2020年12月11日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和2年12月11日(金)15:00~

出席者

出席委員(16名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人3名
 

欠席委員(5名)

行政機関出席者
 

 山本史(大臣官房審議官)
 吉田易範(医薬品審査管理課長)
 中井清人(医薬安全対策課長)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
 山田雅信(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 田宮憲一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構執行役員) 他
 


 

議事

○医薬品審査管理課長 それでは定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。本日のWeb会議におきます委員の出席状況ですけれども、赤羽委員、大賀委員、武田委員、山田委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、増井委員、森委員は遅れての御出席と認識しております。したがって、本日、現在のところ当部会委員数21名のうち、15名の委員がこのWeb会議に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。

 なお、本日は審議事項議題1に関して、国立大学法人東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野教授の井上彰先生、愛知県がんセンター薬物療法部医長の坂東英明先生、北里大学医学部上部消化管外科学教授の比企直樹先生を参考人としてお呼びしております。どうぞよろしくお願いいたします。

 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。薬事分科会規程第11条におきましては「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており御負担をお掛けしておりますけれども、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

 また、本日のWeb会議に際しましても、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者におきましてはマスクを着用したまま説明させていただいておりますけれども、御了承いただければと思います。それでは杉部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。

○杉部会長 よろしくお願いします。杉でございます。それでは事務局から審議の進行方法の説明をお願いいたします。

○事務局 事務局でございます。本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨の御発言をお願いいたします。その後、部会長から順に発言者を御指名させていただきます。御発言いただく際にはマイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言をお願いします。なお、発言者が多いときには、発言されたい委員がこちらのメッセージ欄のほうに御記入いただくことで、部会長より発言者を順番に指名させていただきます。適宜、メッセージ機能も御活用ください。

○杉部会長 これまでの説明に何か御質問、御意見はありますでしょうか。特にないようですから、本日の審議に入りたいと思います。まず、事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目、競合企業リストについて報告を行ってください。

○事務局 それでは、本日の会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りした資料のうち、資料1~資料5と製剤写真を用いますので、お手元に御用意をお願いします。このほか、資料6として、「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料7として、「専門委員リスト」、資料8として、「競合品目・競合企業リスト」を事前にメールにてお送りしています。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。

 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについてご報告します。資料8を御覧ください。まず1ページ目ですが、「エドルミズ錠50mg」です。本品目は「下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質 非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤がないことから、競合品目はなしとしています。

 続いて2ページ目です。「ルキソリチニブリン酸塩」ですが、本品目は「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病」を予定効能・効果としていて、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に記載の品目を競合品目として選定しております。続いて3ページ目の「cipaglucosidase alfa」ですが、本品目は「糖原病II型に対するミグルスタットとの併用療法」を予定効能・効果としていて、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に記載の品目を競合品目として選定しています。

 続いて4ページ目の「ミグルスタット」ですが、本品目は同じく「糖原病II型に対するcipaglucosidase alfaとの併用療法」を予定効能・効果としていて、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しています。5ページ目の「イブルチニブ」ですが、本品目は「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしています。以上です。

○杉部会長 今の事務局からの説明に、何か先生方から特段の御意見はありますでしょうか。特にないようですから、それでは本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、先生方の了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申出状況について、報告をお願いします。

○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況について、御報告します。議題1の「エドルミズ」ですが、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。議題2の「ルキソリチニブリン酸塩」については、退室委員なし、議決に参加しない委員として大森委員です。議題3の「cipaglucosidase alfa」については、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。議題4の「ミグルスタット」についても、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。最後の議題の「イブルチニブ」についても、退室委員、議決に参加しない委員はともにいらっしゃいません。以上です。

○杉部会長 今の事務局からの説明に、先生方から何か特段の御意見はありますでしょうか。特にないようでしたら、先生方に御確認いただいたものといたします。本日は審議事項5議題となっています。それでは審議事項の議題に移りたいと思います。議題1について、機構から概要の説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 それでは議題1、資料1、医薬品「エドルミズ錠50mg」の製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。本薬は、令和元年8月29日の医薬品第一部会において、国内外の臨床試験で示された本薬のベネフィット・リスク並びに本薬の投与対象について、実施済みの臨床試験成績等を再度整理した上で、本薬の承認の可否等について改めて御審議いただくことが適切であるとされました。

 当該審議結果を踏まえ、機構は、本薬のベネフィット・リスクを改めて精査した上で、本薬の承認の可否並びにその適切な投与対象について再度検討しました。審査報告書の通し番号63ページ以降に、再度検討した結果を審査報告書()としてまとめています。以下、御指摘を踏まえた検討結果について御説明します。

 安全性について、審査報告書の通し番号6470ページを御覧ください。前回審議時に、主に3点の御指摘を頂いています。その御指摘と機構の再検討・対応方針を順に説明いたします。

 1点目の御指摘は、「がん悪液質患者に本薬を経口投与したときの、本薬未変化体の血漿中濃度は個体間変動が大きい。また、本薬は肝代謝型の薬物であり、肝機能障害を有する患者では本薬の曝露量が高くなる可能性がある。健康成人を対象とした海外QT/QTc評価試験では、本薬400mgが投与された7例中1例でQRS幅延長が認められた結果、検討用量を300mgに減量して再開されたことも十分に考慮した上で、慎重に対応を検討する必要がある」という内容でした。

 この御指摘については、がん悪液質患者における本薬未変化体の血漿中濃度の個体間変動及び本薬の薬物動態に影響を及ぼす因子を考慮した上で、がん悪液質患者に対して本薬100mgを1日1回反復経口投与したときの最大曝露量を推定し、臨床試験で認められた安全性と曝露量の関係を踏まえて、安全対策について再度検討しました。

 その結果、中等度以上の肝機能障害を有する患者を禁忌に設定するとともに、軽度の肝機能障害を有する患者については、添付文書の慎重投与の項に設定した上で、中等度のCYP3A4阻害剤を併用投与する場合には、特に注意を要する旨を注意喚起することが適切と判断しました。また、本薬の投与開始前及び投与期間中は、定期的に肝機能検査を行うよう、添付文書の重要な基本的注意の項において注意喚起することが適切と判断しました。

 2点目の御指摘は、「海外で実施された本薬の臨床試験では、約900例のうちSMQ「Torsades de pointes/QT延長」に該当する有害事象が3例認められていること、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)assessment reportでは、海外臨床試験における心電図のモニタリングの頻度等の安全性評価の適切性について指摘がなされていることも踏まえて、本薬の心機能への影響は慎重に検討する必要がある」という内容でした。

 この御指摘については、まず海外臨床試験でSMQ「Torsades de pointes/QT延長」に該当する有害事象が認められた3例は、いずれも本薬との因果関係は否定され、本薬の投与も継続されたことを確認しました。また、国内臨床試験(ONO-7643-04試験及びONO-7643-05試験)は、EMAから指摘がされた海外臨床試験を踏まえて、新たな安全対策を講じた上で実施され、臨床的に大きな問題となる事象は認められていなかったことを確認しました。その上で、海外臨床試験の安全性成績は過少に評価されている可能性もあることから、参考情報として利用しつつ、国内臨床試験を中心に本薬の安全性を評価しました。

