1点目は、制度としてあるというのが、この55ページ目では17.8%ということでありますが、今の御質問はその制度があって、かつどの程度それを活用されているかといった御質問ということでしょうか。そういう意味では活用されている状況ということで言いますと、これも確認になってしまいますが、51、52ページ目のところが、言わばそういったものになるわけですが、この中では、御質問の趣旨としては、制度でこういった活用をされているのか、それとも運用で活用されているのかというのが、この51、52ページ目では分からないので、その辺の区別がつくかという趣旨でしょうか。そういった意味では、現状そういった区分けのものは思い浮かばないところでありますが、またございましたらお示ししたいと思います。
 2点目の56ページ目の、実際に正社員と全く同じ雇用維持努力を行って、実際そうだったかどうかという点についても、今時点で思いつくものがございませんので、こちらももしありましたらお示ししたいと思います。
○山川座長 よろしいでしょうか。
 何らかのデータ、あるいはヒアリングでの対応も考えられますけれども、よろしくお願いいたします。
 個人的な印象ですが、相互に移行可能が75.2%というのは想定したよりかなり多いのですが、どの程度活用されているかは、確かに興味があるところかと思います。慣行があるということは、多分活用されていなければ慣行はできないので、慣行のほうは、例はあるのだろうなと想像できますけれども、ちょっと実態は検討する必要があろうかと思います。
 安藤委員、お願いします。
○安藤委員 資料6についてなのですが、まず全体に関わる重要かなと思う論点からお話しさせていただきます。
 14ページ目の正社員の定義は、無期、直接、フルタイムとなっています。これは法律上、正社員という言葉が明確に定義されていないと理解しておりますが、講学上といいますが、専門家が議論するときにはこの3要素をもって正社員とすることが一般的です。しかし、35ページ目にある正社員の定義にはフルタイムは入っておりません。無期と直接だけです。そして、我々が日常生活でも使う用語として「短時間正社員」などという用語も多用されているわけです。
 ここで、例えば正社員から短時間正社員になって、例えば子育ての時期に短時間正社員となって、また正社員に戻ったというのが、これは多様な正社員というか、以前から別の雇用形態に切り替わって戻ったと認識されるのか、それとも、正社員の中で変わっているのであって、これは雇用形態の変化と捉えられていないのか、こういう点で企業などの認識にも違いがあると思います。また、労働者にとってもアンケート調査、聞き取り、ヒアリング等で同じものを認識しているのかというところに問題が発生し得ると思っています。
 また、そもそも働き方についての呼称が人や企業によって違うということでは、例えば労働者が今の会社とほかの会社を比較する上で、または就職活動を行っている際に、複数の雇用主の仕事を比較して、どちらが自分にとって魅力的なのか、このような比較をするときに結構難しい問題に直面するのかなと感じております。A社の正社員とB社の限定正社員、どちらが雇用保障が強いのかであったりとか、こういうものが比較可能になることが、そもそも必要なのではないかと全体を通じて感じております。
 細かい点にいきますと、資料6の16ページ目ですが、やはり正社員という働き方について、どのような働き方かを明確にしないと、なかなかこういうデータを理解するのが難しいのかとも思っています。例えば既に一度正社員として働いたことがあって、その後に有期雇用などとなって働いている人に「正社員になりたいですか?」と尋ねた場合には、正社員というのはどういう働き方なのかある程度は知っているわけです。
 例えば非正規の場合と比較して、雇用保障は強いけれども、その他、別の面で負荷があるであるとか、そういうネガティブな面も知っている。これに対して一度も正社員として働いた経験がない人に「正社員になりたいですか?」と聞いたときには、実はその正社員が負っている責任であったりとか、様々な負荷を認知せずに、安定している、賃金が高い、こういうことを認識して「正社員になりたい」と答えている可能性もあります。というわけで、正社員というものをどう認識しているのかによって回答の意味が変わってくるということには注意が必要だと思っています。
 21ページ目のところで、無期転換のお話がございますが、ここで個人的には「ただ無期」とよく言われている、現状の労働条件をそのまま維持したままで、ただ無期雇用に変わるというのではなく、そういう選択肢を設定せず、この21ページ目の下に「別段の定めをすることにより変更可能」としている、この別段の定めをしている場合、労務管理上の理由でただ無期を許さない、これはアンケートの回答でそう答えるのが多いわけですが、しかし、実際としては、できれば選んでほしくないということで、ハードルを課していることもあり得ると思っています。ただ無期というものが労務管理上難しいというような回答について、実態を、それは表向きの理由としてそう言っているのか、本当にそういう、ただ無期というものが難しい実態があるのか、このあたりは認識する必要がある、調査する必要があると思っています。
