第1回労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会 議事録

日時

2021年(令和3年)1月6日(水) 10時00分~
 

場所

霞ヶ関ナレッジスクエア  千代田区霞が関3丁目2-1 霞が関コモンゲート西館3階

出席者

  ・阿部 正浩
  ・安藤 至大
  ・大久保 幸夫
  ・鎌田 耕一(座長)
  ・武田 洋子
  ・中田 るみ子
  ・山川 隆一

議題

(1)労働市場における雇用仲介の現状について(公開)
(2)その他(公開)

議事

議事内容

○事務局 皆様、おはようございます。定刻になりましたので、第1回労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会を開催いたします。まず初めに、当省の職業安定局長の田中より、本研究会の開催に当たっての御挨拶を申し上げます。
 
○田中局長 おはようございます。職業安定局長の田中でございます。今回、労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会を開催させていただきたく、先生方に御参加をお願い申し上げたところ、快くお引き受けいただきましてありがとうございました。大変お忙しい中、お集まりいただきまして心より感謝いたします。
本題に入ります前に、目下政府では、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言の検討に入っております。昨年来、雇用調整助成金をはじめとする様々な対策を講じてまいりましたが、引き続き新型コロナウイルス感染症に関しては、経済の影響、雇用の影響が大きく懸念される事態が続いております。私どもとしては、雇用調整助成金はもちろん、今後は少しずつ労働移動あるいは離職された方の支援といったことにも力を入れながら、バランスの良い雇用対策を講じつつ、産業政策などともしっかり連携して雇用の安定を図ってまいりたいと考えております。引き続き御指導をお願いしたいと思います。
こうした中で、恐らく皆さん感じておられることだと思いますけれども、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、雇用・経済に関する様々な構造変化がこれから起こってくると思います。
また、この新型コロナウイルス感染症による休業など様々な形で希望する労働者の流動性とか、そういったものが止まっている部分もありますから、今後の回復期に当たっての経済あるいは雇用の在り方やその政策といったものも、調整あるいは柔軟な考え方で対応していかないといけない。その上で大きな構造問題に対しても、しっかり対応していくことが必要と思っております。
今回取り上げます労働市場における雇用仲介というものについても、これは長年にわたって、非常に大きな課題として、私どもはどのようにこの日本の労働市場を、より機能的なものとして形作っていくかというテーマの中で、職業訓練などとも合わせた課題ですけれども、取り組んでまいっております。
大きくは戦後、公共が基本的に独占してきた職業紹介というものを、1999年の職業安定法改正の前後から民間への開放、それからその中で、官民の協力あるいは競争をしながら、その人材サービスの質を高めてきております。その中で法制度あるいはその運用についても、より機能的なものに見直していく、こういう過程を長年にわたってやってきたわけでございます。
ただ、現在においても人手不足問題というものが影響しております。いわゆる終身雇用制あるいは新卒一括採用といった日本的な雇用システムがなかなか機能しない部分も出てきているということで、より多様性のある形の採用とか、あるいは通常の採用するだけではなくて、その周りの様々な人材サービスを活用しての人材確保の動きが出てきています。これも、単に中立的にマッチングするだけではなくて、より労働者に近いサービス、あるいは事業者に近いサービスというように多様化してきております。今まで想定していたようなモデルでは、なかなか捉えきれないような部分が出てきているということで、そういったものを、もう一回全体的に、この研究会において、既成概念に囚われない形で現実を直視して、将来に向ったよりよい機能的な労働市場の姿に貢献できるような、人材サービスの姿というものを模索していく、是非こういう方向性で御議論いただきたいなと思っております。
特に、1999年の職業安定法の改正のときにはあまり意識していなかった課題として、個人個人が非常に自分のキャリアを大切にする意識というものが出てきたということでありますし、会社の人事も、そこをしっかり意識しなければ良い人材を確保して、その後の効率的な働き方を導き出せない、生産性を上げられないという形で、人事管理、労務管理も推移してきていると思っています。こうした動きにきっちりとリンクするような、人材サービスというのはどういうものであるのか。その条件整備として、国としてはどのようなルール、例えば個人情報でありますとか様々な課題がありますけれども、そういったものについて、どのように対処していくことが考えられるのかということを、多面的に御議論いただければと思っております。
今後、一定の期間を設けて、しっかり御議論いただきたいと思っておりますが、事業者さんやあるいはユーザーの方々からヒアリングを行ったりしながら、現場の実情をしっかり把握したいと考えています。その上で、本来の課題であります求職者の保護、権利の保護といったもの、更にはより効率的な機能的なサービスを、ITだとかあるいはAIが登場する中で、どのように考えていったらいいのかということを、より新鮮な目で見て御議論いただければありがたく存じます。先生方には本当に、忌憚のない御意見をいただければと思っております。
以上、簡単ではございますけれども、本研究会によせる期待も含めてご説明させていただきまして、私の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○事務局 それでは、報道陣の皆様の頭撮りはここまでとさせていただきます。
それでは、本日は第1回目ですので、本研究会の開催要項を御説明いたします。配布資料の資料1を御覧ください。
1、開催の趣旨。少子高齢化による就業構造の変化、働き方や職業キャリアに対する考え方の多様化等を踏まえ、新しい時代に対応した労働市場の整備と就労マッチングサービスの発展の観点から、多種多様となっている採用プロセスにおける人材サービスを明らかにした上で、我が国のこれからの雇用仲介制度の在り方を検討する必要がある。
このため学識経験者からなる研究会を開催し、労働市場における雇用仲介の在り方について、法的・制度的な観点から専門的な検討を行う。
2、検討事項。
(1)IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方。
(2)有料職業紹介事業及び募集情報等提供事業等をより適正かつ効果的に運営するための制度の在り方。
(3)働き方や職業キャリアの在り方が多様化する中で、需要サイドと供給サイド双方にとって機能的な労働市場を実現するための制度や官民連携の在り方。
3、構成員。(1)研究会の構成委員は、別紙のとおりとする。委員の皆様の御紹介は、後ほどいたします。(2)研究会の座長は構成員の互選により選出する。(3)座長は必要に応じて意見を聴取するために、参考人を招聘することができる。
4、研究会の運営等。(1)研究会は厚生労働省職業安定局長が学識経験者の参集を求めて開催する。(2)研究会の庶務は、厚生労働省職業安定局需給調整事業課において行う。(3)研究会、会議資料及び議事録については、原則として公開とする。ただし、個社のヒアリング等、公開することにより特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある場合等において、座長が非公開が妥当であると判断した際には、非公開とすることができる。なお、非公開とする場合には、その理由を明示するとともに、議事要旨を公開する。以上です。
続きまして、資料2で委員の皆様の御紹介をいたします。順番に読み上げさせていただきます。中央大学経済学部教授の阿部正浩委員です。本日はオンラインで参加いただいております。日本大学経済学部教授の安藤至大委員です。リクルートワークス研究所アドバイザーの大久保幸夫委員です。東洋大学名誉教授の鎌田耕一委員です。株式会社三菱総合研究所政策・経済センター長の武田洋子委員です。三菱ケミカル株式会社取締役常務執行役員の中田るみ子委員です。東京大学大学院法学政治学研究科教授の山川隆一委員です。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、座長の選任に入ります。先ほど読み上げました要項3の(2)に基づきまして、研究会の座長は構成委員の互選により選出することとなります。事務局といたしましては、鎌田委員にお願いしたいと考えておりますが、委員各位、よろしいでしょうか。
(了承)
○事務局 ありがとうございます。それでは、本研究会の座長を鎌田委員にお願いしたいと思います。それでは、鎌田座長、一言御挨拶をお願いいたします。
 
○鎌田座長 どうもありがとうございます。皆様は、この分野での本当に学識・経験豊富な方々ですので、私としては、皆さんに忌憚のない御意見を頂くように進行に務めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○事務局 ありがとうございます。議事の進行につきましては、形式的な議事進行、例えばヒアリングなどの進行等につきましては、事務局で行いますが、委員各位による御議論の係には鎌田座長にお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
それでは、議事の公開について申合せをしておきたいと思います。お配りしている議事の公開での取扱いでよろしければ、そのようにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(了承)
○事務局 ありがとうございます。それでは、本日の議題に入ります。労働市場における雇用仲介の現状についてです。資料4を御覧ください。資料4~6までについて、事務局より御説明をさせていただきます。
 
