2019年8月29日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和元年8月29日(木)16:00~

場所

AP虎ノ門 Aルーム(11階)

出席者

出席委員(17名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人1名

欠席委員(4名)

行政機関出席者

 樽見英樹(医薬・生活衛生局長)
 森和彦(大臣官房審議官)
 山本史(医薬品審査管理課長)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 森口裕(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 宇津忍(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
 鈴木章記(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他


 

議事

○医薬品審査管理課長 それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。本日は、お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の委員の御出席の状況ですが、飯島委員、代田委員、武田委員、平石委員より御欠席との御連絡を頂いております。現在のところ、少し御到着が遅れておられる先生方もおいでですが、当部会委員数21名のうち、13名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。また、本日は審議事項、議題2に関しまして、愛知県がんセンター中央病院の坂東英明先生を参考人としてお招きしております。議題のタイミングで御入室いただく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 続いて、部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告申し上げます。今回、全ての委員の皆様より薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいております。委員の皆様におかれましては、会議の開催の都度書面を御提出いただく等御負担をお掛けしておりますが、引き続き何とぞ御理解を頂き、御協力賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 それでは、杉部会長に以降の進行をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○杉部会長 杉です。それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 配布資料の確認を順番にさせていただきます。本日、机上に議事次第、座席表、座席表の裏側に部会の委員名簿を配布しています。議事次第に記載されている資料1~19-2については、あらかじめお送りさせていただいております。会議のペーパーレス化に向けた取組として、本日の部会では、あらかじめお送りした紙資料と同様の内容の電子ファイルをタブレットに格納し、閲覧していただけるようにするとともに、机上に配布する紙の資料を諮問書、審査報告書及び添付文書とさせていただいています。この他、資料20として審議品目の薬事分科会における取扱い等の案を配布し、また、タブレット内に資料21として、各審議品目に係る専門協議の専門委員リスト、資料22として競合品目・競合企業リストを格納しています。なお、タブレットの動作不良等がございましたら、会議の途中でも結構ですので事務局までお申し付けください。
 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。タブレット資料22の1ページを御覧ください。1品目目、エベレンゾ錠20mg他2規格ですが、本品目は透析施行中の腎性貧血を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しています。
 2ページですが、エドルミズ錠50mgです。本品目は、がん悪液質を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤がないことから、競合品目はなしとしています。続いて3ページは、クリースビータ皮下注10mg他2規格ですが、本品目はFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しています。
 4ページは、ブリニューラ脳室内注射液150mgです。本品目は、セロイドリポフスチン症2型を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしています。5ページは、トリンテリックス錠10mg他1規格です。本品目はうつ病、うつ状態を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しております。
 続いて、6ページはアイベータ配合点眼液ですが、本品目は緑内障や高眼圧症で、他の緑内障治療薬が効果不十分な場合を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を選定しています。7ページは、エクフィナ錠50mgです。本品目はレボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるwearing off現象の改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しています。
 8ページは、コララン錠2.5mg他2規格ですが、本品目は洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤がないことから、競合品目はなしとさせていただいております。9ページは、テリパラチドBS皮下注キット600μg「モチダ」です。本品目は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しています。
 続いて、10ページはダルベポエチンアルファBS注5μシリンジ「JCR」他8規格です。こちらは腎性貧血を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しております。続いて、ダルベポエチンアルファBS注5μシリンジ「三和」他8規格ですが、本品目も同様に、腎性貧血を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を選定しています。
 13ページは、ダルベポエチンアルファBS注射液5μシリンジ「MYL」他8規格ですが、こちらも腎性貧血を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しています。14ページは、サトラリズマブ(遺伝子組換え)ですが、本品目は視神経脊髄炎及び視神経脊髄炎関連疾患を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を選定しております。
 最後に15ページですが、KP-100ITです。本品目は、急性期に起きる脊髄損傷進展抑制及び運動機能改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとさせていただいております。以上です。
○杉部会長 今の事務局からの説明に、特段の御意見等はございますでしょうか。それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を得たものといたします。
 それでは、委員からの申出状況について報告をお願いいたします。
○事務局 本日ですが、議題1~14通して退室委員はございません。議決に参加しない委員の御紹介をさせていただきます。議題1のエベレンゾが大賀委員、大森委員、議題2のエドルミズは、議決に参加しない委員はございません。議題3のクリースビータについては大賀委員、議題4のブリニューラについては、議決に参加しない委員はございません。議題5のトリンテリックスについては川上委員、議題6のアイベータについては大森委員、議題7のエクフィナについては川上委員、議題8については議決に参加しない委員はございません。議題9~12まではBSが続くのですが、議決に参加しない委員はございません。議題13のサトラリズマブですが、議決に参加しない委員は大賀委員、議題14のKP-100ITについては、議決に参加しない委員はございません。以上です。
○杉部会長 今の事務局からの説明に、何か特段の御意見等はございますでしょうか。大丈夫でしょうか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものといたします。本日はお聞きのように、審議事項が14議題、報告事項が5議題となっております。
 それでは、審議事項の議題1に移ります。議題1について、機構から概要を説明してください。よろしくお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品エベレンゾ錠20mg他の製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。タブレットを御覧になる際には、資料1のフォルダを開き、★が付いている審査報告書のファイルをお開きください。
腎性貧血に対する薬物治療は、現在、赤血球造血刺激因子製剤(以降、ESAと呼ぶ)が使用されていますが、いずれも注射剤であり、また、抗エポエチン抗体陽性赤芽球癆がまれに発現することが報告されています。
 本剤は、ロキサデュスタットを有効成分とする経口剤です。本剤は、低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素に対する阻害作用を有することから、エポエチン産生を増加し、赤血球造血を亢進することが期待され、開発に至りました。今般、透析施行中の腎性貧血患者を対象とした国内臨床試験により、当該患者に対する本剤の有効性及び安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。
 なお、2019年4月時点において、本剤は中国において透析施行中の腎性貧血に対する治療薬として承認されておりますが、その他の国又は地域において承認はされておりません。本品目の専門協議では、本日の配布資料21に示した専門委員を指名しています。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性に関しては、審査報告書の青字で表記しております通し番号の40ページ、表37を御覧ください。血液透析施行中の腎性貧血患者を対象とした国内第III相試験において、ESAから本剤へ切り替えた際のヘモグロビン値の維持効果を検討いたしました。主要評価項目である「投与18~24週のベースラインからの平均ヘモグロビン値の変化量」について、本剤はESAであるダルベポエチンアルファに対する非劣性が検証されました。
 続いて、審査報告書の通し番号45ページ、表47を御覧ください。血液透析施行中のESA未治療の腎性貧血患者を対象とした国内試験において、本剤の貧血改善効果を検討いたしました。「投与終了時までの累積奏効割合(ヘモグロビン値が10.0g/dL以上かつベースラインより1.0g/dL以上上昇した患者割合)」は、本剤50mgから開始した群と70mgから開始した群いずれも80%を超えており、本剤の貧血改善効果は示唆されたと考えました。また、本剤50mgから開始した群と70mgから開始した群で、有効性及び安全性に大きな差はなかったこと等から、血液透析施行中のESA未治療患者における本剤の開始用量を50mgとすることは適切と考えました。
 さらに、審査報告書の通し番号47ページ、表51を御覧ください。腹膜透析施行中の腎性貧血患者を対象とした国内試験において、本剤の貧血改善効果及びESAからの切替え維持効果を検討いたしました。ESA未治療例における「投与18~24週の目標ヘモグロビン値達成率(平均ヘモグロビン値が10.0g/dL以上12.0g/dL以下であった患者割合)」は92%でした。また、ESAからの切替え例における「投与18~24週のベースラインからの平均ヘモグロビン値の変化量」は0.14g/dLであり、ESAからの切替え後も大きく変動することはなく、目標値内に維持されました。したがって、腹膜透析患者においても本剤の貧血改善効果及び切替え維持効果は期待できると考えました。以上より機構は、透析施行中の腎性貧血患者に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 安全性に関しては、審査報告書通し番号54ページの表58を御覧ください。血液透析施行中の腎性貧血患者を対象とした国内第III相試験における有害事象の発現状況を示しています。本剤群とダルベポエチンアルファ群では、有害事象の発現割合に大きな差は認められず、また、本剤群で認められた有害事象はほとんどが軽度又は中等度でした。
 続いて、審査報告書の通し番号55ページ、表59です。血液透析施行中のESA未治療例における有害事象の発現状況を示しております。血液透析施行中のESA未治療例では、ESAからの切替え例と比較して有害事象の発現割合に大きな差は認められませんでした。
さらに、審査報告書の通し番号56ページ、表60を御覧ください。腹膜透析施行中の患者における有害事象の発現状況を示しています。腹膜透析施行中の患者では、血液透析施行中の患者と比較して副作用の発現割合が高い傾向が認められたものの、腹膜透析に伴うカテーテル留置部位感染以外に明らかに発現割合が高い副作用はありませんでした。
 審査報告書の通し番号59ページ、表63です。本剤の注目すべき有害事象として、本剤の血栓塞栓症の発現状況について検討しました。血液透析施行中の腎性貧血患者対象の国内第III相試験において、本剤群では、ダルベポエチンアルファ群と比較して血栓塞栓症の発現割合が高い傾向が認められました。また、重篤な血栓塞栓症の発現割合についても本剤群で高い傾向が認められました。本剤により血栓塞栓症に関連する重篤な有害事象が発現する可能性は否定できないことから、本剤の使用に際しては血栓塞栓症の発現に十分な注意が払われる必要があると考え、添付文書の警告の欄に、本剤の投与開始前に血栓塞栓症のリスクを評価し投与の可否を慎重に判断する旨、また、本剤投与中は血栓塞栓症の症状に留意し、患者にも指導する旨を注意喚起する必要があると考えました。以上より機構は、血栓塞栓症の発現に十分注意しながら使用することで、本剤の安全性は許容可能と考えました。
 以上、機構での審査の結果、透析施行中の腎性貧血に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上です。御審議、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○杉部会長 委員の先生方から何か御質問、御意見はございますでしょうか。
○長島委員 従来の静注の薬剤との使い分けというか、臨床的意義というのを教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 まず、本剤はESAとは異なる作用機序と投与経路を有することから、透析施行中の腎性貧血に対する治療選択肢の1つとなると考えております。なお、本剤とESAの選択については、個々の患者の状態や服薬アドヒアランス等に応じて医師が判断すると考えております。
 本剤の経口剤であるメリットについてですが、血液透析患者では、透析回路よりESAを投与することは可能ですが、その際に医療従事者の針刺し事故等による感染リスクが報告されておりますので、本剤ではそのリスクを回避できると考えております。また、腹膜透析患者では感染リスクの回避の他に、来院負担の軽減等が期待されると考えています。
○杉部会長 よろしいでしょうか。