 22ページ目で雇止め法理の議論が紹介されています。この雇止め法理の①②、どちらについても過去に反復更新された有期労働契約で対象となるという話、または期待権の話、これは両方ありますが、この無期転換ルールが導入された後の5年間で無期転換権が発生しますよということを知っているという状況の下での、過去に反復更新されて、無期労働契約の解雇と社会通念上同視できるかどうかという点、また期待権の面、このあたり、もしかしたら無期転換ルールが導入されたことによって、労働者の認識が変わっているのではないかということで、この裁判の結果がそのまま適用されるものなのか、それとも何か状況が変わっているのかということが知りたいと思いました。
 あと、3点ございます。
 51ページ目に多様な正社員の話がございます。ここで多様な正社員区分がある企業と企業に聞いていますが、果たしてどのくらい多様な正社員ということを認識した上で回答しているのかに疑問を持ちました。
 今、ここのフロアとオーディエンスとしていらっしゃっている中で、自分が多様な正社員であると認識している人がどのくらいいるのか、いらっしゃいますかね?
私は多様な正社員です。だって先生方もみんな職務を限定されているではないですか。配置転換をされないということで、いきなり事務職員になってください、駐車場の警備をしてくださいと言われないわけです。勤務地も職種を限定されているということで、例えば私自身でいったら日本大学に雇われてから最初は大学院の専属として雇われて、そこから経済学部に配置転換をされている。しかし、元の職場が維持されていたら多分配置転換はされていない。
 だから職務を限定しているけれども、その仕事がなくなることになったら、会社の中で雇用保障があるのかないのか、このあたりも含めて、実は大学の教員であったり新聞記者さん、職務を限定されているというのが一般的な理解だと思います。こういう点で多くの人が他人のことだと認識しているものの中に、自分は実は多様な正社員だというものがあり得るのではないかとも思っています。なので、この回答というのが、もしかしたら少な目に出ているのかなという気もしています。
 55ページ目、正社員と多様な正社員の間で移行可能という話について、山川座長が先ほど「数字が多いよね」と、お話しされていましたが、これについてもどういう異動だったら可能なのかというのは区分けしてやる必要があると思っています。正社員として一度会社に採用された場合、入社のセレクションを通っている場合には、一度限定正社員に、それこそ子育て時期などの一定時期になったとしても、また正社員に戻るというのは、例えば短時間正社員になったのが正社員に戻る、これは多くの企業で可能かなと思います。しかし、限定正社員として採用された人が何の条件も付与されずに正社員になれるかというと、やはり求められている能力面の水準に違いがあるなどの理由で試験や面接などがある可能性もあります。というわけで、これ全部をまとめて扱うというよりは、どういう形で入職したのかによって、この異動の可能性であったり容易さには違いがあると思っております。
 最後、戎野先生からあったポイントですが、56ページ目に、正社員と全く同じ雇用維持努力を行うという点の御指摘がございましたが、例えば正社員のほうの仕事には全く手をつける必要がない状況で、限定正社員の人の雇用を守るのかといったときに、例えば職種を限定しているのだけれども、その仕事がなくなった、では、別の仕事に就いてもらうということを提案しますか、それとも限定正社員なのだから契約した仕事がなくなったらそこでおしまいと割り切るのか、このあたりの話というのは理解できる話です。
 では、限定していない正社員と限定正社員、今の用語で言ったら多様な正社員、この両方が全体として雇用を維持できなくなったときに、では、同じ基準で雇用保障するのですかというのが多分問題になるわけです。おそらく劣後するのではないかという気もするわけで、このあたり、この円グラフで示されているものでは分からない。この正社員と多様な正社員の間でのどういう関係にあるのかというところをさらに明らかにする必要があると考えております。
 以上です。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございました。
 今後の検討すべき論点の指摘と若干御質問の点も入っていたかと思いますけれども、例えばアンケートのときの正社員がどう定義されているかですとか、あとは判例で無期転換制度が導入された以降の合理的期待に係る判例の対応はどうかとか、幾つか御質問の点もあったと思いますので、この点、事務局から何かございますか。
○竹中補佐 御質問と御意見、ありがとうございます。
