第3回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和元年12月5日(木)9:30~12 :00

場所

全国都市会館 第2会議室
(東京都千代田区平河町2-4-2)

議題

(1) がんゲノム医療推進に向けた取組について
(2) がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会について
(3) その他

議事

 
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」を開催させていただきます。
構成員及び参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の丸山でございます。よろしくお願いいたします。
本日、御出席いただいている構成員、事務局からの出席者については、座席表をもってかえさせていただきたく存じますが、構成員の御交代がございましたので、交代された構成員については、御紹介させていただきたく存じます。
石岡千加史構成員でございます。
○石岡構成員 東北大学の石岡でございます。
南博信先生の後任で、日本臨床腫瘍学会の理事長として構成員に加わらせていただきます。専門は腫瘍内科学です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 続きまして、瀬戸泰之構成員でございます。
○瀬戸構成員 おはようございます。東京大学の病院長を拝命しております瀬戸でございます。
私は、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議の代表として出席させていただいております。専門は、消化管外科学であります。よろしくお願いします。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 続きまして、藤原康弘構成員でございます。
○藤原構成員 PMDAの理事長になりました藤原でございます。
近藤先生の後任でございます。よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 なお、江川洋構成員、木下賢吾構成員、北川雄光構成員からは、御欠席の御連絡を頂戴しております。
現時点で3名の構成員の先生方がまだ御到着なさっていませんが、引き続き進めさせていただければと存じます。
また、本日は、参考人といたしまして、がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会の部会長であられます山口建先生、また国立がん研究センター中央病院のがんゲノム情報管理センターから吉田輝彦参考人にお越しいただいおります。
続きまして、事務局より資料の確認をさせていただきます。
本日はペーパーレスで実施させていただきたく存じますので、構成員のお手元にはタブレットを配付させていただいております。会議中、タブレットの操作について不明な点がございましたら、事務局に何なりとお声がけをいただければ幸いです。
現在、皆様に議事次第が開かれているかと思いますが、左上の「私のiPadへ」という矢印をタッチしていただきますと、資料の一覧をごらんいただけると思います。ファイルが全てそろっているか、確認させていただきます。
ゼロポツということで、2つ、座席表と議事次第がございまして、その後、01から05までが資料1-1から3-2までの5つのファイル。引き続きまして、06から13までで参考資料の一連が数字順にそろっていれば、全ての資料が入っていることになります。不備がございましたら、何なりとお申しつけください。
また、こちらでカメラをおおさめいただければと存じます。御協力をお願いいたします。
それでは、以降の進行は中釜議長にお願いさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○中釜議長 中釜です。本日もよろしくお願いいたします。
それでは、お手元の議事次第に従いまして進めさせていただきます。
まず、議題1「がんゲノム医療推進に向けた取組について」に移りたいと思います。
まず、資料1-1、1-2を事務局より説明いただき、その後、まとめて構成員から御意見や御指摘をお受けしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 それでは、再び事務局から失礼いたします。
お手元は、資料1-1のファイルをお開きください。前回の「がんゲノム医療推進コンソーシアム」、3月に開催させていただきましたので、この9カ月の間にありました進捗を御報告させていただきたく存じます。
資料の2枚目は、本コンソーシアムを含めた全体像のポンチ絵でございまして、この9カ月の間にありました1つのことは、6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載になりまして、それに伴い、厚生労働省といたしましては、今までがんゲノム医療の中核拠点病院と連携病院という2類型を指定していたところでございますが、このパネル検査の解釈を行える、10名以上の専門家に集まっていただくエキスパートパネルを開催できる病院ということで、追加で34病院、実態としては連携病院から申請があったものでございますが、これを指定させていただきました。
4枚目のスライドにその一覧を記載させていただいておりまして、名前が太字になっているのが中核拠点病院、太字でないものが拠点病院でございます。合わせて45カ所で、引き続き、それ以外の連携病院122カ所と、合計167の数は変わっておりません。
122の連携病院については、5枚目のスライドをごらんいただければと存じますが、患者さんのアクセスポイントということでは、47都道府県、これで網羅しているという状態でございます。
6枚目のスライドに移りますが、今、申し上げたとおり、拠点病院と中核拠点病院の45病院で、エキスパートパネルの自施設で解釈ができる病院ということで認定させていただいていますとともに、中核拠点については、さらに人材育成機能であるとか、治験や先進医療を主導していただく機能を担っていただくといった差別化を図っている次第でございます。
これらの体制でございますが、7枚目のスライドでございます。拠点病院については、保険収載後、速やかにということで、本年9月に指定させていただきました。中核拠点病院はもともと2年ということでございましたので、2020年4月に一旦、指定の見直しを予定しております。いずれも、本体制については、右のほうでございますが、2年後、2022年4月をもって一旦見直しをさせていただきたいという予定でございます。
また、連携病院は中核拠点病院または拠点病院が指定する病院でございますが、今後は年1回をめどに、中核拠点もしくは拠点病院から御報告いただき、厚生労働省のホームページを通じて国民の皆様に周知させていただきたいと考えております。
8枚目からが、現在始まった遺伝子パネル検査の結果や、その情報がどうやってC-CATに流れるかという、これは以前提示させていただいた資料になっているかと思います。
9枚目が、現在、利用可能なパネル検査、また先進医療の状況でございます。下の2つのカラムでございますが、現在は2製品が6月1日から保険収載されたという状況でございまして、続きまして、10枚目のスライドに、現在の位置づけということで、標準治療のある類型のがんにつきましては、その標準治療が終わった方に矢印のマル1でございます。標準治療のないがんの類型の方にあっては、確定診断が下った後ということで、マル2の矢印でございます。その状態で遺伝子パネル検査が保険収載となった次第であります。
おめくりいただきまして、11枚目が収載前の臨床研究のデータでございますが、TOP-GEARのデータによりますと、13.4%が治療薬に結びつくということでございましたが、本日、保険収載後のデータについては、資料1-2で速報という形でお知らせさせていただきたく存じます。
12枚目、13枚目が、そういった治療薬に結びつく患者さんが少ないということに対して、どう施策を打っていくかという図でございまして、12枚目は、そういった治験や条件付き早期承認制度を活用することで、いち早く医薬品を保険診療下に導入していくこと。
もう一つは、13枚目のスライドでございますが、そういった治験や先進医療でないものであっても、患者申出療養制度の活用によりまして、1人でも多くの方になるべく治療薬を届けていくということを施策として展開させていただいている次第です。
14枚目が、9月の患者申出療養評価会議のほうで承認いただいたスキームでございまして、現在、がん研究センター中央病院のほうで調整事務局を担っていただいて、8剤9製品について、適応外薬をこの形で使えるような体制を整えて、10月1日から開始していると聞いております。
15枚目が、以前御報告している人材育成のスライドでございますが、右側の人数のほうを時点修正させていただいたとともに、16枚目、最後、工程表でございますが、先ほど申し上げたような連携病院、拠点病院、中核拠点病院の体制見直しも含め、今後、2021年度までの工程表を示させていただいた内容になっております。
続きまして、恐縮ですが、資料1-2まで御説明させていただきたく存じます。こちらは、遺伝子パネル検査が6月1日に保険収載されましたので、その後、どのような状況かというのを、本コンソーシアム運営会議に報告すべく、167のがんゲノム中核拠点病院等に任意の形でアンケート調査をさせていただきました。
2枚目のスライドに調査の概要をまとめさせていただいておりまして、6月1日の収載以降、10月末までの時点で、どれほど検査をしていただいたかというものを調査させていただいております。調査の具体的なシートについては、本日の参考資料4としておつけしておりますので、議論の際に御参照いただければと存じます。調査方法は、記載のとおり、メールで送信・回収しておりまして、実施は11月上・中旬の2週間をかけてやらせていただきました。回収率は、ごらんのとおり80.2%でございまして、中核・拠点は全施設から、連携病院は一部の施設から回収しているということでございます。
おめくりいただきまして、3枚目、それでは、どの程度の施設が開始しているかということでございますが、調査完了時点の11月22日の時点で、中核拠点病院は全て、拠点病院は26施設というのが下の円グラフでごらんいただけるかと思います。こちら、訂正いたしますが、上の数字の表記でございますが、回答のあった「133」となっておりますが、「134」が正しく、11月22日までに開始している施設数が「83」となっておりますが、「79」。その下の「37」が「41」の間違いでございます。大変申しわけございません。この場をおかりして訂正させていただきます。そういった形で、現在79の施設で開始していることの確認がとれている状況でございます。
円グラフの一番右側でございますが、開始時期が未定とされた14病院については、類型化した理由を聞いておりますが、ごらんのとおり、幾つかの理由によって、まだ開始時期が定まっていないという病院も幾つかあるということを現状、御報告させていただきます。
おめくりいただきまして、4枚目のスライドは、では、実際どの程度の件数の検査がされているかということでございます。10月31日までと定義しておりますので、先ほどの79から若干減りますが、62施設が10月31日までに開始しておりまして、具体的な件数は805件という報告を受けております。
続きまして、5枚目に進んでいただきますと、その中で、先ほど資料1-1でお示しさせていただいたとおり、C-CATへのデータ登録とか、その先の二次利活用の同意というものがどの程度得られているかということでございますが、805分の799ということで、99%を超える患者様に御同意いただいているという状況でございます。
下のカラムでございますが、その後、治療に何名の方が結びついたのかということでございますが、10月31日時点で切ると88名ということでございます。これは、10.9%になりますが、一番下の※印にありますとおり、検査したが、エキスパートパネルの結果が未返却の方や、結果に基づいた治療方針の検討中の方も分母に含まれておりますので、この10.9%が最終的な値というわけではないということを御了解いただければと存じます。速報の時点で10.9%ということでございます。
続きまして、6枚目で、実際、エキスパートパネルがどの程度開催されているかということですが、中核拠点病院は、ごらんいただくとおり、検査が既に開始されている施設については、月3回以上ということでございますが、拠点病院自体は、9月19日に指定させていただきましたので、まだその体制が整っていない、開催できていない施設が多いということがごらんいただけるかと思います。
最後、7枚目は、今、申し上げた内容をまとめさせていただいたスライドですが、2つ目の●は、先ほど3枚目のスライドで訂正させていただいたとおり、数字が間違っておりますので、その点、御承知おきいただければ幸いです。
事務局からは以上でございます。
○中釜議長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して、何か御質問、御不明な点等ございますでしょうか。
天野構成員。
○天野構成員 御説明いただきまして、ありがとうございました。
2019年6月のパネル検査の保険収載以降、現場の先生方並びに関係の皆様に、限られた期間とリソースで尽力いただいていることに感謝申し上げます。
その上で、私から3点、申し上げたいと思います。
まず、1点目でございますが、今回、エキスパートパネルでの検討を通じて、患者さん等に結果が返されるというスキームになっていると理解しておりまして、その中で、例えば従来から指摘があったように、エキスパートパネルでさばくことができるというか、検討することのできる患者さん、症例の数が限られているということがあって、希望する患者さんがパネル検査にまだまだ到達できていないという現状があると聞き及んでおりますし、また保険収載されたパネル検査につきましても、それぞれの価格が病院との契約になっている。
その過程で、検査会社を通じて契約しているということになっていて、いわゆる体力のある病院であればいいのだけれども、体力のない病院ですと、そういった価格設定の関係上、検査すればするほど負担がふえてしまって、患者の検査をなかなかやりづらいという状況があると聞き及んでおります。そういった中で、今後、エキスパートパネルを通じた検討であるとか、現場の負担がある中で、適応となる患者さんがより適切に、この遺伝子パネル検査を通じたがんゲノム医療を受けられるようにするために、どのような方策を考えていらっしゃるのかということについて、教えていただければというのが1点目です。
2点目が、1点目に関連しますが、ことし、がんゲノム医療の拠点病院が新たに指定されていまして、資料1-1の7ページ目のスライドになるかと思いますが、指定の期間が決まっていて、指定期間はおおむね2年となっているという記載があります。一方で、ゲノム医療の現場での進歩というか、変化が相当程度早いという状況がある中で、この2年という年限の間に、それぞれの拠点とか中核拠点も含めた病院の体制がかなり変わり得ると思うのですが、2年という年限で大丈夫なのか。場合によっては、1年で見直す必要もあるのではないかというのが2点目の意見です。
3点目、同じく資料1-1の14ページ目になりますが、患者申出療養制度、これは私たちも非常に期待を持って見つめているところでございまして、特に未承認薬や適応外薬の使用を考えざるを得ない患者さんにとっては、非常に期待の大きいスキームであると思うのですが、現状、これはどの程度まで動いているのかということについて、教えていただければと思います。
以上3点となります。
○中釜議長 以上3点について事務局からお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
まず、1点目の件でございますが、患者さん、希望された方が全員受けられていないのではないかという御指摘でございますが、今回、資料1-2として集計させていただいたのは、あくまで速報という形で集めさせていただきましたので、今後、中核・拠点・連携の3類型の病院に対して、現況報告書という形で求めるとともに、それでは把握し切れない部分については、どのような把握のあり方があるのか、至急検討させていただきたいと思っております。
2点目の話、拠点病院の指定が2年で妥当かどうかという御指摘でございますが、まさにここはがんの診療連携拠点病院制度であるとか、小児のがん拠点病院制度が4年ごとの見直しである中、がんのゲノムの進歩の早さに鑑みて、そういう御議論をいただいて2年とさせていただいた次第であります。1年で指定見直しとなると、現場もそこの変化についていくのが難しいということで、2年となっていることを御理解いただければと存じます。ただ、御指摘のとおり、制度が余り合っていないということが現況報告等を通じて把握できた場合にあっては、事務局としてきちんと検討させていただきたいと思っております。
3点目でございますが、患者申出療養については、済みません、保険局のほうから御報告させていただきます。
○中釜議長 お願いいたします。
○保険局医療課医療技術評価推進室長 保険局医療課でございます。
6月以降の保険収載に当たりましては、委員の先生方に大変御協力、御理解いただいておりますことを、この場をおかりして御礼申し上げます。
ただいま天野構成員から御質問ございました患者申出療養でございますけれども、先ほど事務局から御説明させていただきましたように、枠組みをつくっておりまして、今、1号目の患者さんがエントリーされたというところまでは、事務局として承知しているところでございます。今後は、医療機関から定期的な情報をいただきながら、実態の把握に努めてまいりたいと考えております。
○中釜議長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
ほかに御質問ございますか。山口構成員。
○山口(俊)構成員 この実態把握調査ですけれども、これは最初からやるとなっていたのでしょうか。また今後、こういう調査が行われるのでしょうか。というのは、調査の内容が非常に簡単で、しかも100%カバーしていないので、これはどういう位置づけになるのか、ちょっとわかりにくいのですけれどもね。
○中釜議長 事務局、お願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
説明が不十分で失礼いたしました。今回、資料1-2、参考資料4の調査票を用いてやらせていただいた調査は、保険収載直後ということですので、迅速に概要を把握するためにアドホックにやらせていただいたものでございます。正式には、これから3類型の病院に対しては現況報告という形で、月別にどの程度件数を検査されたのかといった詳細な調査を、少なくとも年1回させていただくことを予定しております。今年度につきましては、12月25日を締め切りとして、一旦御報告いただくことを考えております。
○中釜議長 よろしいでしょうか。
ほかに御質問ございますか。
では、末松構成員。
○末松構成員 まだ調査が始まったばかりではあるかと思いますが、800例ぐらいの実施件数の中で、がん種の内訳によって、何%が治療にたどり着いたかというのは、どのがんの種類がどうという、あらあらのところはわからないのでしょうか。わかれば教えてください。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
恐縮ながら、今回、がんの類型別には値はとってございません。
○中釜議長 今後、その報告に基づいて、その値の細かいところがわかってくるという理解でよろしいですか。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
現況報告については、恐縮ながら、末松構成員の御指摘のような、がんの類型ごとに件数を集計する様式には現時点ではなっておりませんので、どのような調査のあり方があり得るのか、検討させていただきたく存じます。
○中釜議長 ほか、よろしいでしょうか。
それから、先ほどの質問に関連して、検査のタイミングもあろうかと思いますけれども、検査にたどり着けない患者さん、検査のタイミングもあろうかと思いますけれども、そのあたりについては、今後検討される予定はないと考えてよろしいですか。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
今、御指摘の点は、現在の保険の話なのか、標準治療の前にやるといったことの御指摘かと理解したのですが、それについては、今、先進医療でできないかというのを、中核拠点病院を初め、御検討いただいていると理解しております。
○中釜議長 ありがとうございます。
石岡構成員。
○石岡構成員 先ほど事務局から少し御説明があったかと思いますが、国民、がん患者にどれだけ普及しているかというところかと思いますけれども、今後、調査のあり方を検討されるというお話ですが、この3病院、中核・拠点・連携を調べているだけでは把握できなくて、ここにアクセスできる患者そのものが、地域格差とか施設格差というのがかなりあるということは、現場でよくわかっています。ですから、例えばがん登録ベースのアクセスぐあいはどうかとか、人口とか、そういった視点での普及状況を今後も見ていく必要があると思います。
○中釜議長 重要な御指摘と思います。
では、宮野構成員。
○宮野構成員 宮野でございます。
調査が始まったということで、大変うれしく認識しております。今後、調査するに当たって、いわゆるターンアラウンドタイムがどれくらいになっているのか。今回の場合は、始まりの部分が少し曖昧になっているかと思うのですが、パネル検査のサンプルが得られた時点から、患者さんに担当医から返していく。それをターンアウランドタイムと呼んでいるのですが、その時間がどれくらいの時間になっているのかということと。全体のプロセスの中で、どこがボトルネックになっているのか、どこを改善していけばスムーズに患者さんの待っているところへ戻していけるのか。そのあたりのところを調査に入れていただければと思います。
○中釜議長 事務局、お願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
貴重な御指摘、ありがとうございます。ターンアラウンドタイムについては、事務局も大変気にしているところでございまして、もともと三、四週以上かかると言われておりましたので、全体のターンアラウンドタイムについては、現況報告を通じて把握したいと考えております。その要素分解という御指摘だと思いますが、これについては、どのようなとり方があるのか、検討させていただきます。
○宮野構成員 ありがとうございます。
○中釜議長 では、石岡構成員。
○石岡構成員 今の御質問、非常に重要かと思います。それに関連して、私の先ほどの質問と関連するのですが、この連携病院あるいは拠点・中核病院に患者がアクセスできて、それからのターンアラウンドタイムというのは、我々、中核拠点病院の情報共有がかなりしっかりしていますので、大体わかっているのですが、私が現場で感じている一番の問題点はそこではなくて、そこも多少改善する必要があると思いますが、一般の病院でがん診療を受けていて、遺伝子パネル検査を希望する、あるいは担当医がしたほうがいいのではないか。そこから連携病院に紹介したり、検体を用意する。場合によっては、拠点病院、中核病院にさらに紹介していく。
そういったプロセスに実は非常に時間がかかっていて、今のターンアラウンドタイムというのは、パネル検査にもよりますが、1カ月ぐらい、サンクスギビングデイで1週間、2週間、今週はおくれていますけれどもね。私の問題点は、むしろその前の問題点で、そこにアクセスするのに1カ月ぐらいかかったりしていますので、そういった状況もあわせて改善する方法を考えたほうがよろしいかと思います。
○中釜議長 その点もよろしくお願いいたします。
ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。また、後ほど御意見等がありましたら、受けたいと思います。
続きまして、資料2をがんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議の議長、瀬戸構成員よりお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○瀬戸構成員 がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議では、これまでの第1回、第2回のがんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議にも御報告してまいりましたが、いろいろなワーキング・グループを設置いたしまして議論を深めてまいりました。本日は、これらのワーキング・グループで作成した資料を中心に、その進捗状況について、連絡会議の事務局を務め、本会議にも参考人として出席していただいておりますC-CATの吉田参考人より報告いたします。
○中釜議長 お願いいたします。
○吉田参考人 それでは、中核拠点病院等連絡会議事務局から御報告いたします。資料2をごらんください。各スライドの右側に赤字で♯1とか2とか、書いてありますので、その番号を頼りに、かいつまんで御説明いたします。
まず、♯2は全体像であります。この会議、コンソーシアム運営会議は、一番上のガバナンスの会議で、その下にいわゆる病院長会議、C-CATセンター長と中核拠点病院等の病院長からなる連絡会議があります。その病院長会議の下に、右にあるWGがつくられております。昨年度のWGに対して、1の実務者会議、3の二次的所見WG、7の診療WGが追加されております。
めくっていただいて、♯4をごらんください。
まず、インフォームドコンセント・情報利活用WGからです。構成員の◎が座長で、○が副座長です。昨年度に引き続き、武藤香織先生に座長をしていただいております。
その下、♯5の中央の上のほうに赤字で書いてあるのが、今年度のICWGの主なテーマとなっております。昨年度は、主にインフォームドコンセントや、その取得の仕方、説明の仕方を中心に検討を行いましたけれども、今年度は、その後、集められた情報の二次利活用のためのさまざまな課題、知財や戦略に関して議論を行うとしております。
それから、♯6をごらんください。前年度に1つ大きな論点になったのは、各病院からC-CATに診療情報、ゲノム情報などを送る際には、倫理審査が各病院で必要ではないかという疑義がありました。
それに対して、7月19日に健康局がん対課からの事務連絡として見解が出されておりまして、それが下の箱にありますけれども、病院からC-CATまでの情報の提出は、診療の一環として、それを一義的目的として情報提供しているので、病院側の倫理審査は必要ない。ただ、そのうち、二次利活用に同意された患者さんのデータを、第三者に研究開発の目的で提供する場合、これを二次利活用と言っておりますが、その場合は、C-CATに集まった既存の情報を研究のために提供するということで、これは研究計画書の作成と倫理審査が必要になります。これは、C-CATが倫理審査を受けるということで、国立がん研究センターの審査を受けて承認を受けております。
それから、♯7をごらんください。インフォームドコンセントに関する調査もICWGでしておりますが、先ほど丸山推進官からあった御説明の段階では、インフォームドコンセントに関する大きな問題は生じていないということですが、引き続きモニターしていくとしております。
それから、♯8をごらんください。これは、今年度の主な課題となる情報利活用の大まかなスケジュールの案となっております。今年度がR1年度ですけれども、情報利活用ポリシーを作成する予定です。前回の3月のコンソーシアム運営会議で骨子案までつくりましたが、その骨子をさらにポリシーとする議論を行います。
それから、情報提供審査会を情報利活用審査会と改称しておりますが、そのポリシーをつくったり、契約に関するひな形をつくるということを行いまして、来年度、実際に情報利活用審査会を設立し、模擬審査を行ってみる。さらに、二次利活用のために必要なシステム整備などをし、今の予定では、データもたまってくるので、R3年度から実際の提供が始まるだろうと考えております。
♯9をごらんください。こちらは、研究のための二次利活用に関する主な基本的なポリシーですけれども、許可できない禁止事項として、データの転売とか、検査会社のノウハウのリバースエンジニアリングといったものを禁止としております。また、当然ながら、個人・血縁者の同定を試みるような解析はしないとしております。
♯10をごらんください。これは、二次利活用のための審査から提供の流れを書いております。
まず、C-CATに来年度つくる、無料の検索ポータルをユーザーの方が調べて、実際に研究計画を立てる。それから真ん中の段の左側になりますけれども、各ユーザーの施設で倫理審査委員会の承認を受けていただく。それに基づいて、情報利活用審査会のほうに申請し、そして承認されたら契約し、対価も出していただくとなっております。
♯11は、その審査の現時点でのポイントを書いております。審査の方針の表のほうを見ていただきますと、倫理審査に関しては、海外からの申請の場合には、個人情報の保護等が日本と同等の水準にあると認められるかどうかといったことがポイントになりますし、それから、研究体制、実際にこれが多分重要なポイントの一つになると思いますけれども、がん研究の実績があるか、あるいは実績のある研究者との連携ができているかといったことと、その他のところでは、先ほどの主な禁止事項が書いてあります。
♯12は、契約項目ですけれども、これも今まで述べたようなことがまとめて書いてあります。
次に、#13からは二次的所見WGです。セカンダリーファインディングス、SFWGと呼んでおりますけれども、治療目的に使える結果を今回のがんゲノムプロファイル検査の一次的所見とすると、遺伝性腫瘍の原因遺伝子が見つかるなどの本人・家族の予防目的に使われる結果を二次的所見と言っております。SFWGは、♯14にありますように、京都大学の小杉先生を座長としておりまして、♯15、青の部分にありますように、前年度はサブワーキングという形で行われたのですが、遺伝性腫瘍とその保険診療への導入に関しては、根本的問題であるので、包括的・継続的に議論すべきということで、このWGが設置されました。
♯16は、その主な議論の内容です。どんな遺伝子が二次的所見の遺伝子として開示の対象になるか。こういったことをAMEDの小杉班でも検討しておりますので、連携して行うなどとしています。
それから、先ほどの遺伝性腫瘍の診療そのものを段階的に保険診療に導入していくための論点や道筋・提言、人材育成。患者・市民参画についての議論も始まっております。
次に、♯17、RPWG、レポジトリWG、患者情報登録WGで、これは♯18にありますように、前年度に引き続き、大江和彦先生に座長をお願いしております。
♯19にありますように、RPWGでは、臨床情報収集項目の最適化というものを引き続き行うとともに、右側のほうに引き継ぎ課題とありますけれども、前年度から引き続き、臨床側の入力の負担をできるだけ軽減するということ。かつ、二次的利活用のためにも、データが国際水準に合う十分なものであり、企業等のユーザー側の期待にも応える。この辺のバランスをいかにとるか。そのためには、システム開発なども必要であるという検討をしております。
♯20、システムの検討課題ですけれども、先ほども丸山推進官の報告にもありましたように、多くの課題が現場にありますが、その1つが非常に複雑なシステムになってしまっているということがあります。これは、NCCオンコパネルについては、先ほども紹介がありましたが、保険診療の前に、研究であるとか先進医療のステージがありましたので、システムを十分練ることができたのですけれども、F1CDxに関しては、5月の中医協の頃から本格的な準備が始まりましたので、オンプレミスのシステムでは間に合わずに、政府の情報セキュリティガイドラインに準拠したクラウドでつくったということになりました。これにより、ネットワークもシステムもNCCオンコパネルとF1CDxの2系統に分かれているということになります。
♯21が現在のネットワークで、まさにこれを見ても非常に複雑になっているのですけれども、見方としまして、紫の実線が一番下、理研ジェネシスからありますが、これはNCCオンコパネルに関しては、ゲノム検査のデータが直接SINET5などを通してC-CATに送られることを示しています。一方、F1CDxに関しましては、左上、中外FMIポータルからのデータは紫の点線で示すように、IPsec-VPN端末を、各病院に決められたライセンスを設定しまして、そこ経由でのC-CATへの提供となっております。
また、臨床情報が赤ですが、臨床情報の入力も、中核拠点病院は電子カルテから入力できますけれども、拠点病院・連携病院は、限られたIPsec-VPN端末からの入力となります。
最後に、C-CAT調査結果が保険請求の必須要件になっているわけですが、これが緑ですけれども、NCCオンコパネル用のC-CAT調査結果は、SINETによるインターネットを介して、レポジトリから中核拠点に返ります。しかし、拠点病院に関しては、NCCオンコパネルもF1CDxも、C-CAT調査結果はIPsec-VPN回線を介して返す必要があります。従って、端末のIPsec-VPNのライセンスが限られる、複数のネットワークを使わなくてはいけない、といったことが、現在のシステムの複雑化の原因となっております。これについては、段階的にシステム開発して改善していく予定であります。
次に、♯24をごらんください。エキスパートパネル標準化WGは、昨年度は油谷先生にお願いしましたが、今年度の座長は谷内田先生、阪大となっております。
♯25にありますように、青のところですけれども、エキスパートパネルの標準化であるとか、C-CAT調査結果のもとになるがん知識データベース、CKDBの進化についても議論しております。
このEPWGではアンケートをとっておりまして、それが♯26からあります。
♯27、28に点数がついておりますが、この点数は♯27の上に1から5まであるように、点数が多いほど問題がある点、重視しなければいけないということになりますが、主なところは赤字にしております。例えば、♯27で言えば、どんな人材が足りないかといいますと、ホの「分子遺伝、がんゲノム医療に関する知識を有する専門家」と、チの「事務的作業員」ということで、それに対応しまして、Q6では、EPの準備のレポートの事前の議論とか会議のセッティングといったところに労力がかかっているということになります。
♯28ですけれども、エキスパートパネルでは、調査結果の利用の解釈やエキスパートパネルのレポートの作成といったことが課題になっておりますし、システムについても、検査会社とC-CATの両方のシステムについて、なかなか煩雑なところがある点が赤字に反映されていると思われます。資金について、人件費や人材育成といったことがネックになっているとあります。
次、医薬品アクセス確保WGです。♯30をごらんください。これは、前年度、藤原先生がPMDA理事長になられましたので、山本昇先生に座長が交代となっております。
この主な内容が♯31、32にありますけれども、これは先ほど厚労省からご説明のあった、患者申出療養のバスケット型の研究のことが中心ですので、省略させていただきます。
最後に、診療WG、♯34です。これは、新たにつくられたWGで、実臨床の中のさまざまな問題点を挙げていくということで、京都大学の武藤学先生が座長であります。
この検討事項が♯36、最後のスライドにありますけれども、主なところで、課題の抽出の最初のビュレットにありますように、かなり複雑な作業が手作業で行われて、かつ、2つ目のビュレットですけれども、専任者が少なく、多くは兼任で対応しているということ。
それから、3つ目に、保険算定上の8000点と4万8000点の請求のタイミングが異なりますので、患者さんの状態が悪くなったりして、患者さんに報告できるまでに至らない場合があるといったことが課題として出ております。
 
