2021年1月29日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

日時

令和3年1月29日(金)16:00~
 

出席者

出席委員(20名)五十音順

欠席委員(1名)

(注)◎部会長 ○部会長代理

行政機関出席者
 

  •  中井清人(医薬安全対策課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  田宮憲一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構執行役員(新薬審査等部門担当)) 他

議事

○事務局 厚労省でございます。それでは、定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会のWeb会議を開催させていただきます。本日、お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からWebでの審議とさせていただきます。まず初めに、先週の1月25日付けにて薬事・食品衛生審議会の委員の改選が行われまして、この部会につきましても、新しく委員の任命が行われたところでございます。つきましては、事前にお送りしている医薬品第二部会の委員名簿に則しまして、私から最初に委員の先生方を御紹介させていただきたいと思います。
 まず初めに、新任の石井明子委員、浦野泰照委員、大隈和委員、大曲貴夫委員、亀田秀人委員、川上純一委員、清田浩委員、新任の小崎健次郎委員、島田眞路委員、宗林さおり委員、田島優子委員、登美斉俊委員、中野貴司委員、濱敏弘委員、新任の松下正委員、南博信委員、宮川政昭委員、本日御欠席の山口拓洋委員、新任の山本昇委員、同じく新任の横幕能行委員、最後に渡辺亨委員でございます。よろしくお願いいたします。
 また、本部会の部会長ですが、1月25日に選任が行われておりまして、この医薬品第二部会につきましては、前年から引き続き、清田浩委員に部会長をお願いすることとしておりますので、御報告を申し上げます。清田部会長、一言御挨拶をお願いいたします。
○清田部会長 皆さん、こんにちは。清田でございます。よろしくお願いいたします。引き続き部会長をお引き受けいたしました。特に新任の先生方におかれましては、慣れるまでちょっと時間がかかるかもしれませんが、引き続き委員の皆様の御指導を頂きながらこの会を進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 ありがとうございました。さらに、薬事・食品衛生審議会令第7条第5項の規定に基づきまして、部会に属する委員のうちから、部会長があらかじめ指名する者がその職務を代理するとされておりまして、部会長代理については部会長から御指名を頂くこととなっております。清田部会長、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 はい。私のほうからは、引き続き川上委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。はい。御異議がないようですので。それでは川上委員、よろしくお願いいたします。
○川上部会長代理 川上でございます。どうぞよろしくお願いします。
○事務局 よろしくお願いいたします。それでは、部会長代理については川上委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。本日ですが、現在のところ、当部会員数21名のうち18名の委員がこのWeb会議に御出席いただいております。ですので、定足数に達していることを御報告いたします。
 部会を開始する前に事務局のほうより、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告させていただきます。薬事分科会規程第11条におきまして、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員、又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には辞任しなければならない」と規定しております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。また、改選後初めての医薬品第二部会ですので、特に御留意いただきたい事項などにつきまして、私のほうから御説明させていただきます。
 本部会への御参加に当たっての留意事項を3点ほど御説明します。まず第一に、守秘義務の関係です。国家公務員法第100条におきまして「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と規定されております。本審議会の委員、臨時委員、専門委員は非常勤の国家公務員となりまして、この規定の適用を受けますので、職務上知り得た秘密について漏らすことのないようお願いいたします。
 第二に、薬事に関する企業等との関係です。関連資料として、事前にメールにて資料16としてお送りした「薬事分科会規程及び薬事分科会における確認事項」ですが、こちらの薬事分科会規程第11条におきまして、先ほど御紹介した「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員、又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には辞任しなければならない」と規定がされております。審議の中立性・公平性を確保する観点から規定がされておりますので、これらに該当する場合、また今後、任期中に該当することとなる場合には、事務局のほうまで速やかに御連絡いただきますようお願いいたします。
 最後に、薬事分科会の審議事項です。同じく資料16の15ページの表になりますが、医療用医薬品という見出しの表の右側に部会・分科会と書かれております欄に、区分ごとに印を付けておりまして、○印が審議、△印が報告、▲印が文書配布による報告、×印については審議・報告はなしとしております。基本的には、これに基づきまして部会・分科会において御審議をお願いさせていただきます。また、こちらの資料、P6の第7条のほうにおきまして、「部会における決定事項のうち、比較的容易なものとして、分科会があらかじめ定める事項に該当するものについては、分科会長の同意を得て、当該部会の議決をもって分科会の議決とする。ただし、当該部会において、特に慎重な審議を必要とする事項であるとの決定がなされた場合はこの限りではない」と定められております。先ほどの表に記載している事項以外にも、この但し書きにありますように、「部会において特に慎重な審議を必要とする事項である」と決定がされた場合には、分科会において御審議をお願いすることとなります。委員の皆様におかれましては、このような規定を御承知の上、御審議に参加いただきますようお願いいたします。
 御説明は以上でございますが、御不明な点がありましたら事務局までお申しつけください。それでは清田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○清田部会長 部会長の清田です。改めてよろしくお願いいたします。それでは、事務局から審議の進行方法の御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。本日はWebでの審議になりますので、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明します。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に、発言者を御指名させていただきます。御発言いただく際にはマイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。なお、発言者が多いときには、発言された委員がこちらSkypeのメッセージ欄のほうに御記入いただくことで、部会長より発言者を順番に御指名します。Skypeのほうのメッセージ機能も適宜御利用をお願いいたします。
○清田部会長 これまでの御説明に御質問、御意見はありますか。よろしいでしょうか。それでは本日の審議に入ります。まず事務局から、資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、御報告をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りした資料のうち資料1~12と、製剤写真のほうを用いますのでお手元に御用意をお願いいたします。このほか資料13として、審議品目の薬事分科会における取扱い等の案、資料14として専門委員リスト、資料15として競合品目・競合企業リストを事前にメールにてお送りしております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申しつけください。
 続きまして、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料15の1ページ目を御覧ください。ジョイクル関節注30mgですが、本品目は変形性関節症を予定効能・効果としておりまして、同様の効能・効果を有する薬剤として、そちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。
 続きまして2ページ目ですが、レミトロ点滴静注用300μgです。本品目は再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫、再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫を予定効能・効果品目としておりまして、同様の効能・効果を有する薬剤として、そちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。続いて3ページ目、ヴァイトラックビカプセル25mg他2規格です。本品目はNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌を予定効能・効果としておりまして、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の1品目を競合品目として選定しております。続いて4ページ目、concizumabです。本品目はインヒビターを保有する先天性血液凝固第VIII因子又は第IX因子欠乏患者の出血傾向の抑制を予定効能・効果としておりまして、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。5ページ目、ペミガチニブです。本品目はFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌を予定効能・効果としておりまして、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。6ページ目はE7090です。本品目はFGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道癌を予定効能・効果としておりまして、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。以上でございます。