○長島委員 もう1点です。週3回という飲み方だと患者さんが非常に迷うというか、忘れやすかったりすると思うのです。74/79の所に週3回で2、3日に1回の間隔、例えば月、水、金とかというような書き方もしているのですが、特に1日に3回飲んでもよいのかとか、その辺のところを週3回という所に続けて少し書いておいたほうが指導はしやすいと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ご指摘のとおり週3回投与は一般的ではないため、資材を用いて服薬指導を徹底する予定です。資材には、週3回服用する際には決められた曜日に服用すること、また、もし飲み忘れた場合は、あらかじめ決めた曜日よりも24時間以上空いている場合はその時点で飲むこと、24時間以上空いていない場合は飲まないで、次のあらかじめ決めた曜日に服用することと記載する予定です。また、同日に2回分以上は飲まないようにとも記載する予定です。そのような内容を記載した資材を用いて服薬指導を徹底する予定です。
○杉部会長 よろしいでしょうか。これは、透析日に飲んでも透析日以外でも同じですね。
○医薬品医療機器総合機構 本剤については透析の影響をほぼ受けないことから、透析日と透析しない日のどちらで飲んでも構いませんが、資材には飲み忘れ防止の1つの策として、透析日に服用することが飲み忘れ防止につながるということを記載する予定です。
○杉部会長 その他、いかがでしょうか。
○赤羽委員 ESAからの切替えの場合に、100mgからスタートして、適宜増減をして最高用量は1日3mg/kgを超えないこととするとあるのですが、お話いただいた安全性試験とか臨床試験では、100mgまでの例が紹介されていたかと思うのです。この3mg/kgという設定をした根拠を教えていただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 最高用量3mg/kgについて、国内第I相試験において忍容性が確認されたことから、国内第III相試験の最高用量として設定しています。本剤の規格は20、50、100mgであることから、国内第III相試験では3mg/kgを超えない投与量の目安として用量調整表を設定しており、その用量調整表には300mgまでの用量調整の目安を記載していました。その結果、国内第III相試験において3mg/kgを超えない範囲で投与された場合には安全性等に問題なかったことから、本剤の最高用量を3mg/kgとすることに問題はないと考えました。
○杉部会長 よろしいでしょうか。その他先生方から何か御質問はございますでしょうか。
○奥田部会長代理 1点確認なのですが、この薬剤は、例えばESAの応答性が悪かったというときに、上乗せでは使わないのですね。そういうときは切り替えるということなのですね。それは何か添付文書とか、そういうところで指示されているのですか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床試験で本剤は単独で腎性貧血に対する有効性が示されましたので、基本的には本剤単独での使用を想定しております。また、本剤とESAを併用した場合の有効性、安全性については不明であり、併用は推奨しておりません。
○奥田部会長代理 推奨はしないのですね。分かりました。
○医薬品医療機器総合機構 本剤をESAへ上乗せすることは推奨しておりません。ESAから切り替える際には、ESAの投与を中止してから本剤に切り替えます。
○奥田部会長代理 分かりました。
○杉部会長 その他、いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。それでは、議決に入ります。なお、大賀委員、大森委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。
 (坂東参考人入室)
 それでは、議題2に移ります。参考人の坂東先生、どうぞ御着席ください。議題2について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、医薬品エドルミズ錠50mgの製造販売承認の可否等について機構より御説明いたします。タブレットを御覧になる際は、資料2のフォルダを開き、★の付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 がん悪液質は、がん患者において通常の栄養サポートでは完全に回復しない持続的な体重、特に筋肉量の減少を特徴とする複合的な代謝異常であり、がん化学療法への忍容性の低下やQOLの著しい低下等を生じ、予後に影響することが報告されています。がん悪液質に対する治療介入の臨床的意義は、食欲を増進し、骨格筋や臓器組織から主に構成される除脂肪体重の減少を阻止することとされています。
 本薬は、グレリン様作用を有する薬剤です。グレリンは主に胃で産生されるペプチドホルモンで、成長ホルモン分泌促進、食欲亢進、脂肪生成促進等の生体内エネルギー代謝を調節します。申請者は、本薬はがん患者の体重(筋肉量)を増加させ、QOLを改善することが期待されるとして、本薬の開発に至りました。
 なお、本薬は海外において承認を取得している国はありません。本品目の専門協議では、本日の配布資料21に示します専門委員を指名しております。
 以下、欧米における本薬の開発状況について御説明した上で、国内臨床試験における本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に御説明させていただきます。
 まず、欧米における本薬の開発状況について御説明します。審査報告書の青字で表記しております通し番号40ページの7.R.1項のマル1を御覧ください。欧米では、ヘルシン社により2つの臨床試験が実施され、主要評価項目は「除脂肪体重」及び「握力」の両者を検証目標とするCo-primary endpointが設定されました。実施された2つの海外臨床試験のいずれにおいても、主要評価項目の1つである「除脂肪体重(LBM)のベースラインからの12週間の平均変化量」は、プラセボ群に対する本薬100mg群の有意差が認められたものの、もう1つの主要評価項目である「握力のベースラインからの12週間の平均変化量」は、プラセボ群に対する本薬100mg群の有意差が認められませんでした。
 これらの2つの臨床試験の結果をもとに、ヘルシン社は○○○○○EMAと申請に向けた協議を行いました。○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
 また、欧州では申請がなされたものの、承認の可否を判断するEMAの医薬品委員会(CHMP)より主要評価項目の1つが達成されなかったことなどを踏まえ、Negative opinionが出され、EMAでは承認に至っていません。現在、欧米では本薬の承認を取得するために、FDA及びEMAとの協議を経て、主要評価項目として「体重の増加」及び「食欲の改善」の2つを設定した新たな2つの海外第III相試験をヘルシン社が実施中です。
 続いて国内臨床試験成績について御説明いたします。本邦での申請に当たっては、主な臨床試験成績として2つの国内臨床試験成績が提出されています。1つ目は、非小細胞肺がんのがん悪液質患者を対象とした国内臨床試験、もう1つは大腸がん、胃がん、膵がんのがん悪液質患者を対象とした国内臨床試験です。なお、海外臨床試験で検討された「握力」については、炎症や全身状態などの様々な因子が結果に影響を及ぼすため、本薬の単一介入のみで改善することは困難と考えられたことから、これら2つの国内臨床試験では、「除脂肪体重」を中心として本薬の有効性が評価されました。
 有効性について審査報告書の通し番号37ページの表41を御覧ください。非小細胞肺がんのがん悪液質患者を対象とした国内臨床試験の主要評価項目である「除脂肪体重(LBM)のベースラインからの12週間の平均変化量」について、本薬100mg群のプラセボ群に対する統計学的有意差が示されました。また、審査報告書の通し番号39ページの表46を御覧ください。大腸がん、胃がん、膵がんのがん悪液質患者を対象とした国内臨床試験の主要評価項目である「除脂肪体重(LBM)の維持・増加が認められた被験者の割合」について、95%信頼区間の下限値が事前に設定された閾値有効率を上回りました。
 以上より、除脂肪体重を主要評価項目とした2つの国内臨床試験において、本薬投与による除脂肪体重の増加が認められました。「除脂肪体重の増加」については、海外臨床試験においても検証されており、また、国内臨床試験においては、副次評価ではあるものの、食欲関連のQOLの改善傾向が認められたこと等も踏まえると、本邦における本薬の一定の臨床的意義が示されたと考えました。
 なお、有効性についてさらに情報を取得するため、現在、主要評価項目として「体重の増加」及び「食欲の改善」、これら2つを設定し、新たな国内臨床試験が実施中であり、当該臨床試験成績が得られた段階で、本薬の有効性、安全性等を確認し、医療現場に適切に情報提供する必要があると考えました。
 続いて安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号44ページの表50を御覧ください。がん悪液質患者を対象とした国内臨床試験の有害事象等の発現状況の概要を記載しています。プラセボ群と比較して、本薬群で副作用の発現割合が高い傾向が認められましたが、重篤な副作用、投与中止に至った副作用及び死亡で大きな差はなく、臨床試験間で異なる傾向はありませんでした。
 また、審査報告書の通し番号45ページの7.R.2.3項を御覧ください。本薬の臨床試験で比較的多く認められた有害事象、非臨床薬理試験成績、毒性試験成績等を踏まえ、特に注意すべき有害事象について記載しております。検討の結果、本薬投与による心機能への影響、血糖上昇、肝機能への影響等について添付文書において注意喚起するとともに、引き続き製造販売後調査等において情報収集する必要があると考えました。
 以上国内で実施された2つの臨床試験の結果から、「除脂肪体重」及び「食欲」の観点でがん悪液質に対する本薬の一定の有効性が示され、認められたベネフィットを踏まえると、安全性は許容可能と判断しました。なお、現時点ではがん悪液質の治療に関する共通認識が、国内の医療現場に浸透していない状況であること、また現在の医療現場では不可逆性の病態を有する患者に対してはステロイドが用いられることが多く、本薬の臨床試験で対象とされた患者と医療現場の医師が持つイメージが異なることが懸念されることから、本薬の適切な投与対象について臨床試験成績に基づいて添付文書等で具体的に注意喚起し、関連学会とも連携しながら医療現場へ周知・徹底することが重要と考えました。
 また、使用実態下における本薬の有効性及び安全性等に関するデータを迅速に収集し、本薬の適正使用に必要な措置を早期に講じるため、全症例を対象とした製造販売後調査を実施する必要があると考えました。したがって、審査報告書通し番号2ページに記載した承認条件を付すことが適切と判断いたしました。
 なお、本品目については、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○されております。
 以上の審査を踏まえ、本薬を承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。
 本申請は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は毒薬及び製剤は劇薬に該当すると判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどどうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 事務局より追加で御紹介させていただきます。本議題では坂東参考人にお越しいただいております。
○杉部会長 最初にお話がありましたように、愛知県がんセンター中央病院の坂東英明先生に参考人として来ていただいております。最初に坂東先生から、本議題について御発言をお願いいたします。
○坂東参考人 よろしくお願いいたします。愛知県がんセンター薬物療法部の坂東と申します。私からは、医療現場でのがん悪液質がどのように治療されているか、あとはこの薬剤の必要性について少しお話をさせていただきます。
 私たちが化学療法をやっているがん患者さんのほとんどは経過の中で、緩和学会等が定義している悪液質の状況になっていると考えています。多くの方がそういう状況だと思っています。悪液質の患者さんに、栄養状態を維持するためにいろいろな治療をするのですが、幾ら食べても維持ができなくて、どんどんやせていくという厳しい状況があります。やせていくので、化学療法のdoseが保てなくて、患者さんが弱っていって亡くなってしまうというのが実際だと思います。
 そういう方に医療現場でどのような治療をしているかと言うと、1番はやはりステロイドを使っていると思うのです。正直一時的な効果はあるのですけれども、長期の効果を維持するのは難しいです。その他に制吐剤プリンペランを使ったりするのですけれども、それも根本的な解決には至らないことになります。真に悪液質に対して有効性が分かっている薬剤が医療現場に入ってくるという意義は非常に大きいと私は考えております。
 もう1つ、除脂肪体重というものがエンドポイントになっています。これが実際に医療現場でどのような意義があるかということです。こちらに関しては、緩和学会とか、若しくは日本がんサポーティブケア学会等が定義している悪液質自体が、脂肪は減らないけれども、筋肉などの除脂肪体重が減ることが悪液質だと定義していますので、このような悪液質の定義に近いものをエンドポイントにするというのはそれなりに意義があると考えております。除脂肪体重が維持できることで、患者さんの全身状態PSが維持できて、化学療法の継続が容易になる患者さんがいると考えております。以上です。
○杉部会長 ありがとうございました。坂東先生のお話を含めて、最初に柴田先生から何かありますか。
○柴田委員 お先にどうぞ。
○杉部会長 よろしいということですので、先に長島先生どうぞ。
○長島委員 QOLの改善が目的ということですけれども、QOLで最も重要なのは患者さん御本人の評価だと思います。したがって、本剤を利用するかどうか、あるいは継続するかどうかということに関しては、患者さん御本人が十分に理解して希望するか、あるいはその後の満足度がどうであるかということで、患者さん御本人が積極的にしっかり関わることが重要である、あるいは必要であるということを是非ここの中に、例えば添付文書等に書いていただければ有り難いと思います。
○医薬品医療機器総合機構 先生から御指摘頂きましたように、本剤の投与においては特に患者さんのQOLの評価が一番重要と思います。添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意の項で、症状の経過も見つつ、継続の可否を判断する旨を注意喚起させていただいております。具体的に、臨床成績の項や、患者さん向けへの資材、医療機関向けへの資材等において、がん悪液質のそもそもの疾患の概念ももちろんですけれども、本薬を投与することの意義、投与した後は患者さんにきちんとQOLも確認した上で継続をするということを記載し、周知・徹底させていきたいと思います。御意見をありがとうございました。
○杉部会長 その他にいかがでしょうか。柴田先生どうぞ。
○柴田委員 坂東先生に御専門の立場から御指導いただきたいです。除脂肪体重の臨床的な意義についてお伺いします。本邦においては、先ほど○○○○○○などに絡んで、除脂肪体重が改善されること、あるいは下がらないことの意義は御説明を頂きました。その考え方というのは、欧州や米国の臨床現場においても同じなのでしょうか。
○坂東参考人 2011年にヨーロッパのほうから悪液質のガイドラインは大きなものが出ています。そこでの定義も、骨格筋の低下が認められる、栄養状態をキープしても骨格筋の減少が認められるような病態だというように定義しているので、恐らく合致したものだと考えています。