以上です。
○中釜議長 ありがとうございます。
では、事務局から追加でございますか。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局から、今の中核拠点病院等連絡会議の報告について補足させていただきます。
今、御指摘があったとおり、患者情報登録WGやエキスパートパネルWGを含め、遺伝子パネル検査の臨床データ入力に係る病院側の負担であるとか、C-CATの調査結果の直接返却といったことが問題提起されておりまして、こういったことにつきまして、厚生労働省として、まず臨床データ入力については、現場の負担をなるべく軽減したいと考えておりますので、目下、各病院に実態をお聞きしたり、訪問したりするなどして実態把握に努めているところであります。このWGとも協力しつつ、どういった形で負担軽減を図れるかというのを引き続き検討していきたいと思っております。
もう一点、C-CATの調査結果を、連携病院については、現時点で直接お返していないところでございますが、エキスパートパネルの準備に当たっては、連携病院の先生方もごらんになって準備されたいという御意見もいただいておりますので、この点についても協力して検討していきたいと思っております。
事務局からは以上でございます。
○中釜議長 ありがとうございます。
それでは、ただいまの説明に関して、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
藤原構成員。
○藤原構成員 2点ございます。
1つ目は、ICWGとRPWG関係で、C-CATの診療情報入力データに関してですけれども、私どもPMDAでも、MID-NETを使った市販後のビッグデータの管理をしておりますし、アメリカのFDAは、ことしの4月に、ビッグデータと言っても、リアルワールドデータを使った医薬品の承認をしています。その際に一番予算を割いているのは、診療情報のデータベースの入力後のバリデーションのところです。C-CATの診療情報の入力後のモニタリングあるいはオーディット、すなわちカルテの情報あるいは診療実態の情報が、C-CATのデータベースに正確に入力されているかどうかの確認をしないままだと、多分、その後の利活用に大きな支障を来すので、そこは今後どういう整備状況にしていくのでしょうか。
例えば、Flatiron社という、アメリカのFDAでリアルワールドデータを審査したときに活用した民間の会社は、1000人ぐらいの規模でデータバリデーションの係、診療情報管理士みたいなものですけれども、カルテをちゃんとCRFに転記されているかどうかの確認する人員を雇用してチェックさせていたりしますので、そのぐらいの規模でないと診療情報の確認は多分できませんので、それをどう考えていらっしゃるのかということを教えてほしいというのが1点目。
2つ目は、SFWG、セカンダリーファインディングと診療WGに関係するところですけれども、今回、余り言及されていませんけれども、私が2016年当時、ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースという、健康・医療戦略室のもとにできたタスクフォースに参加させてもらって検討したときに明らかになったものとして、遺伝カウンセリングの保険適応状況に非常に問題があるということがあります。その後、2017年に、きょう欠席されています北川先生が代表を務められています、癌学会、臨床腫瘍学会、癌治療学会の3学会合同のゲノム医療推進タスクフォースで、がんゲノム医療保険ワーキングがありまして、そこで要望書を出しています。
それは、平成28年の診療報酬改定に向けての要望書ですけれども、未発症者の遺伝カウンセリングが保険上できないとか、遺伝学的検査にひもづいた遺伝カウンセリングしかできないとか、認定遺伝カウンセラーだけが単独で遺伝カウンセリングをすると、診療報酬上、カウントできないとか、さまざまな問題があったのですけれども、その後、28年、30年、あるいは来年予定されています令和2年の診療報酬改定で、遺伝カウンセリングに関するさまざまな問題というのは解決されるのでしょうかという、この2点を教えていただきたい。
○中釜議長 2点ですが、最初の点については、まず吉田先生のほうから何か。
○吉田参考人 あるいは、C-CATへの御質問であれば、C-CATセンター長からの方がよいでしょうか。私、病院長会議の事務局として、参考人出席しております。
○中釜議長 間野構成員、お願いします。
○間野構成員 ありがとうございます。C-CATの間野でございます。
確かに、C-CATが集めるデータのバリデーションをどうするかというのは非常に大きな問題で、本当にバリデーションをすると、実はそこが一番費用のかかるところであるというのは、藤原構成員も御存じのとおりだと思います。C-CATが具体的にどういう形でやっていくのか。
例えば、現行のように医療者あるいは技師さんが入れる情報に基づいて、システム上、ロジックをかけておかしいところは疑義をかけるとしても、それ以外は余りバリデーションをかけない形があります。ある程度ミスがあるようなデータセットでも、保険医療のデータになりますからすごく数が大きくなりますから、さまざまな研究開発ができるというアプローチがあります。あるいは、例えばオーディットを定期的にかけて、質の担保をできるだけ試みるとするのかということに関しては、費用の問題もありますので、今後、厚労省と詰めていきたいと思っています。
以上です。
○中釜議長 2点目の遺伝カウンセリングに関して、お願いいたします。
○保険局医療課医療技術評価推進室長 保険局医療課でございます。御指摘、どうもありがとうございます。
遺伝カウンセリングにつきまして藤原構成員からおっしゃられました点についての課題があるということは、承知しております。その中で、具体的にどういう時間がかかるのか、どういう数があるのかというあたりを、このワーキングの先生方と情報を共有させていただきながら、どういう制度設計にしていくことが医療として適切な形になるのかというあたりを、引き続き検討させていただければと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。○中釜議長 藤原構成員。
○藤原構成員 検討じゃなくて、既に3学会ワーキングで問題を明らかにしているので、それを次の32年度改定のときにどう解決するかを、中医協の話なのでここでは関係ないと思いますけれども、問題点は明らかなので、それをどう解決するかだけの話だと私は思います。
○中釜議長 よろしくお願いします。
では、石岡構成員。
○石岡構成員 石岡です。
C-CATの二次利用について。私も、中核拠点病院連絡協議会、この前も参加していましたので、ポリシーを策定中であるということはよく承知しております。その運営会議では、国の施策との関連で、ある程度すり合わせをしておいたほうがいいのではないかということが私からの意見でありまして、♯9のところ、商業用データベースの構築、データの第三者提供、リバースエンジニアリングは禁止と基本的ポリシーの中に書いてある。ある意味、それは当然だと思います。
一方、がんに限らず、こういった医療の開発に関しましては、産学連携がどうしても避けられないのがグローバルな視点だと思います。例えば、健常人に関しましても、東北大学の東北メディカル・メガバンク機構でも、公開できるものを公開して、それは企業が商用利用することはもう日常的に行われている状況ですので、ポリシーを決める上で、国の施策とのすり合わせで、これはオールジャパンで、あくまでも日本の国民だけの財産という考え方で行くのか、産学連携で、それはグローバルな企業も含めて、グローバルな視点でのがん医療に資するためのデータベースにするのか。
そういったところをある程度ディスカッションしておかないと、細かいポリシーを立てるのは難しいのではないかと研究者の視点で思っておりますので、その点について、少しコメントをいただければと思います。
○中釜議長 お願いいたします。
○吉田参考人 これは、ワーキングへの御質問だと思います。
ご指摘のとおりで、ICWGでは、ICWGの中だけで議論するのではなく、例えば個情法とかELSIの専門家を含めて、知財の専門家、あるいは製薬協等、企業側との連絡もとりつつ、それから先生が御指摘のような、厚労省等とも連携をとりながら、整合性のあるポリシーをつくっていきたいと思います。
ありがとうございます。
○中釜議長 松原構成員、どうぞ。
○松原構成員 先ほどお話に出ました遺伝カウンセリングのことについて、私のほうからも述べさせていただきます。
私自身は、これまで難病関係で遺伝子診療をずっとやってまいりました。先ほど藤原構成員が御指摘になった遺伝カウンセリングの問題というのは、難病領域では十数年前から顕在化しております。窓口は難病対策課になりますが、十数年前から関連学会ではいろいろ要望も出しておりますけれども、なかなか前に進んでいかない。ようやくがんのほうから声を上げていただいたので、十数年来の懸案を何とかこの際、はっきりさせていただいて、遺伝子診療の推進につなげていただきたいと思います。
特に遺伝カウンセリングというのは全く採算がとれませんので、多くの場合、研究費を注ぎ込んで、そこで雇ったカウンセラーの方が実際の診療に当たるという状況がずっと続いてまいりましたので、そのあたりは何とか解決していただきたいと思います。
 
以上です。
○中釜議長 今後のゲノム医療の大きな課題です。よろしくお願いいたします。
では、天野構成員。
○天野構成員 ありがとうございます。
3点、資料2に関連して質問がございます。
まず、1点目ですが、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議ということで、「等」がついているということなので、ゲノム医療は御承知のとおり、中核拠点だけでなし得るものではなく、新たに指定された拠点病院とか連携病院との連携も大切だと思うのですが、構成員の方々を見ると、当初は中核拠点中心に始まった会議と理解しているので、これでいいと思うのですが、今後、拠点病院や連携病院の意向を反映できるようなスキームを検討されているのかというのが1点目です。
2点目は1点目に関連してですが、先ほどの♯16の御説明の中で、二次的所見WGの中では、ゲノム医療当事者団体との連携・患者・市民参画、PPIを実装することであるとか、いわゆるELSIに関する提言ということが記されていたところですが、これは二次的所見WGの所掌範囲のみにかかわることではなく、恐らくゲノム医療全体にかかわる部分かと思います。
例えば、国の第3期がん対策推進基本計画におきましても、患者及びがん研究者の参画によって、がん研究を推進するための取組を開始するということで、PPIの推進が国を挙げて行われることが規定されていますし、本日御出席の末松構成員のAMEDでもPPIを積極的に推進されていると理解しているのですが、この会議全体として、PPIもしくはELSIを実装していくということについて、どのようなお考えをお持ちなのかということをお聞かせいただければというのが2点目です。
最後、3点目になりますが、先ほど来、いわゆる治療薬に結びついた患者さんの割合ということで、概算の値が示されているかと思うのですが、聞き及ぶところによりますと、地域間格差が極めて大きいのではないかという指摘があると聞いております。例えば、未承認薬や適応外薬等の治験を考えた場合、治験を実施している施設は、関東に集中している傾向があると理解しているのです。そうすると、例えば関東のほうにあるがん専門病院等に、例えば東北地方とか中・四国地方から、その治験を受けるために通院している患者さんも一定数いる。それは、もちろん患者さんの希望でそうされていると理解していますが、全ての患者さんがそういったことができるわけではない。
そうなってくると、関東地方以外の病院で、そういった未承認薬や適応外薬に治験等を通じてたどり着けている患者さんの割合は、全体の概算値よりは低い可能性があるのではないかと思うのですが、その点について、この連絡会議で議論や報告などがあったのかということについて教えていただければと思います。
○中釜議長 では、最初の点について、まず吉田参考人。
○吉田参考人 先ほど報告を省略したのですけれども、前回の中核拠点病院等連絡会議、第4回が11月26日に行われておりまして、この時に会議の規約を改正いたしまして、拠点病院の代表の方をオブザーバーとして参加していただけるように変更しております。実際、34施設の方に、どのように会議に効率的に参加していただけるか。そのロジスティクスに関してはこれから検討となっています。また、ワーキングについても、親会議に準ずる形で運用していくことになると思います。
連携病院につきましては、基本的に中核拠点病院あるいは拠点病院が取りまとめていらっしゃるということですし、数も多いので、Web会議をすると情報の拡散のコントロールができないということもありまして、連携病院に関しては、今のところ中核拠点病院あるいは拠点病院を介しての御意見等の反映をしていただくというのが基本かと思っております。
 