○清田部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきましては、皆様の御了解を頂いたものといたします。それでは、委員からの申出状況について御報告をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについて、次のとおりです。最初の議題1、ジョイクルについては退室委員なし、議決に参加しない委員として中野委員、南委員。議題2、レミトロについても退室委員なし、議決に参加しない委員として亀田委員、川上委員、松下委員、南委員、宮川委員。議題3、ヴァイトラックビについて退室委員は松下委員、議決に参加しない委員として亀田委員、濱委員、南委員、山本委員、渡辺委員。議題4、concizumabについて退室委員は松下委員、議決に参加しない委員として亀田委員、川上委員、島田委員、中野委員、濱委員、南委員、山本委員、渡辺委員。議題5、ペミガチニブについて退室委員は山本委員、議決に参加しない委員はいらっしゃいません。最後に議題6、E7090について退室委員は山本委員、議決に参加しない委員として亀田委員、南委員。以上でございます。
○清田部会長 今の事務局からの御説明に特段の御意見等はありますか。よろしいでしょうか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものといたします。
 本日は審議事項6議題、報告事項4議題、その他事項2議題となっております。それでは審議事項の議題に移ります。議題1について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品ジョイクル関節注30mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。お手元に「ジョイクル関節注30mg薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会(令和2年12月4日)での指摘事項と対応」と記載されているA4の1枚の資料及び審査報告書を御用意ください。以後の審査報告書のページ数は、審査報告書の下段に●/53と記載している数字を使用いたします。
 本剤は、令和2年12月4日開催の本部会において、本剤の薬効評価や変形性関節症の適応対象とする関節について再度整理をした上で、本剤の承認の可否等について改めて審議することが適切とされました。機構は、本剤で得られている臨床試験成績を中心に改めて検討を行い、本剤の臨床的位置付けや有効性が期待できる対象関節について、審査報告書の記載の一部修正が必要と判断いたしました。その内容は審査報告書の51ページ以降の審査報告書(2)に記載し、昨年12月の本部会における御指摘も踏まえ、添付文書案も修正いたしました。また、A4の1枚の資料に対応の概要をまとめましたので、検討内容を御説明いたします。なお、これから御説明する内容が、昨年12月の本部会における御説明と一部重複することを御了承いただければと思います。
 本剤は、ヒアルロン酸ナトリウムにジクロフェナクを共有結合させた1つの化合物、すなわち新有効成分含有医薬品としての開発となり、後ほど御説明するプラセボと比較した臨床試験において、本剤の有効性・安全性が確認できているものと考えております。この臨床試験における対照薬に関する御指摘については、投与容量や投与間隔が両剤で異なること等を踏まえると、ダブルダミーを用いたとしてもヒアルロン酸ナトリウムの関節内注射剤(以下IA-HA)と本剤を比較する臨床試験の実施は困難であり、本剤の臨床試験がプラセボを対照に実施されたことは理解可能と判断しております。
 したがって、IA-HAを上回る本剤の臨床効果は示されていないこと等も踏まえ、審査報告書53ページ、8のとおり、本剤の臨床的位置付けは既承認のIA-HAを上回るものではなく、IA-HAと同様と見なすことが適当と考えております。ただ、本剤は4週間隔投与で有効性が確認されており、1週間隔で投与されるIA-HAよりも患者負担の軽減等が期待できることから、臨床的意義はあるものと判断しております。
 また、本薬から遊離されるジクロフェナクによる消炎鎮痛効果は非臨床試験では一定程度確認されている一方、臨床試験成績への寄与は明らかにされていませんが、審査報告書では誤解を招くおそれのある記載が散見されたため、申請資料の改訂と合わせて、審査報告書51ページ以降の1~4、6及び7に記載のとおり修正いたしました。加えて、添付文書案の「16.薬物動態」及び「18.薬効薬理」の項についても同様に修正しております。なお、昨年12月の本部会においては、臨床試験に用いたプラセボは生理食塩液と御説明いたしましたが、正しくは本剤から有効成分を除いた溶液が用いられておりましたので、お詫びして訂正させていただきます。申し訳ございませんでした。
 続いて、本剤を効能・効果に含める対象関節について御説明いたします。昨年12月の本部会でも御説明し、御理解を頂いているところではありますが、審査報告書26ページの表23等から、膝関節のOA患者を対象とした613/1031試験において、本剤のプラセボに対する優越性は検証されております。膝関節以外については、関節の構造及び病態や各関節のOAにおける薬物療法も共通していることを踏まえ、肩関節、肘関節、股関節又は足関節のOAにおいても、膝関節のOAの有効性と同様の傾向が認められるかを確認することとされ、これらの関節を対象とした613/1033試験は、本剤のプラセボに対する優越性を検証する試験計画とはなっておりません。この613/1033試験において、股関節のOAについては審査報告書28ページの表25等から、膝関節と同様の有効性を示す傾向が示されているものと、昨年12月の本部会でも御理解を頂けていると考えております。
 一方、足関節のOAについては、同じく表25におけるプラセボ群との差が小さいことから、昨年12月の本部会で本剤の有効性に対する懸念が示されたものと理解しております。こちらについては、(1)4関節のOAに対する本剤の有効性を評価した613/1033試験の全体集団において、主要評価項目である「投与後12週間における患者日誌による痛みスコアのベースラインからの平均変化量」について、群間差の点推定値が0を下回り、プラセボ群と比較して本剤群の改善効果が大きい傾向が認められており、足関節のOAの部分集団においても同様に、プラセボ群と比較して本剤群の改善効果が大きい傾向であった、(2)審査報告書34ページ、表33のとおり、足関節に特異的な有効性評価項目では、本剤の有効性が示唆されていた、(3)足関節は地面への足の着き方を変える等により、疼痛の感じ方を小さくできるという特徴があり、主要評価項目を初めとする疼痛評価に影響を及ぼした可能性が考えられた、これらのこと等から本剤の有効性を否定する結果ではないと考えております。
 また、本剤の安全性については審査報告書36ページの表34に本剤の臨床試験における安全性の概要を、審査報告書37ページの表35に主な有害事象の発現状況を示しておりますが、OA患者における本剤の安全性上の重要な懸念は示唆されていないと判断しております。以上より、効能・効果には膝関節、股関節に加え、足関節のOAを含めることは可能と判断しております。
 御指摘いただいていた関節別の有効性に関する情報提供についても、添付文書の「17.臨床成績」の項に、股関節及び足関節に関する個々の成績も記載していくこととし、審査報告書52ページの5のとおり、審査報告書にも当該方向性を記載することとしました。なお、613/1033試験の全体集団において本剤の有効性は示唆されておりますが、肩及び肘関節では主要評価項目をはじめとするほとんどの有効性評価項目で、プラセボ群と比較して本剤群の改善効果が小さい傾向であったことから、当該2関節に対して本剤は有効とは言い難いと申請者自身が判断し、肩及び肘関節を申請効能・効果に含めなかった点は理解可能と考えております。
 以上の検討を踏まえ、本剤を申請効能・効果、用法・用量にて承認して差し支えないとの結論に達し、本部会にて再度御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は劇薬に該当し、製剤は毒薬・劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
 また、本申請の専門委員をお受けいただいた順天堂大学医学部整形外科主任教授である石島旨章先生から、本剤についてのコメントを頂戴しておりますので、御紹介させていただきます。
 「膝関節のOAに対するIA-HAは、本邦では広く用いられています。しかし、このIA-HAに対する評価は、世界的には決して高くありませんでした。近年、膝関節のOAの病態解明が進み、本疾患に対する薬物治療は、全身投与よりも罹患関節の関節内での治療を優先する傾向になりつつあります。これに伴い、IA-HAについても、世界的に再評価される傾向にあります。本剤は4週間に1度の間隔で投与されるヒアルロン酸製剤であり、1週間毎に投与される既承認のIA-HAと比較すると、投与間隔が4倍長くなります。このように、本剤は4分の1の投与回数でも既承認のIA-HAと同様プラセボに対する優越性が示されています。したがって、本剤は膝関節のOAに対して既承認のIA-HAと同等の効果を示したことになります。これは、患者の負担軽減等の観点からも、本剤には一定の臨床的意義があるものと考えます。