○柴田委員 ここから先は機構の方にお伺いします。私はこの審査報告書を拝見する限り幾つか問題があると考えていて、たくさん質問します。まず本題に入る前に事実関係を教えてください。国内の3つの臨床試験、治験に関しては事前に機構との相談の上、主要評価項目等が設定されているのでしょうか、あるいは企業が独自に選定したものなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本品目の臨床試験のデータパッケージにおいては、主に国内第II相試験の03試験と、先ほど御説明いたしました非小細胞肺がんの患者さんを対象とした04試験、あとは消化器がんのがん悪液質患者さんを対象とした05試験が実施されておりますけれども、企業から具体的に○○○○○○○○○○○について相談があったのは、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○です。○○○○○○○○○○○○の時点では、非小細胞肺がんのがん悪液質患者さんを対象とした臨床試験については実施されていたという状況です。
○柴田委員 分かりました。本題に入ります。本品は先ほど説明があったとおり、欧州○○○において、海外第III相試験の結果に基づいては承認できないという判断が下されています。その1つの理由として、Co-primary endpointとして、除脂肪体重と握力の2つを設定していたにもかかわらず、除脂肪体重でしか効果が検証できず、2つ同時に検証できて初めて意義があるとする設定が満たされていないので駄目だと。○○○に関しては欧州も○○○○○○○○○○○ところです。
 審査報告書の黒字で39ページ、青字で41ページに、機構としては、探索的ではあるけれども食欲不振の改善が示唆されていることをもって、一定の臨床的意義が示されたと考えているという説明をしています。このことについては、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○の結果、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○という判断をしています。それで、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○について教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 まず国内臨床試験では、非小細胞肺がんの患者さんを対象とした臨床試験において、プラセボに対して検証されたということが事実としてあります。主要評価項目は除脂肪体重(LBM)で、患者さんを対象とした臨床試験においてもきちんと薬理作用に基づいた有効性が認められています。主要評価項目の除脂肪体重という点は評価できると考えました。
 海外では、主要評価項目が検証されなかったということが前提としてあり、食欲又はQOLというところが副次評価項目であったということから、臨床的意義を踏まえた有効性の評価が日本と違うところはあります。機構としても、主要評価項目として除脂肪体重の増加だけを確認すればいいと考えているものではなくて、食欲の改善のところも重要と考えておりました。ただ、国内で開発するにあたっては、国内単独の開発ということで、国内臨床試験を実施したところですが、2つの主要評価項目を置くことになると、プラセボ群との比較の観点で症例数が多くなり、実施可能性の観点から難しいこともあって、副次評価項目で設定せざるを得なかったものの、食欲の改善はある程度評価できると考えております。
 ただし、御指摘を頂いておりますように、主要評価項目で設定して評価されたものではありませんので、現在追加で実施しております国内臨床試験では、主要評価項目として体重と食欲の2つを置いております。この試験でも実施可能性の観点から、プラセボ群を置くと症例数が多くなることから、2つの主要評価項目を設定するかわりにプラセボ群は置いていないのですけれども、海外で現在実施しております臨床試験と同じようなデザインで、試験を実施しております。追加の国内臨床試験成績が得られた段階で、プラセボ対照として実施する海外臨床試験成績とも比較した上で、評価できるようにしました。
○柴田委員 除脂肪体重の効果の大きさについて次にお伺いします。CHMPのレポートはインターネットで出てくると思います。そこでは、海外の第III相試験、301試験と302試験のことですけれども、それの併合解析をして、それぞれ除脂肪体重自体は有効性が示せたわけです。その治療効果の大きさについてはsmall effect sizeであって、clinical relevanceがuncertainであるということ。あるいは、他のエンドポイントとのcorrelationが見られないということが指摘されています。つまり、統計学的な有意差は取れているけれども、その意義について、臨床的な意義が否定されているような解釈がされているわけです。それについては、国内試験としても効果の大きさとしては大して差のない大きさだったと思います。そこまで欧州が言っているにもかかわらず、日本においてはその除脂肪体重の変化が臨床的に意味のある差であると、解釈された理由はどこにあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 欧州で指摘されているようなLBMの上昇の大きさは、国内臨床試験で本薬投与により認められている大きさが十分とまではありませんけれども、プラセボ群では少なからずとも除脂肪体重が減少傾向にあり、一方で本薬群を投与した患者さんでは、除脂肪体重が上昇していることは、本薬の薬効としては評価できるところかと考えております。ただし、先ほどの御質問にも関連するのですけれども、除脂肪体重だけを上げればいいと我々も考えているわけではありませんので、副次評価項目で設定した食欲なども含めて一定の臨床的意義があると判断しました。
○柴田委員 つまり機構の判断として、これは臨床的意義の大きさについては欧○と解釈が異なっていて、○○○欧州もその大きさは不十分であると認識しているけれども、日本では一定のその大きさについては意義があると考えた。つまり、現状では欧州○○○の判断においては、臨床的意義が、大きさが不十分である、あるいは項目が不十分であると言っている。これに対して、プラセボではないということが証明されているので、薬理学的効果は説明されているので、承認してよいと判断した、というようにまとめても乱暴ではないですか。
○医薬品医療機器総合機構 必ずしも今回認められた除脂肪体重の上昇だけで本薬のがん悪液質に対する評価ができるものではないと考えておりますので、市販後に、医師の先生方に本薬の薬効としてどれぐらいの大きさがあるのかというところをきちんと御理解いただいた上で本薬を投与していただくことが必要と考えました。添付文書の1ページにある効能・効果に関連する使用上の注意の4.に「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験で対象とされた患者さん、また本剤の有効性も踏まえて、適切な患者に投与してくださいという旨を注意喚起として入れさせていただきました。その上で臨床成績の項において、本薬の臨床試験成績を詳細に記載しております。
○柴田委員 次に安全性の話をお伺いします。この試験では作用機序から肝機能の問題、心電図異常の問題が懸念されていて、審査報告書の中でもそれは言及されています。この審査報告書を拝見する限り、欧州の公開されている資料に出てくる例えばTorsade de pointes/QT延長が3例記録されていますが、そういうものが出てきていないのですが、その理由は何でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書45ページ以降で記載させていただいております重要な有害事象で項立てしております、心機能への影響についての項がございます。審査報告書では、主に臨床試験で評価した国内の臨床試験、海外の臨床試験の結果をまとめたものをこちらに書かせていただいております。そのため、その他の臨床試験で認められた事象は具体的には書いていません。ただし、その他の試験成績も踏まえて、臨床試験の段階から心機能への影響については安全対策をとった上で実施しており、承認された後もきちんと安全性も管理した上で使っていただけるよう、添付文書での注意喚起を検討しております。
○柴田委員 今の説明についてはちょっと疑問があります。欧州の報告書を見ると、かなり辛辣に、心電図異常に関するデータの取り方が、デザインが不十分であるということが指摘されています。それに対応して、日本においては今の結論を導かれるに足るだけの精密な、あるいはインテンシブな心機能の検査はされたのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生御指摘の欧州のデータの取り方の問題についての課題については私どもも認識しています。その件そのものは今回の申請、それから承認に至る国内試験とは切り離した試験の中でのプロトコールも含めた管理が行われていて、国内の試験については、適切なプロトコールの下に適切なデータが取得されて、それが解析されていて、私どもは十分に適切な判断が出来ると考えています。ただし御指摘いただいています、それから審査報告書にも記載していますけれども、国内のデータは極めて限られています。欧州のデータを含めても限られていますので、長期的にはそのデータを収集した段階で判断をしていくことが必要だと考えています。
○柴田委員 総論として、実際に市販後に慎重に調査をするという方針を提示されること自体は妥当だと思います。欧州においては、承認する前に十分なデータを取る必要があるということが指摘されていると理解しています。例えば、本剤の薬効であるとか、代謝経路の問題から、肝機能障害を有する患者さんにおいて、きちんとしたPKのデータがないこと、あるいは先ほどの話に加えて、これは審査報告書にも書いてありますが、黒字の27ページ、青字の29ページに、400mg投与のときに問題が起きているので、試験の中で400mgが削られているという経緯があります。そういうことについても踏まえると、これはCHMPも言っていることですが、治療域が狭いので、例えば肝機能障害がある方であるとか、個人間差などによって、場合によっては併用薬などの影響もあって、心電図異常などが懸念されるということが出てくるのではないかということが、CHMPの中では議論されていて、それがかなり辛辣に問題だと指摘されている。にもかかわらず、漫然と市販後にデータを取ればいいのではないかという姿勢は不十分ではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 肝機能障害については、特に最高用量の問題は私どもも大きな問題と考えています。申請者は、400mgの設定には課題があるので、300mgを上限ということです。それを踏まえたデータの上では300mgの中で、少なくとも問題となるようなものは出ていないことは確かであると考えています。一方で300mgと400mgの差が少ないのではないかというのが先生の御指摘なのだろうと考えています。
○柴田委員 違います。この話は薬物動態のデータを見ると、個人間差が大きく、場合によっては、ちょっと状態の悪い患者さんでは血中濃度が上がるのではないかという話が指摘されているところなので、そこも考えると300mgに絞っていても、かなり危険な域に達してしまう患者さんが出てくるのではないかということが、CHMPのレポートの中で言及されているところです。それについて、機構の書かれた報告書の中で、400mgのリスクについては脚注に書いてありますが、明示的に書いていなくて、一般的に肝機能障害については慎重に対応する必要があるということに議論がとどめられているのは、ちょっと不十分ではないか、あるいは臨床現場に対する情報提供として不適切ではないかと考えるのですが、それはどうでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生の御指摘は、私どもとおおむね共通の認識と考えています。300mgが決して万全の数字であるとは考えていません。一方で、この薬剤の持っている有効性側のポテンシャルを考えたときには、この用量設定そのものは一応ある程度有効性が示された、なおかつ安全性が、今の段階で担保できる数字の上限というように考えています。それを踏まえた上で、添付文書の中では注意喚起を一通りさせていただいている状況ではあるのですけれども、これについては先生の御指摘も踏まえて、少し丁寧な資材対応も含めて検討させていただきたいと考えます。
○柴田委員 しつこいですが、CHMPにしても○○○○○○○、基本的には非小細胞肺がんの患者さんを前提とした議論が進められているところです。今回は、例えば大腸がんであるとか、そういう他の患者さんに対しても投与されることになると思います。例えば大腸がんに関して言うと、これは釈迦に説法で、皆さんのほうがよく御存じのところだと思いますが、例えばパニツムマブとかセツキシマブでは、低マグネシウム血症がかなりの頻度で起こります。治験の中では10数例ぐらいでしか経験がありません。そういう状況で、CHMPが考えているリスク以上のリスクが、日本の臨床現場で起こるのではないかという疑問に対してはどのような対応が取られているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生が御指摘の点は2つに分けられると考えます。理解が間違っていたら御指摘ください。1つは、海外で今進行中の試験、あるいはこれまで行われてきた試験は、基本的には非小細胞肺がんのみを対象にしていて、開発の方向○○○○○○○○○○○○○○○○○で動いています。
 一方国内では、がん患者の悪液質の幅広さ、先ほど坂東先生からも御説明いただきましたように、悪液質の患者さんを非小細胞肺がんだけに限定することには様々な観点から問題があると考えた上で、この点は機構も同意した上で、非小細胞肺がん以外の、具体的には消化器がんを含めた複数のがんにおける悪液質の現場への、この薬剤の適切な供給が重要ではないかという前提の下に、治験プロトコールに同意した上で開発が行われてきています。その観点で、国内の開発の方針と、国外の開発の方針には既に出発の時点で差が見られています。
 それを踏まえて、2番目の先生の御指摘は、非小細胞肺がんだけで出ている海外のデータ、それから国内の限られたデータから、今後非小細胞肺がん以外の国内での使用に関して問題がないか、懸念がないかという御指摘だと考えます。その点に関しては、国内の臨床試験は05試験というのが、少ないデータではありますけれどもある程度集積された数字を持っています。それから、追加の臨床試験を現在企業が進行中であり、これらのデータを踏まえた上で、私どもは改めて考えていきたいと考えています。
 それから坂東先生も含めて専門協議の先生方、多くの先生から御賛同いただいていますけれども、学会を挙げて適切な使用に向けての調査も含めた研究が進んでいくと考えております。坂東先生、何か追加があればお願いいたします。
○坂東参考人 薬物動態に関して私は専門ではないのですけれども、実際の臨床現場では非小細胞肺がんだけに使用を限ってしまうと、この薬剤のニーズを全く満たさないものになってしまいます。消化管切除された症例だとか、先ほど先生がおっしゃったとおり、全身状態が落ちた方々の血中濃度は確かにおっしゃるとおり、医療現場では十分気を付けなければいけないものだと思います。そこに関しては、臨床現場の医師が慎重に対応するという形でこの薬剤が使っていけたら、こちらとしては有り難いと考えています。
○柴田委員 誤解されるといけないので改めて念のために申し上げておきます。FDAとかEMAが承認していないものを機構が承認するのはよくないと言っているわけではありません。世界で一番最初に承認するというリスクを取られることに対して敬意を表します。このようなアンメット・ニーズに対して、臨床現場で重要な状態に対して、先行事例がないものに対する開発をされている企業にも敬意を表します。一方でこれまで縷々申し上げているように、議論しなければならない点が曖昧にされたまま、必要だからといって世に出すのは危ないのではないかということが、私がお伝えしたい最大のことです。