○事務局 では、資料4です。労働市場における雇用仲介の現状についてということで、現状等々を整理した資料です。ページ番号は、3ページからご説明いたします。
まず、労働者も含めた人口全体のパイについてということで、人口の推移と将来推計でお示しさせていただいております。まず2015年に人口総数が減少に転じております。御案内のとおりですが、今後も減少していく推計となっているということで、その中でも働き手の中心となる15歳から64歳の人口、いわゆる生産年齢人口ですが、こちらも1995年以降減少が続いており、今後もこの傾向が続くことが予測される状況です。
そうした中におきまして、次のページですが、労働力人口の推移です。こちらは15歳以上の人口の中でも、特に仕事に就いている人、若しくは就いていないけれども、現在求職中の人というところにフォーカスしておりますが、こうした労働力人口の方々は2015年以降増加が続いている現状です。他方、推計におきましては2020年以降減少する見込みで、人手不足の傾向が継続すると考えております。男女別の労働力人口の比率を見ますと、右下のグラフですが、男女共に全世代において2019年における比率は、1990年における比率を上回っているか、ほぼ同等という状況になっております。特に赤い折れ線グラフですが、御案内のとおりM字カーブということで、女性につきましては20代後半から30代にかけての労働力人口比率の落ち込みが大幅に解消されている状況で、今般、人口減少下の労働力人口の増加に寄与しているところです。
5ページは、就業者数の推移です。こちらは労働力人口の中でも、就業者数の推移を見たものですが、就業形態別で見ますと、就業者の大宗が雇用者である状況ということが続いております。2019年においては、雇用者が就業者に占める割合が約91.3%ということとなっております。また雇用者の中でも雇用形態別に見ますと、役員や正規の職員といった方々が一貫して6割以上を占めている状況です。
6ページは、有効求人倍率、完全失業率を折れ線グラフで示しております。足下では新型コロナウイルス感染症の影響で、有効求人倍率の低下と完全失業率の上昇が見られるものの、リーマンショックのときの状況とは異なり、求人が求職を上回って推移している状況が続いているということで、人手不足の傾向が続いているところが見て取れるかと思います。
7ページは、産業ごとの人員不足の状況です。左のグラフを見ますと、リーマンショック以降、特に2013年以降は全体的に人員不足の状況が続いている状況です。足下では新型コロナウイルス感染症の影響もあるものの、全体としては、なお人員不足の基調が見られるということです。右の表も見ていただければ分かるとおり、産業別の人員不足感で見ましても、人員不足感があると回答している産業がほとんどという状況になっております。
8ページからは、労働移動の状況です。下のグラフは入職者属性の内訳の推移です。棒グラフで示しております入職者の属性の内訳を見ますと、2000年から2019年までの間に未就業の入職者、新卒の方であったり新規で就業されている方が約60万人。転職されて入職される方が約170万人。同一企業内で転入される方や出向される方が約110万人増加している状況です。他方、折れ線グラフのとおり、転職で入職される方が労働者全体に占める割合と、未就業入職者・同一企業内の転入者・出向者が労働者全体に占める割合が、同程度の10%前後で大きく変動することなく推移してきていることが見て取れるかと思います。
次に、労働移動の状況をみますと、左のグラフで産業ごとの転職者数の状況について、労働者全体に占める転職入職者の割合が高い産業の順番に上から並べております。こちらを見ますと、サービス業を中心に、労働者全体に占める転職入職者の割合が高くなっております。特に生活関連サービス業、娯楽業におきましては16.7%と、最も労働者全体に占める転職者の割合が高いということで、6人に1人が転職入職者となっている状況です。右のグラフですが、横軸に先ほどの労働者全体に占める転職入職者の割合、縦軸に広告を経由して入職する割合をとりますと、相関関係が見られ、転職者の割合が高い産業ほど、広告を経由して入職する方が多くなっていることが見て取れます。
11ページは、求人採用の状況です。入職経路別の求人の状況で、2009年度以降、どの媒体においても求人数は増加している状況です。ハローワーク、民間紹介事業者、求人メディアとそれぞれ折れ線グラフを書いております。特に求人メディアにおける掲載求人件数の伸びが、直近の10年間におきまして、大きくなっているところが見て取れます。
12ページは、求人の年収帯をみたものです。こちらは左からハローワーク、民間職業紹介事業者、求人メディアとそれぞれ示してております。こちらを見ますと、民間職業紹介事業者の取り扱うものが年収としては最も高い一方で、ハローワークの取り扱う求人は、年収の幅が狭くなっており、おおむね220万~550万円ぐらいの間となっております。求人メディアも見ますと、年収帯においても取り扱う職種においても、ハローワークや民間職業紹介事業者の取り扱う求人の両方と重複が見られる状況です。
13ページは、入職経路別の求人の状況で、それぞれ各媒体における職種別の掲載求人数を上位10職種並べております。特徴を見ますと、まず真ん中の民間の職業紹介、こちらが一番多い部分が保健師、助産師、看護師となっております。その下も例えば歯科医師、薬剤師、獣医師といったような、専門的な職業の求人が多いことが見て取れます。一方この表で見ますと、緑の四角囲みされている介護サービス関連の求人はハローワークや民間の職業紹介といったところが中心となっております。赤い枠囲みの部分で飲食関係、接客関係の求人を見ますと、コストの高い民間職業紹介よりもハローワークや、求人メディアといったところに飲食関係や、接客関係の求人が多く見られる状況が見て取れます。
14ページ、どういったところを利用して入職しているのか、経路別の入職割合を見たものが左の折れ線グラフです。こちらは、2000年から一貫して、広告を経由した入職者が最も多いということになっております。変動はありますが、どの経路もおおむね10%程度の幅で推移しており、傾向としては全体的な構成としては大きな変動は見られない状況です。右のグラフの入職者数については各年変動がありますが、2000年から2019年までの間を見ますと、約230万人入職者数は増加しております。
15ページは、就職件数です。左の折れ線グラフを見ますと、ハローワークを経由した就職件数は、景気動向等を受け2012年度以降減少する形になっておりますが、下の民間職業紹介事業者を経由した就職件数を見ますと、景気動向に関わらず就職件数は増加している状況になっております。右の職業分類別の就職状況を見ますと、ハローワークでも民間職業紹介事業者でも、一般事務が最も多くなっております。そのほか、民間の職業紹介事業者を経由した就職では、看護師や配ぜん人、いわゆるマネキンをはじめとする商品販売の職業が多くなっている状況です。
これまで、データ関係を中心に見てきました。続いて、雇用仲介機能の状況で、17ページです。労働力需給調整機能の全体像を書いております。上から労働者派遣事業や職業紹介事業、ハローワーク、労働者供給事業、募集、募集情報等提供事業ということで、様々な事業の形態があります。それぞれ例えば、労働者派遣事業であれば許可制が設けられている。有料の職業紹介事業であっても許可制が設けられている等々、様々なステークホルダーごとに規制が掛けられている状況です。
こうした中で、18ページは人材サービスの全体像です。人材サービスにつきましては、雇用を仲介するサービスと労働者派遣・請負に大別される状況です。雇用仲介の中を見ますと、職業紹介事業、ハローワーク、募集情報等提供事業ということで、単純な求人数で見ますと、募集情報等提供事業者の規模が多くなっている状況です。
19ページ、先ほど紹介しました職業紹介事業者、ハローワーク、募集情報等提供事業者といった雇用仲介のサービスは、職業安定法の中に位置付けられているところですが、職業安定法の制定・改正の経緯を書いております。一番下の平成29年の3番目の○の箇所ですが、平成29年に募集情報等提供事業の定義付けがされ、講ずべき措置が指針に定められており、求人サイトや情報誌等について、法律での規定が設けられている状況です。
20ページは、雇用仲介機能のイメージを描いております。こうした雇用仲介のサービスが、どのように変化してきているのかというものを、イメージとして表した資料です。左の従来の部分では、ホワイトカラー系の高年収の職種を民間職業紹介事業者がカバーしている一方で、サービス・ブルーカラー系の比較的年収の低い職種の部分を、ハローワークが扱うという棲み分けがなされていた状況です。右の近年の部分で、民間職業紹介事業者の取り扱う職種であったり、年収の下限が拡大する一方で、求人メディアが紙からインターネットに変わっていくとともに、幅広い職種・年収を取り扱うようになってきております。ハローワーク・民間職業紹介事業者・求人メディア、こういった3者の領域が重複している形になっております。かつ、IT技術の進展によって、「おまとめサイト」「アグリゲーター」といった新しいサービスが様々登場しております。詳細は、また後ほど御説明いたします。
