令和2年度第1回化学物質のリスク評価検討会(遺伝毒性評価ワーキンググループ)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和3年2月25日(木)13:27~14:22

場所

オンライン開催
(会場:TKP新橋カンファレンスセンター カンファレンスルーム12F
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング12階))

議題

  1. 1.微生物を用いる変異原性試験(Ames試験)(令和2年度実施分)の評価について
  2. 2.Bhas42細胞を用いる形質転換試験(令和2年度実施分)の評価について
  3. 3.その他

議事

議事内容

○植松化学物質評価室長補佐 定刻より少し早いですけれども、皆様おそろいということで、今から始めさせていただきたいと思います。
2020年度第1回化学物質のリスク評価検討会(遺伝毒性評価ワーキンググループ)をただいまより開催させていただきます。
まずは、本年度新たに当ワーキンググループの委員となっていただいている方がいらっしゃいます。本日初めて委員として御出席いただきました先生ということで、御紹介させていただきたいと思います。
国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター変異遺伝部部長の杉山圭一様でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
また、今回、評価いただく各種試験を担当していただいた方にも事務局支援として参加いただいております。
当会場には、形質転換試験を実施していただいた日本バイオアッセイ研究センターの佐々木様と上垣外様に御出席いただいております。オンラインでは加納様、梅田様に待機いただいております。
また、本年度、変異原性試験と形質転換試験を受託して実施していただいた株式会社ボゾリサーチセンターの方々、福田様、中村様、山口様、峯川様、濱田様、堀内様にもオンラインで参加していただいております。よろしくお願いいたします。
○ボゾリサーチセンター/福田氏 よろしくお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 なお、オンラインで御参加の皆様にお願いがございまして、御発言いただく際には、挙手をしていただいて、座長の指名を受けていただいた上で、御自身の所属及びお名前を名乗っていただいた上で御発言いただきますようお願いいたします。もしくは、Zoomですので、挙手ボタンというものがあると思いますけれども、そちらを押していただければこちらで確認できますので、よろしくお願いいたします。
また、会場にお越しの方々におかれましては、御発言の際、お手元のハンドマイクを使って御発言いただきますようよろしくお願いいたします。
本日は御欠席の委員はおられません。
それでは、座長の清水先生に以降の議事進行をお願いしたいと思います。
○清水座長 清水でございます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
まず最初に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 お手元にタブレットを御用意してございますけれども、中身を御確認いただければと思います。まず資料1-1から1-3ということで、資料1-1でAmes試験の結果一覧、1-2でAmes試験結果の概要と、資料1-3でAmes試験の総合評価表というものを格納してございます。続きまして、資料2-1ということでBhas42細胞を用いる形質転換試験の試験結果の一覧があるということと、資料2-2として形質転換試験結果一覧ということで、バイオアッセイで行っていただいた試験の分、資料2-3は試験実施の可否についてということでございます。資料2-4でボゾリサーチセンターさんに行っていただいた形質転換試験の結果一覧と、資料2-5でボゾリサーチセンターさんに行っていただいた形質転換試験の最終報告書の概要をつけてございます。資料2-6としまして、形質転換試験実施事業の試験対象物質一覧ということでございます。それから、参考資料としまして、参考1でございますけれども、リスク評価検討会の開催要綱と名簿の抜粋と、参考2といたしまして「Ames試験実施物質に関する遺伝毒性評価の進め方(2019度改訂版)」でございます。参考3といたしまして「Bhas42細胞を用いる形質転換試験による調査の基準」というもの。それから、参考4-1でございますけれども、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会中間とりまとめ」というもの。それから、参考4-2として概念図ということでございますけれども、「見直し後の化学物質規制の仕組み」というものを格納してございます。過不足はないということでよろしいでしょうか。
○清水座長 それでは、議題に入りたいと思います。