 先ほど、開発方針が違うので、海外では非小細胞肺がんを中心としたデータがあって、日本では先ほど坂東先生がおっしゃったように、非小細胞肺がんに絞るのは適当ではないのでということで、その方針は分かります。海外において、大腸がんであるとか他のがんでの抗がん剤等の併用のデータが十分にあるわけではなく、日本の治験でもそれは少数例にとどまっている。そのような状況で、非小細胞肺がんに限ったデータにおいてもEMAはかなりリスクが高くて、承認前にきちんとしたデータを取らなければならないという話をしているのに、そこを一気に他のがんまで広げるときに、現在のデータで十分なのかということは丁寧に議論されるべきだと思います。
 今おっしゃったことが審査報告書にしっかり書いてあって、臨床現場の臨床の先生方にも伝わるのであれば、例えば先ほどの電解質異常の話などについて言えば、きちんとしたお医者さんであれば、きちんとモニタリングしながら投与されることになるので、きちんと適切に使っていただけると思いますけれども、現状の添付文書(案)であるとか、審査報告書の書きぶりに関しては、結論ありきで、きちんと論点として懸念されることに対する機構の解釈がなされていなくて、なおかつ適切な情報提供もされていないところが問題ではないかと考える次第です。
 最後に付け加えますが、欧州のCHMPのレポートでは、GCP上の問題についても指摘されていて、例えばトルサード・ポアンについては900例ぐらいの試験の中で3例出ているということだけでもかなり問題であるけれども、この試験の安全性のデータの報告が過小になされているために、臨床試験のデータを安全性の評価に使うことは適切ではないとまで書いてあります。そういうことについて、審査報告書の中では全然言及がないのですが、そのデータが適切に報告されたデータだと思って臨床現場の先生方は使うわけで、論文であるとか、公表されている話であるとか、この報告書、これは著しく不適切ではないかと思うのですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書において、審査で検討した内容を十分に記載しておらず申し訳ございませんでした。今御指摘いただきました海外でGCPの観点から問題があるというような試験については、機構としても、そのデータを含めた解析で、添付文書上での注意喚起において発現割合だとか、事象とかを載せるというのは適切ではないと考えました。今回実施された国内臨床試験として、非小細胞肺がんの患者さん、あとは消化器がんの患者さんを対象とした臨床試験の3つの主な試験があります。添付文書での注意喚起については、この3つの試験のデータから副作用の発現割合とか事象等をまとめております。
 また、現時点ではこの3つの国内臨床試験に基づいて、添付文書の注意喚起をしておりますが、今後、現在実施中の国内臨床試験はもちろんですけれども、海外でGCPにきちんと準拠して現在実施されております2つの臨床試験があります。これらの臨床試験成績が得られた段階で、安全性もきちんと解析した上で、添付文書での注意喚起、あるいは適正使用というところについて検討させていただきたいと考えております。
○柴田委員 数字についてはそれでいいと思うのです。先ほどから申し上げているような欧州において、例えば心電図異常であるとか、肝機能障害の問題であるとか、そういうことについて辛辣な指摘がなされているということが、現状の審査報告書からも添付文書からも分からない状況で医療現場に出すのは、医療現場で専門家の先生方が使われると言っても、字面だけ見れば大したリスクはないのだなと思って使われることになるので、そこのところに対する手当は何かされることは可能なのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 欧州のほうで指摘されている事項については、本品目についてはRMPを作成しますので、そちらで詳細に記載する等の手当も含め、RMPに紐付けて作成する医療機関向けへの資材、患者向けへの資材できちんと対応させていただきたいと考えております。
○杉部会長 そのことについては機構でお願いします。赤羽先生どうぞ。
○赤羽委員 1点質問で、1点コメントです。通し番号の39ページの表46の上に説明されているところで、この臨床試験の49名の被験者のうちの6名の被験者から治験中止の申出があったという記載があります。この49名中6名というのは結構な割合かと思うのです。その申出の理由を教えていただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 手元の資料からは、この場で具体的な理由を御説明できないのですけれども、有害事象で何かしら患者さんが投与するのは安全性上不可と判断されたというような状況ではなくて、患者さんの状態等で申出があったのではないかと思われます。
○赤羽委員 この薬剤のQOLの改善に有効かどうかということを判断する上でも、そこのところが少し危惧されるところかと思って質問させていただきました。あとはコメントなのですけれども、先ほどから心機能に関する副作用、有害事象のことが議論されています。抗腫瘍薬そのものが分子標的薬も含めて、それぞれ様々な心機能に対しての副作用があります。もしかすると今、心不全であるとか、不整脈などが顕在化していなかったとしても、その抗腫瘍薬によってそういうリスクが非常に高くなっている患者さんの場合には、そういう副作用が出やすいということもあると思います。現状では、まだどういう薬剤で副作用が出やすいかというところまでは情報が十分ではないと思います。今後そういうところも慎重にデータを積み重ねていただいて、もしかするとこの組合せは禁忌にしなくてはいけないというようなこともあるのではないかと思いますので、よろしくお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 本品目については先生が今御指摘いただきましたように、様々ながん患者さんが想定されますので、実際に臨床試験で入っていた患者さんよりも、もっと広く併用薬を服用している患者さんも出てくるかと考えております。機構もその点については懸念しております。本品目については、適正使用の観点もありますけれども、安全性をきちんと確認していただきたいと考えましたので、全例調査として本品目の製造販売後調査を実施させていただく予定です。そちらのほうで併用薬、あとは併用薬の用法・用量も含めて確認させていただく予定ですので、データがある程度まとまった段階で、状況に応じては早期に臨床現場に提供できるように注意喚起の改訂等も含め、対応させていただきたいと考えております。御指摘をありがとうございました。
○杉部会長 堀委員お願いいたします。
○堀委員 患者の立場から素朴な質問をさせていただきます。今回の薬の服用の時間についてお尋ねいたします。添付文書の1ページには、こちらは1日1回空腹時に経口投与と書いてあります。その後の使用上の注意には、本剤服用後1時間は食事をしないこと。服用の際の注意点はこれだけなのです。これを考えると、例えば薬を飲み忘れた患者さんが、夜11時頃にお腹が空いた状況で投与して、翌朝5時、6時に飲んでも大丈夫というような判断を患者はしてしまうのですけれども、それでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 こちらの1日1回というところは、本薬の薬物動態の血中から消えていく時間や、本薬は日内変動に影響をうけるものではないと考えましたので、1日1回投与とさせていただきました。また、空腹時の定義については、患者さん向けへの資材において、きちんと分かりやすいように図表も用いて御説明させていただく予定です。前日の夜に飲んだ後に、1日1回の薬を次の朝に飲んでいいのかという点は、血中濃度が上がりすぎないように気を付けないといけないという観点ももちろんありますので、患者向け資材のほうで適切に1日1回というのがどういうものであるのかというところは、丁寧に御説明できるようにしたいと思います。
○堀委員 がんの患者さんやそのご家族は、私どもが接していてもすごく薬に対してとてもナイーブになっていらっしゃるように感じます。一般的に患者は薬を服用するときに食前、食後などの指定や、又は1回の服用の後、次の服用までは何時間空けてください、という明確な指示が道しるべではないのですけれども、安心材料になります。ですからこういう漠然とした服用の指示だと、介護をする家族にとってもかなり不安だと思いますので、より丁寧な資材を作っていただきますようお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 ご意見ありがとうございました。
○杉部会長 今回いろいろ御指摘いただきまして、今後のデータの集積も必要だろうと思います。坂東先生から何かありますか。
○坂東参考人 追加はありません。
○杉部会長 大谷委員どうぞ。
○大谷委員 薬物動態の観点からコメントという形で一言言わせてください。やはり、ほぼ100%肝臓から抽出するようなことが分かっている薬物について、そして忍容性がそれほど高くない可能性もある。かつ、血中濃度に個人差があるような場合で、やはり肝障害患者さんにおける薬物動態のデータが非常に欠けているというのは、危機感を薬物動態のほうから見ても感じます。ある程度こういう場合は、今後は実際の血中濃度のデータを肝障害のある患者さんでしっかり集めていただいて、場合によっては慎重投与となっておりますけれども、チャイルド・ピューのBとかCに関しては禁忌に移行するとか、そういうことをしっかりと見るということで、是非肝障害患者さんの血中濃度のデータを、承認後も蓄積して収集していただけるような方向でお考えいただければということで、議事録にもとどめていただきたいと思います。
○杉部会長 チャイルドのCということでは、なかなか薬も使いにくい状況になると思います。最近の流れで、これを禁忌のところにも加えるようなことがあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 現時点では、特に肝機能障害患者さんを対象とした薬物動態試験というのは検討の予定はありません。先生から御指摘いただいた点も踏まえ、今後の対応については適切に企業と検討してまいりたいと考えております。
○大谷委員 基本的にこういう場合は、本当はちゃんと臨床試験を組むべきだと私は個人的には強く思っています。
○杉部会長 今回御指摘されたことが非常に多いので、そのことも添付文書に反映させるような形でしていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○杉部会長 その他にはいかがですか。
○川上委員 通し番号32ページに主な選択基準があります。その一番最後に、4か月以上生存が期待される患者という条件がありますので、がん悪液質のステージ分類で言うと、中等度ぐらいの方を対象にされているかと思うのです。実際に、この薬剤は末期の患者さんに使った場合に、効果は期待されるのでしょうか。あるいは、されないのであれば対象患者を絞ることを検討しないと、相当の使用量になる気もしたのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生から御指摘いただいた点については、専門協議でも先生方と議論させていただいた点になります。本品目の臨床試験を実施する上で、有効性等の評価をする上では生存期間が4か月以上ある患者さんでないと検討できなかったという背景もあり、臨床試験では少なくとも3か月以上生存している患者さんを対象として実施しております。
 御指摘いただきましたように、さらに進行して不可逆性の状態になった患者さんでの試験成績はないのですけれども、そのような患者さんを明確に制限する必要があるのかというところは、本薬の薬理作用を踏まえると、多少は期待できるかもしれない等、先生方の感触としても様々であったというような状況でした。少なくとも臨床試験で実施された患者さんをきちんと御理解いただいた上で、現場の臨床の先生方に使っていただく必要があると考えましたので、効能・効果に関連する使用上の注意、臨床成績の項で記載させていただいておりますけれども、加えて、本薬が投与された後に、3週間たっても除脂肪体重の増加が認められない患者さんについては投与を中止していただくなど、ある程度有効性の判断をしていただく時点を、用法・用量に関連する使用上の注意で記載させていただいております。
 その点も含めて、現時点で可能な限り対応はさせていただいたところではありますけれども、今実施中の国内外の臨床試験、また製造販売後に実施する全例調査のほうで、どのような患者さんに実際に使われていて、有効性も含め、安全性の点もどのようなデータが得られるかというところを、承認後もきちんとフォローしていき、添付文書での注意喚起、例えば効能・効果に関連する使用上の注意など、そういうところも含めて検討させていただきたいと考えております。
○川上委員 添付文書6ページの臨床成績の1ポツで、国内臨床試験の注の2)で、患者さんのインクルージョンクライテリアが書かれています。ここにその3か月以上の生存が期待される患者を組み入れたことは、なぜ書かれないのでしょうか。
○審査第一部長 添付文書は患者さんも実際に目にされる資料になってくるかと思います。例えば、この薬による治療を希望して、医師の最終的な判断でその患者さんには投与できませんという話をしなければならないときに、自分は3か月生きられないのですかと誤解される可能性も懸念されましたので、敢えて全ての選択基準、除外基準は記載しないようにはしております。ただ、ここではパフォーマンス・ステータスが0から2の人ということなので、ある程度元気のある患者が投与対象になるところは理解していただけると思っています。
○杉部会長 いろいろ御指摘がございましたが、坂東先生大丈夫でしょうか。何か一言ありますか。
○坂東参考人 確かに現場で使う医師の教育が非常に重要で、恐らく企業の方々も承認されたら積極的にそういう啓蒙活動、若しくは教育活動をしていくと思います。その中でこの薬剤が適切に使われるようにと思っています。
○杉部会長 森先生どうぞ。
○森委員 この薬剤が医療現場で大変重要であることは私も臨床医として日々痛感するところです。1日も早く使用したい方もたくさん目に浮かぶ状況であります。現状でこの薬剤が医療現場に出ていった際に、まず一番よく分からないのは、この薬剤が有効であることを、どの基準をもって医師や患者さんは確認していけばいいのか、臨床試験のデータが余り答えていない点が気になるところです。
 除脂肪体重という指標は、悪液質の病態的には最も根本的なものでまず最重要と思います。しかしながらクリニカルにがんの方に除脂肪体重を綿密にモニタリングしているかと言うとしていないと思います。恐らく患者さんにとっては、元気が出る、食事が食べられるようになる、なんとなく体調が良くなってきたなどの自覚的な目安、もしくは少し体重も増えてきている、日中起きている時間が長くなったとか、数値化できる何らかのスコアで評価できたほうが良い。この患者さんには効いている、この患者さんにはちょっと副作用はあるけれども効いているみたいだなど、臨床的な判断をする根拠やデータが必要になります。
 私どもの手元資料に記載のあるONO764306試験は現在進行中と伺っています。この試験は、臨床の現場が求めているデータの回答に近いものを、具体的なパラメーターに挙げて評価されているので、この試験で実際にどういう結果が出て、どう有効性があるかということが分かった後のほうが、この薬剤を世に出すにははるかに適していると思いました。この764306試験が現在進行中の状況で、現在この薬剤の審議をしているといった背景は何かを教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 先生から御説明いただきましたように、本薬の有効性については、臨床現場では、体重やQOLで、医師や看護師、患者さん、あるいは介護者の方々は判断されると考えております。
 除脂肪体重で評価した臨床試験成績をもって、現時点で承認の可否を御審議いただいている背景についてご説明します。まず除脂肪体重というものは、実際の医療現場ではこちらの指標を用いて評価することはなかなか難しいものではあると思います。ただし臨床試験では、より明確に本薬の薬理作用として筋肉量の増加が認められたというところを判断する上で、より的確なものを主要評価項目として設定し、検証されたものと考えております。
