2021年3月8日 第6回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ 議事録

政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和3年3月8日(月)10:00~11:10

場所

オンライン会議

出席者

構成員(五十音順、敬称略、◎:主査)
  •  臼井 恵美子
  •  大久保 一郎
  •  小塩 隆士
  • ◎加藤 久和
  •  小山 泰代
  •  津谷 典子
  •  樋田 勉
構成員以外の関係者
  •  西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)
  •  大岩 洋(千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
  •  川村 七海(埼玉県保健医療部保健医療政策課
  •  保健所・衛生研究所・県立大学担当主事)
事務局
  •  鈴木政策統括官
  •  村山政策立案審議官
  •  武藤参事官(企画調整担当)
  •  細井世帯統計室長
  •  奥垣統計企画調整室長
  •  大野審査解析室長
  •  川田世帯統計室国民生活基礎統計専門官
  •  寺坂審査解析室総合解析係長
  •  田中 宗明(みずほ情報総研株式会社)

議題

  1. 1.国民生活基礎調査の推計方法の見直しについて
  2. 2.国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ報告書(案)について
  3. 3.その他

議事

議事内容
○奥垣統計企画調整室長
ただいまから、「第6回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ」を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日は、全ての委員の方に御出席いただいております。
また、本日は、審議協力者といたしまして、早稲田大学政治経済学術院の西郷先生、埼玉県保健医療部保健医療政策課の川村主事、千葉県健康福祉部健康福祉指導課の大岩班長にも御出席いただいております。なお、今年度より本ワーキンググループの資料作成等について、みずほ情報総研株式会社に委託しており、事務局として田中が参加しておりますので御了承ください。
それでは、以降の進行を加藤主査にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
 
○加藤主査
おはようございます。皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。早速ですが、第6回ワーキンググループの議事を進めてまいります。1つ目の議事は、「推計方法の見直しについて」です。事務局より、資料1について御説明をお願いいたします。
 
○細井世帯統計室長
おはようございます。世帯統計室長の細井です。早速ではございますが、第5回ワーキングでの各委員からの御意見に対する回答について御説明をさせていただきます。資料1の3ページに、各委員からの御意見をまとめておりますので御覧ください。前回のワーキンググループでは、ブートストラップ法による1世帯当たりの平均所得金額の検証についてお諮りさせていただいたところですが、御意見といたしまして、平成21年所得の新推計2におけるブートストラップ標本の平均所得と元の標本の平均所得でかい離が生じている点について、推計方法に偏りがなければ、ブートストラップ標本の平均所得は元の標本の平均所得に近くなるはずであり、シミュレーションの繰り返し回数が200回と比較的少ないことに起因する偶然的なかい離であるかどうかを今一度、確認すべきではないかとの御意見がありました。
4ページを御覧ください。そこで、平成21年所得の現行推計、新推計2及び新推計3について、ブートストラップ法によるシミュレーションの繰り返し回数を2,000回と大幅に増加し、再度ブートストラップ標本の平均所得と元の標本の平均所得を比較したところ、新推計2のかい離の縮小は見られず、依然として平成21年所得の新推計2のみ、かい離が大きい結果となっております。
5ページには、今回の結果を用いて、平均所得分布と散布図を掲載しておりますが、反復回数を増やして検証した結果においても、分布の傾向は変わらないことが見て取れるかと存じます。御説明は以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございました。事務局から、前回のワーキンググループで何名かの委員の先生から頂いた御意見に対する回答について御説明を申し上げましたが、委員の皆様、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。ミュートを外してお話しいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。ブートストラップ2,000回という形で再試算していただいて、なかなか真の値が分からないところもありますが、基本的に大きな違いがないということです。いかがでしょうか。
 
○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
西郷ですが、発言してよろしいでしょうか。
 
○加藤主査
よろしくお願いします。
 
○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
御説明どうもありがとうございます。また、シミュレーションもかなり大規模にやり直していただいて、ありがとうございました。結果的に、200回での繰り返し数でやった結果と大差がなかった。つまり、新推計2の特定の年次については、元の標本で計算した平均所得とブートストラップ標本の平均とがかい離していた。かい離の度合いが大きいか小さいかというのは、見方によるという面もあるかとは思いますが、ほかの年度、推計方法と比較すると、理屈どおりというか、本来偏りのない推計が行われているようだったら、一致すべきものが一致していなかったという結果が出ていることなので、何かしら系統的な原因があるのではないかと感じます。現時点で、どういうことが原因でこういうかい離が起きてるのであるという説明というか、理由がまだ分かっていないのですが、新推計2に関しては、かなり気を付けて使わないと。もし使うとすれば、かなり気を付けて使うべき方法と整理できるのかなと思います。少なくとも、かい離の原因が何かということが突き止められるまでは、まだまだ検討を要するというように、今回シミュレーションをやり直していただいた結果は、そのようなことを示唆しているのかと感じました。以上で、意見というよりは感想に近いものですが、私の意見を述べさせていただきました。
 