まず議題1の微生物を用いる変異原性試験の評価についてです。これは事務局からお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 まず資料1-1を御覧ください。本年度、株式会社ボゾリサーチセンターさんに受託いただいて実施いただいたAmes試験の結果一覧となっております。
当初は19物質を予定していたのですけれども、入手が困難であった物質が2物質あったために、合計17物質について実施していただきました。
結果としましては、陽性と考えられる物質が3物質、陰性と考えられる物質が14物質となってございます。
続きまして、資料1-2を御覧ください。こちらは物質ごとの結果を個表にまとめたものになります。
これらの結果資料につきましては、あらかじめ先生方に送付させていただきまして、分担して評価をお願いいたしたところでございます。ありがとうございました。
その結果をまとめたものが、資料1-3でございます。すみません、資料が飛び飛びになってしまいますけれども。
この資料1-3でございますが、今年度実施したAmes試験の総合評価として一覧表にまとめさせていただいております。
試験の適否については、全ての試験において「適」ということで評価いただいております。
それぞれの総合評価は御覧のとおりとなっておりますけれども、試験結果で陽性とされた物質が3物質ございます。
通し番号で言いますと、7番の2-ヒドロキシプロピルアクリラートというもの、こちらは弱い遺伝毒性がありということでございます。
通し番号11番のトリス(2,3-ジブロモプロパン-1-イル)=ホスファートについては、強い遺伝毒性ありと評価いただいております。
通し番号15の2-クロロ-5-ニトロアニリンについては、強い遺伝毒性ありと評価いただいているところでございます。
強い遺伝毒性ありとされた物質につきましては、参考2に格納しています「Ames試験実施物質に関する遺伝毒性評価の進め方」に基づきまして、今後、強い変異原性が認められた物質として行政指導の対象とすることとなっております。そして中期発がん性試験の候補物質にもなるということでございます。
また、弱い遺伝毒性ありとされた物質に関しましては、これをもって評価終了という扱いになります。
一方、試験結果の中で陰性とされたものについてですが、今回、通し番号13番の物質でございますけれども、3,5-ジクロロベンゾイル=クロリドにつきましては、遺伝毒性の有無の判断は困難という評価を頂いております。これも評価基準に基づきますと別途検討とされておりますので、この物質については遺伝毒性の有無を御検討いただきたいと考えてございます。
なお、そのほかの遺伝毒性なしと判断された物質につきましては、今後は形質転換試験の候補物質とすることとなります。
事務局からの説明は以上になります。
○清水座長 ありがとうございます。
既に各委員の皆様には目を通していただいているわけでございますけれども、それぞれ評価いただいた中で、ただいまの事務局からの説明にさらにコメントを加えることはございますでしょうか。―よろしいですか。
杉山委員はよろしいですか。
○杉山委員 杉山でございます。
先ほど事務局の方から御説明いただいたとおりなのですけれども、通し番号で申し上げますと13番になります3,5-ジクロロベンゾイル=クロリドにつきましては、補足で一応説明いたします。溶媒がアセトンということで、この化合物の物性から考えて適切な溶媒を使っての試験となります。ただ、結果は、こちらのコメントにも書いてありますけれども、2倍未満ではございましたが再現性があるコロニーの上昇というのがございましたので、先生方から改めてその点に関しまして御意見を頂いて、最終的な判断を頂ければということでこのような総合評価とさせていただいているところです。コメント等よろしくお願いいたします。
○清水座長 ありがとうございます。
ただいま、13番に関しましては、TA100で再現性のある、2倍までは行かないけれども、増加しているという結果が出ているということですけれども、何か御意見はございますか。
荒木委員、何かございますか。
○荒木委員 1つ下の物質ですが、2,6-ジクロロベンゾイル=クロリドは似ていて、やはり少し上がっていますけれども、どのように捉えればいいのかなという気がするのです。構造的には似ていると思うのですけれども。
○清水座長 そうですね。
太田委員、何かございますか。
○太田委員 2倍行かないものは、従来、疑われるけれども特にアクションを起こさないということで陰性扱いにしていたような気もするのですが、いかがでしょうか。
○荒木委員 多分今までは陰性の評価にしていたと思います。
○清水座長 構造の似たようなものがもう一つ14番にあるわけですけれども、それも少し上がっているのですね。しかし13番ほどではないということですけれども、いずれにしても、過去のいろいろな経験からですと、2倍に達しなければネガティブという判断をしてきたということだと思います。ということで、これは過去の例に倣ってネガティブ判定ということでよろしいかと思いますけれども、よろしいですか。