それから、2つ目の。
○中釜議長 PPI、ELSIの実装等については。
○吉田参考人 確かに、今回、PPIが出てきたのはSFWGの資料だったのですけれども、例えばICWGでは、昨年度、説明同意文書をつくる段階では、複数の患者や患者団体の方に見ていただいたと聞いております。このように、中核拠点病院等連絡会議全体で1つまとめてという取組にはまだなっていないのですけれども、個別に草の根的に患者さんや市民団体との連携が出てきているところかと思っております。これが適切に拡大していくのではないかと見ております。
○中釜議長 では、3番目の治療薬の地域差について。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
今回、資料1-2として集計させていただいたデータについてですが、これはがん・疾病対策課が各病院に直接お願いさせていただいて、参考資料4に書かせていただいていますが、施設名を特定できない形で公表しますという前提で集めさせていただいたデータですので、中核拠点病院等連絡会議には共有しておりません。ですので、関東圏とそれ以外で差があるのではないかという検証とかをどういう形で進めていくかは、相談させていただきたいと思っております。
ありがとうございます。
○中釜議長 それでは、中山構成員、お願いいたします。
○中山構成員 先ほど少しお話の出た、データの二次利活用に関する件でございますが、このWGの中には企業サイドが全然入っておりませんので、できれば早い段階から、企業が新薬の開発研究や臨床試験あるいは薬事申請をにらんで、どういったデータの使い方をするのかといった設計や構造の話と、それから実際に使う上でのプロセスについて早目に意見を聞く場をしっかり設けていただきたい。最近、でき上がったデータベースを使ってほしいと言われるのですが、使い物にならないケースが結構あるので、ぜひ早い段階から意見を聞く機会を持っていただきたいと考えております。
 
○中釜議長 この点について、現状でお答えできますか。
○吉田参考人 これらのWGは、当然ながら横の連携も非常に重要でして、特に今年度は、先ほど省略してしまったのですけれども、WG間の横の連携を図るために実務者会議を設けたところであります。WGの中で、実はICWGは、主に二次的利活用の規定などの仕組みをつくるところなのですけれども、集まったデータをどのように臨床の研究者が二次的利活用のために使えるかということは、臨床情報のどのような項目を収集するかというところに深くかかわってきますので、RPWGのほうで議論しております。
RPWGでは、例えばどのようなユースケースがあり得るのか、C-CATに集められたデータは、そのまま薬事の承認申請に使えるようなデータというよりは、もう少し前の段階の、研究の計画立案とか、あるいは現在、遺伝子変異に対応する薬が存在しない80~90%の方のための画期的新薬の研究であるといった議論もされているところで、そこには臨床の先生を含めた御意見を伺う機会が設けられております。重要な点ですので、企業、臨床側、基礎研究者などの多くの専門の方、それにPPIも含めて議論していくべき課題だと思います。
 
○中山構成員 よろしくお願いします。
○中釜議長 この点について間野構成員からお願いいたします。
○間野構成員 追加の発言ですけれども、研究者だけじゃなくて、実際の薬や診断薬をつくるためには、企業の連携というか、利活用が必須だと思っていますので、これまでも製薬協様を2回ほど訪問しまして、それからつい先日、データを実際に利用する場合には、どういうフォーマットのデータを希望されますか、アクセスはどういう形で希望されますかというアンケートをお送りしたところです。それに基づいて、また、こちらがもう一度出向いて、実際にどういう形にするかということを引き続き御相談していきたいと思っています。
以上です。
○中釜議長 ありがとうございます。
それでは、葛西オブザーバー。
○葛西オブザーバー 私は、厚労省のガイドラインに基づいてクラウドを整備していると書いてあるというのがちょっと気になっていまして、クラウドに適切に適応するようなガイドラインというものは、今のところ余りなくて、まだガイドラインを見直している最中なので、厚労省のほうで早目に、こういうクラウドがどんどんでき上がってくるようであれば、総合的にクラウドに適応するガイドラインのあり方を早期につくらないと、かなりミスリードしてしまうのではないかということが1つです。
それから、もう一つ、基本的に気になっているのは、この♯21を見ると、誰が見てもわかるとおり、システム構造は複雑になって、御説明いただいたとおりですけれども、全く同じようなイメージの運営を別の疫学系でもやっていて、別の介護系でもやっていてとか、いろいろなところで同じモデルをやっているのです。これをある程度集約化していかないと、それぞれの世界で正しいと思っていることがばらばらになってしまうという懸念がちょっとございます。その点で言うと、1個気になるのは、インターネットから出てくる連携病院側、だんだんIPsec VPNとか、だんだん広がっていきますので、このあたりの質の標準性を保たなければいけないのではないかというところです。
もう一個、早々に確認しなければいけないのは、二次利用のクラウドと言っているところも、これもまたたくさんあって、あるものは二次利用クラウドがすごく適切に運営されているなと思うものもあれば、随分と雑な運営をしているものがたくさんあるので、ここも質を均質にする必要があります。
その点で言うと、1個、私が参考にするのは、院内がん登録です。院内がん登録は、御存じのとおり、有資格者によるデータのバリデーションがされているので、このあたりは参考になるだろうということを含めて、急いでシステムをつくらなければいけないですけれども、システムガバナンスについて厚生労働省のほうでちゃんと管理する必要があるのではないかなということを意見として申し上げたいと思います。
○中釜議長 この点について、現状で厚労省側から何か。
○吉田参考人 申しわけありません。♯の20の厚労省ガイドラインに準拠したクラウド環境というのは、言葉を少し拡大で使ったかもしれないのですが、IPsec-VPNなどのネットワークのセキュリティ確保の方策を、政府統一基準群等を参考にして採用したということであります。
それと、2つ目、3つ目の御指摘は、ぜひほかのシステム、院内がん登録などを参考にして開発を進めたいと思います。
以上です。
○中釜議長 では、厚労省、お願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 がん・疾病対策課長の江浪でございます。
葛西顧問の御指摘に関しましては、がん・疾病対策課としても御意見をしっかりお聞きして、どういう対応が可能か、しっかり検討していきたいと思っております。
よろしくお願いします。
○中釜議長 ありがとうございます。
宮野構成員。
○宮野構成員 私も葛西オブザーバーと考えを共有している1人でございます。
○中釜議長 ありがとうございます。
ほかに。では、北川構成員。
○北川(昌)構成員 病理学会の北川でございますけれども、エキスパートパネルの標準に関連して、少しお願いがあります。
検体の質という点で、特に組織検体を使う場合には、病理学会は、中核拠点病院には、現在、分子病理専門医という制度を立ち上げて、そういう人が必ずいるようにという体制をつくっておりますけれども、これから新たな拠点病院とか連携病院については、そういう体制はまだ整っておりませんので、その検体の質という観点から、精度管理にも関係するかもしれませんけれども、各エキスパートパネルの中で中核拠点と拠点と連携と、何か格差があるのかどうかということについても、少し加味していただいて標準化を考えるということをお願いしたいと思います。
○中釜議長 貴重な御指摘かと思います。よろしいでしょうか。
ほかに御意見、御質問ございますか。
私から1点、先ほどシステムネットワークの複雑性に関してです。確かに見るからにそうですけれども、ユーザー側からの具体的な複雑化に伴う要望というのは、どういうものが出ているのでしょうか。
○吉田参考人 ♯22に少しまとめた表があるのですけれども、1つは、複数のネットワークを使わなくてはいけないので、ネットワークを頻繁に切りかえなくてはいけないということです。電カルからレポジトリに入力しようと思っても、端末は同じにできたとしても、電カルのネットワークとIPsec-VPNの回線を切りかえて操作しなくてはいけない。
それから、SINET5以外のIPsec VPN接続だと、ライセンスの数に予算上の制限がどうしてもあります。そうすると、1つの病院で3つしかライセンスがないとなると非常に不便であるといった問題が出てきております。
 