 これらの検討も踏まえ、添付文書の注意喚起について再度検討した結果、本薬の心機能に及ぼす影響を踏まえ、重要な基本的注意の項において、本薬の投与に際して定期的に心電図測定等を行い、異常が認められた場合には中止等の適切な処置を行うよう注意喚起することは適切と判断しました。ただし、本薬の刺激伝導系抑制のリスクを管理する上では、製造販売後も国内臨床試験の規定に準じた安全対策を講じることも重要であることから、新たに添付文書の「臨床成績」の項及び医療従事者向け資材等において、国内臨床試験で設定された心機能に関する中止基準、休薬基準及び注意喚起基準と、これらの基準に該当した患者の発現状況も情報提供した上で、本薬の投与前及び投与中は、国内臨床試験における心電図等の測定頻度を参考に、定期的に患者の状態を把握し、異常が認められた場合には本薬の中止等の適切な対応を行うよう、注意喚起を徹底することが必要と判断しました。

 3点目の御指摘は、「本薬を心機能または電解質に影響を及ぼす可能性のある抗悪性腫瘍剤と併用した場合、心不全や不整脈等が顕在化していない患者においても心関連事象の発現リスクが高くなる可能性がある。臨床試験において抗悪性腫瘍剤を併用された被験者における安全性を改めて整理するとともに、製造販売後においても併用薬剤等に関する情報を収集し、必要に応じて添付文書の改訂等を含めて適切に対応する必要がある」という内容でした。

 この御指摘についても、再度検討した結果、国内臨床試験において、心毒性を有する抗悪性腫瘍剤の併用の有無別で、臨床的に問題となるような安全性への影響は認められなかったものの、本薬の併用により心機能への悪影響が増強される可能性が否定できないことから、心毒性を有する抗悪性腫瘍剤を併用注意に設定すること、慎重投与の項において、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の投与歴のある患者を設定することが適切と判断しました。また、抗悪性腫瘍剤の併用の有無にかかわらず、電解質異常を有する患者に本薬を投与した場合には刺激伝導系抑制のリスクが上昇する可能性が否定できないことから、新たに添付文書の慎重投与の項に低マグネシウム血症等の電解質異常のある患者を追加するとともに、重要な基本的注意の項において、本薬投与前及び投与期間中は定期的に電解質検査を実施するよう注意喚起することが適切と判断しました。

 その上で、製造販売後においても、本薬投与期間における、がんに対する治療状況と安全性について情報収集することは適切と判断しました。なお、電解質異常を高発現することが知られているセツキシマブ(遺伝子組換え)及びパニツムマブ(遺伝子組換え)が併用された5例において、電解質異常及び刺激伝導系抑制に関連する有害事象は認められなかったものの、製造販売後においても、電解質異常を発現することが知られている抗悪性腫瘍剤との併用時における刺激伝導系抑制の発現状況を情報収集する必要があると判断しました。

 また、医療従事者向け資材等において、本薬の臨床試験で併用された抗悪性腫瘍剤を情報提供するとともに、本薬の臨床試験で使用経験がない又は少ない抗悪性腫瘍剤を併用する際には、製造販売後に一定の使用経験と安全性情報が得られるまでは、本薬投与中は患者の状態をより慎重に観察するよう周知することが適切であると判断しました。

 続いて、有効性及び臨床的意義について御説明します。審査報告書の通し番号7174ページを御覧ください。まず、国内臨床試験において、除脂肪体重を有効性の評価指標として用いたことについて御説明します。国内外のがん悪液質の診療ガイドラインにおけるがん悪液質の定義及び治療薬に期待される作用に加え、本薬はグレリン様作用を有する薬剤であり、グレリンは食欲亢進、脂肪生成促進等の生体内エネルギー代謝を調節することが報告されていること、国内臨床試験計画時点では、がん悪液質患者における食欲不振に対して十分にバリデートされた調査法が確立されていなかった状況等も踏まえ、「除脂肪体重(LBM)」を主要評価項目、「食欲」に関する項目を副次評価項目の1つとしてそれぞれ設定し、これらの結果に基づき、本薬の有効性を総合的に評価することは受入れ可能と判断しました。

 その上で、臨床試験で認められたLBMの変化の大きさの臨床的意義について御説明します。がん悪液質は通常の栄養サポートでは完全に回復しない持続的な体重減少を特徴とする複合的代謝異常疾患であり、国内臨床試験のプラセボ群では、12週時のLBMはベースラインから減少したことが確認されました。欧州においては、EMAより、海外臨床試験の成績からベネフィット・リスクのバランスを踏まえたNegative Opinionが出され、本薬は承認には至っていません。しかしながら、国内では、がん悪液質を効能・効果とする医薬品がなく、新たな治療法が強く望まれていることを勘案すると、国内臨床試験において認められた本薬投与時のLBM増加量は、著しい改善とは言えないものの、がん悪液質患者におけるLBM減少の進行を本薬が抑制する傾向があると示唆され、かつ食欲の改善傾向も伴っていることから、適切な安全対策等が講じられることを前提とした場合には、現在の国内治療環境において臨床的に一定の意義のある結果であると判断しました。

 以上を踏まえ、本薬の適正使用について御説明します。審査報告書の通し番号7475ページを御覧ください。適正使用を推進するための方策について、申請者は、関連学会とも連携の上、主に次の3点を実施する予定となっています。1点目、がん患者の治療や緩和ケア等に携わる医師や医療関係者等に対し、本薬の適正使用を周知するため、がん悪液質の診断、本薬の臨床的位置付け、本薬の投与対象及び使用上の注意を取りまとめた資料の発出と、各学会のホームページへの掲載。2点目、本剤を投与する際の患者選択及び投与患者における有効性、安全性等を評価するチェックシートの活用。3点目、患者向け資材において、本薬の有効性に関する結果及び不足している情報を記載した上で、患者又はその家族が本薬の有効性を十分に理解した上で本薬を投与開始され、本薬投与中は食欲等の効能判定に関する情報を定期的に医師に伝える必要がある旨の記載。以上の3点です。

 機構は、本薬の適正使用について、本薬はがん悪液質の診断及び治療に十分な知識・経験を有する医師が、本薬の臨床試験で対象とされた患者背景等を含めた臨床試験成績を十分に理解した上で、個々の患者で想定されるベネフィット・リスクを踏まえ、本薬の投与の適否を慎重に判断すること、患者又はその家族に本剤のベネフィット・リスクを十分に説明し、理解したことを確認した上で、投与開始及び投与継続の判断がなされることが必要と考え、添付文書の「警告」の項において、その旨を新たに注意喚起することとしました。

 また、病態が進行し食事の経口摂取が困難又は食事の吸収消化不良となった場合には、本薬の投与を中止すること、体重や問診による食欲の確認等を行い、効果が認められない場合には投与開始3週後を目途に原則終了することや、定期的に投与継続の必要性を検討することを、添付文書の効能・効果に関連する使用上の注意の項及び用法・用量に関連する使用上の注意の項で、新たに注意喚起することとしました。その上で、本薬の適正使用に係る取組として、申請者が予定している適正使用のための方策は妥当であると判断しました。製造販売後は、承認条件として、使用実態下における本薬の有効性及び安全性等に係るデータを迅速に収集し、本薬の適正使用に必要な措置を早期に講じるため、全症例を対象とした製造販売後調査を実施します。

 なお、本薬の投与対象について、前回御審議いただいた際に、臨床試験で検討されていないがん腫や、がん悪液質の病期の患者への投与についても御指摘いただいたことなどを踏まえ、国内臨床試験に準じて効能・効果を「下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質 非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌」と設定し、効能・効果に関連する使用上の注意の項をより具体的に明示することが適切と判断しました。