では、そういうことでお願いいたします。
そのほかに本年度実施分の評価につきまして御質問、御意見があればお願いいたします。―特にございませんか。
それでは、本年度実施分の評価につきましては、事務局でとりまとめられた案のとおりということにいたします。事務局、よろしいでしょうか。
○植松化学物質評価室長補佐 はい。
○清水座長 それでは、次にBhas42細胞を用いる形質転換試験について、本年度実施分の評価について、事務局から御説明をお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 それでは、資料2-1を御覧ください。こちらは、本年度実施したBhas42細胞を用いる形質転換試験の結果を一覧表にまとめたものでございます。
本年度は、日本バイオアッセイ研究センターさんで8物質、株式会社ボゾリサーチセンターさんで11物質の計19物質を実施していただきました。
結果は御覧のとおりでございますけれども、陽性と考えられる物質が10物質、陰性と考えられる物質が9物質となっております。
なお、陽性と判断される場合には、今後、中期発がん性試験の候補物質となります。
資料2-2ですけれども、こちらは日本バイオアッセイ研究センター実施分の一覧表と概要になります。
資料2-3でございますけれども、昨年度、バイオでの実施候補としてこのワーキンググループに挙げていただいた物質の一覧表になります。バイオのほうで実施の可否について検討していただいておりますけれども、本年度は実施せずに次年度分とした物質について後ほどバイオから御説明いただけると思いますので、よろしくお願いいたします。
資料2-4でございますけれども、こちらはボゾリサーチセンター実施分の結果一覧表になります。
資料2-5ですけれども、それぞれの試験報告書の概要を物質ごとにまとめてございます。
最後に資料2-6でございますけれども、昨年度委託事業分としてこのワーキンググループで選定いただいたものの一覧表で、予備物質に変更したものが2物質ありますので、それが分かるようにつけさせていただきました。
以上になります。
○清水座長 ありがとうございます。
ただいま資料2-1から2-6まで御説明いただいたわけですけれども、試験を実施してくださったバイオアッセイ研究センターから何かコメントはございますか。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 内容に関しては細かくはないのですけれども、8物質実施しております。例年どおりです。
資料2-3のほうで、12物質について調べて、その中から例年どおり8物質実施しております。1物質に関しては入手が困難ということで、購入もできなかったものになります。そのほかの11物質については試験実施可能という判定をして、その中から8物質を例年どおり実施しております。残る3物質に関しましては、後ほど、どういう問題点を確認しながら次年度の実施に持っていけたらというようなお話をさせていただく予定です。
実施8物質の中では4物質が陽性になっておりまして、去年度の委員会で、今までやった中での陽性の数みたいなお話を質問されたときにお答えできなかったので、バイオアッセイ実施分に関して調べたところ、8物質中で言えば例年3.5物質ぐらいの割合で陽性になっており、確かに比較的多い割合で陽性になっておりました。今年は8物質中4物質が陽性で、例年と同じ程度の割合で陽性になっているということを確認しましたので、補足させていただきます。
以上です。
○清水座長 ありがとうございます。
それでは、ボゾリサーチセンターから何かコメントはございますか。
○ボゾリサーチセンター/福田氏 ボゾリサーチセンターの福田です。
ボゾとしましては特にコメントはございませんが、今回11物質実施いたしまして、6物質が陽性を示しています。弊社は陽性になる頻度はやや低い傾向にございましたが、今回は比較的高く、6物質が陽性という結果になっています。いずれもトップドーズのほうでは細胞毒性が強く発現しまして、若干ダウンターンするような毒性の傾向を示していますが、統計学的には有意差がつきましたので、この試験の判定条件においては陽性と考えております。
以上になります。
○清水座長 ありがとうございます。
お伺いしたいのですが、ボゾさんの試験の中で培地の色が変わってきていますよね。色調変化があるものとないものがあって、橙色から黄色になるとか、いろいろあったわけですが、1物質だけ、特に代謝ではないかというようなもので、これは何を根拠にしてそう判断されたのでしょうか。
○ボゾリサーチセンター/福田氏 一覧表を開示できますか。資料の番号で言いますと……
○清水座長 ジイソオクチル=フタラートですね。
