2020年12月3日 薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会 議事録

日時

令和2年12月3日(木)14:00~
 

場所

新橋8E会議室(8階)

出席者

出席委員(14名)五十音順

  • (注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(4名)五十音順

行政機関出席者

 鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
 山本史(大臣官房審議官)
 河野典厚(医療機器審査管理課長)
 中井清人(医薬安全対策課長)
 髙橋暁子(安全使用推進室長)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
 山田雅信(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 林直治(独立行政法人医薬品医療機器総合機構執行役員) 他

議事

○医療機器審査管理課長 それでは、薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会を開催いたします。委員の先生方におかれましては、年末にもかかわらず御多忙の中御出席いただきまして、本当にありがとうございます。
 本年5月の本部会開催以降の委員の異動について、私から御紹介させていただきます。奥田晴宏先生、長島公之先生におかれましては、御退任されたことをまず御報告いたします。続いて、今回から新たに3名の先生方に部会委員に御就任いただいておりますので、御紹介いたします。国立医薬品食品衛生研究所遺伝子医薬部第一室室長の内田恵理子先生、国立医薬品食品衛生研究所所長の合田幸広先生、公益社団法人日本医師会常任理事の宮川政昭先生です。
 続いて、部会長でありました奥田先生が6月30日付けで薬事・食品衛生審議会委員を御退任されましたので、当部会の部会長選出について御説明させていただきます。薬事・食品衛生審議会令第7条第3項において、部会長は部会に所属する本委員の互選で選定するという規定があります。本規定に基づきますと、当部会所属の本委員は合田先生のみとなりますので、合田幸広先生に新部会長に御就任をお願いいたします。それでは、合田部会長、一言御挨拶をお願いいたします。
○合田部会長 合田です。今も説明がありましたように、部会の正委員ということで、立場上、新参者ですが、今日から部会長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。薬食審の薬事分科会の部会で、私は大体半分ぐらいは関与したことがあるのですが、この部会は全く初めてでして、そういう意味では皆様方がほぼ先輩ですので、皆様方の御協力がございませんと潤滑に議事が進行できませんので、どうぞよろしくお願いします。以上です。
○医療機器審査管理課長 続きまして、事務局に異動がありましたので、御報告させていただきます。医薬・生活衛生局安全使用推進室長に髙橋暁子が着任しておりますが、本日、少し遅れて参ります。PMDA執行役員(再生医療製品・ワクチン等審査部門担当)に着任しました林直治です。PMDAワクチン等審査部長に荒木康弘が着任しておりますが、本日は欠席させていただいております。
 現時点で再生医療等製品・生物由来技術部会委員18名のうち14名の先生方に御出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを、ここに御報告いたします。
 部会開会に当たり、何点か引き続き御連絡をいたします。議事に先立ち、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、御報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、ここに御報告いたします。委員の先生方におかれましては、会議開催の都度、書面を御提出していただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
○事務局 続いて、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日、予定している全ての議題は再生医療等製品の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容などが含まれるため、非公開といたします。それでは、以降の進行については、合田部会長、よろしくお願いいたします。
○合田部会長 それでは、最初に事務局から、配布資料の確認と審議事項に関与された委員と利益相反に関する申出状況について、報告を頂きます。どうぞよろしくお願いします。
○事務局 まず、配布資料の確認をさせていただきます。事前にお知らせいたしましたとおり、本日はペーパーレスで会議を進めさせていただき、お手元には議事次第、座席表、及び当日配布資料としてイエスカルタ点滴静注の外観等を示した資料を紙にてお配りしております。なお、イエスカルタ点滴静注の外観等の資料については、会議後、回収させていただきますので、持ち帰らないように御注意いただけたら幸いです。タブレットの操作について御不明点等がありましたら、お近くの事務局員までお声掛けいただければと思います。
 次に、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業について御報告させていただきます。タブレットの資料6、競合品目・競合企業リスト一覧をお開きください。1ページ、イエスカルタ点滴静注ですが、再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫を対象疾患としており、競合品目として資料に掲げる品目を選定しております。
○合田部会長 ただいまの事務局の御説明について、特段の意見、コメントはありますか。よろしいですか。特にないようでしたら、部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、委員の皆様の御了解を得たものとします。
 それでは、委員からの申出状況についてお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。委員の皆様から寄附金・契約金等の受取状況をお伺いしたところ、議題1~5のいずれの議題についても、薬事分科会審議参加規程第12条「審議不参加の基準」に基づく審議に参加できない委員はいらっしゃいませんでした。ただし、薬事分科会審議参加規程第13条に基づき、議題1において議決に参加できない委員は、宮川委員及び森尾委員となっております。この際、御退室いただく必要はありません。以上、御報告いたします。