 専門協議において、以上の機構の判断はいずれも専門委員から支持されました。

 以上の審査を踏まえ、添付文書による注意喚起及び適正使用に関する情報提供が製造販売後に適切に実施され、また、本薬の使用に当たっては、がん悪液質の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、適正使用が遵守されるのであれば、機構は本品目を承認して差し支えないと判断し、本部会で再度御審議いただくことが適切と判断しました。

 本申請は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は毒薬及び製剤は劇薬に該当すると判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 事務局から追加で御紹介させていただきます。本議題については冒頭で御紹介させていただいた、井上参考人、坂東参考人、比企参考人にお越しいただいております。

○杉部会長 ありがとうございます。参考人の先生から本議題について御発言をお願いしたいと思います。まず井上先生から御発言いただけると助かります。井上先生、よろしくお願いいたします。

○井上参考人 私は東北大学病院で臨床をしていて、緩和ケアを専門として、多くの進行がん患者さんを担当しています。がんの進行に伴い、多くの患者さんは悪液質による食欲不振や倦怠感などの症状に悩まれているわけですけれども、現場としては今までのところ、そういう症状に対して根本的な治療は難しいので、対症療法として例えばステロイドといった薬剤を使うわけですが、ステロイドは御存じのとおり、例えば不眠やせん妄といった精神症状を来すこともありますし、あとは易感染性、感染しやすくなったりというような様々なリスクを伴い、バランスが難しい薬と認識しています。

 その点、本剤はグレリン様の作用で、比較的シンプルな作用機序で食欲増進を促すということで、実際に臨床試験もそれを支持するような結果が出ているということで、現場としては非常に期待する次第です。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。続いて前回もお越しいただきました坂東先生から再度御発言をお願い申し上げます。

○坂東参考人 私は消化器のがんの化学療法を専門にしています。私たちは胃がんや膵がんを治療しているのですが、それなりに病勢が制御されていて、かつ食事治療などを行っていても、どんどん体重が減っていき、消耗していく患者さんを経験します。恐らくそういう患者さんこそ、グレリン様の作用を有する薬剤が適切なのかと考えています。実際に患者さんの治療を行っていると、全身状態が弱っていって、そのせいでまだ治療選択肢が残っているのに薬剤が投与できなくなり緩和ケアとなる方も経験しますので、適切なタイミングで、栄養状態、若しくは悪液質を改善させる薬剤を使えるという事は、臨床的に非常に意義があると思います。

 胃がんとか大腸がん、膵がんという臨床試験が行われた対象だけに対象を絞られて、更に禁忌だとか使用上の注意とかの項目も出たわけですけれども、逆に言えば適切な対象にちゃんと安全性の情報を担保した上で、投与ができることかと思いますので、それはそれで十分に受け止めて、是非、臨床の場でこの薬剤を使わせていただきたいと考えています。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは続いて比企先生から御意見を頂けると助かります。

○比企参考人 北里大学上部消化管外科の比企と申します。よろしくお願いいたします。私は胃がんとか食道がんを専門としておりまして、手術療法を専門としていますが、がん専門病院におりました関連上、化学療法などと連携した手術をチーム医療でやっておりました。私もこの薬剤に非常に期待をしていて、先ほどの坂東先生がおっしゃられたように適応さえ間違えなければという点が非常に重要な点かと思います。どういうことかと申しますと、がんの体重減少には2つあって、1つはがん関連性体重減少(Cancer associate weight loss)と言って、いわゆるがんがあることにより、詰まってしまって食べられないとか、若しくは化学療法とかの治療によって食べられないとか、がん自身ではなくて、がんの周囲のことによる体重減少です。次は、がんによる体重減少、がん誘発性体重減少(cancer induced weight loss)と言いますけれども、それはがんがあることで食べても食べても太れないという体重減少です。この辺りで、もし、この薬剤が役立つとすると、どちらかと言うとがん関連性体重減少のとき、そしてがんにより体重減少する場合でも、軽度の場合に非常に使いやすい薬なのかと思いました。筋肉減少を最小限に抑えることができることがLBMで示されているので、二次性のあるサルコペニアの予防として非常に有用な薬かと思います。つまり、lean body muscle mass、LBMですけれども、これも二次性サルコペニアの予防として非常に有効な薬かと思います。ありがとうございます。

○杉部会長 どうもありがとうございました。ただいまの井上先生、坂東先生、比企先生それぞれが、末期のがん患者を診るためにはこの薬が必要だという御意見でした。それでは、委員の先生方から御質問がありましたらお願いしたいと思いますが、まず堀先生、先にお願いしたいと思います。いかがですか。

○堀委員 ありがとうございます。3名の先生方からの貴重な御意見をありがとうございました。先生方の話を伺って私からは、一般市民の立場からの感想を述べさせていただきます。がん患者やその御家族にとっては、がんによる体重減少や食欲不振を抑えてくれるこの薬に対する期待は、かなり強いと思います。闘病生活において生活の質の維持というものは、日々の生活の中でも生きるということについての意欲につながると思っています。ですから、この薬が承認されたならば、その服用を希望する患者さんは非常に多いと思います。でもその半面、この薬ががんを治療する薬ではなく、がん悪液質における体重減少及び食欲不振を改善とする初めてのお薬ですので癌の化学療法ホルモン療法と併用服用しておきる副作用に関しては、さらに患者さんは不安を感じていらっしゃると思います。その際に、やはりとても必要なのが、患者と医師との協働をはかるインフォームドコンセントだと思っています。

 そのインフォームドコンセントに関して、2つ質問させていただきます。まずは先ほど機構からご説明がありましたが、審査報告書の74ページをご覧下さい。1.3の「本薬の適正使用について」という項の3段落以降で、ここにこの薬の適正使用を患者またはその家族に本剤のベネフィットとリスクを十分に説明し、理解した事を確認した上で、投与開始及び投与継続の判断がなされるよう、添付文書の警告の項において新たに注意喚起することが必要である、と医師に対する注意喚起が書かれています。そこで、添付文書の警告の所を確認すると、先ほども機構からお話がありましたけれども、この薬を使う場合には、がん悪液質の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師の下でと記載されていました。私からの1点目の質問は、この「十分な知識」というのは、ここ74ページに書かれている1.3の先ほどお話があったマル1とマル2の部分を医師が周知すれば、それは十分な知識と言えるのでしょうか。教えていただきたいと思います。お願いいたします。以上です。

○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。最後に先生からお示しいただきましたように、その2つの項目というのは非常に重要と考えています。「十分な」に関して、がんの領域においては、本日も先生方にご参加いただいておりますが、内科系各科の先生方、外科系各科の先生方、オンコロジーという腫瘍を専門にする先生方、様々なキャリアと様々な専門科でがんの診療に取り組まれています。先生方のそれぞれの学会であるとか、それぞれの所属施設によって、いろいろなトレーニングを受け、キャリア教育の下に実績を積まれて日常の診療に携わっていらっしゃると考えております。一般的には、我が国のがん診療体制は、他国に比べても非常に充実したものでありますので、それを踏まえて十分な診療実績のある先生方に適切にお使いいただきたいということです。委員の先生方で御追加があればお願いしたいと思います。

○杉部会長 ありがとうございました。専門医の先生、今の説明でよろしゅうございますか。

○比企参考人 比企ですが、よろしいでしょうか。

○杉部会長 お願いします。

○比企参考人 今の説明でかなりいいと思うのですが、例えば分かりやすく説明いたしますと、外科の手術をすると、特に消化管の手術をすると、かなり食物の通る道が通常のうちは食道、胃、十二指腸と通るのですが、そういった通常の通る道とかなり変わってしまうのです。更に変わってしまうだけではなくて、時々その変わってしまった道の通りが悪い所ができたとか、手術によって、人によってかなり消化のプロセスが変わったりします。ですからそういったことをしっかり理解した上で、この薬を使わないと、実際問題、食欲だけどんどん上がっていくというようにグレリンが作用しても、物が通らなかったら仕方ないですので、そういった外科的知識というか、手術をした人の知識ですね、こういったものがしっかりしていないといけないといったことが、我々の世界ではあり得るということだと思います。失礼します。