○ボゾリサーチセンター/福田氏 これですね。これに関しましては、普通の遺伝毒性試験に関しては、処理の直後、被験液を処理液に添加した際にpH変化、つまり色が変わってくるという現象が起こるのですけれども、形質転換試験に関しましては、本試験の場合は3日、3日、4日の処理時間になっていますので、遺伝毒性試験に比べるとやや長いばく露時間を経ています。これは直後には色調変化がないケースが今回ございまして、この剤に関しましてはだんだんpHが変化していって、処理後に真っ黄色に色が変わってくるというような現象にございましたので、被験物質を一番最後に洗った後に関しましても、回復培養期間中にもそういった残存する代謝物がpH変化を引き起こしたような兆候がございましたので、それらを総じて考えますと、被験物質をBhas42細胞が代謝して、その影響によってその代謝物が培地中のフェノールレッドに反応して色調を変化させたと考えています。
○清水座長 ほかの色調変化でも代謝物によるということは考えられないのですか。
○ボゾリサーチセンター/福田氏 今回のこの剤に関しては処理期間中だんだん色が変化していきましたので、それを考えますと、処理直後での化学物質としての被験物質そのものの変化というより、むしろ代謝物による影響ではないかと我々は考えています。
○清水座長 特に代謝物に何か特定の物質は考えられることはありますか。
○ボゾリサーチセンター/福田氏 私はそこは確認していません。ただ、これはS9が入っていない試験ですが、たしか前に秦野研究所さんが、Bhas細胞にもそういった代謝酵素ですか、CYPの遺伝子があるというような報告をされていますので、それに関与するような代謝が行われている可能性があるのではと考えています。詳しい話はこの実験では確認できていません。
○清水座長 ありがとうございます。
バイオさんのほうではこんな経験はございますか。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 細胞毒性が効いているところで細胞が破裂するような形で内容物が出て、それによってpHも変わって黄色っぽくなるとか透明に近い色になってしまうということはよく経験しているのですけれども、一覧表だと細胞毒性とかそちらの情報がないので、それに当たるかどうかは分からないと思って見ていました。
○清水座長 ありがとうございます。
ほかに何か委員の皆様から御質問はございますか。
○荒木委員 前回構造のことを聞いたのですけれども、特に陽性になっているのは酸が多いですよね。酸だと染色体異常が起きたりすると聞いていますので、ひょっとするとそういった影響が考えられるのかどうか、その辺りのコメントを頂ければと思います。
○ボゾリサーチセンター/福田氏 酸と形質転換試験の関係に関しましては私どもも把握できていませんが、恐らく培養環境に起因した陽性反応が形質転換で起こってもおかしくはないと考えています。染色体異常ですと、pHが6.2とか6.3以下になってくると構造異常が発現したり、S9存在下ではそういった現象が増加するような傾向にございますが、形質転換試験はそういった論文がまだない状況なので把握できていないのですけれども、恐らく培養環境に起因した陽性反応が起こっていても、それは真の形質転換プロモーション作用とは別として起こり得る可能性は否定できないと考えています。
○清水座長 何かバイオさんからございますか。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 酸が直接という印象はないのですけれども、確かに去年度、単純な酸の物質というのは、こんなのが陽性になるのかというようなのがなることもありまして、比較的、細胞増殖試験のときに細胞増殖の促進が起きたものが陽性に出る可能性が高いのかなと思って実施当初から追っていたのですけれども、最初の頃は細胞増殖があるものが7割近く陽性になっていたのですが、だんだん物質を重ねるごとにそれが弱まっていって、今では半分強ぐらいにおさまってしまって、もしかしたら酸の刺激か、細胞増殖に影響を及ぼすような酸もあるのかなということは思ったりするのですけれども、確かなことではないです。
○清水座長 よろしいですか。ありがとうございます。
ほかに何か御質問、御意見はございますでしょうか。―よろしいですか。
特にございませんでしたら、本年度実施分の評価につきましては事務局でとりまとめられた案のとおりとするということで御異存ないですか。―ありがとうございます。
例年ですと併せて次年度の物質を検討するということですけれども、この件に関しまして事務局から何か御説明がありますでしょうか。
○植松化学物質評価室長補佐 次年度の実施物質の検討につきましては、この後、その他の議題において説明させていただきます職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討の状況を踏まえて別途検討したいと考えているところでございます。
なお、本日は、昨年度リストアップした物質のうち実施を見送った物質につきまして、今後の実施に当たって御意見を賜りたい事項がございますので、バイオアッセイ研究センターさんから御説明していただければと思います。
