第12回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)

日時

令和3年3月9日(水)14:00~15:50

場所

労働委員会会館612会議室(6階)
(東京都港区芝公園1-5-32)

出席者(五十音順)

(かき)(うち)(しゅう)(すけ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

鹿()()()()() 慶應義塾大学大学院法務研究科教授

(かん)()()()() 東京大学大学院法学政治学研究科准教授

(なか)(くぼ)(ひろ)() 一橋大学大学院法学研究科教授

(やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理

議事


○山川座長 それでは、ほぼ定刻ですので、ただいまから第12回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、本日も御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の検討会につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえて、Zoomでのオンライン開催になります。御理解をいただければと思います。
本日は、委員の皆様全員に御出席いただいております。
こちらの音声や画像はきちんと届いておりますでしょうか。ありがとうございます。
それでは、議題に入ります前に、Zoomによるオンライン開催ですので、操作方法等について事務局から説明をお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 本日はZoomによるオンライン会議となっております。座長以外はオンラインでの御参加となっておりますので、簡単に操作方法について御説明させていただきます。
事前にお送りさせていただいております「会議の開催・参加方法について」を御参照ください。現在、画面には、会議室の映像及びオンラインで会議に御参加いただいている委員の皆様が映っているかと思います。まずは、その下のマイクのアイコンがオフ、赤い斜線の入った状態になっているかを御確認ください。本日の検討会の進行中は委員の皆様のマイクをオフの状態とさせていただきます。御発言をされる際には、サービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の許可があった後に、マイクをオンにしてから御発言いただきますようお願いいたします。アイコンの赤い斜線がなくなった状態になっていれば、マイクがオンになっております。
また、本日は会議資料を御用意しております。事務局から資料を御説明する際には、画面上に資料を表示いたします。
そして、会議の進行中、通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や音声が聞こえなくなった場合等トラブルがございましたら、お知らせいたしております担当者宛てに電話連絡をいただきますようお願いいたします。
なお、通信遮断等が復旧しない場合でも、座長の御判断により会議を進めさせていただく場合がございますので、あらかじめ御了承くださいますようお願いいたします。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
それから、法務省からオブザーバーとして民事局の笹井朋昭参事官にオンラインで御参加いただく予定です。よろしくお願いいたします。
続きまして、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 それでは、資料の御確認をお願いいたします。委員の皆様方におかれましては、あらかじめ送付させていただいた資料を御確認ください。
今回御用意した資料は、資料1から資料6の6種類となっております。
資料1 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会における主な議論の整理(3月9日版)
資料2 労働契約解消金の支払と労働契約の終了について
資料3 労働契約解消金の内容・考慮要素等についての整理(3月9日版)
資料4 有期労働契約に関する議論の整理と論点
資料5 有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めについて(3月9日版)
また、資料6として、本検討会開催要綱を配付しております。こちらは昨年、神吉先生の御所属が変わられた後、変更した名簿をお配りしていなかったため、今回配付させていただいたものです。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
今日はカメラ撮りはないと思いますので、早速、本日の議題に入ってまいります。議題は「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理」です。
進め方ですけれども、資料1~3は、前回までの議論を整理した資料でありまして、資料4と資料5が、前回積み残しがありました有期労働契約に関する議論と論点を整理した資料になっていると思います。まず、資料1~3について事務局から説明をいただきたいと思います。
それでは、よろしくお願いします。
○武田労働関係法課課長補佐 資料1~資料3について御説明させていただきます。
資料1は、これまで御議論いただいておりました法技術的論点の主な議論を整理したものでございます。内容は前回検討会においてお配りした資料1とほぼ同じでありまして、本日の論点は資料4に記載してございますので、こちらには論点の記載はございません。
なお、前回と今回で修正しましたところは、2ページの「権利の消滅要件等」の欄、左側の2つ目の矢印と、右側の1つ目の矢印、辞職に関する記載を修正いたしております。こちらは内容を修正するものではありませんが、表現を若干修正しております。後ほど出てきますので、現時点では読み上げを省略いたします。
次に、資料2として通しのページ数で5ページを御覧ください。こちらは、前回検討会において資料2「労働契約解消金の性質について」というタイトルでお渡ししていた資料を、前回の御議論を踏まえて若干修正したものです。
前回も記載しておりました3つのパターンを、大きく労働契約の終了に当たって労働契約解消金のみを支払う考え方と、労働契約解消金に加えてバックペイも支払う考え方と分けて記載をいたしました。
また、労働契約解消金に加えてバックペイを支払う考え方、右側の2つの考え方の内容についても若干修正を加えております。前回は、パターン2として充当の特則を設け、労働契約解消金とバックペイの両方が支払われなければ、労働契約解消金を支払ったことにはならないといった構成を記載しておりまして、パターン3として、労働契約解消金とバックペイを両方支払って初めて労働契約が終了するという効果が発生するという立法をするという構成を記載しておりました。そもそも両方支払った場合に労働契約が終了すると規定する、もともとパターン3として記載しておりました方法が、法律的にはメインの案であろうとの御指摘をいただきましたので、パターン2とパターン3を入れ替えて記載するという修正を加えております。
それぞれの欄内の内容については修正を加えておりません。
続いて資料3、6ページを御覧ください。こちらは前回お渡しした資料3を前回の御議論を踏まえて修正したものでございます。
まず「補償の内容」の欄を御覧ください。補償の内容について、まずは契約終了後の将来得べかりし賃金等の財産的価値についての金銭的補償が補償の内容になるとの御議論でしたので、上の・にその旨を記載しております。
また、それでは補償しきれないものとして、当該職場でのキャリアや人間関係等の現在の地位にあること自体の非財産的価値についても補償の内容とすることがあり得るとの御議論でしたので、そちらを2つ目の・で記載いたしております。
また、修正したところとしては「メリット・デメリット」の欄です。メリット・デメリットに関しまして、解雇の不当性をどのように考慮するかという観点からの御議論を資料に反映いたしました。A-①案、A-②案共通のメリットとしては、1つ目は前回と同様の記載となっておりますけれども、「定型的な考慮要素で金額が決まるため労使双方にとって金額の予見可能性が高く、早期解決の可能性が高まる」という点を挙げております。
また、2つ目として「解雇の不当性を考慮要素としないため、不法行為による損害賠償請求権との関係が問題となりにくい」という形で少し表現を修正して記載しております。
次に、A案のデメリットに関しましては、前回同様の記載ですので読み上げは省略いたします。
