技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会(第8回)議事録

政策統括官付政策統括室

日時

令和3年2月26日(金)14:00~16:00

場所

厚生労働省省議室(9階)

出席者

委員(五十音順)
事務局

議題

(1)ヒアリング
   ・実践女子大学人間社会学部 谷内篤博様
   ・サンジク株式会社 藤澤寿文様
(2)その他

議事

議事内容
○守島座長 定刻になりましたので、ただいまから「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」の第8回を開催したいと思います。
皆様方におかれましては、オンラインの御出席になっておりますけれども、お忙しい中、お集まりいただいてありがとうございました。
カメラはいらっしゃいませんね。
本日は、所用により、池田委員、大竹委員、佐藤委員、冨山委員が御欠席でございます。
また、本日は、委員の皆様方のほかに、ヒアリングのために実践女子大学人間社会学部理事学部長の谷内様、及びサンジク株式会社代表取締役社長の藤澤様にオンラインで御出席いただいております。お忙しい中、御出席いただき、どうもありがとうございました。
議事に入ります前に、オンラインでの開催に当たって、事務局より御説明をいただきたいと思います。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 本日も皆様にオンラインで出席いただいておりますので、留意事項を御説明いたします。
まず、検討会中は原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしてください。委員の皆様は、御発言の際は、参加者パネルの御自身のお名前の横にあります挙手ボタンを押して、座長から指名があるまでお待ちください。座長から指名後、マイクのミュートを解除して御発言ください。発言終了後は、マイクをミュートに戻し、再度挙手ボタンを押して挙手の状態を解除してください。
通信の状態により、音声での御発言が難しい場合には、チャットで御発言内容をお送りいただければと思います。
また、検討会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしております電話番号まで御連絡ください。
なお、通信遮断などが生じた場合には、検討会を一時中断とさせていただく場合がございますので、御承知おきいただければと思います。
以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。
まず、本日の進め方について御説明をいたします。最初に「労使関係や労使コミュニケーションの変化について」というタイトルで実践女子大学人間社会学部の谷内様にお話をいただきたいと思います。それが終了した後、「ソーシャルメディアにより労使コミュニケーションの変化について」というタイトルでサンジク株式会社の藤澤様よりお話をいただきたいと思います。お二人のプレゼンが全て終了した後に、まとめて質疑応答と自由討議を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、ヒアリングに移りたいと思います。
最初に、実践女子大学人間社会学部の谷内様、よろしくお願いいたします。
(接続確認)
○守島座長 谷内先生はちょっと通信状況が悪いようなので、順番を入れ替えさせていただきたいと思います。
最初に、サンジク株式会社の藤澤様からお話をいただきたいと思います。
藤澤様、急で申し訳ありませんけれども、よろしくお願いいたします。
○藤澤氏 こんにちは。よろしくお願いいたします。
ただいま紹介にあずかりました、サンジク株式会社の藤澤と申します。よろしくお願いいたします。
皆様、資料は今、お手元で御覧いただいている状態でしょうか。
早速始めさせていただきたいと思います。
2枚目のスライドに自己紹介を書かせていただいているのですが、ざっくり申しますと、私はふだん、ソーシャルメディアに関連して発生するリスクについて、企業に対してリスクマネジメントの観点からコンサルテーションを行うということをなりわいとしております。
今回、労使コミュニケーションがソーシャルメディア以前と現在とでどんな変化が起きているのかということをテーマとしていただきまして、ふだん、私が様々な企業様に対してアドバイスをさせていただいている内容と非常に近しいということで、この場でお話をさせていただきます。
次のページにお進みください。
このテーマをもう一度確認させていただきますと、ソーシャルメディアがコミュニケーションをどう変えたのかということとして表せるかなと考えております。ソーシャルメディアと言われてぱっと思いつく代表的なものとしては、今であればTwitterやFacebook、Instagram、YouTubeなどいろいろありますけれども、それらの存在が前提となることで、コミュニケーションの在り方自体大きく変容してきたということがあるかと思います。
これらのソーシャルメディアサービスそのものの在り方も実は変わってきているというところがございまして、次のページにお進みください。
例えばソーシャルメディア元年と言われる2011年、今からちょうど10年前ですけれども、日本で一番利用されていたソーシャルメディアはmixiでした。御記憶されている皆さんも多いかと思うのですけれども、それが今となってはほとんど誰からも使われないマイナーなサービスになっております。ソーシャルメディアと一口で申しましても、その内実というのは日々刻々と変化しているというところでございます。今後も恐らくは様々な形で大きく変化していくのだろうというところではあるのですけれども、私のほうからは、今、まさにこの瞬間、この2021年の現在の状況を切り取ってお話をさせていただければと思っております。
ただ、漠然とお話をしても時間がかかってしまうので、本日はいただいている時間も短いので、トピックを絞ってお話ししていきたいと思います。
次のページにお進みください。
具体的には、3点トピックを挙げさせていただきました。
1つ目が「『労働環境観』の乖離」。
2つ目が「『分かってくれる人』の見つけやすさ」。
3つ目が「ひとたび火が着いたら焼け野原」。
次のページにお進みください。
まず1つ目が「『労働環境観』の乖離」というところです。これについてお話をさせていただければと思います。
次のページにお進みください。
まず、「労働環境観」というのは勝手に私のほうでつくった言葉なので、言葉の定義をお話しさせていただければと思うのですが、まず労使間コミュニケーションということについて私のほうでそしゃくさせていただきまして、ここでは「雇用者と被用者の間で、環境や待遇やその他もろもろの処遇など労働に関連する広い意味での認識のズレをすり合わせる行為」と定義させていただきました。ただ、これは非常にまどろっこしい言葉遣いですし、長ったらしいので、下線を引かせていただきました。「環境や待遇やその他もろもろの処遇など労働に関する広い意味での認識」というところについて、次のページにお進みいただきまして、これを労働環境観という言葉に置き換えさせていただいております。
私もいわゆる労働法とかというところに関して専門ではないもので、世間一般で使われているような認識と多少ずれているようなところもあるかもしれませんが、一旦これを前提にお話を進めさせていただければと思います。
では、次のページにお進みください。
この労働環境観というところなのですが、かつては、いわゆる長時間労働とか、サラリーマンの方々であれば滅私奉公といった心持ちでの働き方が大っぴらに礼賛されるような風潮があったかと思います。ちょっと古い話ですけれども、「24時間働けますか」みたいなキャッチフレーズのCMなどもありました。あれは割とポジティブに受け入れられていたような気配もあると思うのですが、今、それこそ滅私奉公だとか長時間労働を礼賛するようなこと、24時間働けますかなんてことを大っぴらに言ってしまえば、恐らくソーシャルメディア上、特にTwitterなどでは大きな反発を招くことが予想されるという状態になっております。これが場合によってはネット炎上に至るということもあり得るでしょう。つまり、「24時間働けますか」みたいな労働環境観というのは、ソーシャルメディア上では大いに否定されているというのがまさに現状です。
実際に、否定されているのは分かったと。では、ソーシャルメディア上でどのような労働環境観がよしとされているのかというところについて、次のページにざっくり挙げてみました。
次のページにお進みください。
パワハラ、セクハラ、マタハラ、サービス残業などは論外とか、どなればパワハラ認定とか、マイホームを買ってすぐに転勤を命じられるのは大変に理不尽な話であるとか、朝は定時より30分早く着いて仕事の準備をしておけというのは大変理不尽であるなど、箇条書きでずらずらと挙げさせていただきましたけれども、これはもちろん、ソーシャルメディアと一口で言いましても一人一人のユーザーが無秩序に発信しているだけの場ですので、総体として何か合意があるということではございません。ただ、長年たくさん見てきている中で、この辺がどうやら認識のボリュームゾーンだぞというところをざっくりと挙げさせていただいている。まさに温度感というところだと御理解いただければと思います。
次のページにお進みください。
今挙げさせていただいたような労働環境観、新しい労働環境観といいますか、ソーシャルメディア上での労働環境観というところは、今の40代、50代、60代のいわゆる課長、部長、役員世代の方々からすると、何甘っちょろいことを言っているんだと本音レベルでは思ってしまう方も多いのではないかと思います。これがまさに労働環境観の乖離というところでございます。
このような労働環境観というのが、ソーシャルメディアの普及によって、一般の労働者の方々が様々な情報をインプットしやすくなったことで醸成されて大いに広まっているという状況があるのですけれども、次にお進みいただきまして、昔と今とで情報環境はどういうふうに違うのか、なぜソーシャルメディア上では大いに醸成されて、それ以前にはこういう状態になっていないのかというところなのですが、かつてのソーシャルメディアが一般に普及する前の情報の取得先はどこだったのだろうというと、マスメディアや直接の知り合いからの口伝、就業先からのマニュアル類など、大体の方々はこの程度のものがインプットするための元ネタだったのではないかなと思います。
これが、2000年を境にしてインターネットがどんどん一般化してくるという中で、一個人の接触可能な情報量が非常に爆発的に増えました。ただ、爆発的に情報が増えたといっても、これはあくまで接触しようと思えば接触できる場所に置いてありますよというだけだったわけですよね。わざわざ自分から積極的に何かしらの方法で取りに行かないといけない。検索をするとか、もしくは何か置き場所、URLをたどっていく、リンクをたどっていくとかというふうなかなり積極的な情報の取り方をしないと接触できない情報であった。
これが2010年代、ソーシャルメディアが一般化することによって、非常に大きな変化を迎えます。それがタイムラインという機能の発明といいますか、一般化というところです。タイムラインという存在が大きく寄与します。
皆様もお使いの方はいらっしゃると思うのですが、TwitterやFacebook、Instagramなど、ログイン状態で開くと、まず最初にタイムラインが目に入ります。このタイムラインというところにどんどん気になる人をフォローしておけば、その人の発言とかその人がシェアしたものがどんどん勝手に流れ込んでくるという状態になっています。つまり、これはアクティブに情報を取りに行くという環境から、黙っていても入ってくる、パッシブな状態でも情報の取得ができるようになっているというパラダイムシフトが発生している。これによってインターネット上に存在している情報の量、総量そのものだけではなくて、実際に一個人が日々接触する情報の量そのものが爆発的に増えたという状態が考えられます。
どうしてもソーシャルメディアという話になると、情報を発信するツールというところに焦点が当たりがちなのですけれども、実際問題としては、一般の人々一人一人にとっては恐らく発信以上に受信において画期的なツールだったのではないかと考えます。
ただ、こうやっていろいろな情報が入ってきます、いろいろな人がいろいろなことを言っているのがどんどんタイムラインに流れてきますという状態で、個人個人の考え方がアップデートされていったとしても、会社という組織になってしまうと、これが簡単に方向転換できるものではないというところがあるかと思います。
次のページにお進みください。
例えば、サービス残業はいけないと言いながらも、経営側からすれば、残業代を全部出したら会社が潰れてしまうよということがあれば、残業代を出さないのは悪いことだと思いつつも、それはもう仕方がないみたいな状態になるわけですよね。となると、やはり会社としての方向転換はしづらいですし、かといって、残業代を出せないのだったら残業そのものをなくそうという話にもなかなかなりづらいだろうというところがあると思いますので、そういうふうな会社の方針があれば、例えば課長や部長、人事担当などの会社側に立って話をするという人たちも、一個人としてはどう思っているかは別として、会社の意向を代弁しなければいけないということになれば、サービス残業は仕方ないじゃないかという話をしなければいけない。ただ、その話をされる側、一労働者の側とすれば、話の前提が全然違うわけですよね。労働環境観が全然違うわけなので、何てことを言ってくれているんだということになれば、当然、従業員側は、会社側は全然分かってくれない、理不尽だという思いを持つに至るわけです。
この労働環境観の前提が話の最初から違うので、ディスコミュニケーションになってしまうということがこの1つ目のトピックのお話でした。