○加藤主査
西郷先生、ありがとうございました。コメントということでよろしいですか。
 
○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
特に返事を求めるとか、そういうものではありませんので、コメントと御理解していただいて構いません。
 
○加藤主査
ありがとうございます。ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。
 
○小塩委員
小塩です。私も同じような印象を持ちました。ブートストラップをやったときに、元の標本の平均所得と同じになるのが本来の姿ですので、それと違ったことが起こっているのは、少し気になるところではあります。
実は、これから御説明があるかとは思うのですが、資料の29ページ、図表3-10に各推計方法別の1世帯当たり平均所得金額の年次推移、グラフがありますが、これを見ても、平成21年だけ変わった現象が起こっています。ほかの年は、それほど変な姿を見せていない。ブートストラップもほかの年はかい離がないということですから、推計方法に問題があるというよりも、平成21年だけデータ上で何か単純なミスというか、違いがあるのではないか。それが起因しているのではないかという気がします。少し気持ちが悪いので、もし時間があれば、引き続き原因を解明していただければ有り難いと思います。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございました。
 
○寺坂係長
事務局の寺坂と申します。今の件について、現状考えられる可能性の1つとして御説明いたします。新推計2は、所得票の有効回答率の逆数により、各層の重み付けを行っております。そのため、回収率の低い層は拡大乗数が大きくなります。平均所得が低い若年の単独の世帯やひとり親の世帯などは、回収率が低くなっている可能性があるかと思っているのですが、この場合には、平均所得の低い層の拡大乗数が大きくなる可能性があります。ブートストラップ標本の大きさは、報告書案に記載している式で算出しているため、元の標本の大きさから多くの場合は1小さくなっています。そのため、元の標本にあったデータの一部が抜け落ちることになります。また、ブートストラップ標本を抽出する際には、重複を許して抽出をしております。
これらの理由により、平均所得が低くて回収率の低い層は、抽出をされない場合があります。低所得・低回収層の有効回答数がゼロになった場合は、セル落ちという形になりますので、低所得・低回収層に割り振られるはずであった拡大乗数が、残りの層に分配されることになります。残りの層は恐らく低所得・低回収層よりも平均所得が高くなりますので、低所得・低回収層がなくなる一方で残りの層の拡大乗数が更に大きくなる形になると、ブートストラップ標本の平均所得が高くなる場合があるかと考えております。
これはきちんと確認をして集計しているわけではないのですが、21年には、所得票の単位区が1,900種類くらい存在しています。このうち単位区で見たとき、標本の大きさに起因する脱落も含めて、700単位区くらいが当たっていない、要するにブートストラップ標本は、もともと1,900種類くらいあった単位区のうち1,200種類くらいのみで作られている状態になっているようです。また、実際の拡大乗数が作られる単位である層別、即ち年齢階級と世帯構造別、21年では都道府県も含みますが、この層別に見た場合でも、ブートストラップ標本の1番目から50番目の標本の範囲で、大体700セルくらいセル落ちが発生をしている可能性があるかと見ています。ですので、この部分が原因になっている可能性があると思っています。
そういう意味では、後からで申し訳ないのですが、ブートストラップ法でやるというよりは、全部1単位区ずつ落としていくようなジャックナイフ法等でやったほうが、より正しく評価できる結果が出てきた可能性はあるかもしれないとは思いました。ここはきちんと確認ができているわけではないので、現時点で考えられる可能性の1つということで御理解いただければと思います。
 
○加藤主査
ありがとうございました。小塩先生、よろしいですか。ほかにございますでしょうか。もしなければ、1つ目の議事は、以上とさせていただきたいと思います。すみません、通信障害がありまして先生方にご迷惑をお掛けいたしました。
2つ目の議事に移ります。2つ目の議事となる「国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ報告書(案)について」ですが、事務局において資料を作成していただいていますので、事務局より御説明を頂いた後、当ワーキンググループとして報告書の取りまとめを行いたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。それでは、資料2について御説明をお願いします。
 