○堀委員 先生方からの御意見、ありがとうございました。患者もやはりインフォームドコンセントということは、納得をすることが必要なので、私たち患者からも、これからお医者様に対してもいろいろな質問をすべきだと考えております。そこで今のような質問をさせていただきました。2点目の質問なのですが、患者への情報提供の資材について質問させていただきます。同じく通し番号の74ページの先ほど機構から御説明いただきました1.3です。「さらに」という所から始まる文章をご覧下さい。そこで「患者向け資材において、本剤投与中は食欲等の効果判定に関する情報を定期的に患者から医師に伝える必要がある旨を記載する」とありました。この食欲などの効果判定というものが、一般市民、患者又は家族にとって非常に分かりにくいと考えております。ですので、何かこのようなフォーム、共通なフォーマットとか、あと患者が医師に簡単に効果を伝えられるような、そのような資材はお考えでしょうか。お知らせください。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。先生から御指摘いただきました点につきまして、例として、患者向け資材において次のような形で記載させていただいております。食欲不振につきましては、「無理はせずに好きな物が食べられそうでしょうか」や、「口腔ケアをしっかり行って食欲の妨げになるような口内炎なども治療した上で、栄養士の方と御相談した上で、食事の仕方やタイミングについて御相談してください」と記載しています。このような内容を記載した上で、主治医に伝える点については、「多くの患者さんで服用開始から3週間で体重増加が認められているものの、3週間以上服薬を続けても、体重増加や食欲改善に関する実感がない場合には、主治医に御相談いただいて、その後も定期的にこの薬の投与を続けるのか判断をしましょう」という旨の記載をしております。

○堀委員 ありがとうございます。そうするとチェック項目のようなものがあるということなのですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○堀委員 では、患者はその項目をチェックをして、定期的に投与継続の必要性の検討の目安にしたり、または投与以後は3週間ということが効果の可否の一つの目安になっていると思うのですが、その3週間に何回かそれを医師に確認をしていただいて、継続するかしないかというようなことを把握するというように考えてよろしいでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そのような対応を考えております。

○堀委員 分かりました。ありがとうございます。効果というものが、どのように判定したらよいのか、非常に悩むところだと思いましたので、理解できました。以上です。ありがとうございました。

○杉部会長 それでは前回からの質問を頂いております柴田先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○柴田委員 ではコメントと幾つか質問をさせていただきたいと思います。前回の部会のときにかなりたくさん指摘をさせていただきましたが、基本的に本薬剤がプラセボではないこと、一定の薬効が存在することというのは、審査報告書を拝見して納得いただけるように整理していただけていると認識しております。つまり前回は承認することに対する疑問を呈しましたが、その疑問は基本的には解消されたという認識でおります。また、安全性に関する話についても丁寧に検討されて、私が拝見した範囲では納得のいく対応がほとんどされているように感じております。

 一方で、はっきり検討しておきたいところがございますので質問させてください。まず、審査報告書の72ページ、72/78と書いてある所ですが、ここに試験で示された有効性の臨床的意義についてというセクションがございます。そこではプラセボと実薬の治療効果の差、ここではLBMの変化量の群間差が1.56kgであると書いてございます。この大きさが臨床的に意味がある大きさであるのか、というところについては少し議論が曖昧にされていると思います。具体的には次の73ページ中頃に、欧州のEMAのNegative Opinionに関する件が記載されています。審査報告書の中ではベネフィット・リスクのバランスを踏まえたNegative Opinionが出されているというように書いてありますが、もう少し単刀直入に申し上げますと、インターネットで公開されているEMAの報告書を拝見すると、海外の臨床試験においては、1.5kgぐらいのプラセボ群と実薬群の差は、治療効果が小さく、またその臨床的な適切さもはっきりしないと、そのように書いてあります。そのために副作用などとのバランスを鑑みて、リスク・ベネフィットバランスが悪いという結論に至っているというところです。つまり欧州においては、この1.5kgぐらいの増加が、臨床的に意義のある差だとみなされていないと解釈し得る状況にあります。繰り返しになりますが、冒頭に申し上げましたように、本剤がプラセボではなく薬効が存在することまでは示されていると思います。ただし、その効果はやはりマージナルなものであるというように認識していますが、この点について機構の方の御意見をお伺いしたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 機構より説明いたします。先生から御指摘いただきましたLBMの増加量1.5kgの臨床的意義につきましては、審査報告書の通し番号73ページに記載しております。御指摘いただきましたように、国内臨床試験におけるLBMの増加量は、海外のLBMの増加量と同程度ですが、国内臨床試験と海外臨床試験のベースラインのLBMの違いも踏まえると、国内臨床試験では少し高めにベースラインからの変化量が認められています。また臨床試験において、プラセボ群ではベースラインから減少したのに対し、国内臨床試験では本薬投与によってLBMが増加していたこと、また国内では新たな治療法が強く望まれていること、これらを勘案しまして、今回の臨床試験で認められた有効性は一定の意義があると判断したところでございます。

○柴田委員 ありがとうございます。追加ですけれども、今の御説明自体は基本的には余り納得のいくものではないのですが、本日は御専門の先生方がいらしていますので、少し御見解をお伺いしたいと思います。もう一度審査報告書に戻りまして、73ページの一番下の行ですが、「体重を維持できるだけでも十分に意義がある」という専門協議での議論が記録されています。これを踏まえますと、欧州における治療目標と日本における治療目標は違うということなのか、あるいは欧州においてもこのように考える先生方が大半ではあるけれども、人によってこの1.5kgぐらいの体重増加を大きいと考える人と、大きいと考えない人がいるという、人によって解釈が異なるぐらいのマージナルな差だと解釈すべきなのか、いずれと認識するのがよいのかについて、御専門の先生方からお伺いしたいと思います。少し言い方が悪かったので整理しますと、体重を維持できるだけでも十分に意義があるというのは1つの治療目標だと思いますが、欧州においても同様であるのか否か、欧州と日本が違うので、欧州と日本で判断が違うことが妥当なのか。欧州においては治療目標が違うので、日本においてはこの差が意義があると考えられていらっしゃるのか。そこのところについて御意見いただければと思います。

○杉部会長 ありがとうございました。今、専門の先生から御意見を伺う前に、機構から追加がございますので、よろしくお願いします。

○新薬審査第一部長 先ほど機構の担当者から御説明させていただいたところなのですが、ヨーロッパの承認申請で用いられた海外試験と日本で実施された試験では、いずれもLBM増加量は1.5kgとおおむね類似しているのですけれども、審査報告書にも一部データを記載しておりますように、日本人と海外の人のもともとの体格差がかなりありまして、プラセボ群との比較ではいずれもおおむね1.5kgということですけれども、体格の小さな日本人にとっては海外の人よりも意味がある数字であろうというのが、先ほどの機構の担当者が説明したかったことになります。補足は以上です。

○柴田委員 ありがとうございます。少し見通しがよくなりました。

○杉部会長 それでは専門医の先生、今の柴田先生の御質問なのですが、末期の治療をしていて、その治療目標をどこに置いていらっしゃるかというので、もし先生方でお答えできればお願いしたいと思いますが、先生、どなたかいかがでしょうか。井上先生、いかがでしょうか。