 本剤の膝関節以外の変形性関節症に対する効果については、特に足関節のOAについては、主要評価項目にてプラセボ群との差がわずかであったことは事実です。しかし、膝関節のOA以外の変形性関節症患者を対象とした試験(613/1033試験)において、本剤群の主要評価項目(投与後12週間における患者日誌による痛みスコアのベースラインからの平均変化量)の改善効果については、全体集団及び足関節のOAの集団のいずれにおいても、プラセボ群を上回る傾向が認められております。
 さらに、足関節に特異的な有効性評価項目では本剤の有効性も示唆されています。足関節は、歩行時に足の接地方法を変えることにより、疼痛の発生を弱めることができます。したがって、疼痛の強さに影響を及ぼした可能性が考えられます。また、足関節のOAでは、足関節の構造的特徴や、歩行などの移動時における関節局所への荷重の影響等、膝関節のOAと病態に類似性が認められます。以上より、本剤は、膝関節以外の荷重関節を中心に、膝関節のOAと同様に有効であることが想定できます。」
 石島先生からいただいたコメントは以上です。
また渡辺委員より、「資料1の「ジョイクル関節注30mg薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会(令和2年12月4日)での指摘事項と対応」は妥当であると思います。しかし、当初の開発理念(IA-HAよりもIA-HA+ジクロフェナクがきっと優れているに違いない)が達成されていないことから、生化学工業株式会社は、市販後調査(試験)として何らかの検証を実施し、「ジクロフェナク遊離効果」が目論見通りに発揮されるのか、を検証すべきであると思います」とのコメントを頂いております。本剤の特定使用成績調査においては、有効性に関する情報収集を行っていく方針が申請者より回答されておりますので、頂いたコメントとともに可能な限りの情報収集に努めるよう、申請者に伝えるようにいたします。機構からの御説明は以上です。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
○清田部会長 ありがとうございます。それでは、まず渡辺先生から御意見を伺いたいと思います。
○渡辺委員 今お伝えいただいたとおりです。前回から私がこだわっているのは、そもそも最初の臨床試験の対照がプラセボということで○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○がするのです。ですから市販後調査でも何でも、それから、先ほど御専門の先生から説明がありましたように、国際的にIA-HAが評価される傾向にあるということならば、その流れの中で何らかのポジティブな評価を検討するなり、もう少し○○○○やってもらいたいということです。
○清田部会長 機構からいかがですか
○医薬品医療機器総合機構 機構です。御指摘の点については、使用成績調査の中で切り替えられた患者の有効性に関しても、積極的に情報収集を行うよう申請者に伝えさせていただきたいと思います。
○清田部会長 渡辺先生、よろしいでしょうか。
○渡辺委員 よろしくお願いします。
○清田部会長 それでは南先生、御意見を頂きたいと思います。
○南委員 私も渡辺先生と同様に、実薬を対照とすべきだと思いますが、癌などと異なり生命に関わる疾患ではないので、いろいろな試験デザインがあっても良いかもしれないと思うようになりました。私の意見は関節についてです。
 私が気になるのは、やはり足関節です。先ほど御説明いただいたように613/1033試験の結果、表25全体で足関節で改善の傾向が見られるということでしたけれども、これは差がごく僅かで-0.07と、ほとんど変わりないと読むべきだと思います。全体で傾向が示されたので承認するのであれば全体で使用を許可すべきで、改善の大きさで承認するのであれば-0.07は小さすぎると思います。
 それから、足関節の場合は歩き方によって痛みは何とでもなるという御説明でした。それだったら、歩き方で対応すればいいということになってしまいます。歩き方で痛みが軽減するのはプラセボでも同じはずです。にもかかわらずこの結果ですから、やはり効果はないと考えざるを得ないと思います。
 さらに、34ページの表32にアセトアミノフェンの使用量が載っています。それを見ますと、本剤群のほうが使用量が減っていないのです。たくさんアセトアミノフェンを使っている。たくさん使っているにもかかわらず、差がほとんどないということを考えますと、有効性から考えますと足関節は適用から除外すべきと思います。本剤の承認そのものは、私は反対するものではないのですが、足関節に関して言えば、承認の科学的な妥当性がないと言わざるを得ないと思います。股関節に関しては、承認してもいいのではないかと考えます。以上です。
○清田部会長 それでは機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 先生方、御指摘ありがとうございました。先ほど御説明させていただいたように、審査報告書の中では足関節について有効性がある程度期待できる、また石島先生からもそのようなコメントを頂いているところですが、確かに差が僅かであるというところを加味しての本部会からの御指摘ということも踏まえまして、効能・効果に足関節を含めない形で対応させていただければと思っております。
○清田部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。浦野先生からも御質問を頂いております。
○浦野委員 私は前回も御指摘したとおり、基礎研究は分かっているけれども、先ほど渡辺先生もおっしゃったように、これはIA-HAを対照にしないという観点は、今でもほとんど変わっておりません。今回、4週に1回の投与で1週に1回の投与と同じ効果が出せているというところが、唯一新しく認めてもいいのではないかというところがあるので、今回の承認自身、私は反対しないという立場です。
 ただ問題は、今回はジクロフェナクが遊離しているという言葉が、遊離してそれが効いているということが、そういう誤解を与える表現が散見されたので、それをなくしたと言っているということは、ジクロフェナクの効果はないと言っているに等しいわけです。私は何を気にしているかというと、これも事前説明のときに御説明したのですが、ジクロフェナクを任意のものに変えたものというと、幾らでも出せるということになります。なので、もともとのIA-HAを阻害しないものを何かくっ付けて、「それはOCですよ」と言っても、今の論理でいくとそれは成立してしまうと思うのです。コントロールをプラセボにしてしまった限り、そこは全部成立してしまうのです。そういう薬剤がどんどんどんどん出てくるというのは、やはり第二部会としては余り認められるものではないのではないかと。
 今回の4週に1回というのも、本当はIA-HA単独でやるべきだと思うのです。それでジクロフェナクの効果があるのだったら、ジョイクルというものをしっかり大手を振って世に出していいと思うのです。しかし実際のところ、それがないのです。ですから今回は、4週に1回のところを、これまでIA-HA単独でやっていなかったスタディーを敢行し、一応結果が出ているというところのみで、かなり例外的に通すという形かなと思うのです。何かしらそういうコントロールをしっかりと置くことが必要ではないかと。
 一般的に、非劣性という考え方はあると思うのです。それは全く構造の違う薬物が、前よりも劣らなければいいという考え方です。しかし今回、前の薬に対してプラスアルファという形で非劣性のようなことを言っているというのは、やはり余り認めるものではない。これから先、同じような事例が出たときに非常に困るのではないかと思うので、そこは第二部会としてしっかりと資料にとどめておく。あるいは機構さんとしても、次の審査のときにそういう観点でしっかりとスタディーを見直すということを、申請者に対してアドバイスするということをお願いしたいと考えています。以上です。
○清田部会長 機構のほうからいかがでしょうか。今後の姿勢とか対処について何かありますか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。御指摘ありがとうございました。冒頭に御説明いたしましたよう、新有効成分含有医薬品としての開発という視点で考えると、プラセボを対照とした開発はあり得たのかなと思っております。また、IA-HAは週1回投与で承認されているということもあり、盲検下での開発となると、どうしてもダブルダミーを用いた開発ということになってくることから、新有効成分含有医薬品としての開発として考えますと、本剤の薬効は、今回の試験成績である程度評価できたのではないかと思っております。ただ、渡辺先生からの御指摘にもありましたように、今回の製剤開発のコンセプトを考えると、臨床試験の方向性に若干疑問が生じるところかと思いますので、開発当初のコンセプトを踏まえた方向性も、考えていくようにということを申請者に伝えさせていただければと思っております。
○清田部会長 浦野先生、よろしいですか。
○浦野委員 今回のことは了解いたしました。
○清田部会長 それでは将来、同じようなことが起こらないように工夫していただくということで、これは是非、この会としてお願いしていくということでよろしいでしょうか。ほかに御意見はありますか。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。今の部会長がお話になったことと、その前に浦野委員の言われたお話は、非常に重要なことです。これをこのまま放っておくと、第二部会は同じような苦言を繰り返して言わなければならないし、機構にとっても大変なことになってきます。本来これは差戻しという形で、「臨床データを再度しっかりと取りなさい」と言ったほうが、本来普通であることは確かなのです。その辺のところはしっかりと見定めなければいけないと思います。
 それから、先ほども渡辺委員、南委員からお話になったように、足関節については……。
○清田部会長 音声がちょっと途絶えています。
○宮川委員 足関節について懸念を評されていました。接地方法を変えることによってというようなことを何回もおっしゃいましたけれども、これは良いほうにも悪いほうにも捉えられます。そういうことを基準にされることは、全くもってあってはならないことだろうと思います。それから、足関節のところですが、プラセボに対して本剤の有効性があると言うのですが、それも僅かな差異であって、これが臨床的に本当に重要なのかが分かりません。そして繰り返しになりますけれども、南委員が言いましたように、アセトアミノフェンの消費量のところは非常に問題なのです。実際にそういうところからも足関節に対しては認められないと思います。このような臨床試験の取扱いというのは、しっかりと議論をして終止符を打たないと、各委員がこれから頭を悩ますことになります。その辺は理性的に御判断いただくのが、一番大事ではないかと思いました。以上です。