こうした雇用仲介のサービスのそれぞれについて、概要を説明している資料がこれから続きます。まず、ハローワークですけれども、こちらも御案内の情報が多いかと思います。全国のハローワーク、ハローワーク・インターネットサービスを活用した職業紹介等を行って求職者・求人者それぞれに向けてサービスを提供しているということで、詳細については資料をご覧いただければと思います。
24ページを御覧ください。民間の職業紹介事業について、法律の規定を押さえておきたいと思います。職業紹介について、職業安定法に定義が書かれております。この法律において職業紹介とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすることをいう、という定義が置かれております。下の図を見ますと、求人者からの求人申込みがあって、求職者からの求職の申込みがあって、そうした求人者や求職者の雇用関係の成立を紹介事業者があっせんするというそれぞれの行為があって、その上で職業紹介という定義になっております。この職業紹介につきましては、様々職業安定法の中で規定をしておりますが、まず有料・無料職業紹介ともに許可制となっており、一部届出制や通知制があります。許可要件として、例えば財産的基礎を有することや、職業紹介の責任者が選任・配置されていること、個人情報を適正に管理すること等を定めております。取扱職種の範囲は、有料職業紹介については港湾・建設業務に就く職業以外の職業にすることとされております。手数料につきましては、一部職種を除き、求職者からの手数料徴収は禁止されております。そうした規定を担保するために、法令違反是正措置ということで、様々な指導・監督の規定もおいているというところが職業紹介事業の部分です。
25ページは、民間の職業紹介事業の市場拡大で、棒グラフで職業紹介事業所数を示しております。こちらは1985年の職業安定法の改正により、営利の有料職業紹介事業が誕生して以降、一貫して増加している状況が見て取れます。特に1999年度の職業安定法の改正におきまして、紹介事業の取扱職種が全面的に解禁されたこと等により、事業所の増加が顕著となっている状況が見て取れます。2019年度におきましては、有料職業紹介事業所25,684か所、無料の紹介事業所が1,076か所、合計26,760か所となっている状況です。
26ページは、募集情報等提供事業の概要です。こちらも法律の規定を押さえておきたいと思います。この職業安定法第4条第6項で、募集情報等提供とは、労働者の募集を行う者の依頼を受け、募集に関する情報を労働者になろうとする者に提供する、又は労働者となろうとする者の依頼を受け、当該者に関する情報を労働者の募集を行う者に提供することをいうとされてあります。下の図を見ますと、募集企業と労働者になろうとする者、募集情報等提供事業者、つまり求人サイトや求人情報誌ですが、こうした3者がおり、青い矢印を見ますと、募集企業が募集情報等提供事業者に求人の情報の提供を依頼して、それを受けて募集情報等提供事業者が、労働者になろうとする人にそれを情報提供する、又は逆の緑の矢印ですが、労働者となろうとする人が募集情報等提供事業者に自分の情報を提供するように依頼して、その情報を募集企業に情報提供することが、募集情報提供事業とされております。先ほどの紹介と違うのは募集企業と労働者になろうとする人との雇用契約の締結に向けたあっせんがここには存在しない点です。右下の職業紹介との区分については、厚生労働省の告示で定めております。(ニ)のイですが、あらかじめ明示的に設定された客観的な条件に基づくことなく、募集情報等提供事業者の判断により情報の選別又は加工をしますと、職業紹介に当たることになる。ロやハに書いているような情報の加工を行うことは、職業紹介に当たるということで、今、厚生労働省の告示の中で区分を定めている状況です。
27ページは、募集情報等提供事業の適正化です。主に一昨年にあったものですが、就活生の内定辞退可能性を推定し、本人の同意なしに募集企業に対して販売していたサービスがありました。こちらを受けて、厚生労働省からサービスの提供事業者等につきまして、職業安定法に基づく指導を行いました。下にありますが、業界団体に対しても募集情報等提供事業等の適正な運営を要請したということがありました。資料にもありますが、(1)募集情報等提供事業の事業範囲、(2)個人情報の適切な取扱いをすること、(3)個人情報のみだりな情報提供は禁止するようにということ、(4)不適切な事案が生じてしまった場合の対応について、要請をさせていただきました。これを受けて業界団体においては、募集情報等提供事業者が広く連携して自主規制を行うという観点で、ガイドラインの策定や求人情報を適正に提供している事業者を選別することができるように、適合メディア宣言といったことも行っている状況です。
28ページは、個人情報の保護についてです。職業紹介事業者につきましては、右下の個人情報保護法を書いておりますが、個人情報保護法では個人情報の利用目的の特定や、利用目的外の利用制限、第三者提供の制限等々の規制が設けられております。それだけではなく、職業安定法に基づき、職業紹介事業者は個人情報を取り扱うことが義務付けられております。職業安定法の第5条の4等において個人情報を取扱いに当たっての留意事項ということで、規定が掲げられております。他方、募集情報等提供事業者については、こういった職業安定法等の法令上の義務の対象にはなっていないということで、現在は厚生労働省の定める指針の中におきまして、職業紹介事業者が講ずべき措置に係る規定を踏まえることとされております。
29ページは、多様化する人材サービスについてです。従前からあります求人メディアや、合同会社説明会だけでなく、IT技術の発展やインターネットの普及に伴い、様々な人材サービスが展開されている状況です。下の表を見ますと、特に求人企業が情報を提供するだけでなく、求職者が求人企業などに自ら情報提供をするようなサービス、求職者の情報をプールする個人データベースサービス、ポートフォリオが進展している状況です。ソーシャルリクルーティング(SNS)とありますが、求人企業と求職者の双方が互いの情報を総覧することを可能とし、プラットフォームの役割を果たす一方で、直接的に雇用関係の成立をあっせんしないサービスも出てきております。先ほど申し上げたアグリゲーターなど、求人メディアが掲載する求人広告や、企業サイトから求人情報を収集して掲載するといった、おまとめサイトという形でのサービスも出てきているということで、様々な人材サービスが展開されています。
30ページは、求職活動におけるインターネットの利用状況です。こういった様々なサービスが出てきている中で、利用している求職者の側からしても、2008年には求職活動でインターネットを利用した方が3割ぐらいだったものが、年々増加してきており、2018年には半数を超えている状況です。利用したサイト等の状況では、求人広告会社のサイトを利用している求職者が増加しているというが下のグラフから見て取れます。
最後のページは、人材採用における求人企業プロセスと求職者活動です。求人の企業の採用プロセス、求職者活動、それぞれ様々な段階があるかと思います。民間の人材サービスにつきましては、それぞれのフェーズごとに様々なサービスが展開されているとともに、一気通貫でサービスを提供する事業者も登場している状況です。(1)~(15)に様々なフェーズがありますが、今回の研究会において雇用仲介、民間人材サービスというところで、特に取り上げたいところは、(7)(8)選考母集団形成ととしてお示ししております。求人・求職サイト、人材紹介エージェントと書いておりますが、こういったところを、特に御議論いただきたいと考えております。
資料4の説明については以上でございます。
続きまして資料5、主な論点(案)を示させていただいております。(1)IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方。(2)有料職業紹介事業や募集情報等提供事業を、より適正かつ効果的に運営するための制度の在り方。(3)働き方や職業キャリアの在り方が多様化する中で、需要サイドと供給サイド双方にとって機能的な労働市場を実現するための制度や官民連携の在り方を、主な論点(案)で示させていただいております。
続きまして資料6、今後の進め方(案)と示させていただいております。本日、主な論点や今後の進め方、現状の整理等々を示させていただきました。今後につきましては、労働市場の状況に関して関係者のヒアリングを行い、2月~4月ぐらいまで、募集情報等提供事業者や職業紹介事業者、有識者の皆様方からのヒアリングを中心に行っていきたいと考えております。そうしたことを踏まえて、5月以降、論点整理を行い議論ということで、今後は進めさせていただければということでお示しさせていただきました。
私からの説明は以上でございます。
 