 御質問いただいたことに関連しまして、正社員の定義に関しましては、それぞれのアンケートで異なることから、正社員という言葉を使っているものについては、それぞれのページでは付記させていただきましたが、おっしゃるとおり何か統一した正社員の定義というものが現状あるところではございません。
 そういった意味では、正社員については、例えば短時間労働者とか有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行についてという施行通達がありますけれども、そういったところの中で、正規型の労働者というものについては労働契約の期間の定めがないことを前提として、社会通念に従ってその労働者の雇用形態だとか賃金体系などを総合的に勘案して判断されることとされているということであります。そういったものはありますが、決まっているということはないのだろうなとは思います。
 あと、51ページ目の多様な正社員の関係でありますけれども、どれくらい多様な正社員ということで認識した上で回答しているかということで、本質的な御回答ということではないのですが、調査票の中においては、まず質問の中で正社員の定義というのを直接雇用で、かつ無期労働契約で、会社の中で正社員だとか正規の職員として処遇されているという方だと定義した上で、その中で区分として、ここで記載しているような職務・職種などで限定されている区分があるかだとか、そういったことで聞いた結果として51ページというのがございます。
 あと、順不同で恐縮でありますけれども、22ページ目のところを御覧いただきたいと思いますが雇止め法理の関係でございました。無期転換制度の導入によって、労働契約法の19条に関して、労働者の認識が変わっているかという点につきましては、現状新しい裁判例が出てきていまして、雇止め法理の枠内で無期転換に言及するようなものが出てきているというところであります。裁判中のものも幾つかありますので、今後の状況を見ていくということになるかと思います。
 とりあえず、私のほうから以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 最初の正社員と多様な正社員の定義といいますか、その問題もかなり重要なことであろうと思います。おそらくデータの読み方面で重要なのと、各当事者のビヘービアにどういう影響を与えるかという問題の2つがあり、後者のほうは特に政策的にどう対応するかにも関わる問題であろうかと思います。
 それから、判例についての御質問は、まだ合理的期待との関係について、明確に取り扱ったものはそれほど出ていないと思うのですけれども、私のほうで見ました資料7の2ページ目に概要が書いてありますけれども、合理的期待への影響等の関係では例えば資料7の2ページ目の2番目にあります地方独立行政法人山口県立病院機構事件などでは、5年という上限を就業規則の改正により設定した場合に、既に生じていた契約更新の合理的期待を失わせるとは言えないとしており、このあたりの判例は法制度の改正に関わって就業規則がなされた場合の影響に関わるものかもしれないです。詳細はまだ見ておりませんけれども、幾つかは出てきているのかなと思います。特に上限設定の意味に関してです。
 あとは、ほかに何かございますか。
 坂爪委員、お願いします。
○坂爪委員 御説明ありがとうございました。
 1点質問と1点意見という形で発言させていただきます。
 冒頭のほうで幾つか雇止め周知等の検討事項が出てきた中で、同一労働同一賃金の対象から外れるということについてどうなのかということがあったかと思いますが、その点について、これまでの調査のところで何かデータがもしあるようでしたら、教えていただきたいというのが一つです。
 2点目です。多様な正社員の活用ということに関して、この研究会で基本的には、有期雇用者の無期転換後の働き方として多様な正社員を捉えています。一方で、企業の中では、正社員の人材マネジメントとして多様な正社員を入れていくという動きがあります。どちらの視点から多様な正社員を捉えるか、そこの視点が異なることで見えるものと問題点の捉え方が異なってくるのだろう、そこを整理していかないといけないのではないかという意味で、今後調査等をされるときには、その点は留意するということが大事ではないかなと考えました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 最初の御質問の点はいかがでしょうか。
○竹中補佐 御質問ありがとうございます。
 同一労働同一賃金だとか処遇の関係でありますと、資料6の中で言いますと、それに近しいものとしましては35ページ目ということで、無期転換後の形態としてどうなっているかということでございます。そういった資料としてより詳細なものとしては、今日お付けしている参考資料4のほうで言いますと、それの9ページ目のところで、それのより詳細なものがあるところであります。少し古いものになりますけれども、参考資料5のほうを御覧いただきますと、6ページ目のところで、これはある種労働契約法の旧20条の関連ということでデータとしてあるものです。こういったあたりであったり、ここでは掲載されていないわけですけれども、この2つのJILPTのデータの中で、実は関連するようなものもありますので、今後、直近の状況を調べて今度お示しする中では、関連するものは御紹介していきたいと思います。