○中釜議長 ありがとうございました。
では、武藤構成員。
○武藤構成員 済みません、おくれて失礼いたしました。
先ほど天野構成員がおっしゃってくださったPPIの件ですけれども、これは2点申し上げたいことがございまして、先ほど吉田参考人がおっしゃってくださったICWGでも取組をしたのですが、恐らくどのWGでも患者の視点というものをどう取り入れて活動に入れるかということは、みんなポリシーとして、理念として共有すべきなのではないか。それが薄れているというか、設計されていないようにも思いますので、それを改めて確認するとともに、PPIのことを御存じないWGもたくさんあるので、啓発も必要ではないかと思うところです。
それから、今後どんどんデータを活用するという段になると、ますますPPIを離れていってしまうというか、むしろPPIが重要になるのに、どこまで患者さんのデータを使い、それを使っている状況をC-CATが公開すべきか。ここは、企業様の考えとすり合わせをしていかないといけなくて、すごく難しいフェーズに入っていくと思いますので、今後の課題とさせていただきたいと思いますし、考えていきたいと思います。
○中釜議長 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。
続きまして、資料3-1及び3-2「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」の部会長である山口参考人からお願いいたします。事務局から。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 まず、事務局から失礼いたします。
資料3-1をお開きください。今般「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」というのを、当コンソーシアム運営会議の下部組織と位置づけさせていただいて、所与の検討をさせていただきました。その経過の報告をまずさせていただきまして、部会での検討内容については、部会長たる山口建先生にお願いさせていただきたいと思っております。
スライド2枚目でございますが、前回のコンソーシアム、3月以降、6月に経済財政運営と改革の基本方針2019等で、そこの赤字でございますが、全ゲノムの解析について、数値目標や人材育成・体制整備を含めた具体的な実行計画を、2019年中を目途に策定するということが閣議決定されたわけでございます。
スライド3枚目でございます。それを踏まえまして、がんと難病が特に記載されておりましたので、がんと難病、それぞれ2つ矢印が走っておりますが、全ゲノム解析等に関することを10月以降、検討させていただきました。がんの全ゲノム解析等については、10月16日をスタートに、おととい、第3回の部会を開いていただきまして、所与の御議論をいただいたところです。今後、がんと難病、あわせまして、12月からと表にはなっておりますが、最終的に厚生労働省として実行計画をしたためてまいりたいと考えている次第です。
4枚目のスライドが、それぞれ、がんと難病の検討会の構成員でございまして、左側ががんの全ゲノム解析等について御検討いただいた先生方になります。
5枚目と6枚目は、おとといの第3回までの主な御意見を集約したものでございますが、詳細につきましては、部会長たる山口先生にお願いさせていただければと存じます。
事務局からは以上でございます。
○中釜議長 それでは、山口(建)参考人のほうからお願いいたします。
○山口(建)参考人 それでは、資料3-2を用いながら説明させていただこうと思います。先ほど御紹介があった構成員の方に加えて、7名の参考人の方からいろいろ意見を伺って作成した報告書案が参考資料5-4で、ここではその要旨をスライドにまとめました。
資料3-2の2ページをごらんください。本コンソーシアム運営会議から実行計画の策定、検討事項ということを承りましたので、必要性・目的、数値目標、人材育成・体制整備、そして社会環境整備、倫理面、このあたりを中心に検討しております。
まず、「必要性・目的」ですが、4ページをごらんください。がん対策推進基本計画の理念にも沿っているのですが、厚労省としての理念が示されています。「本プロジェクトは、がん患者のために実施し、今後のがん医療の進展や個別化医療の推進を図る。」とされています。日本人のがん全ゲノムデータベースの構築、がんの本態解明、がん医療への応用、創薬などの産業利用というあたりが具体的な方策になると思います。
5ページをごらんください。上記の四つのテーマをすべて含み、具体的にサイエンティフックには何をターゲットにするのかという点を述べます。私どもの5000例のデータでイメージをつかんでいただこうと思います。5000例のがん症例について、エクソーム、遺伝子発現、パネル、そして既知の融合遺伝子、そのすべてで解析したのがこのデータです。
ドライバー遺伝子検出と書いてあるすぐ下に、黒く塗ったところが、すべての解析方法を駆使して72%の患者さんについては原因遺伝子がわかった、しかし、28%はわからない。がん種別に下に展開していますが、例えば、肺腺がん、GISTあるいは大腸がんのように、黒いバーがかなり長いもの、すなわち多くで原因遺伝子を特定できたものがあります。しかし、対応する右側のバーの赤の部分は有効薬剤が存在する割合ですが、各がん種によって大きく違ってきます。肺腺がん、GISTはかなり薬剤が見つかるが、大腸がんは原因遺伝子を特定できるのに薬剤はほとんど見つからない。下の腎がんに至っては、原因遺伝子もほとんど特定できないし、薬剤も全くと言っていいほど存在しない。このように、原因遺伝子の特定と治療薬剤の存在は、がん種によって非常に異なっており、このこともがん種別のデータベースをしっかり築いていくことが必要であることを示しています。
このプロジェクトの本質は、全ゲノム解析によって、がん化の原因遺伝子が特定できなかった28%について詳細に検討し、原因の特定をさらに進めること、そして、すでに特定されたものの中にも別な原因が潜んでいる可能性があるので、再検討を進めることと考えました。また、その結果、薬剤が存在している11%を、原因究明を進め、より高めていくことも重要な目標です。
創薬などの産業利用という観点について少し言及しておきます。5000症例の解析の段階では、創薬のシーズがどれほど出てくるのかと思いながら研究を進める過程で、もっとも標的になりそうな融合遺伝子を積極的に追求したところ、現時点で特許申請に足る新しい融合遺伝子が34種見つかっています。がんの原因となる融合遺伝子には3つの存在様式があります。既知の融合遺伝子で融合部位が異なるもの、一方の遺伝子は同じだが他方が新規なもの、そして、両方が新規なものという三つです。現在まで、第一と第二のグループを調べてきたのですが、それでも34種が見つかりました。症例数で言うと約50例ですので、全体の1%に相当します。さらに、真にがん増殖に関与しているかなどの研究が必要ですが、有効薬剤が存在する症例を増やすことが出来そうです。
このように、エクソームあるいはRNAの解析だけでも、1%ぐらいの患者さんに有効な薬剤を見つけることができるのではないか。だから、だから、全ゲノムを始め、新技術による検討を進めれば、その割合をさらに広げることが出来るのではないかと、期待を持っております。
6ページ、Genomics Englandからはいろいろ学ぶことがあります。
試料収集・支援体制においては、イギリス全土で13のセンターをつくって収集する。ただし、運用開始まで2年かかり、10万人の解析が終わるまで7年かけていますので、かなり時間のかかるプロジェクトになります。特に重要なのは、400以上のアカデミア機関が共同し、3000名以上の研究者が関与したという大規模な体制であると言う点です。
10万人のゲノムプロジェクトが終了した時点で、8万4000症例が希少疾患。2万8000症例ががん。がんの場合は、がん組織と正常組織で2ゲノムと考えます。ただ、がん組織の場合、精度を上げるため正常組織の3倍近く、測定を繰り返すので、手間暇は4倍になります。したがって、この10万人にかけた手間暇を全てがんに投入した場合には5万症例程度になるはずです。Genomics Englandの10万人プロジェクトはそれぐらいの規模だということを認識していただきたいと思います。
さらに、この2万8000症例のうちで結果が返せているものが2万症例以下という情報があります。その理由の一つはがん組織の解析にどのような検体を用いたかと言う点で説明できる可能性があります。Genomics Englandは、さまざまな議論を経た上で、病理組織標本で実施しています。しかし、結果が大変不安定であったことは報告されているので、それが多分、報告を返せていない一つの理由だと推測されます。現時点で、彼らは今後の100万人、500万人を目指すにあたり新鮮凍結組織を推奨しています。ただ、その新鮮凍結組織を収集する体制は未構築で、これからだという状況になっています。これは日本の今回のプロジェクトにおいて、非常に重要な、大きな課題となってまいります。
一方、さすがにイギリスかなと思うのは、そのデータをしっかり保険診療に生かしている点です。ことしの1月から全ゲノム解析の対象として、小児がん、肉腫、小児神経腫瘍、一部の血液系悪性腫瘍を選択しています。これらの疾患については全ゲノム解析をやっても構いません、保険償還します。一方、上記以外の成人の固形がんは、医療保険においては全ゲノム解析の対象にはしないということを現時点では定め、臨床応用を進めています。
ただ、Genomics Englandの体制で実施した場合の重要な点は、250名ぐらいの体制において、みんな大変疲弊してしまっている。10万人対象のプロジェクトでかなり大変な作業になっている。これが100万人、500万人になるとどうなるのだろうという意見も、漏れ聞こえてきております。
7ページは、新鮮凍結組織が本当に必要なのかを調べた私たちのデータです。検体を、新鮮凍結組織にするか、病理標本にするかによって、プロジェクトの取っての負担は全く変わります。
まず、新鮮凍結組織を使った場合の注意点は、そのまま凍結してしまいますので、がん細胞がどれぐらい含まれているかわからない点だと思います。我々の場合、病理医が手術標本をその場で確認し、がん組織が5割以上入っていると思えるものを検体としています。それを、遺伝子変異数をもとにケミカルに確認すると、目分量よりは腫瘍含量は少なくなる傾向があります。7ページ左の赤枠には腫瘍DNAにおける腫瘍特異的変異数を5000症例分プロットしています。0.3というのは、腫瘍含有量が30%という意味ですが、30%以上では標準的な変異数が算出され、平均値は安定しています。ところが、25%以下の部分では、平均値を示す青い線が急に低下する傾向が見られます。このことは、実際に存在している腫瘍特異的変異をかなり見落としていることを意味しています。従って、重要な分析には、腫瘍含量が25%以上の検体を用いることが安全であることがわかります。
次に、右上の赤枠では、新鮮凍結組織と病理組織標本とをDNA品質で比べています。PCRを使った検討ですが、新鮮凍結組織ですと赤い線以下になり、品質は良好であることを示していますが、青い縦グラフで示した39例の病理組織標本では、不良である高値が認められています。病理組織標本を用いた場合、約2割程度はDNA不良のため解析困難となる可能性があります。全ゲノム解析は、ビッグデータですので、こういう問題が大きく効いてくる可能性があります。
それから、右下の赤枠ではRNAの品質を調べています。我々の研究では、手術時に得られた組織を、病理医がRNAlater液に入れて、冷却し、1週間以内にRNAを抽出するという臨床検査としては最適条件で実施しています。それでも5000検体について調べてみると、2.2%ほどの検体はRIN値が0.6以下となり、RNA解析には利用できないという結果になりました。
以上の結果から、Genomics Englandの推奨も含め、今回のプロジェクトにおいても、当初は、新鮮凍結組織を使わざるを得ないと思います。しかし、全ゲノム解析を実施する検体を整理すると、新鮮凍結組織を全がん種で集めることは必ずしも容易ではなく、我々の研究でも前立腺がんは全く集めることが出来ません。術者、病理医によって、診断に差し障るので無理だと判断されています。ですので、がん種によっては、病理組織標本を用いるような方策を考えていく必要があると思っています。
ここまでのような諸点を考慮した上で、8ページに全体計画案を示しています。
まず、一番上の青い帯で示したように、がん種別・技術別研究グループをスタート時点から構築せねばなりません。アカデミア・医療者・患者会・産業界といった方々に最初から加わっていただき、ディスカッションして、特に本格解析、下のピンクの帯のところからは、研究グループの意見をしっかり取り入れていかなければなりません。
先行解析は、Genomics Englandの事業が、2年間、ほとんど動かなかったということを踏まえて、バイオバンクを活用し、同時に本格解析で用いる解析技術をしっかり検討していく。例えば、全ゲノムのロングリード、RNA Seq、メチローム、リキッドバイオプシーなどの様々な技術を実施可能か検討し、次に本格解析に持ち込む。この場合には、新規の検体の収集・解析・新技術の導入、そして経時的解析というステップで解析を進めるということを今回強調しています。これが日本版全ゲノム解析プロジェクトの差別化につながると考えました。
それから、体制整備は最初から準備を始め、本格解析がスタートする時点で整備を終えておかないと、本格解析に移ることが出来ません。検体収集・解析・データ処理・データ管理・データ利用などの取り決めも必要です。新規の検体を新鮮凍結組織で集めるとなると、病院・医療機関側には大きな負担がかかります。例えば、検体の検査センターへの移送を考えても、液体窒素保存で送る場合には、これまで検査センター等での経験がありません。本格解析の実施に当たっては、そこまで考えた準備が必要になります。
人材育成は、オン・ザ・ジョブ・トレーニング等を活用しながら進めていかないと達成できません。
今後検討すべき課題として、倫理的・法的・社会的諸問題(ELSI)、産学連携体制、そして知財をどうするかといったことなどが挙げられます。
9ページは、スキップさせていただきます。
10ページからは数値目標・体制整備の考え方で、11ページに、まず対象疾患・症例数の考え方を示しました。
世界各国でゲノム解析の国家プロジェクトが始まっており、イギリスに比べれば日本は明らかに一周遅れです。部会では、その状況でどうするのかが課題となりました。まず、日本人のがんの全ゲノムデータベースの構築は必須だと意見が一致しました。ゲノムには人種差があり、それを明らかにすることは間違いなくレガシーになっていくだろうと思います。
次に、日本人に特異性のあるがん、さらには、同一症例の継続的な解析。例えば、日本の最も強い内視鏡を用いた生検材料などを活用していく。同時に、リキッドバイオプシーなどで継続的な解析を行うことも必要だと考えます。
対象となるがん種は、罹患数の多いがん、難治性のがん、小児がんを含む希少がん、遺伝性腫瘍ということになります。
先行解析、本格解析の内容は、次のスライドで詳しく説明します。
12ページをごらんください。先行解析に用いる検体は、主にバイオバンクを活用します。使用可能な既存検体。できればDNA・RNA抽出済みのもの、それも採取直後に抽出されているものが望ましいと考えられます。抽出前の新鮮凍結組織であれば、保存状態が良好なもの。液体窒素で保存されていれば使用可能です。さらに、インフォームドコンセントの内容の確認は必須です。全ゲノム解析に使用可能というインフォームドコンセントが与えられているか否か。また、臨床情報をしっかり付随させられるかという点も必須条件だと思います。
このような観点から、現在、各施設のサンプルの保管数・保管状況の調査が必要で、既にこれは事務局のほうで調査を開始していただいております。
推進体制ですが、まず先行解析は、保管されている検体を用いるので、現時点で医療機関に検体が保管されている。そのシークエンスないしはデータ処理・管理は、現時点では中心機関がないので、医療機関・研究機関・委託機関等の中で当面、行わざるを得ない。データセンターが完備された時点で蓄積されたデータを送り込む。そして、最終的に利活用に進める。利活用も、検体保管施設や団体のプライオリティがありますので、まずは研究チーム。それから、2番、2番と書いてあるのはミスタイプではなくて、アカデミアや企業がほぼ同格で利活用していただくという意味で書かせていただきました。