○事務局 資料4~6までの御説明を申し上げました。今ほど事務局から御説明申し上げた内容につきまして、各委員、疑問点ですとか、御質問ございましたら自由に御発言いただきたいと思います。
 
○鎌田座長 資料5の主な論点の所に関わると思うのですが、主としてこの議論の対象になってくるのは、雇用仲介事業ということで、民間の雇用仲介事業が今は対象ということなのですが、先ほど資料の中にありましたように、ハローワークも非常に密接な関連をもって、この労働市場の中では活動しているというように思われるのですけれども、ハローワークについての議論というのは、必要な範囲で議論する対象になっていると理解してよろしいでしょうか。ちょっとそこを確認させていただきたいのですが。
 
○事務局 ハローワークは、法律上、雇用仲介の機能を担う機関ですので、どこかの機会でハローワークにつきましても、機能やデジタル化の状況などを御説明申し上げた上で、その役割等について御議論いただければと思います。ハローワークの意義ということもあると思いますが、雇用仲介事業の一役を担う立場として、全体像を俯瞰していただくためにも御議論いただきたいと考えております。
 
○田中局長 少し補足ですが、ハローワークについては、単純に職業紹介だけを行っているわけではなくて、様々な雇用施策的な部分も担っています。それから、今回の議論とより関係が深いと思われるのは、ハローワーク・インターネットサービスというのは、ハローワークのためだけのものではなくて、ある程度、官民共通の労働市場の基盤という意味でも整備をしております。そういった意味で、ハローワークと捉えるべきか、あるいはもう少し広く、政府の役割と捉えるべきかという視点はありますが、そういった形で共通基盤を作り、その上で公共の職業紹介・人材サービスと、民間の人材サービスが適切に機能していく姿をイメージしながら議論していただきたいと思っております。
 
○事務局 よろしいでしょうか。では、本日第1回の会合ということで、御参集いただいております委員の皆様から、労働市場における雇用仲介の在り方などにつきまして、それぞれのお立場から、持っておられる問題意識につきまして、御意見をいただければと考えております。その後に、フリーディスカッションという形を取りたいと考えております。
それでは、アイウエオ順ということで、恐縮ですが、まず阿部委員にお願いし、安藤委員、大久保委員、鎌田委員、武田委員、中田委員、山川委員の順番でいきたいと思います。それでは、阿部委員、お願いできますでしょうか。
 
○阿部委員 おはようございます。会場に行けずにすみません。まず日本の状況を考えると、国際的に見ますと、長期失業者の割合が、その失業率の水準に比較すると、結構日本の長期失業者の割合は高いということが、よく指摘されるところです。その長期失業者の割合が、失業率の水準に比べて比較的多いということの背景には、たぶん雇用保険などの制度の在り方自体もあると思いますが、それと同時に労働市場の機能があまり効率的ではないというような面も、影響しているのではないかと思います。そういう意味で、確か2012年だったと思いますが、行き過ぎた雇用維持型の労働政策から、労働移動支援型への舵を切っていこうというようなことで、労働市場の機能向上とか、あるいは労働市場の高度化を図っていくということに大きく転換したわけです。そういう意味で、労働市場の効率性を上げていくための雇用仲介の在り方というのは、非常に大事なポイントだろうと、以前から思っているところです。
昨今、特にITCの技術が非常に高度化していることも相まって、あるいは最近のAIの活用といったことで、求職者と求人者どちらにも利便性が高まっているという状況はあるのだろうと思います。ただその一方で、マッチングプロセス自体がそれまで人間を通して行われていたようなものが、アルゴリズムを介してマッチングが行われるようなところも増えてきつつあるのだろうと思います。そういったアルゴリズムが主体になったマッチングというのは、そのマッチングプロセス自体ブラックボックス化していく可能性が高いと思いますので、これをどのように考えていくかというのは、論点にもありましたITの活用、IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方が、1つのポイントになるのかなと思います。ブラックボックス化してしまうといったことを、どのように考えていくかというのは、1つのポイントになるのかなと思います。
それから、新しいサービスが増えているというようなこともありますが、これまで職業紹介事業と募集情報等情報提供事業というのが大きく分けられていたわけですが、そこの垣根も徐々に低くなっているというか、境界が見えにくくなっているといった点をどう考えていくかということも、新しいサービスも含めて考えていく必要があるだろうと思います。
そうした中で、我々がどのようにこの問題を考えていくかという視点や観点を、みんなで共有したほうがいいかなと思っています。個人的にはやはり第一には、求職者保護の視点が大事かと思っています。求職者は、仲介事業者や求人メディアに比べれば、情報量が少ないし、求人企業と比べれば交渉力が弱いというような点から、やはり求職者の保護といったことを第一に考えて、どういった制度を作っていくかを考えていく必要があると思います。情報の正確性はもちろんですが、求職者保護といった観点から、マッチングのアルゴリズムをどのように適正なものにしていくのかといったものとか、あるいは職業紹介事業と募集情報等提供事業との垣根の問題を考えていければと思っています。以上です。
 
○事務局 阿部委員ありがとうございました。続きまして、安藤委員お願いいたします。
 
○安藤委員 日本大学の安藤です。よろしくお願いします。5つ私の考えを紹介したいと思います。
まず1点目は既に御紹介いただいた内容とかぶっておりますが、仕事と人とのマッチング形成というのは、内部労働市場と外部労働市場、この連携が必要だということ。また官民の連携が必要、この辺りのことはよく押さえる必要があると思っています。そして、先ほど資料4において、現時点ではコロナの問題があっても、求人が求職を上回っているという数値の紹介がありましたが、これは現在雇用調整助成金の特例もありますし、今後、今の仕事を失うということが増加していくのではないかということが考えられます。そこで先ほど阿部委員からも、労働移動型への方針転換という話がありましたが、やはり現在の厚生労働省の施策などを見ても、納得感があるなと思われる点があるのは、離職してから新しい仕事を学んだり、また新しい仕事を探すというよりも、在職中に出向であったり、又は副業・兼業を通じて、又は企業そのものが異分野に進出するようなことを通じて、今やっている仕事から別の仕事に移動する。ただし雇用関係は途切れないという形のほうが、生活の安定も図ることができるし、教育訓練を受けるインセンティブ、モチベーション、こういう観点からも適正なのではないか。そのような観点から、内部労働市場をどこまで使えるのか。これと外部労働市場との連携を冷静に見ていく必要があるだろうと考えております。これが1点目です。
2点目は、労働市場に限らず、仲介ビジネスというのは多様なものです。労働だけでなく、例えば不動産市場であったり、結婚市場でも結婚相談所があったりと。誰かと誰かを出会わせる、この仲介機能を考えた際に、それぞれ異なる規制が適応されております。例えば不動産賃貸では、仲介手数料に家賃の1か月分プラス消費税という上限があり、原則として貸し手と借り手で折半して、仲介事業者へお金を払う。ただし、本人たちが合意していれば、一方から取ってよいという形になっているので、多くの場合、我々が家を借りる場合には、借りる側が1か月分プラス消費税の手数料を払うというようなケースが一般的です。これと比較して、職業紹介事業では、一部職種を除いて求職者からの手数料は徴収できない。一見すると労働者保護に資するように感じられますが、労働者側からお金を取らないということは、嫌みな言い方をすれば、企業は求人企業のほうを向いてビジネスをするということにもなりかねないわけで、どういう形が労働者のためになるのか、その辺も考える必要がある。というわけで、ほかの仲介市場において、適用されている規制と労働市場における規制、その辺りについても他市場の規制なども参考に議論していく必要があると感じております。
3点目は今の話とも関連していますが、雇用仲介事業の事業者というのは誰からお金をもらっているのか、又はどこで稼いでいるのかということを理解する必要があると思います。例えばアグリゲーターのサービスをしている所は、表示される広告手数料で稼いでいるのであったら、サイトが視聴される回数が増えること、それが大事であるのかもしれないし、又は求人企業からお金をもらっているところであったら、お金を払ってくれる人に向けて仕事をするのは自然なことだと思います。そのことを前提として各企業が素直に行動したら、社会的に望ましい方向のマッチングが実現するような、そういう仕組みづくり、インセンティブ設計が重要だと考えております。
4点目として、求職者側がその構造を理解せずに、この雇用仲介サービスを利用しているケースも、まだまだあると考えております。身近な話ですが、私のゼミ生からこんなメッセージが届きました。就活エージェントという所に登録している他の学生から、お前も入らないかというお勧めの連絡をもらったと。就活エージェントというのはどういうものだかよく分からないのだけれども、1人で就職活動をやるのは不安なので登録しようかと思っているけど、先生どうですかねというメールを頂きました。いや、でもそれって、あなたがお金を払うわけじゃないでしょうと。どういう会社がどういう目的であなたにどういう情報を提供するのか、この辺りを考えたときに、大学のキャリアセンターのような、学生がより良い就職をすることに対してインセンティブを持つ組織に相談したほうがいいんじゃないのみたいなこと、少なくとも複数の所を並存して使ったほうがいいよみたいなことを紹介したのです。利用者が、そのビジネスモデルであったり、自分にとってどういう面で有益な情報があり、どういう面では自分にとって不利益なことがあり得るのか。こういうことをまだまだ理解していないという可能性もあるので、この辺り、各事業の特性であったり、そういうものについての情報提供を、利用者に見せていく、このようなことも必要かなと感じております。
最後の点です。求人情報サイトでどのような形で見せ方を決めているのか。以前は一般的であった紙媒体では、例えばアイウエオ順とか、ABC順もあったかもしれないし、広告料を払った所を上にする、そういうこともあったかもしれない。しかし、阿部委員からもございましたが、最近は例えばAIによって基準がブラックボックス化している。またその内容も過去の事例を踏まえて、表示の基準であったり誰にどういう情報をどういう順番で見せるのか、これも動的に変わってきております、そうなると先ほど御紹介いただきました告示の基準で、表示情報等の提供と職業紹介の境目26枚目のスライドでしょうか、あらかじめ明示的に設定された客観的な条件という、その基準がAIを通じて見せ方を変えているとなると、どう考えるべきなのか。その辺りも考える必要があると思っています。どういう見せられ方をするかというのは、仕事を探している人間にとって、自分の適職に出会えるというチャンス、その機会を提供するとも考えられますが、より多くの広告料を払った企業のマッチング確率が上がるように、そういうことだって十分に可能なわけで、その辺りをどう考えるべきか。例えば、事業者間の競争がある程度あるのであれば、変な情報を見せているサイトは使われなくなるというようなことを通じて、規制が余り強くなくともいけるのではないかという可能性もありますし、一部の事業者に実質的に固まってしまっていたり偏ってしまっている場合には、規制が必要かもしれません。新しいビジネスの発生を妨げないという視点も、十分に考慮する必要があると思います。
最近新しいビジネスが出てきていますという話ですが、それによりマッチングの効率が上がるという面も、多分に期待できるわけで、そのマッチングの効率性と労働者保護をどう両立させるか、その辺り労働者保護に走り過ぎて、新しいビジネスの芽をつぶしてしまうようなことは、気をつけたいと思っております。以上です。ありがとうございました。
 