では、次のページにお進みください。
次が2つ目、「『分かってくれる人』の見つけやすさ」というところです。
やはり人間は共感を得たいと思う動物でございます。その前提に立てば、例えば仕事の愚痴や不満といったものは、分かってくれないという人よりも分かってくれる人に言いたくなるものですよね。ソーシャルメディアというのは分かってくれる人を見つけやすくしてくれるツールでもありますし、分かってくれる人を周りにたくさんはべらす、はべらすと言うと言葉は悪いのですけれども、周りにたくさんつくるということがリアルな社会よりも容易に可能な空間であるというところでございます。
次のページにお進みください。
先ほどトピック1でタイムラインの登場というお話をしましたけれども、TwitterやFacebook、Instagramなどの現時点でのメジャーなソーシャルメディアの多くはタイムラインという機能が用意されておりまして、このタイムラインに流れてくる情報というのは、自分がフォローする、つながるというアクションをしなければ流れてこないわけです。もちろんどんな情報が流れてくるようにするかというのは、ある程度自分で選別ができる。
そうなると、不快な情報をわざわざ自分のタイムラインに流してこようとはなかなか思わないわけです。常に見るタイムラインという場所に自分の不快な情報をたくさん流すということは普通はしません。多くの人はしません。何らかの必要があってする人もいるかもしれませんが、多くの場合はそれがありません。となると、自分にとって不愉快でない、心地よい発言が流れてくるように、例えばフォローを外したり、フォローをしてみたり、場合によってはミュートしてみたりとかということをいろいろ繰り返して、自分にとって心地よい発言が流れてくるようにする。その結果、自分のタイムラインはどんどん自分にとって心地いいもの、自分にとって同意し得るもので埋め尽くされていくという状況が発生しやすくなります。これによって自分の思考が再強化されていってという現象が発生すると言われているのですが、これを「フィルターバブル」と言ったりします。
これは自分が見る側としての話なのですが、さらに踏み込んでいくと、このソーシャルメディア空間に対して自分が発言をする、何かを言うといったときに、そういった自分と同じような人たちが集まっているソーシャルメディア空間の中に閉じているということになりますと、当然、自分が何か言ったときに強く反対されるとか非難されるという状況はあまり発生しやすくないのです。どちらかというと、共感とか同調という反応が返ってくる。こういうふうな反応が返ってきやすいということを「エコーチェンバー」と言ったりします。
このフィルターバブルとかエコーチェンバーという言葉がありますが、どちらも自分がもともと持っている思考を強化するということを強く促す現象であると。フィルターバブルとかエコーチェンバーという言葉は、通常ポジティブな文脈ではあまり使われません。
次のページをお願いします。
なぜあまりポジティブな文脈で使われないかと言いますと、フィルターバブルとかエコーチェンバーというのは、個人の視野を狭めて多様な意見を受け入れられない排他性を生むということが考えられるからなのですが、ただ、今回の場合、非常に例外的なポジティブ要因として挙げさせていただきたいのですけれども、立場の弱い人が自分の権利をないがしろにされた際に、仕方がないことだと諦めるのではなくて、声を上げることを後押しするという効果を一定望めると。自分は間違っていない、分かってくれる人がこんなにいるんだという安心感があれば、それに後押しされて声を上げるということができるようになるわけです。そう後押しがなければ、やはり一個人は弱いものなので仕方がないかと諦めてしまうわけです。
こういうふうな分かってくれる人の見つけやすさというところと、ソーシャルメディア上で不満を書き込む、怒りを書き込むということというのは大きく関係性があるとお考えいただくといいかなと思っています。
これが2つ目のトピックのお話でした。
こういった発言があったりというところの中で、ソーシャルメディアの発信の結果として、場合によってはいわゆるネット炎上という現象が発生するのですけれども、次のページにお進みください。
ここで3つ目のトピックです。「ひとたび火が着いたら焼け野原」というところです。
次のページにお進みください。
今回のテーマに関連して、ネット炎上と考えたときに持たれるイメージとしては、例えば従業員がソーシャルメディアに会社の不満を書き込んで、それが一気に広まって当該企業に対する非難が高まるみたいな構造をお考えになると思うのですけれども、ただ、厳密に言うとそのイメージはあまりネット炎上の実態をつかんでいない、ちょっと不正確なイメージになります。というのも、そもそもネット炎上というのはそうそう発生するものではないというところです。
次のページにお進みください。
何でそんなにそうそう発生しないのかというところなのですが、ソーシャルメディアのユーザーは単なる愚痴を書く場合、企業を特定できるような情報を付加しないというところが挙げられます。これだけネット炎上というものがいろいろなメディアに取り上げられるようになってから10年近くたつのですけれども、この間にネットユーザーというのはやはりリテラシーがどんどん高くなってきています。そうなってくると、そもそもソーシャルメディアで自分が勤めている会社の情報を特定できるような形で発信するというのがどれだけリスキーなことかというのは大体の人が分かっている。そうなると、単なる愚痴を書くというときには、そもそも会社の情報を書かないわけです。会社を特定できるようなことは書かない。会社が特定できないということは、その投稿を見ている第三者側にとっても、具体的な非難の対象となるべき企業が分からないので、全然盛り上がらない。つまり、拡散も炎上もしにくいというところです。
2つ目として、書かれている不満や怒りなどが、利害関係のない第三者の正義感に訴えかけるような重篤な内容でなければそもそも拡散しませんよというところです。炎上させる、けしからんという声を上げていくためには、声を上げなければいけないような具体性がある話、よっぽどひどいことでなければ、みんなが乗ってこないというところがありますので、ネット炎上になりにくいと。逆に、そのよっぽどのことというところがあればネット炎上につながるということも当然あります。
次のページにお進みください。
ここに挙げさせていただいたのが、A社の事例として、2019年に発生したネット炎上の経緯を時系列でまとめたものなのですけれども、これは詳しくお話ししている時間がないものですから、ざっと流させていただくのですが、2019年4月23日にTwitter上に会社の労務トラブルみたいな形で投稿がありました。具体的な内容は資料に記載させていただいています。これに関しては、こういったツイートが4月23日に始まって5月いっぱいぐらいまで続くのです。その間は、企業名を特定できるような情報というのは一切書かれていません。なので、なのでということでもないかもしれませんが、その間は一切広い範囲で話題になるということもありませんでした。
それが、会社側との交渉が完全に平行線に終わって、5月末で退職することになって、退職日の翌日である6月1日に、企業名そのものを書いたのではなくて、企業名を容易に特定し得るような情報をついに書いたと。その投稿がその日のうちに、この手の話において一定程度影響力のあるユーザーによってリツイートされまして、そこから一気に爆発的に拡散していくという状態が発生しました。
次にお進みください。
この後、どんどん6月の頭に広く話題になって、いわゆるネット炎上状態になっていくのですけれども、拡散していく当初は、よくある話じゃないかとか、会社とはそういうものだという意見も半分ぐらいはありました。非難するものと大体半々ぐらいというところだったのですけれども、どんどん話が大きくなっていくに当たって、どんどん拡散していくうちに、企業側を擁護するような話がほとんど見えなくなってくるという状態になっていきます。ほとんどの投稿がその企業はけしからんという話になっていくと。つまり、よくある話じゃないかとか、会社とはそういうものだというロジックがTwitter上ではやはり受け入れられにくいということはこういうところからも分かります。
これ以降の経緯は割愛させていただくのですけれども、この投稿者も、実際に交渉をしている間、企業側と話をしている間は会社名を明かさなかったわけです。ただ、これが不調に終わって退職となった瞬間にばんと書いたということがありますので、やはり労使コミュニケーションの機能不全というのが、この投稿者にルビコン川を渡らせたというところがあるのではないかなと思います。
次のページのさらに次のページ、A社の公式コメントというページを御覧いただきたいのですけれども、この公式コメントは長いのでここでは一々読まないのですが、ここに書いてあることを一言で言ってしまうと、当社は一切悪くないということが書いてあるのですが、その内容を一々読んでいくとしても、労働者側の言い分とは全く完全に平行線であるという状態が見てとれます。これは果たして労働者側が正しいとか、企業側が正しいとかということは、僕のほうでは何とも申し上げられないところではあるのですけれども、ただ、隔たりが大きくてコミュニケーションになっていないということはこの文章からも察することができるかなと思います。
では、次のページにお進みください。
ネットで炎上すると、結果としてはどういうふうな影響が発生するのかということを簡単にお話ししたいのですけれども、各種悪影響、当然悪評が立つみたいな話が企業側にあるのは皆様御想像いただけると思うのですが、一方で、告発した従業員側のほうにも意外とダメージがあるのです。というのが、もちろん、よくありがちな話として、身元がばれて、少なくとも一般的に広くばれるということではないのですが、関係者の間では確実にあいつだということが分かります。そうなると、その後の職業人生にもおいてちょっと不利に働くような可能性も当然あります。
もう一つ、ネット上でいかに告発者のほうに賛同する人が多かったとしても、一部の心ないユーザーから誹謗中傷を受けることが結構あるのです。そうなってくると、日常生活では通常味わうことのないようなひどい罵詈雑言を投げつけられるので、精神的にもかなりダメージを負います。大体皆さんアカウントを消してしまいます。みんな結構きつい思いをして告発をしている。これは、やってしまったけれども、結果として想像もしなかったようなダメージを食らうということではなくて、告発者の側も結構いろいろなことを覚悟した状態で告発をする。恐らくそういうふうな結果を招くであろうことは予想した状態で発信をするということをしています。つまり、完全に腹をくくって、死なばもろともみたいな気持ちで、後に残るのが全部焼け野原になるだろうということも予想した上で告発をするところまで追い詰められた状態なのであるということを御理解いただけるといいのかなと思います。
では、次のページにお進みください。
ここまでネット炎上に関する暗い側面についてお話をしてきたのですが、社会的なメリットという部分もないことはないので、ちょっとお話をさせていただければ。
アメリカの憲法学者でローレンス・レッシグという方がいらっしゃるのですが、この方は人の行動を規制するものとして、「法」「規範」「市場」「アーキテクチャ」という4つの要素を挙げています。かつて労働問題に当てはめて考えたときに、サービス残業をいくら駄目だと法律で制定しても、なかなか実効性が上がらないと。いろいろなところで横行しているというところがあったわけですよね。それがソーシャルメディアの一般化によって、サービス残業は駄目だとか、パワハラは駄目だという価値観が醸成されて、つまり、ここでいう「規範」が広く共有されて、醸成されて、ネット炎上という分かりやすい形で市場の可視化がされるわけです。これが企業側には突きつけられる。これによって、企業ではネットで告発されたらたまらんということで法律を守るインセンティブが発生する。
かつては「法」「規範」「市場」「アーキテクチャ」の4つのうちの一つ、「法」でしか対処してこられなかったものが、「規範」や「市場」という観点からも影響を与えられるようになってきたというのはプラスの側面かなというところではございます。ただ、これはもちろん劇薬の部類に入るものなので、かなり毒性が強いところではあります。
次のページにお進みください。
ここまでお話ししてくる中で、ネットでの告発の話ばかりをしてきたのですが、そもそも告発であれば内部通報制度があるじゃないかというところはあると思うのですけれども、もちろん実際に内部通報制度がうまく機能しているケースも多々あると思っています。ただ、全部が全部内部通報制度で対処し得るものなのかというと、そうでもないかなというところが、私個人の感想レベルのお話ではあるのですが、そういうふうに思うところがあります。資料には理由を3点挙げさせていただいたのですが、お時間を大分押してしまっているので、飛ばしてしまいます。すみません。御参考までというところで。
次のページにお進みください。
ここまで3つ目のトピックとしてネット炎上のお話を掘り下げてまいりましたけれども、ネット炎上をさせないためにはどうしたらよいかというところをお話しすると、端的に申し上げれば、1つ目のトピックでお話ししたような労働環境観の変化ということを念頭に置く。労働環境観に全部合わせなくてもいいのですが、少なくともそういう労働環境観を持っている従業員と話をする、コミュニケーションをするというときには、話をかみ合わせないとコミュニケーションが始まらないので、その認識を前提にしつつ、じゃあどうするのかというところのコミュニケーションをしていくということに尽きるのではないかなと思います。