○合田部会長 ただいまの事務局の説明について、特段の意見、コメント等はありますか。よろしいですか。それでは、皆さん、御確認いただいたものとします。
 本日は、議題1が審議事項、議題2~5が報告事項となっています。それでは、議題1に入ります。議題1「再生医療等製品「イエスカルタ点滴静注」の製造販売承認の可否、条件及び期限の要否並びに再審査期間の指定の要否について」の審議に入ります。機構より説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題1、資料番号1、イエスカルタ点滴静注の製造販売承認の可否等について、機構より説明させていただきます。タブレットの資料番号1のホルダーを開き、資料1(説明用)イエスカルタ点滴静注の承認の可否等についてのファイルをお開きください。以後の説明に用いるページ数ですが、お開きいただきましたファイルの各ページの一番下に記載されている110分の何と示されているページ番号を使用させていただきます。
 お開きいただいたPDFファイルの7/110ページをお開きください。7/110ページの上から2行目以降に記載した1.1申請品目の概要を御覧ください。本品は、遺伝子組換えレトロウイルスベクターを用いて、B細胞の表面抗原であるCD19を特異的に認識するキメラ抗原受容体、以下、CARと略しますが、CARの遺伝子を患者由来のT細胞に導入した再生医療等製品です。本品に導入されたCARは、CD19を発現した細胞を認識します。標的細胞を認識すると、CARを導入したT細胞が活性化、増殖、標的細胞に対する攻撃等に関する信号を伝達することにより、CD19を発現するB細胞性の腫瘍を死滅させる効果が期待されます。
 今般、本品は「再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫」に係る効能、効果又は性能として承認申請されました。以後の説明では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫をDLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫をPMBCL、形質転換濾胞性リンパ腫をTFL、高悪性度B細胞リンパ腫をHGBCL、4つのリンパ腫をそれぞれこのように略させていただいております。審査報告書の中でも、そのように略称で書かせていただいております。なお、本品は、2018年8月の当部会における審議を経て、希少疾病用再生医療等製品に指定されております。
 令和2年3月時点において、本品は、米国において再発又は難治性のDLBCL、PMBCL、TFL、HGBCLに係る効能効果にて承認されております。欧州においても同様に承認されております。
 本品の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料1-2にありますとおり、7名の委員です。
 以下、臨床試験成績を中心に、審査の概要を説明させていただきます。PDFファイルの26/110ページの表17を御覧ください。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、海外第Ⅰ/Ⅱ相試験であるZUMA-1試験及び国内第Ⅱ相試験であるJ201試験の成績が提出されました。
 最初に、有効性について説明いたします。PDFファイルの29/110ページの表20を御覧ください。海外の再発又は難治性のDLBCL、PMBCL及びTFL患者を対象としたZUMA-1試験において、主要評価項目とされた奏効率は76.5%であり、95%信頼区間の下限は、あらかじめ設定された閾値奏効率である20%を上回りました。
 次に、PDFファイルの33/110ページの表25を御覧ください。国内の再発又は難治性のDLBCL、PMBCL、TFL及びHGBCLの患者を対象としたJ201試験において、主要評価項目とされた奏効率は90%であり、95%信頼区間の下限は、あらかじめ設定された閾値奏効率である26%を上回りました。
 次に、安全性について説明させていただきます。PDFファイルの38/110ページを御覧ください。上から6行目以降に記載している6.R.3安全性についてを御覧ください。本品の使用時に特に注意を要する有害事象として、サイトカイン放出症候群、血球貪食性リンパ組織球症、神経障害等が認められております。したがって、本品投与時には、これらの有害事象の発現に特に注意すべきと判断いたしました。また、これらの有害事象の発現に対応できる設備の整った医療施設において、DLBCL、PMBCL、TFL及びHGBCLの治療に対して十分な知識と経験を持つ医師による観察や管理等の適切な対応がとられることにより、忍容可能と判断いたしました。ただし、国内での治験症例数は極めて限られていることから、製造販売後には、全症例を対象とする調査を実施する必要があると判断しております。
 以上の審査の結果、機構は、PDFファイルの3/110ページの下から9行目以降に記載した効能、効果又は性能、並びに用法及び用量又は使用方法の内容で本品を承認することは可能と判断いたしました。本品は、希少疾病用再生医療等製品に指定されていることから、再審査期間は10年とすることが適当であり、また、指定再生医療等製品への指定は不要と判断いたしました。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○事務局 次に、本日、御欠席の荒戸委員から事前に御意見を頂いておりますので、事務局より御紹介及び回答させていただきます。マイプライベートファイルにお戻りいただき、タブレット資料の追加資料1、荒戸委員より頂いた御質問をお開きください。
 まず、荒戸委員の御質問を御紹介させていただきます。臨床試験の目標用量は2.0×10(±20%)個/kg、許容最小用量は1.0×10個/kgであり、承認用法・用量は「2.0×10個/kgを目安に、単回静脈内投与する」となっています。1.として、海外第Ⅰ/Ⅱ相試験において、目標用量未満(1.6×10個/kg未満)の製品が投与された症例は、許容最小用量を満たしているにもかかわらず、DLT評価対象集団から除かれた理由を御説明ください。2.として、有効性は許容最小用量以上を投与された症例で評価されていますが、目標用量が投与された症例と目標容量未満の症例で、有効性と安全性に違いがなかったのか説明してください。3.として、用法・用量に規定されている「目安」が示す範囲を教えてください。製品の含量が「1.0×10~2.4×10個/kg」と設定されており、有効性は許容最小用量以上を投与された症例で評価されていることから、「許容最小用量以上、目標用量の上限以下」と推定されますが、そう考えて差し支えないか確認させてください。と、3点の御質問を頂いております。