次に、B案のメリット・デメリットの欄にまいります。こちらのメリットの記載も前回と同様の記載となりますので、読み上げは省略いたします。
修正しましたのはデメリットの欄です。1つ目は前回と同様の記載となっておりまして、「評価的な考慮要素が増えるため労使双方にとって金額の予見可能性が低く、また評価的な部分の争いにより紛争の長期化を招くおそれがある」と記載しております。
2つ目について「解雇の不当性を解消金の増額の考慮要素とする場合には、不法行為による損害賠償請求権との関係が問題になり得る」という記載に修正しております。
さらに、欄外の1つ目の※も今回挿入したものでございまして、補償の内容欄以下の記載が、定義欄のある特定の定義をとった場合に、必ず下の欄のものが連動して出てくるというものではないということでしたので、より親和的と思われるものを書いたものだと明記いたしました。
資料1~資料3の説明は以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
今、説明をいただきました資料1~資料3は、これまでの議論を整理したものということですけれども、内容について改めて何か御意見等ありますでしょうか。御発言の際には、先ほどありましたように「手を挙げる」ボタンをクリックしてからお願いいたします。
よろしいでしょうか。それでは、改めての御意見は特になさそうですので、前回の積み残しがあります、有期労働契約に関する議論に移りたいと思います。資料4と資料5について、事務局から説明をお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 資料4と資料5について御説明させていただきます。
まず、順番が前後いたしますが、通しのページ数で10ページ、11ページにあります資料5について御説明をさしあげます。
こちらの資料5は、前回資料4としてお渡ししていた「有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めについて」の資料を少し修正したものとなっております。
10ページについては修正点はございません。関係法令の定めとして、労働契約法の17条と19条を記載し、雇止めに関する裁判例の傾向を記載しております。
続いて11ページは、有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めが無効になる場合の労働者の地位の状況について模式的に記載した表です。
前回の資料では、右側の欄が労働契約法19条1号に該当する場合と2号に該当する場合とで書き分けて、上下に分けた形で記載しておりましたが、こちらの2つの場合については、要件は違うものの効果としては更新が認められるという同様のものとなりますので、1つの欄にまとめて記載をしております。
右側の欄の※の記載につきましては、前回の資料で労働契約法19条1号該当の場合と2号該当の場合の欄に、それぞれ記載のあったものを全てこちらに並べる形で記載しております。内容としては変更ございません。参考の判例等についても記載しております。
資料4に戻らせていただきます。7ページは「有期労働契約に関する議論の整理と論点」とタイトルをつけさせていただきました。前回の委員の先生方の御議論を踏まえ、皆様の総意かと思われるところをまとめたものです。
左側の欄にこれまで御議論いただいていた無期労働契約の解雇の場合を比較対象として記載しております。もともとは形成権構成と形成判決構成とで御議論いただいておりましたところ、基本的な論点は両者共通であり、両方書くと煩雑な図になりますので、形成権構成の場合についての記載を引用しております。また、特に有期労働契約であることが問題になることはないであろうと思われる論点については、そもそも記載を省略しております。
内容について入っていきますと、まず「権利の行使要件」の欄ですが、無期労働契約の解雇の場合には①~③と要件を記載しておりまして、労働者が使用者による解雇の意思表示を受け、その解雇が無効であった場合には、形成権としての金銭救済請求権が発生するとされておりました。
有期労働契約の雇止めにおいては、①~⑤の要件となるとおまとめしております。有期労働契約の労働者について、②当該有期労働契約が労働契約法19条1号の要件を満たすか、または当該労働者が同条2号の要件を満たす場合に、③当該労働者が契約期間中または当該契約期間終了後、遅滞なく更新の申し込みをし、④使用者がその更新の申し込みについて拒絶したと、⑤その更新拒絶が客観的に合意的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことということで、労働契約法19条により更新が認められる場合の要件となりますけれども、そちらの要件を満たした場合には形成権として金銭救済請求権が発生するという構成として記載しております。
この点については論点1としまして、期間途中の解雇を対象とするかという論点を掲げております。この論点につきましては、契約期間が1年間の有期労働契約で残りの契約期間が2か月の時点で解雇されてしまった場合や、契約期間が5年間の有期労働契約で残りの契約期間が4年の時点で解雇された場合など様々な状況があり得るということで、議論の前提として指摘させていただいております。
次に「権利の消滅要件等」について御説明いたします。無期労働契約の解雇の場合には、労働契約を終了させるという性質を有する特殊な金銭債権であり、権利行使後に別事由(死亡、使用者による二次的解雇等)により労働契約が終了した場合には消滅すると考えられるということで御議論いただいていたところ、この権利の性質自体は有期労働契約においても変わりませんので、有期労働契約の雇止めの欄でも同様の記載をしております。ただ1点、労働契約が終了する別事由の具体例として、括弧内に「期間満了」を挿入しております。
ここで論点2といたしまして、有期労働契約の場合は期間満了、ここで言う期間満了というのは合理的な期待が否定されるなど労働契約法19条のいずれかの要件を満たさなくなった場合等ということで考えておりますけれども、こちらを消滅要件として設定することで、無期労働契約の場合と整合的に考えられるかという点を挙げております。
また、論点3として、こちらは前回、鹿野委員から御指摘いただいた論点ですが、無期労働契約の解雇の場合も含め、定年による労働契約の終了については、死亡や使用者による二次的解雇と同様に考えてよいかという点を挙げております。
さらに8ページは、項目としては上の欄から続いていますが、無期労働契約の解雇の場合には、辞職について労働者の意思で契約を終了させる場合として、労働者の選択により金銭の支払いを受けて労働契約を終了させる本制度による労働契約の終了と同視することが法的に可能であると考えられることから、辞職のみ例外として債権が消滅しないと規定することは可能と御議論いただいておりました。
この点は、有期労働契約でも同様かということで、そのまま有期労働契約の雇止めの欄にも記載しておりますが、論点4として、労働者が更新の申し込みをせずに期間満了を迎えた場合も、労働者の意思による契約の終了ということになると思いますので、その点を辞職と同様に考えてよいかという点を挙げております。
続いて「2.労働契約解消金の性質等」です。こちらは定義と解消金の構成及び支払いの効果については、特に有期労働契約であることで問題となることはないとして、文言のみ置き換えたものを記載しております。
続いて「考慮要素」の欄ですけれども、無期労働契約の解雇に関しては資料3で本日御確認いただきましたところです。有期労働契約の雇止めについて考えますと、考慮要素を単純に置き換えれば、給与額、通算勤続年数、年齢、合理的な再就職期間、雇止めに係る労働者側の事情(雇止めの不当性)となるかということで、有期労働契約の雇止めの場合の欄に記載しております。
この点、論点5といたしまして、考慮要素は無期労働契約と同様のものでよいか。有期労働契約の労働契約解消金を算定する場合には考慮すべきでない考慮要素や、無期労働契約では考慮要素となっていないが考慮すべき考慮要素はないかということで掲げております。さらに、期間途中の解雇を労働契約解消金の対象とする場合にはどうかというところも御議論いただければと思っております。
さらに、9ページに移っていただきまして「算定方法」の欄があります。こちらについても無期労働契約の解雇の場合については、資料3で本日御検討いただいたところです。有期労働契約の場合にどう考えるのかというところを論点5と同様の論点として記載しております。内容としましては、算定方法は無期労働契約と同様のものでよいか。有期労働契約の場合に特に留意すべき点があるか。さらに、期間途中の解雇を対象とする場合にはどうかといったところを論点として挙げております。