 以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 確かに無期転換してしまうと有期ではなくなるから、パート有期法の8条、9条等の対象ではなくなるという点。これも検討すべき論点の中でも議論されるのかなと思います。パートであり続けた場合には、パートとして規定の適用が残るとは思いますけれども。それから、おっしゃられた第2の点もこの検討会のタスクに関わる点で、多様な正社員と無期転換ルールの2つを取り上げていて、無期転換をすると、勤務地、労働時間、職務などが限定されたままで一応無期転換となるのが原則だという点が、ある種2つの接点になるかと思いますが、問題関心としては規制改革会議の提言にもありますように、無期転換絡みでない多様な正社員についても検討会としては取り上げるということかなと思いますが、事務局はそういう理解でよろしいですか。
○竹中補佐 その認識で相違ございません。
○山川座長 ということで、広めに検討していただいて結構だと思います。
 なお、データが必ずしも十分でないと思いますが、今の点の前提になるのは、パートは当然なのですけれども、現在の有期契約労働者は労働条件が限定されているという前提で2つの円が重なる状態ができてくるわけですけれども、つまり無期転換すると、ある種多様な正社員になるというのは、もともと有期契約の場合には勤務地等が限定されているということを前提にしていて、本制度の立案のときもそういう発想でいたのですけれども、有期契約の場合に勤務地、職種が限定されているということが直接出てきているデータというのはあったでしょうか。何となくそれを前提にいろいろなことが議論されているような感じはあるのですけれども、パートの場合は労働時間が限定されていることは明らかですが。
○竹中補佐 御質問ありがとうございます。
 無期転換後に限定されているかどうかというところは、今後お示しする直近の状況の調査の結果の中でお示ししていければと思っています。
○山川座長 お願いします。
 多分、資料6の35ページなどは、無期転換後の形態について、各種分類してありますけれども、もともと有期の場合は何らかの意味で限定されていたことが前提になった上での質問かな、あるいは回答のつくり方のためかなという感じはしていますが、いずれにしても、このあたりもできれば検討していただければと思うところであります。
 私の質問まで含めてしまいましたけれども、ほかに何か追加的に御質問・御意見があればお願いいたします。
 安藤委員、お願いします。
○安藤委員 今、山川座長からあったお話というのは、とても大事だと私も思っておりまして、正社員かどうかというのは、普通は無期、直接、フルタイムという条件で言っていて、その無期、直接、フルタイムを全部満たしている正社員の中で限定正社員と無限定正社員という議論がこれまであったと思っています。
 正社員の中で、勤務地、そして職種、そして労働時間、残業の有無であったり、このあたりの要素について全く限定がないと、もちろん本人の意向は聞かれるでしょうけれども、基本的には企業側が決定権を持つというような、いわゆる日本型のバリバリ型の正社員みたいなものです。これと、それ以外というような扱いをこれまでしてきて、一つでも限定されていたら、職種が限定されていたら、勤務地が限定されていたら、または残業の有無であったり、残業可能な時間に上限を設ける等の制約を設けていたとすると、それを限定正社員などと呼んできたのがこれまでかと思いますが、座長がおっしゃるとおり、非正規の人の中でも、場合によっては例えば契約社員と呼ばれるようなフルタイムで直接雇用、しかし、有期雇用です、こういうのをよく契約社員と言っていますが、契約社員の中でも場合によっては職種を変えるであったり、もしかしたら勤務地を変わってもらう契約もないわけではないかもしれないです。
 というわけで、このあたり、正社員に特有の無限定な働き方というのが、もしかしたら非正規の中にも一部あるのかもしれないなということで、このあたりの重なり具合を正確に理解する必要があるのかなと思ったのが1点です。
 もう一点は、この限定の有無ということについてです。例えば事業所が1か所しかない会社の場合、中小企業の場合には、そもそも契約により限定しなくても勤務地は1か所となっているので、限定なしの人であったとしても、一々契約の中に転勤の可能性があります、ありませんとか書かないと思うのです。このようなことで無限定とか限定といったときに、そもそも潜在的にどういう配置転換であったり、いろいろな働き方の変更の可能性があって、それに限定を加えるのか、加えないのか、またはそもそもないのかということをデータを見るときにもきちんと見ていかないと、実態が分からないのかなと感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 竹内委員、お願いします。