 以上、3点について、事務局より回答いたします。1点目、海外試験において、DLT評価対象集団から目標用量未満が投与された症例を除外した理由については、申請者より、既にNCI09-C-0082試験で、臨床推奨用量が2.0×10個/kgとなるであろうことは高い確度で推定されていたことを踏まえ、臨床推奨用量2.0×10個/kgでの安全性を保守的に評価できるように設定した。また、目標細胞数より少ない用量で投与された患者でも、投与後30日間にDLTが発現した患者の場合は、DLT評価対象に含めることとされていたが、ZUMA-1試験の第Ⅰ相部分で目標用量未満の本品が投与された症例では、DLTは発現していない。なお、万が一、用量が下がった場合にも対応できるよう、1.0×10個/kgのコホートも評価ができるような計画としていた。と説明を受けています。
 次に2点目、目標用量が投与された症例と目標用量未満の症例での有効性・安全性への違いについては、ZUMA-1試験において目標用量未満を投与された症例は4例のみであり、奏効割合は75%、重篤な有害事象は75%で認められました。目標用量未満を投与された症例の情報は限定的であるものの、当該集団の有効性及び安全性について、全体集団とは違いがないと考えております。
 最後に、用法・用量に規定される「目安」の範囲については、荒戸先生の御理解のとおり、「許容最小用量以上、目標用量の上限以下」と考えております。事務局からは以上です。
○合田部会長 ありがとうございます。今の事務局の御意見は、荒戸先生にはこれから返されるということですか。もう返されていますか。
○事務局 返させていただいているのですが、その後、御回答はまだ頂いていないということです。
○合田部会長 分かりました。それはもらっておいてください。ありがとうございます。続きまして、資料1-2の最適使用推進ガイドライン(案)について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より、最適使用推進ガイドラインについて御説明させていただきます。マイプライベートファイルにお戻りいただき、資料1(説明用)「イエスカルタ点滴静注」の承認の可否等についてをお開きください。91/110ページをお開きください。
 資料1-5、最適使用推進ガイドライン(案)についてです。最適使用推進ガイドラインは、医薬品で行われている取組にならい試行的に作成するもので、新規作用機序の再生医療等製品について最適な使用を進めていくため、この再生医療等製品を真に必要とする患者や、使用する医師や医療機関の要件についてお示しするものです。ガイドラインの案については、現在、一般社団法人日本血液学会、一般社団法人日本輸血・細胞治療学会、一般社団法人日本造血細胞移植学会、日本血液疾患免疫療法学会、日本遺伝子細胞治療学会、公益社団法人日本臨床腫瘍学会の6学会の御協力を頂いて検討しているところです。本部会の委員からも御意見、御指摘がございましたら、それも含めて検討させていただきたく、案をお示しする次第です。
 ガイドライン全体の構成から説明いたします。92/110ページに目次がございます。まず、「はじめに」で、このガイドラインがどういったものであるか、どういった内容が含まれるのかを御紹介しています。次に、「2.本品の特徴、作用機序」で、この製品の基本的な情報を記載しています。「3.臨床試験」で、今回の承認に使いました2つの臨床試験の成績を御紹介しています。「4.施設について」では、最適使用のための施設や医師についての要件をお示ししています。「5.投与対象となる患者」で、有効性と安全性の観点から、これまでに得られているエビデンスの下、どういった患者さんに投与するのが最適かということをお示ししています。最後に「6.投与に際して留意すべき事項」で、これまでにお示ししているような施設、患者さんで実際に使う場合、どういった点に気を付けるべきかをお示ししています。
 具体的な要件について、特に「4.施設について」以降を御説明いたします。説明用PDFの103ページを御覧ください。「4.施設について」ですが、まず4つの施設の要件を示しています。(1)日本造血細胞移植学会が定める移植認定施設のうち、カテゴリー1又はそれに準ずる施設として、医師や看護師の配置が充実している診療科で治療を行うこととしています。(2)本品は投与後に重篤な副作用が発現する可能性が高く、ICUにおいて集学的対応が必要となることから、ICU等を有していることを要件としています。(3)アフェレーシスを安全に行うための要件です。(4)本品は承認後に全例調査が予定されています。それを適切に行うための要件です。
 次の1.-2に、医師の要件が書かれています。こちらもリンパ腫の専門的知識や診療経験を重視し、さらに製造販売業者が実施する本品の使用に関する講習を修了した医師が複数名配置されていることを要件として求めています。また、複数名の医師のうち1人は治療の責任者として、(1)~(3)までの要件全てを満たす人を責任者として配置することを求めています。
 次に105/110ページを御覧ください。「5.投与の対象となる患者」についてですが、ここは、有効性に関する事項の1.では治験の組入れ基準に、2.では治験の除外基準に該当する患者の要件を主に記載しています。ここで、2.の・の6点目に「自家造血幹細胞移植に適応がない再発の患者で、化学療法歴が1ラインのみの場合」を除外基準に記載しております。これは、ガイドライン作成検討会において構成員より、再発の場合は化学療法が奏効する可能性があること、また、治験時の投与対象と合わせるべきという観点からの御意見がありましたことを踏まえ記載しております。
 安全性に関する事項の1.には、添付文書の禁忌に該当する事項を、2.には治験での除外基準に該当する患者を記載しています。
 次に107/110ページ、「6.投与に際して留意すべき事項」を御覧ください。ここには、添付文書の重要な基本的注意の欄を基に記載しています。特に3.の2つ目、サイトカイン放出症候群(CRS)への処置については、こちらの表12に示しますアルゴリズムにのっとって、3つ目、神経系事象への処置については、表13に示しますアルゴリズムにのっとっての管理することが重要ですので、添付文書よりも詳細な記載としています。最適ガイドラインの今後としては、医薬品と同様に、保険適用上の留意事項としての活用を検討いただくこととしています。