今はさすがにあまりないと思うのですが、従業員がプライベートでソーシャルメディアを利用するのを禁止したり、従業員のアカウントを監視したりという会社も昔は結構あったのですよね。ただ、それは全く意味のないことなので、やめましょうねということは私のほうからはいつもいろいろな企業様にはお話ししています。というのが、ソーシャルメディアに告発を書くというのは、完全に原因ではなく結果なわけですから、原因のところを潰していかないとどうやったって何も変わらないと。むしろ、従業員のプライベートでのソーシャルメディアの利用を禁止したり監視したりするということは単なる不信感しか生みませんので、マイナスの効果しかありませんよというところです。
なので、まずはコミュニケーションの話をかみ合わせるというところから。そのためには、前提となっている労働環境観ということは理解しておきましょうというところでございます。
では、次のページにお進みください。
ということで、ここまで3つのトピックに沿ってお話をさせていただきました。
次のページにお進みください。
ここから補足を2点ほどさせていただきたいと思います。
まず1つ目の補足なのですが、今回ネットワーキングが発生するようなTwitterとかFacebookみたいなソーシャルメディアを念頭に置いてお話ししているのですけれども、それ以外でも人事・労務に影響し得るソーシャルメディアというのが存在します。転職口コミサイトとか、昨今では退職エントリーと呼ばれるようなブログ投稿があったり、そういったものが人材採用活動に大きく影響を与えるということも多々あるようです。今回はお時間も限られているので省かせていただきました。
次のページにお進みください。
2つ目の補足なのですけれども、ここで今回お話をさせていただくに当たって、労働者を指す言葉として「従業員」という言葉を用いてきました。これはもちろん正規雇用労働者だけではなくて、契約社員とかパートアルバイト従業員といった非正規雇用労働者も入りますし、あとは、就業先の企業と直接の雇用関係にないような派遣労働者も含むとお考えください。いわゆる労働者とちょっと違うかもしれませんが、同じような構図ということで言えば、例えばフリーランスの個人事業主やフランチャイズオーナーというものにも同じような構図が当てはまると考えています。実際に大手コンビニチェーンのフランチャイズオーナーが本部をTwitterで告発するみたいなことというのはたびたび起こっていることなので、構図としては同じだというところでございます。なので、こういったところもぜひ念頭に置いていただければと思っております。
長くなりましたが、私からは以上とさせていただきます。ありがとうございました。
○守島座長 藤澤様、御丁寧な説明をどうもありがとうございました。
続いて、谷内先生のお話に移りたいと思います。
では、谷内先生、よろしくお願いいたします。
○谷内氏 大変失礼しました。通信環境が悪いのか突然つながらなくなりまして、申し訳ございませんでした。
私は「労使関係に影響を与える環境の諸相」というテーマでお話をさせていただこうと思っております。
2ページ目の目次を御覧いただいてよろしいでしょうか。そこに私が今日お話し申し上げたい内容が掲載されております。
5つのことを述べたいのですが、一番ウエートとしては、1番目の「ITが雇用環境・労使関係に与える影響」を4つの視点から論じていきたいと考えております。
2点目が、若年層の職業意識、働き方が相当変わってきていると。それに対して企業や組合はどう対応しなければいけないのだろうか。これが大きな2点目です。
3点目は、90年代初頭から成果主義が大きく浸透し始めました。それに対して労働の個別化が進んでくる中で、労使関係の在り方としてどうやっていけばいいのかというところが大きな3つ目です。
それから、昨今はやりのジョブ型雇用です。これに対して組合はどう対応していくのだろうかというのが大きな4つ目です。
それから、大きな5つ目は、上の4つにはまらないものを少し挙げさせていただきました。この5番目としては6つのテーマから論じていきたいなと感じております。
では、3ページを御覧いただきたいと思います。
最初に申し上げたいのが、ITが雇用環境・労使関係に与える影響について。先ほど4つの視点からというお話を申し上げましたが、そのうちの1つ目がME技術革新と今回のIT技術革新を比較してみたいということです。
70年代、生産工程のイノベーションに向けたME技術革新が大々的に展開されました。ロボットやFAです。これが労使関係に与える影響というのは、雇用を第一義的に捉えておりましたので、あくまでME化に伴う技術訓練です。それから、労働条件を確保するために事前協議を中心としたものが多かったはずです。
それに対して、今回のIT技術革新は、生産工程ではないです。知的経営に向けた経営イノベーション、そのためにIT技術革新が行われているのだということです。したがって、ブルーカラーでは当然ないです。ホワイトカラーやゴールドカラーの仕事における裁量制や専門性、クリエイティビティーを発揮できるようなところにポイントが置かれているということです。気をつけなければいけないのは労使関係への影響なのですが、仕事の個別化・非集団化がどんどん進んでいくと、組織率そのものが低下してくるし、企業組合の活動力そのものの低下減少が起きてくる可能性があるのではなかろうかということです。この辺がIT技術革新とMEとの違いではなかろうかというところをまず押さえておきたいと思います。
それから、2つ目の視点は、IT化と組織マネジメントが大きく様変わりしてくるのではなかろうかと考えているということです。
従来の組織は、田の字型組織に見られるように職制を中心とした組織マネジメントですよね。机を並べてフェース・トゥー・フェースで仕事を進めていく。一見すると意思決定がスムーズにいくようなのですが、何が起きるかというと、組織のメンバーは与えられた職務だけを限定的にこなしていくという組織の硬直化現象が起きてしまうのですよね。それに対して今回のIT化というのは、そういう田の字型組織ではない組織のネットワーク化、動態化を推し進めていくのではなかろうかということです。
5ページ目のアンダーラインのところに書かせていただきましたが、組織の階層性を否定して、効率よりも人間性、創造性、さっきイノベーションという言い方をしましたので、そういうものを重視するのがITにおける組織でなかろうかと。それが異職場間の業務提携や異業種間のビジネス・コラボレーションというものにつながっていくわけです。そうすると、組織のアイデンティティーは何か、組織の存在意義とは何かというものを我々としては考えていかざるを得なくなってくるのではなかろうかということです。
もう一つ、IT化によって組織がフラット化していくと何が起きてくるか。ITによる組織のネット化・フラット化というのは、ミドル・マネジメントの役割を縮小させる。かつて管理者不要論が喧伝されましたけれども、本当に管理者は要らないのだろうかと。日本の労使関係というのは中間管理職を通じたコミュニケーションが大体機能しておりましたよね。中間管理職の役割は極めて大きかったのですが、ところが、ITによる組織のネットワーク化は中間管理職を不要論につなげる危険性があるということです。そういう意味では、中間管理職の役割が大きく変わってくる。さらには、いろいろな情報が入ってきますので、情報の検索・収集能力、分析能力が新たな役割として中間管理職に求められてくるのではなかろうかと考えているということでございます。
それから、ITの影響の3つ目は、多様化する雇用形態。それと、多様化するワークスタイル。こういうものが生まれてくるのではなかろうかということです。正社員の業務がITを入れることによって非正規雇用に移ってしまう。パートタイマーであるとか派遣労働ですね。あるいは専門職を含めた契約・登録社員というものが増加していくのではなかろうかなと。
8ページ目にそういうワークスタイルを分類したものが出ていますが、それは後で見ておいていただければよろしいかと思います。
大きな問題は、9ページ目を御覧いただきたいのですが、どうもIT化によって労働組合と我々組織のメンバーとの関係性が大きく変わってしまうのではないかなと。IT化は創造的・専門的仕事の比重が高まっていきます。それと同時に、裁量労働制、テレワークの適用範囲が大きく拡大されていきます。そうすると、何が起きるかというと、仕事の非集団化・個別化がより一層促進されるわけです。
その結果として、非正規雇用者やアウトソーシング、インディペンデント・コントラクターですね。これはダニエル・ピンクが『フリーエージェント社会の到来』の中で提唱した概念ですが、2019年でアメリカでは4000万人出てくるだろうと予想しているわけです。別の言い方をすると、フリーランスという捉え方でもいいのかも分かりません。日本では2020年で1000万人を超える方々がフリーランスという働き方をしている。労働力人口の20%弱です。国もやっと、今年の春あたりからこういうフリーランスの方々を独禁法と下請法、並びに労働基準法によって保護していこうと動き始めましたが、圧倒的に労働条件の交渉において不利な人たちですよね。誰も守ってくれないわけです。同時に、こういうふうな働き方をする人たちは正社員から抜けていきますので、労働組合としての組織率がどんどん低下してくる。労使関係のノンユニオン化が進んでいくのではなかろうか。そういう意味では、協調的な労使関係がなくなってきて、経営関係が不安定になるというところが危惧されるのではなかろうかと考えております。
それから、意外と気づかないのですが、目に見えない怖さとしては、ITというのは作業を細密化します。人為的な変動をなくすというところに大きな特徴があるわけです。ということは、今までの日本の労働者というのは、企業特殊技能をすることによって、勘と経験軸によって能力を高めてきたのです。ところが、それが置き換わっていって標準化されてしまうと、技能に対するアイデンティティーを失ってしまうのです。そうすると何が起きるかというと、雇用の流動化が促進されていくのではなかろうかと。そうすると、ある職種の固まり同士で連携し合って、そこで技能を高め合うような関係性が必要になってくるのではなかろうかなと考えているということなのです。それを私は社会連携に基づく新たな労使関係という形で本の中で書かせていただいているのですが、そのイメージは次の11ページを御覧いただきたいと思います。
守島先生にこれは駄目だと怒られるかも分かりませんが、社会連携をベースにした新たな労使関係ということで、いわゆる職能別組合のように、例えばSEとかバイヤーという人たちが集まっていって、自分たちの労働条件や技能形成の在り方を考えていく。それを団体がそれぞれの個別の企業と交渉していく。こういう新たな関係性というものが多分出てくるのではなかろうかなと。行き過ぎているかも分かりませんが、こういう時代が遠からず来るのではなかろうかと見ているということでございます。
これが、ITがもたらす雇用環境、あるいは労使関係に与える影響という負の1点目でございます。
2点目は、若年層の職業意識というものが相当変わってきている。それに対して、組合や企業はどう対応しなければいけないのかということを考えていかざるを得ないのではなかろうかと。
12ページの下側に書いてございます。中高年と若年層の働き方、職業意識の違いをまとめたものです。中高年の方々は会社に対する帰属意識が非常に高いですから、会社に入ることが目的ですよね。その会社の中で昇進することが最大のポイントになってきます。ところが、若年層というのは所属意識で、欲しいものをそれぞれの組織に所属しながら手に入れていけばいいのです。就職なのです。Task orientedに変わってきているのです。だから、自分の市場価値を高めるためだったらいつでもジョブホッピングしてもいいですよと。当然、こういう方々というのはプロフェッショナル、スペシャリスト志向に動いていくということです。こういう人たちが増えてくると、雇用の流動化、内部労働市場が崩壊します。内部労働市場をベースにした企業別組合というものがだんだん形骸化してしまうということがここから危惧されるのではなかろうかと考えているということです。
では、それに対して労使関係や企業でどう対応すればいいのかというところで、13ページを御覧ください。ここにいろいろ書いてあるのですが、これを説明していたら大変時間がかかるのですが、一つはキャリアオプション。今までの管理職になるような単一のキャリアパスでは無理ですよね。同時に、市場価値を高めるためには従来の階層別教育では無理ですよね。新たな専門教育が必要だろうということ。
それから、市場性の高い専門性を身につけるためには越境学習・バウンダリーレスキャリアというものも企業の中で考えていかざるを得ない。組合も一緒に従業員のキャリア形成を考えるときにこういう視点が必要になってくるだろうと。
同時に、高い専門性を身につけた人間は出ていってしまいますから、出ていかないようにするためにエンクロージャーしなければいけないですよね。これがエンゲージメントを高めるためのA&R、Attraction & Retention。こういうことが必要になってくるということです。
それから、先ほど申し上げましたが、プロフェッショナル志向が高まってくると、内部労働市場が形骸化してしまいます。恐らく企業別組合というものが限界になってしまう。そうすると、先ほど申し上げたように横断的な労働市場を視野に入れたような職能別組合というものを真剣に考えていかざるを得ないのではないのかなと。日本において本当にプロフェッショナルが根づくためには評価機関、あるいはプロフェッショナルが所属する職業コミュニティー、さらに言うならば労働市場を整備していく社会的インフラというものが必要不可欠になってくるのではなかろうかということです。そうすると、労働組合はどういう存在意義があるのだろうかというところのアイデンティティーをもう一回見直さなければいけないのではなかろうかということでございます。当然、プロフェッショナル志向の高まっている人間の優れた英知というものを経営の中に生かすためには、ジュニア・ボード制度なんていうものも考えていかざるを得ないのではないかな。