○竹内(奥野)委員 あとで議題になるであろう検討会で議論すべき事項にも関わる話になってしまうかもしれませんけれども、今の安藤委員の御発言を伺って思ったのは、この検討会としてはここまで説明されてきたところからすると、無期転換が一つ論点としてあって、もう一つは、いわゆる多様な正社員についての労働条件ないし雇用管理のあり方に関して、何か政策的な対応ができないかということかと思いますけれども、いわゆる多様な正社員というものは、別段法的には定義があるわけではなくて、実態なりおそらく法学的な議論ではない観点で認識されて議論されているというところがあろうかと思います。
 そのような中で先ほどの安藤委員の話を聞いていて思ったのは、いわゆる正社員、フルの正社員と呼ばれている人でも、例えば1事業所しかない場合の例を出されましたけれども、そのような人はある意味考えてみれば限定があると言えなくはないわけです。
 あと、これは通常フルの正社員として考えられている人についての認識とはややそぐはないかもしれませんけれども、残業だって本当に1日24時間全部働かせられるわけではなくて、そもそも法的には限界がありますし、そもそも労使協定とかで、法の枠内でも更に限定を設けるということもあって、それを限定と言い得る余地があるのではないかというようなこともあり、そのような意味では多様な正社員として、何かそれ以外の労働者ときちんと区分ができる人たちがいて、その人たちだけを念頭に置いてこの検討会で検討するということがよいのか、という思いがいたします。
 あるいは、現実的な政策対応の案としてはそのような人たちをもちろん念頭に置いて考えるわけですけれども、議論の中で、例えばおそらく安藤委員の御発言、それがいいとか悪いとかいうことを申し上げるのではないですけれども、説明の前提としては、いわゆる正社員というのは無限定であるという働き方だということを前提にお話をしているのだと思うのですけれども、そのように、そもそもフルの正社員は無限定であるという認識を前提として議論をする、あるいはそれを肯定するような形で議論をしていくということがいいのか、とも思います。
 端的に言いますと、いわゆるフルの正社員みたいなものについても、少なくとも政策的なメッセージを含むことを込みで、多様な正社員についての労働条件とか処遇とかについての政策的な課題検討というものをしてくべきではないかと、更に端的に言いますと、いわゆる普通のフルの正社員についても何らかの形で念頭に置いて検討会をしていくべきではないかなと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 これは前の厚労省の検討会のときでも、こうした議論があったような記憶があります。いわゆる正社員について、運用上、例えば非常に家庭の事情が大変だから彼・彼女についてはしばらく配慮をしてあげるとか、そういう運用がなされていることがままあるのではないかと思いまして、こういうことをどう考えるかという点も関わってくるように思います。おそらくは主たる検討対象としては設定されていないのですけれども、表現があまりよくないかもしれませんが、多様な正社員を検討する際に、返す刀でいわゆる正社員をどう考えるかというのも議論の対象にはなり得るのかなと思っておりますけれども、このあたりも検討すべき論点に関わります。
 田村課長、お願いします。
○田村課長 いろいろ御意見をいただきましてありがとうございます。
 補足的に資料の中で少し御紹介したい部分がありますけれども、資料6の8ページ目を御覧いただければと思います。先ほど来正社員の定義等について御意見等をいただいておりますが、統計上は呼称で回答していただいているようなケースが多くなっているわけですけれども、例えばこの8ページ目の労働力調査の中で、正規の職員・従業員という呼称で答えていらっしゃる方の中にも有期の方もいらっしゃると、逆に言えば有期だけれどもおそらく正規の職員と同じように働いていると認識をされている方もいらっしゃると、このデータ上も273万人ということで、それなりのボリュームもあるということで、多様な形態があるということを念頭に置いて議論していく必要があると思います。
 もう一つ、同様に見ていただきたいデータが、52ページです。多様な正社員の人数割合を記載しておりますけれども、この中で全員が多様な正社員と回答している企業も9.9%あるということで、自分の会社は全て職種が明確になっている、職種が限定されていると認識されている会社もあるということで、先ほど来、安藤委員、竹内委員からも御指摘あったように、正社員というのは何を指しているのかとか、あるいは限定というときに、どういう場合に限定で、逆に無限定というのはどういうものなのかということも十分に念頭に置きながら、資料の方もできる限り明らかになるようにしていきたいと思いますし、皆様方にも御議論いただければと思っております。