 次に、93/110ページにお戻りください。四角枠で囲われた箇所を御覧ください。ここは、本品「イエスカルタ点滴静注」の承認事項を書き写しております。対象となる効能、効果又は性能において、「ただし、以下のいずれも満たす場合に限る」とし、「CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない」ことを条件としております。一般に、CD19を標的としたCAR T細胞治療の後に再発した腫瘍では、CD19抗原が消失している可能性があるため、CD19を標的としたCAR T細胞治療歴のある患者に対して、本品の投与は推奨されないと考えられることから、当該記載を行っているところです。一方で、CD19を標的としたCAR T細胞治療製品の1品目目である「キムリア点滴静注」においては、当該記載がなされていないところでございます。つきまして、本部会終了後、キムリアの製造販売業者であるノバルティス社と相談を行い、キムリアにおいても効能効果や最適使用ガイドラインの記載について、適切に対応することを予定していることを御報告いたします。
 説明は以上です。以上、御報告いたします。
○合田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見等をお願いいたします。
○永井委員 神戸大学の永井と申します。臨床試験成績の御説明が余りなかったので、本品をより正しく理解するために、2、3の質問ないしコメントをさせていただきます。まず、有効性について、海外ではPDになった症例が100例中数例ある中で、日本ではほぼゼロでした。海外でPDになった症例のキャラクタライゼーションができているのか、つまり、どういった特徴のある人がPDになったのか、SDを含めてもいいですが、要は効果がなかったのかを理解することでより適切に本製品を理解できるかと思います。それが1点目です。
 次に、死亡例が海外で14、15例出ていますけれども、これがCRあるいはPRからも出ているのか。それとも専らSDないしPDから出ているか。と申しますのは、結局、それらは代替エンドポイントに過ぎませんので、ハードなエンドポイントで見た場合どうだったのか、お分かりでしたら教えていただきたいというのが2点目です。
 3点目はコメントです。副作用として神経障害が多いということで、49/110ページ、50/110ページあたりにいろいろと書いてありますが、結構、MedDRAから拾った言葉が単に羅列してあるだけで、見掛け上、かなり誇張されている気がするのです。例えば、脳症と一口に言っても、傾眠傾向も脳症かもしれないし、錯乱も脳症かもしれません。この辺の整理がちゃんとできているのかという点です。日本では幸い出ていませんが、それぞれの症例の有害事象をきちんと整理すれば、神経障害はもう少し少ないというか、見え方が違うのではないかと感じます。以上です。
○合田部会長 ありがとうございます。事務局、対応はよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構のほうから説明させていただきます。1つ目の御質問ですが、SDの有効性が示されなかった患者さんの特性については。
○永井委員 PDですね、特に。
○医薬品医療機器総合機構 はい。PDの患者さんの特性については、今のところ特にこういう特徴があるという説明はされていませんが、引き続き情報収集するように企業のほうには指導してまいりたいと思います。
 2つ目の死亡例の話ですが、審査報告書に記載がございます。31/110ページ目を御覧ください。こちらの上から2パラグラフ目の安全性についてという所で、死亡が認められた症例の実際の死亡原因、死亡理由を書いています。31/110ページになります。上から2つ目のパラグラフの「安全性について」から始まる部分に、死亡例の理由について書いていて、54例中46例が疾患進行で死亡されていることを確認しています。
 また、有効性の観点から、36/110ページ目を御覧ください。図4に今回のZUMA-1試験のOSのKaplan-Meier曲線を書いていて、これが本品を投与した患者のデータです。その下の文章の所で、実際に同様の対象患者さんの既存療法でのOSの中央値が6.3か月というところもあり、それを踏まえると、今回、この製品を使った患者さんの有効性というのは示された、そういうOSの観点からも有効性が示される結果が得られたと考えています。
○永井委員 効果があることはもちろん分かるのですが、要はCR又はPRになった症例でも死亡に至っているのか。あるいは、PRあるいはSDの症例が死亡に至っているのか、そこはポイントかと思います。死因は確かにおっしゃるとおりですが、がんが一旦シュリンクしても、またどんどん大きくなるという場合は幾らでもあるわけで、そこがどうなのかもし分かれば教えていただきたいと思いました。
○合田部会長 これは後でも調べられますか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。後ほど確認して御連絡させていただくようにいたします。
○合田部会長 永井先生に後でお伝えするようにしてください。ほかに何か御質問、御意見等はございますか。宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 宮川です。これは技術的なことですが、キムリアでは医療機関で採取した白血球、アフェレーシスの産物を凍結保存して、それで輸送するということになっていますが、本品では、2~8℃に設定された保冷輸送を行い、後で凍結という形になっておりますが、この手順の中で何か問題が起ることはないのか。キムリアとイエスカルタで輸送手段がどうして違ってくるのか。製造の際に、齟齬が出てくる可能性はないのかどうか。その違いをお聞きしたいのです。なるべく製造の確率を下げることがあってはならないと思い質問いたしました。
○合田部会長 PMDA、よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。キムリアとイエスカルタの違いで、そういった医療機関での凍結の有無というのがあることは、製品の特徴として開発過程からずっとそういった形で続けられてきたところがございます。確かに2つの製品が世に出た後、違う製法の物が提供されることになりますから、キムリアはキムリアで、イエスカルタはイエスカルタで、医療機関におけるアフェレーシス検体の取扱いに関しては、きちっとしたマニュアルを提供することになっていて、そうしたマニュアルによるトレーニングや教育を徹底することで、製造に関する齟齬は生じないようにしてまいりたいと考えています。
○宮川委員 遵守すれば、それでいいということでいいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○宮川委員 分かりました。続けてよろしいでしょうか。
○合田部会長 どうぞ。