これが若年層のいわゆる働き方が変わることが企業、労使関係に与える影響、大きな2点目でございます。
大きな3点目、成果主義の浸透です。これが労使関係にどのような影響を与えるのだろうかと。この成果主義という言い方が非常に微妙なのですが、成果主義には広義と狭義の成果主義があると思うのです。集団の生産志向を高めることを広義の成果主義と呼ぶのですが、日本の成果主義は狭義の成果主義、すなわち、札束でほっぺたをはたくような報酬主義なのです。これが日本に展開されている成果主義だと思います。そうすると、上司と部下の間で与えられた目標の結果でどうなってくるか、労働条件はそこで交渉されるわけです。個別労使交渉というものが本格化してくるということです。
確かに労働組合というのは評価制度とかMBOの導入については会社側と一緒に話し合うのですが、評価結果には介入できないのです。そうすると、成果主義が浸透すると、弱者というのは相当出てくるわけです。その弱者が不満を持っている声をどこかで吸い上げるための機関、オンブズマン制度であったり、苦情処理であったり、オープンドアポリシーであったり、そういうものをつくることによって従業員の不満というものを吸い上げていかないと、労使におけるウィン・ウィンの関係というのは構築できないのではないかな。成果主義が強まれば強まるほど、ウィン・ルーズという関係になってしまうということです。その危惧がここで見てとれるということです。
それから、もう一つ、これも盲点なのですが、成果主義が浸透してくると、事業部別、カンパニー別で賞与とか能力が違ってしまうわけです。今まで労働組合はカンパニーユニオンで集団労使交渉で一本だったのです。ところが、労働条件がカンパニーごとに違ってしまうわけです。パナソニックが2006年に事業領域別の労働組合をつくりました。そういう連合体として組合の在り方に変えていったわけですよね。本当にこういう事業部制やカンパニーが進んでいったら、カンパニーユニオンという言い方で果たしていいのだろうかと。70年代以前は会社の中に複数の組合が存在しましたよね。したがって、企業別組合という言い方をしないで、企業内組合という言い方をしたと思うのです。そういう意味では、こういうカンパニーとか事業部制が出てきたときに、企業別組合という言い方が果たして正しいのだろうか、企業内組合という概念にパラダイムシフトすることも考えていかなければならないのではなかろうかと感じているということでございます。
それから、環境変化の大きな4つ目はジョブ型雇用です。経団連などは新卒からジョブ型に移行しろなんて言っているのですが、メンバーシップからジョブ型雇用に転換するわけです。職務の範囲が固定化されてくる。ジョブのグレードによって賃金が決定するわけです。その閉ざされた中でやっていく中に組合はどう関わっていくのだろうか。一番大きなポイントというのは、横断的な労働市場って全く形成されていない現日本において、競争力ある賃金設定がジョブ型雇用においてでき得るかなのです。極めて限定的にならざるを得ないですよね。
同時に、森戸先生がいらっしゃいますけれども、解雇法理がある中でいうと、職務がなくなった場合にジョブ型雇用というのは解雇でき得るのだろうか。こういうところが大きなネックになってくるのではなかろうかなと。ある階層やある職種などと限定した形でジョブ型雇用に移行するならばいいのですが、全従業員を対象にするような動きが片一方であるわけですよね。これに対して労働組合というものがどう対応していくのかというところをこれから考えていく必要性があるのではなかろうかと思っているわけです。
時間がだんだんなくなってきたので、最後に、今まで取り上げた4つ以外に幾つか気をつけなければいけないテーマがあるので、そのテーマをざっとお話し申し上げて終わりにしたいと思います。
1つ目が、16ページの➀を御覧いただきたいと思うのですが、労使協議制の強化ということと、組合あるいは労働者の経営参加を促していく必要性があるのではなかろうかなと。例えば西ドイツの共同決定法に見られるように、労働者の一部がいわゆる監査役会に参加するとか、経営の合同メンバーとして参加していくようなこともどこかで考えていかなければいけないかなと。先ほども申しましたが、若年層はプロフェッショナル志向が強いのです。ジョブ崩壊になりやすい。そういう人たちをつなぎとめるためには、そういう人たちの意見を経営に反映したほうがいいですよね。そういう意味では、ジュニア・ボード制みたいなものもどこかで考えていかざるを得ないのではないかなということでございます。
それから、次の17ページを御覧いただいてよろしいでしょうか。
組合員の範囲の見直しと、その組合員に対する新しい戦力化・組織化というものが必要になってくるのではなかろうかと見ているということです。雇用のコンティンジェント化がより一層進められていきます。したがって、正社員だけに限定している組合員の範囲を拡大していかなければいけない。同時に、その方々の能力を高めて戦力化していかなければいけないということだと思います。それと、非組合員としてカウントされてしまうのですが、管理職の方々です。常にリストラの対象になってしまう、出向・転籍の対象になってしまう方々は結構不満がたまっていると思いますので、経営側との懇談の会を設けるなどの工夫を考えていかなければいけないのではないかなと。労使環境の中で管理職の方々とのコミュニケーションをどう取っていくかということも大きなテーマだろうと思います。
大きな3つ目は、労働組合のガバナンス機能を強化したほうがいいのではなかろうかなと。例えば労働組合の資本所有への参加です。これはできるかどうか分からないのですが、労使協議制の法制化、あるいは取締役会、監査役会の労働者代表の参画、共同決定法に見られるようなこういうことをやっていって、ガバナンス機能を高めていくことが、今、労使関係の中で求められているのではなかろうかなということでございます。
大きな4つ目は、M&Aによってグループ経営が本格化してきています。そうすると、単一の労働組合だけではなくなってしまうわけですよね。では、M&Aをかけて買収した企業のいわゆる組合とどういうふうなチャネルで我々は労使交渉をしていけばいいのか。労働組合というものはこれから複数のチャネルを持っていかないと多分駄目なのだろうと。グループ経営が本格化するときに労働組合の在り方というのは変わっていかざるを得ないのではないかなというのがここでいう大きな4つ目でございます。
大きな5つ目は、18ページの➄を御覧いただきたいと思うのですが、これは諏訪さんが言っているのですが、組合員のキャリア権です。労働者に対するキャリア権というものを組合としてどう担保していけばいいのだろうかということも大きなテーマになってきているのだと思うのです。では、それは一企業の労働組合が考えていけばいいのかというと、多分そうではないと思うのです。矢印の2つ目に書いてありますが、会社の中だけでそういうものは多分難しいだろうと。大学や公的機関、他の組合と連携したようなキャリア形成を考えていく必要性がある。さらにもう一方それを推し進めるならば、グローバル競争に勝つためには産業レベルで全体的なキャリアを高めていく必要性があるのではなかろうかと。例えば電機連合の職業アカデミーやファッション産業に見られるIFIですよね。40億で400社の企業が参加していて、プロフェッショナルを育てようと。産業別のコンソーシアム型のCUというものを設置する。これは組合が主導的に設置しながら産業レベルでいわゆるキャリア形成を図っていくということも多分今後より一層重要になってくるのではなかろうかなと考えているということでございます。
最後の6番目は、先ほど来申し上げているように、組合の存在意義がかなり低下しています。組織率が低下するだけではなくて、若年層というのは組合に対する興味を持たなくなっています。賃上げ機能とか労働条件機能しか持っていないような組合に対して興味を持たなくなってきている。そうすると、本当に我々のための労働組合だというふうにやっていくためには、Union Identityというものをもう一回再構築し直す必要性があるのではないかなと。例えばオリエンタルランドの労働組合は、オリエンタルランド・フレンドシップ・ソサエティ、OFSというものを組合の名称にしているのです。こういうふうな形で、全従業員が巻き込まれて、若者の価値観の多様化、働き方の多様化に合うような労働組合にアイデンティティーを変えていかないと、労働組合の不要論みたいなものが出てくるのではなかろうかというのが私自身がここ最近危惧しているところでございます。
20分という時間のお約束でしたので、以上で終わらせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
○守島座長 谷内先生、どうもありがとうございました。
それでは、お二人からプレゼンテーションをいただきましたので、質疑応答と自由討議に移りたいと思います。ただいまのお二人のどちらでも構わないのですけれども、御説明について御質問、御意見のある方は挙手もしくはチャットに名前を入れていただければと思います。
後藤委員、質問をお願いいたします。
○後藤委員 今日は貴重な御説明をいただきまして、ありがとうございました。
どちらの先生のお話も非常に興味深くて、特に藤澤さんからいただいていたほうは、私は今、労働組合の役員をやっているのですけれども、かつてはネットの環境整備に携わっていた仕事もあったりしたものですから、非常に興味深く聞かせていただいて、ほとんど同意する内容だなと思いました。
谷内先生のほうからは、組合の役員だからこそ示唆に富んだ内容が多くて、中には本当に振り返って考えないといけないなというような内容も多くありました。
時間が限られていますので、谷内先生の内容について少し感想と、1つ教えていただきたいなということをお話ししたいと思っています。
特に14ページ以降になるのですかね。その辺の後半のほうについて、現役の組合役員としても非常に参考になる内容だなと思っていまして、私はKDDIの労働組合に所属しているのですけれども、その事例も含めて少し感想をお話しさせていただきたいと思っています。
全体的には企業の大きさとか、あるいは組合があるとかないといったことにも関係するかもしれないなというのが第一印象としてありました。労働者が個別化しているというようなことについては、今のところ、そんなに大きく進展しているというような状況にはないと受け止めています。全体的にはもう少し時間が経過していくとそういうふうになっていく可能性は非常に高いのだろうなと、先生が御指摘しているとおりかなと思っています。
現在は社員の職種が多様になっていったり、あるいは、先ほど藤澤さんのほうからも御説明がありましたように、労働環境観といいますか、労働観といったものが非常に多様化していますので、それを全部会社、特に人事部門が一手に引き受けていろいろ対応していくというのは、リソースとしても限界があるのだろうなと思っていまして、そういった部分を労働組合が担っているという役割は非常に大きいと、自負ではないですけれども、結果としてそうなっていると考えております。
あと、15ページですかね。ジョブ型のところは、KDDI社は去年からジョブ型と名付けて導入をしているのですけれども、今のところ、海外における本来の意味でのジョブ・ディスクリプションが非常にきちんと固まったジョブ型というものではなくて、どちらかというと十数年前にはやったプロフェッショナル人材制度みたいなものに非常に近くて、ジョブ・ディスクリプションというのも割と大きな意味で定義されていますので、今のところ、一足飛びに海外と同レベルのジョブ型に移行していくというような段階にはまだないのかなと思っているのですけれども、ただ、先生に御指摘していただきましたように、これまでよりは専門性を求められていきますので、そういう意味では、社員教育に対して労働組合としても積極的に行っていかなければいけないのだろうなと受け止めています。KDDI労働組合としても、拙いのですけれども、参考になるように外部の先生を呼んでセミナーをやったり、動機づけをやっていくということの模索を今しています。
最後のほうに、組合の資本参加によって経営に参画していくというような御指摘というかアドバイスもありましたけれども、労働組合でも相対する企業あるいは産業の株を所有していく組合もあろうかなと思っていまして、実は私たちKDDI労働組合もKDDI株式会社の株式を取得しています。ただ、それは経営参画という目的でやっているというよりは、会社自体が苦しい時期がありましたので、それは組合として、従業員としても買い支えると言ったら大げさですけれども、会社を支えましょうと。自分たちの雇用の場を守りたいという思いもあって取得しています。ですので、株主総会に出て発言するというようなことはないのですけれども、そういうチャネルではなくて、組合の本来的な取組として経営に関する協議を年に何回も定期的に行っていますし、そういったことをやられている組合さんもたくさんあると思いますので、今のところはその仕組みで十分網羅できているのではないかなと思います。
ただ、先生が全体にわたって御指摘いただいたように、専門性がもっと鋭くなっていくと、確かにそういうことだけでは網羅できないというか、組合側も専門性を持った人たちがたくさん入ってこないといけないと思っています。もともと組合はやはり労働者が自主的に集まって組織する組合ですので、最初から与えられているような組織ではないというような心持ちがないといけないかなと思っていましたので、先生の御指摘というのは非常に今後のクリティカルな課題かなと感じました。