○井上参考人 承知しました。私見ですが、まず最初に今、機構の新薬審査第一部長がおっしゃったように、私自身も、そもそもの体格差で日本人は比較的やはり小柄な方が多いので、その中でこの1.5kgという差は意味があるのではないかと感じていることと、緩和ケア医として現場で対応している立場としては、臨床試験として体重を評価項目とすることは異論ないのですが、私が現場で食欲のない患者さんに対応するときは、食べていても痩せてしまうということで悩まれている方も非常に多いので、そういうときには体重はそんなに気にしなくていいから、まず好きな物を食べられてよかったですねという感じで対応していますので、副次的項目にあります患者さんが感じる食欲も実際に増しているということは、十分臨床的な意味を持つと感じておりました。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。坂東先生、いかがでしょう。

○坂東参考人 似たような意見になってしまうのですけれども、恐らく除脂肪体重の絶対値は、体格が例えば50kgの日本人の方であれば、30kg台だと思います。その中の1.5kgというのは、それなりに大きな差だと私は理解しています。機構の御意見と同じなのですが、それと併せてプラセボ群の体重が減少しているとありますし、この試験の対象となる患者さんは恐らく抗がん剤治療をやっており、そして恐らく病勢進行もある中で、例えば胃がんや膵がんならそれらの影響で確実に体重が減っているものと思われます。そのような従来の様々な治療法に反応しない対象に対して、本薬剤を投与することで体重を維持して、場合によっては体重を底上げできたということは、臨床的にはかなり意義は大きいと理解しております。

○杉部会長 今、3人の専門医の先生に御意見を伺いまして、比企先生、最初に御意見を伺ったのですけれども、今の柴田先生の御指摘で、体重増加が本当にこれでいいのかということだったのですが。

○比企参考人 最初に伺っていました。

○杉部会長 そうでしたね。比企先のお考えはわかりましたが、追加は何かございますか。

○比企参考人 特に追加はございませんけれども、確かに柴田先生がおっしゃるように、それが有意差をもって何の臨床の効果に、エンドポイントにつながってくるかというのは、非常に難しいことかと思うのですけれども、ただ、筋肉量が10%程度とか維持された場合には、手術をした場合とかに合併症が減るとか、あとは化学療法の継続が非常にいいとか、そういったレトロスペクティブなデータはかなりあるものですから、プロスペクティブなデータはこの薬をもって、きっと将来また証明されていくのではないかと思います。これまではそれだけの筋肉量を確保できるような薬というのはなかなかなかったものですから、レトロスペクティブのデータでしかない。まだものは言えませんけれども、その筋肉の維持10%というのは、臨床的な感覚からするとかなり大きなものではないかと私は考えます。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは、ほかの先生方から何か御質問ございますでしょうか。特にございませんでしょうか。

○平石委員 平石でございます。では質問をさせていただきます。4種類のいわゆる固形がんの悪液質に対する治療薬ということでございます。こういった固形がんの非手術例には化学療法が行われて、乏しくPD(Progressed Disease)になった場合には、ベストサポーティブケアから緩和医療に入っていくわけでございます。そういった場合に、緩和医療領域では麻薬を使用する頻度が非常に高いわけでございます。本薬の代謝について、審査報告書65ページの表1に、CYP3A4の阻害薬によって本薬の未代謝体あるいは未変化体の血中濃度が増加することが示されています。麻薬の中にはチトクロムP450で代謝される薬もあろうかと思います。例えばフェンタニルは同じCYP3A4で代謝されると言われておりますので、そうしますと競合的な代謝が起こるわけで、麻薬の血中濃度の上昇が起こるケースも想定されます。そうした場合に麻薬の副作用が増強する可能性も想定されると思いますので、この点につき御質問させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構より御説明いたします。御指摘いただきましたCYP3A4の代謝関連につきましては、本剤はCYP3A4により代謝されること、CYP3A4を阻害すること、CYP3A4を誘導することがin vitro試験からわかっております。本剤のCYP3A4による代謝を介した注意喚起につきましては、先ほど御説明したとおり、CYP3A4阻害剤を併用する場合の注意喚起が必要と判断しております。一方で本剤のCYP3A4阻害作用または誘導作用を介した相互作用につきましては、臨床薬理試験に基づく検討の結果、現時点で併用薬に関する注意喚起をする必要はないと考えております。したがって、添付文書におきまして、CYP3A4阻害剤の併用のみ、注意喚起をさせていただいているところです。以上の説明でよろしいでしょうか。

○平石委員 そうしますと、麻薬の副作用に対する増強効果ということについては、大きな心配は必要なかろうという理解でよろしいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。臨床試験で確認した範囲では、併用に関して、現時点では特に添付文書で注意喚起をするものではないと考えております。ただし、製造販売後調査において、本薬と併用する薬剤と安全性について確認した上で、それを踏まえて新たに注意喚起する必要がないか検討する体制を構築しております。今後得られる情報も踏まえて、適宜、注意喚起については、必要に応じて見直すことが出てくるかと思います。

○平石委員 今後も追加の情報提供をどうか積極的にお願いしたいと思います。以上です。どうもありがとうございました。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは宮川先生、いかがでしょうか。

○宮川委員 ありがとうございます。宮川でございます。3人の先生から非常に切実な問題であるということも含めて御説明いただきまして、ありがとうございます。聞こえますでしょうか。

○杉部会長 大丈夫です。

○宮川委員 機構のほうに、まず1つお聞きしたいのは、この審査報告書の43/78の国内第III相試験の記載の中に「国内第III相試験の結果については、速やかに機構に報告する」とされているところ、並びに海外の第III相試験の57/78ですが、「臨床成績が得られた段階で速やかに公表する」と記載されております。すでに1年半近くたっているので、それに対しての報告がどのようになっていたのかということに対して、審査報告書の()についての機構の説明が、十分に反映されていません。そういう意味での臨床情報というのが非常に少ないと思ったのですが、それはいかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。御指摘いただきました国内臨床試験と海外臨床試験につきましては、現在実施中でございます。そのため、安全性情報はまだ得られていないため、審査報告書()では、当該試験における安全性情報は含めておりません。ただし、今回、継続審議の審査の中で、有害事象の発現傾向として、新たに注意喚起をする必要があるような事象は認められていないかという観点で治験副作用等報告も確認しましたところ、現時点では、これまで得られている試験結果に加えて特に安全性上懸念となるような事象は認められていないことは確認いたしました。

○宮川委員 ありがとうございます。もう1年半近くかかっても中間報告というのは出ていない、そのような試験と認識してよろしいですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりでございます。

○宮川委員 もうすこし迅速にと、願うところです。それから、添付文書の「用法・用量に関連する使用上の注意」というところです。体重増加又は食欲改善が認められない場合に3週間後に判断ということになるわけですけれども、ここに除脂肪体重の増加という項目は入らないのかどうかお聞きしたいと思います。客観的な指標なので、先ほど専門医の先生からのお話にあったように、食欲が出るだけでも大丈夫というような判断で、本当にそれでよいのか、非常に大事なことだと思います。このような件を判断する場合においては、少しでも客観的な項目を入れる必要があるのかどうかお聞きしたいと思います。それに対していかがでしょうか。

○新薬審査第一部長 御質問いただいた効果の判定についてですが、臨床試験では精度の高い除脂肪体重というものが用いられておりましたけれども、通常の診療では除脂肪体重を測ることは余り行われないので、体重と食欲の状況を直接聞いた上で、投与の継続や中止を評価していっていただくということを考えております。