○宮川委員 ウイルスベクターの開発過程での製造工程に変更があって、○○の○○○、○○○試験では、製法Bと製法Cと異なる製法で製造された製品の投与を受けた患者が含まれているようですが、その患者数の差異をお聞きしたいと思います。申請製法はCですが、製法Bと製法Cでは少し異なるのか、その患者数が全て含まれているのか、あるいは解析のされた方に違いがあるのか、異なる結果が出ているかについてお聞きしたかったのです。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。製法の違いに関しては、審査報告書の10/110ページ、2.1.4ウイルスベクターの製造工程の開発の経緯の所にまとめられています。御指摘のありました製法Bと製法Cの違いというのは、○○○○○○○○○○○○○○○の変更ですが、これは○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○の違いで、製法Bと製法Cでそこまで品質特性に大きな影響を与えるような変更とは考えていません。また、製法Bと製法Cで同等の品質特性のウイルスベクターが製造されることは審査において確認していますので、品質の観点からこの変更の影響はないと考えています。
○宮川委員 ありがとうございました。もう1つ、いいですか。
○合田部会長 どうぞ。
○宮川委員 先ほど最適使用推進ガイドラインのお話がございましたけれども、添付文書に付ける形で、その内容が入ってくるということでよろしいのではないかと思い、お聞きしました。例えばですが、エムガルティなどは添付文書内にそういうものをしっかりと落とし込み、齟齬がないようにという形で、施設要件と医師要件も入っています。
○合田部会長 これは、厚労省。
○事務局 最適ガイドラインの中に記載がある事項が添付文書中に記載されている、またはその逆のこともありますので、相互に活用いただくものであると思います。
○宮川委員 ありがとうございました。
○合田部会長 ほかに何か御意見はございますか。小野寺先生。
○小野寺委員 今の質問に関連するのですが、これの製造場所は○○ですよね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。ウイルスベクターの製造に関しては○○ですが、ウイルスベクターを患者さんの細胞に遺伝子導入のために導入する工程というのは○○で実施されます。
○小野寺委員 では、○○で遺伝子導入は行うということで、よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○小野寺委員 問題点として、凍らさないで送った場合、時間の問題、つまり輸送に掛かる時間が極めて大きな問題になると思います。今回の治験においてはGDP(good distribution practice)のバリデーションがなされ、品質は担保されているということでしょうか。つまり、各の輸送時間において、出荷先と受入れ先において品質に大きな差はないという○○のデータはあるということでよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。輸送試験についても行われていまして、医療機関から製造開始までの時間は48時間以内というのが、検討の結果、安定ということが分かっています。それについては、医療機関への情報提供によって、アフェレーシス検体が48時間以内に製造者に送られるようになる見込みです。
○小野寺委員 今後、製造施設は業者のほうが指定してくると思いますが、それにおいても沖縄を含めて全国をカバーしているで、よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、全国共通で48時間以内ということになります。
○合田部会長 ありがとうございます。ほかに何か、宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 キムリアは適応対象をCD19の陽性例に限っていますが、本品は発現の有無にかかわらず適応対象になっています。陽性と判断されるか否かは、患者数によって随分違ってくると感じますが、そのことについては問題はないのでしょうか。それから、両者の開発方針の隔たりがありますが、実際に臨床適応になった場合にどのような違いがあるのでしょうか。使い分けに関しての問題はどのようなものがあるのでしょうか。適応患者に関しては過去にCAR-T療法を受けていない患者であって、もし一方を使用すれば、もう一方は使用できないという形になります。適応についての問題をお教えください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。機構のほうから説明させていただきます。御指摘のように、キムリアのほうでは投与前にCD19抗原を確認するという効能、効果になっています。一方でイエスカルタは付いていません。その点については審査報告書の62/110ページで検討していますので御覧いただければと思います。
○宮川委員 検討の部分は分かるのですが、使い分けや適応にどのように結び付くのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御懸念の部分ですが、CD19を確認するにせよ確認しないにせよ、実際に使われる患者さんはほぼ同じ対象と考えています。本品では投与前にはCD19の発現は確認しないのですが、確認した場合でも確認しない場合でも、実際、投与対象となる患者さんはほとんど一緒ということです。
○宮川委員 この場合は、どちらでもいいよということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○宮川委員 片方は陽性のという形だったわけですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○宮川委員 分かりました。使い分けは、今後どうなってくるのでしょうか。これはPMDAに聞くことではないのでしょうけれども、現場の専門家はどのような想定をしているのかということはあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、そちらのほうは、今回、ある程度は効能、効果に書かせていただけていると思います。1点、補足ですが、CD19自体はB細胞にほとんど発現しているような抗原になりますので、今回、キムリアの投与対象にしても本品の投与対象にしても、ほぼ90%以上の確率でCD19は陽性になっているという形です。
○宮川委員 ありがとうございます。どの確率ということが明確になり理解できました。90%以上なのですね。
○医薬品医療機器総合機構 そういう形になります。
○宮川委員 ありがとうございました。
○合田部会長 ありがとうございます。ほかに何か御質問等はございますか。