○細井世帯統計室長
それでは、報告書(案)について御説明をさせていただきます。資料2、通し番号では6ページを御覧ください。令和元年6月以来、本ワーキンググループにおきまして、約2年間にわたり、検証・検討いただいた結果について、報告書(案)を作成させていただきました。
8ページ、目次を御覧ください。本報告書は、4部構成で作成しており、巻末に参考資料として、本ワーキンググループの設置要綱、開催実績などを掲載しております。
ローマ数字1はじめにでは、国民生活基礎調査の目的をはじめ、ワーキンググループの設置経緯、検討課題などを記載し、ワーキンググループにおける議論を踏まえて、本報告書を取りまとめた旨を記載しております。次に、ワーキンググループで御議論いただいた大きな柱があります。2オンライン調査導入と、3推計方法の見直しについて、検証・検討に用いた資料を含めて整理をさせていただいております。そして、4のまとめにおいて、今回のワーキンググループにおける検証・検討の結果を記載させていただいております。
それでは、ページに沿って報告書の内容を御説明させていただきます。10ページ目は、先ほどの御説明と重なりますので省略させていただきます。
11ページ目、オンライン調査の導入についてを御覧ください。検討の背景と課題についてですが、オンライン調査の導入については、政府統計全般における基本的な方針としてその推進が進められておりますが、国民生活基礎調査においては、国民生活の基礎的事項を幅広く把握をしており、大規模調査年においては、5種類の調査票を用いて、6月には世帯票、健康票、介護票を保健所経由で調査をしておりまして、7月には所得票、貯蓄票を福祉事務所経由により調査をしております。このような調査方法や、国民生活の幅広い調査事項の把握など調査としての特殊性から、容易にオンライン化になじむとは言い難い面もありまして、これまでオンライン調査の導入についての実現には至らなかったということがございます。今回は、2019年の調査計画の答申課題を受けまして、回収率の更新を図る観点から、導入について御検討いただきました。
検討の方向としましては、大きく2つ考えられ、1つは、「現行の調査方法を基本としてオンライン化を図るのか」、それとも、「5種類ある調査票の再編や調査時期・調査系統の一元化などを抜本的に調査方法を見直した上で、オンライン化を図るべきか」という点でございました。
そこで、今回のワーキンググループでは、12、13ページにありますとおり、調査票の再編、調査時期・調査系統の一元化や、2つの調査方法の比較を整理した上で御検討いただきました。
その検討のまとめを14ページに記載させていただいております。オンライン調査の導入に当たっては、5種類ある調査票の再編、調査時期・調査系統の一元化などを抜本的に見直した場合、多くの時系列情報が失われて、厚生労働行政における政策上の重要なトレンド等が観察できなくなるおそれがあるということや、調査計画の大幅な見直しに伴う各種手続や調整に時間を要するということになり、その結果、オンライン調査の導入までに相当の期間が見込まれるというようなデメリットがあります。
このことを踏まえますと、導入に当たって留意すべき点として、国民の重要な情報基盤となっている公的統計につきまして、調査事項の削減により時系列情報が欠落することなどは、公的統計として品質低下を招くというものとなりますことから、2022年調査からの導入には、現行の調査方法を基本としつつオンライン化を図るべきであるという点。また、システム構築に当たっては、コスト意識を念頭において、既存の政府統計共同利用システムを活用すべき点。さらに、本来であれば、試験調査を経て課題解消をしてからの導入が望ましいわけですが、コストや時間的な制約がありまして、今回、試験調査ができなかった中で、2022年の大規模調査年からの導入に踏み切るためには、本調査の特殊性やオンライン調査の導入による予見できない要素によるリスクも想定されますことから、2022年調査は、一部の調査地区から先行的に実施すべき点。また、紙の調査票とオンライン回答用のIDの配布につきましては、本調査が6月、7月に調査を実施するスケジュールとなっているため、実査期間を十分に確保する必要性があること、そして、調査事務負担を極力抑えるという観点からも、同時配布方式とすべきではないかという点をまとめさせていただいております。