「上限・下限」に関しましては、無期労働契約の解雇の場合と有期労働契約の雇止めの場合を分けて考える必要はないのかということで、両者同様の記載をしております。
「3.地位確認請求、バックペイ請求、不法行為の損害賠償請求権等の関係」ということで、他の訴訟物との関係についての論点も記載しておりますけれども、こちらについても有期労働契約の雇止めの場合を無期労働契約の解雇の場合と別に考える必要はないかということで同様の記載をしております。
資料4及び資料5の説明は以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、資料4と資料5の説明していただいたことを踏まえまして議論に入っていきたいと思います。御質問・御意見等がありましたら、よろしくお願いいたします。御発言の際には「手を挙げる」というボタンをクリックした上、私のほうで指名させていただいた後に御発言をお願いいたします。
垣内委員、どうぞよろしくお願いします。
○垣内委員 他の先生方から御発言がないようでしたので。今日の資料4等に記載の論点は基本的に労働法の問題と申しますか、私は手続法が専門ですので、部外者からの感想ということになるかもしれませんが、資料4の論点1で、期間途中の解雇を対象とするかということで、確かに契約期間の残りが少ないような段階で解雇されて、その効力が認められないという場合に解消金請求を認めるということが、実際上は下の消滅要件とも関係しまして、更新もされずに終了する場合であれば、あまり意味はないということがあるのかなという感じもいたしますけれども、ただ、更新拒絶が認められないような場合を主として想定しているということでもありますので、期間途中の解雇をあえて除外するほどの区別を設けることが必要かというと、その点について何か積極的な理由があれば区別するという議論はあり得るのかもしれませんが、今、御説明を伺った限りでは、期間途中の解雇をあえて排除・除外するまでの理由も感じられないかなと思いました。そうしますと、論点1については期間途中の解雇も対象として考えた上で、全体として制度が合理的にできるかどうかをさらに検討していくことが一つ考えられるのかなと思ったところです。
その点と関係しまして、7ページの「権利の消滅要件等」の関係ですけれども、無期労働契約の場合と同様に、使用者による二次的解雇による労働契約の終了も挙げておりまして、こちらは解雇は有効で労働契約が終了する場合を想定しているということかと思いますけれども、これも無期労働契約の場合に同様に考えるのであれば、有期の場合も同様に考えるのかなと思います。
その上で論点1との関係で、解雇が有効な場合には、更新拒絶等に伴って発生した解消金請求権の事後的な消滅事由になるという理解を取りつつ、解雇が無効である場合について解消金請求の基礎となることを認めないという論点1について否定的な立場を取ることになりますと、論理的にそれがあり得ないということで両立しないということではないと思いますけれども、二次的解雇の位置づけについて有効な場合と無効な場合とで、ややバランスを欠くような印象も受けますので、そういう意味でも期間途中の解雇も一応含めておいた上で、それが有効な場合には契約の終了ということで解消金の消滅の効果をもたらすという整理が一つ考えられるのかなと思いました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。資料4の7ページに関するところで、契約期間中の解雇も対象に基本的に含めてよいという御意見をいただいたところです。
ほかの委員の先生方、この点を中心に、なければほかの点でも結構ですけれども、御意見があればお願いいたします。
○鹿野委員 すみません、手を挙げる機能が今日はうまくいかないのですが。
○山川座長 分かりました、鹿野委員、お願いします。
○鹿野委員 私も、今の7ページの論点1については、理屈の上では有期の場合であっても期間中の無効な解雇がなされた場合については同様の取扱いをすべきだ、要するに含むと取り扱うべきだと考えております。
ただ、議論の蒸し返しみたいになって恐縮なのですが、今まで幾つかの個別の各論的な論点を検討してきまして、特に有期の問題なども含めて検討してきたときに、改めて前提について考えておかなければいけないと思うことがありましたので、少し長くなるかもしれませんけれども申し上げさせていただきたいと思います。
従来は、解消金の支払いがあったときに労働契約が終了するということを前提として議論してきたと思います。それには主に2つの理由があって、第1には、使用者に解消金の支払いを促すことと、第2には、その時点までのバックペイの支払いを労働者に確保させるという点において、その構成が労働者の利益につながるという配慮があったのではないかと思います。ただ、個別論点について議論してきますと、個別の点においては今の解消金の支払いがあったときに終了するという、支払時基準構成とでも言いましょうか、そういう構成が労働者の利益に必ずしも合致しない点も出てくるのではないかとも思いました。支払時でなかったらいつになるのかというと、権利行使の意思表示をした時、つまり形成権行使をした時ということになるかもしれません。所定の要件が備わっている限りにおいて、形成権行使の時に労働契約は終了するけれども、一方で解消金の請求権が債権として発生するという構成が、労働政策の観点からそれが妥当かどうかはともかくとして、理論的には考えられるのではないかと思います。それぞれのメリット・デメリットを比較して、結局政策的にはこちらのほうがよいと判断されるのであれば、今とってきた前提をひっくり返さなければいけないとまで思っているわけではないのですけれども、それを自覚しておいたほうがいいのではないかという気がしているところです。
どこをもってそのように思ったかといいますと、7ページに「権利の消滅要件等」が出てきます。いわゆる支払時点構成によりますと、支払いがなされるまでに死亡したとか定年を迎えたとか、あるいは有期の場合ですと、そもそも終わる時期を迎えてしまったという場合には結局は解消金はもらえない、消滅要件に該当するということになってしまうわけです。もちろんバックペイは一方で確保できるのだから、そちらでいいではないかとも思われるかもしれませんが、先ほど垣内先生もおっしゃったように、7ページの論点1で、理屈の上では有期の場合でも中途の解雇の場合を含むのだといっても、有期の場合でずっと紛争が長引いて、あるいは使用者が支払いを怠っていて支払いがなされない間に終了するということは、無期の場合より多く生じ得るのではないかと思うのです。そうなってくると、そのような権利が事実上、有期の場合のほうが補償されにくくなってしまう。事実上、利用しにくい制度になってしまうことになるのではないかと思った次第です。それでよいのかということです。理屈の上では無期の場合でも同じで、例えば、手続が数年継続したことによって労働者が定年年齢を迎えることになったということで、果たして解消金請求権がゼロになるということでよいのかということが問題となります。
特に、解消金の中にどういう要素が含まれるのかについて前回ないし前々回少し議論しました。そのときにいわば慰謝料的な非財産的な損害、この言い方は正確ではないかもしれませんが、慰謝料に相当するような要素も含まれるという整理がありました。そうすると、この分は本来はそこで一旦発生しそうなのですが、たまたま支払いより前に終了時期を迎えたら、その分までゼロになるということが理屈の上で一貫していると言えるのかという点が疑問と言えば疑問でもあります。
もう一つの問題としては辞職の場合の取扱いで、これは8ページに書いてあって、辞職の場合については、例外として債権が消滅しないということで規定してもいいのではないかという御議論があったことは承知しているのですが、辞職の場合になぜ理屈の上で例外扱いになるのかということが少なくとも現時点で私としてははっきりしません。実質的には、再就職を促進するという趣旨が、今検討している制度にあると思いますので、そういう意味では、本人がここを辞めて新たな職場で再び労働を始めるけれども、従来の職場で不当な解雇がなされたことについては解消金の請求を認めるという結論がいいとは思うのですが、原則的に支払いの時点で契約関係が終了するという立てつけをとり、支払いがなされるときに契約関係が存続していることが要件だという形で立てておいて、辞職だけそれを外すことが理屈の上でどれだけ説明がつくのかということは少し分かりにくいようにも感じるところです。