○清田部会長 機構からはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘、ありがとうございました。足関節については、先ほどの発言の繰り返しになりますけれども、南先生、宮川先生からの御指摘も重々と受け止めさせていただき、本剤の効能・効果には含めない方向で対応したいと思います。
○宮川委員 それから添付文書の臨床成績の記載についてです。17.1.2に、肩関節が注に書いてありますね。こういうところは削除していかないと、非常に問題だろうと思います。注の所の「承認を受けた効能又は効果」の「変形性関節症(膝関節、股関節、足関節)」という表現も削除しないと、これを見ると誤解を受けることになります。この記載は改めないといけないと思います。添付文書は報告資材ではないので、適切な記載をしなければならないと思います。そこはしっかりと記載を改めるようにしていただかないといけないのではないかと思います。以上です。
○清田部会長 添付文書について、機構から修正は可能ですね。
○医薬品医療機器総合機構 今の17.1.2の613/1033試験ですけれども、本日の部会の御指摘を踏まえ、股関節の成績だけを記載する形に改める方向で対応したいと思います。ただ、対象患者の方々の部分に関しては、肩関節や肘関節、足関節のOA患者も含まれておりますので、臨床試験を実施した対象患者を記載しつつも、注釈において、承認を受けた効能・効果は変形性関節症(膝関節、股関節)と記載する形になろうかと思います。
○宮川委員 そのようにしていただければ幸いです。誤解を与えないようにしてください。
○清田部会長 ほかに御意見はありますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは議決に入りたいと思います。中野委員、南委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことにします。議題1について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。続いて議題2に移ります。議題2について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、医薬品レミトロ点滴静注用300μgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。以後の審査報告書のページ数は、各ページの●/68で記載している番号を使用いたします。本剤の有効成分であるデニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)は、腫瘍細胞の細胞膜上に発現するインターロイキン2受容体に結合し、細胞内に取り込まれた後にジフテリア毒素が切断され、遊離したジフテリア毒素がタンパク合成を阻害すること等により、腫瘍の増殖を抑制すると考えられております。
 今般、本剤は再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫及び再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫を効能・効果として承認申請されました。令和3年1月時点において、本剤は再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫に関する効能・効果にて、米国のみで承認されております。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料14にありますとおり9名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に審査の概要を説明いたします。
 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国内第II相試験である205試験が提出されました。有効性につきまして、審査報告書32ページの表22を御覧ください。再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫及び再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫の患者を対象とした205試験において、主要評価項目とされた奏効率は36.1%であり、事前に設定された閾値奏効率を上回ったこと等から、本剤の一定の有効性は示されたと考えました。安全性については、審査報告書35ページ中ほどの「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。本剤投与時に特に注意を要する有害事象として、毛細血管漏出症候群、infusion reaction、横紋筋融解症、骨髄抑制、感染症、肝機能障害、眼障害、心臓障害及び皮膚障害が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師による有害事象の観察や管理、本剤の休薬等の適切な対応により、忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は限られており、製造販売後には、本剤を使用した全例を対象とした使用成績調査の実施が必要であると判断し、承認条件としております。
 以上のような審査の結果、機構は、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫、再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年とすることが適当であり、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当すると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。
 なお、渡辺委員より事前に、眼障害の注意喚起に関する御意見を頂いておりますので、機構より回答をさせていただきます。
 御意見としましては、臨床試験における眼障害の発現頻度は少ない状況であるが、添付文書の警告欄において、失明を含む重篤な視力障害や色覚異常が現れ、回復しなかった症例も報告されている旨の記載があり、眼科医との連携の下で使用し、定期的な眼科検査を実施する旨の注意喚起が設定されています。しかしながら、当該注意喚起は具体性に乏しく、かつ多くの病院では眼科医師数が少ないことなどを考慮すると、始めから眼科医との連携を強調するのではなく、まずは血液内科医等が眼障害の発現に留意することを前提とした警告事項の記載とするのが良いのではないかと、そういった趣旨の御意見を頂きました。
 機構としましては、次のように考えております。御指摘のように臨床試験における眼障害の発現頻度は高いとは言えない状況ではありますが、海外製造販売後において、失明等の不可逆的かつ重篤な事象が認められていることなどを考慮すると、十分注意する必要があると考え、警告において注意喚起を設定しております。失明等の眼障害が発現する機序は現時点で明確ではありませんが、一部は網膜異常の所見も認められたと報告されております。臨床試験においては、視力検査のみならず、眼底検査等、詳細な眼科検査も設定されておりました。本薬投与前に眼科検査を行い、投与前の状態(ベースライン)を正確に把握した上で、定期的に経過を観察することが重要であり、そのためにも眼科医との連携が非常に重要であると考えております。
 御指摘いただいたように、眼科医が少ないという点は十分理解をしておりますが、本薬の投与対象となる患者様が希少疾病に相当し、非常に少なく、また具体的な連携体制、検査内容等までは警告欄において規定をしておりませんので、各医療機関の状況等に応じて、柔軟に対応いただきたいと考えております。なお、本品目の専門協議におきましても、眼科医と連携して使用することの重要性は支持されまして、加えて本薬を使用するに当たり、具体的な眼科検査内容、検査スケジュール等、参考となる情報提供をすることが望ましいといった意見が出されたことを踏まえて、医療従事者向けの資材を用いて、臨床試験での実施内容等の情報提供を行うことといたしましたので、当該情報も参考に、各医療機関の状況に応じて対応していただきたいと考えております。事前に頂いた御質問に対する回答は以上になります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは御質問を頂いている渡辺委員から。
○渡辺委員 今、お伺いいただいたことは大体分かるのですが、機構の今までのやり方として、過剰に恐怖心をあおるみたいなところがあるので、それが果たして正しいのかと思うのです。例えば間質性肺炎に関しては、日本では過剰に対応され指摘されすぎているということも、僕はあれはただ単にアテンションバイアスじゃないかと思っているのです。ただ機構が常にこういう間質性肺炎という話になっているし、それの延長線上に僕はこの添付文書案も眼科医との連携の下でということを、非常に強調しているんじゃないかと感じたわけです。
 それも間違いではなく、確かに眼科医との連携というのは必要ですが、まず大事なことは、こういうような今まで眼底検査とかないような、眼球に対する障害がある可能性があるので、血液内科医が十分に留意してということが重要なわけですが、最初から眼科医のということになると、じゃあ全ての患者さんを眼科の先生に見せなきゃいけないみたいな話で終わっちゃうということもあるので、そこら辺のちょっと疾病を考え直していただきたいという、問題提起ではありますが、多分叶えられないことだと思いますが、このように感じたので、コメントさせていただきました。
○清田部会長 ありがとうございます。機構のほうはいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございました。おっしゃっていただいたような意見はあろうかと思います。ただし、繰り返しになって恐縮ですが、眼科領域の診断ということもありまして、やはり専門の先生に診ていただくことが適切な対応だろうと考えております。現場の眼科医が不足していて大変だという御指摘はごもっともかと思いますが、今回は、抗癌剤で新有効成分医薬品ということもありますので、慎重に使用していただきたいという考えのもと、このような対応とさせていただければと思います。以上です。