15ページを御覧ください。こちらでは、オンライン調査の実施に当たって考慮すべき点として5点を挙げさせていただいております。1つ目は、電子調査票の開発は、報告者負担を考慮した設計とすべき点。2つ目は、調査関係機関と報告者双方の負担軽減を十分に検討して、地方公共団体の御協力を頂けるように丁寧な説明を行うべき点。3つ目は、報告者や調査員に対してアンケートを実施して、課題を把握すべき点。4つ目は、オンラインと紙の調査票の両方の回答があった場合にどちらを有効とするのか判断基準を作成すべき点。5つ目は、同時配布方式は回収率が低下するというような研究もあることから、回収状況のモニタリングをすべきという点を記載させていただいております。
16、17ページには参考として、政府統計共同利用システムの概要とオンライン調査の実施手順を掲載しておりますが、説明は省略させていただきます。
次に18ページを御覧ください。ここからは、推計方法の見直しについてです。まず、背景と課題ですが、答申課題とともに前研究会である「国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会」で検討した国勢調査を利用した推計方法と採用できなかった問題点を整理しております。
19ページを御覧ください。前研究会で課題があった国勢調査の結果に代わるベンチマークがないかを検討したところ、国立社会保障・人口問題研究所が公表しております「日本の世帯数の将来推計」の全国推計と同じく都道府県別推計が類似したベンチマークとして候補に上がりました。前研究会の課題が解消されることが期待されますことから、本ワーキンググループでは、これらのベンチマークを利用した新たな推計方法の検証・検討を行うとしたことを記載しています。
次に、20ページを御覧ください。ここでは、「日本の世帯数の将来推計」の特徴と新推計に当たっての課題を整理するとともに、その課題につきまして、御覧のように、都道府県別推計値がない年次における層別推計世帯数の算出方法、指定都市別の層別推計世帯数の算出方法、21ページに記載していますが、国民生活基礎調査の表章に必要な世帯構造区分等の推計世帯数の算出方法、そして、世帯主の年齢階級「不詳」の推計世帯数の算出方法について整理した内容を記載させていただいております。
その整理を踏まえまして、新たな推計方法として考えたものが22ページの新推計1となります。推計方法につきましては、22ページ、23ページに掲載したとおりでして、この結果、24ページにあるように、新推計1による集計結果と国勢調査等との比較を行った項目を記載しております。
その結果、25ページにまとめましたように、現行推計と比較しまして、新推計1では世帯票の多くの項目が国勢調査に近付きましたが、仕事の有無や雇用形態につきましては、かい離が残ることなどが確認できました。一方で、世帯票において「父子世帯」が国勢調査に比べて過大推計となることや、所得票及び貯蓄票において、現行推計と比べて新推計1は平均所得が大きく減少する等の変化が見られましたが、所得票では、世帯票のように真の値とみなせる国勢調査のような指標がないために、推計方法の良否を判断することができないという課題が残りました。
26ページを御覧ください。次に、新推計1において、父子世帯が過大推計となる課題が残り、その原因を検討しましたところ、父子世帯の推計に用いた拡大乗数が原因ではないかと考えられ、図表3-5にありますような「ひとり親と未婚の子の世帯」の拡大乗数の作成区分を整理して検証したものが新推計2となります。
新推計2につきましても、新推計1と国勢調査等との比較を行い、その結果、27ページにまとめましたように、新推計1に見られた世帯票の父子世帯の過大推計の改善や、父子世帯以外の新推計2と新推計1の差はほぼ見られず、また、現行推計と比較すると新推計1と同様に、所得が大きく減少するなどの変化が確認できました。
なお、現行推計に比べて新推計2で所得が大きく減少した要因としては、平均所得が低く回収率も低い若年の単独世帯やひとり親と未婚の子の世帯の影響が、有効回答率で重み付けを行う新推計2の手法により、大きくなったためであると考えられ、一方で新推計1と同じく、所得票に対する評価方法がないことや、層別のウエイトにばらつきがあり、特に所得票及び貯蓄票について推定精度の低下の原因になり得るなどの課題が残りました。
28ページを御覧ください。新推計2における課題を踏まえて、所得票、貯蓄票にポイントを絞って28ページに記載している推計方法のとおり、調整係数を別の方法で作成する方法として検証したものが新推計3となります。