○事務局 安藤委員、ありがとうございました。続きまして大久保委員お願いします。
 
○大久保委員 リクルートワークス研究所の大久保です。ワークス研究所は、人材ビジネスの研究を20年ぐらいやっています。多分、人材ビジネスの研究をやっている所はほとんどないと思うので、わりと珍しい領域だと思うのですが、それをやってみて、改めてしみじみと思うのは、20年間で人材ビジネスは本当に激変したのです。全く同じフレームで比較できないぐらい変わってきた。
何かというと、一番はテクノロジーの変化だと思うのです。そのことによって、一番何がよかったかというと、人を取りたいと思ってから、面接、選考を終えて入社に至るまで、この期間が劇的に短くなった。何分の一ではなくて何十分の一というレベルになった領域もある。これは当然ながら、失業期間を短くすることにも貢献するわけですし、企業の事業活動のスピードを上げることにも貢献するということで、大変ポジティブな変化の1つだと思うのです。テクノロジーを使って行うということになってきたことによって、プレーヤーが変化した。従来の人材サービス業で長く紹介事業とか、派遣業とかをやっていたプレーヤーじゃないプレーヤーが、今はどんどんシェアを広げているという状況です。典型的に言えば、いわゆるプラットフォーマーと呼ばれるような所が、一領域として、雇用マッチングの領域もやると、あるいはSNS事業者が、そのサービスの中でマッチングの領域のサービスに手を出していく。あるいは、もともとは全然別のデータベース事業をやっていた所が、そのデータベース事業を変化させて人材サービス事業的にやっていることもある。そういう形で随分プレーヤーが多様化し、変化したということだろうと思います。特にそのテクノロジーを使って採用スピードを上げていくということに関して言えば、アグリゲーターなどが集めてくるみたいなこともできる状況です。昔のように一軒一軒、営業が訪問して求人票を作っていくという状況とは全く違います。また、アプリケーションのサービスをしているプロバイダーが、次々に新しいテクノロジーを使って短い時間で人を集めていくことになります。ソーシングの領域の所に競争の軸足が移っています。そこに主にビジネスの中心が動いていっており、ビジネスの競争のコンペティションの状況が変わってきている。こういうような状況が動いている中で、果たして我々は従来の人材サービスのフレームで、それを見ていって全体が見られるかどうかというのが、大きな問題だろうと思いますし、先ほどから出ています、職業安定法にあるような、職業紹介か否かということが、このテクノロジーをベースとした中で、機能し得るのかどうかということも議論しなければいけないテーマだと思います。これが1点です。
2つ目は、プレーヤーがグローバル化したということです。テクノロジーですから、作り出したものは1つの国だけで使うわけではなくて、他国でも当然使えるということになってきますから、進出をしていく。日本は実はこの国際競争から取り残されている。新しいテクノロジーが出てきても、日本は1つは日本語の壁があるということと、もう1つは必ずしも日本の国の労働市場というのが、グローバルに見たときに、それこそ魅力的かというと、優先順位が低いということがあるかと思います。進出が遅れていまして、やはりインドに行くかとか、シンガポールに行くかというほうが先になっている。インドのような国は、どんどん海外の雇用仲介サービスが参入してきて、人材の採用についてリーダーシップを取っている。逆に中国などはどちらかというと国内の事業者を保護する政策を取っているので、あの大きなマーケットで、中国資本の会社がどんどんシェアを伸ばしているという状況がある。その中で日本はどうなるか。日本国内でやっていたサービスの事業者と、海外でグローバルで展開している事業者のコンペティションがこれから進んでいく時に、日本のルールの在り方をどうするのかということは、考えていかなければいけない視点ではないかと思います。これが2点目です。
もう1つは、AIを使った事業展開の中、人材の雇用仲介ビジネスにおいて、一番根幹となる大事な保護の視点というのは、人権と個人情報ということにかなり集約されるのではないかなと思います。人権の問題というのは、日本は今、どんどんダイバーシティーが進んでいく中で、逆行するようなことが実際には雇用のマッチングの段階で起こり得ている。特によく指摘されるのは、AIというのは、アンコンシャス・バイアスを再現してしまうということがある。そして、そのこと自体がブラックボックス化してしまうこともあるわけです。それをテクノロジーでどうやって回避していくかが中心的な領域にもなり始めている。そういうような人権の問題とどう向き合うか。個人情報もどういう形に具体的なマッチングの領域で保護していくか。ほかの領域とも違ったナーバスな状況がある中で、個人情報の問題をどのようにルール化していくのか。人権と個人情報の保護の問題は、職業安定法だけの問題ではないということだと思うのですけれども、そこを議論をしていく必要があるというのが、3点目です。
そういうことで、前回の職業安定法改正の時も議論がありましたが、それ以上に、今申し上げたようなところは、特に変化の大きかったところだと思います。そういった前提を踏まえて議論を進めていければなと思います。以上です。
 
