2021年3月16日 第167回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和3年3月16日(火) 18:00~20:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
 荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、平野委員、藤村委員、水島委員、両角委員
労働者代表委員
 川野委員、櫻田委員、津村委員、仁平委員、八野委員、世永委員
使用者代表委員
 池田委員、早乙女委員、佐久間委員、佐々委員、佐藤委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
事務局
 吉永労働基準局長、小林審議官(労働条件政策、賃金担当)、石垣総務課長、黒澤労働条件政策課長、尾田監督課長、大塚賃金課長

議題

  1. (1)情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改定について(報告事項)
  2. (2)資金移動業者の口座への賃金支払について
  3. (3)2019年度評価及び2020年度中間評価について

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第167回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の労働条件分科会も、会場からの御参加とオンラインの御参加、双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員として労働者代表の北野眞一委員、森口勲委員と承っております。なお、使用者代表の山内一生委員におかれましては、所用のため途中からの出席と伺っております。
最初に、事務局より定足数の報告と、本日の議事運営について説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
定足数について御報告いたします。
労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
また、本日の議事運営につきましても、新型コロナウイルス感染防止の観点から、会場備付けの消毒液の御利用、マスクの御着用などに御配慮いただきますようお願い申し上げます。
以上でございます。
○荒木分科会長 カメラ撮りはここまでということでお願いします。
本日の議題に入ります。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題(1)は「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改定について」ということで、これは報告事項であります。
では、事務局より、説明をお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
お手元に資料No.1-1と資料No.1-2の2つを御用意いただきたいと存じます。
資料No.1-1に「経緯」と書かれてございますけれども、テレワークにつきましては、特に新型コロナウイルス感染症の感染拡大などを背景といたしまして広がりを見せております。そういった中で、良質な形でテレワークが定着されるようにということで、昨年8~12月にかけまして、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」におきまして議論を行いました。なお、この検討会においては、当分科会の公益委員でもいらっしゃいます川田先生に、学識者のお一人として御参加を頂戴したところでございます。
そうした議論を踏まえまして、このたび、テレワークガイドラインの改定をしたいと考えておりまして、御報告させていただくものでございます。
なお、テレワークガイドラインの現行のものは参考資料No.3として添付させていただいておりますが、3年ほど前に策定されているものでございます。
資料No.1-1の一番後ろの6ページを御覧いただきますと、右側に現行のガイドラインの目次として1~4がございます。現行のガイドラインにつきましては、2番目の労働基準法などの解釈が中心になってございましたが、今回の改定におきましては、左側にございますように、1~11ということで項目を増やしてございます。その観点といたしましては、今般、従来テレワークに取り組んでいらっしゃらなかった企業におかれても取り組まれるということを想定いたしまして、例えば項目の3番にありますような対象業務や対象者をどうするかといった導入に際しての留意点、あるいは4番におけますような人事評価や費用負担といった、テレワークを行う前提としての労務管理上の取扱いに関しましても幅広くガイドラインの中に盛り込みたい、そのようなことで今回改定を行うものでございます。
なお、テレワークに関しましては、全体といたしましては、雇用環境・均等分科会のほうで担当をされておりまして、本日、御報告するガイドライン案につきましては、去る3月4日に雇用環境・均等分科会のほうに報告がなされております。
また、安全衛生に関する内容も含まれておりますので、安全衛生分科会に対しても報告がなされております。
この労働条件分科会におきましては、目次でいいますと5番目、ルールの策定と周知、6番目、労働時間制度、7番目、労働時間管理が中心ということではございますが、せっかく御報告の機会を頂戴しておりますので、全体を効率的に御説明申し上げさせていただきたいと存じます。
資料1-1の2ページ目を御覧いただきたいと思います。まず、2ページ目から主な概要につきまして、ポイントを申し上げていきます。まず、「テレワーク導入に際しての留意点」でございますが、1つ目の○にございますように、テレワークの推進が労使双方にとってプラスなものとなるよう、働き方改革の推進の観点にも配意して行うことが有益であるといったことが書かれておりまして、その下、「テレワークの対象業務」にございますが、管理職側の意識を変えることや、業務遂行方法の見直しを検討することが望ましいといったことを示しております。
その次、「テレワークの対象者等」につきましては、1つ目の○にございますように、正規雇用労働者、非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由として、テレワーク対象者から除外することのないよう留意する必要があるといったことを書いてございます。
その下、「導入に当たっての望ましい取組」といたしましては、押印、署名の廃止やペーパーレス化、職場内の意識改革をはじめ、業務の進め方の見直しも期待されるといったことを記載してございます。
続きまして、3ページでございますが、「労務管理上の留意点」でございます。
まず、1つ目として「テレワークにおける人事評価制度」でございます。1つ目の○にございますように、人事評価につきましては、企業がその手法を工夫して、適切に実施することが基本であるということ。
その上で、2つ目の○にございますように、人事評価の評価者に対しても、訓練等の機会を設ける等の工夫が考えられるといったことを記載してございます。
その下、「テレワークに要する費用負担の取扱い」でございますが、1つ目の○、テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくないといったことを掲げてございます。
その下、「人材育成」の2つ目の○にございますように、労働者に対して必要な研修などを行うこと。3つ目の○にございますように、管理職のマネジメント能力向上に取り組むこと。そのようなことを記載してございます。
続きまして「テレワークのルールの策定と周知」からが特に当分科会と関連が深い部分でございますので、こちらに関しては、資料No.1-2の5ページをお開きいただきたいと存じます。資料No.1-1は概要でございますが、これから御説明させていただきます資料No.1-2がガイドラインの案本体ということでございます。
5ページの真ん中ほど、「5 テレワークのルールの策定と周知」でございます。まず、「(1)労働基準関係法令の適用」といたしまして、テレワークを行う場合でございましても、労働者に対して労働基準関係法令が適用されるということを確認した上で、「(2)就業規則の整備」といたしまして、テレワークを円滑に実施するために、労使で協議して、テレワークのルールを就業規則に定め、労働者に適切に周知することといったことを掲げてございます。
続きまして、6ページの「(3)労働条件の明示」といたしまして、テレワークを行う場所につきまして、自宅やサテライトオフィスなど場所を明示する必要があるといったことを書いてございます。
「(4)労働条件の変更」といたしまして、労働契約や就業規則に定められている範囲を超えまして、労働者にテレワークを行わせる場合につきましては、労働条件の変更に関するルールに御留意いただく必要があるということを掲げてございます。
次に「6 様々な労働時間制度の活用」でございます。
まず、(1)に書いてございますのは、様々な労働時間制度がある中で、テレワーク実施に際して、テレワーク導入前に既に採用している労働時間制度のままテレワークを行う場合も考えられますし、一方で、テレワークを実施しやすくするために、労働時間制度を変更するといったことも考えられるといったことを書いてございます。
その上で、「(2)労働時間の柔軟な取扱い」といたしまして、様々な労働時間制度ごとに、特にテレワークの場面を想定いたしまして柔軟な労務管理の取扱いを幾つか掲げてございます。
まず、「ア 通常の労働時間制度及び変形労働時間制」につきましては、一律の時間に始業・終業を設定する必要がない場合につきましては、その日の所定労働時間の長さはそのままとしつつ、始業・終業の時刻について労働者ごとに自由度を認めるといったことも考えられるということを掲げてございます。
続きまして、7ページの「イ フレックスタイム制」でございます。フレックスタイム制につきましては、労働者が始終業時刻を決定できますので、テレワークになじみやすい制度であるとしてございます。その上で、黒ポツが3つほどございますけれども、労働者の生活サイクルに合わせて始終業時刻を柔軟に調整する。あるいは、コアタイムといった取扱いに関しましても、出勤する日と出勤する必要がない日とで使い分けるなど、柔軟な取扱いが考えられるといったことを掲げてございます。
次の「ウ 事業場外みなし労働時間制」でございます。こちらについては①と②といった要件がテレワークの場合に制度を使える要件として従来から解釈として示しておるところでございますけれども、これらにつきましても、その下に幾つか黒ポツを掲げてございますように、テレワークの場合にはどういった状態であればこの要件に合致するのかといったところを示させていただいているところでございます。
続きまして、8ページの「(3)業務の性質等に基づく労働時間制度」として裁量労働制、高度プロフェッショナル制度がございます。そういった制度の対象の方に関しましてもテレワークといったことも考えられるといったことを掲げてございます。
次、7番目は労働時間の管理に関して書いてございます。
「(1)テレワークにおける労働時間管理の考え方」といたしましては、テレワークの場合についてはオフィスではないということになりますので、テレワークの場合の労働時間の管理方法をあらかじめ明確にしておく。それによって労働者も安心してテレワークができるようになるということを掲げてございます。
「(2)テレワークにおける労働時間の把握」でございます。労働時間の把握に関しましては、従来から適正把握ガイドラインによりまして、その適切な把握管理に取り組んでいるところでございます。テレワークの場合におきましても、これを踏まえまして、アとしてパソコンの使用時間の記録などの客観的な記録による把握がまず考えられるということ。次に、9ページでございますが、イとして、そういった客観的な記録によることができない場合に、労働者の自己申告による把握といったものが考えられる。ただ、その場合には、①、②、③などのように、自己申告制度が適切に機能するような措置を、留意点として掲げさせていただいているところでございます。
続きまして、下のほうの(3)でありますが、先ほどの労働時間制度ごとに労働時間の把握に関してどういった留意点が必要かといったこと。例えば、フレックスタイム制の場合であれば、時間を適切に把握するといったこと。あるいは、事業場外みなしであれば、みなし時間について確認をする。そのようなことを書いているところでございます。
続きまして、10ページでございます。「(4)テレワークに特有の事象の取扱い」を幾つか掲げてございます。