29ページを御覧ください。新推計3につきましても、新推計2と現行推計との比較を行いまして、その結果、新推計2と比較すると、平成26年所得が増加するなど変化が確認されましたが、一方で新推計1、新推計2と同様に、所得票に対する評価方法がなく採用するべきか否かが判断できない課題が残りました。
30ページを御覧ください。所得票における新推計2や新推計3をどのように評価するかという課題につきまして、推計値を評価することができる指標がないために、これに代わり、推計値の直接の指標とはなりませんが、ブートストラップ法による評価を行いました。その結果、分散の大きさの観点からは新推計2が優れている一方で、ブートストラップ平均所得と元の標本の平均所得や平均二乗誤差から見える安定性の観点からは、新推計3や現行推計が優れていると評価できるという点。また、新推計2や新推計3の平均所得が現行推計方法のものと比べて変化したことから、過去の調査結果と比べる等の継続性の観点からは、現行推計が優れていると評価できる点があり、そのようなことからも、今回のブートストラップ法による検証からは、新推計2又は新推計3のいずれかの方法を採用するべきという積極的な根拠は得られなかったと考えられることをまとめさせていただきました。
次に31ページを御覧ください。推計方法の見直しにかかるまとめを記載しております。(1)の各票の確認結果につきましては、これまでの説明と重複する点がありますので御説明は省略させていただきます。
(2)では、推計方法の見直しに当たって考慮すべき点をまとめています。第一として、本調査の結果は、政策判断をする際の指標として活用されていることから、遡及改定も含めて推計方法の見直しの時期を検討していく必要がある。第二として、新型コロナウイルス感染症は、世帯の経済状況、個人の健康状態などに影響を与えると推察できることから、こうした状況下で推計方法を見直すと、当該調査結果と過去の調査結果の間の変化が、推計方法の見直しによるものなのか、新型コロナによる影響なのかが判別できなくなるので、十分考慮する必要がある。そして、第三としまして、オンライン調査による影響が、新型コロナ同様にどのように調査結果に影響を与えているのか判別ができなくなるおそれがあるということから、こうしたことも十分考慮する必要があるという、以上の3点をまとめております。
(3)の結論につきましては、最後のまとめの所で御説明をさせていただきます。
次に、33ページから105ページの資料ですが、こちらは今回のワーキンググループの検討で用いた資料を掲載しておりますので、御説明は省略させていただきます。
最後に106ページを御覧いただきたいと思います。こちらでは、本ワーキンググループにおきまして検証・検討いただきました統計委員会答申の課題であるオンライン調査の導入及び推計方法の見直しについてのまとめです。こちらについては内容を読み上げさせていただきます。
(1)オンライン調査の導入。現行の5種類ある調査票の再編や調査時期・調査系統の一元化など抜本的に調査方法を見直した場合、調査事項の大幅な削減によって、多くの時系列情報が失われ、厚生労働行政における政策上の重要なトレンド等の観察ができなくなるおそれがあること、また、調査計画の大幅な見直しに伴う各種手続や、省内関係部局・調査関係機関等との調整など、オンライン調査の導入までに相当の期間を要することが見込まれることから、まずは、現行の調査方法を基本としつつオンライン化を図るべきである。なお、オンライン調査における予見できない要素によるリスクも考えられるため、令和4年調査は、一部の調査地区から先行的に実施すべきである。また、調査の実施方法については、実査期間を十分に確保する必要があるオンライン回答先行方式を適用するのは困難であるため、同時配布方式にすべきである。
(2)推計方法の見直し。世帯票、健康票及び介護票の推計方法の見直しについては、新推計2は新たな推計方法として有力ではあるが、採用する時期等については慎重に検討していく必要があり、新型コロナウイルス感染症やオンライン調査の導入の影響等も考慮する必要がある。所得票及び貯蓄票については、現時点で新推計2又は新推計3を現行の推計方法に変えて採用する積極的な根拠がなく、現行の推計方法を継続することが妥当であると考えられる。一方で、新推計2及び新推計3については、課題が解決できれば新たな推計方法として採用できる可能性もあり、引き続き検討を行っていくことが必要であると考えられる。また、所得票における評価方法を確立することは今後の重要な検討課題である。
以上のように報告書(案)をまとめさせていただきました。私からの御説明は以上です。
 