○宮川委員 分かりました。そうなりますと、04試験及び05試験では、そのQOL調査票のところを見て、実際にその改善の傾向は十分にバリデートされた評価ではないという表現があります。これですと矛盾する形になってしまいます。そのところの評価について、お聞きしたわけです。いろいろなスコアがあり、実際にそのような副次項目のところで、食欲が増えたなどというようなところで評価をされています。QOLの調査票の中の食欲関連項目は、本剤のプラセボに対する改善傾向は十分にはバリデートされた評価ではないという形になると、何をもって客観的な評価をするのかと懸念しております。先ほど専門医の方が、食欲があるだけでも非常に大事だとお話がありました。私もそのことは大切だと思います。しかしながら、客観的な指標がないということはやはり問題です。先ほど除脂肪体重の評価の問題もあります。私もSGLT2などをはじめとする生活習慣病についてのさまざまな調査をしており、体脂肪計なども使用しております。大変重要な指標の一つです。承認されていく場合においても追加でも考量していく必要性があると思うのですが、機構に見解をお聞きしたいと思いました。

○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えさせていただきます。宮川先生、ありがとうございます。ここでいうバリデートというのは薬効評価、薬の有効性あるいは場合によっては安全性の評価という指標に関してですが、判定するための材料として使うには、これまでのデータが十分でなく、乏しいと、そういう意味でございます。ですので、もう少し具体的には、例えば既存の承認品目があって、既に食欲を評価するようなことがある程度確かめられているような尺度があれば、それは用いることができますが、この領域におきましては既存の薬剤がないということ、それから食欲という評価項目が多少とも主観的、あるいは場合によっては客観と主観が入り混じったような数字であることを踏まえますと、承認審査等で用いるような指標が十分にはなかったと、そういうことを意味します。実際に、今後どうするかということに関して言えば、先ほど比企先生からも御意見を頂いておりますけれども、今後、臨床現場の先生方が様々な形で、指標を用いて、実際の有効性として、それは体重や食欲を評価されていくということに関して評価を行っていくことが期待されるという点は、先生がおっしゃられたとおりと考えております。以上です。

○宮川委員 専門医の先生が非常に重要な薬であるということで、私自身も了解しております。重要な薬で、これが悪液質の方々にも福音であればそういうことも含めて理解しております。今後、この薬がどのような位置付けになるかということに関しては、しっかりとした指標を用いた再評価をしなければいけないと考えます。全例対象に、今後さらなる検討していかないと、この薬が本当に有益かどうか分からないと思います。そういうことはしっかりと見ていくべきだろうと思います。可能な限り、体重増加や食欲亢進だけの評価ではなく、除脂肪体重の評価をできる施設があれば情報を与えて、今後の適切な運用に生かすべく、更なる情報を収集していただければと考えております。追加させていただきました。以上です。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。食欲や、その他がん悪液質に関連する症状等の情報の収集につきまして、全例調査の中で調査項目として確認できるように対応させていただいております。今後得られてくる全例調査の結果等も踏まえて、御指摘いただいた点も踏まえて、医療現場のほうにフィードバックできるように対応するようにいたします。

○宮川委員 それから、心機能に対する影響というのは非常に懸念されるところです。添付文書などに適切に反映されていない部分を懸念しています。この辺のことだけを教えていただければと思います。

○杉部会長 心機能に対する影響でございますか。

○宮川委員 そうです。心機能に対する除外基準などを明記することが必要なのかどうかです。その辺のところが不明確でしたので、発言させていただきました。

○杉部会長 機構はいかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。心機能に関する除外基準に関してですが、前回部会でいろいろと御意見をいただきまして、機構でも再検討しております。具体的に禁忌の項目なのですが、禁忌の()うっ血性心不全に、前回は「重篤な」という文言を付けていたのですが、今回は、重篤性にかかわらず、うっ血性心不全の患者さん全員に禁忌となるように変更しております。また、()で、心筋梗塞又は狭心症のある患者となっていますが、こちらも再検討しまして、治験での設定基準で、こちらも除外基準に設定されていましたので、()も新たに設定しております。また、()の中等度以上の肝機能障害のある患者に関しては、曝露量の観点からの設定ではあるのですが、こちらも心機能への影響を懸念した上で、曝露も考慮して、新たにこの禁忌を設定しております。ですので、こちらは再検討しまして、幾つかの禁忌を追加している状況でございます。

○宮川委員 その辺のところは、慎重に注意喚起していかないと、問題が起こってくるのではないかと思います。配慮していただければ幸いです。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは岡先生、よろしいでしょうか。

○岡委員 1つ、御質問します。体重が増えるのは分かったのですけれども、あちこちに「筋肉が増える」と書かれています。食欲が増えて体重が増えるという以外に、筋肉に特異的な何か作用機序があるということなのでしょうか。それを教えていただきたいと思います。

○新薬審査第一部長 筋肉に特異的というよりも、食欲が増えること等によって、筋肉量が増えてくるとものと理解しております。LBMを臨床試験で有効性に関する指標としたのは、浮腫等による体重増加の影響を排除して、真の薬効を見るためにLBMを指標としているということでございます。

○岡委員 そうすると筋肉に特異的な効果があるということではなくて、筋肉を増やすのでしたら、タンパク質を摂って、負荷をかけて少し運動しないとできないと思うのですが、そういうことではないということですね。

○医薬品医療機器総合機構 機構から追加でお答えさせていただきます。先生、ありがとうございます。先生の御質問は薬理学的なことも踏まえてということかと理解していますが、その観点では、日本は、グレリンやグレリン様化合物に関しての極めて豊富なアカデミアの先生方、基礎系の先生方のデータが蓄積されている国でありまして、実験室レベルでは、例えば筋肉のもとになる筋芽細胞に対する直接的作用があるとか、あるいは先ほども新薬審査第一部長から出ましたが、ほかの代謝を介して筋肉に対する薬理作用というのも知られております。ただ、これらは実験室レベルですので、これらがすぐに何らかの臨床的データとして結びつくようなものではないということは申し添えさせていただきます。

○岡委員 ありがとうございます。私もグレリンを調べておりましたので分かるのですが、その添付文書の作用機序のところに書き込むほどのことではないということでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりでございます。

○岡委員 ありがとうございます。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは森先生、何か御意見ございますか。

○森委員 1点、発言してよろしいでしょうか。先ほどからお話のとおりに、現在、国内第III相試験(ONO-7643-06)が進行中です。情報によりますと、2021年6月30日に終了予定となっておりますが、この現在進行中の第III相試験の結果を待たず、今回この審査をしている背景には、この新規薬剤の臨床的な緊急性が高いという御判断があるのかと考えますが、本日御参加の御専門の先生方から、臨床的な緊急性の状況について、御意見を伺ってよろしいでしょうか。

○杉部会長 分かりました。今日御参加の3人の先生、もしできればお答えをお願いしたいと思います。まず、井上先生いかがでしょうか。

○井上参考人 どのような基準で緊急性を考えればいいのか、ちょっと悩ましいのですけど、ただ、このお薬は相当前から開発されているということは、現場の我々は十分認識しておりまして、先ほど申しましたように、そもそも悪液質に対する薬がこれまで何もなかったという状態であるということから、やはりそういう薬があるのでしたら、いち早く使いたいというのは、現場の声としてあります。