先ほど言いましたように、対比するという意味で、形成権行使の意思表示をした時に契約関係は終了するという構成をとれば、その時点で契約関係を終了して、解消金請求権はいずれにしても発生するということで、その点の複雑さは問題なく回避することができると思いますが、他方、この構成はデメリットとして、それで使用者がちゃんと払ってくれるのかとか、あるいはバックペイの問題という大きな問題があるということも一応は認識しているつもりでもあります。
それから、もう一つ前回出てきたところで、判決が確定しても使用者が支払いをしない場合にどうなるのかということがありました。判決確定後に支払いをしないまま使用者が引き延ばしていて、それで労働者が定年年齢に達したり、あるいは有期の場合に予定の期間が満了したときに、仮にそこで権利が消滅することになるとそれはそれで問題があるのではないかと思います。額にもよるでしょうが、使用者が結局支払いを引き延ばすというインセンティブを与えるようなことに逆になってしまうとすると、それは問題だとも思うところです。
ということで、それぞれのところについて適切な手当をすれば問題は解消できるということかもしませんけれども、今それぞれの各論的な論点がたくさん出てきましたので、それとの関連で意識しておかなければいけないと思って申し上げた次第です。
ちょっと長くなりまして、申し訳ありません。
○山川座長 ありがとうございました。非常に基本的で重要な問題提起をいただいたと思います。基本は、解消金の支払いによって労働契約が終了するという、これまで一応前提としてきた構成をどう考えるかということかと思います。それとの関係で、辞職のみ例外とする扱いを整合的にどう説明するのかといったことや、判決確定後に支払いをしない状況をどう考えるのかということと併せての御指摘と考えております。個々の論点を検討してから、また基本的なことを考え直すことはあり得ることだと思いますので、どんどん御意見をいただければと思います。
事務局から何かありますか。
○武田労働関係法課課長補佐 先ほど資料を御説明した際に併せて御説明をしようと思っておりましたところ失念しておりまして、今、鹿野委員から御指摘いただきましたので御説明させていただきます。
最後に御指摘のありました判決確定後に権利が消滅するような事由が発生した場合どうなるのかという御指摘を前回いただいておりまして、過去の議論等を再度見返しましたところ、さきの御議論の中で、その点に関してこうなるのではないかという御指摘がありましたので御紹介さしあげます。
形成権構成をとった場合を考えますと、判決確定後に消滅事由となるような事実が支払いの前に発生し、まだ支払われていない場合には、労働者は強制執行等の手続に移ることになるかと思いますが、その手続の中で使用者側から権利が消滅するような事由が判決確定後に発生したのだということを請求異議の事由として提出することができ、それが認められた場合には強制執行が妨げられる、労働者による強制執行ができない、最終的には支払いを受けられないことになるという御説明をいただいておりました。
また、形成判決構成の場合を考えますと、判決確定後に形成原因が消滅するような事由が発生した場合どうなるかに関しては、まだ民訴法の議論として結論が出ていない論点であって、その場合どうなるのかは請求できなくなるという説と請求できるという説と両説あり、両方とも有力であるというお話をいただいていたところですので、御紹介させていただきます。
○山川座長 ありがとうございました。
委員の先生方、基本的な問題提起でございましたので、何か御意見等ございますか。
垣内先生どうぞ。
○垣内委員 今、事務局から御説明いただいた点は、厳密に申しますと、形成権構成でいった場合本当にそうなるのかということも議論はあり得るところかと思いますけれども、いずれにしても解釈問題ということで、特に形成判決構成でいった場合どうなるかは両論あり得るところだろうと考えております。
その前提としまして、先ほど鹿野委員から御指摘のありました点は重要な点であると思われます。鹿野委員が御指摘になりましたように、一つの考え方として、労働契約終了の効果そのものを意思表示の時点で発生させるということで、現在権利の事後的な消滅要件とされているような諸事由という問題を一気に解決するということが法的構成として一つの選択肢になり得るのだろうと思います。
他方で、資料4の7ページですと、現在、死亡等の事由による事後的な労働契約の終了が権利の消滅事由という要件という形で位置づけられておりますけれども、理屈の問題といいますか、論理的には金銭債権が発生し、それが存続することの要件と、支払いの効果として労働契約が終了するのか、どの時点で終了するのかという問題、労働契約の終了の要件は一応別個の問題と考えることができると思われますので、労働契約の終了が解消金支払いの効果として初めて発生するとしても、その場合に別に有効な終了事由があればその時点で労働契約は終了すると。しかし、そのときに解消金請求権という一旦形成権行使の意思表示あるいは形成判決の確定によって発生した金銭債権が消滅すると考えるべきかどうかについては、この検討会でまさにこれまで議論されてきたとおり、論理的には両論あり得るところだろうと思われます。
そうした中で、現在資料としておまとめいただいているのは、一応、政策的には死亡等の場合と辞職の場合とを区別することが一つ合理的な選択肢として考えられるのではないかという前提のもとで、こういった整理がされているということかと思いますけれども、私自身は死亡等も含めて一度成立した金銭債権は、その後影響を受けないという考え方もあり得るようには思っております。そうしますと、労働契約は基本的には解消金支払いまで存続するけれども、仮にその前に有効に終了することがあっても、解消金請求権自体の存続は妨げられないことになってまいりますので、別の形でこの問題についての処理が図られることになるかと思います。
ですので、先ほど鹿野委員が示唆されたような構成、労働契約の終了の効果そのものが意思表示等によって即時に生ずるという考え方、それから、労働契約の終了は解消金の支払いによるのだけれども、金銭債権についてはそれ以前の労働契約終了によって影響を受けないとする考え方、そして資料にまとめられておりますように、原則として労働契約は解消金の支払いによって終了するのだけれども、それ以前に一定の終了事由が有効に成立した場合には解消金は消滅するという考え方、大きく言えばこの3つの考え方があり得るところなのかなと思われますので、その中でどの考え方が政策的にあるいは法律論として適切なものなのかといったあたりが論点になるのかなと理解しております。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
両先生おっしゃるように、恐らく辞職のときを例外とするというのは、政策的な考慮に基づくということですので、その政策をどのように考えるかということで広くなったり狭くなったりするということかと思いました。
ほかの委員の先生方、何かございますか。中窪先生、お願いします。
○中窪委員 私も今、垣内委員がおっしゃいましたことに賛成で、もともとの金銭救済を求める権利は、形成権とするか形成判決にするかという議論がありましたけれども、それともう一つの、判決が出て実際に解消金を払えというときの請求権はちょっと違う問題だと思います。後者は、後で使用者が払わなくて実際上契約解消の効果が出ないとしても、そんなに簡単に消えないのではないかと感じているところです。
その意味で、資料1で表をつくっていただき、2ページに「権利の消滅要件等」と書いておりますけれども、これは、もともとの金銭救済を求める権利についての消滅等の議論だと思います。その後ろの3ページの頭に「労働契約解消金の性質等」とありますが、これがもう一つ別の問題であって、解消金の支払いが命じられた場合に、支払いによってこういう効果が出るとか、途中で辞職なり有期で期間満了といったことがあった場合にどうなるというのは、このように別個に書くべきことではないかと思いました。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかの委員の先生方からは何かございますか。小西先生どうぞ。
○小西委員 私も今、垣内先生、中窪先生がおっしゃられたような、これまでの議論と同様の感想を持っています。私は、より具体的にというところですが、期間満了を消滅要件と設定することについてどうかということに関してですけれども、合理的な期待が否定されるかどうかという問題は非常に判断が難しい、相対的にも定年との比較では判断が難しいと言えることからすると、期間満了を消滅要件という形で設定しない方法も十分考えられるかなとも思っています。
さらに議論があるところかもしれませんが、60歳定年を設定されている場合、定年についてもそれを消滅要件として設定することが果たして妥当なのかどうか。最近では、60歳を超えて、60歳定年の後も継続雇用されているという実態が多く見られている中で、定年を消滅要件として設定するのが果たして政策的に妥当なのかどうかは検討する余地があるのかなと感じております。