 評価の中心となる国内臨床試験について、除脂肪体重で評価した結果、現時点で得られている臨床試験をもって承認の可否を御審議いただくことが適切と判断したところです。
 一方で、今後臨床現場で使われる中で、診断の観点においても体重の継続的な測定というところが重要だと、医師の先生方にも浸透して、確認していただくことが必要かと思います。現在実施している臨床試験については、体重とQOLで評価しますので、そちらのデータが出た段階で、早めの段階で機構もそちらのデータを確認し、添付文書とか医療機関向けへの資材等において、そのデータも含めた形で更新してきちんと患者さんや医師に御説明させていただくような形を考えております。
○森委員 もう1つ質問します。除脂肪体重は、筋肉量とイコールではないです。内臓重量と筋肉量の合計と考えたほうがいいと思います。IGF-1の増加は、筋肉量と内臓重量の両方の増加を招く可能性があります。今回、除脂肪体重が筋肉量の増加だというように判断している根拠は何でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生の御指摘はごもっともです。除脂肪体重がイコール筋肉量であるとは私どもは考えていません。ただし、除脂肪体重の増減が筋肉量のある程度の増減の代用になると考えます。そこのところは、読み換えをしていることは確かです。柴田先生の御指摘に戻ってしまうのですけれども、悪液質を対象とした臨床試験というのは、1990年代後半から様々行われてきていますが、なかなか良い指標がなかったというのが正直なところです。先ほどの海外試験の失敗の話にもつながりますが、握力を対象とした試験が幾つか行われて、その結果として握力が指標になるかもしれないということで、本剤の開発者であるヘルシン社は実際に握力を指標とした試験を行いました。試験を行った結果として明らかになったことの1つは、握力自体は悪液質の臨床試験の評価としての指標として必ずしも適切ではないということで、つまり握力を指標とした試験で有効性を示すデータを得ることは、相当に容易ではないということが分かってまいりました。
 その中で除脂肪体重も決してベストの指標であるとは言えないのですが、今入手可能な範囲の、なおかつ現場で求められているものに近いデータとして考えられているものは、除脂肪体重、それから主観側として患者さんのQOLや食欲の増加という辺りがあると考えています。その辺りを踏まえ、現在行なわれてる海外の試験も、専ら除脂肪体重、それから食欲に主眼を置いたQOL関連の指標が中心となっているという状況です。
○森委員 今進行中の7643-06試験はどの程度進行していて、いつ頃その状況が分かるのかを教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 現在実施中の国内第III相試験、ONO-7643-06試験については、本年3月から開始しています。試験予定期間は2021年6月までです。
○杉部会長 まだ期間があるようですが、本日の議論を聞いていると、どういう症例に使うかとか、そのことがまだはっきりしていないようなところがあるような感じがいたします。もう少ししたら何か指標となるようなデータが出るか、というところを伺いたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 現時点では、この国内臨床試験と、海外で実施中の海外第III相試験2つの臨床試験成績が実施中です。今すぐに何か新しいデータが出てくるという現状ではありません。その点も考慮して、製造販売後においては全症例を対象として、安全性だけではなく有効性や、どのような患者さんに投与されているのかというところを、具体的な患者背景と、その後の体重推移、QOLの辺りも含めて全例調査のほうで確認させていただく計画としています。
 現時点で確定なところではありませんけれども、少なからずとも国内第III相試験成績が得られる前に、ある程度の全例調査での状況等は把握できるかと思いますので、その点については国内第III相試験成績が出てくる前に情報提供することはできるかと考えております。
○杉部会長 ということは、今ここに出された成績、体重のこと、食欲のことということですが、それは改善傾向にあったというふうに判断してもいいということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 我々としては、食欲については一定の改善傾向はあったと考えております。
○杉部会長 分かりました。指標については非常に難しいように思います。皆さんに本当に議論を頂いて、これでこのまま決めていいかどうかも、これをここで皆様の反応を伺いたいのです。この審議会で、今のこの状態でこの薬を認めていいかどうかです。もっとデータが出てからでないと難しいという感じがあるかどうか。そのことについて坂東先生は御意見がありますか。
○坂東参考人 私が言う立場なのかですけれども、恐らく第III相試験のデータが出たら、対象患者さんが明確になって、投与の指標が固まるかと言うと、それもなかなか難しいのかと個人的には思いました。実臨床で、恐らく患者さんが化学療法をやっているときに、もっと強い毒性の薬剤と、例えば糖尿病を合併している方はいろいろな薬剤を併用しながら実際に投与しているので、ある程度医師が自らのデータを確認した上で、慎重に投与していくという姿勢でやらざるを得ない現状があるのかと個人的には考えております。
○杉部会長 なかなか難しいところですよね。先生方の反応をちょっと伺いたいと思います。これを可としてどうでしょうか、よろしいでしょうか。それともここではもう少し待って、データがそろってからもう一回やるということでしょうか。何かそのことについて御意見があればお伺いします。これだけ意見が出てしまうと、これで可としてよろしいですかと伺うのも難しいような感じがするのですけれども、どうでしょうか。なかなかこういう質問は難しいし、機構としては有効のところもあるという御意見ではあります。ここで伺います。これを可としてもよろしいとお考えの方は挙手をお願いできますか。どうでしょうか。
(挙手なし)
○杉部会長 それは、なかなか難しいということなのでしょうか。良い薬が世の中に出るというのは大事なことではありますが、今の反応に対して機構のほうからどうでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 現在実施中の06試験ですけれども、先ほど坂東先生からお話があったとおり、こちらの試験は対象患者が非小細胞肺がん、あとは大腸がん、胃がん、膵がんということで、既に実施している04試験及び05試験と同じがんの患者さんを対象として、再度体重と食欲を見ている試験となります。
 既に実施された04試験、05試験の結果について、更に補強というかサポーティブ、更にその成績について確認した成績をもって、それを改めて情報提供させていただくというようなことになるかと思います。したがって、追加で何か新しい結果をもって、今までなかったところが出てくるというところまでの成績にはありませんで、現時点では04試験、05試験の有効性も踏まえて、我々としては一定の有効性は示されているのではないかと判断させていただいたところです。
○杉部会長 分かりました。何かありますか。
○審議役 データとしては現時点で利用可能なものを使って機構としては評価しております。ですから、このデータの範囲で評価できないということになれば、先ほど議論があったように追加の臨床試験の結果を待つかということになります。追加の臨床試験で得られるデータというのも限度があるというのも事実だと思います。それから、循環器関係の話がありましたけれども、循環器関係の危険性を検討すると言っても症例数の規模からなかなか難しいですし、様々な背景のある患者さんにおいて評価するというのもかなりの限度があると思います。そういうことも御考慮の上御意見を頂ければと思います。
○杉部会長 奥田先生どうぞ。
○奥田部会長代理 恐らく柴田委員の御発言も、これだけのデータでどのように正しく医療現場で使ってもらえるか、そのための方策がその情報提供も含めてきちんとなされているかということが、最後に柴田先生がおっしゃりたいことだったのだろうと思います。今のこの報告書のまとめ方では、恐らくミスリードするのではないかという、非常に強い懸念を表明され、また森先生のご発言もそのようなことだろうと思います。それであれば、ここでの議論を踏まえて、このお薬の評価というものをもう一度機構のほうでされて、その上でこのお薬の使用に関して限定して使用するなどを考えられて、情報の伝達というものも含めて再度ここに出す。それでもう一度審議をするという考えも取り得るのではないかと思っています。
 このまま臨床試験の結果を3年待つのか、それとも今あるデータをもう一度精査して、何ができて、何ができていないかをもう一度きちんとレビューしていただいて、ここに持ってくるというのがもう1つのやり方かと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○杉部会長 長島委員どうぞ。
○長島委員 今の奥田委員の御意見に賛成です。例えば、添付文書と資材等をもう一回しっかり今までの御意見を踏まえて書き直していただいて、あるいは対象となる患者さんのことももう一回しっかり考えていただいて、それで再提出していただいて検討をするというのがよろしいのではないでしょうか。
○杉部会長 そういうことに集約されそうですが、どうですか。
○医薬品審査管理課長 御議論、御意見ありがとうございます。奥田先生、あるいは長島先生から頂いたような方向で、もう一度私ども機構と厚生労働省で持ち帰って整理をして、次のタイミングにもう一度御説明したいと思います。その説明の内容をもって御判断を頂くことでいかがでしょうか。
○杉部会長 やはり皆さんの御意見がそういうことですので、この件については継続審議という形で、またの機会に出していただくことにいたします。次のデータを得るということではなくて、今まで出されたご意見をまとめて添付文書に記載していただいて、それでみんなが注意を喚起できるかというところが重要だと思いますのでそのようにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。長い時間討論をありがとうございました。坂東先生どうもありがとうございました。
(坂東参考人退席)
○杉部会長 それでは継続審議ということで、次の議題3に移ります。議題3について機構から説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題3、資料3、医薬品クリースビータ皮下注10mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。タブレットの資料3のフォルダを開き、審査報告書のファイルをお開きください。
 本剤の適応疾患は、「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症」とされています。骨の成長及び石灰化に必要なリンが不足すると、骨及び軟骨の石灰化障害が生じ、その結果、成長軟骨帯閉鎖以前の場合はくる病、それ以降の場合は骨軟化症を発症します。くる病及び骨軟化症のうち、腎近位尿細管でのリン再吸収の抑制作用等を有する線維芽細胞増殖因子23(以降、「FGF23」と略します)の過剰産生による血清リン濃度の低下に起因するものが、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と定義されています。本疾患には、X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症(以下、「XLH」と略します)に代表される生殖細胞又は体細胞の遺伝子変異が原因の先天性疾患と、主に間葉系腫瘍が原因となる後天性の腫瘍性骨軟化症(以下、「TIO」と略します)が含まれています。
 本剤は、FGF23を標的とするヒト型IgG1モノクロナール抗体であるブロスマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする皮下注用の注射剤です。
 本邦におけるFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の患者数については、2005年~2009年の5年間で311例、2009年の1年間で新たに報告された患者数は63例との報告があり、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。
 本剤は2018年4月に米国で1歳以上のXLHに対して、また同年2月に欧州で1歳以上の小児及び青少年のXLHに対して承認され、2019年5月現在、米国及び欧州を含む35カ国でXLHを適応症として承認されております。
本品目の専門協議では、資料21に示す先生方を専門委員として指名しております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明します。
有効性について、成人XLH患者と小児XLH患者、TIO患者を対象とした3つの臨床試験成績について御説明します。まず成人のXLH患者については、審査報告書、48ページの表53を御覧ください。成人XLH患者を対象としたプラセボ対照比較試験が国際共同試験として実施され、主要評価項目とされた4週ごとの各投与サイクルの中間時点、つまり、各投与サイクルでの投与2週時点での血清リン濃度の平均値が基準下限値を上回った被験者の割合は、プラセボ群で7.6%、本剤群で94.1%であり、本剤群でプラセボ群に対して有意に高値を示しました。
 続いて、小児XLH患者については、審査報告書の52ページ下段の「有効性について」から始まる段落、及び53ページの表59を御覧ください。小児XLH患者を対象として、既存治療である経口リン酸製剤及び活性型ビタミンD製剤を対照とした比較試験が国際共同試験として実施され、主要評価項目として、膝や手首等のX線画像に基づき、くる病の重症度の変化を評価するスコアであるRGI-Cグローバルスコアが設定されました。その結果、RGI-Cグローバルスコアについて、本剤群の対照群に対する有意な改善が認められました。また53ページの下の図4を御覧ください。本試験においても、血清リン濃度について、対照群に比較して本剤群で上昇しており、その効果の維持が認められております。
 続いて、TIO患者については、審査報告書の43ページの図2を御覧ください。TIO患者を対象とした非盲検非対照試験が実施され、主要評価項目とされた血清リン濃度について、同様に改善傾向が認められております。
 安全性については、審査報告書49ページの表56を御覧ください。成人XLH患者を対象とした国際共同試験での有害事象の発現状況について、プラセボ群と比較して本剤群で有害事象の発現割合に大きな差は認められませんでした。また、本剤の作用機序等から懸念される事象として、過敏症、高リン血症、及び高リン血症が持続した際に発現する可能性のある異所性石灰化等が挙げられますが、臨床試験においては、対照群と比較して発現頻度が顕著に高くなることはない、又は本剤の用量調節により管理可能であったことから、添付文書において過敏症の発現状況や異所性石灰化に対するモニタリングに関する注意喚起等を適切に実施することで、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 なお、日本人における投与経験は限られていることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる等の承認条件を付すことが適当と判断しております。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤いずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いします。