長くなって申し訳ないのですが、その上で質問ですけれども、特にこの検討会はIT等の新技術の導入における労使間コミュニケーションをどういうふうにしていけばいいのかということなのですが、そういったIT等の新技術を導入するに当たって経営者側が説明する必要はないのだと思い込んでいるケースとか、あるいは労働者側も、これは経営の専権事項だから聞く必要はないよねみたいな認識のずれが生じているのだというのはこれまでの検討会の中で指摘をされてきたのですけれども、これらのそういう状況を踏まえて、今後どんどん技術が進展していく中で労使コミュニケーションを深めていくためにはどういうふうな取組をしていったらいいのかというアドバイスがもしあれば教えていただきたいと、最後に質問としてお願いしたいと思います。
長くなりましてすみません。以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
では、谷内先生、お願いします。
○谷内氏 感想と御質問ありがとうございました。
守島先生に怒られるかも分かりませんが、実は私自身は労使関係そのものの専門家ではないのです。どちらかというとコンサルタント出身なので、人事制度とかMBOとか評価制度という設計論中心の人間なのです。労使は実は一番弱いところなのです。ただ、コンサルティングする中で上場企業が多かったですから、そういう中で労使がどうしても入り込んでくるということで、そこで危惧の要素として、ああいう未来志向型のちょっと先走ったことを言ってしまったのだと思うのです。
だから、恐らく両方で経営諮問委員会みたいなものをつくりながら、これからの技術革新にどう対応していくのだろうかと。経営協議会のような組織をつくって、そこで話合いをするようなことをやっていかれたらどうでしょうか。多分経営者の意識って大分違いますよね。DNAが今回初任給で70万近く出しますよね。新卒からいわゆるプロフェッショナル採用をやっていくみたいなことを言っているのですよね。あれは経営者の南場さんがそういう色彩を持っているからこそああやってつながっていくのだと思うのですが、多分多くの会社さんはそこまで許容化できにくいですよね。
だから、名前は分からないのですが、経営協議会的な組織をつくって、一緒に考えていくようなことをやっていくしかないのかなというところが私の回答なのですけれども、どうでしょうか。正しいかどうか分かりません。
○後藤委員 ありがとうございました。場をつくることと、その場に経営者の方々を呼んでくるという努力が非常に重要かなと思いました。
○守島座長 ありがとうございました。
ほかにどなたか。
では、仁平委員、お願いします。
○仁平委員 連合の仁平です。
藤澤先生、谷内先生、どうも御説明ありがとうございました。いろいろな角度から考える材料として示唆に富むものだなと感じました。
まず、私もお話を伺っての感想ということになるのですが、谷内先生からもありましたが、今まで社内で行われてきた業務がクラウドソーシングとかシェアリングビジネスなどで切り出されて、いわゆる曖昧な雇用とかフリーランスとして働く人などが増えているのだと思っています。こうした方々で労働者を守るための法律とか保護の枠組みからこぼれ落ちてしまう方々は増えているのではないかと思っています。基本部会の報告書にもあるとおり、保護等の在り方についてはスピード感を持って検討していくことが重要なのだろうなと思っております。
中でも、特に当事者の声を反映して実効性ある取組ということにしていくには、現在の集団的労使関係の持つ力を基盤としつつ、そうした力が現在及んでいない労働者とか就業者への集団的コミュニケーションの枠組みをどう広げていくのかということも重要な検討課題の一つではないかなと思っています。
連合の取組を紹介させていただきたいと思っておるのですが、こうした状況も踏まえて、連合としてフリーランスを含む曖昧な雇用で働く方々と緩やかにつながりを持っていこうと考えておりまして、その一つの試みとして昨年の秋にWor-Qというウェブサイトを立ち上げました。このサイトを足がかりに、課題の把握や、今までの運動とか取組、培ってきたノウハウなどを活用して支援の取組ができないかということで始めたところです。
そこに寄せられた声としては、フリーランスとして働いているのだけれども、やはり立場が弱くて発注者との条件交渉に苦慮しているのだとか、仲介業者によって報酬が低く抑えられていることに対する不満とか、あとは、このコロナ禍の中で特に仕事の報酬とか条件をめぐる、要するに困っている人の声が多く寄せられているところでありまして、さらに、労働環境の問題を相談できる人や場がそもそもないのです。あるいは、同業者でそういう悩みを共有できる人との情報交換やネットワークの場がぜひあったらいいなという声をいただいております。
そこで質問なのですが、こうした曖昧な雇用とかフリーランスで働く人たちが一定の固まりを形成して、集団的なコミュニケーションを図っていくに当たって、労働組合とか企業がどのようにアウトリーチをしてコミュニケーションを図っていくことが可能なのか、藤澤先生にアイデアがあればお伺いできればというのが一つであります。
谷内先生には、ネット上での仕事の受注なども広がっているわけですけれども、こういう諸条件の交渉相手先としてどのような主体というのが考えられるのだろうか、あるいはそういった交渉の仕組みづくりということを考えた場合に、社会の環境整備ということも大事だと思うのですが、こういった辺りについても何かお考えがあればぜひお伺いしたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
○守島座長 ありがとうございました。
では、藤澤さん、まずお願いできますか。
○藤澤氏 ありがとうございます。
それでは、フリーランスのような立場の労働者が、端的に言ってしまえば、孤独に陥って労働上のいろいろな困ったこととか相談する先もないし、買いたたかれるしと。そういうふうなところに対して手を差し伸べていくような何か、団体というのかどうか、また別なことはあるかもしれませんが、きちんと横のつながりをつくって対抗していけるような状態をつくっていくという動きをしていくに当たって、例えば連合様のほうでアウトリーチしていくのにどうしたらいいかということですよね。
○仁平委員 はい。
○藤澤氏 すみません。念のため確認させていただきました。
まず、アウトリーチということを考えたときに、フリーランスというのはそれぞれいろいろな立場がいますと。僕も実質的にはフリーランスみたいな状態で働いているのですけれども、フリーランスと呼ばれる働き方も、例えば、最近いろいろ問題になることもあると思うのですけれども、Uber Eatsみたいな、かつて言っていたようなフリーランスとちょっと違うような形態のものもあったり、つまり、実質的にはパート従業員と変わらないような動きをしながら、取引関係としてはフリーランス、つまり、個人事業主という状態もある。一方で、古くからあるような、いわゆる職能を持って、自分の職能を売って稼いでいる、例えばイラストレーターみたいな方々というのは、恐らく論点が違うのだろうと思っています。
当然、どういった従事の仕方をしているかによって悩みの在り方が全然違うので、Uber Eatsの配達員の方とイラストレーターの方は同じ土俵には立てないと思うのです。恐らく職能別にグループを形成していく以外に機能するようなものがそもそもつくれないという前提があって、その上でなのですけれども、アウトリーチというところにいくと、やはり端的に言えば広報活動で、悩みを抱えている人たちにリーチしていくということになると思うのですが、広報活動のやり方というのが、いわゆるマスメディアとか口コミ以外にネットというのがありますと。ネットというのはいわゆるホームページみたいなスタティックなものから、ソーシャルメディアのような場所までありますと。恐らくは、アウトリーチしていくときにソーシャルメディアで公式アカウントみたいなものをつくって発信していくだけでは全く届かないということがあると思います。そのためにはお金をかけて広告を出すしかなくなってしまうのですよね。
もしくは、記事化してもらうというのが一番端的なPRの方法だと思うのですけれども、フリーランスの方々がフリーランスという立場だからこそ見るメディアというものが、今、恐らく存在していないと思うのです。イラストレーターの人はこういうものを見る傾向があるよねとかということはあるかもしれないです。いわゆる職能売りの人たちはあるかもしれません。でも、最も弱者と言われるような単純労働を提供するような立場を、従来であればパート、アルバイトという形で採用していたにもかかわらず、個人事業主なんだという形で契約をしているような場合、これはそもそもまとまりようがないので、何か特定の共通の興味がある分野があるとかということではないわけですよね。そうなると、広く浅くリーチしていくしかなくなってしまう。
恐らくは労働問題を取り上げて、例えばいわゆるビジネス誌のオンライン版とかで、例えばUber Eatsの人たちがどんなふうな状態になっているかとかみたいな、具体的な企業名を出すのはあまり好ましくないでしょうけれども、そういった立場の人たちに関してこんな状態になっていますよという記事が出たりする。でも、恐らく実際に働いている方たち、個人事業主として働いている方たちは、その記事にリーチする可能性が非常に低いなと思っていて、当人たちにはあまり読まれないのではないかなと思っています。そうなると、PRという形で記事化してもらってリーチしていくということが非常に難しいのかなと。であれば、やはり効率的な予算のかけ方という話になってしまうのですけれども、行動ターゲティング的にどういった人たちがどこにアクセスすることが多いのかという端的な分析をしなくてはいけない。その分析をした上で、そこに効率的にお金をかけていく、予算の絶対量を乗せていくというやり方しかないかなというところでございます。
正直、まとまりのない答えになってしまってすみません。
○守島座長 ありがとうございました。
谷内先生にも御質問があります。
○谷内氏 私のほうからも。
御質問、どうもありがとうございます。
一つは、法環境をどう整備するかというところが大きなポイントかも分かりません。独禁法とか下請法によって保護していこうということがあったり、労働者扱いをするという、労働者扱いという言葉はよくないですね。労働者性が認められたら労基法を適用するとかということで国のほうは何とか守っていこうと言っていますよね。ヨーロッパなどはギガワーカーでも準労働者として考えていて、社会保障の対象にも入れてくるという社会的インフラができつつあるのだと思うのです。日本でもインディペンデント・コントラクター協会というものが2003年にNPO法人として立ち上がっているのです。こういう社会的な組織がだんだん立ち上がってきて、どこかに何かを言えるような組織が出てこないとおかしいのかなと。
私の答えは、先ほど11ページに社会的連帯をベースにした新たな労使関係と書かせていただいたのですが、職能別組合というのは、フリーランスもあるのかも分かりませんが、いろいろな専門性の高い人たちが職能コミュニティーをつくりながら、そこで自分たちの技能を高めながら、かつ労働条件も有利に交渉するための雇用横断的な組織体、組合をつくっていったらどうかというところに一つ答えがありそうな気がするのですけれども、フリーランスそのものに対する回答ではないと思うのですが、恐らく若年層のプロフェッショナルなどが増えてきたときに、ある固まりの声を吸い上げる機構、機関として何かがないと駄目なのかなという気はいたします。
回答になっているかどうか分かりませんが、以上でございます。ありがとうございます。
○仁平委員 藤澤先生、谷内先生、ありがとうございました。
○守島座長 ありがとうございました。
続いて森戸先生、お願いします。
○森戸委員 ありがとうございます。
藤澤先生、谷内先生、どうもありがとうございました。非常に面白いというか示唆に富んだ内容で勉強になりました。
それで、お二人のを伺ってまとめて感想と、大したものではないのですけれども、藤澤先生に1つ質問があります。
最初に感想的な話からですが、お二人のお話を伺って、違うテーマではありましたけれども、くしくも労働組合の今後の在り方について非常に示唆に富んだ内容だったなと思いまして、やはり企業別組合よりも職種別とか企業の枠を超えた、もしくは悩み別ではないですけれども、今までの枠とは違う形での連帯とか団結が求められているのかなということをまず共通して感じたところでございます。
これはちょっと話がそれますけれども、藤澤先生のお話にありましたが、ある意味タイムラインに流れてくることが、非常に受動的だけれども重要な位置を占めているというのは私も自分で思うのですけれども、だから、厚労省なども政策的に望ましいことをがんがん発信してみんなに受動的にでも受信してもらえばいいのだろうなと。これは関係ないのですけれども、感想として思いました。
ただ、IT化その他で働き方が変わっていくけれども、一人一人は個人なので、集団になる枠組みとか、集団になる必要性はあるのだろうと。ただ、お二人の話で出てきたのは、それが別にたまたま同じ会社にいるだけで集まる必要性がだんだん薄れてきているのではないかと。まさに同じ悩みとか同じ境遇の人を見つけやすい時代なので、そういうところが薄れてきて、だんだん労使関係の在り方が変わるのかなというような印象を受けました。そういう意味で、コミュニケーションにとどまらないですけれども、非常に大きい今後の労使関係の在り方を考えていく示唆を得たかなと思います。