私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。定年後の再雇用の問題は7ページの論点3とも関わって、さらにこれまでの議論の前提としても、いろいろ議論があり得るところかなと思っておりました。
そのほかの先生方といっても、もう神吉先生しか残っていませんけれども、何かございましたら。あるいは改めてということでもよろしいですが、どなたでも何かありましたら、お願いいたします。
では、神吉先生、お願いします。催促したみたいですみません。
○神吉委員 私も手を挙げる機能が分からなくて、小西先生すごいなと思っていたのですが。
私も、解消金の支払いがあったときに契約が終了するという話と、解消金を受け取るときに差し出す地位が残っていなければいけないかという問題は違うと考えていました。そうではなくて、政策的にどういった場合に権利が消滅しないかと振り分けていくときに、鹿野先生が言われたように、辞職だけ特別扱いでいいのかというのはやや気になるところではあります。資料7ページでも、死亡と使用者による二次的解雇、有期の場合は期間満了とありますけれども、それぞれ別個に考慮すべき要素が付随してくるケースであるかなと思いまして、二次的解雇に関しても、その有効性が新たな争いになる可能性もありますし、小西先生が言われていたように、期間満了に関しても合理的期待のみであるとか、無期との実質的同一性みたいなものもかなり問題になりますので、これをもう少し突っ込んで考える必要があるのかなと思います。
死亡の場合も当然のように終わるような気がしないでもないのですけれども、解消金の性質としてある程度財産的、非財産的損害の回復という要素もあるのだとすれば、ほかの損害賠償債権のように相続の対象にならないと、一義的にならないとも言えないのではないかという気もしまして、一身専属性なものだと政策的に位置づけるということであればそれはそうなのですけれども、当然に権利が消滅することにはならないのかなと思った次第です。
使用者の二次的解雇に関しても、抗弁的な位置づけにもなり得るのでしょうか。それとも消滅事由として規定しておくべきところなのか、ちょっと考え中です。
考えがまとまっていなくてすみません。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
先ほど鹿野先生も手を挙げられていたかと思いますが、お願いします。
○鹿野委員 御議論いただいてありがとうございます。私は先ほど極端に2つの構成を対置させるような言い方をしたのですが、垣内先生が言ってくださったように、もちろん金銭債権がいつまで存続するのかを労働契約の存続と切り離して考えることができれば、それはそれでいいかなと私も思っています。
ただ、従来の議論が7ページの「権利の消滅要件等」にも書いてありますように、労働契約を終了させるという性質を持っている特殊な金銭債権であることから、そのときに差し出す地位がなかったら、もう債権もないのだともとれるような流れで書かれていたこともあります。それは、場合によっては本来の支払うまで契約は終わらないということを立てた趣旨と逆行するような結果を認めるようなことにもなりかねないのではないかということが言いたかっただけで、私自身も権利行使の意思表示をした時に直ちに契約関係が終了するのだということを強調するというか、それを支持するのだということではございません。この制度をつくっている基本的な趣旨に沿った形で、それぞれ金銭債権の存続ないし消滅について考えていくべきだと思っております。その一言に尽きるということです。
○山川座長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか、基本的なお話ですけれども。
中窪先生、お願いします。
○中窪委員 先ほど、私は無期の表でとどめてしまいましたけれども、これを有期に持ってきている以上、資料4の8ページにある「労働契約解消金の性質等」についても、それがどうなるかは本来の権利と区別した形で議論しないといけないと言うべきだったかな、というのが一つです。
それから、同じ有期の表で7ページの一番下に、労働契約を終了させるという性質を有する特殊な金銭債権であり、後に別事由により労働契約が終了した場合は消滅すると解されると書いていますけれども、最初の無期の表ではその前に、形成権の性質上、権利行使は事後的な事情により消滅しないのが原則と書いています。この原則が後ろのほうでなくなっているのはどういうことなのか、今ふと気がついたのですけれども何か。
○山川座長 資料何の何ページですか。
○中窪委員 資料2の7ページの一番下の枠なのですが、左が無期で、右が有期で、どちらも別事由により終了した場合には消滅と書いてあります。他方、資料1の2ページの一番下では、少なくとも形成権構成の場合には、具体的な解消金債権が発生しており、その後の事情によって消滅しないのが原則だとした上で、矢印で労働契約を終了させるという性質上、別の事由で終了した場合には・・・と書いています。この原則が後ろのほうで落ちているのは、繰り返しを避けたということなのですか。
○山川座長 ありがとうございます。ここは事務局から何かありましたら。
○武田労働関係法課課長補佐 資料1では、形成権構成と形成判決構成の違いを説明するという趣旨の資料でしたので、形成権の場合は原則こうだけれどもというところを書き出す形で左側の欄に記載したところです。今回の資料4については、無期労働契約と有期労働契約の違いをわかりやすくというところを意識して作成しましたので、無期労働契約の議論の際に形成権構成においても形成判決構成においても、一旦発生するであろう、形成判決の場合は判決まで発生しないのですけれども、提起後に死亡または使用者による二次的解雇等によって労働契約が終了した場合には、それで権利が消滅するというところを一つの御議論のまとめとして記載したところでしたので、その共通したところのみを資料4には書き出したということでございます。今、御議論いただいている論点に関しましては、資料1が正確な記載かと思いますので、そちらを御参照いただければと思います。
○中窪委員 分かりました。両方の構成のいわば共通部分をここに抜き出して、有期と無期を対比しているということですね。
いずれにしても、もともとの権利と解消金の請求権を分けて議論する必要があるのではないかということですけれども、御説明は理解しました。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございました。いろいろ基本的な議論をいただいているところです。だんだんと議論の中で出てまいりましたのが、多分解消金の性格にも関わってくるようなことではないかと思ってきました。そもそも解消金とはどのようなものかということについて、資料3になりますけれども「補償の内容」で、契約終了後の将来得べかりし賃金等の財産的価値ということで、これも先ほどの前提に関わるかもしれませんけれども、支払いによって契約が終了して、その終了した後の得べかりし賃金等を考えると。そのほかにも付随的なものがありますけれども、基本的にはこの発想は、その前の段階はバックペイで処理されるという前提でのお話でありまして、契約が終了したとしても、その後の得べかりし賃金等を解消金として支払うという前提で構成されていたので、このあたりから考え直す必要が出てくるかもしれないというご指摘になるかという感じが出てきます。そうすると、そもそもこの制度の趣旨はどのようなものなのか、解雇が無効になって、それを地位確認ではなくて金銭解決をするというような本来の出発点からするとどうなるのだろうかと。これは前も申しましたけれども、有効に契約が存続している場合に、単に自発的に辞職する場合とどう違ってくるのかという点にも関わるのかなという感じを持っております。私個人は、どちらかというと以上のようなことがこれまでの議論で、あとは政策的にどう調整するかというような感じでおったわけですけれども、改めていろいろ御指摘がありましたので考えてみたいと思います。
それから、もう一点についてのコメントで、終了原因という言葉の意味ですけれども、雇止めで契約を19条で更新される場合と、さらに展開すれば定年後で再雇用が成立する場合も同じような話になるのですが、この点、来る前に要件事実ダイアグラムをつくって今見ているのですけれども、恐らくどの場合でも期間満了で契約は終了するんですね、判決前の話です。しかし、雇止めについて19条が期間満了ごとに適用されるとしたら、改めて新契約が成立する。定年後再雇用について、もしそれが認められるとしたら、19条の類推とかいろいろ理屈はまだ固まっていませんけれども、一旦は定年で契約は終了して、もう一回再雇用契約が判決までに成立する場合をどう考えるかということで、期間満了等が終了原因であるというのは、それと両立する新たな契約の成立を妨げるものではないという感じがしております。したがって、この点によって契約終了や解消金の請求権が直ちに影響を受けるわけでもない。要するに、新たな契約が成立していれば、それをどう考えるかという問題になるのかなと思いました。