○事務局 大久保委員ありがとうございました。続きまして鎌田座長お願いいたします。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。私もこの労働市場に関しては、幾らか考えてきた者の一人なのですが、少し歴史的スパンで見ますと、労働市場に関する法制度というのは、3つの時期に分かれると思います。第1期と言いますか、1999年職業安定法の大改正があるまでが第1期と捉えているのですが、それはどういうことかというと、労働市場というのは国家が基本的にはコントロールするのだという考え方ですね。法律家は国家の職業紹介、国家独占と言っていたのですが、それはILOの98号条約などあって、それが労働市場というのは他の市場と違って、国家が管理するのだという基本的なグローバルスタンダードがあったわけです。それが1997年、ILOの181号条約ができて、民間と国とが協同して労働市場をコントロールするのだと大転換をして、それを踏まえて1998年、東京大学の菅野先生が座長で、労働力需給調整の研究会で、私もその委員でまだ当時若かったのですが、大改革というものをやったのですね。
そのときの主なテーマというのは、ハローワークと民間の仲介事業との役割分担はどうするのかというのが、非常に大きな議論のテーマだったのです。そのときの民間の雇用仲介事業は何がイメージされていたかというのは、有料の職業紹介事業と労働者派遣事業だったのです。ILOの181号条約では、それに加えて情報提供事業というのも定義の中に入れていたのですが、その当時の1999年職安法の中では定義付けされなかったのですね。それは、いろいろな歴史的な経緯もあるわけですが、一応、職業安定法の大改正によって法制度的には民間事業というのが、労働市場の中のパートナー、あるいはプレーヤーとして認められた。それがずっと続いてきて、つい先だって、これは阿部委員が座長をされた研究会の議論を経て職業安定法の改正になったのですが、情報提供事業、求人メディアを職業安定法の対象にするということで、言ってみれば、1999年の職業安定法のときの宿題が解答できたという状況になってきました。ところが今、皆さんもお話いただいたように、労働市場というのは、それにとどまらない状態です。非常に大きな変化を生じておりまして、既に何周回後れの状態になっているというのが私の実感です。これはもう皆さんがいろいろと雇用仲介事業の多様化についてのお話をされているので、私も同感であります。
一言で言うと多様化ということなのですが、まず職業安定法で対象にしている職業紹介、派遣、それから求人メディア、これにとどまらない様々な雇用仲介的な機能が、労働市場の中で拡大している。これをどのように位置付ければいいのかということが大きな問題であり、これは外側に法制度の外縁をどう拡大するかということかと思います。
もう1つは、その従来職業紹介、募集情報等提供事業と分けていたけれども、この区分が改めて曖昧になってきたというのは、これはもう皆さんが御指摘のとおりです。非常に境界線が曖昧になってきていて、これをどのように考えて、どう整理していけばいいのかということが課題です。とりわけ、皆さんもよく御存知のことですが、仲介事業の位置付けによって法規制が全く違うということは、法律家にとってはなかなか難題です。ちょっと違うと、天と地の差と言いますか、こういったことが非常にビジネスをする上で障害になっているのではないかというのが私の第一感でありまして、これをどのようにしたらいいのかということがあります。
それから特に求人情報に関して言うと、基本は求人企業と、それから求職者との間で適正な活動ということが大事だと思いますが、第一義的責任は求人企業にあると思うのですが、しかしながら仲介に入っているこの仲介事業者も、このような良質な信頼のできる情報を提供するということから考えますと、決して責任というのは軽くはないと思いますので、是非こういった事業者としての在り方、あるいは情報の的確性を確保するための工夫が必要かと思っています。
それから最後となりますが、求職者にとって安心して職業を選択できるような仕組みを作ることが、基本であると思うのですが、ところがこの求職者も多様化していて、求職者の属性に着目した問題を考えていかないといけないだろうということです。従来、例えば派遣の対象、職業紹介の対象、有料職業紹介の対象、それから求人メディアの対象、先ほど資料の中にも説明があったわけですが、少子高齢化で高齢者というのをどう考えるか、それから転職者が拡大していくと思われる中、日本的雇用慣行のある種の変化の中で、転職者が増えていく。この転職者が安心して働けるような仕組みを、労働市場の中で仲介する上で、ポイントとなる必要な工夫が必要と思います。それからもう1つ、これを強調しておきたいのは、特にコロナのときに、生活困窮者というのでしょうか、就職弱者の方たち、この人たちに、現在の例えば求人メディア、有料職業紹介、派遣、ハローワークというのがうまく機能しているのだろうか。この人たちに本当に雇用機会を提供する上で機能しているのだろうか、ここが非常に重要なポイントだと私なんかは思っておりまして、求職者保護ということであるのですが、是非このようなことも議論をしていただきたいと思います。以上です。
 
○事務局 鎌田座長、ありがとうございました。では続きまして、武田委員、お願いいたします。
 
○武田委員 ありがとうございます。武田でございます。よろしくお願いいたします。冒頭、局長からお話がありましたとおり、大きく労働市場が構造変化をする中、この研究会では将来を見据えて、より良い労働市場を築いていくため、その下で仲介の在り方をどう考えていくかという意識を持って参加させていただきたいと考えております。その上で、本日は初回ですので、議論の前提として考えていることを、3点申し上げます。
1点目は、労働市場の真の課題は何かということです。先ほど事務局から御説明いただいた資料の中にもありましたが、近年、矛盾する2つのことが同時に語られています。労働力人口が減少していくので、人手不足が構造的に強まっていくということ。一方でAIなどによって雇用が奪われていくため、労働力が余っていくとおっしゃっている方もいます。我々が数年前から分析している結果に基づき、結論を申し上げると、真の課題は量の問題というよりはミスマッチの問題です。労働力人口が減っていくのも事実ですし、一方でAIやロボティックスの進化により、人々に求められるタスクも変化していく。要はそのタスクの変化に対して人々がどのように変わっていけるか。変わっていけないと、マクロとしては労働需給に大きな問題がないとしても、ミスマッチが起き、雇用にたどり着けない方々が増えていくとの問題意識を持っております。残念ながら、コロナによってその傾向は加速する、時期が早まると考えており、そのミスマッチを解消するための取組も、加速させていかなければいけないというのが1点目の問題意識です。
2点目は、ではどうしたらいいかということになります。当社では数年前から労働市場のミスマッチを解消するために、FLAPが必要と提言してきました。
FLAPのFはFindです。人々がまず変化が起きるということを知っていかなければいけないということです。冒頭、局長のお話にもございましたが、今は一人一人が自分のキャリアを真剣に考えるようになっていますので、適切に将来このように変わっていく、同じ職業でもタスクの中身はこのように変化していかなければいけないという、一歩先を見据えた情報がきちんとあれば、FindのFという気付きは、得られるようになってきているのではないかと思いますが、それを正しく提供できているのか、情報インフラ、職業やスキルの見える化が整備されているのかは課題です。。
FLAPのLはLearnです。学び、リカレントです。この研究会では中心テーマではないですが、学びが極めて重要と思います。
FLAPのAがActで、行動になります。先ほど安藤委員からお話がありましたとおり、全員が必ずしもすぐ転職するのではなく、日本の特徴なんかを考えますと、内部労働市場の中でのスキルの変化と成長分野への移動もあるでしょうし、外部労働市場と連携させ転職をより効率良くするため流動性を高めていくことと、複合的にやっていくことと思います。
最後のPがPerformanceで、学んで行動して、より生産性の高い分野で必要なスキルを身に付けたら、それが評価され報酬などにもつながっていくようにならないといけない。日本全体としても、生産性上昇と賃金の上昇が両立しないということが、長年の課題で、ここを解決していかなければいけないと思います。一人一人の評価と報酬が上がっていけば、企業としてもまた次のFindを与え、Learnにつなげていく、FLAPの循環につなげることが可能になりますので、最後のPもかなり重要と思います。
3点目、FLAPを回すためにマッチングの効率を高めていく、FLAPのFである気付きを高めるために、職業情報のインフラ環境・整備を進めていく必要があると思います。
テクノロジーを活用した様々なサービスが広がっており、先ほど大久保委員からもご示唆を頂きましたが、多様なサービスが生まれグローバルにも参入が増える中で、必要なスキルやスキルの変化に関する情報が、会社によりばらばらでに蓄積されています。多様と言えば多様なのですが、ばらばらな情報をどのように共通言語化していくかは、Fの観点から大事であり、様々なサービスが生まれる中、国として何ができるのか、共通言語を整備することによって、民間サービスがより機能することはないのか、検討していく必要があると思います。
また、マッチングがますます重要になる中、より良く解決されるには、新しいサービスの創出は阻害してはならないと思います。一方で、鎌田委員もおっしゃられましたが、個人情報や人権の問題にはしっかり対応することが大前提であると考えます。この辺は皆様と同じ考えかと思います。以上です。ありがとうございます。
 