それで、最後はちょっとレベルの低い質問なのですけれども、藤澤先生に1つだけなのですが、資料でお使いになった言葉で、労働環境観が醸成される理由というところです。これは非常に説明がよく分かったのですけれども、ただ、お話だと、要は各人ある意味自分に都合のいいタイムラインをつくっているから、自分の都合のいい情報を見て、私もそうですけれども、それで情報を得た気になっていますよね。つまり、一人一人、今、世の中こうなんだよねと思っているのは実は全然違っていたりするかもしれない中で、ただ、藤澤先生のお話だと、労働環境観というのが全体的に醸成されているのだというお話だったかなと思うのですけれども、それは何をもってそういうふうにおっしゃっているというか、全体としてはみんなこういうふうに思っているよみたいなことは、具体的に数値的にというかはかられておっしゃっているのか、そこのところを聞きたかったのです。質問はそれだけです。
以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
では、藤澤さん、お願いします。
○藤澤氏 ありがとうございます。
何か数字的なエビデンスがあるかというと、お出しできるものはないというところです。
ただ、どういった形でこれがボリュームゾーンではないかということで御提示しているかといいますと、これは特にTwitterに限定してのお話をさせていただきます。ソーシャルメディアごとに仕様が違うので、どのぐらい全く知らない人が影響を与え得るかというところが変わってくるので、Facebookなどはつながっている人としか一切関わりがないですし、Instagramは写真だけなので、ここではTwitterに限定してお話をさせていただくのですけれども、Twitterというのはどのぐらい影響力があるか可視化されるわけです。影響力というのも、その人の発信したものによって誰かが行動をするというほどの強いものではないのですけれども、どのぐらいその人の発言がたくさんの人にリーチしているかということはある程度把握できるわけです。それがリツイートといいねです。これが少ないものというのは、ほとんど何の影響力もないと言って過言ではない。逆に、このリツイートとかいいねが3万、5万、10万とついている発言というのは、それだけ多くの人が少なくとも目にしている。賛同しているかどうかは別として、目にしているということが考えられます。
例えば何か騒ぎになったときに、当然いろいろな人の発言が流れてくるわけです。万人の万人による闘争ではないですけれども、それぞれがめいめい勝手に発言をしたりリツイートをしたりシェアしたりということをするわけなのですが、その中で、ある程度この問題に関してはこの人の声が大きいぞみたいなプレイヤーがいるわけです。こういう人たちを、言葉を変えるとインフルエンサーと言ったりするのですけれども、そういうインフルエンサーの人たちがどういうふうな発言をしているかというのは、僕は仕事なのでかなり広い範囲で追ってはいるのです。それを見ていると、日本人の4500万人ぐらいが月に1回はTwitterを見るという統計結果が出ているのですけれども、その4500万人が先ほど僕が提示したような労働環境観にコミットしているかというと、そんなわけはないわけです。ただ、インフルエンサー、労働に関するような発言について、特に強く支持される、リツイートされたりいいねを押されたりするという傾向が強い人たちの発言を見ていると、先ほど資料に提示させていただいたような労働環境観というのがかなりメジャーといいますか、支持されている傾向が強いなというところではあります。
というところで、回答になっていますでしょうか。大丈夫でしょうか。
○森戸委員 はい。ありがとうございます。
○守島座長 ありがとうございました。
続きまして、根橋委員、お願いします。
○根橋委員 ありがとうございます。連合長野の根橋でございます。
谷内先生、藤澤先生、どうもありがとうございました。
とりわけ谷内先生の御提起は、私も労働組合の役員ですので、労働組合としての経営参画の必要性、また、エンプロイアビリティの関与、そして、産業社会の連携によるキャリア形成の関与等、今、大変課題としておりまして、参考になったところです。どうもありがとうございました。
時間も限られておりますので、藤澤先生の御報告に対しての感想と2点質問をさせていただければと思っております。
お話にもありましたように、コミュニケーションは異なる価値観を埋めること、また、分かり合うためのプロセスと考えておりますが、ソーシャルメディアが広がる中においても、やはり労使で異なる価値観をすり合わせていくという労使のコミュニケーションの本質的な部分に変わりはないという認識を新たにしたところであります。
13ページの御報告にもありますように、働く者一人一人が接する情報の量が比較にならないくらい増えてきたということで、労使間の認識のギャップがますます拡大をし、ディスコミュニケーションが発生しやすくなるという御指摘、我々の管轄する地域においての企業、また、職場においても、そういった事象や課題も浮き彫りになりつつあるという状況であります。
その中で、27ページにもありますように、労働環境観に関する変化を理解して、それを念頭に置きつつギャップを埋められるようにコミュニケーションをしていくことが必要という御提起もいただきました。まさにこういった状況を直視して、各労使が質の高いコミュニケーションをどう構築していくのかということが課題であると考えておりますが、このギャップを埋めるために藤澤様が考える具体的な方策やアドバイス等があれば、御教示いただければと思っております。
2点目でありますけれども、16ページにもありますように、立場の弱い人が声を上げるための力をSNSのコミュニティーに見出すということが必要であるということについては、私たち労働組合としてもまさに働く者のニーズ、隠れた声や困り事を把握していくための手段が十分かどうかということについては、適宜見直しをしていくことが必要になると考えております。そうした点において、どのような点に留意をしていくべきなのかということについて御教示いただければありがたいと思っております。
以上2点、よろしくお願いします。
○藤澤氏 ありがとうございます。
1つ目、労使間のギャップを埋めるコミュニケーションってどうしたらいいんだというお話だったかと思うのですけれども、これは、実は僕もいろいろな企業さんとお話ししている中でものすごく難しいなと思っています。常識というのは何かショックを受けないとどうも上書きされないぞということを痛切に感じています。
例えばなのですが、僕が承るような仕事の話に絡めてなのですけれども、例えば従業員がソーシャルメディアで変なことをやらかさないようにルールをつくりたいという御要望をいただくことが多いのです。当然それは、俗な言い方をするとバイトテロみたいな話があって、店舗の従業員の方が店舗の中で働いているときにふざけた動画をアップするみたいなトラブルが発生してしまったりしたときには、いろいろな会社さんから御要望をいただくことが特に多いのですけれども、こうなったときに、前提となるソーシャルメディアの使い方自体の常識が、もはや現場レベルの方とそれを何とかしたいという管理職とか経営層の方々とのギャップが既に大きいのです。何でそもそもそんなところにそんな動画をアップするのかというところからもはや理解ができないと言われてしまうと、まずはソーシャルメディアとは何ぞや、人々にはどういうふうに使われているのか、なぜ使われているのか。既に現場レベルの方々は、生まれたときにはソーシャルメディアの原型になるようなものがあった、既にインターネットは完全に商業化されていたという時代、ネットバブルの頃に生まれたような方々が現場レベルで働いているわけです。一方、経営者層とか管理職、特に例えば部長クラスなどの方々になると、学生時代にはまたインターネットが商業化されていなかったみたいな方々も当然いらっしゃるわけですよね。そうなると、インターネットはどうも生活のインフラらしいぞと。自分も使うことは使うぞと。でも、ソーシャルメディアどっぷりではないわけです。なので、労働環境観が醸成される前提となるソーシャルメディアの在り方自体から乖離してしまっている。
なので、これは実際にやっていただけることは非常に少ないのですけれども、ソーシャルメディアをやってください、使ってくださいというところから実はお願いをしています。発信はしないでください、リードオンリーでお願いしますと。慣れないうちに発信するとろくでもないことを書いてしまうので、それはやめてくださいと。なので、とにかくたくさん読んでくださいと。先ほど申し上げたようなインフルエンサーの人たちを、こういう人たちがいるので、こういう人たちの声というのは影響力があるんですよ。なので、ちょっと価値観と合わなくて御不快かもしれませんが読んでみてくださいみたいなことを御提案するということはやっています。正直、実行していただけることは少ないです。ただ、そうやって個人としての認識を少しずつ改めて、新しい価値観に沿って行動してくださいということではなくて、こういうことを言っている人たちがいて、こういうことを言っている人たちが受けているというか、支持されているんですよということをまず前提として認識してくださいというところから始めていただくということはやっています。
というのが1つ目です。
2つ目の声を拾っていくというところなのですが、実は、これは僕の個人的なお話になってしまうのですけれども、僕は労働組合のある会社で働いたことがなくて、20年以上インターネット業界にいるものですから、ヤフーとかアイスタイルとか、今、一部上場しているような企業であっても、ほぼ労働組合というものがない状態で働いてきているので、実際に労働組合という組織が企業の中でどのように動いているのかという具体的なイメージをあまり持っていないというのが正直なところです。
ただ、労働組合ということではなくて、会社の組織として、不満を持っている人間は表面的にはあまり出してこないケースも当然あるでしょうと。不満を持っている人間を補足できたとしても、その不満を理解することができるかどうかは分からないのですけれども、そういうふうなところをどうケアしていくかというのは、恐らく労働組合に限らず、企業として、組織として共通の課題なのではないかなと想像します。
不満を持っているほうがなぜ言わないのかというと、どうせ言っても分かってくれないから、言ったところで不利に扱われるから、文句が多いやつだと思われるからというのが一番大きいと思うのです。なので、陰で愚痴を言うわけです。
ではなく、これはインターネット業界の中には多いのですけれども、割とフラットに物は言うと。文句を言った人間が不利に扱われないというカルチャーを持っている会社は非常に多いです。文句を言っていたらば、じゃあおまえがやれと言って管理職に任命されるとかみたいなことが逆に行われるのがインターネット業界であって、そこまでドラスティックなことを普通の会社はできないと思うので、それをやれという話ではないのですが、文句を言った人間を不利に扱わない。文句を言ったことでむしろ何かより責任ある立場に抜擢されるとか、何か役割を与えられるとか、その人を巻き込んで一緒にどうやったらよくなるのか、文句を言っているのではなくて一緒によい場所をつくっていこうよということにその人を巻き込んでいくというカルチャーが育つと、発言がしやすくなるという状況があります。なので、文句が埋もれないという環境はつくりやすくなるかなと。
ただ、これは企業のカルチャーの話になってしまうので、これが本当にいろいろな会社での解決策になるのかどうかというのは僕には何とも分からないところではあるのですが、僕の育ってきた環境としてはそうですというところでございました。
○根橋委員 ありがとうございました。
○守島座長 ありがとうございました。
続いて、井上委員、お願いします。
○井上委員 日本商工会議所の井上です。
本日は、藤澤先生、谷内先生、貴重なお話をいただきまして誠にありがとうございました。
お二人のお話を聞いての感想、意見を述べさせてもらいます。そして、最後に藤澤先生に1つデジタル関係の質問をさせていただきたいと思います。
お二人の先生のお話を聞きますと、今後ますます働き方や雇用形態の多様化、労使コミュニケーションの多様化が本当に求められてくる時代になることを切に感じました。したがいまして、労使間のコミュニケーションにおいても、そのような時代の急激な変化により柔軟に対応することが非常に大切になってくると思いました。
現状を見ますと、今、商工会議所は約125万社の会員企業様がいらっしゃるのですが、その会員企業様を見ますと、労働組合を持たない企業が約半数近くを占めておりまして、また、中小企業を中心に技術革新、AIが十分に導入、活用されていないという企業が多く存在しているというのが現状でございます。したがいまして、この検討会のタイトルは「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーション」ということなのですが、中小企業を含めまして大きく現状を見ますと、まだまだできていないという企業が多くあるのかなと思っております。
また、厚生労働省様の調査結果によりますと、労使コミュニケーションで重視される項目ということで、日常業務とか職場の人間関係といった、ある意味本当に社会人として基本的な項目が多く挙げられておりますので、こういったことを踏まえますと、藤澤先生に1つ質問なのですが、日常業務とか職場の人間関係がよりよいものになるように、例えばAIなどの技術革新を活用して円滑な労使コミュニケーションを図られている企業の事例などがありましたら、御教授いただけましたら幸いです。
○藤澤氏 ありがとうございます。