まず、アは中抜け時間でございます。テレワークの場合において、労働者が一定程度業務から離れるといったことも考えられます。そういった場合の取扱いについて、幾つか考えられる手法を掲げさせていただいております。
イに書いておりますのは、勤務時間のうちの一部分のみテレワークを行う場合に、例えば1日の中でオフィスと自宅とを移動するような場合の移動時間の取扱いに関して記載をしてございます。
ウは休憩時間の取扱いといたしまして、労使協定によって一斉付与の原則の適用除外も可能であるということ。
エの時間外・休日労働の労働時間管理といたしまして、テレワークの場合におきましても、11ページの1行目になりますが、使用者は、労働時間の状況を適切に把握し、必要に応じて労働時間や業務内容等について見直すことが望ましいとしてございます。
11ページのオ、長時間労働対策といたしまして、テレワークの場合に着目した長時間労働対策として考えられる点を幾つか掲げてございます。
まず、(ア)としてメール送付の抑制。メール送付、報告のルールに関して、ルールを設けておくということ。
(イ)として、システムへのアクセス制限。
(ウ)として、時間外・休日・所定外深夜労働についての手続としてございます。(ウ)に関しましては、従前のガイドラインにおきましては時間外・休日・深夜労働の原則禁止といった見出しで、一つのやり方として例として掲げていたところでございますが、原則禁止というのが、絶対やってはいけないといった誤解を招きかねないという御指摘もございました。一方で、やはり時間外・休日・深夜労働というのは長時間労働の原因にもなりやすいところでございますので、あらかじめそういった働き方のルールを労使で決めておいていただくという内容によりまして、長時間労働対策のところになお掲げさせていただいているところでございます。
次に12ページ、(エ)といたしまして、長時間労働等になってしまっておられる労働者の方への注意喚起、あるいは(オ)といたしまして、勤務間インターバル制度をテレワークの場合においても導入する。そのようなことを掲げているところでございます。
続きまして、また先ほどの資料No.1-1の概要のほうに戻っていただきまして、5ページを御覧いただきたいと思います。
資料No.1-1の5ページ、「安全衛生の確保」でございます。今回、ガイドラインにおきましては、まず事業者用として、テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト、それから労働者用といたしまして、自宅などでの作業環境を確認するためのチェックリストといったものをつくってございまして、これらの活用を盛り込んでいるところでございます。
その次、「テレワークにおける労働災害の補償」といたしまして、2番目の○、使用者は、情報通信機器の使用状況などの客観的な記録を保存しておくということ。それから、労働災害の発生状況などについて、可能な限り記録しておくこと。そのようなことを書いてございます。
その次、「ハラスメントへの対応」といたしまして、テレワークにおきましても、オフィスの場合と同様、ハラスメント防止対策を十分に講じる必要があるということ。
最後に、「セキュリティーへの対応」に関しても掲げているところでございます。
以上のような内容によりまして、今般、テレワークのガイドラインの改定を行いたいと考えてございます。
なお、テレワークのガイドラインに関しましては、今後、分かりやすいパンフレットあるいはQ&Aなどの作成をしてまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局の説明につきまして、御質問、御意見があればお願いしたいと思いますが、オンライン参加の皆様はチャット機能に「発言希望」と入力してお知らせください。「手を挙げる」機能と混在いたしますと、混乱しますので、「手を挙げる」機能は使わずに、チャットのほうに「発言希望」と書いていただければ幸いです。
では、御質問、御意見があれば、どうぞお願いいたします。
川野委員、どうぞ。
○川野委員 ありがとうございます。
資料No.1-2、4ページの(2)に、テレワークに要する費用負担の取扱いに関して記載がされているところでございます。労働者に過度の負担が生じることは望ましくないこと、また、あらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めて、就業規則等で規定しておくことが望ましいことが記載されています。
しかし、実際には、冒頭にも書いてありますけれども、コロナ禍による緊急的な導入が進んで、テレワークが急速に拡大したために、そうした話合いが不十分なまま、労働者が少なからぬ金額の通信費や通話料等を負担している例も多々あると認識をしているところでございます。
労働者がなし崩し的に過度な費用負担を強いられることのないよう、Q&Aやパンフレット等で詳細な説明を記載した上で周知徹底することが必要と考えますが、事務局の見解を確認させてください。
○荒木分科会長 多数発言希望が出ておりますので、まとめてお答えいただきたいと思います。
続けて、櫻田委員、御発言をお願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
私も、資料No.1-2の部分で発言をさせていただきたいと思っております。
今、川野委員のほうからもありましたが、コロナ禍によってテレワークが急速に拡大したという現状がありまして、今も実施が求められているというところだと思います。
今回のガイドラインの改定は、使用者がテレワークを導入して、労務管理を適切に行えるようにするというのがその目的であったと理解しているのですけれども、この資料を見ますと、労働時間の管理や制度の活用といったことについて詳細に記述をしていただいておりまして、中には労働時間規制を緩和するかのように見えないこともない部分があると思っています。改定の内容は、従来の労働関係法規のルールや解釈を改めるものではなくて、あくまでもこれまで示されてきた趣旨を明確にするものであるというように理解しておりますけれども、そうした認識でよいのかということをまず確認させていただきたいと思います。
そのほかの具体的な記述を見てまいりますと、趣旨の明確化というどころか、誤解を生みかねないのではないかという文章が散見されるのではないかと感じています。例えば、資料No.1-2の9ページの中ほどにあります米印の4行ですけれども、ここは労働者が長時間労働を行ったとしても、使用者がそれを認識していなければ、使用者は責任を免れることができるかのような印象を与えかねないと思っています。そうした誤解がなされることを強く危惧するところでございます。
ガイドラインは、労働者が保護されるようにするためのものであって、改定されても、これまで労働関係法規によって求められてきた使用者責任が減じられるということは全くないということは明確に説明していただきたいと思います。
また、改定後は、Q&Aやパンフレットを作成して周知が行われるということになるかと思いますけれども、今、申し上げましたような誤解が生じないように、的確な周知に力を尽くしていただければと思っております。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。使用者側の鳥澤です。
コロナ禍を契機にテレワークが、都市部を中心に、中小企業にも普及してきたということから、ガイドラインが改定されるというのは非常に時宜を得ていると思っております。
その上で、意見を2点ほど述べさせていただきたいと思います。
まず、1点目は、ガイドラインの周知についてです。各企業がテレワークを適切に運用していくためには、労使双方がガイドラインをしっかりと理解しておく必要があります。特に改定前からの変更点や新たなガイドラインに基づき、企業がどのように取組をすべきか分かりやすく具体的に明示することが重要です。
先ほど説明にもありましたが、分かりやすいパンフレットの作成、Q&A、テレワークモデル就業規則など、関連資料を更新することも必要ではないかと考えております。
なお、テレワークは、コロナ終息後も普及・定着していくと思われますので、これを契機に、企画業務型裁量労働制など時間にとらわれない柔軟な働き方を拡充していくことや、テレワークの運用に関する相談機能を強化していくことも重要だと思っております。日商としては、本ガイドラインの重要性を鑑み、幅広く周知してまいりたいと思います。
そして、2点目は、労働基準監督署による指導監督についてです。
全国には約3,000名の労働基準監督官が配置されていると伺っておりますが、一人一人の監督官が労働者の自己申告による労働時間の把握、中抜け時間の取扱いなど、ガイドラインの内容をしっかりと理解していただき、全国的に統一的な見解、基準を基に指導監督に当たることが重要だと思っております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、早乙女委員、お願いいたします。
○早乙女委員 ありがとうございます。
私からは、意見とお願いを述べさせていただきます。
先ほど御説明いただいた新しいガイドラインは、従来のガイドラインと比べ、労務管理に関する留意点や取組例などが大幅に追加され、各企業が導入や拡大を図る上で参考としやすい内容に刷新されたという感想を持ちました。厚生労働省をはじめとした関係者皆様の御尽力に感謝申し上げます。
先ほどの御説明にもありましたが、今後、Q&Aやパンフレットなど、企業が参考としやすい資料を作成いただくことで、良質なテレワークが一層普及、定着することを期待しております。
続きまして、他委員の皆様と同様、周知のお願いでございますが、まず、テレワークは通常の勤務より長時間労働になるのではないかという懸念の声もございます。その要因について様々なものが考えられますが、例えば仕事の適切な割当てやコミュニケーションなど、管理職のマネジメントに起因することも多々あるように感じます。ガイドラインの中にも、マネジメントの重要性について記載がございますので、今後、事例集などを作成いただく際は、この点についてぜひ御周知いただきたいと思っております。
もう一点、資料No.1-2の2ページの「(2)テレワークの対象業務」にエッセンシャルワーカーなどが従事する業務等、一般にテレワークを実施することが難しい業種、職種であっても個別の業務によっては実施できる場合があり、管理職側の意識を変えることや、業務遂行方法の見直しを検討することが望ましいとございました。
弊社のような百貨店においても、店頭で販売する部門ではなかなか取組を推進しづらいという実情がございます。今後、テレワークを推進していくに当たっては、こうした難しい業種や職種における取組事例の周知など、各企業の導入、拡大の一助となるような幅広い活用事例を展開していただきたいと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 今日はリアルで会場のほうから参加をさせていただいています佐久間でございます。
テレワークガイドラインでございますけれども、事務局のほうでこれだけ煮詰めていただいて、本当にありがとうございます。
今回のテレワークガイドラインは、「上司と部下とのコミュニケーションの円滑化」とか、「労使間での話合いによる決定」など、多くの項目に「労使間のコミュニケーション」が入っており、これは前回も申し上げたのですけれども、非常に大切なことだと思っています。やはり話し合って、お互いを理解するということが必要だと思います。
しかしながら、そうは言いながらも、本ガイドラインは、全体的にどうしても外観的というか、総花的に書かれていまして、具体的にどこまで踏み込んでいるかというのが欠けているような気がいたします。私が一番気になっているのは、先ほど櫻田委員からも御指摘があった箇所なのですけれども、例えば資料No.1-2の9ページの米印の部分にかかる部分でございます。労働側のほうでは、使用者側が都合よくというか、そういう認識が出るのか、と感じるのですけれども、事業者の立場からいえば、ここは逆に事業者にとっては普通のリアルの場であれば、例えば部・課員が時間外労働を席で見ている。そこでやっていれば、これは「黙認」になるわけで、超過勤務手当としてつけなければいけないことは確実なわけです。
部・課員が自宅等でテレワークを実施している場合に、管理者は見えていないわけですから、どうしても管理が及ばない。そこで、例えば時間を時間外労働は仕事が残っていたとしても、9時から17時までですとか、定時で終わらせてください。それ以外は認めません。また、残業は1時間だけですというように御指示をさせていただいても、実際、テレワークになりますと企画の業務とかが多く、製造現場のように作業をしてつくるというものではありませんから、そうなると、どうしても後でやってしまったとか、いくら労使で話し合ったとしても、気になって仕事をしていた場合、あるいは、コンピュータをつけっ放しにしていた場合など、それでも業務をやっていると言ったら、これはつけなければいけなくなってくる可能性が高いのです。