○森尾委員 森尾です。もし分かればですが、治験中の規格外製品の発生率が分かったら教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 少々お待ちください。ZUMA-1試験のほうで製造成功率は99%で、1例だけ失敗していますが、その他の製品については成功している状況です。
○森尾委員 アメリカ全体でということですか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど御説明したのは海外の試験で、日本においては100%成功しています。
○森尾委員 ありがとうございます。
○合田部会長 ありがとうございます。ほかに御質問、御意見等はございますか。よろしいですか。それでは、本品目につきまして議決を行いたいと思います。再生医療等製品「イエスカルタ点滴静注」については、承認を可としてよろしいでしょうか。また、条件及び期限付承認に該当せず、10年間の再審査の指定の対象としてよろしいでしょうか。皆様、よろしいでしょうか。御異議ありませんね。御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。本件は分科会にて報告を行うこととします。また、ガイドラインのほうは頂いた御意見も踏まえまして、引き続き事務局において検討されていくということでよろしいですね。ありがとうございます。それでは、議題1を終了いたします。
 続きまして、議題2「希少疾病用再生医療等製品の指定の取消しについて」の審議を開始いたします。まず事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 議題2「希少疾病用再生医療等製品の指定の取消しについて」、事務局より御報告いたします。マイプライベートファイルにお戻りいただき、資料2をお開きください。NPR-01ですが、届出者は日本製薬株式会社です。本製品は、平成25年12月12日にクローン病性瘻孔(外瘻(痔瘻を含む))を予定される効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されました。本製品は希少疾病用医薬品として指定されましたが、旧医薬品医療機器等法附則第56条に基づき、希少疾病用再生医療等製品の指定を受けたものとみなしております。
 届出者は平成○年○月より国内治験を行う予定としていたところ、類似成分について他社特許が出願されていることが判明し、当該特許成立後、これを回避することは困難であると判断をし、本製品の開発を断念することを決定したとのことです。よって、本品の本予定効能・効果に係る希少疾病用再生医療等製品への指定を取り消すことといたしました。以上、御報告いたします。
○合田部会長 それでは、本件について委員の先生方から御意見、御質問等ありますでしょうか。よろしいですね。それでは、本議題について御確認いただけたものといたします。
 続いて、議題3「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第4条に基づく遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認及び同13条に基づく遺伝子組換え生物等の第二種使用等の拡散防止措置の確認を行った品目について」に入ります。事務局より説明をお願いします。
○事務局 議題3について事務局から御報告いたします。マイプライベートファイルにお戻りいただき、資料3をお開きください。カルタヘナ法では、ウイルスを含む遺伝子組換え生物を、治験等を目的として、特段の拡散防止措置を執らない開放系で使用する場合には、カルタヘナ法に基づいて承認された第一種使用規程を遵守する必要があります。また、医薬品や遺伝子治療用製品を製造するために遺伝子組換え生物等を用いる場合には、カルタヘナ法に基づく一定の拡散防止措置を執った閉鎖系で使用する必要があります。
 まずは、第一種使用規程の承認を行った品目について御報告いたします。それでは、1ページの一覧を御覧ください。前回の部会での報告以降で、令和2年5月から令和2年10月までに第一種使用規程の承認を行った品目は、こちらの7品目となります。PMDAでの評価、学識経験者からの意見を踏まえ、本申請における第一種使用規程に従って本遺伝子組換え生物等の使用等を行う限り、生物多様性に影響が生じるおそれはないと判断したものです。
 続いて、第二種使用等の拡散防止措置の確認を行った品目について御報告いたします。2ページ以降の一覧を御覧ください。令和2年5月から令和2年10月までに第二種使用等の拡散防止措置の確認を行った品目は、こちらの34品目となります。これらについてもPMDAでの評価、学識経験者からの意見を踏まえ、いずれの遺伝子組換え生物等についても、執られる拡散防止措置は適切であると判断したものです。以上、御報告いたします。
○合田部会長 ありがとうございました。
本件について委員の先生方から御意見、御質問等ございましたら承りますが、よろしいでしょうか。それでは、これで議題3を終了したいと思います。
 続いて、議題4「再生医療等製品「ゾルゲンスマ点滴静注」の事案を踏まえた対応について」に入ります。事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 「再生医療等製品「ゾルゲンスマ点滴静注」の事案を踏まえた対応について」、事務局より御説明いたします。マイプライベートファイルにお戻りいただき、資料4を御覧ください。まず、資料4-1、PDF1/16ページの左上の事案概要を御覧ください。ノバルティスファーマ社から承認申請され、本年3月に承認されたゾルゲンスマに関しては、先駆け審査対象であるにもかかわらず、約1年4か月の審査期間を要し、本年2月の本部会において、データ操作を含めた企業の不適切な対応に関する再発防止策及び今後の制度的対応に関して検討を求められておりました。この件については、薬事分科会等においても同様に指摘されております。事務局といたしましては、企業側に再発防止策の検討を指示するとともに、令和元年の薬機法改正による先駆的医薬品等の運用について、本件を踏まえた対応方策を本年8月に通知で明確化いたしました。
 同資料の下の矢印を御覧ください。当該通知においては、指定・取消要件の追加として、従来の申請時の内外比較に加え、承認時点での内外比較、また、企業側の事由として、不十分な対応や審請資料の瑕疵等があったことによる実用化の遅延が生じた場合にも、指定の取消しを行うことを可能といたしました。また、問題事案があった場合の次回指定への反映として、指定時に開発計画の妥当性について確認を行う中で、今回のノバルティスファーマ社のように、過去に問題のあった事案の申請者に対しては、再発防止策が講じられるまでの間、指定しないよう対応することといたしました。これらについて通知で対応を行っております。