○杉部会長 先生方から何か御意見ございますでしょうか。特段の御意見はありませんので、この承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでちょっと断りを忘れました。大賀先生は、今回は利益相反に関して、議決への参加を御遠慮いただいております。皆さんほかの方には可と決めていただきました。ありがとうございました。これを薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは議題4に移りたいと思います。機構から概要をお話しください。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題4、資料4、医薬品ブリニューラ脳室内注射液150mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。タブレットの資料4のフォルダを開き、審査報告書のファイルをお開きください。
 本剤の適応対象であるセロイドリポフスチン症2型は、セロイドリポフスチン症の病型の1つであり、リソソーム内のセリンプロテアーゼであるトリぺプチジルペプチダーゼ1(以下、「TPP1」と略します)をコードする遺伝子変異によって、TPP1酵素活性の低下により、リソソーム内にポリペプチドが蓄積する遺伝子疾患です。本疾患は、不可逆的な神経変性の進行を特徴とし、多くは2~4歳で症状が発現するとされ、初期症状としては、痙れん発作や言語発達の遅滞等が認められます。その後、歩行困難や認知機能の低下、言語障害や重度の延髄機能障害等が発現し、多くは10~16歳までに死亡に至るとされています。
 本剤は、遺伝子組換えヒトTPP1酵素前駆体であるセルリポナーゼ アルファを有効成分とし、セロイドリポフスチン症2型に対して、酵素補充療法として用いる脳室内投与用の注射剤となります。
 本邦におけるセロイドリポフスチン症2型の正確な有病率は算出されておりませんが、2001年に実施された全国疫学調査において、21例のセロイドリポフスチン症患者が確認されております。その患者の一部に2型の患者が含まれている可能性があるとされており、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。現在、本邦において、セロイドリポフスチン症2型に対して有効な治療薬は承認されておりません。
本剤は、2017年4月に米国、同年5月に欧州で承認され、2019年6月現在、7つの国又は地域で承認されております。
本品目の専門協議では、資料21に示す先生方を専門委員として指名しております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明します。
有効性については、審査報告書22ページの表18を御覧ください。日本人を含むセロイドリポフスチン症2型患者を対象に、本剤を2週間に1回脳室内投与する190-201試験が実施され、本剤の有効性の主要評価項目としては、表18に示しますセロイドリポフスチン症2型の臨床評価尺度のうち、運動尺度と言語尺度の合計スコアでありますML尺度が用いられました。このML尺度については、運動尺度及び言語尺度の各尺度を0~3点でスコアリングを行い評価する指標であり、点数が高いほうが運動機能や言語能力が高いことを示します。臨床試験成績については、表18の下の「用量漸増期又は」から始まる段落を御覧ください。本剤300mg投与開始時をベースラインとし、ML尺度がベースラインから48週時までに2点以上の不可逆的低下が見られないこと、又はベースラインのML尺度が1点であった場合、48週時までに0点とならないことをレスポンダーと定義して有効性が評価されました。その結果、当該患者は、23例中20例に認められ、その割合は87%であり、自然経過患者で推定された割合である50%を有意に上回りました。また、審査報告書25ページの中段を御覧ください。190-201試験を完了した患者を対象とした継続投与試験である190-202試験が実施され、ML尺度が本剤300mg投与開始時のベースラインから96週時までにレスポンダーであると判断した患者の割合は、190-201試験と同様の結果であり、治療効果の持続性が示唆されております。
 また、安全性については、審査報告書34ページの中段の「機構は」から始まる段落に示したように、臨床試験や海外の市販後における有害事象の発現状況等を踏まえると、アナフィラキシーを含む過敏症関連事象や脳室内投与用のデバイス関連事象等について、適切な注意喚起等がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 なお、日本人における投与経験が極めて限られることから、製造販売後は、全投与症例を対象として製造販売後調査を実施し、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
本剤は、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いします。
○杉部会長 ただいまの意見に、何か先生方から御意見、御質問ございますでしょうか。特にはございませんでしょうか。
○山田委員 添付文書についてお伺いしたいのです。添付文書の6ページに、薬剤投与時の注意ということで、これはフラッシュ用の液との取違え防止のためのことが非常に事細かく書かれていますが、これに関連するフラッシュ溶液とかそういうラベルのようなものが別途提供されるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より御説明いたします。御指摘いただいた薬剤投与時のシリンジ等に貼るラベルについては、本剤の包装に同封はされませんが、別途、申請者から医療機関に提供されて、必ず誤投与がないようにラベルを貼って投与されるという形になっております。
○山田委員 もう1点だけ。このように誤投与防止の対策を考えるのは非常に重要だと思うのですが、非常に細かく書かれていて、これを少し逸脱すると不適切使用ということに、添付文書にこれほど細かく書かれると、なるのではないかという気がするのですが。例えば、フラッシュ用というラベルを貼らなかったということになっても、ここではすごく細かく書いてあるのですが、これぐらいするのは、書きぶりというのは通常のことなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。こちらの誤投与防止のラベルに関する注意喚起については、欧州等の添付文書でも同様の記載がされており、本邦においても同様に投与手順も含めた注意喚起を添付文書にて記載したいとの申請者からの要望もあり、さらに本剤の投与経路が脳室内投与という観点も踏まえ、誤投与防止対策を実施することも重要であると判断した上で、そういったラベルに関する注意喚起については、添付文書、あるいは別途お配りしてあります投与ガイドにも具体的に投与手順に関したラベルの取扱いとして記載しております。
○山田委員 分かりました。ありがとうございます。
○杉部会長 そのほかいかがでしょうか。大丈夫でしょうか。それでは議決に入りたいと思います。ただいまのような注意事項を踏まえて、本議題の承認を可としてよろしゅうございましょうか。
 ありがとうございます。それでは、承認を可として、薬事分科会に報告します。
 それでは議題5に移りたいと思います。議題5について機構からの御説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料5-1及び5-2、医薬品トリンテリックス錠10mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。タブレットの資料5のフォルダを開き、★マークの付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 本剤の有効成分であるボルチオキセチン臭化水素酸塩は、5-HT、5-HT及び5-HT1D受容体アンタゴニスト作用、5-HT1B受容体部分アゴニスト作用、5-HT1A受容体のアゴニスト作用、並びにセロトニントランスポーター阻害作用を有する抗うつ薬です。今般、うつ病・うつ状態に対する有効性及び安全性が確認されたとして製造販売承認申請が行われました。海外では、2019年4月現在、米国、欧州等83か国において本剤が承認されております。本申請の専門委員として、資料21に記載されている9名の委員を指名しております。臨床成績を中心に審査の内容を説明します。
 まず有効性です。審査報告書、44ページの表42を御覧ください。国際共同第II/III相試験(CCT-002試験)及び国内第III相試験(CCT-003試験)において、本剤群とプラセボ群との間に有意差が認められなかったことを踏まえ、プラセボ反応性の高い被験者を除外する等、試験デザインを工夫して、国内第III相試験(CCT-004試験)が実施されました。その結果、表42に示したとおり、主要評価項目である、FASにおける投与8週時点のMADRS合計スコアのベースラインからの変化量において、本剤10mg/日群及び20mg/日群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められました。
 次に安全性です。主な有害事象として、審査報告書49ページの表48に、傾眠、浮動性めまい等の中枢神経系の有害事象、続いて審査報告書50ページの表49に、セロトニン症候群関連の有害事象、審査報告書51ページの表50に自殺関連の有害事象の発現状況を記載しております。これらの有害事象について特段の懸念が示されていないことから、添付文書において、他の選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬と同様の注意喚起をすることが適切と考えております。
 用法・用量について、審査報告書61ページの8行目の「その上で申請者は」から始まる段落を御覧ください。国内第III相試験(CCT-004試験)において、本剤10mg/日群と20mg/日群が設定され、本剤20mg/日群では、1日10mgを1週間投与した後、1日20mgに増量されました。その結果、いずれの群においても、プラセボ群との間に有意差が認められたこと、本剤10mg/日群と比較して20mg/日群で改善が大きかったこと、いずれの用量群においても安全性に大きな問題が認められなかったことから、本剤の開始用量及び維持量は1日10mgとし、効果不十分な場合には、最高用量である1日20mgを超えない範囲で適宜増量すること、国内第III相試験のとおり、増量は1週間以上の間隔をあけて行うことが適切と考えております。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いします。
○杉部会長 先生方から、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
○大谷委員 御説明のところで、プラセボ反応を低くする工夫をということがあったのですが、具体的にはどのようなことをされたのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の46ページの表44を御覧ください。プラセボ群に対する優越性を示すことができなかった2試験、国際共同第II/III相試験(CCT-002試験)と、国内第III相試験(CCT-003試験)と同様の重症度の患者を対象としまして、プラセボに対する優越性が検証されている海外試験の2試験、305試験と13267A試験を比較しますと、本剤群のもたらす合計スコアの変化量は大きく異なりませんでしたが、失敗した2試験ではプラセボ群の反応性が大きいという傾向でした。この結果を踏まえまして、プラセボ反応性の高い患者を除外するために、まず、無作為化割付け前に盲検下でプラセボ群を1週間投与しまして、プラセボリードイン期間を設定して、MADRSの合計スコアが大きく変化した患者を除外したということや、反復性のエピソードを有する患者ではプラセボ反応性が低いという論文等も出ておりますので、反復性のエピソードを有する患者を対象とすること等、試験デザインを工夫し、結果として成功したという状況です。
○杉部会長 よろしいですか。そのほかいかがでしょうか。大丈夫でしょうか。
○柴田委員 審査報告書の市販後のデータベース調査の所について教えていただきたいのですが。リスクマネジメントプランの書いてある青い字で65ページの所に、出血関連の有害事象に関して、製造販売後データベース調査等を行うという計画になっていますが、現在、具体的に、データベース調査で出血をイベントとした調査を実施できる見込みがあるということでいいのですね。それは事前に検討されているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 今現在、申請者としては、○○○○のデータベースを使ってその調査を検討することを計画しています。今のところ、調査が実施できる見込みはあると考えていますが、具体的なイベント定義などの細かいデザイン等は、今後更に検討していく予定となっております。
○柴田委員 分かりました。
○杉部会長 それでは、これで議決に入りたいと思います。なお、川上先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは議題6に移りたいと思います。機構からの御説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料6、医薬品アイベータ配合点眼液の製造販売承認の可否等につきまして、機構より御説明いたします。紙資料は資料6の審査報告書を御覧ください。タブレットについては、資料6のフォルダを開いていただいて、★の付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、通し番号の3ページ、「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤はアドレナリンα受容体作動薬であるブリモニジン酒石酸塩と非選択的アドレナリンβ遮断薬であるチモロールマレイン酸塩を有効成分とする配合点眼剤です。本邦において、ブリモニジン酒石酸塩を有効成分とする単剤の点眼剤は2012年1月に、チモロールマレイン酸塩を有効成分とする単剤の点眼剤は1981年6月にそれぞれ承認され、緑内障又は高眼圧症に対して広く使用されている状況です。
 本剤の臨床試験は20○○年○月から開始され、今般、国内臨床試験成績を基に製造販売承認申請がなされました。なお、海外において本剤が承認されている国又は地域はありませんが、配合成分は本剤と同様で、ブリモニジン酒石酸塩の濃度のみが異なる配合点眼剤が2003年12月にカナダで承認され、それ以降、2018年12月時点で米国を含む60を超える国又は地域で承認及び販売されている状況です。本品目の審査に関して、専門委員として資料21に記載されている4名の先生方を、専門委員として指名いたしました。
 本品目の審査の概略につきまして、臨床試験成績を中心に御説明いたします。まず、有効性については通し番号10ページの「7.2国内第III相試験」の項を御覧ください。本剤の有効性及び安全性を検討する目的で、チモロールマレイン酸塩単剤で効果不十分な原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象に、チモロールマレイン酸塩単剤を対照薬とした無作為化評価者遮蔽並行群間比較試験が実施されました。有効性の結果については、11ページの表11を御覧ください。主要評価項目である治療期投与4週における眼圧変化値において、本剤群のチモロールマレイン酸塩群に対する統計学的な有意差が認められました。以上から、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 続いて安全性については、通し番号16ページの表14を御覧ください。こちらの表の真ん中の大きなカラムの中に、本剤の国内第III相試験における本剤群と対照群である0.5%チモロールマレイン酸塩群の有害事象の発生状況を示しています。なお、表内では「TIM」と表しています。個々の事象も含めて、本剤群と対照群との間に大きな差異は認められませんでした。以上の点等を踏まえまして、各成分を配合することによる新たなリスクは見いだされず、既承認単剤と同様に本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 最後に、本剤の配合意義については、通し番号18ページから始まる「7.R.4の本剤の配合意義及び臨床的位置付けについて」の項を御覧ください。機構の考え方を19ページの下から10行目から記載しております。こちらについて、少し補足させていただきながら説明いたします。