そういう状況がある中で、賃金債権の関係も、時効の期間が延びたとかというのがあって、後で請求されるということの不安感がある。ですから、この資料の米印のところを見れば、労使間で解釈が違ってくるというものが出ている中で、今回、業務、作業の内容お時間外労働など報告するということになっていますけれども、賃金債権の時効となる期間において、使用者が把握していない、認めていない超過勤務時間に対する金額まで請求されるのではないかという怖さが残るということを感じる次第でございます。
以上です。
○荒木分科会長 5名の方から質問あるいは意見がございました。
では、事務局よりお答えをお願いします。
○労働条件政策課長 ありがとうございます。
まず、川野委員から、費用負担の部分に関しまして、Q&Aのほうで周知徹底をという御指摘がございました。テレワークの費用負担につきましては、昨年、厚生労働省で実施しました調査においてもその実態把握に努めているところでございますけれども、個々の企業ごとの業務内容や物品の貸与状況などによりましても状況が様々でございます。例えばそういった機材が業務外では使い道がないか。あるいは、業務外も含めた労働者の生活と結びつきが深いものか。そういったことによっても費用負担の取扱い、考えも様々あり得るのかなと考えられるところでございます。
そうしたことから、今回このガイドラインにおきまして、一概に使用者が負担するべき費用について明確な基準を示すことはなかなか困難であるわけではございますけれども、過度な負担にならないように、トラブルが起きないようにということで、労使でよく話し合っていただきたいというようなことで書かせていただいておるところでございます。
御指摘のようなQ&A、あるいは今後企業の取組事例といった事例集などを作ることも含めまして、様々検討を進めてまいりたいと考えている次第でございます。
続きまして、櫻田委員から、今回は趣旨を明確化するものでよいかということでございますけれども、まさにそのとおりでございまして、従来からの法制度、法解釈を変更するものではございませんし、適切な管理のために使用者にやっていただくべきことは当然変わるところではないということでございます。誤解のないような周知をということでございますので、ここもQ&Aなどを含めて周知に取り組みたいと考えてございます。
鳥澤委員からも、分かりやすい周知ということをいただきましたので、取り組んでまいりたいと考えてございます。
早乙女委員からは、仕事の割当て、上司によるマネジメントといった点がございました。まさにそういった点も工夫が必要であると思いまして、ガイドラインに掲げているところでございますけれども、そういった点、あるいは難しい業種、職種も含めた事例といったものも今後集めるような取組を進めてまいりたいと考えてございます。
佐久間委員からもございました。なかなか具体的な踏み込みが足りないという御指摘もございました。特に労働時間の部分に関しましては、まずはルールを労使できちんと話し合っていただくということもありますが、自己申告の部分にも書いてございますように、実態がずれていくというようなこともあろうかと思います。したがいまして、実態もよく確認をした上でといったような留意点も書かせていただいているところではございますけれども、個々に関しましても、その趣旨などをより分かりやすい形で、またQ&Aなども含めて周知徹底を図ってまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 事務局から引き続いてお願いします。
○監督課長 監督課長でございます。
鳥澤委員から、監督指導の実務についてお尋ねがございました。今回のガイドラインにつきましては、今、黒澤課長からも申し上げたとおり、現状の労働基準関係法令の通知等でお示ししている内容を基本的には明確化するということでございますので、それを変更するものではございません。
そういう中で、監督行政といたしましては、引き続き、公正中立的な権限行使に努めてまいりますが、いずれにしても、今回のガイドラインの内容についてもしっかりと現場に周知いたしまして、御懸念のようなことのないように取り組んでまいりたいと思っております。
○荒木分科会長 さらに御意見はありますでしょうか。
仁平委員、どうぞ。
○仁平委員 どうもありがとうございます。連合の仁平です。
コロナ禍で、多くの労働者がテレワークで働いておりまして、その中で様々な問題も明らかになってきているわけですが、テレワークを適正に実施をして、定着させるということは、まさに今、労働政策の重要な課題なのだろうと思っております。その指針となるのが、本日報告いただいている厚生労働省のガイドラインであって、これを踏まえて今後、労使の取組が行われていきます。だからこそ今、みんなが注目していると考えております。
また、この間、進めてきた働き方改革の流れから見ても、今回のガイドラインの改定というのは極めて重要な案件だというふうに認識しております。やはりこうした状況の中での重要性、注目度を考えると、本日、報告の扱いということになっておりますが、まず、労政審で議論すべきだったのではないかと考えております。すでに、雇用環境・均等分科会で、労働側だけではなく公益側からも、進め方についての発言があったと聞いてございますが、今後、法制上、労政審の議を経ることが求められていないものであっても、実際の働き方に影響を及ぼすような重要な案件については、労政審でぜひ議論し、取りまとめるようにしてほしいなということで、要望として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○労働条件政策課長 御指摘ありがとうございます。
まさにテレワークに関しましては、現場での労使のお取組といったものもございまして、このガイドラインもそれに資するものとしたいという思いで取りまとめているところでございます。
先ほど来ございますように、従来の法制度自体を変えるものではありませんで、我々行政として持っている問題意識も含めまして、私どものほうで取りまとめていくものではございますけれども、実際に御活用いただく労使の方々に御報告をするということです。したがって、制度を変えるわけではないから、諮問答申ということにはならないのですけれども、御報告ということで本日させていただいているところでございます。
また、本日もこのような機会を頂戴できましたので、いろいろな御指摘もいただきましたので、それもまた様々な周知のほうにも実際に生かしまして、より御活用いただけるように取り組んでまいりたいと考えてございます。
○荒木分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、種々御意見をいただきましたので、今後、テレワークの一層の普及、定着のためにも、このガイドラインの周知というのが非常に重要だと思いますので、今日いただいた意見も踏まえて、対処いただければと考えております。
それでは、次の議題に移ることといたします。2番目の議題は「資金移動業者の口座への賃金支払について」となります。
事務局より説明をお願いします。
○賃金課長 賃金課長の大塚でございます。
私のほうから、資料No.2に基づいて、資金移動業者の口座への賃金支払いについて、課題の整理②ということで御説明申し上げます。
資料をおめくりいただきまして、2ページ目から6ページ目は、前回もお示ししましたけれども、この審議会で各委員から頂戴した御意見等について並べたものでございます。前回、2月15日の御意見につきましては赤字にしておりますので、必要に応じて御参照いただければと存じます。
続きまして、7ページ以降は、前回、前々回、各委員の方から御要請のありました言わば宿題について整理させていただいたものでございます。
7ページと8ページは、1月28日にいただいた御指摘に基づいて整理したものでございまして、資金移動アカウントを利用する場合の資金の流れのイメージをお示ししたものでございます。
7ページのほうは、給与払いではなく、現状において行われております資金移動アカウントの決済時にお金の流れがどうなっているのかを示したものでございまして、図の上にありますように、利用者が○○ペイにお金を入金している場合は、利用者が資金移動業者に対して一定の債権持っている状態となります。
この利用者が買物した場合の図が下でございますけれども、まず、利用者の資金移動アカウントにお金をチャージした状態のときに、お金そのものは資金移動業者の銀行口座のほうに移り、利用者が資金移動業者に対して債権を持っている状態になります。それを店舗で買物いたしますと、この債権が店舗側に移るということになります。
店舗の持っている銀行口座にお金が振り込まれるまでの間は、店舗が資金移動業者に対して債権を持っている状態になります。一定の期日が来た場合に、資金移動業者の銀行口座から店舗の銀行口座のほうにお金が移ることになります。
つまり、○○ペイ上、金額の表示が利用者から店舗のほうに移るわけでございますけれども、お金はどこにあるかというと、銀行口座のほうに入っているということを示した図であります。
8ページは、賃金の支払いの場合に、同じようにどのような流れになるのかを示したものでございます。使用者側の銀行口座から、一定の額、要は賃金の原資を使用者の資金移動アカウントのほうに移します。そうなりますと、お金そのものは資金移動業者の銀行口座のほうに移ることになります。一定の給与の支払日に労働者に賃金が支払われますと、労働者が資金移動業者に対して債権を有する状態になります。お金そのものについては、資金移動業者の銀行口座に入ったままという状態であります。
9ページは1月28日の委員の御指摘を踏まえて整理したものでございまして、振込エラーの原因と対応策の例を示したものでございます。3パターン書いてございまして、1つ目の振込エラーの原因としては、労働者の資金移動アカウントが適切に特定できないというパターンであります。
これに対する対応策の例、右側でございますけれども、労働者の同意の際に、使用者が基本的にはこの3点、労働者の氏名、資金移動業者名、そしてアカウントのIDを同意事項として取り付けることが考えられますけれども、これらに限らず、労働者の資金移動アカウントを特定するために必要かつ十分な情報を確認するということが考えられます。例えば生年月日や電話番号などが想定されます。
こうした情報を使用者側が本人同意の際に確認し、資金移動業者側と共有する。これによって、労働者の資金移動アカウントが適切に特定されるのではないかということが考えられます。
2点目の場面が、給与振込に必要なデータを作成する際に誤りが生じるパターンでございまして、これに対する対応策としては、右側に2点ございます。1点目は、労働者の同意の際に得た、(1)で示した各種情報を基に、労働者のアカウントは実在性等を確認し、事前にエラーを防止するという実在性の確認が1点。
そして、もう一点は振込データ作成時に、資金移動業者側で振込データをチェックして、それを使用者側にフィードバックするという振込時の確認、この2点を行うことによって、対応できるのではないかと考えております。
3点目は、労働者の資金移動アカウントに受入上限額が設定されていて、言わば入金できない状態になる。その結果、賃金支払いができないという問題が生じ得ます。
これについての対応策は右側でございますけれども、まず、資金移動業者側で、振込時確認の際に受入上限額を超える入金額でないかどうかを確認する。さらに、給与振込の際に受入上限額を超え得る場合には、事前に定めていた代替手段により支払うといったことが対応策として考えられます。
次の10ページは、前回、2月15日の御指摘を踏まえてお示しするものでございまして、現行の銀行口座等への賃金支払いを行う際の通達をそのまま貼り付けたものでございます。
着目していただきたいのは3点ございまして、1つ目は記の1でございます。こちらは現行の本人同意事項として3点示しておりまして、それらは従来、この場で私のほうから御説明してきた内容と同一でございます。
続きまして、記の4の部分でございます。これも前回口頭で御説明しましたが、口座振込等がされた賃金は、所定の賃金支払日の午前10時頃までに払出し等ができるようにしなければならないということでございます。
さらに、記の5でございますけれども、取扱金融機関等については、1行、1社に限定せず複数とするなど、労働者の便宜に十分配慮して定めることといったことも、この通達で併せて示しております。