○清田部会長 渡辺先生、よろしいですか。
○渡辺委員 今の御回答には、異論はございません。
○清田部会長 ありがとうございます。それでは、南先生から御質問があるようです、南先生。
○南委員 ありがとうございます。今の点で、私も渡辺先生と同様に思います。ただ今回は失明もありますし、この病気を診ている病院は、まず眼科の先生がいる規模の病院だと思いますし、連携を強固に取っていただくのが良いと考えます。
 それから質問ですが、私はこの肝障害が気になります。特に重篤な肝障害の頻度が少し多いように感じます。その可逆性を教えてください。どのくらい速やかに回復していたかを教えていただきたいということと、もう1つは、お願いなのです。この試験ではシングルアームでレスポンスで有効性を評価しています。これは疾患の頻度を考えるとある程度は仕方がないと思うのですが、副作用を評価する際にAEだけではなくて、それが試験治療と関連していたかどうかという情報を是非、報告書に盛り込んでいただければと思います。
 資料の後ろのほうの臨床に関する概括評価には、いわゆるADRがまとまっているのですが、それを見ると審査報告書のAEよりは若干少ない3分の2ぐらいということが理解できるのですが、悪性疾患を対象とする場合、原疾患による症状も高頻度に見られますので、是非、AEだけでなくADRも審査報告書に盛り込んでいただければと思います。もちろんランダム化試験の場合には、研究者の判断を入れないためにAEを比較する必要がありますが、このように単群の試験の場合には是非、治験と関係があるADRをリストするようにお願いしたい。
 2つ目は、お願いであります。1つ目のどのくらい速やかに肝障害が改善したかという点についてはいかがでしょうか。
○清田部会長 機構よりお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答させていただきます。まず最初に1点目の御質問についてです。肝障害の回復性という観点ですが、細かい数字まではすぐに出せないのですが、概ねの患者さんで回復性が認められているという状況です。
○南委員 そうすると、試験治療の継続には支障を来たさなかったという理解でいいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。投与が変更されていない患者さんがほとんどという状況です。
○南委員 了解しました。2点目は、御検討いただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。今後の参考にさせていただきたいと思います。
○清田部会長 よろしいでしょうか。宮川委員から御質問があるようです。
○宮川委員 私はこの分野の専門家ではないので、機構と南先生に教えていただきたいのですが、52/68の所です。これを白血病型に分類されている病理組織型についてという所で始まりますが、その中ほどですが、表32、その下の2行目の所です。その中でいろいろな型別がありますが、治療体系から異なることから205試験の組入れ対象から除外したと記載されております。
 その後、続いて記載されている問題が諸々ある点の中で、205試験からの組入れ対象から除外されたENKLの病理組織型に対しても本剤投与は許容されるのかどうか、この治療体系が異なるということに対して問題があるのかどうか、このようなところがちょっと分からないので、是非、機構と南先生にお教えいただければ幸いと思います。以上です。
○清田部会長 まず機構からお答えできますか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。審査報告書の53/68ページの中ほどを御覧いただければと思います。「7.R.6の用法・用量について」と記載されている所の上の方です。205試験で除外されたENKLにつきましては、除外はされていたのですが、そちらに書かせていただいたように、この患者さんで安全性上、懸念される事象は認められていないということ、米国の既承認製剤の海外の臨床試験では、ENKL患者さんで奏効が認められたこと、加えて、本薬の腫瘍細胞に対する効果というのがIL-2Rを介した機序であることなどを考慮しまして、ENKLを除外する必要性は低いと判断しております。
 ですので、試験の対象からは除外はされたのですが、今回の効能・効果の対象は、かなり希少な疾患で、ENKLはさらにその中の細かい組織型に分類されるので、この組織型だけで臨床試験を実施するのは現実的ではないということも考慮いたしますと、今回の効能・効果の中に含める形で良いのではないかと判断しているところです。説明は以上になります。
○宮川委員 確かにこれ非常に少ない症例の中からいろいろ選ばなければいけないということがあるので、非常に大変なことは分かりました。53ページの上、同様のことなのですが、1分の1で奏効が認められただけであれば、作用機序として期待されると記載されてしまうと根拠の薄いような感じを受けます。それに対しても非常に懸念があったのですが、そのことも含めて症例数も少なく非常に希少な疾患であることから、そのように読み取らなければいけないということなのでしょうか。以上です。教えていただければと思います。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。今、御指摘いただいたとおりでして、我々も確かに情報量は限られている状況ではありますが、もともと腫瘍の発生学的な観点では、共通しているところも多々ありますし、作用機序の観点や、少ないながらも臨床試験での投与経験がありますので、この組織型の患者さんを除外する必要性は低いと考えております。
 ただし、実際に臨床試験に組入れられた組織型の結果につきましては、添付文書の臨床成績の項に記載させていただきまして、そういった情報も含めて適切に投与対象を選択していただけるように、情報提供させていただきたいと考えております。以上です。
○宮川委員 ありがとうございます。本当に情報提供が非常に重要なのかなと思います。歴史が長い薬で、やはり未承認薬の適用外の薬の検討会で開発要請した後、非常に長い期間掛かってこれだけやられているわけですので、そういう意味では症例が集まりにくいのかと推測しています。企業と機構との間での試験デザインの相談のところの中から、様々なことが検討されてきたにもかかわらず、このような問題点が存続していることについて、今後も適切な審査をお願いしたいと思います。以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。検討させていただきます。
○清田部会長 ほかに御質問ございますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは議決に入ります。亀田委員、川上委員、松下委員、南委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして議題3に移ります。松下正委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題3、4の審議の間、会議から御退出して御待機いただくことといたします。松下委員は、御退出をお願いいたします。
(松下委員退出)
○清田部会長 それでは議題3につきまして、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、医薬品ヴァイトラックビカプセル25mg他の製造販売承認の可否等について機構より説明いたします。以後の審査報告書のページ数は各ページの●/84で記載している数字を使用いたします。neurotrophic receptor kinase、以下、NTRKと略させていただきますが、NTRK融合遺伝子陽性の固形癌においては、NTRK融合遺伝子が発癌、腫瘍細胞の生存や増殖に寄与する重要な原因遺伝子であると考えられております。本剤の有効成分であるラロトレクチニブ硫酸塩は、NTRK遺伝子がコードするチロシンキナーゼを阻害することにより、NTRK融合遺伝子陽性の固形癌の増殖を抑制すると考えられています。今般、本剤は「NTRK融合遺伝子陽性の局所進行又は遠隔転移を有する固形癌」を効能・効果として承認申請されました。なお、本剤は平成31年4月の当部会における審議を経て、希少疾病用医薬品に指定されております。令和2年10月時点において本剤は、NTRK融合遺伝子陽性の固形癌に係る効能・効果で、42の国又は地域で承認されています。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料14にございますとおり8名の委員です。
 以下、臨床試験成績を中心に審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国際共同第I/II相試験であるSCOUT試験及び国際共同第II相試験であるNAVIGATE試験が提出されました。有効性については、審査報告書40ページの表25を御覧ください。生後0日以上21歳以下のNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌患者を対象としたSCOUT試験の第II相パートにおいて、主要評価項目とされた独立評価委員会判定による奏効率は88.9%でした。
 続きまして、審査報告書42ページの表26を御覧ください。12歳以上のNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌患者を対象としたNAVIGATE試験において、主要評価項目とされた独立評価委員会判定による奏効率は表26のとおりであり、コホート7以外のコホートにおける奏効率は65.2%でした。以上の成績に加えて、NTRK融合遺伝子が癌のドライバーであること等を考慮すると、NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌患者に対する本剤の一定の有効性が示されたと判断しました。