 一方、同じ資料の右側の矢印に進んでいただき、今般、提出がありましたのが、ノバルティスファーマ社としての再発防止策の案です。概要についてここに記載しておりますが、同社では事案の原因として、海外本社の導入品に関する信頼性確認体制の不備、日本法人の体制の脆弱さ、日本法人と本社との連携体制の弱さが、データ改ざんを発見できなかったことや、国内で当該情報の入手報告が遅延したこと、また、迅速審査への対応遅延につながったと分析しております。同社は、それらへの対応案として、本社の導入品に関する信頼性確認体制の構築、日本法人において迅速審査に対応できる体制を確保した上で承認申請の意思決定を行うこと、承認申請資料の信頼性を日本法人でも確認するプロセスを構築すること、また、日本法人と本社の連携強化として、日本法人と本社が連携して迅速審査に対応できる体制の構築、申請データ等の問題を迅速に社内で共有し、各国の規制当局に報告するプロセスの構築を行うことを説明しております。
 これらをまとめた文書案とその概要については、資料4-2及び資料4-3として配布しておりますが、事前に部会の委員の皆様に配布してコメントをお願いし、何名かの委員の方から頂戴しましたので、事務局の回答と併せて御紹介いたします。
 まず、内田委員及び宮川委員から2つコメントを頂き、1つ目は、遺伝子治療用製品は海外でも製薬大手の自社開発ではなくベンチャーを買収するケースが多く、ノバルティスファーマ社に限らず今回のようなケースは今後も起こり得るのではないかということ、2つ目は、先駆け指定品目の審査においては申請企業側も迅速な対応が求められるということについて、応募の段階から企業に十分に周知・指導すべきであることの2点についてコメントを頂きました。
 1つ目の今後の他社のケースについては、ベンチャーからの買収などを行った企業は、ノバルティスファーマ社の今回の事例を教訓に、リスク対策として信頼性の一層の確保を行うことが必要です。審査当局としては、引き続き、様々な機会を通じて事業者への規制の遵守を指導してまいります。また、企業への今後の指定要件の通知については、先駆的医薬品等の運用における通知について、従来あった優先審査を行うこと、企業は承認申請前に先駆け総合評価相談を受けることに加え、今回の先駆的医薬品等の通知において、迅速な承認審査に対応できる体制を有していることを明記いたしました。今後も、指定に関する相談などの機会を通じて、企業に適切に通知の趣旨の説明を行ってまいります。
 続いて、小野寺委員から2つコメントを頂きました。1つ目は、企業が照会回答に時間を要した要因として、遺伝子治療用製品の品質に関する審査事項に欧米との要件の違いはなかったのかという御質問、2つ目として、本品の承認審査で海外本社等との連携不足が課題になりましたが、市販後の安全対策においても、海外からの情報入手と国内の医療現場での情報提供の迅速性が重要であること、この2点についてコメントを頂きました。
 1つ目の品質の審査については、本品は日米欧で同時に申請が行われましたが、日本での申請資料は基本的に欧米と同じであり、また、欧米との整合化を図った国内の品質ガイドラインに基づいて審査を行ったため、審査での要求事項については審査期間の遅延をもたらすものではありませんでした。なお、遺伝子治療用製品の分野でも、現在、ICHで非臨床の分野の議論が始まっているところで、今後、ICH等で更なる規制調和を図っていくことは重要であると認識しております。2つ目の市販後の安全対策については、承認審査と同様、市販後対策においても海外本社との連携や国内の迅速な対応は重要であると考えます。その点も含め、企業がGVP省令に基づき適切な安全対策を講ずるよう、引き続き指導してまいります。
 続いて、楠岡委員から、本事案に関してノバルティスファーマ社の海外本社から公表されている文書はないか、また、ある場合には参考資料として添付させてはどうかというコメントがありました。これについて同社に提示を求めましたところ、Avexis社によるデータ改ざんの調査報告書や、それを受けたノバルティスファーマ海外本社による、今後はデータ改ざん等の再発防止や当局への迅速な報告を行う旨の声明が公表されておりましたので、新規の情報を含むものではありませんが、最終的な文書と併せて提出するよう指示いたしました。
 中岡委員から、先駆け審査指定品目としての対応不備に関する原因分析の中で、先駆け総合評価相談を完了することなく承認申請を行ったことが挙げられているが、そこにどのような問題が結果として生じたのかが明確になっていないというコメントを頂きました。御指摘を受けて同社に追記を求め、PDF4/16ページの2.1.1.2の中で、同相談を完了しなかったことで、申請前の十分な課題の把握ができなかったこと、それによって申請後の照会回答に時間を要した点を追記させました。また、今後は先駆け総合評価相談を完了してから承認申請を行うことを後ろのページに追記いたしました。
 このほか、事務局より追加の修正指示を出しています。文書の9/16ページにおいて、国内法人と海外本社との連携体制の見直しについて、事前に委員にお配りした案では、本事案発生前の取組では不十分だったという事実や、国内法人内で組織統合を行うことが海外本社との連携強化にどう資するかということの意義が不明確でしたので、それらの点を追記させ、今後は海外本社や買収企業と連携体制を構築した上で、国内法人が承認申請の可否判断を行うことを明確化させました。
 以上、委員から事前に頂いたコメントと事務局の対応について御説明いたしました。更に御意見があれば御指摘を承りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○合田部会長 ありがとうございました。それでは、追加の御質問、御意見等ありましたら承ります。よろしいですか。宮川先生。
○宮川委員 この件に関しては、もう腹立たしいことばかりで、嫌なことばかりが思い出されます。ノバルティスファーマ社の報告書の一つ一つの文字を見ていくと、苛立ちを覚えます。7/16ページに「エスカレーションプロセス」と書いてあるのです。これはビジネス用語で一般的に使う言葉ではありません。ビジネスにおいて、誰が誰に報告するかという伝達の中で、SOPなど規定されている業務手順なのか、あるいは一般的な社員同士なのか、上下間の中での伝達なのか、何を指すのか非常に曖昧な言葉を使っています。これはノバルティスファーマ社の常套手段なのか、このような言葉を選択し、非常に分かりにくくして、責任を曖昧にするような言葉が散見されます。公的文書というわけではありませんが、明確な表現をするように指導しなくてはいけません。一般的な報告文書にあるまじき表現であるということは、しっかりと申し述べたほうがいいと思います。これから同じようなことが起こった場合の対応に関して重要なことだと考えます。しっかりと申し述べることが必要だと思います。