○杉部会長 ありがとうございます。坂東先生、いかがでしょう。

○坂東参考人 私も緊急性と言われると、ニュアンス的に少し迷ってしまうわけなのですが、ただ、その医療現場に全く選択肢がない悪液質という治療対象があり、そこに対して、既に開発されていて使うべき薬剤があるのであれば、やはり臨床の場に出てきていただきたいというのが率直な意見です。

○杉部会長 ありがとうございます。比企先生、いかがでしょうか。

○比企参考人 やはり後期高齢者がどんどん増えてまいりまして、さらに、がん患者が増えている現状において、高齢者はやはりサルコペニア、つまりプライマリーなサルコペニアは筋肉がどんどん減っていくという状況があって、それに加えてがんによる悪液質でやはり筋肉が減っていくと、それで臨床成績がどんどん悪くなっていくという状況において、これを改善できるということが示された薬が出ることは、緊急性という言葉が正しいのか分かりませんけれども、現代において非常に求められている薬であるということを申し添えたいと思います。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。森先生、今の御専門の先生方からの御意見、いかがでしょう。

○森委員 御意見をよくお伺いしました。現在進行中のONO-7643-06試験の結果が出た場合でも、この新薬を臨床上の使用のその実際について、追加の有用な情報は得られないと予想、つまり安全性や有効性に関するより適した患者さんにうまく使っていくという追加の情報が得られない、そういった予測をされているから、今現在のこの審議のタイミングと理解していいでしょうか。

○新薬審査第一部長 前回の部会からいろいろ申請者とのやり取りがあって、審査に時間がかかっているところではございますが、前回の部会のときには、今あるものをまとめた上で、再度、部会で審議をいただくという形で審議を継続するというご指摘をいただきましたので、今回の部会で審議いただいているということです。国内の臨床試験については現在実施中ですが、○○○○○○○○○○○○○○○○○○と聞いております。

○杉部会長 森先生、これでよろしいですか。

○森委員 現在進行中のONO-7643-06試験は、いつ頃成績がまとまる見込みと言われていますか。もし分かっていたら、教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。前回、審議いただいた際に御説明した試験予定期間は2021年6月まででしたが、その後、新型コロナウイルス感染症の現状も踏まえまして、多少臨床試験の○○○○○○○○○○○○○○ところでございます。そのため、現時点では、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○状況です。

○杉部会長 ありがとうございました。森先生、そういう事情だそうです。

○森委員 新型コロナウイルス感染症の影響があるということは今よく分かりました。事情をよく承知しました、了解です。

○杉部会長 ありがとうございます。それでは柴田先生、もう少し御質問ございますか。

○柴田委員 審査報告書75ページの「本薬の投与対象について」のところで、確認させてください。国内臨床試験ではPSが2以下の患者さんが予後の観点を加味して登録されていたのですが、「いずれの試験においても、投薬中にPSが3以上に至った患者が認められた。よって、PS又は生命予後により、一律に本薬投与を制限することは適切ではないと考える」と書いてあるのですが、念のために確認ですが、PS3以上に至った患者さんにおいても安全に投与が継続できたということをもって、PS3の患者さんを投与対象にしても大丈夫だと判断されたということでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。今、御指摘いただきました臨床試験12週間の投与期間中にPSが3又は4に至った患者さんにつきましては、投与12週後まできちんと投与されていることは確認されておりまして、この患者さんで特に懸念されるような有害事象が認められているというような安全性に問題となる傾向はないことは確認いたしました。

○柴田委員 分かりました。今のこの書き方では、ちょっと確認されたのかされていないのか分からなかったので、お伺いしました。以上です。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。

○杉部会長 そのほかの先生方、いかがですか。何かございますか。

○宮川委員 日本医師会の宮川ですけれど、よろしいでしょうか。

○杉部会長 はい、どうぞ。

○宮川委員 森先生の御発言というのは非常に重要なことだろうと考えております。このように継続審議が1年以上になってしまったことは、現在においても情報というのがまだ足りないということを示しており、非常に問題なのかと思います。患者さんの福音のためということはあれ、審議が十分になされないまま通り過ぎてしまうことの懸念があります。

 それから、この分科会の存続意義を考えなければなりません。患者の福音のことだけ考えるのではなく、新型コロナウイルス感染症によって臨床研究が遅れてしまうことなどには配慮しなければなりませんが、分科会における十分な審議ということが前提であるということが基本でありましょう。この分科会の学術的意義は十分に御理解いただきたいと思います。以上です。

○杉部会長 宮川先生、御懸念ありがとうございます。私も、この何年間か薬事分科会に出させていただきまして、かなりそこでも議論が行われることがございます。ですから、先生の御懸念は、その分科会のほうで、もうこういうことで大丈夫というように理解されれば、それはいいと思いますというふうに私は理解しております。杉からお答えしました。

○宮川委員 はい。ありがとうございます。本当に大事なところなので、やはり感情的なところだけでなく、しっかりとこの部会では議論していくのが重要なことだろうと考えてございます。以上でございます。

○杉部会長 先生、どうもいろいろ御意見をありがとうございました。そのほかの先生はいかがでしょうか。特になければ、今、宮川先生もちょっとおっしゃいましたけれど、ここで議決を取ろうかと思いますが、特に御意見がなければ、議決に入りたいと思います。今日御参加いただきました3人の御専門の先生方、井上先生、坂東先生、比企先生、お三人とも、やはりがん患者の末期の場合にはもうこういう薬が早く使えるようになるといいというような御意見をいただきまして、臨床医としてはそうだろうなという感じがいたしました。これは私の私見でございます。それでは、いろいろな面からの先生方のお考えを入れて、議決に入りたいと思います。

 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですから、承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。宮川先生の御懸念、よく分かりまして、そこでの審議にかかると思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、続きまして議題2に移りたいと思いますが、よろしいですか。

○医薬品審査管理課長 今のところを明確に。

○杉部会長 はい、どうぞ、もう一回。

○医薬品審査管理課長 審査管理課長の吉田でございます。分科会での扱いでございますが、十分に分科会での御確認といいますか、御議論をいただきたいとは思っておりますが、分科会の規程上の扱いからいたしますと、分科会で御審議いただく品目というのは、これまでの例から申し上げますと、本当にその承認を行わないというか、そういったような大きなものぐらいとなっております。今回のものについて、本日の御議論をお聞きしている限りにおきましては、臨床的な意義というのは十分あるということで、この部会としましては、十分に承認して差し支えないという御結論だったというように認識しております。したがいまして、分科会の規程上は、扱い上は報告という形にさせていただきたいとは思っております。ただ、部会長から御説明いただきましたとおり、分科会で十分に御確認いただく、御議論いただくことについては、我々も十分説明させていただきますし、先生方から十分御意見いただき、御確認させていただき、そういったような扱いにさせていただければと思っておりますので、補足させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

○杉部会長 どうもありがとうございます。私の言葉足らずのところもありました。それでは議決については、承認いただいたということにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは議題の2に移りたいと思います。では議題2について、事務局から概要の説明をお願いいたします。

○事務局 議題2、資料2、ルキソリチニブリン酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書1ページの中段を御覧ください。申請者は、ノバルティスファーマ株式会社、予定される効能・効果は「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病」です。以下、移植片対宿主病はGVHDと略します。

 まず、1ページの対象者数について、日本造血細胞移植データセンターにおける全国調査及び文献報告より、本邦におけるGVHDの総患者数は約5,900人と推計されることから、推定基準を満たしているものと考えております。