○山川座長 ありがとうございました。
 課長のおっしゃられたとおり、そもそも法制度でかちっと決まっているわけでもない概念ですので、逆に検討のときには広めにいろいろ視野に入れた上でということになろうかと思います。
 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、次に、本検討会の今後の進め方についての御議論が予定されていますが、既にもうかなり御意見をいただいております。資料が用意されていますので、事務局から説明をお願いいたします。
○竹中補佐 そうしましたら、資料の8から10まで御説明したいと思います。
 まず、資料8のほうを御覧ください。タブレットでは06でございます。
 こちらは「検討会のスケジュール(案)」ということでして、第1回は現状等ということで今日でありますが、第2回ではヒアリング等をしてはどうかと、第3回以降で、先ほど少しお話ししましたが、直近の状況というのは別途調査しておりまして、そういった結果などもお示ししつつ、その後、各論点について御議論いただくようなことで、秋以降をめどで報告書取りまとめということができればと考えています。
 続いて、資料9のほうを御覧いただきたいと思います。今ほど申し上げました次の会でヒアリングをするということですと、ヒアリングの対象者としては、企業の人事担当者を2社程度、労働組合は2団体程度ということで考えています。主なヒアリング項目としては、団体の概要ですとか、各論点に関する事項、あとは制度面で改善を求める事項ですとか、そういったことで考えています。留意事項としましては、ヒアリングは対象者からの説明をいただいた上で適宜質疑をする形でしてはどうかということと、(2)としては非公開で行うことが必要ではないかと考えているところであります。
 続いて、資料の10のほうを御覧いただきたいと思いますが「検討会で議論していただく論点(案)」ということでして、先ほど御覧いただいた資料3の閣議決定などですとか、過去の指摘などを踏まえて事務局のほうでまとめております。
 まず1の「無期転換ルール関係」ということで(1)でありますが「無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保」ということで、規制改革実施計画関係であります。
 (2)の「無期転換前の雇止め」については、先ほど御覧いただいた建議の記載なども踏まえたところであります。
 (3)は5年などの通算契約期間ですとか、原則6か月のクーリング期間ということを挙げています。
 (4)については無期転換後の労働条件ということで、関連する記載が附帯決議でもあったところです。
 (5)は無期転換ルールの特例ということで、有期特措法の活用状況でございます。
 (6)で「その他」です。
 2の「多様な正社員関係」ですと(1)で「雇用ルールの明確化」ということで、規制改革ですとか骨太の関係であります。
 (2)は「その他」ということで、必要に応じて適宜論点を追加と考えております。
 資料の説明は以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 まず、資料8にありますとおり、次回第2回ではヒアリングを行うということで、資料9のような形で進めることを予定しております。このヒアリングにつきましては、率直な意見交換という性格が損なわれる可能性もあるために非公開にしたい。先ほどの要綱、あるいは資料2のところで説明いただいたとおりですけれども、それに従って、ヒアリングについては非公開ということでよろしいでしょうか。
(委員首肯)
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、今後の検討に関しては資料10に簡単に論点が記載されております。この点について議論を既にある程度いただいていますけれども、何か足りないところ等がありましたら御意見をお願いいたします。正社員とか多様な正社員とは何かというのは、特に後者の2に関わりますけれども、1にも関わる問題として正社員、あるいは多様な正社員とは何か、ということが前提となる論点として議論の対象におそらくなるだろうと思いますけれども、ほかに何か追加すべき点、あるいは御質問等はありますでしょうか。
 竹内委員、お願いします。
○竹内(奥野)委員 何度も恐縮です。先ほど既に資料6の質疑の中で幾つか関連するものを申し上げさせていただきましたけれども、資料6の26ページとかで、無期転換申込権に関して、労働者側の制度の理解ないし認識というのが、私はこの数字を見ると非常に低いのではないかなという印象を持っておりまして、そういう意味では、資料10で言いますと1の(1)に関わる論点だと思いますけれども、無期転換申込権とか、それにまつわる制度について、労働者に認知されるようにするための施策について検討することは、先ほど申し上げた無期転換後の労働条件に関わる整備とか、多様な正社員関係のところと加えて私は重要な論点ではないかなと思っております。それは現状の私の感覚ということで申し上げさしていただきます。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 おそらくこの機会の確保の中には周知等の政策的な取組も論点として含まれていくのではないかと私も思っております。