その詳細は、13ページの図にございますので、ごらんいただければと思います。
次、14ページ。何年か後に本格解析が始まるわけですが、この場合には新規検体になります。そこで、この段階に向けて、がん種別あるいは技術別研究グループによる計画策定が必要となります。その上で、選定された医療機関で、それまでに整備されたマニュアルに従って収集、保存、移送を行い、民間企業等でシークエンスを実施する。そして、研究グループや中央機関等によって解析・データ処理を行う。データセンターは、それを一括管理して、一定のルールに基づいた利活用を進める。残った検体等についても、適切に取り扱って保管していただくことが必要です。
本格体制の推進体制は、先ほどの図とは少し変わって、今度は中央機関が整備されていることが前提ですので、そこを中心とした動きになるだろうと思います。
その詳細が15ページに書かれておりますので、ごらんいただければと思います。
16ページをごらんください。最終的に、このプロジェクトで期待される成果にはどのようなものがあるかをまとめてみました。
まず、先行解析の中では、がん種別・技術別の研究グループの構築と連携が始まります。それから、本格解析の目標の策定。そして、全ゲノム解析の長所・短所を明確にし、将来の保険診療につなげる。本格解析のための新技術の検討も並行して進める。本格解析のために望ましい体制も構築する。
先行解析の中で出てきたデータの多くは、すぐにがん遺伝子パネル検査等の改良には使えるので、患者さんへの恩恵という点では、この段階からどんどん活用できる体制をつくっておく必要があろうかと思います。
最終的に、本プロジェクトによって期待される成果としては、がん医療におけるがん種別・技術別研究グループが定着すること。今、例えば何とか学会のもとで、ほぼ独立してやっているものが、ゲノムというキーワードを横串として連携を強化する。そのことによって日本のがん医療はもっと進むのではないかと思っております。それから、日本人のがんの全ゲノムデータベースが構築される。また、細胞がん化のメカニズムがさらに解明され、さらに創薬やがん診断技術への活用がどんどん進むでしょう。
次の項目は人材育成です。18ページをごらんください。これも先ほどからいろいろ議論がでていますが、まず、医療機関のさまざまな専門職が必須です。
それから、検体処理・解析機関において、必要な方々。それをオン・ザ・ジョブ・トレーニングで育成していくことになろうかと思います。
20ページをごらんください。これは、社会環境整備、倫理面をまとめたものです。
倫理面に関しては、倫理的な課題に対応できる体制整備。それから、電子情報を用いた電子的インフォームドコンセント。さらには、先行解析と本格解析の違いをよく考えておく必要があります。先行解析は既にインフォームドコンセントが与えられた検体であり、新たな説明・同意を得ないかぎり、その範囲内で研究を進める。一方、本格解析の場合は、すべて新たなインフォームドコンセントのもとで研究を進めることになります。
全ゲノム解析の倫理という点では、がんパネル検査とは異なり、また、エクソーム解析には似た点がありますが、圧倒的に多くの二次的所見が見つかるという点です。単一遺伝子劣性遺伝病という観点からは、1人の健常人でも数種の劣性遺伝子キャリアであるということがよく知られております。実際に、そういう解析結果にどのように対応していくのかを決めておかねばならないと思います。
社会的な課題ですが、対象となる遺伝情報やその扱いについて、日本における状況を把握せねばなりません。法律をつくる必要があるかもしれないし、何らかのガイドラインも必要でしょう。それから、患者・市民参画も大変重要だと思います。
産学連携に関しては、先ほど述べたような研究チームが、しっかり連携した研究体制を最初から築き上げれば、利活用に当たって使い勝手の良いデータベースが構築できるだろうと思います。また、知財等については、事前の適切なルールの策定が必要だと思います。
21ページ、最後のスライドですが、8ページで提示した全体計画案の中に、喫緊の課題、「もしこのプロジェクトを次年度スタートさせるのであれば、これらの事項を解決しておかないと開始は困難ですよ」という事項について、構成員の皆さんの御意見をまとめてみました。
右側の赤です。先行解析においては、条件を満たす対象検体を選別すること。臨床情報をちゃんとつけられるか。それから、短期間で本格解析の準備ができるか。このあたりが、この先行した部分での重要な作業になると思います。
体制整備では、新鮮凍結組織を使う場合の医療機関の負担が、今の病理組織に比べれば、多分10倍、100倍の状況になると思われますので準備が必要です。シークエンサーの不足もかなり深刻ではないかと思います。今、利用可能なシークケンサーは日本に10台少々しかありませんので、今のままではとても間に合わないと思われます。それから、全ゲノム解析のノウハウは間違いなく不足していますし、人材も不足しています。このあたりをどう育成し、間に合わせるかが課題です。
今後検討すべき課題の中に、倫理指針、特に患者同意を入れました。先ほどのような課題があります。それから、データ利用のルールづくり。そして、ビッグデータに対応する組織の構築。このあたりが、今すぐにでも始めないと間に合わない課題としてまとめさせていただきました。
以上です。
○中釜議長 ありがとうございました。
ただいま、部会長である山口参考人から、この全ゲノムの解析等の推進に関する部会での報告を整理、まとめて御紹介いただきましたが、何か御質問、御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。
では、北川構成員から。
○北川(昌)構成員 病理の北川でございますけれども、検体の新鮮凍結材料のほうに移行していく御方針だということですけれども、FFPEを使う場合にも、DNAをとる場合とRNAを抽出する場合では条件を変えなければいけないし、先生方の施設は、多分最も適切な方法でとっていらっしゃるのでしょうけれども、これを広げていって、いろいろな施設からの材料をとるということになると、採取の仕方と保存の仕方がますますばらばらになってくると、もっと比率が落ちてしまう。
なので、凍結材料を使うのには賛成ですけれども、凍結材料にしても、保存の仕方等にはかなり施設間格差みたいなものがありますので、医師もさることながら、パラメディカルというか、医療スタッフの方々の教育も非常に重要になると思うので、お考えいただければと思います。
○中釜議長 その点について山口参考人、お願いします。
○山口(建)参考人 ありがとうございます。
まず、私たちの施設の現状を申しますと、6年以上、この研究を継続してきました。手術場で採取された手術標本を病理医が確認して、DNAは液体窒素の中に、RNAはRNAlaterの液につけて、それぞれ一、二週間以内で抽出するという体制をとっています。その体制を確立するには、今おっしゃった、いろいろな職種が関わり、結果的には病院の医療スタッフの約半数が何らかの形でこの研究に関わるという状況が生まれています。専従は40名程度、必要になっています。従って、全国的な規模で実施するには、Genomics Englandで250名必要だというのはよく理解できます。
ただ、これはあくまでも研究なので、将来にわたってそういうことがずっと続くというわけでは多分ないと思います。特に、研究に参加する施設においては、一、二年かけてそういう体制をつくっていただき、スタートさせるというのが、この部会での一応の結論だと思っております。
○中釜議長 ありがとうございます。
ほかに。
では、厚労省、お願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 がん・疾病対策課長の江浪でございます。
この部会の議論を受けました、今後の流れに関しまして、少し補足の御説明をしておきたいと思っております。
ことしの骨太の方針などを踏まえまして、「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」におきまして、がんの全ゲノム解析を行う対象疾患、あるいは数値目標等の考え方について、これまでの議論の結果をお示しいただきました。部会におきましては、本日、参考資料5-2に、例えばバイオバンクにどれぐらいの検体があるのかということも、事務局のほうで精査中ということでございますが、数値をお示ししながら議論いただきました。
また、体制のほうに関しましても、参考資料5-3に、これは部会長のほうから御報告いただきました体制のことについての資料もつけておりますが、例えばページ7におきましては、データ管理以外にも、検体の保存のことについても、どういうふうにしていくのかということを議論していただきまして、部会におきましては、自院で管理しつつ、指定されたバイオバンク等で適切に管理していくという考え方があるのではないかという御意見もいただいたところでございます。
数値目標などに関しましては、部会におけます議論の経過を踏まえまして、例えば先行解析のバイオバンクにおけます患者同意の具体的な取得の内容でありますとか、保管されております検体の状況などを精査していきながら、全ゲノム解析の具体的な実行計画を年内めどに策定していくという作業を続けていきたいと考えてございます。
○中釜議長 ありがとうございました。検体の収集体制の議論をきちんと詰めて、本格的に進めていく必要があると思います。
では、中山構成員。
○中山構成員 ありがとうございます。
最初に、参考人もお話になりましたように、全ゲノム解析の計画はほかの国と比べると周回遅れという感じがしていますので、ぜひスピード感を持って進める必要があると思います。
また、早い段階から産業界の意見を取り込んで、うまく使えるようにしようというお考えをいただきまして、大変ありがたく思っています。産業界としても日本人のゲノム解析結果で、日本人のための薬を開発したいという強い希望がございます。
最後になりますが、研究所の現場の人間と話していますと、ゲノム解析も必要だけれども、さらにオミックス解析もしたい、それがかなり重要度を増しているという話を聞きますので、この枠組みの中でするのであれば、それをどうしていくかということを御検討いただければありがたいと思っています。
○中釜議長 その点について、山口参考人。
○山口(建)参考人 さっきスキップしたのですが、9番目のスライドです。お答えにならないかもしれませんが、本格解析のほうで用いていく新技術の中に、例えば全ゲノムであればLong readを、またRAN-seqを必死するとか、メチローム、それから書き忘れましたがメタボローム、そういうものも含めて、もともと私どもはマルチオミクスというコンセプトで研究体制を固めてきましたが、今回のプロジェクトも同様な考えで将来的には進めるべきであると考えております。
ただ、例えばメタボロームは末松構成員が御専門ですが、ゲノム解析のようにとりまとめやすい形で出てくるデータではありませんので、実施に当たってはかなりの検討が必要かなと思います。
○中釜議長 ありがとうございます。
では、渡部構成員。
○渡部構成員 シークエンスの部分というのは、産業界、民間に委託して競争原理も働かせていこうというのは、最終的にはその方向だと思いますけれども、設備投資が結構必要なので、かなり重たいテーマがここに来ているのではないか。シークエンサーは、ノバセックの数も非常に少ないし、中国のBGIが使っているものが本当に日本で使えるのかとか、日本が国産化できるのかというテーマもございますし。
それから、コンピューティングパワーが一つのクリティカルになるということで、京コンピュータがもう一つ要るという見方の方もいらっしゃいますし、あるいはもっとGPGPUで簡便にできるようになってきているということで、これは政策的にも取り組んでいただくこともあると思いますし、あるいはコンピュータサイエンスという形で解析を研究していくとか、いろいろなテーマがあると思いますので、そういったことが大事ではないかと思います。
○中釜議長 ありがとうございます。
この点について、よろしいですか。重要な御指摘と思います。
ほかに。末松構成員、お願いします。
○末松構成員 山口参考人から今、説明のあった、組織を凍結するプロセス。研究目的でやるにしても、断端をFFPEで処理して、断端診断がちゃんとできる状態で残りのサンプルを凍結しないと、患者さんの不利益に間違いなくなると思うのですけれども、その辺の手順ですね。断端に関しては、凍結は禁忌になっているので、その辺は大丈夫なのでしょうか。
○中釜議長 お願いいたします。
○山口(建)参考人 私どもの現状だけ、まず申し上げますと、そのために、ともかく凍結する組織は全て病理医が一件一件、採取しています。ただ、そうしますと、当然、今おっしゃられたような注意せねばならないケースは全部除かれることになりますので、静岡がんセンターで年間に行われる3000症例の腫瘍摘出手術のうちの1000症例だけが対象になっています。ということは、ステージ2、3で病理診断に影響を与えないような腫瘍の一部分ということになっています。
先ほど申しませんでしたけれども、全ゲノム解析の中でステージをどう考えていくかというのは大変重要で、ステージ1のような病変については病理組織標本を使わざるを得ないと思いますが、それがさきほど申し上げたように現在のGenomics Englandの推奨からは外れてしまいます。そこで、先行研究の間に2年ぐらいかけて、病理組織標本を使用可能にするような手法を見つけることが出来れば、かなり対象は広がるであろうと思っています。
○末松構成員 もう一点だけ。先生からお示しいただいた資料で、なるほどと思ったのですけれども、組織の中で30%を境に解析のクオリティーが落ちるという話でしたけれども、膵臓がんみたいな、ストローマが多くて、がん細胞が余りないようなところで、どの程度の成果が期待できるかというのは、これからの話なのか、あるいは初めからそういったところは期待できないのか、その辺がもしわかることがあれば教えていただきたいです。
○山口(建)参考人 おっしゃるとおり、膵がんはスキルスタイプになりますので、データから算出した腫瘍含量が30%以上、未満で2つに分けると、30%未満の群では例えば膵がんにおけるKRASの検出はかなり落ちてきます。一方、30%以上の群では、ほぼ過去の報告と同程度になっています。従って、新鮮凍結組織を用いる場合、組織内腫瘍含量という考え方をこの計画の中にしっかり取り入れる必要があろうかと思います。
○中釜議長 ありがとうございます。
では、杉山構成員。
○杉山構成員 私、コンピュータサイエンスのほうから、この会議に参加させていただいていますが、AIの分野、世界的に人材が足りないというのは、皆さん御存じのことかと思いますが、AIの分野から見ると、たくさんあるアプリケーションのうち、医療というのは非常に重要な分野の一つだと認識しておりますので、そういう意味では、研究者のコミュニティの中でも医療分野に貢献したいという機運は高まっていると思います。
一方、このデータ解析に対するハードルの高さといいますか、アクセスに対する難しさというのは感じているところでして、これはお願いベースになりますが、コンピュータサイエンスのほうから見ますと、すごく扱いやすいデータはいろいろな分野にありまして、魅力的です。若い、手が動く学生は、それをぱっと解析できる分野にどんどん行ってしまいますので、医療のほうでなかなかデータが出てこないとか、アクセスが簡単じゃないというハードルがあると、みんなそっぽを向いて別のところへ行ってしまうような状況になってしまっています。
なので、ぜひそうならないように、皆さん、十分御努力いただいていると思いますが、ぜひ分野の外のコンピュータサイエンスの若手の研究者でも、簡単にデータにアクセスできるような環境をつくっていただければと思います。
○中釜議長 とても重要な御指摘だと思います。
では、石岡構成員、お願いします。
○石岡構成員 石岡です。
これは、国の成長戦略の中に予算が組まれているということで、それに関連して、まず厚労の事務局に伺いますけれども、健康局から予算立てといいますか、こういうプロジェクトが出てくるということで、我々現場として心配なのは、限られた科学研究予算の中で、この全ゲノム解析というプロジェクトは、日本としては相当リスクを冒したチャレンジをある意味動かす。成長戦略にかける決意と理解しているところですけれどもね。
一方、がんの専門家としては、現在の医療、厚労がやっている、先ほどの前半のがんゲノム医療とかもありますし、がん診療連携拠点病院の強化事業とか、いろいろありますけれども、そういった枠組みとの中で、これだけ大きなプロジェクトが走ったときに、そういったところに支障が出ないのか。簡単な話、今後もそれ以外のがん予算が確保できるかといった、非常にプリミティブな心配を私は持っているということです。それが1点です。