日常業務とか人間関係のところですよね。日常業務に関しては、当然、今、クラウド化されていろいろな便利なツールができています。そういうふうなところで、例えば非常に面倒くさいステップを踏まないと決済まで下りないみたいなところが、流れがかなりスムーズになったりということは多々あるかと思います。ドキュメントの整理なども、本当に細かいことを言えば、それこそ経理や人事上のドキュメントの管理、人材管理みたいなところも、SaaSと言われるようなオンラインのツールがたくさん出てきているので、そういったものは積極的に活用すべきなのだろうと思ってはいるものの、そういったところを活用するときに必ず立ちふさがる課題として、経営者の方がそもそもITを信じていないと。例えばExcelで自動計算ができるようになっているにもかかわらず、もう一回計算機をはじくということをしないと書類として受け取ってもらえないとか、これはもはやIT化以前のところの問題ではないかというような話がやはりよくあるのです。なので、そこは、いくら技術が発展しても、結局技術を使うのは人であるというところが抜けられないカルマみたいなところなのかなと思っています。
一方、人間関係のほうなのですが、これは、例えば本当に些細なところで言えばなのですけれども、立場によって変わると思うのですが、このコロナでもって在宅勤務が多くなった瞬間に、職場でのストレスが大きく減ったというようなことをおっしゃっている方の割合は非常に大きいという報道などもあるところでございます。ただ、一方で、コミュニケーションができなくて取り残されたような感じで不安であるというふうな思いを持つ方も同様に多数いらっしゃる。
労働環境の中、どういうところで働くのか、どういう環境で働くのかというところによって、コミュニケーションの在り方、人間関係の在り方は当然変わってくると思うので、現在のようないわゆるリモートワークが推奨されるような中の人間関係の悩みと、一か所の職場に詰め込んだ状態で発生する人間関係の悩みというのは全く別種になるとは思うのですけれども、コミュニケーションツールは、手段が多ければ多いほどいいなと思っていまして、コロナ前であれば多くの会社は対面とメールと電話が主なコミュニケーションツールだったと思うのです。これが少し先進的な会社になってくると、いわゆるSlackとかというようなリアルタイム、オンラインでやり取りをできるようなツールが導入され始めましたねみたいな話があったと思うのです。そういうふうなツールがあるので、リモートでやってもまあ何とかなるだろうということでリモートを推進している企業さんなども出て来始めている。そういう積極的なツール活用をしているところほど、恐らく今、オフィスの賃貸ちょっと削ってみようかとかというふうに、かなり積極的なリモート活用のほうに移行しているなと。逆にそういうふうなものに不慣れで、そういうツールを使ってコミュニケーションをすることができないと、メールと電話と対面だけに頼っていたような企業さんは、リモートと言われてもコミュニケーションをしようがなくなってしまうという問題が出てくる。
なので、これも結局、IT技術を使うのは人であるという話になってしまうのですけれども、いかに便利なツールを便利に使えるような状態になっているかどうかによって、人間関係の、特にコミュニケーションにおける人間関係のトラブルというのは、解消まではいかないにしても、何か手段が講じられるようになるのではないかなという気はしますというところでございます。
ちょっと漠然とした答えになってしまいましてすみません。
○井上委員 ありがとうございます。
○守島座長 ありがとうございました。
続いて、佐久間委員、お願いいたします。
○佐久間委員 お二人とも、今日はありがとうございました。
まず、藤澤先生のほうでございますが、「『労働環境観』の乖離」とか「『分かっている人』の見つけやすさ」、「ひとたび火が着いたら焼け野原」と、このレジュメに記載されていることは、切実だなという感想を持っておりました。特に中小企業の関係では、私どもは支援する立場で接することが多いものですから、経営者の方々が、自分たちが今まで創り出してきた経営方針や職場環境などについて、どういうふう労使が話し合い、取り組むことが重要であり、やはりここは「労使のコミュニケーション」というのが、経営者と従業員の方々が直接話をしていくという、そこはミドル・マネジメントとかそういうこと抜きに、もっと経営者と直接に接する機会を設けるというのが意思疎通の最も効果のある手段なのかなと思っています。これは大企業だと、従業員の人数や部署も多いことから、なかなかやりにくいのでしょうが、そのような中でも、ヒアリング等で伺うと、いろいろな方式を取られて、デジタル機器やソフトを使い、直接接しながら、実施している思うのです。その方策としては、グループウエアにとどまらず、さまざまな工夫をされています。しかし、中小企業では、ツールとして使いこなしているという状況には、まだ至っていないのが現状ではないかと思いますので、意思疎通の難しさが感じるところでした。
藤澤先生に質問なのですけれども、このレジュメをまとめていただいているときに、企業規模について、大体、どんなイメージを持った企業で考えていらっしゃたのか。例えば、大企業的な規模で想像していらっしゃるのか。あるいは、中小企業の従業員の平均的な数値として、中間値は平均的には大体30人ちょっとなのです。もちろん厚生労働省の各種の統計数値では、50人とか100人、または300人以下と切っていくわけですけれども、イメージ的にはどの辺の企業を想定してつくられたものなのかなということをお伺いしたいと思います。
それから、谷内先生ですけれども、今日はありがとうございました。特にフリーランスの関係については、「フリーランスは確実に事業者に属する」と私どもは考えております。そこで労働者性があるなら、発注者からの指揮命令があり、また、設備の使用など発注者の設備等を使用する契約の形態であるのならば、「労働者として雇用」されるのが本来ではないかなと思います。けれども、実際には曖昧なところが生じているのが現状です。
私どもはコミュニケーションを図っていくためにも、事業者により組織された事業協同組合や、個人が集まった組織である企業組合など、いろいろな組合組織づくりを絡めていければよいのではないかと考えます。これは労働組合だけではなくて、組織を使って推進をしていくということが本来、必要なのではないかと考えております。また、企業内部での緩やかな形での組織体については、いろいろ部署や企業単位として出てくると思うのですが、緩やかな形の組織を一歩進めていく、そのリーダーとなるものを育成していかなければならないと思います。しかし、先ほどのご説明の中で、ジョブ型もありましたけれども、推進役の本人にとっては、「職務としてはいっていない」、「面倒である」等の理由で、推進役がいないことが要因で、なかなか次の段階に進まないということがあると思います。このような推進役を中心として活動させていけば、私どもの協同組合組織、企業組合組織、そして、労働組合としても、まだまだこれから役割と有効性があるのではないかなと考えております。
1点質問なのですけれども、レジュメの6ページ目でミドル・マネジメントの役割が低下するということが出ていたと思うのですけれども、どちらかというと、経営階層図から見れば、例えば、時間外労働手当が付く係長クラスの下層経営管理層の者と、中間経営管理者層(ミドル・マネジメント)の者との間には、責任とか、時間管理の難しさ、仕事の指示の仕方というのは、自分で最後できなければ覆いかぶさってくるのではないかと思っています。ミドル・マネジメントは、逆に責任が重くなるのではないかと思いますが、その辺の御見解を教えていただければと思っています。
以上でございます。
○守島座長 では、藤澤先生、お願いします。
○藤澤氏 私のほうから、1つ目の質問ということで、企業の規模感というところですね。トピック1とトピック2に関してはそれほど大きくない、それこそ従業員20人、30人というサイズ感の企業様にも同じことが言えるのではないかと思っています。むしろ、今時いわゆる超一流大企業みたいなところのほうがこの辺のガバナンスはしっかりしていて、必ず100%そうではないのですけれども、こういった問題が起きにくい構造にはなっているかと思います。労働環境観の乖離が激しいみたいなところに関しては中小のほうが多いのかなと。
一方で、ネット炎上という話になってくると、どれだけ多くの人がその話題に乗っかるかという話になるので、ニュースバリューとして大きいかどうかという問題が出てくるわけです。これは企業の規模というよりは、その企業がどれだけ話題性があるか、人々に知られているかみたいなところが関係してくると思っています。それこそ非常にきらびやかな経営者がそろっているようなスタートアップで内紛が起きていて、その内紛に関して一現場の二十歳そこそこの若者が実情を暴露するブログをアップするとかということがあって、ここ2~3日、一部で大変話題になっているのですけれども、そこの企業規模でいえば、従業員数は本当に少ないのです。ただ、ニュースバリューとしては、経営陣が非常にネームバリューがある人たちなので、ニュースバリューがあるということで話がどんどん大きくなっていっているという状況があります。なので、規模というよりは、第三者から見たときのニュースバリュー、その話題に食いつきたくなるかどうか、そういう企業かどうかというところだと考えています。
○佐久間委員 ありがとうございました。
○守島座長 谷内先生、どうぞ。
○谷内氏 御質問どうもありがとうございます。
イメージとしては、例えば私がコンサルティングをしていた企業があるのです。社長から一般社員に直接指示が出たりシステムが走っているのです。管理職をスキップされてしまう。管理職とはいったい何だろうか。情報のルートが多様化してきて、管理職の役割って要らないんじゃないのというところが企業の中でも昨今叫ばれていますよね。
ところが、違うのだと思うのです。管理職こそが大事であって、例えばどれだけ優秀な人間をいっぱい集めたとしても、個人の暗黙知を組織の知に置き換える作業が必要になっていきますよね。そのためには中間管理職、リーダーたるものというのは必要に不可欠になってくると思うのです。ところが、そのリーダーの役割がどんどん変わってきて、上意下達で上からメールが来ると下ろすだけではなくなってきているのではなかろうかなと。個々人の個性を生かしながら、職場の中に活力を形成させて組織学習を促すようなリーダーシップが必要になってくる。むしろ、今こそ中間管理職の役割というものが大事になっているのではなかろうかというのが僕の結論でございます。その人たちが若い人たちの声を吸い上げることによって、ある意味で管理職を介した労使間のコミュニケーションがうまくいけば、いわゆる組合は要らないということは言いたくはないのですが、それに代わり得ることがコミュニケーションとしてうまくいくのではなかろうかなと思っているということです。
むしろ、リーダーは違った意味で、管理職は形を変えて必要不可欠になってきていると御理解いただければよろしいかなと思います。
○佐久間委員 ありがとうございました。
○守島座長 ありがとうございます。
続いて、戎野委員、お願いいたします。
○戎野委員 お話ありがとうございました。
藤澤先生のお話は聞いていてだんだん怖くなってくるぐらいでありまして、本当にいろいろ考えさせられました。
また、谷内先生のお話はこれからの発展形というところで、未来に向けて考えていくべきいろいろなヒントをいただいたような感じがいたしております。
1つずつ質問をさせていただきたいのですけれども、今、ミドルマネージャーの話も出ましたけれども、藤澤先生に、ミドルマネージャーがいろいろ不満を持っていたりするときに、より内部のことが分かっていると、辛辣なことが起きてくる、また、自分の立場上ずっと我慢していた、なかなかほかに分かってもらえないみたいなことがこういうところに出てくるということがあるのではないかなと思ったのです。そういうように、労使というのはどこを取り上げる、どこの環境を取り上げるかというところがあるのですけれども、労労関係もあり得ますし、今のようにほぼ使用者側ではあるものの、会社に対してという問題が今後、また、今あるのかということが一点と、これは非常に自爆してでも相手を痛めつけるみたいなところがあるような感じがしまして、そうなってくると、本当に危険性も大きいのではないか。そういうふうに規制というようなものである一定のところで歯止めをかけることも必要なのではないかなとちょっと思ったものですから、そのような動きや考え方があるのかどうかということを教えてください。
また、谷内先生には、IT化、労働組合という2点が非常に重要な今のポイントかなと思って聞いていた中で、IT化によって仕事も変化していくというようなことがスライドの9の辺りからも読み取れるかなと思うのです。そのときに、職能別組合の役割というのが仕事の変化、能力の変化に対してどういうふうに機能していったらいいのかなと。その辺り、お考えがあれば教えていただきたいなと思います。
以上です。よろしくお願いします。
○藤澤氏 私のほうから失礼いたします。
まず1つ目で、中間管理職のような立場の方、場合によっては上級管理職のような方も含まれると思うのですが、そういった方々の不満がどこに向かうのかというお話だと思うのですけれども、いわゆる労使関係といったときには、管理職というのは使用者側であるという前提に立たれると思うのですが、当然、中間管理職の方々の労働者としての権利が保障されないわけではないですよね。なので、ここでは単純に図式化してすぱっと二分するということではなく、労働者としての中間管理職もいるわけです。なので、言葉は悪いですけれども、いわゆる平社員みたいな方々と同様に、当然中間管理職の方々がこういった会社側とのディスコミュニケーションに悩むということは当然あり得ます。しかも、真ん中に立って一番あつれきを感じる場所にいるので、現場に対してはこう言わなければいけないけれども、自分の考えとは全然違うことを言わなければいけないと。それを上は分かってくれないというアンビバレントな状態になるというのは、恐らく中間管理職のほうがより強いジレンマに陥るケースがあると思うのです。