もう一点は、先生方から種々御指摘のあったところですけれども、今申し上げたのは判決前に期間満了等によって契約が終了した場合ですけれども、それから判決後とか判決確定後、厳密に言うと口頭弁論終結前と判決確定後という基準になるかもしれませんが、そこと期間の満了時点の関係をどのように考えるかによっても、パターンがいろいろ変わってくるのかなという感じがいたします。例えば、判決確定後に支払いをしなかった場合について考えると、就労の意思を労働者が失っていない限りはバックペイとしての賃金債権は発生していて、ただ、判決で支払いを命じられるのは判決確定までというのがこれまでの通例なので、確定後については、なお就労の意思があって契約が終了しない限りは、バックペイの支払いの債権は発生するのですが、ただ、今の運用だと改めて別訴で請求しなければならないということになろうかと思います。
バックペイと解消金というのは、これまでの理解だと連続的といいますか、あるところまではバックペイで、その後契約の終了に伴って解消金になるという理解でこれまで構成してきたかと思いますので、その点も含めて制度設計がどうなるかをシミュレーションしていく必要があるのではないかと思っております。
すみません、私のコメントになってしまいましたけれども、ほかに何か御質問・御意見等ありますか。
鹿野先生、お願いします。
○鹿野委員 私も、最初のころはバックペイがあるところまでいって、バックペイが切れたところについての将来の得べかりし財産的価値についての金銭的請求というイメージでつくるのかなと思っていました。ただ、今回の資料の6ページの「補償の内容」で、先ほども少し言及したところなのですが、2つ目で、当該職場でのキャリアや人間関係等の現在の地位にあること自体の非財産的価値についての金銭的補償がありまして、これは何もバックペイと連続的というか、バックペイの次に引き続いてくるものとは若干性質が異なるのかなとも思われます。前にも、補償の内容はほかのところに影響するのではないですかという趣旨のことを申し上げたかもしれませんけれども、今おっしゃったこととの関連も含めて、補償の内容をどう捉えるのかも検討する必要があるのかなと思います。
○山川座長 ありがとうございました。有益な御指摘かと思います。このあたりも金額を算定する場合にどうするかという問題とも関わってくるのかなと思います。定年後の場合や有期雇用の場合でも、契約があと1年しか残らない場合に、再雇用の問題などは別ですけれども、補償金の額をどう計算するのか、金銭的なことだけでも有期や定年をどう考えるかということが出てくるかと思います。
鹿野先生の御指摘の資料3の「補償の内容」の2つ目で、後者は契約の終了と直接関わらず存在するとすると、この場合の算定をどうするのか。上の・が存在しなくて、下の・だけ存在する場合の金額とはどうなるのかということを改めて検討する必要が出てくるのかなという感じがしております。これも非財産的価値というのは精神的損害とどう違うのかという話も出てきて、キャリアなどは経済的なものですが、しかし、不法行為としての損害はなかなか認められないものに該当するのかと思いますので、このあたりも複雑になると思います。2つある・のうちの1つしかない場合の金額の算定をどう考えるかという点も、もし契約終了と結びつけないとすると出てくるのかなという感じがありまして、金銭の性格と算定の方法にも影響を与える議論なのかなと思ったところです。どうもありがとうございます。
予定としては、有期契約については一応今日で終わらせようかと思っていたところですので、御意見をいただければと思います。
垣内先生、お願いします
○垣内委員 今、御議論がありました補償の内容との関係あるいは解消金の性質との関係で、終了事由あるいは消滅事由をどう考えるかというのは、確かに非常に重要な論点なのかなと思われます。
今、6ページの「補償の内容」に書かれているうち、1つ目と2つ目で意味合いが異なってくるのではないかという御示唆があったかと思うのですけれども、そういう見方もあり得ると思いますし、ここはいろいろな見方があり得るところかなと思われます。と申しますのは、2つ目につきましても、ある見方からしますと、例えば死亡やその他の事由で、解消金が支払われる前に労働関係が別の事由で有効に終了するに至ったのであるというときに、なお無効な解雇によって失われたとされるところの非財産的価値についての補償を求めていいのか、求められるべきと考えるのかどうかというのは、これもまた両論あり得るところなのかなと思われまして、一旦、無効な解雇のときにそういった価値がゆえなく失われかけて、それはしかし無効だったので失われなかったけれども、解消金の支払いという形で終了させてもいいというときには、その部分を補償しましょうと。一旦、金銭請求権が発生したのであれば、その後に別の事由での労働契約の終了があったとしても、それは左右されないというのは一つの考え方かと思われますし、そうではなくて、しょせんそれは別の事由で失われることになったものなので、その点を解消金の支払いという形で使用者側に補償させるべきだということにならないのではないかという議論もあり得ることはあり得るのかなと思われます。
同じようなことが1つ目にも成り立つのかなと思われますので、どういう補償内容を考えるかということが具体的に問題になりますけれども、それと終了事由とをどういう形で組み合わせるのかということも、これまた議論を複雑化させるばかりですが、いろいろな考え方があり得るところなのかなと感じました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。確かに、2番目も、特に人間関係を考えると、何となく一身専属性な感じがイメージ的にはしなくもないです。慰謝料と考えれば相続されることもあるかもしれませんし、特に2番目は、何かがあるだろうというのは皆さん共通しているところかと思いますが、その性格付けはより考える必要があるのかなという感じはしております。
ほかにありましたら。中窪先生、お願いします。
○中窪委員 今のことと直接は関わらないのですけれども、計算の仕方は一つ重要な、特に有期の場合に無期とは違う要素が入ってくることはあり得るのかなと思いました。
最初に垣内委員から、期間途中の解雇が無効になった場合をどうするかについて、それをアプリオリに除外することもないだろうということだったかと思います。確かにそれはそうだと思うのですが、これで解消金を払えという判決が出る場合に、有期であと数か月しか残っていないときには、それが無期でずっと続く場合と、そこは内容や金額が違ってくるのかなという感じがします。雇止め法理によってその先も更新がずっと続いていくという状況であれば無期と同様に扱えると思いますけれども、もしそこがなくて本当に一回限りの有期の期間途中で無効になった場合であれば、有期の契約に特有の考慮要素として、契約の残り期間というのはあってもいいのかなと思います。
そういう意味で8ページの「考慮要素」の中に、有期に関しては残りの契約期間とかそういうものも無期にない要素として入り得るのかなと思いましたので、一言コメントさせていただきました。
○山川座長 ありがとうございます。今は資料4の8ページの論点5に関わることで、これは定年等を想定しているのかと思いますけれども、年齢が就労可能期間ということで含まれていますが、契約の残存契約期間みたいなものも有期に特有のものとして入りそうな感じがしますね。
再雇用の場合どうするかという問題が出てきて、再雇用契約が今、高年齢者雇用安定法の義務づけがありますからある程度成立したという場合に、それをどう考えるのか。しかし、賃金はかなり下がるのが通常です。賃金が下がったことがパート有期法8条に違反する云々の論点はなくはないのですけれども、そういう点も含めてどう考えるかという論点も出てきそうです。
○中窪委員 定年後の再雇用は状況が特殊なものですから、それはそれで別に考えたほうがいい気がするんですけどね。一般の単純な有期とは違う気がするのですが。
○山川座長 恐らく定年後再雇用の状況のようなことも考慮要素として別途働き得るという感じでしょうかね。そもそもこの制度の対象から外すことを考えるかといった点もあったようですが、これまでのお話ですと、そこまではいかないという御意見が有力かと思っていましたが。