続きまして、11ページは、労使が資金移動業者の口座への賃金支払いを選択する場面等の整理をしろということで、前回の御指摘を踏まえて並べたものでございまして、3つの場面を想定しております。1つが、労働者が資金移動アカウントでの賃金受取を望むと考えられる場合の例でして、幾つかございますけれども、1つは、労働者がふだんからキャッシュレス決済によって商品等の購入を行っている。その場合、例えば銀行口座から資金移動アカウントにチャージするなどの一手間かかるわけですけれども、これが軽減できるのではないかということ。
2つ目は、給与口座の用途別管理などが例えばアプリ上で行えるようになるということの便宜性。
3点目は、週払いや隔週払いなど、月に1回よりも短期の賃金支払いを希望する場合。
最後に、労働者が実家や母国に賃金の一部の仕送り等を行う場合に、手数料が軽減できるのではないかといったことが考えられます。
2つ目は、使用者側が資金移動アカウントへの賃金支払いを望む場面について整理したものでございまして、2点記載しております。
1点目は、先ほど①で述べましたような労働者のニーズ、こういったニーズを感じている労働者の人材確保、定着を使用者側が図りたい場合が考えられます。
2点目は、使用者側が給与振込の手数料事務負担を抑えたい場合と書いているのですけれども、ただ、これはこれまでも御説明申し上げておりますように、制度化された後に資金移動業者側が手数料の設定等も含めてどのようなビジネスモデルを構築するかに左右される面がありますので、必ずしも一概に言えないとも思われます。
3点目ですけども、労働者が望んでいないにもかかわらず、使用者側が資金移動アカウントへの賃金支払いを望むと考えられる場合で、例えばとして書かれておりますように、労働者側は銀行口座への賃金支払いを望んでいるのだけれども、その手段を選択肢としてなくしてしまって、通貨払いか資金移動アカウントでの受け取りかの二者択一を迫るような場合が想定されるかと思います。
これについては、まさに本人同意の真意性というものをきちんと議論していただければと思いますけれども、それに加えまして、先ほど前のページでお示しした通達の記の5を御参照いただきますと、金融機関等について1行、1社に限定せず労働者の便宜を図ることということがありましたので、これも参考に、例えば資金移動アカウントか通貨払いかの二者択一ではなくて、そこに銀行という選択肢も入れた上で、さらに複数の業者を用意するといったことなども考えられますが、労使の皆様方の御意見を頂戴できればと思っております。
12ページは1月28日の御指摘を受けて、米国におけるペイロールカードの概要につきまして、私どもで確認できた範囲で記載したものでございます。
まず、概要でございますけれども、米国におけるペイロールカードは、労働者に賃金を支払う目的で使用者が提供するプリペイドカードをいいます。金融機関等により発行されるカードなのですけれども、VISAやMastercardなどのマークがついていることが多くございまして、その場合には、そういったブランドが利用できる店舗等でそのまま決済等にも利用できるといったものでございます。
次に、規制の内容でございますけれども、ペイロールカードについては、連邦法による規制に加えて、州法による規制のある州もあるのですけれども、ペイロールカードの利用自体が禁止されている州はないとされております。
連邦法では、まず、厚生労働基準法のペイロールカードに関する明確な規制はないと思われますけれども、電子資金移動法というものがございまして、その言わば下位法令でありますレギュレーションにおきまして2つ定められていると承知しています。
1つは、使用者がペイロールカードを提供した労働者に対して、他の選択肢も提供すること。
もう一つは、金融機関等は、口座に関連する手数料が条件等を利用者に開示することといったことが規制されていると承知しております。
次の○にございますように、銀行が発行する場合は通常、預金保険制度の対象となるのですけれども、預金保険が適用されるケースが多いとされています。あるシンクタンクの調査によりますと、ペイロールカードの預金保険が義務化されているのは、ハワイ州とコネチカット州の2州とされているようでございます。
利用者や利用理由について次の枠に書いてございますが、かつてはペイロールカードの主な利用者は銀行口座を持たない労働者と言われておりました。ただ、現在では、次の○に書いてございますように、そういった方々に加えまして、銀行口座を持つ労働者であっても、モバイルアプリなどによる収支の管理などがしやすいといった利便性に着目して利用が進んでいるということで、その年齢層は若年層が多いと言われているようでございます。
次の13ページは、前回の2月15日の御指摘を受けまして、厚生労働省から資金移動業者等に報告を求める仕組みのイメージについてお示ししたものでございます。
まず、前提として申し上げますと、労働基準関係法令におきましては、基本的には労働者とその労働者を使用する使用者の2者関係に着目いたしまして、厚生労働省や労働基準監督署が権限を及ぼすことができるのは、基本的に使用者ということになっております。
この資金移動業者は、言わば賃金の支払いの場面だけに出てくる業者ですので、今、申し上げた一般的な労使関係からすると第三者であります。その第三者である資金移動業者に対しては、現行では厚生労働省のほうから指導監督する権限はないということになりますので、逆に、制度化する場合におきましては、何らかの権限を規定する必要があるのではないかとも考えられるところです。
そこで、こちらのほうにその考え方を一案として整理したものでございます。まず、申請時におきまして、資金移動業者の指定する要件の一つに賃金支払い業務の実施状況等を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有することということを定めてはどうかと考えられます。これによりまして、まさに適時に報告できる体制でないと指定されないということになりますので、逆に言えば、この要件を満たした以上は適時に報告をしなさいと言うことができるようになるのではないかと考えております。
あわせまして、次の○に書いてございますように、資金保全に関わる保証会社・保険会社等につきましても報告できる体制を求めるということが考えられるのではないかと考えております。
これは申請時において満たしていればオーケーというわけではなくて、申請して、指定された後もその体制は維持していただかなければいけません。指定後に、その要件を満たさなくなっているのではないかと思われるようなことがあれば、この要件に限らず、例えば資金保全の要件とか、不正引き出しへの対応とか、ほかの要件につきましても何か問題が生じているのではないかと考えられる事案がありましたら、先ほど御紹介したような要件に基づきまして、厚生労働省のほうから資金移動業者のほうに適時、報告を求めていく。
もし、この報告が不十分あるいは虚偽の報告などをしたということであれば、この適時報告要件を満たさなくなりますので、事後的に指定の取消しもなし得るというような考え方ができるのではないかとも思われますが、委員の皆様方からの御意見をいただければと思います。
本体資料の最後、14ページは、前回までにもお示ししておりました考えられる課題につきまして、前回2月15日の議論を踏まえてリバイスしたものでございます。修正箇所は3点ございまして、1つは2のところでございますが、個人情報の取扱いの記載を追加しました。枠囲みの2つ目のポツでございますけれども、労働者の個人情報について厳格な取扱いがなされることが必要ではないか。
続きまして、4の企業の賃金支払事務ということを追記しまして、枠囲みの下から2つ目でございます。使用者が選択する賃金支払手段に関して何らかの取扱いを示すべきではないか。
最後の5は項目名でございますけれども、その他とありましたのは、厚生労働省による監督指導に改めております。
参考資料につきましては、前回までにお示ししたものと基本的には同じでございますけれども、まず、20ページは前回の御指摘を踏まえて新たに追加したものでございまして、資金移動業における口座開設時の本人確認ということで、マネーロンダリングの関係でどのようなルールになっているのかなどを記載したものでございますので、必要に応じて御参照いただければと思います。
また、次の21ページは、右側に各社の資本金の状況というデータを前回の御指摘を踏まえて追記いたしました。この資料を見ただけではちょっと分からないかなと思うので、口頭で補足いたしますと、資本金の金額帯に応じて該当する事業者数を並べているのですけれども、傾向として言えるのは、海外送金のみを行っているような業者については資本金が低い傾向に。そして、他業兼業といいますか、ほかに本業があって、それを効率化するために資金移動業を併せて行っているようなパターンの場合には資本金が高い傾向にあるように見受けられます。
資料の説明は以上なのですけれども、これまでの回で御指摘いただいた事項につきまして、資料化に至らなかったものが幾つかございますので、それを口頭で補足させていただきます。大きく5点ございます。
1点目は、セキュリティー、マネロン、個人情報保護における金融庁の監督や運用の実態を比較してほしいという御意見がございました。これにつきまして、監督や運用上の実態等につきまして金融庁に確認したところ、銀行、資金移動業者ともに業態別の担当部署が監督するとともに、ITセキュリティーやマネーロンダリングといった業態横断的な課題に対しても専門のチームが連携を行った上で、必要な監督上の対応を行っているということでありました。
続きまして、2点目でございますけれども、資金移動業者における個社の保証割合や保証される事例について示すべきという御指摘もございました。
まず、補償割合についてですけれども、日本資金決済業協会に確認したのですが、各社の補償割合について現時点で調査、公表していないため、定量的にお示しすることはできないということでございました。
補償されない事例についても、同じく日本資金決済業協会のほうに確認しましたが、補償される事例について、現時点では各資金移動業者から収集、公表していないため、定量的にお示しできないということでした。
他方で、ドコモ口座問題を受けまして改正された事務ガイドラインにおきましては、各社において補償有無を含めた補償方針を定めて、利用者へ情報提供するということが定められております。これに基づきまして、各社の補償方針は利用規約等で確認することができる状態になっていると承知しております。
続きまして、3点目でございます。銀行と資金移動業者の振込手数料の例を示してほしいという御指摘がございました。まず、資金移動業者の振込手数料につきましては、制度化後のビジネスモデルによってくるために、まだ制度化されていない現段階ではお答えするものがないという状態であります。
他方で、銀行の場合ですけれども、現在でも給与振込サービスが提供されております。ここでは、初期契約や月額の基本契約を結んだ上で、それらの料金を支払うことによりまして、1件当たりの手数料が通常の銀行振込よりも安価な料金体系となっていると承知しております。
4点目、資金移動業者の財産的基礎、財務状況について示してほしいということで、先ほど資本金の部分は参考資料の21ページにお示ししたとおりでございますけれども、財務状況ということで、どうなっているのかということを金融庁のほうにも確認したところでございます。
資金移動業者につきましては、事業年度ごとに資金移動業に係る収支の状況を含む事業報告書を財務局に提出するといったスキームになってございます。その中で、金融庁・財務局におきましては、資金移動業を適正かつ確実に遂行するため、必要と認められる財産的基礎を有しているかどうかを継続的に確認しているというふうに承知しております。
他業との兼業などがあった場合には、他業との兼ね合いを見て、資金移動業を遂行するに足りる財産的基礎があるかどうかをしっかり見ているということでありました。
5点目ですけれども、システムエラーの件数や事例は公表しているのかという御指摘もございました。こちらでございますけれども、事務ガイドラインにおける報告すべきシステム障害等に該当するような障害が発生した場合には、資金決済法や関連のガイドラインに基づきまして、金融庁に報告することになっていると承知しています。ただし、金融庁自身は報告を受けているわけでございますけれども、金融庁が報告を受けた該当事案や検討件数につきましては対外的に非公表であるということでございました。