 安全性については、審査報告書49ページの「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。本剤投与時において、特に注意すべき有害事象として、肝機能障害、骨髄抑制、中枢神経障害、運動失調及び認知障害が認められています。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師による有害事象の観察や管理等の適切な対応により、忍容可能と判断しました。以上のような審査の結果、機構は「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。ただし、NTRK融合遺伝子陽性の固形癌患者の癌腫別の検討症例、及び日本人における検討症例は限られていることから、使用実態下における日本人のNTRK融合遺伝子陽性の固形癌患者に対する、本剤投与時の有効性及び安全性を検討することを目的とした、全例調査を実施する必要があると判断し、承認条件としております。本剤は、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年とすることが適当であり、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。
 なお、渡辺委員より事前に御質問を頂いております。本剤と既承認のエヌトレクチニブは、いずれも「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」を効能・効果としておりますが、この2剤の基本的違いに関して、3点御質問を頂きましたので、それぞれ機構より回答いたします。
1つ目の質問ですが、それぞれの添付文書における作用機序について、エヌトレクチニブは、トロポミオシン受容体キナーゼ、ROS1等のチロシンキナーゼに対する阻害作用を有する。本剤はNTRK遺伝子がコードするトロポミオシン受容体キナーゼファミリータンパクのチロシンキナーゼに対する阻害作用を有する、とありますが、内容は同じことなのでしょうか、と質問を頂いております。本剤とエヌトレクチニブは、いずれもTrkA、TrkB、TrkCのトロポミオシン受容体キナーゼに対する阻害作用を示す点では同一ですが、本剤はROS1、ALK等のキナーゼに対する阻害作用を示さない一方、エヌトレクチニブは当該阻害作用を示す点で異なっています。このことから、添付文書の作用機序の記載ぶりが異なっております。また、当該作用機序の差異により、安全性プロファイルに差異が生じる可能性があると考えております。
 2つ目の質問ですが、いずれの薬剤も多遺伝子パネルに含まれるNTRK遺伝子変異が検出されれば、治療効果を発揮すると考えてよいのでしょうか。そうだとすると、両薬剤とも肺癌、甲状腺癌、悪性黒色腫、消化管間質腫瘍、大腸癌、軟部肉腫、胆管癌、乳癌、唾液腺癌、乳児型線維肉腫など、20以上の組織型にわたる固形癌が対象となると考えてよいのでしょうか、と質問を頂いております。本剤のコンパニオン診断薬としては、エヌトレクチニブと同一の「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」を用いて患者を選択する予定であり、NTRK融合遺伝子陽性と判定されれば、治療効果が期待できると考えています。また、対象となる癌腫については、臨床試験において幅広い癌腫で高い奏効率が認められていること、ドライバー遺伝子変異を有する腫瘍を対象とした薬剤であることを考慮すると、NTRK融合遺伝子が陽性であれば、癌腫に関わらず本剤の有効性が期待できると判断しております。なお、癌腫ごとの奏効率については添付文書で情報提供する予定です。
 3つ目の質問ですが、これらの疾患を一元的に診断、治療、フォローアップできる診療科としては、腫瘍内科だと思いますが、エヌトレクチニブが使われている現状はどうなのでしょうか、と質問を頂いております。エヌトレクチニブは現在、製造販売後調査を実施中であり、詳細な情報は得られておりませんが、主な診療科は腫瘍内科となるのではないかと考えております。事前に頂いた御質問に対する回答は以上になります。審議のほどよろしくお願いいたします。
○清田部会長 渡辺先生、よろしいでしょうか。
○渡辺委員 ありがとうございました。もし、南先生、何かコメントがあれば、頂きたいと思います。
○清田部会長 南先生、いらっしゃいますか。
○南委員 御説明ありがとうございます。エヌトレクチニブの例がありますので、やはり幅広く癌腫横断的に承認するのが妥当だと思います。それから、やはりゲノム検査の中で使われていく薬だろうと思います。渡辺先生の御質問に関しては、私も機構の意見と同じであります。
 一方、コンパニオン診断薬に関してですが、F1を使用するということですが、エヌトレクチニブの場合もですが、F1をコンパニオン診断薬として使用する場合は、コンパニオン診断薬としての料金が病院に入ってくるだけで、F1のコストが賄えないんです。そのため、実際に検査しにくい状況があります。パネル検査として実施する場合は収支的には良いのですがコンパニオン診断薬として使用する場合は、パネル検査として請求してはいけないということになっています。この矛盾を今後どう解決していくのか、御教示いただければと思います。
 それからもう一点、これは1番の質問になりますが、安全性に関しては日本人2人が評価されていますが、有効性の評価対象に含まれていません。データ提出時はいなかったかもしれませんが、その後どうだったかという点と、今後は安全性だけ見ればいいのかという質問をさせていただければと思います。ちょっと意地悪な質問であると認識しながら、あえて聞かせていただきます。機構の方、すみません。
○清田部会長 では、機構からお答えします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。1点目にいただいたのは、CDxと保険の関係のお話だと思いますが、機構からは回答しづらいので、審査管理課や、厚労省の他の部局と相談して、検討していくことになるのではないかと考えております。
 2点目に頂いた日本人に関するデータですが、今回のデータカットオフ時には日本人の有効性評価はされていませんでしたが、その後有効性評価が行われておりますので、御説明させていただきます。審査報告書の46ページの図2の下の部分を御覧ください。こちらに日本人データを記載しておりまして、NAVIGATE試験に登録された日本人患者4例のうち、治験責任医師判定による有効性評価が可能であった3例における最良総合効果はPRが1例、SDが2例という状況でした。
 また、SCOUT試験にも登録されておりますので、そちらも説明させていただきます。次の47ページの図3の下側の部分を御覧ください。SCOUT試験に登録された日本人患者の2例のうち、治験責任医師判定による有効性評価が可能であった1例における最良総合効果はPRという状況でした。今後引き続き、安全性のみではなく、有効性の情報も収集されると考えております。説明は以上になります。
○南委員 奏効例があってよかったです。F1に関しては薬が承認されても薬が使えない事態を引き起こしていますので、是非早急に御検討いただければと思います。以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
○事務局 事務局より、ご指摘いただいた検査について補足させていただきます。本剤の対象となる患者のNTRK融合遺伝子の陽性率につきまして、審査報告書の45ページを御覧いただきますと、標準治療が確立していない非常に希少な癌腫において、NTRK融合遺伝子の陽性率が比較的高い傾向が認められております。そのような非常に希少な癌腫を対象とする場合には、本剤のコンパニオン診断のような遺伝子パネル検査を行うことが可能となるように、ガイダンスや事務連絡で手当されているものと認識しております。
○清田部会長 南先生いかがですか。
○南委員 ありがとうございます。そうすると、希少癌の場合、例えばここに挙げてある子宮頸癌はスタンダードな治療があるのですが、最初からF1をやって、実際はコデックスとしての臨床的な位置付だけれども、希少癌であるため、プロファイリングとしての料金で実施していいという理解でいいのでしょうか。
○事務局 事務局よりお答えします。そのような標準治療が一定程度確立されている癌腫では、先ほど申し上げたガイダンスや事務連絡では手当されていないことになります。そのような癌腫に対する取扱いについては今後の課題ということになるかと思います。
○南委員 こういう形で今後、承認されていく薬は、副作用と効果の比が従来の殺細胞性抗癌薬よりも随分優れており、アップフロントで使われていくと想定されますので、是非制度の矛盾が解決するように、今後もよろしくお願いいたします。
○事務局 ありがとうございました。
○清田部会長 濱先生から御質問があるようです。濱先生。
○濱委員 添付文書の副作用の記載方法について確認をさせてください。その他の副作用の所で、5%以上5%未満という、非常にざっくりした書き方がされているのですが、例えば審査報告書の69ページの所には、いずれかの投与群で30%以上の有害事象が発現したものが幾つか書かれています。何かこの添付文書を見ると、この薬剤結構安全なのかなと思ってしまいます。この5%以上という括りは間違ってはいないのですが、例えば30%以上あるものは30%以上という括りを追加するとか、あるいは5%以上のままであれば、例えば悪心、便秘等について括弧書きで何%と書くものは最近多いと思っていますが、これはそういうことが書かれていません。添付文書の記載の方法について、これで許容はされるのでしょうか。以上ですが、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、御意見ありがとうございます。その他の副作用に関しましては、明確な区切り方の基準が存在しないと承知しております。一方で、特に注意するべきものがある場合又は発現割合を明確に周知したい場合は、その他の副作用ではなく、この1つ前の重大な副作用の項に挙げて区別しているような状況です。したがいまして、その他の副作用というのは、それほど注意深く見てもらう必要のない、ちょっと言い方が悪いかもしれないのですが、そういった形で区別させていただいているところですので、こういった形の記載にさせていただいているところです。発現割合のことを御指摘いただいたのですが、添付文書に記載しているのは有害事象の発現割合としてではなく、副作用としての発現割合であることを念のため補足説明させていただきます。以上になります。
○濱委員 大体分かるのですが、そうはいっても、NTRKのもう1つの製剤の添付文書には、その他の副作用の所に頻度が書かれています。2つを比べると大分何か安全性の面について差があるように読めてしまうのですが。間違ってはいないのでしょうが、何となく5%以上という表現と、30%以上という表現では同じ悪心であっても、ちょっと感覚が違うかなと感じるところです。意見ですけれども、以上になります。