鹿野先生どうぞ。
○鹿野委員 今、中窪先生がおっしゃったことはそのとおりだと思うのですが、ただ、基本的な考え方としては、有期だから、無期だからというより、無効な解雇がなかったらどれくらいそこで契約が存続して労働を続けることができるのかということが大きな考慮要素となるのだということだと思います。無期の場合については定年制度があるとすると、定年まで何年ぐらいかというのがそこにかかってくるし、あるいは有期の場合だったら有期で残りあと何年だったかとか、有期の期間が一旦終了したときも、どれくらい更新の期待可能性があるのかというところが問題となります。具体的な点は若干違ってくるかもしれませんけれども、基本的な大きな枠組みとしては、どれくらいの期待可能な期間があったかというところに集約され、その中に個別的にどういう要素が入るのかということになってくるのかと思います。
○山川座長 ありがとうございます。このあたりはいろいろ議論のあり得るところかと思っておりましたが、小西先生から手が挙がっておられますね。お願いします。
○小西委員 今、御議論をされている点とも関係してくるところですけれども、8ページの論点5に関してですが、有期の場合に雇用継続の期待がどのくらい続くのかということも、一つ考慮要素として検討すべき中身にはなってくるかなと思っています。ただ、将来に向かって雇用継続の期待がどのくらい続いたのかを裁判所等が判断しなければいけないことになってくると、それはそれで大変かなという気もしますし、また、雇用継続の期待がどんどん続いていくと無期転換という話も出てくることになってくると、期間についてですが、そういう場合に有期としての特殊性をどのくらい実際上反映させることができるのかというのは、考えてみるとなかなか難しいなと思っている次第です。これは感想です。
私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
中窪先生、お願いします。
○中窪委員 私も、さっき有期でそこから先更新がないとはっきりしている場合について特別に考慮したほうがいいと申し上げました。無期の場合も、定年というのはある程度はっきりしていますけれども、そこまでいくとも限らないものですから、私のイメージとしては有期でもはっきり先が決まっていること以外は、むしろ一律にやったほうがいいのではないかと思っております。
雇止めについても、前回から議論があるように実質無期と同じ場合と更新期待の場合と、そこが違うのではないかということも言い出せば切りはないのですが、それは合理的な理由がない限り更新できないという意味で無期に準じるものとなったと、効果の面では考えるべきだと思っております。ですから、その他については一般的な考慮要素でやって、しかし、有期でそこから先がないことがはっきりしているときだけ例外的に、これから先は行かないという意味での残りの契約期間が決まっていると、私としては特別の要素を有期に加えるというイメージですので、補足させていただきます。
○山川座長 ありがとうございます。
考慮要素につきまして、有期に特有のものが何らかはあるだろうという御意見が多かったかと思いますが、それをどう考えるかは、さらに別の論点が出てくるように思われます。恐らく判決前の段階で雇止めがなされて、判決を出すときに19条を適用する場合と、判決で解消金の支払いを考えるときに、本来だったらその後もさらに雇止めについて19条が適用されるのかという2つの議論が別にあり得るのかなという感じもしております。判決を出すときには、契約の存在を前提にするということであれば、難しい点は、一旦雇止めや解雇をしてしまっているものですから仮想的に19条を適用することになり、働き具合の中で19条を適用するということではないものですから、その点が難しくなってきて、さらに解消金を算定するときは、将来も雇止めが許されなくなる可能性をどう考えるかということになろうかと思います。一方で、予見可能性をどう考えるかという問題もありますので、限りなく個別事案を考慮すると、そちらの要請がなかなか実現できないという悩ましいところかなという感触を持っております。
すみません、またコメントになってしまいましたけれども、考慮要素のお話に基本的には移っていると思いますが、御質問・御発言等をお願いいたします。
中窪先生、続きでしょうか。
○中窪委員 確かにおっしゃるように、期間途中の解雇で期間が終わったところでどうなるかというのは非常に判断が難しいですね。さっき私はそこがはっきりしている場合には特別だと言いましたけれども、それ自体非常に難しい、訴訟の中でどこまで明らかになるだろうかと今、山川先生の話を聞いて思いましたものですから、そこだけ補足させていただきます。
○山川座長 ありがとうございます。
では、神吉先生、お願いします。
○神吉委員 その先の話になるかもしれないですけれども、論点5と6に関して「考慮要素」の中で、合理的な再就職期間というのがありますよね。これは無期については結構難しい話だと思って、不法行為の損害賠償請求とかだと、当該事案についてのその人のこれまでのキャリアや年齢で、3か月だったり6か月だったりと計算されてきたと思うのですけれども、これはある程度定型的にやるという趣旨で入っていると思うんですね。もしかしたら理解が違うかもしれないのですが、そうなったとき紛争に寄与しているとある程度個別的に見るのかもしれないのですが、それが無期と有期で違ってくるかというのを考えたときに違い得るのかなと。ただ、違いを設けていいのかという迷いがあります。
というのは、これは基本的には外部労働市場に出たときに、明確にはされていませんけれども暗黙の前提として同じような条件での仕事が見つかるということは加味していたような気がするのですけれども、そうなったときに無期で働いていた人が同じような仕事を見つけられる蓋然性と、有期で臨時的な仕事をしていた場合の再就職の見つけやすさというのは、社会事情としては違うのかなと思うのですが、そういうことを加味するのかしないのかどうなのでしょうか。まさに合理的な再就職期間というのを「考慮要素」の中で、年齢とかこれまでの勤続状況とは別に考えるということがどうだったのかというところに立ち戻ってしまうのですが、やや難しいかなと思いました。
○山川座長 ありがとうございます。このあたりも必ずしも詰められてこなかったかなと思いますが、不法行為の場合、確かに外部労働市場での再就職可能性などを考えると、無期の場合は6か月とかもっと短いものもありますけれども、それを個々的な事情で認定していくのは、不法行為の場合でしたらまだ可能性は高まるのですけれども、この制度の設計をしていく場合は、個々的にこの人は何か月くらい再就職にかかっただろうということまで判断するというのは、個人的な感想ですが難しいのかなと思っております。そこで、有期と無期の差を考えるとすると、今の労働市場ですと、多分有期のほうが求人がたくさん出ているというか、再就職自体は労働条件を別にすればしやすいということもありますが、外部労働市場での再就職というよりも、本来は契約を終了させることの対価ということでしたので、無期の場合もともと得られていた賃金がどのくらい続いていっただろうかとか、そういうことを考えるのかなと思いますし、有期の場合は期間の定めがある間は、もともとの賃金額を、期間満了までは損害賠償としてであれ得られるというのが普通ではないかと思いましたので、こちらは考慮要素に違いが出てくるかもしれませんけれども、少なくとも再就職の難易ということまで、個別事情で外部労働市場の状況を踏まえて、また有期と無期でそれぞれ考えていくということは多分、運用上難しくなるのではないかと、これも私の感じですけれども、しております。
すみません、また個人的なコメントになってしまいましたが、ほかに御発言がありましたら。
垣内先生、お願いします。
○垣内委員 今の考慮要素のところはまた非常に難しい問題で、今日の資料3、6ページでA-①、A-②、Bという形で考え方が整理されているわけですけれども、直前に議論になっておりました合理的な再就職期間というのは、A-②の場合に考慮することが考えられる要素として挙げられているわけですが、A-①をとった場合には出てこないという話になるのかもしれませんけれども、就労可能期間は基本的にはどのパターンでも考慮されるということで、その考慮の内容が無期の場合と有期の場合とで変わってくるのではないかということかと思います。
ただ、議論が非常に難しいと感じますのは、就労可能期間を無期の場合にそもそもどういう形で考慮するのかというところが、年齢に着目するという方法が一つ出されているのですけれども、具体的な算定式としてどんな形の金額になるのかというあたりがさまざまなバリエーションがあり得るところで、それはかなり限定的なものでありますと、無期と有期をそんなに区別しなくてもいいような場合もあり得るのかもしれませんし、無期の場合にかなり金額として大きなものになるというときに有期の場合どうかというと、また前提が少し違ってくるような感じもいたしますので、無期の場合の算定式がどうなるのかも見ていきませんと、なかなか議論が難しい問題なのかなという感じがいたします。