○清水座長 では、お願いいたします。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 資料2-3を開いていただいて、この中で4番のポリマーのものと11番のポリマーのもの、それから12番の2-エチルヘキシル=ホスファートというものを実施可能ですけれども、今年度実施しない形になっております。
来年度実施する際に確認して御承諾いただきたいと思っていたことは、まず4番と11番ですけれども、両方ともポリマーになっております。物質を購入して物性等を問い合わせたところ、平均分子量が53万4,000というかなり大きなものになっております。なので、10 mMは現実的ではないので、染色体異常とかと同じような5 mg/mLの溶液濃度での実施でいけるかどうかを各種溶媒で検討しました。その際、1,1-ジフルオロエテン重合物のほうは培養液に被験物質を加えた懸濁状態で懸濁可能というのが確認できております。それから、11番の臭素化ポリスチレンは培養液というよりDMSOのほうが粘性があるせいか懸濁状態がよくて、そちらを経てから培養液に処理したほうがうまく分配できることが確認できております。こちらに関してはそういった形で懸濁処理の5 mg/mLでの懸濁処理を最高濃度でする形で実施したいと思っておりますが、1点だけ気になりますのは、そういう形で試験実施は可能なのですけれども、不溶性の粒子状物質ですので、3回の繰返しの被験物質処理をした際にどんどん洗い切れない被験物質が追加されることになりまして、普通の方法で一度やってみた際に被験物質がかなり細胞の上に降り積もってしまって判定が困難になるケースも考えられますけれども、まずは通常法で実施し、もし困難になった場合は、細胞を剥がさないように洗うとか、いろいろ工夫してやることが必要になると思われますので、それを一応ここでお知らせしておきたいと思いました。
それから、もう一物質、12番の最後のものですが、こちらはりん酸2-エチルヘキシルというものがくっついておりまして、当該被験物質としては、ここにありますモノエステルが1個だけくっついたりん酸の形のものが入手可能でした。和光でもほかのメーカーでも同じような純度で、35%ぐらいの目的の純度で、ジエステル、今の2-エチルヘキシルが2個くっついたものが必ず60~70%ぐらい入ってくるというものしか入手可能ではありませんでした。それから調べたところ、この2個くっついた2量体のほうであれば純度95%以上の試薬が販売されているのですが、今回は1量体のほうが目的の物質ですので、どうしてもこの2つ、35%程度の目的物質と2量体の不純物が60%程度になるものをやらざるを得ない。この際に、純度換算して35%のものを目的の濃度を含む形で実施する、ここで言うと丸1という書き方をしておりますけれども、そういう手段と、丸2のほうでは混合物として100%みたいな形で普通にやってしまう方法が考えられるのですけれども、私たちは丸1の純度換算してやる方法を考えているのですけれども、それでよいかというのをお聞きしたかったのです。
○清水座長 ありがとうございます。
では、最初にポリマーのほうですけれども、これに関して何か御意見はございますか。いかがでしょうか。
試験をしてできないことはないわけですね。ただ、判定が難しくなる。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 そうですね。検体処理に関しては問題なくできそうだということを溶解性試験で確認しています。
○清水座長 では、これは実施していただくことでよろしいですか。
では、ポリマーのほうはこれで実施していただくということでお願いします。
もう一つ、2-エチルヘキシル=ホスファートは、モノが35.2%、ジが61.9%ということで、モノのほうで純度換算してよいか、あるいは混合物として100%でやるかということですけれども、この点はいかがでしょうか。
○増村委員 先ほどおっしゃっていたのは、丸1でやろうということですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 そうです。
○増村委員 個人的には、対象物質がモノなのであれば、35.2%なので、純度換算してやるほうがいいのかなと思ったのですが。ちゃんと用量で調整できるのであれば、混合物としてやるよりも、モノの評価として実施してはどうかと思ったのですが、何か難しいところがあるのですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 35%のものを100%の量含まれるような形での溶解性も確認しておりますので、上げて純度換算でやることに関しては問題ありません。ただ、方針だけ確認を取らせていただきたいというところでした。
○清水座長 ただいま増村委員から、35.2%のモノエステルの濃度で純度換算してということですが、ほかの委員の皆様はいかがですか。―よろしいでしょうか。
御異存ないようですので、モノエステルの純度換算で行っていただくということでお願いいたしたい。