それから、山口参考人に伺いますが、先ほどどなたかからも既に質問されました。私、オミックス解析とかは、もちろん非常に重要だと思っています。ただ、先ほど私が前半で、国際的な部分との関連ということで質問させていただきましたけれども、これは日本人特有と、我々東北大学も東北メディカル・メガバンクもそういううたい文句でやっているわけですけれども、実際、疾患というのは、日本人特有な部分は当然ありますけれども、皆さんもよく御存じのとおり、人種を越えた共通部分がむしろ大きいというのがコンセンサスだと思います。
そうすると、こういった全ゲノム解析の研究というのは、それはそれで、もちろん私もいいと思いますけれども、日本でスタンドアロンでやって、オールジャパンでやるということは、日本の目標には早く達すると思いますけれども、もっと高いところの目標には、各国といろいろ協調してやらないと行けないのではないかと僕は思っています。
そういう意味で、オミックスという話も参考人から出ましたけれども、日本だけ独善的なプロジェクトに決してならないようにというのが僕は非常に重要だと思いますし、そういった中で、東北大も新鮮凍結のLong readにかじを切っていますけれども、どこが日本の得意とするところなのか。日本で全部できるわけはないですので、そういった日本が先んじてやれる部分と、ほかの国に任せる部分を協調するというビジョンは、これだけのチャレンジをするのであれば、私は最初から必要じゃないかなと思います。これが2点目で、それを御回答いただきたい。
それから、コストのことを考えますと、最近、日本のがんの学会との協調が非常に盛んに行われていまして、具体的に言えば、米国臨床腫瘍学会(ASCO)と欧州臨床腫瘍学会(ESMO)とも、年に二、三回、ビジネスミーティングをやっているような状況です。彼らは、アジアを、悪い言い方ですけれども、バトルフィールドにして、なぜならがん患者の半分以上はアジアにいるという状況で、市場にしようとしているというのが明らかだと思います。
そういった中で、日本のゲノム解析にこれまでかかっているお金は非常に高くて、先ほど中国のお話が出ましたけれども、非常に安くできます。これは、国プロとしてやっている。韓国でも、例えば先ほど保険償還されたFoundation Oneに相当するような遺伝子パネル検査ですが、3分の1の価格、米ドルで1500ドルぐらいでできるという実態があったときに、日本は、例えばこれに100億円、500億円かけたときに、その消耗品に係る金は莫大になっていて、そういったインフラ部分を相当変えないと、金ばかりかかって、コストパフォーマンスのいいものが余り出てこないのではないかと、私は現場として心配しております。
ですから、国の予算の問題と、それから国際協調して、日本独自のところは何かということを見て、独善的にならないということ。それから、コストの面で、日本もアカデミア等がより安く、そういうことができるということを、産学連携として新しい枠組みをつくるということが必要だと思うので、その点をそれぞれ御回答いただきたいと思います。
○中釜議長 最初に、国の予算に対して。
○健康局がん・疾病対策課長 がん・疾病対策課長の江浪でございます。
今回の全ゲノム解析の推進に当たって、多額な研究予算が必要ではないかということについては、御指摘のとおりです。それにより、今、進んでいるさまざまながんの研究開発がおくれてしまったり、患者さんに対する新しい治療、医薬品の開発等が逆にとまってしまうということがあるとすれば、それは本来、全ゲノム解析そのものも、がん患者の皆様のためという目的とも合ってこないと考えてございます。
この全ゲノム解析に関する計画に関しましては、ここはがんゲノムコンソーシアムということですので、がんの分野について本日は御報告申し上げておりますけれども、難病も含め、全体としての計画をまとめていく中で、先生から御指摘があったような、ほかの研究を阻害して、結果としてがん患者さんに対して不利益を与えることがないような予算確保ということにつきまして、検討をしっかり進めていきたいと思ってございます。
○中釜議長 加えて、恐らくデータの利活用の点から、研究から診療への展開を意識して目標として進めるということも重要かなと思いました。
2点目、日本として、日本ゲノムの特異性あるいはその国際協調について山口参考人、お願いします。
○山口(建)参考人 このプロジェクトに関して、いろいろなところから、まさに石岡構成員と同じことを随分言われています。しかし、回答のポイントは、日本人のデータベースを持たないで国際協力もないのではないかというのが、まず最初の考えです。
先生も御存じのとおり、東北メディカル・メガバンクのデータによれば、SNPsのところで85%が西洋と共通だが15%は日本人特異のSNPsだとされています。先生が御専門のp53に関しても、私たちの研究では、全体の1~2%に見つかる生殖細胞系列の変異が見つかり、当然common SNPだろうと考え、IARCのデータベースで確認するとLi-Fraumeni症候群の変異として登録されている場合がありました。日本人特有なSNPが、誤って登録されているのですが、このような事例からも日本人のデータベースをしっかり持っておかないと、がんについての診断を誤るということになります。これを進めて、日本人のがんのデータベースをしっかり構築した上で、国際協力というのが筋じゃないかと思います。もちろん、並行して進むのは当然のことだと思います。
実際に5000例解析した中で、日本人に特異的なものがそんなに出てくるのかという御質問も少し絡むと思いますが、一般的ながんに関して言えば、日本人にだけ特有ながんというのは出て来ていません。ただし、先般の印刷会社における胆管がんのような特殊な発がん物質等によるものは日本だけということがありえます。また、日本人に多い、遺伝子変化が日本人特有である、日本でないとなかなか発見できないといった症例も散見されます。内視鏡検査が発達している日本で多く見つかるGISTなどがその例で、技術面から日本の特徴を出すことも可能です。
まとめると、当然、国際協力、国際共同は視野に入れながら、まずはともあれ、最初の数年で日本人のがんの全ゲノムデータベースをしっかり構築することが、日本国民のために一番いい方法じゃないかと思って、こういう形にとりまとめました。
○中釜議長 3点目の技術的な開発も含めたコストに関する工夫に関しては、山口参考人、何か御意見ございますか。
○山口(建)参考人 ゲノム解析技術と費用については、専門でありませんので私が云々する問題ではないかも知れませんが、あえて申し上げれば、解析コストは、BGIにしても、イルミナにしても、どんどん下がってきていると思います。私たちの研究でも、2014年のスタート時点で全ゲノム解析を考えましたが、費用面で実現することは出来ませんでした。しかし、現時点ではGenomics Englandでは1ゲノムで、今、10万円を切っていると伺っています。Genomics Englandは、イルミナ社が全面的に引き受けて実施していますのでより安価になっています。我が国でも、宮野先生がBGIは1ゲノム5万円という話をしておられましたので費用は下がってきていると思います。いずれ1、2、3万円の時代が来れば、このプロジェクトも予算的にはかなり楽になるのではないかと思います。宮野先生、いかがでしょうか。
○宮野構成員 コストは、人件費のところを除きますと、シークエンサーは先ほど先生がおっしゃったように、MGIのDNBseqというのが商品名ですが、そういうもので、1日、1ラン、6テラベース、1億1000万円のセットを買えば、デプス30で全ゲノムをシークエンスした場合、1台で1万人ゲノムを166日、半年でできるというものです。今、定価で550ドルでシークエンスを受けますというのが来ていますが、試薬代の見積もりを定価ベースでやってもらったときが5万1000円ちょっとでした。
○石岡構成員 デプスは50じゃだめです。腫瘍だったら500から1000ぐらい。がんだったら50じゃだめで、デプスは500とか1000ぐらい。
○宮野構成員 はい。
それと、コンピューティングリソースの点ですけれども、これまでスパコンが必要でした、しかし、いわゆるCPUでデータ解析をやっていた時代から少しシフトを始めまして、GPUで非常に低価格で1000万円ぐらいのコンピュータで、マッピングから変異コールまで、腫瘍ゲノムとジャームライン、両方あわせて2時間程度でできる時代になっており、我々のところでも検証しています。デプスが150のマッピングが、うちでテストしたところでは1時間ちょっとぐらいでできるようになっています。これは、1台を使った場合です。
複数台使ってやれば、マッピングのところはぐっとパラレルに減らせます。変異コールのところは一定の時間がかかりますけれども、そんな時代になっていますので、今まで1日かかっていた、2日かかっていたという時代からは、2年前はそうだったのですけれども、今、随分と違っています。
○中釜議長 ありがとうございます。
追加で山口参考人、お願いします。
○山口(建)参考人 石岡構成員の御発言に関してですが、部会においては、がんの組織のペア解析のdepthは、生殖細胞系列が30から40カバレッジ、腫瘍組織が100から110カバレッジで計算しています。現在の機器では、全ゲノム解析の場合、それがマキシマムに近いと思います。もちろん1000カバレッジでやれればより正確になりますが現有機器ではとても不可能です。
○中釜議長 ありがとうございます。
では、藤原構成員、お願いします。
○藤原構成員 簡潔に3つ。
1つ目は、知財。全ゲノム部会からの報告の20ページに関係してですけれども、これはがん・疾病対策課に聞いたほうがいいかもしれませんけれども、いろいろながん遺伝子の異常に関する特許については、米国では整理されていますけれども、日本の特許庁は、それを診療に使う場合に、そのロイヤリティをどう請求するかという、特許法との兼ね合いの整理がいまだについていないと思うので、早急に解決していただきたいというのが1つ。
2つ目は、ELSIの絡みで、先ほど前半で申し上げた健康・医療戦略室のタスクフォースでの議論のときには、法学者の方とか倫理の方を呼んで、米国のGINAと呼ばれるような遺伝子差別を禁止するような法律が日本で必要かという議論がありました。そのときには、財務省が保険の約款のチェックをするとか、さまざまな通知があるとかで、法律で規制しなくても、日本の中ではGINAは不要ですという結論になっているので、全ゲノムをもう一度議論するのであれば、再度そういうものを検討する場を設けられたほうがいいのではないかというのが2つ目です。
3つ目は、次世代医療基盤法との兼ね合い、これは自分の頭の中でも整理できていないのですけれども、Genomics Englandとか全ゲノムをやっているニューヨーク・ゲノム・センターを見ると、財政の大きな部分が民間企業からの寄附のお金でやっていますね。お金を取るということを考えて、全ゲノムを将来診療に導入するのであれば、民間との共同が必要になったときに、次世代医療基盤法の第三者提供のところは、今は多分、研究目的に限っていると思うのですけれども、民間からお金をたくさん入れる中で、それを研究目的として永遠に言って、匿名加工情報の提供の際に弊害が生まれないかどうかというのも、整理しておいたほうがいいのではないかと思います。
○中釜議長 ありがとうございます。
最初の知財、山口参考人のほうから。
○山口(建)参考人 ELSIのところをまず私が答えて、あとは事務局に答えていただこうと思います。
私は、20年ほど前に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の倫理指針を作成させていただいたのですが、ご指摘の問題はその時点から課題になっていました。差別を禁ずる法律をぜひつくるべきだという意見が強かったと思います。しかし、その一つの流れが終わった後、余り動きがなかったと思います。今回、構成員の皆様からも、このプロジェクトがゲノム解析研究の倫理をもう一度しっかり見直すいい機会ではないかというご指摘がありました。もし、ゲノムに由来する差別を禁止する法律をつくるのであれば、今がいいチャンスではないかという意見も出ました。それは事務局のほうで押さえていただいております。関係部署にしっかり言っていただくようにお願いしております。
○中釜議長 この点について武藤構成員から何か追加で御発言、よろしいですか。
○武藤構成員 はい。
○中釜議長 では、残りの2点、知財、特許等に関する点と、次世代医療基盤法との関係について事務局、お願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 まず、遺伝子特許に関する課題の整理をしっかりと、という御指摘に関しましては、パネル検査の保険適応の際にも、課題として我々検討してきたところでございます。特に、全ゲノム解析になったときに、知財がどのような課題になってくるのか。ここは、先生方の知見もぜひいただきながら、しっかり検討を進めてまいりたいと思います。
差別禁止の関係に関しましては、昨日も立法府のほうで超党派のゲノム医療推進法に関する検討が行われております。立法府のほうにおきます検討状況もしっかり確認しながら、我々のほうでも課題の整理等に努めてまいりたいと考えてございます。
3点目の民間の方の参画、特に財政的な面での御協力をいただいていくということに関しましては、この全ゲノム解析に関します総コストのようなものを考えた場合、あるいは実際に研究開発に資する部分が非常に大きいのではないかという中で、民間の方々の活力の活用というのが必要不可欠であると考えてございます。遺伝子情報という中で、どうしても個人識別符号であるという個人情報保護法上の課題もございますので、どういった制度の中でやっていくかということは、これからも議論していきますけれども、財政的な貢献のほうを民間の方々にも求めていきたいという考え方は、我々のほうでも引き続き検討していきたいと考えてございます。
○中釜議長 ありがとうございます。
では。
○大臣官房審議官 大臣官房審議官の大坪です。
前職で次世代医療基盤法を担当しておりましたので、藤原先生の御質問に対して簡潔にお答えしたいと思います。次世代医療基盤法は、民間企業からの要望に基づいてつくられた法律でして、そもそも個人情報保護法の76条規定で、研究開発に関して、研究部分に関しましては、既に手当て済みでして、研究の中では、第三者提供等の縛りはかからないことになっています。民間企業の方に医療機関から出したい場合であっても、個人情報保護法制の中では、例えば先生方がみずから匿名加工していただければ、それを出すことは可能でございます。
今回の次世代医療基盤法は、民間に使っていただくことを想定しておりましたので、生のローデータのまま、それを国が指定した認定事業者というところに出していただくことを可能とした法律でございまして、そこは国が指定した認定医療機関というところが匿名加工して第三者に出しますから、大丈夫ですよという法律になります。その場合、ユーザーである民間企業から費用をいただくことになっておりまして、これは全く国費が入っておりませんで、持続可能なシステムということで、民民の中で成り立つという仕組みでございます。
以上です。
○中釜議長 明快な説明、ありがとうございました。
松原構成員。
○松原構成員 先ほど、がん・疾病対策課のほうから、参考資料5-3、体制整備について御説明があったのですけれども、そのことに関して2つ質問させていただきます。
1つは、ここで示された資料というのは、がんの全ゲノムの体制整備ということでやられておりますけれども、難病の全ゲノム解析の体制整備も同時に進んでいくと思うのですが、これらは別々に実施されていくのでしょうか。1つにまとめたほうが、コストも安くなりますし、あるいはノウハウの共有という点でも非常にいいと思うのですけれども、その辺についての厚労省のお考えをお伺いしたいと思います。
それから、もう一つは、こういった体制整備に当たり、Genomics Englandでは、イルミナ社を中に取り込むことで、非常に安く、しかも最新の機器とかノウハウを全部取り入れる形で進んできたわけです。こういった民間の企業を中に取り込んでの体制整備ということをわが国でもされるおつもりがあるでしょうか。全ゲノムに関する機器の開発とか、さまざまな試薬の開発というのは、民間企業主導でこれまで進んできておりましたので、そういったものを取り込むようなことをお考えになっているかどうか、その2点について、お伺いしたいと思います。
 