 ほかに何かございますか。
 安藤委員、お願いします。
○安藤委員 今、竹内委員からあったお話も私はとても重要だと思っておりまして、この資料10の1の無期転換ルール関係の(1)である無期転換を希望する労働者というところが、分母としてどういう人が該当するのがとても大事だと思っています。例えば学生のアルバイト、主婦のパートなどの中では、先ほどの無期転換を希望する理由としてあった雇用が安定するということは特段気にせずに、例えば学生だったら自分が大学生の間は雇用が継続してほしいけれども、その後のことは知らない。別に無期転換など考えてもいないという人も当然いるでしょうし、生活費の一部を補助的にするためにパートアルバイトをしていて、その職場で働き続けるとも限らない、友人・知人に誘われたら別のところに行っても全然構わないという人は、そもそも無期転換ということに興味がないのかもしれない。こういう人と同じ仕事をできれば続けていきたい、無期転換のチャンスがあったらそれを得たいと思っている人が認識している、していないというところは分けて、分母として考えて、そのうちどのくらいの人が認識しているのかというところの把握が大事かと思いました。
 同じく1の(4)の無期転換後の労働条件というところですが、これは実態として無期転換後にどういう労働条件で働いているのかという話と、法制度上どういうことが求められているのかという2点で重要だと感じております。
 先ほど坂爪委員のほうから、同一労働賃金との関係のお話がございましたが、私の理解では、同一労働同一賃金という今走っている制度、また、この4月から中小企業についても適用されますが、これは正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の処遇の均等・均衡についてのものであって、正社員の中での均等・均衡については一切触れていないと認識しております。
 ということは、非正規雇用の労働者と正規雇用の労働者の間では均等・均衡は取られていたとして、無期転換した後の多様な正社員が、仮に正規雇用労働者よりも労働条件に劣っている部分があったとしても、同一同一では拾うことができない。そうすると、無期転換することによって、特段の定めをしたことによって労働条件が下がるということも許容されるのか、されるとしたらどの程度までなのか、これは実務上どういうことが行われているのかという話と、法制度上どこまで何が可能なのかというところを分けて理解する必要があると思ったので、発言させていただきました。
○山川座長 ありがとうございます。
 この資料10はかなり大きく、基本的な論点ということで書いてありますので、今、安藤委員がおっしゃられたようなことも、例えば(4)に入ると思いますし、(1)も周知ということを考えますと、選択の機会を与えるという点では、希望するかしないかをそもそも考えるという意味での情報提供というような点も含めて、母集団としては広がり得るのかなと私は個人的には思っているところであります。ということで、これらを詳細化すると、今まで各委員のおっしゃられたような論点も議論の対象として入ってくると思います。
 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
 では、資料10そのものは、一応基本的な論点としては、このようなことを取り扱うということで御了解いただければと思います。
 それでは、資料8から10の方向で、今後先生方の御指摘も踏まえて進行させていただきたいと考えております。
 おおむね時間もまいりましたが、特に先生方のほうで何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。まだ5分近くありますけれども、少し早いのですが、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
 次回の日程について、事務局からお願いします。
○竹中補佐 次回の日程につきましては調整中でございます。確定次第、開催場所と合わせて追って御連絡いたします。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、これで第1回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を終了いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、またウェブでも御参加いただきましてありがとうございました。それでは、終了いたします。お疲れさまでした。

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