 次に、医療上の必要性について、GVHDは、同種造血幹細胞移植で認められる合併症であり、造血幹細胞移植関連死の主要な一因です。現在、急性GVHDに対する一次治療にはステロイドが用いられていますが、治療効果は限定的であり、二次治療で使用できる薬剤も限られています。また、慢性GVHDに対しても、一次治療としてステロイドが用いられていますが、治療効果は限定的であり、かつ、二次治療は確立していないことから、新たな治療薬の開発が望まれています。急性GVHD患者及び慢性GVHD患者を対象とした国際共同第III相試験において、既存治療群と比較して本剤群で奏効率が高かったことから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性についてです。造血幹細胞移植後の急性GVHD及び慢性GVHD患者を対象とした国際共同試験成績に基づいて、承認申請を行う予定であることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございました。今の説明に関して、先生方から何か御質問はございますでしょうか。特になければ、それではこの薬品を希少疾病用の医薬品として指定することの議決に入りたいと思いますが、よろしゅうございますか。大森先生、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。特に御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、議題3と議題4を続けてお願いいたします。

○事務局 議題3、資料3、cipaglucosidase alfa、及び議題4、資料4、ミグルスタットを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、これらは併用して使用される薬剤であることから、あわせて御説明いたします。資料3の希少疾病医薬品該当性事前評価報告書のファイルをお開きください。

 報告書1ページ中段を御覧ください。申請者は、アミカス・セラピューティクス株式会社、予定される効能・効果は、cipaglucosidase alfaについては「糖原病II型に対するミグルスタットとの併用療法」です。なお、ミグルスタットは「糖原病II型に対するcipaglucosidase alfaとの併用療法」です。まず、対象者数について、糖原病II型は指定難病である「ライソゾーム病」又は「筋型糖原病」に含まれる疾患であり、小児慢性特定疾病の特定医療費受給者証所持者数の調査によると、多く見積もっても患者数は4,300人と推計されていることから、指定基準を満たしているものと考えております。

 次に2ページ、医療上の必要性について御説明いたします。本邦において糖原病II型に対する治療薬としてアルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)が承認されていますが、アルグルコシダーゼアルファ投与患者においても、大部分が人工呼吸器による換気補助を要するまで病態進行が継続することが報告されており、新たな治療薬が望まれています。cipaglucosidase alfaは、酵素の細胞内への取込み等を改善した薬剤であり、ミグルスタットはcipaglucosidase alfaの活性部位に直接結合し、cipaglucosidase alfaの安定性を高める薬剤です。アルグルコシダーゼアルファによる治療がなされていた遅発型糖原病II型患者を対象とした海外第I/II相試験において、cipaglucosidase alfaとミグルスタットのとの併用により運動機能の改善が認められていることから、これら2剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に3ページ、開発の可能性について御説明いたします。cipaglucosidase alfaとミグルスタットとの併用投与について、遅発型糖原病II型患者を対象として、アルグルコシダーゼアルファに対する優越性を検討することを目的とした国際共同第III相試験が実施中であること、及び乳児型糖原病II型患者を対象として有効性及び安全性等の評価を行う国際共同第III相試験の開始が予定されていることから、cipaglucosidase alfa及びミグルスタットの開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございました。ただいまの説明に、先生方から何か御質問はございますでしょうか。大丈夫でしょうか。それでは、この案件につきまして議決に入りたいと思います。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、指定を可といたしまして、薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、議題5に移ります。これについても、事務局からの説明をお願いいたします。

○事務局 議題5、資料5、イブルチニブを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」のファイルをお開きください。

 報告書1ページ中段を御覧ください。申請者は、ヤンセンファーマ株式会社、予定される効能・効果は「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病」です。以下、移植片対宿主病はGVHDと略します。まず、1ページの対象者数について、日本造血細胞移植データセンターにおける全国調査及び文献報告より、本邦における慢性GVHDの総患者数は約6,300人と推計されることから、指定基準を満たしているものと考えております。

 次に、医療上の必要性について、GVHDは、同種造血幹細胞移植で認められる合併症であり、重症患者における生存期間中央値は30か月と予後不良な疾患です。現在、慢性GVHDに対して、一次治療としてステロイドが用いられていますが、治療効果は限定的であり、かつ、二次治療は確立していないことから、新たな治療薬の開発が望まれています。また、慢性GVHD患者を対象とした海外第Ⅰb/II相試験の第Ⅱ相パートにおいて、全奏効率が66.7%であったこと、及び国内第III相試験において、全奏効率が73.7%であったことから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性について、先ほど御説明した海外第Ⅰb/II相試験及び国内第III相試験成績に基づいて、承認申請を行う予定であることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○杉部会長 どうもありがとうございました。今の説明につきまして、委員の先生方から何か御質問、御意見はございますでしょうか。特にございませんでしょうか。それでは、議題5の議決に入りたいと思います。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として、薬事分科会に報告させていただきます。

 本日の議題は、以上のとおりでございます。事務局から何かございますでしょうか。

○事務局 事務局です。本日の部会ですが、年内最後の医薬品第一部会となっております。委員の任期を迎えられ、金子委員、増井委員、山田委員、大賀委員、杉部会長におかれましては、今回で御退任となります。大賀委員、山田委員は本日あいにく御欠席ですが、金子委員、増井委員、杉部会長より一言御挨拶を頂戴したいと思います。まず、金子委員お願いできますでしょうか。

○金子委員 金子です。お世話になりました。歯科口腔外科の立場から、審議に参加させていただきました。私の任期のときはビスホスフォネート製剤が出てきました後半から、降圧剤がどんどん配合薬になってくる、それから糖尿病薬が出て、それが更に配合薬になってくるようなことで、先生方の専門の御意見を聞いて、大変勉強させていただきました。特にまた堀先生の視点というのが、私が抜けているところがありましたので、また勉強させていただき、大変感謝しております。ありがとうございました。

○事務局 ありがとうございました。続きまして、増井委員、お願いできますでしょうか。いらっしゃらないですか。では、最後に杉部会長、お願いできますでしょうか。

○杉部会長 杉でございます。本当に、長い間お世話になりました。多分、平成27年の最後の辺りにこの第一部会に招かれまして、私は循環器、特に不整脈、抗不整脈薬も含めて専門ですが、不整脈の議題も結構多くて、いろいろ勉強させてもらいました。平成28年からはずっと毎回出ており、これで約5年間になります。直近の2年間はこの第一部会の部会長という重責を負わされまして、これがうまくいったかどうかはわかりませんが、先生方の御意見はできるだけ伺うようにして、機構と厚労省、事務の意見と併せて、皆さんにいろいろと御審議いただいたことと思います。司会の不手際も多々ありましたが、先生方に本当に大変お世話になりました。

 私は、もう今70歳になりましたが、これで最後になりますので、大変長い間お世話になり、ありがとうございました。また、この会で重要なのは、今日もありましたが、先生方からいろいろな御懸念に関する質問を頂き、それをクリアしていくことだろうと思います。ただ、必要なのは、今日も3人のがんの専門の先生方がお出でになりましたが、対象とする薬を必要とする患者さんがおられることが最大のポイントです。その面において、それを使用するときに、今、先生方の御懸念がありましたいろいろなことについて、この会で検討して、もんでいくのがよろしいかと思います。重要な意味のある会ですので、今後とも御継続いただければと思います。今まで長い間、どうもありがとうございました。

○事務局 ありがとうございました。それでは、次回の部会につきましては、来年1月27日午後2時から開催させていただく予定ですが、また状況に応じまして、部会の開催方法につきまして、おって御連絡をさせていただきます。来年もまたよろしくお願いいたします。

○杉部会長 本日はこれで終了としたいと思います。どうもありがとうございました。

( 了 )

 

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)