○太田委員 質問なのですけれども、モノエステルだけでやった場合、これは水に溶解ということで、両方入ったほうはDMSOなのですか。両方入ったほうは換算しなくてもほぼそのままですよね。これがDMSO溶媒でできるということで、モノエステルはもっと濃くしなければいけないのだけれども、これは水に溶解ということで、それでいいのですか。逆かなと思って。懸濁ですか。DMSOに溶解。分かりました。DMSOに懸濁ではなくて水に懸濁のほうがということになるのですかね。丸1の場合がDMSOに溶解で。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 DMSOに溶解可能でした。純度換算をする形で、濃い濃度の調製に関しても、ちゃんと溶解するのを確認しておりますので、それでも大丈夫ということです。
○清水座長 確認ですけれども、モノのほうはDMSOに溶けて、ジのほうは水ですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 混合物の形のものを購入しておりまして、中にモノエステルが35.2%、ジエステルが61.9%が入っているという混合物を購入しておりまして、それを100%扱いで使用する濃度調製もDMSOを用いてできましたし、今度は純度換算する形だと調製濃度をもっと濃くしなければいけないのですけれども、それに関しても確認しているということで、やっているのは、混合物を用いた35.2%のものを純度換算用の濃い濃度と100%としての薄めの濃度でやっているということで、モノとジを2個買ってやっているわけではありません。混合物込みの1物質を買って、2種類の濃度で、純度換算した濃い濃度と普通に100%扱いでできる濃度と、2濃度確認したということになります。それでDMSOで両方とも溶けて問題なかったということです。
○清水座長 ありがとうございます。
ほかに何か御意見はございますでしょうか。
○植松化学物質評価室長補佐 確認させてください。混合物ということは、モノエステルとジエステルの割合自体は丸1も丸2も変わらないということですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 そうですね。割合は変わらないです。35.2%のものが入っているのが、例えば1 g量り取ったら、そのうちの35.2%の重さが目的の物質なので、そういう形で、欲しい10 mMの重さを得るために純度換算して、普通よりは濃度を上げて調製するということです。なので、どちらの場合であっても不純物はこの割合であるということです。
○植松化学物質評価室長補佐 とすると、モノエステルの試験というよりはジエステルの試験のようにも見えてしまうかなと思ったのですけれども。
○日本バイオアッセイ研究センター/佐々木氏 市販の試薬としてはモノエステルを高純度で含むものが購入不可能でしたので、2つのメーカーでモノエステルを含むものを売っていたのですけれども、どちらも30~35%程度しか含まないという、多分、ジエステルが6割ぐらい、モノエステルが3割強入る形で安定的にならざるを得ないような物質のようです。ただ、ジエステルの純度を上げることは試薬的に可能なので、書いてありますように、ジエステルでの物質であれば95%以上のものが入手可能なのですけれども、今回のターゲットはモノエステルのほうで、しかも入手可能なのは混合物で、30%強しか含まれず、6割ぐらいは不純物のジエステルが必ず含まれるもので、2つの試薬メーカーで売っていたのですけれども、両方とも同じような形でした。それ以外はモノエステルを含む試薬を販売しておりませんでしたので、やるとすれば、この混合物込みの物質でどうやって濃度を取ってやるかというので、その濃度の取り方を今回確認させていただいたということになります。
○清水座長 よろしいですか。
○植松化学物質評価室長補佐 はい。
○増村委員 コメントですけれども、これは混合物なので、モノエステルで濃度換算をやって試験をやった場合、もし陽性に出た場合、モノエステルで陽性になったのか、ジエステルで陽性になったのか分からないですよね。ただ、陰性に出れば、どちらも問題なかったわけだから、モノエステルも問題ないということになるかと思います。もし陽性に出た場合に原因を切り分けなければいけないのだったら、ジエステル単独だったら高純度品があるということなので、ジエステルでやってみて、そちらが出なければモノのせいだし、そちらで出た場合は分からないですけれども、モノ単品での高純度品がないということなので、それはしようがない。期待としては、モノエステルでの評価ができる純度換算のやり方でやっていただいて、それで陰性になれば、モノよりもジエステルのほうが含有量が多いわけだから、どちらも問題ないということになるのかなと思います。
○植松化学物質評価室長補佐 分かりました。ありがとうございます。
○清水座長 では、そういうことで。
ほかに何か御質問、御意見はございますか。―よろしいでしょうか。
それでは、ありがとうございました。本年度実施しました各試験の評価は以上ということになります。
日本バイアッセイ研究センターとボゾリサーチセンターの皆様にはお忙しい中御協力いただきまして、ありがとうございました。