○清田部会長 ありがとうございます。機構から何かありますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。確かに同種・同効薬の添付文書と、見た目としてちょっと違うところがありますので、見せ方を企業と検討させていただければと思っております。以上です。
○濱委員 お願いしたいと思います。ありがとうございます。
○清田部会長 ほかに御質問ございますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
 そうしましたら、議決に入りたいと思います。亀田委員、濱委員、南委員、山本委員、渡辺委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題4に移ります。議題4につきまして、事務局からの概要の御説明をお願いいたします。
○事務局 議題4、資料4、concizumabを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より説明いたします。希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書のファイルをお開きください。1ページの中段を御覧ください。申請者は、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社です。予定される効能・効果は、インヒビターを保有する先天性血液凝固第VIII因子又は第IX因子欠乏患者の出血傾向の抑制です。concizumabは、先天性血液凝固第VIII因子欠乏症の血友病A及び、先天性血液凝固第IX因子欠乏症の血友病Bのうち、インヒビターが発生した患者に使用する医薬品です。
 まず、対象患者について、インヒビターを保有する血友病Aの患者及びインヒビターを保有する血友病Bの患者は、厚生労働省の委託事業である血液凝固異常症全国調査の令和元年度報告書において、それぞれ101人、18人とされており、希少疾病用医薬品の指定基準である5万人を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性について、血友病A及び血友病Bに対する治療は、第VIII因子製剤又は第IX因子製剤があります。一方、インヒビターを保有する患者においては、これらの製剤の止血効果が著しく低下することになります。そのため、作用機序の異なる活性型プロトロンビン複合体製剤のファイバ静注用や二重特異性モノクローナル抗体製剤のヘムライブラ皮下注などが使用されています。ただし、それぞれ感染症伝播リスクやアレルギーが誘発される可能性があること、インヒビターを保有する血友病Bの患者には使えないことなどの欠点があります。
 一方、本剤は第VIII因子又は第IX因子の有無に関わらず凝固経路を活性化することができ、インヒビターを保有する血友病Aの患者及び、インヒビターを保有する血友病Bの患者における止血効果が期待でき、また感染症伝播リスクが低いと考えられ、本剤の医療上の必要性は高いと考えています。
 最後に開発の可能性について、本剤は海外第II相試験が実施されており、実薬対照である遺伝子組換え活性型血液凝固第VIII因子製剤の出血時投与よりも出血率が低い傾向が確認されており、また、一時中断した経緯があるものの国際共同第III相試験が実施されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしているものと考えております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは、委員の皆様からの御質問を承りたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。御質問がないようですので、議決に入ります。亀田委員、川上委員、島田委員、中野委員、濱委員、南委員、山本委員、渡辺委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告させていただきます。引き続き、議題5に移ります。御待機されている松下委員をお呼びください。
                                 (松下委員入室)
○清田部会長 山本昇委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議題5と6の審議の間は会議から御退出して御待機いただくことといたします。山本委員は御退出をお願いいたします。
                                 (山本委員退室)
○清田部会長 それでは、事務局から、議題5の概要の説明をお願いします。
○事務局 議題5、資料5、ペミガチニブを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より説明いたします。希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書のファイルをお開きください。1ページの中段を御覧ください。申請者は、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社です。予定される効能・効果は、FGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌です。まず、対象患者数についてです。厚生労働省における患者調査及び文献報告に基づき、本邦におけるFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌の患者数は609~881人と推測されており、指定基準を満たしているものと考えております。
 次に、2ページの医療上の必要性についてです。FGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌に対しては、FGFR2融合遺伝子陰性の患者と同一の化学療法等が行われておりますが、治療効果は限られており、FGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌は依然として予後不良な疾患です。また、FGFR2融合遺伝子は、FGFRシグナル伝達経路の異常の原因となること、その異常は腫瘍の生存・増殖、腫瘍血管の新生等に大きく寄与することが報告されていること等から、FGFR2のチロシンキナーゼを阻害する本剤は、FGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌に対する有効性が期待されます。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性についてです。国際共同第II相試験の中間解析において、化学療法歴のあるFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆管癌患者における本剤の奏効率は35.5%でした。また、化学療法歴のないFGFR2融合遺伝子陽性の患者を対象とした、国際共同第III相試験が実施中であることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは、委員の先生方から御質問はございますか。いかがでしょうか。いらっしゃらないようですので、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告させていただきます。それでは、事務局から議題6の概要の説明をお願いします。
○事務局 議題6、資料6、E7090を希少疾病用医薬品として指定することの可否について説明いたします。希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書のファイルをお開きください。1ページの中段を御覧ください。申請者は、エーザイ株式会社です。予定される効能・効果は、FGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道癌です。まず、対象患者数についてです。厚生労働省における患者調査及び文献報告に基づき、本邦におけるFGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道癌の患者数は約439人と推測されており、指定基準を満たしているものと考えております。
 次に、2ページの医療上の必要性についてです。FGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道癌に対しては、先ほど説明したとおりの治療体系で、FGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道癌は依然として予後不良な疾患です。また、本剤はFGFR2のチロシンキナーゼを阻害する作用を有していることから、FGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道癌に対する有効性が期待されます。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性についてです。国内第I相試験において、化学療法歴のあるFGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆管癌患者における本剤の奏効率は83.3%でした。また、この第I相試験と同様の患者を対象とした国際共同第II相試験が実施中であることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは、委員の先生方から御質問はございますか。先ほどと似た状況のお薬です。よろしいでしょうか。ないようですので、議決に入ります。亀田委員、南委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、報告事項に移ります。御待機されている山本委員をお呼びください。少々お待ちください。
(山本委員入室)
○清田部会長 それでは、事務局から、報告事項の議題1と2について説明をお願いします。
○事務局 報告事項の議題1と2について説明いたします。まず議題1は、医薬品ダウノマイシン静注用20mgの製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。本剤は、アントラサイクリン系の抗腫瘍性抗生物質であるダウノルビシン塩酸塩を有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。現在は急性白血病に係る効能・効果で承認されております。今般、Meiji Seika ファルマ株式会社から、急性白血病に対する本剤の高用量の投与に係る用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされております。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断されております。