簡単でございますけれども、前回までにいただいた宿題で書面化できなかったものについての補足説明は以上であります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局の説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。先ほどと同じ要領でお願いいたします。
川野委員、どうぞ。
○川野委員 ありがとうございます。
先ほど最後に資金移動業者の破綻リスクといいますか、資本金のお話がありました。資金移動業を適正かつ確実に遂行するための財産的基礎については、今回、資料として21ページに記載いただいていますが、本業と他業を合わせた資本金がどのぐらいの比率になっているのかというのが非常に分かりづらいということと、金融庁が指導監督するという意味合いにおいては、資金移動業部分のほか、他業についても指導するというお話を今ほどいただいたわけでございますが、その辺が我々にとってはどういう形でどのような監督指導がされるのか、具体的に見えづらいところ、分かりづらいところがあります。全体的な資本金の中身が明確になっていないことを踏まえると、破綻リスクも考慮した議論が必要ではないかと思っているところでございますので、必要に応じて、そうした資料を提示していただければと思います。
○荒木分科会長 では、事務局からお願いします。
○賃金課長 金融庁とも相談しまして、どの程度までお示しできるかは検討したいと思います。
今、答えられるものとして申し上げますと、例えば海外送金のみを行っている業者の数を、21ページの参考資料に基づいて概数を述べますと、上から2、23、16、17、1、16と続いているかと思います。このうち、海外送金のみを行っているような業者は、資本金が低いほうに集中しているのです。例えば2のところは2ですし、23のところは22ですし、16のところは12、17のところは5といったように、低いほうに集中はしております。
海外送金のみを行っているような業者については、まさにそれが本業そのものなのですけれども、他方で、証券系や携帯電話系など、言わばほかに本業を抱えていて、そこでの本業をうまく回すために資金移動業を組み合わせているというところにつきましては、言わばそれ自体で儲けることはあまり想定していないような業態なのです。そういったときには、ほかの本業の状況も勘案して、その上で資金移動業としてきちんと今後も成り立っていけるかどうかを金融庁としては見ていると聞いております。
いずれにしましても、今の御指摘を受けて、さらに詳しい資料がどれだけ提示できるかどうかは検討させていただければと思います。
○荒木分科会長 仁平委員、お願いします。
○仁平委員 ありがとうございます。連合の仁平です。
これまでも労働側から、安全性を見るにはガイドラインなどの規定だけではなく、実態を見ないと分からないのではないかということを申し上げてまいりました。資金移動業者におけるトラブルは年間どれくらい起きているのか、金融庁としてどの程度、指導監督を行っているのかなどお尋ねしてきましたが、先ほど大塚課長から今回資料として提示できていないものについて5つほど補足で説明がございました。今回の審議会では資料は出されませんでしたが、今後の審議会では資料が出てくるという理解でいいのか、本日の説明で全部終わりなのだということなのか、まず質問をさせてください。
○荒木分科会長 どうぞ。
○賃金課長 先ほど私のほうで補足説明申し上げた5点に関しましては、例えば金融庁のほうからこれ以上出せないと言われたものなどもございますので、一応、私どもの整理としては、先ほどの説明をもって代えさせていただきたいということでございます。
○荒木分科会長 お願いします。
○仁平委員 引き続きすみません。
仮に給与の振込口座ということなれば、事件が発生したらそのときに対応すればいい、あるいは、許認可の取消しなど事務的に対応すればいいというだけでは済まされないと思います。したがって、現状、どのようなチェック機能が働いているのか、問題が発生した資金移動業者に対してどのような行政指導監督を行っているのかといった中身について説明してください。監督官庁から具体的に説明していただきたいと思っています。別に今回でなくても結構です。
○荒木分科会長 事務局、いかがでしょうか。
○賃金課長 監督官庁というのは、金融庁ということと理解いたしますけれども、金融庁はこの労政審の正式なメンバーではないわけですが、今、御要望がございましたので、分科会長とも御相談して、必要な手続も含めて検討したいと思っております。
○荒木分科会長 要望がございましたので、所定の手続も必要だと思いますが、事務局と検討したいと思います。
それでは、ほかにもたくさん手が挙がっております。ウェブ参加の佐々委員、どうぞ御発言ください。
○佐々委員 ありがとうございます。
私からは、資料9ページの振込エラーについてなのですけれども、今回、原因と対策案を例示いただきまして、ありがとうございます。
企業実務の観点から特に関心が高いところなのですが、「(2)給与振込に必要なデータを作成する際に、誤りが生じる」というところですけれども、資金移動業者が労働者のアカウントの実在性や振込データの正確性を確認するという対策案が示されております。この内容であれば、現状の銀行への振込と同程度の振込エラー防止措置になり得るのではないかと考えております。
その上で、恐らく(1)の資金移動アカウントを特定するために必要かつ十分な情報というところとも関連すると思いますけれども、現行の金融機案への振込依頼で必要となる情報と大きな差が出るようなことがあると、前々回の場でも申し上げましたけれども、企業のシステム対応の負担が大きくなると考えておりまして、もしそういうことになると実効性ある仕組みにならないのではないかということを懸念しております。
ですので、今後議論される際は、企業でのシステム対応という視点も御留意いただけると助かるなと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
事務局、いかがですか。
○賃金課長 御指摘、ありがとうございます。
賃金の確実な支払いを確保するという観点からは、今まさに佐々委員から御指摘のありましたような企業実務のとの兼ね合いは留意すべきと考えておりますので、今後の議論におきましては、今、御指摘のありましたことも含めてきちんと検討していきたいと考えております。
御指摘、ありがとうございます。
○荒木分科会長 続いて、池田委員、お願いいたします。
○池田委員 御説明どうもありがとうございました。
私のほうからは意見が2点ございます。
この議論については、労働者が賃金を受け取る手段を増やした上で、労働者自身が受け取る方法を選択することが大前提なのだろうと考えます。
11ページに、労働者等が資金移動業者の口座への賃金支払いを選択する場面等を整理していただきました。このうちの3つ目、労働者が望んでいないにもかかわらず、使用者が資金移動アカウントへの賃金支払を望むと考えられる場合があると想定しますと、使用者による資金移動業者の口座への賃金の支払いが強制されないような仕組みをつくる必要があるのではないかと考えます。
具体的に14ページ目の課題の「労働者の同意・企業の賃金支払事務」にあるように、銀行口座等の既存の支払事務との違いを理解して同意を進めるように、また資金の不正引き出しにおける補償等の情報を適切に提供することを要件化して、その上で、厚労省において具体的な同意書のひな形を示すということが有効なのではないかと考えます。
もう一点は、使用者の強制を防ぐという観点から、あわせて、事前に労使が十分に話し合うということが重要だろうと考えます。10ページ等で、賃金支払いの例外である銀行口座や証券総合口座への賃金支払いに当たって、通達では労使協定の締結を求めています。銀行の取扱いと同様に労使協定を締結すること等、労使双方が関与する一定の手続を要件とすることも必要なのではないかと考えます。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
事務局、いかがでしょうか。
○賃金課長 池田委員、御指摘ありがとうございます。
今、池田委員から御指摘のあった本人同意に係る事項については、いずれも重要な御指摘というふうに考えております。仮に制度化された場合に、労働者の方の本意に反して資金移動アカウントへの振込が強制されるようなことがあってはならないことは言うまでもございませんし、また、銀行と資金移動業者の違いがよく分からない状態のまま、何だかよく分からないけれども資金移動アカウントにしてしまうといったことも防がねばならないと考えております。
これまでの審議会でも、私のほうから御説明申し上げておりますように、資金移動業者は、仮に今回制度化された場合であっても、預金機能を持たないという意味においては、銀行と明確に違うのです。これは今までも違っておりましたし、今後も変わらないことだと思っております。
それに派生する問題というか違いといたしましては、例えば資金保全のスキームが違うとか、様々な違いがあろうかと思います。こういったことに関しましては、仮に制度化された場合には、厚生労働省のほうからも、そういった銀行と資金移動業者の違いについてはきちんと使用者そして労働者の方々にも周知しなければいけないと思っております。
その一環として、池田委員のほうから、例えば本人同意のひな形のようなものを示すべきではないかというお話もございました。こちらは言わば36協定の届出様式のように、省令様式で示すような性質のものではないのですが、一方で、各企業のほうで適切に本人同意の手続が行われるようにするためには、一定の考え方や確認すべき同意事項などについて、厚生労働省のほうからモデルを示すことも大事な観点だろうと考えますので、今後、ここでの労使の皆様方からの御意見を踏まえつつ、どういうことが適切なのか検討していきたいと思っております。
あと、この制度が仮にできた場合に、各使用者側で具体的にどういう手続で、どういう業者を選んで、どのように進めていくのかという言わば社内制度の整備のようなことを進めていくのだろうと思いますが、その際に、そこの事業場に所属する労働者の方々の希望や意見がどういったものなのかということをきちんと労使で話し合っていただくことも大事な観点だと思っております。そういう意味で、池田委員のほうからは、今の銀行口座振込と同様に、労使協定というような御提案がございましたけれども、ここでの労使の皆様方の御意見、ほかの皆様方の御意見を踏まえながら、その点も含めて検討していきたいと思っております。
御指摘いただきありがとうございました。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○池田委員 どうもありがとうございました。
○荒木分科会長 続いて、世永委員、お願いします。
○世永委員 ありがとうございます。
私のほうからは、資料の8ページの使用者が労働者の資金移動アカウントに賃金を支払う場合のイメージについて発言をさせていただきます。
イメージとしてお示しいただきました実際の資金の流れを見ると、銀行口座から銀行口座への振込となっています。使用者が労働者の口座に振り込むのか、資金移動業者の口座に振り込むのかという点のみが違うということで、実質的には現行制度と同じではないのかと思っております。現行の労働者の銀行口座への振込と単に振込先の名義が違うだけであり、資金移動業者の口座に振り込まれるといっても、債権は労働者が有しているのであるならば、なぜわざわざあえて複雑で安全性や補償が担保されないような口座を選択肢に加える必要があるのかということについて疑問であるということについて、意見として申し上げさせていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 では、事務局よりお願いします。
○賃金課長 8ページの図でお示ししましたように、賃金が支払われた後の状態におきまして、仮に資金移動業者の資金移動アカウントに対してお金が振り込まれた状態というのが、御説明申し上げましたように、実質的には資金移動業者側の銀行口座にお金が実際にあって、労働者が資金移動業者に対して債権を持っている状態であるということについては、世永委員と共通の理解に至れたのかなと思っております。
それにもかかわらず、このような仕組みをあえて設けることについて、世永委員のほうから御意見を承ったところでございますけれども、私どもといたしましては、確かに実際のお金そのものは銀行口座間の移動ではあるものの、例えば労働者がキャッシュレス決済などを行っている場合には、銀行からのチャージという手間を加えなくても、資金移動アカウントそのものをもって買物等もできるといった利便性、あるいはアプリ上で資金管理ができるといった利便性なども一方であるのではないかと考えておりまして、労使の皆様方の御意見を今後も承りたいと思っております。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