○事務局 武田委員、ありがとうございました。続きまして中田委員、お願いいたします。
 
○中田委員 三菱ケミカルの中田と申します。私は求人企業側として、どのような課題意識を持っているかというお話をさせていただこうと思います。
まず、企業の中で今どのようなことが起こっているかといいますと、若手の人たちの職業意識というのは確実に変わってきていまして、このまま一生この会社に勤めるかどうかは分からないという人が多くなっています。また、本当かどうかわかりませんが、新卒で入る時にお世話になった情報提供の会社から、また何年かたつとお誘いが掛かるという、そのような仕組みができているという人もいます。普通は大体、登録していて当たり前という感じになっているというように聞いています。
今、テレワークの状況になってきまして、このコロナ禍で製造現場は別ですが、オフィスなどですと大体出社が2割ぐらい、8割がテレワークで自宅で働いている又はサテライトオフィスで働いているというような状況です。私もオンラインでいろいろそうした人たちと話をするのですが、やはりこの環境下で自分は何のために働いているのだろうかということを考えるようになったと、決してこの会社が嫌だとか転職したいということではないのだけれども、そもそもに立ち戻って考えるようになったという声がよく聞かれます。
また、非常に転職をしやすい状況になっておりまして、今、採用もほとんどオンラインでやっておりますので、登録している会社から声が掛かって、自宅で簡単に面接ができて、簡単に決まってしまうというようなことになっていると思います。頂いたデータでは、2020年度のものはありませんでしたが、2020年度は飛躍的に労働移動というか労働市場の活発化が伸びるのではないかと思っております。
企業側の問題意識としては、私どもは4点ほどございまして、1点目は求人一つ一つに非常に手間が掛かるということです。キャリア採用の場合はジョブ単位で募集をしておりますので、求める人材層など、いろいろテキストでは表現しにくいような所もございまして、会社さんごとに擦り合わせですとか、それから一社一社とコミュニケーションを取って事業情報を交換して理解をしていただくということで、非常に俗人的で時間が掛かっております。そういった問題意識が1つです。
あと、これはインターンシップですので文科省の管轄かと思いますが、新卒のマッチングという意味ではインターンシップが非常に役に立っておりまして、いい人材が採用できています。ただ、このインターンシップが、また学校ごとに人数も、それからフォームも違いますし、後の報告の要請事項も全く違いますので、非常に手間が掛かっています。ただ、マッチングには非常に重要だと思っていまして、これからのキャリア採用に関してもまずは体験してもらって、お互いに良ければ進めましょうという形が増えてくるかなと思っています。これが今のインターンシップと同じように、個別にやっているととても大変で、今は出向の受入や出向に出すというのも全部個別でやっています。その辺、もう少し効率化ができるとお互いにメリットが高いかと思っています。
それから、仲介業者さんのフィーが高いというのも現実的なところとしては非常に苦しいところでございます。サーチ型はそれだけの時間を使って頂いていますので、それはある程度仕方がないと思うのですが、登録型でも30%程度の水準、そのジョブの難しさや人材プールの大きさといったことが反映されていないところは使いにくい形です。また、サーチ型ですと着手金や最低補償が必要でしたり、一定期間は他の仲介会社に声を掛けてはいけないとか、いろいろな縛りがあり、その辺、何か全体としてうまく見直しができないだろうかと思います。市場原理だけではなかなかうまくいっていないのではないかといった問題意識があります。
4点目は労働市場についてなのですが、マーケットに出てくる人が非常に限られている。当たり前なのですが、転職の意識があって登録している人しか出てこない。なかなか会社として欲しい人材がそこにいないというようなことがあります。製造の現場の非常に経験が豊かな人であるとか、又はスペシフィックに労務関係に非常に強い人ですとか、もしかしたら、その人たちがその会社の中では十分活躍されていない状態かもしれないのに、そうした人たちは出てこない。登録している人たちも今すぐ転職をしたいのか、一応登録だけしているのかというのが分からない。また、今回は不成立だったけれども数年たってまたちょっとアプローチしてみたい、お互いに興味があるというようなところも個別にやるしかないというところがありまして、一番最初に申し上げた手間が掛かるというところも一緒なのですが、何か共通のプラットフォームのようなもの、ハローワークでせっかく入れていたベースがあるので、ただそこはかなり範囲が限られてしまうと思っています。それがプラットフォームとしてしっかり個人情報が保護されて、でも必要な人が見に行けるというような何かがあるといいなというのが、民間の企業側からの今の問題意識と御検討いただきたいなと思っている点です。以上になります、ありがとうございます。
 
○事務局 中田委員、ありがとうございました。最後に山川委員、お願いいたします。
 
○山川委員 東京大学の山川でございます、よろしくお願いいたします。まず、ミクロ的には先ほど来、様々な仲介ビジネスの実態を御紹介いただき、大変興味深く思っております。法律の観点からすると、鎌田委員がおっしゃいましたようにデマーケーションというか、区分の問題が非常に重要になってくるので、できるだけ実態を広く把握して検討ができればと思っております。その中で、法律のどの要件との関係で問題が生じるのかも明らかになればよいと思います。先ほどの紹介と情報提供の区分ですと、告示に出てきたような法律上は、真に情報の提供といえるのかどうか、そこがポイントかなという感じがしていました。一体、今の法律のどの要件の所に問題があるのか、あるいは問題があるのかないのかということを視点として検討していければと、ミクロ的にはそういうことを考えております。
若干、マクロ的な話になると、検討事項にもありますように、基本理念のようなもの、あるいはそのための手法のようなものが重要になってくるかと思います。これまでの、特に制定当時の職業安定法は労働市場のマイナス面を除去するという発想が非常に強くて、刑事罰中心あるいは行政の取締り中心の法律になっていて、それは今でも重要な面があると思います。ただ、現状はやや情報の保護というような、個人情報の保護という点に焦点が変わってきているという点は変化かと思います。そうしたマイナス面の除去のほかに、市場のプラス面をより促進させるという方向も、特に人手不足下の市場ではあるのではないかと思っています。例えば、労働市場と言うと何となく労働者だけ競争しているようなイメージがあるのですが、実は人手不足の状況ですと企業、求人企業も競争している。より良いチャンスとか条件を提供することによって良い人材を集めるということで、企業にとっても競争の場だと思っています。
それによって市場が機能していく。それを促進できるような法律が今でも段々と出てきており、最近の職業安定法改正もそうですし、あるいは女性活躍推進法の情報公開や若者雇用促進法もそうですが、そういう形で市場をより機能させる方向に現在の法政策は既になりつつあると思います。そういう観点が理念として1つ出てくるかと思います。
もう1つは市場の高度化、これは仲介ビジネスとの関係で、どういう位置付けができるのかまだ自分ではよく分かっていないのですが、国際競争などを考えると、日本の労働市場が高度化していくことがいろいろな意味で課題になると思います。それを促進するような仲介ビジネスの在り方というのがあり得るのかという点も関心を持っております。
そのように、マイナス面の除去からプラス面の促進というように、理念を追加することがありえますけれども、政策実現の手法も、先ほどの女性活躍推進法にありましたように、従来型の刑事罰的なものに限られない手法が出てきているので、新しい理念に対応する手法は何かということも、具体的に考えていく必要があるのではないかと思っております。
あとは皆さまから御指摘が多いのですが、大久保委員からも先ほどお話がありました国際化という点も、特に法規律という観点からすると、人は国際化するし、企業も国際化するということになりますと、現在の法システムでどういうものが対応可能なのか。そもそも実態がよく分からないということもあるかもしれませんが、そういった国際化への対応も頭のどこかに入れておく必要があるかと思います。
もう1つ、やはり新たな発想がいろいろ出てきて、あるいは新たなビジネスが出てくるとなりますと、国際的に、比較法といいますか、他国ではよりそうした状況が進んでいるとすると、どういう手法を労働政策として取っているのかという点も、調べられる限りで把握できれば非常に有効ではないかと思います。また、先ほど鎌田座長のお話にもありましたILOとの取組も注目に値すると思います。
最後になりますけれども、今の点とも若干関わるのですが、求人誌を見ていると、昔の知識しかないのですが、必ずしも雇用労働者に限らないような形の情報提供があったりして、今日の資料の中にも委託型の場合をどうするかという点があります。今、政府全体でフリーランサーとか、労働者に限らない方の支援、あるいはそれに対する法的な取組が課題になっています。昔、「2035年働き方の未来」という研究会に参加して、そこでは非労働者化が進展した場合における法規制の在り方のようななことを検討したのですが、ある意味でマッチングサービスは、労働者であるかどうかとどの程度問題とする必要があるのかをその時も既に議論したことがあります。これは労働法の根幹に関わることでもあるので、この研究会だけでどうということではないかもしれませんけれども、労働者かどうかはっきりしない方々、あるいは労働者でないけれども、ある種交渉力が弱い立場にあるとか、そういった方たちもある種の労働市場に属していることは間違いのないことですから、そういう現象にどう対応するかも視点としてはあってもいいかなと思っております。以上です。
 