○植松化学物質評価室長補佐 ありがとうございました。
○清水座長 それでは、次に移りたいと思いますが、次はその他ということですけれども、事務局から御説明をお願いいたします。
○内田化学物質評価室長 本年度の評価につきましてはどうもありがとうございました。
例年であれば、この後、来年度の物質の選定ということでやっていただくことになっておりますけれども、政策について大きな見直しがあるという状況なものですから、そういう政策の見直しの方向性を踏まえ、また改めて今後の試験について整理していくというような状況になってございます。その政策の見直しについて、このワーキンググループの今後にも絡む話ですので、現状について少し御説明させていただきたいということで、参考4-1をお開きいただければと思います。
「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会中間とりまとめ」ということで、実は一昨年の9月からずっと検討してまいりまして、今年の1月に中間とりまとめということでとりまとまったものでございます。
直接関係いたしますものは、5ページ目を御覧いただければと思います。5ページ目の一番下のほうに(2)と書いてございますけれども、「化学物質規制体系の見直し(自律的な管理を基軸とする規制への移行)」ということで書いてございます。
もともとこのリスク評価に関連いたしまして、労働安全衛生法の政策体系といたしましては、有害性、特に発がん性の高い物質について、まず国がリスク評価を行って、特定化学物質障害予防規則―特化物と言っておりますけれども―の対象に追加して、ばく露の防止のために講ずべき措置を国が個別具体的に事細かく法令で定めるという形でこれまで規制を進めてきたという状況でございます。
リスク評価は平成18年度に始まって、それ以降この特化物に追加したのが29物質ということで、年間1物質強というような状況で順次追加してきたところでございますけれども、現状の問題点といたしまして、5ページ目の上のほうのアを御覧いただければと思います。「労働災害の発生状況」ということで、化学物質による休業4日以上の労働災害につきまして、現状では特化物が原因のものは約2割ということで、特化物以外のものが約8割を占めているといった状況になってございます。
何でそんな状況なのかということで、下に書いてございますけれども、一度特化物に追加されると、皆様その物質を取り扱うのはやめましょうという形になって、ほかの類似する、危険有害性が十分はっきりしていないようなものも含めて、その確認なり評価をせずに、規制対象外の物質を安易に利用して、十分な対策が取られずに労働災害が発生しているといったような状況が生じております。我々はいたちごっこと呼んでおりますけれども、幾ら特化物にどんどん追加しても、ほかの物質に移行して労働災害が起きてしまうというような状況もあるものですから、先ほど29と言いましたけれども、ごく一部の物質だけを規制の対象にすると。今、約7万とかいう化学物質の数が言われておりますけれども、その中のごく一部だけを取り出して規制してもなかなか追いつかないというような問題意識を持ってございます。
そういった意味で、国がそういう物質を特定して事細かく規制を講じるという手法を転換して、自律的な管理ということで、ある意味事業者さん主体にリスク評価をしていただくというような方向性に転換しようと考えてございます。
5ページ目の一番下に戻りますけれども、「以下のとおり、国はばく露濃度等の管理基準を定め、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みを整備・拡充し、事業者はその情報に基づいてリスクアセスメントを行い、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら選択して実行することを原則とする仕組み」ということで、国は今までリスク評価をやっていましたけれども、そうではなくて、リスク評価は事業者が主体的に行って、それを行うに当たっての有害性の情報とか判断基準を国は提供していくというような体系に見直していくという方向性がこの中間とりまとめで示されたという状況になってございます。
もう一つ、参考4-2というものをお開きいただければと思います。
新しい政策体系についていろいろと書いてございますけれども、具体的には、上のほうに書いてございますように、国としては、「ばく露限界値」という、これ以上にばく露濃度を下げなさいという数値を設定して、それ以下になるように事業者の方に取り組んでいただくとか、あるいは、その右側にございます、GHS分類で危険性・有害性の情報を定めて、それを情報提供していくといったような取組を主体的に行うという形になります。
真ん中の下のほうの※印に書いてございますけれども、今後特化則への物質追加は行わないということで、つまるところ、リスク評価をして、それから特化則への追加ということをやっておりましたけれども、今後はリスク評価も国としてはやらないというような方向性になります。