 続いて、議題2は医薬品バベンチオ点滴静注200mgの製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。本剤は、programmed cell death-ligand1(以下、PD-L1と略します)に対する、免疫グロブリンG1サブクラスのヒト化モノクローナル抗体であるアベルマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。現在は根治切除不能なメルケル細胞癌及び根治切除不能又は転移性の腎細胞癌を効能・効果として承認されております。今般、メルクバイオファーマ株式会社から、根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断されております。以上です。
○清田部会長 それでは、委員の先生方から御質問はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、報告事項の議題1と2については御確認いただいたものといたします。
○事務局 続いて、報告事項の議題2に関連して、バベンチオ点滴静注200mgについて、その他事項として最適使用推進ガイドライン(案)を作成しておりますので説明いたします。資料11を御覧ください。各ページの下に記載のページの通し番号の2ページの枠内を御覧ください。対象となる効能・効果は、根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法です。
 4ページ以降に、今回審査された主要な臨床試験の結果を記載しております。プラチナ製剤を含む一次化学療法にて、疾患進行が認められていない根治切除不能な尿路上皮癌患者を対象として、対照群とされたBest Supportive Care単独療法群と比較して、本剤併用群で全生存期間の有意な延長が認められました。安全性については、6ページに記載しております。今回、審査された臨床試験において、新たに懸念される事象は認められておりません。
 7ページを御覧ください。施設についての項では、マル1-2として、尿路上皮癌の化学療法及び副作用発現時の対応に、十分な知識と経験を持つ医師を治療の責任者として配置いただくよう記載しております。9ページを御覧ください。有効性に関する事項として、臨床試験の結果に基づき、有効性が示されている対象と本剤の投与対象にはならない患者を記載しております。安全性に関する事項は、これまでに作成しているバベンチオの他のガイドラインと同じ内容です。10ページ以降の投与に際して留意すべき事項についても、これまでに作成しているバベンチオの他のガイドラインと同様の内容です。説明は以上です。
○清田部会長 委員の先生方から御質問等はございますか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、その他事項、議題1のバベンチオ点滴静注200mgの最適使用推進ガイドライン(案)については、御確認いただいたものといたします。引き続き、報告事項の議題3と4について事務局から説明をお願いします。
○事務局 報告事項の議題3については、ニボルマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする医薬品オプジーボ点滴静注20mg、他3規格の承認条件に係る報告です。資料9を御覧ください。なお、ページ番号は各ページの最下部に記載している通し番号に基づき説明いたします。
 4ページを御覧ください。本剤は、平成28年8月26日に根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に係る効能・効果が承認され、承認時にページ下段に記載の承認条件が付されております。この度、小野薬品工業株式会社から実施された使用成績調査の結果等に関する報告書が提出され、機構において評価されました。
 使用成績調査については、5ページの提出された資料の概要(1)製造販売後調査の結果を御覧ください。本調査は平成28年8月26日から開始され、平成29年1月31日までに登録された調査票回収対象症例である580例の情報を基に調査結果がまとめられました。本調査において、新たな注意喚起を要する情報は得られておりません。10ページのIII.総合評価を御覧ください。提出された資料から、記載している承認条件は対応されたものと判断されております。
 続けて、頭頸部癌に係る本剤の承認条件について報告いたします。14ページを御覧ください。本剤は平成29年3月24日に再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌に係る効能・効果が承認され、承認時にページ下段に記載の承認条件が付されております。この度、小野薬品工業株式会社から、実施された使用成績調査の結果等に関する報告書が提出され、機構において評価されました。
 使用成績調査については、15ページの提出された資料の概要(1)製造販売後調査の結果を御覧ください。本調査は、平成29年3月24日から開始され、平成29年6月30日までに登録された調査票回収対象症例である632例の情報を基に調査結果がまとめられました。本調査において、新たな注意喚起を要する情報は得られておりません。21ページのIII.総合評価を御覧ください。提出された資料から、記載している承認条件は対応されたものと判断されております。以上です。
○事務局 続いて、報告事項の議題4、医療用医薬品の再審査結果について報告いたします。資料は10-1~10-3です。資料10-1は、有効成分名はデノスマブ(遺伝子組換え)、販売名はランマーク皮下注120mgです。資料10-2は、有効成分名はベポタスチンベシル酸塩、販売名はタリオン錠5mg、同錠10mg、同OD錠5mg、同OD錠10mgです。資料10-3は、有効成分名はゴリムマブ(遺伝子組換え)、販売名はシンポニー皮下注50mgシリンジ、同皮下注50mgオートインジェクターです。
 これらの品目については、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験に基づき再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の第14条第2項第3号に掲げられている、承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要がないカテゴリー1と判定しております。以上です。
○清田部会長 委員の先生方から、何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。それでは、報告事項の議題3と4については、御確認いただいたものといたします。続いて、その他事項に移ります。その他事項について、事務局から説明をお願いします。
○事務局 その他事項、議題2、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について説明いたします。今回は、令和2年12月9日に開催された、第43回の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断され、本部会に報告する品目が1品目ありました。その他事項の資料12の公知申請事前評価報告書のファイルをお開きください。
 3ページを御覧ください。本要望は、ブスルファンに係る小児の1日1回投与に関する日本小児血液・がん学会からの要望です。本要望については、平成27年7月の第24回の検討会議にて医療上の必要性が高いと判断され、開発要請が行われておりました。
 本要望の公知該当性について説明いたします。19ページの(1)を御覧ください。まず、有効性です。海外における臨床試験として、本剤の1日1回投与に関する生着、再発率、生存率等の有効性に関する結果が多数報告されております。また要望内容として、同じ用法・用量がオーストラリアで承認されており、国内外の教科書、診療ガイドラインにおいて、本剤は1日1回投与が可能である旨が記載されております。さらに、本邦における使用実態調査の結果、要望内容と同じ用法・用量による使用が広い年齢層において確認され、生着等が確認されております。以上より、小児に対する本剤の1日1回投与の有効性は期待できると判断されました。
 次に、安全性についてです。20ページの(2)を御覧ください。海外臨床試験において、肝静脈閉塞性疾患又は類洞閉塞症候群(以下、それぞれVOD、SOSと略します)が認められているものの、デフィブロタイドの治療により治癒している状況が確認されております。国内の使用実態調査の結果におけるVOD又はSOSの発現率は2.9%であり、本剤の1日4回投与と比較して、1日1回投与でVOD又はSOSの発現率が明確に異なる傾向は認められませんでした。
 また、海外臨床試験及び国内使用実態調査において、VOD又はSOS以外の事象についても、新たに注意喚起が必要な事象は認められておらず、いずれも本剤の添付文書で既に注意喚起されている有害事象の範囲内であることから、小児における本剤の1日1回投与による有害事象は管理可能と判断されております。以上より、ブスルファンの小児に対する1日1回投与に関する有効性及び安全性は、医学薬学上公知であると判断されました。
 なお、検討会議において、効能・効果及び用法・用量は22~23ページに記載の内容とすることが適切と判断されております。以上です。
○清田部会長 それでは、委員の先生方から、何か御質問はございますか。ないようです。それでは、その他事項、議題2については、御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、事務局から何かありますか。
○事務局 ありがとうございました。次回の部会日程は、決まり次第、こちらから連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を終了いたします。どうもありがとうございました。
( 了 )
 
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)