 緑内障治療においては、単剤での治療をまずは優先することになりますが、単剤では十分な眼圧降下が得られない場合も多く、そのような場合は配合剤を含めた併用療法を行うということが一般的となっております。本剤の配合成分である2剤についても、臨床現場で一定の割合で併用されているという実態があります。このような併用療法においては、適切な投与間隔を空けずに点眼した場合に、先に点眼した薬剤が洗い流されることによる治療効果減弱の懸念があり、点眼間隔を一定期間空けることが必要とされております。これを考慮すると、点眼間隔を空けずに投与が可能な配合点眼剤である本剤は、患者の利便性の向上に資するものと考えています。
 以上のような検討を行った結果、本剤は他の緑内障治療薬が効果不十分な場合の緑内障、高眼圧症における新たな治療選択肢を提供するものであり、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新医療用配合剤であることから、再審査期間は6年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○杉部会長 ただいまの説明に何か御意見、御質問はございますでしょうか。配合剤ということで作用が強くなるようですが、特にございませんか。それでは、これの議決に入りたいと思います。大森先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしゅうございますか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可といたしまして、薬事分科会に報告させていただきます。それでは議題7に移りたいと思います。機構から説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料7、医薬品エクフィナ錠50mgにつきまして、医薬品医療機器総合機構より説明いたします。紙資料は資料7の審査報告書を御覧ください。タブレットは、資料7のフォルダを開き、★の付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全72ページの通し番号で4ページ、「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況関する資料等」の項を御覧ください。本剤はサフィナミドメシル酸塩を有効成分とするパーキンソン病の治療薬です。本剤はドパミンを分解する酵素であるモノアミンオキシダーゼB型(以下、「MAO-B」と言う)を阻害し、シナプス間隙のドパミン濃度を高めることにより、パーキンソン病における運動症状の日内変動(wearing off)現象の改善をもたらします。
 今般、国内外の臨床試験成績を基に製造販売承認申請されました。なお、本剤は2019年5月現在、欧州及び米国を含む37の国又は地域で承認されています。本品目旨の審査に関して、専門委員として資料21に記載されている委員を指名しました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号の45ページの表34を御覧ください。本剤の開発は本剤の有効性が検証された海外第III相試験の成績を日本人に外挿するブリッジング戦略に基づくものであり、本剤50mg群及び100mg群が設定された海外試験(016試験)をブリッジング対象試験とし、wearing off現象を伴うレボドパ製剤で治療中のパーキンソン病患者を対象とした、国内第II/III相試験がブリッジング試験として実施されました。
 審査報告書の通し番号の46ページの表35を御覧ください。国内第II/III相試験では、ブリッジング対象試験と同様に、主要評価項目は治療期24週時における1日平均on時間のベースラインからの変化量とされました。本剤50mg群及び100mg群で、ともにプラセボ群と比較して有意な延長が認められ、プラセボ群との群間差は本剤50mg群よりも100mg群で大きい傾向を示していました。審査報告書の通し番号の50ページ、表42に示すように、ブリッジング対象試験である海外016試験においても、本剤50mg群及び100mg群のいずれにおいても、プラセボ群との比較においても有意なon時間の延長が示されていたこと等から、ブリッジングは成立しており、審査報告書の通し番号51~52ページの「7.2.4」項に示したもう1つの海外第III相試験(SETTLE試験)の成績も含め、海外試験の有効性の結果を日本人に外挿することが可能であると判断しました。以上より、wearing off現象を有する日本人の進行期パーキンソン病患者において、本剤は有効であると判断しました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号56ページから記載している「7.R.4安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験の比較において、国内臨床試験における有害事象の発現状況は海外臨床試験と大きな違いはなく、次に述べます網膜関連の有害事象以外の有害事象について、既存のMAO-B阻害薬と同様の注意喚起を行うことで対応可能と判断しました。また、毒性試験の所見等から、潜在的なリスクと考えられた網膜関連の有害事象については、添付文書において本剤による網膜での懸念事項を注意喚起するとともに、網膜に関連する疾患又はその既往のある患者では、視力・視野の変化を定期的に観察する必要がある旨を注意喚起することで管理可能なリスクと判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効性分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定成物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○杉部会長 ただいまの説明に、何か御意見、御質問はございますでしょうか。
○堀委員 私からはパーキンソン病を持つ患者の家族の視点から、質問させていただきます。最大の悩みの便秘についてお尋ねいたします。この薬についての副作用ということで、添付資料の3ページから4ページに「その他の副作用」という所がございました。その中の「消化器」という所で、5%未満の方が便秘で、頻度不明の所に「下痢」という項目がありました。介護をする家族からは、様々な薬を飲ませることによって、パーキンソン病の方はすごく便秘になりやすいとお聞きしています。摘便をしたり下剤を飲ませたりという対処を日々行わなければならず、便秘は介護する家族にとってはとても悩みなのです。この点に関して考えると、「便秘」と「下痢」という相反する項目があったことに対し、この薬を飲ませた後、そういう影響というのはあるのでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 パーキンソン病の患者はドパミンアゴニストなどほかの薬剤も使っておりますので、直接この薬剤によるというわけでなくても、便秘であったり、消化器症状が出るところです。この薬剤の臨床試験での消化器症状の有害事象の出方ということに関しては、ほかの同じ作用機序を持っている薬剤と比べて、特に本薬で何か多いというような傾向はないと考えております。
○堀委員 ありがとうございます。皆さんにとってみたら、書かれていないから大丈夫という形で判断されるかと思うのですが、患者の立場からすると、この薬を飲んでもっと便秘がひどくなるのではないかという不安感を持ちながら飲む、又は、飲ませる、そして薬剤師に聞く、又は服用するのをどうしよう、ということが、実際に医療の患者の立場からは感じていることなので、そういうことがないのであるなら、是非副作用というところで、特に便秘というものに関して過大な影響はないということを書いていただくと、すごく有り難いと思いました。以上です。
○杉部会長 機構のほうはいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。少なくとも本剤の臨床試験での発現状況を踏まえますと、因果関係も含めてプラセボとの比較において、便秘を悪化させるという傾向は今のところは認められておりませんが、添付文書において発現状況、発現の割合自体は情報提供させていただきまして、その上で、本剤のリスクについて患者向け資材、医師向け資材の双方を今回は作成する予定ですので、その他の注意も含めて適切な注意喚起を行っていきたいと思います。
○堀委員 ありがとうございます。実際にこの添付文書の副作用の所で、消化器の所に便秘ということと下痢ということが書いてあるというのは、非常に患者はナーバスになっていますので、相反することが書かれていると、「あれっ」と思う患者もいると思います。それで御指摘させていただきました。よろしくお願いいたします。
○長島委員 網膜変性に関する安全性をお尋ねします。欧州の添付文書では当該患者の禁忌とされていますが、日本では注意喚起にしたということで、その評価の違いの理由を教えていただくということが1点です。
 2点目は、単なる注意喚起だけではなくて、網膜変性の有無が不明である場合は眼科での確認というものが必要にならないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、注意喚起の強度という点で、御指摘いただいたように、欧州では禁忌である一方、米国の添付文書では禁忌とせず、比較的本邦でのこの添付文書案に近い注意喚起となっております。
 このリスクの評価としましては、先ほど申し上げたように、毒性試験では齧歯類においてのみ、網膜変性に関する所見が比較的低曝露量で認められており、潜在的にはそのリスクと言えるという状況でした。一方で、国内外の臨床試験で発現した網膜関連の有害事象については、審査報告書の56ページの7.R.4.1項の中段に記載しているとおり、プラセボ群と比較しても、本剤群で多く認められる傾向もないことから、現時点では、あくまで動物で認められた潜在的リスクという評価で、網膜関連の既往がある患者を禁忌とする必要まではないと判断したところです。
 続いて、2点目の御指摘については、添付文書案の2ページ目の9項の1-1で、網膜に関連する疾患又はその既往のある患者は注意が必要であることを記載していて、事前にそういった既往が確認可能な患者においては、定期的な視力、視野に関する症状変化の観察を行っていただくことを注意喚起しております。
 また、御指摘のように自覚症状がない場合に、本剤投与前に必ず診断が必要かというところに関しては、先ほど申し上げたようなリスクの発現状況を踏まえますと、まずは投与中に視力に関する自覚症状等もきちんと注意していただいて、症状があった時点で速やかに医師等に御連絡いただいて、その時点で適切な対応を取っていただくという注意喚起とリスク管理を行っていくのが妥当と考えております。
○長島委員 当該患者が臨床試験では除外されているということもあるので、ここはもうちょっと強く注意喚起を医師及び患者に対して行うと。そういうことがないかをしっかりと確かめてということを強調すべきではないかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど申し上げました、医師向け、患者向け資材において、当該患者が除外されていたということ、また、実際に動物においてどういう所見が認められたか、本剤の投与に際してそういった症状の有無について注意深く聞き取り等をしていただきますように注意するなど、対応させていただきたいと思います。
○杉部会長 それでは議決に入りたいと思います。川上先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題を承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。承認を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。それでは、議題8に移ります。機構から説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題8、資料8、医薬品コララン錠2.5mg、同錠5mg、同錠7.5mgにつきまして、機構より説明いたします。タブレットの資料8のフォルダを開き、★が付いている審査報告書ファイルをお開きください。以降の説明では、審査報告書の下部に青字で記載されている通し番号で御説明いたします。
 本剤の有効成分であるイバブラジン塩酸塩は、細胞膜の過分極により活性化される陽イオンチャネルであるHCNチャネルの遮断薬であり、心臓の洞結節に発現しているHCN4チャネルを阻害し、心ペースメーカー電流を抑制することによって、心拍数を減少させる新規作用機序の薬剤です。
 本剤は海外では2005年に欧州で安定狭心症に係る効能・効果で最初に承認され、慢性心不全に係る効能・効果では2012年に欧州、2015年に米国でそれぞれ承認され、2019年6月時点で、慢性心不全に係る効能・効果で100以上の国又は地域で承認されています。今般、国内外の臨床試験成績等に基づき、慢性心不全に係る効能・効果で医薬品製造販売承認申請がなされました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書の47ページを御覧ください。海外第III相試験として、心不全の標準治療を受けている左室駆出率(LVEF)が低下した慢性心不全患者で、投与開始時に洞調律かつ安静時心拍数が70回/分以上の患者を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。本剤の用法・用量は1回5mg、1日2回から開始し、1回用量2.5~7.5mgの範囲で、安静時心拍数及び忍容性に応じて用量調節することとされました。その結果、主要評価項目である心血管系死又は心不全悪化による入院の複合イベントの発現リスクについて、本剤群とプラセボ群との間に有意差が認められました。
 次に、審査報告書51ページを御覧ください。国内では本剤の有効性を検証できる規模の臨床試験を実施することは困難であったことから、実現可能な規模でプラセボ対照二重盲検無作為化並行群間比較試験を実施し、国内外の第III相試験成績の類似性に基づき、海外第III相試験を利用して、有効性及び安全性を評価する開発計画が採られました。国内第III相試験の対象患者として、欧州で本剤の投与対象とされている心不全の標準治療を受けているLVEFが低下した慢性心不全患者で、投与開始時に洞調律かつ安静時心拍数が75回/分以上の患者を選択しました。