そうすると何が起きるかというと、今日評価いただいた試験に関して言いますと、平成25年度から、発がん性スクリーニングという仕組みの中で、今日ございました変異原性試験なり形質転換試験をしていただいて、陽性となったものは中期なり長期の発がん性試験をして、そこで発がん性が明らかになったものがリスク評価の対象物質になるということで、リスク評価の対象物質を選定するという観点から今日評価いただいた試験などを実施していただいてきたという状況でございますけれども、今後はリスク評価がなくなるという状況なものですから、この試験についても、今後どういう中身で何を目的にやっていくのかとか、そういったことをもう少しこの方向性に沿った中で、国が行う有害性試験についてどういう役割があるのかとか、そういうことをよく整理した上で今後の試験の組立てとかそういったことをやっていくことになります。
この検討会の中間とりまとめということで1月にまとまってございますけれども、もう少し具体的な、国なり、今、事業所の方にも新規化学物質の有害性調査ということで変異原性試験をやっていただいておりますけれども、そういった試験のあり方について今後議論を深めて、大体6月を目途に整理していくという形になってございますけれども、その整理の過程で今後の試験はどういうことを進めていくのかについても整理した上で、リスク評価検討会なりこのワーキンググループも含めてどういう形で今後担っていただくのかというのは、その整理が終わった段階で改めて御説明させていただければと思っておりますけれども、途中段階の経過ということで、今はこういう状況であるということと、そういった状況もあるものですから今回は来年度の対象物質については選定しなかったというような経過もございますので、御理解賜れればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○清水座長 ありがとうございました。
ただいまの御説明に関して何か御質問はございますでしょうか。
○増村委員 参考4-2の概念図で質問です。真ん中あたりに※印がついているところで、「ばく露濃度をなるべく低くする措置」というのがあるのですけれども、「なるべく」というもののニュアンスがわかりません。ばく露限界値があるものはそれ以下にしなさいということだと思うのですけれども、そうではないもので「なるべく低くする」というのはどういうことですか。
○内田化学物質評価室長 まさしくおっしゃられましたとおり、ばく露限界値があるものについてはそれ以下にしていただくという義務になりますけれども、ばく露限界値が定められるものは、例えば産衛学会の許容濃度とか、そういったものが定まっているものに限られると考えてございまして、それ以外のものについては、ばく露限界値という数値を設定することができないものですから、その指標、メルクマールとなるものが定められない中でできるだけ低くしていただくという意味での「なるべく低くする」というニュアンス、分かりづらいかと思いますけれども、そういった趣旨で書いているということでございます。
○増村委員 その下に丸1、丸2、丸3、丸4と、事業者が自ら選択というオプションがあるのですが、例えば、ベストエフォートではないですけれども、これをやっているからうちは努力していますということでオーケーなのか、あるいは、どこまでやっても、それはもっと低くできるはずだと事業者は言われてしまうのか、その辺、どこまでやったらちゃんとやっていることになるのかなと思ったので。
○内田化学物質評価室長 なかなか判断は難しいかと思うのですけれども、リスクアセスメントとかに取り組んでいただきながら、実際には基準となる数値がないので判断は難しいと思いますけれども、定期的にやっていただいて、でき得る限り下げるなり確認していただくということで進めていただければというような感じで考えてございます。
○清水座長 このばく露限界値というのは国が決めるということになりますか。例えば管理濃度みたいに。
○内田化学物質評価室長 そういう形になります。
○清水座長 そういうことですか。
ほかには何かございますか。―よろしいですか。
特にございませんでしたら、これで御報告を終わりということにいたします。
以上で議題は終わりましたけれども、その他何か事務局からございますでしょうか。
○植松化学物質評価室長補佐 特段の事項はございませんけれども、今年度もどうもありがとうございましたというお礼をまず申し上げたいことと、来年度以降のこのワーキンググループの運営につきましては、先ほど室長から説明させていただきましたとおり、まだこれから検討させていただく部分もございまして、また整理ができ次第丁寧に御説明させていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
どうもありがとうございました。
○清水座長 大分時間が早いですけれども、今日はこれで終了いたしました。
どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。