○事務局 山川委員、ありがとうございました。一巡いたしましたが追加の意見や御発言がありましたらお願いできればと思います。
大久保委員、お願いします。
 
○大久保委員 日本の転職の仲介機能はより高度化していく必要があると思います。他の国との比較の中で気になっていることを追加で申し上げたいのですが、転職の国際比較調査を以前にも何度かやったことがあります。10数箇国比較をやったのですが、日本の転職者は最も転職によって賃金が上がらない。確かに、ほかの国の人と比べると、日本人は転職の理由として、報酬ではなく人間関係を理由にする人が多いので、そういう理由にも絡んでいるのかもしれません。それにしても上がらないのです。しかも、転職すればするほど管理職とかの上のキャリアに行ける可能性が減るのです。日本以外の全ての国は転職により上のポジションを取っていくのがスタンダードなので、これはすごく分かりやすく、日本と日本以外に分かれます。
あるいは日本がOECD主要国の比較の中で、最も、例えば大卒でなくとも就ける仕事に大卒者が応募している。つまり学歴がちょっとオーバーになっている。それは大学等の教育投資がキャリアの中ではうまく回収できていないということなのかもしれませんが、そういう傾向がはっきりと出てきています。
あと、最も日本の転職者が日本の国内だけでドメスティックに転職活動をやっていて、海外に行く志向も、実際に行っている人も極端に少ない。選択肢を提示していないということももちろんあると思います。
これから日本も新卒採用だけでなく、キャリア採用、中途採用が増加していくでしょうし、転職によって長いキャリアを作っていくということになったときに、ちょっとこのマッチング機能は弱過ぎないだろうかと。先ほど、それこそミスマッチという話を武田委員もされていましたけれども、これって本当にミスマッチなのではないかという思いがあります。どうやってその機能を高めていくのかという視点をちゃんと持っておく、何らかの行動が必要という前提に立った上での議論をしていく必要があるなと実感しています。以上です。
 
○事務局 大久保委員、ありがとうございました。そのほか、各委員から御意見はございますでしょうか。
安藤委員、お願いします。
 
○安藤委員 今、大久保委員からあったミスマッチという話の中には、避けられるミスマッチと避けられないものが混ざっているように感じております。例えば、人間関係というのは実際に働いてみないと分からないという面は多分にあるだろうと感じております。他方、昨年でしたか一昨年でしたか、ある大手の銀行に採用された新入社員が、全国に支店があり配置転換があることを分かっていたはずなのに、東京以外に配属されたからという理由で、すぐに辞めてしまったということが報道されたりもしておりました。このように自分がどういう労働条件で雇われているのか、どういう働き方をする可能性があるのか、これを理解していたらその会社に入らなければいいということがありつつも、その辺、もしかしたら甘く見ていたのかもしれないし、理解が及んでいなかったのかもしれませんが、避けられるミスマッチを避けていない、避けられていないという面は注意しないといけないのかなと。こういう点で情報提供みたいな所も、まだまだいろいろとやる余地があるのかなと思っております。
また、人間の好みであったり働き方の希望というのは、やってみたら変わるということもあると思っています。全国求人情報協会の2018年の研究会に私も参加したことがあるのですが、大卒で就職3年以内に3割の人が辞めてしまうという話でアンケート調査を取ってみた所、初職よりも企業規模が小さい所に転職した方でも、7割の方は転職して満足している、最初の仕事よりも小さい会社に移ったけれどもそちらの方が満足度が高いと答えています。また、初職と比べて転職先での賃金が1割以上減少したという方が5割ぐらいでした。転職したことによって賃金は1割以上下がっているけれども、この転職に満足しているという人が61.9%いるわけです。
ですので、最初の仕事にうまくマッチしなかった、こういうケースもあるわけで、どうやってミスマッチを解消するのかというのは大卒新卒就職に限らず、いろいろな場である話だと思っています。この辺、避けられるミスマッチと避けられないミスマッチを分けて、避けられるミスマッチをどう削減していくのかという観点が非常に重要かなと感じております。以上です。
 
○事務局 ありがとうございました、そのほか御意見等々ございますでしょうか。
鎌田座長、お願いします。
 
○鎌田座長 これはこれから議論をする上で、少し事務局にも考えていただきたいことなのですが、雇用仲介事業についての様々なビジネスモデルとか、それから先ほど来から話題になっている区分とか、そういうことは資料としても出てくると思います。一方で、求職者の側の属性と求職者のニーズ、転職におけるニーズということも、データとしてできれば御用意いただければと思います。例えば、就職氷河期の方たちに対する雇用機会ということで、いろいろな企業が努力されていると思いますけれども、1つは就職氷河期という時代的な問題もあったと思いますが、もう1つ、年齢の問題とか、日本的雇用慣行の裏の面と言ってもいいと思いますけれども、なかなか転職においても障害が大きいというのは、日本的雇用慣行もあると思うのですが、それはそれとして、高齢者や30代・40代の転職の方たち、特に障害のあることとか、あるいはキャリアがどのようにチェンジするのか。それから新卒者、若者、こういった方たちの労働市場に対する期待といいますか、あるいは仲介事業に対する期待、こういったことがデータとして、もしあれば御用意いただけるとありがたい。それはハローワークも含めて、どういった期待があるのだろうかを考えていただければと思います。以上です。
 
○事務局 ありがとうございました。そのほかございますでしょうか、よろしいでしょうか。では、本日、1回目としましては議論をここまでにしたいと思います。
本日の議論を踏まえまして、鎌田座長から総括をお願いできればと思います、よろしくお願いします。
 
○鎌田座長 総括と言うほど大層なものではないですが、私の個人的な感想ということで申し上げます。
皆さん、この分野での学識経験の豊富な方たちの御意見ということで、どれも私にとっては非常に有難いといいますか、勉強になった、有意義だったなと思っております。
今、幾つかキーワードというものを考えますと、1つは「多様化」ということを皆さん言われていました。求職者の多様化もありますし、雇用仲介事業者の多様化もありますし、そもそも労働市場の多様化もある。こういった環境に対してどういうようにこの問題を考えていくのか、そういうことだったと思います。
それから国際化といいますか、国際的な人材確保の競争の中で我が国の労働市場をどう考えていくかということの問題提起もあったのではないかと思います。
何よりも求職者目線に立った様々な問題意識、求職者の保護や個人情報の問題もあり、いろいろな観点からの御意見もあったのではないかと思っております。こういった御意見を頂いたわけですけれども、私としては利用者が安心して利用できるような雇用仲介機能というものを中心に考えていくということでは、皆さんが同じような立場でおっしゃっていたのではないかと思っております。
さらに、私が冒頭申し上げましたように、様々な変化の中でどういう議論、どういうような方向性を探っていくかということについては、今後議論をする上での必要な情報、資料、あるいはヒアリングを含めて進めていければと思います。今後有識者や事業者からのヒアリングを通じて、実態を正確に把握して更に議論をつなげていきたいと思っています。
以上です。
 
○事務局 鎌田座長、ありがとうございました。今後の進め方につきましては、先ほど事務局から説明しました、資料6に沿った形で進めてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。
本日は闊達な御議論を大変ありがとうございました。次回につきましては、また事務局より御案内させていただきたいと考えております。
それでは第1回研究会をこれにて終了いたします、どうもありがとうございました。