○中釜議長 今の2点について、お願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 がん・疾病対策課長の江浪でございます。
まず、体制の整備のことについてでございますけれども、当初、我々のほうでお示ししておりました検討スケジュールにおきましては、難病とがんと検討を並行して進めながら、体制整備の部分に関しまして、恐らく共通する部分があるのではないかという前提のもとで、合同会議で開催したいということで申し上げてまいりました。結果として、その2つの検討の場での検討状況を踏まえまして、合同会議という形で会議を持つことを最終的には行わず、それぞれの検討の場での整理ということで今回行いましたので、今、構成員から御指摘の点につきまして、これまでの検討の中で結論が明らかになっていないのではないかという御指摘だと考えてございます。
これは、これからその2つの検討の場での結果を踏まえまして、1つの全ゲノムに関する実行計画を策定する中で、構成員御指摘のような課題について、どういうふうに考えるのか、そこをしっかり整理してまいりたいと考えてございます。
2点目の民間企業の参画という課題についての点でございますけれども、資料5-3の中では、シークエンスの部分に関しまして、民間企業に御協力いただきながら進めていくという絵でお示ししております。そういった中で、一定規模以上の検査を委託することになった場合に、企業とのコンソーシアムという形なのか、御協力、共同体制を築きながら、コストの削減、あるいは研究開発に関しましても一緒にやっていくという考え方があるのではないかという御指摘だと思います。それに関しましては、競争の中での価格の低減という観点と、共同研究あるいはコンソーシアムのような形でやっていく場合のメリットと、そこは整理しながら検討を進めていきたいと考えております。
○中釜議長 ありがとうございます。
では、お願いします。
○松原構成員 資料3の5ページでは外注と書いてありますが、こういう形にしておくと、試薬は全部海外でつくっていますので、海外から試薬を買って、そっちに全部お金が流れていく。そして、解析の部分はブラックボックス的に、ただ海外に高いお金をどんどん払うだけになっていって、日本に何も残らないような気がするのです。ですから将来のことを考えて、できるだけこの辺はプロジェクトの中に取り込むように仕組みを考えていただければと思います。
 