○加藤主査
どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様に、報告書(案)の内容について御議論を頂きたいと思います。非常に大部な報告書でもありますので、オンライン調査の導入と推計方法の見直しという2つの章に分けて御議論を頂ければと思います。
まずは、2のオンライン調査の導入についてです。資料の11ページから17ページにかけて記載がありますが、特に14ページのまとめに関する部分を中心に御質問を含めて、委員の皆様から何かありましたらお願いいたします。ミュートを外して御発言を頂ければと思います。
 
○津谷委員
津谷です。内容はこれで結構だと思います。非常に丁寧かつ具体的な説明がなされており、統計委員会の基本計画に示された今後の課題への回答として、部分的に一部先行での導入とはいえオンライン調査を導入するということで、きちんとした前向きな回答になっていると思います。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございました。ほかに、先生方いかがでしょうか。
 
○小塩委員
私もこの方向で大変結構かと思います。ちょっと注意していただきたい点が1つあります。というのは、私たちも大学でオンライン調査を行うことが多く、そのときにスマホで回答していただくことが多いのですが、回答しないと次のページに行かないという仕掛けをしていて、それで無回答が少なくなるという傾向があります。それは1つの工夫ですが、オンラインによって人々の回答の仕方が変わってくると思うのです。そうすると、後で集計するときに、オンラインで回答した人と紙で回答した人の回答のスタイルが違ってくると思うのです。それが、どのように変わってくるかはやってみないと分からないのですが、ちょっと注意しておく必要があります。何も工夫しないで、一緒にそのまま集計していいのか、ちょっと気になります。ですから、少なくとも集計した後に、回答のスタイルに違いがあるかをチェックしておく必要があると思います。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございます。
 
○津谷委員
小塩先生の御意見にセコンドしてよろしいでしょうか。
 
○加藤主査
お願いいたします。
 
○津谷委員
これは、社会調査法で俗に言うモードイフェクトというものです。つまり、同じ調査票を使っていても、調査方法によって回答に影響が出るかもしれないということです。今回の調査では、一部の調査区で先行してオンライン調査を導入することになりますので、調査方法の違いによる影響を確認する必要があります。このためには、何らかのフラグとしての変数が必要で、この人はオンラインで回答したのか、それとも紙媒体で回答したのかということを示す変数を付け加える必要があります。このデータは必ず収集されると思いますが、調査方法によって回答の傾向に有意な差が出ていないのか、もし出た場合には、なぜ出たのかということについて、調査で収集されるいろいろな基本的属性から分析ができると思いますので、そのような分析を追加されることを願っております。以上です。
 
○細井世帯統計室長
貴重な御意見をありがとうございます。回答の違いのチェックについては、データとして紙調査票とオンライン調査の区別がつくように、フラグを立てるようにして、分析ができるようにしたいと考えております。調査をした後に、その違いについて内容をチェックして、分析につなげていきたいと思います。
 
○加藤主査
ありがとうございました。よろしいでしょうか。大久保先生、お願いします。
 
○大久保委員
横浜市の衛生研究所の大久保です。内容については、特に問題ないと思います。一部の調査地区から先行的に実施するということですが、これは何か具体的にどこだとか、どういう条件が整っている所だとかというのは、今は事務局としてお考えはあるのでしょうか。
 
○細井世帯統計室長
まだ、どこの地区を実施するというところは、これから地方公共団体の皆様と御相談をするという点があります。1つは、若年・単独世帯の捕捉率が下がっているのではないかという御指摘もあることから、そうした世帯が多く出現する地区を選定して、調整をしていこうかと現状では考えております。
 
○加藤主査
よろしいでしょうか。ありがとうございます。ほかに御意見、御質問等はありませんか。
 
○臼井委員
オンラインに関しては、私も皆様と同じで結構と思います。オンラインでのアンケートにおいて、高齢や母子家庭の方たちの回収率をあげることを考える場合、回答者がパソコンを持っているか、スマホを持っているか、あるいは、使えるのかが影響してくると思います。こういう点に対応するために、何か考えていらっしゃるのでしょうか。
 
○細井世帯統計室長
本調査は、調査員調査を実施することを基本としております。今回は、その回答方法の1つとして、オンラインによる回答もできるような形にしたいというものです。先ほど先生が御指摘をされたパソコンがない世帯においては、その点は紙の調査票で回答していただくということになるかと思いますが、調査員によるサポート又は今回はコールセンターを設置することとしておりますので、コールセンター対応によるサポートを行っていきたいと考えております。
 