続いて、津村委員、お願いします。
○津村委員 ありがとうございます。
私のほうからは、先ほど説明をいただいた中では10ページの関係になりますが、現行の取扱通知の関係で2点ほど確認をさせていただきたいと思います。
まず、1点目の関係ですけれども、現行の取扱通知の中では、金融機関または証券会社の所在状況等からして、1行、1社に限定せず複数とするなど、労働者の便宜に十分配慮して定めることとされています。通知における1行、1社ということの定義でありますが、銀行や証券会社という各業態において、それぞれ複数選択肢を用意するということではなくて、例えば業態としては銀行のみしかないけれども、その中で選択肢が複数用意をされていればよいということと理解をしておりますが、まず、この点につきまして見解をお願いしたいと思います。
○荒木分科会長 お願いします。
○賃金課長 今、津村委員の御指摘にあったような見解でよろしいかと存じます。
○津村委員 ありがとうございます。
では、その上で、例えばということでありますが、資金移動業者が賃金の振込先として選択肢に加わったとした場合ですが、使用者が業態としては資金移動業者のみとして、その中で複数選択肢を示すような、いわゆる結果として労働者から見れば資金移動業者しか資金の振込先として選択肢がない場合があり得ることになり、もし、そうだということであれば、結果として、労働者にリスクの高い選択肢しか示されないというのは問題だと思っております。
この点は、先ほど使用者側のほうからも御発言があったとおりでありますし、先ほど説明いただきました11ページの③に対しても、労働側としてそうした受け止めをしているということで、意見として聞いていただければと思っております。
次に2点目でありますけれども、同じく取扱通知の関係でありますが、労働者の便宜に十分配慮し決めることという通知につきまして、実際は自分で自由に賃金振込先の銀行を指定することができずに、使用者から振込先の銀行を指定されているケースもあると認識をしております。これは本人同意に関わる問題でもありますが、今までは使用者から指定されていたとしても、銀行という業態の枠組みの中での話でありまして、業としての指導監督がきちんとなされているために、どの銀行であっても大きな違いはなかったと思います。しかし、今検討の俎上に上がっております賃金移動業におきましては、従来、労働側が申し上げているとおり、資金保全の仕組みも補償の仕組みも個社によりそれぞれ異なっており、どこを選ぶかで大きな違いがあるという認識をしております。
その上で、改めて確認をさせていただきたい点でありますが、現行の制度におきまして使用者から振込先口座を指定されている場合、取扱通知を根拠としまして、労働者が使用者に対する指導を求めることはできるのでしょうか。取扱通知に関わる行政の指導という観点から確認させていただきたいと思います。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 今、津村委員が御指摘されたような事象を捉まえて、労働者の方が監督署に言わば申し出てきた場合につきましては、必ずしも労基法24条等に反する違法状態ではないものの、この通達に書いてあることに抵触するということになれば、それにつきましては改善を求めるといった対応などを労働基準監督署のほうですることが想定されます。
津村委員が、今の御指摘の前におっしゃっていた銀行との違いに関しても一言だけ申し上げさせていただければと思います。
津村委員が1点目の御指摘としておっしゃった、結果として資金移動業者だけに限定されるような場合というのは、まさにこの労働条件分科会の場で労使の皆様方でこれからどうしていくのかを議論していただきたい部分なのでございますけれども、先ほども私のほうから申し上げましたように、資金移動業者は、前回お示しした2階建ての図でいうところの1階部分であります資金決済法に基づきまして、滞留規制がかかっております。これは、要すれば、この資金移動業者というのは銀行のように預金業務を行う業者ではないということなのです。
それはどういうことかというと、預金、すなわち長期間にわたって保管するためのお金を取り扱うことができない。資金移動業者はあくまでも為替取引のために一時的にお金を取り扱う。それを専門とする業者なわけであります。それは、これまでもそうでありましたし、仮にこの仕組みが制度化された後におきましても同様でございます。ということは、どういうことかといいますと、例えば給与を30万もらっている労働者の方がいたとして、30万全額を資金移動アカウントのほうに振り込むという取扱いになった場合、何が起きるかというと、30万全部その月のうちに、家族に送金したり、あるいは自分でキャッシュレス決済を使ってしまう場合は問題ないのかもしれませんけれども、どうしても残っていくということになりますと、それは事実上、滞留規制にも抵触しかねない問題に発展するのではないかとも考えられます。
そういうこともありますので、先ほど津村委員のほうから御指摘がありましたように、資金保全の点など様々異なるのですが、そもそも資金移動業者が預かるお金というのは、預金ではないのですよという大前提も含めて、きちんと労使の皆様方に厚生労働省のほうから周知していくことが必要なのかなと考えております。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○津村委員 ありがとうございます。
今、言われたような見解も含めて、より深く検討する必要があると思いますので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
次に、鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
先ほど池田委員が発言されましたけれども、私も資金移動業者の口座への賃金支払いは賃金受給者にとって選択肢が増えるものだと理解しております。賃金支払いは労使にとって最も重要で、かつ信頼の基本となるものでございますので、これからも丁寧に議論していく必要があると考えております。
だからこそ、使用者といたしましては、9ページにあるようなあらゆる場合で、賃金を振り込めないといった事情があったときに、事業主側が責任を負わないということを明確にすることや、回避先の口座をあらかじめ指定しておくなどの措置を講じることが制度化においては大前提だと思っております。
また、前回の分科会で出された資料のとおり、金融庁が所管する1階部分と、厚生労働省が所管する2階部分は論点を分けて議論していくべきではないかと思っています。もちろん1階部分というのは重要なことではございますが、本分科会においては、2階部分の労基法関係法令を中心に議論していく必要があるのではないかと思っております。
いずれにしても、実際に制度化されるとなると、企業実務に影響がありますので、企業実務に沿った形で丁寧な議論をしていくことをお願いしたいと思っています。
以上です。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 鳥澤委員、御指摘ありがとうございました。
まさに企業実務に沿った検討を今後も行っていきたいと思っております。
また、先ほどの9ページの(3)の部分、代替手段により支払うなどというのも、本人同意の際に併せて資金移動業者との間でも同時に契約を結ぶことも想定しつつ、迂回先の銀行口座のあらかじめの設定などを行っていくことが考えられますけれども、いずれにしましても、企業実務に沿って、何が必要なのかというのをあらかじめきちんと検討した上で、皆様方の御意見を頂戴していきたいと思っております。
御指摘ありがとうございます。
○荒木分科会長 次に、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
この問題については、再三申し上げておりますとおり、労働者の保護を大前提にしつつ、一方で多様な給与受取のニーズに応え、労働者の利便性を高める観点から議論を進めていくということが重要だと思っております。
既に社員の経費精算あるいは福利厚生の一環で、報奨金の一部の支払いにつきましては、資金移動業者のサービスが利用されております。導入企業における利用者の声として、「月に一度だけではなく、タイムリーにお金を受け取れるのでありがたい」、「スマートフォンのアプリから送金履歴を確認できて便利」、「経理業務がIT化して、働き方が進んだ」といったように、高く評価する意見が出ていると聞き及んでおります。
こうした幅広いメリットがあることを踏まえると、労働者の賃金受取の選択肢を広げる議論をこれからもしてまいりたいと考えております。
次に、労働者保護についてお話をさせていただければと思います。
資金移動アカウントにつきましては、ショッピングや飲食代の支払いのために、必要な額だけ一時的に送金・入金される性質のものです。実際、資料の21ページに記載がございますとおり、利用者の資金残高の9割以上が5万円未満という少額でございます。
毎月のショッピングをするという目的で、賃金の一部をそちらに振り替えるという利用方法を想定するのであれば、前回、分科会で示されました資金保全スキーム、すなわち、事業者が破綻した場合に最大6営業日までに100万円まで支払われ、その残りの部分については別途、供託金から支払われるという仕組みは、労働者保護として十分だと考えております。
さらに、セキュリティの不備による不正出金の補償レベルを事業者の間で統一することが重要だと思っております。インターネットバンキングの補償根拠となっております全銀協の申合せと同じ補償をすることを、2階部分の大臣指定の要件とすることが適切ではないかと考えております。
さらに本日、資料の14ページに示されました課題の3点目、換金性についてですが、手数料や単位の検討を必要としているという点は同感です。労働者の利便性の確保と、換金に際する資金移動業者の負担の両面を考えますと、出金単位は1円単位とし、かつ、月に一度程度無料で換金できるようにすることが必要ではないかと考えます。
最後に、先ほど仁平委員からも御指摘がございましたとおり、1階部分の資金決済法令に基づく規制の内容、あるいは登録を受けた事業者の実態についての質問がさまざま出てきたところでございます。
私からも次回以降の分科会におきまして、この制度を所管する金融庁にご同席いただくことを検討いただければと思っておりますので、重ねてお話をさせていただいたところでございます。
私からは以上です。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 鈴木委員、御指摘ありがとうございます。
今、鈴木委員からいただいた御指摘は、14ページの課題にのっとりますと、資金保全あるいは不正引き出し等への対応、換金性について具体的な制度設計の御意見をいただいたと受け止めております。ほかの方々からの御意見もあれば、併せてお伺いしたいなと思う次第でありますけれども、今後の議論の参考にさせていただければと思っております。
また、最後におっしゃいました金融庁の同席につきましては、先ほど仁平委員のほうからも御指摘がございましたので、分科会長と御相談し、対応を決めていきたいと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 八野委員、どうぞ。
○八野委員 2点ほどあります。
関連する意見ですが、セキュリティーの問題や、答弁の中でも指摘されていましたが、預金性はないけれども、一方で滞留に対する金額や期間の制限はまだないわけです。為替取引の送金1回当たりの規制はありますが、それらは資金決済法における問題であり、そういうことをクリアにしていかないと、安全性を確認することはできないと思っています。
先ほど、資料にもありましたように、多くの口座で滞留している金額は5万円未満だということですが、これは自らチャージして行っています。しかし、賃金支払いの口座ということになれば、滞留金額が多くなる可能性は十分あります。使用者が資金移動業者を選択することについても、どのような選択肢で見るのかというところもありますので、労基法と資金決済法の両方の関連の中で、労働側が懸念を持っている、特に安全性については、クリアにしていかなくてはいけないと思っています。