 本剤の用法・用量は、1回2.5mgを1日2回から開始し、1回用量は2.5~7.5mgの範囲で、安静時心拍数及び忍容性に応じて用量調節することとされました。その結果、海外第III相試験と同様の主要評価項目について、本剤群のプラセボ群に対するハザード比の点推定値が1を下回り、事前に規定された本剤を有効と評価する目安を満たしたことや副次評価項目の結果等から、海外第III相試験と同様の傾向が示されたと判断しました。以上より、洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の日本人慢性心不全患者において、国内第III相試験で設定された用法・用量の本剤は有効であると判断しました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の73ページから記載している「7.R.6安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験において、本剤群でプラセボ群と比較して、徐脈、房室ブロック、心房細動、光視症・霧視等の発現が多い傾向が認められました。本剤投与中は、これらの有害事象の発現に十分に注意するとともに、徐脈及び心房細動等については心拍数測定及び心電図検査等の定期的モニタリングを実施するとともに、必要に応じて追加実施するよう添付文書で注意喚起することが適切と判断しました。また、光視症・霧視については添付文書での注意喚起に加え、患者本人及び医療従事者への情報提供資材にて、光視症・霧視の発現状況や具体的な症状、自動車運転等の機械操作に関連する注意喚起等について、情報提供することが適切と判断しております。以上のような注意喚起の必要はあるものの、認められた有効性を考慮すると本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は毒薬、製剤は劇薬とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○杉部会長 ただいまの説明に、何か御質問、御意見はございますでしょうか。赤羽先生は大丈夫でしょうか。
○赤羽委員 結構です。
○杉部会長 よろしいでしょうか。
○森委員 製剤に関する話なのですが、今回、剤形が2.5、5、7.5mgと3つあって、各錠剤は色が分けられていてはっきり識別できるのですが、循環器系の薬剤で、用量設定がかなりデリケートな薬剤が多い中で、通常は剤形も変えられていることが多いかなと思ったのです。今回あえて3つとも同じ剤形になっているというのは、何か理由はございますか。
○医薬品医療機器総合機構 今回、3規格ありまして、全て楕円形の形状を取っておりますが、必ずしも規格間で形を変えなければならないということになっているわけではなく、特段の理由等は機構としても把握していないところではあるのですが、おっしゃったように錠剤の色ですとか、PTPの色などで識別していただけるようにはなっていると考えています。
○森委員 今の話では、特に剤形の規制はないと理解してよろしいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 結構です。
○杉部会長 これは注意して使わないといけないということもあると思います。今のことも含めまして、議決に入りたいと思います。この議題を可としてよろしゅうございましょうか。
 ありがとうございます。それでは、承認を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。それでは、議題9及び報告事項1に移ります。機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 審議事項の議題9と報告事項の議題1について御説明いたします。資料はタブレットの資料9になります。まず、審議事項の議題9、医薬品テリパラチドBS皮下注キット600mg「モチダ」の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について、説明いたします。資料9の別紙3の毒薬・劇薬等の指定審査資料のまとめを適宜御覧ください。
 本剤は、ヒト副甲状腺ホルモンの1から34番目のアミノ酸に相当する遺伝子組換えペプチドであるテリパラチド(遺伝子組換え)[テリパラチド後続1]を有効成分とする製剤であり、フォルテオを先行バイオ医薬品とするバイオ後続品として、持田製薬株式会社により製造販売承認申請がなされました。先行バイオ医薬品のフォルテオは、原体・製剤ともに、毒薬及び劇薬に指定されていないことから、フォルテオと同等/同質である本剤についても、原体・製剤ともに毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないとすることが適当と考えております。また、原料等に、生物由来成分は使用されていないことから、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当と考えております。
 審議事項の議題9、本剤の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定並びに毒薬または劇薬の指定の要否について、御審議のほどよろしくお願いします。
 続きまして、同一品目に係る報告事項の議題1についても、御説明させていただきます。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤とフォルテオの同等性/同質性が確認されたことから、本剤をフォルテオのバイオ後続品として承認して差し支えないと判断しております。説明は以上になります。
○杉部会長 今回は可否と言うよりも、本議題につきまして、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも指定せずに、毒薬及び劇薬にも指定しないというような項目を審議するということです。先生方から、何か御質問、御意見はございますでしょうか。ないようですから、議決に入りたいと思います。本議題につきまして、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも指定せず、毒薬及び劇薬にも指定しないこととしてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、生物由来製品及び特定性物由来製品のいずれにも指定せず、毒薬及び劇薬にも指定しないこととしまして、薬事分科会に報告させていただきます。それから、報告事項1については、御確認いただいたものといたします。 それでは、議題の10から議題12及び報告事項2から報告事項4に移ります。これはいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 審議事項の議題10から議題12と報告事項の議題2から議題4について、こちらはいずれも同一有効成分に対するバイオ後続品であることから、まとめて説明させていただきます。資料はタブレットの資料10、資料11、資料12です。まず、審議事項の議題10から議題12、医薬品ダルベポエチン アルファBS注5μgシリンジ「JCR」他、医薬品ダルベポエチン アルファBS注5μgシリンジ「三和」他、及び医薬品ダルベポエチン アルファBS注射液5μgシリンジ「MYL」他の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について説明いたします。
 資料10、資料11及び資料12の別紙(3)毒薬・劇薬等の指定審査資料のまとめ、別紙(4)生物由来製品又は特定生物由来製品の指定資料のまとめを適宜御覧ください。これら3製品は持続型赤血球造血刺激因子製剤であるダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)[ダルベポエチン アルファ後続1]、[後続2]及び[後続3]を、それぞれ有効成分とする製剤であり、ネスプ注射液を先行バイオ医薬品とするバイオ後続品として、それぞれJCRファーマ株式会社、株式会社三和化学研究所及びマイランEPD合同会社により、製造販売承認申請がなされました。
 先行バイオ医薬品のネスプは、原体・製剤ともに劇薬に指定されていることから、ネスプと同等/同質であるこれらの3製品についても、原体・製剤ともに劇薬とすることが適当と考えております。また、いずれの製品もチャイニーズハムスター由来の細胞を用いて製造されることから、3製品ともに生物由来製品とすることが適当と考えております。審議事項の議題10、議題11及び議題12、3製品の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否並びに毒薬又は劇薬の指定の要否につきまして、御審議のほどよろしくお願いいたします。
 同一品目に係る報告事項の議題2から議題4についても、併せて御説明いたします。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、いずれの製品もネスプとの同等性/同質性が確認されたことから、ネスプのバイオ後続品として承認して差し支えないと判断いたしました。説明は以上となります。
○杉部会長 ただいまの説明に、何か御質問、御意見はございますか。同じものですが、3つの薬剤の申請が出ておりますが、いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。1つずついきます。まず、議題10について、劇薬及び生物由来製品の指定を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。議題11について、劇薬及び生物由来製品の指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。議題12についても、劇薬及び生物由来製品の指定をして可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。これらの3つについて指定を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。また、今の報告事項の議題2から議題4につきましては、御確認いただいたものとします。それでは、議題13に移ります。事務局から概要を説明してください。
○事務局 議題13、資料13、サトラリズマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、御説明いたします。タブレットの資料13のフォルダをタップしていただき、2番目のファイルの事前評価報告書をお開きください。
 1ページですが、申請者は中外製薬株式会社、予定される効能・効果は視神経脊髄炎(以下、「NMO」と略す)及び視神経脊髄炎関連疾患(以下、「NMOSD」と略す)です。3要件のうちの1つ目の対象患者数ですが、NMOは指定難病に指定されており、疫学調査によりこれらの患者数が約4,400人と推定されております。以上より、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。
 続きまして、2ページの医療上の必要性について御説明いたします。本邦ではNMO及びNMOSDの再発予防に対して承認された治療薬はありません。ガイドラインにおいて、ステロイド又は免疫抑制剤が使用されておりますが、比較的少数の結果であり、エビデンスが乏しい旨や長期使用に対する対策が必要である旨が記載されております。以上より、医療上の必要性が高いと考えております。
 最後に開発の可能性ですが、これらの患者を対象とした国際共同第III相試験及び海外の第III相試験が実施されておりますが、いずれの試験においても、主要評価項目とされている「二重盲検期間における初回再発までの期間」において、プラセボ群と比較して、統計学的に有意な延長が認められております。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○杉部会長 先生方から、何か御質問、御意見はございますでしょうか。特になければ、議決に入りたいと思います。大賀先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。本議題を指定を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。本議題について、指定を可として、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、議題14に移りたいと思います。議題14について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 議題14、資料14、KP-100ITを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明いたします。タブレットの資料の14のフォルダの2番目のファイルです。事前評価報告書をお開きください。
 こちらの申請者はグリングルファーマ株式会社で、予定される効能・効果が急性期における脊髄損傷進展抑制及び運動機能改善になります。まず、1ページ目の対象患者数ですが、本邦における脊髄損傷の新規発生患者は、全国調査において年間で、人口100万人当たりで40人と報告がされており、年間で約5,000人と推定されます。以上及び、本剤の投与対象患者が急性期の脊髄損傷患者であることから、患者数は5万人未満という基準を満たしているものと考えております。
 続きまして、2つ目の医療上の必要性について御説明いたします。本邦では急性期の脊髄損傷に対する治療薬として、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムが承認されていますが、易感染性や呼吸器障害などの合併症が認められており、諸外国のガイドラインでも使用を推奨しないことが明記されております。そのため、現在は急性期における治療としてはリハビリテーションなどが中心となっており、急性期において早期に実用可能な別の治療法が求められているところです。以上より、医療上の必要性が高いと考えています。
 最後に、開発の可能性です。本剤は遺伝子組換えの肝細胞増殖因子(HGF)タンパクであり、HGFは運動ニューロンの細胞死を抑制することが報告されております。また、国内の第I相/第II相の試験において、主要評価項目である投与後24週のスコアにおいて、プラセボ群と比較して、本剤群で改善傾向が認められておりまして、今後、検証的試験が予定されているところです。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○杉部会長 先生方から、何か御質問、御意見はございますでしょうか。これは希少疾病用の医薬品として指定することの可否です。よろしいでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。指定を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、報告事項に移ります。報告事項の議題5について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項議題1から議題4については、既に説明させていただいておりますので、議題5の医療用医薬品の再審査結果について、御説明させていただきます。資料番号19-1と資料番号19-2を御覧ください。
 まず、資料番号19-1ですが、有効成分名はガルスルファーゼ(遺伝子組換え)、販売名は「ナグラザイム点滴静注液5mg」です。資料番号19-2ですが、アログリプチン安息香酸塩及びビオグリタフォン塩酸塩になりまして、販売名が「リオベル配合錠LD及び同配合錠HD」です。こちらの品目については、製造販売後の特定使用成績調査及び製造販売後臨床試験に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要がないカテゴリー1と判定させていただいております。以上です。
○杉部会長 今の議題の報告事項に関して、先生方から御質問、御意見はございますでしょうか。特段なければ、報告事項の議題5については御確認いただいたということにしたいと思います。ありがとうございました。本日の議題は以上です。事務局から何か報告はありますか。
○事務局 長時間にわたり御議論いただきましてありがとうございました。次回の部会ですが、10月25日(金)の午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○杉部会長 本日は議題2のところで継続審議とさせていただきましたが、それ以外のところは可とさせていただいたところです。非常に長い熱心な討論を頂きまして、ありがとうございました。また10月25日(金)も、どうぞよろしくお願いします。本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
( 了 )
 
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 荒木(内線2746)