なので、トピック3で挙げたようないわゆるネット炎上のような状態の告発者に立つという可能性に関しては、平社員だろうと課長だろうと部長だろうとあまり変わりません。ただ、キャリアをその業界で積み上げてきた人たちが課長、部長になっていくと思うので、そこで会社名を特定して暴発したときに、自分が失うものの大きさということを振り返るわけですよね。なので、暴発に対する歯止めというのは自分の中で失うものの大きさと比例するところはあるので、これまで見てきた感じだと、ネットにいきなり書き込むということは割合としては少ないのではないかなと思います。
恐らく課長、部長の立場になるような方は、もっとほかの方法があるということをちゃんと御存じの方も多い。例えば内部通報制度に訴えたほうがうまくいくという場合もあるかもしれませんし、場合によっては、その業界の中でキャリアを積み上げてきた方なので、もっといいポジションで別の会社に転職する。それでほっかむりするという手もあるでしょうし、なので、不満があったら全部ネット上に書き込んでやるぞということだけが解決策というわけでは当然ないですよね。あくまで、幾つもある選択肢のうちの一つがネットなので、そういうふうな意味においては、リスクということは同等にあるけれども、しかも、抱えているものは大きいけれども、それを表に出してしまったときのリスクは書き込む側にとっての失うものの大きさであるというところなので、相殺される部分はあるのかなと思います。
中間管理職とか平社員とか関係なく、それが表に出てしまう、暴露されてしまうというリスクに対しての規制というお話なのですけれども、例えばこれをピンポイントに規制するような法律ができたとしても、法律というのは基本的に行動を阻止するものではなくて後追いで罰するものなので、先ほど発表の中にも法と規範と市場とアーキテクチャと書かせていただいたのですが、法は行動させない、抑止力には当然なるのですけれども、100%阻止できるという保証はないわけですよね。100%阻止したかったらば、アーキテクチャの問題になってくるわけです。そもそもそういう行動は取りようがないような空間設計にする。
ただ、実際問題としてはアーキテクチャで書き込むことを阻害するというのはほぼできないので、どういうふうにしていったらいいかというと、従業員に対する教育しかないと思うのです。「しかない」と言うとちょっと語弊があるのですけれども、従業員に対する教育をします。あとは内部通報制度みたいなものに関して、もっと実効性のある状態にしていく。告発する動機をどれだけ減らせるかということと、告発しなければいけない状態に追い込まれたときに、書かないようにさせるということではなくて、暴発しなくて済むようなセーフティーネットをどうやってつくるかという話だと思うのです。
なので、先ほどは割愛しましたけれども、内部通報制度でも、例えば社内のコンプライアンス担当に言ってくださいみたいな設計になっている会社もたくさんあるわけですよね。そうなると、従業員からすれば、いや、会社側を信用できないのに何で社内の人間に言うんだという話になってしまうわけです。そういうふうな設計にせざるを得ないような現状があるとは思うのですけれども、それを、会社のことを信用していない人間でもちゃんと通報が生かされるような状況をつくるとかというほうに制度設計を持っていくということが一つの抑止効果を生むものになると思います。
あとは、教育という意味でいうと、現状の法律でも、暴露してしまった時点でいろいろな不法行為とみなされるところが出てくると思います。例えば、ネットに書き込むということになると名誉棄損、信用棄損みたいな話もあり得るでしょうし、民事的な話で言えば、秘密保持契約の違反であるとかという話にもなるでしょうし、そこで賠償も発生するでしょうしというふうに、実は規制という意味、法律というイメージで言えば、労働者は暴露するということに関しては本来既にがんじがらめになっているはずなのです。でも、それが分かっていても暴露するわけです。場合によっては、そのことの重要性が分かっていても死なばもろともということもありますし、その結果が招く重大性、自分自身に対する火の粉というところを過小評価してしまっている。分かっているつもりでも過小評価してしまっているというパターンもあると思うので、そこに関してはきちんと教育をしていくということもあると思います。
なので、これのために、例えば去年、女子プロレスラーの方が、テレビでの言動が元でネットで誹謗中傷にさらされて自殺したみたいな話がありましたけれども、そのときも、やはり規制はどうなっているんだという話になるのですが、規制自体は既にあるのです。だけれども、その規制を十分に理解していない人が誹謗中傷を書いて、いや、僕はそんなつもりじゃなかったとかと言い訳をするとかということもありますし、それは事の重大性を理解していないということですよね。
その女子プロレスラーの方の場合とはちょっと違いますけれども、義憤に駆られて、自分が正義だと思ってみたいなことで書き込む方というのは、それでもって自分が罰を受けるようなことがあったとしても、それはもう知らないというふうな、殉教精神ですよね。そこまでいってしまったらば法律ではもう止められないというところだと思っています。
これで答えになっていますでしょうか。
○戎野委員 ありがとうございます。いろいろ勉強になりました。本当に教育は重要で、特に大学でもそうだなと思っていましたので、ありがとうございました。
○守島座長 ありがとうございました。
谷内先生、いかがですか。
○谷内氏 御質問ありがとうございます。
労使御専門の先生から見ると、わけの分からない職能別組合というのは気になる存在と思うのです。大前提は、プロフェッショナル志向とか仕事志向が高まってくると。雇用が流動化して、内部労働市場が崩れつつあるなと。そういう中で、どこが労働条件を話し合うとか、それぞれの能力のスペックを高め合う場であるとか、あるいは職業コミュニティーをつくるとか、ある意味で横断的な労働市場というものをつくるための機能として職能別組合が果たす役割は今後出てくるのではなかろうかなと。
11ページのスライドにSEとかバイヤーと書かせていただいたのは、どうもSEとかバイヤーというのは横断的な市場が少し形成されているらしいのです。どういう商品をいくら何億仕入れた、どこにいたということで年俸の値踏みができるのだそうです。そういうものが出来上がるような横断的な市場とか、労働市場において賃金が横断的に分かるようなバロメーターみたいなものをこういう組合を通じてやっていけたらいいのかなという意味で、まだ構想の段階で実証的な裏づけが何もないので、専門家の先生から見られるとわけの分からないことを言っているなと思われるかも分かりませんが、一応そういうことを考えているということでございます。
以上でございます。
○戎野委員 どうもありがとうございました。本当にこれから重要になってくると思うのです。私は職種転換のときにそれをどう機能させて流動化させていければいいのかなと。産業構造の転換がこれからうかがえる中で、大変興味深く勉強させていただきました。
○守島座長 ありがとうございました。
では、最後に鬼丸先生、お願いいたします。
○鬼丸委員 御報告、大変勉強させていただきました。ありがとうございます。
今後考えていくときに、もしもそういったことを御存じでしたらということでお教えいただきたいことがございます。
まず藤澤様にお教えいただきたいことは、スライドの15枚目あたりで、多くの人にとって近頃ソーシャルメディアは発信よりも前に受信があるのだと御指摘になっておりましたが、近頃の若い世代の人々の「自分自身にとって益のある情報などを受信するところから始める」というような行動様式は、ソーシャルメディアの中でだけ見られることなのか、あるいは、一般的なコミュニケーション全般でこのような傾向が強まってきているのかということについて、どちらなのだろうかということをもし御存じでしたらお教えいただきたいと思っております。
そう申しますのは、もしも一般的なコミュニケーションの際にそのような受信を前提とする傾向に変わってきているということであれば、それを前提とした労使コミュニケーションの取り方に我々も考えを変えていかなければならないのではないかと感じましたので、もしそういった点について御存じの点や、事例を見聞きしたことがあるということがございましたら、少しお話しいただければと思います。
谷内先生のほうも、似たようなことでヒントや先行事例などを御存じでしたらということになるのですが、先生は17枚目のスライドで、組合員範囲の見直しと戦力化というところに非正規労働者ももっと組合の活動に戦力化・組織化をしていくべきではないかという御提言をなさっておられます。非正規の皆さんはシフトがばらばらなことが多いと思いますので、なかなか一堂に意見を集めるといった形で意見交換をするというのが難しい面もあるのではないかなと感じております。例えばIT技術を活用してそういった困難を乗り越えているケースを御存じである、あるいはITに関係なく既にそういった取組を始めているということをもしも御存じでしたら、少しお教えいただければと思います。
私からの質問は以上です。
○藤澤氏 では、私のほうから。
ソーシャルメディア以外で受信から始まるかどうかというところなのですけれども、前提といたしまして、ソーシャルメディアというツールのつくりとして、いきなり発信しても誰も受け止めてくれないのです。フォローフォロワー関係があって、自分の書いたことを誰かが受け止めてくれる前提でないと、書いてもあまり意味がない。もちろん自分のメモ書きみたいに使っている方もいらっしゃいますし、王様の耳はロバの耳みたいに、誰もいないところだからこそ言いたいみたいなこともあるかもしれないのですけれども、それはあまりメインの使われ方ではないだろうということを考えると、まずはコミュニティーをつくるというところがあります。コミュニティーをつくるのに、もちろん自分から発信し続けるというタイプの、自分はインフルエンサーを目指すんだみたいなタイプの方もいらっしゃるのですけれども、通常はコミュニティーをつくってからそこに対して発信をしていくという順番になるので、コミュニティーをつくるためには誰とつながるのかということを考えたときに、受信から始まるわけですよね。
もちろん、例えば大学の同じクラスの中でLINEグループをつくりましょうみたいな話になってくると全く形は違ってくるのですけれども、通常、フラットな状態で何か新しいソーシャルメディアができたぞと。最近はClubhouseなんていうものが話題になっていたりしますけれども、そういうときには、入ってみて、まずいろいろなところを見て歩くわけです。既にそこに存在しているものなので、まずは見て歩く。それで、どうやらここではこういうふうな使われ方をするらしいということを理解してから自分も発信していくということが一種の手順です。
対面のコミュニケーションということになると、それは恐らくソーシャルメディア云々とは全く関係なく、古来から変わっていないのではないかなと思います。なので、受信から始めるか、発信から始めるかみたいな話というよりは、対面であれば自然な対話ということになるのではないかなと思います。
なので、最近の若者が引っ込み事案で、自分から物を言うよりも相手の出方を見るみたいなところがあるかというと、必ずしもそうではないかなと。若い人は割とそういう傾向は昔からあるでしょうし、様子を見てから、例えば学校でも先生とか教授から、君たちはこれをどう思うかと言われても、指されないと言わないみたいなことは今も昔も変わらないと思うので、それはソーシャルメディアの独特の行動様式だと御理解いただくのがいいかなと思っています。
○鬼丸委員 ありがとうございます。
○谷内氏 では、私のほうからも御回答申し上げたいと思います。
パートタイマーを労働組合の中に入れている事例としては、イオンの労組が非常に有名だと思うのですが、そこを一回ケースで取り上げていただければ詳細が分かっていただけるかなと。
逆に言うと、パートタイマーの戦力化の事例としては、もうM&Aで買われてしまったのですけれども、ダイエーさんは、例えばキャリアキャップとかジェネラルキャップ、プロフェッショナルキャップ、アクティブキャップと言って、身分ではなくて働き方に応じて4つのタイプで昇進の可能性、あるいは給与やボーナスというところの枠組みを非常に有効活用してパートを戦力化しているという事例が多く紹介されていますので、ダイエーさんのパートタイマーの戦力化の事例などを研究いただけると、結構面白い事例が見えるかなと思います。
私もあまり詳しくないので、この辺で御了承いただければありがたいです。
○鬼丸委員 ありがとうございます。
○守島座長 ありがとうございました。
これで全員の御質問を受けたのですけれども、私、個人的には、この2時間ちょっとで、この検討会は労使コミュニケーションというタイトルがついているのですけれども、その内容が恐ろしく広がっていて、かつ変容しているなという感じがして、そういう意味では、この検討会は最初は厚労省の労使コミュニケーション調査の報告から入っているのですが、その段階で終わっていて本当にいいのかなということが非常に疑問になりました。また今後議論する中でこういう議論も進めていければと思います。
それでは、これで今回の検討会を終わらせていただきたいと思います。藤澤さん、谷内さん、長時間にわたって非常に丁寧な、かつ面白い、興味深い説明をいただき、本当にありがとうございました。お礼を申し上げたいと思います。
それでは、事務局から次回日程等について御案内をいただきたいと思います。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 次回の検討会は、3月18日木曜日、10時から12時の開催を予定しております。詳細については、追って事務局から御連絡いたします。
○守島座長 それでは、ちょっと時間が超過してしまいましたけれども、本日はこの辺りで閉会とさせていただければと思います。
皆さん方、御協力どうもありがとうございました。これで終わりにしたいと思います。