12ページに米国におけるペイロールカードの概要があります。先ほどVISAやMastercardのマークがついているという紹介がありましたけれども、実はここが重要なところで、VISAやMasterというのは、預金保険に加入する金融機関のみに同ブランドのカードを発行するライセンスを与えており、実はVISAやMasterがついているということについて見れば、そこで保全性が担保できているわけです。だから、安易にペイロールカードを進めているわけではなくて、保全が実はビジネスモデルの中であって、企業、労働者、それとカード会社、金融機関が絡んでいるのではないかと思います。
今回この資料をつくっていただいたのですけれども、特に規制に関しては、利用自体は禁止されている州はないとか、他の選択肢を提供することだとか、口座に関連する手数料や条件を利用者に開示するという3つしか挙げられていません。しかし、今、労働条件分科会の中でいろいろ課題になっていること、例えばペイロールカードを利用した場合には、利用履歴という個人情報の保護の規制はあるのか、ペイロールカードに滞留している資金の保全はどうなっているのか、破綻した場合の払い戻し、不正利用された場合の補償など、分科会で示された課題を比較資料として示していただければ、参考にする上で大変ありがたいなと思います。
以上です。
○荒木分科会長 事務局よりお願いします。
○賃金課長 大きく2点、御指摘があったかと思います。
まず、1点目の御指摘で、労基法体系のほかに資金決済法がもともと土台としてあるので、そこの部分をクリアにしていくということはまさに大事なことだと思っております。
滞留規制のことをおっしゃいました。滞留規制に関しましては、改正後の資金決済法におきまして、3類型に分かれるわけでございますけれども、低額型はそもそも5万を超える入金ができなくなるということで、物理的にも5万円以下となってございます。
また、高額類型のほうは、100万を超える送金ができる類型はあるのですけれども、あらかじめどこに送金するのか、送金日時や送金先、送金額などを指図していないと、そもそも入金ができないという仕組みなので、こちらはまさに滞留しようがない類型だと認識しております。
現行の類型、第2類ですけれども、こちらは100万円を超える入金自体はできなくはないのですが、ただし、100万円を超えるような滞留があった場合に、それまでの入金の状況やそれまでの出金の状況、あるいは利用者の利用の意図などを総合的に判断して、これは為替取引のためのお金ではないのではないかと判断される場合には、資金移動業者が利用者に対して払出しなどを促すといった態勢整備が義務づけられていると承知しております。
いずれにしましても、先ほど来、申し上げておりますとおり、ここの資金移動業者の資金移動アカウントが銀行口座と根本的に違っているのは、預金するところではないということがございますので、その点はきちんと認識した上で制度設計しなければいけないし、制度ができた場合には、その辺は労使に対してきちんと周知していかなければいけないと考えております。
2点目のアメリカのペイロールカードの規制等の実情なのですけれども、一次資料で確実なものでないと、私どものほうもなかなか資料として示せないという事情があり、御指摘いただいたようなものについて、どこまでさらに示せるかというのは、見てみないと分からない面がございますけれども、御指摘を踏まえて何か示せるものがあるかどうかを確認していきたいと思っております。
○荒木分科会長 ウェブ参加の安藤委員、お願いいたします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
資料No.2の11ページ目と12ページ目については、私の質問に御対応いただいたものだと思っておりまして、感謝しております。ありがとうございました。
11ページ目の③、労働者が望んでいないにも関わらず、使用者が資金移動業者のアカウントへの賃金支払を望む場合、これが本人同意の観点から一番課題かなと認識しておったポイントなわけですが、この点については、御回答いただいたのは、現金か○○ペイなどの2択にするようなケースを例示として挙げていただいております。私は、①や②と同じように、どのような理由なのかという意図のところが知りたかったのです。例えば本当にそういう例があるのかどうかは別として、資金移動業者がその会社の労働者に対して、または関連会社、グループ会社などにおいて、賃金支払いを現金かその会社がやっている○○ペイの2択にする。その意図としては、自社のサービスを使ってほしいとか、自社のサービスを普及させたい。利用者数の実績を上げたい。こういうことが目的であるというように、意図のところについて何か例示がされればと思っておりました。
今回御回答いただいたものでも、法律上、現金という選択肢はなくせないと思いますが、銀行という選択肢をなくして、現金と資金移動業者、それも資金移動業者としては選択肢が1つだけというものになったときには、これまで委員各位から御発言があったような「選択肢が増える」というものとは違うものになってしまうわけです。ここが大事だと私は思っております。
銀行という選択肢がこれまであったのに、それがなくなってしまうということがあったら、労働者からしては大層不便であると思います。こういう観点から、まずはお手数ですが具体的な制度設計案を事務局のほうで提示していただいたほうが議論を進めやすいのかなと感じております。
なぜかと申しますと、例えば労働者に対して、今でもできれば複数の選択肢を提示することとなっておりますが、これに、仮に資金移動業者のアカウントを追加するとしたら、銀行口座も必ず選択肢に入れるとすることが望ましいのか。とはいっても、活用が進んでいるアメリカでの実態、または日本でも今回の議論の発端で少し出てきた外国人の方などで銀行口座を持たない労働者というのもいるかもしれないですよね。そういう観点から、選択肢について、銀行口座は必ず入れることとするのが適当かどうかというところもなかなか悩ましいものがあると考えております。
そういうわけで、いずれにしてももう少し具体的に制度設計案があったほうが、こういう点に課題があるとか、こういう点が好ましい、というような議論ができると考えておりますので、可能であれば、御検討をお願いしたいと思っています。
以上です。
○荒木分科会長 事務局、お願いします。
○賃金課長 安藤先生、御指摘ありがとうございました。
そして、安藤先生の御意図を私どものほうで正確に受け止め切れずに、不十分な資料を提示してしまったかもしれないことにつきまして、おわび申し上げます。
先生が冒頭におっしゃったような事象がもし仮に起きてしまった場合は、まず、私どもとして注意しなければいけないと思いますのが、その資金移動業の社員であったにしても、その社員が設定する資金移動アカウントの性質は、預金をためるためのアカウントではないはず。資金決済法上は、これは為替取引のためのお金を入れる場所にすぎず、ということは、いずれ遠からぬ時期に、長く保管することなく出金や払出しなどをしなければいけない前提のアカウントのはずであります。それが、もし仮に全額資金移動アカウントのほうに給与を振り込むということになると、そういった点からも問題が生じると思います。
また、先生から御指摘いただきましたように、労働者の選択肢を増やすという意味では、言わば逆行してしまうおそれもありますので、本人同意が真意であることや、本人同意が適切になされる環境づくりという意味で、先ほど八野委員などもおっしゃったように、労働基準法体系や資金決済法上の体系でどのような違いがあるのかなども含めて、私どものほうが周知をしていかなければいけないのだろうなと考えております。
資料の御指摘もございましたけれども、次回以降もこの議論は続くのではないかと思いますが、どういう資料を出すのがより議論を促進できるのか、事務局としても検討していきたいと考えます。
御指摘ありがとうございました。
○荒木分科会長 佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
今、私も安藤先生の意見に本当に賛成なのですけれども、資料の7ページとか8ページに流れのイメージを明記していただいているのですが、あとは、支払いの場面の整理ということで、前々回、前回も申し上げたのですが、手数料等々が出てくるときに、どの部分に手数料が発生する機会が出てくるのか。それは、事業者によって、例えば7ページの中段の利用者の銀行口座、チャージ、利用者の資金移動アカウントがあって、店舗への決済が行われる。こういうルートで、業者によってまずチャージの段階でも手数料を徴収しようとする事業者が出てくるのか。その後、また店舗に入金される段階でも手数料が発生するのか、どこに手数料が生じるのかというのが私はまだ分からないものですから、明確にしていただき、安藤先生が言われたモデルをつくるのと一緒に、どこの場面に手数料が発生してくるのかということを明記していただくと分かりやすくなるかなと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 事務局、お願いします。
○賃金課長 まず、手数料の関係でございますけれども、銀行口座から別の銀行口座のほうに資金を移すときには、銀行は通常手数料を課しております。そういう意味では、7ページの図で申し上げますと、利用者が資金移動アカウントのほうにお金をチャージする際に、実際のお金の流れとしては、利用者の銀行口座から資金移動業者の銀行口座のほうにお金が移るということになりまして、これが自行の自店なのか、自行の他店なのか、あるいは他銀行なのかによってもまちまちでございますが、いずれにしても、まず、銀行側の手数料は生じ得ます。
同様に、資金移動業者の銀行口座から店舗の銀行口座に移るときも同様な手数料が生じ得るものでございます。
ビジネスモデル次第というのは、要するに、資金移動業者側がその銀行から生じる手数料を自腹で負担しているのか、それとも、どこかに転嫁しているのかということで違いが出てくると思われます。
去年の4月にまとめられた公取の実態調査によりますと、普通、利用者が自分の資金移動アカウントのほうにお金をチャージする場合、我々も日常的にチャージとかをするわけでございますけれども、普通、利用者には手数料は求められないのです。それはどういうことかというと、実際には銀行から手数料は求められているはずなのですが、資金移動業者のほうがかぶっているはずだと思われます。
他方で、資金移動業者側は、店舗のほうから手数料を取るような場合が多いということを去年4月の公取の調査には書いてあったように記憶しておりますので、私が説明のときにビジネスモデル次第と何回か申し上げるのは、銀行では確実に手数料は何らか発生しているはずなのですけれども、それをどの程度かぶって、どの程度、利用者の方に転嫁するのかというのが、ビジネスモデル次第だということなのかなと思っております。
○荒木分科会長 大分時間が押してまいりましたので、この議題は以上としたいと思います。
様々な御指摘がございましたので、次回、引き続き議論を続けてまいりたいと思います。事務局にはしかるべく準備をお願いしたいと思います。
それでは、議題(3)に移ります。「2019年度評価及び2020年度中間評価について」です。事務局より説明をお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
資料No.3-1「2019年度年度評価 評価シート」の1ページ目を御覧いただきたいと存じます。
労働条件分科会におきましては、2020年までの目標といたしまして、年休取得率70%、週60時間以上の雇用者の割合5%といったものを掲げてございます。
今、御覧いただいております資料No.3-1は、2019年度の実績のうち、②に関しては既に評価いただいておりますので、今回①の年休の取得率のところに関して評価をいただくことによって、2019年度の評価を終えるというものでございます。
1ページ目にございますように、年休取得率51.1、52.4と推移しましたものが、2019年につきましては56.3ということで、大幅に上がってございます。
その分析でございますが、3ページの中ほどから御覧いただきたいと思います。2019年度の分析でございますが、まず、その下5行ほどでございますけれども、以前の御議論の中で、働き方改革と労働生産性といった視点も必要であるという御指摘も頂戴しておりましたので、まず、働き方改革に関しまして、労働生産性の改善といったこと。さらには、長時間労働の是正、ワーク・ライフ・バランスといったことをまず確認として書かせていただきました。その上で、①でございますが、年次有給休暇取得率は、ただいま申し上げましたように56.3%と伸びておりますが、目標である70%まではまだ乖離があるところでございます。
今回、特徴的なものといたしまして、年休の計画付与に関しまして、2018年調査では22.2%でありましたが、今回、2019年調査では43.2%と倍増近く伸びているところでございます。