○加藤主査
臼井先生、よろしいでしょうか。
 
○臼井委員
はい、ありがとうございます。
 
○加藤主査
ほかにいかがでしょうか。御意見を頂きまして、ありがとうございます。オンラインと紙による回答のスタイルの違い、フラグを立てるということですが、そういったことを注意するという御意見、それから、PCやオンライン調査が難しい回答者については、サポートしていくというようなお話を頂きました。以上で、最初のオンライン調査の導入については区切らせていただきます。
続いて、推計方法の見直しについて御議論いただければと思います。通し番号ですと、18ページから105ページにかけて記載があります。特に31、32ページのまとめに関する部分を中心に御質問、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。推計方法についてはブートストラップの所でもお話を頂きましたが、何かありますか。
 
○津谷委員
この部分は最初のオンライン化についての説明と比べて、少し後退したトーンのあるまとめになっているように感じます。ただ、そこで、31ページから32ページにかけて、(2)推計方法の見直しに当たって考慮すべき点として、3つほど重要なポイントが挙げられています。コロナ禍の影響についても、政府統計調査のみならず、全ての社会調査がある程度コロナ禍の影響を受けているわけですので、慎重な対応をすべきという結論は時宜を得たものだと思います。ここに述べられている考慮すべき点をきちんと前面に出して背景と理由を述べることで、説得力のある説明になると思います。この結論では推計方法の見直しをやらないと言っているわけではないのですから、こういう結論でよろしいのではないかと思います。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございます。ほかの委員の皆様、いかがでしょうか。津谷先生から、非常に前向きな肯定的な御意見を頂きました。私個人としても同じような形で、最初のタスクからすると一瞬後退的に見えるのですが、この事情を考えたときにはこういった結論はやむを得ないと思いますし、しっかりとロジカルなものになっているのではないかと思っています。ほかに御質問等はありませんか。
 
○大久保委員
内容については特に問題ないかと思いますが、所得票、貯蓄票については、今後の重要な検討課題だと思います。今後、どういうタイムスケジュールで更にこの検討課題について進めていくのかということについて、事務局としてのお考えはありますか。
 
○細井世帯統計室長
今回の検討を踏まえて、令和4年度に向けての調査実施の計画を立てているところです。今、令和3年調査を実施すべく準備を進めておりますが、その調査結果と更に令和4年の調査結果が出て以降、検討を進めていきたいと考えております。
 
○大久保委員
そうすると、この委員会はまだ継続するということなのでしょうか。
 
○細井世帯統計室長
このワーキングについては、設置要綱にありますように、今年度末で一旦の方向性、報告をまとめていただくことになっておりますので、ワーキングとしてはこの年度末で一旦閉じさせていただくことを想定しております。引き続き検討が必要になった場合に、また各先生に御協力を仰ぐことが出てくると思いますので、その節は御協力をよろしくお願いしたいと思います。
 
○大久保委員
ありがとうございました。
 
○加藤主査
大久保先生、ありがとうございました。ほかに御質問、コメント等がありましたら、よろしくお願いします。
 
○臼井委員
今回、ワーキンググループに参加させていただいて、推計方法の見直しなど、諸課題や対応方法をしっかり検討されていることが分かりました。この問題を解決するのは難しい中で、いろいろな試みがなされたと受け止めました。その中で、平均所得の推定方法がいくつか提示され、それぞれの推定方法ごとに550万円、540万円、530万円というように、1つの値を推定値として提示しています。そうした方法は確かに分かりやすいと思いますけれども、それらの個々に算出された推定値は、実は、様々な仮定を置いてから算出されたものであることを忘れてはいけないと思います。そのような仮定の懸念に対応するためには、例えば、新しい計量経済学の手法である「部分識別」というのがあります。なるべく仮定を置かない下において平均所得を幅を持つ形で推定する方法です。これは、斬新すぎるかもしませんが、そういう方法もあることを念頭に、今後の方向を検討していくことも考えられます。
 
○細井世帯統計室長
貴重な御意見をありがとうございます。引き続き、分析について検討を進めてまいりたいと存じます。
 
○加藤主査
樋田委員、お願いします。
 
○樋田委員
私も、先ほどの津谷先生の意見と全く同感です。推計方法の見直しについては、国民生活基礎調査の推計上の問題が解決したわけではありませんので、今後も是非積極的に改善に向けた取組を続けていっていただきたいと思います。非常に難しい問題ではあるのですけれども、今回いろいろな検討がされましたので、こういったものをベースにして更なる改善に向けて取組を継続していただければと思います。以上です。
 