 改正薬機法などにいろいろなことを考慮して、適切な運用がされなかった場合の責任の取り方を含めて、しっかりとした制度設計などを作っていかなければなりません。私の職務の1つとして厚生労働省の方々だけでなく、経済産業省のDTC遺伝子検査ビジネスという件も関与することがあります。制度設計の開始のときに問題点を幾ら指摘しても、やってみて問題があったら対応するなどと、経済産業省方々は言葉として表現します。経済産業省はやることが大事な省です。国の機関の中で厚生労働省というのは国民の健康のためにしっかりと規制をしていくという唯一の省だろうと思います。是非とも、このようなことが今後あってはならないという意味合いで、しっかりと歯止めをかけていただくような言葉を一つ一つ吟味しながら、薬機法に落とし込んでいただければ非常に有り難いと思います。これは意見というよりも、是非、厚生労働省に頑張っていただきたいというお願いです。
○合田部会長 宮川先生、どうもありがとうございました。
○医療機器審査管理課長 御指摘、コメントありがとうございます。企業に対して私どもとしても指導していきたいと思いますし、報告書の中のエスカレーションプロセスという言葉が分かりづらいというのは、宮川委員が御指摘のとおりだと思いますので、これを適切な言葉に変更するよう、改めて企業には指導してまいりたいと思います。
○合田部会長 企業の今後の対応の点も含めて、ここに書かれている文章で皆さんよろしいですか。ほかにありますか。よろしいですね。では、これで議題4を終了したいと思います。ありがとうございます。
○事務局 ありがとうございました。宮川委員から修正いただきました用語が不明確な部分については、ノバルティスファーマ社に修正を指示いたします。適切に修正された文書については、まずは事務局で確認した上で部会長に報告・確認し、御了承いただければノバルティスファーマ社の再発防止策として受領するという手続について、議長に御一任を頂くようお願いできますでしょうか。
○合田部会長 皆さん、よろしいですか。では、見させていただきます。
○事務局 部会長に確認いただいた後、部会委員の皆様のほか、次回の薬事分科会にも報告する予定です。その後のことについてですが、再発防止策がとられたということになりましたら、文書の受領後に同社より先駆的医薬品等の指定の希望があれば、再発防止策の状況を確認の上、指定審査の俎上に載せることとしたいと思います。また、同社の再発防止策の概要及び本日の部会での議論の概要については、本部会後の事務局による記者ブリーフィングにおいて記者に説明いたしますので、あらかじめ御了知ください。事務局からは以上です。
○合田部会長 ありがとうございます。それでは、この議題4は終了し、議題5「遺伝子導入細胞の製造に用いられた非増殖性遺伝子組換えウイルスの残存に関する考え方について」、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 議題5について事務局より御説明いたします。マイプライベートファイルにお戻りいただき、資料5をお開きください。まず、背景について資料5-2、2/7ページの冒頭を御覧ください。再生医療等製品のうち、生体内から採取した細胞に、体外で遺伝子組換えウイルスにより遺伝子導入して患者に投与する、いわゆるex vivo遺伝子治療に用いるヒトの細胞等はカルタヘナ法の対象外ですが、遺伝子導入に利用する遺伝子組換えウイルスはカルタヘナ法で規定する生物に該当します。このため、遺伝子導入後の細胞にこれらのウイルスが残存している場合には、ウイルスが残存した細胞の使用等に先立ち、カルタヘナ法に基づく第一種使用等の承認及び第二種使用等に係る拡散防止措置の確認が必要となります。
 平成25年12月16日の生物由来技術部会において、「遺伝子導入細胞の製造に用いられた非増殖性遺伝子組換えウイルスの残存に関する考え方」を示し、一定の要件を満たす遺伝子導入細胞については、非増殖性遺伝子組換えウイルスは残存しないものと整理しました。今般、最新の知見を踏まえ、旧考え方で示した要件を見直し、「考え方」を改正することとしました。
 資料5-1、1/7ページで改正の概要をお示しております。主な改正点は以下のとおりです。1つ目は、製造に用いる非増殖性ウイルスの残存について、文献、製造実績等により残存可能性が極めて低いことが説明できれば、実験データの提出は不要とすること。2つ目は、製造時に生じ得る増殖性ウイルス(RCV)の残存について、製造された遺伝子組換えウイルスにおいて増殖性ウイルスが検出限界未満であれば、製造工程の下流に当たる遺伝子導入細胞での確認は基本的に不要とすること。
 資料5-2のとおり、改正案を作成しております。この改正案は、本部会で御報告した後、事務連絡等の文書にて発出する予定です。事務局からは以上です。
○合田部会長 ありがとうございます。本件について、委員の先生方から御質問、御意見等ありますでしょうか。よろしいですか。それでは、これで議題5を終了いたします。本日の議題は以上ですが、事務局から連絡事項はありますか。
○医薬品医療機器総合機講 機講からよろしいでしょうか。
○合田部会長 はい、どうぞ。
○医薬品医療機器総合機講 先ほど、イエスカルタの議題のところで永井委員から御質問いただいた件について確認がとれましたので御説明いたします。頂いた質問については、イエスカルタを投与して奏効された患者さんと奏効が得られなかった患者さんでOSで違いがあるかというところですが、投与された患者のうちCR、完全奏効に達した被験者については、観察期間において半数以上の方が生存しており、OSの中央値は推定できなかった。PRに達した患者さんについては、OSの中央値は7.7か月になります。また、奏効しなかった患者さんのOSの中央値は4.9か月というところで確認をしております。以上、御報告いたします。
○合田部会長 永井先生、よろしいですか。
○永井委員 分かりました。要は、Surrogate Endpointではあるが、True Endpointにほぼ近い治療成績だったということですね。ありがとうございます。
○合田部会長 ありがとうございます。ほかに、事務局から連絡事項はありますか。
○医療機器審査管理課長 本日も御議論いただき、ありがとうございました。次回の部会については、改めて事務局から御連絡させていただきたいと思います。連絡事項は以上です。
○合田部会長 それでは、これをもちまして本日の再生医療等製品・生物由来技術部会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室

再生医療等製品審査管理室長 大原(内線4226)