口頭で恐縮でございますが、さらに中身を御紹介します。平成31年(令和元年)の調査の段階ですと、年休の計画付与の労使協定がある場合で、その対象となる日数、1~2日が14.6%、3~4日が21.8%、5~6日が39.6%となっておったのですが、令和2年でありますと、5~6日が66.6%ということで、山がここに集中をしておりまして、それ以下、1~2日が8.1%、3~4日が8.4%となっております。
この統計では、計画付与を導入した理由は聞いておりませんので、あくまでこうしたデータからの推測ということにはなりますが、今、申し上げましたような計画付与を導入した企業が増えているということ。さらには、対象日数も増えているといったことが全体としての底上げになっているのではないかと思われます。
底上げの契機が3ページに書いておりますように、ちょうど2019年4月から、働き方改革法の年休に係る部分が施行されておりまして、年5日について時季指定の義務といったものが施行されております。そういったものに対応していくというような視点も含めまして、この計画年休の利用が増えて、それによる取得率の増加といったものではないかと分析をしているところでございます。
4ページでございますけれども、以前御議論いただきましたときに、業種別や企業規模別などに関しても分析をという宿題がございました。例えば宿泊、飲食、卸、小売、建設など、取得率が5割を切っている産業もございますが、いずれの産業におきましても取得率は上昇傾向でございまして、特にここ2~3年、上昇が続いております。
また、企業規模で見ましても、規模が小さいほど取得率が低くなっておりますが、小規模でございましても着実に伸びているというところでございます。
続きまして、資料No.3-2「2020年度中間評価 評価シート」の1ページを御覧いただきたいと思います。こちらは、2020年度の中間評価で、①の年休はまだ出ておりませんので、②の週労働時間60時間以上の雇用者の割合でございます。目標が5%まで下げるでありましたが、6.9、6.4が5.1まで下がっているというところでございます。
分析は4ページにございます。下のほう、②の部分でございますけれども、ただいま申し上げましたように、5.1%となっておりまして、政府目標の5%にほぼ近づいたところではございます。以前の御議論といたしまして、週労働時間40時間以上の者に限ったデータでも見るべきであるという御指摘がございました。書いてございますけれども、週40時間以上の雇用者に限りますと9.0%でございまして、前年よりは下がっておりますが、5%よりは高くなっているところでございます。
しかしながら、2020年、新型コロナウイルスの影響が出ておりますので、この5.1%といった数字の見方には注意が必要であるとは考えてございます。
次、5ページでございますけれども、「また」というところに書いてございますように、勤務間インターバル制度の導入といったものも引き続き有効であると思いますし、「加えて」にありますように、特に長時間となっているような事業場に対しての監督指導といったものも必要であると考えているところでございます。
お時間の都合もございますが、ごく簡単に参考資料No.4を御紹介したいと存じます。
1ページ目は、これまでいただいていた御意見で、今、触れた部分も含まれておりますが、めくっていただきまして、2ページは産業別の年休の取得率ですが、3ページのほうにグラフ化しております。3ページ目は産業別の取得率の推移でございますが、先ほど申し上げましたように、ベースとして低くなっている産業もございますが、傾向としては全て右肩に上がってきているというような状況にあるというところでございます。
続きまして、4ページは取得率を企業規模別に見てございます。1,000人以上に関しては60%を超えて63.1%でございます。一方で、30~99人につきましても、2016年は40%台だったものが50%を超えるというところまで来てございますので、こういったトレンドを続けていけることが重要であると考えてございます。
5ページは週60時間以上の雇用者の割合でございます。一番右側の列に産業別の割合が出てございますけれども、高くなっている部分が3つございまして、1つが建設業7.9%、2つ目が運輸業、郵便業の13.0%でございます。この2つは時間外労働の上限規制が、業務の特性なども踏まえまして5年間施行が猶予されているといったところでございます。建設業に関しましては、業所管省庁におきましても適正な工期設定の取組などを進めておりますし、運輸業に関しましても、例えばトラックの荷主と運送事業者等、取引環境の適正化、あるいは当分科会におきましても専門委員会におきまして、改善基準告示の見直しなど、御議論いただいているところでございます。
もう一つ高くなっておりますのが、下から4番目の教育、学習支援の8.1%であります。こちらにつきましても、文部科学省のほうで学校教員の働き方改革などを進められているというところでございます。
一方、左側の列、実数で見ますと、下から3つ目、医療、福祉の22万人で、割合としては少ないのですが、結構ございます。医師の働き方改革も今、進めておりますけれども、そういった医師の方などがここに入ってきているということで、こういったデータは割合で見ることも多いのですけれども、実数で見て、さらにそれが何なのかといったものも今後より丁寧に見ていく必要があると感じているところでございます。
以上を踏まえまして、資料No.3-2の最後の5ページに戻っていただきたいと思います。
今後の方針というところでございます。今、申し上げましたように、働き方改革関連法が施行された部分の効果も出てきておりますが、これから施行されていく部分もございますので、まずはそういった制度をきちんと進めていくことが大前提であると思います。
一方、最後にデータで見ましたように、制度の問題もありますけれども、それぞれの様々な労働現場におきまして、いろいろな事情などがあると思います。そういったものを踏まえまして、より丁寧に働き方改革推進支援センターや様々な助成措置といったものを絡めていくことによりまして、健康確保、ワーク・ライフ・バランス確保といったものを進めていきたいと考えるところでございます。
最後でございますが、これまで2020年までの目標ということで進めてきてまいりましたが、2020年度が間もなく終わります。2021年度以降の目標をどうするかということでございますが、これは先ほど参考資料No.4の1ページ目の一番下にも掲げさせていただいてございますが、これまで当分科会の中におきましても、例えば過労死防止大綱における数値目標など、様々なものとの整合性を踏まえて設定していくべきであるという御議論も頂戴しております。したがいまして、今後の新たな目標値に関しましては、そういった他の取組における目標設定の状況なども踏まえまして、改めて労働条件分科会の場で御議論いただくようなことにしてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。
八野委員、どうぞ。
○八野委員 説明、どうもありがとうございました。
資料No.3-1、3-2についてですけれども、2019年度の評価のうち、年休取得率の実績は上がってきていると言いながらも56.3%と、2020年度までの目標である70%とは大きな開きがありますので、そこは厳しく受け止める必要があるのだろうと思います。
先ほど説明の中で、2020年の中間評価の、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を見たのですが、こういう労働統計を見るときに感染症の影響をどう考えるのかというところは一つ重要なところだと思いますので、そこは指摘しておきたいと思います。
2つの目標に共通することですが、参考資料No.4にあるように、年休取得率や労働時間というのは、産業、業種、企業規模でかなり異なりますので、全体的な底上げをやっていくことと同時に、改善の進んでいないところについての要因の洗い出し、また、業種、業態等の特性に応じた対策を重点的に行っていくことが重要だろうと思います。
先ほど運輸産業の話がありましたが、行政だけではなく当該労使で取り組んでいるところもありますので、こうした取組を、他の産業でも参考にして広げていただきたいと思います。
今、最後にありましたように、新たな目標を設定するということなのですが、目標だけが独り歩きしても仕方がないので、目標を設定するだけでなく、実現のためにどうしていくのかという方策を考えることが重要だと思います。
また、先ほどもありましたように、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」をはじめとして、いろいろなところで目標が出ているわけですが、労働政策全体としてどういうふうに取り組んでいくのかという視点が、これから重要になってくるのだろうと思いますので、再度、それについても検討をお願いしたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
山内委員、どうぞお願いいたします。
○山内委員 使用者側の山内です。
すみません、職場の消灯時間になったので、画面が非常に暗くなって申し訳ないです。
いただきました御説明の中で、私から3点申し上げたいと思います。
2点は、労働時間に関してでございます。御説明いただきましたように、各企業とも働き方改革の一環でいろいろな取組を進めている中であります。その中でまず1点、現在、テレワークの推進において、押印業務の見直し、あるいはペーパーレスを各企業は進めているところであります。つきましては、現在、官庁でも進めていただいている労働関係法令に基づく各種手続の押印廃止、これはぜひとも完遂いただくようにお願いしたいということが1点でございます。
もう一点、2つ目は、同じく労働時間でございます。先ほどの労働時間60時間以上の雇用者の割合の中での実績を見れば、政府の目標に近い数字に達しているのも事実でございます。分析のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、働き方改革を継続していく必要があるものの、経団連のほうで昨年実施した労働時間実態調査によれば、行政機関等の取引において建設業や製造業を中心に、自社の従業員の長時間労働につながる取引がある、いわゆる行政機関との取引の中で、労働時間が長くなることにつながるものがあると答えたのが約3割に上っているのが実態でございます。
具体的には、翌朝一番での資料提出を求められるであるとか、見積りの提出期間が極めて短い、あるいは契約外の説明資料の提出を求められるといったものが実態として上がっております。建設業や製造業は週の労働時間60時間以上の雇用者の割合、官公庁取引における長時間労働につながる商慣行の見直し、これにつきましても、引き続きぜひとも対策を講じていただきたいというお願いでございます。
最後の1点は年休に関してでございます。先ほど21年度の目標の設定ということを検討していただいているというお話をいただきました。20年度の実績は新型コロナウイルス環境下で非常に特異であったと理解しております。本来、郵便局に行くとか、お子さんのお迎えに行く等で半日年休を取っていたものが必要なくなったりとか、一方で、むしろ年休の必要性が増したりとか、業種、職種によって様々な状況だったと思います。
この辺を踏まえた分析・評価をぜひともお願いしたいという内容でございます。
私のほうからは、以上3点でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
司会の不手際で時間外労働状態になっておりますが、事務局から一言お願いします。
○労働条件政策課長 恐縮でございます。
今、八野委員、山内委員からいただいた点をよく踏まえて、また引き続き今後の分析に生かしていきたいと思います。
あと、先ほど説明が漏れましたが、今、頂戴いたしました意見をこの評価シートの分科会委員の意見の欄に明記することによりまして、評価を終えたいと思ってございます。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、時間が超過しておりますが、以上で今日用意した議題は終了となります。
次回の日程について、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
次回の日程、場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 時間を超過いたしまして、大変失礼いたしました。
以上で本日の分科会は終了といたします。
どうもありがとうございました。