○加藤主査
樋田先生、ありがとうございます。いかがでしょうか。小山先生、お願いします。
 
○小山委員
私も皆様の御意見とほぼ同じで、特に新型コロナウイルスという非常に大きな、このワーキンググループが始まった頃には想定されていなかったような事態があって、そこで個人の生活にも大きな変化があったので、一番変化を知りたいところで調査が一回中止されて変化を知る術がなくなったという事情もありますので、ここで一度にオンライン化にするとか推計の方法を見直すとかいうこと、幾つも新しい変化を調査の場で行うというのは、ますます実態が分からなくなってしまうようなおそれがあるというのが、お話をしていく中で心配が大きくなっておりましたので、今回の報告書の内容は非常に真摯な対応であると思います。
ですので、今年は調査も実施されるということですけれども、そういったことも踏まえつつ、先ほどのブートストラップ法でのまだ原因がはっきりしないような推計ということもありますので、引き続き試算などを繰り返していただいて、新たな推計の方法を探っていくというのが、ここに書いてあるとおり非常に妥当なことであると思います。それと同時に、このような推計方法の見直しというものをしているのだということを、どこかにアピールというほどではないのですけれども、一言付記しておくようなことも、もしかしたら今後統計の結果を使う人たちにとって、心構えというか、周知をしておくような効果があるといいのかなということも実感したところです。報告書の内容については、これで異論はありません。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございます。ワーキンググループの委員の先生ほとんどの方から、御了解いただいたと思います。なお、所得票、貯蓄票の検討を含めて今後の改善に向けた取組を進めるという点と、統計の見せ方あるいは新しい手法を使いながらどのような形で示していくのかということについての御意見を頂いたということでございます。どうもありがとうございました。
以上、報告書の案については、今頂いた御意見を踏まえて、最終的な報告書(案)を私が事務局と御相談させていただきながら作成をしていきたいと思います。なお、最終的な報告書(案)については、まとまり次第、各委員の先生方にお送りして御確認を頂くこととしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)


○加藤主査
ありがとうございます。それでは、報告書(案)については、本日の御意見を反映した最終案を御確認いただくという条件付きで、御了解いただいたものといたします。なお、この報告書(案)については、厚生労働統計の整備に関する検討会開催要綱により、本日午後開催されます検討会に報告させていただくこととなりますので、御了解のほどお願い申し上げます。
それでは、本日はこれで終了いたします。6回にわたり集中的に御議論いただきました当ワーキンググループも、本日をもって終了となります。委員の皆様におかれましては、御多忙の中貴重な御意見を頂きありがとうございます。それでは、事務局にお返しいたします。
 
○奥垣統計企画調整室長
皆様、長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。また、本日は事務局側でネットワークが落ちたり、一部の方にネットワーク障害等が発生いたしまして、誠に申し訳ございませんでした。これまで、6回にわたり御議論いただきました結果を、本日報告書としておまとめいただきましたことに感謝を申し上げます。主査から御説明がありましたとおり、事務局で主査と御相談の上、委員の皆様からの意見を反映した最終案を作成し、皆様に御確認、御了承いただいた上で、本ワーキンググループの報告書とさせていただきます。最後に、今回でワーキンググループは終了ですので、鈴木統括官から御挨拶申し上げます。
 
○鈴木政策統括官
政策統括官の鈴木でございます。これまで6回にわたり、精力的な御議論をいただき、誠にありがとうございます。厚生労働省としましては、本日おまとめいただいた内容をもとに必要な手続をとった上で、令和4年調査の実施に向けて準備を進めてまいります。コロナ禍において、オンライン調査の重要性は益々増しております。まずは、一部地域で着実に実施し、その取組を検証したうえで全国に展開してまいります。また、所得票、貯蓄票に関する推計方法につきましては、非常に難題ではありますが、社会経済の実態を適確に反映する推計方法の検討を引き続き行います。本日をもちまして、このワーキンググループでの検討は一旦終了となりますが、また本調査において検討すべき事案が生じた際には、皆さま方のお力添えをいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 
○奥垣統計企画調整室長
本日は、いろいろとネットワーク障害がありましたが、以上をもちまして、「第6回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ」を閉会いたします。ありがとうございました。

(了)

照会先

政策統括官付参事官付統計企画調整室

電話:03-5253-1111(内線7373)