○中釜議長 その点もよろしくお願いします。
ほかに御意見ございますか。
○武藤構成員 武藤です。
先行解析の位置づけのことで山口参考人に質問させていただきたいのと、あと、患者・市民への啓発のことでお話ししたいと思います。
先行解析は、研究という位置づけで計画されているという理解でよろしいですか。
○山口(建)参考人 これは、先行解析・本格解析を問わず、研究の位置づけです。
○武藤構成員 ありがとうございます。
その場合には、倫理審査をどうするかという話になってくると思います。それと、患者さんたちに再同意が要るのか要らないか問題というのは、結構議論になります。最初、バイオバンクでされるということで、私は個人的には、ちゃんとまともな審査をしてくれる委員会で一括審査して、オプトアウトでやるという方針ではないかと理解しているのですけれどもね。
そこで、厚生労働省などにお願いしたいのは、非介入研究の一括審査を円滑にやる仕組みというものがなかなか難儀しているところで、例えば遺伝子名を書いていないと審査を受け付けませんという委員会は、即刻やめてほしいと思っているのです。ですので、全ゲノムに対応できる審査ができる倫理審査委員会にあらゆることを集約するということを、ぜひ応援していただきたいというのが1点でございます。
それから、2点目に、今の話と関連するのですけれども、わかりやすくするという趣旨もあるかと思うのですが、本来、ゲノムと言うべきところを、みんな遺伝子と言いかえてずっと来ている。説明文書もそうですし、倫理審査でもそうですし、本当はゲノムと言わなければいけないことを、ゲノムだとわかりにくいから遺伝子にするという歴史が、多分10年以上あって、それが今、ブーメランとしてはね返ってきているのではないかと思います。
先ほど石岡構成員がおっしゃっていたことにもかかわるのですが、今回の全ゲノム解析は、今までのものとは全然違って、海外にもいろいろな協力したり、協力してもらったりしながらやらないといけない、すごい世界観なので、これがそういうものだということを、ぜひ天野構成員のお力もおかりして、患者さんや市民にもっとわかってもらってプランを立てないといけないというのが私の意見です。
以上です。
○中釜議長 ありがとうございます。
最初の非介入研究の一括審査等に関する現時点での考え、事務局、お願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 がん・疾病対策課長の江浪でございます。
まず、先行解析におきます倫理委員会等の取り扱い、あるいは同意の取得、再取得の必要性の関係についての御指摘がございました。これに関しましては、私から少し補足のところで御説明申し上げましたけれども、今、バイオバンクにあるさまざまな検体が、そもそもどういう前提条件で患者さんの同意、どういう形で得られたものかということをしっかり確認しながら、いろいろな規定に照らして、しっかり利活用できるような形でどういうふうに進められるかということで、これは進めながら検討をしっかりしていかなければいけないものではないかと考えてございます。
2点目の倫理委員会に関する課題でございますけれども、研究に関します倫理指針にかかわる部分ということでございまして、この部会で議論していただく中でも、部会長の御提案によりまして、倫理指針のほうの検討状況がどうなっているのかということについても、ヒアリングという形で御意見をお聞きする場を設けさせていただいたところでございます。倫理指針の担当部局とも相談しまして、しっかりした倫理審査体制を維持しながら、課題の少ない見分け方をしっかり検討してまいりたいと考えてございます。
○中釜議長 ありがとうございます。
2点目のゲノムと遺伝子の言いかえの問題は、かなり大きな問題かなと思いますけれども、そのあたりについて山口参考人。
○山口(建)参考人 その話は初めて聞いたのですが、静岡では多分そういうことは起きていないので、東京の風習かなと思いますけれども、ゲノムと遺伝子は明らかに違いますので、それは改めていただくしかないのではないでしょうか。ただ、大事なことは、研究への参加者を含めた一般国民がそれをちゃんと理解していただかなければいけないと思うし、こういう研究が、いつかがんの診療レベルを高めるのだということを理解していただかなければいけないと思います。実はこの点は、がん対策推進協議会でも大きな問題になりまして、遺伝ないしは遺伝子ないしはゲノムという言葉がひとり歩きして、パネル検査が始まると、診療のハードルが高いので、民間企業の遺伝子検査に向かってしまうという問題が課題として出てきているようです。
ですので、協議会における次期がん対策推進基本計画の一つの課題は、がんに関する情報の均てん、その中にゲノムを含むという議論が進められています。ただ、数年かかりますから、その間、武藤構成員の御努力で、そういった内容のお話をしっかり広げていただくことを期待したいと思います。
○中釜議長 武藤構成員。
○武藤構成員 厚生労働省から御回答いただいた件で、ありがとうございます。倫理指針上は全く問題なくて、改正されても、その部分は全く変わっていないのですけれども、どちらかというと各倫理審査委員会の信頼できる委員会をどう認定するかとか、どこを活用してもらうかというところの課題かなと思っております。
2点目の件は、東京の風習ではなくて、済みません、いろいろなところで起きているのです。治験の説明文書にもまだ入っていますし、いろいろなところに遺伝子と言っているものが混ざり込んでいるものがありますので、それは何とか教育のほうの部署のお力もおかりして頑張るべきだと思っております。
以上です。
○中釜議長 山口参考人、お願いいたします。
○山口(建)参考人 倫理指針を部会の中で言い出した、あるいは、かつてやっていた経験から申し上げますと、現在の倫理指針が全ゲノム解析の時代に追いついていないのではないかと危惧しています。全ゲノム解析では、例えば二次的所見は何千も出てくる可能性があります。そこで、現在、倫理指針が改定中なので、そこに関わっている倫理の専門家を、部会に参考人としてご出席いただき、改定中の内容が全ゲノム解析に適合しているかをお聞きしたのですけれども、それはまだ十分ではないとのお答えでした。ということは、本プロジェクトの少なくとも本格解析の部分を始められないというリスクを負うことになりますので、厚労省の事務局には、必要に応じて改定する、あるいは、例えば補遺をつくって対応するといった判断をせねばならないということは申し上げています。
○中釜議長 武藤構成員。
○武藤構成員 ありがとうございます。
全ゲノム特有の課題ということを新たに追加されるということは、今、改正されている指針の議論の中では出てきていないのです。ですので、それがガイダンスであったり、何かの形でどこかで加えないと始まらないというのは同じ意見です。
○中釜議長 末松構成員。
○末松構成員 、繰り返しになりますけれども、AMEDで今、研究を管理しているゲノム解析のインフォームドコンセントは、ほとんど武藤先生のおっしゃった状態です。遺伝子という言葉です。現場の研究者は、本当に恐ろしいことだけれども、エクソーム解析ならこれでいいだろうと言って、一度IRBを通ると、全ゲノムでもその文言でいいだろうと拡大解釈している危惧がある。
特に、2020年に、個情法の細かいところは、罰則云々とかいろいろ入ってきますよね。全ゲノムに大きく踏み込むときに、これは全ゲノム解析だということをどこにもきちんと書いていない状態で、厚労省の調整費等の全ゲノム事業をこれからスタートする、あるいはこれからIRBに係るものもある。そういうところにきちんと書いて、ちゃんとした説明をしないと、大変な問題になると思いますので、ぜひ山口先生おっしゃったような、補遺という形でもいいので、そういう文言、今までと何が違うのかということをちゃんと記載していただきたいなと思います。
○中釜議長 ありがとうございます。
ほかに御意見ございますか。よろしいですか。
1点だけ、私のほうから。先ほど山口参考人からの御指摘で、先行解析・本格解析をステップを踏んでする段階で、体制整備の重要性、あるいは体制整備の準備の重要性を御指摘になったかと思います。その点については、先ほどの事務局の説明の中で、実行計画の中にそこを踏まえた形で計画を提示されるという理解でよろしいのか、その点について事務局から追加で御説明できますか。
○山口(建)参考人 私の立場では、構成員の方々から、その体制について、いろいろ御意見をいただき、この図の中に入っているような、ポンチ絵ですけれども、でき上がっているという状況です。これを今後、本当に動くような形に構築していくのは、次のステップだと思っています。そのためもあって、先行解析の間にそういうシステムをしっかり築き上げて、使い勝手のいいものにしていく必要があるだろう、本格解析が始まるまでの間にやる必要があるのではないかと思います。
事務局のほうから追加をお願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 一番最初の私からの御説明の中で明確にお伝えしているつもりであったのですけれども、厚生労働省といたしましては、今回検討いただきました部会におきます議論の成果を踏まえて、具体的な実行計画を策定していきたいということでございますので、今、まさに申し上げたとおりでございます。
○中釜議長 ほかに御意見、御質問ございますか。
葛西オブザーバー、お願いします。
○葛西オブザーバー 5-3のICTのインフラのイメージがある程度描かれてしまっているので、これをどういうふうにつくるのかというのが、多少気になります。この観点で言うと、恐らく統合解析とか、いずれにしても全ゲノムですから、かなり巨大であるというのは明らかで、その巨大なコンピューティング環境を自分がもし開発するとなったとすると、果たして日本のエンジニアで特定の分野を得意とする会社だけでやるということは、多分難しいのではないかと感じます。例えばGPUの部分とソフトウエアの部分とネットワーキングとクラウドと全然違うので、特定の会社が全部できますということはまずあり得ないわけで、そういった戦略的な調達のあり方とかも事前に考えなければいけないのと。
そもそも、実は私もメディカルは、本来専門でないわけですけれども、ICTの人間はメディカルに来てみたいなと思うのですけれども、むちゃくちゃ壁が高いので、そこの門戸を少し下げてあげないと、医療がある程度わかってテクノロジーがわかる会社というと、もう限られるというところを含めて、ちゃんと競争性がある形でインフラをつくるということをしない限り、国際競争に全然勝てないのではないかという気がします。
○中釜議長 重要な御指摘で、そのあたりも含めた上での体制整備の準備をぜひお願いしたいと思います。
ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。
それでは、本日、構成員の方からいろいろな御意見、御指摘を受けまして、大変参考になり、私も大変勉強になりました。いただいた御意見をもとに、先ほどの実行計画等について参考にしていただき、日本として世界に誇れるようなものをつくっていければと期待いたします。
それでは、事務局から連絡事項等ありましたら、お願いします。
○健康局がん・疾病対策課がん対策推進官 事務局でございます。
本日は、長きにわたり御議論いただきまして、まことにありがとうございました。
議長がおっしゃっていただいたとおり、本日いただいた意見を踏まえまして、引き続き所与の検討を進めてまいりたいと思いますので、御指導いただければ幸いです。
次回以降の運営会議の日程につきましては、追って調整させていただきたく存じますので、お忙しい中、恐れ入りますが、調整をよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
○中釜議長 それでは、本日の運営会議を終了したいと思います。
構成員の方々及び参考人の皆様には、スムーズな議事進行に御協力いただき、ありがとうございました。
本日は、どうもありがとうございました。
 

照会先

健康局がん・疾病対策課

03-5253-1111(内線3826)