いずれにしましても、個別の事情を本当に具体的に事案に立ち入って一件一件検討していくことはかなり難しいのではないかということは、ほかの先生からも御指摘いただいているとおりかと思いまして、ある程度定型的な形でということにならざるを得ないのだろうと思います。そのときに無期の場合はこう、有期の場合はこうという区別がされることがあるのだろうと思いますけれども、先ほど来の御議論を伺っていまして悩ましいと感じますのが、有期の場合に労契法19条の適用があり得るような有期契約と、それを考えなくてもいいような有期契約の場合とで、実質的にはかなり異なるところがありそうなのですが、これも既に御指摘がありますように、19条が実際に想定している適用場面というのは、既に更新の部分が問題となっているような場面で、1号とか2号の要件が満たされていたのかどうかということが問題になるだろうと思われますけれども、雇止めの場合はいいとしまして、特に期間途中の解雇も対象にしましょうといった場合には、期間途中ですから将来予測として期間満了時にどうなっているだろうかということで、両者を区別することができるのかを併せて考えなくてはならない。実質的な妥当性という点からしますと、本当に更新は考えなくていいという場合と、19条の適用が十分あり得るだろうという場合とは区別したほうがいいという感じもするのですけれども、その区別が実際には難しいのだろうなというのが非常に悩ましいところだと感じました。
これは単に感想ですけれども、以上です。
○山川座長 ありがとうございます。重要なところかと思います。特に、解消金の算定のときにいろいろな主張立証上の負担が双方当事者にかかってくることになりますと、本来解雇の無効とか雇止めの無効ということに代えて金銭解決による救済をというスキームを想定したわけですけれども、この制度をもし導入するとした場合に、そのおかげでもう一件訴訟みたいなものが出てきてしまって、当事者や裁判所等への負担が非常に増えてしまうとすれば、制度の本来の必要性からずれてきてしまうのかなという感じも、先生方の御意見を伺って持っております。こうなると、ある程度固定的といいますか、あまり個別事由に踏み込まないでということが要請されるかと思いますが、そうなると、ある種の政策的判断のようなものも含まれて、どこかでえいやというようなところが含まれてくるのかなという感じもしております。
すみません、個人的な感想の連続ですけれども、考慮要素の点もかなり議論をいただいておりますし、そのほかの点でももちろん結構ですので、どうぞ御発言がありましたらお願いいたします。
中窪先生、お願いします。
○中窪委員 有期ではないですが、今の考慮要素を改めて振り返ってみると、6ページのA-①、A-②とBの図ですが、合理的な再就職期間というのはどうやって計算するのだろうと改めて思ってしまいました。年齢で例えば10歳刻みぐらいにするというのはまだ可能かもしれませんけれども、そうすると年齢との関係も曖昧になってきます。要素として置くのはいいですが、特にほかのものと比べてこれは非常に判断が難しいなと改めて思いました。
その上でBを見ますと、さらに考慮要素が多くなっていますが、こちらには解雇の不当性といいますか労働者側の事情を入れるというのが多分みそなので、ここに合理的な再就職期間を入れるか入れないかというのは一つオプションとしてあり得るわけです。ここに合理的な再就職期間が当然に入るわけではなくて、給与額、勤続年数、年齢というA-①にプラスして解雇の不当性を入れる場合もあり得るのだと思います。右に行くほど少しずつ増えていくというイメージでは必ずしもないということを改めて思いましたものですから。
○山川座長 ありがとうございました。恐らくこれまでの議論でも、解雇の不当性とある要素に関連して出てくることはあり得るというお話は出てきたかという感じがいたします。今日のお話ですと、有期契約の場合には残存期間とか、あるいは定年までの期間というのは、有期の場合に特有のものとして入るのかなという感じもしております。確かに、中窪先生がおっしゃるように、合理的な再就職期間というのはそもそもどうやって判断するのかというか、それを判断するための基礎的な要素をまた考えないとなかなか難しいのかなという感じもしております。柔軟性と予見可能性の両方の要請があるとしますと、それをどう調整するかというのはなかなか難しいところがあろうかと思っております。
ほかに最後のところまで、あるいは今の御指摘もありましたように、資料1~3まで含めて全般にわたりまして何か御質問・御意見がございましたら、お願いいたします。
神吉先生、お願いします。
○神吉委員 基本的なことに戻ってしまうのですけれども、またよく分からなくなってしまったので質問をさせてください。
7ページの先ほど来ずっと議論になっていた点ではあるのですけれども、「権利の消滅要件等」の「消滅」というのは、解消金がゼロということなのですか。死亡とか解雇というのがあったら、そこでゼロになるということが消滅ということなのですか。権利の性質を考えて、発生自体はしているとして、その中でももしかすると要素的に地位がなくなっても残り得るものとなくなってしまうものとがあって、完全にゼロにはならないみたいな構成もあり得ますか。その辺がちょっと分からなくなってしまったので。
○山川座長 ありがとうございます。最初のころの議論に関わるかなと思います。解消金をどのような性質なものと捉えるか。私の記憶では、たしか辞職に関して減額事由とするというような御意見も出ていたような気もしますので、消滅事由とするということのほかに減額事由とするということもあり得るかなと思います。そこは解消金の性格をどう考えるかによっても左右しますけれども、この点、事務局から何かありますか。
○武田労働関係法課課長補佐 補償の内容の御議論をいただいている段階で、契約終了後の将来得べかりし賃金等を補償するという内容と、前々回ぐらいまでの資料で記載していた、過去の就労実績等を補償するものとして考えられるという御議論の中で、将来どこかで地位がなくなった場合には、将来得べかりしものというのはどのみちなくなったのだからという御議論に加えて、過去の就労実績等に関しては、また別途考える余地があるような御発言があったように記憶しておりますけれども、そのとおりの御発言だったかどうか、にわかにはすみません。
○山川座長 ありがとうございます。ここも先ほどのように解消金の性質に関わることですけれども、減額事由とするというのはあり得るのかなと私としては思っておりますが。
○神吉委員 ありがとうございました。本当に消滅させたほうがいいケース、もし一身専属性というのを重視するのだったら、死亡の場合とそうでない場合というので、完全に消滅というところに全部並べなくてもいい、並べないほうがいいこともあるのかもしれないと思いました。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
それでは、定刻より若干早いのですけれども、議論はおおむねいただいたかと思いますので、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
前回も申し上げましたけれども、傍聴の人数を感染対策の関係で制限しておりますので、議事録の確認につきましては御協力をよろしくお願いいたします。
種々御議論をいただきまして、議論するたびに基本的な論点が改めて出てくるということで、まとめがなかなか大変かなという感じも抱いておりますけれども、非常に充実した御議論をいただいていると思っております。ありがとうございます。
それでは、次回の日程等について事務局からお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 次回の日程につきましては現在調整中でございます。確定し次第、開催場所と併せて御連絡いたします。
○山川座長 ありがとうございます。
それでは、これで第12回解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会を終了いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、また、非常に有益な御議論をいただきまして、大変ありがとうございました。それでは終了いたします。

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